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涼し 2

涼し 2


例句を挙げる。


形相の涼しきもあり伎楽面 和田悟朗 法隆寺伝承
影といふものに游びて涼しき生 鷲谷七菜子 天鼓
待合の木椅子涼しき黒光り 仁平勝 東京物語
御来迎涼しきまでに燃ゆるかな 大谷碧雲居
御灯に切火を打つて神涼し 武原はん女
志度寺は涼しく海女の墓もある 池内たけし
念願の涼しさ極め主の祈り 稲畑廣太郎
思ひ出すことどもこゝに涼しく居 高木晴子 晴居
恋死の墓も涼しき一つにて 加藤三七子
惚れ惚れと若人の句読む息涼し 殿村莵絲子 牡 丹
慮外なから月に裸の涼しさよ 尾崎紅葉
我立てば師の句碑鏡なし涼し 深見けん二
扉に垂れし忘れロザリオ彩涼し 下村ひろし 西陲集
手をのべて届く崖百合窓涼し 福田蓼汀 山火
手廂に来し方を見て涼しかり 黛まどか
手廻しに朝の間涼し夏念仏 野 坡
手拭の二尺がほどの涼しさよ 塚田登美子
手水水涼しかりしを金火鉢 曲言 選集「板東太郎」
手鏡に夕月がふと涼しけれ 日野草城
打揃ひ涼しき芥子の頭かな 虚子選躑躅句集 岩木躑躅、村上磯次郎編
抜け道のなんと涼しき京伏見 芦内くに
拓本涼し紙透き出づる沙羅の詩 林翔 和紙
拱きて舟を見てゐる涼しさよ 岸風三楼 往来
振りかざすだんびら涼し怪猫圖 高澤良一 燕音
振り移る起床の鐘の涼しき音 石川桂郎 高蘆
排気の火涼し戦火を忘れねど 殿村莵絲子 牡 丹
提唱の布袋和尚や蓮涼し 河野静雲 閻魔
揚羽など真黒きものら涼しげなり 三橋鷹女
揺れて涼し愛の折鶴千羽 下村ひろし 西陲集
摺粉木も旅の買ひもの露涼し 細川加賀 生身魂
教会の大いなる鍵月涼し 有馬朗人 天為
敢て書き遺すことなし灯涼し 岸風三樓
文涼し男の子生れしを綴り来し 河野南畦 『花と流氷』
斫るも負ふも生涯奈落石涼し 西本一都 景色
新聞に三日触れざる眼の涼し 中村明子
施餓鬼旛五彩涼しき梨葉の忌 文挟夫佐恵 雨 月
旅一と日ウィンの雨に濡れ涼し 高木晴子 花 季
旅涼しうら表なき夏ごろも 高井几董
旅涼し燈下繚乱のペルシャ靴 林翔 和紙
旅衣涼しく俥飛ばしけり 白水郎句集 大場白水郎
日々のこと天に任する涼しさよ 高澤良一 素抱
日かげる時連れ鳴いて鳰涼し 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
日さかりの花や涼しき雪の下 呑舟
日の盛りより涼しさに移る艸 松瀬青々
日めくりの減るも涼しきひとつにて 正木ゆう子
日曜の紺まだらなる朝涼し 原裕 青垣
日涼し船いま波のさわぐ中 久保田万太郎 流寓抄以後
昏れがての飛天に似たる雲涼し 伊藤いと子
昔日の涼しさに立つ二人かな 依光陽子
星涼しうたごゑ流れくる川原 穴澤光江
星涼しく白樺も闇たのしめり 宮津昭彦
星涼しみよしのの坊灯をもらす 下村梅子
星涼しアンデルセンの童話など 星野麥丘人
星涼しニューヨーク行パリー行 山本歩禅
星涼しユダヤかたぎのはなし好き 久保田万太郎 流寓抄
星涼し光となりて飛びにし代 林翔 和紙
星涼し吾子賜はぬも神の意か 水田むつみ
星涼し夜は夜の面の龍馬像 つじ加代子
星涼し寝るを惜みて立つ門に 星野麦丘人
星涼し川一面に突刺さり 野見山朱鳥(1917-70)
星涼し昼は黒砂に雲母賞でぬ 香西照雄 素心
星涼し樅のふれあふ音かさね 星野麦丘人
星涼し謡の声のをとこをみな 猪俣千代子 堆 朱
