アイロンの焦げを作りし虫時雨 高橋和子
あかき火となりゆく藁や昼の虫 大木あまり
あくる日は虫の声寄る櫓かな 若井新一
いざよひも過て隙なり虫の声 立花北枝
いつといふことなく鳴いて昼の虫 倉田絋文
いま褪せし夕焼の門の虫しぐれ 秋櫻子
いやな記憶南京虫の闇蒸れて 依田草矢
ウイグル帽刺す婆と娘に昼の虫 田中英子
うつり来しとなり静かや虫の夜 阿部みどり女 笹鳴
うれしくて何か悲しや虫しぐれ 星野立子
おいて来し子の眠る頃虫の闇 西村和子
おだやかな死をほめ合うて虫の夜 荒井正隆
ガラシヤ忌虫の音銀沙撒くごとし 宮脇白夜
ガレ場にて嗄れしこゑの昼の虫 高澤良一 宿好
くたびれし僧の鼾や蟲の聲 虫の声 正岡子規
くるゝ程芭蕉にひゞく虫の声 許六
くれなゐの虫籠抱いて高麗の子よ 並木葉流
けふはけふの山川をゆく虫しぐれ 飴山實(1926-2000)
コンサートあとの虫の音東大寺 飯隈球子
しはぶきもなき虫の夜の薪能 青木重行
しんしんと夜更けの厩舎虫時雨 平田恵
ずず玉の真青な闇に昼の虫 辻桃子 ねむ
その奥の闇の濃淡虫時雨 成井 侃
その中に噛むこゑのあり虫時雨 中拓夫
たまさかの早寝虫の音枯れにけり 金尾梅の門 古志の歌
ツクヾヽト我影見ルヤ虫の聲 虫の声 正岡子規
ともし火になじむ夜頃や虫の聲 虫の声 正岡子規
とらはれて鳴く虫の音のことならず 木下夕爾
なつかしさ戸惑に湧き虫しぐれ 木津柳芽 白鷺抄
なゐ強し一命虫の声に通ず 北原白秋
バーボンは火の酒酌めば虫のこゑ 小坂るり子
ばらばらに鳴いていつしか虫時雨 大塚省子
ばらばらに鳴いてとぎれず昼の虫 片山由美子 風待月
ひとすぢの虫音よすがに寝る母か 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
ふるさとの虫の音高き夜を寝ぬる 桂 信子
ホームステイの子等去つてより虫の声 西浦末寿
ぽつねんと居士の座机昼の虫 高澤良一 随笑
ほつれ笠着た僕もあり虫の声 巣兆 (閑庭)
まさぐれば四方に山あり虫の闇 栗生純夫
まだ夢に戻れるくらさ虫時雨 浅井多紀
マリア地蔵首欠け子欠け昼の虫 中村明子
ものかげに煙草吸ふ子よ昼の虫 鈴木しづ子
ゆきどまりまで来しわが世虫のこゑ 岸田稚魚
ゆきひらの耳なほ熱き虫時雨 木田千女
よべとりし虫籠の虫なきにけり 野本城山
よよとまゐる手打うどんや虫の宿 鈴鹿野風呂 浜木綿
りんりんと虫の音家を押しにけり 松村蒼石
わが子はやひとり子の母虫の秋 松村蒼石
われとのほか妻に旅なし虫の宿 大野林火
われに向う一つの怒濤昼の虫 古沢太穂 古沢太穂句集
われら金婚遠き太鼓や虫の音や 谷内茂
安静は囚人めけり昼の虫 つじ加代子
暗黒大陸暗黒のまま虫の声 高野ムツオ 雲雀の血
闇といふ大きな景や虫時雨 山田弘子
闇浄土万の虫の音鏤めぬ 村越化石
闇深き京の御苑や虫時雨 岡本明美
椅子に倚る句作に馴れて虫の秋 大場白水郎 散木集
磯着干す浜屋人なく昼の虫 市之瀬明童
磯轍噛みし藻よりの昼の虫 中戸川朝人 星辰
一握の米の白さよ虫の声 栗生純夫 科野路
一筋に夜明けし路地や虫の声 佐野青陽人 天の川
一身を耳にして聞く虫時雨 成合よしひろ
一切株に一円空昼の虫 安東次男 裏山
一村の夜の重たき虫しぐれ 雨宮抱星
一灯の及びてをれる虫の闇 行方克己 無言劇
一灯を消し体内も虫の闇 地原光夫
一匹が心に入りて虫時雨 小檜山繁子
一抹のしるき花あり虫の宿 軽部烏帽子 [しどみ]の花
鰯焼くコンロ持ち出す虫の闇 椎橋清翠
飲食のものが遺品や虫しぐれ 加藤三七子
雨だれをすゝりあげてや虫の声 内藤丈草
雨のため虫の音聞かせられぬ牧 坊城 中子
雨音のかむさりにけり虫の宿 松本たかし
雨傘のたたまれて来し虫の宿 後藤夜半
雨水をすゝりあきてや虫の声 内藤丈草
永留守の屋根にも透る昼の虫 殿村莵絲子 雨 月
駅四五歩出ればまつくら虫時雨 石井とし夫
円卓に十人づつや虫の夜 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
遠き電話切れて一人の虫しぐれ 青木 愛子
遠慮してゐる肚の虫昼の虫 小出秋光
塩にぎるごとし晩年の虫の音は 遠藤 煌
奥嵯峨は大き虫籠夕樹亡し 鈴木鷹夫 千年
奥能登に来て星しぐれ虫時雨 沢木欣一 往還
奥飛騨や昼の虫鳴く雑貨店 山田英津子
奥方の部屋を飛び出す昼の虫 宇多喜代子
横窓は嵯峨の月夜や蟲の聲 虫の声 正岡子規
鴎外の生家の古りぬ昼の虫 家塚洋子
屋ねまくる暴風(野分)の中や虫の声 李由 八 月 月別句集「韻塞」
屋根まくる野分の中や虫の声 李由
屋上に上れば天も虫時雨 塚越杜尚
音のみの世に生きる身に虫時雨 中西一考
音階の一とはね上り虫時雨 上野泰 佐介
音読の子に虫時雨窓の下 福田蓼汀 山火
下宿屋の裏窗あかし虫の聲 虫の声 正岡子規
嫁がせてものぐさにをり昼の虫 荒井正隆
歌膝を組み直しけり虫の宿
火の消えて胴にまよふか虫の声 水田正秀
火山弾転がる陰に昼の虫 高澤良一 寒暑
火星来る南の島の虫の声 仲間ルミ子
火葬場に生きゐて昼の虫鳴けり 成瀬桜桃子 風色
