灼く

灼く

「当人渡世勝手次第」の島に灼け 高澤良一 ねずみのこまくら
あげ舟の如く熱砂に駱駝伏す 中村草田男
ある遠さは灼けてしづかにもがく濤 竹中宏 句集未収録
うらがへる葛の葉飛騨も灼けそめぬ 大野林火
おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ嶽 加藤楸邨
かたまり灼けし雲の純粋青が透き 加藤秋邨 死の塔
かへりみる厦灼けて虚に充ちぬ 下村槐太 光背
かへりみる大厦灼けて虚に充ちぬ 下村槐太 天涯
からみゆく登山綱にわれに岩灼くる 石橋辰之助 山暦
ぎじぎじと熱砂は口をねばらする 長谷川素逝 砲車
くづほるる酒灼け顔の日焼けして 石原八束 空の渚
ぐすぐすと熱砂を踏めり旅の神 原裕 青垣
ここにも歳月山気も灼けて招魂碑 平井さち子 完流
この熱風走る詩としてゴビを行く 加藤知世子
こぼすパン屑枝を上下の灼け雀 友岡子郷 遠方
こんなにも灼けゐる墓石西林寺 高澤良一 素抱
しんしんと鉄灼き雪はみどりなり 杉崎ちから
ただ灼けて玄奘の道つづきけり 鉄之介
ただ灼けて空に夏雲湧けよ湧けよ 石橋辰之助
ただ石として灼くるのみ野の佛 千代田葛彦
ただ祈りあるのみ被爆の碑ぞ灼くる 向野楠葉
たゞ灼けて空に夏雲湧けよ湧けよ 石橋辰之助 山暦
とはの雪灼けそゝぐ日にかげろはず 石橋辰之助 山暦
どんど火に顔ばかり灼け餅灼けず 町田しげき
のどぼとけ動く慟哭生者灼く 平井さち子 紅き栞
はや灼けて検問所の窓乱反射 関森勝夫
はらからと喪服を灼かる炎天下 高澤良一 素抱
ひたすらに灼けて摩文仁の甘蔗畑 竹中碧水史「箪r巻一」
ひまはりかわれかひまはりかわれか灼く 三橋鷹女
ひるがほを忘れてをれば灼き切れし 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
へくそかづら攀ずる金網灼けてをり 高澤良一 暮津
ほと神を灼く太陽の熊野灘 吉田紫乃
まかがよふ白さるすべり地に灼けて 高澤良一 素抱
やすやすと山の蚯蚓の日に灼かれ 宮坂静生 春の鹿
やせっぽち灼ける海見て怯みけり 高澤良一 暮津
わが影のたちまち冷ゆる灼け沙漠 伊藤いと子
わが灼くる影をちぢめて爆心地 佐野美智
わたつみに楫取り損ね灼け汐木 高澤良一 寒暑
われに無かりし青春海女の堅肉灼け 野澤節子 花 季
イスラムの墓灼けてゐて貴賎あり 森田峠 逆瀬川
エーゲ海睦みて水虫も灼ける 八木三日女 石柱の賦
キャラメル工場を出る一輛の灼けた貨車 穴井太 穴井太集
クローン羊解体新書碑の灼ける 澤柳たか子
ケルン灼け足奪はるる地獄谷 河野南畦 湖の森
コンクリート灼くるに坐り行き処なし 石田郷子
ゴビ灘の灼くる瓦礫にタマリスク 菅田静歩 『大花野』
ゴビ熱砂蝶きしきしと消えにけり 鍵和田釉子
ゴム灼くる匂ひにダリヤいたみたる 和田耕三郎
シーサーの大屋根小屋根灼けゐたり 小元 洋子
タージマハル靴底熔くるまで灼くる 中野紀夫(青嶺)
ダムの上灼けて土工の墓二十 三鬼
ダム灼くるダム建設の慰霊碑も 森田かずを
バレンタインの日なり灼かれて真赤な鉄 見学 玄
ヒンドゥーの秘儀灼けつきる 全塔身 伊丹公子 ガルーダ
ピラミッド叩けば熱砂こぼしけり 矢島渚男 釆薇
ペンキ塗る青空がまだ灼けぬうち 高澤良一 随笑
ボクサー像のグラブが灼けて草田男忌 奈良文夫
マラルメて誰梨は木に灼け響き 竹中宏 饕餮
ミサイルの灼くる砲座に蟻のぼる 伊藤いと子
ラバウルに灼けし零戦見て船旅 高澤良一 石鏡
リベリアの旗破れたり灼くるマスト 大村 進
ヴァレンタインの日なり灼かれて真赤な鋲 見学玄
一茶の地灼けて一人の子にも逢はず 蓬田節子
三時草鋪道は灼けてほてりをり 高澤良一 素抱
主峰なほ灼けふかみをりわが裡にて 昭彦
丼の墨汁灼けて葬終る 田口珂那
久女の墓灼けてわが手を触れしめず 藤岡筑邨
