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餅 の俳句

餅 の俳句

餅 の例句


餅 補遺

あかつきの闇へ餅つく音させて 長谷川素逝 村
あきかぜに焼餅つまみ滝薬師 能村登四郎
あけびの実餅なり種のある餅なり 山口誓子
あぶる餅いきづけり齢ふかくをり 能村登四郎
いきいきと夜気がうごめく鏡餅 飯田龍太
いくさなきをねがひつかへす夜の餅 大野林火 青水輪 昭和二十六年
いざこざの一部始終や餅ふくれ 村山故郷
いちにちの大方餅を焼く匂ひ 桂信子 花影
いつまでも淡海の冷やよもぎ餅 藤田湘子 神楽
いでたちの紺めでたしや餅の臼 石田勝彦 秋興以後
いとけなき手がふれてさへ餅の花 飴山實 次の花
いびつ餅荼筒に新茶あふれつつ 水原秋櫻子 玄魚
うすらひや翳のたゞよふ水の餅 飴山實 次の花
おいそれと死ぬ気はなしよ餅を食ふ 藤田湘子 てんてん
おのづからくづるる膝や餅やけば 桂信子 女身
お供餅の上の橙いつも危し 山口青邨
お供餅はさすがにまろし年の暮 山口青邨
お茶の間やラヂオの上の鏡餅 星野立子
お鯉観音お供餅一つ白妙に 山口青邨
かき餅の向きあちこちに干反りゐる 能村登四郎
かき餅を干して粒つぶ梅もどき 森澄雄
かさこそと掻餅焼くや冬の夜 日野草城
かた餅やそろそろかぢる嫁が君 正岡子規 嫁が君
かの稿の一束化せる白餅よ 能村登四郎
かばかりの佛供への寒の餅 石田勝彦 秋興以後
かまくらに餅焼く誰の母ならむ 上田五千石 風景
かまくらやひよつとこ顔に餅ふくれ 鷹羽狩行
かみしめる餅のうまさの夜のふかさの 種田山頭火 自画像 落穂集
くず餅のきな粉しめりし大暑かな 鈴木真砂女 夏帯
くず餅の皆三角形にかなしけれ 川端茅舎
くばりあふ卯月八日のよもぎ餅 長谷川素逝 村
けふも雪もよひのこんなに餅をもらうてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
この世から餅供へけり寒見舞 飴山實 花浴び
この宵の麦代餅とは面白し 高野素十
ごへい餅の糅味噌焦ぐる中座の機 木村蕪城 寒泉
さびしさはふくよかに餅を焼きゐたり 林翔 和紙
しひられて餅くらひけりけふの秋 正岡子規 秋
すき腹のはるとしいへば雜煮餅 正岡子規 雑煮
すざつて犬の見上ぐる高さ餅の杵 中村草田男
ずつとおくれて来し寒餅の送り状 細見綾子 伎藝天
ぜんざいや餅とり出して花の山 岡井省二 大日
そば餅や浜田庄司の紺もんぺ(浜田庄司氏の窯にて) 細見綾子
たちまちに闇来てつつむ鏡餅 飯田龍太
ちかづけばすぐ餅翳る水の中 飴山實 次の花
ちん餅や托して軽き米二升 石塚友二 曠日
つきたての餅をもらつて庵主であつた 尾崎放哉 小豆島時代
つぎつぎに子等家を去り鏡餅 加藤秋邨
づつとおくれて来し寒餅の送り状 細見綾子
とろけ餅呑みて胃の腑へ届くまで 林翔
どの道も見えて居るなり餅の味 永田耕衣 物質
どんど餅亀甲焦げの神の餅 百合山羽公 樂土以後
なかんづく土蔵の神への大鏡餅 長谷川素逝 村
なむからたんのう御仏の餅をいただく 種田山頭火 自画像 落穂集
のし餅や狸ののばしゝもあらむ 村上鬼城
のどかさに餅くふ三井の茶店哉 正岡子規 長閑
はでやかな大しだれなる餅の花 阿波野青畝
ひし餅のひし形は誰が思ひなる 細見綾子 桃は八重
ひとり焼く餅ひとりでにふくれたる 種田山頭火 草木塔
ひもじさの餅にありつく睦月かな 正岡子規 一月
ひもじさの餅にうれしき睦月哉 正岡子規 一月
ふくれ来る餅に浸画を思ひけり 高田風人子
ふるまひや火宅といへど餅の花 飴山實 句集外
まだ食へぬ赤子はをれど母子餅 森澄雄
まるめたる手のあとつきし餅来る 細見綾子
みちのくの青きばかりに白き餅 山口青邨
むつちりと手応へ寒の餅とどく 能村登四郎
めでたさも一茶位や雜煮餅 正岡子規 雑煮
もう妻は思はずあられ餅を煎る 能村登四郎
もてなしの餅つき踊月の宿 角川源義
やうやくに雛餅干ぞる旦暮かな 飯田蛇笏 山廬集
やはらかに生き熱く生き雑煮餅 林翔
ゆうぐれは不思議かな餅ふくれだし 橋閒石 虚 『和栲』以後(I)
ゆる褌や画餅糊餅も箸同じ 永田耕衣
よもぎ餅和讃衆と食べ仏生会 大野林火 飛花集 昭和四十六年
よもぎ餅買ひて雲ゆく歩みかな 岡本眸
わが切りし餅なり然く歪みたり 相生垣瓜人 負暄
わが闇のいづくに据ゑむ鏡餅 飯島晴子
われら餅食ふ糞ころがしは糞ころがす 加藤秋邨
カンテラに買ふ焼餅(シャウピン)も野分かな 加藤秋邨
一の字に白き串柿鏡餅 山口誓子
一人正月の餅も酒もありそして 種田山頭火 自画像 落穂集
