2014年 12月 17日 ( 12 )

虎落笛

虎落笛

例句を挙げる。

けふのすぐきのふとなりて虎落笛 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
この齢で何をおそるゝ虎落笛 及川貞
さいはての時化の港の虎落笛 平野竜風
ふとさめし夜の深さに虎落笛 清崎敏郎
ふるさとに父の独酌虎落笛 大串章
ほてりたる炉辺の湯呑や虎落笛 松藤夏山 夏山句集
またたくはわが知れる星虎落笛 村越化石 山國抄
みちのくや厠もつとも虎落笛 草間時彦
めぐる日や釈迦三尊に虎落笛 和田悟朗 法隆寺伝承
やはらかき児の蹠拭く虎落笛 中田幸子
わが月日妻にはさむし虎落笛 加藤楸邨
オペラ果て魔力を得たり虎落笛 吉原文音
オリオンの出に先んじて虎落笛 上田五千石 田園
シベリアの星は幾重か虎落笛 最東峰
シベリヤの使者のつぶやき虎落笛 山下美典
一汁一菜垣根が奏づ虎落笛 中村草田男
亡き人の声還るとも虎落笛 大橋敦子
人の黙こはし岬の虎落笛 大木あまり
仰臥して死後や朝の虎落笛 古舘曹人 能登の蛙
体温を越えし念珠や虎落笛 鳥居美智子
叡山は虎落笛さへ仏陀めく 堀 無沙詩
吊り皮にしがみつきゐて虎落笛 仙田洋子 橋のあなたに
堤防の長々と暮れ虎落笛 荒金 久平
売りに来し潮濡章魚や虎落笛 石塚友二 光塵
夕づつの光りぬ呆きぬ虎落笛 阿波野青畝(1899-1992)
夜は村に霊還り来る虎落笛 笹川正明
夜更けて吹き手の替る虎落笛 棚山 波朗
夢で師の子は師と瓜二つ虎落笛 磯貝碧蹄館 握手
太梁は夜に艶増す虎落笛 能村研三 騎士
奥能登の百日止まぬ虎落笛 松本伸一
子の病気いつも突然虎落笛 下田青女
寝まるほか用なきひとり虎落笛 菖蒲あや あ や
寝る前の錠剤一つ虎落笛 錦織畔燼
寝返れば耳吹く風や虎落笛 石塚友二
山の雲海へ移りぬ虎落笛 稲畑汀子
山車倉に昔の闇や虎落笛 中村風信子
川音と同じ夜空の虎落笛 廣瀬直人
帰り来し故郷の山河虎落笛 星野立子
座礁船北の挽歌や虎落笛 林 青峰
忌日なき遊女の墓や虎落笛 正岡照世
愛憎や卓上に吹く虎落笛 塚本邦雄(1922-)
折鶴蘭鏡にうつり虎落笛 阿部みどり女 月下美人
抹殺の線を真直に虎落笛 殿村菟絲子 『樹下』
掘れば出る籠城の米虎落笛 久保田雅代
新しき枕眠れず虎落笛 星野椿
旗を灯に変える刻来る虎落笛 鈴木六林男 第三突堤
日の匂して水上の虎落笛 斎藤玄 雁道
日輪の月より白し虎落笛 川端茅舎
昼暗き笹叢ばかり虎落笛 加藤知世子 花 季
月光の棕梠つつぬけに虎落笛 町田しげき
月磨き星を磨きぬ虎落笛 津村典見
朽舟の嗚咽の如し虎落笛 三上美津女
来ずなりしは去りゆく友か虎落笛 大野林火
柝鶴蘭鏡にうつり虎落笛 阿部みどり女
樹には樹の哀しみのあり虎落笛 木下夕爾
樹に宿る神のこゑとも虎落笛 伊藤いと子
檣頭にあつまるロープ虎落笛 中村房子
歌碑の辺がぬくしと寄るや虎落笛 加藤知世子 黄 炎
歩一歩闇ひきしまる虎落笛 相馬遷子 雪嶺
母看とり夫看とる夜の虎落笛 仲澤 昭
母親の影より生まれ虎落笛 高澤晶子 純愛
河越えてほういほういと虎落笛 内原陽子
泣き寝入るは遺族のみかは虎落笛 香西照雄 素心
海鳴りか虎落笛かや暮れ落ちぬ 高木晴子
海鳴りの天駆け虎落笛となる 桑田青虎
港の灯瞬きもせず虎落笛 水原春郎
湖暮れて一戸一戸の虎落笛 山田みづえ
湯が沸いてしだいしだいに虎落笛 長谷川双魚 風形
湯に聞けば泣きをんなめき虎落笛 井沢正江 以後
漁具小屋の影うずくまる虎落笛 石川博司
漂とちち渺とはは飛ぶ虎落笛 飯田綾子
灯を消せば階下の納屋の虎落笛 羽部洞然
燈火の揺れとどまらず虎落笛 松本たかし
牛が仔を生みしゆふべの虎落笛 百合山羽公 故園
琴糸を縒る灯も消えて虎落笛 細井みち
生きて聞く夫亡き夜の虎落笛 柳生千枝子
白日の天地悲しむ虎落笛 相馬遷子 雪嶺
真ん丸な月あり真夜の虎落笛 柘植梅芳女
神々の空ゆく哄ひ虎落笛 渡邊千枝子
立枯れて芙蓉も鳴るや虎落笛 石川桂郎
紫の氷かなしや虎落笛 川端茅舎
終バスのひたすら走る虎落笛 山田節子
繋がれ合ふ囚人・電柱虎落笛 香西照雄 素心
肉親の顔が遠のく虎落笛 柴田白葉女 遠い橋
胸廓の裡を思へば虎落笛 日野草城
葬送の堂を包みて虎落笛 稲畑汀子
藁小屋に湯の花ねむる虎落笛 大島民郎
虎落笛「烏の塒山」は眠らぬ山 佐野美智
虎落笛あかりが消えし添乳どき 百合山羽公 故園
虎落笛いつの世よりの太き梁 広瀬町子
虎落笛この一管は父の国 松山足羽
虎落笛こぼるるばかり星乾き 鷹羽狩行 誕生
虎落笛ねむれぬ病我にあり 上村占魚 鮎
虎落笛のゆくさき見ゆる夕の川 柴田白葉女 花寂び 以後
虎落笛ひしめくものに乳房あり 岸本マチ子
虎落笛ふるへやまざる壺の花 阿部みどり女
虎落笛また父母の墓にきぬ 三宅句生
虎落笛めつむりをればひと昔 櫛原希伊子
虎落笛わが片肺の半世紀 神原健
虎落笛わが詩に欲しき塩の艶 磯貝碧蹄館 握手
虎落笛ゐつく曲馬の天幕に 西川雅文
虎落笛人の不運に隙間なし 内藤吐天 鳴海抄
虎落笛今宵修道院泊り 津田清子
虎落笛叫びて海に出で去れり 山口誓子
虎落笛叫ぶ少年と銃の隙 原裕 葦牙
虎落笛吉祥天女離れざる 橋本多佳子
虎落笛塵取に塵はなかりけり 五十崎古郷句集
虎落笛夜に甦る怒りあり 伊丹さち子
虎落笛夜は鯨を連れてくる 澤本三乗
虎落笛夢魔にどんぐりまなこあり 仙田洋子 橋のあなたに
虎落笛天の肋も折れにけり 熊谷愛子
虎落笛嫁が泣く場は詩の中 加藤知世子
虎落笛子にも遺らぬ稿を継ぐ 石田 波郷
虎落笛子は散りやすく寄りやすく 山本洋子
虎落笛子をとられたる獣のこゑ 山口波津女
虎落笛子供遊べる声消えて 高浜虚子
虎落笛山より姥が子を盗りに 小川一路
虎落笛帯織る家を迂回せり 磯貝碧蹄館 握手
虎落笛帰らんとする家の形 岡田耕治
虎落笛引掻き傷めくアラブ文字 奈良文夫
虎落笛怪談いよいよ面白く 嶋田摩耶子
虎落笛手をとられゐて影あをし 仙田洋子 橋のあなたに
虎落笛抱かれて夜は何を生む 高澤晶子
虎落笛星の吹けるは竪笛に 井沢正江 以後
虎落笛枯菩提樹のひとり聴く 百合山羽公 寒雁
虎落笛残しただけの留守電話 櫂未知子 貴族
虎落笛母大切に籠りけり 野村喜舟 小石川
虎落笛毛糸編む妻いも寝ずに 五十崎古郷句集
虎落笛水子かへせと繰りかへす 保坂敏子
虎落笛沖荒れやまぬ佐渡泊り 松尾緑富
虎落笛海にすりへる澪つくし 百合山羽公 寒雁
虎落笛涙にじみてゐたりけり 相馬遷子 山国
虎落笛爐に酔ふ耳にかなでけり 西島麥南
虎落笛痛飲のこと我になし 相生垣瓜人
虎落笛百鬼夜行を旨とせり 柴田奈美
虎落笛眠に落ちる子供かな 高浜虚子
虎落笛知恵熱の子とひとつ闇 辻美奈子
虎落笛絨毯に曳く折鶴蘭 阿部みどり女 月下美人
虎落笛絶え入る音の尾ありけり 小杉余子 余子句選
虎落笛美しすぎる音を聞かす 橋本美代子
虎落笛聞きつゝ言葉探しをり 赤木 範子
虎落笛胎児は耳の形して 森田智子
虎落笛胡笳の聲にも似たらむか 相生垣瓜人
虎落笛色とりどりの風をつれ 吉田茂子
虎落笛色紙一枚約果す 石川桂郎 高蘆
虎落笛裁かるゝ身を横たへず 松岡ひでたか
虎落笛道を曲ればひとりなり 佐野良太 樫
虎落笛風樹の嘆のごときもの 長谷川双魚 風形
訪ひ来しは待つ人ならず虎落笛 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
過ぎ去りし日の遠くなる虎落笛 阿部寿雄
野の町の銀座も寝たり虎落笛 三橋敏雄 長濤
金色堂奏づる月の虎落笛 沼澤石次
鉄塔の峰々つなぐ虎落笛 道川虹洋
鉄橋を一塊として虎落笛 鷹羽狩行 誕生
長城に匈奴の叫び虎落笛 品川鈴子
閻王に更けし灯や虎落笛 小原菁々子
電工の働く虎落笛の上 馬越冬芝
風神の韋駄天走り虎落笛 不破幸夫
餓ゑきるまで食べぬが償ひ虎落笛 香西照雄 対話
鰻田に闇うづくまる虎落笛 児玉 寛幸
鳴沙とも目覚めて居りぬ虎落笛 田中英子
いつの世も挽歌は秀でもがり笛 井沢正江 以後
もがり笛いく夜もがらせ花ニ逢はん 檀一雄
もがり笛とまれ寝るべくなれりけり 木下夕爾 遠雷
もがり笛ひめごとめいて布を裁つ 原 尚子
もがり笛よがりのこゑもまぎれけり 加藤郁乎
もがり笛一つ目小僧呼んでをり 上村占魚 『自門』
もがり笛伝言板の文字とがる 林田 江美
もがり笛前山の闇なだれ来る 米沢吾亦紅 童顔
もがり笛夕焼けてゐし耳ふたつ 角川春樹
もがり笛明日醒めざれば寂光土 植村通草
もがり笛星の吹けるは竪笛に 井沢正江
もがり笛洗ひたてなる星ばかり 上田五千石(1933-97)
もがり笛熄めば岬のまた淋し 高嶋遊々子
もがり笛荷風文学うらがなし 石原八束 『秋風琴』
もがり笛風の又三郎やあ一い 上田五千石
三千年先人の声もがり笛 百合山羽公 寒雁
夜を籠めて萱の葺面(つら)もがり笛 高澤良一 随笑 
夫征きしままの生活もがり笛 石原舟月
纜の太く短しもがり笛 田中峡一
モガリ笛いく夜もがらせ花ニ逢はん 檀 一雄

