泉  の俳句

泉  の俳句


*ろうかんの泉を鳴らす大柄杓(黒羽大雄寺) 角川源義 『秋燕』
「おはよう」を胸が噴き出す泉の辺 林翔 和紙
あたたかき血を思ひけり初泉 石田勝彦
いづみ千年湛ふ白きは姫辛夷 及川貞 夕焼
いのち短かし泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥
いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥
うつくしく泉毒なる螢かな 飯田蛇笏 霊芝
およがせて洗ふ産着や泉鳴る 高橋せをち
おろがみて神の泉をすくひ飲む 山田健弘
かゞまりて水皺したしき泉かな 日野草城「花氷」
かぎりなく泉の涌ける園の奥失はれたる時を埋めむ 大野誠夫
かなかなや泉に浸けし力杖 村越化石
くらがりのそぼふる泉ありしかな 小池文子
クレヨン一本曾我兄弟の泉の中 川崎展宏
けまん草森は泉の音に酔ひ 河野南畦 湖の森
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
この樹の根泉の下に濡れをらむ 鈴木鷹夫 千年
この先に泉があると言って帰る 池田澄子 たましいの話
コムパクト泉の空を捉へけり 加藤三七子
こんこんと泉湧きをり茂の忌 岩永成史
こんこんと夫の笑ひし泉かな 小池文子 巴里蕭条
さし入れし手を押し上げて泉湧く 高橋悦男
サングラス泉をいよよ深くせり 水原秋桜子
サングラス泉をいよゝ深くせり 水原秋桜子
シスターの声降りそそぐ泉かな 市堀玉宗(栴檀)
しろがねの器ならべつ泉殿 松瀬青々
しんしんと峡星満ちぬ泉の上 羽部洞然
しんしんと泉わきけり閑子鳥 閑古鳥 正岡子規
しんしんと日を押し上げてゐる泉 仲村青彦
スイスは朝の青さ漲り泉湧く 有働亨 汐路
せきれいに夕あかりして山泉 飯田蛇笏 山廬集
セルロイド製たり泉に沈みても 加倉井秋を 午後の窓
たちよれるものの朝影山泉 飯田蛇笏 椿花集
ちひさくも絶え間なく声泉汲む 中田剛 珠樹以後
つまだちの白樺ばかり夜の泉 上田五千石 森林
てのひらは茶碗のはじめ泉汲む 小檜山繁子
どか~と泉の深さ底磊塊 西山泊雲 泊雲句集
とくとくの泉に 鳴らす 跪坐の喉 伊丹三樹彦 一存在
なづな咲き泉細音に墓の裏 野澤節子 黄 炎
にぎやかに大根車来る泉 安田晃子
はしりもて杓しりぞきし泉かな 阿波野青畝
はつ蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり 山口青邨
ひざまづき海女目を洗ふ泉かな 上野泰 春潮
ピレーネエの風の泉は氷遠に鳴る 石原八束 人とその影
マイナス充電中か泉への水 加藤郁乎
まくなぎが泉暗しと囁けり 鈴木鷹夫 渚通り
まひる野の泉鶺鴒が知れるのみ 栗生純夫 科野路
まれに人まれに犬来る泉かな 小林たけし
みえてゐる枕一つや泉殿 加藤三七子
みづかきのあるごと掬ふ泉かな 石田京子
み仏と泉と庇同じうす 森田峠
もとからの泉を活かす開拓よ 茨木和生 木の國
もの音の芯はしぐれの泉かな 秋山牧車
もりあがる泉の歓喜汲みて飲む 平井照敏 天上大風
ゆるやかに光琳模様泉より 宮津昭彦
よりかゝる柱映れり泉殿 池内たけし
らふそくの炎伸びたり泉殿 小川軽舟
ラムネ湧く園遊会の泉哉 尾崎紅葉
りんだうを摘みて泉の辺に出づる 畠山譲二
わが影を掬ひ飲みする泉かな 井上美也
わが影を金のふちどる泉かな 朱鳥
わが子欲し泉内より水ひらく 山上樹実雄
わたなかの島に泉の噴き止まず 品川鈴子
愛情は泉のごとし毛絲編む 山口波津女 良人
握手いづれも大き掌ばかり泉湧く 野沢節子 雪しろ
握手するやうに泉に手をひたす 岩岡中正
暗きもの泉に棲めり娶りけり 河原枇杷男
闇美し泉美し夏祓 素十
伊豆の夜の泉か脈かききすます 八木三日女
一会とは泉の如し虹立てり 佐藤美恵子
一人ゐて泉のほとり風つどふ 相馬遷子
一点の渦震へをる泉かな 阿波野青畝
一燈をもらひ祭の森の泉 村越化石
一本の蝋燃しつつ妻も吾も暗き泉を聴くごとくゐる 宮柊二
茨の実泉に映りかつこぼる 水原秋桜子
芋茎洗ふ泉に水輪ひろげつつ 手島靖一
芋洗ふひとりが占めて野の泉 黒坂紫陽子
羽子一つ落ちて泉水氷りゐぬ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雲の頭に晩夏の茜泉暮る 川村紫陽
雲裏に毅き富士ある泉(わきま)かな 中戸川朝人 尋声
駅春夜喫泉の辺に移民の荷 馬場駿吉
越にこもる低き泉の子守唄 豊口陽子
園林に仏陀泉を秘めたまひし 長谷川かな女 雨 月
炎天の中充ちてくる泉かな 中山砂光子 『納沙布』
炎天の道行く泉あれば飲み 相馬遷子 雪嶺
遠くから空の鳴り出す泉かな 秋山夢
汚染源探す人あり泉に在り 香西照雄
鴬にくつくつ笑う泉あり 西東三鬼
黄落や泉のこゑのあるばかり 角川春樹
温むなき砂丘の泉砂を噴く 山口草堂
音ひとつ立ててをりたる泉かな 石田郷子
音一つたててをりたる泉かな 石田 郷子
夏手袋望郷のいづみ揺れやまず 柴田白葉女 花寂び 以後
家の泉鶯ひそむ緑映す 香西照雄 対話
火の山へ旅す泉に手を浸けて 津田清子 礼 拝
火を焚きて美しく立つ泉番 平畑静塔
花アカシヤ泉のこゑののぼりゆく 石田勝彦
花火垂る夜の泉が声あげて 小林康治 玄霜
花終りぬ泉いよいよ黝し 栗生純夫 科野路
花楓われを泉へいざなへり 星野麦丘人
花鋏夜の泉へとしづめたし 朝倉和江
蚊帳の中月光溜り泉なす 白松達夫 『初松籟』
蛾の羽をうかべてゐたる泉かな 夏井いつき
蛾の眠る真昼睡たげに泉の芯 田川飛旅子 花文字
海近き泉に馬の来てをりぬ 藤木倶子
海神の膂力あまりて噴く泉 林翔 和紙
海底の泉のむかしむかしかな 夏石番矢
崖(はけ)泉玉とたばしる太郎杉(偕楽園) 角川源義 『神々の宴』
垣結ひの蕗葉それ浮く泉かな 金尾梅の門 古志の歌
鴨足草雨に濁らぬ泉かな 飯田蛇笏
萱わけて馬の来てをる泉かな 秋櫻子
刈草屑のかたより浮ける泉かな 西山泊雲 泊雲
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 山廬集
缶詰を泉に囲ふ郁子の花 篠田悌二郎
観音の御掌のうちより泉湧く 渡辺 恭子
閑古沁む泉一物もまとはねば 栗生純夫 科野路
丸太担いで通つても泉に映る 加倉井秋を
丸太擔いで通つても泉に映る 加倉井秋を
巌より湧く泉には齢なし 津田清子 二人称
眼つむれば泉の誘ひひたすらなる 多佳子
眼の奥に白旗ばかり涸れた泉 吉浜稲子
眼まで青き魚棲む野の泉 永方裕子
岩かどに飾かゝれる泉かな 比叡 野村泊月
岩つばめ古き泉を見にゆかむ 山田みづえ
岩穿ちけるを昔に泉かな 尾崎迷堂 孤輪
顔つけしあとの泉の明るしや 七菜子
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
顔ゆれて血よりつめたく泉澄む 鷲谷七菜子
顔映りにくき泉の風を知る 森田峠 逆瀬川以後
顔浸けしあとの泉の明るしや 鷲谷七菜子
顔濡らすも幸かアルプの泉喫む 有働亨 汐路
亀鳴くや西湖うつしのお泉水 竹中碧水史
掬ぶとし深さありける泉かな 尾崎迷堂 孤輪
掬ぶよりはや歯にひびく泉かな 芭蕉
掬ぶより早歯にひびく泉かな 松尾芭蕉
鞠外れてざぶと浮へる泉かな 尾崎紅葉
喫泉が婆にとびつく彼岸かな 秋元不死男
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔
喫泉に顔打たす人を裏切るべく 隈治人
喫泉に丈足らぬ子よ桃ひらく 村上 光子
喫泉に鼻濡らしゆく末黒かな 吉本伊智朗
喫泉に百万石の蝉しぐれ 田中英子
喫泉の把手が敏感少女等に 右城暮石
喫泉の穂の定まらず日焼の子 真田 清見
喫泉の老ゆるを知らぬ苑の薔薇 伊藤敬子
喫泉は舌をくすぐる薔薇の昼 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