一岳を傾けにけり餅の杵 石田勝彦 秋興以後
一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎
一片の餅に血がさす誰か死ぬ 三橋鷹女
一片の餅温かく年迎ふ 橋閒石 雪
一臼の餅抱へられ通さるる 三橋敏雄
一臼は黄なる餅つく貧しさや 河東碧梧桐
一茶の像ちひさしこれに鏡餅 木村蕪城 一位
七曜の序は易りなし鏡餅 阿波野青畝
三彩の黴寒餅を固めけり 百合山羽公 樂土
三方の前やうしろや鏡餅 後藤比奈夫
三河衆槍ぶすましてどんど餅 百合山羽公 樂土以後
上り蚕に餅つくといふその餅を 山口青邨
与へるもののよろこびの餅をいただく 種田山頭火 自画像 落穂集
両眼に明らかな灯と鏡餅 廣瀬直人
串二本さしたる焼餅春惜む 山口青邨
丸きもの初日輪飾り鏡餅 正岡子規 鏡餅
乳中に白き餅いる夢を狩らむ 赤尾兜子 歳華集
二三片餅を焙るや年の内 能村登四郎
二枚目の餅を切るべく息のがす 能村登四郎
五平餅平らげ上手山椒味噌 百合山羽公 寒雁
亡きひとを加へし数の餅の黴 岡本眸
亡父餅を捻り出しけり鉢の松 永田耕衣
人近き餅のひかりや冬の海 永田耕衣
今年また切りごろ過ぎて鏡餅 鷹羽狩行
今日の月櫻が下に餅を煮る 正岡子規 今日の月
今昔のなきもの餅のふくるる香 森澄雄
今昔のわれにも移り鏡餅 森澄雄
代々住みて鄰保親しき餅の音 飯田蛇笏 雪峡
伐りし竹積んで餅箱その上に 波多野爽波
体重を杵に預けて餅こねる 高浜年尾
何もかもあきらめて餅焼いてをり 村山故郷
佛にも机も小さき鏡餅 森澄雄
佳き睡り餅の白さを枕辺に 岡本眸
來年の餅の匂ひや大三十日 正岡子規 大晦日
傍観す女手に鏡餅割るを 西東三鬼
元日やしろかねの餅こかねの蜜柑 正岡子規 元日
元日や餅二日餅三日餅 尾崎放哉 大学時代
元旦の餅を焦せしあろじかな 日野草城
光る空より授かりし鏡餅 廣瀬直人
八朔の苦餅ならぬにぎり飯 星野麥丘人
八朔や会津に食うて蕎麦と餅 藤田湘子 神楽
冬の日やよらで過ぎ行く餅の茶屋 正岡子規 冬の日
冬曇陽は餅のごと黙りおり 金子兜太
凍蝶や餅が通れば倒れて起つ 永田耕衣
凩の槇や念死の餅うどん 永田耕衣
出来疲れ餅が感じつ黄鶺鴒 永田耕衣
切りごろのやや過ぎし餅切りにけり 能村登四郎
切りごろを外さず切りし寒の餅 能村登四郎
切り餅を買ふ正月も遠のきて 能村登四郎
切餅を二つ冬至の屋敷神 雨滴集 星野麥丘人
初詣して三井寺の力餅 森澄雄
別れ棲む都会と田舎寒の餅 福田蓼汀 山火
力瘤ほどに寒餅ふくれけり 橋閒石 卯
力餅腹に稲掛け終りたり 大野林火 飛花集 昭和四十七年
勝ち栗も餅もそろふてあすの春 正岡子規 大晦日
北上川の岸辺のよもぎ餅喰むよ(平泉二句) 細見綾子
十日夜の餅にぬくむに炬燵賜ぶ 大野林火 飛花集 昭和四十六年
十津川を出でし柚餅子と冬籠 後藤比奈夫
厄捨餅秋葉街道憚らず 百合山羽公 樂土以後
厄落し餅の居直る白さかな 百合山羽公 樂土
去年よりも餅小さく切り父寂ぶよ 能村登四郎
台湾の餅の甘さの気に入りぬ 後藤夜半 底紅
君網買へわれ餅買はん年の市 正岡子規 年の市
吟行に力つけむと土用餅 松崎鉄之介
吾なれやなりひら腕の雑煮餅 岡井省二 猩々
吾娘等の肌都の餅は粗なれども 中村草田男
啄木鳥の音入り吉野柚餅子かな 百合山羽公 樂土以後
嘴細が餅ついてをる田螺かな 阿波野青畝
四捨五入すれば五十と餅を焼く 星野立子
固き餅切らさる髭などを生やし 橋閒石 無刻
國ぶりの威儀の大椀雑煮餅 及川貞 夕焼
土塀かたむくや餅焼く静けさに 永田耕衣
夏の炉に焙りし五平餅とかや 高野素十
夜の餅にすこしつめたき母の顔 飯田龍太
夜の餅海暗澹と窓を攻め 金子兜太
夜仕事の更けて餅焼くならひかな 鷹羽狩行
大きくて扁平神の鏡餅 山口誓子
大き手に恍惚と餅伸されゐる 能村登四郎
大挙来る鏡餅をもち切餅もち 山口青邨
大鴨をどさと投げだし餅を啖ふ 加藤秋邨
天と地のあはひに生きて餅を焼く 桂信子 草影
女の子二人かさねや鏡餅 正岡子規 鏡餅
妻子寄り白餅を食ぶ乗のごと 小林康治 玄霜
姑のくはぬ餅ありよめが君 正岡子規 嫁が君
婆々が売るささげまぶせし月見餅(沖縄) 細見綾子
婚近き長子に年の餅あまた 角川源義
嫉妬心もて掻餅を吊すなり 右城暮石 句集外 昭和二十五年
子が鬩ぐ枕辺の餅一と筵 小林康治 玄霜
子のころの引きながかりし雑煮餅 森澄雄
子ら来ねば餅も減らずよ七日粥 安住敦
実物の餅反り返る雛祭 右城暮石 句集外 昭和三十二年
家も人も餅も菖蒲の匂ひ哉 正岡子規 菖蒲
寒の餅切る日あたりの古畳 松村蒼石 寒鶯抄
寒夜市餅臼買ひて餅つきたし 西東三鬼
