橇 の俳句

橇 の俳句


例句を挙げる。

*のろの仔のおくれ逃げゆく橇愉し 田村了咲
いさかうて一つの橇を兄弟 大家湖汀
いつの間にどこやらに橇しまはれて 田村了咲
いとけなき霊はや橇の白轍 成田千空 地霊
いと遥か彼方の橇となり了る 森田峠 逆瀬川
うなだれて客を待ちゐる橇の馬 笹倉数子
かりかりと残雪を喰み橇をひく 飯田蛇笏
げらげらと笑ふ橇より落ちころげ 山口青邨(1892-1988)
こゝに来てなほ奥の温泉へ橇を駆る 高濱年尾 年尾句集
さいはての町の馬橇に鈴もなし 上村占魚
さむく~橇道消ゆる震源地 萩原麦草 麦嵐
しまひ橇して大吹雪また来る 二唐空々
すれちがふ犬と男と柩橇 黒田杏子 水の扉
とまらんとして橇の尻横すべり 高濱年尾 年尾句集
どの橇も膝掛赤く日に匂ひ 大場白水郎 散木集
ひつぱりて動かぬ橇や引つぱりぬ 高野素十
ひとりづつ死し二体づつ橇にて運ぶ 松崎鉄之介(1918-)
ふるさとの若人よわが橇を曳く 佐藤漾人
ほそぼそと月に上げたる橇の鞭 飯田蛇笏
みそさざい聴く雪原に橇止めて 小坂順子
めつむりて夜橇にあれば川音も 山口青邨
わが橇の竹林に入り冷ゆるかな 佐野良太 樫
わが橇の馬が大きく町かくす 高濱年尾 年尾句集
オリオンは韃靼の星橇を駆る 依田明倫
クリスマス海にはあらぬ橇の鈴 鈴木翠塔
シベリアの血を滾らせて橇の犬 青木青磁
バスの座の高さで馬橇追ひ越しぬ 平井さち子 完流
メリケン粉積んで奥地へ駱駝橇 田村了咲
リボンつけ雪のまつりの橇の馬 森田公司
一つ行く橇に浪うつ最上川 前田普羅
一人づつ死し二体づつ橇にて運ぶ 松崎鉄之介
一直線に馳け橇馬の眼の青むか 山本よ志朗
一輪草木橇をつかひすてゝあり 木津柳芽
一鞭が街の灯見せつ犬の橇 有働亨 汐路
丸太橇崖の氷柱を薙ぎゆけり 飯塚 秀城
乗り捨ての子の橇暮るる雪の道 三嶋隆英
仔馬ひく橇をみんなが振り返る 高野素十
休日の学校に来て橇遊び 太田土男
停りても瞼ひらかず橇の酔 田村了咲
児の睡る橇を氷湖に曳き渡る 品川鈴子
冬山の笹に橇道消えにけり 渡邊水巴 富士
凍ての限りへ橇の鈴の音この夜を泊つ 古沢太穂
凍江や船より船へかよふ橇 田村了咲
凭れたる荷にあるくぼみ橇の酔 田村了咲
刃のあとを粗くのこして橇つくり 栗生純夫 科野路
初荷橇まつ毛の長き馬に逢ふ 本宮哲郎
初荷橇氷湖をたわみつつ渡る 吉村唯行
北海の荒るるに沿ひつ橇の鈴 河野南畦
吹きすさぶ白き闇より橇の鈴 白旗喜知子
吹きだまりスコップに掘り橇進め 高濱年尾 年尾句集
吹雪く野に僧ともやひの橇を駆り 高濱年尾 年尾句集
吹雪やまず柩を橇にうつす間も 大橋櫻坡子 雨月
吹雪中忍路の方へ橇の点 藤田湘子 雲の流域
吹雪衝く橇に面を伏せもして 高濱年尾 年尾句集
地吹雪の夜の涯より橇の鈴 佐藤国夫
城うらや橇の道に星光る 加舎白雄
夕映や角ひかり立つ橇の牛 三宅句生
夜橇駆る教会暗く町はづれ 成瀬正俊
夜橇駆る謎のごとくに暗き森 成瀬正とし 星月夜
