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蜩 の俳句

蜩 の俳句


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蜩 補遺

故山の土のひぐらしアメリカの君聞きたまえ 荻原井泉水
あかつきのひぐらし萌黄いろに啼く 原石鼎 花影以後
あしたあるゆえにひぐらしゆうべあり 荻原井泉水
あな幽かひぐらし鳴けり瀧の空 水原秋櫻子 葛飾
あるがまま、ひぐらし鳴くゆえに日が昏れる 荻原井泉水
いそいでもどるかなかなかなかな 種田山頭火 草木塔
うらは蜩の、なんとよい風呂かげん 種田山頭火 自画像 落穂集
かなかなかなかなと鳴くほかはなし鳴きあかす 荻原井泉水
かなかなかなかなやうやく米買ひに 種田山頭火 草木塔
かなかなかなと河あかりして曉けゆくや 角川源義
かなかなが夕日はなさぬ湖北かな 鷹羽狩行
かなかなしぐれ人あつまりて今宵も 大野林火 海門 昭和七年以前
かなかなしぐれ泣けてくるよな腹の汗 大野林火 海門 昭和九年
かなかなと山田の水の冷たさと 香西照雄 対話
かなかなにかなかな応へ故郷去る 香西照雄 対話
かなかなにまみれて水にゐるおもひ 鷲谷七菜子 天鼓
かなかなにマタギ皮足袋雪恋ふや 石川桂郎 高蘆
かなかなに二十歳の時の空あるごと 香西照雄 対話
かなかなに小粒も小粒十団子 百合山羽公 寒雁
かなかなに履く足袋ほそき思ひかな 石川桂郎 含羞
かなかなに応ふこゑある盆の谿 鷲谷七菜子 花寂び
かなかなのいまは繁きにまたねむる 高屋窓秋
かなかなのひとつひとつの化佛なり 岡井省二 五劫集
かなかなのひとつ啼き澄み塔ありぬ 伊丹三樹彦
かなかなの二こゑみこゑきゝて澄む 高屋窓秋
かなかなの交錯したる谺かな 阿波野青畝
かなかなの声のはるかにはぐれ鹿 鷹羽狩行
かなかなの大音声や本門寺 川端茅舎
かなかなの嬰の目覚めをあやしをり 森澄雄
かなかなの後ひと雨の昼下り 佐藤鬼房
かなかなの朝の力や文覚忌 森澄雄
かなかなの森出づ流れ何の香ぞ 石田波郷
かなかなの築城以来かなかなかな 鷹羽狩行
かなかなの谷深ければ聞きまどふ 飯島晴子
かなかなの越後へこゆる川ひとつ 鷲谷七菜子 天鼓
かなかなの金銅佛に近づきぬ 岡井省二 夏炉
かなかなの青山かげになきいでぬ 百合山羽公 春園
かなかなの音の明け暮れや道元忌 阿波野青畝
かなかなの鳴きうつりけり夜明雲 飯田蛇笏 山廬集
かなかなの鳴きかはしつつ遠のきぬ 木村蕪城 一位
かなかなの鳴きをはりたる門火かな 森澄雄
かなかなの鳴くを待ちつつ夜を目ざめ 山口青邨
かなかなの鳴けばかたはらのもの起こす 山口青邨
かなかなは子を抱き門に彳てば啼く 安住敦
かなかなは目立屋めけり四方に鳴く 阿波野青畝
かなかなもわたしばつたも亦わたし 渡邊白泉
かなかなやなほざりに降る森の雨 石田波郷
かなかなやまだ出てをりし茗荷の子 石田波郷
かなかなや亜炭掘る小屋いまもあり 山口青邨
かなかなや刻まれて字も幹も古り 鷹羽狩行
かなかなや友の焚くなる湯に浸り 相馬遷子 山国
かなかなや句づくゑ下の膝がしら 角川源義
かなかなや土の貌して木暗仏 鷲谷七菜子 游影
かなかなや夕日を知らぬ谿の村 鷲谷七菜子 花寂び
かなかなや寺に朱塗りの箱枕 鷹羽狩行
かなかなや少年の日は神のごとし 角川源義
かなかなや山神片足ふんばりて 山口青邨
かなかなや峡残光の露天碁に 中村草田男
かなかなや指組めば似る晩祷に 三橋鷹女
かなかなや日は沈みゆく防雪林 山口青邨
かなかなや木の像に木の耳飾り 鷹羽狩行
かなかなや森がくり来る妻紅し 森澄雄
かなかなや森は鋼のくらさ持ち 深見けん二
かなかなや森は黄昏のごといつも 山口青邨
かなかなや欅屋敷と称へ古り 松本たかし
かなかなや母よりのぼる灸の煙 飴山實 少長集
かなかなや母を負ひゆく母の里 三橋鷹女
かなかなや水車の運ぶ個々の水 鷹羽狩行
かなかなや永睡りせし巌の上 石田波郷
かなかなや決めて言はざること一つ 鷹羽狩行
かなかなや沼に濃くなる青みどろ 松村蒼石 雁
かなかなや浴身ぬぐふたび細り 鷹羽狩行
かなかなや海平らかに疲れたり 岡本眸
かなかなや湯の村の豆腐屋で一軒 荻原井泉水
かなかなや漂ひ越えに霧の伊賀 鷲谷七菜子 花寂び
