2014年 12月 14日 ( 12 )



例句を挙げる。

あしたより学舎の大炉ゆたかなる 石橋辰之助 山暦
あひつれて煤躍りそめ炉火おこる 青畝
いちにちのたつのがおそい炉をかこむ 長谷川素逝
いつの間に亥の子の炉辺の蠅交る 長谷川かな女 牡 丹
いつまでもさめぬほとぼり焙炉端 入倉愛子
いとどしき猟夫の狐臭炉のほとり 山口誓子
いろいろのものに躓き炉火明り 高野素十
うから寄りけんちん汁の炉を囲む 高野彩里
うたた寝をつなぎ炉明りたのしめり 宮津昭彦
うたゝ寝も嫁来るまでと炉辺の母 斎藤双風
おもかげや炉の灰白く崩れ落つ 内藤吐天 鳴海抄
かつこうや一炉空しき青畳 碧雲居句集 大谷碧雲居
かひば煮る炉火とろとろと鳴くちゝろ 瀧澤伊代次
かみこきて寄ればいろり(囲炉裡)のはしり炭 内藤丈草
きさらぎの捨てて火ばしる炉灰かな 西島麦南 人音
この娘恋ふとにあらねども炉辺たのし 木村蕪城 一位
この家の厨に近く大炉あり 上村占魚 球磨
この里の西郷話炉辺の冬 楠目橙黄子 橙圃
さいはてや犬猫の来て一つ炉火 中山純子 沙 羅以後
さび鮎やぶちまけて炉に炭足せり 石川桂郎 高蘆
さび鮎を焼く一燈の炉端かな 石川桂郎 高蘆
さりげなく浄土のことも炉辺話 赤谷ちか子
しぐるるや脚折鍋を炉にかけて 白雄
しぐるゝや乾かぬ飯笥炉にあぶる 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
しぐるゝや柱をのぼる炉火明り 金尾梅の門 古志の歌
しぐるゝや脚折鐺を炉にかけて 加舎白雄
たね芋の芽を出してゐる炉端かな 橋本鶏二 年輪
たまきはる生きの炉明り末枯るゝ 林原耒井 蜩
だるま炉やこけしに走る轆轤筆 石川桂郎 高蘆
ちちははや炉火あかあかとぢぢばばよ 静塔
つくづくと炉にかざし見る病後の手 西山泊雲 泊雲
つねの炉の冬に入るさま焔立ちけり 松村蒼石 雪
とどまらぬ齢のなかの炉のあかり 木附沢麦青
どの家も新米積みて炉火燃えて 高野素十
どび六や炉の火に焦げる柱の根 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
ながかりし旅の主を炉に囲み 橋本鶏二 年輪
なまはげのどかと去りたる囲炉裡かな 磯貝碧蹄館
はるさむく医家の炉による奥の旅 飯田蛇笏 雪峡
ひとよさの山の囲炉裡も紅葉狩 福田蓼汀 山火
ひと死して小説了る炉の胡桃 橋本多佳子
ふるさとの雪に我ある大炉かな 飯田蛇笏(1885-1962)
ぶな・いたや炉に静けしやまくれなゐ 林原耒井 蜩
ぶな・いたや芽吹くべかりき炉に燃ゆる 林原耒井 蜩
ほこほことふみて夜永き炉灰かな 飯田蛇笏 山廬集
またい征く吾子よ炉辺に夜を惜しむ 及川貞 榧の實
みちのくの夜のたのしさ炉にあれば 岸風三楼 往来
むしり羽のまひつつ鳥屋の炉火さかん 木村蕪城 一位
もろの手の茶も炉けむりの匂ふなり 山口草堂
やまびとの大炉ひかへぬ花の月 飯田蛇笏 山廬集
よそびととうとまるる身を除夜の炉に 木村蕪城 一位
わがことに及ぶ炉話笑ひ聞き 高濱年尾 年尾句集
をりしともなく鳥屋の炉にをられけり 新井ひろし
コキリコを唄ひ健在炉の主 清水諄子
コスモスの枯るゝ雨音夜の炉に 長谷川かな女 雨 月
スキー帽脱ぎ捨てに炉を囲みけり 岡田 貞峰
ストーブを取る日来にけり炉砂売 福原雨之
マスクして藪騒ぐ聴ゆ囲炉裡ばた 萩原麦草 麦嵐
マッチの軸散りをり昼の炉は淋し 高濱年尾 年尾句集
ランプを吊り別の明かさの炉火燃やす 平井さち子 紅き栞
一つかみづつ炉にくべるもみぢ哉 正岡子規
一尾の山女魚を獲たる炉火おこす 木村蕪城 一位
一年に一度横川の炉に会す 久米幸叢
七草の粥煮ゆる間の炉の火色 井上雪
三月炉藤村生地の日の丸さ 友岡子郷 遠方
主の声炉辺へ出てくる戸の重さ 草田男
乳倉の子撫でゝ炉辺の客となる 中田みづほ
二つ炉の上炉火を入れ客迎ふ 八牧美喜子
二日の炉松笠黒う燃え了る 萩原麦草 麦嵐
二日はやあふるゝ客の我が家の炉 穴井 梨影女
亥の子餅炉の間の広き飛騨の家 古田 清
亭に炉があり暮るゝまでそこに居て 高濱年尾 年尾句集
人のうしろにゐて炉火の舌やはらかし 木下夕爾
人のみな帰りしあとの炉火明り 佐野美智
人馬来ずなりし山炉も日を経たり 林原耒井 蜩
今出でし炉火想ひ行く枯野哉 西山泊雲 泊雲句集
今宵炉に桜生木も火となりぬ 吉田汀史
今年又延命院の炉辺の座に 星野立子
今日の旅明日の旅を炉に語る 岩垣子鹿
仏壇の中も茶ぼこり焙炉どき 大森積翠
佐渡なまり越後なまりの炉に参ず 山内年日子
何待つとなきいちにちの炉が鳴いて 林原耒井 蜩
侘に絶て一炉の散茶気味ふかし 榎本其角
信にのみ生きて深皺炉を守る 林翔 和紙
俳諧の炉火絶やさずに守れよと師 村松紅花
僧あまた炉辺に眠れる涅槃通夜 森白象
僧の声洩るる空海忌の炉端 田中菅子
僧死してのこりたるもの一炉かな 高野素十
光太郎の如く茂吉のごとく炉火みつめ 上田五千石 琥珀
八つどきの炉火のちらつく花茶かな 芝不器男
八方を睨みて炉辺の父怖し 橋本鶏二 年輪
冬に入る炉につみ焚くや古草鞋 飯田蛇笏 山廬集
出土せし五十九炉や風薫る 西本一都 景色
分け入りて炉話を聞く子供かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
初冬の炉櫨の実買ひのおとなひぬ 西島麦南 人音
初釜の炉に太き炭一文字 佐野美智
初鶏や庫裡の大炉の火明りに 臼田亞浪 定本亜浪句集
力粥炊く炉か雨に竃馬跳ね 河野南畦 湖の森
加熱炉の照りのゆらめく青き踏む 加藤知世子 黄 炎
医者の前口中に炉火てらてらす 龍太
午の炉火うら~と四方の雪とくる 金尾梅の門 古志の歌
午の鶏きこゆ炉辺に師弟あり 柴田白葉女 花寂び 以後
去れといふ目にうなづきて炉辺をたつ 竹下陶子
古暦少しくこげて炉辺にあり 清原枴童
古里の大炉を守りて母達者 後藤鬼橋
叱られてゐる猫ゆゑに炉辺をかし 汀女
各戸一炉出水に映る灯もありて 堀 葦男
吊し柿一つはづして炉にもどる 大橋櫻坡子 雨月
同門や炉火にこがせる肉の端 石川桂郎 四温
君と我炉に手をかへすしかなかれ 其角
吹き入りし紅葉も鳥屋の炉に燃ゆる 大橋越央子
吹抜けに遊ぶ炉煙脇本陣 羽部洞然
団交の静寂だん炉のよく燃えて 鈴木精一郎
囲むには充たねど男炉に睦ぶ 望月たかし
囲炉裡火や雪の牡丹に客ありて 谷嶋澪子
園丁の炉火を確め勤務終ふ 河村良太郎
堂守の穀雨に焚ける炉のほとり 黒田杏子 花下草上
堂押衆草鞋のままに炉へ座る 森 重夫
塵一つ許さぬ炉辺の和尚かな 森永杉洞
塵焼炉火中を通るぎすの声 百合山羽公 寒雁
壮んなりし歳月遠し炉火赤し 近藤一鴻
夕冷えの炉明りに宇野浩二伝 飯田龍太 山の木
夕立の晴行かたや揚灯炉 炭 太祇 太祇句選
夜なべの座去年も今年も炉を囲み 田中冬二 俳句拾遺
夜の炉に僧のたしなむ生姜酒 岡安迷子
夜を放つ稲妻野より炉辺冷ゆる 石橋辰之助 山暦
夜更しもいつか馴れたる我炉かな 高濱年尾 年尾句集
夜鷹鳴き炉に香りたつ朴葉味噌 松本 幹雄
夢ありき炉の白樺の美き炎あげし 内藤吐天 鳴海抄
大き炉に応への言葉煮つめをり 吉野義子
大土間に日がな炉火焚く酢茎宿 中田余瓶
大年の空かきくらし鎔鉱炉 関圭草
大服や囲炉裡に席を作りつつ 芦 口
大根の煮ゆる間の炉火みつめをり 文挟夫佐恵 雨 月
大榾にかくれし炉火に手をかざす 前田普羅 飛騨紬
大炉燃えて山中の家城の如し 清原枴童 枴童句集
大炉燃え鮎掛衆のゐて騒ぐ 木村蕪城 寒泉
大露や炉辺に仰ぐ夜の山 金尾梅の門 古志の歌
天に近く短夜の炉を焚く一人 斎藤空華 空華句集
太鼓にて培炉を返す葉撰りかな 史邦 芭蕉庵小文庫
夾竹桃挿して炉の釜たぎるなり 松村蒼石 雁
奥祖谷の旅籠炉端の薬喰ひ 日守むめ
奥飛騨の端午や炉火をもてなさる 勝山 耕南
如月の凭る手炉ぬくき旅泊かな 飯田蛇笏 山廬集
妻の留守知つて友来る炉辺かな 島谷王土星
妻病めば子等おとなしく父と炉に 田上一蕉子
姥捨てに似て泣きに来る寺の炉辺 八牧美喜子
子と炉辺に桜咲く日の話など 野見山ひふみ
子も挽きし麦挽き終へて炉火落とす 石橋辰之助 山暦
子を抱いて片手に炉火を育てをり 滝沢鶯衣
子を連れて母の炉にあり山ざくら 松村蒼石 雪
子等寄りて昼餉を炉火にあたゝむる 石橋辰之助 山暦
宣戦やよろこび泣ける炉辺翁 河野静雲
宮殿炉なり女御更衣も猫の声 山口素堂
家の人寝に炉ばなしの人らまだ 長谷川素逝 村
家毎に焙炉の匂ふ狭山かな 高浜虚子
宿の子と鶫焼く炉をかこみつゝ 石橋辰之助 山暦
宿の炉に出支度遅き女待つ 木全篝火
宿院の世に古る炉辺の飾りかな 飯田蛇笏 山廬集
寒天小屋土間のくぼみを炉としたり 村上冬燕
寝を誘ふ子もなし炉火をくれなゐに 神尾久美子 桐の木
寝寒しと炉火つぐ吾れに虫更けぬ 乙字俳句集 大須賀乙字
寺の炉の夜話に避寒の客のあり 喜谷六花
小鮒焼く炉のかんばしく煙りけり 西島麦南 人音
小鳥来る嘉門次小屋の炉辺かな 西本一都 景色
居眠つてゐしが炉話知つてをり 藤村うらら
山の炉に独りの酒をあたゝむる 岡安迷子
山の鳩吹き鳴かす人や炉のほとり 菅原師竹句集
山を売る煙草火を炉に深く挿し 小林波禮
山ン姥を射て来て炉辺に睡りけり 飯田蛇笏 霊芝
山人の蓬莱の間にある炉かな 癖三酔
山住みの五平・炉話でかいこと 加藤耕子
山大炉逢魔ケ時を燃えにけり 清原枴童 枴童句集
山宿は膝みな立てて炉の早き 桂樟蹊子
山寺の大炉の蓋や麦埃 西山泊雲 泊雲句集
山羊の乳大炉に煮たり雪祭 中島花楠
山青く晩涼の炉の燃えにけり 福田蓼汀 山火
山靴や炉を遠まきの深眠り 小宅容義
山靴を脱ぐ背に炉火の燃えさかる 越智貴美子
岳人の寝息さだまる炉火太し 岡田 貞峰
峠まで送るつもりの炉火を埋め 長尾あき子
峰入の貸提灯を炉辺につみ 本田一杉
巣燕を誰もゐぬ炉の火が照らす 西村公鳳
市振は魚臭の炉辺に玉娘 宮武寒々 朱卓
師なき炉にいま淋しさを分ち合ふ 坂本とみ子
帰廬の雨語りもならず炉火による 飯田蛇笏 椿花集
干網に炉火が透けゐて祝ひごと 木村蕪城 寒泉
年取が済みて炬燵に炉に集ひ 高野素十
年新た三百年の炉が焚かれ 山本一糸
年越ゆる眼のごとし炉の埋火は 加藤知世子 花 季
年迎ふ炉を真四角に均しけり 成田千空 地霊
幾度も鍋が替りて榾炉燃ゆ 大森積翠
庭炉焚きつぎて会陽の世話方衆 上田土筆坊
彫金の花鳥ぬくもる手炉たまふ 皆吉爽雨
往診と云へば山家や炉火燃ゆる 酒井黙禅
御仏の炉辺に在はす桔梗花 阿部みどり女 笹鳴
御住持の炉ばたに話すもの静か 中村吉右衛門
心中しそこねたはなし炉ばなし 人間を彫る 大橋裸木
思ひ出し笑ひをしては炉灰掻く 辻桃子
憂きことにかゝはるまじと炉に在れど 高岡智照
憎まれてながらふる人冬の蝿 其角 (寒蝿炉をめぐる)
懐石の炉に六月の天城かな 山口都茂女
我れ一人去る炉框の帽握り 遠入たつみ
戸襖に炉火てらてらと梅の宿 木村蕪城 一位
戸隠の神の炉に焼く岩魚かな 宮下翠舟
手をのせて手炉とは心利きしもの 中田はな
手炉の火も消えぬお経もここらにて 森白象
手炉撫でゝ山の嵐をきゝにけり 宇田零雨
手炉膝に宿の昔を語らるる 今井つる女
折柴の猶細かれや炉のけぶり 乙二
拭きこみし板の間を這ふ炉火明り 上村占魚 球磨
持ち寄りしもの炉話もその一つ 後藤夜半 底紅
持寄りしもの炉話もその一つ 後藤夜半
捨頭巾置かれしまゝに炉辺にあり 小幡幽荘子
掃立やひんやりと炉の黒框 荒井正隆
掛乞に炉火燃えてあり山は雪 青峰集 島田青峰
掻き立つる人もあかるし狩屋の炉 前田普羅 能登蒼し
料峭と炉に焚く煙衣にしむ 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
斧の刃にうつる地炉の火松飾る 早崎 明
旅の飲食靴ごと炉火に温まり 清子
早発ちの炉辺に吹き入る山の霧 木村蕪城 一位
易きことより片付くる足炉かな 中村君沙
昔の夜のごと夜咄の炉をかこむ 佐野美智
昼席の燻る手炉膝に抱き 戸塚黒猫子
昼燈をかゝげ夜炉を擁す安居かな 乙字俳句集 大須賀乙字
昼鳴く虫炉辺より離れがたくゐぬ 石橋辰之助 山暦
時雨るゝや古き軒端の唐辛 炉柴 古句を観る(柴田宵曲)
暁けきらぬ暗さの鳥屋の炉辺にあり 清崎敏郎
曲家の火伏の神も炉火埃 稲畑汀子
曲屋の炉あかりに立つ影法師 木村里風子
更けし夜のがくりと炉火の衰ふる 藤井松代
月までの闇を鉱炉の炎が焦がす 木村里風子
末枯や地鳴りしづかに電解炉 有働亨 汐路
本を読む子にランプより炉火明り 阿部みどり女
杣病めり*かんじきを炉に吊りしまま 東 天紅
松ゆれて炉辺の心もうごくなり 佐野良太 樫
染糸を炉上にほすや冬の雨 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
柴燻べて山の炉くらき土用かな 石原舟月 山鵲
栗焼くと炉中のを拡げけり 西山泊雲 泊雲句集
梅さかばおもへ炉に手を交へしを 成美
梅に宿る炉火ひたすらに焚きつぎて 木村蕪城 一位
梅の香や炉にのびきつて自在鉤 大熊輝一 土の香
梅見舟涼炉煽りて散る火かな 野村喜舟 小石川
梟鳴く夜や炉火細く夫を待つ 原山 はね子
森番がひとり炉を焚き聖夜なり 黒木 野雨
楮の節拾ふ膝炉を襤褸くるみ 西本一都 景色
極道の祖父に炉話とびにけり 茨木和生 往馬
楽屋炉に坐りて声を馴らしをり 寿々木米若
榾火欲し椎葉振りなる炉のほとり 桂樟蹊子
樺太の話をきくも炉辺にして 高木晴子 晴居
檐燕覗く炉棚に刻む「時」 林原耒井 蜩
櫛造るうしろに暗き炉の間かな 木村蕪城 一位
死を遁れミルクは甘し炉はぬくし 橋本多佳子
残り餅焼く三月のくらき炉火 能村登四郎
母がゐてその母がゐて炉火熾ん つじ加代子
母代り濡手炉の火に間々映えて 香西照雄 対話
母子草咲く登呂人の炉址かも 岡田貞峰
民宿の炉邉の暗さに馴るゝまで 西沢さち女
気やすさの炉火をながむる侘居かな 飯田蛇笏 山廬集
水澄むと炉げむり空へ抜けにけり 宇佐美魚目 天地存問
沖荒れを見にゆきて炉に戻り来ず 茨木和生 往馬
河豚鍋や炉にかたむきて地獄変 野村喜舟 小石川
沸々と炉中の音や夜半の冬 乙字俳句集 大須賀乙字
泊りたる祖谷の八十八夜の炉 藤岡あき
法を説くしづかに手炉に手を重ね 森白象
浜田庄司坐せし大炉や焚かである 辻桃子
海荒るる漁家のすが漏り炉の上に 加藤憲曠
海陸を走せ続け来て炉火に坐す 右城暮石 上下
海鼠突舟炉煙らせつゝ漁る 徳永玄子
淋しさに炉箒使う胎の姉 西川徹郎 死亡の塔
渋鮎を焼く入口の炉をまたぐ 前田普羅 新訂普羅句集
渓音や炉にゐて背の頼みなき 桂樟蹊子
渡り漁夫みな寝て炉の火いきいきと 山田緑光
渡岸寺の一炉ほどなる曼珠沙華 吉田紫乃
湖をむく旅人に炉火は傾けり 宮武寒々 朱卓
湯をいでてわれに血めぐる囲炉裡かな 飯田蛇笏 山廬集
湯治客炉辺に加はり兎汁 松尾緑富
漁衣解けば砂のこぼるゝ夜の炉かな 金尾梅の門 古志の歌
漬物甕整然と炉火燦然と 加藤知世子 花寂び
火なき手炉に酔ひし頬よせし時鳥 雑草 長谷川零餘子
火なき炉の辺に法螺貝と糸車 北野民夫
火の花を咲かす涅槃の大炉かな 影島智子
火を育て炉主ぶりも一寸楽し 高木晴子 花 季
火消壷炉によせて蓋とりし口 河野静雲 閻魔
火箸もて三十棒の眞似を炉に 高野素十
火葬の炉鎖せり冬田を前にして 榎本冬一郎 眼光
灯を消せば炉に火色あり後の月 小杉余子
炉あかりにちらかるものをかたづけて 橋本鶏二 年輪
炉あかりのとどくところに山暦 吉田紫乃
炉がたりも気のおとろふる三日かな 飯田蛇笏 山廬集
炉がなくて炉話亡ぶ夜の雪 八牧美喜子
炉が燃えて代々馬も一つ屋根 近藤一鴻
炉が鳴いてわが頤とがる夜長かな 林原耒井 蜩
炉が鳴けど心老いにし筆枯れぬ 林原耒井 蜩
炉けむりのいづる小窓へ訪へり 安東次男 裏山
炉げむりの家はなれぬを雨意といふ 宇佐美魚目 天地存問
炉ごもりのこころ満たざる雪起し 森 澄雄
炉にあたる僧の双手のふくよかに 橋本鶏二 年輪
炉にあつき脛又うつや厭きごこち 飯田蛇笏 山廬集
炉にあれば腹にこたへぬ鰤起し 森澄雄
炉におちしちちろをすくふもろ手かな 飯田蛇笏 山廬集
炉にかざす指の反りにも齢かな 八染藍子
炉ににゆる粥にひ杓や梅の宿 橋本鶏二 年輪
炉にはたく印前だれ夜なべずみ 西山泊雲 泊雲
炉にひとりこころ足るまで紙燃やす 目迫秩父
炉にもどり岳の饗宴胸を占む 大島民郎
炉によつて連山あかし橇の酔 飯田蛇笏 霊芝
炉によりて沙彌も手かざす時鳥 岸風三楼 往来
炉にゐるや別の己れが北風を行き 松崎鉄之介
炉に一夜峠で別れ後知らず 福田蓼汀
炉に寄れば家霊は梁にきたりけり 石原八束
炉に投ず生木燃えはぜ冬苺 中村汀女
炉に招じ小屋のどぶろく出して来る 小原菁々子
炉に挿して酒あたためぬ颱風裡 内藤吐天 鳴海抄
炉に深く火箸つきさし風を言ふ 佐野美智
炉に火屑 天に星屑 ネパール更け 伊丹三樹彦 写俳集
炉に炭を組むなり文字を書くごとく 伊藤敬子
炉に焦がす鳥屋師の結飯かへしやる 木村蕪城 一位
炉に焦げし朴葉も葱も味噌に練る 中戸川朝人 残心
炉に焼きてけぶりを握る紅葉かな 蕪村
炉に茹でるしただみ能登を偽らず 木村蕪城 寒泉
炉に覚めし蛾や涅槃図に入りゆかず 吉野義子
炉に足を焦がすな雪は積むばかり 林火
炉に跼み短き煙草火を得たり 米沢吾亦紅 童顔
炉に近き窓あり雪の山見ゆる 紅緑
炉に近く猿を舞はすや家の内 小杉余子 余子句選
炉に近く行商の荷を解きにけり 森 花恵
炉に遠く凭れ合ひ寝の橇の犬 有働亨 汐路
炉に遠く命枯れゆくしづかかな 松崎鉄之介
炉のあとに土の寄せある鹿火屋かな 古館曹人
炉のはたやよべの笑ひがいとまごひ 一茶 ■寛政十一年己未(三十七歳)
炉のへりの盃あつし小鳥焼く 大橋櫻坡子 雨月
炉のまどゐ去り難くして怠けゐつ 馬場移公子
炉の上に吊りて動きし冬灯かな 長谷川かな女 雨 月
炉の上に隠倉ある恵方かな 古舘曹人 樹下石上
炉の上のうつばりに日のさしてをる 橋本鶏二 年輪
炉の上の小豆匂へり小正月 杉崎あさ
炉の中に火を入れたるは船大工 依光正樹
炉の主雑学博士もて任ず 三村純也
炉の僧の立たれて猫を従へる 大野佳子
炉の兄に声尖らして畚を置く 清原枴童 枴童句集
炉の妻の膝の公教要理かな 景山筍吉
炉の媼人見ちがへて語らへる 念腹
炉の客の片頬にある窓明り 高濱年尾 年尾句集
炉の客をすき見する子やかはるがはる 橋本鶏二 年輪
炉の榾のやせ謁ほどになりて燃ゆ 下村梅子
炉の母に年移りゆく榾をつぐ 倉田 紘文
炉の火種絶やさぬことを家憲とす 飯田ゆたか
炉の火色見てもふるさとなつかしや 重田暮笛
炉の灰に昼の陽が射すひと待てば 桂信子 黄 炎
炉の灰の栄枯均して年迎ふ 毛塚静枝
炉の炎杣の白髪も数へらる 前田普羅 飛騨紬
炉の父に長男次男従はず 河野 初夫
炉の番のこの子なか~法器かな 静雲
炉の眠り浪こそきかね須磨明石 言水
炉の辺に出稼ぎ話走り炭 今泉貞鳳
炉の部屋に神棚ありて煤けたる 塩川雄三
炉の部屋を常に散らかし親しめり 山口波津女
炉の鍋のかけかはりをり客覚めず 木村蕪城 寒泉
炉ばなしの牛のお甚の子のおけい 長谷川素逝 村
炉ばなしの盛りすり寄る爺の膝 影島智子
炉ばなしの風呂をもらひに来てわすれ 長谷川素逝 村
炉ばなしや風呂をもらひに来て人ら 長谷川素逝 村
炉へ呼ばれ火明りの婢のちさき顔 香西照雄 対話
炉ほとりの甕の澄む日や十二月 飯田蛇笏
炉ほとりの空気いと澄む別れかな 原月舟
炉ぼこりを払ひあひつゝまだをかし 星野立子
炉をきつて出るや椿に雲もなし 飯田蛇笏 霊芝
炉を出て度々月ぞおもしろき 野水
炉を切つてましろき助炭かぶせたり 飴山實 『次の花』
炉を囲み星が星生む話など 中本憲己
炉を囲み顔面土器に似るは誰ぞ 古沢太穂
炉を囲む木地師にのこる公家言葉 曽和 信雄
炉を怖れ炉を恋ひ麻痺の足一生 村越化石 山國抄
炉を明て見てもつまらぬ獨かな 一茶
炉を焚いて島の厠は真の闇 野見山朱鳥
炉を焚いて百姓らしき三ヶ日 古川 あつし
炉を焚きて静かに老いませ寒の日々 殿村莵絲子 花 季
炉を焚くや風を友とす万の樹々 河野南畦
炉を焚けばしづかに時の還りくる 文挟夫佐恵 雨 月
炉を見つつ野火の話や牧場守 成瀬正とし 星月夜
炉を閉ぢてよりの山野に親しめり 山口苔石
炉を離れ飯詰(いじこ)の中に雪明り 古舘曹人 樹下石上
炉主のあぐらの中に寝落ちし子 鈴木貞二
炉仕事や湿気てふぬけの風邪薬 富田木歩
炉埃のつきころげくる箒かな 橋本鶏二 年輪
炉埃やこのごろとみに物忘れ 石田雨圃子
炉帚のなにかかなしげに減りつつあり 細谷源二
炉挿し鮎簗の夕時待つ間あり 石川桂郎 高蘆
炉明りにみめよしあしの姉妹 木村蕪城 一位
炉明りに山の詩濡るる飾り皿 堀口星眠 営巣期
炉明りに撫づる座機の傷だらけ 鍵和田[ゆう]子 未来図
炉明りに杣等朝出の身ごしらへ 植地芳煌
炉明りに馬の顔あり電話借る 木村蕪城 一位
炉明りのもののなつかし梅の宿 橋本鶏二 年輪
炉明りの夕世情を忘じたり 草堂
炉明りの影の大きく起居かな 及川仙石
炉明りの顔へものいふ別れかな 木村蕪城 一位
炉明りやいつ片付くとなき書屋 石川桂郎 四温
炉明りやセピアに褪せてレノンゐる 橋本榮治 麦生
炉明りを分つ余生の影二つ 国吉尚子
炉框に仕事はじめの矢立おく 木村蕪城 一位
炉框の焦げなつかしき土蔵かな 西本一都 景色
炉火いよよ美しければ言もなし 松本たかし
炉火かなし子故のことに言ひ募り 戸沢きゆゑ女
炉火ことり崩れて座敷わらしかな 森戸 光子
炉火とあり家系のすゑの影法師 宮津昭彦
炉火に照りつぐこれ百年の煤人形 加藤知世子 花寂び
炉火ぬくく骨身にとほる寝起きかな 飯田蛇笏
炉火のあり家系のすゑの影法師 昭彦 (下部湯の奥、門西家)
炉火の焔をすかし梵天眺めをり 石原八束
炉火の燠長持唄は誰が嘆き 文挟夫佐恵 雨 月
炉火もえつぎたやすくひと日たちにけり 桂信子 黄 炎
炉火を吹く身体髪膚うち倒し 野見山朱鳥
炉火を焚き継ぐ痩身も三代目 今瀬剛一
炉火刎ねて寝てゐし男起き上る 高野素十
炉火囲み転落したる大地主 小原菁々子
炉火守の遠き雪崩に目覚めをり 辰之助
炉火守りて海女串焼の車海老 小原菁々子
炉火守りて焼岳凍る夜を寝ねず 石橋辰之助 山暦
炉火掻いて瞳も火のいろの雪安居 山口草堂
炉火明り夫婦抱き寝の一と呎(かます) 沢木欣一 赤富士
炉火映るこころに激つ流れにも 内藤吐天 鳴海抄
炉火更けて寄り添ふものは影ばかり 内藤吐天 鳴海抄
炉火楽し手かざし言葉なきときも 福田蓼汀 山火
炉火欲しや暗き嬶座の柱負ふ 石川桂郎 四温
炉火燃え上る畳に氷る射鳥かな 雑草 長谷川零餘子
炉火燃ゆるうへをながるる鹿の声 鶏二
炉火立てゝ比良八講の土百姓 古舘曹人
炉火箸に掌を置き空を過ぐるもの 中戸川朝人 星辰
炉火箸の長きに香を埋めけり 後藤夜半 底紅
炉火箸へのばしたる手に数珠たれて 入江月凉子
炉火美しく上蔟の夜に入るも 平畑静塔
炉火育つ心貧しきときさらに 松尾緑富
炉火見つめ心痛めてをりにけり 山田弘子 螢川
炉火親しさびまさりたる串の鮎 麦南
炉火赤し旅の疲れもおはさずや 福田蓼汀 山火
炉火赤し檜山杉山淋しかろ 平畑静塔
炉火赤し犬わが膝に顎をのせ 福田蓼汀 山火
炉火青し口づけ給ふまぶたの上 小坂順子
炉煙に炊ぎ煙も立罩めて 高浜虚子
炉煙に煤けしげんのしようこ吊る 猿渡青雨