夜橇駆る馭者若ければつつたてり 成瀬正とし 星月夜
奥の湯へ橇おしのぼる大旦 小林碧郎
奥湯への郵袋橇にかへて発つ 中村 翠湖
妙高も天も茫々橇絶えつ 大島民郎
妹のせて牧の起伏の橇遊び 太田土男
子供橇立掛けてある朧かな 太田土男
子燕や軒に立て乾す救助橇 原 柯城
客降りし橇に残れる湯婆かな 棚元花明
寒垢離の白衣を橇に曳ききたる 勝尾佐知子
寒肥の野をすぐ橇やよそ~し 萩原麦草 麦嵐
寒鮒売子の橇借りて引ききたる 三宅 句生
小走りの馬橇をつつむ雪つむじ 平子 公一
少年のたてがみそよぐ銀河の橇(そり) 寺山修司(1935-83)
山の日もいつしよに乗せて橇遊び 山田弘子 こぶし坂
山車蔵の扉にたてかけて橇干せり 加藤 岳雄
山鳴るとうちみる妻や橇暗し 飯田蛇笏 山廬集
巨き雪遺骸を橇に載せゆけり 沢木欣一
弓手あげ星流れしと橇の馭者 成瀬正俊
後手に曳いて行く橇氷下魚釣 永谷たくじ
御岳の額割る風に橇を組む 岡田貞峰
御座橇や先に立たる道具持 羽州-不玉 俳諧撰集「有磯海」
急ぐでもなき橇の綱長く曳き 高濱年尾 年尾句集
急峻にかかり炭橇ふと技見す 加藤知世子 花寂び
或時は星ほど遠く橇を駆り 京極杞陽
手綱に血かよひ馬橇の動き出し(稚内所見) 上村占魚 『萩山』
押す力加はつて橇ひかれ出す 佐藤一村
採氷の橇がわり込む湖上の路 古館曹人
提灯を借りて尚遣る橇に在り 楠目橙黄子 橙圃
旅かなし橇のきしりに目覚めたる 木村蕪城 寒泉
旅二日すでにさみしき橇の鈴 栗生純夫
日は低く氷上にあり橇ゆきき 田村了咲
明らかに二つの橇の鈴となり 佐藤 多太子
星空へたちあがりたる橇の馭者 成瀬正俊
暁近く馬橇の鈴のすきとほる 小清水幸子
暮れてなほ坂に聲して橇の吾子 依田明倫
曳く人の足見ながらに橇の我 高濱年尾 年尾句集
曳く橇の氷湖に沿へり注連貰 村上光子
月の出てあかるくなりぬ橇の道 村上鬼城
月輪の右に左に橇を駆る 西田浩洋
林檎の香こぼす馬橇の疲れをり 堀口星眠 営巣期
柩橇母振りきつて曳き出でぬ 細川加賀 『傷痕』
柩橇百千の墓佇ち迎ふ 細川加賀 『傷痕』
楮橇曳く*かんじきを穿きにけり 西本一都 景色
榾橇に声かけていざ木曾の人 宇佐美魚目 天地存問
横すべりがちの橇押し菜を売りに 三浦芳靖
橇あそび家路の雪の凍りゆく 石橋辰之助 山暦
橇あそび雑木林の雪に来る 石橋辰之助 山暦
橇がゆき満天の星幌にする 橋本多佳子
橇でゆく棺はながく見送らむ 永田耕一郎 氷紋
橇でゆく長き別れを惜みけり 合田波一郎
橇で着く初刷折るや雪の上 久米正雄 返り花
橇に葱夕日が深む山の襞 宇佐美魚目 秋収冬蔵
橇に逢ひ側壊したる家に逢ひ 森田峠 三角屋根
橇のあと水ついて鴉むきむき 佐野良太 樫
橇のあと鋭く深く雪を截つ 高濱年尾 年尾句集
橇の子に日射せば珠の声放つ 板持玲子
橇の子に暮色三人は淋しき数 千代田葛彦 旅人木
橇の子のもんどり打つて澄みきる空 成田千空 地霊
