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金魚

金魚

例句を挙げる。

「金魚、金魚」「竿屋」「目立もまゐります」 筑紫磐井 婆伽梵
「金魚さんご飯ですょ」と餌やる孫 高澤良一 素抱
あかあかと春の雪ふる金魚玉 齋藤愼爾
あきらめて金魚見てゐる病児かな 阿部みどり女
あぎとへる金魚春水玉楼に 野澤節子 黄 炎
あらあらと夜雲走れり金魚玉 村沢夏風
あらぬ方日がな泳ぎて金魚玉 関戸一正
あるときの我をよぎれる金魚かな 中村汀女
ある朝の児の眼に触れず金魚死す 樋笠文
いきいきと灯を身のいろに夜の金魚 渡辺恭子
いちじゆくの熟れ金魚田の澄みにけり 木津柳芽 白鷺抄
いつも来る金魚売泊め春祭 黒坂紫陽子
いつ死ぬる金魚と知らず美しき 高浜虚子(1874-1959)
いのちゆらぐ水をになひて金魚売 井上子
いろいろな色に雨降る金魚草 高田風人子
いろ~な色に雨ふる金魚草 高田風人子
おほかたは水の重みの金魚買ふ 龍野 龍
かたまつて金魚の暮るる秋の雨 臼田亞浪 定本亜浪句集
からたちの花のほそみち金魚売 後藤夜半 翠黛
きのふ金魚死せり水藻のかげ大き 斉藤夏風
けふ買ひし金魚眠りぬ宵の春 渡辺水巴 白日
けんらんと死相を帯びし金魚玉 三橋鷹女
こどもたちしやがんでる中の金魚の荷 原田種茅 径
この頃の暮しが映り金魚玉 高濱年尾 年尾句集
こんな日はどうして過ごす鉢金魚 高澤良一 素抱
さみしくて金魚の水に指つつこむ 菖蒲あや 路 地
さようならさようなら金魚が午後の匂ひせり 栗林千津
しだり尾の錦ぞ動く金魚かな 河東碧梧桐
しづかな金魚字なき位牌へ風が行く 川口重美
しばらくは貰はれ金魚の品定め 高澤良一 素抱
すぐ掬へさうな金魚をしくじれり 高澤良一 ぱらりとせ
すれ違つてから金魚売は呼ぶ 加倉井秋を 『胡桃』
ちびっ子の手に手に金魚ねぶた提げ 高澤良一 寒暑
つかりをる八つ手に金魚かくれけり 上野泰 春潮
つけられし値段を知らぬ金魚かな 谷口桂子
とある夜は秋澄むいろに金魚玉 五十崎古郷句集
なほ咲いてうつる躑躅や金魚池 大橋櫻坡子 雨月
なんとなく淋し金魚の歌うたひ 行方克巳
にはか雨金魚へらへら斃ちさうな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
はじめての金魚つるんと見せてあげる 櫂未知子 蒙古斑
はるかよりオルガン金魚死なしめし 柚木紀子
ひたひたと小さき素足金魚草 柴田白葉女 花寂び 以後
ふくよかに屍の麗はしき金魚かな 高橋淡路女 梶の葉
ぼんやりと鯉の影ある金魚かな 藺草慶子
また一尾金魚死なしてしまひけり 高澤良一 素抱
まだ鉢に馴れぬ金魚を寝しな見て 高澤良一 素抱
みかねたる父も掬へぬ金魚かな 大槻秋女
みづうみの映りてゐたり金魚玉 関戸靖子
むさしののはしつこにゐて冬金魚 松澤雅世
むつとした顔を金魚の水の上 川崎展宏
めずる金魚の一ぴきとなり久しく生きる 人間を彫る 大橋裸木
めつむればものよく見ゆる金魚玉 国見敏子
もう見えぬ池の金魚や秋の暮 岸本尚毅 選集「氷」
もの書くに夜はこのもし金魚玉 嶋田青峰
やうやくに金魚の水のにごりかな 楠目橙黄子 橙圃
やうやくに顔の暮れたる金魚玉 福島 勲
やはらかに金魚は網にさからひぬ 中村汀女
やわらかに金魚は網にさからひぬ 中村汀女
ゆふぐれの金魚となりてつぶやける 軽部烏頭子
わが家のけふの出来事金魚の死 上村占魚(1920-96)
わが金魚死せり初めてわが手にとる 橋本美代子
カーテン閉じて今日の終りや金魚玉 細田静
コップ酒干して始まる金魚糶 石崎 宏江
シースルーエレベーター昇る時は金魚 櫂未知子 貴族
セルを着て稚き金魚買はんなど 沢木欣一
ベートーウベン消せる隣家の金魚灯る 川口重美
モラル呪ひ金魚真向の顔を呪ふ 川口重美
一と声もなく街角に金魚売る 石山佇牛
一ト甲板金魚の桶の占めにけり 五十嵐播水 埠頭
一人居の金魚肥満にしてしまふ 伊東みのり
一匹が死に一匹の金魚玉 すずき春雪
一匹となり水替ふる金魚玉 角田雪弥
一匹になりし金魚と一人住む 竹村忠吉
一匹の黒い金魚を飼うて秋 富澤赤黄男
一塊の金魚の散りし霜日和 阿部みどり女 『雪嶺』
一掬の水を宇宙として金魚 村松紅花
一日の明暗金魚玉にあり 山口青邨
