2014年 12月 13日 ( 12 )

冬の月

冬の月

例句を挙げる。

あら猫のかけ出す軒や冬の月 内藤丈草
いつも見るものとは違ふ冬の月 鬼貫
うきて行く雲の寒さや冬の月 斯波園女
うしろからひそかに出たり冬の月 正岡子規
うす~とけぶる梢や冬の月 渡辺水巴 白日
うちあげて津の町急ぐ冬の月 吉右衛門
この木戸や鎖のさゝれて冬の月 榎本其角
しづかなる柿の木はらや冬の月 黒柳召波 春泥句集
しめなほす奥の草履や冬の月 惟然
しめ直す奥の草鞋や冬の月 広瀬惟然
ともどもに別るゝ心冬の月 稲畑汀子
なぐさめし琴も名残りや冬の月 万里 俳諧撰集玉藻集
びらびらはなき道筋や冬の月 広瀬惟然
まんまるの厚みなかりし冬の月 藤勢津子
むさし野は堂より出る冬の月 上島鬼貫
よき夜ほど氷るなりけり冬の月 浪化
ゴンドラに乗るとき冬の月傾ぐ 佐藤 博重
ランプ灯く「忘れ唱歌」に冬の月 長谷川かな女 牡 丹
一列のレグホン眠る冬の月 柿本多映
亡き魂も出迎へよ門の冬の月 寺田寅彦
人すこし聟入り見るや冬の月 雑草 長谷川零餘子
仏間はまた熟寝の間にて冬の月 鷲谷七菜子 天鼓
兀殿の先だち寒し冬の月 水田正秀
冬の月いざよふこともなく上る 高浜年尾
冬の月いのちわけあふには淡し 保坂敏子
冬の月いま吾が顔にとどき来る 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
冬の月いろいろな欲捨てて寝る 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
冬の月おどろとなりし糸芒 阿部みどり女
冬の月かこみ輝き星数多 高木晴子 晴居
冬の月けざむくにじみ錠を鎖すわれをわれとしひとりねむるべく 山田あさ
冬の月このさびしさをすてきれず 浜野節子
冬の月たかが人間ではないか 栗林千津
冬の月ひそかにかかぐ時計台 柴田白葉女
冬の月より放たれし星一つ 星野立子
冬の月わたしの毛布照らしおり 大高翔
冬の月をみなの髪の匂ひかな 野村喜舟 小石川
冬の月スフィンクスの尾右へ巻く 本澤晴子
冬の月女優志願と隣り合う 二村典子
冬の月寂莫として高きかな 日野草城
冬の月屍は狂ふこともなし 小野冬芽
冬の月提灯つりて道具市 妻木 松瀬青々
冬の月明たかが人間ではないか 栗林千津
冬の月杉を燈まするあらしかな 木導 霜 月 月別句集「韻塞」
冬の月母と子の距離凍てついて 河野静雲
冬の月淋しがられて冴えにけり 古白遺稿 藤野古白
冬の月煮炊きのほのほおちしとき 金田咲子 全身
冬の月琴を背負つて帰りけり 如月真菜
冬の月美しけれど人に告げず 石川文子
冬の月肩のチョークを打ち払ふ 林原耒井 蜩
冬の月軒すれ~に傾けり 温亭句集 篠原温亭
冬の月銀杏の枝の中にあり 松尾 美子
冬の月雲にかかれば暈を持ち 阿部みどり女
冬の月高くなりつつ靄離れぬ 篠原梵 雨
冬の月黒き木仏木に戻り 宇多喜代子
出迎ふる人亡くて門の冬の月 寺田寅彦
出逢った日のパールネツクレス冬の月 松本恭子
厠の扉叩く子がゐて冬の月 松村蒼石 雁
四辻にうどん焚火や冬の月 石友
団地の窓灯はみな消えて冬の月 吉屋信子
土塀壌ちて石入れ据ゑぬ冬の月 新傾向句集 河東碧梧桐
塀添ひに風流れをり冬の月 臼田亞浪 定本亜浪句集
塀裏の桐の木ずえや冬の月 朱仙 霜 月 月別句集「韻塞」
夜々おそく帰るや冬の月まどか 宵曲
大工帰り佐官働き冬の月 永井龍男
大船や帆綱にからむ冬の月 高浜虚子
天測の北緯五十度冬の月 河合いづみ
夫行つてしまひぬ冬の月尖る 仙田洋子 雲は王冠
妻の座は厨に近し冬の月(小松にて) 飴山實 『おりいぶ』
宿坊へ案内の僧や冬の月 比叡 野村泊月
寒知らぬ島かも冬の月にいづる 及川貞 榧の實
寝た家の外から白し冬の月 母斛 選集古今句集
尿放つ子の泪して冬の月 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
屋根の上に火事見る人や冬の月 子規句集 虚子・碧梧桐選
山庭に冬の月白あるばかり 瀧井孝作
山火事を知る人もなし冬の月 雉子郎句集 石島雉子郎
嶺の松や後夜後ト前キの冬の月 尾崎迷堂 孤輪
帰天せし母にまどかな冬の月 千原叡子
廓近く来し俳句会冬の月 楠目橙黄子 橙圃
影踏みの果てに上りぬ冬の月 橘孝子
我影の崖に落ちけり冬の月 柳原極堂
戸口から芦の浪花や冬の月 蒼[きう]
戸口まで道が来ており冬の月 鳴戸 奈菜
星屑消して無碍なり崖の冬の月 及川貞 榧の實
木の影や我影動く冬の月 正岡子規
村へ帰る一青年と冬の月 青柳志解樹
束の間の冬の月さへ砕く波 竹屋睦子
松ばやしぬけねばならず冬の月 久保田万太郎 流寓抄
松よりも杉に影ある冬の月 井上井月
松原にとまる電車や冬の月 銀漢 吉岡禅寺洞
松原や闇の上行く冬の月 古白遺稿 藤野古白
柝過ぎて後犬行くや冬の月 河東碧梧桐
桐の実の鳴る程なりて冬の月 井月の句集 井上井月
梨の木や結ひこご(屈)めたる冬の月 鳩枝 俳諧撰集「藤の実」
橙の色を木の間の冬の月 松岡青蘿
次に見し時は天心冬の月 稲畑汀子
此木戸や鎖のさゝれて冬の月 宝井(榎本)其角
水門にうごく木影や冬の月 故郷 吉田冬葉
池氷る山陰白し冬の月 古白遺稿 藤野古白
泣くもあり泣かねば冬の月を見る 石原八束
浅からぬ鍛冶が寐覚や冬の月 加舎白雄
深夜ミサ終へし人らに冬の月 丸山よしたか
温室の花を照らすや冬の月 広江八重桜
濡れて居る梢も見えず冬の月 桃隣
炭売の戻る野道や冬の月 吉川天河水
無医村の消灯早し冬の月 高野清美
焼け香嗅ぐ胸もかばかり冬の月 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
犬にうつ石の扨なし冬の月 炭 太祇 太祇句選後篇
狐狸のする空臼搗きや冬の月 松木星陵
狼のかりま高なり冬の月 奚魚 霜 月 月別句集「韻塞」
町内に湯屋が健在冬の月 高澤良一 寒暑 
病院の門を出づれば冬の月 寺田寅彦
白波の上に更たり冬の月 闌更
白雲や女の歯がすみ冬の月 立独 選集「板東太郎」
百品(ももしな)の旅の仕舞ひや冬の月 斯波園女
目のひかる夜咄ずきや冬の月 許六
知らぬ犬と道明るさや冬の月 碧雲居句集 大谷碧雲居
砂に埋む須磨の小家や冬の月 暁台
砂みちのすこし上りや冬の月 久保田万太郎 流寓抄
硝子屋のアロエの鉢に冬の月 横山房子
禅寺の松に来て冬の月となる 文挾夫佐恵
竹の幹太く勁くて冬の月 柴田白葉女 花寂び 以後
笛の音のいつからやみて冬の月 也有
縁日や人散りかかる冬の月 寺田寅彦
肝煎の手をはなれけり冬の月 曲翠 俳諧撰集「有磯海」
背高き法師にあひぬ冬の月 梅室
臍の緒のあと鹹し冬の月 柚木紀子
芋買ひに行きし夜もあり冬の月 尾崎紅葉
荒天を鎮めて上る冬の月 川村甚七
襟巻に首引き入れて冬の月 杉風
見張り猿ゐる絶壁の冬の月 畑中とほる
質置の彳む門や冬の月 黒柳召波 春泥句集
軍門に据うる俘や冬の月 大須賀乙字
鋸山のやゝ東より冬の月 阿部 美津子
長安の糸より細き冬の月 有馬朗人 天為
階に我が影しるき冬の月 岩下ただを
隻腕の河童にあひぬ冬の月 北園克衛 村
雪よりも寒し白髪に冬の月 丈草
露座仏をなかなか越さぬ冬の月 吉田渭城
静なるかしの木はらや冬の月 蕪村 冬之部 ■ 郊外
音たてぬ家霊いとしや冬の月 池田澄子
高々とポプラに風や冬の月 小杉綾子
鳥は浮き魚はしづみて冬の月 才麿
鳥影も葉に見て淋し冬の月 千代尼
これやこの冬三日月の鋭きひかり 久保田万太郎(1889-1963)
その夜夢に寒月の下の師の御言 相馬遷子 山国
ついて来し寒月に木戸閉てにけり 赤尾恵以
ひとごとのやうにみごもり冬三日月 仙田洋子 雲は王冠
ひとり寝て眼に寒月を掲げたり 石塚友二 方寸虚実
まろみなほ朝月凍ててそも偸安 香西照雄 対話
ゆく馬の背に月凍る年の暮 金尾梅の門 古志の歌
ダイヤ買ひ形見ふえたり寒月夜 八牧美喜子
チヤルメラやまだ宵の町月冴ゆる 『定本石橋秀野句文集』
三寒のどっちつかずの夜半の月 高澤良一 素抱 
不二見えて屋根の寒月堅きかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
中天に月冴えんとしてかゝる雲 高浜虚子
人穴を掘れば寒月穴の上 富沢赤黄男
何祈らむ冬三日月を額に享け 横山房子
俎を寒月に立てかけて寝る 小檜山繁子
俳諧のまだ宵なから月氷る 尾崎紅葉
僧居ねば寒月に*いさざ買ひ戻る 赤尾兜子
党人の寒月や此処に悲歌の橋 久米正雄 返り花
冬三日月ひたと機窓に深空航く 富安風生
冬三日月わが形相の今いかに 鳴戸奈菜
冬三日月屋台車に石噛ます 黒沢一太
冬三日月更に呑むため別れゆく 寺井谷子
冬三日月浮く丘のそら縹いろ 柴田白葉女 『月の笛』
冬三日月男宮詣での篠島衆 高澤良一 鳩信 
冬三日月祈りて叶ふことならず 福田蓼汀 秋風挽歌
冬三日月羽毛の如く粧ひ出づ 原コウ子
冬三日月見てゐて匙を落しけり 加倉井秋を 午後の窓
冬三日月高野の杉に見失ふ 桑島啓司
吾を唖と燃えさかる火と寒月と 安斎櫻[カイ]子
地辷り止まず冬三日月を拝めども 西本一都
城見えて寒月高し呉の流れ 蘇山人俳句集 羅蘇山人
夜半の月冴えず明るし春近き 及川貞 榧の實
夢にあればわれも幼な子冬三日月 山田諒子
天平の扉を寒月に閉ざしけり 狹川 青史
天竺へ冬三日月をとりにゆく 高桑弘夫
夫へ朝刊冬三日月をはさみました 金子弘子
寒月が鵜川の底の石照らす 栗田やすし
寒月にうつし見む我かこち顔 高井几董
寒月にさらして我が家閉ざしあり 青峰集 島田青峰
寒月にすまひが宿の稽古かな 子曳 五車反古
寒月にそそり立ち折れ波頭 星野立子
寒月にひかる畝あり麦ならむ 水原秋桜子
寒月にまぶたを青く鶏ねむる 田中祐三郎
寒月に古き噴井の夜も滾つ 下村槐太 天涯
寒月に大いに怒る轍あり 秋元不死男
寒月に幻(げ)の影懸り失せにけり 友次郎
寒月に幻の影懸り失せにけり 池内友次郎 結婚まで
寒月に影遊ばせて野の宴 稲岡長
寒月に手を出して戸を叩きけり 榎本冬一郎 眼光
寒月に木を割る寺の男かな 蕪村遺稿 冬
寒月に水捨つひとの華燭の日 桂信子 黄 炎
寒月に水浅くして川流る 誓子
寒月に沈みて低き家並かな 青峰集 島田青峰
寒月に炭窯匂ふ側通る 羽部洞然
寒月に焚火ひとひらづゝのぼる 橋本多佳子
寒月に照そふ関のとざし哉 高井几董
寒月に照る海を見て寝に就く 山口波津女 良人
寒月に立や仁王〔の〕からつ臑 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
寒月に縷の立ち顕つはわれ病むか 下村槐太 天涯
寒月に腹鼓うつ狸哉 寺田寅彦
