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風邪

風邪

例句を挙げる。

あかあかと山車灯し過ぐ風邪心地 内藤吐天 鳴海抄
あきらめしうつろ心に風邪ひきぬ 林原耒井 蜩
あけくれに富貴を夢む風邪哉 前田普羅
あたゝかな窓に風邪の名残かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
あつあつのけんちん汁に風邪抜かん 高澤良一 鳩信 
あれこれと今年の風邪の諸症状 高澤良一 素抱 
あれこれと言葉尽くされ風邪心地 ふけとしこ 鎌の刃
いとしみて手足を洗ふ風邪のあと 千手 和子
いよ~に世のまぼろしや風邪の熱 尾崎迷堂 孤輪
いろいろな所が風邪を引いてをり 櫂未知子 貴族
うつされし風邪のうらみを言つてみる 田中敬子
うつ伏して風邪を軽しむ女かな 阿部みどり女 笹鳴
うはごとをいうて泣きをり風邪の妻 森川暁水 黴
おちあひし風邪聲同士十三夜 久保田万太郎 流寓抄以後
おのがじし詩のさみしさに風邪ごこち 石原舟月
おほぜいの命あづかり風邪に臥す 五十嵐播水 埠頭
おもふこと遠くもなりぬ風邪に寝て 臼田亞浪 定本亜浪句集
きゝわけのある子ない子に母風邪寝 村山笑石
くらがりに灯を呼ぶ声や風邪籠り 村上鬼城
こころなみ風邪の外出の昼がすみ 太田鴻村 穂国
ことわれぬ保険に入りて風邪心地 宍戸富美子
この場合乳菓に挟む風邪ぐすり 宮武寒々 朱卓
この夜亡き妻と話して風邪心地 森澄雄 所生
この女医も風邪ひけり午の剋鮑をさく 岸風三楼 往来
この子亦髪伸びてきて風邪らしも 京極杞陽
この永き風邪もつて厄落すべし 細川加賀
これしきの風邪に倒るゝ老いしかな 八島半仙
さげ髪をして床にあり風邪の妻 山口波津女 良人
じわじわと風邪に染まりてゆくらしも 相生垣瓜人 明治草抄
すぐ乾く風邪の唇行商す 東出善次
たちまちにあられ過ぎゆく風邪ごもり 桂信子 黄 瀬
つり皮にひしと風邪気の眼をつむり 下田実花
ぬぎ掛けし羽織が赤く風邪の床 八牧美喜子
ねぎま汁風邪の眼のうちかすみ 下村槐太 光背
のら猫の裏声ききて風邪心地 藤井寿江子
はやり風邪お鉢が廻り来て臥せぬ 高澤良一 宿好 
ひた急ぐ風邪を振切り得るとして 相生垣瓜人 微茫集
ひとごゑのなかのひと日の風邪ごこち 桂信子 黄 瀬
ひとり身の低くつめたる風邪の髪 菖蒲あや 路 地
ふるさとや風邪のくすりにたうがらし 加藤覚範
ほつれ毛を噛みて起きをり風邪の妻 森川暁水 黴
ほとばしる洟やなみだや風邪人 西島麦南 人音
ほのと饑じ風邪の汗とるもの脱げば 石川桂郎 高蘆
ほろほろと風邪の涙流しけり 阿部みどり女
ぼんやりとかかりてをりぬ風邪の罠 市野川隆
また今日の暮色に染まる風邪の床 能村登四郎
また風邪を引いたとはもう言へずをり 後藤比奈夫 めんない千鳥
まなうらの瀧白々と風邪きざす 馬場移公子
みかんのいろほどの風邪熱感じをり 上村占魚 『方眼』
みどり子の風邪に泣きぐせつきにけり 大熊輝一 土の香
めつたやたらの線風邪神の壁画 栗林千津
やすまざるべからざる風邪なり勤む 竹下しづの女句文集 昭和十四年
やはらかき畦踏んでまだ風邪抜けず 岸田稚魚 筍流し
よろこびて吾子のまつはる風邪休み 金子 潮
わが声に覚めてとまどふ風邪のゆめ 稲垣きくの 牡 丹
わが風邪のつのるや寒き患家にて 相馬遷子 雪嶺
わが風邪の癒えよと夫の手を賜ふ 山口波津女 良人
ゐのこづちいとしや妹も風邪ひきて 下村槐太 天涯
クレームの詫の風邪声気遣はる 川村紫陽
スペインより帰りし夫の風邪に臥す 田中芙美
セーターの王子風邪気におはしけり 八木林之介 青霞集
パイプの汚れ拭き捨つ風邪の薬包紙 猿橋統流子
ポンプの柄がたがた風邪の農家族 宮坂静生 青胡桃
モヂリアニの女の首も風邪心地 細川加賀 『玉虫』
一家の燈風邪の薬も照らしけり 百合山羽公 故園
一日のいつも低き日風邪ごもり 皆吉爽雨
一日を臥して風邪寝の薄まぶた 高澤良一 燕音 
一粒一粒葡萄愛すや風邪の床 宮坂静生 青胡桃
一通の風邪の見舞のラブレター 溝口 博子
七福詣して来て風邪を授かりぬ 富安風生
三従の妻や風邪にも従ひて 本宮鼎三
下痢また風邪わが新年の賑やかに 石塚友二
不機嫌といふにあらねど風邪心地 上村占魚 球磨
主婦のわれ風邪もひかねばならぬらし 下村梅子
久方の麻生病院院長風邪 塚本邦雄 甘露
久米の子や洟を舐め~風邪ひける 山口青邨
久闊や風邪の衾を出でゝ逢ふ 清原枴童 枴童句集
九月盡胸あつくなる風邪ぐすり 古沢太穂 古沢太穂句集
二三日風邪にこもるや時雨月 松瀬青々
人の引く風邪は引かじと薬喰 亀井糸游
人妻の風邪声艶にきこえけり 高橋淡路女
人情は不変と風邪の父帰国 杉本寛
人日や寝酒にまとふ風邪の神 角川源義
今日の燈のまた灯りたる風邪寝かな 阿部みどり女 笹鳴