かなかなや畳みて寺の落し紙 鷹羽狩行
かなかなや百観音と呼ぶ平 阿波野青畝
かなかなや目ほどに耳の衰へず 鷹羽狩行
かなかなや粥の上澄みなほ冷めず 鷹羽狩行
かなかなや素足少女が燈をともす 森澄雄
かなかなや美技後うなだれバレー少女 楠本憲吉 楠本憲吉集
かなかなや胸の涸れ井へ幾たびも 林翔
かなかなや腹のへりても食細し 石川桂郎 四温
かなかなや芭蕉廓然たる末明 川端茅舎
かなかなや草にかくるる姫の墓 鷲谷七菜子 天鼓
かなかなや裏窓明けて裏の山 草間時彦 櫻山
かなかなや雲水帰る下界より 百合山羽公 寒雁
かなかなや風が繙く日葡辞書 楠本憲吉 孤客
かなかなや食べて汚せし皿重ね 鷹羽狩行
かなかなよひとと別るるまた愉し 安住敦
かなかなを聞けよと道の九十九折 鷹羽狩行
かなかな木魂山萱の葉のふれ合へる 臼田亜浪 旅人 抄
かゝる朝かなかなきけば目も冴えぬ 高屋窓秋
きようはきようのひぐらし鳴きおわり 荻原井泉水
くづれる家のひそかにくづれるひぐらし 種田山頭火 草木塔
こころにも崖あり泊灯ありかなかな 楠本憲吉 孤客
こほろぎや蜩いまだ鳴きやまず 正岡子規 蟋蟀こほろぎ<虫+車>
こゑしぼるものにひぐらし蓮華峰寺 星野麥丘人
さて嫁にやるとすると二人きりのひぐらしか 荻原井泉水
さんさん蜩女の写真預かれば 石田波郷
しぬ竹の伸びの若くて蜩が 右城暮石 句集外 昭和十三年
すぐに木を変へつつひぐらし庭にゐる 篠原梵 年々去来の花 雨
たちまちに蜩の声揃ふなり 中村汀女
たつぷりと鳴くやつもいる夕ひぐらし 金子兜太
とほくひぐらし鳴きだす窓をしめさする 大野林火 海門 昭和九年
とほく葬りをおもふかなかなしづまれば 大野林火 海門 昭和九年
どの銘となくかなかなの夕浙 阿波野青畝
なほこゑの杉山がかりかなかなかな 岡井省二 夏炉
はじめから遠き蜩遠ざかる 稲畑汀子
はるかより風の蜩岳樺 佐藤鬼房
はろかより朝蜩や何につづく 加藤秋邨
ひぐらしが下界に鳴けり皇子のため 山口誓子
ひぐらしが啼くゴンドラの最終便 鷹羽狩行
ひぐらしが啼く奥能登のゆきどまり 山口誓子
ひぐらしが鳴いてゐるよと心太 細見綾子
ひぐらしが鳴きかぶさりぬ蟻地獄(丹波七句) 細見綾子
ひぐらしが鳴けり神代の鈴振つて 山口誓子
ひぐらしと電気鋸声悲し 山口誓子
ひぐらしにつづく朝禽梅雨明けむ 水原秋櫻子 殉教
ひぐらしに今日を譲らず油蝉 百合山羽公 樂土
ひぐらしに峡の朝雲霧がくり 飯田龍太
ひぐらしに樹々の残照ながかりき 桂信子 月光抄
ひぐらしに無明の星をむかへけり 飯田蛇笏 家郷の霧
ひぐらしに病む暁は尊き刻 飯田龍太
ひぐらしに真近く浴み了るひと日 飯田龍太
ひぐらしのうしろさみしき白地かな 藤田湘子 途上
ひぐらしのかたみに鳴きてもの寂し 渡邊白泉
ひぐらしのこゑのつまづく午後三時 飯田蛇笏 家郷の霧
ひぐらしのこゑの針なす駒ケ嶽 飯田龍太
ひぐらしのこゑ切久女のこゑ切々 鷹羽狩行
ひぐらしのさざなみとなり朝の空 佐藤鬼房
ひぐらしのやむや浅黄に日の暮れて 原石鼎 花影以後
ひぐらしの一樹にひゞき父子の渓 飯田龍太
ひぐらしの一樹一樹に沁む遙けさ 鷲谷七菜子 銃身
ひぐらしの中にぬきさしならぬ声 鷹羽狩行
ひぐらしの土にしみ入る沼明り 飯田蛇笏 椿花集
ひぐらしの墓新羅への道で死す 山口誓子
ひぐらしの声沁む昇仙峡の瀬々 鷹羽狩行
ひぐらしの声減らさずに修道院 鷹羽狩行
ひぐらしの声肌に沁む浴後の子 飯田龍太
ひぐらしの夕一片の菓子を食ふ 有馬朗人 母国
ひぐらしの幹のひびきの悲願かな 飯田龍太
ひぐらしの幹の一本づつ奥へ 鷹羽狩行
ひぐらしの打振る鈴の善意かな 飯田龍太
ひぐらしの方へ行かうといつも思ふ 藤田湘子 神楽
ひぐらしの日の寂寞と父祖の墓 鷲谷七菜子 銃身
ひぐらしの木の葉になきて竿とほし 石橋秀野
ひぐらしの流離の声の巌ばしら 能村登四郎
ひぐらしの百鈴ひびく吉野村 鷹羽狩行
ひぐらしの秩父山人禿げやすし 金子兜太
ひぐらしの羽黒座りて耳学問 平畑静塔
ひぐらしの近音や上げし眉のうへ 鷲谷七菜子 游影
ひぐらしの遠のくこゑや山平ラ 飯田蛇笏 山廬集
ひぐらしの遠のく声や山平ラ 飯田蛇笏 霊芝
ひぐらしの遠ひちりきや鮎供養 水原秋櫻子 殉教
ひぐらしの遠音の糸の切れしまま 飯田龍太
ひぐらしの電気地蔵といふがあり 飯島晴子