一月の雪晴れ金魚売通る 高濱年尾 年尾句集
一本の道を微笑の金魚売り 平畑静塔(1905-97)
一杯に赤くなりつゝ金魚玉 高浜虚子
一様に風にゆられて金魚かな 阿部みどり女 笹鳴
一滴に膝を濡らして金魚売 川村亜輝子
一番に愛称を得て屑金魚 土生重次
上州去る十年飼ひたる金魚提げ 上村占魚 『霧積』
上海や金魚冥きにひるがへり 黒田杏子
下宿子の恋成らずゐて金魚飼ふ 黒坂紫陽子
不眠症 およぐ金魚に鏡ばかり 松本恭子 二つのレモン
中坪は雪国づくり金魚飼ふ 水原秋櫻子
乙女頸曲げし成熟金魚玉 宮武寒々 朱卓
二の酉の雨の中なる金魚かな 岸本尚毅 舜
二夏を経たる金魚を死なしめき 高澤良一 鳩信
二階踏む昼の足音冬金魚 桂信子 遠い橋
五日目や金魚ねぷたのあせし紅 如月真菜
井の中に金魚を飼つて漁師町 天野小石
京の宿金魚水盤に放ちたり 竹冷句鈔 角田竹冷
京の水甘き宿屋の金魚かな 四明句集 中川四明
人声に金魚馴れ寄る秋涼し 大場白水郎 散木集
今朝もまた小さき地震金魚玉 吉井莫生
仏生会金魚をつれて退院す 阿部みどり女 『雪嶺』
仮住に金魚の孵化といふ一事 山田弘子
仮住みの耳を過ぎゆく金魚売 渡辺恭子
佛生会金魚をつれて退院す 阿部みどり女
作り雨金魚ちりぢりちりぢりに 阿波野青畝
停止なき金魚粉雪に売られおる 寺田京子 日の鷹
八文字ふむや金魚のおよぎぶり 永井荷風
冬水に瀕死の金魚華麗なり 篠田悌二郎
冬満月百の金魚田こゑもたず 原 好郎
冬眠せぬ金魚気魄をかなしめり 殿村莵絲子 牡 丹
凍金魚朽木火身を得つつあり 香西照雄 対話
凍金魚氷片をもて掬はれし 阿部みどり女
凍金魚顔に水垢をまとひたる 大橋櫻坡子 雨月
出目金の話したがりの黒まなこ 上田日差子
出目金を買うて龍宮城も買ふ 木田千女
出荷箱数多の金魚ぶつからず 渡辺倫子
初日うつる水族館の金魚かな 会津八一
初日待つ百の金魚田視野におき 原 好郎
初産の赤子父似や金魚草 阿部恵子
午過ぎの人も金魚も口ひらく 那須 乙郎
厚氷幾日金魚をとぢ込めて 山口波津女
厚氷金魚をとぢて生かしめて 橋本多佳子
口論や金魚の水のまつたひら 如月真菜
古井戸に金魚を放つ気の弱り 関由紀子
台風を生める地球と金魚玉 高澤良一 素抱
向いて来し金魚の顔と対しけリ 深見けん二
吾子の忌やビニール袋に金魚吊り 石川桂郎 含羞
咲いてなほ目立たぬ花よ金魚草 稲畑汀子
啓蟄にガラス袋の金魚来る 百合山羽公 寒雁
啓蟄の甕には金魚明りゆれ 皆吉爽雨
喪の留守金魚が赤き領巾を掘る 辻田克巳
団交無言ぎらりと返る夜の金魚 川村紫陽
垂直に簀にて金魚の水分つ 山口誓子 方位
基地は金魚も唱ふよD・D・Tのけむり 中村草田男
塔うつるとある金魚田枯野ゆく 皆吉爽雨 泉声
売れ残る金魚をどこへ捨てゆかん 対馬康子 純情
夕風やかたちづくりし金魚の子 臼田亞浪 定本亜浪句集
夜の金魚ときどきかほをよせてくる 曷川 克
夜は閉す扉の外の金魚黒 香西照雄 対話
夥しく金魚浮きけり雨のひま 会津八一
大き根のもとには金魚埋めけり 対馬康子 純情
大写し金魚が水に屈折して 高澤良一 素抱
大厄日金魚逆立つことしきり 村上岱南
大和より金魚をはこぶ水の音 岡井省二
大阪の屋根に入る日や金魚玉 大橋櫻坡子 雨月
大阪の煤ふる窓の金魚玉 島田鶴堂
大阪の空へ吊りたる金魚玉 藤田あけ烏 赤松
大雲の崩れ見つ吊る金魚玉 宮武寒々 朱卓
天と地の間の金魚玉の水 粟津松彩子
天の川金魚の値すでに廉し 瀧春一 菜園
奈良のよく見えて金魚田浚へかな 岡井省二
女たちおしやべり金魚浮き沈み 山口青邨
女だちおしやべり金魚浮き沈み 山口青邨
妙なとこがうつるものかな金魚玉 下田実花
妻の留守金魚が赤き領巾を振る 辻田克巳
子とあればわが世はたのし金魚玉 高橋淡路女 淡路女百句
子の内緒話は春の金魚欲し 有働亨 汐路
子の生れし日金魚売来てゐたる 成瀬桜桃子 風色
子への愛知らず金魚に麩をうかす 桂 信子
子供より母美しき金魚玉 大谷 おさむ
子育ては己れ育てや金魚玉 高橋悦男
孕み金魚飼育者の手に裏返る 津田清子 礼 拝
官邸の暗きに堪えて金魚飼ふ 久米正雄 返り花
宝石輸出のやうに金魚を荷造れる 鈴木栄子
室内の金魚も喜雨をよろこべる 右城暮石
家居とは金魚うろちょろする構図 高澤良一 寒暑
家影に一息入れて金魚売り 武嶋一雄
