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例句を挙げる。

「川音が聞こえる」と母朧かな 肥田埜勝美
あはうみに鯉の吐きたる朧かな 大石悦子
いずかたも朧犬吠崎より打電 宇多喜代子
いちまいの葉よりはじまる草朧 齋藤愼爾
いつの世も朧の中に水の音 桂信子
うごくまで亀を見ている朧かな 福原八寿世
お法会に影絵あるよし朧かな 飯田蛇笏 山廬集
こころ足らふ女を求めゆかむ朧かな 室生犀星 犀星發句集
この朧海やまへだつおもひかな 原石鼎
さざめきは水の朧に棹す舟か 高濱年尾 年尾句集
さしかかる町に魚の香初朧 鷲谷七菜子 花寂び 以後
さばかりのことを朧にかづけけり 林原耒井 蜩
さまざまの人と遊びし朧かな 山田みづえ 木語
しつかりと見ゆるものほど音朧 能村研三 鷹の木
しゅんさいや京の朧はあじさいいろ 楠本憲吉
つややかな管つけ父は朧なり 櫂未知子 貴族
ともる窓下に恋忍びよる朧かな 青峰集 島田青峰
はだら雪踏みて来し温泉に朧なり 林原耒井 蜩
はづかしき骨を許してくれ朧 櫂未知子 蒙古斑
はや~と巣雀ねむり朧かな 原石鼎 花影以後
はるかより神の木と知る朧かな 山本洋子
ひたひたの海其処なれや朧行く 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
ひとこゑの鴨に朧のふかきかな 鷲谷七菜子 花寂び 以後
ひとり湯のひとりに濁る朧かな 能村登四郎 菊塵
ひと吹きは土くさき風初朧 村越化石
ふるさとや牛も朧のおもながに 河原枇杷男 定本烏宙論
ふる里は基地のつぎはぎ朧なり 嘉陽伸
ふろしきのなかを問はれし朧かな 松岡貞子
ほとほととほとほとと撲つ門朧 菅原師竹
まうしろのステンドグラス朧なり 須藤徹
まひる梅の咲くさえ朧愛人あり 末永有紀
まんまるな山々ならぶ朧哉 寺田寅彦
みなぎつてケトルの笛となり朧 鳥居おさむ
み吉野の山路阻みてゐる朧 河野美奇
むかう岸朧や寝釈迦山ありて 加藤耕子
もの言はぬ雪塊森に朧なり 堀口星眠 営巣期
やはらかき草を踏み行く朧かな 荻原井泉水
ややこしきこと棚上げの朧かな 手塚美佐 昔の香
ゆつたりと朧ながるる身の内外 能村登四郎
よこがほの朧に過ぎし梅若忌 鷲谷七菜子 花寂び 以後
わが名さゆみ朧々となべぶたを持つ 鎌倉佐弓 天窓から
わが窓の灯の果の草朧 星野立子
わが船も朧と見ゆれ多島海 山岸治子
われとわがいのちたちたき朧かな 久保田万太郎 流寓抄
われ折々死なんと思ふ朧かな 夏目漱石 明治三十二年
キリストが売られし日なり星朧 古賀まり子
シャガールも馬も朧を昇りゆく 文挟夫佐恵
バナゝ揺るゝ夢も朧よ復覚むる 林原耒井 蜩
ビル朧どこにでもある中央区 中田 美子
ボタ鼻に朧の胡弓弾くは誰 清原枴童 枴童句集
メロンパン体内すこし朧なり 奥坂まや
一斉に客の帰りし朧かな 塩谷康子
一樹~押し来る幹の朧かな 渡辺水巴 白日
一病に吾が行く先の朧なる 吉村ひさ志
万亭は土蔵ある庭朧濃し 渡邊水巴 富士