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:25 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

隙間風

隙間風

例句を挙げる。

ありとある隙を占めをる隙間風 相生垣瓜人 微茫集
かく隙ける隙間風とはわらふべし 皆吉爽雨
かたくなな心に隙間風の吹く 山田 敏子
かみ合はぬ話に黙す隙間風 加藤武夫
けぶりゐるランプに見ゆる隙間風 米沢吾亦紅 童顔
この店のここに坐れば隙間風 辻桃子
さりげなく語りゐる座の隙間風 高野彩里
しみじみ孤り寝ても覚めても隙間風 小松崎爽青
すぐ寝つく母いとほしや隙間風 清崎敏郎
ほのゆるゝ閨のとばりは隙間風 杉田久女
みちのくの馴染みの宿の隙間風 小島左京
カーテンの動いてゐるは隙間風 高濱年尾 年尾句集
コンセント大工に貸して隙間風 塩川祐子
サーカスの緊張解けし隙間風 きよみ
二階より隙間風来る母の死後 中尾寿美子
五百年つづける宿の隙間風 茂里正治
人の世に出遅れてゐる隙間風 松山足羽
助け茶屋仕舞ひ仕度の隙間風 加藤知世子 花 季
単身赴任寮プレハブの隙間風 福原紫朗
国宝の寺おほらかに隙間風 鷹羽狩行
夢にまで入る隙間風夫婦たり 大沢初代
妻の指に真珠うるほふ隙間風 千代田葛彦 旅人木
寸分の隙をうかがふ隙間風 富安風生
屑籠を楯なる書屋隙間風 井沢正江 湖の伝説
御座の間の百万石の隙間風 吉本香歩
忍び入り紛れをるなる隙間風 相生垣瓜人 微茫集
恋に怯づは才なきあらず隙間風 石塚友二 方寸虚実
折目正しき屏風より隙間風 鷹羽狩行 七草
折詰に鯛の尾が出て隙間風 波多野爽波
指銜え口中にある隙間風 和田幸司
旅にして海の匂ひの隙間風 山内山彦
時々にふりかへるなり隙間風 高浜虚子
晩年といふ家ありて隙間風 蔦 悦子
朝粥の湯気斜なる隙間風 村上青竜
東京の隙間風とも馴染みたる 山田弘子
枕上来てやる度に隙間風 中村汀女
母がりやむかしのまゝの隙間風 山本晃裕
海の隙間風茶沸しの瓦斯ゆるる 田川飛旅子 花文字
減塩の腰抜汁や隙間風 高橋茶梵楼
潮騒を伴ふ隙間風に叔母 大岳水一路
灯を消して雪の匂ひの隙間風 堀口星眠 青葉木菟
灯虫来し野より来るなり隙間風 相生垣瓜人 微茫集
煤掃きて改め招く隙間風 百合山羽公 寒雁
版画屑転がしてゐる隙間風 中条久三夫
産小屋の十坪に足らぬ隙間風 斉藤夏風
町ながらここは谷の底隙間風 下村槐太 天涯
疼く歯のほとりを行けり隙間風 相生垣瓜人 微茫集
白襖の黒枠不吉隙間風 香西照雄 素心
百姓の夜はしづかや隙間風 橋本鶏二 年輪
眉毛にも耳朶にも著けり隙間風 相生垣瓜人 微茫集
立てまはす古き屏風や隙間風 阿部みどり女 笹鳴
精いつぱい身を楯にして隙間風 森川恭衣
糸繰るや雪気もまじる隙間風 能村登四郎
縄のれん一本挟む隙間風 黒坂紫陽子
蒸しものの細めの瓦斯や隙間風 宍戸富美子
輸かざりやすでに三日の隙間風 久保田万太郎 流寓抄
長病みの夫の背中に隙間風 浅見まき子
閉むるときをどる襖や隙間風 小路紫峡
隙間風かんばし偸安の人よ国よ 香西照雄 対話
隙間風さへ団欒をさまたげず 斎藤道子
隙間風さまざまのもの経て来たり 波多野爽波 『湯呑』
隙間風せんなし火鉢守る父子 小原菁々子
隙間風その数条を熟知せり 相生垣瓜人(1898-1985)
隙間風ちちははの夢吾子の夢 相馬遷子
隙間風とも争はずなりにけり 藤田湘子 春祭
隙間風どのみち立て付け直す家 高澤良一 宿好 
隙間風ひとすぢこころ無惨なり 柴田白葉女 花寂び 以後
隙間風エレベーターの扉より 関森勝夫
隙間風パン焼く香り運びくる 田中雅子
隙間風五十腕置くに膝よりなし 原田種茅 径
隙間風何に倣ひて犇くや 相生垣瓜人 微茫集
隙間風元三大師のお札より 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
隙間風兄妹に母の文異ふ 石田波郷
隙間風剃らるる鬚に黒ぞなく 石川桂郎 高蘆
隙間風十二神将みな怒る 阿波野青畝(1899-1992)
隙間風寝嵩崩さず妻子あり 小林康治 四季貧窮
隙間風寝煙草煙顔に来る 米澤吾亦紅
隙間風屏風の山河からも来る 鷹羽狩行 平遠
隙間風座りかへたるところへも 宮下翠舟
隙間風想ひ出す顔みな違ふ 赤尾兜子
隙間風来し方見つめ直すとき 久保田静子
隙間風来る卓上に林檎一つ 山口青邨
隙間風次第しだいに四面楚歌 佐土井智津子
隙間風殺さぬのみの老婆あり 相馬遷子 雪嶺
隙間風母をらぬ家のどこよりか 春日こうじ
隙間風灰を熾して通りけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
隙間風祖母と寝し子の寝落ちしか 大野林火
隙間風終生借家びととして 石塚友二
隙間風臍につぶやく言葉とて 加藤知世子 黄 炎
隙間風般若波羅蜜多生きたしや 田川飛旅子 『山法師』
隙間風薔薇色をこそ帯ぶべけれ 相生垣瓜人
隙間風衆愚の目鼻して病めり 小林康治 玄霜
隙間風負ふべくあらぬ身の負ひ目 石塚友二 方寸虚実
隙間風逃ぐる術なき夜々の肩 石塚友二 方寸虚実
隙間風驚き合ひて棲みつかな(木村武子を娶り滝野川に移る) 岸田稚魚 『負け犬』
飲食や檜の家の隙間風 殿村莵絲子 雨 月