星涼し遊歩甲板の籐椅子に 岸風三楼 往来
星涼し遠い日本の見えそうな シヨー麗子
星涼し青竹踏みの土不踏 村本畔秀
星空の涼しければの瞳なりけり 石田勝彦 秋興
昧爽の風の涼しさ眠り落つ 山田みづえ
昼しぼむ花や涼しき石の間 中川宋淵 詩龕
昼はまた昼の涼しさ萱草咲く 沢田早苗
時の来て朴と涼しき別れかな 中山世一
時代の眼涼しく使ふ雄之介 高澤良一 鳩信
晒布ひく人涼しさをいひあへり 飯田蛇笏
暑き箇所涼しき箇所が汽船極端 京極杞陽 くくたち上巻
暗き燈も時に僅かに涼しきか 瓜人
曇りともわかたぬ富士の影涼し 金尾梅の門 古志の歌
曉齋の百鬼夜行図おお涼し 高澤良一 寒暑
更けまさる月の波筋涼しきに 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
更に上る一層楼の雲涼し 尾崎紅葉
月いでて涼しき蓮の広葉かな 本多 勝彦
月が涼しゆう毀れた肺がしみじみ息するは 大橋裸木
月のこる涼しきまゝに夢殿ヘ 松瀬青々
月の暈茶筅がおどる涼しきごと 小林康治 玄霜
月は日を火星は月を追ひ涼し 岡田日郎
月も露も涼しきとはのわかれかな 久保田万太郎 流寓抄
月影の洩れて涼しや籠枕 利会
月明下一舟の去る涼しさよ 杉本寛
月涼しいそしみ綴る蜘蛛の糸 杉田久女
月涼しこころに棲めるひと遠く 木下夕爾
月涼しそれ~跼み船を待つ 五十嵐播水 埠頭
月涼しといへる老爺が達者哉 尾崎紅葉
月涼しところどころに斑ある樹 中田剛 竟日
月涼しよきおもひ出をもたぬわれ 藤木清子
月涼しノートルダムの時計鳴る 星野立子
月涼し中庭の戸はあきしまま 五十嵐播水 埠頭
月涼し今日の終りの厨水 木下夕爾
月涼し僧も四条へ小買物 茅舎
月涼し兵火山門に迫りしと 大峯あきら 鳥道
月涼し吹かれて雲のとどまらず 臼田亞浪 定本亜浪句集
月涼し塩田筋目正しけり 稲垣美知子
月涼し慰められることはいや 今井千鶴子
月涼し映画をひとつみて帰る 古沢太穂 古沢太穂句集
月涼し晝のまゝなる雲ひとつ 春草句帖 長谷川春草
月涼し杉葉の門の明放し 尾崎紅葉
月涼し来世もまぎれなき母娘 渡辺恭子
月涼し橋架けたやと歌ひつゝ 尾崎紅葉
月涼し汐垂るゝ艪をかつぎゆく 内藤吐天
月涼し浜の電車に送られし 阿部みどり女 笹鳴
月涼し百足の落つる枕もと 之道 俳諧撰集「藤の実」
月涼し祭行燈消えがちに 福田蓼汀 山火
月涼し空は洞となりにけり 上野泰 佐介
月涼し葭切やみて葭の影 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
月涼し行けば纜ありまたぐ 五十嵐播水 埠頭
月涼し貯炭場蛙鳴き渡る 小林康治 玄霜
月涼し軽業のごと畦わたり 石川桂郎 含羞
月涼し運河をめぐるカンツォーネ 今留治子
月涼し韓国へゆく船の旅 小川軽舟
月蝕のやがて涼しきひかりふる 百合山羽公
月読命涼しや鰡とばす 小川軽舟
有松も鳴海もしぼり風涼し 伊藤敬子
朝 は 涼 し い 著 荷 の 子 山頭火
朝の銀座めづらし銀座も涼しかり 及川貞 夕焼
朝の間の露を涼しと芝歩く 稲畑汀子
朝の雨涼しく木槿咲きにけり 岸風三楼 往来
朝は涼しい茗荷の子 種田山頭火 草木塔
朝市のあとの涼しく掃かれけり 大串章
朝市や涼しき雨の榊売 ながさく清江
朝日涼し野良着も蠅も縞模様 香西照雄 対話
朝早く起きて涼しき橋ありぬ 今井杏太郎
朝毎の涼しさにある残暑かな 小杉余子 余子句選
朝涼し健啖の語のあはれなる 相生垣瓜人 微茫集
