汗  の俳句

汗  の俳句

汗1

汗2


汗 補遺

あぐらかく者に満つ汗蟇 赤尾兜子 蛇
あしうらに嬌声汗の安静終ふ 岸田稚魚 負け犬
あたしがいくさおこして負けた汗の税 中村草田男
あつまりて故宮に汗す旅のはじめ 金子兜太
あてなき歩み汗流す馬とすれちがふ 大野林火 青水輪 昭和二十五年
あぶら汗拭ひ馬齢を加へけり 日野草城
いきいきと汗老斑の体より 山口誓子
いたはられゐてぼうだたる老の汗 松村蒼石 寒鶯抄
いねゐつつをさなき指(および)汗の髪掻く 篠原梵 年々去来の花 皿
いまも嚢負ふ職汗臭くして 山口誓子
いま山頂に汗よろびて看護婦達 飯田龍太
いわけなや牛ひきかへる児の汗 正岡子規 汗
うすうすと晩夏の髭の汗ばめる 原裕 葦牙
うすごろもやははだの汗あらはるる 日野草城
うす汗や行李をくゝる力業 日野草城
うつとりと友と見合ひき汗拭き終へ 中村草田男
うづくまり父の墓前に汗おとす 大野林火 早桃 海風抄
おくれ毛の汗ひややかに背かるる 鷲谷七菜子 黄炎
おとなびし少年の手の汗ばめる 山口誓子
おんこゑのまぎれがちなり汗冷ゆる 日野草城
かたはらに土屋文明の鬚の汗 加藤秋邨
かたびらや汗ひえびえと座にたゆる 飯田蛇笏 山廬集
かなかなしぐれ泣けてくるよな腹の汗 大野林火 海門 昭和九年
かひな霑らすことし苦患の汗にあらず 野澤節子 未明音
かんばせの汗うつくしき祭かな 日野草城
くひちぎる折もありけり汗拭 正岡子規 汗巾
くろぐろと汗に溺るるほくろかな 日野草城
ことしまた校正の夏汗垂りて 山口誓子
このごろを嘆きの汗のほか知らず 大野林火 飛花集 昭和四十八年
この夏は成すこと多ししづけき汗 大野林火 青水輪 昭和二十四年
こめかみに汗二すぢや花圃の人 原石鼎 花影
これが最後の日本の御飯を食べてゐる、汗 種田山頭火 草木塔
こゑなさぬ悲鳴あげつつ汗の床 岸田稚魚 雁渡し
さまざまなかほして汗の嘘つきあふ 加藤秋邨
さらぼひし身もひそやかに汗ぐめる 相生垣瓜人 明治草
すこやかな汗の大足に見舞はれぬ 加藤秋邨
すでに子の薄き貧しき汗の胸 石田波郷
すもも食む午前の汗を流しきり 野澤節子 鳳蝶
すゝしさやむかしの人の汗のあと 正岡子規 涼し
ずぶ濡れの汗は匂はず投炭夫 草間時彦 中年
その顔の汗のべし見や麻畠 森澄雄
たくましき僧の腕や汗手貫 高浜年尾
ただ汗のとき長崎の夕凪ぞ 森澄雄
ただ砂礫今は喜悲なき汗の貌 加藤秋邨
たどりきし道さながらに汗流る 大野林火 月魄集 昭和五十六年
たわやめや笑みかたまけし鼻に汗 日野草城
たゞ汗を流しに入り有馬の湯 高浜年尾
つかれ身の汗冷えわたる膚かな 飯田蛇笏 山廬集
つくつくと汗の香に飽く旅寝哉 正岡子規 汗
つつじ山とつとと下りて汗ばみぬ 上村占魚 球磨
てのひらを見せよといはれ汗ばみぬ 星野麥丘人 2004年
なにをしに行くや老人汗垂れて 草間時彦 櫻山
なまこ壁に触れたる汗のひきにけり 石川桂郎 四温
なりはひの汗とめどなし悲しからず 鈴木真砂女 夏帯
にじみたる汗につつまれ総身あり 篠原梵 年々去来の花 皿
はじいてもまた来る蟻に汗しけり 臼田亜郎 定本亜浪句集
はてもない旅で汗くさいこと 種田山頭火 自画像 落穂集
はなやかな照明しかと汗を見す 中村汀女
はるばると来しごと額の汗ぬぐふ(中村草田男、西東三鬼、神田秀夫、原子公平の諸氏と粟津温泉に遊ぶ) 細見綾子
ひとすぢの流るる汗も言葉なり 鷹羽狩行
ひと宥す術なく坐り汗たれつ「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
ふるさとや多汗の乳母の名はお福 三橋敏雄
へそが汗ためてゐる 種田山頭火 草木塔
べと濡れの汗の腕のこの児に触る 山口誓子
ほのかなる少女のひげの汗ばめる 山口誓子
ほのと饑じ風邪の汗とるもの脱げば 石川桂郎 高蘆
ぽろぽろしたたる汗がましろな函に 種田山頭火 草木塔
またたきまたたき論鋒澄みくるよ汗の妻 中村草田男
まつたくのひとりの汗を耳の裏 岡本眸
まどろみの汗ねっとりと火口茂る 橋閒石 風景
むつの海や鹹きは汗疹ゆゑならず 佐藤鬼房
やさしき声す汗し落胆ふかきらし 加藤秋邨
やせ馬の背に汗流すあつさ哉 正岡子規 汗
わがあぎと離れて石に汗ぽとり 波多野爽波
わが声を出すラジオ提げ汗しをり 加藤秋邨
わが汗をわが嘗めわれの味したり 林翔
わが汗疹充実す恥かきたれば 加藤秋邨
わが身の汗聖なる土に落ちて沁む 日野草城
われを見る妻の眼汗を眼張りの中 中村草田男
サタン生る汗の片目をつむるとき 加藤秋邨
スケートの汗ばみし顔なほ周る 橋本多佳子
スト終へ来し男の汗が匂ふなり 加藤秋邨
デモ満つ日の地階に汗を帯ぶボンベ 古沢太穂 火雲
トタン屋根踏まれうつうつ昼盗汗 佐藤鬼房
ハンドルの汗を拭ひて地図を見る 稲畑汀子
バラかがやく鉄工の汗の顔寄れば 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
ピアノ離れず汗の子は触れ母は拭き 林翔 和紙
ヘルベルト・フォン・カラヤンのつひの汗 林翔
ペンとる身の 汗の薄味 原爆忌 伊丹三樹彦
マグロ購ふ汗の片手は鎌下げて 飯田龍太
マラソンの顔をふつては汗とばし 清崎敏郎
ラグビーや敵の汗に触れて組む 日野草城
リノリューム看護の汗落ちもとのまま 中村草田男
リフトに入る汗にほふ風とすれちがふ 篠原梵 年々去来の花 皿
レスリングあしかの如く汗に濡れ 後藤比奈夫
ロザリオにあやまつ汗は神ぞ知る 阿波野青畝
一本の木蔭に群れて汗拭ふ 相馬遷子 山国
一歩出てジムの汗拭く 柳絮飛ぶ 伊丹三樹彦
一身の芋八貫と汗ともどる 平畑静塔
三尺の汗の空間対面す 草間時彦 中年
三時打つ烏羽玉の汗りんりんと 川端茅舎
