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曼珠沙華

曼珠沙華


例句を挙げる。

あかつきの北風とほる曼珠沙華 飯野燦雨
あしもとに日のかがやける曼珠沙華 夏井いつき
あだし野や首の重たき曼珠沙華 殿村莵絲子 牡 丹
あとさきを人は旅せり曼珠沙華 とよなが水木
あばかれし墳の中まで曼珠沙華 伊藤 通明
ありふれし明日来るならひ曼珠沙華 斎藤玄 雁道
あるほどの茎たち竝び曼珠沙華 高橋淡路女 梶の葉
ある時の女のこころ曼珠沙華 本岡 歌子
いちにちを水に使いし曼珠沙華 久保純夫 水渉記
いつかどこかで曼珠沙華よりすがれむか 菖蒲あや
いつからか曼珠沙華など抱かぬのは 五島エミ
いつせいに散るときなきか曼珠沙華 斎藤玄 雁道
いまは野も杳けくなりぬ曼珠沙華 篠田悌二郎 風雪前
うたたねや野に一本の曼珠沙華 島みえ
うつりきてお彼岸花の花ざかり 種田山頭火 草木塔
おづおづと出て曼珠沙華野を走る 原裕 青垣
おのおのの紅つらならず曼珠沙華 齋藤玄 『雁道』
おやみなき雨の畷の曼珠沙華 山本歩禅
お前さん どこへ行くんじや 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
かけこみ寺の坂を燃やして曼珠沙華 井上淑子
かざおとをかすかにつつみ彼岸花 松村蒼石 春霰
かたまりて淋しくはなし曼珠沙華 椎橋清翠
きこゆるは瀧の音とや曼珠沙華 久保田万太郎 草の丈
こころとは毬のようなり曼珠沙華 金子皆子
ここ安房の海へ火走れ曼珠沙華 佐川広治
この年をあそび尽くして曼珠沙華 黒田杏子 一木一草
この径は罠かも知れず曼珠沙華 植村通草
この畦は仏の通る曼珠沙華 宮本澄
こまごまと骨がくづれて曼珠沙華 飯野燦雨
こんこんと水も土より曼珠沙華 百合山羽公 故園
こゝから先は振向かぬ亡母曼珠沙華 磯貝碧蹄館 握手
さらに一歩傾(かぶ)けば捨身彼岸花 竹中宏 饕餮
ざりがにの劫つめたきは曼珠沙華 松村蒼石 春霰
すうと出て曼珠沙華の蕾竹の根に 北原白秋
すこしだけこの世華やぐ曼珠沙華 後藤洋
すでに旅始まつてをり曼珠沙華 加藤瑠璃子
すめらぎのくらきところに曼珠沙華 久保 純夫
そのひとの出でたる他は曼珠沙華(伊賀上野) 佐々木六戈 百韻反故 初學
そびらにも曼珠沙華ありこころ楽し 内藤吐天 鳴海抄
たがへずに曼珠沙華咲き草の庵 後藤夜半 底紅
たそがれは微熱の籠る曼珠沙華 都筑智子
ただ立てる緑の茎や曼珠沙華 岩田由美
たはやすく世の終りいふ曼珠沙華 林翔 和紙
たふれざる秋濤はなし曼珠沙華 佐々木有風
ためらはでゆくさきざきの曼珠沙華 松村蒼石 雁
たをやなる阿修羅の六臂曼珠沙華 文挟夫佐恵 遠い橋
だしぬけに咲かねばならぬ曼珠沙華 後藤夜半 底紅
ちらほらとありどつとあり曼珠沙華 山本多河史
つきぬけて天上の紺曼珠沙華 山口誓子(1901-94)
づかづかと土地買の踏む曼珠沙華 佐野美智
としごと見て今年無惨や曼珠沙華 松村蒼石
とどまれば我も素足の曼珠沙華 あざ蓉子(1947-)
とび火して空へつづけり曼珠沙華 今瀬剛一
とゞまれば蹠脈摶つ曼珠沙華 馬場移公子
どの川も寂しい根を持ち曼珠沙華 神矢みさ
なかなか死ねない彼岸花さく 種田山頭火
にんげんの燃えさかる音曼珠沙華 上田繰
はふり人歯あらはに泣くや曼珠沙華 飯田蛇笏
ひとたびは夫帰り来よ曼珠沙華 石田あき子 見舞籠
ひとりきてふたりで帰る曼珠沙華 矢島渚男
ひとり往けひとりかなしめ曼珠沙華 黒田杏子
ひらくまで曼珠沙華群ること知られず 吉野義子
ふるさとに何残し来ぬ曼珠沙華 村越化石
ふるさとのどの畦行かむ曼珠沙華 細見綾子
ふるへあふ音叉のごとく曼珠沙華 夏井いつき
ぽき~と折れば野が哭く曼珠沙華 萩原麦草 麦嵐
またぐとき風より赤く曼珠沙華 宇多喜代子
まつすぐに岐阜道の曼珠沙華赤し 冬の土宮林菫哉
まへがきもあとがきもなし曼珠沙華 黛まどか
みづうみはひかりに倦まず曼珠沙華 神尾久美子 桐の木
もぐらみち塞ぎといふ彼岸花をゆく 山崎昭登
もの乞ひの唇赤し曼珠沙華 岩田昌寿 地の塩
ゆき過ぎて振向く花や曼珠沙華 石川桂郎 含羞
よべ天降りたるかや朝の曼珠沙華 稲岡長
わが室に相應はば相應へ曼珠沙華 相生垣瓜人
わが影の中に納めて曼珠沙華 星川木葛子
わが影を及ぼすや初曼珠沙華 波多野爽波 『湯呑』
わが旅にさかりを過ぎし曼珠沙華 山口波津女 良人
わが生は阿修羅に似たり曼珠沙華 角川春樹
わが生死縛す惧れの曼珠沙華 河野南畦 湖の森
わたくしが昏れてしまへば曼珠沙華 柿本多映
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 杉田久女(1890-1946)
われの名に奈落の奈の字曼珠沙華 辻美奈子
オリーブの四五本の間曼珠沙華 佐野まもる 海郷
キヤデイこの麓の農婦曼珠沙華 車谷弘 花野
コンパスが描きちらしたる曼珠沙華 三嶋 隆英
コートの石灰角は濃く溜り曼珠沙華 田川飛旅子
サルトルと会う、彼の顔面や曼珠沙華 橋本夢道 無類の妻
ダム開くや吹きすさぶ白彼岸花 澁谷 道
バス降りて徒歩で十分曼珠沙華 河村玲波
一喝に鴉を翔たす曼珠沙華 横山美代子
一夜にて 火の手のあがる 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
一島を潮の支ふる曼珠沙華 大木あまり 火のいろに
一村の半日吹かれ 曼珠沙華 松本恭子 檸檬の街で
一村を興さんと燃え曼珠沙華 井沢正江 湖の伝説
一茎の紅露につづく曼珠沙華 百合山羽公 寒雁
一面に祖霊一面の曼珠沙華 森尾雀子
一駅も旅に似しかな曼珠沙華 青木千秋
万延元年の血の色に咲き曼珠沙華 伊藤いと子
万蕾のある日ただちに曼珠沙華 大石悦子
並べ置く祖のしやりかうべ曼珠沙華 小原菁々子
九十九里の一天曇り曼珠沙華 加藤楸邨
