2014年 12月 19日 ( 10 )

枯蓮

枯蓮

例句を挙げる。

おのが影池に映して蓮枯るる 河本遊子
このあたり下谷芸者や枯蓮 つや女
たつぷりと日を使ひては蓮枯るる 石田勝彦 秋興
つつ伏さぬ一茎もなし枯蓮 鈴木貞雄
ひとつ枯れかくて多くの蓮枯るる 秋元不死男
みなわれを打ち損じたる蓮の骨 今瀬剛一
われを消すものほうほうと蓮枯れて 手塚美佐 昔の香
一切を拒みてぞ蓮枯れにけり 有働亨 汐路
一徹の緑存しぬ枯蓮 行方克巳
一望の廃墟に似たり蓮の骨 渋谷のぼる
余り天低ければ蓮枯れ伏しぬ 徳永山冬子
修羅場なり田の蓮枯れて折れ曲り 西島陽子朗
初弁天窈窕と蓮枯れにけり 安住敦
動くことなき枯蓮と一と日居る 永田耕一郎 海絣
地球外生命体かも蓮の骨 吉原文音
夜に入りてさらに静かに蓮枯るる 辻田克巳
大玻璃戸立てゝ枯蓮へだゝりぬ 阿部みどり女 笹鳴
天なる母地下なる母の枯蓮 齋藤玄 『玄』
太液の枯蓮未央の枯柳 正岡子規
少年の視界枯蓮あるばかり 仙田洋子 橋のあなたに
己れをも放じて蓮枯れたてる 菊地一雄
年寄がとしとるごとき蓮の骨 松村蒼石
幾百を刺さつて抜けず枯蓮 木村日出夫
庇ひあひ傷つけあひし蓮枯れぬ 篠田悌二郎
悉多粗相す枯蓮の月をこぼしけり 仁平勝 花盗人
懇ろな日の消えにけり枯蓮 綾部仁喜
押し沈めたる枯蓮の浮いてくる 岸本尚毅 舜
掌のくぼに新月遊ぶ枯蓮 角川源義 『神々の宴』
映る影枯蓮よりも濃かりけり 石井とし夫
暖かき枯蓮の色日暮れても 欣一
月かげのそこに及ばず蓮枯るる 河合凱夫 藤の実
枯はちす五体投地のごと伏して 部谷千代子
枯蓮にあそばす心曇りをり 藤田湘子
枯蓮にてのひらほどの水残る 三村純也
枯蓮にひかりは満てり来て悔いず 篠田悌二郎
枯蓮にヴァイオリンは来つつあり 安井浩司 密母集
枯蓮に光は満てり来て悔いず 篠田悌二郎
枯蓮に大きな魚の見えにけり 高橋淡路女 梶の葉
枯蓮に影より薄き男女佇つ 齋藤愼爾
枯蓮に応ふるごとく唖鴉 石川桂郎 含羞
枯蓮に昼の月あり浄瑠璃寺 松尾いはほ
枯蓮に石舫の影は冷たき 臼田亜浪 旅人
枯蓮に荒涼として日向あり 山田弘子
枯蓮に隈おとしたる道化たち 橋かんせき
枯蓮に雪のつもりし無慙かな 草城
枯蓮のいつしか死所を失へる 有働亨 汐路
枯蓮のうごく時きてみなうごく 西東三鬼(1900-62)
枯蓮のからかさ軽し辻談義 笠凸
枯蓮のことごとく背を向けをりし 西村和子 かりそめならず
枯蓮のこのまま雨の夜とならん 倉田 紘文
枯蓮のつひながるるよ小沼尻 飯田蛇笏 山廬集
枯蓮のどの影となく動きけり 鉄谷佳子
枯蓮のなくなりにつつありにけり 後藤夜半 翠黛
枯蓮のオブジェ揺れざるときかなし 鳥居おさむ
枯蓮の一切を容れ水冥し 鈴木貞雄
枯蓮の上を高圧強電流 長田等
枯蓮の乱るゝ中に光る水 高浜年尾
枯蓮の修羅満目に風渡る 皆川白陀
枯蓮の傷みけぶらふ水の上 林火
枯蓮の向きたき方を向き吹かる 川村紫陽
枯蓮の影より息の影濃くて 稲葉直
枯蓮の影混乱し混乱し 山本歩禅
枯蓮の折るゝは折れて春の水 中村汀女
枯蓮の折れたる影は折れてをる 風生
枯蓮の折れてはおのれ全うす 原田喬
枯蓮の折れ沈みしも見えてあり 岡本松浜 白菊
枯蓮の敵味方なく吹かれゐる 清水昇子
枯蓮の日に温まる古鴉 殿村莵絲子 牡 丹
枯蓮の水が映せる日まぶし 高浜年尾
枯蓮の水に日ゆがみうつりをり 湯浅桃邑
枯蓮の水に日映るひとところ 石川桂郎 高蘆
枯蓮の水中も虹懸るらし 宮坂静生
枯蓮の水来て道にあふれけり 久保田万太郎 流寓抄
枯蓮の水漬きて遠き人ばかり 岩中志げ子
枯蓮の水漬きゐて水動かざる 加藤水万
枯蓮の水面のほこり絵面館 中拓夫
枯蓮の水面やうやく平らなり 汀女
枯蓮の池にてりつく夕日哉 寺田寅彦
枯蓮の池に横たふ暮色かな 高浜虚子
枯蓮の玉といつはる霰かな 古白遺稿 藤野古白
枯蓮の紅らむ沼と見てはるか 阿部みどり女
枯蓮の色に遠近なかりけり 小林草吾
枯蓮の茎の集りゐるところ 高野素十
枯蓮の茎みな天に祈りつゝ 横山白虹
枯蓮の葉くびたれ居り風のまゝ 西山泊雲 泊雲句集
枯蓮の赤らむ沼と見てはるか 阿部みどり女
枯蓮の銅(あかがね)の如立てりけり 虚子
枯蓮の風に押されて独り言 西村和子 かりそめならず
枯蓮の骨すり合はせ風の中 三甲野一魂
枯蓮の鳴りひびきゐる机かな 岸本尚毅 舜
枯蓮はCocteauの指無数に折れ 横山白虹
枯蓮はつきりと実をつけたるよ 佐野良太 樫
枯蓮はゴッホの素描空透ける 三浦加寿子
枯蓮は日霊(ひる)のごとくに明るけれ 安井浩司 密母集
枯蓮は阿羅漢水仙は文珠かな 飯田蛇笏 山廬集
枯蓮やかげろふほどに水の色 小澤碧童 碧童句集
枯蓮やくづれかゝりし角櫓 寺田寅彦
枯蓮やたましひが哄笑してゐる 白石司子
枯蓮やたま~浮きし亀一つ 西山泊雲 泊雲句集
枯蓮や却て春の仏涅槃 尾崎迷堂 孤輪
枯蓮や地獄の如く泥の中 市川和孝
枯蓮や境内犇と風の松 東洋城千句
枯蓮や夕日が黒き水を刺す 鷲谷七菜子 黄 炎
枯蓮や天井の竜閉ざし堂 東洋城千句
枯蓮や学舎は古城さながらに 竹下しづの女句文集 昭和十六年
枯蓮や寐つかぬ鴛の古衾 斑象
