2017年 04月 18日 ( 32 )

寒鰤 の俳句

寒鰤 の俳句

寒鰤 

あきらかに寒鰤を抱く怒濤なれ 吉田紫乃
塩打ちし寒鰤の肌くもりけり 草間時彦
寒鰤と煮る大根の厚さかな 加藤浩子
寒鰤に祝儀値付きし手締かな 渡辺安江
寒鰤のいづれ見劣りなかりけり 鈴木真砂女
寒鰤のどさりととどく朝の市 荻野輝子
寒鰤のとどく潮の色のまま 柴田佐知子
寒鰤の一切のみの煙上ぐ 殿村菟絲子
寒鰤の神のごとくに売られけり 平井照敏 天上大風
寒鰤の大きく跳ねて市が立つ 梶山千鶴子
寒鰤の目の美しさ揃へ売る 猪狩紫水
寒鰤の夜が来て立山もう見えず 角川春樹
寒鰤の糶られるまでの無聊かな 市原幸子
寒鰤は虹一筋を身にかざる 山口青邨
寒鰤は虹一条を身にかざる 山口青邨
寒鰤や飛騨を越え来し塩こぼす 中澤康人
寒鰤をおろす刃捌き活魚店 田原幹一郎
寒鰤を煮る幸せや永らえて 原田マサ恵
寒鰤を買へばたちまち星揃ふ 山本洋子
寒鰤を糶るや雄声の日本海 海野ふさ子
気前よく飲んで寒鰤漁師達 金子 蜂郎
手秤りの寒鰤の潮雫かな 友岡子郷
酒すすむ氷見の寒鰤刺身かな 山口耕堂
二三言言ひて寒鰤置いてゆく 能村登四郎
二三言言ひて厚き寒鰤置いてゆく 登四郎
日の柱立つ寒鰤の定置網 神蔵 器
糶落ちし寒鰤を引く手際かな 新鞍かほる

寒鰤 補遺

二三言言ひて厚き寒鰤置いてゆく 能村登四郎
刃を入るるまで寒鰤の厚さ撫でてゐし 能村登四郎
寒鰤をこの世のものとして食める 石田勝彦 百千
寒鰤は虹一条を身にかざる 山口青邨
寒鰤の無念の目口見とれをり 加藤秋邨
寒鰤の神のごとくに売られけり 平井照敏 天上大風
寒鰤の熊野灘より到来す 山口青邨
寒鰤の下頤ばかり月に立つ 加藤秋邨
寒鰤のいづれ見劣りなかりけり 鈴木真砂女
寒鰤に一句授る魚市場 鈴木真砂女 都鳥
寒鰤にいどむ老妻血ぬらして 山口青邨
塩打ちし寒鰤の肌くもりけり 草間時彦

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 18:21 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪山 の俳句

雪山 の俳句

雪山の例句
雪山 

*えり挿しの背後雪嶺威を解かず 丸山哲郎
あかつきの雪山の上星黄なり 長谷川かな女 雨 月
あめつちのいましづかなり雪の嶺 山口波津女 良人
ある日遠くある日は近く一雪嶺 本郷昭雄
いちご咲く雪嶺天にねむれども 有働亨 汐路
いつ見ても婆に雪山雪降りをり 中山純子
いぬふぐり雪山は雲湧き立たせ 斎木直治
いや白く雪嶺媚びぬ彼岸前 相馬遷子 山河
うしろより雪嶺匂ふ夕茜 大石昌代 『清見潟』
おほひなる雪山いま全盲 かがやくそらのもとにめしひたり 葛原妙子
おもおもと雪山の方餅搗く音 村越化石
かのセーラー服二輌目の雪嶺側 今井 聖
かへり見る雪山既に暮れゐたり 清崎敏郎(1922-99)
ガラス戸の内側拭けば雪嶺見ゆ 津田清子 二人称
ぎしと鳴つて牧柵の釘耐う雪嶺風 中島斌雄
きのふ見し雪嶺を年移りたる 森澄雄
きらめきて雪嶺月の黄を奪ふ 佐野美智
けふの日のしまひに雪嶺荘厳す 上田五千石 田園
げんげんを見てむらさきの遠雪嶺 大野林火
こし雪の山見て障子しめにけり 原石鼎
こたへなき雪山宙に労働歌 飯田蛇笏
この雪嶺わが命終に顕ちて来よ 橋本多佳子
この寮を出て雪嶺へ行き逝きし 岡田日郎
これを見に来しぞ雪嶺大いなる 富安風生
コンテナは並び雪嶺かがやける 岩崎照子
しきりなる汽笛雪嶺より返す 岸風三楼 往来
しろがねの甲冑つけて一雪嶺 古川京子
すつへりと日に向ひてあり雪の山 作者不知 選集古今句集
スト中止令雪嶺に対ひて張らる 内藤吐天 鳴海抄
すれちがふ汽車の窓透き雪山あり 篠原梵
そそり立つ雪嶺に月近くあり 上村占魚 球磨
その墓に佇てば雪山鷽の舞ふ 黒田杏子 花下草上
タクシーに射す日のぬくさ斑雪山 茨木和生 木の國
たはやすく弾丸に撃たれて雪山をまろび落つる熊は映画に撮られぬ 半田良平
たんぽぽを踏み雪嶺を指呼に見る 藤岡筑邨
つく~と雪山近く歩きけり 星野立子
つらなりて雪岳宙をゆめみしむ 飯田蛇笏
つるぎなす雪嶺北に野辺おくり 飯田蛇笏 春蘭
どんと焼果てて雪嶺に囲まるる 石原八束
どんど焼果てて雪嶺に囲まるる 石原八束
なお雪が降り雪山の羽毛みゆ 和知喜八 同齢
ねんねこの子ごと見返る雪の山 鈴木貞雄
はこべらや雪嶺は午後うつとりす 森 澄雄
はこべらや雪嶺は午后うつとりす 森 澄雄
はたちの吾娘を遠見るおもひ雪の嶺々 中村明子
はるかなる雪嶺のその創まで知る 橋本多佳子
ふいご押す雪嶺の光押し返えし 細谷源二
ふところに一枚の櫛雪山へ 岡本 眸
ふりむかず猟夫は雪の山に入る 本多 勝彦
ふりむきし鷲の眼雪嶺けぶりたる 鷲谷七菜子
ふりむけば雪嶺ならぶ洋書棚 大島民郎
ふるさとは雪山まろし父母在らず 成瀬櫻桃子 素心
ほほづきの如き日輪雪嶺に 岡田日郎
まんさくの淡き雪嶺にかざし見て 阿部みどり女
まんさくの淡さ雪嶺にかざしみて 阿部みどり女
まんさくや町よりつゞく雪の嶺 相馬遷子
みやげ屋の熱き呼びごゑ斑雪山 堀口星眠 樹の雫
めざめては睡りめざめて雪の山 黒田杏子 花下草上
ゆくほどに雪嶺囲ひや恵方道 森 澄雄
ゆっくりと麻酔解けゆく斑雪山 伊藤はる子
レモン吸ひ雪嶺に香を拡げたり 荒川文雄 『銀河』
わが一生(ひとよ)雪山つなぐ橋に揺れ 野沢節子 花季
わが一生雪山つなぐ橋に揺れ 野澤節子 『花季』
わが汽車に雪嶺のやや遅れつつ 榎本冬一郎 眼光
わが攀ぢしひと日雪嶺に雲湧かず 岡田日郎
わが疼く眼に雪嶺の照り倦かぬ 相馬遷子 山国
われを呼ぶもの雪嶺と大日輪 和泉千花
われを枯野に點じ雪嶺大いなり 高島 茂
愛ひらくときも心に雪嶺あり 平木梢花
愛欲に斑雪の山の遠静か 三谷昭 獣身
逢へさうな逢へなささうな斑雪山 鳥居美智子
芦刈りて夕べ雪嶺をあらはにす 茂里正治
安曇野は雪嶺連なり猫柳 森澄雄
安曇野や雪嶺におよぶ晝がすみ 及川貞 夕焼
安曇野や雪嶺に及ぶ昼がすみ 及川貞
闇とほく雪山おそふ風ゆける 石橋辰之助 山暦
杏咲き雪嶺いたくよごれたり 宮下翠舟
一つ知る雪山の名を言ひにけり 綾部仁喜 樸簡
一家のゴム長乾されるたびに雪嶺指す 細谷源二
一戸減り雪嶺がまたひとつ増ゆ 齊藤美規
一汁の大鍋たぎる雪嶺下 加藤知世子 花 季
一蝶に雪嶺の瑠璃ながれけり 川端茅舎
一歩前へ出て雪山をまのあたり 斉藤美規
咽喉かわく旅や雪嶺蹤き来る 津田清子
厩出し牛に雪嶺蜜のごと 森澄雄
雲しきてとほめく雪嶺年新た 飯田蛇笏 雪峡
雲の影過ぎ雪の嶺刻が過ぐ 津田清子 二人称
雲上にまだ雪嶺や百千鳥 森 澄雄
雲嶺の中まぼろしの一雪嶺 岡田日郎
英霊を雪山ふかく秘めし家 石橋辰之助 山暦
燕来る遠雪嶺の光負ひ 林翔 和紙
艶やかに雪嶺まだ出ぬ蕗の薹 相馬遷子 雪嶺
遠き雪嶺日の大きな赤児見て 北原志満子
遠く雪嶺一村日の中ぐみ熟るる 近藤馬込子
遠ざかり来て雪嶺の主峰見ゆ 右城暮石 上下
遠ざかる雪嶺近づき来る雪嶺 大橋敦子 手 鞠
遠ぞらに雪嶺のこり機の音 鷲谷七菜子 花寂び
遠空へ雪嶺畳めり晝蛙 松村蒼石 春霰
遠雪嶺うすむらさきの野辺送り 渡辺礼子
遠雪嶺嬰児に渾身の泣く力 栗林千津
遠雪嶺近よりがたし去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
遠雪嶺見むと胎児もともに出づ 鷹羽狩行
遠雪嶺黒部に紅葉下りて来し 源義
遠雪嶺石楠花は紅こぼれむと 林 翔
遠天に雪山ほのと秋の暮 相馬遷子 山国
奥武蔵雪山ならぶ除夜の鐘 水原秋櫻子
往還の上雪嶺のたたずまひ 猪俣千代子 秘 色
翁舞国栖の雪山塀をなす 津田清子 二人称
温泉の色硝子ごし雪の山 京極杞陽 くくたち下巻
音が光晴雪の嶺に斧うてる 千代田葛彦
下品下生町を繞りて雪の山 小鳥幸男
下萌や雪嶺はろけき牧の柵 芝不器男
夏雪嶺生れし郷は目の高さ 一條友子
花のなき日は雪嶺の窓に向く 清水径子
花杏雪嶺なぞへに暮れなづむ 石原八束 空の渚
貨車連結さる雪嶺の大盤石 齋藤愼爾
霞む中雪嶺の白あでやかに 相馬遷子 雪嶺
画家たらんおもひ雪山前にして 高澤良一 素抱
海に聳つ雪嶺はこの陸つゞき 右城暮石 上下
海へ雪嶺へ舞ひは銀朱や朱鷺の夢 加藤知世子 花寂び
灰色の夜空の下の雪の山 高木晴子 晴居
革命のいろに雪嶺暁けてきし 高島茂
楽器抱くように編物雪嶺ふくらめ 寺田京子 日の鷹
鴨ねむりくらき雪嶺湖に満つ 堀口星眠 火山灰の道
鴨の陣はつきり雪の山ぼうと 波多野爽波 鋪道の花
刈萱寺塵掃く雪嶺まなかひに 岡部六弥太
干割れ落つ餅花一つ雪嶺覚め 喜多牧夫
雁の声雪山は月に見えてか 佐野良太 樫
寄生木に雪嶺浮かみゐしが雨 木村蕪城 寒泉
帰還兵なり雪嶺の下に逢ふ 文挟夫佐恵
帰路の友にぶし雪嶺は夕日得て 大井雅人 龍岡村
汽車どちら向くも雪嶺なくなれり 右城暮石 声と声
汽車とまり遠き雪嶺とまりたり 山口誓子
汽車降りて雪嶺の高さには馴れず 橋本美代子
汽車喘ぎ雪嶺遠く威ありけり 岸風三楼 往来
脚はやき僧に雪嶺あとしざり 河野静雲
逆雪嶺うすももいろに水あかり 原裕 青垣
久方の雪嶺見えて霞みけり 鈴木花蓑
牛乳のむ花の雪嶺のつづきにて 細見綾子 黄 炎
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
魚割女胸に雪嶺かがやかす 金箱戈止夫
競ひ立つ雪嶺をアラスカの天とせり 有働亨 汐路
狂院のちなみに鴉声遠雪嶺 古舘曹人 能登の蛙
胸ひらく母の眼をして斑雪山 堀口星眠 青葉木菟
暁光におのれ削ぎ立つ雪の嶺 相馬遷子 山河
暁光にけふ雪嶺となりて立つ 相馬遷子 山河
極月や雪山星をいたゞきて 飯田蛇笏
極月や雪山星をいただきて 飯田蛇笏 山廬集
極月や雪山星をいたゞきて 飯田蛇笏 霊芝
金星や雪の山稜見ゆるのみ 杉山岳陽 晩婚
銀の匙もて雪嶺を窓に指す 神谷九品
銀婚の旅雪山の虹に入り 影島智子
空海のくに雪嶺のひとつ泛く 水沼三郎
空青し雪嶺これを縫ふごとし 橋本鶏二
熊鷹の巣作りはじまる雪の山 阿部みどり女
桑の芽や雪嶺のぞく峡の奥 秋櫻子
桑を解く雲よりくらき雪の嶺 中拓夫
桑解けば雪嶺春をかゞやかす 西島麦南
桑括ることぶれの雪山に見て 秋山幹生
群りてゐる雪山を去りにけり 八木林之介 青霞集
畦青み雪嶺しざり秩父別(ちっぷべつ) 高澤良一 素抱
月いでゝ雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏
月いでて雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏 山廬集
月いでゝ雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏 霊芝
月光に雪嶺かくすところなし 大橋桜坡子
月光に雪嶺ひとつ覚めて立つ 相馬遷子 山河
月稚し雪山照らす力なし 岡田日郎
月明りありて雪山くるゝかな 比叡 野村泊月
見えゐて遠き雪嶺や夫に追ひつけず 加藤知世子 花寂び
元日や比枝も愛宕も雪の山 虚子
戸隠の雪嶺間近に御開帳 前川みどり
枯桑に雪嶺裾をひきにけり 大橋櫻坡子 雨月
湖眠る雪嶺深く映すべく 西村和子 かりそめならず
午後の日の雪嶺づたひや山葵採 藤田湘子
吾子泣くか雪山かぎる杉一樹 角川源義
向うは雪の山へ山吹の咲くのが湯どころ 巣山鳴雨
紅葉鮒そろ~比良の雪嶺かな 松根東洋城
行く雁に雪嶺襞をゆるめざる 井沢正江
降りて止む降りて止む雪山真白 岡田日郎
高まりし野にかくれたる雪嶺かな 阿部みどり女
刻々と雪嶺午後の影きざむ 相馬遷子 山国
告げざる愛雪嶺はまた雪かさね 上田五千石
国栖奏の吉野の奥に雪嶺見す 村上冬燕
酷寒の白日照るや雪の嶺 相馬遷子 山河
黒凍(くろじ)みの道夜に入りて雪嶺顕(ゆきねた)つ 石原八束(1919-98)
黒凍みの道夜に入りて雪嶺顕つ 石原八束
此処景色余りに雪の山多し 京極杞陽 くくたち上巻
昏るるとき雪嶺やさしふるさとは 長谷川秋子
昏々と夜は雪山をおほひくる 石橋辰之助 山暦
昏々眠る昨日雪嶺の裾にゐし 佐野美智
佐保姫の鈴鳴る水の斑雪山 山上樹実雄
妻と雪嶺暮色に奪われまいと白し 細谷源二
昨日より今日大いなり雪の嶺 相馬遷子 山河
策無きに怒る雪山の中の妻 石橋辰之助
三國嶽三つの國の雪嶺なり 山口誓子 紅日
山開雪山讃歌もて了る 渡辺立男
山桜雪嶺天に声もなし 水原秋桜子
産院を繞る雪山四温光 飯田蛇笏 椿花集
蚕具焼く火に雪嶺の線揺ぐ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
子に学資わたす雪嶺の見える駅 福田甲子雄
子に学費わたす雪嶺の見える駅 福田甲子雄
師の碑けふ少し猫背に遠雪嶺 平井さち子 鷹日和
師の訃あり雪嶺を見に丘のぼる 堀口星眠
死の砂漠展けて遠き雪の嶺 セリグマン和佳人
獅子舞つてはるか雪嶺の晴れをよふ 上野一孝
耳うごくごと雪嶺に遠く佇つ 萩原麦草 麦嵐
七十年雪嶺あふぎてくたびれたり 斎藤美規
捨てられて雪嶺あそべる村の空 齊藤美規
車輪すでに雪山がかる響かな 野沢節子 花季
尺八吹く雪嶺に窓開け放ち 伊藤いと子
手あぶりや雪山くらき線となりぬ 林火
朱鷺の山斜めに雪の降る日なり 生田政春
種浸す若狭は雪嶺遠巻きに 西村公鳳
授業日々雪嶺にとりまかれつつ 石田小坡
秋の暮どの雪嶺がわれを待つ 齋藤愼爾
終に風けものの性を斑雪山 緒方敬
終着駅雪嶺触るるばかりなり 茂里正治
銃声の谺雪山無一物 長嶺千晶
春の牛乳おはよう牧の雪嶺よ 有働亨 汐路
春の雪嶺夜は雲母の肌へ照る 石原八束 空の渚
春ふかき雪嶺めぐる甲斐盆地 柴田白葉女 花寂び 以後
春雲と雪嶺ふれむとして触れず 吉野義子
春雲に雪嶺ふれむとして触れず 吉野義子
春駒がゆく雪嶺を雲の上 森澄雄
春月を得て雪嶺のやさしさよ 岸風三楼 往来
春光に消えなんと立つ雪の嶺 相馬 遷子
春祭山のうしろに雪の山 鷲谷七菜子
春雪嶺北へ数へて飼山の家 宮坂静生 春の鹿
春立つや雪嶺はまだ夢の白 大串章
春闌けし牧をいだけど雪の嶺 石橋辰之助
初めに言ありと雪嶺光りだす 田川飛旅子
初めに言葉ありと雪嶺光りだす 田川飛旅子
初蝶や雪山恍と雲の上 松村蒼石
初日待つ雪嶺の色かはりつつ 五十嵐播水
初富士に従ふ如き雪の嶺々 星野高士
初旅や明るき雪の山つづき 阿部みどり女
諸仏諸天かつ雪嶺の加護なせる 小澤 實
除湿器に生の水たまり遠雪嶺 平井さち子 鷹日和
小さき母雪山にながくながくあれよ 石橋辰之助 山暦
小春日や雪嶺浅間南面し 相馬遷子 山河
小路ふさぐ雪嶺へ蒸籠けむりけり 金尾梅の門 古志の歌
少年に雪嶺の盾ゆづりわたす 伊藤 敬子
松原の見こしに白し雪の山 雪 正岡子規
乗初めのすぐ雪嶺と対ひあふ 上田五千石
城古び雪嶺背骨なせる国 濱本暁生 『因幡』
唇に雪嶺感ず眠き夜汽車 三好潤子
新樹の道雪嶺に向き背まつすぐ 細見綾子
榛の花雪嶺かすかに光り暮れ 岡田日郎
真夜雪嶺雲なし月光のみまとふ 岡田日郎
身にあまる白さに堪へて雪の嶺 相馬遷子 山河
身は萎えて気はまだ確か雪嶺よ 相馬遷子 山河
身を反らすほど晴れしかや雪の嶺 村越化石 山國抄
人の許へ雪山たゝむ敦賀湾 細見綾子 花 季
人は世に墓を遺して遠雪嶺 小澤克己
人間の我は虫けらよ雪の山 阿部みどり女
人生序の口雪嶺に眼を凝らし 伊藤敬子
人日の雪山ちかき父母の墓 石原舟月
人日の雪山近き父母の墓 石原舟月
刃毀れのやうな雪嶺月渡る 金箱戈止夫
吹かれつゝ雪嶺暗し棉の花 久保田月鈴子
吹き晴るる雪山の威の自ら 阿部みどり女
吹越や虹のごとくに遠雪嶺 角川源義
水晶の数珠雪山にかげなき日 柴田白葉女 花寂び 以後
水鳥に凍てはとほらず逆雪嶺 原裕 青垣
雛の灯を消せば近づく雪嶺かな 本宮哲郎
雛買うて杣雪山へ帰りけり 原石鼎
雀交る雪嶺を截る屋根の上 相馬遷子
星うるむ夜は雪嶺も肩やさし 千代田葛彦
星ひとつともり雪嶺ひとつ暮れ 岡田日郎
星空に雪嶺こぞる夜番かな 松本たかし
星光り雪嶺になほ夕日の斑 岡田日郎
聖鐘はひびき納めて雪の嶺々 野澤節子 黄 炎
製紙工場白煙雪嶺より白し 本多穆草
青春なかば雪山並ぶ暗さ知りぬ 岡田日郎
青年の肩幅雪嶺をかくしえず 椎橋清翠
赤子哭くたび雪嶺聳え立つ 徳岡蓼花
切干の青みがちなる雪嶺も 中村志那
切手購ふ雪嶺のあるやすらぎに 猪俣千代子 秘 色
切手買ひ雪嶺の名を聞きにけり 正岡雅恵
切先に比叡の雪嶺破魔矢受く 山田弘子 こぶし坂
切炬燵夜も八方に雪嶺立つ 森澄雄
雪の山かはつた脚もなかりけり 向井去来
雪の山からくる栗鼠に林檎置く 和知喜八 同齢
雪の山しりぞいて道春になる 細見綾子 花 季
雪の山も見えて花野や夢ごころ 渡辺水巴
雪の山義仲の目に憑かれ越す 大串章
雪の山巨きく巨きく凹みをり 京極杞陽 くくたち上巻
雪の山紅葉の山に隠れけり 正木ゆう子 静かな水
雪の山三角形をただ畳む 橋本鶏二
雪の山山は消えつつ雪ふれり 高屋窓秋
雪の山山は消えつゝ雪ふれり 高屋窓秋
雪の山山は消えつつ雪ふれり 高屋窓秋(1910-99)
雪の山十三輪塔雪つけゆく 八木林之介 青霞集
雪の山照る日の山毛欅に鳶下りぬ 渡邊水巴 富士
雪の山低きは花の梨畑 森鴎外
雪の山背すぢのばせば眼前に 澤村昭代
雪の山畑白真ッ平らしかし斜め 金子兜太 遊牧集
雪の山眉間に立てゝうち仰ぐ 古舘曹人 砂の音
雪の山壁の崩れに見ゆる哉 雪 正岡子規
雪の山朴ひらく日は嵐と決む 大木あまり 山の夢
雪の山遥か他界にあるごとし 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
雪の山瞽女のごとくに座りをり 仙田洋子 雲は王冠以後
雪の山翳うしなふは霞立つ 相馬遷子 山国
雪の嶺いま紅雲に護られて 相馬遷子 山河
雪の嶺うつろに照れり雁帰る 相馬遷子 雪嶺
雪の嶺にゆめいろふかき日和空 飯田蛇笏 春蘭
雪の嶺のまだゆるぎなき櫻かな 久保田万太郎 流寓抄以後
雪の嶺の霞に消えて光りけり 花蓑
雪の嶺はるか連なり梨の花 長谷川 耕畝
雪の嶺むらさき深しつひに暮る 遷子
雪の嶺を磁針のをどりつつ指せる 加藤三七子
雪の嶺四方にはしれり緋の菜干す 橋本鶏二 年輪
雪の嶺消えなんばかり鳥雲に 相馬遷子 山河
雪の嶺真紅に暮るゝ風の中 相馬遷子 山国
雪の嶺成人の日を照り通す 相馬遷子 山河
雪の嶺走らずにみな聳え立つ 山口誓子 激浪
雪の嶺地底の色の煙噴く 相馬遷子 山河
雪の嶺鳥送らんと照り交はす 矢島渚男
雪の嶺旅より戻り来てまぶし 相馬遷子 雪嶺
雪の嶺々つひに求めし本を抱き 宮坂静生 青胡桃
雪の嶺々仰ぐことなし子守姥 宮坂静生 青胡桃
雪岳が並びおり実のななかまど 和知喜八 同齢
雪岳の胸のももいろ海が見る 和知喜八 同齢
雪岳の上眼が暗く鬼がいて 和知喜八 同齢
雪沓でゆく雪山の発電所 和知喜八
雪沓の跡が雪嶺と駅を結ぶ 加藤楸邨
雪原のかなた雪嶺絹の道 片山由美子 風待月
雪山こごりげんげ田の果に海光る 栗林一石路
雪山と降る白雪と消し合ひぬ 松本たかし
雪山と寝起共にし疲れけり 阿部みどり女
雪山と雪の日輪白きかな 阿部みどり女
雪山と立ち向ひたる身一つ 伊藤柏翠
雪山に 日のあたりたる 馬のいななき 富澤赤黄男
雪山になほ降る雲か垂れて来ぬ 篠原梵 雨
雪山にひとりの眠り沈みゆく 林翔 和紙
雪山にゆふべの月のまだ白く 上村占魚 球磨
雪山に一家はたらく日の英霊 石橋辰之助 山暦
雪山に一切埋めし心のはづ 相澤静思
雪山に雲のかゝりしことありぬ 今井杏太郎
雪山に英霊の供華あたらしき 石橋辰之助 山暦
雪山に沿ふてりんごの花街道 高澤良一 燕音
雪山に何も求めず夕日消ゆ 飯田龍太
雪山に会いたる痩木とその影と 寺田京子 日の鷹
雪山に還り英霊しづかなるや 石橋辰之助
雪山に時計は遅々とすゝまざる 相馬遷子 山国
雪山に春が来てをり美しや 高木晴子 晴居
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火
雪山に春の川ある街住ひ 高木晴子 晴居
雪山に春の夕焼滝をなす 飯田龍太
雪山に照る日はなれて往きにけり 飯田蛇笏
雪山に水ほとばしる寒の入り 飯田蛇笏 椿花集
雪山に成層圏の蒼さ墜つ 松本詩葉子
雪山に雪の降り居る夕かな 前田普羅
雪山に雪降り重ね粥柱 陣内イサ子
雪山に雪降り夜の力充つ 日下部宵三
雪山に大汗はばむしまき哉 中勘助
雪山に灯なき電気に雪が降る 金子兜太
雪山に汝を思へば海蒼し 相馬遷子 山国
雪山に日は入り行けり風吹けり 相馬遷子 山河
雪山に白樺の白やや汚れ 福田蓼汀 山火
雪山に父の樅の木鳥見えて 大井雅人 龍岡村
雪山に噴く湯ゆたかに登別 清水寥人
雪山に頬ずりもして老いんかな 橋かんせき
雪山に頬削り来し男なり 野沢節子 鳳蝶
雪山に野を界(かぎ)られて西行忌 橋本多佳子
雪山に野を界られて西行忌 橋本多佳子
雪山に野鯉群れいて蜜の澄み 阿保恭子
雪山に野尻湖の碧沈めけり 橋本夢道
雪山に林相白を以て描き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山に路あり路を人行かず 相馬遷子 山国
雪山に籠り牛百の他は見ず 太田土男
雪山のあなた雪山麻を績む 文挟夫佐恵 雨 月
雪山のある日老髯のさるをがせ 古舘曹人 能登の蛙
雪山のいま樹々の闇青かりし 石橋辰之助 山暦
雪山のうしろにまはり遅日光 松村蒼石
雪山のおもてをはしる機影かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山のかがやき近き山になし 阿部みどり女
雪山のかへす光に鳥けもの 木村蕪城
雪山のきららの雪の夜を透す 石原八束 空の渚
雪山のけさ鳴きたるは橿鳥か 長谷川櫂 天球
雪山のけぶらひひとりふたり帰化 松澤昭 山處
雪山のそびえ幽らみて夜の天 飯田蛇笏
雪山のたそがれにこそあこがるる 松澤昭 面白
雪山のどこも動かず花にほふ 飯田龍太
雪山のどのみちをくる雪女郎 森 澄雄
雪山ののぞける街の羽子日和 上村占魚 球磨
雪山のひかりのこれりかの夜空 石橋辰之助 山暦
雪山のひと日のうるみ青烏 野澤節子 黄 炎
雪山のふもとの伏家初かまど 飯田蛇笏 春蘭
雪山のまなざしのなか白鳥湖 細見 綾子
雪山のみな木かげして音絶えき 飯田蛇笏
雪山のむらさきに出す凍豆腐 平沢洲石
雪山のむらたつ故園日のはじめ 飯田蛇笏 春蘭
雪山のラッセル深し膝でこぐ 矢我崎和子
雪山のゑぐれし襞に霧たてばただよふ如し愛といふこと 五島茂
雪山の旭にひとざとの鶫かな 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の闇たゞ闇にすがりゆく 石橋辰之助
雪山の闇夜をおもふ白か黒か 正木ゆう子
雪山の遠さ発止ととどめたる 松澤昭
雪山の奥に雪山白子汁 長田喜代子
雪山の冠りみだるゝ風の星 飯田蛇笏
雪山の冠りみだるる風の星 飯田蛇笏 雪峡
雪山の岩肌をかく爪掻きし 八木林之介 青霞集
雪山の虚ろに炎立つランプ小屋 原裕 青垣
雪山の後ろにまはり遅日光 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の向うの夜火事母なき妻 金子兜太
雪山の荒膚仰ぐ針供養 堀口星眠
雪山の今日の輝き明日ありや 阿部みどり女
雪山の昏るるゆとりに鳴る瀬かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山の左右に揺るる歩みかな 上野泰 佐介
雪山の重なる奥の白さかな 五十嵐春男
雪山の初明りして狐罠 小坂順子
雪山の照り楪も橙も 森澄雄
雪山の障子をひらきたるかたち 齊藤美規
雪山の星見いでたし猿啼く 松村蒼石 雪
雪山の星座を数ふ指で衝き 橋本美代子
雪山の雪の立錐皆檜 橋本鶏二
雪山の雪の歇み間の一つ星 殿村莵絲子 花 季
雪山の繊翳もなく日のはじめ 飯田蛇笏 椿花集
雪山の大白妙に初烏 田村木国
雪山の端が輝き奴凧 阿部みどり女
雪山の昼も夜も寝て杉丸太 吉田紫乃
雪山の朝日に顔のちから抜く 飯田龍太
雪山の朝日英霊にわかれ浴びぬ 石橋辰之助 山暦
雪山の眺めに桑のあをみけり 松村蒼石 露
雪山の鳥の音は目をさそふなり 大串章
雪山の底なる利根の細りけり 草間時彦
雪山の堂断食の僧一人 伊藤柏翠
雪山の肌より顕るる岳かんば 関本テル
雪山の斑や近き者愛す 岸貞男
雪山の斑や友情にひゞ生ず 上田五千石 田園
雪山の斑や友清にひゞ生ず 上田五千石 田園
雪山の風樹孤島の濤と聴き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山の風来るまでにちかづきぬ 篠原梵
雪山の聞きたる儘に現れし 京極杞陽
雪山の名を言ふ春の渚かな 山本 洋子
雪山の夜ぞねがふべきいのち忘れ 石橋辰之助
雪山の夜も聳えをり近松忌 森澄雄
雪山の夕かげふみて猟の幸 蛇笏
雪山の夕しづかさのせまりけり 橋本鶏二 年輪
雪山の夕べかげりて噴く煙 石原八束 空の渚
雪山の夕日に溶けて鳩の道 阿部みどり女
雪山の麓の山毛欅の疎林かな 京極杞陽
雪山の羞らひの白村が見え 齊藤美規
雪山の襞ぎつしりと青年期 木村敏男
雪山の鷽が来てをり春祭 加藤岳雄
雪山はうしろに聳ゆ花御堂 石井露月
雪山はゆつくり霞むかいつむり 岡井省二
雪山は雲にかくれて梅匂ふ 大熊輝一 土の香
雪山は月よりくらし貌さびし 前田普羅 飛騨紬
雪山は人の棲まざる淋しさあり 岡田日郎
雪山は晴れて港の船往来 高濱年尾 年尾句集
雪山へ眼遊ばす絵付工 羽部洞然
雪山へ顔上げつづけ一人旅 細見綾子 黄 炎
雪山へ共に快癒を祈るかな 阿部みどり女
雪山へ狐の駈けし跡いきいき 大野林火
雪山へ狐の馳けし跡いきいき 大野林火
雪山へ向ふ人数恃まるる 山田弘子 螢川