二上山を兄弟(いろせ)と呼ばむ曼珠沙華 津田清子
二十歳の日と同じ紅曼珠沙華 津田清子 二人称
二花にしてすでにもつるる曼珠沙華 吉野義子
二花にしてともにすがるる曼珠沙華 吉野義子
人の世を少しはずれる曼珠沙華 岸本マチ子
人を泣かせ己れも泣いて曼珠沙華 鈴木真砂女
人刺指の過去帳がある曼珠沙華 仁平勝 花盗人
人麻呂のおもひの丈を曼珠沙華 戸島淳子
今はもう飛びこせぬ溝曼珠沙華 星野明世
今死なば炎の中ならむ曼珠沙華 荒井千佐代
仏より痩せて哀れや曼珠沙華 夏目漱石 明治四十三年
仏心の疑わしくて彼岸花 和田悟朗 法隆寺伝承
仔狐が忘れていつた曼珠沙華 坂本宮尾
他の花は世になきごとし曼珠沙華 橋本美代子
休耕や野の墓聚む曼珠沙華 河野南畦 湖の森
体内に水流れをり曼珠沙華 小島健
何故にあるのか白の曼珠沙華 細見綾子
修羅めきて群れてなびくや曼珠沙華 稲川久見子
倒れたる塀にむらがり曼珠沙華 森田峠 避暑散歩
億年のなかにわれあり曼珠沙華 原田喬
全共闘世代それとも曼珠沙華 櫂未知子 貴族
八束穂は露にみだれて曼珠沙華 西島麥南
出水修羅駆け去り堤曼珠沙華 近藤一鴻
出雲路の雲紡ぐかな曼珠沙華 吉田鴻司
初鵙の一と鳴きに群れ曼珠沙華 原裕 青垣
前の世に来りし家か曼珠沙華 平井照敏 天上大風
勾玉や摩訶曼陀羅華曼珠沙華 鈴木六林男 悪霊
勿来より北は雨なる曼珠沙華 遠藤梧逸
匂ひなく百姓通る曼珠沙華 梶井枯骨
医師の一言われを起たしめ曼珠沙華 阿部みどり女 月下美人
半開の洋傘のすそ曼珠沙華 羽部洞然
原爆の地より噴き出す彼岸花 朝倉和江
双手つく思ひのいまを曼珠沙華 朝倉和江
叡子ふと思ひ出されて曼珠沙華 京極杞陽
叢をうてば早や無し曼珠沙華 高浜虚子
古戦場昼の篝と曼珠沙華 福田蓼汀 秋風挽歌
古道のほろぶる輪廻曼珠沙華 富安風生
吉野の冬著莪の崖曼珠沙華の崖 右城暮石 上下
向ふの家蚊帳干してゐる曼珠沙華 遠藤梧逸
周防長門晴つづけをり曼珠沙華 西村節子
呪咀のごと樹の根を巻けり曼珠沙華 馬場移公子
和服着てこたびは曼珠沙華の旅 星野立子
咲き初めて雲のつめたさ曼珠沙華 野見山朱鳥
咲くほどに闇ただよはす曼珠沙華 池田博子
咲く前の姿幼し曼珠沙華 古賀まり子
唇くつきり描いて言ふまじ曼珠沙華 八牧美喜子
唐突に月日知らせし曼珠沙華 谷口和子
善と悪いづれも一字曼珠沙華 河野南畦 湖の森
喉笛を掻き切つたるか曼珠沙華 齋藤愼爾
嘘つきの舌よく回る曼珠沙華 川井玉枝
四十路さながら雲多き午後曼珠沙華 中村草田男(1901-83)
土をでて茎透とほる曼珠沙華 百合山羽公 寒雁
土堤刈つてより二日目の曼珠沙華 飴山實 少長集
土手の家に田鮒焼き居り曼珠沙華 内田百間
土手道の芝に狭ばまり曼珠沙華 内田百間
土曜日の首掻きにくる曼珠沙華 坪内稔典
土曜日はきつと雨降る曼珠沙華 原田青児
土着してしまふはかなし曼珠沙華 百合山羽公 故園
地の霊の鬨一斉に曼珠沙華 原 柯城
地雷死のキヤパを偲べと 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
坊中にひとつはしりの彼岸花 猪俣千代子 秘 色
堤防は叢のステージ曼珠沙華 南 孝
墓となりぬはしやぎだす曼珠沙華 三橋鷹女
墓のなき国もあらむに曼珠沙華 小倉覚禅
墓原に咲く曼珠沙華誰が「死後の恋」突き抜けて天上は紺 小川太郎
墓掘りにある青天や曼珠沙華 鈴木草二露
壮年過ぎし後ろ真赤や曼珠沙華 伊東昌信
夏ゆけばいつさい棄てよ忘れよといきなり花になる曼珠沙華 今野寿美
夕びとのかげの去りゆく曼珠沙華 松村蒼石 寒鶯抄
夕方は遠くの曼珠沙華が見ゆ 細見綾子 花 季
夜の西湖へ歩く人なり曼珠沙華 金子皆子
夜へつゞく雲の量感曼珠沙華 能村登四郎
大いなる秋の入日や曼珠沙華 月舟俳句集 原月舟
大原や近かる比良と曼珠沙華 尾崎迷堂 孤輪
大江山いく野の路や曼珠沙華 月舟俳句集 原月舟
大秋と謂ひ早世す曼珠沙華 飯田蛇笏
大雨に朱の糸くづさず曼珠沙華 阿部みどり女 月下美人
天つ日や臥牛に炎ゆる曼珠沙華 渡邊水巴 富士
天上に戻らでなんの曼珠沙華 河野南畦 『広場』
天上に殖ゆる血痕曼珠沙華 磯貝碧蹄館
天上へ赤消え去りし曼珠沙華 右城暮石 上下
天界の花地に咲けり曼珠沙華 鈴木稔彦
太陽を厭ふが如し曼珠沙華 阿部みどり女 月下美人
夭折の兄妬ましき曼珠沙華 金森三猪
奪衣婆へ千の直立曼珠沙華 山本秋穂
女の子尿るとかがむ曼珠沙華 遠藤梧逸
女の眼拗ねて見ざりし曼珠沙華 右城暮石 上下
女三人の無言の昏み曼珠沙華 野澤節子 花 季
如何程の覚悟かと問ふ曼珠沙華 柴田奈美
妓もまじる漁師の葬曼珠沙華 宮武寒々 朱卓
妬心つひに火となり闇の曼珠沙華 後藤綾子
妻の流せし血ほどに曼珠沙華咲かず 能村登四郎 天上華
妻癒えよ茎のみとなる曼珠沙華 磯貝碧蹄館 握手
婆たちをさかんに流す曼珠沙華 中拓夫 愛鷹
嫁ぐはまた隠るる如し曼珠沙華 山上樹実雄
子供等の声も赤らむ曼珠沙華 右城暮石 上下
家いづれば嫁生き生きと曼珠沙華 加藤知世子 黄 炎
家系図の末なるわれか曼珠沙華 三森鉄治
宿(しゅく)外れ一本咲きの彼岸花 高澤良一 燕音
寂光といふあらば見せよ曼珠沙華 細見綾子 花寂び
密集の意思なし曼珠沙華枯れて 有働亨 汐路
寝ころべば空に燃え立つ彼岸花 大西 土水
寺坂に海が夕づく曼珠沙華 松村蒼石 雁
寺大破いたる所に曼珠沙華 野村喜舟 小石川
寺門出て詠み捨て草や曼珠沙華 松根東洋城
対岸の火として眺む曼珠沙華 能村登四郎
少年のたじろぐ紅や曼珠沙華 斎藤嘉久
屋根裏の曼珠沙華ならまっさかり 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
山からの雨か裸身の曼珠沙華 金田咲子 全身
山くだる山人の葬曼珠沙華 岡部六弥太
山中を出て曼珠沙華旅いざなふ 村越化石 山國抄
