外套 の俳句

外套 の俳句

外套

例句を挙げる。

あおぞらに外套つるし古着市 阿波野青畝(1899-1992)
ある時の書肆に外套のわれひとり 軽部烏頭子
あをぞらに外套吊し古着市 阿波野青畝
うしろより外套被せるわかれなり 川口美江子
おそき芽のごとし外套の重さ着て 宮津昭彦
かかれゆく担架外套の肩章は大尉 長谷川素逝 砲車
かの日より壁の外套うごくなし 徳永山冬子
くたびれて外套凡医われに似る 新明紫明
つくろへり我は外套鴉は羽 木下夕爾
つとめやめ外套古びたることよ 手島清風郎
なほ壁に外套疲れし姿なす 岸田稚魚
また一人外套掛けに外套を 成瀬正とし 星月夜
わがゐしは外套の中雪まつり 矢島渚男 采薇
わが身なき黒外套や壁に垂る 榎本冬一郎
わつぱ飯肩かけのまゝ外套のまゝ 殿村菟絲子
アイスクリームに厚き外套脱ぎ給へ 長谷川かな女 雨 月
ダブ~の外套引つかけ水見舞 清原枴童 枴童句集
バレンタインデー外套着せて貰ひけり 松山足羽
ボタン落ちて急に片輪の春外套 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
ルージュ濃く外套黒く霧はしり 三谷昭 獣身
世に混じるべく外套の黒ねずみ 橋本榮治 逆旅
京極の館のはねどき外套着て 藤後左右
人の外套を持つて笑つて醒めをる 梅林句屑 喜谷六花
人の訃を聞いて外套ひつかけて 上村占魚 球磨
伊豆の湯の温もりきちと外套に 林原耒井 蜩
何祷りをるや毛皮の外套着て 菖蒲あや 路 地
修道士黒き外套着て若き 大塚千舟
傷心の外套といふ重きもの 桜木残花
兵たりし父外套を残しけり 榎本好宏
冬も終りの外套 数珠とマッチが出て 伊丹三樹彦
出船あり春外套に夕日沁む 草間時彦
北風吹くや少女外套の裏あかく 岸風三楼 往来
参観の春外套を腕にたたみ 遠藤梧逸
古びたる外套の肩に雨そそぐ既にして叛き離れし妻の 大野誠夫
吾子の四肢しかと外套のわれにからむ 沢木欣一
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行 誕生
地図をよむ外套をもて灯をかばひ 長谷川素逝 砲車
坂登る黒き外套は吾が世界 細見綾子
塔婆煽つ風に外套脱ぎにけり 渡辺水巴 白日
墓地の中ゆく外套の中の我 深見けん二
壁に外套そのほかに妻と子を遺し 右城暮石 声と声
壁の夕日に痩外套や腕たらす 角川源義
外套が長くて海は遠すぎて 櫂未知子 蒙古斑
外套が雫だらけの春の雪 右城暮石 上下
外套が黒くてすぐに雪が降る 清水径子
外套でぬぐう涙を持ちて子は 対馬康子 吾亦紅
外套と帽子と掛けて我のごと 高浜虚子
外套と持物ひとつが革命家(ボルシェビキ) 筑紫磐井 婆伽梵
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
外套におしつつみたる歓喜かな 加畑吉男
外套にくるまつて聞くラジオかな 富田潮児
外套にしみもせざりし時雨なる 野澤節子 黄 瀬
外套にまつはる風の重さかな 松下 義幸
外套に今来し道の今終はる 佐々木六戈 百韻反故 初學
外套に天の重さや働ける 徳永山冬子
外套に帽子かさなりて玄関の灯 青峰集 島田青峰
