稲 の俳句

稲 の俳句


*ひしこ干し稲干し風の存分に 野辺祥子 『遠野火』
いくたびも握る稲穂の重みかな 中川博秋 『加賀野』
いちめんの稲穂明りに目の馴るる 高澤良一 随笑
いつしかに稲を干す瀬や大井川 其角 俳諧撰集「有磯海」
いつの世も稲負鳥北より来 宇多喜代子
いま掛けしばかりの稲のうすみどり 宮下翠舟
いわし雲粟の垂穂の影し合ふ 藤田湘子 途上
うつむきて稲負ふ影が水辺ゆく 柴田白葉女 遠い橋
うねりゐて月の稲穂のかぎりなし 新田祐久
おぼろ夜や去年の稲づか遠近に 泉鏡花
おろおろと軽き稲穂を掌に広ぐ 山本小品
お伊勢様御稲の倉も豊の秋 阿波野青畝
お七夜の膳に稲穂の添へてあり 平山節子
お飾りの稲穂引いては雀翔つ 永岡好雄
かかし傘の月夜のかげや稲の上 飯田蛇笏 山廬集
かぐはし水うごく國原稲穣りたり 中塚一碧樓
かそけしや垂穂を垂穂うてる音 高澤良一 ももすずめ
かりますというて稲干す鳥居かな 立花北枝
かんざしの稲穂のゆるる初稽古 井口はる子
けふの菊中稲の食のうまみかな 才 麿
けふの菊中稲の飯のうまみかな 才麿
ことごとく稲の倒るる日和かな 大木あまり 火球
ことばかけては人通る稲田いちにち シヤツと雑草 栗林一石路
この国のまさをき空や二番稲 金子 九九
ごぼりとかんじき手束の稲をくくりては 古沢太穂 古沢太穂句集
ころり往生稲田の案山子見て御座りし 矢田鹿苑子 『白雲悠々』
さいぎさいぎお山参詣稲穂黄に 飯塚田鶴子
さざなみの滋賀の子まとふ美稲(みしね)の香 加倉井秋を 『風祝』
さら~と穂ずれおもたし稲運び 高橋淡路女 梶の葉
さらさらと稲穂に風のつづり文字 阿部栄子
ざりがにの稲掴みゐる落し水 白岩 三郎
ジパングは黄金の国稲稔る 佐藤知敏
じよんからの楽屋口まで稲熟るゝ 多賀啓子
しら糸や稲負勢鳥呼子鳥 上島鬼貫
しんしんと空あをく左右の稲匂ふ 川島彷徨子 榛の木
せとにます大海若にうま酒の初穂ささげてさかづきを取る 石槫千亦
せんもなや家には鼠あり稲の虫 寺田寅彦
それぞれの聲稲の露芋の露 田中裕明 櫻姫譚
それ程に稲もあらさぬ螽かな 牧 童
だいこんの三浦は雨の稲運ぶ 木村蕪城 寒泉
たそがれて馬おとなしや稲を積む 原石鼎
たたずめば稲が鳴るなり夜見の国 夏石番矢
つゝましや旅降りいでし稲の音 中村草田男
つとめ日々はかどり愉し稲は穂に 岸風三楼 往来
ところどころ家かたまりぬ稲の中 正岡子規
とまりとまり稲すり哥もかはりけり 京-ちね 俳諧撰集玉藻集
ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ 篠原 梵
バス降りし婆が一礼稲穂道 岸田稚魚
はるかまで夕日を入れて稲の国 平山路遊
ひき水の野路よこぎりて稲みのる 飯田蛇笏 春蘭
ひと駅の列車通学稲の秋 橋本風車
ふるさとの稲田は低し野辺送り 広瀬みわ
ふんばつて稲杭を押す女かな 高濱年尾 年尾句集
ホリドールの赤旗 稲は 日蝕のようにひつそりと 吉岡禅寺洞
まぼろしの稲を育てゝ初神楽 矢島渚男
みちのくの空の広さの稲田かな 鈴木わかば
みやま霽れて黄色むや稲の陽のたまり 日夏耿之介 婆羅門俳諧
むさし野は稻よりのぼる朝日哉 稲 正岡子規
むつかしき牛の眉間や稲の秋 山口誓子
めでたさよ稲穂落ちちる路の傍 黒柳召波 春泥句集
ものの繭つきたる稲を掛けにけり 岸本尚毅 舜
やはらかに静かに芒初穂かな 高橋馬相 秋山越
ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は 静塔
よき雨や枕もあげず稲積まむ 風蘿
よき色にあがりて稲のかなしけれ 阿部みどり女
よく育つ稲田に深き靴のあと 澤内ゆき子
よく揃ふ粟の垂穂のここは加賀 赤尾冨美子
よの中は稲かる頃か草の庵 芭蕉
ロックコンサート稲の実らぬ田の見えて 田口彌生
わがこころ稲の穂波にただよへり 山口青邨
わさ鍋のいつ干(ひ)さらん稲の露 椎本才麿
愛宕よりおりくる靄や稲かくる 比叡 野村泊月
粟の垂穂子の固肉に触りて鳴り 大野林火
伊賀の子の受ければ弾む稲の束 殿村莵絲子 牡 丹
伊賀越えや昔のままに稲干さる 佐藤末一
育種以後も稲の葉みどり黒き遺髪 香西照雄 対話
磯松に稲干しかけてこの日頃 佐野まもる 海郷
一家鮮し稲田へだてて手を振れば 堀 葦男
一石路の「鎌の柄談議」君の故郷の貧乏稲田 橋本夢道 良妻愚母
一坪の園児の稲田案山子立つ 内久根眞也
一穂の稲にかがめば伽藍かな 正木ゆう子 静かな水
一望の稲田母なる大野川 渡辺 彦陽
一望の稲田豊かな湯川村 山口瑞穂
一里行けば一里吹くなり稲の風 夏目漱石 明治二十八年
稲がかけてある野面に人をさがせども 尾崎放哉
稲かくる女や少し背のびして 高橋淡路女 梶の葉
稲かたぐや膝にとらへて足を抜く 桜井土音
稲かつぐ母に出迎ふうなひかな 凡 兆
稲こす水に祠浮きたつ 山店 芭蕉庵小文庫
稲そして山美しき出羽の国 森澄雄
稲つけて馬が行くなり稲の中 子規
稲つむや痩馬あはれふんばりぬ 村上鬼城
稲といふ名もきがゝりやいもが門(かど) 中村史邦
稲といふ名も気ががりやいもが門 史邦 俳諧撰集「有磯海」
稲と稲触れ合ふ音の暮れて来し 山内山彦
稲なべて短かく湖も北に果つ 岸風三楼 往来
稲に線香花火見せている 森 命
稲に追肥むらなく語りかけつつも 吉本春生
稲に日のすこし暑くて念仏講 鷲谷七菜子 花寂び
稲のほをおこして通る田道かな 蝶夢
稲の雨斑鳩寺にまうでけり
稲の雨班鳩寺にまうでけり 稲 正岡子規
稲の黄に出てすぐねむる赤子かな 六角文夫
稲の黄の日があたるより爛熟す 川島彷徨子 榛の木
稲の月遠山見えて昼のまゝ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
稲の香が町をつつみて筆まつり 亀井朝子
稲の香にむせぶ仏の野に立てり 水原秋桜子
稲の香にむせぶ佛の野に立てり 水原秋櫻子
稲の香に顔なぶられて奥会津 高澤良一 鳩信
稲の香に溺れたき眼を瞑るべし 耕二
稲の香に田夫の我が血さわぎけり 永田辰夫
稲の香に面吹かるる震災忌 阿部みどり女
稲の香のしるき国原神迎 栗間酔舟
稲の香のねざめて近し五位の声 暁台
稲の香のわつと羽前に入りにけり 今野福子
稲の香の寝覚めてちかし五位の声 暁台
稲の香の天に満つる日古墳村 鍵和田[ゆう]子 未来図
稲の香の飛鳥の畦に牛とあふ 宮原双馨
稲の香の風さはやかに阿礼祭 石井桐陰
稲の香の満るを今宵月の雲 松岡青蘿
稲の香は大き安らぎ豊の秋 山下美典
稲の香やカサイ平のばか一里 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
稲の香やどこか足らざる糸車 吾亦紅
稲の香やゆりもて運ぶ行違ひ 黒柳召波 春泥句集
稲の香や闇に一すぢ野の小道 正岡子規
稲の香や闇濡らしゆく夜汽車の尾 橋本榮治
稲の香や関東平野の数人に 鈴木六林男
稲の香や屈めば水の音聞こゆ 矢島房利
稲の香や継ぎ目あらはに飛鳥仏 角谷昌子
稲の香や月改まる病心地 夏目漱石 明治四十三年
稲の香や束ねて落つる水の音 蓼太
稲の香や太陽倒れかかるかに 三橋敏雄
稲の香や鉄鍋に煮る芭蕉絲 沢木欣一
稲の香や父母ありし日の山と川 石塚友二
稲の香や鱒ずしを買ふ七尾線 冨田みのる
稲の香や明日香童の埴輪顔 米沢吾亦紅 童顔
稲の香をまとひし婚の使者迎ふ 野上 一枝
稲の根にすてし布あり藍の濃し 長谷川零余子
稲の山にひそめるを刀でひき出だす 長谷川素逝 砲車
稲の秋ここ天領の奥座敷 清水理都子
稲の秋てんぷらの鍋鳴りはじむ 長谷川櫂 天球
稲の秋のむしろにすわりたり女なり 中塚一碧樓
稲の秋の風吹き流れ二つ並びの山 中塚一碧樓
稲の秋山山進み向ひくる 池内友次郎
稲の出穂そろひて豊前太鼓かな 鈴木厚子
稲の上にはかに星を落しける 山口誓子
稲の上を低くわたれる烏かな 西山泊雲 泊雲句集
稲の世を巨人は三歩で踏み越える 安井 浩司
稲の青しづかに穂より去りつつあり 篠原梵