山墓に午後もうるほふ曼珠沙華 飯田蛇笏 春蘭
山廬忌の瞼あふるる曼珠沙華 三宅一鳴
山畑や椶櫚の根もとの曼珠沙華 河野静雲 閻魔
山路ゆく赤き帯また曼珠沙華 野澤節子 黄 炎
山麓声なくて初曼珠沙華 岡井省二
岩蔭に痩せてまたたく彼岸花 福田甲子雄
島中を随いてまはれる曼珠沙華 岸田稚魚
川の中の一水脈や曼珠沙華 中拓夫 愛鷹
川岐れ風別れゆく曼珠沙華 荒井書子
川湯より首出して見る彼岸花 今川凍光
工場はタオル靴下曼珠沙華 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
平服の医師に薬臭曼珠沙華 奈良文夫
年々に見て刻々の曼珠沙華 吉野義子
広島へ帰る児のあり彼岸花 星野麥丘人
座席得て手に取る如く曼珠沙華 右城暮石 声と声
張板をたのしみ使ひ曼珠沙華 中山純子
彼岸には消えてしまひぬ曼珠沙華 鳥居美智子
彼岸花 蝶あたふたと あたふたと 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
彼岸花おのころ島へ飛火して 小川杜子
彼岸花たのしき墓となりにけり 文挟夫佐恵 黄 瀬
彼岸花にも芋虫の這ひ移る 岸本尚毅 選集「氷」
彼岸花に佇ちてさびしき師弟たり花を知らず葉は花を見ず 加藤将之
彼岸花の白きは幽冥界のもの 柴田白葉女 『月の笛』
彼岸花は紅笄や尼寺の跡 高井北杜
彼岸花みし夜昂ぶるをんなの血 稲垣きくの 牡 丹
彼岸花も夜泣石も雨に濡れ 田中冬二 俳句拾遺
小石川植物園
彼岸花ツンツカツンと生えにけり 高澤良一 寒暑
彼岸花中の莟を囲み老い 高木晴子 花 季
彼岸花傷つきやすき空の紺 菖蒲あや あ や
彼岸花彼岸の色を薄めけり 高澤良一 ぱらりとせ
彼岸花忌みてはみれど美しく 河野南畦 『花と流氷』
彼岸花指組めば指あたたかき 柴田白葉女 花寂び 以後
彼岸花武家の系図のここに果つ 山本 孟辰
彼岸花濃くなる明日も明後日も 猪俣千代子
彼岸花莟ばかりのお仏壇 高澤良一 燕音
彼岸花鎮守の森の昏きより 中川宋淵
心臓のかたちはいづれ曼珠沙華 北川邦陽
忌のごとく雨のあつまる曼珠沙華 石塚真樹
怖い夜や見えなくならぬ彼岸花 池田澄子
恍惚は不安のごとく曼珠沙華 平井照敏 天上大風
愁ひつゝ旅の日数や曼珠沙華 河東碧梧桐
我が前の曼珠沙華の群鬨起せ 石橋辰之助 山暦
手に持てば束ひんやりと曼珠沙華 加藤三七子
手のとどくむなしさありぬ曼珠沙華 斎藤玄 雁道
手の中の冷たき日なり曼珠沙華 藤田あけ烏 赤松
才筆に歯序はあらざり曼珠沙華 橋本夢道 良妻愚母
打たれては犬釘熱す曼珠沙華 原田青児
折りためて悲しくなりし曼珠沙華 高橋淡路女 淡路女百句
折る前に 折る音のして 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
抜刀隊の上陸近し曼珠沙華 仁平勝 花盗人
抱けば色消ぬべく雨の曼珠沙華 村田 脩
持たされし茎ひややかや曼珠沙華 浮洲久子
捨てきれぬものにふるさと曼珠沙華 鈴木真砂女
揺れ惑ふ影や土蔵の彼岸花 仙田洋子 橋のあなたに
旅の日のいつまで暑き彼岸花 臼田亞浪 定本亜浪句集
旅の日の曼珠沙華とは華やかに 田畑美穂女
日の旅や散華以前の曼珠沙華 磯貝碧蹄館 握手
日当れば磧さみしき曼珠沙華 鷲谷七菜子 花寂び
日豊線爪先立ちに曼珠沙華 高澤良一 鳩信
日輪の光芒曼珠沙華の蕋 石井とし夫
日輪の寂と渡りぬ曼珠沙華 川端茅舎
明暗のくらがりを吸ひ曼珠沙華 小池文子 巴里蕭条
昔へも行けそうな橋彼岸花 西尾千佳子
春なれや猛き緑は彼岸花 岩田由美
昼酒やどこを向いても曼珠沙華 池田秀水
昼間から酔うたり雨の曼珠沙華 橋石 和栲
晴れし土手曼珠沙華まで手を引かれ 阿部みどり女
暮れはてし眼底にあり曼珠沙華 成瀬正俊
曼珠沙華あつけらかんと道の端 夏目漱石
曼珠沙華あつまり丘をうかせけり 長谷川かな女
曼珠沙華あとかたもなき月夜かな 黛執
曼珠沙華あまたは咲けどたのしまず 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華あるひは畦を踏みはずし 鳥越久美子
曼珠沙華あれば必ず鞭うたれ 高浜虚子
曼珠沙華いづこを行くも農婦の眼 馬場移公子
曼珠沙華いよいよ長良川のいろ 塩谷鵜平
曼珠沙華おほあをぞらにふとまみゆ 五十崎古郷句集
曼珠沙華かくれているのは母さんね 合志浩子
曼珠沙華かたまつて燃え飛んで燃え 夏秋仰星子
曼珠沙華かなしきさまも京の郊 石塚友二 方寸虚実
曼珠沙華かなしきまでに茎の青 岩岡中正
曼珠沙華かなしみは縦横無尽 塚本邦雄(1922-)
曼珠沙華かなし折る手に応へなく 西本一都 景色
曼珠沙華からすは淋しきとき歩む 石川文子
曼珠沙華けふ衰へぬ花をこぞり 橋本多佳子
曼珠沙華ここにと山の鴉鳴く 阿部みどり女 『雪嶺』
曼珠沙華この世かの世の橋の数 栗林千津
曼珠沙華この世の出水絶ゆるなき 松村蒼石 寒鶯抄
曼珠沙華この世の朱のために咲く 原田かほる
曼珠沙華こぼれ石段絶対値 増田まさみ
曼珠沙華さくさく刈ってみたきかな 小檜山繁子
曼珠沙華しんかんたるに旅二日 飴山実
曼珠沙華じやかごのうちも水激す 杉山玲羊
曼珠沙華すずしき赤と思ひけり 嶋田麻紀
曼珠沙華すつくと系譜絶ゆるべし 鷲谷七菜子 花寂び
曼珠沙華その一本になつてゐし 河野邦子
曼珠沙華たじろぎて茎のぼりけり 松村蒼石 雁
曼珠沙華ついと頭上はさみしきかな 中村明子
曼珠沙華つなぎ合せてレイとせる 右城暮石 上下
曼珠沙華つゆしらじらとくだけけり 石原舟月 山鵲
曼珠沙華とびとび眼つぶればかたまる 三好潤子
曼珠沙華とりまきの草みな枯らし 鈴木淑生
曼珠沙華どこかに祭あるごとし 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華どこそこに咲き畦に咲き 藤後左右(1908-91)