寒月に鍋釜尻を並べけり 柑子句集 籾山柑子
寒月に雲飛ぶ赤城榛名かな 河東碧梧桐
寒月のありと外より人の声 星野立子
寒月のいささかうしろぐらきかな 辻田克巳
寒月のいびつにうつる玻璃戸かな 高浜虚子
寒月のうつくしといふ閨の妻 青邨
寒月のかけらぶつかり合ふ怒濤 福田蓼汀 秋風挽歌
寒月のどちへもつかず離(り)の一字 広瀬惟然
寒月のひかりにとほき星の闇 松村蒼石 寒鶯抄
寒月のわれふところに遺書もなし 富澤赤黄男
寒月の作れる陰につまづける 高木貞子
寒月の光さし添ふ病床に 高浜年尾
寒月の光をちらす千鳥かな 成美
寒月の入る山を知る眠れぬ夜 八牧美喜子
寒月の埠頭も船も寝しづまり 高林蘇城
寒月の大いなるかな藁廂 星野立子
寒月の大藁屋根にささりし如 星野立子
寒月の小さく見えし妬心かな 平井葵
寒月の山を離れてすぐ高し 永方 裕子
寒月の漣も立たず行けども 原田種茅 径
寒月の瀬にのしかかる峯暗し 瀧春一 菜園
寒月の熱海の宿に遅くつき 車谷 弘
寒月の相逢はしめし犀千曲 西本一都 景色
寒月の真昼より見え書を配る 成田千空 地霊
寒月の空に確む終の燕 羽部洞然
寒月の美しくして病む夜かな 苅谷 千代
寒月の胸にとほりて夜もすがら 太田鴻村 穂国
寒月の蹤きくるゆゑに歩むなり 飯野 計夫
寒月の通天わたるひとりかな 川端茅舎
寒月の野を機関士ら眠られず 内藤吐天 鳴海抄
寒月の金の稚し水の上 角川源義
寒月の門へ火の飛ブ鍛冶屋哉 炭 太祇 太祇句選
寒月の高くて地に影置かず 岸風三楼 往来
寒月は丑満の雲すこし灼く 佐野良太 樫
寒月へのぼる靴音螺旋階 近藤甚之助
寒月や きりきりしろき歯を鳴らし 富澤赤黄男
寒月やいよいよ冴えて風の声 荷風
寒月やからりと捨てるから玉子 大江丸
寒月やきんきん女嗤ひたり 磯貝碧蹄館 握手
寒月やもつとも耐ふる松柏 齋藤玄 飛雪
寒月やわが発心にくもりなし 西沢信生
寒月やわれ白面の反逆者 原石鼎
寒月や別れの肌のあたたかく 鳥居おさむ
寒月や受胎ののちの身のしづか 辻美奈子
寒月や古人に見する我が心 東洋城千句
寒月や喰ひつきさうな鬼瓦 一茶
寒月や天の一方に越の山 野田別天楼
寒月や妙義も見えて木樵町 安斎桜[カイ]子
寒月や宿の女の国なまり 森田峠 初期
寒月や居合をしへの葭がこひ 尾張-荷兮 元禄百人一句
寒月や岬に松を照り出だし 尾崎迷堂 孤輪
寒月や御鷹の宿もするあたり 乙二
寒月や我ひとり行橋の音 炭太 (たんたいぎ)(1709-1771)
寒月や我一人行く河豚の客 雨山楼
寒月や撃柝ひゞく監獄署 寺田寅彦
寒月や支度調ふ食堂車 永井龍男
寒月や斯くて去る港顧みす 楠目橙黄子 橙圃
寒月や更けて物洗ふ台所 寺田寅彦
寒月や枯木の中の竹三竿 蕪村 冬之部 ■ 感偶
寒月や比叡より高き如意ケ嶽 五十嵐播水 播水句集
寒月や水車一廻りに二度きしみ 川村紫陽
寒月や涛と戦ふ離れ巌 青峰集 島田青峰
寒月や灯影に冱てん白拍子 飯田蛇笏 山廬集
寒月や牛市のこゑまだ宙に 百合山羽公 故園
寒月や猫の夜会の港町 大屋達治
寒月や獄庭松の奢る枝 河野静雲
寒月や獣突くべき竹の鎗 石井露月
寒月や獺がくはへし魚のそり 野村喜舟
寒月や玻璃戸の内に刃物売る 大橋敦子 母子草
寒月や留守頼れし奥の院 炭 太祇 太祇句選
寒月や白紙の飛狩のあと 加舎白雄
寒月や皿より棄つる魚の骨 大串章
寒月や盥の水に鼠捕 六花
寒月や眼を開けてゐし熱帯魚 林 民子
寒月や石きり山のいしぼとけ 加舎白雄
寒月や穢多(ゑた)が虎竹に肉の影 黒柳召波 春泥句集
寒月や穴の如くに黒き犬 川端茅舎
寒月や翼の如くいのち去る 朱鳥
寒月や耳光らせて僧の群 中川宋淵
寒月や舌のごとくに雲より垂れ 河野静雲 閻魔
寒月や藪をはなれて畑の上 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
寒月や衆徒の群議の過て後 蕪村 冬之部 ■ 感偶
寒月や行ひ人の赤はだか 高井几董
寒月や表にものを取りに出て 上野泰 佐介
寒月や裏戸灯りて沼の宿 橋本鶏二 年輪
寒月や見渡すかぎり甃(いしだたみ) 川端茅舎(1897-1941)
寒月や谷に渦巻く温泉の煙 寺田寅彦
寒月や貴女のにはとり静かなり 攝津幸彦
寒月や路上ピエロの白化粧 仙田洋子 橋のあなたに
寒月や野の大門の谺呼ぶ 乙字俳句集 大須賀乙字
寒月や鋸岩のあからさま 蕪村 冬之部 ■ 感偶
寒月や門なき寺の天高し 蕪村 冬之部 ■ 感偶
寒月や門をしめゐる前通る 波多野爽波 鋪道の花
寒月や門をたゝけば沓の音 蕪村遺稿 冬
寒月や雑木の中の松の幹 岸本尚毅 舜
寒月や雲尽きて猶風烈し 正岡子規
寒月や高い窓ある庫裏の闇 古白遺稿 藤野古白
寒月や魂離れかへらざる 山本洋子
寒月や鹿ひゆうと鳴く岡の上 五十川茶村
寒月をともなひ妣の国に着く 佐川広治
寒月をとらへし梢の高からず 稲畑汀子
寒月をまたぐに惜しき潦 桂信子
寒月を一寸仰いでさつさと行く 加倉井秋を 『胡桃』
寒月を呑む鶴すこし亀もすこし 攝津幸彦
寒月を浴び来ておのれ軽くなる 滝佳杖
寒月を絡んで巨樹の枝こまか 比叡 野村泊月
寒月を網する如き枯枝かな 虚子
寒月を顱頂に置きて歩みをり 上野泰 佐介
寒月下あにいもうとのやうに寝て 大木あまり(1941-)
寒月下その鉄蓋を誰も踏み 加倉井秋を 午後の窓
寒月下一塊の雪病むごとし 野澤節子 黄 瀬
寒月下子の落書を踏み戻る 香西照雄 素心
寒月下幹影印し小屋傾ぐ 香西照雄 対話
寒月下影のがれたきわが生身 櫛原希伊子
寒月下灯の濁りたる電車行く 草田男
寒月下盲のごとく沼涸れをり 伊東宏晃
寒月下馬繋がれて濡れにけり 木村虹雨
寒月光あまたの軌條地に漂ひ 横山白虹
寒月光いつか一人となるこの家 古賀まり子 緑の野
寒月光こぶしをひらく赤ん坊 三橋鷹女(1899-1972)
寒月光ゆれゆきなやむ肥車 桂信子 花寂び 以後
寒月光わが影に尾の蹤きゐずや 渡邊千枝子
寒月光われより若き父ふりむく 眞鍋呉夫
寒月光下駄の揃へてありにけり 赤澤新子
寒月光地のひびわるるまで白く 三谷昭 獣身
寒月光山を恋いつつ遁走す 宇多喜代子
寒月光己の骨も透きとほる 糸山由紀子
寒月光心もろとも投げて病む 古賀まり子 緑の野
寒月光掌に享け神楽舞ひにけり 佐川広治
寒月光犬山犬川犬橋犬姫 夏石番矢 神々のフーガ
寒月光真昼に似たる水の照り 大木あまり 火のいろに
寒月光背後見ずとも貨車通る 桂信子 花寂び 以後
寒月光覚めしばかりに家怖ろし 横山房子
寒月光隈なき水で焚火消す 齋藤愼爾
寒月光電柱伝ひ地に流る 西東三鬼
寒梅や痛きばかりに月冴えて 日野草城
山の月冴えて落葉の匂かな 芥川龍之介
山の端に冬三日月の金沈む 阿部みどり女
恋の血の高鳴つていま月凍る 仙田洋子 橋のあなたに
悔のごと繊月凍ててかかりけり 斎藤 道子
曽根崎やむかしの路地に月冴えて 鷲谷七菜子 黄 炎
月冴えし三条麩屋町あられ蕎麦 徳田千鶴子
月冴えてこの夜めでたき会陽かな 燕 々
月冴えて夜鳴そば笛また通る 渋谷 一重
月冴ゆるばかりに出でて仰ぎけり 高浜年尾
月冴ゆる一度は見たき棺造り 小檜山繁子
月冴ゆる石に無数の奴隷の名 有馬朗人 知命
月冴る夜や人を焼く煙見ゆ 蘇山人俳句集 羅蘇山人
月凍つる群青の村その下に 岡田順子
月凍てて千曲犀川あふところ 福田蓼汀 山火
望郷や雪降るごとき寒月光 八牧美喜子
柊家の忍返しに月冴え来 京極杞陽
極楽中心中山寺月冴えし 中島陽華
橋にきし目におのづから月冴ゆる 木津柳芽 白鷺抄
死の家の菌青々寒月下 三谷昭 獣身
母のなき子らに寒月よりの漣 柴田白葉女 『冬泉』
母逝けり寒月白く残る軒 町田しげき
毟りたる一羽の羽毛寒月下 橋本多佳子(1899-1963)
水煙の飛天冬三日月に失せ 阿波野青畝
池を干す水たまりとなれる寒月 尾崎放哉
海が墓冬三日月の指すあたり 北見さとる
海の上に昼月冴えて慈姑掘り 松村蒼石 雪
海を抱く寒月出でし松林 長谷川かな女 花寂び
漁港過ぐ寒月列車と同じ速さ 川村紫陽
煙突と冬三日月と相寄りし 風三楼
疑ふ目冬三日月を見るときも 加倉井秋を 午後の窓
真白な寒月岩山の横へ出づ 岡田日郎
窓押せば寒月雪と地に布けり 青峰集 島田青峰
竹林の奥へ奥へと寒月光 目迫秩父
篠原の月冴残る兜かな 支考
納屋の間に寒月出初め大いなる 河野静雲 閻魔
経蔵に猫の近づく寒月夜 つじ加代子
自縛して寒月よりも細き身よ 古館曹人
賓頭盧は廻り寒月翔けりけり 西本一都 景色
身代りに寒月をあげ櫟の山 和田悟朗
遮断機の影身を下る寒月光 桂信子 花寂び 以後
阿武隈や月冴えて鳴る渚砂 鳥居おさむ
降りし汽車また寒月に発ちゆけり 羽公
雲間洩る寒月ベッド撫でゆけり 榎本鶴さと
頑なに言ひ争へば寒月下 片山桃史 北方兵團
顔に来し寒月光を掌にも享く 右城暮石 上下
風鳴や寒月かじる鬼瓦 幸田露伴 竹芝集
餅買うや寒月光の街の幅 三谷昭 獣身
駅出口寒月喧嘩地区で消え 長谷部さかな
駕を出て寒月高しおのが門 太祇
魚城移るにや寒月の波さゞら 正雄
鯛焼を手にささげ持ち冬三日月 長谷川かな女 牡 丹
あら海に人魚浮めり寒の月 青蘿
カーテンを引き残したる寒の月 湯浅典男
同じ湯にしづみて寒の月明り 龍太
圓生のうたふ聲きこゆ寒の月 久保田万太郎 草の丈
夜学の鐘やさし寒の月と雲に 古沢太穂 古沢太穂句集
大屋根の反りの指したる寒の月 大場去聖
寒の月しきりに雲をくゞりけり 久保田万太郎 草の丈
寒の月ちいさき母の影に添ふ 太田鴻村 穂国
寒の月子はころころと湯へ連るゝ 金尾梅の門 古志の歌
寒の月川風岩をけづるかな 樗良
寒の月押し照る底に病めりけり 小林康治 四季貧窮
寒の月指しければ歪みけり 林原耒井 蜩
寒の月畦の木の影うごきをる 鈴木しづ子
寒の月白炎曳いて山を出づ 飯田蛇笏
寒の月酒にもまろみありとせり 相生垣瓜人
寒の月鋭く痩せて星育つ 森下肖史
更級の郡なぐさめ寒の月 渡辺重昭
水張つて獲りたきほどの寒の月 吉原文音
烏飛て高台橋の寒の月 松岡青蘿
病む父のありての家路寒の月 深見けん二
神官に自宅ありけり寒の月 宇多喜代子 象
胃を病めり貝殻に似て寒の月 眸
荒海に人魚浮けり寒の月 松岡青蘿 (せいら)(1740-1791)
足音のわれを離れず寒の月 片山由美子
身に鱗あらば剥落寒の月 石嶌岳
韓国語放送ひびく寒の月 仙田洋子 橋のあなたに
寺寶なき寺こそよけれ冬満月  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:43 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

