冴ゆる

冴ゆる

例句を挙げる。

*ろうかんの潮あびては巌冴ゆる 加藤耕子
「詩人はいのち墓は塊」妻の語冴ゆ 草田男 (「去来の墓」にて)
あざけりを浴びるごと昼冴え返る 成田千空 地霊
あぢさゐの冴えて落ちたる眼のうろこ 稲垣きくの 牡 丹
ありありと福耳冴えて遺影なり 渡邊千枝子
いくたびも鼻撫で虚子の句の冴えよ 吉野義子
うたたねに醒めて冴えざえ今年の灯 永井龍男
うつつ寝の胸にせせらぎ冴ゆるかな 山口草堂
うみづきの目の冴えてゐる粽の夜 田中裕明 花間一壺
お堀の月の冴えわたるかな 史邦 芭蕉庵小文庫
かしげ見し老婆の顔に冴ゆる月 友次郎
かなしみの半面の冴え伎藝天 加藤知世子 花 季
かんてらの灯の冴えかへる白魚汲む 小原菁々子
かゞやける日の葉落ち~冴ゆるかな 中島月笠 月笠句集
きびしさや寒の霜夜の石の冴え 北原白秋
けふ冴ゆる筑波の藍や梅若忌 野村喜舟
この町のどこからも冴ゆ伊吹山 柘植潮音
さ(冴)ゆる夜のともし火すごし眉の剣 斯波園女
さめかゝる火燵の天の冴えてあり 安斎櫻[カイ]子
ざうざうと頭の冴え山の粗き湯に 高澤良一 素抱 
しの竹や夜さむに冴ゆる雨戸越し 室生犀星 魚眠洞發句集
その一語胸中にあり冴ゆるかな 青柳志解樹
だまり鵙来て夕冴えの梢搖る 高田蝶衣
ちゝろ燃ゆ焔の冴えも海の丘 細見綾子 花 季
はつ秋の誓ひに似たるペンの冴え 柴田白葉女 『冬泉』
ひとたまりもなく我冴ゆる路上かな 中島月笠 月笠句集
ひとりゐて壁に冴ゆるや晝の影 富田木歩
ふるさとの鯛かも知れず瞳の冴えて 鈴木真砂女 夕螢
ほうほうと媼鶴呼ぶ声冴ゆる 川村ひろし
まえにうしろに百の窓冴え新居とす 赤城さかえ句集
まことの死かなたにし夜々冴えかへる 石塚友二 方寸虚実
まなじりの泪をとらへ灯冴ゆ 西本一都
みかん甘き伊豆の夜にして冴え返る 林原耒井 蜩
もてなしの秋の野菜の彩の冴え 柴田白葉女 花寂び 以後
わがほとりもつとも冴ゆる花鋏 古賀まり子
オリオンの四ッ星冴えて三ツ星も 京極杞陽
コントラバス靴底でとるリズム冴ゆ 高澤良一 燕音 
チヤルメラやまだ宵の町月冴ゆる 『定本石橋秀野句文集』
チュウリツプ閑な女はかく冴ゆる 佐野良太 樫
ビードロの*かうがい冴ゆる出島跡 平田幸子
ミシシッピー鰐の横縞雨に冴ゆ 高澤良一 さざなみやっこ 
レーニン風唄い手の額灯に冴えて 高澤良一 燕音 
一つ火の再びの火の冴ゆるかな 西村和子 窓
一切の木の流体の冴えにけり 岡井省二
一切の飾納めて冴ゆるかな 赤尾恵以
一尾冴えて渓流を突く鯉ながれ 渡邊水巴 富士
一本の薄紅梅に冴え返る 高浜虚子
一生のしばらくが冴え夏鶯 清水径子
一病冴ゆ五年刻みに生きて来て 北野民夫
一瞬の静けさ冴えて火口退く 石原八束 空の渚
一通の投凾函忘れ星冴ゆる 脇本良太郎
一音符指打たれ出て冴えて消ゆ 宮津昭彦
万緑の一紺として四葩冴ゆ 石塚友二
三日月は反るぞ寒さは冴えかへる 一茶
三角形つなぐ星座の冴え返る 対馬康子 吾亦紅