曼珠沙華どれも腹出し秩父の子 金子兜太(1919-)
曼珠沙華なに言はれてもの覚悟はなし 鈴木栄子
曼珠沙華にこゝろ置きつゝ散歩かな 五十崎古郷句集
曼珠沙華に雪の近さよ迦毘羅城 雑草 長谷川零餘子
曼珠沙華に鞭うたれたり夢さむる 松本たかし(1906-56)
曼珠沙華のするどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべし 坪野哲久
曼珠沙華の二本いつぱいにひらき 金田咲子 全身 以後
曼珠沙華の余燼にちりちり猫の鈴 横山房子
曼珠沙華の冬の青葉の抱くもの 山西雅子
曼珠沙華の燃えゐてむしろ静心 殿村莵絲子 花 季
曼珠沙華の群へはぐれる月の貨車 仁平勝 花盗人
曼珠沙華の葉のふさふさと畦ぬくし 瀧春一 菜園
曼珠沙華の蘂の金環欠けるなし 嶋田麻紀
曼珠沙華の野を真二つに飛鳥川 春名耕作
曼珠沙華の隙なき構へ根より抜く 桂信子 黄 炎
曼珠沙華はがねの力もてひらく 北さとり
曼珠沙華はじめひたすら立錐す 鳥居おさむ
曼珠沙華はなればなれに人の去る 小池文子 巴里蕭条
曼珠沙華は森の勲章薄明に 田川飛旅子
曼珠沙華ひしめいて声なかりけり 大串章 百鳥 以後
曼珠沙華ひとむら炎えて落人村 楠本憲吉
曼珠沙華ひとりが踏んで径なす 石川桂郎 高蘆
曼珠沙華ほろびるものの美を美とし 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
曼珠沙華ぽと咲きわつとけい一忌 奈良文夫
曼珠沙華まだまだ女止めません 山尾玉藻
曼珠沙華まだ咲かぬかと見に出でし 下村槐太 天涯
曼珠沙華まつ赤にくらし海のほとり 鷲谷七菜子 黄 炎
曼珠沙華ま茎すくすく陽ゆらゆら 冬の土宮林菫哉
曼珠沙華みな山に消え夜の雨 森澄雄
曼珠沙華やうやく枯れて夏立てり 相生垣瓜人
曼珠沙華ゆっくり歩く父につき 相良美奈子
曼珠沙華ゆつくりと消ゆいまも消ゆ 原田喬
曼珠沙華わが去りしあと消ゆるべし 野澤節子 花 季
曼珠沙華わが満身に罪の傷 木下夕爾
曼珠沙華わなわな蘂をほどきけり 上田五千石 田園
曼珠沙華われに火の性水の性 西嶋あさ子
曼珠沙華をんなと書いてそれより悔 河野多希女 納め髪
曼珠沙華ガラスの城のごとしとも 京極杞陽
曼珠沙華ガラス繊維の蘂を持ち 安田鈴彦
曼珠沙華キリストの血が流れだす 長田等
曼珠沙華マチスは部屋をくれなゐに 小山森生
曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径 木下利玄
曼珠沙華一念凝らす女人の句 西本一都 景色
曼珠沙華一抜け二抜け三抜けて 伊野多津男
曼珠沙華一揆のごとく畦くるよ 那須 乙郎
曼珠沙華一本見ゆる奥座敷 柿本多映
曼珠沙華一村一寺一如来 河村昇
曼珠沙華一枚の藪枯れつくす 松村蒼石 雪
曼珠沙華一気に暮れてしまひけり 塩崎彩雲望
曼珠沙華一水の紺飛びちれり 石嶌岳
曼珠沙華一糸まとはぬ気迫かな 高山洋子
曼珠沙華不思議は茎のみどりかな 長谷川双魚(1897-1987)
曼珠沙華二三本馬頭観世音 寺田寅彦
曼珠沙華二本づつ立ち雨の中 阿部みどり女 月下美人
曼珠沙華互ひにしべのもつれつゝ 高橋淡路女 梶の葉
曼珠沙華五六本大河曲りけり 野村喜舟 小石川
曼珠沙華亡き友跼みゐるごとし 石田あき子 見舞籠
曼珠沙華人にのみ降るにはか雨 蓬田紀枝子
曼珠沙華人来て晩年と言ヘり 細見綾子 黄 炎
曼珠沙華俄かに畦の高くなり 石田勝彦
曼珠沙華俤を地にひきおろす 小檜山繁子
曼珠沙華傾き合ひてうつろへり 西山泊雲 泊雲句集
曼珠沙華元寇の絵図さながらに 高澤良一 寒暑
曼珠沙華光は沖に集ひをり 秋元草日居
曼珠沙華全盛かへりみるなかれ 津田清子 二人称
曼珠沙華出て曼珠沙華見つめ合ふ 松山足羽
曼珠沙華出水の上にうつりけり 池内たけし
曼珠沙華刈り伏せて畦熱くなる 藤井寿江子
曼珠沙華前後人なき柳生道 丸山哲郎
曼珠沙華十四五本も生けたらむ 相生垣瓜人
曼珠沙華十歩に久女の墓小さし 藤岡筑邨
曼珠沙華南河内の明るさよ 日野草城
曼珠沙華印を結びしまま褪せぬ 羽部洞然
曼珠沙華吉凶共に黒衣着て 田中政子
曼珠沙華名もなき野川海に入る 山口誓子 激浪
曼珠沙華吾が忌日には挿して欲し 三好潤子
曼珠沙華吾に渺々と仏家の血 赤松[ケイ]子
曼珠沙華呪文は胸に隠し持つ 仙田洋子 橋のあなたに
曼珠沙華咲きさかりつつ忘らるる 松村蒼石 露
曼珠沙華咲きて口上ありさうな 後藤夜半 底紅
曼珠沙華咲きて金魚の褪せにけり 相生垣瓜人 明治草抄
曼珠沙華咲くとつぶやきひとり堪ゆ 橋本多佳子
曼珠沙華咲くほか何も無きところ 右城暮石 上下
曼珠沙華咲く水湖へ流れ込む 右城暮石 上下
曼珠沙華咲く野に出でよ観世音 橋本鶏二
曼珠沙華咲けば悲願の如く折る 橋本多佳子
曼珠沙華咲ける限りの暮色澄む 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華喜悦をもちし女面 河野多希女 こころの鷹
曼珠沙華噴く火を山の際にまで 桂信子 遠い橋
曼珠沙華地下に束ね持つ手あるかに 福田蓼汀 秋風挽歌
曼珠沙華地下に血脈あるごとし 福田蓼汀 秋風挽歌
曼珠沙華塚穴一つとり囲み 西山泊雲 泊雲句集
曼珠沙華声ふたいろに立話 伊藤万代子
曼珠沙華夕せせらぎに紅流せ 太田鴻村 穂国
曼珠沙華夕日を連れて山に入る 中拓夫
曼珠沙華夕日沈まばくづほれむ 徳永山冬子
曼珠沙華大川に橋突と見ゆ 松村蒼石 雪
曼珠沙華大路の際にあはれなり 相馬遷子 山国
曼珠沙華天のかぎりを青充たす 能村登四郎 民話
曼珠沙華天の一部は朽ちつつも 河原枇杷男 定本烏宙論
曼珠沙華夫は見しとふ羨し 山口波津女 良人
曼珠沙華失せしのみ今日乱されず 千代田葛彦 旅人木
曼珠沙華妻横抱きに日が走れり 磯貝碧蹄館
曼珠沙華子の縄電車通りゆく 田辺キヨ子
曼珠沙華子を負ひて胸括られて 津田清子 二人称