朝涼し僧の会釈と白芙蓉 角川春樹 夢殿
朝涼し全脳動きはじめたる 村山三郎
朝涼し国境渡る乳母車 有馬朗人 天為
朝涼し巣を離れ飛ぶ蜂一つ 宋淵
朝涼し苔の面のささら立ち 岸田稚魚 筍流し
朝皃に涼しくくふやひとり飯 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
朝露によごれて涼し瓜の泥 芭蕉
朝露や撫でて涼しき瓜の土/朝露によごれて涼し瓜の土 松尾芭蕉
朝顔と赤坊の瞳と暁涼し 福田蓼汀 山火
朝顔や朝寝涼しき枕もと 会津八一
朝顔や片肺なれど声涼し 中山純子 茜
木かくれて鶴一聲の涼しさよ 会津八一
木に囲まれて蝉の眼とゐて涼し 河野友人
木下闇あらら涼しや恐ろしや 正岡子規
木偶の抜く段平涼し文弥節 高澤良一 ももすずめ
木曽涼し磨きぬかれて火縄銃 中島畦雨
木菟が目を細め涼しきランプかな 殿村菟絲子 『繪硝子』
木麻黄の葉風涼しや夏季講座 石井桐陰
本町の法被の届く涼しさよ 如月真菜
本門寺の森を吹き来る風涼し 高木晴子 晴居
朱の柱あまた涼しき還御かな 藺草慶子
朱肉つけて一塊涼し山の石 碧雲居句集 大谷碧雲居
杉の幹太し涼しと中年来る 原裕 葦牙
杉叢の群山あつめ涼しけれ 石塚友二 方寸虚実
杉抽いて松涼し雨ざんざ降る 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
杉玉を吊るす地酒屋蝉涼し 後藤冬至男
村涼し飼屋の草履見えてをり 大峯あきら 鳥道
村雨に漁火消ゆるあら涼し 大須賀乙字
杓のうなづく滴りの涼しさよ 辻田克巳
杜涼し幣に結びし麻一筋 伊藤いと子
来いといふ人あれ嶋は涼しげ也 尾崎紅葉
杭涼し蹠に感ず水の張り 櫛原希伊子
松に濡れて旭に晞く衣涼し 尾崎紅葉
松の奥浪音涼し御用邸 五十嵐播水 播水句集
松の風また竹の風みな涼し 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
松は朽ちて御涼しさの遺りける 尾崎紅葉
松涼し鎮みまつりし法の宮 高濱年尾
松落葉見る見る殖ゆる庭涼し 高浜虚子
松蔭に笛吹いて海涼しゅうす 高澤良一 素抱
松虫鈴虫汐騒の涼しくなれる 臼田亜浪
松風に乾きて涼し由か耳 尾崎紅葉
松風の涼しき浜の館かな 高橋淡路女 梶の葉
松風の落葉か水の音涼し 松尾芭蕉
松風や阿修羅涼しく腋をあげ 前田普羅
板前の万能包丁涼しけれ 猪狩セイジ
枇杷の露涼しと窓を蔽ふ日かな 会津八一
林中のやがて涼しきこだまかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
果てしなき涼しさといふ夢も見き 高山れおな
枝移りする蝉のあり月涼し 五十嵐播水 埠頭
枯笹の涼しき葉ずれ父の周忌 中拓夫 愛鷹
枳殻新芽吾目の中の涼しかる 細見綾子
染屋舟みどり涼しき淦汲めり 林翔 和紙
柳行李片荷は涼し初真桑 松尾芭蕉
栗鼠の子に見つめられゐる涼しさよ 仙田洋子 雲は王冠
桃食べて涼しくなりし寺住ひ 中山純子 沙 羅以後
桜鯛さげて少女の瞳の涼し 阪本謙二
梅雨あけて静かに涼し夜の畳 高橋馬相 秋山越
梵鐘を爪はじきつつ涼しけれ 上村占魚 球磨
森にゐて木よりも涼し袋角 平畑静塔
椅子涼し衣通る月に身じろがず 杉田久女
椰子の実の流れ著く浜月涼し 千本木溟子
椰子涼し一番星はどこに出る 岩崎照子
楼門の山気ひとひらづつ涼し 赤松[けい]子 白毫
榧の樹を涼しがりつつ皆憩ふ 下村槐太 天涯