寥々と黒き金魚に紅きざす 百合山羽公 故園
小説に赤と黒あり金魚にも 粟津松彩子
少し病む児に金魚買うてやる 尾崎放哉
少女等の声のふくらむ金魚草 中村真由美
尾は別のところに見えて金魚玉 森岡白夜
尾をかざし逆立つ金魚憂なく 河野静雲
尾を揉んで泳ぎも足らぬ金魚かな 安斎櫻[カイ]子
尾を袖の如く構へし金魚かな 京極杞陽
山の手に住む一生や金魚玉 町 春草
山寺の御手洗に生く屑金魚 関森勝夫
山王の蝉をゆくてや金魚売 増田龍雨 龍雨句集
島人の飼へる金魚として浮かぶ 上野泰
川崎の場末で買ひし金魚かな 月舟俳句集 原月舟
川風に吹かれつゝをり金魚売 今井杏太郎
己れ殺す勤めぞ金魚買ひ足して 藤田湘子 途上
布袋草金魚に買うて雨の街 高澤良一 寒暑
帽子深く金魚のほかは錆びやすし 古舘曹人 能登の蛙
年々に池浅くなり屑金魚 依光陽子
年を越す鉢の金魚に被せ物 高澤良一 さざなみやっこ
幸あるも幸の薄きも金魚飼ふ 荒川 曉浪
幼な顔ふくらみばかり金魚草 香西照雄
幼子の金魚に化けたる夢見たり 谷活東
心ふと翳さす金魚藻にかくれ 中村苑子
心病む如くに病める金魚かな 上野 泰
忘られしたらひの中の金魚かな 指中 恒夫
忘れられてしづかに紅き金魚かな 清原枴童
忘れゐしことのひとつの金魚飼ふ 軽部烏頭子
思ひ出も金魚の水も蒼を帯びぬ 中村草田男
思ふ事金魚にばかりいひにけり 野村喜舟 小石川
思出も金魚の水も蒼を帯びぬ 中村草田男
恋さめて金魚の色もうつろへり 高浜虚子
愛されぬ秋の金魚の開放感 大江まり江
感歎詞より逃れきて金魚とあり 油布五線
憩ふとき水静止して金魚売 池田秀水
戸締りをして冬眠の金魚見る 阿部みどり女 『陽炎』
担ひゆく金魚に桶の怒濤なす 原田種茅 径
掬はるゝ金魚は隅にかたまりて 高澤良一 素抱
掬はれて金魚の孤独始まれり 森高たかし
掬ひたる出目金の黒抽んでぬ 高澤良一 素抱
掬へずに泣きし子金魚貰ひけり 池田世津子
撒く餌に金魚なついて来たりけり 高澤良一 素抱
支那甕をつつみ金魚の冬構 福田芳子
放たれし金魚の如くさはやかに 阿部みどり女
放たれて金魚あはてる鉢の中 中村真由美
放たれて金魚の世界はじまりし 阿部みどり女
放ちやるひとつ~の金魚かな 軽部烏帽子 [しどみ]の花
放課後や全教室の冬金魚 対馬康子 純情
教室の金魚放ちて卒業す 樋笠文
文芸春秋金魚が眠るまで読みし 斉藤夏風
斑(ぶち)なるは猫のみならず金魚にも 高澤良一 素抱
斯く肥えて押しも押されぬ金魚かな 高澤良一 素抱
新しき水新しき金魚かな 内田 じすけ
新参の金魚が鉢を一巡り 高澤良一 素抱
日に出せば鰭動かしぬ寒金魚 阿部みどり女 笹鳴
日ねもすのつがひの蝶や金魚草 岬人
日曜日なり蘭鋳を見てリラックス 高澤良一 寒暑
日本に著き家に著き金魚玉 嶋田一歩
日蝕や街の底ゆく金魚売 秋元草日居
早明けて金魚ひかりの層のなか 佐野良太 樫
明日のこと言わず掬つた金魚飼う 保尾胖子
春の扉は金魚のねむるあかるさなり 栗林千津
春の金魚のおもしろがつておよぐ 松澤昭 面白
春嵐金魚のAはAのまま 坪内稔典
春日さすその水位にて金魚死せり 橋本美代子
春更けて金魚に隠れごころかな 依光陽子
春没日とぼしき朱ケを金魚田に 石田あき子 見舞籠
昼ぐっすり眠る番犬金魚池 右城暮石 上下
時計屋の微動だにせぬ金魚かな 小沢昭一
晩年の父に金魚のまぶしくて 黒田杏子
暖かに薦をとりやる金魚かな 野村喜舟 小石川
暮春かな生玉前の金魚みせ 下村槐太 天涯
書き急ぐ汗ばみ夜半の金魚浮く 金尾梅の門 古志の歌
曼珠沙華咲きて金魚の褪せにけり 相生垣瓜人 明治草抄
月がさす卓や動かで金魚あり 石島雉子郎
朝起きし心は素直金魚玉 遠藤梧逸
未熟児の日々育ちつつ金魚草 滋野純生
末の子の今の悲しみ金魚の死 上野泰(1918-73)
朱きもの病む子に一つ金魚吊る 石川桂郎 含羞
来ぬ人に思ひ果てなし金魚玉 高橋淡路女 梶の葉
松籟の中や一点金魚玉 岩田昌寿 地の塩
枕二つ金魚にとほく並べられ 太田鴻村 穂国
梅雨どきの何處を見据えて金魚の目 高澤良一 素抱
梅雨に入る金魚の緋色見たるより 細見綾子 花寂び
梅雨晴間犬猫金魚丸洗ひ 龍野龍
梅雨風や濁りて懸る金魚玉 前田普羅 新訂普羅句集
椅子ひとつ秋の金魚を見るために 石田郷子
正月の金魚が元気元気かな 皆吉司