外套に捜るニューヨーク行き切符 対馬康子 愛国
外套に沁む月光や言葉なし 中島斌男
外套に考えし皺残りけり 恒藤滋生
外套に胸ボタン無し母無からん 成田千空 地霊
外套に荒ぶる魂を包みゆく 長谷川櫂 虚空
外套に裾がたるんでゐて立てり 高濱年尾 年尾句集
外套に闇密着す非常線 榎本冬一郎
外套に降り来る火山灰は目に見えず 森田峠 避暑散歩
外套に風少し出て夜店の灯 島田青峰
外套のけものがくさき年の市 古舘曹人 樹下石上
外套のその儘通る夜更かな 尾崎紅葉
外套のなかに子を負い牛を避く 金子兜太
外套のなかの生ま身が水をのむ 桂信子(1914-)
外套のひらりと降りし電車かな 青峰集 島田青峰
外套のまま座す人気なき生家 北川英子
外套のまゝ観音をまのあたり 川崎展宏
外套のポケットの深きを愛す 片山由美子 水精
外套の一人轢かれてしまひけり 仙田洋子 橋のあなたに
外套の下の喪章は誰も知らず 岸風三樓
外套の下は僧衣の足袋白し 青峰集 島田青峰
外套の中で輪ゴムを爪はじく 田川飛旅子 『外套』
外套の中なる者は立ちにけり 千葉皓史
外套の中の寒さを覚え立つ 深見けん二
外套の中手がもえる朝の城 大井雅人 龍岡村
外套の人に女鹿のごとく蹤く 松本澄江
外套の仕立下しや酉の市 久保田万太郎 草の丈
外套の前下るなり老い給ふ 殿村菟絲子 『路傍』
外套の厚地よ父も亡き人に 小口雅広
外套の士官は乙女社会鍋 岩崎照子
外套の大人と歩む子供かな 千葉皓史(1947-)
外套の大股美術館めざす 赤松[けい]子 白毫
外套の夫と離れつつ貝拾ふ 山口波津女 良人
外套の奥の喪服に凍徹る 飯田龍太
外套の奥は枯野へ続きけり 鳴戸奈菜
外套の姿勢正しく「飲みませう」 川崎展宏 冬
外套の子のてのひらに土の御子 加藤耕子
外套の嶮しき胸を湖の前 古舘曹人 能登の蛙
外套の手深く迷へるを言ひつゝまず 河東碧梧桐
外套の旅の持薬の二三ならず 森川暁水 淀
外套の毛皮鉄砲傷残る 品川鈴子
外套の泥はね一つ灯に戻る 細見綾子 花 季
外套の淋しさ埠頭に極まれり 古川歌子
外套の皺が街ゆくにはか寒む 林 翔
外套の綻びて世に狎れゆくか 伊丹三樹彦
外套の老いたる父にふと遅れ 三谷昭
外套の耳イヤホンで塞ぎゐる 仲村青彦
外套の肩の断崖孤独かな 不破博
外套の肩尖るとき山の音 草間時彦 櫻山
外套の背に一些事をささやかれ 椿 作二郎
外套の背に血縁の手が交叉 平井さち子 完流
外套の背の父に似て子は旅へ 村上 光子
外套の胸の底まで荒野かな 草間時彦 櫻山
外套の脇にかいこむ杖細し 青峰集 島田青峰
外套の衿立てて世に容れられず 加藤楸邨
外套の衿立てて人許さざる 鈴木 まゆ
外套の裏は緋なりき明治の雪 山口青邨(1892-1988)
外套の裏緋色なる妻の勤 香西照雄 対話
外套の裾切れ街は春埃 米沢吾亦紅 童顔
外套の襟のよごれに冴え返る 吉屋信子
外套の襟を立て東京の隅へ帰る 加倉井秋を 『胡桃』
外套の襟立ててより語らはず 元岡幸子
外套の襟立てて世に容れられず 加藤楸邨
外套の襟立てゝ肩のいかりやう 青峰集 島田青峰
外套の襟立て淋しがりやかな 成瀬正とし 星月夜
外套の赤に尾鰭がついてくる 櫂未知子 蒙古斑
外套の重きに減りて靴悲し 橋本鶏二