寒餅に教師一家の足るごとし 能村登四郎
寒餅に罅はしらざるめでたさよ 水原秋櫻子 餘生
寒餅に胸のつかへや囲ひ者 日野草城
寒餅に蓬の香ありめでて焼く 水原秋櫻子 餘生
寒餅のひび割れ樫の空晴れて 細見綾子
寒餅の切口厚し不揃ひに 水原秋櫻子 餘生
寒餅の反りて乾くはなつかしき 後藤比奈夫
寒餅の焦げて炎をあげにけり 水原秋櫻子 餘生
寒餅の生の重味を持たされし 能村登四郎
寒餅の紅切れば艶老妻に 山口青邨
寒餅の荷の釘づけの固しかたし 細見綾子 和語
寒餅は水浅けれどいと沈む 細見綾子 冬薔薇
寒餅は網目匂はせ焼くべかり 水原秋櫻子 殉教
寒餅も彼の花巻の人の情 石塚友二 磯風
寒餅やことに胡麻餅豆の餅 草間時彦
寒餅を切るか鈍重なる音す 山口誓子
寒餅を焼くたのしさに火桶置く 水原秋櫻子 餘生
寒餅を焼くとて炭火ながめをり 水原秋櫻子 餘生
寺に干す切餅撒きし紙の如 山口誓子
寺の月合掌餅を供へけり 百合山羽公 樂土
尻餅をつけば蟋蟀かなしめり 三橋鷹女
尼君のまろみに倣ひ鏡餅 鷹羽狩行
山の香のかすかにありて栗子餅 鷹羽狩行
山中の雪の玉屋かがみ餅 飯田蛇笏 家郷の霧
山光る餅の白さも幾夜経て 飯田龍太
山姥の力餅賣る薄かな 正岡子規 薄
山帰来のとげの長蔓引き寄せる(故郷にて山帰来の葉に包み餅を作るとて) 細見綾子
川の木を男の餅皿まはつてをり 飯島晴子
川鵜また日なかにとべり鏡餅 岡井省二 五劫集
巫女の手にありてこの世の鏡餅 飯田龍太
常搖れの船霊様へ鏡餅 三橋敏雄
年の瀬や霹靂のごと餅届く 小林康治 玄霜
年の餅秀衡椀に祝ひけり 松崎鉄之介
年を守る三方に餅白々と 森澄雄
年男老羽公にもどんど餅 百合山羽公 樂土以後
年立つまであとひとときの餅の白 森澄雄
庖丁を逸らしめつつ餅切れり 相生垣瓜人 明治草
庭の松一朶は這ヘり鏡餅 山口青邨
庵の春鏡餅より白みけり 正岡子規 初春
弁慶の餅くふてゐる祭哉 正岡子規 祭
強東風や唇をよごして五平餅 古舘曹人 砂の音
彼岸入とて萩の餅波郷氏も 及川貞 夕焼
御開扉の笛鐘で舁く大き餅 古沢太穂 捲かるる鴎
忘られて二月もふかき乾割れ餅 能村登四郎
忽ちに食ひし寒餅五六片 日野草城
恋捨つるごと餅の耳切り落す 小林康治 玄霜
恋捨てゝ餅焦がすことに執着す 小林康治 玄霜
我はただ餅の黴削ぐむかし者 藤田湘子 てんてん
扉より歌舞伎幕見ゆ鏡餅 水原秋櫻子 餘生
手より手に受けてまことの鏡餅 飯田龍太
打てば鳴る凍餅ばかり智者ばかり 香西照雄 対話
抽斗に黴美しき教師の餅 平畑静塔
振り上ぐる杵より飛びし餅の切れ 石田勝彦 秋興
捨て水が地面流るる餅の味 永田耕衣
掛餅畳にとゞく雛の宿 前田普羅 普羅句集
揚き終へし餅にまどかな形与ふ 山口誓子
擱筆や番茶の出花桜餅 日野草城
文机や柚子を代りの鏡餅 石川桂郎 高蘆
新鋭のごとし火に乗る餅あまた 秋元不死男
方円の餅を沈めて甕の底 鷹羽狩行
旅の宿橡餅をもてなされたる(松山周辺) 細見綾子
旅立つや刈上餅を幸先に 百合山羽公 樂土以後
日と月と重なつてゐる鏡餅 山口誓子
日の上に月を重ねて鏡餅 鷹羽狩行
日月に光籠れる鏡餅 山口誓子
旧正の餅送りくる人いまも 山口青邨
明日のため残せし餅や月させり 加藤秋邨
明日は夜鴉 孤つ家の燈に餅ふくれ 三橋鷹女
春月の二度出しごとし姥ケ餅 岡井省二 鯨と犀
晩年や雪採れば餅近づきぬ 永田耕衣
更けてひとり焼く餅の音たててはふくれる 種田山頭火 自画像 落穂集
更けて夜毎貞夫の搗きし餅を焼く 伊丹三樹彦
更けて焼く餅の匂や松の内 日野草城
最澄の山餅啣へたる犬に逢ふ 森澄雄
月桃餅と一握の砂旅みやげ(夫沖縄行) 細見綾子
月桃餅の匂ひを春愁として(夫沖縄行) 細見綾子
朝の粥老を敬ふ餅入れて 水原秋櫻子 緑雲
朝市に旅人の買ふ飛騨の餅 高野素十
木枯や皆からびたる力餅 正岡子規 凩
木綿一家展べ餅重ね布団めく 香西照雄 対話
未来ひとつひとつに餅焼け膨れけり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
朴の葉につつみ夏越の餅とどく 飯島晴子
板片など捨て難や餅眺められ 永田耕衣
果して愛弟子たりしや否や餅焦がす 安住敦
枝撓め烏の去れば餅ふくる 石川桂郎 含羞
柚子載せて餅はやうやくかがみ餅 加藤秋邨
柚餅子くろくごつごつ奥三河の貌か 大野林火 方円集 昭和五十年
柚餅子食ふ坐れば思ひさかのぼり 加藤秋邨
柚餅子食み茶を甘しともまろしとも 大野林火 方円集 昭和五十年
栃餅の大盤悉皆ふるまふよ 平畑静塔
栃餅も出て右源太の川床料理 星野麥丘人
栃餅や天間より下りて炉のほとり 水原秋櫻子 旅愁
