2014年 12月 11日 ( 10 )

厚司

厚司

例句を挙げる。

さいはての厚司が似合ふやうな町 関根牧草
たたかれて埃のたちし厚司かな 上田春水子
七尾線厚司のをんな深ねむり 秋本三代子
厚司展あり大綿の紺ごのみ 中戸川朝人 星辰
厚司着て世吉を巻きに出掛けけり 茨木和生 往馬
厚司着て何やらすねてゐる児かな 大隈 米陽
厚司着て叱咤も女盛りかな 斎藤均
厚司着て熊牧場を采配す 平間真木子
厚司著て世にのこされしアイヌかな 小島海王
厚司著て元艦長が荷宰領 吉井莫生
厚司著て銑鉄のあがらぬ日の仲仕 川島彷徨子 榛の木
新しき厚司が撓み鉄担ぐ 小島昌勝
父想ふたびに厚司の紺匂ふ 山内山彦
磯の香のにじみ入りたる厚司かな 七戸木賊
紺の厚司で魚売る水産高校生 能村登四郎 合掌部落
老アイヌ夏経し厚司うすぎれたり 林翔 和紙
魚臭き籠や厚司の群わめく 堀部青爺

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

*えり竹の一管ごとに鴨座る 佐川広治
*ひつじ田に鴨の声あり夕まぐれ 遠藤孝作
「大根の葉の流れゆく」川に鴨 小原澄江
あかんぼうの空に鴨がつきささっているよ 増田まさみ
あきらかに鴨の群あり山峡漂白 金子兜太
あけし戸に夜鴨翔つ音沼住ひ 石井とし夫
あげ汐に弟雪ちかし鴨の声 エド-支梁 十 月 月別句集「韻塞」
あらぬ方に鴨の声して湖心亭 坂本四方太
いねがてや小鴨(あじ)のこゑとも身に添へる(尾上) 岸田稚魚 『花盗人』
いやはての鴨のたむろはけぶらへる 烏頭子
うす塩の鴨に薺の雫かな 浪化
うつたうしき景物としていついかなる行動にも鴨は番なるべし 黒木三千代
うづくまりゐれば尻垂れ鴨の寄る 仙田洋子 橋のあなたに
うねうねと船に筋かふ鴨の声 上島鬼貫
うね~と船に筋違ふ鴨の声 鬼貫
うれしさの霰たばしる鴨の数 山田みづえ 草譜以後
おのづから一団を為し鴨すすむ 高澤良一 随笑 
おもしろう鴨の滑りし氷かな 岸田稚魚
お手玉の置かれしやうに浮寝鴨 永野絢子
お濠の杉菜一面な吹く中の鴨 梅林句屑 喜谷六花
かかへ来て鴨や市場の端に売る 小池文子 巴里蕭条
かきくらす雪より鴨の下りにけり 秋櫻子
かくれ咲く命涼しき鴨脚草 富安風生
かれ芦や鴨見なくせし鷹の声 炭 太祇 太祇句選後篇
がやがやと鴨ゐて池を凍らせず 高澤良一 随笑 
きのふけふ鴨場の水の温みけり 大場白水郎 散木集
きのふけふ鴨湧く空や菊作り 菊地一雄
くつくつと鴨も寒さを諾へり 高澤良一 随笑 
くにゃくにゃと嘴広鴨の影曳きて 高澤良一 宿好 
くはへたる煙草飛ばされ鴨見人 森田峠 避暑散歩
くるくると堀江の鴨の浮寝かな 支考
けごろもにつつみて温し鴨の足 松尾芭蕉
けふよりぞ冬をかこへり池の鴨 室生犀星 犀星発句集
けふ凪ぎて初鴨沖に泛べたり 篠田悌二郎
けふ寧し日を曳き日を摶ち鳰真鴨 石田あき子 見舞籠
こがらしの野鴨啖ひて憚らず 齋藤玄 飛雪
この池のやがて引くべき鴨ならめ 高濱年尾 年尾句集
これとても着水の裡鴨滑る 高澤良一 寒暑 
これは粋小さきちょん髷ある鴨で 高澤良一 素抱 
さきがけて芦叢鳴れり鴨の着く 伊藤京子
さだまれる寒さのなかに鴨ひかり 宮津昭彦
さみしさのいま聲出さば鴨のこゑ 岡本眸
さわさわと越す夕鴨や農夫わかれ 細谷源二 砂金帯
しぐるると舟がひく水尾鴨の水尾 宮原 双馨
しぐるゝや鴛鴦見えず鴨の見え 大場白水郎 散木集
しろがねに濡れたる湖や鴨来そめ 堀口星眠 営巣期
すこしづつ翔ちゆき鴨の群移る 青葉三角草
ただ二羽で婦る鴨らし見送りぬ 篠田悌二郎
たわたわとうすら氷に乗る鴨の脚 松村蒼石
たわ~と薄氷に乗る鴨の脚 蒼石
たゞ一羽離れて行くか鴨の声 蓼太
だしぬけに黄檗山の鴨鳴きし 岸本尚毅 鶏頭
つがひ鴨交互に羽打つ昼下り 内野睦子
つぎつぎに覚めたる鴨の光かな 下坂速穂
つぎはぎの水を台に浮寝鴨 齋藤玄 『狩眼』
つぎ~に連れ翔つ鴨の夕まぐれ 鈴鹿野風呂 浜木綿
つり人の竿先遊ぶ浮寝鴨 南部紀江
つるされて尾のなき鴨の尻淋し 正岡子規
てのひらに消す莨火や鴨を待つ 橋本鶏二 年輪
ときに鋭き夜鴨の声のするばかり 成瀬正とし
どことなく散らばつて鴨沼日和 石井とし夫
どこまでも鉤の手に部屋鴨料理 渋谷道
なきごゑの真鴨の顔の一羽なり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
なにげなく見ゆ初鴨の一たむろ 松村蒼石 雪
なに一つなき水面を鴨迅し 岸本尚毅 選集「氷」
なほも水はじく飾毛鴨の死後 津田清子 礼 拝
のこる鴨渦ををさめし夕潮に 原柯城
のこる鴨肥えて遠嶺のかすみけり 山本古瓢
のびきりし鴨の首かな水をたつ 高濱年尾 年尾句集
はぐれ鴨なきゐる池の夜となる 鈴鹿野風呂 浜木綿
はぐれ鴨夜半を鳴くなり芦の中 水原秋桜子
はぐれ鴨来る坂鳥の明け放れ 安斎櫻[カイ]子
はろかなる鴨池晴れて梅嫌 小原菁々子
ひとこゑの鴨に朧のふかきかな 鷲谷七菜子 花寂び 以後
ひとり酌めばひとりの酔や夜鴨鳴く 吉野義子
ひと夜さに鴨のつきたる晩稲刈る 西川柚黄翁
ひと騒ぎして涼しき鴨となりにけり 黒米満男
ひねもすを鴨の空声先んずる 齋藤玄 飛雪
ほとゝぎす鴨河越えぬ恨かな 高井几董
また啼いて同じ夜鴨であるらしや 石井とし夫
まだ去らぬ鴨を浮べて浦晴れて 上村占魚 球磨
まだ明けてをらぬ沼空鴨の声 青葉三角草
まつくろな鴨にあたりし春日かな 仙田洋子 雲は王冠
みづうみや鴨の五千は多からず 森田峠 避暑散歩
みづやかにしてがらくたや骸鴨 齋藤玄 『狩眼』
むかし男ありて作りし鴨番屋 関戸靖子
むかし誰この堀越えし鴨脚ぞも 高井几董
むしりいて鴨の死の脚手に触る 渡辺秋男
もう鴨の来るか来るかと真野の浜 田畑美穂女
やがて去る鴨等舞立ち羽馴らす 吉良比呂武
やや冷えて鴨待つ水のひろさかな 鷲谷七菜子 花寂び
やや寒し雀鴨く度身を緊めて 香西照雄 対話
ゆく鴨に一つの小鴨鳴きいそぐ 悌二郎
ゆく鴨のあまたや湖に触れつゝも 及川貞 夕焼
ゆく鴨や遠つあふみは潮ぐもり 林 翔
ゆふしみや翅音きこゆる尾越し鴨 吉田冬葉
よく降るをいい降りといふ鴨の鍋 清水径子
らふそくの灯の温泉にありぬ鴨啼く夜 森川暁水 淀
わが庵や鴨かくべくも竹柱 芥川龍之介
わが影の水に沈めば鴨らたつ 臼田亞浪 定本亜浪句集
わが旅路豊かに渡り来し鴨よ 汀子
わたりきし鴨につききし曇なれ 宮津昭彦
わたる鴨はなれはなれの寒き砂丘 森川暁水 淀
をかしさよ銃創吹けば鴨の陰(ほと) 阿波野青畝(1899-1992)
オホーツクもサロマ湖も荒れ鴨とべり 高嶋遊々子
ジャンボ機の影遠ざかる見張り鴨 酒井 武
ダンディな鴨先頭に立ちにけり 高澤良一 随笑 
ダンディーな鴨の襟首水温む 高澤良一 寒暑 
マイン五月妻争ひの鴨のゐて 関森勝夫
マルサスの人口論や鴨の池 高木青二郎
一つ家に鴨の毛むしる夕かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
一つ家の明きし戸の灯に夜鴨啼く 石井とし夫
一刷の日の移りゆく鴨の湖 深見けん二
一団のしんがりを追ふ鴨の鈍(どん) 高澤良一 随笑 
一団の鴨を脇見の鴨一団 高澤良一 随笑 
一息に母を訪はめや鴨の声 永田耕衣 奪鈔
一斉に翔ちたる鴨に湖傾ぐ 植木きよ子
一湾の窪みは鴨をもて埋む 山崎みのる
一湾や吹きをさまりて月の鴨 田村木国
一群の鴨内宮の日暮飛ぶ 右城暮石 上下
一羽にていそぎおよいでゐる鴨よ 京極杞陽(きよう)(1908-81)
一芸と言ふべし鴨の骨叩く 右城暮石(1899-1995)
一陣の鴨のとび立つ羽音かな 下村梅子
一髪の空に鴨寄る岸のこゑ 原裕 青垣
七星を寝鴨の毬の挿頭とす 下村槐太 天涯
万の鴨鶴引く声にしづまれり 辺見京子
下総や胸の高さに鴨の水 高木良多
不忍の鴨寝静まる霜夜かな 正岡子規
不忍の鴨見て七福詣終ゆ 成瀬櫻桃子
中天を翔び来る鴨の跡ひかり 加藤耕子
中洲あり鴨の砦といふべかり 高澤良一 寒暑 
乗り廻し追ひ廻し湖の小鴨かな 比叡 野村泊月
乱舞して鴨月光を暗くせり 大鶴登羅王
争ひをやめし鴨なほ羽ばたける 森田峠 避暑散歩
五六羽の鴨のよるべの*えり立てり 遠藤梧逸
五色沼鴨来て色を深めけり 鈴木漱玉
人を見て寄り来る鴨の日和貌 高澤良一 宿好 
人声に池動き出す鴨の陣 阿部美恵子
人手にかゝりお果てなされし鴨一羽 冬の土宮林菫哉
人麻呂の終の鴨山ほととぎす 西村さだ
人麻呂の鴨山かけて降る霙 石川魚子
仔鴨食う巨き異国の男のなか 赤尾兜子
仮りの世の鴨鍋に泛く脂かな 辻桃子
休猟をよく知る鴨の陣をなす 森田峠 逆瀬川以後
伯母の忌の屏風払えば鴨の池 渋谷道
佐保河に鴨の毛捨つるあらしかな 蕪村
何に心せく不忍に鴨のきて 金子静江
停車場の周り田植や鴨の宮 滝井孝作 浮寝鳥
元日の一湖を拓く鴨の陣 原裕 青垣
元朝の一湖を拓く鴨の陣 原裕 『青垣』
元朝の空侵しゆく鴨のこゑ 原裕 青垣
先口の鴨南蛮(かもなん)忘れ居らぬかや 高澤良一 ぱらりとせ 
先着の鴨の一隊中州占め 高澤良一 燕音 
光琳の梅にしぶきを 水浴び鴨 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
八枚の襖が真白鴨の宿 茨木和生
八雲立つ比良へ向き変へ見張鴨 秋元不死男
内濠に小鴨のたまる日向かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬川に鴨の毛かゝる芥かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
冬川や森あらはなる鴨社 冬葉第一句集 吉田冬葉
冬湖や吹き飛ぶものに鴨もあり 稲岡長
冴返り鴨らは闇の遠くを見る 松村蒼石 雪
凡百の鴨の真中に鷺の立つ 高澤良一 燕音 
凶作の野に雨しみて鴨来る 松村蒼石 寒鶯抄
刈草を踏むやはらかき鴨の足 石田勝彦 秋興
初凪や翔てばみな翔つ鴨の群 大友月人
初鴨が着く草川を忘れずに 佐野美智
初鴨にふるさとの人の声透る 石原八束
初鴨に居着の鳰のよく潜る 大串章
初鴨に沼波たたみたたむなり 木村蕪城 一位
初鴨のいまだ遊意の水尾ならず 高野途上
初鴨のしぶき大きく水に着く 佐藤和枝
初鴨のつきし湖畔と朝散歩 小原菁々子
初鴨のみづうみ渺として遠し 百合山羽公 故園
初鴨のやがて始めし波あそび 関戸靖子
初鴨の一陣朝日きらめかす 河本好恵
初鴨の中の一羽の馴々し 樋笠文
初鴨の光りを曳きて着水す 横山美代子
初鴨の四五に足らず池ひろし 水原秋桜子
初鴨の多摩の横山がかりかな 八木林之介 青霞集
初鴨の大羽博ちにも比良黙す 阿波野青畝
初鴨の水尾まつすぐに折返す 鷹羽狩行
初鴨の泳ぎ廻つてをりにけり 三村純也
初鴨の着水一糸乱れざり 西村 琢
初鴨の空のはしより着水す 小林せつ子
初鴨の蹼ひらく水の中 尾崎隆則
初鴨の降りて水輪を重ねあふ 井口朝子
初鴨の青置き湖水よみがへる きくちつねこ
初鴨やしだいに晴れて沖の点 篠田悌二郎
初鴨や刈らぬ水田に波をたて 雲道
初鴨や穂高の霧に池移り 水原秋櫻子
初鴨を待つ紀の川の水平ら つじ加代子
初鴨を湖はきらめきもて迎ふ 山下美典
到来の鴨をながめて一夜あり 八木林之介 青霞集
割り込ませてもらひますよと鴨のこゑ 高澤良一 ぱらりとせ 
北上の川上に浮く雨の鴨 阿部みどり女
十五夜の野にあか~と鴨威し 素十
又飛んで又飛んで鴨来てをりし 石井とし夫
古刀根や鴨来そめたる秋の風 野村喜舟 小石川
古利根や鴨の鳴く夜の酒の味 一茶
古池や柳枯れて鴨石に在り 子規句集 虚子・碧梧桐選
合鴨や鍋の中なる冬の暮 三橋敏雄 畳の上
吊し鴨月明を翔けしつばさ垂れ 坂戸淳夫
吊るされて鴨は両脚揃へけり 土肥あき子
吹き溜るごとく鴨降る湾の奥 長谷川史郊
咳きて思ひ寝の鴨乱さゞれ 篠田悌二郎
哲学の道沿ひ鴨も散歩する 高澤良一 宿好 
土器や鴨まつ青によこたはる 青畝
地いまはうるめるを知る鴨の脚 松村蒼石 雁
地を歩くときの楽しさ鴨の顔 沢木欣一 往還
城の松をうしろに鴨の浮びけり 雑草 長谷川零餘子
堰の音静なるとき鴨たてり 米沢吾亦紅 童顔
墓地へさしかかる撃たれ鴨提げて 伊藤敬子
夕波に見えがくれする鴨のあり 上村占魚 球磨
夕波の一つひとつに鴨ゐたる 八木林之介 青霞集
夕風の出てそはそはと鴨の水 石田郷子
夕鴨の一番橋は高かりし 三好達治 俳句拾遺
夕鴨やはるかの一つ羽ばたける 高野素十
夕鴨や二つ三つづゝ水尾明り 高野素十
夕鴨や汀の石に羽づくろひ 比叡 野村泊月
