冬枯 の俳句

冬枯 の俳句

冬枯

例句を挙げる。

はらわたの冬枯れてたゞ発句かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
パレットに藍冬枯の街描ける 山本歩禅
冬枯て手持ぶさたの山家哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
冬枯にめら~消るわら火哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
冬枯に天狗の下駄を蔵す寺 山田弘子
冬枯に年尾偲ぶも経ケ島 稲畑廣太郎
冬枯に死にたい死にたいが病かな 瀧井孝作
冬枯に犬の追ひ出す烏哉 正岡子規
冬枯に畢竟おとる尾花かな 秋色 俳諧撰集玉藻集
冬枯に看板餅の日割哉 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
冬枯のあちらこちらやとぶ鴉 原 石鼎
冬枯のいますさまじき菖蒲田に 古舘曹人 砂の音
冬枯の天城の山に旅しつつ 三原千枝
冬枯の市に購めし宋書かな 比叡 野村泊月
冬枯の町に藁屋の二三軒 上村占魚 鮎
冬枯の藪に住みつくかたゐかな 太田鴻村 穂国
冬枯の西日となりし己が影 阿部みどり女 『微風』
冬枯の身近きものに谿の音 日下正伝
冬枯の鞄をおろす鐘の下 古舘曹人 砂の音
冬枯やとびとびに菜のこぼれ種 一茶
冬枯やひとの愁いに手を藉せず 鈴木栄子
冬枯やひとり牡丹のあたたまり 千代尼
冬枯や乞食火を焚く土手の上 寺田寅彦
冬枯や在所の雨が横にふる 一茶
冬枯や垣にゆひ込つくば山 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
冬枯や墾き捨てたるこのあたり 河東碧梧桐
冬枯や夕陽(せきよう)多き黄檗寺 夏目漱石 明治二十八年
冬枯や少女の降りし無人駅 白井冨子
冬枯や平等院の庭の面 鬼貫
冬枯や柿をくはへて飛ぶ鴉 正岡子規
冬枯や水の溜まりし寺の庭 前田普羅
冬枯や烏のとまる刎釣瓶 正岡子規
冬枯や犬ののぼれる台所 金尾梅の門 古志の歌
冬枯や神馬の漆はげて立 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
冬枯や葬具たためば一白木 近藤一鴻
冬枯や雀のありく戸樋の中 炭 太祇 太祇句選
冬枯るる目は南軍の兵の母 対馬康子 吾亦紅
冬枯るる苛め条理や逃げ処なし 石原八束 雁の目隠し
冬枯れし草に個性の残りけり 稲畑汀子
冬枯れし野に球形のガスタンク 今井杏太郎
冬枯れて那須野は雲の溜るところ 渡邊水巴 富士
冬枯れに長寿の象のハマ子さん 高澤良一 燕音
冬枯れの天を感ずる峡磧 飯田蛇笏 雪峡
冬枯れの枯れひびき合ふ雑木山 山田和子
冬枯れの葉づれこゑだつ百花園 石原八束 空の渚
冬枯をのがれぬ庵の小庭哉 正岡子規
冬枯野母から得しもの懐に 高橋沐石
墓碑もなき幾万にかく冬枯れし 加藤楸邨
恋にうとき身は冬枯るる許りなり 正岡子規
捨猫が啼く冬枯の草の中 浅野京子
死と対す瞳に冬枯の野を見たり 柴田白葉女 遠い橋
汽車の窓の冬枯にとつついてゐる子 シヤツと雑草 栗林一石路
渓ぞひにたかまる大嶺冬枯るる 飯田蛇笏 春蘭
目を遠く誘ふ冬枯始めかな 宮津昭彦
聴き澄めば冬枯音色す夜半のペン 石川桂郎 含羞
あいの風松は枯れても歌枕 角川源義
あしといひよしといふもの枯れ尽くす 行方克巳
あしはらの夜の枯れざまのうちかへし 松澤 昭
あたたかく枯れたるものの日の黄いろ 長谷川素逝 暦日
いさぎよく枯れいさぎよく聳えをり 山口甲村
いたみやまぬまなこ 萬緑も枯れてきた 吉岡禅寺洞
えのころの上手に枯れを見せにけり 岸田稚魚
おどる枯れ木に踊りたくない昼のそら 津沢マサ子 風のトルソー
おどろにも枯れたるしだれ桜かな 下村梅子
おのが道おのが歩みて枯れにけり 村越化石
お変りもなくてといはれ枯れの中 伊藤白潮
かまつかの流人の如き枯れやうや 上野泰 佐介
かまど火はいつも安らか山枯れても 大野林火
か程まで枯れ急がねばならぬにや 相生垣瓜人 微茫集
きさゝげのいかにも枯れて立てるかな 久保田万太郎 流寓抄以後
きしきしと帯を纏きをり枯るる中 橋本多佳子
くすり使わぬ日々くろがねの嶺枯れる 寺田京子 日の鷹
けもの径仏への径枯れてをり 藤田あけ烏 赤松
げんげ野に枯れてげんげの首飾り 諸岡直子
こつこつといふ音のして枯るる山 今井杏太郎
ことごとく枯れし涯なり船の中 石田波郷(1913-69)
ことごとく枯れ鉄塔の脚も枯る 福永耕二
この枯れに胸の火放ちなば燃えむ 稲垣きくの(1906-87)
さみしさや霰逃れし方の枯れ 小林康治 『潺湲集』
しぐれては枯れゐる石をなほ枯らす 朱鳥
すこやかに故郷の楡の枯れにけり 阿部みどり女 『雪嶺』