枯蓮や悪魔の杖を欲しつつ 斎藤慎爾
枯蓮や有明月のすさまじく 野村喜舟 小石川
枯蓮や枕に枕よりそへる 大野朱香
枯蓮や水さゞめかす鳰一つ 西山泊雲 泊雲句集
枯蓮や水にきらめく時雨星 西山泊雲 泊雲句集
枯蓮や水のそこひの二日月 水原秋桜子
枯蓮や水垢見れば流れゐる 秋櫻子
枯蓮や泥の深さの烏貝 野村喜舟 小石川
枯蓮や消息相絶つ指呼の間 槐太
枯蓮や皮下走る血の圧されつつ 佐怒賀正美
枯蓮や空ゆく風につれさやぎ 橙黄子
枯蓮や老太陽を靄のなか 落合伊津夫
枯蓮や舟のくゞらぬ石の橋 野村喜舟 小石川
枯蓮や見る間減り行く工場の灯 雉子郎句集 石島雉子郎
枯蓮や鯉を丸煮の支那料理 野村喜舟 小石川
枯蓮をうつす水さへなかりけり 安住敦
枯蓮をめぐり一生を経しごとし 鷹羽狩行 六花
枯蓮を出でて番ひの水尾となる 山下紀美子
枯蓮を折り畳みたる水の色 つる女
枯蓮を梳きゆくだけの風であり 藤田つとむ
枯蓮を被(か)むつて浮きし小鴨哉 夏目漱石 明治二十八年
枯蓮を離れて遠し鴨二つ 抱琴
枯蓮以外悪魔の杖を未だ見ず 小宮山遠
枯蓮大き葉つぱをわらはれて 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
枯蓮思ひさだめしごと沈む 松村蒼石 雁
枯蓮折れて水面の雲を刺す 那須淳男
枯蓮揺れて遠きに恋ごころ 仙田洋子 橋のあなたに
枯蓮考へてゐて目が動く 岸田稚魚 筍流し
枯蓮葉同じ形のなかりけり 八牧美喜子
枯蓮雨の水輪をちりばめし 行方克巳
枯蓮黙せり今もナルシスト 仙田洋子 橋のあなたに
水さびて影も映らず蓮枯るゝ 西山泊雲 泊雲句集
水の上の枯蓮ことごとく折れし 山口草堂
水底の影は柔らか枯蓮 成瀬正とし
水浅くして枯蓮の嵩もなし 藤田湘子 途上
氷るには美しかりし蓮の骨 吉田鴻司
汽車着きし音の近さや蓮の骨 飴山實 辛酉小雪
泥の上の寸澄む水や枯蓮 徳永山冬子
浮見堂枯蓮日和つづくかな 宮崎安汀
海の荘大き枯蓮の池もてり 松村蒼石 春霰
涙溜めたる沼にして蓮枯るる 斉藤夏風
湖の枯蓮風に賑かに 高野素十
生きものの泡枯蓮の真下より 長田等
生ぬくき雨こぼれけり枯蓮 石橋秀野
白くさむく枯蓮の裾透きにけり 草間時彦
百万遍風に応えて蓮枯れぬ 津沢マサ子 空の季節
百姓の肩に日の出や蓮枯るゝ 萩原麦草 麦嵐
石臼を回しておれば蓮枯れる 森田智子
破蓮となく枯蓮となく広し 石井とし夫
美しき空とりもどす枯蓮 小川千賀
翡翆の翔け去るや蓮枯れにけり 千代田葛彦 旅人木
老人の透きて見らるる枯蓮 松山足羽
耐へがたきまで蓮枯れてゐたりけり 敦
肱曲げて家に在り蓮枯れにけり 耕衣
蓮の骨するどき大和去りにけり 永島靖子
蓮の骨ひと日の風に痩せにけり 館岡沙緻
蓮の骨一本揺れし水えくぼ 佐藤火峰
蓮の骨哀れは美女の屍かな 服部嵐雪
蓮の骨日々夜々に減りにけり 月斗
蓮の骨雲遠きより来てうつる 霜後
蓮千変生きる構への枯蓮 齋藤玄 『玄』
蓮枯るる満目の中黄の一葉 青邨
蓮枯るる直線太く交へつつ 吉田汀史
蓮枯れたりかくててんぷら蕎麦の味 久保田万太郎 流寓抄
蓮枯れてかへつて影のおびただし 那須乙郎
蓮枯れてしまへば風の笑はざる 石原八束 藍微塵
蓮枯れてゆきてとどまるところなし 古舘曹人 樹下石上
蓮枯れてゆき告白の間に合はず 日原傅
蓮枯れてゆふべゆきかふ腕かな 柿本多映
蓮枯れて一天に瑕なかりけり 大獄青児
蓮枯れて何でも映る水のいろ 黒田杏子
蓮枯れて夕栄うつる湖水かな 子規
蓮枯れて山並北をふさぎけり 石原義輝
蓮枯れて形づくらぬ影となる 島田一耕史
蓮枯れて晴れのむら雲姫路城 飯田蛇笏 雪峡
蓮枯れて枯の触れあふ音起こる 橋本美代子
蓮枯れて死招きの闇ひろがれり 小檜山繁子
蓮枯れて水に立ったる矢の如し 水原秋桜子
蓮枯れて水のつながるところあり 串上青蓑
蓮枯れて水の冥さを隠し得ず 天田牽牛子
蓮枯れて水まで動くことのなし 石井とし夫
蓮枯れて泥に散りこむ紅葉かな 正岡子規
蓮枯れて眺めてふものなき眺め 富安風生
蓮枯れて自在の天を持ちはじむ 櫛原希伊子
蓮枯れて芥の水となりにけり 草間時彦 櫻山
蓮枯れて赤子をくくりつけし胸 柚木紀子
蓮枯れて飲食の湯気すこし立つ 波多野爽波 『湯呑』
蓮枯れて鯉も蛙もあそびに来ず 中田剛 珠樹以後
蓮枯れぬ鳳凰堂の翼を映し 大橋越央子
蓮枯れの静寂に乳房熱くせり 九鬼あきゑ
蓮枯れ尽してやなほ雨に溺る 松村蒼石 雁
蓮枯れ日輪たかくとどまれる 岸風三楼 往来
蓮枯れ枯れて日輪映る池 轟蘆火
蓮枯れ水際もしざりゆきにけり 風三楼
蓮枯れ風に凹みて水すこし 岸風三楼 往来
蓮枯れ鴛鴦羽ふるへば日にひびく 宮武寒々 朱卓
蓮枯葉敷きて憩へり蓮根掘 安藤恵美子
薬師寺や破れぬまゝに蓮枯るゝ 松藤夏山 夏山句集
薬研堀空堀見よや枯蓮 高木晴子 花 季
襖絵や蓮枯れ水は敏感に 大井雅人 龍岡村
踏絵見る遠き世もかく蓮枯れて 神尾久美子 掌
遠くより道の集まり枯蓮 徳弘純 非望
金色の日に猥雑な蓮の骨 磯貝碧蹄館
雲粉々折れば多孔の蓮の骨 西谷孝
風絶えぬ枯蓮も翳屈託し 加藤春彦
骨太の父の一喝枯はちす 大槻和木
鴨がやがや云うて蓮葉枯らすなり 高澤良一  随笑

