鮟鱇

鮟鱇

例句を挙げる。

あらたまの火を呑んで鮟鱇老いせぬや 中勘助
あんかう(鮟鱇)や孕み女の釣るし斬り 夏目漱石(1867-1916)
おほき孤独が鮟鱇にぶら下がる 辻美奈子
ききわけの無き鮟鱇を鍋にかな 櫂未知子 蒙古斑
とめどなき大鮟鱇の涎かな 岡田耿陽
ぬめりとる出刃を砥にあて鮟鱇割く 辻口八重子
ひたひに灯りを感じる鮟鱇をたべる 中塚一碧樓
イエスより軽く鮟鱇を吊りさげる 有馬朗人 母国
エリックサティ鮟鱇の肝食ひをれば 大石悦子
フォークもて食ふ鮟鱇や漱石忌 日原傳
一喝に似て鮟鱇を糶りおとす 今瀬剛一
人中に鮟鱇吊られしたゝれり 小林康治
人中の鮟鱇と我れを罵りぬ 四明句集 中川四明
冬日中鮟鱇吊られ罪あるごと 小林康治 四季貧窮
出刃を呑むぞと鮟鱇は笑ひけり 阿波野青畝(1899-1992)
口紅ぬり鮟鱇食べしとは見えず 鈴木貞雄
吊されて老鮟鱇の無念かな 有永実
吊し切る鮟鱇の腹すでになし 鈴木勇之助
吊るされし鮟鱇何か着せてやれ 鈴木鷹夫
夕鯵をまつ間わびしき鮟鱇かな 井上井月
大年の一匹糶の鮟鱇かな 西本一都 景色
大鮟鱇触つてみれば女体かな 矢島渚男(1935-)
寒波来鮟鱇肝を値打とし 鈴木真砂女 夕螢
息止めて見る鮟鱇の吊し切り 小俣由とり
惨憺たる鮟鱇の顔今日終る 岸田稚魚 筍流し
手鈎傷眉間に鮟鱇糶られけり 奈良文夫
昼行燈鮟鱇向きを変へにけり 高澤良一 ぱらりとせ 
晴天の鮟鱇といふわだかまり 今瀬剛一
水揚げの鮟鱇ビロード光りせり 高澤良一 寒暑 
沓鮟鱇馬にて海を渡す事 椎本才麿
泪目のまゝ鮟鱇の割かれけり 佐々木 鳴子
潮錆の空へ鮟鱇吊られけり 神山果泉
煮こごりにも裏鮟鱇を裏返し 橋本美代子
生家とは鮟鱇の口ほどの闇 鳥居真理子
目の前でする鮟鱇の吊し切り 金沢瓢舎
真つ先に肝を抜かれて吊り鮟鱇 福田貴志
競られゐて暑き鮟鱇飛魚は涼し 野澤節子 黄 炎
築地明石町鮟鱇吊られあり 石嶌岳
紐になり了る鮟鱇の吊し切り 田川飛旅子 『使徒の眼』以後
素通りを許さぬ貌の鮟鱇買ふ 立石 京
能登の海鮟鱇あげて浪平ら 前田普羅 能登蒼し
自転車につむ鮟鱇の尾が見えて 岸本尚毅 舜
自転車の荷台に鮟鱇積み帰る 高澤良一 寒暑 
舟釣瓶ぶつかけられし鮟鱇かな 阿波野青畝
貧てふ文字鮟鱇のごと吊したし 小林康治 四季貧窮
貪婪の鮟鱇といひそれを食ふ 北澤瑞史
身のうちに鮟鱇がゐる口あけて 奧坂まや(1950-)
身を削がれゆく鮟鱇の眼ありけり 牧野寥々
選り好みしても鮟鱇同じ貌 山岡成光
風に背を押され鮟鱇買ひにけり 小坂優美子
馴染店入れば鮟鱇勧められる 梁取 久子
鮟鱇がふぐに恋する小泥海 中勘助
鮟鱇が吊るされ河岸に雪降れり 伊藤みちを
鮟鱇と一対一の一句なり 鈴木真砂女
鮟鱇と汝が愚魯と吊さんか 永井龍男
鮟鱇に似て口ひらく無為の日々 木下夕爾(1914-65)
鮟鱇に刃を入れてのち自在なり 原けんじ
鮟鱇に力いつぱい出刃包丁 鈴木真砂女
鮟鱇に右往左往の厨妻 阿部底下
鮟鱇に大手ひろげて枯るるかな 斎藤玄 雁道