世間師の歯白し汗を圧拭(おさへぶき) 中村草田男
主ならねど癩と踊りて我汗す 平畑静塔
九段坂田園の婆汗垂り来 渡邊白泉
乳濡れの汗濡れの頬ねむり落つ 鷹羽狩行
乳貰ひ戻るや汗の目をつむり 細見綾子
二人子はや汗の若者独活の花 石田波郷
二時頃は山も汗する蝉ぢぢと 星野立子
人ごみに母失ふまじき額の汗 角川源義
人の汗によごれ我が身の汗に汚れ 右城暮石 句集外 昭和三十一年
人の背が巨いなり汗を見つつゐる 加藤秋邨
人の膝ばかり見せられ汗に臥す 加藤秋邨
人まかせ出来ぬ性にて汗かきで 上村占魚
人夫の汗乱れ乱れぬ身を揺るゆゑ 中村草田男
今も胸に友の原爆死汗むすぶ 山田みづえ 忘
今年竹皮剥ぐころの汗少し 鈴木真砂女 夕螢
仏陀の顔うつむき汗す孤児白痴 赤尾兜子 蛇
仔牛独り反芻(にれは)みながら居汗して 中村草田男
代田掻汗と光を撒き散らし 相馬遷子 山河
仰臥して満面の汗無為の汗 日野草城
休らへば汗につめたき背中哉 正岡子規 汗
休暇語る汗の生徒ら燦爛たり 林翔 和紙
伝はりし器量より恥ぢらひの汗 平畑静塔
体内に狂へるものや往き汗す 石塚友二 玉縄抄
信太森出て汗くさく貰ひ水 角川源義
信心の汗にはあらず弥陀の前 鷹羽狩行
俥挽うなじの汗を見られつゝ 日野草城
健康な弟顔の汗を拭く 日野草城
傭はれて汗の学徒の前に売る 飯田龍太
傷兵の隻手汗拭ふ黒眼鏡 加藤秋邨
傾城の重ね着苦し汗の玉 正岡子規 汗
働きし汗の胸板雷にさらす 西東三鬼
働き通す汗百日や汗を恃め 山田みづえ 忘
働くも遊ぶも汗が身を濡らす 右城暮石 声と声
働く婦顎の継ぎ目に汗溜めて 山口誓子
兄妹の餉のしづかさの汗の裡 石田波郷
充ちし中年額づたふ汗振りて落す 能村登四郎
先づ汗の顔に親しみ初対面 稲畑汀子
先達とても天恵の汗の玉 平畑静塔
兜蟲漆黒なり吾汗ばめる 石田波郷
入学児脱ぎちらしたる汗稚く 飯田龍太
入道雲あまたを友に職場の汗 西東三鬼
全身に汗して人の好意うく 右城暮石 上下
兵の顔あはれ稚し汗拭くなど 加藤秋邨
兵出征機械断層の辺に汗す 細谷源二 鐵
冷ゆるまなき旱の汗にあまんずる 野澤節子 未明音
冷ゆる汗国原の見のはろけしや 日野草城
冷房や汗のけはひもなき少女 日野草城
分娩室扉は鉄壁ぞ汗滂沱 草間時彦 中年
刻々を汗の愁顔寄せ守り 福田蓼汀 秋風挽歌
削り氷や汗冷えそむる腋の下 日野草城
剣襟の尖目を離れず汗ばみあるく 篠原梵 年々去来の花 皿
励める顔節あるごとき汗流る 中村草田男
労働の汗臭くしてよき句作る 山口誓子
医もおそる夜半の病者の玉の汗 飯田蛇笏 白嶽
十二神将汗のまなこに打ち仰ぐ(新薬師寺) 細見綾子
十年の汗を道後の温泉に洗へ 正岡子規 汗
千両の石の重さや牛の汗 正岡子規 汗
午前の汗午後の汗意識不明のまゝ 右城暮石 声と声
半世紀生き堪へにけり汗を拭く 日野草城
南京の月夜の汗疹ありにけり 加藤秋邨
原爆忌汗とめどなく頭は冷えて 野澤節子 未明音
原爆投下時分の汗の手を洗ふ 上田五千石『琥珀』補遺
去るものばかりが見ゆる汗の中 斎藤玄 雁道
友の前胸の薄さの汗拭ふ 木村蕪城 寒泉
友ひそと来て坐りゐし汗ばみて 石塚友二 方寸虚実
友よりの来信はたらく汗を言はず 野澤節子 未明音
口を信ぜずあはれは汗の喉仏 加藤秋邨
口腹の慾の足どり汗ながれ 石橋秀野
合掌のぬくさつめたさ汗のまま 中村草田男
君たちの血がめぐるより汗ばめる 石田波郷
君と吾ずぶぬれの汗わかつなし 草間時彦 中年
君汗を拭きつつ既にしたしけれ 日野草城
吾が死ぬ日と口述筆記汗冷ゆる 松崎鉄之介
吾子の鼻汗かきて蝉を鳴かせゐる 加藤秋邨
吾子も亦汗の蓬髪瞳澄めり 中村草田男
吾子痩せて手に病汗のねばりけり 飯田蛇笏 白嶽
呟けば子が問ひかへす汗の中 加藤秋邨
和して汗の手拍手痛しフラメンコ 林翔 和紙
咳込むや汗と泪に顔濡らし 大野林火 青水輪 昭和二十三年
唄が唄汗が汗呼びフラメンコ 鷹羽狩行
唐突にセリム湖の碧汗冷ゆる 松崎鉄之介
唾涸れ怒れる汗は黒き河に 西東三鬼
商ひに汗す日曜讃歌のなか 伊丹三樹彦
喜劇みし汗を拭きつつ言無かり 石田波郷
嘆きつゝひとのはだへは汗にじむ 日野草城
嘲られゐる汗の胸板浮き沈み 岸田稚魚 雁渡し
噴き出づる汗もて汗の身を潔め 橋本多佳子
噴くごときかんばせに汗飴湯かな 森澄雄
四つの閉美籠れる顔の汗ばめる 相生垣瓜人 微茫集
四五柱英霊に駈く汗噴きつ 石塚友二 方寸虚実
土なぶりして透き通る汗こぼす 右城暮石 散歩圏
土掘る人の汗はつきずよ掘らるゝ土に 種田山頭火 自画像 層雲集
土間の燈に澄む密造酒汗し呑む 佐藤鬼房
地の池や衆愚のわれら汗し過ぐ 佐藤鬼房
地も汗を出すとき死のごとき外寝 平畑静塔
地図の上に汗を落して命令聞く 長谷川素逝 砲車
地熱の汗炎天の汗より鹹し 山口青邨
坐り胼胝汗ばみし足組み交す 石塚友二 方寸虚実
基地の子として生れ全身汗疣なり 能村登四郎
基地化後の嬰児か汗に泣きのけぞり 能村登四郎
堕地獄や汗の父子の硫黄にむせ 能村登四郎
墓に告ぐ汗していよよ(けが)れむと 西東三鬼
墓に汗林火十七回忌かな 松崎鉄之介
墓の前立ちてしづかに汗流れ 深見けん二
墓の地に一滴の汗すぐ乾く 西東三鬼
墓原に汗して老いし獣めく 西東三鬼
墓地に来て我が身の汗を拭ひ居り 右城暮石 句集外 昭和三十二年
墓掘人等「孝行話」を汗の手ぶり 中村草田男
壁の面の汗の手型や征きにけり 加藤秋邨
売子たちみな美しく汗かけり 安住敦
夏ちかし髪膚の寝汗拭ひ得ず 石橋秀野
夏終る花めく汗もあえずして 相生垣瓜人 明治草
夕衣そとよりしみし他人の汗 中村草田男
夜もすがら汗の十字架背に描き 川端茅舎
夜学にて得し金銭妻に汗ぬぐふ 大野林火 早桃 太白集
夜行軍汗の軍帽を手に脱げる 山口誓子
夢の師や覚めて川なす胸の汗 石塚友二 曠日
