人気ブログランキング | 話題のタグを見る

春の宵

春の宵

例句を挙げる。

「前略」と書きしばかりや春の宵 中村苑子
うかれ鴉ほかに名は無く宵の春 中島月笠 月笠句集
けふよりの妻と来て泊つる春の宵 日野草城
けふ買ひし金魚眠りぬ宵の春 渡辺水巴 白日
すり減りし骨を嘆きつ春の宵 原裕 青垣
そぞろ歩きもはなだの裾や春の宵 夏目漱石 大正三年
どぶ泥に手を入れて冷たしや春の宵 内田百間
はたなかに案山子囁(ツツ)めく春の宵 日夏耿之介 婆羅門俳諧
ひえ~と浅間がすわる春の宵 前田普羅 春寒浅間山
びら文字の跳ねたる髭よ春の宵 今泉貞鳳
ふと春の宵なりけりと思ふ時 高浜虚子
ふり向きしうしろに月や春の宵 高橋淡路女 梶の葉
ほどを打つ鼓稽古も春の宵 四明句集 中川四明
また明日といふ日のあるに春の宵 長谷川回天
ゆく春の宵にて僧が修羅を舞ふ 佐藤鬼房
カーテンも引くべきは引き春の宵 波多野爽波 鋪道の花
サバランに酔ふ父なりし春の宵 水原 春郎
セルロイド人形歩け春の宵 大峯あきら
上方の穴子押鮨春の宵 國島十雨
人形の胸押せば哭く春の宵 伊藤敬子
伝へ古る雅の舞や春の宵 谷川八重子
傾城に歌心あり春の宵 寺田寅彦
児の笑顔寝顔にかはり宵の春 福田蓼汀 山火
公達に狐化けたり宵の春 蕪村
六区とてひとりは淋し春の宵 関口真沙
切株の松脂ひかる春の宵 前田普羅 能登蒼し
句を知りて四十年の春の宵 高橋淡路女
同じ橋三たび渡りぬ春の宵 夏目漱石 大正三年
声まがふ茶の間の父子春の宵 亀井糸游
女湯の聲の覚えや春の宵 会津八一
妊りし娘に長電話春の宵 野川 枯木
妹が読む伊勢物語宵の春 池上浩山人
妻とエレベーターの急行に乗る春の宵 橋本夢道 『無類の妻』以後
婚の荷の重ねの淡し春の宵 橋本良子
子守歌うたつてみたし春の宵 谷口桂子
客を待つ一卓一花春の宵 岩崎照子
客帰る三日月があり春の宵 高木晴子 晴居
家集まだ表紙のしめり春の宵 赤松[けい]子 白毫
宿坊の廊下軋むや春の宵 内田八重子
宿引にひかれごころや宵の春 飯田蛇笏 山廬集
寐まどひし鶯もあるよ春の宵 渡辺式子丸
小百姓の飯のおそさよ春の宵 村上鬼城
小鏡にうつし拭く墨宵の春 杉田久女
座布団の緋色によろけ宵の春 井沢正江 以後
息つめて写経一と文字春の宵 石川 泰子
扇もて顔をかくしぬ宵の春 雑草 長谷川零餘子
抱けば吾子眠る早さの春の宵 深見けん二
新妻の湯桶かんこん春の宵 辻田克巳
日本の古へよりの春の宵 上野泰 春潮
春の宵このままパリに住みたしや 山本歩禅
春の宵やわびしきものに人體圖 中塚一碧樓
春の宵テレビばつかり見なさんな 稲畑廣太郎
春の宵人の妻なる事もよし 高橋淡路女 梶の葉
春の宵北斗チクタク辷るなり 前田普羅 春寒浅間山
春の宵噴煙の香を横ぎれり 前田普羅 春寒浅間山
春の宵妻のゆあみの音きこゆ 日野草城
春の宵歯痛の歯ぐき押してみる 徳川夢声
春の宵白鳩の尾に影たまる 四ッ谷 龍
春の宵皿を汚して男去る 北さとり
春の宵船のほとりの待ち俥 五十嵐播水 埠頭
春の宵身より紅紐乱れ落つ 三好潤子
春の宵鋏の小鈴よくひびき 吉屋信子
春の宵高層ビルに迷い犬 伊藤真理
椅子の背をすべる衣や春の宵 大場ひろみ
椿子も叡子もいます宵の春 阿部慧月
歌人の絵所訪へり春の宵 桃家
止まり木といふ椅子に乗り春の宵 岩崎照子
止利仏師衾裾を刳り春の宵 和田悟朗 法隆寺伝承
母といふも我が知るのみや宵の春 渡邊水巴 富士
水銀の行方も知れぬ春の宵 五島高資
江に映る関の灯や宵の春 蘇山人俳句集 羅蘇山人
江の電のことんと停まる春の宵 水原 春郎