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:23 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

枯菊

枯菊

例句を挙げる。

あまつさへ枯菊に雨そそぎけり 安住敦
いつか見し姿のまゝに菊枯るゝ 今井つる女
いつしかに悔も残らず菊枯れし 汀女
いつの続きか枯菊を眼は見つつ 斎藤玄
かの人に逢はざりしより菊枯るる 成瀬桜桃子 風色
しじみ汁菊枯れし宿の蔀越 室生犀星 犀星発句集
ぬぎ捨つる供華の枯菊にほひけり 河野静雲 閻魔
ひそかなる枯菊に年改る 松本たかし
ぼろぼろの身を枯菊の見ゆる辺に 福永耕二
もの枯るゝ中に菊枯るあきらかに 池上浩山人
よせてある枯菊も焚き初竃 田村木国
モナリザはいつもの如し菊枯るる 山口青邨
乾鮭や焚く枯菊の薄畑 石井露月
人佇ちてはたと枯菊暗くなる 阿部みどり女 『石蕗』
他人の家の枯菊焚いてみたきかな 上野さち子
伏せ籠に矮鶏の子育ち菊枯るる 新海りつ子
傘乾せば集まる蠅や菊枯るゝ 金尾梅の門 古志の歌
僅か焚く枯菊思ひあまたなり 古賀まり子 降誕歌
共に焚かれ枯菊と縄似てしまふ 桂信子 黄 瀬
別るるに枯菊焚いてくれしかな 吉田紫乃
南のよき日当りの菊枯るゝ 楠目橙黄子 橙圃
命ありて佇む影を枯菊に 阿部みどり女 『雪嶺』
夏菊として枯菊に移りゆく 相生垣瓜人 微茫集
夕づつの珠と懸りて菊枯るる 山本歩禅
大方の菊枯れ尽きて黄菊かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
妻に縋る起居や枯菊枯れしまゝ 小林康治 玄霜
家家の枯菊捨てぬ滑川 松本たかし
富士に雪三度来て菊枯れにけり 萩原麦草 麦嵐
年盡るまで枯菊を守りけり 石井露月
庭下駄を用意枯菊焚く用意 稲畑汀子
弱き日の柊を洩れ枯菊に 阿部みどり女
掃き納め又掃き始む枯菊に 松本たかし
日の微塵風の微塵に菊枯るる 田畑美穂女
日輪のがらんどうなり菊枯るゝ 鶏二
月の出よ枯菊のこの賑はひは 岸本尚毅 舜
枯れ菊やすでに仏の貌をして 石川文子
枯果し菊にはなやぐ朝日かな 松藤夏山 夏山句集
枯芭蕉枯菊その他あるまゝに 松本つや女
枯菊がいま音たてゝゐる焚火 高木晴子 晴居
枯菊が見てゐる村の冬仕度 有働亨 汐路
枯菊となりてののちの日数かな 安住敦
枯菊とゝもに焚きたる何々ぞ 久保田万太郎 草の丈
枯菊と言い捨てんには情あり 松本たかし
枯菊にあたり来し日をなつかしむ 清原枴童 枴童句集
枯菊になほ大輪の誇あり 下村梅子
枯菊になほ愛憎や紅と黄と 久保より江
枯菊に一天の碧ゆるみなし 福田蓼汀 秋風挽歌
枯菊に冬の蝿居て庭掃除 青々
枯菊に刈り頃の色渡りけり 青木重行
枯菊に初雪すこしふりにけり 桑村竹子
枯菊に午前の曇り午後の照り 桂信子 黄 瀬
枯菊に寿像みづから刻む翁 四明句集 中川四明
枯菊に尚色といふもの存す 高浜虚子
枯菊に帚塵取休みをり 阿部みどり女 月下美人
枯菊に来らずなりし狐かな 高浜虚子
枯菊に此の廬の窓を修すなし 雑草 長谷川零餘子
枯菊に炎とび~とび燃ゆる 素十
枯菊に点じてはやき火のまはり 棚山 波朗
枯菊に着綿程の雲もなし 子規
枯菊に草履落とすや外厠 龍胆 長谷川かな女
枯菊に藍玉くだく筵かな 烏不關句集 織田烏不關、吉田冬葉選
枯菊に虹が走りぬ蜘蛛の糸 松本たかし
枯菊に触れて立ちたる埃かな 上野泰 佐介
枯菊に鏡の如く土掃かれ 星野立子
枯菊に隈なき月や寝ぬるとき 五十嵐播水 埠頭
枯菊に雲洩る日さへながりけり 木下夕爾
枯菊に風過ぎて香の立ちにけり 岸田稚魚 筍流し
枯菊に馬は毛深き首を垂れ 北原志満子
枯菊ぬけば枯蓼のみの虫細音 島村元句集
枯菊のくれなゐふかき久女の忌 林十九楼
枯菊のつかねほぐせば青葉あり 瓜燈籠 西村白雲郷
枯菊のもゆる火中に花触れあふ 天野莫秋子
枯菊の一畝のなほ残りけり 高浜年尾
枯菊の匂ひもあらず人ゆきぬ 室生犀星 犀星発句集
枯菊の唐草模様土に描き 上野泰 佐介
枯菊の土に鍬打つ日ありけり 尾崎迷堂 孤輪
枯菊の影ひきそふや干炭団 田中王城
枯菊の打ち重なりて色失せず 森山 治子
枯菊の日矢まとひたる微塵かな 小林康治 玄霜
枯菊の水にうつりて色香なし 青邨
枯菊の火のほゝほゝと燃え終る 大橋敦子 手 鞠
枯菊の焚かるる束の軽さかな 園池 澄子
枯菊の焚かれて終の香を放つ 佐藤信子
枯菊の焚くときの来て焚かれけり 小林康治 『華髪』
枯菊の焚くほどもなきほどの嵩 堀江多真樹
枯菊の燃えるさなかは花より美し 河野南畦 『焼灼後』
枯菊の終に刈られぬ妹が手に 岡本松浜(1879-1939)
枯菊の終の香りは火の中に 桂信子 黄 瀬
枯菊の臙脂の色を焚きにけり 皆川白陀
枯菊の色失ひてなほ高し 櫻内玲子
枯菊の色無き上に日のひかり 岩田由美
枯菊の薫るや焚くに先んじて 千代田葛彦
枯菊の鉢に光陰矢のごとし 五十嵐播水 埠頭
枯菊の雨にぬれゐし宿を借る 田中冬二 俳句拾遺
枯菊の香を愛しともむなしとも 西島麦南
枯菊へ疲れたる目のゆくならひ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
枯菊も干煎餅もからからに 軽部烏帽子 [しどみ]の花
枯菊も芥のひとつ水に浮き 桂信子 黄 瀬
枯菊やこころ一掬づつ会ふも 赤松子
枯菊やこまかき雨のゆふまぐれ 日野草城
枯菊やごぼりととれて鉢の土 安藤橡面坊
枯菊やつむりふたつの二上山 藤田あけ烏 赤松
枯菊や凍たる土に立ち尽す 子規句集 虚子・碧梧桐選
枯菊や北斗も嵯峨も打ちまじり 阿部みどり女
枯菊や墓原道の草の中 寺田寅彦
枯菊や我徒の選集出づるよし 尾崎迷堂 孤輪
