菊 補遺2

菊 補遺2

白菊の太平洋を使節船 山口誓子
白菊の少しあからむ時雨哉 正岡子規 時雨
白菊の暮色の前の白さ充つ 能村登四郎
白菊の白の厚みに安んじる 佐藤鬼房
白菊の白妙甕にあふれける 水原秋櫻子 秋苑
白菊の粥かな秋のほの~と 渡邊水巴 富士
白菊の老いて赤らむわりなさよ 正岡子規 菊
白菊の花でこさばや濁り酒 正岡子規 濁酒
白菊の辺や道知らぬ友を待ち 石川桂郎 四温
白菊はにつぽんの花ここにささぐ 山口青邨
白菊はひとのいぶきにくもりけむ 日野草城
白菊は富士新雪を前に光る 山口青邨
白菊や一天の光あつめたる 桂信子 月光抄
白菊や中年の膝崩すまじ 中村苑子
白菊や対岸は父亡き故郷 永田耕衣
白菊や弔詞の中に友生くる 松崎鉄之介
白菊や昧爽花屋に客一人 日野草城
白菊や未生以前の渚見ゆ 佐藤鬼房
白菊や深海魚族の図がかかり 加藤秋邨
白菊や玉解くさまに咲きはじめ 鷹羽狩行
白菊や珊瑚の簪入るべからず 正岡子規 菊
白菊や祖母の代塩でもの潔めき 中村草田男
白菊や蒼き夕靄遠なびき 日野草城
白菊や闇をこぼれて庭の隅 正岡子規 菊
白菊や風邪の名残の小しはぶき 日野草城
白菊や風邪気の妹に濃甘酒 日野草城
白菊をこゝと定めて移しけり 村上鬼城
白菊をはなれしひとぞうるはしき 日野草城
白菊を瀧につくりし細工哉 正岡子規 菊細工
白菊を珠と活けこよひダンスあり 山口青邨
白菊一輪かいてたまわれという君にかく 荻原井泉水
白雲のゆたかなれども菊月夜 福田蓼汀 秋風挽歌
白露に養ふ菊の莟かな 正岡子規 菊
白髪の辺の闇ねむる菊のころ 飯田龍太
白髪抜く四十の額を菊の中 古舘曹人 能登の蛙
百姓の垣に菊あり鶏頭あり 正岡子規 菊
百舌鳥鳴くや醍醐の道の菊の村 河東碧梧桐
百菊のおのもおのもの光あり 山口青邨
百菊のこぞるに軒の一灯のみ 山口青邨
百菊の妍をきそひし月日あり 山口青邨
百菊の汀の心とはなんぬ 岡井省二 有時
百菊の白のみにあらず紅のみにあらず 山口青邨
百號に滿ちけり菊はさきにけり 正岡子規 菊
百鉢のいづれも白き菊月夜 鷹羽狩行
皇子加冠菊の籬に琴も鳴り 山口青邨
盆程の庭の蒔繪や菊もみち 正岡子規 菊
盗まれし菊をいよいよ惜みけり 尾崎放哉 大学時代
目の前に柱垂るるや菊さむし 加藤秋邨
目覚めては黄菊に風に瞳の澄むや 右城暮石 句集外 昭和十八年
相掛けてよし軒廂菊障子 山口青邨
相見ては菊冷ゆる夜も息あつし 鷲谷七菜子 黄炎
真上から魔のさしてくる菊の葉よ 飯島晴子
真中の流速に菊棄てゝ来し 能村登四郎
真珠採る沖島かけて菊日和 水原秋櫻子 玄魚
真白毛の渦巻く狗の菊に伏す 水原秋櫻子 霜林
眩しみて白菊の辺に撮られたる 桂信子 月光抄
着せ替への菊は蕾の細かくて 山口誓子
石垣の家のいづこも菊日和 鷹羽狩行
石段に供花の菊をこぼし行く 右城暮石 天水
砂礫はこぶ音が日和で菊の花 右城暮石 句集外 昭和十二年
砲にかざる花環はよろし菊の花 山口青邨
破靴や延命菊に雫せる 齋藤玄 飛雪
硝子戸に這ふ夕靄や菊を売る 山口青邨
硝煙が菊をけぶらす一場面 後藤比奈夫
神棚に豆菊白し小鳥焼く 山口青邨
神苑の杉に囲まれ菊花展 右城暮石 天水
秋天の裳裾を菊の彩れる 上野泰 佐介
秋山路拓きし畑に菊もあり 右城暮石 句集外 昭和七年
秋菊に媒はき落す小窓哉 正岡子規 菊
秋雨やこけしの着物紅菊を 山口青邨
稚き仏ぞ被まし菊衾 石塚友二 光塵
稲掛けて菊隠れたる垣根かな 村上鬼城
稲架とけば菊畦に伏し淋しがる 富安風生
稲架の中大路の如く菊の道 山口青邨
稻の花東籬菊いまだ莟なり 正岡子規 稲の花
稻舟や穂蓼の渚菊の岸 正岡子規 菊
空つ風忘れて過ぎし菊屋橋 石川桂郎 高蘆
空気澄むところや菊を燃やしゐて 細見綾子
空気銃撃ちし音菊ひやゝかに 山口誓子
空腹を感ずる菊の花小粒 右城暮石 句集外 昭和十七年
突き出たる風除棒に菊仆れ 阿波野青畝
立ち番をせる消防士菊花展 右城暮石 散歩圏
立て看板に赤鬼子鬼菊の宴 角川源義
竹垣の低きがうれし菊いろいろ 松本たかし
竹垣や隣の菊のこぼれ咲く 正岡子規 菊
竹生島ちかく淡しや菊月夜 水原秋櫻子 旅愁
竹立てゝ?燭さしぬ菊の中 正岡子規 菊
竹青く残りて菊花展の果つ 鷹羽狩行
笹岡は水清き村野菊晴 星野立子
筆とらぬ日を経て菊の衰へず 相生垣瓜人 微茫集
筆擱けば真夜の白菊匂ひけり 日野草城
筬音の水声のごと菊に立つ 山口青邨
簇れ伏して露いつぱいの小菊かな 杉田久女
簾の揺れしままひつかかり菊の花 阿波野青畝
籾殻に温みあり菊咲きはじむ 右城暮石 句集外 昭和十六年
籾殻に追ひつく堰の捨て菊は 能村登四郎
紀元節菊正宗の喇叭呑み 渡邊白泉
紅菊の洋装上着もスカートも 山口誓子
紅菊の色なき露をこぼしけり 日野草城
紙を干す山家のわざも菊日和 水原秋櫻子 霜林