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:59 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

足袋

足袋

例句を挙げる。

あちら向き古足袋さして居る妻よ 正岡子規
あぶるとすぐに屍臭をはなつ坑夫の足袋 細谷源二
あら玉の年立つて足袋大きかり 川崎展宏
いたづらに足袋のみ白く寒の墓地 阿部みどり女
いつの世も足袋の白さは手で洗ふ 朝倉和江
いつも留守足袋を一つか二つ干し 波多野爽波 『骰子』
いづくへも行くにはあらず足袋穿き替ふ 山口波津女 良人
うしろむき足袋はく妻に謝しにけり 榎本冬一郎 眼光
うらゝかや足袋ぬいで足袋洗ふ日の 四明句集 中川四明
お下がりの福助足袋を呼びつける 仁平勝 東京物語
かくも小さき白足袋ありし七五三 林 翔
かたくなに定めて白襟白足袋と きくちつねこ
かなかなにマタギ皮足袋雪恋ふや 石川桂郎 高蘆
かなかなに履く足袋ほそき思ひかな(埋骨) 石川桂郎
きつき足袋過去より響きくるものあり 川口重美
こころみに足袋ぬぎし日や花あしび 林翔 和紙
この頃の買ひ置き足袋や暮し向 尾崎迷堂 孤輪
しぐるるや旅の日数の足袋の数 影島智子
しばし待て今足袋をはくところなり 寺田寅彦
すべったか革足袋はいた初とがめ 斯波園女
だぶ~の足袋を好みてはきにけり 高浜虚子
ちちを埋めはは埋め乾く福助足袋 穴井太 天籟雑唱
はく日からはや白足袋でなかりけり 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
はしたなく水薬にぬれし紺足袋よ 青愁 佐竹草迷宮
ほぎごとの白足袋も入れ旅鞄 柴田只管
ほととぎす足袋ぬぎ捨てし青畳 鈴木真砂女 夕螢
みちのくの子の赤足袋の鞐見え 阿波野青畝
もとほると言へるこころの足袋白し 後藤夜半 底紅
よこがほがさびしく足袋をはいてゐる 安住 敦
わが足袋の重ねてあるがやるせなき 佐野青陽人 天の川
をみな若きは足袋の白きを匂はしめ 太田鴻村 穂国
をんなは女外出気負うて白足袋に 河野多希女 琴 恋
一と竿に干しも干したり足袋ばかり 高橋淡路女 梶の葉
一欲を捨てたる尼の足袋白し 磯野充伯
一重足袋日の頂上を履きにけり 増田龍雨 龍雨句集
七文半の吾子の白い足袋にあした正月がくる 橋本夢道 無禮なる妻抄
七月の足袋白く穿き夜毎の雨 長谷川かな女 花寂び
万両に賽ころひらふ足袋はだし 河野静雲 閻魔
万灯引く衆の白足袋白法被 高澤良一 随笑 
三日はや小童が足袋破れ初む 石塚友二 光塵
上向く芽洗濯の足袋みな破れ 西東三鬼
下帯も白足袋も濡れ出初式 宮田 勝
下駄に足袋の混血児連れ日本の祖母 田川飛旅子 花文字
両脇に足袋屋の弟子の寒さかな 毛* 極 月 月別句集「韻塞」
中啓の舞破れ足袋をかくすなし 西本一都 景色
九文の白足袋はかす死出の母 品川鈴子
乞食の足袋に入れたる小銭哉 会津八一
乳児寝たり歩く形に足袋ぬいで 加藤知世子 黄 炎
二つ三つ足袋干す音を枯園に 井上雪
二趾(ゆび)の邪鬼足袋はける吾もまた 品川鈴子
亡き師恋し片足立ちて足袋履けば 肥田埜勝美
人の賀の足袋の白きを保ち了ふ 渡邊千枝子
今日もはく娑婆苦の足袋の白かりき 飯田蛇笏
今日足袋をはき替へにけり寒ければ 原石鼎 花影以後
今朝より冬黒ビロードのかがやく足袋 古沢太穂 古沢太穂句集
保線夫の足袋裏厚しすべりひゆ 小林幸子
俵重ね足袋清浄と白きかな 増田龍雨 龍雨句集
僧に尾いて足袋冷え渡る廊下かな 楠目橙黄子 橙圃
僧の足袋菜の花あかりしてみどり 河野静雲 閻魔
元旦や前山颪す足袋のさき 飯田蛇笏 山廬集
六月や能の亡霊足袋真つ白 北野民夫
冬の日 日雇女のじか足袋から 街は暮れる 吉岡禅寺洞
冬夜の静けさたてよこに足袋をつづくる 人間を彫る 大橋裸木
冬蝶を翔たす庭師の紺の足袋 石川文子
冷まじき滝川白き足袋に添ふ 野澤節子 黄 炎
冷まじき面や足袋や薪能 石川桂郎 四温
冷水のつややかをもて足袋濯ぐ 鳥居美智子
凍る足袋いづれが夫のものなりや 井上雪
初夢の夢の叶はぬ足袋をはく 径子
初夢もなく穿く足袋の裏白し 渡邊水巴
初大師なり紺足袋の男など 神尾久美子 桐の木以後
初蝶に会ふ白足袋に退け目なし 神尾久美子 桐の木
初蝶を追ふと数歩の足袋はだし 上田五千石 田園
初飛行柿の木に子の足袋赤し 渡邊水巴 富士
別るると教授夫人ら足袋しろく 柴田白葉女 遠い橋
勁き拇指蝸牛のごとく覗く足袋 中村草田男
十三夜真白くきつき足袋をはく 菖蒲あや 路 地
卯の花や愚かにかばふ雨の足袋 馬場移公子
厄年や足袋の温みを愛ではじむ 竪阿彌放心
厨子像の近松翁の足袋白し 山田弘子 螢川
受験勉強父より大き足袋穿きて 田中灯京
古足袋の四十に足をふみ込みぬ 服部嵐雪
古足袋の四十もむかし古机 永井荷風
古足袋の妻一病を捨てきれず 荒川邪鬼
古足袋もそのまま履くや去年今年 龍男(毎日新聞連載小説の題名を決め、歳晩より仕事部屋に籠る)
古足袋をさがしあつめて奉謝かな 森川暁水 黴
句一念わが白足袋の指太き 岡本圭岳
名優の余技足袋しろく笛吹けり 宮武寒々 朱卓
向日葵や足首細きとびの足袋 高井北杜
喀血す足形足袋を置きて臥す 石川桂郎 含羞
堅き足袋はきて初日ををろがめり 鈴木白路子
夕蝉に足袋脱ぐ膝を立てにけり ほんだゆき
外套の下は僧衣の足袋白し 青峰集 島田青峰
夜は孔雀拡がるごとし足袋はくとき 中嶋秀子
大寒や足袋に吸ひつく夜の舞台 佐野青陽人 天の川
大川を越え浅草へ足袋買ひに 館岡沙緻
大晦日蓬髪足袋をはきながら 赤尾兜子
大足の使徒となるかな足袋を脱ぐ 平畑静塔
天つ日は聖戦のひかり足袋をつぐ 渡邊水巴 富士
天国ヘルイス茨木足袋はいて 林翔
夫の忌の白足袋濡るる傘の中 日野晏子
奉仕すんで足袋はきかゆる巫女幼な 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
女老ゆ風呂場の隅で足袋洗ひ 菖蒲あや 路 地
女足袋をぬいで悲しい顔をする 関口比良男
女足袋紫野行くゆかりなり 椎本才麿
女面打つ黒足袋を穿きにけり 山口都茂女
妄想の足袋百間を歩きけり 永田耕衣(1900-97)
妻にて候死後の証しの白足袋は 栗林千津
妻の足袋すでに汚れぬ死までの距離 小林康治 玄霜
妻まろく足袋の鞐をかけてをり 椎橋清翠
妻今も紅足袋ちさし仕事多し 香西照雄 対話
妻死後を覚えし足袋のしまひ場所 能村登四郎(1911-2002)
姥捨の闇に足袋売る燈影かな 尾崎紅葉
子の縁にうすくて石に足袋を干す 長谷川双魚 風形
家護りて妻はもひとり足袋つゞる 岸風三楼 往来
寐るのみの明るさ足袋を脱ぎにけり 碧雲居句集 大谷碧雲居
寒燈に揃へておかな母の足袋 萩原麦草 麦嵐
小兎や真白の足袋に父とゐて 中山純子 茜
小夜時雨ほとけに履かす足袋買ひに 梶山千鶴子
就中首里城衛士の足袋真白 北見さとる
尼御前の白足袋濡らす著莪の雨 井口 秀二
尼法師足袋ねむごろに綴りけり 野村喜舟 小石川
川渉りてすぐはく足袋や日の枯野 阿部みどり女 笹鳴
干し足袋も鴨の形す湖辺宿 右城暮石 上下
干足袋にかもめのこゑのくれさそふ 金尾梅の門 古志の歌
干足袋に日の古びゆく風の音 三橋迪子
干足袋に湿りのもどる晝の月 松村蒼石 雪
干足袋のこはぜの光り草枯るゝ 金尾梅の門 古志の歌
干足袋の乾くまもなく盗られけり 森川暁水 黴
干足袋の夜のまゝ月のまゝとなり 河東碧梧桐
干足袋の天駆けらんとしてゐたり 上野泰(1918-73)
干足袋の日南(ひなた)に氷る寒さかな 大須賀乙字(1881-1920)
干足袋の裏返されて突つ張りて 高浜虚子
