例句を挙げる。

あけびの実餅なり種のある餅なり 山口誓子
あこが餅~迚並べけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
あたたかき息のごとくに餅置かる 中根美保
あぶり餅食べて安良居祭見て 村尾 梅風
あら玉の餅を焦してゐたりけり 永方 裕子
いたゞきぬ餅も膾もそのつゆも 林原耒井 蜩
うらがれや馬も餅くふ宇都の山 其角
おのづからくづるる膝や餅やけば 桂信子 黄 炎
おもかげが絹となりゆき餅匂う 和知喜八 同齢
おらが世やそこらの草も餅になる 小林一茶 (1763-1827)
お仏事の餅に色塗る老夫婦 河野静雲 閻魔
お供餅の上の橙いつも危し 山口青邨
かき餅のかげなる人となりにけり 滝井孝作 浮寝鳥
かき餅の乏しき火にも透きとほり 北川沙羅詩
かき餅の乾くにつれて反り返り 岩本 幸吉
かき餅や姉を母とし二階住 岸風三樓
かき餅をたべて見てをり水中花 高浜虚子
かき餅を焼いて出しけり花曇 月舟俳句集 原月舟
かさゝぎ溺れ血餅のわたしの願い 八木三日女 赤い地図
かまくらに餅焼く誰の母ならむ 上田五千石 風景
かる~と上る目出度し餅の杵 高浜虚子
きな粉餅木の葉を皿に童子仏 中山純子 沙羅
くれくれて餅を木魂のわびね哉 松尾芭蕉
くろこげの餅見失ふどんどかな 室生犀星(1889-1962)
さびしさはふくよかに餅を焼きゐたり 林翔 和紙
しのぶさへ枯れて餅買ふやどりかな 松尾芭蕉
しんしんと白く厚きは越後の餅 福田甲子雄
じんだ餅あをあをと師の三七忌 八牧美喜子
すすはきや餅の次手(ついで)になでゝ置く 野澤凡兆
そば餅や浜田庄司の紬もんぺ 細見綾子 和語
つかみ得ぬ倖せ餅のかびおとし 菖蒲あや 路 地
つききりでゐて夫餅を焦がしけり 須川洋子
つき立の餅に赤子や年の暮 服部嵐雪
つやつやして多数吾家に未知の餅 永田耕衣 驢鳴集
どんど火に顔ばかり灼け餅灼けず 町田しげき
のし餅の皺手の迹はかくれぬぞ 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
ひとり焼く餅ひとりでにふくれる 山頭火
ひゞ走る流感一家のうすき餅 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
ふくらめる餅にはろけき近江かな 本庄登志彦
ふくれ来る餅に漫画を思ひけり 高田風人子
まだ残る餅使はねばならぬかな 稲畑汀子
まんさくはまだ餅を負い田を越えて 和知喜八 同齢
まんまろき餅が天上を志す 東川紀志男
やはらかき餅の如くに冬日かな 高浜虚子(1874-1959)
よろめきて投げ餅拾ふ神の裔 栗生純夫 科野路
ソ連なき世界はいよよ潭(ふか)くあれど金柑を置く餅のいただき 大辻隆弘
フェリー発つ土産の餅のあたたかく 新 昇二郎
ラグビー場の/観念として/餅の華 林桂 銀の蝉
一家長たり餅の黴かきけづり 清水基吉 寒蕭々
一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎(1897-1941)
三十やひとり餅やく膝寒く 菖蒲あや 路 地
