雪 3

雪 3

例句を挙げる。

雪降るや種くろく透け雀瓜 山西雅子
雪降るや紙人形の紙の呼吸 滝井清子
雪降るや経文不明ありがたし 相馬遷子 山河
雪降るや葉音収めて竹立てる 臼田亜浪 旅人
雪降るや身裡に翳をつみかさね 宗田安正
雪降るや遠き記憶の母の胸 皆川白陀
雪降るや銀紙まきしチヨコレート 藤岡筑邨
雪降るより消えてひるごろ シヤツと雑草 栗林一石路
雪降るよ障子の穴を見てあれば 正岡子規(1867-1903)
雪降るを見てゐて人を赦しけり 日下部宵三
雪降る三界僧の飽食赦すべからず 磯貝碧蹄館 握手
雪降る中硝煙の香の甦る 千代田葛彦 旅人木
雪降る庭に昨夜の父が立っている 西川徹郎 死亡の塔
雪降る朝白き産着を賜りし 有働亨 汐路
雪降る淵玉虫色に紬織る 加藤知世子 花寂び
雪降る街大魚の背骨など見せて 北原志満子
雪降る間も暗き結核彷徨す 林田紀音夫
雪降る降る今宵北国へと発つ人よ 文挟夫佐恵 黄 瀬
雪降ればすぐに雪掻き妻なき父 寺田京子 日の鷹
雪降れば夜は来といひて昼に来ぬ 下村槐太 光背
雪降れば女子大もつくる雪達磨 山口青邨
雪降れば湯気倍にして饅頭屋 高澤良一 寒暑
雪降れば石の耳輪はおもからまし 野澤節子 黄 炎
雪降れば雪たのし商の妻失格 八牧美喜子
雪降れば雪見の酒をもてなさん 金山 有紘
雪降れりくつがへらんとする鯉に 高澤良一 随笑
雪降れり子の手を包む我の手に 橋本榮治 麦生
雪降れり子役の素足花道に 佐藤せつ子
雪降れり少年の日の友等無く 相生垣瓜人 微茫集
雪降れり時間の束の降るごとく 石田波郷(1913-69)
雪降れり海なき国の野に山に 福田蓼汀 山火
雪降れり疑心暗鬼の雪降れり 堀井春一郎
雪降れり葱の口臭あたらしく 中拓夫 愛鷹
雪降れり雪の重みが裂きし木に 徳永山冬子
雪降れる夜の闇淡くなつて来し 青葉三角草
霊南坂ゆけば雪降る牧師館 冨田みのる
青き愛撫の銅版の人雪降れり 磯貝碧蹄館
静けさの極み雪降りいでにけり 徳永山冬子
静けさを深め雪降るわが行方 原裕 葦牙
静夜にてかのバイオリン雪降らす 鈴木六林男 桜島
静臥位に豊かなる雪降りつづく 誓子
音すべて雪降る音の中に消ゆ 加藤瑠璃子
音もなく白く冷たく雪降る闇 中村苑子
音絶えしこの音が雪降る音か 有働亨
風景の何処からも雪降り出せり 柿本多映
風裏はあそび雪降る氷柱かな 松村蒼石
食堂のすべての窓に雪降れり 大井雅人 龍岡村
餅の杵洗へば山に雪降りぬ 大串章
餅食う母雪降る死火山の裏側に 佐藤野火男
馬の目に雪降り湾をひたぬらす 鬼房
馬の眼に遠き馬ゐて雪降れり 中条明
馴鹿の角重たげに雪降りぬ 寺田寅彦
高山の雪降る街の消火栓 高澤良一 随笑
高張に霏々と雪降るお講かな 石田雨圃子
鮟鱇が吊るされ河岸に雪降れり 伊藤みちを
鳥の目に雪降るはひとつの奇跡 宇多喜代子
鳥翔ちて雪降りすさむ遠い沼 対馬康子 愛国
鳴雪忌二月一度も雪降らず 堀田春子
鳶のいろ巌に重なり雪降れり 中西舗土
鴨の羽に雪降り汀までは寄らず 猿橋統流子
鴨毟る雪降らざれば止まぬなり 多佳子
鶴の懐妊山裾に雪降らしむる 磯貝碧蹄館
鷺の雪降りさだめなき枯野かな 千代尼
鹿の瞳に雪降る今年はじまれり 野見山ひふみ
黒白の斎藤茂吉雪降れり 和田悟朗
*えりに降る雪のはげしさ往くさ来さ 下村槐太 天涯
いちさきに孟宗ゆれて降る雪よ 原石鼎 花影以後
いつせいに降る雪速度ゆるむなり 加藤秋邨 雪起し
いつ涌きていつ降る雪の玉柏 上島鬼貫
かぎりなく降る雪何をもたらすや 西東三鬼
かまくらへ降る雪生死ひとつなる 河野多希女 月沙漠
ごみごみと降る雪ぞらの暖かさ 宮沢賢治
しん~と降る雪に見入りわがさだめ 原石鼎 花影以後
ただ白く降る雪心音もて通る 野澤節子 黄 炎
ちらちらと檻の狐に降る雪よ 成瀬正とし 星月夜
ふるさとの夜半降る雪に親しめり 飯田蛇笏 椿花集
まつすぐに降る雪はなく積りをり 橋本榮治 麦生
やみなく降る雪を掻きに出てゐる 人間を彫る 大橋裸木
よろこべる子に降る雪の白くなり 臼田亜浪 旅人
スケートの終り降る雪真直なり 山崎秋穂
亂れ降る雪や音なき音をこめ(上州草津温泉) 上村占魚 『かのえさる』
佳き言に似て降る雪や掃き納め 川辺きぬ子
元日や竹の葉に降る雪の音 南うみを
公魚のよるさゞなみか降る雪に 渡邊水巴 富士
凛然と降る雪のさまかそかなる夜の紺青を吸ひて光れり 大滝貞一
力なく降る雪なればなぐさまず 石田波郷(1913-69)
君に降り吾に降る雪卒業す 北澤瑞史
吾等つひに起てり降る雪もたのし 佐野良太 樫
天地たゞ傘に降る雪あるばかり 石塚友二
宿とりて猶降る雪に佗びにけり 東洋城千句
幌に降る雪明るけれ二の替 阿部みどり女 笹鳴
懸命に降る雪知らで夜半に覚む 村越化石 山國抄
戎克の灯降る雪に射すほどもなき 桂樟蹊子
新年会降る雪を見て高階に 川畑火川
日射しつつ降る雪の綺羅蔵開 早川柾子
明日を信ず鉄骨に降る雪の向き 榎本冬一郎 眼光
杉に降る雪さらさらと紙漉場 西村公鳳
東京よ小公園に朝降る雪 高柳重信
