秋風 補遺1

秋風 補遺1

あかざ吹き人の脛吹き秋の風 右城暮石 句集外 昭和六年
あかざ吹き秋風知るゝ家のそば 右城暮石 句集外 昭和五年
あきかぜかなしとパフをたたいてゐる 安住敦
あきかぜがかなしと帯をしめてゐる 安住敦
あきかぜがかなしと指をならしてゐる 安住敦
あきかぜに焼餅つまみ滝薬師 能村登四郎
あきかぜに狐のお面被て出むや 三橋鷹女
あきかぜのあはれにほそき眉を曳けよ 安住敦
あきかぜのそよりと彦根屏風かな 鷲谷七菜子 一盞
あきかぜのわが妻を娼婦型とおもふ 安住敦
あきかぜの乳房隆からざるをんな 安住敦
あきかぜの山脈おのが影いだく 楠本憲吉 隠花植物
あきかぜの草よりひくく白き塔 西東三鬼
あきかぜやためてよしなきはした銭 飯田蛇笏 山廬集
あきかぜやなんにもなくてあたりまヘ 星野麥丘人
あきかぜやわが胸中のさるをがせ 加藤秋邨
あけたての戸道の減りや秋の風 三橋敏雄
あまよのあまど秋風のならしつつ 大野林火 冬青集 雨夜抄
あらくさをわけゆく膝や秋の風 山口誓子
いちはやき秋風男の眉めだつ 野澤節子 未明音
いつしかに桑の葉黒し秋の風 正岡子規 秋風
いつよりか秋風ごろを病むならひ 能村登四郎
いづこかへ運ばれてゐて秋の風 平井照敏
いづこより鳴る秋風や経ケ原 鷲谷七菜子 天鼓
いにしへの姑蘇城の名の秋の風 加藤秋邨
いぼむしり身をさかしまに秋の風 山口青邨
いまは亡きひとぞうたへる秋風に 日野草城
うしろから秋風来たり草の中 渡邊水巴 白日
うしろより汽罐車煽つ秋の風 山口誓子
うしろ向けば我にも吹くや秋の風 正岡子規 秋風
えつ見ねば秋風ばかり筑後川 加藤秋邨
えびがにの上にえびがに秋の風 伊藤白潮
おだやかに暮れゆく比叡秋の風 日野草城
おもちやかぼちや机の上に秋の風 山口青邨
お日樣を蟲が喰ひけり秋の風 正岡子規 秋風
お母さん見えますか句碑秋風裡 楠本憲吉 方壺集
かかるもの洗ひて干して秋風に 波多野爽波 鋪道の花
かかる記憶秋風の音おこるとき 加藤秋邨
かがまりて聴く秋風の高さかな 大野林火 早桃 太白集
かく吹くを須磨の秋風とぞ思ふ 後藤比奈夫
かの岸をくらめあからめ秋の風 佐藤鬼房
からまつの音の秋風荘包む 稲畑汀子
かわかわと鳴るは朴の葉秋の風 山口青邨
きび畑を光らするもの秋の風(沖縄二句) 細見綾子
きりもなく独活群れにけり秋の風 石田波郷
くごの木もおがたまの木も秋の風 高野素十
くさびらを煮炊する背や秋の風 飴山實 花浴び
くさめして黒板ぬらす秋の風 能村登四郎
くびきられたる人と秋の風に吹かれ 日野草城
くゝりたる桑の裾吹く秋の風 細見綾子 桃は八重
けさ秋風焦土の民らただ急ぐ 石田波郷
ごうごうと秋風吹いて吾迎ふ高野素十
ささめ落つ滝秋風の匂ひなし 鷲谷七菜子 銃身
さつきまで人のゐたりし秋の風 岸田稚魚 紅葉山
さつぱりと秋風のネクタイでもしよう 平井照敏
さらばよ君明日はいづこの秋の風 正岡子規 秋風
さるをがせ秋風の穂のゆき違ひ 岸田稚魚 筍流し
さる程に秋とはなりぬ風の音 正岡子規 秋風
した二階秋風にひとつ障子明く 能村登四郎
しらかみのまとひて野糞秋の風 平畑静塔
しんからの秋風と知る余呉過ぎて 能村登四郎
すがれゆくもの秋風に吹かれ立つ 稲畑汀子
すつこめる龜の首にも秋の風 正岡子規 秋風
すでに秋風や尿を吹き曲げて 伊丹三樹彦
せまり吹くや音頭が瀬戸の秋の風 正岡子規 秋風
そのひとや他郷に秋の風詠まむ 山口誓子
そのままが佳し秋風にふくらむ衣 桂信子 花影
そよそよと入日の面を秋の風 正岡子規 秋風
そよそよと秋風吹きぬ單衣 正岡子規 秋風
ただ秋風悔いも嘆きも救ひなし 福田蓼汀 秋風挽歌
たち入りてこの確かさの秋の風 斎藤玄 雁道
ちら~と眼に金神や秋の風 川端茅舎
つくづくと肥前名護屋や秋の風 石塚友二 玉縄抄
つばくろの子にはじめての秋の風 廣瀬直人 帰路
つまさきに見る母が居や秋の風 永田耕衣
ていれぎの下葉淺黄に秋の風 正岡子規 秋風
てのひらの厚みを渡る秋の風 佐藤鬼房
でで虫が桑で吹かるゝ秋の風 細見綾子 桃は八重
とどこほる秋風鞍を吊りつらね 石田勝彦 秋興
とどまるも行くも秋風昼休 中村汀女
とにかくに一人は失せぬ秋の風 正岡子規 秋風
ともし火を見れば吹きけり秋の風 正岡子規 秋風
どこからか蟻あきかぜを消しにくる 佐藤鬼房
どこからも川現はるる秋の風 廣瀬直人
どこに臍ある秋風と思ひをり 岡井省二 夏炉
どちらが前かあきかぜの浮御堂 能村登四郎
なかんづく秋風の瀬の鮎返し 能村登四郎
なきがらや秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏 山廬集
なにをきく眼じりの耳や秋の風 飯田蛇笏 山廬集
なまなまと白紙の遺髪秋の風 飯田蛇笏 雪峡
ならんたる鐘や木魚や秋の風 正岡子規 秋風
なんばんに酒のうまさよ秋の風 飯田蛇笏 山廬集
にひらぎの目のまだ生きて秋風に 右城暮石 句集外 昭和十一年
のら犬の背の毛の秋風に立つさへ 尾崎放哉 須磨寺時代
はや一つ命へらしぬ秋の風 正岡子規 秋風
はや秋日はや秋風の遮れず 後藤夜半 底紅
はるかなる人語のあとの秋の風 相馬遷子 山国
ひけ目なし肩に秋風もろ手に荷 鈴木真砂女 夕螢
ひさかたの病衣をぬぐや秋の風 小林康治 四季貧窮
ひた眠る瞼は生きて秋の風 斎藤玄 雁道
ひとしくも秋風広島を通りすぐ 平畑静塔
ひとびとの上の秋風骨しづか 飯田龍太
ひとりゐてひとり分だけ秋の風 能村登四郎
ひとりゐて秋風の十重二十重かな 後藤比奈夫
ひとり膝を抱けば秋風また秋風 山口誓子
ひと通るだけの小径を秋の風 飯田龍太
ひもじきとき鉄の匂ひの秋の風 山口誓子
ひるも夜も秋風吹いて壇ノ浦 亭午 星野麥丘人
ひるを臥て展墓のゆめや秋の風 飯田蛇笏 山廬集