乳房灼いて漁婦一生の影嘆く 秋元不死男
亀灼くる岩とひとつに禅定めく 角田敬恵 『花しづめ』
五反幟のもとや灼かれて軍鶏道楽 平井さち子 鷹日和
人灼けて行けど兵舎の趾地響かず 宮坂静生 青胡桃
人骨に似たる熱砂の枯珊瑚 秋光道女
今生に灼く地獄見る鬼来迎 毛塚静枝
今生の石の閻魔の灼けにけり 真下耕月
仰向けに倒れて灼くる風化仏 佐野農人
休日のシャッター灼ける問屋街 西村和江
低い家に住み熱風の草を刈る毎日が仕事 橋本夢道 無禮なる妻抄
何もかも灼けて踏切鳴つてをり 神林三江
信濃男の顴骨に雲灼くるなり 宮坂静生 春の鹿
修理鍬灼く火の赤し芦の花 中田勘一 『雪礫』
俺に似た少年兵が熱砂ゆく 五島高資
先生の墓前に潔く灼かる 荒井正隆
八方の灼けてたゞ刻経つばかり 暮石
八月灼け六日九日原爆落つ 山崎秋穂
八束忌の空の渚の灼け始む 中村石秋
冬灼けて秀立つ野守の一つ杉 小松原みや子
初神楽潮灼けの耳二つみせ 諸角せつ子
到天の長城を行く灼かれゆく 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
剥落の刻追う乳房 シギリヤ灼け 伊丹公子 パースの秋
力なき浜昼顔に砂灼けし 三ツ谷謡村
千代尼忌や屋根石灼くる街に佇ち 沢木欣一 雪白
原子雲灼け地軸なき被爆絵図 玉城一香
原爆屍かつと口開け灼けつく地 中島斌雄
原爆忌使徒のごとくに身灼きをり 小林康治 玄霜
厦灼けぬなにか憤しく灼けぬ 下村槐太 光背
友等夜勤の高炉へ太く熱風管 和知喜八
古利根の夕日に灼けて蘆枯れし 石井とし夫
古稀自祝土蜂を追うて眼の灼けて 中島斌雄
句おもふが祈り瓦礫の灼けふかき 中島斌男
向日葵の灼ける頸筋力欲し 田川飛旅子 花文字
向日葵は灼けて土偶のおほらかさ 高澤良一 素抱
喪の列にがたんと小さく日灼けの母 平井さち子 紅き栞
喪の家の使はぬ物干竿灼けて 岡本眸
国原に団雲浅問は我と灼ける 草田男
土灼くる日の続くなり棉の花 原田青児
土熱く灼けゐし記憶終戦日 沢木欣一
地の塩が白を凝らせり灼け砂漠 品川鈴子
地より灼け天より灼けて健児の塔 吉田紫乃
地獄灼けガツと鳴り鎖す鐵の扉 横山白虹
地獄灼け天使の翼見ることなし 横山白虹
地獄灼け悪鬼の胸に汗きら~ 横山白虹
地獄灼け面もふらず人うごく 横山白虹
城灼けて海灼けてここ母のくに 奈良文夫
塩噴いて流沙の川の灼けにけり 下村梅子
塩噴きて流沙の川の灼けにけり 下村梅子
墓になりし明るさ寄るや灼熱くる 加藤知世子 花寂び
壁灼けて落書ふはと抜け出るか 松崎麻美「射手座」
壘を獲し熱砂のけむりあがりたれ 大橋櫻坡子 雨月
壺涼し灼熱の火に歪みたる 大野雑草子
夏灼くる砲車とともにわれこそ征け 長谷川素逝 砲車
夏灼けし小島を頼み徒人海女 桂樟蹊子
夕顔に舌灼くものを啜りおり 間石
夢殿灼け秘仏は秘して見せざりき 塩川雄三
大佐渡の竹灼き尽す日なりけり 高澤良一 ももすずめ
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ 長谷川素逝 砲車
大厄のもうなき齢灼けはじむ 野見山ひふみ
大西部熱砂に蝶と人の影 仙田洋子 雲は王冠
大阪や黒猫灼けし屋根歩き 有働亨 汐路
天が下灼けゐる墓誌に余白あり 高澤良一 素抱
天に鷹地に灼熱の登り窯 石井紅楓
天を灼く積乱雲の育つ峡 大野林火
天地灼けぬ兵士乗船する靴おと 片山桃史 北方兵團
天地灼けゐたり棄教も殉教も 倉橋羊村
天灼けて白さるすべり地に灼けて 高澤良一 素抱
天狗岳攀る一列灼け灼けて 日野あや子
太陽を逃げきれぬ塔灼け曲る 小檜山繁子
夾竹桃東京砂漠灼けはじむ 千代田葛彦
姑なくて灼けしままなる休み石 影島智子
嬰も母も灼けし白濤眸にやどす 大岳水一路
子の机灼けゐてパズルまだ未完 石寒太 翔
存らへしことを負目に額灼けつつ 平井さち子 紅き栞