都鳥

都鳥

例句を挙げる。

いざのぼれ嵯峨の鮎食ひに都鳥 貞室
かよひ路のわが橋いくつ都鳥 黒田杏子 木の椅子
くろがねの橋も幾重や都鳥 石塚友二
こと問はん阿蘭陀広き都鳥 西鶴
さくら餅の籠を流して都鳥 長谷川かな女 花寂び
その昔膳所で越年都鳥 高澤良一 燕音 
まねき揚げ手締へ舞へる都鳥 田中英子
めぐりては水にをさまる百合鴎 石田郷子
わが波の一つ一つに都鳥 中村汀女
シベリアの田舎より来て都鳥 片岡青苑
マスクかけ暫く都鳥を見る 深川正一郎
万噸の錨鎖に憩ふ都鳥 道川虹洋
万歳は今も烏帽子ぞ都鳥 正岡子規
両翼を広げて暗し都鳥 藤本美和子
亀清に昼の客あり都鳥 三宅清三郎
何もかも曇つてしまひ都鳥 久保田万太郎 草の丈
古き名の一料亭や都鳥 阿波野青畝
名城に羽根休ませて都鳥 上西啓三
喰ふときの翼を立てて百合鴎 依光陽子
土手に佇ち都鳥見る役者かな 大橋越央子
塩にしてもいざことづてん都鳥 芭蕉
声も立てず野分の朝の都鳥 闌更
夕暮の水にもどりし百合鴎 藤澤美代
大川にゆかりはひとり都鳥 中村汀女
大正で変りたる世や都鳥 京極杞陽
寄り添つて波を忘れし都鳥 福永みち子
富士見ゆる日和となりぬ都鳥 皆川盤水
対岸は靄の深川都鳥 安田孔甫
嵯峩寒しいざ先くだれ都鳥 蕪村 冬之部 ■ 泰里が東武に歸を送る
川の面にこころ遊びて都鳥 高濱虚子
川幅が空を拡げて都鳥 稲畑廣太郎
川船に別れはありぬ都鳥 深川正一郎
川見ゆる二階住居や都鳥 大木さつき
帰る舟ゆく舟都鳥さんさ 星野立子
御降や嘴を抱ける都鳥 増田龍雨 龍雨句集
思ひ出はなほはるかなる都鳥 川口咲子
我舟におもて合せよ都どり 高井几董
扨あかき娘の足袋や都どり 黒柳召波 春泥句集
放浪の胸ゆたかなる百合鴎 原田喬
料亭に今歩む我都鳥 上野泰 春潮
明らかに高きに飛べり都鳥 池上浩山人
明治座の幟は赤し都鳥 内田ゆたか
昔男ありけりわれ等都鳥 富安風生(1885-1979)
昭和夢見し少年倶楽都鳥渡る 高橋康菴
時化来るや内濠を打つ都鳥 内田百間
晩節や大浪に乗り都鳥 高澤良一 鳩信 
曳かれ行く筏の上の都鳥 宇野直治
書き捨つる一句都鳥の句なり 山口青邨
木場堀に都鳥来ることありと 高浜年尾
橋向うがたと淋しく都鳥 中村汀女
橋越へて水もしたたる都鳥 高澤良一 鳩信 
母を亡くし友ここに住み都鳥 深見けん二
水はやき宇治の瀬波や都鳥 鳥羽とほる
水呑んでよろめく鳥は百合鴎 岩田由美
水神の森を遠くに都鳥 福田寿堂
波がしら一つにひとつ都鳥 高本莫
泣き伏せる狂女に都鳥飛ぶも 池内友次郎
浮名とは明治の言葉都鳥 矢津 羨魚
煤けたる都鳥とぶ隅田川 高濱虚子
物干に女出て来て都鳥 松本たかし
百丈の帯を解きたる百合鴎 古賀まり子
百合鴎ちりぢりに恋きれぎれに 仙田洋子 雲は王冠
百合鴎少年をさし出しにゆく 飯島晴子
百合鴎東京に空失ひて 千代田葛彦 旅人木
百合鴎浜より翔ちて伊勢の方 高澤良一 鳩信 
百合鴎灰色に河口曇りゐたり 長谷川かな女 花寂び
百合鴎舞へる夜明けや復活祭 古賀まり子
百合鴎道中は手を愛しめる 宇多喜代子
秋水に浮べる紙の都鳥 阿部みどり女
窓にとぶ都鳥あり筆始 桜坡子
紅梅と都鳥とは似合はしや 京極杞陽 くくたち下巻
耀ひにつつまれ中洲の都鳥 加藤知子
船過ぎし後に数増す都鳥 白木サダ子
菜つ葉服マストに干され都鳥 北野民夫
落第やひとつ泛いてる都鳥 龍岡晋
蝶ネクタイ外してをりぬ都鳥 黒田咲子
言問に住みしは昔都鳥 鷲巣ふじ子
遅れ翔つ一羽だになし都鳥 西村和子 かりそめならず
遊学の頃はよく見つ都鳥 森田峠 三角屋根
都鳥あそぶ川舟にも国旗 加倉井秋を 『胡桃』
都鳥かがやき下りる芥かな 深川正一郎
都鳥とらへし波に浮びけり 中村汀女
都鳥とんで一字を画きけり 高浜虚子
都鳥なつかしきことをいかんせん 京極杞陽
都鳥より白きものなにもなし 山口青邨
都鳥ゐる水につゞく厨かな 久米正雄 返り花
都鳥を染めし暖簾や冬木茶屋 雑草 長谷川零餘子
都鳥下町まつる神多く 有馬籌子
都鳥二三羽とべる焚火かな 清原枴童 枴童句集
都鳥今も跳ねをる勝鬨橋 高澤良一 鳩信 
都鳥名所佃の渡し無く 長谷川かな女 花寂び
都鳥吹かれ来にけり花川戸 野村万蔵
都鳥囀つて曰く船頭どの 正岡子規
都鳥昭和の白のながれゆく 津根元潮
都鳥時折紅蓮見せにけり 日原傳
都鳥正座の足をして舞へり 大石雄鬼
都鳥水汚れたる世となりし 岡安仁義
都鳥汚れし電車橋渡る 長谷川浪々子
都鳥汝も赤きもの欲るや 山口青邨
都鳥漂ふ波に情あり 森田桃村
都鳥父亡き我に高く飛ぶ 深見けん二
都鳥狂女のあはれ今もあり 池内友次郎 結婚まで
都鳥空は昔の隅田川 福田蓼汀 山火
都鳥群れしんがりを船の来る 安藤綾子
都鳥群れ何ごとも無きごとく 京極杞陽 くくたち下巻
都鳥舞ふや子恋の句碑の辺に 佐藤いね子
都鳥近くに遊ぶ謡ぞめ 深川正一郎
都鳥都は汚れゆくばかり 湯浅桃邑
都鳥都を分つ水ひろ~ 阿波野青畝
都鳥飛び交ふ猫間障子かな 京極杞陽 くくたち下巻
都鳥飛んで一字を画きけり 高浜虚子
都鳥高しや朝の日に向くは 岸風三樓
長き橋渡りて風の都鳥 鵜川 易子
雨が霙に変つて都鳥流るる 長谷川かな女 花寂び
雪の日の隅田は青し都鳥 正岡子規
飛んでゐても浮いても都鳥眩し 小林敏朗
鬘屋のウインド小振や都鳥 北野民夫
その昔膳所で越年都鳥  高澤良一  燕音
浮寝とはゆかざる鳥羽のゆりかもめ  高澤良一  燕音
ゆりかもめ女(め)顔をすいと寄せてくる  高澤良一  燕音
下積みのあくせく知らぬ都鳥  高澤良一  素抱

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:42 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