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by 575fudemakase | 2014-12-14 00:58 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

炬燵

炬燵

例句を挙げる。

あまりにもしづかにすごす炬燵かな 葉山ひろ子
あまり寝る火燵の祖母をのぞきけり 大橋櫻坡子 雨月
いちまいに海荒れてゐる置炬燵 古舘曹人 樹下石上
いとこはとこの似て似ぬ顔の昼炬燵 臼田亜浪 旅人
うすよごれゐる子どもらと炬燵かな 京極杞陽 くくたち下巻
うす~と寝るや炬燵の伏見舟 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
うたたねに炬燵蒲團の胸よりは来ず 篠原梵
うたた寝を愉しむ如く炬燵猫 星野こうき
うとうとと炬燵の妻の四日かな 今井つる女
うまれくるものをおもへり置炬燵 太田鴻村 穂国
お稽古のあとの炬燵に夜を更かし 沢田登美江
かの人をここの炬燵に呼びたくて 波多野爽波 鋪道の花
かゝりゐる大堰の舟の置火燵 皿井旭川
きさらぎや火燵のふちを枕本 服部嵐雪
きりぎりす忘れ音に啼く火燵哉 松尾芭蕉
ぐい呑に炬燵酒声なせりけり 石川桂郎 四温
こちを見る床の達磨や盈炬燵 会津八一
こはぜ一つ外してよりの炬燵かな ふけとしこ 鎌の刃
ごまめ吊るす炬燵信濃に母と居て 宮坂静生 青胡桃
ささやかに生き来し炬燵塞ぐなり 亀谷麗水
さめかゝる火燵の天の冴えてあり 安斎櫻[カイ]子
しぐるゝと茶屋の火燵に戻りけり 比叡 野村泊月
じやんけんに負けてしぶしぶ炬燵出る 成嶋いはほ
たましいの脂ぬけゆく炬燵かな 橋石
ちゑの輪は大人の遊び置炬燵 一丸成美
つくづくともののはじまる火燵かな 上島鬼貫
つくづくと偕に老いたり掘り炬燵 藤崎 実
つくづくと出雲訛の炬燵の子 京極杞陽
つくづくと物の始まる火燵哉 鬼貫
つとめよと親もあたらぬ火燵哉 服部嵐雪
づぶ濡の大名を見る炬燵哉 小林一茶
とりどりの九谷にせまき炬燵膳 大島民郎
なきがらのはしらをつかむ炬燵かな 飯田蛇笏 山廬集
なにもかもなにもかも置く炬燵かな 松木年子
なまぬるき炬燵のやうな年なりき 高澤良一 ぱらりとせ 
ねころんで新聞を見る炬燵哉 寺田寅彦
ねんごろに人のすすむる炬燵かな 籾山梓雪
のぞき見し尼の炬燵のはなやかな 藤後左右
はるばると旅をもどりし火燵かな 金尾梅の門 古志の歌
ひさしぶりは東山のふとんのすその炬燵ぶとん(京都) 荻原井泉水
ひとの部屋見廻してゐる炬燵かな 岡本高明
ひとりでも生きられるけど掘炬燵 櫂未知子 蒙古斑以後
ひとり住むよきゐどころや古炬燵 飯田蛇笏 山廬集
ふるさとや炬燵ごもりも一夜二夜 臼田亜浪 旅人
べた凪の晩年を漕ぐ置炬燵 武田和郎
ほこほこと朝日さしこむ火燵かな 内藤丈草
ほこほこと菊の宴の炬燵の火 木村蕪城 寒泉
また父と真向かふ炬燵出しにけり 今瀬剛一
まぼろしと知り果つる世の炬燵かな 尾崎迷堂 孤輪
まん中に炬燵のありて伊勢の宿 小原菁々子
みな違ふことをしてをり炬燵の間 藤岡幸子
むく鳥の一茶漁らむ置炬燵 高澤良一 宿好 
ゆくところ炬燵ありたり風吹けり 長谷川かな女 花寂び
よき衣を着てあたりゐる炬燵かな 山口波津女 良人
よみさしの小本ふせたる炬燵哉 永井荷風
わが炬燵こんもり森より夜が来ぬ 村越化石
われ入るをぬくき炬燵が待ちゐなり 山口波津女
をんな泣きて冬麗日の炬燵かな 飯田蛇笏 山廬集
テレビ見て妻の泣きをる炬燵かな 山内 一甫
トラムプの崩れちらばる置炬燵 高浜虚子
ヨーヨーの炬燵の上に抛うりある 高木晴子 晴居
万両の雨見る熱き炬燵あり 大峯あきら
三千歳を弾かして唄ふ炬燵かな 酒井小蔦
上手より来る舟も又炬燵抱く 阿波野青畝
下かけもいうぜんならし置炬燵 泉鏡花
下京をめぐりて火燵行脚かな 内藤丈草
下戸ひとり酒に迯たる火燵哉 炭 太祇 太祇句選後篇
世の中の炬燵の中という処 池田澄子 たましいの話
世の様の手に取る如く炬燵の間 高浜虚子
並べけり火燵の上の小人形 子規句集 虚子・碧梧桐選
乗りて来し馬を火燵に見つゝをる 河東碧梧桐
京大の起ても寐ても火燵かな 杉山一転
人の情やさしく炬燵あたゝかし 岸風三楼 往来
人の来るたびに目をあけ炬燵猫 小嶋丁二
人目なき宿は炬燵に子日かな 竹波 五車反古
人老て炬燵にあれる踵かな 加舎白雄
今そこに居たかと思ふ火燵哉 寺田寅彦
介病も一人前する火燵哉 向井去来
伊香保呂の湯湿り炬燵塞ぎけり 久米正雄 返り花
住つかぬ旅のこころや置火燵 芭 蕉
余生とは寄り添う月日置炬燵 木村清
侘しさは夜著をかけたる火燵かな 桃先
俤や火燵の際の此のはしら 杉風
僧といふ風のごときを見て炬燵 岩淵喜代子 硝子の仲間
元日や炬燵の上に受験の書 相馬遷子 雪嶺
元朝や去年の火残る置炬燵 日野草城
内海の日和炬燵へかよふかな 増田龍雨 龍雨句集
冬の蠅炬燵の膳をなみすかな 野村喜舟 小石川
冬雨に炬燵櫓をはたくかな 室生犀星 犀星発句集
切炬燵夜も八方に雪嶺立つ 森澄雄
切炬燵波郷いよいよ酒の神 殿村菟絲子 『菟絲』
十日あまり旅して帰り炬燵かな 小杉余子 余子句選
十月や昼の火燵の炭なだれ 中村史邦
午過の火燵塞ぎぬ夫の留守 河東碧梧桐
南無仏間炬燵切るなり老の為 尾崎紅葉
卯の花に火燵置くらん雪の暮 服部嵐雪
厨の灯移せば覚めし火燵かな 金尾梅の門 古志の歌
古壁や炬燵むかうのはつ暦 小林一茶
古本屋炬燵を出でず応へけり 舘岡りそ
古里の母の炬燵に居りどころ 楠目橙黄子 橙圃
句を玉と暖めてをる炬燵かな 高浜虚子(1874-1959)
可ならずや炬燵して聞く竹の雪 寺田寅彦
叱りたる子供の一人炬燵に来 京極杞陽
向ひ家の炬燵に招ばれ行きにけり 尾崎迷堂 孤輪
堂守の時雨炬燵や引けば寄る 古舘曹人 砂の音
塞ぎたる炬燵のあとの青畳 香下 寿外
声を出すラジオの前の置炬燵 南村健治
夕幕の道のゆきつく炬燵かな 長谷川櫂 虚空
夜着かけてつらき袖あり置火燵 立花北枝
大山の火燵をぬけて下りけり 阿波野青畝
大空の風きゝすます火燵かな 渡辺水巴
大足をもてあましゐる炬燵の子 新井君代
奥山の奥ある国にゐて炬燵 村越化石 山國抄
妻呼んでばかりをられず炬燵出る 原三猿子
姑の出たあとぬくき炬燵かな 羊捨
姑の顔むつかしき炬燵哉 寺田寅彦
姥捨の深雪の底の炬燵婆 藤岡筑邨
婢が走り怒濤まぢかに置炬燵 古舘曹人 能登の蛙
婢もあてて屹度あはれむ炬燵かな 飯田蛇笏 山廬集
嫁かぬ身やぬるき炬燵に深ねむり 菖蒲あや
嫂や炬燵に遠く子を膝に 富安風生
子とあたる五月の炬燵旅もどり 木村蕪城 寒泉
子供に火燵してやれさういふな 河東碧梧桐
子等遠し二辺を余す掘炬燵 野上 水穂
守りゐる火燵を菴の本尊かな 内藤丈草
客設けしたる炬燵やゑびす講 遠藤正年
家例までつひ待ちかねて置火燵 井月の句集 井上井月
宿かへてまだ土くさき火燵かな 伊賀-我峯 俳諧撰集「有磯海」
宿炬燵山の夜長を如何にせん 高澤良一 燕音 
寄附の事心にかゝる炬燵かな 高橋淡路女 梶の葉
寒病みの火燵もほしや後の月 斜嶺 俳諧撰集「有磯海」
寝ごゝろや火燵蒲団のさめぬ内 榎本其角
寺執事炬燵を前に声荒し 高木晴子 花 季
寺茶屋の床几炬燵に片手入れ 西本一都 景色
小屏風のうちの炬燵にくつろぎて 高濱年尾 年尾句集
小畳の火燵ぬけてや花の下 内藤丈草
小若衆に念者きはまる火燵かな 李由 十 月 月別句集「韻塞」
小説の中の火燵に虚子と子規 高澤良一 寒暑 
小買物火燵の上に並べけり 大橋櫻坡子 雨月
尼一人には大いなる切炬燵 森信坤者
居あまりて火燵や棚へとし忘 水田正秀
山やおもふ紙帳の中の置火燵 内藤丈草
山冷にはや炬燵して鶴の宿 杉田久女
山墓へ残光ゆづり夕炬燵 香西照雄 素心
山宿の炬燵の酔ひがまはりけり 高澤良一 燕音 
山寺の一夜の宿の置炬燵 外園 タミ女
山寺は山椒くさき火燵かな 千那子息-角上 十 月 月別句集「韻塞」
年取が済みて炬燵に炉に集ひ 高野素十
店先より炬燵が見えて親しめり 杉本寛
庚申や殊に火燵のある座敷 残香 閏 月 月別句集「韻塞」
座敷わらし炬燵蒲団の端を踏む 田中あき穂
庭焚火炬燵をぬけてまた一人 吉屋信子
庭石の苔を見に出る炬燵かな 室生犀星 魚眠洞發句集
彌生なり火なき炬燵もあつくるし 幸田露伴 拾遺
影法師の横になりたる火燵かな 内藤丈草
待恋の夢に逢うたる炬燵かな 尾崎紅葉
徒らに炬燵熱うす独居かな 高橋淡路女 梶の葉
心労の膝さし入るる炬燵かな 服部京女
忌の炬燵ことば選びつ読笑す 北野民夫
忠も義もとどのつまりは掘炬燵 仁平勝 東京物語
急須・ペン炬燵の嬶座常に混む 平井さち子 鷹日和
恋ふ心悔ゆる心や置炬燵 上村占魚 鮎
憲法第九条炬燵明りかな 郡山やゑ子
我が前に坐る子小さき炬燵かな 高橋淡路女 梶の葉
我よりも老行く妻や置火燵 佐藤紅緑
我妻や炬燵あげたるかぶりもの 松瀬青々
戦時回想炬燵に深く足を垂れ 馬場駿吉
手焙りや炬燵塞ぎて二三日 小杉余子
折鶴の空を漂ふ炬燵かな 徳永山冬子
折鶴をやがて千折る炬燵かな 野村喜舟 小石川
押絵して老のたのしむ火燵かな 比叡 野村泊月
拾ひ得し命を惜しむ火燵哉 寺田寅彦
掘りかへす炬燵埋火八方に 上野泰 佐介
掘炬燵背を丸めてはならぬ場所 岩坂満寿枝
掘炬燵薄ら日なれどとゞきけり 黒田櫻の園
掻きたてる炬燵の火の香顔をうつ 篠原梵 雨
掻餅に新聞を読む火燵かな 寺田寅彦
提灯の手造り励み置炬燵 長屋せい子
新年はめでたし炬燵にあたれといふ シヤツと雑草 栗林一石路
旅籠屋の客のおどりや置火燵 水田正秀
日がなゐて夕しづもりの炬燵かな 松本たかし
明方をひえきつてゐる炬燵かな 大野朱香
明日帰る人と親しき炬燵かな 高木晴子 晴居
昨日までおはせし炬燵に通夜の雪 吉屋信子
昼炬燵田中家さんといはれたる 京極杞陽 くくたち下巻
昼過ぎの火燵塞ぎぬ夫の留守 河東碧梧桐
時計修理すや雪光のこの炬燵 羽部洞然
暫くはあたり隣の炬燵かな 萬翁
更けしづむよき句得たさの置火燵 大橋櫻坡子 雨月
書いてゐる手紙見られてゐる炬燵 嶋田摩耶子
書きかけし文は炬燵に晝寝かな 会津八一
木曾の夜や炬燵の加減見てくれし 森田峠 避暑散歩
本箱に手の届かざる炬燵かな 会津八一
村風子然と書を読み炬燵守る 福永鳴風
松活けて炬燵なかなかぬくもらず 岡本高明
松風のもうつまらなく炬燵かな 永末恵子 留守
枚方の火燵の外の枯野かな 岡本松浜 白菊
梅の宿炬燵ほこ~勿体なし 鈴鹿野風呂 浜木綿
横顔を炬燵にのせて日本の母 中村草田男
歌ひつつ万里子来にけり炬燵の間 阿部次郎 赤頭巾
残る火燵まだ山里はこころかな 上島鬼貫
残る鴨何番の花置火燵 子規句集 虚子・碧梧桐選
母なき子の父に親しむ炬燵哉 寺田寅彦
母の声大きくなりし炬燵かな 小野恵美子
母の肩揉むもたのしき炬燵かな 志摩角美
母の間のぬるき炬燵に言ひそびれ 五十嵐哲也
母の顔しげしげ見たる炬燵かな 野村喜舟
母人に賀客のひまの置炬燵 寸七翁
母方の客のみ残る炬燵かな 中谷葉留
水車小屋覗けば留守の置炬燵 渡辺一魯
沼の風障子にあたる炬燵かな 橋本鶏二 年輪
洋室に似合ふ工夫の置炬燵 稲畑汀子
淋しくもなにもなけれど昼炬燵 永井龍男
湯女の来て暫く火燵ばなしかな 大場白水郎 散木集
濁り酒とろっと炬燵火は赫っと 高澤良一 燕音
濤音へあけて炭つぐ置炬燵 石田波郷
火を仕込む奈落も寺の大炬燵 赤松[けい]子 白毫
火燵(こたつ)からおもへば遠し硯紙 沙明 古句を観る(柴田宵曲)
火燵から江戸の出店に助言かな 菅原師竹句集
火燵から江戸吉原は焼けにけり 井出茶山人
火燵から見ゆるや橋の人通り 正岡子規
火燵から青砥が銭をひろひけり 榎本其角
火燵してアルバムを見る女哉 寺田寅彦
火燵して四五人居りぬ花の茶屋 野村泊月
火燵して小説に泣く女かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人
火燵にあたりて思ひ遠き印旛沼 河東碧梧桐
火燵にはいかにあたるぞ蛸の足 浜田酒堂
火燵よりねに行く頃は夜中かな 雪芝 芭蕉庵小文庫
火燵人腰を捕へし暖に在り 高浜年尾
火燵出て月ををがみぬ一茶の日 金尾梅の門 古志の歌
火燵好い火かげんの三人でいるに一人の来る(湯田中) 荻原井泉水
火燵寝のうら~と雪晴れにけり 金尾梅の門 古志の歌
火燵深く居て軒一枝の垂れ紅葉 西山泊雲 泊雲句集
火燵覚めして大書すや望嶽と 廣江八重櫻
灯ともさぬ瞽女の炬燵の厚蒲団 西本一都 景色
灯も置かで炬燵に物を思ふ夜や 会津八一
灯りて何か忘れし火燵かな 金尾梅の門 古志の歌
炬燵あつし酒利きつもる小盃 飯田蛇笏 山廬集
炬燵あり火を入れしむる十三夜 木村蕪城 一位
炬燵からおほらかに元日の山ある シヤツと雑草 栗林一石路
炬燵から我に教へよ不随斎 尾崎紅葉
炬燵さめて我家に男の世界一つ 中村草田男
炬燵してさるのこしかけものがたり 松山足羽
炬燵してしばし一途に子に教ゆ 大津希水
炬燵して我家に活気なくなりし 谷口まち子
炬燵して灯のあかるさに眠りけり 増田龍雨 龍雨句集
炬燵して絵本の蟻の穴倉図 高澤良一 さざなみやっこ 
炬燵して絵草紙見て居る女の子 寺田寅彦
炬燵して老艶の書に深入りす 能村登四郎 天上華
炬燵して芋銭の狐隊行圖 高澤良一 ももすずめ 
炬燵して菓子の名平家物語 赤松[ケイ]子
炬燵して躓くものの多かりし 鈴木南子
炬燵して鏡に對す夫婦哉 寺田寅彦
炬燵して飛騨鰤談義一頻り 高澤良一 随笑 
炬燵して鹿来る山を思ひけり 百合山羽公 寒雁
炬燵なき蒲団や足ののべ心 正岡子規
炬燵にて帽子あれこれ被りみる 波多野爽波 『一筆』以後
炬燵にも襖あけても母のゐず 石井とし夫
炬燵に父ゐるとみてまた出てゆけり 川島彷徨子 榛の木
炬燵に穴のこして海を見にゆけり 大石雄鬼
炬燵に顎のせ友恋か山恋か 矢島渚男(1935-)
炬燵ぬるし泣くみどり児を押しつけ合う 田川飛旅子 花文字
炬燵の上に温もる鋏もう寝ねん 田川飛旅子 花文字
炬燵の向き足で変へしが日本の向き 香西照雄 対話
炬燵の火埋けても熱し年守る 久保田万太郎 流寓抄
炬燵の辺先づ猫よりぞ寝入りける 林原耒井 蜩
炬燵の間母中心に父もあり 星野立子
炬燵よりおろかな猫の尻が見ゆ 平井照敏
炬燵よりつき返されし紙風船 小原啄葉
炬燵より出し足首を掴まるる 寺井谷子
炬燵より半身出して狩の犬 辻桃子
炬燵より指図がましとひかへける 日原方舟
炬燵より跳ぶ吾子全身にて受ける 沢木欣一
炬燵一つ真ん中に置く間取かな 高澤良一 寒暑 
炬燵人よそ目の心閑かかな 尾崎迷堂 孤輪
炬燵今日なき珈琲の熱さかな 久米正雄 返り花
炬燵出ずもてなす心ありながら 高浜虚子
炬燵出づればすつくと老爺峰に向ふ 加藤知世子
炬燵出て医師心となつてゐし 矢倉矢行
炬燵出て夜の勤行のお肩衣 河野静雲 閻魔
炬燵出て尼が燈をやる女人堂 古舘曹人 砂の音
炬燵出て歩いてゆけば嵐山 波多野爽波(1923-91)
炬燵出て鍬とる主や冬牡丹 冬葉第一句集 吉田冬葉
炬燵塞ぐ八畳の居間真四角 栗橋敏子
炬燵嫌ひながら夫倚る時は倚る 及川貞 夕焼
炬燵寝の五分に長い長い夢 工藤克巳
炬燵寝の夕べの雨となりゐたり 川村紫陽
炬燵寝の妻の眼元の涙かや 京極杞陽
炬燵寝の更けて浮寝の鳥ごこち 松浦敬親
炬燵寝の若者起きて餅を搗く 木村蕪城 一位
炬燵寝の見ゆる裏手に廻りけり 白岩 三郎
炬燵寝も酔のあげくや川音す 皆川白陀
炬燵寝やあまり幼き妻の夢 雉子郎句集 石島雉子郎
炬燵寝や口中入歯ばかりなり 北野民夫
炬燵寝を夜半起されて学期了ふ 阿部ひろし
炬燵居に山のけものら近く来る 村越化石
炬燵居のふた草あらぬ七日粥 角川源義
炬燵居の一睡に湖暮れてゐし 佐野美智
炬燵居の夫を促す万歩計 山口恵子
炬燵居や妻へかたむく子等の情 栗生純夫 科野路
炬燵抱くはしぶきに濡るる思ひにて 栗生純夫 科野路
炬燵火に脛を焙りて「安愚楽鍋」 高澤良一 さざなみやっこ 
炬燵火をいっそう強くまたぎ宿 高澤良一 燕音 
炬燵焦げくさし雪嶺暮れてなし 藤岡筑邨
炬燵熱くて出郷を懐しむか 中戸川朝人 残心
炬燵猫をんなの疳にさはりけり 鈴木しげを
炬燵猫吾が家の気配知りつくし 長岡天狼
炬燵置きくらし正方形となる 木村淳一郎
炬燵置くこのごろ新居落ちつきぬ 瀧澤伊代次
炬燵膳夫も子恋の箸を措く 村上 光子
炬燵部屋おかめの額のかけてあり 高木晴子 晴居
炬燵酒酌みて寡黙に変らざる 松尾緑富
熱き炬燵抱かれしころの祖母の匂ひ 野澤節子 黄 瀬
燠入れし熱き火燵に目ざめけり 大橋櫻坡子 雨月
燠足して貧農の炬燵焦げんばかり 相馬遷子 雪嶺
父母の老いゐたまひし炬燵かな 吉田冬葉
片附いてゐるは朝の間置炬燵 稲畑汀子
狩宿の炬燵や足の混みあへる 辻桃子
玉子酒僧の炬燵の派手布団 五十嵐播水
玻璃うちの日向炬燵をして老婆 高濱年尾 年尾句集
玻璃皿に熟柿の照りや夜の炬燵 遠藤 はつ
田舎源氏炬燵に伏せて髪をのせ 福田蓼汀 山火
疎開して六十年の切炬燵 黒田杏子 花下草上
病人の炬燵に火を足して冬の夜終る 人間を彫る 大橋裸木
盃に怒濤のひびく炬燵かな 佐藤南山寺
目覚ませば人の来て居る炬燵哉 会津八一
看病の次ぎの間にある炬燵かな 楠目橙黄子 橙圃
真夜中や炬燵際まで月の影 去 来
睦じき顔をならべて炬燵哉 寺田寅彦
礼受やよき衣寒く置炬燵 高浜虚子
祇王寺の仏間の次の火燵かな 上野青逸
祈祷師の倚れる炬燵の夕間暮 森田峠 避暑散歩
祝ごとの山の炬燵のただ熱し 木村蕪城 一位
神棚の燈のふもとなる炬燵かな 原石鼎 花影以後
福だるま見下ろす炬燵塞ぎけり 津高里永子
秘めごとの仄かに炬燵塞ぎけり 牧 月耕
秘めごとをもてあそぶなり置火燵 鈴木詮子
窓一つ明るく淋し火燵の間 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
筆力も抜けて火燵の寫し物 会津八一
筋違に琴しらべ居る炬燵かな 路習 選集古今句集
節分の熱き炬燵に宿直す 木村蕪城 一位
籠りゐて一つの炬燵生簀めく 横山万兆
紅梅に見えて炬燵の美しき 遠藤梧逸
緋鹿子にあご埋めよむ炬燵かな 杉田久女
編み飽いて炬燵の猫をつつき出す 原田種茅
縁側と老婆と猫と炬燵かな 里見宜愁
置火燵後や花折るふまへ物 斯波園女
置炬燵とは熱かりき日吉館 黒田杏子 一木一草
置炬燵出てがさ市の客相手 高澤良一 鳩信 
置炬燵四人の客にわがあふれ 石川桂郎 四温
置炬燵夜すぎの茶器の音すなり 石原舟月 山鵲
置炬燵夜風障子につめたかり 坂本四方太
置炬燵独り言にも馴れて住む 時田志華絵
置炬燵過ぎしこと皆ゆるさるる 松山和子
置炬燵雪の兎は解けにけり 正岡子規
美しき妻驕り居る炬燵かな 尾崎紅葉
美しき蒲団かけたり置炬燵 村上鬼城
老ぼれて眉目死にたる炬燵かな 村上鬼城
老優の出を待つ楽屋置炬燵 武原はん女
老夫婦世を住よしの炬燵かな 竹裏
老眼の進み知る夜の火燵かな 正木不如丘 句歴不如丘
考へず読まず見ず炬燵に土不踏 伊藤松風
耳たぶに手をあてもする炬燵舟 阿波野青畝
耻かしやあたりゆがめし置火燵 炭 太祇 太祇句選
聖書ありあるときはなし置炬燵 京極杞陽
肉炙いてすぐに火燵の火となる火 下村槐太 天涯
腰かけて物思ひ居る炬燵かな 尾崎紅葉
腰ぬけの妻うつくしき炬燵かな 蕪 村
膝入れて尼の炬燵に女人われ 赤松[ケイ]子
膝入れて炬燵布団の紅うごく 京極杞陽 くくたち下巻
膳棚へ手をのばしたる火燵かな 温 故
臘梅や時計にとほき炬燵の間 室生とみ子
舟住の海より低き炬燵せり 山野邊としを
舟宿の炬燵こそ大今日の句座 栗生純夫 科野路
花の雨父の炬燵のあたゝかき 佐野青陽人 天の川
茶を出しぬ炬燵の猫を押落し 金子伊昔紅
茹玉子炬燵で食うてかなしかり 和田耕三郎
草菴の火燵の下や古狸 内藤丈草
菊の宿夜は炬燵のあたたかく 木村蕪城 一位
華やかに炬燵布団の歌ぢらし 福田蓼汀 山火
落つる日の障子見てをり置火燵 本田あふひ
葛城の神に仕へて火燵かな 大橋櫻坡子 雨月
薄目あけ人嫌ひなり炬燵猫 松本たかし
薄目して猫のすりよる置炬燵 井口朝子
藪入て暫し炬燵の主かな 竹冷句鈔 角田竹冷
蜂の巣の見ゆる炬燵に入りにけり 岸本尚毅 舜
衰老の机に遠き炬燵かな 会津八一
裏見せて火燵布団の紅きかな 温亭句集 篠原温亭
見台に髪ゆふうちの火燵かな 毛* 十 月 月別句集「韻塞」
観音を拝みて炬燵ふるまはる 三嶋隆英
訥々と婚後をさとす夜の炬燵 大熊輝一 土の香
話頭又た亡師に及び火燵冷ゆ 佐藤紅緑 紅緑句集
誤ちもなかりし火燵塞ぎけり 小澤碧童 碧童句集
読みきれぬ本をかかへて掘炬燵 高橋光江
譲らざることあり向かひあふ炬燵 武智徳子
豆撒きの手を守りゐる炬燵人 原裕 青垣
豆腐売切れ豆腐屋一家炬燵かこみ 藤岡筑邨
貧乏は掛乞も来ぬ火燵かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
買物に出る町遠き火燵かな 大場白水郎 散木集
贈り来し写真見てをる炬燵かな 高浜虚子
赤子炬燵寝漬菜くらがりよりにほふ 藤岡筑邨
足袋と見えて時々触はる火燵哉 会津八一
足袋の先火燵にあつくお元日 廣江八重櫻
跡さして火燵に寝たも暮なれや 破笠
転た寝の炬燵に叱る母の亡く 今泉貞鳳
辞書置けば炬燵も書斎メガネ拭く 船平潮子
迎へ舟炬燵しつらへ来てくれし 石井とし夫
通し間に行者ごろ寝の掘炬燵 浜朝風子
逢阪で昼飯食ふや炬燵売 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
酒の座を逃れて来たる炬燵の間 豊田千代子
野沢菜にやすらぐこゑの信濃炬燵 原 裕
鈴木牧之の御宿炬燵出され在り 上野さち子
鍋のもの煮つまる炬燵寝の父に 皆川白陀
鏝さしてぬるき炬燵よ妹が宿 木村蕪城 一位
長男は貧しさを知り炬燵に居 京極杞陽
長身をもてあますなる炬燵かな 岩崎照子
閨事に眼をつむりたる炬燵猫 瀧澤伊代次
隠し子の年員へゐる火燵かな 柳女
隠栖の松荒れてよし置炬燵(宍道未亡人邸) 『定本石橋秀野句文集』
離室まで行きて炬燵にあたらんか 高濱年尾 年尾句集
雨の日は雨を見てをり置火燵 斎藤雨意
電気炬燵に膝すこしあて老母かな 竹下しづの女 [はやて]
電気炬燵のみを点滅万年床 右城暮石 上下
電燈の青き炬燵の部屋に入る 京極杞陽 くくたち上巻
青すぐり浅間くもれば炬燵して 山田孝子
静まりゐて水輪生む鳥炬燵の母 香西照雄 対話
革羽織とりかくされて火燵かな 中村史邦
音のする雨となりたる炬燵かな 田辺 栖村
頬杖をつきて一人や置炬燵 小山 ため
飯すめばすぐ入る火燵なかりけり 篠原句瑠璃
餅花の高々とある炬燵かな 高浜虚子
養老の炬燵を掘れる小書屋 遠藤梧逸
髪をゆふ手の隙明きて炬燵かな 千代尼 五車反古
髪を結ふ手の隙明(ひまあき)て炬燵かな 千代女
麓神遊びに来るか炬燵せり 村越化石 山國抄
麻痺のわがよりどの炬燵塞がれし 日比野美風
こたつ出てまだ目の覚ぬ霞哉 高井几董
人の世のことに耳立てこたつ猫 関根喜美
置ごたつ夫を楯として強気 柴田白葉女 『夕浪』
美しき思ひ事しぬ置ごたつ 高橋淡路女 梶の葉
西陣のをんな所帯の置きごたつ 前山松花
茶碗蒸し腹に行火を入るるごと  高澤良一  随笑