外套の重き日のあり軽き日も 永井良
外套の重くなりしを人に言はず 遠藤梧逸
外套の釦手ぐさにたゞならぬ世 中村草田男
外套の電車待つ間を往たり来たり 青峰集 島田青峰
外套は夜更の街を歩み去る 長谷川櫂 虚空
外套ひとり水平線を胸に引き 友岡子郷 遠方
外套も疲れ釦穴瞑らず 田川飛旅子 『外套』
外套やいつもの位置に待つ電車 小田 司
外套やこころの鳥は撃たれしまま 河原枇杷男 烏宙論
外套やさゞめき後に街頭へ 青峰集 島田青峰
外套やまさぐりあてし一信書 岸風三楼 往来
外套や人百態の色一つ 林翔 和紙
外套や大いなる世に押されつゝ 徳永山冬子
外套や或日物憂き五十肩 石塚友二
外套や曾我殿原の痩我慢 尾崎紅葉
外套や来し方の闇行方にも 鈴木六林男 *か賊
外套や火山灰に失ふ山の藍 大岳水一路
外套や白き鴎を入江にて 草間時彦 櫻山
外套や知性を楯となせる顔 徳永山冬子
外套や終日雲にまつはられ 徳永山冬子
外套や落魄の肩崩れそめ 小林康治 玄霜
外套や見れば小さく彦根城 岸本尚毅 舜
外套や語らざること妻知らず 不破博
外套や雄を誇れぬ野鳥園 石川桂郎 高蘆
外套や館の出口は横町に 藤後左右
外套や鬱々として市の裡 河野南畦 『花と流氷』
外套をいなせに着しは悪魔にて 京極杞陽
外套をかかえ直して見舞い辞す 対馬康子 純情
外套をかけては扉に人消ゆる 清原枴童 枴童句集
外套をこゝろの住処なく覆ひ 杉山岳陽 晩婚
外套をしつかと抱へ納得す 猿山木魂
外套をだまつて著せて情あり 高橋笛美
外套をはじめて着し子胸にボタン 細見綾子 雉子
外套をゆたかに着けて散歩かな 青峰集 島田青峰
外套を吾子の赤きに並べて掛く 相馬遷子 山国
外套を四円に売るや春寒し 河野静雲
外套を売るに妻女ら無き如し 萩原麦草 麦嵐
外套を掛けし俥の初日かな 増田龍雨 龍雨句集
外套を深々と著て玄関に 高木晴子 晴居
外套を環視の中に入りて脱ぐ 右城暮石 声と声
外套を盾とし過ぐる行者滝 桂樟蹊子
外套を眼ぐや巷のなげかひも 軽部烏頭子
外套を着せらるる手をうしろにす 池田秀水
外套を着せられてゐる別れかな 原田青児
外套を着せ居り夫が負ふことのみ 殿村菟絲子 『繪硝子』
外套を着て触れし世の募金箱 宍戸富美子
外套を着て過去のみがあたたまる 内藤吐天 鳴海抄
外套を羽織りヌードの出番待つ 橋詰沙尋
外套を翅の如くに着工歩む 萩原麦草 麦嵐
外套を脱いで小さな肩があり 岸本尚毅 鶏頭
外套を脱がずどこまでも考へみる 加藤楸邨
外套を脱ぎて弱気の虫動く 藤井彰二
外套を脱ぐより少女の声噴き出す 林 翔
外套を脱ぐバルザツク富士が立つ 磯貝碧蹄館
外套を脱ぐ胸白く旗模様 池内友次郎 結婚まで
外套を脱げば一家のお母さん 八木忠栄
外套を負ひて炎夏の街をかへる 瀧春一 菜園
外套を買ふにわからぬ子の好み 稲畑汀子
外套を車窓に吊つて日本海 藺草慶子
外套千々揉む夜の駅の朱の欅 石塚友二 方寸虚実
外套男女睦む足下に弱き波 田川飛旅子 『外套』
外套重く不幸の末の足病みぬ 森川暁水 淀
外套重し何起るとも驚かず 津田清子 礼 拝
外套重し受話器の底の嘘を聞く 松村多美
外套重し廃墟の占める夜の位置 石原八束 秋風琴
奇蹟なし外套の脚地に生えて 三谷昭 獣身
