手袋 の俳句

手袋 の俳句

手袋

例句を挙げる。

あそび足りない手袋のすぐ乾く 辻美奈子
いくたびも失せては戻る手袋よ 吉屋真砂
うろたへてゐて手袋のなかの指 鎌倉佐弓 水の十字架
かの枯野子の手袋を隠し了ふ 福永耕二
けもの臭き手袋呉れて行方知れず 西東三鬼
てのひらの上で畳みて春手袋 檜紀代
はめてみし革手袋の指反らす 深見けん二 日月
ふかふかの手袋が持つ通信簿 井上 康明
わがたのむピアノ弾く手や手袋す 田中敬子
わが旅の黒手袋のゆびぞ透き 関口みぐさ
ショーウインドーの手袋緑立ててをり 金箱戈止夫
スキー手袋置かれ握力まだ残りて 平井さち子 完流
ペンだこに手袋被せてさりげなく 竹下しづの女句文集 昭和十一年
久々の夕日手袋の手をかざす 細見綾子
亡き妻の手袋五指を入れてみる 杉浦範昌
亭薄暑手袋をしてゐる女 高濱年尾 年尾句集
人さかしく帽とるや手袋の手に 飯田蛇笏 山廬集
人憎し手袋を手に持つて打つ 潮原みつる
代田出て泥の手袋草で脱ぐ 西東三鬼
仲直りできぬ手袋脱ぎにけり 藤田弥生
伊豆は白い手袋蜜柑の花が散り 川島彷徨子
健康失せし手袋しろく吊皮に 柴田白葉女 遠い橋
冷笑をこらへ手袋はめゐたり 長谷川かな女 雨 月
卓になげし絹手袋のちぢむ見し 田中王城
右左子と手袋の手をつなぐ 東浦津也子
墓地をゆき黒き手袋をぬがざりき 橋本多佳子
外出がちなるを悔いつつ手袋ぬぐ 柴田白葉女 遠い橋
大いなる寝手袋をして寝まりけり 竹下しづの女
大いなる手袋忘れありにけり 高浜虚子
妙齢を保つレースの手袋に 百合山羽公 寒雁
妻のポケット探せばぬくき手袋など 香西照雄 対話
子の中の手袋なき子固拳 林 翔
学帽と派手な手袋置いてあり 成瀬正とし 星月夜
宙吊りにわが手袋と鵠と 宇多喜代子
寒雀わが手袋の色に似る 田中冬二 麦ほこり
少しふくらんで手袋脱がれあり 上野さち子
弊衣無帽無手袋なれど教授なる 竹下しづの女句文集 昭和二十三年
弥陀洞にゴム手袋の凍ててをり 大石雄鬼
徹宵にのぞむ手袋はめにけり 鈴木しづ子
忘れたる手袋ひとつ止り木に 角川春樹
怒も寒もわが手袋の中なりけり 橘川まもる
思ひ断つごと手袋のぬがれあり 原田青児
悴みて手袋ぎらひ足袋ぎらひ 太田育子
愛わかつごと手袋に十指編む 橋本榮治 麦生
慰まぬ事の慰霊祭手袋をとる 及川貞 夕焼
戯れに触れ手袋に恋をさす 三好潤子
手袋が恨むかたちに脱ぎ置かれ 平島一郎
手袋が鏡の中で花を買う 渋谷道
手袋さぐるポケット底があり 八年間『碧梧桐句集八年間』 河東碧梧桐
手袋で拝む虚空蔵菩薩かな 石寒太 あるき神
手袋とるや指環の玉のうすぐもり 竹下しづの女
手袋と明日出す文と置き揃へ 中口飛朗子
手袋と紙幣使はずして病めり 野澤節子 黄 瀬
手袋と鞭置かれあるペチカかな 原田青児
手袋なし手話の青年言葉光る 坂間恒子
手袋にもらふより飛ぶ何のビラ 下村ひろし 西陲集
手袋にキップの硬さ初恋です 藤本とみ子
手袋にダイアモンドの指沈め 星野椿
手袋に五指を分かちて意を決す 桂信子
手袋に付きて解けざる霜払ふ 茨木和生 倭
手袋に十指をおさめ耐えるのみ 高橋たかえ
手袋に年をかくして夫人かな 星野立子
