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雪 の俳句

雪 の俳句

雪 の例句

雪 補遺

*えぐい舌触りの街の暮雪かな 佐藤鬼房
*えりに降る雪のはげしさ往くさ来さ 下村槐太 天涯
あかつきに雪降りし山神還る 藤田湘子 神楽
あひ触れて深雪の廂夜は深し 福田蓼汀 山火
あらぬこと思ひてをりし雪明り 飯田龍太
いちさきに孟宗ゆれて降る雪よ 原石鼎 花影以後
うちこめる斧の厚刃に雪散華 福田蓼汀 秋風挽歌
おしひらく傘新しき深雪かな 原石鼎 花影
おでん酒うしろ大雪となりゐたり 村山故郷
おのづからよき声の出て深雪晴 能村登四郎
お降りといふに適ひし細雪 後藤比奈夫
かん酒や深雪とならん深雪になれ 渡邊白泉
きさらぎや深雪に沈む林檎園 福田蓼汀 山火
ぎんなんを焼くゆふぐれの雪明り 橋閒石 雪
くもる日はすでに心に雪降りをり 能村登四郎
くらがりに雪降る空のありにけり 岸田稚魚 負け犬
こしかたゆくすゑ雪あかりする 種田山頭火 草木塔
こんこんは来む来む姑に雪降れり 寒食 星野麥丘人
さめざめと夕べ雪降る川流れ 松村蒼石 雁
さんさんと雪降るなかのものわすれ 鷲谷七菜子 花寂び
サンシャインビルの占めたる雪景色 岸田稚魚 紅葉山
しばらくは粉雪が頬に除夜詣 村山故郷
じぶ食へばたちまち加賀の雪景色 飴山實 次の花
しん~と降る雪に見入りわがさだめ 原石鼎 花影以後
しんしんと深雪や鴨も声を断つ 野見山朱鳥 幻日
しんしんと雪つむ夜の梁の音 長谷川素逝 村
しんしんと雪降りしんしんと降りかくす 伊丹三樹彦
しんしんと大雪吊の天地かな 村山故郷
そののちの仏らに雪深からむ 安住敦
ただ積る小雪朦朧たりしことよ 野見山朱鳥 愁絶
つとわが手とらるる夜の牡丹雪 鷲谷七菜子 黄炎
てのひらに熱き火桶や雪景色 日野草城
てり返へす峰々の深雪に春日落つ 前田普羅 飛騨紬
はげしさのかくも寂かに雪降れり 鷲谷七菜子 一盞
はるかなる坂下ともり秋の暮 橋閒石 雪
ひざまづき散華を拾ふ雪あかり 能村登四郎
ふり出してささめ雪また牡丹雪 森澄雄
ふるさとの町縫う根雪煤臭し 飴山實 おりいぶ
ふるさとの夜半降る雪に親しめり 飯田蛇笏
ぼけの蕾のふくらみようは大雪にして晴れ 荻原井泉水
ほしいまま亡師春雪降らしめき 岸田稚魚 筍流し
ぼたん雪卒業の日のひねもすを 百合山羽公 春園
マネキンと帰路をともにす雪降れり 村山故郷
まひる野のいよよ雪降り林檎小屋 古沢太穂 捲かるる鴎
マリヤ祀る樹林聖地の暮雪かな 飯田蛇笏 山響集
みくじは八十番吉、読むに雪つむ松の如しと 荻原井泉水
みくまりの落葉松しんと雪降る前 佐藤鬼房
みじめなる妻の下着や雪降れり 日野草城
みそさざいふりしく暮雪紊るなし 飯田蛇笏 春蘭
みちつけて水の出でくる深雪沢 上田五千石 森林
みみづくの眠る梢に粉雪舞ひ 飯田龍太
やつと退勤ネオンの色の牡丹雪 草間時彦 中年
ゆふぐれと雪あかりとが本の上 篠原梵 年々去来の花 皿
よろこべる子に降る雪の白くなり 臼田亜浪 旅人 抄
ランプ明り雨戸に粉雪ささと触れ 福田蓼汀 秋風挽歌
りんごの木乳のにほひの雪降り出す 上田五千石『琥珀』補遺
わが葬列夢に雪降る仮借なし 小林康治 玄霜
われを見る深きまなざし雪降るなか 鷲谷七菜子 黄炎
われを呼ぶ深雪の中の母の墓 野見山朱鳥 愁絶
をさな子も深雪を帰るクリスマス 日野草城
愛のごとし深雪の底の水音は 小林康治 玄霜
愛をしる牝獣の前雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
愛を知る牝獣の前雪降れり 飯田蛇笏 家郷の霧
愛隣の果も雪降る夜通し降る 森澄雄
逢ひし目のほのぼの濡れて牡丹雪 鷲谷七菜子 黄炎
逢ふ宵の大雪ふりとなりにけり 日野草城
逢ふ人の皆大雪と申しけり 正岡子規 雪
逢瀬阻みしかの夜の雪が根雪なす 上田五千石『田園』補遺
鮎の炉の火かげとゞかず深雪の戸 前田普羅 飛騨紬
鮎焼きし大炉の灰に雪あかり 前田普羅 飛騨紬
闇に眼の馴れて見え来し牡丹雪 右城暮石 句集外 昭和四十七年
一つ寝のはじめての夜の牡丹雪 日野草城
一色に雪降りかくしても藁塚 右城暮石 句集外 昭和二十六年
一葉の便りが通る深雪掻く 上田五千石 森林
淫らな唄雪降る青年集会所 草間時彦 中年
雲のまに新雪きそふ嶺三つ 飯田蛇笏 家郷の霧
餌とならず鱒池に降る牡丹雪 右城暮石 虻峠
駅凍てゝ曠野につゞく深雪かな 前田普羅 飛騨紬
焔といふもののしづけき暮雪かな 鷲谷七菜子 花寂び
猿に別れ山下り来ても雪深し 松村蒼石 雪
猿の湯や杉は深雪に花つけて 松村蒼石 雪
遠つ嶺に刷く新雪や母へ駈く 能村登四郎
遠つ嶺に雪降りてより木々の銘 原裕 青垣
遠國に降る雪ながら恐るべし 相生垣瓜人 明治草
奥山に大雪やある余寒かな 原石鼎 花影以後
屋根白くなりて夜の雪降りやまず 右城暮石 上下
牡丹の芽にあな予告なく雪降り来 安住敦
牡丹囲ひもあへずちらちら雪降り来 安住敦
牡丹雪 牡丹雪 くろき牛の頭蓋 富澤赤黄男
牡丹雪こころの海に吸はれけり 野澤節子 存身
牡丹雪さかんなるまゝあらせ度き 右城暮石 句集外 昭和十七年
牡丹雪なれば韻きてつもるなり 日野草城
牡丹雪にじむ地べたの浅蜊買ふ 佐藤鬼房
牡丹雪に変りて間なし降りしきる 右城暮石 句集外 昭和四十三年
牡丹雪ノート小脇に今日は若し 草間時彦 中年
牡丹雪の日と記し獄へ入るる書よ 古沢太穂 古沢太穂句集
牡丹雪ひととき鏡はなやぎぬ 桂信子 女身
牡丹雪まづしき一日とは言はず 細見綾子
牡丹雪まばらに人の顔の見ゆ 桂信子 花影
牡丹雪牡丹根元の敷きわらに 細見綾子
牡丹雪己濡れつゝ鉄濡らす 右城暮石 声と声
牡丹雪降りつつむ家を軽んずる 藤田湘子 途上
牡丹雪触るゝものなく地に下りぬ 右城暮石 句集外 昭和二十三年
牡丹雪触るれば触れし如く散る 右城暮石 句集外 昭和二十三年
牡丹雪触れたるものに砕け散る 右城暮石 一芸
牡丹雪善き記憶のみ積まれなば 上田五千石 田園
牡丹雪退廳どきのけしきかな 百合山羽公 春園
牡丹雪池にぎやかに降りしきる 右城暮石 散歩圏
牡丹雪宙に触れ合ひ砕け散る 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
牡丹雪昼をともしし灯と濡るる 右城暮石 句集外 昭和二十一年
牡丹雪繚乱たるに恋雀 相馬遷子 山河
牡蠣舟を出でゝ天満の雪景色 河東碧梧桐
温室の花買ひぬ信濃の深雪中 及川貞 夕焼
音をたえて寒流のゆく雪げしき 飯田蛇笏
何埋むべく降る雪や妻との距離 楠本憲吉 孤客
歌留多取粉雪ふるとはよも知らじ 日野草城
河豚の文大雪降ると物しけり 河東碧梧桐
花に雪降り光太郎逝き給へり 石塚友二 曠日
花仕度元禄館の小雪洞 百合山羽公 樂土以後
花置いて身を退く四囲の雪景色 飯田龍太
蝦夷見むと深雪に窪む長靴は 小林康治 玄霜
我菴や上野をかざす雪明り 正岡子規 雪明
海さかに牡丹雪ふる吾がねむり 佐藤鬼房
貝殻に雪降りゐるや伊良湖岬 細見綾子
外灯立ちその先深雪道昏し 野澤節子 未明音
街路樹にからむ風船雪降り出す 草間時彦 中年
学久し靴をしずかに暮雪踏む 赤尾兜子 蛇
橿鳥に峡の逆光根雪解く 飯田蛇笏 家郷の霧
竃火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
鴨射ちが粉雪を払ひ船上る(七尾にて二句) 細見綾子
寒牡丹雪被てその緋ふかめけり 鈴木真砂女 夕螢
寒卵刻一刻の雪明り 飯田龍太
観能の灯の昼ふかき深雪かな 西島麦南 人音
雁たちて暮雪に翅音のこしたる 野澤節子 八朶集
雁なくや小窓にやみの雪明り 正岡子規 雪明
帰りつく身をよす軒や雪明り 飯田蛇笏 山廬集
蟻塚のほとりひたすら粉雪舞ふ 飯田龍太
丘の住宅暮雪ふかきにガス細る 野澤節子 未明音
急ぎ降り急ぎ止みたり牡丹雪 細見綾子
求心の湖放心の雪景色 飯田龍太
泣寝妻いつか安寝の雪降れり 草間時彦 中年
京菜好きの男の歯音粉雪降る 古沢太穂 捲かるる鴎
京底冷え奈良は粉雪の万燈会 細見綾子
京都遠し夜行列車に雪降りつつ 村山故郷
峡湾は暮しの歯型雪降り降る 佐藤鬼房
仰ぎみしのみにみるみる雪はげし 岡井省二 明野
銀座うら雪降れる夜の鶴吊れり 飯田蛇笏 山響集
銀壺の花くれなゐに雪降る日 飯田蛇笏 家郷の霧
駒鳥や大雪嶺に真横の陽 石塚友二 曠日
鍬研いで忘れしころの雪降らす 能村登四郎
君の遺著まづ雪の香の書といはむ 能村登四郎
君は酒家へわれは駅へと夜の小雪 林翔
軍港の兵の愁ひに深雪晴れ 飯田蛇笏 霊芝
鶏が踏む根雪が蒼しガリレオ忌 飴山實 おりいぶ
鶏たかく榎の日に飛べる深雪かな 飯田蛇笏 山廬集
