綿虫

綿虫

例句を挙げる。

あはたゞしき死や綿虫の蹤き行けず 殿村菟絲子 『旅雁』
あまたゐてあまた淋しき雪螢 原田青児
あわただしき死や綿虫の蹤き行けず 殿村莵絲子 雨 月
いつまでの微笑疲れや綿虫来 山田みづえ 忘
いつも来る綿虫のころ深大寺 石田波郷(1913-69)
お骨埋めて袖の雪虫そと払ふ 太田鴻村 穂国
かがよへる女人高野の雪蛍 高野千代
こころ急くとき綿虫の近づきぬ 藤井寿江子
この指にとまれ夕日も綿虫も 大石 悦子
さしのべし手と綿虫と宙にあり 綾部仁喜
しらしらと魂あそぶ雪螢 中村苑子
たましひは紺にてあらむ雪螢 三嶋隆英
とくゆるく雪虫まひて蘇鉄寺 飯田蛇笏 雪峡
ねむる泣く食ふそれだけの日々綿虫よ 栗林千津
はなやぎて与謝の雪虫舞ひにけり 加藤三七子
ふところに綿虫の入る淋しかろ 村越化石 山國抄
ふりかぶる大綿雲や鮎を掛く 楠目橙黄子 橙圃
ほそ道の序や綿虫の二つほど 中村明子
ぼろ~な衣に綿虫がつきて死ぬ 萩原麦草 麦嵐
また独りなり雪虫を見失ひ 山口速
まばたけば綿虫消ゆる野の入日 平賀扶人
みづからの重さ雪虫身を細め 河野南畦 『風の岬』
わが吐息綿蟲となりただよへる 石田あき子 見舞籠
ノートルダム寺院まで蹤く雪蛍 影島智子
一抹の魔風綿虫唇に触れ 殿村莵絲子 花寂び 以後
一日は結構永く綿虫とぶ 桑原三郎 晝夜 以後
三の酉すぎたここら軒々の雪虫 梅林句屑 喜谷六花
下りてくるとき綿虫の重くなる 比奈夫
二月堂昏れ綿虫か雪片か 長谷川史郊
二月礼者見し綿虫のわづかかな 萩原麦草
人の息かかるを待てり雪虫は 鷹羽狩行
人は罪を綿虫は綿負ひにけり 成瀬桜桃子 風色
今の欠くごとく綿虫消えにけり 斎藤玄 雁道
休みなく舞ふ一生や綿虫は 倉橋羊村
佇めば綿虫の舞ふ立子句碑 松下信子
停車場の大綿たれにかかはりある 草田男
停車場の大綿まへる暮情かな 中村草田男
十字架より空が低くて綿虫来 佐野まもる
友欲しと目なき綿虫泣きにけり 中村明子
号砲を打つ綿虫の群るる中 高田誠司
吉か凶か夕べ綿虫群がれる みどり女
吐息みな綿虫となる日暮どき 山崎富美子
唇緘ぢて綿虫のもうどこにもなし 能村登四郎 枯野の沖
啓蟄の雪虫つひに見ざりけり 松村蒼石 雪
喪の列の深息が呼ぶ綿虫か 橋本榮治 麦生
地震雲たりや大綿染めにけり 中戸川朝人
堂ぬちへ拝観人と大綿と 皆吉爽雨 泉声
堂前へすすむ綿虫眉にふれ 皆吉爽雨 泉声
壮年の兄遠ながめ雪虫くる 寺田京子
声なさぬ綿虫霧を遣りすごす 栗生純夫 科野路
夕焚火雪虫眉にただよへる 石原舟月 山鵲
夢にまた綿虫群るる中にゐき 相生垣瓜人 微茫集
大き旅了へ綿虫にむかへらる 斎藤節子
大綿が一直線の道迷ふ 稲畑広太郎
大綿にひきあげをりし視線かな 田畑美穂女
大綿に揃はぬ顔を捜しけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
大綿に橋の長さを見送りぬ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