橇の子の登りつくこと繰り返し 嶋田一歩
橇の子の膝にゆれをり遊蝶花 堀口星眠 営巣期
橇の客ことなく着きし星夜かな 雑草 長谷川零餘子
橇の犬アラスカ馳せし血をひけり 大島早苗
橇の犬息そろふとき林過ぐ 澤田緑生
橇の道竹林に入り凍てにけり 佐野良太 樫
橇の道雪あたらしくかゞやけり 水原秋櫻子
橇の鈴きこえしのみの今宵かな 柏崎夢香
橇の馬丸胴の汗筋をなす 永田耕一郎 氷紋
橇の馭者坂も老馬に鞭打たず 小島左京
橇ゆきし奥処夕澄む火口壁 小林碧郎
橇ゆきて寂しき岳を野にのこす 堀口星眠 火山灰の道
橇をひく犬立ち止り主見る 高野素十
橇を干す戸にまたひゞき遠雪崩 山岸 治子
橇を曳く子の丹の頬よ夕映よ 中島斌男
橇一つ立てかけしまゝ戸締まりす 森田峠 避暑散歩
橇下りる深雪に足を下したる 高濱年尾 年尾句集
橇去りてより鈴きこゆ木魂とも 石原八束
橇失せぬ雪原と星あふところ 平野 露子
橇山河カチューシャ色の装曲げて 古館曹人
橇帰る飛雪の底に町ありて 堀口星眠
橇引いて犬黙々と従へり 黒沼 草生
橇曳きて辻につどへる注連貰 増澤正冬
橇犬の渦巻く太尾突堤ヘ 成田千空 地霊
橇用意して娼家ある深雪かな 森川暁水 黴
橇知らぬ犬も聖夜の雪の上 村越化石 山國抄
橇立てて月の出おそき湯華小屋 渡辺 立男
橇納ひ遠い音のせ芽吹く空 新谷ひろし
橇著いてよろめき出でし女かな 西方石竹
橇行に寝し村酒場のみ灯り 石井とし夫
橇行や氷下魚の穴に海溢る 山口誓子(1901-94)
橇迅し空研ぎ立てる白馬岳 堀口星眠 火山灰の道
橇逸る馬の眼に灯の飛び入れば 栗生純夫 科野路
橇遊びどの子が風の又三郎 太田土男
橇遊び開拓の碑の吹きさらし 太田土男
橇馬に荒鞭くれて馭者酔へり 田村了咲
橇馬の怖れすゝまず吹き溜り 高濱年尾 年尾句集
橇馬の息づきばかり夜半をゆく 中島斌男
橇馬の昏れたる貌の近づけり 依田秋葭
橇馬の積荷に耐えている憩い 飴山 實
橇馬の耳の動きに吹雪泣く 石川桂郎 高蘆
橇馬の臀毛少なに老いにけり 飯田蛇笏
橇馬の袋の中の耳うごく 田村了咲
橇馬の鈴うち鳴らし歩みいづ 阿部みどり女
橇馬の鼻のもゝいろ湯を覗く 山口草堂
橇馳せて何忘れんとしてゐるや 田中妙子
橇駆るや雪によごれし眼鏡拭く 高濱年尾 年尾句集
橿鳥や木の香たゞよふ橇作り 岡本まち子
止るたびおのづと尾振り橇の犬 江川虹村
氷上の最短距離を橇走る 藤野弥生
氷柱噛み馬橇の鈴をゆかしめき 小林康治 玄霜
氷橋荷を傾けて橇を曳く 松原地蔵尊
氷海やはやれる橇にたわむところ 山口誓子
氷海やはるか一連迎ひ橇 山口誓子
氷海や船客すでに橇の客 山口誓子
汽車のつく頃幌橇が一つ来し 高野素十
泣初や父の曳く橇くつがへり 堀口星眠 営巣期
温泉の町の雪に橇曳く湯女もあり 高濱年尾 年尾句集
満載の橇に銀漢尾を垂れつ 栗生純夫 科野路
潟橇の跡の一水夕焼くる 奈良文夫
炉によつて連山あかし橇の酔 飯田蛇笏 霊芝
炉に遠く凭れ合ひ寝の橇の犬 有働亨 汐路