雪山へ鉄路消えゆく建国日 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
雪山みゆるこの坂いつも埃まく 川島彷徨子 榛の木
雪山も雪なき山も似し高さ 稲畑汀子
雪山や駅には駅の煙立ち 京極杞陽
雪山をぬけきし川の高鳴れる 安原 葉
雪山をのしのし匍へる鯰雲 宮坂静生 春の鹿
雪山をはなれてたまる寒の闇 飯田龍太
雪山をはひまはりゐるこだまかな 飯田蛇笏
雪山をはるけく来つる炭売女 飯田蛇笏 雪峡
雪山をへだてて見ゆる炭山疲れ 齋藤玄 『無畔』
雪山をまぢかに見つゝ通勤す 上村占魚 鮎
雪山をみせて月出ぬ古かかし 飯田蛇笏 山廬集
雪山をゆく日とどまるすべもなし 飯田蛇笏
雪山を畏みてをり源義忌 吉田鴻司
雪山を寒きところと仰ぐばかり 高柳重信
雪山を近く林檎の咲き潤ふ 長谷川かな女 雨 月
雪山を見てきし故に山見つゝ 京極杞陽
雪山を灼く月光に馬睡る 飯田龍太
雪山を手玉にとつてみたくなる 松澤 昭
雪山を前に後に耕しぬ 森田 愛子
雪山を宙にひくめて年新た 飯田蛇笏 雪峡
雪山を背にし枯れ山貧窮す 吉田嘉彦
雪山を背に立つ国境歩哨兵 深田久彌 九山句集
雪山を奔りきし水口漱ぐ 長谷川櫂 虚空
雪山を夜目にポールをまはすなり 中村汀女
雪山を容れて伽藍の大庇 伊藤柏翠
雪山を流れて水の炎となれる 原裕 葦牙
雪山を匍ひまはりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪山を匐ひまはりゐる谺かな 蛇笏
雪山を匐ひまわりゐる谺かな 飯田蛇笏
雪山滑り降り人住むドア汚る 中山純子
雪山幾重まさしく北にポーラリス 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山真向ひもり上がりをる膝の継 川口重美
雪山想う心音は軽い音楽 一ノ瀬タカ子
雪山背にバレーのごとき白孔雀 加藤知世子 黄 炎
雪山暮るゝや天青きまゝ月ほの~ 楠目橙黄子 橙圃
雪焼けの唇割れて血がにじむ 大原雪山
雪晴れて浅間嶺すわる町の上 相馬遷子 雪嶺
雪嶺(ゆきね)を砦書を砦しなほ恋へる 川口重美
雪嶺が台座神鏡の日が一輪 岡田日郎
雪嶺が北に壁なす大暗黒 榎本冬一郎
雪嶺とスケートの子の初景色 相馬遷子
雪嶺となつて外山の大起伏 竹下しづの女 [はやて]
雪嶺となる雲中にきらめきつゝ 相馬遷子 山河
雪嶺とわれ立春の日を頒つ 相馬遷子
雪嶺と激浪のあひ貨車長し 吉野義子
雪嶺と吾との間さくら満つ 細見綾子
雪嶺と交歓に日の短かさよ 大島民郎
雪嶺と色同じくて霞立つ 相馬遷子 山河
雪嶺と倒影の間の唐辛子 中戸川朝人
雪嶺と暮色のあひを風吹けり 長谷川双魚
雪嶺にても女懐中かがみ見る 稲垣きくの 黄 瀬
雪嶺にぶつかりぶつかり凧あがる 藤岡筑邨
雪嶺にむかひて*たらの芽ぶきたる 長谷川素逝
雪嶺にむかひて高し祷りの碑 古賀まり子 降誕歌
雪嶺にわが名呼ばれぬ春の暮 奥坂まや
雪嶺に一雲すがりともに暮れ 岡田日郎
雪嶺に雲無きひと日忌を修す 勅使川原敏恵
雪嶺に遠し田があり田がありて 山口波津女 良人
雪嶺に押され梵天近づき来 利部酔咲子
雪嶺に我こそ寵児たらむとす 行方克己 昆虫記
雪嶺に汽車現れてやや久し 中村汀女
雪嶺に汽車現れてやゝ久し 汀女
雪嶺に汽車分け登る力出し(津軽路) 河野南畦 『黒い夏』
雪嶺に輝きし日も昏れそめし 上村占魚 球磨
雪嶺に駆けのぼりたき夜ぞ街へ 石橋辰之助
雪嶺に景の触れゐて月は春 皆吉爽雨
雪嶺に訣るる影を濃くしたり 行方克己 昆虫記
雪嶺に月の部落息ひそむかな 河野多希女 こころの鷹
雪嶺に後ずさりつゝ*どを沈む 森田 愛子
雪嶺に向きて雪解の簷しづく 素逝
雪嶺に向く山車蔵を開け放つ 栗田やすし
雪嶺に向ひて砂利を篩ひをり 萩原麦草 麦嵐
雪嶺に向ひて妻と洗面す 椎橋清翠
雪嶺に骨光るかに月かかる 岡田日郎
雪嶺に今年別れんとして来たり 岡田日郎
雪嶺に三日月のヒ首飛べりけり 松本たかし
雪嶺に三日月の匕首飛べりけり 松本たかし
雪嶺に産声あげて水芭蕉 渡辺和子
雪嶺に死ぬ落陽を生かしたし 細谷源二 砂金帯
雪嶺に手を振る遺影ふり返り 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に終る太陽手は垂れて 細谷源二 砂金帯
雪嶺に住む鏡掛くれなゐに 神尾久美子 掌
雪嶺に重なりて瑠璃きつき峰 内藤吐天 鳴海抄
雪嶺に瞬く星も春めけり 京極高忠
雪嶺に照りりんりんと夜明月 岡田日郎
雪嶺に真向き居並ぶ化け地蔵 岡田日郎
雪嶺に真向ふ道のあれば行く 太田土男
雪嶺に神観し朝日当るより 吉村ひさ志
雪嶺に星座の移るとんどかな 角川春樹
雪嶺に雪あらたなり実朝忌 相馬遷子
雪嶺に雪片のごと鴎飛ぶ 森田 愛子
雪嶺に対きて雪解の簷しづく 長谷川素逝 暦日
雪嶺に対したじろぎ一歩挑む 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に対す籐椅子ふたつ置かれ 岸風三楼 往来
雪嶺に鷹の流るる初御空 森澄雄
雪嶺に地は大霜をもて応ふ 相馬遷子 山河
雪嶺に注連新しき若狭彦命 斎藤夏風
雪嶺に沈む満月黄を失し 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に電車久しく通らざる 山口波津女 良人
雪嶺に徒手空拳をもて対す 行方克己 昆虫記
雪嶺に発し海まで短か川 山口誓子 青銅
雪嶺に鼻梁のかげのごときもの 宮津昭彦
雪嶺に風突き当り苗代寒 石井とし夫
雪嶺に面をあげて卒業歌 岩崎健一
雪嶺に目を離し得ず珈琲のむ 岩崎照子
雪嶺に夕蒼き空残しけり 馬場移公子
雪嶺に落月白くまぎれ消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に離り近づく桜かな 阿部みどり女
雪嶺に立つ父の過去子の未来 京極紀陽
雪嶺に礼し初湯に入りにけり 柳澤和子
雪嶺に暈の触れゐて月は春 皆吉爽雨
雪嶺に雉子全きを吊りにけり 野中亮介
雪嶺のいづかたよりの山彦ぞ 猪俣千代子 秘 色
雪嶺のうしろより雷ひびき来る 飯田晴子
雪嶺のうしろを見たき夕焼かな 太田土男
雪嶺のうつりてひろき水田かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
雪嶺のかがやきかへし花すもも 仙田洋子 雲は王冠
雪嶺のかがやき集め紙乾く 細見 綾子
雪嶺のかゞやき集め紙乾く 細見綾子
雪嶺のかがやき集め紙乾く 細見綾子 黄 炎
雪嶺のかがやく祖谷の出初かな 佐原頼生
雪嶺のかげ射す車窓人睡たり 相馬遷子 山国
雪嶺のかみそり走り尾根を成す 若木一朗
雪嶺のこぞりて迫る大根漬け 駒形白露女
雪嶺のさめては鳶を放ちけり 井上三余
雪嶺のため息聴ゆ大落暉 伊達甲女
雪嶺のどこかにまぎれ鳥飛べり 岡田日郎
雪嶺のとらへがたけれ雲湧きつぎ 大島民郎
雪嶺のどれか谺をかえす発破音 田邊香代子
雪嶺のなほ彼方なる一雪嶺 右城暮石
雪嶺のひとたび暮れて顕はるる 森 澄雄
雪嶺の茜や詩論白熱す 加藤知世子 花寂び
雪嶺の威の劣へし初桜 上野弘美
雪嶺の遠き一つの名は知りて 須田冨美子
雪嶺の乙女さびしてスイス領 有働亨 汐路
雪嶺の下五日町六日町 高野素十
雪嶺の霞むといふはやさしかり 平林春子
雪嶺の我も我もと晴れ来たる 三村 純也
雪嶺の間近く泊り確かに酔ふ 鈴木鷹夫 渚通り
雪嶺の供華とし銀河懸かりけり 藤田湘子 てんてん
雪嶺の肩に雲燃え樺の花 西村公鳳
雪嶺の見えしざわめきスキーバス 行方克己 無言劇
雪嶺の見えてなかなか近づけず 冨田みのる
雪嶺の見えて漆器をつくる町 冨田みのる
雪嶺の見つめすぎたる暗さかな 猪俣千代子 秘 色
雪嶺の光や風をつらぬきて 相馬遷子
雪嶺の光わが身の内照らす 相馬遷子 山河
雪嶺の光をもらふ指輸かな 浦川聡子
雪嶺の光をもらふ指輪かな 浦川 聡子
雪嶺の佐渡の吹つ飛ぶ大嚏 小島 健
雪嶺の歯向ふ天のやさしさよ 松本たかし
雪嶺の愁眉に迫る朝かな 蓬田紀枝子
雪嶺の春やいづこの田も日射す 山口誓子
雪嶺の尚彼方なる一雪嶺 右城暮石 声と声
雪嶺の照りをうながす除夜詣 原裕 正午
雪嶺の上の青空機始め 沢木欣一
雪嶺の上の青空子は二十歳 越智千枝子
雪嶺の神々しさに鮭打たる 洲浜ゆき
雪嶺の人語翼となりて飛ぶ 小川原嘘帥
雪嶺の吹き晴れてゆく桜かな 仙田洋子
雪嶺の数見えて来し初深空 永田耕一郎
雪嶺の裾なにか播きなにか消す 木村敏男
雪嶺の裾を踏まんと来て踏むも 相馬遷子 山国
雪嶺の星おのおのの音色あり 舘野 豊
雪嶺の正装君を送るなり 福永耕二
雪嶺の青き昃りのとき浴む 木村蕪城
雪嶺の青のきびしき生糸繰る 加藤知世子
雪嶺の青みかかりぬ柏餅 阿部みどり女
雪嶺の青何処までも吾とへだつ 市川翠峯 『素木』
雪嶺の雪につづける縁の雪 遠藤梧逸
雪嶺の大を以て怒りを鎮む 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺の中まぼろしの一雲嶺 岡田日郎
雪嶺の朝な影濃き園児服 原裕 葦牙
雪嶺の天に牆なす牧びらき 小林碧郎
雪嶺の天の余白は生きんため 宮坂静生 春の鹿
雪嶺の踏んばつてゐる湖国かな 大石悦子 群萌
雪嶺の覗く苗代かぐろしや 石田波郷
雪嶺の白かぎりなし總選挙 相馬遷子 雪嶺
雪嶺の白銀翳り藍に染む 粟津松彩子
雪嶺の彼方の何ともわからぬ音 加倉井秋を
雪嶺の氷の色を夜空かな 正木ゆう子 静かな水
雪嶺の浮きて流れず茜空 原裕 『青垣』
雪嶺の風繭玉に遊ぶかな 村越化石
雪嶺の並ぶかぎりの青霞 岡田日郎
雪嶺の暮れなむとしてこころの炎 仙田洋子 雲は王冠
雪嶺の無言に充てる太虚かな 松本たかし
雪嶺の名をみな知らずして眺む 山口誓子 晩刻
雪嶺の目の高さなる小正月 みどり女
雪嶺の悠久年のあらたまる 阿部みどり女
雪嶺の溶け入る湖のくもりかな 矢島渚男 延年
雪嶺の裏側へなほ旅つづけ 岡田日郎
雪嶺の裏側まっかかも知れぬ 今瀬剛一
雪嶺の裏側まつかかも知れぬ 今瀬剛一
雪嶺の稜骨くろし地にも雪 相馬遷子 山河
雪嶺の冷たさいつも桜の上 細見綾子
雪嶺の麓に迫る若葉かな 野村泊月
雪嶺の麓再会と言ふ茶房 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺の煌々として年立てり 荒川文雄 『銀河』
雪嶺の襞しんしん蒼し金縷梅咲く 加藤知世子
雪嶺の襞亀裂せり父の鬱 斎藤愼爾 秋庭歌
雪嶺の襞濃く晴れぬ小松曳 杉田久女
雪嶺は 遠い切り絵で 珈琲沸いた 伊丹公子 アーギライト
雪嶺はくまなく父でありにけり 下山田禮子
雪嶺はつらなり畝はたてよこに 長谷川素逝 暦日
雪嶺は遠し田があり田がありて 波津女
雪嶺は月掲げたり友癒えよ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
雪嶺は雪嶺に向き黙し会ふ 岡田日郎
雪嶺は天の奥なり目白籠 宇佐美魚目
雪嶺は天柱をなし吾を迎ふ 伊藤彰近
雪嶺は美し道祖神手をつなぐ 坂口緑志
雪嶺は父この橋ときに酔うて帰る 齊藤美規
雪嶺は北に遠しやたんぽゝ黄 大橋桜坡子
雪嶺は襞深く立ち送水会 岡崎桂子
雪嶺へひとたび柩掲げたる 中島畦雨
雪嶺へひびき丸太を貨車積みす 榎本冬一郎 眼光
雪嶺へ杏の枝のやゝしだれ 椎橋清翠
雪嶺へ貨物車長き列と影 右城暮石 声と声
雪嶺へ戸口のくらさ猟夫住む 星眠
雪嶺へ向けチカチカと鶸の嘴 木村蕪城 寒泉
雪嶺へ酷寒満ちて澄みにけり 相馬遷子
雪嶺へ畝の伸びたり木の芽風 小島健 木の実
雪嶺へ通ふゴンドラ外より鍵 大橋敦子
雪嶺へ二輛編成にて発てり 本宮鼎三
雪嶺へ日影去りにける花野かな 渡辺水巴
雪嶺へ白魚を汲む肘上ぐる 田川飛旅子
雪嶺へ林檎の芯を投げにけり 佐久間慧子
雪嶺まで枯れ切つて胎かくされず 森澄雄
雪嶺まで行きては戻るばかりかな 平井照敏 天上大風
雪嶺も一憂一喜雲移る 堀口星眠 営巣期
雪嶺やコーヒー餓鬼のわが乾き 秋元不死男
雪嶺やどこを行つても向ひ風 ふけとしこ 鎌の刃
雪嶺やひとのこころにわれ映り 黒田杏子 花下草上
雪嶺やマラソン選手一人走る 西東三鬼
雪嶺や一つ猟銃音ありしのみ 猪俣千代子 堆 朱
雪嶺や一艇湖の色分ける 中村みよ子
雪嶺や右に首垂れイエス像 野沢節子
雪嶺や畦の焚火に誰もゐず 秋元不死男
雪嶺や口を拭ひて飯の後 岸本尚毅 舜
雪嶺や死者還らねば棺は空ら 岡田日郎
雪嶺や寝足りて耳の温かりし ふけとしこ
雪嶺や疎林の奥にゆるぎなく 筒井正子
雪嶺や誰も触れざる火縄銃 長田喜代子
雪嶺や地蔵のごとく吾を残す 渡辺七三郎
雪嶺や昼夜の膳に鱈鰊 岸本尚毅
雪嶺や頭を寄せ合つて唄ふ看護婦 岩田昌寿 地の塩
雪嶺や肉塊トラックよりおろす 藤岡筑邨
雪嶺や如来の幅に扉を開く 小島千架子
雪嶺や白眼ばかりの達磨市 渡辺白峰
雪嶺や髪刈つて首すくめゆく 永田耕一郎 方途
雪嶺や名もまぶしくて初鴉 森澄雄
雪嶺や夕ベのチャイム廊に鳴り 有働亨 汐路
雪嶺より鯨を曳いて帰るかな あざ蓉子
雪嶺より高処ホテルの桜草 神尾久美子 掌
雪嶺より水来て水菜萌えたたす 伊藤霜楓
雪嶺より来る風に耐へ枇杷の花 福田甲子雄
雪嶺より稜駈けりきて春の岬 大野林火
雪嶺よ柑橘に風吹きこぞり 下村槐太 天涯
雪嶺よ女ひらりと船にのる 石田波郷
雪嶺よ税務署の窓磨かれて 相馬遷子 雪嶺
雪嶺よ日をもて測るわが生よ 相馬遷子
雪嶺をひたくれなゐと思ひけり 中村千絵
雪嶺をひた負ひ年賀配達夫 横道秀川
雪嶺をみちづれにして詩嚢充つ 原裕 青垣
雪嶺ををろがみ杣の一日終ゆ 木村蕪城 寒泉
雪嶺を間近としてや初暦 越智哲眞
雪嶺を仰ぐキヤラメル渡されて 藤岡筑邨
雪嶺を見し網膜のあたらしき 本郷をさむ
雪嶺を見て耕して長命す 田川飛旅子
雪嶺を今年まだ見ずクリスマス 右城暮石 上下
雪嶺を左右にひらき月のぼる 橋本鶏二 年輪
雪嶺を山でたる星のはなればなれ 橋本榮治 麦生
雪嶺を讃へ落葉松芽吹くなり 長倉いさを
雪嶺を支へ百日百夜の湖 伊藤敬子
雪嶺を雌蘂とし夕日の巨花開らく 岡田日郎
雪嶺を慈母とす開拓の聖家族 岡田日郎
雪嶺を若き一日の標とす 藤田湘子 途上
雪嶺を出づ毒の川濁りなし 岡田日郎
雪嶺を出でたる星のはなればなれ 橋本 榮治
雪嶺を小さき日遅々と天づたふ 福田蓼汀 山火
雪嶺を据ゑ一故旧なき故郷 林 翔
雪嶺を西に鞴の太き息 成田千空 地霊
雪嶺を大障壁に天守閣 瀧澤伊代次
雪嶺を天にさだめる線太し 橋本鶏二
雪嶺を天の高みに田の昼餉 大野林火
雪嶺を点じ山々眠りけり 大野林火
雪嶺を背骨となしつ農夫老ゆ 小田欣一
雪嶺を負ふ映画館恋やぶれ 堀口星眠 火山灰の道
雪嶺を落ち来たる蝶小緋縅 川端茅舎
雪嶺を離るる雲とその影と 行方克己 昆虫記
雪嶺を連ねて阿蘇の火山系 山口誓子 青銅
雪嶺襖鳶は翔たんと息つめる 松本 旭
雪嶺下小橋つくろふ雪まみれ 林翔 和紙
雪嶺芽吹く嶺朝湧く力校歌創る 加藤知世子 花寂び
雪嶺輝り伊那の小梅も咲くべかり 西本一都 景色
雪嶺近き畦は塗られて夜も光る 加藤知世子
雪嶺見ゆとて傾ぎゆく一車輛 原裕 青垣
雪嶺星赴任せし夜の寝つかれず 堀井春一郎
雪嶺晴れ畦の水仙風のなか 欣一
雪嶺雪嶺を登り暮るるや西行忌 加藤知世子 黄 炎
雪嶺蒼し研師おのれを研ぎすます 長田豊秋
雪嶺燃えかぶされり夕蒼き村 岡田日郎
雪嶺美しおとこ光星仰ぐかに 源鬼彦
雪嶺描く底に羆を眠らせて 秋本敦子
雪嶺暮れ機婦等若さをもちあぐむ 宮武寒々 朱卓
雪嶺夕焼鈴高鳴らす供米車 加藤知世子 花寂び
雪嶺攀づわが影われを離れ攀づ 岡田日郎
雪嶺颪ゆふべ身ぬちに滾るもの 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
雪嶺颪を毛に立て兎逃げまどふ 加藤知世子
川の淵寂寥は雪山よりくるか 川島彷徨子
川激ち雪山うつるところなし 早崎明
洗面の水の痛さの遠雪嶺 石川桂郎
羨むやかの雪嶺の若き死を 相馬遷子 雪嶺
船の銅羅かの雪嶺に谺せる 福田蓼汀 山火
全貌を見せぬ雪嶺白皚々 右城暮石
喪章はづす雪嶺ちかき野の光 鷲谷七菜子
蒼天に雲消ゆ雪嶺離りては 岡田日郎
送水会や日ののこりゐる斑雪山 猿橋統流子
霜日輪雪山の秀をつつむなり 松村蒼石 春霰
足袋つくろふ雪嶺の朝から晴れて 内藤吐天 鳴海抄
村人や雪山の威に恃み栖む 深川正一郎
大寒の夜明雪嶺微笑せり 相馬遷子 雪嶺
大雪嶺雲突き抜けて鎮もれり 大原雪山
大和にもかかる雪嶺雪金剛 右城暮石
大和にもかゝる雪嶺雪金剛 右城暮石 上下
只眠るなり雪嶺の前の山 原田喬
谷を出る線のまぼろし雪の山 和知喜八 同齢
谷展け雪嶺右へ右へ濃し 太田嗟
炭色の夜空の下の雪の山 高木晴子
短日や雪嶺天に遺されて 小野宏文
男山酒造雪山正面に 高澤良一 素抱
地のうねりつづき雪嶺遥かなり 平川雅也
地鎮めの竹担ぎ出す斑雪山 三森鉄治
竹皮を脱ぐ雪嶺に真向ひて 佐野美智
竹藪の梢に遠し雪の山 雪 正岡子規
朝ざくら雪嶺の威をゆるめざる 木村蕪城
朝な朝な笑ひこぼすや山の雪 山笑う 正岡子規
朝焼けの雪山負へる町を過ぐ 篠原梵 雨
町の上に雪嶺澄めり吹雪熄む 相馬遷子 山国
聴診器ことりと置けば雪嶺あり 岡本正敏
頂ならぶ越の雪山きのこ取り 川崎展宏
頂の夕日わづかや雪の嶺 長谷川かな女 雨 月
追分や越後路雪嶺立ち塞ぎ 福田蓼汀 秋風挽歌
鶴の墓雪嶺に向く小ささよ 神尾久美子
鉄を打つ谺短かし斑雪山 阪本 晋
天に雪嶺路のおどろに蔓もどき 石原八束 秋風琴
天へ入りゆふべ雪山結晶す 岡田日郎
天寿とは父を焼く日の遠雪嶺 古舘曹人 能登の蛙
天帝を追ひ傾ける一雪嶺 岡田日郎
天日に我が血ふえたり雪の嶺 渡邊水巴
電線のたるみが大事雪山へ 林 庄一
東京へ東京へ車窓雪嶺しづむ 桜井博道 海上
桃の村雪山が見え鶏が鳴く 柴田白葉女 花寂び 以後
灯を消され雪山近み眠られず 村越化石 山國抄
筒鳥や雪嶺映す池しづか 鎌田八重子
豆撒くや雪山ふかきかり住居 鎌野秀々
逃げ来しにあらず雪山あたゝかし 石橋辰之助
頭たれて月に覚め居り雪の山 前田普羅 飛騨紬
堂押祭果てし夜空の雪嶺かな 本宮哲郎
鳶ないて雪山空に暮れかぬる 梅の門
鳶の声雪嶺屹つて来る日なり 永田耕一郎 雪明
曇天に雪嶺しづむ野梅かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
南北の雪嶺太陽西へ行く 津田清子 二人称
日がさしてくるはさびしや斑雪山 清崎敏郎
日のテラス雪嶺へ展べ佳人亡し 木村蕪城 寒泉
日の出時雪嶺向きを変へはじむ 永田耕一郎 雪明
日の直下立つくろがねの雪の嶺 相馬遷子 雪嶺
日の描く雪嶺の襞自在なり 阿部ひろし
日を浴びて雪嶺一座づつまどか 岡田日郎
日象と雪山ふかく水かがみ 飯田蛇笏 雪峡
入りし日が裏よりつゝむ雪の嶺 相馬遷子 山国
濡れし眼に雪嶺父の愛母の愛 伊藤敬子
年つまる鼻先にすぐ雪の山 澄雄
能登凪げり越の雪嶺総立ちに 千田一路
農耕の声雪嶺のふもとより 永田耕一郎 海絣
波の花とべば遥かな雪嶺あり 加藤有水
馬の鼻なでて雪嶺のアポイ岳 笠川弘子
馬の目のしづかに雪の山ありぬ 石田 啓
馬産む日しづかに雪嶺明けきたる 鴎昇
白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り 斎藤史
白雲の中白光の一雪嶺 岡田日郎
白雲を雪嶺と見て年忘れ 阿部みどり女
白鳥にこゞしき雪の越の山 石塚友二
白鳥に雪嶺も頭を並べたり 堀口星眠 営巣期
白鳥の別れ夜空に雪嶺泛く 石原舟月
白鳥を送る雪嶺総立ちに 佐藤俊子 『雪の本丸』
麦あをみ雨中の雪嶺雲むるる 飯田蛇笏 雪峡
麦踏のたつた一人にみな雪嶺 加藤楸邨
麦踏を今朝雪嶺となり囲む 佐野美智
麦踏んで雪嶺の下の一頭顱 森澄雄
抜群の雪嶺生涯たどたどし 古舘曹人 能登の蛙
反芻の牛に遠見の斑雪山 鷲谷七菜子 花寂び
斑雪山かたくり咲ける頃とおもふ 鈴木貞雄
斑雪山にぎやかに葬の人帰る 中拓夫
斑雪山はるかに鹿が耳立てる 藤森都史子
斑雪山をりをり射せる日もまばら 堤 高嶺
斑雪山月夜は滝のこだま浴び 飯田龍太
斑雪山見えて空席多きバス 浅井一志
斑雪山四方よりせまる別れかな 永田耕一郎 雪明
斑雪山真下に機上のティータイム 塩川祐子
斑雪山半月の黄を被るなり 大野林火
斑雪山目の前に来て懸巣鳴く 和公梵字
斑雪嶺に会ふまばゆさの顔撫でて 村越化石 山國抄
斑雪嶺のふかきへ鱒を提げゆくか 村上しゆら
斑雪嶺の影のゆらぎの絵蝋燭 吉田紫乃
斑雪嶺の音霊を聴く達治の忌 伊藤貴子
斑雪嶺の暮るるを待ちて旅の酒 星野麦丘人
斑雪嶺や雀尾長も声潤ひ 行木翠葉子
斑雪嶺や風の土手ゆく郵便夫 奥田卓司
斑雪嶺や鴉の声のややに錆び ふけとしこ 鎌の刃
斑雪嶺をささふ穂高の鉄沓屋 宮坂静生 樹下
斑雪嶺を仰ぎ応挙の絵を見たり 越智照美
斑雪嶺を神とも仰ぎ棚田打つ 伊東宏晃
班雪嶺の寡黙を通す別れかな 佐藤文子
晩年の道行きどまる遠雪嶺 木村敏男
彼の背中で忽然消えている雪嶺 田邊香代子
微動せず風に研がるゝ雪の嶺 相馬遷子 山国
美しき雪山の名のシンデレラ 京極杞陽
美しき雪嶺を指す人さし指 茨木和生 木の國
病医師と病者をへだつ雪の山 三嶋隆英
貧しくて照る雪嶺を窓にせり 相馬遷子 山国
夫と語り吾と語らぬ遠雪嶺 田淵ひで 『木椅子』
浮雲いつかなし雪嶺は墓標群 福田蓼汀
父を火にしていでて雪の山なみはあり 和田光利
武藏野やあちらこちらの雪の山 雪 正岡子規
舞踏室灯せばなづむ雪嶺かな 宮武寒々 朱卓
風が棲む雪山の裾初荷行く 相馬遷子
風雲の雪嶺にふるるところあかし 矢島渚男 釆薇
風強くきりりと晴れて雪の山 阿部みどり女
風荒び雪嶺の秀を研ぎすます 前山松花
風邪の眼に雪嶺ゆらぐ二月尽 相馬遷子 山国
風邪の目に雪嶺ゆらぐ二月尽 相馬遷子
復活祭雪嶺を青き天に置く 堀口星眠 火山灰の道
噴煙をおのれまとひて雪の嶺 相馬遷子 山河
文江忌の雪嶺の蒼心にす 加藤耕子
文鎮を持ち上げるとき雪の山 鈴木鷹夫 春の門
並ぶ肥樽峰雪嶺に湧きつつあり 成田千空 地霊
米磨ぐや雪嶺いつまで夕茜 岡田日郎
壁に身をする馬や雪山眼のあたり 金子兜太
碧落に神雪嶺を彫りにける 福田蓼汀
鋪装路の果ての雪嶺に駅出でぬ 原田種茅 径
歩廊の端に余りし雪嶺の寒さ 内藤吐天
穂高ほどの名なく雪嶺にて並ぶ 篠田悌二郎
暮れ際のさくらむらさき斑雪山 堀口星眠 営巣期
暮雲おき雪嶺たゞの山に伍す 篠田悌二郎
暮雪の嶺帽なき空を掟とす 安東次男 裏山
母の死や南風の雪山きほひたつ 金尾梅の門(古志)
母の瞳の行き届くかに遠雪嶺 佐藤美恵子
母看取る何処に坐すも雪嶺見ゆ 寺田京子
崩れ簗雪嶺のぞみそめにけり 五十崎古郷句集
方位盤指す山すべて雪嶺なる 村木海獣子
北の星ばかり雪山背に迫り 中戸川朝人 残心
北へ走す雪山島に二タ並び 中戸川朝人 残心
北端の極みに雪嶺ひとつ立つ 永田耕一郎 海絣
北陸線雪嶺に沿ひ海に沿ふ 朝野早苗
牧の犬むつみ来るまゝ雪嶺ヘ 石橋辰之助 山暦
幕切れのごと雪嶺の夕日消ゆ 岡田日郎
繭玉の端雪嶺に触れてゐし 平原玉子
万才の雪嶺にかざす扇かな 志水圭志
満月の夜は翅たたむ雪の嶺 木村敏男
無情なるまで雪嶺の天聳る 榎本冬一郎 眼光
明日へ繋がる寝息雪嶺足先に 太田土男
網を引くエンジンに負荷雪嶺耀る 中戸川朝人 尋声
木菟の夜は雪嶺軒に来て立てる 堀口星眠 火山灰の道
木菟の夜は雪嶺簷に来て立てる 堀口星眠
夜が来て雪山けもののごと横たふ 吉野義子
夜の明けてをらぬ雪山見えてをり 青葉三角草
夜間飛行雪嶺と湖響きあふ 川村紫陽
矢のごとく降り雪嶺の雪となる 原裕 葦牙
夕月にとどろき暮るる一雪嶺 岡田日郎
夕凍みに青ざめならぶ雪の嶺 相馬遷子 山国
夕日さしカットグラスの一雪嶺 岡田日郎
夕日なほ濃き一群の雪嶺あり 岡田日郎
夕日落つ雪山の裏は明るからん 岡田日郎
夕風や捨子のごとく雪嶺攀づ 加藤知世子 花寂び
楊萌ゆ雪嶺天にねむれども 有働 亨
窯出しの雪山写シいかばかり(萩焼休雪白は水指にきはまり、口縁の景色まさに遠山の風趣なり) 飴山實 『次の花』
遥かよりわれにむき照る雪嶺あり 岡田日郎
来し方や雪嶺はかくあるばかり 行方克己 昆虫記
落ちてゆく日をとどめたる斑雪山 清崎敏郎
落花抜けゆく雪嶺にまみえんと 中戸川朝人 残心
落花霏々雪嶺いまも陸に聳つ 佐野まもる 海郷
落葉松の立のまばらに雪の嶺 石橋辰之助 山暦
立ち憩ふときも雪嶺に真向へり 相馬 遷子
立枯の林の上の雪の嶺 比叡 野村泊月
立春の日差雪嶺の肌燃やす 岡田日郎
流氷と羅臼の雪嶺いづれ濃き 石原八束 『風信帖』
旅人に雪嶺翼張りにけり 大橋敦子 匂 玉
糧を喰ふ手もて雪山の闇はらふ 石橋辰之助
良いときにお逝きなされて斑雪山 鳥居美智子
冷房のかつ雪嶺の絵の前に 皆吉爽雨
嶺の奥に雪山ありぬ薺摘み 飯田龍太
恋ふ寒し身は雪嶺の天に浮き 西東三鬼
恋捨てに雪山に来しが笑ひ凍る 小林康治 玄霜
練習機雪山にそひまはりくる 川島彷徨子 榛の木
連なりて雪嶺一つづつ尖る 石井いさお
連なれる雪嶺の黙天を占む 山本歩禅
炉に近き窓あり雪の山見ゆる 紅緑
狼のちらと見えけり雪の山 雪 正岡子規
狼の見えて隱れぬ雪の山 雪 正岡子規
老婆より菫を買へり雪嶺下 田川飛旅子
鷲飛びし少年の日よ雪嶺よ 多田裕計
藁屋根の端の雪嶺ことに冴え 桂信子 黄 瀬
藁灰の底の火の色雪嶺星 福田甲子雄
腕組んで唄へば雪嶺ゆらぎ出す 岩田昌寿 地の塩
梟に雪山星を加へけり 山下竹揺
泪目に殊に眩しき遠雪嶺 前山松花
炬燵焦げくさし雪嶺暮れてなし 藤岡筑邨
玻璃拭けば幸住むごとき雪の山 柴田白葉女
糀屋が春の雪嶺を見てゐたり 森澄雄
綺羅星は私語し雪嶺これを聴く 松本たかし
翔ぶことの歓喜雪嶺たたなはる 原和子
谺して雪嶺牧の子の相手 太田土男 『西那須野』
雉子喰つて目のさめたれば雪の山 沢木欣一
鷽鳴いて雪嶺天に還りけり 松本進