結跏趺坐雪積るとも積るとも 大野林火 月魄集 距和五十七年
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治 四季貧窮
見えぬ枷雪降るは谷とざすため 佐藤鬼房
源義の声桂郎の眼や雪降る夜 石塚友二 磊[カイ]集
玄関のくらさを好み雪降り込む 能村登四郎
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女 夕螢
古池のをしに雪降る夕かな 正岡子規 鴛鴦
孤児園に雪降り太る雪達磨 飴山實 おりいぶ
戸の隙を雪散りこんで蜆籠 鷲谷七菜子 游影
枯枝に刻々つもる粉雪かな 日野草城
湖に群衆の如く雪降れり 上野泰 佐介
五六軒雪つむ家や枯木立 正岡子規 枯木
午ちかく雀なき出し深雪かな 原石鼎 花影
御水屋に浅柄杓伏せ雪降る杉 古沢太穂 捲かるる鴎
御扉にふとも日のさす暮雪かな 日野草城
御涅槃のかたきまぶたや雪明り 前田普羅 普羅句集
公魚のよるさゞなみか降る雪に 渡邊水巴 富士
喉を責む痛み湖上に雪降れり 佐藤鬼房
稿難し雪降れば雪に韜晦す 小林康治 玄霜
紅梅に雪降り雪に紅梅散り 安住敦
行平や春の雪散る夕まぐれ 桂信子 花影
降りに降る雪や恋情汪然と 日野草城
降り沈む暮雪向き変ふ鳰ひとつ 鷲谷七菜子 銃身
降る雪に山霊のぼる太古かな 野見山朱鳥 運命
降る雪に時流れゐる水の中 飯田龍太
降る雪に樹霊ふくれてきたるかな 鷲谷七菜子 游影
降る雪に独りの風呂を湧かすかな 鈴木真砂女 卯浪
降る雪に白玉楼中皆会す 福田蓼汀 秋風挽歌
降る雪に悲しみはたゞ怺ふべし 相馬遷子 山河
降る雪に力抜きたる汀かな 山田みづえ 木語
降る雪の奥も雪降るその奥も 林翔
降る雪の中に雪片たたかへり 鷹羽狩行
降る雪の波の穂先と争ひぬ 鈴木真砂女 夏帯
降る雪の舞ふは熄むてふ心あり 稲畑汀子
降る雪の力の中へ川入りゆく 斎藤玄 狩眼
降る雪へつばさ摶ち摶つ死鼠を恋い 橋閒石 風景
降る雪やあざやかすぎし夢の虹 鈴木真砂女 卯浪
降る雪やこけしの如く吾子馳け来 小林康治 四季貧窮
降る雪やこゝに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女 夏帯
降る雪やわれをとりまく人の情 鈴木真砂女 卯浪
降る雪や暗き自画像想はるる 藤田湘子 途上
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏 雪峡
降る雪や女所帯は豆撒かず 安住敦
降る雪や聖徒の折り競きをリ 上田五千石『田園』補遺
降る雪や地上のすべてゆるされたり 野見山朱鳥 運命
降る雪や父母を子が持つ日曜日 林翔 和紙
降る雪や旅は孤りを佳しとして 鈴木真砂女 夏帯
降る雪泣熄め太陽顔を洗ひたり 中村草田男
豪華古るラツキーシツプ深雪晴れ 飯田蛇笏 雪峡
豪雪の岩がしら息鮮しや 佐藤鬼房
豪雪の空港となり燈も見えぬ 佐藤鬼房
豪雪の夜明のおさな髪撫でる 橋閒石 荒栲
豪雪や母の臥所のかぐわしく 橋閒石 卯
豪雪を友へ禅林の太柱 福田蓼汀 秋風挽歌
黒田三郎小雪もたらし逝きしはや 山田みづえ 手甲
黒豆を煮んか粉雪が降つてゐる 細見綾子
黒白の差別根雪につばきして 有馬朗人 母国拾遺
根雪となりぬ 根雪の間に翼拡げ 三橋鷹女
根雪にて社は朱なり丹はさみし 佐藤鬼房
根雪ふみ新雪にぬれ旅の町 及川貞 夕焼
根雪掘る二十代経し妻の背よ 佐藤鬼房
魂祭庫裏は團子の粉雪哉 正岡子規 魂祭
佐久に雪降るか寒鯉苞に厚し 能村登四郎
座禅草そこから根雪とけそめし 飴山實 句集外
細雪一茶の国の夕間暮 原裕 青垣
細雪遠干潟かけ人恋ふも 小林康治 玄霜
細雪客は蒲焼好みけり 村山故郷
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏 家郷の霧
坂邸楽はずませて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
昨夜は雪降りし信濃の暮春かな 細見綾子
三度目の雪降りざまも遊びをり 能村登四郎
山あひに時を閉ぢこめ牡丹雪 佐藤鬼房
山は深雪湯檜曽の村は夕日さす 村山故郷
山越えの木偶に優しや雪明り 橋閒石 卯
讃美歌の中木の股に雪積る 岸田稚魚 負け犬
仕込樽撞木と古りぬ雪明り 石川桂郎 高蘆
仔牛瞬く丑三つの雪明り 飯田龍太
四方の深雪に山上湖温みそむ 松村蒼石 雁
子がいつまで寝ねず雪降り東北線 古沢太穂 捲かるる鴎
子の胸の粉雪ゆふべの醤油買 飯田龍太
子鏡の一円相に雪降れり 野見山朱鳥 愁絶
市隠の愚責めぬく無燈雪明り 香西照雄 対話
死ぬ人の歩いて行くや牡丹雪 藤田湘子 てんてん
死のかげに音楽が雪降らせをり 原裕 葦牙
歯にあてゝ雪の香ふかき林檎かな 渡邊水巴 白日
歯車の噛みあふ真夜を雪つむか 橋閒石 朱明
時雨星またゝく嶺の雪明り 西島麦南 人音
自転車の燈に降る雪のおびただし 相馬遷子 雪嶺
七十の恋の扇面雪降れり 橋閒石 荒栲
柴折戸を押すすべもなき深雪かな 原石鼎 花影
酌めば茶のすぐにさめたる深雪かな 鈴木真砂女 夏帯
若菜滴みし畦道今日は雪降れり 細見綾子
寂として春の雪降る林かな 村山故郷
手ぶくろをはめつゝ急ぐ暮雪かな 及川貞 夕焼
手袋や暗夜の粉雪肩に鳴る 村山故郷
朱の柵とざして廟の深雪かな 日野草城
朱印捺す手をぬらしけり牡丹雪 飴山實 句集外
週末や眼鏡濡らして雪降れり 赤尾兜子 蛇
宿根の宿恨は在れ雪景色 永田耕衣
春の雪はじめ粉雪でありにけり 細見綾子
春の雪降つて消えたる地面かな 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
春の雪降りつゝすでに野は眩し 相馬遷子 山国
春の雪降るふつくらとゆつくりと 細見綾子
春の雪降るまもとけてゐたりけり 鈴木真砂女 夏帯
春の悲曲窗をくらめて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
春寒き夜半の深雪を人知らず 村山故郷
春深雪買はねばならぬ青菜の値 及川貞 夕焼
春雪の二夜の深雪星を得ぬ 及川貞 夕焼
春大雪この世眩しみゐたりけり 鷲谷七菜子 天鼓
春大雪の宵東京のラヂオ聞く 村山故郷
春猫の暮雪に逢うて失せにけり 原石鼎 花影
春蘭の葉のとどめたる牡丹雪 野澤節子 飛泉
春隣り雪降る湖を思ひつつ 飯田龍太
初寄席の池田の猪の雪景色 飴山實 花浴び
初七日の春の深雪を忘れめや 日野草城
初雪の大雪になるそ口をしき 正岡子規 初雪
初夢の模糊の目覚めに雪降りをり 上田五千石『森林』補遺
初旅や寝返りてまた雪明り 岸田稚魚 紅葉山
初蕨隠りし雪の香にたちぬ 百合山羽公 春園
初鴉山に大雪降らせけり 岸田稚魚 紅葉山
小柴門出入のしげき深雪かな 飯田蛇笏
小雪の思ひ込めたる切字かな 能村登四郎
小雪の浅間の水を飲んでみる 雨滴集 星野麥丘人
小雪の日とか茶色の奈良に居り 桂信子 草影
小雪や古り枝垂れたる糸桜 飯田蛇笏 山廬集
小雪吸ふ昼の襁褓が長屋の旗 佐藤鬼房
小雪降る勤めやめんと思ふとき 山田みづえ 草譜
小雪庇よし大雪庇知らざるも 右城暮石 句集外 昭和四十三年
少年帰る夕日の根雪蹴りながら 飴山實 おりいぶ
庄司が二婦深雪のせつに馨りけり 佐藤鬼房
松とれて雪降りて常の日となりぬ 及川貞 夕焼
沼暗らめ琵琶の音色に雪降れり 佐藤鬼房
鐘の音の一つひとつの深雪かな 鷲谷七菜子 天鼓
鐘の臍雪明りとはちがうなり 永田耕衣
障子梅の木の影、大雪大に晴れ 荻原井泉水
上*せいの燈明りわたり深雪かな 原石鼎 花影以後
新しき年新しき雪降らせ 細見綾子
新雪すでに山を覆へり発哺に灯 及川貞 夕焼
新雪にやもめ炊爨ラヂオ鳴る 飯田蛇笏 春蘭
新雪に一歩また一歩あゆみ出づ 相馬遷子 山河
新雪に出て橇犬のふる尾かな 飯田蛇笏 春蘭
新雪に触れ三行の葉書出す 有馬朗人 母国
新雪のかがやきを遠ざかり来し 細見綾子
新雪のかがやき何にたとへんか 細見綾子
新雪のスキーの音の上に立つ 篠原梵 年々去来の花 皿
新雪の闇より闇へ雁のこゑ 飯田龍太
新雪の幹のうしろのかたつむり 飯田龍太
新雪の高嶺相寄るごときあり 上田五千石『天路』補遺
新雪の消えてしばらく山日和 福田蓼汀 秋風挽歌
新雪の浅間燃えたり人丸忌 相馬遷子 山国
新雪の東京神妙に在りぬ 山田みづえ まるめろ
新雪の比良正面に朝日出る 右城暮石 句集外 昭和三十五年
新雪の富士の肩荒きへら使ひ 細見綾子
新雪の富士や忙しき里車 石塚友二 光塵
新雪の富士見ゆるなり妻の墓 森澄雄
新雪の富士現はれし草の上 飯田龍太
新雪へ絵踏のごとく踏み出だす 上田五千石『田園』補遺
新雪や空の蒼さに神ひしめき 橋閒石 朱明
新雪や山のゴンドラに犬も乗る 村山故郷