稲の束うしろに投げて吉備の国 金田瑞穂
稲の中のそちこちの顔がふるさと シヤツと雑草 栗林一石路
稲の中駆け来て汽車に間に合ふか 上野泰 春潮
稲の中水の音して日和かな 野田別天楼
稲の虫せん方もなく殖えてけり 寺田寅彦
稲の虫川向ひへも拡がりぬ 寺田寅彦
稲の日のいまだ暑くて寺普請 大峯あきら 鳥道
稲の日や子につき歩くぬくくと 長谷川かな女 雨 月
稲の熱月山空に坐りけり 宇佐美魚目
稲の波かぶりて遊ぶ雀かな 正岡子規
稲の波はる~と来て枕元 梅室
稲の波案山子も少し動きをり 高浜虚子
稲の馬女が曳いておとなしき 吉武月二郎句集
稲の穂に馬乗り掛けて初嵐 車庸 俳諧撰集「藤の実」
稲の穂のすつくすつくと丹波口 松尾隆信
稲の穂のふれるさやぎとみれば止む 川島彷徨子 榛の木
稲の穂のりりとひびかふたなごころ 赤城さかえ
稲の穂のりりとひゞかふたなごころ 赤城さかえ
稲の穂の寂光芒より淋し 中西碧秋
稲の穂の胎蔵界は雨の中 角川春樹
稲の穂の日々垂れわが家整へり 林翔 和紙
稲の穂を露ながれたる嵐かな 萩原麦草 麦嵐
稲の葉の震への止まず山背吹く 加門 勝
稲の葉の青かりしよりかかしかな 月渓 五車反古
稲の葉や風左右裏おもて 尾崎紅葉
稲の露けぶる月光くまもなし 金尾梅の門 古志の歌
稲は穂にここ更級の棚田かな 北條政春
稲は穂に海やはらかくなりしかな 橋本榮治
稲は穂に明るき西日鏡面に 柴田白葉女 遠い橋
稲は穂に嶽真つ黒に星を生み 雨宮抱星
稲ぶさや誰がむすび置く宮柱 黒柳召波 春泥句集
稲みのる暑さや膝を立てもして 大木あまり 火球
稲むしろ奥街道を一目かな 下村牛伴
稲むらの上や夜寒の星垂るる 芥川龍之介
稲むらや南瓜の花に鶏諷ふ 梅沢墨水
稲もはや苅りしほなれや衣装畑 中村史邦
稲もほつほつ菜の花いろの夕爾の忌 鈴木真砂女
稲も人も北へかたむく野分中 藤原暁子
稲も蝗ももの狂ふかな卑弥呼の国 高柳重信
稲わけて月のそひくる田路かな 中勘助
稲を扱く四方のひゞきになれてねる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
稲を干す村の夜空の鱗雲 中拓夫
稲を見てをれば縦横に無尽に 折井紀衣
稲を守る神の別れや落し水 広江八重桜
稲育つ風ちりちりと鳴るやうに 福永鳴風
稲雨蔽ふ雲冷やかに暮れてゆく 臼田亞浪 定本亜浪句集
稲運びをり十五夜の千枚田 青木重行
稲運ぶ山辺に光りくもの糸 宇佐美魚目 秋収冬蔵
稲黄ばむ頃よ聞きしむ音ありて 右城暮石 声と声
稲株の殖えて盆来る父も来る 影島智子
稲乾く匂ひ教室まで届く 井口光雄
稲干して村社となりし王子あり 宮津昭彦
稲干すや海にはじまるうすみどり 古舘曹人 能登の蛙
稲干のもも手はたらく冬日かな 北枝
稲牛を見おくりて又雲をみる 百合山羽公 故園
稲茎に青草のこす冬田哉 宗因
稲懸けて里しづかなり後の月 蓼太
稲懸ける音ほそ~と月夜かな 渡辺水巴 白日
稲原に良夜の濤はきくべかり 石田波郷
稲原の吹きしらけゐる墓参かな 芝 不器男
稲原の白き匂ひの夜なりけり 臼田亜浪 旅人
稲原や鉄塔霧をはなれゐる 太田鴻村 穂国
稲枯れて往来もあらず星月夜 中島月笠 月笠句集
稲姿や吉林の燈のまだ見えず 臼田亞浪 定本亜浪句集
稲主に啄(はみ)をかくすや小田の雁 毛* 九 月 月別句集「韻塞」
稲秋の夕日の壁のとなり村 長谷川素逝 村
稲秋や近江は恒の三上山 尾崎迷堂 孤輪
稲終る腰抜けるまで踊るべし 羽部洞然
稲熟るるあまき匂ひの夜の雨 郷原弘治
稲熟るる筑後の国の明るさに 直野秀子
稲熟るる中に藤の木古墳かな 福永京子
稲熟るる毛深き闇を戻りけり 穴井太 原郷樹林
稲熟れて深大寺道牛臭き 西村公鳳
稲熟れて日光まみれの雀空 河野南畦 湖の森
稲熟れるゆふべをともす燈も黄なる 加畑 吉男
稲熟田の一枚昏るる風の中 星野麦丘人
稲垂れて産土神道をせばめけり 五十崎古郷
稲青し窓枠額として絵なり(香里病院に西東三鬼氏を訪ふ) 河野南畦 『黒い夏』
稲積に出づるあるじや秋のあめ 内藤丈草
稲積みのもしや狸の化け損ね(観世寺黒塚) 高澤良一 石鏡
稲積むやたぢろぐ牛にも一と把 楠目橙黄子 橙圃
稲積むや痩馬あはれふんばりぬ 村上鬼城
稲積むや啄み足りて鶏歌ふ 石井露月
稲積や人の笑ひも花心 井月
稲積や六升五合は仮の春 尾崎紅葉
稲積んで車推し行く親子哉 正岡子規
稲積んで暮れる細舟女ばかり 西東三鬼
稲積んで忙しき夕餉さんま焦ぐ 柴田白葉女 遠い橋
稲束ねゐて紙よりもやさしき音 岩淵喜代子 朝の椅子
稲束をかついでずるずると沈み 今瀬剛一
稲束を投げし宙より跳ぶ蝗 鷹野清子
稲束を抱き学童に声をかけ 西村和子 窓
稲太る月夜の手足盆踊 飴山 實
稲虫のむつつりとをる筑波かな 大石 悦子
稲塚にしばしもたれて旅悲し
稲塚のそこはかとなく暮れそめぬ 五十崎古郷句集
稲塚の影おどろ並む衣川 松村蒼石
稲塚の戸塚につゞく田守かな 其角
稲田あり*どあり日本に似たるかな
稲田とる巾あり峡のこの辺り 高澤良一 燕音
稲田バス軽き老母の揺れどほし 津田清子
稲田へぬけてゆく跫音を更けてきく 川島彷徨子 榛の木
稲田ゆくまぢかの稲の一つづつ 桂郎
稲田描く油絵の具を盛り上げて 高澤良一 寒暑
稲田風総身にうけ熟睡せり 佐川広治
稲倒れ用捨なく雨日々続く 鈴木玉[きう]
稲匂ひ潟の民話に溺れをり 河野南畦 湖の森
稲匂ふ風のゆたかにローカル線 田山諷子
稲入るゝ提灯つけて一家かな 比叡 野村泊月
稲熱田の一枚昏るる風の中 星野麦丘人
稲熱田の一枚昏るゝ風の中 星野麦丘人
稲背負ふ祈るかたちに膝を折り 佐川広治
稲不作うったふ婆の冷夏の眼 高澤良一 素抱
稲不作日とたはむるゝ鴉かも 清水基吉 寒蕭々
稲負うてゆつくり膝をついて立つ 及川仙石
稲負ひて闇に追はれて来しふたり 相生垣瓜人
稲負ふや腰つき湿る膝頭 大熊輝一 土の香
稲負ふや左右にはしる山の翼 加藤楸邨
稲負ふ影水牛に似し風の畦 大熊輝一 土の香
稲負へり白馬は神の馬なるに 藤井亘
稲淵の春や男綱のゆらぎたる 福島壷春
稲淵の梟よ日の柞(ははそ)山 藤田あけ烏 赤松
稲分けて鶏探す夕かな 福田把栗
稲穂いま乳こもり来し撓ひにあり 篠原梵
稲穂はやしめるけはひに夕日山 鷲谷七菜子 花寂び
稲穂垂る後楽園の一枚田 佐々木潤子
稲穂束柱に括る宗吾堂 内田郁代
稲穂村はたらく紺をみなまとふ 渡辺千代子
稲穂波そぞろ打ち合ふ神楽の里 高澤良一 鳩信
稲穂波父が冥途もきっと晴 池田澄子 たましいの話
稲穂浪鳴子進むが如くなり 島村元
稲豊穣父を呼ぶ声野に呑まれる 成田千空 地霊
稲稔りゆくしづかさに村はあり 長谷川素逝 村
稲稔りゆつくり曇る山の国 広瀬直人
稲稔り蜻蛉つるみ子を背負ひ
稲稔る中を各駅停車かな 西上禎子
稲無限不意に涙の堰を切る 渡辺白泉
稲明りさし込む中や湯葉造り 高澤良一 寒暑
稲籾を噛んで長雨きりもなし 太田土男
稲藁を積むふくらみの二階まで 猪俣千代子 秘 色
稲孕みつつあり夜間飛行の灯 西東三鬼
稲滓火(いなしび)や天竜夜へいそぎをり 中澤康人
稲滓火(しび)の関東平野雪もよひ 角川春樹
稲滓火に三山傾ぐ夕べかな 小島健 木の実
稲滓火の関東平野雪もよひ 角川源義
引きまはす襖の外も稲屏風 立花北枝
陰々と男ばかりの稲じまひ 平畑静塔
羽ぐるまをもろに交はして稲すゞめ 飯田蛇笏 霊芝
雨に濡れ判官道の稲ぼつち 太田土男
雨ふくむ上野の森や稻日和 稲 正岡子規
雨晴れて稻の穗末の夕日哉 稲穂 正岡子規
雨風を凌ぐ稲穂の光抱き 名本静枝
雲の峰稲穂のはしり 河東碧梧桐
雲州橘の袖の香ぞする稲田姫 椎本才麿
雲裏ゆ月光漏れて稲冷ゆる 川島彷徨子 榛の木
嬰児ぽっかり目覚め稲の香部屋に満つ 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
曳き水の野路よこぎりて稲みのる 飯田蛇笏
炎天のうすきまなざし稲の穂や 中拓夫 愛鷹
遠く強き足音信ず稔る稲 田川飛旅子 花文字
遠山の晴れつづく夜の中稲かな 塩谷半僊