上品に弟は餅焼いてをり 櫂未知子 貴族
不ぞろひを笑ひ笑はれ餅を切る 川村紫陽
世の花や餅の盛の人の声 上島鬼貫
両棒(じやんぼ)餅食うべ囀囲みなる 橋本榮治 越在
乳中に白き餅いる夢を狩らむ 赤尾兜子
五色に塗る餅柔かしお命講 長谷川かな女 花寂び
伸シ餅のちりめん皺に占はん 高橋 睦郎
供へ餅大禍時の野末の井 坂井三輪
偉大なるあくびおさめて餅喰う火夫 細谷源二
兆す幸口のべ餅の粉だらけ 川口重美
児に噛んでやる餅よく噛むほどに甘し 江良碧松
八十八夜火よりも熱き餅の白 大木あまり 火のいろに
冬ごもり餅くひちぎりかねしかな 久保田万太郎 流寓抄以後
冬枯に看板餅の日割哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
凍餅吊す両端何の笊 松尾一恵
凡なれば長寿の餅を飽食す 殿村莵絲子 雨 月
切り餅を並べて小さく坐りけり 林原耒井 蜩
利かぬ手を餅炙るにも見せじとす 西本一都 景色
力餅食べて柳絮を掴みけり 堀口星眠 樹の雫
助六で絵馬を杵屋で餅を買ひ 土屋花峰
台湾の餅の甘さの気に入りぬ 後藤夜半 底紅
向い合い善人として餅を食う 宇多喜代子 象
吹雪ねむり夜の餅ねむり思慕の刻 寺田京子 日の鷹
喪の家に祝福の如餅焦げぬ 殿村菟絲子 『旅雁』
四捨五入すれば五十と餅を焼く 星野立子
四方餅十俵控へひばり東風 中戸川朝人 尋声
固餅食べつゝキリストの青年期にならはん 磯貝碧蹄館 握手
夜の餅にすこしつめたき母の顔 飯田龍太
夜の餅海暗澹と窓を攻め 金子兜太 金子兜太句集
大原女の餅をひさげる御忌の寺 池内ひろむ
大雪や焼く餅みんなふくれ来し 碧雲居句集 大谷碧雲居
天つ日のかちどき餅をつきにけり 室生犀星 犀星発句集
天国の母からの餅焦がしけり 磯貝碧蹄館
太鼓うつ御難の餅の腹へらし 島田五空
失言と一ト日気づかず餅腹 中戸川朝人 尋声
夷講に大福餅もまゐりけり 高浜虚子(闇汁に大福餅を投じたりしが句を徴されて)
奉納餅みづから砕け旭の岬 平井さち子 完流
女童に餅つかせゐる貴船かな 安東次男 昨
好餅を残らず黴に付しけり 相生垣瓜人
如月の糧の餅くづ舎利の如 赤松[ケイ]子
妹が子は餅負ふ程〔に〕成にけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
姑が来て切餅の香の二夜ほど 神尾久美子 桐の木
姥ケ餅お関餅師とうららなり 宮津昭彦
姫餅をつまみよばれぬ練供養 早船白洗
子の就職にはかに餅が減りゆけり 米沢吾亦紅 童顔
子は宝憶良のごとく餅を焼く 楠節子
子よ腰に跨る餅のごときものよ 鈴木修一
學ぶ子や餅黴削ぐは女親 石塚友二
安良居やあぶり餅屋の朝掃除 中村七三郎
寒巌に乗る腹中の餅溶けて 西東三鬼
寒苦鳥明日餅つかふとぞ鳴けり 其角
寒雷の響く都心に餅焦がす 田川飛旅子 花文字
寝て一畳流離極まる餅うまし 北野民夫
寮生の呉れし餅焼く舎監室 中井苔花
山の闇濃くなりゆくに餅裂けて 吉田汀史
山光る餅の白さも幾夜経て 飯田龍太
山始饑神にと餅を投げにけり 茨木和生 倭
山家の婆さまの焦がした餅をよばれてゐる 人間を彫る 大橋裸木