紙漉きて一と畝の葱一と畝の菊(埼玉県小川町三句) 細見綾子
紫の菊も遮光作りよ八ケ岳の裾 山口青邨
細いとて賞め太いとて賞める菊 後藤比奈夫
紺菊の闇のしぶきのおぼえかな 斎藤玄 雁道
終身の喪とす白菊の冷をこそ 山田みづえ 忘
絢爛を極むる菊を嫌厭す 相生垣瓜人 負暄
絹着せぬ家に菊あり詩經あり 正岡子規 菊
維好日百菊にほふ酒祝 山口青邨
網棚秋晴慶事弔事へゆく菊揺れ 伊丹三樹彦
綿雲を見れば近づく菊の秋 山口誓子
緑青の吹きをることの菊の如露 後藤夜半 底紅
縁の日のふたたび嬉し菊日和 杉田久女
縁日へ押し出す菊の車かな 正岡子規 菊
縁日へ菊買ひに行く翁かな 正岡子規 菊
繚乱の菊を思へども蜂一匹 三橋鷹女
繪かきには見せじよ庵の作り菊 正岡子規 菊
繪に書くは黄菊白菊に限りけり 正岡子規 菊
翠菊や今日を妻来し故知らず 石田波郷
翠菊や妻の願はきくばかり 石田波郷
翳る身の寄りがたく菊澄みにけり 鷲谷七菜子 黄炎
老が身の皺手に手折る黄菊かな 村上鬼城
老菊のものやはらかき花の鞠 後藤夜半 底紅
耳が沈んで菊月の死者とあり 佐藤鬼房
聖天のうしろは淋し菊の花 正岡子規 菊
育てたきおもかげ得しや菊の酒 角川源義
背伸びをば強ひられし菊竝びをり 相生垣瓜人 明治草
膝の上に日溜りつくる菊日和 水原秋櫻子 蘆雁以後
臼の音籬落の菊にひゞきけり 日野草城
舟べりをながるる菊の艪に遅れ 阿波野青畝
航跡の泡は雪白菊を投ぐ 阿波野青畝
船つくる音のなかなる菊日和 飯田龍太
色を言ひ菊の匂を言はざりし 後藤比奈夫
色残る菊もくくりて千曲沿ひ 細見綾子
色菊の小さきを添へし情かな 山口青邨
花かげに~蕾露の菊 高野素十
花に月に雪にわけては菊の香に 正岡子規 菊
花卉かほど庭統ぶる菊の雨明り 種田山頭火 自画像 層雲集
花店の朝を白菊薫りけり 日野草城
花笠菊来ます御仏にぎやかに 山口青邨
花笠菊高くゆるるよ冷奴 山口青邨
若年の汝に礼す菊さむし 草間時彦 中年
茎長き菊桔梗など父に挿す 山口誓子
茶屋に菊あり遠足會の人休む 正岡子規 菊
草の戸や盃赤く菊白し 正岡子規 菊
草庵の落葉の中の黄菊かな 山口青邨
荒菰に巻かれて菊の衣裳着く 鷹羽狩行
荒野菊身の穴穴に挿して行く 永田耕衣
莟む菊日にまし青さまさりつゝ 右城暮石 句集外 昭和十四年
菊あまた咲かせ雑草園荒るるまま 山口青邨
菊あまた書屋の瓶に畑になし 山口青邨
菊あれて鶏ねらふ鼬かな 正岡子規 菊
菊いくら剪りても足らぬ思かな 後藤比奈夫
菊いけて荷物ちらはる旅籠哉 正岡子規 菊
菊いまだ青莟にて色知らず 能村登四郎
菊うごく何か過ぎたるごとくなり 加藤秋邨
菊うらら遠き日の遺書裂きてをり 鷲谷七菜子 黄炎
菊おこす風雨の合羽頭にかむり 及川貞 榧の實
菊かほるこのしづけさはきみはぐくむ 伊丹三樹彦
菊かほる辺のたまゆらをほとけの香 伊丹三樹彦
菊かをり新しき画布かがやけり 相生垣瓜人 微茫集
菊かをり金槐集を措きがたき 水原秋櫻子 秋苑
菊かをれ石の優婆塞肋あらは 角川源義
菊くゝる杖の長さをそろへけり 正岡子規 菊
菊さかり履歴ゆたけき新教師 能村登四郎
菊さかる平群(へぐり)に融通念仏寺 森澄雄
菊さくやきせ綿匂ふ不二の雪 正岡子規 菊
菊さくや十二街頭の塵の中 正岡子規 菊
菊さくや米飯麥飯粟の飯 正岡子規 菊
菊さけば南蛮笑ふけしきかな 飯田蛇笏 山廬集
菊さむくなる湯の中に膝かゝへ 山口誓子
菊さむしはらから泣くを見守りをり 草間時彦 中年
菊しづか山妻なにをしつつあらむ 山口青邨
菊しろし罐詰切つて誕生日 山口誓子
菊しろし芭蕉も詠みぬ白菊を 水原秋櫻子 秋苑
菊つかむ雀悲しき嵐哉 正岡子規 菊
菊つくる五位の隱居や黒あばた 正岡子規 菊
菊つみてはや盛り上る籠の中 高野素十
菊なますてふやさしきを重の隅 細見綾子
菊なます口中冷えて来たりけり 草間時彦
菊なます眉を逃げゆく山の音 角川源義
菊なます肺の一薬抜かれけり 角川源義
菊なます色をまじへて美しく 高浜年尾
菊なます鍋島は藍佳かりけり 草間時彦 櫻山
菊なます風邪の夕餉を床のうヘ 及川貞 夕焼
菊ならべ帷舎天井低くせり 阿波野青畝
菊なるかな挿して一輪満座匂う 荻原井泉水
菊にうづもる御死顔の見飽かぬも 大野林火 青水輪 昭和二十六年
菊にさす夕日は卓に溢れけり 大野林火 早桃 海風抄
菊にさす夕日は卓を溢れけり 大野林火 海門 昭和十一年
菊になく石蕗にありたる雨明り 後藤比奈夫
菊にほひ波郷も寝ねし雨の音 及川貞 榧の實
菊にほふ国に大医の名をとどむ 水原秋櫻子 緑雲
菊にむせびて遺影の眼鏡縁強し 飯田龍太
菊にわが同齢教師老目立つ 能村登四郎
菊にゐて鶺鴒は身のほそかりき 右城暮石 句集外 昭和十六年
菊に喜々たり教師仮縫に袖通し 能村登四郎
菊に対ひ身に高山を繞らする 山口誓子