遠方の平らかにあり稲の月 綾部仁喜 寒木
奥羽路の青き稲穂の明るかり 前田貴美子
奥出羽のよき日の入りや稲の秋 名和三幹竹
奥津城も稲の香ぞするふるさとは 石塚友二
応召兵稲穂たわめて行きにけり 萩原麦草 麦嵐
黄は貴色い行くに稲田継ぎ目なし 薄 多久雄
音楽は終りぬ稲を見にゆかん 原田喬
下総の日の潮臭き中稲かな 小林希世子
化粧のらぬとなげくわが妹稲終へたり 大熊輝一 土の香
何の音もなし稲うちくふ螽哉 服部嵐雪
何も音もなし稲うちくうて蝗かな 服部嵐雪
夏の日の淡さ矮き稲も穂に 岸風三楼 往来
家高低稲段々に山の裾 正岡子規
家高低稻段々に山の裾 稲 正岡子規
家霊みな嫗のかほや稲の秋 河原枇杷男
花稲に身はうち震ふ不信心 斎藤玄 雁道
花稲のあかとき鬱金泛べ来つ 高井北杜
花稲や天照らす神葉のかげに 高井北杜
過疎村と云はれ豊かに稲実る 小野三子
我が思ふ如く人行く稲田かな 中村汀女
海にそふ北に山なし稲百里 北枝
海荒れて海際の稲しづまらず 津田清子
海女小屋に甲乙丙の稲穂かな 攝津幸彦
海照も日受もよくて稲黄ばむ 茨木和生 遠つ川
海凪ぎて稲の匂ひの与謝郡 依田安子
海猫交る稲佐の浜の砂飛ばし 岩切貞子
海老稲も実入り頃とや放生会 中村史邦
角帽の金章は稲麦の秋 高橋悦男
革命や稲原を飛ぶ新聞紙 宇多喜代子
掛けて干す見栄えぬものを稲のあと 篠田悌二郎 風雪前
掛けられて稲やすらぎの香を放つ 大熊輝一 土の香
葛城古道地干しの稲の匂ひくる 山田春生
株間四寸畝間一尺豊の稲 西本一都 景色
冠水の稲田に雲の尾の垂るる 佐久間俊子 『むさし野』
堪へがたし稲穂しづまるゆふぐれは 山口誓子
干拓稲田貝殻群が畦に散り 河野南畦 湖の森
干拓稲田夜は遠き灯に睦むとか 河野南畦 湖の森
干稻に鷄上る夕日かな 干稲 正岡子規
干稻の上に首出す地藏かな 干稲 正岡子規
汗涌くや夕凪の稲すく~と 佐野青陽人 天の川
観月の句碑に稲干す長楽寺 高山美喜子
岩代は汽車も留らず稲の色 松瀬青々
雁渡る月の稲田の眩しさを 中村汀女
奇稲田姫の須勢理姫の恋の秋峠 伊藤いと子
奇稲田媛の宮処の薄すみれ 荒井正隆
帰省子やばつたり出逢ふ稲かつぎ 飯田蛇笏 山廬集
汽笛遠し稲の香をわれにもたらしぬ 栗生純夫 科野路
汽罐車も鰓もてすすむ稲穂波 竹中宏 饕餮
稀にゆく山辺は稲の霜きびし 太田鴻村 穂国
疑わしき草は抜かれて稲の国 池田澄子
黍秋や道の垂り穂のこぼれつゝ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
宮立てゝ稻の神とぞあがめける 稲 正岡子規
宮址より稲穂なびけり畝傍まで 足立靖子 『梨花』
牛小屋に牛ゐて曇らざる稲田 原 裕
居眠りに稲投げつけて夜業せり 成海 静
巨いなるうねりに入りて稲稔る 中村和弘
魚沼や中稲の穂波うち揃ひ 若井新一
魚提げて歸る親父や稻の中 稲 正岡子規
凶作や伊豆の稲田の蝗捕 石塚友二 光塵
凶作田焼く棒立ちに稲と人 太田土男
峡の田の稲のさゆらぎ穂の重し 澤田キミ子
暁の風に初穂の見えかくれ 大河双魚
勤め途や腰折れ稲穂つづくなり 石川桂郎 含羞
巾一ぱい河口の流れ稲黄ばむ 茨木和生 木の國
隅々や稲虫除の護符 寺田寅彦
桑名より雲くる稲の実りけり 藤田あけ烏 赤松
君が代や四海静かに稻の波 稲 正岡子規
君や思ふ十符の菅ごも稲の番 言水
軍捷つて天下の稲の干かな 会津八一
畦に添う稲穂の特に色付きぬ 柴田照子
畦を来る人に旭尊と稲の秋 楠目橙黄子 橙圃
月に稲運ぶ田下駄の水の音 羽部洞然
月のもと罪あるごとく稲を負ふ 亀田岳水
月の田にあすの用意の稲はこび 長谷川素逝 村
月光に稲穂は一穂ずつ女体 高野ムツオ 雲雀の血
月白の稲にぬくもりありにけり 東野照子
建ちてまだ住まぬ一棟稲の秋 草城
権現へざつくり切りし初穂置く 伊藤佳代
犬つれて稲見に出れば露の玉 鬼貫
犬の尾に稲が実るぞ弟よ 夏石番矢 神々のフーガ
犬連れて稲見に出れば露の玉 鬼貫
犬蓼の稲田になだれ込むところ 高澤良一 ももすずめ
見はるかす豊の稲田も御苑内 下村ひろし 西陲集
湖辺に垂穂汽車尋常にめぐり遅々 石橋辰之助 山暦
湖北いま稲の稔りの重き刻 田川飛旅子
鼓笛隊山田をすぎつ稲の出来 飯田蛇笏 椿花集
後朝や袖に飛付く稲の虫 寺田寅彦
御陵や御垣の外トの稲垂り穂 尾崎迷堂 孤輪
降臨の里に波打つ稲穂かな 新子満州男
高館淋し稲塚幾千北傾ぎに 加藤知世子 花寂び
高繩や稻の葉末の五里六里 稲 正岡子規
国生みの山を間近に稲を干す 三森鉄治
国東の二十八谷稲の秋 豊東 蘇人
黒とんぼ稲の葉末にとまりけり 増田龍雨 龍雨句集
黒部川わたりて稲の高襖 阿波野青畝
惚けぎみの婆よ稲田に立つと光る 田中はるよ
今ぞしる稲を手ぼしの袖の恩 立花北枝
根を深く稲杭豊の重さ負ふ 中島斌男
佐高いま佐大稲田も街中に 下村ひろし 西陲集
祭笛主客稲田を巡りをり 松倉ゆずる
斎田の稔りし稲に鎌入るゝ 竹崎 紫泉
山の温泉へ中稲の畦を通りゆく 上川井梨葉
山の子の大き長靴稲運ぶ 井上久枝
山移小学校は稲の中 穴井太 原郷樹林
山陰に稻干す晝の日脚哉 干稲 正岡子規
山陰や草穂まじりに稲の出来 飯田蛇笏 山廬集
山祇は稲穂を愛でて帰りけり 宮川三保子
山峡に稲の音あり秋まぼろし 金子兜太
山峡の稲をいぢめに山背風(やませ)くる 高澤良一 素抱
山国の稲穂の冷えにラジオ流す 桜井博道 海上
山川やひかりの末の稲を負ひ 永島靖子
山盡きて稻の葉末の白帆かな 稲 正岡子規
山盡きて稻の穗末の白帆かな 稲穂 正岡子規
姉妹や織りかけ機の稲の秋 小杉余子 余子句選
師と逢ひてすすきに初穂生れけり 村越化石 山國抄
志賀の里妹子の村の稲実る 西村雅苑
寺とても稲つくりけり人出入 小杉余子 余子句選
持ち直す稲に雷三日かな 太田土男
時雨来む風に稲屑火どんと燃ゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
宍道湖の波かよへる稲田かな 大場白水郎
宍道湖の波のかよへる稲田かな 大場白水郎
悉く稲倒れ伏す野分哉 寺田寅彦
柴又の茶店いづれば稻の雨 稲 正岡子規
射とめたる稲すゞめ浮く榛の水 飯田蛇笏
寂として畔の夕かげ稲稔る 飯田蛇笏 雪峡
手にうけし垂穂やかさと手をはなれ 星野立子
手握りし粟の垂穂のあたたかく 高野素十
酒になり餅になる稲の穂並哉 呉逸
酒になり餅に成る稲の穂並かな 左海 呉逸 五車反古
首出して稲つけ馬の通りけり 一茶
首出して稲付馬の通りけり 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
首都圏ニュース稲の作柄やや良と 高澤良一 随笑
受水や稲穂一本磐座に 呉屋菜々
秋さびしもののともしさひと本の野稗の垂穂瓶にさしたり 古泉千樫
秋出水稲の穂首をとらへたり 鈴木玉[きう]
秋晴や蔵持つ農家稲の中 大谷句佛 我は我
秋風やどこにも稲田うちひらけ 久保田万太郎 草の丈
秋風や笹にとりつく稲すゞめ 飯田蛇笏 霊芝
秋螢光り失ふ稲の上 阿部みどり女
舟やるや稲結ふ藁を腰にして 軽部烏帽子 [しどみ]の花
十津川の稲積む舟や目に熱し 小池文子 巴里蕭条
渋柿の馬鹿なりをして稲不作 原田青児
重味ある稲騒にふとたちどまる 川島彷徨子 榛の木
熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 臼田亜浪
出の温泉へ中稲の畦を通りゆく 上川井梨葉
出羽言葉に馬が従きゆく晴れ稲田(月山) 河野南畦 『風の岬』
出揃ふや稲の田づらのざんざぶり 尾州-露川 俳諧撰集「有磯海」
出穂の稲の香通す大土管 中戸川朝人 星辰
出穂の稲田のつづく方十里 椛沢田
初とんぼ吹かれて稲へ落ちにけり 柏
初秋の伏見稲荷の稲穂舞 小松生長
初髪にたりほの稲の小かんざし 高橋淡路女 梶の葉
初髪の稲の垂穂の粒揃ひ 塚腰杜尚
初髪の稲穂の揺れをまぶしめる 佐野青陽人
初髪の稲穂はゆるるほどの長さ 鶴淡路
