寒鯉
寒鯉
例句を挙げる。
すれ違ふ寒鯉に渦おこりけり 岸本尚毅 選集「氷」
たもとほる寒鯉釣の一人かな 青畝
まざと見たり寒鯉沈むときの瞳を 川口重美
わが咳けば寒鯉鰭をうごかしぬ 風生
わが堕ちし穴寒鯉の口なりし 熊谷愛子
ライターの青火寒鯉水に澄む 三谷昭 獣身
一すぢの日に寒鯉のみじろぎぬ 不断草
一椀にあまる冬鯉の胴廻り 栗生純夫 科野路
別の桶にも寒鯉の水しぶき 龍太
動かざる寒鯉を見て決断す 中西咲央
動かねば寒鯉の金くもらざる 西川 織子
反転の寒鯉黄銀日矢の中 中村明子
寒鯉がうごき嶺々めざめたり 楸邨
寒鯉が動き公園動きだす 森田智子
寒鯉となりてゐたりし夢の中 片山由美子 水精
寒鯉となり渓聲を天に擧ぐ 古舘曹人 砂の音
寒鯉とわかる深さにをりにけり 新井ひろし
寒鯉とわれ遂にわれより動く 能村研三(1949-)
寒鯉にときをり青き葉も散りぬ 岸本尚毅 鶏頭
寒鯉にぴしりと脛を打たれたり 太田鴻村 穂国
寒鯉に一すぢの日のさしにけり 渡辺一魯
寒鯉に又きぬずれの音のして 大峯あきら
寒鯉に喪服の男手をたたく 坂間恒子
寒鯉に影のずしりとぶらさがる 斉藤扶美
寒鯉に手叩き寺の白飯粒 中山純子 沙羅
寒鯉に揺るぎなき水重なれる 橋田憲明
寒鯉に方丈よりの灯かげかな 清原枴童 枴童句集
寒鯉に昃りし水の重さかな 山田閏子
寒鯉に見ゆれ光の棒に見ゆれ 齋藤玄 『狩眼』
寒鯉に金輪際のひかりかな 齋藤玄 『玄』
寒鯉に隠るるところなかりけり 藺草慶子
寒鯉に音をとばして刀鍛冶 石田勝彦 秋興
寒鯉のあとしざりつゝ相寄りぬ 三宅清三郎
寒鯉のあらはの鰭や古盥 飯田蛇笏 山廬集
寒鯉のうねる心音ひそみをり 新谷ひろし
寒鯉のかたまつてゐて触れ合はず 伊藤伊那男
寒鯉のかたまるあたりより昏し 嶋田麻紀
寒鯉のぎくと向き変ふ帰心かな 鍵和田釉子
寒鯉のけむりの如く去りにけり 杉山碧風
寒鯉のごつとぶつかり煙るかな 小島健(1946-)
寒鯉のさびしらの目の動くかな 坂本山秀朗
寒鯉のしづかなりけり瞼深く 青邨
寒鯉のしばしおのれを流しゐる 鳥居おさむ
寒鯉のそよぎに水の応へざる 上田五千石 琥珀
寒鯉のひとつの色にまはりけり 古舘曹人 樹下石上
寒鯉のふたたびよつてくる目つき 松澤 昭
寒鯉のふたつのひげを思ひ寝る 三橋敏雄 畳の上
寒鯉のまためぐり来し柱かな 藺草慶子
寒鯉のまなじりあげて喪を泳ぐ 松本照子
寒鯉のみじろげば湧くにごりかな 菁果
寒鯉のものを言ひたる目が動く 澄雄
寒鯉のもの言ひつひに聞きもらす 嶋田麻紀
寒鯉のゆらりと水の殺到す 脇 祥一
寒鯉の一擲したる力かな 高濱虚子
寒鯉の上にこの世の風が吹く 鈴木鷹夫
寒鯉の二匹問答するごとし 太田土男
寒鯉の光る水面をさざめかす 稲畑汀子
寒鯉の凝然たるを凝視せり 相生垣瓜人
寒鯉の叡智めぐらすごとくなり 高澤良一 燕音
寒鯉の口で息して腑を抜かる 右城暮石 声と声
寒鯉の口にひろがるかすみかな 久保純夫 水渉記
寒鯉の呪縛ときたる水の色 鈴木貞雄
寒鯉の呼吸大きく秤られし 酒井智代
寒鯉の売れてだぶつく命水 羽公
寒鯉の売れのこりゐて日の暮るる 田中冬二 麦ほこり
寒鯉の居ると云ふなる水蒼し 普羅