構はれぬことが涼しき浦の宿 上崎暮潮
樋にかゝる苗一束や露涼し 島村元句集
樒くべ護摩の火はぜる涼しさよ 岡田日郎
樹々涼し穂高岩群照りをるに 石橋辰之助 山暦
樹下涼しゴッホに似たるルンペン氏 岩崎照子
橋かけて中島涼し茶の通ひ 立花北枝
橋の名を聞きて涼しくなりゐたる 黒田杏子
橋通るとき涼しくて欄に手を 高濱年尾 年尾句集
櫂ひとつ置かれて月の涼しかり 浦川 聡子
櫓声身にひしと涼しむ闇の濃し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
欄涼し闇の川面のすぐそこに 高濱年尾 年尾句集
此あたり目に見ゆるものは皆涼し 芭 蕉
此人は洒落が上手で風涼し 竹冷句鈔 角田竹冷
歩くこと涼し仏の前を行く 村越化石
死ぬまでの痛みと悟り涼しかり 牧野春駒
死は涼し医師の手に衿合されて 赤松[けい]子 白毫
死や涼し点滴の紐とりはづし 清水径子
死後涼し光も射さず蝉も鳴かず 朱鳥
母がりの厨子の佛の涼しけれ 筑紫磐井 野干
母の日の母の福耳涼しかり 渡辺恭子
母の背の若く涼しき桐箪笥 猪俣千代子 堆 朱
母の骨涼しあしゆびより拾ふ 上野さち子
母ひとり住みて涼しき草屋かな 石井桐陰
母へ向く妻にのこされつゝ涼し 杉山岳陽 晩婚
母よかの星と涼しき刻得てか 小松崎爽青
母老いて灯の涼しさを言ひ給ふ 大串章
水の色涼しくかげり初めにけり 高橋淡路女 梶の葉
水の葉鰈網はふり落つ涼しさよ 金尾梅の門 古志の歌
水よりもわづかに涼し瓜の色 樗良
水よりも竹林に添ふ涼しさよ 八染藍子
水団扇ペカ~鳴りて涼しいぞ 鈴木花蓑句集
水底の石みな透ける涼しさよ 吉屋信子
水底の砂の涼しく動くかな 長谷川櫂(1954-)
水底を涼しき雲のわたるなり 会津八一
水月光坂水走り岩涼し 岡田日郎
水涼しモーツァルトを聴くやうに 吉原文音
水涼し毬藻に鱒のひらめきて 臼田亜浪 旅人
水涼し毬藻の生きてゐる蒼さ 大橋敦子 匂 玉
水涼し父が好みし中の川 高木晴子
水涼し秋澄む関のかざり鎗 蓼太
水涼し緋鯉真鯉と浮き変り 今村蕾橘
水涼し過去一切を惜しみなく 柴田白葉女 花寂び 以後
水涼し選炭更に洗はるゝ 高濱年尾 年尾句集
水渡る声の涼しさ嫉みをり 文挟夫佐恵 黄 瀬
水盤に木賊涼しく乱れなく 小谷松碧
水貝や灯が入れば灯の涼しさに 森澄雄
水輪涼し祠に木目大きすぎて 香西照雄 素心
水鏡してゐる如き鹿涼し 岩崎照子
水音のかすかにありて涼しさよ 稲畑汀子 汀子句集
水音の風とはなるる春涼し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
水飯がすこし胃の腑も涼しからん 細川加賀 生身魂
汐煙ながれて涼し伊良古岬 鈴木花蓑句集
汐越や鶴脛ぬれて海涼し 芭蕉
汗涼し一刻に鞭あつる旅 赤松[ケイ]子
汝が指卓布にかけて涼しさよ 清原枴童 枴童句集
汝が涼し眼のあな大きもよ父を見ず 林原耒井 蜩
江戸五百里京八百里風涼し 西本一都 景色
池水の涼しさうつる蚊帳かな 増田龍雨 龍雨句集
池涼し向ふ側にも誰かゐる 山口いさを
沖涼しかかる船の灯街をなし 五十嵐播水 埠頭
沙羅の木に涼しさをいふ水のかげ 田中裕明 櫻姫譚
泡吹虫泡を出てをり朝涼し 堀口星眠 青葉木菟
波涼しすれ違ふ時船迅く 河合いづみ
波涼しボートは遠くへは行かず 岸風三楼 往来
波立てゝ生簀涼しや闇の中 増田龍雨 龍雨句集
注射器具朝は涼しき音たつる 朝倉和江
泳ぐ寐ざまの自画像死また涼しきや 文挟夫佐恵 黄 瀬