松に降る雪ほたほたと実朝忌 冨田みのる
河に降る雪があきらめきつて降る 加倉井秋を
泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕に眠れ 佐佐木幸網
洋芹をいとほしみ降る雪淡し 堀口星眠 営巣期
海に降る雪美しや雛飾る 小林康治 『華髪』
湖こめて降る雪松につもり来し 佐野青陽人 天の川
灯の及ぶ限り降る雪埋むる雪 橋本榮治 逆旅
灯明りの中をしづかにくらがりへ降る雪 シヤツと雑草 栗林一石路
炭を積む馬の脊に降る雪まだら 夏目漱石 明治三十二年
無人派出所曲れば降る雪の千代田区 大沼正明(1946-)
白髪の姉を秋降る雪と思い込む 西川徹郎 月山山系
積もる雪降る雪いまだ名なき児に 野見山ひふみ
立つたびに降る雪つのる温め酒 小林康治 『虚實』
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
約束の日なり降る雪さまたげず 及川貞 榧の實
自転車の燈に降る雪のおびただし 相馬遷子 雪嶺
舳先に降る雪一条の言葉のごと 桜井博道 海上
蟹を立ち売る降る雪に消されもせず 津田清子 二人称
誰を訪はむ故郷を蔽ひ降る雪に 榎本冬一郎 眼光
賤ヶ岳より降る雪や*いさざ汲む 井桁蒼水
身の闇に降る雪嘗めて檻の熊 金箱戈止夫
遠く降る雪より緩く吾に降る雪 加倉井秋を 午後の窓
闇を降る雪をおもえば額打たる 和田悟朗
降る雪がさそふねむりの思惟仏 小室善弘
降る雪が別るゝひとの瞳にも降る 五所平之助
降る雪が川の中にもふり昏れぬ 高屋窓秋(1910-99)
降る雪が月光に会う海の上 鈴木六林男
降る雪が父子に言(こと)を齎らしぬ 加藤楸邨
降る雪と歯並の白さ別れ際 榎本冬一郎 眼光
降る雪にさはられてゐるクリスマス 攝津幸彦
降る雪にはばたく鷺の生きの白 吉野義子
降る雪にわが家の客の家遠し 山口波津女 良人
降る雪にわが家の燈のみ道照らす 山口波津女 良人
降る雪にピンポンの音は廊下の果 栗林一石路
降る雪に力抜きたる汀かな 山田みづえ 木語
降る雪に卒業写真撮りにゆきし 大橋櫻坡子 雨月
降る雪に大護摩焚けり初薬師 熊田鹿石
降る雪に天神地祇と応えけり 渡辺誠一郎
降る雪に客送らんと吾も濡る 山口波津女 良人
降る雪に弾み付ききし夕笹子 高澤良一 ねずみのこまくら
降る雪に悲しみはたゞ怺ふべし 相馬遷子 山河
降る雪に松は翼をひろげたり 徳永山冬子
降る雪に楽器沈黙楽器店 大橋敦子 母子草
降る雪に消えし国家の現われ来 徳弘純 麦のほとり 以後
降る雪に照らされてゐる谷の家 桑原三郎 晝夜
降る雪に白樺総立ちとなりにけり 岡田日郎
降る雪に白玉楼中皆会す 福田蓼汀 秋風挽歌
降る雪に目ひらいてみてまた泣けり 加藤楸邨
降る雪に眼いきいき目礼少女 鈴木六林男
降る雪に睫毛もつとも早く濡れ 内藤吐天 鳴海抄
降る雪に糶らるる蟹の紅しづもる 三好潤子
降る雪に紛ぎれ梅咲き和紙の村 西村公鳳
降る雪に縒つよくして川流る 的野雄
降る雪に老母の衾うごきけり 永田耕衣 與奪鈔
降る雪に胸飾られて捕らへらる 秋元不死男
降る雪に船の肋骨歯抜け立つ 米沢吾亦紅 童顔
降る雪に裸身まぶしき玉せせり 井田満津子
降る雪に触れんと蔓ら這ひまはる 三橋鷹女
降る雪に遠流のごとし鶴の色 齋藤玄 『無畔』
降る雪に金の卵を想ひゐる 林桂 銅の時代
降る雪に針金ゆるく巻かれあり 森田智子
降る雪に長子羽摶つごと来るよ 角川源義 『神々の宴』
降る雪に闇に瞠き喰ひ飽かぬ 石橋辰之助 山暦
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
降る雪のかなたかなたと眼があそぶ 皆吉爽雨
降る雪のかなた蝋燭の輪の舞踏靴 高柳重信
降る雪のことば遊びのかぎりなし 長田等
降る雪のその先日暮れ峠の灯 野澤節子 『八朶集』
降る雪のたてがみかぶり秣喰ふ 三橋敏雄
降る雪のつもる濃淡ありにけり 志摩芳次郎
降る雪のときたま力ゆるめけり 秋山未踏
降る雪のをりをり隙をひろげ舞ふ 井沢正江 晩蝉
降る雪の一身もえてただ悼む 赤城さかえ
降る雪の中の香煙初大師 今川 青風
降る雪の力の中へ川入りゆく 齋藤玄 『狩眼』
降る雪の垣に昨日の煤の竹 中野浩村
降る雪の天に逆巻くときのあり 鈴木貞雄
降る雪の奥うすうすと雪刷く山 千代田葛彦 旅人木
降る雪の徐々に地上の形なす 林田紀音夫
降る雪の水くらければ浮寝鳥 小檜山繁子
降る雪の白魚採を遠くする 大橋敦子 匂 玉
降る雪の真ん中にあり自在鈎 森田智子
降る雪の空におしやべり拡声器 青葉三角草
降る雪の舞ふは熄むてふ心あり 稲畑汀子
降る雪の谷に雉子鳴く西行忌 南光 翠峰
降る雪の野の深井戸の谺かな 高柳重信
降る雪は天飛ぶ田鶴を消しにけり 下村梅子
降る雪は急ぎ積るに急がざる 嶋田一歩
降る雪は生者に翳り死者に照る 加藤知世子 花 季
降る雪は雪国の財際限なく 品川鈴子
降る雪も一途雛とは女とは 綾部道江
降る雪も互みの酔も迅し早し 清水基吉 寒蕭々
降る雪やこけしの如く吾子馳け来 小林康治 四季貧窮