仏事のあとインターナシヨナル的風邪 橋田サカエ
似顔絵の唯一似たる風邪の髪 対馬康子 純情
何もかも御用納めの風邪ぐすり 有働亨 汐路
何をきいても風邪の子のかぶりふり 小路智壽子
値下りし豚を見比ぶ風邪の眼に 大熊輝一 土の香
儲からぬ話聞き飽き風邪心地 猿橋統流子
児を抱いて風邪聲憂ふ鳳仙花 富田木歩
冬靄を窓に近寄せ風邪に伏す 及川貞 夕焼
冷蔵庫風邪おびやかす充電音 河野南畦 湖の森
初夢の中まで風邪をひいてをり 半谷洋子
初薬師風邪いましめて帰しけり 安住敦
勤憂し幾度風邪をひきかへし 新井英子
匂ひなき色なき風邪に染まりけり 相生垣瓜人 微茫集
医師の云ふ風邪軽んぜず山茶花どき 高澤良一 素抱 
医師来れば障子の穴に風邪童子 三嶋 隆英
十一月しょっぱなの風邪貰ひけり 高澤良一 燕音 
友さきに風邪声に海の暮色言ふ 宮津昭彦
双の眼のほのぼのと風邪占むるなり 相生垣瓜人 微茫集
双六や風邪を召したる姉の側 蘇山人俳句集 羅蘇山人
受験子を励まし風邪をいたはらる 林翔 和紙
古妻の引き添へ風邪や又宵寝 楠目橙黄子 橙圃
古寺の僧の風邪なぞ便ンなけれ 尾崎迷堂 孤輪
合唱に溶けぬ風邪声中年や 川村紫陽
含ませし乳房に知るや風邪の熱 北川ミチ女
吾子とならんで風邪に臥すこそたのしけれ 佐野良太 樫
咋今の風邪でありぬ作男 飯田蛇笏 山廬集
咳けば脾腹が痛し何の風邪 石塚友二 光塵
咳けば風邪かと問ひぬかなしけれ 宮部寸七翁
嘘少し薬にまぜて風邪の子に 野口たもつ
嚏しておのれも朝ゆ風邪ごころ 石塚友二 光塵
土塊の日当るみつつ風邪ごこち 石川桂郎 含羞
土運びはこぶ灯の街風邪はやる 桜井博道 海上
坂の下まで来て風邪の熱きざす 下村槐太 天涯
坑内の底の底まで風邪はやる 中野詩紅
壁うつす鏡に風邪の身を入るる 桂信子 黄 炎
売れのこる芒みみづく風邪引くな 高澤良一 ねずみのこまくら 
夕の雨風邪見舞ひ来て風邪心地 川村紫陽
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
夜となりて風邪の床とも見えぬなり 山口波津女 良人
夜の臥床風邪の臥床と並びけり 山口波津女 良人
夜を境に風邪熱落したり穀雨 長谷川かな女 花寂び
夜半のおちば夜明のおちば風邪ごゝち 及川貞 夕焼
夜半の燈の我に親しき風邪かな 阿部みどり女 笹鳴
夢を見しこと風邪熱の出たるらし 下村梅子
大仏に見下されゐて風邪貰ふ 高澤良一 ねずみのこまくら 
大江山に雪来今年も風邪をひく 猿橋統流子
大病のあとの風邪ひく二月かな 五十嵐播水 埠頭
大空を見てゐて風邪を引きにけり 小川軽舟
大舟に乗った気のして風邪の身は 高澤良一 宿好 
天井高き思ひに寝しが風邪引きぬ 乙字俳句集 大須賀乙字
夫かなしひくべからざる風邪をひき 山口波津女 良人
夫の寛容わが風邪癒えて失せにけり 及川貞 夕焼
夫の忌を修すや風邪の褥より 竹下しづの女
夫の風邪癒えて白粥けさ炊かず 及川貞 榧の實
夫医師吾の風邪などとりあはず 嶋田摩耶子
妻がいふ風邪の我儘許しけり 上村占魚 球磨
妻が手のつめたかりけり風邪顔 吉武月二郎句集
妻の風邪わるく不義理をそここゝへ 森川暁水 黴
妻叱り身のさびしさよ風邪を知る 杉山岳陽 晩婚
妻風邪寝今朝も出勤見送らず 中村青蔦
娘のつくる白粥匂ひ風邪籠り 城間芙美子
婢をよびて厨ごと言ふ風邪ごもり 及川貞 夕焼
嫌はるる癒えし風邪また引き直し 川村紫陽
子は風邪に籠れりゆらぐねずみさし 太田鴻村 穂国
定年勧告するもさせるも風邪声に 近藤一鴻
宵月のさやけきを見ぬ風邪心地 楠目橙黄子 橙圃
家籠る風邪の教師に電話くる 上村占魚 鮎
寒取や柱のかげの風邪の神 増田龍雨 龍雨句集
寝飽きたる風邪の枕を裏がへす 榎本冬一郎 眼光
寺もめる和尚の話風邪の床 西山泊雲 泊雲
少女のごと風邪ひき易し野ばらの日日 金子皆子
少年の風邪の三日を紺絣 蓬田紀枝子
居直れる風邪を追い出す粉薬 高澤良一 鳩信 
山の娘の風邪にこもれる蚊帳かな 原石鼎
山妻に風邪移りたる移したる? 高澤良一 鳩信 
師の僧は風邪ごもりとや花の宴 野村泊月
幕間や風邪ごゑのほの甘やかに 藺草慶子
干潟まで行けぬ孔雀と風邪の子と 神尾久美子
年用意風邪も抜かねばならぬかな 三輪一壷
幾日も風邪に寝て身が棒になる 山口波津女
床下に生きものゐるや風邪癒えず 山口誓子
庭石の輝る日もなくて風邪ごもり 桂信子 黄 瀬
庵主さまよりとどきたる風邪封じ 黒田杏子 花下草上
建長寺さまのぬる燗風邪引くな 石塚友二(1906-86)
弓道部主将なりしが風邪寝とよ 都筑智子
引きさうに思ひしときに引きし風邪 稲畑汀子 汀子第二句集
影法師髪みだれたる風邪気かな 中村汀女
心弱く風邪ひき易き体かな 野村喜舟 小石川
忽然と喉もと深く風邪もらふ 赤松[けい]子 白毫