炭小屋は粗末なるもの炭橇も 徳永玄子
炭橇に犬が吠えをり人が曳き 加藤楸邨
独り泣きひとり泣きやみ橇あそび 千代田葛彦
産神に雪の夜さりの橇の鈴 深谷雄大
町川に橇を洗へる雪解かな 大橋櫻坡子 雨月
登校の箱橇曳かせ牧の犬 原 柯城
眦を飛ぶ綺羅星や橇を駆る 成瀬正とし 星月夜
祝言の門の内なる橇溜り 吉村刀水
穴釣に炭配るとふ橇遠し 手島靖一
空に抛らるる子もあり橇の丘 依田明倫
空青くして力生む橇の馬 村越化石
空鞭のひびき夜空に橇を駆る 水見寿男
窓の灯は樹氷を照らし橇をてらす 石橋辰之助 山暦
立てかけし橇に四温の雫かな 原田青児
箱橇で来てかまくらの小さき客 菊地映楼
箱橇に手足はみ出し子が二タ重 平井さち子 完流
箱橇の曲つて消えし一位籬 宇佐美魚目 秋収冬蔵
箱橇の滑りとまれば曳き登り 福田蓼汀 秋風挽歌
箱橇の荷についてゆく別れかな 橋本鶏二
箱橇の鰤の荷のゆく鉄砲町 下田稔
終章の橇の鈴かと外へ出る 杉野一博
綺羅星に鈴を鳴らして橇の馬 山田無月
耕牛となり変りをり橇の牛 石塚友二 光塵
耳を打つちら~雪や夜の橇 楠目橙黄子 橙圃
聖夜めく二頭の馬が曳く橇は 有働亨 汐路
肥橇曳く遠深雪野に消えむため 小林康治 玄霜
花嫁の馬橇の鈴の遠ざかる 鈴木舜子
若き主婦の毛橇に幼児湖の眼で 細谷源二
草橇の子等の声飛ぶ夕薄暑 佐藤ちさと
荷を下す橇馬つつむ汽車煙 大野林火
落照の燃ゆるばかりに橇の唄 柴田白葉女 遠い橋
落葉松の径ゆき馬橇の鈴透る 池田風信子
藪の家真赤な橇を蔵ひけり 吉本伊智朗
蝶憩はす橇この冬の痩せ加ふ 中戸川朝人 残心
行き交ひし夜の馬橇より笑ひ聲 依田明倫
触れて響く馬橇の鈴や掃納 鳥羽とほる
走り出すまでは甘えて橇の犬 藤南桂子
起重機の腕が馬橇の荷に下りる 三ツ谷謡村
身の始末つけんとごとく馬橇駈けだす 成田千空 地霊
軒吊の昆布に触れて馬橇過ぐ 大網信行
軒深く納めし橇の今年傷 立川きよし
迎へ橇送り橇友遠きかな 石川桂郎 高蘆
逸りとぶ懸巣鮮し橇のまヘ 堀口星眠 営巣期
道のべの婆叫ばしめ柩橇 細川加賀 『傷痕』
道ばたにしまひ遅れし馬橇かな 比良暮雪
道知りて橇曳きゆくや秋田犬 細谷鳩舎
郵便旗たてゝ馬橇の来りけり 長谷草石
酒の甕ずつしりと橇動きだす 朔多 恭
酒場の灯ゆびさし笑ひ橇の馭者 成瀬正とし 星月夜
野の果につまづく夕日馬橇去る 堀口星眠 営巣期
野鍛冶の火橇の高さに見て過ぐる 山口青邨
錆び古りて馬橇の鈴の結ばるる 石川桂郎 高蘆
門の前雪橇を置き寒河江姓 森澄雄 花眼
開墾の父の臭ひや橇の馬 湊元子
防寒衣馬橇の馬をおびやかす 石川桂郎 高蘆
除夜淋し町ゆく橇もなき今は 阿部慧月
雪きしむ音にも堪へず橇に酔ふ 中島斌男
雪しぐれ乗ればはや馳す橇の馬 松崎鉄之介
雪しんしん聴きたきものに橇の鈴 小川田鶴子
雪ふりて橇の灯にたつ油煙かな 飯田蛇笏
雪凍てゝ来てわが橇のきしむなり 高濱年尾 年尾句集