大綿に荷を解くも荷を擔ふるも 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
大綿に蒼白の渦浮きあがる 村上高悦
大綿に軽く心をのせてみる 長浜光弘
大綿に頬のさみしき日なりけり 東野礼子
大綿のいつもわれより低くとぶ 篠田悌二郎
大綿のちぎれつきたる掌 高濱年尾 年尾句集
大綿のとび交ふそれも山日和 塩見武弘
大綿のひとつを肩に臘八会 西田栄子
大綿のひとつ薄明界を占む 岸田稚魚 筍流し
大綿のゆつくりと飛ぶそれでよし 辻田克巳
大綿の一つが三つにやがて消ゆ 岸田稚魚
大綿の三人寄れば悶着す 田川飛旅子
大綿の乾ききつたる舞を見せ 稲畑廣太郎
大綿の動けり人が過ぐる速さ 中拓夫 愛鷹
大綿の夕日消えいて吾にかえる 古沢太穂 古沢太穂句集
大綿の宙のたしかさ石の上 岸田稚魚 筍流し
大綿の日に明暗を見せて飛ぶ 吉村ひさ志
大綿の消えて消えざる虚空かな 稲畑汀子
大綿の澄みゐる暮のゆとりかな 鈴木花蓑句集
大綿の真白に迫りたるが無し 皆吉爽雨
大綿の空気に乗りて高みゆく 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
大綿の羽根いっぱいにうき上り 黒崎 幸子
大綿の翔ちし日向に水のさび 手塚美佐 昔の香
大綿の遊ぶやそこに刻ありし 岸田稚魚
大綿の静に逃げし水の空 年尾
大綿は心の翳を引きて舞ふ 風生
大綿は手にとりやすしとれば死す 橋本多佳子
大綿やしづかにをはる今日の天 楸邨
大綿やすくはれて手を易々と翔たず 松村蒼石 雁
大綿やわが顔のみが泪せる 松村蒼石 雪
大綿やアララギを買ふ町の書肆 山口誓子
大綿や医師季石いま手術中 細川加賀 生身魂
大綿や善財童子くらがりに 辻桃子
大綿や大晴れ富士の暮れ残り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
大綿や専務室はや他人の住 田川飛旅子 『邯鄲』
大綿や日射しを抱く寺の猫 吉井秀風
大綿や昔は日ぐれむらさきに 大野林火
大綿や朝夕富士を見るくらし 星野椿
大綿や褥にわすれたりし紐 中田剛 竟日
大綿や足音吸はる島の道 松崎鉄之介
大綿や頬とがり来し日暮どき 岸田稚魚 筍流し
大綿や風呂上る肩とがらせて 松村蒼石
大綿をとらへ放ちて損ねざり 赤松[けい]子 白毫
大綿を払ひ生涯教師の手 今瀬剛一
大綿を過ぎつつ時のしどろなる 斎藤玄 雁道
大綿小綿孫太郎虫の里に飛ぶ 林火 (白石市斉川)
大綿虫をあげおだやかに暮色あり 青邨
大綿虫を上げおだやかに暮色あり 山口青邨
大綿虫を揚げおだやかに暮色あり 山口青邨
大薩?界綿虫の死にどころ 加倉井秋を
天暮るる綿虫が地に着くまでに 橋本多佳子
夫が掌をひらく綿虫ひとつのみ 山口波津女 良人
妻の忌の昨日が遠し雪蛍 沼澤石次
婚終へて雪渓に死す雪虫か 堀口星眠 火山灰の道
子等が消え大綿が消え風暮れし 山田弘子
宙に一線か垂れる錯覚一ぴきの雪虫にして 安斎櫻[カイ]子