すさまじやかくまで枯れて人の住む 塩谷康子
すべて枯れ師の句碑まぎれなかりけり 池田秀水
すれちがいざまに男も枯れにけり 豊口陽子
そはそはとはちすの枯るる気配かな 岸田稚魚
たまさかの早寝虫の音枯れにけり 金尾梅の門 古志の歌
たましひの回りの棘も枯れ果てし 中村苑子
たゞ一戸湯宿湯の香に枯れいそぐ 及川貞 夕焼
つきささる光となりて枯るるなり 倉橋羊村
とうがらし枯れて気高きこころざし 大竹広樹
とぼとぼと目玉落として木が枯れる 山本仁太郎
とりもちて蕃椒枯れそ唐錦 飯田蛇笏 山廬集
どこに身を置くや万目枯れすすき 苑子
なかぞらの鳩や大学枯れ果てぬ 石田波郷
なないろの洗濯挟み四囲枯るる 石川文子
なにほどかつかみをへしを枯れてをり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
はた~やいづれは野辺の枯るゝまで 小杉余子 余子句選
はつきりと枯れしもの枯れそめしもの 石井とし夫
はや枯れの遊びはじめしねこじやらし 小島千架子
ひかり佇つ父の長身枯るる中 伊藤京子
ひょこひょこと枯るる中来て露天湯に 高澤良一 鳩信
ひらかねば孔雀は黒衣枯るる中 金子篤子
ふぢ袴消ゆるまで枯る茶筅塚 殿村莵絲子 牡 丹
ふるさとの家枯れ崩る構堀 竹ノ谷ただし
ほうほうと楢山枯るる寒日和 富安風生
まいにち通る先生に村の山は枯れ 栗林一石路
またちがふ枯れし岬の見えそめし 篠原梵 雨
まつすぐなポプラはまつすぐに枯るる 平井照敏
まんじゆしやげ枯れておくれ毛めきしかな 野澤節子 遠い橋
ま明るくて山繭も素枯れたる 猪俣千代子 秘 色
みささぎの枯れて木に鳥水に鳥 岡本高明
みたやうな景色のなかを菱枯るる 黒田咲子
みづひきもはぎも枯れたれ文化の日 久保田万太郎 流寓抄
むしばみて青鬼灯もなく枯るゝ 河野静雲 閻魔
むらさきに顔枯れて巣の女かな 八木三日女 赤い地図
もの枯れて酒場に地獄耳揃ふ 小檜山繁子
やどり木もともども枯れてしまひけり 成瀬桜桃子 風色
やぶからし己れも枯れてしまひけり 辻田克巳
やゝ枯れし秣にとぶや青蛙 高浜虚子
わが山河いまひたすらに枯れゆくか 遷子
われより出て枯れひろがりし原ならむ 照敏
ガソリンカー跳ねはね枯れし並木去る 石川桂郎 含羞
コスモスの枯るゝ雨音夜の炉に 長谷川かな女 雨 月
コスモスの枯れて神父の髭白し 内藤吐天 鳴海抄
ゴム毬を野が枯れつくすまでつくか 今瀬剛一
シャガールの鳥ひそみける沼枯れに 対馬康子 愛国
ダリア枯れぬ幾日わが髪を放置せし 有働亨 汐路
プラタナス枯るる明るさ水の辺に 館岡沙緻
プラタナス枯れて歩道は傾きて 京極杞陽 くくたち上巻
ボイラーの火影踊らせ枯れはげし 伊藤京子
ヨーロッパ枯れる日の雨ガラス戸に 大峯あきら
一切の枯れてたしかに石畳 池田秀水
一塊の黒に還りて忍枯る 富安風生
一山の枯れに加はる父の声 朝広純子
一山の枯れ清水の舞台圧(お)す 高澤良一 燕音
一月や枯れ木の肌の日のぬくみ 小島政二郎
一本の巨樹の異形の枯れつくす 三谷昭 獣身
一村の枯れ遁れんと夢に痩す 河野南畦 湖の森
一病や物枯れることひた急ぐ 中山純子 沙羅
七面鳥の示威の肉髯枯るる中 津田清子
万物の枯るる中吾も枯れゆくか 藤松遊子
下品下生ものの枯れゆく明るさに 細田恵子
丘なだり枯れのよさいふ小麗か 林原耒井 蜩
丘枯れて天の深さの底知れず 相馬遷子 雪嶺
串の鮠枯るゝひかりの十三夜 碧雲居
主婦に澄む火と水森に枯れはじまり 神尾久美子 掌
乱れつゝ水漬けるさまに真菰枯れ 高濱年尾 年尾句集
二の酉やいよいよ枯るる雑司ケ谷 石田 波郷
二面石枯れて善悪なかりけり 渡辺恭子
五月雨やかくて枯れゆく串の鮒 碧雲居句集 大谷碧雲居
人のほか土の上よりもの枯れぬ 長谷川素逝 暦日
人も樹も枯れ年の瀬となりにけり みどり女
人間がすこし声だす枯れの中 津根元 潮
何の木かわからぬほどに枯れにけり 竹下史郎
何も彼も枯れ果てたれば蕗の薹 杉山岳陽 晩婚
供華枯れて立ち被爆者の手がまじる 林田紀音夫
傷兵と母たり枯れし木の根もと 岸風三楼 往来
元日の庭もあるじも枯れにけり 小林康治 『虚實』
入江濃きくまの一木枯れにけり 金尾梅の門 古志の歌
全円の夕日に憑かれ海枯るる 河野南畦 湖の森
公害魚擲られ磯の枯れこだま 河野南畦 湖の森
六月の根まで枯れたる椎立てり 松村蒼石 雪
円形の街のかたちに街は枯れ 対馬康子 愛国
再会や舞台の上の枯れ山河 対馬康子 純情
凶作の稲扱きの音入日枯れ 西東三鬼
刈らぬまま枯れたうちの田を走る鼠か 栗林一石路
刈干を天に捧げて枯るる阿蘇 文挟夫佐恵 雨 月
初冬の苔枯れ寂びぬ光悦寺 龍胆 長谷川かな女
前栽の菜の凍枯れや懶けゐる 滝井孝作 浮寝鳥
劣情のごとくに供華の枯れて立つ 林田紀音夫
十一月枯れゆくは華咲くごとく 平井照敏 天上大風