ひぐらしの音を起したる萱の中 富安風生
ひぐらしの鳴く白川へ入り行かず 山口誓子
ひぐらしの鳴く音にはづす轡かな 飯田蛇笏 霊芝
ひぐらしは薄明の鈴花火果てし 金子兜太
ひぐらしひねもすあふるる泉ぞ 荻原井泉水
ひぐらしやあちこち灯る山がゝり 日野草城
ひぐらしやあまた瀧落つ湯檜曽川 水原秋櫻子 磐梯
ひぐらしやうごかぬ水が暮れてゐる 日野草城
ひぐらしやここにいませし茶の聖 水原秋櫻子 旅愁
ひぐらしや仏に会ひに婆が鉦 岸田稚魚
ひぐらしや円坐に尻の痩せを知り 石川桂郎 高蘆
ひぐらしや坩堝の如き姉の情 楠本憲吉 孤客
ひぐらしや夕立したたる舟日覆 水原秋櫻子 蓬壺
ひぐらしや対きあふひとの眸の疲れ 桂信子 月光抄
ひぐらしや急ぐ由なき家路にて 石川桂郎 四温
ひぐらしや故山深きへ探り入り 中村草田男
ひぐらしや梅雨百尺の杉の鉾 水原秋櫻子 殉教
ひぐらしや流るる水に水ゑくぼ 鷹羽狩行
ひぐらしや潮より立ちし巖の門 水原秋櫻子 蓬壺
ひぐらしや瀬音を誘ふ岩いくつ 鈴木真砂女 卯浪
ひぐらしや点せば白地灯の色に 金子兜太
ひぐらしや熊野へしづむ山幾重 水原秋櫻子 旅愁
ひぐらしや玉砂利明りなほ奥ヘ 鷹羽狩行
ひぐらしや磐石に罅かそかなる 鷲谷七菜子 游影
ひぐらしや祭の笛や時流る 百合山羽公 故園
ひぐらしや絨毯青く山に住む 橋本多佳子
ひぐらしや走り根曝るる夕明り 鷲谷七菜子 銃身
ひぐらしや遣り水の家隣りあひ 鷹羽狩行
ひぐらしや雲水はいま何の刻 百合山羽公 寒雁
ひぐらしや静臥の胸に水奏で 鷲谷七菜子 黄炎
ひぐらしや高嶺落ちこむ青湯壷 秋元不死男
ひぐらしよ塔の齢は測り知れず 鷹羽狩行
ひぐらしをさびしがる娘と居りにけり 日野草城
ひぐらしを手捕りぬ蒼き淵の上 水原秋櫻子 磐梯
ひぐらしを聴かである日は阿修羅かな 加藤秋邨
ひぐらしを鳴かせて昼の通り雨 石塚友二 玉縄抄
ひぐらし啼いてるぞさかな買つてこよ 安住敦
ひぐらし日の暮ほいほい駕籠来る 荻原井泉水
ひぐらし止みぬ窓には夜という夜が 金子兜太
ひぐらし耳のそばに来て鳴くようになりて鳴く 荻原井泉水
ひぐらし遠い耳の近くでも鳴く 荻原井泉水
ひぐらし鳴くは松山ならむ池澄めり 松崎鉄之介
ひぐらし鳴く中のうぐいすと聞くも焼香の時刻 荻原井泉水
ひぐらし鳴けば惜し聞けば僅に喜寿なりし 荻原井泉水
ひそかなる叛意蜩しきりなり 木村蕪城 寒泉
ひとり来しことの悲しくかなかなに 上村占魚 球磨
また字のありてこの谷いま蜩 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
みどりの噴涌そこから蜩一度だけ 加藤秋邨
み吉野のかなかなに夕影を曳く 稲畑汀子
やうやくたづねあててかなかな 種田山頭火 草木塔
ゆふべゆふべひぐらし鳴いて秋近し 正岡子規 秋近し
わが歌のふと蜩に和したりき 金子兜太
ガードレールが見えて蜩の家畜 金子兜太
ホテルはともす鳴くかなかなに似合ふ灯を 桂信子 晩春
一ふろ一くべのけむりのひぐらし 荻原井泉水
一夜寝て暁ひぐらしを枕もと 橋本多佳子
一本の木を森といふ蜩鳴き 山口青邨
一雨きてほしくどうやらきそうなかなかな 荻原井泉水
七月のひぐらしきけり鞍馬口 雨滴集 星野麥丘人
七月二十三日晴 秩父中ひぐらし 金子兜太
上の池下の池とてひぐらしの 飯島晴子
世間虚仮蜩の声王のごとし 平井照敏 天上大風
久方の暁のひぐらしたまくらに 石塚友二 方寸虚実
久方の曉のひぐらしたまくらに 「方寸虚実」石塚友二
二三日は居ていただく仏さまひぐらし 荻原井泉水
二番蜩鳴くや病母へただ帰る 中村草田男
人に言はずひぐらしきけばながらへし 森澄雄
人の世にかなかなの啼く淋しさよ 後藤比奈夫
人吉の灯恋ひ蜩降るばかり 能村登四郎
仏壇と背中合せの蜩谷 大野林火 月魄集 昭和五十四年
他人に母居て七輪使ふ夕蜩 岡本眸
会へば兄弟ひぐらしの声林立す 中村草田男
佛燈かんがりと晝よりかなかな 荻原井泉水
六たびづつ啼きひぐらしの移りけり 原石鼎 花影以後
出格子に戸口くらしよ蜩どき 大野林火 雪華 昭和三十八年
出湯熱し蜩のこゑ注ぎやまず 上田五千石『天路』補遺
初蜩夕月はまだひからずに 大野林火 月魄集 距和五十七年
初蜩聞きし夜の雨出羽かけて 松崎鉄之介
化女沼に夕ひぐらしのひびき入る 佐藤鬼房
