北風 の俳句

北風 の俳句

北風

例句を挙げる。

あかつきの北風とほる曼珠沙華 飯野燦雨
かの時は北風を香ぐはしとせり 相生垣瓜人 微茫集
これからは毎日北風の浜荷役 福田冷味
しづかなる駒岳の煙に北風ありや 京極杞陽
その夜更け笞のごとく北風吹けり 小林康治 四季貧窮
のどぼとけあらはに北風の中を来し 上野さち子
ひらくコーモリ接収海域の北風避くと 古沢太穂 古沢太穂句集
ふるさとの春の北風つよきかな 久保田万太郎 流寓抄
やつにも注げよ北風が吹きあぐ縄のれん 太穂
わが影の髪乱れつつ北風を行く 山口波津女 良人
われに妻妻にわれあり北風吹く夜 森川暁水 黴
アドバルン北風はらみ下ろさるゝ 阿部みどり女 笹鳴
マスクして北風を目にうけてゆく 篠原梵 雨
ユリの木のまばらなる葉を北風鳴らす 高澤良一 さざなみやっこ
一枚の壁傾きて北風低く(焦土) 河野南畦 『花と流氷』
人行けば我も行くなり北風に 本田あふひ
今も小諸刃のごとき北風の吹き 村松紅花
俯瞰に北風の港契約がんじがらみ 中戸川朝人
傷兵や北風吹く門に母を送る 岸風三楼 往来
八音節か筑紫の国の北風は 夏石番矢
出帆旗北風に羽摶ちて昇りゆく 波津女
切れ切れて北風に残りし母のテープ 羽部洞然
北風あたらしマラソン少女髪撥ねて 三鬼
北風あと心呆うけし夕餉かな 木歩句集 富田木歩
北風がときに宣撫の声をさらふ 長谷川素逝 砲車
北風すさびたまとび瓦ふるひ落つ 長谷川素逝 砲車
北風すさび納め納めと何やかや 久保田万太郎 流寓抄以後
北風す扉にくろがねの巨き鋲 石原舟月 山鵲
北風す穂家のもののぐ古りにけり 石原舟月 山鵲
北風たゆむ神葬の笙火に温む 宮武寒々 朱卓
北風つのるどこより早く厨に灯 岡本眸
北風つよき九番ホールをあへてゆきぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
北風とおなじ速さに歩きゐしなり 篠原梵
北風とガラスのような二人かな 二村典子
北風にあらがふことを敢へてせじ 風生
北風にいらだてば咳きし胸ほてる 川島彷徨子 榛の木
北風にかけてがせいや帆前垂 久保田万太郎 流寓抄以後
北風にかほのしらけて葬もどり 森川暁水 黴
北風にさからふ腕をしかと組む 岸風三楼 往来
北風にたちむかふ身をほそめけり 本下夕爾
北風によろけそれでも海が好き 飯沼衣代
北風に人細り行き曲り消え 高浜虚子(1874-1959)
北風に向ひ歩きて涙ふく 室町ひろ子
北風に吹かるゝ旅をしてをりぬ 今井杏太郎
北風に吹かれそのまま囚の前 阿部みどり女
北風に吹き歪められ顔嶮し 高浜虚子
北風に唄奪られねば土工佳し 津田清子 礼 拝
北風に情念透きて前後なし 柴田白葉女 花寂び 以後
北風に打つ鉄の皮ぽろぽろと 右城暮石 声と声
北風に揺れゐる檣ばかりなり 五十嵐播水 埠頭
北風に棕櫚が葉鳴らすのみの窓 波多野爽波 鋪道の花
北風に横向き立てるビルディング 京極杞陽 くくたち下巻
北風に浚渫船のあるばかり 五十嵐播水 埠頭
北風に火の粉あげつつ船出でぬ 五十嵐播水 埠頭
北風に牛角を低くして進む 西東三鬼
北風に糞落しゆく荷馬かな 碧梧桐
北風に脳味噌乾き吹かれをり 昌治
北風に腹を叩いて牛通す 長谷川かな女
北風に舟そくばくや湖の浦 尾崎迷堂 孤輪
北風に言葉うばはれ麦踏めり 楸邨
北風に逆ふ自嘲は木炭車か吾か 赤城さかえ
北風に鍋焼饂飩呼びかけたり 子規
北風に雲は東し南しぬ 京極杞陽 くくたち上巻
北風に顔の粉のふくおかしさよ 鳥居美智子
北風に飛びくる雪のきほひかな 比叡 野村泊月
北風に飛ぶ人の隻語を聞きとがむ 竹下しづの女句文集 昭和十五年
北風のうしろにいつも又三郎 今井杏太郎
北風のかたちのこる髪なり擁く 中戸川朝人
北風のこの崖にきて逆まける 上村占魚 鮎
北風のころがり落つる千枚田 大平芳江
北風のなか昂ぶり果ての泪ぬぐふ 鈴木しづ子
北風のふわりと甘くパン工場 木谷はるか
北風のますぐに歩く仲仙道 長谷川かな女 雨 月
北風のまだ力ある花しどみ 福田甲子雄
北風の丘坂なりにわが庭となる 加藤楸邨
北風の人誰もかつては母に甘へし 細谷源二 砂金帯
北風の吹きぬけて山美しき 今井杏太郎
北風の吹きまく雲の尖りかな 上村占魚 鮎
北風の吹くだけ吹きし星の冴え 渋沢秀雄
北風の墓へ縁由の酒をそゝぐなり 清水基吉 寒蕭々
北風の夜やほとほと熱き襁褓籠 下村槐太 光背
北風の大門稀に開くかな 阿部みどり女 笹鳴
北風の奪へる声をつぎにけり 中村汀女
北風の巻尺飛んで捲かれ来る 米沢吾亦紅 童顔
北風の息安めゐる七七忌 橋本榮治 麦生
北風の星嶺も祈りの姿もつ 中島斌雄
北風の昨日も今日も軒の梅 高濱年尾 年尾句集
北風の河岸銑鉄船ひくく河岸につく 川島彷徨子 榛の木
北風の灯を近づけぬ聖書地図 田川飛旅子