山宿や餅を入れたる根深汁 癖三酔句集 岡本癖三酔
山帰来餅不揃ひの葉の二枚 大橋敦子 匂 玉
山神に供ふ餅・柿・雪沓添へ 羽部洞然
峯の日の眩むばかり餅切る家 友岡子郷 日の径
巌門とひつぱり餅と単衣の子 神尾季羊
川びたりの餅にも飽けよ瘠河童 小川芋銭 芋銭子俳句と画跡
師に餅を焼かせて弟子の吾は食ふ 杉山 岳陽
干餅の五彩つらなる日の始め 成田千空 地霊
年の餅音なく膨れみな息災 永方裕子
幸福といふ語被せられ餅焦がす 野澤節子(1920-95)
庖丁を逸らしめつつ餅切れり 相生垣瓜人
弱法師我が門ゆるせ餅の札 榎本其角
彩餅吊る藁しべの艶雪祭 文挟夫佐恵 雨 月
彼岸入とて萩の餅波郷氏も 及川貞 夕焼
微笑して拈華の餅を分け呉るる 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
忍さへ枯れて餅買ふ宿り哉 松尾芭蕉
忽ちに餅のなる木は柳かな 萬翁
怒りつぺの餅笑ひつぺの餅子と焼けば 磯貝碧蹄館 握手
恃む義兄より厚切の餅届きけり 村越化石
患家にて餅焦がす香のかくれなし 下村ひろし 西陲集
截つまでの餅を休ます夕凍みに 宮坂静生 山開
打てば鳴る凍餅ばかり智者ばかり 香西照雄 対話
掻餅に新聞を読む火燵かな 寺田寅彦
掻餅を並べる役を賜りぬ 倉橋尚子
揚げ餅に塩の白さの弥生かな 堀川良枝
撒いてやる今日は餅くづ寒雀 亀井糸游
故郷の餅焼きつ流浪の夜のごとし 大串章
教え子に囲まれ餅を焼きにけり 横井弘美
数へ日の餅をしづかに焼きにけり 佐川広治
新餅や一家五丁の鎌納め 菅原師竹句集
日がてつてゐる何もつけないで餅を焼いてくふとき 中塚一碧樓
日が暮れてわれは星の子餅を食ふ 桑原三郎 晝夜
日の光に百千餅切るさびしさよ 寺田京子
日本の白さと形餅を焼く 嶋田一歩
昔あり今ありて餅白くあり 村越化石
晩年や雪採れば餅近づきぬ 永田耕衣 冷位
智恵餅を掌に握りしめ磴降る 佐藤 芙陽
暮れ暮れて餅を木魂の侘寝哉 松尾芭蕉
更けて焼く餅の匂や松の内 日野草城
最澄の山餅啣へたる犬に逢ふ 森澄雄 游方
月と花餅と酒との都かな 水田正秀
月日古り餅箱どことなくゆるみ 竹下波城
有明の月吹き落せ餅の臼 中村史邦
朝寐して餅焼く遅れ始めなり 殿村莵絲子 雨 月
木綿一家展べ餅重ね布団めく 香西照雄 対話
木餅に主婦のなさけをかけ通す 山口波津女
未来ひとつひとつに餅焼け膨れけり 大野林火
末枯や馬も餅くふ宇都の山 其角
来る客もなくて餅切などしつゝ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
枝撓め烏の去れば餅ふくる 石川桂郎 含羞
柱餅唐貿易の長者かな 田中田士英
梅が香や綴(つづれ)に餅の喰ひ残し 広瀬惟然
梅咲くやあはれことしももらひ餅 一茶 ■文化五年戊辰(四十六歳)
梅雨冷えや炉端充たして御幣餅 河野南畦 湖の森
梵天の餅紅白よ雪に売る 宮野斗巳造
椎樫のたのもしかりし餅あはひ 綾部仁喜 寒木
楸邨門たる栄光餅が焦げており 藤村多加夫
残り餅焼く三月のくらき炉火 能村登四郎
母の切る餅大悪しき世のいまも 太田土男
母子ありき雪深き昼餅焼いて 松村蒼石 雪