手袋に忘れし暖とわが脈と 赤尾兜子
手袋に息つつみ立つ夜の落葉 堀口星眠 火山灰の道
手袋に明かるき昼の光かな 波多野爽波 鋪道の花
手袋に明日出す厚き手紙載せ 肥田埜勝美
手袋に紐つけし子よわれ教師 木村蕪城 寒泉
手袋に葬後の指をふかくさす 渡邊千枝子
手袋に首つかまれて夫に逢ふ 赤松[ケイ]子
手袋のうへより握手君はをとめ 上村占魚 『霧積』
手袋のかたち直して今日終ふ 水野あき子
手袋のしづかに柄杓つかみたる 岸本尚毅 選集「氷」
手袋のその小さきを口で脱ぐ 岡田史乃
手袋のぶか~したる官吏かな 柑子句集 籾山柑子
手袋のほか何か忘れし坂の上 林翔 和紙
手袋のままに握手をして父子 村瀬 晋
手袋の両手で犬の背をおさへ 川崎展宏
手袋の中の水仕の嫌ひな手 前内木耳
手袋の五指なげうつて五指のこる 行方克巳
手袋の五指恍惚と広げおく 対馬康子 愛国
手袋の十本の指を深く組めり 山口誓子
手袋の単色派手に吊皮に 高濱年尾 年尾句集
手袋の失せざれば持つ古びかな 楠目橙黄子 橙圃
手袋の如く袋の掛けられし 上野泰 佐介
手袋の左許りになりにける 正岡子規
手袋の己れの指の短かけれ 行方克巳
手袋の布地薄れし処かな 高澤良一 さざなみやっこ
手袋の幸と不幸を左右に握る 文挟夫佐恵
手袋の忘れてありし懺悔台 三枝正子
手袋の手くびのあたり縞多し 上村占魚 球磨
手袋の手にはや春の月明り 中村汀女
手袋の手の老いを愧づ人しれず 稲垣きくの 黄 瀬
手袋の手をかざしゐる芦火かな 篠原鳳作
手袋の手をたゞひろげゐる子かな 松根東洋城
手袋の手をつき憩ふ砂の丘 山口波津女 良人
手袋の手をつなぎあふ親子かな 鈴木真砂女 生簀籠
手袋の手をもて撲つや乗馬の面 飯田蛇笏 山廬集
手袋の手を振る軽き別れあり 池内友次郎
手袋の手を置く車窓山深み 宇佐美魚目
手袋の指出るまでになりにけり 中山稲青
手袋の指組めば日しみにけり 佐野良太 樫
手袋の水に浸つて落ちゐたり 茨木和生 野迫川
手袋の片手穂高に忘れけり 冨村みと
手袋の片方ぬいで立読みす 川原 程子
手袋の片方拾ふてみたものの 高澤良一 素抱
手袋の真白き道士語りだす 日原 傅
手袋の穴に聴くアンダンテカンタビレ 長谷川かな女 牡 丹
手袋の穴を見つけつバスを待つ 佐野良太 樫
手袋の裏のわが色折返し 後藤夜半 底紅
手袋は心定めず指にはめ 中村汀女
手袋は手のかたちゆゑ置き忘る 猪村直樹
手袋へ紐つけ首へ掛け幼な 福田蓼汀 秋風挽歌
手袋やバラバ許せし手をつつむ 有馬朗人 知命
手袋や人を見まじとする疲れ 高橋馬相 秋山越
手袋や去年となりたる昨日のこと 藤岡筑邨
手袋や或る楽章のうつくしく 山西雅子
手袋や母情華やぐ席隣る 石塚友二 方寸虚実
手袋や端麗にして邪に 軽部烏頭子
手袋や終に指輪を買はぬ母 山田ゆう子
手袋や退社ばたばた椅子よせて 大津希水
手袋をあぐるや遠き眉うごく 黒田櫻の園
手袋をあちこちと置く卓の上 久米正雄 返り花
手袋をしてふるさとの橋の上 加藤耕子
手袋をしてゐてうっかり落し物 高澤良一 宿好
手袋をして現実に触れざりし 中村正幸
手袋をつかみて人を見送りぬ 龍胆 長谷川かな女
手袋をつかむ一切は男なり 赤尾兜子
