冬籠

冬籠

例句を挙げる。

「ヨブ記」読み神を疑ふ冬籠 柴田奈美
あけくれの酒食に飽かず冬籠り 吉武月二郎句集
あたらしき茶袋ひとつ冬籠 荷号
あれこれと怠り勝ちに冬籠 増田多計志
いつまでも女嫌ひぞ冬籠 炭 太祇 太祇句選
いまは亡き人とふたりや冬籠 久保田万太郎 流寓抄
うぐひすの巣の隣あり冬籠 松岡青蘿
おとうとの頭でつかち冬籠 二村典子
おのれをもうとんじをりし冬籠 森澄雄 四遠
かくて冬籠りゆく庵在りにけり 高木晴子 花 季
かたまりて飯匙蛇のめうとの冬籠り 軽部烏帽子 [しどみ]の花
かの世より届きし本と冬籠り 長谷川櫂 虚空
かもじ造る音せねば淋し冬籠 左衛門 (丹波竹田)
からかひに異派の友来つ冬籠 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
がぶがぶと白湯呑みなれて冬籠 前田普羅
きのふより今日を大事に冬籠 後藤夜半 底紅
こころまで閉ざしておらず冬籠 三宅 桂
しんしんと冷ゆる日のあり冬籠 久保田万太郎 流寓抄
たぐひなきひとり男よ冬籠 加舎白雄
ため置きし虱遁げけり冬籠り 会津八一
たる事や世を宇治茶にも冬籠 松岡青蘿
たれかれの写真の下に冬籠 比叡 野村泊月
とふふ屋と酒屋の間を冬籠 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
とりとめし古き命や冬籠 高田其月
なき妻の名にあふ下女や冬籠 炭 太祇 太祇句選
はつとする古句が相手よ冬籠 加藤郁乎(1929-)
ぶるぶるとファックス始動冬籠 高澤良一 寒暑 
まこと人に負き得てんや冬籠り 青峰集 島田青峰
また見やる瓶ィの黄瀬戸や冬籠 尾崎迷堂 孤輪
まづ祝へ梅を心の冬籠り 松尾芭蕉
みちのくの土の馬置き冬籠 福田蓼汀 山火
もう急がぬ齢の中の冬籠 村越化石 山國抄
ものうくて二食になりぬ冬籠 河東碧梧桐
もの食うて汚れし卓や冬籠 大橋櫻坡子
よみかきに凝りて果敢なき冬籠り 石原舟月 山鵲
わが老をいたはりてわが冬籠 後藤夜半 底紅
わが聲も忘るるほどに冬籠 阿部みどり女
われからといふことばあり冬籠 京極杞陽 くくたち下巻
われに来る夢美しき冬籠 森 澄雄
シャガールの蒼きをんなと冬籠り 鍵和田釉子
シャッターを閉ざし神輿の冬籠 太田常子
ニュートンも錬金術師冬籠り 有馬朗人
ネクタイをつけしは外出冬籠 青葉三角草
一と日出てまた冬籠る皿の色 中村明子
一室を虹の間と呼び冬籠 田中裕明 先生から手紙
一村は青菜つくりて冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
一生を勤勉に生き冬籠 黒川花鳩
一箱の林檎ゆゝしや冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
丈け高き妻もおかしや冬籠り 会津八一
三月に南米にゆく冬籠 上野泰 春潮
三軒家生死もありて冬籠 鬼城
不沙汰して訪ふ先先や冬籠り 会津八一
世に疎く住みて仏師の冬籠る 山口燕青
中庭に湯殿つくるや冬籠 会津八一
五十にして冬籠さへならぬ也 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
人も来ぬ根岸の奥よ冬籠 正岡子規
人を吐く息を習はむ冬籠 千那 霜 月 月別句集「韻塞」
人形に愛憎すこし冬籠 後藤夜半(1895-1976)