洋間には木の椅子ばかり涼しけれ 上野泰 春潮
洗はれてつむり涼しき石地蔵 樋笠文
洞然居士庭に涼しく花茗荷 田中英子
津軽弁涼しく聞きて分らなく 稲畑汀子 春光
浜木綿の百重なす葉の露涼し 鈴鹿野風呂 浜木綿
浦唄涼しそれとおぼしき夜山影 林原耒井 蜩
浪涼し干潟の端に乳母車 福田蓼汀 山火
浮み来て真昼涼しき鯉の髭 小松崎爽青
浮世絵の女涼しくふり向ける 西村和子 夏帽子
浮葉巻葉立葉折葉とはす涼し 山口素堂
海にすむ魚の如身を月涼し 星布尼
海は球形せりあがりゆく船涼し 林翔 和紙
海へ向く人のことばの涼しさよ 旭
海女涼し桶にすがりし子に教ふ 近藤一鴻
海女涼し玉依姫の血あるかや 阿波野青畝
海樓の涼しさ終ひの別れかな 河東碧梧桐
海涼し夕暮れ島の片便り 蘇山人俳句集 羅蘇山人
海涼し絣模様にうさぎ波 河野頼人
海風を渡るオカリナ雲涼し 吉原文音
涙また涼しよ生きてありにけり 村越化石
涼しいか草木諸烏諸虫ども 広瀬惟然
涼しいねと通夜の遺影のおん眼もと(悼大野林火先生) 殿村菟絲子 『菟絲』
涼しからん這入口から加茂の水 一茶 ■年次不詳
涼しかる月の門辺の臀(しりこぶた) 尾崎紅葉
涼しきかさびしきかもぐらに問はむ 南上敦子
涼しきダム友とその妻の間に見る 寺田京子 日の鷹
涼しき斑染めて秋待つ薊の葉 大島民郎
涼しき灯すゞしけれども哀しき灯 久保田万太郎 草の丈
涼しき灯一つ~に涼しき灯 久保田万太郎 草の丈
涼しき灯夜毎にふえて来りけり 久保田万太郎 草の丈
涼しき瞳迫りて舞に誘ひけり 岩崎照子
涼しき身耳にあて繭ささやかす 平畑静塔
涼しき雨老境の艶ほくろにも 村越化石 山國抄
涼しくしづか白繭に音こもりゐて 高島 茂
涼しくて山の樹々ひそひそ語る 高橋信之
涼しくて山雀の芸飽かず見る 辻田克巳
涼しくて眠られざりし女の顔 右城暮石 声と声
涼しくて眼に見えざりし蜘蛛の糸 右城暮石 声と声
涼しくて立つてをるなり寺の門 岩田由美
涼しくて翳りある屋ぞあらまほし 筑紫磐井 婆伽梵
涼しくて薪かかへる手が上手 金田咲子 全身 以後
涼しくて薬の草の花も咲く 大峯あきら
涼しくて蟹の朽ちをるお寺かな 太田鴻村 穂国
涼しくて魚影一分の隙もなし 飯田龍太
涼しくなるまで帯はぐるぐる巻き 今瀬剛一
涼しくも火之迦具土ノ神といふ 後藤夜半
涼しくも野山にみつる念仏哉 向井去来
涼しく化粧ひ墓参に向ふ三人子曳き 小林康治 玄霜
涼しく女の名聞いて忘れて女と居る 荻原井泉水
涼しく裸のうらおもてからほくろ寫しとらる 橋本夢道
涼しく銀鱗抗し得し魚数尾くるる 古沢太穂 古沢太穂句集
涼しけに横日匂へり夕鏡 尾崎紅葉
涼しけれ睫毛夕日に灼かれつつ 佐野良太 樫
涼しげといはれ心外梅雨は憂し 星野立子
涼しげな師と対ひゐて畏れけり 都筑智子
涼しげな菓子のくばられ来たりけり 成瀬正とし 星月夜
涼しさうな顔してすごいことを言ふ 須川洋子
涼しさにひとり門辺を歩きけり 会津八一
涼しさにミダ同躰のあぐら哉 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
涼しさに一筋生きて水屋川 松本進
涼しさに二人とうたり物がたり 紫白女
涼しさに伸びて夜明の瓜の花 石井露月
涼しさに似る子の心うべなふは 毛塚静枝
涼しさに嘯く月の高頬かな 尾崎紅葉
涼しさに四ツ橋を四つ渡りけり 来山
涼しさに坐して暑さを口にせし 手塚美佐 昔の香
涼しさに堪へて人あり磯しぶき 原石鼎