雪山 補遺

ああ敵に死守なし雪嶺厳かしき 山口誓子
あふぎ飲む牛乳雪嶺をまなかひに 山口青邨
いちはやく雪嶺となりて峯を統ぶ 上田五千石『森林』補遺
いや白く雪嶺媚びぬ彼岸前 相馬遷子 山河
うきうきと雪の晴れまの雪の嶺嶺 上村占魚
おぼろ月奥の雪嶺の夜は見えず 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
かすむ雪嶺よ吾を死なしむなゆめ 山口誓子
かの雪嶺火噴きし頃の切支丹 野見山朱鳥 幻日
かの雪嶺信濃の国の遠さ以て 山口誓子
かへり見る雪山既に暮れゐたり 清崎敏郎
きのふ見し雪嶺を年移りたる 森澄雄
けふの日のしまひに雪嶺荘厳す 上田五千石 田園
けふ見ゆるとて雪嶺のたのみがたし 山口誓子
げんげんを見てむらさきの遠雪嶺 大野林火 冬雁 昭和二十二年
コーヒー飲み残して下る斑雪山 廣瀬直人
こざかしく雪嶺に回る風力計 山口誓子
こし雪の山見て障子しめにけり 原石鼎 花影
こたへなき雪山宙に労働歌 飯田蛇笏 雪峡
こだまして雪山に鶴浮び出づ 野見山朱鳥 幻日
ことごとく雪山なりしめでたさよ 高野素十
この雪嶺わが命終に顕ちて来よ 橋本多佳子
ゴビ灘のかなた万年雪の嶺 鷹羽狩行
こよひ焼くべかりしに奈良雪の山 阿波野青畝
これを見に来しぞ雪嶺大いなる 富安風生
ころ柿の粉の峭絶の雪嶺か 大野林火 雪華 昭和三十九年
さくら咲き連なり雪山の光連なり 荻原井泉水
すれちがふ汽車の窓透き雪山あり 篠原梵 年々去来の花 皿
そして眠れ 雪山散華の父の骨 伊丹三樹彦
そそり立つ雪嶺に月近くあり 上村占魚 球磨
つるぎなす雪嶺北に野辺おくり 飯田蛇笏 春蘭
てのひらに陽炎載せて雪嶺越ゆ 加藤秋邨
どこまでも雪嶺の道訣れなむ 山口誓子
とつぐ子に雪嶺月山となりて立つ 加藤秋邨
とどかざる掌にて雪嶺を撫で回す 山口誓子
ぬり上げし鉛筆の艶雪山澄む 松崎鉄之介
はこべらや雪嶺は午後うつとりす 森澄雄
はるかなる雪嶺のその創まで知る 橋本多佳子
ふぐり垂るるは寂しからずや雪嶺の間 森澄雄
ふところに一枚の櫛雪山ヘ 岡本眸
ふりむきし鷲の眼雪嶺けぶりたる 鷲谷七菜子 銃身
まだ見えぬ騎手二三人斑雪山 飯田龍太
まだ国の雪山はしり舷に雨 古沢太穂 火雲
まばたかぬ雪山のわがアトラスよ 佐藤鬼房
まんさくや町よりつゞく雪の嶺 相馬遷子 山河
めひらけば雪嶺つむれば指が立つ 加藤秋邨
ゆふべしづかに明日にも雪嶺たらむとす 山口誓子
よべの雪山白くしぬ梅花村 山口青邨
わが一生雪山つなぐ橋に揺れ 野澤節子 花季
わが雪嶺北は曇りて南顕つ 佐藤鬼房
わが博徒雪山を恋ひ果てしかな 佐藤鬼房
わが疼く眼に雪嶺の照り倦かぬ 相馬遷子 山国
わざをぎの如し雪嶺よそほへば 阿波野青畝
をのゝく日雪山にきて胸にしむ 高屋窓秋
愛語一閃雪嶺の威の囲むなか 楠本憲吉 方壺集
或る雪嶺尖るを雪嶺みな倣ふ 山口誓子
安曇野は雪嶺連なり猫柳 森澄雄
安曇野や雪嶺におよぶ晝がすみ 及川貞 夕焼
一雪嶺を赤松が抽き風鳴らす 森澄雄
一足さきに出る雪の山宿 尾崎放哉 小豆島時代
一族の墓雪嶺根より真白 橋本多佳子
一蝶に雪嶺の瑠璃なかれけり 川端茅舎
芋植ゑて雪嶺にひとかくれけり 岡井省二 明野
引鶴のごとく雪嶺かすみけり 森澄雄
隠すもの雲のほかなき雪嶺よ 右城暮石 句集外 昭和三十八年
鰻田や春の雪嶺たたなはり 岡井省二 明野
厩出し牛に雪嶺蜜のごと 森澄雄
雲しきてとほめく雪嶺年新た 飯田蛇笏 雪峡
雲をもて隠ろひ了る雪の嶺 山口誓子
雲雀たかく雪山隈に夕日照る 角川源義
雲表に雪の嶺のぞく辛夷かな 阿波野青畝
永き日の雪嶺としてうつつなす 森澄雄
越中の雪嶺芭蕉の高さなる 山口誓子
燕来る遠雪嶺の光負ひ 林翔 和紙
艶やかに雪嶺まだ出ぬ蕗の薹 相馬遷子 雪嶺
遠ざかり来て雪嶺の主峰見ゆ 右城暮石 上下
遠ぞらに雪嶺のこり機の音 鷲谷七菜子 花寂び
遠雪嶺ときに咎むるごとく顕つ 上田五千石『田園』補遺
遠雪嶺近よりがたし去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
遠雪嶺見んと胎児とともに出づ 鷹羽狩行
遠雪嶺黒部に紅葉下りて来し 角川源義
遠天に雪山ほのと秋の暮 相馬遷子 山国
遠天に雪嶺尾根をつらねたり 水原秋櫻子 霜林
遠白き雪嶺雲の厚からむ 右城暮石 句集外 昭和四十一年
翁舞国栖の雪山屏をなす 津田清子
温泉の池に雪山映り女体透き 松本たかし
何とぬかるむ田ばかり 頑固な雪嶺ばかり 伊丹三樹彦
火の山の雪の浄衣や嶺嶺の上 松本たかし
火の山の爛れに雪の斑なる 山口誓子
霞みたる雪嶺霞の側のもの 山口誓子
霞む中雪嶺の白あでやかに 相馬遷子 雪嶺
回転のプ口ペラ雪嶺撫でやまず 山口誓子
快晴の雪嶺を観る欄の雪 松本たかし
海に聳つ雪嶺はこの陸つゞき 右城暮石 上下
海の上飛ぶ雪嶺の加護もなく 山口誓子
海港や雪嶺天に支へたる 山口誓子
外に出て雪の山畑見る月夜 大野林火 飛花集 昭和四十六年
外輪山五百重雪山を垣外にす 山口誓子
外輪山雪嶺を短山とせり 山口誓子
鴨の陣はつきり雪の山ぼうと 波多野爽波 鋪道の花
岩の背をここに露はす雪の嶺 山口誓子
頑とある雪嶺 死火口五月の北 伊丹三樹彦
寄せ雪の山成せり駅周辺は 右城暮石 天水
寄生木に雪嶺浮かみゐしが雨 木村蕪城 寒泉
汽車どちら向くも雪嶺なくなれり 右城暮石 声と声
汽車とまり遠き雪嶺とまりたり 山口誓子
汽車に寝て雪岳行の膝慄ふ 山口誓子
汽車煙雪嶺にちかくかざし寄る 山口誓子
汽車走る雪嶺の向き変りつつ 右城暮石 天水
汽罐車と雪嶺よよとかげろへり 山口誓子
祈りに似て煙はながし雪嶺下 加藤秋邨
客土馬車雪嶺天にまかがやき 大野林火 雪華 昭和三十五年
逆雪嶺うすももいろに水あかり 原裕 青垣
牛乳のむ花の雪嶺のつづきにて(長野県高遠へ二句) 細見綾子
牛鳴いて雪嶺ぬくき誕生日 秋元不死男
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
狂院のちなみに鴉声遠雪嶺 古舘曹人 能登の蛙
胸を背に寄せて雪嶺重なりあふ 山口誓子
胸痛きまで雪嶺に近く来ぬ 藤田湘子 神楽
蕎麦すする越の雪嶺明けわたり 秋元不死男
暁光におのれ削ぎ立つ雪の嶺 相馬遷子 山河
暁光にけふ雪嶺となりて立つ 相馬遷子 山河
極月や雪山星をいただきて 飯田蛇笏
極月や雪山星をいたゞきて 飯田蛇笏 霊芝
近くなるほど雪嶺の威丈高 桂信子 草影
桑の芽や雪嶺のぞく峡の奥 水原秋櫻子 葛飾
群山の中系なすは雪嶺のみ 山口誓子
畦焼いてねむらず覚めず雪の嶺 森澄雄
畦焼の近づきあひぬ雪の嶺 岡井省二 明野
鶏鳴はまさに男声や雪の嶺々 中村草田男
月いでて雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏
月いでゝ雪山遠きすがたかな 飯田蛇笏 霊芝
月光に雪嶺ひとつ覚めて立つ 相馬遷子 山河
月曇るとき雪嶺のあとずさり 上村占魚
犬吠えて峡は雪山すぐ応ふ 森澄雄
軒氷柱下がり雪嶺突き立ちぬ 松本たかし
個々に太陽ありて雪嶺全しや 西東三鬼
湖岸まで雪を垂らせる雪嶺あり 山口誓子
湖暮れて雪山ほのと残りたる 細見綾子
午後の日の雪嶺づたひや山葵採 藤田湘子
吾が降りし夜の雪嶺に残る者 山口誓子
吾子泣くか雪山かぎる杉一樹 角川源義
口笛に林語すぐ和す雪嶺晴 上田五千石 森林
孔雀小屋春の雪嶺に向へりき 飯島晴子
更科はまだ冠着の斑雪山 森澄雄
行く春を比良の雪山紫に 細見綾子
降りやみて雪山鎮む月あかり 飯田蛇笏 家郷の霧
降るとき雪岳天に群立す 山口誓子
刻々と雪嶺午後の影きざむ 相馬遷子 山国
告げざる愛雪嶺はまた雪かさね 上田五千石 田園
酷寒の白日照るや雪の嶺 相馬遷子 山河
骨太の窓枠の中雪の嶺々 中村草田男
祭典のよあけ雪嶺に眼を放つ 西東三鬼
鷺とんで直ぐ雪嶺の上に出づ 山口誓子
昨日より今日大いなり雪の嶺 相馬遷子 山河
笹飴や雪嶺濃くて昼ねむし 森澄雄
三国嶽三つの国の雪嶺なり 山口誓子
山の魂浮かび月夜の斑雪山 森澄雄
山は雪山の根がずつと張つてゐるでもあらう 中川一碧樓
山葵田に夜も日も雪の山襖 飯田龍太
山垣の奥処ひかるは雪の嶺 水原秋櫻子 霜林
山櫻雪嶺天に声もなし 水原秋櫻子 帰心
産院を繞る雪山四温光 飯田蛇笏
子を抱きて雪嶺しづかなるゆふべ 山口誓子
師の眼鏡雪山照らす木瓜の花 角川源義
指ざせし雪嶺どれが氷山 右城暮石 句集外 昭和四十三年
時かけて暮る雪嶺の白き部分 上田五千石『田園』補遺
次越や虹のごとくに遠雪嶺 角川源義
耳聡き小鳥に遠き雪の山 飯田龍太
車輪すでに雪山がかる響かな 野澤節子 花季
若楓大き傘とし雪嶺見る 角川源義
手あぶりや雪山くらき線となりぬ 大野林火 早桃 太白集
酒場既に灯雪山遠く日あたりて 日野草城
終着駅立ちはだかれる斑雪山 松崎鉄之介
出航の花束で指す遠雪嶺 鷹羽狩行
春空にして雪嶺を夢の数 森澄雄
春耕の顔上ぐるたび雪の嶺 右城暮石 虻峠
春雪嶺壮行の旗群を解く 上田五千石『田園』補遺
初蝶や雪山恍と雲の上 松村蒼石 寒鶯抄
書架組めば春の雪嶺みそなはす 秋元不死男
勝を祝ぐ雪嶺の裏も雲なしに 山口誓子
小春日や雪嶺浅間南面し 相馬遷子 山河
松原の見こしに白し雪の山 正岡子規 雪
照り翳り照るアルプスの雪の嶺々 鷹羽狩行
乗初めのすぐ雪嶺と対ひあふ 上田五千石 風景
信濃は雪山をめぐらす城山の花にして 荻原井泉水
信濃まで霞みて雪の嶺見えず 鷹羽狩行
心には美濃の雪嶺としてしたしむ 山口誓子
新樹の道雪嶺に向き背まつ直ぐ 細見綾子
親不知雪嶺下り来てここに落つ 山口誓子
身にあまる白さに堪へて雪の嶺 相馬遷子 山河
身は萎えて気はまだ確か雪嶺よ 相馬遷子 山河
辛夷咲き浅間嶺雪を梳る 相馬遷子 雪嶺
針落ちし音雪嶺にひびきけり 秋元不死男
人の許へ雪山たゝむ敦賀湾 細見綾子
水のんできて雪嶺の濃くなりぬ 加藤秋邨
水鳥に凍てはとほらず逆雪嶺 原裕 青垣
雛祭雪嶺ばかりが白みそむ 森澄雄
杉檜賞めてめぐれば雪嶺照る 上田五千石『天路』補遺
瀬を岐れ来る春水や雪嶺聳ち 右城暮石 句集外 昭和二十七年
西は雪の山山春おおらかに日の入りし空 荻原井泉水
西行忌班雪の山を見てゐたり 森澄雄
青き野の果の雪嶺眉に感じ 細見綾子
切炬燵夜も八方に雪嶺立つ 森澄雄
雪ぐもる雲ゐに佐渡の雪の山 上村占魚
雪のなき山雪嶺の裾かくす 右城暮石 句集外 昭和三十八年
雪の屋根雪の山膚近く竝み 清崎敏郎
雪の山から海苔ひびに朝日さす 飯田龍太
雪の山から帰つて来たゆふぐれわが家の廂 中川一碧樓
雪の山が空に輝く恵方かな 右城暮石 句集外 昭和二年
雪の山くつがへらんず鬼女棲むと 山口青邨
雪の山とほくなりゆき襞立ちぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
雪の山にはかに顔の前に立つ 有馬朗人 母国
雪の山はだかり暮れて谿寒むし 水原秋櫻子 新樹
雪の山を眺めに軒の出入かな 右城暮石 句集外 大正十五年
雪の山見ゆるがせめて嬉しけれ 高野素十
雪の山山は消えつゝ雪ふれり 高屋窓秋
雪の山照る日の山毛欅に鳶下りぬ 渡邊水巴 富士
雪の山畑白真ッ平らしかし斜め 金子兜太
雪の山眉間に立てゝうち仰ぐ 古舘曹人 砂の音
雪の山壁の崩れに見ゆる哉 正岡子規 雪
雪の山夜空をせばめ立ち並ぶ 水原秋櫻子 秋苑
雪の山夕映えてをり馬を練る 日野草城
雪の山翳うしなふは霞立つ 相馬遷子 山国
雪の上に雪山かすむ朴の花 松崎鉄之介
雪の嶺いま紅雲に護られて 相馬遷子 山河
雪の嶺うつろに照れり雁帰る 相馬遷子 雪嶺
雪の嶺にゆめいろふかき日和空 飯田蛇笏 春蘭
雪の嶺むらさき深しつひに暮る 相馬遷子 山河
雪の嶺仮りに滋賀県側にをる 山口誓子
雪の嶺消えなんばかり鳥雲に 相馬遷子 山河
雪の嶺真紅に暮るゝ風の中 相馬遷子 山国
雪の嶺成人の日を照り通す 相馬遷子 山河
雪の嶺聖岳ぞと見てとほき 水原秋櫻子 浮葉抄
雪の嶺走らずにみな聳え立つ 山口誓子
雪の嶺地底の色の煙噴く 相馬遷子 山河
雪の嶺朝日がさしてなまなまし 山口誓子
雪の嶺天に溶け入り春祭 草間時彦 中年
雪の嶺旅より戻り来てまぶし 相馬遷子 雪嶺
雪の嶺々の平らな山が春呼ばふ 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
雪の嶺々琴柱の如し無絃の楽 中村草田男
雪やまずひとりとなりて出羽の酒 角川源義
雪を被て富士も伊吹も雪嶺なり 山口誓子
雪雲の通路の伊吹雪嶺なり 山口誓子
雪解水こんこんと野に雪嶺照る 角川源義
雪岳と天守を護る天守を歩し 山口誓子
雪更に厚き雪嶺現れし 右城暮石 虻峠
雪国の雪嶺弔辞に答なし 鷹羽狩行
雪国の雪嶺木の花より美し 山口誓子
雪三たび来て雪嶺となりにけり 水原秋櫻子 重陽
雪山が負ふ幻の嶺二つ 佐藤鬼房
雪山と雲とのあはひ鳥帰る 森澄雄
雪山と降る白雪と消し合ひぬ 松本たかし
雪山に 日のあたりたる 馬のいななき 富澤赤黄男
雪山になほ降る雲か垂れて来ぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
雪山にひとりの眠り沈みゆく 林翔 和紙
雪山にゆふべの月のまだ白く 上村占魚 球磨
雪山に位あり老いても兵に位 松崎鉄之介
雪山に一つの入江飯の浦 高野素十
雪山に何も求めず夕日消ゆ 飯田龍太
雪山に近づくわれに雲垂れ来 大野林火 白幡南町 昭和三十年
雪山に憩ひ明日思ふうつゝなき 高屋窓秋
雪山に時計は遅々とすゝまざる 相馬遷子 山国
雪山に春のはじめの滝こだま 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
雪山に春の夕焼滝をなす 飯田龍太
雪山に照る日はなれて往きにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山に食ひものありて犬は食ふ 山口誓子
雪山に水ほとばしる寒の入り 飯田蛇笏
雪山に水銀燈を消し忘れ 山口誓子
雪山に星が矢を射る父母の国 飯田龍太
雪山に雪の道あり白白と 松本たかし
雪山に雪降り友の妻も老ゆ 西東三鬼
雪山に漕ぎ入り謡などうなる 佐藤鬼房
雪山に打てばとび散る蔓もどき 飯田龍太
雪山に対し州庁舎の威容 高浜年尾
雪山に朝の樫の木さかんなり 飯田龍太
雪山に灯なき電気に雪が降る 金子兜太
雪山に汝を思へば海蒼し 相馬遷子 山国
雪山に虹のをはりのいろしづか 飯田龍太
雪山に虹の尾たらしはたた神 角川源義
雪山に日が真赤ぞな薺打 岸田稚魚 紅葉山
雪山に日は入り行けり風吹けり 相馬遷子 山河
雪山に燃え来よ嫁かぬ事務乙女 藤田湘子 途上
雪山に白樺の白やや汚れ 福田蓼汀 山火
雪山に頬ずりもして老いんかな 橋閒石 微光
雪山に頬削り来し男なり 野澤節子 鳳蝶
雪山に無韻の流れ一と筋に 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山に野を界(かぎ)られて西行忌 橋本多佳子
雪山に野村万蔵手をかざし 高野素十
雪山に林相白を以て描き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山に路あり路を人行かず 相馬遷子 山国
雪山のあきらかにして自愛見ゆ 森澄雄
雪山のある日老髯のさるをがせ 古舘曹人 能登の蛙
雪山のおもてをはしる機影かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山のかへす光に鳥けもの 木村蕪城 寒泉
雪山のしづけさの中に吾ゐたり 村山故郷
雪山のそびえ幽らみて夜の天 飯田蛇笏 雪峡
雪山のつき出してあり鮭の海 高野素十
雪山のどこも動かず花にほふ 飯田龍太
雪山のどのみちをくる雪女郎 森澄雄
雪山ののぞける街の羽子日和 上村占魚 球磨
雪山のふところ深く行く列車 高浜年尾
雪山のふもとの伏家初かまど 飯田蛇笏 春蘭
雪山のまなざしのなか白鳥湖 細見綾子 曼陀羅
雪山のみな木かげして音絶えき 飯田蛇笏 雪峡
雪山のむらたつ故園日のはじめ 飯田蛇笏 春蘭
雪山の旭にひとざとの鶫かな 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の遠目に煙る林かな 川端茅舎
雪山の絵を見て選ぶ雪眼鏡 後藤比奈夫
雪山の冠りみだるる風の星 飯田蛇笏 雪峡
雪山の幾襞遠く曇りなし 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山の虚ろに炎立つランプ小屋 原裕 青垣
雪山の金色の線引くところ 川端茅舎
雪山の午下はけぶろふ桃の花 上田五千石 天路
雪山の後ろにまはり遅日光 松村蒼石 寒鶯抄
雪山の向うの夜火事母なき妻 金子兜太
雪山の昏るるゆとりに鳴る瀬かな 飯田蛇笏 春蘭
雪山の左右に揺るる歩みかな 上野泰 佐介
雪山の照り楪も橙も 森澄雄
雪山の裾とどまれば畦木立つ 廣瀬直人
雪山の星見いでたし猿啼く 松村蒼石 雪
雪山の雪谷を出て魚野川 森澄雄
雪山の泉の鯉を苞にせる 水原秋櫻子 蓬壺
雪山の繊翳もなく日のはじめ 飯田蛇笏
雪山の前に目立たぬ雪の山 桂信子 緑夜
雪山の前の煙の動かざる 高野素十
雪山の大汝とはなつかしや 高野素十
雪山の底なる利根の細りけり 草間時彦 中年
雪山の底に方等般若落つ 川端茅舎
雪山の内懐に岳友葬 上田五千石『田園』補遺
雪山の日にかゞやきて雪崩前 鈴木真砂女
雪山の肌をはなれて雲移る 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山の肌朗々と雉子鳴く 飯田龍太
雪山の斑や友情にひゞ生ず 上田五千石 田園
雪山の眉を上げゐる春の夕 森澄雄
雪山の風樹孤島の濤と聴き 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山の風来るまでにちかづきぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
雪山の没日を咥へ飛びたしや 佐藤鬼房
雪山の木々の根もとの息吹かな 飴山實 おりいぶ
雪山の夕かげふみて猟の幸 飯田蛇笏 春蘭
雪山の夕日の斜面近くゆく 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山の翼ひらけば蔓もどき 飯田龍太
雪山の梨ケ平は十七戸 高野素十
雪山の立木の並び見の正し 松本たかし
雪山の麓のポスト尊くて 川端茅舎
雪山の谺金輪際を這ふ 川端茅舎
雪山はゆつくり霞むかいつむり 岡井省二 明野
雪山は月よりくらし貌さびし 前田普羅 飛騨紬
雪山へ顔上げつづけ一人旅 細見綾子
雪山へ狐の馳けし跡いきいき 大野林火 白幡南町 昭和三十年
雪山へ行きし日焼や松の内 水原秋櫻子 蘆雁
雪山へ成人の日の道通ず 百合山羽公 樂土
雪山へ雪吹きかへす最上川 上村占魚
雪山も雪なき山も似し高さ 稲畑汀子
雪山も其を見る人も屹と立つ 林翔
雪山や正しく胸のかたすみに 飯田龍太
雪山をはなれてたまる寒の闇 飯田龍太
雪山をはるけく来つる炭売女 飯田蛇笏 雪峡
雪山をまぢかに見つゝ通勤す 上村占魚 鮎
雪山をみせて月出ぬ古かかし 飯田蛇笏 山廬集
雪山をめぐらす國土日のはじめ 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山をゆく日とどまるすべもなし 飯田蛇笏
雪山を雲海の涯に見て登る 松崎鉄之介
雪山を冠りつららの峡は裂け 川端茅舎
雪山を見し眼うつらふペンの先 飯田龍太
雪山を見てならぶショールのまぶしくも 飯田龍太
雪山を行く電線のかすかなる 山口誓子
雪山を指して確認転轍手 松崎鉄之介
雪山を灼く月光に馬睡る 飯田龍太
雪山を手招いてゐる山の木か 飯田龍太
雪山を出でたる風の雲に入る 飯田龍太
雪山を宙にひくめて年新た 飯田蛇笏 雪峡
雪山を浮べて春のはやて村 森澄雄
雪山を蔽ふまひるの黝き海 飯田蛇笏 家郷の霧
雪山を夜目にポールをまはすなり 中村汀女
雪山を流れて水の炎となれる 原裕 葦牙
雪山を匐ひまわりゐる谺かな 飯田蛇笏 霊芝
雪山幾重まさしく北にポーラリス 福田蓼汀 秋風挽歌
雪山呼ぶO(オー)の形の口赤く 西東三鬼
雪山暮れきれば月するどし 荻原井泉水
雪晴れて浅間嶺すわる町の上 相馬遷子 雪嶺
雪掻きて雪嶺に白き道つくる 山口誓子
雪嶺ある陸を離れて海を飛ぶ 山口誓子
雪嶺かがよう峡の口なる宵の星 金子兜太
雪嶺が遠き雪嶺よびつづけ 橋本多佳子
雪嶺が雪嶺を負ひ紙漉き老ゆ 橋本多佳子
雪嶺さめゆく一赤松の秀が日ざし 森澄雄
雪嶺として霞の中をなほ白め 山口誓子
雪嶺として聳つ御嶽教の山 山口誓子
雪嶺とスケートの子の初景色 相馬遷子 雪嶺
雪嶺となりて遠嶺の名乗り出づ 上田五千石『田園』補遺
雪嶺となる雲中にきらめきつゝ 相馬遷子 山河
雪嶺とはならずしづかに天を占む 山口誓子
雪嶺とわれ立春の日を頒つ 相馬遷子 雪嶺
雪嶺と月と燃えゐる冷たさよ 松本たかし
雪嶺と月光の宙残し寝る 大野林火 雪華 昭和三十五年
雪嶺と吾との間さくら満つ 細見綾子 伎藝天
雪嶺と色同じくて霞立つ 相馬遷子 山河
雪嶺と青嶺のやどる雪しろ湖 角川源義
雪嶺と童女五月高野のかがやけり 橋本多佳子
雪嶺にこころひかれて陽の歩み 飯田蛇笏 家郷の霧
雪嶺にのびて無欠の飛行雲 平畑静塔
雪嶺には野焼あそびの火と見えむ 平畑静塔
雪嶺にも主と副天の中にして 山口誓子
雪嶺に岩尖りゐて雪積まず 山口誓子
雪嶺に汽車現はれてやや久し 中村汀女
雪嶺に輝きし日も昏れそめし 上村占魚 球磨
雪嶺に近づく歩みなるわが家 細見綾子
雪嶺に甲乙のある端山かな 阿波野青畝
雪嶺に甲斐の紺天あとずさる 上田五千石『森林』補遺
雪嶺に三日月の匕首(ひしゅ)飛べりけり 松本たかし
雪嶺に死ぬ落陽を生かしたし 細谷源二 砂金帯
雪嶺に手を振る遺影ふり返り 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に終る太陽手は垂れて 細谷源二 砂金帯
雪嶺に消えし夕映鮟鱇割く 岡井省二 明野
雪嶺に条紋の蝶かがやかず 川端茅舎
雪嶺に雪あらたなり実朝忌 相馬遷子 山河
雪嶺に雪よぶ鴉きえにけり 角川源義
雪嶺に対きて雪解の簷しづく 長谷川素逝 暦日
雪嶺に対したじろぎ一歩挑む 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に地は大霜をもて応ふ 相馬遷子 山河
雪嶺に朝日「永遠に女性なるものへ」 上田五千石『田園』補遺
雪嶺に沈む満月黄を失し 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺に凍て観覧車解を待つ 山口誓子
雪嶺に日常のわが書の新た 飯田蛇笏 家郷の霧
雪嶺に白くならざる芒原 山口誓子
雪嶺に発し海まで短か川 山口誓子
雪嶺に風立つ男日和かな 上田五千石 森林
雪嶺に揚げたる声や四月尽 細見綾子
雪嶺に落月白くまぎれ消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺のありかや旅の夏爐焚き 中村汀女
雪嶺のうつる田植をしてゐたり(佐渡) 細見綾子
雪嶺のかがやき集め紙乾く 細見綾子 和語
雪嶺のかげ射す車窓人睡たり 相馬遷子 山国
雪嶺のがれ煎餅買ふ掌に雪の声 角川源義
雪嶺のそばだつ畦の子供かな 富安風生
雪嶺のひかり恋しく唇を吸う 赤尾兜子 蛇
雪嶺のひとたび暮れて顕はるる 森澄雄
雪嶺の位高きは奥に坐し 上田五千石『森林』補遺
雪嶺の囲む盆地の石の街 大野林火 飛花集 昭和四十五年
雪嶺の一つ日当りかゞやけり 右城暮石 句集外 昭和三十八年
雪嶺の運河の道を送らるる 山口誓子
雪嶺の影雪嶺に尖りけり 松崎鉄之介
雪嶺の遠さよ袂連ね行く 山口誓子
雪嶺の下にクレタの富士聳てり 山口誓子
雪嶺の下に胎児を養ふも 鷹羽狩行
雪嶺の下五日町六日町 高野素十
雪嶺の下病む者を搬びけり 山口誓子
雪嶺の供華とし銀河懸かりけり 藤田湘子 てんてん
雪嶺の靴あと女なりしを踏む 山口誓子
雪嶺の月の照らせる波一つ 野見山朱鳥 運命
雪嶺の光や風をつらぬきて 相馬遷子 雪嶺
雪嶺の光わが身の内照らす 相馬遷子 山河
雪嶺の光輝を煽り飛ぶ白鳥 佐藤鬼房
雪嶺の紅を含みて輝けり 松本たかし
雪嶺の黒く夜明に連亙す 山口誓子
雪嶺の最高峰に向へる眼 松本たかし
雪嶺の歯向ふ天のやさしさよ 松本たかし
雪嶺の手がかりもなき胸壁よ 山口誓子
雪嶺の春やいづこの田も日射す 山口誓子
雪嶺の尚彼方なる一雪嶺 右城暮石 声と声
雪嶺の裾を踏まんと来て踏むも 相馬遷子 山国
雪嶺の青き昃りのとき浴む 木村蕪城 寒泉
雪嶺の青く震ひぬ夜の鏡 桂信子 草影
雪嶺の赤恵那として夕日中 橋本多佳子
雪嶺の折るるばかりの鋭さよ 松本たかし
雪嶺の雪の平は山上湖 山口誓子
雪嶺の雪乱るるところ襞乱る 山口青邨
雪嶺の前朴の花朝茶の湯 山口青邨
雪嶺の大を以て怒りを鎮む 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺の大を数ふや十座余り 松本たかし
雪嶺の大三角を鎌と呼ぶ 山口誓子
雪嶺の朝な影濃き園児服 原裕 葦牙
雪嶺の二月南方戦果に満つ 山口誓子
雪嶺の覗く苗代かぐろしや 石田波郷
雪嶺の白かぎりなし總選挙 相馬遷子 雪嶺
雪嶺の白きがいたく霞みたり 山口誓子
雪嶺の薄肩尾根の薄ければ 山口誓子
雪嶺の尾根が陥ち来て親不知 山口誓子
雪嶺の浮きて流れず茜空 原裕 青垣
雪嶺の方へともなく逍遥す 上田五千石 風景
雪嶺の無言に充てる太虚かな 松本たかし
雪嶺の名をみな知らずして眺む 山口誓子
雪嶺の裏へ白夜の日が廻る 有馬朗人 耳順
雪嶺の稜骨くろし地にも雪 相馬遷子 山河
雪嶺の冷たさいつも桜の上(長野県高遠へ四句) 細見綾子
雪嶺の麓再会と言ふ茶房 福田蓼汀 秋風挽歌
雪嶺の皓体雲の環(わ)をまとひ 松本たかし
雪嶺の緻密な雪の上を飛ぶ 山口誓子
雪嶺の蹤き来ずなりて帰路寧し 上田五千石『田園』補遺
雪嶺はつらなり畝はたてよこに 長谷川素逝 暦日
雪嶺ははなびら鎌も御在所も 山口誓子
雪嶺は湖畔の榛をひきたてぬ 阿波野青畝
雪嶺は燦うなゐ子は蒲公英を 山口青邨
雪嶺ひらく常念の座を真中に 森澄雄
雪嶺へゆく目もどる目煙たつ 加藤秋邨
雪嶺へわさび根分けの目を上ぐる(長野県安曇山葵田二句) 細見綾子
雪嶺へ貨物車長き列と影 右城暮石 声と声
雪嶺へ向きはつきりと肯定語 藤田湘子 神楽
雪嶺へ向けチカチカと鶸の嘴 木村蕪城 寒泉
雪嶺へ喉のびて鶏鳴となる 橋閒石
雪嶺へ酷寒満ちて澄みにけり 相馬遷子 山国
雪嶺へ日暮紫寄するまで(長野県安曇山葵田二句) 細見綾子
雪嶺まで枯れ切つて胎かくされず 森澄雄
雪嶺まで行かずに未亡人の家 山口誓子
雪嶺まで行きては戻るばかりかな 平井照敏 天上大風
雪嶺みなわが故旧天守降りがたき 山口誓子
雪嶺みな越後境に根を下す 山口誓子
雪嶺も見えずもてなす何もなし 山口誓子
雪嶺やいまに誦して純愛詩 上田五千石『天路』補遺
雪嶺やいま口閉ぢて牡蠣そだつ 加藤秋邨
雪嶺やマラソン選手一人走る 西東三鬼
雪嶺や右に首垂れイエス像 野澤節子 鳳蝶
雪嶺や果樹園に斧谺して 藤田湘子 途上
雪嶺や火花発して独楽遊び 山口誓子
雪嶺や牛先立てて牛男 森澄雄
雪嶺や群鳥樹頭を見すて見すて 中村草田男
雪嶺や畦の焚火に誰もゐず 秋元不死男
雪嶺や甲斐の蓬はしろがねに 石田勝彦 百千
雪嶺や号泣を野にしづめ得ず 上田五千石『田園』補遺
雪嶺や春のゆふべの村の屋根 草間時彦
雪嶺や榛のさびしき雪間萌え 森澄雄
雪嶺や天龍に家屯して 森澄雄
雪嶺や田にまだなにもはじまらず 森澄雄
雪嶺や日本に雪頓節ぞ欲し 岡井省二 鯛の鯛
雪嶺や肌幾重にもむすびあひ 中村草田男
雪嶺や名もまぶしくて初鴉 森澄雄
雪嶺よさくらの園となりにけり 高屋窓秋
雪嶺より出でて二川とも涸川 山口誓子
雪嶺より春の旭を得て林檎店 森澄雄
雪嶺より低くなりゆく吾が機席 山口誓子
雪嶺より稜駈けりきて春の岬 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
雪嶺よ柑橘に風吹きこぞり 下村槐太 天涯
雪嶺よ女ひらりと船に乗る 石田波郷
雪嶺よ税務署の窓磨かれて 相馬遷子 雪嶺
雪嶺よ日をもて測るわが生よ 相馬遷子 山河
雪嶺をかぞへあまさずかなしみき 加藤秋邨
雪嶺をたたむ山山うづくまり 阿波野青畝
雪嶺をはるか国仲平野かな 細見綾子
雪嶺をひきゐ野に出る川の幅 上田五千石 風景
雪嶺をみちづれにして詩嚢充つ 原裕 青垣
雪嶺をわたる陽ここに四度の瀧 飯田蛇笏 家郷の霧
雪嶺ををろがみ杣の一日終ゆ 木村蕪城 寒泉
雪嶺を何時発ちて来し疾風ならむ 山口誓子
雪嶺を空にし人はあひわかる 橋本多佳子
雪嶺を見わたす湖の桟橋に 右城暮石 句集外 昭和三十八年
雪嶺を光去りまた光射す 野見山朱鳥 愁絶
雪嶺を光源として白夜かな 上田五千石『田園』補遺
雪嶺を今年まだ見ずクリスマス 右城暮石 上下
雪嶺を削ぎ落したる 日本海 伊丹三樹彦
雪嶺を遮二無二攀づる誕生日 赤尾兜子 蛇
雪嶺を若き一日の標とす 藤田湘子 途上
雪嶺を小さき日遅々と天づたふ 福田蓼汀 山火
雪嶺を据ゑ一故旧なき故郷 林翔
雪嶺を雪なき伊勢にゐて眺む 山口誓子
雪嶺を全掲風の日のために 鷹羽狩行
雪嶺を低め低めて信濃川 森澄雄
雪嶺を天の高みに田の昼餉 大野林火 雪華 昭和三十五年
雪嶺を点じ山々眠りけり 大野林火 青水輪 昭和二十三年
雪嶺を登る道白歴歴と 山口誓子
雪嶺を落ち来たる蝶小緋縅 川端茅舎
雪嶺を連ねて阿蘇の火山系 山口誓子
雪嶺を玻璃戸開きて凝視なす 山口誓子
雪嶺遠し落葉松新樹立ち並ぶ 右城暮石 句集外 昭和五十四年
雪嶺下小橋つくろふ雪まみれ 林翔 和紙
雪嶺下鳶を翁と思ひをり 岡井省二 明野
雪嶺下抱き上ぐる児の腹が見え 山口誓子
雪嶺下藍つぼ紅つぼ深し深し 橋本多佳子
雪嶺見せ影も明るし真田村 松崎鉄之介
雪嶺見て子等は天守に瞼張る 山口誓子
雪嶺見て灼鉄を打つ町通る 山口誓子
雪嶺見て天守に吾等君は監守 山口誓子
雪嶺見て天守降りざる一人の靴 山口誓子
雪嶺見て歩くうちにも日は暮るゝ 山口誓子
雪嶺見ゆとて傾ぎゆく一車輛 原裕 青垣
雪嶺見る薄き草履を天守に履き 山口誓子
雪嶺見る名古屋平城よりけふは 山口誓子
雪嶺見る睫毛天守に瞬き 山口誓子
雪嶺残照五十の坂の戦友ら 松崎鉄之介
雪嶺星言葉にちかき光だす 鷹羽狩行
雪嶺星瞳ににじむ旅半ば 上田五千石『田園』補遺
雪嶺星旅の早寝を強ひられて 上田五千石『天路』補遺
雪嶺暮れ城も蔀を下さうとする 山口誓子
雪嶺無く極地は雪の平のみ 山口誓子
雪嶺名乗らず遠くより出で迎ふ 山口誓子
雪嶺立つ四十の熱き血の彼方 能村登四郎
雪嶺立つ北の鬼房望むため 平畑静塔
雪熄めば遠雪嶺も現るゝ 右城暮石 句集外 昭和三十一年
仙丈そのほか一々雪山のその名にうなずく 荻原井泉水
羨むやかの雪嶺の若き死を 相馬遷子 雪嶺
船の銅羅かの雪嶺に谺せる 福田蓼汀 山火
船は皆出てしまひ雪の山山なり 尾崎放哉 一燈園時代
全貌を見せぬ雪嶺の白皚々 右城暮石 句集外 昭和三十三年
禅寺の屋根落ちし雪山を成す 右城暮石 句集外 昭和五十九年
僧ひとりまじりて仰ぐ雪の山 飯田龍太
双眼鏡の双眼こらし雪嶺見る 山口誓子
喪章はづす雪嶺ちかき野の光り 鷲谷七菜子 黄炎
蒼天の彼の雪嶺の鎌尾根よ 松本たかし
大寒の夜明雪嶺微笑せり 相馬遷子 雪嶺
大日の顔雪嶺に立ちをれば 山口誓子
大和にもかゝる雪嶺雪金剛 右城暮石 上下
凧あがる斑雪の山の面かな 清崎敏郎
淡海の奥の奥には雪嶺立つ 山口誓子
地図を羞ぢず雪嶺見ゆる天守に来ぬ 山口誓子
馳す雪嶺紅雲ちぎりちぎり捨て 上田五千石『田園』補遺
竹藪の梢に遠し雪の山 正岡子規 雪
中空に相寄り昏れる雪の嶺 桂信子 緑夜
中継の後もマラソン雪嶺へ 鷹羽狩行
朝焼けの雪山負へる町を過ぐ 篠原梵 年々去来の花 雨
朝日射す斑雪嶺に対きわが暗し 岸田稚魚 負け犬
町に燈が点いて暮れゆく雪の嶺 山口誓子
町の上に雪嶺澄めり吹雪熄む 相馬遷子 山国
長きトンネル出て雪山の夕かな 村山故郷
鳥帰る雪嶺の肩雲の間に 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
津軽とて梅雨青雲に雪の山 水原秋櫻子 帰心
追分や越後路雪嶺立ち塞ぎ 福田蓼汀 秋風挽歌
鶴舞ふや雪嶺遠き世を距て 野見山朱鳥 幻日
鉄橋の影水にある雪の山 飯田龍太
天に尖りて雪嶺と吾と立つ 山口誓子
天守の雪嶺參を見むと靴脱げり 山口誓子
天寿とは父を焼く日の遠雪嶺 古舘曹人 能登の蛙
天日に我が血ふえたり雪の嶺 渡邊水巴 富士
田掻牛海に向くとき雪嶺照る 角川源義
田返して杏の花を雪嶺下 森澄雄
搭乗機まで雪嶺の反射光 山口誓子
湯檜曽水上すぎて雪山に日暮るゝ 村山故郷
透くばかり雪嶺いまは天のもの 大野林火 方円集 昭和四十九年
頭たれて月に覚め居り雪の山 前田普羅 飛騨紬
二階より雪の山見て春やすみ 雨滴集 星野麥丘人
日がさしてきて照りそめし斑雪山 清崎敏郎
日がさしてくるはさびしや斑雪山 清崎敏郎
日のテラス雪嶺へ展べ佳人亡し 木村蕪城 寒泉
日の直下立つくろがねの雪の嶺 相馬遷子 雪嶺
日の当りをる雪山の雪げむり 右城暮石 句集外 昭和四十九年
日もすがら日当りてゐし雪山か 清崎敏郎
日りんに耐ふる雪嶺雲を絶え 飯田蛇笏 家郷の霧
日象と雪山ふかく水かがみ 飯田蛇笏 雪峡
日没るとき隠れ雪嶺に光当つ 上田五千石『森林』補遺
日本海の雲つどひ侍す雪嶺あり 村山故郷
乳牛に遠き雪嶺の遅日光 廣瀬直人 帰路
入りし日が裏よりつゝむ雪の嶺 相馬遷子 山国
年つまる鼻先にすぐ雪の山 森澄雄
馬車ゆけり春の雪嶺照る下を 草間時彦 中年
梅雨川を従へ雪嶺海に向く 角川源義
梅折つて雪山遠く帰るの図 山口青邨
白蝶に越の雪嶺も末期なり 山口誓子
白鳥にこごしき雪の越の山 石塚友二 曠日
白鳥の帰北うながす斑雪山 野澤節子 八朶集
白鳥去り雪嶺のやや老兆す 能村登四郎
白鳥見て雪山を見て戻りたる(新潟県、瓢湖六句) 細見綾子
麦あをみ雨中の雪嶺雲むるる 飯田蛇笏 雪峡
麦踏のたつた一人にみな雪嶺 加藤秋邨
八方に雪山ばかり年用意 角川源義
抜群の雪嶺生涯たどたどし 古舘曹人 能登の蛙
半月に向きかはりしがまた雪嶺 加藤秋邨
半月に今昔もなき斑雪山 森澄雄
反芻の牛に遠見の斑雪山 鷲谷七菜子 花寂び
斑雪山月夜は滝のこだま浴び 飯田龍太
斑雪山魂のいろいろ宙に充ち 飯田龍太
斑雪山眺めて遠き月日かな 飯田龍太
斑雪山半月の黄を被るなり 大野林火 雪華 昭和三十五年
斑雪山負ひたる雪の墓並ぶ 清崎敏郎
斑雪嶺の紅顔とあり飛騨の国 金子兜太
斑雪嶺の暮るるを待ちて旅の酒 星野麥丘人
斑雪嶺の翳ればかげる種物屋 岡本眸
斑雪嶺を四方に立掛け雪解村 林翔
班雪嶺の暮るるを待ちて旅の酒 弟子 星野麥丘人
飛び来し方飛び行く方のみな雪嶺 山口誓子
微動せず風に研がるゝ雪の嶺 相馬遷子 山国
百姓のおどけ走りに雪嶺湧く 飯田龍太
貧しくて照る雪嶺を窓にせり 相馬遷子 山国
武藏野やあちらこちらの雪の山 正岡子規 雪
風邪の眼に雪嶺ゆらぐ二月尽 相馬遷子 山国
蕗の薹青し雪の嶺殺到す 加藤秋邨
淵となる夜のしづけさ雪嶺聳つ 鷲谷七菜子 銃身
噴井あり沙漠に雪嶺もりあがり 加藤秋邨
噴煙をおのれまとひて雪の嶺 相馬遷子 山河
米負うて男雪嶺を負ひ来る 森澄雄
壁に身をする馬や雪山眼のあたり 金子兜太
墓ありてそれより雪の山幾重 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
暮れて蒼し雪積む嶺も雪無きも 相馬遷子 雪嶺
忘却のならぬ遠さに雪嶺泛く 上田五千石 天路
北斗の柄雪嶺の襞につきささる 有馬朗人 母国拾遺
北方に遠祖の如き雪の嶺 山口誓子
牧舎の扉雪嶺へ向け明け放つ 草間時彦 中年
牧者杖はつしと振れば照る雪嶺 有馬朗人 知命
蜜入れる林檎雪山ととのへり 大野林火 飛花集 昭和四十三年
眠る児を遥かに囲む雪の嶺 有馬朗人 母国拾遺
木の芽谷なほ雪嶺のつきまとふ 中村汀女
目を上げて初旅にあり雪の嶺 森澄雄
夜の雪嶺車中教師の肱かたし 伊藤白潮
夜明けつつなほ雪嶺は夜の方 森澄雄
野の一樹より雪嶺へ道はじまる 野見山朱鳥 荊冠
野兎追うて雪嶺それし鷹一つ 飯田蛇笏 家郷の霧
矢のごとく降り雪嶺の雪となる 原裕 葦牙
夕べ現れて雪嶺すでに星かざす 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
夕茜真紅な方に雪の嶺 山口誓子
夕冴ゆる雪嶺ちりめん織られゆく 橋本多佳子
夕凍みに青ざめならぶ雪の嶺 相馬遷子 山国
夕暮れに奥へ奥へと雪の嶺 山口誓子
窯出しの雪山写シいかばかり 飴山實
欲れば手に五月の雪嶺母の傍 橋本多佳子
来ぬ友の消鳥雪嶺応へざる 松崎鉄之介
陸走る艀の犬に雪の嶺 右城暮石 句集外 昭和三十二年
立ち憩ふときも雪嶺に真向へり 相馬遷子 山国
立ち塞ぐ雪山に日の急ぎ落ち 松本たかし
林檎園人をり雪嶺を遠くしぬ 山口青邨
林帯に雪嶺を据ゑて雪解川 角川源義
累代の墓や雪嶺悲しきまで 山口誓子
嶺の雪天に波うつ季節風 相馬遷子 雪嶺
恋ふ寒し身は雪嶺の天に浮き 西東三鬼
恋捨てに雪山に来しが笑ひ凍る 小林康治 玄霜
連なれる雪嶺御嶽直ぐ判る 山口誓子
狼のちらと見えけり雪の山 正岡子規 雪
狼の見えて隱れぬ雪の山 正岡子規 雪
藁塚若し遠雪嶺に佇立して 岡本眸
哭く鴉雪山ちかき家の群 角川源義
廁より雪嶺の貌夜明け前 森澄雄
搦手に斑雪の山のたたなはる 清崎敏郎
杣のみち今雪山に見えずとも 平畑静塔
楮蒸す湯気あげてをり雪の嶺へ 右城暮石 句集外 昭和九年
煖を採り阿蘇雪岳を顔にせる 山口誓子
痣の青年雪山に融け輝くなり 佐藤鬼房
癩園を春の雪嶺遠巻きに 大野林火 青水輪 昭和二十六年
磧より春の雪嶺羽根ひらく 森澄雄
糀屋が春の雪嶺を見てゐたり 森澄雄
綺羅星は私語し雪嶺これを聴く 松本たかし
蘆枯るる信濃川面に雪嶺の秀 森澄雄
蜷のひげ見てをりし眼を雪山へ 岡井省二 夏炉
蟇のこゑ日の廻りゆく遠雪嶺 角川源義