ふた親のある身秋風ともに流れ 三橋鷹女
ふと思ふ深夜秋風に逢ひし顔を 加藤秋邨
ふりかへる秋風さやぎ已にとほし 中村草田男
ふるさとへ続くこの道秋の風 橋閒石
へうへうと秋風の裏揚羽蝶 山口誓子
べろ出して秋風の渋かりしこと 伊藤白潮
ほし店の鬼灯吹くや秋の風 正岡子規 秋風
ほのぼのと寝息あきかぜよりかなし 安住敦
まつろはぬものの非運や秋の風 佐藤鬼房
まどろみて秋風そしてまどろめる 能村登四郎
まぶしめばもの遠ざかる秋の風 鷲谷七菜子 游影
みほとけに秋かぜ堂をめぐり吹く 伊丹三樹彦
みほとけの六臂自在にして秋かぜ 伊丹三樹彦
みまかりしとき爽籟のたしかなり 鷲谷七菜子 一盞
もつれしは天女の如し秋の風 永田耕衣
もの云はず身を秋風につつまるる 山口誓子
もの問へど秋風われにつきまとふ 三橋鷹女
もの読んで相好かはる秋の風 加藤秋邨
もろこしの裳に秋風の真狩村 角川源義
やぶ入もせぬ迄老いぬ秋の風 正岡子規 秋風
ゆくりなく薩藩戦士の墓秋の風 山口青邨
ゆめみたる三十余年秋の風 飯田蛇笏 雪峡
ゆりかごに包(パオ)の裾より秋の風 松崎鉄之介
ゆりけすや下手のうたひを秋の風 正岡子規 秋風
よきしらせとは秋風の中に来る 稲畑汀子
よるべなく水皺ただよふ秋風湖 能村登四郎
わがたよる声受話器より秋の風 鷲谷七菜子 黄炎
わが助手も征けりペン捨て秋風裡 山口青邨
わが墓に来て立つは誰秋の風 野見山朱鳥 天馬
わが恋や秋風渡る中に在り 鈴木真砂女 夏帯
わが胸ゆ出でし紅血秋風に 日野草城
わが馬車ゆ秋風生るるゆふべかな 大野林火 冬青集 雨夜抄
わきばさむ麺麭秋風にふとにほふ 日野草城
われにのみ湖の秋風かぎりなし 富安風生
われも亦色なきをとこ秋の風 林翔
われを置き夫は秋風とともに逝けり 桂信子 月光抄
われを見る机上の筆や秋の風 飯田蛇笏 山廬集
われ佇ちて古墳の松や秋の風 飯田蛇笏 山廬集
をのこ山紫にして秋の風 山口青邨
アメジスト群晶峨々と秋の風 山口青邨
イタリヤの蚕飼ふ木の秋の風 高野素十
カストムの秋風清き艇の人 中村汀女
ガイドの訃聞く山は秋風ならん 福田蓼汀 秋風挽歌
ゲージ飼鶏舎(とや)をとりまく秋の風 佐藤鬼房
サルビアのほとりは殊に秋の風 加藤秋邨
ネオン街秋風袖をひるがへす 山口誓子
ビルの窓吾れ秋風と遊びをり 草間時彦 中年
ビル出でて秋風に深き呼吸し行く 篠原梵 年々去来の花 皿
プラハの街に戦車聳ゆる秋の風 相馬遷子 雪嶺
ホープの箱つぶれ石の上秋の風 山口青邨
ポプラの葉すべてさざめく秋の風 山口青邨
ラヂオつと消され秋風残りけり 星野立子
一ツ家のともしめくりて秋の風 正岡子規 秋風
一人食ふ夕飯や秋の風をかむ 細見綾子 桃は八重
一億の一兆のその秋風が見ゆる 岸田稚魚 紅葉山
一塊の金鉱飾る秋の風 山口青邨
一木の齢を算ふ秋風裡 後藤比奈夫
一本の老松現の秋の風 山口青邨
一枚の絵馬あきかぜのゆくへかな 松村蒼石 雪
一椀のけつねうどんや秋の風 星野麥丘人
一水をうちひろげたる秋の風 石田勝彦 秋興
一渓の爛れ甘つ噴く秋の風 水原秋櫻子 蓬壺
一皿のランチを食つて秋風に 山口青邨
一盞のいろに出にけり秋の風 森澄雄
一筋の秋風なりし蚊遣香 渡邊水巴 白日
七面鳥千羽はばたき秋の風 山口青邨
三つ石といふ秋風の鳴るところ 大野林火 月魄集 昭和五十六年
三人のひと切株に秋の風 山口青邨
三十の阪見あぐれば秋の風 正岡子規 秋風
三十六坊一坊殘る秋の風 正岡子規 秋風
三猿の風動かしむ秋の杉 原裕 青垣
下北は秋風過ぎる山ばかり 金子兜太
両刀を抜けば竹なり秋の風 内藤鳴雪
中空に秋の風吹く尾上哉 正岡子規 秋風
中空に秋の風吹く峠かな 正岡子規 秋風
丸の内三時の陰り秋の風 中村汀女
乗船の身に秋風の蹤ききたる 右城暮石 句集外 昭和三十五年
九十九里の磯長く秋の風渡る 村山故郷
九十九里浜の砂丘の秋風や 村山故郷
乞食に似て面白し秋の風 西島麦南 人音
乱山とならむとすなる秋の風 斎藤玄 狩眼
乳ぜり子に小家秋風堰く術なし 岸田稚魚 負け犬
亀、首をのべてあはれや秋の風 鈴木真砂女
二上に秋風吹て青田かな 右城暮石 句集外 昭和二年
二段三段秋風の瀧落ちる 廣瀬直人
五年目に國へ歸れば秋の風 正岡子規 秋風
亡き母の草履いちにち秋の風 飯田龍太
人ごとと思へぬ話秋の風 星野立子
人にあへばなつかしきかな秋の風 山口青邨
人の国の牛馬淋しや秋の風 飯田蛇笏 霊芝
人の死に心動かず秋風に 相馬遷子 山河
人の眼に涸れぬなみだや秋の風 西島麦南 人音
人の訃やネクタイ替へて秋風に 山口青邨
人は作る秋風の句をみなさびし 山口青邨
人も居らずほこりも立たず秋の風 正岡子規 秋風
人体を乗せむとすなり秋の風 永田耕衣
人問ハゞマダ生キテ居ル秋ノ風 正岡子規 秋風
人寐ねて秋の初風吹出しぬ 正岡子規 秋風
人思ふ簾を吹くは秋の風 山口青邨
人来しが如くざわつく秋の風 右城暮石 句集外 昭和十四年
人毎に吹かず吹き吹け秋の風 斎藤玄 雁道
人波の市電をえらみ秋の風 中村汀女
人無言あきかぜに時計鳴りにけり 大野林火 早桃 海風抄
人遠く去りゆきしまま秋の風 山口青邨
人間の屑に吹きけり秋の風 正岡子規 秋風
人院車へ正坐犬猫秋の風 西東三鬼
仁王の目山中に生き秋の風 鷲谷七菜子 黄炎
今日も亦曠野の夕焼秋の風 相馬遷子 山国
仕置場や地藏の胴の秋の風 正岡子規 秋風
仰がるゝ鳶の破れ羽や秋の風 飯田蛇笏 霊芝
仰臥こそ終の形の秋の風 野見山朱鳥 愁絶
伊吹嶺のあきかぜが聴きはじめかな 能村登四郎
体操教師に憎まるゝ子の秋風詩 能村登四郎
何がここにこの孤児を置く秋の風 加藤秋邨
何といふ發句つくろふぞ秋の風 正岡子規 秋風
何とせん母痩せたまふ秋の風 正岡子規 秋風
