寒卵

寒卵

例句を挙げる。

いつまでも在る病人の寒卵 佐藤鬼房(1919-2002)
いつよりの愛の重さの寒卵 嶋田麻紀
おどけ顔泣き顔どれも寒卵 小檜山繁子
おほつぶの寒卵おく襤褸の上 飯田蛇笏
お茶碗と同質のおと寒卵 高澤良一 素抱 
これは自分から出たもの寒卵 高澤晶子 純愛
しづかなる暮しとなりぬ寒卵 真鍋完子
つつましく日を過しをり寒卵 森澄雄
なか空に寒卵あり生死はあり 小川双々子
はれやかに佐渡は近しや寒卵 黒田杏子 木の椅子
ひとしれず敏捷ならむ寒卵 渋谷道
びつこ鶏走らせて買ふ寒卵 石田あき子 見舞籠
ほのと影しあうて二つ寒卵 長谷川櫂 蓬莱
ほの暗き巣に洞然と寒卵 小原菁々子
もたれあふひかりの重き寒卵 松村蒼石 露
もてなしの地獄に茹でし寒卵 内田 愛子
やはらかき影の上なる寒卵 片山由美子 風待月
れいろうと生み落されて寒卵 川本臥風
わが生ひ立ちのくらきところに寒卵 小川双々子
マンシヨンが暾を独りじめ寒卵 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
一匹の影のさしこむ寒卵 櫂未知子 蒙古斑
一汁と一菜と寒卵かな 清水基吉
七人の敵ある夫に寒卵 山田弘子 こぶし坂
三和土にて立ちながら割る寒卵 山口波津女 良人
三輪山の神に供ふる寒卵 吉田 久子
二筋に血の緒分れし寒卵 佐川広治
人の死をうらやみすする寒卵 村越化石
人焼きし匂ひに焦げて寒卵 吉田紫乃
内からも殻割るちから寒卵 多摩 茜
制服のまま寒卵買ひにゆく 折井紀衣
南北をかんがえている寒卵 永末恵子 留守
単純がもっとも怖し寒卵 前田典子
古羅馬の玉座に何の寒卵 攝津幸彦
含羞や白紙のうえの寒卵 河合凱夫 飛礫
味噌汁におとすいやしさ寒卵 草間時彦
塗椀に割つて重しよ寒卵 石川桂郎 高蘆
夜すがらのあらしもやみて寒卵 山口誓子
大つぶの寒卵おく襤褸の上 飯田蛇笏(1885-1962)
天秤の弱き姿勢や寒卵 攝津幸彦
奴隷の自由という語寒卵皿に澄み 金子兜太 少年/生長
孤児院の一人にひとつ寒卵 本庄登志彦
家族の数割れば小揺らぎ寒卵 中村明子
寒卵ありやと覗く鶏寄り来 上野泰 佐介
寒卵いつより深くわかれたる 徳弘純 麦のほとり 以後
寒卵かゝらじとする輪島箸 前田普羅 能登蒼し
寒卵くんのみ世故をささやけり 飯田蛇笏 春蘭
寒卵こつと頭蓋に打ち込めり 小檜山繁子
寒卵ことこと煮えて成仏す 百合山羽公 寒雁
寒卵ころがしてをり人嫌ひ 玉城一香
寒卵ころがりつつも触れゆけり 堤 白雨
寒卵しづかに雲と雲はなれ 田中裕明
寒卵すゝり九十の身ごしらへ 大久保橙青
寒卵どの曲線もかへりくる 加藤楸邨(1905-93)
寒卵のふりをしている<空(くう)>一個 折笠美秋 君なら蝶に
寒卵は尼の静けさ岬暮る 大木あまり 山の夢
寒卵ひしめき朝の補食籠 石田あき子 見舞籠
寒卵ひとりわらいのうつりしや 渋谷道
寒卵むかしは家の闇澄みし 北原志満子
寒卵わがままがまだ通る家 辻美奈子
寒卵わが壮年期陥没し 相馬遷子 雪嶺
寒卵わが晩年も母が欲し 野澤節子 花 季
寒卵われを生みたるものに母 鷹羽狩行
寒卵を飯に落してそれを刺す 田川飛旅子
寒卵コツと割る聖女学院 秋元不死男
寒卵コツンと母の恙なし 柿内芳子
寒卵プレス打つ音浴びづめに 中戸川朝人 尋声