菊に峰巒大霧に月のありどころ 原石鼎 花影
菊に手を合せ年尾に手を合す 後藤比奈夫
菊に掃きゐし庭師午砲に立去れり 杉田久女
菊に文戸に物申す女の童 内藤鳴雪
菊に日の短かく四十雀は去り 右城暮石 句集外 昭和十五年
菊に早き萩にはおそき忌に参ず 鈴木真砂女 夕螢
菊に立ち裲襠美しき愛しさよ 相馬遷子 雪嶺
菊に薄埃 遠のくものばかり 伊丹三樹彦
菊に虻夷狄に風土記なかりけり 佐藤鬼房
菊に酒酌んで もとより日本の父 伊丹三樹彦
菊のちり打つべくもなくかかりけり 飯田蛇笏 山廬集
菊のまへしづかな埃たちにけり 高屋窓秋
菊の中遺愛の壺にも菊さしてあるを 荻原井泉水
菊の主拙き歌を詠みにけり 正岡子規 菊
菊の乱れは月が出てゐる夜中 尾崎放哉 須磨寺時代
菊の前こゝろ痩せをり洟ゆるび 石塚友二 光塵
菊の前友の顔得てよみがへり 草間時彦 中年
菊の前夜はつどひ来てペン執るも 石田波郷
菊の前小耳によそのよき話 富安風生
菊の前話のつぎほとだえがち 日野草城
菊の匂ひ生ま生ましくて喪のにほひ 右城暮石 上下
菊の卓鴎は窓に翼ひろげ 深見けん二
菊の友山を見るにはあらねども 岡井省二 有時
菊の句も詠まずこの頃健かに 杉田久女
菊の句を殘して去りぬ把栗居士 正岡子規 菊
菊の句を選びて菊の秋を待つ 鷹羽狩行
菊の垣南の山は上野なり 正岡子規 菊
菊の垣滿艦飾の見ゆる哉 正岡子規 菊
菊の垣犬くゞりだけ折れにけり 正岡子規 菊
菊の墓在りし世のごと人厭ふ 角川源義
菊の壇氣に入つた菊はなかりけり 正岡子規 菊
菊の壇聖体帰りましましぬ 山口青邨
菊の夜をつとに息して眠りけり 岡井省二 五劫集
菊の大輪活けていちりん 荻原井泉水
菊の奸邪悪もつとも美しく 飯田蛇笏 家郷の霧
菊の季節の白菊をもて君を葬る 荻原井泉水
菊の宴に菊の蒔繪そ心なき 正岡子規 菊
菊の宿なぜか気になる裏梯子 中村苑子
菊の宿夜は炬燵のあたたかく 木村蕪城 一位
菊の宿昔女のうたひかな 正岡子規 菊
菊の寺母呼ぶ声は吾子なるか 角川源義
菊の庭死霊遊ばせ姥ぐらし 角川源義
菊の径客をみちびきつつも恋ふ 日野草城
菊の後暗峠越ゆる腓かな 岡井省二 猩々
菊の日々ふるさとを母恋ひたまふ 桂信子 月光抄
菊の日に雫振り梳く濡毛かな 杉田久女
菊の日のあはや俄かに風だつは 富安風生
菊の日を浴びて耳透く病婦かな 杉田久女
菊の日を雪に忘れずの温泉となりぬ 河東碧梧桐
菊の昼着物正しく着て居りぬ 右城暮石 句集外 昭和十二年
菊の月夜々に輝きまさりけり 西島麦南 人音
菊の杖蜻蜒のとまる處なり 正岡子規 菊
菊の根に降りこぼれ敷く松葉かな 杉田久女
菊の正行手の甲で涙拭く 山口誓子
菊の気の騰りて庭の静かな 村上鬼城
菊の灯に酌む雪冤の面テかな 西島麦南 人音
菊の灯の過去帳に見し悲劇の名 角川源義
菊の簇れ落葉をかぶり乱れ伏す 杉田久女
菊の綿露の重りに剥がしけり 能村登四郎
菊の花びらのごとくに噴井かな 鷹羽狩行
菊の花八百屋の店に老いにける 正岡子規 菊
菊の花匂ひ茎葉も亦匂ふ 右城暮石 句集外 昭和十六年
菊の花天長節は過ぎにけり 正岡子規 菊
菊の花我を相手に咲きにけり 正岡子規 菊
菊の花抑制作りして出荷 右城暮石 句集外 昭和六十二年
菊の花月あはくさし数へあかぬ 高屋窓秋
菊の花蓑の下より見ゆるかな 正岡子規 菊
菊の荷にはじめの若き黄ばかりを 右城暮石 句集外 昭和十二年
菊の蕚うかべる雲に咲きこぞる 山口誓子
菊の虻つまづきながら歩きをり 上野泰
菊の虻一と花びらを立てて去る 高野素十
菊の虻翅を光となして澄む 深見けん二
菊の虻花の桟敷を渉り 上野泰 佐介
菊の裏菊の表とうちなだれ 山口青邨
菊の辺や作り笑ひの顔せねば 桂信子 花影
菊の酒人の心をくみて酌 星野立子
菊の酒思ひつついま花の酒 後藤比奈夫
菊の鉢並べてありと月に見る 右城暮石 句集外 昭和五年
菊の鉢移せよ日向移りける 水原秋櫻子 蘆雁以後
菊の鉢重たくて持ち運べざる 右城暮石 散歩圏
菊の間に聖樹とならむ鉢の樅 能村登四郎
菊の雨一夜の旅の髯延びて 草間時彦 中年
菊の雨子等の砂場に一日浸む 能村登四郎
菊の雨襟立ててより本降りに 草間時彦 櫻山
菊の雫盃に受けたる如かりき 原石鼎 花影以後
菊の霜泡立ち消ゆる如くなり 星野立子
菊の頃にも動くもの水は佳し 山口誓子
菊の頃よりの病もやうやくに 高野素十
菊の香にある吉凶の記憶かな 右城暮石 散歩圏
菊の香にやすんずるまもなきまくら 飯田蛇笏 家郷の霧
菊の香に夫を想ひて昼しづけき 桂信子 月光抄
菊の香に始終を細目菊売りは 能村登四郎
菊の香に寄りてかたむく鼻やさし 日野草城
菊の香のくらき佛に灯を献ず 杉田久女
菊の香のそゞろなる間へ通さるゝ 日野草城
菊の香のまつすぐ立てり北斗立つ 加藤秋邨