三亀松のようはあようの朧にて 高澤良一 ぱらりとせ
不空羂索観音にあひたき朧かな 安東次男 昨
不老不死てふ花活けてみて朧 稲畑汀子
世話もなし朧おぼろと年のくれ 京-竹翁 元禄百人一句
中幕は延寿太夫の朧かな 龍岡晋
丹田のちからをぬけば朧なる 濱田俊輔
九頭朧の洗ふ空なる天の川 細見綾子
五体投地終へたる僧の朧かな 小枝秀穂女
亡き父母遠し生家の朧影にねる 羽部洞然
人下りし市電朧の中に揺れ 橋本鶏二
仮縫の身におよびたる朧かな 杉本雷造
仮縫ひの糸曳き朧にもなれず 齋藤愼爾
伴天連を伝へし島の朧かな 上村占魚 鮎
何となき時を大事に朧かな 手塚美佐 昔の香
俳諧を鬼神にかへす朧かな 前田普羅
倚りかかりたきほど朧濃くなりし 能村研三 騎士
億兆の魚介眠れる海朧 岡安迷子
光背の火焔のほかは朧なり 山内康典
六条はいとど朧やよるの雨 立花北枝
其髯かあらぬか松の朧なる 尾崎紅葉
初朧かや松籟ののびちぢみ 川端茅舎
初朧どの山となく対ひゐて 村越化石 山國抄
初朧大蛤を僧の焼き 関森勝夫
初朧菓子買ふための寄り道よ 大野林火
初朧隣へひとつ届け物 村越化石
別れんとかんばせよする朧かな 飯田蛇笏 山廬集
刻過ぎて行けば悲しみさへ朧 川口咲子
動く灯も動かざる灯も朧かな 伊藤孟峰
匂い立つ樹々の朧に笛木霊 長谷川かな女 牡 丹
十一面千手観音朧へ手 松山足羽
千枚田朧へ影を重ねけり 松岡悠風
卒塔婆より身におよびたる朧 齋藤愼爾
南麓に灯の帯展け朧富士 川村紫陽
反戦の一人の旗を巻く朧 文挟夫佐恵
口中に湯葉をふふみて朧かな 冨田みのる
古墳みな口開けてゐる朧かな 冨田みのる
古都五山朧の鐘の響き合ふ 沖鴎潮
右心房より左心房へ朧の血 高野ムツオ
吾れ朧世も朧なり猫を膝 村越化石
呼びかけて妻そこにゐる朧かな 小林康治 『虚實』
喉越しに残るワインや星朧 安藤マチ子
四隅より朧湧き立つ支那らむぷ 殿村莵絲子 花寂び 以後
国分寺の在れば朧に国分尼寺 野見山ひふみ
国外へ朧ひつさげ僧らの旅 赤松[ケイ]子
国生みのはじめにありし草朧 齋藤愼爾
園朧雨呼び花の我に咲いて 廣江八重櫻
土捏ねる鍬倒れたる朧かな 柑子句集 籾山柑子
地球儀をつつんでゐたる朧かな 山川与志美
堂朧絵を出て歩く鳥けもの 猪俣千代子 堆 朱
夕明り麦笛既に朧めき 河合凱夫 藤の実
夕朧帆を下ろしてはたまりけり 金尾梅の門 古志の歌
夕朧笈摺堂に白ふやす 杉本寛
夕網の重さ海の面朧立つ 金尾梅の門 古志の歌
外濠の向う朧に牢屋町 石黒裕運
夢殿の暮のつづきの松朧 鍵和田釉子
大いなる星一つある朧かな 綾部仁喜
大いなる鐘にゆきあふ朧かな 飴山實(1926-2000)
大むらさき羽化を待つ林朧かな 陣野今日子
大仏の目には吾等も朧かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
大仏の真正面の朧かな 岡田史乃
大部屋の患者寝息の朧なる 高澤良一 鳩信
大阪の朧まとひて旅情とす 西本一都 景色
夭々と朧は吾にぶつかりぬ 岡井省二
如意輪寺灯りてよりの朧かな 堀恭子