降る雪やこゝに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女
降る雪やさらに北指す夜汽車なり 桂樟蹊子
降る雪やひとひらづつの初明り 金箱戈止夫
降る雪やもの言ひて眼の黒さ増す 今瀬剛一
降る雪や九死一生皆懺悔 橋本夢道 無類の妻
降る雪や他郷と言ふを知りてをり 杉山岳陽 晩婚
降る雪や厠が近くなりにけり 仁平勝 東京物語
降る雪や地上のすべてゆるされたり 野見山朱鳥
降る雪や天金古りしマタイ伝 長谷川双魚(1897-1987)
降る雪や夫婦離(か)れ住むせんもなし 川口重美
降る雪や妻が過しむ愚痴の中 清水基吉 寒蕭々
降る雪や家得たりしを誰に謝す 杉山岳陽 晩婚
降る雪や岬に買ひし藻付焼 八牧美喜子
降る雪や拳の鷹に心問ふ 野村喜舟 小石川
降る雪や旅人われに家路なく 山本歩禅
降る雪や明治は遠くなりにけり 草田男
降る雪や母の諭しに「をのこたれ」 井田寛志
降る雪や灼鉄は暗いところで打つ 榎本冬一郎 眼光
降る雪や父母を子が持つ日曜日 林翔 和紙
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏(1885-1962)
降る雪や祖母が縫ひゆく花雑巾 古賀まり子 降誕歌
降る雪や禅問答を繰り返す 佐藤美恵子
降る雪や竹藪庵に香を聴く 橋本夢道 『無類の妻』以後
降る雪や行かねばならぬゆえに行く 下村梅子
降る雪や野には舌持つ髑髏(ひとがしら) 夏石番矢 猟常記
降る雪や音読の書は立てらるる 成田千空 地霊
降る雪より積む雪白し避病棟 川村紫陽
降る雪よ今宵ばかりは積れかし 夏目漱石(1867-1916)
降る雪よ闇のシュプール消さずあれ 石橋辰之助 山暦
降る雪を仰ぎゐる身の浮遊感 高橋京子
降る雪を仰げば昇天する如し 夏石番矢(1955-)
降る雪を天階に見ず畦に見る 秋元不死男
降る雪を泥にこねたる時雨かな 水田正秀
降る雪を見てをり犬の真顔なる 行方克巳
降る雪を見てをり眼鏡てのひらに 井上雪
降る雪を見んとてこけし眼をもらふ 矢島渚男 天衣
降る雪を避ける意志なき柩出づ 林田紀音夫
降る雪を降る雪を消す湿り田は 津田清子 二人称
降る雪淋しがつて白粉をとくてのひら 人間を彫る 大橋裸木
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女 夕螢
限り無く降る雪何をもたらすや 西東三鬼
雪や降る雪や母胎にあるごとし 松山足羽
雪明りあり降る雪の見ゆるほど 汀子
飛ぶ雪も降る雪に和し暮れにけり 殿村菟絲子 『牡丹』
饒舌に吹雪き寡黙に降る雪よ 稲畑汀子 汀子第二句集
じやじや馬を飼ひ馴らすかに雪激し 柴田奈美
夜廻りの老の背を追ひ雪はげし 岡田日郎
懺悔(こひさん)に雪はげしくて浄めらる 筑紫磐井 婆伽梵
木の芽打つて雪はげし句々抹殺す 渡辺水巴 白日
熊笹原音絶えてより雪はげし 岡田日郎
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
絶壁にはりつく海鵜雪はげし 新谷氷照
鏡中に飛ぶ雪激し髪染むる 加藤 紅
関ヶ原ここを先途と雪はげし 下村梅子
雪はげしいのち惜しめと母の文 宮下翠舟
雪はげしかり劉生のかぶらの絵 中田剛 竟日
雪はげし夫の手のほか知らず死す 橋本多佳子
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子(1899-1963)
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 橋本多佳子(1899-1963)
雪はげし松ぼつくりの見えながら 岸本尚毅 舜
雪はげし灯して碧きなまこ切る 吉野義子
雪はげし生まるる言葉宙に消え 仙田洋子 橋のあなたに
雪はげし白樺一樹一樹消す 岡田日郎
雪はげし縛されざるはむしろわびし 吉野義子
雪はげし血汐のごとき茨の実 古賀まり子 緑の野以後
雪はげし遠のものみな亡びけり 野澤節子 黄 瀬
雪はげし闇を横切る北キツネ 松田満江
雪はげし雪の脈博灯をつつむ 石原八束
雪はげし鶫がくだる葡萄棚 石原舟月
雪激しピアノ売りたる夜のごとし 櫂未知子 蒙古斑以後
雪激し何の夾雑物もなし 津田清子 礼 拝
雪激し見知らぬ人と言交はし 佐野美智
雪激し鼓はげしく打たれゐて 文挟夫佐恵 雨 月
飯の前死の前音なく雪はげし 小檜山繁子
おぼろ夜の雪のふる夜にさも似たる 久保田万太郎 草の丈
こんもりと栂や旦暮を雪の降る 村越化石 山國抄
さ迷ひて果は降りゆく雪の降る 小池文子 巴里蕭条
しらぬまにつもりし雪のふかさかな 久保田万太郎 流寓抄
どんど焚くどんどと雪の降りにけり 一茶
どんど焼きどんどと雪の降りにけり 一茶
ないそでをなをふる雪の歳暮かな 井上井月
なほも雪の降る市街戦にならう雪降る 秋山秋紅蓼
なまはげの出る夜を雪の降りしぶる 高澤良一 ももすずめ
はつ雪の降出す此や昼時分 傘 下