千年の命よぢれて藤枯るる 高橋悦男
千手仏のごとプラタナス枯れにけり 田口彌生
卵びつしり蚕蛾枯れゆく夜の翅音 野澤節子 黄 炎
取らずある山鬼灯も枯れにけり 阿部みどり女
古利根の枯れたるものに触れし音 稲垣きくの 牡 丹
吊しのぶ枯れて世のさま見えやすき 宇佐美魚目 天地存問
吊捨てに枯るゝ忍や稲光 龍雨
名勝を猫の歩いて枯れにけり 鳥居美智子
吹いてばかり旧正月の土枯れし 臼田亜浪 旅人
吹き晴れし空の滝口枯れ極む 河野南畦 湖の森
吾が愛す芽ぐみし中の枯れしもの 杉山岳陽 晩婚
唇のまわりの枯れてしまつた日 津沢マサ子 空の季節
唐崎の松は枯るゝに月夜かな 大谷句佛 我は我
噴水のびしよびしよ落ちて枯れはげし 内藤吐天 鳴海抄
囚徒らの頭かがやく枯れの中 石原舟月
四囲の山枯れしと湖のすさぶかな 成瀬桜桃子 風色
四方枯れて朱唇匂へり伎藝天 東條素香
国境に長き停車や枯るる中 森田公司
國枯れて青葉うつろに繁りをる 横光利一
垣間見て枯れの一色寒天干し場 和地清
墓枯れて藁屋の雀痩せにけり 広江八重桜
壇の浦枯れゆくものの光り合ふ 石川文子
夕日枯れ人智の極へ神の畏怖 小松崎爽青
夕空のうつろひ枯れし街並木 太田鴻村 穂国
夢に見る母彩なさず枯るる中 伊藤京子
大いなる月色の月枯るる中 相馬遷子 雪嶺
大き入日紫苑とすすき抱き枯るる 松村蒼石 雪
大伽藍枯れにつくものみなおなじ 河野南畦 湖の森
大寒の枯るる音する膝頭 近藤一鴻
大峡谷枯れの匂ひに満ちゐたり 仙田洋子 雲は王冠
大枯れの祠の水を換へにゆく 山本洋子
天南星火の棒かざし枯れにけり 堀口星眠 青葉木菟
天地にす枯れ葵と我痩せぬ(病中) 篠原鳳作
夫は出稼鍋墨を枯るゝ潟に流し 能村登四郎 合掌部落
女の雉子のあはれ枯るるにまぎれたり 吉野義子
女體の やわらかさで 枯れた野のたかまり 吉岡禅寺洞
姉の墓地上は雨に枯れいそぐ 川島彷徨子 榛の木
安曇野は枯れ深めをり眠りませ 藤岡筑邨
実ざくろの木乃伊めく枯れ祖父の忌よ 高澤良一 ねずみのこまくら
家枯れて北へ傾ぐを如何にせむ 三橋敏雄 眞神
密集の意思なし曼珠沙華枯れて 有働亨 汐路
寒き日や枯れて立ちたるかくれみの 久保田万太郎 流寓抄以後
寒の雨枯れたるものの華やげり 右城暮石
小鳥の聲しづまり山は枯れゆくばかり 内藤吐天
小鼠がちよろと出て消ゆ枯れ大地 北野民夫
少女来て人待つ枯れし幹のもと 岸風三楼 往来
尺蠖の棒立ちとなり枯れはじむ 本澤晴子
尾長ゐて淡青ともす枯るる中 相馬遷子 雪嶺
屏風から糸瓜の枯れに目をうつし 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
山の日の林檎枯れ立つもののうち 古舘曹人 能登の蛙
山川のしがらみ枯れしものばかり 西村公鳳
山川を汽笛が通り枯るる飛騨 西村公鳳
山枯るるとも綿虫に雄と雌 栗生純夫 科野路
山枯るる音なき音の充満す 岡本眸(1928-)
山枯れたり遥に人の咳ける 相馬遷子 山国
山枯れてみな青空にしたがへり 岩岡中正
山枯れてものにつかまり歩くなり 松村蒼石 雪
山枯れて一途に赤し猿の面 矢島渚男 梟
山枯れて三日月珠を抱きけり 岡田日郎
山枯れて巨きな月を載せてをり 八木尋子
山枯れて湯呑の縁の遠かりき 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
山枯れて簡潔な家陽をとどめ 大井雅人 龍岡村
山枯れて言葉のごとく水動く 龍太
山枯れぬかなのやうなる渓の水 朝倉和江
山枯れの始まつてゐる湯呑かな 原田喬
山椒太夫追つてきそうな枯れ岬 兼近久子
山深く在りて枯れゆく山帰来一期の朱も風の泡沫 安永蕗子
山眠りけり刺枯るゝ猿いばら 松根東洋城
岬枯れ青を恥ぢらふ猫じやらし 大木あまり 山の夢
岳枯るる人より高き樹のなくて 黒坂紫陽子
岳麓の枯れのつづきの畳に母 友岡子郷
峡枯れて高麗びとの墓道を外れ 河野南畦 湖の森
島に枯れ海女の磯笛沖へ逃ぐ 河野南畦 湖の森
崖枯れて干潟の色に子ら遊ぶ 神尾久美子 掌
嶺枯れゆく扉の音さえ訴える 寺田京子 日の鷹
川寒くドームと枯れし木を映す 菖蒲あや 路 地
川幅が枯れ一色の顔である 椎橋清翠
川枯れて石投げる気にもなれず 安斉久美子
工場体繰立枯れの樹に拳むけ 細谷源二 鐵
帚木の枯れたる影の掃かれけり 宮津昭彦
常盤木の老いて枯れぬは淋しやな 後藤綾子
年の夜やもの枯れやまぬ風の音 渡邊水巴
幹太き朴や枯れ立つ文化の日 望月たかし
底見えて能登の浦曲の竹枯るゝ 前田普羅 能登蒼し
庭枯れて遺愛の一間炭火燃ゆ 渡邊水巴 富士
弾丸飛んで来そうな湖岸枯れ深し 森田智子
当薬を引く枯れ音の地にこぼれ 安藤姑洗子
彼岸會やこゑの枯れたる老鸚鵡 松村蒼石 雪
徒労のみ立枯れ松も霞み立つ 小林康治 四季貧窮