北風の爪のあとある大地かな 上野泰 春潮
北風の砂丘を指す馬ならば嘶かむ 金子無患子
北風の磨き上げたる尼の柚子 殿村莵絲子 雨 月
北風の空サーチライトが叉を求めあふ 篠原梵 雨
北風の背中よ窓は嵌め殺し 櫂未知子 蒙古斑
北風の藪鳴りたわむ月夜かな 杉田久女
北風の街砲馬はげしく頬寄せあふ 中島斌男
北風の身を切るといふ言葉かな 中村苑子
北風の釜火に頬を焼かれけり 金尾梅の門 古志の歌
北風の障子ことりと吹き凪げる 寸七翁
北風の鶏羽ばたく型にくくられぬ 羽部洞然
北風はげし書房の書架が街の壁 古館曹人
北風ふく夜ラジオは遺児に唄はする 岸風三楼 往来
北風へ壁も膨らむ楽の渦 林翔 和紙
北風まとふ花梨の下のおびしや宿 町田しげき
北風やあるひは赤き蟹の足 久保田万太郎 流寓抄以後
北風やあをぞらながら暮れはてゝ 芝不器男
北風やお不動山へ土手許り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
北風やかたまりあうて葬もどり 森川暁水 黴
北風やかなしき楽の曲馬団 福田蓼汀 山火
北風やけふ七ッ峰皆見ゆる 乙字俳句集 大須賀乙字
北風やこの板の間は書を教ふ 波多野爽波 『一筆』以後
北風やつひに立ちとまり吸ふたばこ 佐野良太 樫
北風やふるひ声して葬もどり 森川暁水 黴
北風やほとけの足のぶうらぶら 飯田蛇笏 山廬集
北風やまつかうを打つ砂つぶて 上村占魚 球磨
北風やイエスの言葉つきまとふ 野見山朱鳥
北風や一茶の上蔵窓ひとつ 玉木春夫
北風や余燼の中の幾屍(三月十日未明の大空襲に一眸災火余燼の渦巻く墨東の焦土に佇ちて) 石原八束 『秋風琴』
北風や南に傾ぐ風師山 佐藤漾人
北風や合掌棹しに沼渡舟 橋本鶏二
北風や多摩の渡し場真暗がり 秋櫻子
北風や夜の店番の針仕事 小澤碧童 碧童句集
北風や夜店尻なる古雑誌 五十嵐播水 播水句集
北風や大青竹の吹きしなふ 高橋淡路女 梶の葉
北風や子の物干して賑はしく 野村喜舟 小石川
北風や小草萌え居る葎底 西山泊雲 泊雲句集
北風や山の妙義の屏風立ち 上村占魚 球磨
北風や山越して雁湖に落つ 菅原師竹句集
北風や怒濤へなだれ千枚田 徳永山冬子
北風や戸をさしかけの夜商ひ 小澤碧童 碧童句集
北風や書架に読まざるリルケ頌 火村卓造
北風や杉の三角野の果に 東洋城千句
北風や桑を出し月すぐのぼり 大峯あきら 鳥道
北風や椿油は瓶の底 波多野爽波 『一筆』以後
北風や此処までくるとみな背き 高柳重信
北風や汁に輪禍の供花一基 森本啓太
北風や浪に隠るゝ佐渡ケ島 月斗
北風や涙がつくる燭の虹 高柳重信
北風や爐邊に金魚鉢の大 泰山俳句集拾遺 中村泰山、熊谷省三編
北風や独楽買ふ銭を固く掌に 永井龍男
北風や目汁鼻汁媼あはれ 河野静雲
北風や石を敷きたるロシア町 高浜虚子(1874-1959)
北風や碧童の句の憤り 久保田万太郎 流寓抄以後
北風や神のみたらしから~に 阿部みどり女 笹鳴
北風や移民相手の雑貨店 五十嵐播水 埠頭
北風や肌青々と桐立てり 阿部みどり女
北風や護国寺をさす霊柩車 野村喜舟 小石川
北風や釣つてすぐ売る鯉の色 野村喜舟 小石川
北風や釣瓶に上げし水すくな 小杉余子 余子句選
北風や鍛冶屋魚屋の腰障子 六花
北風や青空ながら暮れはてゝ 不器男
北風をくぐれる水の早さかな 中村汀女
北風をまともに川に沿うてゆく 高濱年尾 年尾句集
北風をゆきつぶら童子を拾ひくる 栗林千津
北風をゆけばなけなしの髪ぼうぼうす 金子兜太 皆之
北風を削り出さるるごとく歩む 石川仁木
北風を帰りて髪の減りにけり 莵絲子
北風を来し相おし鎮め轆轤踏み 加藤知世子 花寂び
北風を来し骨相とがり描きやすし 加藤知世子 黄 炎
北風を軽しと思ふ日暮れけり 今井杏太郎
北風を避くべくもなし馬の上 石井露月
北風三日風男来て篠生刈る 鈴木勁草
北風低く糶に灯して河岸女 河野南畦 湖の森
北風凪ぎて夕陽のしみる桐畠 塚原麦生
北風凪ぎの星空ゆくは鴎かや 金尾梅の門 古志の歌
北風凪の海の落暉や飽かず立つ 金尾梅の門 古志の歌
北風吹いて沼の匂の網乾く 神宮きよい
北風吹いて泥土の干割れ底知れず 有働亨 汐路
北風吹いて瓦礫の中の小もの店 石原舟月
北風吹くやしらじら昼の塩害田 有働亨 汐路
北風吹くや一つ目小僧蹤いてくる 角川春樹
北風吹くや少女外套の裏あかく 岸風三楼 往来
北風吹くや鳴子こけしの首が鳴る 菖蒲あや
北風吹く夜ねむり薬にしばし寝る 森川暁水 黴
北風吹く夜壁の蜘蛛見て寝ずありぬ 森川暁水 黴
北風吹く硝子戸に鍵かけてある 川島彷徨子 榛の木
北風吹く葬儀社の花白妙に 飯田蛇笏
北風吹けば北風に嘶く寒立馬 小松夜潮
北風吹けば砂粒うごく失語の浜 西東三鬼
北風吼ゆる夜に出でゆく酒少し 上和田哲夫
北風寒しだまつて歩くばかりなり 高浜虚子