人形の髪梳り冬籠 後藤夜半 底紅
人我を忘れ去らんか冬籠 山田不染
人来れば雨戸を開けて冬籠 暮石
人生に間といふがあり冬籠 亀井尚風
人誹(そし)る会が立つなり冬籠 小林一茶 (1763-1827)
人間の海鼠となりて冬籠る 寺田寅彦(1878-1935)
今去りし屑屋の素性冬籠 上野泰 春潮
今日の客娘盛りの冬籠 後藤夜半 底紅
今生のいくばくをかし冬籠 尾崎迷堂 孤輪
今食うてはや来る膳や冬籠 小杉余子 余子句選
仏書より好きな俳書や冬籠 月尚
何にもかも文にゆだねぬ冬籠り 飯田蛇笏 山廬集
何事も言はで止みなん冬籠 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
侃々も諤々も聞かず冬籠 正岡子規
俎の荒れに水かけ冬籠 西山常好
信州の人に訪はれぬ冬籠 正岡子規
先生の筆見飽きたり冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
兵糧のごとくに書あり冬籠 後藤比奈夫 花びら柚子
冥れば死の影まざと冬籠 上林白草居
冬籠こもり兼たる日ぞ多き 加舎白雄
冬籠さきをとゝひの汁もある 高田蝶衣
冬籠してむつかしき世に生きて 中村芝鶴
冬籠して疎くをりさとくをり 後藤夜半 底紅
冬籠その一日の達磨の忌 森澄雄
冬籠つひに一人は一人かな 久保田万太郎 流寓抄
冬籠また寄り添はん此のはしら 芭蕉 選集古今句集
冬籠りときに梅酒の酔ごこち 松浦 釉
冬籠りまたよりそはん此はしら 芭蕉
冬籠り染井の墓地を控へけり 夏目漱石 明治三十九年
冬籠り炭一俵をちからかな 僧-滄波 俳諧撰集「有磯海」
冬籠り猫が聾になりしよな 内田百間
冬籠り琴に鼠の足のあと 正岡子規
冬籠り画も描いてみたき茶目気あり 坪内逍遥 歌・俳集
冬籠り畳の上のらんの鉢 会津八一
冬籠り真上日のあと月通る 桂信子
冬籠り米つく音を算へけり 青蘿
冬籠り虫けらまでもあなかしこ 貞徳
冬籠り豁山人と改めて 会津八一
冬籠り黄表紙あるは赤表紙 夏目漱石 明治二十八年
冬籠るや鶲は桐に妻は化粧に 島村はじめ
冬籠る人の灯や東山 会津八一
冬籠る北に窓あり遺影の間 殿村莵絲子 花寂び 以後
冬籠る家や婢の減るまゝに 島村元句集
冬籠る尻の下ゆく夜汽車かな 会津八一
冬籠る燈下に青き蜜柑かな 会津八一
冬籠る燈色の天井旅人に 香西照雄 素心
冬籠る父の座右の書を借りて 上野泰 佐介
冬籠る身の一灯をともしをり 村越化石
冬籠る部屋や盥の浮寐鳥 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬籠わきすぎし湯に入りけり 久保田万太郎 流寓抄
冬籠われを動かすものあらば 高浜虚子
冬籠万巻の書を守るごとし 山田みづえ
冬籠不自由ながら婢も置かず 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬籠五六椀を人の数 高橋睦郎 金澤百句
冬籠人を送るも一事たり 高浜虚子
冬籠今日より香のかはりけり 五十嵐播水 埠頭
冬籠仕事の山を崩すべく 稲畑汀子
冬籠代り~に泣く子やな 楠目橙黄子 橙圃
冬籠伴侶の如く文机 上野泰 春潮
冬籠伴侶の如く机あり 上野泰
冬籠其所駄句菴と名付くべし 会津八一
冬籠動かざること鰐のごと 高澤良一 宿好 
冬籠友来て本を持ちゆけり 田村了咲