*えりの戸にかたまり浮ける鳰 寺川祐郎
*えりの簀に逃げ腰の鳰波を生む 伊藤白楊子
*えり挿すや遠つらなりに鳰のむれ 五十嵐播水
あかときの淡海は昏き鳰の笛 春樹
あやとりの橋の下なり鳰潜る 柿本多映
いとやなぎただ垂れ朝の鳰啼ける 木津柳芽 白鷺抄
いまどこへ浮かび出でても鳰曇 今瀬剛一
うらかれや比叡まで来ても鳰の海 尾崎紅葉
かくれけり師走の海の鳰 芭 蕉
かくれ津の地蔵とあれば月の鳰 吉野義子
かたむける日に鳰のなきにけり 風三楼
ききわけのよき子を育て鳰 大石悦子
きらめきし後の昏きが鳰 齋藤玄 『狩眼』
くれなゐの夕べ鳰が首だす寂しくて 小寺正三
くゞゐ鈍く鳰鳥はさとき汀かな 加舎白雄
けふ寧し日を曳き日を摶ち鳰真鴨 石田あき子 見舞籠
さまざまな声経て雪の鳰のこゑ 岡井省二
さらばこそ雪中の鳰として 赤尾兜子
すれちがふどちらの鳰も子をつれて 鈴木ひなを
たかだかと三代の松鳰の岸 加藤耕子
ちちははの彼岸にいつも鳰 田中荒砂
とんとつかめぬ曲り江の鳰の数 長田等
ねそベりて京都ながむる鳰 田中裕明 櫻姫譚
はるかきて布施の溜鳰聞くばかり 佐野美智
ひら比叡わか葉影さす鳰の海 中勘助
まだ居りし我におどろき鳰くゞる 右城暮石 上下
まんまるい胸から鳰の浮いてくる 望月一美
みささぎの鳰の岸なる若菜摘 松下艸石
みづうみの半眼にして鳰 中田剛 珠樹以後
めぐり来し球体を抱き鳰浮きぬ 小檜山繁子
めざめたり浪に揉まるる鳰ふたつ 中田剛 珠樹
めをと鳰玉のごとくに身を流す 加藤知世子 花 季
やはらかな雨足ばかり鳰の海 飴山實 『次の花』
ゆる~と鳰を見て行く遅刻かな 島村元句集
わが思ふはじまりいつも鳰くるよ 岡井省二
わが思ふ所へだてゝ鳰浮きぬ 徳永山冬子
をちかたに鳰のくれゆく干菜かな 清原枴童 枴童句集
ポケツトの手を出せば鳰もぐるなり 右城暮石
一つ行きてつゞく声なし鳰 渡辺水巴 白日
一呼吸置いて同時にもぐる鳰 長田等
一夜寝て淡海に浮かぶ鳰の数 関戸靖子
一夜来て泣友にせん鳰の床 風国 (芭蕉翁追悼)
一時間先の約束鳰浮いて 橋本榮治 麦生
一条の洩れ日を鳰のふり返り 能村登四郎
一湾や二つの鳰のゐるばかり 洗耳
世の寒さ鳰の潜るを視て足りぬ 澤木欣一
二三軒煤掃出すや鳰の海 妻木 松瀬青々
五月雨に鳰の浮き巣を見に行かむ 芭蕉
仏生会鳰には鳰の笛仕え 佐々木栄子
俳諧の膳所に致仕して鳰 麻田椎花
初鴨に居着の鳰のよく潜る 大串章
去り難し江に浮き沈む鳰を見て 徳永山冬子
古利根の水なめらかや鳰進む 高野素十
向替へてまた水ひろし春の鳰 鷲谷七菜子 游影
吾がつぶて妹がつぶてに鳰遠し 粂田夕洋子
吾が鬱を鳰が銜わえて去りにけり 宮道三生
吾も見き師走の湖のその鳰を 相生垣瓜人
啼きごゑとならずつぶやく夜の鳰 森 澄雄
啼きとほす潜りても恋やまぬ鳰 佐野美智
四方より花吹き入れて鳰の波 芭蕉
土佐湊鳰のゆらゆら朝寝して 高澤良一 寒暑 
地下に温泉が流れて潟に鳰潜る 公鳳
夏野来て鳰に色なきことわびし 原コウ子
夕月や鳴きつゝ鳰のすれちがふ 石井とし夫
夕波にまぎるる鳰のかなしけれ 中村汀女
夕雉の走り留や鳰の海 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
夜の潟の鳰驚かし燐寸摺る 西村公鳳
大いなる沼見せにゆく子づれ鳰 石井とし夫
大年の雨の間に聞く鳰の笛 松村蒼石 雪
天平の鳰の裔かや初もぐり 飴山實 『次の花』
子の鳰は見えず親子の鳴き交ふも 吉野義子
寄つて来て鳰の見てゐる雑魚を選る 石井とし夫
山鳰の首の小さき二月かな 八木林之介 青霞集
嶽々や鳰とりまはす雪けぶり 史邦 芭蕉庵小文庫
巣ごもりの鳰らし舟のみちを替ヘ 河野南畦 湖の森
巣立鳰沼のどこかに鳴いてをり 石井とし夫
幼なくて息のつづかぬ鳰 西村和子 かりそめならず
彼の女は俥にて去る鳰は浮いて流れる 中塚一碧樓
御用始鳰見ることもその日より 倉橋澄子
恋しさのつのりしところ鳰現るる 柴田佐知子
息長く潜きし鳰の浮くあたり 後藤夜半 底紅
息長に子鳰潜つて見せにけり 樋笠文
懸命に見ゆる浮かみしときの鳰 ながさく清江
掛茶屋に鳰なぶりして憩ひけり 清原枴童 枴童句集
揺れゐるは湖のみならず鳰浮巣 木内怜子
散り紅葉泛べる水に鳰あそぶ 春潮
日かげる時連れ鳴いて鳰涼し 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
日永さの鳰の湖べり長辿り 宮津昭彦
日白うして鳰啼くや松納 渡辺水巴 白日
春の暮鴎の波に鳰の乗り(近江) 岸田稚魚 『雪涅槃』
春昼の透き通りゐる鳰の声 青葉三角草
昼月の水面にかろし鳰の巣も 佐野美智
暮れはてて光の底の鳰 山西雅子
月光の波の鍵盤鳰の唄 原 柯城
月明の青さあまりて鳰啼かしむ 加倉井秋を 午後の窓
月白うして鳰啼くや松納 渡辺水巴
有為の世やいくたび鳰の浮かみても 伊藤孝一
朝茜鳰の浮巣を荘厳す 鈴木公二
朝蛙ひとつの声と鳰啼けり 木津柳芽 白鷺抄
東京に出て日は西す鳰の岸 石田波郷
東風の波かぶりては鳴く鳰 清崎敏郎
板の如き沼に逆立ち鳰沈む 石井とし夫
枯蓮や水さゞめかす鳰一つ 西山泊雲 泊雲句集
柴漬の艫臍泣きゆく鳰の中 飴山實 『次の花』
梅のみち鳰ゐて水の寒からず 大場白水郎 散木集
梅雨に入る鳩時計ほど鳰啼いて 樋笠文
次の間のごときがありて鳰浮巣 亀井美奈美
母鳰の滑水帰着浮巣揺るよ 香西照雄 対話
比叡より横川へくだる道のべの合歓よりひくし鳰の湖づら 太田水穂
比良夕風赤襟鳰の尻押せり 高澤良一 燕音 
水の玉振るひおとせよ鳰 中田剛 珠樹
水仙の咲きたるうへを鳰のこゑ 鈴木しげを
水尾引いてをりたるは鳰初明り 石井とし夫
水底の日暮見て来し鳰の首 福永耕二(1938-80)
水走る鳰に浮巣の在所知る 中井余花朗
水走る鳰に稲舟はや遠し 五十嵐播水 埠頭
水靄に鳰のよく鳴く日和かな 高橋淡路女 梶の葉
水音にきよとんきよとんと鳰 高澤良一 さざなみやっこ 
水鳥もふねも塵なり鳰の海 梅室
氷る池に鳰遥かなる晨かな 島村元句集
永すぎる鳰の潜水人に母心 香西照雄 素心
求むるものなき妓と漕げり鳰とほく 宮武寒々 朱卓
沈むあり浮かむあり鳰もとの数 成瀬桜桃子
沈むべく水走りきし鳰親子 中村汀女
沈む日の真赤を囃し鳰の鳴く 石井とし夫
沈む鳰の水深く鮒釣れにけり 碧雲居句集 大谷碧雲居
沈めば沈み浮かめば浮かみ鳰二つ 鈴木花蓑
河霧や舳に浮きし鳰一つ 島村元句集
沼の鳰はかないをなご呼べどこず 瀧井孝作
泛かみ出て母の遠さよ鳰 行方克巳
波の中鳰あそばせて野止め村 猿橋統流子
波光るとき鴨いづこ鳰いづこ 稲畑汀子 汀子第二句集
流さるる浮巣に鳰の声悲し 正岡子規
流さるる浮巣を鳰の見放さず 大久保橙青
浅黄空巣につく鳰の声なるかな 冬の土宮林菫哉
浦浪に鳰の群れゐる暮春かな 佐野まもる 海郷
浮かび出て遠き日向や鳰 山田弘子
浮き出でて水輪の中の春の鳰 森重昭
浮くときも生れる水輪鳰 京極杞陽 くくたち下巻
浮び出て冠鳰といふ名あり 石井とし夫
浮み出て水輪の中の鳰寧し 鈴木貞雄
浮巣には鳰ゐず雨の降るまゝに 萩原寿水
浮巣守る鳰の長鳴き沈みけり 本田一杉
浮御堂鳰の浮巣を秘中の秘 安住敦
涼しさの鈴振るごとき鳰のこゑ 石田郷子
深曇りして時雨よぶ鳰の海 柴田白葉女 『冬泉』
湖や渺々として鳰一つ 正岡子規
湖風に鳰の浮巣のよるべなし 長谷川史郊
満腹仔鳰杭にのぼつて身を崩す 北野民夫
漂へるものと遊びて鳰 大石悦子
潜かむと鳰一身を緊めし 本井英
潜りたる鳰のひとつが浮かび来ず 和田祥子
潜りても浮きても一羽春の鳰 池田弥寿
潜り際毬と見えたり鳰 中田剛 珠樹以後
潜る鳰浮く鳰数は合ってますか 池田澄子
濠の鳰焚火の人に浮き沈む 島村元句集
瀬田唐橋くぐり遊びの鳰一つ 高澤良一 燕音 
無駄金をたんとつかへば鳰 辻桃子
燕(つばくら)の雁に問うてや鳰まはり 内藤丈草
燦燦と浪と浪間の鳰 中田剛 珠樹
田の水に鳰の水尾ある雪解かな 大橋櫻坡子 雨月
田の池に四日の鳰のあつまりぬ 星野麥丘人
畠打や肱の先の鳰の海 一茶
疾うに鳰目覚めて居りぬ堅田寒 高澤良一 燕音 
百姓の漸く暇に親子鳰 福田蓼汀 山火
真菰刈る童に鳰は水走り 水原秋櫻子
睡蓮に鳰の尻餅いくたびも 川端茅舎
石集めてひとり遊ぶ子鳰淋し 清原枴童 枴童句集
破れ鐘も霞む類か鳰の海 言水
秋天や飛べざる鳰は水に在り 中島月笠 月笠句集
秋苑に雛よぶ鳰の声透る 西本一都
積みはじむ大藁鳰となるらしき 中田みづほ
空つぽの鳰の浮巣の見えにけり 仲田益子
竹生島へ眼をやり鳰の浮くを待つ 猿橋統流子
筑摩江やたつべをのぞく鳰汝村 俳諧撰集「有磯海」
糸ゆふのちる方見せよ鳰の海 斯波園女
網簗の少し上ミ手に鳰遊ぶ 高濱年尾
緑蔭へ鳰をながせる瀬のきほひ 瀧春一 菜園
群鴨の中より出でゝ鳰となる 石井とし夫
翔ぶことを夢みて鳰の子の潜る つじ加代子
老畫家のけふは妻伴れ鳰の岸 石田あき子 見舞籠
脇僧に似て坐りをり鳰の湖 登四郎
舟やれば鳰の減りつゝ遠ざかる 奈良鹿郎
舟通しふかく入り来て鳰の居り 水原秋櫻子
芭蕉忌の暮れて甘ゆる鳰のこゑ 澄雄
花の幕うしろ向なる鳰の池 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
花眼には見えざる鳰の鳴きにけり 有働 亨
花筏やぶつて鳰の顔のぞく 飴山實(1926-2000)
苗代の水のつゞきや鳰の海 松瀬青々
荒るる潟鳰くつがえり冬日照る 西東三鬼
菊の香に鳰も硯の水添へん 服部嵐雪
菊人形鳰の水輪の幾重にも 田中裕明 花間一壺
菜が咲いて鳰も去りにき我も去る 楸邨
菜の花の匂ひや鳰の磯畑 素牛 俳諧撰集「藤の実」
菜洗ひの去りてひろごる鳰の波 川勝 春
菱畳より貌あげて鳰の子よ 岸風三楼 往来
萍に忍ぶが如く鳰浮けり 鈴木花蓑句集
萍のひらきて閉ぢて鳰くゞる 素十
萱鳰があり粟鳰も稗鳰も 橋本鶏二
葦のひま鳰の浮巣を匿しけり 石川桂郎 四温
薄氷やひとりたのしき鳰 石田波郷
蛇の来る鳰の浮巣ときけば憂し 高浜虚子
蛍火や吹とばされて鳰のやみ 向井去来
蜻蛉や日は入りながら鳰のうみ 惟然
螢火や吹きとばされて鳰のやみ 向井去来(1651-1704)
行き違ひたり鴨の水尾鳰の水尾 行方克巳
行く年の鳰見て登り窯を見て 藤田あけ烏 赤松
見渡して鳰の数ゐる松手入 森 澄雄
親鳰の子に与ふもの水底草 高澤良一 素抱 
蹤いてゆく鳰にあるらし主導権 江川由紀子
身に余るもの水に捨て鳰あそぶ 石川 桂郎
軽重を問はれて鳰の潜りけり 鈴木栄子
追ふ鳰も追はるゝ鳰も潜りけり 猿渡青雨
道の児も鳰も西日の倭文(しとり)村 龍太