外濠にとぶ鴨遠きおもひ出を 飯田蛇笏 雪峡
外濠の鴨を窗辺に年用意 飯田蛇笏 雪峡
夜あらしや鴨の腹する長等越 水田正秀
夜がらすをそやし立けり鴨のむれ 内藤丈草
夜の鴨に騒(ぞめ)きのありぬ納りぬ 高澤良一 随笑 
夜の鴨玉の如くに浮かびをり 岸本尚毅 鶏頭
夜鴨かな末広がりに声落し 伊藤敬子
夜鴨撃掌に煙草火をかばひ待つ 米澤吾亦虹
夜鴨聴く女体白木の湯に沈め 吉野義子
大き音して鴨の翔ち母死せり 館岡沙緻
大本営鴨啼く月夜深まりぬ 渡邊水巴 富士
大貯水ふるゝもの鴨と松風ぞ 渡辺水巴 白日
大鴨脚化けて出さうな月見哉 尾崎紅葉
天上を鴨わたりゆく響きかな 宇多喜代子
天孫降臨読めば新し鴨鳴く夜 殿村莵絲子 牡 丹
天籟や山のなぞへを鴨の群 文挟夫佐恵
天龍の石原きつて鴨寒し 百合山羽公 故園
太き尻ざぶんと鴨の降りにけり 阿波野青畝(1899-1992)
夫婦鴨さみしくなれば光り合ふ 松本 旭
夫婦鴨芦の中より現はるる 白井良治
夫年今年なく鴨泊つる志賀の海 小原菁々子
奥の江に虹被て鳴けり初鴨は 桂樟蹊子
奥琵琶の鴨の波乗り上手かな 岩崎照子
女らに尻の浮鴨ばかりなり 大石悦子
女三人鴨を尻目に長話 高澤良一 随笑 
好まざる群あるらしく鴨降りず 森田峠
子鴨の瞳二粒必ず翔つ日あり 立岩利夫
宍道湖の鴨と添うたるひと夜かな 飴山實 『次の花』
定まれる席あるごとし浮寝鴨 関森勝夫
宮の船来ますと鴨の波うつり 五十嵐播水 埠頭
寄り合ひて眠れる鴨の首さむし忍従といふとほき生き方 竹下奈々子
寄り寄りに水輪つくりて月の鴨 臼田亜浪
密集の鴨浜名湖の精気なり 百合山羽公 寒雁
寒紅や鴨煮るくちに濃く刷かれ 龍岡晋
寒茜極楽いろに鴨千羽 柴田白葉女
寒菊やつながれあるく鴨一つ 渡辺水巴 白日
寒風の鴨浮き鴉翔ちにけり 齋藤玄 飛雪
射止めたるその手で鴨の深毛撫づ 品川鈴子
少年や鴨をむしりて日向ぼこ 大橋櫻坡子 雨月
尻つきし鴨に水面のへこみけり 宮坂静生
尻振りて玩具めく鴨近寄り来 高澤良一 燕音 
尾白鷲の気配に万の鴨翔ちし 高橋桐子
尾越鴨まづ渡岸寺のほとけ見ん 安東次男
山晴れて湖晴れて鴨動きそむ 市村不先
山水や鴨の羽いろにながれこむ 乙二
山葵田の水初鴨の水と会ふ 石田勝彦 秋興
岬山の没日より現る鴨の群 関森勝夫
岳はなほ白き彫刻鴨かへる 大島民郎
峠こす鴨のさなりや諸きほひ 内藤丈草
川暮れて鴨暮れて灯の遠くあり 石井とし夫
川縁の鴨の口々雪来ると 高澤良一 鳩信 
干し足袋も鴨の形す湖辺宿 右城暮石 上下
幼き日鴨は大きな鳥なりし 村松栄子
底冷えに遇ひたる鴨の真顔かな 高澤良一 寒暑 
廻し来て矢頃の鴨となりにけり 松藤夏山 夏山句集
彼岸まで雪の橋あり睡り鴨 立花波絵
忽ちに降りたる鴨の陣なせる 高浜年尾
怒濤うち鴨を砂丘へ追い上げぬ 水原秋桜子
思ひきや渦より鴨のたちつゞく 佐野まもる 海郷
怠け市民鉄橋色に鴨と染まり 加倉井秋を 『真名井』
恋人よ鴨の頭をさげてゆく 宇多喜代子
恵比須講あひるも鴨に成にけり 利合 芭蕉庵小文庫
悪声の鴨にもつとも近く佇つ 福永耕二
我庭に育ちし子鴨とびにけり 大須賀乙字
手の届く位置に鴨寄る神の池 篠田悦子
手前より杭・葭・鴨の睡る水 高澤良一 さざなみやっこ 
手套より手が出て万の鴨動く 松山足羽
手負ひ鴨望遠鏡の裡にせり 池田秀水
打入りて先づあそぶなり池の鴨 立花北枝
押しあひてへしあひて鴨らしからぬ 行方克巳
拗ね者は鴨にもをりぬ愛すべし 平子 公一
振りあほぐ鴨に皇居の櫻かな 高澤良一 鳩信 
揖斐長良まぎらはしけれ夜鴨鳴く 森田峠 逆瀬川以後
撃ちし鴨掴めば薄眼あけにけり 奥坂まや
故郷へ帰らなんいさ鴨も来し 上崎暮潮
敗荷の千本沼の千羽鴨 文挟夫佐恵 遠い橋
敗荷や笑ふがごとき鴨のこゑ 重信
教会の鐘降る野川鴨ねむる 関森勝夫
数へ日や近くて遠き鴨の声 板谷芳浄
数十と見し鴨翔てば数百羽 川村紫陽
文人とかかはり鴨の骨叩く 水谷芳子
文机やひとへにひゆる鴨の羽 中田剛 珠樹以後
料峭の鴨颯々と行き交うて 高澤良一 素抱 
旅の孤島に撃たれた鴨のごと眠る 浜 芳女
旗行列鴨ことごとく水にならぶ 渡邊水巴 富士
日が暮れて干潟を鴨の歩く音 岩田由美
日にしぶきあげ飛ぶ青首鴨といふ 岡田日郎
日に鴨の白砂あゆむ尾ぶりかな 白雄
日のあたるところがほぐれ鴨の陣 飴山實 『次の花』
日は遠くなり捲き返す鴨の群 臼田亞浪 定本亜浪句集
早春や鴨の名どころ鴨の声 大場白水郎 散木集
明けし戸に夜鴨翔つ音沼住ひ 石井とし夫
明方や城をとりまく鴨の声 許六 十 月 月別句集「韻塞」
星影の揺らぐは鴨の来そめけり 千代田葛彦
星消えてゆき鴨のこゑみづ~し 中岡 毅雄
春雷やあをあをとして鴨の首 岸本尚毅 舜
春風に鴨のあかあし歩きをり 田中裕明 櫻姫譚
時化あとのはぐれ鴨浮く浪逆浦 中村七穂
晩雪に睦みてこゑの鴨と雁 橋本榮治 越在
暁けの湖鴨が祈りの数に見ゆ 田鎖雷峰
暁紅の一川鴨の着いてをり 高澤良一 随笑 
暁紅へ首のべきつてはぐれ鴨 鷲谷七菜子 雨 月
月くらし細江の鴨の羽摶ちたつ 水原秋櫻子
月の出や鴨さざなみに嘴つけて 藺草慶子
月の面にかゝりし鴨の撃たれけり 藤原たかを
月光を葦に沈めて鴨のこゑ 松村蒼石 雁
朝寒の松につく鴨の雫かな(山部の池) 廣江八重櫻
朝顔よおもはじ鶴と鴨のあし 山口素堂
朝鴨に比し夕鴨は寂と居き 瓜人
朝鴨のみな首立てて飛ぶことよ 安東次男 裏山
木の葉舞ふ雪に小鴨のせり合へり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
木偶鴨に鴫か千鳥か鳴いてゐる 木村蕪城 寒泉
木偶鴨の畦にならびし佛生会 関戸靖子
木偶鴨の眼のかなしくて雪降れり 関戸靖子
木偶鴨の眼ひらきしまま流れ寄る 関戸靖子
木偶鴨を積み枯菰へ投げ碇 木村蕪城 寒泉
未明より海も動きて鴨啼ける 百合山羽公 寒雁
末枯れやカレー南蛮鴨南蛮 田中裕明
杉焼にこげついて鴨うっぽっぽ 加藤郁乎 佳気颪
杉玉を吊る軒端より鴨が見え 爽波
来し鴨に雨の水輪の賑ひぬ 石田あき子 見舞籠
来し鴨のおどろき易く陣なせり 田辺夕陽斜
来そめたる鴨いりあひの鐘近く 松村蒼石 雁
来るまでは遅し早しと鴨のこと 中井冨佐女
来世もかく飛ぶ鴨が鴨を見る 三好潤子
東大の構内にして鴨の波 稲畑汀子
松は高し暮天を移る鴨の声 斎藤空華 空華句集
松明消えて江の音寒し鴨の声 雷夫
枕まで海の暁紅鴨の声 百合山羽公 寒雁
林泉の鴨寒の虚空にしばし舞ふ 西島麥南
枯るるもの枯れて鵜の島鴨の島 大木あまり 火球
枯草に鴨の彩羽をむしりすつ 臼田亞浪 定本亜浪句集
枯蓮を被(か)むつて浮きし小鴨哉 夏目漱石 明治二十八年
枯蓮を離れて遠し鴨二つ 抱琴
枯蘆や夜々に折れ込む鴨の上 素丸
栃木屋の鴨啼いて松過ぎにけり 藤田あけ烏 赤松
梓川清流合す処に鴨 高澤良一 素抱 
椋の実が熟れ海からも鴨のこゑ 須並一衛
榛咲くや水に潰え込む鴨場道 高田蝶衣
横川遠からずと言はれ鴨料理 森田峠 三角屋根
橋立の海荒れつゞき鴨来る 島谷王土星
次の間にきのふの鴨の吊しある 京極杞陽 くくたち下巻
歓びに似て着水の鴨数羽 椎橋清翠
武蔵野の此処に水凝り鴨呼ばふ 臼田亞浪 定本亜浪句集
歯固めの美濃の青頸鴨なるよ 大石悦子
死を透かしひろげし鴨の羽二枚 柴田白葉女
残照のいづこの野水鴨のこゑ 百合山羽公 故園
残照のきらめきとなり鴨消えぬ 米沢吾亦紅 童顔
母訪はぬ一日一日や鴨の声 永田耕衣 奪鈔
毛衣につつみてぬくし鴨の足 ばせを 芭蕉庵小文庫
毛見に云ふ虫がつかねば鴨がつき 高野素十
毫を吹いて弾痕蒼き鴨の胸 内山忍冬
水すでに夕辺の気配鴨鳴けば 加藤耕子
水の上に四五羽の鴨の来てをりぬ 今井杏太郎
水の空出でずて鴨の或は低し 原田種茅 径
水ひかる二月真鴨は月の鳥 石原舟月
水上や風にしたがふ鴨の笛 松村蒼石 寒鶯抄
水中の脚覚めてをる浮寝鴨 千原叡子
水中まで鴨の足跡ありて見ゆ 大串章
水凝て鴨なく星の林かな 椎本才麿
水噛んで浮寝の鴨となりにけり 岸田稚魚 『花盗人』
水底に消えし鴨山青すすき 土谷和生
水底を見て来た貌の小鴨かな 内藤丈草
水禍より起き立ちてはや鴨を撃つ 百合山羽公 故園
水葬のありしは昔鴨の海 小原菁々子
水靄の立ち込め鴨を遠くせり 新川智恵子
氷上にばらまきしごと鴨のゐる 石井とし夫
氷上に上りし鴨の足歩く 嶋田摩耶子
永き日の月山よぎる番鴨 堀口星眠
江の鴨に橋ろんろんと響く夕 松村蒼石 雪
池に浮く鴨もそぞろや草萌ゆる 松本たかし
池の雪鴨やあそべと明けて有り 千代尼
池の鴨さくらもみぢの梢越し 瀧井孝作
池の鴨森の鴉や夕時雨 寺田寅彦
池重く鴨のたつきの淡々し 松村蒼石 雁
汽車におどろく鴨におどろく旅人われ 臼田亞浪 定本亜浪句集
汽車に驚く鴨におどろく旅人の我れ 旅人 臼田亜浪
沖照りてわれには見えず波の鴨 篠田悌二郎
沙魚釣や近く小鴨の群飛べる 小澤碧童 碧童句集
没り日いま尾越の鴨か湖に浮き 石川桂郎 高蘆
河口ものうし鴨の喉笛どこにゐても 加倉井秋を 『真名井』
河骨の群へまぎれしはぐれ鴨 三宅郷子
沼凍てて鴨一族に空もなし 河野南畦 湖の森
沼空に星満ちて翔つ鴨もなし 石井とし夫
沼空のどこかにいつも鴨飛べり 石井とし夫
沼翔ちし鴨月めざし月めざし 石井とし夫
沼面より迎へ翔つあり鴨来る 石井とし夫
波まぶし湖心の鴨の陣見えず 高浜年尾
波よけもして受けもして鴨の胸 大木あまり 火球
波光るとき鴨いづこ鳰いづこ 稲畑汀子 汀子第二句集
波立てゝ何故に鴨陣をとく 高木晴子
注連かけて鴨の字隠る翁塚 林翔 和紙
派手好きな鴨の二三羽交じりゐし 高澤良一 ぱらりとせ 
流るるにまかせて鴨の寝溜めどき 平子 公一
流れをる川とも見えず鴨流る 石井とし夫
浮く鴨に志賀のさざなみ細かなり 山口誓子 紅日
浮寝鴨の濡れ身そのまま夜に入る 桂信子 花寂び 以後
浮寝鴨ベンチに戦禍のニュース読み 関森勝夫
浮寝鴨薄眼入日の金枯葦 桂信子 花寂び 以後
浮寝鴨覚めては羽摶つふたみたび 鈴木貞雄
浮御堂すこし見下ろす鴨の宿 後藤夜半
浮鴨の暮れしまなこに二羽離れず 佐野美智
浮鴨の近きいちにち松の雨 岡井省二
浮鴨や泊りぐせなる沖の雲 高井北杜
海くれて鴨のこゑほのかに白し 芭蕉
海に出て伸縮自在鴨の列 右城暮石 上下
海に鴨発砲直前かも知れず 山口誓子(1901-94)
海の鴨あはれまむにもみな潜く 誓子
海口へ寄る無垢のこゑ鴨の群れ 原裕 青垣
海暮れて鴨の声ほのかに白し 芭蕉
海穏やか鴨一族の他はなく 阿部みどり女
海苔粗朶の茫々と鴨弾み入る 桂樟蹊子
涸れ沼の一枚の反り鴨落ちる 小松崎爽青
混沌と来てすぐ揃ふ鴨の陣 中村明子
渦潮にいま撃たれたる鴨の廻ふ 佐野まもる 海郷
湖すれすれ鴨飛ぶ息をつゞかしめ 右城暮石 上下
湖に添ふ一筋町や鴨のこゑ 大東晶子
湖に鴨琴糸作り見も知らず 石川桂郎 高蘆
湖の北まだ来ぬ鴨の臭ひする 三好潤子
湖の村鴨の来る日をこころ待つ 伊藤敬子
湖の芥に添うて流れる鴨の羽 桂信子 遠い橋
湖を鴨で埋たる夜あけかな 士朗
湖上に降る鴨の比良組比叡組 高澤良一 鳩信 
湖北に寝てなほ北空の鴨のこゑ 橋本多佳子
湖離る鴨のこころも昼霞 高澤良一 鳩信 
滝つぼを覗いて見たる小鴨かな 程己 十 月 月別句集「韻塞」
漆黒の夢の切れ目に鴨のこえ 澁谷道
潮に泛く鴨の羽がひに夕明り 奏鳳
澪すぢも鴨のなかなるもどり舟 柳芽
火を焚いて鴨惜しみなく発たせけり 鳥居美智子
灯とは無縁の暮し鴨番屋 中村田人
炉辺の父鴨をくはへて子におどけ 雑草 長谷川零餘子
炭なくて鴨になりたき老いの冷え 中勘助
炭斗を跨ぎて鴨の丁子屋に 鈴木しげを
点きてすぐ外燈熟るる鳴く鴨に 宮津昭彦
烈風に向きかへ鴨の陣を敷く 野田節子
烈風の真鴨が月になりにゆく 吉田紫乃
焚火消すうす暗がりに鴨の列 右城暮石 声と声
焼土も済む里人に鴨来初む 廣江八重櫻
燃ゆる日に盲ひず鴨の翔ち連るゝ 森田峠 避暑散歩
父死後の湖や初鴨浮き沈み 関戸靖子
物書きて鴨にかへけり夜の雪 笹山 菰堂 五車反古
猟夫と鴨同じ湖上に夜明待つ 津田清子 礼 拝
現世をはみ出して行く鴨数羽 小泉八重子
甘茶寺番野鴨にあひしのみ 堀口星眠 営巣期
田にゐたる鴨が初日をよぎり飛ぶ 水原秋桜子
町川に鴨のふえたり障子貼る 石黒哲夫
番ひ鴨遠くはとばずまた浮寝 下村梅子
番屋留守鴨は餌附の頃なるに 添田棗之
畫架たたむ夕日の鴨の飛ぶ下に 石田あき子 見舞籠
病む鴨の真菰がくれに陽炎へる 鈴木貞雄
痛み羽をたゝみきれざる浮寝鴨 右城暮石 上下
白き胸こちらに向きし湖の鴨 右城暮石 上下