寒鯉の常陸山垣低くして 軽部烏頭子
寒鯉の平安水の昏さに馴れ 桂信子 黄 瀬
寒鯉の張(ふく)よかなるを見逃さず 佐川広治
寒鯉の怫然たるを売買す 相生垣瓜人 明治草抄
寒鯉の悠々たるを叱陀せり 原裕 『新治』
寒鯉の散るとき水の厚みかな 伊丹さち子
寒鯉の斑のとどこほるささめ雪 後藤夜半
寒鯉の桶に大利根柏屋と 田中冬二 行人
寒鯉の桶底に沈みて藍ばめる 田中冬二 行人
寒鯉の権(はか)らるる目の何見ゆる 山口草堂
寒鯉の水くもらせて山の雨 茨木和生 遠つ川
寒鯉の水に来ており山の翳 白井房夫
寒鯉の水の筋金呑みしごと 宮坂静生
寒鯉の水の粘りてゐたりけり 草間時彦 櫻山
寒鯉の水押す力鈍りたる 高澤良一 鳩信
寒鯉の沈みきりたるあと知らず 館岡沙緻
寒鯉の泳ぎ畢せし影なるや 鳥居おさむ
寒鯉の流れに耐へてをりにけり 谷口忠男
寒鯉の浮びきし口餌をはづれ 平野青坡
寒鯉の深く沈みて石となる(母の死) 河野南畦 『空の貌』
寒鯉の澄むや奥より主客の声 赤城さかえ
寒鯉の班のとどこほるささめ雪 後藤夜半
寒鯉の生き身をはさむひとの前 野沢節子
寒鯉の生くる証の泥けむり 遠藤若狭男
寒鯉の百の一鰭だに揺れず 大岳水一路
寒鯉の籠しづまらず秤らるる 波田 三水
寒鯉の背なの高みの現れし 岸本尚毅
寒鯉の背鰭の水はぬめりけり 齊藤夏風
寒鯉の胴さやさやと触れ合へる 太田嗟
寒鯉の腹中にてもさざなみす 齋藤玄 『狩眼』
寒鯉の臓腑ぬくしと捌きをり 北村保
寒鯉の色あつまつてなほ淡し 曹人
寒鯉の色うつり来て消えにけり 静雲
寒鯉の花びらとなり沈みをり 靖子
寒鯉の苞提げゆくに河碧し 栗生純夫 科野路
寒鯉の買はるる空のうすみどり 白葉女
寒鯉の蹴たてし泥のまだひろがる 森田峠 避暑散歩
寒鯉の身を摺り合ひて桶に澄む 中島杏子
寒鯉の遠き雲よりしづかなり 黒木 夜雨
寒鯉の金泥のごと沈みゐる 鈴木貞雄
寒鯉の金鐶の眼を嵌めにけり 福田蓼汀
寒鯉の闇に水打つ山の宿 林 瑠美
寒鯉の雌伏を沈めをりにけり 山田弘子
寒鯉の雲のごとくにしづもれる 山口青邨
寒鯉の静にむきをかへにけり 保坂文虹
寒鯉の音なく群れて脂肌 小檜山繁子
寒鯉の頭揃えて沈みをり 榎田きよ子
寒鯉の鬱々としてたむろせり 五十嵐播水
寒鯉の魚籠にひかりて月ありぬ 秋櫻子
寒鯉の鰭あほりたる水玄(くろ)き 高澤良一 素抱
寒鯉の黒光りして斬られけり 飯田蛇笏(1885-1962)
寒鯉はしづかなるかな鰭を垂れ 水原秋櫻子
寒鯉は背が濃し贅肉なき詩人 香西照雄
寒鯉やたかし歩みし道辺にて 草間時彦 櫻山
寒鯉やみられてしまい発狂す 鈴木六林男
寒鯉やむら胆据ゑて水の底 石塚友二 光塵
寒鯉や乳房の胸に手を入れて 鈴木六林男 王国
寒鯉や底をコントラバス響く 柴田奈美
寒鯉や日ねもす顔を突き合せ 前田普羅 春寒浅間山
寒鯉や浅き生簀に脊を並べ 増田龍雨 龍雨句集
寒鯉や石ともなれず身じろぎぬ 但馬美作
寒鯉や見られてしまい発狂す 鈴木六林男
寒鯉をぐるぐる巻に新聞紙 細川加賀 生身魂
寒鯉をまな板にのせふたごころ 中山純子 沙 羅以後
寒鯉を丸太掴みに丸太切り 上村占魚 『自門』
寒鯉を二夜つゞけて貰ひけり 原石鼎 花影以後
寒鯉を包む苞なく笹にさす 田中冬二 行人
