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梅雨 補遺3

梅雨 補遺3

梅雨の卵なまあたたかし手醜し 西東三鬼
梅雨の句のところを開きなつかしむ 高野素十
梅雨の喪や亡き友の弟子が傘さしかけ 安住敦
梅雨の喫泉渇き求むにやや低し 草間時彦 中年
梅雨の土ひとを焼くべき薪を組む 大野林火 早桃 太白集
梅雨の土間一本のマッチ燃え終る 橋閒石 雪
梅雨の土間父を描きぬ父なき児 有馬朗人 母国拾遺
梅雨の地にはずまぬ球は投げあげる 中村草田男
梅雨の地に据らぬ足やここは日本 佐藤鬼房
梅雨の地を湧き出づる音かベルリオーズ 林翔
梅雨の坂入なきときは水流る 西東三鬼
梅雨の坂酔どれ黒人ポスト抱く 山田みづえ 忘
梅雨の壁背に曇りなき太き声(兜太氏金沢に来る) 細見綾子
梅雨の壁落書はよしリルケの詩 山口青邨
梅雨の夕焼力士のうしろ姿かな 村山故郷
梅雨の夜に出て煙草火を強く吸ふ 右城暮石 句集外 昭和二十七年
梅雨の夜のうつ伏せる妻に戻りきぬ 大野林火 早桃 太白集
梅雨の夜のぬかるみひかる木場過きぬ 大野林火 早桃 太白集
梅雨の夜のひとづまならぬわが熟睡 桂信子 月光抄
梅雨の夜のひと夜風吹き星こぼれ 水原秋櫻子 磐梯
梅雨の夜のふと置くものも持てる翳 林翔 和紙
梅雨の夜の勁き莨火とすれちがふ 飯島晴子
梅雨の夜の夢に故人と歓談す 日野草城
梅雨の夜の家族に同じ冷凍魚 飯田龍太
梅雨の夜の湿舌闇を深くせり 右城暮石 天水
梅雨の夜の灯かげもさゝぬ扉に帰る 西島麦南 人音
梅雨の夜の病廊なにかただならぬ 能村登四郎
梅雨の夜の痰壺さがす手をのばす 石田波郷
梅雨の夜の芝生に入りて影濃ゆし 大野林火 冬青集 雨夜抄
梅雨の夜の蟻卓に来て背を曲ぐる 加藤秋邨
梅雨の夜の身ほとり白きものをおく 石田勝彦 百千
梅雨の夜の道の段差を熟知せり 能村登四郎
梅雨の夜の金の折鶴父に呉れよ 中村草田男
梅雨の夜の長き沈黙親老いしむ 野澤節子 未明音
梅雨の夜の頭髪にほはし逢ひも得ぬ 伊丹三樹彦
梅雨の夜や常にも暗き宮の道 上村占魚 球磨
梅雨の夜空へ工場の熱の煙 津田清子 礼拝
梅雨の妻いまにして「女の一生」読む 山口誓子
梅雨の宮檜の香荒くぞおはすなる 木村蕪城 寒泉
梅雨の家並わづかにゆけば焦土見ゆ 大野林火 早桃 太白集
梅雨の家子連狼来て荒す 安住敦
梅雨の家我去りゆかば母歎かむ 藤田湘子 途上
梅雨の家老女を赤松が照らす 金子兜太
梅雨の家鳥天国となりゆけり 角川源義
梅雨の宿これなむむかしランプの湯 石塚友二 磊[カイ]集
梅雨の宿ささくれ髪を掌にまろむ 角川源義
梅雨の宿何に堕ちゆく眠り落つ 星野麥丘人
梅雨の寄席廓ばなしの艶どころ 能村登四郎
梅雨の寄席手ぶりも寂と「鰍沢」能村登四郎
梅雨の寺襖の虎のけふやさし 山口青邨
梅雨の寺銀屏墨の如く古り 野見山朱鳥 曼珠沙華
梅雨の尾の見え出してゐる桑畑 岡本眸
梅雨の山幾重の中にいまはひる 山口青邨
梅雨の山立ち見る度に囚徒めく 西東三鬼