恋猫やラジオは風邪を警しめつ 岸風三樓
愉しさに似し風邪熱の兆しくる 右城暮石 声と声
憤り生れきて風邪の癒えをりぬ 鈴木貞雄
戀風邪や管弦の管ほそりつつ 塚本邦雄 甘露
或る僧の風邪ひく桃の夕かな 大峯あきら
手がすこし荒れてをりたる風邪心地 後藤夜半 底紅
手に載せて益子の壺の風邪心地 猪俣千代子 堆 朱
手鏡を床にかくして風邪の妻 山口波津女 良人
抜けてゆく風邪に豪華なシクラメン 安藤恵子
持ち帰る鞍馬の闇に得し風邪を 宮津昭彦
持ち運ぶ風邪こぼるなり咳くたびに 宮津昭彦
指ふれしレモンや風邪をつのらする 野澤節子 牡 丹
支出なき一日風邪寝の窓汚れ 菖蒲あや あ や
教職に検診きびし風邪ごこち 木村蕪城 寒泉
散歩道夜風の尖る風邪心地 米須盛祐
文弱の性にて風邪も引き易く 西沢破風
方丈の風邪嗄れたまふ一偈かな 阿波野青畝
旅に得し風邪に旅よりながく臥す 中戸川朝人 残心
旅発ちのわれを見送る風邪の妻 近藤一鴻
日当つてくるや風邪寝の枕許 上崎暮潮
日本の風邪も癒えたる帰国の日 山田弘子 こぶし坂
日脚のび風邪気の残る足のうら 篠田悌二郎
早寝してなほりしほどの風邪なりし 稲畑汀子
昏々とねてわが風邪寝あはれまれ 篠田悌二郎
昨日診し風邪患者なりチンドン屋 瀧澤伊代次
昼は雑炊夜はシチューに風邪寄せず 高澤良一 随笑 
時、人を待たざる旅の身の風邪寝 稲垣きくの 牡 丹
暮からの風邪まだぬけず切山椒 久保田万太郎 流寓抄
曇天の母屋に風邪の老婆かな 廣瀬直人
書留来て戸外眩しむ風邪寝妻 鍵和田[ゆう]子 未来図
月のものありてあはれや風邪の妻 森川暁水 黴
望郷を洩らすや風邪の南部杜氏 廣瀬 遊星
朝よりは鳴かぬカナリヤ風邪籠 阿部みどり女 笹鳴
杖の吾に風邪を引くなと車椅子 村越化石
枕もとにぎやかにして風邪に臥す 右城暮石 上下
枕もとの筆硯にお風邪かろからず 河野静雲 閻魔
枕辺に財布よせたる風邪かな 吉武月二郎句集
枯黍の残るをいとふ風邪の妻 阿部ひろし
染め髪の根本の白髪風邪の母 鹿山隆濤
柚子一つ机の上や風邪ごもり 皆川白陀
梅干の種にこだはる風邪心地 小泉八重子
梅林をざつと見て来ぬ鼻つ風邪 高澤良一 ももすずめ 
検温器ふり過ちぬ風邪ごこち 中尾白雨 中尾白雨句集
橄欖のエーゲは知らず風邪ごもり 文挟夫佐恵 雨 月
機械油で硬ばる工衣風邪の悪寒 津田清子 礼 拝
死ぬること風邪を引いてもいふ女 高浜虚子
残り福いただき戻り風邪ごゝち 岸風三楼 往来
母恋し壁にかこまれ風邪に寝て 菖蒲あや 路 地
母見んと夢たのしみぬ風邪の昼 長谷川かな女 雨 月
気力あるときにも風邪を引くことも 稲畑汀子 汀子第二句集
水つかふ音をきゝをり風邪ごゝち 西山誠
水仙の影卓に落ち風邪ごこち 古沢太穂 古沢太穂句集
水道を出しつつけふも風邪ごこち 山口波津女 良人
水飴の固きを掬ひ風邪心地 丹羽啓子
河口より遡り来る風邪心地 五島高資
泣きやすき娘子となりぬ風邪の妻 上村占魚 球磨
泣初の注射にぎはふはやり風邪 三嶋 隆英
洗面の湯気の中なる風邪心地 岡本眸
流寓の家を夢みる風邪にねて 百合山羽公 故園
流氷を待ち風邪人となりゆけり 斎藤玄
流行風邪わが家に迫る目に見えて 百合山羽公 故園
流行風邪吾が屋台骨揺らすなり 高澤良一 鳩信 
海峡を北へ北へと流行風邪 澤 草蝶
海鼠なり風邪こじらせて臥せる身は 高澤良一 さざなみやっこ 
消えやらぬ風邪伸びそめし蕗の薹 相生垣瓜人 明治草抄
深夜往診風邪の外套重く着て 下村ひろし 西陲集
温もるは汚るるに似て風邪ごもり 岡本眸
澄む水に映りしよりの風邪ごこち 佐野美智
火の元と風邪ひきの猫心配す 桑原三郎 晝夜 以後
灯を消してこしかた浮かぶ風邪の闇 稲垣きくの 牡 丹
煖房にいよいよ風邪を意識せる 内藤吐天 鳴海抄
煤雲の凝りとどまれり風邪の家 森川暁水 黴
熱の子を負ひ来し祖母も風邪患者 渡会 昌広
爐塞や耳目に潜む風邪の気 石井露月
父の忌に吾が風邪声の正信偈 山口超心鬼
父子風邪兎のたつる音に臥す 古沢太穂 古沢太穂句集
片付けてをると風邪ごゑ返しけり 高澤良一 さざなみやっこ 
牛買ひも来てをり風邪の牛を診る 右城暮石 上下
犬吠は男波ばかりに風邪ごこち 猪俣千代子 秘 色
猫の足に惚るる如きは風邪心地 永田耕衣 驢鳴集
玄関に厨にさとき風邪の耳 阿部みどり女 笹鳴
玄関に風邪を置き去り風の神 阿部みどり女 『石蕗』
玉ねぎが白くて風邪をひいてゐる 富澤赤黄男
玉葱苗霜枯れぬつぎつぎ風邪に寝る 古沢太穂 古沢太穂句集
生姜湯に顔しかめけり風邪の神 高浜虚子
男の子等に雛のすしを風邪の床 高木晴子 晴居
異次元を浮遊しており風邪籠り 高井喜子
疲れては風邪ながびかせ二兎を追ふ 佐野美智
病雁の湯に入りほとぶ風邪ごころ 角川源義
白浪に背後をみせて風邪つのる 上田五千石 田園