雪山 続補遺

あぶなしや海へかたむく雪の山 田川鳳朗
いざよひやきのふの雪の不二の山 桜井梅室
おなじ色を重~て雪の山 高桑闌更
のけぞりて雪の上なる雪の山 夏目成美
ひつかくれ~降る雪の山 秋之坊
ひつすくへ硯の蓋に雪の山 傘下
ふらぬ日や見たい程見る雪の山 一笑(金沢)
沖一夜あれてはるかに雪の山 卓池
鶏てたつ日も遅し雪の山 高桑闌更
枝川へ盗まれにけり雪の山 早野巴人
松明けして見るやそこから雪の山 成田蒼虬
正面に江戸のゑぼしや雪の山 平洲 園圃録
雪の山かはつた脚もなかりけり 去来
雪山に死なで見苦し涅槃像 越人
線香やそのまゝでゐる雪の山 昌房
鳥の道ばかり有る也雪の山 成田蒼虬
踏分て何見る人ぞ雪の山 高桑闌更
二日路といふや舳先の雪の山 田川鳳朗
馬場先を乗出す果や雪の嶺 許六
有明をすこしみせけり雪の山 完来

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 18:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

寒暮 の俳句

寒暮 の俳句

寒暮 

アフリカ象の耳のうしろの寒暮かな 伊藤いと子
かまきりの卵嚢よりの寒暮光 高野ムツオ 鳥柱
こんもりと鳩は寒暮に耐ふ容 高澤良一 石鏡
サイレンがつどふ寒暮の墓地の空 小川奴々子
なにもゐぬ洲に汐充ちて寒暮かな 松村蒼石
ねむたくて睡りむさぼり寒の暮 八木林之介 青霞集
やはらかき土を賜はる寒暮かな 柿本多映
われ遊び妻働きて寒の暮 八木林之介 青霞集
一日を寝ていし父の寒暮かな 岡田 耕治
一遍像寒暮を歩き出すところ 高澤良一 素抱
烏賊の墨返り血のごと浴ぶ寒暮 内田美紗 浦島草
羽摶きのあとの静もり寒暮光 菅野茂甚
遠山のまだ見えてゐる寒暮かな 片山由美子
佳きことばもて訪いくる寒暮遠い汽笛 寺田京子 日の鷹
家を出て寒暮のわが家かへりみる 堀井春一郎
家々に寒暮を頒ちゐる老樹 福田甲子雄
火に乗せし菊に生気の寒暮かな 大木あまり 火球
海老跳ねて寒暮の厨かがやかす 石田あき子 見舞籠
寒の暮手紙の束の燃えてをり 木下野生
寒の暮兎の箱に足ふれて 百合山羽公 故園
寒暮いま干潟の果の水あかり 中村祐子
寒暮に売らるわが水枕魚となり 寺田京子 日の鷹
寒暮の灯点けて雨音身を離る 鷲谷七菜子
寒暮の谿滝白光となり展く 鷲谷七菜子 雨 月
寒暮光痩せたるヨハネさらに痩す 藤井 亘
寒暮光諦めにいろありとせば 平野冴子
寒暮光彼には光我に闇 高澤晶子
寒暮少し夕焼け母に還らねば 蓬田紀枝子
寒暮地下道光盗人あまた来る 金子兜太
寒暮肉屋に肉の断面渦を巻く 谷野予志
寒暮濃くなりて煮つまる鯛の骨 佐野まもる
機関車の寒暮炎えつつ湖わたる 山口誓子
京の町ゆくさきざきの寒暮かな 小川ひろし
狂院の寒暮の百の窓並ぶ 谷野予志
胸底に昭和居すわる寒暮光 吉見弘子
串にさす魚やはらかし寒の暮 桂 信子
堅田てふ寒暮の郷の風呂熱し 鈴木鷹夫 大津絵
呼ぶ母にこゑは応へず寒の暮 山口誓子
御頬の寒暮剥落前の罅 中島斌雄
鯉食べて眼の効いてきし寒暮かな 大石悦子
紅梅のおとろふるみしこの寒暮 原裕 青垣
黒富士と鉄塔はるかなり寒暮 松村蒼石 雁
産湯出て足型とられゐる寒暮 赤松[けい]子 白毫
姿見に男がうつる寒暮かな 秋永放子
耳ふたつ吹かれ寒暮の日本海 土肥さだ子
耳門より細身の出入り寒の暮 桂信子 遠い橋
手の中に死神がいる寒暮なり 寺田京子 日の鷹
集卵や寒暮の山がよく見えて 長谷川双魚 風形
商ひて戻る寒暮の子のもとに 田中菅子 『紅梅町』
樟大樹山の寒暮が海に移り 長谷川双魚 風形
畳拭く死後のながさの寒の暮 関戸靖子
森ひとつひとつに寒暮湧くごとく 村越化石
身丈越す火に近づきて寒暮かな 斉藤史子
人買い舟消えた寒暮と おなじ寒暮 伊丹公子
酢のいろに染まり寒暮の骨拾う 岩佐光雄
水すこし溜めて寒暮のわだち跡 加藤耕子
水鳥の羽摶ちごたへのある寒暮 高澤良一 随笑
杉谷に檜山かぶさる寒暮かな 宮坂静生
声のなきこゑを寒暮の鯨幕 富川仁一郎
惜別や寒暮の溝をともに越え 岩崎健一
石灰工場寒暮殺到して来るぞ 加藤かけい
対峙して枯山水の寒暮なり 鈴木鷹夫 大津絵
大津絵の朱の美しき寒暮なり 鈴木鷹夫 大津絵
大仏の胸のうしろに湧く寒暮 福田甲子雄
卓の布替へてあかるき寒暮光 西岡千鶴子
沢蟹の寒暮を歩きゐる故郷 飯田龍太
竹切りし粉がこぼれてゐる寒暮 関口謙太
釣宿の客の帰りし寒暮かな 飯田龍太 涼夜
鉄棒の下の窪みの寒暮かな 内田美紗 浦島草
天哭し猫も哭せる寒暮かな 大橋敦子 勾 玉以後
湯の町は人待ち顔の寒暮なる 大高芭瑠子
呑みはじむ薄紫に寒の暮 松根久雄
縄とびの寒暮いたみし馬車通る 佐藤鬼房
縄とびの寒暮傷みし馬車通る 佐藤鬼房
白き馬寒暮の波を聚めをり 岸田稚魚 筍流し
尾の長きこの鳥去れば寒暮の木 高澤良一 宿好
斧一丁寒暮のひかりあてて買ふ 福田甲子雄
負犬となるとも寒暮妻が待つ 冨田みのる
風の中彼方直視十里の寒暮あり 飯田龍太
風の彼方直視十里の寒暮あり 飯田龍太
物は皆器に入りぬ寒の暮 森川麗子
物売りに寒暮あかるむ橋の際 桂信子 黄 瀬
母を入れ地球寒暮の蒼さかな 下山光子
母亡くて寒暮吹く笛山に沁む 佐藤母杖 『一管の笛』
亡きひとを木に喩へつつ寒暮かな 友岡子郷 風日
夢にまた寒暮の土のひと握り 河原枇杷男 定本烏宙論
夢解や贋あかしやは寒暮の木 宮坂静生 山開
明日までは転覆し置く寒暮のトロ 西東三鬼
盲鵜の法師のごとき寒暮かな 近藤一鴻
木の裏や表や甘き寒暮かな 柿本多映
流域の寒暮ひきずり鴉翔つ 河合凱夫 飛礫
旅にをり眼鏡を通し寒暮いふ 下田稔
両の肩抜けし曲り家寒暮光 照井 翠
佗助を骨色にまで寒の暮 斎藤玄 雁道
摶つ濤に眼鏡の白む寒暮かな 中戸川朝人 残心
蜆売り発止と諏訪の寒暮にゐ 宮坂静生 春の鹿

寒暮 補遺

「もつと光を」鴉の絶唱寒の暮 上田五千石『田園』補遺
イルカの鼻 撫でる 寒暮の飼育青年 伊丹三樹彦
ガラスケースに剥製の寒暮かな 廣瀬直人 帰路
しづもりて庭樹にはやも寒暮光 伊丹三樹彦
なぜかこの寒暮を父と二人きり 藤田湘子
なにもゐぬ洲に汐充ちて寒暮かな 松村蒼石 雪
ひとときは寒暮の日記しぐれけり 高屋窓秋
一段と寒暮の水の甘かりき 高屋窓秋
雲を駆け帰る寒暮の看護妻よ 野見山朱鳥 愁絶
貨物船に寒暮羽ばたく熔接光 右城暮石 句集外 昭和三十二年
外燈細身寒暮帰る鵜みな濡れ身 大野林火 雪華 昭和三十九年
崖下の町犬吠えてゐる寒暮 大野林火 月魄集 距和五十七年
寒の暮まばたきしては落着かず 弟子 星野麥丘人
寒の暮一塊の海抱きつづけ 上田五千石『田園』補遺
寒の暮兎の箱に足ふれて 百合山羽公 故園
寒の暮灯さず妻が泣いてをり 弟子 星野麥丘人
寒暮にて足に跫音つきまとふ 鷹羽狩行
寒暮にて頭燈いまだ焚火色 山口誓子
寒暮の谷滝白光となり展く 鷲谷七菜子 銃身
寒暮の灯点けて雨音身を離る 鷲谷七菜子 銃身
寒暮ひとを忿り足らざる駅の裏 伊丹三樹彦
寒暮までト口ッコ外れるまで遊ぶ 山口誓子
寒暮ラッシュの 都塵ぼかしに照明城 伊丹三樹彦
寒暮鵜は耐へとぶ一羽も叫ばずに 大野林火 雪華 昭和三十九年
寒暮光わが降架図に母よ在れ 上田五千石 天路
寒暮光見舞の菊を焚きにけり 角川源義
寒暮光瀬頭の渦衰へず 佐藤鬼房
寒暮地下道光盗人あまた来る 金子兜太
寒暮灯さず頬杖の教師像 上田五千石『田園』補遺
寒暮来て階梯険しき聖歌楼 山口誓子
寒暮来て衰へし鍵盤蓋したり 山口誓子
堪へかねて寒暮のネオン走り出す 岡本眸
機関車の寒暮炎えつつ湖わたる 山口誓子
汽罐車のよこがほ寒暮裏日本 橋本多佳子
泣かんばかり寒暮の潦を越ゆ 佐藤鬼房
空に未だにほふものなし寒暮色 能村登四郎
串にさす魚やはらかし寒の暮 桂信子 女身
呼ぶ母にこゑは応へず寒の暮 山口誓子
紅梅のおとろふるみしこの寒暮 原裕 青垣
黒き男鉄船へ入る寒の暮 西東三鬼
黒富士と鉄塔はるかなり寒暮 松村蒼石 雁
菜を引いて寒暮のまなこ濡れにけり 岡本眸
山の灯に棘生えてくる寒暮かな 飯田龍太
寺ひとつすぐれし村の寒暮かな 廣瀬直人
手を触れて寒暮の母を覚ましけり 石田勝彦 雙杵
獣めく熔岩にまつはる寒暮光 角川源義
青火噴く寒暮の工場押しくる潮 佐藤鬼房
青竹の千鳥がかりも寒暮にて 飯田龍太
全山の寒暮滝壷よりひろごる 橋本多佳子
袖口を噛んでひつぱる寒暮の馬 右城暮石 句集外 昭和三十三年
沢蟹の寒暮を歩きゐる故郷 飯田龍太
団栗を四方に射ちうつ子の寒暮 伊丹三樹彦
潮退いて寒暮まぬがれがたき礁 鷲谷七菜子 花寂び
釣宿の客の帰りし寒暮かな 飯田龍太
動きしか寒暮干潟の黒きもの 右城暮石 句集外 昭和三十九年
禿山を駈けくだりしは寒暮の巷 伊丹三樹彦
縄とびの寒暮いたみし馬車通る 佐藤鬼房
廃船のあつけらかんと寒暮光 佐藤鬼房
白き馬寒暮の波を聚めをり 岸田稚魚 筍流し
風の彼方直視十里の寒暮あり 飯田龍太
鱒池の鱒に寒暮の水澄みて 飯田龍太
明治に初点今日の寒暮に燈台点く 山口誓子
戻る鵜に寒暮むらさきより黒へ 大野林火 雪華 昭和三十九年
陽を浴びた顔こちらむく寒暮の村 金子兜太
旅やめて寒暮とりとめなく残る 大野林火 月魄集 距和五十七年
老婆来て赤子を覗く寒の暮 西東三鬼
佗助を骨色にまで寒の暮 斎藤玄 雁道
咆哮の牛浦の町すぐ寒暮 古沢太穂 捲かるる鴎以後
塒雀よ海ありて寒暮光さす 佐藤鬼房
榧の木にかへる雀の寒暮あり 森澄雄
濤つひに寒暮の船を生みいだす 岡本眸
藪の向うに早鐘の寒暮かな 廣瀬直人

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 18:08 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪起し の俳句

雪起し の俳句

雪起し

例句を挙げる。

あかんぼの頭蓋やはらか雪起し 辻美奈子
くろぐろと津軽がありし雪起し 青山法破来
とつぷりと暮れし海より雪起し 田村木国
ふるさとに腰抜けてゐる雪起し 細川加賀
われの中われを覚ましめ雪起し 森澄雄
一天を転げ出したる雪起し 安原葉
乗換の越後湯沢の雪起し 大久保白村
初鳴りは高嶺止まりに雪起し 相馬沙緻
北国の冬はかく来る雪起し 山本薊花
唯一つ大きく鳴りぬ雪起し 高浜虚子
夜半の雪起きてくすしに君馳せしか 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
夜半の音雪起しとは知らざりし 西尾北鳴
大富士の面よりおこり雪起し 井沢正江
大釜に湯のたぎりをり雪起し 鎌田容克
夫の字の一つおどろく雪起し 加藤知世子 花 季
山国の耳振る牛よ雪起し 高橋正人
幾山を越えて夜となる雪起し 福田甲子雄
戸の隙に手紙が刺さり雪起し 細川加賀
榛の木に風纏ひつく雪起し 中川志帆
機音の街をゆすりぬ雪起し 加藤知世子 花 季
死の想ひありて他郷の雪起し 清水昇子
法要の箸とる僧や雪起し 飯田蛇笏 春蘭
海沿ひの一筋町や雪起し 小峰恭子
灯しても鏡奥晦し雪起し 山口草堂
炉ごもりのこころ満たざる雪起し 森 澄雄
照るときの伊吹の鞍や雪起し 阿波野青畝
生湯葉のほのと甘しや雪起し 関 成美
砂山に雀が鳴いて雪起し 今井杏太郎
納豆するとぎれやみねの雪起 内藤丈草
良寛の里にききゐる雪起し 茂里正治
花麹買うて土堤ゆく雪起し 飴山實 辛酉小雪
荒海に一と火柱や雪起し 堀前小木菟
莨火をわかつやとゞろ雪起し 相川背水
話しゐて距てある人雪起し 川村紫陽
軒裏に榾高く積み雪起し 吉沢卯一
酔た人をかへさや花の雪おこし 井原西鶴
雪起しいくたび坊の灯を奪ふ 鈴木貞雄
雪起しきくべくなりし屏風かな 京極杞陽
雪起ししんのいかりは一度かぎり 加藤秋邨 雪起し
雪起し一晩鳴りて雨ばかり 田辺 栖村
雪起し一瞬あをき闇つくる 大竹孤悠
雪起し仏間の暗き加賀の国 西村公鳳
雪起し出がけに念を押されたり 橋石 和栲
雪起し夜すがら沖を離れざる 安藤五百枝
雪起し夢千代像にひびきけり 岩崎照子
雪起し恐ろし加賀の冬なつかし 西村公鳳
雪起し普賢の象の大き四股 岡井省二
雪起し海のおもてをたゝくなり 阿部慧月
雪起し轟き渡り雪となる 金山 有紘
雪起し闇に海の香強まれり 伊藤京子
雪起し障子震はし過ぎにけり 本間翠雪
甲羅酒雪いかづちを聴きながら 角川春樹
雪雷や死の刻を医師知る由なし 町原木隹
春もまた雪雷やしなの山 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雪の雷浅間の火天ゆるがし来 大坂藤屋
雪の雷若狭酒蔵ゆるがしぬ 橋本鶏二
黒燿の眼が驚きし雪の雷 細見綾子

雪起し 補遺

ある日戦が忽と立ちゐき雪起し 加藤秋邨
われの中われを覚ましめ雪起し 森澄雄
花麹買うて土堤ゆく雪起し 飴山實
黒姫は鴉のことか雪起し 鷹羽狩行
黒燿の目がおどろきし雪の雷 細見綾子
照るときの伊吹の鞍や雪起 阿波野青畝
雪起しけふあり春も遠からじ 森澄雄
雪起しと人いふに雪降り出しぬ 岸田稚魚 紅葉山
雪起し何から先に焼き棄てん 橋閒石
雪起し響みかさねしひとつかな 岡井省二 明野
雪起し山刀伐峠底ひびき 加藤秋邨
雪起し出がけに念を押されたり 橋閒石
雪起し心底応ふるもののあり 岸田稚魚 紅葉山
雪起し普賢の象の大き四胯 岡井省二 明野
雪起し烙印しかと信濃鎌 鷹羽狩行
雪起し瞽女のうたひし恋の唄 鷹羽狩行
雪起低き軒端のふるへけり 阿波野青畝
地平より三たび四たびと雪起し 阿波野青畝
滴瀝の音日昏れつつ雪起し飯田龍太
頭を下げて炉籠りをれば雪起し 森澄雄
法要の箸とる僧や雪起し 飯田蛇笏 春蘭
炉ごもりのこころ満たざる雪起し 森澄雄
老夫婦しづかにあれば雪起し 山口青邨
窖(あなぐら)へ下りる裸火雪起し 橋閒石 雪
窖へ下りる裸火雪起し 橋閒石

雪起 続補遺

納豆するとぎれやみねの雪起 丈草
酔た人をかへさや花の雪おこし 井原西鶴
身ぞひとり夢の枯野の雪起こし 角上
ふす児やわつとをびえの雪おこし 尚白

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:54 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

寒の俳句

寒の俳句


例句を挙げる。

われ起きてはじまるけふの寒きびし 山口波津女 良人
妻の瞳のかまど火明り寒きびし 柏燹
寒きびし一刀彫のごとくなり 鈴木青園
寒きびし學生駅へ群れよぎり 及川貞 夕焼
寒きびし悠範義道居士天へ 飯田蛇笏 春蘭
寒きびし気を張りつめて参籠す 島村茂雄
寒きびし海の匂ひに街暮るる 河野南畦 湖の森
寒きびし醪湧くこと遅れ勝ち 中井余花朗
いちぢくの葉の残りをる寒九かな 藤田あけ烏 赤松
おささらの列へ寒九の浄め水 小枝秀穂女
ちいちいと山を鶸とぶ寒九かな 省二
ひじき置かれ燦たり寒九たり 中北綾子
ひたひたと寒九の水や廚甕 飯田蛇笏(1885-1962)
もぐさ屋の硝子戸ひびく寒九かな 桂 信子
ゆらめきは百済ぼとけの寒九の身 井沢正江 以後
よき甕に寒九の水を封じけり 武田酔仏
二三枚寒中見舞申し上ぐ 佐田 かずえ
仏にも寒九の水をたてまつる 森澄雄
出来過ぎの話寒九の水呷る 種子田誠子
刀鍛治寒九の庭にひびきけり 向久保貞文
勝者なく寒中水泳終りけり 伊藤通明
寒中の毛衣磨れば火の走る 大須賀乙字
寒中の画房花満つ陶壺かな 西島麦南 人音
寒中の茜粗々しき筑波 原裕 新治
寒中の蕗掘られ来て箸洗ひ 石塚友二 光塵
寒中の風鈴が鳴る四温かな 飯田蛇笏 春蘭
寒中の鰡に呼ばるる何の酔ひ 佐藤鬼房 朝の日
寒中や柴の虫繭あさみどり 飯田蛇笏 春蘭
寒中や水なくば供華砂利に埋め 依光陽子
寒中や目覚めたる目に柚子の照り 岸田稚魚
寒中水泳観る寒泳の貌をして 河野南畦 『試走車』
寒九の水山国の血を身に覚ます(父母ともに信州の生れなれば) 野澤節子 『飛泉』
寒四郎溜息橋をひき返す 加古宗也
寒四郎火星を珠とかがやかす 宮津昭彦
寒四郎秩父を孫の駆け回る 矢島蓼水
山河眼にさやか寒九の水のめば 朔多 恭
指折りて寒九にひと日早き雨 大橋敦子 匂 玉
捨て灰をなだめ寒九の雨なりし 能村登四郎
昼の月上げて寒九の潮かな 大澤ひろし
棒のごと寒九の水を呑みくだす 大石悦子
歓べる寒九の水ののんどかな 石塚友二
母に似て寒中大事にされている 宇多喜代子 象
氷上や寒九の雨のうちけむり 齋藤玄 飛雪
氷柱折つて寒九の水を汲みゆけり 茂里正治
犬歯見せ寒中水泳より戻る 大石雄鬼
磨かれて寒九のこゑの太垂木 岡井省二
磨かれて寒九の杉の横たはる 笹井武志
竹が竹打つ音を聴く寒九かな 鈴木太郎
笹百合の実のからからと寒四郎 青木重行
筆おろす寒九の水になじませて 武藤あい子
筆洗にむらぐもつくる寒四郎 上田五千石 琥珀
粥吹いて寒九のまなこ濡しけり 鷲谷七菜子 花寂び
老の眼のものよく見えて寒四郎 小松崎爽青
老酒蜜のごとき寒中の甕かな 高田蝶衣
虹鱒の虹寒中をおとろへず 宮津昭彦
諒闇の語のよみがへる寒四郎 青木重行
身の内の闇を寒九の水流る 成田清子
霊招ばひしをり寒九の黒づくめ 後藤綾子
おかめ笹いつまでつづく寒日和 内藤吐天 鳴海抄
ほうほうと楢山枯るる寒日和 富安風生
もの影の皆正しゐる寒日和 堀恭子
リヤカーの影は複雑寒日和 大岳水一路
一歩出てかんばせ怯む寒日和 高澤良一 素抱
並ぶ鵜の黒の端正寒日和 吉年虹二
埴輪の手どこへ伸びても寒日和 廣瀬直人
寒日和コックが花を捨てに出づ 多田睦子
寒日和布袋に礼を申しけり 平本微笑子
寒日和渚の平踏めば硬し 瀧春一 菜園
山肌のひとところ濡れ寒日和 阿部みどり女
帰りにもなお立話寒日和 北田真洲美
庭に出づくるぶし二つ寒日和 井沢正江 一身
手を摶つて粉はらふ昼寒日和 桂信子 遠い橋
抽斗に花種ねむる寒日和 本宮哲郎
死は狎れを許さぬものぞ寒日和 飯田龍太 山の影
水平線波立ち見ゆる寒日和 大橋敦子 匂 玉
海辺の松黄に汚れ寒日和 瀧春一 菜園
湧水の川を養ふ寒日和 高澤良一 ぱらりとせ
湧水の気泡ぴぴぴぴ寒日和 高澤良一 ぱらりとせ
炭竃ほとり木瓜咲き出でぬ寒日和 冬葉第一句集 吉田冬葉
獄の扉のゆくてをはばむ寒日和 飯田蛇笏 雪峡
発掘の土中の人語寒日和 井沢正江
禽獣とゐて魂なごむ寒日和 麦南
空ざまに真葛枯れたり寒日和 内藤吐天
笠嶽に笠雲翳し寒日和 西本一都 景色
箱棟の寺紋きらめく寒日和 高崎恵久子
芝舐むる牛濤を見ず寒日和 石原舟月 山鵲
郵便の来てをりし門の寒日和 日野草城
霊柩車野に遠ざかる寒日和 有働亨 汐路
から鮭も空也の痩も寒の内 芭蕉
くわりん落ち木瓜守りけり寒の内 梓月
さそはれて寒の内なる寺詣り 尾之内 かゑ
たのもしき岩の風切り寒の内 齋藤玄 飛雪
のら猫の声もつきなや寒の内 浪化
ひたとやむ咳の薬や寒の内 筏井竹の門
むきだしの仏の肩も寒の内 上田五千石 琥珀
不慮の死に人垣ゆるむ寒の内 安東次男 裏山
乾鮭も空也の痩も寒の内 芭蕉
何う手探りしても出口のない寒の内かな 冬の土宮林菫哉
何ともなき足大切や寒の内 龍胆 長谷川かな女
働く妻の裾に病みをり寒の内 小林康治 玄霜
切干の袋ゆたかや寒の内 広江八重桜
勧進の白提灯も寒の内 館岡沙緻
厳かに万象寒の内にあり 風生
名ある星名のなき星も寒の内 猪俣千代子 秘 色
垣越しに低き日の出や寒の内 碧童句集 小澤碧童
夜噺の脾胃の強さよ寒の内 千川
寒の内このやうな日のあることを 星野立子
寒の内たま~客を迎へけり 小澤碧童 碧童句集
寒の内まくらのにほひほのかなる 飯田蛇笏 春蘭
寒の内子等健やかであれば足る 高木晴子
寒の内朱唇干されてゐたりけり 赤松[ケイ]子
寒の内釣り来し鮒の泳ぐかな 小澤碧童 碧童句集
寧楽山の寒の内訪ふ身ごしらへ 稲畑汀子 春光
小をんなの鼠走りや寒の内 石塚友二 光塵
庖丁の刃こぼれ憂しや寒の内 鈴木真砂女 夕螢
松籟やふたり寝る夜も寒の内 清水基吉 寒蕭々
枝折りて香に立つ柴や寒の内 丸林好翠
森といふ大きしじまよ寒の内 上田五千石 田園
水口にうごく田水や寒の内 松村蒼石 寒鶯抄
煤降るも貯炭の痩せも寒の内 小林康治 『玄霜』
痩せし身をまた運ばるる寒の内 石田波郷
肉桂の葉がもつ艶や寒の内 裸馬
肌寒の内にうごきし恋かとも 松瀬青々
花温室に漁具ものめきて寒の内 飯田蛇笏 霊芝
薬のむあとの蜜柑や寒の内 子規
蹇が厨を鳴むす寒の内 小林康治 玄霜
酒買ひに線路越しをり寒の内 石塚友二 光塵
鎌倉のなかの往来も寒の内 清水基吉 寒蕭々
頬に享くる日の屑ばかり寒の内 斎藤玄
餅焼いて寝しな喰ひけり寒の内 碧童
鮒売を二タ朝聞くや寒の内 小杉余子 余子句選
鶴にやる鰌惜むや寒の内 比叡 野村泊月
ものの音沈めて深き寒の闇 飯田蛇笏 椿花集
一徹の眼も寒の日も美しき 上村占魚 『自門』
咲きつゞく臘梅にある寒の日々 高木晴子 花 季
嗚呼といふ声々寒の日差来て 齋藤玄 『雁道』
妻無しの鬼面を映す寒の闇 石原八束 『断腸花』
寒の日のいくたび変る海の色 五所平之助
寒の日の爛々とわれ老ゆるかな 中川宋淵
寒の日の西日となりて射して来ぬ 斎藤空華 空華句集
寒の日や弥勒の笑ひ蒼覚めぬ 角川春樹
寒の日陰シャツがつぶやく妻のように 大井雅人 龍岡村
寒の日陰音失ないて登校児 大井雅人 龍岡村
寒の空日々の日のありどころ 高野素十
寒の闇ほめくや赤子泣く度に 西東三鬼
寒の闇来て一燈に入る夜学生 桂信子 花寂び 以後
寒の闇煩悩とろりとろりと燃ゆ 草城
寒の闇腓返りに呼ばれたる 徳弘純 麦のほとり
寝しづみて老が火を吹く寒の闇 飯田蛇笏
少年の毛穴十方寒の闇 飯田龍太
廻廊の拭きこまれたる寒の寺 坂内佳禰
潰えゆく藁火にひしと寒の闇 飯田蛇笏 春蘭
炉を焚きて静かに老いませ寒の日々 殿村莵絲子 花 季
白衿を恃みて寒の闇すがし 川端京子
石階を寒の日射しの降り来る 木下夕爾
空瓶のかたちを出でず寒の闇 久保純夫 熊野集 以後
篁や寒の日輪たよりなし 清水基吉 寒蕭々
簑虫や病窓寒の日を入るゝ 小林康治 四季貧窮
糸を張る杣に寒の日強まれり 飯田蛇笏 椿花集
終夜食む獣屋の神寒の闇 飯田蛇笏 雪峡
羽をのして鶴なく寒の日和かな 飯田蛇笏 春蘭
老人や寒の日だまり誰も居ず 草間時彦 櫻山
肉食のあと寒の日に照らされに 清水径子
降りさうで寒の日空の浚渫船 長谷川双魚 風形
雪山をはなれてたまる寒の闇 飯田龍太 山の木
風邪の町寒の日輪白熱し 相馬遷子 雪嶺
いく夕べ死を定めけむ寒の中 立花北枝
いのち一つ寒の瞳の中にあり 野澤節子
一あらし犬のど吠えや寒の中 巴水 俳諧撰集「藤の実」
乾坤に寒といふ語のひびき満つ 富安風生
乾鮭も空也の痩も寒の中 芭蕉
供するは梨を尋ん寒の中 服部嵐雪
厳といふ字寒といふ字を身にひたと 高浜虚子
寒といふことばのごとくしづかなり 長谷川素逝
寒といふ大いなるもの空より来 阿部みどり女
寒といふ字のー劃々々の寒さ 富安風生
寒といふ百の切つ先足下より 河野薫
干鮭も空也の痩も寒の中 芭蕉
海老焼てやまひに遊ぶ寒の中 樗良
端倪を許さぬ寒の中にあり 相生垣瓜人 微茫集
釘うてばひゞく身内を寒と言はむ 綾子
千両の実のいちいちに寒没日 斎藤玄
ふぐりまで拭かれて寒の没日うるむ 森澄雄
声走る寒の落日見に来よと 永井東門居
風よりも透けば死すべし寒入日 仙田洋子 橋のあなたに
声走る寒の落日見に来よと 龍男
茎石に寒の没日のしばしあり 宮田正和
千両の実のいちいちに寒没日 斎藤玄
のこる杜に今いま今の寒入日 及川貞
牛乳うまし寒の入日の雲染めて 太田鴻村 穂国
寒入日妻子にしばたゝかるるなり 細谷源二 砂金帯
一日の終り 寒ンの入日を たしかめに出る 吉岡禅寺洞
寒没日濡れ羽たためば撫肩鵜 野澤節子 花 季
寒没日むずと掴みて家組まる 加藤知世子 黄 炎
のこる杜に今いま今の寒入日 及川貞
熊笹にしばらく寒の入日かな 木下夕爾
寒没日濡れ羽たためば撫肩鵜 野沢節子 花季
がうがうと朝日押上ぐ寒の海 小島みつ代
まさしくも子らの星夫の星寒の空 及川貞
寒の空ものの極みは青なるか 細見綾子
寒の空日々の日のありどころ 高野素十
寒の空竿を巻き旗赤きはまる 島津亮
寒の街ある日人より馬多き 加藤楸邨
工場の太き白煙寒の空 望月田鶴子
帰り来て駅より低き寒の町 石田波郷
松浜のかゞやくみよや寒の海に 石田波郷
欅ありさびしからざる寒の空 大井雅人
葬り場へゆく見馴れたる寒の町 上崎暮潮
告別の膝折る寒の百合の前 高澤良一 ねずみのこまくら
風生に「大寒と敵のごとく対したり」の句あれば
風生の相手取りたる寒ン迎ふ 高澤良一 ももすずめ
碧梧桐忌法外な寒ンもたらせり 高澤良一 ももすずめ
寒芹をこづき湧水馳せゆけり 高澤良一 ぱらりとせ
供花絶えず絶やさず寒ンの巴塚 高澤良一 燕音
でかしたる丈艸の墓つつむ寒ン 高澤良一 燕音
叡山の寒ンを背に阿耨多羅(あのくたら) 高澤良一 燕音
寒ンの採尿咄嗟に出たりするもんか 高澤良一 宿好
山鳩のごとく身を揉み寒ン払ふ 高澤良一 宿好
鼻莫迦になるまで寒ンの通勤路 高澤良一 宿好
火の用心命用心寒最中 高澤良一 宿好
ぎっくり腰悪寒は鼬のやうにくる 高澤良一 寒暑
水差しに水満ちゆける音も寒 高澤良一 暮津
猫がまだ己押さへて寒の日々 高澤良一 暮津
寒中を咲き通す花物好きや 高澤良一 暮津