梅雨の峡来れば室生寺は雲ふかき 水原秋櫻子 古鏡
梅雨の峡頬白須臾の日を恋へり 橋閒石 雪
梅雨の崖崩れたり日々傍観す 右城暮石 声と声
梅雨の崖網戸の中のマヨネーズ 細見綾子
梅雨の嶺ひと日輝く雲をおく 橋閒石 雪
梅雨の川こころ置くべき場とてなし 飯田龍太
梅雨の川どう急ぎてもいま濁る 岡本眸
梅雨の川兵ら馳せ来て佇立せり 中村苑子
梅雨の川海へ丸太のごとく入る 平井照敏
梅雨の川芦一本にまがりけり 前田普羅 普羅句集
梅雨の川近江の短かき川も皆 山口誓子
梅雨の幹乾くひまなし蛇のぼる 大野林火 青水輪 昭和二十三年
梅雨の床子等へ聖書を口うつしに 橋本多佳子
梅雨の底うんざり貌の鴉ゐて 石塚友二 磊[カイ]集
梅雨の底顔を蔽へば悲嘆の掌 岸田稚魚 雁渡し
梅雨の庫裡時計の顔の大いなる 清崎敏郎
梅雨の庭ともしび二つともりけり 山口青邨
梅雨の廃壇石塊の黙天使の黙 橋本多佳子
梅雨の戸に人影さしつ小夜くだち 日野草城
梅雨の戸やふたゝびつるす喪の簾 西島麦南 人音
梅雨の戸をくぐると触れし炭俵 岡井省二 明野
梅雨の戸をむげに男の子や開けもして 中村汀女
梅雨の扉の菊の御紋の金青く 山口青邨
梅雨の旅迎へてくれし肥後菖蒲 百合山羽公 樂土
梅雨の旅館黒くかたまる女学生 右城暮石 句集外 昭和二十九年
梅雨の日が馬に照りだす道をしヘ 百合山羽公 故園
梅雨の日に噴水とどきとどき上る 山口青邨
梅雨の日のただよひありぬ油坂 西東三鬼
梅雨の日の光背にさすと見しが消ゆ 水原秋櫻子 古鏡
梅雨の日の月のごとくに御所の上 山口青邨
梅雨の日の黄色の日向つくりけり 山口青邨
梅雨の日は涯の雲得て落ちてゆく 山口青邨
梅雨の日も亦箭の如く過ぎ行けよ 相生垣瓜人 負暄
梅雨の時化芒ばかりを乱しけり 鈴木真砂女 生簀籠
梅雨の晴マッチは匂ふ火を発し 中村汀女
梅雨の暮鉄ヘトラック後退ざる 古沢太穂 三十代
梅雨の書架はや新しき家の塵 山口誓子
梅雨の月あげ道祖神歩き出す 佐藤鬼房
梅雨の月ありやとかざす掌に 加藤秋邨
梅雨の月てらすは樹下の魚の骨 桂信子 月光抄
梅雨の月ふけて樗の上にあり 水原秋櫻子 古鏡
梅雨の月べつとりとある村の情 飯田龍太
梅雨の月まろしと見ればはや消ぬる 山口青邨
梅雨の月やがて小雨をこぼしけり 高屋窓秋
梅雨の月一骨片に負荷多し 加藤秋邨
梅雨の月光をましぬ瑠璃光院 山口青邨
梅雨の月入笠山に見て赤し 相馬遷子 山国
梅雨の月凄ししとしと降りゐたり 山口誓子
梅雨の月半輪高し白鷺城 水原秋櫻子 餘生
梅雨の月城頭にあるを見て泊る 木村蕪城 一位
梅雨の月帰りし帽を書の上に 金子兜太
梅雨の月志賀のみづうみ銀放つ 桂信子 草影
梅雨の月或夜明るし山近し 及川貞 夕焼
梅雨の月明日食ふ米を問ひてねむる 加藤秋邨
梅雨の月狐の仕業かも知れず 稲畑汀子
梅雨の月耳薄く幸また薄し 加藤秋邨
梅雨の月金ンのべて海はなやぎぬ 原裕 青垣
梅雨の木々やや躊躇うて夕焼けぬ 橋閒石 微光
梅雨の木場ゆく出前箱危ふしや 佐藤鬼房