新雪を見つめたる眼を伏せにける 細見綾子
新雪を染めざる浦の溢れ潮 飯田蛇笏 雪峡
新雪を被てはるかなる加賀の山 石塚友二 光塵
新雪を来て返しゆく郵便夫 右城暮石 上下
新雪眉のごとし杖老の手にしてのぼる 荻原井泉水
新雪来り約して今日小生来り 荻原井泉水
新年の深雪ぬくとく愛馬飼ふ 飯田蛇笏 春蘭
榛の木に雪降る音を聞きわくる 細見綾子
深雪して遺愛樹の洞ふたがりぬ 中村草田男
深雪つむ夜のシンクロンただ聾ひぬ 飯田蛇笏 白嶽
深雪に会へば眉目の新しき 細見綾子
深雪の顔にかかりし子の白息 細見綾子
深雪やむときの粉雪に星浮ぶ 松村蒼石 雪
深雪見むと軒へのべたる手燭かな 原石鼎 花影以後
深雪晴たばこのけむり濃むらさき 日野草城
深雪晴野を来て町は汚れたる 相馬遷子 雪嶺
深雪青翳畦川ほそき音ひらき 鷲谷七菜子 銃身
深雪中湖村一塊となり睡る 鷲谷七菜子 銃身
深雪踏む楽しさ胸に旅始 林翔
深雪野の美濃や近江は彦根まで 石塚友二 玉縄抄
深大寺の裏藪春の雪降れり 細見綾子
真下のみ照らす駅燈牡丹雪 右城暮石 声と声
神山や霽れ雲うつる雪げしき 飯田蛇笏 山廬集
神無月テレビ画面に雪降れり 右城暮石 句集外 昭和五十四年
薪水を事とする日の牡丹雪 細見綾子
人寄せへ朝より湯気や粉雪降り 古沢太穂 捲かるる鴎
人形の家に窓あり雪明り 有馬朗人 耳順
人恋えば灰のごとくに雪降れり 橋閒石 卯
尋ね来て山科は雪深かりき 安住敦
水底は暗のさざなみ雪降れり 鷲谷七菜子 游影
水面に近づき弱る牡丹雪 右城暮石 句集外 昭和三十七年
雛棚や雛の中の小雪洞 正岡子規 雛祭
世に遠く浪の音する深雪かな 臼田亜浪 旅人 抄
星暗らめ雪降る気配したるのみ 佐藤鬼房
聖仏母懸けて春雪降りしきる 松村蒼石 寒鶯抄
青天に湧く粉雪やえんぶり踊り 草間時彦 中年
青縄に染まる根雪や女工寮 飴山實 おりいぶ
静けさを深め雪降るわが行方 原裕 葦牙
石の精神、まず大雪をぬきんず 荻原井泉水
積みあまる富士の雪降る都かな 正岡子規 雪
雪あかりのまぶしくも御飯ふく 種田山頭火 草木塔
雪あかりの足袋の破れからつまさき 種田山頭火 自画像 落穂集
雪あかりほのかにも浪の音すなり 種田山頭火 自画像 層雲集
雪あかり胸にわきくるロシヤ文字 古沢太穂 古沢太穂句集
雪つむや亡き児の形見歳古りて 飯田蛇笏 家郷の霧
雪のこゑ老来ひしと四方より 飯田蛇笏 春蘭
雪の香に炉辺の嬰児を抱きて出ぬ 飯田蛇笏 雪峡
雪の香に鄰保親しくすまひけり 飯田蛇笏 家郷の霧
雪の香や街角に出し花売女 飯田蛇笏 雪峡
雪の香をおもひ蕨の香をおもふ 百合山羽公 春園
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪はげし遠のものみな亡びけり 野澤節子 未明音
雪卸し暮れており立つ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
雪起しと人いふに雪降り出しぬ 岸田稚魚 紅葉山
雪降つてから鴨鍋といふことに 亭午 星野麥丘人
雪降つて姑は正気にもどりけり 寒食 星野麥丘人
雪降つて椋(ちしやのき)の名をたしかにす 亭午 星野麥丘人
雪降らば降れと塞の神相擁く 安住敦
雪降りこむままの棒鱈干場の列 古沢太穂 捲かるる鴎以後
雪降りしばかりの荒嶺光なし 野見山朱鳥 愁絶
雪降りそめし葉のそよぎ暗き病床に 種田山頭火 自画像 層雲集
雪降りつ凹めつ馬淵川氷る 小林康治 玄霜
雪降りてゐて壜詰の帆掛船 有馬朗人 天為
雪降りて色となりゆく恵方道 斎藤玄 狩眼
雪降りて真昼の何もかも淡し 廣瀬直人 帰路
雪降りぬ忘れるほどに遠くの日 能村登四郎
雪降りのかまくら父を加へざる 佐藤鬼房
雪降りの街空明り早寝の妻 佐藤鬼房
雪降り来ず白鷺潟に彳つかぎり 上田五千石 天路
雪降るに溺るるわれを遮るな 藤田湘子 途上
雪降るやしばらく墓を忘じゐし 松村蒼石 雁
雪降るや沖へ出でゆくわがねむり 藤田湘子 神楽
雪降るや仰臥死を待つにも似たり 村山故郷
雪降るや経文不明ありがたし 相馬遷子 山河
雪降るや葉音収めて竹立てる 臼田亜浪 旅人 抄
雪降る海白鳥群るる辺は明し 草間時彦 中年
雪降る暁巣箱のわらも樹も覚めず 古沢太穂 捲かるる鴎
雪降る山神に捧ぐるもの持たず 藤田湘子 てんてん
雪降る山毛欅のおなじ傾き湯桧曽川 古沢太穂 火雲
雪降れば焼跡の家すぐ白し 右城暮石 句集外 昭和二十五年
雪降れば墓碑銘を書く心の中 有馬朗人 母国
雪降れば夜は来といひて昼に来ぬ 下村槐太 光背
雪降れり『雪降れ降れ』の受賞かな 松崎鉄之介
雪降れり海なき国の野に山に 福田蓼汀 山火
雪降れり少年の日の友等無く 相生垣瓜人 微茫集
雪降れり沼底よりも雪降れり 橋閒石
雪降れり天上の詩がこぼせしか 林翔
雪散るや干曲の川音立ち来り 臼田亜郎 定本亜浪句集
雪散るや千曲の川音立ち来り 臼田亜浪 旅人 抄
雪散るや桃子の3は逆字のΣ 村山故郷
雪散るや木の葉小鳥を交へつつ 山田みづえ 木語
雪散るや利酒茶碗手に持ちて 村山故郷
雪女南の国に雪降らす 鈴木真砂女 紫木蓮
雪深き高嶺火噴きし形して 右城暮石 虻峠
雪深き朝よ時計に耳澄ます 細見綾子
雪深き道外るるには決意要る 津田清子 礼拝
雪深き方へといそぐ何の愁 鈴木真砂女 夏帯
雪深く合掌建へ丘なだらか 石川桂郎 高蘆
雪深しかくれて来たる旅ならね 鈴木真砂女 夏帯
雪深し熊を誘ふおとしあな 正岡子規 雪おとしあな<こざとへん+井>
雪積る谷けものの眼さかなの眼 藤田湘子 てんてん
雪積る中滑らかな水車の軸 津田清子 礼拝
雪像にいたはりの雪降り出せり 鷹羽狩行
雪墜ちて深雪ににぶき音うまる 桂信子 女身
雪踏みの無言につづく深雪空 松村蒼石 雪
雪明りしてこの隈や四季桜 河東碧梧桐
雪明りして渡岸寺観音像 寒食 星野麥丘人
雪明りには池くらし山あかるし 及川貞 夕焼
雪明り月明りして町眠る 松本たかし
雪明り鳥の首切り脚を切り 飯田龍太
仙丈新雪を見る日の君を煙とするか 荻原井泉水
船の荷の佐渡の青竹雪降り出す 草間時彦 中年
船方に三角山の雪景色 佐藤鬼房
素琴忌の雪降り出すや暮れてより 村山故郷
早も小雪かゝりし水や鴛鴦の沓 原石鼎 花影以後
槍の穂は雪をとどめず深雪晴 福田蓼汀 山火
相寄れる木地師の墓や雪深し 有馬朗人 知命
窓ぢゆうの夜明けの空も雪あかり 篠原梵 年々去来の花 中空
村まはりする花嫁御深雪晴 木村蕪城 寒泉
他家(よそ)で働く妻の寝ぎはへ牡丹雪 佐藤鬼房
太陽が煤を降らして雪降らす 鷹羽狩行
大きさの極まりし夜の牡丹雪 右城暮石 上下
大絵馬の朱のうごくなり牡丹雪 岸田稚魚 筍流し
大雪となるべし春の夜空これ 岸田稚魚 紅葉山
大雪となる我が家の玄関まで 右城暮石 声と声
大雪になるや夜討も遂に來ず 正岡子規 雪
大雪にぽつかりと吾れ八十歳 飯島晴子
大雪にほめき出る月ありにけり 原石鼎 花影
大雪に耐ゆる柱の時計うつ 橋閒石 朱明
大雪に来て肥を汲む男かな 原石鼎 花影
大雪のただひたぶりな一日かな 細見綾子
大雪のたなぞこふるゝ別れかな 齋藤玄 飛雪
大雪のなほ降る闇へ鬼やらふ 相馬遷子 山河
大雪のわが掻きし道人通る 相馬遷子 山河
大雪のわれのニコニコ絣かな 飯島晴子
大雪の山猿こころかわきけり 松村蒼石 雪
大雪の小川たぎちて道添へり 松村蒼石 雪
大雪の上にぽっかり朝日かな 正岡子規 雪
大雪の谷間に低き小村かな 内藤鳴雪
大雪の朝を出でゆく魚の骨 佐藤鬼房
大雪の夜の排卵を拝むなり 橋閒石 荒栲
大雪の夜の白檀を燻ずべし 橋閒石 雪
大雪の夜を福寿草ひらきけり 橋閒石 朱明
大雪の鴉も飛ばぬ野山哉 正岡子規 雪
大雪やあちらこちらに富士いくつ 正岡子規 雪
大雪やめくら暦の里埋もれ 百合山羽公 樂土
大雪や玉のふしどに猪こゞへ 正岡子規 雪
大雪や洲の雪穴のゆりかもめ 松村蒼石 雁
大雪や寝るまでつがん仏の灯 渡邊水巴 白日
大雪や人を呼び込む壕の中 岸田稚魚 雁渡し
大雪や石垣長き淀の城 正岡子規 雪
大雪や底びかりして夜の梁 鷲谷七菜子 花寂び
大雪や納屋に寝に来る盲犬 村上鬼城
大雪や風鈴鳴りつ暮れてゐし 渡邊水巴 白日
大雪や幽明わかず町寝たり 渡邊水巴 白日
大雪や狼人に近く鳴く 正岡子規 雪
大雪や關所にかゝる五六人 正岡子規 雪
大雪を見に大雪の国へ行く 山口誓子
大雪を朗報のごと春立てる 百合山羽公 寒雁
大雪嶺子らの喊声打ち返し 上田五千石『田園』補遺
大日の前けなげにも雪降りをり 上田五千石『森林』補遺
大年の襖の隙の深雪かな 百合山羽公 春園
瀧尻の渦ながれつぐ深雪かな 飯田蛇笏 心像
谷杉の深雪に堪へてつむじ舞ふ 松村蒼石 雪
鱈割いて女体汗ばむ牡丹雪 佐藤鬼房
誰とて黙つてただただ雪降る世相か 荻原井泉水