道よりも天は淋しき鳰 河原枇杷男 定本烏宙論
遠目きくさびしさ鳰の数もよみ 能村登四郎
遠鳰や語らひ歩く二人づれ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
都会派の鳰ゐて浮くばかり 真 幸晶
酔うてゐてすとんと酔ふや鳰のこゑ 岡井省二
醤蝦舟に鳰のたそがれ襲ひきぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
金泥の水の落日鳰くぐる 桂信子 遠い橋
隠沼に鳰ゐて錆びぬ白椿 石川桂郎 高蘆
雨の日のさびしさ知るや鳰 中村汀女
雨降れば雨の白さを鳰浮巣 加古宗也
雪の戸にかぶる葉竹や鳰遠し 雑草 長谷川零餘子
雪を待つばかりの鳰と観世音 橋石 和栲
雪晴や水騒がして交る鳰 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
靄ついて鳰の浮巣を見にゆける 中田剛 珠樹以後
頭勝ちなる鳰の身すぐにくつがへる 橋本多佳子
風の波消えゆき鳰の波残る 内田准思
風浪やとばしりあげて沈む鳰 鈴木花蓑句集
風筋をとほせんばうの鳰浮巣 関戸靖子
鳰(にお)がゐて鳰の海とは昔より 高浜虚子(1874-1959)
鳰、顔を出せばまはりに河骨黄 成瀬桜桃子 風色
鳰あまた北し南し比良の裾 阿波野青畝
鳰いつも目覚めてをりにけり 京極杞陽 くくたち下巻
鳰がゐて川おのづから岐れゆく 山口誓子
鳰がゐて鳰の海とは昔より 高浜虚子
鳰が生む沼の靨のまたひとつ 耕二
鳰くぐり水輪むなしく遊びけり 猿橋統流子
鳰くぐり潜りて地震の神に会ふ 小泉八重子
鳰ちかく湖駅除雪車汚れたり 宮武寒々 朱卓
鳰どりに鴨添ひゐてや寒見舞 岡井省二
鳰どりのかづく蓑なし芦の雨 乙二
鳰どりの川に来てゐるふくさ藁 岡井省二
鳰どりも鴎もこゑの近松忌 森澄雄 空艪
鳰どりや顔見合はせて又はひる 蝶夢
鳰なくや梁にさす夕日かげ 金尾梅の門 古志の歌
鳰にも青空のうれしくて 石田郷子
鳰に跳んでみせたる沼の稚魚 高澤良一 さざなみやっこ 
鳰のいつか二つとなつてゐし 安藤馬城生
鳰のよく潜るさいはひさはにあり 岡井省二
鳰の二羽離るべき刻きて離る 成瀬桜桃子 風色
鳰の仔や花藻の下辺餌に満つや 中村草田男
鳰の前腕組むは思ひ組むごとし 福永 耕二
鳰の声さざ波となり蘆青む 石田 厚子
鳰の声して風除の裏は湖 柏翠
鳰の奥の浮み出けり宵月夜 成美
鳰の子に水は砦でありしかな 河野美奇
鳰の子に淡海の靄のまだ晴れぬ 鷲谷七菜子
鳰の子のおくるるに親泳ぎ寄り 中村汀女
鳰の子のかくもをりしよ*えりの内 竹内留村
鳰の子のくゞる稽古や秋の池 青木月斗
鳰の子のこゑする処暑の淡海かな 森 澄雄
鳰の子のつむりの毳吹かれをり 石嶌岳
鳰の子のひとりあそびをしそめたり 石井とし夫
鳰の子の二羽ゐて水輪絶え間なし 田村恵子
鳰の子の巣よりこぼれて泳ぎだす 高橋悦男
鳰の子の水尾うすうすと擴がらず 岡安仁義
鳰の子の潜り下手なるをかしさよ 宮下翠舟
鳰の子の行手ゆくてに初茜 佐野鬼人
鳰の子の野分の波をかぶりたる 大串章 百鳥 以後
鳰の子や波みんなみへみんなみヘ 橋本榮治 越在
鳰の岸女いよいよあはれなり 石田波郷(1913-69)
鳰の巣に月光波を送りをり 工藤義夫
鳰の巣に波のいたりて舟過ぐる 山下豊水
鳰の巣に田舟の波の余りけり 藤田あけ烏 赤松
鳰の巣のさはりし指に水上る 松藤夏山 夏山句集
鳰の巣の廃りて浮けり蒲のもと 松藤夏山 夏山句集
鳰の巣の揺るさざなみも近江かな 安住 敦
鳰の巣の浮み出けり宵月夜 成美
鳰の巣の湖心の月に背く哉 尾崎紅葉
鳰の巣は鷭の巣よりも暖かし 松藤夏山 夏山句集
鳰の巣や水郷を守る老船頭 岸 信子
鳰の巣や浮きつ沈みつ流されず 菊地万里
鳰の巣や蛍もかりの足やすめ 荊口 俳諧撰集「有磯海」
鳰の巣をさとられまいと草の揺れ 檜 紀代
鳰の描く水尾の白線剛かっし 竹下しづの女句文集 昭和十一年
鳰の春あけぼのの水輪かな 八木林之介 青霞集
鳰の水の青さも婚後なる 大峯あきら
鳰の水尾くれそむる舳に歌妓佇てる 宮武寒々 朱卓
鳰の水尾浮巣へもどるまつしぐら 大竹きみ江
鳰の水暮れゆく根深きざみけり 金尾梅の門 古志の歌
鳰の水脈消え一枚に森の影 宮津昭彦
鳰の水遠煙突の影を置く 佐野美智
鳰の浮ききし方の暮れてをり 館岡沙緻
鳰の浮くべき方を心待ち 岸風三樓
鳰の浮巣へ日も腰かがめ母の相 磯貝碧蹄館 握手
鳰の海紅梅の咲く渚より 森澄雄 鯉素
鳰の着水光るよ椅子へ出勤す 香西照雄 対話
鳰の笛ありたるところまで歩く 武石花汀
鳰の笛湖北の旅のはじまりし 井上 たか女
鳰の笛風のつらしと韻きけり 比奈夫
鳰の親として目の前で消えて見す 吉岡翠生
鳰の頸伸びしと見しが潜りけり 高浜虚子
鳰は潜水精進吾は句精進 高澤良一 鳩信 
鳰ひそむ気配どこかに浮巣見る 石井とし夫
鳰ひとつ消えて冬田の夜が来たる 楸邨
鳰ひとりぼつちの水輪描き 西村和子 かりそめならず
鳰も居りわが初だより淡海より 澄雄
鳰を見てなぐさめられてゐたりけり 石井とし夫
鳰を見てまた歩き出す風の中 塚本久子
鳰を見て他にもひとり女佇つ 萩原麦草 麦嵐
鳰を見て浦の郵便局のひと 木村蕪城 寒泉
鳰二つ対ひあひゐてなくなりぬ 後藤夜半 翠黛
鳰人をしづかに湖の町 森澄雄 浮鴎
鳰人を面白さうに見る 高澤良一 随笑 
鳰入(かいつぶり)人をしづかに湖の町 森澄雄
鳰円山川の緩流に 京極杞陽
鳰吹かるる岸の曠野なり 斎藤玄
鳰啼いて畝傍の町の昃りぬ 下村槐太 天涯
鳰啼けばゆふぐれ水のみだれのみ 斎藤空華 空華句集
鳰啼けり近江どの田も燻すとき 飴山實
鳰啼ける湖見てをれば火の恋し 椎橋清翠
鳰引佐郡引佐を潜りけり 峠 素子
鳰残す波紋に倦くよ死者忘れ 香西照雄 素心
鳰水凹ませて浮き出でし 小川軽舟
鳰沈みひとりひろがりゐる水輪 石井とし夫
鳰沈みわれも何かを失ひし 中村汀女
鳰沈み水は一枚板となる 森田峠
鳰流れゆき八重桜流れゆき 岸本尚毅 鶏頭
鳰浮きあはせたる波路かな 軽部烏帽子 [しどみ]の花
鳰浮きては人に遠ざかり 三浦みち子
鳰浮くと即座に寒風襲ひたる 関森勝夫
鳰浮くや湖光の鏡こなごなに 関 典子
鳰浮くを見届けざれば夜も思ふ 岡本眸
鳰浮巣鯉しろ~とくゞり去る 佐野青陽人 天の川
鳰消えておぼろの水となりにけり 町田しげき
鳰潜きあとの無音に山眠る 野見山ひふみ
鳰潜き水輪途方に暮れてあり 関森勝夫
鳰潜くたびに湖国の暮れゆけり 山下千代子
鳰潜るしばらく水に透けてゐし 鈴木貞雄
鳰潜るたびに暮れゆく鳰の海 滝野三枝子
鳰葭に集りぬ湖暮るる 中村汀女
鳰見てゐるは母子その他は恋人達 鈴木栄子
鳰見てをり家人に行方晦まして 安住 敦
鳰見むと秋の簾を上げにけり 辻桃子
鳰親子芦出てひかる声のあと 猪俣千代子 堆 朱
鳰載せてけはしき水となり初めつ 竹下しづの女 [はやて]
鳰遠く花浮く水があるばかり 桂信子 花寂び 以後
鳰顔を洗ひに潜きけり 山崎十死生
鳰鳥が潜き鴉がこれを見る 相生垣瓜人
鳰鳥に仕科似てくる寒釣師 能村登四郎 幻山水
鳰鳥のこゑにつのれる牡丹雪 根岸善雄
鳰鳥の息のながさよ櫨紅葉 誓子
鳰鳥も蘆刈る人も風の中 黄枝
鳰鳥や池の底より大あぶく 橋本榮治 逆旅
鳰鳴いて鳰鳴いて湖暮れんとす 大橋敦子
鳰鳴きて闇ことごとく鳰の湖 殿村莵絲子
鳰鳴くや夕ベは花の寒けきに 林原耒井 蜩
鳰鳴くや春著の鈴も夕急ぎ 香西照雄 対話
鳰鳴くや落葉踏みくる茶の帽子 鷹女
鳴きつれてしばらく鳰の馳せかひぬ 比叡 野村泊月
鳴き交しゐて鳰は鳰鴨は鴨 三村純也
鴨がゐて鳰がゐて池なつかしき 藤松遊子
鴨の崖鳰ははなれてくゞりける 及川 貞
鴨ゐると鳰ゐると月澄みにけり 行方克巳
鴨宿の裏あらはなり鳰 中井余花朗
鶏のあつまり鳰もあつまりて 岸本尚毅 舜
黒点のふえし太陽鳰の上 藤田湘子
かいつぶりいくど引きこむ空の紺 武川一夫
かいつぶりさびしき波の日向かな 櫛原希伊子
かいつぶりさびしくなればくゞりけり 草城
かいつぶりさみしき数のまま暮れし ながさく清江
かいつぶりつづき潜ぎてつづき出づ 喬人
かいつぶりに女のなげし石とべり 銀漢 吉岡禅寺洞
かいつぶりふいと潜れば何もなし何もなしとぞ水の輪が浮く 安永蕗子
かいつぶりほどの愛嬌なくもがな 片山由美子 水精 以後
かいつぶりもつとも日射し強き辺に 棚山波朗
かいつぶり人は夕映着て帰る 林翔
かいつぶり啼きしか汐木きしみしか 成田智世子
かいつぶり女のなげし石とべり 銀漢 吉岡禪寺洞
かいつぶり山をのぞきにくぐりけり 矢島渚男 梟
かいつぶり思はぬ方に浮て出る 正岡子規
かいつぶり未明のこゑは咲くやうに 中田剛 珠樹
かいつぶり波郷忌過ぎし淡海にて 鈴木しげを
かいつぶり浮び昔のまゝの沼 加地北山
かいつぶり浮出る迄見て過る 暁台
かいつぶり浮寐のひまもなかりけり 正岡子規
かいつぶり潜き光輪のこしけり 高崎菁枝
かいつぶり潜けば湖の窪みけり 加古宗也
かいつぶり潜けるを見て壮ならず 高澤良一 燕音 
かいつぶり潜りしあとの霞かな 鷲谷七菜子
かいつぶり潜り出でたる比良面 高澤良一 燕音 
かいつぶり潜り居る間も照り昃り 清水忠彦
かいつぶり硝子の沓を宙に見す 磯貝碧蹄館
かいつぶり素潜り芸の荒削り 高澤良一 随笑 
かいつぶり許して湖のくすぐつたし 櫂未知子 蒙古斑
かいつぶり鉄砧しばし火の雫 子郷
かいつぶり雨が嫌ひでまた潜る 飯田 直
かいつぶり首うごかせば進みけり 遠藤睦子
かいつむりひかりとなつて浮びたる 石井とし夫
かいつむりみな潜りたり人も去る 大野林火
かいつむり何忘ぜむとして潜るや 安住敦
かいつむり沈むたび日を傾かす 成瀬桜桃子 風色
かいつむり浮くたび遠くなつてゆく 石井とし夫
かいつむり焚火たひらになりにけり 岡井省二
かりそめの水輪の中のかいつぶり 倉田絋文
せはしなく息長く汝かいつぶり 中村明子
どの岸に佇ちても遠しかいつむり 榎本冬一郎 眼光
にほどりを見てゐる親子遍路かな 岸 風三楼
ウオッチングの目を弄ぶかいつぶり 宮田俊子
人の手に水晶の数珠かいつぶり 磯貝碧蹄館
今日の日が林に終るかいつぶり 有働亨 汐路
東京の暮色を好むかいつぶり 橋本修
比良晴れて花に浮身のかいつぶり 矢島渚男 天衣
淡海いまも信心の国かいつむり 澄雄
親と子の一つの水輪かいつぶり 瀬戸十字
雪山はゆつくり霞むかいつむり 岡井省二
頻波のかがやきに出てかいつむり 阿波野青畝
飛ぶ雪に鋼の光かいつぶり 金箱戈止夫
練達の士なり堅田のにほ鳥は  高澤良一  燕音
覚め際のこゑ一つしてかいつぶり  高澤良一  燕音
水破る音も夕づくかいつぶり  高澤良一  燕音

