蔦 の俳句


あら壁に蔦のはじめやかざり縄 乙由
いちはやくもへて甲斐なし穂だ榾の蔦 加舎白雄
かけ橋や蔦のあはひの蔓いちご 苺 正岡子規
かつ散りぬ蔦に戦く蹴出しかな 攝津幸彦 未刊句集
かはせみに蔦をよそはぬ老樹なく 竹下しづの女 [はやて]
きりさめやいかにおつべき蔦のつゆ 飯田蛇笏 山廬集
ゴッホに弟蔦茂る墓ふれあひて 小池文子 巴里蕭条
こまやかに這ひて恐し蔦かづら 嘯山
すゞしさのこころもとなし蔦漆 丈草 俳諧撰集「有磯海」
その角を蔦にからめてなく鹿か 鹿 正岡子規
どことなく地にはふ蔦の哀也 越水
ノートルダム寺院の蔦は川へ垂る 橋本鶏二
ひつはれは思はぬ蔦の動きけり 蔦 正岡子規
まとふ塀に窓あり家中町 蔦 正岡子規
まなかひに蔦のくれなゐ岩を這ふ 中川宋淵 遍界録 古雲抄
もみづるを急く葉急かぬ葉すべて蔦 山内山彦
ロンドンや蔦に埋もるる鉄扉錆び 野中 亮介
わざと這はす蔦の茂りや茶師の門 蔦 正岡子規
稲架裏に出でたる蔦の径かな 倉田紘文
稲妻や散るばかりなる窓の蔦 碧雲居句集 大谷碧雲居
引けば寄る蔦や梢のここかしこ 太祇
引けば寄蔦や梢のこゝかしこ 炭 太祇 太祇句選
引窓に蔦の手を出す山家かな 蔦 正岡子規
羽衣やちきれてのこる松のつた 蔦 正岡子規
炎天やひしと蔦這ふ石館 徳永山冬子
猿一つ蔦にすがりてしくれけり 時雨 正岡子規
遠景に近景黒し蔦の家 森田智子
横山外科炎暑の街に蔦茂り 山口波津女 良人
夏痩せて蔦這ふ音のきこえけり 林菊枝
家一つ蔦と成りけり五月雨 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
我が袖の蔦や浮世の叢しぐれ 遊女-薄雲 俳諧撰集玉藻集
我袖の蔦や浮世のむら時雨 遊女薄雲
我戀や筆のはこびも蔦かつら 蔦 正岡子規
皆知れる蔦の館でありにけり 稲畑汀子
角煙突は祖父の世のもの蔦茂る 鍵和田[ゆう]子 未来図
釜無の蔦木の宿の柿並木 田中冬二 俳句拾遺
釜無の蔦木の宿の蛍かな 田中冬二 麦ほこり
岩橋の裏這ふ猿や蔦かつら 蔦 正岡子規
岩壁を染めはひ上り蔦かづら 岩本 幸吉
顔も膝も蔦の羅漢や夏近き 渡辺水巴 白日
起き伏しの蔦の緑や五月雨 碧雲居句集 大谷碧雲居
鬼蔦や仁王の膝へ這上る 寺田寅彦
久女より多佳子に系譜蔦かづら 池上不二子
笈の角梢の蔦に知られけり 其角 (宇都の山の絵に)
給水塔南茂りの蔦まとひ 中戸川朝人 尋声
教会のクルスを残し蔦茂る 渋谷麻紗
欠け~て蔦のもみぢ葉つひになし 富安風生
月うかれ妙義の蔦を上らうよ 蔦 正岡子規
牽牛子やをのが蔓かと蔦に咲く 千代尼
梧うごく秋の終りや蔦の霜 ばせを 芭蕉庵小文庫
梧動く秋の終りや蔦の霜 松尾芭蕉
紅や霧のひまより蔦梢 東洋城千句
紅茶濃き樹海うもれに蔦温泉 斎藤富雄
笹鳴や蔦の細道石粗し 関根近子
山蔦に朝露すべる葉数かな 芥川龍之介 我鬼句抄