花卉畑に明け放つ灯や虫の声 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
蚊帳のそと虫音冷え来と言ひ去りし 林原耒井 蜩
我顔死に色したことを誰れも首はなんだ夜の虫の音 河東碧梧桐
雅楽やみ虫籠の灯に書を献ず 宮武寒々 朱卓
駕籠舁の喧嘩も過ぎて虫の聲 虫の声 正岡子規
海の上に押し出でにけり虫の闇 岡本眸
海暮れて月出るまでの虫の闇 宗像夕野火
皆光る雨夜の星や虫の声 野坡
絵巻まき終ふるに間あり虫の夜 石島岳
絵絹灯籠虫の音近し草の花 調菅子 選集「板東太郎」
外人を夫とし住みし虫の宿 成瀬正とし 星月夜
街道を挟むこちらは虫の秋 坊城 中子
噛みまぜてあくび念佛蟲の聲 虫の声 正岡子規
乾坤に虫の音満つる日の出前 大内迪子
緩急の銃声虫の音を間に 石塚友二 方寸虚実
丸太蔵邃く一縷の虫の声 西村公鳳
眼科にてみな瞑りをり昼の虫 工藤克巳
顔つくる外出の妻に昼の虫 高澤良一 宿好
寄り添へる頭を以て虫の闇 中田剛 珠樹以後
汽車とまり大いなる虫の闇とまる 加藤楸邨
客の着く刻きまり居り昼の虫 中村汀女
客来しと一体誰や虫の宿 高田風人子
久々に流す父の背虫時雨 山田弘子 こぶし坂
仇し野や露吸ふ虫の聲三里 虫の声 正岡子規
救急車過ぎ虫の闇もりあがる 有働亨 汐路
居別れて病の子守る虫の秋 吉武月二郎句集
橋脚に虫音ののこり濤摶てり 中戸川朝人 星辰
胸に手を置けば虫の音通ひ来ぬ 藤木清子
暁の虫音交りの雨降れり 高澤良一 素抱
暁や雨も頻に虫の声 暁台
琴の糸切れて久しや昼の虫 久屋三秋
琴冴えてのこる虫の音冴えにけり 水原秋櫻子
金の吹口虫の音籠り紙風船 中村草田男
金銀の虫篭の外の虫時雨 小松原みや子
金銀の虫籠の外の虫時雨 小松原みや子
金糸りりりりと織り混ぜ虫の闇 赤松[ケイ]子
銀の柄のナイフが欲しき虫の闇 皆吉司
句會の灯だけが都會につながつて 虫の夜を守る 吉岡禅寺洞
軍歌過ぎ虫の音垣によみがへる 石塚友二 方寸虚実
形見分けして墓のこり虫の秋 福田蓼汀
径おのづから雑木林の昼の虫 山口草堂
経堂を出て階や昼の虫 露月句集 石井露月
月あらば十日頃らし虫時雨 森田峠 避暑散歩
月育つ一夜一夜の虫時雨 深見けん二 日月
月光を遡りゆく虫のこゑ 鈴木貞雄
月上げて凪ぐ水なりし虫の声 碧雲居句集 大谷碧雲居
玄室の暗きに入りて虫時雨 塩川雄三
古郷忌の踏まじと歩む虫のこゑ 石田あき子
戸口まで虫の夜が来る峡ぐらし 寺本蓮月
故郷も隣長屋か虫の声 其角 (柴雫と伊勢を語りて)
胡桃落つ虫の音海鳴りのごとく 宮坂静生 青胡桃
鼓虫の夜は化けて出て蛍哉 蛍 正岡子規
五日臥しての死なり虫音も絶えにけり 杉山やす子 『梅東風』
御所偲びまつるいづこも虫時雨 殿村菟絲子
光陰は土もて覆ひ虫の秋 斎藤梅子
公卿小路藻に住む虫の音を聞けり 大野今朝子
昂ぶれば悪女にならん虫時雨 真嶋つぎえ
更くる夜や川を隔つる虫の聲 虫の声 正岡子規
洪水見櫓にまた炬火見えて虫の声 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
溝石の並みさへ宮趾昼の虫 角光雄
行秋や聞かむとすれば昼の虫 中村汀女
行水のすて所なき虫の声 鬼貫
行水の捨てどころなき虫の声 鬼貫
行水の捨て所なき虫の声 鬼 貫
行水の捨どころなき虫の声 鬼貫
行水の捨所なき虫の声 上島鬼貫
行水の捨所なし虫の声 鬼貫
行水も日まぜになりぬ虫の声 来山
行燈に「鍵や」めつぽふ虫の声 鈴木鷹夫 春の門
行列の太皷過ぎけり蟲の声 虫の声 正岡子規
降り立ちし門前すでに虫の宿 安原葉
香煙や祖かくありし昼の虫(大仏殿にて) 『定本石橋秀野句文集』
香水の身にて虫音のなかに佇つ 吉野義子
高き虫音低き虫音を連れて更く 村越化石
高原の月はや沈み虫の闇 五十嵐八重子
高々と虫籠吊つて聴きにけり 高橋淡路女 梶の葉
高畑の崩れ土塀や昼の虫 高橋悦子
高濤の夜は舟虫の畳這ふ 沖一風
今宵また口あけて待て虫の闇 中田剛 珠樹以後
今日の音階 天道虫の紋様は 伊丹公子 山珊瑚
根詰めて仕事にかかる虫の夜 高澤良一 鳩信
砂丘への登り口なる虫の宿 鈴鹿野風呂 浜木綿
坐像立像いつさい虫の闇の中 佐野まもる
妻の寝顔すやすや虫音の高音部 高澤良一 随笑
妻死んで虫の音しげくなりし夜ぞ 臼田亜浪
妻病んでわれはおろおろ昼の虫 細川加賀 『玉虫』
菜畠や二葉の中の虫の声 尚白
柵破れしあたりもつとも昼の虫 淺野晒寿
皿一つ取りて分けあふ虫しぐれ 橋本榮治 麦生
三味線にすがりて盲ひ虫の宿
山小屋の他に灯のなし虫時雨 深見けん二 日月
山刀伐の闇の深さや虫の声 五十嵐春男
姉川ときくに虫の音たゞならず 水原秋櫻子
子が悩み鎮もれば虫音射して来つ 林原耒井 蜩
子が病めば百千の虫や唖の虫 石塚友二
子の家にほどよく離れ虫しぐれ 太宰和子
子規庵のつましき間取り昼の虫 高澤良一 随笑
子等海へまぶしき光虫籠に 阿部みどり女
市振は日曜なりし昼の虫 八田勢都子
師の方へ途は折れつつ昼の虫 石川桂郎 含羞
志野茶碗手にすつぽりと虫しぐれ 近藤一鴻
思ひ出し鳴きして雨後の昼の虫 山口慶子