歩をゆるめ万事は金魚売の歩に 古館曹人
死せる赤生きてゐる赤金魚池 右城暮石 上下
死に居るを魔の高笑ふ金魚かな 尾崎迷堂 孤輪
死の家の金魚の池に日がさせる 山口波津女 良人
死神とあそぶこゝちや金魚飼ふ 山田文易
殖え過ぎし金魚貰ふに金盥 高澤良一 随笑
殺すかも知れぬ金魚の数ふやし 長谷川草々
母と子とひとつ愁ひや金魚玉 高橋淡路女 梶の葉
母のゐる暮しのなかの金魚玉 櫛原希伊子
民宿に金魚けんらん海鳴る日 野澤節子
水かへて秋の金魚となりにけり 那須淳男
水ばかり掬ひて金魚何時掬ふ 高澤良一 鳩信
水もまた玉になりをり金魚玉 粟津松彩子
水も入れ替へて金魚の新居の秋 高澤良一 随笑
水を着て金魚の金のくもりゐる 上田五千石 琥珀
水中に牡丹崩るる金魚かな 筏井竹の門
水垢の中に眼じろぎ凍金魚 大橋櫻坡子 雨月
水捨てる少女よ金魚死にたるか 北光星
水換ふる金魚をゆるく握りしめ 川崎展宏
水易へて嬉しき様の金魚哉 星野麦人
水更へて金魚目さむるばかりなり 五百木飄亭
水替えて金魚のこころ取り戻す 高澤良一 素抱
水替えの金魚を洗面器に揺らし 高澤良一 寒暑
水替へてつれなきさまの金魚かな 伊東慶子
水替へて夕日入り込む金魚玉 寺岡捷子
水替へて鉛のごとし金魚玉 飯田蛇笏 霊芝




水温む金魚の大和郡山 山根 真矢
水盤の水に泳がす金魚草 中嶋秀子
江戸川や金魚もかかる仕掛網 依光陽子
江戸川区金魚ガイドを取り寄せて 高澤良一 素抱
沈む金魚江東に雨降りやすく 小林一枝
注ぐ水金魚の水に棒立てり 橋本美代子
泳ぐときかんむりを振る金魚かな 京極杞陽
洗面器金魚の紅がはじきあひ 小路紫峡
洩れ日潤む金魚の小池遺児二人 成田千空 地霊
浄玻璃におどろき貌の金魚飼ふ 井沢正江 以後
浮いているだけで大きな金魚かな 宇多喜代子 象
浮かぬ顔姉の金魚と見比べて 高澤良一 随笑
浮くや金魚唐紅の薄氷 正岡子規
海の戸を閉して病者の冬金魚 角川源義 『秋燕』
海へ去る水はるかなり金魚玉 三橋敏雄(1920-2002)
海原というけ遠さに金魚玉 斎藤愼爾 秋庭歌
海原といふけ遠さに金魚玉 齋藤愼爾
淋しくて金魚たくさん飼ひにけり 館岡りそ
深窓に孔雀色なる金魚玉 飯田蛇笏 霊芝
深窗に孔雀色なる金魚玉 飯田蛇笏
清らかに飼うて二匹の金魚かな 野村喜舟 小石川
温泉の客の飼ひ捨てゆける金魚かな 白水郎句集 大場白水郎
激論の渦中に金魚太りをり 辻美奈子
火祭や金魚ひたひた泳ぎをり 石嶌岳
灯してさざめくごとき金魚かな 飯田蛇笏 山廬集
灯してさゞめくごとき金魚かな 飯田蛇笏
灯して鉢の金魚を散らしけり 高澤良一 素抱
灯に映えて金魚赤さや風雨の夜 西山泊雲 泊雲句集
灯より濃き金魚を掬ふ夜宮かな 高澤良一 ねずみのこまくら
灯翳せば深夜の金魚喘ぎをる 久米正雄 返り花
炎天より金魚の貌をして戻る 山田冬馬
無職夫妻宵早く金魚買ひに出づ 及川貞 夕焼
熊野の如朝顔の如金魚かな 京極杞陽
熱の中声まさしくも金魚売 千代田葛彦 旅人木
牡丹雪内気な家は金魚飼う 坪内稔典
犬あり夜毎更けて金魚の水飲みに 林原耒井 蜩
独立祭金魚は玻璃を占め泳ぐ 大野林火
獅子頭揺らぎ~の金魚かな 野村喜舟 小石川
玻璃の檻に金魚脱糞獄は見せじ 香西照雄 素心
玻璃へだつおなじひと夜を金魚なる 大館史子
玻璃瓶に児の手大いなり金魚捕る 青峰集 島田青峰
生き残る玉の金魚を放ちけり 温亭句集 篠原温亭
生き物は飼はぬつもりの金魚の死 石毛幸恵
生涯の今の心や金魚見る 高濱虚子
田に生れて二十日の金魚色もなし 澤田 緑生
留守さびし金魚水かへおこたらず 大橋櫻坡子 雨月
番号札をたらひに金魚品評会 間島あきら
番犬の歩く四角な金魚池 右城暮石 上下
異なる金魚ファツションショーの如く出づ 阿波野青畝
病み耐へてをさなごころや金魚飼ふ 中尾白雨 中尾白雨句集
病む母に金魚死ぬ日もうとかりし 富田木歩
百日病み金魚の愛を底から見る 三好潤子
眼が合ひし出目金は横柄なりし 行方克巳
短夜の金魚に微塵沿ひ浮けり 八木絵馬
石の影深くて金魚冴ゆるなり 佐野良太 樫
神のごとく嬰児金魚に畏れけり 下村槐太 天涯
秋の水つねに金魚の相寄れる 瀧春一 菜園
秋の水色まさり行く金魚かな 乙字俳句集 大須賀乙字
秋まつり錻力の金魚泳がせて 星野繁子