白湯の匂ひさしてばかりに風邪ごもり 右城暮石 声と声
目をかるくつむりてゐたり風邪の神 今井杏太郎
目刺にがし風邪に身ふるふなげきの日 森川暁水 淀
真青な空より風邪をひきこみし 波多野爽波 鋪道の花
真青にわらび煮て風邪忘れけり 及川貞 夕焼
眠るのみにて主婦の風邪癒ゆるかな 吉野義子
眠れねば風邪寝の闇の羽交締め 稲垣きくの 牡 丹
眼の裏に風邪が潜みぬ去年今年 加藤知世子 花寂び
知らぬ町にて風邪ぐすり買ふ店探す 安住敦
知りそめし日のごと三つ編み風邪の妻 茂里正治
石鼎忌より風邪ごゑの昔ばなし 原裕 青垣
硝子戸の中の静かや風邪心地 青峰集 島田青峰
税務署に呼び出されゐつはやり風邪 村山古郷
空は黒き雪満ちてをり風邪に臥す 徳永山冬子
空を見て二階の風邪寝ながびきぬ 中戸川朝人 残心
童話読みつづくよ風邪の子ねむるまで 郷原弘治
節穴の日が風邪の子の頬にありて 竹下しづの女 [はやて]
粥腹の半日もたず風邪はじめ 橋本榮治
納豆が風邪寝の箸を逃げたがる 稲垣きくの 牡 丹
絵本と散らばる甥よ姪よ風邪ひくな 菖蒲あや
縁談や巷に風邪の猛りつゝ 中村草田男
繚乱の花柄布団風邪ひけり 能村研三 鷹の木 以後
美しき猫の跳躍風邪一家 寺井谷子
羽織の鉤とれたるほどの風邪ごゝち 久米正雄 返り花
翳りなく水流れをり風邪ごこち 岸田稚魚 筍流し
耳鳴るや師走を寝よと賜ふ風邪 及川貞 夕焼
聞いて来し風邪とのみただ思ひゐしが 上村占魚 球磨
肉親来て墓前にてのむ風邪ぐすり 中山純子 沙羅
胎動を確めんと妻の風邪の瞳は 鳥居おさむ
脳外科の待合室に風邪の神 河内一明
腹の子の風邪引くといふ霜夜かな 野見山朱鳥
船旅や憑きて離れぬ風邪の神 山崎ひさを
芍薬の芽の色濃くて風邪引きぬ 林原耒井 蜩
花一樹ありて風邪寝のやすからぬ 馬場移公子
花鋏ひと冬を身に風邪栖ませ 佐野美智
苗木市素通り母の風邪見舞 本田豊子
草の上を風邪がすべりて賀茂祭 鷲谷七菜子
草木瓜や歩きつつ子は風邪癒やす 加藤知世子
荼毘を待つ風邪身の悲愁は怒るに似て 赤城さかえ句集
菊なます風邪の夕餉を床のうヘ 及川貞 夕焼
菜園の青さ誰それ風邪をひき 岸風三楼 往来
葉牡丹の輪郭ゆるび風邪きざす 玉出雁之
著ぶくれて懶く居れば風邪かな 温亭句集 篠原温亭
薬臭を訴ふる子や風邪に臥す 東野昭子
薬飲みむしろつのれる風邪心地 南光 翠峰
蘭の影障子にあるや風邪籠り 島村元句集
蘭鋳の痩せたれど風邪は引かざらむ 林原耒井
蟹揚ぐる見ての膝より風邪兆す 石川桂郎 高蘆
裏伊吹見しより旅の風邪癒えず 能村登四郎
裏山の日暮れのいろの風邪心地 白岩三郎
褞袍着て風邪の女房となりけらし 原コウ子
襲はれてあいたた筋肉痛の風邪 高澤良一 燕音 
覗かれし風邪寝のこころ揺藻なす 稲垣きくの 牡 丹
親子三人風邪声寄せて浅蜊汁 増田龍雨 龍雨句集
親方の風邪の不機嫌持て余し 橋場もとき
言訳を考へてゐる風邪心地 竹中しげる
話ししてゐる聞に風邪のこゑとなる 篠原梵 雨
誰よりも早き夕食風邪の子に 志岐寿枝
豆腐ありなにより風邪の箸すすむ 石川桂郎 高蘆
贋物の壷を愛して風邪籠 小泉八重子
起きいでて貌の小さき風邪かな 松村蒼石 露
起きて食ふ心直ぐ消え風邪人 阿部みどり女 笹鳴
路地奥にまた路地がありはやり風邪 茨木晶子
蹼の吾が手に育つ風邪心地 奥坂まや
身のうちに紙の音して風邪心地 猪俣千代子 堆 朱
身の一処しめりて風邪をながびかす 中戸川朝人 残心
辞世句の習作二、三風邪寝の床 守田椰子夫
迷惑をかけまいと呑む風邪ぐすり 岡本眸
逢ひたくて凧をみてゐる風邪ごこち 桂信子 黄 炎
過信せし健康はたと風邪に臥し 嶋田摩耶子
醜草のきつねいろなる風邪気かな 今野福子
里の子と路に遊べり風邪の神 露月句集 石井露月
金魚燃ゆ粥煮こぼして風邪癒ゆる 河野南畦 湖の森
金魚瓶愛づる嫂風邪つのる 宮武寒々 朱卓
鉄板打つ音風邪の頭にたまりゆく 榎本冬一郎 眼光
銃眼の視野ことごとく風邪流行る 野見山ひふみ
鍋洗ふうしろを見せし風邪の神 猪俣千代子 堆 朱
長梅雨の風邪寝で減らす持ち時間 池田政子
長風邪の二人たまたま街で会ふ 細見綾子 黄 炎
長風邪の或る日レモンを買ひに出づ 細見綾子 黄 炎
降りて曇り風邪の鼻孔と遠爆音 古沢太穂 古沢太穂句集
雑炊の韮片よせて風邪長し 石川桂郎 高蘆
雨漏や風邪の衾の裾あたり 清原枴童 枴童句集
電球が風邪寝の顔の上にともる 藤岡筑邨
音もなく起きて来てをり風邪の妻 浜井武之助
頬はれて梅雨の子風邪か生ふる歯か 皆吉爽雨 泉声




頭から風邪ひくといふ頭巾かな 永田青嵐
頭の芯に海が鳴るのみ風邪残る 伊豆三郷
風邪うつしうつされわれら聖家族 伊藤白潮
風邪おして着る制服の釦多し 榎本冬一郎 眼光
風邪かくすとておろかにも顔つくる 山口波津女 良人
風邪かしら会ふ人がみなうとましく 下田青女
