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春風

春風

例句を挙げる。

あと戻りして春風に吹かれゐる 今井杏太郎
あをみどろ剥がれゆく春風を無帽 原田種茅 径
その人がゐて春風の吹くごとし 北富美子
どちらから吹くも春風風見鶏 後藤比奈夫
ひとつづつ春風渡す風船売 佐藤和夫
ひようきん者に古来利あらず春風ふく 橋本夢道 無禮なる妻抄
むら薄輪に春風や帆のあまり 斯波園女
もろこしの春風を載せて帰り鳧 内田百間
よろこびといふ春風に似たるもの 深川正一郎
ステッキの軽ろきを取りて春風に 日置草崖
一歩さへ成しがたきとき春風来 橋本榮治 越在
下北半島や春風くばる郵便夫 杉浦範昌
丘のぼるたゞ春風に吹かれたく 中島智子
今日よりの春風なりしコップ伏せ 井上雪
何見ても親し春風吹くときは 藤崎久を
入り鉄砲 出女 春風 通過せり 高澤良一 燕音
写真機を据え春風の渡月橋 高濱年尾 年尾句集
効く薬あり春風に面吹かれ 村越化石
古稀といふ春風にをる齢かな 風生
句箋吹いて春風甲斐へ渡るかな 碧雲居句集 大谷碧雲居
基地春風頸を平らに猫が咳く 田川飛旅子 花文字
夕焼に染まる春風とぞ思ふ 目迫秩父
夜の春風手の甲のどぶどろかわかしね 内田百間
天上は春風まかせまなぐ凧 文挟夫佐恵 雨 月
家あり一つ春風春水の真中に 夏目漱石 明治二十九年
家に這入るときの春風身をおかす 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
家出するちりめんじゃこも春風も 坪内稔典
家出づる子に春風を持たせけり(白井爽風氏の句にならひて) 橋本榮治 越在
寿命とはただ春風の吹いてをり 藤崎久を
屋の棟や春風鳴つて白羽の矢 夏目漱石 明治二十九年
山寺暮春風呂の煙りに守宮出づ 松村蒼石 雁
御身拭春風たへに堂の内 松瀬青々
心地よき疲れを縁に春風に 高木晴子 晴居
散のこる葉を春風のもみぢ哉 松岡青蘿
星条旗春風に見るニユーヨーク 高木晴子
春光は見え春風は見えざりし 嶋田一歩
春風が吹いても石は石佛 寺田寅彦
春風が汝を抱きくぼみし胸 川口重美
春風が消えにはとりも暗くなる 龍太
春風が空の中から吹いて来る 松瀬青々
春風で砂丘の神の砂あそび 辻田克巳
春風というて鬣なきものら 柿本多映
春風という肉体の行きずりぞ 永田耕衣 物質
春風といふ川風に母校かな 前野雅生
春風となる焼あとの子供たち 中川宋淵 命篇
春風と思ひたるより歩を移す 稲畑汀子 春光
春風にいつまで栗の落葉哉 蝶夢
春風にからだほどけてゆく紐か 田中裕明 櫻姫譚
春風にこぼれて赤し歯磨粉 正岡子規(1867-1903)
春風にさかふて濁る野川哉 松岡青蘿
春風につい置きしほどの寺門かな 細見綾子 花寂び
春風にてらすや騎射の綾藺笠 炭 太祇 太祇句選
春風にのべふすいろや淡路島 松岡青蘿
春風にはばたきがちや地図ひらく 西村和子 夏帽子
春風にひよどり多き葬りかな 大峯あきら 鳥道
春風にふき出されけり水の胡蘆 去来 芭蕉庵小文庫
春風にまぶたをそめてひときたり 川島彷徨子 榛の木
春風にむかふ椿のしめりかな 野波 二 月 月別句集「韻塞」
春風にポプラは芽ぶくこと遅し 高木晴子 晴居
春風に七味が飛べり競艇場 辻桃子 ねむ 以後
春風に乗りたくて買ふトウシューズ 米沢恵子
春風に力くらぶる雲雀かな 野水
春風に吹かれ心地や温泉の戻り 夏目漱石 大正三年
春風に吹き出し笑ふ花もがな 松尾芭蕉
春風に吹出されたり水の胡蘆 向井去来
春風に太く男神のおんばしら 杉本寛
春風に尻を吹るゝ屋根屋哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