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by 575fudemakase | 2014-12-11 00:30 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

消炭

消炭

例句を挙げる。

すぐ熾る消炭ありき乙女期ありき 池田澄子 たましいの話
冴えかへる夜や消し炭の美しき 川越苔雨
啓蟄や消炭いろの鯉直進 高澤良一 さざなみやっこ 
寒菊や消炭干せし売る茶亭 鈴木芋村
干されある消炭のまだ濡れてゐし 吉川 きわえ
恋に似て消炭の火のはかなくて 上村占魚
来山は消し炭淡々はいぶり炭 子規句集 虚子・碧梧桐選
水餅を焼く消炭のやわらかさ 萩原麦草 麦嵐
消し炭をつくる母いて鶏ねむる 高山幸子
消炭に寒菊すこし枯れにけり 室生犀星 魚眠洞發句集
消炭に火のいろうかぶ雪安居 三田きえ子
消炭に薄雪かかる垣根かな 黒柳召波 春泥句集
消炭に薪割る音かをのの奥 松尾芭蕉
消炭のごとき息して帰路にあり 桑原雅子
消炭のすぐおこりたつ淋しさよ 高浜虚子
消炭のつやをふくめる時雨かな 室生犀星 魚眠洞發句集
消炭の壺のありどは妻にのみ 皆吉爽雨
消炭の壺の如くに居られけり 小川素風郎
消炭の火となり灰となりにけり 田中塵外
消炭の火のつきにくき日もありぬ 山田 敏子
消炭の火をみちびきてかなしけれ 上村占魚 鮎
消炭の貧しき笊に散り紅葉 遠藤梧逸
消炭の軽さをはさむ火箸かな 吉田三角
消炭の過去の又燃え上りけり 上野泰 春潮
消炭の雨ににじめり韮の花 金尾梅の門 古志の歌
消炭や妻がかくしてゐる煙草 石川桂郎 含羞
消炭や瀬どころわたる鳥高音 宇佐美魚目 秋収冬蔵
消炭を作るも陶を焼く順序 小畑一天
消炭を夕べまつかな火に戻す 三橋鷹女
消炭を廓やめたる軒に干す 森田峠 避暑散歩
湾流や干す消炭に濃き木目 大岳水一路
火消壷すでに消炭のいろで待つ 平井さち子
笊に干す消炭銀杏道へこぼし 香西照雄 対話
くらがりに置かれて火消壷といふ 今井杏太郎
なにもかも晴れて冬至の火消壺 大木あまり 火球
まなこ昏れ生家に熱き火消壺 柿本多映
川上に雪降る夜の火消壺 広治
年越や使はず捨てず火消壷 草間時彦
火消壷すでに消炭のいろで待つ 平井さち子
火消壷炉によせて蓋とりし口 河野静雲 閻魔
火消壺昼のくらがり馴れて黒し 殿村莵絲子 遠い橋
火消壺水甕よりも夜寒かな 野村喜舟 小石川
福耳の婆へ雪降る火消壷 坂内佳禰
秋深みたり浜焼の火消壺 綾部仁喜 樸簡
老妻とは吾のことかも火消壺 上野さち子
西陣から下鴨へ来し火消壺 梶山千鶴子
革椅子に汗冷えて見る火消壷 松村蒼石 雁


以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:21 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

炭火

炭火

例句を挙げる。

いまはむかし壺で炭火を消すことも 長谷川照子
うつくしき炭火蕪村の忌なりけり 岸風三樓
うらぶれし夜は美しき炭火かな 鷲谷七菜子 黄炎
かきたてゝ炭火へりゆく旅籠の夜 河野扶美
かまくらのうしろの闇へ炭火捨つ 牧石剛明
くらがりに炭火たばしる雨月かな 石田波郷
くらがりに炭火の紅や何言はむ 齋藤玄 飛雪
くわん~と炭火おこれり師走店 温亭句集 篠原温亭
こころよき炭火のさまや三ヶ日 飯田蛇笏
どぜう屋の炭火真紅に冬来る 細見綾子 黄 瀬
はや炭火の音なくて心みだれ 梅林句屑 喜谷六花
ひとり詠むわが詩血かよふ炭火かな 飯田蛇笏 山廬集
ふつ~と血を吸ふ炭火さはやかに 篠原鳳作
ほとけより美しかりし炭火かな 内田美紗 誕生日
もてなしの貧の炭火をふきにけり 西島麦南 人音
ものおもひ居れば崩るる炭火かな 樗堂
わがうしろ炭火匂ひて運ばるゝ 平田佐久男
わがまなこくらくてならぬ炭火掻き 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
わが母とゐるごとく居て炭火美し 岡本眸
ドン・キホーテに道化けて疲る夜の炭火 宮坂静生 青胡桃
ローマンの夜は炭火守るかなしさよ 河野南畦 『花と流氷』
一喘の焔を上げし炭火かな 鈴木貞雄
七輪に炭火熾して靴磨き 添野光子
亢ぶれる炭火を運びきたるひと 辻桃子
人がなす冬蚕に炭火赫々と 栗生純夫 科野路
人来ずや炭火を吹つ茶を煮をり 岩木躑躅
人訪ひて炭火賜ふも天城かな 渡辺恭子
何も彼も遙に炭火うるみけり 石田波郷
倖をさぐる手かざす炭火かな 杉山岳陽 晩婚
倖を炭火の如くあたゝむる 野見山ひふみ
先生の通夜の炭火でありにけり 鈴木しげを
刀鍛冶炭火の色を育てをり 岡田朔風
初釜の炭火をわたる山の色 森句城子
別るゝや炭火なほ燃え閑古鳥 渡辺水巴 白日
厨よりのはげしき炭火もてなさる 宮津昭彦
壷焼や炭火に並ぶ人の顔 温亭句集 篠原温亭
夜もすがら句作る炭火育てけり 銀漢 吉岡禅寺洞
夜祭や炭火に猛ける捨煙草 角川源義
妻の愚痴わが愚痴炭火うつくしく 岸風三楼 往来
妻泣かすはほとほとかなし炭火見る 杉山岳陽 晩婚
寒泳の炭火を土の上に焚く 田中午次郎
寝ぬる頃少し残りし炭火かな 石井露月
対き合うて安堵の炭火いや燃やす 杉山岳陽 晩婚
小庵や夕づく炭火にほやかに 西島麦南 人音
屠蘇注ぐや袂の隙に炭火赤し 中村汀女
山樫の炭火に燃ゆる古葉かな 西島麦南 人音
岩魚焼くうすくれなゐの炭火かな 佐川広治
己れもの言はねば炭火に呟かる 林翔
年かはり炭火匂つてゐるばかり 藤木清子
幼にして運命数奇炭火濃し 野見山朱鳥
庭を来る山家料理のよき炭火 桂樟蹊子
庭枯れて遺愛の一間炭火燃ゆ 渡邊水巴 富士
廊暗し炭火を運ぶ僧に逢ふ 加藤楸邨
弱り目祟り目炭火に灼けで湯に灼けたり 磯貝碧蹄館 握手
弾初にあかり立てゐる炭火かな 増田龍雨 龍雨句集
心赤し炭火ゆ灰を削ぎ落し 中村草田男
恋愛の漠たる探り炭火掻く 石塚友二 方寸虚実
我が憂き顔の凸凹を感じ炭火吹く 人間を彫る 大橋裸木
或夜半の炭火かすかにくづれけり 芥川龍之介
手を裏がへしても炭火の翳がある 近藤一鴻
斯かる人ありきと炭火育てつつ 星野立子
方丈の炭火艶めく近松忌 藤村たけし
星のごと光り消えたる炭火中 高浜虚子
朝々の炭火つゆけく菜種咲く 金尾梅の門 古志の歌
本の背炭火あかりに立ちならぶ 篠原梵
汝が涙炭火に燃えて月夜かな 飯田蛇笏 山廬集
泥鰌屋に厄日の炭火熾んなり 鈴木鷹夫
流燈は炭火のくらさ横手川 高澤良一 素抱 
消えてゆく炭火に時を惜しみけり 高橋淡路女 梶の葉
漆屋の炭火の灰の盛り加減 伊藤敬子
濡れ豆腐焼くや炭火の総紅蓮 中村草田男
炭火あたたかし壺に菜の花あり 川島彷徨子 榛の木
炭火かぎろふまひる目白の声しげき 金尾梅の門 古志の歌
炭火しづか無理難題の美しく 正木ゆう子 静かな水
炭火たゞ見まもりて寝惜しむとなき 金尾梅の門 古志の歌
炭火の香うつり易しや若き掌は 野澤節子 黄 瀬
炭火ふくおちよぼ口してをさな顔 上村占魚 球磨
炭火みる時間充分ありにけり 杉野一博
炭火吹き働く齢のこりをり 米沢吾亦紅 童顔
炭火吹き技師の宿命を妻は知る 米沢吾亦紅 童顔
炭火吹くやまざと幼きおのが顔 林原耒井 蜩
炭火吹く口むけられてくらみけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炭火吹く口尖らして人あはれ 高橋淡路女 梶の葉
炭火吹く祖母美しい日暮かな 森下草城子
炭火吹く頬のふくらみをよしと見し 林原耒井 蜩
炭火掻き出してでびらをあぶりけり 茨木和生 往馬
炭火赫と虚無の弁舌うべなへり 赤尾兜子
炭火途中にて真つ黒に消えゐたる 右城暮石 声と声
熾んなる炭火に声をおとしつつ 佐野良太 樫
熾んなる炭火ほてりの句帖にも 小林 正夫
畳古り炭火ともしも新娶り 三谷昭 獣身
看護妻炭火一片許されず 細川加賀 『傷痕』
禅僧の瞑りてゐる炭火かな 三森鉄治
竹散るや火熨の舟に炭火載り 中戸川朝人 星辰
緋蕪も飛騨の炭火も赤きころ 石原八束 仮幻の花
罪業の血のうつくしさ炭火に垂らす 篠原鳳作
美しや炭火の白き零落は 鷹羽狩行 五行
翳したる指の隙間に炭火うつくし 篠原梵
育てつゝ炭火に心遊ばせて 元重廉直
臘八会炭火奢りの焔吐き 飯田龍太
薄雪の炭火深雪の炭団かな 小杉余子 余子句選
藁灰のなかの炭火まなかより焔す 梅林句屑 喜谷六花
藪ふかく余震の炭火起りをり 萩原麦草 麦嵐
蛤を炭火に泣かす土間厨 影島智子
行く年の花のやうなる炭火かな 鷲谷七菜子 天鼓
見てをれば心たのしき炭火かな 日野草城
言はざれば炭火の洞にほのほ満つ 西垣脩
言ひかけぬ炭火掻きゐし手をとめて 松岡巨籟
訪ふも憂し訪はれて炭火継ぐばかり 石塚友二 光塵
話しつつかたみに炭火いぢりゐし 篠原梵 雨
調書取る被疑者に炭火継ぎ足して 大谷静
貫かん嘘美しく炭火燃ゆ 福本竹峰
跳炭火の粉宙になほ跳ね愛つらぬけ 川口重美
身につきし北国の癖炭火盛る 高木餅花
逢ふに似てはねる炭火や年忘 石川桂郎 四温
鉛筆もてひろぐ炭火や夫はなし 桂信子 黄 炎
錆鮎の桶に跳ねをり炭火燃ゆ 寺岡捷子
陶器舗のあたりの幽らむ炭火かな 飯田蛇笏 山廬集
雁鳴くや炭火を移す炉の湿り 井月の句集 井上井月
雪の上に炭火旺んや歳の市 暮雪
雪の前炭火ひらきて信濃にゐ 森澄雄
雪の降る夜握ればあつき炭火かな 上島鬼貫
電燈消えて闇に見つめし炭火かな 青峰集 島田青峰
魚串の細腰こがす炭火かな 敬天牧童
鮠を焼く炭火あかあか真室川 田川飛旅子