水がめに重なり合ひて餅沈む 千原叡子
水の餅つながり焼けて夜をなごます 大野林火
水中にしてなほ餅の角たしか 岸風三樓
江戸の香の海苔につゝみて毛野の餅 林原耒井 蜩
沖から吹く烈風餅の杵外れず 友岡子郷 遠方
海に出づ彼岸の餅を平らげて 中拓夫
湯浴後のおくれ毛の濡れ餅を切る 猪俣千代子 堆 朱
漬け餅の水替へるこの一些事よ 細見綾子 黄 炎
火の上に餅あれば亡き父母来ます 清水径子
火の用心さつしやりませう餅の反り 石塚友二
火を焚きつ終大師の餅摂待 井上楽丈
火星に異変あるとも餅を食べて寝る 津田清子
炭の香や花葩餅の紅ほのと 木村 ふく
焼く餅の焦げ大いなる2000年 大木あまり 火球
焼く餅の破るるあまつみそらかな 中尾寿美子
焼けし餅駒と進めて網の上 鈴木栄子
焼餅の窓のけぶりや梅紅葉 成美
煩へば餅をも喰はず桃の花 松尾芭蕉
熨斗餅はまだへなへなとしないけり 文人歳時記 吉屋信子
燃えさかるどんど妻への餅も焼く 神原栄二
片店はさして餅売野分かな 炭 太祇 太祇句選
玉澤のずんだ餅目に涼しきよ 高澤良一 寒暑 
田のしめり踏んで運ぶや餅の白 鷲谷七菜子 花寂び 以後
田楽の舞ひを横目に餅こがす 小林義治
男の手剛く哀しく餅焦がす 鷲谷七菜子
病人にかき餅焼くや茨の花 島村元句集
療養の餅を小切りに三十年 村越化石 山國抄
百千鳥餅ひからびて割れにけり 岸本尚毅 鶏頭
皓々と老が咽喉ゆく餅ひときれ 栗生純夫 科野路
真と偽といづれを採るや餅の黴 河野多希女 両手は湖
祝ひ餅湖にも投げて照葉かな 小原樗才
祭礼の残り火育て餅を焼く 永島千恵子
禅院のかた餅さげし廊下かな 会津八一
稚児餅の振舞二軒茶屋に来て 四明句集 中川四明
突如膨れ出す金網の隅の餅 内藤吐天 鳴海抄
窯神の餅引く山の嫁が君 岸川松韻
窯神の餅隠したり嫁が君 浅見光子
笹餅の笹剥ぐ越の朝ぐもり 上田五千石
紅白の餅の柱やお命講 高濱虚子
紅白の餅大いなり大師祭 喜多栄子
紅走るひと切れの餅なづな粥 茂里正治
純白にこころをのせて餅を切る 岡田和子
罅餅の片面焼けて家遠し 香西照雄 対話
義士餅を食べ犬死と思ひけり 辻田克巳
老斑のごとくに憎む餅の黴 稲垣きくの 牡 丹
耕人も来て上棟の餅拾ふ 篠田悦子
耳遠き婆の餅買ふ彼岸かな 白岩三郎
耳餅を透す火色や年歩む 永井龍男
耿耿と餅沈める甕の底 小澤實
背山より露の下り来るしんこ餅 山田弘子 懐
背後より慕はれ紅き餅焦がす 神尾久美子 桐の木
胡桃餅祖師のひとりに光太郎 中戸川朝人 残心
腹あしき僧も餅食へ城南祭 蕪村
膝がしら出して餅押す寒さかな ヲハリ-東推 極 月 月別句集「韻塞」
膨れんとして膨れざる餅あはれ 能村登四郎
臼洗餅や牛にも夜食草 中戸川朝人 残心
茂吉忌の豆餅狐色に焼け 富田直治
茶屋餅屋暫し砂糖ある花の山 井原西鶴
草枯に宇津の餅屋の床几かな 乙字俳句集 大須賀乙字
荒海や粥の湯気吹く餅間 飴山實 辛酉小雪
菴の夜は餅一枚の明り哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
落葉ふるなり峠の茶屋にたべる餅に シヤツと雑草 栗林一石路