春風に尾をひろげたる孔雀哉 正岡子規
春風に山の木育つ真直かな 柑子句集 籾山柑子
春風に引いてしまへば短き根 依光陽子
春風に待つ間程なき白帆哉 井上井月(1822-86)
春風に暮れて人冷ゆ大伽藍 原石鼎
春風に松毬飛ぶや深山径 前田普羅 春寒浅間山
春風に此処はいやだとおもつて居る 池田澄子
春風に母死ぬ龍角散が散り 坪内稔典
春風に池水たゞある焦土かな 青峰集 島田青峰
春風に派手なスカーフ巻いてみる 吉田喜美子
春風に浮いてすぐ死ぬ紙の鶴 坪内稔典
春風に海知らぬ国の空碧し 青峰集 島田青峰
春風に煮崩れている遠海魚 坪内稔典
春風に畏みくぐりたる木戸ぞ 村松紅花
春風に眼小さくなる老母 飯田龍太
春風に立つ顔セやかゞやけり 青峰集 島田青峰
春風に箸を掴で寝る子哉 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
春風に重く置きけり墓の蓋 長谷川かな女 雨 月
春風に開けたる窓の夜となりぬ 高濱年尾 年尾句集
春風に阿闍梨の笠の匂かな 蕪村遺稿 春
春風に電線はいま弦となる 皆吉司
春風に面伏せて暗き山河かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
春風に頂渡る禅師かな 野村喜舟 小石川
春風に頬光らせて皆居たり 久米正雄 返り花
春風に駝鳥の耳はありとのみ 五十嵐播水
春風に鴨のあかあし歩きをり 田中裕明 櫻姫譚
春風のいねいねと囁く眠し 石塚友二 光塵
春風のおしろい刷毛でありにけり 波多野爽波 『一筆』
春風のこそつかせけり炭俵 高井几董
春風のごとく青年肉食す 保科その子
春風のさそつてくれしとこしなへ 松澤昭 面白
春風のそこ意地寒ししなの山 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
春風のちぎれて鶏の白散れり 太田土男
春風のつまかへしたり春曙抄 蕪村遺稿 春
春風のやさしき散歩車椅子 窪田佐以
春風の一日のみち長かりし 高野素十
春風の先頭を切るモノレール 吉原文音
春風の切断面を思わずや 豊口陽子
春風の只中にあり太き枝 中田剛 珠樹
春風の吹いておりたる藁屋かな 倉田 紘文
春風の吹いて居るなり飴細工 河東碧梧桐
春風の吹き止まず宵の雨となり 内田百間
春風の吹けども黒き仏かな 正岡子規
春風の吹出したる筏かな 桂棠
春風の壁ひとの名か船の名か 子郷
春風の大阪湾に足垂らす 坪内稔典(1944-)
春風の女見に出る女かな 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
春風の山の麓に子がもたれ 大峯あきら
春風の彼方かならず太平洋 木附沢麦青
春風の心となりて老いゆかん 中井余花朗
春風の心を人に頒たばや 高浜虚子
春風の扉ひらけば南無阿弥陀仏 山頭火
春風の折れしところが法善寺 山田弘子
春風の揚州に絹売る話 山本洋子
春風の旗の日の丸落日色 池田澄子
春風の日本に源氏物語 京極杞陽
春風の昔一銭蒸汽かな 成瀬正俊
春風の来る庭詰の僧の膝 後藤比奈夫
春風の檜原をかけし少女かな 岡井省二
春風の比羅に亡き名をとゞめけり 久保田万太郎 草の丈
春風の疾風にかはる夜の柱 大木あまり 雲の塔
春風の石にジンタが喇叭置く 高濱年尾 年尾句集
春風の石を引き切る別れかな 服部嵐雪
春風の石叩ゐる蘆の先 山本洋子
春風の美しき空や棚曇り 矢野奇遇
春風の行方を記す海図室 八木荘一
春風の裏返し吹く忘れ物 岸田稚魚 『紅葉山』
春風の重い扉だ 住宅顕信(すみたく・けんしん)(1961-87)
春風の野山をわたる雲の影 中勘助
春風の鉢の子一つ 種田山頭火 草木塔