秋声や金魚鳴くとも鳴かぬとも 原 好郎
秋立つや緑新たに金魚の藻 林原耒井 蜩
秋風や生きのこりたる黒金魚 川口重美
稚金魚を選り分く何が目じるしぞ 右城暮石 上下
稿料を帯にはさみて金魚掬ふ 殿村莵絲子 牡 丹
窓にすぐひろがる港金魚玉 木下夕爾
立春大吉護符あたらしく金魚小屋 原 好郎
童話よみ尽して金魚子に吊りぬ 杉田久女
簡単に生きる金魚を見本とす 高澤良一 素抱
簷の金魚松の籟に沈みけり 西山泊雲 泊雲句集
籠鳥啼けば金魚逆立ちしづむかな 大橋櫻坡子 雨月
精薄児といはれ金魚の絵ばかり描き 成瀬桜桃子 風色
紙のたも秋の金魚をまだ嬲る 百合山羽公
紙の手網秋の金魚をまだ嬲る 百合山羽公 寒雁
紙の網あやふくたのし金魚追ふ 篠原 梵
終生をまろく泳ぎて金魚玉 辻井ト童
緋金魚に日蓮の性あらむかな 筑紫磐井 婆伽梵
縁ばかりまはる金魚は尾切れ哉 新傾向句集 河東碧梧桐
罎の金魚憐みつゝも忘れがち 石島雉子郎
美しき蝶きてとまる金魚草 岩島 畔水
群集の流れの裾の金魚桶 伊藤柏翠
羽衣を猩々を舞ふ金魚かな 野村喜舟 小石川
肩替へて紀ノ川わたる金魚売 田上冬耕子
腋剃るや小さき金魚に見られゐて 菖蒲あや 路 地
自虐の我金魚と一つ灯の輪の中 川口重美
舗道吸ふ金魚の水に過ぎなくて 古舘曹人 能登の蛙
色あふれゐて金魚田の水暗し 橋本榮治 麦生
色街の雨静かなる金魚玉 大橋越央子
芥子坊主三人遊ぶ金魚かな 野村喜舟 小石川
花ぞ浪紅梅凍る金魚船 花流 選集「板東太郎」
花入れて数にも見ゆる金魚かな 西山泊雲 泊雲句集
花落ちし如くに金魚草にあり 庄司瓦全
苔庭の夜あさき雨に金魚玉 飯田蛇笏 春蘭
荷を捨てゝ火事に走るや金魚売 原月舟
華麗なる金魚をのぞく老患者 有働亨 汐路
落ちながらこはるると知る金魚玉 辻美奈子
著莪映る金魚いくつか買ひ足して 篠田悌二郎 風雪前
葵より芥子より赤き金魚かな 野村喜舟 小石川
薄氷の裏を舐めては金魚沈む 西東三鬼(1900-62)
薬すててビンに金魚を飼はん哉 会津八一
藻にのりて金魚孵りぬ復活祭 堀口星眠 営巣期
藻を落つる金魚の夢や時鳥 雑草 長谷川零餘子
蘭鋳の爆発寸前のかたち 奥坂 まや
蘭鋳の痩せたれど風邪は引かざらむ 林原耒井
蘭鋳の真正面の目玉かな 細川加賀 『玉虫』
蘭鋳の重たき金を身にまとひ 粟津松彩子
蘭鋳や漁夫に飼はれて静かなり 有馬朗人 耳順
蘭鋳を揺りて昼の地震ありぬ 高澤良一 ねずみのこまくら
虫の声金魚の夢にこぞりけり 道芝 久保田万太郎
虹の後も金魚金魚といひにけり 今瀬剛一
虹出でて金魚の口を揃へだす 斎藤石雲
蝶ネクタイは金魚草を見つつ結ぶ 時光紀山
街の子に金魚掬ひの灯の点きし 舘野翔鶴
街角に金魚一途の小皺ため 古舘曹人 能登の蛙
衣食足りて故宮の池の金魚たち 菅野孝夫
西日なか片目の金魚つひに死す 沢木欣一
西陣は路次に路次あり金魚売 柊 愁生
見るものに倦むまで金魚売憩ふ 加倉井秋を 『真名井』
触れ合ひて互に金魚紅ちらし 真下ますじ
診断をなほ迷ひつゝ金魚見る 小坂蛍泉
認定証出して金魚のすくひ取り 村上辰良
豆腐屋の笛あと戻り金魚玉 本宮鼎三
貰ひ来し金魚のその後鉢覗く 高澤良一 随笑
貰ひ来る茶碗の中の金魚かな 内藤鳴雪
購はんこころのありて金魚見る 上村占魚 球磨
赤い金魚頭の中の金魚鉢 高桑婦美子
赤貧洗ふがごとく金魚飼ひにけり 飯田蛇笏
赤銅の鯉七宝の金魚かな 会津八一
越冬の金魚の水も温みけり 樋笠文
路地裏を夜汽車と思ふ金魚かな 摂津幸彦
踏切を一滴ぬらす金魚売 秋元不死男
軒高う吊りて見まさる金魚哉 乙字俳句集 大須賀乙字
退る金魚さらさらと置く首飾 秋元不死男
逆立ちてをりたる秋の金魚かな 村中[トウ]子
酔うて男は金魚に戯るるときありぬ 文挟夫佐恵 黄 瀬
重ねある金魚の甕や園の冬 原田青児
金魚あぎとふ尾鰭胸鰭みな使ひ 相馬遷子 山河
金魚あり蓄音機あり夜の書斎 京極杞陽 くくたち上巻
金魚いれて錆瞭かな錻力鑵 内藤吐天 鳴海抄
金魚ただしづかに弟征く日来ぬ 森川暁水 淀
金魚どし尾鰭ねらつて遊ぶかな 小澤碧童 碧童句集
金魚など飼うて年金暮らしの身 高澤良一 素抱
金魚には皇帝の名を付けてやる 櫂未知子 貴族
金魚にも拗ねものの居て和を乱す 樋笠文
金魚ねぶた片目瞑つてゐたりけり 千葉みちる
金魚ねぷた紙の胸鰭たたまれし 如月真菜
