2017年 04月 19日 ( 2 )

雪 の俳句ー

雪 の俳句

雪 の例句

雪 補遺

*えぐい舌触りの街の暮雪かな 佐藤鬼房
*えりに降る雪のはげしさ往くさ来さ 下村槐太 天涯
あかつきに雪降りし山神還る 藤田湘子 神楽
あひ触れて深雪の廂夜は深し 福田蓼汀 山火
あらぬこと思ひてをりし雪明り 飯田龍太
いちさきに孟宗ゆれて降る雪よ 原石鼎 花影以後
うちこめる斧の厚刃に雪散華 福田蓼汀 秋風挽歌
おしひらく傘新しき深雪かな 原石鼎 花影
おでん酒うしろ大雪となりゐたり 村山故郷
おのづからよき声の出て深雪晴 能村登四郎
お降りといふに適ひし細雪 後藤比奈夫
かん酒や深雪とならん深雪になれ 渡邊白泉
きさらぎや深雪に沈む林檎園 福田蓼汀 山火
ぎんなんを焼くゆふぐれの雪明り 橋閒石 雪
くもる日はすでに心に雪降りをり 能村登四郎
くらがりに雪降る空のありにけり 岸田稚魚 負け犬
こしかたゆくすゑ雪あかりする 種田山頭火 草木塔
こんこんは来む来む姑に雪降れり 寒食 星野麥丘人
さめざめと夕べ雪降る川流れ 松村蒼石 雁
さんさんと雪降るなかのものわすれ 鷲谷七菜子 花寂び
サンシャインビルの占めたる雪景色 岸田稚魚 紅葉山
しばらくは粉雪が頬に除夜詣 村山故郷
じぶ食へばたちまち加賀の雪景色 飴山實 次の花
しん~と降る雪に見入りわがさだめ 原石鼎 花影以後
しんしんと深雪や鴨も声を断つ 野見山朱鳥 幻日
しんしんと雪つむ夜の梁の音 長谷川素逝 村
しんしんと雪降りしんしんと降りかくす 伊丹三樹彦
しんしんと大雪吊の天地かな 村山故郷
そののちの仏らに雪深からむ 安住敦
ただ積る小雪朦朧たりしことよ 野見山朱鳥 愁絶
つとわが手とらるる夜の牡丹雪 鷲谷七菜子 黄炎
てのひらに熱き火桶や雪景色 日野草城
てり返へす峰々の深雪に春日落つ 前田普羅 飛騨紬
はげしさのかくも寂かに雪降れり 鷲谷七菜子 一盞
はるかなる坂下ともり秋の暮 橋閒石 雪
ひざまづき散華を拾ふ雪あかり 能村登四郎
ふり出してささめ雪また牡丹雪 森澄雄
ふるさとの町縫う根雪煤臭し 飴山實 おりいぶ
ふるさとの夜半降る雪に親しめり 飯田蛇笏
ぼけの蕾のふくらみようは大雪にして晴れ 荻原井泉水
ほしいまま亡師春雪降らしめき 岸田稚魚 筍流し
ぼたん雪卒業の日のひねもすを 百合山羽公 春園
マネキンと帰路をともにす雪降れり 村山故郷
まひる野のいよよ雪降り林檎小屋 古沢太穂 捲かるる鴎
マリヤ祀る樹林聖地の暮雪かな 飯田蛇笏 山響集
みくじは八十番吉、読むに雪つむ松の如しと 荻原井泉水
みくまりの落葉松しんと雪降る前 佐藤鬼房
みじめなる妻の下着や雪降れり 日野草城
みそさざいふりしく暮雪紊るなし 飯田蛇笏 春蘭
みちつけて水の出でくる深雪沢 上田五千石 森林
みみづくの眠る梢に粉雪舞ひ 飯田龍太
やつと退勤ネオンの色の牡丹雪 草間時彦 中年
ゆふぐれと雪あかりとが本の上 篠原梵 年々去来の花 皿
よろこべる子に降る雪の白くなり 臼田亜浪 旅人 抄
ランプ明り雨戸に粉雪ささと触れ 福田蓼汀 秋風挽歌
りんごの木乳のにほひの雪降り出す 上田五千石『琥珀』補遺
わが葬列夢に雪降る仮借なし 小林康治 玄霜
われを見る深きまなざし雪降るなか 鷲谷七菜子 黄炎
われを呼ぶ深雪の中の母の墓 野見山朱鳥 愁絶
をさな子も深雪を帰るクリスマス 日野草城
愛のごとし深雪の底の水音は 小林康治 玄霜
愛をしる牝獣の前雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
愛を知る牝獣の前雪降れり 飯田蛇笏 家郷の霧
愛隣の果も雪降る夜通し降る 森澄雄
逢ひし目のほのぼの濡れて牡丹雪 鷲谷七菜子 黄炎
逢ふ宵の大雪ふりとなりにけり 日野草城
逢ふ人の皆大雪と申しけり 正岡子規 雪
逢瀬阻みしかの夜の雪が根雪なす 上田五千石『田園』補遺
鮎の炉の火かげとゞかず深雪の戸 前田普羅 飛騨紬
鮎焼きし大炉の灰に雪あかり 前田普羅 飛騨紬
闇に眼の馴れて見え来し牡丹雪 右城暮石 句集外 昭和四十七年