以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:20 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬の空

冬の空

例句を挙げる。

いつとなく葡萄の国も冬の空 飯田龍太
いつの間に昼の月出て冬の空 内藤鳴雪
から風の北明るさや冬の空 大須賀乙字
コスモスの花はあれども冬の空 原石鼎 花影以後
何か一つ落ちたる音の冬の空 河合凱夫 藤の実
傷舐めて今も幼き冬の空 千代田葛彦 旅人木
冬の空つひに上らぬ日の没す 安藤秋蘿
冬の空少し濁りしかと思ふ 高浜虚子
冬の空思ひ直して明るかり 麻生 直美
冬の空昨日につづき今日もあり 波多野爽波 鋪道の花
冬の空罠かも知れぬ吊り鏡 小長井和子
冬の空重きブーツの底鳴らし 谷川 典大
冬の空青く展けて異国船 柳瀬重子
塔失せてあをあを冬の空残す 伊藤いと子
墨の線一つ走りて冬の空 高浜虚子
夕焼の金龍飛べり冬の空 山口青邨
天ぷらの海老の尾赤き冬の空 波多野爽波 『骰子』
宋研一つの冬の空大いなり 中塚一碧樓
峯々へ松ちぎり置き冬の空 久米正雄 返り花
峰二つ乳房のごとし冬の空 赤星水竹居(筑波山)
或る冬の空にとどまる昼花火 柿本多映
戸袋にかくれゐる戸や冬の空 波多野爽波 鋪道の花
担がるゝ熊の四足や冬の空 野村喜舟 小石川
散るものを誘ふ碧さの冬の空 後藤比奈夫 初心
日を追うて歩む月あり冬の空 松本たかし
明日よりは遠き但馬と冬の空 京極杞陽 くくたち下巻
月影の針もてさすか冬の空\ 何某母 俳諧撰集玉藻集
歌舞伎座のうしろに住みぬ冬の空 久保田万太郎
水の裏見てゐるごとし冬の空 川嶋一美
湯けむりの息吹き返す冬の空 佐藤哲一郎
無患子の一目卍や冬の空 殿村莵絲子 雨 月
爆心といふも瑠璃なす冬の空 堀内薫
牡丹にもこの色なくて冬の空 松瀬青々
畑あり家ありここら冬の空 波多野爽波 鋪道の花
老幼を愛する如し冬の空 永田耕衣 狂機
芋二つしなびて冬の空があり 岸本尚毅 選集「氷」
郵便が冬の空より来てをりぬ 波多野爽波
銀杏の幹裂け沈む冬の空 横光利一
靴と靴叩いて冬の空青し 和田耕三郎
鴉呼ぶ鴉に冬の空青く 岩淵喜代子
あぎと引き冬空はひきしまりけり 上野泰
あをさぎの巣は冬空にかけておく 夏井いつき
うつくしき冬空なりし鉄格子 角川春樹
ひろすぎる冬空に貼る人の顔 磯貝碧蹄館 握手
クレーンの手冬空に鐵を掴み去る 内藤吐天
ザラ紙のような冬空レンズ磨いても 浜 芳女
タワー赤冬空の青引き上げて 稲畑汀子
ベル押せば冬空に足音おこり 波多野爽波 鋪道の花
マルメロの創冬空となりにけり 千代田葛彦 旅人木
一人だけ死ぬ冬空の観覧車 磯貝碧蹄館
一噴煙冬空涜しひろごりぬ 草間時彦 櫻山
一塵もなき冬空に日を満たし 上村占魚 鮎
人ゐて冬空の青い枝きる シヤツと雑草 栗林一石路
人送りて今日の冬空見たりけり 長谷川かな女 雨 月
冬空と極楽鳥花玻璃一重 森田峠 逆瀬川
冬空にしてうすぎぬの烏帽子かな 岸本尚毅 選集「氷」
冬空につき出でてゐるもの多し 上村勝一
冬空にとぎれ未完のハイウェイ 岩崎照子
冬空に噛みつくものや礁と濤 久米正雄 返り花
冬空に大樹の梢朽ちてなし 高浜虚子
冬空に宝塔暮るゝ金色に 高木晴子 花 季
冬空に探す逃がした詩の言葉 有働亨 汐路
冬空に掴まれて富士立ち上る 伊藤通明
冬空に撞木の揺れ残りをり 藤田あけ烏 赤松
冬空に枯木のみ見えて雲も無し 高濱年尾 年尾句集
冬空に聖痕もなし唯蒼し 中村草田男
冬空に触れし指より光りそむ 仙田洋子 橋のあなたに
冬空に騒立つ樫を伐りにけり 青峰集 島田青峰
冬空に鳩を見上げて松葉杖 京極杞陽
冬空のビルヂングの資本の攻勢を見ろ 栗林一石路
冬空の一方へ竹伐り倒す 榎本冬一郎 眼光
冬空の一片落ちてくる咳のあと 桜井博道 海上
冬空の下一点のわが歩み 星野立子
冬空の下身をかがめくぐり押す 波多野爽波 鋪道の花
冬空の大起重機に人居る窓 五十嵐播水 埠頭
冬空の弾けば響きさうな青 木内怜子
冬空の汚れか玻璃の汚れかと 波多野爽波 鋪道の花
冬空の溢れて黒き河口かな 山田みづえ
冬空の澄みつ暮れゆく鎮魂歌 文挟夫佐恵 黄 瀬
冬空の疵とはならぬ鴉かな 阿部みどり女
冬空の禅寺丸柿形見とし 殿村莵絲子 雨 月
冬空の薄き瞼を裂く青さ 澁谷道
冬空の鋼色なす切通し 大野林火
冬空の鳶や没後の日を浴びて 上田五千石 田園
冬空の鴉いよいよ大きくなる 飯田龍太
冬空は一物もなし八ケ岳 森澄雄
冬空へくぐり戸の鈴鳴り終る 波多野爽波 鋪道の花
冬空へとどかぬ梯子婚約す 対馬康子 愛国
冬空へ出てはつきりと蚊のかたち 岸本尚毅(1961-)
冬空へ打つ甘藷の鳥威し 太田土男
冬空へ消えてゆくたましいよ涙 北島輝郎
冬空へ深入りしたる風船よ 小泉八重子
冬空へ煙さでたくや灘の船 飯田蛇笏 山廬集
冬空へ象嵌ひたひたと愛技 和泉香津子
冬空やみちのおく道先づ千住 野村喜舟 小石川
冬空や大樹暮んとする静寂 飯田蛇笏
冬空や宝珠露盤は寺の屋根 野村喜舟 小石川
冬空や山陰道の君が家 小澤碧童
冬空や峡にくひ入る桑畑 金尾梅の門 古志の歌
冬空や巣鴨は江戸の北はづれ 嵐竹 芭蕉庵小文庫
冬空や津軽根見えて南部領 河東碧梧桐
冬空や父いますごと大欅 谷内田和子
冬空や猫塀づたひどこへもゆける 波多野爽波(1923-91)
冬空や野をかけるトロの大軋り 楠目橙黄子 橙圃
冬空や風に吹かれて沈む月 永井荷風
冬空や魂は横移動する 桑原三郎 晝夜 以後
冬空や麻布の坂の上りおり 永井荷風
冬空をいま青く塗る画家羨し 中村草田男
冬空をかくす大きなものを干す 波多野爽波 鋪道の花
冬空をふりかぶり鉄を打つ男 秋元不死男
冬空遠く大工の音とアヴェマリア 安東次男 裏山
凧一つ貌のごときが冬空に 中村苑子(1913-2001)
凶作になんのかかわりもなく冬空に白く議事堂 栗林一石路
唐辛子の色冬空が盗みたり 小泉八重子
四角な空万葉集にはなき冬空 加藤楸邨
寒肥をひく冬空の泣くばかり 飯田蛇笏 椿花集
山峡の冬空よ生きせばむるか 細見綾子 花 季
幹高きその冬空へ耳を寄す 桜井博道 海上
我もだし冬空もだしゐたりけり 松根東洋城
戸あくれば冬空に帽とりて客 波多野爽波 鋪道の花
手術の日冬空少し汚れけり 森田峠 避暑散歩
故郷の冬空にもどつて来た 尾崎放哉
旅立たむ冬空はしらのあるごとく 森かつみ
日当つて大仏の顔冬空に 奈良文夫
朝雲ちり冬空とほく光りあり 飯田蛇笏 雪峡
泉見て今日冬空を見しと思ふ 上野さち子
湯加減のごと冬空に手を入れて 平井照敏 天上大風
煙草なく米なく出でて冬空美し 岩田昌寿 地の塩
父を焼くいま冬空へうす煙 小林康治 四季貧窮
甘き冬空右手に母が箸持たす 磯貝碧蹄館
田鳧啼き冬空をまた深くせり 落合伊津夫
白壁と冬空の壁人死せり 阿部みどり女
移民船冬空へ旗ちぎれ飛び 五十嵐播水 埠頭
紺の香きつく着て冬空の下働く 尾崎放哉
結界に冬空が見ゆ縄梯子 河合凱夫 飛礫
絶対安静冬空に押へられ 小川双々子
螺旋階尽き冬空まで昇れず 福田蓼汀 秋風挽歌
街中の焼跡の墓地冬空持つ 細見綾子 花 季
裏庭に冬空の立ちはだかれる 波多野爽波 鋪道の花
針もつ母に東京の冬空となりくる 栗林一石路
鉄を截る音冬空にありにけり 五十嵐播水 埠頭
雲生れてきて冬空の相となる 綿谷吉男
高貴なる冬空を得て天女丸 飯田蛇笏 雪峡
あけすけに団栗の木と冬青空 高澤良一 燕音
ひとみ元消化器なりし冬青空 攝津幸彦
まつ毛瞭らかに冬青空はあり 千代田葛彦 旅人木
わが胸に旗鳴るごとし冬青空 野澤節子 『鳳蝶』
カナリヤの籠の目すべて冬青空 中拓夫
世間体一つ外せば冬青空 高澤良一 素抱 
冬青空 祖母が煙りに 風になる 松本恭子 檸檬の街で
冬青空いつせいに置く銀の匙 水野真由美
冬青空このまゝ死なば安からむ 相馬遷子 山河
冬青空さえぎるもののなき別れ 上野好子
冬青空ひとの歩みの映るかな 清水径子
冬青空わが魂を吸ふごとし 相馬遷子 山河
冬青空わたしの羽音ありにけり 吉田悦花
冬青空アミメキリンの首を容れ 高澤良一 燕音 
冬青空マッチの軸が水に浮き 桜井博道 海上
冬青空九億九光年の留守 斎藤慎爾
冬青空双手ひろげて使徒の像 古賀まり子 降誕歌
冬青空夜は万年筆の中 高野ムツオ
冬青空工夫の胃ぶくろよろこびあふ 磯貝碧蹄館 握手
冬青空明日をはるかとおもふとき 金田咲子
冬青空母より先に逝かんとは 相馬遷子 山河
冬青空涙とともにパンを食べ 堀井春一郎
冬青空灯台打ち上げて見たし 高橋とも子
冬青空瑞枝さみしきときもあり 飯田龍太
冬青空胸中の鈴鳴りはじむ 江中真弓
冬青空鈴懸の実の鳴りさうな 中村わさび
四人の子がきく冬青空の鐘 柴田白葉女
地の果てに海その果てに冬青空 高橋悦男
妥協なき冬青空とうち仰ぎ 高澤良一 随笑 
宿木の翔び立ちさうな冬青空 高澤良一 随笑 
崖の上の冬青空は壁なせり 水原秋櫻子
朱を入れて凧とびやすし冬青空 杉本寛
滝落ちて冬青空をひきしぼる 石嶌岳
父よいま冬青空も深呼吸 酒井弘司
神殿の列柱残る冬青空 毛塚静枝
絶壁をけものの堕ちる冬青空 津沢マサ子
縫目なき冬青空へ消えし鳥 柿本多映
鎌倉の切通ゆく冬青空 大橋敦子
髪刈って頭の頼りなき冬青空 高澤良一 燕音 
からたちの冬天蒼く亀裂せり 富澤赤黄男
まひる冬天の青かぶさり来て沈黙 加藤楸邨
カシオペアは冬天の椅子児は寝しや 辻田克巳
コルト撃ち恋冬天にひるがえる 三谷昭 獣身
ザトペック冬天を馳す跫音す 高澤良一 宿好 
ペン執りし身を冬天に爆ぜしめき 加藤秋邨 火の記憶
二夜われ肉片として凍空に 佐藤鬼房
人に家雁に寒空果てしなく 阿部みどり女
信濃路へ冬天の川ながれをり 加藤秋邨 火の記憶
冬天が星をこぼせり達磨市 中拓夫 愛鷹
冬天といふ一枚の碧さかな 石橋淑子
冬天にゆゆしきほむら落城史 町田しげき
冬天に勁きくちばしありにけり 奥坂まや
冬天に牡丹のやうなひとの舌 富澤赤黄男
冬天に見えぬ星あり娶られて啼かず翔ばずのひと生の如き 今野寿美
冬天に透く金の葉や樺の梢 相馬遷子 山河
冬天に錐立つ嶺のテレビ塔 油谷和子
冬天のどこまで異邦紅茶澄む 対馬康子 吾亦紅
冬天のまるくかかれり無住寺 平井照敏 天上大風
冬天の動物園や歌舞伎町 平井照敏
冬天の無縫の青を遺さるる 嶋田麻紀
冬天の碧さ言ふべきこともなし 岸風三楼 往来
冬天の青に湧き顕つグレコの街 文挟夫佐恵 雨 月
冬天へ杉は槍なす平家村 鍵和田[ゆう]子
冬天や北に棲むほど熱き肌 対馬康子 純情
冬天や噴煙のほかに雲二三 水原秋櫻子
冬天より父貌の鳥降り来たる 宇多喜代子
冬天を仰ぎぬ要らぬものばかり 手塚美佐 昔の香
冬天を降りきて鉄の椅子に在り 西東三鬼
凍空にネオンの蛇のつる~と 篠原鳳作 海の旅
凍空に父焼く煙とどかざる 下村梅子
凍空に竹ま直ぐなるみどりかな 上村占魚 鮎
凍空に触るゝばかりの航荒く 河野南畦 『花と流氷』
凍空に陰なす魄をかき抱くかぼそき月よ妹ぞこほしき 吉野秀雄
凍空の鳴らざる鐘を仰ぎけり 飯田蛇笏 雪峡
凍空へ尾根みち槍のごとくあり 清水青風
凍空へ銀杏並木の槍ぶすま 内田園生
凍空へ顔のべて飛ぶほかはなく 石田郷子
凍空を端から開く朝鏡 桂信子 黄 瀬
口きりや此寒空のかきつばた 高井几董
呼ばれたるごとく冬天打ち仰ぐ 角田すみ
夕晴れて凍空に川外明り 飯田蛇笏 椿花集
失墜の鳥を捜せこの冬天の坂の彼方 寺井谷子
寒空に乾ききつたる鳶の声 稲畑廣太郎
寒空に杵売るを見む買はねども 相生垣瓜人
寒空に枝こまごまと伸びきりし 金丸 希骨
寒空に皮を剥るふぐと哉 必花
寒空に都を逃し物ぐるひ 上島鬼貫
寒空に鳴るニコライの鐘うごけり 千代田葛彦 旅人木
寒空のどこでとしよる旅乞食 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
寒空の昼の眉月田が終る 中拓夫 愛鷹
寒空は輝く雲にありにけり 滝青佳
寒空へ枝強く張る鬼くるみ 菊井稔子
寒空やみなあきらかに松ふぐり 渡辺水巴 白日
寒空や鶴しづ~と汚れつゝ 佐野青陽人 天の川
寒空を穴の開くほど見てをりし 保坂伸秋
屋根に猫鳴いて冬天遠きかな 大野林火
山際の凍空まぶし婆の髪も 金子兜太
岩裂けて冬天にひとを攀じらしむ 石橋辰之助
朝寒空「けふははっきりしませんね」 高澤良一 寒暑 
松ふぐりひとつは蒼き冬天に 河合凱夫 藤の実
核の冬天知る地知る海ぞ知る 高屋窓秋
欺かれ冬天あまり青く寡婦 三谷昭 獣身
汝冬天にありきわが乳房と 九鬼あきゑ
火種にも似て寒空ヘピラカンサ 武井与始子
荼毘の音この凍空へ弟よ 松本草戊
蹴球や冬天に見る時計塔 柴田白葉女 遠い橋
鉄階のつめたさ冬天の蒼さ 柴田白葉女 花寂び 以後
鳶の笛冬天汚れなかりけり 稲荷島人
まよなかの星寒天をあますなし 長谷川素逝 暦日
一平野一寒天の下にあり 高野素十
凍て空にネオンの塔は畫きやまず 篠原鳳作
凍て空にネオンの蛇のつる~と 篠原鳳作
凍て空に声を残して移民発つ 五十嵐播水
夕凍の寒天深む透明度 羽部洞然
寒天に大晴れしたる花柊 飯田蛇笏 椿花集
寒天に棕梠の葉そよぐ見て登る 北原白秋
寒天に船渠の鎖長短あり 細谷源二 鐵
寒天に落葉松の尖針と揃ふ 福田蓼汀 秋風挽歌
寒天の打ち落すべき何もなし 梅沢一栖
寒天の日輪にくさめしかけたり 臼田亞浪 定本亜浪句集
寒天の電柱老ひしと言ふべき乎 草薙朱砂郎
寒天やしやがまる妻の熱き映画 攝津幸彦
寒天や夕まぐれ来る水のいろ 芥川龍之介 我鬼句抄
山光や寒天に聳つ木一本 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪吊の縄棒のごと凍て空に 二唐空々
雲凍てゝ空の動きの止りけり 古賀昭浩
らんぼうに斧振る息子冬の天 細谷源二 砂金帯
サーカス来てわが病む冬の天囃す 小川双々子
冬の天わが耳削がずわれにあり 磯貝碧蹄館 握手
邂逅にポプラ彎りて冬の天 飯田蛇笏 雪峡
魚のごと鳥流るるや冬の天 櫛原希伊子
冬青空歩きたくなる日を歩く  高澤良一  石鏡
冬空を仰いでけふの雲の多寡  高澤良一  石鏡
冬青空噴水勢ひ取り戻す  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:19 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬木