油気の喰へぬ病や春の宵 富田木歩
活魚の顔に疵あり春の宵 岩井如酔
浦人の小唄習ふや宵の春 竹冷句鈔 角田竹冷
浮かぶのは横顔ばかり春の宵 谷口桂子
温顔の輝きおもふ春の宵 相馬遷子 雪嶺
湯の町の春の宵とは殊の外 星野椿
潮の香をもて来る露地や春の宵 小杉余子 余子句選
灯の位置を変へてひと待つ春の宵 谷口桂子
灯の前にはにかむ妻や宵の春 西山泊雲 泊雲句集
灯を卓に近づけ春の宵となる 高木晴子 花 季
無為といふこと千金や春の宵 富安風生
父を呼ぶコーヒの時間春の宵 小山白楢
犬にあひて猫は稲妻春の宵 橋本鶏二
猪口伏せて飯食ふ老や宵の春 河野静雲 閻魔
町なかの藪に風あり春の宵 内田百間
白馬に使者にほやかや春の宵 河東碧梧桐
目つむれば若き我あり春の宵 高浜虚子
眠たがる兄に句を問ふ宵の春 比叡 野村泊月
笙鳴るや「林歌」に連るゝ春の宵 長谷川かな女 雨 月
筋かひにふとん敷きたり宵の春 蕪村
筋違にふとん敷きたり宵の春 蕪村
籠行燈さげて庭ゆく宵の春 比叡 野村泊月
織田作の住みたる町の春の宵 高見岳子
肘白き僧のかり寝や宵の春 蕪村
胴掛のほどけて淋し春の宵 道芝 久保田万太郎
自像見入る時淋しみや宵の春 中塚一碧樓
花嫁が舳先をあるく春の宵 佐川広治
草庵や子の絵ひとつに春の宵 杉田久女
菊亭のおとゞ牧馬を弾ず春の宵 寺田寅彦
蓼科の未だ見えてゐる春の宵 田中冬二 麦ほこり
藪空に拡ごる星や春の宵 西山泊雲 泊雲句集
衝立の繍ひ鳳凰も宵の春 軽部烏帽子 [しどみ]の花
袂もたげて盃さしぬ宵の春 雑草 長谷川零餘子
裏口に誰か来て居る春の宵 田中冬二 麦ほこり
裏川の水鳴り止まず春の宵 内田百間
言ひつのる唇うつくしや春の宵 日野草城
贈られし花環に燭や春の宵 四明句集 中川四明
足なえの妻所在なや春の宵 寺田寅彦
足袋裏に舞台の塵や宵の春 龍胆 長谷川かな女
鏡の間こゝは米国春の宵 高木晴子
鐘撞けば流石に更けて春の宵 井月の句集 井上井月
額つりて小家賑し春の宵 前田普羅
養生の酒色に出づ宵の春 河東碧梧桐
鯱のイルミネーシヨン春の宵 稲畑廣太郎
黄に灯る赤き蝋燭春の宵 中口飛朗子
人寄れば早や春宵の思ひする 高木晴子 花 季
刻長し春宵の情詠ふべく 徳永山冬子
卒寿なる吾にも春宵おとづれる 粟津松彩子
叱られて 春宵古い積木を積む 沙羅冬笛
咳やみて春宵さらに更くるのみ 上村占魚 鮎
地階より春宵スープ皿の下に 古舘曹人 能登の蛙
子を諭し春宵稀に胸さわぐ 殿村菟絲子
山の雨春宵だんろもてなさる 及川貞 榧の實
山春宵鯉のあらひに酒飲めば 岡田日郎
戸に戻りつく春宵の雨ほつ~ 高濱年尾 年尾句集
春宵に包まれてをる我のみか 上野泰 春潮
春宵のきんいろの鳥瞳に棲める 富澤赤黄男
春宵のこの美しさ惜しむべし 星野立子
春宵のたがひに交す小盃 倉田 紘文
春宵のつくづくたたみいわしの目 池田澄子
春宵のふしどに入りし聖かな 河野静雲 閻魔
春宵のサラダのヴイネガ過ぎにけり 林原耒井 蜩
春宵のムーン・ストーンの形見かな 野澤節子 『駿河蘭』
春宵の乳足りし子を見飽かぬも 西村和子 夏帽子
春宵の今は今又明日は明日 星野立子
春宵の伐折羅の闇は田へ通ふ 古館曹人
春宵の何から話そ旅のこと 稲畑汀子
春宵の分針少し遅れゐる 行方克巳
春宵の匂ひと思ふ闇ふかし 高木晴子
春宵の地震ありしといふなしといふ 高濱年尾 年尾句集
春宵の埴輪つぶやく如くなり 井上兎径子
春宵の夫の莨を盗み吸ふ 西村和子 夏帽子
春宵の宿のもの音聞かれけり 行方克巳
春宵の弔文遺著を積みて書く 皆吉爽雨 泉声