指先にメンソールの香虫の闇 廣海道士
死の家を田の隔てをり昼の虫 石川桂郎 含羞
獅子庵に坐せばかすかに虫の声 市野沢弘子
糸口をさがす糸巻虫の秋 石川桂郎 四温
詩はいまも木の間がくれぞ昼の虫 村沢夏風
雌なりし吾子の虫籠ひそとして 千原 叡子
飼ふ雉子の鳴く音しづみて昼の虫 飯田蛇笏
時差呆けの夜や虫の音にいたはられ 北野民夫
耳の底に一座敷あり虫の声 北枝
耳を澄ませば声ひそめ昼の虫 片山由美子 天弓
雫落つ音木移りす森の虫時雨 安斎櫻[カイ]子
失望は午前に午後に虫の夜に 宇多喜代子 象
手紙書くことののびのびの虫の夜頃となつて シヤツと雑草 栗林一石路
酒断ちて胃の腑澄みゆく昼の虫 橋本榮治 逆旅
秋の野を手にさげてきく虫籠かな 貞徳
秋は夕暮母の虫籠ぽつねんと 古賀まり子
秋風に品を付けるや虫の声 立花北枝
舟虫が舟虫のこゑ探しをる 中尾寿美子
舟虫の秋白きこの足を噛む 殿村莵絲子 花寂び 以後
充つは寧し広島の灯も虫の音も 秋光 泉児
十二神将まなざし暗く昼の虫 千手和子
出入口なき虫籠を編む男 日原 傳
書を購ひて暫く貧し虫の秋 松本たかし
宵はいつも秋に勝気を虫の声 上島鬼貫
宵暗や狐火に寄る虫の声 水田正秀
松の幹簷にうかべる虫しぐれ 金尾梅の門 古志の歌
松山に風湧く昼の虫しぐれ 高井北杜
松本城闇に形して虫しぐれ 西村公鳳
沼空をつらぬく銀河虫時雨 石井とし夫
消灯は孤独の一つ虫しぐれ 桂樟蹊子
硝子戸に天鵞絨の如虫の闇 茅舎
衝立のころびさうなる虫時雨 真山 尹
鉦叩たゝきやめたる虫の声 富安風生
鉦叩虫時雨には加はらず 冨士谷清也
鐘楼の石垣錆びて昼の虫 高澤良一 素抱
上人の虫音のごときおねんぶつ 高澤良一 燕音
上棟の客みな去りて虫しぐれ 萩原きしの
城持つがゆゑの貧しさ虫時雨 成瀬正とし 星月夜
常の声われに戻りて昼の虫 野澤節子
杖を手に遠出の小径虫の宿 石川風女
寝しづまりくりやの虫の夜となり 長谷川素逝 村
寝惜みて茂吉の郷の虫しぐれ 桂樟蹊子
心ゆるめ飯食ふや虫音八方に 猿橋統流子
新道やまだ人なれぬ蟲の聲 虫の声 正岡子規
森暗く入るべくもなし虫時雨 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
深川の露路に虫籠釣りて棲む 吉屋信子
神と人その境目の虫の闇 小泉八重子
薪能待つ間の闇の虫時雨 村上辰良
人間をいつも囲んで虫しぐれ 竹本健司
人呼びにやるも夜更けつ虫の声 上島鬼貫
厨ぬけゆく清流のあり虫の宿 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
吹降や家陰たよりて虫の声 一茶 ■寛政四年壬子(三十歳)
水飲んで轆轤にもどる虫しぐれ 渡辺昭
水音と虫の音と我が心音と 西村和子
水注いで甕の深さや虫時雨 永井龍男
水匂ひ虫音囲ひの沼眠る 大熊輝一 土の香
睡るまで身をつつみをり虫時雨 朝倉 和江
清夜ふと藻に住む虫の音を聞けり 細木芒角星
生きて知るソ連崩壊虫しぐれ 三橋敏雄
声出して心衰ふ虫の闇 大石悦子 聞香
声絶えし虫籠に闇あつまれり ほんだゆき
青年を踏むまぼろしや虫の闇 天野素子
静まりて西行庵の昼の虫 坊城中子
静もりて湖なきごとし虫の闇 中井冨佐女
石に鳴く石山寺の昼の虫 清水嘯風子
石に踞し聞く高原の昼の虫 相馬遷子 山国
石磴に日の坐りゐる昼の虫 平田繭子
赤蜻蛉けさ虫の音もちからづき 木津柳芽 白鷺抄
折々や藻に啼く虫の声沈む 闌更
先の生へ血は博ちくるる虫時雨 齋藤玄 『狩眼』
浅茅生やまくり手おろす虫の声 向井去来
浅間社よりの樹海の虫の闇 肥田埜勝美
船虫の障子を這ふも島の宿 中井 ユキ子
船虫の打ち合ふ髭の音やある 依光陽子
善悪はや虫音一途にかき消され 野澤節子 黄 瀬
僧ひとり帰してしまひ虫の宿 金田咲子 全身 以後
喪の家に灯ばかり多し虫時雨 高木太舵子
喪の家の人の出入に虫時雨 成瀬正とし 星月夜
喪の路の入り行く先は虫の闇 田中政子
漕ぎ出でて遠き心や虫の声 臼田亞浪 定本亜浪句集
相慕ふ村の灯二つ虫の声
窓の火や山を請込む虫の声 内藤丈草
窓の灯の草にうつりて虫の聲 虫の声 正岡子規
窓の燈の草にうつるや虫の声 子規
草に生れ土に生れたる虫の声
草の戸の柱は細し虫の声 小峰大羽
草の根の民意奈辺に昼の虫 高澤良一 暮津
草刈の笛暮はてゝ虫の声 也有
草深き鴫立庵に昼の虫 鈴木大林子
草川の朝は虫の音押流す 堀口星眠 営巣期
送り火の跡あはれなり虫の声 桃 隣
騒がしき子の二人居ず昼の虫 石川桂郎 含羞
足音の置きどころなし虫の闇 来栖早殳子
多摩川や鮭群来群来と昼の虫 伊藤いと子
打ち明けてやすらかならず虫の夜 佐藤博美
大鍋の煮ゆるを囲み虫時雨 宮武寒々 朱卓
大氷河暮れ虫の声ばかりなり 仙田洋子
大富士や虫の音今宵懐に 川端美重子
大粒な雨過ぎてより虫の夜 角川源義
濯ぎしもの白づくめなる虫の闇 中山純子
蛸壺に波音詰まる昼の虫 白井新一
箪筍のなか晴着眠れり虫時雨 藤岡筑邨
弾痕も九十年や虫の声 坊城 中子
地震つづく栗駒山の虫の闇 仙田洋子 雲は王冠
地震止みし地にふたたびの虫の声 西村和子
