例句を挙げる。

あかつきの甘藷蔓焚火鶴を待つ 河野静雲 閻魔
あけぼのの鶴にはじまる初日記 吉野義子
あやめわかぬ雪天田鶴の声落ち来 大橋敦子
あをあをと鶴を織りゐる雪女 有馬朗人 耳順
いざ祝え鶴をかけたる幸木かな 松瀬青々
いざ祝へ鶴をかけたる幸木かな 松瀬青々
いづ辺より鶴の浮世ぞ吹雪き浚ふ 齋藤玄 『無畔』
うたかたの虹たつ鶴の野に来たり 大島巨雨
うちつれて鶴歩みくる淑気かな 西山東渓
うらゝかや躑躅に落つる鶴の糞 日野草城
おもむろに鶴歩み出づうらゝかな 高橋淡路女 梶の葉
お祭りを仕切るあたまは鶴ヶ嶺 仁平勝 東京物語
お隣りや銀座うら舗鶴を吊る 飯田蛇笏 雪峡
かくて暮雪持たざる人は鶴のごとし 細谷源二
かくまでも鶴啼くものか凍つる夜は 猿渡青雨
かけかへて鶴の相舞ふ六日かな 松根東洋城
きさらぎの夜を創りし鶴の声 河野多希女 こころの鷹
きらきらとしぐれくるなり田鶴の空 大橋櫻坡子 雨月
くゝりたる鶴の細首をもたげけり 妻木 松瀬青々
こがらしのあとの青空風鶴忌 山岸 治子
さのゝ小春和哥の浦辺は鶴あらん 松岡青蘿
しとやかなこと習はうか田打ち鶴 広瀬惟然
しらけたる月や鶴寐る梅の奥 幸田露伴 拾遺
すさまじき垂直にして鶴佇てり 齋藤玄 『狩眼』
すすき野がひつぱる鶴飼橋の索 田村了咲
すてゝある石臼薄し桐の華 鶴声 古句を観る(柴田宵曲)
とびそうな鶴のリボンや七五三 山口都茂女
とぶ田鶴の羽おとす見えて去ぬ日あり 森川暁水 淀
なほ高きよりあかつきの鶴一つ 中杉隆世
のどかさよ鶴の齢を六七羽 越人
はてしなき雪野に鶴は朱を点ず 木下ふみ子
はるの海鶴のあゆみに動きけり 松岡青蘿
ひえびえとただ白きもの鶴病めり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
ひとつ鶴地に降りるなくただに舞ヘり 森川暁水 黴
ひと波にしづまる産湯鶴の天 赤松[ケイ]子
ふと雨ふりふと雨やどり鶴とKなり 阿部完市 春日朝歌
ふらこゝや人去つて鶴歩みよる 尾崎放哉
ほうほうと媼鶴呼ぶ声冴ゆる 川村ひろし
ほの~と鶴を夢みて明の春 尾崎紅葉
まづ来る鶴の一羽や空の秋 康成
まなうらの自尊の鶴を舞はしむる 沼尻巳津子
まぶしさの鶴おちてくる北は紺 宇多喜代子
まみどりの落葉も雨に風鶴忌 八木林之介 青霞集
みなかみは鶴の乙女か流れ芹 中勘助
むくろじの黄葉明りや風鶴忌 八木林之介 青霞集
やがてたつ鶴粛然と雪の野に 竹下陶子
やすき瀬や冬川わたる鶴の脛 高井几董
ゆく月や国なきかたに田鶴の声 高井几董
ゆつくりと来て老鶴の凍て仕度 能村登四郎 菊塵
ゆふぐれの鶴はをみなにて胸さむし胸さむければひと恋ふならむ 今野寿美
よく晴れて鶴を数へる鶴居村 福永法弘
らうそくの涙氷るや夜の鶴 蕪村 冬之部 ■ 鶴英は一向宗にて、信ふかきおのこ也けり、愛子を失ひて悲しびに堪えず、朝暮佛につかふまつりて、讀經をこたらざりければ
わが耳に鶴唳年の改る 加藤三七子
クリスマスカードの鶴よドイツヘ飛べ 山本歩禅
ツンドラゆく鶴より細く首延べて 八木三日女 赤い地図
マスクして鶴の白さにとなりけり 所山花
ランチタイム禁苑の鶴天に浮き 西東三鬼
一月三日は霜のとけて乾いた道の鶴が岡 詣る 荻原井泉水
一片の雲抱く月に鶴翔ちぬ 小原菁々子
一羽舞ふは一羽ほろびの雪の鶴 齋藤玄 『無畔』
一羽舞ふもと大たむろ田居の鶴 皆吉爽雨 泉声
一輪の竜胆餐けよ鶴の墓 阿波野青畝
一鶴の座標を雪に定めゆく 金箱戈止夫
七福の一福神は鶴を飼ふ 山口青邨
七種や七日居りし鶴の跡 松岡青蘿
万太郎安鶴も逝きしぐれかな 松山足羽
万歳の鶴の広袖ひろげ舞ふ 福田蓼汀
万歳や雀驚く鶴の丸 野村喜舟 小石川
三樹彦禿げわれに白髪や鶴唳忌 八幡城太郎
下野にとどめ刺されし寒さかな(鶴連衆と赤麻に遊ぶ) 岸田稚魚 『雪涅槃』
並み山の暁けゆく端より田鶴わきぬ 森川暁水 淀
丹頂の頭巾似あはむ霜の鶴 高井几董
丹頂の鶴の白玉凍りけり 渡邊水巴
丹頂が来る日輪の彼方より 黒田杏子 木の椅子
丹頂が鯵の頭をのこしけり 辻桃子
丹頂と在ればつゝしみ寒鴉 園田夢蒼花
丹頂に日本の色極まれり 高澤良一 鳩信
丹頂に春日いつまで妻遠し 細川加賀 『傷痕』
丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子
丹頂のさて水に入る日永かな 三好達治 路上百句
丹頂の嘴交す流氷期 喜多みき子
丹頂の気高く舞ひて春立てり 墓田いさを
丹頂の白息天へ吐かれけり 嶋田麻紀
丹頂の紅のもつとも凍ててゐし 石鍋みさ代