大いに汗かきたる後の身ぬち冷ゆ 松崎鉄之介
大き荷を提げし外人汗見せず 右城暮石 句集外 昭和四十六年
大き頭に汗噴き野路の墳遠し 角川源義
大津絵奴汗ぬぐふ間も槍立てて 能村登四郎
大阪に来てゐるのみに汗流す 山口誓子
天暑し悲しみの場汗滂沱 山口青邨
夫婦して主に汗捧げ甘藷挿す 上村占魚
夾竹桃白しと見つつ兵汗す 山口誓子
女人憂し旅粮食ふとき目に汗し 佐藤鬼房
女教師が白背に汗のしみ負へる 山口誓子
女汗ばむ花の陰爬虫族眠る 橋閒石 無刻
妻の汗見てわが汗を拭ひけり 日野草城
妻子措けば漂泊に似て腋の汗 小林康治 玄霜
娼婦いま汗の蹠ぞやはらかし 岸田稚魚 負け犬
娼窟の錺屋(かざりや)鼻に汗浮かべ 佐藤鬼房
婦人会幹事やさしき鼻に汗 日野草城
子の汗のすがしく匂ひ神輿振 林翔 和紙
子の汗の顎が押ふる小提琴 能村登四郎
子の遺髪汗にぬれじや旅つづく 角川源義
子の顔の叱られて汗滂沱たり 山口誓子
孤児すでに女の瞳なり汗す街 右城暮石 句集外 昭和二十二年
孫だいてほしく汗もひくころの抱いてくる 荻原井泉水
家に帰りて汗臭からぬ浴衣哉 正岡子規 浴衣
寝かへれば汗のひつゝくあつさ哉 正岡子規 暑
寝ぬる身にこの日の汗のこもらへり 松崎鉄之介
寧ろすかし汗の少年のガラス工 石田波郷
審判の婦の泣く汗に夏来る 飯田蛇笏 家郷の霧
小便に糖が出て鼻に汗が出て 阿波野青畝
小倉山夏うぐひすに汗ばみぬ 日野草城
小説の発端汗の捨切符 藤田湘子
小麦刈るしわ多き眼に汗たまる(道志渓谷) 細見綾子
少年の汗の香と寝る雨の航 能村登四郎
少年憂国白シャツ汗で透きとほり 香西照雄 対話
屏風坂まで汗かいて来りけり 雨滴集 星野麥丘人
山住みの人訪ふ道の汗たのし 細見綾子 桃は八重
山匂ふ雨もろともに汗拭けば 岡本眸
山拓く汗にじむ目に動かぬ湾 佐藤鬼房
山揚に參ずる二十前の汗 平畑静塔
山昏れてぬぎすてし汗のもの重し 松村蒼石 雪
山風に汗同臭の麦刈女 飯田龍太
峯行の褐色の汗衣を徹す 津田清子
嵐めく青葉見つめて汗垂れゐき 大野林火 早桃 太白集
嶺の肩に富士小さしや玉の汗 角川源義
巓の風にをとめの汗にほふ 日野草城
巴里知らずくらしの汗の帯に滲み 鈴木真砂女 夏帯
帯しめて心きまりぬ汗もなし 星野立子
帯に汗滲ませ路地に老いゆくか 鈴木真砂女 夕螢
帽子ぬぐや汗に撚れあふもつれ髪 杉田久女
店先に車夫汗くさき熱哉 正岡子規 暑
座をわけて貰ひ汗の身通しけり 中村汀女
弥撒うかゞふ恥の己れの汗の胸 小林康治 玄霜
弥撒果てし汗ぬぐふ老婆胸皺み 小林康治 玄霜
強力の汗や夏炉のそばに来て 百合山羽公 寒雁
彼を負ひ彼の汗の手前に垂れ 長谷川素逝 砲車
御仏に忘れてありし汗拭ひ 高野素十
御僧は父の世よりや汗手貫 草間時彦
心より過去消し日々の汗にも馴れ 鈴木真砂女 夕螢
忙中の汗日月と申さばや 日野草城
応召の髪成り笑ひ汗拭へり 石川桂郎 含羞
怒るにはあらねど汗の死者みつめる 右城暮石 句集外 昭和二十六年
思ひ屈し汗冷冷とありしこと 木村蕪城 寒泉
思春期の汗あふれ出づ麦畑 飯田龍太
息災の汗華やぎて三十過ぐ 山田みづえ 忘
悔の果深夜日輪を汗の目に 加藤秋邨
愚かなる汗して迎ふ面かむり 山田みづえ まるめろ
戀ごころまひるは汗もながれたる 渡邊白泉
我が名楸邨汗の沈黙に呟かる 加藤秋邨
我もはや汗かゝぬ迄に老にけり 正岡子規 汗
手ににぎりしめし汗やがて見つめたり 尾崎放哉 大正時代
手にふれし汗の乳房は冷たかり 野見山朱鳥 曼珠沙華
手首なる汗の中より光りにじむ汗 篠原梵 年々去来の花 皿
押しくらに 加わる 有色同志の汗 伊丹三樹彦
拭へども噴く汝の汗有難き 大野林火 月魄集 距和五十七年
掌のなかに子の掌汗ばみ墓参の途 伊丹三樹彦
掌中に夫の画料 汗沁むまで 伊丹三樹彦
掌中に汗ばむ栗の肌の艶ン 川端茅舎
掌中の栗とて汗を握り〆め 川端茅舎
撥ねる汗鉄の赤き間短かさよ 中村草田男
支配人猪首の汗を且拭ふ 日野草城
教會より汗の黒人のみ出でくる 三橋敏雄
数条の汗にさきがく汗一条 能村登四郎
新薬師寺に吾がふく汗も立秋か 細見綾子
旅人の汗の玉散る清水哉 正岡子規 汗
旅人は汗も涙も独り拭きぬ 中村草田男
旅人や杖に干し行く汗拭 正岡子規 汗巾
旅果つや旅の汗疹をかなしめば 小林康治 玄霜
日々の夕ベは汗の衣をぬぎ 高野素十
日に浴しにじめる汗の鹹にほふ 山口誓子
日まはりの盛んなる日の額の汗 細見綾子
日中や汗にほはさぬ看護婦たち 石川桂郎 四温
明け方の二度寝の夢に汗したり 能村登四郎
明け易き四五幹の竹汗を噴く 能村登四郎
明日来ると云ふたのしさや汗ふけど 細谷源二 砂金帯
昼寝ざめ厨に立てり胸の汗 石塚友二 方寸虚実
昼寝覚む耳のうしろに汗掻いて 安住敦
昼顔や襦袢をしぼる汗時雨 正岡子規 昼顔
晴れて汗すげなく多佳子忌はすぎし 平畑静塔
曇日の汗頸すじに君失ふ 岸田稚魚 負け犬
曳き連れてどれも汗馬夏木立 日野草城
書写山に残暑の汗を拭きあへず 高浜年尾
朝の駄馬 勇ませ 半裸の汗 光らせ 伊丹三樹彦
朝も汗瓦灼けわたりほのじろき 日野草城
朝餉すみし汗やお位牌光りをり 渡邊水巴 白日
木賊刈地にぽたぽたと白き汗 平畑静塔
来て立ちて汗しづまりぬ画の女 深見けん二
東京に着て汗ばめる白絣 細見綾子
東京は不毛の汗のピカソ展 平畑静塔
松籟は峠ならむと汗ばみ登る 篠原梵 年々去来の花 雨
林火忌の汗滂沱たる記憶かな 松崎鉄之介
果樹園の舗装路に汗したたらす 右城暮石 一芸
柵ぬちに汗の黄裸の俘虜めける 能村登四郎
梢踏んで汗拭く漢輝けり 中村草田男
棕梠の蔭に汗ばみ立てば汽艇出づ 藤田湘子 途上
棺はこぶ男の汗も世にありがたし 飯田蛇笏 白嶽
極彩の夢見て覚めし胸の汗 岡本眸