不惜身命天へ高々四肢冴ゆる 渡辺恭子
不意に戦後来る紺碧のひと日冴え 桜井博道 海上
中天に月冴えんとしてかゝる雲 高浜虚子
五体投地の指の先より冴え渡る 茂田慶花
五体投地の発止発止と伽藍冴ゆ 加藤知世子 花 季
五六丈滝冴え返る月夜かな 蓼太
人に死し鶴に生れて冴え返る 漱石俳句集 夏目漱石
人去つて冴ゆるほかなき夕ざくら 太田鴻村 穂国
人去りて電燈冴える廣間かな 会津八一
人形や玩具や冴えてゆく齢 市原光子
人待てば鏡冴ゆなり青落葉 横光利一
人生冴えて幼稚園より深夜の曲 金子兜太(1919-)
今宵しかない酒あはれ冴え返る 室生犀星 犀星発句集
今日より冴ゆ天井鼠みじろぐ音 香西照雄 対話
俗われに僧が飯盛り冴え返る 佐野美智
入る月の波きれ雲に冴え返る 内田百間
冬の夜を冴えし瞳と居りにけり 室生犀星 犀星發句集
冬の月淋しがられて冴えにけり 古白遺稿 藤野古白
冬川に冴える電球を撃つは今 赤尾兜子
冬萌えのおちばすきまに冴ゆるかな 室生犀星 犀星発句集
冬萌や夕踏まれて朝冴ゆ 加藤知世子
冬萌冴ゆ調子昂めるよいとまけ 加藤知世子 黄 炎
冴えかえるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨
冴えかへり手術の話遠ざかる 朝倉和江
冴えかへるそれも覚悟のことなれど 高浜虚子
冴えかへるたましひにしむ香けむり 飯田蛇笏 雪峡
冴えかへるとて美しき仏顔 石原八束 空の渚
冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤秋邨 火の記憶
冴えかへる夜の灯のもとはつはつに雛のしろき頬ひかるなり 杜沢光一郎
冴えかへる夜や消し炭の美しき 川越苔雨
冴えかへる山ふかき廬の閾かな 飯田蛇笏 山廬集
冴えかへる工事現場の点滅灯 高久フミ
冴えかへる影ひとすぢの絲野蒜 篠田悌二郎
冴えかへる面ら魂をあふぎみる 石原八束 空の渚
冴えかへる鳥籠被ふ白き布 中田剛 珠樹以後
冴えざえと人住む町や川開き 永井龍男
冴えざえと天衣無縫の癌転移 田中ただし
冴えざえと群の海猫より離れきし 八木林之介 青霞集
冴えだす瞳を鏡に見たり坑に入る 加藤知世子 花寂び
冴えて書の天金浮けり病世界 秩父
冴えゐたり柩出でしは遠き国 小池文子 巴里蕭条
冴え冴えとゴム長靴の川虫採 高澤良一 宿好 
冴え冴えと余白めく闇寝惜しみぬ 野澤節子 遠い橋
冴え冴えと手術待つ夜の白枕 毛塚静枝
冴え冴えと春さむければ月近き 飯田蛇笏 春蘭
冴え冴えと枝豆白磁の皿大き 河野多希女
冴え返り冴え返りつゝ春央ば 西山泊雲 泊雲句集
冴え返り見えぬと瞳澄みきはむ 殿村莵絲子 雨 月
冴え返るある日の恥をありありと 野澤節子 『駿河蘭』
冴え返ることを悔みに代へにけり 林原耒井 蜩
冴え返るとは取り落すものの音 石田勝彦 秋興
冴え返るとは蝋涙に人立ちて 宇佐美魚目 天地存問