鮟鱇に巷の影のぶら下がる 上谷昌憲
鮟鱇に目のあり二つちよぼとあり 藤田あけ烏 赤松
鮟鱇のあぎとの残る鈎を見き 八木林之助
鮟鱇のあんぐり湾の形せり 小島ノブヨシ
鮟鱇のがまんの口を今降す 今関幸代
鮟鱇のごとく胃袋は何んでも食いたがる 橋本夢道 無礼なる妻
鮟鱇のさかさまに日は闌けにけり 谷川護物
鮟鱇のどこからが顎どこが貌 水谷芳子
鮟鱇のどろりと箱を溢れけり 吉澤利枝
鮟鱇のふさぎこんだる面がまへ 市川栄次
鮟鱇のむらぎもを食ひ独りなり 本宮銑太郎
鮟鱇のよだれの先がとまりけり 阿波野青畝(1899-1992)
鮟鱇のロが裂けても言へぬなり 安住敦
鮟鱇の仰向ざまに糶られけり 大庭雄三
鮟鱇の切られ切られて骨透明 羽部洞然
鮟鱇の削がれつくして凍てにける 小林康治 四季貧窮
鮟鱇の口して義歯の型とらる 田川飛旅子 『山法師』
鮟鱇の口だけ裏の木に残る 中拓夫
鮟鱇の口にはら~しぐれけり 藤井紫影
鮟鱇の口ばかりなり流しもと 高浜虚子
鮟鱇の口より落ちし氷かな 山西雅子
鮟鱇の口巨大迷路のはじまりとも 白石司子
鮟鱇の吊られ大愚の口開けて 日置草崖
鮟鱇の吊られ日輪尚赫し 杉本寛
鮟鱇の土曜の町に吊られけり 成井 侃
鮟鱇の大口あいて笑ふ哉 寺田寅彦
鮟鱇の屈託の肝抜かれけり 村中[トウ]子
鮟鱇の強つくばりの口許よ 高澤良一 随笑 
鮟鱇の愚にして咎はなかりけり 村上鬼城
鮟鱇の掟のごとく吊さるる 高橋ツトミ
鮟鱇の昨日の骨と今日の骨 すずきりつこ
鮟鱇の正体もなく糶られけり 高浜胡鈴子
鮟鱇の毀れし貌が競(せ)られけり 高澤良一 宿好 
鮟鱇の泣き寝入りして買はれけり 堀口星眠 営巣期
鮟鱇の津波を起しさうな口 八牧美喜子
鮟鱇の海底の地震見たる貌 八牧美喜子
鮟鱇の涎の糸の地べたまで 十玉幸男
鮟鱇の涎汚れの土間辷り 日向正雅
鮟鱇の煮え隣の男の肘がさはる 梅林句屑 喜谷六花
鮟鱇の煮ゆる間侍り女将たり 鈴木真砂女 夕螢
鮟鱇の糶り落されしぬかり顔 白井爽風
鮟鱇の罪業深く吊されぬ 栗原米作
鮟鱇の聖者のごとく吊られけり 三谷 和子
鮟鱇の肝うかみ出し鮟鱇鍋 高濱虚子
鮟鱇の肝の四角の揺れてをり 山尾玉藻
鮟鱇の肝一樽や春の雪 鈴木真砂女 夕螢
鮟鱇の肝喰つてまた逢ふ日まで 朝倉和江
鮟鱇の肝蒸し上る雪催 鈴木真砂女
鮟鱇の肝食べ頭怠る日 下田稔
鮟鱇の胆溢れゐる鉄の皿 二宮一知
鮟鱇の腸の潮水あふれけり 石脇みはる
鮟鱇の腸より天主立ちあがる 平井照敏 天上大風
鮟鱇の腸をたべたる深眠り 池田弥生
鮟鱇の腹たぶたぶと曳かれゆく 角川照子
鮟鱇の腹に納まる壺おもへ 中田剛 珠樹以後
鮟鱇の裏返されて糶られをり 山崎美白
鮟鱇の襤褸の中の骨太し 能村登四郎
鮟鱇の貌ほめあげて売られけり 那須淳男
鮟鱇の面構えして世を渡る 大月桃流
鮟鱇の面皮剥がれし眼かな 矢島渚男 梟
鮟鱇の顎の残る鉤を見き 八木林之介 青霞集
鮟鱇の顔俎板にのりきらず 能登裕峰
鮟鱇の飼はれてひげを静かにふる 永田耕一郎 氷紋
鮟鱇の首切られ且つ腹裂かれ 鈴木真砂女 夕螢