地底より虫音沁み出て奥信濃 西村公鳳
置かれある身欠鰊や虫の宿 岸本尚毅 舜
竹垣の外は上野や虫の聲 虫の声 正岡子規
昼の虫いづれは帰りくる人等 中村草田男
昼の虫かかとが沈む花圃の土 大熊輝一 土の香
昼の虫しづかに雲の動きをり 相馬遷子 山国
昼の虫しろじろ息を交はしけり 岩田昌寿 地の塩
昼の虫すがれし赤のままのなか 高澤良一 さざなみやつこ
昼の虫って何とも淋しすぎないか 柴山猛
昼の虫に鳴きつつまれて末社あり 五十嵐播水 埠頭
昼の虫リリと啼き澄み四肢あつく 藤木清子
昼の虫われに永仕へせし妻よ 石田波郷
昼の虫ゐなくなりたる人かぞへ 仙田洋子 雲は王冠
昼の虫阿呆のごとき貧しさよ 小林康治
昼の虫衣桁に父の忘れもの 佐々木育子
昼の虫一声鳴いて押し黙る 八幡より子
昼の虫枯葉のごとく母睡り 古賀まり子 緑の野
昼の虫合はせ鳴くことありて鳴く 酒井土子
昼の虫砂丘の底に鳴きゐたる 有働 亨
昼の虫債鬼白皙なれば憂し 小林康治 四季貧窮
昼の虫四畳程なる円空堂 高澤良一 素抱
昼の虫手紙はみんな恋に似て 細川加賀 『玉虫』以後
昼の虫焦ることありて躓ける 石塚友二 方寸虚実
昼の虫人棲みて壁汚れけり 辻田克巳
昼の虫雀がくれの土堤つづく 中村みづ穂
昼の虫草に沈みし土台石 木附沢麦青
昼の虫電車はなんぼ待てば来る 高澤良一 随笑
昼の虫峠の神は足短か 江中真弓
昼の虫得心までに刻費ひ 中戸川朝人
昼の虫日向国府という田舎 池袋寛
昼の虫父母の世の戦蹟に 京極杞陽 くくたち下巻
昼の虫風に向へる頬冷えて 相馬遷子 山国
昼の虫聞きゐる人に鳴きにけり 鳥越久美子
昼の虫牧夫無聊の腕を組む 沢 聰
昼の虫眠ればわれも白骨化 高野ムツオ 陽炎の家
昼の虫鳴いて居りたる墓拝む 秋畑 やすえ
昼の虫野づらまぶしくなりまさる 木村蕪城 寒泉
昼の虫狼藉の子を擲ちしまで 小林康治 四季貧窮
昼の虫樅の木もれ日窓に来ず 及川貞 榧の實
虫しぐれして人類を森とせり 沢井山陽
虫しぐれして不逞なる影法主 中川宋淵
虫しぐれチエロの全身がらんどう 吉原文音
虫しぐれ原つぱに寝てゐるやうな 清水基吉
虫しぐれ吾子亡き家にめざめたり 予志
虫しぐれ冴ゆとしづかに遺書は言へり 瀧春一 菜園
虫しぐれ死の空間は卑弥呼めく 河野多希女
虫しぐれ手術待つベッド初夜に似る 岩田昌寿 地の塩
虫しぐれ声なき虫は灯を巡り 藤原如水
虫しぐれ千灯の炎は低かりき 梶山千鶴子
虫しぐれ灯も谷ごめの村ひとつ 鷲谷七菜子 花寂び
虫しぐれ燈も谷ごめの村ひとつ 鷲谷七菜子 花寂び
虫しぐれ燈も谷籠めの村ひとつ 七菜子
虫しぐれ童話の虫はチェロを弾き 水木 鈴子
虫のこゑいまなに欲しと言はるれば 石川桂郎 四温
虫のこゑいま何欲しと言はるれば 石川桂郎
虫のこゑじいんじいんと稲稔る 高澤良一 宿好
虫のこゑ歳々にして今日のこゑ 橋本 榮治
虫のこゑ早寝養生してをりぬ 森田公司
虫のこゑ百匹居れば百通り 高澤良一 暮津
虫のこゑ布団に入ればちかくきこゆ 川島彷徨子 榛の木
虫のこゑ濤の上に出づ真暗に 小檜山繁子
虫のゐぬ虫籠つるし精神科 本庄登志彦
虫の闇おしまひ風呂はゆつたりと 森下きぬゑ
虫の闇おぼへなき声きはだち来 中田剛 珠樹以後
虫の闇ガレの虫らの日本語 須川洋子
虫の闇だまつて通る虫のあり 石田郷子
虫の闇はげしき夢を見しあとも 仙田洋子
虫の闇へだてゝ灯る隣かな 森 花恵
虫の闇ゆらゆらとあるむかしかな 鷲谷七菜子 花寂び
虫の闇縁よりふかく足垂らす 桂樟蹊子
虫の闇桐の葉白く見ゆるかな 増田龍雨 龍雨句集
虫の闇見つめてあらむ君もまた 及川貞
虫の闇死の闇ほどは深からず 成瀬櫻桃子
虫の闇獣の眼もち山男 福田蓼汀 秋風挽歌
虫の闇人が人撃つこと止まず 酒井弘司
虫の闇生者に刻と悔のこる 文挟夫佐恵 黄 瀬
虫の闇赤倉銀座過ぎしより 川口千賀子
虫の闇前を行く灯におくれじと 京道踏青
虫の闇大黒柱孤独なり 澁谷道
虫の闇地底に都ある如し 佐藤漾人
虫の闇百鬼も耳を澄ましをり 矢島まさる
虫の闇風吹きたまるところなし 高橋馬相 秋山越
虫の闇分つ一灯ありにけり 稲畑汀子
虫の闇放たれて来し貨車停る 内藤吐天
虫の闇又寄り来る友一人 高浜年尾
虫の闇夜蝉の闇とうちまじり 鳥居おさむ
虫の闇濤に応へて燈のゆるゝ 金尾梅の門 古志の歌
虫の音におっとりとまた性急と 高澤良一 寒暑
虫の音にこぼれさうなる星ばかり 山下しげ人
虫の音につゝまれてなほ気のいらち 久保田万太郎 流寓抄
虫の音にまみれて脳が落ちてゐる 藤木清子
虫の音に引込まれつゝ眠りけり 疋田逸牛
虫の音に煙草だけ売る灯を消しぬ 林田素朴
虫の音に挟まれて行く山路かな 風国
虫の音に近づきたくて奏でしが 中川のり子
虫の音に合はす不眠の息づかひ 宮津 澪子
虫の音に心も置かず降る夜かな 千代尼
虫の音に折/\わたるあらし哉 松岡青蘿
虫の音に続く雨音父系絶ゆ 高野ムツオ 蟲の王
虫の音に堕つる忘我の星いくつ 滝本魚顔女 『絵踏』
虫の音に沈みて暗き茶店あり 大木さつき
虫の音に浮き沈みする庵かな
虫の音に風誘ひ夜明け来るらし 高橋馬相 秋山越
虫の音に包まれ住みて虫を見ず 西岡安夫