冴え返るもののひとつに夜の鼻 楸邨
冴え返るパリの灯影ははなやがず 山本歩禅
冴え返る万の足痕過密都市 寺井谷子
冴え返る三十三間堂の端 岸田稚魚
冴え返る包丁雉子を贅とせり 野沢節子
冴え返る匙を落して拾ふとき 細見綾子 黄 炎
冴え返る土にこたへて下駄の音 青峰集 島田青峰
冴え返る地下に赤き燈強き酒 成田千空 地霊
冴え返る大歳時記の函きつく 喜多杜子
冴え返る小便小僧の反り身かな 塩田俊子
冴え返る山国に星押し出さる 雨宮抱星
冴え返る川上に水なかりけり 村上鬼城
冴え返る手の老斑を撫す癖も 殿村莵絲子 花寂び 以後
冴え返る敗戦の碑は海中に 対馬康子 愛国
冴え返る日をなまぐさの漁村かな 小杉余子 余子句選
冴え返る枝もふるへて猿すべり 芥川龍之介
冴え返る沓音高しお水取 石井桐陰
冴え返る空ゆ母拉致せしは誰 楠本憲吉
冴え返る空を歩いてきたりけり 平井照敏
冴え返る空灰色に凧一つ 会津八一
冴え返る身にしみじみとほつき貝 芥川龍之介
冴え返る身に黒服のたたみ皺 鍵和田釉子
冴え返る身辺白し黒を着て 殿村菟絲子 『樹下』
冴え返る鐘の響きに驚けり 青峰集 島田青峰
冴え返る長子を抱ける兵の遺影 島村久枝
冴え返る面魂は誰にありや 草田男
冴え返る風夜の店灯照りかはす 林原耒井 蜩
冴え返る魚の眼におしなべて主婦 殿村菟絲子 『路傍』
冴え~と鳶笛吹けり蕗の薹 飴山實 辛酉小雪
冴ゆるなり星の炎の見ゆるまで 宮津昭彦
冴ゆるのみの庵も柊挿しにけり 中島月笠 月笠句集
冴ゆるまで静けき室に墨匂ふ 新井石毛
冴ゆる俎上魚を呑みゐし魚割かる 成田千空 地霊
冴ゆる夜のかつてに雪駄ならしけり 室生犀星 犀星發句集
冴ゆる夜のかなしきものや鬼の面 加藤知世子
冴ゆる夜のこゝろの底にふるゝもの 久保田万太郎 草の丈
冴ゆる夜のレモンをひとつふところに 木下夕爾
冴ゆる夜の今の飛脚は狐かな 原本神桜
冴ゆる夜の匂袋の緒を切りぬ 岡部名保子
冴ゆる夜の口笛われに蹤ききたる 木下夕爾
冴ゆる夜の古き顔見て別れけり 碧雲居句集 大谷碧雲居
冴ゆる夜の噴煙月に追ひすがる 静二
冴ゆる夜の抽斗に鳴る銀の鈴 爽青
冴ゆる夜の星落る処千島なるべし 坂本四方太
冴ゆる夜の梁に吊られし鳴一羽 三狼
冴ゆる夜の無韻につもる砂時計 徳田千鶴子
冴ゆる夜の瓦音ある礫かな 碧梧桐
冴ゆる夜の谺にひゞく汽笛哉 寺田寅彦
冴ゆる夜やネオンの一字欠けしまま 青木不二子
冴ゆる夜や乾び反りたる魚の鰭 上村占魚 鮎
冴ゆる夜や拍手指揮者を引戻す 都筑智子
冴ゆる夜や烈しく生きし人の曲 大串章
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏
冴ゆる灯の見えて石切る遠音かな 広江八重桜
冴ゆる灯や獄出ても誦む東歌 不死男
冴ゆる薄暮母は時計を進ませおく 桜井博道 海上
刈芝のこぼるるたびに水脈冴えつ 栗生純夫 科野路
初霜やわが母なれど面冴え 中村汀女
北斗冴えて藪に音ある時雨かな 西山泊雲 泊雲句集