喫泉や風をはらみて楡大樹 八幡城太郎
喫泉を丸太囲ひにうららけし 上田日差子
喫泉飲む疲れて黒き鳥となり 西東三鬼
朽ち柵を覗くや法の泉澄む 鍵和田[ゆう]子 未来図
汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉 飯田蛇笏 山廬集
汲みに出て初東雲の泉かな 田中兆木
牛の貌泉を暗くしたりけり 大串章
牛去りし泉に赤し九輪草 相馬遷子 山国
牛蒡一束泉に座る年の暮 原田喬
居待月泉かがやきそめにけり 山田梵雨
競馬負け顔ぢゅう濡らし喫泉のむ 津田清子 二人称
胸冷ゆるまで湧泉の奥を見る 千代田葛彦
極彩スカート幾重にも巻き泉汲む 吉野義子
近よらば泉の声の遠去らむ 玄
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな 原石鼎
薫風の泉なるべし大榎 本宮鼎三
啓示乞ふ泉の面にくちづけて 上田五千石 田園
詣る子に智慧の泉といふが湧く 舘野翔鶴
結ぶより早歯にひびく泉かな 松尾芭蕉
血圧高し泉の底をのぞき込む 田川飛旅子 花文字
月よさの泉あふれつ夏落莱 内藤吐天
月夜の森を縷をなし出づる泉の水 内藤吐天 鳴海抄
犬が飲む月下の泉溢れをり 移公子
犬が来て泉を飲めり移る鵙 田川飛旅子
原爆忌ごぼりごぼりと泉の穂 加藤楸邨
原爆日ごぼりごぼりと泉の穂 加藤楸邨
言霊の茂吉のくにの泉かな 成田千空「白光」
呼吸あらく地を抱き泉口づけに 栗生純夫
己が顔映りて暗き泉かな 比叡 野村泊月
己れ恃む泉の中に五指ひらき 岡本眸
故郷や暗きより湧く泉ゆゑ 小檜山繁子「流水」
午過ぎの濃き木影なる泉かな 尾崎迷堂 孤輪
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
御簾垂れて人ありやなし泉殿 柳沢白川
光の矢折々飛ばし泉湧く 深見けん二 日月
口づけて山の泉の硬きかな 鈴木梅代
口やれば泉の霊気おのづから 町田しげき
広き葉のかさなり映る泉かな 吉岡禅寺洞
紅つつじ咲ききはまれる庭泉 柴田白葉女 『夕浪』
荒れなぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏
荒れ凪ぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏
降り出づる泉のほとりすぐに濡れ 栗生純夫 科野路
降り出でて泉にはなき雨の音 栗生純夫 科野路
降誕祭ルルドの泉病む娘に欲し 成瀬桜桃子
香を放つ大樹いづれや夜の泉 堀口星眠 営巣期
香椎宮にゆかりの泉甕に満つ 竹田守貞子
刻々と天日くらきいづみかな 川端茅舎
刻々と天日くらき泉かな 茅舎
黒百合や高嶺の泉飛騨に落つ 堀口星眠 営巣期
黒蜻蛉浮木に群るゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
今も尚湧き継ぐ泉芙美子の忌 水野征男
今日も描く泉に雲の変りけり 長谷川かな女 雨 月
昏らみたる泉にひたすほたるかご 飯田蛇笏 春蘭
根白草摘みに靄立つ泉まで 古川芋蔓
紺青の蟹のさみしき泉かな 阿波野青畝
紺切濃く底に沈める泉かな 西山泊雲 泊雲句集
妻の母独り居泉に胡瓜浮べ 香西照雄 対話
妻詣る鈴を泉にゐて待てり 中戸川朝人 星辰
菜洗ひがひろげて山の泉暮る 宮坂静生 山開
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實 少長集
柵されて飲水といふ泉湧く 小林勇二
笹子鳴く泉に声を試すごと 羽部洞然
山雲のかゞやき垂れし泉かな 石橋辰之助 山暦
山吹の移りて黄なる泉さヘ 服部嵐雪
山泉つるくさはやく黄葉せり 飯田蛇笏 春蘭
山泉橿鳥蔓の実を啄めり 飯田蛇笏
山泉杜若実を古るほとりかな 飯田蛇笏 山廬集
山男老いては集ふ泉あり 有働 亨
仔鹿ゐて泉に青き闇溜まる 野沢節子 八朶集以後
仔鹿ゐて泉に青き夕来たる 野澤節子 『駿河蘭』
使ふ人ある泉の辺うつくしき 布施伊夜子(鷹)
四阿は風の十字路泉噴く 田中水桜
子ども失せ天神さまの泉かな 飯島晴子
子のなき村の露の泉を汲みて去る 老川敏彦
子蜥蜴に泉がわかつ瑠璃の色 三谷昭 獣身
思ひ出すどこの泉といふことなく 加倉井秋を 『午後の窓』
思ひ出すには泉が大きく過ぎる 加倉井秋を
枝ひくく橿鳥とまる泉かな 飯田蛇笏 春蘭
枝映る樹に懸巣鳴く泉かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
死火山麓泉の声の子守唄 西東三鬼
詩はひとりひとりよ泉覗きゆく 村越化石
詩人と俳人相寄る春泉湧く音に 加藤知世子 花寂び
次の子に帽子あづけて泉呑む 江本英一
辞書の名の苑や泉や春を待つ 藤村克明
鹿杖に翁倚らるゝ泉かな 尾崎迷堂 孤輪
実となれる梨の根株の泉かな 沢木欣一
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 大野林火
若き歌唱いよよ泉をあふれしむ 木下夕爾
若菜摘みいくたり寄るや田の泉 下村ひろし
手鏡を汚してしまふ泉かな 櫂未知子 蒙古斑
周辺がありて泉が昏れきりぬ 加倉井秋を 午後の窓
宗祇の名遺す泉へ細き露地 塚本京子
修羅の貌うつし泉を暗くする 小林康治 玄霜
終生まぶしきもの女人ぞと泉奏づ 中村草田男
臭木の実泉が川になるところ 辻桃子
充電のやうに泉に手を浸す 猪俣千代子
宿とればすぐ泉べに炊ぐ娘よ 爽雨
出土クルスまろばせ祀る泉の辺 下村ひろし 西陲集
春の月酒の泉にうかびけり 尾崎紅葉
春の泉汲むとて乙女ひざまづく 内藤吐天 鳴海抄
春泉かそけき飢ゑは恋に似て 鍵和田[ゆう]子
春泉にかがめば過去の顔々々 橋本榮治 逆旅
春泉もの結ひし藁輪の形に 大岳水一路
春泉を飲みきれず去る森深く 今瀬剛一
春遅し泉の末の倒れ木も 石田波郷
春夜浴泉翼のごとく腕ひろげ 山口青邨
春来つつあり喫泉の噴き強し 館岡沙緻
初蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏
初泉おのづからなる踏処あり 綾部仁喜 樸簡
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 草田男
傷兵と子に噴泉の水は涸れ 岸風三楼 往来
少年の鱗のひかる泉かな 近三津子
松籟の泉の底に起りけり 牧野春駒
笑ひてもひびくばかりの夜の泉 加倉井秋を 『午後の窓』
城郭都市あちこちに湧く泉かな 上原瑞子 『燈台草』
常のことの泉に洗ふ若菜かな 尾崎迷堂 孤輪
譲られて譲る檜山の青泉 影島智子
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
唇つけし泉息つくひまもなし 橋本美代子
唇を濡らす泉やa・i・u・e・o 高澤晶子
寝ても思ふ砂丘にとめし泉の色 有働亨 汐路
心身の離合泉のこゑ聴けば 下村槐太 天涯
新蕎麦や床几のはしに泉鳴り 井沢正江
新樹光泉あふれてより昏し 鷲谷七菜子 雨 月
森の奥泉ひかりて聖夜待つ 古賀まり子 降誕歌
森の泉汲みゆく乙女ばかりなり 内藤吐天 鳴海抄
榛の枝を山蛤おつ泉かな 飯田蛇笏 霊芝
浸す手に水の刃立つる泉かな 井沢正江
深山雨に蕗ふか~と泉かな 飯田蛇笏 霊芝
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
身のなかを北より泉ながれけむ 河原枇杷男 密
身を延べて泉は近し烏蛇 豊口陽子
震災忌老婆喫泉抱へ飲む 岡本 眸
人が飲み羊が飲みし泉かな 下村梅子
人声のして泉湧く町の端 桂信子 黄 瀬
人葬りきし手すすげと泉鳴る 井沢正江
人避けて来しが泉のさびしさは 大島民郎
諏訪口は泉の色の暮春かな 直人
吹き降りの夜が明け泉滾々と 栗生純夫 科野路
吹奏や黄泉は泉のはずもなく 増田まさみ
水の中水を突き上げ泉湧く 岡田日郎
水晶の如くに湧きて泉かな 内田 じすけ