宇宙船あばたに灼けて冷房裡 高井北杜
寒月は丑満の雲すこし灼く 佐野良太 樫
寺町の真赤なポルシエ灼けてをり 佐々木悦子(帆船)
小さな楽器の熱風が来る 五島瑛巳
小包とゞく燈台守の灼け畳 中島斌男
屋上園灼けて花かげうばはれぬ 原田種茅 径
山々の灼け美しき落し文 大岳水一路
山の木の日灼けきりたる揺らぎかも 宮坂静生 春の鹿
山恋ふ日母の墓石の灼けゐるか 石橋辰之助 山暦
山河統べてわれあり足うら灼けて立つ 千代田葛彦 旅人木
山灼けて死の谷生きる硫気吐く 福原紫朗
山灼けのまま冬籠りダムを護る 毛塚静枝
山車に蹤く子につき添ひて俄灼け 高澤良一 暮津
山鉾の解かれて骨の灼けてをり 上原瑞子 『燈台草』
岩灼かれわが登山綱さへ目守りえず 石橋辰之助 山暦
岩灼くるその岩かげの雪あはれ 石橋辰之助 山暦
岩灼くるにほひに耐へて登山綱負ふ 辰之助
岩灼くる光の底に蛇ゆけり 沢木欣一
岩灼けて北岳草の残り花 小林碧郎
岩肌を叡智の登山綱灼け垂るゝ 石橋辰之助 山暦
巌灼けて真鐵の光り濤摶てり 内藤吐天
巫女の鈴りりちりち砂灼けにける 伊藤敬子
巷より女人灼け来ぬ花氷 徳永山冬子
師の墓の灼くるを冷ます水いくたび 吉川与音 『琴柱』
干魚の眼が抜けゐたり熊野灼く 茨木和生「木の國」
干魚の眼が抜けゐなり熊野灼く 茨木和生
平和の礎(いしじ)灼かれて女子供の名 岡崎たかね
廈灼けぬなにか憤ろしく灼けぬ 下村槐太 天涯
弱り目祟り目炭火に灼けで湯に灼けたり 磯貝碧蹄館 握手
影ぐるみ灼かれ突立つ義民の碑 高澤良一 ねずみのこまくら
影絵消え長崎の墓碑ひたすら灼ける 穴井太 土語
彼の日のごと権兵衛坂は灼けをらむ 高澤良一 寒暑
従ふや灼けの極みに巷あり 油布五線
心中に一基の墓の灼くるかな 赤尾恵以
怠け夫婦に百体仏の灼けてをり 鍵和田[ゆう]子 浮標
息づけば灼けし風さへ岩吹かず 石橋辰之助 山暦
悪城の壁ほろびの魔刻持ち灼ける 河野多希女 納め髪
愛され方足らぬあしうら熱砂で灼き 田邊香代子
憩なし獣皮の椅子の背の灼けて 後藤綾子
或る記憶熱風道の幅に来る 中島斌雄
戦後十年蜥蜴と灼くる一標識 宮坂静生 青胡桃
扇風機まはり熱風吹き起る
手が灼けて昔も関の手付き石 和知喜八 同齢
掃苔の手触りえ灼くる墓石かな 竹下しづの女句文集 昭和十年
掃苔の手触りて灼くる墓石かな 竹下しづの女 [はやて]
掛茶屋の酒に唇灼くだるま市 町 淑子
撓鐵の焔海風を灼きて冬 内藤吐天
故宮外壁白菜売りの鼻筋灼け 諸角せつ子
故郷のひたすら灼ける父母の墓 山県よしゑ
敷石に灼きつけられて男座す 仙田洋子 橋のあなたに
断層の縞あらく海の風灼けぬ 内藤吐天 鳴海抄
新宮の九月の灼くるポストかな 黒田杏子 花下草上
旅灼けの顔がかこみぬ真桑瓜 加藤知世子 花寂び
日こそ明鏡灼けて償ふ「刺客」の墓 磯貝碧蹄館 握手
日に汐に灼かれ黄泉路のトタン板 攝津幸彦 未刊句集
日覆灼け花市の花香にむせし 山口波津女 良人
昔より九月も灼けて磐座は 茨木和生 三輪崎
星鴉崖崩は地獄の色に灼け 小松崎爽青
暖炉灼く夫よタンゴを踊ろうか 三橋鷹女(1899-1972)
曼珠沙華日はじりじりと襟を灼く 橋本多佳子
月光のちりちり島の間を灼く 岸田稚魚 筍流し
月灼けて放牛を逐ふ鞭ひかる 石原舟月
月面に人の足痕地球灼く 石塚友二
朝より謝肉祭ゆゑ雲も灼く 石塚友二 光塵
朝曇午後は灼くべし頭のほてり 石塚友二
朝雲の灼けて乳牛に桐咲けり 飯田蛇笏 霊芝
朝顔のうつろひやすく灼け来けり 臼田亞浪 定本亜浪句集
木の葉髪ちりちり灼いて狂ひ出す 三橋鷹女
木場灼けて素顔の女たもとほる 磯崎兼久 『孤雲』
木枯や灼かれて薄き喉仏 冨士眞奈美
朱鷺の嘴灼けたる檻に触れにけり 辻桃子
杏いくつか熟れてをりぢつと灼けつづく 川島彷徨子 榛の木
村の葬り必ず通り灼くる橋 中戸川朝人 尋声
杖に置く挙も灼くるひとつかな 村越化石