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:56 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

煉炭

煉炭

例句を挙げる。

一つ売れた煉炭あの子に母はなく 菖蒲あや
一つ煉炭渡船の膝をかこむなり 角川源義
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
星凍つ下煉炭とれぬ幾家族 古沢太穂 古沢太穂句集
正月来る煉炭に夜通し小豆煮られ 古沢太穂 古沢太穂句集
涅槃図に煉炭の香のまぎれなし 辻桃子
深夜にて煉炭息を断たむとす 岸風三樓
濤高き夜の煉炭の七つの焔 橋本多佳子
煉炭に*こおろぎが来て朱を点ず 萩原麦草 麦嵐
煉炭に掌かざし子に継ぐ命なり 小林康治 玄霜
煉炭の匂う改札口とおる 田川飛旅子
煉炭の十二孔炎ゆもの書けと 伊丹三樹彦
煉炭の十二黒洞つらぬけり 西東三鬼
煉炭の火の匂ひ濃し蟹買ふに 宮津昭彦
煉炭の火の絶壁を風のぼる 斎藤空華 空華句集
煉炭の火先寄り合ふ母子の夜 三好潤子
煉炭の灰ぶちまけて路地寒し 菖蒲あや 路 地
煉炭の灰捨てあればすなはち路地 菖蒲あや 路 地
煉炭の燃えどき猫の不仲なる 大木あまり 火のいろに
煉炭の眼に火が満ちて雨強まる 榎島沙丘
煉炭は土となり今日の事終る 吉田胡狄
煉炭や屋台歌舞伎は十段目 角川照子
煉炭や暮しの幅に煮炊して 石塚友二
煉炭を悪事なすごと煽ぎをり 小林康治
煉炭炉骨めける指寄り翳す 石塚友二 方寸虚実
煉炭熾す望みなき掌と思はねど 小林康治
父の忌の暮れ煉炭に薬罐のる 菖蒲あや あ や
蛙鳴く煉炭の残り火にうどんかける 古沢太穂 古沢太穂句集
豆炭と豆炭照らし合ふ気合 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
豆炭の焔を上ぐ夜店芙美子亡し 寒川北嶺
豆炭や旧悪に似し手かざすも 小林康治
道後公園
貸し練炭貸し茣蓙夜桜真っ盛り  高澤良一  寒暑

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:54 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