金魚の前ひとりの飯を食う努力 池田澄子
金魚の尾うすき曇りを曳きにけり 永田耕衣 真風
金魚の尾ふはふはと今日振り返る 桜井博道
金魚の死はらからの死に続きけり 高澤良一 素抱
金魚の死因松笠病とや突き止めて 高澤良一 寒暑
金魚の死春夜を少し生ぐさく 蓬田紀枝子
金魚の死母には伏して言はずおく 高澤良一 素抱
金魚の水新しくして眠られず 寺井谷子
金魚の目うごいて私語の始まれり 谷口桂子
金魚の糞掬ひて待てる店開き 高澤良一 素抱
金魚の荷あらしのなかに下しけり 道芝 久保田万太郎
金魚の荷くつがへりたる降車駅 右城暮石 声と声
金魚の荷下すや朱の尾ゆらぎ出づ 原田種茅 径
金魚の荷嵐の中に下ろしけり 久保田万太郎 草の丈
金魚の餌遺りつつ昨夜の劇を思ふ 宮武寒々 朱卓
金魚は魚でしょうか はなびらと思うのに 伊丹公子
金魚へりゆく雨つづき照りつづき 西本一都 景色
金魚また死なせてしまふ金魚運 高澤良一 素抱
金魚また留守の心に浮いてをり 深見けん二
金魚みなあぎとひ一藻伸びやかに 香西照雄 対話
金魚も孤独気泡を一つまた一つ 三谷昭 獣身
金魚も小便小僧も冬眠に 阿部みどり女
金魚一尾沈み暴風圏となる 三谷昭 獣身
金魚一鱗末枯の庭わが愛す 山口青邨
金魚入れて熱帯魚槽違和おこる 篠田悌二郎
金魚吊る女暖簾に脛を押す 萩原麦草 麦嵐
金魚売おのが金魚を見て憩ふ 安田 晃子
金魚売くるわの跡の路地あるき 石川春暁
金魚売けふゐて明日もゐあはすや 石川桂郎 含羞
金魚売こぼせし水のすぐ乾く 玉田年春
金魚売の声や心身酷使の日日 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
金魚売の日焼奥目に死の灰降る 田川飛旅子 『外套』
金魚売りこぼせし水に雲映る 土橋いさむ
金魚売り己れの影へ水零す 中村苑子
金魚売るや子らは遊女の名を知らず 長谷川かな女 花寂び
金魚売る声の名物男来て 栗崎敏子
金魚売る店にはじまる朝の市 三浅馨三
金魚売二店出して夫婦かな 松藤夏山 夏山句集
金魚売出でて春行く都かな 室生犀星 魚眠洞發句集
金魚売別の声あげ路地曲る 百瀬ひろし
金魚売城の大手を遠く見て 水原秋桜子
金魚売夕空を何見上げゐる 中山純子 沙 羅以後
金魚売弁天さまの水もらふ 結城美津女
金魚売憩ふ金魚に水を足し 関岡明石
金魚売来し日より樹下風棲めり 村越化石 山國抄
金魚売水こぼしつゝ通りけり 藤松遊子
金魚売水を零して去にけり 星野麦人
金魚売突然大きな顔となる 岡田史乃
金魚売花にさきだち来りけり 大橋櫻坡子 雨月
金魚売買へずに囲む子に優し 吉屋信子
金魚売路地深く来て汗拭ふ 加藤楸邨
金魚売露地深く来て汗拭ふ 加藤楸邨
金魚売静々笠をかむりけり 増田龍雨 龍雨句集
金魚売魔法の酸素吹き入るる 小林春水
金魚夜を如何に過すや人は寝る 山口波津女 良人
金魚大鱗夕焼の空の如くあり 松本たかし
金魚大鱗海の日に汲む寒の水 角川源義 『秋燕』
金魚嬉々壷中の天地華やかに 塩田月史
金魚孵し雉子を孵して怠け医師 堀口星眠 営巣期
金魚孵り動けるかげの泳げるよ 原田種茅 径
金魚孵る微塵の命透きとほり 木下ふみ子
金魚守昼寝も池の水音なか 原 好郎
金魚居てしづかに病いゆるかな 前田普羅
金魚屋の親爺と金魚の共喰談 高澤良一 素抱
金魚市胴長乙女も胴締めよ 香西照雄 対話
金魚店仕舞ふ夜更けの水流す 原田種茅 径
金魚手向けん肉屋の鉤に彼奴を吊り 中村草田男(1901-83)
金魚掬ひおたまじゃくしも入り交り 高澤良一 素抱
金魚掬ひ掬つて見せて客を呼ぶ 栗山妙子
金魚掬ひ未だ幼くて見てゐる子 高澤良一 寒暑
金魚掬ひ浴衣の帯を地に擦りて 高澤良一 素抱
金魚提灯ともす其所だけが晩夏の町 長谷川かな女 花寂び
金魚揺れ昼の天河が結氷す 坪内稔典
金魚撩乱みどり児醒めず真昼時 柴田白葉女
金魚放つバンド一段高きより 長谷川かな女 牡 丹
金魚放つ大洗面器瑕瑾なし 内藤吐天 鳴海抄
金魚放つ池の小波や大喜び 青峰集 島田青峰
金魚桶にもたれかゞむ子夜店かな 高橋淡路女 梶の葉
金魚桶地をすれすれに担はれゆく 内藤吐天 鳴海抄
金魚槽のらんちゆう最も泳ぎ下手 岩本彰子
金魚死して涸れ残る水の氷哉 正岡子規
金魚死なせし透明の金魚鉢 津田清子 礼 拝
金魚死なせ死なせては子の健やかに 林 翔