地の深雪宙の二階の白根澄む 飯田蛇笏
遅月にふりつもりたる深雪かな 飯田蛇笏 山廬集
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
竹の張力、太陽へ大雪を払う 荻原井泉水
竹垣にひそむ雉子の眸深雪晴れ 廣瀬直人 帰路
竹藪の前の枯木にちる暮雪 飯田龍太
猪打ちの足許しまる粉雪かな 細見綾子
猪打ちの粉雪を蹴つてゆくなりし(懐旧) 細見綾子
兆しそむ飢の清しく細雪 鷲谷七菜子 黄炎
朝すこし雪降り年を深くする 能村登四郎
長靴をはくほど春の雪降りし 細見綾子
鳥とぶや深雪がかくす飛騨の国 前田普羅 飛騨紬
鳥高みたる完璧の雪景色 飯田龍太
鳥声や出窓みづから雪明り 石川桂郎 四温
鎮み降る雪のかなたにけぶる過去 鷲谷七菜子 銃身
漬きごろの今年の京菜粉雪降る 古沢太穂 捲かるる鴎
爪切つてをり細雪呼びにけり 岸田稚魚 紅葉山
爪先に体重かかりたる根雪 橋閒石 無刻
吊橋の深雪ふみしめ飛騨へ径 前田普羅 飛騨紬
鶴哭くや新雪須臾にして消えさり 橋閒石 無刻
庭におく深雪の石にみそさざい 飯田蛇笏
泥眼や般若や杉生雪降らす 岡井省二 明野
天よりも夕映敏く深雪の面 野澤節子 未明音
天上に貯へゐたる牡丹雪 右城暮石 虻峠
天地たゞ傘に降る雪あるばかり 石塚友二 磯風
天地の息合ひて激し雪降らす 野澤節子 未明音
田起しや根雪一塊うづくまり 鷲谷七菜子 一盞
電気爐の烈しき雪の香だちけり 飯田蛇笏 家郷の霧
電線の雨滴の上も雪の声 飯田龍太
電話借る母校や夜の雪明り 右城暮石 句集外 昭和三十七年
兎ゆきしあとのみ散りて深雪なり 及川貞 夕焼
兎獲て一羽と数ふ雪深し 右城暮石 句集外 昭和三十三年
唐松は空の支へ木雪降りふる 佐藤鬼房
東京の雪らしく雪降りにけり 岸田稚魚 紅葉山
東大寺の高き赤松牡丹雪 細見綾子
盗伐で生く曲木部落いま深雪 佐藤鬼房
湯煙や根雪となりし山襖 石塚友二 光塵
湯坪には母の怨念雪降り降る 佐藤鬼房
湯婆こぼす垣の暮雪となりにけり 飯田蛇笏
灯に粉雪にわとり眠るうしろ向き 飴山實 おりいぶ
灯は水にまたたきはじめ牡丹雪 桂信子 初夏
灯を消して障子にはかに雪明り 上村占魚 鮎
踏みこみし萱のほとりの雪深く 木村蕪城 一位
踏切の灯を見る窓の深雪かな 飯田蛇笏
頭の中の地獄極楽牡丹雪 藤田湘子 てんてん
瞳孔に雪散り童唄ありき 橋閒石 荒栲
鳶鳴いて小雪崩さそふ峰日和 上田五千石『森林』補遺
奈良で会ふ約束眉につく粉雪 細見綾子
那須嶽や二月乱雲雪散らす 村山故郷
汝がとる燭芯たちて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
二三尺雪つむ軒や猿肉屋 飯田蛇笏
二十五年目といふ大雪に降られたる 細見綾子
二日より深雪に飛ばす鉄火かな 齋藤玄 飛雪
匂ふ肌大きな窓に雪降れり 日野草城
日に近く雪深まりぬ山毛欅林 渡邊水巴 富士
日暮まで降り出して大雪となる 右城暮石 散歩圏
日輪のいでて深雪やスキー行 百合山羽公 春園
葱洗ふや月ほのぼのと深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
脳天に小雪ちらつく杉の森 佐藤鬼房
農具市深雪を踏みて固めけり 前田普羅 普羅句集
波璃越しに降る雪実物よりも大 右城暮石 句集外 昭和三十九年
馬に雪降るローカル線に老いし駅夫 古沢太穂 火雲
梅探る吾妻の森や雪深き 正岡子規 雪
煤蟹や根雪明りに糶場うち 石川桂郎 高蘆
白魚や襖の裏の雪明り 岸田稚魚 負け犬
白鳥に春の雪降る遥かに降る 有馬朗人 母国
白鳥よ日かげればすぐ雪降り出す 草間時彦 中年
白鳥を真近に見むとすれど雪降り 安住敦
白鳥座大雪嶺を越えて翔く 上田五千石『田園』補遺
白鳳仏の眉目見に来て春の雪(深大寺) 細見綾子
箸流る川筋追いし牡丹雪 赤尾兜子 歳華集
発止ときし鶺鴒つぶて深雪原 鷲谷七菜子 銃身
髪刈りあう父と子に雪つむ迅さ 橋閒石 荒栲
帆船は雲と日暮れて雪降りぬ 細谷源二 鐵
晩鐘に雪降り続く爆心地 有馬朗人 母国
彼岸過ぎの大雪ふるさと人嘆く(丹波) 細見綾子
肥橇曳く遠深雪野に消えむため 小林康治 玄霜
飛行音の闇穢されず雪積る 野澤節子 未明音
飛騨人や深雪の上を道案内 前田普羅 飛騨紬
柊に春の雪降り一樹の音 野澤節子 鳳蝶
柊をさしたる闇にまた粉雪 百合山羽公 春園
筆匠の死後も名だいに雪降れり 飯田蛇笏
紐解くになほ天霧し雪降り来 下村槐太 光背
病巣のごとき根雪をつつきゐる 佐藤鬼房
苗木市春の粉雪となりにけり 西島麦南 人音
富士の里大雪に筬を鴫らす門 村山故郷
富士新雪これほどまでに薄しとは 林翔
浮かれ猫わた雪歇んでしまひけり 寒食 星野麥丘人
風の揶揄やみて暮雪となりゐたり 上田五千石 森林
風一夜したたかに根雪そだちけり 能村登四郎
風邪の神去る日の小雪ちらつかす 安住敦
風神の膝に力の雪明り 古舘曹人 砂の音
風立てば落花の小雪ふじざくら 林翔
福笹をいただきし夜の小雪かな 雨滴集 星野麥丘人
仏坂より雪深き鶴の村 野見山朱鳥 幻日
鮒煮えてくれば粉雪となりにけり 桂信子 女身
粉雪あがる夕日の彩がただよいて 古沢太穂 古沢太穂句集
粉雪の句帳にたまる鶴を待ち 古舘曹人 砂の音
粉雪の塔あかしひとびと儚なき希ひ 細谷源二 砂金帯
粉雪の眉辺泉辺哀れなり 永田耕衣
粉雪ふるまでのやさしい潦 桂信子 新緑
粉雪や還るを惜しむ人のむれ 永田耕衣
粉雪降り鯉をも切に見んと思ふ(京都西芳寺) 細見綾子
粉雪降る妻の徹夜は幾日ぞ 野見山朱鳥 愁絶
粉雪降る正月空の遠くより 細見綾子
粉雪積むあかつき闇の藪畳 松村蒼石 雪
粉雪片片停らぬ駅と伐木に 古沢太穂 捲かるる鴎
兵を送る松明あらはるゝ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
墓にも降る雪のこんや屋根につむ屋根のした 荻原井泉水
墓碑銘を写す間も雪降り冥む 木村蕪城 寒泉
暮れてなほ倶楽部にゐたり外は深雪 村山故郷
暮雪さびし道をそれ居る足跡も 原石鼎 花影
暮雪にてただ漠々の海苔簀原 林翔 和紙
暮雪にて天に雪降る意なし 山口誓子
暮雪のタクシー流れて舞踏会のごと 岸田稚魚 負け犬
暮雪の広場いましアドマン漂はす 岸田稚魚 負け犬
暮雪の天刎枝の雪の白々と 山口青邨
暮雪ふむ僧長杖をさきだてぬ 飯田蛇笏 山響集
暮雪ふる舞踏乙女もちりぢりに 百合山羽公 故園
母たちの供養乳房や根雪解く 能村登四郎
母のふところ雪深々とあやめ咲く 橋閒石 荒栲
母の座は雪降る家の灯の真下 有馬朗人 母国
母遺し雪降りかくす故郷発つ 福田蓼汀 山火
母郷なり粉雪と知れるのみの闇 佐藤鬼房
母子ありき雪深き昼餅焼いて 松村蒼石 雪
法悦のごとく雪降りやまぬかな 村山故郷
忘られし三角渚水雪降る 佐藤鬼房
望郷やしなのの山の深雪空 松村蒼石 雪
枕辺に妻ゐて春の深雪云ふ 村山故郷
鱒池にひとの近づく雪景色 飯田龍太
繭玉にかかる小雪や光悦寺 寒食 星野麥丘人
無花果の木や雪降れば雪かかり 細見綾子
霧行くや樅は深雪に潰えつゝ 相馬遷子 山国
命日の牡丹雪その後の凍て 佐藤鬼房
明け方の暗さもどりし深雪に降り立つ 篠原梵 年々去来の花 皿
綿雪や雪をかむれる実万両 森澄雄
茂吉忌や時に逸りて牡丹雪 細見綾子
毛蟹食えば雪降りウイマム以後の民 古沢太穂 火雲
木のもとに草青々と暮雪かな 原石鼎 花影
木の芽打つて雪はげし句々抹殺す 渡邊水巴 白日
木の芽張り雪降り山の幻化境 林翔
木々ぬれて大樋水迅く暮雪やむ 飯田蛇笏 春蘭
黙々生きて暁の深雪に顔を捺す 佐藤鬼房
目覚の声か満開の雪の下 飯田龍太
夜の間に薄雪降りしだけつもる 右城暮石 句集外 昭和二十九年
夜の書庫にユトリロ返す雪明り 安住敦
夜の船は雪降り出でて雪積みぬ 細谷源二 鐵
夜の町は紺しぼりつつ牡丹雪 桂信子 初夏
夜の明けてゆくと深雪の冷えぞこれ 篠原梵 年々去来の花 皿
夜もすがら雪明りしんしんと冷ゆ 村山故郷
夜桜や大雪洞の空うつり 正岡子規 夜桜
野に大雪も来よとおもふ冬菜を漬ける 中川一碧樓
野の果まで雪明かるくて道あやまつ 津田清子 礼拝
野火あふつ風に粉雪のまじりつつ(奈良) 細見綾子
約束の日なり降る雪さまたげず 及川貞 夕焼
幽きより風新雪の竹しなふ 鷲谷七菜子 銃身
有明に雪つむ四絛五絛かな 正岡子規 雪
夕月や雪あかりして雑木山 藤田湘子 途上
窯跡に鼬出て来し雪明り 飯田龍太
落葉松林の奥しづかなる深雪かな 村山故郷
乱へ到らず根雪絡みあう白秩序 赤尾兜子 歳華集
離りて貧し深雪の中の翌檜 小林康治 四季貧窮
立ち睡る馬のまはりを舞ふ小雪 有馬朗人 知命
流水の声は隠さず雪の谷 鷹羽狩行