風邪がぬけるくだものを噛む顔汚れたる 瀧井孝作
風邪ぐすりたうとう買はず旅終る 稲畑汀子
風邪ぐすり授けて医家も寝むとする 百合山羽公 故園
風邪ぐすり煎じて起居あらあらし 宮武寒々 朱卓
風邪ごこちシュークリームのかたちかな 奥坂まや
風邪ごこち夜の水栓締めても洩る 三好潤子
風邪ごこち鳳仙花の種とりつくし 大木あまり 火のいろに
風邪ごゑにみんないらつこいらつひめ 松澤昭 麓入
風邪ごゑに商ふまこと見えにけり 石原舟月 山鵲
風邪ごゑのうだうだ云うて茶を所望 高澤良一 宿好 
風邪ごゑのおのれに遠き柚味噌かな 森澄雄
風邪ごゑの三面鏡をたたみけり 行方克巳
風邪ごゑの住職が鐘撞きにゆく 廣瀬直人
風邪ごゑを常臥すよりも憐れまる 野澤節子 黄 瀬
風邪ときゝ流しもならず電話する 高濱年尾 年尾句集
風邪ながし夢の中までシヤベル持つ 岩田昌寿 地の塩
風邪ならむ纏はり来るものあるは 相生垣瓜人 明治草抄
風邪なりや薔薇を離れて薔薇の線 加藤楸邨
風邪にねて我が家の一日見たりけり 五十嵐播水 埠頭
風邪に伏し竹の日斑を眼うらに 阿部みどり女
風邪に寝ていくたび書架へ妻をやる 桂樟蹊子
風邪に寝てすこし静な世なるかな 尾崎迷堂 孤輪
風邪に寝てわれと遊べるうれしさよ 原コウ子
風邪に寝てゐしが起き来て洗濯す 吉良比呂武
風邪に寝て仮りのこの家をたのみとす 山口波津女 良人
風邪に寝て夢の明恵をさづかりし 酒井和子
風邪に寝て愛しき一日はやも過ぐ 相馬遷子 山国
風邪に寝て母の足おと母のこゑ 馬場移公子
風邪に寝て頬のあかるき雛祭り 川崎展宏
風邪に寝て頭のなかに海青く 山口波津女 良人
風邪に臥して窓の日ざしを喜べり 青峰集 島田青峰
風邪に臥すや枕に近き手水鉢 雑草 長谷川零餘子
風邪に臥す一日梅の光りざま 高澤良一 ねずみのこまくら 
風邪に臥す妻に鎖し出し鍵を袂 森川暁水 黴
風邪に臥す子の目に熱のありそめぬ 高濱年尾 年尾句集
風邪に臥て雨戸一枚ひきのこす 原田種茅 径
風邪ぬけし下戸の一献袖座敷 平井さち子 鷹日和
風邪のあと励みてひとに気遣はる 根岸 善雄
風邪のなすところも爾く淡々し 相生垣瓜人 微茫集
風邪のひと多し言ひ居てわれも臥す 及川貞 榧の實
風邪の休校教師に似合ふ久留米絣 猿橋統流子
風邪の傘重し虹立つ沖明り 小林康治 玄霜
風邪の先見えて侮りあそびけり 湯浅典男
風邪の児が桜実となる下帰る 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
風邪の児にすこし熱くて七日粥 田中一荷水
風邪の児のふた花びらの薄まぶた 文挟夫佐恵 遠い橋
風邪の児の餅のごとくに頬ゆたか 飯田蛇笏
風邪の吾に焦がし屋お恵小芋煮よ 肥田埜勝美
風邪の咳のなみだのみにてあらざりし 森川暁水 淀
風邪の喉錠剤の角なほもあり 篠原梵
風邪の夕の笑ましくありて少しくるし 梅林句屑 喜谷六花
風邪の夢さめて外套壁に垂る 岸風三楼 往来
風邪の夢髣髴として冥土あり 吉武月二郎句集
風邪の夫小鳥より疾く飯終る 上野さち子
風邪の妻うすきけはひをして居りぬ 山口波津女 良人
風邪の妻きげんつくりてあはれなり 富安風生
風邪の妻しあはせうすく暮しけり 石原舟月 山鵲
風邪の妻の薬を買ひに年の暮 冨田みのる
風邪の妻男枕をしてをりぬ 山口波津女 良人
風邪の妻起きて厨に匙落す 山口誓子
風邪の妻長びけば起き長びかす 大野林火
風邪の娘の若き快復目のあたり 加地悦子
風邪の婢いたはれば泣く根深汁 阿部みどり女 笹鳴
風邪の婢の濡手にいらふ竃火かな 西島麦南 人音
風邪の子が空泳ぐ魚あまた描く 長谷川双魚 『ひとつとや』
風邪の子が見てをり地を擦る赤き凧 桜井博道 海上
風邪の子と夜更颪をきき澄ます 福田甲子雄
風邪の子につき合ひ過ぎし三ケ日 稲畑汀子
風邪の子に妻つよくなる起居かな 佐野良太 樫
風邪の子に屋根の雪見え雀見え 細見綾子 花寂び
風邪の子に忙しく暮れし冬至かな 高野素十
風邪の子に昔話しの尽きにけり 小室梅子
風邪の子に毛糸からまりうつくしや 萩原麦草 麦嵐
風邪の子に燈を暗うして月の影 岩田由美
風邪の子に読むざら紙の童話一つ 文挟夫佐恵 黄 瀬
風邪の子に象の真似してミカンとる 椎橋清翠
風邪の子のうす紅の水薬 長谷川回天
風邪の子のかなしきまでにおとなしく 鈴木とみ子
風邪の子のさびしき顔や人見知り 及川貞 夕焼
風邪の子のついでのおじやもらひけり 小島健 木の実
風邪の子の一人一人にかまけつゝ 高木晴子 晴居
風邪の子の壁にある凧はためきぬ 川口重美
風邪の子の客よろこびて襖あく 星野立子
風邪の子の布団のなかの宝もの 八染藍子
風邪の子の暗きところでよく遊ぶ 岸本尚毅 舜
風邪の子の枕辺にゐてものがたり 日野草城
風邪の子の母のみへ見す片ゑくぼ 毛塚静枝