何ゆゑにひらく扇ぞ秋風裡 川端茅舎
何吹くとなく立ち初めし秋の風 右城暮石 句集外 昭和六十二年
來て見ればこゝにも吹くや秋の風 正岡子規 秋風
信濃愉し木の根つ子から秋風湧き 草間時彦
俳諧に生きて男の子や秋の風 日野草城
俳諧の毒の只中なる秋風 石塚友二 光塵
傷兵に秋風の道駅より出づ 加藤秋邨
傾城に問へども知らず秋の風 正岡子規 秋風
僧院や秋風呂たててこみあへる 飯田蛇笏 山廬集
兀山を越えて吹きけり秋の風 正岡子規 秋風
光堂まで秋風に追ひ追はれ 能村登四郎
入港船陸の秋風吹き集まる 右城暮石 句集外 昭和三十一年
八ケ岳よりの秋風と聴きにけり 能村登四郎
公園の秋風のいまさかりかな 草間時彦
六里ヶ原秋風渡るとき昏し 村山故郷
冗談に鼻孔や在らん秋の風 永田耕衣
出歩くや爽籟に病む眼入れ 佐藤鬼房
刑吏らに朝秋風の青山河 飯田龍太
刑窓と大路と距て秋の風 飯田龍太
前山をゆり動かして秋の風 上野泰
割竹をうちつけし檻秋風に(伊勢志摩・大王崎) 細見綾子
割竹を打ちつけし檻秋風に 細見綾子 存問
北浜は沸けど橋上秋の風 阿波野青畝
医師とは唇歯の仲や秋の風 石塚友二 玉縄以後
千枚の舌めらめらと秋の風 橋閒石 微光
午前の秋風山荘ぬけて草の絮 古沢太穂 古沢太穂句集
午前や爽籟放つ今日の雲 石塚友二 光塵
博奕や寺のうしろに秋風に 山口青邨
印南野に初見の鳶や秋の風 永田耕衣
原宿の秋風に売る砂絵かな 飯島晴子
厠より日鼻を晒す秋の風 小林康治 四季貧窮
又しても秋風太く降つて居り 星野立子
又一つ命へらしぬ秋の風 正岡子規 秋風
友が呼ぶ殺到し来る秋風裡 川端茅舎
友に死なれ宗匠じみて秋風に 中村草田男
友の子の少年秋風に声ひびかす(丹波にて) 細見綾子
古井戸の名はわすられて秋の風 正岡子規 秋風
古里や小寺もありて秋の風 正岡子規 秋風
古鍋に豚の油や秋の風 正岡子規 秋風
句を見ねば君の遠さよ秋の風 山口誓子
句を選みゐる秋風のうしろ髪 飯田龍太
句碑の字を秋風いとほしんでゐし 後藤比奈夫
句碑建つや爽籟つつむ大き寺 松崎鉄之介
右京左京中は畑なり秋の風 正岡子規 秋風
吊へばわれに吹きけり秋の風 正岡子規 秋風
名所に秋風吹きぬ歌よまん 正岡子規 秋風
名石はわれ踏んで立つ秋の風 山口青邨
君知るや秋風に糞すら細し 加藤秋邨
吹かるるは老いゆく人や秋の風 岸田稚魚 紅葉山
吹きおこる秋風よりも高くゐき 加藤秋邨
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 石田波郷
吹きぬける秋風の吹きぬけるままに 種田山頭火 草木塔
吾が病長びく恐れ秋の風 高浜年尾
吾を追ふは秋の風にはあらざりき 相馬遷子 山河
吾子が香の湯の香かすめぬ秋風裡 石川桂郎 含羞
呆として秋風に乗る思かな 林翔 和紙
品川は海をひかへて秋の風 正岡子規 秋風
哭く者に拳ありけり秋の風 岡本眸
唐詩にていふ秋風と異れり 相生垣瓜人 微茫集
喪の家として秋風も裏おもて 能村登四郎
嘆き堪へまた秋風の山に来し 福田蓼汀 秋風挽歌
噴煙につのる秋風のみの音 野見山朱鳥 幻日
四方を吹く秋風狐舎の戸に吹けり 水原秋櫻子 残鐘
土偶童顔眦上げて秋の風 山口青邨
地に草に秋風の吹く影法師 飯田蛇笏 山響集
地より湧くごとき秋風無伴奏 野見山朱鳥 愁絶
地獄這ひ出て秋風の火口湖に 能村登四郎
地藏古りて錫杖折れぬ秋の風 正岡子規 秋風
坑出でて栄光のごと秋風浴ぶ 草間時彦 中年
垂れ毛虫みな木にもどり秋の風 臼田亜浪 旅人 抄
垂れ毛虫皆木にもどり秋の風 臼田亜浪 定本亜浪句集
城下 秋かぜ 兵馬の匂いを嗅いだな 昔 伊丹三樹彦
塩効いて秋風冷(さま)す握り飯 秋元不死男
墓原の提灯白し秋の風 正岡子規 秋風
墓地あたらしきゆゑ秋風のあたらしく 森澄雄
墨の黴拭ひぬ秋の風とかな 石川桂郎 四温
壁を負ふ後髪をば秋の風 中村草田男
壁越しに病問ひあふ秋の風 加藤秋邨
売るものゝそこばくは有ち秋の風 石塚友二 方寸虚実
夕富士をみつむる顔や秋の風 石田波郷
夕日の彩さらふ秋風会散ず 大野林火 雪華 昭和三十六年
夕顔ノ太リ過ギタリ秋ノ風 正岡子規 秋風
夜の秋風川遡りきて酒くむも 星野麥丘人
夜は想はず秋風の山上湖 飯田龍太
夢殿に来たり秋風檐にあふれ 村山故郷
大いなる峰に来て秋風に立つ 村山故郷
大き貝棲む荒磯や秋の風 山口青邨
大佛の大きさ知れず秋の風 正岡子規 秋風
大佛の尻より吹きぬ秋の風 正岡子規 秋風
大佛の腹をのぞけば秋の風 正岡子規 秋風
大佛の螺髪がかげる秋の風 佐藤鬼房
大利根の渡頭秋風老妻と 山口青邨
大杉のとほき木末や秋の風 日野草城
大秋と白林を弟子や秋の風 飯田蛇笏 山廬集
大陸にわが書を贈る秋の風 飯田蛇笏 白嶽
天狗泣き天狗笑ふや秋の風 正岡子規 秋風
天蓋の下につつしむ秋の風 山口青邨
天蓋の下に新発意秋の風 山口青邨
太幹のかげより起る秋の風 富安風生
奈良阪や石切る家の秋の風 正岡子規 秋風
奥の秋の風に吹かれしも昔なり 正岡子規 秋風
女満別西女満別秋の風 高野素十
妹泣きそ天下の画なり秋の風 渡邊水巴 白日
妻病めり秋風門をひらく音 水原秋櫻子 帰心
嬬恋の起き伏し辺り秋の風 岸田稚魚 紅葉山
嬰児の声秋風の音かはる間に 石田波郷
子と作せば秋風とほる積木の門 伊丹三樹彦
子のたまをむかへて山河秋の風 飯田蛇笏 雪峡
子を曳けば朝秋風は顔に充つ 飯田龍太
子爪このごろ親指にのみ秋の風 臼田亜浪 定本亜浪句集
子等のこゑめざめて聞かず秋の風 加藤秋邨
学問の稚子のすゝみや秋の風 河東碧梧桐
家ふかくゐて秋風の始終知る 能村登四郎
富士とても瘤山おほし秋風裡 角川源義
富士近くなりぬ蕭々たる秋風 村山故郷
寝かへれば秋風の音吹きかはる 石田波郷