北風の吹くだけ吹きし星の冴え 渋沢秀雄
十二月八日の冴えに退りけり 渡邊水巴 富士
千切れ藻の冴えざえ磯の流れをり 山口草堂
千鳥駈る干潟銀無垢に冴え返る 内藤吐天
卵中の子を呼ぶ巣鶏土間冴えて 海雲(もづく) 原本神櫻、臼田亜浪刪存
友送る一と群におこる校歌冴ゆ 原田種茅 径
合掌の家霊冴えをり家郷捨つ 石原八束
同じ道黙し戻れば冴え返る 高澤良一 素抱 
吹雪冴えして岩壁の福寿草 加藤知世子
噴烟の冴えて消えゆく響なし 石原八束 空の渚
圓空佛鉈目も飛騨の花も冴ゆ 小檜山繁子
土佐沖の星冴ゆるなり漁始 綿谷ただ志
塗香して拝す千眼仏冴ゆる 小原菁々子
声冴ゆる女あるじゆ紅を買ふ 野澤節子
声冴ゆる虫は何々銅盥 白雄
壺あまた冴えてをどるや詩人の死 石原八束 空の渚
夏も冴え~女身に刻すいくさの爪 赤城さかえ句集
夕焼の消ゆる湖畔に灯影冴ゆ 瀧春一 菜園
外套の襟のよごれに冴え返る 吉屋信子
夜の波のかたみに冴ゆる秋の風 すみだ川 新井聾風
夜は冴えて妻恋鹿に聡き耳 松本巨草
夜冴えてひとり蛇笏忌と言ふべしや 松澤昭 神立
夜半の月冴えず明るし春近き 及川貞 榧の實
夢のひと冴えざえ霧の吉野杉 中島斌雄
大いなる月も冴ゆるにまかせたり 落合水尾
大衆や点心の鐘冴ゆる朝 句仏
大衆や経行冴ゆる臘八會 名和三幹竹
大風の家居うつろに冴ゆるかな 富田木歩
天冴えて海鼠かゝれり網雫 菅原師竹句集
天冴えて烈風に繊き富士を見たり 渡邊水巴 富士
天秤棒担へし形に冴ゆる壁 成田千空 地霊
奥穂高冴えたり星座遠ざけて 澤田 緑生
妻も子もはや寝て山の銀河冴ゆ 臼田亞浪 定本亜浪句集
妻も詩人濯ぎつくして白布冴ゆ 香西照雄 対話
子のためにいのち惜しめば冴えかへる 柴田白葉女 遠い橋
安曇野に冴ゆる灯数や小正月 鳥羽とほる
安楽死冴え返る夜を醫師戻る 相馬遷子 雪嶺
実千両猫がとほれば冴ゆるなり 太田鴻村 穂国
宵月に松籟冴ゆる浮御堂 伊東宏晃
宵月の二十あまりや冴え返る 会津八一
富士冴えて山拓く人ら石担ふ 渡邊水巴 富士
寒声の水をわたりて冴ゆるかな 小泉迂外
寒月やいよいよ冴えて風の声 荷風
寒林に一語の冴えをのこし去る 三谷昭 獣身
寒梅や痛きばかりに月冴えて 日野草城
寝冴ゆると双耳の蝉や鳴きしきる 石塚友二 方寸虚実
小春日に大滝秀治の話術冴え 高澤良一 随笑 
少年に草の香のして春冴ゆる 佐藤とも子
山がひの杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 澄江堂句集
山の月冴えて落葉の匂かな 芥川龍之介
山の緋鯉じつと沈みゐたゞに冴ゆ 林原耒井 蜩
山の緋鯉危きばかり冴えゆく日々 林原耒井 蜩
山内の冴ゆる日に干す僧のもの 高澤良一 随笑 
山寺に織られて紙布の紅冴えぬ 吉野義子
山峡の杉冴え返る谺かな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