北風強く夕焼を地の果に押す 飛旅子
北風強し製菓会社の旗緊まり 田川飛旅子 花文字
北風昏くはくれむ弁を閉ぢにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
北風暗く笛も鳴らさず船出でぬ 五十嵐播水 埠頭
北風荒ぶ赤い帽子の児と船に 上村占魚 鮎
北風荒らびラヂオも今はなき真夜と 森川暁水 黴
北風荒るる夜のそら耳に子泣くこゑ 森川暁水 黴
北風荒るる夜の時計の鳴り嗄れぬ 森川暁水 黴
北風落ちて夕陽のしみる桐畠 塚原麦生
北風防ぐ垣はもあらず泥染は 米谷静二
北風鳴るや五十腕のパイプ歯にあたる 原田種茅 径
北風鳴れり虚しき闇につきあたり 油布五線
千余の赤旗北風をゆくらんひと日家に 赤城さかえ
原子炉を抱く岬や北風吼ゆる 兼田 幸苑
吾子が抱く一壺となりし夫に北風 野見山ひふみ
哨戒機北風に真向ひ音をたかむ 篠原梵 雨
喜多方ラーメンずずと啜れば北風ひゅう 高澤良一 随笑
喬き木の北風に勝たんとするを見たり 細谷源二 砂金帯
嘆きつつ我を蹤けくる北風も 河原枇杷男 定本烏宙論
埋立地の北風にひからぶ不思議なパン 齊藤夏風
墓に到いて柩吹かるる北風かな 下村槐太 光背
墓地の涯北風吹き電車低く見ゆ 三谷昭 獣身
夕北風一トきは月のほそりかな 久保田万太郎 流寓抄以後
外は北風パン種のぬくみけり 如月真菜
夜ぞ深き葦を折りては北風叫ぶ 竹下しづの女 [はやて]
天城雪なし猟人北風に吹かれ去ぬ 臼田亞浪 定本亜浪句集
天橋に北風憑きて鳴りわたる 石原八束 『仮幻』以後
奔放な北風が海巻く陸は未完 斉藤夏風
嫁ひとり迎ふ総出の北風の村 成田千空 地霊
寝がたし北風(きた)に吹き飛ぶ遠汽笛 川口重美
小さくて薪の神とぞ北風の中 友岡子郷
小鳥の音北風に消えつつ田ゆきこゆ 川島彷徨子 榛の木
山際のあさぎ空より北風は来る 篠原梵 雨
峠は闇われに棲みつく北風も 河原枇杷男 流灌頂
干蛸の口尖りゐる北風強し 壺井久子
必ずと言つて良いほど午後は北風 加藤古木
急に北風たてり雨降嶺青ませて 川島彷徨子 榛の木
急に北風空の形相うち変り 上野泰 佐介
恋猫にまだ北風荒き三崎かな 久米正雄 返り花
抱き止めて北風匂ふ子の旋毛 西村和子 かりそめならず
救急車香ものこさずに北風を去る 昭彦
新北風の幅を見据ゑよ屋根獅子 鳥居おさむ
日もすがら北風の林のさわぐ音 長谷川素逝 村
春の北風大学生を死なしたる 久米正雄 返り花
春水の縮緬皺や北風添へば 栗生純夫 科野路
昼くらく北風つよき日なりけり 長谷川素逝 砲車
末枯や北風強く當る山 石井露月
杉葉かけて北風防ぎ銭乞へる 比叡 野村泊月
村々へ秩父北風おろしけり 喜谷六花
村は槇籬高く北風堰いて住む 長谷川素逝 村
梅の陽と北風に嬰児のもの晒す 鈴木六林男 第三突堤
棕梠の葉が肝胆くだく夜の北風 田川飛旅子 花文字
樫山に北風雪を降らしけり 右城暮石 声と声
橋二つ渡る参賀に北風まとも 木田素子
死を言ふ妻はげしく叱す北風の中 徳永山冬子
水の上を北風の吹き通りけり 今井杏太郎
池に波たゝせて春の北風寒き 大場白水郎 散木集
沈いし顔北風にこわばり工場退ける 田川飛旅子 花文字
波止暗く北風に鳴る旗手ん手 五十嵐播水 埠頭
海べりに旗立ち北風を裂きいたり 飴山實 『おりいぶ』
海苔採の眼しよぼしよぼと北風まとふ 大野林火
海道や松蔭小家北風に 尾崎迷堂 孤輪
温泉の煙北風しづまれば山かくす 深見けん二
滅びてはいま北風の素通り村 有働 亨
漂泊や北風の波退く潮仏 石原八束 『幻生花』
潟の水乗れる田のほか北風暗し 西村公鳳
濠の波北風すさみそめにけり 麦南
火を飼つて鍛造北風に隙だらけ 宮津昭彦
火口壁の身の影北風に舞ひ暗む 石原八束 空の渚
炉にゐるや別の己れが北風を行き 松崎鉄之介
燕俄かにおしやべり北風を帰り来て 羽部洞然
片頬にひたと蒼海の藍と北風(きた) 竹下しづの女句文集 昭和十三年
特攻基地址北風に椰子の葉ささら鳴り 奈良文夫
獄の門出て北風に背を押さる 秋元不死男
田を移るたびに北風つよき谷 飯田龍太
白波しみじみ砲音なき日の北風に 古沢太穂 古沢太穂句集
白波や筑波北風の帆曳き船 石原八束 『高野谿』
白鳥の相寄る北風のつのる中 成瀬桜桃子 風色
目も耳も北風に散らし後ずさり 渡部陽子
砂を売る砂山の村北風晒らし 成田千空 地霊
砂舟の水尾撓む北風大幅に 成田千空 地霊
神の階青空に見え北風吹けり 柴田白葉女 花寂び 以後
空は北風地にはりつきて監獄署 飯田蛇笏 山廬集
窓の椎夕日に映えて北風かな 木歩句集 富田木歩
竹を打つ音北風となりにけり 山岡正嗣
笹つなぎの雑魚北風乾きつゝ 泰山俳句集拾遺 中村泰山、熊谷省三編
純白の結び目北風の遺骨一つ 成田千空 地霊
羽音して北風吹き分る野末の樹 成田千空 地霊