次の村まで 汗は出尽す 薬売 伊丹三樹彦
歩々に汗ワイシヤツ胸に附き離る 篠原梵 年々去来の花 皿
死に近き父に汗なく生仏 上村占魚
死ぬる日と詠みしみほとりただ汗す 松崎鉄之介
死賜う如し汗の筆硯抛つは 楠本憲吉 孤客
母ならぬ乳房の汗を隠し拭く 岡本眸
母の汗拭へば終の白額 野澤節子 八朶集
母者には汗によごれしもの土産 篠原梵 年々去来の花 皿
気づかれのひとり汗ばみゐたりけり 岡本眸
水に手を入れてたのしむ汗退くまで 大野林火 雪華 昭和三十八年
水笛を吹いて一旦汗の引く 後藤比奈夫
汗おぼゆ間なくに鉄の走り寄る 中村汀女
汗かいて笑ふみどり児日照草 岡本眸
汗かかぬやうに歩きて御所の中 波多野爽波
汗かきて日日恙なくありにけり 松本たかし
汗かきて馬は馬色を失へり 山口誓子
汗かきの我が誕生日油照り 右城暮石 句集外 昭和三十三年
汗かゝぬ女の肌の涼しさよ 正岡子規 涼し
汗がぶつかり漁夫と漁夫すれ違ふ 鷹羽狩行
汗が目に己恃むは潔し 福田蓼汀 秋風挽歌
汗が糸ひく紅を血と拭きチンドン屋 中村草田男
汗きらり青花搾る挺子に石 大野林火 飛花集 昭和四十八年
汗くさき女工となりて藤を知らず 三橋鷹女
汗くさき少女かたまり水を飲む 右城暮石 句集外 昭和二十四年
汗くさき行者の宿や夏の月 正岡子規 汗
汗くさき農夫の立てる中通る 山口誓子
汗くさき遊女と寝たり狭き花筵 正岡子規 汗
汗くさしうしろ向たる小傾城 正岡子規 汗
汗さへ無しや腕繊ければ腋捉ふに 中村草田男
汗しさする師の背よ明日は思はざり 松崎鉄之介
汗しつつ大いに笑ひ汗垂れたり 石田波郷
汗しつつ菓子食へり人をもてなすと 石田波郷
汗しづみ巨き石棺を抱きけり 松村蒼石 雁
汗してになつてきたきうりかじれといわれる 荻原井泉水
汗してマラソン胸もと緊めて銀行員 中村草田男
汗して帰る坂に情火の犬の列 秋元不死男
汗して石に彫るべき大字書きおえたり 荻原井泉水
汗しとど写楽の目して口をして 林翔 和紙
汗しとゞ苦しき夢はさめてけり 正岡子規 汗
汗し働く基地の炎天生々し 小林康治 四季貧窮
汗し喰ひ男六人食器缺け 伊丹三樹彦
汗し思ふますらたけをはみいくさは 三橋鷹女
汗し来て絵島の墓に煙草供く 角川源義
汗し見る木偶大首は天狗久 能村登四郎
汗し覚め胸に波せりとほき虫 石塚友二 方寸虚実
汗し集会放屁その子をたしなむ漁婦 古沢太穂 古沢太穂句集
汗し食ふパン有難し糞の如し 西東三鬼
汗し飲む馬盥茶*碗我鬼忌かな 齋藤玄 飛雪
汗じみし人のからだとさはりけり 松本たかし
汗じむペン桝を埋めねば稿成らず 伊丹三樹彦
汗すゞし働くのみに身を任せ 及川貞 夕焼
汗たぎちながれ絶対安静に 川端茅舎
汗で辷る男女椰子の実落ちる音 三橋敏雄
汗と拭く柱鏡の脂顔 石塚友二 方寸虚実
汗と泥にまみれ敵意の目を伏せず 長谷川素逝 砲車
汗と涙こも~こぼし合掌す 石橋秀野
汗どつと出て子の言葉真くれなゐ 藤田湘子
汗ながれ啼魚先生いまは亡き 日野草城
汗にしみて紅さめし襦袢哉 正岡子規 汗
汗にじむ目に力籠め瞑りぬ 石田波郷
汗にまみれ薬研の谿を渡りたる 佐藤鬼房
汗に饐えし千人針を彼捨てず 長谷川素逝 砲車
汗ぬぐはぬ一旅人や筆の業 小林康治 玄霜
汗のかひな時計うつし世刻みをり 野澤節子 未明音
汗のつぶやき人一人さへ救へざる 大野林火 潺潺集 昭和四十年
汗のほかただ詫びたしや喜雨亭忌 能村登四郎
汗のほかには味方なし汗滂沱 鷹羽狩行
汗のみを垂れゐて涙なかりけむ 斎藤玄 雁道
汗のものどかと置かれぬ婢に 高野素十
汗のもの抛りて籠にをさまりし 波多野爽波 鋪道の花
汗のもの脱いで人手に委ねたる 波多野爽波 鋪道の花
汗のハンケチ友等貧しさ相似たり 石田波郷
汗の光溌剌たれば悪女とや 中村草田男
汗の双腕削ぎおとさるる思ひかな 岡本眸
汗の吾子ひたすらにわが眼を追へり 飯田蛇笏 白嶽
汗の囈語誰に「久闊」の一語ぞも 中村草田男
汗の坂翁に遅れゆくごとし 上田五千石『琥珀』補遺
汗の多弁やたつた一語を救はんため 加藤秋邨
汗の女体に岩手山塊殺到す 加藤秋邨
汗の妻化粧くづれも親しけれ 日野草城
汗の子が楽器を銭に換へむとす 阿波野青畝
汗の子のつひに詫びざりし眉太く 加藤秋邨
汗の子の呂律や唄となりにけり 石塚友二 光塵
汗の子一人皿をなめては又泣いて 中村草田男
汗の孤独九十九里浜に歩み出で 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
汗の手に草の穂をおく別れかな 石橋秀野
汗の手の一度は触れよわらべ石 加藤秋邨
汗の手合す殉忠の鏃刻りたる戸 石塚友二 方寸虚実
汗の掌に天金失せし辞書馴染む 伊丹三樹彦
汗の日のみさを忌なりき女流来て 石田波郷
汗の日日かくて相逢ふこともなし 加藤秋邨
汗の服のポケットにマッチこぼれいて 古沢太穂 三十代
汗の服脱ぐや教師を棄つるごと 能村登四郎
汗の母者が病児負ひ負ふ放屁なりき 中村草田男
汗の水夫飯食ふ顔が船に満つ 中村草田男
汗の火夫顎紐とれば農夫の顔 草間時彦 中年
汗の父また母また子岩を越ゆ 中村草田男
汗の玉ふつふつ結びやまぬかも 日野草城
汗の玉背中に道がありしとは 林翔
汗の目が見る大粒の実梅かな 松村蒼石 雪
汗の目に索道すすむ愉快かな 阿波野青畝
汗の目のくぼみて子等も飢ゑんとす 加藤秋邨
汗の目はかがやき黄塵の頬はとがり 長谷川素逝 砲車
汗の目をきゆうつと搾り開きけり 阿波野青畝
汗の眼に金色仏細しけれ 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
汗の眼に青芦の水脈吹かれひらく 大野林火 青水輪 昭和二十六年
汗の眼帯片眼びかりに黒宗徒 能村登四郎
汗の睡り夢に癩者が高笑ふ 草間時彦 中年