冬木

例句を挙げる。

B棟の患者見下ろす一冬木 高澤良一 さざなみやっこ 
あせるまじ冬木を切れば芯の紅 香西照雄(1917-87)
あるときは冬木の瘤のごと寝まる 福島勲
いしだゝみへ冬木のひくい枝々 中塚一碧樓
いただきの現るるより冬木かな 後藤夜半 翠黛
いたゞきのふつと途切れし冬木かな 松本たかし
いつぽんの冬木に待たれゐると思へ 長谷川櫂(1954-)
かぎりなく冬木倒すや幸探すごと 細谷源二 砂金帯
かくて住みし応挙ぞと知る寺冬木 河東碧梧桐
かたくなに根もと日ざさぬ大冬木 長谷川素逝 暦日
かはせみのひらめけるとき冬木かな 久保田万太郎 草の丈
からだじゅう冬木になって熱くなる 乾鉄片子
くらやみの冬木の桜ただ黒し 三橋敏雄 畳の上
この村の人は猿なり冬木だち 蕪村
こまごまと星をやどせる冬木かな 下村槐太
さかしまに栗鼠のはりつく冬木かな 日原傳
しづけさは冬木の瘤に結集す 山田桂三
すべて冬木子の重みのみとなりゐつつ 細見綾子
そそり立つ一冬木見て職引く身 高澤良一 宿好 
その冬木誰も瞶めては去りぬ 加藤楸邨(1905-93)
たくましくずんと冬木の神経が春を感じている 栗林一石路
たじろぐまいと思えども思えども冬木のとがり 橋本夢道
たらちねのもとの冬木のかく太り 中村汀女
つながれて牛も冬木も海に向く 菖蒲あや 路 地
つなぎやれば馬も冬木のしづけさに 大野林火
つら~と見上げて高き冬木かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
でんでら野白日輪と冬木影 佐野美智
とんがって風切る冬木の芽の容 高澤良一 素抱 
なきがらに逢ひにゆくなる冬木かな 岸本尚毅 舜
はなしごゑ冬木の幹につきあたる 長谷川素逝 暦日
はればれと冬木枝ふる帰省かな 西島麥南
ひつ~と冬木鳴る丘の夕日かな 乙字俳句集 大須賀乙字
ひととこへ寄りて冬木の根を張りし 長谷川かな女 花 季
びつしりと茸を帯びたる冬木かな 岸本尚毅 舜
ぴつかりと冬木の幹に光る脂 京極杞陽 くくたち下巻
みちのくの夕日あまねき冬木かな 五所平之助
みつめ行く冬木は仰ぐべくなりぬ 加倉井秋を 午後の窓
みな冬木母の簪捨てきれず 神尾久美子 桐の木
もちははの墓は無番地冬木の芽 野村青司
ものごころつきし如くに冬木の芽 岬雪夫
もの言はぬ冬木ばかりに囲まるる 朝倉和江
もの音に冬木の幹のかかはらず 長谷川素逝 暦日
ゆかりある冬木また仰ぐ家居かな 富田木歩
よはの冬木くろし空たかく風消ゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
わがこゝろつよし冬木に瘤多く 岸風三楼 往来
わが凭れる冬木ぞ空の真中指す 八木絵馬
わが影の中より枝を出す冬木 篠原梵 雨
わが影を踏む人そこに冬木風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
わが立ちて冬木のいのちわがいのち 深見けん二
わが見ざる三日冬木と立ちかはる 篠田悌二郎 風雪前
われ以外影てふもののみな冬木 加倉井秋を 午後の窓
アカシヤもマロニエも未だ冬木なる 高木晴子 花 季
アドバルン冬木はづれに今日はなき 吉岡禅寺洞
ゲーテ座の昔冬木が風呼んで(横浜山手) 河野南畦 『湖の森』
ゴールたち冬木はおよそ離りたり 棚橋影草
チエンソー唸り冬木の匂ひ来る 高橋笛美
チャーチル死す一つ一つのみな冬木 有働亨 汐路
デモ終へし息深くして冬木の前 原田喬
ハモニカ吹いて少年工は冬木による 栗林一石路
バスが著き冬木の間に人散りぬ 高木晴子 晴居
ピアノ鳴りあなた聖なる冬木と日 西東三鬼
一人遊ぶ童女冬木に傷つけて 猿橋統流子
一冬木仕置のごとく牛繋ぐ 太田土男
一列の冬木残して移るなり 大場白水郎 散木集
一本のあたりに木なき大冬木 高野素十
一本の冬木に扉どうと閉ぢ 川口重美
一本の冬木をこの日見了らず 相生垣瓜人 微茫集
一瀑を負ひて灯せり冬木宿 富野 春
下駄鳴らし過ぐ老獪な冬木のそば 橋石 和栲
世はやすらかならず八方へ冬木の根 近藤一鴻
中年や冬木のあなたボレロの曲 三谷昭 獣身
乳母車冬木ばかりのただなかに 軽部烏頭子
五位鷺憑きてひたすら曇る冬木かな 石原舟月 山鵲
亡き犬を訪ひ来し犬や冬木縫ひ 石田あき子 見舞籠
人と居るごとく冬木と長居せり 本多静江
人に逢ふがいやで廻れる冬木かな 清原枴童 枴童句集
人よりも冬木親しと痛み籠る 福田蓼汀 山火
人下に立てば即ち大冬木 上野泰 佐介
人入りて人の耳澄む冬木山 広瀬直人
人去れば囁きあへる冬木かも 橋本榮治 麦生
今日の号外張られてくれてゐる冬木 シヤツと雑草 栗林一石路
会釈して金壷眼冬木伐 森澄雄
伸びすぎて古墳の冬木切られけり 五十嵐波津子
余世とはいつよりのこと冬木の芽 来住野臥丘
偶然のごと大冬木聳てりけり 澤井我来
傷つける園の冬木の眼にとまり 上村占魚 球磨
働いて薄着たのしや冬木賊 岡本眸
僧もする冬木の中の連小便 河野静雲 閻魔
入日濃くなりまさる棟や冬木風 木歩句集 富田木歩
公園の冬木の瘤の日曜日 木下夕爾
冬日柔か冬木柔か何れぞや 高浜虚子
冬木々となりおほせたるいとしさよ 徳永山冬子
冬木かげさせば貧し釜に入るるもの 冬の土宮林菫哉
冬木かげわが影なべてあるがまま 林翔
冬木から見えてほつほつ灯りそめる シヤツと雑草 栗林一石路
冬木きるや人らこだまに意を注がず 細谷源二 砂金帯
冬木この一回性の森を成し 加藤郁乎 球体感覚
冬木さくらの貝殻虫は眼に痛し 松村蒼石 雁
冬木さヘネオンの色に立ち並び 篠原鳳作 海の旅
冬木することの暦日創りけり 栗生純夫 科野路
冬木だち月骨髄に入夜哉 高井几董
冬木なかしろい校舎が浮いてゐる 河合凱夫 藤の実
冬木にて欅あくまで枝わかつ 篠田悌二郎 風雪前
冬木にもたれ一学徒何を疑へる 富安風生
冬木に手かけ卒論の話など 佐伯哲草
冬木に眼なきやさむざむと我がおとすもの 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
冬木の 木ずれの音 たれもきていない 吉岡禅寺洞
冬木のさくら雨靄に育ひたり 松村蒼石 雁
冬木のベンチけふも人をり逸れしめぬ 原田種茅 径
冬木のベンチ隣にゐるが残かぞふ 原田種茅 径
冬木の中の一本を倒しに来た霜朝 人間を彫る 大橋裸木
冬木の中撞いたる鐘のうごくなり 岡井省二
冬木の手切られ切り口鮮らしき 稲垣きくの 牡 丹
冬木の枝しだいに細し終に無し 正木浩一
冬木の枝に止まりしボールにかかづらふ 細見綾子 黄 炎
冬木の根ふたたび蹴つて心きまる 中島斌男
冬木の根われを怖るるかたちせり 加倉井秋を 午後の窓
冬木の相息ひくごとく翳りけり 永田耕一郎 雪明
冬木の芽かたく閉ざして御輿庫 松田延子
冬木の芽ことば育ててゐるごとし 片山由美子
冬木の芽ジャツクナイフの硬さなり 尾田秀三郎
冬木の芽チャボが卵を落しけり 北見さとる
冬木の芽明日は待たるるためにあり 新明紫明
冬木の芽水にひかりの戻りけり 角川照子
冬木の芽父は家ぬちに咳ける 瀧春一 菜園
冬木の芽篤くと見て其処離れけり 高澤良一 宿好 
冬木の芽跡取りが居て孫がゐて 宮坂秋湖
冬木の芽風の帽子がむずがゆい 川田由美子
冬木ま直ぐおのが落葉の中に立つ 大野岬歩
冬木みな傾ぎ菟は神の座に 木村蕪城 寒泉
冬木みな言葉を溜めて間引絵馬 町田しげき
冬木みるたび裏切りし眸がりかぶ 川島彷徨子 榛の木
冬木よい雨見れば降る シヤツと雑草 栗林一石路
冬木よりさみしき男歩き出す 中村明子
冬木より女が降りて来て泣けり 皆吉司
冬木より枯木に移る夕鴉 長谷川双魚 『ひとつとや』
冬木より静かに息をすること得ず 後藤比奈夫
冬木らはののしる舌を持たざればわれを居らしむこころしづかに 川田順
冬木一つ日当りもろく吹かれけり 中島月笠 月笠句集
冬木一本立てる尾上の日を追へり 臼田亞浪 定本亜浪句集
冬木中一本道を通りけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
冬木中乳房をさぐる如く行く(修善寺) 角川源義 『秋燕』
冬木中小鳥闘ふ日ざしかな 乙字俳句集 大須賀乙字
冬木中日は流れゐてしらけつつ 原田種茅 径
冬木中日輪太く沈みゆく 阿部 夕礁
冬木中相摶つ斧の響かな 川上土司夫
冬木中鳥音慕うて歩きけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
冬木二本憩ふ旅人をはさみけり 野村喜舟 小石川
冬木仰ぐいとまなき君と知るは憂き 富田木歩
冬木伐り倒すを他の樹が囲む 武藤不二彦
冬木伐る木魂あそべり道志峡 石田あき子 見舞籠
冬木伐る親子の音の異なれり 大串章
冬木光る位置に身を置く牛のごと 村越化石 山國抄
冬木坂うで組みわれら労働者 岸風三楼 往来
冬木影しづけき方へ車道わたる 篠原鳳作 海の旅
冬木影ばさと昨日に同じ刻 栗生純夫 科野路
冬木影戞々ふんで學徒来る 篠原鳳作
冬木影解剖の部屋にさしてゐる 篠原鳳作 海の旅
冬木影頬のさみしき女とも 石原八束
冬木暮るゝそがひの空の夢に似し 木歩句集 富田木歩
冬木暮るゝやふとまぼろしに己が影 中島月笠 月笠句集
冬木根に躓きたれば立ち憩ひ 浜井武之助
冬木根のあらはに茶屋の休みをり 五十嵐播水 播水句集
冬木根もあらはに小諸城址なる 浅野右橘
冬木流す人は猿の如くなり 夏目漱石 明治三十二年
冬木照らさる階上の子供部屋に 横山白虹
冬木牡丹ひそかに蕾さだめけり 松村蒼石
冬木積む舟見て閉めし障子哉 西山泊雲
冬木空にまぎらふ月のかかりゐし 富田木歩
冬木空に冷えつめらるるより暮るる シヤツと雑草 栗林一石路
冬木空を刺せども洩るる日はあらず 木下夕爾
冬木空大きくきざむ時計あり 篠原鳳作 海の旅
冬木空時計のかほの白堊あり 篠原鳳作 海の旅
冬木空見をれば青みさしにけり 佐野良太 樫
冬木等にトランペットを聴かせゐる 西村和子 かりそめならず
冬木緻密に枝と枝との交響で 楠本憲吉
冬木縫ひ吾と平行に人歩む 横山白虹
冬木見てをりぬその他は考へずに 加倉井秋を 午後の窓
冬木越し霊山に拠る町点る 宮津昭彦
冬木道すぐに引き返して来たる 行方克巳
冬木風山湖の蒼さ極まりぬ 金尾梅の門 古志の歌
冬木騒うしろより来てまた過ぐる 篠原梵 雨
冬木鳴る子の正直はうとましく 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
冬木鳴る昴(すばる)の星の鳴るばかり 竹下しづの女句文集 昭和十五年
冬木鳴る闇鉄壁も啻(ただ)ならず 竹下しづの女句文集 昭和十五年
凍鶴に冬木の影の来ては去る 富安風生
出逢ひたる太き冬木に木の話 京極杞陽 くくたち上巻
刈り込んでたん瘤だらけこの冬木 高澤良一 素抱 
別れにも振向くはをんな冬木の目 稲垣きくの 牡 丹
前ひ綱絡み冬木となりゐたり 蓬田紀枝子
剣を持つ子が大冬木より出て来 上野泰 春潮
力瘤付けて冬木となりにけり 小島健
北畠一族墓をつらねて冬木かな 廣江八重櫻
半鐘とならんで高き冬木哉 夏目漱石 明治二十九年
南宗の貧しき寺や冬木だち 月渓 五車反古
句つくりははなればなれに冬木の芽 上田五千石 風景
叫ばんとして握る冬木に手がすべる 川口重美
同じビラ貼られし冬木は切なからむ 加倉井秋を
吾よりさきに野川に映りゐし冬木 加倉井秋を 午後の窓
哀しさ負ふ冬木の裏は日を浴びず 成瀬桜桃子 風色
喬き冬木に背骨押しつけてこころよし 内藤吐天 鳴海抄
四五本の冬木を楯の浜館 小原菁々子
国会に子等がいつぱい冬木の芽 有島五浪
地に投げて冬木の影のこまやかに 石塚友二 光塵
坂なりに家並落ちゆく冬木かな 柑子句集 籾山柑子
墓地ありて寺あらぬ村冬木太し 成田千空 地霊
壁鏡冬木が遠く身震ひする 桂信子 花寂び 以後
売家につんと立たる冬木かな 一茶
夕星に冬木が洩らす独り言 永峰久比古
夕焼が 冬木の幹を もやそうとする 吉岡禅寺洞
夕焼に手をあげしごとき冬木ならぶ 篠原梵 雨
夕焼のすべてを許しゐる冬木 加藤燕雨
夜の冬木とほり過ぐれば黒にかへる 篠原梵 雨
夜の冬木風のひびきとなりて立つ 谷野予志
夜祭の隆々として冬木瘤 青柳志解樹
夢に見れば死もなつかしや冬木風 木歩句集 富田木歩
大冬木より放たれて歩きけり 上野泰 春潮
大冬木わが頼るべき仁(ひと)のごと 深川正一郎
大冬木伐りて静かな世なりけり 豊山千蔭
大冬木苦節の日々のありにけり 八幡里洋
大冬木蛇蛇蛇として垣乗り越え 上野泰 佐介
大冬木野性の鸚哥とまらせて 福原千枝子
大冬木鹿の瞳何にうるほふや 松野静子
大冬木黄金の棒の如き時 上野泰 佐介
大学のさびしさ冬木のみならず 加藤秋邨 寒雷
大浅間ひとり日当る山冬木 臼田亞浪 定本亜浪句集
大空に伸び傾ける冬木かな 高浜虚子(1874-1959)
大空の風を裂きゐる冬木あり 篠原鳳作 海の旅
天地夕焼冬木の中の分教場 川村紫陽
太い冬木に身をよるうちつけな影 梅林句屑 喜谷六花
女王の灯冬木に洩らし大使館 石塚 友二
好晴の空をゆすりて冬木かな 篠原鳳作
妻とわれに垣の内外の冬木かな 原石鼎 花影以後
妻われを冬の木と見つ熱き冬木と 橋本榮治 麦生
妻子病む冬木の空の昼花火 細川加賀 『傷痕』
妻急変冬木一列帰路一途 松崎鉄之介
子供来て冬木の枝にぶらさがる 橋本鶏二 年輪
孤独なり冬木にひしととりまかれ 木下夕爾
孫六の墓へ冬木の桜かな 金子青銅
家守る妻高き冬木に鳥祝ぐよ 磯貝碧蹄館 握手
宿坊も大本山も冬木中 赤堀五百里
寂寞がやたらに冬木にぶつかりたし 河野南畦 『黒い夏』
寄生木の影もはつきり冬木影 篠原鳳作 海の旅
寒禽を捕るや冬木の雲仄か 飯田蛇笏 山廬集
寝覚うき身を旅猿の冬木かな 上島鬼貫
少年や冬木に頬を寄せて哭き 樋笠文
山しづかなり悉く冬木なり 有働亨 汐路
山にきてつかみし冬木生々し 川島彷徨子 榛の木
山日濃く幹の匂へる大冬木 澤原たけお
年礼や畑どなり冬木松五郎 龍岡晋
幸せの胸騒ぎとて冬木鳴る 上田日差子
幻燈や冬木のごとく兔死す 対馬康子 吾亦紅
影を出す力の無くて冬木かな 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
彳めば我も冬木と異らず 福田蓼汀
後円墳あらは冬木の桜かな 青柳志解樹
御幸路の秀衡桜大冬木 広瀬河太郎
御狩場の天に犇めく冬木の芽 加藤 一郎
怒り込み上げて冬木に力瘤 柴田奈美
怖ろしき冬木の黙や穴居あと 町田しげき
恙寝は旅寝のごとし冬木見え 鷲谷七菜子 天鼓
我が倚れる冬木しづかに他に対す 岩木躑躅
我が庭や冬日健康冬木健康 高浜虚子
我一歩冬木も一歩しりぞきし 田中暖流
或僧のたちいづるより冬木かな 阿波野青畝
戸をしむる音あらあらし冬木宿 高橋淡路女
戸を閉ざすときのみ眺む冬木あり 佐野美智
手毬唄柿の冬木をひとめぐり 瀧春一 菜園
招ばれゆく冬木一本立てる家ヘ 村越化石
挫折感朝は失せゐて冬木の芽 中村明子
挽く人の冬木の幹にかくれけり 阿部みどり女
旅に出たしかがやく雲を負ふ冬木 有働亨 汐路
日の沈むまで一本の冬木なり 橋間石
日当れる冬木の瘤に手が届き 行方克巳
日曜の人出うすれゆき冬木あすも晴れる シヤツと雑草 栗林一石路
早川や崖の冬木の真ッ下に 滝井孝作 浮寝鳥
明日伐る木ものをいはざるみな冬木 細谷源二 砂金帯
昏れて無し冬木の影も吾が影も 三橋鷹女
星が贅刺さんと冬木磨きをり 宮坂静生
昴(すばる)は神の鈴なり冬木触りて鳴る 竹下しづの女句文集 昭和十五年
昼火事の煙遠くへ冬木つらなる 尾崎放哉
時鳥の枝ふみわたる冬木かな 雑草 長谷川零餘子
晩年といふさびしさか冬木の芽 斎藤節
暮れがての八十肩や冬木打つ 玉木春夫
暮れそめて冬木影ある障子かな 木歩句集 富田木歩
月の堂鳩禰宜を怖るる冬木影 原石鼎
月ふとりゆきて冬木の散りゆく 高木晴子
月光の中に捉へし冬木の芽 中村苑子
月光の暗き枝ある冬木かな 榎本冬一郎 眼光
月光の歓喜冬木の根へおよぶ 花谷和子
月冬木いつまで臼をひく家ぞ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
月明の冬木ら爬虫類に似る 河合凱夫 飛礫
東京の何に堪へゐる冬木かな 山田みづえ 手甲
枝をさしのべてゐる冬木 種田山頭火 草木塔
枝先に冬木の力みなぎれり 北村量子
枝打ちて墓域しばらく冬木の香 関戸靖子
枝鳴りを空にのこして冬木倒る 川島彷徨子 榛の木
枯れゆけばおのれ光りぬ冬木みな 加藤楸邨
枯葉しかと小枝にあるや日の冬木 高濱年尾 年尾句集
栴檀の冬木に凭れつぶやきぬ 加倉井秋を 午後の窓
根もとよりおのがしじまの大冬木 長谷川素逝 暦日
根方なる萩山吹も冬木かな 尾崎迷堂 孤輪
森抜けてゆく一本の冬木より 稲畑汀子 汀子第三句集
楼破れ冬木影おくほどもなき 桂樟蹊子
武蔵野のどこまでつゞく冬木かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
歳月の獄忘れめや冬木の瘤 秋元不死男
残照や歩まねば吾も一冬木 岡本眸
母とゐて和讃うたふや夜半の冬 木歩句集 富田木歩
母のみとりに仏燈忘る宵の冬 木歩句集 富田木歩
気なく帽子のせて冬木の枝です シヤツと雑草 栗林一石路
水上や雄々しく太き冬木の芽 前田普羅 飛騨紬
池澄みて冬木の影をそのままに 水上 龍
汽車過ぎていよいよ暮色一冬木 森澄雄
沈思より起てば冬木の怖ろしき 石井露月
没りし日のいろをとどめて冬木の幹 川島彷徨子 榛の木
沼つぶほどをひかりて冬木の芽 清水衣子
沼尻の冬木に灯す水車かな 比叡 野村泊月
浄蓮の瀧とて冬木うちふるふ 水原秋櫻子
浦風に冬木の楯や屋島寺 伊沢健存
浪・冬木ひかりて白く描かれし 宮津昭彦
海見えて山桜いま一冬木 大串章 朝の舟
渋柿の取り残されし冬木かな 伊丹-鷺助 選集古今句集
渓流を越ゆかんかんと冬木伐 中拓夫 愛鷹
渚まで冬木の影や晴れにけり 尾崎迷堂 孤輪
渾身の力は真紅冬木の芽 折井眞琴
湖の影絵めくられ冬木山 和知喜八 同齢
湿原の冬木に実あり真くれなゐ 殿村莵絲子 雨 月
潟冬木魚さげて浜人ならず 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
潦に映らず立てる冬木かな 京極杞陽 くくたち下巻
灌木をわたる冬木の一人称 加藤郁乎
火を焚きて眼を燃やしゐる冬木樵 大野林火
焼あとに残る石階と大冬木 八牧美喜子
焼けあとの壁と冬木とのみの村 長谷川素逝 砲車
煙出づ冬木空なる煙出 中村汀女
照らさるゝ冬木や畦や月西に 五十崎古郷句集
照りいづるものを待つなり冬木また 有働亨 汐路
爪先のくらさ遠景冬木燃ゆ 柴田白葉女 花寂び 以後
父のごと仰ぐ母校の大冬木 山下美典
父見るは遠き冬木を見るごとし 渡邊千枝子
猫下りて次第にくらくなる冬木 佐藤鬼房
獄塀に冬木の影の余すなし 角川春樹
田の中に冬木があれば住居あり 阿部みどり女
画を蔵す大厦窓なく冬木影 福田蓼汀 秋風挽歌
病むことも治る証拠や冬木の芽 京谷圭仙
登窯延ぶるに鴉ゐる冬木 茂里正治
登記所より町の冬木の大方見ゆ 宮津昭彦
白雲と冬木と終にかゝはらず 高浜虚子
皮下出血かひな冬木の色なせり 西本一都 景色
目白籠吊せばしなふ冬木かな 室生犀星 魚眠洞發句集
盲ひては辿る幾夜の冬木山 金箱戈止夫
省くだけ省きし寂に一冬木 百瀬美津
眼がわるくなり犬の毛の冬木山 和知喜八 同齢
眼帯やひかりつらなる夕冬木 近藤一鴻
石濤を遠き冬木の隠すなし 相生垣瓜人 微茫集
砂町は冬木だになし死に得んや 石田波郷
碧空に冬木しはぶくこともせず 篠原鳳作 海の旅
磨り込みし墨を一筆冬木にする 望月たけし
神の井やあかねにけぶる冬木の芽 角川源義 『神々の宴』
空にくひ込んで冬木といふ力 金田志津枝
空へ冬木のなんといふ枝のすなほさだ シヤツと雑草 栗林一石路
空仰ぐ冬木のごときギプスの身 野澤節子 黄 炎
窓越しの冬木の月が頭を晒す 太田鴻村 穂国
箸つかふ冬木伐つたる明るさに 飴山實 少長集
美しと思ひてよりの冬木道 波多野爽波 鋪道の花
老人の気に入つてゐる冬木かな 岡井省二
老松の冬木といふやたもとほる 齋藤玄 飛雪
耕二なきあとの冬木へ遠目癖 橋本榮治 麦生
肩に手を置くごと何時も倚る冬木 林翔 和紙
胸赤な鳥りちとめし冬木かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
自祝てふしづかな刻の冬木の芽 能村登四郎 寒九
船倉に著きて明けたる冬木かな 比叡 野村泊月
艶すこしありて冬木の桜かな 青柳志解樹
花の色はからび果てたる冬木かな 上島鬼貫
若き粟鼠棲ましめ森の老いたる冬木 内藤吐天 鳴海抄
若水や冬木が丘に鐘の声 青々
菫咲き松も冬木の相なし 篠田悌二郎 風雪前
菰を着し冬木や人を欺かず 青木重行
落日を戻す冬木あらざり雲もなし 細谷源二 砂金帯
葉を数枚のこし冬木になりきれず 藤岡筑邨
葬りの冬木の沙羅となりて立つ 岸田稚魚 筍流し
葬場の冬木それ~影もち佇つ 小林康治 四季貧窮
葬送にゆりかごの唄冬木の芽 大木あまり 火のいろに
蕭々と星を呼びゐる冬木かな 野村喜舟 小石川
藤も冬木樹齢しづかにひろがりて 古舘曹人 能登の蛙
蚕まつりや冬木の裂く夜の花火 角川源義 『西行の日』
蜂の窖に泥塗りつめて冬木かな 比叡 野村泊月
街ともる冬木は芯を暗めけり 町野けい子
街は夕日とつづいてゐる冬木 シヤツと雑草 栗林一石路
裁ち割らばいま充実の冬木の芽 木村敏男
裸婦像の見据ゑる先の冬木の芽 伊東よし子
西空焼け人影冬木ともに黒し 三谷昭 獣身
見てゐたる冬木の影の濃くなりぬ 加倉井秋を 午後の窓
見てをりし冬木鴉の巣となりぬ 岩田昌寿 地の塩
見下して滝つぼふかき冬木かな 飯田蛇笏 山廬集
観音の冬木は星を鏤めし 深川正一郎
話声雀にとどく夕冬木 太田鴻村 穂国
谿ふかく水音の冬木の霜 シヤツと雑草 栗林一石路
豆剣士柳生へ通ふ冬木道 渡辺龍子
身籠りて冬木ことごとく眩し 中嶋秀子
轢死おそろし冬木にみごとなる没日 大井雅人 龍岡村
逢ふ人のかくれ待ちゐし冬木かな 野見山朱鳥
遠景もまた歴々と冬木かな 徳永山冬子
遠近法果つる冬木やヴェルサイユ 坂井建
邂逅や冬木となりし町辻に 岸風三楼 往来
郊外に酒屋の蔵や冬木だち 黒柳召波 春泥句集
郵便局葉書きらしし冬木かな 龍岡晋
都鳥を染めし暖簾や冬木茶屋 雑草 長谷川零餘子
野宮の冬木ごもりに羽摶つもの 木村蕪城
金婚にたどりつきたる冬木の芽 穐好頂磨子
金銭の網目冬木の枝繁に 三谷昭 獣身
釜寺へ近みちとある冬木かな 龍岡晋
鉄を打ちつづけて冬木昏れしむる 加倉井秋を 午後の窓
銭苔のうすきみどりの冬木なる 篠原梵 雨
長考の一手冬木の影に指す 船越淑子
門灯の早く点きたる冬木かな 永井龍男
闊歩して去りし人恋ふ夜半の冬 木歩句集 富田木歩
阿武隈の蘆荻に瀕す冬木かな 飯田蛇笏 山廬集
陸奥ふじの光りにあひて大冬木 阿部みどり女
隠亡の子が鴉飼ふ冬木かな 西島麥南 金剛纂
隠水は澄みわたりけり冬木中 永井龍男
雀まだも鳴きをる冬木月出たり 金尾梅の門 古志の歌
雨降るや冬木の中の翌檜 石塚友二 光塵
雲重し冬木は高く相擁す 金箱戈止夫
電柱と冬木のみなりあゆみゆく 山口波津女 良人
青天は流るゝごとし冬木原 近藤楓渓
青年に愛なき冬木日曇る 佐藤鬼房(1919-2002)
青空に枝さしかはしみな冬木 古賀まり子 緑の野
鞄あけ物探がす人冬木中 高浜虚子
顧みす冬木に浅きなごりかな 富田木歩
風受けて冬木も独り言増やす 家里泰寛
風邪の床一本の冬木目を去らず 加藤秋邨 寒雷
風鶴院波郷居士今大冬木 中里 結
餅提げて冬木の寺を出でにけり 雑草 長谷川零餘子
馬とめて提灯ともす冬木かな 尾崎迷堂 孤輪
馬の瞳に蒼空映る冬木風 太田鴻村 穂国
駅遠き渡し廃れて冬木かな 雉子郎句集 石島雉子郎
高炉の火消えてたしかに冬木の芽 山田桂三
鳥よぎる冬木はあれどとまらずに 大野林火
鳴る冬木悪名うしろより蹤きくる 河合凱夫 飛礫
鴎外の文体で立つ冬木かな 中嶋秀子
鶯を目白を飼うて冬木宿 青木重行
麻布絶口釜無谷の冬木かな 龍岡晋
黒々と冬木そのものありにけり 京極杞陽 くくたち上巻
一冬木仰ぐ心もささくれて  高澤良一  宿好
瘤隆と立寄り易き一冬木  高澤良一  宿好