冬籠和尚は物をのたまはず 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬籠喪にこもるかに振舞へる 久保田万太郎 流寓抄以後
冬籠夜をりの病時を得し 松岡青蘿
冬籠夜着の袖より窓の月 正岡子規
冬籠家動かさん謀りごと 上野泰 春潮
冬籠小猫も無事で罷りある 漱石
冬籠少しの用に長電話 三木由美
冬籠山籟聞いて起きしぶる 高田蝶衣
冬籠山門の牒句会かな 尾崎迷堂 孤輪
冬籠座右に千枚どほしかな 高浜虚子
冬籠弟は無口にて候 夏目漱石 明治三十年
冬籠影かたまれば出てゆきぬ 栗林千津
冬籠或は留守といはせけり 会津八一
冬籠撤下の神酒にほろ酔ひつ 高田蝶衣
冬籠文来ぬは文書かぬゆゑ 高本時子
冬籠日々の献立くりかへし 坊城董子
冬籠日あたりに臥てただ夫婦 飯田蛇笏 山廬集
冬籠日のくたびれる明り窓 杉風
冬籠日記に夢を書きつける 正岡子規
冬籠書斎の天地狭からず 高浜虚子
冬籠書痴といはるゝ鬢の霜 真下喜太郎
冬籠朝日を拝む廊下かな 会津八一
冬籠机辺雑然日々に日々に 上野泰 佐介
冬籠正坐の猫を乗せて正坐 香西照雄 素心
冬籠水を甘しと思ひけり 露月句集 石井露月
冬籠火上に瞳涸らしけり 乙字俳句集 大須賀乙字
冬籠燈光虱の眼を射る 蕪村 五車反古
冬籠病めるおもへば我の折るゝ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
冬籠祈るべき神もなかりけり 寺田寅彦
冬籠第五句集へ志 上野泰
冬籠米つく音のかすかなり 夏目漱石
冬籠米つく音を算へけり 松岡青蘿
冬籠米搗く音の幽かなり 夏目漱石 明治二十八年
冬籠素槍一本具足箱 中村史邦
冬籠背筋正して鯉の陣 香西照雄 素心
冬籠花鳥風月侍らしめ 上野泰 春潮
冬籠薬袋を身ほとりに 高澤良一 宿好 
冬籠観音経を襖かな 竹冷句鈔 角田竹冷
冬籠解きて会ふ人みな親し 林加寸美
冬籠貧乏神と共にかな 村山古郷
冬籠足らぬがままに足るままに 上野泰 佐介
冬籠長寝しからぬ人となり 井原西鶴
冬籠雲見てあればともりけり 太田鴻村 穂国
冬籠顔も洗はず書に対す 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬籠飯櫃一つ磨がかれて 小澤碧童 碧童句集
冬籠鼓の筒のほこりかな 木導 霜 月 月別句集「韻塞」
凡に過ぐ冬籠にも予定表 宍戸富美子
北山に茶の湯の沙汰や冬籠 会津八一
十年の耳ご掻きけり冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
十津川を出でし柚餅子と冬籠 後藤比奈夫 花びら柚子
印刀をとぐ硯の裏や冬籠 高田蝶衣
取り下ろすものゝ埃や冬籠 池内たけし
受け霊(ひ)てふ筆まづ立つや冬籠 加藤郁乎 江戸桜
受話器から世間洩れ聞き冬籠る 谷口東人
古寺や狐顔出す冬籠 四明句集 中川四明
古書の山天井の空や冬籠 柑子句集 籾山柑子
吾が性(さが)に肖(にし)し子を疎み冬籠 竹下しづの女句文集 昭和十五年
味噌倉の鍵あづかるや冬籠 会津八一
命二つ互に恃み冬籠 富安風生
咲き絶えし薔薇の心や冬籠 正岡子規
哀楽のこゝろも老いぬ冬籠 河野静雲 閻魔
啖みちらし書きちらしつつ冬籠 山口青邨
善根は冬籠るさへあはれなり 会津八一
囲まれし蔵書の裾に冬籠 井上兎径子
地の底に釣瓶の音や冬籠 沢田はぎ女
坐右の火に重湯あたゝめ冬籠 上林白草居
埃じむ眼鏡磨きて冬籠 高澤良一 宿好 