山月に冴えて聾ひたる耳二つ 飯田蛇笏 山廬集
山辺より灯しそめて冴ゆるかな 普羅
巴里の絵のここに冴え返り並ぶあはれ 水原秋櫻子
幹黒く愛憐の黙冴ゆる村 成田千空 地霊
幾日も米はなく冴えし山のぞむ 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
庭木々の泥洗ひけり冴え返る 乙字俳句集 大須賀乙字
廻り冴ゆる独楽や絶えざる澪・轍 成田千空 地霊
強風に新築の音ばかり冴え 廣瀬直人
急ぐなかれ月谷蟆(たにくぐ)に冴えはじむ 赤尾兜子
恋の鬼泣けば冴えゆき我も冴ゆ 加藤知世子 黄 炎
手さぐりて木の扉や夜の冴えにけり 小池文子 巴里蕭条
拭けば底に冴ゆる瞳据わる冬鏡 柴田白葉女 花寂び 以後
文楽の春とはいへど灯影冴え 飯田蛇笏 雪峡
新聞なれば遺影小さく冴えたりき 石田 波郷
旅もいよゝ果の泊りや山冴ゆる 金尾梅の門 古志の歌
旱天に星みえ疲労冴えてくる 金子兜太
明星のひかりは冴ゆる夕山の片空明り雪さやに見ゆ 尾上柴舟
星冴ゆる歩いて居れば心足る 石昌子
星冴ゆる窓やワインの杯重ね 吉村容子
春の汗して絶食十日頭冴ゆ 相馬遷子 山河
春泥や夕暮すこし冴え返り 小杉余子 余子句選
晒し首神や仏の中に冴ゆ 加藤知世子 花寂び
暮れぎはや不二もあらはに冴えかへる 木津 柳芽
暮れ残る豆腐屋の笛冴え~と 中村草田男
更け更けて人冴え渡る運坐かな 会津八一
曽根崎やむかしの路地に月冴えて 鷲谷七菜子 黄 炎
月ありて北斗の冴えや冬木立 岡本松浜 白菊
月にさらすわが顔われに見え冴ゆる 川島彷徨子 榛の木
月の舟山に落ちんとして冴ゆる 百瀬美津
月冴えし三条麩屋町あられ蕎麦 徳田千鶴子
月冴えてこの夜めでたき会陽かな 燕 々
月冴えて夜鳴そば笛また通る 渋谷 一重
月冴ゆるばかりに出でて仰ぎけり 高浜年尾
月冴ゆる一度は見たき棺造り 小檜山繁子
月冴ゆる石に無数の奴隷の名 有馬朗人 知命
朧人あすはいづこの灯に冴えむ 林原耒井 蜩
机上冴ゆけふ一日を拠らざりし 大野林火
松と家裏映し朝冴えの苗代水 西山泊雲 泊雲句集
松ばかり冴えて十一月といふ 石塚友二
枯枝のさきそろひゐて冴え返る 室生犀星 犀星発句集
柊家の忍返しに月冴え来 京極杞陽
梅冴えざえ愛は奏でてならぬとや 河野多希女 彫刻の森
極楽中心中山寺月冴えし 中島陽華
橋にきし目におのづから月冴ゆる 木津柳芽 白鷺抄
橋上の継目の鐵や冴え返る 内田百間
櫂の音冴えまさり湖の色ふかし 荻原井泉水
次の間の灯に牀頭の冴ゆるなり 富田木歩
此頃の泣日和八ッ手色冴えぬ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
歳旦や虚構す文字の冴えやすし 松澤昭 神立
歴代や張り目垂れ目の冴えかへり 竹中 宏
死の側が夜どほしひかり冴え返る 栗林千津
残るに老ゆぞ鳴呼冴え返る鈴鹿山 広瀬惟然
水冴えてカーヴす鯉の白々と 渡邊水巴 富士