老いたれば非常を常に春の北風 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
耳傾むく北風より遠き物音に 林火
草山の墓北風に吹きはれぬ 西島麦南 人音
荒園の夜は犬群れて北風すさぶ 中尾白雨 中尾白雨句集
荒神松買ふにがま口北風晒し 高澤良一 ねずみのこまくら
蛸壺の北風受けてころがれり 松藤夏山 夏山句集
街燈の独楽の子北風に連れ去られ 石原八束 空の渚
覆われて貨車に角ばるもの北風へ 田川飛旅子 花文字
角曲るとき北風に相対す 川原 程子
訃ははるか鉄板鳴らし北風はしる 三谷昭 獣身
起重機索厳と垂直北風吹く 羽部洞然
足上げて鶴のごとしよ北風吹く日 仙田洋子 橋のあなたに
身の内に北風の入口出口あり 加藤はま子
身をぬけてゆく北風のつぶて打ち 長谷川久々子
軍旗に手向うなの気球に北風の吹きつけている風景 栗林一石路
逆髪や北風の風渡野葬り道 文挟夫佐恵 遠い橋
道のべや北風にむつむ女夫鍛冶 飯田蛇笏 山廬集
道の辺の噴井に落る北風かな 増田龍雨 龍雨句集
部屋くらく坐りぬ立ちぬ北風すさぶ 片山桃史 北方兵團
部屋になほ北風を戻りし耳なじまぬ 篠原梵
野辺送りまさしう野辺を北風に吹かれ 奈良文夫
鍵をもて導かるるや北風の獄 松村蒼石 春霰
長江の出口入口北風を呑む 柴崎左田男
非命多喜二北風の機関車煙伏す 成田千空 地霊
非常梯子北風へ少女の裾ふくらむ 田川飛旅子 花文字
頬に北風あてて一歩も退かず 鎌倉佐弓 水の十字架
風呂敷をもつ子がすぎて北風吹けり 長谷川双魚 『ひとつとや』
飢ゑし啼く海猫に日増しの北風嵐(禮文島) 上村占魚 『自門』
鬼灯忌の北風を聴く一人かな 有働亨 汐路
鶏遠音きこゆる北風に病臥かな 富田木歩
鶏頭の毛穴立ち行く北風かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
甲板に出づれば北風に面張られ 高澤良一 石鏡
SOUVENIRSHOPスカジャン北風に吊り 高澤良一 石鏡
あらぬこと口走りては寒風に 高澤良一 素抱
家に入りまだ寒風の足取なり 富田直治
寒風が揉んで変形せぬプール 渋谷道
寒風となり大富士の声となる 齋藤玄 飛雪
寒風と雀と昏るゝおのがじし 竹下しづの女句文集
寒風にあらがいて骨太りけり 森田智子
寒風にすぐ取乱す棕梠を愛す 田川飛旅子 花文字
寒風にとびとどまれる鴎かな 京極杞陽
寒風にふきしぼらるゝ思ひかな 星野立子
寒風にふき紋られて歩きをり 上野泰
寒風に向つて歩く外はなし 池内たけし
寒風に吹きしぼらるる思ひかな 星野立子
寒風に吹き絞られて歩きをり 上野泰 春潮
寒風に声かけゆくは亡父ならむ 寺田京子 日の鷹
寒風に売る金色の卵焼 大木あまり
寒風に少女はつよき言葉持つ 右城暮石 声と声
寒風に曝され金に突きとばされ 石橋辰之助
寒風に背筋伸ばして誕生日 菖蒲あや
寒風に葱ぬくわれに絃歌やめ 杉田久女
寒風に赤旗立てて厄除寺 船津俶子
寒風に身を*そそがむと出でて来し 上野さち子
寒風に顔ちぢまりて吾子戻る 中嶋秀子
寒風のつよければ振る旗おもし 長谷川素逝 砲車
寒風のぶつかりあひて海に出づ 山口誓子
寒風のむすびめごとの雀かな 齋藤玄 『雁道』
寒風の中にとどまる骨の鯉 斎藤玄 雁道
寒風の吹込んでゐるビルディング 京極杞陽 くくたち下巻
寒風の土へ掘り出す紅かぶら 福田甲子雄
寒風の子を見てあれば抱き去れり 長谷川かな女 牡 丹
寒風の盆地芭蕉の出奔地 楠節子
寒風の真黒き架線ああ家に 齋藤愼爾
寒風の研き上げたる星の街 水田むつみ
寒風の通天閣もの落すなよ 右城暮石 上下
寒風の陸灯船の灯が加はる 右城暮石 声と声
寒風の鴨浮き鴉翔ちにけり 齋藤玄 飛雪
寒風へ首差し伸べて川鵜たつ 加藤耕子
寒風やたかくは飛ばぬ土の鳥 銀漢 吉岡禅寺洞
寒風やたくましと見しひとのそば 桂 信子
寒風やだんまり解かぬ夜泣石 渡辺恭子
寒風やふくらむものは立ち上り 石田勝彦 秋興
寒風や半分ひらく島の店 山根きぬえ
寒風や石の如くに抱く決意 藤浦昭代
寒風や砂を流るる砂の紋 石田勝彦
寒風や羽根折つて来る鳥真白 金箱戈止夫
寒風や菜に飛ぶ虫の散り~に 渡辺水巴 白日
寒風や鉄火ちかみの膝頭 齋藤玄 飛雪
寒風や隊伍みじかき帰還兵 渡邊水巴 富士
寒風を一気に吸つて過去を吐く 河渕香保女
寒風を来し子に光る耳二つ 細川加賀 『傷痕』
寒風を来し目に少し涙ため 星野立子
寒風を殺してゐたり波殺し 大木あまり 火のいろに
寒風を突いて人皆用ありげ 星野立子
寒風を見舞ひ耳順を言ひ合ひぬ 田中英子
寒風裡裸の軍鶏がときつくる 福田蓼汀 山火
死ねよ死ねよと寒風に漢帆を走らす 細谷源二
汝が骨を経て吾に到る寒風か 成田千空 地霊
海に出て寒風の陸みすぼらし 右城暮石 声と声
無人の家夜更けて戻る寒風裡 石塚友二 方寸虚実