丹頂の翔つとき天地息合はす 木村敏男
丹頂の翔び立つ胸を開きけり 中司信子
丹頂の頭巾似あはむ霜の鶴 高井几董
丹頂の首を正して巣籠れり 福山英子
丹頂の鶴の白玉凍りけり 渡邊水巴
丹頂もさだかに鶴の巣籠れる 岡本浩村
夢さめて家族と丹頂鶴をよび 阿部完市 春日朝歌
姿見の在らばとおもふ丹頂に 高澤良一 寒暑
息白し餌を撒く人も丹頂も 牧野寥々
緑立つ風丹頂のうなじ打つ 清水基吉
花吹雪逃げて丹頂別れ居り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
詩の 丹頂の鶴となつての 昇天だつた 吉岡禅寺洞
飼はれ鳴く丹頂蝦夷の大夏野 大橋敦子 匂 玉
首のべて啼く丹頂は雪恋ふか 古賀まり子 緑の野以後
鶴引くや丹頂雲を破りつゝ 東洋城千句
九皐(きうかう)に達して鳴けリ鶴千羽 加倉井秋を
九皐の鶴も馴れたる春野哉 玉子
二三歩をあるき羽博てば天の鶴 野見山朱鳥
二位どのが田鶴(たづ)ゑがかせし屏風かな 筑紫磐井 野干
五月雨に鶴の足短くなれり 松尾芭蕉
人に死し鶴に生まれて冴返る 夏目漱石
人去りて鶴はふたゝび冱てにけり 竹末春野人
人音を鶴もしたふて若菜かな 千代尼
今年また渡来の鶴の親しもよ 中村苑子
仲秋や屋根の上行く大き鶴 渡辺水巴 白日
仲秋や空めぐる鶴かたむかず 渡辺水巴 白日
何処やらに鶴の声聞く霞かな 井月の句集 井上井月
何處かに瀧震へとまらぬ紙の鶴 渋谷道
何處やらに鶴の聲聞く霞かな 井上井月
余所者を鶴痛烈に越えゆけり 高橋たねを
便りとて梅に鶴千羽折るまで生きていたいと言う 荻原井泉水
傘松と飼はるゝ鶴と深雪かな 野村喜舟 小石川
元の階のぼる羽摶ちをつよく鶴 大岳水一路
元日やうす濁りたる鶴の水 富田うしほ
元日を飼はれて鶴の啼きにけり 臼田亜浪
先導の鶴の初声ひびきけり 米森えいじ
八千の端の鶴と畦あゆむ 中戸川朝人
八千の鶴に餌をまき悴めり 原 和子
八千の鶴月光をほしいまま 原裕 出雲
内部にて卵ころがる鶴機関(からくり) 大屋達治 繍鸞
再た鶴が黙想の畝にユーラシアを書く 加藤郁乎
写生する子に突き出して鶴の嘴 辻桃子
冬ざれやころゝと鳴ける檻の鶴 秋櫻子
冬ざれや拾ひ足して渚鶴 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬の夜の巷に鶴を飼ひなれし 犀星
冬晴の雲井はるかに田鶴まへり 杉田久女
冬晴や翼触れ舞ふは親子鶴 羽部洞然
冬暁や紙鶴紙に戻りゆく 宇多喜代子
冷房の鶴に乗りたる仙人画 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
凩の空見なほすや鶴の声 去来
凩空見なをすや鶴の声 向井去来
刈りかけし田面の鶴や里の秋 松尾芭蕉
刈るほどに*ひつじのみのり鶴の村 大岳水一路
初しもや煩ふ鶴を遠く見る 蕪村遺稿 冬
初声を鶴ともきかめ松の花 上島鬼貫
初旅や存分に見し鶴の舞 大橋敦子 勾 玉以後
初日いま天なる鶴に田の鶴に 兼折風外
初日影鶴に餌を飼ふ人は誰 青蘿
初晴や男鶴につきて母子鶴 吉野義子
初空の戦くや鶴の羽撃つほど 尾崎紅葉
初能の鶴の大砲皆舞ヘリ 長谷川かな女 雨 月
初雪へ園丁鶴を先づ放つ 金田きみ子
初雷や一羽となりて狂ふ鶴 久米正雄 返り花
初霜やわづらふ鶴を遠く見る 蕪 村
初鴉百羽の鶴をいざなひぬ 吉野義子
別の羽つかう男と鶴の空 永末恵子
前に出る鶴の片脚長きかな 河野多希女 両手は湖
十歩より遠くは行かず雪の鶴 樋笠文
単衣きてまだ若妻や鶴を折る 星野立子
原鶴は月ある夜も鵜飼舟 高濱年尾
去年の鶴去年のところに凍てにけり 水原秋櫻子
双鶴の離れて芙蓉水に濃き 渡邊水巴 富士
名月やたしかに渡る鶴の声 服部嵐雪
名月や粟に肥えたる鶴の友 浜田酒堂
向う山舞ひ翔つ鶴の声すめり 杉田久女
吠え犬に鶴七千羽おし黙る 品川鈴子
吹き起こる秋風鶴をあゆましむ 石田波郷
呼ぶ鶴も応ふる鶴も天向けり 能登裕峰
啄木の旧居の庭の枯柳 鶴飼 風子
啼きあぐる鶴口中の真くれなゐ 上野さち子
啼きしあと鶴は深雪の中あゆむ 安田 晃子
啼き移る田鶴に運河を拓きゐる 神尾久美子 掌
啼く田鶴の一身銀の日矢の中 橋本榮治 麦生
嘴が重たくなりて痩せし鶴 富澤赤黄男
噴水のつつつつつつと鶴の臑 高澤良一 素抱
噴水のつらら吐き出す鶴の口 村上辰良
噴水の音木立透き風鶴忌 八木林之介 青霞集
噴水やしぶきに濡れて鶴の居り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