ふる雪にひとりふたりとひと逝きぬ 中尾白雨 中尾白雨句集
ふる雪にみなちがふことおもひゐる 中尾白雨 中尾白雨句集
ふる雪に巴をつくる浮寝鳥 内藤吐天 鳴海抄
ふる雪に手をのべて時とどまらず 野見山朱鳥
ふる雪に木々の撓ひや白吉野 宇佐美魚目 秋収冬蔵
ふる雪に洗濯バサミなげつけり 皆吉司
ふる雪に犬も退屈狩の宿 三好雷風
ふる雪に駅はしりぞきはじむなり 藤後左右
ふる雪のかりそめならず年用意 久保田万太郎 流寓抄以後
ふる雪のゆるやかにして松の幹 橋本鶏二 年輪
ふる雪の水の明るさ山葵沢 細見綾子
ふる雪の音のみとなるわさび沢 細見綾子 黄 炎
ふる雪やすでに深雪の一伽藍 橋本鶏二
ふる雪や機械しづかに鐵を切る 橋本鶏二
ふる雪を消しつつ鱒の渦ながる 沢田緑生
ふる雪を見てをりこの曲何の曲 西村和子 夏帽子
まなうらの緋を積む雪の降りにけり 斎藤玄
みちのくにさらりと雪の降りし頃 成瀬正とし 星月夜
ゆくところ雪のふるくに親鸞忌 西本一都 景色
りんてん艫、今こそ響け。/うれしくも、/東京版に、雪のふりいづ。 土岐善麿
バザールヘ行きましよ雪の降る前に 筑紫磐井 花鳥諷詠
二十日忌は雪の降るさへなつかしき 大森桐明
井戸深く雪のふりこむ日暮かな 増田龍雨 龍雨句集
人体に空地のありて雪の降る 鳴戸奈菜
仲秋淡海に遊ぶ 水の月やよ望にふる雪歟とぞ 蕪村遺稿 秋
初髪を結ひをり雪のふりてをり 久保田万太郎 草の丈
前略と激しく雪の降りはじむ 嵩 文彦
古郷はかすんで雪の降りにけり 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
大仏にひたすら雪の降る日かな 飯田龍太 今昔
姉と雪の降る日の貝あはせ 筑紫磐井 野干
学問の静かに雪の降るは好き 中田みづほ
山焼きのすみたる村に雪の降る 河原 比佐於
彳めば猶ふる雪の夜みちかな 几菫
急がねばならぬ暮雪の降りやうや 高澤良一 随笑
捨てられし花の朧へ雪の降る 金箱戈止夫
新しき雪の降る夜の雪女 後藤夜半 底紅
林あかるくさらさらと雪のふるけはひ シヤツと雑草 栗林一石路
桐畑それも景色や雪のふる 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水雪の降る日暮まで札所道 吉田紫乃
氷結の上上雪の降り積もる 山口誓子 青女
沢庵の若衆せゝりや雪のふみ 服部嵐雪
河豚喰て其の後雪の降りにけり 上島鬼貫
湖に隈なく雪の降ることよ 上野泰 佐介
濡れ土に届かぬ雪の降ってをり 嶋田摩耶子
父と子のあはひに雪の降り積る 福田甲子雄
生き生きて妻と二人の老いたらば帰らむ英彦山(えいげん)よ雪の降る見ゆ 伊藤保
真鱈なお涙眼雪のふりはじむ 諸角せつ子
稚き日の雪の降れゝば雪を食べ 篠原鳳作 海の旅
窓帷の重くて雪のふる夜なり 桂信子 黄 炎
節分をみかけて雪のふりにけり 久保田万太郎 草の丈
紅梅に雪のふる日や茶のけいこ 永井荷風
綿雪の降る一つ空隅に目離れず 安斎櫻[カイ]子
緑竹の猗々たり霏々と雪の降る 夏目漱石 漱石俳句集
縄を綯ふ檜山に雪の降る限り 小原渉
芝生との別れと思ふ雪の降る 嶋田摩耶子
芹洗ふ井水に雪の降りそそぐ 石川桂郎 四温
見てとほる雪のふる駅ふらぬ駅 藤後左右
贄の熊昇天雪の降り止まず 柴田黒猿
輪飾や鏡中雪の降りしきる 龍雨
近き友遠き友雪の降る聖夜 村越化石 山國抄
近山に彼岸の雪のふりにけり 石原舟月 山鵲
遠き灯は兎眼雪の降りに降る 大木あまり 山の夢
遠山に雪のふたたび小鮎波 鷲谷七菜子 花寂び 以後
酒蔵の窓あるかぎり雪の降る 茂里正治
鉛筆に雪の降り出す匂いあり 高野ムツオ
限りなく虚しき雪の降るばかり 福田蓼汀 秋風挽歌
隣國は雪の降りつむ木のかたち 宇多喜代子
雁行や初秋の雪の降る地平 対馬康子 吾亦紅
雪のふることのこんなになつかしく 行方克巳
雪のふるさみしさよけれ善光寺 西本一都 景色
雪のふるゆめよりさめし朝寝かな 久保田万太郎 流寓抄以後
雪のふる空の高処に年木樵 宇佐美魚目 秋収冬蔵
雪の上に二月の雨の降りにけり 石原舟月
雪の降るまへの桜の木にもたれ 長谷川双魚 『ひとつとや』
雪の降る佐渡ヶ島より初電話 北澤瑞史
雪の降る夜握ればあつき炭火かな 上島鬼貫
雪の降る山を見てゐる桃の花 福田甲子雄
雪の降る彼の世は赤く燃えてをり 石原八束
雪の降る町といふ唄ありし忘れたり 安住敦(1907-88)
雪の降る華麗に夜の来てをりし 嶋田一歩
雪の降る遠き世赤く燃えてをり 石原八束(1919-98)
雪の降る闇に無数の目犇く 鈴木貞雄
雪をんな来さうな雪の降りといふ 根元敬二
雪吊の力の限り雪の降る 倉田紘文
雪国の子に雪の降る七五三 小川里風
雪山に雪の降り居る夕かな 前田普羅(1884-1954)
霊山を仰ぐ夜の果て雪の降る 飯田蛇笏 椿花集
魚眠るふる雪のかげ背にかさね 金尾梅の門
鰒喰うて其の後雪の降りにけり 鬼貫
鰤敷や雪の降り込む舟焚火 桑田青虎
鴬につもらぬ雪のふりにけり 久保田万太郎 流寓抄
鹿を曳く雪の上なり雪の降る 文挟夫佐恵 黄 瀬