干足袋や糸に吊して梅の枝 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
干足袋を逃げし日松に当り居る 雑草 長谷川零餘子
干足袋を飛ばせし湖の深さかな 前田普羅
平凡な妻の倖はせ色足袋はき 柴田白葉女 牡 丹
年新たな凍み足袋裏を堅くせり 節子
年明くとベツドに凭りて足袋はけり 石田波郷
年暮るる干足袋の白空跳んで 殿村莵絲子 花寂び 以後
幾日も乾かぬ北國の足袋かなしからずや 細谷源二
店先に足袋干す籠や木曾の宿 会津八一
座を掃けば干足袋高く暮れにけり 金尾梅の門 古志の歌
弥生とは洗ひ縮みし足袋のことか 米沢吾亦紅 童顔
律僧の紺足袋穿つ掃除かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
悪役となる足袋きつき控室 北光星
悴みて手袋ぎらひ足袋ぎらひ 太田育子
扇収めて辞し去る客の足袋白し 青峰集 島田青峰
手づくりの足袋寛闊にはきよくて 高浜虚子
手と目のわざ色足袋えんじに糸を繰る 古沢太穂 古沢太穂句集
打連れて足袋の白さや御坊達 村上鬼城
抽出しの白足袋の波母老いぬ 小檜山繁子
拇指反らす妻の新足袋子のスキー 香西照雄 対話
拝殿へ足袋穢れなく七五三 佐藤美恵子
探梅のどろんこの足袋提げてをり 米澤吾亦紅
数へ日や足袋幾足の生乾き 永井龍男
文芸無頼枕頭の書へ足袋重ね 北野民夫
断崖へ松茸採りの足袋脚絆 岡田日郎
新年のくるぶし緊むるかたき足袋 能村登四郎
旅しらぬ幾とせ妻に足袋白し 軽部烏頭子
旅嚢より足袋いだし履き山国ヘ 古沢太穂 古沢太穂句集
日々の足袋の穢しるし書庫を守る 竹下しづの女 [はやて]
日だまりに足袋屋の築く足袋の山 本庄登志彦
日の出でて東さみしき足袋を干す 寺田京子
日脚伸ぶ足袋干してある竿の先 高濱年尾 年尾句集
早乙女の足袋脱いでゐる寺の縁 田中冬二 麦ほこり
昼寝覚素通る猫が足袋履いて 高澤良一 寒暑 
暑に抗すとりわけ足袋の白きもて 鈴木真砂女 夕螢
月下美人足袋はきかへてより講師 影島智子
月祀るための白足袋替へにけり 青木まさ子
望の夜の色足袋召して尼ぜかな 桑田青虎
朝の雨昨日の足袋をはきにけり 細見綾子 花寂び
朝日は軒ふかくさしいり日曜日の足袋を穿く 橋本夢道 無禮なる妻抄
朝曇白足袋はいて出でにけり 増田龍雨 龍雨句集
木屋町の宿から足袋を買はせけり 野村喜舟
未婚一生洗ひし足袋が合掌す 寺田京子
松の内すでに足袋裏よごれけり 吉屋信子
松納めし日向あり足袋下しにけり 中島月笠 月笠句集
枕頭に波と紺足袋漁夫眠る 鈴木六林男 第三突堤
梳き初めや足袋ほのしろき立鏡 上川井梨葉
楠の冷八十八夜足袋をはく 森 澄雄
業病に背中を向けて足袋を穿く 三好潤子
樒咲く尼寺に干す足袋二足 猿橋統流子
横光忌齢の足袋も幾重ね 石塚友二
横坐りの足袋の鼻緒の跡しるし 原田種茅 径
欝然と富めり葬列の足袋しろく 藤木清子
次の間に足袋ぬぎに立つ女かな 柴浅茅
正月の足袋白うして母在はす 大谷碧雲居
此日巡遊興のなかりし足袋払ふ 河東碧梧桐
歯朶の葉の塵清らなり足袋の先 紅葉
死出の足袋足にあまるや法師蝉 角川源義
母の足袋汚れきつたり父死なす 小林康治 四季貧窮
母枯れゆく跳べるかたちに足袋ぬいで 中嶋秀子
母訪はむ足袋のこはぜのはめ難し 永田耕衣 奪鈔
水仙に湯をいでて穿く毛足袋かな 飯田蛇笏 山廬集
水兵と行くは妹か足袋もはかず 佐野青陽人 天の川
水無月やあしたゆふべに足袋替へて 鈴木真砂女 夕螢
沓足袋や鐙にのこる初ざくら 榎本其角
法善寺横丁をゆく足袋白く 後藤比奈夫 初心
法善寺色足袋の紅かなしけれ 大石悦子 群萌
法衣にも足袋にも継の當りたる 後藤夜半
津山足袋やぐらに足をかけてはきし 廣江八重櫻
海士の子の足袋はく姿見る世哉 井原西鶴
海市(かいやぐら)あまたの足袋の干されゐる 柿本多映
海市あまたの足袋の干されゐる 柿本多映
温みある足袋を重ねて花疲れ 三好潤子
湯上りの指やはらかし足袋のなか 桂信子 黄 炎
滝一気死後の出合ひは足袋はだし 鳥居美智子
濡れ足袋のまゝに失火の調べ受く 矢倉信子
火燵出る足袋の白さや蓍衣始 中村烏堂
烈風の青空白足袋だけを干す 川島千枝
烈風踏みしめて来る足袋白し 林原耒井 蜩
烏賊のごと足袋つるされし近松忌 寺井谷子
無精さや蒲団の中で足袋を脱ぐ 正岡子規
焼杭に干す足袋赤く年つまる 古賀まり子 洗 禮
煤逃げや赤別珍の足袋買うて 市橋千翔
片方の足袋のありしは障子ぎは 細見綾子 花 季
狂言の足袋黄色なる虚子忌かな 岸本 尚毅
猿蓑塚山深ければ足袋汚る 殿村莵絲子 牡 丹
玄関で足袋はき替へし礼者かな 大場白水郎 散木集
甘酒や木影添ひ来る足袋の白 島村元句集
生き耐へし女どうしの小さき足袋 柴田白葉女 『夕浪』
生れし日を忘じ干足袋風の中 寺田京子
生活の確かさ白足袋乾き切る固さ 中村明子
生涯を足袋干す暮らし仏生会 井上雪
病みがちの足袋を離せず四月尽 猪俣千代子 堆 朱
病む人の足袋白々とはきにけり 前田普羅 新訂普羅句集
病よし医師の白足袋目にしるく 島村元句集
病上り白足袋ゆるく人と逢ふ 野澤節子 黄 瀬
癇性のすぐ雪晴に足袋干して 及川貞 榧の實
白妙の足袋踏み出しぬ飛鳥展 都筑智子
白足袋にいと薄き紺のゆかりかな 河東碧梧桐
白足袋に狭目の下駄も好みかな 野村喜舟
白足袋に皺殖え老母花見得たり 香西照雄 素心
白足袋のいちにん深山朝櫻 黒田杏子 花下草上
白足袋のじよんがら弾のづかと来る 田中英子
白足袋のつるつる縁やつく手毬 野村喜舟
白足袋のどこまでゆけば弥陀に会ふ 神尾久美子 桐の木
白足袋のひたひたと来る破芭蕉 川崎展宏
白足袋のよごれもつかずぬがれけり 富安風生
白足袋のよごれ尽せし師走哉 正岡子規
白足袋のチラチラとして線路越ゆ 中村草田男(1901-83)
白足袋の位置の磐石弓始 岩田千恵
白足袋の僧より落ちし名刺かな 桂信子 樹影
白足袋の暑中稽古や鞍馬寺 小中 勿思
白足袋の汚れざりしがさびしき日 鷲谷七菜子 黄 炎
白足袋の汚れもあはれ鹿踊 田村了咲
白足袋の熔岩原を踏み行けるかな 草間時彦 櫻山
白足袋の爪先そろへて御仏がくらい 人間を彫る 大橋裸木
白足袋の父にしたがふ墓参かな 五十嵐播水 播水句集
白足袋の若き和尚や花あせび 田中冬二 麦ほこり
白足袋の足の先まで几帳面 竹崎玉子
白足袋の踏んでゆきける瓦礫かな ふけとしこ 鎌の刃
白足袋も五つこはぜの針供養 今泉貞鳳
白足袋も鼻緒もきつめなのが好き 榊原 弘子
白足袋や大僧正の袈裟の下 野村喜舟 小石川
白足袋や帯の固さにこゞみ穿く 阿部みどり女 笹鳴
白足袋や母の天寿をわれ知らねど 平井さち子 完流
白足袋や箱階段の黒き艶 今泉貞鳳
白足袋や継もなか~清浄に 野村喜舟 小石川
白足袋をぬぐや流るる天の川 野澤節子 『駿河蘭』
白足袋を一歩も退かず怒濤見る 神尾久美子 桐の木
白足袋を穿きて心を立つるなり 岡野美代子
白足袋を穿けば歩幅の改る 小林一鳥
白足袋を脱ぐに流れて天の川 野沢節子 八朶集以後
白足袋を脱ぐや流るる天の川 野澤節子
白足袋裾ずれこの用もあの用も 河東碧梧桐
白足袋遺し泣くほか寝るほかなかりしか 中村草田男
白鹿と足袋にも銘すはきにけり 赤松[ケイ]子
短日の足袋を湯殿に脱ぎにけり 汀女せん 吉屋信子
石の上花のごとくに足袋を干す 柏禎
破れ足袋やはたと夜の階のぼりゆく 『定本石橋秀野句文集』
硝子戸の中の幸福足袋の裏 細見綾子 花 季
祖母の足袋もつとも白し野遊びへ 福島延子
祝ぎ事の済みし白足袋干されけり 高橋利雄
神官の足袋はかぬ日は麦を踏む 後藤智子
神楽舞ひ砂利踏む足袋の白きこと 城間芙美子
禰宜達の足袋だぶ~とはきにけり 村上鬼城