梅雨の木菟鳴き出で分つ死者生者 相馬遷子 雪嶺
梅雨の朱き蛇目傘に妻が隠り来ぬ 石田波郷
梅雨の松百億劫も雫して 前田普羅 飛騨紬
梅雨の森焼却炉置けり稿焚くか 安住敦
梅雨の森見る遠距離をよしとする 能村登四郎
梅雨の椎雨の夜明に狎れにけり 石田波郷
梅雨の楽ただ人の子よ人の子よと 中村草田男
梅雨の樹々かのもこのもに風は居り 石田波郷
梅雨の橋低し白鳥これを過ぐ 山口青邨
梅雨の死者ホロホロ鳥の寄つてくる 飯島晴子
梅雨の毒防ぎ得ずして病臥せり 相生垣瓜人 負暄
梅雨の水けふ浮べたる蝶の翅 大野林火 月魄集 昭和五十六年
梅雨の水ながれながれてゆふべとなる 日野草城
梅雨の水奈良の芝生の溝流る 右城暮石 虻峠
梅雨の池濁すものきのこ雲つくり 山口青邨
梅雨の汽車赤き鉄橋ひびき終ゆ 細見綾子
梅雨の没日遠き屋上に人うつむき 加藤秋邨
梅雨の河口に死豚漂う威をなして 金子兜太
梅雨の河見えざるものへ網を打つ 桂信子 花影
梅雨の波止黒き大魚の投げ出され 能村登四郎
梅雨の波鯛ひしめきて光りけり 飯田蛇笏 白嶽
梅雨の浜鴉の上に鳶の舞ひ 鈴木真砂女 夏帯
梅雨の海すさの入江といふとかや 高野素十
梅雨の海たちまち青し風が過ぎ 加藤秋邨
梅雨の海の一片ありて思ひ出せず 加藤秋邨
梅雨の海の一電柱に心寄す 草間時彦 中年
梅雨の海桃色ローソク点す家 飯島晴子
梅雨の海静かに岩をぬらしけり 前田普羅 能登蒼し
梅雨の深夜バルブ操作の両手影 佐藤鬼房
梅雨の深夜覚めて明るき灯をともす 右城暮石 上下
梅雨の湖あふれて馬柵を浸したり 水原秋櫻子 蘆刈
梅雨の湖の何村なりし故人かな 高野素十
梅雨の溝に蛙鳴き澄む深夜かな 渡邊水巴 白日
梅雨の漏を問はず語りに主かな 三橋敏雄
梅雨の漏笑へば笑ふ子に囲まれ 加藤秋邨
梅雨の漏肩ぬれて思険しくなりぬ 加藤秋邨
梅雨の漏防ぐバケツもまた漏りぬ 加藤秋邨
梅雨の漏飯食ふひまも子が騒ぐ 加藤秋邨
梅雨の瀧どどと一山震へをり 上村占魚
梅雨の瀬の簗駈けのぼる最上川 水原秋櫻子 帰心
梅雨の瀬やうぐひ渦巻く幾ところ 水原秋櫻子 殉教
梅雨の火のひびきて吾子のすはや燃ゆ 飯田蛇笏 白嶽
梅雨の灯に千手観音御手精し 山口青邨
梅雨の灯に野鶏(ヤーチー)の雨衣透きとほる<四馬路野鶏は街の女> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
梅雨の灯のさざめく酒肆の鏡かな 飯田蛇笏 山廬集
梅雨の灯のさゞめく酒肆の鏡かな 飯田蛇笏 霊芝
梅雨の灯の二つ三つ点きどつと点き 高田風人子
梅雨の灯の廓にともり山廬にも 松本たかし
梅雨の灯をまぶしと見たり旅疲れ 鈴木真砂女 夏帯
梅雨の炉に遊ぶ牧夫に電話くる 高野素十
梅雨の烏賊燐光烏賊の形もて 加藤秋邨
梅雨の熱ずうんと騰りまた騰る 日野草城
梅雨の燈やわが疲るれば句座もまた 岡本眸
梅雨の犬で氏も素性もなかりけり 安住敦
梅雨の犬呼ぶに口笛もう鳴らず 安住敦
梅雨の町向日葵がくと坂に垂れ 石田波郷