寒鯉を封づ氷の曇りけり 高澤良一 随笑
寒鯉を持つ腕ぐいと突き出せり 茨木和生 野迫川
寒鯉を掬ひしたもの撓みかな 橋本鶏二 年輪
寒鯉を提げ墓原をよぎりけり 館岡沙緻
寒鯉を生かす盥の天地かな 三幹竹
寒鯉を真白しと見れば鰭の藍 水原秋櫻子
寒鯉を突きぬ静かに濁る水 石井とし夫
寒鯉を苞にして抱く銃の如 今瀬剛一
寒鯉を苞造りして重たさよ 杉雨
寒鯉を見て雲水の去りゆけり 森澄雄
寒鯉を雲のごとくに食はず飼ふ 森澄雄
寒鯉仮死の如く潜むも不倫めき 楠本憲吉
寒鯉棒の如くに動かざる 加来 小洞
寒鯉雄々し黒天鵞絨の座布団も 草田男
尾へ抜けて寒鯉の身をはしる力 加藤秋邨 まぼろしの鹿
山動くかに寒鯉の動きけり 藤崎久を
帯ほどくごと寒鯉のうごきいづ 島谷 征良
掬ひたる寒鯉網におとなしく 上村占魚 球磨
晩年や寒鯉動く夜の川 上田晩春郎
水洟をすすり寒鯉売つて居り 田中冬二 麦ほこり
浮いて来し寒鯉にこゑかけにけり 細川加賀 生身魂
甘露煮や寒鯉の金なほのこり 楸邨
生きてゐる重さ寒鯉苞に巻く 火川
群のまま寒鯉すこし動きけり 上野泰 佐介
記憶するために寒鯉にさわる 永末恵子 留守
陽の下にただ寒鯉の尾鰭あり 田中鬼骨
鯉爺の寒鯉つきのなくなりし 久保 青山
泳ぎ来る鯉にさゞなみ凍るかも 渡邊水巴 富士
大鯉の屍見にゆく凍のなか 飯田龍太 山の木
ふくらかに腸蔵す寒の鯉 矢島渚男 梟
やや寒の鯉にゆらりと鯉寄りて 高澤良一 さざなみやっこ
三寒の鯉がみじろぐ泥けむり 能村登四郎
二日三日生けて得食はず寒の鯉 林原耒井 蜩
僧体のやうなつもりの寒の鯉 齋藤玄 『狩眼』
冬の海紺青の斑の鯉澄める 水原秋桜子
冬の鯉光飲んでは沈みけり 稲垣恵子
冬の鯉幽く梵鐘ひゞきけり 渡邊水巴 富士
冬の鯉日ごとに不動たらむとす 大串 章
別の世のほうが賑やか寒の鯉 宇多喜代子 象
動かぬが修羅となるなり寒の鯉 斎藤玄
口しめて男の月日冬の鯉 永田耕一郎 方途
家ぬちに男のいろの寒の鯉 関戸靖子
寒の鯉もの言いたげに瞑りぬ 宇多喜代子 象
寒の鯉身をしぼりつつ朱をこぼす 鍵和田釉子
寒の鯉金輪際をうごかざる 川端茅舎
少年に白紙おかれて冬の鯉 桂信子 黄 瀬
山の子が提げて静かな寒の鯉 稲垣晩童
日を封じ山ふところに寒の鯉 斎藤玄 狩眼
水底に昼夜を分ち冬の鯉 桂信子 黄 瀬
滝口にたゆたふ寒の鯉として 大高芭瑠子
神仏まづ暮れ給ふなり冬の鯉 中山純子 沙 羅以後
葛飾の鯉の黒さや寒の雨 野村喜舟 小石川
薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎(1911-2002)
身に鳴つて食としにけり冬の鯉 斎藤玄 雁道
身動きも夢見ごころや寒の鯉 森澄雄 四遠
透明になるまで眠る寒の鯉 谷口桂子
閑かなる水の重たし冬の鯉 東條和子
鰭動くとき生きてをり寒の鯉 六花女
青蓮院(粟田御所)
掌を打てるところへ寒ンの御所の鯉 高澤良一 燕音
寒鯉は黎明の色つと動く 高澤良一 暮津
以上
例句を挙げる。
すれ違ふ寒鯉に渦おこりけり 岸本尚毅 選集「氷」
たもとほる寒鯉釣の一人かな 青畝
まざと見たり寒鯉沈むときの瞳を 川口重美