御降りや枯れあたたかき羊歯の色 沢木欣一
心枯るゝや老を養ひ日南ぼこ 松根東洋城
急行の速度に入れば枯れふかし 西垣脩
恙なし雁来紅は枯れにけリ 清水基吉 寒蕭々
息枯れて熟蚕蛹にならんとす 栗生純夫 科野路
愁ふるとなくたのしまず枯れすすき 蛇笏
戸口迄づいと枯れ込む野原哉 一茶
手術まつ窓が切りとる枯れし梢 横山白虹
折鶴のつらなり焼かる枯れの中 大木あまり 山の夢
指先で薔薇枯れていく仮眠室 対馬康子 吾亦紅
接骨木の枯れきりしさまあらはにす 池田秀水
撫然たる枯れし胡桃をてのひらに 栗林千津
教会は何の帽子か枯れに入る 平井照敏 天上大風
文化の日枯れれば薪も割りやすし 北野民夫
断念の力つくして桔梗枯る 平井照敏 天上大風
方墳の枯れのまんまる劉生忌 吉田紫乃
旅を行く君に黄泉路も枯れてゐる 山口誓子
旅涯の屑負ひ憩ふ地は枯れて 古賀まり子 洗 禮
日にかがむ浮野の枯れを聴くやうに 落合水尾
日当りが好くて芯まで枯る雑木 高澤良一 鳩信
明る過ぎ磧の枯れを夜が流れる 桜井博道 海上
映るもの枯れ一色や鴛鴦の水 高澤良一 素抱
昼の月柏は枯れし葉を鎧ふ 横山房子
昼月の白じろと枯れ木立中 阿部美恵子
晩年や一風景の枯れ透きて 三谷昭 獣身
暁寒く枯るゝ命をめぐり坐す(悼菅沼氏) 『定本石橋秀野句文集』
曲芸のポスターありて枯れ進む 対馬康子 純情
月のよな日輪かかり枯るる楢 西村公鳳
月影やはしばみの実の枯れて後 飯田蛇笏 山廬集
朝顔の実の枯れ枯れてまだ採らず 高浜虚子
木々枯れて風も吹かねば瀬のひゞき 相馬遷子 山国
木の葉髪あぢさい枯れて姿あり 松村蒼石 雪
木は枯れて尊く見ゆる甍かな 雉子郎句集 石島雉子郎
朱の棒の枯れかまつかの地に刺さり 上野泰 佐介
朴といふ気ぜはしさうに枯れにけり 阿波野青畝
東風吹くや枯るゝにあらぬ海女の髪 野村喜舟 小石川
松まじり枯れて御嶽へつづく丘 川島彷徨子 榛の木
松明あかし弔ひの火か枯るるなか 八牧美喜子
枯どきが来て男枯る爪先まで 能村登四郎 幻山水
枯るるとは閑けきものの滝のみかは 稲垣きくの 牡 丹
枯るるなか金剛の水流れけり 篠崎圭介
枯るるなら一糸纏はぬ曼珠沙華 殿村菟絲子 『菟絲』
枯るるものつないでゐたる蜘蛛の糸 森賀 まり
枯るるものなき石庭の声を聴く 小川玉泉
枯るるものまだあたたかし山の雨 古賀まり子
枯るるもの枯れて鵜の島鴨の島 大木あまり 火球
枯るる中けぶるがごとく童女来る 時彦
枯るる中一茎折れて生鮮烈 林翔 和紙
枯るる中指輪の碧き石ぬぐふ 鷲谷七菜子
枯るる中耳掻きて音たつぷりと 中戸川朝人
枯るる中野鳩の声の養生訓 西東三鬼
枯るる中電車が光かざしくる 栃窪 浩
枯るる中青き耳輪を欲りにけり 菖蒲あや
枯るる夜の正午に同じ大時計 鳥居美智子
枯るる夜や灯ある道まで人送り 池田秀水
枯るる夜をジーラジーラと唄い出す 高澤良一 燕音
枯るる山噛めば噛むほど飯の味 斉藤美規
枯るる巴里幹の日さらに淡きかな 小池文子 巴里蕭条
枯るる気の地に満つ渋民村に入る 河野多希女
枯るる貧しさ厠に妻の尿きこゆ 森澄雄(1919-)
枯るる身に探りを入るる聴診器 高澤良一 宿好
枯るる道ひとに従ひゆくはよき 橋本多佳子
枯るゝとも櫟のあるを恃むなり 杉山岳陽 晩婚
枯るゝなか女あつまり灯をともす 長谷川双魚 風形
枯るゝもの枯れて去来の碑たりけり 岸風三楼 往来
枯るゝもの枯れはじめたる日和かな 加藤覚範
枯るゝもの枯れ神山の歯朶青し 長谷川 より子
枯るゝ中出でて満月みづみづし 相馬遷子 山河
枯るゝ中妻が守る亡きひとの窯 及川貞 榧の實
枯るゝ中藍たぎつなり千曲川 相馬遷子 山国
枯るゝ夜を飛行機野郎の本を読む 高澤良一 宿好
枯るゝ崖日矢の踊ればやはらかく 杉山岳陽 晩婚
枯るゝ身に熱湯をこそ湯西川 高澤良一 燕音
枯るゝ野や未明に犯す星の領 原月舟
枯れあけび宙にもつれて炎の形 細見綾子
枯れいそぐものに月かくほそりけり 木下夕爾
枯れいそぐ色の殆ど似て来たる 稲畑汀子
枯れがれの山の橋脚朱を張れり 影島智子
枯れきざすものに心を奪はれて 朝倉和江
枯れきつてまことままこの尻ぬぐひ 行方克巳
枯れきつてガソリンのぼる筒赤し 飴山實 『おりいぶ』
枯れきつて国賀大崩崖の放ち牛 石原八束 黒凍みの道
枯れきつて崖は夕日を流しをり 田口一穂
枯れきつて崩崖のなだれの銅山の墓地 石原八束 空の渚
枯れきつて胸に棲みつく怒りの虫 石原八束(1919-98)
枯れきりてをるは吾亦紅かと思ふ 長尾 雄
枯れきりて風走りけり海の上 岡木 眸
枯れきるやムンクの夢にゐるごとく 仙田洋子 雲は王冠
枯れきわまる森の相よし今日に賭ける 寺田京子 日の鷹
枯れきわみたる骨相に八ケ岳 宮津昭彦
枯れざまのなまじ茄子木の焚かれけり 金尾梅の門 古志の歌
枯れざりし木もその声を嗄らしけり 瓜人