手袋をとりたての手の暖かく 星野立子
手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな 日野草城
手袋をはめつつ師弟論納む 桂樟蹊子
手袋をはめても行手さだまらず 下村ひろし
手袋をはめぬ癖いつか妻に似る 杉本寛
手袋をはめわが醜をわが掴む 林翔 和紙
手袋をはめ終りたる指動く 高浜虚子
手袋をまだ脱がずゐる遠嶺かな 綾部仁喜 樸簡
手袋をゆつくり外し七七忌 大木あまり 火球
手袋をわすれ四五歩をもどりけり 廣江八重櫻
手袋を六つ失くして冬終る 黒田杏子 花下草上
手袋を出でていつもの手なりけり 櫂未知子 蒙古斑以後
手袋を取りて別れの手を重ね 藤野 山水
手袋を取りて夜会の始まれり 稲畑廣太郎
手袋を展望台に忘れ来し 石川文子
手袋を岩に置きたるままにして 岸本尚毅 鶏頭
手袋を探してばかりゐる日かな 稲畑汀子
手袋を握りしめたる湿りかな 久米正雄 返り花
手袋を編みくれし人いまは亡く 上村占魚 球磨
手袋を美しくして家を出る 松山足羽
手袋を脱いでも悔の残りけり 伊藤 雅樹
手袋を脱いで握りし別れかな 川口松太郎
手袋を脱ぎて働く手となれり 徳永山冬子
手袋を脱ぐとき何か忘れをり 辺見じゅん
手袋を脱ぐ妙薬の無かりけり 松山足羽
手袋を脱げと病者にもてなさる 萩原麦草 麦嵐
手袋を落しゝも旅はろかかな 尾崎迷堂 孤輪
手袋を買ふも銀座のつれづれに 星野椿
手袋を銜へ脱ぎたる喪の疲れ 岡田 貞峰
手袋合掌させて蔵いし会いたきなり 寺田京子 日の鷹
手袋白し森に遊べる一少女 草間時彦
手袋脱いで握り合しし血動けり 原田種茅 径
指先の出し手袋の暦売り 今泉貞鳳
新郎吾子つひに母視ず白手袋 柴田白葉女 『冬泉』
春手袋ほつれ易くて父母の無し 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
晩学の手袋を遁ぐ一新書 千代田葛彦 旅人木
更衣せめて真白な手袋も 高木晴子 花 季
月光が革手袋に来て触るる 山口青邨(1892-1988)
枯れし明るさ黒手袋を深く嵌む 鷲谷七菜子 黄炎
柚子買の皮の手袋新しく 今井真寿美
欲るこころ手袋の指器に触るる 鈴木しづ子
歯もて脱ぐ手袋代案など持たず 奈良文夫
死を診来し手が手袋の中にあり 新明紫明
母の眼に青年吾子の大き手袋 柴田白葉女 花寂び 以後
氷上に手袋落しすぐ拾ふ 森田峠 避暑散歩
汚れれば父の匂ひの皮手袋 長沼紫紅
決闘のごと手袋を脱ぎすてる 堀 政尋
海に浮く手袋何を掴みしぞ 福田蓼汀 秋風挽歌
海茜みる手袋は黒が佳し 柴田白葉女 雨 月
海鞘むきの手袋の中爪をたて 小枝秀穂女
海黒し子の手袋に掴まれて 田原千暉
漂へる手袋のある運河かな 高野素十(1893-1976)
炭を挽く手袋の手して母よ 河東碧梧桐
炭掴む手袋にして妻のもの 竹原梢梧
照り昃りはげしき風の皮手袋 柴田白葉女 花寂び 以後
特攻碑手袋赤き子ら遊ぶ 田尻牧夫
白の中の純白手袋妻へ買ふ 本宮鼎三
白手袋はめて門衛交替す 小笠原須美子
白鳥の村に手袋忘れたる 石田勝彦
皮手袋の匂ひがわれをへだてゐる 桂信子 黄 炎
皮手袋を忘れたり朝の喫茶店 中拓夫 愛鷹