秩父颪看板に鳴る足袋屋かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
穿き寝せし足袋の裏いつか汚れけり 月舟俳句集 原月舟
立像は足袋穿きたまひ右近の忌 森田峠 三角屋根
竹馬やひたと竹吸ふ足袋の股 林 翔
紐足袋の昔おもへば雲がゆく 臼田亞浪 定本亜浪句集
細梯子足袋裏白くはづみけり 小島千架子
細見と足袋を懐に歩きけり 野村喜舟
紺足袋の女も冬の初めかな 大谷句佛 我は我
紺足袋の底の真白し初仕事 武田克美
紺足袋の強げに見ゆる女かな 会津八一
紺足袋の紺に好みのありしこと 後藤夜半 底紅
縁あればをみなは白き足袋を穿く 萩原麦草 麦嵐
繕ひし足袋抽斗に母逝けり 石垣 弘子
老い老いて足袋潔白に冴えにけり 小寺正三
老足(ろうそく)に足袋美しや二日灸 後藤夜半
老足に足袋美しや二日灸 後藤夜半 底紅
肩借りて足袋ぬげるあり若菜摘む 皆吉爽雨 泉声
脱ぎし足袋冷えてよごれの目立つかな 野澤節子 黄 瀬
脱ぎすてし足袋の白きに雪降り出す 内藤吐天 鳴海抄
腰ひもに足袋つつぱさみ石蓴掻く 上村占魚 『霧積』
色足袋で来て拝みけり竹生島 山本洋子
色足袋に替へて自分に戻りけり 江頭けい子
色足袋に迎へてくれし雪の宿 茂里正治
色足袋に馴れて女房らしくあり 上野泰 佐介
色足袋のまゝの遠出となりしかな 島崎きよみ
色足袋のまゝよ遠くへ行き居らじ 宮城きよなみ
色足袋や尼ともならず寺暮し 中山純子 沙羅
色足袋や律儀に老いて路地ぐらし 菖蒲あや
色足袋や湯女に老婆のかかりうど 西本一都
色足袋を買初めに町ぬかるみて 綾子
花の雨延年舞の白足袋に 沢木欣一 地聲
花冷えの旅鞄足袋加へけり 近藤一鴻
花疲れ灯にちらばつて足袋と足 今瀬剛一
花衣足袋をよごしてかへりけり 山口波津女 良人
花足袋の南枝はしめて幼稚園 尾崎紅葉
草の雨一歩踏み出す足袋白し 阿部みどり女 月下美人
草市に足袋を濡らして女老ゆ 菖蒲あや 路 地
荒梅雨の足袋に蝋塗る野外能 田川飛旅子
萩のトンネル白足袋の母に蹤きゆきぬ 杉本寛
蓑虫や足袋穿けば子もはきたがり 渡邊水巴
蛇穴を出づる喪の足袋脱ぎ了へて 橋本榮治 越在
行きはわが足袋の真白く下萌ゆる 中村汀女
行く年の水美しく足袋洗ふ 有馬籌子
行年の干足袋一つ吹かれけり 中島月笠 月笠句集
表より裏にねんごろ足袋洗ふ 池田のぶ女
裏白や新しき足袋さがしあて 石川桂郎 四温
見るたびに干足袋うごく霙なか 谷野予志
貧乏の足袋のこはぜが光りけり 長谷川双魚 風形
買ひ戻る足袋のつつぱる袂かな 森川暁水 黴
赤い足袋買つて欲しいと粥を炊く 中山純子 茜
赤き足袋はき家中を明るくす 中山純子 茜
赤足袋にゐのこづち着け子が生れず 中山純子 沙羅
赤足袋のふくらんだまま脱がれある 上野泰 佐介
赤足袋を手におつぱめる子ども哉 一茶
足るといふ事知る暮し足袋つゞる 楠井光子
足袋あぶる能登の七尾の駅火鉢 細見綾子 雉子
足袋かがる一身の悔背にこめて 小林康治
足袋かさね穿いて死神よせつけず 富田潮児
足袋かたしかたかた風が鳴らしけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
足袋かへぬ人卑しさよ更衣 島村元句集
足袋かゞる一身の悔背にこめて 小林康治 四季貧窮
足袋かゞる灯かげに遠く艦うかぶ 金尾梅の門 古志の歌
足袋きつく父の気質を吾が受けし 上野さち子
足袋きよく光は励む妻が負ふ 山田 文男
足袋きよく成人の日の父たらむ 能村登四郎
足袋こはぜかたく女の意地とほす 上村占魚 『橡の木』
足袋しろくなにか哀しき急ぎあし 相馬 黄枝
足袋すこしよごれ元日昏れにけり 文挟夫佐恵 黄 瀬
足袋つがんと日々思ふのみ思ふのみ 山口波津女 良人
足袋つくろふ雪嶺の朝から晴れて 内藤吐天 鳴海抄
足袋つぐごと心つくろひつつ生くも 吉野義子
足袋つぐやノラともならず教師妻 杉田久女(1890-1946)
足袋つづるくらくて低き灯の畳 長谷川素逝 村
足袋つゆにぬれつゝ仰ぐ天高し 及川貞 夕焼
足袋つゞる小指の当りていねいに 田中政夫
足袋と干菜とうつる障子かな 室生犀星 魚眠洞發句集
足袋と見えて時々触はる火燵哉 会津八一
足袋にあり男の白といふ色も 山崎みのる
足袋にふれし手をすゝぎ燈明奉る 高田蝶衣
足袋にアイロンあな憎き顔足袋になれ 稲垣きくの 牡 丹
足袋に指きつちり家庭内別居 稲井優樹
足袋ぬいであかがり見るや夜半の鐘 正岡子規
足袋ぬいでうららけき足の裏かな 冬の土宮林菫哉
足袋ぬいでからびはてたる肉刺を剥く 川島彷徨子 榛の木
足袋ぬいでそろへて明日をたのみとす 細見綾子 花 季
足袋ぬいでつかれ覚えぬ花衣 山口波津女 良人
足袋ぬいで卯の花腐しゆく娘かな 麻田椎花
足袋ぬいで耳より眠むる積木の城 浜 芳女
足袋ぬがぬ臥所や夜半の乳つくり(乳なければ) 『定本石橋秀野句文集』
足袋ぬぐに聖痕を見るごときかな 平井照敏 天上大風
足袋ぬれて寄る火の灰揚れり 安斎櫻[カイ]子
足袋のせて明日の外出に着る着物 木暮英子
足袋の値に驚くことも現世かな 尾崎迷堂 孤輪
足袋の先火燵にあつくお元日 廣江八重櫻
足袋の型おろかし逢ひにゆくときも 寺田京子
足袋の持つ演劇的な要素かな 京極杞陽
足袋の紐の解けたるを知らす行く人よ 尾崎紅葉
足袋の紺匂ふを知りつ階上る 久米正雄 返り花
足袋の裏汚れずにゐることは死か 安東次男 裏山
足袋はいて夜着ふみ通る夜ぞ更けし 飯田蛇笏 山廬集
足袋はいて宿の浴衣のなじまざる 高濱年尾 年尾句集
足袋はいて寝る夜ものうき夢見哉 蕪村 冬之部 ■ 御火焚といふ題にて
足袋はいて心を謙となしにけり 小杉余子 余子句選
足袋はきていよいよ仕事はかどりて 黒田杏子 花下草上
足袋はきて寝る夜隔(へだて)そ女房共 服部嵐雪
足袋はくやうしろ姿を見られつつ 大野林火
足袋はくやはじめを強く喪の太鼓 長谷川双魚 『ひとつとや』
足袋はくや心つまづくばかりなり 清水基吉 寒蕭々
足袋はくや故園の霜のくまなくて 百合山羽公 故園
足袋はくや装ひなりし帯固く 高橋淡路女 梶の葉
足袋ぼこり買ひあぐねつつ外足に 香西照雄 対話
足袋ゆるく穿く旅十万億土とやら 榎本嵯裕好
足袋をつぐより小説が読みたけれ 山口波津女 良人
足袋をつぐ絲長々とさしにけり 高橋淡路女 梶の葉
足袋をはくとき虫更けてゐたりけり 道芝 久保田万太郎
足袋を穿くだけの十万億土かな 橋間石
足袋を継ぐ母の背ゆすり金せがむ 宮坂静生 青胡桃
足袋を脱ぐ足のほてりや花疲れ 鈴木真砂女 生簀籠
足袋先の冷えしんしんと父の通夜 鈴木愛子
足袋堅く爪先へ気や初点前 牧野寥々
足袋売の声うち曇師走哉 高井几董
足袋外套脱ぎ散らさでや孤独慣れ 石塚友二 方寸虚実
足袋嫌ひとことん齢を喰つてみむ 後藤綾子
足袋少し汚し枯野を越え来たり 鈴木真砂女 夕螢
足袋履いて夜は昼の足と別にある 松原地蔵尊
足袋履くと上布の翅の身を離る 殿村菟絲子 『牡丹』
足袋干して星が消えさう蜜柑村 中拓夫 愛鷹
足袋干すに薄き山の日ななかまど 稲垣きくの 牡 丹
足袋干すや山ふところは梅早し 青峰集 島田青峰
足袋干すや影を馴れゐる小鳥共 野村喜舟 小石川
足袋幾つ衣の隙に干されけり 柑子句集 籾山柑子
足袋底に滲む残雪橡芽吹く 松村蒼石 雁
足袋底のうすき汚れや松の内 三橋鷹女
足袋替へしこころにひらく茶道口 小澤満佐子
足袋替へる母の足首細りけり 吉宇田敬子
足袋替へる青木の花のくらがりに 平沢美佐子
足袋洗ひそれで和みて一日を 細見綾子 花寂び
足袋洗ひ訃報を待ちてゐたらずや 白岩 三郎
足袋清く凱旋の友来りけり 森川暁水 淀
足袋甲の縫目鼻筋通す貴女 香西照雄 素心