梅雨の病廊屍のごとき妻擔はれ来 小林康治 玄霜
梅雨の石ひしひしと草寄せつつむ 山口青邨
梅雨の石蟇は子ながら金ン目据わる 野澤節子 未明音
梅雨の社寺より明し母を祈る 中村草田男
梅雨の禽手のよく光る兄弟 飯島晴子
梅雨の空ひとが遺せし手鏡に 石田波郷
梅雨の空竹が皮剥ぐ膚見す 廣瀬直人 帰路
梅雨の窓子が覗き去り妻の留守 加藤秋邨
梅雨の窓狂女跳び下りたるままに 西東三鬼
梅雨の窓開けて市井の物音を 星野立子
梅雨の窓電柱いつも月隠す 桂信子 月光抄
梅雨の窓餌を欲る鳩が暗くする 中村汀女
梅雨の竈雑誌を焚いて火力なし 山口誓子
梅雨の簷絵筆ころびてかくれなし 小林康治 四季貧窮
梅雨の縁手鞠ころがり故人なし 山口青邨
梅雨の羊歯金堂をめぐり真青なり 水原秋櫻子 古鏡
梅雨の臥に生きむとしたり膝立てて 山口誓子
梅雨の航喪失の二字現れては消ゆ 楠本憲吉 孤客
梅雨の花圃またしも父にめぐりあふ 飯田龍太
梅雨の花幼児の声は草のごとし 飯田龍太
梅雨の花林にしろく野にしろし 水原秋櫻子 霜林
梅雨の花汝が泣ごゑの近づき来 岸田稚魚 雁渡し
梅雨の花病みて怠る謂れなし 石田波郷
梅雨の苔色を尽くして波うてる 岸田稚魚 筍流し
梅雨の葬君降りし駅吾も降り 岡本眸
梅雨の藁家巨岩暮るるに異ならず 香西照雄 対話
梅雨の藻よ恋しきものの如く寄る 橋本多佳子
梅雨の蚊帳腕抱きあひ妻子ねる 森澄雄
梅雨の蛾のとりつく幾日書庫の壁 山口青邨
梅雨の蟇客おどろかすことなかれ 山口青邨
梅雨の蟹半身紅きまゝに死す 百合山羽公 故園
梅雨の蟹攀ぢては落つる潮佛 水原秋櫻子 緑雲
梅雨の街に塵紙買うて戻りけり 原石鼎 花影
梅雨の衣嚢に先の日の喪の浄め塩 安住敦
梅雨の谷落ちゆく水のひびきを籠め 廣瀬直人 帰路
梅雨の路次女が前額のひたにあり 三橋敏雄
梅雨の車内寄りかかるには細き傘 桂信子 草影
梅雨の車窓雨粒さそひあひ筋ひく 篠原梵 年々去来の花 雨
梅雨の道まがりぬ疑問文のごとく 平井照敏
梅雨の道欅のみどり夜も流す 大野林火 早桃 太白集
梅雨の遥か地獄の門に夜警の灯 中村草田男
梅雨の野に剥きたる蝮(ハメ)のうす紅ぞ 岡井省二 鹿野
梅雨の釜おどろおどろと鳴り出づる 桂信子 草影
梅雨の鏡の中の髭面孤愁面 安住敦
梅雨の門傘を掴みて立ち出づる 石田波郷
梅雨の門開くことありて葬出づ 福田蓼汀 山火
梅雨の間の夕焼誰ももの言ひやめ 加藤秋邨
梅雨の間の夕空とてやなつかしき 岸田稚魚 紅葉山
梅雨の間の月かかげたる宵宮かな 石川桂郎 四温
梅雨の間や高原ホテル児ら飛び出す 飯田龍太
梅雨の闇ひたすらに水流れゐる 飯田龍太
梅雨の闇疑は莨火の強さに 加藤秋邨
梅雨の闇黒洞々たり諸仏秘め 能村登四郎
梅雨の降り夜明けてあたり異状なし 右城暮石 句集外 昭和十七年
梅雨の陸船離れんと太き汽笛 右城暮石 句集外 昭和三十一年
梅雨の雀夜のなき夫婦手握り合ふ 岸田稚魚 雁渡し
梅雨の雀左右に飛んで身拓ける 岸田稚魚 雁渡し
梅雨の雨波郷の墓と濡れあへる 石川桂郎 高蘆