あかつきの甘藷蔓焚火鶴を待つ 河野静雲 閻魔
あけぼのの鶴にはじまる初日記 吉野義子
あやめわかぬ雪天田鶴の声落ち来 大橋敦子
あをあをと鶴を織りゐる雪女 有馬朗人 耳順
いざ祝え鶴をかけたる幸木かな 松瀬青々
いざ祝へ鶴をかけたる幸木かな 松瀬青々
いづ辺より鶴の浮世ぞ吹雪き浚ふ 齋藤玄 『無畔』
うたかたの虹たつ鶴の野に来たり 大島巨雨
うちつれて鶴歩みくる淑気かな 西山東渓
うらゝかや躑躅に落つる鶴の糞 日野草城
おもむろに鶴歩み出づうらゝかな 高橋淡路女 梶の葉
お祭りを仕切るあたまは鶴ヶ嶺 仁平勝 東京物語
お隣りや銀座うら舗鶴を吊る 飯田蛇笏 雪峡
かくて暮雪持たざる人は鶴のごとし 細谷源二
かくまでも鶴啼くものか凍つる夜は 猿渡青雨
かけかへて鶴の相舞ふ六日かな 松根東洋城
きさらぎの夜を創りし鶴の声 河野多希女 こころの鷹
きらきらとしぐれくるなり田鶴の空 大橋櫻坡子 雨月
くゝりたる鶴の細首をもたげけり 妻木 松瀬青々
こがらしのあとの青空風鶴忌 山岸 治子
さのゝ小春和哥の浦辺は鶴あらん 松岡青蘿
しとやかなこと習はうか田打ち鶴 広瀬惟然
しらけたる月や鶴寐る梅の奥 幸田露伴 拾遺
すさまじき垂直にして鶴佇てり 齋藤玄 『狩眼』
すすき野がひつぱる鶴飼橋の索 田村了咲
すてゝある石臼薄し桐の華 鶴声 古句を観る(柴田宵曲)
とびそうな鶴のリボンや七五三 山口都茂女
とぶ田鶴の羽おとす見えて去ぬ日あり 森川暁水 淀
なほ高きよりあかつきの鶴一つ 中杉隆世
のどかさよ鶴の齢を六七羽 越人
はてしなき雪野に鶴は朱を点ず 木下ふみ子
はるの海鶴のあゆみに動きけり 松岡青蘿
ひえびえとただ白きもの鶴病めり 宇佐美魚目 秋収冬蔵
ひとつ鶴地に降りるなくただに舞ヘり 森川暁水 黴
ひと波にしづまる産湯鶴の天 赤松[ケイ]子
ふと雨ふりふと雨やどり鶴とKなり 阿部完市 春日朝歌
ふらこゝや人去つて鶴歩みよる 尾崎放哉
ほうほうと媼鶴呼ぶ声冴ゆる 川村ひろし
ほの~と鶴を夢みて明の春 尾崎紅葉
まづ来る鶴の一羽や空の秋 康成
まなうらの自尊の鶴を舞はしむる 沼尻巳津子
まぶしさの鶴おちてくる北は紺 宇多喜代子
まみどりの落葉も雨に風鶴忌 八木林之介 青霞集
みなかみは鶴の乙女か流れ芹 中勘助
むくろじの黄葉明りや風鶴忌 八木林之介 青霞集
やがてたつ鶴粛然と雪の野に 竹下陶子
やすき瀬や冬川わたる鶴の脛 高井几董
ゆく月や国なきかたに田鶴の声 高井几董
ゆつくりと来て老鶴の凍て仕度 能村登四郎 菊塵
ゆふぐれの鶴はをみなにて胸さむし胸さむければひと恋ふならむ 今野寿美
よく晴れて鶴を数へる鶴居村 福永法弘
らうそくの涙氷るや夜の鶴 蕪村 冬之部 ■ 鶴英は一向宗にて、信ふかきおのこ也けり、愛子を失ひて悲しびに堪えず、朝暮佛につかふまつりて、讀經をこたらざりければ
わが耳に鶴唳年の改る 加藤三七子
クリスマスカードの鶴よドイツヘ飛べ 山本歩禅
ツンドラゆく鶴より細く首延べて 八木三日女 赤い地図
マスクして鶴の白さにとなりけり 所山花
ランチタイム禁苑の鶴天に浮き 西東三鬼
一月三日は霜のとけて乾いた道の鶴が岡 詣る 荻原井泉水
一片の雲抱く月に鶴翔ちぬ 小原菁々子
一羽舞ふは一羽ほろびの雪の鶴 齋藤玄 『無畔』
一羽舞ふもと大たむろ田居の鶴 皆吉爽雨 泉声
一輪の竜胆餐けよ鶴の墓 阿波野青畝
一鶴の座標を雪に定めゆく 金箱戈止夫
七福の一福神は鶴を飼ふ 山口青邨
七種や七日居りし鶴の跡 松岡青蘿
万太郎安鶴も逝きしぐれかな 松山足羽
万歳の鶴の広袖ひろげ舞ふ 福田蓼汀
万歳や雀驚く鶴の丸 野村喜舟 小石川
三樹彦禿げわれに白髪や鶴唳忌 八幡城太郎
下野にとどめ刺されし寒さかな(鶴連衆と赤麻に遊ぶ) 岸田稚魚 『雪涅槃』
並み山の暁けゆく端より田鶴わきぬ 森川暁水 淀
丹頂の頭巾似あはむ霜の鶴 高井几董
丹頂の鶴の白玉凍りけり 渡邊水巴
丹頂が来る日輪の彼方より 黒田杏子 木の椅子
丹頂が鯵の頭をのこしけり 辻桃子
丹頂と在ればつゝしみ寒鴉 園田夢蒼花
丹頂に日本の色極まれり 高澤良一 鳩信 
丹頂に春日いつまで妻遠し 細川加賀 『傷痕』
丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子
丹頂のさて水に入る日永かな 三好達治 路上百句
丹頂の嘴交す流氷期 喜多みき子
丹頂の気高く舞ひて春立てり 墓田いさを
丹頂の白息天へ吐かれけり 嶋田麻紀
丹頂の紅のもつとも凍ててゐし 石鍋みさ代
丹頂の翔つとき天地息合はす 木村敏男
丹頂の翔び立つ胸を開きけり 中司信子
丹頂の頭巾似あはむ霜の鶴 高井几董
丹頂の首を正して巣籠れり 福山英子
丹頂の鶴の白玉凍りけり 渡邊水巴
丹頂もさだかに鶴の巣籠れる 岡本浩村
夢さめて家族と丹頂鶴をよび 阿部完市 春日朝歌
姿見の在らばとおもふ丹頂に 高澤良一 寒暑 
息白し餌を撒く人も丹頂も 牧野寥々
緑立つ風丹頂のうなじ打つ 清水基吉
花吹雪逃げて丹頂別れ居り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
詩の 丹頂の鶴となつての 昇天だつた 吉岡禅寺洞
飼はれ鳴く丹頂蝦夷の大夏野 大橋敦子 匂 玉
首のべて啼く丹頂は雪恋ふか 古賀まり子 緑の野以後
鶴引くや丹頂雲を破りつゝ 東洋城千句
九皐(きうかう)に達して鳴けリ鶴千羽 加倉井秋を
九皐の鶴も馴れたる春野哉 玉子
二三歩をあるき羽博てば天の鶴 野見山朱鳥
二位どのが田鶴(たづ)ゑがかせし屏風かな 筑紫磐井 野干
五月雨に鶴の足短くなれり 松尾芭蕉
人に死し鶴に生まれて冴返る 夏目漱石
人去りて鶴はふたゝび冱てにけり 竹末春野人
人音を鶴もしたふて若菜かな 千代尼
今年また渡来の鶴の親しもよ 中村苑子
仲秋や屋根の上行く大き鶴 渡辺水巴 白日
仲秋や空めぐる鶴かたむかず 渡辺水巴 白日
何処やらに鶴の声聞く霞かな 井月の句集 井上井月
何處かに瀧震へとまらぬ紙の鶴 渋谷道
何處やらに鶴の聲聞く霞かな 井上井月
余所者を鶴痛烈に越えゆけり 高橋たねを
便りとて梅に鶴千羽折るまで生きていたいと言う 荻原井泉水
傘松と飼はるゝ鶴と深雪かな 野村喜舟 小石川
元の階のぼる羽摶ちをつよく鶴 大岳水一路
元日やうす濁りたる鶴の水 富田うしほ
元日を飼はれて鶴の啼きにけり 臼田亜浪
先導の鶴の初声ひびきけり 米森えいじ
八千の端の鶴と畦あゆむ 中戸川朝人
八千の鶴に餌をまき悴めり 原 和子
八千の鶴月光をほしいまま 原裕 出雲
内部にて卵ころがる鶴機関(からくり) 大屋達治 繍鸞
再た鶴が黙想の畝にユーラシアを書く 加藤郁乎
写生する子に突き出して鶴の嘴 辻桃子
冬ざれやころゝと鳴ける檻の鶴 秋櫻子
冬ざれや拾ひ足して渚鶴 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
冬の夜の巷に鶴を飼ひなれし 犀星
冬晴の雲井はるかに田鶴まへり 杉田久女
冬晴や翼触れ舞ふは親子鶴 羽部洞然
冬暁や紙鶴紙に戻りゆく 宇多喜代子
冷房の鶴に乗りたる仙人画 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
凩の空見なほすや鶴の声 去来
凩空見なをすや鶴の声 向井去来
刈りかけし田面の鶴や里の秋 松尾芭蕉
刈るほどに*ひつじのみのり鶴の村 大岳水一路
初しもや煩ふ鶴を遠く見る 蕪村遺稿 冬
初声を鶴ともきかめ松の花 上島鬼貫
初旅や存分に見し鶴の舞 大橋敦子 勾 玉以後
初日いま天なる鶴に田の鶴に 兼折風外
初日影鶴に餌を飼ふ人は誰 青蘿
初晴や男鶴につきて母子鶴 吉野義子
初空の戦くや鶴の羽撃つほど 尾崎紅葉
初能の鶴の大砲皆舞ヘリ 長谷川かな女 雨 月
初雪へ園丁鶴を先づ放つ 金田きみ子
初雷や一羽となりて狂ふ鶴 久米正雄 返り花
初霜やわづらふ鶴を遠く見る 蕪 村
初鴉百羽の鶴をいざなひぬ 吉野義子
別の羽つかう男と鶴の空 永末恵子
前に出る鶴の片脚長きかな 河野多希女 両手は湖
十歩より遠くは行かず雪の鶴 樋笠文
単衣きてまだ若妻や鶴を折る 星野立子
原鶴は月ある夜も鵜飼舟 高濱年尾
去年の鶴去年のところに凍てにけり 水原秋櫻子
双鶴の離れて芙蓉水に濃き 渡邊水巴 富士
名月やたしかに渡る鶴の声 服部嵐雪
名月や粟に肥えたる鶴の友 浜田酒堂
向う山舞ひ翔つ鶴の声すめり 杉田久女
吠え犬に鶴七千羽おし黙る 品川鈴子
吹き起こる秋風鶴をあゆましむ 石田波郷
呼ぶ鶴も応ふる鶴も天向けり 能登裕峰
啄木の旧居の庭の枯柳 鶴飼 風子
啼きあぐる鶴口中の真くれなゐ 上野さち子
啼きしあと鶴は深雪の中あゆむ 安田 晃子
啼き移る田鶴に運河を拓きゐる 神尾久美子 掌
啼く田鶴の一身銀の日矢の中 橋本榮治 麦生
嘴が重たくなりて痩せし鶴 富澤赤黄男
噴水のつつつつつつと鶴の臑 高澤良一 素抱 
噴水のつらら吐き出す鶴の口 村上辰良
噴水の音木立透き風鶴忌 八木林之介 青霞集
噴水やしぶきに濡れて鶴の居り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
園丁と鶴と暮れゐる落葉かな 飯田蛇笏 山廬集
土佐鶴に鱶の湯晒し春の雨 高澤良一 寒暑 
土古く渡来の鶴を歩かしむ 吉岡禅寺洞
塒鶴幼きこゑも混りたる 岸田稚魚 『花盗人』
塒鶴肩を落して降り来たり 岸田稚魚 『花盗人』
夏の闇鶴を抱へてゆくごとく 長谷川櫂(1954-)
夏霧の飛ぶや鶴富姫の家 早瀬紀子
夕づくと脚下げて鶴降りて来し 伊藤通明
夕影の青芝踏みて鶴涼し 日野草城
夕映えの雲より生れし鶴の棹 今井つる女
夕田鶴の宿の裏にも来て啼ける 村上青史
夕空を鋭く鶴の流れけり 中岡 毅雄
夜の鶴鴛鴦の中よりも哀なり 加舎白雄
夢さめて家族と丹頂鶴をよび 阿部完市 春日朝歌
夢寐の間体内を鶴よぎりけり 石母田星人
大年の鶴・鳶・鴉天わかち 吉野義子
大空に舞ひ別れたる鶴もあり 杉田久女
大雪原翔ちて清らな鶴の脚 禰寝雅子
大霜の空まつすぐに鶴が来る 大串章 百鳥
天さかる鄙をとめ野菊奉れ(奉迎鶴駕) 石井露月
天に水流るるごとし鶴翔くは 吉野義子
天に舞う鳩地を歩む鳩初詣する(鶴が岡) 荻原井泉水
天の原鶴去つて残暑すみにけり 渡辺水巴 白日
天の画布いま一面に鶴群るる 大岳水一路
天の竟に入るまで羽摶つ雪の鶴 都筑智子
天の鶴雌雄の紅をならべたる 大岳水一路
天上の誤謬の鶴を撃つ友よ 豊口陽子
天心に鶴折る時の響きあり 攝津幸彦
天清く鶴能く高し春の霜 内田百間
天長節御苑の鶴の首長し 鈴木余生
天隠る鶴のうららを野に賜ひ 赤松[けい]子 白毫
太箸の鶴にあやかる思ひあり 尾崎紅葉
夫唱婦随か婦唱夫随か鶴歩む 田部黙蛙
女房は鶴/糸見せぬ身八口 仁平勝 東京物語
如月や鶴翼樓人雲を恋ひ 松根東洋城
妻と希望に近ずいたように鶴を見ている 橋本夢道 無礼なる妻
姿よき鶴にて群を離れ立つ 古賀まり子 緑の野以後
子づれ鶴ばかりや沼の秋立てり 石井とし夫
子の折りし鶴を栞に秋灯 佐藤美恵子
子の田鶴は嘴にこそしれ舞へりけり 森川暁水 淀
子を連れて落穂拾ひの鶴の群 杉田久女
宵闇に漁火鶴翼の陣を張り 松本たかし
家売た金なくなりぬ秋の暮 鶴英 五車反古
寄り添ひて野鶴はくろし草紅葉 杉田久女
寒暁の鶴啼くこだまかけめぐる 貞吉 直子
寒曝野を夜歩きの鶴ならん 廣江八重櫻
寒月を呑む鶴すこし亀もすこし 攝津幸彦
寒空や鶴しづ~と汚れつゝ 佐野青陽人 天の川