砂に落ち鳥の形の春手袋 猪俣千代子 堆 朱
砂丘の女手袋ぬげば海盤車になる 有馬朗人 母国
砂丘ひろがる女の黒き手袋より 有馬朗人 母国
神学生手袋黒くカミユ読む 高島 茂
穴へ忘れられ穴掘りたる手袋は 加倉井秋を
空色のゴム手袋や牡蠣を割る 松本みず代
細長く皮手袋をしまひけり 今橋眞理子
編みゐるはスキー手袋らしき縞 上村占魚 球磨
耕してゴム手袋の型戻る 山崎 篤
背信いくつ手袋の中爪ぬくもる 川口重美
脱ぎ手袋の指に見られて紅茶飲む 河野南畦 『焼灼後』
花を買ふ手袋のままそれを指し 山口波津女
若き士官かくしに手袋のはし見せし 梅林句屑 喜谷六花
衰運の卦の手袋を落しけり 久保田万太郎 流寓抄
襟巻と手袋買つて年忘れ 田中冬二 若葉雨
観音の手に手袋の忘れもの 綾部仁喜 樸簡
誰へ編む手袋か躬を離さずに 中島斌雄
豆拾ふ革手袋の女来て 萩原麦草 麦嵐
赤筋の手袋ながら借りかへる 川島彷徨子 榛の木
道の辺に手袋春の落し物 中村祐子
遠い夜景へ手袋咥へぬぐ青年 藤田湘子
鍬だこの五指手袋に充ち満てり 小出秋光
雪渓に手袋ぬぎて何を得し 橋本多佳子
雪白の手袋の手よ善き事為せ 中村草田男
飛びたちさうに春手袋の忘れもの 櫛原希伊子
飛行機音春の手袋はめにけり 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
魂ぬけの手袋ありて窯休み 森田峠 避暑散歩
鴎舞ひゐし手袋の手を振りて去りし 池内友次郎 結婚まで
麗人をいざなふ僕の白手袋 筑紫磐井 婆伽梵
黒くうすき手袋の手に云ふ別辞 横山白虹
黒手袋を見事に落し気がつかず 田川飛旅子 『山法師』
黒手袋指にぴちりと神を説く 齋藤愼爾
やはらかき掌を与へむと手套脱ぐ 佐野まもる
コルト撃ち白き手套を地にさらす 三谷昭 獣身
チゴガニの応援団の白手套 高澤良一 寒暑
デイトリツヒ懐かし黒き長手套 今泉貞鳳
ピッケルを握るかたちの手套脱ぐ 小林 碧郎
切通し手套の拳固めすぐ 大岳水一路
別れ来し黒き手套を脱ぎてみつむ 柴田白葉女 遠い橋
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行 誕生
巷の灯低目にうけて手套嵌む 木村蕪城 寒泉
悲しみのかたちに置かれ皮手套 鷹羽狩行
手のうちを見せぬつもりの黒手套 神林久子
手套がつつむ十指寒礁横並び 三谷昭 獣身
手套より手が出て万の鴨動く 松山足羽
手套嵌むつまさきにすぐ水広し 大岳水一路
手套嵌む吾へさしたる小鳥の眸 大岳水一路
手套嵌む空と水とに二つの日 大岳水一路
手套欲し千草も彩を失へる 大岳水一路
手套脱げば自由の十指月掬ふ 佐野まもる
月光に軍醫の手套ま白なり 横山白虹
梨花のもと黒き手套をしぼり持つ 原コウ子
湖風を真正面の黒手套 山田弘子 懐
牧師の手套まぶしく孤児のなでられる 川口重美
病室に忘れし手套寒ゆるぶ 石田あき子 見舞籠
白手套手綱を取つて汚れなし 森田峠 逆瀬川以後
皮手套葬後の指を嵌め違ふ 大石悦子 群萌
石棺に直に触れむと手套脱ぐ 佐野まもる
祈りにはあらず手套の五輪を組む 磐城菩提子
紫外線防止のための長手套 高澤良一 寒暑