けらけらと笑ヘり雪の積りをり 石原八束 黒凍みの道
さみしさの極みの雪の積るなり 石飛如翠
ひと遠く雪降りつもる雪の上 柴田白葉女 雨 月
まだもののかたちに雪の積もりをり 片山由美子
初午や狐のわたる雪の積 滝井孝作 浮寝鳥
弥太郎忌今宵は雪の積れかし 上村占魚 鮎
新樹匂ひ霊車は雪の積れるなり 渡邊水巴 富士
眉の上にも降りつもる雪父と母 磯貝碧蹄館
舞ふ雪の積むにはあらず昼の鐘 上村占魚 鮎
草木なき頂上雪の積むままに 津田清子 二人称
門松や静かに雪の積る音 墨水句集 梅澤墨水
降りつもる雪に火口もただの穴 品川鈴子
*かんじきをはいて一歩や雪の上 高浜虚子
かりがねの撓ひしなひて雪の上 飴山實 少長集
かんじきをはいて一歩や雪の上 高浜虚子
したゝかに炭こぼしけり雪の上 銀獅
しら~と今年になりぬ雪の上 伊藤松宇
たびらこや洗ひあげおく雪の上 吉田冬葉
ひと遠く雪降りつもる雪の上 柴田白葉女 雨 月
厄落す火の粉とび散る雪の上 福田甲子雄
吹落す杉の枯葉や雪の上 比叡 野村泊月
囀りや宿雪の上を水流れ 八束
墓守の火を焚きつぐも雪の上 岸田稚魚 筍流し
夜もすがら満月照るや雪の上 相馬遷子 山国
夥かに炭こぼしけり雪の上 銀獅
山吹や根雪の上を飛騨の径 前田普羅
左義長や降つゞきたる雪の上 鞭石
左義長や雪国にして雪の上 東洋城
市に竝ぶ泥葱三把雪の上 羽部洞然
御神楽やおきを弘げる雪の上 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
手水湯や流しそこなふ雪の上 膳所-弩鳥 俳諧撰集「有磯海」
数読んで鰤投げ出すや雪の上 萩男
日光みちて樹影はげしき雪の上 渡邊水巴 富士
明星は乞食も見るか雪の上 服部嵐雪
木の影の一語を置ける雪の上 大串章 山童記
柿の枝の影につまづく雪の上 石川桂郎 含羞
橇で着く初刷折るや雪の上 久米正雄 返り花
死後もまたあかあかと火を雪の上 有馬朗人 知命
水仙の折れ伏せる葉や雪の上 虚子選躑躅句集 岩木躑躅、村上磯次郎編
水仙の香やこぼれても雪の上 千代女
炭竈や雪の上行夕煙り 松岡青蘿
煤掃に砧すさまじ雪の上 亡士-嵐蘭 極 月 月別句集「韻塞」
煤竹の投げ出されある雪の上 大橋宵火
父亡くて母かこみ立つ雪の上 細川加賀 『傷痕』
空澄みてまんさく咲くや雪の上 相馬遷子 雪嶺
笹一葉ちりとなりけり雪の上 土芳 俳諧撰集「有磯海」
糶り残る鱈ひきずつて雪の上 石川文子
美しき日和になりぬ雪の上 太祇
能舞台普請の木屑雪の上 藺草慶子
菊月や外山は雪の上日和 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
落葉松の錆針敷けり雪の上 福永耕二
葬の雪の上誰が転びしや 岸田稚魚
葱抜くや土ぱらぱらと雪の上 南 うみを
金蘭のふくろおとせよ雪の上 立花北枝
雪の上*あさざこぼれてゐたりけり 関戸靖子
雪の上から踏む牡蠣殻や他郷ならず 木村蕪城 寒泉
雪の上ぽつたり来たり鶯が 茅舎
雪の上まづ第一歩印しけり 鈴木貞雄
雪の上まろびて熱き女の身 井上雪
雪の上わが影跼み糧を食ふ 相馬遷子 山国
雪の上をころげどんどの火屑かな 岸田稚魚 『萩供養』
雪の上を死がかがやきて通りけり((二月二十五日歌人斎藤茂吉逝く)) 石原八束 『秋風琴』
雪の上を燃えつつ走る吉書かな 白文地
雪の上ジルベスターの仮面捨つ 山口青邨
雪の上光りの贅のたよりなし 松澤昭 神立
雪の上日が交叉して四月くる 永田耕一郎 雪明
雪の上桃花の色の霞かな 松瀬青々
雪の上火屑かたまり吹かれをり 鈴木貞雄
雪の上芥捨て暮れ早くせり 岸田稚魚 筍流し
雪の上鱈ぶちまけて売られけり 松本 旭
雪の上鶏あつまりてくらくなる 成田千空 地霊
雪を掻き落して白し雪の上 右城暮石 声と声
青天やなほ舞ふ雪の雪の上 臼田亞浪 定本亜浪句集
餅搗きし臼のほてりや雪の上 大串章 山童記
香をとめぬまで蓬枯れ雪の上 藤岡筑邨
鳴き通る雪間雪の上猫の恋 皆吉爽雨 泉声
麦のためまづ風ゆらぐ雪の上 立花北枝
うつくしき日和となりぬ雪のうへ 炭 太祇
冬紅葉散りて数葉雪のうへ 高澤良一 寒暑
炭竃や雪のうへ行く夕けぶり 青蘿
真昼間の山雪のうへ蜘蛛あるく 高澤良一 燕音
鶯の畳さはりや雪のうへ 立花北枝
おぼろ夜の雪ふる夜にさも似たり 久保田万太郎
おらが世は臼の谺ぞ夜の雪 一茶
くらがりに変貌を遂ぐ夜の雪 高澤良一 随笑
こゝろ皆竹にふすなる夜の雪 松岡青蘿
さくさくと藁喰ふ馬や夜の雪 大江丸
たまさかに浪の音して夜の雪なり 北原白秋 竹林清興
ともしびを見れば風あり夜の雪 蓼太
ともし火を見れば風あり夜の雪 蓼太
ひきすてし車のかずよ夜の雪 加舎白雄
みとりするその夜の雪は積りけり 平井照敏 天上大風
ポストから玩具出さうな夜の雪 渡邊水巴
乞食の事いふて寝る夜の雪 李由 霜 月 月別句集「韻塞」
二十日夜の雪残りたる竹籬 浦田一代
今日の塵焼くその上に夜の雪 阿部みどり女
何の工事場土管に夜の雪かかり 古沢太穂 古沢太穂句集
修行者に此杖やらん夜の雪 むめ
俳居士の高き笑や夜の雪 会津八一
六条の豆腐の沙汰や夜の雪 京-吾仲 霜 月 月別句集「韻塞」
