菊 補遺1

菊 補遺1

「菊の賞」軽し賞状一枚にて 右城暮石 句集外 昭和四十七年
あえかなるおよびのうれの菊に冷ゆ 伊丹三樹彦
あけくれの涛声菊も乱れ伏し 福田蓼汀 山火
あはれ氣もなくて此菊あはれなり 正岡子規 菊
あまえたくて走りてをれば臙脂の菊 飯島晴子
あまたなる菊の一つに日が当る 林翔 和紙
あまりにも菊晴れて死ぬかもしれず 下村槐太 天涯
あらぬ方さす軍配の菊の武者 鷹羽狩行
ある宵の菊のおごりにひとりゐぬ 石田波郷
いかるがの一の菩薩や菊満ちて 水原秋櫻子 緑雲
いたく螫すものは何ぞや菊咲けり 水原秋櫻子 残鐘
いにしへゆかがよふ菊を国の紋 日野草城
いのちあるものみなさびし残る菊 山口青邨
いややさし巴御前てふ朱の菊 山口青邨
うしろよりさし込む夕日菊花展 深見けん二
うしろ手に消防士見る菊花展 右城暮石 散歩圏
うちの菊さけば菊さげて詣る墓がある 荻原井泉水
うちの菊にをればこの虻うちの虻 高田風人子
うつせみの翳しろたへに菊の前 赤尾兜子 稚年記
うなゐらの髪光りあそぶ菊たわゝ 山口青邨
うねりふす伏屋の菊も明治節 杉田久女
うるはしきひとのおもわと白菊と 日野草城
うるはしきひと白菊に添ひにけり 日野草城
うれしさや聞えぬ耳で菊の花 正岡子規 菊
えぞ菊に平仮名を憶ひ出さうとする 三橋鷹女
えぞ菊の紫も白し月の宿 山口青邨
おくるとて庵主灯しを菊の雨 及川貞 榧の實
かしは手を菊載が驚きし 阿波野青畝
かの大臣菊にうきみをやつしけり 日野草城
かやふきの細殿あれて菊の花 正岡子規 菊
からしあへの菊一盞の酒欲れり 角川源義
かるた切るうしろ菊の香しんと澄み 飯田龍太
かんむりに華髪を得たり菊の酒 上田五千石 天路
かゝへゆく笊の黄菊のふは~と 高野素十
きのふより後日の菊の晴れ渡り 森澄雄
きよらかな井のふか~と菊畠 日野草城
きらきらと山羊に小菊がこゑかけて 飯田龍太
くくりたるひとむらの菊白かりし 山口青邨
くつきりと菊の影ゆれ甃 飴山實 句集外
くもり日の焔もうすく菊を焚く 能村登四郎
くらがりに男が拾ふ菊の屑 岡本眸
くれといへはしたゝかくれし小菊哉 正岡子規 菊
けふの花環白菊にして夕間暮 山口青邨
けふの菊御堀の水をのまうよ 正岡子規 菊
けふを祝ぐ今は昔の菊花節 日野草城
ここにますお六櫛の祖菊たわわ 山口青邨
ここにゐて二荒の雨や残る菊 山口青邨
こころもち西の紅らむ菊の雨 上田五千石 天路
ことごとく臙脂菊なりその畝なり 岡井省二 前後
こともなげに菊咲かせたる小家哉 正岡子規 菊
このごろの菊はいつもあるものの忌日の菊 荻原井泉水
この人に充ち白菊の香に発す 加藤秋邨
この大き妊婦咎めず菊花展 鷹羽狩行
この家のとり分き冷ゆれ菊の雨 松本たかし
この年のこの日青空菊の上に 日野草城
この菊ぞみちのくの菊けふ匂ふ 山口青邨
この菊や山国ぶりに杖ついて 高田風人子
こもり居の門辺の菊も時雨さび 杉田久女
これもうし菊に晴着の黒小袖 正岡子規 菊
ごうごうと焼きつくす音兄も菊も 西東三鬼
さんさんとしづかなる日や菊合せ 村山故郷
さゝげもつ菊みそなはせ観世音 杉田久女
ざわついてゐるをはづして菊に立つ 右城暮石 句集外 昭和十年
しくるゝや隣の小松庵の菊 正岡子規 時雨
しくるゝや鶏頭黒く菊白し 正岡子規 時雨
しくれしてねぢけぬ菊の枝もなし 正岡子規 時雨
しくれつゝも菊健在也我宿は 正岡子規 時雨
しぐるると菊も籬によろぼへる 富安風生
しぐるるや花売媼菊持て来 安住敦
しぐれつつ花咲く菊に葉のにほひ 飯田龍太
したたむる残んの菊の五六行 相生垣瓜人 微茫集
しほしほとかざられにけり菊雛 飯田蛇笏 山廬集
しろ~と花びらそりぬ月の菊 杉田久女
すてた餌に鶏もとる菊畠 正岡子規 菊
すでに亡きあとゝも知らず菊だより 及川貞 榧の實
せせらぎのほとりに咲ける菊もよし 山口青邨
せわしなや桔梗に來り菊に去る 正岡子規 菊
その中狂いざく菊を菊の酒とせよ 荻原井泉水
その母の裲襠(うちかけ)似会ふ菊日和 水原秋櫻子 緑雲
そろそろと菊畑らしきいろのかず 鷲谷七菜子 天鼓
たかし快し傾く菊もよしありげ 阿波野青畝
たそがれのまぎはの客の菊を見る 阿波野青畝
たましひのしづかにうつる菊見かな 飯田蛇笏 霊芝
ちよいと茶店があつて空瓶に活けた菊 種田山頭火 草木塔
つぎつぎに風が木を出て菊日和 飯田龍太
つぎはぎのおんいたはしの残る菊 山口青邨
つくばひをうつ鶺鴒や菊日和 水原秋櫻子 磐梯
つぶやきや菊に対して面紗をぬげ 加藤秋邨
つゆよりも小さき菊の蕾み初む 川端茅舎
ともがらの長老失せぬ菊の宿 松本たかし
とりどりの菊もて死者の隙塞ぐ 津田清子 礼拝
どこもかも菊の香オリンピアドとて 石塚友二 曠日