涼しさに寐よとや岩の窪溜 内藤丈草
涼しさに寝かねし唄や門の月 小酒井不木 不木句集
涼しさに寝てわが生をながめやりぬ 村越化石 山國抄
涼しさに居眠り行かん汽車の中 会津八一
涼しさに心の中を言はれけり 細見綾子(1907-97)
涼しさに惜みつ手置く読後の書 篠田悌二郎 風雪前
涼しさに懸けられてゐる佛かな 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
涼しさに旅濯ぐものひと掴み 稲垣きくの 牡 丹
涼しさに柱細りて酔ひにけり 八木林之介 青霞集
涼しさに石仏もまた位せり 村越化石
涼しさに覗く隣を持ちにけり 野村喜舟 小石川
涼しさに触れし手を剌す幹の芽よ 中島月笠 月笠句集
涼しさに鉛筆五本削りけり 鈴木しげを
涼しさのおみやげ三つ蛸三つ 永末恵子
涼しさのさびし走馬燈火をつがん 渡辺水巴 白日
涼しさのはや穂に出でて早稲の花 正岡子規
涼しさのむらだちのぼる杉木立 石原八束 空の渚
涼しさのゆつくりひらく薔薇茶かな 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
涼しさの一つ生まれて固き渦 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
涼しさの一人が立つて歩きけり 阿部みどり女 『微風』
涼しさの太き柱に凭れけり 藺草慶子
涼しさの宵の明星目ざし歩す 高木晴子 花 季
涼しさの寂しさとなる留守居役 小山則道
涼しさの心太とや凝りけらし 寺田寅彦
涼しさの指図に見ゆる住まゐかな 松尾芭蕉
涼しさの星の仲間の山家の灯 加藤亮
涼しさの水の上の声の漕ぎ出でつ 原田種茅 径
涼しさの池畔に出でし歩をゆるめ 西村和子 窓
涼しさの澄みの怖ろし羅針盤 太田鴻村 穂国
涼しさの火より生れし土偶かな 小池きく江
涼しさの真たゞ中や浮見堂 井上井月
涼しさの累々としてまり藻あり 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
涼しさの肌に手を置き夜の秋 高浜虚子
涼しさの肩より背より帰るさは 石塚友二 方寸虚実
涼しさの舟をわたりて舟に乗る 杉本寛
涼しさの野山に満つる念仏かな 去来 選集古今句集
涼しさの鈴振るごとき鳰のこゑ 石田郷子
涼しさの銅板に引く線なりし 高橋将夫
涼しさの闇こめて水匂ふかな すみだ川 新井聾風
涼しさの鳶の尾楫や伊勢の海 大峯あきら 鳥道
涼しさはいつもの席の柱陰 桂信子(1914-)
涼しさは一本道の母の墓 大木あまり 火球
涼しさは人参の髭馬の髭 大木あまり 火球
涼しさは哥機嫌なり月の船 乗雲 俳諧撰集「藤の実」
涼しさは寂しさとなり糸すすき 殿村菟絲子 『晩緑』
涼しさは座敷より釣鱸かな 昌長
涼しさは染めつけ鯰向付 高澤良一 鳩信
涼しさは椅子に円座をたまひしこと 後藤夜半 底紅
涼しさは波のうしろを次の波 岩田由美
涼しさは淋しさとなり糸薄 殿村莵絲子 雨 月
涼しさは淋しさに似て夜の秋 藤松遊子
涼しさは船の灯のゆきちがふとき 五十嵐播水 埠頭
涼しさは花えらびゐる尼二人 長谷川双魚 風形
涼しさは錫の色なり水茶碗 信徳
涼しさは露の大玉小玉哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
涼しさもその名からしてユカタハタ 高澤良一 燕音
涼しさも暑さもなべて寂かなり 相生垣瓜人 微茫集