松風の吹いてをれども灼けてをり 槐太
果てしなき熱砂に両親揃わぬ子 対馬康子 吾亦紅
柔かく女豹がふみて岩灼くる 風生
柩車はしる秋の巷の灼けゐたる 瀧春一 菜園
核の日々静かに灼くるオートバイ 徳弘純 麦のほとり
桔梗にはよそ事のごと灼ける空 高澤良一 寒暑
桟橋の杭のタイヤの灼けてをり 行方克己 無言劇
梵字板しづかに灼くる蓮華峰寺 仲川康子
業風に叫喚地獄灼けよ灼けよ 横山白虹
機翼の屑貨車に溢れて灼けつつ過ぐ 原田種茅 径
機翼灼け眼下に都市をあざけるか 皆吉司
機関車の瘤灼け孤り野を走る 西東三鬼
殉教地寝墓濡れやすし灼けやすし 香西照雄 素心
母の背や岩群灼けて棘(おどろ)なか 徳弘純 非望
母馬の影の灼けざり仔馬添ふ 大熊輝一 土の香
毛野の空狭間の奥に灼けつづく 川島彷徨子 榛の木
水壺と灼け翻る乙女妻 小檜山繁子
水泳に灼けて女の産毛消ゆ 辻田克巳
汐灼の婆の日傘も影一つ 行方克巳
沙丘灼け長き兵列天に入る 片山桃史 北方兵團
没日凍て暗き火口の像を灼く 石原八束 空の渚
河原石ひとつ灼けことごとく灼け 行方克巳
河口灼けゆうべの夜光虫を見ず 栗生純夫 科野路
河灼けて纜槍のごとくなり 不死男
波止灼けて物売る子等の目のかはき 西村和子 かりそめならず
洋洒もて胃の瞼灼きをり木瓜曇り 石塚友二
洪水あとの石白く灼け鳥渡る 臼田亞浪 定本亜浪句集
流木や熱砂に消ゆる河なれど 鳥居おさむ
浜木綿や荒磯の天日人を灼き 下村槐太 天涯
浜灼けて恋路ヶ浜はがらんどう 岬雪夫
海に向かへば長崎の坂灼くる 高田正子(藍生)
海に注ぐ川真青や灼熱す 松村蒼石
海匂ふ灼くるガスタンクのうしろより 宮津昭彦
海昇り来し太陽が熊野灼く 右城暮石 上下
海浜ステージ灼けゐて何もはじまらず 池田秀水
海灼くる四肢もて余す少年に 清水衣子
海照りて鬼の手作り岩を灼く 高澤良一 随笑
海路来て灼くる埠頭に旅終る 山口波津女 良人
涼しけれ睫毛夕日に灼かれつつ 佐野良太 樫
涼風熱風こもごもいたる白河原 福田蓼汀 秋風挽歌
渚まで熱砂跳ねゆく跣かな 高澤良一 素抱
湖に突き出して木の灼け桟橋 右城暮石 上下
湖を搦め灼くる太古の道一筋 西本一都 景色
滅法に灼く業平の通ひ道 楠節子
漁夫の葬舟を熱砂に曳き上げて 津田清子 礼 拝
潮さしてくるを待つ岩灼けてをり 澤村昭代
潮灼けの海士の顔浮く初湯かな 古畑丁津緒
潮灼けの眉のうすさよ磯竃 中村丹井
潮路来て夏日に灼けし国を踏む 山口波津女 良人
濤灼けて眠りゐる嬰に母の影 大岳水一路
灘灼けて無辜の一舟漂はす 下村ひろし 西陲集
灼かれても青葉が綺麗いたちはぜ 高澤良一 暮津
灼かれゐる大絶壁に巨眼空く 仙田洋子 雲は王冠
灼かれをり見えざるものを釣る人は 櫂未知子 蒙古斑
灼きつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給へ 中城ふみ子
灼きつくる日よりも蟻の膚くろし 長谷川素逝 暦日
灼くほどにアキレス腱を際立たす 櫂未知子 貴族
灼くるだけ灼けし風立つ百日紅 馬場移公子
灼くるだけ灼けて空貨車動き出す 堀 青研子
灼くる園蛇口の向きのまちまちに 宮田俊子
灼くる地にうつそ身立たす葬りかな 井沢正江
灼くる地に今降りたちてスチユアデス 森田峠
灼くる宙に眼ひらき麒麟孤独なり 中島斌雄
灼くる岩ふと背に影を恐山 金山たか
灼くる嶺よし青年の肩見るごと 大野林火
灼くる日に大鉄骨は翼なす 鈴鹿野風呂 浜木綿
灼くる日の陸に積まれて波殺し 白井房夫
灼くる正午索道宙にいこひをり 登四郎
灼くる石籠に満てば立つ石負女 細川加賀
灼くる石蹴る影ひかず飛びにけり 遠藤政児
灼くる砂上豚鳴く方へ少女ゆく 須並一衛
灼くる砂丘このまま流人とはならむ 都筑智子
灼くる空へ煙突残し瓦礫の山 原田種茅 径
灼くる空より溶接の火をこぼす 大橋敦子