一つ寝のはじめての夜の牡丹雪 日野草城
一色に雪降りかくしても藁塚 右城暮石 句集外 昭和二十六年
一葉の便りが通る深雪掻く 上田五千石 森林
淫らな唄雪降る青年集会所 草間時彦 中年
雲のまに新雪きそふ嶺三つ 飯田蛇笏 家郷の霧
餌とならず鱒池に降る牡丹雪 右城暮石 虻峠
駅凍てゝ曠野につゞく深雪かな 前田普羅 飛騨紬
焔といふもののしづけき暮雪かな 鷲谷七菜子 花寂び
猿に別れ山下り来ても雪深し 松村蒼石 雪
猿の湯や杉は深雪に花つけて 松村蒼石 雪
遠つ嶺に刷く新雪や母へ駈く 能村登四郎
遠つ嶺に雪降りてより木々の銘 原裕 青垣
遠國に降る雪ながら恐るべし 相生垣瓜人 明治草
奥山に大雪やある余寒かな 原石鼎 花影以後
屋根白くなりて夜の雪降りやまず 右城暮石 上下
牡丹の芽にあな予告なく雪降り来 安住敦
牡丹囲ひもあへずちらちら雪降り来 安住敦
牡丹雪 牡丹雪 くろき牛の頭蓋 富澤赤黄男
牡丹雪こころの海に吸はれけり 野澤節子 存身
牡丹雪さかんなるまゝあらせ度き 右城暮石 句集外 昭和十七年
牡丹雪なれば韻きてつもるなり 日野草城
牡丹雪にじむ地べたの浅蜊買ふ 佐藤鬼房
牡丹雪に変りて間なし降りしきる 右城暮石 句集外 昭和四十三年
牡丹雪ノート小脇に今日は若し 草間時彦 中年
牡丹雪の日と記し獄へ入るる書よ 古沢太穂 古沢太穂句集
牡丹雪ひととき鏡はなやぎぬ 桂信子 女身
牡丹雪まづしき一日とは言はず 細見綾子
牡丹雪まばらに人の顔の見ゆ 桂信子 花影
牡丹雪牡丹根元の敷きわらに 細見綾子
牡丹雪己濡れつゝ鉄濡らす 右城暮石 声と声
牡丹雪降りつつむ家を軽んずる 藤田湘子 途上
牡丹雪触るゝものなく地に下りぬ 右城暮石 句集外 昭和二十三年
牡丹雪触るれば触れし如く散る 右城暮石 句集外 昭和二十三年
牡丹雪触れたるものに砕け散る 右城暮石 一芸
牡丹雪善き記憶のみ積まれなば 上田五千石 田園
牡丹雪退廳どきのけしきかな 百合山羽公 春園
牡丹雪池にぎやかに降りしきる 右城暮石 散歩圏
牡丹雪宙に触れ合ひ砕け散る 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
牡丹雪昼をともしし灯と濡るる 右城暮石 句集外 昭和二十一年
牡丹雪繚乱たるに恋雀 相馬遷子 山河
牡蠣舟を出でゝ天満の雪景色 河東碧梧桐
温室の花買ひぬ信濃の深雪中 及川貞 夕焼
音をたえて寒流のゆく雪げしき 飯田蛇笏
何埋むべく降る雪や妻との距離 楠本憲吉 孤客
歌留多取粉雪ふるとはよも知らじ 日野草城
河豚の文大雪降ると物しけり 河東碧梧桐
花に雪降り光太郎逝き給へり 石塚友二 曠日
花仕度元禄館の小雪洞 百合山羽公 樂土以後
花置いて身を退く四囲の雪景色 飯田龍太
蝦夷見むと深雪に窪む長靴は 小林康治 玄霜
我菴や上野をかざす雪明り 正岡子規 雪明
海さかに牡丹雪ふる吾がねむり 佐藤鬼房
貝殻に雪降りゐるや伊良湖岬 細見綾子
外灯立ちその先深雪道昏し 野澤節子 未明音
街路樹にからむ風船雪降り出す 草間時彦 中年
学久し靴をしずかに暮雪踏む 赤尾兜子 蛇
橿鳥に峡の逆光根雪解く 飯田蛇笏 家郷の霧
竃火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
鴨射ちが粉雪を払ひ船上る(七尾にて二句) 細見綾子
寒牡丹雪被てその緋ふかめけり 鈴木真砂女 夕螢
寒卵刻一刻の雪明り 飯田龍太
観能の灯の昼ふかき深雪かな 西島麦南 人音
雁たちて暮雪に翅音のこしたる 野澤節子 八朶集
雁なくや小窓にやみの雪明り 正岡子規 雪明
帰りつく身をよす軒や雪明り 飯田蛇笏 山廬集
蟻塚のほとりひたすら粉雪舞ふ 飯田龍太
丘の住宅暮雪ふかきにガス細る 野澤節子 未明音
急ぎ降り急ぎ止みたり牡丹雪 細見綾子
求心の湖放心の雪景色 飯田龍太
泣寝妻いつか安寝の雪降れり 草間時彦 中年
京菜好きの男の歯音粉雪降る 古沢太穂 捲かるる鴎
京底冷え奈良は粉雪の万燈会 細見綾子
京都遠し夜行列車に雪降りつつ 村山故郷