汗の紅往診幾千なさば業果てむ 相馬遷子 雪嶺
汗の肌より汗噴きて退路なし 能村登四郎
汗の肩精悍なり蝉を示したる 加藤秋邨
汗の背にはるかな夕日わかちなし 飯田龍太
汗の背を掴みて反る子癒えたしや 加藤秋邨
汗の背を水道栓に当てゝ洗ふ 右城暮石 句集外 昭和二十九年
汗の胸この創痕に仕ふるか 石田波郷
汗の胸割つて昼餉をとるところ 佐藤鬼房
汗の腕触れてべとつく幼姉妹 山口誓子
汗の膚はつと冷たし花柘榴 右城暮石 声と声
汗の臍に山風あそび青田ゆく 飯田龍太
汗の街急坂の上にあるは悲し 渡邊白泉
汗の襯衣脱ぎて若者胸毛恥づ 山口誓子
汗の視野に涯かぎろへる熔岩地帯 能村登四郎
汗の身の露の身の程冷えにけり 川端茅舎
汗の身や露の身よりもひえまさり 川端茅舎
汗の軽子つぎつぎ飛び来悪魔のごと 小林康治 玄霜
汗の雀斑少年聖歌隊解かれ 橋本多佳子
汗の頸没日も風も沖へ急く 飯田龍太
汗の顔の笑へば生まる二重顎 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
汗の顔人が拭くゆゑ我も拭きぬ 林翔 和紙
汗の顔吾子怒り何をいはんとする 加藤秋邨
汗の顔多くうなだれ野辺送り 伊丹三樹彦
汗の顔失語の貌や師の部屋に 角川源義
汗の顳フレッチャーイズム覚えてけり 岸田稚魚 雁渡し
汗の顳フレツチヤーイズム覚えてけり 岸田稚魚 負け犬
汗の香のいまだ稚き香を嗅げり 三橋鷹女
汗の香のほのかに寝ぬる子の愛しさ 日野草城
汗の香の愛しく吾子に笑み寄らる 三橋鷹女
汗の香の職餓鬼ばかりビール酌む 小林康治 玄霜
汗の髪切つて終身の翳うする 鷲谷七菜子 銃身
汗の髪洗ふ頭蓋も痩せにけり 相馬遷子 山河
汗はじく蝦夷の乾燥空気かな 高浜年尾
汗は目に傷兵の銃と二つ負ひ 長谷川素逝 砲車
汗は鹽坐して帯びゆく放射能 三橋敏雄
汗ばみし手のひらの音畳這ふ 篠原梵 年々去来の花 皿
汗ばみし穂先ほのぼの稲の花 能村登四郎
汗ばみし面をぬぐふ御成かな 阿波野青畝
汗ばみし黒子見てゐてまじろがず 加藤秋邨
汗ばみて亡きひとの妻うらわかき 日野草城
汗ばみて余命を量りゐたらずや 石田波郷
汗ばみて加賀強情の血ありけり 能村登四郎
汗ばみて少年みだりなることを 山口誓子
汗ばみて蒙古少女にみつめらる 加藤秋邨
汗ばみて薨去を語る家族かな 渡邊水巴 白日
汗ばみて言ひ足りしとも足りぬとも 後藤比奈夫
汗ばむ手ピアノ怒濤の海になる 有馬朗人 母国
汗ばめる頬の生毛の金色に 清崎敏郎
汗ひいて太幹をしげしげと見る 波多野爽波
汗ひいて母は仏となりにけり 深見けん二
汗ひいて洞然と銭洗ふなり 石川桂郎 高蘆
汗ひとすぢそのまま臍に入らむため 能村登四郎
汗ふかき尊大人の冠かな 山口青邨
汗ふくや仙台は木もあるところ 正岡子規 汗
汗ふくや背にかばんの紐のあと 正岡子規 汗
汗ふくや飛騨も晩夏の白木槿 森澄雄
汗ふくわれに何の気負ひの夕日なる 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
汗ふく親銭数ふる子舟は着きぬ 正岡子規 汗
汗ふんだん 墓地を下見の男のいま 伊丹三樹彦
汗みづく句碑より刈るは丈の草 平畑静塔
汗みづく妻のあはれさはいふも愚か 日野草城
汗もて買ふ「靖国の楯」母が為 石田波郷
汗もひき島の風にも馴れてきし 清崎敏郎
汗もろとも本音を吐いてしまひけり 山田みづえ 木語
汗も唱(うた)も湧き尽きしかや光る寝顔 香西照雄
汗も唱も湧き尽きしかや光る寝顔 香西照雄 対話
汗も塩となる塩田かせぎの痩せよう 荻原井泉水
汗も拭はず握手して親しさよ 鷹羽狩行
汗も身のうち極楽のあまり風 鷹羽狩行
汗ゆるやか七つの丘の一つ越え 林翔 和紙
汗わくや動きもやらぬ牛車 正岡子規 汗
汗をかく蛇も居るらしその濡れ身 桂信子「草影」以後
汗をよくかきたまひけり夏といはず 日野草城
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 正岡子規 汗
汗を拭くわが肌なればいとほしく 種田山頭火 自画像 層雲集
汗・泪慟哭を断ち柩出づ 能村登四郎
汗一洗の赭顔夕映父てふもの 香西照雄 対話
汗一滴見せぬ土工の炎天掘り 右城暮石 句集外 昭和三十四年
汗伝ふ背を観るわれに兄あるごと 中村草田男
汗光り安全帽の光りけり 後藤比奈夫
汗入れてより本題に入りにけり 稲畑汀子
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 霊芝
汗冷えて嚏しきりや蔵王堂 右城暮石 句集外 昭和四十八年
汗冷えて黙せる肩のならびけり 石橋秀野
汗口ヘオンマカキヤ口ニソワカ誦し 阿波野青畝
汗喘ぎ大牛の身の動きゐて 山口誓子
汗噴くをすくなくせむと身じろがず<津浦線> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
汗垂りて孤りの昼餉食むはさみし 三橋鷹女
汗垂れてまた愚痴をいひ出さんとする 伊丹三樹彦
汗垂れて乾き渺たる一僧侶 斎藤玄 雁道
汗垂れて半面笑ふ宣教師 加藤秋邨
汗垂れて庶民モツ喰ふヘイ・マンボ 岸田稚魚 負け犬
汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓 石田波郷
汗垂れて昔恋せし顔昼寝 加藤秋邨
汗垂れて酔へば職の穢呵責なし 小林康治 玄霜
汗垂れて霧笛聴きをり刻うつる 加藤秋邨
汗垂れて鳶を聞くなり松隠れ 石田波郷
汗多かりければ籾殻多く附き 中村草田男
汗夜ごと片半身に熱帯夜 山口青邨
汗寒く拝むや涙おのづから 石塚友二 方寸虚実
汗干してだらりとさげた紋服とはだかでいる 荻原井泉水
汗微塵身は冷静の憤 川端茅舎