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪崩音過ぎて声あげ子等の橇 加藤知世子 花寂び
雪掻きし市内に来り橇難渋 中村汀女
雪橇に日をのせ子乗せ青菜のす 中山純子 沙羅
雪照りのはげしさ橇が一つ来し 佐野良太 樫
雪舞ふ日老爺橇曳き町さまよふ 岡田日郎
雪踏に従いて柩の橇曳けり 大橋櫻坡子 雨月
雪道をひたすらなもの橇の馬 細見綾子
青炎の星空に澄む橇の鈴 沢 聰
鞭の音きこゆるのみの橇に酔ふ 田村了咲
音曳いて馬橇とまるや星の中 堀口星眠 営巣期
頑なに赤き木の実よ橇作り 堀口星眠 営巣期
頑丈な馬橇のベンチ金魚草 八木林之介 青霞集
顔洗い洟かみ朝や雪とぶ橇 寺田京子 日の鷹
餅花や空馬屋に吊る父祖の橇 佐藤ちさと
馬の足太く短く橇行けり 稲畑廣太郎
馬よりも橇の逸れりとどまらず 栗生純夫 科野路
馬橇家族どれも老父のうちかがみ 堀口星眠 営巣期
馬橇行くただきらきらと野路の果 福田蓼汀 山火
馬橇過ぎ又馬橇過ぐ子等遊ぶ 高木晴子 晴居
馬橇馳す蹄がとばす雪の塊 大橋敦子
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子
馬橇駆る父は男の匂ひせり 関根礼子
鴨四五羽翔つより馬橇湖に沿ひ 田村了咲
黄泉坂に橇とおぼしきものありぬ 攝津幸彦 鹿々集
黒衣僧月界より橇に乗りて来ぬ 飯田蛇笏 山廬集
雪車(そり)に乗る奥方さむき十夜かな 浜田酒堂
雪車(そり)立てて少し春めく垣根かな 一茶
雪車(そり)負て坂を上るや小サイ子 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)

橇 補遺

いそがねばならぬ夜橇や馬黙々 山口青邨
エスキモー犬六匹の後に橇 鷹羽狩行
かりかりと凍雪をはみ橇をひく 飯田蛇笏 春蘭
きらきらと敗れし如く橇急ぐ 藤田湘子
げらげらと笑ふ橇より落ちころげ 山口青邨
こゝに来てなほ奥の温泉へ橇を駆る 高浜年尾
ついて行く大きな男橇のあと 高野素十
とまらんとして橇の尻横すべり 高浜年尾
ひつぱりて動かぬ橇や引つぱりぬ 高野素十
ほそ~と月に上げたる橇の鞭 飯田蛇笏 霊芝
みちみちも雪崩のあとや橇日和 百合山羽公 春園
めつむりて夜橇にあれば川音も 山口青邨
わが前にいつも夜橇の馬の尻 山口青邨
わが橇の提灯もなく鈴もなく 山口青邨
わが橇の馬が大きく町かくす 高浜年尾
わが橇の落せしものそれは人参 山口青邨
一人づつ死し二体づつ橇にて運ぶ 松崎鉄之介
稲橇の跡の乱れてあるところ 高野素十
引きすてた雪車に來て寐る小犬哉 正岡子規 橇
引越すやたぐれば軽き橇ひいて 飴山實 おりいぶ
曳く人の足見ながらに橇の我 高浜年尾
駅のホームに馬橇は馬身深く入れ 松崎鉄之介
荷を下す橇馬つつむ汽車煙 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
汽車のつく頃幌橇が一つ来し 高野素十