焼酎に胃をやきてすぐ寒風へ 右城暮石 上下
猫入り寒風の闇へわが辞する 古沢太穂 古沢太穂句集
生花冴ゆ夜の寒風歩く人に 大井雅人 龍岡村
石棺観て寒風を来し耳ふさぐ 河野多希女 納め髪
竹群に寒風集め達磨市 真鍋貴子
縋るものなし寒風に取り縋る 三橋鷹女
肉病むのみ寒風玻璃戸を平手打 香西照雄 対話
西晴れて寒風見えず絶えず吹く 相馬遷子 山河
見え透いてゐて寒風の荒ぶなり 相生垣瓜人 微茫集
門を入りさらに寒風の石の坂 香西照雄 対話
青空に寒風おのれはためけり 中村草田男
鳰浮くと即座に寒風襲ひたる 関森勝夫
朔風やわら一本を噛む兎 五味真穂
朔風や十にも足らぬ羊守る 遠藤梧逸
朔風や木目浮きたる跪拝台 小林 貴子
かりがねを湖北の雲に冬の風 飯田蛇笏 椿花集
ゆるぎなき大楠冬の風やどす 上村占魚
中空に月吹上げよ冬の風 阿部次郎
何か鳴る焦土は暮れぬ冬の風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
冬の風人生誤算なからんや 飯田蛇笏
垂れ蔦の石垣を擦る冬の風 高田蝶衣
巨亀の骨より冬の風が吹く 対馬康子 純情
軒のもの倒れる音や冬の風 田村木国
道のべに痢して鳴く鵜や冬の風 飯田蛇笏 山廬集
顔に手を触れず一日冬の風 右城暮石 声と声

北風 補遺

かの時は北風を香ぐはしとせり 相生垣瓜人 微茫集
かりがねを湖北の雲に冬の風 飯田蛇笏 椿花集
かるがると北風に吹かるる信なき日 鷲谷七菜子 黄炎
このページ繰ればかならず北風が吹く 中村苑子
その夜更け笞のごとく北風吹けり 小林康治 四季貧窮
はるかにも北風の鶏鳴家殖えたり 野澤節子 未明音
みちのくの外海荒るる北風立ち 村山故郷
やつにも注げよ北風が吹きあぐ縄のれん 古沢太穂 古沢太穂句集
わが電波北風吹く夜の陸よびつ 橋本多佳子
われによき師ありて北風をいそぐなり 桂信子 女身
トロッコを子が駆り北風の中を来る 橋本多佳子
フィナーレに似て寒風の大蘇鉄 岡本眸
プール涸れ屋上の如し北風吹き 秋元不死男
マグネシウムおのが煙と北風照らす 篠原梵 年々去来の花 皿
マスクして北風を目にうけてゆく 篠原梵 年々去来の花 雨
一仏の残りまします北風の中 山口青邨
一晩中北風の音土を打つ 金子兜太
一水を北風吹きくぼめ吹きくぼめ 清崎敏郎
一筋の縄北風によせやの標 右城暮石 句集外 昭和三十四年
人と並び落暉北風身にひびく 西東三鬼
何を為せとや北風強き誕生日 岡本眸
供花吹っとぶ 慌てる 北風の墓地の男 伊丹三樹彦
保税倉庫裸の馬車を北風におけり 安住敦
冠着の寒風遊ぶ子を転(こか)す 大野林火 雪華 昭和三十五年
冬の風人生誤算なからんや 飯田蛇笏 家郷の霧
冬の風黙つてをれば吹きにけり 岸田稚魚 紅葉山
切通し多羅尾寒風押し通る 山口誓子
北の窓日本海を塞ぎけり 正岡子規 北風
北吹いてうつつのことはみなかなし 福田蓼汀 山火
北吹くや赤城は雲を居らしめず 水原秋櫻子 新樹
北吹くや鉄のクルスの澄みのよき 大野林火 海門 昭和十一年
北吹けば国来々々と海氷来 角川源義
北風あたらしマラソン少女髪撥ねて 西東三鬼
北風あれて機音ゆく雲光るのみ 飯田蛇笏 家郷の霧
北風いそぐやひとをあざむき了せたり 大野林火 冬雁 昭和二十一年
北風うけて咲くこと散ること梨花は急く 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
北風がときに宣撫の声をさらふ 長谷川素逝 砲車
北風が呼べば日空は鎌の色 飯田龍太
北風が額を打つて余りに酷 西東三鬼
北風くる野の赫光り朝の愛 金子兜太
北風さむし人葬る地を深く掘りぬ 山口誓子
北風すさびたまとび瓦ふるひ落つ 長谷川素逝 砲車
北風つのるどこより早く厨に灯 岡本眸
北風つよしバンカーの砂吹きとびて 高浜年尾
北風とおなじ速さに歩きゐしなり 篠原梵 年々去来の花 皿
北風にあへなく折るゝ葱ばかり 日野草城
北風にうなじ伏せたる荷牛かな 村上鬼城
北風にまむき歩きて目に泪 星野立子
北風にわらふ共に家なき焼け出され 加藤秋邨
北風に一人の怒声蟹を競る 阿波野青畝
北風に二代目肩をゆすりゆく 西東三鬼
北風に向いて堀端通りかな 正岡子規 北風
北風に吹かれざるなき女の髪 右城暮石 句集外 昭和二十七年
北風に唄奪られねば土工佳し 津田清子 礼拝
北風に愛されて眼に水たまる 西東三鬼
北風に打つ鉄の皮ぽろぽろと 右城暮石 声と声
北風に振るシャツ 移民船 徐々に加速 伊丹三樹彦
北風に新緑の根を幣とせり 三橋敏雄
北風に棕櫚が葉鳴らすのみの窓 波多野爽波 鋪道の花
北風に棕櫚の葉光出しつづく 右城暮石 一芸
北風に比良のそゝれは*えりのなき 河東碧梧桐
北風に流れそめけり冬の雲 日野草城
北風に牛角(ぎゅうかく)を低くして進む 西東三鬼