水鳥の聲のかたまり暮天冴ゆ 高田蝶衣
水鳥や澪冴えざえと霧の中 新井声風
沼が随所に髭を剃らねば眼が冴えて 金子兜太 蜿蜿
波冴ゆる流木立たん立たんとす 山口草堂
注連冴ゆる俎上が天地式庖丁 野澤節子 遠い橋
洗濯屋白に疲れぬ白壁冴え 香西照雄
浅間冴え松炭燃ゆる五月の炉 前田普羅 春寒浅間山
海の上に晝月冴えて慈姑掘り 松村蒼石 雪
海潮音木瓜の紅白冴え分る 瀧春一 菜園
渋濯屋白に疲れぬ白壁冴え 香西照雄 素心
渦笑窪消え水鏡寡婦に冴ゆ 香西照雄 対話
湖わたりきし白鷺の舞ひ冴ゆる 加藤知世子 花寂び
湖冴ゆる夜の蒼天へ風奔り 鷲谷七菜子 雨 月
湯を汲みて濡れし茶杓の冴えにけり 尾崎迷堂 孤輪
満月の冴えてみちびく家路あり 飯田龍太 童眸
漬梅の三年越しやその香冴ゆ 加藤知世子 花 季
漬茄子の紺冴え冴えと赤坂昏れ 楠本憲吉
火口壁の死角うつろに没日冴ゆ 石原八束 空の渚
火口鳴るや迅風の冴えは空に光り 石原八束 空の渚
灯を消してより鍋釜のあたり冴ゆ 小檜山繁子
灯を消せば山河冴えくる布団かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
灰とりし箕に冴え返る木かげかな 金尾梅の門 古志の歌
烏瓜ほどに頭の冴えきたる 高澤良一 寒暑 
煌々と冴えたる庭の月の石 白石 時子
煮干棚干さぬ百里の冴え返り(九十九里浜) 殿村菟絲子 『晩緑』
燈台の白きが冴えて汐ぐもり 瀧春一 菜園
父と子は母と子よりも冴え返る 野見山朱鳥
牡蠣割りのとばす牡蠣殻冴えかへる 細見綾子
物の音の冴える夜だ子も目をあいて 北原白秋
狐啼く声冴えざえと高嶺星 斎藤美智子
猿山より下のけものの冴え返る 金田咲子
琵琶冴えて星落来る台かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
生きのびし人ひとりゐて冴え返る 室生犀星 犀星発句集
生花冴ゆ夜の寒風歩く人に 大井雅人 龍岡村
疲れ寝のこぼれ泪も燭に冴え(拙編『定本三好達治全詩集』発刊) 石原八束 『空の渚』
疾風に澪冴えきつて夕立かな すみだ川 新井聾風
病む馬に蝋涙冴ゆる夜なりけり 碧水
白菊とわれ月光の底に冴ゆ 桂信子
白驟雨桃消えしより核(さね)は冴ゆ 赤尾兜子
相対し冴ゆる月光菩薩と吾 皆吉 司
石ころの冴えた音梅の畑かじく 細見綾子 花寂び
石の影深くて金魚冴ゆるなり 佐野良太 樫
石工あり玄翁宙に風冴ゆる 飯田蛇笏 雪峡
砂のごとき遺髯冴えたる鋼より 野澤節子 花 季
稗蒔や十露盤朝の音冴えて 鈴木頑石
稲を刈る利鎌の冴えの音はしる 大橋敦子 匂 玉
立たんとす腰のつがひの冴え返る 正岡子規
竜燈鬼*吽の眼の闇に冴ゆ 加藤知世子 花 季
竹の葉騒は冴ゆる眼鏡に数知れず 野澤節子 黄 瀬
竹の青さ冴えざえと刃物磨ぎすます 人間を彫る 大橋裸木
竹冴ゆる今日鳥の影いくつ過ぎし 篤子
笑つても痛しいたしと冴え返る 長谷川かな女 花寂び