寒菊を挿し喰初の鶴の椀 長谷川かな女 牡 丹
小坂殿のはり縄朽ちてあられかな 鶴汀 五車反古
小春日の鶴とは臭うものなりけり 永末恵子 発色
屠蘇酌むや膳の上なる鶴の羽 大谷句佛 我は我
山冷にはや炬燵して鶴の宿 杉田久女
山峡の鶴のまろ寝に月雫 上野さち子
山眠るや谷空一仙鶴の背に 松根東洋城
山茶花の大樹花満つ鶴の村 朱鳥
山葵田の三万坪の秋の水 鶴飼 風子
山風に鶴が啼いたる寒さかな 飯田蛇笏 山廬集
巣籠の鶴のほとりを掃いてをり 神吉五十槻
左義長の火中に鶴の舞へりけり 古舘曹人 砂の音
帰り花鶴折るうちに折り殺す 赤尾兜子(1925-81)
干拓の土よろこびて田鶴棲めり 小原菁々子
干柿は鶴の子といひ種ばかり 下村梅子
年の夜や山科までは一里半 素十 (祇園久鶴、橙重氏等と)
年玉のかざしの鶴の挿せば舞ふ 森川暁水
幾春の文の齢や鶴が岡 上島鬼貫
幾春をまたいで鶴のあゆみ哉 幸田露伴 江東集
弥生はや一羽は啼けり親子鶴 古舘曹人 砂の音
御降や寂然として神の鶴 寺田寅彦
忘年の山河はまざと鶴翔たず 齋藤玄 『無畔』
息抜いて鶴の着地のおのづから 上野さち子
意思表示してからのちの紙は鶴 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
懐手して鶴番の大男 染谷秀雄
我がためか鶴食み残す芹の飯 松尾芭蕉
我ためか鶴はみのこす芹の飯 芭蕉
戸を打つは鶴の伴れきし風ならむ 大串章 百鳥
折り鶴にひとり遊びの日永妻 高澤良一 素抱 
折り鶴の大発生の八月くる 敷地あきら
折紙の鶴の処分にまた困る 池田澄子
抱擁し前世を鶴と疑わず 山下正雄
撒餌して鶴の別れを惜む子ら 瀬戸本よしえ
支那海の大き没日や鶴の舞 能勢真砂子
旅の鶴鏡台売れば空のこる 寺山修司 花粉航海
旅人や丘のぼりきて田鶴の墓 大橋櫻坡子 雨月
旅鶴や身におぼえなき姉がいて 寺山修司 花粉航海
日に日に薬の紙を手にして三羽の鶴 海重抱壷
日の春をさすがに鶴の歩み哉 榎本其角
日本髪の母の写真に鶴が来る 田中櫻子
日照雨鶴と鶴とがすれちがふ 富澤赤黄男
早春の園鶴涙を放ちけり 富安風生
明日田鶴(あしたづ)のあすも春なし袖の月 篭口 俳諧撰集玉藻集
星月夜盗むならあの鶴の首 鳥居真里子
星消えてたちまち鶴をふやす天 大岳水一路
春たつや静かに鶴の一歩より 黒柳召波 (1727-1771)
春めいて空の半円鶴に垂れぬ 吉岡禅寺洞
春園や妻と佇つなる鶴の前 下村槐太 天涯
春服に鶴のマークのクルー嬢 高澤良一 寒暑 
春水を上りし鶴の羽ばたける 星野立子
春田打つ鶴女房の村はづれ 有馬朗人 耳順
春荒れのひと夜や鶴の釘隠し 長崎玲子
春雨やあはれ鶴折る物狂 松根東洋城
春雨や鶴の七日をふりくらす 蕪村遺稿 春
春雷に砂蹴る鶴の足掻かな 内田百間
春風に浮いてすぐ死ぬ紙の鶴 坪内稔典
晴れ渡る八代の空は鶴のもの 水田千代子
暁けはなれつゝ鶴の声俄かなり 小坂蛍泉
暁紅に山々ゆらぎ鶴の聲 篠田悌二郎
暁闇を下りくる鶴の声つらね 小野 喬樹
書を閉ぢて鶴のひとこゑ栞とす 大岳水一路
月の暈著て三千の塒鶴 大岳水一路
月の面に引き流したる鶴の脚 大橋敦子
月下なる青きつららに鶴の村 赤松[けい]子 白毫
月光に舞ひすむ鶴を軒高く 杉田久女
月明にひかりとなりて鶴佇てり 大山安太郎
月明の水にしたしき鶴の脚 原 和子
月更けて鶴が機織る遠こだま 渡辺恭子
月触るる一瞬鶴となる楽器 石母田星人
朝々の鶴の餌を撒く麦五俵 渋田ト洞庵
朝牡丹喨々鶴の聲おこる 篠田悌二郎
朝顔よおもはじ鶴と鴨のあし 山口素堂
朝鶴のすぐ夕鶴と旅寒し 赤松[けい]子 白毫
朝鶴の声が障子にひゞくほど 松本圭二
朧夜や首さげて飛ぶ群鶴図 古舘曹人 樹下石上
木かくれて鶴一聲の涼しさよ 会津八一
木がらしの空見直すや鶴のこゑ 去来
木枯や晩年鶴のごと吹かれ 桑原視草
村の灯のまたたきもせず塒鶴 佐藤艸魚
村人にこゝろ許して田鶴あそぶ 山口水士英
村人に田ごとの鶴となれりけり 阿波野青畝
村人の鶴にのこせし落穂とも 亀井糸游
来し方や鶴が連れたる鶴の空 三橋敏雄 畳の上
東風の鶴逆毛たてて静なり 山高雨声
松とのみどんいどと鶴の冬籠り 広瀬惟然
松の苔鶴痩せながら神の春 夏目漱石 明治三十二年
松原に稲を干したり鶴の声 椎本才麿
松島の鶴になりたや春の空 乙二
松島や鶴に身をかれほとゝぎす 曽良
松明や鶴の林の夕煙 方山
枯深し千の願ひの鶴褪せて 赤井淳子
枯蘆に鶴のたむろのひそかなる 新田 郊春
枯蘆に鶴の脛そふ洲崎哉 猶存
柝鶴蘭鏡にうつり虎落笛 阿部みどり女
梅園の鶴は曇らず人間の自嘲うす暗し 橋本夢道 無禮なる妻抄
梅白し昨日や鶴を盗まれし 芭蕉
梅見ばや竹の細枝鶴の脛 中勘助
梅雨の夜や姙るひとの鶴折れる 田中冬二 行人
梅雨寒の黴を育てて鶴のごと 高橋睦郎 稽古飲食
棟の上大工が鶴を見上げをり 大串章 百鳥
植樹祭飼はるる鶴は嘴そろヘ 細谷源二 鐵
極月や鶴の餌を売る禰宜が宿 吉武月二郎句集
樹のそばの現世や鶴の胸うごき 飯島晴子(1921-2000)
檻の鶴いとしみのぞく深雪かな 大場白水郎 散木集
檻の鶴八ッ手の花をついばめる 右城暮石 声と声
死ぬまでに私は歌人か、鶴みたいに羽を抜き続けそれでもいいか 河野裕子
残る雪鶴郊外に下りて居り 河東碧梧桐
残月に鶴放ちけり嶺の人 尾崎紅葉
残月のひかりつ呆けつ田鶴のそら 森川暁水 淀
水に映ゆ茜さみしも鶴の里 大橋敦子 勾 玉以後
水ふくみて鶴日を仰ぐ冬至かな 渡邊水巴 富士
水仙や老いては鶴のごと痩せたし 猿橋統流子
氷面鏡鶴ともならず畦を行く 神蔵 器
汐越や鶴はぎぬれて海涼し 芭蕉
泛き出づる氷の底の鶴の色 斎藤玄
泰山木の花かげに鶴もゐたり 栗林千津
浅春の夕日の中に鶴なけり 田中冬二 行人
涅槃図に鶴すべりをる樹もあらむ 大屋達治 繍鸞
涼風や障子にのこる指の穴 鶴声(おさなき人の早世に申しつかわす) 古句を観る(柴田宵曲)
深雪より嘴をぬき鶴歩む 大澤ひろし
渡り来る鶴の空あり初御空 坂口幸江
温泉を珠と育てて弥生鶴の里 古舘曹人 砂の音
湿原は鶴の涯なる二月盡 古舘曹人 砂の音
満月をかかげて雪の八代田鶴 下村梅子
潮騒の雄心鶴の来る日なり 長野澄恵
灘風にあらがふ田鶴の棹なさず 向野楠葉
火の山の麓に二つ秋の湖 鶴飼 風子
無事に来し子鶴を殊によろこべり 蘆高昭子
熱燗や鶴を見にゆく話など 樋笠文
爪立ちに鶴を覗ひ妻凍つる 原裕 出雲
父の泪と鶴の泪と二を包み 阿部完市 春日朝歌
片足をあげ鶴の真似春着の子 穂苅きみ
琴の音に鶴の歩の長閑さよ 田村西男
田の田鶴にそらなる田鶴に朝移る 森川暁水 淀
田の闇をかうかうと鶴争へり 上野さち子
田居の鶴雲井の鶴と夕づける 小原菁々子
田鶴あそび一つは翔る稲架の空 石塚友二 光塵
田鶴の来て遊ぶ庭先垣結ばず 江口竹亭
田鶴の棹わが居る亭の上を越ゆ 大橋櫻坡子 雨月
田鶴の棹出来る高さのありにけり 向井光子
田鶴の空日月並び懸りけり 田中菊坡
田鶴の群地にや降りんとひたに舞へり 森川暁水 黴
田鶴ひくやぢかに骨なる母の脛 小檜山繁子
田鶴ひとつおくれて渡る御空かな 大橋櫻坡子 雨月
田鶴一羽蓮田の風を切って翔つ 曽我部多美子
田鶴去りて浦の海苔採はじまりぬ 大橋櫻坡子 雨月
田鶴群の鳴く天彦をうち仰ぎ 野見山朱鳥
田鶴翔けて地の霜朝日得つつあり 森川暁水 淀
田鶴翔けて暁けの炊煙四方四方に 森川暁水 淀
田鶴舞へりつまうしなひしひとつ鶴も 森川暁水 黴
田鶴降りてはや芹青む流あり 森川暁水 淀
男鶴佇ち母子ついばむお元日 吉野義子
畦の土鶴の足がた押しにけり 下村梅子
畦の陽をうれしと鶴のたたら踏む 上野さち子
番鶴身じろがざるにひと吹雪 岸田稚魚 筍流し
病みし鶴抱きし男通りけり 中島昴
病む鶴の羽裏よごれて飼はれけり 野見山ひふみ
病む鶴の鶴に応へてひた鳴ける 福神規子
痩脛や病より起ツ鶴寒し 蕪村 冬之部 ■ 大魯が病の復常をいのる
痩身の鶴を傾げて走る断雲 富澤赤黄男
登高や鶴を招けば雲来る 島田五空
白地着て鶴の眠りに遠くをり 櫛原希伊子
白布取ればまさに鶴人汗もなし 猿橋統流子
白帝の鷺の幻聴鶴の恩寵 沼尻巳津子
盗まれぬ鶴の鳴くなり冬の梅 萩原乙彦
目の前を雪散ぎて発つ鶴を追う鶴続ぎて光を曳けり 川口美根子
看護婦は乳房を持ちし鶴ならむ 栗林千津
真名鶴の声こんこんと初明り 白澤良子
真白羽を空につらねてしんしんと雪ふらしこよ天の鶴群 岡野弘彦
真青な松原被害者は鶴つれ 阿部完市 春日朝歌
眼に力入るるさみしさ鶴仰ぐ 大岳水一路
着地鶴二三歩はづみ羽根納む 岸田稚魚 『花盗人』
短日の家並据ゑたる鶴ヶ城 又村静池
石打つて鶴飛ばせたり青嵐 臼田亜浪 旅人
碧落や鶴が邪魔する雲気かな 増田まさみ
祝ぎの如夕焼の鶴仰がるる 阿波野青畝
神の定めし順序にヒマラヤ越ゆる鶴生きゆくことの勁ささびしさ 野村米子
神苑に鶴放ちけり梅の花 夏目漱石 明治三十二年
秋の空きのふや鶴を放チたる 蕪村遺稿 秋
秋の空昨日や鶴を放ちたる 蕪村
秋夜火と燃ゆる思を鶴の上 石田波郷
秋風や火中の鶴の嘴裂けて 渡邊水巴 富士
稗蒔の離々として嗚呼鶴病めり 尾崎紅葉
稗蒔や百姓鶴に語て曰く 子規句集 虚子・碧梧桐選
種蒔きに似て鶴守の餌を撒けり 内薗富恵
稲佐山かけて朝焼にけり鶴の海 小林康治 玄霜
稲村の鶴を見てをるすずめかな 孤屋 俳諧撰集「有磯海」
空の鶴われら仰ぐと声こたふ 皆吉爽雨 泉声
空覆ふ鶴の聲より風花す 邊見京子
立舞の鶴さながらに雪の城 上村占魚 『方眼』
童等の声を慎む田鶴の頃 田中英子
粉雪の句帳にたまる鶴を待ち 古舘曹人 砂の音
絵屏風の鶴の目つきが気になりぬ 夏井いつき
絵襖の鶴翔けに翔け夜長かな 野村喜舟 小石川
綿虫の漂ふ月日風鶴忌 小林康治 『存念』
縄に堰く野路あり塒づく鶴に 皆吉爽雨 泉声
美しき羽根を使ひて鶴争ふ 大串章 百鳥
群らだちし田鶴やうやくに棹づくり 大橋櫻坡子 雨月
群れを離れた鶴の泪が雪となる 西川 徹郎
群鶴の声こだまする天暗く 小原菁々子
群鶴の影舞ひ移る山田かな 杉田久女
群鶴の落暉に寒き首揃ふ 冨田みのる
群鶴を見て寝る誰も齢負い 北原志満子
羽をのして鶴なく寒の日和かな 飯田蛇笏 春蘭
羽広ぐ鶴よゆるがぬ鉄格子 吉原文音
翔ちつづく鶴の荒瀬となりし天 大岳水一路
老鶴の天を忘れて水温む 飯田蛇笏
耕して鶴をまねけよ杖の友 松岡青蘿
耳に鳴る風も鶴唳さまたげず 皆吉爽雨 泉声
耳袋真紅に鶴を見てゐたり 喜多みき子
聾阿弥佛も鶴に召されていでましけむ 日夏耿之介 婆羅門俳諧
肩から出し翅のその肩鶴の舞 中村草田男
胸ふかく鶴は栖めりきKao Kaoと 佐藤鬼房 名もなき日夜
脚たゆく立ちて病鶴残る見ゆ 皆吉爽雨 泉声
舞いたい鶴舞いたくない鶴一緒に舞う 藤後左右(1908-91)
舞ひむつむ田鶴を文にしわが妻へ 森川暁水 黴
舞ひ下りてこのもかのもの鶴啼けり 杉田久女
舞ひ下りて田の面の田鶴は啼きかはし 杉田久女
舞ひ降りし力余りて鶴跳べり 下山宏子
舞ふ田鶴に残月ありぬかがやけく 森川暁水 淀
舞ふ田鶴に盃すすぐいとまなし 森川暁水 黴
舞ふ田鶴の奇しくも啼きぬ徹る音に 森川暁水 黴
舞ふ鶴に誘はれ翔てる田居の鶴 小原菁々子
舞ふ鶴の光芒を師の言葉とす 沼尻巳津子
舞ふ鶴の紅浮かみつつ下りそめし 橋本鶏二
舞へる田鶴飛雪のときをおもはする 森川暁水 黴
良夜待つ襖の鶴の八十姿態 荒井正隆