栃餅や里の神楽も人不足 藤田湘子 神楽
栃餅を苞に三月木曾の人 森澄雄
梅が枝餅はあたたかいうちに君たちわたし 荻原井泉水
棟あげや棟の上なる餅蜜柑 正岡子規 蜜柑
椎山に鳥よくとぶや餅莚 岡井省二 山色
極月の乏しき餅をふるまはる 加藤秋邨
橙は赤し鏡の餅白し 正岡子規 鏡餅
機仕舞ふ一間広さや餅莚 河東碧梧桐
正月の切餅金言良語かな 百合山羽公 樂土以後
正月の白き餅まだ生ける餅 百合山羽公 寒雁
正月の餅送りしといふ便り 細見綾子
正月や餅ならべたる佛の間 正岡子規 正月
武具飾り陣中餅をふるまはる 上田五千石『風景』補遺
歩いてくる鳩に餅をやりたく歩けて歩く 荻原井泉水
歯固や餅に遺恨をもつごとし 金子兜太
歳の神お招ぎ申す鏡餅 山口青邨
死神と餅焼きゐたる無言かな 村山故郷
残り餅焼くきさらぎの今日に果つ 能村登四郎
残り餅焼く三月のくらき炉火 能村登四郎
母刀自のごとどつしりと鏡餅 鷹羽狩行
母子ありき雪深き昼餅焼いて 松村蒼石 雪
母病みて遅れてかたき餅を切る 能村登四郎
水槽の河豚のまへにも供餅 百合山羽公 樂土以後
沢庵の墓は重石や餅そなへ 山口青邨
河豚鍋や餅も見分かぬ湯気立ちて 水原秋櫻子 餘生
河豚雑炊餅に舌焼くたのしさよ 水原秋櫻子 餘生
河豚雑炊餅のうまさにまぎれ食ふ 水原秋櫻子 蘆雁
泥運ぶ燕の見えて姥が餅 大野林火 月魄集 昭和五十四年
泪ぐむまで寒餅のやはらかし 能村登四郎
洗ひ上げて見惚るる餅の臼の木目 能村登四郎
流寓を寒餅黴びて甘やかす 百合山羽公 樂土
海老赤く穂俵黒し鏡餅 正岡子規 鏡餅
海面あをく凪ぎ餅のす亡母 三橋鷹女
深き夜の焼けたる餅を餅の上 鷹羽狩行
湯葉で餅巻くことこそよけれ合歓の里 金子兜太
漬け餅の水替へるこの一些事よ 細見綾子
澱みなく一日終る鏡餅 廣瀬直人
火の用心さつしやりませう餅の反り 石塚友二 磊[カイ]集
火星に異変あるとも餅をたべて寝る 津田清子 礼拝
炉開にわれも相伴亥の子餅 森澄雄
焼餅を食うべ釣瓶落しの秋の日や 山口青邨
熨斗餅や植物のゴミ如きゴミ 永田耕衣
爆音の間は絶えつつも餅の音 加藤秋邨
父ら蒼し餅つき唄の昼を経て 金子兜太
片餅の慎しやかに雑煮かな 相生垣瓜人 負暄
物質の鐘果てざらむ餅の数 永田耕衣
犬盗むまだ柔かき墓の餅 右城暮石 句集外 昭和三十四年
独り住む餅の裏表を焦がし 津田清子
猪ガ見ル餅ヤ今日切ニ餅 永田耕衣
玄翁でわるや鍛冶屋の鏡餅 正岡子規 鏡餅
現はれし彼に応へてふくらむ餅 平畑静塔
生くるに耐へ餅食ふ母系家族の燈 佐藤鬼房
田のしめり踏んで運ぶや餅の白 鷲谷七菜子 游影
田を斜にわたつてかへる餅配 飴山實 辛酉小雪
田植餅どつさりもらひすべもなし 山口青邨
甲厚き農婦の掌より餅生まる 右城暮石 句集外 昭和二十五年
男の意地赤米の餅粘りだす 津田清子
画餅即ち画餅に非ず鏡餅 永田耕衣
留守番に餅買ふてくる花見哉 正岡子規 花見
病床に日毎餅食ふ彼岸かな 正岡子規 彼岸
癒えし子に寒餅食ます強くなれよ 石塚友二 光塵
白少し透きし三日の鏡餅 森澄雄
白昼の鼾に餅の黴育つ 橋閒石 無刻
白木槿のれんに餅とありにけり 星野麥丘人
白障子ならべし餅に日脚断つ 平畑静塔
白餅に古墳の空気如きが墜つ 永田耕衣
白餅を噛む天頂に雲うまれ 橋閒石 無刻
眠き稚児餅切れ切れに呑みくだす 右城暮石 句集外 昭和三十二年
睡蓮に鳰の尻餅いくたびも 川端茅舎
石あげて野菊花さく力餅 正岡子規 野菊
磔像に据ゑ日の本の鏡餅 阿波野青畝
禅寺の最大の餅三升餅 山口誓子
秋の指ひたひた造る萩の餅 中村草田男
秋天に焼岳焦げて五平餅 水原秋櫻子 緑雲
秋山に騒ぐ生徒や力餅 前田普羅 普羅句集
種子雑然と蒔く腹中の黴びた餅 橋閒石 風景
稻妻や大福餅をくふ女 正岡子規 稲妻
稿はふくれずふくるる夜の餅 森澄雄
空っ風の強き日餅の焼きざまし 橋閒石
空つ風の強き日餅の焼きざまし 橋閒石 朱明
端折つて短かく使ふ餅むしろ 草間時彦
笛黒く紅し白餅白く黒し 永田耕衣 人生
笹餅の笹剥ぐ越の朝ぐもり 上田五千石 琥珀
節分の餅一臼や真竹山 石田勝彦 百千
籠に盛りし餅の真上を雁のこゑ 飯田龍太
紅梅の鬼が手伝う餅熱し 橋閒石 荒栲
紅白が日月雛の鏡餅 山口誓子
紅白の紅が上なる雛の餅 山口誓子
緑の羽根さして彼岸の餅黄なり 百合山羽公 寒雁
罅餅の片面焼けて家遠し 香西照雄 対話
群衆みな此方向き来る餅の頃 永田耕衣
老の膝よせて寒餅伸ばしをり 百合山羽公 故園
腰高き餅に足音を残す人 永田耕衣
膝そろへ伸びる餅食ふ女の前 西東三鬼
膝に手をおく父が目に見ゆ鏡餅 加藤秋邨
膨れんとして膨れざる餅あはれ 能村登四郎