北風に発掘の土盛り上げて 右城暮石 天水
北風に皆傾きし夏木かな 高野素十
北風に糞落し行く荷馬かな 河東碧梧桐
北風に群集が叫ぶ口赤し 西東三鬼
北風に莨火かばひ獄を出づ 秋元不死男
北風に藪の穂を見て歩くなり 右城暮石 句集外 昭和二年
北風に言葉うばはれ麦踏めり 加藤秋邨
北風に訪ひたき塀を添ひ曲る 杉田久女
北風に重たき雄牛一歩一歩 西東三鬼
北風に鍋燒温泉呼びかけたり 正岡子規 北風
北風に鍋燒温飩呼びかけたり 正岡子規 北風
北風に魚塩の便りなかりけり 河東碧梧桐
北風に鼻づら強き雄姿かな 村上鬼城
北風のここに一羽の鸚鵡飼ふ 三橋鷹女
北風のこの崖にきて逆まける 上村占魚 鮎
北風のひゆーらひゆーらと愚禿なぶる 金子兜太
北風のひるみを突いて走り出す 上田五千石『琥珀』補遺
北風の中氷挽きたるあと残る 岡本眸
北風の中酔人詫びる楽しげに 中村草田男
北風の人誰もかつては母に甘へし 細谷源二 砂金帯
北風の北区や岸田稚魚在りし 能村登四郎
北風の南にかはる小春哉 正岡子規 小春
北風の吹いて寒しや夏の嶋 高野素十
北風の吹きまく雲の尖りかな 上村占魚 鮎
北風の土に光りて山羊の綱 波多野爽波
北風の外壁ピーナツ売に鳴りどほし 伊丹三樹彦
北風の夜やほとほと熱き襁褓籠 下村槐太 光背
北風の奪へる声をつぎにけり 中村汀女
北風の眉引きいのち死なざりき 三橋鷹女
北風の空サーチライトが叉を求めあふ 篠原梵 年々去来の花 雨
北風の藪鳴りたわむ月夜かな 杉田久女
北風の道折れていきなり魚臭き 岡本眸
北風の階のぼり切るとき声出しぬ 岡本眸
北風の馬荒れ荒れて千住まで 渡邊白泉
北風はしり軽金属の街を研ぐ 西東三鬼
北風へ向く婦になべて包重し 野澤節子 未明音
北風へ壁も膨らむ楽の渦 林翔 和紙
北風も訪ひくるるものとして 後藤比奈夫
北風やおのが身かばふおのが身に 山口青邨
北風やかなしき楽の曲馬団 福田蓼汀 山火
北風やこの板の間は書を教ふ 波多野爽波
北風やほとけの足のぶうらぶら 飯田蛇笏 山廬集
北風やまつかうを打つ砂つぶて 上村占魚 球磨
北風や女逃げゆくモノレール 雨滴集 星野麥丘人
北風や山の妙義の屏風立ち 上村占魚 球磨
北風や椿油は瓶の底 波多野爽波
北風や獄出て道路縦横に 秋元不死男
北風や磐城国人は雪田打つ 村山故郷
北風や磧の中の別れ道 河東碧梧桐
北風や芋屋の煙なびきあへず 正岡子規 北風
北風より入り百の油火おどろかす 橋本多佳子
北風をくぐれる水の早さかな 中村汀女
北風をゆけばなけなしの髪ぼうぼうす 金子兜太
北風を来しとは誰も語らずに 中村汀女
北風を走り停まりて猫やさし 右城暮石 句集外 昭和二十四年
北風去つて欅の樹瘤微熱もつ 三橋鷹女
北風吹くや月あきらかに港の灯 杉田久女
北風吹くや遠くゆれをり森の木々 山口青邨
北風吹く窓黒牛の胴きてかがやく 加藤秋邨
北風吹けば忽ち瑠璃や海地獄 後藤比奈夫
北風吹けば砂粒うごく失語の浜 西東三鬼
北風吹けり外套のかげ墓にながく 大野林火 海門 昭和十三年
北風吹けり外套の影墓に長く 大野林火 早桃 海風抄
北風吹けり昨日も日本海に吹きぬ 山口誓子
北風吹けり船檣高く聳えゆくに 山口誓子
北風寒き阜頭に吾子の舟つけり 杉田久女
北風強く日ざしにごれる丸の内 松崎鉄之介
北風強く水夫のバケツの水を奪る 山口誓子
北風強し木橋どこか脚ゆるみ 廣瀬直人 帰路
北風昏くはくれむ弁を閉ぢにけり 臼田亜郎 定本亜浪句集
北風晴の径も無くて老い行くも 永田耕衣
北風沁む獄出て泪片眼より 秋元不死男
北風荒ぶ赤い帽子の児と船に 上村占魚 鮎
北風荒れて帆綱の軋り寝ても聞きぬ 山口誓子
北風降りてわが前檣を駆けめぐる 山口誓子
北風駆けり会堂に聖書一片散る 山口誓子
北風駈る草原吾子を駈らしめ 三橋鷹女
北風高し尼僧の穿きて木靴鳴る 飯田蛇笏 家郷の霧
千曲寒風戦友がどの村々にも 松崎鉄之介
友の子や眉宇父に似て寒風へ(金子兜太氏一家丹波に来る) 細見綾子
哨戒機北風に真向ひ音をたかむ 篠原梵 年々去来の花 雨
唐辛子干す北風聞くも明日ならむ 大野林火 月魄集 昭和五十六年
喬き木の北風に勝たんとするを見たり 細谷源二 砂金帯
園を打つ海の北風に鼻とがる 西東三鬼
墓に到いて柩吹かるる北風かな 下村槐太 光背
夕北風子のうたごゑの勁く濁らず 大野林火 早桃 太白集
夕北風朱色こき壺焼かるるか 大野林火 海門 昭和十二年
夜の北風はこの世にえにしなきこゑか 飯田龍太
天を覆ふ火の子北風の花の如し 村山故郷
天城雪なし猟人北風に吹かれ去ぬ 臼田亜郎 定本亜浪句集
天空に北風群れる山居かな 金子兜太
夫留守や戸揺るゝ北風におもふこと 杉田久女
姫蔓蕎麦咲かす鎌倉北風がこひ 松崎鉄之介
子を叱る声寒風にちぎれつつ 伊丹三樹彦
孤児肘を挙げぬ返しの寒風に 中村草田男