凧の果てはチラチラ夜の雪 阿部みどり女
初午や思ひがけなき夜の雪 高橋淡路女 梶の葉
別荘や膳のかよひも夜の雪 松岡青蘿
刻かけて蟹食ふ夜の雪密に 川島万千代
厩の灯道にさしゐる夜の雪 木村蕪城 一位
夜の雪だまつて通る人もあり 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
夜の雪となりたるらしきしじまなり 渡部マサ
夜の雪となる焼跡を通りすぎ 長谷川かな女 花寂び
夜の雪に御嶽の貂が木を登る 小山しげる
夜の雪に聴き耳をたて老コリー 鈴木貞雄
夜の雪に誰かホテルの窓あけし 横山白虹
夜の雪に駅の時計の機械透け 田川飛旅子 花文字
夜の雪のひとひらうけて嗅ぐあそび 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夜の雪のまこと静かや縄をなふ 水野六江
夜の雪のやみし風音立ちにけり 赤城さかえ
夜の雪やさら~と戸にふれもして 法師句集 佐久間法師
夜の雪や受験の吾子が居睡りて 相馬遷子 山国
夜の雪をとこのおもさかと思ふ 保坂敏子
夜の雪公衆電話開けつぱなし 八木三日女 紅 茸
夜の雪大きく照らし出されたる 岸本尚毅 鶏頭
夜の雪屏風一枚ものおもふ 中尾寿美子
夜の雪晴れて薮木の光りかな 浪化 (1671-1703)
夜の雪耶蘇の言葉のごとく降る 藤岡筑邨
夜の雪遮二無二海の中へ降る 山口誓子
夜の雪降りつつ下水流れけり 榎本冬一郎 眼光
夜の雪雪の音して降りはじむ 右城暮石 上下
妻と病めば鎮魂歌めく夜の雪解 小林康治 玄霜
嫁く人のほかはささめく夜の雪 鷲谷七菜子 黄 炎
子の部屋に子がゐる音の夜の雪 細川加賀 生身魂
孤独なるブロンズに夜の雪積り 山本歩禅
寝ならぶやしなのゝ山も夜の雪 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
射的屋の人形倒る夜の雪 鈴木真砂女 夕螢
小便の数もつもるや夜の雪 貞室
屋根白くなりて夜の雪降りやまず 右城暮石 上下
山にふる夜の雪片に満つる軒 橋本鶏二
川黒うして舟に声あり夜の雪 古白遺稿 藤野古白
師の面ざし父と重なる夜の雪 毛塚静枝
御車を大路に立てゝ夜の雪 古白遺稿 藤野古白
我が子なら供にはやらじ夜の雪 とめ 俳諧撰集玉藻集
戦争が戻つてきたのか夜の雪 鈴木六林男 桜島
戸まどひや呉竹くゞる夜の雪 西望 選集「板東太郎」
手探りに香炉を擁す夜の雪 古白遺稿 藤野古白
昼よりも明るき夜の雪を掻く 北 光星
更けゆくや雨降り変はる夜の雪 碧童 (昭和十二年二月一日碧師病歿、通夜)
月の夜の雪の立山まのあたり 中村汀女
月光とともにただよふ午夜の雪 飯田蛇笏 雪峡
林中やきちきちと散る夜の雪 岸田稚魚 筍流し
梅白し古墳に夜の雪来つつ 神尾久美子 掌
森の奥の夜の雪のおくの真紅のまんじ 高柳重信
椅子回し見る少年に夜の雪 対馬康子 吾亦紅
樽さげて酒屋おこさん夜の雪 二柳
漆にはうるしを重ね夜の雪 管 タメ
灯の動き来るは道なり夜の雪 高橋笛美
炉がなくて炉話亡ぶ夜の雪 八牧美喜子
熊突の夫婦帰らず夜の雪 名倉梧月
爆音またもペンがりがりと夜の雪 栗林一石路
父の死の夜の雪と思ふ肩に頭に 小林康治 四季貧窮
牛飼が句を見せに来る夜の雪 細川加賀 生身魂
牡蠣船や夜の雪堆く覚めてあり 山口誓子
物書きて鴨にかへけり夜の雪 笹山 菰堂 五車反古
窓あけて眺めゐる間の夜の雪 波多野爽波 鋪道の花
窓の灯やわが家うれしき夜の雪 永井荷風
笠着たる人によく降る夜の雪 立花北枝
自転車に夜の雪冒す誰がため 相馬遷子 山国
舞姫のおもかげいだき夜の雪ヘ 山本歩禅
蛎船の障子細目や夜の雪 孤軒句集 三宅孤軒
豆撒きの夜の雪やむや家路急き 石川桂郎 含羞
質おいて番傘買ふや夜の雪 泉鏡花
身を律す夜の雪琴は袋の中 河野多希女 両手は湖
酒のめばいとど寝られね夜の雪 芭蕉
酔ひ帰る教師に夜の雪だるま 新田祐久
閉し固む戸に訪れて夜の雪 石塚友二 光塵
陣太鼓ひそかに打つは夜の雪 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
難波津や橋めぐりして夜の雪 青蘿
霊膳の湯気の細さや夜の雪 渡辺水巴 白日
静かさや大つごもりの夜の雪 吉野左衛門
顔につく夜の雪村に岩つきだし 大井雅人 龍岡村
魂を落して睡る夜の雪 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
鹿子ゆふ音きこゆなり夜の雪 広瀬惟然
わが佇てば降りまさりつつ窓の雪 波多野爽波 鋪道の花
下窓の雪が明りのばくち哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
丸窓の雪に灯ともる実南天 九郎
切張りの隙は有けり窓の雪 調鶴 選集「板東太郎」
北窓の雪さへあかり障子かな 重頼
子の声の窓の雪しきりなり白き 原田種茅 径
空襲の夜明けて窓の雪あかり 京極杞陽 くくたち下巻
窓の灯やわが家うれしき夜の雪 永井荷風
窓の雪日の暮れかねてありにけり 高橋淡路女 梶の葉