壁張るや古新聞に冬籠 寺田寅彦
壺のごと胸中深め冬籠 村越化石 山國抄
変化住む屋敷もらひて冬籠 與謝蕪村
夕膳に鰯の煮つけや冬籠 小澤碧童 碧童句集
夜を好む吾に癖あり冬籠 定雅
夢に舞ふ能美しや冬籠 松本たかし(1906-56)
大和糊少なくなりぬ冬籠 上野泰 春潮
大壺の肩の埃や冬籠 河野静雲 閻魔
大空と大海の辺に冬籠る 原石鼎 花影以後
天井に取付(とりつく)蝿や冬籠 柴道 古句を観る(柴田宵曲)
天井に箴貼られけり冬籠 会津八一
夫の持ち帰る世間や冬籠 辻井のぶ
夫唱婦随婦唱夫随や冬籠 高野素十(1893-1976)
妻とあり子とあり斯かる冬籠 京極杞陽 くくたち下巻
妻を遺る本家の用や冬籠 会津八一
妻子なき芭蕉を思ふ冬籠 岡本松浜 白菊
家の犬庭駆け廻り冬籠 上野泰 春潮
宿替の蕎麦を貰ふや冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
寺にありて茶粥茶飯に冬籠 高浜虚子
尋ねよる知らぬ詩人や冬籠 会津八一
小夜ながら紅茶の時間冬籠 楠目橙黄子 橙圃
屏風には山を画書いて冬籠り 松尾芭蕉
屑籠に抛る紙屑冬籠 上野泰 春潮
山を見て心に足りぬ冬籠 河東碧梧桐
山水を引くこころあり冬籠 斉藤夏風
山灼けのまま冬籠りダムを護る 毛塚静枝
巻紙の落書あきぬ冬籠 会津八一
席題を貼りつ放しや冬籠 寸七翁
幸運な一老人や冬籠 岩木躑躅
床の間のビールの壜や冬籠 会津八一
座布団の直下南米冬籠 上野泰 春潮
弟子縁にうすき老師や冬籠 馬場太一郎
心ゆく絵紙屏風や冬籠 会津八一
心消し心灯して冬籠 後藤夜半(1895-1976)
心病めば身も病むものか冬籠 東浦佳子
忘れし字妻に教はり冬籠 富安風生
思ひごと必ず夢み冬籠 岩崎照子
思ふこと書信に飛ばし冬籠 高浜虚子
恋辞せず敵否まんや冬籠 島村元句集
愚陀仏は主人の名なり冬籠 夏目漱石 明治二十八年
成田詣で終りし母の冬籠 杉本寛
戦へる闇と光や冬籠 野見山朱鳥
戸に犬の寐がへる音や冬籠 蕪村
戸明くれば東街道や冬籠り 几董
手をちゞめ足をちゞめて冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
折々に伊吹を見ては冬籠り 松尾芭蕉
押入れに棚をふやして冬籠 山口波津女 良人
拾はれし猫も居つきて冬籠 桑田詠子
捨てられぬものはこゝろよ冬籠 加舎白雄(1738-1791)
掻き立てし火の粉のよぎる冬籠 岩田由美 夏安
新聞に吾が事出づる冬籠 会津八一
旅をする春の思案や冬籠 正巴
旅終へし師はそのままに冬籠 近藤一鴻
日本海みたきねがひや冬籠 久保田万太郎 流寓抄
早寝して夢いろいろや冬籠 日野草城
昼も酒夜も酒なる冬籠 小澤碧童 碧童句集
晩年の塵すこし立て冬籠 小林康治 『潺湲集』
暈けて映る写真眺めて冬籠 高澤良一 随笑 
暗き灯に悲しみ伏すや冬籠 会津八一
書きなれて書きよき筆や冬籠 正岡子規
書を買ふが為め家貧し冬籠 菅原師竹句集
書を貸して書架淋しさや冬籠 池上浩山人
木の洞にをる如くをり冬籠 上野泰
未来記に吾れ死ぬとあり冬籠 会津八一
朱硯へ花瓶の水や冬籠 会津八一
来て留守といはれし果や冬籠 炭 太祇 太祇句選
来よと言ふ小諸は遠し冬籠 武原はん女
来信へ直ぐに返信冬籠 上野泰 春潮
松とのみどんいどと鶴の冬籠り 広瀬惟然
板に彫る火炎は白し冬籠 野見山朱鳥
柚餅子百吊つて安堵の冬籠 文挟夫佐恵