臼いただきに白餅成りて妻潔し 中村草田男
舎利を壺に金網の餅うち反す 橋閒石 無刻
舟に据ゑ海へ供へし鏡餅 山口誓子
船長にうつうつと餅黴びにけり 秋元不死男
色身は反故甘なぶは餅うどん 永田耕衣
花の香のただよひ来たる鏡餅 飯田龍太
花火ひらき餅の厚みの恋人たち 橋閒石 荒栲
花餅の赤に焦がるる緑かな 後藤比奈夫
花餅の飛騨の赤また美濃の赤 後藤比奈夫
花餅の餅の赤の枝緑の枝 後藤比奈夫
花餅や美濃の白鳥山深き 後藤比奈夫
茶屋アリテ夫婦餅売ル春の山 正岡子規 春の山
草餅に焼印もがな草の庵 村上鬼城
草餅を焼く天平の色に焼く 有馬朗人 母国
草餅を網で焼きくれ当麻道(当麻寺) 細見綾子
荒海や粥の湯気吹く餅間 飴山實 辛酉小雪
菊形の焼餅くふて節句哉 正岡子規 菊
菜の花のさく頃里の餅赤し 正岡子規 菜の花
蒸加減口にたしかめ餅をつく 右城暮石 散歩圏
蕗の薹棟上餅に打たれけり 百合山羽公 樂土以後
蕗の薹餅に散らして朝な朝な 細見綾子
蕣に餅あたゝかき茶店かな 正岡子規 朝顔
薄墨のどこか朱をひく亥の子餅 有馬朗人 立志
薄氷の罅や箸附き総画餅 永田耕衣
薫風の床几火山灰降るぢやんぼ餅 水原秋櫻子 殉教
虎落笛蕎麦餅の粘り歯に残り 林翔
蝶追ふや旅人餅を喰ひながら 正岡子規 蝶
行く鳥に餅べろばかす翁かな 永田耕衣
褒貶をひねり上げたり鏡餅(現代俳句協会大賞を契す・平成二年二月十七日追記) 永田耕衣
見えてこそ道筋消ゆれ鏡餅 永田耕衣
親ひとり子ひとりに夜の鏡餅 飯田龍太
詩よりほかもたらさぬ夫に夜の餅 中村草田男
誰が持ちて来しや春炉に餅焼けて 星野立子
誰もゐぬ一間の寒気鏡餅 森澄雄
谷戸の宿餅を炙る梅白し 富安風生
豆打(づんだ)餅食ふべいぐべと市帰り 加藤秋邨
豆打(づんだ)餅餓鬼わらしこの顔ふたつ 加藤秋邨
買納め餅焼く網を忘れざる 百合山羽公 樂土
賃餅の大貼紙も老舗かな 清崎敏郎
賭博師も老皺深きよもぎ餅 百合山羽公 故園
赤子泣く家の大きな鏡餅 鷲谷七菜子 一盞
軟かな餅になやむや老の口 阿波野青畝
近江路や田の神といふ餅一つ 阿波野青畝
透くやうな米を敷きけりかがみ餅 加藤秋邨
道の多さ膝を揃へて餅切つて 永田耕衣
選句せり餅黴けづる妻の辺に 石田波郷
重なりて安定したる鏡餅 山口誓子
重陽や老いのはらから餅を食ふ 水原秋櫻子 重陽
野あがりの餅つく音の隣りにも 長谷川素逝 村
野あがり餅蒸さり男らなほ起きず 長谷川素逝 村
野のあちこちに紫陽花冷えた隠し餅 金子兜太
鏡餅あり種袋どさとあり 飯田龍太
鏡餅いみじき罅を見せにけり 安住敦
鏡餅うしろの正面畏けれ 三橋敏雄
鏡餅かつ櫃の影そこにあり 岡井省二 大日
鏡餅ここには居らぬ声ありて 加藤秋邨
鏡餅すぐ前を潮流れゐる 飯田龍太
鏡餅の内なる声を聴かむとす 山田みづえ 手甲
鏡餅はや二分けの罅走る 山口誓子
鏡餅ひとごゑ山に消えしまま 飯田龍太
鏡餅ひとまづ置ける岩の上 飯田龍太
鏡餅ゆるがぬままや水の中 赤尾兜子 玄玄
鏡餅わけても西の遥かかな 飯田龍太
鏡餅不出来人工衛星の世や 山口青邨
鏡餅並べ硝子の家くもる 鷹羽狩行
鏡餅供ふ漁船の命綱 右城暮石 上下
鏡餅切る爛々と稜がふゆ 山口青邨
鏡餅大のチーズと冬ごもり 鷹羽狩行
鏡餅大俎板の真ン中に 上村占魚
鏡餅天日かつと照らしゐる 飯田龍太
鏡餅寒気憑きては離れては 飯田龍太
鏡餅山々はいま月下にて 飯田龍太
鏡餅弁天池の石となれ 阿波野青畝
鏡餅昆布が黒き舌垂らす 山口誓子
鏡餅暗きところに割れて坐す 西東三鬼
鏡餅本気にするもせぬもよし 飯島晴子
鏡餅杉の板戸も新しく 星野立子
鏡餅此処を展望台となし 阿波野青畝
鏡餅生き残りめく家長の座 能村登四郎
鏡餅立山の民麓なり 平畑静塔
鏡餅縦に一筋罅が入る 山口誓子
鏡餅荒山風に任せあり 石田波郷
鏡餅載る橙のアンバランス 山口誓子
鏡餅霰まじりの音となリ 深見けん二
鏡餅青歯朶左右に葉を張れり 山口誓子
鏡餅食べて韋駄天走せ給ふ 山口誓子
鏡餅高廈かすみのなかに聳ち 飯田龍太
門番に餅をたまふや松の内 正岡子規 松の内
門番に餅を賜ふや三ヶ日 正岡子規 三が日
阿波で見し夕霧遺文餅の花 能村登四郎
陀羅尼助吉野柚餅子と黒同士 百合山羽公 樂土以後
隣りより旧正月の餅くれぬ 石橋秀野
隣人の争ひにわが餅膨るる 藤田湘子 途上
隣住む貧士に餅を分ちけり 正岡子規 餅
雀斑美しく寒餅焼き漕す 鷹羽狩行
雀飜(だ)ち観念画餅かがみ餅 永田耕衣
雑炊に刈上餅をしづめけり 水原秋櫻子 餘生
雑煮餅切れず青畝の頤うごく 阿波野青畝
雑煮餅坐りて食ふや癒えしごと 日野草城
雑煮餅焼く 爆音がのしかかる 伊丹三樹彦