峡湾は暮しの歯型雪降り降る 佐藤鬼房
仰ぎみしのみにみるみる雪はげし 岡井省二 明野
銀座うら雪降れる夜の鶴吊れり 飯田蛇笏 山響集
銀壺の花くれなゐに雪降る日 飯田蛇笏 家郷の霧
駒鳥や大雪嶺に真横の陽 石塚友二 曠日
鍬研いで忘れしころの雪降らす 能村登四郎
君の遺著まづ雪の香の書といはむ 能村登四郎
君は酒家へわれは駅へと夜の小雪 林翔
軍港の兵の愁ひに深雪晴れ 飯田蛇笏 霊芝
鶏が踏む根雪が蒼しガリレオ忌 飴山實 おりいぶ
鶏たかく榎の日に飛べる深雪かな 飯田蛇笏 山廬集
結跏趺坐雪積るとも積るとも 大野林火 月魄集 距和五十七年
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治 四季貧窮
見えぬ枷雪降るは谷とざすため 佐藤鬼房
源義の声桂郎の眼や雪降る夜 石塚友二 磊[カイ]集
玄関のくらさを好み雪降り込む 能村登四郎
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女 夕螢
古池のをしに雪降る夕かな 正岡子規 鴛鴦
孤児園に雪降り太る雪達磨 飴山實 おりいぶ
戸の隙を雪散りこんで蜆籠 鷲谷七菜子 游影
枯枝に刻々つもる粉雪かな 日野草城
湖に群衆の如く雪降れり 上野泰 佐介
五六軒雪つむ家や枯木立 正岡子規 枯木
午ちかく雀なき出し深雪かな 原石鼎 花影
御水屋に浅柄杓伏せ雪降る杉 古沢太穂 捲かるる鴎
御扉にふとも日のさす暮雪かな 日野草城
御涅槃のかたきまぶたや雪明り 前田普羅 普羅句集
公魚のよるさゞなみか降る雪に 渡邊水巴 富士
喉を責む痛み湖上に雪降れり 佐藤鬼房
稿難し雪降れば雪に韜晦す 小林康治 玄霜
紅梅に雪降り雪に紅梅散り 安住敦
行平や春の雪散る夕まぐれ 桂信子 花影
降りに降る雪や恋情汪然と 日野草城
降り沈む暮雪向き変ふ鳰ひとつ 鷲谷七菜子 銃身
降る雪に山霊のぼる太古かな 野見山朱鳥 運命
降る雪に時流れゐる水の中 飯田龍太
降る雪に樹霊ふくれてきたるかな 鷲谷七菜子 游影
降る雪に独りの風呂を湧かすかな 鈴木真砂女 卯浪
降る雪に白玉楼中皆会す 福田蓼汀 秋風挽歌
降る雪に悲しみはたゞ怺ふべし 相馬遷子 山河
降る雪に力抜きたる汀かな 山田みづえ 木語
降る雪の奥も雪降るその奥も 林翔
降る雪の中に雪片たたかへり 鷹羽狩行
降る雪の波の穂先と争ひぬ 鈴木真砂女 夏帯
降る雪の舞ふは熄むてふ心あり 稲畑汀子
降る雪の力の中へ川入りゆく 斎藤玄 狩眼
降る雪へつばさ摶ち摶つ死鼠を恋い 橋閒石 風景
降る雪やあざやかすぎし夢の虹 鈴木真砂女 卯浪
降る雪やこけしの如く吾子馳け来 小林康治 四季貧窮
降る雪やこゝに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女 夏帯
降る雪やわれをとりまく人の情 鈴木真砂女 卯浪
降る雪や暗き自画像想はるる 藤田湘子 途上
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏 雪峡
降る雪や女所帯は豆撒かず 安住敦
降る雪や聖徒の折り競きをリ 上田五千石『田園』補遺
降る雪や地上のすべてゆるされたり 野見山朱鳥 運命
降る雪や父母を子が持つ日曜日 林翔 和紙
降る雪や旅は孤りを佳しとして 鈴木真砂女 夏帯
降る雪泣熄め太陽顔を洗ひたり 中村草田男
豪華古るラツキーシツプ深雪晴れ 飯田蛇笏 雪峡
豪雪の岩がしら息鮮しや 佐藤鬼房
豪雪の空港となり燈も見えぬ 佐藤鬼房
豪雪の夜明のおさな髪撫でる 橋閒石 荒栲
豪雪や母の臥所のかぐわしく 橋閒石 卯
豪雪を友へ禅林の太柱 福田蓼汀 秋風挽歌
黒田三郎小雪もたらし逝きしはや 山田みづえ 手甲
黒豆を煮んか粉雪が降つてゐる 細見綾子
黒白の差別根雪につばきして 有馬朗人 母国拾遺
根雪となりぬ 根雪の間に翼拡げ 三橋鷹女
根雪にて社は朱なり丹はさみし 佐藤鬼房
根雪ふみ新雪にぬれ旅の町 及川貞 夕焼
根雪掘る二十代経し妻の背よ 佐藤鬼房
魂祭庫裏は團子の粉雪哉 正岡子規 魂祭