根深煮る色こそ見へね冬籠 横井也有 蘿葉集
此の里は山を四面や冬籠り 支考
死神を召使ひをり冬籠 小林康治 『潺湲集』
母に客我にも客や冬籠 星野立子
母屋貸し離室暮しの冬籠 中田余瓶
毛頭巾をかぶれば猫の冬籠 中村史邦
油売も来ぬ屈詫や冬籠 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
泥深き小田や田螺の冬籠 正岡子規
浪の雪戸板びらめや冬籠 言水 選集「板東太郎」
海鳴りの遠音を聞くや冬籠 癖三酔句集 岡本癖三酔
湯に入りてはなやぐ顔や冬籠 龍男
濤音のある夜なき夜も冬籠 蓼汀
火の島を眼前に置き冬籠 野上水穂
火曜日は手紙のつく日冬籠 高野素十
火襷の備前を置けり冬籠 澄雄
炎ゆる目を飯匙蛇はつむりて冬籠り 軽部烏帽子 [しどみ]の花
炭の香に膝直さばや冬籠 水田正秀
炭はねて心動きぬ冬籠 成美
無為と言ふ日のありてよし冬籠 杉原竹女
煮こぼるる鍋にさし水冬籠 村山砂田男
燃料の安算段や冬籠 河野静雲 閻魔
爪もろく剪るに甲斐なし冬籠 飯田蛇笏 椿花集
物捜がす机の下や冬籠 会津八一
物言はぬ顔となりけり冬籠 山田人
物食はで生きらるべしや冬籠 会津八一
犬の目の人に似てくる冬籠 小林輝子
瓦斯つける袂の燐寸冬籠 宵曲
生涯の今がしあはせ冬籠 渡辺セツ
用のある時立ち上り冬籠 上野泰 佐介
留主札もそれなりにして冬籠 一茶 ■年次不詳
癌の文字トーチカに似て冬籠り 金子 潤
白雲の去来見送る冬籠り 遠藤はつ
目の中におはす仏や冬籠 野村喜舟 小石川
真の自我冬籠る仮の自我ありつ 久米正雄 返り花
眼がつねに涙にうるみ冬籠 林火
眼ばかりは達磨にまけじ冬籠 来山
眼をつむり耳をはるかへ冬籠 村越化石
硝子戸の枠真新らし冬籠 右城暮石 上下
窓もとに底干す船や冬籠り 会津八一
立ち出でゝ戻る日もあり冬籠 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
竹林の奥に尼さま冬籠 鈴村 寿満
筆擱いて又部屋歩く冬籠 比叡 野村泊月
紙屑のたまるばかりや冬籠 久保田万太郎 流寓抄以後
組紐の低きへら音冬籠 山下美典
縁側へ出て汽車見るや冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
羽子板の句を案じつつ冬籠 後藤夜半 底紅
老い二人双六におどけ冬籠 山田みづえ
老僧の爪の長さよ冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
耳の根に襟を重ねて冬籠 浜田酒堂
聡くゐるこころに疲れ冬籠 浅井青陽子
職引きて冬籠る図は鰐のうたた寝 高澤良一 宿好 
背き果つるを終の願や冬籠 松根東洋城
背に触れて妻が通りぬ冬籠 石田波郷
胡棲突く鳥の嘴見ぬ冬籠 長谷川かな女 雨 月
能なしは罪も又なし冬籠 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
脇指も吾もさびけり冬籠 水田正秀
腰あげてすぐ又坐る冬籠 高浜虚子
膚に触る剃刀おぞや冬籠 島村元句集
膳並べていつも四人や冬籠 龍胆 長谷川かな女
色糸の赤増えてゐる冬籠 井上雪
花食べに来る鳥ありと冬籠 宇佐美魚目 天地存問
荒れ狂ふ海を忘れて冬籠 池内たけし
落ちし歯を抽出にため冬籠 河野静雲 閻魔
蓑笠も世に足る人や冬籠 尾張-露川 俳諧撰集「藤の実」
蔵幅の数かけ盡す冬籠 会津八一