梅雨の雨着が放つ五彩の布晒し 林翔 和紙
梅雨の雲幾嶽々のうらおもて 飯田蛇笏 雪峡
梅雨の電車乗り違へしも喪の一事 安住敦
梅雨の霧流れ夜鳥の声もせぬ 相馬遷子 山国
梅雨の霧浮彫の詩を指に撫づ 山口誓子
梅雨の霧青胡桃よりはれゆけり(長野県柏原二句) 細見綾子
梅雨の風庭松花を搖りにけり 飯田蛇笏 椿花集
梅雨の飾窓(まど)カレーライスの皮に皺 香西照雄
梅雨の飾窓カレーライスの皮に皺 香西照雄 対話
梅雨の馬いななく脳病院の裏 西東三鬼
梅雨の鳥ひとに似て啼く青嶺かも 飯田蛇笏 雪峡
梅雨の鴉の人に隠れて鳴きにけり 安住敦
梅雨の鴉の人を譏りて鳴きにけり 安住敦
梅雨の鴉の利得なければ寄りつかず 安住敦
梅雨の鴉の寝刃合はせて鳴きにけり 安住敦
梅雨の鴉啼いて恐山支配下に 鈴木真砂女 居待月
梅雨の鴫羽摶ちし波の俄かなり 水原秋櫻子 玄魚
梅雨の鶏啼けり性慾なき日にて 草間時彦 中年
梅雨の鶏白さつくして羽ひろぐ 下村槐太 天涯
梅雨の鷹磐梯の雲へ翔け入りぬ 水原秋櫻子 蘆刈
梅雨はげしあたりに人の居らざりし 波多野爽波 鋪道の花
梅雨はげし傘ぶるぶるとうち震ひ 波多野爽波 鋪道の花
梅雨はげし右も左も寝てしまふ 石田波郷
梅雨はげし枕を胸にあてて読む 大野林火 早桃 太白集
梅雨はげし百足虫殺せし女と寝る 西東三鬼
梅雨はげし顔に集る竹の風 廣瀬直人 帰路
梅雨はじまる空き瓶打ち合ひて過ぐ 細見綾子
梅雨はれの風気短かに罌粟泣きぬ 飯田蛇笏 春蘭
梅雨は又文字摺草を捩曲げし 相生垣瓜人 負暄
梅雨は又梅雨として澄み来りたり 相生垣瓜人 微茫集
梅雨は憂しきのふの今もこの駅に 福田蓼汀 山火
梅雨は降り梅雨は晴るるといふことを 後藤夜半 底紅
梅雨ばれの燭西方寺飛鳥過ぐ 佐藤鬼房
梅雨ひえびえ肌みづいろに水死仏 大野林火 雪華 昭和三十六年
梅雨ひぐらし再びにして灯りけり 水原秋櫻子 餘生
梅雨ひぐらし去年は開きける人いづこ 水原秋櫻子 蘆雁
梅雨ひぐらし去年をきのふと思ひ聞く 水原秋櫻子 蘆雁
梅雨ひぐらし天守の神にはるかなり 水原秋櫻子 餘生
梅雨ひぐらし川連法眼の址いかに 水原秋櫻子 殉教
梅雨ひぐらし淵の底にも鳴く如し 水原秋櫻子 緑雲
梅雨ひと日にんげんの声のがれたし 桂信子 月光抄
梅雨ふかき吹降りに拝む師弟の碑 水原秋櫻子 緑雲
梅雨ふかくあざみいろ濃き拓地かな 飯田蛇笏 春蘭
梅雨ふかく烏賊の腸痩せにけり 鈴木真砂女 居待月
梅雨ふかく鯖の太腹裂きにけり 鈴木真砂女 居待月
梅雨ふかしいづれ吾妹と呼び難く 西東三鬼
梅雨ふかしからたちばなの花も咲き 山口青邨
梅雨ふかしくろぐろとまたしろじろと 橋閒石 微光以後
梅雨ふかしでんでん太鼓裏へも鳴る 中村草田男
梅雨ふかしゆでて色増すさくら海老 鈴木真砂女 夏帯
梅雨ふかし古墳の壁に大日の輪 上村占魚
梅雨ふかし塗りたる橋の竹煮草 飯田龍太
梅雨ふかし庖丁で掻く鍋の焦げ 鈴木真砂女 卯浪
梅雨ふかし戦没の子や恋もせで 及川貞 夕焼
梅雨ふかし昼の小皿のぶだう豆 亭午 星野麥丘人