菊の香の夜の扉に合掌す 高野素十
菊の香の大顔見世となりにけり 水原秋櫻子 餘生
菊の香の身に移されし芸すこし 松本たかし
菊の香やぎくりと懸かる河童図 石田波郷
菊の香やみほとけをまのあたりにて 伊丹三樹彦
菊の香やめがねはづして睡るとき 渡邊白泉
菊の香や何も映らず夜の鏡 中村汀女
菊の香や初心を以て貴しと 桂信子 花影
菊の香や只三人に夜の更くる 正岡子規 菊
菊の香や命惜しみしまでにして 石田波郷
菊の香や太古のままに朝日影 飯田蛇笏 山廬集
菊の香や思ひにからむセレナード 日野草城
菊の香や旅籠の主帯刀を 山口青邨
菊の香や木隠れ墓の捨聖 角川源義
菊の香や民生れ増しつしかも彦 石塚友二 方寸虚実
菊の香や灯もるゝ観世音 高野素十
菊の香や父の屍へささやく母 草間時彦 中年
菊の香や芭蕉の襤褸(つづれ)金色に 川端茅舎
菊の香や芭蕉をまつる燭ひとつ 水原秋櫻子 晩華
菊の香や裏をつけたるひとへもの 日野草城
菊の香や陵王の舞強く軽く 林翔
菊の香や雲井に近き朝朗 正岡子規 菊
菊の香や騒人常に苦味の中 中村草田男
菊の香や鬚ある人の思はるゝ 正岡子規 菊
菊の香や鮒の魚拓のまだ濡れて 水原秋櫻子 霜林
菊の香や鶴はしづかに相よれる 水原秋櫻子 新樹
菊の香をやや遠ざけて消燈す 石田波郷
菊の黄に松尾の姓をまのあたり 右城暮石 句集外 昭和十九年
菊はいまだ萩と尾花の忌日かな 草間時彦
菊は古るし人形つくる躑躅かな 内藤鳴雪
菊は未だ青葉に立てり後の月 右城暮石 句集外 昭和三年
菊もわれも生きえて尊と日の恵み 杉田久女
菊も刈り薄も刈りぬ霜柱 正岡子規 霜柱
菊も咲きぬ新酒盗みに來ませ君 正岡子規 新酒
菊も咲き石のニユーヨーク出現す 山口青邨
菊も菜の色に咲きたる小春哉 正岡子規 小春
菊も這ひ雑草園は野のごとく 山口青邨
菊や鍬や買ひけり市の夕月夜 正岡子規 菊
菊よりも月光遠きかと思ふ 加藤秋邨
菊よろし紫ならず赤ならず 松本たかし
菊をして狂はしめつつ怪しまず 相生垣瓜人 明治草
菊を一廓にして厩あり散る柳 河東碧梧桐
菊を与へかの子を母の喪にかへす 能村登四郎
菊を剪つて行く秋惜む主かな 正岡子規 行く秋
菊を売り有為転変もおもしろし 山口青邨
菊を売るその小車と行き並ぶ 石田波郷
菊を売るまた俳諧の心なり 山口青邨
菊を売る白と黄とさびしからずや 山口青邨
菊を焚くうしろを通り声かけず 能村登四郎
菊を焚くかすかな音に来て跼む 能村登四郎
菊を焚く細き烟の日和かな 草間時彦 櫻山
菊を着てまつといふ妻ありしこと 後藤比奈夫
菊を被ぬ武者城垣を攀ぢ登る 山口誓子
菊を観る中年の背の友ばかり 草間時彦 中年
菊を買ふ妻のうしろに立ちにけり 上村占魚 球磨
菊一つ摘みし子兵に送るといふ 渡邊水巴 富士
菊一籬栗三升に事足りぬ 正岡子規 菊
菊乱れ~て背戸の小六月 高浜年尾
菊二本写したるほか今日事なし 荻原井泉水
菊亭はよし十六夜の月に酌む 山口青邨
菊作り顏に疱瘡のある男なり 正岡子規 菊
菊倒れ庭荒るるさま忸怩たり 山口青邨
菊冷えの三和土よりすぐ急階段 鷹羽狩行
菊冷えの剃刀頬を辷りけり 鈴木真砂女 紫木蓮
菊冷えの闇を背負ひし貝剥女 能村登四郎
菊冷の眦くらく癩病めり 野見山朱鳥 天馬
菊冷の黄泉より便り来る筈なし 鈴木真砂女 夕螢
菊凪に 乾ききったる 六地蔵 伊丹三樹彦
菊切りに出てゐて茜びたしかな 飴山實 辛酉小雪
菊切るや唇荒れて峯高し 前田普羅 普羅句集
菊刈つてひき出す時花とばす 高野素十
菊剪つてしばらく壺とたたかへる 加藤秋邨
菊剪るや提灯もすこしあげよといふ 原石鼎 花影
菊剪るや燭燦爛と人にあり 原石鼎 花影
菊剪るや花花に沈みて離れぬ 原石鼎 花影
菊匂う深きより水湧くごとく 橋閒石 微光
菊匂ひ或は秋刀魚輝けり 相生垣瓜人 明治草
菊匂ひ石鹸匂ひ洗面所 波多野爽波 鋪道の花
菊古ればもて来し友はもてゆきぬ 石田波郷
菊合せ弓矢ごのみの血筋なる 飴山實 句集外
菊咲いてじつくりと地を守りけり 平井照敏
菊咲いて巽書院といふ日和 岡井省二 有時
菊咲いて晴れたり一子妻取りの日 石塚友二 磊[カイ]集
菊咲かす程の畑あり山の奥 正岡子規 菊
菊咲かせどの孤児も云ふコンニチハ 西東三鬼
菊咲かせ家ぬち見せじと住む人々 水原秋櫻子 霜林
菊咲きし川畑咳をして通る 山口誓子
菊咲きて山の赭谷ひえまさる 山口誓子
菊咲き犬は病ひ忘れて遊びをり 村山故郷
菊咲くやけふ仏参の紙草履 飯田蛇笏 山廬集
菊咲くやわすれがたみの眉似たる 日野草城
菊咲くや大師の堂の普請小屋 正岡子規 菊
菊咲くや家ぬちくらきに太柱 水原秋櫻子 旅愁
菊咲くや樓に上れば舟遠し 正岡子規 菊
菊咲くや神父の裾に吾子がをり 能村登四郎
菊咲くや舟漕いで童子酒買ひに 正岡子規 菊
菊咲くや草の庵の大硯 正岡子規 菊