枯菊や日々にさめゆく憤り 萩原朔太郎
枯菊や日落つる影を地に守り 裸馬
枯菊や木意なき別れ君知らず 雉子郎句集 石島雉子郎
枯菊や桃の落葉に埋もるゝ 西山泊雲
枯菊や梳きもてあそぶ母の髪 篠田悌二郎 風雪前
枯菊や洗ひし筆を軒に吊り 遠藤梧逸
枯菊や籠花活の蜘蛛のいと 森鴎外
枯菊や落葉をくゞる洗ひ水 松藤夏山 夏山句集
枯菊や雨きて鶏の冠動く 飯田蛇笏 山廬集
枯菊や馬洗ふ湯の流れ入る 古白遺稿 藤野古白
枯菊や馬鹿長きホースとぐろ巻く 野村喜舟
枯菊をたばね捨てあり滑川 星野立子
枯菊をつつむ薄日の情かな 今泉貞鳳
枯菊をひとり焚くさへ心の喪 安住 敦
枯菊をまろび出でたる雀かな 波多野爽波 鋪道の花
枯菊を刈らんとおもひつゝ今日も 西島麥南
枯菊を刈るや青空凛と張り 和泉伸好
枯菊を剪るうす埃あがりけり 富安風生
枯菊を抜いて暖冬の日あまねし 内藤吐天 鳴海抄
枯菊を残らず刈りて春を待つ 阿部みどり女 笹鳴
枯菊を沈めて高き焔かな 藤崎久を
枯菊を焚いて主客の心別 高濱年尾 年尾句集
枯菊を焚いて師走の閑にあり 木村蕪城 一位
枯菊を焚いて忌日の手向けとも 太田きん子
枯菊を焚いて旧家を取り毀す 福原紫朗
枯菊を焚いて黄泉の火起しけり 石原八束 仮幻の花
枯菊を焚いて鼻澄む夕べかな 臼田亞浪 定本亜浪句集
枯菊を焚きたるあとの月夜かな 角川春樹
枯菊を焚きたる灰のあがりけり 久保田万太郎 草の丈
枯菊を焚きつゝおもふこと一つ 久保田万太郎 草の丈
枯菊を焚きてこの世に遊びをり 織田 道子
枯菊を焚きてとぶらふ忌日かな 篠塚兆秋
枯菊を焚きて一書に対すかな 大橋敦子 匂 玉
枯菊を焚きて母なる地を焦す 大橋敦子 手 鞠
枯菊を焚きて焔に花の色 深見けん二
枯菊を焚き培ひしもの失する 大橋敦子 手 鞠
枯菊を焚き天よりの声を待つ 小川双々子
枯菊を焚き尽し老とどまらず 殿村莵絲子 雨 月
枯菊を焚き島岬けぶらしぬ 大橋敦子
枯菊を焚き来しにほひ母の髪 古賀まり子 緑の野以後
枯菊を焚き萩を焚き自愛かな 蓼汀
枯菊を焚き鎮めたる怒かな 中村春逸
枯菊を焚くてふことにかゝはりぬ 風生
枯菊を焚くなり淡き火を期して 相生垣瓜人 微茫集
枯菊を焚くやつひの香昇天す 大橋敦子 手 鞠
枯菊を焚くや冬心そゞろなる 西島麦南 人音
枯菊を焚く世の隅の寒さかな 小林康治 『叢林』
枯菊を焚く人とほく咳きゐたり 石原舟月
枯菊を焚く光陰を火種とし 村本畔秀
枯菊を焚く影に櫛落しけり 長谷川双魚 風形
枯菊を焚く枯菊のかをりかな 照敏
枯菊を焚く美しき焔揚げ 浩山人
枯菊を燃し一通の手紙燃す 辻田克巳
枯菊を燃やす為すなき日の終り 鷹羽狩行 五行
枯菊焚き夕栄えを妻ことさら言ふ 村越化石
枯菊焚き菊のいのちの匂ひけり つじ加代子
枯菊焚くうしろの山の暗さ負ひ 長沼紫紅
枯菊焚くためらひは愛の変身か 河野多希女 彫刻の森
枯菊焚く娘あれども遠く置き 成瀬桜桃子 風色
枯菊焚く棒が自在に火を叱る 河野南畦 『焼灼後』
枯菊焚く身は執着の重たさよ 河野多希女 こころの鷹
消えざるよ枯菊抜きし掌の汚れ 成瀬桜桃子 風色
添へ竹をはなれ傾き菊枯るる 松本たかし
火のはしるより枯菊の香に立てる 大橋敦子
火の中に枯菊の花沈みけり 杞陽
炎中焚く枯菊のまだ燃えず 上野泰 佐介
炭屑に小野の枯菊にほひけり 几董
炭斗に炭まだ小出し菊枯るる 中村汀女
畑をめぐりて菊枯るゝ戸に年賀かな 大谷句佛 我は我
白猫の綿の如きが枯菊に 松本たかし
眼に涙張り枯菊の力見る 齋藤玄 『雁道』
祖母活けし菊枯れずあり祖母死後も 小澤實
舟着くやいとも小さき枯菊に 岸本尚毅 舜
菊枯らす雪がふりたる夜の富士 萩原麦草 麦嵐
菊枯るるいのちあるゆゑ湧く泪 秋元不死男
菊枯るる都住ひの佗びしかり 木村蕪城 一位
菊枯るゝ地表の色となり果てゝ 大橋敦子 手 鞠
菊枯れしまま年を越し雨にうたれをる シヤツと雑草 栗林一石路
菊枯れたり垣はあれどもまたぐも可 高田蝶衣
菊枯れていよよ緊まれる海の紺 松本三千夫
菊枯れてけふ麗日の虻多し 篠田悌二郎 風雪前
菊枯れてこまごまと日の当るかな 山本けんじ
菊枯れてしばし花壇のわかれかな 森鴎外
菊枯れてちぢこまりたる庭の石 上村占魚 『石の犬』
菊枯れてほしいまゝなる子の熟睡 大町糺
菊枯れてゆく三日月の高さかな 萩原麦草 麦嵐
菊枯れてゆく時間なるノクターン 丸山南石
菊枯れてわれまたやがて焼かれる身 折笠美秋
菊枯れて人の生涯見る如し 阿部みどり女
菊枯れて其後訪はず健なりや 仙波花叟
菊枯れて冬薔薇蕾む小庭かな 正岡子規
菊枯れて寒き日南となりにけり 高浜虚子
菊枯れて対座の人と離心もつ 長谷川かな女 雨 月
菊枯れて新聞剥げぬ床の壁 会津八一
菊枯れて机辺彩るものもなし 石塚友二 光塵
菊枯れて松の緑の寒げなり 子規句集 虚子・碧梧桐選
菊枯れて枯れてあとかたなかりけり 久保田万太郎 流寓抄以後
菊枯れて梔黄ばむかき根かな 森鴎外
菊枯れて泣かねばならぬこともなし 鈴木真砂女
菊枯れて牡蠣捨ててある垣根かな 室生犀星 犀星發句集
菊枯れて籬は川に傾ける 岸風三楼 往来
菊枯れて茜めく葉の冴ゆるかな 室生犀星 犀星発句集
菊枯れて農閑の炉となりにけり 西島麦南 人音
菊枯れて都はるかとなりにけり 月舟俳句集 原月舟
菊枯れて鴻稀に来る日かな 露月句集 石井露月
菊枯れぬ土の硬さのおのづから 耕二
葱引くや枯菊に遺る情もなく 尾崎迷堂 孤輪
蕭条の中に枯菊焚く一事 池上浩山人
虚子庵の枯菊を焚く我が焚く 大橋櫻坡子
起き直り起き直らんと菊枯るゝ 高浜虚子
金賞の札の重さに菊枯るる 中村まゆみ
鉢の菊枯れしがままの裏戸かな 室生犀星 犀星発句集
静かなり枯菊焚いてゐる日向 川口利夫