曼珠沙華子在らば十二如何な声 文挟夫佐恵 黄 瀬
曼珠沙華宇宙の闇に立つてをり 鳥居おさむ
曼珠沙華安心の葉の出でにけり 岡本眸
曼珠沙華家のまはりに雨が降る 千代田葛彦



曼珠沙華寝墓はつひに起たざりし 井沢正江 湖の伝説
曼珠沙華寺に咲くべき名なりけり 歌原蒼苔
曼珠沙華巌頭へ出て流人村 松山足羽
曼珠沙華川の瀬もとにかへりたる 木津柳芽 白鷺抄
曼珠沙華師を見舞はむに汽車おそし 堀口星眠 営巣期
曼珠沙華御油赤坂をつらねたる 森田峠(1924-)
曼珠沙華微妙な齢近づき来 鈴木栄子
曼珠沙華忘れし頃に後の月 百合山羽公 故園
曼珠沙華忘れゐるとも野に赤し 野澤節子 黄 瀬
曼珠沙華念彼(ねんぴ)観音力以ちて 高澤良一 ぱらりとせ
曼珠沙華思へば船の出る所 攝津幸彦
曼珠沙華恋に免疫といふはなし 鈴木栄子
曼珠沙華恋の字並ぶごとくあり 成瀬正とし 星月夜
曼珠沙華恋の火花に火傷して 鈴木真砂女
曼珠沙華折りかかぐるは拝火の徒 井沢正江 以後
曼珠沙華折る子に柩通りけり 五十嵐播水 播水句集
曼珠沙華折れて重なる光かな 高浦銘子
曼珠沙華抱くほどとれど母恋し 中村汀女(1900-88)
曼珠沙華抱へゐる子の泣きじやくる 内藤吐天 鳴海抄
曼珠沙華捨てる諸声あげにけり 萩原麦草 麦嵐
曼珠沙華捨犬の脚休まずに 原裕 葦牙
曼珠沙華描かばや金泥もて繊く 長谷川素逝 暦日
曼珠沙華揺れては言葉こぼしをり 窪信路
曼珠沙華散るや赤きに耐へかねて 野見山朱鳥(1917-70)
曼珠沙華日ぐれは汐のさすごとし 細川加賀 生身魂
曼珠沙華日はじりじりと襟を灼く 橋本多佳子
曼珠沙華日輪すこし海に寄る 百合山羽公 故園
曼珠沙華早稲をかけたる日おもてに 木津柳芽 白鷺抄
曼珠沙華智慧の泉の澄むところ 飯田龍太
曼珠沙華暗き太陽あるごとし 阿部みどり女
曼珠沙華暮るるに早きへんろ道 尾亀清四郎
曼珠沙華曇ればくもる己れかな 阿部みどり女
曼珠沙華最も青く年立ちぬ 相生垣瓜人 明治草抄
曼珠沙華最後の舌を使いけり 久保純夫 熊野集 以後
曼珠沙華月光のほか纏ふなし 三橋敏雄
曼珠沙華朝より谷は音満つる 田川飛旅子 花文字
曼珠沙華木椅子は雨に濡れはやし 古舘曹人 能登の蛙
曼珠沙華本家と分家つなぎたり 品川鈴子
曼珠沙華松の林を笑ひ出て 岡井省二
曼珠沙華根つ子の流木怒つてをり 桜井博道 海上
曼珠沙華梵の一字を曳き来たる 河野多希女 こころの鷹
曼珠沙華榾煙るごと枯れゆけり 吉野義子
曼珠沙華構も墓も崖に拠る 木村蕪城 寒泉
曼珠沙華模糊と骨積む海の底 小檜山繁子
曼珠沙華樹の稠密に燃え尽し 阿部みどり女
曼珠沙華橘寺の浮き上がり 綾部仁喜
曼珠沙華此の世は明るすぎますか 川井玉枝
曼珠沙華歩く速さで見てをりぬ 鈴木妙子
曼珠沙華死にきれずして髪を切る 和田耕三郎
曼珠沙華残暑もどりの御取越 大谷句佛
曼珠沙華母は涙すたびに老ゆ 石田仁子
曼珠沙華水の迅さも久しぶり 北原志満子
曼珠沙華汽車ゆくとき勢ひたつ 川口重美
曼珠沙華沖の舟など呼び寄せむ 栗林千津
曼珠沙華沖浪は秀を重ねつつ 水原 春郎
曼珠沙華沼に月光ひろがりぬ 中田剛 珠樹
曼珠沙華泥土のながれ干たるまま 瀧春一 菜園
曼珠沙華洗ひざらしの空にして 石田勝彦 秋興
曼珠沙華派手な出迎へしてくれる 宮本美津江
曼珠沙華流せば水に梵字書く 三好潤子
曼珠沙華流れゆくなりなほ燃えて 成瀬桜桃子 風色
曼珠沙華浄土の雲に紅移す 平畑静塔
曼珠沙華消えたる茎の並びけり 後藤夜半
曼珠沙華消えてしまひし野面かな 『定本石橋秀野句文集』
曼珠沙華消えゆくものゝ影となる 米沢吾亦紅 童顔
曼珠沙華消え果てて墓寧からむ 鷲谷七菜子 花寂び
曼珠沙華漆黒の蝶つゆ吸へり 松村蒼石 露
曼珠沙華激流に舞ひ納めたり 三好潤子
曼珠沙華濁流峡を出でいそぐ 馬場移公子
曼珠沙華無月の客に踏れけり 前田普羅 新訂普羅句集
曼珠沙華無菌癩者の旅に濃し 村越化石 山國抄
曼珠沙華燃えしづまりし野面かな 大橋敦子 手 鞠
曼珠沙華燃えて棚田の道細し 高浜年尾
曼珠沙華燃えて海軍基地たりし 平沢みさを
曼珠沙華燃えて風化の流人の碑(佐渡二句) 河野南畦 『風の岬』
曼珠沙華燃えはてし野の水澄めり 西島麦南 人音
曼珠沙華獣骨舎利を置く磧 『定本石橋秀野句文集』
曼珠沙華田を分け畦を太くする 山崎 篤
曼珠沙華男の鋭鎌潔し 殿村莵絲子
曼珠沙華畦になければ日本海 早乙女 健
曼珠沙華病人の顔捨てに来し 朝倉和江
曼珠沙華発するまへの土の声 百合山羽公 寒雁
曼珠沙華目的地まで暮るるなかれ 津田清子 礼 拝
曼珠沙華真赤な嘘でかたまれり 伊藤敬子
曼珠沙華眠れば目覚めねばならぬ 辻美奈子
曼珠沙華祭の杜に畦つなぎ 茨木和生
曼珠沙華稚児の歩みを危うす 加藤知世子 黄 炎
曼珠沙華突撃バンザイ花にして 高澤良一 鳩信
曼珠沙華突然に咲き天凹む 岸風三樓
曼珠沙華窃かに月を得て旋る 千代田葛彦 旅人木
曼珠沙華立尿の透くあはれさに 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
曼珠沙華競馬の馬づまをあゆまする 水原秋櫻子
曼珠沙華竹数幹の向ふにて 細川加賀 生身魂
曼珠沙華竹林に燃え移りをり 野見山朱鳥
曼珠沙華約稿旅の身を縛り 藤田湘子
曼珠沙華終りて川の青ざめし 山田具代
曼珠沙華絶叫しては遠ざかる 岸田稚魚 『雪涅槃』
曼珠沙華肉声かゆくひびきけり 河野多希女 こころの鷹
曼珠沙華膝いだくとき波無限 桂樟蹊子
曼珠沙華茎見えそろふ盛りかな 飯田蛇笏 山廬集
曼珠沙華茶碗は欠けしまま使う 対馬康子 吾亦紅
曼珠沙華落暉も蕊をひろげけり 中村草田男
曼珠沙華蕊のさきまで意志通す 鍵和田釉子
曼珠沙華蕊反り勁き古戦場 加藤水万
曼珠沙華蕊奔放をこころざす 石嶌岳
曼珠沙華藁をかぶりてなほ赤し 高橋馬相 秋山越
曼珠沙華蘂のさきまで意志通す 鍵和田釉子