灼くる空より熔接の火をこぼす 大橋敦子 手 鞠
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 林火
灼くる街崖は真葛の谷なせる 瀧春一 菜園
灼くる道ほじくり返しその上に 高澤良一 素抱
灼くる魚河岸身体置くだけある日影 岩田昌寿 地の塩




灼けしづむ天に涙のとどかざり 仙田洋子 雲は王冠
灼けし地にまる書いてあり中に佇つ 後藤綾子
灼けし地に灼けし影置く師の忌なり 嶋田麻紀
灼けし岩噴煙けぶり行きがたし 秋櫻子
灼けし熔岩さまよふ原始人清子 津田清子 二人称
灼けし環礁踏絵の如く歩みゆく 岸本マチ子
灼けし砂踏みしむ日付変更線 海老原徳彦
灼けし鉄管のたうちまわること知らず 八木三日女
灼けし鐵帽拾い墓水汲むほかなき 石橋辰之助
灼けすぎしものに秋明菊までも 後藤比奈夫 めんない千鳥
灼けず濡れず真赤な水着肉余る 下田稔
灼けそゝぐ日の岩にゐて岳しづか 石橋辰之助 山暦
灼けつくす沙漠の月は色なさず 石原舟月
灼けてゐる礁に耳つけ濤を聴く 篠原梵 雨
灼けてをりお岩木行きのバスダイヤ 高澤良一 寒暑
灼けて暁くるテラスに亀とその卵 小池文子 巴里蕭条
灼けて木曽駒ヶ岳あり人もまた 清水青風
灼けにけり氷柱の先の遠い雲 佐野良太 樫
灼けほてる土にどすんとランディング 高澤良一 燕音
灼ける景眼鏡の球を拭くばかり 高澤良一 暮津
灼ける肌の一部分にて痒がる耳 河合凱夫 飛礫
灼ける鴉砂防より湧く土工の唄 齋藤愼爾
灼けゐたり漢の触れし岩も樹も 茨木和生 三輪崎
灼けゐたり紫蘇そのものが影のごと 宮津昭彦
灼けゴビに長城力尽きゐたり 平野謹三
灼け土にしづくたりつつトマト食ぶ 篠原鳳作
灼け岩のにほひさびしき飯噛みしむ 宮坂静生 青胡桃
灼け岬いのち捨てむか詩捨てむか 品川鈴子
灼け木道一人歩めば一人の音 高澤良一 暮津
灼け熔岩にわれを窺ふ鴉の眼 伊東宏晃
灼け石に所有者のないからだ置く 田邊香代子
灼け石に跨がり墓石きざむなり 持田石映 『まぼろし』
灼け石積んで島が高いと海女よろこぶ 加倉井秋を 『真名井』
灼け砂にまろびて球を獲しところ 大橋櫻坡子 雨月
灼け砂に藻屑を焚きし跡匂ふ 栗原 政子
灼け砂に踏板埋れ途方なし 長谷川かな女
灼け砂の真白目を突く恐山 高澤良一 随笑
灼け砂を宥める潮や浜おもと 玉井翠陽「渋柿句集」
灼け砂を踏みゐてひとりとは軽し 伊丹さち子
灼け砂利の蟇の豆子よいづこまで 加藤知世子 花 季
灼け破船からんと置きて尻屋崎 鳥居おさむ
灼け神輿揉むぞ気抜けば遺さるる 荒井正隆 『父嶽』
灼け紅旗へんぽん関羽生誕祭 高澤良一 鳩信
灼け蔓のその先獲物のあるごとし 高澤良一 素抱
灼け鉄路犬方角を失ひて 右城暮石 上下
灼け雲や竜骨海の荒れ呼んで 河野南畦 湖の森
灼つ土にしづくたりつゝトマト食ふ 篠原鳳作
灼土にしづくたりつゝトマト食ふ 篠原鳳作 海の旅
灼沙に果てにしものの形ただし 楸邨
灼熱に打たれ強かり女郎花 高澤良一 素抱
灼熱のびいどろを吹き夏深し 渡辺 立男
灼熱のスペインガウディ・ミロ・ピカソ 川崎かほる
灼熱の星屑であり父の骨 徳弘純 麦のほとり
灼熱の砂を過ぎゆく夢の翳 仙田洋子 雲は王冠
灼熱の鬼こそ出づれ豆打てり 辻桃子
灼熱を足裏に仰ぐパゴダかな 浅野昭寿「残響」
灼熱観音わが鉛筆を数珠に替ゆ 磯貝碧蹄館
灼石の一つ憤怒の目鼻みゆ 田川飛旅子 『山法師』
灼雲に老ひとりゐる黍畑 田中ひろし
炎天の葉智慧灼けり壕に佇つ 鈴木しづ子
炎天の葉知慧灼けり壕に佇つ 鈴木しづ子
烈日に灼けつつまれて造船所 五十嵐播水 埠頭
焦土灼けもはや待避の意なし 下村ひろし
焼岳は夏日に灼けて立つけぶり 水原秋櫻子
焼灼の傷あと失せよ霙ぐせ 河野南畦 『焼灼後』
焼灼の胸触れまじや猛り鵙(焼灼手術) 河野南畦 『黒い夏』
煖炉灼く夫よタンゴを踊らうよ 三橋鷹女