雑煮餅秀衡椀に重ねけり 上村占魚
雛の餅きのふは帰る雁を見て 百合山羽公 故園
雛段に日の餅紅き鏡餅 山口誓子
雜煮餅くひなやみたる女かな 正岡子規 雑煮
雪に信ぜん腹医すとふ神の餅 林翔 和紙
雪の宿餅の味噌蒸味濃かり 松崎鉄之介
霜夜ひとり餅焼き焦す出征歌 加藤秋邨
霜黒の婆ぞ庇いつ餅*板チヨコ 永田耕衣
靠れ合う土塊の隙間餅を切る 永田耕衣
響き来る音まちまちや餅日和 松本たかし
頬たのしふくるる餅のさまなどし 加藤秋邨
風の夜や石より硬き供へ餅 鷹羽狩行
風強き夜が明け鏡餅に罅 鷹羽狩行
風花やひるげともなき餅を焼く 星野立子
風邪の子の餅のごとくに頬豊か 飯田蛇笏 山響集
飛騨人に夏白妙の朴葉餅 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
食ひ惜しむ一片の餅月させり 加藤秋邨
餅あはひ大原に来て茶漬かな 松崎鉄之介
餅あぶり前夫の話さらりと言ふ 村山故郷
餅うどん我が反故身の写るのみ 永田耕衣
餅かとも白く剥かれし梨を盛る 右城暮石 天水
餅かびしにほひ今宵も寝に就かむ 山口誓子
餅くふやよしずに見すく山つゝじ 正岡子規 つつじ
餅つきの柱に乗つて渡海せり 飯島晴子
餅つくと東京者の咳一つ 平畑静塔
餅つく頃蕪は土出て肌並べ 香西照雄 素心
餅で餅叩いてどんどの灰落す 鷹羽狩行
餅にかびつく頃に咲くすみれあり 細見綾子
餅ぬくき蜜柑つめたき祭りかな 正岡子規 鞴祭
餅ぬくくてどりちぎりてたまたすき 飯田蛇笏 雪峡
餅のかびいよ~烈し夫婦和し 西東三鬼
餅のかびけづりてゐたり静けさか 細見綾子
餅のかびけづりをり大切な時間 細見綾子 和語
餅のかび削りて時間忘れたり 細見綾子
餅の数而今全国閑かなり 永田耕衣
餅の耳やゝ厚く切り年逝かす 小林康治 玄霜
餅の膨らみ俄にはげし友来るか 加藤秋邨
餅の荷か岬人がバスに托しをり 能村登四郎
餅の荷の縄燃やすなり牡丹の芽 細見綾子
餅の莚にいんいんと古時計 飯田龍太
餅の音はくるしみの幸打つごとし 飯田龍太
餅の黴削ぐボオドレエルの忌を知らず 上田五千石 天路
餅の黴削りあひ愛古びけり 小林康治 玄霜
餅の黴落して春を待ちにけり 鈴木真砂女 紫木蓮
餅はまだ橋越え切らず都鳥 永田耕衣
餅は皆にじり居るらし雪の暮 永田耕衣
餅ひとつふくれんとして爆音す 加藤秋邨
餅ふくらむふくらむ虚空雪ふらす 加藤秋邨
餅ふくらむ荒野近づく声ありて 西東三鬼
餅ふくれ大音響もなく割れぬ 村山故郷
餅むしろ書斎狭むること許す 安住敦
餅やくや床の梅か香炭の音 正岡子規 梅が香
餅や荒鵜やわが揚幕は地獄の色 橋閒石 荒栲
餅よりも扁平となる蕎麦延ばし 山口誓子
餅を切るところ畳のほかはなし 加藤秋邨
餅を切るゆゑに石橋架かりをり 永田耕衣
餅を切る包丁のよく切るるなり 日野草城
餅を切る夕凍てのなほつのりつつ 飯田龍太
餅を噛むこのときまつたくひとりなり 加藤秋邨
餅を売る大原女の顔花簿 阿波野青畝
餅を手に立ちあがりをり爆音す 加藤秋邨
餅を焼く人の眉ほど焦がしたり 山口青邨
餅を焼く手順の香らし冬の雨 永田耕衣
餅を焼く翁の知らぬ齢にて 上田五千石『琥珀』補遺
餅を焼く花鳥諷詠骨頂漢 山口青邨
餅を食む子に目を細めゐたらずや 伊藤白潮
餅ノ名ヤ秋ノ彼岸ハ萩ニコソ 正岡子規 萩
餅一つ焙り妻ならず母ならず 岡本眸
餅切つてしまへばただの厨かな 加藤秋邨
餅切つて子夫婦のことには触れず 安住敦
餅切つて風の真下の薄暮かな 廣瀬直人
餅切は下座の勝かときの声 角川源義
餅切ると指切りし妹に胸さわぐ 正岡子規 餅
餅切るやきらりきらりと融雪器 加藤秋邨
餅切るや中年以後の運変じ 鈴木真砂女 夕螢
餅切るや妻に病まれし周章てぶり 藤田湘子 神楽
餅好きの巫女に老いたる山傾く 橋閒石 荒栲
餅如何に道路は如何に娯しむや 永田耕衣
餅恭(うやうや)しければや槇の粉落葉 永田耕衣
餅撒かれ菫踏まねばならぬかな 阿波野青畝
餅板の上に庖丁の柄をとん~ 高野素十
餅歪みつつ横道に猪現れぬ 永田耕衣
餅殿を戀に夜毎の嫁か君 正岡子規 嫁が君
餅浮べ長命寺うどん望の月 大野林火 方円集 昭和四十九年
餅焦しけり尾長鳥らに日の深く 星野麥丘人
餅焼いてをり美しき不安あり 藤田湘子 てんてん
餅焼いて喰ふやふるさとびといかに 伊丹三樹彦
餅焼くやちちははの闇そこにあり 森澄雄
餅焼くやみちのくの餅よくふくれ 山口青邨
餅焼くや更けて風音つのり来し 鷹羽狩行
餅焼く火さまざまの恩にそだちたり 中村草田男
餅焼けん時や浮木に蹤いて行く 永田耕衣
餅生れて翁かたむきいたるかな 永田耕衣