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by 575fudemakase | 2014-12-19 00:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷魚

氷魚

例句を挙げる。

*えり壷といふ罠氷魚を見のがさず 馬場五倍子
あけぼのや湖の微をとる氷魚網 森澄雄 游方
あられせば網代の氷魚を煮て出さん 芭蕉
こぼれ氷魚一夜ふゞきし磯明けて 山田孝子
初漁の四つ手に上る氷魚少し 小林七歩
初糶のはじめの氷魚汲まれけり 下田 稔
古*えり簀焚く火明りに氷魚を選る 木村蕪城 寒泉
川尻に鴎つきそめ氷魚汲 森田薊村
月影の砕けては寄る氷魚かな 松笙
朝月の砂嘴へ曳くべし氷魚網 桂樟蹊子
棒杭の五六夕日に氷魚の網 加藤耕子
氷魚*えりに立つ寒雷の水柱 駒井でる太
氷魚くへば瀬々の網代木見たきかな 松瀬青々
氷魚といふ名こそおしけれとしの暮 千郡 極 月 月別句集「韻塞」
氷魚の網月の小波立てゝ曳く 田畑比古
氷魚を酢に堅田の雨の宿りせん 飴山實 『次の花』
氷魚捕の焜炉の炎よこなびき 阿波野青畝
氷魚汲むや暁の霰に灯かざして 山田孝子
氷魚漁の合羽を脱げば乙女なる 大島民郎
氷魚炙る手のひらひらと義仲忌 関戸靖子
氷魚網に両手絡まる末路かな 塚本邦雄 甘露
氷魚食べて今年の旅のをはりかな 細川加賀 生身魂
漁夫咳きて魚籠へ頒たむ氷魚こぼす 大島民郎
遠山にうごかぬ雲や氷魚取 松婦
雛納め*あさざ少々氷魚少々 波多野爽波 『湯呑』
霰せば網代の氷魚を煮て出さん 松尾芭蕉

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:35 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

マスク

マスク

例句を挙げる。

あらたまの春のマスクや楽屋入 久保田万太郎 流寓抄
お身拭ひいやに大きなマスクして 高澤良一 宿好 
かがまりてやさしきまなこ寄せくるにマスクをせよと言へばせつなし 竹山広
さゝやけば目がうれしがるマスクかな 倉田春名
つき添ひの母の特大マスクかな 指澤紀子
ふと心通へる時のマスクの瞳 神田敏子
ぼろ市に買ふ気のマスク外しけり 白岩 三郎
よく喋る女マスクで蓋をせん 高澤良一 鳩信 
わが憤怒あはれマスクに曇らひぬ 岸風三楼 往来
ピカソ展マスクの僧とすれ違ふ 藤井寿江子
ポケットに切符とマスク連れ居らず 小出秋光
マスクかけサングラスかけ春の耳 辻桃子 童子
マスクかけ仄かに彼の眉目かな 高浜虚子
マスクかけ暫く都鳥を見る 深川正一郎
マスクかけ目で挨拶をすることも 桔梗きちかう
マスクしておのづからなる女の目 高澤良一 燕音 
マスクしてけふの遠嶺の雪に会ふ 五十崎古郷句集
マスクしてしろぎぬの喪の夫人かな 飯田蛇笏 春蘭
マスクしてそれはわざをぎ春の風 高濱年尾 年尾句集
マスクしてとみかうみして畦づたひ 下村槐太 天涯
マスクしてふところ手して何おもふ 久保田万太郎 草の丈
マスクしてものを一直線に見る 山田弘子 螢川
マスクしてものを言ふ口ありにけり 行方克巳
マスクしてゐても猫にはわかるらし 北川沙羅詩
マスクしてをる人の眼を読みにけり 上野泰 春潮
マスクしてをれど言ひたきことを言ふ 吉年虹二
マスクしてマスクしている人にあう 細井啓司
マスクしてマスクの人に目敏しよ 宮坂やよい
マスクして下着売場を横断す 木本徹男
マスクして世に容れらるる言吐かず 橋本榮治 麦生
マスクして人と齢をあらそはず 長谷川双魚 『ひとつとや』
マスクして人に逢ひ度くなき日かな 稲畑汀子
マスクして人の怒りのおもしろき 上野さち子
マスクして人の背なかが前にある 加倉井秋を 『真名井』
マスクして北風を目にうけてゆく 篠原梵 雨
マスクして吾をゆるさぬ眼のやさし 行方克巳
マスクして女のうしろ隙間なし 萩原麦草 麦嵐
マスクして妻に子がなし我にもなし 右城暮石 声と声
マスクして寝るほど寒き恐はき夜 池内友次郎
マスクして寸鉄含みをりしかな 行方克巳
マスクして少年切に漫画読む 石塚友二 光塵
マスクして彼の眼いつも笑へる眼 京極杞陽 くくたち上巻
マスクして心隠せしごとくなる 北垣翠畝
マスクして我と汝でありしかな 高浜虚子
マスクして我を見る目の遠くより 高浜虚子
マスクして振り返るには来過ぎたる 岡本眸
マスクして断りの語尾濁しけり 川村紫陽
マスクして月の光の屍室 大木あまり 火球
マスクして検事己の貌となる 坂本木耳
マスクして疾うに観念してゐる目 高澤良一 燕音 
マスクして砕氷船のごと進む 林翔 和紙
マスクして自負強き眉残しけり 岡田 貞峰
マスクして藪騒ぐ聴ゆ囲炉裡ばた 萩原麦草 麦嵐
マスクして蛙めき来ることはおもしろ 高澤良一 燕音 
マスクして見舞の客は吉右衛門 楠目橙黄子 橙圃
マスクして赤い車の郵便車 平野 山石
マスクして重たき息となりにけり 那須 淳男
マスクして隠さふべしや身の疲れ 林翔 和紙
マスクして鶴の白さにとなりけり 所山花
マスクするたび耳朶は生え変る 宇多喜代子 象
マスクせる兵の感涙きらびやか 飯田蛇笏 春蘭
マスクとりその人のその声となる 板場武郎
マスクとり唇あでに生れけり 吉屋信子
マスクとる熔接工の眼が枯色 穴井太
マスクなき不安の盾の車中の書 金子 潮
マスクの人水口に幣立ててゆく 藤田あけ烏 赤松
マスクの白さ同僚とは相憎むもの 榎本冬一郎 眼光
マスクの目いちいち頷きをりにけり 高澤良一 素抱 
マスクの瞳三年越しに逢ひにけり 野村喜舟
マスクもるゝ心の吐息きかむすべ 久保田万太郎 流寓抄
マスク新し身に匂ふものこれのみに 能村登四郎
マスク白くいくさに夫をとられきぬ 加藤楸邨
マスク白しまけず嫌ひの意地ツぱり 久保田万太郎 流寓抄以後
下校時のマスクをしてる少女かな 本庄志帆
五七忌の大きマスクの及川貞 岸田稚魚 筍流し
会場にマスクの市松模様かな 高澤良一 素抱 
修道女大きマスクに瞳澄む 山口 季玉
修道尼澄める瞳もてるマスクかな 森田峠
凍る夜の袋マスクの馬の貌 有働亨 汐路
初詣マスク清らにかけにけり 吉屋信子
千鳥見に彼もマスクをして来り 高濱年尾 年尾句集
原爆忌農薬マスク息苦し 松倉ゆずる
受験子にすすめしマスク捨ててあり 塩谷はつ枝
口紅のなじみしマスクかくるかな 久保田万太郎 流寓抄
句座の衆マスクご免の「こんにちは」 小出秋光
咳こぼすマスクの中の貌小さし 吉田鴻司
嘘云はぬためマスクとり物を言ふ 村上冬燕
図書館の薄暮マスクの顔険し 加藤楸邨
埠頭で海に触れる町の子マスク小さく 宮津昭彦
夜のマスク汽車過ぎし香の鐵路踰ゆ 中島斌男
大きなマスク息温かに人の喪ヘ 田川飛旅子 花文字
大マスクかけて籠りてゐるごとし 井村 経郷
大マスクとつて白子の味見せり 高澤良一 ねずみのこまくら 
失業をしてゐるマスクかけにけり 銀漢 吉岡禅寺洞
小樽にて大きなマスク買いにけり 山崎 聰
度外れの遅参のマスクはづしけり 久保田万太郎(1889-1963)
座の一人少し風邪気味マスクして 高濱年尾 年尾句集
待つ人のあるべきマスク深くせる 岸風三楼 往来
怒りゐることがありありマスクの目 遠山みよ志
怖れけりマスク・メロンの甘さだに 林原耒井 蜩
息づきのよごれマスクに騏のごとし 篠原梵 雨
新しきガーゼのマスク老婦人 京極杞陽 くくたち下巻
早咲きの梅にマスクを掛けぬ日々 赤尾兜子
朝戸出のマスク純白なるはよし 岸風三楼 往来
没る日黄に防毒マスク脱ぎて嗤ふ 岸風三楼 往来
浮かぬ顔悟られまひぞマスクして 大宮良夫
涅槃図を仰げりマスクかけしまま 長谷川かな女 花 季
皇宮衛士けふマスクして立ちにけり 細川加賀 生身魂
目交してマスク同士の逢瀬かな 鳥居おさむ
看護婦のマスク布団を干す時も 青葉三角草
真夜中の大きなマスクの中のかもめ 攝津幸彦
眼の笑ふマスクの人を考へる 青葉三角草
眼はうごき眉はしづかにマスクの上 山口誓子
硅肺法のマスク冬にも汗の顔 及川貞 夕焼
福耳を引つぱってゐるマスクかな 下村非文
笑つてゐて何か言ひたいマスクの瞳 古市絵未
純白のマスクぞ深く受験行 岸風三楼 往来
純白のマスクを楯として会へり 野見山ひふみ
美しき人美しくマスクとる 京極杞陽 くくたち下巻
美しき顔にふたたびマスクかな 玉木 こうじ
老侯のマスクをかけて薔薇に立つ 高浜虚子
肝心な事言ふマスクはづしけり 石垣 弘子
肝心な話はマスクとってせむ 高澤良一 素抱 
艀よりマスク大きく登校す 竹下流彩
花冷えのマスクをかけて眉の濃き 久保田万太郎 草の丈
見舞妻喰べよと一語マスクしつ 岸風三樓
言問橋マスクはづしてわたりけり 藤岡筑邨
誰もマスク屍見し日は言葉やさし 岩田昌寿 地の塩
豊年のけぶりの中にマスクして 岸本尚毅 舜
路に出てマスクの中の息熱き 原田種茅 径
逢ふときは目をそらさずにマスクとる 仙田洋子 橋のあなたに
遊ぶ子のときをりマスク掛け直す 加藤宵村
遠くよりマスクを外す笑みはれやか 富安風生
避妊具を買ふマスクより已が聲 石川桂郎
酸素マスク掛けチチカカの船遊び 品川鈴子
鉄のごとき顎の傷痕マスクはづす 加藤楸邨
防毒マスク路次駆け冬日呆けたり 岸風三楼 往来
陳情の二列目に居る大マスク 川村紫陽
頤にマスクをずらし饒舌に 岩田公次
頬骨にマスクのあとや夜の客 原石鼎
顎マスクしてぼろ市の骨董屋 福神規子
麻酔マスクの奥綿菓子の様な眠り 渋谷道
マスクして歩行の何處かしゃちこばる  高澤良一  石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:35 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