汗拭いてあたり撫子畑かな 岡井省二 鹿野
汗拭いてふと掃苔の山甘し 岡井省二 明野
汗拭いて何に怒らん腹減りぬ 加藤秋邨
汗拭いて卒然とわが塒無し 石塚友二 光塵
汗拭いて身を帆船とおもふかな 岡本眸
汗拭いて顔うしなへる忌ごもり 岡本眸
汗拭きし頭をばしづかに掻く百姓 中村草田男
汗拭きてあげる面を日の待てる 中村草田男
汗拭きてすなはち肌理のこまかなり 山口誓子
汗拭きて白鷺をれば遠を見る 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
汗拭きに来し大阪と思ひけり 亭午 星野麥丘人
汗拭くは門入りていつもこの石上 加藤秋邨
汗拭くや傘寿は字面だけのこと 平畑静塔
汗拭くや膩乗り来し年の胸 石塚友二 光塵
汗拭くや茂吉の大人にはげまされ 加藤秋邨
汗拭くや谷を埋むるくはずいも 上村占魚
汗拭けば*墨東くらき迎へ風 中村草田男
汗拭はず戦敗れし日を語る 上村占魚
汗拭ふ向ふに高し雲の峯 正岡子規 雲の峯
汗拭を草に干しけり葱摺 正岡子規 汗巾
汗拭香水の香をなつかしむ 正岡子規 汗巾
汗掻きて昼寝しゐたる吾をあはれむ 山口誓子
汗散らし再見(ツアイチイエン)の拍手と握手 鷹羽狩行
汗氷る山陰行けば風もなし 正岡子規 汗
汗沁みて傍目もならぬ想一つ 中村草田男
汗涸れぬ高梁雲を凌ぐ午下 相馬遷子 山国
汗淋漓男かがやきかがやける 山口青邨
汗深く商館の暗き階を登る 日野草城
汗滲み面皮白磁のごとくなり 川端茅舎
汗漬となりし師の日を忘れめや 上田五千石 風景
汗濡れし身にて五十に近づけり 山口誓子
汗濡れの乳袋より乳貰ふ 山口誓子
汗疣の児我も裸のまゝいだく 右城暮石 句集外 昭和二十五年
汗疣の背罪を犯せしこと思ふ 山口誓子
汗疹して娘は青草のにほひかな 飯田蛇笏 霊芝
汗疹の児尻へに蜆採り倦まぬ 佐藤鬼房
汗疹児の頭を刈る怒り哀しけれ 石川桂郎 含羞
汗白く幼き黒人鼓笛隊 鷹羽狩行
汗知らずところきらはずうたせけり 上田五千石『琥珀』補遺
汗粒の 鼻が出ばつて 原爆忌 伊丹三樹彦
汗臭きシヤツに秋風四方よりす 飴山實 おりいぶ
汗臭き手拭洗ふ清水哉 正岡子規 清水
汗臭き着物脱ぎけり山の宿 正岡子規 汗
汗臭ふ貧しき友の呉れし金 日野草城
汗舐めて十九世紀の母乳の香 西東三鬼
汗血馬絶えし沃土に馬肥ゆる 稲畑汀子
汗貧し金色仏顕ずれば 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
汗馬の筋張る腹や草いきれ 日野草城
汗鹹し友の死悼む言とぎれ 安住敦
汝が胸の谷間の汗や巴里祭 楠本憲吉 楠本憲吉集
汽缶焚いて創る聖夜の汗の塩 上田五千石『田園』補遺
汽関車頭部まず着き汗の汽関手着く 金子兜太
沙羅の雨汗牛充棟を恥部とする 下村槐太 天涯
沸々の汗を羨む汗をかき 鷹羽狩行
洋車夫の剃りたる頭汗を噴く<北京> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
洋車夫の肩の日汗にぬれて来ぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
洗ひ髪ひたひの汗の美しく 星野立子
浄瑠璃のむせび語りや汗一滴 能村登四郎
浄衣着て汗を忘れてしまひたる 後藤比奈夫
浅かりし真昼の夢に寝汗しぬ 日野草城
浦上や旅来し胸の汗緊る 小林康治 玄霜
海藻を食ひ太陽へ汗さゝぐ 藤田湘子
淋汗に山の日まはり蛙かな 岡井省二 明野
淋漓たる汗もうれしや虚子墓前 波多野爽波
深き業もちて女の汗かかず 右城暮石 句集外 昭和四十五年
温泉あがりの汗乾く間を一人をり 星野立子
温泉に汗を落す間もなき人出入 高浜年尾
湯上りの汗吹き出づる心地よし 星野立子
満身の汗の茶筅を狂はしをり 石川桂郎 含羞
満面に汗して酬もとめざる 阿波野青畝
滂沱たる女の汗や絲を取る 相馬遷子 雪嶺
滂沱たる汗のうらなる独り言 中村草田男
滴りか金山掘りの汗か血か 鷹羽狩行
濃き影の真上に汗にまみれ立つ 篠原梵 年々去来の花 雨
灌水し 太陽神に汗仕え 伊丹三樹彦
火の鉄を打つ胸の汗日に曝し 右城暮石 句集外 昭和三十一年
火曜日の巷をかへり家に汗す 三橋敏雄
炎える岩運ぶや汗の毛脛張り 佐藤鬼房
焔へ額差入れ汗の投炭夫 草間時彦 中年
無影燈汗の五体を捉へたり 鷲谷七菜子 花寂び
焼土に汗たらし行車力哉 正岡子規 汗
熔岩に汗しおのれの歩みあゆみつづくる 橋本多佳子
熟睡して汗疹赤らむ児のあはれ 中村汀女
爆忌のシャツ 死に損いの 汗濡れの 伊丹三樹彦
父を焼く音に堪へをり指に汗 岡本眸
牛の顔よりもあはれに汗の顔 藤田湘子 途上
狂人を見て来しといふ額の汗 細見綾子
狼星が盗汗の胸にはりついて 佐藤鬼房
獅子頭 外す 流民の裔の汗 伊丹三樹彦
玉の汗ぬぐはず茨木少年像 鷹羽狩行
玉の汗ぬぐへばありし喉仏 鷹羽狩行
玉の汗簾なすなり背に腹に 川端茅舎
玉の汗鳩尾(みづおち)をおちゆきにけり 川端茅舎
現身の汗に濡れざるところなき 日野草城
琉球裂く泣く汗の孫引据ゑて 大野林火 雪華 昭和三十四年
甕を頭に汗かく女匂ひけり 阿波野青畝
生えそろひ来し髪汗ばみねむりをり 篠原梵 年々去来の花 皿
生きかはり執念く生きて今の汗 能村登四郎
生きて汗 引導石に坐してもみる 伊丹三樹彦
生姜湯に薄汗をして更けしかな 大野林火 飛花集 昭和四十七年
生死軽重ニユース凝りつく汗の面 石塚友二 方寸虚実
産声やへなへな落とす汗の腰 草間時彦 中年
畢に路傍の人見やりつゝ双手汗 石塚友二 方寸虚実
異人学徒の汗の香 加え 山手をバス 伊丹三樹彦
異教徒の汗してのぞく懺悔室 相馬遷子 山国
病める身の汗や白胸より溢る 山口誓子
病者にかこまれ汗匂はすはわれのみに 大野林火 青水輪 昭和二十五年