小公園秋風めぐり母子の座 藤田湘子 途上
小沼(ボントウ)のいたるところに秋の風 高野素十
小浅間をつゝむ煙や秋の風 高野素十
小面を照らせ曇らせ秋の風 飴山實 句集外
尻たてて湯の橋渡る秋風裡 角川源義
尻屋人秋風に赤眼しばたたく 能村登四郎
尼さまに吹いてさすがに秋の風 飯田龍太
居睡りの膚しみじみす秋の風 右城暮石 句集外 昭和十五年
屍吹きし秋風と思ふ人の中 小林康治 玄霜
山々の藍おとなしや秋の風 日野草城
山々は追ひつ追はれつ秋の風 飯田龍太
山々を出でて漂ふ秋の風 飯田龍太
山の灯は泪のごとし秋風に 岡本眸
山下る身を秋風に晒されて 相馬遷子 雪嶺
山撓宝珠銀の蕊吐き秋風に 木村蕪城 一位
山本の灯ゆるゝや秋のかぜ 正岡子規 秋風
山畑の半分すがれ秋の風 岸田稚魚
山畑や茄子笑み割るゝ秋の風 村上鬼城
山裾の桑畑にまづ秋の風(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
山見ゆる金剛力の秋の風 岡井省二 五劫集
山里に大鳥飛ぶや秋の風 正岡子規 秋風
山陰や寺吹き暮るゝ秋の風 正岡子規 秋風
山頂の岩盤に座し秋の風 松崎鉄之介
岩に岩重ねて白し秋の風 山口青邨
岩をかむ人の白歯や秋の風 飯田蛇笏 山廬集
岩を刳り生洲たたへたり秋風に 岩礁
島に病むごとし秋風四方に吹き 大野林火 白幡南町 昭和三十年
島より暮れ異端の肩が秋風溜め 小林康治 玄霜
島一巡して秋風の句を一つ 安住敦
崖うつて秋風かへす音なりき 加藤秋邨
嶋々のみたまを夢に秋の風 飯田蛇笏 心像
嶺離る雲の真白き秋風裡 廣瀬直人 帰路
嶽の草大いなり秋の風ひびく 村山故郷
川は流れる秋風と別れても 後藤比奈夫
川禰宜の巣や秋風の淵の上 水原秋櫻子 重陽
已が庵に火かけて見むや秋の風 原石鼎 花影
帛紗わが手擦れの色に秋の風 鷲谷七菜子 黄炎
師ゐますごとき秋風砂丘ゆく 川端茅舎
師を埋むあらがねの土塊秋風裡 角川源義
帰天てふ文字あきかぜの寝墓にて 鷲谷七菜子 天鼓
平坦の地を行き慣れて秋の風 山口誓子
年とへばメノコは六つ秋の風 星野立子
年寄の日の秋風のつめたかり 後藤比奈夫
幹太し秋風はるかなるうれに 橋閒石 雪
幼な名を呼びケルン積む秋風裡 福田蓼汀 秋風挽歌
幾山河越え秋風の青母郷 角川源義
幾度聞く秋風と思ひ真新し 能村登四郎
座右の書に麦の秋風かよひけり 飯田蛇笏 春蘭
庭十歩秋風吹かぬ隈もなし 正岡子規 秋風
廊わたる沙弥大股に秋の風 山口青邨
廊拭きし後秋風のかよふまま 能村登四郎
弄ぶマチの火秋風の物かげに 大野林火 早桃 太白集
引き殘す松葉牡丹や秋の風 正岡子規 秋風
引き裂いた雲のあとなり秋の風 正岡子規 秋風
引く影もなく秋風へ歩み出づ 橋閒石 朱明
弘法筆砂丘にひろふ秋風裡 角川源義
弥陀の前秋風の軍鶏首を立つ 加藤秋邨
強情(じょっぱり)に日の珠拾ふ秋風裡 角川源義
征くに洩れ征くに洩れたる身に秋かぜ 伊丹三樹彦
御墓にこもるほかなし秋の風 星野麥丘人
思ひ出の坂秋風を通しけり 鈴木真砂女 紫木蓮
悲します一語秋風の傍観者 福田蓼汀 秋風挽歌
悲報ばかり秋風よるべなかりけり 福田蓼汀 秋風挽歌
悲母の一燈秋風に灯りつづけけり 能村登四郎
悼まれて悼みて秋の風の中 能村登四郎
想ひ出あり秋かぜ壁につきあたる 安住敦
愛猫を抱く秋風うしろまへ 三橋鷹女
我を恋人といふ人淋し秋の風 河東碧梧桐
我死なで君生きもせで秋の風 正岡子規 秋風
我死なで汝生きもせで秋の風 正岡子規 秋風
戸障子のゆるびを覚まし秋の風 鷲谷七菜子 花寂び
手は常の白さ星出て秋の風 飯田龍太
手を置けば子の髪厚し秋の風 石田波郷
担走車去る秋風の速さにて 能村登四郎
括られし蟹秋風の底にゐる 百合山羽公 寒雁
持ちかへて秋風の荷の檜木笠 加藤秋邨
捨鐘の余韻秋風おこりけり 福田蓼汀 秋風挽歌
掛けるなら秋風ごろか河童の絵 能村登四郎
掴むものなければ秋の風掴む 岸田稚魚 紅葉山
揚げ泥も揺るる秋風衝つところ 中村草田男
摘みて噛むクレソン辛し秋の風 飯島晴子
摩崖佛彫る秋風の昔かな 平畑静塔
撫し子のまた細りけり秋の風 正岡子規 秋風
撫で切りの秋風を我が女体とす 永田耕衣
支那ランプともし秋かぜをききたりや 安住敦
教堂の秋風に溺れ背教徒 小林康治 玄霜
散りやすきものから吹くや秋の風 正岡子規 秋風
数師は負ひ生徒は対ふ秋の風 中村草田男
数知れぬ故宮の門の 秋の風 伊丹三樹彦
斎をうく合掌唱偈秋の風 水原秋櫻子 玄魚
料理屋の白川侯の秋の風 正岡子規 秋風
断層に秋風がしむ別れかな(十月下旬、沢木欣一氏出征のため寒雷送別会、水戸大洗に行く) 細見綾子
旅の旅その又旅の秋の風 正岡子規 秋風
旅の旅又その旅の秋の風 正岡子規 秋風
旅の果葎をしぼる秋の風 小林康治 四季貧窮
旅の荷の筆は軽ろしや秋風立つ 小林康治 玄霜
旅人をひとり渡しぬ秋の風 山口青邨
旅客機閉す秋風のアラブ服が最後 飯島晴子
日々同じ秋風に身を横たへて 相馬遷子 山河
日当れど秋風は山高き吹く 右城暮石 句集外 昭和十五年
旭に向いて空に棹さす秋の風 正岡子規 秋風
昃れば秋風の吹きわたりけり 清崎敏郎
昏昏として長昼寝秋風裡 川端茅舎
星明く杉の秋風更けにけり 日野草城
昨日より濃き秋風と思ひけり 草間時彦 櫻山
晝の灯や本堂暗く秋の風 正岡子規 秋風
普化僧の修法の尺八秋風裡 飯田蛇笏 雪峡
晴れきつて秋風荒るゝ朝日哉 正岡子規 秋風
曝れ貝に湖のささめく秋風裡 鷲谷七菜子 銃身




書き鈍れば天井秋の風棲むや 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
替老いて越ゆあきかぜの老の坂 能村登四郎
最上川秋風簗に吹きつどふ 水原秋櫻子 玄魚