苦しみて手橇曳き上げ一気に降る 山口誓子
空林にありて炭橇雪を待つ 森澄雄
迎へ橇送り橇友遠きかな 石川桂郎 高蘆
玄関の馬橇の鳴るも亡き名かな 加藤秋邨
湖の方へ刃のごとき馬橇あと 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
耕牛となり変りをり橇の牛 石塚友二 光塵
降る雪の星屑まじへ橇走る 山口青邨
黒衣僧月界より橇に乗りて来ぬ 飯田蛇笏 山廬集
札幌の春や馬橇の鈴の音 渡邊白泉
錆び古りて馬橇の鈴の結ばるる 石川桂郎 高蘆
三日月を駆りて疾しや橇の馬 橋本多佳子
山の娘が椿がくれに橇を曳く 飯田蛇笏 春蘭
山鳴るとうちみる妻や橇暗し 飯田蛇笏 山廬集
仔馬ひく橇をみんなが振り返る 高野素十
新雪に出て橇犬のふる尾かな 飯田蛇笏 春蘭
薪橇のとどまるひまも嶽おろし 飯田蛇笏 春蘭
吹雪中忍路(おしょろ)の方へ橇の点 藤田湘子
星消えて又雪となる橇の旅 山口青邨
青き野に翼尾の橇を触れしむる 山口誓子
雪しぐれ乗ればはや馳す橇の馬 松崎鉄之介
雪原に橇駆り吾子と昏れてゐる 橋本多佳子
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の昏るるに燈なき橇にゐる 橋本多佳子
雪原の夜気をしりへに橇の燈 飯田蛇笏 家郷の霧
雪原をゆくとまくろき幌の橇 橋本多佳子
雪車引いて入る町中や雪淺し 正岡子規 橇
雪車引いて立ちどまりたる話かな 正岡子規 橇
雪車引いて醫師を載せて戻りけり 正岡子規 橇
雪車引て笹原歸る月夜かな 正岡子規 橇
雪車下りてかじきをつける麓かな 正岡子規 橇
雪車歌の聞ゆる谷や雪車見ゆる 正岡子規 橇
雪車道や童の雪車も引き出でぬ 正岡子規 橇
雪積もり出す救命橇曳き行くに 山口誓子
雪凍てゝ来てわが橇のきしむなり 高浜年尾
雪道をひたすらなもの橇の馬(七尾線) 細見綾子
雪霏々と橇の龕燈すすけむり 飯田蛇笏 春蘭
川曳きに橇木馬とは山言葉 山口誓子
前山の橇の子眺め戸口の子 中村草田男
大木を載せたる雪車の辷りかな 正岡子規橇
炭橇の炭のかはりにわれら乗る 山口青邨
庭紅葉大稲橇を立てかけし 高野素十
冬山の笹に橇道消えにけり 渡邊水巴 富士
凍ての限りへ橇の鈴の音この夜を泊つ 古沢太穂 火雲
禿木といふべき木々や子等の橇 中村草田男
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子 天鼓
馬橇行くただきらきらと野路の果 福田蓼汀 山火
箱橇の滑りとまれば曳き登り 福田蓼汀 秋風挽歌
肥橇曳く遠深雪野に消えむため 小林康治 玄霜
尾橇もて青草原を掻きむしる 山口誓子
氷下魚釣るあなた馬橇の影ゆくに 西東三鬼
氷海やはやれる橇にたわむところ 山口誓子
氷海やはるか一連迎ひ橇 山口誓子
氷海や月のあかりの荷役橇 山口誓子
氷海や船客すでに橇の客 山口誓子
氷柱噛み馬橇の鈴をゆかしめき 小林康治 玄霜