旅かなし夢の中にも雪降れり 鈴木真砂女 夏帯
林泉に暮雪の白き涅槃かな 日野草城
嶺近く大雪晴るる水迅し 廣瀬直人 帰路
炉を離れ飯詰(いじこ)の中に雪明り 古舘曹人 樹下石上
炉隠しに轡かかりて暮雪ふる 飯田蛇笏 春蘭
廊灯しゆく婢に月明の深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
老孤松大雪景を降らしけり 永田耕衣
老松方方を拝す大雪景 永田耕衣
曼珠沙華の葉をぬらしたる粉雪かな 細見綾子
撓みたる樹頭の刎ねて雪散華 福田蓼汀 秋風挽歌
朧夜の裸火の見に粉雪舞ふ 飯田龍太
柩蔽へば華やかに雪降り来 鷲谷七菜子 一盞
焙じ茶の熱しかんばし雪景色 日野草城
爐隠しに轡かかりて暮雪ふる 飯田蛇笏 心像
竈火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
篁の夜の査けくて雪の声 臼田亜郎 定本亜浪句集
翔べと命じて死にぎはおのが雪景色 佐藤鬼房
蓼科へ傾く廂大雪解 木村蕪城 一位
蹇に縋り寝の子よ雪明り 小林康治 玄霜
蹇や深雪ゆく子を励ましつ 小林康治 玄霜
鰤の尾に大雪つもる海女の宿 前田普羅 能登蒼し
鳰と目があう鉄道長屋へ粉雪舞い 古沢太穂 火雲

雪 補遺  続き

*あさざ網吹かれ雪降る溺谷 松崎鉄之介
あかんぼに紅き唇雪明り 中村草田男
あのへんに浮御堂点く暮雪かな 阿波野青畝
あまづたふ日のさざなみの深雪原 上村占魚
いま起きしばかりの寝間の雪明り 廣瀬直人
うごめくに雪降り積むや蟹の甲 水原秋櫻子 殉教
おのづからひらく瞼や牡丹雪 加藤秋邨
かがやく雪景色の夢がさめた 尾崎放哉 小豆島時代
かごめかごめかまくらに降る雪の声 平畑静塔
きさらぎの粉雪に浮く錦鯉 廣瀬直人
ぎんなんを焼くゆふぐれの雪明り 橋閒石
くすぐるごとき哀歓の雪降り初めぬ 中村草田男
けふはふる牡丹畑に牡丹雪 山口青邨
ここが縄張り 根雪に手押車を押し 三橋鷹女
こころ火の国にあそべる粉雪かな 三橋鷹女
コツプのかげすきとほる夜の雪深し 大野林火 海門 昭和七年以前
ささやかに受賞祝はれ牡丹雪 松崎鉄之介
さざんかにすこし雪降るこころかな 平井照敏
さんさんと田宮二郎の雪降れり 平井照敏
しづかにこころ満ちくるを待つ牡丹雪 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
じぶ食へばたちまち加賀の雪景色 飴山實
しん~と雪降る空に鳶の笛 川端茅舎
しんとして深雪の視野のあるばかり 加藤秋邨
スケートの面粉雪にゆき向ふ 橋本多佳子
ずり落ちず聖樹に積みし綿雪は 山口誓子
そこここと網倉見ゆる深雪かな 阿波野青畝
ただに素顔の青流沿へり深雪道 中村草田男
たべ物の切口ならび夜の深雪 中村草田男
だんまりの深雪一行子を中に 平畑静塔
どの家よりも海に近くて雪降れり 山口誓子
トンネルを出れば雪国雪降れり 清崎敏郎
なきがらの軽きおもひの雪明り 飯田龍太
なつかしき水の音する深雪かな 清崎敏郎
バス停 暮雪 揃って無口の湯治老婆 伊丹三樹彦
はるか新雪北へ真直ぐ道作り 森澄雄
ひとつづつ深雪の上の星の数 加藤秋邨
ひとりゐの牡丹畑に牡丹雪 山口青邨
ふるさとの山は愚かや粉雪の中 飯田龍太
ふるさとの楢山夢の粉雪舞ひ 飯田龍太
ヘヤピンを前歯でひらく雪降り出す 西東三鬼
また一人暮雪にかへりスキー脱ぐ 水原秋櫻子 古鏡
マフラーの新雪のごと肩にゆたか 山口青邨
まんさくや小雪となりし朝の雨 水原秋櫻子 餘生
みちのくの雪降る町の夜鷹蕎麦 山口青邨
みちのくの雪深ければ雪女郎 山口青邨
みちのくは雪深き国ゆきつばき 山口青邨
みつみつと雪積る音わが傘に 橋本多佳子
みみづくの眠る梢に粉雪舞ふ 飯田龍太
めづらしい春の大雪 尾崎放哉 小豆島時代
もちの花よべの小雪のほどこぼれ 山口青邨
ゆるやかに大雪片のまじりきし 清崎敏郎
わが頬に天の雪降り地にもふる 渡邊白泉
暗黒に降る雪片の見えて積む 大野林火 青水輪 昭和二十七年
伊吹山広き地域に雪降らす 山口誓子
遺されて母が雪踏む雪あかり 飯田龍太
井戸の窪一茶旧居の深雪中 松崎鉄之介
一刀に斬りさげし根雪秋の富士 富安風生
一燈につのりきたりし粉雪かな 清崎敏郎
一燈を底に雪降る硫黄泉 大野林火 雪華 昭和三十七年
一木の白樺立てば雪降れり 平井照敏
飲食はいやしきがよし牡丹雪 岸田稚魚
飲砲光つて居る深雪 尾崎放哉 小豆島時代
羽子つき居る青空よ粉雪をおとす 尾崎放哉 大正時代
駅夫の眼旅具の粉雪をかなしむや 大野林火 海門 昭和十年
円空仏怒髪ゆたかに雪降れり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
炎天に妄執の雪降らしたり 山口誓子
猿の眼に 飢ありありと 深雪の檻 伊丹三樹彦
縁側に映りて降るや牡丹雪 三橋敏雄
遠き燈のそこにのみ雪降り集ふ 山口誓子
遠野勢夜半に著きぬる雪明り 河東碧梧桐
鉛とかすにみちのくの空雪降らす 松崎鉄之介
応挙寺大雪塊のしりぞかず 阿波野青畝
黄に爛れ深雪晴せる硫気口 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
沖暗くサィ口をうづむ雪降れり 松崎鉄之介
牡丹雪 人間(ひと)の貌こそかなしけれ 富澤赤黄男
牡丹雪 茫失の面またたきせず 富澤赤黄男
牡丹雪おのが生みたる風に乗り 岡本眸
牡丹雪ジルベスターの夜をこめて 山口青邨
牡丹雪その夜の妻のにほふかな 石田波郷
牡丹雪てのひらくぼめ降つてくる 山口青邨
牡丹雪とははつきりと地にとどく 後藤比奈夫
牡丹雪わらべのこゑをまじへ降る 大野林火 月魄集 昭和五十五年
牡丹雪一片にして覆ふ紅粉花の苗 山口青邨
牡丹雪下宿のお豊何してる 山口青邨
牡丹雪海に消えてはとどろくも 加藤秋邨
牡丹雪古人一茶を撫でをれば 加藤秋邨
牡丹雪酒屋の前の友の家 森澄雄
牡丹雪重しと伏すやおかめ笹 山口青邨
牡丹雪息がゆるめば鯉うごく 加藤秋邨
牡丹雪天に戻るもあるごとし 阿波野青畝
牡丹雪土につくときふとためらふ 加藤秋邨
牡丹雪二つに離れ解けにけり 阿波野青畝
牡丹雪木立は遥か粉雪せる 三橋鷹女
牡丹雪陽明門をかくし得ず 川端茅舎
牡丹雪林泉鉄のごときかな 川端茅舎
温室の戸を緑のぞくよ深雪晴 大野林火 雪華 昭和三十七年
温室へ出入り二日またぎの深雪晴 大野林火 雪華 昭和三十七年
音といふ音閉ざされし深雪宿 稲畑汀子
音なく白く重く冷たく雪降る闇 中村苑子
火を浴びし木に降る雪を見てゐたり 飯田龍太
火形(かぎゃう)にて焚火深雪にくだけゆく 平畑静塔
火消壷まことに黒し牡丹雪 山口青邨
花匂ふ能郷白山の雪の香か 大野林火 飛花集 昭和四十六年
悔のような根雪 日がさし 日がかげり 伊丹三樹彦
海に寄り来て海に降る雪を見る 山口誓子
海音の明るさ恃め根雪墓 角川源義
海吹雪く林檎畑に雪深々 松崎鉄之介
海底に何か目ざめて雪降り来 加藤秋邨
蟹を立ち売る降る雪に消されもせず 津田清子
貝まきて畳に拾ふ根雪かな 平畑静塔
貝刺しの雪つむ芝をわたり来ぬ 永田耕衣
外堀内堀きさらぎの粉雪舞ひ 廣瀬直人
柿吊つて新雪の神嶺に来ぬ 森澄雄
岳新雪前山幾重衿合わせ 山口青邨
額の亡母浮き出てかなし雪降れば 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
橿鳥のこぼす粉雪の光り舞ふ 水原秋櫻子 秋苑
鎌倉に小雪ありけり初詣 山口青邨
鎌倉に雪降り出しぬ黒マント 草間時彦
鴨毟る雪降らざれば止まぬなり 橋本多佳子
寒潮に雪降らす雲の上を飛ぶ 西東三鬼
干柿の八ツ岳新雪のかがやきに 山口青邨
干潟には時間をかけて雪積る 鷹羽狩行
幹たかく葬後深雪の夕ながし 飯田龍太
甘酒に 小雪散り込む 椿の宮 伊丹三樹彦
甘酒の沸々木瓜は雪深き 水原秋櫻子 蓬壺
観音の御衣深雪にはだけむほど 松崎鉄之介
眼がしらに雪降りはじめ樹をぬらす 三橋敏雄
眼の高さ以下はゆつくり牡丹雪 鷹羽狩行
眼を病むに降る雪霏々と兵舎消す 伊丹三樹彦
眼前を刻すぎゆけり牡丹雪 岡本眸
顔出でし窓の暗黒雪景色 三橋敏雄
幾谿の雪明りのみ見つつ来ぬ 加藤秋邨
記憶を持たざるもの新雪と跳ぶ栗鼠と 中村草田男
起きてゐる咳や深雪となりにけり 石橋秀野
泣ける場所があって 暮雪の 漬物納屋 伊丹三樹彦
旧正や雪深き国けふも雪 山口青邨
虚空見る目や瞬けば牡丹雪 加藤秋邨
虚空雪降る一途なる妻遊べる妻 加藤秋邨
虚子塔の手向の蜜柑にも粉雪 阿波野青畝
漁夫町 根雪 飴玉溶かす舌もつ子ら 伊丹三樹彦
魚屋の荷に雪降つて金目鯛 草間時彦
峡一つ奥へすゝめば雪降れり 高浜年尾
峡湾は暮しの歯型雪降り降る 佐藤鬼房