如逝輪寺ぽつんと灯り谷朧 石井とし夫
妻と磯を行くどこまでも朧なり 有働亨 汐路
妻の辺に寝ね身をのばす朧かな 八木林之介 青霞集
媼てふ遠きわたくし朧の木 正木ゆう子
子を取ろの来さうな村の夕朧 富永小谷
子供橇立掛けてある朧かな 太田土男
客待てば座広くともし宵朧 雑草 長谷川零餘子
宥すことに慣れて朧となりにけり 小林康治 『潺湲集』
家の鍵換えて朧の鈴の音 中里行雄
家中の柱が芽吹く朧かな 齋藤愼爾
寄宿舎に賊を捕へし朧哉 寺田寅彦
寝に落つるきはの死に似て朧闇 内海守
寝る前の髪に朧を感じをり 朝倉和江
寺田屋の裏に水捨つ朧かな 山本洋子
少女の絵みな鳥となる昼朧 原コウ子
岩山の岩押しあへる朧かな 小川軽舟
岬の燈ひとつが朧ならざる燈 上田五千石
帰り来て手は取らねども母よ朧 楠本憲吉
年寄りの聞えぬ振りの朧かな 日下部宵三
幾度も歩をとめて坂朧なり 古賀まり子 緑の野
庖丁の香を逃しやる朧かな 安東次男 昨
弓張かそれかれこれも皆朧 広瀬惟然
引いてやる子の手のぬくき朧かな 中村汀女(1900-88)
待たされてゐて約束のふと朧 今橋眞理子
御百度を踏むに朧よ近江の陸 高柳重信
急ぐことなければ朧濃くなりぬ 岸田稚魚 『紅葉山』
急須の茶しぼりたらすよ夕朧 原石鼎 花影以後
息吸うてからだ浮く湯の朧かな 澁谷道
戒名で呼ばれてをりし朧かな 齋藤愼爾
手を洗ひ顔を洗つて朧かな 細川加賀 『玉虫』
折鶴をひらけばいちまいの朧 澁谷道
捨てられし花の朧へ雪の降る 金箱戈止夫
接骨木の芽の揃ひたる朧かな 前田普羅 能登蒼し
敗れたる軍鶏の目ひらく朧かな 加藤楸邨
日めくりに大納言ゐる朧かな 大屋達治 絢鸞
星一つ二つは見えて朧かな 貴葉志行
星朧わづかな湯気に吾も主 香西照雄 対話
春めくや築地は海の朧より 白水郎句集 大場白水郎
春日三球ひとりとなりし朧かな 能村登四郎
時の上に朧の時を浮かべ逢ふ 赤松子
晩年のひと日過ぎゆく朧かな 広谷春彦
暁の夢かとぞ思ふ朧かな 夏目漱石 明治二十九年
更級日記の道や此の世も朧なる 町田しげき
書魔堰いて書庫の鉄扉が生む朧 竹下しづの女句文集 昭和十一年
朧々ふめば水也まよひ道 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
朧とはなりぬ昴も西の星 山本歩禅
朧とは桜の中の柳かな 正岡子規
朧とも沼明りともいづれとも 石井とし夫
朧なりグラス廻せば花となる 千代田葛彦 旅人木
朧なり次の朧はまだ見えず 原田喬
朧なり猫がもどりて蜜柑箱 中田剛 珠樹以後
朧なり甍をうめて山の道 中田剛 竟日
朧なるものの初めのわが乳房 山下知津子
朧なる枝くねりゐる並木かな 原田種茅 径
朧なる湖に瀕死の白樺 堀口星眠 営巣期
朧なる畦のいつぽん病むごとし 櫛原希伊子
朧なる素足の遊行上人像 猪俣千代子 秘 色
朧にて寝ることさへやなつかしき 森澄雄
朧にて昨日の前を歩きをり 加藤楸邨
朧にて落つるハンマー音おくれ 加藤楸邨
朧の灯すこし離れて屍室 橋本榮治 麦生
朧の灯縫うて島々漕ぎぬけし 雑草 長谷川零餘子