小さき影ふれあふさきの雪螢 仙田洋子 橋のあなたに
山墓のくらさ綿虫ただよはす 吉田未灰
山枯るるとも綿虫に雄と雌 栗生純夫 科野路
帯電すゆゑに綿虫はじきあふ 小川軽舟
平手もて綿虫打ちぬかなしき冬 内藤吐天 鳴海抄
強ひて言へば綿虫百はわが胎児 栗林千津
影もなく雪虫が来るもう癒えよ 小林康治 玄霜
往診にまた雪虫の頃が来し 新明紫明
忽ちに湧きし綿虫日を微塵 後藤比奈夫 紅加茂
愚の職に就くや歓喜の雪虫湧く 小林康治 玄霜
憂き日なり綿虫あまた飛ぶ日なり 遷子
懸巣鳴き綿蟲とべば雨上る 八木林之介 青霞集
我が家に居る綿虫を知らざりし 右城暮石 声と声
手に落ちて憐れまるなり綿虫は 村越化石 山國抄
手のひらに雪虫ひとつ這はせたり 太田鴻村 穂国
手の中にかすか綿虫の息づかひ 今鴎 昇
振袖につく綿虫が地を擦りし 萩原麦草 麦嵐
捉へむとせし綿虫の芯曇る 福永耕二
掬ひたる綿虫綿を吹き返す 能村登四郎
散策圏出でず綿虫光り飛ぶ 樋笠文
旅立ちの早や綿虫を追ふまなざし 鷲谷七菜子 花寂び
日あたりて綿虫の宙杉の宙 手塚美佐 昔の香
日だまりに出し綿虫のかゞやけり 相馬遷子 山河
日に透きて綿虫も持つかなしびか 坂本山秀朗
春の雪虫とぶ如く衰へぬ 石田波郷
晴れすぎて翳るいのちの雪螢 福永耕二
暮れなづむ綿虫あかり魚藍坂 加藤 汀
杉玉に大綿遊ぶ一惨事 殿村菟絲子 『菟絲』
村病むに似て雪虫の夥し 当摩八千代
東京に綿虫の飛ぶ交差点 山田閏子
東大寺かたちの影に綿虫か 杉山岳陽
格子戸を出て綿虫の舞の中 古賀まり子 緑の野
森の日の嘆きかたむく雪蛍 堀口星眠 火山灰の道
樹下に来て綿虫綿を失なひし 滝 佳杖
橋渡りきり綿虫を見失ふ 田代民子
死ぬことは死ぬこと眉に綿虫が 栗林千津
殉難の碑に見失う雪蛍 畠 友子
母は亡し綿虫に手をさしのべて 大木あまり 火球
比良比叡綿虫よりもかろき吾れ 渡辺恭子
永らへて雪虫を身にまとふかな 朔多 恭
決闘にゆく綿虫か白マント 堀口星眠 営巣期
波郷忌の綿虫なれば袖囲ひ 関戸靖子
波郷忌の綿虫出でよ出でて来よ 中谷五秋
泪脆くて綿虫のよく見ゆる 神戸周子
海の子に綿虫あまた飛べる日よ 真砂女
深息や大綿を辺に漂はす 加藤楸邨
溜め息に綿虫浮かれだしゐたり 仙田洋子 雲は王冠
溶岩原昏れると綿虫の白さのみ 加倉井秋を 午後の窓
澄みとほる天に大綿うまれをり 加藤秋邨 火の記憶
濠青むかな綿虫の飛べるとき 加古宗也
濡れもせず綿虫舞へり樅の雨 堀口星眠 営巣期
牡丹餅の粉がにほふ暮れの雪虫 太田鴻村 穂国
犬よりも大綿に手をさしのぶる 相生垣瓜人 微茫集
狂ほしき綿虫をこそ見出でけれ 相生垣瓜人 明治草抄
独楽木地師小屋へ雪虫の橋懸 石川桂郎 高蘆
獏の檻綿虫宙に遊びをり 町田しげき
産卵の雪虫飛びて裏羽黒 阿部月山子
眼の高さまで降りて来し雪婆 岡地蝶児
瞼攣るくもる綿虫見てあれば 下村槐太 天涯
穴居して見る綿虫のあたたかさ 萩原麦草 麦嵐
空に綿虫福音書など置きて逝く 文挟夫佐恵 雨 月
窖(はか)ちかく雪虫まふや野辺おくり 飯田蛇笏