絹糸の光沢しめやかに窓の雪 瀧井孝作
繭玉にはなやぎ降れり窓の雪 星野立子
蝋燭のうすき匂ひや窓の雪 素牛 俳諧撰集「藤の実」
降り止まぬ無灯の窓の雪青し 阿部みどり女
飾り臼南の窓の雪明り 村上一央
くろぐろと雪片ひと日空埋む 相馬遷子 山國
ただならぬ静けさは雪片の大 菅裸馬
つまづけり人の暗さの雪片に 栗林千津
三椏の花雪片の飛べる中 山口青邨
中空に見し雪片を身にまとふ 原裕 葦牙
二月堂昏れ綿虫か雪片か 長谷川史郊
加奈陀の雪片ひらりとクリスマスカード 石塚友二
去年今年雪夜雪片かさなり降る 斉藤美規
囚徒ゆき雪片は地にくだけけり 飯田蛇笏 雪峡
大いなる雪片ふはと枝をたつ 橋本鶏二
妻寂し髪の雪片消ゆるより 齋藤玄 『玄』
宙にのみありて華麗なる雪片 鷲谷七菜子 銃身
山にふる夜の雪片に満つる軒 橋本鶏二
崖赭し雪片はひた飛びゆくも 藤田湘子 途上
巨島消えし天雪片を掌に数ふ 古館曹人
日の中に雪片とべるだるま市 門伝史会
檜山より雪片馬の強咀嚼 宇佐美魚目 秋収冬蔵
浮き沈む雪片石切場の火花 西東三鬼
消え難き雪片をつけ毛つぶ貝 八木林之介 青霞集
温泉は遠し肩の雪片すでに凍り 大島民郎
湖村音なし雪片かぎりなき夜空 鷲谷七菜子 雨 月
湯煙を吸ひ雪片を散らす空 成瀬正とし 星月夜
病者見よ熔岩が雪片ゆたかにす 萩原麦草 麦嵐
百万片中一雪片の落下つづく 加藤秋邨 吹越
目刺やく一雪片にとびこまれ 下村槐太 天涯
石蕗の葉に雪片を見る霙かな 高浜虚子
磁気帯びて春の雪片髪につく 渋谷道
穢土と呼ぶこの世の冬ぞ仰ぐとき無数の雪片天より下る 大下一真
空にもどる雪片もあり工事の灯 桜井博道 海上
絶巓へ降る絶体の雪片よ 坂戸淳夫
罠に雪片森のおきてとして速し 対馬康子 愛国
老人と思ひ雪片とびつけり 加倉井秋を
胎動や午後の雪片太りつつ 飴山實 『おりいぶ』
花の中雪片こほる椿かな 中田剛 珠樹
虹くぐり舞ふ雪片のかぎりなし 岡田日郎
通る雲雪片こぼす猫柳 遠藤梧逸
雪片が舞うくらがりの石の椅子 河合凱夫 飛礫
雪片が雪のいのちをきらめかす 三好潤子
雪片が髪を濡らすよ月給日 石橋辰之助
雪片となるまではただ鈍色に 猪俣千代子
雪片と耶蘇名ルカとを身に着けし 静塔
雪片にふれ雪片のこはれけり 夏井いつき
雪片に飛びつく波の上りけり 西村和子 窓
雪片のかかるよ赤子家に迎ふ 太田土男
雪片のつれ立ちてくる深雪かな 高野素十
雪片のはげしく焦土夜に入る 飯田蛇笏 春蘭
雪片の大きさ今のきざやかさ 細見綾子 花 季
雪片の平らにのりし寒牡丹 吉野義子
雪片の消ぬべくあそぶ辛夷の芽 堀口星眠 営巣期
雪片の眼より離れず埴輪馬 河野多希女 こころの鷹
雪片の瞼に降りてきたるあり 中田剛 珠樹
雪片の花びらとなる子の受賞 都筑智子
雪片の裏返り紺ばかり降る 殿村菟絲子 『牡丹』
雪片の負けず嫌ひが先争ふ 三好潤子
雪片の高きより地に殺到す 山口誓子 激浪
雪片は誰のてのひら弟よ 栗林千津
雪片も旅いそぐかに翁の忌 堀口星眠 青葉木菟
雪片やこぼれ餌にきてこぼれ海猫 吉田紫乃
雪片や呪符のごとくにこころ占む 林田紀音夫
雪片をすいと引き寄せ一枯枝 高澤良一 鳩信
雪片を児は児の眼して見てゐたる 星野麥丘人
雪片を星が降らしぬクリスマス 相馬遷子 雪嶺
鶴のこゑ身に雪片の消ゆる間も 大岳水一路
鶴の檻雪片月をかすかにす 飯田蛇笏 春蘭
黒人が眉に雪片つけて来る 田川飛旅子 花文字
えんぶりの雪照り道を影の列 加藤憲曠
三椏の花や雪照る夕日受け 及川貞 夕焼
安達太良は雪照りにけり吹流し 細川加賀 生身魂
幻のごと雪照らふ天塩岳 古賀まり子 緑の野以後
片頬に雪照る雛を納めけり 渡邊千枝子
牛羊に昨日の雪照る大試験 木村蕪城 寒泉
萱ふかく雪照る雲雀きこえくる 金尾梅の門 古志の歌
葛城山の肩に雪照る皇子の陵(河内日本武尊白鳥陵) 角川源義 『神々の宴』
見えてゐる菜圃の妻を雪照らす 吉武月二郎句集
雪照らして光の渦の日が渡る 渡辺水巴 白日
雪照りて山上の日はゆらぎをり 渡邊水巴 富士
雪照りに馬打たるること忘れ 松澤昭 父ら
雪照りに髯うつうつと歩くべく 岸田稚魚 筍流し
雪照りのはげしさ橇が一つ来し 佐野良太 樫
雪照るや骰も人も面つつむ 古舘曹人 能登の蛙
あまえびのぬめりを舌に雪夜かな 吉野義子
いねし子の朱唇にうるむ雪夜かな 渡邊水巴 富士
いぶりがつこ雪夜に飲めと届きけり 茂里正治
ごきぶりの何と大きく舞ふ雪夜 殿村莵絲子 花寂び 以後
ねむりいて耳が孤独よ雪夜の父 寺田京子 日の鷹
ふと覚めし雪夜一生見えにけり 村越化石
ふるさとの雪夜のいまも匂ふ水 千代田葛彦 旅人木
スタンドの燈は何さそふ雪夜なる 渡辺水巴 白日
フリージヤ雪夜に長き妻の祈り 金箱戈止夫
一糸整然雪夜夢まで香をきく 加藤知世子 花寂び
並び寐の子と手つないで雪夜かな 渡辺水巴 白日
亡き人の句に逢ひ閉づる雪夜の書 野澤節子 黄 瀬
去年今年雪夜雪片かさなり降る 斉藤美規
墓の上雪夜の潮流れをり 岸田稚魚 『負け犬』
夢ありし雪夜の離被架庇護の中 赤松[けい]子 白毫
夫遠しわが量にふゆ雪夜の湯 吉野義子
妻の裾跨ぐ雪夜となりしかな 小林康治
