2017年 1月 ねずみのこまくら句会の諸句

2017年 1月 ねずみのこまくら句会の諸句


予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。
句の前の番号は、選句稿の通し番号

5仏壇の香炉灰より淑気満つ
9数え日の陽のポケットのような里
26天水に篝燃えゐる除夜詣
28初春の尾道水道碧豊か
31旧水軍の島を眠らせ冬霞
41芹摘むや大揺れに過ぐ一両車
42初富士へ大観覧車せりあがる
43除夜の鐘大海原へ撞きにけり
46七面鳥に船上パーテイ星も飛ぶ
55仄明かり障子九枚に九体仏
57金田一耕助ぬかる木の葉髪
60兜町兜神社の初御籤
61子は農を捨つるつもりか田鳧鳴く
63雪嶺を前自販機のゴトと鳴る
74年の宿大広間にて治部煮膳
76東京の無垢の青空お元日
80あらぬ用見付けデパート煤逃げに
82お年玉鴨居に頭届く孫
85屠蘇祝ふ喜寿も傘寿も夫は亡く
86度忘れが慣ひとなれりちゃんちゃんこ
87数へ日の楽ゆるやかに美容室
89鉄鉢に硬貨ことりと淑気かな
94元朝や定位置にある潜水艦
95裏木戸に闇のしづもる年の暮
96冬しんしん妻の塗絵の根気よき
97敷網の湾を俯瞰や初明り
98年の市身を乗り出せる嗄れ声
103花八手入れ替はり鳴く路地の猫
110ふたりきり向き合ひ雑煮すする朝
111天心のオリオンに撞く除夜の鐘
112お若いとヨイショされおり女正月
124言ふなれば炭火の爆ぜる如くなり
133トーストの四日の朝となりにけり
137あをぞらの一瞬怯む威し銃
146マフラーに顔を埋めて鶴を待つ
154はや四日とはいへ何をするでなし
157締め切りて白さの違ふ坊障子
161お元日先づは一献田神にも
163寒柝を打つて路地裏大つぴら
165朱ヶ褪せず祖母母を経し雑煮椀
173初席や呆けに徹する芸達者
174富士へ向く小道が恵方試歩のばす
175噛んで脱ぐ手袋それは断固ノー
180餅花をくぐり塩豆求めけり
181七日粥泣くも笑ふも一人なり
183やはらかき朝陽が届き七種粥

以上

後評 2017年一月ねずみのこまくら句会


●天水に篝燃えゐる除夜詣
この頃 足許不如意となったので近場の除夜詣ばかりやっている。
そんな親近感があって頂いた。

●初春の尾道水道碧豊か
かって良寛さんの里を詠もうと思って一人旅をやった。
そこから良寛さんが発心を起こして旅立ったのが尾道。
「初春の尾道水道」と先ず据えた。「碧豊か」とはよう享けたとおもう。

●仄明かり障子九枚に九体仏
これはおそらく浄瑠璃寺の作であろう。
一つの堂に九体の阿弥陀さまが祀られている。上品 中品 下品 の三体づつが一つの堂宇
に祀られている。何といっても、あの堂宇の開放的な空間が魅力である。
堂障子の向こうはお池。堂障子が明り取りである。以下は拙句。季は同じく冬。

うすらひをつつつつと鶸浄瑠璃 ねずみのこまくら 昭和五十八年

●東京の無垢の青空お元日
東京と言えば、女房方の会津の俳人 新城杏児 の次句を思い出す。
東京の悪に触れたる冬銀河 杏児
新城杏児は栄泉と並ぶ会津の造り酒屋 末廣の当主で、わが女房の父親はその新城家の
七男である。その縁もあって、過日 その新城家の墓地を訪れたことがあったが、その中に
出稼ぎ先のここ会津で亡くなった杜氏の墓を見い出して、その〝あわれ〟を想ったこと
があった。杏児句はたしか、平凡社の歳時記、冬銀河の部に例句として載っている筈である。
そんな訳があって掲句に関心が及ぶのである。