春風の頬にくつ附くは酷ならむ 永田耕衣 殺祖
春風の驢に鞭喝を寛うせよ(原稿を断る) 芥川龍之介 我鬼窟句抄
春風はどの街角も曲り来る 三須虹秋
春風は山河のかけら舞台終ゆ 対馬康子 愛国
春風は海を渡りて檳榔樹 高澤良一 さざなみやっこ
春風も大阪ガスも魚なぶる 坪内稔典
春風も揃へて麦も稲むしろ 中村史邦
春風も静かな夜半をまどひ年 広瀬惟然
春風やいさかひ上る野崎船 岡本松浜
春風やいつか褪めゆく楼の色 楠目橙黄子 橙圃
春風やかぶつて運ぶたらひ舟 赤塚五行
春風やからだのなかに浮袋 大井恒行
春風やからりとかはく流し元 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
春風やくろき鶏冠を曳く誰か 宇多喜代子
春風やすぐつかまりし小盗人 福田蓼汀
春風やつうい~と附木舟 鈴木花蓑句集
春風やところ~の家普請 不木句集 小酒井不木
春風やひとりくふ飯くひこぼし 龍岡晋
春風やぶつかり合つて飛ぶ鶲 大峯あきら 鳥道
春風やまことに六世歌右衛門 久保田万太郎 流寓抄
春風やもすそみだれて美しき 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
春風やリュック一つでフランスヘ 岡田京花
春風や三保の松原清見寺 鬼貫
春風や三味線堀のささら波 正岡子規
春風や丘越えて来る卵売 中村明子
春風や乱れんとして淵の面 尾崎迷堂 孤輪
春風や仏を刻むかんな屑 大谷句佛 我は我
春風や伝へて黒き木端仏 大嶽青児
春風や伸びゆくビルの安全旗 藤本朋子
春風や但馬守は二等兵 京極杞陽 くくたち下巻
春風や佛を刻む鉋屑 句佛上人百詠 大谷句佛、岡本米蔵編
春風や侍二人犬の供 小林一茶 (1763-1827)
春風や八文芝居だんご茶や 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
春風や古き港の中の関 鈴鹿野風呂 浜木綿
春風や吉田通れば二階から 夏目漱石 明治二十九年
春風や吹かれこぼるる巌の砂 原石鼎
春風や吹かれ吹かれて三百里 正岡子規
春風や國の真中の善光寺 月舟俳句集 原月舟
春風や堤ごしなる牛の声 来山
春風や堤長うして家遠し 蕪村
春風や夕ほのしろし北魏佛 田中裕明 花間一壺
春風や大宮人の野雪隠 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
春風や大樹の下の夢がたり 廣江八重櫻
春風や大江戸に入る懐手 会津八一
春風や天上の人我を招く 正岡子規
春風や女も越る箱根山 一茶
春風や富士をまともに林檎むく 碧雲居句集 大谷碧雲居
春風や屑物市に糸車 高橋淡路女 梶の葉
春風や川波高く道をひたし 内田百間 百鬼園俳句
春風や巣に居る鷺のむく毛にも 幸田露伴 江東集
春風や干潟の蟹の穴ごもり 冬葉第一句集 吉田冬葉
春風や徐ろに欅伐り倒す 野村喜舟 小石川
春風や恥より赤きドレスを着て 中烏健二
春風や惟然が耳に馬の鈴 夏目漱石 明治三十九年
春風や我苦言容る君が眉宇 西山泊雲 泊雲句集
春風や我馬老いて草喰めり 野村泊月
春風や揃へる鯛にかけめぐり 野村喜舟 小石川
春風や旅としもなく京に来て 原 石鼎
春風や東下りの角力取 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
春風や枝こまやかに椋榎 野村喜舟 小石川
春風や柩を置きし畳拭く 依光陽子
春風や栄誉の丘に立つ我に 高濱年尾
春風や根岸の寮に女客 正岡子規
春風や桐の実黒く誰れも見し 碧雲居句集 大谷碧雲居
春風や桜もちらぬ能登の海 妻木 松瀬青々
春風や橋を渡れば嵐山 古白遺稿 藤野古白
春風や櫻もちらぬ能登の海 松瀬青々