家にまつ女房もなし冬の風 正岡子規 冬の風
寄進名にて北風を板囲ひ 右城暮石 天水
寒月や北風氷る諏訪の海 正岡子規 寒月
寒風が四方の眠りの中を過ぐ 廣瀬直人 帰路
寒風となり大富士の声となる 齋藤玄 飛雪
寒風にま向き歩きて泪拭く 星野立子
寒風に吹かれし頭痛かも知れず 星野立子
寒風に吹かれて我も飛ばむとす 相生垣瓜人 負暄
寒風に吹きしぼらるゝ思ひかな 星野立子
寒風に吹き消されゆく日毎かな 相生垣瓜人 負暄
寒風に孤児なに物もなきところ 中村草田男
寒風に富雄川あり寝ては覚め 右城暮石 句集外 昭和二十二年
寒風に少女はつよき言葉持つ 右城暮石 声と声
寒風に帰り来し妻美しき 高田風人子
寒風に廻ふ換気筒わが家伍す 伊丹三樹彦
寒風に息を合はして運河さわぐ 右城暮石 句集外 昭和三十一年
寒風に打ち込む杭の頭裂け 右城暮石 句集外 昭和三十二年
寒風に旗の死者の名ひるがへる 廣瀬直人 帰路
寒風に晒されて濃き枝を剪る 廣瀬直人
寒風に未来を問ふな臍に聞け 中村草田男
寒風に汲むや便壺を攪拌して 右城暮石 句集外 昭和三十二年
寒風に牛叱るこゑのみ短か 桂信子 月光抄
寒風に眼を奪はれて線路越ゆ 右城暮石 句集外 昭和三十一年
寒風に立ちて国歌を敬ひあふ 山口誓子
寒風に立てり自転車老朽して 山口誓子
寒風に立てる噴水定型なし 山口誓子
寒風に自転車の燈が侮れず 右城暮石 句集外 昭和三十一年
寒風に葱ぬくわれに絃歌やめ 杉田久女
寒風に鍬を晒して午をゐず 上田五千石『田園』補遺
寒風のさ中のおもひ野を出でず 飯田龍太
寒風のつよければ振る旗おもし 長谷川素逝 砲車
寒風のひびきて草のみどり萌ゆ 飯田龍太
寒風のぶつかりあひて海に出づ 山口誓子
寒風のむすびめごとの雀かな 斎藤玄 雁道
寒風の中にとどまる骨の鯉 斎藤玄 雁道
寒風の凝つて星斗と砕けゝむ 日野草城
寒風の吹きあてにある萱の枯れ 右城暮石 句集外 昭和四年
寒風の天に電線裁るつなぐ 上田五千石『田園』補遺
寒風の屋根に日当り医者の妻 飯田龍太
寒風の揉む竹林の揉まれやう 右城暮石 一芸
寒風の樽の中より声ありし 鷹羽狩行
寒風の洗ひし鎧兜岳 右城暮石 一芸
寒風の濡らせしところまで波来ず 右城暮石 句集外 昭和二十二年
寒風の砂丘今日見る今日のかたち 山口誓子
寒風の荷役の船尾沖に向け 右城暮石 句集外 昭和三十一年
寒風の通天閣もの落すなよ 右城暮石 上下
寒風の陸灯船の灯が加はる 右城暮石 声と声
寒風の駅打水の我に及ぶ 右城暮石 句集外 昭和三十二年
寒風の鴨浮き鴉翔ちにけり 齋藤玄 飛雪
寒風やふくらむものは立ち上り 石田勝彦 秋興
寒風や妻もしもしと呼びしかと 右城暮石 句集外 昭和三十六年
寒風や砂を流るる砂の粒 石田勝彦 秋興
寒風や菜に飛ぶ虫の散り~に 渡邊水巴 白日
寒風や鉄火ちかみの膝頭 齋藤玄 飛雪
寒風や隊伍みじかき帰還兵 渡邊水巴 富士
寒風を吸ひては駈る力あり 三橋敏雄
寒風を少女等のみが燥げり 右城暮石 句集外 昭和三十年
寒風を振り落さんと灯のホテル 廣瀬直人 帰路
寒風を来し目に少し涙ため 星野立子
寒風を来りしをとめ十も老け 山口誓子
寒風を歩きつづけて医に到る 山口誓子
寒風を突いて人皆用ありげ 星野立子
寒風吹く何か面白き事無きやと 永田耕衣
寒風呂に上機嫌なる父子かな 飯田蛇笏 霊芝
寒風呂を出てなりはひの襤褸を着ぬ 飯田蛇笏 山響集
寒風無尽江東の黒き屋並 松崎鉄之介
寒風裡裸の軍鶏がときつくる 福田蓼汀 山火
寒風高く海へ出でんと茲をひたに 中村草田男
対岸の人と寒風もてつながる 西東三鬼
少年院の北風芋の山乾く 西東三鬼
少数の人が地を行く寒風吹き 永田耕衣
山際のあさぎ空より北風は来る 篠原梵 年々去来の花 雨
巻きそびれたる甘藍は北風まかせ 加藤秋邨
帰り来ぬ人北風に立つ日かな 河東碧梧桐
急に北風空の形相うち変り 上野泰 佐介
振り上ぐる鍬を北風来ては舐ぐ 西東三鬼
掏摸も出て閉づ百貨鋪に北風吹く 飯田蛇笏 山響集
敵さだかに見ゆ寒風の落暉また 飯田龍太
日ざし失せ十六万坪鉄と北風 大野林火 雪華 昭和三十五年
日もすがら北風の林のさわぐ音 長谷川素逝 村
日本海そこにあり北風の砂丘越す 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
星屑に冬の夜の風つのりけり 日野草城
昼くらく北風つよき日なりけり 長谷川素逝 砲車
月夜寒風行くに現世は蒼ざめて 香西照雄 対話
朔風に火を焚くこころ孤ならずや 上田五千石『琥珀』補遺
朔風のなき上手ひろひ初詣 阿波野青畝
朔風の天に円月の大孤独 日野草城
村は槇籬高く北風堰いて住む 長谷川素逝 村
東京いづこに行けど寒風と人流れ 松崎鉄之介
東京の大路越えがての母に北風 松崎鉄之介
枯原に北風つのり子等は去り 西東三鬼