水底にものの双葉や初泉 綾部仁喜 樸簡
水飯の残りを捨てる泉かな 水飯 正岡子規
水面おだやかならず泉が湧きつづけ 津田清子 礼 拝
杉山中何も映さず泉湧く 野澤節子 遠い橋
世阿弥の手巌の真下より泉 中田剛 珠樹以後
星ぞらへこと~と湧く泉かな 萩原麦草
星凍る泉端より揺れやみて 藤原たかを
棲むものの孤独月牙の泉あり 稲畑汀子
生はひとたび一日は泉湧くままに 斎藤玄 雁道
生前も死後も泉へ水飲みに 中村 苑子
聖泉の結氷に突く双手かな 井上弘美
聖泉の水岐れては芹の水 下村ひろし 西陲集
聖泉の湧きつつ溜むる落椿 下村ひろし 西陲集
聖童女くちづけ去りし泉かな 大橋敦子
青ぶだう庭に泉をもつ一戸 つじ加代子
青松葉見えつつ沈む泉哉 正岡子規
青松葉見えつゝ沈む泉哉 泉 正岡子規
青竹を編みて泉の蓋となす 森田 峠
青梅のはねて泛く葉や夕泉 飯田蛇笏 山廬集
青葉木菟泉溢れて灯の圏外へ 川村紫陽
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規
赤き馬車泉に掬める少女待つ 林翔 和紙
切れるまで神の泉に指浸す 村松 いく
折れ曲り泉に沿ひて手摺かな 西山泊雲 泊雲句集
折れ曲る手摺泉に浮き沈み 西山泊雲 泊雲句集
絶間なき泉や家齢三百年 加藤知世子 花寂び
絶間なく砂踊らせて湧く泉 了戒 純
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋桜子
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉荐りにとび交ふ映る泉かな 西山泊雲 泊雲句集
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
泉ありいづれの堂も遠からず 森田峠 三角屋根
泉ありピカドンを子に説明す 池田澄子 たましいの話
泉あり遠き神代に恋ありき 山本歩禅
泉あり子にピカドンを説明す 池田澄子「たましいの話」
泉から巣箱が三つ見えにけり 大串章 百鳥 以後
泉くむ歯朶の青きに胸染めて 清水 節子
泉こんこん母思ひ出すこと易し 橋本美代子
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泉と別れ一樹なき谿直登す 有働亨 汐路
泉なほ湧く天領の廃銀山 品川鈴子
泉に映るおのれ厭ひて歩き出す 平間真木子「洙」
泉に手浸し炎天うるほへり 黒坂綾子 『黙契の虹』
泉に浸け少年の脛短か 上田五千石
泉に棲みつき退屈のあめんぼう 津田清子 二人称
泉に灯夕暮はイエスの匂ひ 伊藤希眸
泉に来て花瓣をそしる烏かな 高橋 龍
泉ぬくしといひつゝ女葱洗ふ 村田八重
泉のごとくよき詩をわれに湧かしめよ 木下夕爾
泉のなかの瑞の言の葉円き力 平井さち子 完流
泉のむ父祖の大地にひざまづき 大串 章
泉の底に一本の匙夏了る 飯島晴子
泉の辺後れ来しものらつどふなり 小林康治
泉の辺後れ来し者らつどふなり 小林康治 玄霜
泉の辺驢馬を荷車より離す 山崎ひさを
泉はなきかカイバル越えの弱法師 加藤楸邨「吹越」
泉へと桃李二人を従へて 平野周子 銀化
泉へのかぐはしき闇夜鶯 小池文子
泉への崖鷹の巣の下を落つ 石田波郷
泉への道や全き落し角 大石悦子 百花
泉への道火を振つてくれにけり 茨木和生 往馬
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷
泉への路おくれゆくやすけさよ 石田波郷
泉へ垂らし足裏を暗く映らしむ 田川飛旅子
泉へ沈む常緑樹の葉へ子守唄 田川飛旅子 花文字
泉ほどさみしきものを知らざりき 夏井いつき
泉まで遡る蝌蚪黒緊り 中戸川朝人 残心
泉まで歩める影の深からむ 小林康治
泉まで木々の影ふむ独歩の忌 三田きえ子
泉まで来て読む母の手紙かな 村上喜代子 『雪降れ降れ』
泉みて子育て観音乳房おす 和知喜八 同齢
泉やさし旅果ての掌は泳がせて 小林康治
泉ゆたか揺れ揺れ育つ名無し草 鍵和田[ゆう]子 未来図
泉より刈り来て茅の輪結ひにけり 根岸 善雄
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子
泉より石輝ける二月かな 大岳水一路
泉より転生の鳥翔てりけり 村越化石
泉一井戸二の島の大南風 中戸川朝人 星辰
泉飲む仔馬に風の茨垂れ 飯田龍太
泉飲む子は真みどりに透きとほり 吉原文音
泉屋の跡に落葉が彩重ね 田中英子
泉屋の壓(ママ)に蚊の鳴く夕哉 蚊 正岡子規
泉干る女足音多きゆえ 萩原麦草 麦嵐
泉掬う生命とくとく脈打ちて 大塚梅子
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
泉掬むひかりを咽喉にはしらせて 平井照敏 天上大風
泉掬む山人面上げにけり 河野静雲 閻魔
泉喫み終るまで峰いくつか澄む 加藤知世子 花寂び
泉喫み虹ほどの刻充ちゐたり 加藤知世子 花寂び
泉吸ひ紅髪を獅子のごとぬらす 古舘曹人 砂の音
泉吸ふ草木と同じ生を享け 平畑静塔
泉汲むや胸を離れし首飾 猪俣千代子
泉汲む綱引張るや*すがる 八木林之介 青霞集
泉汲む手鍋を置いてありしかな 茨木和生 倭
泉水になじまぬ蝌蚪も泳ぐなり 樋笠文
泉水に顔をうつすや花曇り 飯田蛇笏 山廬集
泉水に山女も活きて鮎の宿 滝井孝作 浮寝鳥
泉水に落葉のたまる小舟哉 落葉 正岡子規
泉水へと人没し去る葎かな 高浜虚子
泉成るわれ純粋を主宰して 加藤郁乎
泉石のあきらけくある雨月かな 大橋櫻坡子 雨月
泉石をはづるる滝や青嵐 飯田蛇笏 山廬集
泉石を外づれる滝や青嵐 飯田蛇笏 霊芝
泉聴く面ざし深くなりゐたり 大石悦子 群萌
泉底にしきなす木の葉木の実かな 飯田蛇笏 山廬集
泉殿に朗詠うたふ声更けぬ 泉殿 正岡子規
泉殿映せる水の古色なる 石川星水女
泉殿鏡面消えし古鏡吊る 橋本鶏二
泉殿水かげろふも庇内 高木晴子 花 季
泉殿西日となりて下りにけり 吉岡禅寺洞
泉殿文房四宝備へたる 二塚元子「かつらぎ選集」
泉噴き萬餘の霊に献水す 下村ひろし 西陲集
泉噴く水輪の影は光るもの 勝俣泰享
泉噴く千万の音退けつ 中村汀女
泉噴く罔象の女神顕ちたまへ 津田清子
泉辺に棲み荒星を殖やさむか 栗林千津
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 中村草田男
泉辺の家消えさうな子を産んで 飯島晴子
泉辺の石われ去らば蟹の乗る 村越化石
泉辺の母子訪ふや旅つぎ足して 平井さち子 完流
泉鳴る修道院は眠るによし 平畑静塔
泉湧くくちづけ誰もはばからず 井沢正江
泉湧くらしや佇てるも跼めるも 山本歩禅
泉湧く山家を捨てて町に住む 神谷美枝子
泉湧く太古の砂を踊らせて 安斉君子
泉湧く朴の花影片寄せず 羽部洞然
泉渾々飯島晴子自裁せり 鈴木鷹夫
浅間嶺に唇ひびかせて泉呑む 宮坂静生 雹
洗ひ積む大根いづみ溢れをり 及川貞 夕焼
銭透ける愛の泉や小鳥来る 楠見稲子
早乙女のすぎし泉のそば通る 百合山羽公 故園
早乙女の笠や泉のうへを過ぎ 百合山羽公 故園
相ひびかふ智恵子泉と落し水 西本一都 景色
草の葉に朝の泉が匂へるよ 河合凱夫 藤の実
草原の径は泉の森へ消ゆ 山田弘子 懐
草泉鳴く虫ありてながれけり 飯田蛇笏
草泉夕やみ退けば昏るるのみ 岡本眸
草濡れてはたして泉湧くところ 井沢正江
蒼然と旅人を待つ泉かな 大木あまり 雲の塔
足浸ける泉徹底して透けり 津田清子 礼 拝
体内に泉あるごと愛すなり 辻美奈子
台風待つ一燭泉めく暗さ 友岡子郷 遠方
大いなる泉を控へ酒煮かな 石井露月
大勢で来てもさびしき泉かな 折笠悦子
大旱や泥泉地獄ふつふつと 誓子
鷹の巣やひとり泉のゆらめける 山上樹実雄
啄木鳥に泉の水輪絶ゆるなし 水原秋桜子
沢瀉に泉の蜻蛉生れけり 根岸善雄
濁りゆく泉のそばのからすうり 中田剛 珠樹
谷口の木の葉の八重に泉かな 松瀬青々