どの駅に下りても菊の花ありぬ 右城暮石 句集外 昭和十八年
なかなかにもちこたへゐし菊日和 後藤比奈夫
なほ残す去りて二十日の霜の菊 水原秋櫻子 玄魚
なま鮭や擦生姜の匂ひ菊に似たり 渡邊水巴 富士
なむ大師の弟子となり得ず菊の門 角川源義
にごりなき心に菊を咲かしめぬ 三橋鷹女
のめよのめよ老師老友菊の酒 高野素十
はつ菊や大原女より雁の文 飯田蛇笏 山廬集
はなやかに工場の裏の菊花壇 日野草城
ひえびえと菊揺れ一機にはあらず 加藤秋邨
ひそかにわがおもふひとも菊の客 日野草城
ひとすぢの香の冷まじや残り菊 鷲谷七菜子 一盞
ひとつぶの菊のつぼみも飛騨料理 藤田湘子 神楽
ひとの子を膝下に襁褓菊に干す 及川貞 榧の實
ひろげ干す菊かんばしく南縁 杉田久女
ふるみちや伊賀の時雨に菊濡れて 水原秋櫻子 殉教
べんがら館に飾る菊水の鉾粽 村山故郷
ほとばしる雨明るけれ菊障子 中村汀女
ほのと月ほのぼのと懸崖の菊 鷹羽狩行
ほんたうは秋冥菊と書くとかや 後藤比奈夫
まいた餌に鶏もどる菊畠 正岡子規 菊
また一つ齢奢りぬ菊の秋 鷹羽狩行
まだ菊の色を明かさぬ蕾かな 稲畑汀子
まだ賞の決まらぬ菊花展めぐる 右城暮石 句集外 昭和四十八年
まだ露の深さばかりや菊籬 中村汀女
ままごとも湖を見つつよ霜の菊 草間時彦 櫻山
まらうどに礼をつくして菊白し 飯田蛇笏 雪峡
みだれ白菊乳を銜ます母若し 赤尾兜子 歳華集
みちのくのかはたれどきの菊の灯を 山口青邨
みちのくの僧たち来たり菊の月 能村登四郎
みちのくの八戸の菊いまぞ摘む 山口青邨
みちのくの菊見て帰り門の菊 山口青邨
みな持てる詩人の首よ菊畠 斎藤玄 狩眼
みほとけといちりんの菊いや澄むも 伊丹三樹彦
みほとけの白菊にほの立たせける 伊丹三樹彦
み仏のゆたかなる胸菊の花 福田蓼汀 山火
もたらせし御墓の菊冷えにけり 星野麥丘人
もづく買つて菊月の荷を重くせり 鈴木真砂女 居待月
ものつくる程の田もなし菊の花 正岡子規 菊
ものゝうれし小菊の莟鳥の聲 正岡子規 菊
ゆかしさはさしみのつまの黄菊哉 正岡子規 菊
ゆきずりの香の白菊を買ひ昏れぬ 橋閒石 朱明
ゆふべ来てわれらささぐる玉小菊 山口青邨
ゆゝしさや九輪咲いたるけふの菊 正岡子規 菊
よく売れし菊の小店を掃いてゐる 右城暮石 句集外 昭和十年
よるべなし懸崖菊の先の花 山口誓子
よろこびの好謔とばし菊に酌む 富安風生
よろこびの悲しみの菊買はれけり 石田勝彦 秋興以後
わがいのちさびしく菊は麗はしき 水原秋櫻子 新樹
わがいのち菊にむかひてしづかなる 水原秋櫻子 新樹
わが旦暮菊吸虫のありやなし 飯島晴子
わが業にいしくも咲ける黄菊かな 日野草城
わが為の菊日和とも思はるゝ 高浜年尾
わが老をわがいとほしむ菊の前 富安風生
わが詩嚢貧しけれども菊多し 山口青邨
わが門のゆふべに菊の車かな 日野草城
わらはずに恋囁くか菊の前 石川桂郎 含羞
われも身を反らす懸崖菊の前 鷹羽狩行
エゾ菊は紫にして赤にして 高野素十
カンテラや蕾少き市の菊 正岡子規 菊
キヤロンの微笑、水中の白菊塵もなし 荻原井泉水
サルビアの赤き入口菊花展 右城暮石 句集外 昭和三十三年
ストマイ幾本打ちて癒ゆるや菊の朝 角川源義
チエホフ忌白菊を挿す鉄の壺 飴山實 おりいぶ
トロ箱と菊を往来の蠅 快晴 伊丹三樹彦
ハジカレたが菊の見事さよ 種田山頭火 自画像 落穂集
ピアノ借りに少女来今日は菊抱きて 林翔 和紙
ヨーグルトに匙 白菊に蝶来る朝 伊丹三樹彦
レーダーに応ふる船や菊日和 中村汀女
一つづゝ橋持つ家の菊の花 正岡子規 菊
一つ摘み二つ摘み菊籠にみちぬ 富安風生
一ト間~白菊いけて草の宿 村上鬼城
一万円借りて返すや菊日和 星野麥丘人 2002年
一天の青さも菊の頃は過ぎ 清崎敏郎
一年の丹精こゝに菊の花 正岡子規 菊
一戸も日当らぬはなく菊日和 鷹羽狩行
一斉に哀へ初めし作り菊 上野泰
一斉に露凝る如く菊蕾む 川端茅舎
一本を活けて厠も菊日和 鷹羽狩行
一枝は荷にさしはさむ菊の花 正岡子規 菊
一病の黒白知らず菊焚火 角川源義
一痕の朝月を窓に菊を挿す 水原秋櫻子 磐梯
一眼に黒アイマスク菊の将 山口誓子
一輪の菊ありこれの室に縫ふ 三橋鷹女
一部落那須野の菊の痩せにけり 河東碧梧桐
万蕾のことごとく露菊畑 岡本眸
万蕾をゆるめず懸崖菊の矛 鷹羽狩行
丈六に 膝を正せば 菊明り 伊丹三樹彦
三たび茶を戴く菊や灯さずに 石川桂郎 含羞
三つの新聞見て喜びぬ菊の秋 山口青邨
三日月に星一つそふ菊の下 山口青邨
三菊の名ある県の一長者 河東碧梧桐
三錢と札の付いたる小菊哉 正岡子規 菊
下の魚に箸向く菊の節過ぎて 能村登四郎
下駄にのる踵小さし菊日和 鈴木真砂女
世や捨てんわれも其名を菊の水 正岡子規 菊