寒卵一つ割つたりひゞきけり 原石鼎 花影以後
寒卵一気に杣の喉ぼとけ 平子公一
寒卵主婦健康な頬を持ち 千原草之
寒卵二つぶつかりとどまりぬ 加藤三七子
寒卵二つ置きたり相寄らず 細見綾子(1907-97)
寒卵二つ置く二つ相寄りぬ 富田与士
寒卵互ひに触れて冷たきもの 山口波津女 良人
寒卵享くまぶしさに声をあぐ 千代田葛彦
寒卵人ぎらひまた吾に復る 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
寒卵今日の予定の何もなし 嶋澤喜八郎
寒卵割りて啜るや湖あをし 加藤楸邨
寒卵割りひとり旅ひとりの餉 大橋敦子 手 鞠
寒卵割り山彦の国を出る 市原光子
寒卵割るとき神を信じをり 西川 五郎
寒卵割るまん前に櫻島 本庄登志彦
寒卵割る一瞬の音なりき 山口波津女 良人
寒卵割る山脈を近づけて 中村明子
寒卵割る殻よりも大きな黄身 三輪閑蛙
寒卵割る脳天の割れし音 今瀬剛一
寒卵割る音異にふたりの餉 上柿照代
寒卵割れば仕ふる人欲しき 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
寒卵割れば器に躍り出で 西岡正保
寒卵割れば殻のすきまからぬるりと落ちぬひかりをひきて 沖ななも
寒卵割れば直ちに自転かな 星野紗一
寒卵取りに出しのみ今日も暮 安積素顔
寒卵吸はるるごとく吸ひゐたり 原裕(1930-99)
寒卵啜り機関車乗務かな 永田蘇水
寒卵喉(のんど)生きるを識るときか 河野多希女
寒卵嚥み遥かなる貌をせり 橋本草郎
寒卵地球をくらく抱きけり 平井照敏
寒卵売る前掛に包み来て 松本 旭
寒卵夕焼にかざす掌 兼巻旦流子
寒卵大き梁の下に嚥む 黒田櫻の園
寒卵夫を人手にまかせ病む 八牧美喜子
寒卵掌にし没日の神讃ふ 石原八束 『秋風琴』
寒卵朝の翼の少女かな 上原勝子
寒卵机にひとつ影ひとつ 宇多喜代子 象
寒卵煙も見えず雲もなく 知久芳子
寒卵狂ひもせずに朝が来て 岡本眸(1928-)
寒卵産みてほのぼの鶏の貌 大熊輝一 土の香
寒卵産む鶏孤つ飼はれけり 西島麦南
寒卵男ばかりが立志伝 仁平勝 東京物語
寒卵笑ふと思ふ笑はずや 長谷川櫂 天球
寒卵箱にぎつしり争はず 木村敏男
寒卵箱にならべて美しや 浅見波泉
寒卵素直に割れし朝讃ふ 朝倉和江
寒卵累々と灯を求め合ふ 中村秋農夫
寒卵置きし所に所得る 細見綾子 花 季
寒卵薔薇色させる朝ありぬ 石田波郷(1913-69)
寒卵見せて病者を微笑ます 白岩 三郎
寒卵軍神宿を出て啜る 相原左義長
寒卵追ひ来て医師の手に一つ 金子伊昔紅
寒卵闘病のわが一行詩 長田等
寒卵馥郁と夜を統べむとす 正木ゆう子 悠
寒卵黒髪解きし頭のかたち 中村草田男
山の湯やすぐ売切れし寒卵 首藤勝二
川あげし靄の来てをり寒卵 中戸川朝人 尋声
廃墟にて赤き眸のある寒卵 石原八束 仮幻の花
影を曳くものに加はり寒卵 中戸川朝人 残心
恙なきわれにも割つて寒卵 山口波津女 良人
息災を願う朝餉や寒卵 中井敏子
悪役のどーらんの色寒卵 田川飛旅子
愛をもて割れば珠なす寒卵 山口波津女 良人
手にとればほのとぬくしや寒卵 高浜虚子
手のひらに 予言の重さ 寒卵 伊丹三樹彦 樹冠
手元見られゐし寒卵割り損ね 樋笠文