痩せし夢道置ききて築地銀座は汗 古沢太穂 捲かるる鴎
痩せし師の枕頭に汗罪科めく 松崎鉄之介
癌患者訪ふ汗をもて身を鎧ひ 相馬遷子 雪嶺
白皙の鼻汗ばみて子等遊べり 山口誓子
百仏を撮るに百拝 汗したたる 伊丹三樹彦
百姓の広き背中や汗流る 高野素十
百態の人の一人は汗拭けり 林翔
盆すぎの万の燈籠汗地獄 角川源義
盆僧の汗芳しく来たりけり 草間時彦 櫻山
盗汗冷ゆ化性のものに圧されゐし 相馬遷子 山河
目にはひる汗はこぶしでぬぐふのみ 長谷川素逝 砲車
目の窪になほも生きんとして汗溜め 岸田稚魚 雁渡し
相摶てる吾子を汗垂れて見てゐるなり 加藤秋邨
眉たわみ麗貌汗をちりばめぬ 日野草城
真黒き汗帽燈の下塗りつぶす 西東三鬼
眦を汗わたりゆく飴湯かな 阿波野青畝
眼に汗や火山の赫き襞なだれ 大野林火 雪華 昭和三十四年
眼のきれいな汗の老婆や母在さば 中村草田男
眼の大きな汗かき男の漫画終わる 金子兜太
眼澄む犬馬は騎士の汗の伴 中村草田男
睾丸の汗かいて居るあはれ也 正岡子規 汗
石に沁む石工の汗や蝉時雨 日野草城
石仏に雲累々と汗落す 古舘曹人 能登の蛙
石舞台遊ぶ額に汗見せず 平畑静塔
砲の辺に叱咤され兵汗垂らし 伊丹三樹彦
砲車はをどり砲手は汗を地におとし 長谷川素逝 砲車
硫黄臭塔婆塚汗とめどなし 佐藤鬼房
硫黄臭浴みの肌の汗噴けり 能村登四郎
磨崖大仏の膝下に汗ぬぐふ 鷹羽狩行
祗園会や女ざかりの汗見事 日野草城
神の愛にも似て限りなき汗よ 林翔
神父の汗どつと惜しげもなし場末 平畑静塔
秋の汗ひとをくびきりし気の疲れ 日野草城
秋扇となりて汗の句あらはれぬ 加藤秋邨
秋涼し寝汗もなくて昼寝ざめ 日野草城
税吏汗し教師金なし笑ひあふ 加藤秋邨
種採つて束の間の汗愉しみぬ 岡本眸
稽古場の面をかぶれば汗臭き 正岡子規 汗
積まれ乾けり嘗て淋漓の汗の石 林翔 和紙
窓一つ涼し汗牛充棟裡 阿波野青畝
端役にて汗を殺すといふことも 藤田湘子
笈摺に洗ひて落ちぬ汗もあり 後藤比奈夫
笈摺の文字も朱印も汗透す 後藤比奈夫
算機鳴り勤労の汗面に満つ 日野草城
総身の汗を脱ぐなりシャツを腹ぎ 鷹羽狩行
緑光へはりつく汗の裸形の細き祷り 赤尾兜子 蛇
縁厚き眼鏡してをり汗と光る 篠原梵 年々去来の花 皿
縞帳の黄が訴ふる苦か汗か 大野林火 飛花集 昭和四十四年
罐焚の首ふりて汗ふり落す 加藤秋邨
罪消ゆる日ありや囚衣に汗の塩 津田清子 礼拝
罪深き京の女や綺羅の汗 正岡子規 汗
羅に汗も見せずよ来て坐る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
美しきものにも汗の引くおもひ 後藤比奈夫
美しき五月の汗を拭はずに 鷹羽狩行
美しく小鼻に汗をとゞめたる 高浜年尾
老の汗夕焼さめて来りけり 松村蒼石 寒鶯抄
老人の汗たまりたる眼窩かな 草間時彦 櫻山
老母の視野 朦朧 そこへ汗の胡坐 伊丹三樹彦
老皺に真幸く現ず夏の汗 三橋敏雄
老身に泌みし汗や輝かぬ 相生垣瓜人 負暄
老車夫の汗を憐む酒手哉 正岡子規 汗
老農の陳情われも汗したたる 伊丹三樹彦
耕すや天より汗を賜りて 細谷源二 砂金帯
肉食つて汗拭きて消ゆ脇役者 能村登四郎
背の窪をさぐりすべりの汗ありし 林翔
胸に掌に歩兵はあごの汗おとす 長谷川素逝 砲車
胸の上に毛布たくめて汗しゐしか 篠原梵 年々去来の花 皿
胸の汗カンテラの灯に鏡なす 山口青邨
胸の汗冷えて遠くが見えはじむ 岡本眸
胸の汗拭くまうしろに柱立つ 岡本眸
胸の汗真青白夜の稲妻か 加藤秋邨
胸板を汗の流るるわかめ汁 細見綾子
腕の汗触れ合ひバスの扉しまらず 右城暮石 句集外 昭和三十一年
腕の腹汗ばみゐるにこだはり書く 篠原梵 年々去来の花 皿
腕ひろげ放つ狐臭の夜の汗 三橋敏雄
腰撓め踏絵見し腋汗走る 小林康治 玄霜
膚しろき少女も汗によごれそむ 山口誓子
臍凹め汗溜めて世を罵るや 小林康治 玄霜
興奮のすぐ汗ばみて恥しく 星野立子
舌頭に千転するや汗の玉 正岡子規 汗
舞扇たたむ玉の汗ただひとつぶ 山口青邨
芋団子汗の童べ膝に肩に 細谷源二 砂金帯
芒野へ山襞汗の如く垂れ 野見山朱鳥 曼珠沙華
芦の香の汗したまひし老母かな永田耕衣
花の墓前にしばらくは汗のまま 飯田龍太
花木槿美作に来て汗白し 森澄雄
若き母汗腋の下乳房の下 中村草田男
若者の汗が肥料やキャベツ巻く 西東三鬼
若者の汗の流るる焙炉かな 高野素十
若者の汗は透明稲の風 草間時彦 中年
若者の汗旺んなる力業 日野草城
若者や汗の顔セ笑みほぐし 星野立子
英霊車子が母に教ふ汗しつつ 加藤秋邨
茫として女の汗や仙洞御所 雨滴集 星野麥丘人
草の宿汗かきたまふ仏あり 山口青邨
草取の汗に衰ふ髪の嵩 岡本眸
草田男つぶやき誓子独語す汗の黙 加藤秋邨
草苅の汗眼に入れば日がいびつ 細谷源二 砂金帯
荒草を薙ぎゆく汗の女脛(はぎ) 佐藤鬼房
荵摺我旅衣汗くさし 正岡子規 汗
菅刈と同じからざる汗垂るる 斎藤玄 雁道
菅刈のめげぬ汗噴き出づるかな 齋藤玄 飛雪
著たきりの死装束や汗は急き 三橋敏雄
葛の葉に働く汗をふりこぼす 富安風生
蒼き寡婦つめたき汗をわきのした 日野草城
薄暑の汗頸おおう髪今日刈らな 古沢太穂 三十代
薔薇かかへきし汗をとるわれの前 大野林火 雪華 昭和三十五年
蚊の口もまじりて赤き汗疣哉 正岡子規 汗
蝦夷の奥珈琲もとめ額の汗角川源義
蝸牛も食ひきと汗にめつむりき 加藤秋邨
蟻地獄抗へば侏儒に似て汗す 小林康治 四季貧窮
血を採らる快感に汗してゐたり 能村登四郎
血を止めんと軍医は汗を地におとす 長谷川素逝 砲車
血族(みうち)に見ざる一重瞼の汗重きを 中村草田男
行共にして若き尼汗見せず 右城暮石 上下
行末や額せまくして汗たるゝ 岸田稚魚 雁渡し