窖ちかく雪虫まふや野辺おくり 飯田蛇笏 春蘭
立ち止まるたびに日暮の雪螢 平子 公一
立つ僧の綿虫を宙釈名す 村越化石 山國抄
童女の墓は童女の童丈綿虫飛ぶ 磯貝碧蹄館 握手
紅葉濃し綿虫も濃くなりにけり 相生垣瓜人 明治草抄
綿減りて大綿手よりのがれたる 皆吉爽雨
綿虫がとぶ御岳とわが間 原田喬
綿虫がとぶ青雲の志 辻田克巳
綿虫がわが憐むに任せけり 相生垣瓜人 明治草抄
綿虫が傘のがれゆく甲武信岳 堀口星眠 火山灰の道
綿虫が飛ぶ石の宙竜安寺 勝井良雄
綿虫といふ日がさせば消ゆるもの 今瀬剛一
綿虫といへど堪へゐる暮色かな 小島千架子
綿虫となりし命のひとかたまり 麦草
綿虫とぶ先の月日は誰が知らむ 文挟夫佐恵 雨 月
綿虫とぶ石のマリアの後向き 橋本美代子
綿虫とぶ綿の浮力は制し得ず 津田清子 二人称
綿虫とぶ胸の高さしか飛ばず 加倉井秋を
綿虫とぶ錆びしレールの待避線 長田等
綿虫と別れて熱き湯に入れり 相生垣瓜人
綿虫と吾ともろともに抱きしめよ 藺草慶子
綿虫と漂ひ年を越えゐしや 塘柊風
綿虫にありし空気の出入口 江川虹村
綿虫にあるかもしれぬ心かな 川崎展宏
綿虫にいのちの重さありて泛く 神蔵器
綿虫にかかはりゐたる宇陀郡 澄雄
綿虫にふれんと宙に躯を泳がす 内藤吐天 鳴海抄
綿虫にまかせて山を下りけり 辻桃子
綿虫にまたたけば日の没りにけり 鷲谷七菜子 花寂び 以後
綿虫にみちびかるるか染野のみち 鷲谷七菜子
綿虫に一切をおまかせします 川崎展宏
綿虫に体育館の扉あり 山尾玉藻
綿虫に出会ひここより先行けず 松本翠
綿虫に呼ばるるうしろ朱雀の門 和田悟朗
綿虫に慕はれしごと信じをり 相生垣瓜人 微茫集
綿虫に手が届きさう届かざり 西村和子 かりそめならず
綿虫に洗濯物の雫かな 加藤三七子
綿虫に涙袋を持ち歩く 小檜山繁子
綿虫に眉を上げたる齢かな 草間時彦 櫻山
綿虫に荒ぶるこころありにけり 三好さら
綿虫に覚えず耳を澄ましけり 相生垣瓜人 明治草抄
綿虫に触れ落魄の歩に似たり 村越化石 山國抄
綿虫に逢はんと来たり深大寺 外川飼虎
綿虫に遁(にぐ)る意のあるかなしさよ 悌二郎
綿虫に遁る意のあるかなしさよ 篠田悌二郎
綿虫に顔の力を応とぬく 藤田湘子
綿虫のいつぱいとぶ日里帰り 澤井悦子
綿虫のいづこの光負ひ来たる 大串章
綿虫のおちてきたりし茣蓙の上 中田剛 竟日
綿虫のおのが重さをとぶ雅歌や 寺山修司 『 わが高校時代の犯罪』
綿虫のかろさに生きんこころざし 石渡芳江
綿虫のこの不確かなもの掴む 塩川雄三
綿虫のさへぎる佳き事さきのさき 毛塚静枝
綿虫のその影ほどの不安かな 檜紀代
綿虫のたそがれの綿つと青き 正江
綿虫のただよふ是より北国路 佐野美智
綿虫のながれてあをき行手かな 黒田杏子
綿虫ののぼるそこより天なるぞ 鳥居おさむ
綿虫のはたしてあそぶ櫟みち 石川桂郎 含羞
綿虫のひとつただようもうひとつ 辻桃子
綿虫のふくらみて消ゆ山の墓 岸田稚魚 筍流し
綿虫のふと消え我があるばかり 斎藤 道子
綿虫のまはりの酸素世界とは 須藤 徹
綿虫のみな綿負ひて奇蹟なし 宗田安正