朧めく庭より上る獨り言 阿部みどり女
朧よりうまるる白き波おぼろ 藤田湘子
朧よりぬけきし猫の白さかも 白岩 三郎
朧より水運び来し塵芥 原裕 青垣
朧を来し燈の下の手足つめたく 原田種茅 径
朧中二人の心一つかな 白水郎句集 大場白水郎
朧人あすはいづこの灯に冴えむ 林原耒井 蜩
朧人一人ベンチに来てかけし 温亭句集 篠原温亭
朧漕ぐ波のうねりに添ふ艪かな 柑子句集 籾山柑子
朧濃く他界の言葉吐きしかな 齋藤愼爾
朧濃し常おぼろなるわが眼にも 木村 風師
木仏をさがしあぐぬる朧かな(西国四十二番仏木寺縁起) 飴山實 『次の花』
木戸深く砂入れしより朧かな 金尾梅の門 古志の歌
朱の鳥居千本くぐる朧かな 老川敏彦
来し方を行く方を草朧かな 高木晴子
松の立ち木を朧に舞台暗転す 長谷川かな女 花寂び
松の葉のみな立ちのぼる朧かな 永田耕衣 真風
松は松杉は杉なり朧にて 青柳志解樹
松深き海音に立つ朧かな 金尾梅の門 古志の歌
枕へと朧を通ひつめにけり 杉野一博
枝坂のまた枝坂の朧かな 大場白水郎
枝打ちが下りて来ておる朧かな 森下草城子
柳の下に物ありと思ふ朧かな 寺田寅彦
根の国へ手足を伸ばす朧かな 沼尻巳津子
樹々に触るゝ手の生き~と朧かな 渡辺水巴 白日
樹の上の少女に喚ばれゐる朧 中村路子
止り木に脚のあそべる朧かな 岸田稚魚
此國の山皆まろき朧哉 寺田寅彦
死に際の台詞を思ふ朧かな 星野明世
殖ゆる灯も貝殻山も朧なり 石田あき子 見舞籠
水のんでおのれ朧となりにけり 角川春樹(1942-)
水揺れて灯の尾淋しき朧かな 柑子句集 籾山柑子
水朧ながら落花を浮べけり 芥川龍之介 我鬼窟句抄
水郷の橋みな低く朧かな 浅野右橘
水際のうごきてゐたる朧かな 岸田稚魚
水飲んであしゆびひらく朧かな 小川軽舟
水飲んでゐる晩年の朧かげ 鷲谷七菜子 花寂び
江に添ひて人棲むらしき朧かな 川越民子
沫雪の日の中消て朧哉 成美
沼囲む樹々なまめきて朧かな 永井龍男
波音のをりをり漏るる朧かな 林 千恵子
泣いて行くウヱルテルに逢ふ朧かな 尾崎紅葉
泥濘のぬくみにふれつ朧かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
洛中をすぎゆく風も朧にて 長谷川双魚 『ひとつとや』
浄め塩浴びてより身の朧なる 平野直子
浅草寺扉しめたる朧かな 増田龍雨 龍雨句集
浜朧芥焼く火の高からず 関森勝夫
浪音の今宵は遠し草朧 本井英
涅槃より今年の朧はじまりし 森澄雄 所生
深深と朧思いの瓦礫かな 永田耕衣 人生
温室にトマト熟れたる朧かな 岸本尚毅 舜
湯にうごく異形のものも朧かな 宇多喜代子
湯煙の朧へだてゝ語りけり 青峰集 島田青峰
湯煙りの白粉臭き朧哉 寺田寅彦
漱ぐ朧を鳴らすごとくにて 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
濡れ沈む汝が辺にて朧まさりつつ 齋藤玄 『玄』
灘御影酒倉つづき朧なる 田中冬二 俳句拾遺
灯ともせば外の面影なき朧かな 富田木歩