わが咳けば寒鯉鰭をうごかしぬ 風生
わが堕ちし穴寒鯉の口なりし 熊谷愛子
ライターの青火寒鯉水に澄む 三谷昭 獣身
一すぢの日に寒鯉のみじろぎぬ 不断草
一椀にあまる冬鯉の胴廻り 栗生純夫 科野路
別の桶にも寒鯉の水しぶき 龍太
動かざる寒鯉を見て決断す 中西咲央
動かねば寒鯉の金くもらざる 西川 織子
反転の寒鯉黄銀日矢の中 中村明子
寒鯉がうごき嶺々めざめたり 楸邨
寒鯉が動き公園動きだす 森田智子
寒鯉となりてゐたりし夢の中 片山由美子 水精
寒鯉となり渓聲を天に擧ぐ 古舘曹人 砂の音
寒鯉とわかる深さにをりにけり 新井ひろし
寒鯉とわれ遂にわれより動く 能村研三(1949-)
寒鯉にときをり青き葉も散りぬ 岸本尚毅 鶏頭
寒鯉にぴしりと脛を打たれたり 太田鴻村 穂国
寒鯉に一すぢの日のさしにけり 渡辺一魯
寒鯉に又きぬずれの音のして 大峯あきら
寒鯉に喪服の男手をたたく 坂間恒子
寒鯉に影のずしりとぶらさがる 斉藤扶美
寒鯉に手叩き寺の白飯粒 中山純子 沙羅
寒鯉に揺るぎなき水重なれる 橋田憲明
寒鯉に方丈よりの灯かげかな 清原枴童 枴童句集
寒鯉に昃りし水の重さかな 山田閏子
寒鯉に見ゆれ光の棒に見ゆれ 齋藤玄 『狩眼』
寒鯉に金輪際のひかりかな 齋藤玄 『玄』
寒鯉に隠るるところなかりけり 藺草慶子
寒鯉に音をとばして刀鍛冶 石田勝彦 秋興
寒鯉のあとしざりつゝ相寄りぬ 三宅清三郎
寒鯉のあらはの鰭や古盥 飯田蛇笏 山廬集
寒鯉のうねる心音ひそみをり 新谷ひろし
寒鯉のかたまつてゐて触れ合はず 伊藤伊那男
寒鯉のかたまるあたりより昏し 嶋田麻紀
寒鯉のぎくと向き変ふ帰心かな 鍵和田釉子
寒鯉のけむりの如く去りにけり 杉山碧風
寒鯉のごつとぶつかり煙るかな 小島健(1946-)
寒鯉のさびしらの目の動くかな 坂本山秀朗
寒鯉のしづかなりけり瞼深く 青邨
寒鯉のしばしおのれを流しゐる 鳥居おさむ
寒鯉のそよぎに水の応へざる 上田五千石 琥珀
寒鯉のひとつの色にまはりけり 古舘曹人 樹下石上
寒鯉のふたたびよつてくる目つき 松澤 昭
寒鯉のふたつのひげを思ひ寝る 三橋敏雄 畳の上
寒鯉のまためぐり来し柱かな 藺草慶子
寒鯉のまなじりあげて喪を泳ぐ 松本照子
寒鯉のみじろげば湧くにごりかな 菁果
寒鯉のものを言ひたる目が動く 澄雄
寒鯉のもの言ひつひに聞きもらす 嶋田麻紀
寒鯉のゆらりと水の殺到す 脇 祥一
寒鯉の一擲したる力かな 高濱虚子
寒鯉の上にこの世の風が吹く 鈴木鷹夫
寒鯉の二匹問答するごとし 太田土男
寒鯉の光る水面をさざめかす 稲畑汀子
寒鯉の凝然たるを凝視せり 相生垣瓜人
寒鯉の叡智めぐらすごとくなり 高澤良一 燕音
寒鯉の口で息して腑を抜かる 右城暮石 声と声
寒鯉の口にひろがるかすみかな 久保純夫 水渉記
寒鯉の呪縛ときたる水の色 鈴木貞雄
寒鯉の呼吸大きく秤られし 酒井智代
寒鯉の売れてだぶつく命水 羽公
寒鯉の売れのこりゐて日の暮るる 田中冬二 麦ほこり
寒鯉の居ると云ふなる水蒼し 普羅
寒鯉の常陸山垣低くして 軽部烏頭子
寒鯉の平安水の昏さに馴れ 桂信子 黄 瀬
寒鯉の張(ふく)よかなるを見逃さず 佐川広治
寒鯉の怫然たるを売買す 相生垣瓜人 明治草抄