笛は泣き音か挿頭鳳凰舞ひ冴ゆる 加藤知世子 花寂び
笹鳴や落葉くされし水の冴え 室生犀星 魚眠洞發句集
筆えらぶ店先にゐて冴え返る 室生犀星
籾を沈めし夕べの水田口笛冴え 大井雅人 龍岡村
絵附の娘面ざし冴えて磁器に映ゆ 石原八束 空の渚
継ぎし火の冴えて灯の穂や万燈会 加藤知世子 花 季
線のみが無数にめざめ冴ゆる日ぞ 千代田葛彦 旅人木
縞ふかく朱冴えかへる南瓜かな 室生犀星 犀星発句集
繊月の艶の冴えゆく冬隣 小池文子
羽音冴え飛騨へましぐらぼろ鴉 加藤知世子 花 季
老い老いて足袋潔白に冴えにけり 小寺正三
耳底の声追ふばかり冴ゆるかな 石川桂郎 含羞
耳朶冴えて星々の声待つごとし 鈴木修一
背戸中は冴え返りけり田螺殻 丈岬 俳諧撰集「有磯海」
能登の端を海に出でたる星冴ゆる 中西舗土
脱け髪冴えすでに我が身のものにあらぬ 宮津昭彦
艇庫より男が現はれて冴ゆる 長谷川双魚 風形
芭蕉布の煤け引手や冴え返る 内田百間
花栗かぶさる貧農の家冴えゆく眼に 金子兜太
花菜売りここに冴えざえ羽後訛 加藤知世子 花寂び
茨の芽の冴えつつ田水溢れけり 太田鴻村 穂国
草むらの花ぽつかりと霜に冴ゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
草千里浜のうす眼の水冴えて 石原八束 空の渚
菊枯れて茜めく葉の冴ゆるかな 室生犀星 犀星発句集
萩刈つてからりと冴えぬ夕明り 渡辺水巴 白日
落城の仕掛松明天に冴ゆ 伊東宏晃
葛城や夜の念仏の鉦冴ゆる 有馬朗人 知命
葡萄酒の壜と乞食冴えゐたり 小池文子 巴里蕭条
藁屋根の端の雪嶺ことに冴え 桂信子 黄 瀬
虫しぐれ冴ゆとしづかに遺書は言へり 瀧春一 菜園
蜜蜂に冴え隔てたり石蕗の花 石塚友二 光塵
蝉の枝たどる子の眼の冴えてけり 原田種茅 径
血を分けし証の白髪冴え返る 猿橋統流子
血を吐けば現も夢も冴え返る 宮部寸七翁
行く雁に電車の音も冴ゆる夜や 木歩句集 富田木歩
行人裡馭夫の鞭ぱんぱんと冴ゆ 伊丹三樹彦 仏恋
行火守る木乃伊の婆々に冴え返る 河野静雲
裸婦像の吐息沈めて冴え返る 小川廣男
襲名の若武者に冴ゆ能舞台 小林三郎
触れてみる魚板の窪み冴え返る 今井里峰
詩は怒余寒緑を冴えしめて 香西照雄 対話
詩人伝一夜いのちの冴えにけり 大串章 山童記
誰がための高き石垣冴え返る 金田咲子 全身
誰一人通らぬ町の冴え返る 藤田 静水
諸星の冴えざるはなし山泊り 鞍悦子
踊り来し冴えそのままの筆づかひ 加藤知世子 花寂び
身の影を火日に墜とす風の冴え 石原八束 空の渚
身をおぎなふもののひとつに眼鏡冴ゆ 佐野美智
通夜をして戻りし日からたゞに冴ゆ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
遠い風きけばおのれの冴えにけり 佐野良太 樫
遠目にも 禰宜の白冴え 梅花祭 伊丹三樹彦
還暦の春に酒なし冴えかへる 中勘助