梅雨ふかし昼の楽より睡り克つ 野澤節子 未明音
梅雨ふかし水にもどせる干ひじき 鈴木真砂女 卯浪
梅雨ふかし蔓まきそめし朝顔に 及川貞 夕焼
梅雨ふかし見えざる糸を誰が引く 鈴木真砂女 夕螢
梅雨ふかし韋駄天の眼の硝子玉 亭午 星野麥丘人
梅雨ふかめ燃えるがための反古燃える 橋閒石 無刻
梅雨ふるや美女は採用せず帰す 村山故郷
梅雨へだて師のことに思ひ馳す一夜 松崎鉄之介
梅雨へわが腰据ゑて椅子軋みけり 藤田湘子 途上
梅雨までのこの半歳や水のごと 雨滴集 星野麥丘人
梅雨むして発作不安に過しをり 高浜年尾
梅雨めきて眉目もわかぬ納戸佛 水原秋櫻子 蘆雁
梅雨めきて胸の火崩れ易きかな 小林康治 玄霜
梅雨めきて薔薇を視るとき老めきて 三橋鷹女
梅雨めくやこの家に木も二十年 大野林火 青水輪 昭和二十七年
梅雨めくや人に真青き旅路あり 相馬遷子 山国
梅雨めくや入日真紅に真円に 相馬遷子 山河
梅雨めくや心に旅は思ふのみ 相馬遷子 雪嶺
梅雨めくや濃淡壺にある灰釉 松崎鉄之介
梅雨めくや衾ぬぎゐし肩の冷え 鷲谷七菜子 黄炎
梅雨めける机の上の買ぐすり 岡本眸
梅雨めける沼のかたちに遊びけり 岡本眸
梅雨も人も葬りの寺もただよすが 中村草田男
梅雨も悔もくりかへし沁む顔即襞 中村草田男
梅雨も愉し娘夫婦はいつも一緒 安住敦
梅雨も愉し子が恋人を伴ひ来 安住敦
梅雨やすむ埋骨の日のうぐひすよ 角川源義
梅雨やまぬ大川の明るさに出づ 松村蒼石 雪
梅雨やみゐし夜の真深さを星埋む 野澤節子 未明音
梅雨やや明し祈り押しつめ眼あければ 中村草田男
梅雨をはたらくかの子の白紙答案よ 能村登四郎
梅雨をゆく蜑の柩の車輪かな 山口誓子
梅雨を入り来し昆虫の標本館 右城暮石 一芸
梅雨を啼く鴉しんから憎きかな 鈴木真砂女 生簀籠
梅雨を待つ不安の日々を重ねけり 相生垣瓜人 負暄
梅雨を旅せむ銭おもひ思ひ立つ 及川貞 夕焼
梅雨を来てわれに親しき筑紫の湯 高浜年尾
梅雨を来て縁に数刻ゐたるのみ 山口誓子
梅雨を来て錆びし原爆ドーム見る 後藤比奈夫
梅雨を病む老松屋根にかむされり 福田蓼汀 山火
梅雨を経て既に優しき木々ならず 相生垣瓜人 負暄
梅雨を聞くために余生はあるならむ 大野林火 方円集 昭和五十二年
梅雨を見て句を案ず粥の煮ゆるまで 日野草城
梅雨・遺墨柱時計はいまの刻 大野林火 方円集 昭和五十一年
梅雨一夜かるかや童女夢に立つ 佐藤鬼房
梅雨一夜の明けし北上川の流れこなたへ 中川一碧樓
梅雨一日妻解けあはぬ眼をもてり 大野林火 冬青集 海門以後
梅雨上る向日葵かかぐ第一花 山口青邨
梅雨上る水に日輪太宰の忌 廣瀬直人 帰路
梅雨上る潮騒陸にたかぶりて 松村蒼石 雪
梅雨久し汚濁の日々といはねども 相生垣瓜人 微茫集
梅雨久し甘忍の日が又久し 相生垣瓜人 明治草
梅雨久し野は雑草の階をなす 川端茅舎
梅雨仄白きこと相同じ寝て了へり 石田波郷
梅雨佛ものいはぬ眼をとぢまけぬ 飯田蛇笏 白嶽
梅雨傘いっぽん 立てて 神学部にこもる 伊丹三樹彦