谷底の癩者の家の泉など 香西照雄 対話
探梅の女湧き泉湧きつゞく 横山白虹
短日の泉と暮るる虚空かな 廣瀬町子
地の凍てを流るる泉遠からず 鈴木詮子
地べたより生えし石仏鳴る泉 河合凱夫 飛礫
池泉めぐる老松の影苔の花 田口一穂
中年の顔奪はるる泉かな 角川源義
中年の恋の暗さよ草泉 三谷昭 獣身
昼くらく歯朶も映らぬ泉かな 五十嵐播水
朝の裸泉のごとし青年立つ 島津 亮
朝日まだ山を出でざる泉かな 茨木和生 往馬
町びとの麦茶を冷す泉あり 石川桂郎 高蘆
蝶がゐて草の泉を傷つける 石原八束 風霜記
長虫を追うてあがりぬ泉殿 吉岡禅寺洞
鳥が来る泉の鹿は花うるし 能村登四郎
鳥たちのための泉に口づけぬ 野中亮介
鳥を飼い胸に泉をひろげている 前田秀子
椎の根に杓渡しある泉かな 比叡 野村泊月
槻の根の泉や美濃の一の宮 鈴木しげ子
蔦幾条枝よりたるゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
嬬恋の字の一つの泉汲む 文挟夫佐恵
底ひ鳴る平出泉ゆ田水引く 宮坂静生 青胡桃
底砂の綾目さやかに泉かな 松根東洋城(渋柿)
笛吹くや泉は夢の国のもの 龍胆 長谷川かな女
天つ日のふとかげりたる泉かな 富安風生
天正の世より存する泉あり 田中蛇々子
田園広し青き唇もて泉吸ふ 齋藤玄 『玄』
登山馬人乗せしまま泉飲む 山口波津女
凍る沼凍らぬ泉道は奥へ 森川光郎
島人の永久に掬むべき泉かな 上野泰(春潮)
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
橡の実の打ちて泉の面ゆがむ 前田鶴子
薙ぎ草のおちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 山廬集
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 霊芝
南半球泉に映る星の房 橋本美代
二人してしづかに泉にごしけり 川崎展宏
二人してしづかに泉よごしけり 川崎展宏(1927-)
虹見うしなふ道、泉涸るる道、みな海辺の墓地に終れる 塚本邦雄
日ざす喫泉濡れけるままに髑髏消ゆ 磯貝碧蹄館
日本遠し落葉の下に泉生き 有働亨 汐路
日矢とても底にとどかぬ泉かな 檜紀代
日矢とどく聖泉春を奏でをり 秋月すが子
日矢の中泉にひたす櫛ちさき 鷲谷七菜子 黄 炎
如月花ひらくや古泉湛然として魚子遊ぶ 日夏耿之介 婆羅門俳
波郷忌の泉に生きて水馬 向笠和子
馬は未明の泉のむ鈴りんりんと 加藤知世子
馬も飲む泉にどかと小日輪 村越化石 山國抄
白き矢の浮ぶ泉や百合の花 会津八一
白雲の滑り尽せり青泉 関森勝夫
白雲の限りなく過ぐ野の泉 近藤一鴻
白濁は泉より出で天高し 西東三鬼
白藤のほとりと落ちし泉かな 柴田白葉女
肌沈め野分の泉底明るむ 筒井節子
抜けし歯を捨てに泉を探しに行く 秋元不死男
飯籠の次第に枕む泉かな 比叡 野村泊月
被爆時報平和の泉いま激す 下村ひろし 西陲集
避暑浴泉つひの床寝の乙女どち 橋本鶏二
百合影す径を泉へ行かんとす 大野林火
百代の過客行かしめ泉鳴る 渡辺恭子
百日紅の午後盛り上る泉の芯 田川飛旅子 花文字
不意に合ふ泉の脈とわが脈と 中嶋秀子
浮き出でし鯰をかしや泉殿 楠目橙黄子
父たる希ひ泉へ飴の紙泛かす 磯貝碧蹄館 握手
父の後姿に残る戦争泉の辺 鈴木六林男
撫子の咲き澄む泉汲みにけり 中村 四峰
風に映え泉におそき山ざくら 飯田蛇笏 春蘭
物売りのきて蹤きまとふ泉の辺 稲垣きくの 黄 瀬
物落し易し泉のほとりでは 加倉井秋を 『午後の窓』
噴きやまぬ*かがいの森の青泉 毛塚静枝
焚火明り遠ちの泉をまづとらふ 栗生純夫 科野路
穂を揺りて泉は夜も充たすものを 中戸川朝人 残心
母の忌の蟹みつつ汲む泉かな 福田甲子雄
母はわが心の泉リラ芽ぶく 古賀まり子
母子像となり喫泉をかわるがわる 八木三日女
母老いぬ地図に泉の記号欲し 江里昭彦
抱き上げて駅の喫泉子に与ふ 河野南畦 『風の岬』
砲音の響く村なり泉湧く 上西啓三
帽燈や坑の泉は声あげて 小林康治
朴の花いづみ炎の如くにて 茨木和生 三輪崎
鱒秤る分銅蒼し山いづみ 伊藤白潮
又一人来て口づける泉かな 都甲久美子
末期来と露の泉を汲みにけり 栗生純夫 科野路
万年筆の中に泉やさくらの芽 正木ゆう子
満月の泉飲む胃の形見え 今瀬剛一
満山のみどりを籠めて泉湧く 有働亨 汐路
未婚なり掌をついて濁す泉の底 中嶋秀子
無花果や雨余の泉に落ちず熟る 飯田蛇笏 山廬集
無碍の詩こそ泉うちより水拳 友岡子郷 遠方
名にしおふ除病延寿の泉飲む 竹内鈴子
綿虫をはづませてゐる泉かな きちせ・あや
木の蔭の巌の蔭なる泉哉 星野麦人
木雫の間遠となりし泉かな 西山泊雲 泊雲句集
木雫の吹き飛んで来る泉かな 茨木和生 往馬
木蓮や泉石の幽今春に 尾崎迷堂 孤輪
目慣るればほのぼの碧き泉かな 五十嵐播水
勿忘草穂高のゆらぐ泉あり 澤田 緑生
夜の泉男寝落つや奏でいづ 殿村莵絲子 牡 丹
野の風塵穢れざるもの泉のみ 栗生純夫 科野路
幽霊の立ち寄りさうな泉かな 東野鷹志
有刺線砂丘の泉囲みけり 高繁泰治郎
湧き止まぬ泉なりけり橡のもと 高浜年尾
湧き立ちて静けさつのる泉かな 深見けん二 日月
湧くや泉白扇の影のありどころ 村上鬼城
湧ける音輪となり泉湧きゐたり 村越化石
夕づくや桑摘の背に泉鳴り 馬場移公子
夕明り水輪のみゆる泉かな 草城
揚羽より軽し泉に憩ひ来て 神尾久美子 桐の木
洋傘ついて泉がすこしも親しめず 加倉井秋を 午後の窓
羊群の泉濁して立ち去れり 太田土男
陽関の涯て泉あり寄れば逃ぐ 石原八束
浴泉のエメラルド色花曇 桂信子 樹影
雷蝶の身を立て直す泉かな 大木あまり 雲の塔
落盤葬終えごくごくと泉呑む 鷹島牧二
里芋を泉に洗ふ乙女かな 岩井久美恵
立ちどまりたるのみ泉辺を過ぎぬ 森田峠 避暑散歩
立ち去るや泉の音の背にさやか 内藤吐天
立てば郭公跼みて泉湧く音す 千代田葛彦
立上り泉へ落す咳ひとつ 田川飛旅子 花文字
竜胆に霧ふる泉澄みにけり 西島麦南
旅の泉に手洗ひをるや妻いかに 小林康治 玄霜
旅人の影を重ねし泉かな 成瀬正俊(ホトトギス)
旅人の額あかるき泉かな 小川軽舟
旅人の手を浸しゆく泉あり 丸山 麻子
猟人が示しし泉つめたしや 成田千空 地霊
緑わく夏山陰の泉かな 蓼太
緑蔭のいづみの草にしづむ花 石原舟月 山鵲
緑蔭の奥かがやきて泉湧く 内藤吐天 鳴海抄
緑泉に老の手浸す沁むことょ 山口草堂
林中にわが泉あり初茜 小澤 實
霊泉に散る風花のうすみどり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
霊泉の味の濃かりし照紅葉 安藤 節
連歌師の名を負ふ泉柳散る 久保田珠生
連翹の花にとどろくむなぞこに浄く不断のわが泉あり 山田あき
露のスラムの夜が昼となる泉の声 赤城さかえ句集
老鴬の啼くねに鎮む山泉 飯田蛇笏 椿花集
老農は鎌で泉を飲みにけり 安井浩司 汝と我
和へくれぬ泉に浸し置きし独活を 大野林火
蕨丈け泉がうつす雲の冷え 西村公鳳
腕時計外す泉の底得んと 河野南畦 『風の岬』
凭れゐて謫居の如し泉殿 木村蕪城
曼珠沙華智慧の泉の澄むところ 飯田龍太
孵で水の泉に遇ひぬ旅の果 沢木欣一
寫り来し泉はすでに夜のもの 中原道夫
巒霽れてちる花に汲む泉かな 飯田蛇笏 山廬集
毬つく子二人泉に春兆す 町田しげき
祀りある泉の神も門邊なる 橋本鶏二
罐詰を泉に囲ふ郁子の花 篠田悌二郎
蓼は穂に霧ふる泉澄みにけり 西島麥南
蜻蛉生る朝の泉は息ひそめ 山田弘子 螢川
螢とぶや泉石ひろき庭の面 高橋淡路女 梶の葉
袂なきことつまらなき泉かな 正木ゆう子
迸らずに滾るる泉を子安神 平井さち子 鷹日和
邯鄲や叢中泉あるごとし 羽部洞然
霙れ空泉のいろに雲剥がれ 石原八束 空の渚
靄明りして十三夜泉鳴る 吉野義子
饒舌の彼奴を泉の辺に置くな 吉田未灰
鶺鴒の叩く泉石序ありけり 篠塚しげる