丘の辺に住み古る我が霜の菊 水原秋櫻子 残鐘
久に逢ふ順々よ菊白く赤く 臼田亜郎 定本亜浪句集
乗鞍はもつとも近し菊日和 山口青邨
乞食や捧ぐる菊を仰ぎ居り 高野素十
乱れざる菊を描きて乱れしむ 相生垣瓜人 微茫集
乱れじとする白菊の乱れそめにし 荻原井泉水
乱菊の二三の花の新しき 高野素十
乱菊の籬なりけり温泉のほとり 高浜年尾
乱菊の縫ひつくぐりつ四目垣 松本たかし
乱菊やわが学問のしづかなる 山口青邨
乱菊をかすめてはやき月の雨 飯田蛇笏 霊芝
乱菊を掻き天領に筋目立つ 古舘曹人 砂の音
争ひは白菊わかつ黄菊かな 河東碧梧桐
二つとははかなき数や菊の束 石田勝彦 秋興以後
二三本菊倒れ伏す草の雨 正岡子規 菊
二人のめ四百歳づゝ菊の花 正岡子規 菊
五月咲きあはれやうすき大原菊 水原秋櫻子 玄魚
五月雨の旱のと菊の手入れかな 正岡子規 五月雨
井戸端に一うね菊の赤きかな 正岡子規 菊
亡き母を友ありて讃ふ夜の菊 林翔 和紙
人人手に手に菊をことごとく白菊を 荻原井泉水
人形なき廊下の菊に憩ひけり 松本たかし
人形に仕立おろしの如き菊 後藤比奈夫
人形のならぶ小店や菊の花 正岡子規 菊
人形の咲満ちたりし黄菊かな 阿波野青畝
人形の菊に桜の咲く場面 後藤比奈夫
人形をきざむ小店や菊の花 正岡子規 菊
今年ゐて菊咲く頃の我家かな 杉田久女
今日はまた白菊ばかり干しひろげ 杉田久女
仏壇の菊冷え庭の菊日和 鷹羽狩行
仔雀や雛菊千が地を埋めて 草間時彦 中年
伊豆の海星の消えゆく菊の雨 角川源義
伶人に香をまとひたる夜の菊 飯田蛇笏 家郷の霧
佃島一丁目百歩ばかりや菊咲かせ 山口青邨
低空を古型機飛ぶ菊花展 右城暮石 上下
体育の祭典菊花節と永遠 石塚友二 方寸虚実
何もなしただしづかにも菊咲いて 山口青邨
何事もなき世なりけり菊の花 正岡子規 菊
余生棄てがたし菊焚きにけり 安住敦
佛壇の灯暗く菊の匂ひかな 正岡子規 菊
作り菊黄の大毬の名は宇宙 山口青邨
佳節より下りくだりて今日の菊 山口誓子
供華えぞ菊夕の月になほ紺に 山口青邨
保美の除夜電照菊の灯が占むる 阿波野青畝
信心の衆の早足菊若葉 上田五千石『琥珀』補遺
俳諧につぐ闘菊や西鶴忌 飯田蛇笏 霊芝
個々別々流れ鉱夫の墓に菊 平畑静塔
偲びゐむ障子白きを菊咲くを 及川貞 榧の實
働きし身のさわやかに夜の菊 中村汀女
僧の招き我を致せし菊見かな 河東碧梧桐
先生はいつも留守なり菊の花 正岡子規 菊
全開し花火大きな菊花なり 山口誓子
八十の翁なりけり菊作り 正岡子規 菊
兵の服革くさき夜の菊の市 右城暮石 句集外 昭和十二年
其中に莟の多き黄菊かな 正岡子規 菊
冒頭は菊蝶のむらがりて 飯島晴子
凍菊を折り焚くわづかなる生色 桂信子 晩春
凩や白菊痩せて庭の隅 正岡子規 凩
出勤や路地をふさげる菊車 木村蕪城 一位
刈上や小菊上げたる仏さま 高野素十
初夢や砲火の中に菊澄みし 林翔 和紙
初曾我や團十菊五左團小團 正岡子規 初芝居
初釜は裏千家山門に菊の紋 山口青邨
初霜に温泉けぶり立ちて菊黄なり 水原秋櫻子 磐梯
初霜に負けて倒れし菊の花 正岡子規 初霜
初霜や束ねよせたる菊の花 正岡子規 初霜
前栽に菊遠景に豊の稲架 後藤比奈夫
剪花にせしあと菊に蕾持つ 右城暮石 句集外 昭和七年
割れし石いつまで尖る菊日和 中村草田男
匂ひする園主が菊の蚊遣かな 河東碧梧桐
匂ひ立ちゐしはさかりを過ぎし菊 後藤比奈夫
北国の菊日和蝶よそ~し 高野素十
医王山朝日下り来て菊日和 水原秋櫻子 玄魚
十人の女の菊に梳る 高野素十
十日の菊すなはち臍をやつしけり 岡井省二 猩々
十日の菊なれどと届きみづみづし 能村登四郎
十銭屋といふ屋号もつ菊かなし 山口青邨
南山にもたれて咲くや菊の花 正岡子規 菊
南椽の敷居の浅き菊日和(福沢諭吉旧居二句) 鷹羽狩行
南無満月童子、白菊供えまいらす 荻原井泉水
南縁の焦げんばかりの菊日和 松本たかし
厖大に老眼鏡に菊の虻 阿波野青畝
厚物と言はるる菊の名は言はず 後藤比奈夫
厚物咲よきかな少年菊作 山口青邨
友染菊のかげ灯に浮きし敷布かな 杉田久女
口長き口の短き菊の如露 後藤比奈夫
古き香に白菊さける手向哉 正岡子規 菊
古き香に白菊咲いて手向かな 正岡子規 菊
古の天文台下野菊摘む 阿波野青畝
古利根も見ゆ門の菊日和かな 村山故郷
古家にあるじは知らず菊の花 正岡子規 菊
古庭に白菊白し星月夜 正岡子規 星月夜
古庭に芒散る菊の莟かな 正岡子規 菊
句会の部屋今日は菊一ぱいにして君が黒い菊の中 荻原井泉水
句屑焚くあはれは菊を焚くよりも 阿波野青畝
召しあがる菊の花びら鄙びけり 阿波野青畝
右衛門七は十八歳よ菊たむけ 山口青邨
名取川川原畑に菊残す 山口青邨