佐久に雪降るか寒鯉苞に厚し 能村登四郎
座禅草そこから根雪とけそめし 飴山實 句集外
細雪一茶の国の夕間暮 原裕 青垣
細雪遠干潟かけ人恋ふも 小林康治 玄霜
細雪客は蒲焼好みけり 村山故郷
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏 家郷の霧
坂邸楽はずませて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
昨夜は雪降りし信濃の暮春かな 細見綾子
三度目の雪降りざまも遊びをり 能村登四郎
山あひに時を閉ぢこめ牡丹雪 佐藤鬼房
山は深雪湯檜曽の村は夕日さす 村山故郷
山越えの木偶に優しや雪明り 橋閒石 卯
讃美歌の中木の股に雪積る 岸田稚魚 負け犬
仕込樽撞木と古りぬ雪明り 石川桂郎 高蘆
仔牛瞬く丑三つの雪明り 飯田龍太
四方の深雪に山上湖温みそむ 松村蒼石 雁
子がいつまで寝ねず雪降り東北線 古沢太穂 捲かるる鴎
子の胸の粉雪ゆふべの醤油買 飯田龍太
子鏡の一円相に雪降れり 野見山朱鳥 愁絶
市隠の愚責めぬく無燈雪明り 香西照雄 対話
死ぬ人の歩いて行くや牡丹雪 藤田湘子 てんてん
死のかげに音楽が雪降らせをり 原裕 葦牙
歯にあてゝ雪の香ふかき林檎かな 渡邊水巴 白日
歯車の噛みあふ真夜を雪つむか 橋閒石 朱明
時雨星またゝく嶺の雪明り 西島麦南 人音
自転車の燈に降る雪のおびただし 相馬遷子 雪嶺
七十の恋の扇面雪降れり 橋閒石 荒栲
柴折戸を押すすべもなき深雪かな 原石鼎 花影
酌めば茶のすぐにさめたる深雪かな 鈴木真砂女 夏帯
若菜滴みし畦道今日は雪降れり 細見綾子
寂として春の雪降る林かな 村山故郷
手ぶくろをはめつゝ急ぐ暮雪かな 及川貞 夕焼
手袋や暗夜の粉雪肩に鳴る 村山故郷
朱の柵とざして廟の深雪かな 日野草城
朱印捺す手をぬらしけり牡丹雪 飴山實 句集外
週末や眼鏡濡らして雪降れり 赤尾兜子 蛇
宿根の宿恨は在れ雪景色 永田耕衣
春の雪はじめ粉雪でありにけり 細見綾子
春の雪降つて消えたる地面かな 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
春の雪降りつゝすでに野は眩し 相馬遷子 山国
春の雪降るふつくらとゆつくりと 細見綾子
春の雪降るまもとけてゐたりけり 鈴木真砂女 夏帯
春の悲曲窗をくらめて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
春寒き夜半の深雪を人知らず 村山故郷
春深雪買はねばならぬ青菜の値 及川貞 夕焼
春雪の二夜の深雪星を得ぬ 及川貞 夕焼
春大雪この世眩しみゐたりけり 鷲谷七菜子 天鼓
春大雪の宵東京のラヂオ聞く 村山故郷
春猫の暮雪に逢うて失せにけり 原石鼎 花影
春蘭の葉のとどめたる牡丹雪 野澤節子 飛泉
春隣り雪降る湖を思ひつつ 飯田龍太
初寄席の池田の猪の雪景色 飴山實 花浴び
初七日の春の深雪を忘れめや 日野草城
初雪の大雪になるそ口をしき 正岡子規 初雪
初夢の模糊の目覚めに雪降りをり 上田五千石『森林』補遺
初旅や寝返りてまた雪明り 岸田稚魚 紅葉山
初蕨隠りし雪の香にたちぬ 百合山羽公 春園
初鴉山に大雪降らせけり 岸田稚魚 紅葉山
小柴門出入のしげき深雪かな 飯田蛇笏
小雪の思ひ込めたる切字かな 能村登四郎
小雪の浅間の水を飲んでみる 雨滴集 星野麥丘人
小雪の日とか茶色の奈良に居り 桂信子 草影
小雪や古り枝垂れたる糸桜 飯田蛇笏 山廬集
小雪吸ふ昼の襁褓が長屋の旗 佐藤鬼房
小雪降る勤めやめんと思ふとき 山田みづえ 草譜
小雪庇よし大雪庇知らざるも 右城暮石 句集外 昭和四十三年
少年帰る夕日の根雪蹴りながら 飴山實 おりいぶ
庄司が二婦深雪のせつに馨りけり 佐藤鬼房
松とれて雪降りて常の日となりぬ 及川貞 夕焼
沼暗らめ琵琶の音色に雪降れり 佐藤鬼房
鐘の音の一つひとつの深雪かな 鷲谷七菜子 天鼓
鐘の臍雪明りとはちがうなり 永田耕衣
障子梅の木の影、大雪大に晴れ 荻原井泉水