泉 補遺

「おはよう」を胸が噴き出す泉の辺 林翔 和紙
「お日さん」と日を称ぶ子等と泉辺に 中村草田男
あたたかき血を思ひけり初泉 石田勝彦 百千
いづみ千年湛ふ白きは姫辛夷 及川貞 夕焼
いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥 天馬
うたかたの命泉に充満す 中村草田男
うつくしく泉毒なる螢かな 飯田蛇笏 霊芝
うつぶせに落椿泛く山泉 飯田蛇笏 白嶽
うつむきて尾のある形泉飲む 右城暮石 虻峠
うつろひて蝋燭すすむ泉かな 阿波野青畝
うなだれの馬待つ 廃墟や 泉や 秋 伊丹三樹彦
おほばこの花は穂をなし泉の辺 清崎敏郎
お大師のお杖の泉みづすまし 飴山實 句集外
かがまりて水皺したしき泉かな 日野草城
かつて矢尻を研ぎし泉の神隠し 橋閒石 風景
からまつのうつる泉に雷匂ふ 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
かりそめに板屋かけたる泉かな 阿波野青畝
くもりなき秋の泉を誰も汲まず 上田五千石『天路』補遺
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
この冬のもうゆげを吐く泉かな 阿波野青畝
しぐれより霰となりし山泉 森澄雄
しづめたる食器泉の辺に読める 橋本多佳子
しんしんと泉わきけり閑子鳥 正岡子規 閑古鳥
せきれいに夕あかりして山泉 飯田蛇笏 山廬集
せきれいの叩く泉石ひきしまり 阿波野青畝
そのことば森の泉ですすぎ来よ 平井照敏
そよ風やしきりに湧ける夕泉 日野草城
たぎりたぎる坩堝のさまの泉口 中村草田男
たちよれるものの朝影山泉 飯田蛇笏 椿花集
つくばねや泉のごとく竹酒鳴る 角川源義
つまだちの白樺ばかり夜の泉 上田五千石 森林
とくとくと泉脈うち月くらし 鷲谷七菜子 銃身
とくとくの泉に 鳴らす 跪坐の喉 伊丹三樹彦
どの石も坐昧にかなふ泉かな 阿波野青畝
なやらひの夕影おとす泉坂 角川源義
のぞきこむ寒の泉の抜け道を 平井照敏
はしりもて杓しりぞきし泉かな 阿波野青畝
はしる鮠こごみ見るなり泉殿 阿波野青畝
はつあきを石田いづみに逝かれけり 山田みづえ 草譜
はつ蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏 春蘭
はなやかに秋空うつる山泉 飯田蛇笏 春蘭
はなやかに秋空ふかき山泉 飯田蛇笏 心像
ひざまづき海女目を洗ふ泉かな 上野泰 春潮
ひとり奏でてわがきれぎれの遠泉 加藤秋邨
まんさくや鯉重なりて山泉 森澄雄
みほとけに泉水の冬青みどろ 伊丹三樹彦
もりあがる泉の歓喜汲みて飲む 平井照敏 天上大風
やはらかく擁く唇に泉噴く 飯田龍太
やみがての夕立の泉くみにけり 高野素十
ゆるき歩の父子登攀者に泉の穂 能村登四郎
ろろろろと喫泉噴かす厄日かな 上田五千石『琥珀』補遺
わが影を金のふちどる泉かな 野見山朱鳥 天馬
わが掬めば泉涸るゝか罪数多 鈴木真砂女 夏帯
アルミ貨透く噴泉の底 浮浪の午后 伊丹三樹彦
ゲーテもここにシルレルもここに泉湧く 山口青邨
サングラス泉をいよよ深くせり 水原秋櫻子 晩華
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり 山口青邨
一とめぐりして三十歩泉かな 高野素十
一と枝の葉を千切りあひ泉に投ぐ 中村草田男
一人ゐて泉のほとり風つどふ 相馬遷子 山国
一掬の泉のほかは考へず 鷹羽狩行
一族の墓乾く泉遠く遠く 橋本多佳子
一泉一石昔ながらの桜散る 内藤鳴雪
一点の渦震へをる泉あり 阿波野青畝
一王国寒の泉を掌に掬ぶ 角川源義
三本の杉を神とす泉湧き 山口青邨
不語よ泉辺妻の「結び笑」 中村草田男
中年の顔奪はるる泉かな 角川源義
五指五箇の意思もつ泉に漬かり 橋閒石 無刻
亡きひとの数この家の自流泉 山口誓子
人影を許さず湛ふ泉かな 清崎敏郎
人栖めば泉のきめも密になる 右城暮石 句集外 昭和三十五年
人獣くはしく彫りし泉かな 阿波野青畝
今日生くる不思議泉の湧く不思議 林翔
仔鹿ゐて泉に青き闇溜まる 野澤節子 八朶集以後
仲間さがす 森の泉で遅れをとり 伊丹三樹彦
何に赴く泉の水の奔り出す 石田波郷
何もかも丸太のままや泉殿 阿波野青畝
修羅の貌うつし泉を暗くする 小林康治 玄霜
傾く日雪の下なる泉鳴り 相馬遷子 雪嶺
光りひろげ雪の泉の朝日子よ 大野林火 白幡南町 昭和三十年
児が掬ふ泉菲力な父の前 佐藤鬼房
円き泉二十年来一宣言 中村草田男
円匙・鶴嘴泉辺の葛無慙なり 能村登四郎
冬の旅喫泉あふれゐるを飲む 橋本多佳子
冬の森旧知のごとく泉噴く 相馬遷子 雪嶺
冬も湧くたしかな泉夜明け近し 佐藤鬼房
冬も湧く泉を山の音としぬ 鷹羽狩行
冬寧く故旧の泉聴くばかり 上田五千石『琥珀』補遺
冬帽が涙の泉泣きつづく 平井照敏 天上大風
冬木の芽泉汲みたる夢より醒め 藤田湘子
冬眠の夢の端に鳴る山泉 上田五千石『天路』補遺
冷泉にしぼりし夕オル眼をひやす 山口誓子
冷泉に浸しハンカチうすきかな 右城暮石 句集外 昭和三十九年
冷泉の魚下界より吾は来し 山口誓子
冷泉を温泉と呼ぶ恵方村 阿波野青畝
凝然と葛餅はあり自流泉 山口誓子
凧のうなり山中の泉へかよふ 大野林火 冬青集 雨夜抄
初日射す嬰児泉の如く泣く 有馬朗人 母国
初泉五穀作りを安らげぬ 平畑静塔
初風の海や棕櫚ある泉澄む 中村草田男
刻々と天日くらきいづみかな 川端茅舎
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
千年の泉ごぼりとたなごころ 加藤秋邨
口つけて泉うごかす小太陽 秋元不死男
口つけて秋意こもごも山泉 飯田龍太
古る嶺もふるき泉も雪ふれり 飯田龍太
古泉水居沈むいもり動くなし 松本たかし
吾子の上妻が言ふ間も泉湧く 中村草田男
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
命の過半は過ぎぬ泉と日へ祈る 中村草田男
哄笑す泉に浸けし顔あげて 岡本眸
唇歯没して馬や音なく泉吸ふ 中村草田男
啄木鳥に泉の水輪絶ゆるなし 水原秋櫻子 玄魚
啓示乞ふ泉の面にくちづけて 上田五千石 田園
喫泉に口あまやかす雪のなか 桂信子 女身
喫泉に爪立ち童女 晩夏の森 伊丹三樹彦
喫泉に顔伏せてゐて花菜照 岡本眸
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔 和紙
喫泉のピュッと頬打ち 震災忌 伊丹三樹彦
喫泉の女うかがふ仔蟷螂 燕雀 星野麥丘人
喫泉の把手が敏感少女等に 右城暮石 上下
喫泉をむさぼりて子の鼻濡れぬ 日野草城
喫泉飲む疲れて黒き鳥となり 西東三鬼
噴泉の裸女の羞恥に雪墜るか 下村槐太 光背
国有林泉は杣が私す 鷹羽狩行
地にちらばり蟻が泉の辺にも来る 右城暮石 句集外 昭和三十年
地に出づる音よろこべる泉かな 野見山朱鳥 荊冠
地獄とは泉源のこと丑湯治 阿波野青畝
増えも減りもせずに泉の湧き流る 右城暮石 句集外 昭和三十四年
夏浅しラジウム泉に臍下透け 上田五千石 琥珀
夕影のしぬびやかなる泉かな 日野草城
夕日低し冬喫泉に身を折れば 岡本眸
夕明り水輪の見ゆる泉かな 日野草城
夕立に濁らぬ泉町中に 右城暮石 句集外 昭和三十九年
夕蝉よ泉いちにち水を練り 鷹羽狩行
夕闇 閉門 音して受洗の泉は在る 伊丹三樹彦
夜の厨こほろぎが涌く泉なす 山口誓子
夜の噴泉わが恋畢りたりと彳つ 安住敦
大年の注連新しき杣泉 森澄雄
大御心斯くありとこそ泉涌く 阿波野青畝
大旱や泥泉地獄ふつふつと 山口誓子
大杉の根を抱き込みし泉かな 右城暮石 天水
大石臼のさまの底より湧く泉 中村草田男
大風の藪如月の泉坂 岡井省二 山色
天つ日のふとかげりたる泉かな 富安風生
天も地も泉のなかに声はして 高屋窓秋
天下第三の泉の水の茶を賞づる 大野林火 月魄集 昭和五十五年
天日の徹る冬日の山泉 飯田蛇笏 家郷の霧
天日の遮ぎられをる泉かな 清崎敏郎
天日をしづめし泉龍の玉 森澄雄
