松田雄姿句集「歳月」を読んで

松田雄姿句集「歳月」を読んで

2017・2・20 ふらんす堂 第四句集

以下、共鳴句を挙げる。

抜刀隊駈けし山坂曼珠沙華
開戦日一年生が七十に
雪掻いて雪掻き道具並べ売る
流氷を見むと靴紐固く結ふ
山に鈴聞かせて秩父遍路去る
高空に富士ある暮し初幟
富士の水七日温め田を植うる
蟻走る富嶽を目指しゐるごとく
春の雪慶事の積りゆくごとく
春光や名を書いて船塗りあがる
雉撃たれ首やはらかく置かれあり
大花火昔警備に明け暮れて
赤き花赤く映して水澄めり
秋高し亀も飛びたくなってをり
白鳥来銀河を発ちて来しごとく
冬薔薇孤高の色を掲げたる
梅雨茸大地つぶやく如く生ふ
子鎌切風を掴みて飛び立てり
やんまの眼眼鏡を掛けて見たりけり
己が鵜を師として鵜匠五十年
芥掻き梁守の今日始まれり
河鹿鳴く水が余りに美しく
春の雪真珠の育つ海に降る
往き帰り見る猿の芸日の永し(浅草三社境内)
風鈴の音競はせて売りに来る
鮎を釣る川幅ほどの竿振って
振出しは雷門や初日射す(昭和二十八年浅草署へ)
初鵙や叱る勇気の湧いて来し
誤字脱字正すごと稲補植せり
遠山の暮れてゆくなり冷奴
虹を来て明日の予定告げてゆく
甚平や齢に従ひ又抗し
老いていよいよ煩悩具足着膨るる
氷面鏡他人のごとく老いてをり
千年の桜のオーラ浴びに行く
薔薇の芽にはや大輪の勢あり
半分は聞こえぬ会話夜の長し
銀杏散る楽しき明日があるやうに
絵馬に跳ね梅林へ飛び年の豆(湯島天神)
柿熟るる美濃も尾張もなく晴れて
猪鍋を囲み昭和の気概あり
八十路なほ冬芽のやうな夢育て
松の芯目指せるもののあるごとく
松原は海辺の名残り緑さす
草笛を吹き郷愁を呼び覚ます
玄奘の塔に里程図雲の峰
横綱碑見て初場所へ廻りけり
春の雪一幕ほどを舞ひて止む
青葉谿獣のごとく水勢ひ

集中、好みで言えば、次句あたりが最も好きである。

秋高し亀も飛びたくなってをり
遠山の暮れてゆくなり冷奴
松原は海辺の名残り緑さす
氷面鏡他人のごとく老いてをり

以上


by 575fudemakase | 2017-04-09 14:02 | 句集評など | Trackback | Comments(0)
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