初穂米井桁に組みて比神社 勝山美枝
徐々にして稲田に月の道敷かれ 能村登四郎 有為の山
宵闇の稲の匂ひを歩きけり 知久芳子
宵々や簾にかぎる稲の波 金尾梅の門 古志の歌
小熊手の稲穂のぞかせ事務鞄 奈良文夫
小作争議にかゝはりもなく稲となる 竹下しづの女
小松原稲田明りに立ちいでし 石原舟月
庄屋殿の棺行くなり稲の中 正岡子規
庄屋殿の棺行くなり稻の中 稲 正岡子規
松原に稲を干したり鶴の声 才麿
松代や入るも出るも稲田越え 清水杏芽
照り曇る檀風城址稲田寄す 野沢節子
上気多の段々畑の稲の株 高澤良一 素抱
城見えて朝日に嬉し稲の中 支考 (岩瀬に遊ぶ)
信貴の灯のとくある稲を掛けにけり 大橋櫻坡子 雨月
振り照す松明や乱るゝ稲の虫 寺田寅彦
新刊の書に似る稲穂明りとも 高澤良一 随笑
新米や土佐はよい国二番稲 浜田波静
真直ぐに育つよろこび稲田にも 大倉箏子
神集ふ稲佐の浜の大落暉 宮原悦子
神松や稲も荒穂の冬日和 上島鬼貫
人買に蝦夷路の秋の稲すゞめ 西島麦南 人音
人里を離れし浦に稲を干す 高木晴子
吹き降りや稲田へ橋のゆきもどり 飯田蛇笏 山廬集
吹く風や稲の香にほふ具足櫃 鬼貫
吹く風や稲の香匂ふ具足櫃 上島鬼貫
垂り稲の地平に唸り哨戒機 高井北杜
垂穂道瞼のつゆに日はしづむ 金尾梅の門 古志の歌
水のみちまたわかれをり稲の中 大橋櫻坡子 雨月
水口に水の錆いろ稲穂波 松本 久
水呑んで胎児のうごく稲の中 上高原ひ郎
水門の閉ぢ季稲の水濁す 石川桂郎 四温
水流に青草浸り稲の秋 林順子
杉垣に稲干してある門の脇 干稲 正岡子規
雀烏われもうれしき垂穂かな 中勘助
瀬音より離り影なき稲実る 阿部みどり女
畝傍山香具山つなぎ稲穂波 藤田佑美子
生徒らがゆきすぎしあとの土ぼこり稲の穂づらをなびき流れつ 安田青風
盛装を稲田の夕日照らしけり 山口誓子
青き穂に千鳥啼くなりひつぢ稲 史邦 芭蕉庵小文庫
青稲穂夕山風に息もつかず 松村蒼石
青々と稲のかたちになり垂るる 阿部みどり女
青帯びし稲田千人塚を攻め 原裕 新治
青葉かの吾をば稲羽のしろうさぎ 加藤郁乎
青立の稲に眼を慣らしけり 斎藤玄
昔々わらんぢの馬稲を運びし 栗生純夫 科野路
石に干し石濡らしけり峡の稲 鳥居美智子
石手寺の築地くづれて稲の波 山口青邨
積む稲の重さに牛よ蹄ひらき 羽部洞然
赤錆びの船も走るぞ稲日和 中川宋淵 遍界録 古雲抄
折りそふる梅のからびや粥初穂 史邦 芭蕉庵小文庫
雪の唱稲とぼとぼときこえけり 西本一都 景色
千町田の月の垂穂のかをり哉 中勘助
千枚田その一枚に稲を扱く 河本晴樹
川上の稲穂飾もとどきたる 黒田杏子 花下草上
川地蔵供養稲の香むせるなか 高澤良一 ぱらりとせ
賎(しづ)の子や稲摺りかけて月を見る 松尾芭蕉
賎の子や稲摺りかけて月を見る 松尾芭蕉
銑鉄船のなかを稲船ぬけてゆく 川島彷徨子 榛の木
痩稲も垂穂そろひぬ日照り雨 七菜子
草枕あり其稲穂手向かな 杉風 (翁塚の記)
葬列の人ら稲の穂たわめて見る 萩原麦草 麦嵐
村遠近雨雲垂れて稻十里 稲 正岡子規
太宰の星の土に親しや稲負鳥 長谷川かな女 花寂び
太宰府の月まんまるし稲の秋 大峯あきら 宇宙塵
台風過全身打撲の如き稲 成子利美
大演習出水の稲を踏渡り 増田龍雨 龍雨句集
大竃あかあかと稲はこばれぬ 柴田白葉女 遠い橋
大時化の稲佐の浜の神送り 筒井満枝
大鳥居垂穂に脚を沈めたり 岡本松浜 白菊
大名のお庭は廣し稻十里 稲 正岡子規
濁水の稲に太陽照りいだす 百合山羽公 故園
誰逝くや稲にさびしき稲穂波 河原枇杷男 蝶座 以後
短足の胴長稲の束かつぐ 今瀬剛一
団欒の座を解き稲を負ひ去れり 阿部みどり女
地下鉄の穴出で三社祭かな 稲石實(季節)
遅き月上りぬ稲も掛け終り 松元桃村
遅月やありあり見ゆる稲の露 西島麦南 人音
中学生朝の眼鏡の稲に澄み 草田男
虫のこゑじいんじいんと稲稔る 高澤良一 宿好
虫送すみたる稲のそよぎかな 三村純也
虫送りすみたる稲のそよぎかな 三村 純也
猪荒れて畳のごとき稲田かな 岡田耿陽
猪防ぐ手立て尽くせし稲を干す 茨木和生 往馬
朝すでに露天湯にこゑ稲熟るる 井沢正江
朝露に稻の穗波の亂れ哉 稲穂 正岡子規
鳥威あらたに土佐の二番稲 西川雅文
鳥威し挿しに稲穂を泳ぎゆく 高浜年尾
鳥栖(とす)に着くころ稲秋の虹は消ゆ 友岡子郷 未草
直立の止め葉揃ひし青稲田 西川雅文
追憶は過稲要らざる炉火明り 吉村ひさ志
低山も雲居て伊豆の稲の雨 皆吉爽雨 泉声
泥の稲泥の豆木と見分くのみ 西本一都 景色
泥稲をかかへ田下駄をひきずれり 大野林火
鉄棒に稲穂干されて休校日 浅見まき子
天心の月の白毛稲を干す 中拓夫 愛鷹
田下駄に足引つぱられ稲抱へ出す 大熊輝一 土の香
徒食の手触れて鋭き稲の葉よ 馬場移公子
途ふさぐ稲や赤子や遠刈田 橋本榮治 麦生
途方もなき稲穂の寄する小学校 高澤良一 随笑
倒れし稲茎の枯色重ね曇る 古沢太穂 古沢太穂句集
倒伏の稲をくぐれる落し水 岡安紀元
棟上や家猫稲へしのび入る 池上樵人
踏み光る一本畦を稲運ぶ 大熊輝一 土の香
踏切の警報を浴び稲青つ 田川飛旅子 花文字
動かざる雲ゐて稲の伸ぶるなり 中川宋淵
堂の影稲田に落つる月夜かな 大谷句佛 我は我
道すがら夜風に稲の香も交り 高澤良一 暮津
道の辺や小萩にうつる稲の虫 樗堂
道道の稲の出来見て山の湯ヘ 上村占魚 球磨
道問ひし少年稲の香をもてり 町田美知子
徳利の口まつくらや稲穂波 桂信子 緑夜
鈍行の中まで稲田の照り返し 高澤良一 随笑
南部花巻干稲を地に抱き合はせ 宮坂静生 春の鹿
日ちりちり櫟葉かゝる稲の上 右城暮石 声と声
日盛りを走つていたり稲と犬 永末恵子 発色
日雷田を這うて稲いたはれり 茨木和生 往馬
乳房もて稲押し進む稗抜女 本間 一萍
妊れる妻の目据わり稲を負ふ 大熊輝一 『土の香』
濡れて行く柩の駕や稻の雨 稲 正岡子規
熱燗やきん稲にこの宵のほど 道芝 久保田万太郎
熱燗やきん稲のこの宵のほど 久保田万太郎 草の丈
播但線とは稲明り川明り 山田弘子 螢川
婆つれし佛詣りや稻曇 稲 正岡子規
婆ひとり稲穂に沈む鎌の音 桂郎
背の曲がる農婦そのまま稲になる 伊藤眞一
背負ひたる稲の穂鳴りに歩を合はす 米沢吾亦紅 童顔
白鷺の稲にかくるる愁かな 太田鴻村 穂国
白鷺の白さ掛け稲濡れとほる 右城暮石 声と声
白鷺も稲分けゐるよ釣歩き 孝作
八月の行方や稲に波走り 米澤吾亦紅
八十の路八方に稲穂かな 成田千空
八束穂の垂穂の藤の莟かな 会津八一
髪のごと神に稲穂をつかみ置く 古舘曹人 樹下石上
晩鐘や稻の葉末を鳴り渡る 稲 正岡子規
磐越西線稲の睡気が移りさう 高澤良一 石鏡
磐梯颪に農衣はたはた稲束緊む 加藤知世子 花寂び
肥効いて稲くろぐろと田水沸く 市村究一郎
肥効いて稲黒々と田水沸く 市村究一郎「東皐」
飛騨越や稗の垂穂の霧雫 鈴鹿野風呂 浜木綿
美しき稲の穂波の朝日かな 路通
美しき稲の穂並の朝日かな 路通
鼻先のむずむず稲の熟れにけり ふけとしこ 鎌の刃
稗の穂の吹かれ穂稲の波のよ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
稗の穂は垂り稲の穂はツン~と 竹下しづの女
稗の穂は垂り稲はツンツンと 竹下しづの女句文集 昭和十年
百姓が凶作の稲を噛みしめつ 山田佐人
百姓は力稲を束ねる女の息 栗林一石路
百千把掴み爪減る稲脱穀 大熊輝一 土の香
標本や稲を添へたる稲の虫 寺田寅彦
病めば他の生徒相寄る稲の冷え 友岡子郷 遠方
苗代に出て干稻に戻りけり 干稲 正岡子規
苗代やある夜見そめし稲の妻 高井几董
苗代や或夜見初し稲の妻 几菫
蛭痩せの見ゆ泥稲の分蘗に 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
不意に顔暮れて少年稲担ぐ 青木泰夫
夫婦ひややか新しき縄稲に垂れ 飯田龍太
負ふ稲にすれちがふときよき音を 阿部みどり女
負ふ稲に天竜の霧来てまとふ 西本一都