菊咲けりふるさと人は老いてやさし 福田蓼汀 山火
菊咲けり在れば百寿の秋櫻子 藤田湘子
菊咲けり小さき花を羞ひて 石塚友二 磊[カイ]集
菊咲けり悪路つゞきの家々に 右城暮石 声と声
菊咲けり故郷に帰らんかと思ふ 福田蓼汀 山火
菊咲けり産月の腹さすりをり 岸田稚魚 負け犬
菊咲けり鉄と石との厦の庭 日野草城
菊咲けり長征ここに憩ひしこと 松崎鉄之介
菊咲けり陶淵明の菊咲けり 山口青邨
菊咲けり雨降り飽きて澄める日に 水原秋櫻子 蓬壺
菊咲けるまことや目には目をの世に 石塚友二 磊[カイ]集
菊咲て龍駕幸手にとゞまりぬ 正岡子規 菊
菊園に天長節の國旗哉 正岡子規 菊
菊売の蔓梅もどき少し持つ 後藤夜半 底紅




菊売りて明るき燈さす花舗の前 山口誓子
菊夫人菊に薫染したまへり 日野草城
菊好きの菊の鉢置く鉄路際 右城暮石 句集外 昭和三十四年
菊守のごとくたたずみ菊日和 鷹羽狩行
菊安し天長節の後の市 正岡子規 菊
菊寂びてありたる屋形障子かな 後藤夜半 底紅
菊市に一人の遍路立ちまじり 松本たかし
菊市の町筋城に尽きてあり 松本たかし
菊市の菊買ひ提げて城さやか 松本たかし
菊干して土の香のする二三日 後藤比奈夫
菊干すや何時まで褪せぬ花の色 杉田久女
菊干すや日和つゞきの菊ケ丘 杉田久女
菊干すや東籬の菊も摘みそへて 杉田久女
菊年々天長節の日和順 正岡子規 菊
菊年年の明治百年近きなり 荻原井泉水
菊形の焼餅くふて節句哉 正岡子規 菊
菊慈童さめし瞼も菊の中 能村登四郎
菊打つて少年ひとり憤りゐる 加藤秋邨
菊折て日の丸る旗の竿にせん 正岡子規 菊
菊折て高きに上る旅情かな 河東碧梧桐
菊挿しつ恋に溺るゝ恥やある 石塚友二 方寸虚実
菊挿すと肉親の墓はごしごし洗ふ 三橋鷹女
菊挿すや晨の部屋に菊の塵 石田波郷
菊捨ててよりの起居のうらさむし 鷲谷七菜子 黄炎
菊描きて向日葵の時の如くせし 相生垣瓜人 微茫集
菊描くと省きし筆のただ粗し 相生垣瓜人 微茫集
菊描く金ンの花びら長短 後藤夜半 底紅
菊提げて帰る白墨まみれの手 津田清子
菊提げて浪寄る家に戻り着く 山口誓子
菊提げて行きいつまでも遠ざかる 山口誓子
菊提げて雜魚提げて村へ歸る人 正岡子規 菊
菊揺るる今か天山を仰ぐらし 加藤秋邨
菊摘むや広壽の月といふ新種 杉田久女
菊摘むや群れ伏す花をもたげつゝ 杉田久女
菊斗りの夜店のはしに成にけり 右城暮石 句集外 昭和十年
菊日和 欠伸の涙のごわずに 伊丹三樹彦
菊日和いねて寝不足をとりかへす 水原秋櫻子 霜林
菊日和かくあるべしと今日を待ち 高浜年尾
菊日和かさねてさらに菊月夜 水原秋櫻子 餘生
菊日和がらんと昆虫標本館 右城暮石 一芸
菊日和くづれさうなる虻となる 後藤比奈夫
菊日和この朝明の老のこと 中村汀女
菊日和たまたま箒売も来て 安住敦
菊日和なくて菊咲月の過ぐ 鷹羽狩行
菊日和もぐらの道は直ならず 鷹羽狩行
菊日和らくだの瘤に亡娘をのせむ 角川源義
菊日和シヤベルは砂利を掻鳴す 川端茅舎
菊日和出戻り患者にまた逢へり 角川源義
菊日和塗抹無菌と告げにくる 角川源義
菊日和夕さむくして鶴鳴けり 水原秋櫻子 新樹
菊日和夜はまどかなる月照りぬ 水原秋櫻子 古鏡
菊日和夜は満月をかかげけり 富安風生
菊日和天皇(すめろぎ)幸く在せ民と 日野草城
菊日和書塾の子らの行儀よく 山口青邨
菊日和浄明寺さま話好き 松本たかし
菊日和獄出しひとの言葉しづか 伊丹三樹彦
菊日和美しき日を鏤めぬ 星野立子
菊日和虻連れ立ちて来たるかな 高田風人子
菊日和身にまく帯の長きかな 鈴木真砂女 卯浪
菊日和道を放射に環状に 川端茅舎
菊日和馬は直ちに汗に濡れ 中村汀女
菊明けていま洲畑にわたる人 岡井省二 五劫集
菊映ゆる厨子より黒き御像 水原秋櫻子 蓬壺
菊時はあきぞ悲しき明樽の 正岡子規 菊
菊時は菊を賣る也小百姓 正岡子規 菊
菊晴に遊べる魂の我とあり 松本たかし
菊晴れて道ある限りかがやかに 稲畑汀子
菊暮るる倚門の母は今もあり 山口青邨
菊月のある夜の足のほてるかな 鈴木真砂女 居待月
菊月の役炭竃や休ませて 石川桂郎 高蘆
菊月の虻も蜂(すがる)も日に酔つて 佐藤鬼房
菊月や浴衣も入れて旅鞄 鈴木真砂女 居待月
菊月夜人よりつたふ手のぬくみ 鷲谷七菜子 黄炎
菊植る丈の畑あり山のおく 正岡子規 菊
菊活くるこの子去るとは思ほえず 相馬遷子 雪嶺
菊活けてあればゆかしや菊の句を 山口青邨
菊活けて夕立白き中に居る 渡邊水巴 富士
菊活けて外へ出ないで暮してしまふ 細見綾子 桃は八重
菊活けて空につながる窓明り 林翔 和紙
菊活けて荷物ちらばる宿屋哉 正岡子規 菊
菊活けて貧しき調度見じとする 林翔 和紙
菊活けて黄菊一枝殘りけり 正岡子規 菊
菊流る湖のどこより流れ来し 右城暮石 上下
菊淋し歌にもならで賤か庭 正岡子規 菊