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by 575fudemakase | 2014-12-14 00:51 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬の星

冬の星

例句を挙げる。

いつまでも一つのままに冬の星 富安風生
かぞへゐるうちに殖えくる冬の星 上田五千石 田園
ことごとく未踏なりけり冬の星 高柳克弘
しんじついのちの母に泣かるる冬の星 栗林一石路
また一つ家毀たれて冬の星 高澤良一 鳩信 
オリオンは直に目につく冬の星 三好竹泉
亡きものはなし冬の星鎖をなせど 飯田龍太
働くものにひかり惜しまず冬の星 成瀬桜桃子 風色
冬の星うがひしてゐて歌となる 川口重美
冬の星よりも冷たきものを言へ 夏井いつき
冬の星らんらんたるを怖れけり 富安風生
冬の星わが眼しびれるほど瞶む 糸山由紀子
冬の星わが鬢髪に銀を差す 中島斌男
冬の星仰ぎて通夜の聖堂に 稲畑汀子
冬の星地震のあとに燃えさかる 渡邊水巴 富士
冬の星堕ちて餓鬼田の夜明けかな 橋本榮治 逆旅
冬の星屍室の夜空ふけにけり 飯田蛇笏 春蘭
冬の星明王の眼のごとく燃え 大西淳二
冬の星暗し山の灯真赤なり 阿部みどり女
冬の星消息といふ縁あり 保坂敏子
冬の星赤子ぐつたりしたるまま 岸本尚毅 鶏頭
冬の星足もとに犬来て息す 廣瀬直人
創いたむ風の彼方の冬の星 小林康治 『虚實』
天上の茶会に召され冬の星 阿部みどり女
庇合(ひあはひ)に一つ見ゆるや冬の星 日野草城
忘れきしものの数ほど冬の星 うえだみちこ
極めたる色の白なり冬の星 高石幸平
深川へ納め詣や冬の星 武原はん
焼く反古に小つむじ立てり冬の星 奥谷亞津子
眠られず冬の星夜を閉め出して 田川飛旅子 花文字
祈りても終る一日冬の星 長島和子
神ありと決めし眼で読む冬の星 田川飛旅子 『外套』
蜂飼いの友いて冬の星うごく 大西健司
見舞ふたび母遠くなる冬の星 成田清子
足音に追ひつかれさう冬の星 高木晴子 花 季
鉄道員の襟に届きし冬の星 稲岡巳一郎
ちかぢかと命を燃やす寒の星 相馬遷子 雪嶺
ペン絶ちの何時までつゞく寒の星 岩田昌寿 地の塩
伊賀泊り苗代寒の星浴びて 太田嗟
吹き晴れてくらき大地と寒の星 篠原梵 雨
地にひびくばかり輝やき寒の星 松村蒼石 寒鶯抄
声出さばこぼれてしまふ寒の星 密田真理子
寒の星うすき光りの娘星 柴田白葉女 花寂び 以後
寒の星昴けぶるに眼をこらす 橋本多佳子
寒の星立身出世の明治恋し 岩田昌寿 地の塩
山国の縦につらなる寒の星 中拓夫 愛鷹
峡谷(キャニオン)の闇に貼り付く寒の星 仙田洋子 雲は王冠
愁ひ頒つ寒の星より応へなし 阿部みどり女
月光のあまねくわたり寒の星 松村蒼石 寒鶯抄
梳る顔のまはりの寒の星 渋谷道
死をもつて消息わかる寒の星 能村研三 鷹の木
母の寝嵩つばさひろげて寒の星 北原志満子
淋しさのきはみの寒の星ひとつ 近藤愛
いくたびも震ふ大地や寒昴 桂信子
いとかすかなる寒星もありにけり 清崎敏郎
かすかなるタングステンや冬銀河 五島高資
くに唄に母が寝に入る冬銀河 山田諒子
こゑなさぬ願ひを切に冬銀河 上田日差子
さらす身の十七文字寒北斗 吉田三千子
すゝむ癌昨日の凍星位置変へず 菖蒲あや 路 地
たましいを蹴りつつ還る冬銀河 須藤 徹
つぎつぎとピアス落した冬銀河 前田保子
どの木にも木霊生まるる寒昴 美野節子
なやらひの荒星畠にこぞりけり 石田勝彦
ゆびさして寒星一つづつ生かす 上田五千石(1933-97)
イタリアヘ寒星のすぐ横を飛ぶ 長谷川智弥子
オリオンの四ッ星冴えて三ツ星も 京極杞陽
ユーカリをずたずたにして冬銀河 原田喬
一天の寒星つれて出航す 中村尚子
一寒星燃えて玻璃戸に炬のごとし 相馬遷子 山国
一通の投凾函忘れ星冴ゆる 脇本良太郎
上蔟や荒星ひとつ森を出づ 岩永佐保
人の世のそののちのこと冬銀河 伊藤敬子
仏壇の街というもの寒昴 対馬康子 純情
何語りくる寒星のまたたきは 富内英一
光年といふものさしや寒北斗 吉原一暁
再びは生れ来ぬ世か冬銀河 細見綾子(1907-97)
冬北斗この世に夫をとどめたし 井上雪
冬銀河かくもしづかに子の宿る 仙田洋子 雲は王冠
冬銀河かぶり平和へ道一本 城取信平
冬銀河けぶる左右に女弟子 中島斌雄
冬銀河すこしよごして生まれ来し 辻美奈子
冬銀河たてがみを持て余していたり 大下真利子
冬銀河にんげんは殖えつづけおり 池田澄子
冬銀河ほろと男根垂らしたり 糸大八
冬銀河まっすぐ届く声を持つ 二村典子
冬銀河らんらんたるを惧れけり 富安風生
冬銀河一糸ほつるることもなし 小川軽舟
冬銀河何處ぞとあふぐ千鳥足 高澤良一 随笑 
冬銀河出自は平氏後不詳 妹尾 健
冬銀河垂れて狼ほろびの地 橋本榮治 逆旅
冬銀河夜干の工衣のしたたらす 吉田鴻司
冬銀河姥子はひとり来べき宿 及川貞 夕焼
冬銀河寝顔のほかは子と逢えず 宇咲冬男
冬銀河山影かむる和紙の里 柴田白葉女 花寂び 以後
冬銀河山影かむる陶の町 柴田白葉女 花寂び 以後
冬銀河巌より暗く海ありぬ 田中ひろし
冬銀河息吹きかけて眼鏡拭く 平野 博
冬銀河患者の一語残りをり 岩永のぶえ
冬銀河掌の中の掌のやはらかし 大嶽青児
冬銀河映して凪げりエーゲ海 毛塚静枝
冬銀河時間過ぎゆくときの音 石田郷子
冬銀河歳月をもて測る距離 辻美奈子
冬銀河母あることを恃みとす 館岡沙緻
冬銀河激せば黙すわが性よ 妹尾 健
冬銀河畑菜の青を感じつつ 佐野良太 樫
冬銀河真つ向に墓標歩かせる 蔦愁花女
冬銀河紙で切りたる指うづく 平井照敏 天上大風
冬銀河肩にまはる手真白なる 仙田洋子 橋のあなたに
冬銀河藁足して馬睡らしむ 木附沢麦青
冬銀河言葉で殺し合ふことを 櫂未知子 貴族
冬銀河軋む扉を開け放つ 前田秀子
冬銀河雁は鳴き鳴きめぐるなり 佐野良太 樫
冬銀河青春容赦なく流れ 上田五千石(1933-97)
冬銀河魂炎反応始まりぬ 久冨風子
冬銀河鳥のつばさは酒に濡れ 橋口 等
凍星のどれかや妻は天に在り 石井とし夫
凍星のわれをゆるさぬ光かな 鈴木真砂女
凍星の光に加ふなにもなし 岡田吉男
凍星の汝弱しとまたゝくよ 大橋敦子 手 鞠
凍星の爛々と咲き屍車いづる 柴田白葉女 遠い橋
凍星の綺羅をつくして墓地の天 柴田白葉女 遠い橋
凍星の鋲を打ち込む木地師谷 中村翠湖
凍星の高きに祈る父癒えよ 菖蒲あや 路 地
凍星は末梢神経の労働歌 赤石憲彦
凍星へまつしぐらなる大樹あり 奥坂まや
凍星も星座を組めば煌けり 野澤節子
凍星や瞳と呼べば星鎮む 赤尾兜子
凍星や篠山乾く音ばかり 能村登四郎
北に耀る寒星母を喪ひぬ 伊東宏晃
友越して半年過ぎぬ冬銀河 矢口由起枝
君寄らば音叉めく身よ冬銀河 藺草慶子
土佐沖の星冴ゆるなり漁始 綿谷ただ志
塵芥の捨場寒星かゞやけり 右城暮石 上下
墳山の天狼父にまぎれなし 角川春樹
墳山の真上天狼またたけり 佐川広治
夕星のもう凍星か山鼻は 村越化石 山國抄
大吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀
大日や年の天狼海の上 岡井省二
天に天狼日本狼死に絶えし 島世衣子
天幕を畳むサーカス冬銀河 小田実希次
天狼のひかりをこぼす夜番の柝 山口誓子
天狼の光りて豆腐凍りけり 野木与情
天狼の泪目あやとり解けぬ子に 齋藤愼爾
天狼の青き光も春めけり 二口 毅
天鳴りて寒星青き火を散らす 相馬遷子 山国
女にはくちびるの栄冬銀河 藤田湘子
女盛りのマチ子と仰ぐ冬銀河 青木重行
子宮とらば空洞にごうごう冬銀河 下山田禮子
寒北斗死にはじめたる後頭部 栗林千津
寒星となるらし土橋は肉の響き 遠藤 煌
寒星とまたたき交す受験苦よ 平畑静塔
寒星と発つ灯と着く灯エアポート 嶋田摩耶子
寒星にたどりつきたるひとり旅 鈴木六林男
寒星にどの夜もどこかに雲白し 篠原梵 雨
寒星に出でしが薪を抱へ来し 猪俣千代子 秘 色
寒星に懐中燈を向けて照らす 右城暮石
寒星に見透かされたる吾が虚勢 田村一翠
寒星のひとつを引きてわが燈火 岡本眸
寒星のむらがれる邊の枯野に似 橋本鶏二
寒星の一つを父の星と決め 南 桂介
寒星の光髪膚にほとばしる 内藤吐天 鳴海抄
寒星の天の中空はなやかに 山口誓子
寒星の弾ける音す手術室 長山遠志
寒星の爛たる眼全天に 相馬遷子 山河
寒星の真只中にいま息す 相馬遷子 雪嶺
寒星の身に降るごとし吾子誕生 橋本春燈花
寒星の近々と地のぬかるめり 右城暮石
寒星はただ天に倚る海の上 山口誓子
寒星は天の空洞子の病気 西東三鬼
寒星やいのちの果ての北枕 佐藤きみこ
寒星やとぼそ洩る燈のおのづから 山口誓子
寒星やよごれぬままに料理人の胸 柚木紀子
寒星や世にある歎き除けがたし 阿部みどり女
寒星や亡き師の叱咤高きより 池田秀水
寒星や仰げばすでに声は無き 相馬遷子 山国
寒星や北の血脈継ぐために 渡辺誠一郎
寒星や地上に逃ぐるところなし 岸風三樓
寒星や悲しみいつか諦めに 菖蒲あや 路 地
寒星や暮色が海を押しせばめ 林翔 和紙
寒星や男の意地を押し通す 椎橋清翠
寒星や神の算盤たゞひそか 中村草田男
寒星や転勤の子の辞令待つ 関口美子
寒星や魂の着る人の肌 三島広志
寒星ら出て荒淫をかなしめり 森澄雄
寒星をあほぐ癖つき一周忌 柴田白葉女 『月の笛』
寒星をいつも火星を見をさめに 篠原梵 雨
寒星をかぶり死すまで麻痺の身ぞ 村越化石
寒星をつかむ仕ぐさの子の拳 対馬康子 吾亦紅
寒星をつなぐ絲見ゆ風の中 福永耕二
寒星をぶちまきし下浮浪がり 平畑静塔
寒星を近々と地のぬかるめり 右城暮石 声と声
寒星動きて喪の家に淡き影 加藤瑠璃子
寒星夥しサーカスのあとの天 斎藤爾
寒星明暗わが身のなかに眠る妻 成田千空 地霊
寒星騒然国のエゴなどどこにありや 香西照雄 対話
寒昴いま少年にくらい智慧 中尾壽美子
寒昴フルートの音は続きをり 冨田弥生
寒昴仰ぐなり死を告げ来り 水原春郎
寒昴幼き星をしたがへて 角川照子
寒昴死後に詩名を顕すも 上田五千石 田園
寒昴父母の息感じをり 老川敏彦
寒昴病みてぞ正す仰臥の寝 駒木逸歩
寒昴眼鏡摧(くだ)けしその夜も 赤尾兜子
寒昴迷ひし時は歩き出す 高平乃布子
寒昴鉛筆書きの妹の遺書 角川春樹
寝袋に体温満ちぬ冬銀河 小川軽舟
少年をさかしまに抱き寒昴 増田まさみ
峡空に寒星集め雪まつり 神取房江
崩れ簗夜は荒星をかかげたる 加倉井秋を 『欸乃』
師亡き後のおのれ励まし冬銀河 館岡沙緻
干柿に宇陀の荒星今宵より 大峯あきら 鳥道
庭の木に寒星の種はじけたり 増田まさみ
廂なる寒星溢れ落ちざるや 橋本鶏二
急かずともすでに顱頂に冬銀河 衣川次郎
戸の外に清めの塩や寒昴 中沢城子
手を洗ひ寒星の座に対ひけり 山口誓子
投函の後ぞ寒星夥し 山口誓子
故郷のなき晩年や寒昴 塩田晴江
斉斉哈爾地方ノ母ハ寒昴ヨリ乾イテヰルカ 夏石番矢 真空律
明々と身のうち通る冬銀河 北詰雁人
星冴て寒菊白う成にけり 唄子
星冴ゆる枚を銜んで六百騎 寺田寅彦
星冴ゆる歩いて居れば心足る 石昌子
星冴ゆる窓やワインの杯重ね 吉村容子
木の中でじいーんと泣くか寒北斗 岸本マチ子
木守柿夜は荒星を擁けり 関戸靖子
東京の悪に触れたる冬銀河 新城杏所
梁のどこか爆ぜゐし冬銀河 島青櫻
極上のほくろが創る寒昴 櫂未知子 貴族
樟脳の匂ふ胸より冬銀河 大久保悦子
機関音恋めき遡る冬銀河 平井さち子
母在せば問ひたきものを寒昴 荒木 梢
母恋し逝きし子恋し冬銀河 清水 きよ子
母病むと寒星天に集ふなる 山本歩禅
水に浮くもの透かし見ぬ寒昴 石川桂郎 四温
水仙の夜は荒星のつぶて打ち 岡本眸
永遠と宇宙を信じ冬銀河 高屋窓秋
渓流に雪の荒星なだれたる 野澤節子 遠い橋
漁船出づ頭上煌めく寒北斗 大久保灯志子
火の山の上に消えをり冬銀河 上村占魚 『橡の木』
火の山へ荒星帰る猫の恋 橋本榮治 麦生
火祭に海の荒星なだれたり 猿山木魂
煙突の火の子寒星にまぎれ散る 内藤吐天 鳴海抄
煙突掃除夫が寒星を弾き出す 野中亮介
燈台の遠き燈加へ冬銀河 坂本文子
父の眸は島の荒星夏薊 柴田白葉女 『冬泉』
犀は角見ながら育つ冬銀河 大石雄鬼
犬吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀 秋風挽歌
狼が空に来てゐる冬銀河 石原八束 『仮幻』
玉はじけては集ひけり寒昴 市村究一郎
玻璃越しに寒星も身を震はせつ 相馬遷子 山河
癌病棟夜は凍星にのぞかるゝ 岸風三樓
真夜に見る凍星の大舞踏会 滝青佳
瞑りて凍星ひとつ呼び覚ます 片山由美子 水精
神の馬目覚めんとして冬銀河 佐野典子
空ふかく凍星月を待ちにけり 松村蒼石 寒鶯抄
空澄みて光り増したる冬銀河 中村 仏船
空腹時寒荒星と身が潔し 佐野美智
窓ぬれて寒星下りて来つつあり 柏禎
窯火守る傾ぎて大き冬北斗 日比野里江
立ち止まるとき寒星の無尽蔵 木村敏男
繋りてまたたきてみなわが寒星 千代田葛彦 旅人木
美しき名の船が出る冬銀河 池田琴線女
胸中に布石の一語寒昴 保坂知加子
能登の端を海に出でたる星冴ゆる 中西舗土
自転車を漕ぐ寒星の宙の中 相馬遷子 雪嶺
舟よこげよ億光年の冬銀河 岸本マチ子
荒星と吹かるる河豚の一夜干 片田 千鶴
荒星に宿雪の昏るる猟の径 八束
荒星のいま大寒に入るひかり 相馬遷子 雪嶺
荒星の一塵もなき額の上 山田珠み
荒星の冷え野天湯に女どち 大橋敦子
荒星の匂ひのセロリ齧りたる 夏井いつき
荒星の吹きちぎらるることはなし 宇咲冬男
荒星の掴む近さや初薬師 曽根原幾子
荒星や毛布にくるむサキソフォン 攝津幸彦 鹿々集
荒星や深くは眠れざる男 夏井いつき
荒星や老いたる象のやうな島 夏井いつき
荒星をぶちまけ神楽はじまりぬ 奈良文夫
荒星を風が磨くよ棺づくり 大木あまり 火のいろに
薬喰峡の荒星ともりけり 石野冬青
裏街や天狼ももう春の星 原田喬
誓子逝く荒星煌と冴返り 伊東宏晃
金属のスクスク育つ冬銀河 三浦北曲
銀河茫々荒星ばかりまたたける 福田蓼汀
青貝の櫛買うて出づ寒昴 文挾夫佐恵
面上の星はいのち火冬銀河 井沢正江 晩蝉
鬼舞も照る寒星も昔ぶり 橋本榮治 麦生
黒天にあまる寒星信濃古し 西東三鬼
星冱てて人のこころに溺れけり 松村蒼石