葩餅長子の嫁となる人や 大石悦子 百花
蔦の実を馬にくはすなうつの山 涼莵 (馬も餅くふと晋子の句に付て)
薬喰全うせむと餅も煮る 皆吉爽雨
薬師寺の除夜三千の餅を焼く 木田千女
藪騒やたましひのごと餅を食ふ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
西陣の機場始めや餅白し 中村烏堂
見せばやな餅の長櫃歯朶入れて 才麿
角菱(つのびし)の餅にありとも桃の花 上島鬼貫
誰が聟ぞ歯朶に餅負ふ丑の年 芭蕉
豆咲くや海にも投げて祝ひ餅 猪俣千代子 秘 色
越の餅入れて焚きけりなづな粥 木原樵蔭
身をのせて餅切る影も力こめ 佐野美智
農夫切なし餅にべたべた醤油つけ 中山純子
道の多さ膝を揃へて餅切つて 永田耕衣 吹毛集
遠火事へ耳向きむきに餅の夜 安井浩司 青年経
選句せり餅黴けづる妻の辺に 石田波郷
野あがり餅蒸さり男らなほ起きず 長谷川素逝 村
長命寺門の餅屋の枯木かな 雑草 長谷川零餘子
長生(ながいき)に徳あり姥がすわり餅 園女 俳諧撰集玉藻集
長男がまもる故郷の餅届く 早乙女成子
門番に餅を賜ふや三ヶ日 正岡子規
闘鶏師持参の餅を炉に焼いて 高濱年尾 年尾句集
雪に信ぜん腹医すとふ神の餅 林翔 和紙
雪国にこの空の青餅の肌 成田千空
雪欲しと思ふ夜に焼く佐渡の餅 金子麒麟草
雪肌の艶に膨み焼くる餅 上村占魚 『自門』
雪降つてをりぬ独りで餅を焼く 岸風三楼 往来
霰餅炒る炎の強き二月尽 金久美智子
青空へ吹きたたきたる餅のかび 川崎展宏
風邪の児の餅のごとくに頬ゆたか 飯田蛇笏
餅あみの目にぼんやりの月日かな 藤田あけ烏
餅が敷く裏白楪病に死ぬな 野沢節子
餅さげて雪見る人の来りけり 長谷川かな女 雨 月
餅すこし干すも余生の昨日今日 村越化石 山國抄
餅と酒と座敷に鶏が来てもよろし 磯貝碧蹄館
餅に手をふれたき吾子の粉にまみる 大熊輝一 土の香
餅に黴青年世辞に抵抗す 宮坂静生 青胡桃
餅ぬくき蜜柑つめたき祭りかな 正岡子規
餅ぬくくてどりちぎりてたまたすき 飯田蛇笏 雪峡
餅のかびけづりをり大切な時間 細見綾子 黄 炎
餅のこな楪につき目出度けれ 虚子
餅の上よりジンクスひとり歩きして 栗林千津
餅の出る槌がほしさよ年の暮 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
餅の出来たて生き恥の恥死者になし 磯貝碧蹄館 握手
餅の杵洗へば山に雪降りぬ 大串章
餅の杵海潮の紺流れつぐ 友岡子郷 遠方
餅の粉の家内に白きゆふべかな 炭 太祇 太祇句選後篇
餅の耳硬しその後のピカソを見ず 河合凱夫 飛礫
餅の膨らみ俄かにはげし友来るか 加藤楸邨
餅の臼ぬらしそめたるうれしけれ 増田龍雨 龍雨句集
餅の香に在りて捉へつ六花の音 林原耒井 蜩
餅の香をうれしきものに枕上 松瀬青々
餅の黴むらがるばかり共稼ぎ 細川加賀 『傷痕』
餅の黴削りてもなほ水す 近藤一鴻
餅の黴削るよ吾が身削るごと 楠節子
餅の黴剥がす前髪より老ける 殿村菟絲子 『路傍』
餅の黴等さゝやかな悩みなる 殿村莵絲子 花 季
餅はこぶ虜囚船いま沖に糞す 安井浩司 赤内楽
餅は皆にじり居るらし雪の暮 永田耕衣 冷位