菊火照り英霊かへる街せはし 石橋秀野
菊焚いてゐて一葉の忌なりしか 安住敦
菊焚いてをれば齢のふかくなりぬ 草間時彦
菊焚いて日暮れ待つほかなかりけり 星野麥丘人
菊焚いて晩年の*さたあるべからず 安住敦
菊焚きし跡の菊の葉司祭館 藤田湘子
菊焚きてモーツアルト忌の夕ベかな 草間時彦
菊焚くや沖に居られぬ波達達 永田耕衣
菊焚くや海青き日の裏日本 大野林火 月魄集 昭和五十四年
菊焚くや炎中にひらく花のあり 能村登四郎
菊焚く火月も光を加へたり 阿波野青畝
菊焚けば日射し萩刈れば時雨過ぐ 安住敦
菊畑に影と聳ちたる大江山 鷲谷七菜子 天鼓
菊畑に手鞠はひりぬ菊にほふ 山口青邨
菊畑に欅の落葉はじまりぬ 清崎敏郎
菊畑に水引き入るる鬼貫忌 岡井省二 鹿野
菊畑の夜霧にも言ひそびれける 日野草城
菊畑の大きく傾ぎたるに住む 岡井省二 有時
菊畑の日輪霜をはなれけり 飯田龍太
菊畑をかたづけてゐる烟かな 岡井省二 山色
菊畑笑ひて人の誠かな 岡井省二 鹿野
菊畠に干竿躍りおちにけり 杉田久女
菊畠や大空へ菊の気騰る 飯田蛇笏 山廬集
菊畠南の山は上野なり 正岡子規 菊
菊痩せて離々たる四ッ目垣となる 阿波野青畝
菊白き月ある夜々と思ひ馴れ 中村汀女
菊白くわが手の時計秒を刻む 三橋鷹女
菊白く死の髪豊かなりかなし 橋本多佳子
菊白しつまづき消えし父の脈 草間時彦 中年
菊白しとほき祖先(みおや)の世をおもふ 三橋鷹女
菊白しピアノにうつる我起居 杉田久女
菊白し亡き子のことはな問ひそ 上村占魚
菊白し何に音する夜更けの手 飯田龍太
菊白し安らかな死は長寿のみ 飯田龍太
菊白し死にゆく人に血を送る 相馬遷子 雪嶺
菊白し祈りの吾子のへに祈る 三橋鷹女
菊白し菊より白きゆめ一つ 三橋鷹女
菊皓とわが憂鬱に照りとほる 日野草城
菊目石店内霜のごときかな 阿波野青畝
菊石のさんらんとして年の暮 角川源義
菊積んで人中通る車かな 正岡子規 菊
菊籬農家の犬の吠えやすく 石川桂郎 含羞
菊純白にかなしみの香を放つ 飯田龍太
菊繚乱母がこのみの菓子買ひ来 三橋鷹女
菊繚乱職を退く願書く 山口青邨
菊花壇の障子をあぶる西日哉 正岡子規 菊
菊花展ありて境内人まばら 清崎敏郎
菊花展その簀透しに天守閣 鷹羽狩行
菊花展終りしテントなほ残る 桂信子 草影
菊花展針効かぬまで蜂は酔ひ 鷹羽狩行
菊花展雀ときどき降りてきぬ 亭午 星野麥丘人
菊花弁けさはじけゐし一二片 右城暮石 句集外 昭和十八年
菊花摘む新種の名づけたのまれて 杉田久女
菊花節大東亜圏晴一天 石塚友二 方寸虚実
菊荒れて日好し虻去り虻來る 正岡子規 菊
菊莟むことにとなけれ虔しみ湧く 右城暮石 句集外 昭和十五年
菊薫りまれ人来ますよき日かな 杉田久女
菊見にとアイロンの痕光らせて 林翔 和紙
菊見事死ぬときは出来るだけ楽に 日野草城
菊許り花賣の荷の物淋し 正岡子規 菊
菊買ふや杖頭の錢二百文 正岡子規 菊
菊賣に天長節の朝日哉 正岡子規 菊
菊賣るや十二街道の塵の中 正岡子規 菊
菊車きのふの谷に似てゐたり 岡井省二 山色
菊車朝風ビルの裏に満つ 飯田龍太
菊車角過ぐ芭蕉生家とや 福田蓼汀 秋風挽歌
菊選るや如来回在中の鉦 岡井省二 鹿野
菊鉢や咲きひろけたる二百輪 正岡子規 菊
菊鉢や咲きも咲いたる二百輪 正岡子規 菊
菊障子朝光あふれしめにけり 中村汀女
菊館桜の花の大き過ぎ 山口誓子
菊館檜葉の青嶺を富士とせり 山口誓子
菊鶏頭山祗にこゑありにけり 岡井省二 有時
菊黄なり反省の日々しづかにて 山口青邨
菜に混ぜて小菊商ふ嵯峨の口 飴山實 次の花
菜畑に菊残しあり浄瑠璃寺 細見綾子
菜畑に黄菊一とうね上越線 細見綾子
菜畠のわつかに青し菊の花 正岡子規 菊
菰強く縛せる菊荷重たしや 右城暮石 上下
萩と菊あはれ一炬の灰と消え 阿波野青畝
萩の根を移しつ菊の根を分けつ 正岡子規 摘草
萩刈りぬ菊に朝日を受くるべく 正岡子規 菊
萩燃えて菊燃ゆるとき匂ひそむ 阿波野青畝
落し文菊畑照るに出でにけり 岡井省二 鹿野
葉桜や菊の御紋のたうとしく 山口青邨
著せ綿を除けば菊の赤さかな 渡邊水巴 白日
著馴れたる蒲團や菊の古模様 正岡子規 蒲団
蓬とも菊とも畑の冴え返り 右城暮石 句集外 昭和六年
蓬菖蒲菊作る家の門口に 正岡子規 菖蒲
薔薇を移して跡に莟の菊を植ゑし 正岡子規 菊
藁屋根の雫に痩する小菊哉 正岡子規 菊
蘭の名を問ひ菊の名を問はざりし 後藤夜半 底紅
虚子庵のさかりの菊をまたぎ訪ふ 山口青邨
號外を受け取る菊の垣根哉 正岡子規 菊
號外を投込菊の垣根哉 正岡子規 菊
蛇笏忌や振つて小菊のしづく切り 飯田龍太
蜜足りし蜂針金に菊花展 鷹羽狩行
蜥蜴の子這入りたるまま東菊 松本たかし
蝦夷菊や古き江戸絵の三度摺 内藤鳴雪
蝶来りさびしからずや白菊のみ 山口青邨