涼しさやあるほど出して鷺の首 千代尼
涼しさやお水屋にさす木もれ月 金尾梅の門 古志の歌
涼しさやことに八十年(やそぢ)の松の声 千代尼
涼しさやこぼれもやらぬ松の露 高井几董
涼しさやすべて良医の匙加減 会津八一
涼しさやどの絵馬も帆に風孕み 伊藤いと子
涼しさやほの三日月の羽黒山 芭蕉
涼しさやみどりごの振る鈴の音 上田圭子
涼しさやよき碁に勝ちて肱枕 雨谷
涼しさやをさなき時のよし簀蔭 松瀬青々
涼しさやジャズに星降る楼の上 寺田寅彦
涼しさやデュフィにブルー・モツァルト 文挟夫佐恵 遠い橋
涼しさやファーストサーブ決めし時 仙田洋子 橋のあなたに
涼しさや一人が立って歩きけり 阿部みどり女
涼しさや井筒の中の忍草 江戸庵句集 籾山庭後
涼しさや傳一休のされかうべ 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
涼しさや先づ蛤の口の砂 句空 芭蕉庵小文庫
涼しさや先武蔵野のよばひ星 榎本其角
涼しさや八人代の田の青み 荒雀 俳諧撰集「有磯海」
涼しさや共に米かむ椎が本 如行
涼しさや再びともす燭の下 高井几董
涼しさや切紙の雪はら~と 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
涼しさや十悪法然愚禿鸞 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや半月うごく溜り水 一茶 ■寛政六年甲寅(三十二歳)
涼しさや去来の墓の一つ石 荒井英子
涼しさや君とわれとの胸の中 正岡子規
涼しさや塵なき風の茂り吹く 大谷句佛 我は我
涼しさや境内こゝに歯朶の谷 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや墓なる父を訪ひたれば 角川春樹
涼しさや夏田の畔の昼あかり 智月 俳諧撰集玉藻集
涼しさや夕わだつみの色かはる 五十嵐播水 播水句集
涼しさや夕襞できし比枝の山 五十嵐播水 播水句集
涼しさや大津灯りし水の上 五十嵐播水 播水句集
涼しさや天守へのぼる木の階段 相馬沙緻
涼しさや天神地祇も鶏も 阿波野青畝
涼しさや奈良の大仏腹の中 夏目漱石 明治二十九年
涼しさや婦人画報に友二の句 青木重行
涼しさや子をよぶ牛も川の中 正岡子規




涼しさや客仕舞たる井の雫 蓼太
涼しさや家計簿にしるすきり~す 渡辺水巴 白日
涼しさや山から見へる大座敷 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
涼しさや山は沈黙海多辯 阿部みどり女
涼しさや嶋から島へ橋づたひ 正岡子規
涼しさや布晒すごと藻の長き 関森勝夫
涼しさや帆に船頭のちらしがみ 榎本其角
涼しさや帯も単衣も貰ひもの 竹下しづの女
涼しさや平家亡びし浪の音 子規句集 虚子・碧梧桐選
涼しさや庭のあかりは隣から 永井荷風
涼しさや恥かしいほど行き戻り 千代尼
涼しさや息に波うつ金の箔 吉藤春美
涼しさや扇なげうつ瀬田の橋 中勘助
涼しさや手に持てるなく触るるなし 林翔 和紙
涼しさや投出す足に月の影 定雅
涼しさや旅に出る日の朝朗 樗良
涼しさや日の落かゝる海の上 秋色
涼しさや暮れて時経つ磧の夜 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや會話吹き消す沖の風 幸田露伴 谷中集
涼しさや月まつ船の帆ごしらへ 水田正秀