寒 補遺 

*はららごをかなしむ寒の色として 石田勝彦 百千
*ひさかきの実の黒曜も寒の内 富安風生
「もつと光を」鴉の絶唱寒の暮 上田五千石『田園』補遺
あざらしの潜きたのしむ寒の水 日野草城
アダムの太根煌々寒の雀ども 角川源義
あたらしき舎利塔にいま寒の雨 飯田龍太
あゆみやむ大冠ゆれて寒の鶏 飯田蛇笏 心像
アルミ貨の浮くといふこと寒の水 後藤比奈夫
あをあをと水の廻れる寒の池 岡井省二 鹿野
いつぽんの火の秀そだてて寒の谷 鷲谷七菜子 花寂び
いとほしく寒のいく日を生きしいのち 村山故郷
いまも若し寒の星数眼に狩れば 上田五千石『天路』補遺
うしみつや音に出でたる寒の雨 日野草城
うとまれて声なすまでや寒の雨 小林康治 玄霜
おじいさんも好きだつた寒の水をあじわう 荻原井泉水
かしこみて白粥二椀寒のうち 石橋秀野
かばかりの佛供への寒の餅 石田勝彦 秋興以後
くれがたは声の明るむ寒四郎 上田五千石『琥珀』補遺
こくげんをわきまふ寒の嶽颪 飯田蛇笏
こだまして昼夜をわかつ寒の渓 飯田蛇笏
ことほぎの寒九の昼の望の月 岡井省二 大日
この町の気性はげしき寒の柝 鷹羽狩行
こめかみに寒の日ほのと晩年へ 岡本眸
これこそは寒の土筆よ小吸物 及川貞 夕焼
さわがしく綱打つてをり寒の雨 村山故郷
しんしん寒の夜の人間にほふ 種田山頭火
すぐ消えし寒の夕焼あはれまず 安住敦
すぐ消えし翡翠寒の川のなり 岡井省二 鹿野
すこやかなれ寒の鼻梁のあけぼの色 能村登四郎
すなどるやめをとに寒の子持鮒 飴山實 句集外
すはといふ間もあらばこそ寒の地震 桂信子 花影
すりこぎで肩叩きゐて寒の晴 飴山實 句集外
せりせりと寒の寸土を鋤きはじむ 上田五千石『琥珀』補遺
たのもしき岩の風切り寒の内 齋藤玄 飛雪
たばこやにたばこがない寒の雨ふる 種田山頭火 草木塔
ためらはず寒の牡丹に刻藉しぬ 星野麥丘人
だんだんに眼を遠くせる寒の凪 石田勝彦 百千
ちいちいと山を鶸とぶ寒九かな 岡井省二 明野
ちかぢかと命を燃やす寒の星 相馬遷子 雪嶺
つけさして老けは~し寒の紅 河東碧梧桐
なんときびしい寒の水涸れた 種田山頭火 草木塔
のぞきこむ寒の泉の抜け道を 平井照敏
ビー玉のかちあふ音や寒の雨 佐藤鬼房
ひたすらに波打ち寄せる寒九かな 飯田龍太
ひたひたと寒九の水や厨甕 飯田蛇笏
ひたひたと担ひこぼしぬ寒の水 西島麦南 人音
ひとり居や映るものなき寒の水 前田普羅 春寒浅間山
ひと仰ぐたび殺気立つ寒の滝 桂信子 晩春
ひらくより五衰のいろに寒の梅 鷲谷七菜子 天鼓
ひりひりと寒の悪意の刺しにけり 富安風生
ほうほうとー楢山枯るる寒日和 富安風生
まぼろしの幹に釘うつ寒の闇 橋閒石 卯
むきだしの仏の肩も寒の内 上田五千石 琥珀
むつちりと手応へ寒の餅とどく 能村登四郎
むらぎもの大小掃いて寒の庭 岡井省二 五劫集
むらくもの動くと見れば寒の鯉 鷹羽狩行
めつむりて病む母寒の埃立つ 佐藤鬼房
ものの音沈めて深き寒の闇 飯田蛇笏
やすやすと榧の樹に入る寒の鳥 岡井省二 鹿野
ゆめを見て泣く子に寒の燈をともす 篠原梵 年々去来の花 雨
ラヂオさへ黙せり寒の曇り日を 日野草城
わがかたちわがこゑ寒の明けにけり 岡本眸
わが庭の寒のたんぽぽ君に摘む 山口青邨
わきあふれ流れゆくなり寒の水 山口青邨
われ泣くもいとしむことも寒の闇 飯田蛇笏 家郷の霧
をさなさを馳走に寒の蜆汁 飴山實 辛酉小雪
或ることに心傷つき寒の雨 富安風生
安房よりの寒の鹿尾菜を珍重す 雨滴集 星野麥丘人
移り香のして宵寒の抹茶飴 佐藤鬼房
胃を病めり貝殻に似て寒の月 岡本眸
遺愛まだ寒の荒枝ながらに芽 古沢太穂 捲かるる鴎
遺構とは寒の燈の一つにも 後藤比奈夫
一枚の寒の鏡とたましひと 藤田湘子 てんてん
一枚の硝子に厚き寒の闇 橋閒石
宇治山の幽くて寒の雨降れり 日野草城
宇治川の碧く曲れり寒の雨 日野草城
羽をのして鶴なく寒の日和かな 飯田蛇笏 春蘭
羽をのして鶴啼く寒の日和かな 飯田蛇笏 白嶽
羽開く孔雀に寒の潮流れ 有馬朗人 母国拾遺
雨寒の刃ものゝ舗のほのぐらき 日野草城
雲間出る編隊機あはれ寒日和 飯田蛇笏 山響集
雲水の打てるはつきり寒の水 後藤比奈夫
奥嶺よりみづけむりして寒の渓 飯田蛇笏 白嶽
横浜に焼売買へり寒の雨 石塚友二 光塵
横濱に焼賣買へり寒の雨 石塚友二 光塵
屋根裏に寒の朝日の黄金なす 石田波郷
牡丹の寒の芽立ちを虔める 岸田稚魚 筍流し
何となく苗代寒の灯はくらく 高野素十
何揚げてこれ煮て寒の思案妻 石塚友二 玉縄以後
佳きひとと水を距てし寒九かな 桂信子 草影
科学自体は残酷ならず寒の月 中村草田男
火にあぶり寒の鼓の音を聞けり 飴山實 花浴び
火の匂ひより出てあそぶ寒の星 飯田龍太
花温室に漁具ものめきて寒の内 飯田蛇笏 霊芝
花絶えし壺拭き浄む寒の水 林翔 和紙
我痩せて鴉太りぬ寒の内 藤田湘子 てんてん
海の鳥あそべり寒の墓の前 西東三鬼
海へ出て寒の谺となりにけり 小林康治 玄霜
絵葉書を売る娘の日焼寒日和 富安風生
芥子雛を夢にみごもる寒の竹 橋閒石 卯
階段を信じて寒の皮膚なめらか 橋閒石 荒栲
鎌かけず火かけず寒の芒原 飯田龍太
粥にぽと落せし黄味や寒四郎 藤田湘子 てんてん
粥吹いて寒九のまなこ濡しけり 鷲谷七菜子 花寂び
寒きびしごくりと白き乳を飲む 日野草城
寒きびしひとの青春眼もあやに 日野草城
寒きびし鯉の沈思をつづかしめ 上田五千石『風景』補遺
寒きびし樟の切口香に立ちて 日野草城
寒きびし悠範義道居士天に 飯田蛇笏 心像
寒きびし學生駅へ群れよぎり 及川貞 夕焼
寒のビール狐の落ちし顔で飲む 西東三鬼
寒のひよこ一塊にうごく油田帯 能村登四郎
寒の闇鼠とんでもゆらぐ家 飯田龍太
寒の闇匂ふばかりに更けにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
寒の闇煩悩とろりとろりと燃ゆ 日野草城
寒の雨はじくからかさ通りけり 日野草城
寒の雨リフト開きて乗り降りなし 岡本眸
寒の雨枯れたるものの華やげり 右城暮石 一芸
寒の雨芝華やぐと夫も言ふ 細見綾子
寒の雨洲の水の面に漾たたず 松村蒼石 雁
寒の雨深夜ふたたび厠踏む 佐藤鬼房
寒の雨石人も古りわれも古り 高野素十
寒の雨舗道に散りて黒かりき 細見綾子
寒の雨擁きて心屈しけり 小林康治 玄霜
寒の雨鈴売りうどん来てかへす 小林康治 玄霜
寒の崖日表の土こぼしけり 岸田稚魚 紅葉山
寒の巌鵯わだの日に啼きにけり 渡邊水巴 富士
寒の雁磐余の田井を*あさるかな 下村槐太 天涯
寒の雁磐余の田井を求食るかな 下村槐太 光背
寒の菊にも末法の塵すこし 後藤比奈夫
寒の菊乾きて咲けり妻も他人 草間時彦 中年
寒の菊水子の魂の消えしまま 飯田龍太
寒の菊病吟更にあはれなり 村山故郷
寒の暁ツイーンツイーンと子の寝息 中村草田男
寒の苦が八苦の外に置かれけり 相生垣瓜人 明治草
寒の空ものゝ極みは青なるか 細見綾子
寒の空崇めて鳧にとばれけり 岡井省二 前後
寒の鶏とさかゆらりともの思ふ 飯田蛇笏 山響集
寒の鶏鳴くかに見えて終りけり 橋閒石 和栲
寒の月押し照る底に病めりけり 小林康治 四季貧窮
寒の月牡丹畑の上に高く 山口青邨
寒の月昂然として満ちてゆく 相生垣瓜人 負暄
寒の月酒にもまろみありとせり 相生垣瓜人 明治草
寒の月白炎曳いて山をいづ 飯田蛇笏 家郷の霧
寒の月夜ぶかく赭くのぼり来ぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
寒の月由々として満ちゆけり 相生垣瓜人 負暄
寒の厳しさ湛えているさま鯉を見て想う 荻原井泉水
寒の戸のひとつひとつに釘を剌す 橋閒石 朱明
寒の鯉描く薄墨を塗りかさね 能村登四郎
寒の紅思ひをこめて塗りにけり 清崎敏郎
寒の坂つまづきたるをひとりごと 岸田稚魚 紅葉山
寒の坂女に越され力抜け 岸田稚魚 雁渡し
寒の山々中年の陰きよらに覚め 古沢太穂 火雲
寒の始発車日傭の弁当のぬくみに触れ 能村登四郎
寒の終り陸橋に風執着し 佐藤鬼房
寒の重さ戦の重さ肢曲げ寝る 西東三鬼
寒の松見あげ黙つて出掛けたり 橋閒石 微光
寒の松伐れと亡父の独り言 橋閒石
寒の水あをあをとして吉野川 日野草城
寒の水かそけき音に煮たちけり 西島麦南 人音
寒の水こぼれて玉となりにけり 右城暮石 句集外 昭和三十二年
寒の水しづまりかへるうちたたへ 山口青邨
寒の水のまず逝きしがあはれかな 石橋秀野
寒の水もろもろのもの制し澄む 右城暮石 上下
寒の水井戸は地獄に通ずとふ 相生垣瓜人 明治草
寒の水飲み干す五臓六腑かな 細見綾子
寒の水飲む機も遂に得ざりけり 相生垣瓜人 負暄
寒の水城壁の稜うつし暗し 松崎鉄之介
寒の水触れなば珠と砕くらむ 山口青邨
寒の水念ずるやうにのみにけり 細見綾子
寒の水棒呑みに何恃むべき 岡本眸
寒の水餅つけてより夜のたしか 細見綾子
寒の水浴びし記憶も薄れけり 相生垣瓜人 明治草
寒の水玲瓏よよと家鴨掻く 山口青邨
寒の水六百尺の地下より湧く 山口青邨
寒の炊事場水叩きつけては洗ふ 能村登四郎
寒の星一点ひびく基地の上 西東三鬼
寒の星忘れゐし「死」にゆきあたる 桂信子 月光抄
寒の星恃むものなく竹揺るる 廣瀬直人 帰路
寒の晴れ爆音空を吹かれ去る 飯田蛇笏 家郷の霧
寒の打水徐々に流れて泡を抱く 林翔 和紙
寒の中コンクリートの中医師走る 西東三鬼
寒の庭犬も女のけがれ見す 下村槐太 天涯
寒の土紫檀の如く拓きけり 川端茅舎
寒の独房黒スリッパを戸々にそろへ 能村登四郎
寒の独房覗けばあをき頭が真下 能村登四郎
寒の鳶一つ砂丘の歌碑一つ 木村蕪城 寒泉
寒の鳶天に砂丘に光無し 木村蕪城 寒泉
寒の内まくらのにほひほのかなる 飯田蛇笏 山響集
寒の内桶ケ谷沼の鴨見舞ふ 百合山羽公 樂土以後
寒の内御宝蔵にもいたち穴 百合山羽公 樂土以後
寒の内光るかまちに家の責 飯田蛇笏 家郷の霧
寒の凪ぎ歩行のもつれ如何せん 飯田蛇笏
寒の日の影法師つれ火口壁 角川源義
寒の日の覚束なしや浅蜊むく 角川源義
寒の日の寄りきて暮るる豆腐笛 角川源義
寒の日の肩ほこ~と打ち給ふ 川端茅舎
寒の日の今こそ我が背焼き給ふ 川端茅舎
寒の日の静かさ崖はこぼれつぎ 川端茅舎
寒の日の恃みがたしよまた雪に 角川源義
寒の日の襤褸によぎる軍鶏の街 角川源義
寒の日を屋根に野鳥の毛をむしる 橋閒石 朱明
寒の日々敵地を行くに似たりけり 相生垣瓜人 負暄
寒の日々無為の日々とも選ぶなし 相生垣瓜人 負暄
寒の猫短く鳴きて争へり 岡本眸
寒の馬首まつすぐに街に入る 桂信子 月光抄
寒の梅心身とかく背き合ふ 藤田湘子 てんてん
寒の白き馬居り昨夜の焼跡に 石田波郷
寒の箸がほとぼる骨をはさみあふ 小林康治 四季貧窮
寒の百合ひらき湖沼のにほひせり 野澤節子 未明音
寒の百合硝子を声の出でゆかぬ 野澤節子 未明音
寒の百合喪の帯ひくく結び終ふ 鷲谷七菜子 黄炎
寒の浜婚期の焔焚火より 西東三鬼
寒の富士椋の木膚を白くせり 大野林火 青水輪 昭和二十四年
寒の蕗水の日向を流れけり 飯田龍太
寒の鮒うしろにこころして遊びぬ 永田耕衣
寒の墓所口開けてゐる名刺受 飯田龍太
寒の暮まばたきしては落着かず 星野麥丘人
寒の暮一塊の海抱きつづけ 上田五千石『田園』補遺
寒の暮兎の箱に足ふれて 百合山羽公 故園
寒の暮灯さず妻が泣いてをり 星野麥丘人
寒の明け頭たたけばごぼと鳴る 佐藤鬼房
寒の餅切る日あたりの古畳 松村蒼石 寒鶯抄
寒の夜の一間ばかりは明うせよ 中村汀女
寒の夕焼雄鶏雌の上に乗る 西東三鬼
寒の裸足の指真紅なる藷洗ひ 能村登四郎
寒の雷おのれを庇ふひしと庇ふ 山田みづえ 忘
寒の廊鳴らすひそけさに六家族 藤田湘子 途上
寒の壺虚空が詰りいたりけり 橋閒石 微光
寒の柝星座総出の海に向け 鷹羽狩行
寒の靄バスの遠くのまへうしろ 篠原梵 年々去来の花 雨
寒の鵙見窄らしきが訪ね来し 相生垣瓜人 負暄
寒の鵙呟きもせで去りにけり 相生垣瓜人 負暄
寒九の水山国の血を身に覚ます 野澤節子 飛泉
寒四郎逝かしめ寒九郎を恃む 上田五千石『琥珀』補遺
寒泉の玉を走らせてはひびく 山口青邨
寒日和シネマの深空見て飽かず 飯田蛇笏 山響集
寒日和吾れに水兵と下命あり 村山故郷
寒日和台うてなの棚田かな 岡井省二 鹿野
寒日和童児再び象の前 飯田龍太
寒日和必定編隊機墜ちず 飯田蛇笏 山響集
寒日和兵ら頭を刈り竝ぶ 村山故郷
寒日和老尼もしばし手鞠つき 飯田龍太
寒念佛に行きあたりけり寒念佛 正岡子規 寒念仏
寒夕焼きびしうつくし人の世も 山口青邨
歓べる寒九の水ののんどかな 石塚友二 玉縄以後
甘皮を垂らす折れ口寒の木瓜 右城暮石 散歩圏
簡素といふことの厳粛寒の月 山口青邨
含嗽して舌の根甘し寒の水 石塚友二 光塵
雁首が抜けてからりと寒の湖 橋閒石 虚 『和栲』以後(I)
顔小さき女なる寒の街なれ 中川一碧樓
顔伏せてはたと齢や寒の雨 草間時彦 櫻山
喜びの面洗ふや寒の水 前田普羅 普羅句集
忌へ連れて雲水飄と寒日和 飯田蛇笏 山響集
久女忌は寒のひかりの虚空より 飯田龍太
急雨に寒のピアノの強連弾 赤尾兜子 玄玄
魚市場傲気に寒の水使ふ 飯島晴子
京いづれかくれやすけれ寒の猿 岡井省二 鯨と犀
狂女の手赤きもの乾す寒の窓 西東三鬼
胸に矯むことばふえゆく寒の内 星野麥丘人
暁けの波ひたすらなれば寒きびし 岡本眸
曲るとき墓地が匂ひぬ寒日和 岡本眸
琴爪に花色かよひ寒四郎 上田五千石 風景
金魚大鱗海の日に汲む寒の水 角川源義
句作りの文語不識や寒の梅 藤田湘子 てんてん
空桶に空柄杓立て寒の内 木村蕪城 寒泉
空也蒸しにして三寒の「笹の雪」 及川貞 夕焼
串にさす魚やはらかし寒の暮 桂信子 女身
串刺しに焼かれて寒のうぐひの眼 石塚友二 玉縄以後
熊笹の美しき時寒の内 高田風人子
兄妹の焚火のあとの寒の雨 安住敦
欠伸にも揺らぎて寒の泪壺 林翔
結界の寒のきはみをせせらげる 上田五千石『天路』補遺
月光のあまねくわたり寒の星 松村蒼石 寒鶯抄
鍵鳴らし来て寒の独房へ兄の言 能村登四郎
言ふも悔言はざるも科寒の鵙 野澤節子 鳳蝶
孤立してより寒のししむら艶を帯ぶ 能村登四郎
戸が開いて泣く子出てくる寒日和 岡本眸
湖の家並ぶ寒の小魚とるいとなみ 尾崎放哉 須磨寺時代
五歳や青竹結ひし寒の墓 小林康治 四季貧窮
吾が頭髪つんどらめきて寒の貧 細谷源二 砂金帯
御宮の苗代寒の畏しや 高野素十
御手玉や二人の寒の女学生 石田波郷
御佛の金透く寒の格子とて 川端茅舎
光保つ寒の渦潮胸にしむ 佐藤鬼房
光琳笹白しと思ふ寒の雨 山口青邨
向寒のこころおきなくわれ若し 三橋敏雄
好感を残して寒の去りにけり 相生垣瓜人 負暄
稿しぶる寒のきびしく慈悲もなし 飯田蛇笏
荒神に寒の水仕女燈をさゝぐ 西島麦南 人音
黒ずむをうぐひと言へり寒の水 細見綾子
獄の扉のゆくてをはばむ寒日和 飯田蛇笏 雪峡
此部屋も坊主小し寒の内 正岡子規 寒
佐渡振りを賑ふ臼や寒の内 河東碧梧桐
妻の友階上に靴寒の土間に 伊丹三樹彦
妻癒えず寒の厨の音沈む 小林康治 玄霜
菜の花や一葉は寒の濃紫 渡邊水巴 白日
菜屑より流れはじめし寒の川 桂信子 花影
鷺の蓑すこしみだるる寒の雨 山口青邨
笹原にふる寒の雨人の墓 山口青邨
三寒ののちの四温を信ずべし 上田五千石 風景
三寒の寒さ問はるる逝くままに 斎藤玄 狩眼
三寒の寒のつづきて四温なし 桂信子 花影
三寒の鯉が身じろぐ泥けむり 能村登四郎
三寒の四温の香爐文箱かな 岡井省二 山色
三寒の四温を待てる机かな 石川桂郎 高蘆
三寒の尽くる夜半の星づくし 上田五千石『琥珀』補遺
三寒の星を小粒に櫟原 石田勝彦 雙杵
三寒の日向うらやむ日影かな 鷹羽狩行
三寒の頁の肩を折栞 上田五千石『琥珀』補遺
三星の南廻りや寒の内 石田波郷
三日在りて灯なき病舎に寒の雨 石橋秀野
山水の一縷の生きて寒の寺 岡本眸
山荘も水黒くせり寒の鯉 右城暮石 散歩圏
残寒の火渡り何の穢を焼きし 佐藤鬼房
仕置場にやや似て寒の水垢離場 能村登四郎
子なき夫婦寒の豆腐を切断す 佐藤鬼房
子に堰かる寒の畳を躄りゐて 小林康治 玄霜
子に香をたきては寒の句三昧 飯田蛇笏 雪峡
子の上や寒の戻りの木賊叢 石田勝彦 雙杵
師の柩車寒の砂塵に見失ふ 西東三鬼
指細く耳朶薄し寒の旅の中 中村草田男
指弾して生ける声きく寒の竹(北海道七句) 鷹羽狩行
死を触れて寒の鳴神通りけり 藤田湘子 てんてん
糸を張る杣に寒の日強まれり 飯田蛇笏
紙屑をたきて音なし寒の土 桂信子 女身
紙漉きの寒の水見る約束す 細見綾子
脂粉なき寒の遍路とすれちがふ 上田五千石『天路』補遺
賜はるや寒の一袖父は亡し 古舘曹人 能登の蛙
時計みな止りて吉野寒の内 日野草城
自らの美貌に逃げて寒の渦 古舘曹人 能登の蛙
自由人暉峻康隆寒の内 能村登四郎
汐入りの水嵩さだまり寒の雨 石田勝彦 秋興
鹿の匂ひおのづ辿れば寒の蕗 岡井省二 鹿野
捨て灰をなだめ寒九の雨なりし 能村登四郎
煮凝りも酢の香も寒の清さかな 右城暮石 句集外 昭和四年
若き膝正座す寒の荒蓆 能村登四郎
寂然と自転車漕げり寒の晝 三橋敏雄
手どりたる寒の大鯉光りさす 飯田蛇笏 霊芝
狩くらの雲にあらはれ寒の鳶 飯田蛇笏 霊芝
酒熱く寒の蕗の芽たまはりぬ 西島麦南 人音
酒買ひに線路越しをり寒の内 石塚友二 光塵
首に出て平成と云ふ寒日和 林翔
周到な用意の深さ寒の鯉 鷹羽狩行
秋田杉土佐杉にほふ寒日和 山口青邨
終夜食む獣屋の神寒の闇 飯田蛇笏 雪峡
住むことの湖を見て寒の菅 岡井省二 夏炉
書を閉づや紙も持ちける寒の音 林翔
諸手つき墓洗ふべし寒の水 小林康治 四季貧窮
宵ながら門づけ節も寒のうち 石橋秀野
宵寒の背中を吾子のつたひあるく 篠原梵 年々去来の花 皿
小をんなの鼠走りや寒の内 石塚友二 光塵
少年の毛穴十方寒の闇 飯田龍太
掌の窪に死水ほどの寒の水 斎藤玄 狩眼
松籟の尽きては浮かぬ寒の鯉 斎藤玄 狩眼
松籟も寒の谺も返し来よ 小林康治 四季貧窮
障子あけて夜となる軒の寒の雨 及川貞 夕焼
丈高の社箒や寒の内 石田勝彦 秋興以後
食ふまでのたのしさ尽きず寒の柿 能村登四郎
寝しづみて老が火を吹く寒の闇 飯田蛇笏 家郷の霧
寝る時に飲みほしにけり寒の水 細見綾子
心たひら寒の雨ふる芝たひら 山口青邨
心中を貫く光寒の月 桂信子 草影
森といふ大きしじまよ寒の内 上田五千石 田園
神の川橋の上に汲む寒の水 山口青邨
神橋の下寒の水あをかつし 川端茅舎
薪負いの 額の皺の 寒の汗 伊丹三樹彦
身じろがぬもの 寒の鯉 霜の墓 伊丹三樹彦
身のうちの腑のみやはらか寒の闇 桂信子 草影
身ほとりのものの文目や寒日和 岡井省二 鹿野
身を固くして寒の野の屍を通す 岸田稚魚 雁渡し
進学の子をもち寒の草青し 橋閒石 雪
人の来て寒の月光土間に入る 野澤節子 未明音
人もまた寒九の山の日しづか 岡井省二 夏炉
人形の恋の熱気や寒の汗(大阪、国立文楽劇場にて) 細見綾子
人呼んで応へなかりき寒の内 上田五千石『琥珀』補遺
人知れぬ高みに寒の梅ひらく 上田五千石 天路
吹き晴れてくらき大地と寒の星 篠原梵 年々去来の花 雨
水で拭いて寒の畳目こまかくす 能村登四郎
水飲んで寒九の日暮どきと思ふ 能村登四郎
水汲女寒の石段踏み減らし 岸田稚魚 負け犬
水口にうごく田水や寒の内 松村蒼石 寒鶯抄
水深し水の色して寒の鯉 右城暮石 虻峠
水餅に寒九の水を重ねけり 百合山羽公 樂土
睡る母寒のベツドの端を掴み 石田勝彦 雙杵
瑞の菜の三畝ばかりや寒の内 石田波郷
世の果のこの身このまま寒日和 飯田龍太
畝遠くのび寒の瀬のひゞきゐる 飯田龍太
生かされてわれ在り寒の星の下 林翔
生花造花まじえ籠に盛る寒の妻 山口青邨
西方に寒の蕨を探そうよ 橋閒石 卯
税重し寒の雨降る轍あと 古沢太穂 三十代
切りごろを外さず切りし寒の餅 能村登四郎
切昆布洒すや寒の水まけて 石塚友二 光塵
浅みつつ食べけり寒の桜餅 相生垣瓜人 負暄
浅草に波郷来てをり寒の雨 草間時彦 中年
船が曳く筏は長し寒の水 山口青邨
船を待つひとのあそべる寒日和 飯田龍太
船宿の出格子ぬらす寒の雨 飴山實 句集外
全しや寒の太陽猫の交尾 西東三鬼
組紐や屋根の深空を寒の雁 岡井省二 鯛の鯛
僧体のやうなつもりの寒の鯉 斎藤玄 狩眼
掃き寄せて餓鬼三人の寒の塵 小林康治 四季貧窮
草城の肩突兀と寒の灸 伊丹三樹彦
草青むところも寒の内ながら 石塚友二 玉縄以後
俗吏にも徹せず衒ふ寒の酒 藤田湘子 途上
孫の手と麻姑といづれぞ寒日和 飯田龍太
多聞酒倉仕込み終んぬ寒の雨 村山故郷
耐へに耐へ寒九の己さびしめり 山口青邨
大海のなか一杓の寒の水 桂信子 草影
大木に木蔦からまる寒の闇 飯田龍太
濯ぎゐて寒の旭の有難し 下村槐太 光背
諾ふは寒の土葬の穴一つ 飯島晴子
達磨市寒の日和を當てにけり 百合山羽公 樂土
棚の隅こけしかたまる寒の雨 山口青邨
端倪を許さぬ寒の中にあり 相生垣瓜人 微茫集
段差なき閾にこぼす寒の水 桂信子「草影」以後
地にひびくばかり輝やき寒の星 松村蒼石 寒鶯抄
地震あとの高声寒の闇走る 桂信子 花影
竹叢の秀枝に激つ寒の月 山口青邨
竹木の間を歩く寒日和 日野草城
昼ともる寒の裸燈に村老くる 上田五千石 森林
昼酒のから口にして寒の明け 星野麥丘人
著重ねて苗代寒の芦村翁 高野素十
朝風のからから朝熊寒九郎 山田みづえ まるめろ
朝夕の日影あきらか寒の池 松村蒼石 寒鶯抄
町川の寒の戻りのさゝ走り 上田五千石『風景』補遺
直なるが禅の教へか寒の竹 鷹羽狩行
鎮魂のごと寒の水のみ干して 細見綾子 虹立つ
痛さうに屋台たたまれ寒の月 鷹羽狩行
痛むゆゑ背骨がわかる寒の雨 佐藤鬼房
潰えゆく藁火にひしと寒の闇 飯田蛇笏 春蘭
鉄瓶も風も笛吹き寒四郎 藤田湘子 てんてん
店洗浄寒の切り身に血一痕 香西照雄 対話
田の朝の苗代寒の靄おりて 長谷川素逝 村
兎と懸巣寒の卵にこもりゐる 平井照敏 猫町
土すこし抱きし寒の蕗の薹 野澤節子 八朶集以後
土浦に来て喪を修す寒の鐘 原裕 青垣
唐詩には寒の牡丹の賦のなかり 能村登四郎
島の天日が暮れ寒の鳶もどる 右城暮石 句集外 昭和三十八年
湯ほてりのひととゆきあふ寒の雨 桂信子 月光抄
湯火照りの子をひく寒の河明り 山田みづえ 忘
湯薬師によく来る寒の鶲なり 岡井省二 山色
灯ともるや寒の内なる青畳 日野草城
当麻寺ゆ大和三山寒の松 細見綾子
働く妻の裾に病みをり寒の内 小林康治 玄霜
動かぬが修羅となるなり寒の鯉 斎藤玄 狩眼
動かぬ戸いくつもありて寒の部屋 桂信子 花影
道の辺の藁塚も酔ひたり寒日和 石田勝彦 雙杵
道の辺や寒の芥の色に出て 岸田稚魚 負け犬
道をきく寒の夜道の心細そ 星野立子
突き当り突き当りつつ寒の梅 石田勝彦 秋興以後
縄文の火色うごめく寒の昼 飯島晴子
日も月もわたりて寒の闇夜かな 飯田蛇笏 霊芝
日をうけて寂たる寒の扉かな 飯田蛇笏
日を封じ山ふところに寒の鯉 斎藤玄 狩眼
乳飲んで乳くさき口寒日和 日野草城
猫が人の声して走る寒の闇 西東三鬼
熱の子にくすぶる寒の夕焼よ 佐藤鬼房
年寄りのゐる家として寒の施肥 能村登四郎
波の痕寒の夕日をためて黄に 大野林火 早桃 太白集
波音は礁をはなれ寒日和 飯田龍太
煤の沖寒の太虹弧をなさず 小林康治 玄霜
煤降るも貯炭の痩も寒の内 小林康治 玄霜
萩寺の切株ばかり寒日和 山口青邨
白雲の湧き賑はひぬ寒の空 星野立子
白菊の魂とぶ寒の月明り 飯田龍太
白鶏の番飼はれて寒の樹下 右城暮石 句集外 昭和三十年
白昼の湯を出て寒の臙脂あまし 飯田蛇笏 春蘭
白晝の湯を出て寒の臙脂あまし 飯田蛇笏 山響集
薄き日がさいなむ寒の蜆掻 斎藤玄 雁道
薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎
麦芽ばえ寒の水舟運河ゆく 西島麦南 人音
筏いま通りし運河寒日和 山口青邨
晩凄を好みし寒の明くるなり 相生垣瓜人 明治草
晩節の竹あをあをと寒の内 鷹羽狩行
飛竜頭と煮る向寒の干蕨 草間時彦 櫻山
美しき夜目の生垣寒の月 星野立子
筆洗にむらぐもつくる寒四郎 上田五千石 琥珀
氷上や寒九の雨のうちけむり 齋藤玄 飛雪
病むと聞き死と聞き寒の身の内外 能村登四郎
貧久し薪をぶつさく寒の斧 細谷源二 砂金帯
父の忌過ぐ皺みて窪む寒の水 小林康治 玄霜
父の手のひとつ突きでて寒の棺 平井照敏 猫町
風つよく野の明るさは寒の罰 飯田蛇笏 家郷の霧
風に出て寒九の小旅はれやかに 上田五千石『琥珀』補遺
風の日は水湧くごとし寒の芹 岡本眸
風邪の町寒の日輪白熱し 相馬遷子 雪嶺
風神の寒の裳裾は簓なす 古舘曹人 砂の音
風騒の疼くばかりに寒の月 佐藤鬼房
腹を割き見する尊者も寒きびし 山口青邨
物置を椅子はみ出せる寒の雨 右城暮石 句集外 昭和三十二年
平らかに坐つて見たる寒の池 岡井省二 山色
米櫃の干果てゝ三日寒の内 石塚友二 磯風
別れ棲む都会と田舎寒の餅 福田蓼汀 山火
編隊機寒の鋼空ななめなす 飯田蛇笏 山響集
庖丁の刃こぼれ憂しや寒の内 鈴木真砂女 夕螢
法論に勝ちとりし鐘寒の雨 山口青邨
砲は包みしかと結べり寒の雨 山口青邨
蜂の子の如くに寒のつくづくし 川端茅舎
訪はるるまで寒の閑けさつづく部屋 野澤節子 未明音
豊頬や若さを余す寒の死者 能村登四郎
頬に享くる日の屑ばかり寒の内 斎藤玄 狩眼
北冥は納屋よりくらき寒の雨 古舘曹人 砂の音
磨かれて寒九のこゑの太垂木 岡井省二 明野
巳の絵馬に寒の日ざしの定まらず 佐藤鬼房
眠り神と酌まむか寒の丑の刻 林翔
夢殿をめぐりて寒の草取女 細見綾子 天然の風
霧寒の無間地獄にわが孤影 富安風生
命惜しまむ寒の弱日に縋りても 小林康治 四季貧窮
明星のとび込みし口寒の鰡 岡井省二 鯨と犀
滅罪の寒の夕焼法華尼寺 津田清子
面に化す驚愕の顔寒の雨 平井照敏 天上大風
木の影が土よりうかび寒の明 鷲谷七菜子 天鼓
木の念佛土の念佛や寒の雨 藤田湘子 てんてん
目は涙の蔵かも知れず寒の星 鷹羽狩行
目礼のあとしみじみと寒の明 鷲谷七菜子 一盞
紋章は笹龍胆よ寒の雨 山口青邨
門川は鴨と共有寒の内 百合山羽公 樂土以後
夜学の鐘やさし寒の月と雲に 古沢太穂 古沢太穂句集
約束の寒の土筆を煮て下さい 川端茅舎
薬煮るやゐざり迫りに寒の雲 鷲谷七菜子 花寂び
湧き水を半分照らし寒の月 右城暮石 句集外 昭和二十三年
郵便の来てをりし門の寒日和 日野草城
雄鶏に寒の石ころ寒の土くれ 西東三鬼
夕しづの寒の庭掃く音きこゆ 日野草城
夕寒の温泉夜寒の温泉かな 高野素十
夕寒の村なつかしと逗留す 高野素十
夕空の晴れゆく寒の遍路道 飯田龍太
夕凪の雲美しく寒の果て 原石鼎 花影以後
余震また身を伝ふがに寒の夜半 桂信子 花影
葉牡丹の深紫の寒の内 松本たかし
来し方や寒の没日と無蓋車と 岡本眸
流離あり遠離ありける寒の潮 石田勝彦 秋興
両眼に寒の目高の溢れたり 永田耕衣
力竭して波郷は死にき寒の靄 佐藤鬼房
淋しさの一生病みつつ寒の雁 野澤節子 八朶集以後
冷凍の氷を寒の地にすてる 右城暮石 句集外 昭和二十四年
裂きて食ぶうす桃色の寒の鱈 細見綾子
恋猫に寒の園生の幾起伏 上田五千石『琥珀』補遺
路地抜ける鼠走りや寒の内 鈴木真砂女 都鳥
老移民 波止場の寒の水を飲む 伊丹三樹彦
老人の奢りの寒の巌あちこち 能村登四郎
老人や寒の日だまり誰も居ず 草間時彦 櫻山
老人を一掃すべく寒の来し 相生垣瓜人 負暄
佗助を骨色にまで寒の暮 斎藤玄 雁道
凛々と峡は日をあげ寒九かな 飴山實 句集外
嗚呼といふ声々寒の日差来て 斎藤玄 雁道
壺といふものならず寒の猫柳 橋閒石 朱明
婢が活くる葉蘭そこばく寒の内 飯田蛇笏 家郷の霧
枷の荷に漂ひ泛きて寒の妻 小林康治 玄霜
梟を衣としたる寒九かな 岡井省二 鯛の鯛
洟かんで渡御待つ寒の祭かな 石塚友二 光塵
炙られてひと跳ね寒の諸子かな 飴山實 句集外
獏王は九眼爛々寒の堂 山口青邨
玻璃越しに眉焼く日あり寒の内 石塚友二 磊[カイ]集
甕一ついけて日あたる寒の土 松村蒼石 寒鶯抄
簑虫や病窓寒の日を入るゝ 小林康治 四季貧窮
簀囲ひの魚の潜みや寒の雨 河東碧梧桐
絨毯にフラスコ転び寒の内 飯田蛇笏 山響集
莢豆の芽は出でそめぬ寒の土 飴山實 句集外
藥のむあとの蜜柑や寒の内 正岡子規 寒
藺田の中小川流るる寒夕焼 山口青邨
蹇が厨を鳴むす寒の内 小林康治 玄霜
隱居して芝居に行や寒の内 正岡子規 寒
韋駄天も如法に古び寒の庫裡 木村蕪城 寒泉
饒舌の辺より寒の気ゆるびけり 岸田稚魚 負け犬
驢馬今も寒の塩負ひ川渡る 有馬朗人 知命