散り果てて蔦は朽木を支へをり 原田種茅 径
散り込むや雨岸の蔦瀬を早み 会津八一
桟(かけはし)や命をからむ蔦葛 松尾芭蕉
桟や命をからむ蔦かづら 芭蕉
桟や命をからむ蔦もみぢ 翁 九 月 月別句集「韻塞」
桟橋や命をからむ蔦葛 松尾芭蕉
姿勢正しく 蔦の門でて 老貴族 伊丹公子 アーギライト
枝折戸やからめる蔦の実を残す 石川桂郎 四温
自動車と蔦の月夜や玄関は 京極杞陽
執念のがつきと崖に蔦かつら 石塚友二 方寸虚実
篠原や日あたる蔦のむらもみぢ 飯田蛇笏 山廬集
寂しいと言い私を蔦にせよ 神野紗希
手紙かくや蔦に灯を置く夏隣 碧雲居句集 大谷碧雲居
就中身に入蔦の嵐哉 団水
秋雨に必ず光る蔦の色 横光利一
秋風や桐に動きて蔦の霜 松尾芭蕉
秋黴雨蔦の細道烟らせて 高澤良一 燕音
十月や燃えのぼりたる蔦うるし 和田祥子
十三夜蔦の落葉の緑かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
銃櫓まで攻めて火の蔦もみぢ 岬雪夫
春蝉や蔦を鎧へる松多し 高田風人子
松に紅蔦はや十年の妻帯者 中村草田男
松に蔦街道古き羽州かな 佐藤肋骨
松見ゆる戸口に蔦の茂り哉 茂 正岡子規
松嶋の松にかつらも蔦もなし 蔦 正岡子規
城門を全く掩ひ蔦の秋 楠目橙黄子
色蔦や陽は篁を荘厳す 北原白秋
色変へぬ蔦は寒かり時雨れては 林原耒井 蜩
神籬を走れる蔦も薄もみぢ 岸風三楼
人がひとを阻む壁にて蔦育つ 稲垣きくの 黄 瀬
人もなし蕣の垣根蔦の壁 朝顔 正岡子規
仁王にもよりそふ蔦の茂りかな 園女
垂れ蔦の石垣を擦る冬の風 高田蝶衣
水晶のいはほに蔦の錦かな 蔦 正岡子規
西側は蔦の窓なり四疊半 蔦 正岡子規
石階に蔦紅潮し昔の友 綾子
石崖に木蔦まつはる寒さかな 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕
石垣の蔦の蔓上る遣羽子や(大正3年) 滝井孝作 折柴句集
石垣やあめふりそゝぐ蔦明り 蛇笏
石垣やあめふりそそぐ蔦明り 飯田蛇笏 山廬集
石垣や雨降りそそぐ蔦明り 飯田蛇笏
石山の石にも蔦のうら表 乙州 八 月 月別句集「韻塞」
石山の石にも蔦の裏表 乙州
千仭の岩に蔦なし秋の風 西山泊雲 泊雲句集
尖塔に蔦のもみづる異人館 和田きよし
岨の松の蔦の秋とはなりにけり 尾崎迷堂 孤輪
巣箱までとどきし蔦やいわし雲 大島民郎
窓の蔦にまつはりなびく蚊遣かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
走りたる蔦もて館をなしにけり 不破博
足ふるふ胎内くゞり蔦赤し 蔦 正岡子規
苔埋む蔦のうつつの念仏哉 松尾芭蕉
大入日ここに一筋紅蔦巻く 野澤節子 黄 瀬
大木を抱いて短し蔦かつら 蔦 正岡子規
啄木鳥やくれなゐ震ふ蔦かづら 徳永山冬子
炭がまやぬりこめられし蔦かづら 加舎白雄