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:21 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

ききわけて海府訛は鱈の話 加藤楸邨
きらきらと男の喉を鱈の骨 小檜山繁子
こぼれたる鱈は足蹴にされ凍てぬ 小池次陶
つつじいけて其陰に干鱈さく女 芭 蕉
とし守や乾鮭の太刀鱈の棒 蕪村 冬之部 ■ 題沓
なが生きの途中の干鱈焙りをり 亀田虎童子
はらら子のこぼるるもあり鱈を揚ぐ 岩崎照子
ひつさげて尾を摺る鱈を秤りけり 多賀九江路
ぶち切れば声荒くなり鱈売女 山本一糸
ましろなる鱈に血のありうつくしき 楠本みね
わが血筋処世にうとく干鱈噛む 小倉英男
オホツクの鱈あげて街汚れたり 岡村浩村
ジングルベル~鱈がよく売れる 赤城さかえ句集
ロシヤ帽まぶかく鱈をさげゆけり 高木時子
一尾の鱈の料理の何や彼や 高木晴子 晴居
亜米利加の船へ売らるる干鱈かな 会津八一
俎をすべり落ちたる鱈の顔 中島畦雨
信楽の茶うりが提げし干鱈かな 暁臺
借財や干鱈を焙る日に三度 秋元不死男
値切られて腹たたかれし子持鱈 竹内輝行
分たれて鱈も一山できにけり 大橋櫻坡子 雨月
初鱈や板とり越ゆる雪の馬 魚候
刻昆布塩路ぞ分くる鱈の汁 在慰 選集「板東太郎」
北海の冷をつれ来し鱈を裂く 小林千草
北蝦夷の果の港の鱈景気 沢江六峨
原因はすけとう鱈食う故われは富まざるなり 橋本夢道 無礼なる妻
口割つて鱈に氷をつめにけり 本多一杉
品書の鱈といふ字のうつくしや 片山由美子 水精
商人や干鱈かさねるはたりはたり 太 祗
地酒くんで干鱈にすすむひばの飯 中勘助
塩の香のまづ立つ干鱈あぶりをり 草間時彦 櫻山
塩鱈や旅はるばるのよごれ面 太祇
売られゐる前沖の鱈自若たる 柴田陽子
大なるが滑り出にけり鱈の山 前田普羅 能登蒼し
大鍋に肝浮く鱈の番屋汁 山崎羅春
大鱈を秤る背筋をのばしけり 皆川盤水
天からの雪喰み鱈のぶつ割かる 金箱戈止夫
子持鱈口閉ぢ雄鱈口開く 右城暮石 声と声
子持鱈雪にすべらせ陸揚げす 岩崎照子
実年や咽喉に閊へし鱈の骨 河井多賀夫
宿屋らしからぬ桔梗屋鱈を煮る 渡辺 池汀
寒鱈を売る少年はユダの眼で 対馬康子 吾亦紅
寒鱈を提げて閻魔に見られゐし 吉田紫乃
干鱈あぶりてほろほろと酒の酔にゐる 村上鬼城
干鱈さげて帰りは登る島の坂 谷野予志
干鱈など水に戻してとる昼餉 高澤良一 素抱 
干鱈の乾ききらずに触れあへり 加藤憲曠
干鱈は古び氷柱はあたらしき 八木林之介 青霞集
干鱈むしる土の匂ひの呼気吸気 成田千空 地霊
干鱈やくつゝじの柴や燃んとす 高井几董
干鱈や庇のひくき町があり 磯野利秀
干鱈反る友は教師の講義癖 鳥居おさむ
干鱈噛み家の中にも風吹けり 細川加賀 生身魂
干鱈噛んで一夜惑ひの四十代 北野民夫
干鱈甘し探しあてたる古都の店 後藤松代
干鱈積む浜の女の髪真白 畑 美津恵
年守る乾鮭の太刀鱈の棒 蕪村
手をほぐす湯桶傍へに鱈割ける 手島 靖一
春の雪切身にしても鱈は重し 鈴木真砂女 夕螢
暗き灯に集ひたつきの鱈を割く 奈良千代子
有るものに干鱈の骨のありにけり 尾崎迷堂 孤輪
朝市の雪に並べて鱈を売る 山田 静穂
東の市干鱈・鮓など賣る女 筑紫磐井 野干
棒鱈に乾ききつたる舌ありぬ 辻桃子 桃
棒鱈の口の叫んでをりしかな 太田寛郎
棒鱈の棒のいよいよ世紀末 宮坂静生
棒鱈の棒の始るところかな 後藤立夫
棒鱈の眼を剥く貌の束ねられ 佐野俊夫
棒鱈の荷も片づきぬ初燕 石井露月
棒鱈や下戸の夫と下戸の妻 近藤昌子
棒鱈を薪の如くに負はれたる 倉田 晴生
比良の雪生鱈来べきあした哉 正秀
沖よりの金星鱈の干しあがり 岡澤康司
波の穂に現るる国後島鱈を干す 山本 雅子
湯帰の棒鱈さげし余寒見よ 尾崎紅葉
火にぬれて干鱈の匂ふ夕べかな 大木あまり 火球
炎昼の干鱈の茶漬かっ込めり 高澤良一 寒暑 
生国を呼び名とされて鱈の漁夫 中川水精
男なんざあ女なんざあ干鱈裂く 熊谷愛子
短夜の鱈はこぶ馬車鈴ならし 福田甲子雄
石菖や口あけて鱈焼かれゆく 角川源義
磯埋めて敷き干す鱈に波尖る 吉澤 卯一
米倉は空しく干鱈少し積み 高浜虚子
糶り残る鱈ひきずつて雪の上 石川文子
納屋深く塩鱈積まれ塩噴けり 千葉仁
純白の鬱であり暗く大きな鱈 大西健司
老の赭顔子等の紅顔鱈船来る 成田千空 地霊
肋のなか鱈積み連絡船となれり 赤尾兜子
船の子の干鱈噛み噛み育ちけり 大場白水郎
荒粒の雪降りかくす荷揚げ鱈 平子 公一
荒縄に百枚くゝる干鱈かな 野村喜舟 小石川
薄月の鱈の真白や椀の中 松根東洋城
藁苞や在所にもどる鱈のあご 室生犀星 魚眠洞發句集
血の余る女鱈下げ橋渡る 柏禎
行春に飽くや干鱈のむしり物 李由 三 月 月別句集「韻塞」
議論して帰り薄暗い妻子を嗅ぐやすけとう鱈 橋本夢道
買初や鱈一本を鱈昆布に 野村喜舟 小石川
赫く暗き灯を揺りゆくは鱈船か 村上しゅら
躑躅生けてその陰に干鱈割く女 芭蕉
軒吊りの鱈や沖波暮れ果てて 加藤春彦
酒を得て干鱈をあらふ筧かな 中勘助
雨さむく鱈鍋に着る黄八丈 長谷川かな女 雨 月
雪の上鱈ぶちまけて売られけり 松本 旭
雪の浜鱈投げ出され鯖もまた 田中冬二 若葉雨
雪国の鱈の目玉もねぶり喰ぶ 中山純子 沙 羅以後
雪嶺や昼夜の膳に鱈鰊 岸本尚毅 舜
雪空に堪へて女も鱈を裂く 細見綾子
露しぐれ鱈下げて手頸現はるる 齋藤玄 『狩眼』
鱈うまき季節の越の海鳴れる 橋本花風
鱈さげて夜間工事のなか通る 福田甲子雄
鱈の夢遠国に日をすごし過ぎ 飴山實 辛酉小雪
鱈の海暗し三日の時化続き 吉村ひさ志
鱈の海濁るは春の来つつあり 福永 耕二
鱈を割くことの手だれのまだ少女 杉野秋耕死
鱈を割く女は雪に横坐り 岩崎照子
鱈を煮て雪は積らぬ出雲崎 斉藤夏風
鱈を糶る人のうしろの昏れし海 吉岡秋帆影
鱈を糶る後に波の崩れけり 石垣軒風子
鱈一本北方の空縞持てり 新谷ひろし
鱈割いて漁婦汚るることに馴れ 宇佐美ふき子
鱈割き女あかがりもなく腰太く 西本一都
鱈売の売り切つて乗る越後線 平井あい子
鱈売の長半纏に手鉤かな 籾山梓月
鱈売りに遇いし者ただ郵便夫 対馬康子 愛国
鱈売り女雪女郎となりにけり 田中冬二 行人
鱈売女ライスカレーを食べてゐる 田中冬二 冬霞
鱈干され島のあたたかさの老婆 山崎 聰
鱈干していよいよ古りぬ出雲崎 小松沙陀夫
鱈干して知床の岬僧住める 名塩呑空
鱈干して越後は低き軒つらね 斎藤佳代子
鱈揚げて岸壁踏み場なかりけり 飯塚 秀城
鱈昆布を炊きひとり身を養へる 殿村莵絲子 花寂び 以後
鱈洗ふ桶にとまりし烏かな 野村泊月
鱈漁の出初めの吹雪よろこびて 桑田青虎
鱈百匹穫りし漁夫なり酔ひつぶれ 小熊一人
鱈舟の中に艦見ゆ港かな 長谷川零餘子
鱈船の崩るゝ濤をまたかぶり 伊藤彩雪
鱈船の著く名ばかりの港かな 金岡敦子
鱈船や比良より北は雪ゲしき 李由
鱈船をづかづか下りし面構へ 加藤憲曠
鱈荷役してゐるゆゑのごめの空 山木晃裕
鱈鍋に百日蝋燭ゆらぎ立て 長谷川かな女 雨 月
鱈鍋の蓋踊らせて大家族 加藤憲曠
鱈食ふて口数多し津軽人 矢田邦子
麦飯に干鱈たふとき侘居かな 沼のほとり 中勘助
黙々北の農婦よ鱈の頭買ふ 西東三鬼
大衆魚真鱈の顔の冬親し  高澤良一  燕音