寒 続補遺

*こおろぎのこゝろもとなし寒のうち 露川
あかるさや風さへ吹ず寒の月 三浦樗良
いく夕死を定けむ寒の中 北枝
うぐひすの江戸子鳴なり寒の白 桜井梅室
かり金や友におくれて寒の入 風国
さだめよの遺精もつらし寒の水 其角
のら猫の声もつきなや寒のうち 浪化
ひく汐の浅くさすぢや寒の入 夏目成美
ふむ所あたる所や寒の入り 乙訓
また一つ着れば着寒の霜夜哉 傘下
むさし野は馬の上にて寒の入 土芳
一はづみぬけたる寒の雨気かな 浪化
烏飛て高台橋の寒の月 松岡青蘿
雲いきをねらひすまして寒の明キ 林紅
家並に精進するや寒の入 田川鳳朗
花鳥の身を又誰や寒の中 朱拙
海老焼てやまひに遊ぶ寒の中 三浦樗良
乾鮭を思ふ梢や寒の月 吾仲
寒の月川風岩をけづるかな 三浦樗良
寒の中たま~雨の静也 許六
供するは梨を尋ん寒の中 嵐雪
荒海に人魚浮けり寒の月 松岡青蘿
腰かけてまづ喰へ寒の豆腐汁 三浦樗良
今朝がたや笛も聞へて寒の雨 蘆文
傘の内あたゝかや寒の雨 東皐
持病にも道理つけるや寒の入り 遅望
若猫のつはり心や寒の中 許六
松風も氷りついたる寒の入 鈴木道彦
松風も氷り付たか寒の入 鈴木道彦
心にも花咲ばこそ寒の雨 支考
晴天も猶つめたしや寒の入 杉風
雪一夜ふた夜つゞきて寒の入 卓池
川風や唇切るゝ寒の中 岱水
川蓼の色青~と寒の中 十丈
栴檀の実にひよ鳥や寒の雨 蘆文
張きつて鶤鶏なくや寒の入 卓池
長閑さや寒の残りも三ヶ一 利牛
猫の声うかれ初けり寒の雨 三宅嘯山
農家にはさしてかまはず寒の入 成田蒼虬
梅に似ぬ人のこゝろや寒の入 路青
白魚やさぞな都は寒の水 高井几董
雷一声まことしからず寒の雨 加舎白雄
里人もこゝへ手向よ寒の紅脂 望月宋屋
老衰や口に梅まつ寒の入 杉風
藪一重あちらは春か寒の梅 亀洞
霰かとなじめば太し寒の雨 怒風

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 16:37 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

霰 の俳句

霰 の俳句


例句を挙げる。

「竹返」の手甲の上に霰散る 長谷川かな女 花寂び
あだし野に日の一すぢの霰かな 徳永山冬子
あばら家〔に〕とんで火に入る霰哉 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
いかめしき音や霰の檜木笠 芭蕉
うなゐ髪霰をつけて愛しけれ 福田蓼汀 山火
うれしさの霰たばしる鴨の数 山田みづえ 草譜以後
おとづれし清女が傘の霰かな 中勘助
お七夜荒れ霰も混じりゐるといへり 猿橋統流子
お降りのいつか霰の音となる 粳間ふみ
かきくらす掛菜にはぜて玉霰 小林康治 四季貧窮
かさ守のおせん出て見よ玉霰 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
かの山を思ひ忘るる玉霰 斎藤玄 無畔
からからと霰跳ねたりこの娶り 中田剛 珠樹
きつとして霰に立や鹿の角 支考
この度は音のしてふる霰かな 高野素十
この霰これが北陸日和かな 高木晴子 晴居
こぼれたる霰の空のあをかりき 五十崎古郷句集
これほどの霰に寒き朝かな 日鮮 霜 月 月別句集「韻塞」
さつさつと荻も氷も霰かな 中村史邦
さみしさや霰逃れし方の枯れ 小林康治 『潺湲集』
さわ~と霰いたりぬ年の市 銀漢 吉岡禅寺洞
しのもみや袖に音有り玉霰 調泉 選集「板東太郎」
しろ金や霰ふる夜の年忘れ 上島鬼貫
すぐ昏らむ地のもろもろや霰打つ 村越化石 山國抄
すさまじき霰となりて芦を刈る 加藤楸邨
たばしりし霰のあとの簷雫 河野静雲 閻魔
たばしるや十符(とふ)の樽菰玉霰 松滴 選集「板東太郎」
ちる霰立小便の見事さよ 一茶
つくまでに霰降り過ぎし渡舟かな 野村喜舟 小石川
つるぎ洗ふ武夫(もののふ)もなし玉霰 夏目漱石 明治三十二年
てのひらの霰天より帰り来し 丘本風彦
とけるとも見えで消え行く霰哉 会津八一
とけるまで霰のかたちしてをりぬ 辻桃子
なほ奥へ行者みちあり初霰 高塚頼子
にはとりの総毛立つたる霰かな 白岩 三郎
のぼり窯芯まで青し玉霰 兼近久子
はね上りとび上りして霰降る 久留島 広子
ひらきたる厨子の香にふる霰かな 永田耕衣 加古*傲霜
ふり向きて霰とほりし大徳寺 宇佐美魚目 天地存問
ふるさとに芒なびきて霰来る 横光利一
ふるさとの山仰ぐ眼に霰落つ 横光利一
ふるさとは緋蕪漬けて霰どき 蒼石
ほしいまゝにプラツトフオームの霰哉 尾崎紅葉
まぎれなく貧し鼻うつ夕霰 小林康治 玄霜
みづうみを打つて過ぎゆく霰かな 草間時彦 櫻山
ものありぬ霰が降れば音たてる 加倉井秋を 午後の窓
ものもへば霰にまぶた打たれけり 川口重美
やう~に舟岸につく霰哉 寺田寅彦
ゆく雲や霰ふりやむ寺林 飯田蛇笏 霊芝
ゆづり葉の見事にたれて霰かな 原石鼎
ゆり合す蓑のひまうつ霰かな 弄我
よろこびて地に一刷けの初霰 斎藤俊子
わが血子に移せり霰ふりきたる 川島彷徨子 榛の木
わだなかに教会の鐘霰ふる 石原八束
アーケードの中へ転がる玉霰 川村甚七
一旦は照つて峠の霰かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
一禮に籠めて別るる霰かな 古舘曹人 砂の音
一羽毛たらむ霰へ身を入るる 齋藤玄 『雁道』
一莚霰もほして有りにけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
一霰こぼして青し松の空 原 石鼎
一霰まじろがぬ鷹のけしき哉 也好
丁子かく祖母が布子や初霰 中勘助
三椏の枝をころがる霰かな 藤田あけ烏 赤松
三絃のばちで掃きやる霰哉 小林一茶
三鬼忌の山傾けて霰かな 角川源義 『神々の宴』
乗鞍岳烟り全天霰降る 仙田洋子 雲は王冠
五六間飛ぶや霰の網の魚 蒼[きう]
人等来るうつくしき霰もちて来る 山口青邨
今日も亦霰たばしりつゝ暮れぬ 高木晴子 晴居
仏飯の麦めでたさよ初霰 石田波郷
会い別る占領都市の夜の霰 鈴木六林男 荒天
会者定離(ゑしゃぢょうり)笹に霰や松の雪 ゆき 俳諧撰集玉藻集
何もなき二月と思へば霰降る 百合山羽公
俄かなる霰や壺に花なき日 秩父
俳諧に霰飛び散り長子得し 齋藤玄 『玄』
傘さして女のはしる霰かな 太祇
元日の地を威して玉霰 吉武月二郎句集
内灘の霰たばしる砂塵かな 桑田青虎
冬の情月あきらかに霰ふる 暁台
冬知らぬ宿や籾摺る音霰 松尾芭蕉
冴返る音や霰の十粒程 子規句集 虚子・碧梧桐選
初花に霰こぼしぬ小湧谷 長谷川かな女 雨 月
初薬師磴に霰の敷きそめし 松波はちす
初霰たばしる牧を閉ぢにけり 佐藤瑠璃
初霰めざめの子等を待たで消ゆ 相生垣瓜人 微茫集
初霰父の冥土にしみるもの 古舘曹人 樹下石上
初霰耳に残りてゐし朝餉 相生垣瓜人 微茫集
初霰鮭のぼる瀬々けぶらせて 及川 澄
初霰鳶尾(しゃが)や万年青の葉のきほひ 鞭石 俳諧撰集「藤の実」
勅額に霰はげしき玉せせり 倉富勇二
勿ちに小粒となりし霰かな 高浜虚子
北国の夕べの霰小鯛煮ゆ 高島筍雄
十夜ある昼の筵に霰かな 田中寒楼
叢に日かげりて霰静かな 高濱年尾 年尾句集
口あけば鼻にたはしる霰かな 尾崎紅葉
口こはき馬に乗たる霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
口切の窓を過ぎゆく霰かな 会津八一
句碑ひとつ墓標にかはる夕霰 古舘曹人 樹下石上
叱られて帰る霰の石畳 桂信子 黄 炎
吉野葛溶くや窓うつ夕霰 南光翠峰
吹き落とす木の葉に包む霰かな 錦江 俳諧撰集玉藻集
吾も走り霰も走り橋長し 城谷文城
吾子育つ島の霰に打たれもし 村松紅花
呉竹の奥に音ある霰かな 正岡子規
啄木鳥の羽音きびしく霰止む 堀口星眠 火山灰の道
啓蟄の霰しまくに薄日浮く 松村蒼石 雁
四弦一斉霰たばしる畳かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
土器にたまる霰や土芳の忌 鈴鹿野風呂 浜木綿
垣際のぱつぱとはしやぐ霰哉 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
場末町章魚の脚打つ霰かな 幸田露伴 谷中集
塩田に跳ねて静まる夕霰 岸田稚魚 筍流し
売られをる臼に霰のたまりけり 大島鋸山
変な岩を霰が打つて薄日さす 西東三鬼
夕ばえて霰ふりやむ花圃の水 石原舟月 山鵲
夕霰をりから池の端に在り 下村槐太 天涯
夕霰冥府の母に被布やらむ 関戸靖子
夕霰枝にあたりて白さかな 高野素十
夕霰等身のチエロはこばるる 塚本邦雄
多羅葉をみだれ打つたる霰かな 京極杞陽
夜の町を牛牽く人に打つ霰 内田百間
夜毎敷く霰こまかに雁帰る 金尾梅の門 古志の歌
夢殿は海の枯木に霰かな 島村はじめ
大かたは霰はね出る盥かな 竹冷句鈔 角田竹冷
大屋根に右往左往の霰かな 上野泰 佐介
大嶽を霰ひそかに降り去れり 雑草 長谷川零餘子
大粒な霰にあひぬうつの山 漱石
大隊の駈足に降る霰かな 会津八一
天塩路や霰に残るとりかぶと 齋藤玄 飛雪
太鼓うつ山の学校の霰かな 龍岡晋
夫旅にある寧けさよ玉霰 石田あき子 見舞籠
奔放にあるべき素手や玉霰 渋谷道
奔湍(ほんたん)に霰ふり込む根笹かな 夏目漱石 明治三十二年
妻と行く霰店には鯛二つ 香西照雄 対話
妻死後の力賜はる霰がこ 黒須俊行
子守沙彌霰たばしる傘さして 橋本鶏二 年輪
寒燈や外の霰をきゝすます 西山泊雲 泊雲句集
寝るより枕かたむく初霰 齋藤玄 飛雪
小夜更けて霰らしきが散らばりぬ 手塚美佐 昔の香
小走りに出し禰宜が妻霰降る 木村蕪城 寒泉
小阪殿のはり縄打つて霰哉 鶴汀
小霰の音の蹤きくるばかりかな 八木林之介 青霞集
届きけり霰ちる日の蕪寿し 飴山實 辛酉小雪
山の水まだ衰へず初霰 木村敏男
山茶花に月の霰やそゞろなる 金剛纂(麥南小句) 西島麥南、飯田蛇笏選
山門の鉄網に入る霰かな 古白遺稿 藤野古白
山鳥の霰の打ちしところ白 田中裕明 櫻姫譚
岩海苔を掻けばたまたま霰来て 鈴木真砂女 夕螢
岩襞にすこしたまりて霰かな 西山泊雲 泊雲句集
島原の霰をうける袂かな 岩谷山梔子
川浪の霰光りに川千鳥 飯田蛇笏 椿花集
広小路に人ちらかつて玉霰 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
庄内の野に日は照れど霰哉 寺田寅彦
役者親子しづかに座して霰打つ 長谷川かな女 花寂び
忽ちに小粒になりし霰かな 高浜虚子
急霰のあとの月光愛終る 徳弘純 非望
急霰のたまれば光るイカケ鍋 細谷源二
急霰のはしり波立つ鯛生簀 石原義輝
急霰の去れば影生れ比叡あり 岸風三楼 往来
急霰の自転車白鳥を記憶する 鈴木光彦
恐ろしき岩の色なり玉霰 夏目漱石 明治三十二年
我善坊に車引き入れふる霰 河東碧梧桐
戒壇院霰ひと撒きして雪に 赤松[けい]子 白毫
或る草に佛眼賜ふ玉霰 河原枇杷男 烏宙論
手枕の夢にふりこむ霰かな 二葉亭四迷
打敷くは霰なりけり誕生日 鈴木しげを
打返す藁干す時の霰かな 河東碧梧桐
折からや霰たばしる敷砂に 西山泊雲 泊雲句集
抱きいづる石の睡り児夕霰 松村蒼石 雪
挨拶や髷の中より出る霰 夏目漱石 明治二十九年
振り向けばふるさと白く夕霰 中村苑子(1913-2001)
採氷池よべの霰のまろびをり 金子伊昔紅
故里の人を思へば霰降る 会津八一
散りあえぬ楢の日和や霰雲 会津八一
文章を書きをればよく霰ふる 永田耕衣 傲霜
日の子われ日の下にして玉霰 原石鼎
日の高さ霰おとせる枯野かな 乙字俳句集 大須賀乙字
日一日障子の外の霰かな 森鴎外
明け方にふりし霰ぞ霜の上 花蓑
星消えて闇の底より霰かな 古白遺稿 藤野古白
時ならず馬で山越す霰哉 露月句集 石井露月
晩祷や星を招きし霰あと 村越化石 山國抄
暁闇の衛士のつらうつ霰かな 筑紫磐井 野干
書道塾出る子入る子に玉霰 福田甲子雄
月に侘び霰にかこつとぼそかな 原石鼎
月の出の俄に曇り一霰 比叡 野村泊月
月光の削りし木々に霰ふる 百合山羽公 故園
有耶無耶の関は石山霰哉 寺田寅彦
朝はしぐれ夕べ霰の竹瓮かな 草間時彦 櫻山
朝市の火入にたまる霰かな 一茶 ■文政年間
木曽殿に遅参責めらる玉霰 田中水桜
木賊原小兎はねる霰かな 幸田露伴 江東集
束の間の洩れ日にさとく霰止む 中村田人
松の葉をこぼれて落つる霰かな 古白遺稿 藤野古白
板葺の屋根をころがる霰哉 寺田寅彦
枇杷の花霰はげしく降る中に 野村喜舟
枯れむぐら掻いくゞり落つ霰かな 青邨
枯蓮の玉といつはる霰かな 古白遺稿 藤野古白
柴売の柴にはさまる霰かな 会津八一
梅いくつ閼伽の折敷に玉霰 榎本其角
楢山に降りし霰ぞ田に敷ける 秋櫻子
楪葉にこは年玉の霰かな 古白遺稿 藤野古白
欠航の行嚢二百霰打つ 木村蕪城 寒泉
歌手病める窓の橘霰やむ 宮武寒々 朱卓
武士の臑に米磨グ霰かな 服部嵐雪
武蔵野の教師となりし玉霰 日原傳
死に遠く飢ゑも爽やか霰うつ 楸邨
残菊の雨は霰と変じける 有働亨 汐路
殖林の松伐る香して霰かな 大谷句佛 我は我
母恩遠し夜の霰は屋根駈けて 皆川白陀
母死して軽くなりたる霰かな 河原枇杷男 閻浮提考
水にある日たのしきを大霰 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
水にうくものとは見えぬ霰かな 千代尼
水の面にしばらく見ゆる霰かな 松籟集(蕉子句集) 小野蕉子
水仙に霰のまろびあへるかな 久保田万太郎 流寓抄
水仙の根に降たまる霰哉 吟江
水仙や雨に霰に戸を閉めて 中村汀女
氷上に霰こぼして月夜かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
氷頭なます霰といふ字胸中に 八牧美喜子
氷魚汲むや暁の霰に灯かざして 山田孝子
河童なくと人のいふ夜の霰かな 中勘助
沼の怪をおどろかし降る霰かな 野村喜舟 小石川
波止埋めて糶待つ蟹や初霰 吉澤卯一
注連貰ひ一と霰せし畦跳んで 荒井正隆
洛北の霰日和に蕪村の忌 鈴鹿野風呂
流れゆく霰かなしや泊船 会津八一
浅沓に霰はいるや地鎮 高田蝶衣
浜垣に鴎しけとぶ霰かな 楠目橙黄子 橙圃
海へ降る霰や雲に波の音 其角
海吹雪霰先立て来りけり 西本一都 景色
渡船は帆を巻きおろす霰哉 寺田寅彦
港町海の機嫌の霰過ぐ 猪俣千代子 秘 色
湯村の湯九十八度霰打つ 岩崎照子
満目の霰に旅装解きにけり 田中裕明 櫻姫譚
灯蓋に霰のた〔ま〕る夜店哉 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
炭を出す間に月のさし霰降り 大橋櫻坡子 雨月
焚かんとす枯葉にまじる霰哉 夏目漱石 明治三十一年
熊笹に野麦峠の霰かな 沢部幹雄
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
燈火の色変はりけり霰打つ 内田百間
片町や霰捨てつゝ雲とほる 飴山實 少長集
牛酪なめて一人いぬるや寒霰 北原白秋
牡蠣殼に生身の牡蠣に霰過ぐ 中戸川朝人
犬の尾の霰へ帰るベーシスト 須藤 徹
狐診し医師戻るに霰かな 菅原師竹句集
玉ぜりの裸を叩く霰かな 富安風生
玉霰すべて了りぬ日の光り 山口誓子
玉霰ふたつならびにふゆるなり 三橋敏雄 眞神
玉霰ほちりと石を打ちけるよ 尾崎紅葉
玉霰人の恋聞く聞き流す 清水基吉 寒蕭々
玉霰冬の桜をちらしけり 尾崎紅葉
玉霰夜タカは月に帰るめり 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
玉霰夜鷹は月に帰るめり 小林一茶
玉霰幽かに御空奏でけり 川端茅舎
玉霰月の兎が仕業かな 柳原極堂
玉霰杉の命と檜の妃 下田稔
玉霰漂母が鍋をみだれうつ 蕪村 冬之部 ■ 貧居八詠
玉霰竹に当つて竹青し 日野草城
玉霰花壇はつよき皮膚もてり 渋谷道
玉霰花甘藍を囃しおり 大野紫陽
玉霰茶の子のたしに飛入ぬ 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
玉霰誰がまことより二三分 安昌 選集「板東太郎」
玉霰雪ゆるやかに二三片 汀女
玻璃窓に霰たばしる夜半かな 寺田寅彦
琵琶行の夜や三味線の音霰 松尾芭蕉
生酔がちろりで遊ぶ霰かな 筑紫磐井 花鳥諷詠
甲板に霰の音の暗さかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
畦立ちの仏に霰たまりける 水原秋櫻子
白猫に不実な霰ふりかかる 宇多喜代子
白飯に飢ゑしは昔霰はね 桂信子 花寂び 以後
白鳥に霰をこぼす茜雲 西本一都
百余艘鯨に向ふ霰かな 会津八一
盞や庭に霰のきこえつつ 京極杞陽
相摶つて元旦の霰いさぎよし 河野南畦 『風の岬』
真木部屋の霰拾はん笹交り 能州大野氏-良長 俳諧撰集「藤の実」
石上の霰にそそぐ時雨かな 会津八一
石山の石にたばしる霰哉 松尾芭蕉
石濤に既に狎れつつ玉霰 相生垣瓜人 微茫集
石蕗の葉をうちも破らぬ霰哉 熊三
磐石をめがけて霰降り集ふ 誓子
磧湯の底までうちて霰来る 山岸治子
磨れて木賊に消る霰かな 榎本其角
磨臼にすりつぶさるる霰かな 会津八一
神の田の祭のごとし初霰 永方裕子
神燈の真下のくらさ夕霰 桂信子 遠い橋
稲架骨に風の鳴る日や霰雲 皆川白陀
竹を割る俄霰に力得て 高木和蕾
竹買ふて裏河岸戻る霰かな 正岡子規
篁に降り込む霰山始 木村蕪城 寒泉
素堂碑に霰ふりやむ山の径 飯田蛇笏 椿花集
素湯呑んで霰を見たる近江かな 安東次男 昨
絶えず躍りて軽き霰や肩の幅 高濱年尾 年尾句集
絶頂に敵の城あり玉霰 夏目漱石 明治二十九年
網はらふころり~と霰杜父魚 米野耕人
繭白し不破の関屋の玉霰 井上井月
老い朽ちてゆく母羨し玉霰 永田耕衣 與奪鈔
胸に溜めし敗残の詩夜の霰 小林康治 玄霜
胸熱く詩を溜め霰遊ばせて 小林康治 玄霜
能登殿の矢先にかゝる霰哉 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
船橋に駄馬騒ぎ出す霰かな 会津八一
色ケ浜霰とぶ冬迫りけり 青畝
茎漬に霰のやうに塩をふる 細見綾子 花寂び
荷をうつて霰ちる君みずや村雨 山口素堂
落穂拾ひゆく~霰至りけり 石井露月
落葉掃く中にころがる霰かな 柑子句集 籾山柑子
葉牡丹を街の霰にまかせ売る 中村汀女
葱ひくや昨日の霰そのまゝに 西山泊雲 泊雲句集
葱引いて来る妻の髪霰かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
蓆帆の早瀬を上る霰かな 夏目漱石 明治三十二年
蓑虫は何處に居るぞと霰降る 会津八一
蓮の実を袖に疑ふ霰哉 井原西鶴
蓮の茎からからと鳴り霰来ぬ 松村蒼石 露
薄明の霰と知るや胸に撒く 杉山岳陽 晩婚
薄暮や霰興ずる樽ひろひ 加舎白雄
藁灰にまぶれてしまふ霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
蘭万年青なほ降り足らぬ霰かな 小杉余子 余子句選
蝿の貌ほどの霰や潰れ降り 永田耕衣 殺祖
衛士の火のます~もゆる霰哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
袂着た子を打交せて霰降る 尾崎紅葉
袋小路に霰愛犬紺太の屍 塚本邦雄 甘露
見て居れば小雪の中の玉霰 高木晴子 晴居
訪ふ嬉れしき霰や道に垂るゝ竹 安斎櫻[カイ]子
語られぬ神にたばしる霰かな 角川源義 『冬の虹』
足もとに旅の霰のすぐたまる 加倉井秋を 午後の窓
足もとに霰ころがる焚火かな 上甲明石
足もとに霰はね降る別れかな 小林寂人
蹴あぐれど裳(もすそ)にたまる霰かな 遊女-ときは 俳諧撰集玉藻集
退院者送る霰の門に出て 下村ひろし 西陲集
道訊きにゆきし子を待つ父へ霰 中村草田男
都をどり霰降る夜の篝燃え 渡辺水巴
金槐集霰たばしる日なりけり 奥田杏牛
金沢のしろき日輪夕霰 中田剛 珠樹
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火 草木塔
銅のとゆにたばしる霰かな 寺田寅彦
鍋焼の行燈を打つ霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
鏡餅霰まじりの音となリ 深見けん二
降りにけり落ちては消ゆる玉霰 七 俳諧撰集玉藻集
降りをさまり降りをさまりて霰かな 京極杞陽
降り止んでひつそり並ぶ霰かな 茅舎
隙間多き夜業工場霰溜む 西村公鳳
雑水に琵琶聴く軒の霰かな 松尾芭蕉
雪につきささる霰の小樽かな 小宅容義
雪峰の月は霰を落しけり 原石鼎
雪空に霰ふるなる但馬かな 京極杞陽 くくたち下巻
雲乱れ霰忽ち降り来り 虚子
雲割れて月光霰こぼしけり 福田蓼汀
雲衲等霰に飛んで帰りけり 河野静雲 閻魔
雲霰帆一つ見えぬ海淋し 寺田寅彦
霜の上にたまる霰はやはらかに 高橋馬相 秋山越
霰うつて信長の墓うそぶける 松本進
霰うつわが少年の日の学舎 堀口星眠 営巣期
霰うつ杣が板屋のそぎはなし 北原白秋
霰おく夕べの土のさりげなき 松村蒼石 寒鶯抄
霰おもへば開拓地真平ら 龍太
霰かな野山の真言聴き居れば 河原枇杷男 訶梨陀夜
霰がこ啖ひ文人の棋譜を観る 石原八束 断腸花
霰きく坐せる盲の友一人 京極杞陽 くくたち下巻
霰さらりとあがりて明し門麦生 林原耒井 蜩
霰して月夜もみゆる碑のほとり 飯田蛇笏 椿花集
霰して納め遅れの飾かな 石田勝彦 秋興
霰すがし崩るるものを身に蔵し 鷲谷七菜子 黄炎
霰せば網代の氷魚を煮て出さん 松尾芭蕉
霰たばしる早く起きたる甲斐のあり 長谷川かな女 花 季
霰ちれくゝり枕を負ふ子ども 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
霰とぶ石屋根の先日本海 井上雪
霰なぐ日なたの粉ナ葉かたよりつ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霰にもやさしくならぬ湖の國 安東次男 昨
霰にも夕榮もつや須磨の浦 井上井月
霰ふるこの土地人よ父よ祖父よ 京極杞陽
霰ふると思ふ空かな初竈 増田龍雨 龍雨句集
霰ふる悪しき映畫のポスターに 京極杞陽
霰ふる煤びしまどよドンきこゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霰ふれども濡れざるは白秋碑 松澤昭 神立
霰まじへ修二会の火屑匂ひけり 田中英子
霰みな吸ひこまれゆく茶山かな 守山琴女
霰やみし静けさに月さしてをり 内藤吐天
霰やみ木々美しく濡れにけり 橋本鶏二
霰引く空のおくがに星見つる 金尾梅の門 古志の歌
霰打ち花片積る彫の恥部 八木三日女 赤い地図
霰打つ天井板やいづこより 河野静雲 閻魔
霰打つ暗き海より獲れし蟹 松本たかし
霰打つ模型の鮨をめがけては 秋元不死男
霰打つ男女の世より逃るべし 大木あまり 山の夢
霰打つ相対死も足柄よ 高柳重信
霰散り舗道隅より夕兆す 上井正司
霰散る武者絵のふいと立つごとし 平井照敏 天上大風
霰来て喪の元日の暮色急 下村ひろし 西陲集
霰来るたそがれの川狭められ 松村蒼石 雪
霰止みその日は暮るる御師部落 岡田日郎
霰止み鴉いま鳴く御宮居 木村蕪城 寒泉
霰止む時束の間の淋しさよ 尾崎迷堂 孤輪
霰白う浮ぶ盥の夜の水 鶯子句集 山口鴬子
霰窓を打つて二更の月黄なり 福田把栗
霰粒石採り場への深轍 右城暮石 上下
霰聞くやこの身はもとの古柏 芭蕉
霰跳ねけふ一日を踏まぬ土 野澤節子 黄 炎
霰降り鳩翔ち貯炭渚なす 小林康治 玄霜
霰降る*かりんの色の光にて 対馬康子 吾亦紅
霰降る大地に鈴の音満つごとく 柴田白葉女 花寂び 以後
霰降る天に慶びあるごとく 永津溢水
霰降る宿のしまりや蓑の夜着 内藤丈草
霰降る田の面や榛の枝細か 癖三酔句集 岡本癖三酔
霰降る胃カメラ呑みに行く道に 村本畔秀
青天を一ト雲走る霰かな 東洋城千句
青潮に霰溜め浮きラワン材 木村蕪城 寒泉
青空の見ゆる霰の落ちてきし 石田郷子
鞍馬寺を打つて過ぎける霰かな 尾崎迷堂 孤輪
音たてゝ又霰降るみぞれ降る 高木晴子 晴居
音のして霰ふりくる 遠天に星ありながら雲ありながら 岸本節子
風を追ひ霰を追ひて魂翔けぬ 篠原鳳作
風呂熱くたしなむ妻や夕霰 西島麦南 人音
餅切るや又霰来し外の音 西山泊雲 泊雲句集
馬も家族村は霰を迎へけり 有働亨 汐路
馬を入れて袴たゝめば霰かな 古白遺稿 藤野古白
驚破霰狐啼く声やみにけり 古白遺稿 藤野古白
髪の中に脱けてある髪夕霰 永田耕衣 吹毛集
鬼塀の鬼が霰を撥ね返す 下村ひろし 西陲集
鳩白う神杉に乱れ霰降る 幸田露伴 拾遺
鶏につく鼬の悪の霰かな 野村喜舟 小石川
龍神を祭る岩頭の霰哉 寺田寅彦
ちりめんの狙(さる)を抱く子よ丸雪(あられ)ちる 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
ふりやみていはほになじむ玉あられ 蛇笏
中空に降りきゆるかと夕あられ 白雄
二三合蜆にまじる丸雪(あられ)かな 梅室
初あられ捨鎌の辺に弾みけり 有働亨 汐路
夕市や蟹の眼を打つ玉あられ 東條素香
夕爾の詩つぶやく藁の玉あられ 福田甲子雄
小夜あられ起見んばかり降にけり 加舎白雄
揚舟や枯藻にまろぶ玉あられ 飯田蛇笏 山廬集
獅子舞も奥湯へいそぐ夕あられ 山岸 治子
玉あられ百人前ぞお取越 山店 芭蕉庵小文庫
玉あられ鍛冶が飛火にまじりけり 暁台
玉あられ風夜半を過ぐこずゑかな 飯田蛇笏 山廬集
白樺に吾名きざめば夕あられ 細谷源二 砂金帯
紅の鷹の大緒や玉あられ 胡布 霜 月 月別句集「韻塞」
萱負へば音の変りし夕あられ 藤原 如水
急霰に家鴨の雄声突っ走る 高澤良一 石鏡