天日無冠仰ぎて詩友と泉辺に 中村草田男
女は身重たし泉飲む時も 右城暮石 句集外 昭和四十一年
女人浴泉百囀りの影すなり 松本たかし
女来て男来て泉あふれをり 村山故郷
妻と来て泉つめたし土の岸 中村草田男
妻の母独り居泉に胡瓜浮べ 香西照雄 対話
子ども失せ天神さまの泉かな 飯島晴子
子七人捨てて去る母泉辺に 金子兜太
守一の泉なるべし納戸に日 佐藤鬼房
安産なれ大泉中小泉涌く 中村草田男
家の泉鶯ひそむ緑映す 香西照雄 対話
家より十歩泉のありて朝の蝉 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
寒明けの幣の浸りし泉かな 飯田蛇笏 山廬集
少女に夏泉のやうな鏡持ち 岡本眸
少年の去りし石踏み泉汲む 石田波郷
尾長翔ぶ波郷の泉訪ふわれに 藤田湘子 神楽
屋上の噴泉は凍のもどらずに 山口誓子
山ふかくあふるる泉櫻ちる 飯田蛇笏 家郷の霧
山椒喰に明けぬとしるす浴泉記 水原秋櫻子 緑雲
山泉つるくさはやく黄葉せり 飯田蛇笏 春蘭
山泉冬日くまなくさしにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
山泉常山木の揚羽しばらくは 飯田蛇笏 家郷の霧
山泉杜若実を古るほとりかな 飯田蛇笏 霊芝
山泉橿鳥蔓の実を啄めり 飯田蛇笏 椿花集
山泉汲むや朝の日幾すぢも 佐藤鬼房
山泉顔をうつして掬みにけり 森澄雄
山深く輪飾のある泉かな 能村登四郎
山眠る西日泉の眼と別れ 飯田龍太
山行へ玉の泉を喫し去る 上田五千石『天路』補遺
岳麓は泉わくとこ農易し 高浜年尾
島人の永久に掬むべき泉かな 上野泰
崖泉玉とたばしる太郎杉 角川源義
嶺に旭のまろぶよ森の凍泉 角川源義
巒霽れてちる花に汲む泉かな 飯田蛇笏 霊芝
川音を遠ざかり来て泉の声 右城暮石 句集外 昭和三十六年
差入れて直指水底わが泉 中村草田男
己れ恃む泉の中に五指ひらき 岡本眸
帰り来ずや亡父母山より泉より 中村草田男
庭石の泉の如くしぐれけり 阿波野青畝
延命の泉とくとく掌に受けん 角川源義
引きすてし芹泛く雪の泉かな 飯田蛇笏 心像
心身の離合泉のこゑ聴けば 下村槐太 天涯
思ひ出の誰もすこやか草泉 岡本眸
悪占はためらひ沈む泉かな 阿波野青畝
手をやれば笊を蹶りをる泉かな 阿波野青畝
抜けし歯を捨てに泉を探しに行く 秋元不死男
拷問の池泉残れり冬の蝶 松崎鉄之介
指入れて齢の沁みる山泉 秋元不死男
掬はれてなほ湧きつづく山泉 鷹羽狩行
掬びたる指々にこゑ山泉 鷹羽狩行
握手いづれも大き掌ばかり泉湧く 野澤節子 雪しろ
文芸の人等会する泉かな 山口青邨
新樹光泉あふれてより昏し 鷲谷七菜子 銃身
旅の泉に手洗ひをるや妻いかに 小林康治 玄霜
旅三日泉を慕ふこころ湧く 上田五千石『田園』補遺
旅人に中世の町泉わき 山口青邨
旅人よ 憩えと 泉の岩煙草 伊丹三樹彦
日のはだら泉より川躍り出づ 中村草田男
日向に金泉日陰に銀泉茅舎遥か 中村草田男
日盛りの間歇泉の一つ噴く 高野素十
日矢の中泉にひたす櫛ちさき 鷲谷七菜子 黄炎
日脚伸ぶ椨の大樹の根に泉 松崎鉄之介
旧泉や彼方は蒼く此処は透き 中村草田男
早乙女のすぎし泉のそば通る 百合山羽公 故園
早乙女の笠や泉のうへを過ぎ 百合山羽公 故園
昏さたのし泉の底を手にさぐる 大野林火 雪華 昭和三十三年
昏らみたる泉にひたすほたるかご 飯田蛇笏 春蘭
春の駅喫泉の穂のいとけなし 西東三鬼
春夜浴泉翼のごとく腕ひろげ 山口青邨
春山に間歇泉の今噴くと 高野素十
春泉に立ち春滝は見にゆかず 安住敦
春遅し泉の末の倒れ木も 石田波郷
昼のおぼろ泉を出でて水奔る 西東三鬼
智恵子の泉凍る前にて滴れり 能村登四郎
曼珠沙華咲ける泉も雲の中 野見山朱鳥 荊冠
曼珠沙華智慧の泉の澄むところ 飯田龍太
月出でて泉の空に航路あり 廣瀬直人
朝かげに水蜘蛛はしる秋泉 飯田龍太
朝日さす秋の泉に跼みけり 飯田蛇笏 春蘭
朦朧の身を運びたる泉かな 波多野爽波
木々枯れぬあつき泉は野に湧ける 山口誓子
木の実落つ泉の空の深き日ぞ 石田勝彦 雙杵
木は蟠根竹は錯節泉平ら 中村草田男
木もれ日を遊ばせてゐる泉かな 佐藤鬼房
束ね髪泉に梳きし櫛目なる 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
松の葉散れり泉水の青き空 尾崎放哉 大正時代
松立てて鯉にぎにぎし門泉 森澄雄
松風のひびく泉の底に貌 桂信子「草影」以後
林檎浮く無雑作 泉番は少女 伊丹三樹彦
枝ひくく橿鳥とまる泉かな 飯田蛇笏 春蘭
枯山に薬また飲む泉の音 飯田龍太
枯葎とくとくと鳴る坂泉 角川源義
枯野鴉が涸れし泉の水飲みに 安住敦
桜濃に雨乞ひ泉錆ふかし 角川源義
梅恨あり駅の喫泉に口し彳ち 安住敦
梅雨の喫泉渇き求むにやや低し 草間時彦 中年
森の中酒の泉あり遅桜 山口青邨
森の喫泉詩を泛べては唇づける 能村登四郎
棲むものの孤独月牙の泉あり 稲畑汀子
椿林不増不滅の泉湧く 山口誓子
椿落ち眼ざむる泉波郷の日 角川源義
極月の泉夕日を得てゐたり 廣瀬直人 帰路
榛の枝を山蛤おつ泉かな 飯田蛇笏 霊芝
樹々とその日輪うつる泉かな 山口誓子
死の灰や砂噴き上げて春の泉 西東三鬼
死火山麓泉の声の子守唄 西東三鬼
残雪や狩くら神の泉鳴る 角川源義
水なき喫泉落葉了へたる一樹下に 草間時彦 中年
水の穂をみてぐらと揺り泉湧く 中村草田男
水を読むかに泉辺の老耽読 中村草田男
水打つて泉湧寺道朝のひま 村山故郷
水温む泉に遠き汲置きも 鷹羽狩行
水面おだやかならず泉が湧きつづけ 津田清子 礼拝
水飯の残りを捨てる泉かな 正岡子規 水飯
水飲めと 泉映りの微笑神父 伊丹三樹彦
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 霊芝
汚染源探す人あり泉に在り 香西照雄 素心
汝が病めば泉は雪に埋れゆく 野見山朱鳥 運命
汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉 飯田蛇笏 霊芝
沙の膚小石の堆(つかさ)泉湧く 中村草田男
沙丘の泉小鳥の浴み尾もひろげて 中村草田男
沙羅散つて雨の上りし宝泉寺 燕雀 星野麥丘人
泉、夜が朝となりてあふるる 荻原井泉水
泉ありあかとき人ひとり居る 荻原井泉水
泉ありこの神のあり古事記あり 高野素十
泉あり少年鮒を釣りゐたり 細見綾子
泉あり腹這うて口つくべし 荻原井泉水
泉あれば拝みて憩ふ白遍路 大野林火 飛花集 昭和四十八年
泉あれば熱ありて鴬の国 鷹羽狩行
泉くむ人の婆娑たる秋の影 飯田蛇笏 春蘭
泉くもり父情がきざむ水の皺 能村登四郎
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泉にしばし馬蹄のしぶき犬のしぶき 中村草田男
泉にふかく二犬身を漬くぶつちがひ 中村草田男
泉に入れ胸腹熱き碧蜥蜴 橋本多佳子
泉に棲みつき退屈のあめんぼう 津田清子
泉に浸け少年の脛短か 上田五千石『田園』補遺
泉に笑声本来潔くば誰洗はむ 中村草田男
泉のつめたさ掌の上掌の上かそかなり 赤尾兜子 蛇
泉の中歯締め唇締め乙女佇つ 中村草田男
泉の円一方切つて流れ出す 橋本多佳子
泉の声期して歩めば到るものよ 中村草田男
泉の底に一本の匙夏了る 飯島晴子
泉の底明し顔浸け眼ひらけば 橋本多佳子
泉の底明王怒るさびしさよ 角川源義
泉の水泡いきづき豊かなる日なり 中村草田男
泉の濯ぎ女襞ふかぶかと片水輪 中村草田男
泉の穂咽喉の奥うつごぼごぼと 加藤秋邨
泉の穂族が授けし暇なる 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
泉の詩火薬の匂ひほのかにす 高屋窓秋
泉の辺後れ来し者らつどふなり 小林康治 玄霜
泉の辺水気の中に常若草 中村草田男
泉の際一個老醜の顔うかべ 平畑静塔
泉の面場(もにわ)かぎりつつ泉波 中村草田男
泉の面月訪ひ月色しのび寄る 中村草田男
泉の音つゝましき故世に貽る 飯田龍太
泉の音山姥恋し母恋し 中村草田男