脱ぎ惜しむ手套純白海鳴る夜 鷲谷七菜子 雨 月
落葉めく手套や若き恋ひとつ 橋本榮治 麦生
街の日は霜にさやけく黒手套 飯田蛇笏 雪峡
身にしむや白手套をみるにつけ 飯田蛇笏 雪峡
迎へ出る子の手つなぐと手套とり 吹田青蛾
雑踏に童女の手套踏まれづめ 品川鈴子
革手套北の任地へ子を帰す 佐藤いね子
風の地に手套落ちゐて生生し 鈴木六林男
鷽替や黒き手套の落ちてをり 館岡沙緻
黒き手套はめつゝ螺旋階くだる 岸風三樓
黒き手套黒き鞄の未婚女醫 下村ひろし 西陲集
マッフして頬氷らせつ戻りけり 大石越冬丘
手とればマッフに雪の花ぞ散る 岡野知十
洋行せし伯母の形見の古マッフ 戸塚千代乃
犬怖ぢて雪に倒れぬマッフの子 矢田挿雲
玻璃くもり壁炉の上に古マッフ 栗原とみ子
町に出てゐてあてのなきマッフかな 三宅絹子

手袋 補遺

くびきれず破れ手套に食指見ゆ 秋元不死男
けもの臭き手袋呉れて行方知れず 西東三鬼
とある夜の草手袋のしなやかに 岡本眸
ななめ向くしぐさ手袋脱ぐときも 鷹羽狩行
ピアノリサイタル遂げ来し掌秘む白手套 伊丹三樹彦
ベルリンのおしやれ男の黄手袋 山口青邨
ロートレクの踊子手袋黒く長く 山口青邨
久々の夕日手袋の手をかざす 細見綾子
人さかしく帽とるや手袋の手に 飯田蛇笏 山廬集
会ひて別れしそれだけのこと手袋はむ 松崎鉄之介
伯林の雪にぬらせし手袋よ 山口青邨
冬ぬくし革手袋の革臭ふ 日野草城
冬の霧手套の黒き指を組む 橋本多佳子
勤労の手に手袋も憊れぬる 日野草城
十指の癖一と冬過ぎし手袋ぬぐ 橋本多佳子
十指をば挙げて手套に付しけり 相生垣瓜人 明治草
原爆資料館内剥き脱ぐ皮手套 三橋敏雄
君が手套は青くなが~とつきぬ塀 中川一碧樓
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行
喪ごころの手袋は歩きつつ嵌める 岡本眸
墓地をゆき黒き手套をぬがざりき 橋本多佳子
外套も手套も兵の名残かな 石塚友二 磯風
大和群山落ちし手袋夕の眼に 金子兜太
夫となりぬ白手袋を握りしめ 日野草城
妙齢を保つレースの手袋に 百合山羽公 寒雁
妹ゆ受けし指環の指を手袋に 中村草田男
妻のポケット探せばぬくき手袋など 香西照雄 対話
妻のポケツト探せばぬくき手袋など 香西照雄
妻編みし手袋ゆるむ右左 秋元不死男
姉いもと姉の手袋あかかりき 平井照敏
家々ぎつしりつまつて少女は手套の快く 中川一碧樓
巷の灯低目にうけて手套嵌む 木村蕪城 寒泉
幸を言ひ手袋の巨手永久に去る 平畑静塔
心あふれ絹手袋の手をゆだぬ 日野草城
急坂半ば手袋拾ひ易かりし 中村草田男
悲しみのかたちに置かれ皮手套 鷹羽狩行
慰まぬ事の慰霊祭手袋をとる 及川貞 夕焼
手套して横川の鐘を仕る 阿波野青畝
手套の手つと重なりて信じをり 鷲谷七菜子 黄炎
手袋で指さしあれが壇の浦 鷹羽狩行
手袋と紙幣使はずして病めり 野澤節子 未明音
手袋にかくさざりし手つとひらく 加藤秋邨
手袋に五指を分ちて意を決す 桂信子 晩春
手袋に包むいちにち使ひし手 後藤比奈夫
手袋に収めて十指盲ふなり 上田五千石『琥珀』補遺
手袋に忘れし暖とわが脉と 赤尾兜子 蛇