虫の音のあふるる家へ帰りけり 谷口摩耶
虫の音のかれ頃窯に火を入れん 内藤吐天 鳴海抄
虫の音のじんじんとフルオーケストラ 高澤良一 暮津
虫の音のたかまりくれば月出でん 今井つる女
虫の音のつひには人の嗚咽かな 松村蒼石
虫の音のはたとやみたる舞稽古 寺田タツ
虫の音のひりゝと触れし髪膚かな 川端茅舎
虫の音のほろろばったり雨閉す 高澤良一 ぱらりとせ
虫の音のまつただなかに浮く柩 文挟夫佐恵 雨 月
虫の音のリズムに乗せて口遊む 長屋妙子
虫の音の闇にどなれば気がすまうか 藤後左右
虫の音の一旋律に寝ね難し 苑 清子
虫の音の一途に何を恃むべき 館岡沙緻
虫の音の弱くてまばら夕立あと 高澤良一 素抱
虫の音の終りつぶさや稚児抱いて 松村蒼石
虫の音の上さまよふや不眠の頭 相馬遷子 山国
虫の音の上に床しく伏家哉 虫の声 正岡子規
虫の音の千万ふるる刃先かな 野見山朱鳥
虫の音の訴ふるとも諭すとも 西村和子 夏帽子
虫の音の中で虫の句書き留めぬ 高澤良一 暮津
虫の音の中にかがやくなめくじり 栗生純夫 科野路
虫の音の中に咳き出す寝覚かな 丈草
虫の音の中に咳出す寝覚哉 丈草 (病床)
虫の音の中へ鼓を打ち始む 市野沢弘子
虫の音の夜夜澄むは飢極まるか 高橋睦郎
虫の音の鈴鹿にもまたうろつけば 広瀬惟然
虫の音も月光もふと忘るゝ時 富安風生
虫の音も散るや灯影の松の露 荻子
虫の音も踊に蹤いて明けにける 鳥居おさむ
虫の音や火をけして寝る一重壁 巴流 俳諧撰集「藤の実」
虫の音や関宿船の麁朶(そだ)の中 養浩 芭蕉庵小文庫
虫の音や君を思へば土手八町 虫の声 正岡子規
虫の音や月ははつかに書の小口 加舎白雄
虫の音や月見座頭の狂言後 野田裕子
虫の音や交番跡の三坪ほど 山田 進
虫の音や高音の一つ且つ遠き 東洋城千句
虫の音や閉ぢては開く死生の書 船平晩秋
虫の音や木綿所のわた車 ぶん村 八 月 月別句集「韻塞」
虫の音や夜更けてしづむ石の中 園女
虫の音や夜更てしづむ石の中 園女
虫の音や野におさまりて庭の内 千代尼
虫の音をあつめて星の夜明けかな 織本花嬌
虫の音をつづれさせなど聴きしは誰ぞ 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
虫の音を隅にゲルマンの紡ぎ唄 平井さち子 鷹日和
虫の音を襲へる雨となりゐたり 中田剛 珠樹以後
虫の音を聞きつゝ庭の片づけごと 高澤良一 暮津
虫の音を聞き虫の句を校正す 池田秀水
虫の音を満たす各駅停車かな 伏見青雲
虫の秋貧の一字に我も病むぞ 石塚友二 光塵
虫の秋眠れぬ夜はねずにあり 石川桂郎 四温
虫の宿あかつきの灯を漏らしけり 五十崎古郷句集
虫の宿とぼしき酒の美しく 成瀬正とし 星月夜
虫の宿色ある声をきゝとめて 荻江寿友
虫の宿代々百姓の仏壇よ 成瀬正とし 星月夜
虫の宿並びて更けし灯を湖に 大橋宵火
虫の宿楷書細き額かかげ 京極杞陽 くくたち下巻
虫の声いつしかソロとなりにけり 赤峰江楓
虫の声かさなり四方の野より来る 橋本多佳子
虫の声しびんに添ひてひびきけり 上林暁 句集 木の葉髪
虫の声とゝのひそめし夜のカーテン 林原耒井 蜩
虫の声やんで闇夜に腕透く 仙田洋子 橋のあなたに
虫の声金魚の夢にこぞりけり 道芝 久保田万太郎
虫の声月よりこぼれ地に満ちぬ 富安風生
虫の声高きにゐればひびくなり 佐野良太 樫
虫の声人待ちてゐる一人かな 池上不二子
虫の声草のふところはなれたり 几董
虫の声草の懐はなれけり 几董
虫の声胎動ときにともなはむ 林原耒井 蜩
虫の声低き枕を選びけり 水谷芳子
虫の声二度目の運坐始まりぬ 正岡子規
虫の声余白に埋めて書く手紙 安田美樟
虫の声艸のふところはなれたり 高井几董
虫の巣や折り焚く柴に煤の夜を 飯田蛇笏 山廬集
虫の名は知らず虫聞く男ども 虫の声 正岡子規
虫の鳴隅隅暗し石灯籠 虫の声 正岡子規
虫の夜あした抜く歯を磨きおり 大村静子
虫の夜といふには虫を知らず来し 高澤良一 随笑
虫の夜とは一枚の絹である 高野ムツオ 雲雀の血
虫の夜のああ利尿剤利きにけり 高澤良一 ぱらりとせ
虫の夜のおのれ古りたる影を膝 長谷川素逝 暦日
虫の夜のがちやがちやといふ楽天家 今瀬剛一
虫の夜のぺーパーナイフいとしめる 行方克己 無言劇
虫の夜のわれは潰れたアルミ缶 高野ムツオ 雲雀の血
虫の夜の雨の夜となる京泊り 阿部みどり女
虫の夜の黄泉路に茂る雨戸かな 攝津幸彦 鹿々集
虫の夜の介護の五感敏くいる 池田政子
虫の夜の句の話して心足り 西村和子 かりそめならず
虫の夜の君来り君また来る 高濱年尾
虫の夜の更けては葛の吹きかへす 蛇笏
虫の夜の更けゆく刻を惜しむなり 高木晴子 花 季
虫の夜の使はず減らず甕の水 有山八洲彦
虫の夜の子よりも古き金のペン 坂本宮尾
虫の夜の手足寝かせて耳覚むる 菖蒲あや
虫の夜の女いみじき足もてり 林原耒井 蜩
虫の夜の小便粗相致しけり 高澤良一 暮津
虫の夜の心傾きやすきかな 行方克己 無言劇
虫の夜の人ごゑよしと聞きゐけり 林原耒井 蜩
虫の夜の星空に浮く地球かな 大峯あきら
虫の夜の弾くと叩くとありにけり 佐々木六戈