奈良女高師望みし日はも冬外套 鈴木栄子
女流書家みどりの外套着て華奢に 柴田白葉女 『冬泉』
妻のものへ外套冬鳶のごと掛ける 吉田鴻司
妻の外套の隠しを探す抱くごとく 田川飛旅子 花文字
定年まであと一年の外套着る 福島壺春
寒波来や外套のボタンつややなる 椎橋清翠
寒紅の舞妓も見たり外套被る 百合山羽公 故園
屠殺場につとむる人の外套よ 田村了咲
干しひろげ死者の外套大いなる 赤松[ケイ]子
廊更けぬ軍醫外套をきてかへる 横山白虹
患者診るや外套敢へて脱がずして 相馬遷子 山国
愛恋や外套おもき春と思ヘ 齋藤玄 飛雪
我れ病めば吾が外套も病みにけり 上野泰
戦傷兵外套の腕垂らしたり 加藤楸邨
教壇を去りて外套今も黒 森田峠 避暑散歩
明日ありやあり外套のボロちぎる 秋元不死男(1901-77)
暗がりに外套ならぶ昭和かな 徳弘純 麦のほとり
書架の前黒き外套のまゝ立てり 岸風三楼 往来
月光の外套のま.ゝ歩み入る 中島斌雄
朝々や外套古き日済貸 尾崎紅葉
東道の心ゆるめず外套著る 保田白帆子
横丁をふさいで来るよ外套着て 藤後左右
母が着物売つて買ひきし外套ぞ 成瀬櫻桃子 風色以前
毛布外套なんど蒲団にかけて寝る 寺田寅彦
毛皮すてゝ外套かろく空蒼し 渡邊水巴 富士
深夜往診風邪の外套重く着て 下村ひろし 西陲集
深夜来て不明の外套富士裏に 攝津幸彦
父と子の外套紛ひ母も老う 吉屋信子
父の世の外套はやる港町 古賀まり子
玉砂利の初日に帽子外套置く 篠原梵 雨
玉羅紗の外套着たる冬の蝶 久米正雄 返り花
生き難く生きて外套裏も黒 中村明子
白き手に外套托し軽き疲れ 田中冬二 麦ほこり
社会鍋守る外套の裾長し 岸風三樓
箪笥憂し服に外套にわが歴史 林翔 和紙
義父の死におどろきはおる外套重し 森川暁水 淀
聖堂のミサや外套着しままに 山田尚子
胸射ぬかれし外套を衣を剪りて脱がす 長谷川素逝 砲車
脱ぎ捨てし外套の肩なほ怒り 福永耕二
船を見てゐる外套の背を並べ 深見けん二
薔薇色の肺に外套を黒く着る 日野草城
被つて袖通す外套農夫の旅 田川飛旅子
裏返しせし外套も着馴れけり 相馬遷子 山国
裸婦像は暗し外套群がりて 加藤三七子
貝の洋書読む外套に品よく老い 田川飛旅子
足袋外套脱ぎ散らさでや孤独慣れ 石塚友二 方寸虚実
遠きピアノ書を閉ぢ外套を着てかへる 中島斌雄
遠富士に外套の襟に頬を埋め 池内友次郎 結婚まで
都府楼址一外套のたゝずめる 森田峠 三角屋根
酔うて着る外套の袖二つ長し 榎本冬一郎 眼光
重さうな外套やその鴎外忌 森田峠
風邪の夢さめて外套壁に垂る 岸風三楼 往来
鮟鱇はゆるき外套着用す 安田千枝子
鶏頭に外套長き毛氏の像 横山房子
オーバーにかくす己れをなほ愛す 河野南畦 『焼灼後』
オーバーに今日の吾が身を包みけり 稲畑汀子
オーバーに出際に抱きし吾子の毳 篠原梵
オーバーぬがず新宿夜話を語り去り 成瀬正とし 星月夜
オーバーの奥の奥なるふさぎ虫 今泉陽子
オーバーの背中がものを言ふことも 山田弘子 懐
オーバーの胸雪まみれ逢ひに行く 茨木和生 木の國
オーバーの裏には泳ぐ児をかくす 対馬康子 吾亦紅
オーバーの裏側にある荒野かな 櫂未知子 蒙古斑
オーバーの裏地の破れひとり知る 工藤克巳