園丁と鶴と暮れゐる落葉かな 飯田蛇笏 山廬集
土佐鶴に鱶の湯晒し春の雨 高澤良一 寒暑
土古く渡来の鶴を歩かしむ 吉岡禅寺洞
塒鶴幼きこゑも混りたる 岸田稚魚 『花盗人』
塒鶴肩を落して降り来たり 岸田稚魚 『花盗人』
夏の闇鶴を抱へてゆくごとく 長谷川櫂(1954-)
夏霧の飛ぶや鶴富姫の家 早瀬紀子
夕づくと脚下げて鶴降りて来し 伊藤通明
夕影の青芝踏みて鶴涼し 日野草城
夕映えの雲より生れし鶴の棹 今井つる女
夕田鶴の宿の裏にも来て啼ける 村上青史
夕空を鋭く鶴の流れけり 中岡 毅雄
夜の鶴鴛鴦の中よりも哀なり 加舎白雄
夢さめて家族と丹頂鶴をよび 阿部完市 春日朝歌
夢寐の間体内を鶴よぎりけり 石母田星人
大年の鶴・鳶・鴉天わかち 吉野義子
大空に舞ひ別れたる鶴もあり 杉田久女
大雪原翔ちて清らな鶴の脚 禰寝雅子
大霜の空まつすぐに鶴が来る 大串章 百鳥
天さかる鄙をとめ野菊奉れ(奉迎鶴駕) 石井露月
天に水流るるごとし鶴翔くは 吉野義子
天に舞う鳩地を歩む鳩初詣する(鶴が岡) 荻原井泉水
天の原鶴去つて残暑すみにけり 渡辺水巴 白日
天の画布いま一面に鶴群るる 大岳水一路
天の竟に入るまで羽摶つ雪の鶴 都筑智子
天の鶴雌雄の紅をならべたる 大岳水一路
天上の誤謬の鶴を撃つ友よ 豊口陽子
天心に鶴折る時の響きあり 攝津幸彦
天清く鶴能く高し春の霜 内田百間
天長節御苑の鶴の首長し 鈴木余生
天隠る鶴のうららを野に賜ひ 赤松[けい]子 白毫
太箸の鶴にあやかる思ひあり 尾崎紅葉
夫唱婦随か婦唱夫随か鶴歩む 田部黙蛙
女房は鶴/糸見せぬ身八口 仁平勝 東京物語
如月や鶴翼樓人雲を恋ひ 松根東洋城
妻と希望に近ずいたように鶴を見ている 橋本夢道 無礼なる妻
姿よき鶴にて群を離れ立つ 古賀まり子 緑の野以後
子づれ鶴ばかりや沼の秋立てり 石井とし夫
子の折りし鶴を栞に秋灯 佐藤美恵子
子の田鶴は嘴にこそしれ舞へりけり 森川暁水 淀
子を連れて落穂拾ひの鶴の群 杉田久女
宵闇に漁火鶴翼の陣を張り 松本たかし
家売た金なくなりぬ秋の暮 鶴英 五車反古
寄り添ひて野鶴はくろし草紅葉 杉田久女
寒暁の鶴啼くこだまかけめぐる 貞吉 直子
寒曝野を夜歩きの鶴ならん 廣江八重櫻
寒月を呑む鶴すこし亀もすこし 攝津幸彦
寒空や鶴しづ~と汚れつゝ 佐野青陽人 天の川
寒菊を挿し喰初の鶴の椀 長谷川かな女 牡 丹
小坂殿のはり縄朽ちてあられかな 鶴汀 五車反古
小春日の鶴とは臭うものなりけり 永末恵子 発色
屠蘇酌むや膳の上なる鶴の羽 大谷句佛 我は我
山冷にはや炬燵して鶴の宿 杉田久女
山峡の鶴のまろ寝に月雫 上野さち子
山眠るや谷空一仙鶴の背に 松根東洋城
山茶花の大樹花満つ鶴の村 朱鳥
山葵田の三万坪の秋の水 鶴飼 風子
山風に鶴が啼いたる寒さかな 飯田蛇笏 山廬集
巣籠の鶴のほとりを掃いてをり 神吉五十槻
左義長の火中に鶴の舞へりけり 古舘曹人 砂の音
帰り花鶴折るうちに折り殺す 赤尾兜子(1925-81)
干拓の土よろこびて田鶴棲めり 小原菁々子
干柿は鶴の子といひ種ばかり 下村梅子
年の夜や山科までは一里半 素十 (祇園久鶴、橙重氏等と)
年玉のかざしの鶴の挿せば舞ふ 森川暁水
幾春の文の齢や鶴が岡 上島鬼貫
幾春をまたいで鶴のあゆみ哉 幸田露伴 江東集
弥生はや一羽は啼けり親子鶴 古舘曹人 砂の音
御降や寂然として神の鶴 寺田寅彦
忘年の山河はまざと鶴翔たず 齋藤玄 『無畔』
息抜いて鶴の着地のおのづから 上野さち子
意思表示してからのちの紙は鶴 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
懐手して鶴番の大男 染谷秀雄
我がためか鶴食み残す芹の飯 松尾芭蕉
我ためか鶴はみのこす芹の飯 芭蕉
戸を打つは鶴の伴れきし風ならむ 大串章 百鳥
折り鶴にひとり遊びの日永妻 高澤良一 素抱
折り鶴の大発生の八月くる 敷地あきら
折紙の鶴の処分にまた困る 池田澄子
抱擁し前世を鶴と疑わず 山下正雄
撒餌して鶴の別れを惜む子ら 瀬戸本よしえ
支那海の大き没日や鶴の舞 能勢真砂子
旅の鶴鏡台売れば空のこる 寺山修司 花粉航海
旅人や丘のぼりきて田鶴の墓 大橋櫻坡子 雨月
旅鶴や身におぼえなき姉がいて 寺山修司 花粉航海
日に日に薬の紙を手にして三羽の鶴 海重抱壷
日の春をさすがに鶴の歩み哉 榎本其角
日本髪の母の写真に鶴が来る 田中櫻子
日照雨鶴と鶴とがすれちがふ 富澤赤黄男
早春の園鶴涙を放ちけり 富安風生
明日田鶴(あしたづ)のあすも春なし袖の月 篭口 俳諧撰集玉藻集
星月夜盗むならあの鶴の首 鳥居真里子
星消えてたちまち鶴をふやす天 大岳水一路