灯を消して朧に慣れて寝まるなり 林翔 和紙
灯明に離れて坐る朧かな 斎藤梅子
炭焼や朧の清水鼻を見る 榎本其角
点滴の終りを告ぐる朧ごゑ 高澤良一 鳩信
烏賊さしにわさび効かせて朧かな 藤岡筑邨
燈明に離れて坐る朧かな 斎藤梅子
燈臺の朧のさきの別の國 島田刀根夫
父と子の離れて眠る朧かな 広瀬直人
父の世へまはす朧の蓄音機 藤井寿江子
父むかしオルフェを観しといふ朧 皆吉司
牛小屋に牛形据うる朧めき 石川桂郎 含羞
犬吠の今宵の朧待つとせん 高浜虚子
狂乱や朧の影は鐘にあり 青峰集 島田青峰
狩くらす花の朧を歩路かな 東助
甕ひとつ朧の国に居りにけり 村越化石
生きて候花の朧をつぎ合はし 齋藤愼爾
疇に似し径に出たり朧づき 蘇山人俳句集 羅蘇山人
病妻を曳く肉片の朧の手 斎藤玄 雁道
病臥とは朧へ見えぬ手に曳かるる 斎藤玄
白粥を朧にはこぶ看とりかな 橋本鶏二
白魚汁朧のゆゑにこころ足り 森澄雄
百歳のわれを見てゐる朧の木 平松彌栄子
眼界や朧に消ゆる蝶の翅 石塚友二
知らぬ町に家をたづぬる朧なり 千代田葛彦 旅人木
石の碗ささげて水の朧かな 夏井いつき
石棺の蓋あいてゐる朧かな 黛執
石蹴れば落ちゆく谷の朧かな 上村占魚 鮎
磨ぐ米のさくさくさくと草朧 中拓夫
祖父に手をよくさはられし朧かな 皆吉司
神の手で撫でたやうなる朧かな 松瀬青々
神代より波と闘へる岩朧 石島雉子郎
空に触るる思ひに歩む朧かな 日石俳句鈔 井上日石
章臺や柳に妓楼朧なり 寺田寅彦
竹の根が岬を縛る朧かな 大屋達治 龍宮
笑ひごゑ通つてゆきし朧かな 細川加賀 『玉虫』
筆先にためらひ絡む朧かな 谷口桂子
管楽器絃楽器眠り朧かな 松山足羽
経が峯朧を曳いてゐて嶮し 橋本鶏二 年輪
綱解けて誰が曳くとなき馬朧 安斎櫻[カイ]子
網敷きて待つや朧の集魚燈 平賀扶人
美しき学校あらば草朧 攝津幸彦(1947-96)
翌檜朧といふが降りにけり 鈴木太郎
老人を引っぱる海の朧かな 石田勝彦
背水の朧明かりに見ゆる景 小出秋光
能管のきはやかなりし朧かな 森澄雄 所生
能舞台朽ちて朧のものの影 鷲谷七菜子 花寂び
能面のうちに泣くこゑ朧にて 猪俣千代子
膚膩爛壊屍載せ去りし朧かな 東洋城千句
自らを緊めて朧の壺の首 河合凱夫
船溜り船の素顔の朧にて 出田洋子
花ぐもり朧につゞくゆふべかな 蕪村
花曇朧につづく夕べかな 蕪村
花朧きらきらとある子の涙 対馬康子 愛国
花朧なれば酔歩も許されむ 南光翠峰
花朧吉野格子を漏るる燈に 小川斉東語
花朧樹の脈拍を感じおり 大高 翔
花朱欒香ふかぎりの朧なる 千代田葛彦 旅人木
芽ぐむものみな芽に出でゝ朧かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
草の戸の閉め忘れある朧かな 坊城春軒
草朧仔羊に髯の生え初めし 村越化石 山國抄
草朧黄泉の朧を知らざれど 手塚美佐 昔の香
荒鋤きや田へ引く水の朧にて 石川桂郎 四温
菜の色の日々に濃まさり朧かな 原石鼎 花影以後
落石もきつねの山も朧せり 村越化石 山國抄