地に下りし蔦の新芽に梅雨さはぐ 前田普羅 飛騨紬
猪や足すくはるゝ蔦かつら 蔦 正岡子規
朝顔の這ひいでて咲きぬ塀の蔦 朝顔 正岡子規
蔦かづら脚にまつはり死者生者 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
蔦かづら裏門多き小道かな 正岡子規
蔦かつら裏門多き小道かな 蔦 正岡子規
蔦からみ傾く家の棺を出す 竪阿彌放心
蔦からむ階あり秋の風に佇つ 高濱年尾 年尾句集
蔦からむ侍町の土塀かな 蔦 正岡子規
蔦かれて壁に音する嵐かな 軒秋
蔦さがる岩の凹みや堂一つ 蔦 正岡子規
蔦さがる窓に緑の朝日かな 蔦 正岡子規
蔦すがる古城の石の野面積み 千田一路
蔦に幹しばられ天城桜咲く 羽部洞然
蔦に灯を入れて水盤の大旱 萩原麦草 麦嵐
蔦の花あり~と蠅逃げにけり 碧雲居句集 大谷碧雲居
蔦の花滝と白さを分ちけり 渡邊水巴 富士
蔦の実の数へられつゝ冬ざれて 高濱年尾 年尾句集
蔦の実の日ざしの秋の深まりぬ 銀漢 吉岡禅寺洞
蔦の実を馬にくはすなうつの山 涼莵 (馬も餅くふと晋子の句に付て)
蔦の窓より洩るる四重奏 岩崎眉乃
蔦の這ふ吉野拾遺の名所哉 蔦 正岡子規
蔦の網ぱりぱり剥げば壁けぶり 栗生純夫 科野路
蔦の葉の落ちた処を時雨けり 此筋 十 月 月別句集「韻塞」
蔦の葉は残らず風の動(そよぎ)かな 荷兮
蔦の葉や貝がらひろふ岩の間 臥高 俳諧撰集「有磯海」
蔦の葉や拙(つた)の身ながらかゝる時 服部嵐雪
蔦の葉や拙の身ながらかゝる時 服部嵐雪
蔦の葉や無絃の琴に這ひかゝる 蔦 正岡子規
蔦の葉をつたふて松の雫哉 蔦 正岡子規
蔦の輪の下に鉦うつひがんかな 大江丸
蔦ひらく二日に一度づつの葉を 加藤楸邨
蔦もみじ神が登つてゆきにけり 中村苑子
蔦もみぢ神が登つてゆきにけり 中村苑子
蔦もみぢ疎に国東の仏たち 江副 操
蔦もみぢ二階に淫し宝島見ゆ 加藤郁乎
蔦もみぢ濡れしは今かしぐれけむ 水原秋櫻子
蔦をからめひとつの追憶残酷に 池田草舎
蔦一葉はさむ手帳や旅の果 丹羽啓子
蔦巻く家へ悲劇の方へ一歩づつ 秋元不死男
蔦幾条枝よりたるゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
蔦紅らみ物音澄める司祭館 嶋崎茂子 『ささやき神』
蔦紅らむ野外音楽堂椅子一目 宮津昭彦
蔦若芽爬虫類館蔽ひけり 高澤良一 ねずみのこまくら
蔦植ゑて竹四五本のあらしかな 芭蕉
蔦植ゑて竹四五本の嵐かな 松尾芭蕉
蔦新葉みづみづと螢一つ行く 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蔦萌えてなほ鉢のいろ蔽ひえず 原田種茅 径
蔦茂り壁の時計の恐しや 池内友次郎
蔦茂り壁の時計の恐ろしや 池内友次郎
蔦茂るオランダ坂の煉瓦館 山本行二
蔦茂る宇津の山辺へ沢づたひ 小野宏文
蔦茂る酒場にルオーのキリストが 川崎展宏 冬