金魚池の心安なる浅さかな 尾崎迷堂 孤輪
金魚池の縁に病葉かたよれり 青峰集 島田青峰
金魚池や時あり金魚絡繹と 尾崎迷堂 孤輪
金魚池渾天映りゐたりけり 山口誓子
金魚沈み人の挨拶始まりし 稲岡長
金魚沈む真夜の時間の重たさに 宇咲冬男
金魚沈む西日本は豪雨にて 長谷川かな女
金魚浮び出でし二日の日はさゝね 林原耒井 蜩
金魚澄みフランス人形裾ひろげ 本居桃花
金魚燃ゆ粥煮こぼして風邪癒ゆる 河野南畦 湖の森
金魚玉あるとき割れんばかり赤 加藤華都
金魚玉うす濁りたる一尾のみ 原田種茅 径
金魚玉こっぱみじんにとり落す 三ケ山孝子
金魚玉こつぱみじんにとり落す 三ケ山孝子
金魚玉とり落しなば舗道の花 波多野爽波
金魚玉に燦爛として酒宴の灯 青峰集 島田青峰
金魚玉に聚まる山の翠微かな 青木月斗
金魚玉に透く樹々うれし立ちて見る 雑草 長谷川零餘子
金魚玉ぬぐひ清拭終りたる 宮岡計次
金魚玉の下に展がる家庭かな 上野泰 春潮
金魚玉の中通りぬけ我は来し 上野泰 春潮
金魚玉まだ揺れてをり地震のあと 田中三代子
金魚玉よみのあささをわれと知り 石川桂郎 四温
金魚玉ミラー現象過信する しらいししずみ
金魚玉亡き子の映るはずはなし 八木隆史
金魚玉友に一男一女あり 金田咲子 全身
金魚玉吊りその後の暮しかな 岸田稚魚
金魚玉同じ高さの星生れ 山本歩禅
金魚玉夕焼さめて来りけり 石井貫木子
金魚玉天神祭映りそむ 後藤夜半(1895-1976)
金魚玉太つた巫女のそらねむり 二村典子
金魚玉如何に台風荒れやうと 高澤良一 素抱
金魚玉帰路は短き父として 古舘曹人 能登の蛙
金魚玉教会に閑ありにけり 小川軽舟
金魚玉方尺の冷気くれなゐに 内藤吐天 鳴海抄
金魚玉日盛り移りそめにけり 増田龍雨 龍雨句集
金魚玉明日は歴史の試験かな 高柳重信(1923-83)
金魚玉朝一点の煤うかぶ 石田波郷
金魚玉枯野の色のこれを攻む 栗生純夫 科野路
金魚玉正しく吊りてギプスの子 萩原麦草 麦嵐
金魚玉浅草のほか母は知らず 本土みよ治
金魚玉浮世の裏は映さざる 三谷蘭の秋
金魚玉留守を任されゐたりけり 高澤良一 素抱
金魚玉秋はたましひしづかにも 飯田蛇笏 雪峡
金魚玉空傾けて大旱 石塚友二 光塵
金魚玉篠つく雨もよき家居 大津希水
金魚玉職なきことに馴れにけり 平野哉
金魚玉見てゐて思ひ遠きかな 山口波津女 良人
金魚玉豪雨の脚の透き見ゆる 木下夕爾
金魚玉隣へ贈り退院す 五十嵐播水 播水句集
金魚玉音楽室に古りにけり 藤田湘子 去来の花
金魚瓶愛づる嫂風邪つのる 宮武寒々 朱卓
金魚田に冬日みごもり海の音(芭蕉のやどりし佐屋の渡(愛知県)は桑名行の舟だまりなりしが蒼海すでに陸と変じぬ) 角川源義 『神々の宴』
金魚田に月を上げたる夕爾の忌 佐藤映二
金魚田に沈めてありし種俵 広瀬峰雄
金魚田に色浮きたちて雨兆す 村田 脩
金魚田に茫々の梅雨至りけり 大橋敦子 手 鞠
金魚田に蔭おく草は刈りのこす 松田 青郊
金魚田に金魚をさがす雪もよひ 大島民郎
金魚田のはやなまぐさき弥生来ぬ 澤田緑生
金魚田のほか余すなく田を植うる 川口雨太郎
金魚田の一つ一つに寒夕焼 大橋敦子 手 鞠
金魚田の一枚づつを雨逃げし 河野南畦 『硝子の船』
金魚田の十字の畦の初明り 木村蕪城
金魚田の四角四面に雨ひしめく 上田日差子
金魚田の時々光り梅雨の闇 川瀬孝子
金魚田の水にゆらぎし城下町 野中亮介
金魚田の水の町にて鯉幟 山口誓子 紅日
金魚田の畦踏む平均台のごと 肥田埜恵子
金魚田の赤きさざなみ山笑ふ 橋本薫
金魚田の道消えがちに晝の蟲 石田あき子 見舞籠
金魚田の隅に移ろふ稚魚の群 楠田 光子
金魚田の風に仏間の開けてあり 後藤比奈夫
金魚田や瑠璃を惜しまず螢草 石田あき子 見舞籠
金魚田をすべるそよ風またそよ風 小澤満佐子
金魚田を空より襲ふものもあり 山内山彦
金魚田を覆ひしのみの冬構 渡辺みかげ
金魚皆喘ぐや午後の雲低し 西脇茅花女
金魚糞を曳くやるせなき歳月 細谷源二
金魚糶る兵顔(つはものがほ)の男どち 高澤良一 寒暑
金魚育つ等温の水入れ替り 津田清子 二人称
金魚草うしろ鏡に帯結ぶ 福川ゆうこ
金魚草おこりっぽいと云はれけり 小島千架子
金魚草など摘みをれば午報鳴る 高澤良一 寒暑
金魚草ひらがなだけの手紙来て 栃木恵津子