曼珠沙華蘂の先まで蟻ゆかしむ 橋本美代子
曼珠沙華蘂毛のごとし鋼のごとし 津田清子 礼 拝
曼珠沙華表うらなく咲いてをり 上村占魚 『方眼』
曼珠沙華見に鏡中を出て歩く 神尾久美子 桐の木
曼珠沙華試歩許されし夫に燃ゆ 石田あき子 見舞籠
曼珠沙華赤し船より上り来て 右城暮石 上下
曼珠沙華赤衣の僧のすくと立つ 角川源義
曼珠沙華足くび細く女立つ 三好淡紅
曼珠沙華跨いでふぐり赫(かつ)とせり 能村登四郎 冬の音楽
曼珠沙華身は柔椅子に加速せる 渋谷道
曼珠沙華身体髪膚仮のもの 佐藤鬼房
曼珠沙華軌道ここより岐れゆく 山口波津女 良人
曼珠沙華逃るるごとく野の列車 角川源義 『口ダンの首』
曼珠沙華遠い処を逍遥す 百合山羽公 寒雁
曼珠沙華遠き国にて馬病める 相原左義長
曼珠沙華野を思はする庭の土手 阿部みどり女 月下美人
曼珠沙華鎌倉古道細りけり 水島つる子
曼珠沙華鎖をつなぎ合ひにけり 大木あまり 雲の塔
曼珠沙華闇に描かば地獄変 福田蓼汀
曼珠沙華雨の一ト日を経たる色 西村和子 窓
曼珠沙華雲にも燃えよ風の岬 河野南畦 『風の岬』
曼珠沙華雲はしづかに徘徊す 山口誓子
曼珠沙華雲より鴉下りにけり 相生垣瓜人 微茫集
曼珠沙華霧に潰えてしまひけり 久保田万太郎 草の丈
曼珠沙華霧より疾く濡れにけり 萩原麦草 麦嵐
曼珠沙華青空われに殺到す 奥坂まや
曼珠沙華風を鏡と思わずや 宇多喜代子
曼珠沙華風体月にあきらかな 中田剛 珠樹
曼珠沙華髪を阿修羅に病めりけり 西本一都
曼珠沙華鮮人穴居せる如く 久米正雄 返り花
曼珠沙華黄泉のとば口此処にあり 高澤良一 寒暑
曼珠沙華黒き蝶吸ひ寄せてをり 上村占魚 『自門』
月あれば月の暗さの曼珠沙華 宇野隆雄
月も老い黒きばかりに曼珠沙華 百合山羽公 故園
月光に濡れざるはなし曼珠沙華 長沼紫紅
月光のあとことごとく曼珠沙華 矢島渚男
月光の微熱ごときを曼珠沙華 齋藤愼爾
月入りて曼珠沙華もつとも喧し 内藤吐天 鳴海抄
月山はるか岩の裂け目の曼珠沙華 佐藤鬼房
月読の夜ごとに濡れて彼岸花 松村蒼石 寒鶯抄
朝潮がどっと負けます曼珠沙華 坪内稔典
木曽を出て伊吹日和や曼珠沙華 河東碧梧桐
本堂の中はくらやみ曼珠沙華 山口いさを
村を貫く一川一路曼珠沙華 奥谷亞津子
村童の我に親しや曼珠沙華 阿部みどり女
束なして曼珠沙華咲き出でにけり 青葉三角草
束ね刈る曼珠沙華海たひらなり 小野恵美子
杣が子の摘みあつめゐる曼珠沙華 原石鼎
東京も弁慶橋の曼珠沙華 鈴鹿野風呂 浜木綿
松ありてたゞ叢や曼珠沙華 高橋淡路女 梶の葉
枯るるなら一糸纏はぬ曼珠沙華 殿村菟絲子 『菟絲』
極楽の近道こゝか曼珠沙華 大谷句佛
橋立の松籟に褪せ曼珠沙華 西本一都 景色
死に下手の吾に褪せゆく曼珠沙華 三好潤子
死ぬときは火柱たてて曼珠沙華 石飛如翠
死ぬならば自裁晩夏の曼珠沙華 橋本榮治 麦生
死を急がず曼珠沙華見れども見れども 長谷川かな女 花寂び
死人花にてひとつだにうつむかず 金谷信夫
死者ついにわれと隔たる曼珠沙華 和田悟朗
殉教の島の光の曼珠沙華 青木重行
残塁に降り石火矢の曼珠沙華 高澤良一 素抱
母なき川曼珠沙華なと流れ来よ 村越化石 山國抄
母に嘘つきし日遥か曼珠沙華 小川みどり
母の歌二三の記憶彼岸花 風間久四郎
水にある影のうごかず曼珠沙華 柴田白葉女
水のように抱けば現れ曼珠沙華 久保純夫 熊野集
水の如く風の流るる曼珠沙華 行方克巳
水分けして 日本の背の 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
水影も一本きりの曼珠沙華 石原八束 『黒凍みの道』
水染むる影ほむらなき曼珠沙華 西島麥南
水音のふくらんでくる曼珠沙華 野木桃花
河二月曼珠沙華葉をびつしりと 松村蒼石 雪
法窟の大破に泣くや曼珠沙華 河東碧梧桐
泣く声にびつしり生えて曼珠沙華 櫛原希伊子
洲も末のここにさかりて彼岸花 松村蒼石 雪
海上に星らんらんと曼珠沙華 山口誓子
海彦の墓標たつたる曼珠沙華 野中 亮介
海見えて海消えて旅曼珠沙華 中村明子
海静かなれば疲るる曼珠沙華 中拓夫
涙出る手紙読みたり曼珠沙華 細見綾子 黄 炎
清涼のきのふともなし曼珠沙華 百合山羽公 故園
渓流の滾つ蒼さや曼珠沙華 田塚 公晴
渡岸寺の一炉ほどなる曼珠沙華 吉田紫乃
測量の巻尺伸ばす曼珠沙華 中村居月
湖が日を返しそこねし彼岸花 関戸靖子
湖の色すでに寂びたり曼珠沙華 水原秋櫻子
満月の夜の地に消ゆる曼珠沙華 石原八束 『秋風琴』
満潮の海動きをり曼珠沙華 中拓夫 愛鷹
潮泡の高く飛ぶ日や曼珠沙華 大木あまり 火球
潮騒をくろきひかりと曼珠沙華 鳥居おさむ
火が走る丹波蛇窯曼珠沙華 文挟夫佐恵 遠い橋
火に亀裂ありつつひらき曼珠沙華 赤松[けい]子 白毫
火の付きし鎌倉古道曼珠沙華 白岩てい子
火の国の火よりも朱し曼珠沙華 清水徹亮
火の消えて雨に打たるる曼珠沙華 伊藤敬子
火の渦のなかに火奔り曼珠沙華 大橋桜坡子
火の神が歩いてゆきし曼珠沙華 岩岡 中正
火をつけて廻る阿蘇野の曼珠沙華 伊藤通明
火柱の夢のあとなり曼珠沙華 鈴木蚊都夫
烈日の曼珠沙華みて髪凝る 小檜山繁子
照どしの土を荒しと彼岸花 松村蒼石
燃えうつることなく燃ゆる彼岸花 桔梗きちかう
燃えはしるここをみなもと曼珠沙華 皆吉爽雨
燃え殻の夕雲を置く曼珠沙華 原裕 青垣
燃ゆるほど芯のさめゐる曼珠沙華 椿文恵
燕みな海に送りぬ曼珠沙華 森澄雄 浮鴎
父の亡き空掴みをり曼珠沙華 関戸靖子
父倒れし今年の庭に曼珠沙華 下田稔
犬死にか野垂れ死将曼珠沙華 大関靖博
狂ふほど人恋うてをり曼珠沙華 成瀬櫻桃子
狂女のみに媚態ありし代曼珠沙華 香西照雄 対話
狐啼け曼珠沙華光(くわう)おとろへぬ 北原白秋
独りの母に海が濃すぎる曼珠沙華 鍵和田釉子
現れてより立ち通し曼珠沙華 倉田紘文(1940-)