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:50 | Trackback | Comments(0)

枯木立

枯木立

例句を挙げる。

くらしの声道へ筒抜け枯木立 雨宮昌吉
この後は桂郎忌てふ枯木立 斎藤玄 雁道
三井寺や狂女もあらず枯木立 高浜虚子
今日の日の空を支へて枯木立 星野立子
参道のあらはになりて枯木立 本田三千代
夕焼を背負ひて立てり枯木立 並松 玉哉
大仏も鎌倉文化枯木立 奥村青霞
居留地の頃のままなる枯木立 後藤比奈夫 初心
日の温み残して寺の枯木立 村上辰良
昼月の白じろと枯れ木立中 阿部美恵子
枯木立ありその上に八ケ岳 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
枯木立おぼろに茜沈めたり 林原耒井 蜩
枯木立しづかに揺れて触れあへり 小林勇二
枯木立どの幹となく揺れはじむ 清崎敏郎
枯木立モームの月のひつかかる 笠間圭子
枯木立一つひとつをよけ歩く 高木晴子
枯木立一宇一灯あきらかに 阿部みどり女
枯木立一樹は西行桜かな 山下喜代子
枯木立中の一樹は父ならむ 小俣由とり
枯木立千々ありありと夕日去る 松村蒼石 雁
枯木立埃つぽさの夜の目にも 行方克巳
枯木立影存分に伸ばしをり 大橋一郎
枯木立月光棒のごときかな 川端茅舎
柔道の先生来たり枯木立 滝井孝作 浮寝鳥
樽前の雪の裾野の枯木立 高濱年尾 年尾句集
満天の星を支へて枯木立 横原律子
潮風に冬住まぬ家や枯木立 玉越琅々
父逝きて枯木立けふも遠くに在り 有働亨 汐路
神様も鳥も素足や枯木立 栗林千津
雲代謝みなうつくしき枯木立 三好達治 路上百句

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:49 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬鴎

冬鴎

例句を挙げる。

あげ潮の舞を大きく冬かもめ 岡本 眸
ある距離に富士と仁王と冬鴎 原裕 青垣
なほ北へ行く船の白冬かもめ 赤塚五行
今生に白は紛れず冬かもめ 神蔵 器
仲遠きかの日墓標と冬鴎 金箱戈止夫
冬かもめ小さき漁港に小さき船 文挾夫佐恵
冬かもめ明石の娼家古りにけり 石原八束 『秋風琴』
冬かもめ汚れる印刷工の眼に 中山純子 沙羅
冬かもめ波の牙のみ暮色溜め 河野南畦 湖の森
冬かもめ海の青さに翻る 宮田俊子
冬かもめ都へわたる眼鏡橋 柴田白葉女 『月の笛』
冬かもめ黙契は身をほとばしる 宇多喜代子 象
冬鴎いくたび眼路を溢れ過ぎし 内藤吐天 鳴海抄
冬鴎いつのころより遠目ぐせ 菖蒲あや あ や
冬鴎このまま暮るること怖し 坂間晴子
冬鴎ちかぢかと目を合はせくる 矢島渚男
冬鴎どこかの光線が顔に 金子兜太
冬鴎どこへ飛んでも声落す 新谷ひろし
冬鴎わがペン先に来つつあり 皆吉司
冬鴎キッと長谷川一夫の眼 高澤良一 さざなみやっこ 
冬鴎一羽が生れ一羽死す 宇多喜代子 象
冬鴎乗りゆく背波背波の尖 鷲谷七菜子 雨 月
冬鴎天より千々の懸想文 文挟夫佐恵 雨 月
冬鴎川幅たもち橋を越ゆ 米澤吾亦紅
冬鴎影と相摶ち水面割る 鳥居おさむ
冬鴎忘却といふ語の親し 行方克巳
冬鴎橋越す翼つよく張り 館岡沙緻
冬鴎海せまくする起重機船 内藤千鶴子
冬鴎海のあをくて咳込めり 中拓夫
冬鴎煤煙よどみやや赤し 石田波郷
冬鴎燈台ひとつに遠旅路 百合山羽公 寒雁
冬鴎生に家なし死に墓なし 加藤秋邨 野哭
冬鴎生涯拱手して立つ船台 米沢吾亦紅 童顔
冬鴎空の青さに溶けゆけり 阿部誠文
冬鴎窓の景のみ吾にかかはる 木村蕪城 寒泉
冬鴎素数の如くとびとびに 高澤良一 ぱらりとせ 
冬鴎越後の旅は白づくし 福永耕二
冬鴎足あともろとも水葬す 対馬康子 吾亦紅
冬鴎退場うつくしき女優 斎藤冬海
冬鴎黒き帽子の上に鳴く 西東三鬼
凧落ちて砂にまみれて冬鴎 対馬康子 吾亦紅
北欧の船腹垂るゝ冬鴎 秋元不死男
妻病みて旅つづくなり冬鴎 水原秋桜子
巌頭に涙一滴冬鴎 齋藤愼爾
川に来て昼をすなどる冬鴎 上田五千石
数へ日の蜑を弔ふ冬かもめ 井上論天
新港にはじめての船冬かもめ 下田稔
昼のランプに冬鴎冬鴎 中岡毅雄
暁紅の波に影ゆく冬鴎 水原秋櫻子
桟橋の先ぷっつりと冬かもめ 赤塚五行
横腹に知多の朝日よ冬鴎 高澤良一 鳩信 
歩道橋くぐる港の冬かもめ 大島民郎
死にてからび羽毛吹かるる冬鴎 西東三鬼
母の忌や河口に数の冬鴎 八木林之介 青霞集
沖荒るる日の揚げ舟に冬かもめ 鈴木しげを
泊船に午後の波飛ぶ冬鴎 秋光泉児
波に打つひかりの楔冬鴎 加藤耕子
浮寝していかなる白の冬鴎 森澄雄 浮鴎
海たかく街見通しに冬かもめ 飯田蛇笏 雪峡
熔接の火走るを見よや冬鴎 佐藤鬼房
父が残せし櫂も白木に冬鴎 中拓夫
玄海の舟出日和や冬鴎 清水基吉
町空に力抜きたる冬鴎 西村和子 かりそめならず
癌切るや紙片のやうに冬鴎 林徹
糶あとの波止にふくらみ冬かもめ 小林紀代子
老男老女エプロン痛し冬かもめ 平北ハジム
考へる冬鴎に杭ひとつづつ 橋本榮治 麦生
虚室のかなた白尽し飛ぶ冬鴎 赤尾兜子
酢を運ぶ舟の往来冬鴎 高澤良一 鳩信 
釣具屋を畳むにぎわい冬鴎 五味 靖
電線の花とも今朝の冬鴎 石塚友二
青空に切つ先ありぬ冬鴎 夏井いつき
風といて音なき我に冬かもめ 玖保律子
風に乗る手際宜しも冬鴎 高澤良一 鳩信 
風説の父が父なり冬鴎 宇多喜代子
魚干すや空をきしきし冬鴎 中拓夫 愛鷹
風筋を掴み滑空冬鴎  高澤良一  燕音

格好いい川崎洋は冬鴎  高澤良一  石鏡
腋の下締めて降り立つ冬鴎  高澤良一  暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:48 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