餅ひとつ腹に入れ来し螢狩 茨木和生 往馬
餅ふくれくる野の宮に火のにほひ 辻桃子
餅ふたつ火に並べたる夫との夜 赤松[けい]子 白毫
餅やくをおいとま乞のどんど哉 炭 太祇 太祇句選後篇
餅を切るときは亭主に戻りけり 竹中しげる
餅を切る夕凍てのなほつのりつつ 飯田龍太
餅を切る手の運びまで母に似て 牛島 けい子
餅を切る昨日と今日を切り離す 宮川由美子
餅を売る茶店の軒や柿垂るゝ 寺田寅彦
餅を夢に折り結ぶ歯朶の草枕 松尾芭蕉
餅を焼くガスの火農の土間そのまま 大熊輝一 土の香
餅を焼く刃物はひかり収めゐて 鍵和田[ゆう]子 浮標
餅を焼く空気固まりつつありぬ 柿本多映
餅を焼く釦ほとぼり誕生日 瀧澤伊代次
餅を負ひ桃の節句の使かな 瀧澤伊代次
餅一つ焙り妻ならず母ならず 岡本眸
餅一夜置かるる闇の濃かりけり 都筑智子
餅伸すとにはかに畏りゐたる 辻桃子
餅供ふ手作り厨子の中の主に 下村ひろし 西陲集
餅入れて粥を煮る日や松納 碧梧桐
餅切るやきのふ芭蕉の墓を訪ひ 橋本鶏二
餅切るや中年以後の運変じ 鈴木真砂女 夕螢
餅切るや刃を大根にしめらせて 福田甲子雄
餅切るや又霰来し外の音 西山泊雲 泊雲句集
餅割りて亡父微塵に砕けたり 河原枇杷男 定本烏宙論
餅合やぐんぐん伸びる遊爪 後藤綾子
餅哥や君が歳暮の馬下りに 上島鬼貫
餅好きの酢のもの嫌ひ年経ても 猿橋統流子
餅干すにすこしく寒の起居かな 村越化石 山國抄
餅恋しあんこ力士の居りし世も 高澤良一 燕音
餅懐く火さまざまの恩にそだちたり 中村草田男
餅提げて冬木の寺を出でにけり 雑草 長谷川零餘子
餅替の祭に五嶽かがやける 西本一都
餅板の上に包丁の柄をとんとん 高野素十
餅焙り一病息災冥利かな 高澤良一 ぱらりとせ 
餅焦がしつゝ繰言の始めかな 清水基吉 寒蕭々
餅焦げし匂ひ洩らして灯を洩らさず 野澤節子 黄 炎
餅焦げる匂ヒたま~はつ雪す 久保田万太郎 流寓抄以後
餅焼いて去年がはるけくなりにけり 細川加賀
餅焼いて囚はれ人の如くあり 澤村昭代
餅焼いて寝しな喰ひけり寒の内 碧童
餅焼いて新しき年裏返す 原裕 出雲
餅焼いて神木の箸こがしけり 鈴木ヤエコ
餅焼いて親しき客や松の内 高橋淡路女 梶の葉
餅焼きて年越し行務の肩ほぐす 河野南畦 『焼灼後』
餅焼くやざわめく反故の中に暮れ 小檜山繁子
餅焼くやちちははの闇そこにあり 森澄雉
餅焼くやはるかな時がかへり来ぬ 加藤楸邨
餅焼くや我が子の如き句友どち 阿部みどり女 笹鳴
餅焼くや手巻の時計ゆるり打つ 川地五江
餅焼くや父死後の母小さかり 中拓夫 愛鷹
餅焼くや雪が恋しき額寄せ 林原耒井 蜩
餅焼くや鼻が記憶す妻のにほひ 磯貝碧蹄館 握手
餅焼くをおいとま乞のどんどかな 太祇
餅焼く火さまざまの恩にそだちたり 中村草田男(1901-83)
餅焼けて蕪酢づけは箸やすめ 及川貞
餅焼けば笹はねる雪となりにけり 室生犀星 犀星發句集
餅甘し古老の前にかしこまり 宮津昭彦
餅白うして人間(じんかん)に怖れあり 永田耕衣 人生
餅白う鏡台祝ふお末かな 伊藤観魚
餅白くみどり児の唾泡細か 中村草田男
餅祝ふ老母枯れじ枯れまじと 栗生純夫 科野路