上*せいの燈明りわたり深雪かな 原石鼎 花影以後
新しき年新しき雪降らせ 細見綾子
新雪すでに山を覆へり発哺に灯 及川貞 夕焼
新雪にやもめ炊爨ラヂオ鳴る 飯田蛇笏 春蘭
新雪に一歩また一歩あゆみ出づ 相馬遷子 山河
新雪に出て橇犬のふる尾かな 飯田蛇笏 春蘭
新雪に触れ三行の葉書出す 有馬朗人 母国
新雪のかがやきを遠ざかり来し 細見綾子
新雪のかがやき何にたとへんか 細見綾子
新雪のスキーの音の上に立つ 篠原梵 年々去来の花 皿
新雪の闇より闇へ雁のこゑ 飯田龍太
新雪の幹のうしろのかたつむり 飯田龍太
新雪の高嶺相寄るごときあり 上田五千石『天路』補遺
新雪の消えてしばらく山日和 福田蓼汀 秋風挽歌
新雪の浅間燃えたり人丸忌 相馬遷子 山国
新雪の東京神妙に在りぬ 山田みづえ まるめろ
新雪の比良正面に朝日出る 右城暮石 句集外 昭和三十五年
新雪の富士の肩荒きへら使ひ 細見綾子
新雪の富士や忙しき里車 石塚友二 光塵
新雪の富士見ゆるなり妻の墓 森澄雄
新雪の富士現はれし草の上 飯田龍太
新雪へ絵踏のごとく踏み出だす 上田五千石『田園』補遺
新雪や空の蒼さに神ひしめき 橋閒石 朱明
新雪や山のゴンドラに犬も乗る 村山故郷
新雪を見つめたる眼を伏せにける 細見綾子
新雪を染めざる浦の溢れ潮 飯田蛇笏 雪峡
新雪を被てはるかなる加賀の山 石塚友二 光塵
新雪を来て返しゆく郵便夫 右城暮石 上下
新雪眉のごとし杖老の手にしてのぼる 荻原井泉水
新雪来り約して今日小生来り 荻原井泉水
新年の深雪ぬくとく愛馬飼ふ 飯田蛇笏 春蘭
榛の木に雪降る音を聞きわくる 細見綾子
深雪して遺愛樹の洞ふたがりぬ 中村草田男
深雪つむ夜のシンクロンただ聾ひぬ 飯田蛇笏 白嶽
深雪に会へば眉目の新しき 細見綾子
深雪の顔にかかりし子の白息 細見綾子
深雪やむときの粉雪に星浮ぶ 松村蒼石 雪
深雪見むと軒へのべたる手燭かな 原石鼎 花影以後
深雪晴たばこのけむり濃むらさき 日野草城
深雪晴野を来て町は汚れたる 相馬遷子 雪嶺
深雪青翳畦川ほそき音ひらき 鷲谷七菜子 銃身
深雪中湖村一塊となり睡る 鷲谷七菜子 銃身
深雪踏む楽しさ胸に旅始 林翔
深雪野の美濃や近江は彦根まで 石塚友二 玉縄抄
深大寺の裏藪春の雪降れり 細見綾子
真下のみ照らす駅燈牡丹雪 右城暮石 声と声
神山や霽れ雲うつる雪げしき 飯田蛇笏 山廬集
神無月テレビ画面に雪降れり 右城暮石 句集外 昭和五十四年
薪水を事とする日の牡丹雪 細見綾子
人寄せへ朝より湯気や粉雪降り 古沢太穂 捲かるる鴎
人形の家に窓あり雪明り 有馬朗人 耳順
人恋えば灰のごとくに雪降れり 橋閒石 卯
尋ね来て山科は雪深かりき 安住敦
水底は暗のさざなみ雪降れり 鷲谷七菜子 游影
水面に近づき弱る牡丹雪 右城暮石 句集外 昭和三十七年
雛棚や雛の中の小雪洞 正岡子規 雛祭
世に遠く浪の音する深雪かな 臼田亜浪 旅人 抄
星暗らめ雪降る気配したるのみ 佐藤鬼房
聖仏母懸けて春雪降りしきる 松村蒼石 寒鶯抄
青天に湧く粉雪やえんぶり踊り 草間時彦 中年
青縄に染まる根雪や女工寮 飴山實 おりいぶ
静けさを深め雪降るわが行方 原裕 葦牙
石の精神、まず大雪をぬきんず 荻原井泉水
積みあまる富士の雪降る都かな 正岡子規 雪
雪あかりのまぶしくも御飯ふく 種田山頭火 草木塔
雪あかりの足袋の破れからつまさき 種田山頭火 自画像 落穂集
雪あかりほのかにも浪の音すなり 種田山頭火 自画像 層雲集
雪あかり胸にわきくるロシヤ文字 古沢太穂 古沢太穂句集
雪つむや亡き児の形見歳古りて 飯田蛇笏 家郷の霧
雪のこゑ老来ひしと四方より 飯田蛇笏 春蘭
雪の香に炉辺の嬰児を抱きて出ぬ 飯田蛇笏 雪峡
雪の香に鄰保親しくすまひけり 飯田蛇笏 家郷の霧
雪の香や街角に出し花売女 飯田蛇笏 雪峡
雪の香をおもひ蕨の香をおもふ 百合山羽公 春園
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪はげし遠のものみな亡びけり 野澤節子 未明音
