2017年 3月 ねずみのこまくら句会の諸句

2017年 3月 ねずみのこまくら句会の諸句


予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。
句の前の番号は、選句稿の通し番号

3料峭やシート囲いのぼやの跡
9立子忌の礼儀正しき句会かな
13金盞花太陽の黄を散りばめぬ
16四温晴れ幌を外してマーケット
17手松明に頬なぶらるる送水会
18下萌えや歩くたび鳴る稚児の靴
20梅散らす風かと見れば番い鳥
26啓蟄や水抜く池の穴あまた
27雪舞へる函館市場に氷下魚汁
30瀬戸の海凪ぎ素麺の天日干し
32柔らかに纏ふ光や雛納め
33奥津城の椿は落ちて色褪せず
35沈丁花襲脱ぎつつ匂ひけり
44庭畑の残雪散らし矮鶏番ふ
56総門に鳩除けネット涅槃西風
64焼け山の縞目くつきりとのぐもり
66亀鳴くや耳付き壺の耳失せて
67古書市に師の初版本鳥雲に
68雛納め振子時計の音ばかり
74舫ひ船脇差めきて東風の竿
77涅槃絵図掲げる床の鏡なす
81その昔上級生に御蚕の部屋
82母あらば急くや遅日の夕げ時
89芝居はね街におぼろの十日月
91花ミモザ海辺の町のピザの店
99新海苔や甥の嫁御のお里より
107岩窟に銭を洗ひて春浅し
112一輌車来る無人駅雪解靄
113こまがえる草々羨し妹亡く
119くもりけり幼なの握る竜の玉
120享保雛飾り門前写真館
133亀鳴くやもの憂き午後の美容室
134桜餅もぐもぐ鼻毛ごともぐもぐ
141つと突けば磯巾着のすと窄む
142五年ものの蒟蒻芋置く梅見茶屋
145陽炎は俑の嘆息古墳山
151房総の菜の花畑ゆく電車
154終曲の指ねんごろに春の宵
156啓蟄や嘴に虫垂れてをり
158啓蟄や街に出会ひて旧知なる
164梅白し子ども相撲の声高し
165姫椿落ちて乱れず苔の上
166曲がり来て沈丁の香に突き当たる
167病み抜けて久の外出春袷
168姑となりて久しや花大根
172けふはまだましと春めく日の言葉
188何事もなかったやうにひひな達

以上

後評(2017・3)


20梅散らす風かと見れば番い鳥
庭先でこんな光景によく出会うので、ごもっともと相槌を打つ次第。
我が家の梅は枯れてしまったので、桃である。桃は花が終わって葉が
モサモサである。其処へ一陣の擦過音、なあーんだ目白かである。

44庭畑の残雪散らし矮鶏番ふ
「番ふ」がいかにも春到来を告げて、躍動する動詞。
名詞の「番い」は静的であるが、動詞の「番ふ」は動的である。

68雛納め振子時計の音ばかり
静寂な座敷での雛納めといふ一仕事。時計の振り子の音が支配せる世界。
振り子の規則的なリズムに作業もはかどる。

81その昔上級生に御蚕の部屋
養蚕が旺んな時代にはこんな光景もままあったことであろう。
勉強部屋とお蚕さんの部屋が同居していたといふ… 昭和といふ
佳き時代である。そう言えば、濱の古参同人に竹中龍青という人が
居って、その人の句集に「御蚕神」というのがあった。信州 佐久
在の人である。その人の案内で渚男さん等と上田あたりを吟行した
のを思いだした。林火師も信州によく遊んだ一時期があったと仄聞
している。十日夜とか、穂高 山葵農園とか、しょなら様とか挑戦しがい
のある吟行地が多い。

89芝居はね街におぼろの十日月
じっくりと十日月を眺めたことがないが何となく惹かれる。


99新海苔や甥の嫁御のお里より
「甥の嫁御のお里」と畳み込んでゆく処にある種の親身を感じる。
その上に季語が効いているではないか?

100畦焼きは遠き日のこと老ふまじや
「老ふまじや」と、俳句を介して、自分自身に向き合っている。
遠き日の出来事はみな佳きものと感ぜられるよう神様は人間を造った
とでも言っておこうか?。

134桜餅もぐもぐ鼻毛ごともぐもぐ
かなりレトリックのかかった一句である。
ぬけぬけと小汚いところを詠むのも老者の特権であろう。

141つと突けば磯巾着のすと窄む
「つ」と「す」の関係は「あ」と「うん」の関係に類似する。
一音、一字の 照応が面白い。押し合い圧し合いしている。

172けふはまだましと春めく日の言葉
他人が言っているのか それとも 自分が言っているのか?
自分なら自分自身を慰める為の独言?
表現として「春めく日の言葉」がよい。
by 575fudemakase | 2017-03-26 09:20 | ねずみのこまくら句会 | Trackback | Comments(0)
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