春たつや静かに鶴の一歩より 黒柳召波 (1727-1771)
春めいて空の半円鶴に垂れぬ 吉岡禅寺洞
春園や妻と佇つなる鶴の前 下村槐太 天涯
春服に鶴のマークのクルー嬢 高澤良一 寒暑
春水を上りし鶴の羽ばたける 星野立子
春田打つ鶴女房の村はづれ 有馬朗人 耳順
春荒れのひと夜や鶴の釘隠し 長崎玲子
春雨やあはれ鶴折る物狂 松根東洋城
春雨や鶴の七日をふりくらす 蕪村遺稿 春
春雷に砂蹴る鶴の足掻かな 内田百間
春風に浮いてすぐ死ぬ紙の鶴 坪内稔典
晴れ渡る八代の空は鶴のもの 水田千代子
暁けはなれつゝ鶴の声俄かなり 小坂蛍泉
暁紅に山々ゆらぎ鶴の聲 篠田悌二郎
暁闇を下りくる鶴の声つらね 小野 喬樹
書を閉ぢて鶴のひとこゑ栞とす 大岳水一路
月の暈著て三千の塒鶴 大岳水一路
月の面に引き流したる鶴の脚 大橋敦子
月下なる青きつららに鶴の村 赤松[けい]子 白毫
月光に舞ひすむ鶴を軒高く 杉田久女
月明にひかりとなりて鶴佇てり 大山安太郎
月明の水にしたしき鶴の脚 原 和子
月更けて鶴が機織る遠こだま 渡辺恭子
月触るる一瞬鶴となる楽器 石母田星人
朝々の鶴の餌を撒く麦五俵 渋田ト洞庵
朝牡丹喨々鶴の聲おこる 篠田悌二郎
朝顔よおもはじ鶴と鴨のあし 山口素堂
朝鶴のすぐ夕鶴と旅寒し 赤松[けい]子 白毫
朝鶴の声が障子にひゞくほど 松本圭二
朧夜や首さげて飛ぶ群鶴図 古舘曹人 樹下石上
木かくれて鶴一聲の涼しさよ 会津八一
木がらしの空見直すや鶴のこゑ 去来
木枯や晩年鶴のごと吹かれ 桑原視草
村の灯のまたたきもせず塒鶴 佐藤艸魚
村人にこゝろ許して田鶴あそぶ 山口水士英
村人に田ごとの鶴となれりけり 阿波野青畝
村人の鶴にのこせし落穂とも 亀井糸游
来し方や鶴が連れたる鶴の空 三橋敏雄 畳の上
東風の鶴逆毛たてて静なり 山高雨声
松とのみどんいどと鶴の冬籠り 広瀬惟然
松の苔鶴痩せながら神の春 夏目漱石 明治三十二年
松原に稲を干したり鶴の声 椎本才麿
松島の鶴になりたや春の空 乙二
松島や鶴に身をかれほとゝぎす 曽良
松明や鶴の林の夕煙 方山
枯深し千の願ひの鶴褪せて 赤井淳子
枯蘆に鶴のたむろのひそかなる 新田 郊春
枯蘆に鶴の脛そふ洲崎哉 猶存
柝鶴蘭鏡にうつり虎落笛 阿部みどり女
梅園の鶴は曇らず人間の自嘲うす暗し 橋本夢道 無禮なる妻抄
梅白し昨日や鶴を盗まれし 芭蕉
梅見ばや竹の細枝鶴の脛 中勘助
梅雨の夜や姙るひとの鶴折れる 田中冬二 行人
梅雨寒の黴を育てて鶴のごと 高橋睦郎 稽古飲食
棟の上大工が鶴を見上げをり 大串章 百鳥
植樹祭飼はるる鶴は嘴そろヘ 細谷源二 鐵
極月や鶴の餌を売る禰宜が宿 吉武月二郎句集
樹のそばの現世や鶴の胸うごき 飯島晴子(1921-2000)
檻の鶴いとしみのぞく深雪かな 大場白水郎 散木集
檻の鶴八ッ手の花をついばめる 右城暮石 声と声
死ぬまでに私は歌人か、鶴みたいに羽を抜き続けそれでもいいか 河野裕子
残る雪鶴郊外に下りて居り 河東碧梧桐
残月に鶴放ちけり嶺の人 尾崎紅葉
残月のひかりつ呆けつ田鶴のそら 森川暁水 淀
水に映ゆ茜さみしも鶴の里 大橋敦子 勾 玉以後
水ふくみて鶴日を仰ぐ冬至かな 渡邊水巴 富士
水仙や老いては鶴のごと痩せたし 猿橋統流子
氷面鏡鶴ともならず畦を行く 神蔵 器
汐越や鶴はぎぬれて海涼し 芭蕉
泛き出づる氷の底の鶴の色 斎藤玄
泰山木の花かげに鶴もゐたり 栗林千津
浅春の夕日の中に鶴なけり 田中冬二 行人
涅槃図に鶴すべりをる樹もあらむ 大屋達治 繍鸞
涼風や障子にのこる指の穴 鶴声(おさなき人の早世に申しつかわす) 古句を観る(柴田宵曲)
深雪より嘴をぬき鶴歩む 大澤ひろし
渡り来る鶴の空あり初御空 坂口幸江
温泉を珠と育てて弥生鶴の里 古舘曹人 砂の音
湿原は鶴の涯なる二月盡 古舘曹人 砂の音
満月をかかげて雪の八代田鶴 下村梅子
潮騒の雄心鶴の来る日なり 長野澄恵
灘風にあらがふ田鶴の棹なさず 向野楠葉
火の山の麓に二つ秋の湖 鶴飼 風子
無事に来し子鶴を殊によろこべり 蘆高昭子
熱燗や鶴を見にゆく話など 樋笠文
爪立ちに鶴を覗ひ妻凍つる 原裕 出雲
父の泪と鶴の泪と二を包み 阿部完市 春日朝歌
片足をあげ鶴の真似春着の子 穂苅きみ
琴の音に鶴の歩の長閑さよ 田村西男
田の田鶴にそらなる田鶴に朝移る 森川暁水 淀
田の闇をかうかうと鶴争へり 上野さち子
田居の鶴雲井の鶴と夕づける 小原菁々子
田鶴あそび一つは翔る稲架の空 石塚友二 光塵
田鶴の来て遊ぶ庭先垣結ばず 江口竹亭
田鶴の棹わが居る亭の上を越ゆ 大橋櫻坡子 雨月