虫の夜の知音知音と鳴けるかな 行方克己 知音
虫の夜の地球すっぽり浮いており 相川玖美子
虫の夜の地球すつぽり浮いており 相川玖美子
虫の夜の二段ベツドに夢ふたつ 満田春日
虫の夜の風呂は吾が身にかへる場所 中島よし絵
虫の夜の風呂より上りひと仕事 森田公司
虫の夜の柄杓探りぬ手水鉢 尾崎迷堂 孤輪
虫の夜の母娘に一つ机かな 宮崎とき女 『雪椿』
虫の夜の法具一切散らばれり 佐々木六戈
虫の夜の名札付けたる男下駄 飯田龍太
虫の夜の洋酒が青く減つている 伊丹三樹彦
虫の夜はひとみをあけて帰りけり 鴇田智哉
虫の夜も角なき鹿の鳴きにけり 角川春樹 夢殿
虫の夜や煙草のけむりふかくはき 高島 鶏子
虫の夜や鏡見て命ほしくなりし 中島月笠 月笠句集
虫の夜や妻をめとれと母の言ふ 成瀬正とし 星月夜
虫の夜や酒つつしめと母の言ふ 成瀬正とし 星月夜
虫の夜や畳のくぼむひとところ 鈴木青泉
虫の夜や父母早寝吾読書 成瀬正とし 星月夜
虫の夜をピアノ小刻みダリエンソ 高澤良一 素抱
虫の夜を覚めて語りし夫も亡く 木下みね子
虫の夜を君もしずかな息しているか 恩知陽子
虫の夜を眠る乳房を手ぐさにし 山口超心鬼
虫の夜手足寝かせて耳覚むる 菖蒲あや あ や
虫の夜草にも声のあるやうな 黒沢孝子
虫ノ聲滋シ歌ヨミナラバ歌ヨマン 虫の声 正岡子規
虫の聲二度目の運坐始まりぬ 虫の声 正岡子規
虫を聞く会終りゐし昼の虫 岸田稚魚
虫音そこここ眼な底澄みぬ野の歩み 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
虫音のごと木乃伊の音声ガイド洩れ 高澤良一 燕音
虫音揃ふ夜の鉄骨の鋲二列 片岡慶三郎
虫時雨 たつぷりと明日あるごとし 守田椰子夫
虫時雨いのち澄みゆく思ひあり 佐藤美恵子
虫時雨わが哭くこゑもその中に 鷹女
虫時雨闇のふくらみくるごとし 辰巳奈優美
虫時雨闇を篩にかけながら 佐藤美恵子
虫時雨起き出てしばし坐りゐる 市川春子
虫時雨銀河いよ~撓んだり たかし
虫時雨銀河いよいよ撓んだり 松本たかし
虫時雨古湯を捨つる真夜の湖 宮武寒々 朱卓
虫時雨妻の寝顔のつやつやと 高澤良一 鳩信
虫時雨山住にして奈落めく 山田弘子
虫時雨寝て中天へ掲げらる 小檜山繁子
虫時雨草の戸浮かんばかりなり 沢木欣一 往還
虫時雨足音もなく夫帰る 小玉真佐子
虫時雨陶師も酒座に招ばれけり 内藤吐天 鳴海抄
虫時雨猫をつかめばあたたかき 岸本 尚毅
虫時雨浜近ければ潮騒も 滝川如人
虫時雨夫に涙をぬぐはるる 徳田千鶴子
虫時雨眠りて今日に運ばれ来 小檜山繁子
虫時雨夜汽車煌々野をわたり 堀口星眠 営巣期
虫時雨老杉暗き甘露の井 高橋保平
虫時雨恙の虫を雑(まじ)へけり 相生垣瓜人
虫時雨恙の虫を雑へけり 瓜人
虫鳴くや人少し野の停車場 虫の声 正岡子規
虫鳴くや木もなき闇の山一つ 虫の声 正岡子規
虫鳴や俳句分類の進む夜半 虫の声 正岡子規
虫啼て籠から月をのぞきけり 虫の声 正岡子規
虫籠といふ空間を一つ買ふ 北登猛
虫籠にあるごとき日々夏を病む 阿部みどり女 『石蕗』
虫籠にすきとほりをる緑かな 上野泰 春潮
虫籠につられ笑ひやぢき失せぬ 阿部みどり女 笹鳴
虫籠になすび夜食になすびかな 岸本尚毅 舜
虫籠に屋根あり虫の一家かな 鳥居真里子
虫籠に顔貼り付いてゐし息子 稲畑廣太郎
虫籠に軒星ぞらを垂らしけり 徳永山冬子
虫籠に午前と午後のありにけり あざ 蓉子
虫籠に罪深き紐残りけり 大串章 百鳥 以後
虫籠に朱の二筋や昼の窓 原石鼎
虫籠に酒吹きたかり誕生日 石川桂郎
虫籠に生きのこるみな金亀子 福永耕二
虫籠に蝉の御報謝ありにけり 高澤良一 素抱
虫籠に昼の青空溜まりしまま 高野ムツオ 鳥柱
虫籠に虫なし子なし寝ねにけり 呉竹弓夫
虫籠に虫ゐる軽さゐぬ軽さ 西村 和子
虫籠に虫籠突きだし比べっこ 高澤良一 素抱
虫籠に入れたるものの萎えやすく 藺草慶子
虫籠に蜥蜴を入れて兄貴分 高澤良一 素抱
虫籠のうつくしければあはれかな 堀端蔦花
虫籠のなかより出たる男女かな あざ蓉子
虫籠の闇を見てをり生家見ゆ 今井 聖
虫籠の下に姙りゐたりけり 斎藤蕗葉
虫籠の去年の草の音なりし 浜口高子
虫籠の軽さ夕空の軽さ 百瀬美津
虫籠の桟に掴まり弱りをる 高澤良一 素抱
虫籠の洗はれてゐる井水かな 石田勝彦 秋興
虫籠の総角(あげまき)さめぬ致仕の君 黒柳召波 春泥句集
虫籠の総角さめぬ致仕の君 召波
虫籠の中はと見れば蝉の殻 高澤良一 暮津
虫籠の中味の話訥々と 高澤良一 素抱
虫籠の虫買はれ行く鳴き乍ら 永澄幸子
虫籠の虫放つ日や母癒えて 西谷義雄
虫籠の虫鳴き出でし真昼かな 神戸鼕々
虫籠の美しからぬ昼間かな 上野泰 佐介
虫籠の木かげに小さく明けてゐる 太田鴻村 穂国
虫籠の螢の街に子と遊ぶ 金箱戈止夫
虫籠の邯鄲淡し月させば 水原秋櫻子
虫籠はあのあたり夜の診察室 秋武久仁
虫籠や財過去のもの愛とても 鈴木真砂女 夕螢
虫籠をかかえて書店素通りす 間石
虫籠をこわす小石を振り上げて 対馬康子 吾亦紅
虫籠をさげし虚空のかたむける 成瀬正とし 星月夜