雪卸し暮れており立つ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
雪起しと人いふに雪降り出しぬ 岸田稚魚 紅葉山
雪降つてから鴨鍋といふことに 亭午 星野麥丘人
雪降つて姑は正気にもどりけり 寒食 星野麥丘人
雪降つて椋(ちしやのき)の名をたしかにす 亭午 星野麥丘人
雪降らば降れと塞の神相擁く 安住敦
雪降りこむままの棒鱈干場の列 古沢太穂 捲かるる鴎以後
雪降りしばかりの荒嶺光なし 野見山朱鳥 愁絶
雪降りそめし葉のそよぎ暗き病床に 種田山頭火 自画像 層雲集
雪降りつ凹めつ馬淵川氷る 小林康治 玄霜
雪降りてゐて壜詰の帆掛船 有馬朗人 天為
雪降りて色となりゆく恵方道 斎藤玄 狩眼
雪降りて真昼の何もかも淡し 廣瀬直人 帰路
雪降りぬ忘れるほどに遠くの日 能村登四郎
雪降りのかまくら父を加へざる 佐藤鬼房
雪降りの街空明り早寝の妻 佐藤鬼房
雪降り来ず白鷺潟に彳つかぎり 上田五千石 天路
雪降るに溺るるわれを遮るな 藤田湘子 途上
雪降るやしばらく墓を忘じゐし 松村蒼石 雁
雪降るや沖へ出でゆくわがねむり 藤田湘子 神楽
雪降るや仰臥死を待つにも似たり 村山故郷
雪降るや経文不明ありがたし 相馬遷子 山河
雪降るや葉音収めて竹立てる 臼田亜浪 旅人 抄
雪降る海白鳥群るる辺は明し 草間時彦 中年
雪降る暁巣箱のわらも樹も覚めず 古沢太穂 捲かるる鴎
雪降る山神に捧ぐるもの持たず 藤田湘子 てんてん
雪降る山毛欅のおなじ傾き湯桧曽川 古沢太穂 火雲
雪降れば焼跡の家すぐ白し 右城暮石 句集外 昭和二十五年
雪降れば墓碑銘を書く心の中 有馬朗人 母国
雪降れば夜は来といひて昼に来ぬ 下村槐太 光背
雪降れり『雪降れ降れ』の受賞かな 松崎鉄之介
雪降れり海なき国の野に山に 福田蓼汀 山火
雪降れり少年の日の友等無く 相生垣瓜人 微茫集
雪降れり沼底よりも雪降れり 橋閒石
雪降れり天上の詩がこぼせしか 林翔
雪散るや干曲の川音立ち来り 臼田亜郎 定本亜浪句集
雪散るや千曲の川音立ち来り 臼田亜浪 旅人 抄
雪散るや桃子の3は逆字のΣ 村山故郷
雪散るや木の葉小鳥を交へつつ 山田みづえ 木語
雪散るや利酒茶碗手に持ちて 村山故郷
雪女南の国に雪降らす 鈴木真砂女 紫木蓮
雪深き高嶺火噴きし形して 右城暮石 虻峠
雪深き朝よ時計に耳澄ます 細見綾子
雪深き道外るるには決意要る 津田清子 礼拝
雪深き方へといそぐ何の愁 鈴木真砂女 夏帯
雪深く合掌建へ丘なだらか 石川桂郎 高蘆
雪深しかくれて来たる旅ならね 鈴木真砂女 夏帯
雪深し熊を誘ふおとしあな 正岡子規 雪おとしあな<こざとへん+井>
雪積る谷けものの眼さかなの眼 藤田湘子 てんてん
雪積る中滑らかな水車の軸 津田清子 礼拝
雪像にいたはりの雪降り出せり 鷹羽狩行
雪墜ちて深雪ににぶき音うまる 桂信子 女身
雪踏みの無言につづく深雪空 松村蒼石 雪
雪明りしてこの隈や四季桜 河東碧梧桐
雪明りして渡岸寺観音像 寒食 星野麥丘人
雪明りには池くらし山あかるし 及川貞 夕焼
雪明り月明りして町眠る 松本たかし
雪明り鳥の首切り脚を切り 飯田龍太
仙丈新雪を見る日の君を煙とするか 荻原井泉水
船の荷の佐渡の青竹雪降り出す 草間時彦 中年
船方に三角山の雪景色 佐藤鬼房
素琴忌の雪降り出すや暮れてより 村山故郷
早も小雪かゝりし水や鴛鴦の沓 原石鼎 花影以後
槍の穂は雪をとどめず深雪晴 福田蓼汀 山火
相寄れる木地師の墓や雪深し 有馬朗人 知命
窓ぢゆうの夜明けの空も雪あかり 篠原梵 年々去来の花 中空
村まはりする花嫁御深雪晴 木村蕪城 寒泉
他家(よそ)で働く妻の寝ぎはへ牡丹雪 佐藤鬼房
太陽が煤を降らして雪降らす 鷹羽狩行
大きさの極まりし夜の牡丹雪 右城暮石 上下
大絵馬の朱のうごくなり牡丹雪 岸田稚魚 筍流し
大雪となるべし春の夜空これ 岸田稚魚 紅葉山
大雪となる我が家の玄関まで 右城暮石 声と声
大雪になるや夜討も遂に來ず 正岡子規 雪
大雪にぽつかりと吾れ八十歳 飯島晴子