原色の毛布積まれてかなかな蝉(泉大津市に鈴木六林男氏を訪ふ) 細見綾子
友をまつ虫たゞ日ぐらしの蝉のこゑ 正岡子規 蜩
古い祠のふれば鈴の古い音のひぐらし 荻原井泉水
古人多く旅に死す蜩の鳴き綴る 大野林火 月魄集 昭和五十四年
合掌仏蜩ひとつ遠鳴きに 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
名所とてひぐらしひぐらし巡りおわり 荻原井泉水
呼吸とはこんなに蜩を吸うことです 金子兜太
唖蜩のひとつぐらゐはゐるならむ 加藤秋邨
地に坐して蜩聞けば流浪めく 津田清子
地に転ぶひぐらし蟇が覗きいし 金子兜太
堰切つて暁蜩や一灯忌 岸田稚魚 筍流し
墓にくれば墓の蜩あたらしく 星野麥丘人
夕かなかな明るく見ゆる鉢の木は 大野林火 冬青集 雨夜抄
夕刊一紙蜩と来て正に暮る 石塚友二 方寸虚実
夕榮や蜩多き岡の松 正岡子規 蜩
夕蜩掘割黒く汐上げつ 中村汀女
夕餉待ち梅雨ひぐらしを待つこころ 水原秋櫻子 蘆雁
天城山麓私語を許さぬまで蜩 鷹羽狩行
天竜の蜩あげて咲きけり 百合山羽公 樂土以後
奥の院見えて蜩十八町 正岡子規 蜩
奥三河中ひぐらしの鳴く時刻 百合山羽公 樂土
奥肥後に死ぬ蜩か声うるむ 能村登四郎
妻へおくる旅の優言夜ひぐらし 能村登四郎
妻ゐねば蜩ないて腹減りぬ 加藤秋邨
子を負うてひぐらしの土くらくなる 森澄雄
孫は留守遠ひぐらしも響きやすし 香西照雄 対話
宿坊のあさひぐらしに朝鏡 木村蕪城 寒泉
小岩らはいつも水浴び昼蜩 香西照雄 素心
屍室の扉梧の蜩ひびきけり 飯田蛇笏 春蘭
山に星犬捨てる奴ひぐらしに 金子兜太
山の中はひぐらし客の来ない処に来ている 荻原井泉水
山荘の夕蜩に包まるる 稲畑汀子
山裏の水をおしへて蜩鳴く 能村登四郎
山雨をりをり蜩の二三声 佐藤鬼房
川湯柔か高くひぐらし低く河鹿 西東三鬼
幹に耳をつけてかなかな去るまで聞く 篠原梵 年々去来の花 中空
幼きをみな蜩どきの縞模様 中村草田男
幾刻ぞ朝蜩に軍馬ゆく 石田波郷
形見分蜩やみて燭灯す 福田蓼汀 山火
影から影へと草取つてひぐらし影りきる 荻原井泉水
急流にひぐらしのこゑ乗りゆかず 鷹羽狩行
恋せむには疲れてゐたり夕蜩 草間時彦 櫻山
我が門火蜩嘆く空に向き 川端茅舎
手捕りたる伊吹ひぐらし鳴き咽ぶ 山口誓子
換気扇よりひぐらしの甘き声 鷹羽狩行
故伍長蜩鳴けるふるさとに 山口青邨
斎館の蜩にあり晝深む 岡井省二 前後
方方にひぐらし妻は疲れている 金子兜太
旅の飢すこしひぐらしつまづき鳴く 伊丹三樹彦
日のさせば鳴くひぐらしの深山かな 鷹羽狩行
日暮れたる顔をしてをりひぐらしに 加藤秋邨
昼も鳴く梅雨ひぐらしや胡麻豆腐 水原秋櫻子 餘生
昼蜩窪道が身にふさはしく 香西照雄 素心
時、処、ひぐらしの鳴きそうな、鳴く 荻原井泉水
時計の燐燃えかなかなは未だ鳴かず 山口青邨
暁のかなかな三日月われを覗き落つ 臼田亜郎 定本亜浪句集
暁のひぐらし妻はベッドの下 飯田龍太
暁の夢のきれぎれ蜩も 大野林火 冬雁 昭和二十二年
暁の暗さ蜩鳴きはじむ 清崎敏郎
暁の蜩不義理が三つ四つほど 中村草田男
曉ひぐらし終の住家のアパートか 鷹羽狩行
書けざるはまさに文盲暁ひぐらし 上田五千石『天路』補遺
書に倦むや蜩鳴て飯遲し 正岡子規 蜩
朝ひぐらし痛風も癒えしかなかな 金子兜太
朝ひぐらし眼を開けて楸生う野に 金子兜太
朝蜩世界戦争記事落下 三橋敏雄
朝蜩小さな礁濡れ合ひて 佐藤鬼房
朝蜩礼して昨日の湯治婆 岸田稚魚
杉の穂と蜩の声競ふなり 大野林火 月魄集 昭和五十五年
枯山水より蜩の杉の山 大野林火 月魄集 昭和五十四年
梅雨ひぐらし再びにして灯りけり 水原秋櫻子 餘生
梅雨ひぐらし去年は開きける人いづこ 水原秋櫻子 蘆雁
梅雨ひぐらし去年をきのふと思ひ聞く 水原秋櫻子 蘆雁
梅雨ひぐらし天守の神にはるかなり 水原秋櫻子 餘生
梅雨ひぐらし川連法眼の址いかに 水原秋櫻子 殉教
梅雨ひぐらし淵の底にも鳴く如し 水原秋櫻子 緑雲
梅雨ひぐらし鳴けよ秋葉子蕎麦を打つ 水原秋櫻子 蘆雁以後
梅雨夕焼初ひぐらしもまた淡し 水原秋櫻子 帰心
梅雨昨日明けしかなかな萱の山 岡井省二 鹿野
梅雨晴や蜩鳴いて松の風 正岡子規 梅雨晴
梅雨晴や蜩鳴くと書く日記 正岡子規 梅雨晴
梅雨蜩雨の銀糸をうたひけり 林翔