負ふ稲のさや~と歩を速くしぬ 土方花酔
武藏野や昔問へば稻のうなづきぬ 稲 正岡子規
封人の家軒場まで稲植ゑる 森 重夫
風がしら稲佐も秋の青霞 石塚友二 方寸虚実
風と競ふ帰郷のこころ青稲田 福永耕二
風の盆中稲もすでに穂を垂らし 三村 純也
風炎の稲田をはしる青鴉 柴田白葉女 『夕浪』
風禍とは稲のみならず杉山も 吉持鶴城
風鈴や雨さらさらと稲の葉に 岸本尚毅 鶏頭
風呂に沈めば稲抜きし首かゆくなる 大熊輝一 土の香
風呂出るによろめく可笑し稲終へたり 荒井正隆 『父嶽』
蕗葉の忌稲馬が尾を鳴らし発つ 高橋鋼乙
穂に出でて献供の稲の三鉢かな 皆川白陀
穂を上げし稲株のある花野かな 茨木和生 倭
墓一基また一基稲稔りけり 池田秀水
母かくす雨一円に稲穂垂れ 原 裕
母かくす雨一円の稲穂垂れ 原裕 『葦牙』
母方の尊かりける幟かな 中山稲青「明治俳句」
蓬莱の垂穂こぼれてみせしかな 後藤比奈夫 花びら柚子
豊の稲をいだきて蝗人を怖づ 山口青邨
豊の稲舷かくるまで積める 西本一都 景色
豊稲や大黒さまの道祖神 西本一都 景色
豊作の稲の香浄瑠璃寺に入りても 大野林火
豊作の埃り少なし稲脱穀 大熊輝一 土の香
豊饒の稲抱くしぐさ金の獅子 吉原文音
北緯四十一度に近し稲の秋 寺田寅彦
奔牛の性をわすれて稲はこぶ 百合山羽公 故園
本合海渡しの向う稲の海 高澤良一 随笑
本草を調べて見るや稲の虫 寺田寅彦
盆すぎの稲が目を突く田草取 白岩 三郎
盆月夜稲よりも顔あきらかに 森 澄雄
盆前の稲を掛けたりゆかし潟 大星たかし
稔る稲電線はいづちへゆくらん 佐野良太 樫
霧はれて稲のおしあふ旭哉 稲 正岡子規
名月やうつむくものは稲ばかり 宗専
木曾谷の深し稲田を積み重ね 守屋井蛙
門前の稲田また減り宗鑑忌 高橋鬼灯
夜の稲田母の子宮にひろがれり 高野ムツオ 雲雀の血
夜汽車明け稲の穂近し吾子近し 大串章
夜勤明けのねむりとろとろ稲の光 斎藤耕心
夜祭の神饌に荒稲・秩父柚子 森田公司
夜念仏すり足とどめ稲匂ふ 井沢正江
夜明けより来て大方の稲をかる 平野博之
野に出でて目路にぎつしり稲の色 瀧井孝作
野の家の箪笥見えてる稲の秋 臼田亜浪 旅人
野は風のまほろば稲の色づくも 北原志満子
野々宮の神に供へし稲の束 村上みきお
唯一度負ひたる稲を忘れめや 相生垣瓜人
友が住めるは此の里か稲田ひろびろ 荻原井泉水
友信じつつ湯をかぶる稲田見え 友岡子郷 遠方
由良川の水照りへ掛くる稲の束 田村愛子
夕映えて不作の稲に空やさし 相馬遷子
夕山や稲積の一つにありし母 金箱戈止夫
夕日いま人に立木に稲の秋 大隈チサ子
夕日が逃げる稲田黍原北信濃 古賀まり子 緑の野以後
夕風や垂穂にあるく片鶉 蛇笏
夕暮の稲穂匂へる湖畔径 太田常子
夕露ののぼる稲穂に八ケ岳 橋本鶏二
窯開けやぐるり稲田にとりまかれ 鈴木真砂女 夕螢
葉巻虫楚々とかくれぬ稲の露 西山泊雲 泊雲句集
葉巻蟲楚々とかくれぬ稲の露 西山泊雲
踊の足稲の出穂よりなほ揃うた 高澤良一 素抱
来るわ~扱くあとへ稲を引扛ぎ 泉鏡花
落花生掛けある稲田御坊かな 西本一都 景色
利根川や稲から出て稲に入 一 茶
利根川や稲より出て稲に入り 一茶
梨け稲の芽生ふ雨天に打つ手なし 菅沼義忠 『早苗饗』
里山の間埋む稲田後三年 高澤良一 素抱
里人に稲瘠せたりと言はず去る 藤後左右
里人は稲に歌よむ都かな 芭蕉
里人は稲に歌詠む都かな 松尾芭蕉
陸行かば稲本角海老大文字 攝津幸彦 未刊句集
立出でて侍にあふや稲の原 才麿
流れ者のやうに踊りぬ稲孕む 鳥居美智子
旅の目に哀れ浮塵子に焦げし稲 藤本はるの
旅人に稲負鳥峠口 八木林之介 青霞集
旅人の藪にはさみし稲穂哉 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
林中の一路澄みたる稲背負ひ 飯田龍太
輪飾の稲穂をこぼす雀らし 長谷川吉雄
霊棚の稲も大豆も色づきて 高野素十
列車いま金色となり稲の国 斎藤康子
列車音稲田をキタカタキタカタと 高澤良一 石鏡
裂帛の旭にうちけぶり稲の露 西山泊雲 泊雲
蓮一葉抽く稲原の朝涼し 金尾梅の門 古志の歌
連れてゆくくに女稲女や大石忌 比叡 野村泊月
露乾ねば稲田をおほふ黄も暗し 篠原梵 雨
露人墓地稲佐や百舌鳥の樟がくり 石塚友二 方寸虚実
露冷や谷戸へ絞りて風の稲 石川桂郎 高蘆
老牛の房々として稲を負ふ 百合山羽公
彳むや社壇から見る稻の雲 稲 正岡子規
澤々から稲熱病おこしの水の風 廣江八重櫻
磬子の余韻仏が稲田へ出で立つよ 磯貝碧蹄館 握手
稻の香に人居らずなりぬ避病院 稲 正岡子規
稻の香の雨ならんとして燕飛ぶ 稲 正岡子規
稻の香や闇に一すぢ野の小道 稲 正岡子規
稻の香や汽車から見ゆる法隆寺 稲 正岡子規
稻の香や修覆しかゝる神輿部屋 稲 正岡子規
稻の香や修覆出來たる神輿部屋 稲 正岡子規
稻の香や野末は暮れて汽車の音 稲 正岡子規
稻の秋命拾ふて戻りけり 稲 正岡子規
稻の波南に凌雲閣低し 稲 正岡子規
稻の波渺々として牛の聲 稲 正岡子規
稻の葉や袂にふくむ風の味 稲 正岡子規
稻の畫をかき直さゞる話かな 稲 正岡子規
稻の穗に温泉の町低し二百軒 稲穂 正岡子規
稻の穗に十里の雨の靜かなり 稲穂 正岡子規
稻の穗に招く哀れはなかりけり 稲穂 正岡子規
稻の穗に姫路の城は暮れてけり 稲穂 正岡子規
稻の穗のうつむく程にみのりけり 稲穂 正岡子規
稻の穗のうねりこんだり祝谷 稲穂 正岡子規
稻の穗の雨ならんとして燕飛ふ 稲穂 正岡子規
稻の穗の鎌の形にたわみける 稲穂 正岡子規
稻の穗の人招きよせよせ 稲穂 正岡子規
稻の穗の動きて昇る朝日哉 稲穂 正岡子規
稻の穗の伏し重なりし夕日哉 稲穂 正岡子規
稻の穗の名所に神の鎭まりぬ 稲穂 正岡子規
稻の穗の嵐になりし夕かな 稲穂 正岡子規
稻の穗やうるちはものゝいやしかり 稲穂 正岡子規
稻の穗や南に凌雲閣低し 稲穂 正岡子規
稻穗やあちらこちらの赤錬瓦 稲穂 正岡子規
縺れつつ解けつつ走る稲穂波 若井新一
翳もなみ耳成山は稲の中 佐野良太 樫
藪の風稲田に落ちてたはれ居り 西山泊雲 泊雲句集
蜻蜒や実り伏す稲まだの稲 寺田寅彦
谿の稲バスの玻璃刷くみのりかな 林原耒井 蜩
豐年や稻の穗がくれ雀鳴く 稲穂 正岡子規
霍乱を起して倒る稲あらん 高澤良一 燕音
靜かさや稻の葉末の本願寺 稲 正岡子規
颱風はもう来ぬといふ稲の秋 高浜年尾
鮑殻吊つて稲守る不破の関 後藤春子

稲 補遺

あたたかく交る藁や麦と稲 三橋敏雄
いつまでも凶作稲を焼く火勢 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
いわし雲粟の垂穂の影し合ふ 藤田湘子 途上
お伊勢様御稲の倉も豊の秋 阿波野青畝
かかし傘の月夜のかげや稲の上 飯田蛇笏 山廬集
かぐはし水うごく国原稲穰りたり 中川一碧樓
さやさやと羽後の稲穂の囁けり 鈴木真砂女 紫木蓮
しみ~と青稲暮るゝ身のまはり 日野草城
たちつづく四五羽の鷭や稲の露 水原秋櫻子 磐梯
たわわなる稲田に低き川原寺 松崎鉄之介
だいこんの三浦は雨の稲運ぶ 木村蕪城 寒泉
ところところ家かたまりぬ稻の中 正岡子規 稲
どこからか来てどこへ去る稲枕 飯島晴子
どこよりの稲を負ひくる人ならん 高野素十
なほ稲田ゆく汽車妻が下りし汽車 山口誓子
はこびくる稲に農夫に日かがやき 大野林火 早桃 太白集
ひき水の野路よこぎりて稲みのる 飯田蛇笏 春蘭
ひとりして水漬きし稲を嘆かへり 山口誓子
ひをんどりたまらず散つて稲の露 石田勝彦 雙杵
ほのとさす日があとずさり稲の上 右城暮石 句集外 昭和十一年
みちもせに稲穂は垂りつ塔はろか 伊丹三樹彦
みどりごを抱きふるさとの稲のみち 伊丹三樹彦
むさし野は稻よりのぼる朝日哉 正岡子規 稲
むつがしき牛の眉間や稲の秋 山口誓子
ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は 平畑静塔
わがこころ稲の穂波にただよへり 山口青邨