樫山に北風雪を降らしけり 右城暮石 声と声
機翼現れ吾子の口笛北風に和す 三橋鷹女
歩いてゐて川がよく見える冬の風冬の日 中川一碧樓
歯車の噛みあへる音北風を切る 大野林火 早桃 太白集
殉教の遠眼差や北下し 佐藤鬼房
母の命よ寒風の崖そがれつづく 松崎鉄之介
母の連祷石から石へ寒風立て 赤尾兜子 蛇
水夫立てり太き洋袴を北風に 山口誓子
海に出て寒風の陸みすぼらし 右城暮石 声と声
海べりに旗立ち北風を裂きいたり 飴山實 おりいぶ
海苔採の眼のしよぼしよぼと北風まとふ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
海雀を北風に群れしめ解纜す 橋本多佳子
温泉の煙北風しづまれば山かくす 深見けん二
濤音にちかづく北風の道となる 大野林火 早桃 太白集
灰白のビル魁然と朔風に 日野草城
炉にゐるや別の己れが北風を行き 松崎鉄之介
無人の家夜更けて戻る寒風裡「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
無電技士わかく北風航く夜をひとり 橋本多佳子
焼跡の北風を棕櫚うけて立つ 右城暮石 句集外 昭和二十六年
焼酎に胃をやきてすぐ寒風へ 右城暮石 上下
煉瓦塀ただ寒風の想夫恋 中村草田男
熔鉱炉火気の高みに人と北風 中村草田男
燃えさかる火中の北風をまざと見ぬ 大野林火 早桃 太白集
燦爛と硝子の屑や北風に 山口青邨
爆死幾万は一つの釦北風鳴る 加藤秋邨
猫入り寒風の闇へわが辞する 古沢太穂 三十代
猿山の岩まことしやか北風に 山口青邨
獄門を出て北風に背を押さる 秋元不死男
獅子の髪わが髪北風は乱し吹く 山口青邨
田を移るたびに北風つよき谷 飯田龍太
畦下に雀天国狂ひ北風 上田五千石『田園』補遺
疲れゐる身に北風はみじめすぎ 星野立子
白波しみじみ砲音なき日の北風に 古沢太穂 古沢太穂句集
百貨鋪の錦繍にまで北風吹く 飯田蛇笏 山響集
砂丘寒風抱き合ひて二人吹かれくる 松崎鉄之介
砂利を揚ぐ艀をゆきき北風の子よ 佐藤鬼房
砂採りの北風に屈伸するが見ゆ 松崎鉄之介
空は北風地にはりつきて監獄署 飯田蛇笏 山廬集
窟作りこんぶのやうな北風を塗り 三橋鷹女
竹藪に北風騒ぐ音ぞかし 日野草城
笊盛りの貝に水打ち北風哭けり 岡本眸
紡績女工の夕日の列よ北風の畦 飴山實 おりいぶ
縋るものなし寒風に取り縋る 三橋鷹女
耳傾く北風よりとほき物音に 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
聖愛をともしくゆけば冬の風 飯田蛇笏 家郷の霧
肉病むのみ寒風玻璃戸を平手打 香西照雄 対話
臥してきく寒風の音草城忌 桂信子 晩春
舟子(ふなびと)よ北門を出て北風に 金子兜太
船室(キャビン)より北風の檣(マスト)の作業みゆ 橋本多佳子
草山の墓北風に吹きはれぬ 西島麦南 人音
藤の実のゆるるを眺め北風に 山口青邨
蜂巣反る孔に寒風つめこんで 三橋鷹女
蜑達も寒風に目をうるませて 中村草田男
製氷所もて北風の町尽くる 岡本眸
西晴れて寒風見えず絶えず吹く 相馬遷子 山河
見え透いてゐて寒風の荒ぶなり 相生垣瓜人 微茫集
豆煎るや床下に北風吹きこもり 加藤秋邨
軍歌に歩合ひゐしか北風遽かなり 草間時彦 中年
軍歌ふと泪こみあげ寒風裡 伊丹三樹彦
返りペンキ浴び寒風にペンキ塗る 右城暮石 句集外 昭和四十四年
退避するひとごゑ北風の垣曲る 大野林火 早桃 太白集
道のべに痢して鳴く鵜や冬の風 飯田蛇笏 山廬集
道のべや北風にむつむ女夫鍛冶 飯田蛇笏 山廬集
道祖神北風に磨かる膝頭 松崎鉄之介
遠筑波兵馬の鬨は北風に乗る 角川源義
部屋になほ北風を戻りし耳なじまぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
門を入りさらに寒風の石の坂 香西照雄 対話
雲水の寒風呂いたくたしなみぬ 飯田蛇笏 山響集
電柱に貼りつき北風の新聞紙 鷹羽狩行
韃靼の朔風一夜北京澄む 松崎鉄之介
顔に手を触れず一日冬の風 右城暮石 声と声
風垣の片側北風にそそけ立つ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
馬黒く白く北風かぎりなし 西東三鬼
鵜は舷に小夜の北風吹く屋形船 飯田蛇笏 山響集
鶏殺す竹林の天北風に鳴り 上田五千石『田園』補遺
鷲動かず紙屑北風にさらはるる 桂信子 月光抄
黒田節低唱しつつ北風を 高田風人子

以上

by 575fudemakase | 2017-01-27 17:53 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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