森閑と雨後のかなかな人還らず 楠本憲吉 孤客
榧の実にかなかなしぐれ不破の関 森澄雄
民宿の朝蜩が鼾どめ 百合山羽公 樂土
水打つや森のひぐらし庭に来る 水原秋櫻子 重陽
池の上に池ある昼のひぐらしや 岡井省二 明野
沖で漂う老漁夫 岬のかなかな昏れ 伊丹三樹彦




油滴天目かなかなのひとしきり 鷲谷七菜子 一盞
法羅貝を夕蜩にふき習ふ 清崎敏郎
泳ぐ少年見守る少女夕蜩 草間時彦 中年
洗ひたる墓にかなかな来て鳴けよ 安住敦
海のあけぼの蜩は谷にこぞる 松村蒼石 雁
海風にひぐらしは鳴きそそるかな 平井照敏 猫町
深山十九時ひぐらしの声折れさうに 秋元不死男
渓の霧蒼し蜩に暮るる時 村山故郷
湖とひぐらしと句を釣つている釣人で 荻原井泉水
湯にひとり蜩に耳聾したり 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
滅びゆくもの生れゆくものいま蜩 加藤秋邨
潮満ち切つてなくはひぐらし 尾崎放哉 須磨寺時代
濁流に立ちひぐらしを聞き分くる(奥多摩) 細見綾子
濁流や梅雨の蜩こゑ止めて 百合山羽公 故園
灯がひとつ不断燈としてひぐらし 荻原井泉水
灯さめと思ひ臥しをり蜩に 石田波郷
烏賊舟にゐてかなかなを聞いてをり 飴山實
照り出しぬ朝ひぐらしの山ながら 雨滴集 星野麥丘人
由布岳の初かなかなを湯壺まで 飴山實
男断ちの文字たどたどし蜩鳴く 右城暮石 句集外 昭和三十四年
異国に没る日よ石見野のかなかなよ 津田清子 礼拝
白む夜をかなかなも待ち吾も待つ 山口青邨
白樺にかなかな鳴きて大花壇 飯田蛇笏 山響集
白靴を穿きかなかなに衝たれゐる 渡邊白泉
目覚むれば朝ひぐらしの蚊帳なびき 加藤秋邨
着るものの甚平というものを着ていてひぐらし 荻原井泉水
砂漠かなコンサートホールにかなかな 金子兜太
磯釣と舞蜩相博つ枯薊 水原秋櫻子 晩華
祖母逝けり蕭々と蜩の朝明け 佐藤鬼房
神の鈴音ひぐらしに鳴き継がれ 鷹羽狩行
秋の蝉蜩にまぎれ鳴きにけり 正岡子規 秋の蝉
秋の雷に蜩のこゑこもる 加藤秋邨
空耳か梅雨ひぐらしか乗船寺 亭午 星野麥丘人
端近に蜩鳴きぬ見舞はれゐて 野澤節子 未明音
竹藪に蜩が鳴く碑をめぐり 山口青邨
緋色透くひぐらしの森祭司館 佐藤鬼房
老い母の愚痴壮健に夕ひぐらし 金子兜太
而うして初ひぐらしや虚子屏風 藤田湘子 神楽
育つた土地の合歓咲く山のひぐらしかな 金子兜太
草木と共に向きのまんまぞ蜩刻 中村草田男
葬のあとひぐらしが鳴きはじめたり(西垣脩さん突如として長逝さる) 細見綾子
藍布一反かなかな山からとりに来る 飯島晴子
蜩おちこち自愛水いろの夜明け空 古沢太穂 火雲
蜩がやめば 水色の さざなみ 富澤赤黄男
蜩が余りに近き樹に鳴けり 右城暮石 句集外 平成四年
蜩が呼び出せし闇妻遠し 香西照雄 素心
蜩が杉の林を濃くしたり 廣瀬直人 帰路
蜩が母の旅立ちせはしくす 大野林火 海門 昭和九年
蜩が湧きからからとリフト行く 佐藤鬼房
蜩が草の青さを広げゆく 廣瀬直人 帰路
蜩が誘う砂墜り 土柱界 伊丹三樹彦
蜩といまのうぜんの遊び蔓 大野林火 方円集 昭和五十二年
蜩どき放馬あつめの人来たる 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
蜩どき西東より旅便り 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
蜩なき石童丸の泣く刻ぞ 中村草田男
蜩にきらめく一劃そこへくだる 加藤秋邨
蜩にきらりと曲る水の性 廣瀬直人 帰路
蜩にもたれて秋の日はくれぬ 正岡子規 秋の日
蜩にタベは長し荘を去る 稲畑汀子
蜩に一すぢ長き夕日かな 正岡子規 蜩
蜩に刻々松の暮色かな 日野草城
蜩に十日の月のひかりそむ 川端茅舎
蜩に固く成仏夜泣石 百合山羽公 樂土
蜩に夕ベの池をめぐりけり 日野草城
蜩に山片照りもしばしかな(大野寺磨崖仏) 細見綾子
蜩に山雨の去つてゐし夕べ 稲畑汀子
蜩に岩とんで人帰るなり 飯田龍太
蜩に暁の瀧川霧がくり 飯田龍太
蜩に林泉のほそみちまがりつつ 伊丹三樹彦
蜩に湯加減すこし熱きかな 上田五千石『田園』補遺
蜩に白雲高し檜山越え 村山故郷
蜩に砂浜痩せて出雲崎 上田五千石 森林
蜩に立ちつくすのみ石だたみ 林翔 和紙