落葉松原四方にせめぎて朧なり 堀口星眠 火山灰の道
薬師寺の朧を踏みて湯女帰へす 萩原麦草 麦嵐
薬飲む竹の朧を通りぬけ 大岳水一路
藁塚のしんで泣くよな朧かな 渡辺白泉
藍染に灯までも青き朧かな 高田菲路
藍玉の立方体の朧かな 伊藤いと子
虚子立ちし大観峯の草朧 大久保橙青
蛙ともならまし悔や草朧(感あり) 原石鼎
蛤をこゑにききたる朧かな 黒川純吉
行き行きて朧に笙を吹く別れ 夏目漱石 明治三十一年
行く川のあなた北斗の朧かな 立花北枝
街朧言つてしまへば皆嘘めく 品川鈴子
袴つゝみて使に渡す朧かな 龍胆 長谷川かな女
西山や花の朧に日の落つる 士巧
見下ろして人も朧でありにけり 高浜きみ子
見送りし朧々の後ろ影 高浜虚子
角のない山ばかりなる朧哉 寺田寅彦
角力取露けき旅をつゞけけり 朧雨
言の葉にきせたき衣の朧ほど 坂本京子
試写室の小さき闇出で夕朧 岡田貞峰
誰訪ひて心満たさむ夕朧 林翔 和紙
谷ごとに仏のおはす朧かな 飴山実
貝こきと噛めば朧の安房の国 飯田龍太
足のむくままに歩きて朧なり 今井杏太郎
足音をもたず朧の砂丘ゆく 羽部洞然
踏みいでゝ酔発したる草朧 小林康治 四季貧窮
身に一つ加へし忌日初朧 目迫秩父
身も業も骨となりたる朧かな 橋本榮治 越在
軒近くかかれる山も朧かな 田中冬二 麦ほこり
辛崎の朧いくつぞ与謝の海 蕪 村
辛崎の松は花より朧にて 芭蕉
辻仏灯して朧ふやしけり 毛塚静枝
遊女屋の渡り廊下の朧かな 田中冬二 行人
道の辺に堰く水高き朧かな 尾崎迷堂 孤輪
還らじの人指折りて花朧 千原叡子
郵便船泊まりとなりし朧かな 松山足羽
酒蔵に人の入りゆく朧かな 豊田八重子
酒飲めばいよいよ墓の朧かな 相生垣瓜人 微茫集
金粉の袖に附きくる朧かな 竹内悦子
鉄鉢のすがたと思ふ朧にて 岡井省二
鉦提げて叩かぬ鬼の朧かな 碧童句集 小澤碧童
長生きの朧のなかの眼玉かな 金子兜太(1919-)
閉さでおく坊の雨戸や滝朧 峰山 清
雁の声朧々と何百里 支考 俳諧撰集「有磯海」
雨そぼ~灯籠の灯の朧なる 寺田寅彦
雨戸たつれば外は朧の瀬音かな 青峰集 島田青峰
雨音やいとゞ朧と思ひしに 原石鼎 花影以後
雪はあれど山鳥の立つ朧かな 乙字俳句集 大須賀乙字
雪雫絶ゆるに出でて朧かな 安斎櫻[カイ]子
電話番号ルージュで記す朧かな 河府雪於
青僧の経の滲み出す朧かな 鳥居おさむ
鞆の津の浮燈台の朧かな 伊藤いと子
顔剃りし傷を朧がうづめゆく 都筑智子
風呂の戸にせまりて谷の朧かな 原石鼎(1886-1951)
鬼橋の朧を渡る狐かな 椎橋清翠
魂魄を身近かにしたる朧かな(悼佐藤鬼房) 橋本榮治 越在
鯉の見る夢の知りたき朧かな 大串章
鯉二つ二の字にゐたる朧にて 森澄雄 四遠
鳥塚を経て虫塚へ草朧 櫛原希伊子
鳥好きの人と聞きゐる家朧 高澤良一 さざなみやっこ
鳥居より引きかへしたる朧かな 阿部みどり女
鳥眠る沼の朧を櫂の音 佐野美智
鴛鴦飼うて朧に住むや草館 雑草 長谷川零餘子
鶏の目のわづかにひらく草朧 夏井いつき
麦畑の香の染みとほる朧かな 米沢吾亦紅 童顔