泉はなきかカイバル越えの弱法師 加藤秋邨
泉は涸れず倒れ木のまま冬を越す 大野林火 青水輪 昭和二十六年
泉への横径に入りかへり来ず 上田五千石『田園』補遺
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷
泉へ誦する「父母忌みの歌」父母恋し 中村草田男
泉まで幼霊に手をひかれゆく 佐藤鬼房
泉やさし旅果ての掌は泳がせて 小林康治 玄霜
泉より数歩たちまち烈日下 岡本眸
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子 礼拝
泉わく苔むす熔岩の間より 高浜年尾
泉をば夜とならしめて闇ぞ護る 中村草田男
泉一つ水楢林こゑもなし 石田波郷
泉中水湧く水玉もぶれあひ 中村草田男
泉久し呪はんとして遂には祝ぐ 中村草田男
泉亭へつながる小径富貴草 飴山實 句集外
泉光りて走せ去る少女を祝福す 草間時彦 中年
泉原や皆夕ぐれの菌山 高野素十
泉吸ひ紅髪を獅子のごとぬらす 古舘曹人 砂の音
泉吸ふ草木と同じ生を享け 平畑静塔
泉喫んでにんげん駱駝顔同じ 加藤秋邨
泉噴くいま天山は雪解にて 加藤秋邨
泉噴く光りを肩の麦袋 橋閒石 風景
泉噴く火の山の胎とほり来て 津田清子
泉声の絶えしほとりや寒施行 水原秋櫻子 殉教
泉声の訥々たるをもてなさる 上田五千石『琥珀』補遺
泉声や小梨の花もたそがれて 相馬遷子 山国
泉声をしづめて澄みに徹しけり 上田五千石『琥珀』補遺
泉変らず集へるものも変らずに 大野林火 飛花集 昭和四十四年
泉守る蛇いて東一華咲く 金子兜太
泉居てこの山裾に荒星呼ぶ 金子兜太
泉底にしきなす木の葉木の実かな 飯田蛇笏 山廬集
泉底見ゆ蟹とはなるる泡ひとつぶ 加藤秋邨
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
泉掬むひかりを咽喉にはしらせて 平井照敏 天上大風
泉映りを はばかる齢か 竹の秋 伊丹三樹彦
泉春の音にこどもの影揺れて 大野林火 青水輪 昭和二十六年
泉暗し古き難破の落椿 三橋敏雄
泉殿に朗詠うたふ声更けぬ 正岡子規 泉殿
泉水に顔をうつすや花曇り 飯田蛇笏 山廬集
泉水の雪やむ蘚に波うてり 飯田蛇笏 心像
泉汲む指のこごゑはほぐれゆき 平畑静塔
泉湧きあふる歓喜は静かならず 橋本多佳子
泉湧きゆがみて戻る鱒の列 水原秋櫻子 晩華
泉湧くかぎり信心絶ゆるなし 上田五千石『天路』補遺
泉湧く乳房ビキニにかくれたり 平畑静塔
泉湧く冬山赤面症の君に 金子兜太
泉湧く周辺嗅ぎて猟の犬 右城暮石 句集外 昭和三十一年
泉湧く女峰の萱の小春かな 水原秋櫻子 葛飾
泉湧く暗さいつまで見てゐても 岡本眸
泉湧く暗さイエスは十字架に 野見山朱鳥 荊冠
泉湧く青銅古き大鉢に 中村汀女
泉滾々悔いても消ゆる罪ならず 鈴木真砂女 夏帯
泉滾々許されしごと佇ち上る 鈴木真砂女 夏帯
泉澄みて水働きの底を見す 上田五千石『琥珀』補遺
泉番そこはかとなく涙ぐむ 平畑静塔
泉番歩みてものをこそ思へ 平畑静塔
泉白し木の間高みを山越人 中村草田男
泉石と 冷え通いあう 孤座の膝 伊丹三樹彦
泉石にきて禽せはし秋の影 飯田蛇笏 春蘭
泉石の同工異曲水すまし 百合山羽公 樂土
泉石の在処かなしと栖み給ひき 伊丹三樹彦
泉石をはづるる滝や青嵐 飯田蛇笏 山廬集
泉石を外づれる滝や青嵐 飯田蛇笏 霊芝
泉見て鯉になりたき老の顔 森澄雄
泉辺に日のありどころ妻問へり 中村草田男
泉辺に発意か無為か莚小屋 中村草田男
泉辺に雪の通ひ路けふつかず 上田五千石『琥珀』補遺
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 中村草田男
泉辺の家消えさうな子を産んで 飯島晴子
泉辺は色なき風の湧きどころ 上田五千石『琥珀』補遺
泉辺は藤蔓掛けて直き木々 中村草田男
泉辺へ生きものすべて独り来る 中村草田男
泉辺やここらの父母の足の迹 中村草田男
泉辺や一遍路過ぎそれつきり 岡本眸
泉辺や報命のごと風到る 中村草田男
泉辺や声音ふくらに乙女どち 上田五千石『琥珀』補遺
泉透く 青かまきりを頭まで沈め 伊丹三樹彦
泉面に湧き到るものやはらかし 上田五千石『田園』補遺
泉飲む仔馬に風の茨垂れ 飯田龍太
泉鳴る修道院は眠るによし 平畑静塔
法力の泉湧かしめ蛭封ず 右城暮石 天水
洗ひ積む大根いづみ溢れをり 及川貞 夕焼
洗骨の泉にふるへ秋の蝶 飯島晴子
活眼や肉眼泉に洗ひつる 中村草田男
浦上や涙喜捨して泉湧く 平畑静塔
浴泉の腕は翼花の雲 山口青邨
浴泉やひた降る雪を唇に吸ひ 松本たかし
浴泉や夜のまはりに林檎の実 森澄雄
浴泉や青嵐して箒川 水原秋櫻子 葛飾
海神の膂力あまりて噴く泉 林翔 和紙
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
深山雨に蕗ふか~と泉かな 飯田蛇笏 霊芝
渇癒す泉に葬の顔写し 鈴木真砂女 夏帯
測量手にごして去りし泉の辺 能村登四郎
湧きゆらぐ泉が昏し大夕焼 右城暮石 句集外 昭和三十二年
湧くあたり石菖揺るる泉かな 清崎敏郎
湧く泉白布ふはふは濯ぎをり 右城暮石 句集外 昭和三十四年
湧く泉駱駝は噛みつぶすごとく喫む 加藤秋邨
湯泉の丘の頬白とまる桑の先 飯田蛇笏 椿花集
滴りは底にて泉聴いており 赤尾兜子 蛇
澄むことに一生を懸けし人の泉 中村草田男
火の山へ旅す泉に手を浸けて 津田清子 礼拝
火を焚きて美しく立つ泉番 平畑静塔
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 大野林火 青水輪 昭和二十五年
炎天の道行く泉あれば飲み 相馬遷子 雪嶺
無人とはただ己居る夕泉 中村草田男
無花果や雨余の泉に落ちず熟る 飯田蛇笏 山廬集
爛々と泉虫音にふちどられ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
爽かにたちどまりたる山泉 飯田蛇笏 家郷の霧
牛去りし泉に赤し九輪草 相馬遷子 山国
猟の音雪にきこえて山泉 飯田蛇笏 椿花集
玉鏡遺れたまへる泉かな 日野草城
琅*かんの泉を嗚らす大柄杓 角川源義
瑠璃鳥鳴くや飛泉こもごも霧となり 水原秋櫻子 旅愁
生きものの影入るるたび泉哭く 飯島晴子
生きるから水の中より泉の音 藤田湘子 てんてん
生はひとたび一日は泉湧くままに 斎藤玄 雁道
生前も死後も泉へ水飲みに 中村苑子
生家の肌夜も泉のあふるる音 香西照雄 対話
町びとの麦茶を冷す泉あり 石川桂郎 高蘆
町中や泉あふれてもの晒す 山口青邨
白桔梗の根も売りゐたり泉辺に 細見綾子
白泉のもの朽縄も唖蝉も 佐藤鬼房
白蛾寝て泉のほとり一夜泊つ 山口青邨
百合しばし消入りしわむ泉かな 阿波野青畝
百合影す径を泉へ行かんとす 大野林火 青水輪 昭和二十三年
盆過ぎし天魚ましづか村泉 岡井省二 鹿野
盗伐の斧を泉に浸けて置く 鷹羽狩行
目のあたり浴泉群女深雪晴 松本たかし
眼つむれば泉の誘ひひたすらなる 橋本多佳子
短日や泉汲まんとまづ拝し 星野立子
石泉の灼けて秋意を語らざる 阿波野青畝
砂金つきあげ突き上げて山泉 鷹羽狩行
祖父となりし掌喫泉くすぐるよ 中村草田男
秋の夜や泉のごとく酒鳴らす 角川源義
秋の暮浅溲瓶泉のこゑをなす 石田波郷
秋耕のみち通じたる山泉 飯田蛇笏 春蘭
秋耕の遠くよりきて泉掬む 飯田蛇笏 春蘭
秋蚊出て暮るゝ泉の端濡らす 小林康治 玄霜
穂芒に熱泉樋を走り漏る 松本たかし
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
競馬負け顔じゆう濡らし契泉のむ 津田清子
粉雪の眉辺泉辺哀れなり 永田耕衣
紅葉照る双つ泉を姉妹とも 上田五千石 風景
細長き泉に着きぬ父と子と 飯島晴子
紺青の蟹のさみしき泉かな 阿波野青畝
終生まぶしきもの女人ぞと泉奏づ 中村草田男
給油着陸 農耕国の喫泉飲む 伊丹三樹彦
絶えず一旦泉の面盛りあがる 中村草田男
縄文の杉に泉声すさびけり 阿波野青畝
翠光の浴泉たばる走梅雨 上田五千石『天路』補遺