名月や菊の御紋の丸瓦 正岡子規 名月
君が代は菊の花こそ大きけれ 正岡子規 菊
君に云はん長命菊も花盛り 高野素十
君を火とすると行く菊を手に手に持つ 荻原井泉水
吟味して刃物買ひけり菊日和 鈴木真砂女 居待月
吹き上げし木の葉降りくる菊花展 右城暮石 一芸
吾が庵は菊に二尺の日南かな 内藤鳴雪
吾子と菊壁を病院のものたらしめず 篠原梵 年々去来の花 皿
吾子の他に教へ子もあり菊咲く月 能村登四郎
吾子の名のひとも秩父に菊の酒 角川源義
吾子は絵の我は祷りの菊咲いて 加藤秋邨
吾小さき勲章をさげ菊に立つ 山口青邨
味噌桶をめくつて菊の花咲きぬ 正岡子規 菊
咲きさうにしながら菊のつぼみかな 正岡子規 菊
哀れにもなくて此菊哀れ也 正岡子規 菊
商人と化すひとときや菊の卓に 楠本憲吉 隠花植物
啼いて睡つて菊になつた赤ん坊 三橋鷹女
喜寿の眉菊明りして居給はむ 石田波郷
喪の花の黄菊白菊闌けてあはれ 日野草城
喪家の菊のなか空壜の山が立つ 赤尾兜子 虚像
噴く水の田毎に白し菊日和 石川桂郎 含羞
噴水の水を灌水菊花展 右城暮石 一芸
四目垣次ぎ小柴垣菊花壇 後藤夜半 底紅
団欒や民喜びの菊の洒 河東碧梧桐
図体の肥ゆるにまかせ菊の中 斎藤玄 雁道
国原や到るところの菊日和 日野草城
園の菊葉広に雁の糞白し 河東碧梧桐
園遊会めきてひねもす菊を見て 後藤比奈夫
土砂ぶりの菊に還りて母の前 加藤秋邨
土砂積みの車輛が唸る小菊垣 佐藤鬼房
地に伏すといふほどならず残る菊 高野素十
坂の道菊咲かせたり村に入る 山口誓子
垣ごしに菊の根わけてもらひ鳬 正岡子規 摘草
垣の菊ほのぼの赤しつぼみつつ 深見けん二
城趾の菊に硯の瓦かな 正岡子規 菊
埴輪観る画廊は菊の香に満てり 西島麦南 人音
執拗な一病からみ菊まくら 能村登四郎
墓の供華白菊おほしいな殆ど 山口誓子
墓場僧来て去る菊の吹かれをり 石川桂郎 含羞
墓通ひばかり長崎菊提げて 平畑静塔
壇上、時間を待つ空間の静かなる菊白し 荻原井泉水
声高の菊見客居り大野寺 日野草城
壷をえらむもたのし好き菊をもらう 荻原井泉水
夕影のいつ濃くなりし菊畑 中村苑子
夕月や東籬の菊に靄流れ 山口青邨
多くは菊 休戦記念日の碑に 広場に 伊丹三樹彦
夜にひとの賜ひし菊をめで飽かぬ 下村槐太 天涯
夜に入れば白菊の香の虚空より 飯田龍太
夜の机菊を買ひ来ねば壺彳てり 石田波郷
夜の菊毛槍の如くうつりけり 村上鬼城
夜の菊積む書の中に家計簿も 能村登四郎
夜の菊街の繁華のそこここに 波多野爽波 鋪道の花
夜の菊遠く潮さすとどろきか 加藤秋邨
夜の雨もつてのほかの菊賜ぶよ 角川源義
夜を咳けば昼はねむりつ菊日和 水原秋櫻子 霜林
夜を照るや黄紫二枝の瓶の菊 石塚友二 方寸虚実
夜中菊をぬすまれた土の穴ほつかりとある 尾崎放哉 須磨寺時代
夜半の咳おのれは知らず菊日和 水原秋櫻子 餘生
大人すげなく子供しつこし菊の金 中村草田男
大仏に菊道の辺の仏にも 大野林火 月魄集 昭和五十六年
大会の菊覇取らんとならび立つ 阿波野青畝
大内氏菩提寺といふ菊を焚く 飴山實 句集外
大君のあれましせし日や菊の花 正岡子規 菊
大君のあれましゝ日や菊の花 正岡子規 菊
大幅に余命を削る菊の前 相馬遷子 山河
大式典(おおみのり)菊清浄と甕を埋む 三橋鷹女
大星雲すがるゝ菊にうちけぶり 渡邊水巴 白日
大胆に描きし菊を早や厭ふ 相生垣瓜人 微茫集
大菊に吾は小菊を愛すかな 正岡子規 菊
大菊の大仰なるを敬遠す 相生垣瓜人 負暄
大菊や金持めかす家構 正岡子規 菊
大菊や金持めかす門搆へ 正岡子規 菊
大菊を養ひ得たる隱士かな 正岡子規 菊
大輪のかわきおそさよ菊筵 杉田久女
大輪の白菊の辺がまづ暮れぬ 加藤秋邨
大輪の菊の首の座刎ねたしや 鈴木真砂女 卯浪
大輪の菊を咲かせて翼々と 山口青邨
大輪の菊を活くるに高さあり 稲畑汀子
大輪の菊婚の香と葬の香と 飯田龍太
大鯉は影を重ねず菊日和 鷹羽狩行
天に向け享けよと菊のよき花環 山口誓子
天皇も詠み給ひ吾も菊を詠む 山口青邨
天長節小菊結びて轅かな 村上鬼城
天高く地に菊咲けり結婚す 野見山朱鳥 曼珠沙華
夫うづむ真白き菊をちぎりたり 橋本多佳子
夫の菊虻来蝶来て猫跳んで 及川貞 夕焼
妻の描く菊の花弁の太し~ 高野素十
妻の描く菊の花弁の細し~ 高野素十
妻の眼の涙うるみの菊焚けり 草間時彦 中年
妻の袱紗子の手に生くる菊籬 能村登四郎
妻子等も寄せず咲かせし菊の花 右城暮石 句集外 昭和三十五年
嬰を抱いて豊饒の母菊に立つ 林翔
子の帰心にはかに辞せり菊の客 中村苑子
子の頃のねえやは菊や温め酒 森澄雄
子を思ふ日ねもす捨菊見えてをり 石田波郷
子を愛し菊を培ひ博奕打つ 松本たかし