蠣がらは垣根に白し菊の花 正岡子規 菊
行く秋や菴の菊見る五六日 正岡子規 行く秋
袖は一重二重合羽や菊の花 正岡子規 菊
袖交ひて女はまるく菊の雨「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
裳裾より木の香ただよふ菊館 石川桂郎 高蘆
裸子に凜々しき菊の花蕾 飯田龍太
見をるうち菊のましろさ眼より溢れぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
見事なるはたはた下りぬ菊日和 水原秋櫻子 蘆雁以後
観音力念じてささぐ菊白し 水原秋櫻子 蘆雁
観音経唱へつつ菊受けてをり 水原秋櫻子 蘆雁
討入りの義士皆菊の装束して 右城暮石 句集外 昭和四十六年
読み倦みしとき瓶の菊蝕める 赤尾兜子 蛇
誰に賣らん金なき人に菊賣らん 正岡子規 菊
谷の家は菊も焚かれしお取越 岡井省二 鹿野
谷の家や朝日に育つ菊少し 正岡子規 菊
谷の戸や菊も釣瓶も霧の中 飯田蛇笏 山廬集
谷川に臨んで菊の宿屋哉 正岡子規 菊
豆程にむらがる菊の莟かな 正岡子規 菊
豊の日に酔へるさまなる黄菊かな 日野草城
貧しさの差なき十戸の菊日和 鷹羽狩行
買ふて來た菊に水やる手燭哉 正岡子規 菊
買ふて來た菊を見せたる手燭哉 正岡子規 菊
買物籠に菊の花のぞかせてただいま 荻原井泉水
賞多き菊花展にて疲れたり 右城暮石 句集外 昭和四十一年
賢しらに菊描く墨を惜しみけり 相生垣瓜人 微茫集
赤菊の蕾黄菊の蕾哉 正岡子規 菊
赤菊をそへし柚味噌の贈物 正岡子規 菊
赤飯の炊き殖え菊もさかりなり 能村登四郎
起せども腰が拔けたか霜の菊 正岡子規 霜
起ちつ居つ楽屋の菊に会主かな 松本たかし
足場かく下や松菊猶存す 内藤鳴雪
足音かつ十日の菊の音したり 岡井省二 前後
路地菊に 真水被りの合羽漁夫 伊丹三樹彦
跳ねる鰡 野地菊に魚籠覗きこめば 伊丹三樹彦
身仕舞や縁にいたはる菊にほひ 及川貞 夕焼
身弱にて買う児への汽車妻への菊 楠本憲吉 孤客
軍艦のデッキの菊や佳節凪ぎ 飯田蛇笏 山廬集
軍鶏の貌朱に爛れたり菊日和 水原秋櫻子 残鐘
軒高き杣の懸崖菊盛り 鷹羽狩行
辻が花一度は着たし菊日和 鈴木真砂女 都鳥
返り血といふはなかりし菊衣 後藤比奈夫
逃れんと立ち上り菊焚かれけり 上野泰
通らせてもらふ小春の菊畠 上田五千石 琥珀
通夜の夜の冷酒菊正君も飲め 安住敦
進水の大舶菊の花を舳に 日野草城
遂にこぬ晩餐菊にはじめけり 杉田久女
道々の菊や紅葉や右左 正岡子規 紅葉
道の菊杖を停めてあはれみぬ 富安風生
道ばたに伏して小菊の情あり 富安風生
道長き池田の町の担ひ菊 右城暮石 句集外 大正十四年
遠からぬ浪のしづかに菊の庭 鷲谷七菜子 黄炎
遠きゆゑ会釈を深く菊日和 鷹羽狩行
遠嶺明りに菊の残暮れしめず 上田五千石『森林』補遺
遺児雪子大きくなつて黒い菊のように坐り 荻原井泉水
遺影なほふくいくとして菊の中 鷹羽狩行
遺影に菊吾は生きゐて飯を食ふ 山口誓子
酒壺に十日の菊ぞ挿したまへ 石川桂郎 四温
酒買ひにどこへ行きしぞ菊の花 正岡子規 菊
酒買ふて酒屋の菊をもらひけり 正岡子規 菊
醉ざめや十日の菊にたばこのむ 正岡子規 菊
里近し酒賣る家の菊の花 正岡子規 菊
重からず八艘飛びの菊衣 鷹羽狩行
重陽の菊をたたへし紫苑かな 森澄雄
野を染めて友禅菊といふとかや 後藤比奈夫
野分して葎の中の小菊哉 正岡子規 菊
野紐菊すでに綿虫とびはじめ 森澄雄
野路菊も身辺もまた晴れ渡り 後藤比奈夫
金屏の金には染り菊の白 後藤比奈夫
金持の隱居なりけり菊つくり 正岡子規 菊
金色に咲くとは菊の口をしき 正岡子規 菊
金賞の字がまだ濡れて菊花展 鷹羽狩行
金銀のほか白もまた菊の賞 右城暮石 上下
金閣の楼に懸崖菊垂らせ 山口誓子
釦孔一花の菊をぶすと挿す 阿波野青畝
鉄路より低く住着き菊咲かす 伊丹三樹彦
鉢の菊蕾びつしりかな女逝く 石田波郷
鉢の菊重たくて持ち運べずと 右城暮石 句集外 平成二年
鉢の菊門より見えて菊日和 水原秋櫻子 餘生
銀燭の燦爛として菊合 正岡子規 菊
銀翼に鵯の谺や菊日和 川端茅舎
銀翼の光飛び末ぬ菊日和 川端茅舎
銀髪ゆたかに莞爾として菊なり 荻原井泉水
鏡店菊ゐて鏡澄み通し 三橋鷹女
長期戦菊は斯く咲き斯く匂ふ 渡邊水巴 富士
門のべにをののきながら菊残る 阿波野青畝
門の内に菊つくりたる小料理屋 正岡子規 菊
門の菊妻が愛してをれば憑く 山口青邨
門の菊西日の人の澄みゆける 臼田亜郎 定本亜浪句集
門口や稻干すそばの菊の花 正岡子規 菊
門川の橋に小菊の鉢おいて 山口青邨
門辺より咲き伏す菊の小家かな 杉田久女
間仕切りを払ひ灯二つ菊なます 鷹羽狩行
間借して塵なく住めり籠の菊 杉田久女