餅箱の父の書にある年齢となる 中川正登
餅米を洗ふ三代同じ井に 大熊輝一 土の香
餅米を浸せし桶の並びをり 長谷川 耕畝
餅米洗ふ竹山そよぎをりにけり 田中午次郎
餅粉うつやうにはつゆき伊那郡 辻桃子
餅網と花を購ひ来し夜の幸 菖蒲あや 路 地
餅網も焦げて四日となりにけり 石塚友二
餅腹にもくれむの芽を見に出づる 高澤良一 ねずみのこまくら 
餅腹に昼過ぎの空展けたる 高澤良一 さざなみやっこ 
餅腹に相模の海のにほふかな 高澤良一 ぱらりとせ 
餅腹の声が日ざらし佃島 諸角せつ子
餅腹の汚さゆるせ二日酒 石川桂郎 含羞
餅腹の重きを据ゑて墨をする 杉本零
餅腹をこなしがてらのつぎほ哉 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
餅腹を佐原囃子にゆさぶらる 木村虹雨
餅腹を暫し伸ばして狢の湯 高澤良一 素抱 
餅腹を空かさんそこらまで散歩 木内悠起子
餅腹を蹴る子の足を掴み寝る 大熊輝一 土の香
餅膨れつつ美しき虚空かな 永田耕衣 葱室
餅臼の罅の一筋地に届く 綾部仁喜 寒木
餅芒この宵月の子規忌かな 木歩句集 富田木歩
餅蓆ずらして炉辺にくすしの座 金子伊昔紅
餅藁の青き香を入れ注連を綯ふ 影島智子
餅蜜柑吹革まつりやつかみ取 下風 芭蕉庵小文庫
餅買うや寒月光の街の幅 三谷昭 獣身
餅買ふや百姓に歯に衣きせて 石川桂郎 含羞
餅雪を白糸となす柳哉 芭蕉
餅食うて午過ぎの潮ひかり満つ 中拓夫
餅食うべ体内に芽のやうなもの 清水径子
餅食うや物まねのあと寂然と 永田耕衣 闌位
餅食う母雪降る死火山の裏側に 佐藤野火男
餅食ふや貧しき過去を身にまとひ 相馬遷子 雪嶺
餅食へり英霊へだつ戸とて無く 石橋辰之助 山暦
餅食べて子供遊べり称名寺 瀧澤伊代次
餅食べて影絵あそびに加はれり 栗林千津
餅食べて輪郭暈けぬ国びとよ 殿村莵絲子 雨 月
餅食みつつ不敵の笑ひ書を閉ざす 加藤知世子 黄 炎
餅飯殿通り新茶のかをりかな 橋本榮治 逆旅
餡を持つ餅のうすうすあをみたり 篠原梵 雨
香に於て餅の在るあり老時雨 永田耕衣 闌位
香ばしく餅焼き上る半歌仙 北見さとる
駅路の菖蒲葺くらん姥ケ餅 尾崎迷堂 孤輪
高坏に赤福餅や守武忌 橋本 對楠
鮪船団餅臼つみて出てゆけり 橋本栄治
鴨泛いて日向は餅を焼く匂ひ 長谷川双魚 風形
鹿消えて鹿の斑色の餅ならぶ 渋谷道
黄粉餅喰ふたる顔の撫掃除 高澤良一 随笑 
黴の為誤られたる餅の如 相生垣瓜人 明治草抄
黴の香もなつかしう餅届きけり 林原耒井 蜩
黴びし餅家にあり勤め怠けたし 津田清子 二人称
黴餅の毛がふさふさとけものめく 内藤吐天 鳴海抄
年祝ぎの餅召せ井戸神厠神  高澤良一  石鏡
餅に飽きバリリとやりぬクラッカー  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-20 00:38 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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