子等に試験なき菊月のわれ愉し 能村登四郎
孜孜として皆いそしめる菊の虻 松本たかし
孳々として蕾のまはり菊の露 阿波野青畝
家あれば菊あり村あれば薄紅葉 正岡子規 紅葉
家妻に小菊咲きたり常(とこ)めずら 松本たかし
家妻のあはれつましき小菊咲く 松本たかし
家毎に咲いて明るし小菊むら 杉田久女
家毎に車庫家毎に菊咲かす 右城暮石 虻峠
家買ふて古菊の根を分ちけり 正岡子規 摘草
宿の菊天長節をしらせばや 正岡子規 天長節
寝かせある長き梯子や菊の花 渡邊白泉
寝たらひし耳目に菊の色香濃し 上村占魚
寝墓の辺菊にほひ遠に聖楽する 伊丹三樹彦
寧ろ花の小さかれと菊の根も分けず 正岡子規 摘草
小指より繊き莨や菊の露 日野草城
小橋かけて黄菊鷄頭なと見えぬ 正岡子規 菊
小菊いま芳紀のいろの花ざかり 飯田龍太
小菊畑つい後手になりゐたる 飯島晴子
小菊黄に桑名十里の道しるべ 角川源義
小雨して小袖に菊の香をしたむ 正岡子規 菊
尼寺の仏少く菊白し 山口青邨




屍室まで抱きゆく菊を看護婦嗅ぐ 伊丹三樹彦
山々や友なりはひの菊畑に 及川貞 榧の實
山に家をくつつけて菊咲かせてる 尾崎放哉 須磨寺時代
山に開く土蔵の小窓菊日和 福田蓼汀 山火
山下りて黄小菊に夕はつきりす 細見綾子 桃は八重
山坂に転びて菊の月たのし 岡井省二 有時
山寺は山形市内野紺菊 山田みづえ まるめろ
山桑の木高さや菊も作り捨つ 河東碧梧桐
山猫をよぶ主艶也菊の花 正岡子規 菊
峡わたる日が真上より菊に差す 山口誓子
峯垣内菊を焚く火の姿して 岡井省二 鹿野
島やぶりすすめられをり菊の酒 角川源義
嵐雪が黄菊白菊庵貧し 正岡子規 菊
嵐雪の黄菊白菊庵貧し 正岡子規 菊
嵯峨菊の夕日をへだつ写経の間 水原秋櫻子 殉教
嵯峨菊の暮光も天にのぼりけり 水原秋櫻子 殉教
嵯峨菊は天に咲く花わが死後も 佐藤鬼房
嵯峨菊も伊勢菊もやさし賜はりて 山口青邨
巌裂けて山菊をその襞に垂る 富安風生
川舟や木槿の垣根菊の背戸 正岡子規 木槿
巫女(かんなぎ)のひとりは八重歯菊日和 飯田龍太
巫女袴菊水鉾と読まれたる 後藤比奈夫
市の菊旅人も買ふ遍路も買ふ 松本たかし
市中や穢多まぎれ住む菊の花 村上鬼城
布団干し菊焚くことのひと日持つ 鈴木真砂女 夕螢
布団干せば布団に添へり残る菊 山口青邨
帯ときて坐りし部屋に菊にほふ 鷲谷七菜子 黄炎
幕張つて菊千輪の玄関かな 村上鬼城
干してある蒲団に菊の虻とまる 上野泰 佐介
年々の菊の簀古び尽しけり 後藤夜半 底紅
年々や菊に思はん思はれん 正岡子規 菊
年の瀬や岩の菩薩に菊たむく 角川源義
幼帝のまさに入水の菊衣 鷹羽狩行
庇より高くは飛ばず菊の虻 上野泰 佐介
店先に賣れざる菊の盛哉 正岡子規 菊
座敷の灯とどくほのぼの菊障子 山口青邨
庭の菊万蕾青く老耄に 山口青邨
庭の菊天長節の蕾哉 正岡子規 菊
庭荒れて名なしの菊の盛哉 正岡子規 菊
廃れたる海苔粗朶裏の菊作り 能村登四郎
弔問に菊祝賀に菊の人生、長生する 荻原井泉水
後から朝日さす菊の花壇哉 正岡子規 菊
後の菊笑ひ弥勒となりぬべし 岡井省二 大日
後列にありても高き鉢の菊 山口誓子
御園生やところところに菊の家 正岡子規 菊
御帷に触れ後段の菊揃ふ 阿波野青畝
御所の雨菊拜觀の草履哉 正岡子規 菊
御机といふ山里や菊日和 阿波野青畝
御空より発止と鵙や菊日和 川端茅舎
御菊見の物運ぶらし女官だち 正岡子規 菊
御階近く大菊の花亂けり 正岡子規 菊
心すぐに妻子にもどる霜小菊 能村登四郎
心よきもてなしぶりよ菊ましろ 星野立子
忌ふたつ黄菊白菊手向くべし 福田蓼汀 山火
志万両剪るも菊剪るも 後藤比奈夫
思ふことなしたゞ白菊の吹き散るか 赤尾兜子 稚年記
思ふさま乱菊となる頃なりし 飯島晴子
性の欲かきたてて菊にほふなり 上村占魚
息のなかにときどき座右の菊がある 篠原梵 年々去来の花 中空
息吸うて息吐くひまの菊日和 橋閒石 荒栲
愛し菊はついに恍惚として乱るるや 荻原井泉水
懸崖の姿くづさず菊名残り 鷹羽狩行
懸崖の菊のたちまち咲き重り 鷹羽狩行
懸崖の菊の岬を廻り見る 能村登四郎
懸崖の菊の託生文化の日 百合山羽公 樂土
懸崖の菊三段に賀の筵 山口青邨
懸崖の菊武士の楯の如く 山口青邨
懸崖の菊発すれば琴の音 百合山羽公 樂土
懸崖の菊見るといふ遠さあり 後藤夜半 底紅
懸崖菊いかな高さに置くならん 山口誓子
懸崖菊みな腹這へる毛物なり 山口誓子
懸崖菊両翼ありて飛ばむとす 山口誓子
懸崖菊城は懸崖石の反り 山口誓子
懸崖菊臍の緒まぎれゐるならむ 岡井省二 有時
懸崖菊蕾のときをわれ知らず 鷹羽狩行
懸崖菊載せ自転車を僧が押す 右城暮石 句集外 昭和四十四年
我が凭りし銅の火鉢や菊を彫(ゑ)る 松本たかし