梅雨傘がピンクその他は男の子 後藤比奈夫
梅雨傘に襲ひかかりし子連れ鹿 右城暮石 天水
梅雨傘の裏透き合うて言多し 野澤節子 未明音
梅雨傘の魂抜けて倒れをり 波多野爽波 鋪道の花
梅雨傘をまた無意識に持つて出し 後藤比奈夫
梅雨傘を挿してぞ宝塚へ行く 後藤比奈夫
梅雨傘を袋に入れて美術館 右城暮石 虻峠
梅雨冥く世のいとなみの何やかや 福田蓼汀 山火
梅雨凝つて四山暗さや軒雫 原石鼎 花影
梅雨凝りてまだ真青に簷菖蒲 水原秋櫻子 餘生
梅雨凝る錘(おもし)かしぼり切らぬ神の雑巾か 中村草田男
梅雨出あるく失職の裾搦ませて 小林康治 玄霜
梅雨出水人群れ頭上大鴉 細見綾子
梅雨出水太宰忌もはや過ぎにけり 石川桂郎 含羞
梅雨出水蘆が簾のごとく揺れ 松村蒼石 雪
梅雨出水鳥飼はれて遊びをり 石川桂郎 含羞
梅雨到る狭庭ながらや竹四五種 石塚友二 光塵
梅雨前のあをき丸さの信夫山 能村登四郎
梅雨前の碑面くもらす山の靄 能村登四郎
梅雨前の闇のなかなる大欅 桂信子 草影
梅雨厠より遠き祖現るる 山口誓子
梅雨去ると全き円の茸立つ 西東三鬼
梅雨四五日坐し艶をもつすわりだこ 松崎鉄之介
梅雨土間に日差すや鶏の銃火声 上田五千石『田園』補遺
梅雨埠頭木屑(チップ)の山の減りもせず 佐藤鬼房
梅雨夕べ起重機の爪どさと地に 佐藤鬼房
梅雨夕ベ一堂加行中とかや 高野素十
梅雨夕ベ消え入る山羊をつれにくる 百合山羽公 故園
梅雨夕ベ町敬虔に点り初む 高田風人子
梅雨夕焼け聖晩餐図にありし色 鷹羽狩行
梅雨夜倦んで陶の狸をつまはじき 佐藤鬼房
梅雨夜寒瞼に翳(さ)すは妻の手か 加藤秋邨
梅雨夜更あまた土偶の乳房顕つ 佐藤鬼房
梅雨夜更けわが手負鷲荒び発つ 佐藤鬼房
梅雨夜樹上に人影ソロを透らしめ 佐藤鬼房
梅雨夜空ネオンがほしいままにせり 波多野爽波 鋪道の花
梅雨夜船陸よりも灯を賑やかに 大野林火 方円集 昭和四十九年
梅雨夜道ゆくて垣なす黒きは山 上村占魚
梅雨夜長しいつの世よりの木菟の声 原石鼎 花影
梅雨大樹宿りて終の一雫 桂信子 草影
梅雨大河まさに一級河川なる 山口誓子
梅雨太し軍帽に肩に軍刀に 日野草城
梅雨富士の黒い三角兄死ぬか 西東三鬼
梅雨寒く小蕪真白く洗はるゝ 鈴木真砂女 生簀籠
梅雨寒し教会堂の昼の鐘 上村占魚 鮎
梅雨寒し猫が手紙を跨ぐ見て 石川桂郎 高蘆
梅雨嵐夫婦にともし白けたり 大野林火 海門 昭和十三年
梅雨嵐朴の白珠葉がかばひ 大野林火 飛花集 昭和四十七年
梅雨川に厨口向け一町内 岡本眸
梅雨川を従へ雪嶺海に向く 角川源義
梅雨幾夜妻子囲ふや旅の果 小林康治 玄霜
梅雨後の根付きをつよく箒ぐさ 能村登四郎
梅雨微光言葉は肚にためて置く 佐藤鬼房
梅雨急坂飛んで真言みだれけり 鷲谷七菜子 天鼓
梅雨憂しや誰とも知らず客を帰し 安住敦
梅雨懶し穢水が長く谷へ落つ 山口誓子
梅雨戻る不死男の墓を冷やすため 上田五千石 風景
梅雨日差すねずみの姑といふ虫に 佐藤鬼房
梅雨日輪あをあを海の上をゆく 大野林火 雪華 昭和四十年