蕪村の蕪太祇の炭や冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
薪をわる妹一人冬籠 正岡子規
薪を割るいもうと一人冬籠 正岡子規
衣笠の山をうしろに冬籠 五十嵐播水 播水句集
袖口のくれなゐ古りぬ冬籠 つゆ女
袖無しを著て老がまし冬籠 小澤碧童 碧童句集
親も斯見られし山や冬籠 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
誘はれず誘はず老いの冬籠 藤田素候
読みちらし書きちらしつつ冬籠 青邨
起り来る事に即して冬籠 上野泰 春潮
身に添てさび行壁や冬籠 炭 太祇 太祇句選
身に添ひて窪みしペット冬籠 上野泰
身ほとりに死神を飼ひ冬籠 小林康治 『華髪』
連句讀めば芭蕉が好きや冬籠 星野立子
道元のこゑなきこゑに冬籠 原裕 『王城句帖』
部屋毎に時計を置いて冬籠 山口波津女
郵便受見に出るだけの冬籠 阿部みどり女
重き書は手近に置いて冬籠 佐藤紅緑
金屏の松の古さよ冬籠り 芭蕉
金曜は花の来る日や冬籠 佐伯哲草
金泥の額の古びや冬籠 会津八一
鈴廼舎の座の半時や冬籠 松根東洋城
鉢に見る梅の莟や冬籠 井月の句集 井上井月
鍋敷に山家集あり冬籠り 蕪村
鏡とりて我に逢はゞや冬籠 原月舟
長押なる赤き団扇や冬籠り 会津八一
間食にモンキーバナナ冬籠 高澤良一 随笑 
闇がりに湯気吐く鍋や冬籠 会津八一
隣人の深き構へや冬籠 石塚友二
雑炊のきらひな妻や冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
難波津の旅やあつまの冬籠 尾崎紅葉
雪国へ帰る人あり冬籠 田福
電車通ふ度びの地ひびき冬籠 臼田亞浪 定本亜浪句集
青山の学校にあり冬籠 子規句集 虚子・碧梧桐選
頭の大き子規の画像に冬籠る 原裕 『出雲』
頼りとす小机一つ冬籠 郷田潭水
風垣の内夜々の月さす冬籠 金尾梅の門 古志の歌
風船を居間に放ちて冬籠 山口波津女(1906-85)
飲食(おんじき)をせぬ妻とゐて冬籠 森澄雄
香のわるき炭つぎたして冬籠 大場白水郎 散木集
香の名をみゆきとぞいふ冬籠 竹下しづの女 [はやて]
馬がくふて垣まばらなり冬籠 古白遺稿 藤野古白
髯寒し小倉の里の冬籠り 会津八一
鮎網を客間に吊し冬籠 伊藤いと子
鮭に塩なじみやすくて冬籠 伊藤京子
鷹番や小屋の住居も冬籠 笑工 選集「板東太郎」
鹿喰へと人は言ふなり冬籠 道立
鼠にもやがてなじまん冬籠 榎本其角
鼠よく捕る猫膝に冬籠 大場白水郎 散木集
いつしかに石蕗の花さく冬ごもり 八十島稔 秋天
おもひ寄る夜伽もしたし冬ごもり 水田正秀
かけものの壁に跡あり冬ごもり 涼莵
かの詩人一語のために冬ごもり 皆吉司
この一書読みごたへある冬ごもり 下村梅子
ぢゝばゝの一つキセルに冬ごもり 河野静雲 閻魔
また人の死んだしらせや冬ごもり 久保田万太郎 流寓抄以後
みどり児の顔の埃や冬ごもり 楠目橙黄子 橙圃
もの音を妻はたやさず冬ごもり 柳芽
一ぱいに日のさす屋根を冬ごもり 鳳朗
一家みな病母につかへ冬ごもり 西島麦南 人音
万緑やおもへばながき冬ごもり 西本一都
京の水遣ふてうれし冬ごもり 炭 太祇 太祇句選
仁斎の炬燵に袴冬ごもり 黒柳召波 春泥句集
仏壇に在す父母冬ごもり 河野静雲 閻魔
信濃なる僕置けり冬ごもり 蕪村遺稿 冬
俳諧の三神こゝに冬ごもり 高井几董