金魚草よその子すぐに育ちけり 成瀬櫻桃子
金魚草泳ぐさまなす風雨かな 前沢青葉女
金魚草讃岐を離れ揺れはじむ 殿村莵絲子 花 季
金魚葬る吾子に薔薇も枝伸べて 林翔 和紙
金魚藻と老虚子と秋立ちにけり 小川軽舟
金魚藻にせばめられつつ溝の水脈 川島彷徨子 榛の木
金魚藻に逆立ちもして遊ぶ魚 高浜年尾
金魚藻に金魚孵りしさまも見し 江口竹亭
金魚藻に雨の重さの伝はりぬ 西村好
金魚藻のたばね浸され御身拭 田口彌生
金魚藻の奥にも夕日漂へり 甘粕世紀夫
金魚藻の揺れて小沼の眠りかな 池上樵人
金魚藻の浮く沼寂し風の夕 新村千博
金魚藻の金魚色して照る最中 国本 みね
金魚藻や金魚の気泡一つ浮き 阿賀田信
金魚見むと力だめしの歩をすこし 石田あき子 見舞籠
金魚見るや雨やみがての傘廻しつ 阿部みどり女 笹鳴
金魚見る店の先きなる日かげかな 青峰集 島田青峰
金魚貰ひたり洗面器に受くる 山口波津女 良人
金魚買うて子の手を曳いて帰りけり 高橋淡路女 梶の葉
金魚買うて戻る子や水こぼれがち 高橋淡路女 梶の葉
金魚買う湖水に友等の憎めぬ顔 福富健男
金魚買って病むメーデーを豪華にす 赤城さかえ
金魚買はずくびす返して家に入る 波多野爽波 鋪道の花
金魚買はず主婦らいづれも豪のもの 波多野爽波 鋪道の花
金魚赤し賞与もて人量らるる 草間時彦
金魚車中に吊られ山河めまぐるし 津田清子 礼 拝
金魚追ふ少年のひとへまぶたかな 谷口桂子
金魚逆さまにちぐはぐな夢が続く 松本恭子
金魚釣る影あはあはと逸らせて 橋本榮治 逆旅
金魚飼うこと面白きそんな齢 高澤良一 寒暑
金魚飼ひ簡易保険にも入る 遠藤梧逸
金魚飼ふこどもあがりの夫婦かな 森川暁水 黴
金魚飼ふて能の太夫の奢りかな 河東碧梧桐
金魚飼ふや玻璃の水色まだ寒き 富田木歩
金魚飼ふ一つるるごと受胎 皆吉爽雨
金魚飼ふ死床の人の美しく 久米正雄 返り花
金魚餌を貰ひ一礼後ずさり 高澤良一 素抱
鉢の金魚一つ一つの無分別 高澤良一 素抱
鉢まるくまるく金魚の平常心 高澤良一 素抱
鉢底に貰はれて来し金魚の眼 高澤良一 素抱
鉢金魚幼児キンギョとなつてしまう 長谷川かな女 花 季
銀いろにかへ水おもし金魚玉 高橋淡路女 梶の葉
長雨や金魚玉にも水平線 土肥あき子
闇の金魚いとしみ見れば動きけり 高橋淡路女 梶の葉
降りかけやかげうすうすと金魚売り 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
階のぼりきり冬の金魚の尾鰭みる 桂信子 花寂び 以後
雨一日金魚が浮いて死にさうに 高澤良一 素抱
雨垂れの音を映して金魚玉 金堂豊子
雨降つてゐる金魚玉吊りにけり 安住敦
雨降り出す祭の森の金魚店 西村公鳳
雪が降りたれば見に来し金魚池 右城暮石 上下
雪の上に金魚をこぼすそれが遺書 栗林千津
露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな 攝津幸彦(1947-96)
霾や隅に片寄る田の金魚 原 好郎
面倒は見る約束の金魚買ふ 官能千秋
鞄手に金魚田覗く往診医 松浦 釉
音階の狂ふオルガン金魚浮く 高橋敦子
預りし金魚に見られゐし生活 斉藤始子
頑丈な馬橇のベンチ金魚草 八木林之介 青霞集
頑是無き金魚が鉢に放たれて 高澤良一 素抱
頸すでに老いて金魚をのぞきこむ 桂信子 花寂び 以後
風邪見舞のみなよく泳ぐ金魚かな 渡辺水巴 白日
颱風や泥しづみたる金魚玉 松村蒼石 寒鶯抄
飛騨なれや年々能登の金魚売 山畑一翠
飯少し食うて金魚とくらすかな 金箱戈止夫
餌をあさりつゝ尾をふれる金魚かな 上村占魚 鮎
餌付きの金魚貰へり義弟より 高澤良一 随笑
驟雨来金魚田の水匂ひ立ち 大橋敦子 手 鞠
高潮と流れ金魚の行方知れず 山口誓子 構橋
魚市をかがやき通る金魚売 桂樟蹊子
魚市場終りしあとへ金魚売 吉屋信子
鳥除けの糸を巡らす金魚池 今井三重子
黒い金魚買つて砂丘に棲む女 加倉井秋を


以上
by 575fudemakase | 2014-07-06 00:12 | 夏の季語 | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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