外套

外套

例句を挙げる。

あおぞらに外套つるし古着市 阿波野青畝(1899-1992)
ある時の書肆に外套のわれひとり 軽部烏頭子
あをぞらに外套吊し古着市 阿波野青畝
うしろより外套被せるわかれなり 川口美江子
おそき芽のごとし外套の重さ着て 宮津昭彦
かかれゆく担架外套の肩章は大尉 長谷川素逝 砲車
かの日より壁の外套うごくなし 徳永山冬子
くたびれて外套凡医われに似る 新明紫明
つくろへり我は外套鴉は羽 木下夕爾
つとめやめ外套古びたることよ 手島清風郎
なほ壁に外套疲れし姿なす 岸田稚魚
また一人外套掛けに外套を 成瀬正とし 星月夜
わがゐしは外套の中雪まつり 矢島渚男 采薇
わが身なき黒外套や壁に垂る 榎本冬一郎
わつぱ飯肩かけのまゝ外套のまゝ 殿村菟絲子
アイスクリームに厚き外套脱ぎ給へ 長谷川かな女 雨 月
ダブ~の外套引つかけ水見舞 清原枴童 枴童句集
バレンタインデー外套着せて貰ひけり 松山足羽
ボタン落ちて急に片輪の春外套 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
ルージュ濃く外套黒く霧はしり 三谷昭 獣身
世に混じるべく外套の黒ねずみ 橋本榮治 逆旅
京極の館のはねどき外套着て 藤後左右
人の外套を持つて笑つて醒めをる 梅林句屑 喜谷六花
人の訃を聞いて外套ひつかけて 上村占魚 球磨
伊豆の湯の温もりきちと外套に 林原耒井 蜩
何祷りをるや毛皮の外套着て 菖蒲あや 路 地
修道士黒き外套着て若き 大塚千舟
傷心の外套といふ重きもの 桜木残花
兵たりし父外套を残しけり 榎本好宏
冬も終りの外套 数珠とマッチが出て 伊丹三樹彦
出船あり春外套に夕日沁む 草間時彦
北風吹くや少女外套の裏あかく 岸風三楼 往来
参観の春外套を腕にたたみ 遠藤梧逸
古びたる外套の肩に雨そそぐ既にして叛き離れし妻の 大野誠夫
吾子の四肢しかと外套のわれにからむ 沢木欣一
吾子を抱く外套のまま手套のまま 鷹羽狩行 誕生
地図をよむ外套をもて灯をかばひ 長谷川素逝 砲車
坂登る黒き外套は吾が世界 細見綾子
塔婆煽つ風に外套脱ぎにけり 渡辺水巴 白日
墓地の中ゆく外套の中の我 深見けん二
壁に外套そのほかに妻と子を遺し 右城暮石 声と声
壁の夕日に痩外套や腕たらす 角川源義
外套が長くて海は遠すぎて 櫂未知子 蒙古斑
外套が雫だらけの春の雪 右城暮石 上下
外套が黒くてすぐに雪が降る 清水径子
外套でぬぐう涙を持ちて子は 対馬康子 吾亦紅
外套と帽子と掛けて我のごと 高浜虚子
外套と持物ひとつが革命家(ボルシェビキ) 筑紫磐井 婆伽梵
外套どこか煉炭にほひ風邪ならむ 森澄雄
外套におしつつみたる歓喜かな 加畑吉男
外套にくるまつて聞くラジオかな 富田潮児
外套にしみもせざりし時雨なる 野澤節子 黄 瀬
外套にまつはる風の重さかな 松下 義幸
外套に今来し道の今終はる 佐々木六戈 百韻反故 初學
外套に天の重さや働ける 徳永山冬子
外套に帽子かさなりて玄関の灯 青峰集 島田青峰
外套に捜るニューヨーク行き切符 対馬康子 愛国
外套に沁む月光や言葉なし 中島斌男
外套に考えし皺残りけり 恒藤滋生
外套に胸ボタン無し母無からん 成田千空 地霊
外套に荒ぶる魂を包みゆく 長谷川櫂 虚空
外套に裾がたるんでゐて立てり 高濱年尾 年尾句集
外套に闇密着す非常線 榎本冬一郎
外套に降り来る火山灰は目に見えず 森田峠 避暑散歩
外套に風少し出て夜店の灯 島田青峰
外套のけものがくさき年の市 古舘曹人 樹下石上
外套のその儘通る夜更かな 尾崎紅葉
外套のなかに子を負い牛を避く 金子兜太
外套のなかの生ま身が水をのむ 桂信子(1914-)
外套のひらりと降りし電車かな 青峰集 島田青峰
外套のまま座す人気なき生家 北川英子
外套のまゝ観音をまのあたり 川崎展宏
外套のポケットの深きを愛す 片山由美子 水精
外套の一人轢かれてしまひけり 仙田洋子 橋のあなたに
外套の下の喪章は誰も知らず 岸風三樓
外套の下は僧衣の足袋白し 青峰集 島田青峰
外套の中で輪ゴムを爪はじく 田川飛旅子 『外套』
外套の中なる者は立ちにけり 千葉皓史
外套の中の寒さを覚え立つ 深見けん二
外套の中手がもえる朝の城 大井雅人 龍岡村
外套の人に女鹿のごとく蹤く 松本澄江
外套の仕立下しや酉の市 久保田万太郎 草の丈
外套の前下るなり老い給ふ 殿村菟絲子 『路傍』
外套の厚地よ父も亡き人に 小口雅広
外套の士官は乙女社会鍋 岩崎照子
外套の大人と歩む子供かな 千葉皓史(1947-)
外套の大股美術館めざす 赤松[けい]子 白毫
外套の夫と離れつつ貝拾ふ 山口波津女 良人
外套の奥の喪服に凍徹る 飯田龍太
外套の奥は枯野へ続きけり 鳴戸奈菜
外套の姿勢正しく「飲みませう」 川崎展宏 冬
外套の子のてのひらに土の御子 加藤耕子
外套の嶮しき胸を湖の前 古舘曹人 能登の蛙
外套の手深く迷へるを言ひつゝまず 河東碧梧桐
外套の旅の持薬の二三ならず 森川暁水 淀
外套の毛皮鉄砲傷残る 品川鈴子
外套の泥はね一つ灯に戻る 細見綾子 花 季
外套の淋しさ埠頭に極まれり 古川歌子
外套の皺が街ゆくにはか寒む 林 翔
外套の綻びて世に狎れゆくか 伊丹三樹彦
外套の老いたる父にふと遅れ 三谷昭
外套の耳イヤホンで塞ぎゐる 仲村青彦
外套の肩の断崖孤独かな 不破博
外套の肩尖るとき山の音 草間時彦 櫻山
外套の背に一些事をささやかれ 椿 作二郎
外套の背に血縁の手が交叉 平井さち子 完流
外套の背の父に似て子は旅へ 村上 光子
外套の胸の底まで荒野かな 草間時彦 櫻山
外套の脇にかいこむ杖細し 青峰集 島田青峰
外套の衿立てて世に容れられず 加藤楸邨
外套の衿立てて人許さざる 鈴木 まゆ
外套の裏は緋なりき明治の雪 山口青邨(1892-1988)
外套の裏緋色なる妻の勤 香西照雄 対話
外套の裾切れ街は春埃 米沢吾亦紅 童顔
外套の襟のよごれに冴え返る 吉屋信子
外套の襟を立て東京の隅へ帰る 加倉井秋を 『胡桃』
外套の襟立ててより語らはず 元岡幸子
外套の襟立てて世に容れられず 加藤楸邨
外套の襟立てゝ肩のいかりやう 青峰集 島田青峰
外套の襟立て淋しがりやかな 成瀬正とし 星月夜
外套の赤に尾鰭がついてくる 櫂未知子 蒙古斑
外套の重きに減りて靴悲し 橋本鶏二
外套の重き日のあり軽き日も 永井良
外套の重くなりしを人に言はず 遠藤梧逸
外套の釦手ぐさにたゞならぬ世 中村草田男
外套の電車待つ間を往たり来たり 青峰集 島田青峰
外套は夜更の街を歩み去る 長谷川櫂 虚空
外套ひとり水平線を胸に引き 友岡子郷 遠方
外套も疲れ釦穴瞑らず 田川飛旅子 『外套』
外套やいつもの位置に待つ電車 小田 司
外套やこころの鳥は撃たれしまま 河原枇杷男 烏宙論
外套やさゞめき後に街頭へ 青峰集 島田青峰
外套やまさぐりあてし一信書 岸風三楼 往来
外套や人百態の色一つ 林翔 和紙
外套や大いなる世に押されつゝ 徳永山冬子
外套や或日物憂き五十肩 石塚友二
外套や曾我殿原の痩我慢 尾崎紅葉
外套や来し方の闇行方にも 鈴木六林男 *か賊
外套や火山灰に失ふ山の藍 大岳水一路
外套や白き鴎を入江にて 草間時彦 櫻山
外套や知性を楯となせる顔 徳永山冬子
外套や終日雲にまつはられ 徳永山冬子
外套や落魄の肩崩れそめ 小林康治 玄霜
外套や見れば小さく彦根城 岸本尚毅 舜
外套や語らざること妻知らず 不破博
外套や雄を誇れぬ野鳥園 石川桂郎 高蘆
外套や館の出口は横町に 藤後左右
外套や鬱々として市の裡 河野南畦 『花と流氷』
外套をいなせに着しは悪魔にて 京極杞陽
外套をかかえ直して見舞い辞す 対馬康子 純情
外套をかけては扉に人消ゆる 清原枴童 枴童句集
外套をこゝろの住処なく覆ひ 杉山岳陽 晩婚
外套をしつかと抱へ納得す 猿山木魂
外套をだまつて著せて情あり 高橋笛美
外套をはじめて着し子胸にボタン 細見綾子 雉子
外套をゆたかに着けて散歩かな 青峰集 島田青峰
外套を吾子の赤きに並べて掛く 相馬遷子 山国
外套を四円に売るや春寒し 河野静雲
外套を売るに妻女ら無き如し 萩原麦草 麦嵐
外套を掛けし俥の初日かな 増田龍雨 龍雨句集
外套を深々と著て玄関に 高木晴子 晴居
外套を環視の中に入りて脱ぐ 右城暮石 声と声
外套を盾とし過ぐる行者滝 桂樟蹊子
外套を眼ぐや巷のなげかひも 軽部烏頭子
外套を着せらるる手をうしろにす 池田秀水
外套を着せられてゐる別れかな 原田青児
外套を着せ居り夫が負ふことのみ 殿村菟絲子 『繪硝子』
外套を着て触れし世の募金箱 宍戸富美子
外套を着て過去のみがあたたまる 内藤吐天 鳴海抄
外套を羽織りヌードの出番待つ 橋詰沙尋
外套を翅の如くに着工歩む 萩原麦草 麦嵐
外套を脱いで小さな肩があり 岸本尚毅 鶏頭
外套を脱がずどこまでも考へみる 加藤楸邨
外套を脱ぎて弱気の虫動く 藤井彰二
外套を脱ぐより少女の声噴き出す 林 翔
外套を脱ぐバルザツク富士が立つ 磯貝碧蹄館
外套を脱ぐ胸白く旗模様 池内友次郎 結婚まで
外套を脱げば一家のお母さん 八木忠栄
外套を負ひて炎夏の街をかへる 瀧春一 菜園
外套を買ふにわからぬ子の好み 稲畑汀子
外套を車窓に吊つて日本海 藺草慶子
外套千々揉む夜の駅の朱の欅 石塚友二 方寸虚実
外套男女睦む足下に弱き波 田川飛旅子 『外套』
外套重く不幸の末の足病みぬ 森川暁水 淀
外套重し何起るとも驚かず 津田清子 礼 拝
外套重し受話器の底の嘘を聞く 松村多美
外套重し廃墟の占める夜の位置 石原八束 秋風琴
奇蹟なし外套の脚地に生えて 三谷昭 獣身
奈良女高師望みし日はも冬外套 鈴木栄子
女流書家みどりの外套着て華奢に 柴田白葉女 『冬泉』
妻のものへ外套冬鳶のごと掛ける 吉田鴻司
妻の外套の隠しを探す抱くごとく 田川飛旅子 花文字
定年まであと一年の外套着る 福島壺春
寒波来や外套のボタンつややなる 椎橋清翠
寒紅の舞妓も見たり外套被る 百合山羽公 故園
屠殺場につとむる人の外套よ 田村了咲
干しひろげ死者の外套大いなる 赤松[ケイ]子
廊更けぬ軍醫外套をきてかへる 横山白虹
患者診るや外套敢へて脱がずして 相馬遷子 山国
愛恋や外套おもき春と思ヘ 齋藤玄 飛雪
我れ病めば吾が外套も病みにけり 上野泰
戦傷兵外套の腕垂らしたり 加藤楸邨
教壇を去りて外套今も黒 森田峠 避暑散歩
明日ありやあり外套のボロちぎる 秋元不死男(1901-77)
暗がりに外套ならぶ昭和かな 徳弘純 麦のほとり
書架の前黒き外套のまゝ立てり 岸風三楼 往来
月光の外套のま.ゝ歩み入る 中島斌雄
朝々や外套古き日済貸 尾崎紅葉
東道の心ゆるめず外套著る 保田白帆子
横丁をふさいで来るよ外套着て 藤後左右
母が着物売つて買ひきし外套ぞ 成瀬櫻桃子 風色以前
毛布外套なんど蒲団にかけて寝る 寺田寅彦
毛皮すてゝ外套かろく空蒼し 渡邊水巴 富士
深夜往診風邪の外套重く着て 下村ひろし 西陲集
深夜来て不明の外套富士裏に 攝津幸彦
父と子の外套紛ひ母も老う 吉屋信子
父の世の外套はやる港町 古賀まり子
玉砂利の初日に帽子外套置く 篠原梵 雨
玉羅紗の外套着たる冬の蝶 久米正雄 返り花
生き難く生きて外套裏も黒 中村明子
白き手に外套托し軽き疲れ 田中冬二 麦ほこり
社会鍋守る外套の裾長し 岸風三樓
箪笥憂し服に外套にわが歴史 林翔 和紙
義父の死におどろきはおる外套重し 森川暁水 淀
聖堂のミサや外套着しままに 山田尚子
胸射ぬかれし外套を衣を剪りて脱がす 長谷川素逝 砲車
脱ぎ捨てし外套の肩なほ怒り 福永耕二
船を見てゐる外套の背を並べ 深見けん二
薔薇色の肺に外套を黒く着る 日野草城
被つて袖通す外套農夫の旅 田川飛旅子
裏返しせし外套も着馴れけり 相馬遷子 山国
裸婦像は暗し外套群がりて 加藤三七子
貝の洋書読む外套に品よく老い 田川飛旅子
足袋外套脱ぎ散らさでや孤独慣れ 石塚友二 方寸虚実
遠きピアノ書を閉ぢ外套を着てかへる 中島斌雄
遠富士に外套の襟に頬を埋め 池内友次郎 結婚まで
都府楼址一外套のたゝずめる 森田峠 三角屋根
酔うて着る外套の袖二つ長し 榎本冬一郎 眼光
重さうな外套やその鴎外忌 森田峠
風邪の夢さめて外套壁に垂る 岸風三楼 往来
鮟鱇はゆるき外套着用す 安田千枝子
鶏頭に外套長き毛氏の像 横山房子
オーバーにかくす己れをなほ愛す 河野南畦 『焼灼後』
オーバーに今日の吾が身を包みけり 稲畑汀子
オーバーに出際に抱きし吾子の毳 篠原梵
オーバーぬがず新宿夜話を語り去り 成瀬正とし 星月夜
オーバーの奥の奥なるふさぎ虫 今泉陽子
オーバーの背中がものを言ふことも 山田弘子 懐
オーバーの胸雪まみれ逢ひに行く 茨木和生 木の國
オーバーの裏には泳ぐ児をかくす 対馬康子 吾亦紅
オーバーの裏側にある荒野かな 櫂未知子 蒙古斑
オーバーの裏地の破れひとり知る 工藤克巳
オーバーの裾長にして老教授 田村了咲
オーバーの軽さ吾が身のうつろなり 上松康子
オーバーをぬぐ間も子等のぶら下る 庄崎以知太
オーバーを着せかけしのみ何も言わず 今井千鶴子
オーバーを羽識つてむかひあひ更けぬ 篠原梵 雨
オーバー濡れかすかつ模様浮いて来ぬ 篠原梵 雨
オーバー脱げばオーバー重し死を悼む 津田清子 二人称
オーバー買ふ迄街を行く金のぬくみ 加藤知世子
オーバー重し太陽燃ゆるゴッホの絵 野村慧二
ルオーの絵見しよりオーバー重たしや 石谷秀子
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔 和紙
妻の留守オーバーの儘火をおこす 畠山譲二
手錠の手隠すオーバー羽織りやる 中村鎮雄
疲れ脱ぐオーバー釦飛ばしけり 大串 章
知己のなき満座の中やオーバー脱ぐ 皆川白陀
著せかけてオーバーの名をちよと読みぬ 長尾樟子
連立ちしオーバーの端子が掴み 猪俣千代子 堆 朱
首筋のすうすうオーバー羽織り初め 高澤良一 鳩信 
鬱然と父匂ひけり合オーバー 大石悦子
小平町
親方の漁場差配の赤毛套(あかけつとう)  高澤良一  素抱



以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:46 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

ジャケツ

ジャケッ

例句を挙げる。

このジヤケツ着るたび遠き母近し 大島民郎
まっすぐに日射すジャケツの妻の胸 藤田湘子
ゆるぎなくジヤケツ二十の躯をつつみ 丸山一実
キリストを着よと手編のジャケツ賜ぶ 田川飛旅子 『使徒の眼』
ジャケツ厚し落葉焚きゐし香をこめて 草間時彦
ジャケツ着て出て椋鳥をふり仰ぎ 野澤節子
ジャケツ着て快晴の海想ひけり 林桂 銅の時代
ジヤケツの娘自転車とばし来りけり 上村占魚 球磨
ジヤケツの子鼻梁は吾れに瞳は妻に 大岳水一路
ジヤケツの端のどをつつみて花とひらく 中村草田男
ジヤケツの胸突如仔牛になめられて 飯利勝郎
ジヤケツ厚し落葉焚きゐし香をこめて 草間時彦
ジヤケツ真赤く縄飛はまだ出来ず 富安風生
ジヤケツ編む日向の鶏に竹さがり 飯田龍太
スケートの憩ひジヤケツの身をほそめ 岸風三楼 往来
ズボンに手ジャケツの漁夫ののぼる岨 橋本鶏二
ラグビーのジャケツちぎれて闘へる 山口誓子
一少女ジヤケツの胸に鍵垂らし 田川飛旅子 花文字
制服がジャケツ締めつけ試験期なり 香西照雄 素心
勝独楽は派手なジャケツの子供かな 上野 泰
厚ジャケツ一枚着足す国境 鈴木栄子
古ジャケツ愛し雑木の影を愛す 大嶽青児
古ジヤケツあたまより着て老はまくす 森川暁水
小鳥来ぬジヤケツの赤き子供らに 岸風三楼 往来
屑買ひは青空仕事紺ジャケツ 香西照雄 対話
平静をよそほふだぶだぶジャケツ着て 上田五千石
愛をもて編みしジャケツのかく痒し 鷹羽狩行
楽屋口水の江滝子ジャケツきて 星野立子
毛糸編む紅のジヤケツの子が紅を 上村占魚 鮎
海をゆく心細さよジャケツ着込む 津田清子 礼 拝
背の厚き新斧老の黒ジャケツ 香西照雄 素心
袖通す他なきジャケツぎっくり腰 高澤良一 寒暑 
跫音高し青きジャケツの看護婦は 石田波郷
闘争歌ジヤケツがつゝむ乙女の咽喉 藤田湘子 雲の流域
うしろより皮ジヤンパーを被せらる 辻美奈子
どん底の舞台稽古の革ジャンパー 橋本美代子
園丁のジャンパーが木にかけてある 西村和子 窓
真二つに割り皮ジャンパー脱ぎ落す 太田寛郎
青年の顎ジャンパーが突き上ぐる 今村俊二
革ジヤンパー利へ鳴り急ぐ去年今年 香西照雄
すれちがいし革ジャケットは緒形拳 中原徳子
カーディガン青し看護婦と患者われ 黒崎治夫
ジャケットの羽毛ふくれに汝が青春 清水衣子
乗り合はす電車にぼつぼつ皮ジャンパー  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:44 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

コート

コート

例句を挙げる。

さよならの手をしまひたる黒コート 内田美紗 浦島草
そのまゝといはれ会釈しコートぬぐ 星野立子
だぶだぶの黒いコートの手に椿 長谷川櫂 天球
わがコート赤し枯野に点なすや 山田弘子 螢川
アイロンをあてて着なせり古コート 杉田久女
グッピーに遭ひておもたき黒コート 吉田紫乃
コートのひと其処此処跼み犬ふぐり 川崎展宏
コートの袴たてるは洋画観てのこと 石川文子
コートみなきちんと畳み聖書会 森田峠
コートやゝ長しと思ひつゝ旅に 曾我鈴子
コート着し人のそがひや雪の道 原石鼎
コート着てジェット気流にもぐり込む 郡山やゑ子
コート着て母のさからふ風も見し 中村汀女
コート着て財布の位置が変りけり 能村研三 鷹の木
コート着ればすぐ秋雨の中ゆく母 野澤節子 黄 瀬
コート脱ぎつつ白鳥を想ひをり 折井紀衣
コート脱ぎ法身窟へ身を入るる 小川かん紅
コート脱ぎ現れいづる晴著かな 高浜虚子
コート脱ぐ間も言葉を交しをり 風間啓二
コート買ふ十一月の旅のため 西村和子 夏帽子
ミンクのコート着てマヌカンの小指反る 川村紫陽
俯向いてコートの襟の中に咳く 西海枝梟子
冷えきったコートよ中に弟が 池田澄子
処女らコートの白に統べられ霧の航 上野さち子
出かけんとせるコート脱ぎ客迎へ 丸山茨月
刑事飛び出しぬコートを手掴みに 松岡ひでたか
初日拝す夫のコートを着重ねて 伊藤いと子
別れても子の眸はりつくコートの背 青木喜久
十字軍より元気にて黒コート 櫂未知子 蒙古斑
吾妻コート藁屋の霜はあはれまし 尾崎紅葉
壁に吊るコートも疲れたる姿 三村純也
嵐ケ丘へ靡くコートを身に纏う 斎藤冬海
巫女の髪解かずに下向革コート 河野頼人
座席帯(シートベルト)毛皮コートにくひ込めり 品川鈴子
抱くやうに毛皮コートを脱がせやる 辻桃子
振のなきコート鎧へり近松忌 殿村莵絲子 花寂び 以後
捨ても着もせぬ緋のコートまた出しぬ 佐々木いく子
早梅の影をコートにお互ひに 川崎展宏
気づかひや借りしコートに夕立ばね 阿部みどり女 笹鳴
波音を離れコートの襟を立て 高澤良一 随笑 
流木に赤きコートの掛けてゐる 中野貴美子
火の言葉つつみおほせしコート着る 島田夏子
男の愚痴聞くにコートは脱がざりし 内田美紗 誕生日
皮コート天守の闇を曳き出づる 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
約束の赤きコートの駈けて来る 阿部王一
羽衣か宮址に脱ぎし革コート 品川鈴子
藍の香の匂ふコートの仕付け取る 中 憲子
藤村の写真を前にコート脱ぐ 伊藤敬子
観音にまみゆと革のコート脱ぐ 品川鈴子
話題選るコートの中の胸の中 槫沼清子
豹紋の忘れコートがカフエテラス 増田治子
負け嫌ひにて火の色のコート着る 辻美奈子
逢ひたさが先立つコートまとひけり 早川志津子
遅れ着しことを詫びつゝコート脱ぐ 平野 竹圃
道服と吾妻コートの梅見哉 夏目漱石 明治三十二年
革釦絢爛たりし日のコート 岩井秀子
顔見世のしなやかにコート脱ぎにけり 伊藤京子
鴨を見るコートの下に喪服着て 深見けん二
黙つてゐる羊のコート温ければ 橋本美代子

以上
by 575fudemakase | 2014-12-14 00:34 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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by 575fudemakase

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具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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