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:21 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

あたたかき葱鮪の湯気やぶしやうひげ 日野草城
かつぎたる大いなるもの鮪竿 高野素十
たれかれの話となりし葱鮪かな 斎藤優二郎
ひやひやときて鮪身を料しをり 菊地一雄
ゆく年や鯛も鮪も符丁買ひ 鈴木真砂女 夕螢
ゆつくりと闇のはばたく鮪船 石田よし宏
よろめいて鮪かき行く漁師かな 上川井梨葉
トラックが落せし鮪雨しぶく 木村蕪城 寒泉
トロ箱の長きは梶木鮪かな 平松三平
一族の影の濃くなる葱鮪鍋 八木荘一
一本釣鮪や灘のダイヤモンド 萩原とし子
一生を泳ぎつづける鮪かな 星野恒彦
冬の夜や逆さに吊りし大鮪 鈴木真砂女 生簀籠
凍結の鮪に歌う「ペチカ」です 五島エミ
凍鮪千畳なすを糶り尽す 鷹羽狩行
凍鮪氷の極の音したり 百合山羽公 寒雁
凍鮪胴に糶値のなぐり書き 品川鈴子
凍鮪開き切つたる口と鰓 秋山牧車
切売りの鯨・鮪も十二月 鈴木真砂女 夕螢
勝浦へ渡り漁夫来る鮪来る 西畑幸子
四代を生きて傘寿や葱鮪鍋 町田しげき
土間に糶る見渡すほどの鮪かな 高倉勝子
夕凪やのこぎりでひく大鮪 盤水
大鮪とどく神前初戎 山本 正樹
大鮪凍て解けて紅甦る 鈴木真砂女 夕螢
大鮪姨捨駅に横たはる 安西閑山寺
大鮪曳つぱつてゐる女かな 細川加賀 『玉虫』
太陽の臍やわらかき鮪の海 永末恵子
居酒屋に靄たちこむる葱鮪かな 井上唖々
帆をたゝみ鮪船ともなくなりし 森田峠 避暑散歩
帰港漁夫那智へ寄進の鮪舁く 田守としを
損ひし形そのまゝ凍鮪 百合山羽公 寒雁
敬老の日の給食の鮪鮨 角川源義 『西行の日』
新年は赤道直下と鮪船 吉井竹志
朝の日も鮪糶り場も移りつつ 加倉井秋を
此の岸の淋しさ鮪ぶち切らる 加倉井秋を
海流のかゞやきに騎り鮪船 小原菁々子
海贏打や鮪庖丁恐しく 野村喜舟 小石川
焼津より鮪売来る秋まつり 橋本榮治 逆旅
町をゆく鮪の馬車に会ふばかり 大橋櫻坡子 雨月
秤いま0をさす針鮪市 森田峠 逆瀬川以後
積丹の鮪釣ること生甲斐に 水見句丈
立てて売る鮪の頭大南風 高尾方子
糶り勝ちて鮪を雪に曳きゆけり 野原 春醪
糶待ちの鮪の胴のなぐり書 藤井寿江子
美しく鮪の頭一列す 松本恭子
船傾ぎ阿吽の呼吸鮪釣る 楓巌濤
葱鮪鍋つつく合縁奇縁かな 清水基吉
葱鮪鍋もも引渡世難きかな 秋山夏樹
葱鮪鍋下町に闇にはかなり 伊藤伊那男
親方の顔に日のさす鮪売 上川井梨葉
転がされ氷塊吐きぬ大鮪 白岩三郎
追ひ糶の鮪をまたぎゆく女 友草 寒月
遠つ海の幸の鮪を神饌となす 黒田晃世
鉤を打つ鮪に美しき眉間あり 樫谷雅道
閲兵のごとくに鮪見てゆきぬ 福本鯨洋
霜終へし鮪ころがり凍三和土 菖蒲あや あ や
露領より帰りし船と鮪船 高浜虚子
飛魚の入りて輝く鮪網 前田普羅 能登蒼し
飛魚をバタ~呉れぬ鮪船 前田普羅 新訂普羅句集
魚河岸の晝の鮪や春の雪 虚子選躑躅句集 岩木躑躅、村上磯次郎編
鮪(しび)の船水平線を突き上ぐる 山口誓子
鮪の目氷解けしが血を噴きぬ 加藤知世子 花 季
鮪の船水平線を突き上ぐる 山口誓子
鮪の血冷凍ゆるみ流れだす 津田清子 二人称
鮪またぎ老いのがにまた競りおとす 橋本多佳子
鮪乗り皆大声になつてをり 水見悠々子
鮪切る木挽唄など口にせむ 野中亮介
鮪捌く手鉤一丁夏旺ん 毛塚静枝
鮪揚ぐ沖曼陀羅に茜雲 水見悠々子
鮪船団餅臼つみて出てゆけり 橋本栄治
鰭強く刎ねゐし鮪の腸を抜く 山口誓子
黒潮のいろ濃き鮪糶り落す 松本幹雄
黒髪を船に祀りて鮪追ふ 歌津紘子
凍てまぐろ鋭き鉤をはねかへす 森田峠
三崎港まぐろのひとつ輪飾す 橋本榮治 麦生
まぐろ船まひ飛ぶ鴎率て帰る 白川朝帆
まぐろ船帰投す柳絮浮く汐に 及川貞 夕焼
花の雪まぐろ登らん吉野川 洞雨 選集「板東太郎」
奨めらる鮪の三味線・潜水板  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:19 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