梅雨日輪雲跳ねのぼる三たびなり 水原秋櫻子 帰心
梅雨旱肩落す者はすでに敗者 岸田稚魚 雁渡し
梅雨昏し死魚洗はるるを見下せる 桂信子 月光抄
梅雨昏し腰揺りて牛歩き出す 桂信子 女身
梅雨星や梢かかはる幹二本 上田五千石『森林』補遺
梅雨昨日明けしかなかな萱の山 岡井省二 鹿野
梅雨晒し被爆聖像石に帰す 津田清子 礼拝
梅雨晴にさはるものなし一本木 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴のせめては蝶のにぎやかに 高野素十
梅雨晴のよき夕方となりにけり 高田風人子
梅雨晴の京のどこにも雀とぶ 右城暮石 句集外 昭和二十八年
梅雨晴の唐三彩の馬飾る 山口青邨
梅雨晴の塵埃こそ躍るなれ 相生垣瓜人 明治草
梅雨晴の影の数歩のたのしけれ 岸田稚魚 紅葉山
梅雨晴の朝日に松の雫かな 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴の清水板を奔りけり 野澤節子 未明音
梅雨晴の眩惑するに任せけり 相生垣瓜人 微茫集
梅雨晴の空へ天寿の君をかな 林翔
梅雨晴の蜂陶卓の水を舐む 右城暮石 句集外 昭和五十五年
梅雨晴の鏡に酔ひし顔映る 右城暮石 句集外 昭和四十一年
梅雨晴の雲一と流れ立葵 富安風生
梅雨晴の風に戻りし柳哉 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴の風青々と吹きにけり 星野立子
梅雨晴の鯉大き音立てて逃ぐ 右城暮石 句集外 昭和四十三年
梅雨晴の鯖雲をさへうかべたる 富安風生
梅雨晴やかびにならずふじの雪 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴やけさ天窓の煤のいろ 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴やところところに蟻の道 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴やひとの葬に間口貸し 岡本眸
梅雨晴やふじひつかゝる蜘の網 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴や上野の鳶はいつも鳴く 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴や出先を急に切りかへて 稲畑汀子
梅雨晴や労りに来し烏蝶 相生垣瓜人 負暄
梅雨晴や北斗の下の能登に入る 前田普羅 能登蒼し
梅雨晴や午後の屋上遊歩園 日野草城
梅雨晴や友等西東四方より 山口青邨

以上
by 575fudemakase | 2016-06-18 09:16 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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