我が如く彼もありけり菊に訪へば 松本たかし
我が肌抱きめざめぬ菊さむく 石田波郷
我が膚のぬくもりに菊の夜店見る 右城暮石 声と声
我今年牡丹に病んで菊に起きし 正岡子規 菊
我庵や黄菊白菊それもなし 正岡子規 菊
我生きて在るは人死ぬ菊花哉 永田耕衣
戸あくれば紙燭のとゞく黄菊哉 正岡子規 菊
手のひらのわづかな日さへ菊日和 水原秋櫻子 蘆雁以後
手の荒れを防ぐも一事残る菊 鈴木真砂女 夕螢
手を放し稚児を歩ます菊花展 右城暮石 上下
折れし菊捨てがたければ池に捨つ 及川貞 榧の實
折れ口の手にいさぎよき霜の菊 右城暮石 句集外 昭和十一年
括ること多し十日の菊手入れ 鷹羽狩行
捨てし菊磐に野生えて秋日和 右城暮石 句集外 昭和十一年
捨て菊や故なく妻子陥しめし 小林康治 玄霜
捨菊のあとかたもなし鯉の音 斎藤玄 狩眼
捨菊のまはりから水漬しけり 中村草田男
捨菊や非常階段裏見えて 草間時彦 中年
捨言葉数歩にて菊を見たりけむ 加藤秋邨
掟の火いまに絶やさず菊日和 角川源義
提げとほる菊の匂ひや生姜市 石田勝彦 秋興
揚花火芯を囲める菊花弁 山口誓子
搦手もひらきて菊の鉢ならぶ 水原秋櫻子 殉教
摘み移る日かげあまねし菊畠 杉田久女
摘み移る菊明るさよ籠にあふれ 杉田久女
摘菊の笊傾きてすこし見ゆ 山口青邨
摺鉢のもの何なりや菊の宴 山口青邨
撒華隊黄白の菊籠に満たし 山口青邨
故郷の菊はいくさに踏まれけん 正岡子規 菊
敗戦のただ中に誰ぞ菊咲かせし 三橋鷹女
数へ日の黄菊白菊布団柄 森澄雄
敷いてある宵寝の床や菊の花 日野草城
斑猫も此處にありたる菊日和 相生垣瓜人 明治草
斗酒辞せず詩ありて菊を食べられし 阿波野青畝
新婚ふたりかくるる菊紫苑 石川桂郎 含羞
新米に菊の香もあれ小六月 正岡子規 小六月
新酒賣る家は小菊の莟かな 正岡子規 新酒
旅をして来て爪をきる菊の前 山口青邨
旅客機をふり仰ぐ地の菊車 飯田蛇笏 家郷の霧
旗は菊は人は錦のむら紅葉 正岡子規 菊
旗一本菊一鉢の小家かな 正岡子規 菊
旗汚れ垣は頽れて小菊かな 正岡子規 菊
日に向いて菊の莟のはぜかゝる 正岡子規 菊
日に酔うてひとまどろみも菊日和 福田蓼汀 山火
日の光白玉菊にわが肌に 日野草城
日の旗や淋しき村の菊の垣 正岡子規 菊
日の縁に羽織ぬぎ捨て菊に掃く 杉田久女
日の菊に雫振り梳く濡毛かな 杉田久女
日は空の奥へしりぞき菊日和 鷹羽狩行
日は西に菊売ならぶ博多川 水原秋櫻子 玄魚
日南ぼこ菊の細りの見ゆるかな 右城暮石 句集外 昭和六年
日当りてうす紫の菊筵 杉田久女
日当れば錆朱の菊の蘂も燃ゆ 山口青邨
日日の海日日紺にして菊すがる 山口誓子
日曜やけふ菊による人の蟻 正岡子規 菊
日本は海なり机上菊白し 渡邊水巴 富士
日燦々東籬山妻菊を摘む 山口青邨
旭に向くや大輪の菊露ながら 正岡子規 菊
昃りしときの落着き菊の虻 後藤比奈夫
昇降機菊もたらせし友と乗る 石田波郷
明家や旗はなけれど菊の花 正岡子規 菊
明日活けむ菊片隅に夜の厨 鷲谷七菜子 黄炎
明治より前の日淡く菊の靄 飯田蛇笏 雪峡
明治村わが輩お主菊自慢 平畑静塔
明耿々朝日に竝ぶ菊花? 正岡子規 菊
昔めくことこそよしや菊の露 正岡子規 菊
星飛んでそゞろに冷ゆる菊の白 日野草城
昼を夜として菊咲かせ美しや 山口青邨
晩晴をけふの奢りに菊畑 鷹羽狩行
暗澹と小菊むらがる夕日かな 草間時彦
暮れなづむ白菊にある旅ごゝろ 日野草城
曇り日の運河船なし菊ながる 水原秋櫻子 霜林
書きゐつつ白き小菊とともにあり 篠原梵 年々去来の花 皿
書冊懸崖のごとく菊を置くところありて置く 荻原井泉水
替へ菊のややまづしきを戴きぬ 能村登四郎
最上川濁れば菊もうつらざる 山口青邨
月あれば庭のそこらに菊を点じ 山口青邨
月しろのほどとほからぬ菊畑 岡井省二 五劫集
月の下菊あるごとくうちけぶる 山口青邨
月もあり黄菊白菊暮るゝ秋 正岡子規 暮の秋
月夜ふけ黄菊はまるく浮びたる 高屋窓秋
月蝕をおそれて菊に傘しけり 村上鬼城
有刺線東籬の菊を護るなり 阿波野青畝
有明の月下に菊の輝きし 川端茅舎
朝な朝な掃き出す塵も菊の屑 杉田久女
朝夕に見て過ぎ菊を購めざる 伊丹三樹彦
朝市の花屋の小菊よく売れる 岡本眸
朝月や菰にまかれし小浜菊 雨滴集 星野麥丘人
朝焼や今日あることに白菊に 中村汀女
朝霧や奈良阪下る小菊賣 正岡子規 菊
木棉ながら善き衣着たり菊の花 正岡子規 菊
木魚ふとやみたる菊の日和かな 鷲谷七菜子 游影
未だ山を離れず菊を作る里 河東碧梧桐
末弟子菊の香およぶ果にあり 能村登四郎
本尊は阿彌陀菊咲いて無住也 正岡子規 菊
朱の帯はまことの帯の菊の姫 山口誓子
机に挿して白菊ややに愁の翳をもつ 荻原井泉水