虫籠を月さす方へ吊りかへて 古賀まり子
虫籠を残暑の枝に吊りはなす 長谷川かな女 雨 月
虫籠を持ちスカートに捉まつて 行方克己 無言劇
虫籠を吊せる軒に日の廻る 阿部みどり女
虫籠を覗けば何と瑠璃蜥蜴 高澤良一 素抱
虫籠を覗けば蛙入れてゐし 茨木和生 丹生
虫籠を買うて裾野にむかひけり 上島鬼貫
虫籠を揺らして中の蝶発たす 高澤良一 素抱
虫籠吊る野より淋しき十階に 有馬籌子
虫籠提げ蝉など捕ってちょうだいと 高澤良一 素抱
虫賣りにゆられて虫の啼きにけり 虫の声 正岡子規
彫る男彫らるる女虫のこゑ 鈴木鷹夫 千年
町荒れて家まばら也虫の聲 虫の声 正岡子規
長き夜やいろ~に聞く虫の声 許六
長びける会議に虫の夜と思ふ 木暮つとむ
吊鐘の中の闇見ゆ昼の虫 殿村莵絲子 花寂び 以後
停電の海辺に及ぶ虫の闇 下村槐太 天涯
庭手入れして虫の音の片寄りぬ 堀之内和子
庭上にラムプを置くや蟲の聲 虫の声 正岡子規
提灯に尾いて言なし虫時雨 楠目橙黄子 橙圃
敵味方塚を一つに昼の虫 小田実希次
天なるや童女の声の虫の声 耕衣
天に星地に虫の音や生きて在り つじ加代子
天牛の髯立てて哭く虫籠の隙 高澤良一 暮津
天降る音もありて峡なる虫の秋 皆吉爽雨 泉声
点線の虫音と棒線の虫音 高澤良一 石鏡
渡御待つや虫の夜空の男山 本田一杉
土間ばかり残りし塩屋や昼の虫 石塚友二
投げやりにして眠る夜の虫しぐれ 藤平寂信
東尋坊岩間に昼の虫音澄み 高澤良一 宿好
東大寺裏なる虫の闇深し 源一朝
灯されし舟のむかうの虫の闇 中田剛 珠樹以後
灯ともして虫篝とも虫の宿 佐々木六戈
灯ともせば既に蟲なく夕哉 虫の声 正岡子規
灯に馴れて虫籠の虫鳴き出せり 伊藤文子
灯取虫虫の音鬱と迫りくる 瀧春一 菜園
頭澄む子なれ虫音に寝かされて 大熊輝一 土の香
道一つ耳は二つの虫時雨 林 翔
徳川の邸つゞきの虫の宿 大橋櫻坡子 雨月
奈良町に抜け道多し昼の虫 加藤美代女
難問の解けたる後の虫の声 市村季子
二人家族一人二階に虫しぐれ 毛塚静枝
尼さまの掃きこぼしたる昼の虫 中村祐子
肉炙るなどかなしけれ昼の虫 黒田杏子
乳の上に手を置きて寝ぬ虫の宿 宮武寒々 朱卓
入れ墨の竜を背に病む虫しぐれ 北見さとる
入院の夜は旅に似て虫しぐれ 谷口ふさ子
尿すや鏘々と虫の音を隔つ 石塚友二 方寸虚実
波郷忌の虫の果なる虫のこゑ 岸田稚魚 『雪涅槃』
婆々が茶屋夜は虫鳴く處哉 虫の声 正岡子規
売家や猫も杓子も虫の声 支考
萩が根も芒かもとも虫の聲 虫の声 正岡子規
萩が枝に蟲籠吊つて聞きにけり 虫の声 正岡子規
萩刈りて虫の音細くなりにけり 高浜虚子
白波おしよせてくる虫の声 山頭火
白木てふ虫の闇より担ぎくる 斎藤 梅子
白浪物短けぇ娑婆に昼の虫 高澤良一 鳩信
八石ノ拍子木鳴ルヤ虫ノ聲 虫の声 正岡子規
発電所海に築けば虫のこゑ 斉藤夏風
半島はここにてくびれ昼の虫 高澤良一 さざなみやつこ
卑下しつつ自負の長文昼の虫 奈良文夫
避難所を解きし校舎の虫の闇 山田弘子 懐
膝に来し仔犬の熱く虫しぐれ 堀口星眠 火山灰の道
病むといふきびしさに臥し昼の虫 及川貞 榧の實
病人のうすきかけもの昼の虫 阿部みどり女 笹鳴
病得て今は故郷に虫の秋 鶴田栄秋
夫とゐる虫の音のみの寂けさに 中島智椅子
夫と娘の黄泉路は遥か虫時雨 土居房江
普請場や丸太の下の虫の声 酒葉月人
父通り過ぎたるこの世虫時雨 小檜山繁子
父母と吾と三人の虫の宿 成瀬正とし 星月夜
武蔵野の夜は真平ら虫時雨 佐藤母杖 『一管の笛』
物しらぬ妻と撰ぶや虫の声 高井几董
物音におどろきやすく虫の夜 阿部みどり女
物思ふしじま何時しか虫の声 遠田 澄子
文債の痞を胸に虫の夜々 石塚友二
文末に不悉としるす虫しぐれ 三田きえ子
聞き分けて違ふ虫の音三つほど 高澤良一 石鏡
壁あればすべて書を積み虫時雨 宮坂静生 雹
勉強の音がするなり虫の中 飴山 實
鞭のこと話しませうか虫時雨 櫂未知子 貴族
捕へ飼ひしたる虫の音妻ごめに 三橋敏雄 畳の上
捕れたかと云へば虫籠掲げ見す 高澤良一 宿好
歩きませ虫の声するところまで 小澤満佐子
墓誌に書く母の名文子虫の秋 大久保白村
暮るるほど芭蕉にひごく虫の声 許六 八 月 月別句集「韻塞」
暮るゝ程芭蕉にひゞく虫の声 許六
母と寝る一夜ゆたかに虫の声 栗生純夫 科野路
包丁を仕舞いて気づく虫の声 亀井遊楽
放つまで髪切虫の声を出す 右城暮石
蓬生はこのましき名よ虫の聲 虫の声 正岡子規
蓬生はこのもしき名よ虫の聲 虫の声 正岡子規
頬を掌におきてしんじつ虫の夜 飯田蛇笏
頬杖をやめてしばらく虫の闇 仙田洋子 雲は王冠
本読めば本の中より虫の声 富安風生
盆すぎて宵闇くらし虫の声 ばせを 芭蕉庵小文庫
盆過て宵闇暗し虫の声 芭蕉
幕間の残る虫の音いとやさし 中村佳子
枕辺に櫛ならべ寝る虫しぐれ 宮武寒々 朱卓
末枯の径虫の音に近づくことなき 原田種茅 径
末枯や根からも枯れる虫の声 也有
万の翅見えて来るなり虫の闇 高野ムツオ
万灯を一歩外れたる虫の闇 関口ふさの
万灯会果て一山の虫の闇 佐藤藍
満月のゆれんばかりに虫のこゑ 瀧澤伊代次