枯れしかば包むがごとく雪を置く 杉山岳陽 晩婚
枯れしもののうつつや母の忌に逢へり 松村蒼石 雪
枯れしもの描きて志野の暖し 相生垣瓜人 微茫集
枯れしもの枯れ残るもの光満つ 殿村菟絲子 『繪硝子』
枯れしもの美し山を下り来し少女の手に 栗林一石路
枯れしもの黒子となして吹雪きけり 金箱戈止夫
枯れし土地にはじめて吾子を立たしぬ 篠原梵
枯れし岬に日さすや見ゆる一部落 加藤楸邨
枯れし崖とはたましひの背中かな 平井照敏
枯れし明るさ黒手袋を深く嵌む 鷲谷七菜子 黄炎
枯れし木に縄つるされて癩一家 岸風三樓
枯れし木に雪崩るゝ如く木の芽吹く 杉山岳陽 晩婚
枯れし木のうしろに雲の寄り易し 谷野予志
枯れし苑磔刑の釘錆流す 山口誓子
枯れし谷もつとも奥の家に火を 永島靖子
枯れし野に青丹の扉持ちて包(パオ) 桂樟蹊子
枯れし野を強く引き寄せラガー蹴る 能村研三 騎士
枯れずしてきちがひ茄子の衰ふる 相生垣瓜人 微茫集
枯れせめぐ蛭ケ小島の葱の畝 宮津昭彦
枯れそめし水藻のみどり日当れリ 高濱年尾
枯れたちの木木をめぐりて日のちひさ 細谷源二 鐵
枯れつくし赤き実一つ世に正す 古舘曹人 能登の蛙
枯れつくす寸時詩人に止らず 斎藤玄
枯れていく肉體をささえて 間引菜している 吉岡禅寺洞
枯れてなほこの執心の牛膝(いのこづち) 中戸川朝人
枯れてゆくものに聲あり虔めり 関成美
枯れてゆくゆとりの袖を畳むかな 橋石 和栲
枯れてゆく山にこだまして砧うつなり 山本木天蓼
枯れてゆく岸に空気のきれいな流れ 高橋信之
枯れてゆく底が浄土と言ふものか 平井照敏 天上大風
枯れてゆく桜一樹に添ふこころ 阿部みどり女
枯れてゆく黒瞳のうごく疣むしり 鈴木貞雄
枯れてより現し世永しうめもどき 殿村菟絲子 『樹下』
枯れてをりウツボカズラの壺半分 高澤良一 宿好
枯れて後失せゆくさまも慌し 相生垣瓜人 微茫集
枯れて立つものの軽さを欲りゐたり 朝倉和江
枯れて立つヒポクラテスのプラタナス 小宮山政子
枯れながら生きながらいぼむしりかな 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
枯れにけり合歓の葉眠り続くまゝ 斎藤空華 空華句集
枯れにけり土塁石組崩れつつ 有働亨 汐路
枯れに入るここら岩塩採れし山 高澤良一 鳩信
枯れに入るものの一つに床擦れも 高澤良一 鳩信
枯れぬもの乙女の瞳のみ寒の入 林原耒井 蜩
枯れの丘晴れて赦さる沖の景 河野南畦 湖の森
枯れの中己れもつとも枯れ果てて 鈴木真砂女
枯れはげし海鵜の城の断崖は 羽部洞然
枯れはてしものにある日のやすらかに 長谷川素逝 暦日
枯れはてし松笠の辺のみ墓なり 古沢太穂 古沢太穂句集
枯れはてし隣部落の墓見ゆる 福田甲子雄
枯れはてゝ数珠玉の実の白かりし 五十嵐播水
枯れふかむ山をやまびともつくづく見る 大野林火
枯れふかむ紙幣の表裏みな利息 雨宮抱星
枯れまぶし固きカラーに首嵌めて 高井北杜
枯れむぐら掻いくゞり落つ霰かな 青邨
枯れやまぬ街路樹指環ひとの手に 寺田京子 日の鷹
枯れゆけばおのれ光りぬ枯木みな 加藤楸邨(1905-93)
枯れゆけば空引き寄せて川流る 馬場移公子
枯れよとも枯れざれよとも教へけり 相生垣瓜人 微茫集
枯れるほど鵜の来てねるや松の色 野澤凡兆
枯れるまでソメイヨシノと呼ばれけり 高澤晶子 純愛
枯れる地へこぼして水を寺へ運ぶ 中山純子 沙羅
枯れる嶺の暗さ烈しさ飯の味 寺田京子 日の鷹
枯れる滝女教師喋らねば孤独 河合凱夫 飛礫
枯れる音男の首を抱き眠り 高澤晶子 純愛
枯れをゆく杣の脚絆の飛ぶごとし 野澤節子 遠い橋
枯れを来て駅のくらがり行商荷 伊藤京子
枯れ中洲鳥立ちて人現れにけり 茂里正治
枯れ伏せるもののひかりの二月かな 遠藤悠紀
枯れ全し吸殻投げて水哭かす 河合凱夫 飛礫
枯れ切つて日ざしはなやぐ杏村 宮津昭彦
枯れ切つて藁塚の撫で肩並びけり 都筑智子
枯れ切りしものに触るるはあたたかき 行方克巳
枯れ始むまでは開かない非常口 対馬康子 吾亦紅
枯れ婆娑羅狼藉朝日将軍よ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
枯れ尽くしたる安らぎに山河あり 野見山ひふみ
枯れ尽くす物干竿が地に着けり 松山足羽
枯れ尽すまで幾千の鐘鳴れり 井上鶏平
枯れ山中夜は星降るを誰れも知らず 河野南畦 『空の貌』
枯れ廃るもののひとつに燕の巣 平井照敏 天上大風
枯れ急ぐ男ばかりの靴音に 影島智子
枯れ急ぐ音なき音の建長寺 青木重行
枯れ斜面雀にピアノ線の足 飴山實 『おりいぶ』
枯れ木っ葉臭き湯町の子が乗り来 高澤良一 鳩信
枯れ果つをひとり柏が肯ぜず 篠田悌二郎
枯れ果てしものの中なる藤袴 高浜虚子
枯れ果てし地上シエパードいそぎゆく 川島彷徨子 榛の木