机上大菊の花火揚げておる 荻原井泉水
机辺例の雑多粉々たる中菊白し 荻原井泉水
村々や菊月過ぎし畑の菊 富安風生
杖の老爺 五六歩止まり 菊日和 伊丹三樹彦
束ねてはむらさき勝てり畑の菊 水原秋櫻子 殉教
東京に富士見ゆる日や菊を焚く 森澄雄
東籬とし斯くあるものと並ぶ菊 阿波野青畝
松に菊古きはものゝなつかしき 正岡子規 菊
松に菊蕎麦屋の庭の時雨かな 渡邊水巴 白日
松を伐てうれし小菊に旭のあたる 正岡子規 菊
松風す大輪の菊運ばるる 松村蒼石 雁
果ちかく莟残せり菊花展 能村登四郎
柚味噌燒く雨の夕や菊百句 正岡子規 柚味噌
柿堆く菊堆く額きし 高野素十
栗飯や下駄ぬぐきはに菊の花 正岡子規 菊
栗飯を昼に炊いたる菊節供 森澄雄
栗鼠のごと手足揃へて菊に寝る 右城暮石 句集外 昭和十八年
梁の年経し張りや菊の雨 石塚友二 光塵
梅落葉する閑雅さよ菊の上(奥多摩吉野梅林) 細見綾子
梅雨の扉の菊の御紋の金青く 山口青邨
棄て菊のただよふ午後のベカ溜り 能村登四郎
棟上げや家巍々として菊の紋 正岡子規 菊
棲み訣る家並菊の花白し 赤尾兜子 稚年記
椋落葉黄菊すがれとなりにけり 飯田蛇笏 霊芝
横町につゞきて菊の夜店哉 正岡子規 菊
樫垣も径も古りたる菊の花 右城暮石 句集外 昭和十八年
檜の香は白菊の香よ木倉冷ゆ 松崎鉄之介
檣の門暮れゆく菊をのぞかしむ 山口青邨
櫛巻にかもじ乾ける菊の垣 杉田久女
次の皿なかなか来ねば菊を見る 日野草城
歌を読み心匂へり菊のまへ 水原秋櫻子 重陽
正しくは黄菊日和と云ふらしも 相生垣瓜人 負暄
歳晩の菊臙脂なる草廬かな 富安風生
歸んなんいざと咲きけり菊の花 正岡子規 菊
死をかざられる菊とおもう胸にして祝わるる 荻原井泉水
死者の家昨日の小菊に昨日の虻 林翔 和紙
死顔のやすけさに菊香るかな 松崎鉄之介
残り菊棚田の隅に伏してゐし(木曽路) 細見綾子
残る菊束ね始まる酒つくり 水原秋櫻子 蓬壺
殘る菊けふより後の名にせはや 正岡子規 菊
殘菊のしどろに妹が垣根かな 正岡子規 菊
殘菊や宇治の古宮女君 正岡子規 菊
段菊に獲物落せし鳶の舞ふ 阿波野青畝
段菊のいまも李朝のさむらさき 後藤比奈夫
母が活けし菊に小菊を挿しそへぬ 三橋鷹女
母のこゑして菊を焚くうすけむり 桂信子 月光抄
母のなき寧らぎと思ふ菊の後 能村登四郎
母の息ありやありけり菊暮色 能村登四郎
母子二人菊をたむけて吹かれをり 角川源義
母子寮に母子の夜来たり菊真白 能村登四郎
母留守の菊にそと下りし病後かな 杉田久女
母老いず身辺に菊を咲きかをらせ 三橋鷹女
毛見の僕三径の菊に尿し去る 内藤鳴雪
毟らるゝ菊芳しき料理かな 前田普羅 普羅句集
水一筋菊の亂れのうつくしき 正岡子規 菊
水呑むや十日のあやめ六日の菊 橋閒石 和栲
水洟をかむたくさんの小菊紙かな 日野草城
水滴る地下道抜けて菊花展 右城暮石 句集外 昭和三十八年
水盤の菊大輪に新たな世 飯田蛇笏 雪峡
水菊の花や慈覚の露の降る 河東碧梧桐
水菊をまづちりばめて花野見ゆ 水原秋櫻子 緑雲
水霜の菊摘みてをり喪の母は 草間時彦 中年
汐風に蜑か垣根の菊痩せぬ 正岡子規 菊
汲みおきの水の冷し残る菊 鈴木真砂女
油菊かなし女の髪の香を 山口青邨
波郷忌に時あふれをり菊の屑 斎藤玄 狩眼
泣いて匂ふ白き因幡の菊うさぎ 秋元不死男
泣きしあとの心すが~し菊畠 杉田久女
泰然として太き竹菊の杖 上野泰 佐介
洗濯にふやけし指や菊日和 鈴木真砂女 生簀籠
洛北の風雨あとなき菊まがき 飯田蛇笏 心像
流す菊ながるるに降りいでにけり" 水原秋櫻子 残鐘
浦安の俄出水や菊日和 水原秋櫻子 晩華
浦安の鯊もしまひの菊日和 清崎敏郎
浦山に砂のかよひ路霜小菊 上田五千石『風景』補遺
浮世哉菊に晴レ着の黒小袖 正岡子規 菊
浮雲の夜も真白に菊月夜 福田蓼汀 秋風挽歌
海道を一碧として菊日和 百合山羽公 故園
添竹をはづし歩むや菊も末 杉田久女
渚辺に若きらの尻みな黄菊 金子兜太
湖の空から蜘蛛の糸誰の菊 岡井省二 鹿野
湖人のなかなか菊を焚かず晴れ 岡井省二 鹿野
湯の沸きのいささか早き菊日和 鷹羽狩行
湯冷めして菊の白さよ寂しさよ 日野草城
滄浪の水濁りけり菊の花 正岡子規 菊
澄雄来て硯咄や菊びより 角川源義
激流の犀川白菊上下動 山口誓子
瀬戸内の島見下ろしに菊花展(尾道三句) 鷹羽狩行
火の力昂り出よと菊を焚く 阿波野青畝
火をつけしところに煙菊を焚く 上野泰
火焔仏見るごとく菊焚かれけり 阿波野青畝
灯かへす供華の白菊椿邸 原裕 葦牙
灯ともして御影祭るや菊の花 正岡子規 菊
灯ともせば只白菊の白かりし 内藤鳴雪
灯ともりて君の絵姿菊の上 日野草城
炉塞ぐや菊の根もとを掘る男 正岡子規 炉塞