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

あきらめもつかず逢ひ得ず炭をつぐ 稲垣きくの 黄 瀬
あけがたを炭うつくしといふひとと 佐々木六戈 百韻反故 初學
いそしめる正月髪の選炭婦 石橋梅園
いぶり炭いぶらせてをくほかなきか 斎藤空華 空華句集
いぶり炭三和土に出して憎みけり 山口波津女 良人
いぶり炭蓬莱の霞かもしけり 高田蝶衣
うつむきて涙を見せず炭をつぐ 大場白水郎 散木集
かきならす灰にかけらの炭つきず 篠原梵 雨
かへる母ひきとゞめつゝ炭をつぐ 財家呼帆
かみこきて寄ればいろり(囲炉裡)のはしり炭 内藤丈草
かんかんと炭割る顔の緊りをり 石田波郷
かんかんと炭熾りをり魚簗の晴 辻桃子
くらがりに二つの炭の燃ゆるかな 岸本尚毅 舜
くらしぶりにも偲ばるる桜炭 稲畑汀子
くわん~と炭のおこりし夜明哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
けふの分炭つぎ了る机かな 石川桂郎 含羞
この山の炭この山の猪を煮る 中島月笠
こぼれ炭石蕗さく土に濡れにけり 石原舟月 山鵲
ごみ箱のわきに炭切る餘寒かな 室生犀星
さび鮎やぶちまけて炉に炭足せり 石川桂郎 高蘆
しぐるるや炭が火となるさみしき香 三橋 迪子
したたかに炭こぼしけり雪の上 銀獅 五車反古
それそれと招ばるゝ美濃の桜炭 高澤良一 ぱらりとせ 
たかし亡し梅雨の炭挽く静けさに 小林康治 玄霜
たまさかの家居炭など挽きもして 横田直子
たッぴつに雲水炭をつぎくるゝ 久保田万太郎 流寓抄
ちとの間は我宿めかすおこり炭 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
つぎつぎて通夜の火鉢の炭乏し 上村占魚 球磨
つぎ去りし炭うつくしく火うつくしく 後藤夜半
つげばなをくだけながらや熾し炭 広瀬惟然
つややかに炭となりたる木目かな 岸本尚毅 舜
なが性の炭うつくしくならべつぐ 長谷川素逝 暦日
なべ炭の燃ゆる霜夜や生姜酒 水田正秀
はかり炭買うてゆききにまぎれけり 森川暁水 黴
はかり炭買うて寄合世帯かな 森川暁水 黴
はかり炭買ひゐて夕餉おくれけり 森川暁水 黴
はかり炭買ひゐるところ見られけり 森川暁水 黴
ぱち~と椿咲けり炭けぶり 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
まじ~と炭つぐ手元見られつゝ 高橋淡路女 梶の葉
まらう人に炭挽すがた見られ鳧 高井几董
めつむりて奈落一瞬炭匂ふ 石橋秀野
もてなしの獣炭でありにけり 佐々木六戈 百韻反故 初學
ゆるゆると熾りて美濃の桜炭 高澤良一 ぱらりとせ
よき炭のよき灰になるあはれさよ 高浜虚子
よそ事と思へぬ話炭をつぐ 間浦葭郎
クリスマスツリーにふれて炭運ぶ 菖蒲あや 路 地
ダム尻を船で渡しぬ三依炭 西本一都 景色
トロイメライ余りに炭の母が強く 平井さち子 完流
ベランダを亜炭がよごし日短か 原田青児
一々に意地悪く炭つぎ直す 鈴木花蓑句集
一日の炭撫減らす火桶かな 横井也有 蘿葉集
一番炭朝の佛間に匂ふなり 熊田鹿石
三伏や七輪と炭調へて 中村雅樹
三十を諾ひ素手に炭掴む 佐野美智
三声ほど炭買はんかといふ声す 高浜虚子
三峰へ寄進の炭を子にも負はせ 有本銘仙
三日はや峡のこだまは炭曳くこゑ 加藤楸邨
丹念に炭つぐ妻の老いにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
乾鮭を挽ば木のはし炭の折 高井几董
二人して坐せば二人に走り炭 岩崎素水
二夜三夜風刺す炭を惜みなく燃せ 杉山岳陽 晩婚
二階より見られて父と炭をひく 菖蒲あや 路 地
亜炭かす捨てる庭先梅ふふむ 原田青児
人の葬に炭殻踏んで最短距離 菖蒲あや 路 地
人日の客をもてなす炭の色 山田弘子 こぶし坂
今日の余白に真赤な炭と碁盤の斑 平井さち子 完流
佳きことのありて跳炭愉しくて 岩崎 すゞ
侘しさよ藁灰の中に燻る炭 寺田寅彦
冬はいつ火宅出でけん車炭 正友 選集「板東太郎」
冬寒く舟より炭を我あげし 松瀬青々
冬鵯のこゑのつばらに炭点前 中村祐子
冴返る朝やうばめの炭のおと 幸田露伴 礫川集
出家して間なしと炭をつぎくるゝ 森田峠 避暑散歩
分てやる隣もあれなおこり炭 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
切口に丹波のにほふ桜炭 羽田岳水
切口に日あたる炭や切り落とす 石鼎
切炭に火種やさしく添へてやる 元田千重
切炭の火は花のごと奥吉野 澤井我来
切炭や下戸なき里の朝枕 調和 選集「板東太郎」
切炭や師匠の言はれしを雪の垣 言求 選集「板東太郎」
切炭や雪より出づる朝烏 言水 選集「板東太郎」
切炭や青葉のゆかり冬なき里 才丸 選集「板東太郎」
切炭や風の関もる机火の床 調古 選集「板東太郎」
刎ね炭の上に怒りを移しけり 永田青嵐
初午へ昼餉やすみの選炭婦 安部伏荷
初釜の炉に太き炭一文字 佐野美智
初釜の炭を洗ひし日和かな 飯田 法子
初釜の用意の炭を洗ひ置く 三宅節子
初雪の富士に炭つぐ老大父 長谷川かな女 雨 月
別れ霜昨日こぼした炭の粉に 綾子
割炭や柚が名残の鉄火箸 若風 選集「板東太郎」
厄年のはじまる炭の香なりけり 細川加賀 『傷痕』
古草や炭切る息の平らけく 斎藤玄 玄
合掌をほどいて炭をつぎにけり 大橋櫻坡子 雨月
吊橋に犬来て軈て炭負女 岡安迷子
君が居に久しの炭をつぎにけり 八木林之介 青霞集
和服着て炭を切りゐる三日かな 黒川白舟
咳しつつ炭つぎゐしもしんとしぬ 篠原梵
喪の家の炭で炭割る音澄みて 高木勝代
坂で逢ふ炭を配達する父と 菖蒲あや
坑千尺炭層つづく縞また縞 三谷昭 獣身
堅炭の尉の厚さよ更けにけむ 石塚友二 光塵
堅炭をもて堅炭を割りにけり 野田別天楼
夕風の海へ炭屑はたきけり 金尾梅の門 古志の歌
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
夢に見る亡父未だ炭をかつぎをり 菖蒲あや 路 地
夥かに炭こぼしけり雪の上 銀獅
大ぶりや修行者埋む炭がしら 井原西鶴
大嶺や裾曲の道を炭車 山口誓子
天暗し炭塊寒く地に光り 三谷昭 獣身
夫へ来る嫌ひな一人炭つぎに 丸橋静子
失職や梅雨の炭つぐ掴み来て 小林康治 玄霜
奥山やめでたきものに飾炭 原石鼎 花影以後
妹叱つて独り者めくいぶり炭 渡辺水巴 白日
妻にのみ月日つもるや炭頭 齋藤玄 飛雪
妻哭かせ崩れきつたる炭の尉 小林康治 四季貧窮
子規鳴雪の若き写真に炭をつぐ 長谷川かな女 雨 月
学間のさびしさに堪へ炭をつぐ 山口誓子 凍港
安炭のはしたなき音して熾る 風生
家ぢゆうをかなしませ炭いぶるなり 山口波津女 良人
家守りて炭つぐ隙も胸暗し 石塚友二 光塵
密林にこぼるゝ炭も霜を着け 前田普羅 飛騨紬
寒弾きや寸を揃へし炭の形 永井龍男
寒波にただよひはてて炭の欠け 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
寒牡丹炭ひく音をはばからず 橋本多佳子
寺大破炭割る音も聞えけり 河東碧梧桐
尉もまた見て貰ふもの桜炭 広瀬ひろし
小説も下手炭をつぐことも下手 久保田万太郎 流寓抄
小野ゝ炭匂ふ火桶のあなめ哉 蕪村 冬之部 ■ 老女の火をふき居る畫に
小野炭や手習ふ人の灰ぜせり 松尾芭蕉
屑炭を継げば枯野の匂ひけり 中村楽天句集 中村楽天
山すでにたび~雪や炭を負ふ 水野六江
巫女白し炭をつかみし手をそゝぐ 前田普羅 飛騨紬
帷子や袖に野風呂の走り炭 会津八一
平和論掻く粉炭の底息づく 桜井博道 海上
年あたらし炭の火となる音にゐて 西垣脩
年けはし炭欲る心打ち捨てたり 竹下しづの女句文集 昭和十四年
年終る星美しや炭かつぎ 菖蒲あや 路 地
底冷えの炭の匂ひを吸ひにけり 中田剛 珠樹以後
弟子某甲炭を挽き居る姿かな 尾崎迷堂 孤輪
御正忌の百の火鉢の炭をつぐ 瀬川美代
御簾の間に備長炭の熾りゐて 山口超心鬼
心幽に折々炭をつぎにけり 大須賀乙宇
怒の炭燃してはすぐ炭惜しむ 杉山岳陽 晩婚
思ひ出は美しかなし炭をつぐ 原田青児
思ふこと日に~遠し炭をつぐ 高浜年尾
急峻にかかり炭橇ふと技見す 加藤知世子 花寂び
悼文霞 白炭の骨にひらくや後夜の鐘 蕪村遺稿 冬
惜みなく炭つがれあり京の宿 乾一枝
慰めの言葉もなくて炭をつぐ 山本 嘉代子
我事にわが嘆きある燻炭 石塚友二 光塵
戸口より落花ひとひら炭点前 佐野美智
手紙読むや子がつぎし炭起り来し 碧雲居句集 大谷碧雲居
打水の土凹ませて炭運ぶ 右城暮石 声と声
撥炭や小芥子おばこは子の胸に 齋藤玄 飛雪
日のさして炭のかけらが泥まみれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
明日のため大年の夜を炭かく音 栗生純夫 科野路
星の飛ぶたぐひなるべし走り炭 古白遺稿 藤野古白
星凍つ下煉炭とれぬ幾家族 古沢太穂 古沢太穂句集
暗がりの炭踐みわりし板間かな 会津八一
更くる夜や炭もて炭をくだく音 蓼太
更る夜の炭に鼠の匂ひかな 安介
朝晴にぱちぱち炭のきげん哉 小林一茶
朝炭を切り菊をいぢつてをつた一日 梅林句屑 喜谷六花
木々の青空炭出しの日もひとり 友岡子郷 遠方
木曾のなあ木曾の炭馬並び糞る 金子兜太
木賊枯るゝ雨に炭馬着きにけり 金尾梅の門 古志の歌
杉山の水に視られて炭を負ふ 六角文夫
松炭のくらがりに耐え白くなる 穴井太 土語
松過ぎの後山に淀む炭煙り 飯田蛇笏 椿花集
核心に触れぬ話や炭をつぐ 安部悌子
桜炭ほのと師弟に通ふもの 竹中弘明
桜炭ほのぼのとあり夕霧忌 後藤夜半 翠黛
桜炭切つて銀座の裏に住む 杜藻
桜炭明治の言葉うつくしき 古賀まり子 緑の野
桜炭昔の匂ひして熾り 細川子生
梅が香や湯立のあとの炭の切 内藤丈草
梅雨しげく炭車は長くのろく長く 横山白虹
極月や鶴来の宿に炭継いで 黒田杏子 花下草上
櫻炭ほのぼのとあり夕霧忌 後藤夜半
歌いまくる炭子の唄に銀漢伸ぶ 金子兜太
歓談一時夫にゆだねて炭出しに 平井さち子 完流
正月がすぎゆく固き炭を挽く 百合山羽公 故園
母憶ふ炭の火色のやはらかし 千代田葛彦 旅人木
水底の草炭十尋水澄めり 中戸川朝人 尋声
沙弥の頃炭つがされし炭をつぐ 山口笙堂
泣きたくなる父に代りて炭かつぎ 菖蒲あや 路 地
泣きはじめありて女に炭がなし 萩原麦草 麦嵐
海没炭黒き貝秘め薄冬日 中戸川朝人 残心
渓石を渡り馴れたり炭荷馬 内藤吐天
温泉の宿の炭ストーヴの可愛らし 高濱年尾 年尾句集
潮満ちぬ炭挽いてゐし顔暮れぬ 藤田湘子 途上
澄むといひ濁るといふも炭の音 中瀬喜陽
濤音へあけて炭つぐ置炬燵 石田波郷
濤高き夜の煉炭の七つの焔 橋本多佳子
火に群れて炭のごとしよ冬の海女 友岡子郷 風日
火吹竹吹けばぱちぱち炭起る 高月 ポプラ
火桶炭團を喰事夜ごとごとに一ツ宛 蕪村遺稿 冬
火鉢だき炭はゆたかにただ遠き 捷平
火鉢各々に炭つぎ足して更けにけり 青峰集 島田青峰
灰ならす手のつと伸びて炭をつぐ 河野美奇
灰染めて色に出けり櫻炭 石塚友二
炉に炭を組むなり文字を書くごとく 伊藤敬子
炉の辺に出稼ぎ話走り炭 今泉貞鳳
炉開きの炭寄り添ふに風の音 櫛原希伊子
炉開きや炭も桜の帰り花 正岡子規
炉開や炭の香守る人の顔 霞夫
炎天へ炭車影ごと突つ放す 小川雅英
炭あけを我も稚き日はしたり 松瀬青々
炭あたりなれと祈れり師の伏すを 石川桂郎 含羞
炭いよゝ乏しくも壺の菊しづか 渡邊水巴 富士
炭かく音りんとひびくはただ一音 栗生純夫 科野路
炭かつぎ堪へねばならぬことばかり 菖蒲あや 路 地
炭かつぐ力出すとき声を出し 菖蒲あや 路 地
炭かつぐ背をジングルベルはやす 菖蒲あや 路 地
炭がいる立ち話を窓の雨催ひ 原田種茅 径
炭が火となりゆく匂ひきりぎりす 渡辺純枝
炭くだく手の淋しさよかぼそさよ 一茶
炭くだく槌のよごれて置かれあり 高濱年尾 年尾句集
炭ついでかそけき音のたちそめし つや女
炭ついでさらりとふざけゆきにけり 星野立子
炭ついでしぐれに居りぬ吉野山 石井露月
炭ついでしづかに吾にもどりけり 芦川源
炭ついでしまへど言葉みつからず 牧野美津穂
炭ついで一つの悔に触れにけり 中島斌雄
炭ついで去る小婢の後を見し 青峰集 島田青峰
炭ついで火照りの顔を旅にをり 森澄雄
炭ついで父のわれのみ通夜ひとり 上村占魚 球磨
炭ついで青梅見ゆる寒さかな 室生犀星 魚眠洞發句集
炭つかむ荒炭の世にあるかぎり 百合山羽公 寒雁
炭つがせ夫が話のあるらしく 大橋こと枝
炭つがれ急いで帰る用もなく 隈柿三
炭つぎしにほひ臥処をつつみ来し 篠原梵 雨
炭つぎつ昼はそのまま夜となんぬ 信子
炭つぎてさらりとふざけゆきにけり 星野立子
炭つぎて釜の松風もどりけり 手塚基子
炭つぐいく度かして鄙びた師を見つ 梅林句屑 喜谷六花
炭つぐにさうこまごまと云ふはいや 稲畑汀子 汀子句集
炭つぐにつけても性や荒々し 高濱年尾 年尾句集
炭つぐやわが家の芯の古火桶 百合山羽公 寒雁
炭つぐや世帯くるしき座りざま 増田龍雨 龍雨句集
炭つぐや人の慈言に泣くこゝろ 西島麥南 金剛纂
炭つぐや寝静まりたる吉田町 五十嵐播水 播水句集
炭つぐや浪花のやどり宵浅く 道芝 久保田万太郎
炭つぐや静かなる夜も世は移る 播水
炭つぐや頬笑まれよむ子の手紙 杉田久女
炭つぐ事の下手な男で不平を持つてる 人間を彫る 大橋裸木
炭つげばべこの玩具が首を振る 大久保白村
炭つげばまことひととせながれゐし 長谷川素逝 暦日
炭で炭を叩けば炭は吟ずらく 無法
炭とりに出て風花の夜も舞へり 風生
炭にくる鼠にわらふ夫婦かな 森川暁水 黴
炭にくる鼠の立つてあるきけり 森川暁水 黴
炭に火の移る音高き夜半かな 月嶺句集 松田月嶺、名和三幹竹編、大須賀乙字選
炭に酔ひし子は雪深き星みつけ 阿部みどり女
炭のにほひす故人爐の端へ来る 中塚一碧樓
炭の塵きらきら上がる炭を挽く 川崎展宏
炭の火に並ぶきんか(金柑頭)のひかりかな 北枝 俳諧撰集「有磯海」
炭の火に峯の松風通ひけり 一茶
炭の炎の美しく立つ旅愁かな 長谷川双魚 風形
炭の熨日のあたたかくさしにけり 石川桂郎 四温
炭の粉の大根に散りし厨かな 内田百間
炭の荷や早瀬へまでを人の背に 尾崎迷堂 孤輪
炭の輪の隈とる縞は美しきかな 室生犀星 犀星発句集
炭の香のして草笛を吹く寺よ 田中裕明 櫻姫譚
炭の香のたつばかりなりひとり居る 草城
炭の香のなみださそふや二の替 道芝 久保田万太郎
炭の香のはげしかりけり夕霧忌 日野草城
炭の香のほのかにものをこそおもへ 倉田素商
炭の香の雪をさそふや夕霧忌 小林羅衣
炭の香や僞筆の虎の寝ぼけ面 会津八一
炭の香や奥に聞ゆる咳払へ 会津八一
炭の香や嬌やぎそむる吾子の指 日野草城
炭の香や温めてゐたる出雲弁 石塚友二 光塵
炭の香や絵巻ひろげて主客こごむ 松本たかし
炭の香や花葩餅の紅ほのと 木村 ふく
炭の馬伊香保の町につゞきけり 増田龍雨 龍雨句集
炭はぜしのちの夫婦の何を待つ 山口波津女
炭はぜし音に動ぜぬ点前かな 井桁敏子
炭はぜてうつつにかへる夜の畳 福島小蕾
炭はぜて葱に飛びたり夜新し 綾子
炭はぜるともしのもとの膝衣 鈴木しづ子
炭はぬる山での事を申さうか 寺田寅彦
炭はぬる音さへ除夜のごとくにて 清原枴童 枴童句集
炭はねて又静かなる塗火桶 伊丹丈蘭
炭はねて眉根を打ちぬ鮟鱇鍋 中田余瓶
炭は火になり急ぎつつひたすらに 細見綾子
炭は火に人は眉あげゐたるかな 加藤楸邨
炭は火に火は灰に時は荏苒と 林翔 和紙
炭ひいて稍まぎれたる愁かな 松本たかし
炭ひくを幽禽来る椿あり 高田蝶衣
炭よけれ手掴みなるが尚よけれ 宇多喜代子 象
炭をおこすかくも手荒く萩を祈り 殿村莵絲子 花 季
炭をつぎかけて用事にかまけつゝ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
炭をつぐことにも姿ありにけり 山田弘子 こぶし坂以後
炭をつぐとは稿をつぐ如くにも 成瀬正俊
炭をつぐ仕種の有りて話しよし 高岡うさ
炭をひき俎を噛む鼠かな 森川暁水 黴
炭をひくうしろしづかの思かな 松本たかし
炭をひく下部ゆがまぬ心かな 召波
炭をひく後しづかの思かな 松本たかし
炭をひく誰にもかへり見られずに 菖蒲あや
炭をもて炭割る音やひゞくなり 高浜虚子
炭をもて炭打つ闇を測るとて 高橋睦郎 稽古
炭を出す嗅ぎよる犬に声をかけ 稲垣きくの 黄 瀬
炭を出す間に月のさし霰降り 大橋櫻坡子 雨月
炭を切る手元暮れゆく落葉かな 村山たか女
炭を割るわれに小さき森の月 阿部みどり女
炭を割る乾ける音の冬日和 田村木国
炭を割る内庭の空を鳥とほる 孝作
炭を割る音夕凍みのむらさきに 大野林火
炭を挽く地より逃れ得ぬ父よ 菖蒲あや 路 地
炭を挽く妻に夕陽の微塵立つ 桂樟蹊子
炭を挽く手袋の手して母よ 河東碧梧桐
炭を挽く鋸として朽ちのこる 百合山羽公 故園
炭を挽く静な音にありにけり 高浜虚子
炭ッ子と呼びて備長炭愛す 後藤比奈夫 めんない千鳥
炭一箇炎に包まるるとき忘と 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
炭借りて描くお岩木山の雁渡し 鳥居美智子
炭出してゐる音す母か妻か 田村了咲
炭出すやさし入る日すぢ汚しつゝ 芝不器男
炭出すや寒うち焚かぬ湯殿より 阿部みどり女 笹鳴
炭出すや猫の泣きゐるまくらがり 蓼汀
炭切つて貰ふ一劃雪を掻く 殿村莵絲子 遠い橋
炭切りし跡幾日もかゞやけり 殿村莵絲子 遠い橋
炭切りの帰りし木戸のはためける 殿村莵絲子 遠い橋
炭切りの跡は掃かれて冬の雨 永井龍男
炭切るも茶事の一端花ゑんじゆ 神尾久美子 桐の木
炭切るや柊ありて寒き庭 内藤吐天
炭切るや焚火の灰を且つ被り 阿部みどり女 笹鳴
炭切る母貨車にひかりを奪はれつゝ 磯貝碧蹄館 握手
炭割って一碧楼忌家居せむ 藤田 尚
炭割つてきてきらきらと目うつくし 楸邨
炭割つて一碧楼忌家居せむ 藤田尚
炭割るや片足萎へが裾引きて 小林康治
炭割れば雪の江のどこに鳴く千鳥 前田普羅
炭匂ふ雨夜は母とゐるおもひ 近藤一鴻
炭吹いて埋もれ火さがす源内侍 筑紫磐井 野干
炭吹きてしばらく何も肯んぜず 中村汀女
炭国の丹波はさむし遅桜 大谷句佛 我は我
炭塵によごれしまゝの御慶かな 森山 抱石
炭子の子父の辺にゐて日向跳ぶ 森 澄雄
炭少し是や今宵の馳走ぶり 広瀬惟然
炭屑にいやしからざる木のは哉 榎本其角
炭屑に小野の枯菊にほひけり 几董
炭屑もこぼさぬ朝の氷かな 清水基吉 寒蕭々
炭山にげんのしようこの花のみち 高濱年尾 年尾句集
炭山は尾根を重ねて月遅し 高濱年尾 年尾句集
炭手前済みつり釜はしづまりぬ 及川 貞
炭挽きし汚れ夫には近づけず 山口波津女 良人
炭挽くや訪ふ声を聞きもとめ 小杉余子 余子句選
炭挽くを長く見てゐて悲しくなる 橋本美代子
炭掴み主婦のよろこびここにもあり 山口波津女 良人
炭掴む手袋にして妻のもの 竹原梢梧
炭撰り女二人対きあひ草萌ゆる 石川桂郎 高蘆
炭橇に犬が吠えをり人が曳き 加藤楸邨
炭熾りすぎたる手炉に手を置かず 辻本斐山
炭熾る余属音の寂しさは 井戸昌子
炭熾る音にほのかに未来追ふ 川口重美
炭燃えてひとなつかしき霜夜かな 太田鴻村 穂国
炭燃して六月寒き海に耐ふ 長谷川かな女 雨 月
炭燃やしつゝ吾が行方さだまらず 杉山岳陽 晩婚
炭燠る不思議をしばし叔母の家 藤田あけ烏 赤松
炭田に赤馬彳てり冬没日 三谷昭 獣身
炭盗むたんぽぽ色の冷害野 古館曹人
炭積みし舟ゆるやかに瀞下る 橋本鶏二 年輪
炭積んで落ち来る木曾の筏かな 柑子句集 籾山柑子
炭箱に顔さし入れてくさめかな 富田木歩
炭継ぎて胸の奥処にしまふこと 江頭 信子
炭肩にいやしからさる木のは哉 其角
炭背負ひ仰ぐといふこと父になし 菖蒲あや 路 地
炭舟や筑波おろしを天窓から 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
炭色の夜空の下の雪の山 高木晴子
炭薪貧の帖尻底抜けに 石塚友二 光塵
炭負うて両の手の杖はこびくる 岡安迷子
炭負のきらりと横目ゆきちがふ 森澄雄 花眼
炭負のよく見れば目を瞠りゐる 加藤楸邨
炭負の地を掴まねば立ちあがれず 増田達治
炭負ひて亡母かとも見え父来ます 木附沢麦青
炭負へり力いつぱいに生きてをり 千代田葛彦 旅人木
炭負女小走りに日が谿くだる 佐野操
炭負女胸圧されては梅ひらく 萩原麦草 麦嵐
炭負女追ひぬいて水奔りけり 大串章
炭負女通り教師の窓暮るる 木村蕪城 寒泉
炭負女降り来し嶮とおもはれず 伊藤水城
炭買うて女は泣きぬこぼれ日に 萩原麦草 麦嵐
炭買ひにいづれも寒き女づれ 萩原麦草 麦嵐
炭賣に日のくれかゝる師走哉 蕪村遺稿 冬
炭賣の娘のあつき手に触りけり 飯田蛇笏
炭車うち重なりてたふれたる 尾崎真理子
炭車かたよせあるや梅が下 西山泊雲 泊雲句集
炭車去り日没つる方に汽笛寒し 三谷昭 獣身
炭車押す重たくなりし汗の腕 戸澤寒子房
炭運び込むとき見えし飾雛 菖蒲あや 路 地
炭馬とならぶもしばし狩づかれ 米沢吾亦紅 童顔
炭馬にあひし頃より道嶮し 山下豊水
炭馬にしばし挟まれゆく山路 田村了咲
炭馬のおほきな顔へ雨のつぶ 栗生純夫 科野路
炭馬のくびきの軋み紛る街 成田千空 地霊
炭馬のとがれる貌を真近にす 伊藤通明
炭馬のとどまりて大いならんとす 栗生純夫 科野路
炭馬の下り来径あり蜜柑山 篠原鳳作
炭馬の手綱墓を縛れり何の咎ぞ 栗生純夫 科野路
炭馬の町に降り来て大き雷 長谷川かな女 花寂び
炭馬の荷に挿して来ぬ納札 米澤吾亦紅
炭馬の鞍馬に著くはいつも午 山岸舎利峯
炭馬や来し方はただ山重畳 栗生純夫 科野路
炭馬を崖におしつけとほしくれ 森沢蒼郎
炭馬過ぐ林間を勁き電話線 中拓夫 愛鷹
点炭をわすれけり冬の置所 露言 選集「板東太郎」

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by 575fudemakase | 2014-12-11 00:16 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