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男
郷倉は深雪・氷柱よ三百年 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
鏡なす大雪嶺を北の盾 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
暁闇をこめて降る雪こまかなり 大野林火 青水輪 昭和二十五年
局地性大雪六甲山に積む 山口誓子
芹川の芹を埋めて雪積る 大野林火 月魄集 昭和五十五年
近づいて 遠のく人語 根雪地蔵 伊丹三樹彦
近づく睡り水に近づく牡丹雪 加藤秋邨
喰積や雪明暗の陶の匙 角川源義
空の紺氷柱の瑠璃に深雪晴 松本たかし
空町へ土塀の坂や深雪晴 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
空谿の深雪のどこか月ありぬ 加藤秋邨
月光に深雪の創のかくれなし 川端茅舎
犬を呼ぶ女の口笛雪降り出す 西東三鬼
犬猫と共に永らふ牡丹雪 西東三鬼
肩落とすやうに日暮れて牡丹雪 岡本眸
見てゐたるところから雪降りはじむ 加藤秋邨
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女
限りなく降る雪何をもたらすや 西東三鬼
枯草に粉雪さゝやけば胼の吾れ 杉田久女
湖の松に雪つむ*えり簀編 高野素十
胡桃ひとつに夢ひろがりぬ牡丹雪 森澄雄
御高祖頭巾の婆寸詰り粉雪降る 松崎鉄之介
御所の灯はかぞへて五つ牡丹雪 山口青邨
口あけて口中の天雪降りくる 三橋敏雄
杭一本雪降る条々かぎりなし 中村草田男
行きゆきて深雪の利根の船に逢ふ 加藤秋邨
購ふはくろき襟巻雪降れり 大野林火 早桃 海風抄
降り積むごとき睡りは来ずや牡丹雪 加藤秋邨
降る雪が川の中にもふり昏れぬ 高屋窓秋
降る雪が父子に言を齎しぬ 加藤秋邨
降る雪が踊る櫟を降りつつむ 石田波郷
降る雪に 宝石店の 裡暗む 伊丹三樹彦
降る雪にサイレンの尾の細り消ゆ 西東三鬼
降る雪にさして消えたる日ざしかな 清崎敏郎
降る雪にさめて羽ばたく鴨のあり 加藤秋邨
降る雪にしんこの犬コ四肢張れる 大野林火 飛花集 昭和四十七年
降る雪にやすらけくとぞ奏しける 阿波野青畝
降る雪に映写つゞくる映画館 山口誓子
降る雪に貝吹く頬をふくらませ 山口誓子
降る雪に角巻の胸真白くす 山口誓子
降る雪に汽笛船底をうち貫けり 山口誓子
降る雪に胸飾られて捕へらる 秋元不死男
降る雪に古りし螺鈿の底光り 松崎鉄之介
降る雪に若菜祭の禰宜の列 高野素十
降る雪に終焉の蔵戸もなしや 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
降る雪に触れんと蔓ら這ひまはる 三橋鷹女
降る雪に漕ぎ出で海に漁夫ひとり 山口誓子
降る雪に太陽光の通路あり 山口誓子
降る雪に長子羽摶つごと来るよ` 角川源義
降る雪に日輪小さきスキー場 山口誓子
降る雪に病む者一指だに触れず 石田波郷
降る雪に目ひらいてみてまた泣けり 加藤秋邨
降る雪に老母の衾うごきけり 永田耕衣
降る雪に俯向くことを慣ひとす 山口誓子
降る雪のいまは鴨さへかきくらす 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪のしんしんと松を降りかくす 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪のそらへ體温のぼりゆく 三橋敏雄
降る雪のたてがみかぶり秣喰ふ 三橋敏雄
降る雪の影おぎろなし昇汞水 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
降る雪の影をさまりつ壁冴えぬ 大野林火 早桃 太白集
降る雪の影を障子に旅ごころ 大野林火 月魄集 昭和五十五年
降る雪の空つづきにて海も降る 山口誓子
降る雪の激しさにゐる受け応へ 岡本眸
降る雪の月をかくさずすでに春 大野林火 冬雁 昭和二十二年
降る雪の紙呆気なし聖夜劇 伊丹三樹彦
降る雪の松に浮寝の鴨にふる 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪の勢ひあまりて捻れけり 岡本眸
降る雪の勢ひ失せてさまよひぬ 岡本眸
降る雪の星屑まじへ橇走る 山口青邨
降る雪の川の奔流見せず降る 大野林火 青水輪 昭和二十四年
降る雪の底にして鴨の青うごく 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪の薄ら明りに夜の旗 西東三鬼
降る雪やここに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女
降る雪や襖をかたく人の家に 石田波郷
降る雪や傘にあまりて供華の枝 石田波郷
降る雪や山美しく人貧し 角川源義
降る雪や樹洞を恋ふる一羽毛 秋元不死男
降る雪や父母の齢をさだかには 石田波郷
降る雪や夢の檜山に憑かれ来て 中村苑子
降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男
降る雪や流せし赤きものも消え 山口青邨
降る雪を見てまた戻る哺育室 飯田龍太
降る雪を見る眼差のみな同じ 山口誓子
降る雪を高階に見て地上に濡る 西東三鬼
降る雪を照らす汽罐車動きそむ 山口誓子
降る雪を鳥凌ぎゆく昇りゆく 中村草田男
降る雪を天階に見ず畦に見る 秋元不死男
降る雪を齢を一つ加へ見る 大野林火 青水輪 昭和二十四年
降る雪点々アララギ巨幹にあたり散る 中村草田男
高きより雪降り松に沿ひ下る 山口誓子
豪雪に寝て髪の毛の白くなる 山口誓子
豪雪の夜明のおさな髪撫でる 橋閒石
豪雪や母の臥所のかぐわしく 橋閒石
豪雪をうがつわが尿レモン色 平畑静塔
豪雪報ひしひし雪割草は知る 山口青邨
黒き雲脚を垂らして雪降らす 山口誓子
黒き地や身を降る雪の打ちつけに 中村草田男
骨上げ 深雪路 モンペおかしい姉遅れる 伊丹三樹彦
骨上げ 大雪 隠亡待ちのたたら踏む 伊丹三樹彦
根雪掘る二十代経し妻の背よ 佐藤鬼房
根雪待つ用意をさをさ怠らず 清崎敏郎
砂山の八方やぶれ雪降り出す 中村苑子
細雪加賀屋あたりに灯の入りて 岸田稚魚
細雪妻に言葉を待たれをり 石田波郷
細雪身に添ひ齢加へけり 岡本眸
在りし日の妻のこゑあり牡丹雪 森澄雄
三つ並ぶ大きな窓や牡丹雪 松本たかし
三月のとぼそのひまの粉雪かな 石橋秀野
山の雪降るを見てをり春炬燵 岸田稚魚
山の襞みな垂直に新雪を 山口青邨
山越えてゆかばいかなる雪降らむ 平井照敏
山越えの木偶に優しや雪明り 橋閒石
山峡の粉雪にまじり枯葉舞ふ 清崎敏郎
山々のはればれねむる深雪かな 飯田龍太
山上の粉雪一日草に積む 廣瀬直人
山雀の声の深雪を誘ひゐる 飯田龍太
山川と湯川落ち合ふ雪深し 松本たかし
山刀伐の深雪の中に炭を焼く 阿波野青畝
山刀伐の深雪解けまで文字ねむれ 加藤秋邨
山門を掘り出してある深雪かな 清崎敏郎
四月馬鹿雪降りいでて夜をはやむ 角川源義
四面 雪明り その湯にかるがる浮き 伊丹三樹彦
子が寝ねて妻の水のむ雪明り 加藤秋邨
子の留守の家降りつつむ牡丹雪 飯田龍太
市隠の愚責めぬく無燈雪明り 香西照雄
死ぬ日いつか在りいま牡丹雪降る 橋本多佳子
獅子舞に山手暮色雪降り出す 富安風生
紙を干す富士新雪と相照らひ 山口青邨
次の間も~雪明りかな 高野素十
七十の恋の扇面雪降れり 橋閒石
酌めば茶のすぐにさめたる深雪かな 鈴木真砂女
手毬唄牧も雪降るころならむ 飯田龍太
首綱で犢引き来る深雪かな 河東碧梧桐
樹蔭にも雪積るまで時借さめ 山口誓子
洲浜草鞍馬はけふも雪降ると 後藤比奈夫
熟睡より雪降る中に覚めゐたり 大野林火 月魄集 昭和五十五年
出雲まが玉暮雪の中を買ひに出づ 松崎鉄之介
春の雪降らせし夜空裾濃なす 松崎鉄之介
春の雪降りつつ早む夜の刻 飯田龍太
春の雪降るまもとけてゐたりけり 鈴木真砂女
春の雪降るや山家のうしろから 三橋敏雄
春の雪降る日の鬘合せかな 後藤比奈夫
春の雪降れば積れば山つばき 飯田龍太
春の雪明るし法王の日本語 阿波野青畝
春の粉雪に一塊の村しづか 飯田龍太
春暁や音もたてずに牡丹雪 川端茅舎
春月の眼胴(めどう)うるほひ雪景色 川端茅舎
春大雪未明友逝き逝きて帰らぬ 金子兜太
処女の背に雪降り硝子夜となる 西東三鬼
初雪は根雪にならぬ林檎かな 阿波野青畝
曙の雪明りより膳所の鳰 阿波野青畝
書を積んで巌のごとし牡丹雪 山口青邨
書庫までのわが足あとや牡丹雪 山口青邨
女中部屋の雪あかりに病んでゐる 尾崎放哉 小豆島時代
女名の家の濡縁深雪嵩む 中村草田男
除雪軍の通りしあとに雪降れり 清崎敏郎