僧にする子を膝もとや冬ごもり 炭 太祇 太祇句選
全集を積めば墓碑めく冬ごもり 橋本榮治 麦生
冬ごもり「おしん」朝見て昼も見て 松倉ゆずる
冬ごもり世間の音を聞いて居る 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬ごもり五車の反古の主かな 黒柳召波 春泥句集
冬ごもり人にものいふことなかれ 惟然
冬ごもり仏にうときこゝろ哉 与謝蕪村
冬ごもり又よりそはむ此はしら 芭蕉
冬ごもり古き揚屋に訊れけり 炭 太祇 太祇句選
冬ごもり塩せんべいに母の顔 滝井孝作 滝井孝作全句集
冬ごもり壁をこころの山に倚 與謝蕪村
冬ごもり妻にも子にもかくれん坊 蕪村遺稿 冬
冬ごもり孝といふ字の抜け難く 松山足羽
冬ごもり家ぬち大樹立つごとし 澤井我来
冬ごもり家主よりとて畳見に 五十嵐播水 播水句集
冬ごもり小鳥に人の名をつけて 片山由美子 水精
冬ごもり心の奥のよしの山 蕪村遺稿 冬
冬ごもり書籍に床の歪み居り 阿部みどり女 笹鳴
冬ごもり未だにわれぬ松の瘤 芝不器男
冬ごもり母屋へ十歩の椽傳ひ 蕪村遺稿 冬
冬ごもり漉し水の音夜に入りぬ 白雄
冬ごもり燈下に書すとかゝれたり 蕪村 冬之部 ■ 人人高尾の山ぶみして一枝の丹楓を贈れれり、頃ハ神無月十日まり、老葉霜にたえず、やがてはらはらと打ちりたる、ことにあハれふかし
冬ごもり燈光虱の眼を射る 蕪村遺稿 冬
冬ごもり紙屑かごと共に在り 瀧井孝作
冬ごもり苦髪のびるにまかせけり 久保田万太郎 流寓抄以後
冬ごもり虫けらまでもあなかしこ 貞徳
冬ごもり身はひゞ入りし甕のごと 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
冬ごもり閉ぢてはあける目なりけり 久保田万太郎 流寓抄以後
冬ごもり顔も洗はず書に対す 正岡子規
冬ごもり餅くひちぎりかねしかな 久保田万太郎 流寓抄以後
冬ごもり鶏は卵を生みつゞけ 鈴木真砂女 生簀籠
勝手まで誰が妻子ぞ冬ごもり 蕪村 冬之部 ■ 人人高尾の山ぶみして一枝の丹楓を贈れれり、頃ハ神無月十日まり、老葉霜にたえず、やがてはらはらと打ちりたる、ことにあハれふかし
北方の土を供養す冬ごもり 宮武寒々 朱卓
増水や岨の立木の冬ごもり 洞両 選集「板東太郎」
売喰の調度のこりて冬ごもり 與謝蕪村
大儀して鍋蓋ひとつ冬ごもり 李由 霜 月 月別句集「韻塞」
天竜の鳴瀬になれて冬ごもり 塩沢はじめ
妻と吾同時に欠伸冬ごもり 澤井山帰来
子を持てばなめづる情に冬ごもり 飯田蛇笏 山廬集
客去りてもとの庵や冬ごもり 五十嵐播水 播水句集
屁くらべがまたはじまるぞ冬ごもり 一茶
居眠リて我にかくれん冬ごもり 與謝蕪村
屋根ひくき裾うれしさよ冬ごもり 蕪村
川獺をたしかに見たり冬ごもり 浜田酒堂
師と呼ばるゝ我にはあらず冬ごもり 岡本松浜 白菊
底意にや広間の香も冬ごもり 美濃-恕風 俳諧撰集「有磯海」
思ひ出し独合点や冬ごもり 松藤夏山 夏山句集
折々に伊吹を見ては冬ごもり 松尾芭蕉
抽出に音の出るもの冬ごもり 折井紀衣
抽斗に翅をもつ種冬ごもり 鷹羽狩行 月歩抄
換えられし厠草履や冬ごもり 五十嵐播水 播水句集
放すかと問るゝ家や冬ごもり 向井去来
旅をする春の思案や冬ごもり 正巴 五車反古
日のあたる紙屑籠や冬ごもり 草城
日出没潮干満や冬ごもり 東洋城千句
昼の闇得し猫の眼と冬ごもり 草田男
期することなくもなくして冬ごもり 下村梅子