月を見る背中に吹くや秋の風 正岡子規 秋風
月負ふてわが身わが家に秋の風 飯田龍太
朝湯出て空を仰ぎぬ秋の風 日野草城
木にもどる仏に木理秋の風 平井照敏
木曾の雪飛騨へ嶺越す秋の風 水原秋櫻子 晩華
木枕を耳しひが売る秋の風 伊藤白潮
木道の秋風人を葭を吹く 林翔
木隠に一寺武田菱秋の風 山口青邨
本堂に上る土足や秋の風 尾崎放哉 大学時代
朴の葉のブリキの如く秋風に 山口青邨
束の間の爽籟幸はこの程度 佐藤鬼房
東京に麦飯うまし秋の風石田波郷
松明に秋風起る洞の闇 正岡子規 秋風
松江秋風の鱸なり蕪村大皿にあり 荻原井泉水
松風の秋風のこの吾に吹く 山口青邨
枕頭に柚子置けば秋の風到る 日野草城
林中のわきてひとつ家秋の風 飯田龍太
果知らずの記のあとを来ぬ秋の風 河東碧梧桐
枝さきに西日かかりて秋の風 臼田亜浪 定本亜浪句集
架橋工一万といふ秋風裡 中村汀女
染め壺の辺の蛇皮線に秋の風(琉球絣織場) 細見綾子
染物のはなだになりぬ秋の風 正岡子規 秋風
柳の木又柳の木秋の風 高野素十
栂指を親しみ見るや秋風に 山口誓子
栓取れば水筒に鳴る秋の風 相馬遷子 山国
栗飯と粢(しとぎ)綺羅なす秋の風 角川源義
栴檀の実の三ツ叉や秋の風 河東碧梧桐
根のみだれてある間引菜に秋の風 右城暮石 句集外 昭和六年
格子よりうすき来書や秋の風 鷲谷七菜子 黄炎
桃いろ多き明治の駄菓子秋風に 古沢太穂 火雲
桃色の雲より落とす秋の風 富安風生
桐や棕櫚や迫りし庭の秋の風 正岡子規 秋風
桟橋は湖の触覚秋風に 富安風生
梨食うて顔吹き分くる秋の風 森澄雄
棧や下をのぞけば秋の風 正岡子規 秋風
椎の樹や力を入れる秋の風 正岡子規 秋風
椎山の椎の木にあり秋の風 高野素十
楼の古き欄や秋の風 日野草城
楼の秋風騒夜々に星近む 飯田蛇笏 椿花集
榛の木に子鴉むれて秋の風 飯田蛇笏 霊芝
槍のほに咎人もなし秋の風 飯田蛇笏 霊芝
樟太し秋風の吹き通るとき 飯田龍太
樹々を抜け来し秋風と椅子に会ふ 野見山朱鳥 愁絶
樹の穴へあきかぜの蟻出入りす 大野林火 早桃 太白集
橋を行く犬の真顔や秋の風 村山故郷
機銃音きかねば一夜秋の風 加藤秋邨
機音去り秋風思ひ出のごとし 加藤秋邨
檜山松山秋風こぞる身のめぐり 角川源義
櫂入れて沼はつぶやく秋の風 木村蕪城 寒泉
櫛つくる木屑匂へり秋の風 草間時彦 中年
歌は古し詩で白河の秋の風 正岡子規 秋風
正面の校舎冷酷秋の風 廣瀬直人
此頃の蕗のにがさよ秋の風 正岡子規 秋風
此頃は蓴菜かたし秋の風 正岡子規 秋風
此頃や河豚小さき秋の風 正岡子規 秋風
歩をゆるめつゝ秋風の中にあり 清崎敏郎
死に魚に秋風くらき眼せり 原裕 青垣
死の淵の明るさ暗さ秋の風 佐藤鬼房
死屍来ると禿鷹啼くか秋の風 角川源義
死骸や秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏 霊芝
母を訪ふ足音ながらに秋の風 永田耕衣
比叡に来て比叡に秋風吹く日かな 村山故郷
気がつけば秋風に順ひゐたりけり 能村登四郎
水かけて仏あらたや秋風裡 角川源義
水の音してそれよりは秋の風 岸田稚魚
水をまたぎて秋風のこころかな 鷲谷七菜子 天鼓
水を捉へて秋風の画家耳朶赤し 佐藤鬼房
水牛の秋風に曳く揚水車 加藤秋邨
水草の花まだ白し秋の風 正岡子規 秋風
水馬止るときの秋の風 高野素十
水馬走りしときの秋の風 高野素十
汗しみつむる母の鬢より秋風湧き 小林康治 玄霜
汗臭きシヤツに秋風四方よりす 飴山實 おりいぶ
江戸川の鯉売るといふ秋風裡 山口青邨
池のここみつめて久し秋の風 山口青邨
汽罐車の黒さ秋風暮るる中 古沢太穂 古沢太穂句集
沖に出て白帆あきかぜに穢(けがれ)失す 大野林火 雪華 昭和三十七年
沢潟の花のましろく秋の風 山口青邨
河明り秋風去ればまた募り 大野林火 冬青集 海門以後
河童松めがけて漕ぐや秋の風 山口青邨
法師蝉一途秋風一途かな 後藤比奈夫
法衣ふきまくるはまさに秋風 種田山頭火 自画像 落穂集
波白く岩捉へをり秋の風 深見けん二
泣きし後秋風の色眼にたたへ 能村登四郎
泣く母も笑ふ其子も秋の風 正岡子規 秋風
流行歌詞身に覚えなく秋の風 中村草田男
浅くかぶるベレーに秋の風そつと 林翔
海へ行かず一ト日秋風に籠りゐき 大野林火 早桃 太白集
海原やものにもつかす秋の風 正岡子規 秋風
海原や波にもつかす秋の風 正岡子規 秋風
海永劫散りし貝殻秋風に 細見綾子
海猫がおこす秋風と又ちがふ風 能村登四郎
海老かゝる綱も海老色秋の風 鈴木真砂女
海蟹の市に船寄る秋の風 水原秋櫻子 晩華
消防署秋風さへも警戒す 後藤比奈夫
淋しさやどの顔見ても秋の風 正岡子規 秋風
淋しさや嵐のあとの秋の風 正岡子規 秋風
淋代の浜秋風や虚貝 山口青邨
深山に吹かれて誰の秋風ぞ 斎藤玄 雁道
淺草や猿飼ふ店の秋の風 正岡子規 秋風
渓魚の一串炉火に秋の風 飯田蛇笏 春蘭
渓魚の一串爐火に秋の風 飯田蛇笏 心像
湍と湾織りなす漓江秋の風 松崎鉄之介
湖の上の秋風いよゝ吹く 高野素十
湖の日かげりしより秋の風 高野素十
湖の水平線や秋の風 高野素十
湖の生れし歴史秋の風 上野泰
湖の空を吹きけり秋の風 正岡子規 秋風
湖尻といふ秋風の藻屑寄せ 能村登四郎
湾の巾見えて秋風瞼にす 古沢太穂 火雲
満山の秋風鷲に吹きわかる 加藤秋邨
溺愛の顔も書もなし秋の風 秋元不死男
滝の音調を変ふる秋の風 山口青邨
漁の沖にてよごす秋の風 山口誓子
漂泊や秋風に置く一旅嚢 小林康治 玄霜
漕ぎ出でて扁舟遠し秋の風 日野草城
濃く淡く秋風過ぎぬ思ひごと 草間時彦 櫻山
瀧壺のほとりもつとも秋の風 石田勝彦 秋興以後
瀬戸二町中を秋風吹いて來る 正岡子規 秋風
火ちらちら足もとはしる秋の風 正岡子規 秋風