餅白うして人間(じんかん)に怖れあり 永田耕衣 人生
餅白くみどり児の唾泡細か 中村草田男
餅白し死ぬまで運のつきまとふ 藤田湘子 神楽
餅竈かへしに焦土此花区 平畑静塔
餅箱のきれいに乾き梅の簷 後藤比奈夫
餅網も焦げて四日となりにけり 石塚友二 曠日
餅腹に半日睡い波の音 佐藤鬼房
餅腹に陽を細めたる山の風 佐藤鬼房
餅腹の汚さゆるせ二日酒 石川桂郎 含羞
餅腹や大往生を父に謝す(一月十七日父死す。百一歳なりき) 藤田湘子 てんてん
餅膨れつつ美しき虚空かな 永田耕衣 葱室
餅臼の一日の土窪めたる 能村登四郎
餅船のうしろ淋しやけさの秋 正岡子規 今朝の秋
餅莚誰かがゐなくなりさうに 飯島晴子
餅負うて豊旗雲の裾野ゆく 橋閒石 卯
餅負ひて隣へ帰る年のくれ 三橋敏雄
餅買ひにやりけり春の伊勢旅籠 正岡子規 春
餅買ふや百姓に歯に衣きせて 石川桂郎 含羞
餅賜べと姥過ぎ行くや霜の橋 永田耕衣 物質
餅間のグラタン舌を汚しけり 百合山羽公 樂土以後
餅食うや物まねのあと寂然と 永田耕衣
餅食えば数個の橋の迫るかな 永田耕衣
餅食ふや貧しき過去を身にまとひ 相馬遷子 雪嶺
餅食へり野武士の加く恢々と 藤田湘子 神楽
餅食べて妻は家出をするといふ 星野麥丘人 2002年
餅食べて我はいづこへ行着くや 藤田湘子 てんてん
餡を持つ餅のうすうすあをみたり 篠原梵 年々去来の花 雨
餡甘し甚だ甘し土用餅 高野素十
香に於て餅の在るあり老時雨 永田耕衣
鳥帰る三河の涯や五平餅 古舘曹人 砂の音
鳶の瞳を土塀に餅の黴削る 橋閒石 無刻
鳶鴎こゑのとどきて鏡餅 森澄雄
麗けき大福餅のほとりかな 相生垣瓜人 負暄
黴びし餅家にあり勤め怠けたし 津田清子
黴生て曇るといふらん鏡餅 正岡子規 鏡餅
黴餅や子等もつれつゝ育ちをり 小林康治 玄霜
鼠追ふて餅盜みくる火鉢哉 正岡子規 火鉢
齒固や鼠もためす鏡餅 正岡子規 歯固め
齢富む一間に寝ねて餅莚 森澄雄

餅 続補遺

あぢさゐの焼餅ほどに咲にける 成美 はら~傘
いで子ども花見越れし鏡餅 半残
うぐひすの声は餅気を離けり 秋之坊
うらがれや馬も餅くふうつの山 其角
かい餅も伏猪の床の小萩かな 支考
かい餅をせがみに行や稲くろべ 小春
かうあろとおもふて来たぞ餅の音 惟然
かけ乞や無言でいぬる餅の音 許六
かさ餅や雪に行脚の立すがた 尚白
かたまりし善哉餅や御影講 三宅嘯山
かゞみ餅蜜柑はうまき時分也 許六
きていはへもののふのよき長足餅 道春 羅山文集
しろしとも青しともいへひしの餅 兀峰
すゝはきや餅の次手になでゝ置 凡兆
つき立の餅に赤子や年の暮 嵐雪
つや~と餅に朝日ややら寒う 除風
のし餅に灯霞む広間かな 東皐
のし餅のうへにいざ寐て年とらん 許六
のし餅を其まゝかざれ琵琶の形 乙訓
はつ雪は餅に造りて進ぜませ 野坡
ふところの餅で小しほのはな見哉 露川
むつまじきものや餅つく町つゞき 羽笠
むめ柳餅あり春がいま来ても 馬場存義
やよ給へみかん橙年の餅 田川鳳朗
ゐの子から似合て餅に頭巾かな 北枝
んめさくや宿行過て餅の音 早野巴人
一とせや餅つく臼の忘水 万子
一よさを越とて梅にあづき餅 桃妖
一村を鼓でよぶや具足餅 史邦
七夕や稲の初穂の御座れ餅 智月尼
世の中の酒の異見や餅の音 柳居 柳居発句集
世の花や餅の盛の人の声 鬼貫
五器の香や春立つけふの餅機嫌 鬼貫
元三や座敷は餅のかたづけ場 路健
元日や神の鏡に餅の影 木導
元服や餅をつくやら年のくれ 芙雀
初雪や御難の餅の過し今朝 松窓乙二
初雪や餅を乞子も家に有 風国
北斗待夜に餅やけばふう~ふく 乙訓
十日餅かりのやどりをおしみけり 許六
吹おろすもみぢやまいるいのこ餅 土芳
土用餅腹で広がる雲の峰 許六
声いくよ餅へ舂込川鵆 長川 江戸名物鹿子
夕皃や夕越へくれば馬に餅 建部巣兆
夕顔の花おもしろし餅の音 支考
夜あらしに餅つく音や西隣 諷竹
夜~の枕に来る餅の音 早野巴人
大雪に餅をならべし莚かな 建部巣兆
太箸や其逆鉾の餅の島 蝶羽
妹が子や薑とけて餅の番 其角
寒月や須磨の寝ざめも餅の音 馬場存義
小座しきに餅のむしろや梅の花 凉菟
山彦や臼の飛出る餅の音 早野巴人
師走かな餅つく音の須磨の浦 凡兆
年の市永楽餅に胡座かな 貞佐 桑々畔発句集
弱法師我門ゆるせ餅の札 其角
形のよき餅ひとつなき莚哉 田川鳳朗
待春を恋せば痩ぬべし餅くらひ 荷兮
御命講の餅のつよさよ法の力 木導
御影講やあの世へひゞく餅の音 吾仲
忘れ難し古郷の餅に年暮ぬ 凉菟
思出つ赤人にまでのかゞみ餅 言水
息才な子やくさ花を餅のさい 桜井梅室
我が宿の春は来にけり具足餅 鬼貫
投るとも蘭にさはるな餅莚 早野巴人