黒姫山かかる朧を雪崩れけり 松村蒼石
黒潮の沖に島ある朧かな 福島せいぎ
「眼鏡はどこに」うたにして妻おぼろかな 加藤楸邨
うつし世のおぼろの中に歩を移す 吉田 長良子
おぼろおぼろともし火みるや淀の橋 上島鬼貫
おぼろげな馬の形を湯冷めかも 永末恵子 留守
おぼろなり彫りし葡萄は金にして 山口青邨
おぼろなり早寝の町の販売機 小島千架子
おぼろなる仏の水を蘭にやる 大木あまり 雲の塔
おぼろにてひとごとならぬ普賢かな 永田耕一郎 方途
おぼろにてわれの柩はまだ着かぬ 小檜山繁子
おぼろにて一樹紅白の落椿 水原秋櫻子
おぼろにて木兎移りゆく八重桜 水原秋櫻子
おぼろの灯集めて湾の形とす 蔦三郎
おぼろの石積みやり馬頭観世音 村越化石 山國抄
おぼろめくいそぎんちやくのそよげるは 奥坂まや
おぼろめくしづかなしづかな枝の空 長谷川素逝 砲車
おぼろめくオペラの天井桟敷かな 山本歩禅
おぼろよりおぼろへ向けし舳先かな 栗島 弘
おぼろより仏のりだす山の寺 桂信子
おぼろより檣灯不意に迫りくる 築城百々平
おぼろ坂あとは畳を拭いてをり 新関幸至
つなぎ飼ふ子猫に胡洞おぼろ濃し 田中英子
にんげんは悲しみの泡夕おぼろ 林 翔
のれそれののんどを走るおぼろかな 茂里正治
ろまんすをおぼろづくしにふくらまそ 松澤蕗子
わかれたる顔おぼろなるバスの中 阿部みどり女 笹鳴
わが框おぼろの杖を措きにけり 林原耒井 蜩
オリーブの繊枝おぼろにさし交す 佐野まもる 海郷
シクラメンおぼろ哀しきしろさかな 久保田万太郎 流寓抄
ビルと云ふ直方體の夕おぼろ 高澤良一 ももすずめ
一年のまためぐり来しおぼろかな 久保田万太郎 流寓抄以後
世話もなし朧おぼろと年のくれ 京-竹翁 元禄百人一句
乗り継いで乗り継いで来し街おぼろ 黒川悦子
人形も疎開して来ぬ里おぼろ(文楽) 廣江八重櫻
仏像と僧と等身おぼろにて 猪俣千代子 堆 朱
仏陀笑むおぼろに黐の花振りて 内田秀子
佛像と僧と等身おぼろにて 猪俣千代子
六地蔵ひとり戻らぬ花おぼろ 中嶋秀子
列柱に水音おぼろ地下宮址 澤田緑生
古りしこと年々おぼろ枝珊瑚 宇佐美魚目 天地存問
土不踏草を踏みしが身のおぼろ 山上樹実雄
堂おぼろ青衣の女人現れませよ 下村梅子
夕おぼろ入湯十訓声にして 高澤良一 ぱらりとせ
夕おぼろ葉深く樫の花見たり 栗生純夫
夢おぼろ寝あけば坐る昼の蚊帳 上村占魚 鮎
夢の如きおぼろの富士に見えけり 星野立子
大津絵の鬼をどり出すおぼろかな 小松崎爽青
天球の一角おぼろなる砂漠 澤田 緑生
太夫町揚屋町てふ路地おぼろ 徳永 亜希
夫婦箸の在り処おぼろや桜鯛 草田男
妻あらば衣もぞ掛けん壁おぼろ 原石鼎
娘と同居おぼろじめりの灰ならす 栗林千津
宇治陵へ京の灯遠きおぼろかな 西村公鳳
寺の塔今日いくつ見し夕おぼろ 河府雪於
屑星に漂へる気のおぼろかな 阿部みどり女
山おぼろ檻に納まる穴仏 高松遊絲
岳おぼろにて雪深きけものらよ 千代田葛彦 旅人木
帯きつく締めおぼろなる母の声 鎌倉佐弓 潤
座敷童子振り向くおぼろ燠明り 櫛原希伊子