手袋に手を引く兒の歩行かざる 正岡子規 手袋
手袋に放しし把手(ノブ)のつめたさ来し 篠原梵 年々去来の花 皿
手袋に明かるき昼の光かな 波多野爽波 鋪道の花
手袋に秘めたる指をおもはめや 飯田龍太
手袋に紐つけし子よわれ教師 木村蕪城 寒泉
手袋に純白の白を借しまざる 山口誓子
手袋に銀貨を捜るかくしかな 正岡子規 手袋
手袋に風痛きいま耐忍す 山口誓子
手袋のうつくしき落葉にぎりゐる 山口青邨
手袋のうへより握手君はをとめ 上村占魚
手袋のその手は舵輪握りしめ 阿波野青畝
手袋のほか何か忘れし坂の上 林翔 和紙
手袋のまま木の芽をさはる懈怠かな 赤尾兜子 玄玄
手袋の先の五つのうつろかな 阿波野青畝
手袋の刺繍の花の眼の前に 山口青邨
手袋の十本の指を深く組めり 山口誓子
手袋の如く袋の掛けられし 上野泰 佐介
手袋の妻の手を見し他人の中 星野麥丘人
手袋の左許りなりにける 正岡子規 手袋
手袋の愛撫さげすむ犬と猫 鷹羽狩行
手袋の手くびのあたり縞多し 上村占魚 球磨
手袋の手で指すものは水底に 波多野爽波
手袋の手の吊皮のかぎり下れる 篠原梵 年々去来の花 皿
手袋の手の愚かしき豹の視野 橋閒石 風景
手袋の手をつなぎあふ親子かな 鈴木真砂女 生簀籠
手袋の手をもて撲つや乗馬の面 飯田蛇笏 山廬集
手袋の手を挙げ人の流れに没りぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
手袋の手を重ねたる別れかな 清崎敏郎
手袋の指さまざまにいきどほる 加藤秋邨
手袋の指破れたり雪まろげ 鷹羽狩行 雪丸げ
手袋の指組み錯落刺繍の花 山口青邨
手袋の獣臭きを組み反らし 鷹羽狩行
手袋の真白なる挙手をして征けり 日野草城
手袋の編みさしてある病かな 正岡子規 手袋
手袋の裏のわが色折返し 後藤夜半 底紅
手袋の赤きを拾ふ笹鳴す 橋閒石 雪
手袋の赤き手振りて歩きけり 日野草城
手袋の鋲(ホック)の音も別れさだか 中村草田男
手袋の黒と黒衣とただ黒き 山口誓子
手袋はうつくしつつむ運命線 山口青邨
手袋やバラバ許せし手をつゝむ 有馬朗人 知命
手袋や暗夜の粉雪肩に鳴る 村山故郷
手袋や母情華やぐ席隣る 石塚友二 方寸虚実
手袋や運命線も何も無し 阿波野青畝
手袋をつかむ一切は男なり 赤尾兜子 蛇
手袋をとりたての手の暖かく 星野立子
手袋をぬぐ手ながむる逢瀬かな 日野草城
手袋をはめて表情生れし手 後藤比奈夫
手袋をはめわが醜をわが掴む 林翔 和紙
手袋を口にしたれば濡れてゐし 右城暮石 句集外 昭和二十三年
手袋を君より借りぬ紅葉冷 山口青邨
手袋を嵌めて満員のバス掴む 右城暮石 句集外 昭和三十一年
手袋を忘れし人を追ふ手かな 林翔
手袋を映画の如く投げて脱ぐ 後藤比奈夫
手袋を編みくれし人いまは亡く 上村占魚 球磨
手袋を脱ぐ漆黒の壺の前 岡本眸
手袋を落し自分の記憶までも 有馬朗人 母国
手袋嵌むや雲の重さの堪へ難き 草間時彦 中年
手袋片つぽだけ拾つた 尾崎放哉 小豆島時代
手袋白し森に遊べる一少女 草間時彦 中年
拍手して白手袋に手をかくす 有馬朗人 母国
指抜いて革手袋のただ黒し 岡本眸
握られしごとく手袋手に馴染む 岡本眸