春宵の折からの雨頬にあたる 高濱年尾 年尾句集
春宵の星に会話をつなぎをり 稲畑汀子 春光
春宵の時計のねぢを固く巻く 藤木清子
春宵の枕行燈灯を忘る 飯田蛇笏 霊芝
春宵の林檎のはだへゆるみゐる 藤木清子
春宵の歩を祇園にも一寸入れ 戸田河畔子
春宵の母にも妻にもあらぬ刻 西村和子 夏帽子
春宵の母に会ひきし京都かな 大橋櫻坡子 雨月
春宵の灰をならして寝たりけり 原石鼎
春宵の烏丸帖習ふなり 岡本松浜 白菊
春宵の無聊の母に琴を置く 山岸治子
春宵の玉露は美酒の色に出づ 富安風生
春宵の玻璃戸は鏡みな映る 高木晴子 花 季
春宵の白障子ただならぬ時 皆吉爽雨
春宵の皆殺されし沙翁劇 下田明子
春宵の窯燃えつらね瓦村 三好潤子
春宵の紐ぞろぞろと蔵の中 吉田さかえ
春宵の胸撫でおろすやうな灯よ 高澤良一 随笑
春宵の自動車平凡な人と乗る 藤木清子
春宵の蘇州夜曲は聴かざりし 深川正一郎
春宵の賭場万金を卓に積み 吉良比呂武
春宵の部屋の広さよ嫁がせて 望月たかし
春宵の障子にひゞく水の音 上村占魚 鮎
春宵の食事了れり観光団 前田普羅 能登蒼し
春宵の食卓かこむ一人缺けし 内藤吐天
春宵の黙に万金ありぬべし 内藤桂子
春宵やいま別れ来し人に文 村上杏史
春宵やうごくともなき布良の星 大西 桑風
春宵やおのず歩の合ふ湖畔みち 乃万美奈子
春宵やこぼるゝものに足袋の砂 林原耒井 蜩
春宵やすでにはるけくボブ・ディラン 行方克巳
春宵やその月暦なかば過ぐ 石川桂郎 高蘆
春宵やもの和へて指やさしくす 中野あぐり
春宵やセロリを削る細身の刃 石田波郷
春宵や人の屋根さへみな恋し 原石鼎
春宵や兜煮まなこ見開きて 古賀まり子
春宵や地震にまろびし加賀手鞠 宮崎みさを
春宵や女易者に列出来て 下山宏子
春宵や字を習ひゐる店のもの 五十嵐播水 播水句集
春宵や客より綺羅の熱帯魚 水原秋櫻子
春宵や客賑やかに門を出づ 田中冬二 麦ほこり
春宵や彗星淡き尾をひろぐ 横山房子
春宵や戸棚のわきの花燈口 加倉井秋を
春宵や押せば露台へあく扉 波多野爽波 鋪道の花
春宵や木偶が眉上げもの申す 那須 淳男
春宵や朱の毛朱を噴き化身舞ふ 加藤知世子 花寂び
春宵や柱のかげの少納言 高浜虚子
春宵や楽器それぞれの音を持てる 下村梅子
春宵や港は船の灯をつらね 鮫島交魚子
春宵や漁家の上なるくぬぎ山 大峯あきら 鳥道
春宵や笛の仕ふる能移し 都筑智子
春宵や自治会の議事もめて居り 酒井信四郎
春宵や菓子鉢銀のいぶしいろ 及川貞 夕焼
春宵や鉄漿壺のありどころ 西島麦南 人音
春宵や閉ぢて久しき舞扇 行廣すみ女
春宵や食事のあとの消化剤 波多野爽波 鋪道の花
春宵や駅の時計の五分経ち 中村汀女
春宵をみんな読みゐて雨の音 及川貞 夕焼
春宵を一人名曲喫茶店 成瀬正とし 星月夜
春宵を尽せし人の話かな 長谷川かな女 雨 月
春宵を水上勉登壇す 辻田克巳
春宵を独りにされぬ死後のごとし 田川飛旅子 『山法師』
春宵を番台にただ坐りをり 波多野爽波 鋪道の花
春宵を鉄塔穏やかに待てる 吉田素糸
昭君酒春宵を汲む紫砂の碗 田中英子
東京の春宵に旅立ちて来し 成瀬正とし 星月夜
横顔に春宵といふ角度あり 蔦三郎
濱名湖畔春宵京の菓子頒けて 及川貞 夕焼
猫出かけ我春宵の庵を守る 深川正一郎
画室春宵パレツトのごと床汚れ 皆吉爽雨 泉声
皿洗ふ音も春宵さまたげず 皆吉爽雨 泉声
裸電球春宵文弥節熱す 石川桂郎
酒提げて農に春宵来りけり 鷲谷七菜子 花寂び
門前の春宵ひたと暗くなる 長谷川素逝 暦日
集ひあり春宵いたるやや遅き 皆吉爽雨 泉声
風車春宵の闇に翼をひたし 山口青邨