綿虫のもし声あらば嗚呼と云ふ 角光雄
綿虫のもの問ひ足らぬごとく去る 昭彦
綿虫のよりどころなく流れけり 小林康治 『華髪』
綿虫の一つふたつは愛さるる 山田みづえ 草譜
綿虫の中にわが息しづかなり 平井あい子
綿虫の倒るる波に吸はれたり 中拓夫
綿虫の双手ひらけばすでになし 石田あき子
綿虫の夕空毀れやすきかな 佐藤鬼房
綿虫の己の軽きこと知らず 丸山嵐人
綿虫の急がずに浮く一と処 八牧美喜子
綿虫の急げど雨の条増しつつ 原田種茅 径
綿虫の息あるごとし掌にあれば 石原 義輝
綿虫の息やはらかしあたたかし 上田日差子
綿虫の掌にのるほどのいのちかな 石川文子
綿虫の掌に触れ白さ失へり 長田等
綿虫の掌をはなれとぶ命かな 阿部みどり女
綿虫の日差しの中や五十代 伊藤京子
綿虫の暮れてしまへば如何ならん 猿橋統流子
綿虫の死しても宙にかがやくや 内藤吐天 鳴海抄
綿虫の水色のぼる波郷の忌 貞吉直子
綿虫の沈みては日に掬はるる 岡田貞峰
綿虫の泛く頃合に地震ひとつ 杉山十四男
綿虫の流れゆきてはひかりけり 澤村昭代
綿虫の浮力この世と思はれず 子安教子
綿虫の浮游病院の屋根越せず 多佳子
綿虫の浮遊病院の屋根越せず 榾本多佳子
綿虫の消えなむころにこころ遣り(深大寺) 岸田稚魚 『雪涅槃』
綿虫の消ゆる刻来て青を帯ぶ 能村登四郎 民話
綿虫の漂ひそめし夕ごころ 西村和子 かりそめならず
綿虫の漂ふ月日風鶴忌 小林康治 『存念』
綿虫の狂ひとぶとき黒衣なる 阿部みどり女
綿虫の私語のなかへは誰も行かぬ 河野南畦 『風の岬』
綿虫の穴場といへばそこらへん 伊藤 格
綿虫の綿の青さの日暮れくる 石田郷子
綿虫の群るるはじめをかなしめり 伊藤京子
綿虫の聞きたきものに翅の音 中谷まもる
綿虫の舞ひたすらの青衣 堀口星眠 営巣期
綿虫の舞ふ空ひくき輓馬市 島田 尚子
綿虫の身をひくやうに暮れはじむ 猪俣千代子 秘 色
綿虫の辻ならいくらでも待てさう 飯島晴子
綿虫の遊ぶやそこに刻ありし 稚魚
綿虫の遠を見し眼の其処に飛ぶ 槐太
綿虫の青空よぎる時の白 安井行子
綿虫の頭上はくらし北透きぬ 杉山岳陽 晩婚
綿虫の風よりうすき翅つかふ 篠原宵人
綿虫の飛びかふ妣の国に着く 佐川広治
綿虫の飛びゐて紅葉おとろふる 内藤吐天 鳴海抄
綿虫の飛ぶころといふ水の色 前島みき
綿虫の飛んでる途中われも途中 橋本美代子
綿虫の高さに日射す異人墓地 橋本榮治 麦生
綿虫の齢の中にみつつあり 能村登四郎
綿虫は頬かすめたり母葬り 伊藤敬子
綿虫は風に乗るため綿を着る 三須虹秋
綿虫もそれを追ふ眼も自在なり 爽雨
綿虫も吾もこの世に生を享け 奥村すみれ
綿虫も残照も消ゆかりそめとは 成瀬櫻桃子
綿虫も水の匂ひも木暗より 佐野美智
綿虫やきのふいづこに今日こゝに 水原秋櫻子
綿虫やけふ方丈は留守といふ 飴山實
綿虫やこゑの暮れゐるかくれんぼ 清水節子
綿虫やしめ鯖用の鯖仕入れ 鈴木真砂女 夕螢
綿虫やそこは屍(かばね)の出てゆく門 石田波郷(1913-69)
綿虫やそこは屍の出でゆく門 石田波郷