風邪の子の焦げくささうな鼻あはれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
風邪の子の熱退けばすぐさわがしき 野澤節子 黄 炎
風邪の子の爐ぼこりとめし睫かな 西島麥南
風邪の子の男くささをみつめけり 小島千架子
風邪の子の襤褸の袖のひかりけり 西島麦南 人音
風邪の子の遊びほうけてもどりけり 西島麥南
風邪の子の電気暗いの明るいの 上野泰
風邪の子の餅のごとくに頬豊か 飯田蛇笏
風邪の子や団栗胡桃抽斗に 中村汀女
風邪の子や眉にのび来しひたひ髪 杉田久女
風邪の子をふうつと掴みそこねけり 森賀 まり
風邪の子をまじへて子らのねしづまる 谷野予志
風邪の子を抱きしめ母も風邪心地 佐藤漾人
風邪の子を抱きゐる母も熱ありげ 三村純也
風邪の子を抱く火の玉を抱くごとし 杉浦すゞ子
風邪の子を残して年賀挨拶に 稲畑汀子
風邪の子遊びほうけてもどりけり 西島麦南 人音
風邪の孫遠来の祖母は棄てらるゝ 及川貞 夕焼
風邪の屋根雁いくたびも声落とす 西村公鳳
風邪の床に鼻糞稿料来て穢る 石塚友二 光塵
風邪の床ぬくもりにける指輪かな 中村汀女
風邪の床出て老犬にパン頒つ 角淳子
風邪の床喪へゆく母に声かけて 古賀まり子 緑の野
風邪の床背戸より肥を汲まれをり 榎本冬一郎 眼光
風邪の床見舞はれはぢてをりにけり 森川暁水 黴
風邪の床追想振子となりては消ゆ 加藤知世子
風邪の息みだる水辺に鳥多し 柴田白葉女 牡 丹
風邪の息もてくちなしの花濡らす 吉野義子
風邪の手に朱塗の盆の葛湯とる 阿部みどり女
風邪の掌に一刀彫の番ひ鶏 阿部みどり女
風邪の教師己が重みに凭れ佇つ 宮坂静生 青胡桃
風邪の旅電話いきもの何処でも鳴る 寺田京子 日の鷹
風邪の日や煤ふりおとす花蘇枋 瀧井孝作
風邪の母咳きつゝ炊ぎ在しけり 清原枴童 枴童句集
風邪の洟かむかさかさの職場の紙 右城暮石 声と声
風邪の熱さがりてもとのみじめさに 右城暮石 声と声
風邪の熱混濁すれば妻し恋ふ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
風邪の熱身の閂のみなはづれ 松本たけし
風邪の牛ごぼごぼ減らす注射液 右城暮石 上下
風邪の牛診る灯をともす長コード 右城暮石 上下
風邪の町寒の日輪白熱し 相馬遷子 雪嶺
風邪の疲れ夜の昏さにかくまへり 野澤節子 黄 瀬
風邪の目にはや下萌の浅みどり 石井露月
風邪の目に墓の弱日のなつかしき 岸田稚魚
風邪の目に枯蘆の黄のうつるのみ 森川暁水 淀
風邪の目に熟柿と雨の湾とあり 宮津昭彦
風邪の目に竹かつがれてゆくが見え 岸本尚毅 鶏頭
風邪の目に雪嶺ゆらぐ二月尽 相馬遷子
風邪の眼に海女の濡れ身をまのあたり 田上石情
風邪の眼に藷穴暗し父の忌よ 大熊輝一 土の香
風邪の眼に解きたる帯がわだかまる 橋本多佳子
風邪の眼に雪嶺ゆらぐ二月尽 相馬遷子 山国
風邪の眼の熱く式典終りたり 阿部みどり女
風邪の瞳になじまず支那の赤き菓子 伊藤京子
風邪の瞳のうるみて浮ぶ幼な顔 原田種茅 径
風邪の神のからくる絲に熱上下 上村占魚 『一火』
風邪の神ひそめるランプ油の匂ひ 原裕 青垣
風邪の神わが家に草履ぬぎて久し 上村占魚 球磨
風邪の神を掃きだす屑籠をどかし 成瀬桜桃子 風色
風邪の神喚くフランス料理ならぶ 寺田京子 日の鷹
風邪の神堰にかゝれり冬の川 内田百間
風邪の神打たばやと豆炒らせけり 石川桂郎 高蘆
風邪の神村の十字路行き惑ひ 広瀬直人
風邪の背に夕映の刻迫りをり 野澤節子 黄 瀬
風邪の身にながき夕ぐれきたりけり 桂信子 黄 炎
風邪の身に米の磨ぎ汁いや白し 山口波津女 良人
風邪の身に艶なく過ぎし三ケ日 下村ひろし
風邪の身に萬のうたごゑたまりゆく 中戸川朝人 残心
風邪の身のほてりや透きし雨衣のなか 桂信子 黄 炎
風邪の身の大和に深く入りにけり 波多野爽波 『骰子』
風邪の身の海月さながら厠まで 高澤良一 宿好 
風邪の身はこぶ車窓や野分あふれおり 赤城さかえ
風邪の身を夜の往診に引きおこす 相馬遷子 山国
風邪の身を爽気きはだつ谿へ運ぶ 金田咲子 全身 以後
風邪の身を見らる能面壁にあり 館岡沙緻
風邪の額に唇つけむとす怖るゝな 岩田昌寿 地の塩
風邪の髪にピンゆるく止め人と逢ふ 井上雪
風邪の鼻捧げて一日了へにける 林翔 和紙
風邪はやる巷を白く霜そめぬ 森川暁水 黴
風邪はやる巷を通ひ小吏たり 森川暁水 黴
風邪はやる黒装束の男ゐて 藤岡筑邨
風邪ひいてふつと体が浮きにけり 今井杏太郎
風邪ひいてゐたる種紙青写真 茨木和生 三輪崎
風邪ひいて太い欅の下通る 和知喜八 同齢
風邪ひいて思ひ出す貌出さぬ貌 谷口桂子
風邪ひいて早寝の夜やきりぎりす 田中冬二 俳句拾遺
風邪ひいて木星の重さだろうか 五島高資
風邪ひいて蟹を喰はれてしまひけり 根津芙紗
風邪ひいて赤子のかほでなくなりぬ 田中裕明 先生から手紙