枯れ果てし岬の灯台風の的 石垣軒風子
枯れ果てし真菰の水や日短か 素十
枯れ果てし野の日一服の薬のむ 阿部みどり女
枯れ果ててひとりの影のあたたかし 鷲谷七菜子 黄 炎
枯れ果てて川の真中は流れをり 山上樹実雄
枯れ果てて煙突天と地をつなぐ 仙田洋子 橋のあなたに
枯れ果てて誰か火を焚く子の墓域 飯田龍太 童眸
枯れ枯れし四方ふかければ吾もまた 栗林千津
枯れ枯れて山の根性座りけり 川村紫陽
枯れ枯れて幹恍惚と立つ日向 村越化石 山國抄
枯れ枯れて素性の失せし鵙の贄 稲畑汀子
枯れ潔し鉄塔にのみ海見えて 佐野美智
枯れ澄みて落葉もあらず黒部川 前田普羅 新訂普羅句集
枯れ激し己れはげます平手打ち 吉田未灰
枯れ真菰風に浮き立つ湖北かな 皆川盤水
枯れ立てる葵の上を鳥渡る 阿部みどり女
枯れ色の連なるを火の国といふ 乾 歌子
枯れ色を動かし僧の枯野行く 齋藤愼爾
枯れ蔵王山勢谷を下りけり 石原八束 空の渚
枯れ車窓女人が占めて華やげり 冨田みのる
枯れ透ける地や虹色の中尊寺 殿村莵絲子 牡 丹
枯れ進む一輪挿しの長き洞 対馬康子 吾亦紅
枯山に未だ枯れぬ川侍りけり 能村登四郎
枯山に枯れてはならぬものを植ゆ 東郷瑞穂
枯山のむかうなほ枯れひとり旅 鍵和田[のり]子
枯山の枯れの匂ひも夕日なか 青木重行
枯山を渡り歩けば眼も枯れて 高澤良一 燕音
枯木らは枯れし高さを競ひけり 成瀬櫻桃子
枯荵枯れて幾日の檐端かな 坂本四方太
枯野ゆく女の髪も枯るるもの 檜紀代
柿の木のへうへうと彳つ枯れて彳つ 高澤良一 随笑
森をぬく枯れし一木や囀りす 室生犀星 魚眠洞發句集
椴の枯れ眼にまざと天の川懸る 臼田亜浪 旅人
楡枯れぬ露西亜軍楽隊いまはなき 山口誓子
楢山の楢枯れ木(ボク)に還るころ 高澤良一 燕音
楢林枯れ迦具土神に夕日差す 宮津昭彦
横柄な猫が通りぬ枯るる庭 小松崎爽青
歯朶枯るる初めの色を胸におく 細見綾子
歯朶類が枯れ和み合ふ世の一隅 細見綾子
母枯れゆく跳べるかたちに足袋ぬいで 中嶋秀子
水の声地のこゑ睦ぶ枯れはてて 古賀まり子 降誕歌
水の相成さず噴水枯れはじむ 河野南畦 湖の森
水温む枯れゐるものはさいなまれ 松村蒼石 雁
江南の好風景も枯れにけり 日原傳
沼枯るる茫漠夢と境無し 宮津昭彦
泡のごときものを枯れ野に打てる鞭 竹中宏 饕餮
泥やなぎ枯るる中洲の夕月夜 三好達治 俳句拾遺
浜木綿は枯れを尽くせり走水 山西雅子
浪よりも一戸がまぶし枯れ岬 加藤三陽
浮島がまづ枯れ沼辺枯れんとす 岡田日郎
浮島の枯れの明るし尉鶲 宮坂静生
海の日をさやけみ尾根の枯れをゆく 太田鴻村 穂国
渋色に沁みし染桶枯れ重ね 影島智子
滝枯るる一枚岩にある窪み 佐々木いつき
漁夫の墓詩人の墓の枯れわらび 細見綾子
潔く枯れいさぎよく吹かれをり 三ケ尻 とし子
濡れて来る猫いっぴきの枯れ故郷 河合凱夫 飛礫
濯ぎ去る水を染めつゝ菰枯るゝ 金尾梅の門 古志の歌
瀬に据ゑて鵜舟の枯れの始まりぬ 関戸靖子
火を枯れをだいじに村の匠たち 栗林千津
火口壁枯れ果つ底に湖たたへ 深見けん二
灯を過くる蚊の骨枯れて夜は五更 尾崎紅葉
灰蒙々十里淡々黍の枯れ 金子皆子
炉が鳴けど心老いにし筆枯れぬ 林原耒井 蜩
炉に遠く命枯れゆくしづかかな 松崎鉄之介
炎天や渡頭の舟の枯れ~に 野村喜舟 小石川
無数の目あり高原の枯れ澄めば 堀口星眠 青葉木菟
無縁塔枯るるに河床ほりいそぐ 細谷源二 鐵
焼いもや山紫水明枯るる京 龍岡晋
焼肉の息吐きに出て枯れ港 高井北杜
焼酎に胸骨枯れてあぐら組む 佐藤鬼房
焼酎のつめたき酔や枯れゆく松 西東三鬼
煙突二本枯るる早さの中に立つ 大野林火
燐寸擦る音ぴしぴしと枯るる潟 齋藤愼爾
父の忌や枯れて縮める楓の葉 石川桂郎 含羞
父祖の地に眠れる山よ枯れし野よ 成瀬正とし 星月夜
牧枯れて秒音確と耳に応ふ 杉本寛
物枯れて最後に笑うや大茸 安井浩司 氾人
犬に杖嗅がれてゐたり枯るる中 村越化石
独楽の日や枯れざる竹の中に臥す 石川桂郎 含羞
独活枯るるところ最後の蜂羽音 村越化石 山國抄
瓜枯れてきち~のとぶ西日かな 銀漢 吉岡禅寺洞
瓦斯工夫枯れきはみなき土を掘る 細谷源二 鐵
甕積みし檣外枯るゝ広野かな 楠目橙黄子 橙圃
生卵枯れゆく旅にて顔もたず 寺田京子 日の鷹
畦十字枯れて焚く火のすがしけれ 村越化石 山國抄
畦枯れてくろき影措く帰郷の人 中拓夫 愛鷹
疾走馬枯るる大地の風を焔に 伊藤京子
病むひとに紫苑の高さ枯れしまま 安東次男 裏山
白樺はおのれかがやき枯れ立てる 大竹きみ江
白樺枯れ陽筋頒け合ふ八ケ岳 北野民夫
白鳥の白も枯れ行くものの中 有馬朗人
目張して山河枯るゝにまかせけり 前田普羅
眠たさの半分枯れてゐる岬 鎌倉佐弓 潤
眼より枯れて東京歩きおり 高澤晶子 純愛
瞳孔に枯るるもの見て戻りけり 松山足羽