綿虫やつぶせるもののみつぶす世ぞ 香西照雄 対話
綿虫やひとり暮しの水の音 藤本鷹山
綿虫やひと日身につく紺絣 藤田湘子 雲の流域
綿虫やへらぶな釣りを片寄する 石川桂郎 高蘆
綿虫やむらさき澄める仔牛の瞳 水原秋桜子
綿虫やゆくほど枯れし野の明るさ 千代田葛彦 旅人木
綿虫や上目づかひの少年期 舟越とみ子
綿虫や両足の浮きはじめたる 桑原三郎 晝夜
綿虫や京より届く庵主の訃 大久保白村
綿虫や光りつづける死者の爪 宇多喜代子
綿虫や北さす川に沿へる宿 福田蓼汀 秋風挽歌
綿虫や北にさだまる磁石の針 村越化石 山國抄
綿虫や卓袱台捨てて一家去る 守屋明俊
綿虫や善意かくまでうとんじられ 小松崎爽青
綿虫や喪の出入りも夕ひととき 村越化石 山國抄
綿虫や坂に沁みゆく夕汽笛 川村紫陽
綿虫や夕ベのごとき昼の空 阿部みどり女 月下美人
綿虫や妻を染めなす夕茜 杉山岳陽 晩婚
綿虫や子を呼びに出て雲深き 原田種茅 径
綿虫や安静時間緩やかに 波郷
綿虫や寂光まとふ五合庵 石野冬青
綿虫や寒の地獄に仏の灯 野見山ひふみ
綿虫や心のうつろ太らせて 朝倉和江
綿虫や情かけすぎてあと悔いて 鈴木真砂女 夕螢
綿虫や抜け口遠き京の路地 茂里正治
綿虫や掃目ただしき母の庭 古賀まり子 緑の野
綿虫や日は焼岳にけぶり落つ 堀口星眠 火山灰の道
綿虫や晩年むしろ夢多き 宮下翠舟
綿虫や晴れても暗き北の海 角田双柿
綿虫や母あるかぎり死は難し 成田千空 地霊
綿虫や海道一重山幾重 百合山羽公 故園
綿虫や点景としてわれが在り 新谷ひろし
綿虫や焚かぬ炉端に日の差して 望月たかし
綿虫や病忘れて客用意 亀井糸游
綿虫や皿割りしこと母もあり 金子皆子
綿虫や立ち動くもの妻といふ 杉山岳陽 晩婚
綿虫や精進湖の水痩せ曲る 百合山羽公 寒雁
綿虫や納屋に用なき石の臼 坂本登美子
綿虫や納戸色なる妹背山 矢部白茅
綿虫や経師屋が来て大工来て 鈴木真砂女 夕螢
綿虫や縄掛けて売る皿茶碗 日原傳
綿虫や聖書の文字のこまかくて 内藤吐天 鳴海抄
綿虫や肺の破れを出て舞ふか 小檜山繁子
綿虫や胴体はいとしかりけり 佃悦夫
綿虫や般若の経はテープより 小檜山繁子
綿虫や葬りの道を掃きいそぎ(十一月二十一日) 岸田稚魚 『筍流し』
綿虫や虚空掴みしたなごころ 藤松遊子
綿虫や触るるたび綿へりゆくよ 小檜山繁子
綿虫や誰もが影を置いて去る 栗林千津
綿虫や負ふこと多き膝を折る 河野多希女 琴 恋
綿虫や足音を待つ小屋ぐらし 石川桂郎 四温
綿虫や露坐の仏の厚瞼 石川文子
綿虫や風*ぼうまざと波郷句碑 伊東宏晃
綿虫や首振つて消すいやな顔 細川加賀 生身魂
綿虫よさみしくて墓もつどふなり 成瀬桜桃子 風色
綿虫よ私と遠出してみぬか 白岩三郎
綿虫をいひ波郷忌をいふことも 岸田稚魚 『萩供養』
綿虫をつれて夕餉にかへりくる 羽公
綿虫をはづませてゐる泉かな きちせ・あや
綿虫をはらふは夢魔をはらふごと 仙田洋子 橋のあなたに
綿虫をひきつれてゆく片目かな 宇多喜代子
綿虫をまとふ別れとなりにけり 渡辺 立男