天蚕や賢治のくには山多し 佐々木蔦芳(薫風)
冬蔦のがんじがらめの木に鴉 中丸まちえ
冬蔦や五箇山の豆腐は縄で吊る 蒲田玉枝
冬蔦や帯〆やわと結ぶ母 榎本眞千
唐紙や敷居の細道蔦葛 露甘 選集「板東太郎」
徳利蜂巣の徳利ざま蔦結ぶ 石川桂郎 高蘆
瀞に映る絶壁広し蔦の秋 西山泊雲 泊雲句集
二百十日塀きれぎれに蔦の骨 横光利一
日覆して蔦の茶房もエルグレコ 澤田 緑生
年寄りて牛に乗りけり蔦の路 木節 (甲斐の身延に詣ける時、宇都の山辺にかゝりて)
馬士(うまかた)に見られて赤し森の蔦 立花北枝
梅雨の森蔦からむ幹隙間より 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
売家の直は下りけり蔦かづら 横井也有 蘿葉集
白亜館紅蔦淋漓闇に散る 草田男 (三島氏原作・水谷氏所演の「鹿鳴館」に需められて、読まず観ずして、作る。)
白雄忌の火取蛾一夜蔦沼に 鳥居美智子
八一居の雨に彩増す蔦もみぢ 佐久間洋子
鉢蔦のみだれおちたる諸葉かな 飯田蛇笏 山廬集
半襟も蔦のもみぢや窓の秋 永井荷風
板塀や厨につゞく蔦かづら 蔦 正岡子規
飛ぶが中に蔦の落葉の大きさよ 落葉 正岡子規
美しう蔦はおとろふ人の秋 加舎白雄
姫蔦や地蔵の膝へ這ひ上る 寺田寅彦
塀の蔦瑪瑙いろなる一、二葉 高澤良一 素抱
壁の蔦焚火の照らす錦かな 久米正雄 返り花
壁の蔦隣は鰯たく香哉 成美
変電所痣の如くに蔦の緑 田川飛旅子 花文字
墓所の杉火よりもあかき蔦まとふ 大野林火
萌ゆる蔦橋踰ゆる意志継いでをり 中戸川朝人
明てから蔦となりけり石燈篭 千代尼
木つつきのつつき登るや蔦の間 浪化
木椅子の脚を蔦が掴みて悲劇めく 内藤吐天 鳴海抄
門に蔦火燗手酌に胸もみぢ 幸田露伴 谷中集
夜に入ば灯のもる壁や蔦かづら 炭 太祇 太祇句選
夜に入れば灯のもる壁や蔦かづら 太祇
夜嵐や吹き靜まつて蔦の霜 霜 正岡子規
薮蔭や蔦もからまぬ唐辛子 萩原朔太郎
落葉松を駈けのぼる火の蔦一縷 福永 耕二
涼しさや松風蔦の葉を返し 尾崎迷堂 孤輪
淋しさや蔦の細道捨草鞋 蔦 正岡子規
冷まじや人の面うつ蔦かづら 手塚美佐
蓮華つつじ燃えて蔦の湯溢れつぐ 小坂順子
露霜の石抱くものに蔦かづら 伊丹さち子
浪ぎはへ蔦はひ下りる十餘丈 蔦 正岡子規
老杉を登る若蔦墳墓立つ 百合山羽公 寒雁
搦手や門朽ちて蔦うつくしき 蔦 正岡子規
疵一つなき裸身にて鬱の傷 蔦悦子(好日)
縱横に蔦這ひたらぬ岩屋哉 蔦 正岡子規
蕣の蔦にとりつく山家哉 朝顔 正岡子規
藪畳半は蔦のもみぢけり 黒柳召波 春泥句集
雹のなかつめたき蔦は葉をよせて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく

蔦 補遺

あざやかに蔦の落葉の柄を長く 山口青邨
かけ橋や蔦のあはひの蔓いちご 正岡子規 苺