●屠蘇祝ふ喜寿も傘寿も夫は亡く
高齢者さん 淡々と境涯をお詠みになる。
俳句の行き着く先はかくなる所か?ブレずに行こう。

●元朝や定位置にある潜水艦
このところ、横須賀参りが続いている。
イオンにある映画館行とヴェルニー公園からみる軍艦の勇姿がハラショーである。
小生はそれを楽しむ極めて危ない老人である。
三が日から護衛艦 出雲を撮りたくてパチパチやって来たが、尖閣方面へでも行ったのか
お留守であった。帰路は、銭湯が好きなので、その近くの吉倉というところの新湯にザブン
と入って来た。今年の読み初めは「米中戦争 その時日本は(渡辺悦和)」「米中もし戦わば
戦争の地政学(ピーター・ナヴァロ)」と潜水艦の本 4、5冊である。(「潜水艦の戦う技術 現代の「海の忍者」-その実際に迫る」「潜水艦のメカニズム完全ガイド なぜ、日本の潜水艦は世界最高水準と言われるのか?」「知られざる潜水艦の秘密 海中に潜んで敵を待ち受ける海の一匹狼」等)
渡辺悦和氏は元東部方面総監、ピーター・ナヴァロ氏は教授で、対中強硬派で、ドナルド・トランプ政権の国家通商会議代表。
話変わって、掲句に係わる点については、かって貞雄さんの句集紹介をした折に指摘した
一部を以下抜粋する。下記一連につらなる句である。
あと正月に観た映画と言えば、「この世界の片隅に」である。横須賀と並ぶ軍港 呉の戦前 戦中 戦後を描いたアニメである。空襲のシーンだったか、忘れたが呉と言う地名の謂れが印象的であった。後でグーグルマップで地形を調べたら、たしかにここは天然の要塞。戦艦大和が建造されるのにふさわしい地である。
「灰ヶ峰」をはじめとする呉一帯をつつむ連峰を「九嶺(きゅうれい)」と呼びそれが訛って「 くれ」になったという説があります…

(抜粋)
季語別 田中貞雄句集を読んで(特徴を中心に)

俳誌のサロン 2015・5・10

貞雄さんとのおつき合いは、そもそも俳句初学の頃
俳句結社 濱の同人であった 下田稔氏の教えを共に
受けたというご縁であった。句会を共にするように
なって15年を経た。目下、作句力は爆発しているようだ。

▼ご自宅周辺
お住まいは横須賀 田浦 。軍港に近く港町に因んだ町名が
多い。因みに、田浦 長浦 船越 汀橋等々…
とりわけ〝潜水艦が街の顔〟の句は、自宅周辺を詠って秀逸
である。

ぼんやりと尾をひく汽笛年替はる
艦艇の舳先ずらりと年迎ふ
初明り潜水艦が街の顔
浅蜊汁分の浅蜊を採つて足る
きぶし咲く素掘隧道出入口
春眠を引きずるやうに油槽船
泣き言の代りに鳴らす海酸漿
軍艦碑竜舌蘭を供花とせむ
釣瓶落し艦旗降納見届けて
行く年の憂さの捨て場の転舵渦
釣瓶落し艦旗降納見届けて
潮溜りあれば覗きて秋うらら

●冬しんしん妻の塗絵の根気よき
高齢者が塗り絵をするシーンと言えば、デイケアでよく見かけるところ。
ちょっと切ない一句。わが妻と思えば…。

●年の市身を乗り出せる嗄れ声
かって浅草 浅草寺の年の市に出向いたことがあった。この年の市、元来、仲買人が相手で
小売は無かったのではなかろうか?冬の寒さの中、股火鉢でもしながらの商売であった。
こんな中で詠んだ拙句は

年の市海山の幸積み上げて さざなみやっこ
神棚の値切り落とさる年の市 HAIKU199812sono3

健脚であった当時を懐かしむばかり。

●冬牡丹眺め居る間の陽の翳り
わたしの感覚では、「眺め居る間の」では無く「眺め居る間を」である。
いろいろな日の翳りの句があろうが、冬牡丹への日の翳りは、微妙であり、格別である。
かっての上野 牡丹園での寒牡丹当日詠の興奮を思い出す。拙作(細見綾子特選)は以下。
寒牡丹こゑあたたかく讃へらる ねずみのこまくら 昭和五十八年

●七日粥泣くも笑ふも一人なり
泣くも笑ふも一人 とは切ない。
孤独に耐えるのが老人の仕事 と言ったのが佐藤愛子。
今 彼女の 「九十歳。何がめでたい」を読んでる最中。
キンドルのペーパーホワイトを買ったので、これからは全て電子書籍。
寝床の真っ暗闇でポーッとした明りの中で読んでるいる。
by 575fudemakase | 2017-03-26 09:17 | ねずみのこまくら句会 | Trackback | Comments(0)
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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

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単語 575筆まか勢
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PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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