田鶴の棹出来る高さのありにけり 向井光子
田鶴の空日月並び懸りけり 田中菊坡
田鶴の群地にや降りんとひたに舞へり 森川暁水 黴
田鶴ひくやぢかに骨なる母の脛 小檜山繁子
田鶴ひとつおくれて渡る御空かな 大橋櫻坡子 雨月
田鶴一羽蓮田の風を切って翔つ 曽我部多美子
田鶴去りて浦の海苔採はじまりぬ 大橋櫻坡子 雨月
田鶴群の鳴く天彦をうち仰ぎ 野見山朱鳥
田鶴翔けて地の霜朝日得つつあり 森川暁水 淀
田鶴翔けて暁けの炊煙四方四方に 森川暁水 淀
田鶴舞へりつまうしなひしひとつ鶴も 森川暁水 黴
田鶴降りてはや芹青む流あり 森川暁水 淀
男鶴佇ち母子ついばむお元日 吉野義子
畦の土鶴の足がた押しにけり 下村梅子
畦の陽をうれしと鶴のたたら踏む 上野さち子
番鶴身じろがざるにひと吹雪 岸田稚魚 筍流し
病みし鶴抱きし男通りけり 中島昴
病む鶴の羽裏よごれて飼はれけり 野見山ひふみ
病む鶴の鶴に応へてひた鳴ける 福神規子
痩脛や病より起ツ鶴寒し 蕪村 冬之部 ■ 大魯が病の復常をいのる
痩身の鶴を傾げて走る断雲 富澤赤黄男
登高や鶴を招けば雲来る 島田五空
白地着て鶴の眠りに遠くをり 櫛原希伊子
白布取ればまさに鶴人汗もなし 猿橋統流子
白帝の鷺の幻聴鶴の恩寵 沼尻巳津子
盗まれぬ鶴の鳴くなり冬の梅 萩原乙彦
目の前を雪散ぎて発つ鶴を追う鶴続ぎて光を曳けり 川口美根子
看護婦は乳房を持ちし鶴ならむ 栗林千津
真名鶴の声こんこんと初明り 白澤良子
真白羽を空につらねてしんしんと雪ふらしこよ天の鶴群 岡野弘彦
真青な松原被害者は鶴つれ 阿部完市 春日朝歌
眼に力入るるさみしさ鶴仰ぐ 大岳水一路
着地鶴二三歩はづみ羽根納む 岸田稚魚 『花盗人』
短日の家並据ゑたる鶴ヶ城 又村静池
石打つて鶴飛ばせたり青嵐 臼田亜浪 旅人
碧落や鶴が邪魔する雲気かな 増田まさみ
祝ぎの如夕焼の鶴仰がるる 阿波野青畝
神の定めし順序にヒマラヤ越ゆる鶴生きゆくことの勁ささびしさ 野村米子
神苑に鶴放ちけり梅の花 夏目漱石 明治三十二年
秋の空きのふや鶴を放チたる 蕪村遺稿 秋
秋の空昨日や鶴を放ちたる 蕪村
秋夜火と燃ゆる思を鶴の上 石田波郷
秋風や火中の鶴の嘴裂けて 渡邊水巴 富士
稗蒔の離々として嗚呼鶴病めり 尾崎紅葉
稗蒔や百姓鶴に語て曰く 子規句集 虚子・碧梧桐選
種蒔きに似て鶴守の餌を撒けり 内薗富恵
稲佐山かけて朝焼にけり鶴の海 小林康治 玄霜
稲村の鶴を見てをるすずめかな 孤屋 俳諧撰集「有磯海」
空の鶴われら仰ぐと声こたふ 皆吉爽雨 泉声
空覆ふ鶴の聲より風花す 邊見京子
立舞の鶴さながらに雪の城 上村占魚 『方眼』
童等の声を慎む田鶴の頃 田中英子
粉雪の句帳にたまる鶴を待ち 古舘曹人 砂の音
絵屏風の鶴の目つきが気になりぬ 夏井いつき
絵襖の鶴翔けに翔け夜長かな 野村喜舟 小石川
綿虫の漂ふ月日風鶴忌 小林康治 『存念』
縄に堰く野路あり塒づく鶴に 皆吉爽雨 泉声
美しき羽根を使ひて鶴争ふ 大串章 百鳥
群らだちし田鶴やうやくに棹づくり 大橋櫻坡子 雨月
群れを離れた鶴の泪が雪となる 西川 徹郎
群鶴の声こだまする天暗く 小原菁々子
群鶴の影舞ひ移る山田かな 杉田久女
群鶴の落暉に寒き首揃ふ 冨田みのる
群鶴を見て寝る誰も齢負い 北原志満子
羽をのして鶴なく寒の日和かな 飯田蛇笏 春蘭
羽広ぐ鶴よゆるがぬ鉄格子 吉原文音
翔ちつづく鶴の荒瀬となりし天 大岳水一路
老鶴の天を忘れて水温む 飯田蛇笏
耕して鶴をまねけよ杖の友 松岡青蘿
耳に鳴る風も鶴唳さまたげず 皆吉爽雨 泉声
耳袋真紅に鶴を見てゐたり 喜多みき子
聾阿弥佛も鶴に召されていでましけむ 日夏耿之介 婆羅門俳諧
肩から出し翅のその肩鶴の舞 中村草田男
胸ふかく鶴は栖めりきKao Kaoと 佐藤鬼房 名もなき日夜
脚たゆく立ちて病鶴残る見ゆ 皆吉爽雨 泉声
舞いたい鶴舞いたくない鶴一緒に舞う 藤後左右(1908-91)
舞ひむつむ田鶴を文にしわが妻へ 森川暁水 黴
舞ひ下りてこのもかのもの鶴啼けり 杉田久女
舞ひ下りて田の面の田鶴は啼きかはし 杉田久女
舞ひ降りし力余りて鶴跳べり 下山宏子
舞ふ田鶴に残月ありぬかがやけく 森川暁水 淀
舞ふ田鶴に盃すすぐいとまなし 森川暁水 黴
舞ふ田鶴の奇しくも啼きぬ徹る音に 森川暁水 黴
舞ふ鶴に誘はれ翔てる田居の鶴 小原菁々子
舞ふ鶴の光芒を師の言葉とす 沼尻巳津子
舞ふ鶴の紅浮かみつつ下りそめし 橋本鶏二
舞へる田鶴飛雪のときをおもはする 森川暁水 黴
良夜待つ襖の鶴の八十姿態 荒井正隆
色変へぬ松のみどりや夫婦鶴 小俣由とり
花かるた松もて鶴をぴしと打つ 百瀬ひろし