抱上て玉のやうなる餅かな 凉菟
散事を待とはおかし餅の花 千代尼
旅人に亥子幾人姥が餅 中川乙由
春の夜の餅や智月のこがすらむ 乙訓
春立や餅の間の人どをり 木導
月と花餅と酒との都かな 正秀
月花のかます作らん餅むしろ 挙白
有明の月吹落せ餅の臼 史邦
来ぬ筈か仕似せになりぬ餅の札 田川鳳朗
松風に餅の音あり神おくり 吾仲
桜木を切れば餅なし酒もなし 越人
梅が香や綴に餅の喰ひ残 惟然
梅になれ木の端につく餅の花 土芳
棟上の餅投る春のひとりかな 東皐
正月のこなたや餅の音羽山 吾仲
正月のへぎ餅ほつす弥生かな 許六
正月を出して見せうか鏡餅 去来
武を右に箸もかねたり具足餅 牧童
海山の達者や雛の餅と酒 朱拙
海老臥龍餅をうがつに玉あらん 北鯤
灌仏の日や市中の餅つゝじ 芙雀
片店はさして餅売野分かな 炭太祇
物安きむかしゆかしや嘉餅 素丸 素丸発句集
獅子舞や牡丹餅を見て花ざかり 木導
畠打や穴のきつねに餅居て 建部巣兆
痩麦の里のあはれや臍肥餅 露川
白けゝりわかばの陰の小豆餅 三宅嘯山
神垣や百味磨出す鏡餅 中川乙由
秋上や満月ほどの餅十五 史邦
竹林に餅の谺や乞食村 三宅嘯山
節季候も来ずなる餅のさはぎ哉 鈴木道彦
粥餅の腹機嫌なり神をくり 路青
臼にはぢ杵にはづかし餅の音 支考
臼杵の青ミを餅の節句かな 嵐青
花に降りぼた餅にふるや雪の暮 馬場存義
花をみて伯夷は餅を思ひけり 荊口
蘇命路の木々を餅はな滝の音 泰免 江戸名物鹿子
行としも戸板めでたし餅の跡 其角
行春の袋比目や餅かつを 抱一 屠龍之技
親二人ことしも餅に暮にけり 尚白
貪苦鳥明日餅つこうとぞ鳴ケル 其角
達磨忌やその円相の餅くらひ 子英 靫随筆
金杉も餅つく唄に廓くさし 抱一 軽挙観句藻
鏡餅今では飯の名所かな 李由
鏡餅多門は鉾をあれ鼠 言水
鏡餅母在して猶父恋し 加藤曉台
長生に徳あり姥が居り餅 園女
降つゝの雪餅にして薺かな 吾仲
隈篠の広葉うるはし餅粽 岩翁 猿蓑
雪ながら山家ははるの小米餅 土芳
雪の日や馬にくはする姥が餅 許六
雲の峯たとへば涼し凍餅 支考
青梅に臼まはしこむ餅あそび 加藤曉台
餅きりに残らぬ年の仕舞かな 杉風
餅くはで関をばこえじ桃の花 支考
餅くふた馬の気合やなく鶉 鈴木道彦
餅さめて臍のさびしき花見哉 田川鳳朗
餅ずきの目が証拠なり月の形 朱廸
餅たべて年打越へむ老の坂 支考
餅ついた音は夢かよ朝烏 支考
餅つきて鰤待門の柳かな 許六
餅つきに仏そろえや神揃え 魚日
餅つきに響よき名を付にけり 馬場存義
餅つきやあがりかねたる鶏の泊屋 嵐蘭
餅つきやものゝ答へる深山寺 炭太祇
餅つきや下戸三代のゆづり臼 許六
餅つきや夫婦つれだつ小挑灯 芙雀
餅つきや梢にひゞく神路山 正秀
餅つきや火をかいて行男部屋 岱水
餅つきや焚火のうつる嫁の皃 黒柳召波
餅つきや臼も柱も松臭し 諷竹
餅つきや舟に向へる娘だち 三宅嘯山
餅つきや酢にも味噌にも団三郎 〔ブン〕村
餅と屁と宿はきゝわく事ぞなき 其角
餅の室根深を蘭の薫り哉 嵐竹
餅の手をはたいていづる衣配り 木導 故人続五百題
餅の手をはたいて出る衣配 木導
餅の粉の家内に白きゆふべかな 炭太祇
餅の粉や花雪うつる神の*えみ 其角
餅の香に風もにごりて朧哉 露川
餅は杵がならはせとこそ申なれ 中川乙由
餅は飲ミ盃ハ嗅グ除夜の天 越人
餅ひとつ売らで暮るや秋つくば 馬場存義
餅ひとつ鬼が蚊をのむ鈴鹿哉 句空
餅ほして菜の花匂ふ日和哉 乙訓
餅ほめて這入ば茶屋のつゝじ哉 許六
餅やくをおいとま乞のどんど哉 炭太祇
餅作るうらの五月やかしわ貝 りん女
餅哥や君が歳暮の馬下りに 鬼貫
餅喰の喉の広さや御代の春 許六
餅喰はぬ旅人はなし桃の花 支考
餅染てかふぞ信あり御めいかう 尚白
餅白し頭も白し小殿ばら 凉菟
餅腹や藪黄鳥をきゝ寐入 長翠
餅腹をきりゝとつゝむ紙子哉 毛〔ガン〕
餅舂に小腹たてけり*ひょう疸やみ 史邦
餅舂や筵の中のよしの山 素丸 素丸発句集
餅配リ国栖人ごまめ奏シてより 其角
餅酒に慍じて春の野づらかな 加舎白雄
餅附る柳も妹がこゝろばへ 馬場存義
高砂や雑煮の餅に松の塵 野坡
鬼の子に餅を居るもひゐな哉 如行
魂棚やぼた餅さめる秋の風 炭太祇
魂祭餅つく音や夜半楽 百里
黍餅に盆の風ふけかしは貝 りん女

以上

by 575fudemakase | 2017-02-17 07:15 | 新年の季語


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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