わが旅や稲の穂先の黄ばむ中 鈴木真砂女 卯浪
ガソリンの活性の香よ稲田べり 山口誓子
キャタピラーならず稲田の祭山車 山口誓子
ゴルフ網いまは稲田の黄を透かす 山口誓子
トンネルを抜けて越後や稲の秋 石塚友二 磊[カイ]集
バス降りし婆が一礼稲穂道 岸田稚魚
一望にして稲の秋芋の秋 清崎敏郎
一線を引く海の紺稲の秋 清崎敏郎
一路国道九号線稲田一望 荻原井泉水
三畝の畑稲はみのらず草は実に 山口青邨
丘ちかき稲田の面すでに冷ゆ 山口誓子
丘の辺は稲に日あたる出水かな 村山故郷
中国の民も稲田に腕を組む 山口誓子
中学生朝の眼鏡の稲に澄み 中村草田男
五輪塔稲田に地水火風空 山口誓子
人生に倦む駅柵に稲田見て 山口誓子
今年の稲運ぶ水漬く日近き畦を 大野林火 方円集 昭和五十三年
会津の山山雲揚げ雲つけ稲田の民 金子兜太
倒伏の稲に手荒き鳥つぶて 金子兜太
八雲立つ国の稲穂を手に測る 鷲谷七菜子 天鼓
凶作の稲穂芒のごとなびく 山口青邨
凶作の稲穂露の重さに如かず 山口青邨
刀水橋わたれば男沼稲の波 山口青邨
分け入りし農婦厚腰稲穂鳴る 野澤節子 未明音
初穂見たり電車も伊勢に入りゆけり 大野林火 方円集 昭和四十九年
勤め途や腰折れ稲穂つづくなり 石川桂郎 含羞
北の国にはるばる来つれ稲穂道 村山故郷
区画無く地の果までも稲田なり 山口誓子
千枚の稲田陥ちゆく据乱し 山口誓子
午すぎのけだるさ稲も熟るるらし 能村登四郎
厨の火燃ゆれば豊の稲ゆるる 山口青邨
古みち往く吾はも吉備の稲田人 上田五千石『琥珀』補遺
君が代や四海静かに稻の波 正岡子規 稲
吹き降りや稲田へ橋のゆきもどり 飯田蛇笏 山廬集
和讃の夜殊に稲田は熟れいそぐ 能村登四郎
唐招提寺門前稲田実る頃 村山故郷
唯一度負ひたる稲を忘れめや 相生垣瓜人 明治草抄
国中も山中も稲無くなれる 右城暮石 散歩圏
堪へがたし稲穂しづまるゆふぐれは 山口誓子
夕明りして雨ふれる稲の上 右城暮石 句集外 大正十二年
夕映えて不作の稲に空やさし 相馬遷子 山国
夕闇に稲のみが見ゆ稲刈れり 津田清子
夕風や垂穂にあるく片鶉 飯田蛇笏 山廬集
大名のお庭は廣し稻十里 正岡子規 稲
大師の田五穀の稲の成就せる 山口誓子
太宰の通ひ路稲田の遠さ雲の丈 中村草田男
奔牛の性をわすれて稲はこぶ 百合山羽公 故園
奥津城も稲の香ぞするふるさとは 石塚友二 曠日
娼家の灯洩るるところに稲育つ 伊丹三樹彦
婆つれし佛詣りや稻曇 正岡子規 稲
子を背負ふた者の咽喉見せて稲が色づいた 中川一碧樓
学校の実習田稲倒れ伏す 右城暮石 散歩圏
宮立てゝ稻の神とぞあがめける 正岡子規 稲
家高低稻段々に山の裾 正岡子規 稲
寂として畔の夕かげ稲稔る 飯田蛇笏 雪峡
山国やいなづまがちに稲実り 大野林火 冬青集 雨夜抄
山峡に稲の音あり秋まぼろし 金子兜太
山日和下界の稲も終りたる 大野林火 月魄集 昭和五十五年
山深く草ばうばうと稲も生え 平畑静塔
山盡きて稻の穗末の白帆かな 正岡子規 稲穂
山盡きて稻の葉末の白帆かな 正岡子規 稲
山陰や草穂まじりに稲の出来 飯田蛇笏 山廬集
山陽道どこまでも雨稲黄ばむ 村山故郷
工場の火噴き収まりし稲匂ふ 角川源義
帰省子やばつたり出逢ふ稲かつぎ 飯田蛇笏 山廬集
庄屋殿の棺行くなり稻の中 正岡子規 稲
庭紅葉大稲橇を立てかけし 高野素十
建ちてまだ住まぬ一棟稲の秋 日野草城
彳むや社壇から見る稻の雲 正岡子規 稲
往診の俥やなほも稲田ゆく 山口誓子
徳利の口まつくらや稲穂波 桂信子 緑夜
急流を稲の香わたりつづけたり 廣瀬直人 帰路
懸税なりし稲穂を一つ乞ふ 高野素十
我が思ふ如く人行く稲田かな 中村汀女
手握りし粟の垂穂のあたゝかく 高野素十
投網飛ぶ稲置(いなぎ)の谷地と思ふとき 佐藤鬼房
拱きて稲を負ひくる少女かな 松本たかし
掌にうけし御田の稲穂の名はやまと 高野素十
掌にうけて御田の稲穂の軽かりし 高野素十
新婦めざとき黎明を水底の稲 橋閒石 風景
旅は神無月黄に照る稲田伴連れに 金子兜太
日ちりちり櫟葉かゝる稲の上 右城暮石 声と声
日向へ日向へ径わかれて稲はこび 大野林火 海門 昭和七年以前
日盛りの男女の稲かつぐ 高野素十
日矢降りて常陸風土記の稲穂かな 森澄雄
明治節稲田の日和歩きけり 日野草城
星合の稲田は暗し黝(あをぐろ)し 佐藤鬼房
昼の酔津軽の稲風稲ゆする 中村草田男
晩鐘や稻の葉末を鳴り渡る 正岡子規 稲
晴れし日の暮るゝと和む稲の上 細見綾子 桃は八重
暮るゝ前の明るみのあり稲の上 細見綾子
月の田にあすの用意の稲はこび 長谷川素逝 村
朝露に稻の穗波の亂れ哉 正岡子規 稲穂
村遠近雨雲垂れて稻十里 正岡子規 稲
東京の汽車来て嬉し稲の露 前田普羅 普羅句集
松島の入江の稲もみのりたり 山口青邨
林中の一路澄みたる稲背負ひ 飯田龍太
枯れ立ちの稲科の長き葉を愛す 三橋敏雄
染野には火柱あがる稲仕舞 阿波野青畝
柴又の茶店いづれば稻の雨 正岡子規 稲
案山子かと見れば人なり稲熟るゝ 日野草城
武藏野や昔問へば稻のうなづきぬ 正岡子規 稲
母かくす雨一円に稲穂垂れ 原裕 葦牙
水門の閉ぢ季稲の水濁す 石川桂郎 四温
汽車は過ぐ稲田が浜となるところ 山口誓子
泥田の稲かつぎ出すや女の腰 細見綾子
泥稲をかかへ田下駄をひきずれり 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
泥稲をまばらにかけて木槿垣 清崎敏郎
海ちかく稲田の中に蘆荻生ふ 山口誓子
海鳴りの割つて入るなる稲穂かな 岸田稚魚 紅葉山
淡々と夕影しみる稲の出穂 飯田蛇笏 家郷の霧
深稲田より足を抜くをとめを見る 山口誓子
湯神楽のしぶき浴びをり稲つるび 岡井省二 鯛の鯛
溝あれど稲の長穂をもて接す 津田清子
濁水の稲に太陽照りいだす 百合山羽公 故園
濁流の千曲怒りて稲倒す 阿波野青畝
濡れて行く柩の駕や稻の雨 正岡子規 稲
濡れ稲を負ひつつ吾を一瞥す 能村登四郎
烽火待つごとく稲田に立ちてをり 廣瀬直人
熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 臼田亜郎 定本亜浪句集
牛小屋に牛ゐて曇らざる稲田 原裕 葦牙
猪の這入りし稲田どれどれと 飯島晴子
町すぐに果てて秋づく遠稲田 能村登四郎
畔松むざと倒されて稲のそよぎかな 種田山頭火 自画像 層雲集
病み籠りゐたり稲田の黄なるまで 山口誓子
白山の神を稲田に勧請して 山口誓子
百姓が稲田走せいつまでも走す 山口誓子
百姓の胸もと隠す稲田も見 山口誓子
盆月夜稲よりも顔あきらかに 森澄雄
盛装を稲田の夕日照らしけり 山口誓子
目を細め農夫の如く稲田看る 伊丹三樹彦
着陸の態勢土佐の垂穂見ゆ 山口誓子
睦む鴨稲食ふ鴨と思はれず 百合山羽公 樂土
石手寺の築地くづれて稲の波 山口青邨
磯髷をせるをんなのみ稲じまひ 阿波野青畝
稗多き稲田月夜ぞ酒汲まむ 石田波郷
稲かけてあたりの家に人かへる 木村蕪城 一位
稲かけて見えなくなりし麓かな 渡邊白泉
稲かつぎ行きぬ後ろに蝶々とび 高野素十
稲がかけてある野面に人をさがせども 尾崎放哉 大正時代
稲がみな俯伏し低き田となれり 山口誓子
稲つけて馬が行くなり稻の中 正岡子規 稲刈
稲てらすさなかの螢抓みとる 平畑静塔
稲ならぬものぬきんでて豊の秋 鷹羽狩行
稲の上にはかに星を落しける 山口誓子
稲の中に夕日さしこむ紅葉草 村上鬼城
稲の中遠く流れきし悠々と海ちかく 荻原井泉水
稲の中駆け来て汽車に間に合ふか 上野泰 春潮
稲の牛上り来るを坂に待つ 山口誓子
稲の秋の風吹き流れ二つ並びの山 中川一碧樓
稲の穂に露下り灯る奈良の町 右城暮石 句集外 昭和十一年
稲の穂のあたりにゆるる夕厨 山口青邨
稲の穂のこころもとなく芭蕉像 廣瀬直人
稲の穂の撓む国よりまかり出づ 角川源義
稲の穂の日々垂れわが家整へり 林翔 和紙
稲の穂の逆波峡の田におよぶ 鷹羽狩行
稲の道なだらかに誰にも逢はず 廣瀬直人
稲の道村の南の学校ヘ 飯田龍太