春風や水楼に上る舟の酔 子規句集 虚子・碧梧桐選
春風や永代橋の人通り 正岡子規
春風や汐木が中の観世音 野村喜舟 小石川
春風や江沙へ道の自ら 楠目橙黄子 橙圃
春風や河原に熊の落し魚 乙字俳句集 大須賀乙字
春風や浅田の小波浅緑 暁台
春風や海は海苔取蚫取 正岡子規
春風や片手たづなに駒並めて 素逝
春風や牛に引かれて善光寺 小林一茶
春風や牛売りありく京の町 正岡子規
春風や牡蠣殻塚に花豌豆 島村元句集
春風や犬の寝聳(ねそべ)るわたし舟 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
春風や獅子のかたちに太湖石 日原傳
春風や玉乗の子の吹かれ皃 会津八一
春風や由良の戸守る松林 長谷川かな女 雨 月
春風や碁盤の上の置き手紙 井月の句集 井上井月
春風や筏なかなかまとまらず 永井龍男
春風や箍のはづれし桶のざま 真砂女
春風や箒目直し掃部寮 含粘 俳諧撰集「藤の実」
春風や米屋が前の鳩十羽 野村喜舟 小石川
春風や紅看板の吹きながし 井月の句集 井上井月
春風や紙を貼られし籠の底 野村喜舟 小石川
春風や紙漉く水に玉襷 野村喜舟 小石川
春風や義経芭蕉まぼろしに 鈴鹿野風呂 浜木綿
春風や老の躾は見習ひて 後藤夜半 底紅
春風や肥はこび来る大地主 中島月笠 月笠句集
春風や船伊豫に寄りて道後の湯 草雲雀 柳原極堂
春風や船頭唄ひ櫓が軋り 鎌倉啓三
春風や芒は穂絮皆飛ばし 高濱年尾 年尾句集
春風や花買ひに行くだけの用 稲畑汀子
春風や苗圃の緑丈揃ふ 福田蓼汀 秋風挽歌
春風や薙刀持の目八分 炭 太祇 太祇句選
春風や藪より藪の足出づる 鳴戸奈菜
春風や虚子の心を貰ひ立つ 水田むつみ
春風や蝶のうかるゝ長廊下 林紅
春風や走りたいとき馬走る 嶋田摩耶子
春風や軽塵ほのと路の草 臼田亞浪 定本亜浪句集
春風や通訳つけて居合抜 石島雉子郎
春風や逢坂越る女講 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
春風や遊女屋並ぶ向ふ河岸 寺田寅彦
春風や邸内にある道しるべ 五十嵐播水 埠頭
春風や酢売りありく声の艶 井月の句集 井上井月
春風や野川流るゝ水の泡 孤村句集 柳下孤村
春風や金箔入れし祝ひ酒 野村喜舟
春風や釣銭足らぬ煙草店 中島月笠 月笠句集
春風や鐘の売れたる後掃除 四明句集 中川四明
春風や門に出でゝは待ち歩りき 楠目橙黄子 橙圃
春風や闘志いだきて丘に立つ 高濱虚子
春風や阿波へ渡りの旅役者 正岡子規(1867-1903)
春風や青物市の跡広し 正岡子規
春風や頤とがるをんながた 高橋睦郎 荒童鈔
春風や頭ふれあう水子たち 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
春風や飴うつくしき店により 四明句集 中川四明
春風や馬に乗りたる小百姓 竹冷句鈔 角田竹冷
春風や駅馬たゝずむ札の辻 幸田露伴 蝸牛庵句集
春風や高さを競ふ千社札 故郷 吉田冬葉
春風や魚籠をのぞけば海老の髭 遠藤梧逸
春風や鮒つるいとのふるゝほど 幸田露伴 谷中集
春風や鮒つる泛子の羽のゆれ 幸田露伴 拾遺
春風や鳩の塒へ千社札 野村喜舟 小石川
春風や鴉に啼かる塞神 吉田鴻司
春風や鶏鳴くあちこち又井戸の音 高濱年尾 年尾句集
春風や鹿がうばひし奈良の地図 大島民郎
春風や麦の中行く水の音 木導
春風や鼠のなめる隅田川 一茶
春風をあふぎ駘蕩象の耳 山口青邨
春風を入れても油揚げからっぽ 鎌倉佐弓
春風を入れて停車の二分間 星野椿
春風を腹いつぱいに河馬沈む 白岩 三郎
春風塵犬もかたへに立ちどまる 原田種茅 径
春風雨野球そのまま進めをり 上野泰 春潮
材木のつまれ春風無尽なり 節子