石ひとつおろかにまろびよろづ枯る 富安風生
石仏も傴僂のごと枯れ民話なす 河野南畦 湖の森
石枯れて石の言霊風となる 河野南畦 湖の森
石枯れぬ立ちて切なく縁軌む 桂樟蹊子
砂山も碑も美しく枯れにけり 難波 三椏
神通川音いつか瞼の枯れの音 古沢太穂
祭り日遠退く潮仏も枯れつくす 河野南畦 湖の森
福ささの枯れて甲子さまとなん 太田鴻村 穂国
稗枯れて月にも折るゝ響きせり 前田普羅 飛騨紬
種子を採るまでの枯れざま許しおく 朝倉和江
稲枯れて往来もあらず星月夜 中島月笠 月笠句集
空たれて炭地区の径蓖麻枯るる 飯田蛇笏 雪峡
空也忌や枯れゆく声の野に満ちて 橋本榮治
窯場出て枯れ鮮やかに野を占むる 河野南畦 湖の森
立ち尽す他なし蒲の枯れたるは 館岡沙緻
立ち枯れてあやめなりけり風の中 望月たかし
立ち枯れて久しくなりし紫苑かな 高濱年尾 年尾句集
立つことは枯れてゆくこと大はちす 上田日差子
立木皆枯れて海聞く日和かな 中川宋淵
立枯るる樅の白さの良夜かな 有働亨 汐路
立葵一輪白をあげて枯る 阿部みどり女
笹枯れて白紙の如しかたつむり 竹下しづの女句文集 昭和十一年
箒木の枯れたる影の掃かれけり 宮津昭彦
粟枯れて隣る耕土の日影かな 飯田蛇笏 山廬集
粽食ひぬ早や相抱き枯るゝ笹 島村元句集
糸のごと枯れてさみしや曼珠沙華 太田鴻村 穂国
綬をたれて枯るゝや聖者サワグルミ 前田普羅 飛騨紬
網代守かんばせ枯れて居据れる 吾人
線路沿ひ枯れて故郷を遠くせり 大串章
繭倉の稜きはやかや野の枯れに 木村蕪城 寒泉
美しくもろもろ枯れし初景色 富安風生
群青抜けば立枯れの幹濃紫 香西照雄 対話
翅畳み余す玉虫枯るるなよ 殿村菟絲子 『晩緑』
聖樹立つ窓より景の枯れわたる 亀井糸游
肉体の枯れ色のヤッケ吊るさるる 松田ひろむ
背負ひばつたを離せば枯れてしまひけり 平井照敏 天上大風
脊の汚れ猫が搖りゆく基地の枯れ 中島斌男
腰据ゑてひかる星あり櫟枯れ 宮津昭彦
腸の枯るるごとくにダリア果つ 上野さち子
自ねんじよをすり枯れ色をおしひろぐ 細見綾子 存問
色紙結ふ笹枯れ早き日和かな 林原耒井 蜩
芽ぶく樹々とほきはただに枯れし樹々 川島彷徨子 榛の木
芽吹く木々なほ枯れてゐし木を包む 杉山岳陽 晩婚
英彦枯るる又一つ増え無人坊 筒井珥兎子
茂吉忌の枯れて平らな畦伸びる 中拓夫
荏の実枯れ大いなる師とそこに立つ 松村蒼石 雪
菩提子の羽透きとほるまで枯れぬ 加藤三七子
菱紅葉水一枚も枯れ兆す 能村研三
萬緑と立枯れの木と相距つ 中杉隆世
葺捨ての菖蒲枯れけり雲の峯 大谷句佛 我は我
蒼天に山芋の枯れすすむなり 伊藤いと子
蓼の葉の虫枯れて鳴る涼しけれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蓼枯れて隠れあへず魚逃げて行 正岡子規
藍蓄めて潤目鰯も枯れいそぐ 稲島帚木
藤袴折目正して枯れにけり 北見さとる
藻も枯れてあるがままなる鴨の水 臼田亞浪 定本亜浪句集
虎杖の月にも枯るる音すなり 勝又木風雨
蝙蝠のやうに下りて枯るゝ葉あり 高澤良一 燕音
蝶の類枯れ石神に日燦爛 木村蕪城
蝶ひとつ流れて枯るる真菰かな 南部憲吉
螢光燈に 蛾の幻影がとぶ 眼は枯れるか 吉岡禅寺洞
街の木は枯れてタンゴの鼻濁音 高澤良一 燕音
裏山のわらびぜんまい枯れはげし 細見綾子
裏山や雪頬白に枯れ尽くし 佐々木六戈
裏庭の廃材紫苑は高く枯れ 阿部みどり女 『雪嶺』
裏白のともればすこし枯れてけり 太田鴻村 穂国
詩神撒く枯れの光に立ち尽くす 仙田洋子 雲は王冠
詩腸枯れて病骨を護す蒲団哉 正岡子規
谷中天王寺裏すゝき枯れにけり 久保田万太郎 流寓抄以後
豆枯れて影たゞしさよ十三夜 相馬遷子 山国
豌豆の手の枯れ竹に親すゞめ 飯田蛇笏
象の眼の枯れゆくものの中にあり 有馬朗人 母国
赤き実は知の一滴よ森枯れて 古舘曹人 能登の蛙
赤く見え青くも見ゆる枯れ木かな 松本たかし
赤崩崖(あかなぎ)の背の山枯れて墓五十(中通島新魚目町、隠れキリシタンの村) 石原八束 『藍微塵』
走者若し枯れ土手水をあたためて 大井雅人 龍岡村
身のほとり枯れいそぐものばかりかな 安住敦
身の枯れをためつすがめついぼむしり 長谷川双魚 風形
車蔵ひて枯れ枯れの畦眺む 小野田子緑
轟然と山枯れ宙に日は漂ふ 岡田日郎
逞しき蝦夷のどぐいも枯れ初めぬ 石塚友二
逢ふはかなしみとなれり枯れ一途 河野多希女 両手は湖
逢ふはみな樹々に籠れり枯れきつて 栗林千津
運転手の背より知らず夜の枯れヘ 寺田京子 日の鷹
酉の市六日の月も枯るるかな 太田鴻村 穂国
野の枯れや子の涙泉なして湧く 中島斌男
野の枯れを愛すと壺の枯れを捨てず 稲垣きくの 黄 瀬
野の面の枯るるとききて吾亦紅 松村蒼石 雪
野は枯れつ小さき一挾に日の当る まそほ貝 武定巨口
野は枯れて落日支ふ何もなし 吉本 昴