風邪ひいて造花につもる塵少し 谷口桂子
風邪ひきし夫を俄かに大切に 辻井のぶ
風邪ひきの一層猫を愛しけり 辻美奈子
風邪ひきの遅き年賀の落ちあふも 篠田悌二郎 風雪前
風邪ひき猫と棄て犬の母がおれの妻 平井照敏 天上大風
風邪ひくや病めば凡そ大仰に 小杉余子
風邪ひけば従容として臥しにけり 尾崎迷堂 孤輪
風邪ひけば風邪も逃がさじとして老ゆる 村上鬼城
風邪ふかむ暗き観客席幾重負ひ 宮津昭彦
風邪よごれ見られたくなしかくれ病む 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
風邪よせぬ念力ありてわが五十路 亀井糸游
風邪わるきわれを誣ふるをにくみやまず 森川暁水 淀
風邪わるき妻にせめての灯を明かむ 森川暁水 黴
風邪わるき妻にわが炊く粥焦げぬ 森川暁水 黴
風邪わるき妻に人置くこともならじ 森川暁水 黴
風邪わるき妻のひたへに手やり護る 森川暁水 黴
風邪わるく人に誣ひられ臥し居りぬ 森川暁水 淀
風邪わるく誣言に応ふすべもなし 森川暁水 淀
風邪われに及びて年も詰るなり 茂里正治
風邪を引くいのちありしと思ふかな 後藤夜半 底紅
風邪を引くことも大切鳶の笛 黒田杏子 花下草上
風邪三日雲に乗りたるごときかな 知多瑞穂
風邪二日咳次ぎかめる洟一斗 石塚友二 光塵
風邪人たつきの市塵浴びもどる 西島麦南 人音
風邪人に夜々の月影まさりけり 西島麦南 人音
風邪人に渺々と澄む日空かな 西島麦南 人音
風邪人や鉢巻しつゝ棚吊れる 清原枴童 枴童句集
風邪人鶴に餌をやる沓重し 月舟俳句集 原月舟
風邪声で亭主留守です分りませぬ 岡田史乃
風邪声に妻呼ぶ遠き人のごとし 大野林火
風邪声の妻よ異国へ吾子帰し 羽部洞然
風邪声の言葉の上に青き天 榎本冬一郎 眼光
風邪声も押しこめゴンドラ揺らぎ発つ 平井さち子 鷹日和
風邪声や燠々と曇る目玉焼 平井さち子 完流
風邪声をはばかり秘密持つごとし 川村紫陽
風邪声を気づかれてゐてもてなさる 荒川 曉浪
風邪声を紙漉く水に俯向ける 殿村莵絲子 遠い橋
風邪声を詫びて始まる保健学 風間和雄
風邪声を詫びて御慶の電話かな 角川照子
風邪夫婦笑つてをれずなりにけり 細川加賀 『玉虫』
風邪妻のしあはせうすく暮しけり 石原舟月
風邪妻の小膝のぬれし水仕かな 石原舟月 山鵲
風邪寝してなつかしき香のどこよりぞ 中村苑子
風邪寝して恋におちたるごとくなり 野本 京
風邪寝の妻十日を経れば父子汚る 古沢太穂 古沢太穂句集
風邪寝の掌年新しき空気載る 野澤節子 遠い橋
風邪寝われ止りし時計に見下ろされ 菖蒲あや
風邪床にぬくもりにける指輪かな 中村汀女
風邪引いてだうにもならない頭です 高澤良一 随笑 
風邪引いて不参の電話月の客 宮武寒々 朱卓
風邪引いて床に打ち臥す図は平目 高澤良一 宿好 
風邪引いて昼の長さよ隅田川 岩田由美
風邪引いて粥の淡しや梅の花 露月句集 石井露月
風邪引いて齢すすむるごとくをり 三井量光
風邪引かぬことが取り柄と湯治人 高澤良一 寒暑 
風邪引かぬ我うとまれて居る如し 松井敏
風邪引きし医師の見えけり年の暮 小澤碧童 碧童句集
風邪引きや髯蓬々の山男 楠目橙黄子 橙圃
風邪引けば散薬をのむ懐炉哉 小澤碧童 碧童句集
風邪引て冬季十則定めけり 瀾水
風邪引の鼻のつまりし美人かな 高浜虚子
風邪心地パイプオルガン聴くまでは 大島民郎
風邪心地抜けゆく壺の辛夷かな 川崎展宏
風邪心地燃ゆる暖炉をみまもれる 増田龍雨 龍雨句集
風邪患者いたはり帰し掃納め 瀧澤伊代次
風邪患者金を拂へば即他人 相馬遷子 雪嶺
風邪抜けず大脳形のキャベツ剥ぐ 品川鈴子
風邪抜けてゆく山川に日潤ひ 矢島渚男
風邪抜けの目鼻外気に心地よし 高澤良一 燕音 
風邪押して書くなる手紙激し来ぬ 森川暁水 淀
風邪教師欠勤もせず笑ひもせず 楠節子
風邪永びく梅雨空垂れておびやかす 河野南畦 湖の森
風邪流行る巷より人けふも来る 山口波津女 良人
風邪熱に昼夜形なきもの通る 野澤節子 牡 丹
風邪熱に燃えてきほへる主かな 上村占魚 球磨
風邪熱のあやつる夢の蝶真赤 上村占魚 『自門』
風邪熱の下がりてもとのみじめさに 右城暮石
風邪熱の夢にむらがる赤き蝶 上村占魚 『自門』
風邪熱の子のゆめあたまを撫でて去らしむ 篠原梵 雨
風邪熱やにがきがなかの白湯の味 久保より江
風邪熱を悟られまじく勤めをり 吉田小幸
風邪猛る道に大きな石一つ 藤岡筑邨
風邪癒えず老に物憂き日の続く 吉良比呂武
風邪癒えてはや常の日の二三日 山口波津女 良人
風邪癒えて掃除魔となり疎まれる 村井信子
風邪癒えて論客の貌よみがへる 堀 政尋
風邪癒えて雨あたゝかし檀の実 望月たかし
風邪癒えぬ碌々休暇とらぬ間に 樋笠文
風邪癒ゆやまた気の強き吾となりぬ 松枝よし江
風邪癒ゆる上り框が理髪椅子 石川桂郎 高蘆