明暗のさかひに置かれ寒卵 長田等
朝はたれもしづかなこゑに寒卵 野澤節子 黄 瀬
朝は幸多し寒卵まどかなる 福田蓼汀
東京は暗し右手に寒卵 藤田湘子(1926-)
殻の中ほのと明るく寒卵 長谷川櫂 蓬莱
母の世や病気見舞に寒卵 古賀まり子
温泉の寒卵なり匙を添へ 森田峠 避暑散歩
無間地獄の湯に沈みゆく寒卵 横山白虹
獄は口開け寒卵売通す 斎藤玄
生も死も累々として寒卵 岩岡中正
眠れぬ夜は犇と総立ち寒卵 堺 信子
眼を開けて寒卵産む立派なり 阿部完市 無帽
着の身着のままにまぶしき寒卵 友岡子郷 翌
硝子戸に濤の攻め来る寒卵 鍵和田釉子
神童とよばれし昔寒卵 平井照敏 天上大風
籠青し翳かさねたる寒卵 草間時彦
籾殻の底よりとりて寒卵 長谷川櫂 古志
籾殼より白眼を剥きぬ寒卵 田川飛旅子
絞り布も盛り寒卵二タ色に 香西照雄 対話
老犬とのつぺらぼうの寒卵 大木あまり 雲の塔
腹背に寒ありて先づ寒卵 齋藤玄 『無畔』
自画像のその前にあり寒卵 加藤三七子
自販機の母より生まれ寒卵 木谷はるか
薄鬚の受験子かなし寒卵 石田あき子 見舞籠
見舞苞解くやころがる寒卵 五十嵐春男
親ひとり子ふたり三つ寒卵 満田春日
貯へて臼の中なり寒卵 山野邊としを
買はれつゝ夕日のやどる寒卵 池禎章
転がるをみづからとどめ寒卵 檜紀代
転がれぬ形うとみて寒卵 谷口桂子
野仏の空昏れいろに寒卵 久行保徳
閑談のふところにして寒卵 飯田蛇笏 霊芝
音楽の中の日陰や寒卵 宮津昭彦
いのち一つわが掌に寒玉子 高橋淡路女
なほ温し妻が掌へやる寒玉子 軽部烏頭子
ぬく飯に落して円か寒玉子 高浜虚子
ぶっつける力が余る寒玉子 高澤良一 随笑 
一人とる遅き朝餉や寒玉子 三沢久子
初場所や昔しこ名に寒玉子 百合山羽公
地玉子とありそのすべて寒玉子 波多野爽波 『一筆』以後
寒桜咲き寒玉子てのひらに 高木晴子 晴居
寒玉子うく徹宵の油の掌 鈴木しづ子
寒玉子わりし器の花鳥かな 橋本鶏二 年輪
寒玉子一つびとつのいとしさよ 久保田万太郎 流寓抄以後
寒玉子一つ両手にうけしかな 久米三汀
寒玉子今日の力と頂きぬ 景山筍吉
寒玉子割れば双子の目出度さよ 高浜虚子
寒玉子包みて呉れぬ撥帛紗 岡本松浜 白菊
寒玉子即ち破つて朝餉かな 阿波野青畝
寒玉子狂ひもせずに朝が来て 岡本眸
寒玉子血潮こごえること知らぬ 原裕 投影
手にとればほのとぬくしや寒玉子 高浜虚子
晩縁の薄き掌のひら寒玉子 稲垣きくの 牡 丹
燈をつけるしぐさ寒玉子等に見られ 細谷源二 砂金帯
俳々と馬鹿の一念寒たまご 加藤郁乎

以上
by 575fudemakase | 2014-12-24 00:31 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

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単語 575筆まか勢
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表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

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