炎は馳せのぼる一気に菊のきざはしなり 荻原井泉水
炎天に菊を養ふあるじ哉 正岡子規 炎天
炎天の菊を縛して花見せず 右城暮石 上下
炎帝の下に盾並め菊作り 齋藤玄 飛雪
炭いよゝ乏しくも壺の菊しづか 渡邊水巴 富士
焚菊の故事の如きもありぬべし 相生垣瓜人 明治草
焼のビル街をゆく菊車 飯田龍太
煤掃いてなほ残る菊をいとほしむ 渡邊水巴 白日
熊祭るアイヌも踊れ菊の洒 内藤鳴雪
熱き茶の喉に痛くて菊澄みぬ 水原秋櫻子 残鐘
熱気をも孕みたりける菊日和 相生垣瓜人 負暄
燈心の如き白菊咲きにけり 正岡子規 菊
燦たるも黄菊食用にも黄菊 右城暮石 句集外 昭和三十八年
燭とりて菊根の雪をかき取りぬ 杉田久女
爪脆き齢か 管菊めくれつつ 伊丹三樹彦
父に似し弟一人残る菊 松本たかし
父の涙ひと筋潔し菊の婚 楠本憲吉 孤客
牛久沼頭に生き菊花節暮れたり 石塚友二 方寸虚実
犇き咲く小菊よ妻は癒えしなり 草間時彦 中年
犇くは 波の白頭 また野路菊 伊丹三樹彦
犠牲多き戦果や菊を活け足らず 渡邊水巴 富士
猪口才や忍者の小菊宙に咲き 秋元不死男
玉菊の毬なす黄の毬紅の毬 山口青邨
玉菊の白妙慈悲の乳迸り 山口青邨
玉菊の衰ふること忘れしや 日野草城
玉菊や日照雨の露のきらきらと 日野草城
玉菊燈籠あはれ一葉の文字あはれ 福田蓼汀 秋風挽歌
王官の荒れんとすなり菊あせて 臼田亜郎 定本亜浪句集
瓣多く辯多き菊竝びけり 相生垣瓜人 負暄
瓶の菊夜は窓まで闇が来る 石田波郷
甕にあふれ東籬にあふれ菊咲けり 山口青邨
生れし日を菊の十一月に持つ 山口誓子
田の色の平群に多き菊畠 森澄雄
甲斐嶺は寂しかるらむ菊の味 三橋敏雄
男なり小菊ながらも白を咲く 正岡子規 菊
畑にして菊の蕾のこぞりたる 清崎敏郎
疲れては戻る暗夜の菊ばかり 伊丹三樹彦
疲れては朝の茶うまく菊咲きぬ 水原秋櫻子 玄魚
病む妻に子のことづての菊の花 高野素十
病める友五人も十人も菊咲くに 山口青邨
病居士の端居そゞろなり菊の花 正岡子規 菊
病癒えて菊にある日を尊めり 杉田久女
病院に花舗ありすでに菊の秋 水原秋櫻子 餘生
痩村の質屋富みたり菊の花 正岡子規 菊
痩菊に霜置かぬ朝の曇りかな 正岡子規 霜
癒え賜ひまぶしき菊の日も賜ふ 能村登四郎
癩の墓暮夜来て手向けたる菊か 大野林火 白幡南町 昭和三十年
白も黄もさき竝べたり菊の花 正岡子規 菊
白も黄も咲きならべけり菊の園 正岡子規 菊
白妙といやしろがねと菊讃ふ 鷹羽狩行
白菊ぞ黄菊ぞふるき年重ね 山口青邨
白菊とわれ月光の底に冴ゆ 桂信子 月光抄
白菊と思ひし菊の黄を咲ぬ 正岡子規 菊
白菊にかなしさありて眸を閉づる 桂信子 月光抄
白菊にしかもこよひは月夜哉 正岡子規 菊
白菊にしたがへる葉のみどりかな 日野草城
白菊にほのと黄のさす日和かな 鷹羽狩行
白菊にハヴァナは蒼くかんばしき 日野草城
白菊に今宵の酒をそとふくみ 川端茅舎
白菊に埋もれ天に召されゆきぬ 山口誓子
白菊に愚かなひとの唇弛く 日野草城
白菊に愛しきひとの瞳黒く 日野草城
白菊に来て立てば髪冷えにけり 加藤秋邨
白菊に棟かげ光る月夜かな 杉田久女
白菊に癒えざるものを糧とせよ 平井照敏 天上大風
白菊に紅さしそむる日数かな 村上鬼城
白菊に紫の憑く日ごろかな 阿波野青畝
白菊に蟻はひ上る日和かな 正岡子規 菊
白菊に貧しきひとの眉薄く 日野草城
白菊に貴きひとの鼻隆く 日野草城
白菊に賜わりし言忘れめや 楠本憲吉 方壺集
白菊に賢きひとの額濶く 日野草城
白菊に起ち居しづかな日を重ね 桂信子 月光抄
白菊に起居の塵のおきにけり 富安風生
白菊に遠い空から雨が来る 飯田龍太
白菊のあしたゆふべに古色あり 飯田蛇笏 心像
白菊のさし覗けるに水走る 石塚友二 光塵
白菊のしづくつめたし花鋏 飯田蛇笏 山廬集
白菊のもはや昏れざるまで昏れぬ 加藤秋邨
白菊の一もとゆかし八重葎 正岡子規 菊
白菊の一もと白し八重葎 正岡子規 菊
白菊の中の大輪とけそめし 上村占魚 鮎
白菊の九つの花みな薫る 日野草城
白菊の今は照りはゆる日光充ち 日野草城
白菊の夜もかがやくばかりなり 村山故郷

以上
by 575fudemakase | 2016-11-12 14:31 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)
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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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