風邪神がうしろを通る夜の鏡 遠山泰子
風邪神に煙草の味を抜かれけり 高澤良一 宿好 
風邪神のけふ打晴れて御出立 高澤良一 宿好 
風邪神のたらひまはしのはじまりよ 小島千架子
風邪神のもう四五日と居直りて 高澤良一 宿好 
風邪神の有無を云はさず擦り寄れる 高澤良一 宿好 
風邪神駈け妙義山塊ぐらぐらす 河野南畦 『元禄の夢』
風邪秘めて耳輪に金の鈴二つ 赤松[けい]子 白毫
風邪籠りし一ト日の終り赤子泣き 宮津昭彦
風邪籠りをとめつばきの咲きそめぬ 松村蒼石 寒鶯抄
風邪籠り留守居のごとし箸茶碗 石川桂郎 高蘆
風邪臥しの夕べや隣るけもの谷 村越化石 山國抄
風邪臥しの背骨の疼く草城忌 伊丹三樹彦
風邪薬つぎつぎ替へて風邪久し 下村ひろし
風邪衾かすかに重し吾子が踏む 能村登四郎 咀嚼音
風邪見舞のみなよく泳ぐ金魚かな 渡辺水巴 白日
風邪負ひて紅葉さ中の湯を怖る 野沢節子
風邪貰ふ妻は何でも欲しがり屋 高澤良一 鳩信 
風邪長びかすや亡き子と遊ぶ夢 川村紫陽
風邪顔が鏡の奥に停年後 河野南畦 湖の森
風邪髪の櫛をきらへり人嫌ふ 橋本多佳子
風邪髪の腐藻梳くさへ人の手に 稲垣きくの 牡 丹
風邪髪を抜けしピンなり己が踏む 稲垣きくの 牡 丹
風邪鼻の赤きも加へ福詣 宮岡計次
飛行機低き子の歓声を風邪に臥て 原田種茅 径
飯の座に灯とらるゝ風邪かな 金尾梅の門 古志の歌
飲食も砂噛む思ひ風邪籠 大森積翠
飲食や風邪の目鼻を以てして 相生垣瓜人
鬼平が好きな老人風邪引かず 尾村馬人
鮭のぼる川の真中の風邪心地 細川加賀
鰤起し腹に徹りて風邪癒えぬ 加藤楸邨
鳥のごと眼つむり風邪の床に臥す 高澤良一 さざなみやっこ 
鴨の声またの風邪忌む早寝かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
鶏のように走りて風邪引かず 高橋三柿楼
鹹き痰を嚼みつつ風邪に耐ゆ 竹下しづの女
麦の芽のもえ初めし風邪に籠りけり 金尾梅の門 古志の歌
鼻大きく子に描かれゐて風邪癒ゆる 毛塚静枝
ひゞ走る流感一家のうすき餅 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
医師迎ふ仔豚の顔や流感期 堀口星眠 営巣期
壁囲む見えざるが見え流感苦 河野南畦 『空の貌』
感冒の妻にもの煮る音殺し 高井北杜
流感の熱き乳房に乳溜る 山口超心鬼
流感は古き浮巣を踏むここち 大木あまり 火球
流感や青き夕ぐれ街涵す 有働亨 汐路
病めば身を細めてすごす流感期 黒木 野雨
蘂包む百合流感の都心まで 津田清子 礼 拝
逆光の飛行船浮く流感都市 横山房子
邪馬台国がどこであろうと流行性感冒 池田澄子 たましいの話
鼻風邪を追出す手だてなかりけり  高澤良一  燕音
鼻風邪の鼻にかかりし頼み事  高澤良一  燕音
鼻風邪の妻に味見を頼まれぬ  高澤良一  燕音
鼻風邪の妻の言づて事細か  高澤良一  燕音
鼻風邪の寝付きよければ直るべし  高澤良一  燕音
鼻風邪の昼餉を問へる鼻濁音  高澤良一  宿好
鼻風邪のやる気なき身に鞭入るる  高澤良一  宿好
鼻風邪を温存するにはあらねども  高澤良一  宿好
鼻風邪に愚図る頭を整理せむ  高澤良一  宿好
鼻風邪を直す呪文のもしあらば  高澤良一  宿好
鼻風邪の鼻がむずむず直るらし  高澤良一  宿好
鼻風邪を引いてずぼらな仕事ぶり  高澤良一  随笑
鼻風邪を紛らすための根(こん)仕事  高澤良一  随笑
鼻風邪にだうだう巡りの考えごと  高澤良一  随笑
温泉三昧はたして鼻風邪心地かな  高澤良一  寒暑
腰だるしさては取り憑く風邪の神  高澤良一  暮津
こんなにも朝昼晩の風邪薬  高澤良一  鳩信
こたびは喉イタイタウイルス引当てし  高澤良一  燕音
こたびは胸ムカムカウイルス引当てし  高澤良一  燕音
春先の風邪こじらせてああしんど  高澤良一  燕音
心臓の薬に加へ風邪薬  高澤良一  燕音
インフルエンザ
予防注射したもののさあどうなんだ  高澤良一  宿好
心臓の薬の後に風邪薬  高澤良一  宿好
風邪薬もったいなくも剩りけり  高澤良一  素抱
もうそんな季節か風邪のコマーシャル  高澤良一  石鏡
蜂の巣の容が風邪の熱の眼に  高澤良一  石鏡
風邪の身の何處かひくひく起ち上がる  高澤良一  暮津
鼻紙を使ふ妻見てさては風邪  高澤良一  暮津
風邪抜けずひとりくよくよしてゐては  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-04 00:04 | 冬の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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