寒鯉の悠々たるを叱陀せり 原裕 『新治』
寒鯉の散るとき水の厚みかな 伊丹さち子
寒鯉の斑のとどこほるささめ雪 後藤夜半
寒鯉の桶に大利根柏屋と 田中冬二 行人
寒鯉の桶底に沈みて藍ばめる 田中冬二 行人
寒鯉の権(はか)らるる目の何見ゆる 山口草堂
寒鯉の水くもらせて山の雨 茨木和生 遠つ川
寒鯉の水に来ており山の翳 白井房夫
寒鯉の水の筋金呑みしごと 宮坂静生
寒鯉の水の粘りてゐたりけり 草間時彦 櫻山
寒鯉の水押す力鈍りたる 高澤良一 鳩信
寒鯉の沈みきりたるあと知らず 館岡沙緻
寒鯉の泳ぎ畢せし影なるや 鳥居おさむ
寒鯉の流れに耐へてをりにけり 谷口忠男
寒鯉の浮びきし口餌をはづれ 平野青坡
寒鯉の深く沈みて石となる(母の死) 河野南畦 『空の貌』
寒鯉の澄むや奥より主客の声 赤城さかえ
寒鯉の班のとどこほるささめ雪 後藤夜半
寒鯉の生き身をはさむひとの前 野沢節子
寒鯉の生くる証の泥けむり 遠藤若狭男
寒鯉の百の一鰭だに揺れず 大岳水一路
寒鯉の籠しづまらず秤らるる 波田 三水
寒鯉の背なの高みの現れし 岸本尚毅
寒鯉の背鰭の水はぬめりけり 齊藤夏風
寒鯉の胴さやさやと触れ合へる 太田嗟
寒鯉の腹中にてもさざなみす 齋藤玄 『狩眼』
寒鯉の臓腑ぬくしと捌きをり 北村保
寒鯉の色あつまつてなほ淡し 曹人
寒鯉の色うつり来て消えにけり 静雲
寒鯉の花びらとなり沈みをり 靖子
寒鯉の苞提げゆくに河碧し 栗生純夫 科野路
寒鯉の買はるる空のうすみどり 白葉女
寒鯉の蹴たてし泥のまだひろがる 森田峠 避暑散歩
寒鯉の身を摺り合ひて桶に澄む 中島杏子
寒鯉の遠き雲よりしづかなり 黒木 夜雨
寒鯉の金泥のごと沈みゐる 鈴木貞雄
寒鯉の金鐶の眼を嵌めにけり 福田蓼汀
寒鯉の闇に水打つ山の宿 林 瑠美
寒鯉の雌伏を沈めをりにけり 山田弘子
寒鯉の雲のごとくにしづもれる 山口青邨
寒鯉の静にむきをかへにけり 保坂文虹
寒鯉の音なく群れて脂肌 小檜山繁子
寒鯉の頭揃えて沈みをり 榎田きよ子
寒鯉の鬱々としてたむろせり 五十嵐播水
寒鯉の魚籠にひかりて月ありぬ 秋櫻子
寒鯉の鰭あほりたる水玄(くろ)き 高澤良一 素抱
寒鯉の黒光りして斬られけり 飯田蛇笏(1885-1962)
寒鯉はしづかなるかな鰭を垂れ 水原秋櫻子
寒鯉は背が濃し贅肉なき詩人 香西照雄
寒鯉やたかし歩みし道辺にて 草間時彦 櫻山
寒鯉やみられてしまい発狂す 鈴木六林男
寒鯉やむら胆据ゑて水の底 石塚友二 光塵
寒鯉や乳房の胸に手を入れて 鈴木六林男 王国
寒鯉や底をコントラバス響く 柴田奈美
寒鯉や日ねもす顔を突き合せ 前田普羅 春寒浅間山
寒鯉や浅き生簀に脊を並べ 増田龍雨 龍雨句集
寒鯉や石ともなれず身じろぎぬ 但馬美作
寒鯉や見られてしまい発狂す 鈴木六林男
寒鯉をぐるぐる巻に新聞紙 細川加賀 生身魂
寒鯉をまな板にのせふたごころ 中山純子 沙 羅以後
寒鯉を丸太掴みに丸太切り 上村占魚 『自門』
寒鯉を二夜つゞけて貰ひけり 原石鼎 花影以後
寒鯉を包む苞なく笹にさす 田中冬二 行人
寒鯉を封づ氷の曇りけり 高澤良一 随笑
寒鯉を持つ腕ぐいと突き出せり 茨木和生 野迫川
寒鯉を掬ひしたもの撓みかな 橋本鶏二 年輪