新しき手袋をして徒食せり 日野草城
新しき手袋牛に逢ひにゆく 石田勝彦 百千
旅人も革手袋をして粛然 山口青邨
月光が革手袋に来て触るる 山口青邨
杉山や手袋脱げば子が生まれ 岡本眸
枯れし明るさ黒手袋を深く嵌む 鷲谷七菜子 黄炎
枯れはげし紅き手套の手とゆけば 楠本憲吉 孤客
母なるひと黒き手套に手を裏む 山口誓子
気づきたる忘れ手袋あきらめし 右城暮石 散歩圏
汽車の切符買はんとして手袋脱げざる 正岡子規 手袋
泣かんとし手袋を深く深くはむ 渡邊白泉
浮くものに赤き手袋と都鳥 山口青邨
海峡を流るるものや手袋も 中村汀女
海見つつ嵌めて手套の先余さず 岡本眸
漂へる手袋のある運河かな 高野素十
片手には黒き手袋片手になき 山口誓子
牡蠣作業ぼろの手袋はずさざる 阿波野青畝
物みなに触る手袋の網へだて 山口誓子
玄関を出るときは旅手袋はめ 加藤秋邨
白き手套置き燈台守は見えず 能村登四郎
白鳥の村に手袋忘れたる 石田勝彦 百千
皮手袋で雪来た頭張りかわす 飴山實 おりいぶ
矍鑠と手袋に鍬軽く提げ 川端茅舎
石を積む子に供く手套雉子の声 角川源義
砂丘の女手袋ぬげば海盤車になる 有馬朗人 母国
砂丘ひろがる女の黒き手袋より 有馬朗人 母国
礼装の白手袋や遺品めき 山口青邨
細微なり黒手袋の白刺繍 山口誓子
絲赤く手袋の破れつくろひし 正岡子規 手袋
編みゐるはスキー手袋らしき縞 上村占魚 球磨
置き忘れし手袋に疲れ隠し切れず 岸田稚魚 負け犬
美しき手袋のなか一指病む 岡本眸
肩よりの手袋の紐親しげに 佐藤鬼房
胃袋大の麺麭手袋の掌に軽し 中村草田男
脱ぎ惜しむ手套純白海鳴る夜 鷲谷七菜子 銃身
膝に置く思ひつめたる黒手套 飯田龍太
自らへ手套を投げて濤の前 中村草田男
色貧しき吾子の手袋薔薇を刺せ 能村登四郎
草取のゴム手袋のももいろよ 山口青邨
荒縫の皮の手袋をして瀟洒 山口青邨
菲才眼つむり手袋の手をかたく組む 松崎鉄之介
薪つかむ手袋もおく暖炉の座 山口青邨
蘆の角光り手袋の手に触れぬ 橋閒石 雪
血みどろの手袋 手も 血みどろ 三橋鷹女
街の日は霜にさやけく黒手套 飯田蛇笏 雪峡
身にしむや白手套をみるにつけ 飯田蛇笏 雪峡
闇の中喪の塩うくる手套脱ぐ 岡本眸
雨の隙疼く掌手套に鍛冶の街 角川源義
雪と 火の 黒い亡命者の手套よ 富澤赤黄男
雪の日に持つ手袋のしめりがち 右城暮石 句集外 昭和十三年
雪柳白き手套の手を振れり 山口誓子
雪白の手袋の手よ善き事為せ 中村草田男
青天の白雲日吐きぬ手套脱ぐ 中村草田男
革手袋一枚の死の電報打つ 有馬朗人 母国
革手袋富を攫みし手ををさむ 日野草城
革手袋本願寺の廊に居て脱がず 渡邊白泉
鳰沈み黒き手套の夫人と逢う 橋閒石 荒栲
鴨見るに欲しき手袋耳袋 後藤比奈夫
黒き手袋黒し冬月うすくとも 山口青邨
黒革の手袋指曲げて悪魔の手 山口青邨

以上

by 575fudemakase | 2017-01-27 17:12 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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