酒米の冴えたる白さ寒造 水谷 たつ子
金泥を練る箆や冴え返るなり 内田百間
針よりも細き冴え瞳や針の神 加藤知世子 花寂び
鉾杉や海より冴えて空の青 汽笛 勝峯晋風
銀河冴ゆ腸ぬいて細る鮎 長谷川かな女 牡 丹
鐘を献じて冴えきる除夜の聲きかん 中勘助
闇冴えて虚空に聴きし濤の音 鷲谷七菜子 雨 月
阿武隈や月冴えて鳴る渚砂 鳥居おさむ
除雪夫の寝息冴えきて寝むらえぬ 石橋辰之助 山暦
雨漏の壁のひまより冴えかへる 『定本石橋秀野句文集』
雪とならで山越したり冴え返る 乙字俳句集 大須賀乙字
雪中に瑠璃冴えにけり竜の玉 荻野泰成
雪冴えや癌ならざりし血が匂ふ 加藤知世子 花寂び
雪明り闘病冴えの眠る顔 加藤知世子 花寂び
雷のあと竹冴えて祖の魂を待つ 鶏二
電気ストーブ冴えざえ二日明けにけり 永井龍男
霜をける畠の冴えや鍬の音 太祇
霜月や下駄の音冴ゆる大通り 寺田寅彦
霜柱余命を賭けし一誌冴ゆ 小林康治
霜除や月より冴ゆるオリオン座 渡辺水巴
青き草に雪来る北の馬冴えて 大井雅人 龍岡村
青を研ぐごとくに風や冴えかえる 平井照敏
青簾銀屏よりも撥の冴え 沢木欣一
音冴えて羽根の羽白し松の風 鏡花
音楽の殴打冴えてくる水蓮 増田まさみ
頼み了へ人冴ゆ目尻の皺も消し 香西照雄 対話
風となる灯に冴えまさりつゝ読める 赤城さかえ
風冴えて宙にまぎるる白梅花 飯田蛇笏 雪峡
風冴えて高嶺紺青雪のこる 飯田蛇笏 雪峡
風冴えて魚の腹さく女の手 石橋秀野
風冴ゆる遠き燈と生命鮮明に 佐野美智
風荒き峠の菫冴えにけり 渡辺水巴 白日
馬を野放つ日のゆくりなう冴え返る 乙字俳句集 大須賀乙字
鮒忠の灯と並び冴ゆ通夜の灯 石原八束 空の渚
鯉の金しづめし水の冴ゆるかな 鷲谷七菜子 花寂び
鴉めく太宰のマント冴え返る 田中英子
鴎らに鷹を消したる空の冴え 上田五千石 琥珀
鴨わたり太白月と冴えのこる 木津柳芽 白鷺抄
鶏の眼の金環冴えて初時雨 北原志満子
鶏鳴冴え追うてむなしき幸てふもの 川口重美
鶴の羽や白きが上に冴え返る 河東碧梧桐
黄金のモザイク冴ゆる寺広し 影島智子
さえざえとまたなき夜空現れにけり 齋藤玄 飛雪
さえざえと水蜜桃の夜明けかな 加藤楸邨
さえざえと紙切り裂ける肥後之守 高澤良一 さざなみやっこ 
さえざえと雪後の天の怒濤かな 加藤秋邨 雪後の天
手品師に十指さえざえありにけり 加藤耕子
漬茄子の紺さえざえと赤坂昏れ 楠本憲吉
風のあと刻さえざえと梅ひらく 鷲谷七菜子 雨 月
鳴く千鳥水さえざえと暮れのこる 瀧春一 菜園
あんこ玉薄皮冴えに冴えにけり  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2015-01-10 00:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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