子より幼く雪夜寝息に加はりぬ 猪俣千代子 堆 朱
子ら留守の雪夜晩年のごとく更く 茂里正治
寝仕度に触れて鈴鳴る雪夜かな 村越化石
少年美し雪夜の火事に昂りて 中村苑子
幕開いてひとり紅茶の雪夜かな 渡邊水巴 富士
文業の竹林灯す雪夜にて 清水基吉 寒蕭々
昔雪夜のラムプのやうなちひさな恋 鷹女
甕に入れ雪夜の水の自在奪ふ 宮津昭彦
甕の水雪夜は言葉蔵しをり 能村登四郎(1911-2002)
甘栗をむけばうれしき雪夜かな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
生けるものは重たさ持てり雪夜にて 加藤秋邨 まぼろしの鹿
畦の雪夜も解くるなり初蛙 藤原如水
畳の目粗し雪夜をかへりきて 桂信子 黄 炎
発心の言葉雪夜の方寸に 田川飛旅子
登り窯の洩れ火のはねる雪夜かな 石原八束 藍微塵
祝祭の雪夜にぎやかとりけもの 山田みづえ
精霊の凍みる雪夜を牡丹照る 渡邊水巴 富士
紙幣とは雪夜香を嗅ぐためのもの 林翔 和紙
紙風船越の雪夜に妻がつく 肥田埜勝美
繭紡ぐごとく雪夜を重ねたる 金箱戈止夫
覚めてひとり盗汗ぬぐふや雪夜風 小林康治 四季貧窮
過去帳に姑の名記す雪夜かな 影島智子
酔ふほどに行火のあつき雪夜かな 小杉余子
雪の風瀬々になごんで雪夜かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪夜なる足はるかにし睡るかな 村越化石 山國抄
雪夜にてことばより肌やはらかし 森澄雄
雪夜にて妙にも耳の鳴りゐたる 馬場移公子
雪夜の瀬こころを遣れば奏でけり 馬場移公子
雪夜ふるさと真白き曲り蒼き曲り 加藤知世子 花寂び
雪夜一路わが車追ふ車なく 野澤節子 牡 丹
雪夜子にかぶすマフラー裏につぎ 古沢太穂 古沢太穂句集
雪夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び 加藤秋邨 起伏
雪夜寝て四囲を海とも野山とも 大串章
雪夜思ふ花咲蟹の濃き脂肪 小檜山繁子
雪夜来し髪のしめりの愛しけれ 大野林火
雪夜消す灯の残像の緋から青 千代田葛彦 旅人木
雪夜眠る痛む喉など痛ましめ 所山花
首出して夫婦雪夜を眠りをり 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
馬が眼をひらいてゐたり雪夜にて 加藤楸邨
鼻かみて雪夜を更に貧しうす 原コウ子
あたたかき雪がふるふる兎の目 上田五千石(1933-97)
いちまいの鋸置けば雪がふる 上田五千石(1933-97)
むまさうな雪がふうはりふはり哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
伊那の吊り柿食うて戻れば雪がふる 林原耒井 蜩
山頭火永遠の留守雪がふる 夏石番矢
山鳩よみればまはりに雪がふる 高屋窓秋(1910-99)
林ゆたかに火を焚いてをれば雪がふる シヤツと雑草 栗林一石路
柳葉魚漁るアイヌ舟歌雪がふる 野見山朱鳥
灯をめざし白蛾のやうな雪がふる 佐藤公子
菊枯らす雪がふりたる夜の富士 萩原麦草 麦嵐
雪がふかくなりそうな、財布の紐くびにかけゆく 伊藤雪男
雪がふるふる雪見てをれば 種田山頭火 草木塔
雪がふる障子に顔をうづめけり 萩原麦草 麦嵐
かぢの火も殊さらにこそ笠の雪 服部嵐雪
ぽつかりとわれて落ちけり笠の雪 伊勢-芦本 俳諧撰集「有磯海」
何を釣る沖の小舟ぞ笠の雪 黒柳召波 春泥句集
市人にいで是売らむ笠の雪 松尾芭蕉
我が雪とおもへばかろし笠の雪 其角
笠の雪いくび(猪首)になりて惜しまるる 卯七 俳諧撰集「有磯海」
白酒やどんどこ降つて昼の雪 大峯あきら
米売と交す言葉や昼の雪 藤田湘子 途上
腸(はらわた)が古びん昼の雪ちらちら 高澤良一 随笑
見上げたる顔に当りて昼の雪 高澤良一 随笑
魚食うて口腥(なまぐさ)し昼の雪 成美

以上
by 575fudemakase | 2015-01-23 00:54 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fudemaka57.exblog.jp/tb/22997379
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

カテゴリ

全体
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
未分類

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2011年 04月

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

検索

タグ

最新の記事

実朝忌 の忌日
at 2017-04-22 09:12
茂吉忌 の俳句
at 2017-04-22 09:09
義仲忌 の俳句
at 2017-04-22 09:07
えり挿す の俳句
at 2017-04-22 09:04
かまくら の俳句
at 2017-04-22 09:01

外部リンク

記事ランキング