蜩に翌の米とぐ伏屋哉 正岡子規 蜩
蜩に翌の米なき伏屋哉 正岡子規 蜩
蜩に老杉幹を正しをり 上野泰
蜩に醜女坐れり隆乳房 金子兜太
蜩に関屋厳しく閉ぢにけり 村上鬼城
蜩に降るごと鳴かる聖母の前 鈴木真砂女 紫木蓮
蜩に青山深く宿とりぬ 村山故郷
蜩に鳴かれてをりぬ萱の原 加藤秋邨
蜩に鳴き勝たれけり秋の蝉 正岡子規 秋の蝉
蜩に黄葉村舎となりにけり 村上鬼城
蜩のあるひは帽に啼きしづむ 齋藤玄 飛雪
蜩のいまは雪積む地の奥に 平井照敏 天上大風
蜩のかなしき間ありまえうしろ 山口青邨
蜩のこゑ振る山に汽車停る 百合山羽公 故園
蜩のさびしくなりて「もういいか」 加藤秋邨
蜩のしげき森なり人往来す 大野林火 冬青集 海門以後
蜩のつと鳴き出しぬ暦見る 星野立子
蜩のなき代りしははるかかな 中村草田男
蜩のなく頃宮も夕煙 高野素十
蜩のひびかふ顔の暮るるなり 森澄雄
蜩のまだ雨粒の杉丸太 岡井省二 明野
蜩のもつともひびき合ふ静寂 稲畑汀子
蜩のマツカリ岳を目にさめき 加藤秋邨
蜩の一声起る池亭かな 松本たかし
蜩の下野にして男多し 飯島晴子
蜩の与謝蕪村の匂ひかな 平井照敏 猫町
蜩の二十五年もむかし哉 正岡子規 蜩
蜩の傷寒論を読みゐたり 岡井省二 鹿野
蜩の呼応女は熱きのみ 香西照雄 素心
蜩の啼きたる川は凍りけり 平井照敏 天上大風
蜩の声おとし鳴き森暮るる 山口青邨
蜩の声のまに~御造営 高野素十
蜩の声の真水の底に坐す 林翔
蜩の声山林に奥まりつつ 中村草田男
蜩の声振りかぶる祖霊の地 右城暮石 句集外 昭和五十五年
蜩の声終るまで何を待ちし 中村汀女
蜩の声蓬髪も流れとぶ 右城暮石 句集外 昭和三十六年
蜩の宮明け放つ幼なごゑ 原裕 青垣
蜩の寺の逗留はや二日 高野素十
蜩の寺鳴物はみなひそめ 百合山羽公 樂土
蜩の山々道にかぶさりぬ 大野林火 早桃 太白集
蜩の山坂登り農夫帰る 相馬遷子 雪嶺
蜩の幹にひびきて幹にしむ 森澄雄
蜩の幹の老眼鏡に歪む 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
蜩の曉月読の馬刀葉椎 岡井省二 明野
蜩の最後の声の遠ざかる 稲畑汀子
蜩の来鳴く家垣翌檜 右城暮石 散歩圏
蜩の松は月夜となりにけり 正岡子規 蜩
蜩の梢や三日月の逍遥遊 中村草田男
蜩の水にをさめし言葉かな 原裕 青垣
蜩の湖なす声へ泳ぎ入る 林翔
蜩の白き女の隠岐かなし 橋閒石 無刻
蜩の真青に萱尖りけり 加藤秋邨
蜩の石階下り乾門 廣瀬直人
蜩の福沢山桃介山とは言はず 山口青邨
蜩の聲の尻より三日の月 正岡子規 蜩
蜩の茶屋靜かなり杉の中 正岡子規 蜩
蜩の茶屋靜かなる木の間かな 正岡子規 蜩
蜩の街角はあり人は亡し 加藤秋邨
蜩の身近なる日は悲しき日 後藤比奈夫
蜩の遠澄む声にこころ寄す 上田五千石 田園
蜩の鏗々と鳴き澄めるかな 日野草城
蜩の長鳴き夕刊は来ぬ土地ぞ 大野林火 雪華 昭和三十八年
蜩の雄啼きの朝を戸隠に 能村登四郎
蜩の鳴いてみづからをさびしめり 山口青邨
蜩の鳴き安閑としてをれぬ 平井照敏 天上大風
蜩の鳴く声にまだ生きてゐる 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
蜩の鳴く隈々に道通ず 右城暮石 声と声
蜩の鳴く頃井水で甕満たす 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
蜩の鳴く頃客あり淋しからず 中村草田男
蜩は しんしんと 日を 梢に吊り 富澤赤黄男
蜩は夜を呼びつつ近く来ぬ 山口青邨
蜩は寂しと幼な心にも 上野泰 佐介
蜩は絶唱法師蝉一偈 後藤比奈夫
蜩も有りと思へて蝉の殼 右城暮石 句集外 昭和九年
蜩も水ちかく啼けり気多の海 能村登四郎
蜩やいつしか園の径ならず 富安風生
蜩やいつも眠れる眠猫 山口青邨
蜩やお住持輪袈裟金古りて 山口青邨
蜩やお堀の松に人もなし 正岡子規 蜩
蜩やかたと傾く弥勒石 阿波野青畝
蜩やここより径は南谷 加藤秋邨
蜩やしもへしもへと水の音 右城暮石 句集外 昭和五十五年
蜩やその音域に議会ひかる 加藤秋邨
蜩やつひに永久排菌者 石田波郷
蜩やどの道も町へ下りゐる 臼田亜浪 旅人 抄
蜩やなかなか暮れぬ採草地 大野林火 雪華 昭和三十四年