満腹の腹先すっかり虫の闇 高澤良一 石鏡
眠る子に夜更の虫の声澄めり 石原ふさ
眠れねば眠らぬと決め虫の闇 片山由美子 水精 以後
夢殿に住み一匹の昼の虫 鳥居美智子
無限階段ひとりでのぼる虫の闇 山田径子
名刀ををさめし蔵に虫時雨 京極杞陽 くくたち下巻
明け惜むまろき月あり虫の声 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
明はなし寐た夜つもりぬ虫の声 炭 太祇 太祇句選
明日洗ふ虫籠に雨かかりけり 樋口愛子
明々と産屋灯れり虫時雨 石井とし夫
鳴き交ふや買ふて来た虫籠の虫 尾崎紅葉
綿虫の聞きたきものに翅の音 中谷まもる
面打ちの木屑掃き出す虫の闇 冨田みのる
目つむりて数へてちちろ虫の声 今井杏太郎
目つむるや黒白さだかに虫の闇 石塚友二 方寸虚実
目つむればひろがる視界虫の声 八木絵馬
目薬をさして虫の音透きとほる 田阪 笑子
戻る門辺の夜毎の虫音親しけれ 原田種茅 径
悶をかけて見送る虫の闇 桂信子
門灯は門を照らして虫時雨 片山由美子 風待月
夜半に来て燈を持ち去んぬ虫の宿 金尾梅の門 古志の歌
夜凉如水書燈ニ迫ル虫ノ聲 虫の声 正岡子規
野の闇の渺茫として虫の聲 虫の声 正岡子規
野ばなれや風に吹き来る虫の声 上島鬼貫
野菜種さらさら乾き虫時雨 殿村莵絲子 花 季
憂きことのひとつに髪切虫のこゑ 今井杏太郎
猶あはれ選り残されし虫の声 貞室
遊ぶ子の声消えてより虫時雨 林 瑠美
夕顔に人影のさす虫籠窓 竹腰千恵子 『和景』
余裕あるときは聞こえて虫の夜 山下美典
揚舟に昼の虫鳴き海荒るゝ 荒川あつし
窯の火の今地獄めく虫の闇 加藤三七子
葉隠れに虫籠見えけり庭の萩 几董 (或人の別墅にて)
踊り子の揃ふ飼屋の虫の声 前田普羅 春寒浅間山
落し穴あるかも知れぬ虫の闇 今瀬剛一
落石のさまに寝仏昼の虫 野沢節子 存身
落石ののこせし穴の昼の虫 中戸川朝人
流れ来る刈草に虫の声すなり 泉斜汀
旅に迷ふ心細さを虫の聲 虫の声 正岡子規
旅人のいそぐ夜山や虫の聲 虫の声 正岡子規
両の手にころがしてをり虫の声 秋山素子
林火忌の灯よりも虫の闇親し 中川美亀
輪読の旧約聖書昼の虫 佐田昭子
瑠璃光仏閻浮の闇は虫しぐれ 加藤楸邨
冷厳に病はすゝむ虫の夜も 相馬遷子 山河
恋が窪駅出て十歩虫しぐれ 鈴木しげを
連れ立ちて話もなしや虫時雨 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
露の音をりから虫の音にまぎれ 久保田万太郎 流寓抄
露原や虫音に離れぼうとゆく 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
廊下まで破れかぶれの虫時雨 櫂未知子 蒙古斑
朗々と山に生れて昼の虫 阿部みどり女
老ボーイのレノン語れば虫しぐれ 橋本榮治 麦生
老荘につながるものに昼の虫 柚木 紀子
倭鶏の首あちこち向いて虫の秋 岩田由美
話すこと何にも無くて虫の夜 藤崎幸恵
藁屋根に小さき草むら昼の虫 土師光恵
藁灰のひと山熱し昼の虫 千葉皓史
啼かぬもの浅間ばかりよ虫の秋 英治
扁額に露とありけり虫の宿 高木晴子 花 季
狎れ寄るをうとみ寄らしめ昼の虫 稲垣きくの 牡 丹
玻璃越しに見える篝火虫の宿 互井節子
皓々と虫音に緊まる団子かな 林原耒井 蜩
篝火の消え虫の夜となりにけり 市野沢弘子
蟲の音をふみわけて行く小道哉 虫の声 正岡子規
蟲の聲一番鷄の鳴きにけり 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや闇におどろく地藏尊 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや花露草の晝の露 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや金堂の跡門の跡 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや月出でゝ猶暗き庭 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや七堂伽藍何もなし 虫の声 正岡子規
蟲鳴くや梅若寺の葭簀茶屋 虫の声 正岡子規
蟲籠やこちらで鳴けばあちらでも 虫の声 正岡子規
躬に移る虫音にをるや夜を長み 臼田亜浪 旅人
邯鄲につかれ忘れる枕かな 虫の声 正岡子規
邯鄲やあまたの虫の声の中 黒坂紫陽子
閂をかけて見返る虫の闇 桂 信子

by 575fudemakase | 2017-06-08 13:38 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)
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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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