大雪にほめき出る月ありにけり 原石鼎 花影
大雪に耐ゆる柱の時計うつ 橋閒石 朱明
大雪に来て肥を汲む男かな 原石鼎 花影
大雪のただひたぶりな一日かな 細見綾子
大雪のたなぞこふるゝ別れかな 齋藤玄 飛雪
大雪のなほ降る闇へ鬼やらふ 相馬遷子 山河
大雪のわが掻きし道人通る 相馬遷子 山河
大雪のわれのニコニコ絣かな 飯島晴子
大雪の山猿こころかわきけり 松村蒼石 雪
大雪の小川たぎちて道添へり 松村蒼石 雪
大雪の上にぽっかり朝日かな 正岡子規 雪
大雪の谷間に低き小村かな 内藤鳴雪
大雪の朝を出でゆく魚の骨 佐藤鬼房
大雪の夜の排卵を拝むなり 橋閒石 荒栲
大雪の夜の白檀を燻ずべし 橋閒石 雪
大雪の夜を福寿草ひらきけり 橋閒石 朱明
大雪の鴉も飛ばぬ野山哉 正岡子規 雪
大雪やあちらこちらに富士いくつ 正岡子規 雪
大雪やめくら暦の里埋もれ 百合山羽公 樂土
大雪や玉のふしどに猪こゞへ 正岡子規 雪
大雪や洲の雪穴のゆりかもめ 松村蒼石 雁
大雪や寝るまでつがん仏の灯 渡邊水巴 白日
大雪や人を呼び込む壕の中 岸田稚魚 雁渡し
大雪や石垣長き淀の城 正岡子規 雪
大雪や底びかりして夜の梁 鷲谷七菜子 花寂び
大雪や納屋に寝に来る盲犬 村上鬼城
大雪や風鈴鳴りつ暮れてゐし 渡邊水巴 白日
大雪や幽明わかず町寝たり 渡邊水巴 白日
大雪や狼人に近く鳴く 正岡子規 雪
大雪や關所にかゝる五六人 正岡子規 雪
大雪を見に大雪の国へ行く 山口誓子
大雪を朗報のごと春立てる 百合山羽公 寒雁
大雪嶺子らの喊声打ち返し 上田五千石『田園』補遺
大日の前けなげにも雪降りをり 上田五千石『森林』補遺
大年の襖の隙の深雪かな 百合山羽公 春園
瀧尻の渦ながれつぐ深雪かな 飯田蛇笏 心像
谷杉の深雪に堪へてつむじ舞ふ 松村蒼石 雪
鱈割いて女体汗ばむ牡丹雪 佐藤鬼房
誰とて黙つてただただ雪降る世相か 荻原井泉水
地の深雪宙の二階の白根澄む 飯田蛇笏
遅月にふりつもりたる深雪かな 飯田蛇笏 山廬集
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
竹の張力、太陽へ大雪を払う 荻原井泉水
竹垣にひそむ雉子の眸深雪晴れ 廣瀬直人 帰路
竹藪の前の枯木にちる暮雪 飯田龍太
猪打ちの足許しまる粉雪かな 細見綾子
猪打ちの粉雪を蹴つてゆくなりし(懐旧) 細見綾子
兆しそむ飢の清しく細雪 鷲谷七菜子 黄炎
朝すこし雪降り年を深くする 能村登四郎
長靴をはくほど春の雪降りし 細見綾子
鳥とぶや深雪がかくす飛騨の国 前田普羅 飛騨紬
鳥高みたる完璧の雪景色 飯田龍太
鳥声や出窓みづから雪明り 石川桂郎 四温
鎮み降る雪のかなたにけぶる過去 鷲谷七菜子 銃身
漬きごろの今年の京菜粉雪降る 古沢太穂 捲かるる鴎
爪切つてをり細雪呼びにけり 岸田稚魚 紅葉山
爪先に体重かかりたる根雪 橋閒石 無刻
吊橋の深雪ふみしめ飛騨へ径 前田普羅 飛騨紬
鶴哭くや新雪須臾にして消えさり 橋閒石 無刻
庭におく深雪の石にみそさざい 飯田蛇笏
泥眼や般若や杉生雪降らす 岡井省二 明野
天よりも夕映敏く深雪の面 野澤節子 未明音
天上に貯へゐたる牡丹雪 右城暮石 虻峠
天地たゞ傘に降る雪あるばかり 石塚友二 磯風
天地の息合ひて激し雪降らす 野澤節子 未明音
田起しや根雪一塊うづくまり 鷲谷七菜子 一盞
電気爐の烈しき雪の香だちけり 飯田蛇笏 家郷の霧
電線の雨滴の上も雪の声 飯田龍太
電話借る母校や夜の雪明り 右城暮石 句集外 昭和三十七年
兎ゆきしあとのみ散りて深雪なり 及川貞 夕焼
兎獲て一羽と数ふ雪深し 右城暮石 句集外 昭和三十三年
唐松は空の支へ木雪降りふる 佐藤鬼房
東京の雪らしく雪降りにけり 岸田稚魚 紅葉山
東大寺の高き赤松牡丹雪 細見綾子
盗伐で生く曲木部落いま深雪 佐藤鬼房
湯煙や根雪となりし山襖 石塚友二 光塵
湯坪には母の怨念雪降り降る 佐藤鬼房
湯婆こぼす垣の暮雪となりにけり 飯田蛇笏
灯に粉雪にわとり眠るうしろ向き 飴山實 おりいぶ