彩燈を木に鏤めて庭おぼろ 西村公鳳
応へつつ和上おぼろに桶使ふ 角川春樹 夢殿
手相の灯唇紅濃きをおぼろとも 原田種茅 径
放流をけふ了へし川おぼろなり 石川文子
教会の十字架おぼろ平和な村 柴田白葉女
星おぼろにて本流に力あり 千代田葛彦
春おぼろあの世この世の夢の人 嵐山美子
春雨の中におぼろの清水哉 蕪村 春之部 ■ 小原にて
時の上におぼろの時を浮べ逢ふ 赤松[ケイ]子
朧よりうまるる白き波おぼろ 藤田湘子
朧濃し常おぼろなるわが眼にも 木村 風師
松の幹おぼろと見れば根方まで 橋本榮治 麦生
松島の八百八島皆おぼろ 鈴鹿野風呂 浜木綿
枯木立おぼろに茜沈めたり 林原耒井 蜩
水おぼろ首あぐる馬の唇鳴りぬ 瀧春一 菜園
水音は山女魚跳ぶらし淵おぼろ 内山 亜川
波おぼろ漁網も人もうづくまり 岡本まち子
海おぼろ忘れし頃に浪くだけ 若木一朗
湖おぼろ嘴埋めて鳥寝に入りぬ 佐野美智
湖に板戸を閉めて松おぼろ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
濡れ石にある雪洞の夕おぼろ 渡邊水巴 富士
灯おぼろ鏡は覆をあげ居たり 長谷川かな女 牡 丹
牛守の古稀の白髭おぼろかな 太田土男
玄上の琵琶据ゑ厳島おぼろ 尾野恵美
病めるとも亭主関白夕おぼろ 松岡友江
癌負うて一家族山おぼろなり 中山純子 沙羅
白魚のどつと生るゝおぼろ哉 小林一茶 (1763-1827)
盗掘の異神おぼろやぼろの市 津波古江津子
窓いくつ重ねて灯り町おぼろ 青峰集 島田青峰
立枯の木々おぼろなり黒斑山 堀口星眠 営巣期
粟島と佐渡のあわいになだれたる天ノ河とう春の星おぼろ 田井安曇
臥龍藤万の花房おぼろめき 伊東宏晃
舟虫とよばるゝさへや身のおぼろ 久保田万太郎 流寓抄
花おぼろとは人影のあるときよ 比奈夫
花おぼろ凭れて痛い松の幹 池田澄子
花おぼろ遺句の切字の重きかな 渓槐三
草おぼろ木おぼろ家路しかと踏む 下村槐太 光背
草おぼろ生涯に賭まだのこる 藤田あけ烏 赤松
蕾もつ草をおぼろに踏みしかな 龍胆 長谷川かな女
街おぼろ硝子張りなる昇降機 北元 多加
観音の腑中のおぼろ男女上る 嶋野國夫
足元に潮の満ち来て海おぼろ 斉藤葉子
野木瓜掘る手元おぼろとまだならぬ 林原耒井 蜩
釘を打つ顔をおぼろや峡の屋根 飴山實 辛酉小雪
鐘おぼろ強く指組む懺悔台 きりぶち輝
闇おぼろゆけば行かれて瀧のみち 阿波野青畝
降参か歓呼か諸手おぼろなる 仙田洋子(1962-)
雀四五日来ずよ庭木の風おぼろ 渡辺水巴 白日
雛の軸おぼろ少女と老婆寝て 原 裕
鯉おぼろあたまを水に打たせをり 宇佐美魚目 天地存問
鯉に乗る僧の図おぼろ曳きにけり 大串章



以上
by 575fudemakase | 2014-04-26 20:52 | 春の季語 | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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