オーバーの裾長にして老教授 田村了咲
オーバーの軽さ吾が身のうつろなり 上松康子
オーバーをぬぐ間も子等のぶら下る 庄崎以知太
オーバーを着せかけしのみ何も言わず 今井千鶴子
オーバーを羽識つてむかひあひ更けぬ 篠原梵 雨
オーバー濡れかすかつ模様浮いて来ぬ 篠原梵 雨
オーバー脱げばオーバー重し死を悼む 津田清子 二人称
オーバー買ふ迄街を行く金のぬくみ 加藤知世子
オーバー重し太陽燃ゆるゴッホの絵 野村慧二
ルオーの絵見しよりオーバー重たしや 石谷秀子
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔 和紙
妻の留守オーバーの儘火をおこす 畠山譲二
手錠の手隠すオーバー羽織りやる 中村鎮雄
疲れ脱ぐオーバー釦飛ばしけり 大串 章
知己のなき満座の中やオーバー脱ぐ 皆川白陀
著せかけてオーバーの名をちよと読みぬ 長尾樟子
連立ちしオーバーの端子が掴み 猪俣千代子 堆 朱
首筋のすうすうオーバー羽織り初め 高澤良一 鳩信
鬱然と父匂ひけり合オーバー 大石悦子
小平町
親方の漁場差配の赤毛套(あかけつとう) 高澤良一 素抱


外套 補遺

*えい泳ぐ黒きマントをひるがへし 富安風生
あをぞらに外套つるし古着市 阿波野青畝
かかれゆく担架外套の肩章は大尉 長谷川素逝 砲車
かたはらに脱ぎし外套さくら鍋 清崎敏郎
これぞ茂吉黒外套のうしろ肩 加藤秋邨
さぐり進む盲者や外套抜きエモン 中村草田男
その頃マントの礼者で 亡父は 亡祖父は 伊丹三樹彦
なほ壁に外套疲れし姿なす 岸田稚魚 雁渡し
なほ纒ふ冬外套や梅の春 日野草城
ひと待つに似しか外套の襟立てて 伊丹三樹彦
ぼろ外套蝕の巨岩に低頭す 佐藤鬼房
また逢はむ外套着るを見られをり 藤田湘子 途上
みささぎを衛る祖父の外套かな 阿波野青畝
やはり馬に賭ける眼だった 黒マント 伊丹三樹彦
オーバーにあまりに明るすぎる街 有馬朗人 母国
オーバーにかかり荷馬息過ぐ駅の灯見ゆ 金子兜太
オーバーに出際に抱きし吾子の毳 篠原梵 年々去来の花 皿
オーバーのまことうらぶれ木瓜の風 橋閒石 雪
オーバーのまま風邪の子の熱うかがふ 大野林火 早桃 太白集
オーバーのも一つ過去を持てば重し 有馬朗人 母国
オーバーの肩背バスのわれを籠む 篠原梵 年々去来の花 皿
オーバーや老いては子とも肩並めて 安住敦
オーバーを羽織つてむかひあひ更けぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
オーバー壁に犇きかかり遠嶺の雪 橋閒石 朱明
オーバー濡れかすかの模様浮いて来ぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
オーバー脱げばオーバー重し死を悼む 津田清子
ゴーゴリーの外套さがすぼろ市に 有馬朗人 立志
マントのボタン大きく鎌倉の子遊べり 富安風生
マント被て高校生伊勢の片田舎 山口誓子
世は寒しインバネス被て鴨を毟る 中村草田男
二科を観る秋の外套は重からず 日野草城
井戸涸れ教会 鴉のマントふわふわ降り 伊丹三樹彦
人の訃を聞いて外套ひつかけて 上村占魚 球磨
人黙し外套の襟のとがり見ゆ 松崎鉄之介