霰 補遺

うす日して震災堂の玉あられ 飯田蛇笏 山響集
うながすや霰む山村往診談゛ 水原秋櫻子 蓬壺
うなゐ髪霰をつけて愛しけれ 福田蓼汀 山火
うらなひの鬚にうちこむ霰哉 正岡子規 霰
うれしさの霰たばしる鴨の数 山田みづえ まるめろ
おかめ笹笹原なせり初霰 山口青邨
おどろくや月に踏み敷く初霰 石塚友二 磯風
かきくらす掛菜にはぜて玉霰 小林康治 四季貧窮
かたかたは霰ふるなり鳰の月 正岡子規 霰
カラ~な藻草に溜る霰かな 河東碧梧桐
から城に鵲さわぐ霰かな 正岡子規 霰
かるさうに提げゆく鍋の霰哉 正岡子規霰
きりぎしにとりつき住むや玉霰 山口青邨
この度は音のしてふる霰かな 高野素十
ころがれば哀れ天付霰かな 永田耕衣
さげて行く鍋へ打ち込む霰哉 正岡子規 霰
しぐれより霰となりし山泉 森澄雄
しばらくはあられふりやむ楢林 飯田蛇笏 山響集
すさましや霰ふりこむ鳰の海 正岡子規 霰
たちまちにあられ過ぎゆく風邪ごもり 桂信子 月光抄
ちはやぶる臍を原とし霰かな 岡井省二 大日
つはぶきに霰はじける五六粒 飴山實 花浴び
はらはらと音して月の霰哉 正岡子規 霰
ひらきたる厨子の香にふる霰かな 永田耕衣
ふりやみて巖になじむたまあられ 飯田蛇笏 白嶽
ふるさとは緋蕪漬けて霰どき 松村蒼石 寒鶯抄
ほとめきて霰が胸を打ちにけり 岸田稚魚 紅葉山
まぎれなく貧し鼻うつ夕霰 小林康治 玄霜
みちのくの霰はいまも茎漬季 山口青邨
みづうみを打つて過ぎゆく霰かな 草間時彦 櫻山
もう合えぬ祖父母 地蔵に霰の餐 伊丹三樹彦
ものすごき音や霰の雲ばなれ 正岡子規 霰
ゆく雲や霰ふりやむ寺林 飯田蛇笏 山廬集
ゆづり葉の美事にたれて霰かな 原石鼎 花影
りきむ程猶はね返す霰かな 正岡子規 霰
りきむ程猶はね返る霰哉 正岡子規 霰
逢阪や霰たばしる牛の角 正岡子規 霰
一しきり霰のふりてしくれ哉 正岡子規 霰
一ト霰篁わたるひびきかな 村山故郷
一本一本箸洗ひをり夜の霰 岡本眸
一粒の霰裸子道砥の如く 山口青邨
一禮に籠めて別るる霰かな 古舘曹人 砂の音
一霰こぼして青し松の空 原石鼎 花影
隠田の罅すさまじき霰かな 秋元不死男
烏賊漁る大電球を打つ霰かな 阿波野青畝
雲立ちの霰過ぎけり山始 岡井省二 鹿野
塩田に跳ねて静まる夕霰 岸田稚魚
温泉へ行く百姓に霰騒ぐ 飴山實 おりいぶ
音のして藁火に消ゆる霰哉 正岡子規 霰
音のして霰も見えず藪の中 正岡子規 霰
音不意に霰雲より落ちきたる 右城暮石 句集外 昭和三十七年
何か降ると言ひしとき止む宵霰 山口青邨
何か苗育つフレーム霰ふる 山口青邨
何もなき二月と思へば霰ふる 百合山羽公 故園
何段に杉の木陰のあられ哉 正岡子規 霰
我に突き当り行く青年達霰飴色 永田耕衣
我善坊に車引き入れふる霰 河東碧梧桐
蛾の翅の霰小紋がわびしくて 松村蒼石 雁
海の際霰はねては陽にまみる 佐藤鬼房
海静かなるに石切る音や霰降る 河東碧梧桐
刈萱に湖北は霰のるころか 飴山實 句集外
寒月や海にこぼるゝ玉霰 正岡子規 寒月
堪閑の灯も消さず夜半の霰きく 村山故郷
岩海苔を掻けばたまたま霰来て 鈴木真砂女
岩膚の玉あられやみ霑へり 飯田蛇笏
岩關の岩にけし飛ぶ霰哉 正岡子規 霰
祈るとき霰荒蕪の短山 赤尾兜子 歳華集
逆潮の霰ふたたび来りけり 岡井省二 山色
急霰にあけし障子や冬籠 日野草城
急霰を敷き国宝の塔立てり 鷹羽狩行
魚棚に鮫竝べたる霰かな 正岡子規 霰
胸に溜めし敗残の詩夜の霰 小林康治 玄霜
胸熱く詩を溜め霰遊ばせて 小林康治 玄霜
蕎麥の雪棉の霰はまばらなり 正岡子規 霰
鏡餅霰まじりの音となリ 深見けん二
驚かす霰の音や冬籠 正岡子規 冬籠
玉あられまこと小さくちいさくて 川端茅舎
玉あられ風夜半を過ぐこずゑかな 飯田蛇笏 山廬集
玉霰くぐるばかりや枯いばら 阿波野青畝
玉霰すべて了りぬ日の光り 山口誓子
玉霰ふたつならびにふゆるなり 三橋敏雄
玉霰みな傷ついて居るならむ 三橋敏雄
玉霰花無き梅を降り包み 松本たかし
玉霰錦木の実もうちまじへ 川端茅舎
玉霰鯛茶の上に来つゝあり 岡井省二 猩々
玉霰炭に酔ひたる顔出せば 草間時彦 中年
玉霰竹に当つて竹青し 日野草城
玉霰幽かに御空奏でけり 川端茅舎
芹さましあへず霰大空よりす 原石鼎 花影
金華山志せば冬になる霰 河東碧梧桐
句碑ひとつ墓標にかはる夕霰 古舘曹人 樹下石上
駒返り峠に向ふ霰哉 尾崎放哉 大学時代
啓蟄の霰しまくに薄日浮く 松村蒼石 雁
渓巖に吹きたまりたるあられかな 飯田蛇笏 霊芝
畦立ちの佛に霰たまりける 水原秋櫻子 蓬壺
茎漬に霰のやうに塩をふる 細見綾子
欠航の行嚢二百霰打つ 木村蕪城 寒泉
月に侘び霰にかこつとぼそかな 原石鼎 花影
月光の削りし木々に霰ふる 百合山羽公 故園
犬吠ゆる白虎山下の霰かな 正岡子規 霰
軒をうつ霰が覚ます去年今年 飴山實 句集外
古塀の終に倒るゝ霰かな 正岡子規 霰
戸格子を漏れて降り込む霰かな 日野草城
枯むぐら掻いくぐり落つ霰かな 山口青邨
枯原に降り込む霰のみの音 右城暮石 散歩圏
枯蔓にふる霰こそかすかなれ 山口青邨
湖の氷にはぢく霰哉 正岡子規 霰
午過ぎて初霰せり爆音下 加藤秋邨
呉竹の奥に音あるあられ哉 正岡子規 霰
呉竹の横町狹き霰かな 正岡子規 霰
呉竹の名に音たてゝ霰哉 正岡子規 霰
語られぬ神にたばしる霰かな 角川源義
口こはき馬に乘たる霰哉 正岡子規 霰
后陵出でて霰に顔うたる 角川源義
甲板に霰の音の暗さかな 正岡子規 霰
荒れ畝の霰のあとはぬくめあふ 能村登四郎
降り止んでひつそり並ぶ霰かな 川端茅舎
降る程の霰隱れて小石原 正岡子規 霰
降霰の白き小窓の内に職す 渡邊白泉
降霰やつむれるまなこ遊ばせつつ 三橋敏雄
黒羽や霰たばしる座禅堂 鷲谷七菜子 天鼓
妻と行く霰店には鯛二つ 香西照雄 対話
冴え返る音や霰の十粒程 正岡子規 冴返る
鷺のほか霰うつもの暗くなりぬ 加藤秋邨
三鬼忌の山傾けて霰かな 角川源義
三月のたばしる霰見つつ臥す 野見山朱鳥 愁絶
三輪の里降りわたりたる霰かな 阿波野青畝
山茶花に月の霰やそゞろなる 西島麦南 人音
山茶花の落花とをどる霰かな 原石鼎 花影
山風や雉子のあら羽に一ト霰 村山故郷
散りそむ花に霰せり大空高きより 種田山頭火 自画像 層雲集
四絃一齋霰たばしる疊かな 正岡子規 霰
子の脚がはね霰はね視野ゆたか 加藤秋邨
死ぬるまで怒つてゐると玉霰 飯島晴子
時々に霰となつて風強し 正岡子規 霰
鹿の躯のぬくさかなしや霰打つ 草間時彦 中年
柴漬になぐりこんたる霰哉 正岡子規 霰
捨橋の中にたばしる霰哉 正岡子規 霰
捨舟の中にたばしる霰かな 正岡子規霰
弱霰載せ気球の半身夜明待つ 赤尾兜子 蛇
手をしかと合はし霰に耐へゐたり 角川源義
酒倉へ粕とりにやる初霰 飴山實 句集外
宿根を打つや天付き玉霰 永田耕衣
順禮の笠を霰のはしりかな 正岡子規 霰
初めての霰かしこみ誕生日 上田五千石『天路』補遺
初霰ありて即ち欠航す 高野素十
初霰めざめの子等を待たで消ゆ 相生垣瓜人 微茫集
初霰耳に残りてゐし朝餉 相生垣瓜人 微茫集
初霰硝子戸の中びろうど冷ゆ 細見綾子
初霰父の冥土にしみるもの 古舘曹人 樹下石上
初霰簗には鰻かゝるべし 高野素十
小心の鴛鴦に霰の水柱 日野草城
小走りに出し禰宜が妻霰降る 木村蕪城 寒泉
掌に跳ねて失せて霰の重きかな 岡本眸
掌の霰溶けゆくに心ほぐれけり 橋閒石
松を洩る霰夕映え墓の面(能登一の宮、折口信夫先生墓のほとり) 細見綾子
上弦の最後の霰溶け行くも 永田耕衣
城崎に必ず逢ひし霰かな 岡井省二 前後
城門の釘大いなる霰哉 正岡子規 霰
寝るより枕かたむく初霰 齋藤玄 飛雪
振り向けばふるさと白く夕霰 中村苑子
人等来るうつくしき霰もちて来る 山口青邨
陣笠のそりや狂はん玉霰 正岡子規 霰
吹きまはす浦風に霰霙かな 河東碧梧桐
星暗く霰うつなり小野木笠 正岡子規 霰
星一類霰一粒手にもとらむ 山口青邨
青照りの日輪据わる霰あと 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
青竹をつたふ霰のすべり哉 正岡子規 霰
青潮に霰溜め浮きラワン材 木村蕪城 寒泉
石橋の上にたまらぬ霰哉 正岡子規 霰
石上の霰しばらく月照らす 桂信子 月光抄
石上も地上も霰はねかへる 山口誓子
石濤に既に狎れつつ玉霰 相生垣瓜人 微茫集
雪解のぬかるみを吸ふ霰かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
雪峰の月は霰を落しけり 原石鼎 花影
千両に霰こぼして空青し 橋閒石
川浪の霰光りに川千鳥 飯田蛇笏
素堂碑に霰ふりやむ山の径 飯田蛇笏
槍持の横つらを打つ霰哉 正岡子規 霰
蒼天より八ッ手をたたくあられくる 細谷源二 鐵
藻汐草かきあつめたる霰哉 正岡子規 霰
霜よけの俵破れし霰かな 正岡子規霰
打返し藁干す時の霰かな 河東碧梧桐
大きわが熱の掌霰はずみ消ゆ 佐藤鬼房
大きわが熱の掌霰はづみ消ゆ 佐藤鬼房
大屋根に右往左往の霰かな 上野泰 佐介
大阪に来てをり霰しまく日を 村山故郷
大年の霰打つたる鯉の澄み 森澄雄
大粒な霰ふるなり薄氷 正岡子規 霰
大粒の霰降るなり石疊 正岡子規 霰
大佛のからからと鳴る霰哉 正岡子規 霰
大佛のまじろきもせぬ霰哉 正岡子規 霰
瀧壺の渦にはねこむ霰哉 正岡子規 霰
凧に霰降り来る曇りかな 河東碧梧桐
蛸壺の壺割れてをる霰かな 阿波野青畝
鍛錬の霰附くなり老の松 永田耕衣
男神倒けて在せる霰かな 飯島晴子
知る人の顔近づくに霰いよゝ 細見綾子 桃は八重
地に鳴るは三月尽の夜のあられ 飯田蛇笏 雪峡
竹垣の外へころげる霰かな 正岡子規 霰
竹買ふて裏河岸戻る霰かな 正岡子規 霰
竹藪に伏勢起る霰かな 正岡子規 霰
竹賣の通りかゝりし霰哉 正岡子規 霰
猪の人をかけたる霰かな 正岡子規 霰
朝はしぐれ夕べ霰の竹瓮かな 草間時彦 櫻山
朝日さすそのとき霰ときめきて 山口誓子
朝発つ牝牛に異音流れる霰の丘 赤尾兜子 蛇
町筋を霰たばしりたばしりて 清崎敏郎
沈丁をくぐりて落つる霰かな 中村汀女
鶴の巣を傾けてふる霰哉 正岡子規 霰
汀にたまる霰見て温泉の村に入る 尾崎放哉 須磨寺時代
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火 草木塔
天塩路や霰に残るとりかぶと 齋藤玄 飛雪
途中三湖を見る遑ありて降る霰 河東碧梧桐
土くれは霰まみれや寒牡丹 中村草田男
冬緑なる樹を霰降りかくす 右城暮石 句集外 昭和二十七年
燈心のたばにこぼさぬ霰かな 正岡子規 霰
踏み捨ての石も霰も武州の産 三橋敏雄
禿山に鉄塔立ちて霰降る 上田五千石『田園』補遺
届きけり霰ちる日の蕪寿し 飴山實
那須野より大寺打つて霰かな 森澄雄
薙刀を車輪にまはす霰哉 正岡子規 霰
鍋焼きの行燈を打つ霰かな 正岡子規 霰
日の海や今し方なる浮霰 三橋敏雄
日の子われ日の下にして玉霰 原石鼎 花影
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
年賀式軍帽たたきたる霰 伊丹三樹彦
脳天に霰を溜めて耶蘇名ルカ 西東三鬼
波除に霰ころころ人働く 岡本眸
梅の木に霰きしかば文章書く 永田耕衣
白樺に吾名きざめば夕あられ 細谷源二 砂金帯
白魚に霰くはゝる棹秤 飴山實
白飯に飢ゑしは昔霰はね 桂信子 晩春
八陣の石は崩れてあられ哉 正岡子規 霰
八陣の石崩れたる霰哉 正岡子規 霰
髪の中に脱けてある髪夕霰 永田耕衣
帆柱や大きな月にふる霰 正岡子規 霰
帆渡りの島山颪霰かな 河東碧梧桐
板屋根に眠りをさます霰かな 正岡子規 霰
板塀によりもつかれぬ霰かな 正岡子規 霰
磐石の黒き勝利よ霰歇む 鷹羽狩行
磐石をめがけて霰降り集ふ 山口誓子
磐石打つ霰 幻の鬼ら躍り 伊丹三樹彦
筆に聲あり霰の竹を打つ如し 正岡子規 霰
氷上に霰こぼして月夜かな 臼田亜郎 定本亜浪句集
氷霰のかなた気球の沈み浮く 西東三鬼
病院の岩窪の霰夜光る 西東三鬼
貧しき退院胸に霰をはじきつつ 西東三鬼
風吹て霰空虚にほどばしる 正岡子規 霰
風呂熱くたしなむ妻や夕霰 西島麦南 人音
風呂敷のものゝかさばる霰かな 清崎敏郎
文章を書きをればよく霰ふる 永田耕衣
変な岩を霰が打つて薄日さす 西東三鬼
片町や霰捨てつゝ雲とほる 飴山實 少長集
暮れて尚硝子戸を霰うち止まず(三月廿五日、マーシャル全滅の報) 細見綾子
抱きいづる石の睡り児夕霰 松村蒼石 雪
北海の急霰吾の寝屋を撃つ 山口誓子
北斎の北に重なる霰かな 永田耕衣
無口の牛打ちては個々に死ぬ霰 西東三鬼
木の葉に笠に音たてて霰 種田山頭火
木兎の鳴きやむ杉の霰哉 正岡子規 霰
木蓮の苗束打つて霰去る 飯田龍太
黙契の集牛と我を霰打つ 西東三鬼
門附の編笠しをるあられ哉 正岡子規 霰
夜の霰へ犬を叱りて送らるゝ(西東三鬼氏を訪ふ) 細見綾子
夜廻りの木に打ちこみし霰哉 正岡子規 霰
夜廻りの鐵棒はしる霰哉 正岡子規 霰
耶蘇名ルカ霰はじきて友帰る 西東三鬼
油槽へむらがる眼ざらざら霰ふりこむ 赤尾兜子 蛇
有明の霰ふるなり本願寺 正岡子規 霰
夕鳶の翔けかたむきて玉あられ 飯田蛇笏 家郷の霧
夕霰をりから池の端に在り 下村槐太 光背
夕霰枝にあたりて白さかな 高野素十
揚舟や枯藻にまろぶ玉あられ 飯田蛇笏 山廬集
溶くる霰落つる霰を月照らす 桂信子 月光抄
葉牡丹に年立つあられ降りやみぬ 飯田蛇笏 白嶽
葉牡丹を街の霰にまかせ売る 中村汀女
旅僧の笠破れたる霰哉 正岡子規 霰
林中の青笹にとぶ玉あられ 飯田龍太
涙腺に霰たばしる民族なり 永田耕衣
霊芝生えし松の切株霰添ふ 山口青邨
老い朽ちてゆく母羨し玉霰 永田耕衣
老訥の観る霰のみ残るらむ 永田耕衣
鷲の子の兎をつかむ霰かな 正岡子規霰
藁灰にまぶれてしまふ霰かな 正岡子規 霰
藁屑のほのぼのとして夕霰 原石鼎 花影
曉の霰のたまるおとし穴 正岡子規 霰
炮烙に豆のはぢきや玉あられ 正岡子規 霰烙(ろく<火+緑のつくり>)
玻璃障子霰たばしり日ノ箭ふり 川端茅舎
篁に降り込む霰山始 木村蕪城 寒泉
賣れ殘る炭をおろせば霰かな 正岡子規 霰
鉈の柄を短く持ちて霰かな 飯島晴子
霰うつ巌に渇きて若い女 西東三鬼
霰おく夕の土のさりげなき 松村蒼石 寒鶯抄
霰おもへば開拓地真つ平ら 飯田龍太
霰きて術後の弱き目を荒らす 秋元不死男
霰して月夜もみゆる碑のほとり 飯田蛇笏
霰して納め遅れの飾かな 石田勝彦 秋興
霰すがし崩るるものを身に蔵し 鷲谷七菜子 黄炎
霰たばしり雪の切間に雪の佐渡 森澄雄
霰ふりやむ大地のでこぼこ 尾崎放哉 須磨寺時代
霰ふることもありしか笹粽 正岡子規 粽
霰やんで笠ぬげば月空に在り 正岡子規 霰
霰を撥ね石の柱のごとく待つ 西東三鬼
霰笠を打つてすくはる小順禮 正岡子規 霰
霰降りいふこときかぬ杖がある 飯島晴子
霰降り鳩翔ち貯炭渚なす 小林康治 玄霜
霰降り夜も降り顔を笑はしむ 西東三鬼
霰降る生れて間なき乳児の身に 山口誓子
霰降る鼠草子の鼠たち 飯島晴子
霰散る武者絵のふいと立つごとし 平井照敏 天上大風
霰止み鴉いま鳴く御宮居 木村蕪城 寒泉
霰打つ音のままなる山泉 飯田龍太
霰打つ谷底の墓時忠卿 大野林火 飛花集 昭和四十四年
霰打つ模型の鮨をめがけては 秋元不死男
霰跳ね絵馬より馬を誘ひ出す 鷹羽狩行
霰跳ぶ厨に近し病父と寝て 飴山實 おりいぶ
霰来るたそがれの川狭められ 松村蒼石 雪
霰落とす雲つぎつぎに庭日南 右城暮石 句集外 昭和八年
霰粒石採り場への深轍 右城暮石 上下
鮟鱇の口あけて居る霰かな 正岡子規 鮟鱇

霰 続補遺

*霰小雪ふた親のこゝろ察し入 加舎白雄
あめあられ雪や蜷川新右エ門 旦藁
あやなくも霰降かつ小雪哉 加藤曉台
あられかなけさのさむさを計る音 存義 古来庵発句集
あられかなけふのさむさを計る音 馬場存義
あられきくやこの身はもとのふる柏 芭蕉 続深川集
あられにはおもひ忘よはちかつぎ 挙白
あられふる篶のまがきや子はほしき 鈴木道彦
あられ雨空も馴ずや降こぼす 鈴木道彦
あられ降軒は黄めり正木つら 加藤曉台
いかに見よと難面うしをうつ霰 羽笠
うき雲や*霰月夜を鳩の啼 加舎白雄
おもしろき愛宕の坂の霰かな 素丸 素丸発句集
から~と味噌に摺こむ霰かな 傘下
から崎やあられ打込浪がしら 卯七
ぎよつとして霰に立や鹿の角 支考
くれなひの鷹の太緒や玉あられ 木導
げそ~と霰はれたるはる日かな 鈴木道彦
こけかはる霰晴てや梅の花 土芳
こぼるゝとのみ申たし降霰 松窓乙二
さゝばゆふ落葉をくゞるあられかな 杜若
さつ~と荻も氷もあられかな 史邦
しろ金や霰ふる夜の年忘れ 鬼貫
たまあられ水に沈めば消ぬべし 加藤曉台
たま霰星の空より降にけり 長翠
つばの葉も打ぬくやうな霰かな 芙雀
つぶ~と蕗の葉に降夕あられ 加舎白雄
つり髭に二度手間落る霰かな 紫白女
ねこ鳥の山田にうつるあられかな 正秀
のまばのめ霰降夜の箔仏 乙訓
はつ霰座頭笠ぬぐ霰哉 一笑(金沢)
ひすがらに垣間見くゞる霰哉 助然
ひとつ~かぞへもならず玉あられ 乙訓
まて暫しあられを華や柴小舩 馬場存義
めりやすの旅寐はやすしはつあられ 洒堂
もの売の声のはづみやはつあられ 土芳
よそ事にへがたく見ゆれ雪霰 田川鳳朗
伊勢の御師の折敷に溜る霰哉 建部巣兆
一おこし日を取たてゝあられ哉 林紅
一降はあられはしりのふり残し 土芳
一石橋年うちこさん玉あられ 流也 江戸広小路
鵜はしづみ鷺は雲井に霰かな 桜井梅室
奥山は霰雲なりけふの月 加藤曉台
音しばし霰にもなるはちたゝき 土芳
嫁入の歩で吹るゝ霰かな 去来
花の日は空に根のなき霰哉 土芳
荷をうつて霰ちる君みずや村雨 素堂
我物よ溝より内の玉あられ 尚白
海へ降霰や雲に波の音 其角
海士の尻沈むで浮て霰かな 其角
外の井や朝に炊ぐ玉あられ 尚白
柿の葉につれ~当る霰かな 卯七
樫の木の枝にとばしるあられ哉 蘆文
粥杖や打たれてあられはしりまで 完来 発句題叢
干鮭の目打て出るあられかな 雪芝
丸合羽はしり過たる霰かな 知足
顔出してはづみを請ん玉あられ 嵐雪
気たるみし鷹の面うつ霰哉 加藤曉台
記録所に目を留らるゝ霰かな 三宅嘯山
強く降て石に砕ケン玉霰 一笑(金沢)
玉あられ緒絶の橋やふり所 風虎 誹枕
玉あられ小菊の綿がこぼれける 土芳
玉あられ百人前ぞおとりこし 山店
玉霰お児の姿見初けり 木節
玉霰さて奇妙なる細工かな 井上士朗
玉霰思ひまをけし竹柱 加藤曉台
玉霰誰まことより二三分 安昌 坂東太郎
玉霰鍛冶が飛火に交りけり 加藤曉台
狗子の目をしばたゝくあられかな 三宅嘯山
鶏の忘れては寄霰かな 中川乙由
月や霰其の夜の更けて川千鳥 上田無腸
呼かへす鮒売見えぬあられ哉 凡兆
呼びかへす鮒売見えぬあられ哉 野沢凡兆
枯菊をまたもてはやすあられかな 夏目成美
五六間飛や霰の網の魚 成田蒼虬
広小路に人ちらかつて玉霰 一茶 文政句帖
行雲の四五合こぼすあられ哉 荻人
降こんで肩をぬかするあられかな 桜井梅室
今や身を裂か霰の紙合羽 五明
昆布売のうしろにかゝる霰かな 成美 はら~傘
笹の葉にこゞとをはじく霰哉 蘆文
三拝に霰のはしる扇かな 林紅
傘は世にたづさはる霰かな 四睡
山の月霰こぼせし皃もせず 松窓乙二
山風や霰ふき込む馬の耳 吉分大魯
山風や霰ふき込馬の耳 露印
山里は人をあられの花見かな 其角
山里や雲さへ来れば霰降る 鈴木道彦
市人の板戸負ひてあられ哉 支考
市人の目の鞘はづすあられ哉 支考
歯朶売のさつと仕舞ふてあられ哉 配力
汐いりの門田やあれて霰ふる 長翠
取次へ霰をはじく長柄かな 其角
手みじかに消て見するや玉霰 舎羅
舟曳の腰にたばしる霰かな 桜井梅室
初雪の次手のよさにあられ哉 雪芝
初霰柏木風呂にあたる音 句空
小夜あられ起見んばかり降にけり 加舎白雄
松の葉やあられひとつのすはりやう 曲翠
松嶋や炉路の霰にひの木笠 牧童
消まいぞ霰の音がうそになる 松窓乙二
心よくあられやくゞる冬木立 魚日
新田に水風呂ふるゝあられ哉 昌房
吹れ来て珠簾にはさまる*霰哉 三宅嘯山
吹入て背筋をはしる霰かな 許六
吹落す木葉に包む霰哉 錦江女
水にうくものとは見えぬ霰かな 千代尼
水鳥の大崩れするあられかな 正秀
酔きげん*霰に傘をはづしけり 三宅嘯山
菅笠の旅にあふたる霰哉 林紅
青柳やあら怪しからぬゆふ霰 寥松
静さや枯藻にまろぶ玉霰 加藤曉台
雪あられ旅好人の夜も寝ず 桃隣
雪の朝うへにころぶや玉あられ 路健
雪や五合あられや五合壱升哉 凉菟
雪雲の引のき際をあられかな 浪化
銭湯へ客の傘遣る霰かな 道彦 続蔦本集
祖父の指嘗るかんろやはつ霰 野坡
足リになる物か師走の雪霰 凉菟
打綿にあられ降り込師走哉 木導
鯛を切手もとにはしるあられ哉 三浦樗良
大仏のやね閑なるあられかな 許六
中空に降きゆるかと夕あられ 加舎白雄
猪の怒り毛走るあられ哉 木導
町中のあられさはがしひとの顔 炭太祇
追ついて霰の跡のしぐれ哉 旦藁
土器を投てうけたるあられかな 蓮谷 温故集
冬のはやいそがしうなる霰かな 木因
冬の情月明らかにあられふる 加藤曉台
冬瓜のかくてもあられ降夜哉 句空
藤葺やあられにやどる不破庇 其角
曇り晴松は霰のもやうかな 望翠
鍋売や霰ながらも得かぶらず 木因
縄ふしに霰はさまる垣根かな 加藤曉台
匂ひなき冬木が原の夕あられ 加舎白雄
猫の毛の中にはさまるあられ哉 許六
年の尾にあらむつかしや雪霰 中川乙由
梅いくつ閼伽の折敷に玉霰 其角
梅持て霰にはしる三十日哉 万子
白丁の根に吹まくるあられ哉 支考
薄暮やあられ興ずる樽ひろい 加舎白雄
飛かへる岩のあられや窓の内 丈草
美濃帋の力聞ゆるあられかな 晩得 哲阿弥句藻
膝つきにかしこまり居る霰かな 史邦
武士の足で米とぐ霰かな 嵐雪 玄峰集
武士の臑に米磨グ霰かな 嵐雪
武蔵野や富士のあられのこけ所 其角
武蔵野や富士の霰のこけ所 其角
風雲に別れてはしるあられ哉 卓池
壁までが板であられの山居哉 炭太祇
別事のどこともなしや飛あられ りん女
縫ものゝ中につぶ~霰かな 紫貞女
縫立の帋衣をためす霰哉 露川
磨レて木賊に消ル霰かな 其角
門高く池にこけこむあられ哉 卓袋
夜神楽や襟にあられのはくほろり 尚白
夜嵐に中でかたまるあられ哉 露川
野の末の雲に音あるあられ哉 成田蒼虬
矢面に出女たてり玉あられ 白雪
落馬しておもしろげやむ霰哉 松窓乙二
冷めしの霰たばしる鷹野哉 黒柳召波
恋侘てあるにあられぬ霰哉 旦藁
蓮の実を袖に疑ふ霰哉 井原西鶴
浪人のあられたばしる紙子哉 李由
老武者と指やさゝれむ玉霰 去来
嶽山のしるしにおろす霰哉 路健
椶櫚の葉の霰に狂ふあらし哉 野童
籠目から霰ふるふやこと納め 梅人 栞集
莚帆にあられたばしる月夜かな 牡年
霰かとなじめば太し寒の雨 怒風
霰かとまたほどかれし笠やどり一 如行
霰ちれくゝり枕を負ふ子ども 小林一茶
霰にもまだ鳴る山のなる子かな 卓池
霰ふり嶺のまさ木の今やちる 寥松
霰ふる音にも世にも聾傘 長谷川馬光
霰ふる形は木曽路かむさし野か 木節
霰やは芥子に牛房は埋木の 杉風
霰降絵ばかり見てもあられふか 錦江女
霰入る序に耳の掃除かな 朱拙
霰迄降約束歟若菜の夜 松窓乙二
鵲の橋よりこぼす霰かな 示蜂

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷壁 の俳句

氷壁 の俳句

氷壁

火の山の一氷壁の美しき 児玉 菊比呂
三面の氷壁のなか水揉み合ふ 岡田日郎
春あけぼの凱歌の如き氷壁立つ 有働亨 汐路
雪壁につららの育つ夜の月 伊藤いと子
雪壁の炎ゆる夜空ぞ鴨帰る 堀口星眠
雪壁の迫りて山の深くなり 稲畑廣太郎
雪壁の風身を刺すや岳開き 熊田鹿石
雪壁の崩れんばかり日は宙に 岡田日郎
絶巓の夜明け氷壁エメラルド 福田蓼汀 秋風挽歌
啄木鳥や氷壁に日のにじみ落つ 中村 信一
悼むべき「氷壁」を読む炬燵かな 三和玲湖
氷壁が雲とたたかふ牧の空 大島民郎
氷壁が返すこだまはわれのもの 本田青棗
氷壁に黒燿石の洞の闇 中戸川朝人 残心
氷壁に垂る一線のザイルの朱 小倉英男
氷壁に石楠花凍る葉を垂らす 岡田日郎
氷壁に着くゴンドラの終の駅 山口誓子
氷壁に夕雲の来てゐたりけり 岡田日郎
氷壁に来て燦然と鳥乱る 中戸川朝人 残心
氷壁のおのがこだまの中に鴎 古館曹人
氷壁の奥は知らずも死後の国 河野南畦 湖の森
氷壁の下の教会ともりそむ 石原八束
氷壁の碧を引き寄せユーカラ織る 中山砂光子 『納沙布』
氷壁は女の誘ひかも知れず 石田よし宏
氷壁は息絶えわれの声けぶる 中本源二
氷壁へ氷壁の影刃のごとし 羽部洞然
氷壁を煽りて発てるブルージェイ 高澤良一 ぱらりとせ
氷壁を攀づくれなゐの命あり 大串章
木々芽吹く富士の大氷壁の前 羽部洞然
嶺の星黄を氷壁へしたたらす 太田嗟
聳えゐて氷壁に翳まぎれなし 鷲谷七菜子

氷壁 補遺

聳えゐて氷壁に翳まぎれなし 鷲谷七菜子 銃身
瞑れば雉子鳩背後には氷壁 佐藤鬼房
氷壁の空真蒼に日脚のぶ 飯田龍太
氷壁に着くゴンドラの終の駅 山口誓子
桃咲くや雪壁かすむ間の岳 水原秋櫻子 餘生
絶巓の夜明け氷壁エメラルド 福田蓼汀 秋風挽歌
生活の氷壁きびし爪を剥ぐ 富澤赤黄男
残雪の雪壁なせり渋峠 水原秋櫻子 殉教
コーヒーを飲み雪壁の中走る 細見綾子

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:12 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪礫 の俳句