着ぶくれ

着ぶくれ

例句を挙げる。

おどろきて銀婚夫婦着膨れぬ 細川加賀 生身魂
かじめ切る背へ着膨れ子どつと泣く 柏禎
かまきりの巣と云ふを見る着膨れて 高澤良一 ももすずめ 
たなご釣着膨れて畦踏みはづす 田島 秩父
なりふりもかまはずなりて着膨れて 高浜虚子
にこにこと断り上手着膨れて 川村紫陽
人待つごと人厭ふごと着膨れぬ 石田波郷
体ごと振り向く男着膨れて 小泉八重子
共同湯木戸開け着膨れ婆ぬっと 高澤良一 燕音 
患者皆着膨れ病院狭くする 高澤良一 随笑 
朝市の女早くも着膨れて 河本好恵
物拾ふとき着膨れてをりにけり 山田弘子 懐
着膨れし体内深く胃痛む 松本たかし
着膨れたやうな俳句の道具立 高澤良一 素抱 
着膨れてじっと一日家の中 高澤良一 宿好 
着膨れてただおろおろと老いてゆく 田中湖葉
着膨れてなんだかめんどりの気分 正木ゆう子(1952-)
着膨れてゐてはごたつく句ばかり出来 高澤良一 ぱらりとせ 
着膨れてポストが遠くなりにけり 細川加賀 『玉虫』
着膨れて体重計に近寄らず 水原秋櫻子
着膨れて児に唱合はす三十路はや 木附沢麦青
着膨れて入れたり出したり旅支度 増田豊子
着膨れて唯唯診察待つばかり 高澤良一 宿好 
着膨れて山王さんに頼み事 高澤良一 燕音 
着膨れて後部座席を占めにけり 高澤良一 ももすずめ 
着膨れて心臓外科に繋がれぬ 高澤良一 ぱらりとせ 
着膨れて敬老の日の俄寒 水原秋櫻子
着膨れて書店の中が祭めく 岩淵喜代子 硝子の仲間
着膨れて月を見るにも耳澄ます 正木ゆう子 静かな水
着膨れて柔剛二心闘はす 川村紫陽
着膨れて母読む三代烈女伝 川村紫陽
着膨れて海豹の貌してゐたる 長谷川櫂 虚空
着膨れて矢面に立たされてゐる 角光雄
着膨れて籤運恃むこともなし 石塚友二
着膨れて解説雪村贔屓かな 高澤良一 鳩信 
着膨れて財布まさぐる一患者 高澤良一 宿好 
着膨れて遅参の弁をこもごもと 高澤良一 ももすずめ 
着膨れて重荷となりぬ山河かな 小野藤花
着膨れて金貯めて欲つきざるや 相馬遷子 雪嶺
着膨れのもたもた脱いで診察室 高澤良一 宿好 
着膨れの過ぎし上着を手にだらり 高澤良一 さざなみやっこ 
着膨れ聞くこむら返りの直し方 高澤良一 宿好 
福神のわれもひとりや着膨れて 吉田鴻司
胸変と見られたくなく着膨れぬ 阿波野青畝
足弱り来しははそはの着膨れよ 小林英子
路傍仏人も着膨れ来る日向 村越化石 山國抄
おささらの白衣の下は着ぶくれて 岸野千鶴子
おすわりの出来かけし子の着ぶくれて 稲畑汀子
お被せする姥も着ぶくれおしらさま 佐野美智
つかまり立つ子となりてはや着ぶくれぬ 大熊輝一 土の香
ぼろ着て着ぶくれておめでたい顔で 山頭火
われを最も軽視する妻も着ぶくれぬ 猿橋統流子
をなごらもどてら着ぶくれさみだるゝ 日野草城
エプロンの紐のよじれて着ぶくれし 高橋うめ子
ラッシュアワー着ぶくれ姿を置き去りに 小俣由とり
世を呪ふ麻疹の顔や着ぶくれて 堀口星眠 営巣期
世事疎く棲む着ぶくれの老教授 小原菁々子
二尺蟹糶るに応へて着ぶくれて 石川桂郎 高蘆
人の世の荷をそれぞれに着ぶくれて 河邊式江
今をすぐ忘るる母や着ぶくれて 山田みづえ 手甲
他人に帰せし薄き血縁着ぶくれ街 平井さち子 完流
仮の世や賽の河原に着ぶくれて 長谷川せつ子
光負ふ雲の如くに着ぶくれて 奈良碧
勲章を宝に夫の着ぶくれて 添野光子
古雛は着ぶくれたまふ佳かりけり 水原秋櫻子
基地をたたかうモンペ着ぶくれ日本の母 赤城さかえ句集
女坂をんな同士と着ぶくれて 松村多美
女老ゆ春著を着ても着ぶくれて 菖蒲あや 路 地
妻の座の揺ぎ無きかな着ぶくれて 水原 春郎
定位置に着ぶくれ宝くじを売る 三木夏雄
山国の媼ひとりも着ぶくれず 茨木和生 倭
幸福に初雀より着ぶくれて 富安風生
心まで着ぶくれをるが厭はるる 相生垣瓜人(1898-1985)
文化財中住みて見られて着ぶくれ子 鍵和田[ゆう]子 未来図
文机の前こそ墓穴着ぶくれて 赤松[ケイ]子
旅の身の着ぶくれ參ず聖夜ミサ 小原菁々子
日筋踏んでくる着ぶくれのたまご売 中山純子 沙羅
村人も祢宜も着ぶくれ神祀る 小野 久仁子
桑も瘤着ぶくれて皆夜祭へ 荒井正隆
槇売りの着ぶくれて頸失へる ながさく清江
海を見に魂までも着ぶくれて 小泉八重子
港よりヘッドライト着ぶくれてをり 折井紀衣
父が来て母が来て由美子着ぶくれさす 阿部完市 無帽
父の忌へ着ぶくれし身の重さかな 猿橋統流子
父は鰊場ただ着ぶくれて遊びをり 能村登四郎
父母もてばふるさとに着ぶくれてゐる冬 シヤツと雑草 栗林一石路
生きざまの着ぶくれてゐる影法師 赤尾冨美子
百貨店めぐる着ぶくれ一家族 草間時彦
着ぶくれしわが生涯に到り著く 後藤夜半
着ぶくれし子に発掘のもの並ぶ 浜崎素粒子
着ぶくれし影ぞ裸木の影へ触れぬ 香西照雄 対話
着ぶくれし無口いよいよ寄り難き 山野邊としを
着ぶくれし身をつらぬいて足二本 今瀬剛一
着ぶくれてあり雪国に誰よりも 茂里正治
着ぶくれてある日は神の眼を盗み 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
着ぶくれてあれば刻にも追ひこされ 井沢正江 以後
着ぶくれていやしからざるおとな瞽女 西本一都
着ぶくれてかたまつて棺舁きゆけり 藤井 亘
着ぶくれてきりまんじゃろにあこがるる 松澤昭
着ぶくれてくらき大河を見てゐたり 伊藤いと子
着ぶくれてそこなる夫をかへりみず 赤松[ケイ]子
着ぶくれてそのおのおのの机かな 斎藤夏風
着ぶくれてどこへも行けぬ万治佛 北見さとる
着ぶくれてなほ着ぶくれて人の恩 中山純子 沙 羅以後
着ぶくれてなんだかめんどりの気分 正木ゆう子
着ぶくれてふくら雀の如き子よ 田中冬二 俳句拾遺
着ぶくれてまぶしむものに白燈台 中山純子 沙 羅以後
着ぶくれてみちのく乙女細面 八牧美喜子
着ぶくれてよその子どもにぶつかりぬ 黒田杏子 一木一草
着ぶくれてわが潮騒を葬りぬ 櫂未知子 蒙古斑以後
着ぶくれてゐて愛などと真赤な嘘 伊藤トキノ
着ぶくれてゐて祝はるる勿体なや 村越化石
着ぶくれてゐて著こなしの粋な人 高橋幸子
着ぶくれてをりて母恋ふことばかり 塩川雄三
着ぶくれてプールヘ通ふ日曜日 柏原ひろお
着ぶくれてペンギン歩きして吾子は 轡田進
着ぶくれて丹後の織娘礼深き 石原八束
着ぶくれて亡母の貫禄わが継がむ 石田あき子 見舞籠
着ぶくれて人に無視され人無視し 久米清
着ぶくれて人の墓にも詣でたる 細見綾子
着ぶくれて人の流れにさからへり 太田 昌子
着ぶくれて人の涙を見てをりぬ 大木あまり 火球
着ぶくれて人間国宝とは見えず 宮本由太加
着ぶくれて仏の貌の石拝む 岡本まち子
着ぶくれて俄に刻のゆるびけり 金久美智子
着ぶくれて俳句に狎れしをとこども 小島千架子
着ぶくれて出て見渡して茶の木畑 加倉井秋を 午後の窓
着ぶくれて列車に辞儀をいたしけり 岩田由美 夏安
着ぶくれて千代女の国を徒歩く 須永かず子
着ぶくれて受く警策の鈍き音 尼崎たか
着ぶくれて合唱団の中にゐる 大石雄鬼
着ぶくれて否応なしの外階段 加藤正尚
着ぶくれて吾も伽藍のエンタシス 津田清子
着ぶくれて善人なれど茹玉子 吉田素糸
着ぶくれて喉に小骨の刺さりけり 原光 栄
着ぶくれて噂話を躱し得ず 間宮あや子
着ぶくれて女系家族の主たり 中野 貴美子
着ぶくれて子が可愛いといふ病 中村草田男
着ぶくれて客観といふよりどころ 正木浩一
着ぶくれて寄れば机の拒みもす 皆吉爽雨
着ぶくれて富麻の寺へ詣でけり 山本洋子
着ぶくれて己れなぐさめゐたりけり 澤村昭代
着ぶくれて市の采配ふるつてる 明石洋子
着ぶくれて建国の日を肯ぜず 轡田進
着ぶくれて引揚船を待つばかり 松山足羽
着ぶくれて忘るることに逆らはず 斎藤 道子
着ぶくれて怖ろしきものなくなりぬ 原田喬
着ぶくれて恐るるもののなかりけり 多賀谷榮一
着ぶくれて悪の愉しさ謀りをり 村上古郷
着ぶくれて我が一生も見えにけり 五十嵐播水
着ぶくれて手足縮まる牡丹の芽 殿村莵絲子 花寂び 以後
着ぶくれて抱けとばかりに諸手あげ 西村和子 夏帽子
着ぶくれて捨て上手にはなれませぬ 鈴木華女
着ぶくれて探鳥レンズにとらえらる 甚上澤美
着ぶくれて教師気質の抜け切れず 下山宏子
着ぶくれて明日信じていると言えり 寺井谷子
着ぶくれて更に旅券は胸の奥 大島民郎
着ぶくれて朝の村人楔形文字 児玉悦子
着ぶくれて来し松島の保育園 皆吉司
着ぶくれて来ても札所のよく冷ゆる 稲畑汀子
着ぶくれて果実酒澄むを守りゐたり 文挟夫佐恵 雨 月
着ぶくれて汽車の切符が後生大事 遠藤梧逸
着ぶくれて泉岳寺より老いひとり 大串章 百鳥
着ぶくれて津軽の人になりすまし 高木晴子 晴子句集
着ぶくれて浜町育ちは笑止かな 井桁衣子
着ぶくれて浮世の義理に出かけけり 富安風生(1885-1979)
着ぶくれて海山ともに平らなり 栗林千津
着ぶくれて炉辺はなやがす埴輪子よ 小林康治 玄霜
着ぶくれて當麻の寺へ詣でけり 山本洋子
着ぶくれて疑ひぶかくなりしかな 片山由美子 水精
着ぶくれて目白去りたるあとに座す 大石雄鬼
着ぶくれて砂丘に並び日の出待つ 都筑智子
着ぶくれて祈りの人に遠くをり 片山由美子 風待月
着ぶくれて神楽太鼓を敲きけり 佐川広治
着ぶくれて笑ふは泣くに似たるかな 井上土筆
着ぶくれて繭の匂ひの織子たち 作田比沙志
着ぶくれて老いしと思ふ若しとも 西島麦南
着ぶくれて老の命を惜しむなり 富安風生
着ぶくれて聞き上手を通しけり 田村やゑ
着ぶくれて膝にこぼして粉薬 桑嶋竹子
着ぶくれて自分の足につまづけり 矢崎康子
着ぶくれて船頭潮にさからはず 木村里風子
着ぶくれて良識の目に戻りけり 仙田洋子 橋のあなたに
着ぶくれて薬用植物並べ売る 高橋恭子
着ぶくれて藪青々と通りすぐ 村山古郷
着ぶくれて裸祭を遠巻きに 木田畦花
着ぶくれて西国せつに恋しけれ 中尾寿美子
着ぶくれて見かへる時の富士かしぐ 皆吉爽雨
着ぶくれて見る難民の写真展 仲島 四郎
着ぶくれて診察待ちていたりけり 吉屋信子
着ぶくれて試験監督つつがなく 磯 直道
着ぶくれて誰が眼にもただ僧の妻 赤松[ケイ]子
着ぶくれて逢ひたき人をやりすごす 行廣すみ女
着ぶくれて遅刻教師の踊る足 福永耕二
着ぶくれて釘打つやすぐ曲りけり 石井寿男
着ぶくれて鏡の中の月日かな 鈴木栄子
着ぶくれて長老などと言はれをる(北条館別館にて塔の会総会) 細川加賀 『玉虫』
着ぶくれて震災砂漠歩きけり 本橋 節
着ぶくれて青竹踏みを怠らず 長崎小夜子
着ぶくれて馬耳東風の顔となる 佐藤信子
着ぶくれて魚拓のやうな影は誰 櫂未知子 蒙古斑
着ぶくれて鳩に驚く男かな 岸本尚毅 舜
着ぶくれのおろかなる影曳くを恥づ 久保田万太郎 流寓抄
着ぶくれの女車掌や春浅き 青峰集 島田青峰
着ぶくれの妻に呼ばれて星数ふ 杉本寛
着ぶくれの子ら押合ひて立読す 岩崎照子
着ぶくれの手足短く両手に荷 嶋田麻紀
着ぶくれの楸邨先生とエレベーター 川崎展宏
着ぶくれの欠伸まあるく女の子 嶋田麻紀
着ぶくれの満身打ちし産声よ 細川加賀
着ぶくれの片眼鰈につむりけり 伊藤左知
着ぶくれの猪首もをかしかりけるが 久保田万太郎 流寓抄
着ぶくれの胸おし拡げ診察日 鹿倉はるか
着ぶくれの腕をくみ目を閉ぢしはや 久保田万太郎 流寓抄
着ぶくれの起居見かねて沙弥の助 梅山香子
着ぶくれの足のはたらくゐざり機 片山由美子 水精
着ぶくれの髭の奏者も服務員 石寒太 翔
着ぶくれや風の如くに二タ葬 村越化石 山國抄
着ぶくれ幼き従弟が切る秣飛ぶ 田川飛旅子 花文字
砂取節唄ふ翁の着ぶくれて 坂 北濤
砂浴ぶ鶏と同じ日向に着ぶくれて 野沢節子
絶盤のダミアを探す着ぶくれて 大西やすし
置きものの如く着ぶくれ福寿草 遠藤梧逸
腹われぬ教師となりて着ぶくれて 宮坂静生 青胡桃
表情なき民族壁報に着ぶくれて 小倉緑村
貫禄てふ着ぶくれのありにけり 堀 政尋
鰺売の婆着ぶくれて値を引かず 椎橋清翠
着膨るゝ人を見上ぐる鯉の目見(まみ)  高澤良一  宿好
着膨れて身につくものは唯ものぐさ  高澤良一  石鏡
着膨れ妻よろと手貸せば「だいじょうぶ」  高澤良一  石鏡
着膨れて福神漬を零しけり  高澤良一  石鏡
著ぶくれてこの一着に終止せり  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:16 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

重ね着

重ね着

例句を挙げる。

けふの日の重ね着縞をさやけくす 栗生純夫 科野路
こしかたや重ね着る皆綿入れて 長谷川かな女 花寂び
ちちはは経て半纏となるを重ね着ぬ 茂里正治
ぬぎすてし重着またもひろひ着ぬ 原石鼎
バルザック霧のガウンを重ね着て 樋笠文
上州の老の重ね著はじまりぬ 布施春石
不機嫌な重ね着の妻何刻む 猿橋統流子
土地びとにはづかしきほど重ね着て 中戸川朝人 尋声
夕さりの重ね着づかれし給うな 池田澄子 たましいの話
奪衣婆やなんぢ重ね着おしやれ婆 加藤知世子 花寂び
少しづつ違ふ白色重ね着て 須川洋子
弾初めに重ね着の児の重からん 井上日石
母となる日の近き重ね着へ襷 加倉井秋を
窯火守る夜の重ね着を薪の上 在木美和子
著替へる気なくなりしまゝ重ね著て 稲畑汀子
重ね着てなまけの虫を助長さす 後藤春翠
重ね着て北国へ発つ香袋 川島千枝
重ね着て吾も阿*吽の間にあり 角川照子
重ね着て夢にやすやす現れぬ 大石悦子 百花
重ね着て子等孫等待つワルソーヘ 高木晴子
重ね着て思ひ浮かばぬ字の一つ 廣江八重櫻
重ね着て恋の句すこし修飾す 鈴木栄子
重ね着て手もとの狂ふ粉薬 阿部美恵子
重ね着て日当れば来る人なりし 長谷川かな女 雨 月
重ね着て母といふやはらかきもの 伊丹さち子
重ね着て誰もさやけき身をもてり 北原志満子
重ね着て醜老の胆斗のごとし 川端茅舎
重ね着て長逗留の始まりし 日隈 翠香
重ね着に寒さもしらぬ姿かな 鬼貫
重ね着に胸ふくれたる乳母の香よ 久米正雄 返り花
重ね着の中に女のはだかあり 日野草城(1901-56)
重ね着の反りくり返るおしやらさま 田川飛旅子
重ね着の師のうつくしき過去未来 勝又一透
重ね着の浴衣よれよれに秋燈のもと 原田種茅 径
重ね着の爪先にまで及びけり 蓬田紀枝子
重ね着の老僧斎につきにけり 河野閑子
重ね着や妻に視らるゝぼんのくぼ 早川緑野
重ね着や栄枯盛衰みな遠く 日野草城
重ね着をせり波郷忌が近附きぬ 草間時彦 櫻山
重ね着を一枚脱いで逢ひに行く 北見さとる
重ね著に寒さも知らぬ姿哉 鬼貫 (遊興の地に行ける時)
重ね著のための肩凝りかもしれず 藤木和子
重ね著の中に女のはだかあり 日野草城
重ね著の師のうつくしき過去未来 勝又一透
重著や土間やはらかき藍染屋 古舘曹人 樹下石上
重著や神楽のはてにあさぼらけ 古舘曹人 樹下石上
よんどころなく世にありて厚着せり 能村登四郎 菊塵
コアラ見るコアラ色なる厚着の子 高澤良一 さざなみやっこ 
マッチの炎の白色男ら厚着して 桜井博道 海上
他人から見れば他人の厚着かな 池田澄子 たましいの話
他所者の厚着もこもこ共同湯 高澤良一 燕音 
伎芸天拝し厚着の身を嘆く 坂間晴子
倦(たゆ)むとき厚着の麗子壁にいる 澁谷道
厚着して俳句はこの眼この脚で 高澤良一 鳩信 
厚着して八方破れもよしとおもふ 大石悦子 群萌
厚着して燈台守の湿布薬 加藤憲曠
厚着して舟を寄せ合ふ海鼠突 斉藤夏風
厚着の母薄着の児車中にて眠る 右城暮石 声と声
厚着よりもこと手を出し仏撫づ 高澤良一 ももすずめ 
嗤ふべき厚着の夫子梅咲けり 徳永山冬子
夜神楽の室の八嶋へ厚着せり 舘野たみを
山の胡桃抱へて厚着五十なる 村越化石 山國抄
弛むとき厚着の麗子壁にいる 澁谷道
強く吹く日なりその分厚着せり 高澤良一 ぱらりとせ 
心電図厚着を脱いで楽にして 高澤良一 随笑 
月の浦厚着童女のうなづくのみ 佐藤鬼房
水上を横ぎる杣の厚着かな 前田普羅 飛騨紬
父の写真子の愛遠きゆゑ厚着 香西照雄 素心
父の忌や厚着の中に手をかばひ 村越化石 山國抄
白鳥に日本のレダは厚着して 近藤山澗子
酒きらきら句ごころよしの厚着せる 河野南畦 『広場』
馬跳や厚着を知らぬ路地の子ら 古賀まり子 緑の野以後
厚着もそもそ腕まくりして注射かな  高澤良一  石鏡
思考力鈍る厚着はせんでおこ  高澤良一  暮津
湯屋板間厚着剥がすにてこずれり  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:14 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