枯芦に春風吹けば目高かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
橋渡りつつ春風の人となる 倉田 紘文
橡餅を食べ春風の川下り 岡部六弥太
浮き桶に吹けよ春風妊り海女 橋本夢道 『無類の妻』以後
激痛の間の春風や稿成りぬ 加藤知世子 花 季
生垣も春風ながき酒づくり 宇佐美魚目 天地存問
畑打や春風に乳房ひろげゝり 神津美那女
白き兔春風にかたまり売られゐる街ゆきて婚のこともしづけし 米川千嘉子
白湯吹いてのむ春風の七七忌 宇佐美魚目 秋収冬蔵
白脛に春風新進女教師よ 藤本節子
空へ旗立てて春風を鳴らす シヤツと雑草 栗林一石路
紙鳶あがるや蕪村春風馬堤曲 龍岡晋
細長い春風吹くや女坂 小林一茶 (1763-1827)
綿菓子をたべんと口を春風に 京極杞陽
舌と歯に春風あたる眼をつむり 草田男
衰へしわれの心をいかにせむ花散りまがふ春風の中 柴生田稔
裏山の春風さむしすぐ下る 上村占魚 球磨
襟吹いて春風ぞげに春は来ぬ 石塚友二 光塵
襷きつく春風に吹かれ茶をもてくる シヤツと雑草 栗林一石路
象の耳より春風となり来たる 岩岡中正
転校の子や春風に背を押され 永井たえこ
退院の一歩春風まとふなり 朝倉和江
運河春風ビルの窓より花買はれ 神尾久美子 掌
道草の子は春風を持ち帰る 小比賀三重子
鏡より抜けて理髪師春風に 古館曹人
長男として春風の家にあり 森田峠 避暑散歩
雲雀鳴く春風寒し藪がまへ 焦桐 俳諧撰集「藤の実」
靴みがくや春風に鳴る門の鈴 碧雲居句集 大谷碧雲居
馘首うらみ十年骨ずいに吹く春風ありける 橋本夢道 無禮なる妻抄
あるが中に蒟蒻玉も春の風 松岡青蘿
いま以上は伸びぬたてがみ春の風 池田澄子
おれもあの玉屋になろか春の風 幸田露伴 拾遺
ことづての二つ三つも春の風 高野素十
これはこれは腰が立つたか春の風 正岡子規
ごろた石一つ一つへ春の風 柏禎
すなどりに入つてゆきし春の風 松澤昭 麓入
そよ吹くは癌を進むる春の風 斎藤玄
そら豆の戦ぐは白し春の風 青魚
との曇るくぬぎ山から春の風 永峰久比古
はなじろむ上古の神や春の風 飯田蛇笏 霊芝
ははそはの母からははへ春の風 鎌倉佐弓
ひれを吹く春の風とも覚ゆなり 稲垣きくの 黄 瀬
ふところに入るは春の風ばかり 市堀 玉宗
ほして売る鯵に鰈に春の風 岡本綺堂
ぼた餅や地蔵のひざも春の風 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
ぽん~と竹よく割れる春の風 比叡 野村泊月
まゝごとの家長が泣いて春の風 堺井浮堂
やはらかき吾子の匂ひや春の風 山崎貴子
ゆさ~と松つり行くや春の風 井月の句集 井上井月
カキと切って杖よき程や春の風 百花羞居士遺稿第壹輯 戸澤百花羞、戸澤泰蔵(撲天鵬)編輯
テニス見る顔右ひだり春の風 嶋田一歩
ドア開いてゐれば出て見る春の風 稲畑汀子
ペリカンの嘴に魚見し春の風 碧雲居句集 大谷碧雲居
マスクしてそれはわざをぎ春の風 高濱年尾 年尾句集
一力の昼の畳や春の風 小山内薫
七浦をななつ曲るや春の風 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
万灯籠明日を春の風冷す 森 澄雄
両の手に包んで放つ春の風 押谷 隆
丹後路や松からわたる春の風 井上井月
九十五齢とは後生極楽春の風 富安風生
五色饅頭青は色濃き春の風 久米正雄 返り花
人の背の枯草吹くや春の風 碧雲居句集 大谷碧雲居
加茂にわたす橋の多さよ春の風 夏目漱石 明治四十年
化けさうな信楽狸春の風 小林康治 『虚實』
古佐和や赤菜の中の春の風 馬仏 二 月 月別句集「韻塞」
君が代や臍のあたりを春の風 会津八一