松嶋に雪つもるらむ冬ごもり 会津八一
桃源の路次の細さよ冬ごもり 與謝蕪村
横つらの墨も拭はず冬ごもり 大魯
欠伸して伸びして猫と冬ごもり 清水基吉
死んでゆくものうらやまし冬ごもり 久保田万太郎(一子の死をめぐりて)
母よりの伽羅蕗これに冬ごもり 有働亨 汐路
水槽にどぜうばかりや冬ごもり 蓮見勝朗
渓の蟹捕つて薬に冬ごもり 吉本伊智朗
湯殿には椎茸づくり冬ごもり 爽雨
滝の音真近に聞いて冬ごもり 中川宋淵 詩龕
火と話し水と話して冬ごもり 岡本眸(1928-)
灯の下の吾子踏むまじや冬ごもり 楠目橙黄子 橙圃
炭二俵壁にもたせて冬ごもり 正岡子規
病中のあまりすゝるや冬ごもり 向井去来
目はきげん口は不機嫌冬ごもり 久保田万太郎 流寓抄
相寄りしいのちかなしも冬ごもり 安住敦
終夜鳩のねごとや冬ごもり 会津八一
能の村上座下座に冬ごもり 角川源義 『冬の虹』
舟にねて荷物の間や冬ごもり 向井去来
蛤のふたみもありて冬ごもり 斯波園女
誰彼の生死気になる冬ごもり 古賀まり子
貧書斎志功菩薩も冬ごもり 青畝
賣喰の調度のこりて冬ごもり 蕪村遺稿 冬
身に添うてさび行く壁や冬ごもり 太祇
身ぬちにもたまりゆくもの冬ごもり 片山由美子 天弓
近々と山のまなざし冬ごもり 手塚美佐
返信のおほかたを否に冬ごもり 橋 石
逃げてゆく日脚を追はず冬ごもり 久保田万太郎 流寓抄
週刊誌たまれば焼いて冬ごもり 田村了咲
酒のまぬ一日もあらず冬ごもり 会津八一
鉄瓶に傾ぐくせあり冬ごもり 久保田万太郎 流寓抄以後
鍋敷に山家集あり冬ごもり 與謝蕪村
鏡見ぬ日はおのれ消え冬ごもり 井沢正江 晩蝉
間借りして隣はひとり冬ごもり 上村占魚 鮎
障子には毛布つるしぬ冬ごもり 室生犀星 犀星発句集
雉子一羽諸生二人の冬ごもり 黒柳召波 春泥句集
雑水のなどころならば冬ごもり 榎本其角
難波津や田螺の蓋も冬ごもり 松尾芭蕉
雨しみて幹の黒さや冬ごもり 阿部みどり女 笹鳴
雪隠と背合せや冬ごもり 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雲のぞく障子の穴や冬ごもり 正岡子規
音いつもひとりの音や冬ごもり 鎌谷ちゑ子
髯の面哲人に似て冬ごもり 大橋敦子
鹿喰へと人はいふなり冬ごもり 道立 五車反古
はや~と誰冬ごもる細けぶり 一茶
冬ごもる合掌造むき~に 素逝
冬ごもる大藁庇ふかく垂れ 長谷川素逝 村
冬ごもる子女の一間を通りけり 普羅
冬ごもる心の松の戸をほそめ 炭 太祇 太祇句選後篇
心音てふ身内の音に冬ごもる 野澤節子
悪食のけものゝごとく冬ごもる 角川春樹
烏瓜冬ごもる屋根に残りけり 室生犀星 魚眠洞發句集
買ひ置きの焼栗つまみ冬籠  高澤良一  宿好
足の筋違ふへまして冬籠  高澤良一  石鏡
鉛筆は皆とんがらせ冬ごもり  高澤良一  石鏡
ポンジュースなどに温もり冬籠  高澤良一  石鏡
*ポンジユースは夏みかん汁入りの砂糖湯
冬籠手許に置ける園芸誌  高澤良一  石鏡
冬籠り妻と足型見比べて  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-02 00:41 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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