花屋敷雪とまがうて鶴さみし 細谷源二 鐵
花過ぎの鶴は猿より汚れたり 久米正雄 返り花
芹焼の夜やまぼろしの鶴の声 月居
若草や空を忘れし籠の鶴 飯田蛇笏 山廬集
草枯や又国越ゆる鶴のむれ 飯田蛇笏 山廬集
草雲雀草津嬬恋鶴溜 大屋達治 絵詞
荒地にてものくふ鶴と別れけり 矢島渚男 船のやうに
菌山あるききのふの鶴のゆめ 田中裕明 花間一壺
萩さやぐ火の山の裾の鶴溜 小林康治 玄霜
蒔つけし夜より鶴鳴岡の麦 松岡青蘿
薄氷に佇ちて羽衣鶴といふ 上野好子
薄氷の鶴の数歩へ徐行せよ 古館曹人
藁塚のすつくすつくと鶴日和 上野さち子
藁色の月出て鶴はねぐらかな 三嶋隆英
藪道の尽きし日だまり鶴の墓 田中英子
虹立つとさそひ漂ふ鶴千羽 千代田葛彦 旅人木
蜂とぶや鶴にかも似て脚を提げ 東洋城千句
蜂とぶや鶴のごとくに脚をたれ 飯田蛇笏
蠅ひとつ離れぬ鶴飼屋形船 石川桂郎 高蘆
襖絵の鶴に手拡げ春著の子 大串章
襖絵の鶴相寄りて枯野閉づ 橋本榮治 麦生
襤の鶴に一札高き木の芽かな 西山泊雲 泊雲句集
見の遠き深雪の鶴になぜ泣くや 齋藤玄 『無畔』
見直してそれぞと嬉し霧の鶴 尾崎紅葉
親子鶴ゆるやかに息合はせ翔つ 上野さち子
詩の 丹頂の鶴となつての 昇天だつた 吉岡禅寺洞
赤き鶴折りては翔たす夢月夜 石寒太
足上げて鶴のごとしよ北風吹く日 仙田洋子 橋のあなたに
躾糸抜いて千年鶴のまま 永末恵子 留守
近づけば野鶴も移る刈田かな 杉田久女
透明な重圧鶴が啼きにけり 小松崎爽青
連凧のごとくに鶴の棹しなふ 酒井京
連翹や鳴く鶴の子の口赤し 閭門の草(櫻[カイ]子の自選句集) 安斎櫻[カイ]子
連翹をこゞみ出て来る鶴のあり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
遊子なる野いばり熱く鶴仰ぐ 赤松[ケイ]子
遠き田にのびちぢみして鶴家族 上野さち子
遠目鏡見張の鶴の目を感ず 五十嵐播水
遠鶴のたとへば尉のごとき歩よ 上野さち子
酒ちかく鶴ゐる津軽明りかな 大屋達治 繍鸞
醒むるたび鶴は啼きけり雪降る闇 沼尻巳津子
釈然と痩躯の鶴も梅雨に入る 橋本夢道 無類の妻
里人も気づかぬ鶴の別れかな 八木春
野に出でて淑気を鶴とわかちけり 吉野義子
野は枯てのばす物なし鶴の首 支考
金の鶴折る手のひらにある聖夜 対馬康子 愛国
金泥の鶴や朱塗の屠蘇の盃 夏目漱石 明治三十二年
金色の夕映え鶴を呼びもどす 原裕 『出雲』
銀座うら雪ふれる夜の鶴吊れり 飯田蛇笏 春蘭
長き夜や猿の鼾鶴の夢 霊子
長閑さにひとりうそふく音は鶴か 尾崎紅葉
長閑さや鶴の踏み破る田の氷 井月の句集 井上井月
降からに鶴を着初るあしたかな 上島鬼貫
降りなんと棹さし違へ田鶴の群 赤松[ケイ]子
降り立ちてより日本の鶴となる 竹下陶子
降り鶴の脚さしたらす虚空かな 大岳水一路
降る雪に遠流のごとし鶴の色 齋藤玄 『無畔』
降る雪は天飛ぶ田鶴を消しにけり 下村梅子
陶器の鶴の羽から朝焼くる 富澤赤黄男
陽炎に躍る鰌や鶴の閑 野村喜舟 小石川
雛恋ふる親のこゝろや夜の鶴 松岡青蘿
雨の糸鶴の命をしろがねに 北さとり
雪が分んで声やはつゝむ鴬籠 調鶴 選集「板東太郎」
雪のむた鶴女房の窶れかな 金箱戈止夫
雪の日を鶴折りて聖奉仕者よ 村越化石 山國抄
雪中に地図ひらく音鶴となる 中島斌雄
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚 筍流し
雪原を跳びては羽摶ち鶴の舞 伊東宏晃
雪来つつかなしき性の見張鶴 長谷川史郊
雪降り出す灯のなき鶴の寝園に 横山房子
雲恋ふは鶴待つことや樓二月 松根東洋城
雲白き夜の村鶴となる老女 大井雅人 龍岡村
霜の鶴土へふとんも被されず 榎本其角
霜を着て夜ゆく鶴の歩みかな 尾崎紅葉
霜凪や鶴のいただく月ひとつ 沾徳
霜晨の鶴女房として老いぬ 千代田葛彦
霧を噴く鶴の鋳物や青嵐 寺田寅彦
青天のどこか破れて鶴鳴けり 福永耕二
青陽の空に鶴咲き花の声 上島鬼貫
頼朝忌放ちし鶴に似る雲も 久米正雄 返り花
風童子鶴のまはりを翔けめぐる 大串章 百鳥
風花の峠越ゆれば鶴の里 今井つる女
風邪人鶴に餌をやる沓重し 月舟俳句集 原月舟
風鶴忌暮れてしまひし落葉かな 小林康治 『潺湲集』
風鶴忌腹剖き生くも一転機 小林康治 『虚實』
風鶴院微笑の空や法師蝉 佐藤鬼房 「何處へ」以降
風鶴院波郷居士今大冬木 中里 結
颱風来つつあり大小の紙の鶴 西東三鬼
飛ぶ鶴の影畦越ゆるときさだか 大岳水一路
飛翔鶴雪の登校児遥かにす 岸田稚魚 筍流し
食糧難つづく夕餉鶴のごとくにのみ下す 橋本夢道 無礼なる妻