理智光寺跡の烏と曼珠沙華 永井龍男
生ひたちと老耄一如曼珠沙華 松村蒼石 雁
生国に大往生せん曼珠沙華 新谷ひろし
生國や冬真青な曼珠沙華 柿本多映
生涯の恋の数ほど曼珠沙華 大西泰世(1949-)
田の空や畦には曼珠沙華の空 阿部誠文
男より迅く消えさり曼珠沙華 鈴木六林男 王国
男打つ鞭にと曼珠沙華の茎 三好潤子
畦径もお洒落している曼珠沙華 大熊義和
番長の裾長にして曼珠沙華 牧野桂一
病む側に曼珠沙華折りて遊ぶ子よ 河東碧梧桐
病者より長寿祝はれ曼珠沙華 阿部みどり女
白日の曼珠沙華より夜を攫へ 阿部みどり女
白曼珠沙華はたりはたりと鶏番ひ 大石 悦子
百姓の笠に秋立つ曼珠沙華 癖三醉句集 岡本癖三醉
皇居てふ不思議な島の曼珠沙華 和田知子
目つむりて荒野に曼珠沙華咲かす 目迫秩父
目つむればかの日の曼珠沙華燃ゆる 成瀬桜桃子 風色
眼帯の内なる眼にも曼珠沙華 西東三鬼
眼鏡拭くあいだも見ゆる曼珠沙華 五十嵐研三
知らぬ顔ふりかへり笑ふ曼珠沙華 加藤秋邨 穂高
石卓の雨滴長柄の曼珠沙華 宇佐美魚目
砂に陽のしみ入る音ぞ曼珠沙華 佐藤鬼房 「何處へ」以降
神奈川県足柄郡の曼珠沙華 池田秀水
神経科はやりて白き曼珠沙華 中村明子
私怨晴らさむこともまた文学で咲きみだりたる曼珠沙華見ゆ 島田修三
秋燕の目に恐ろしき曼珠沙華 原石鼎
穢多寺の仏うつくし曼珠沙華 子規句集 虚子・碧梧桐選
空中に回転扉曼珠沙華 磯貝碧蹄館
空事の紅もまじりて曼珠沙華 斎藤玄 雁道
空堀に人ゐて曼珠沙華日和 鈴木鷹夫
空港に曼珠沙華見て阿波に入る 能村登四郎 菊塵
空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華 及川貞(1899-1993)
空間に遊ぶお手玉曼珠沙華 磯貝碧蹄館
立ちながら独りしぼむや曼珠沙華 水田正秀
童らの鞄がさわぐ曼珠沙華 津田清子
童女いまも曼珠沙華から逃げている 鎌倉佐弓 天窓から
笈置くや遠く近くの曼珠沙華 尾崎迷堂 孤輪
篁を風のゆさぶる曼珠沙華 大木あまり 火球
糊しぼるひとりのときの曼珠沙華 横山房子
糸のごと枯れてさみしや曼珠沙華 太田鴻村 穂国
約束のごと一本の曼珠沙華 細見綾子
絡み合ふところより枯れ曼珠沙華 手塚美佐 昔の香
縄文の土器を抱けば彼岸花 大西泰世 世紀末の小町
縋りては蝶のふるはす曼珠沙華 日原傳
群るるとき苦しみのいろ曼珠沙華 小宮山遠
群れてゐて一花の孤独曼珠沙華 上原白水
群れ咲きて月光くらし曼珠沙華 川村紫陽
群れ咲くといへども個々の曼珠沙華 館岡沙緻
老人に観念の海曼珠沙華 田川飛旅子 『山法師』
考へても疲るゝばかり曼珠沙華 星野立子
胎内の色あらば曼珠沙華の色 伊丹さち子
臍の緒を箪笥に守り曼珠沙華 佐々木六戈 百韻反故 初學
自転車に夫の弱腰曼珠沙華 石田あき子 見舞籠
自転車泥棒子なくば赦されずよ曼珠沙華 磯貝碧蹄館 握手
船長の肺活量や曼珠沙華 大木あまり 火球
色持たぬ家糸図さみし彼岸花 対馬康子 愛国
花さかる径のうすいろ曼珠沙華 飯田蛇笏 雪峡
花とびし花びらとびし曼珠沙華 高野素十
花失せて茎まつすぐや曼珠沙華 岩田由美
花散りしあとに虚空や曼珠沙華 野見山朱鳥
花火師が村中を馳せ 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
茎襖またひまなけれ曼珠沙華 皆吉爽雨 泉声
草刈の薙ぎ倒しけり曼珠沙華 村上鬼城
草川のそよりともせぬ曼珠沙華 飯田蛇笏(1885-1962)
菩提寺に改宗の故事曼珠沙華 向山房男
葦原に入りて滅びし曼珠沙華 火村卓造
葬人の歯あらはに哭くや曼珠沙華 飯田蛇笏 霊芝
蕊をゆたかにしんがりの曼珠沙華 原田喬
蕋張れば 風の治まる 彼岸花 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
藪つ蚊の来てまださすや曼珠沙華 久保田万太郎 草の丈
藪中へかけて咲き込み曼珠沙華 高濱年尾
蘂が蘂舐めて雨中の曼珠沙華 能村登四郎 天上華
蘂触れて砂洲に漂着曼珠沙華 橋本美代子
蛇わたる野川の岸や曼珠沙華 中勘助
蛇穴に入る時曼珠沙華赤し 正岡子規
蝶々の翅とふるヘリ曼珠沙華 阿部みどり女
行く水のまがね光りや曼珠沙華 沢木欣一 往還
裸にて焔と化すや曼珠沙華 中勘助
襤褸袷赤大名の曼珠沙華 久保田万太郎 草の丈
西国の畦曼珠沙華曼珠沙華 森澄雄(1919-)
西国の落暉まともに曼珠沙華 行方克巳
見てゐるにあらず眼にある曼珠沙華 久保 乙秋
親しまぬ土よりいでゝ曼珠沙華 百合山羽公 故園
誰殺めむと曼珠沙華並び立つ 阪本謙二
論理消え芸いま恐はし曼珠沙華 池内友次郎
赤い花は彼岸花、水に雨ふる 巣山鳴雨
越えられぬ川がいくつも曼珠沙華 椿文恵
踏切があれば必ず曼珠沙華 原田青児
身のなかの一隅昏らし曼珠沙華 中村苑子
身の穴を塞いでしまへ曼珠沙華 齋藤愼爾
農継がぬ子の増えてきて曼珠沙華 皿井節子
逃げ易きものに齢や曼珠沙華 井桁衣子
逃散の夜のましろき曼珠沙華 夏石番矢(1955-)
逆臣のひとりか白く曼珠沙華 宇多喜代子
通り雨子も曼珠沙華も走りをり 米沢吾亦紅 童顔
連れ立てど翳みな孤り曼珠沙華 西村 博子
遅咲きの茎を立てたる曼珠沙華 手塚美佐 昔の香 以後
遅月が照らす野中の曼珠沙華 内藤吐天 鳴海抄
道の今日乞食も曼珠沙華もなくうねる 梅林句屑 喜谷六花
道岐るところもつとも曼珠沙華 原田青児
違算あり野に曼珠沙華かき消えて 馬場移公子
遠き畦近づけてをり曼珠沙華 山田閏子
遠くから妻の墓見え彼岸花 鶴原虎児
野にて裂く封書一片曼珠沙華 鷲谷七菜子(1923-)
野は海へ展けていたり曼珠沙華 北原志満子
長雨に火力衰ふ曼珠沙華 高澤良一 ぱらりとせ
阜の精霊口より吐くは曼珠沙華 横山白虹
隔世遺伝の眼病を得て曼珠沙華 仁平勝 花盗人
離れ咲きて吾を呼び止む曼珠沙華 山田みづえ 木語