照りつける鉄砲鼻に葛灼けて 高澤良一 ももすずめ
熔岩灼くるしづけさ天に日は駐(とどま)り 草堂
熔鉱の熱風に揺れ飾歯朶 斎藤朗笛
熱砂さめ寮の全灯一指で点く 友岡子郷 遠方
熱砂に漁婦泣き「日本の巡査かお前らは」 古沢太穂 古沢太穂句集
熱砂ゆくなほ白靴を捨てきれず 野澤節子 花 季
熱砂ゆく捨て猫と化し街に出る 対馬康子 吾亦紅
熱砂ゆく老婆のこゑもせずなれり 山口誓子
熱砂ゆく老婆の声もせずなれり 誓子
熱砂万里生きとし生けるものミクロ 金子如泉
熱砂砂塵こころ庇ふに限りあり 小池文子 巴里蕭条
熱砂行く老婆のこゑもせずなれり 山口誓子「青女」
熱砂踏む靴音世より来し人か 金子晃典 『望郷独語』
熱砂降る砂漠の薔薇と言ふは石 小池文子 巴里蕭条
熱砂降る飼はれて黙す亀の上 小池文子 巴里蕭条
熱砂駆け行くは恋する者ならん 三好曲「空港」
熱風が過ぎ近々と土星の輪 正木ゆう子 静かな水
熱風に麦なびく麦の青はげしき 日野草城
熱風の刹那に過ぎて野火始め 火村卓造
熱風の樹に倚り白き麺麭を食む 三谷昭「三谷昭全句集」
熱風の花火焔樹や何告げ得む 小池文子 巴里蕭条
熱風の街に満月ぎらぎらす 西村公鳳
熱風の黒衣がつつむ修道女 中島斌雄「火口壁」
熱風や小声に売れる宝籤 百合山羽公 故園
熱風や眼灼かれ行くや夫に蹤き 小池文子 巴里蕭条
熱風や砂にあまたの松の苗 長谷川櫂 天球
熱風や祖国は簾さやかならむ 小池文子 巴里蕭条
熱風や若者に岩砕かれて 佐藤鬼房
熱風や鶏が目ほそめ何かを見る 加藤楸邨
熱風や黒をアラブの色として 日美清史
熱風傾斜し 疾走バイク群都市 伊丹公子 山珊瑚
熱風吹く高層ビル街抜けて来し 高澤良一 暮津
燈台が灼けて真面目に立つてゐる 山口超心鬼
爆心の残壁の灼け手に沁ます 中島斌男
爆音のあと死の谷(デスバレー)の熱砂のみ 仙田洋子 雲は王冠
父母の墓灼けぬ金銭網の目に 石橋辰之助
牛の貌憶えず灼けて牛後たり 中島斌雄
牛馬飼へぬ島よ夏葱ただ灼けて 秋元不死男
狛犬は網かぶせられゐて灼くる 頼経嘉子
猫の信長花椿の灼くるに向き 長谷川かな女 花 季
猫車灼けをり日本海無韻 行方克巳
獄塀灼け身ぬちの時計狂ひ出す 平井さち子 完流
珊瑚樹は熱風の吹き入りしまま 岡田史乃
瓶灼けて裕次郎忌の浜汚れ 原 川雀
甘藷植ゑて島人灼くる雲にめげず 大野林火「海門」
生明らか死も明らかに灼かれをり 櫛原希伊子
田帰りの灼けし自転車漕ぎにけり 宮澤八重子
甲板の灼けて外つ国匂ふかな 水口楠子 『泉汲む』
男靴そろへ灼かれる指の先 谷口桂子
町斜陽灼ける武家門頑に 鍵和田[ゆう]子 未来図
番鳩の啼く樹灼けをり宿得たり 鍵和田[ゆう]子 浮標
異人墓地日本の妻の名も灼けぬ 細川加賀 生身魂
発掘の熱砂に転ぶ泪の壺 殿村菟絲子 『牡丹』
発掘の箆使ふ背の丸く灼け 河野頼人
白々と灼け居る奥の細道よ 楠節子
白眼の仁王の灼くる池頭 今津哲朗
白良浜良き名を灼きて荒布干す 宮津昭彦
白象のごとくけだかく雲灼けて 高澤良一 ぱらりとせ
百万年灼かれ絶壁沈黙す 仙田洋子 雲は王冠
盆セール過ぎしデパート窓灼けて 石塚友二
盆石の灼けて何でもござれ市 川澄祐勝
看板の背骨西日に灼かれゐぬ 羽部洞然
矢鱈赤き看板灼けて物価高 猿橋統流子
石ころとあか土と灼け弾痕焦げ 長谷川素逝 砲車
石伐つて壁に垂線百灼けたり 田川飛旅子 『使徒の眼』
石切場哀史言ひ継ぎ島灼くる 竹中碧水史
石垣はしづかに灼けて我が立つ影 高柳重信「山川蝉夫句集」
石段に日ざし灼きつく蝉時雨 西岡正保
石灼けて生絹のやうな黒揚羽 長谷川櫂 天球
石灼けて粉塵に帰す恐山 高澤良一 随笑
石灼けて纜の影濃かりけり 木母寺
石灼けて賽の河原に一穢なし 稲荷島人
砂の上砂吹かれゆく灼け砂丘 松田多朗
砂丘灼けつひにひとりの影尖る 山口草堂
砂丘灼け天日あをき灘に照る 伊東宏晃