寒鯉を提げ墓原をよぎりけり 館岡沙緻
寒鯉を生かす盥の天地かな 三幹竹
寒鯉を真白しと見れば鰭の藍 水原秋櫻子
寒鯉を突きぬ静かに濁る水 石井とし夫
寒鯉を苞にして抱く銃の如 今瀬剛一
寒鯉を苞造りして重たさよ 杉雨
寒鯉を見て雲水の去りゆけり 森澄雄
寒鯉を雲のごとくに食はず飼ふ 森澄雄
寒鯉仮死の如く潜むも不倫めき 楠本憲吉
寒鯉棒の如くに動かざる 加来 小洞
寒鯉雄々し黒天鵞絨の座布団も 草田男
尾へ抜けて寒鯉の身をはしる力 加藤秋邨 まぼろしの鹿
山動くかに寒鯉の動きけり 藤崎久を
帯ほどくごと寒鯉のうごきいづ 島谷 征良
掬ひたる寒鯉網におとなしく 上村占魚 球磨
晩年や寒鯉動く夜の川 上田晩春郎
水洟をすすり寒鯉売つて居り 田中冬二 麦ほこり
浮いて来し寒鯉にこゑかけにけり 細川加賀 生身魂
甘露煮や寒鯉の金なほのこり 楸邨
生きてゐる重さ寒鯉苞に巻く 火川
群のまま寒鯉すこし動きけり 上野泰 佐介
記憶するために寒鯉にさわる 永末恵子 留守
陽の下にただ寒鯉の尾鰭あり 田中鬼骨
鯉爺の寒鯉つきのなくなりし 久保 青山
泳ぎ来る鯉にさゞなみ凍るかも 渡邊水巴 富士
大鯉の屍見にゆく凍のなか 飯田龍太 山の木
ふくらかに腸蔵す寒の鯉 矢島渚男 梟
やや寒の鯉にゆらりと鯉寄りて 高澤良一 さざなみやっこ
三寒の鯉がみじろぐ泥けむり 能村登四郎
二日三日生けて得食はず寒の鯉 林原耒井 蜩
僧体のやうなつもりの寒の鯉 齋藤玄 『狩眼』
冬の海紺青の斑の鯉澄める 水原秋桜子
冬の鯉光飲んでは沈みけり 稲垣恵子
冬の鯉幽く梵鐘ひゞきけり 渡邊水巴 富士
冬の鯉日ごとに不動たらむとす 大串 章
別の世のほうが賑やか寒の鯉 宇多喜代子 象
動かぬが修羅となるなり寒の鯉 斎藤玄
口しめて男の月日冬の鯉 永田耕一郎 方途
家ぬちに男のいろの寒の鯉 関戸靖子
寒の鯉もの言いたげに瞑りぬ 宇多喜代子 象
寒の鯉身をしぼりつつ朱をこぼす 鍵和田釉子
寒の鯉金輪際をうごかざる 川端茅舎
少年に白紙おかれて冬の鯉 桂信子 黄 瀬
山の子が提げて静かな寒の鯉 稲垣晩童
日を封じ山ふところに寒の鯉 斎藤玄 狩眼
水底に昼夜を分ち冬の鯉 桂信子 黄 瀬
滝口にたゆたふ寒の鯉として 大高芭瑠子
神仏まづ暮れ給ふなり冬の鯉 中山純子 沙 羅以後
葛飾の鯉の黒さや寒の雨 野村喜舟 小石川
薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎(1911-2002)
身に鳴つて食としにけり冬の鯉 斎藤玄 雁道
身動きも夢見ごころや寒の鯉 森澄雄 四遠
透明になるまで眠る寒の鯉 谷口桂子
閑かなる水の重たし冬の鯉 東條和子
鰭動くとき生きてをり寒の鯉 六花女
青蓮院(粟田御所)
掌を打てるところへ寒ンの御所の鯉 高澤良一 燕音
寒鯉は黎明の色つと動く 高澤良一 暮津
以上
by 575fudemakase
| 2015-01-14 00:47
| 冬の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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