鮟鱇の骨ねぶりゐる男かな 瀧澤伊代次
鮟鱇の骨のみいまだ吊られ居り 石井松江
鮟鱇の骨の干さるる酒房裏 松本悦子
鮟鱇の骨まで凍ててぶち切らる 加藤秋邨
鮟鱇の髭もて持たれ値ぎらるる 加藤秋邨 まぼろしの鹿
鮟鱇はゆるき外套着用す 安田千枝子
鮟鱇は海の蒼さを思ひをり 佐川広治
鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな 久保田万太郎(1889-1963)
鮟鱇も河豚も喰ふなり年の暮 寺田寅彦
鮟鱇やかげ膳据ゑて猪口一つ 飯田蛇笏 山廬集
鮟鱇や口をひらけハ肝を見る 松瀬青々
鮟鱇や小光が鍋にちんちろり 夏目漱石 明治四十一年
鮟鱇や店に生きゐて日暮れなる 中川宋淵
鮟鱇や木の葉のような大伯母来 上原勝子
鮟鱇や沓のとなへも二葉より 秋色 俳諧撰集玉藻集
鮟鱇や疾風のごとく夜が来て 小金まさ魚
鮟鱇や長安市上酒家の軒 妻木 松瀬青々
鮟鱇や鼠小僧を泊めし家 龍胆 長谷川かな女
鮟鱇をさくや裸灯低く吊り 赤沼薫
鮟鱇をねほりはほりとさはりけり 作山 大祐
鮟鱇をふりさけ見れば厨かな 其角
鮟鱇を一尾といふも愚かなり 相生垣瓜人
鮟鱇を吊して水を荒使ひ 堀之内和子
鮟鱇を吊りいそぐなり年の内 萩原麦草 麦嵐
鮟鱇を吊りざぶざぶと海暮るる 中 拓夫
鮟鱇を吊りまた銭の笊吊るよ 富岡掬池路
鮟鱇を喰らひ地獄に堕ちんかな 小澤實
鮟鱇を煮て面白き話せん 清水基吉
鮟鱇を煮るにも痩せて書淫の手(某氏を訪ふ) 石川桂郎
鮟鱇を腑におとしたるところなり 西村純吉
鮟鱇・銀河系よりぶらさがる 白澤良子
鮟鱇煮え巧言令色鮮矣仁 高澤良一 ぱらりとせ 
鮟鱇煮て旧悪のごと職擲てり 小林康治 玄霜
鮟鱇煮る妻のたかぶり声なさず 杉山葱子
あんかうは癖のなき魚箸伸ばす 高澤良一 寒暑 
あんかうや孕み女の釣るし斬り 夏目漱石 明治二十八年
あんこう鍋皆いつぱしの顔もてり 荒井正隆
あんこう鍋神田は路地の二階にて 藤岡筑邨

以上
by 575fudemakase | 2014-12-18 00:09 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fudemaka57.exblog.jp/tb/22938521
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

全体
無季
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
未分類

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

電飾 の俳句
at 2017-12-11 12:10
宿木 の俳句
at 2017-12-10 18:42
冬 の俳句
at 2017-12-10 16:58
スキー の俳句
at 2017-12-04 09:25
蝦蛄葉仙人掌 の俳句
at 2017-12-04 03:27

外部リンク

記事ランキング