水鳥

水鳥

例句を挙げる。

いくつかは貼絵の遠さ浮寝鳥 狩行
いざこざのなき隔たりに浮寝鳥 高澤良一 ぱらりとせ 
いちめんの重油のかなた浮寝鳥 森田峠 避暑散歩
いつまでも動かぬ水鳥に我慢せり 石川桂郎 四温
いつもこの杙飯櫃かゝり浮寝鳥 清原枴童 枴童句集
かすかにも芝掃く音や浮寐鳥 渡邊水巴 富士
かたまつてゐて水鳥の隙間かな 綾部仁喜
かの鳥も水鳥にしてかなしかり 染谷卓
くちぶえにかかはらぬ水鳥白し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
ここらより川の名変る浮寝鳥 中井啓子
こころ病めば浮寝鳥さへうつろ眸に 稲垣きくの 黄 瀬
こち向く浮く鳥やゝにこち向き浮寝鳥 原石鼎
この旅の思ひ出旅の浮寝鳥 星野立子
こゝまでは河の銚子や浮寐鳥 久米正雄 返り花
さしのぞく木の間月夜や浮寝鳥 松本たかし
さめてまた一と聲浮寝鳥のこゑ 田中裕明 花間一壺
さゞ波のいたづらめきぬ浮寝鳥 森田峠 避暑散歩
しばらくは塔影に入る浮寝鳥 桂信子 遠い橋
しんかんと山に径ある浮寝鳥 神尾久美子 桐の木
そこここに家建ち水鳥見つつさびし 椎橋清翠
たましひも洗ひ立てなり水鳥は 宮坂静生
つぎはぎの水を台に浮寝鳥 斎藤玄
ふる雪に巴をつくる浮寝鳥 内藤吐天 鳴海抄
ほそめゆき瞳の消えしかば浮寝鳥 西本一都 景色
まるき目を時に光らせ浮寝鳥 深見けん二
みな風に向きて静かや浮寝鳥 高橋 卯木
めぐる日も仄かに揺れて浮寝鳥 橋本榮治 麦生
れいろうとして水鳥はつるむ 種田山頭火 草木塔
わが死後もかく散らばるや浮寝鳥 鈴木貞雄
ミサの鐘ひびき水鳥驚かず 山本歩禅
一切を水にまかせて浮寝鳥 岡澤康司
一日の終はり水鳥はなやかに 浦川 聡子
三日月のみどりしたたる浮寝鳥 野見山朱鳥
不忍の水鳥を見る礼者かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
世の中の裏側に浮寝鳥が浮く 加倉井秋を 午後の窓
乳母と児の遊ぶかてとも浮寝鳥 原コウ子
佇つ人に故里遠し浮寝鳥 風生
体操時間皆駆けて水鳥の晝 容(内田易川句集) 内田易川
億劫の刻過ぎにけり浮寝鳥 鈴木貞雄
先頭の水鳥威儀を正しけり 内田雪泉
先頭の水鳥澪を長うして 佐々木六戈 百韻反故 初學
八ヶ岳越えて来て水鳥となりにけり 大槻一郎
円光を着て漂ひの浮寝鳥 赤井淳子
冬籠る部屋や盥の浮寐鳥 子規句集 虚子・碧梧桐選
初老とは四十のをんな浮寝鳥 黒田杏子 木の椅子
喪ごもりの目に水鳥の白が過ぐ(妹百合子逝く) 岸田稚魚 『花盗人』
囀りてたつ水鳥の水を成し 加藤郁乎 球体感覚
園閉ざし水鳥空に浮かべたり 宮津昭彦
夜をこめて水鳥捕ると云ふをきけば 尾崎迷堂 孤輪
夜学子の灯が水鳥のあたりまで 本宮哲郎
大琵琶の八十の浦なる浮寝鳥 鈴鹿野風呂
天上の言葉ついばみ水鳥来る 高橋謙次郎
太陽や水鳥のため我のため 高田風人子
寝に就くは水鳥の巣を忘れけり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
対岸の日向好みて浮寝鳥 長屋せい子
山かげや水鳥もなき淵の色 石鼎
山中の氷らぬ池や浮寐鳥 石動炎天
山影を日暮とおもひ浮寝鳥 鷹羽狩行
山火事に漕ぐ舟もなし浮寝鳥 安斎櫻[カイ]子
岩あればしたがひ巡り浮寝鳥 原 コウ子
崖落葉吹いて水鳥のまばらなり 内藤吐天
川上に水鳥のゐる羽流れ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
川中へ吹き寄せられて浮寝鳥 中尾吸江
川波の影胸にあり浮寝鳥 深川淑枝
川涸れて水鳥さむきあしたかな 大江丸
巡査通る土手の日に水鳥の濠低し 高濱年尾 年尾句集
強東風に掃かるる水鳥の白 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
御幸拝む人散りつくし浮寝鳥 岡本松浜 白菊
御社や庭火に遠き浮寐鳥 正岡子規
心寒う来て水鳥に啼かれけり 内藤吐天 鳴海抄
想あたためてゐるやも知れず浮寝鳥 西嶋あさ子
愛人を水鳥にして帰るかな あざ蓉子
手紙置いて愁の眼水鳥に 比叡 野村泊月
推敲すいくども浮寝鳥の句を 田中裕明 櫻姫譚
撃たれたる夢に愕く浮寝鳥 高橋悦男
放心や眼前の水に浮寝鳥 内藤吐天 鳴海抄
旅に病む浮寝鳥にも似し寝覚め 稲垣きくの 牡 丹
日当りて鳥羽の水鳥真珠粒 高澤良一 燕音 
日当りぬ水鳥そこへ浮み出でぬ 大橋櫻坡子 雨月
昔々ではじまる川の浮寝鳥 櫛原希伊子
晒舟と水鳥と日々吹かれけり 白水郎句集 大場白水郎
晩節の躬に敵もなし浮寝鳥 伊東宏晃
月の出を待てないわたし浮寝鳥 児玉悦子
月の影水鳥水をわすれけり 林原耒井 蜩
月代や水の影引く樋の水 鳥居おさむ
朝見れば吹きよせられて浮寝鳥 正岡子規
松の雪落ちて水鳥揺れかはし 比叡 野村泊月
林間の瀬に吹きよりて浮寝鳥 飯田蛇笏 春蘭
橋に立つ人に水鳥来りけり 高橋淡路女 梶の葉
橋渡る人より多し浮寝鳥 尾崎迷堂 孤輪
母娘住み窓の外には浮寐鳥 伊藤柏翠
水は息つめて水鳥をねむらする 瀧 春一
水よりもふかく昏れをり浮寝鳥 猪俣千代子 堆 朱
水尾ひいて離るゝ一つ浮寝鳥 高野素十
水広し星もろともに浮寝鳥 松村蒼石 雪
水涸れて出る杭長し浮寝鳥 塩谷華園
水皺や風そと通り浮寝鳥 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水舐めて届く夕日に浮寝鳥 深見けん二
水鉢の水鳥なれや白丁花 一有
水際まで尺の積雪浮寝鳥 古賀まり子
水靄のあそびごころの浮寝鳥 猪俣千代子 秘 色
水鳥おのが身の白さ寒むざむと鳴くかな 人間を彫る 大橋裸木
水鳥が水の糞して年明ける 大石雄鬼
水鳥つと水に入り夕潮に乗りゆけり 人間を彫る 大橋裸木
水鳥となるまで猫の一本道 鳥居美智子
水鳥と云はるる時のいつか過ぎ 高澤良一 寒暑 
水鳥と今日の淡さや障子越し 中島月笠 月笠句集
水鳥と同じうねりの丸太かな 蒼[きう]
水鳥と柱にもたれゐる人と 島田刀根夫
水鳥と除夜の鼾や樗陰 麦水 (一株の樗をたのみかた計の庵を結ひ)
水鳥にしばらく火事の明りかな 増田龍雨 龍雨句集
水鳥に人とどまれば夕日あり 汀女
水鳥に兵営の相たゞならじ 竹下しづの女句文集 昭和十二年
水鳥に凍てはとほらず逆雪嶺 原裕 青垣
水鳥に唐輪の児の餌蒔哉 召波
水鳥に土堤は電車の行き返り 青峰集 島田青峰
水鳥に夜舟着くぞと起さるゝ 雑草 長谷川零餘子
水鳥に来て波裏を反しけり 平井照敏 天上大風
水鳥に水の一年明けにけり 高澤良一 燕音 
水鳥に水尾したがひて静なり 実花
水鳥に溶けゐる母子天白し 阿部みどり女
水鳥に瞑る昼のありにけり 宇多喜代子
水鳥に空が近づく薄暮光 渡辺恭子
水鳥に胸おしつけて舟下ろす 阿部みどり女 笹鳴
水鳥に船にぎはへる港かな 高橋淡路女 梶の葉
水鳥に落日のあり巣にもどる 伊東 伸堂
水鳥に葦の葉舟も見えぬかな 野村喜舟 小石川
水鳥に西吹く風となりにけり 水原秋桜子
水鳥のあさきゆめみし声こぼす 青柳志解樹
水鳥のおもたく見えて浮きにけり 鬼貫
水鳥のかしら並べし朝日哉 布舟
水鳥のかたまりかぬる時雨かな 良長 古句を観る(柴田宵曲)
水鳥のこゑ空にあり貝割菜 毛呂刀太郎
水鳥のしづかに己が身を流す 白葉女
水鳥のすべて入日に真向へり 塚原麦生
水鳥のたちぬ提灯萱に照る 清原枴童 枴童句集
水鳥のてらし出されぬ夕焼波 吉武月二郎句集
水鳥のとほくそこだけ日向かな 西山 誠
水鳥のどちへも行ず暮にけり 一茶
水鳥のばさばさと立つ夜網かな 河東碧梧桐
水鳥のほかに流るゝものはなし 廣江八重櫻
水鳥のむかし淵瀬や麦畠 野村喜舟 小石川
水鳥のゐて土手をゆく心なり 臼田亞浪 定本亜浪句集
水鳥の下りゆく石の沈みをり 星野立子
水鳥の世へ水鳥のすつと入る 中嶋秀子
水鳥の中にうきけり天女堂 正岡子規
水鳥の争ひ摶ちし羽音かな 松本たかし
水鳥の二つの列の行きちがひ 比叡 野村泊月
水鳥の二羽寐て一羽遊びをり 基吉
水鳥の何かさがしに離れゆく 如月真菜
水鳥の何に驚くぞけたゝまし 寺田寅彦
水鳥の何やらあさる蘆の中 寺田寅彦
水鳥の余せる水の広さかな 蓬田紀枝子
水鳥の口しやくりつつ水こぼす 青畝
水鳥の嘴に付たる梅白し 野水
水鳥の嘴のためらいベルが鳴る 本田ひとみ
水鳥の地に上がる時慌し 青峰集 島田青峰
水鳥の声に行かばや櫟原 渡辺水巴 白日
水鳥の夕日に染まるとき鳴けり 林原耒井 蜩
水鳥の夜の瞳さだかが見てゐたり 依田明倫
水鳥の夜を泳がねば凍りつく 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
水鳥の夜半の羽音も静まりぬ 高浜虚子
水鳥の夜半の羽音やあまたたび 虚子
水鳥の夢は真昼の雲の中 川井玉枝
水鳥の夢宙にある月明り 飯田龍太
水鳥の夢驚かす驟雨哉 寺田寅彦
水鳥の大崩れするあられかな 水田正秀
水鳥の岸より紙を干しにけり 野村喜舟 小石川
水鳥の川わかれては夕日さす 羽公
水鳥の帰ていづこ種おろし 加舎白雄
水鳥の幽紋あたり暮れなんと 高澤良一 随笑 
水鳥の日がなぴしゃぴしゃやってをり 高澤良一 鳩信 
水鳥の暁の羽ばたき靄の中 小市葉子
水鳥の月の位を見る寒さ 浜田酒堂
水鳥の月出て黒し眠らんか 金子兜太
水鳥の木にをりて明けゆきにけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
水鳥の来てゐるらしき障子かな 小松原芳静
水鳥の死や全身に水廻り 村上鬼城
水鳥の水に親しき古江かな 暮蓼
水鳥の水をはなれて梢かな 竹冷句鈔 角田竹冷
水鳥の水を離れしとき自在 伊東宏晃
水鳥の水尾の静かに広かりし 高浜年尾(富安風生氏を悼む)
水鳥の水尾引き捨てゝ飛びにけり 松藤夏山 夏山句集
水鳥の水掻の裏見せとほる 山口青邨
水鳥の水破る音夕間暮 高澤良一 鳩信 
水鳥の江に沿うて散歩眼明らか 清原枴童 枴童句集
水鳥の沈みて沼の重くなる 齋藤愼爾
水鳥の沼が曇りて吾くもる 橋本多佳子
水鳥の沼をへだてて瞽女の道 佐川広治
水鳥の沼昃りゆく仕方なし 秋を
水鳥の泥をせせりて汚れなし 岩田由美
水鳥の流るゝ四つ木橋の下 今井杏太郎
水鳥の浮木に並ぶ氷かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
水鳥の混沌として暮れにけり 大串章(1937-)
水鳥の湖に向ひて雪見窓 本間 杏童
水鳥の漂ふは抗ふことと 田中櫻子
水鳥の濠すが~し松の形 滝井孝作 浮寝鳥
水鳥の白ははの死を告げに行く 中島恭子
水鳥の百羽の影のゆれやまず 小俣由とり
水鳥の相向ひ浮き又背き 高濱年尾 年尾句集
水鳥の真青なる眼をしてをりぬ 今井杏太郎
水鳥の眠りにまじる白枕 藤井孝子
水鳥の睡りに徹す直心(ひたごころ) 高澤良一 随笑 
水鳥の糞を彩とし錨朽つ 岸田稚魚 『負け犬』
水鳥の羽のひとひら城の壕 中拓夫
水鳥の羽ばたきに急く婚の朝 満田玲子
水鳥の羽打ちの遠く水ぬるむ 高澤良一 随笑 
水鳥の羽摶ちごたへのある寒暮 高澤良一 随笑 
水鳥の翔ちざま日ざしこぼしけり 西村信男
水鳥の聲のかたまり暮天冴ゆ 高田蝶衣
水鳥の背の高う成るしぐれかな 千代尼
水鳥の胸に分けゆく桜かな 浪化 (1671-1703)
水鳥の胸の寄り合ひつつ流れ 石田郷子
水鳥の脚のしびれか細波す 丸井巴水
水鳥の色の密なる一葉忌 川村哲夫
水鳥の葦に隠れて生む水輪 日野草城
水鳥の行にしたがふ木葉哉 吟江
水鳥の行方追ひゐる鼻に風 高澤良一 寒暑 
水鳥の足舌の如く水の面に触れぬ 高濱年尾 年尾句集
水鳥の蹼昏く年つまる 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
水鳥の近づけば寄る若さあり 金田咲子
水鳥の逆立ちしたる水輪かな 藤野 山水
水鳥の陣をなすありなさぬあり 稲畑汀子
水鳥の陸に休むといふことも 五十嵐八重子
水鳥の静けく渡れゆきにけり 竹冷句鈔 角田竹冷
水鳥の飛び交ふ錨まきにけり 清原枴童 枴童句集
水鳥は乾く四月の水の上 宇多喜代子
水鳥は百万石の畦せせる 阿波野青畝
水鳥は素顔の我のひかりなり 渡部陽子
水鳥は遊び友禅流さるる 本岡歌子
水鳥へかがめば花のくらさかな 小島千架子
水鳥もふねも塵なり鳰の海 梅室
水鳥も寝あたたまるか静かなり 李由 十 月 月別句集「韻塞」
水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉 蕪村遺稿 冬
水鳥やあたたかさうな海の色 清水基吉
水鳥やあるかなきかに舟の者 小平雪人
水鳥やかたまりかぬる山颪 大坂-瓠界 元禄百人一句
水鳥やかねて郷士の婿撰び 黒柳召波 春泥句集
水鳥やがうのわたりに浮沈 中村史邦
水鳥やてうちんひとつ城を出る 蕪村遺稿 冬
水鳥やてふちんひとつ城を出る 與謝蕪村
水鳥やのこらず守る人の顔 松岡青蘿
水鳥やひとつ鋭き女流の句 百合山羽公 故園
水鳥やむかふの岸へつうい~ 惟然
水鳥やをんな逃るる家を持たず 樋笠文
水鳥やマントの中のふところ手 原石鼎
水鳥や一羽立ちたるあとの闇 武田鶯塘
水鳥や中に一すぢ船の道 正岡子規
水鳥や何はなくとも夕ながめ 闌更
水鳥や冬もなげなる月の暈 西島麦南 人音
水鳥や別れ話は女より 鈴木真砂女
水鳥や台詞けいこに夕日来て 大峯あきら 鳥道
水鳥や向うの岸へつうい~ 惟然
水鳥や啄みこぼす葉鶏頭 妻木 松瀬青々
水鳥や城の後ろの古き沼 露月句集 石井露月
水鳥や墓所の火遠く江にうつる 高井几董
水鳥や夕べの夢を浪の上 水田正秀
水鳥や夕日きえゆく風の中 久保田万太郎 草の丈
水鳥や夕日江に入垣のひま 蕪村遺稿 冬
水鳥や夕焼色に芝に在り 温亭句集 篠原温亭
水鳥や夜は閨近く浮きつれて 比叡 野村泊月
水鳥や夢より怖きものに風 夏井いつき
水鳥や安房夕浪に横たはる 秋櫻子
水鳥や岸べに高く杭の鳶 滝井孝作 浮寝鳥
水鳥や巨掠の舟に木綿賣 蕪村遺稿 冬
水鳥や急ぎ仕舞の夕渡し 四明句集 中川四明
水鳥や戸ざしにのぼる夜の二階 金尾梅の門 古志の歌
水鳥や挑灯ひとつ城を出る 蕪村
水鳥や日のかゞやきの沖へ沖へ 大橋櫻坡子 雨月
水鳥や日は莟天に歩を刻む 青峰集 島田青峰
水鳥や明日は明日はと人はいふ 星野立子
水鳥や月の夜はある渡し舟 岡田耿陽
水鳥や枯木の中に駕二挺 蕪村 冬之部 ■ 春夜樓會
水鳥や椅子にある人みな睡り 依光陽子
水鳥や氷の上につぶらなる 高濱虚子
水鳥や氷の上の足紅く 野村喜舟
水鳥や江をうつ芦の下はしる 加舎白雄
水鳥や沼百姓の冬漁り 菅原師竹句集
水鳥や洛北の雲おそろしく 岸本尚毅 鶏頭
水鳥や港に近き遊女町 会津八一
水鳥や澪冴えざえと霧の中 新井声風
水鳥や生きとし生けるものゝ冬 久保田万太郎 流寓抄以後
水鳥や生を憐む三井の僧 尾崎迷堂 孤輪
水鳥や白々明けの尖り浪 野村喜舟 小石川
水鳥や百姓ながら弓矢取 蕪村 冬之部 ■ 一條もどり橋のもとに柳風呂といふ娼家有、ある夜、太祇とともに此樓にのぼりて
水鳥や百眠り二三潜り浮く 東洋城千句
水鳥や皇宮警手出で来る 岡本松浜 白菊
水鳥や砂に濁らぬ木津の川 四明句集 中川四明
水鳥や美しければ人柱 野村喜舟 小石川
水鳥や羽に嘴さす並びやう 依光南渚
水鳥や舟に菜を洗ふ女有 蕪村 冬之部 ■ 一條もどり橋のもとに柳風呂といふ娼家有、ある夜、太祇とともに此樓にのぼりて
水鳥や舟の厨の皿の音 雑草 長谷川零餘子
水鳥や艦船うごき波のくる 滝井孝作 浮寝鳥
水鳥や花と浮びし雪芥 久米正雄 返り花
水鳥や菜屑につれて二間程 正岡子規
水鳥や蘆もうもれて雪衾 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水鳥や西国札所竹生嶋 尾崎迷堂 孤輪
水鳥や通運丸の窓のもの 野村喜舟 小石川
水鳥や霧透けてある月の浪 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水鳥や頭にとまる水の玉 阿波野青畝
水鳥よぷい~何が気に入らぬ 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
水鳥よわがふるさとは心にのみ 成瀬桜桃子 風色
水鳥を吹あつめたり山おろし 蕪村
水鳥を数へる日々の不文猫 古舘曹人 能登の蛙
水鳥を見る人中に宣教師 高野素十
水鳥人は一足づつ歩む 竹下しづの女句文集 昭和二十三年
水鳥水に浮いてゐ夫人はこれにはかなはないと思つても 中塚一碧樓
水鳥翔つ十三湖の上に日本海 神蔵器
水鳥見たはかない満足で帰ります 中塚一碧樓
江の空の水より淡し浮寐鳥 雉子郎句集 石島雉子郎
江戸橋やつい人馴れて浮寝鳥 一茶
汽罐のもの火のまゝ棄つる浮寐鳥 久米正雄 返り花
沖かけて深き曇や浮寝鳥 白水郎
波あらば波に従ひ浮寝鳥 稲畑汀子
波かぶり一家の数の浮寝鳥 西村和子 かりそめならず
波来れば波の高さに浮寝鳥 都筑智子
流るるは浮寝鳥とも時間とも 黒川花鳩
浮寐鳥林相映りさかしまに 福田蓼汀 山火
浮寝鳥いつぽんの木に隠れけり 西田美智子
浮寝鳥いま目覚めゐる一羽あり 西山誠
浮寝鳥うすき枕をうら返す 木村虹雨
浮寝鳥うつゝに尾振る一羽あり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
浮寝鳥ことばを待つはさびしかり 伊藤通明
浮寝鳥しづかに水の流れけり 上井みどり
浮寝鳥ともに棲まねば諍はず 樋笠文
浮寝鳥ながるる宮の御ン柱 宇佐美魚目 秋収冬蔵
浮寝鳥はりまの國の端にをり 田中裕明 先生から手紙
浮寝鳥ほどの寧けさ ありや なしや 伊丹三樹彦 一存在
浮寝鳥また波が来て夜となる 寺山修司
浮寝鳥までの雨粒神のには 田中裕明 櫻姫譚
浮寝鳥みてをり余生おもひをり 柴田白葉女
浮寝鳥一羽さめゐてゆらぐ水 水原秋櫻子
浮寝鳥一羽のさめて啼きにけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
浮寝鳥世の一隅の斯く寂か 深川正一郎
浮寝鳥別別になるうねりかな 瀧井孝作
浮寝鳥同心円を出でざりき 柴田奈美
浮寝鳥城の立體月光に 西島麥南
浮寝鳥揺りし舟燈菰がくる 宮武寒々 朱卓
浮寝鳥日に遁げられてしまひけり 成瀬桜桃子 風色
浮寝鳥日向ぼこして樹にもあり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
浮寝鳥晝は水かげろふと住む 松村蒼石 春霰
浮寝鳥月さして水暗みたり 石原舟月
浮寝鳥月の出を待つ沼あかり 田淵定人
浮寝鳥月夜の波を曳きにけり 今井杏太郎
浮寝鳥桜田門の日向かな 滝井折柴(孝作)(1894-1984)
浮寝鳥沖へ沖へと暮れにけり 永田耕一郎
浮寝鳥波に心を溶しけり 関森勝夫
浮寝鳥洲に汐満ちて夕なり 松村蒼石
浮寝鳥流されさうで流されず 中嶋秀子
浮寝鳥浪にゆられて向き~に 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
浮寝鳥看板こけし茶店かな 清原枴童 枴童句集
浮寝鳥石段の端見えてをり 田中裕明 花間一壺
浮寝鳥芦火明りにながれけり 石原舟月 山鵲
浮寝鳥見えたる国はわたしかな 攝津幸彦
浮寝鳥覚めたる波をたてにけり 石井とし夫
浮寝鳥覚めて失ふ白ならむ 後藤比奈夫 花匂ひ
浮寝鳥連れがぽつりと呟けり 椎名書子
浮寝鳥金銀の星待ちてをり 皆川盤水
浮寝鳥隠れかねたる瘠羽かな 松根東洋城
海とても日溜りはあり浮寝鳥 国松ゆたか
港とは名のみの入江浮寝鳥 大瀬雁来紅
湖心の日山へ移りぬ浮寝鳥 福田蓼汀 秋風挽歌
湖高く飛んでしまひぬ浮寝鳥 吉武月二郎句集
灯ともして戻る御堂や浮寝鳥 松藤夏山 夏山句集
灯火の窓辺に倚りぬ浮寝鳥 高浜虚子
燦爛と波荒るゝなり浮寝鳥 芝不器男
爛々と暁の明星浮寝鳥 高浜虚子
猿蓑のいよいよ暮るゝ浮寝鳥 齋藤玄 飛雪
留守なればその足で浮寝鳥を見に 間石
痩せ杭の彼方に一つ浮寝鳥 高澤良一 宿好 
白鳥も餌付く水鳥逆さ立ち 百合山羽公 寒雁
立つ人の耐へざる風に浮寝鳥 森田峠
纜に水鳥並び堰かれけり 雑草 長谷川零餘子
羽交に嘴さし入れてより浮寝鳥 鈴木貞雄
羽摶きて覚めもやらざる浮寝鳥 高浜虚子
翔たざれば翳の重しよ浮寝鳥 角川照子
翔たば空覆ふなるべし浮寝鳥 森田峠 避暑散歩
耳聡き水鳥の辺を過りけり 樋笠文
胸深く入れて水鳥沖泳ぐ 青邨
舟焼きの煙にまぎれ浮寝鳥 石原義輝
舳かけてくさ~干しぬ浮寝鳥 清原枴童 枴童句集
船神事終りし港浮寝鳥 小西魚水
茄で卵むけば日向に浮寝鳥 桂信子 遠い橋
菜を洗ふ水輪のとゞく浮寝鳥 手島 靖一
落葉中水鳥やどす水ありぬ 林原耒井 蜩
裏那智は鉱区の灯のみ浮寝鳥 宮武寒々 朱卓
襟巻ふかく夜の水鳥に立たれけり 大野林火
見晴らして水鳥の見えはじめたる 徳永山冬子
覚めやすくおどろきやすき水鳥ら 柴田白葉女
読んでゐるときは我なし浮寝鳥 田中裕明 先生から手紙
貯木場の一画占めて浮寝鳥 小松世史子
足止めてむしろ水鳥おびえさす 黒坂紫陽子
身じろぎてより膨らみし浮寝鳥 藤岡幸子
逢ひたしと思ふ心に浮寝鳥 宮尾 寿子
過ぎし日は昨日も遠し浮寝鳥 安住敦
鎮らぬ水鳥破戒図となれり 河野多希女
鎮火の鐘に更け足る雨や浮寝鳥 宮武寒々 朱卓
長き足折りて水鳥巣に籠る 右城暮石 上下
降る雪の水くらければ浮寝鳥 小檜山繁子
陵守の眼にいつもある浮寝鳥 比叡 野村泊月
陽の裏の光いづこへ浮寝鳥 高山れおな
陽を溜めて水鳥水に固定せり 椎橋清翠
雪のせて軽くゆれをり浮寝鳥 堀 葦男
雪待つは浮寝鳥めく菩提樹下 神尾久美子 桐の木
雪昏るるひかり束ねし浮寝鳥 原裕 青垣
面売の面のうしろの浮寝鳥 中村明子
風明りに水鳥もまざと徹夜人 シヤツと雑草 栗林一石路
髪刈つて来し水鳥のかがやきに 斉藤夏風
水鳥の羽ばたくことの終に無し  高澤良一  石鏡
浮寝にはすこし間のある日向鳥  高澤良一  さざなみやつこ
浮寝とはゆかざる鳥羽のゆりかもめ  高澤良一  燕音
旧軍港浮寝の鳥もなかりけり  高澤良一  宿好

以上
by 575fudemakase | 2014-12-11 00:13 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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