蜩やふと翳る顔見つつあり 廣瀬直人 帰路
蜩やむかしむかしの父の恋 鷲谷七菜子 天鼓
蜩ややうやく白く那谷の石 加藤秋邨
蜩やゆふべ費す洗ひ水 三橋敏雄
蜩やわがさすらひの新たなる 三橋敏雄
蜩やコインランドリーに男が一人 安住敦
蜩や一山を占む竹の総 大野林火 月魄集 昭和五十六年
蜩や一日一日をなきへらす 正岡子規 蜩
蜩や上野の茶店灯ともる 正岡子規 蜩
蜩や乘あひ舟のかしましき 正岡子規 蜩
蜩や人哀歓をくりかへし 上野泰
蜩や今日もをはらぬ山仕事 原石鼎 花影
蜩や仮名多き古書よみをはる 鷲谷七菜子 黄炎
蜩や使またせて書く返事 星野立子
蜩や僧にも逢はず寺の庭 日野草城
蜩や兵村にある牛牧場 河東碧梧桐
蜩や凝念の闇うちひびき 加藤秋邨
蜩や几を壓す椎の影 正岡子規 蜩
蜩や動物園の垣ひろし 正岡子規 蜩
蜩や十年家庭教師たり 有馬朗人 母国拾遺
蜩や南大手の御門跡 上村占魚 鮎
蜩や塵労の日の続く限り 小林康治 四季貧窮
蜩や塵紙鼻へやはらかし 中村草田男
蜩や墓碑にありあり旧山河 上田五千石『風景』補遺
蜩や夕日の坐敷十の影 正岡子規 蜩
蜩や夕日の窓に樫の影 正岡子規 蜩
蜩や夕日の里は見えながら 正岡子規 蜩
蜩や大雨の俄か水たまり 細見綾子
蜩や天に崖あるひくれどき 加藤秋邨
蜩や天龍へなほ山一重 百合山羽公 故園
蜩や奥の青嶺にうちひびき 水原秋櫻子 新樹
蜩や子規忌を忘れ患者食 角川源義
蜩や宮しんとして人もなし 正岡子規 蜩
蜩や小説を書く田舍住 正岡子規 蜩
蜩や尼こゝに住む二十年 正岡子規 蜩
蜩や山水のほか庭持たず 上田五千石『琥珀』補遺
蜩や干されて透ける麻衣 野澤節子 未明音
蜩や悲願合掌の一郷に 能村登四郎
蜩や憩へとしげるうまごやし 大野林火 雪華 昭和三十七年
蜩や手にふりすつる帽の露 加藤秋邨
蜩や手の荷持ち替へ持ち替へて 右城暮石 句集外 昭和三十二年
蜩や折口父子の墓砂地 松崎鉄之介
蜩や旅籠もすなる一軒家 正岡子規 蜩
蜩や早鼠つく御佛飯 川端茅舎
蜩や昏れつつあをき山法師 石田波郷
蜩や暗しと思ふ厨ごと 中村汀女
蜩や暮るるを嘆く木々の幹 日野草城
蜩や木曾塚こゝに杉木立 正岡子規 蜩
蜩や杉本寺のあさゆふべ 松本たかし
蜩や松の亀甲脂垂れ 角川源義
蜩や柩を埋む五六人 正岡子規 蜩
蜩や森は夕日の古やしろ 正岡子規 蜩
蜩や椎の實ひろふ日は長き 正岡子規 蜩
蜩や死までの扉いくつある 藤田湘子 神楽
蜩や水底に畦澄むが見ゆ 加藤秋邨
蜩や水底に貝口ひらく 加藤秋邨
蜩や永久にと書きし金字かも 林翔 和紙
蜩や汽車まはりゆく駒ケ嶽 加藤秋邨
蜩や浦人知らぬ崖崩れ 河東碧梧桐
蜩や瀬音や胸はただ濡るる 林翔 和紙
蜩や火の山は火を不意に噴く 津田清子
蜩や灯ともせばわが影法師 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
蜩や灯のうつくしき上野行 加藤秋邨
蜩や球磨も奥なる岩梯子 能村登四郎
蜩や生涯愚なれば酔ふ 小林康治 四季貧窮
蜩や疊に上る夕日影 正岡子規 蜩
蜩や痞へし胸を抱き呆け「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
蜩や白岩に友とその妻と 中村草田男
蜩や硯の奥の青山河 加藤秋邨
蜩や祈りにむすぶ右手左手 上田五千石『天路』補遺
蜩や神鳴晴れて又夕日 正岡子規 蜩
蜩や竝松盡きて町に入る 正岡子規 蜩
蜩や竹林をぬく一樹あり 山口青邨
蜩や背戸から覗く婆の顔 正岡子規 蜩
蜩や膝直角に小角像 右城暮石 句集外 昭和五十五年
蜩や草田男を訪ふ病波郷 石田波郷
蜩や蒼茫として夕茜 原石鼎 花影
蜩や藻の川ながれゐてくらし 松村蒼石 雪
蜩や蝋涙のごと癩者伏す 草間時彦 中年
蜩や誰かに見られゐし夕餉 加藤秋邨
蜩や谷中を出づる墓參 正岡子規 蜩
蜩や道程を聞く二里三里 河東碧梧桐
蜩や配流を胸の小百日 石塚友二 光塵
蜩や金の柱にうとうとと 山口青邨
蜩や金箱荷ふ人の息 正岡子規 蜩
蜩や閻魔も鬼も地に帰り 野澤節子 八朶集以後
蜩や隣もねむき絲車 正岡子規 蜩
蜩や雲のとざせる伊達郡 加藤秋邨
蜩や飯くふ窓に樫の影 正岡子規 蜩
蜩や鳴く方をいつも西と思ふ 山口青邨
蜩よ山上湖なほ水脈保ち 鷹羽狩行