耳袋

耳袋

例句を挙げる。

おもかげの大きな耳の耳袋 細川加賀 生身魂
光るエリー湖黒人の子の耳袋 田川飛旅子 花文字
出勤に要る日要らぬ日耳袋 岡本清閑
分校へ自転車通ひ耳袋 田北 ぎどう
切れ長の目の母に似て耳袋 守谷順子
勝馬に掛けし錦の耳袋 田村了咲
北吹いて世の中遠し耳袋 内藤鳴雪
宿木にほうと佇む耳袋 高澤良一 鳩信 
恋失くせしと耳袋(イヤーマフ)赤きかな 辻桃子
数へ年百歳といふ耳袋 高橋悦男
楮晒す老のつけたる耳袋 高橋時枝
海苔採の完全武装耳袋 高澤良一 素抱 
耳袋かけおこたらず旅遠き 皆吉爽雨
耳袋かけていつもの郵便夫 長谷川回天
耳袋かけて詣づる観世音 福吉 幸子
耳袋して大勢に随はず 山崎ひさを
耳袋して折紙に夢中なり 池本光子
耳袋たがひにはづす立話 栗山北生
耳袋とりて物音近きかも 高浜虚子
耳袋とりて生きものめく耳よ 伊藤トキノ
耳袋の赤鮮しや春の駄馬 沢木欣一
耳袋ゴッホ生涯安堵なき 冨山青沂
耳袋出したることの下車用意 前内木耳
耳袋真紅に鶴を見てゐたり 喜多みき子
耳飾少し見えゐて耳袋 恵利嘯月
聞くまじきことを聞かじと耳袋 富安風生
聴診器持つ手にはづす耳袋 金子伊昔紅
臨時郵便夫少年の耳袋 石川桂郎 高蘆
藁すぐり手伝ふ禰宜も耳袋 葉貫琢良
蜑の子はだんまり童子耳袋 大石悦子 聞香
調教師騎乗のときは耳袋 富岡桐人
貧乏のむかしもたのし耳袋 細川加賀 生身魂
逝きてのこせし鉄筆と耳袋 菅原鬨也
那須の子の畦におくるる耳袋 古舘曹人 樹下石上
風音のふとこそばゆし耳袋 松本徒人

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

羽子板市

羽子板市

例句を挙げる。

あをあをと羽子板市の矢来かな 後藤夜半 翠黛
いくさあれど羽子板市につれだてる 森光子
うつくしき羽子板市や買はで過ぐ 高浜虚子
おみくじを読みて羽子板市の前 成瀬正とし 星月夜
ちょっくら前ごめんなすって羽子板市 高澤良一 鳩信 
なごやかに羽子板市の人出かな 高橋淡路女 梶の葉
はぐれ来て羽子板市の人となる 結城昌治
ふところに雨の匂ひの羽子板市 小島千架子
やはらかく押され羽子板市にゐる 北澤瑞史
一回りして元の店羽子板市 高澤良一 鳩信 
中々に羽子板市を去にがたく 阿部みどり女 笹鳴
二代目も笑顔で対す羽子板市 高澤良一 鳩信 
二天門から近道や羽子板市 宇田零雨
亡き妹の現れて羽子板市なるや 角川春樹(1942-)
人の肩割つて羽子板市の中 鈴木しげを
仏殿へ縮め羽子板市の道 古舘曹人 能登の蛙
仲見世や羽子板市の昨夜の塵 上條筑子
傾城も手玉に取られ羽子板市 高澤良一 鳩信 
公家悪の羽子板市に売れのこる 中村芝鶴
六世歌右衛門羽子板市に多し 石川桂郎 高蘆
写楽のやうな顔で羽子板市へゆく 寺田青香
売り顔も商ひの内羽子板市 高澤良一 鳩信 
川を見て羽子板市へゆく途中 岸本尚毅 舜
志ん朝の買札付きぬ羽子板市 高澤良一 鳩信 
急に暗し羽子板市の裏に出て 池田秀水
手を振つて羽子板市に紛れけり 岸本尚毅 舜
新仲見世仲見世抜けて羽子板市 高澤良一 燕音 
明暗す羽子板市や年の市 石川桂郎 高蘆
更くる夜の羽子板市や灯の熱く 岩田由美 夏安
横顔の誰ぞに空似羽子板市 高澤良一 鳩信 
浅草の羽子板市の夜となり 小林 たか子
浅草も羽子板市もさびれゐし 成瀬正とし 星月夜
灯が点いて寝ずの商ひ羽子板市 高澤良一 鳩信 
灯の増えて羽子板市の艶めけり 阿部美恵子
狐火が火元か羽子板市炎上 鳥居美智子
病上り羽子板市に労らる 石川桂郎 高蘆
空く座待つ羽子板市の流れ客 石川桂郎 高蘆
羽子板市うたかたの世へ誘はる 岡田和子
羽子板市その裏側の径急ぐ 北野民夫
羽子板市にいまは男の国太郎 横山白虹
羽子板市ぬけきし旅の口すすぐ 西本一都
羽子板市の播磨屋と書く箱火鉢 遠藤 はつ
羽子板市の雑踏にゐて首寒し 永方裕子
羽子板市ダイアナ頭上もまれゆく 大槻和木
羽子板市一番星にずばり買ふ 渡辺恭子
羽子板市三日の栄華つくしけり 水原秋櫻子
羽子板市人人人に夜が流れ 岡田和子
羽子板市仁王の視野で待ち合はす 奈良文夫
羽子板市切られの与三は横を向き 石原八束
羽子板市夕べはなやぎ雪降れる 石田小坡
羽子板市大股にして歩み去る 萩原麦草 麦嵐
羽子板市月日渦巻きはじめたり 百合山羽公 故園
羽子板市東都ツアーに組み込まれ 高澤良一 鳩信 
羽子板市片割れ月も明治ぶり 林 翔
羽子板市瓜実顔の世に遊ぶ 岡田貞峰
羽子板市美男美女みな似た顔で 藤岡筑邨
羽子板市羽左に優れる役者なし 梅村好文
羽子板市買ふひとを見る遠まきに 谷口桂子
羽子板市錦絵好みの顔廃れ 平松荻雨
羽子板市陰気な古着市も見て 瀧春一
裾冷えて母と羽子板市の燈に 野沢節子
見上げたる羽子板市の明るさに 坊城中子
角店の助六よかり羽子板市 高澤良一 鳩信 
買はで過ぐ羽子板市の長き道 岩田由美 夏安
逗留の羽子板市に歩を伸ばし 山田弘子 こぶし坂
選りまどふ羽子板市の人込に 松尾緑富
雑踏を顔の流るる羽子板市 片山由美子 風待月
青空の一枚天井羽子板市 鷹羽狩行
魚のごと寄りて離れて羽子板市 鳥居おさむ
一生もの羽子板なりと売り口上  高澤良一  鳩信
羽子板の値踏み群がる頭越し  高澤良一  鳩信
ねずみ小僧見得切る羽子板それがよし  高澤良一  鳩信