杜父魚

杜父魚

例句を挙げる。

九頭竜の杜父魚とりか動かざる 新田祐久
日矢射して淵の青さよ霰魚 中村春逸
杜父魚のえもの少なき翁かな 蕪村
杜父魚の川なる瀬々の星明り 橋本 薫
杜父魚の背鰭凍りて量らるる 河北斜陽
網はらふころり~と霰杜父魚 米野耕人
舟に跳ね杜父魚腹を返しけり 三寺橘子
軒よりも九頭竜高し杜父魚の宿 本多静江
霰魚北ゆくばかり北指す河 文挟夫佐恵 雨 月

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:32 | Trackback | Comments(0)

湯気立て

湯気立て

例句を挙げる。

うづたかき馬糞湯気立つ朝の力 西東三鬼
しろがねの富士に湯気立つ寒土用 村松ひろし
どやどやや若き塊湯気立てる 芦原昌子
ふっと立つすずしろ粥の湯気あがり 斎藤夏風
ほしいまゝ湯気立たしめて独ゐむ 石田波郷
もうもうと湯気立て蒸籠の朝ばたらき 高澤良一 随笑 
マンホール湯気立つは貴種流離かな 五島高資
一人夜の更けゆくまゝに湯気立てゝ 松尾緑富
会へばみな句の友牛鍋湯気立てて 山本光坡
何ごともなくて湯気立つ誕生日 岸本マチ子
児ら合唱干され湯気立つ臼と杵 鍵和田[ゆう]子 未来図
初刷に厨のものは湯気立つる 中村汀女
堂押の湯気立昇る太柱 関 千年雄
堆肥舎に湯気立つ晨一茶の忌 岡野よしを
夜露寒湯気立つものを食べしあと 百合山羽公 故園
大やかん湯気立ててゐる山の茶屋 山根きぬえ
大寒の湯気立つ朝の配膳車 木下蘇陽
大服の湯気立ちのぼる空也像 鈴木鷹夫
大脳やミルクの湯気の立ち込めり 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
大釜の湯気立ち上る栗の花 子規句集 虚子・碧梧桐選
大鍋に湯気立てて夜話始まりぬ 原子公平
夫先きに寝ねて湯気立つ無為暫し 及川貞
夫張りし床肌湯拭き湯気立つよ 香西照雄 素心
女給笑ひ皿鳴りコーヒ湯気立てゝ 高浜虚子
寒肥の湯気を立てたり鶏日和 大木あまり 火のいろに
悼むとは湯気立てて松見ることか 宇佐美魚目 秋収冬蔵
枝に刺す繭玉のまだ湯気立てて 浅見さよ
楡のかげ少女も湯気をまとい立つ 三谷昭 獣身
水撒きて湯気を立たせて堂押祭 井口光雄
湯気白く立つ冷房の理髪室 内藤吐天 鳴海抄
湯気立ちつ舞ひつ産後の髪撫でやる 中村草田男
湯気立ちて遠く押しくる配膳車 石川桂郎 四温
湯気立つや濤の高さを玻璃越しに 鷲谷七菜子 黄 炎
湯気立ててこころ怠りをりしかな 山口英二
湯気立ててそこに松あり梅も見ゆ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
湯気立ててをりたる晝が過ぎにけり 橋本鶏二
湯気立てて今宵は母と話すなり 荻野暁江
湯気立てて大勢とゐるやうに居り 岡本眸
湯気立てて山に稲荷の鳥居かな 波多野爽波 『湯呑』
湯気立てて故人を待てるごとくなり 五十嵐播水
湯気立てて柱時計のくもりたる 高浜虚子
湯気立てて男無言の轆轤の座 森 えみ
湯気立てて花鳥濡れたる屏風かな 橋本鶏二 年輪
湯気立てて貰ひて主は疾くに居ず 中村汀女
湯気立てて韓愈流謫の地の粽 日原傳
湯気立ての大薬缶嘴ありにけり 井沢正江 晩蝉
湯気立てることも忘れず看取妻 鈴木蘆洲
湯気立てゝいつもの部屋に老一人 山県光子
湯気立てゝひそかなる夜の移りゆく 清原枴童
湯気立てゝ今宵これより吾が時間 能美優子
湯気立てゝ故人を待てるごとくなり 五十嵐播水
湯気立に遠く枯木といふものあり 下村槐太 天涯
湯気立の湯気の腰折れ見舞客 副島いみ子
牛鍋は湯気立て父子いさかへる 湯浅藤袴
白き骨湯気立て宿の料理かな 如月真菜
立ちし湯気消えなんとする湯気を追ひ 上野泰 佐介
立待や煮炊の湯気につつまれし 井上雪
紙を漉く手風呂は湯気を立てゝをり 高橋春灯
羨しとも湯気立て若きラガー泣く 稲岡長
蓮枯れて飲食の湯気すこし立つ 波多野爽波 『湯呑』
豆飯の湯気の立つうちいただかん 高澤良一 寒暑 
身に入むや湯気立つ牧の治療棟 佐伯 星子
雑炊の湯気吹きこころ岐路に立つ 稲垣きくの 黄 瀬
餅搗を終へし臼より湯気立てり 辻桃子
どやどやの湯気たて若さぶつけ合ふ 荻野信子
湯気たてて起居忘れし如くなり 松本たかし

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:31 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

吸入器

吸入器

例句を挙げる。

くた~に疲れて戻り吸入器 大塚千々二
すでに子の目の濡れて待つ吸入器 白岩三郎
どの顔も少し呆けて吸入器 大槻右城
まながひに雲ぞ春めく吸入器 吉岡禅寺洞
仙人の飢えたる如く吸入器 栗田 直美
冬の日の障子白さや吸入器 碧雲居句集 大谷碧雲居
医の家の機械細(くわ)しき吸入器 山口誓子 黄旗
吸入器入歯はづせし口くぼめ 吉川 喜美子
吸入器噴く何も彼も遠きかな 橋本多佳子
吸入器地獄のごとく激すなり 山口誓子
吸入器扉あけて罐(かま)の火を焚けり 山口誓子 黄旗
吸入器東風自ら曇りけり 久米正雄 返り花
吸入器槐多亡き夜を激すなり 小川枸杞子
吸入器激しガラスの筒曇る 田川飛旅子 花文字
吸入器白し窓には白き朝 依田明倫
妖精の衣ひろがる吸入器 大石雄鬼
妹より気弱な兄や吸入器 清水基吉
暖かき言葉のごとき吸入器 岡田史乃
考えてをる顔ならず吸入器 阿波野青畝
買ひしまゝ使はずにある吸入器 森田峠 避暑散歩

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:29 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