吹きぬけは腹にわるけれ春の風 永田耕衣 葱室
土入れて庭の広さや春の風 白水郎句集 大場白水郎
土踏めば船酔さめて春の風 岩谷山梔子
夕暮の水のとろりと春の風 臼田亞浪 定本亜浪句集
大仏のはしら潜るや春の風 二柳
大仏の螺髪撫でゆく春の風 高橋倭文子
大原女の荷なくて歩く春の風 星野立子
大阪へ今日はごつんと春の風 坪内稔典
奉公を僧介添や春の風 河東碧梧桐
奉納の赤手拭や春の風 蘇山人俳句集 羅蘇山人
子を負うて舟屋根わたる春の風 五十嵐播水 埠頭
孔雀の尾開く広さに春の風 橋田憲明
富士見えて勢田の大橋春の風 鹿間松濤楼
小式部の衣紋くづすや春の風 古白遺稿 藤野古白
小簾垂れてなか~春の風悲し 尾崎紅葉
山雀の籠の長さよ春の風 大谷句佛 我は我
市中に恋する馬や春の風 守屋青楓
布さらす債わたるや春の風 夏目漱石 明治四十年
帰らなんいざ草の庵は春の風(教師をやめる、八年) 芥川龍之介 我鬼句抄
我子なる羊五百や春の風 雉子郎句集 石島雉子郎
我等夫婦田舎道者や春の風 西山泊雲 泊雲句集
手に当る虻流れ行く春の風 本田あふひ
手のひらの子雀飛ばす春の風 石井露月
抜くは長井兵助の太刀春の風 夏目漱石 明治三十年
拝みたき卒寿のふぐり春の風 飯島晴子(1921-2000)
教場より見ゆ草山や春の風 冬葉第一句集 吉田冬葉
旅人の上向いて行く春の風 正岡子規
旅笠の裏の師の句や春の風 野村喜舟 小石川
明らかに鳶の尾楫や春の風 大峯あきら
春の風いつか出てある昼の月 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
春の風おまんが布のなりに吹 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
春の風けわしき馬を吹きわける 宇多喜代子
春の風このごろ照れるちりめんじゃこ 坪内稔典
春の風ふり返らるゝ月日かな 久保田万太郎 流寓抄以後
春の風やはらかにして吹きくれば馬のまつげはまたたきにけり 岡部文夫
春の風ガラスを珠にふくらます 坂本ひろし
春の風ルンルンけんけんあんぽんたん 坪内稔典
春の風健脚いかに折りたたむ 和田悟朗
春の風厚き暖簾の吹きあがり 京極杞陽 くくたち上巻
春の風喪服たれにも似合ひけり 稲垣きくの 黄 瀬
春の風垣の雑巾かはく也 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
春の風大根抜いた穴である 鳴戸奈菜
春の風心彳みをりにけり 後藤夜半 底紅
春の風水いとすぢを砂に引く 林原耒井 蜩
春の風永平寺口を吹き来る 廣江八重櫻
春の風濁らぬ川はなかりけり 如本
春の風病めば未知なる橋いくつ 佐藤紀生子
春の風硯の水に及びけり 阿部みどり女
春の風秩父颪となりにけり 野村喜舟 小石川
春の風苦しむ鶏を抱きにゆく 宇田喜代子
春の風草にも酒を呑すべし 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
春の風草深くても故郷也 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
春の風荒れ夫と子の眼が愁ふ 柴田白葉女 遠い橋
春の風蟹と遊べば蟹悉く笑みまけつ 日夏耿之介 婆羅門俳諧
春の風街のカーブを吹いてくる 京極杞陽 くくたち上巻
時刻きゝて帰りゆく子や春の風 星野立子
晩年と思ひ打消し春の風 大井戸辿
曙のむらさきの幕や春の風 蕪村 春之部 ■ 無爲庵會
本くるゝ叔母今日も来ず春の風 雑草 長谷川零餘子
本尊の大きな皃や春の風 会津八一
村竹に虎の欠伸や春の風 服部嵐雪
束ねたる松の香や春の風 妻木 松瀬青々
松いたみ四阿荒れて春の風 京極杞陽 くくたち上巻