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

頬被

頬被

例句を挙げる。

しぐるゝや疣の目につく頬被 竹冷句鈔 角田竹冷
そこにあるありあふものを頬被 高浜虚子
ちぬ釣やまくらがりなる頬被 銀漢 吉岡禅寺洞
一望怒濤の襟巻でする頬被 斎藤玄
一漁師なれの果なる頬被 森田峠 逆瀬川
亡父かなし夢の中まで頬被 成田智世子
佐渡茫茫帽子ぐるみの頬被 肥田埜勝美
入坑の頬被して幼けれ 岸風三楼 往来
出されたる傘ことわつて頬被 山桐愛
南部富士けふ厳かに頬被り 山口青邨
単線の汽車くるまでの頬被り 阿部子峡
夕舟を返しくるなり頬被 石田勝彦 秋興
大原女が時雨にしたる頬被り 高濱年尾 年尾句集
大原女や御影供詣の頬被 柴田只管
川狩や頬被して真裸 新免一五坊
幾度しても子の頬被眼が見えず 宮坂静生 青胡桃
日雇に来てをり母の頬被り 名雪多加志
早乙女も頬被してアイヌめき 比叡 野村泊月
曳く馬に養はれゐる頬被 福田蓼汀 秋風挽歌
林中にきのこ採取の頬被り 関森勝夫
桑畑や女蓑着て頬被り 高浜虚子
津軽女等やませの寒さ頬被 富安風生
流木をひよいと担ぎし頬被 山岡麥舟
海苔採や女もすなる頬被り 高橋淡路女 梶の葉
淀の月頬被して通りけり 比叡 野村泊月
牛市の売手買手の頬被 浅賀渡洋
産土神に頬被解く田植道 阿波野青畝
眼に脣にとびつく雪や頬被 桐山薫子
種馬のふところに入る頬被 佐野鬼人
米積んで島へと帰る頬被 依光陽子
背の薪の切口誇り頬被り 香西照雄 対話
見かけよりぬくきものなり頬被 右城暮石
道聞けば案内にたちぬ頬被 草地勉
野菜曳く村の小町の頬被り 松浦 釉
野遊や人目なければ頬被り 岡本松浜
頬被してあどけなき笑顔かな 小川竜雄
頬被して出漁の夜明待つ 須藤常央
頬被して古の王の墓 佐々木六戈 百韻反故 初學
頬被とれば媼や*えり簀編む 中山碧城
頬被はるかな山を見てをりぬ 黛 執
頬被りさせて出しやる風の中 大島三平
頬被りしつかと覗く噴火口 高野素十
頬被りしてそれぞれの昼にする 攝津幸彦
頬被りむかしヤン衆かぶりとも 成田智世子
頬被り上手な斜里の女かな 千葉 仁
頬被り渡舟の席の座り沢 中村草田男
頬被り男まさりの山女 岩本 周熈
頬被り英彦颪に解けにけり 筑紫千代美
頬被人の噂に裏ありて 道川虹洋
頬被付け火の噂してゆけり 茨木和生 三輪崎
頬被正月ものの覗突漁(みづきりょう) 高澤良一 鳩信 
頬被犬に吠えたてられてをり 関根照子
頬被結び直して答へざる 湯川雅
頬被解いてうき世の塵払ふ 宮下萠人
頬被野菊を切つてゆきにけり 岸本尚毅 舜
飛騨に住み古り頬被りにも馴れし 橋詰 一石
麦の芽にふるさとびとや頬被 橋本鶏二 年輪
麦蒔や西日に白き頬被り 村上鬼城
黄泉の人みな頬被り青山椒 摂津よしこ
ふるさとの那須の乙女の頬かむり 深見けん二
ふるさとや若き農夫の頬かむり 伊藤美喜
もし泣くとすれば火男頬かむり 佐藤鬼房
人真似の吾が頬かむり木曾山中 橋本三汀
名月や居酒のまんと頬かぶり 榎本其角
夜桑摘む島人海霧に頬かむり 小原菁々子
屋根替のひとり淋しや頬かむり 高浜虚子
山を見に出る元日の頬かむり 木附沢麦青
涅槃図を去り直ぐ蜑の頬かむり 石井とし夫
狸罠見について行く頬かむり 中村春逸
生涯を都に遠く頬かぶり 市原あつし
立春の野を焼かばやと頬かむり 下村梅子
紫荊女もすなる頬かむり 猿橋統流子
織子帰る武甲颪に頬かむり 有本銘仙
羽子板や気もけし玉の頬かむり 龍岡晋
老いらくの鳥屋師は霧に頬かむり 小原菁々子
苗床や風に解けたる頬かむり 阿部みどり女 笹鳴
茶羽織の人も汐干の頬かむり 森田峠 避暑散歩
草刈女ながるる霧に頬かむり 橋本鶏二 年輪
露けしやぼくちの花の頬かむり 堀口星眠 営巣期
頬かぶり新幹線にて解きにけり 和田耕三郎
頬かむりをとこ結びに朝市女 上村占魚
頬かむり揺れ天草採りの桶眼鏡 古沢太穂
頬かむり緊めて畦焼くひととなれり 大熊輝一 土の香
麦蒔や妹が湯をまつ頬かぶり 上島鬼貫

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:15 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪眼鏡

雪眼鏡

例句を挙げる。

スキー教師雪眼鏡ごと記憶する 橋本美代子
春の雪眼鏡はずさずちよっと眠る 池田澄子
春雪や色濃き杣の雪眼鏡 前田普羅 飛騨紬
白鳥白く見るため外す雪眼鏡 鈴木栄子
雪眼鏡おつとせい見て笑いつつ 田川飛旅子 花文字
雪眼鏡かけてうからを忘れけり 文挟夫佐恵 遠い橋
雪眼鏡かけて景色の貧しさよ 成瀬正とし 星月夜
雪眼鏡かけて雪国熟知せる 堀米秋良
雪眼鏡そびらに過去を流しつつ 文挾夫佐恵
雪眼鏡それで鳩ども焦茶色 細谷源二 砂金帯
雪眼鏡とほきひかりの湖とらふ 大島民郎
雪眼鏡はづして白につかれいる 片山花御史
雪眼鏡はづすや穹に触れんばかり 樋渡瓦風
雪眼鏡はづせば犬の寄り来る 加藤憲曠
雪眼鏡みづいろに嶺々沈まする 大野林火
雪眼鏡みづいろに嶺を沈まする 大野林火
雪眼鏡借りて見つゞけらるゝ景 稲畑汀子
雪眼鏡山のさびしさ見て佇てり 村山古郷
雪眼鏡紫紺の岳と相まみゆ 谷野予志
雪眼鏡終曲家ありにけり 戸塚時不知
雪眼鏡親しきものも距て見る 葛西たもつ
雪眼鏡雪原に日も牛も碧き 橋本多佳子
雪綿を布きて売るもの雪眼鏡 後藤夜半 底紅
雪めがね柩車音なく過ぎゆけり 西島麦南
憎からぬ氷上の妻雪めがね 三宅一鳴

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:13 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

火吹竹

火吹竹

例句を挙げる。

いとど跳ぶ民芸品に火吹竹 神蔵 器
しぐるゝや目鼻もわかず火吹竹 茅舎
ま青なる火吹竹あり初竃 藤田美乗
五月雨や肩など打く火吹竹 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
八方に雪解の音や火吹竹 三橋鷹女
前山のいよいよ眠る火吹竹 齋藤玄 飛雪
吹雪かれて思ひしなぜか火吹竹 金箱戈止夫
大榾の火を吹き分ち火吹竹 高濱年尾 年尾句集
寒入りの雪にやならん火吹竹 清水基吉 寒蕭々
忘れ得ぬ母のくちびる火吹竹 吉田汀史
春雷や火屑がもとの火吹竹 石橋秀野
普請場でこしらえてくる火吹竹 嵐竹 芭蕉庵小文庫
水洟やのつぴきならぬ火吹竹 松根東洋城
火吹竹吹きをれば鳴く雀の子 柑子句集 籾山柑子
火吹竹吹けばぱちぱち炭起る 高月 ポプラ
火吹竹吾が造りて吾が吹く 亀山其園
炭斗の中の小さき火吹竹 古沢葦風
神無月飴いろなして火吹竹 飯田龍太
置き去りの火吹竹より山の声 仁平勝 東京物語
薫風もて養ひし身や火吹竹 鍵和田[ゆう]子 未来図
雁風呂や袖もてぬぐふ火吹竹 塩崎緑

以上
by 575fudemakase | 2014-12-17 00:11 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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