火なき炉の灰に秋風と書きて消す 大野林火 月魄集 昭和五十四年
火の山へ秋風さやぎのぼるらし 藤田湘子 途上
火より生れいま秋風の壺ひとつ 野見山朱鳥 愁絶
灸花消しに来てゐし秋の風 後藤比奈夫
無縁墓秋風そらし蜂を弾き 香西照雄 対話
無著天親其外の佛秋の風 正岡子規 秋風
焼け原の日も暮れてゆく秋の風 臼田亜浪 旅人 抄
焼原の日も暮れてゆく秋の風 臼田亜浪 定本亜浪句集
焼跡の匂ひに馴れて秋風裡 村山故郷
煉瓦色に煉瓦積まるる秋の風 石田波郷
熔鉱炉火の色動く秋の風 深見けん二
燈台へ秋風海の面より吹く 大野林火 早桃 太白集
燈籠の火に音たてゝ秋の風 正岡子規 燈籠
燦爛と火の山暮るる秋の風 藤田湘子 途上
燭はいま祈りの在り処秋の風 飯田龍太
父に出す句を秋風の机に置く 飯田龍太
父祖の地や喉笛さむく秋風裡 角川源義
父逝きてすぐ子を亡くす秋風裡 上村占魚
爽籟の櫟の高さ目に測る 鷲谷七菜子 一盞
爽籟や土偶どれにも臍の穴 有馬朗人 知命
爽籟や犬猛り駈く庭のうち 石橋秀野
爽籟や空にみなぎる月あかり 日野草城
爽籟や簷過ぎてゆく水の綾 桂信子 花影
爽籟や遺骨のあとに鳥の列 古舘曹人 樹下石上
爽籟や龍馬で終る土佐の旅 松崎鉄之介
牆長し秋風に鳴る壁新聞 山田みづえ 草譜
片時の木槿揺るれば秋の風 斎藤玄 雁道
片腕の位牌になりぬ秋の風 正岡子規 秋風
片雲の見よ秋風に誘はるる 相生垣瓜人 明治草抄
牛の子のたどたどしさに秋の風(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
牛蒡そぐゆく秋風に刃をむけて 能村登四郎
牛飼が好きで牛飼ふ秋の風 飯島晴子
物は皆置かれて泰し秋風裡 三橋敏雄
狐舎を見る身に秋風をまとひつゝ 相馬遷子 山国
狸死に狐留守なり秋の風 正岡子規 秋風
猫を抱き娼婦のごとく秋風に 三橋鷹女
獄窓に掬ふ秋風とて細し 秋元不死男
獅子山に秋風おこり我は立つ 加藤秋邨
珍重の扇開くや秋風裡 川端茅舎
珍重の扉開くや秋風裡 川端茅舎
珠数玉の壁に立ち添ふ秋の風 右城暮石 句集外 昭和二年
琅*かんの湖片耳に秋の風 角川源義
琵琶に撥なし秋風が掻きならす 山口青邨
生き殘る藪蚊するどし秋の風 正岡子規 秋風
田子葬る日の秋風に馬蹄音 飯田蛇笏 家郷の霧
町川ニボラ釣ル人ヤ秋ノ風 正岡子規 秋風
畑にゆく秋風の頸蚕臭去る 飯田龍太
畳寝にきく秋風を無上とす 能村登四郎
病み跼みゆく秋風は前うしろ 能村登四郎
病み馴れて妻の機嫌や秋の風 日野草城
病者の歩として秋風の五番町 能村登四郎
病起き秋風近く侍し得たり 山口誓子
痩せし身の吹かれ撓めり秋風に 相馬遷子 山河
痩せたりや二十五年の秋の風 正岡子規 秋風
発車ベル秋風に尾を曳き鳴れる 波多野爽波 鋪道の花
白地着て山の秋風一身に 後藤夜半 底紅
白川や秋の初風旅の歌 正岡子規 秋風
白樺の白は手に附く秋の風 松本たかし
白樺の葉のやはらかく秋の風 高浜年尾
白河や二度こゆる時秋の風 正岡子規 秋風
百姓が知りはじめたる秋の風 飯田龍太
盆すぎの屋並まばらや秋の風 小林康治 四季貧窮
目つむるが休息秋の風の中 星野立子
目に溢れ耳に溢るる秋の風 相生垣瓜人 負暄
目に見えて秋風はしる壁畳 飴山實 少長集
目を丸く鯉の日暮の秋の風 森澄雄
眉剃つてかんばせ広し秋の風 西島麥南 金剛纂
看護婦の衣袂にほへり秋風に 山口誓子
真青に茗荷照るなり秋の風 石田波郷
眦を獣かすめぬ秋風裡 橋閒石 朱明
眼を張りて輓馬も駆くる秋の風 山口誓子
眼を閉ぢて秋風聴くは訃のごとし 安住敦
睡りさへ遁走に似て秋の風 加藤秋邨
瞳の色の秋風を聴きゐるごとし 加藤秋邨
石が曇れば土用秋風樹の間より 臼田亜浪 定本亜浪句集
石に来て秋風の音遠くなりぬ 加藤秋邨
石の上の夏帽いざり秋の風 山口青邨
石仏の薄衣ながらに秋の風 伊丹三樹彦
石小法師子に似て佇つも秋風に 能村登四郎
石庭に精進料理秋の風 細見綾子
石橋も人も金風六時堂 岡井省二 大日
石灰穽(ドリーネ)に逝く秋の風らしきもの 佐藤鬼房
砂丘とは別の秋風海に濃し 百合山羽公 寒雁
砂丘なだれ吹き晒す山の秋風や 村山故郷
砂山を嗅ぐや秋風波の音 佐藤鬼房
砂浜を行けば秋風追ひすがる 山口誓子
砂肝をしやぶり生かさん秋の風 三橋敏雄
破船の底に秋風棲まふ北の果 能村登四郎
硝子戸の秋風通夜をふかめけり 大野林火 海門 昭和八年
碧潭にうたかたもなし秋の風 村山故郷
確にも鵯越の秋の風 後藤比奈夫
磯畑の豆の実りや秋の風 村山故郷
礎石みな踏めば秋風の音こもる 加藤秋邨
神輿踊り人踊る秋の風囃せ 村山故郷
祠の奥の芭蕉抱き取る秋風裡 角川源義
秀雄忌や秋風征爾の髪乱し 林翔
秋の田の風をどこかに忘れゐし 星野麥丘人
秋の雲太虚の風に乗りにけり 日野草城
秋の風おなじ高さに屋根つづく 橋閒石 朱明
秋の風きのふ行脚に出られたり 正岡子規 秋風
秋の風こころづたひに吹きにけり 飯田蛇笏 白嶽
秋の風すこし離るるこころにて 平井照敏
秋の風のろまのほとを吹き渡り 岸田稚魚 筍流し
秋の風ふいてゐる駝鳥大股に 富澤赤黄男
秋の風ほうほうと蓬塔に向く 加藤秋邨
秋の風むかしは虚空声ありき 加藤秋邨
秋の風もとより水の方よりす 上田五千石『琥珀』補遺
秋の風わが足跡が砂丘の道 村山故郷
秋の風われを相手に吹きにけり 正岡子規 秋風
秋の風万里見るべきてだてなし 飯田龍太
秋の風丙に家を見つけけり 阿波野青畝
秋の風人の匂ひのいづこより 桂信子 「草影」以後
秋の風再び薔薇の蕾かな 正岡子規 秋風
秋の風子規文机の文鎮に(松山二句) 細見綾子
秋の風宗谷の浪が牆の上 加藤秋邨
秋の風富士の全貌宙にあり 飯田蛇笏 椿花集
秋の風寺の門前の小さき家 村山故郷
秋の風山越すに海遠白き 上村占魚 鮎