仏炎といふ白マント水芭蕉 山口青邨
個展見るオーバーの客立ち塞ぐ 阿波野青畝
傷兵は黄なるマントを白き衣に 山口誓子
冬も終りの外套 数珠とマッチが出て 伊丹三樹彦
初御籤 赤マントの胸 少し割り 伊丹三樹彦
北風吹けり外套のかげ墓にながく 大野林火 海門 昭和十三年
北風吹けり外套の影墓に長く 大野林火 早桃 海風抄
十二月都塵外套をまきのぼる 加藤秋邨
受験生マントひるがへし街頭ヘ 山口青邨
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行
善き友や年々同じマント被て 伊丹三樹彦
喪の聖歌三度び外套措きて起つ 伊丹三樹彦
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔 和紙
地図をよむ外套をもて灯をかばひ 長谷川素逝 砲車
坂登る黒き外套は吾が世界 細見綾子
塔婆煽つ風に外套脱ぎにけり 渡邊水巴 白日
墓地の中ゆく外套の中の我 深見けん二
壁に外套そのほかに妻と子を遺し 右城暮石 声と声
壁に掛けし外套どことなく内気 林翔
壁の夕日に痩外套や腕たらす 角川源義
外套が擦り梅擬地獄の実 斎藤玄 狩眼
外套が鉄となる肩 小市民 伊丹三樹彦
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
外套なき一団喪主の恩師目守る 伊丹三樹彦
外套にあふれ除夜祭(ジルベスター)の裳の裾が 山口青邨
外套にかくし持つたる捨て台詞 上田五千石『琥珀』補遺
外套にしみもせざりし時雨なる 野澤節子 未明音
外套にとんぼがとまる秋声碑(金沢卯辰山) 細見綾子
外套にふれクリスマスツリーかな 清崎敏郎
外套に手を上げ叫ぶこともなし 右城暮石 句集外 昭和二十三年
外套に赤き風船ひとつかくす 平井照敏
外套に銭あり握りては離す 加藤秋邨
外套のうら存分に酒まはる 飴山實 花浴び
外套のかくしにいつも何かあり 高浜年尾
外套のけものがくさき年の市 古舘曹人 樹下石上
外套のなかに子を負い牛を避く 金子兜太
外套のなかの生ま身が水をのむ 桂信子 女身
外套のままの酔眼妻の前 伊丹三樹彦
外套のもぎれ釦を衣嚢に幾日 安住敦
外套のわが影病めりとぞ思ふ 石田波郷
外套の中の寒さを覚え立つ 深見けん二
外套の剥げて遼東より歸る 正岡子規 外套
外套の大きボタンを愛しけり 後藤比奈夫
外套の奥の喪服に凍徹る 飯田龍太
外套の嶮しき胸を湖の前 古舘曹人 能登の蛙
外套の新しきズボンの穴を掩ひたる 正岡子規 外套
外套の泥はね一つ灯に戻る 細見綾子
外套の累々として面会日 日野草城
外套の綻びて世に狸れゆくか 伊丹三樹彦
外套の緋裏見せあふ齢も過ぎ 鷹羽狩行
外套の肩ぶっけあひ都会に生く 伊丹三樹彦
外套の肩兵たりし過去負ひ来る 松崎鉄之介
外套の肩尖るとき山の音 草間時彦 櫻山
外套の胸の厚きに触れざりしか 鷲谷七菜子 黄炎
外套の胸の底まで荒野かな 草間時彦 櫻山
外套の袖触る父にもの云はず 伊丹三樹彦
外套の裏は緋なりき明治の雪 山口青邨
外套の裏緋色なる妻の勤(つとめ) 香西照雄
外套の裾を挟まれしが辞し去る 山口誓子
外套の裾梅林の何に濡れし 右城暮石 句集外 昭和三十二年