口切

口切

例句を挙げる。

口切におろす晴着の躾とる 星野椿
口切にゆく近道の谷中墓地 佐野美智
口切に堺の庭ぞなつかしき 松尾芭蕉
口切に時雨を知らぬ青茶かな 徳元
口切に来よとゆかりの尼が文 篠塚しげる
口切のとまり客あり峯の坊 炭 太祇 太祇句選後篇
口切の壺と聞えてうやうやし 後藤夜半 底紅
口切の封も奉書もまつたき白 佐野美智
口切の御詰にひかへをりにけり 稲畑汀子
口切の抹茶を買つて梅の橋 野上智恵子
口切の窓を過ぎゆく霰かな 会津八一
口切の菴や寐て見るすみだ河 高井几董
口切の隣も飯のけふりかな 蕪村遺稿 冬
口切やけふのよき日を京の水 角田竹冷
口切やところを得たる御茶壷 田中蘆風
口切やふるきまじはりまた重ね 及川貞 夕焼
口切ややはらかき手をにぎりきて 宮坂静生 山開
口切や主客の心一つなる 小林草吾
口切や五山衆なんどほのめきて 蕪村 冬之部 ■ 几董にいざなハれて、岡崎なる下村氏の別業に遊びて
口切や今朝はつ花のかへり咲く 風 虎
口切や南天の実の赤き頃 夏目漱石 明治二十八年
口切や孟宗竹の雨しぶき 齋藤玄 飛雪
口切や宗旦狐座にまぎれ 井沢正江
口切や小城下ながら只ならね 蕪村 冬之部 ■ 几董にいざなハれて、岡崎なる下村氏の別業に遊びて
口切や庵の行事の覚書 露月句集 石井露月
口切や新居披露の意もありて 合田丁字路
口切や日の当りゐるにじり口 星野立子
口切や梢ゆかしき塀どなり 蕪村遺稿 冬
口切や湯気ただならぬ台所 与謝蕪村
口切や織部らしきを大切に 草間時彦
口切や羽織袴で臼をひく 福村新舟
口切や花月さそふて大天狗 炭 太祇 太祇句選
口切や誰我案内設けの座 松根東洋城
口切りて嵐もそはれこほりもち 水田正秀
口切りに小啄木鳥来てゐる寒の明 高尾峯人
口切りに残りの菊の蕾かな 松瀬青々
口切りや二霜三霜ありしより 赤羽 岳王

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:27 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

一茶忌

一茶忌

例句を挙げる。

いなご香ばしく煮たのも信州もう一茶忌のころ 荻原井泉水
くらがりに鶏突つ立てり一茶の忌 原田喬
すりごまの匂ふ厨や一茶の忌 山下典子
とどかざる月を一茶の忌なりけり 匹田のぶ子
ふるひたちてはまぐはふや一茶の忌 岡井省二
ガスの火の紫もゆる一茶の忌 富安風生
ベレー帽茶に買ひ替へて一茶の忌 大口蘇峰
一茶忌と知るも知らぬも蕎麦すゝる 岩永三女
一茶忌に滑稽の句覚束な 斎藤紫々
一茶忌のたひらな闇を田とおもふ 小原俊一
一茶忌のにつぽん中の雀かな 知久芳子
一茶忌のふうはり雲が通ひ出す 白澤良子
一茶忌の下駄に重たき墓地の土 加藤知世子
一茶忌の今年雪なき柏原 楠本憲吉
一茶忌の句会すませて楽屋入 中村吉右衛門
一茶忌の句屑をくべよ庭竃 黒田杏子 花下草上
一茶忌の夜もあたたかく蠅の来る 西本一都
一茶忌の小遣い少なくなりにけり 高澤良一 随笑 
一茶忌の時雨が雪に早がはり 加藤知世子 花寂び
一茶忌の柿喰ふ椋鳥をゆるし置く 吉野義子
一茶忌の煎薬やこれ恙なく 金井苑衣
一茶忌の熱きうどんを啜りけり 伊東泉花
一茶忌の福神漬を噛み鳴らし 高澤良一 随笑 
一茶忌の蕎麦を雀のごとく食ふ 青柳志解樹
一茶忌の薪割る音のしてゐたり 池田秀水
一茶忌の雀の家族焚火越す 秋元不死男
一茶忌の雀四五羽のむつまじき 清水基吉
一茶忌の霜月もひれ屁ひり虫 菅原師竹句集
一茶忌やどこからも聞く寺障子 西本一都 景色
一茶忌やふかぶか掘りし葱の畝 安住敦
一茶忌や一ト切れのパン夜半に欲し 石川桂郎 含羞
一茶忌や口やかましき人ばかり 瀧井孝作
一茶忌や句会たのしむ老女たち 瀧 春一
一茶忌や同名弥太郎狂馬楽 龍岡晋
一茶忌や吾もたらちねに縁うすく 田中英子
一茶忌や大月夜とはよくも言ひし 高浜虚子
一茶忌や寝しなの鉦を一つ打つ 栗生純夫 科野路
一茶忌や我も母なく育ちたる 上村占魚 『鮎』
一茶忌や柿より小さき目白来て 小東泰子
一茶忌や父を限りの小百姓 石田波郷(1913-69)
一茶忌や窪みもどらぬ旅しとね 澁谷道
一茶忌や親しきものに軒雀 福田蓼汀 山火
一茶忌や遠き世の墓貧しげに 瀧春一
一茶忌や雪とつぷりと夜の沼 角川源義
一茶忌や髪結ふことを尚餐(こひねがはくはうけよ) 高浜虚子(吉右衛門主催、一茶忌)
一茶忌を忘れずゐたる葛湯かな 森澄雄
一茶忌を移る棺形日向かな 永田耕衣 殺佛
他人の靴切に磨けり一茶の忌 佐野まもる
俳諧寺一茶忌あなたまかせかな 増田龍雨
切り取りしごとき日向や一茶の忌 片山由美子 風待月
坐せばはつゆき柏原一茶の忌 黒田杏子 花下草上
堆肥舎に湯気立つ晨一茶の忌 岡野よしを
夕暮れて母呼ぶ声や一茶の忌 水野 あき
大榾火泡吹きたてゝ一茶の忌 竹田 于世
子の縁薄き夫婦や一茶の忌 榎本栄子
孝にして友ならざりし一茶の忌 相生垣瓜人
干大根細り細りて一茶忌へ 林 翔
押売りのめつきり減りて一茶の忌 八幡より子
旅半ば地酒あたゝめ一茶の忌 升谷一灯
月の鎌一茶忌過ぎしより寒し 沖里石
望郷の鮭打たるるよ一茶の忌 北見さとる
梅壺塩壺肩を寄せあふ一茶の忌 佐野まもる
歯の欠けし男饒舌 一茶の忌 富澤赤黄男
消しゴムの方向音痴一茶の忌 雨宮抱星
焼栗の爆ぜて一茶忌近うせり 吉田鴻司
煮えつまる芋の匂ひも一茶の忌 菅生須磨子
甘薯南瓜土間にまろばす一茶の忌 根岸 善雄
甘藷食ひしあとの放心一茶の忌 猿橋統流子
田の胼に風しむ夜なり一茶の忌 伊藤三十四
碾きてこの蕎麦も凶年一茶の忌 黒田杏子 花下草上
荒畝の越後へ走る一茶の忌 宮坂静生 春の鹿
菊の香のにがく晴れたり一茶の忌 鳥居おさむ
虚栗ふすべ一茶の忌なりけり 西本一都 景色
蛙眠り雀膨らむ一茶の忌 本谷英基
貧すれば鈍の一茶の忌なりけり 久保田万太郎 流寓抄
賓頭盧の首見えかくれ一茶の忌 佐川広治
飄々と雲水参ず一茶の忌 飯田蛇笏 霊芝

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:25 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

鎌鼬

鎌鼬

例句を挙げる。

お隣の瓦飛びくる鎌鼬 佐藤 重子
さげてゐしものとりおとし鎌鼬 吉岡秋帆影
つっかけの先をすくはれ鎌鼬 赤松子
わが膽に棲みてひさしき鎌鼬 眞鍋呉夫
三人の一人こけたり鎌鼬 池内たけし(1889-1974)
傷を見て少年泣けり鎌鼬 三星山彦
声あげて見てもひとりや鎌鼬 田中よし雄
広重の富士は三角鎌鼬 成瀬櫻桃子
御僧の足してやりぬ鎌鼬 高浜虚子
心急くまゝにまろびて鎌鼬 長谷川 蕗女
本を売り心の隅に鎌鼬 赤尾兜子
柚もぐやきりりと足に鎌鼬 由利茘枝
死神に尻餅つかせ鎌鼬 林 翔
血塗りたる女人あはれや鎌鼬 檜垣括瓠
話には聞いてをりしが鎌鼬 高橋秋郊
貌見せぬ夜叉払ひたる鎌鼬 中村順子
野を飛んできたりし脛に鎌鼬 瀧澤伊代次
鍵穴をぬけてあやふし鎌鼬 筑紫磐井 婆伽梵
鎌鼬/榛の木原の/花嫁/孤影 林桂 黄昏の薔薇 抄
鎌鼬ほったらかしに海のあり 小林貴子
鎌鼬われは静かに病み臥せる 石川桂郎 四温
鎌鼬冬のふらここ漕ぎ眩む 鈴木栄子
鎌鼬前九年町上り坂 宮慶一郎
鎌鼬萱追ふ人の倒れけり 水原秋桜子
馬売りて墓地抜けし夜の鎌鼬 千保霞舟
かまいたち楔を入れて木を挽けば 茨木和生

以上
by 575fudemakase | 2014-12-19 00:01 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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