蜩歇みぬ明日待つ翼ひ濃きかなし 石塚友二 方寸虚実
蜩谷の奥の奥なる部屋に着く 大野林火 方円集 昭和五十二年
蜩谷世立・京塚字の名に 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
蜩谷狭まりて橋懸りけり 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
蜩遠く鳴き去り澄めり朝の蝉 及川貞 榧の實
蜩鳴く古硝子戸の透明に 右城暮石 句集外 昭和五十一年
蜩鳴く鎌倉を鎌倉に移り 荻原井泉水
蝉の山蜩の山向ひ合ふ 右城暮石 句集外 昭和四十九年
蝉の聲あつし蜩やゝ涼し 正岡子規 蜩
蝉の鳴いて机の日影かな 正岡子規 蜩
蝉蜩其中下す小舟かな 正岡子規 蜩
裏山に裏山かさねゆくひぐらし 平井照敏 天上大風
裔が守り蜩屋敷と申すべし 大野林火 月魄集 昭和五十五年
裸の男女昼ひぐらしに項垂(うなだ)れいし 金子兜太
見返りし扉の蜩を得忘れね 伊丹三樹彦
谷づたひさざ波のやう蜩は 佐藤鬼房
谷のひぐらし高きより低きより 廣瀬直人 帰路
赤人の墓蜩の飛ぶ羽音 右城暮石 句集外 昭和六十二年
転居また転居の標札初ひぐらし 三橋敏雄
農家の子抱けば蜩なきにけり 百合山羽公 故園
迎へ火や蜩近き雲割れて 川端茅舎
迫ひかけて届く蜩あり大晦日 松本たかし
道違へことにかなかなしぐれかな 岸田稚魚 紅葉山
遠き方へと声重ねかなかなかな 鷹羽狩行
遠ざかりゆく蜩と山の風 稲畑汀子
遠ざかる蜩風に消されけり 稲畑汀子
遠ひぐらし妻の郷愁いま癒ゆる 香西照雄 対話
遠方へ凝る仏の眼 蜩湧く 伊丹三樹彦
遠移りしてひぐらしの昃りごゑ 鷲谷七菜子 銃身
遠蜩僧にも幼馴染みあり 飯田龍太
遠雷も遠蜩も踰えがたし 小林康治 玄霜
郭公に刻をゆづるよ暁ひぐらし 橋本多佳子
酒飲めぬゆゑ師を訪へず夕蜩 石川桂郎 四温
金足らぬとき蜩に鳴かれたり 加藤秋邨
鑛山のひぐらし遠くなりにけり 飯田蛇笏 山響集
長時間ゐる山中にかなかなかな 山口誓子
関こえて朝ひぐらしの丘いくつ 水原秋櫻子 新樹
降るやうに蜩が鳴く粟畠 細見綾子 桃は八重
陶土工蜩なけば胸を掻く 飴山實 おりいぶ
陽が来れば蜩が去るまた来るはず 金子兜太
雨晴れて山は蜩夕榮す 正岡子規 蜩
雪夜ふと蜩の声思ひ出ぬ 平井照敏 猫町
雲中も杉蜩は里寄りに 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
霧ひびき朝ひぐらしのこゑおこる 水原秋櫻子 秋苑
靄天湯壺にひぐらしの直の声 鷹羽狩行
面かむり夕蜩に了りけり 山田みづえ まるめろ
風の盆遠ひぐらしのひとつきり 大野林火 飛花集 昭和四十五年
風呂をもつ家は風呂たて蜩に 高田風人子
鬼灯の母衣の破れや蜩に 平井照敏 猫町
魂祭蜩鳴いて夕なり 正岡子規 魂祭
鳴ききそふ蝉と蜩うすつく日 山口青邨
鳴き出して蜩ばかり青畳 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
鳴き惜しみせずみんみんもかなかなも 鷹羽狩行
鶏頭の句碑に蜩鳴きゐしと 細見綾子
黄金粉(きんぷん)がとび 黄金粉がとぶ 蜩 富澤赤黄男

蜩 続補遺

とし四十蜩の声耳にたつ 加舎白雄
ひぐらしも啼ずなりたる夕かな 長翠
ひぐらしやつひに飛こむ月の松 桜井梅室
ひぐらしや明るき方へ鳴うつり 加藤曉台
ひぐらしや近江の入日いせの月 桜井梅室
ひぐらしや麻すぐりたる森の杉 蘆文
ほし合や蜩になる蝉の声 其角
蜩のなけばひさごの花落ぬ 加藤曉台
蜩のふいと一声月夜かな 早野巴人
蜩の啼かずなりしが鳴かなし 五明
蜩の鳴あらしけむ草の種 小春
蜩はよき声もてりほし今宵 鈴木道彦
蜩もあらまし仕舞ふ筧かな 路青
蜩やづぶりと消て念仏水 正秀
蜩や常盤木霞畑出し 兀峰
蝉といふせみ蜩に成にけり 田川鳳朗
行秋を又蜩もふたりやら 路青
馬蜩に打まかせてやあきの風 建部巣兆

以上
by 575fudemakase | 2016-09-01 01:33 | 秋の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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