除雪車に雪降る海がうごきくる 加藤秋邨
小雪や実の紅の葉におよび 鷹羽狩行
小雪飾りて山椒は棘ばかり 飯田龍太
少女等の髪の粉雪やスキー行 高野素十
松の枝大雪塊ののり撓め 高野素十
松籟の消ぬかのままに雪降る音 中村草田男
焼畑に鴉ついばむ雪降り来 角川源義
織りすすむ殊に紅絲に雪明り 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
信濃路に降る雪昏し空に織り 中村草田男
新雪にスキー応へてをりにけり 後藤比奈夫
新雪に何か声澄むさるをがせ 飯田龍太
新雪の山別々の闇に入る 飯田龍太
新雪の上いたましや玩具燃ゆ 飯田龍太
新雪の人の表札を見てはゆく 加藤秋邨
新雪の葡萄畑に水の音 松崎鉄之介
新雪の穂高の奥の光るは槍 山口青邨
新雪の木曽駒と遇ひ君等と会ふ 松本たかし
新雪の来て花ひらく蓮華岳 山口青邨
新雪や崖の上下に声めざめ 加藤秋邨
新雪をかぶり富士山一本立ち 平畑静塔
新雪をもて槍岳は槍としたり 山口青邨
新雪を一浴したる駒ケ嶽と会ふ 松本たかし
深雪にアイヌは腰の定りぬ 後藤比奈夫
深雪のどれもみみづく越後の子 森澄雄
深雪の下くぐり来し水漉場に入る 橋本多佳子
深雪の戸はひれば読んで居り暗し 平畑静塔
深雪の照り双頬へ来てそを熱す 中村草田男
深雪の燈灯れる駅を通過せり 清崎敏郎
深雪の夜友をゆさぶりたくて訪ふ 中村草田男
深雪やへくそかづらがふとそよぎ 加藤秋邨
深雪よりいま一滴の旅はじまる 加藤秋邨
深雪降らしていま憩ふ空月と星 中村草田男
深雪宿温泉室の屋根は雪を置かず 松本たかし
深雪宿足あと家を一めぐり 高野素十
深雪晴 木馬 ブランコ みな音絶ち 伊丹三樹彦
深雪晴雁木表に馬具吊られ 松崎鉄之介
深雪晴湯花凝らしめ湯は流れ 大野林火 雪華 昭和三十七年
深雪晴非想非非想天までも 松本たかし
深雪掻く家と家とをつながんと 西東三鬼
深雪踏む白き看護婦呼べばふり向く 西東三鬼
深雪道来し方行方相似たり 中村草田男
人恋えば灰のごとくに雪降れり 橋閒石
水に着かんとするときがふと牡丹雪 加藤秋邨
清瀬村医療区に鐘雪降り出す 石田波郷
声はわれらよ雪降りつつむ終ひの蔵 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
西方も粉雪の眉毛充満す 永田耕衣
惜しみなく炉火焚かれたり雪降り来る 橋本多佳子
積むことのはやき暮雪よ妻病めば 大野林火 青水輪 昭和二十五年
積るともなき粉雪の積りゐし 清崎敏郎
赤のまんま末枯(すがれ)れたりすでに雪降りたり 金子兜太
赤子泣き覚めぬひとの家雪明し 橋本多佳子
跡隠しの雪降る闇に沸く怒濤 加藤秋邨
雪の一糸も無く白日や秋の声 中村草田男
雪の香の犬コ小筥に族鞄 大野林火 飛花集 昭和四十七年
雪の上に雪降ることのやはらかく 西東三鬼
雪はげし化粧はむとする真顔して 橋本多佳子
雪はげし鶏舎の網の目をつぶし 鷹羽狩行
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 橋本多佳子
雪はげし谷戸の流れの音たつほか 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
雪はげし夫の手のほか知らず死す 橋本多佳子
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子
雪はげし木立悉く傾けば 石田波郷
雪を払って僕生きている 雪降る墓地 伊丹三樹彦
雪雲が通る儀礼の雪降らし 山口誓子
雪空火を焚きあげる雪散らす 尾崎放哉 須磨寺時代
雪窪に雪降る愛を子の上に 橋本多佳子
雪降つてうすずみいろの厨かな 草間時彦
雪降つてもよきほど藁屋いぶせきよ 大野林火 方円集 昭和五十三年
雪降つてより雪除の柵造り 山口誓子
雪降つてゐる赤門や冬休 深見けん二
雪降つて解く大阪の生旺ん 山口誓子
雪降らしおのれも白き天狗山 山口誓子
雪降らす夜も家なしの天の童 三橋敏雄
雪降りて休めるトロを子は走らす 山口誓子
雪降りて谷の底より吹き揚る 山口誓子
雪降りて蕪村忌にしてクリスマス 富安風生
雪降りぬ病む友に詩も多からん 松崎鉄之介
雪降りやみ鋸の音なほつづく 山口誓子
雪降り出す車窓よぎる燈の白熱し 大野林火 青水輪 昭和二十六年
雪降るか沼に宿かる神の岳 角川源義
雪降るか立春の暁昏うして 石田波郷
雪降るとき黄河黄濁を極めん 金子兜太
雪降ると兎の風船だけが赤 加藤秋邨
雪降ると背骨一本立ちにけり 加藤秋邨
雪降るなかのコンクリート塀母子眠らせ 金子兜太
雪降るな人間魚雷いまぼろぼろ 山口誓子
雪降るにまかす夜中の鼠捕り 山口誓子
雪降るはあしたあたりか五百川 平井照敏
雪降るもやむも正法眼蔵意 上村占魚
雪降るや一壺一輪白牡丹 水原秋櫻子 緑雲
雪降るや忌の日一日美しく 角川源義
雪降るや去る足跡をかくさんと 角川源義
雪降るや妻が小声の子守唄 伊丹三樹彦
雪降るや笹に音して更けにけり 森澄雄
雪降るや泥濘荒るる北の海 松崎鉄之介
雪降るや白千羽孜々と食み 大野林火 雪華 昭和三十九年
雪降るや霏々と水仙埋むべく 山口青邨
雪降る山と睡眠薬を枕上 大野林火 雪華 昭和三十五年
雪降る夜逃場は海のほかになし 山口誓子
雪降れど高臺のなき工場地区 三橋敏雄
雪降ればころんで双手つきゐたり 三橋敏雄
雪降れば転んで双手つきゐたり 三橋敏雄
雪降れりすこし離れし海の上 山口誓子
雪降れりひとのさまよひ十字なす 三橋敏雄
雪降れり月食の汽車山に入り 石田波郷
雪降れり時間の束の降るごとく 石田波郷
雪降れり人のゆきかひ十字なす 三橋敏雄
雪降れり美童に遙かに無数の駅 金子兜太
雪降れるときひたすらに白き父 三橋敏雄
雪山に雪降り友の妻も老ゆ 西東三鬼
雪深き村々燈火洩らさざる 山口誓子
雪深くかぶりてをりしヌード小屋 清崎敏郎
雪深くして厨房の音こもる 橋本多佳子
雪深く勝道上人斧ふりしか 川端茅舎
雪深く天手力男命籠り在す 山口青邨
雪深く南部曲屋とぞ言へる 山口青邨
雪深く年歩む吾あゆむなり 岡本眸
雪積ることはじまりて水暮るる 大野林火 青水輪 昭和二十七年
雪積る梢の勾配ありにけり 稲畑汀子
雪掻けば雪降る前の地の渇き 中村苑子
雪中の水仙雪の香とにほふ 山口青邨
雪粉雪受話器をながれ来たるこゑ 三橋鷹女
雪片と人間といづれ雪降りつぐ 石田波郷
雪明りこゑももらさず餌場の鴨 橋本多佳子
雪明りベツドにうづむ寝顔かな 大野林火 早桃 太白集
雪明り一切経を蔵したる 高野素十
雪明り死へやすやすと鉄路置き 岡本眸
雪明り熱のぼるとき冴えにけり 大野林火 早桃 太白集
雪明り目覚めて夜の胸隆き 岡本眸
雪嶺のがれ煎餅買ふ掌に雪の声 角川源義
戦友会暮雪にはかに会者増ゆ 松崎鉄之介
船の絵を見しが雪降る海が見ゆ 加藤秋邨
船煙黒褐に雪降りてやむ 山口誓子
船煙雪降る海にはねかへる 山口誓子
祖母・父母の死苦の総和や雪降り次ぐ 中村草田男
組みあひて降つてくるなり牡丹雪 三橋敏雄
壮行や深雪に犬のみ腰をおとし 中村草田男
想ひ出づ歴史の中に雪降れり 山口誓子
息やはらかく降る雪にお晩です 大野林火 白幡南町 昭和三十年
大いなる牡丹雪鼻の先に落つ 阿波野青畝
大雪が押す禅堂の雪囲ひ 山口誓子
大雪となる兎の赤い眼玉である 尾崎放哉 須磨寺時代
大雪に耐ふる柱の時計うつ 橋閒石
大雪に埋れざるものなかりけり 三橋敏雄
大雪の村に水銀燈点る 山口誓子
大雪の朝を出でゆく魚の骨 佐藤鬼房
大雪の都電とどまる旧居前 水原秋櫻子 帰心
大雪の夜の排卵を拝むなり 橋閒石
大雪の夜の白檀を燻ずべし 橋閒石
大雪の夜を福寿草ひらきけり 橋閒石
大雪や山毛欅の諸枝のどこか揺れ 阿波野青畝
大雪や母の点つ茶の泡みどり 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
大雪を曳きあへずして汽車うごく 平畑静塔
大雪を冠りて木々も低頭す 山口誓子
大雪を降らして伊吹雪少な 山口誓子
大雪を降らす曲者伊吹山 山口誓子
大雪を必然として埋れ住む 山口誓子
大雪原人の住む燈の見当らず 山口誓子
大雪原地球のうねりそのままに 山口誓子
大雪原天には月を掲ぐのみ 山口誓子
大雪片不意に吾が眼の前に降る 山口誓子
大沢の深雪解くるに間あるなり 山口誓子
啄木鳥や深雪に立てる木も凍り 水原秋櫻子 秋苑
脱衣著衣浴女出で入り雪散華 松本たかし
探梅図ことしも掛けて雪深き 山口青邨
炭つぐや髷の粉雪を撫でふいて 杉田久女
炭色の眠たうなりぬ牡丹雪 森澄雄
誕生日わが満面に雪明り 伊丹三樹彦
地は厚くして大雪の富士を載す 山口誓子
抽出に佛光りし雪降るか 永田耕衣
昼暗き四方八方の雪降りみだる 山口誓子