老い母は噂の泉柿の秋 草間時彦 中年
老斑の手を差し入れて泉犯す 西東三鬼
老鴬の啼くねに鎮む山泉 飯田蛇笏 椿花集
聖書にもありき泉の固拳 鷹羽狩行
背籠(たんがら)山杉間の泉暗すぎる 佐藤鬼房
腹背に鵙喫泉に胸濡らす 飴山實 おりいぶ
膝つたふ静かな力泉湧く 桂信子 晩春
臘八や石泉が奏づ美妙音 村山故郷
自から泉への道栗拾ふ 平畑静塔
花アカシヤ泉のこゑののぼりゆく 石田勝彦 雙杵
花火垂る夜の泉が声あげて 小林康治 玄霜
芽吹く樹下喫泉ありて濡れどほし 岡本眸
苔厚き長枝の下の泉湧く 中村草田男
茨の実泉に映りかつこぼる 水原秋櫻子 霜林
草に湧く泉への道古く細く 右城暮石 句集外 昭和三十四年
草原の泉なりけり鳴く蛙 石塚友二 玉縄抄
草泉夕やけ退けば昏るるのみ 岡本
草泉鳴く蟲ありてながれけり 飯田蛇笏 心像
荒れなぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏 春蘭
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實 少長集
萌ゆる野の泉に杖を置かれけむ 藤田湘子 神楽
萱わけて馬の来てをる泉かな 水原秋櫻子 葛飾
萸泉への足袋 穿かす 補聴器 眼鏡不要 伊丹三樹彦
落葉ふみ泉の神の菖蒲谷 角川源義
葉桜の下の喫泉音絶えず 清崎敏郎
蓋ありて明暗わかつ泉かな 阿波野青畝
蕎麦冷す水も泉の深大寺 上田五千石『天路』補遺
薊ぽつかり泉の面を霧流れ 大野林火 雪華 昭和三十四年
薔薇投げて泉一瞬中世に 山口青邨
薙ぎ草のおちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 山廬集
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 霊芝
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
藩公の茶を佗びられし泉かな 阿波野青畝
蘇鉄めぐる泉に濡れし目鼻のまま 橋閒石 風景
蛇笏逝き蟲の音沈む山泉 秋元不死男
蛍に汲めども尽きぬ泉あり 鈴木真砂女 紫木蓮
蜑等の命と讃ふ泉かな 清崎敏郎
蜥蜴青く睦むも涸れし泉の底 橋閒石 無刻
蝉しぐれ樹々は泉石かき抱き 大野林火 冬雁 昭和二十二年
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋櫻子 蓬壺
行者宿泉に廻り甜瓜 森澄雄
裸身、巌をつたうて泉には来たり 荻原井泉水
角を追ふ野に月影の泉かな 高屋窓秋
詩の泉さらさら流る爆心地 高屋窓秋
詩心かなし泉の響滾々と 山口青邨
諏訪日は泉の色の暮春かな 廣瀬直人
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 中村草田男
諸葛泉に大根洗ひて葉を散らす 松崎鉄之介
謝すごとく膝折り泉に口つけて 鈴木真砂女 夏帯
谷底の癩者の家の泉など 香西照雄 対話
赤き馬車泉に掬める少女待つ 林翔 和紙
足浸ける泉徹底して透けり 津田清子 礼拝
透明な泉はぬくし病父に冬 飴山實 おりいぶ
過去見るかに老婆泉を長眺め 橋本多佳子
遷化てふすずしきことば泉鳴る 鷲谷七菜子 一盞
野の泉鳥わたるやと来て空し 水原秋櫻子 蘆雁
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな 原石鼎 花影
長き柄の杓ながれたる泉かな 阿波野青畝
長路来て泉さそへば足浸ける 橋本多佳子
間遠に噴く泉下闇風落ちて 鷲谷七菜子 銃身
闇美し泉美し夏祓 高野素十
隙を充たす三角泉幾沙丘 中村草田男
障子に泉の音は月になるらしく 荻原井泉水
隠し湯の跡池泉なす蝉時雨 松崎鉄之介
雀来てぬくし喫泉に石の屋根 飴山實 おりいぶ
雙燕をしのぶ信濃の浴泉記 飯田蛇笏 家郷の霧
雨のなか流離(さすら)う色の泉あり 金子兜太
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雪ちつて芹生の涵る藪泉 飯田蛇笏 心像
雪の中膏(あぶら)の如き泉かな 川端茅舎
雪の川泉のごとく湧き流る 山口青邨
雪の懸巣霊泉由来つたへけり 水原秋櫻子 殉教
雪を待つ泉一円空暗し 野澤節子 未明音
雪中の泉に真夜の冥さあり 平井照敏 天上大風
雪山の泉の鯉を苞にせる 水原秋櫻子 蓬壺
雪片蔭ふかき泉の満を持す 飯田龍太
雪解の泉飲まむとすれば天うつる 橋本多佳子
雲軽し泉の音は草透きて 草間時彦 中年
震災忌老婆喫泉抱へ飲む 岡本眸
霊池とて四方に泉湧く音よ 川端茅舎
霊泉にシヤボンつかふや明易し 前田普羅 普羅句集
霊泉に冷して酒は甘露水 上田五千石『琥珀』補遺
霊泉に鯉のけはひのして見えず 鷹羽狩行
霊泉の疑ひもなく温みけり 鷹羽狩行
霊泉や銀杏こつと落ちころげ 佐藤鬼房
霞みけり泉を抱く森ふたつ 大野林火 飛花集 昭和四十七年
霰打つ音のままなる山泉 飯田龍太
露の楽夜風に泉汲みをれば 飯田龍太
青嵐泉に似たる鏡拭く 山田みづえ 木語
青松葉見えつゝ沈む泉哉 正岡子規 泉
青梅のはねて泛く葉や夕泉 飯田蛇笏 山廬集
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規 泉
静臥の胸泉見て来し動悸せり 石田波郷
静臥飽く流泉のこゑ蜂のこゑ 橋本多佳子
音たてて泉湧くなり枯山に 水原秋櫻子 霜林
頭脳より噴上げてをる泉あり 阿波野青畝
顔ぢゆうに喫泉当つる青嵐 岡本眸
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
顔ゆれて血よりつめたく泉澄む 鷲谷七菜子 銃身
顔浸けしあとの泉の明るしや 鷲谷七菜子 黄炎
風に映え泉におそき山ざくら 飯田蛇笏 白嶽
風も記憶も亡ぶよ泉飲みすぎて 秋元不死男
風邪声とおもう泉の湧く音を 金子兜太
飛泉あり打ちてしぶける若楓 水原秋櫻子 殉教
飛泉から光風磔死の神色よ 香西照雄
飯粒(いひぼ)四五がひらききつたり家泉 中村草田男
飴なめて舌の泉よ枯るる中 鷹羽狩行
養泉寺は皐月曇りに糸すすき 佐藤鬼房
高草に雲の臭ひや湧く泉 原石鼎 花影
鱒棲まはせ神の泉の冬を涸れず 大野林火 雪華 昭和三十八年
鱒秤る分銅蒼し山いづみ 伊藤白潮
鳥が来る泉の塵は花うるし 能村登四郎
鴨足草雨に濁らぬ泉かな 飯田蛇笏 山廬集
鴬にくつくつ笑ふ泉あり 西東三鬼
黄塵や銭を泉の露店板 百合山羽公 寒雁
黄昏に似てさにあらず泉殿 阿波野青畝
黄鶺鴒泉に舞へる蛾を獲たり 水原秋櫻子 玄魚
黒土退いて白沙出でぬ新泉 中村草田男
黒富士の裾野泉に唇を触れ 鷹羽狩行
龍泉に沈めし弗貨一円貨 右城暮石 句集外 昭和四十七年
龍泉の蛇尾としてまた冬眠か 佐藤鬼房

以上

by 575fudemakase | 2017-05-17 20:11 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fudemaka57.exblog.jp/tb/26863078
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

カテゴリ

全体
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
未分類

以前の記事

2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2011年 04月

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

検索

タグ

最新の記事

冬瓜 の俳句
at 2017-05-25 06:58
新酒 の俳句
at 2017-05-25 05:41
後評(2017・5)
at 2017-05-21 03:08
蝉 の俳句
at 2017-05-21 02:44
苧 の俳句
at 2017-05-19 05:15

外部リンク

記事ランキング