行末や額狭くして汗たるる 岸田稚魚 負け犬
行水や再び汗の細工事 正岡子規 行水
被爆者忌脱ぐ汗のシヤツ裏返る 三橋敏雄
西の密寺の飲真天道汗の童 金子兜太
西方に新月生き残りしは汗す 大野林火 雪華 昭和三十五年
覚めてすぐ戦争を思ふ鼻の汗 加藤秋邨
言葉つまる心の隙に汗ありて 林翔 和紙
詩三千汗くさく薬くさく酒くさし 中村草田男
諂つても生きねばならぬ汗噴き出す 小林康治 四季貧窮
豚の餌煮る乳房の汗のほとばしり 岸田稚魚 負け犬
象使ひ高きに汗をしたゝらし 渡邊白泉
貝をむく汗の口辺法師蝉 古沢太穂 三十代
貧しさも汗もこぶしをもつてぬぐふ 有馬朗人 母国
貧に暇なし夏シヤツは日々汗にほはす 松崎鉄之介
貧農の汗玉なして夕餐摂る 飯田蛇笏 霊芝
賭博の座夜は汗して病むばかり 佐藤鬼房
赤い部屋が車窓とび過ぐ汗の日暮れ 金子兜太
足るを知らずたれかれとなく汗臭き 鷹羽狩行
踊り子のうすら汗してにほひをり 森澄雄
踊笠うしろに脱ぎし汗男 百合山羽公 寒雁
踏む蹄しばしば相触れ汗の馬 中村草田男
身から出てあまり清らに盆の汗 上田五千石 天路
身を起すとき全身の汗流る 山口誓子
身二つとなりたる汗の美しき 野見山朱鳥 曼珠沙華
輜重らの汗砲弾の箱を割る 長谷川素逝 砲車
返り花の白さ汗してゐたりけり 右城暮石 句集外 昭和十九年
透明な外国人の汗見つつ 中村草田男
遅々と船団脱糞のまも汗垂れて 佐藤鬼房
過ぎ去りし汗の季節のなつかしく 波多野爽波 鋪道の花
道化師の種明しして汗見せず 鷹羽狩行
遠足に農夫汗拭く刻賜る 上田五千石『田園』補遺
選句すてゝしたゝる汗に切籠見る 渡邊水巴 富士
遽かの暑美人の汗に眼をとどむ 日野草城
野に臥して汗同臭の麦刈女 飯田龍太
野馬追武者兜の汗は拭はざり 松崎鉄之介
金借るべう汗しまはりし身の疲れ 「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
金借るべう汗しまわりし身の疲れ 石塚友二 方寸虚実
金策の日も夜も汗の胸抱いて 小林康治 四季貧窮
金銭に怒れる汗を土に垂る 西東三鬼
金餓鬼と見るか書を売る汗の日々 伊丹三樹彦
金魚売露地深く来て汗拭ふ 加藤秋邨
金魚玉夜の軽雷に汗ばめり 大野林火 海門 昭和十二年
釘づけに病むにあらねど汗しづか 野見山朱鳥 愁絶
鉄塔下遅々と過ぎ来し朝の汗 右城暮石 声と声
鉄打つて胸の厚みに汗噴けり 佐藤鬼房
鉄斎へ汗念力の膝がしら 加藤秋邨
錦着て牛の汗かく祭りかな 正岡子規 祭
鍛造の地ひびき汗の腿張つて 佐藤鬼房
鍬の柄土間に汗かき梅雨に入る 富安風生
鐘撞いて男ひと日の汗拭ふ 原裕 青垣
長門本逐うて汗の眼すずやけき 原裕 葦牙
闘ふ汗怠ける汗天ただ高し 加藤秋邨
陳情の徒労の汗を駅に拭く 相馬遷子 山国
陽炎や嫁ぎ汗ばみ謎もなし 加藤秋邨
雀班より汗湧く少女運動会 草間時彦
雑閙のお閻魔さまへ汗かきに 山口青邨
難波橋汗光る馬鞭摶たれ 伊丹三樹彦
霊験や善男善女汗まみれ 右城暮石 句集外 昭和五十三年
青年逝きぬその父の和顔の汗 日野草城
青竹の匂ひ青年の汗の匂ひ 大野林火 白幡南町 昭和三十年
青萱をびつしり負ひし汗の顔 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
青葦原汗だくだくの鼠と会う 金子兜太
青麦に青き穂が出て汗稚し(太郎一年生) 細見綾子
静脈の黒さ汗の手吊革に 石塚友二 方寸虚実
面上に汗のあまねき漢かな 日野草城
面除れば淋漓と汗し兵の眉宇 伊丹三樹彦
革椅子に汗冷えて見る火消壷 松村蒼石 雁
頑躯汗すこやかあだをうたでやまじ 長谷川素逝 砲車
頭掻けば洗はぬ日数の汗にほふ 篠原梵 年々去来の花 中空
額に汗の俥夫と 額に朱の母子と 伊丹三樹彦
額の汗顎の汗恋おそるべし 加藤秋邨
顔の汗大きてのひらに一掃す 加藤秋邨
顔寄せてみな親しき人や汗ばみて 山口青邨
顔振つて汗散らし行く青芒 右城暮石 天水
食べた後の顔になりゆく汗さまざま 中村草田男
飲食に腋下汗ばむ柿の花 岡本眸
餞別に汗衫をもらふ殘暑哉 正岡子規 残暑
馬の股白く汗しぬ軍の馬 山口誓子
馬の背のしとどの汗を掻き落す 山口誓子
馬顔を横にふりつつ汗払ふ 中村草田男
髪の奥から奥からの妻の汗 中村草田男
鬼事逃げる汗の小鬼に皆舌出し 中村草田男
鬼剣舞灯に跳躍の汗も飛び 能村登四郎
鬼来迎汗の亡者のでづつぱり 松崎鉄之介
魂も汗を噴くちふ噴くならむ 相生垣瓜人 明治草
魔性棲む余地なき汗をふりこぼす 岡本眸
鯉山の飛沫か汗か鉾の衆 能村登四郎
鶏走る早さや汗の老婆行く 中村草田男
麦刈女汗に張る目の位けるとも 大野林火 雪華 昭和三十六年
麦秋や農婦胸より汗を出す 細見綾子
麦背負ひ智が土にやけ汗にとけ 飯田龍太
麦藁帽杭に被せて汗拭ふ 右城暮石 句集外 昭和四十九年
黄の色の汗修道尼日本人 右城暮石 上下
黒く涼し聖女の祈り汗し見ゆ 小林康治 玄霜
黙々と地下の群集汗を垂る 西東三鬼
黙々と憩ひ黙々と汗し行く 相馬遷子 山国
黙祷や汗なめて礼す被爆時報 小林康治 玄霜
鼻梁汗かく原爆祭うつろなり 原裕 葦牙

以上


by 575fudemakase | 2017-05-17 08:03 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)
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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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