関跡に地蔵据ゑけり菊の秋 河東碧梧桐
関跡に木挽が家や菊の花 河東碧梧桐
闘鶏やもの喰まぬ眼の菊の白 石橋秀野
阿房宮とは食べにくき黄菊の名 後藤比奈夫
陶土練る菊は蕾を固くして 鈴木真砂女 夕螢
隠耶蘇いまもかくるる油菊 山口青邨
隱れ家や贅澤盡す菊の鉢 正岡子規 菊
雁名残り文人菊池逝けるよし 飯田蛇笏 雪峡
雑菊と云ひて床しき菊ありし 相生垣瓜人 明治草
雑菊に足りぬ粗菊に甘んじぬ 相生垣瓜人 負暄
雑菊に足るべき我の菊日和 相生垣瓜人 負暄
雑菊の雑然たるぞ目安かる 相生垣瓜人 負暄
雛の日を白菊で埋めつくされし 金子兜太
雛菊に倦みて羊となりにけり 中村苑子
雨に伏す小菊曼陀羅の中のわれ 山口青邨
雨ふりて古き河港に菊伏しぬ 山口青邨
雨ふれば雨ににじみぬ残る菊 山口青邨
雨をふくむ菊玲瓏とすがれけり 渡邊水巴 白日
雨上り菊拜觀の草履哉 正岡子規 菊
雨降れば雨の翳さす菊花展 村山故郷
雪なく暮るる日の畑の菊の花 中川一碧樓
雪に置く菊は屍に置く如し 古舘曹人 能登の蛙
雪はやき赤岳農婦菊を焚く 及川貞 夕焼
雪掻いて黄菊の花のあらはるゝ 高野素十
雪積むか夜の膳に咲く菊なます 角川源義
雲の上に雲流れゐむ残り菊 赤尾兜子 玄玄
雲や日やもつてのほかの菊畑 山田みづえ まるめろ
雲洩れ日妻がかがむは菊摘めり 草間時彦 中年
雲間より降り注ぐ日は菊畠に 杉田久女
霜いたみ少しも見せず黄の小菊 右城暮石 句集外 昭和十年
霜ためて菊科の蕚聳えたる 前田普羅 飛騨紬
霜の小菊に鶏鳴はあとかたもなし 飯田龍太
霜の菊来世も汝と添ひとげむ 上田五千石 天路
霜月も末の雨浸む菊葎 水原秋櫻子 霜林
霜月や痩せたる菊の影法師 正岡子規 霜月
霜菊や岸に及べる舟の波 岡本眸
霜菊や母に外出の一と日あり 森澄雄
霧とびて馬籠の菊もうつぶしぬ 阿波野青畝
霧の香のなかの菊の香一葉忌 飯田龍太
霧を払ふ風白菊に吹きあたる 日野草城
霧深し白菊は葉も霑れにけり 日野草城
霧白し白菊は霧より白き 日野草城
霧見えて暮るる早さよ菊畑 中村汀女
露かわく葉の濃みどりに菊の虫 西島麦南 人音
露けしや青根こけしは菊こけし 山口青邨
露霜の流るる菊をわが綾羅 山口青邨
靈山の麓に白し菊の花 正岡子規 菊
面やせて来て咲く菊に相見ゆ 中村汀女
面白う黄菊白菊咲きやつたよ 正岡子規 菊
鞴の火くれなゐ菊の花は焦さず 山口青邨
音白く聖書をめくり菊日和 上田五千石 風景
顧みて菊花の白き夜学かな 日野草城
風をいとふ中年婦人菊の燭 飯田蛇笏 雪峡
風除やその中の菊外の菊 山口青邨
颱風のあとの菊畑匂ひ立つ 日野草城
飛行機のとゞろけば菊に飯うまし 渡邊水巴 富士
食べる菊仏の菊と菊多し 高野素十
食堂のまだはじまらぬ菊の鉢 清崎敏郎
飾り了へ掃き了リたる菊花展 深見けん二
香も八重の八重垣姫の菊衣 鷹羽狩行
馬肥えて臙脂の菊を踏みにけり 永田耕衣
馬蹄去つて菊提げし僧に逢着す 正岡子規 菊
駅路も古りぬ一村菊盛り 村山故郷
駈け入りてくづるる顔や菊の中 草間時彦 中年
騎馬縁の今も残れり菊咲かせ 山口青邨
鬼検事菊を作りて好々爺 日野草城
鳥居まで長々幄舎菊花壇 阿波野青畝
鶏白しにはかに菊の青蕾 飯田龍太
鶴の里菊咲かぬ戸はあらざりし 杉田久女
鶴首の壺廣口の壺と菊挿して挿しあまり 荻原井泉水
鶴鳴いて郵便局も菊日和 杉田久女
黄かつ黄菊の花食す夜ひとつ 岡井省二 大日
黄と白の福助菊や安静あけ 角川源義
黄の菊に夕闇を刷く二度三度 山口青邨
黄をもつて祝ふ菊さへ手にあれば 古舘曹人 能登の蛙
黄白の菊や相和し相背く 相生垣瓜人 負暄
黄菊ぬれ白菊うるむ朝となんぬ 渡邊水巴 白日
黄菊垣つねの笑まひのころころと 佐藤鬼房
黄菊白菊お六の像は厨子の中 山口青邨
黄菊白菊一もとは赤もあらまほし 正岡子規 菊
黄菊白菊柿赤くして澁し 正岡子規 柿
黄菊白菊自前の呼吸すぐあへぐ 石田波郷
黄菊白菊菊作者いま白に触れ 橋本多佳子
黄菊白菊通夜の盃をんなにも 星野麥丘人
黄菊白菊鞐もうすき女足袋 石川桂郎 含羞
黄豆菊に汲みあぐる水や輝けり 杉田久女
黙契の重みに菊に額づくのみ 林翔 和紙
黝し日の白菊の置く影は 日野草城
鼈甲の帆船すすむ菊の香に 山口青邨

以上
by 575fudemakase | 2016-11-12 14:33 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)
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探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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