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

石炭

石炭

例句を挙げる。

うづ高き石炭かすや白き薔薇 寺田寅彦
うららかや牛の子も積む石炭船 田中英子
ちちろ鳴く石炭の闇滑らかに 榎本冬一郎 眼光
ストーブに石炭をくべ夢多し 細見綾子 黄 炎
一塊の石炭くらき焔かな 栗内京介
一日のはじまり石炭を掬ふ音 徳永山冬子
卓上の石炭一箇美しき 三橋敏雄(1920-2002)
哄笑のうちに石炭かつと燃えにけり 青峰集 島田青峰
夕涼石炭くさき風が吹く 正岡子規
岬颪朝の石炭殻捨てに出て 平井さち子 鷹日和
復活祭石炭船は黒き眼積む 磯貝碧蹄館 握手
慇懃去った石炭町の フランスパン 伊丹公子 アーギライト
手に重し大塊りの石炭は 橋本鶏二
明日が見える闇を石炭箱に満たす 寺田京子 日の鷹
月の出や石炭殻山裾に葱育て 友岡子郷 遠方
水母ゐるむかし石炭積出し港 花田由子
河豚釣りやボロ石炭船入港す 村山古郷
海の上に夕の雨の寂しく降り石炭はこぶ船一つをり 小泉苳三
港内皆石炭船や海月汐 楠目橙黄子 橙圃
満載して対岸に倦む石炭舟 榎本冬一郎
無言貿易石炭を骸(おどろ)かす雪 竹中宏
燃ゆる石炭棄てて運河の落葉照らす 加藤楸邨
石炭にシャベル突つ立つ少女の死 西東三鬼
石炭の太古無となる炎かな 上野泰
石炭の尽きし山々紅葉せる 山口誓子
石炭の露頭芒を生ひしめず 森田峠 逆瀬川
石炭を口あけ見惚れ旅すすむ 金子兜太
石炭を投じたる火の沈みけり 高浜虚子
石炭を挽く馬の肋骨へ雑草がのびてゐる 嶺達二
石炭を掬ふ音冬遠からず 山口誓子
石炭を欲りつゝ都市の年歩む 竹下しづの女句文集 昭和十四年
石炭を運びこぼしぬ海深し 雑草 長谷川零餘子
石炭箱は牛の骨格山ざくら 小檜山繁子
石炭箱を靴に踏まへし暖炉かな 雑草 長谷川零餘子
石炭船来めし屋の葵旗のごとし 高井北杜
石炭船流るゝ菊を押し戻す 殿村莵絲子 遠い橋
石炭車門司へ入りくる長々と 楠目橙黄子 橙圃
索道の石炭落す麻畠 山口誓子
聖霊の御名に由り石炭を焚き添ふる 山口誓子
船頭の石炭がよく燃えて夜汐があげる 橋本夢道 無禮なる妻抄
荒蝦夷の石炭の火のにほひかな 中條 明
貧児の眼石炭の炉に到るかな 青峰集 島田青峰
起重機の影が石炭山走る 島崎芳月
車上の石炭一箇美しき 三橋敏雛
駅凍てぬ石炭卸し絶間なく 杉本寛
鶴来たる石炭の街眠る夜に 対馬康子 愛国
石炭紀の模型蜻蛉に秋が来て  高澤良一  ももすずめ
大井鐵道
汽車走らす石炭一屯水七屯  高澤良一  石鏡



以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:38 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

セーター

セーター

例句を挙げる。

おとろへしかほうつむきやセーター編む 瀧井孝作
とっくりセーター人波をゆく酉の市 高澤良一 燕音 
ふりかぶり着てセーターの胸となる 不破博
もう泣かぬ顔セーターを抜け出せり 奈良文夫
やや寒のセーター匂ふナフタリン 風生せん 吉屋信子
セーターにつつむ遠野の喉仏 古舘曹人 樹下石上
セーターにもぐり出られぬかもしれぬ 池田澄子
セーターに乳頭尖らせて少女 河本勝利
セーターに枯葉一片旅さむし 加藤楸邨
セーターに編み込む雪にこごえけり 対馬康子 吾亦紅
セーターに頭のかたち頭出る 須川洋子
セーターに顎を埋めて少女期去る 上野澄江
セーターに顔出して遠き山が見ゆ 鎌倉佐弓 潤
セーターに齢は問はぬジャズ仲間 山田弘子 こぶし坂
セーターのジャングルジムに動く赤 西込とき
セーターの上に口あり笑ひあり 林翔
セーターの中に貧しき丘がある 櫂未知子 貴族
セーターの乳房ふつくらもの狂ひ 品川鈴子
セーターの王子風邪気におはしけり 八木林之介 青霞集
セーターの男タラップ駈け下り米 深見けん二
セーターの白は誰にも似合ふ色 稲畑汀子
セーターの紫許せ紫禁城 品川鈴子
セーターの胸にV切る銀ぐさり 渡辺寛子
セーターの色とりどりに八岳仰ぐ 村山古郷
セーターの試着好みの木の葉いろ 高澤良一 宿好 
セーターの赤が似合ひて老いにけり 大久保橙青
セーターの赤をよそほう悲しみも 稲畑汀子 汀子第二句集
セーターの錨の模様胸を逸れ 宇多喜代子 象
セーターの黒い弾力親不孝 中嶋秀子
セーターや蒼茫と山北にあり 折井紀衣
セーターをあれこれ鏡に夫癒ゆる 乾 澄江
セーターをすとんと着せて歯抜児よ 松本勇二
セーターを両手縛りに肚決めて 平井さち子 鷹日和
セーターを着せられし子の兎跳び 福永耕二
セーターを着て風狂に遠くをり 後藤兼志
セーターを着るとき垂れ目はつきりと 小島健
セーターを腰に巻きつけ津軽っ子 小島千架子
セーターを買ふにフランス語は要らず 西村正子
セーター出すそんなきのうが過ぎてけふ 高澤良一 燕音 
セーター着て素顔の日日の流れ行く 佐藤芙美子
今日も晴天セーターにつよく首突込む 中野茂
会ひに行く黒きセーター軽く着て 斉藤淳子
修道女セーターの白許さるゝ 平林とき子
冬哀し吾子のセーター着ることも 中村祐子
包みから赤いセーター赤くなる 伊関葉子
口下手で引込み思案で赤セーター 室岡純子
声ひらく徳利セーター喘ぎ出て 平井さち子 鷹日和
夕すげの黄のセーターを夜は着る 稲垣きくの 黄 瀬
子の数のセーター持ちてドライブに 稲畑汀子
山鳩よセーター顔にかけて寝る 諸岡直子
息吐きながらセーターに顔を出す 辻美奈子
愛ほろぶごとセーターのほどかるる 岡本 眸
成人の日やセーターの静電気 牧野桂一
戸口暫し天日仰ぐ黒セーター 鍵和田[ゆう]子 未来図
日曜の予定なきセーター被りたる 蓬田紀枝子
樟脳の香のセーターに隣りして 高澤良一 鳩信 
橋渡り来るセーターの黒い胸 坂本宮尾
母の編む児のセーターは大振りに 小俣由とり
波風を立てて帰りし黒セーター 諸田登美子
濃き色は似合はぬ歳よセーター著る 黒田充女
父われにセーターの子の体当り 島谷 征良
牧は朝風セーター白き牧夫出て 岡本差知子
目をつむりセーター脱げば剥製です 渡部陽子
着古しのセーターはおり古本市 高澤良一 燕音 
石庭とセーターの胸と対峙せり 加藤三七子
祈祷師のセーター厚く真赤なる 岩崎照子
空高し黄のセーターの編み上り 今泉貞鳳
紅いセーター着て啓蟄の詩ごころ 小松崎爽青
羚羊を胸にセーター編みあがる 古賀祥予
自転車のセーター赤し林透き 谷迪子
花冷が入るセーターの編目より 高木晴子 花 季
葉桜濃し母子のセーター同じ糸 田川飛旅子 花文字
藪入のセーター赤く出でゆきし きくの
謀反めく赤きセーター身にまとひ 樋笠文
赤き碧き夏セーターや霧に現れ 長谷川かな女 牡 丹
赤セーター一日たってなじみけり 阿部佑介
赤セーター去りゴルフ場枯れつくす 前山松花
降り立ちて又セーターをはおりけり 西村和子 夏帽子
雪晴の洗つて緊まる紺セーター 中拓夫 愛鷹
音楽がからだに在りて白セーター 熊谷愛子
頬あかしセーターあかしふたたび逢う 古沢太穂 古沢太穂句集
風のよく通るセーター空青し 池田澄子 たましいの話
黒セーター詩人のやうに生きたくて 山根繁義
一張羅カシミヤセーター来て参拝  高澤良一  随笑

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:37 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