貧しけれど雪車と雪沓と馬二匹 正岡子規 橇
不知火の海の潟橇蹴り帰る 野見山朱鳥 幻日
浮浪寝し宙を聖夜の黄金の橇 伊丹三樹彦
鞭が毛をむしる老馬橇の冬 飯田蛇笏 家郷の霧
墓見ゆる高野の坂の橇遊び 山口誓子
墓地迄の橇見ゆる道見ぬとしても 松崎鉄之介
防寒衣馬橇の馬をおびやかす 石川桂郎 高蘆
民宿で乞う使い湯 スリッパが朝の橇 伊丹三樹彦
娘等やそれ~のひく空の橇 高野素十
木曳橇岩間の鵯をとばしたり 平畑静塔
門の前雪橇を置き寒河江姓 森澄雄
野鍛冶の火橇の高さに見て過ぐる 山口青邨
旅かなし橇のきしりに目覚めたる 木村蕪城 寒泉
旅の町よごれぬ橇はなかりけり 阿波野青畝
林間に昏るる橇人前屈み 飯田蛇笏 春蘭
炉によつて連山あかし橇の酔 飯田蛇笏 山廬集
藁橇をひくは俳人にこ~と 高野素十
柩橇押せし山坂錨草 松崎鉄之介
橇の子の叫びと走りいくすぢも 中村草田男
橇の子等軍歌ためらふこともなく 中村草田男
橇の馬泪をためて牽かれけり 飯田蛇笏 家郷の霧
橇の鈴海の上まで星ふやし 鷹羽狩行
橇の鈴鳴るや石狩川見ゆる 加藤秋邨
橇やがて吹雪の渦に吸はれけり 杉田久女
橇やらぬ馬子を叱して雪霏々と 山口青邨
橇をひく犬立ち止り主見る 高野素十
橇を御すわれ金餓鬼に似たらずや 佐藤鬼房
橇駆る子等や喪へ行く我の足遅し 中村草田男
橇行の宵の明星手にもとらむ 山口青邨
橇行や氷下魚の穴に海溢る 山口誓子
橇道の大き彎曲邑つつむ 松崎鉄之介
橇道へ雪珠糸を引きなだる 松崎鉄之介
橇馬に陽はかがやくも雪の涯 飯田蛇笏 家郷の霧
橇馬の屍に海おもく曇りけり 飯田蛇笏 家郷の霧
橇馬の耳の動きに吹雪泣く 石川桂郎 高蘆
橇馬の積荷に耐えている憩い 飴山實 おりいぶ
橇馬の尿すに吾のもつとも近く 山口青邨
橇馬の怖れすゝまず吹き溜り 高浜年尾
橇馬の鞭音地に徹りけり 飯田蛇笏 家郷の霧
橇馬の臀毛少なに老いにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
橇遊びしてきしこの子顔に疵 高野素十

橇 続補遺 

橇や女子がはけばはしたなき 田川鳳朗
橇やことにをかしき野夫の様 高桑闌更
出ぬけたる橇ながらに小笹原 松窓乙二

以上

by 575fudemakase | 2017-04-17 16:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)
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《方法1》 残暑 の例句を調べる
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探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

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