きりさめやいかにおつべき蔦のつゆ 飯田蛇笏 山廬集
その角を蔦にからめてなく鹿か 正岡子規 鹿
たらちねの手枷足枷蔦かづら 中村苑子
ひつはれは思はぬ蔦の動きけり 正岡子規 蔦
わざと這はす蔦の茂りや茶師の門 正岡子規 蔦
引窓に蔦の手を出す山家かな 正岡子規 蔦
羽衣やちきれてのこる松のつた 正岡子規 蔦
猿一つ蔦にすがりてしくれけり 正岡子規 時雨
我戀や筆のはこびも蔦かつら 正岡子規 蔦
街燈を捲きて闇夜の蔦茂る 上田五千石『田園』補遺
岩に蔦もみぢ松島瑞巌寺(NHK衛星テレビのため松島で) 細見綾子
岩橋の裏這ふ猿や蔦かつら 正岡子規 蔦
基督は癒えし者の眼蔦散り尽き 中村草田男
月うかれ妙義の蔦を上らうよ 正岡子規 蔦
月光にひらひらひらひら幹の蔦 清崎敏郎
枝折戸やからめる蔦の実を残す 石川桂郎 四温
執念のがつきと崖に蔦かつら 「方寸虚実」石塚友二
篠原や日あたる蔦のむらもみぢ 飯田蛇笏 山廬集
松に紅蔦はや十年の妻帯者 中村草田男
松見ゆる戸口に蔦の茂り哉 正岡子規 茂
松嶋の松にかつらも蔦もなし 正岡子規 蔦
真紅は蔦と 臨海ベランダ干しの夜具と 伊丹三樹彦
人もなし蕣の垣根蔦の壁 正岡子規 朝顔
水晶のいはほに蔦の錦かな 正岡子規 蔦
西側は蔦の窓なり四疊半 正岡子規 蔦
石垣やあめふりそそぐ蔦明り 飯田蛇笏
窓あれば壁蔽ふ蔦の厚みみゆ 篠原梵 年々去来の花 皿
窓の蔦刈りて海猫屋といふ茶房 能村登四郎
足ふるふ胎内くゞり蔦赤し 正岡子規 蔦
大入日ここに一筋紅蔦巻く 野澤節子 未明音
大木に木蔦からまる寒の闇 飯田龍太
大木を抱いて短し蔦かつら 正岡子規 蔦
猪や足すくはるゝ蔦かつら 正岡子規 蔦
朝顔の這ひいでて咲きぬ塀の蔦 正岡子規 朝顔
蔦かつら裏門多き小道かな 正岡子規 蔦
蔦がのぞくイエスの前の裸童子 大野林火 雪華 昭和三十九年
蔦からむ侍町の土塀かな 正岡子規 蔦
蔦から赤らむ ワイン納めの横穴は 伊丹三樹彦
蔦さがる岩の凹みや堂一つ 正岡子規 蔦
蔦さがる窓に緑の朝日かな 正岡子規 蔦
蔦の花滝と白さを分ちけり 渡邊水巴 富士
蔦の這ふ吉野拾遺の名所哉 正岡子規 蔦
蔦の葉や無絃の琴に這ひかゝる 正岡子規 蔦
蔦の葉をつたふて松の雫哉 正岡子規 蔦
蔦まとふ塀に窓あり家中町 正岡子規 蔦
蔦巻く家へ悲劇の方へ一歩づつ 秋元不死男
蔦厚し深窓にピアノ鳴り籠る 上田五千石『田園』補遺
蔦茂る家に草根木皮売る 右城暮石 句集外 昭和四十八年
徳利蜂巣の徳利ざま蔦結ぶ 石川桂郎 高蘆
廃校や蔦の実くろき煉瓦塀 上田五千石『田園』補遺
鉢蔦のみだれおちたる諸葉かな 飯田蛇笏 山廬集
板塀や厨につゞく蔦かづら 正岡子規 蔦
飛ぶが中に蔦の落葉の大きさよ 正岡子規 落葉
部屋もまた緑蔭なして蔦巻く家 鷹羽狩行
壁透る男声合唱蔦死なず 西東三鬼
墓所の杉火よりもあかき蔦まとふ 大野林火 冬雁 昭和二十二年
墓裏の木蔦に雪の降る日かな 飯田龍太