毛布

毛布

例句を挙げる。

あくびせる日展ガール膝毛布 衣川砂生
あらよっと電気毛布に滑り込む 高澤良一 素抱 
いと古りし毛布なれども手離さず 松本たかし
こやる身に毛布は厚し誰もやさし 野澤節子 黄 瀬
ねむられぬあなたの毛布代はりだと 櫂未知子 蒙古斑
ひとり夜を更かすに馴れし膝に毛布 安住敦
まだ使ふ陸軍毛布肩身さむ 平畑静塔
みとり女に恩赦の如き足毛布 赤松[けい]子 白毫
もうそろそろなどと話して毛布のこと 高澤良一 燕音
やはらかく毛布身つつみ月の蝕 野澤節子 黄 炎
よき昼寝なりし毛布をかけありし 堺梅子
わしづかみ国無き露人毛布売る 岡田 貞峰
サーカスの天幕の裏の干毛布 宮坂一巵
ツンドラの軍隊毛布を抜け霊魂 高澤良一 燕音 
一人なら毛布を奪ふこともない 櫂未知子(1960-)
一枚のかの軍毛布いつ失せし 文挾夫佐恵
一枚の毛布を膝に稿重ね 近藤一鴻
事務の娘の外から見えぬ膝毛布 小国要
伸べ得たり電気毛布に左右の膝 水原秋桜子
佐渡航路春の毛布をあてがはれ 大石悦子 百花
兵営の力士毛布をまはし哉 森鴎外
冬の月わたしの毛布照らしおり 大高翔
別々の命の添寝毛布被て 品川鈴子
十年の苦学毛の無き毛布かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
受けとりて毛布ぐるみの子の軽く 森田峠 避暑散歩
地震長ししらず身構ふ毛布撥ね 石塚友二 方寸虚実
埓もなし電気毛布に夢追ひて 水谷 晴光
夜半覚めて毛布に眠りいそがざる 皆吉爽雨 泉声
太陽におおっぴらダブル毛布干す 楠節子
子は亡くてやはらかく折るベビー毛布 蓬田紀枝子
寝よと父母毛布に子等をつゝむ時 中村草田男
寝支度の電気毛布をぬくめに行く 高澤良一 鳩信 
寝語りも一枚毛布星流る 吉田鴻司
屍包む毛布一枚風花す 古賀まり子 洗 禮
帰化せんと思うて久し毛布干す 千本木溟子
志摩ホテル白き毛布の目ざめかな 車谷弘
抜いてある電気毛布のコンセント 齊藤美規
掴みたる砂丘の馬車の焦げ毛布 加藤かけい
攻め網と毛布掛け乾す孵化番屋 石川文子
放心をくるむ毛布の一枚に 山田弘子 懐
新しき毛布の匂髯の間に 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
新しき毛布抱へて階登る 岡田史乃
春遅々と毛布の中の空気さへ 辻桃子
柔らかき毛布に柱哭く日あり 津沢マサ子 華蝕の海
母に買ふ電気毛布をのばし見て 畠山譲二
毛布あり放すことなき句集あり 京極杞陽 くくたち下巻
毛布あり母のごとくにあたたかし 松本たかし
毛布かぶり寝る玄界の濤を聴き 福田蓼汀 山火
毛布など一枚足して寝る夜かな 高澤良一 寒暑 
毛布なる吾子にふたりの顔を索む 篠原梵
毛布にてわが子二頭を捕鯨せり 辻田克巳
毛布のなか子の高熱にむれてゐぬ 川島彷徨子 榛の木
毛布の母背に磐石となるに堪ゆ 猿橋統流子
毛布の端七福神を倒しけり 大石雄鬼
毛布の裏老いてさくらの花咲けり 津沢マサ子 楕円の昼
毛布外套なんど蒲団にかけて寝る 寺田寅彦
毛布敷いて抱へおろせし御像かな 河野静雲 閻魔
毛布敷く春愁の砂漠ひろげつつ 宮津昭彦
毛布被し老の移民やその中に 五十嵐播水 埠頭
毛布被つて檣に倚るや冬の海 比叡 野村泊月
毛布被てイエスのごとく夫眠る 山下知津子
毛布被て星の一つに寝るとせり 村越化石
毛布被て春鮒釣のよこたはる 岸本尚毅 選集「氷」
毛布買ひ一夜は早く寝まりたり 石塚友二 方寸虚実
毛布足すさるとり茨の夢を見て 永末恵子
毛布鼻まで上ぐは痛みに堪へゐるか 猿橋統流子
永病まず逝きし父なり白毛布 伊藤京子
河豚宿の小犬が噛んでゐる毛布 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
泣いてゐるかもしれぬ人毛布引く 後藤 章
牛市の牛の背中の毛布かな 田丸富子
犬無聊噛んで小さくなる毛布 杉山鶴子
猫柳毛布ぐるみの子沢山 今泉貞鳳
白毛布はなびら溢れして抱く子 赤松[ケイ]子
白毛布チカ~柊の花に干す 久米正雄 返り花
真珠選る赤き毛布を膝にかけ 篠原 としを
石工小屋毛布を張りし窓に梅 西本一都 景色
空を飛ぶことの不思議な膝毛布 松山足羽
群青の毛布の時化てをりにけり 櫂未知子 蒙古斑
老い母よ二色使ひの膝毛布 中村明子
胸元で打つ波 船の毛布は 白 伊丹公子 メキシコ貝
膝毛布たちまち温し今日に処す 中村汀女
膝毛布配られ飛機は北に発つ 山本白汀女
船酔ひの被くにうすき貸毛布 文挟夫佐恵 遠い橋
色あせしロシヤ毛布の旅寝かな 三溝沙美
草雲雀毛布の耳に白地の被 宮坂静生 雹
荒星や毛布にくるむサキソフォン 攝津幸彦 鹿々集
葬らるるごとく毛布を足にまく 仙田洋子 橋のあなたに
虜れの毛布枯野に垂したり 松崎豊
蝿生れ毛布被つてゐる妻よ 岸本尚毅 舜
見たることあらず干しゐる黒毛布 茨木和生 三輪崎
赤ん坊と一つ毛布に月涼し 岸本尚毅 舜
赫き土赫き家建て毛布干す 都筑智子
足弱るばかり家居の膝毛布 松尾緑富
重ねおく毛布の耳の日差かな 藤田あけ烏
障子には毛布つるしぬ冬ごもり 室生犀星 犀星発句集
雨の踊子毛布に眠る手を出して 金子兜太
雷光の軒に母の香毛布の香 飯田龍太
電気毛布なんぞと云ひて取合はぬ 高澤良一 ももすずめ 
電気毛布にも青空を見せむとす 中原道夫
電気毛布の中の荒野を父さまよふ 林 朋子
電気毛布夜半点滅のたしかさよ 水原秋櫻子
電気毛布恋ふ古里へ荷造りす 吉良蘇月
青年波郷電気毛布の夢に出て 相馬遷子 山河
青毛布赤毛布さま~の雛哉 寺田寅彦
風邪の妻船の毛布を被き臥す 水原秋桜子
飛行冷えつつむ天衣の毛布かな 赤松[ケイ]子
黄天よ祖国よ毛布かぶり病む 片山桃史 北方兵團
熊を彫るアイヌ膝覆ふ赤ケット 松橋与志彦
電気毛布先づ強そのあと適温に  高澤良一  暮津
古電気毛布温度に斑のあり  高澤良一  暮津
電気毛布妻に勧めて受け入れられ  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:35 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