棟上の荒苧動くや春の風 幸田露伴 谷中集
棟並みに積める割木や春の風 西山泊雲 泊雲句集
橋ぎはや帆を下したる春の風 正岡子規
檜物師の木香なつかしや春の風 四明句集 中川四明
欄間には二十五菩薩春の風 子規句集 虚子・碧梧桐選
歌にせん何山彼山春の風 正岡子規
死火山の隣りの山の春の風 城岩 喜
泣いてゆく向ふに母や春の風 汀女
浪華鶴舞ふや八道春の風 幸田露伴 竹芝集
浮かびたる杓の回るは春の風 岸本尚毅
漁舟見えて吹くなり春の風 旧国
潮びかりする浜芒春の風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
潮泡のつぶやきを聴く春の風 臼田亞浪 定本亜浪句集
灸の点干ぬ間も寒し春の風 許六 二 月 月別句集「韻塞」
焦げ土の日響くかも春の風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
焼け落ちし壁を糊塗する春の風 和田悟朗 法隆寺伝承
煮魚のまなこあおむく春の風 坪内稔典
片町にさらさ染るや春の風 蕪村 春之部 ■ 無爲庵會
猫の尾のぴりりと顫ふ春の風 太田鴻村 穂国
玉呑んで吃り癒えけり春の風 安斎櫻[カイ]子
生は死の痕跡吹くは春の風 永田耕衣 殺祖
白馬寺に作務衣の干され春の風 田中英子
百千の帆綱やすめり春の風 五十嵐播水 埠頭
矢橋乗る娵よむすめよ春の風 炭 太祇 太祇句選
笹群がいち早く春の風をうく 柴田白葉女 花寂び 以後
筑後路や圓い山吹く春の風 漱石俳句集 夏目漱石
絵草紙(ざうし)に鎮(しづ)おく店や春の風 高井几菫 (きとう)(1741-1789)
綿菓子に絡まつてくる春の風 いのうえかつこ
縁側に浪うちよせる春の風 会津八一
耳の穴堀つてもらひぬ春の風 夏目漱石 大正五年
胸打つて手話の快諾春の風 奈良文夫
膝抱いてゐる手を春の風が解く 粟津松彩子
舷に髯剃る人や春の風 比叡 野村泊月
船室のカレンダー土曜春の風 中村汀女
落柿舎の二つの床几春の風 高野素十
蔀上げ好文亭の春の風 星野椿
薄絹に鴛鴦縫ふや春の風 正岡子規
藪すけて見ゆる筏や春の風 大谷句佛 我は我
蝦を食ひ地中海より春の風 今井杏太郎
蝶々の乗物行くよ春の風 尾崎紅葉
貝釦ひとつはづして春の風 清水節子
貴婦人の麒麟の闊歩春の風 小路紫峡
赤門はいちにち赤し春の風 小川軽舟
足で舵蹴りや舟曲り春の風 高濱年尾 年尾句集
逢へば直ぐ解くる疑春の風 雉子郎句集 石島雉子郎
遺言書焼いて全快春の風 合田丁字路
野に出でよ見わたすかぎり春の風 辻征夫(1939-2000)
野の茶屋に草鞋一足春の風 蘇山人俳句集 羅蘇山人
釣人の寡黙ほどけり春の風 算用子百合
闘志尚存して春の風を見る 高浜虚子
限りなき春の風なり馬の上 夏目漱石 明治二十九年
階や下駄を草履に春の風 松根東洋城
難波女の懐寒し春の風 ゝ女 うめ 五車反古
電線に凧のかかりて春の風 寺田寅彦
青年の心吹きぬけ春の風 坂本義雄
革臭くなりて還りぬ春の風 久米正雄 返り花
領土出れば身に王位なし春の風 渡辺水巴
高き木の高きを吹きて春の風 倉田 紘文
魚の氷に上るや天下春の風 菅原師竹
鯉釣や銀髯そよぐ春の風 幸田露伴 拾遺
鰈干す簀に降る砂や春の風 冬葉第一句集 吉田冬葉
鳩鳴くや大提灯の春の風 正岡子規
鶏のうしろ吹かれて春の風 角田竹冷
鶏追へば皆堤越ゆる春の風 雉子郎句集 石島雉子郎

以上
by 575fudemakase | 2015-04-10 00:06 | 春の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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