稲の雨班鳩寺にまうでけり 正岡子規 稲
稲の香におぼれてバスのかしぎ来る 水原秋櫻子 玄魚
稲の香にむせぶ佛の野に立てり 水原秋櫻子 蓬壺
稲の香に晩き恋などあるもよし 飯島晴子
稲の香や壺のいしぶみ彫幽か 佐藤鬼房
稲の香や太陽倒れかかるかに 三橋敏雄
稲の香や無帽の人は後より 飯島晴子
稲の黄が眼に沁む風邪を引きにけり 右城暮石 句集外 昭和二十七年
稲の黄を寄せつけぬ黄や泡立草 右城暮石 虻峠
稲はこぶ女の一歩畦にのる 高野素十
稲びかりまづしき運河見せにけり 水原秋櫻子 餘生
稲ぶすま湖の郷愁はるかより 村山故郷
稲みのり雲遠ざかる渓の音 飯田蛇笏 白嶽
稲を懸く木と木に縄を張り渡し 山口誓子
稲原の白き匂ひの夜なりけり 臼田亜浪 旅人 抄
稲咲いてひとびと口の辺より老ゆ 後藤比奈夫
稲域かげ遊べる鶴に歩み寄り 杉田久女
稲堆に梯子かけたり城の趾 山口青邨
稲塚の出来てしまへば帰り急き 中村汀女
稲太る月夜の手足盆踊 飴山實 おりいぶ
稲姿や吉林の燈のまだ見えず 臼田亜郎 定本亜浪句集
稲孕みつつあり夜間飛行の灯 西東三鬼
稲孕む碧空に蛾の重き顔 飯田龍太
稲懸ける音ほそ~と月夜かな 渡邊水巴 白日
稲晴れて蒼き煙を上ぐる家 日野草城
稲暗緑命毛鋭かりし母の文字よ 中村草田男
稲株を豆腐切りして水落す 右城暮石 句集外 昭和六十一年
稲植ゑて三日そこそこ一の関 能村登四郎
稲橇の跡の乱れてあるところ 高野素十
稲浸す水がゆふべにひかりつゝ 山口誓子
稲無限不意に涙の堰を切る 渡邊白泉
稲熟れて冴え冴えとして夕餉とる 細見綾子
稲牛の啣へ上げたる稲一把 高野素十
稲牛を見おくりて又雲をみる 百合山羽公 故園
稲田の上にわがシャツも浮き夜明けの車窓 金子兜太
稲田の黄見れば見るほどよき色す 右城暮石 句集外 平成四年
稲田ゆく自転車重き農婦乗せ 山口誓子
稲田より襁褓吹かるるわが家指す 伊丹三樹彦
稲田より雉子のとびたる丹波かな 高野素十
稲田を前富士は富士のみとして大き 松崎鉄之介
稲田夕焼、有明の海に入る日見に行く 荻原井泉水
稲田夜も黄色し海にこだま走り 金子兜太
稲田来ていつの間に手の甲の傷 山口誓子
稲田来て燈のあたたかき家の間 山口誓子
稲田黄に全盲の画家犬と戯(ざ)れて 金子兜太
稲田黄に山は落とす辛亥の木の実 山口青邨
稲省生身の葬囃しすぐ 角川源義
稲秋の夕日の壁のとなり村 長谷川素逝 村
稲秋の星を低くし湖の国 森澄雄
稲稔りゆくしづかさに村はあり 長谷川素逝 村
稲稔りゆつくり曇る山の国 廣瀬直人
稲稔るカドミウムらしい奴も 金子兜太
稲稔る故旧いづこに求めんや 伊丹三樹彦
稲穂垂り平安城趾ここに掘る 村山故郷
稲穂波よりもしづかに最上川 鷹羽狩行
稲穂田に男鹿の白濤がかぶさる 金子兜太
稲積んで木賃宿ともなかりけり 村上鬼城
稲積んで馬くゞらせぬ長家門 村上鬼城
稲終へて山に片寄る大潟村 松崎鉄之介
稲終へて淡海見に来ぬ越後衆 森澄雄
稲絮解くを肥後牛待てり一の坂 水原秋櫻子 殉教
稲荷山島とし浮ぶ稲穂波 山口青邨
稲襖の陰行く道も賎ヶ嶽 村山故郷
稲襖日のほこほことあたる野辺 村山故郷
稲負うてゆきゆさゆさと暗くなる 佐藤鬼房
稲負ひて闇に追はれて来しふたり 相生垣瓜人 微茫集
稲負ひのゆるやかに来て息づかひ 森澄雄
稲負ふや左右にはしる山の翼 加藤秋邨
稲車山霧の霧後になる 平畑静塔
稲車酔ふからに押し明るさよ 石川桂郎 含羞
稲雨蔽ふ雲冷やかに暮れてゆく 臼田亜郎 定本亜浪句集
稲馬の朝の日あびてひき出さる 山口青邨
稲鳰の秋田平野は夜となりぬ 山口青邨
稲黄ばむ空気叩きてヘリコプター 右城暮石 散歩圏
稲黄ばむ草木染めにもしたき色 右城暮石 散歩圏
稲黄ばむ頃よ聞きしむ音ありて 右城暮石 声と声
稻の波南に凌雲閣低し 正岡子規 稲
稻の波渺々として牛の聲 正岡子規 稲
稻の畫をかき直さゞる話かな 正岡子規 稲
稻の秋命拾ふて戻りけり 正岡子規 稲
稻の穗に十里の雨の靜かなり 正岡子規 稲穂
稻の穗に姫路の城は暮れてけり 正岡子規 稲穂
稻の穗に招く哀れはなかりけり 正岡子規 稲穂
稻の穗に温泉の町低し二百軒 正岡子規 稲穂
稻の穗のうつむく程にみのりけり 正岡子規 稲穂
稻の穗のうねりこんだり祝谷 正岡子規 稲穂
稻の穗の人招きよせよせ 正岡子規 稲穂
稻の穗の伏し重なりし夕日哉 正岡子規 稲穂
稻の穗の動きて昇る朝日哉 正岡子規 稲穂
稻の穗の名所に神の鎭まりぬ 正岡子規 稲穂
稻の穗の嵐になりし夕かな 正岡子規 稲穂
稻の穗の鎌の形にたわみける 正岡子規 稲穂
稻の穗の雨ならんとして燕飛ふ 正岡子規 稲穂
稻の穗やうるちはものゝいやしかり 正岡子規 稲穂
稻の穗や南に凌雲閣低し 正岡子規 稲穂
稻の葉や袂にふくむ風の味 正岡子規 稲
稻の香に人居らずなりぬ避病院 正岡子規 稲
稻の香の雨ならんとして燕飛ぶ 正岡子規 稲
稻の香や修覆しかゝる神輿部屋 正岡子規 稲
稻の香や修覆出來たる神輿部屋 正岡子規 稲
稻の香や汽車から見ゆる法隆寺 正岡子規 稲
稻の香や野末は暮れて汽車の音 正岡子規 稲
稻の香や闇に一すぢ野の小道 正岡子規 稲
稻穗やあちらこちらの赤錬瓦 正岡子規 稲穂
穂を孕む稲田も面平らなり 山口誓子
穴惑倒れし稲にとぐろ巻く 右城暮石 散歩圏
穴惑豊垂穂田に隠れけり 石田波郷
空知野の短き稲も穂となりぬ 山口青邨
窯開けやぐるり稲田にとりまかれ 鈴木真砂女 夕螢
立ちそろふ稲穂暁けたり神路山 鷲谷七菜子 天鼓
老牛の房々として稲を負ふ 百合山羽公 故園
育種以後も稲の葉みどり黒き遺髪 香西照雄 対話
自転車を下りて暑のなき稲憂ふ 山口誓子
若者の汗は透明稲の風 草間時彦 中年
茶の斜面稲の平面接続す 山口誓子
草の穂も垂るることなく稲の秋 鷹羽狩行
葛城の裾万頃の稔り稲 右城暮石 句集外 昭和五十二年
葬りとて通るはよけれ稲の昼 上田五千石 琥珀
葬列の足早に声高に稲を伸ばす 橋閒石 風景
蓬莱の初穂の裾のそろひたる 後藤比奈夫
蓬莱の垂穂こぼれてみせしかな 後藤比奈夫
藪蔭を出てあたゝかし稲の秋 日野草城
蝗らよ稲の上とぶ新聞紙 鷹羽狩行
行かむとす燈火もなき稲田みち 山口誓子
西日して大和の稲田黄の厚み 大野林火 雪華 昭和三十五年
見の限り稲みのるさちいくさなか 伊丹三樹彦
観音に四圍めでたしや稲の秋 森澄雄
誰が目にもよき娘はよき娘稲運ぶ 高野素十
豊の国噴水の穂も垂穂なす 山口誓子
豊作の稲の香浄瑠璃寺に入りても 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
豊作の稲田は稲田姫の国 山口誓子
豊稲に如意が掲ぐる朝日かな 日野草城
賢治の地今豊穣の稲はぜて 能村登四郎
足並が確かむる意志稲穂波 藤田湘子
近々と稲田の生みし月そこに 中村汀女
近づきて父なり稲の途昏れて 伊丹三樹彦
逆波の稲にもありて最上川 鷹羽狩行
通り来し稲田をいまはー眸す 山口誓子
遅月やありあり見ゆる稲の露 西島麦南 人音
道ありと思へず稲田ひと通る 山口誓子
道の上に猫の出てゐる稲の秋 森澄雄
道道の稲の出来見て山の湯ヘ 上村占魚 球磨
野の家の箪笥見えてる稲の秋 臼田亜浪 旅人 抄
闘鶏稲置告げし氷室に雪敷けり 松崎鉄之介
除々にして稲田に月の道敷かれ 能村登四郎
隔りぬはや稲塚も暮れぬれば 中村汀女
雨の日は雨の日の色稲田の黄 右城暮石 散歩圏
雨ふくむ上野の森や稻日和 正岡子規 稲
雨晴れて稻の穗末の夕日哉 正岡子規 稲穂
雨雲を畳みて吉備の稲穂波 岸田稚魚
雲白しつめたき稲のひかりにも 飯田龍太
霊棚の稲も大豆も色づきて 高野素十
霊棚の稲穂よろこび玉ふらん 高野素十
霧の中稲のみだれてゐるが見ゆ 右城暮石 句集外 昭和六年
霧はれて稲のおしあふ旭哉 正岡子規 稲
露冷や谷戸へ絞りて風の稲 石川桂郎 高蘆
露日南鶺鴒のゐて稲にとぶ 右城暮石 句集外 昭和三年
露霜のくされ稲抱き老農婦 能村登四郎
靄下りて稲田暮れゆく悲しさよ 山口誓子
青田にて稲の孕みのひそかなる 山口誓子