枯蔓

枯蔓

例句を挙げる。

あさがほの枯蔓うつる障子かな 久保田万太郎 流寓抄
あらはなりけり枯蔓のつたひ方 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
おのれまた蔓枯れ果てし藪からし 松岡伊佐緒
かげろふ崖枯蔓の実の殻亙る 下村槐太 天涯
がむしやらな姿とどめて枯蔓は 高澤良一 さざなみやっこ 
こと切れしごとく枯蔓宙吊りに 高澤良一 鳩信 
これを憎みこれをたぐりぬ枯かづら 手塚美佐 昔の香
ざうざうと山の枯蔓滝なせり 高澤良一 宿好 
しづけさは明日への力蔓枯るる 野見山朱鳥
たちきれぬきづなのまゝに蔓枯るゝ 国弘賢治
ぬかご垣枯蔓縷々とすがりけり 西島麦南 人音
ゆるやかに幹を縛め蔦枯るゝ 清崎敏郎
ターザンが目をつけさうな枯蔓も 高澤良一 鳩信 
一面に枯蔦からむ仏かな 高浜虚子
三月の枯蔓走る水の中 萩原麦草 麦嵐
三月や枯蔓なかの葛一条 松村蒼石 雪
喪の音して枯蔓翔つは黄鶺鴒 石田あき子 見舞籠
垣ぐるみ払ふ枯蔓群がるを 高澤良一 寒暑 
城垣の昼を深めて蔦枯れる 大野紫陽
大寒の枯蔓を火の渡りをり 野見山朱鳥
大方はむかごの蔓の枯果てゝ 高浜虚子
大霜の枯蔓鳴らす雀かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
尉ひたき枯蔓離すとき大き 長谷川かな女 花 季
岩温泉出で枯蔓を噛む猿のあり 西本一都 景色
晴天にたゞよふ蔓の枯れにけり 松本たかし
松ケ枝や枯蔓かゝるずた~に 西山泊雲 泊雲句集
枯芝と枯蔓映りゐる鏡 京極杞陽 くくたち上巻
枯蔓が伸び縋りえし茜雲 林翔 和紙
枯蔓たぐるこころざしがひっかかり 山崎愛子
枯蔓といふ生き方のありにけり 後藤比奈夫
枯蔓と見し生蔓の引きごたへ 青木重行
枯蔓にうす日あたりて深雪かな 清原枴童 枴童句集
枯蔓にすがるすべさへなかりしか 久保田万太郎 流寓抄
枯蔓につもりてかろし春の雪 西山泊雲 泊雲句集
枯蔓にとびつく雪もみづみづし 高野素十
枯蔓にぴかぴかの日や天寧寺 大串 章
枯蔓に嗤はれやすき我なりき 河原枇杷男 定本烏宙論
枯蔓に垣を離るる力なく 小口理市
枯蔓に山にしみじみ夕日さす 岡田日郎
枯蔓に巻かれ混迷深める木 高澤良一 燕音 
枯蔓に巻きつき垂るる氷柱かな 池内友次郎 結婚まで
枯蔓に棲む日月や友も憂し 河原枇杷男 定本烏宙論
枯蔓に残つてゐたる種大事 山口青邨
枯蔓に縋り夕日の柄長啼き 小林黒石礁
枯蔓に遠くより日の射して来ぬ 加倉井秋を
枯蔓に雪柔かにひつかゝり 高野素十
枯蔓のあれば引っ張り寄せて見ぬ 高澤良一 鳩信 
枯蔓のかげす櫺子の除夜の月 臼田亜浪 旅人
枯蔓のからみしままの棒蔵ふ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
枯蔓のこんがらがりて春隣 岸田稚魚 『萩供養』
枯蔓のずるずる引けて土埃 高澤良一 鳩信 
枯蔓のつかみそこねし物の距離 木下夕爾
枯蔓のところどころに日の当り 高野素十
枯蔓のなんの衒ひもなかりけり 鈴木貞雄
枯蔓のやみくもをまのあたりかな 高澤良一 鳩信 
枯蔓の一本垂れて吹かれゐし 伊谷 詢子
枯蔓の下をゆくとき後手に 田中裕明
枯蔓の乱脈透きて日の差せり 高澤良一 ぱらりとせ 
枯蔓の先の先まで鐘の音 石田勝彦 秋興
枯蔓の切尖に触れ水激す 桂信子 花寂び 以後
枯蔓の嘗ての一途なべて見ゆ 高澤良一 鳩信 
枯蔓の大空よりぞさがりたる 浜屋刈舎
枯蔓の太きところで切れてなし 中村汀女
枯蔓の太き輪を目で見あげけり 橋本鶏二 年輪
枯蔓の尖は左の目にありて 高浜虚子
枯蔓の巻かれ易きに巻かるゝ樹 小林草吾
枯蔓の幹に食い込む馬鹿力 高澤良一 燕音 
枯蔓の引かれじとする力かな 富安風生
枯蔓の我に肖てくる夕かな 河原枇杷男
枯蔓の日蔭日向と綯ふひかり 水原秋桜子
枯蔓の末路を晒す川っぷち 高澤良一 燕音 
枯蔓の枯れつつ掴むもの哀し 本下夕爾
枯蔓の横暴極まりなき立木 高澤良一 燕音 
枯蔓の残る力と引き合へり 片山由美子
枯蔓の消え~わたる籬かな 比叡 野村泊月
枯蔓の石にはりつく高札場 中川文彦
枯蔓の空にとぎれてつゞきをり 上野泰
枯蔓の節のところで燃え残る 能村登四郎 天上華
枯蔓の糸ほどかゝる茶の木かな 比叡 野村泊月
枯蔓の網の中なる落葉かな 加賀谷凡秋
枯蔓の螺旋描けるところあり 上村占魚 鮎
枯蔓の這ふてのめりし籬かな 楠目橙黄子 橙圃
枯蔓の零し損ねし実の二三 高澤良一 ぱらりとせ
枯蔓は焼くべし焼いてしまふべし 三橋鷹女
枯蔓やのうぜんとしもおもほへず 鈴木花蓑句集
枯蔓や吹かれふかれてけふが日へ 林原耒井 蜩
枯蔓や山中に水もつれ合ふ 加藤けい
枯蔓をひき森音をさびしくす 山本佳絵
枯蔓をひく後髪引くごとし 稲垣きくの
枯蔓をふはと浮かせてゆきし風 八木林之介 青霞集
枯蔓をまとはざるものなかりけり 藤原大二
枯蔓をもがき抜けたる鶲かな 水原秋櫻子
枯蔓を引きて一樹の影崩す 中井啓子
枯蔓を引くや生あるものの声 青柳志解樹
枯蔓を引けばあらがふ力あり 高田つや女
枯蔓を引けばまだある力かな 三谷 よし
枯蔓を引けば離るゝ昼の月 中村汀女
枯蔓を引つ張ればまだあるいのち 関谷涼雨
枯蔓を焚きたる灰の絡みけり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
枯蔦が這ひ吸盤に類すもの 高澤良一 素抱 
枯蔦となりて葛藤顕はるる 田中政子
枯蔦となり一木を捕縛せり 三橋鷹女(1899-1972)
枯蔦に山の残照近づけり 米沢吾亦紅 童顔
枯蔦に日の当るのみ甲子園 岡澤康司
枯蔦のあくまでからむ官舎塀 松村蒼石 雁
枯蔦のぐるり取り巻く御用邸 高澤良一 素抱 
枯蔦の垂れ端とざす氷かな 西山泊雲 泊雲句集
枯蔦の尖端水にとどかざる 長田等
枯蔦の引けど引かせぬ力あり 鳥居すゞ
枯蔦の毛蔓巻きゐる春日かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
枯蔦の系図を横に拡げけり 高澤良一 素抱 
枯蔦の胃腸病院となりにけり 久米正雄 返り花
枯蔦の込み入る意図を詮索す 高澤良一 素抱 
枯蔦の隙間 編物教室の手の類型 伊丹公子
枯蔦も遠ざかりゆくものを見る 有働亨 汐路
枯蔦や不動に吹雪く瀧の裏 会津八一
枯蔦や明治の倉の赤煉瓦 加藤みさ子
枯蔦や昨日に過ぎしクリスマス 増田龍雨 龍雨句集
枯蔦や石の舘の夜の雨 東洋城千句
枯蔦や石塀の角廻り込み 高澤良一 素抱 
枯蔦や絵馬は古りたる神の杉 寺田寅彦
枯蔦や藍ことに濃き色硝子 久米正雄 返り花
枯蔦を引けば鉄鎖となりにけり 澁谷道
枯蔦片々独逸文字と衒気遠し 香西照雄 対話
湯の唄をうたひ枯蔦からみあふ 萩原麦草 麦嵐
烏瓜の枯蔓引いて手に揉めり 高澤良一 燕音 
狂院を緊縛しつつ蔦枯れたり 谷野予志
百穴を訪ふ枯蔓を足に引き 青野達江
石を抱く力ゆるみて蔦枯るゝ 木村左近
磐余なるなぞへの太き蔓枯れぬ 下村槐太 光背
窓の蔦枯れ~に陽も皺みけり 飯田蛇笏 霊芝
篁の纏く蔓枯れや歌の橋 石田波郷
老幹をきりきり捲きし蔓枯れぬ 滝春一
落葉松を登り詰めざる蔓枯るる 松本康男
葡萄蔓枯れてひかりをつなぎあふ 飯島晴子
蔓枯れてがんじがらめのありにけり 吉年虹二
蔓枯れて鳴るべくなりぬ風の中 木下夕爾
蔦枯るる先々の葉へ追ひつめて 正木ゆう子
蔦枯るる壁くちづけに髪が邪魔 正木ゆう子
蔦枯るゝ大き巌を縛すまゝ 岸風三樓
蔦枯れて一身かんじがらみなり 三橋鷹女
蔦枯れて十字架の十現れる 森田智子
蔦枯れて塀枯色になりにけり 上野 小百合
蔦枯れて断崖の肌理あらくなる 柴田白葉女 『月の笛』
蔦枯れて蔓の呪縛の残りけり 稲畑汀子
蔦枯れて蔦の爪あと石にのこる 大橋敦子
蔦枯れて蔦の爪あと遺りけり 大橋敦子
蔦枯れて額吹く風や洞の門 会津八一
街裏の捨百度石蔦枯れて 有馬籌子
表札にアラビア文字蔦枯るる 西村和子 かりそめならず
豆の蔓枯れむと紅き日をつかむ 千代田葛彦 旅人木
転がりて蔓の枯れたる冬瓜かな 高木 一水
雪原の月枯蔓に大いなる 西本一都
青天にただよふ蔓の枯れにけり 松本たかし

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:18 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

炭団

炭団

例句を挙げる。

うら町や炭団手伝ふ美少年 一茶
きらきらと朝日浸み入る炭団哉 中山白峰
ただころがり幾万塊の炭団なり 加藤楸邨
とんび着て文士の弧影炭団坂 松村多美
むつかしく炭団に炭をつぎかけし 子規句集 虚子・碧梧桐選
同人菖蒲あやの最も炭団の句 富安風生
呑で吐く炭団の嘘や辻手品 会津八一
寄り合うて焔上げゐる炭団哉 青木月斗
寒む風に鼻尖らせて炭団丸めてゐる 人間を彫る 大橋裸木
手焙りの炭団三たびも白くなり 今泉貞鳳
枯菊の影ひきそふや干炭団 田中王城
水洟をあやふんで居る炭団かな 会津八一
灰の上に炭団のあとの丸さかな 高浜虚子
灰までも赤き炭団の火を掘りし 高濱虚子
炎の威打ちまるめたる炭団かな 上野泰
炭団いけ置く紫陽花吹き降り 小澤碧童 碧童句集
炭団とは刻の経過の判るもの 柴田月兎
炭団干す日和きらきら踏切まで 大野林火
炭団法師潜むやと灰かきにけり 大須賀乙字
炭団造るうしろ虫鳴くくらさかな 菖蒲あや 路 地
炭斗に磊々として炭団哉 妻木 松瀬青々
父病めりいびつな炭団重なりあひ 菖蒲あや 路 地
片側はまだくらやみの炭団かな 赤木格堂
真黒な手鞠出てくる炭団哉 正岡子規
美しき月夜の屋根に炭団干す 菖蒲あや 路 地
薄雪の炭火深雪の炭団かな 小杉余子 余子句選
詩仙堂道に干さるゝ炭団かな 小杉余子
談笑に炭団の月や欠けんとす 浜田波静
赤い羽根つけて炭団を造る父 菖蒲あや 路 地
鉄瓶の尻がつかえる炭団かな 小田切獅子
闇の夜に月が出た様な炭団かな 赤木格堂
雲流れ明日も天気と炭団干す 菖蒲あや 路 地
香炭団抜く間の空を石たたき 石川桂郎 高蘆
駅舎裏炭団ころがり出でてあり 波多野爽波 『骰子』
魂抜けし炭団法師と年越せり 高澤良一 ももすずめ 


以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:12 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

炭売

炭売

例句を挙げる。

うとまれて炭屋炭ひく松の内 菖蒲あや 路 地
三日はや礼深くして炭売りぬ 菖蒲あや 路 地
何事もいはず炭売る翁かな 闌更
元日の炭売十の指黒し 其角
冬が来る吹けばとびそな炭屋にも 菖蒲あや 路 地
古簾吊つてさつぱり炭売れず 菖蒲あや 路 地
己れまづ地に置き炭屋炭をひく 菖蒲あや 路 地
我むかし大川町の炭屋の子 松瀬青々
掛乞や鞍馬の炭屋嵯峨の木や 四明句集 中川四明
散柳夜は炭屋の灯も美し 菖蒲あや 路 地
松の内炭屋炭もて来てくれし 大谷碧雲居
枯山の入日なつかし炭売女 銀漢 吉岡禅寺洞
炭売つて安堵屏風の大字読む 飯田蛇笏 山廬集
炭売に日のくれかゝる師走かな 蕪村
炭売のおのが妻こそ黒からめ 重五 (なに波津にあし火焼家はすゝけたれど)
炭売のひそかに来たるたゝら雲 石田波郷
炭売の娘のあつき手に触りけり 飯田蛇笏 山廬集
炭売の小野で日暮るる話かな 洒竹
炭売の後をここまで參りけり 夏目漱石 明治二十八年
炭売の戻る野道や冬の月 吉川天河水
炭売の炭相打つや音聞けと 星野麦人
炭売の門違ひして隣かな 四明句集 中川四明
炭売や雪の枝折の都道 言水
炭売よ手なら顔なら夕まぐれ 炭 太祇 太祇句選後篇
炭売りのひそかに来たるたたら雲 石田波郷
炭売女朝かがやきて里に出づ 飯田龍太
炭屋ひまさりとて昼寝もして居れず 菖蒲あや 路 地
炭屋死す高きに梯子かけてあり 菖蒲あや 路 地
炭屋炭無しといふ日はましろなり 渡邊水巴 富士
生意気になりし炭屋の小僧かな 榊原鼓天
聖樹に根なし炭屋地べたに炭をひく 菖蒲あや 路 地
花守は炭屋でありし掃きをりぬ 滝沢伊代次
雪山をはるけく来つる炭売女 飯田蛇笏 雪峡
雪解雫炭屋の奥の話し声 加倉井秋を

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:10 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

股引

股引

例句を挙げる。

かく使い古せし夫の股引よ 諸橋 草人
兇状旅で薮蚊は縞の股引よ 島 将五
古写真股引の父若きかな 瀧澤伊代次
海女達の股引赤し町を行く 洞外石杖
炉隠しや古股引の懸けながし 飯田蛇笏 山廬集
畦塗らむ紺股引にふぐり緊め 大熊輝一 土の香
百姓の股引のつぎ十五夜に 中山純子 沙羅
股引のたるみて破れし膝頭 仙人
股引の皺から籾こぼれかたくなに生きる 栗林一石路
股引や夕闇まとふ風を踏む 尾城光
股引や膝から破れて年のくれ 馬仏 極 月 月別句集「韻塞」
股引をして老人が嫌ひなり 小笠原和男
股引をとる早乙女に水匂ふ 佐野良太 樫
股引をもう手放せぬ太郎月 高澤良一 素抱 
股引を履いてゆけとよ事事し 高澤良一 素抱 
膝形に緩む股引足入るる 山畑緑郎

以上
by 575fudemakase | 2014-12-13 00:07 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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