萌えはしる蔦御手ひろげたまふ主に 阿波野青畝
夜嵐や吹き靜まつて蔦の霜 正岡子規 霜
妖粧も薄れてきたり蔦館 赤尾兜子 玄玄
淋しさや蔦の細道捨草鞋 正岡子規 蔦
浪ぎはへ蔦はひ下りる十餘丈 正岡子規 蔦
老松や蔦もみづるをさまたげず 阿波野青畝
老杉を登る若蔦墳墓立つ 百合山羽公 寒雁
搦手や門朽ちて蔦うつくしき 正岡子規 蔦
縱横に蔦這ひたらぬ岩屋哉 正岡子規 蔦
蕣の蔦にとりつく山家哉 正岡子規 朝顔

蔦 続補遺

あら壁に蔦のはじめやかざり縄 中川乙由
いざよひや蔦の動くも見ゆるやと 桜井梅室
いちはやくもへて甲斐なし榾の蔦 加舎白雄
この岩は蔦のそだちのよかるべし 桃妖
そのなみだ山路の蔦もそまるべく 完来
とく~と露はてしなや松の蔦 白雪
はい廻る背中見せてや壁の蔦 りん女
ひき寄て蟷螂うつりぬ下り蔦 鈴木道彦
ひら~といだき付けり石の蔦 りん女
ぶらさがる沓の茂りや蔦の道 許六
ほの見るや岩にかゝれる蔦もみぢ 高桑闌更
ゆく先をもてなす蔦のもみぢ哉 紫貞女
よき仏もちて盆する蔦の宿 長翠
一筋につらき恋あり壁の蔦 助然
引けば寄蔦や梢のこゝかしこ 炭太祇
雨の声浅茅の小蔦水こゆる 加舎白雄
碓もその合点なり壁の蔦 支考
縁の竹蔦よりかよふ雫かな 一笑(金沢)
何人かすみて顔出すまどの蔦 夏目成美
花生の柱に猿や蔦かづら 凉菟
海をのす風のたまりや森の蔦 丈草
垣ばなれすればや蔦も秋の草 鈴木道彦
気のつまる世やさだまりて岩に蔦 其角
笈の角梢の蔦にしられけり 其角
薫ぼりて蔦の哀や狸穴 釣壺
牽牛子やをのが蔓かと蔦に咲 千代尼
見上たり撫たり岩に蔦かづら 凉菟
古宮や蔦を力のくづれ垣 三宅嘯山
股ひきて松も立たり蔦かづら 中川乙由
五六間蔦のもみぢや松ののし 水颯
口切のやくそくするや蔦の宿 素覧
行秋の尾をとらへばや蔦かづら 中川乙由
行秋をしがみ付てや壁に蔦 素覧
今さらに蔦あさましや岩つゝじ 加舎白雄
今朝ぞ秋松をつたふて蔦の中 吾仲
山寺や人這かゝる蔦かづら 仙化
山人の昼寐をしばれ蔦かづら 桃妖
柴石やそのうへまとふ冬の蔦 野坡
若やぎて見ゆるや松に蔦の月 支考
秋かぜや蔦もたのまず浜庇 加舎白雄
住帰り老せぬ蔓や竹の蔦 野坡
初雪に着るや古手の蔦の紋 建部巣兆
松がねの蔦に身をする猪子哉 加舎白雄
松に蔦片手うちなる時雨かな 野口在色
松の雪蔦に氷柱のさがりけり 其角
松引て蔦庭になす力かな 荷兮
心得て火を焚蔦のやどり哉 成田蒼虬
振る鞭も蔦に痩るや小坂越 鈴木道彦
石山の石にも蔦のうら表 乙訓
船に火をたけば蔦這ふ家のさま 支考
蔵隠す亭主の佗や竹の蔦 野坡
其蔓は句れず風雅の蔦かづら 露川
炭がまやぬりこめられし蔦かづら 加舎白雄
茶多葉粉を借る隣あり蔦*もみじ 露川
朝がほに蔦は下葉と成にけり 成田蒼虬
町中の塚の茂りや蔦うるし 鈴木道彦
蔦かづら猿とはなしを山路かな 馬場存義