青稲に附きて乾きし泥の跡 右城暮石 散歩圏
青稲の碧羅の空も茅舎以後 中村草田男
青稲の穂孕めるごと人若し 右城暮石 句集外 昭和十七年
青立の稲に眼を慣らしけり 斎藤玄 雁道
靜かさや稻の葉末の本願寺 正岡子規 稲
風倒の稲これ以上凹まざる 山口誓子
風倒の稲の衾に寝てみたし 山口誓子
風倒の稲を櫛にて梳きたけれ 山口誓子
風倒の稲を異草かと思ふ 山口誓子
風倒の稲穂右巻き左巻き 山口誓子
風倒の稲絡まりて解き難し 山口誓子
颱風圏稲田に禾を立たしめず 山口誓子
首塚へ 黄ばみ うなだれ 飛鳥の稲 伊丹三樹彦
高千穂の垂穂垂穂の棚なしぬ 阿波野青畝
高繩や稻の葉末の五里六里 正岡子規 稲
髪のごと神に稲穂をつかみ置く 古舘曹人 樹下石上
鬼大師様に初穂の近江米 阿波野青畝
魚提げて歸る親父や稻の中 正岡子規 稲
鴛鴦のつく山田の稲のおそじまひ 右城暮石 句集外 昭和八年
鵙ゆきて稲田の幣にとまりけり 石田波郷
黄となりし稲田にはみな窪みあり 山口誓子
黄ばみ来て及ぶものなし稲の色 右城暮石 散歩圏
黄をすさまじ底無し沼につづく稲田 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
黒き貨車走る渋民村稲穂波 山口青邨
鼓笛隊山田をすぎつ稲の出来 飯田蛇笏

稲 続補遺

いざよひの名をうつむくや稲の先 野坡
いやましにはこぶや爰に神の稲 凉菟
うき秋の庭いろ佗し稲の上 土芳
うるはしき稲の穂並の朝日かな 路通
おもたさやわろふて力む稲になひ 素行
かい餅をせがみに行や稲くろべ 小春
かけ稲のその*最中緒やけふの月 馬場存義
かれ稲にきよめの雨やいせの秋 卓池
くはずとも露なめもせで稲の虫 土芳
くれあひに荷ひつれけり稲の音 木導
この比のおもはるゝ哉稲の秋 土芳
こよひ経て稲も孕む歟星の露 馬場存義
さら~と野分ごゝろや稲のうへ 使帆
しら糸や稲負勢鳥呼子鳥 鬼貫
それ程に稲もあらさぬ螽かな 牧童
たなばたや隠れて遊ぶ稲の中 紫道
として又命は続り稲むしろ 加藤曉台
とまり~稲すり哥も替けり 千子
はや稲の香に道をとふもの参 凉菟
ひと日~稲節折て湖遠し 完来
みなし稲小川流るゝ朝哉 一笑(金沢)
むつまじや稲もろともに尉と姥 凉菟
めでたさよ稲穂落ちる路の傍 黒柳召波
一方は稲にかゝるや星のはし 野坡
七夕や稲の初穂の御座れ餅 智月尼
七夕や稲の葉のびの隠れ道 野坡
三日月のしたしや稲にいねの影 桜井梅室
三日月やまだ稲の穂の出そろはず 十丈
乞食しに立出みれば稲の房 馬場存義
今ぞしる稲を手ぼしの袖の恩 北枝
仏にも初穂といふか木綿所 松窓乙二
何も音もなし稲うちくふて螽哉 嵐雪
八朔や薗の初穂の唐辛子 野坡
六尺の稲なかりけり年代記 蓼太 蓼太句集三編
六月は稲の葉伸に朝茶かな 建部巣兆
出揃て中稲に月のすはりけり 塵生
出揃ふや稲の田づらのざんざぶり 露川
初秋やくつろぎかゝる稲の中 路健
初穂から呑でさしたる新茶哉 露川
名月の初穂に藪の雫哉 寂芝
名月や稲番どもの呼リあひ 呂風
名月や誰が養ひて稲のはな 桃隣
吹く風や稲の香匂ふ具足櫃 鬼貫
城見えて朝日に嬉し稲の中 支考
夕影や膝に稲おく大ぼとけ 凉菟
夕顔やよその空なる稲の殿 建部巣兆
大寺の朝寐も見たり稲の露 成田蒼虬
奥庭や稲にもたるゝ暮の馬 林紅
守りめも稲に際だつ里の神 野坡
小墾田のをはりの初穂かくもあれ 加藤曉台
居ながらに稲の鳥追ふ鼓哉 凉菟
川稲の香とりをさして潮来船 加藤曉台
引まはす襖戸の外も稲屏風 北枝
御仏の肩にも一把稲の秋 鈴木道彦
播磨地に入や中稲のもとばらみ 卯七
敷台に稲ほす窓は手織哉 其角
新月や友に柳の稲むしろ 百里
旅なれば稲をまくらに月見哉 田上尼
日も永いやうぞ小春の稲に霍 成田蒼虬
春澄にとへ稲負鳥といへるあり 其角
春風も揃へて麦も稲むしろ 史邦
是もその祝の稲や鰻茶屋 貞棟 梨園
晴て行雨や隣の稲のうへ 成田蒼虬
更る夜や稲こぐ家の笑声 万乎
月の名や稲に照そふ霜溢 昌房
月待や足らぬ男は稲の番 野坡
根わたりや稲かりかゝる今朝の霜 句空
此ごろのおもはるゝかな稲の秋 土芳
此稲が酒になるらん後の月 泥足
氷りけり実のらぬ稲の臥しまゝ 高桑闌更
泣て来て子も飯喰ふや稲の中 中川乙由
浦に網町に稲ほす日和哉 凉菟
海にそふ北に山なし稲百里 北枝
海老稲も実入比とや放生会 史邦
湖のみづのひくさよ稲のはな 井上士朗
片形の月をたよりや根付稲 野坡
犬つれて稲見に出れば露の玉 鬼貫
目にたつや夏埜の末の畑稲 句空
相生の甲童や稲もらひ 朱拙
神松や稲も荒穂の冬日和 鬼貫
秋ちかし苗代あとの稲のたけ 〔ブン〕村
秋風や稲より出て稲に入 万子
稲かけてけしきたりけりひとつ松 鈴木道彦
稲かけて菊の日遠し垣隣 松窓乙二
稲かつぐ母に出迎ふうなひ哉 凡兆
稲こくは人をたはけにした屋敷 冠里 耕作
稲こぐや*ひよこを握る藁の中 其角
稲しきの炉を持そめぬ后の月 鈴木道彦
稲たんとつけて短し馬の首 松窓乙二
稲つかや寐覚の鴈の足だまり 塵生
稲つみてさもしや猿の痩からだ 凉菟
稲といふ名もきがゝりやいもが門 史邦
稲ならばいな葉やみのゝ鮎鱠 支考
稲の葉の青かりしよりかゝし哉 松村月渓
稲の香にむかし小袖や村かぶき 東皐
稲の香のねざめて近し五位の声 加藤曉台
稲の香の満るを今宵月の雲 松岡青蘿
稲の香やかさい平のばか一里 小林一茶
稲の香やゆりもて運ぶ行違 黒柳召波
稲の香や鷺も眠りをさますべう 鈴木道彦
稲ぶさや誰むすび置宮柱 黒柳召波
稲むしろ近江の国の広さ哉 浪化
稲もはや苅しほなれや衣装畑 史邦
稲を啄む鳥はゆるさじ弓矢神 桜井梅室
稲主に啄をかくすや小田の雁 毛〔ガン〕
稲塚のとつかにつゞく田守哉 其角
稲実にひろいつ沖つわすれ貝 土芳
稲房や仙台百をきみが秋 馬場存義
稲積に出るあるじや秋のあめ 丈草
稲若く真菰のはらむ五月哉 尚白
稲遠く傾城涼む夜明かな 泥足
稲~とそよぐはつらし門の秋 支考
羨し門は稲ほす冬ごもり 樗良
芋畑は焦うと儘よ稲の華 鼠弾
苅ながらはなしは稲の実入かな 杉風
苗代やある夜見そめし稲の妻 几董
苗取て夜には幾夜ぞ稲の露 田川鳳朗
草枕有礒の稲穂手向かな 杉風
落雁の稲をふみ込水田かな 素覧
藪かげや鳥もよく寐る稲曇り 寂芝
藪寺の晩鐘遠し稲の華 露川
蜀黍はなどはらまする稲の殿 越人
誰に似て我は稲つむ鴎かな 越人
跡先と熟稲や亀の甲 桃先
道くれて稲のさかりぞちからなる 加藤曉台
鎌捨て苅ほす稲をしきね哉 杉風
青き穂に千鳥啼也ひつぢ稲 史邦
青稲を穂長にかへて祝ひけり 桜井梅室
順も把伎と書てや稲のはな 野坡
馬で行人は見えけり稲の中 木因
馬に付我も背負ふや稲かりら 子珊
魂棚のみになるものは稲穂哉 鈴木道彦
鳥のこゝろ日々に広しや稲莚 野紅

以上



by 575fudemakase | 2017-06-05 08:35 | 秋の季語 | Trackback | Comments(1)
トラックバックURL : http://fudemaka57.exblog.jp/tb/26903907
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by 575fudemakase at 2017-09-16 18:55
ご指摘ありがとうございました。修正しておきました。


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
未分類

以前の記事

2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

朝冷 の俳句
at 2017-10-16 09:58
雨冷 の俳句
at 2017-10-16 09:57
秋冷 の俳句
at 2017-10-16 09:56
ひえびえ・ひやひや の俳句
at 2017-10-16 09:54
秋湿り の俳句
at 2017-10-16 03:21

外部リンク

記事ランキング