雨あしのつばらに見えて曼珠沙華 飯田蛇笏 椿花集
雨つゆをたばねて澄めり曼珠沙華 松村蒼石 春霰
雨の日は冠重たき曼珠沙華 橋本美代子
雨傘の荷とはなりにし曼珠沙華 石塚友二 光塵
雲天や盛り過ぎたる曼珠沙華 松村蒼石 寒鶯抄
霧の香にしんじつあかき曼珠沙華 飯田蛇笏
露の香にしんじつ赤き曼珠沙華 飯田蛇笏 春蘭
青年のやうな茎から曼珠沙華 大石雄鬼
青杉の根方を攻めて曼珠沙華 館岡沙緻
青空に無数の傷や曼珠沙華 藤岡筑邨
青空は山国にのみ曼珠沙華 鷹羽狩行
面影のこゝろに残り曼珠沙華 星野立子
響きあふものあり吾と曼珠沙華 三好潤子
順礼千人止宿供養碑曼珠沙華 西本一都 景色
風と遊べる曼珠沙華皇女の陵 松村蒼石 雁
風音をかすかにつつみ彼岸花 松村蒼石 露
飛んで来る風に塩気や彼岸花 桑原三郎 花表
飛火して此処に一炎曼珠沙華 藤岡筑邨
飛鳥の子兜きし手に曼珠沙華 宮武寒々 朱卓
飛鳥野やかたまる声の曼珠沙華 中村明子
食卓に活けて茎すく曼珠沙華 横山房子
飲食は悼みのけじめ曼珠沙華 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
馬車駆るも港の夜恋ふ曼珠沙華 宮武寒々 朱卓
駈けり来し大烏蝶曼珠沙華 高浜虚子
高麗郷に花の一揆や曼珠沙華 柴崎左田男
髪はさざなみ寺に育ちて曼珠沙華 松本恭子 二つのレモン
髪黒きままの死願ふ曼珠沙華 朝倉和江
鬘もろとも假面もはづす曼珠沙華 竹中宏 饕餮
魂の炎か魄の炎か曼珠沙華 赤井淳子
鳥が知る天の淋しさ曼珠沙華 澤井我来
黄道や白道や葉の曼珠沙華 池田澄子
黒々とうしろ立山曼珠沙華 山路紀子
黒き服蛾のごとくゆく曼珠沙華 加藤知世子 黄 炎
しがらみの地縁人縁まんじゅさげ 高澤良一 宿好
まんじゅさげその朱ケ飛んで宇佐八幡 高澤良一 鳩信
懐古
まんじゅさげ此処を黄泉路と違へ咲く 高澤良一 随笑
まんじゅさげ生白の茎にょきにょきと 高澤良一 宿好
まんじゅさげ蒐まり咲けば墳めきぬ 高澤良一 寒暑
まんじゅさげ遅咲きの村円空守る 高澤良一 素抱
まんじゆさけ蘭に類ひて狐啼 蕪村遺稿 秋
まんじゆさげみぎにひだりに海を見る 軽部烏帽子 [しどみ]の花
まんじゆさげ一茎一花夜が離れ 野澤節子 黄 炎
まんじゆさげ夕べのひかりとなりて失す 岸田稚魚 筍流し
まんじゆさげ大千世界足下にす 高澤良一 寒暑
まんじゆさげ失せて行方もしれぬかな 鷲谷七菜子 花寂び
まんじゆさげ岬ちかくしてみちのべに 軽部烏帽子 [しどみ]の花
まんじゆさげ暮れてそのさきもう見えぬ 大野林火
まんじゆさげ暮れて師の声そのさきに 大串章 山童記
まんじゆさげ月なき夜も蘂ひろぐ 桂信子 黄 炎
まんじゆさげ海わたりくる風に静か 軽部烏帽子 [しどみ]の花
まんじゆさげ淋しきことの野にもあり 林原耒井 蜩
まんじゆさげ炎え晩年の菩提心 西村公鳳
まんじゆさげ畠をふちどりふちどらぬ 軽部烏頭子
まんじゆさげ百万本の茎襖 高澤良一 寒暑
まんじゆさげ蹴散らかしゆく小鬼あり 高澤良一 さざなみやっこ
まんじゆさげ遠の礁は浪しろく 軽部烏帽子 [しどみ]の花
まんじゆしやげよるべなく燃ゆ関所趾 柴田白葉女 『月の笛』
まんじゆしやげ傾くはなし露の中 松村蒼石 春霰
まんじゆしやげ子はせせらぎに蟹もとめ 太田鴻村 穂国
まんじゆしやげ手足みしみし出て帰る 栗林千津
まんじゆしやげ昔おいらん泣きました 渡辺白泉(1913-69)
まんじゆしやげ枯れておくれ毛めきしかな 野澤節子 遠い橋
まんじゆしやげ段畑の先雲に入り 関森勝夫
まんじゆしやげ飛車角参じ候や 栗林千津
七七忌修し師の夢まんじゆさげ 杉本寛
冬まんじゆさげに杳たる家出あり 友岡子郷
夜気のせてすでに枯色まんじゆさげ 伊藤京子
富士の水ここに湧き居りまんじゆさげ 田中冬二(1894-1980)
当山は真言律宗まんじゅさげ 高澤良一 寒暑
新しき地蔵の前掛けまんじゅさげ 高澤良一 寒暑
椎暗し冬まんじゆしやげ繁るのみ 松村蒼石 春霰
法華寺や開花非開花まんじゆ沙華 北野民夫
花と茎のみのデッサンまんじゆさげ 高澤良一 寒暑
武州 金澤山 弥勒院称名寺
蘂わたる一匹の蟻まんじゅさげ 高澤良一 寒暑
農民生活のくらさ まんじゅしやげ なぎ倒され 吉岡禅寺洞
野に出でてよりの水勢まんじゆさげ 高澤良一 ねずみのこまくら
金澤山(きんたくさん)弥勒院跡まんじゅさげ 高澤良一 随笑
高麗川を臨む林間まんじゆさげ 高澤良一 寒暑
むらがりていよいよ寂しひがんばな 日野草城
ひがんばな御武家様から死ぬるもの 筑紫磐井 婆伽梵
むらがりていよいよ寂しひがんばな 日野草城
蝶せせる蘂わなわなとまんじゅさげ 高澤良一 宿好
高麗・巾着田
散らばって散らばって日とまんじゆさげ 高澤良一 寒暑
まんじゅさげ蒐まり咲けば墳めきぬ 高澤良一 寒暑
月光に色を奪られてまんじゅさげ 高澤良一 素抱
石火矢のここに炸裂まんじゅさげ 高澤良一 石鏡
まんじゅさげ薙ぎて悪餓鬼健在ぞ 高澤良一 石鏡
いづれ行く彼の世の下見まんじゅさげ 高澤良一 暮津
悪たれは何處にでも居るまんじゅさげ 高澤良一 暮津

彼岸花咲きゐし場所を事細か 高澤良一 暮津
墓域より人家へ飛んで曼珠沙華 高澤良一 石鏡
描線のみな生きてゐる曼珠沙華 高澤良一 暮津
曼珠沙華先づは一輪挿にして 高澤良一 暮津
藪裾に燃え尽きをりぬ曼珠沙華 高澤良一 暮津
ポキポキと目で折り往きぬ曼珠沙華 高澤良一 暮津
曼珠沙華疾うに御首級あげられて 高澤良一 暮津
死人花蘂は変じてむらさきに 高澤良一 素抱

以上
by 575fudemakase | 2014-09-21 00:48 | 秋の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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