外套の裾水仙にふちどらる(鎌倉瑞泉寺) 細見綾子
外套の襟立てて世に容れられず 加藤秋邨
外套の襟立てて何のうれひある 大野林火 海門 昭和十二年
外套の襟立て天守を背に帰る 赤尾兜子 稚年記
外套の襟立て癖も夫の死後 岡本眸
外套の見ればほのかに月のいろ 加藤秋邨
外套の釦あたらし溶岩に落ち 山口誓子
外套の釦手ぐさにただならぬ世 中村草田男
外套の釦見飽かず爆音下 加藤秋邨
外套の黒さをもつて別れとす 岡本眸
外套も手套も兵の名残かな 石塚友二 磯風
外套やかくしの拳震ひしのみ 渡邊白泉
外套やすみれ色なる比叡見ゆ 草間時彦
外套やまだめぐりゐる通夜の酒 大野林火 青水輪 昭和二十六年
外套や二百三米突の丘の上に 山口誓子
外套や人百態の色一つ 林翔 和紙
外套や或日物憂き五十肩 石塚友二 曠日
外套や日矢一閃の佐渡は見ゆ 草間時彦 中年
外套や河の黒さに心溺れ 草間時彦 中年
外套や火を焚けば波とびかかる 岡本眸
外套や白き鴎を入江にて 草間時彦 櫻山
外套や神経痛といふ枷あり 阿波野青畝
外套や落魄の肩崩れそめ 小林康治 玄霜
外套や近づきがたき背ナばかり 岡本眸
外套や雄を誇れぬ野鳥園 石川桂郎 高蘆
外套をずん胴に着て才うすし 伊藤白潮
外套をはじめて着し子胸にボタン 細見綾子
外套をゆるやかに着て鳰とをり 大野林火 青水輪 昭和二十六年
外套を吾子の赤きに並べて掛く 相馬遷子 山国
外套を環視の中に入りて脱ぐ 右城暮石 声と声
外套を畳んでおいて嵩高な 高浜年尾
外套を着かねつ客のかゝへ走る 正岡子規 外套
外套を着てより声のやや高き 岡本眸
外套を脱がずどこまでも考へみる 加藤秋邨
外套を脱ぎしが壁の影も脱ぐ 加藤秋邨
外套を買ふにわからぬ子の好み 稲畑汀子
外套を黒く来てをり鷹ヶ峯 森澄雄
外套を黝くぞみたるのみに寝る 石田波郷
外套千々揉む夜の駅の朱の欅 石塚友二 方寸虚実
外套着て夜の人波を行けど行けど 中村汀女
外套重く触るること憂き手紙あり 加藤秋邨
外套重し何起るとも驚かず 津田清子 礼拝
外套黒し脱がば一切崩れむよ 岡本眸
女の児真白いマント著て近より来る 中川一碧樓
妻あらぬ夜の外套を吊りにけり 伊丹三樹彦
妻来たり外套の胸を開きつつ 石田波郷
娼婦掛けぬ大襖の上に外套を 山口誓子
子に靴を穿かすインバネス地に触り 山口誓子
寄る鴨に マントひろげの 鴨守よ 伊丹三樹彦
寒梅に赤いマントを着て詣づ 中村汀女
寒瀑や外套黒き男たち 日野草城
寒紅の舞妓も見たり外套被る 百合山羽公 故園
寝てみてゐる子の外套のかゝれるを 細見綾子
尖塔や外套の吾等独り子守り 金子兜太
屈身のままに老婆の黒マント 山口誓子
嵩高に置きし外套玄関の灯 高浜年尾
帽あげて呼ぶ外套の不死男亡し 上田五千石『天路』補遺
影を売るごとく外套を売りにけり 能村登四郎
恋失ひしごと外套の襟立てゆく 林翔
恋敵の厚き外套眼にぬすむ 西東三鬼
悔恨と夕日マントの襟ふかく 大野林火 海門 昭和十四年
患者診るや外套敢へて脱がずして 相馬遷子 山国
悲しみは去りぬマントの如きもの 藤田湘子
懸けんとすオーバー古く持ち重りす 篠原梵 年々去来の花 皿
我れ病めば吾が外套も病みにけり 上野泰
戦傷兵外套の腕を垂らしたり 加藤秋邨