雪礫 の俳句
雪礫 

ふり向けば大年増なり雪礫 一茶
また当る当てずつぽうや雪礫 下村 梅子
まぼろしの夫の背めがけ雪礫 中嶋秀子
わらんべのつぶら眼と来る雪つぶて 後藤房枝 『蕗童子』
影の無き雪礫のみ当りけり 昆ふさ子 『冬桜』
外れし雪礫積雪に喰ひ入れり 津田清子
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子
割れるたび薔薇の形の雪つぶて 櫂未知子
眼に見えて弱まる速度雪礫 右城暮石 上下
仰のけにこけて投るや雪礫 一茶
靴紐をむすぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
靴紐を結ぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
元旦の不眠工区へ雪礫 穴井太 土語
吾にも来る唖の子どちの雪つぶて 細川加賀
三絃のばちでうけたり雪礫 一茶
七日堂熱気沈めの雪つぶて 田崎鶏童
若菜つむぬきかけ袖や雪礫 北枝
若菜つむぬぎかけ袖や雪礫 立花北枝
手の熱くなるまで固め雪礫 深谷鬼一
手加減のなくなりて来し雪つぶて 城台 洋子
手足なき藁塚雪礫受けて立つ 柴田奈美
出稼より帰りし父に雪礫 太田土男 『西那須野』
初花の一枝にしまき雪つぶて 加藤耕子
女医未婚にて雪礫よくあたる 吉田吐志男
新しき雪に沈みて雪礫 村上三良
雪つぶてまた投げ合うて別れかな 阿部慧月
雪つぶて額にはぜる鼻眼鏡 二村典子
雪つぶて光にのめりこむひかり 落合水尾
雪つぶて受けし一つを憎しめり 原 石鼎
雪つぶて樹に当り爆ず吾子恋し 田川飛旅子 花文字
雪つぶて投げ入れにけり佐梨川 細見綾子
雪つぶて別れがたなく投げ合ひて 金児杜鵑花
雪礫あたりし枝の鶲かな 橋本鶏二 年輪
雪礫あたりし障子開きけり 清原拐童
雪礫あらぬ方よりよんで来し 諸橋 草人
雪礫うちし孤独のかへりけり 小林康治 玄霜
雪礫かはされ不意に恋心 小口洋子
雪礫しきりに塀を越えて来る 高浜年尾
雪礫とび交ふ幹の間かな 川原 程子
雪礫もて雪投げに誘ひけり 太田土男
雪礫よりも喚声飛びかはす 中島斌雄
雪礫われに投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫海に吸はれてゆくが見ゆ 松山足羽
雪礫湖に抛りて掌がさびし 猿橋統流子
雪礫吾に投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫光り掠めし恋の中 成田千空 地霊
雪礫松に当れば松にほふ 鈴木鷹夫 春の門
雪礫仁王立して受けとめし 下村梅子
雪礫仁王立ちして受けとめし 下村梅子
雪礫雪にぶちこむ独り旅 椎橋清翠
雪礫田鴫を追つて落ちにけり 長谷川かな女 雨 月
雪礫馬が喰んとしたりけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
雪礫飛んできて子の現れる 田村のり子
雪礫夜の奈落に妻子ねて 森 澄雄
袖がないから濡れずに投げる雪つぶて 仁平勝 花盗人
村の木へ離郷最後の雪礫 中田勘一 『雪礫』
仲直りしてぶつけ合ふ雪礫 片山由美子 水精
長持にわが雪つぶて雪祭 田中午次郎
罵るや戎を縛す雪礫 河東碧梧桐
白き尾を曳く強肩の雪礫 右城暮石 上下
白虹のごとくよぎりし雪礫 柴田果
薄氷の上にとゞまり雪つぶて 川崎展宏
飛のいて烏笑ふや雪礫 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
飛びくるは彼の心音雪礫 広川康子
父への憎しみ消えぬ父の忌雪つぶて 楠本憲吉
雄ごころの萎えては雪に雪つぶて 川崎展宏
幼子の遠くは飛ばぬ雪礫 仲佐方二
懶惰せめて子の雪礫でも浴びろ 伊丹三樹彦
抛らるる刹那の名なり雪礫 越野蒼穹

雪礫 補遺

懈惰せめて 子の雪礫でも 浴びろ 伊丹三樹彦
墓参後の背の雪礫 次代のもの 伊丹三樹彦
父の雪礫礫に芯ありて 鷹羽狩行
彼をぎっちょと知った その雪礫浴びた 伊丹三樹彦
白き尾を曳く強肩の雪礫 右城暮石 上下
罵るや戎を縛す雪礫 河東碧梧桐
啄木の追はれし村の雪つぶて 鷹羽狩行
雪礫打つ電柱を目の敵 上田五千石『琥珀』補遺
雪礫手に受け止めて投げ返す 右城暮石 句集外 昭和五十年
雪礫峡に裂かるる海の街 角川源義
雪礫うちし孤独のかへりけり 小林康治 玄霜
雪礫あへなく没し雪に帰す 阿波野青畝
雪国が的雪つぶて粉微塵 平畑静塔
雪つぶて投げ入れにけり佐梨川(小出紙漉を見る) 細見綾子
女教師に罪なき者の雪礫 上田五千石『田園』補遺
靴紐を結ぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
眼に見えて弱まる速度雪礫 右城暮石 上下
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子 礼拝
賀を交しをるにどこより雪つぶて 森澄雄
愛のごと脆くて春の雪礫 上田五千石『風景』補遺

雪礫 続補遺 

茶の花や越路の笠の雪礫 野坡
初雪や爪臙脂のつく雪礫 木導
若菜つむぬぎかけ袖や雪礫 北枝
軍兵を蒲団で待ん雪礫 其角

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:08 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪野 の俳句

雪野 の俳句

雪野 

あへぎゆく汽笛を刻に雪野人 宮坂静生 青胡桃
お日照るや雪野のくまの鵯のこゑ 金尾梅の門 古志の歌
きんいろのきつねの駆けた足跡か雪野に滲むちいさな闇は 加藤治郎
じゃみせんじょんから坊様(ぼさま)に蹤きて雪の原 高澤良一 燕音
その奥に水ひびきあふ雪野かな 野木藤子
たいくつな白樺佇てり雪の原 三輪初子
ながながと川一筋や雪の原 凡 兆
はてしなき雪野に鶴は朱を点ず 木下ふみ子
ひた歩く雪原恋の罠あらずや 仙田洋子
ぼほと日が落つ雪原の畦木ども 桜井博道 海上
またたかぬ一灯が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子
まぶしくて雪原ひかりの鹿ふやす 永田耕一郎 氷紋
みかへれば雪野のひかり榛にそふ 川島彷徨子 榛の木
みそさざい聴く雪原に橇止めて 小坂順子
やがてたつ鶴粛然と雪の野に 竹下陶子
われとわが顔の昃りを雪の原 佐野良太 樫
われに遇うため父は生まれし雪野 林美鈴
一つ家のともし火低し雪の原 雪 正岡子規
一斉に雪原をたつ日の出鶴 浅沼艸月
一村のみ雪原白紙委任状 河野 薫
一片の雪だにつけず雪野の木 小澤實
一望の雪野に畦の井の字かな 二瓶洋子
影一つだになくて雪原睡くなる 野澤節子 遠い橋
黄塵の野面の隅に雪の富士 水原秋桜子
黄鷹の雪原の果まで飛翔 長谷川かな女 花寂び
何処やらにせゝらぎの音雪の原 西山泊雲 泊雲句集
花嫁が雪野まぶしき駅に下車 阿部みどり女
画竜点晴どころではなく雪野かな 櫂未知子 蒙古斑
鴨飛んで雪原に大き影落す 林 翔
眼とひたいで出逢う雪野に光り合い 岩間愛子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
汽笛しみゆく雪原の果に出そむ星 シヤツと雑草 栗林一石路
汽笛ひいひいと雪の原暮るゝ工場あり シヤツと雑草 栗林一石路
騎初や鞭加へ越す雪野原 広江八重桜
久々に照る雪原のあの木この木 佐野良太
玉川の一筋光る雪野かな 内藤鳴雪
禽のみに目聡く斑雪野に住めり 堀口星眠
金売が小荷駄行くなり雪の原 几董
群れ鴨を載せ雪原のかゆからむ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
形代となるまで伏せむ雪の原 柿本多映
穴と見し所家なり雪の原 松瀬青々
月光の雪原を這ふはぐれ雲 岡田日郎
月雪の野はたしかなり大根時 惟然
元日の日輪雪の野をわたる 宮崎青岬
枯葉揉まるる音澄んで雪原の月 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
後続を待てり雪野の平にて 津田清子
行人に雪野の起伏晴れにけり 金尾梅の門 古志の歌
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
降る雪の野の深井戸の谺かな 高柳重信
根雪原影の嶽おく月明り 河野南畦 湖の森
採氷や唯雪原の網走湖 唐笠何蝶
山室のひとつ灯蒼む根雪原 河野南畦 湖の森
子が知れる雪野の果の屠殺場 沢木欣一
寺一つむつくりとして雪の原 雪 正岡子規
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
耳聾ひて雪原と青空にあり 千代田葛彦 旅人木
若さ遣りな場なし雪原の道つづく 右城暮石
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
手の平を落とし雪野に転びたる 大石雄鬼
朱雀門紛れもあらず雪の原 坪井澄郎
受難節の日矢むらさきに雪の原 鷲谷七菜子
初鴉雪原低くとびつづけ 小野池水
傷あらぬ雪原に顔埋めたし 能村研三 騎士
硝子戸に雪原あふる卒業歌 有働亨 汐路
唇耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
吹かるるは何の蔓もの雪の原 高澤良一 随笑
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子
清算のごとく雪野の石の家 三谷昭 獣身
声出さば他人の声なり雪の原 小泉八重子
青し青し若菜は青し雪の原 来山
雪の原すべりゆくごと大烏 稲葉道子
雪の原とぶ夕雲の力なし 橋本鶏二 年輪
雪の原なる探梅の五六人 長谷川櫂 天球
雪の原ぼつこりとなる木陰かな 美濃-此筋 俳諧撰集「有磯海」
雪の原穴の見ゆるは川ならめ 寺田寅彦
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原道は自然と曲りけり 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雪の原猟銃音がわれを撃つ 遷子
雪の野にところところの藁屋哉 雪 正岡子規
雪の野にもろびとこぞりて雪汚す 今泉康弘
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子 紅日
雪の野に拾ふ薄墨羽毛なり 古賀まり子 緑の野以後
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古館曹人
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の上に見えつつ富士ヶ嶺はくろずむ雲とともに黒ずむ 宮原勉
雪の野の兎華麗な罠に陥つ 能村研三 騎士
雪の野の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の野の彼方を行くは知る人か 高濱年尾 年尾句集
雪の野や畝なす茶垣遠黝し 杉山岳陽 晩婚
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子 紅日
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を最上の幅で押し通す 津田清子 二人称
雪の野を方向づける川流れ 津田清子 二人称
雪眼鏡雪原に日も牛も碧き 橋本多佳子
雪原とならばまた来む芒原 橋本美代子
雪原となりし筑紫野久女の忌 鈴木厚子
雪原にあらかた埋もれ梅林 長谷川櫂 古志
雪原においてきぼりのごと一戸 高澤良一 随笑
雪原におらぶ言の葉なさぬ語を 川口重美
雪原につんと彳ちたる萱いっぽん 高澤良一 随笑
雪原にまつたき夕日垂れ来たる 石橋辰之助 山暦
雪原にわが機影投げ初飛行 室賀杜桂
雪原にわが誕生の紅一すじ 魚沼泉
雪原に塩湖の広さおく機窓 山田弘子 こぶし坂
雪原に汽笛の沈む成木責 石田波郷
雪原に月光ゆらぐこともなし 岡田日郎
雪原に月光充ちて無きごとし 岡田日郎
雪原に建てて見捨てて己が墓 中島斌雄
雪原に犬放ち炉火熾んなり 河野南畦 『黒い夏』
雪原に呼気のみ太しゆまりして 川口重美
雪原に杭打つ土の匂ふまで 加藤憲曠
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に行き暮れいつか星の中 岡田日郎
雪原に子のこゑのある淋しさよ 石寒太 あるき神
雪原に十勝の月をあげにけり 星野松路
雪原に小さき礼拝堂(チャペル)暮れ残る 仙田洋子 雲は王冠
雪原に小さき礼拝堂暮れ残る 仙田洋子
雪原に沼あり水晶水湛ふ 岡田日郎
雪原に雪原の道ただ岐る 八木林之助
雪原に雪降り月光の跡癒やす 岡田日郎
雪原に川あらはれて重きかな 桜井博道 海上
雪原に川の全長沈みけり 鈴木 勉
雪原に太のどのびて鶏鳴す 北原志満子
雪原に丹頂の婚かがやけり 小柳ひろ子
雪原に天つ日暗きまで照りぬ 岡田日郎
雪原に土よりの杭うらがなし 成田千空 地霊
雪原に灯して牧舎年を守る 金箱戈止夫
雪原に到り双手を挙げて会ふ 成田千空 地霊
雪原に踏み入るなんと淋しき世 熊谷静石
雪原に道あるらしや人遠し 高木晴子
雪原に屯田兵舎と碑が一本 瀬野美和子 『毛馬堤』
雪原に白顕ち晒す布の丈 野沢節子
雪原に風吹き夕日消しにけり 岡田日郎
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚
雪原に兵叱る声きびしかり 片山桃史 北方兵團
雪原に片手袋の指忘れ 対馬康子 吾亦紅
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に北斗七ツの六ッ昇る 岡田日郎
雪原に野哭といふ語口もるる 石寒太 炎環
雪原に立方体のホテルかな 岩崎照子
雪原に佇つ初陣のこころあり 中原道夫
雪原に橇現る朝日躍り出で 中山砂光子 『納沙布』
雪原に鴉の掟翔けては降り 齋藤愼爾
雪原のいづこ月光ひらりと舞ふ 岡田日郎
雪原のおのが影へと鷲下り来 山口草堂
雪原のかなた雪嶺絹の道 片山由美子 風待月
雪原のしづかさ余呉の湖を嵌め 永井博文
雪原のなかに川ある墳墓の地 佐川広治
雪原の一樹かがやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹高しと日はのぼる 石田波郷
雪原の果て見て歩くばかりなり 永田耕一郎 氷紋
雪原の起伏失せつゝ雪深む 大橋敦子 匂 玉
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の月枯蔓に大いなる 西本一都
雪原の月光かたまる一巨木 岡田日郎
雪原の見えぬところに翳生ず 宗田安正
雪原の高き一樹を恃みとす 小澤克己
雪原の黒きところが能の村 佐川広治
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子
雪原の子に太陽がつきまとう 長嶋石城
雪原の樹間に光る湯の湖かな 若林幸枝
雪原の深創ゑぐり天塩川 山崎秋穂
雪原の人か一点動くを待つ 有働亨 汐路
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子
雪原の水漬く一線菜現れぬ 原田種茅 径
雪原の青さ身に沁む朝の楽 堀口星眠 火山灰の道
雪原の赤きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雪舐め老犬牛を追ふ 岡田日郎
雪原の泉へけものみち寄れり 中戸川朝人 残心
雪原の中に春立つ産屋はも 依田明倫
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の兎の足跡藪目指す 斉藤志津子
雪原の突起もつとも白き藁塚 河合凱夫
雪原の日矢に盲ひし達磨売り 木内彰志
雪原の白光月光を以つて消す 岡田日郎
雪原の風遠し樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の風遠し樹氷晶々と 内藤吐天
雪原の風遠樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の焚火に月の上りけり 岩田由美
雪原の平らに書かれし遺書ありき 寺田京子
雪原の明より暗へ三十三才 木附沢麦青
雪原の木の影あはし影を踏む 仙田洋子 橋のあなたに
雪原の夜風ぶつかれ街に酔ふ 石橋辰之助
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藍の彼方の吾子七夜 堀口星眠 営巣期
雪原の藁塚として寄り添へる 樋笠文
雪原の靄に日が溶け二月尽 相馬遷子
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原へつながつてゐる長廊下 西山 睦
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や肩から上の人往き来 嶋田摩耶子
雪原や小屋に刃物を閉じ込めて 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
雪原や抜きさしの歩の女の息 猪俣千代子 堆 朱
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪原をわたる日ざしに馬放つ 木村凍邨
雪原を悪童のごと漕ぎ進む 松本明子
雪原を圧してオーロラ出現す 坊城 中子
雪原を一列に来る下校の児 中園真理子
雪原を琴唄まろびゆく夕べ 文挟夫佐恵 雨 月
雪原を月わたりゆく翁面 斎藤梅子
雪原を跳びては羽摶ち鶴の舞 伊東宏晃
雪原を跳び跳ぶ兎一未来 中島斌雄
雪原を分つ落葉松襖かな 古賀まり子 緑の野以後
雪原を北狐また銀狐 天本美沙絵
雪原を来てやまどりの尾をひらふ 那須乙郎
雪原行くきのふの吾を置き去りに 西井さち子
雪野へと続く個室に父は臥す 櫂 未知子
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野ゆく誰もひとりの手を垂れて 阿部誠文
雪野一個所肥壷にふくらめる 栗生純夫 科野路
雪野遠し墓に遇ふさへ親しくて 成瀬桜桃子 風色
雪野原涯に昼餉のうすみどり 平井久美子
雪野原真一文字に昏れにけり 工藤菁生
雪野行き吾には吾の放浪記 大橋敦子 匂 玉
雪野行く汽車にとびつく一戸の灯 笠井操 『雪の紋』
雪野照り莎の金ンの紛れたる 成田千空 地霊
雪野暮るるわが脳濁るはやさにて 高野ムツオ 陽炎の家
雪野来て雪野の果に灯をともす 三谷昭 獣身
雪野来て買ひたきものに懸想文 金箱戈止夫
雪野来て半鐘記号の赤連珠 平井さち子 紅き栞
雪野鴉雨誘ふ声しぼるなり 金尾梅の門 古志の歌
千の鬼出て雪原に跡もなし 加室鳴
千年の大寺一つ雪野かな 雪 正岡子規
川鳴れど雪原暮れて道失ふ 岡田日郎
泉まで雪原踏まれ往来あり 岡田日郎
足跡の盡きし戸口や雪の原 雪 正岡子規
足跡の盡きし小家や雪の原 雪 正岡子規
体重をかけ雪原を横切らねば 嶋田摩耶子
丹頂の舞ふ雪原の輝きに 村上唯志
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
朝日さす雪原金沙銀沙照り 鈴木貞雄
長々と川一すじや雪の原 凡兆 選集古今句集
鳥の数いのちの数の雪野原 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
湯をかけて墓現はるる雪の原 藺草慶子
燈台の燈が雪原へ伸び切れず 河野南畦 『硝子の船』
踏みわたる雪野日たけつ鶏遠き 金尾梅の門 古志の歌
逃げ水が逃ぐ雪原の高速路 茨木和生 木の國
二タ杉より離々の人家の雪野かな 野村喜舟 小石川
馬となるべき魂あをく雪原に 正木ゆう子
柏の葉生きて雪野を駈けつづく 堀口星眠 営巣期
白山に引き上げられし雪の原 大石悦子 百花
白日の雪原を行く浚はれゆく 成田千空 地霊
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野に月あり青き魔がひそみ 堀口星眠 営巣期
斑雪野に古傷かばふ身を斜め 稲垣きくの 牡 丹
斑雪野に黒牛といふ鬱を置く 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
斑雪野に波打ち寄する厚田かな 古川英子
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治
斑雪野やいきなり尽きて陸奥の海 中川禮子
斑雪野や産着干さるる牧夫寮 丸山美奈子
斑雪野や日差し静かにゆき渡り 安田敏子
斑雪野を楽人の群れ通り過ぐ 川崎展宏
班雪野を詩嚢繕ひより戻る 中原道夫
百歳の彼方は雪の野づらかな 成田千空
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
風紋のしるき雪野を踏み戻る 辻 桃子
分水嶺汽車を雪野へ放ちけり 羽部洞然
噴煙の影雪原を蒼くせり 前山松花
文藝はいまだ雪原に佇つ柱 中原道夫
墓前なり月山雪の野に泛ぶ 篠田悌二郎
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
没日の後雪原海の色をなす 有働 亨
本然の日と雪の原ここ母郷 成田千空 地霊
眠りも祈り雪原は雪重ね 斎藤愼爾 夏への扉
夜の嶽を灯が登りゆく根雪原 河野南畦 湖の森
夜の嶽を燈が登りゆく根雪原(立山連峰) 河野南畦 『湖の森』
厄人形雪野へ送る肩車 佐々木とく子 『土恋』
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕空や雪野に黒き楊柳 永井龍男
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
葉のついてゐるのは柏雪の原 高木晴子
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本 眸
林檎の芯抛る雪原の大反射 内藤吐天
林檎置く車窓雪野は果もなく 永井龍男
鷲下りて雪原の年あらたなり 山口草堂
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
橇失せぬ雪原と星あふところ 平野 露子
翔けゆきし影かたちなき雪の原 的野雄
鴉二羽寄りつ離れつ雪の原 辻田菊子

雪野 補遺

うつむくときおのが息の香雪野にて 橋本多佳子
けぶり立つ稲架木雪野の墓標とす 鷲谷七菜子 銃身
しかも狙う鳶か 雪原無一物 伊丹三樹彦
たまゆらの日のたちのぼる雪の原 上田五千石『琥珀』補遺
と見こう見しても 雪野の 飢鴉 伊丹三樹彦
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
絢爛たる雪原を見て又ねむる 岸田稚魚 雁渡し
一つ家のともし火低し雪の原 正岡子規 雪
一樹の影なき雪原へ入り来り 鷹羽狩行
餌を漁るは個々 雪原の群鴉 伊丹三樹彦
何すればこの雪原に跡のこる 右城暮石 天水
懐炉の火身の一点に雪野行く 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
角キラリ雪原の鹿既に在らず 中村草田男
関ケ原よりの雪野に百足虫山 山口誓子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車見る子せちにいとほし雪の原 富安風生
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
穴あいてとけてゐるなり雪の原 三橋敏雄
月が照り雪原遠き駅ともる 橋本多佳子
月の出を夜嵐となる雪の原 飯田蛇笏 家郷の霧
見張る首 雄とし 雪野の番い雉子 伊丹三樹彦
三叉に白き花あり雪の原 山口青邨
思ひ出のごと斑雪野に日当れる 清崎敏郎
寺一つむつくりとして雪の原 正岡子規 雪
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
車窓に映るわが像雪の野を走る 松崎鉄之介
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
水あればある夕焼や雪の原 中村汀女
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子 雪嶺
生きものの白さで飛んで 雪野の鷺 伊丹三樹彦
青鷺のこゑ倶会々々と斑雪野に 山田みづえ まるめろ
切れ切れの雪野の虹をつぎあはす 橋本多佳子
雪の原の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の原ふみ大滝を見んとする 山口青邨
雪の原一樹の蔭に尿かな 日野草城
雪の原何処まで見ゆる月の雪舟 尾崎放哉 大学時代
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原中仙道の家灯る 阿波野青畝
雪の原猟銃音がわれを撃つ 相馬遷子 山河
雪の野に 尖るを 棒杭とも墓とも 伊丹三樹彦
雪の野にところところの藁屋哉 正岡子規 雪
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子
雪の野に最も白き白亜館 山口誓子
雪の野に出てうるほへる昼の汽車 廣瀬直人
雪の野に馬を使ひて耕作す 渡邊白泉
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古舘曹人 砂の音
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の一隅照らす夜の娶り 有馬朗人 知命
雪の野へ吾子がゆあぶる音ゆけり 渡邊白泉
雪の野をうがちて深き井戸をくむ 有馬朗人 母国拾遺
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を多彩のコンテナ貨車走る 山口誓子
雪原に灰撒くは雪を融かすなり 加藤秋邨
雪原に形あるもの牛の柵 山口誓子
雪原に午後のひかりのほろびゆく 飯田龍太
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に黒一点を加へ佇つ 林翔
雪原に黒目がちなる異界の子 佐藤鬼房
雪原に榛の木のみの立つ夕日(新潟県浦佐、行方秋峰さん居六句) 細見綾子
雪原に生きて女が灯に歩く 赤尾兜子 蛇
雪原に遭ひたるひとを燈に照らす 橋本多佳子
雪原に足跡犬の停まるまで 山口誓子
雪原に踏切ありて踏み越ゆる 橋本多佳子
雪原に日射せり糞まる力出づ 岸田稚魚 雁渡し
雪原に日射せり糞る力出づ 岸田稚魚 負け犬
雪原に白鳥雪くれば更に 金子兜太
雪原に物蔭ありて真黒し 佐藤鬼房
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚 筍流し
雪原に兵の壮夫の発句生れよ 石橋秀野
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に没る三日月を木星追ひ 橋本多佳子
雪原に橇駆り吾子と昏れてゐる 橋本多佳子
雪原に雉子出あるく伊吹山 岡井省二 明野
雪原に鴉喪章の羽根納め 鈴木真砂女 夏帯
雪原のどの家にも月芯をなす 飯田龍太
雪原のひとりの尿意清浄と 飯田龍太
雪原のわれ等や鷹の眼下にて 橋本多佳子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子 山国
雪原の雨ぬくし木立一色に 大野林火 冬青集 雨夜抄
雪原の家山寄りにかたまれり 右城暮石 虻峠
雪原の萱離々たりやスキー行 山口誓子
雪原の起伏に翳の煙色 右城暮石 句集外 昭和五十五年
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の昏るるに燈なき橇にゐる 橋本多佳子
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子 山国
雪原の銃身徐々に決りゆく 鷲谷七菜子 銃身
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子 銃身
雪原の轍白さを失はず 右城暮石 句集外 昭和四十一年
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の白さ 生きものの鷺の白さ 伊丹三樹彦
雪原の夜気をしりへに橇の燈 飯田蛇笏 家郷の霧
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藁塚ぐるり雪陥ち込む 山口誓子
雪原の赭きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雉子となりいま朝日さす 岡井省二 前後
雪原の靄に日が溶け二月盡 相馬遷子 雪嶺
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原やアイヌの国のシャモ部落 石塚友二 磊[カイ]集
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や千曲が背波尖らして 橋本多佳子
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亜郎 定本亜浪句集
雪原より低く絶対安静位 岸田稚魚 雁渡し
雪原よ降り疲れたる雪遊ぶ 岸田稚魚 雁渡し
雪原をゆくとまくろき幌の橇 橋本多佳子
雪原をゆく銃口を怠らず 石田勝彦 百千
雪原を堰きて小川の水やはらか 右城暮石 句集外 昭和二十八年
雪原を倖せとみる日輪のかがやき 赤尾兜子 蛇
雪原を山まで誰かのしのし行け 西東三鬼
雪原を焚きけぶらして鉄路守る 橋本多佳子
雪原を無疵のうちに見に来たる 右城暮石 散歩圏
雪野のかぎり行きたし呼びかへされずに 橋本多佳子
雪野の桔梗とり来たばねる荒むしろ 松崎鉄之介
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野より梅野につゞく遠い雲 高屋窓秋
雪野暮れすぐ木星より光来る 橋本多佳子
雪野鴉己れ枉げねば棲みつけず 上田五千石『田園』補遺
千年の大寺一つ雪野かな 正岡子規 雪
疎林立つところもはだら雪の原 阿波野青畝
鼠駆け出しが雪原ひろがれり 山口誓子
足跡の盡きし戸口や雪の原 正岡子規 雪
足跡の盡きし小家や雪の原 正岡子規 雪
電線や雪野はるばる来て吾を過ぐ 橋本多佳子
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野にすこし暴れし蘇民祭 岡井省二 鹿野
斑雪野の月夜を水の流れくる 飯田龍太
斑雪野の端清潔な厠置き 岡本眸
斑雪野の夕日湯の宿まで蹤くか 大野林火 方円集 昭和五十一年
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治 四季貧窮
斑雪野や怯啼く鷺の松くろし 角川源義
斑雪野や女男の塞神の肩を擁く 角川源義
斑雪野を集めて高め富士といふ 上田五千石『琥珀』補遺
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
仏菓捧げゆくに 尾を立て雪野の犬 伊丹三樹彦
圃も湖もただに雪原老スワン 角川源義
歩かねばならぬ雪野を人歩く 山口誓子
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
棒が立って 鴉がとまる ただ雪野 伊丹三樹彦
釦一個が どこかで失せて 雪野の旅 伊丹三樹彦
目から殺(や)られる男 雪野の陽さえも敵 伊丹三樹彦
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本眸
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
鴉には飽いてる 雪野へ坐職の眼 伊丹三樹彦

雪野 続補遺

なが~と川一筋や雪の原 凡兆
雁啼くや明星しづむ雪の原 常世田長翠
月雪の野はたしか也大根時 惟然
七種のみくさは摘し雪野かな 四睡
青し~わか菜は青し雪の原 小西来山
雪の原ほつこりとなる木かげ哉 此筋
雪の野に雪をさゝげし荊棘哉 加舎白雄
川筋のたゞしくなりし雪野哉 乙訓
日の落る方が西なり雪の原 井上士朗
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:04 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

地吹雪 の俳句

地吹雪 の俳句

地吹雪

あす晴るるための地吹雪アイヌ村(コタン) 宮坂静生
こぼれつつ地吹雪橋を渡りゆく 鈴木鷹夫 千年
さらさらと地吹雪あそぶ殉難碑 伊藤霜楓
スキー迅し従ひ走る雪煙 大家湖汀
やみくもに駈け出す地吹雪番外地 平井さち子 紅き栞
伊吹嶺に雪煙見ゆる薬草屋 後藤和朗
一瞬の地吹雪に地の動きけり 瀬野美和子 『毛馬堤』
海へ還る地吹雪晩年泣かぬ母 齋藤愼爾
革命いつのこと地吹雪に昏れる村 木附沢麦青
岩手山雪けむり立つ二日かな 沼澤 石次
汽車の厚き硝子雪浪かがやかす 西村公鳳
畦青む地吹雪除けも外されて 窪田竹舟
月光に落葉松羽摶つ雪けむり 堀口星眠 営巣期
月明や乗鞍岳に雪けむり 石橋辰之助 山暦
最北のバス地吹雪に呑まれゆく 小笠原弘順
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
初夢のなかの高嶺の雪煙 飯田龍太
人死にし山月明の雪けむり 高須茂
吹雪荒れ地の雪けむりつぎて立つ 石橋辰之助 山暦
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂
雪けむり日輪の渦いく重にも 千代田葛彦 旅人木
雪けむり立つ夜の星座鋭く正し 石橋辰之助 山暦
雪けむり立てど北斗はかゝはらず 石橋辰之助 山暦
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
雪煙岳に孤高のこゝろあり 岡田貞峰
雪煙天に吐き出す前穂高 石川英子
雪落ちて空をながるる雪けむり 辻桃子
雪浪に濱はせきれい鳴にけり 松瀬青々
雪浪を鶫喜び跳びにけり 茨木和生 往馬
地吹雪がかくす札幌時計台 魚野満佐流
地吹雪がしんと集まる壜の底 大下真利子
地吹雪が消して見知らぬ街となる 高橋笛美
地吹雪が北の斜面を責めやまず 能村研三 騎士
地吹雪と行くほのぼのと馬の臀 橘川まもる
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子(1931-)
地吹雪にこの身が今に飛ばされん 三好潤子
地吹雪にひとの消えゆく墓の裏 渡辺直信
地吹雪にゆさぶられをり夜の帷 伊藤彩雪
地吹雪に一本の杖護身かな 佐藤母杖 『一管の笛』
地吹雪に何さらはれし墓傾ぐ 中山砂光子 『納沙布』
地吹雪に帰心引止められてをり 山田弘子 螢川
地吹雪に捲かれてすがる燈台碑 伊東宏晃
地吹雪に杭とならんか立ちすくみ 笠井操 『雪の紋』
地吹雪に根尾の老桜巌のごと 近藤一鴻
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消え現れて先ゆく蓑 福田甲子雄
地吹雪に石にならむと身を丸め 小林道子 『下萌』
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
地吹雪に夕日とろりと翼伸ばす 昆ふさ子 『冬桜』
地吹雪のかの糸櫻見舞ふべし 黒田杏子 花下草上
地吹雪のなか身ひとつの寧きかな 澁谷道
地吹雪のやがて遠のく三番叟 黒田杏子 一木一草
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪のやめば山星近かりき 志津天児
地吹雪の渦うまれつつ大沼暮るる 小林 碧郎
地吹雪の渦巻く芯に村一つ 相馬沙緻
地吹雪の果に池あり紅鱒あり 西東三鬼
地吹雪の顔もて集ふ仲間かな 成田千空
地吹雪の駆け降りて来る段々田 森田かずを
地吹雪の空あをあをとありにけり 杉山霄子
地吹雪の行方も知らず北斗の座 宮下師水
地吹雪の高流れして伊賀暗し 橋本鶏二
地吹雪の塞ぐ一路の風の岬 円谷よし子
地吹雪の上は青空草城忌 松倉ゆずる
地吹雪の先には誇り高き海 櫂未知子 貴族
地吹雪の千石平星咲き出す 伊藤いと子
地吹雪の道あらはれて来るを待つ 永田耕一郎 方途
地吹雪の彼方の桜吹雪かな 遠山 陽子
地吹雪の沸騰湖の日をかくす 堀口星眠 営巣期
地吹雪の夜の涯より橇の鈴 佐藤国夫
地吹雪の野を抜けきって夕日あり 奥田智久
地吹雪の恍惚として寒立馬 鈴木石夫
地吹雪は遠く花屋に花満ちて 泉風信子
地吹雪やさきのさきまで姥捨野 小原啄葉
地吹雪やひととへだつる村また町 八幡城太郎
地吹雪や一切黝き夜明前 加藤知世子 花 季
地吹雪や遠野に増ゆる天の音 斉藤夏風
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房(1919-2002)
地吹雪や沖の一縷を目にとどめ 金箱戈止夫
地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子
地吹雪や脚のみじかき陸奥の馬 畑中とほる
地吹雪や牛飼住める茅のはて 堀口星眠 営巣期
地吹雪や曲りて並ぶ大氷柱 長谷川櫂 古志
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄
地吹雪や絶版の書が店先に 辻桃子
地吹雪や叩き鳴らして津軽三味 中岡毅雄
地吹雪や柱のきしむおしら神 小原啄葉
地吹雪や燈台守の厚眼鏡 加藤憲曠
地吹雪や胴擦りあへる寒立馬 小原啄葉
地吹雪より解かれ羽もつごとかろし 笠井操 『雪の紋』
地吹雪を越後路列車突き進む 杉谷悦子
地吹雪を背に青年の大滑降 本多トミ
地吹雪を木曽の尻振列車かな 後藤綾子
地吹雪過ぎよろけつつ影立ちあがる 笠井操 『雪の紋』
地吹雪聞いている何もしない日 伊藤角子
猪苗代湖見えずなりつつ田のうえは地主無用の雪煙立つ 田中佳宏
田居の灯に一夜地吹雪はばたける 佐藤国夫
田居の灯に地吹雪一夜はばたける 佐藤 国夫
南部富士地吹雪寄する中に聳つ 高橋青湖
日の射して地吹雪の奥輝けり 柏原眠雨
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
燃ゆる日や雪天翔くる雪煙 相馬遷子
波しぶき雪煙となり崖のぼる 中戸川朝人 尋声
病枕地吹雪ときに火の音して 寺田京子
碧天や雪煙たつ弥生富士 水原秋桜子
北に生き地吹雪という婆娑羅かな 山下真理子
猛りつついよいよ潔し地吹雪は 澁谷道
夕陽いま射さんとするや地吹雪燃ゆ 佐藤昌市
熄む気配なし海鳴も地吹雪も 中出静女
藪の穂やいまはたしづる雪けむり 西島麦南 人音

地吹雪 補遺

けぶりたつ雪浪に生え木菟の耳 佐藤鬼房
ゴンドラのはるか下方の雪煙 右城暮石 句集外 昭和四十四年
つまづくも女身地吹雪眩み過ぐ 鷲谷七菜子 銃身
一塊の地吹雪飛べる硫気谷 上田五千石 森林
一嶽のあげてゐたるは雪煙 石田勝彦 秋興以後
枯葦は素直に伏して地吹雪す 草間時彦 中年
魂極るいのち耀ふ雪煙 佐藤鬼房
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
真向に地吹雪終生天邪鬼 上田五千石『田園』補遺
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂 捲かるる鴎
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙と瀬鳴りかたみに子の時刻 佐藤鬼房
雪煙の残響の青海原よ 佐藤鬼房
雪煙の夜明りに顕つわが臼女 佐藤鬼房
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
前傾強めよと 地吹雪 真っ向から 伊丹三樹彦
足跡を消す地吹雪を怖れつつ 稲畑汀子
地吹雪 真っ向 孤影を思い知れよとか 伊丹三樹彦
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に天狼呆け失せにけり 阿波野青畝
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪の奥より旅のひかりかな 高屋窓秋
地吹雪の棚田もつとも鍵刻の相 佐藤鬼房
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄 狩眼
地吹雪や倒るる馬は眠る馬 斎藤玄 狩眼
地吹雪を見ての 地酒の燗加減 伊丹三樹彦
竹幹の弓勢なりし雪煙 石田勝彦 百千
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
柏ばかり枯葉へ低地帯地吹雪く 古沢太穂 火雲
磐に立つわれを消したる雪煙 野見山朱鳥 曼珠沙華
爺・鹿島・五竜にあがる雪煙 松崎鉄之介
哭く鴉妙高にたつ雪煙 角川源義

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 09:00 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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