砂丘灼け巫女出さうな濤の牙 河野南畦 湖の森
砂丘馬車匂ふ熱風過ぐる度 竹中碧水史
砂日傘ひらき頃なる砂の灼け 能村登四郎
砂漠灼け虫の如くに長き貨車 菅野イチ子 『花漆』
砂灼けていしを一事として帰る 小宮山遠
磧灼けバッタは石の色に飛ぶ 草村素子
祈りても詠ひても灼け平和像 加藤知世子 花寂び
神将にもの問うて身の灼けにけり 吉田紫乃
祭暑し磴灼けて裂けるかに 森川暁水 黴
禅林の青空灼けて槇大樹 高澤良一 暮津
秋暑し熱砂にひたと葉つぱ草 杉田久女
積乱雲野に湧き野に湧き貨車灼くる 相馬遷子 山国
空ふかし岩群を灼く日はあれど 手島 靖一
米堤げて火を吐く喉をラムネに灼く 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
納屋灼けて嫁に継がるる豆腐臼 玉城一香
網戸ごしに雲灼く入日卓を灼く 川島彷徨子 榛の木
緋衣を一著日灼和尚かな 河野静雲 閻魔
縄跳びの灼け跣子と鶏の足 小檜山繁子
繋船の鉄鎖灼けゐて人影なし 瀧春一
纜の芯まで灼けてよこはまに 中原道夫
羊の血熱砂流るるまでもなく 中戸川朝人
翡翆の田川の行方里曲灼く 下村槐太 天涯
聖像の二十六人灼けわれ一人に 加藤知世子 花寂び
背なを灼く烈日われはアラビアヘ帰り来しなり火の匂いする 三井修
背を灼いて太宰治の墓に佇つ 宮川みね子(風土)
背を灼おて太宰治の墓に佇つ 宮川みね子
胸灼く酒雛といふもの我に会ふ 石川桂郎 含羞
能登塩田足型そのまま灼けている 斎藤 都
自動シャッターヘ灼かるや移り気犬もゐて 平井さち子 完流
自動車の座席灼けゐて人を待つ 長谷川櫂 天球
自由で少し不安で灼けし砂丘行く 津田清子 礼 拝
自転車のサドル灼けゐて腰浮かす 高澤良一 寒暑
臼彫りが彫りし井月の墓灼くる 西本一都 景色
艫綱を幾重にも巻き石灼くる 浦田八枝
花々やかくも灼けたる花圃の土 瀧春一 菜園
苞にせんゴビの灼石拾ふわれ 岩崎照子
草灼くるにほひみだして鶏つるむ 篠原鳳作
草灼くる匂みだして鶏つるむ 篠原鳳作 海の旅
草田男逝くコンクリートに雀灼け 館岡沙緻
荒草の路頭に灼けて浜通り 角田独峰
荒荒と熱砂に羊皮乾きけり 小池文子 巴里蕭条
莨なし食後の河が灼けてゐる 片山桃史 北方兵團
菩提樹や灼けて大地のかぐはしき 長谷川櫂
葛灼けて菅江真澄のゆきし道 高澤良一 寒暑
葭切や灼けたる茎を掴みをる 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
蒼天熱風五所河原炎熱忌 黒田杏子
蓬灼け雉子は卵生みおとす 松村蒼石 雪
蓮の葉へいづこより吹く熱風か 中田剛 珠樹以後
薬罐灼けすぐにアウトとなる野球 八木三日女 紅 茸
蛾を食みし蜥蜴熱砂に口拭ふ 佐野青陽人 天の川
蜘蛛の囲の糸灼けをらん晝つ方 高澤良一 素抱
蝉のこゑ疲れつかれてゆふ灼けぬ 中尾白雨 中尾白雨句集
蟹さんの型押し遊び灼け砂に 高澤良一 素抱
蟻つよく生きて一茶の山河灼く 宮津昭彦
蠅もゐず屍の羊灼き尽きむ 小池文子 巴里蕭条
街道はこれから灼けむ露葎 高澤良一 宿好
被爆像仰ぎ現し身灼かせをり 中島斌男
被爆林灼け長官の死を伝ふ 皆川白陀
貧は貧富は富の天の灼けにけり 久保田万太郎 流寓抄
貨車灼けて満載されている怒り 森 武司
赫灼と枯木に花の牡丹かな 岡本松浜 白菊
足場結ふ裸を的に灼く太陽 石橋林石 『石工日日』
踏めば鳴る離島の白き熱砂かな 橋本榮治 麦生
蹠に灼けつく土や粟を蒔く 久保白茅子
躓きし石が追ひくる灼けし坂 中戸川朝人 残心
身を匿すには灼け溶岩のここがよし 三好潤子
軍配昼顔熱砂をにじりつつ咲けり 堀口星眠 青葉木菟
載せ石の灼けて籠の鵜老いゆくか 伊藤いと子
輪廻生死さもあれきみが病一躯霜ふれば霜にわがこころ灼く 山田あき
逃げどころなし長城のどこも灼け 伊丹三樹彦