涼しさや月を蝕む星にゐて 松村武雄
涼しさや月徒渉る波の上 石塚友二 光塵
涼しさや朝草門に荷ひこむ 凡兆
涼しさや松の葉ごしの帆掛船 正岡子規
涼しさや松の葉越しの破風造 サガ-野明 六 月 月別句集「韻塞」
涼しさや松這ひ上る雨の蟹 正岡子規
涼しさや松風蔦の葉を返し 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや柳につなぐ裸馬 正岡子規
涼しさや梢々の吹あまり 千代尼
涼しさや椽の際なる川手水 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
涼しさや欠釜一ッひとりずみ 一茶 ■寛政五年癸丑(三十一歳)
涼しさや母の足もむ置蚊遣 木歩句集 富田木歩
涼しさや水に刺さりて青松葉 岸田稚魚 『萩供養』
涼しさや氷室の雫々より 千代尼
涼しさや池あり木あり烏啼く 子規句集 虚子・碧梧桐選
涼しさや沙門良寛詩書の妙 松根東洋城
涼しさや波打つ際の藻汐草 正岡子規
涼しさや浮洲の上のざこくらべ 去来
涼しさや海に入れたる最上川 松尾芭蕉
涼しさや海老のはね出す日の陰り 素牛 俳諧撰集「藤の実」
涼しさや海豚のあそぶ波がしら 桜木俊晃
涼しさや清水につけしつぼの籠 中勘助
涼しさや湖を跳ぶ兎波 矢島渚男 船のやうに
涼しさや湖見えて来て道曲る 柑子句集 籾山柑子
涼しさや湖風ぬける空社殿 幸田露伴 谷中集
涼しさや滝を茶に煮る滝の茶屋 子規句集 虚子・碧梧桐選
涼しさや瀬見の小河の談儀坊 中村史邦
涼しさや火種絶やさぬ草の宿 月舟俳句集 原月舟
涼しさや瓜にかきたる稚児のかほ 筑紫磐井 野干
涼しさや直に野松の枝の形 松尾芭蕉
涼しさや眉のごとくに湖北の灯 五十嵐播水
涼しさや真珠一粒汝に与ふ 石嶌岳
涼しさや石握り見る掌 夏目漱石 明治三十二年
涼しさや石灯籠の穴も海 正岡子規
涼しさや破墨は梅雨の山に似て 碧雲居句集 大谷碧雲居
涼しさや秋の日南の人通り 大魯
涼しさや竈二つは有りながら 酒堂 俳諧撰集「藤の実」
涼しさや立木柱に峠茶屋 雉子郎句集 石島雉子郎
涼しさや竹人形の竹の髪 池園二三江
涼しさや笠へ月代そり落し 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
涼しさや筧の下の椀茶碗 増田龍雨 龍雨句集
涼しさや粘土布目のまま乾き 伊藤京子
涼しさや糊のかはかぬ小行灯 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
涼しさや絹着ておはす老和尚 几董
涼しさや羽前をのぞく山の穴 正岡子規
涼しさや羽生えさうな腋の下 正岡子規
涼しさや脈鈴ひゞく水の闇 幸田露伴 拾遺
涼しさや舳(とも)へながるゝ山の数 建部涼袋 (りょうたい)(1719-1774)
涼しさや花屋が店の秋の草 几董 五車反古
涼しさや花時過ぎし木ばかり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
涼しさや草むしり巌うごかすと 中田剛 珠樹

以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:22 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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