首折りて端居の母は一羽の鶴 武政 郁
高まさる齢きらめき田鶴仰ぐ 赤松[ケイ]子
高熱の鶴青空に漂へり 日野草城(1901-56)
鳴きつれて舞ひつれて鶴遊ぶなり 高濱年尾
鵞は泛きてすごもる鶴や梅うるむ 飯田蛇笏 春蘭
鶴あゆむ二日の畦のうすみどり 米谷静二
鶴おりてひとに見らるゝ秋のくれ 加舎白雄
鶴かうかうと夢を横ぎれりけさの秋 中勘助
鶴がくる山河にまじる偽山河 澁谷道
鶴が渡つてこないここら 夕空のオレンジ色 吉岡禅寺洞
鶴くると女の脚のまつはるも 萩原麦草 麦嵐
鶴ころこ鷲かんかんと啼いたりき 山口誓子
鶴すぎしさゞ波雲や葡萄吸ふ 渡辺水巴 白日
鶴たてり 擂鉢形の 冬の底 富澤赤黄男
鶴といへる鳥肌寒の意中にす 野澤節子 黄 瀬
鶴とほく翔けて返らず冬椿 水原秋櫻子
鶴とんで口が淋しくなりにけり 小笠原和男
鶴とんで如月夕日かなし千松島 日夏耿之介 婆羅門俳諧
鶴なけば 氷の破片 日の破片 富澤赤黄男
鶴にまかせ斧をともなひ居士頭巾 斯波園女
鶴にやる鰌惜むや寒の内 比叡 野村泊月
鶴に乗つて人帰る夜の朧かな 会津八一
鶴に乗る願ひは無くて今朝の春 古白遺稿 藤野古白
鶴に逢へたから今日はもう眠ります 上野さち子
鶴ねむる 天はしづかに朱をながす 富澤赤黄男
鶴のあそび雲井にかなふ初日かな 千代尼
鶴のこゑ天に集まりゆきにけり 勝又一透
鶴のこゑ空のまほらにひびくなり 橋本鶏二
鶴のこゑ身に雪片の消ゆる間も 大岳水一路
鶴のごとし人在しけり四方拝 久保田九品太
鶴の加く痩せて逝かれしか寒の雪 内藤吐天 鳴海抄
鶴の墓斑雪一枚残しけり 冨田みのる
鶴の声菊七尺のながめかな 服部嵐雪
鶴の子の泳ぐ水輪や杜若 佐野青陽人 天の川
鶴の字を崩して雪に鶴舞へる 金箱戈止夫
鶴の宿一人の膳を子が覗く 大串 章
鶴の寝屋で麻のふとんでねむりたし 阿部完市 春日朝歌
鶴の尾のキラ~として立版古 池上浩山人
鶴の尾羽短黒矍鑠と夏袴 香西照雄 素心
鶴の形はコスモスの枯枯中に 右城暮石 声と声
鶴の影穂蓼に長き入日かな 夏目漱石 明治四十三年
鶴の影舞ひ下りる時大いなる 杉田久女
鶴の懐妊山裾に雪降らしむる 磯貝碧蹄館
鶴の朝のぱん食みごとにつくり親 阿部完市 春日朝歌
鶴の本読むヒマラヤ杉にシャツを干し 金子兜太 蜿蜿
鶴の村戸ごと白羽を吊しけり 宇多喜代子
鶴の来るために大空あけて待つ 後藤比奈夫(1917-)
鶴の来る空や見るみる神無月 水田正秀
鶴の棲むところと聞けば凍ゆるむ 山口青邨
鶴の棹一しなひして飛べりけり 清崎敏郎
鶴の棹先頭替るとき鍵に 城萍花
鶴の檻雪片月をかすかにす 飯田蛇笏 春蘭
鶴の毛の黒き衣や花の雲 松尾芭蕉
鶴の毛は鳴るか鳴らぬか青あらし 加藤秋邨 まぼろしの鹿
鶴の求愛ダンス 無重力ってこんな 松本恭子 檸檬の街で
鶴の田に旭のさだまれる朝餉かな 大岳水一路
鶴の白借りて明けゆく鶴の里 井手 直
鶴の目には鶴の世あらむ母子草 加藤楸邨
鶴の紅さだかなる日の籾筵 大岳水一路
鶴の美しい目ふり向けば妻が手を握る 橋本夢道 無禮なる妻抄
鶴の群けぶる二月の水衰ヘ 星野昌彦
鶴の群天を手掴みつつ数ふ 赤松[けい]子 白毫
鶴の羽の抜けて残りぬ力草 子規句集 虚子・碧梧桐選
鶴の羽や白きが上に冴え返る 河東碧梧桐
鶴の胸風の刺りし乱れ見ゆ 大岳水一路
鶴の脚きしみて歩む冬旱 伍賀稚子
鶴の脚掴むがごとく菖蒲刈る 緋乃道子
鶴の腹にのみおろさるるや泥鰌真逆さま 橋本夢道 無禮なる妻抄
鶴の舌赤銅の日に哭きただれ 富澤赤黄男
鶴の舞ふ盃はよし雪見酒 山口青邨
鶴の藁塚人らの藁塚と相へだて 亀井糸游
鶴の踏む冬草青む日南かな 長谷川かな女 雨 月
鶴の里涅槃の月を上げにけり 冨田みのる
鶴の里鶴の被害は語らざる 山田弘子
鶴の野にとまりて赤き郵便車 吉野義子
鶴の野に荒崎の海紺たゝゑ 小原菁々子
鶴の闇はるかに一つ二つの灯 山口青邨
鶴の雛日に脚投げて眠りけり 佐野青陽人 天の川
鶴の首夕焼けてをりどこよりもさびしきものと来し動物園 伊藤一彦
鶴は居ても松はありても暑いぞや 尾崎紅葉
鶴は春のいとなみの羽を雪にひろぐ(釧路湿原) 上村占魚 『萩山』
鶴は曇らず目を一ぱいにあけてわが妻驚きぬ 橋本夢道 無禮なる妻抄
鶴は棹鴨は飛礫や時雨空 竹下白陽
鶴は病み寒日あゆむことはやし 飯田蛇笏
鶴は病めり街路樹の葉の灼けて垂り 鷹女
鶴は確かに静かに電気脚いっぽん 中村ヨシオ
鶴は鳴く雲の炎に身を紋り 富澤赤黄男
鶴ばかり折つて子とゐる秋時雨 文挟夫佐恵 黄 瀬
鶴ばかり見て鶴の声忘れけり 小笠原和男
鶴ひくと山河容を正しけり 岡田潟人