逆縁の身を灼く暑き日なりけり 滝青佳
逆髪は姉にてものを灼く陽にて 竹中 宏
遊船に陽は青々と灼けにけり 飯田蛇笏 霊芝
道灼けて悲しみごとのなきごとし 田部谷紫(初蝶)
部落消え残材ひとつ無く灼くる 白松達夫 『初松籟』
野と河原けじめなきまで灼け穂草 下村ひろし 西陲集
野に坐る眉目よき石の灼けてくる 中西舗土
野生馬の背の灼くるまま岬山 寺田順子
針金の灼けきはまりつ誘蛾燈 阿波野青畝
鈴懸の刈り込んである灼け舗道 高澤良一 寒暑
鉄を灼く火を凝視む瞳に火が棲める 片山桃史 北方兵團
鉄棒といふ直線の灼けてをり 永野佐和
鉄灼け木も灼け滑台一基 小澤實「砧」
鉄路が血管日本の道程灼けつゝあり 磯貝碧蹄館 握手
銀杏降る坐せば身を灼く恋生れむ 山本つぼみ
鋼灼くにほひ余寒の鉄工所 松本照子
鍛冶の音を白く打ちこみ灼くる海 栗生純夫 科野路
鏡屋に街の断片灼けゐたり 村竹 弘
長城裡黒髪灼くる香なりけり 白澤良子
間みじかの胸灼く咳を憎み咳く 篠原梵 雨
降る雪や灼鉄は暗いところで打つ 榎本冬一郎 眼光
陵灼けて日本人のみな老いて 石田勝彦 秋興
雀らと灼け少年のぼんのくぼ 神尾久美子 桐の木
雄叫びの騎馬像灼ける駅広場 西川孝子
雪山を灼く月光に馬睡る 飯田龍太 童眸
雪灼けの顔に吹雪のなほひびく 佐野良太 樫
雲の裏灼けゐて藺刈暮れつゝあり 阿部[しょう]人
雲灼けては伸びあがるかなストの街 加藤楸邨
雲灼けて声なき山河広島忌 伊東宏晃
雲灼けて鋼光りの沖とざす 手塚美佐
雲白し夜の畳の灼けのこる 松村蒼石 雪
露地灼くる真青き海を奥にして 川島彷徨子 榛の木
露座仏の膝に灼けたる供へ銭 井戸元女
露置きて灼けし瓦礫も秋黝し 内藤吐天 鳴海抄
青上総海かけ灼くる鬼来迎 野沢節子 八朶集以後
青海が灼け牧柵に女囚消ゆ 石原舟月
青空がまるごと灼けて玉砕日 高澤良一 随笑
鞁(むながい)置く熱砂さみしく波立たせ 対馬康子 愛国
顔過ぐる機関車の灼け旅はじまる 橋本多佳子
風垣(かっちょ)灼けひとすぢみちの婆の村(津軽十三湖付近二句) 河野南畦 『湖の森』
風垣灼けひとすぢみちの婆の村 河野南畦 湖の森
風灼けて南大門にぶつかれり 田口彌生
風灼けて氷塊を水流れ出づ 大岳水一路
風鈴や静かに灼くる能舞台 加古宗也
飴色に坩堝灼けをり秋真晝 内藤吐天
首ふつて弾み歩きの灼け駱駝 鷹羽狩行
馭者の鞭灼くる大地を打てりけり 森田峠
馳せる帆も灼けつく海も点描画 高澤良一 暮津
駅近し灼くる線路の交錯に 原田種茅 径
駅馬車の道は熱砂へ還りけり 仙田洋子 雲は王冠
驢馬の耳ひたひた動く生きて灼けて 加藤秋邨 死の塔
骨拾ふまして熱砂ののど仏 宮本みさ子
鬼女の像灼けつつ内面夜叉美人 加藤知世子 花寂び
鳴りだす第五灼けしづまれる石の塀 秋元不死男「瘤」
鴟尾灼けて顔も尻尾も向ひ合ふ 北野民夫
鴨撃たる吾が生身灼き奔りしもの 橋本多佳子
鶴は病めり街路樹の葉の灼けて垂り 鷹女
麦穂だつ陽は鉄塔に灼けそめぬ 西島麦南 人音
黄は艶なり長けては灼くる女郎花 高澤良一 素抱
黄土灼け巨大な影法師と歩く 小檜山繁子
黄苑眩し這ひ登る掌を岩が灼き 小松崎爽青
黒く灼く樹頭を占むるみな鵜なり 宮津昭彦
黙深く戦の島の熱砂踏む 土田桃花
黝く灼けわが影われに先んじゆく 梵

以上
by 575fudemakase | 2016-08-21 16:30 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)
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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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