綿虫を不意に掴みし女の手 塩川雄三
綿虫を前後左右に暮れはじむ 野澤節子
綿虫を宙にてとどむ祈りのこゑ 寺山修司 未刊行初期作品
綿虫を容れたる空の気合いかな 永末恵子 留守
綿虫を待ちきれずして八つ手咲く 相生垣瓜人 明治草抄
綿虫を払ふは夢魔をはらふごと 仙田洋子
綿虫を払ふ邪心を祓ふごと 金堂豊子
綿虫を指ざす誓子掴む三鬼 右城暮石 声と声
綿虫を掌にとめて吹くひとり旅 稲垣きくの 牡 丹
綿虫を時に日よりも濃しと見る 後藤比奈夫 花匂ひ
綿虫を病者の夫の掌より受く 山口波津女 良人
綿虫を見ずや森ゆく恋人ら 堀口星眠 営巣期
綿虫を見てゐる牛と思ひけり 大串 章
綿虫を見失ひまた何失ふ 林翔 和紙
綿虫を見遺れり多く語らずに 下村槐太 天涯
綿虫を誓子指ざし三鬼つかむ 右城暮石
綿虫を青き焔と思ひけり 橋本美智代
綿虫飛ぶほかの一切消え失せよ 右城暮石 上下
綿虫飛ぶ粒ほどもなき身の軽さ 河野南畦 湖の森
綿虫飛ぶ胸の高さにしか飛ばず 加倉井秋を 午後の窓
綿蟲と同じ速さに三輪車 田川飛旅子
綿蟲に覚えず耳を澄ましけり 相生垣瓜人
綿蟲に訪はるる故のあるらしも 相生垣瓜人
綿蟲に遇ふと思へば今日遇へり 菱科光順
綿蟲のはたしてあそぶ櫟みち 石川桂郎
綿蟲の一つが我を呼びゐたる 河原枇杷男 蝶座
綿蟲の双手ひらけばすでになし 石田あき子 見舞籠
綿蟲の綿あたらしや深大寺 八木林之介 青霞集
綿蟲の頃とこそいへ深大寺 八木林之介 青霞集
綿蟲を前後左右に暮れはじむ 野澤節子
綿蟲を割つて総本山に入る・・・清浄光寺一ツ火 高澤良一 ねずみのこまくら 
綿蟲を待ち切れずして八つ手咲く 相生垣瓜人
綿買ひに行き綿虫の還らざる 白岩 三郎
縁あつて綿虫を数えはじめたる 佐藤きみこ
老農の視力雪虫に衰ふる 榎本冬一郎 眼光
葬の列いま綿虫のなか通る 伊藤霜楓
観音の日や大綿の飛び交へり 石嶌岳
記憶みな乳の香まとふ雪螢 広瀬町子
訪ひがての墓も綿虫飛ぶ頃か 石田勝彦 秋興
詩碑の詩をとりに来るよな雪螢 大橋敦子
語らふも物語らふも雪婆 佐々木六戈 百韻反故 初學
蹤けゆかな綿虫が火を発すると 政野すず子
身ほとりの綿虫ふやす嘆きては 朝倉和江
身を飾る綿が重荷の雪蛍 岩崎憲二
追へば消ゆ綿虫湖まで十歩かな 伊藤京子
過褒なる雪虫抱へきれぬほど 佐々木六戈
降りて来し綿虫口に吹きかへす 占魚
除幕せし句碑に大綿触れて舞ふ 石原栄子
雪催せめて綿虫出でて舞へ 相馬遷子 山河
雪呼びいる初綿虫を掌に開き 古沢太穂
雪婆ばんばと呼ばれ漂へり 長谷川双魚 風形
雪婆を斬り手應へをいぶかしむ 筑紫磐井 婆伽梵
雪虫が胸の高さすぐ眼の高さ 誓子
雪虫と落つるは雁の抜毛にや 安斎櫻[カイ]子
雪虫にあはき交りありしこと 赤尾兜子
雪虫にたしかな力古墳群 吉田美佐子
雪虫に沖つ波いろ濃かりけり 佐野俊夫
雪虫に生殖の意を見つゝ臥す 軽部烏頭子
雪虫のいそげばつきてただよへり 飯田蛇笏 春蘭
雪虫のかくまで碧き三ケ日 道山昭爾
雪虫のただよふ日暮手のあそぶ 桂信子 遠い橋
雪虫のつきくる距離も暗くなる 西村公鳳