秋の風岩吹く旅の終りなり 廣瀬直人 帰路
秋の風巌をみつめて顔痩せぬ 岸田稚魚 筍流し
秋の風帽子の角を吹きへらす 正岡子規 秋風
秋の風我がひげを吹き残を吹く 尾崎放哉 大学時代
秋の風日除の下に起りけり 富安風生
秋の風書き憂かりけむ字の歪み 加藤秋邨
秋の風枕の塵もとめあへず 飯田蛇笏 山廬集
秋の風桃わくらばに吹き起る 細見綾子 桃は八重
秋の風棗ころがるたなごころ 細見綾子
秋の風死して世を視る細眼なほ 飯田蛇笏 椿花集
秋の風母子相摶ちあそべるも 石田波郷
秋の風水の面にふれにけり 清崎敏郎
秋の風水際に立つ市民館 廣瀬直人 帰路
秋の風江戸の鬼門の透し塀 松崎鉄之介
秋の風洲にも水にもとどまらず 廣瀬直人 帰路
秋の風海旋車は燃ゆることもなし 加藤秋邨
秋の風湖を離れぬ熔岩の黒 廣瀬直人 帰路
秋の風満ちて女の中にゐたり 橋閒石 朱明
秋の風濡れしせなかに触れて去る 日野草城
秋の風牡丹の梦もなかりけり 正岡子規 秋風
秋の風獄囚は手になにもなし 飯田蛇笏 雪峡
秋の風田の面田の面の人動く 廣瀬直人 帰路
秋の風男のむら気吹かれゐる 廣瀬直人 帰路
秋の風盗賊市に立ちて見む 加藤秋邨
秋の風看護婦寮の毀たるる 星野麥丘人
秋の風石象の目の吹かれをり 加藤秋邨
秋の風硝子の中に焔澄む 橋閒石 朱明
秋の風竜舌蘭のほかに鳴る 鷲谷七菜子 黄炎
秋の風竹の幹吹く光かな 日野草城
秋の風箸おきて妻何を泣くや 安住敦
秋の風茶の木ひと叢年を経て 飯田龍太
秋の風萬の祷を汝一人に 石田波郷
秋の風貝割る音の仮借なし 草間時彦 中年
秋の風跫音うしろより来たる 加藤秋邨
秋の風身も高梁も吹き揉まる 加藤秋邨
秋の風陽を吹きはやめみゆるかな 飯田蛇笏 心像
秋の風魚すみがたく長藻ゆる 飯田蛇笏 春蘭
秋の風鶏の見るもの我に見えぬ 加藤秋邨
秋の風龍駕かゞよひ往き給ふ 飯田蛇笏 霊芝
秋日に手秋風に手を翳しつつ 後藤比奈夫
秋水秋風声あり呼べど岳応へず 福田蓼汀 秋風挽歌
秋草の童女秋風うしろ吹く 高屋窓秋
秋風、ひろうてタバコいろいろ味ふ 種田山頭火 自画像 落穂集
秋風、行きたい方へ行けるところまで 種田山頭火 草木塔
秋風あるいてもあるいても 種田山頭火 自画像 落穂集
秋風がこんなに心地よき日あり 後藤比奈夫
秋風が吹きゐたり魚骨こまやかに 山口誓子
秋風が吹き分く老の髪密に 三橋鷹女
秋風が吹くと申すぞ吹かねども 正岡子規 秋風
秋風が吹けば秋日が射せばとて 星野立子
秋風が海からばかりそれもあはれ(串本二句) 細見綾子
秋風が眼ふかくに来て吹けり 野澤節子 未明音
秋風が砂吹きよせる鉄鎖かな 細見綾子
秋風が肩越す埠頭師を訪はず 小林康治 玄霜
秋風が薄眼して舐む雑な裾 赤尾兜子 蛇
秋風が通るに嬰児片眼をあき 山口誓子
秋風といへばすでにも秋の風 岸田稚魚 紅葉山
秋風とかろさ比べて唄ひをり 能村登四郎
秋風としらずにやせる案山子哉 正岡子規 案山子
秋風となる幾たびも硯乾し 能村登四郎
秋風とジープの走り無心なれど 中村草田男
秋風とゾーリンゲンの爪切と 飯島晴子
秋風と兄悼む弟ひとりごと 福田蓼汀 秋風挽歌
秋風と我思へども南吹く 阿波野青畝
秋風と身は同温の思ひかな 林翔
秋風に 鞭を甘受の離れ羊 伊丹三樹彦
秋風にあさがほひらく紺張りて 橋本多佳子
秋風にあづけどほしの面かな 石田勝彦 百千
秋風にある噴水のたふれぐせ 中村汀女
秋風にいたみ心もなし足尾 平畑静塔
秋風にいのちが逃げてゆかんとす 野見山朱鳥 曼珠沙華
秋風にかくれ煙草の煙かな 山口誓子
秋風にさざなみさつと水前寺 鷹羽狩行
秋風にさびしくなりぬ牡丹の木 細見綾子 桃は八重
秋風にさみしむや子の独り言 能村登四郎
秋風にしづかな崖の垂れゐなり 平井照敏
秋風にしづかにペーパーナイフかな 林翔
秋風にしらめる湖と養魚場 木村蕪城 寒泉
秋風にすこしかなめの赤芽哉 正岡子規 秋風
秋風にたてる百姓目をこすり 百合山羽公 故園
秋風にたましひ乾きゐつつ咳く 鷲谷七菜子 黄炎
秋風について米売女去る 百合山羽公 故園
秋風にひらきて十指とぎすます 原裕 葦牙
秋風にふくらみ大仏殿の屋根 鷹羽狩行
秋風にふりたて行くや鹿の角 正岡子規 秋風
秋風にほとけごころの鬼念仏 能村登四郎
秋風にまともの海を怖れけり 大野林火 海門 昭和七年以前
秋風にわが手のひらをかゞやかせ 山口誓子
秋風にわが手両つを較べ見る 山口誓子
秋風にわれと見出でし己れかな 原石鼎 花影
秋風にわれは制叱迦(せいたか)童子かな 川端茅舎
秋風にライトブリユーの帆は三崎 山口青邨
秋風に一歩踏み込む羽後の国 鈴木真砂女 紫木蓮
秋風に下り立ちし道に浪ひた~(串本二句) 細見綾子
秋風に乗りて砂丘の端に立つ 岸田稚魚 筍流し
秋風に乱れて馬の接待水 大野林火 方円集 昭和五十二年
秋風に乾きて修羅の白渚 能村登四郎
秋風に乾く船底船の恥部 津田清子 礼拝
秋風に人ゐて火口歩き居り 中村汀女
秋風に佐渡透く傲然と安吾の碑 小林康治 玄霜
秋風に倒れず淋し肥柄杓 前田普羅 普羅句集
秋風に兀ても昔女かな 正岡子規 秋風
秋風に光る根株へ磯づたう 西東三鬼
秋風に兎は耳を立てどほし 石田勝彦 秋興以後
秋風に写るは怨の真赭かな 永田耕衣
秋風に出でし子砂糖舐めやまず 伊丹三樹彦
秋風に別々動く猫の耳 福田蓼汀 秋風挽歌
秋風に励めと背中押されけり 鈴木真砂女 居待月
秋風に募る句ごころ夜のほどろ 日野草城
秋風に向かつて歩みとどまらず 木村蕪城 寒泉
秋風に向けわづらふや遠目鏡 中村汀女
秋風に吹かるるといふ逃避あり 後藤比奈夫
秋風に吹かれたやうな仁王哉 正岡子規 秋風
秋風に吹かれて來たか白い鳥 正岡子規 秋風
秋風に吹かれながらや桑の道 大野林火 海門 昭和八年