野は枯れぬ化粧ながきを云うなかれ 橋石 和栲
金借りにゆく鉄橋の下が枯れ 下村槐太 天涯
鈴のごと瀬音いくつも橡枯れぬ 和知喜八 同齢
鈴懸の意地といふ他なき枯れ瘤 高澤良一 宿好
鉄工忌油槽に写る貌枯れたり 細谷源二 鐵
鉢の木も枯れゆくひるの月まどか 金尾梅の門 古志の歌
鉦叩きしきりに叩き飛騨枯るゝ 前田普羅 飛騨紬
銀嶺を劃す一木枯れにけり 金尾梅の門 古志の歌
錫杖の如かまつかの枯れくねり 上野泰 佐介
錯綜のみごとに枯れて泉秘む 篠田悌二郎
長き旅終るごとくに枯れはじむ 上野さち子
長月や豆のまきひげ黄に枯るゝ 上村占魚 鮎
隠岐枯れて大赤断崖(なぎ)の吹かれけり 佐怒賀正美
隠岐枯れて空の波紋をたたみくる 石原八束 黒凍みの道
雀去り鉄砲が枯れ槍が枯れ 佐々木六戈
雀見ぬ日の久しきに土枯れぬ 臼田亞浪 定本亜浪句集
雑木山かぐはしきまで枯れゐたり 中村やす子
雨細し木霊枯れ棲む磯林 河野南畦 湖の森
雪つけて妻髪枯れぬ耳ほとり 飯田蛇笏 山廬集
雪山を背にし枯れ山貧窮す 吉田嘉彦
雪嶺まで枯れ切つて胎かくされず 森澄雄 雪櫟
雷鳥の枯れ尽しては何を待つ 橋本榮治 逆旅
電線がつなぐ電柱枯るる中 西東三鬼
音と言ふ音に敏感山枯るゝ 浜屋刈舎
音立てて今し朴枯れ極まりぬ 上井正司
音立てて大寒の樹々枯れつくす 三谷昭 獣身
風鳴るや枯れ立つものを靡かしめ 相馬遷子 雪嶺
飛ぶ鳥を見下して山枯れにけり 本宮哲郎
餅祝ふ老母枯れじ枯れまじと 栗生純夫 科野路
馬の瞳に人の世枯れてゆきにけり 大串章
駅枯れて壁に童画の赤多し 飴山實 『おりいぶ』
骨は枯れて折焚く柴の夜寒哉 尾崎紅葉
髪が枯れ俳句三昧壁炉愛づ 飯田蛇笏 雪峡
鬼女跳べり全山枯るる閑けさに 河合凱夫
魚潜む川あり山も枯れ深む 高澤良一 燕音
鮟鱇に大手ひろげて枯るるかな 斎藤玄 雁道
鳥うせて烟のごとく木の枯るる 富澤赤黄男
鳥威し山に檜が枯れしまま 飯田龍太
鳥獣絵巻枯れゆく山をそばだてて 堀口星眠 営巣期
鳴き枯れてがちや~止むや寝待月 石川桂郎 含羞
鴉発ち枯野の窪み枯れつくす 三谷昭 獣身
鴉翔く砂丘濡色枯れに似る 吉野義子
鴛鴦に古木はげしく枯れにけり 石鼎
鴛鴦下りて枯れし両岸息を呑む 篠田悌二郎
鶴啼きて枯山は枯れ深めけり 古賀まり子 緑の野以後
鹿おどし虚空の枯れを打ちにけり 渡辺恭子
麓枯れ色処々に村落寺をまじへ 宮津昭彦
枯月夜燭入りて堂膨らむよ 高澤良一 ねずみのこまくら
不整脈薬で押へ枯るゝ中 高澤良一 さざなみやつこ
枯るる頭を潜望鏡のやうにリス 高澤良一 ぱらりとせ
鈴懸の尾羽うち枯らすまでのこと 高澤良一 鳩信
枯篠にひねもす東京湾の照り 高澤良一 燕音
口許が割れて洩れだす夜のタンゴ 高澤良一 燕音
ジョーカーの裏でくすりと夜の笑ふ 高澤良一 燕音
バイオリンずいこずいこと「颱風」ひく 高澤良一 燕音
枝先に合歓の枯れ莢ひいふうみい 高澤良一 宿好
つくねんと柿の木いっぽん枯月夜 高澤良一 宿好
青空のまま昏れ柿の蔕月夜 高澤良一 宿好
島の鳶こゑ逆落とし篠枯らす 高澤良一 随笑
不細工よ牡丹の木(ボク)の枯れざまは 高澤良一 素抱
年寄りは平屋を好む枯十賊 高澤良一 素抱
枯るゝ夜をダイナマイトの綾戸智絵 高澤良一 石鏡
鼻毛まで枯れてゐるとは壁鏡 高澤良一 石鏡
一芝居摶ってやろうか枯月夜 高澤良一 石鏡



冬枯 続補遺

ふゆがれや寺門かすかに人を呼ぶ 加藤曉台
ふゆがれや機具負来る市もどり 卓池
ふゆがれを見たてゝ墳の有所 凉菟
何おもふ冬枯川のはなれ牛 加藤曉台
冬枯て臼も鐘木も残りけり 凉菟
冬枯にいづれと分ん花がつみ 望月宋屋
冬枯のなつかしき名や蓮台野 建部巣兆
冬枯の中いそがしや梅の花 紫白女
冬枯の中より白しむめのはな 露川
冬枯の勝利を得たりむめのはな 凉菟
冬枯の木間のぞかん売屋敷 去来
冬枯の歯朶にうつるや鳥の息 浪化
冬枯の色なき風の柳かな ト宅
冬枯の草かく馬のさむさ哉 木導
冬枯の道のしるべや牛の屎 ト尺
冬枯やひとり牡丹のあたゝまり 千代尼
冬枯や何から何をいひ出さん 芙雀
冬枯や山詠ても野を見ても 中川乙由
冬枯や平等院の庭の面 鬼貫
冬枯や板戸にしらむ朝月夜 井上士朗
冬枯や煙すりあふ小家かな 文鳥
冬枯や笹の葉にちる鷹の糞 助然
冬枯や雀のありく戸樋の中 炭太祇
冬枯をひとり笑ふ歟赤椿 中川乙由
山枯て狼の目や星月夜 除風
枯るるほど草にしみこむか冬の月 有井諸九
茶の花の香や冬枯の興聖寺 許六

以上

by 575fudemakase | 2017-01-24 07:46 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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