鶴ひとつ何のこころや梅の花 千代尼
鶴む一秒ごとのおみなめしを板めり 加藤郁乎
鶴も巣を今日かけ初めむ雛の宿 松岡青蘿
鶴やみて水べにさゆる冬花かな 飯田蛇笏 春蘭
鶴やみて片雲風にさだまらず 飯田蛇笏 春蘭
鶴よりも先に己レの凍ててをり 菅原章風
鶴よ人の貧今日にはじまりたるにあらず 橋本夢道 無禮なる妻抄
鶴をみにさそって泪ながされる こしのゆみこ
鶴を待つ額冷たき大日向 鳥居美智子
鶴を折る千羽超えても鶴を折る あざ蓉子(1947-)
鶴を折る四角三角日の長し 加藤耕子
鶴を画く雲井の空や鷄合 炭 太祇 太祇句選後篇
鶴を聞けり旅の雑煮を祝ひつゝ 宮原双馨
鶴を聴く衾のすこし魚臭し 古館曹人
鶴を舞ふ扇春日になんなんと 古舘曹人 能登の蛙
鶴を見し昂りに寝る行火かな 杉田賀代子
鶴を見ず鶴を瞼の旅寝かな 北原志満子
鶴を見に老のうき足蓬生に 赤松[けい]子 白毫
鶴を見る洟垂小僧馬車の上 野見山朱鳥
鶴を追ふ旅の懐炉は背にもえて 赤松[ケイ]子
鶴ケ岡や元朝の女色らみな舞はむ 日夏耿之介 溝五位句稾
鶴ケ岡蓮池の水馬かな 尾崎迷堂 孤輪
鶴ヶ丘八幡宮なり藪蚊攻め 前田吐実男
鶴一つ痩せて秋待つ木の実かな 支考
鶴万羽眠る夜空に星もなく 小原菁々子
鶴下りて惜しき日暮るゝ冬田かな 山口漁壮
鶴乱舞して雪の一塊見失ふ 河野多希女 両手は湖
鶴交る翼ゆさゆさと入日摶ち 加藤楸邨
鶴仰ぐ女身の冷えをそばだてて 赤松[ケイ]子
鶴仰ぐ母の袂に手を入れて 児玉南草
鶴去りてかく荒崎の呆け松 寺井谷子
鶴去りて鶴の番人不機嫌なり 成瀬桜桃子
鶴去る日青空に消ゆこころざし 新谷ひろし
鶴咳きに咳く白雲にとりすがり 日野草城
鶴唳のこだま返しの残照に 山田弘子
鶴啼いているしんねりと日本の畦 稲岡已一郎
鶴啼いて月に一滴づつの金 赤松恵子
鶴啼きて枯山は枯深めけり 古賀まり子
鶴啼くと三階に敷く褥かな 阿波野青畝
鶴啼くやどこかほころび北の空 関清子
鶴啼くやわが身のこゑと思ふまで 鍵和田釉子
鶴啼やわが身のこゑと思ふまで 鍵和田[のり]子
鶴塚に日のふりそそぎ萩枯るる 宮内林童
鶴女房日本の風土にいし時代貧しく生きて人を許しき 玉井清弘
鶴威鶴の羽音の蔽ひたり(出水荒崎にて五句註鳥威と同じような仕掛) 岸田稚魚 『花盗人』
鶴守のはがき一片鶴来ると 林十九楼
鶴守りのいよいよ白き下り眉 上野さち子
鶴少し来てゐる村を通りけり 大岳水一路
鶴巣村刈田越しなる円空堂 高澤良一 素抱
鶴待つと音をひそめて田も邑も 木村 風師
鶴待つや雪で固めて畦の窪 古舘曹人 砂の音
鶴折つて春待つ風に吊しけり 土居蹄花
鶴折るに手暗がりなり雪伊吹 澁谷道
鶴折るやうしろの山に雪が降る 柿本多映
鶴摶てば冬日カラカラ壊れけり 富澤赤黄男
鶴料理るまな箸浄くもちひけり 杉田久女
鶴日誌ありて玻璃戸に鶴来る 藤間 蘭汀
鶴日誌畦に鶫の来しことも 大串章 百鳥
鶴昏れて煙のごとき翼ひけり 富澤赤黄男
鶴歩む吾亦紅また吾亦紅 伊藤晴子
鶴流れつめたき空ののこりけり 大岳水一路
鶴燻ゆるひろげし翼のむらさきに 富澤赤黄男
鶴百羽翔つは大濤ひくごとし 吉野義子
鶴眠る川面を照らす後の月 高岡秀行
鶴立ちておのが影研ぐ氷面鏡 古賀まり子 緑の野以後
鶴立つもこゝら狩場の冬田かな 喜谷六花
鶴羽をひろげ朝かげ放ちけり 山田弘子
鶴翼の五層裳階の城の雪(会津若松にて二句) 上村占魚 『方眼』
鶴翼をかざせばはしる霙かな 富澤赤黄男
鶴臭を放つ姉さん被り哉 永田耕衣 狂機
鶴菱も業平菱も雛のもの 後藤夜半 底紅
鶴起つて卵そろへし桜かな 佐野青陽人 天の川
鶴跳べり大地にばねのある如く 大串章 百鳥
鶴送る列の最尾の消ゆるまで 肱岡恵子
鶴飛ぶらさぞうれしうも涼しうも 広瀬惟然
鶴飛来つぐに鑽仰いとまなし 皆吉爽雨 泉声
鶴養ふ寒村の籾十五石 上野さち子
鶴騒ぎ干潟の氷翳深し 西村公鳳
鶴高しわが旅つねにみちびかれ 赤松[ケイ]子
鶴鳴くやその声に芭蕉破れぬべし 松尾芭蕉
鶴鳴くや春の夜あめの江の南 蘇山人俳句集 羅蘇山人
鶴鳴や其声に芭蕉やれぬべし 芭蕉 (はせをに鶴絵がけるに)
鷹狩の獲物の鶴を賜りぬ 高浜虚子
鷺ぬれて鶴に日の照る時雨哉 蕪村遺稿 冬
羽摶ちては凍ることなき夫婦鶴 高澤良一 暮津

以上

by 575fudemakase | 2017-01-23 05:46 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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