以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:53 | 春の季語 | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

全体
無季
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
ブログ
自作j
自作y
未分類

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...
魚屋三代目日記
My style

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

外山滋彦著「俳句的」の指摘し..
at 2024-03-28 07:13
山本覚馬
at 2024-03-28 05:53
【桜餅】といえばどっち派?全..
at 2024-03-27 05:17
あまおう」と「とちお...
at 2024-03-24 03:42
一茶 生きもの句帖 小学館文..
at 2024-03-18 13:28
シュリンクフレーションという..
at 2024-03-13 05:15
ザッピングzapping?き..
at 2024-03-11 01:51
書道 書・筆・墨・硯の俳句
at 2024-03-08 10:04
しょどう
at 2024-03-08 09:38
すずり
at 2024-03-08 09:35
筆の俳句
at 2024-03-08 09:26
墨の俳句
at 2024-03-08 09:04
書の俳句
at 2024-03-07 18:12
佐々木敏光句集 富士山麓・秋..
at 2024-03-07 05:49
山口昭男著 波多野爽波の百句..
at 2024-02-26 02:57
ザッピングzapping?
at 2024-02-24 00:32
私の俳句入門 大野林火編 有..
at 2024-02-21 01:39
茨木和生著 右城暮石の百句 ..
at 2024-02-20 03:20
季寄せを兼ねた 俳句手帖「春..
at 2024-02-11 18:17
我が家の梅 2024/02/..
at 2024-02-06 13:51

外部リンク

記事ランキング