雪虫のとべるに逢へり古き門 加藤楸邨
雪虫のはひ出して雪やはらかき 清崎敏郎
雪虫のひとつの死所をたなごころ 能村登四郎
雪虫のゆらゆら肩を越えにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪虫のコバルトほどの愛が欲し 金箱戈止夫
雪虫の下りて湿る余燼かな 石原舟月 山鵲
雪虫の塩より昏くあふれむと 齋藤玄 『雁道』
雪虫の恋一寸にして一途 鷹羽狩行 七草
雪虫の掌をはなれとぶ命かな 阿部みどり女 笹鳴
雪虫の輪舞ボッカを慰めよ 堀口星眠 火山灰の道
雪虫の青くなりつつちかづきぬ 篠原梵 雨
雪虫の飛ぶ廟前の木立かな 碧梧桐
雪虫の飛ぶ木洩日に木洩日に 嶋田摩耶子
雪虫や俄かに君が他界せし 瀧井孝作
雪虫や僧と妻とがつれだちて 寺田京子
雪虫や半眼にして見ゆるもの 矢島久栄
雪虫や古間百軒鎌を鍛つ 西本一都 景色
雪虫や大股に来る郵便夫 赤塚五行
雪虫や底湿る砂利にシヤベル挿す 榎本冬一郎 眼光
雪虫や日を重ねつつ筆不精 展宏
雪虫や梵字ぎくりととどまれる 松澤昭 宅居
雪虫や牛には温きもの啖はせ 榎本冬一郎
雪虫や田下駄を山の神に吊り 柴田冬影子
雪虫や蕭条として明るき野 柴田白葉女 花寂び 以後
雪虫や連山藍を重ね合ふ 菅原多つを
雪虫や雪降る前の音なき野 柴田白葉女 『冬泉』
雪虫を蓬髪に挿しどこへ行かん 細谷源二
雪虫を見てよりこころさだまらず 石川陽子
雪虫群る野に残光のあるかぎり 加倉井秋を 『欸乃』
雪虫雪虫とひとつみし思ひすぎにけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪蛍泉の楽はをはりなし 堀口星眠(1923-)
雪螢ひとりよがりのやうでもなく 金田咲子
雪螢日が低ければ低くゐる 原田青児
雪螢泉の楽はをはりなし 堀口星眠
雪螢近づきすぎて見失ふ 徳重怜子
雪蟲に川の底まで透けてをり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
電車擦過後の綿虫の如何にあらむ 加倉井秋を
青淵に棲む綿虫の日を知らず 小林黒石礁
馬籠路の綿虫指にとまりけり 森田峠 避暑散歩
魂の重さ夕日に雪蛍 徳田千鶴子
あすなろの林うごかす雪ぼたる 吉田紫乃
五平餅にほへる路地の雪ぼたる きくちつねこ
嘘を言ふシヨール臙脂に雪ぼたる 龍太
夢に来て無言の夫よ雪ぼたる 緒方みどり
町裏にひとつ橋古る雪ぼたる 松島 利夫
石切の奈落にうかぶ雪ぼたる 衣川 砂生
若狭井の乾きし榊雪ぼたる 石鍋みさ代
遭難の錨祀られ雪ぼたる 岡野風痕子
綿虫に道を訊きゆく多聞院  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-11-13 00:08 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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