蔦かづら月まだたらぬ梢哉 里東
蔦かづら三ツ輪組むとも諷はばや 露川
蔦かづら松の根本の不出来かな 為有
蔦かづら団子のいとのもつれかな 馬場存義
蔦かづら猫の子ひろふ枝折哉 一笑(金沢)
蔦かれて浮世に近し庵の壁 成田蒼虬
蔦たれて千尋尋見る滴かな 加藤曉台
蔦の戸に立かけてある弓矢哉 長翠
蔦の実を馬に喰はすなうつの山 凉菟
蔦の葉にとぼし付たり三日の月 支考
蔦の葉にやさしき文のぼさつ哉 支考
蔦の葉に日なたの霜の雫哉 此筋
蔦の葉の落た処を時雨けり 此筋
蔦の葉はおそらく赤し茶屋の茶は 松窓乙二
蔦の葉はそれなりけりの*もみじかな 傘下
蔦の葉は残らず風の動哉 荷兮
蔦の葉やあつき中にも眼のとゞく 成田蒼虬
蔦の葉や貝がらひろふ岩の間 臥高
蔦の葉や見まはす中のをも道具 木因
蔦の葉や拙の身ながらかゝる時 嵐雪
蔦の葉や茂りを屋ねへ持て行 凉菟
蔦も今茂るをみれば先泪 凉菟
蔦染る萱のしづくや清閑寺 卓池
蔦踏ん野もしる霜の馬ふたつ 寥松
蔦葎みな秋風の道具也 小西来山
冬がれは蔦にも逢ず宇津の山 ト宅
二王にもよりそふ蔦のしげり哉 園女
年よりて牛に乗けり蔦の道 木節
年よりて牛に乗りけり蔦の路 木節
馬士に見られて赤し森の蔦 北枝
梅干を薬にいふや蔦の宿 鈴木道彦
這たらぬ蔦むつかしや神子の家 水颯
這まとふ蔦も他力の庵かな 中川乙由
美しう蔦はおとろふ人の秋 加舎白雄
壁の蔦甲斐なきばかり雨悲し 加舎白雄
夢にせぬしるしにまくぞ蔦の種 鈴木道彦
名月や蔦の手を出すわたつ海 野坡
明てから蔦となりけリ石燈篭 千代尼
木つゝきのつゝき登るや蔦の間 浪化
木枯や蔦はゆるさぬ峯の松 中川乙由
門ンに出りや蔦の夕日や海道松 支考
夜に入ば灯のもる壁や蔦かづら 炭太祇
夜ばかり戸明る家や蔦かづら 完来
野ゝ宮の鳥井に蔦もなかりけり 凉菟
有明にさむし宿直の蔦籠取 荊口
遊べとて蔦も招くや庭の秋 中川乙由
余の木より桜にまとへ蔦かづら 中川乙由
余所見すな道の便の蔦かづら 中川乙由
恋の山蔦の葉むしる現かな 乙訓
臍の緒の物がたりせん蔦かづら 露川
藪畳半は蔦のもみぢけり 黒柳召波

by 575fudemakase | 2017-06-07 05:41 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)
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俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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山藤章二著 ヘタウマ文化論 ..
at 2017-12-13 08:29

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