戸外凍つ外套の給仕頭髪白き 山口誓子
探梅や外套脱いで庫裡に立つ 渡邊白泉
敵多し外套の裾風さばき 草間時彦 中年
明日ありやあり外套のボロちぎる 秋元不死男
書の白さ外套を脱ぎ痩身なる 石田波郷
東風の径軍医マントを端しくす 大野林火 冬青集 雨夜抄
果もなや責めらるる膝の黒外套 角川源義
枯草にマントしなやか暖かし 中村汀女
椿色のマント着すれば色白子 杉田久女
毛皮すてゝ外套かろく空蒼し 渡邊水巴 富士
毛裏外套わが履歴書を収めをり 能村登四郎
水仙段丘 のぼる 裾長マントの緋 伊丹三樹彦
水夫がゐて外套黒く夜を守れる 山口誓子
水鳥やマントの中のふところ手 原石鼎 花影
海を見て来し外套を放り出す 岡本眸
濃みどりの遊び足りたるマントかな 山田みづえ まるめろ
火口ふぶき外套白くならむとす 山口誓子
父と子か外套を草に脱ぎ掛けて 石田波郷
玉砂利の初日に帽子外套置く 篠原梵 年々去来の花 雨
異教徒の外套玻璃に朱塗 山口誓子
着たきりが家財やこれの外套も 石塚友二 磯風
神将に冬の外套をわれ脱がず 山口誓子
神楽上げくるるオーバー脱ぐべきや 後藤比奈夫
箪笥憂し服に外套にわが歴史 林翔 和紙
緋マントや母へ手出さんふためきに 中村草田男
縫合の国軽外套もほころびて 赤尾兜子 歳華集
聖十字かこむ黒外套四人 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
聖夜劇外套のまま離れ観る 伊丹三樹彦
胸射ぬかれし外套を衣を剪りて脱がす 長谷川素逝 砲車
脱ぎ了はる外套終始見られつつ 岡本眸
船を見てゐる外套の背を並べ 深見けん二
茂吉顔雪マントにて吹きざらし 平畑静塔
莨火をマントを盾として点す 大野林火 早桃 太白集
薔薇色の肺に外套を黒く着る 日野草城
裏返しせし外套も着馴れけり 相馬遷子 山国
言はできて外套おもく一歩一歩 大野林火 早桃 太白集
足ばやに人等オーバー筒のごとく 篠原梵 年々去来の花 皿
足袋外套脱ぎ散らさでや孤独慣れ 石塚友二 方寸虚実
身につきし汝の遺品の外套も 清崎敏郎
身に外套已がアルバム卓上に 中村草田男
酒欲しと三十路のマント被り居り 伊丹三樹彦
野の男外套胸より吹かれ開き 中村草田男
金鉱夫マントに痩せし身を裹む 岸田稚魚 負け犬
鎌倉に雪降り出しぬ黒マント 草間時彦
限りなき外套の黄の昭和かな 桂信子 「草影」以後
雨烈し雨外套の護謨臭ふ 日野草城
雪の片露になりゐるオーバー懸く 篠原梵 年々去来の花 皿
雪マント被けばすぐにうつむく姿勢 橋本多佳子
風船ひとつマント母子に浮び蹤く 岸田稚魚 筍流し
鳶翔ちてより外套を深合はす 岡本眸
鴉来て女のマント怪しみぬ 岡本眸
黒かがやく細長外套雑種犬と 中村草田男
黒の流行被れば真暗な外套 金子兜太
黒マント角ばりしもの中に負ふ 山口誓子
黒外套鎧ふはるかにひしめく街 桂信子 草影

以上

by 575fudemakase | 2017-01-27 17:20 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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