鶴舞うて雪降りて旅なぐさむる 星野立子
低山に雪降りわれら蹣跚と 金子兜太
天高き処新雪降りしきる 山口誓子
天草を天たかく見れど雪降れり 山口誓子
点燈す手の高さより雪降りをり 森澄雄
電燈を点けて雪降る日の奢り 山口誓子
土につくまで牡丹雪重かりき 加藤秋邨
冬は何故か涙もろくて雪降れり 松崎鉄之介
冬鵙の暮れんとしつつ雪明り 加藤秋邨
湯汲老婆に 妓から会釈の 深雪の橋 伊丹三樹彦
湯女どちと深雪月夜を一つ温泉に 松本たかし
湯女どちの肌の湯艶よ深雪宿 松本たかし
湯畑の湯花採る日や深雪晴 松本たかし
灯台のどの方位にも雪降れり 鷹羽狩行
燈を洩らし深雪の関ケ原に住む 山口誓子
討伐隊まだかへりこぬ暮雪かな 石田波郷
踏み出でて大雪晴に身の浮けり 岡本眸
堂内へ気まぐれ小雪 灰葬経 伊丹三樹彦
瞳に古典紺々とふる牡丹雪 富澤赤黄男
道に柴一枝夜明けて雪降りをり 森澄雄
道傍に海あふれたる暮雪かな 石田波郷
謎もなし穴掘れば穴に雪降り 藤田湘子
日がさして消えて春雪降りやまず 清崎敏郎
日のあたる方へ深雪の幹歩む 藤田湘子
日本曹洞第一道場深雪晴 上村占魚
乳児の黒瞳さめて見てゐる牡丹雪 加藤秋邨
妊りて堆く寝て雪降り積む 森澄雄
年木積み新雪ひかる岳を負ふ 水原秋櫻子 霜林
白牡丹われに落ちつぐ牡丹雪 山口青邨
白菊は富士新雪を前に光る 山口青邨
白魚を煮る酒の香や細雪 水原秋櫻子 緑雲
髪刈りあう父と子に雪つむ迅さ 橋閒石
半ば魔を恃む深雪に両足消し 西東三鬼
斑雪降り家鴨のこゑを聞きとどむ 三橋敏雄
氾濫の絮のごとくに牡丹雪 阿波野青畝
飯噴くと恍惚たりき粉雪の日 加藤秋邨
尾ある人現るか雪降る奥吉野 津田清子
美しき夜となしつつ牡丹雪 森澄雄
百千の土管口あけ雪降れり 石田波郷
病みてここに綿雪を見て慰まむ 森澄雄
病める目にときに繚乱牡丹雪 森澄雄
富士根雪鶴は再び病みにけり 渡邊白泉
父の奥に雪降り子守唄遠し 中村苑子
父の忌の雪降りつもる炭俵 大野林火 早桃 太白集
父の墓へは新雪 母焼く煙見返り 伊丹三樹彦
負け独楽のつきささりたる深雪かな 加藤秋邨
復活や深雪に墓の抱かれて 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
覆はれし受難のイエス雪降れり 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
淵の深さやあとからあとから牡丹雪 加藤秋邨
仏壇屋 覗きもし 雪降る町で男 伊丹三樹彦
憤りわが踏む雪に雪明り 加藤秋邨
粉雪の雉子はしばらくあるきけり 加藤秋邨
粉雪はくちなしの実にとまりそめ 清崎敏郎
粉雪ふつてゐる畑の畝そろへり 大野林火 冬青集 雨夜抄
粉雪ふる常はおもひのなき径 飯田龍太
粉雪ふる町賑はひて年歩む 松本たかし
粉雪や朝より熱き女の身 森澄雄
粉雪散らし来る大根洗ふ顔を上げず 尾崎放哉 須磨寺時代
兵起す喇叭ぞ鹿児島に雪降れり 山口誓子
編笠山新雪すこしのせ瀟洒 山口青邨
墓原に低き声充ち雪降り出す 岡本眸
暮雪てふ比良を舳に捕 阿波野青畝
暮雪飛び風鳴りやがて春の月 水原秋櫻子 霜林
母のふところ雪深々とあやめ咲く 橋閒石
母子踊る粉雪の如く静寂に 三橋鷹女
母情さながら楓古木に粉雪舞ひ 飯田龍太
本を売る予報なかりし牡丹雪 鷹羽狩行
埋葬行森を隠して雪降れり 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
妹の嫁ぐ栃尾も雪深し 高野素十
又も夕ベとなり粉雪降らし来ることか 尾崎放哉 須磨寺時代
満目の大言海の雪降れり 平井照敏
無より有出でくる空の牡丹雪 阿波野青畝
綿雪のいつしか粉雪白魚汁 森澄雄
綿雪のふる夜おのれに紛れ紐れ入る 森澄雄
綿雪やしづかに時間舞ひはじむ 森澄雄
木立裾落ち込んでゐる深雪かな 高浜年尾
黙々生きて暁の深雪に顔を捺す 佐藤鬼房
目のあたり浴泉群女深雪晴 松本たかし
夜なべの母寝ゐてふかぶか雪積る 松崎鉄之介
夜の鉄路乗りかへてより雪深き 橋本多佳子
夜泊石呉天より雪散らせ来よ 阿波野青畝
爺ケ岳新雪の髪ふりかぶる 山口青邨
薬待つ遠い日向の雪景色 飯田龍太
柳鰈貰ふ大雪そのあとに 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
癒らざる方へ打臥す雪降り出す 石田波郷
由良の戸 暮雪 汽笛こんなにかなしいとは 伊丹三樹彦
欲しきもの夫の相槌牡丹雪 岡本眸
浴泉やひた降る雪を唇に吸ひ 松本たかし
落葉松はいつめざめても雪降りをり 加藤秋邨
落葉松を仰げば粉雪かぎりなし 橋本多佳子
裏山に巨岩があり雪降れり 金子兜太
流水のはげしさよ降る雪も斜め 大野林火 青水輪 昭和二十六年
旅鞄雪に置く雪降りしきる 山口誓子
両手組めば握手に似たり雪降りつぐ 中村草田男
力なく降る雪なればなぐさまず 石田波郷
林泉邃く来て雪明る簷ありぬ 伊丹三樹彦
俯伏せに甕押しならび雪降れり 石田波郷
溲瓶にも飛込むがあり牡丹雪 阿波野青畝
煖炉に立つ大雪を積む聖樹 山口誓子
煖炉燃え牡丹雪とはかかるもの 三橋鷹女
轆轤いま土をひきあぐ牡丹雪 加藤秋邨
饒舌に吹雪寡黙に降る雪よ 稲畑汀子

雪 続補遺

*霰小雪ふた親のこゝろ察し入 加舎白雄
あかるさに蠅の出て行深雪哉 田川鳳朗
あやなくも霰降かつ小雪哉 加藤曉台
いつ涌きていつ降る雪の玉柏 鬼貫
こゝろだに置処なき深雪哉 松岡青蘿
しなのぢや小田は粉雪に蕎麦畠 高井几董
そばへ啼鳥や小雪のさゝとふる 寥松
たをやかに柳もうけよ初深雪 馬場存義
ない事のやうに来ていふ深雪哉 田川鳳朗
ひつかくれ~降る雪の山 秋之坊
よし野山も唯大雪の夕哉 野水
われ若きいつやらは此雪げしき 土芳
一重なみ雪降かゝる凍かな 蘆本
下京や雪つむ上の夜の雨 凡兆
絵の中に居ルや山家の雪げしき 去来
客となりて雪降迄は竹の月 松岡青蘿
魚店に鰒の残るや雪げしき 呂風
月雪の墨の香ふかみ古人達 加舎白雄
元服や丹波の小雪ふれこんこ 支考
根雪かと見ればおそろし風の音 北枝
在寺や天井張らぬ雪あかり 鈴木道彦
鷺の雪降さだめなき枯野哉 千代尼
女潟とは小雪のたまる根笹哉 支考
小雪せよ笠着て舞ん神の前 建部巣兆
水仙の香やこぼれても雪の上 千代尼
是をだに夕日の野菊雪深し 句空
積にけり消る力のなき粉雪 田川鳳朗
雪の声篠三葉四葉のうごき哉 加舎白雄
雪の夜や重ッて行鳥の声 丈草
雪の有ものにきかすな松の声 千代尼
雪降て今朝は誠に浮世かな 買明 反古ふすま
雪降にうらと表は替りけり 芙雀
雪降のひよ鳥越や猿すべり 桃先
雪降は鴈のこゝろの目玉かな 助然
雪降や紅梅白し花の春 杉風
雪降や調抜子しづむ夜の神 車庸
雪降や南高藪殿どなり 紫道
雪深く人は世渡る楫をたえて 加藤曉台
雪明りあかるき閨は又寒し 建部巣兆
千人の日用そろふや雪明り 炭太祇
大雪と成けりけさは鶴のこゑ 成田蒼虬
大雪に埋まぬものや鏡の声 落梧
大雪に明たまゝ也枝折門 荻人
大雪に餅をならべし莚かな 建部巣兆
大雪のこゝにも食のけぶりかな 不玉
大雪のつみ残しけり腹のうち 田川鳳朗
大雪の降とは見えず浦のさま 成田蒼虬
大雪の旦若菜をもらひけり 加舎白雄
大雪の中からほのと赤つばき 諷竹
大雪の夜を打崩す景色かな 松岡青蘿
大雪やむぐらの宿のひしけ物 野水
大雪や我を山家に庭の松 夏目成美
大雪や水の枝折の埋跡 野坡
大雪や落つきて啼鳥の声 紫白女
大雪や里どまりするひわの声 卯七
大雪や隣のをきる聞合せ 浪化
大雪や隣へ行ば雪の洞 路健
池水にかさなりかゝる深雪哉 高井几董
猪突の控に立る深雪かな 加藤曉台
底冷やいつ大雪の朝ぼらけ 此筋
提灯についたも氷る小雪かな 寥松
踏初て根雪となるや椿井坂 正秀
日比見し松も深雪の高根哉 高桑闌更
年の雪の郭公かな夜ルの声 旦藁
白妙は遠山而已ぞ小雪ちる 高桑闌更
帆ばしらに雪降そふや風面 泥足
物置の櫃の先まで雪あかり 釣壺
北山は小雪散らん軒端吹 高桑闌更
木の葉ちり雪降上にちる木の葉 野坡
来月は猶雪降ンはつしぐれ 千里
落穂拾ひのまた出るに小雪ふる 寥松
蘭の香は薄雪の月の匂ひかな 松岡青蘿
里へ出る鹿の背高し雪明り 炭太祇
旅人に我糧わかつ深雪哉 高井几董
狼の声そろふなり雪の暮 内藤丈草
寐見台雪降時は起にけり 凉菟
棹立て越の深雪やみほつくし 正秀
蠣ひねる背戸のほそめや雪明り 昌房
鶯よいつをむかしの雪の声 鬼貫

以上

by 575fudemakase | 2017-04-19 10:11 | 冬の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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