秋風に吹かれ居るわれに母なし 尾崎放哉 小豆島時代
秋風に吾を誑かすもののあれや 三橋鷹女
秋風に咲く山吹や鏡立 渡邊水巴 白日
秋風に土佐の暑さの衰へず 上村占魚
秋風に坐すや六畳四畳半 阿波野青畝
秋風に売られて茶碗括らるゝ 飴山實
秋風に夕爾が点す灯なるべし 安住敦
秋風に外浜の線長く延ぶ 大野林火 早桃 太白集
秋風に大きな花の南瓜かな 村上鬼城
秋風に嬰児ひとりうらがへる 山口誓子
秋風に孤つや妻のバスタオル 波多野爽波
秋風に安房の海鵜も潜きをらむ 鈴木真砂女 夕螢
秋風に岩もたれあひ光りあふ 西東三鬼
秋風に影吹かれゐるばかりなり 草間時彦 中年
秋風に得体も知れぬこの干潟 原石鼎 花影
秋風に忘勿草の枯れにけり 村上鬼城
秋風に息こそあへげ化粧坂 石田波郷
秋風に悔は遠からずたちどまる 加藤秋邨
秋風に悲しいことはあづけ置く 後藤比奈夫
秋風に我が肺は篳篥(ひちりき)の如く 川端茅舎
秋風に我が肺は篳篥の如く 川端茅舎
秋風に扉をひらきては十字切る 林翔 和紙
秋風に拾ひし貝の名は知らず 鈴木真砂女 紫木蓮
秋風に捲けば龍頭のかすかなる 山口誓子
秋風に掛けし衣のよき容なす 桂信子 女身
秋風に撫子白き桔梗哉 正岡子規 秋風
秋風に曲げて髪結ふ肘二つ 秋元不死男
秋風に松斜めなるままが佳し 桂信子 花影
秋風に枝も葉もなし曼珠沙花 正岡子規 曼珠沙華
秋風に桑の梢もしたがへり 平畑静塔
秋風に棄てどころなき放愁かな 日野草城
秋風に櫻咲くなり法華經寺 正岡子規 秋風
秋風に歯牙なき口のひた泣ける 山口誓子
秋風に殺すと来る人もがな 原石鼎 花影
秋風に殻脱ぐ蝉のあはれかな 林翔
秋風に水漬く屍と黙祷す 福田蓼汀 秋風挽歌
秋風に油もぬけぬ鰹魚哉 正岡子規 秋風
秋風に波透きとほる千曲川 相馬遷子 山国
秋風に泣き喚き汝の誕生日 山口誓子
秋風に泪のごはず去りゆけり 富澤赤黄男
秋風に浜木綿花をつゞくなり 清崎敏郎
秋風に浮ぶやまひの家ひとつ 飯田龍太
秋風に浴衣は藍の濃かりけり 川端茅舎
秋風に海女の襦袢は飛ばんとす 前田普羅 能登蒼し
秋風に渋臭く嫌はれの町 山口誓子
秋風に漁夫新しき盥買ふ(出雲崎) 細見綾子
秋風に瀞の面のさかのぼる 篠原梵 年々去来の花 雨
秋風に火を落しある大炉かな 清崎敏郎
秋風に灯の穂かたむくゆあみかな 日野草城
秋風に煖き手の両つあり 山口誓子
秋風に牛の涎の曲りもせず 石田勝彦 百千
秋風に琴も鳴るべし八束亡し 林翔
秋風に琴弾く宮城氏といへり 山口誓子
秋風に瓣ゆるみたる薔薇かな 永田耕衣
秋風に生けるミイラが薫るなり 日野草城
秋風に生れてさすが男哉 正岡子規 秋風
秋風に當り散らすよ熊ん蜂 百合山羽公 樂土
秋風に病うしろを見せてゐる 飯田龍太
秋風に病める食事は正座して 能村登四郎
秋風に痩せ尽したる男かな 日野草城
秋風に白湯注ぎ湯気のゆくえ見る 能村登四郎
秋風に目をさましけり合歡の花 正岡子規 秋風
秋風に着てゐるは縞木綿かな 細見綾子
秋風に瞑目す子を養はむ 山口誓子
秋風に石垣高し素十庵 川端茅舎
秋風に石積む父情おろかとも 能村登四郎
秋風に砂丘に杖を突刺し立つ 川端茅舎
秋風に神馬が放つ鼻ぶるひ 鷲谷七菜子 天鼓
秋風に突き当られし散歩かな 百合山羽公 樂土以後
秋風に突き当りけり首出せば 能村登四郎
秋風に立ち号外を日々手にす 石田波郷
秋風に筝をよこたふ戦経て 橋本多佳子
秋風に累卵のもの抱へゆく 斎藤玄 雁道
秋風に細りゆく身の血を採られ 能村登四郎
秋風に纜投ぐる足を張れ 石田勝彦 百千
秋風に老いいつまでも遠目利く 能村登四郎
秋風に肉聲とほり貧しき子 三橋敏雄
秋風に肉聲徹り貧しき子 三橋敏雄
秋風に肥えて非力の一裸身 飯田龍太
秋風に肩ふるへつつ泣仏 伊丹三樹彦
秋風に腰落したる行司かな 阿波野青畝
秋風に舌を扁く児が泣けり 山口誓子
秋風に舳そろへて余呉の舟 高野素十
秋風に藍の狂気の極まりぬ 橋閒石 卯
秋風に裏を吹かれてビル扁平 橋閒石 朱明
秋風に裏返されて魚油の釜 能村登四郎
秋風に豚飼つて杭打ち込めり 原裕 葦牙
秋風に起ちあがらんとかなむぐら 岸田稚魚
秋風に辞去す帽庇をひき緊めて 山口誓子
秋風に追はれ顔なるみちおしへ 阿波野青畝
秋風に適へる松の容かな 桂信子 草樹
秋風に金襴まとひ経すこし 山口青邨
秋風に雲の日ざしの十字架垂れ 大野林火 冬雁 昭和二十二年
秋風に飛出て安き土偶の臍 野澤節子 飛泉
秋風に飯食ふ来しはただ平信 山口誓子
秋風に飯食む飯を食むは侘し 三橋鷹女
秋風に餅しげく搗く喪の農家 相馬遷子 雪嶺
秋風に髪密なるを誇りとす 山口誓子
秋風に鳴る岩のあり麻姑杣女 佐藤鬼房
秋風に鳴る耳双つ かくれんぼ 伊丹三樹彦
秋風に鳴る風鈴は道しるべ 富安風生
秋風に鹿の眼敏くなりぬるか 右城暮石 句集外 昭和十六年
秋風に黒猫とゐて食む夜食 三橋鷹女
秋風に黴びてゐたりしものを出す 右城暮石 句集外 昭和十四年
秋風に齢すこしく流されて 能村登四郎
秋風の 力の圧の 頤の髭 伊丹三樹彦
秋風の、腹立ててゐるかまきりで 種田山頭火 草木塔
秋風のあるじ家憲に囚はれて 中川一碧樓
秋風のいま椋の木の吹き騒ぐ 高野素十

以上
by 575fudemakase | 2016-11-04 07:35 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)
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俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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