灯は水にまたたきはじめ牡丹雪 桂信子 初夏
灯を消して障子にはかに雪明り 上村占魚 鮎
踏みこみし萱のほとりの雪深く 木村蕪城 一位
踏切の灯を見る窓の深雪かな 飯田蛇笏
頭の中の地獄極楽牡丹雪 藤田湘子 てんてん
瞳孔に雪散り童唄ありき 橋閒石 荒栲
鳶鳴いて小雪崩さそふ峰日和 上田五千石『森林』補遺
奈良で会ふ約束眉につく粉雪 細見綾子
那須嶽や二月乱雲雪散らす 村山故郷
汝がとる燭芯たちて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
二三尺雪つむ軒や猿肉屋 飯田蛇笏
二十五年目といふ大雪に降られたる 細見綾子
二日より深雪に飛ばす鉄火かな 齋藤玄 飛雪
匂ふ肌大きな窓に雪降れり 日野草城
日に近く雪深まりぬ山毛欅林 渡邊水巴 富士
日暮まで降り出して大雪となる 右城暮石 散歩圏
日輪のいでて深雪やスキー行 百合山羽公 春園
葱洗ふや月ほのぼのと深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
脳天に小雪ちらつく杉の森 佐藤鬼房
農具市深雪を踏みて固めけり 前田普羅 普羅句集
波璃越しに降る雪実物よりも大 右城暮石 句集外 昭和三十九年
馬に雪降るローカル線に老いし駅夫 古沢太穂 火雲
梅探る吾妻の森や雪深き 正岡子規 雪
煤蟹や根雪明りに糶場うち 石川桂郎 高蘆
白魚や襖の裏の雪明り 岸田稚魚 負け犬
白鳥に春の雪降る遥かに降る 有馬朗人 母国
白鳥よ日かげればすぐ雪降り出す 草間時彦 中年
白鳥を真近に見むとすれど雪降り 安住敦
白鳥座大雪嶺を越えて翔く 上田五千石『田園』補遺
白鳳仏の眉目見に来て春の雪(深大寺) 細見綾子
箸流る川筋追いし牡丹雪 赤尾兜子 歳華集
発止ときし鶺鴒つぶて深雪原 鷲谷七菜子 銃身
髪刈りあう父と子に雪つむ迅さ 橋閒石 荒栲
帆船は雲と日暮れて雪降りぬ 細谷源二 鐵
晩鐘に雪降り続く爆心地 有馬朗人 母国
彼岸過ぎの大雪ふるさと人嘆く(丹波) 細見綾子
肥橇曳く遠深雪野に消えむため 小林康治 玄霜
飛行音の闇穢されず雪積る 野澤節子 未明音
飛騨人や深雪の上を道案内 前田普羅 飛騨紬
柊に春の雪降り一樹の音 野澤節子 鳳蝶
柊をさしたる闇にまた粉雪 百合山羽公 春園
筆匠の死後も名だいに雪降れり 飯田蛇笏
紐解くになほ天霧し雪降り来 下村槐太 光背
病巣のごとき根雪をつつきゐる 佐藤鬼房
苗木市春の粉雪となりにけり 西島麦南 人音
富士の里大雪に筬を鴫らす門 村山故郷
富士新雪これほどまでに薄しとは 林翔
浮かれ猫わた雪歇んでしまひけり 寒食 星野麥丘人
風の揶揄やみて暮雪となりゐたり 上田五千石 森林
風一夜したたかに根雪そだちけり 能村登四郎
風邪の神去る日の小雪ちらつかす 安住敦
風神の膝に力の雪明り 古舘曹人 砂の音
風立てば落花の小雪ふじざくら 林翔
福笹をいただきし夜の小雪かな 雨滴集 星野麥丘人
仏坂より雪深き鶴の村 野見山朱鳥 幻日
鮒煮えてくれば粉雪となりにけり 桂信子 女身
粉雪あがる夕日の彩がただよいて 古沢太穂 古沢太穂句集
粉雪の句帳にたまる鶴を待ち 古舘曹人 砂の音
粉雪の塔あかしひとびと儚なき希ひ 細谷源二 砂金帯
粉雪の眉辺泉辺哀れなり 永田耕衣
粉雪ふるまでのやさしい潦 桂信子 新緑
粉雪や還るを惜しむ人のむれ 永田耕衣
粉雪降り鯉をも切に見んと思ふ(京都西芳寺) 細見綾子
粉雪降る妻の徹夜は幾日ぞ 野見山朱鳥 愁絶
粉雪降る正月空の遠くより 細見綾子
粉雪積むあかつき闇の藪畳 松村蒼石 雪
粉雪片片停らぬ駅と伐木に 古沢太穂 捲かるる鴎
兵を送る松明あらはるゝ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
墓にも降る雪のこんや屋根につむ屋根のした 荻原井泉水
墓碑銘を写す間も雪降り冥む 木村蕪城 寒泉
暮れてなほ倶楽部にゐたり外は深雪 村山故郷
暮雪さびし道をそれ居る足跡も 原石鼎 花影
暮雪にてただ漠々の海苔簀原 林翔 和紙
暮雪にて天に雪降る意なし 山口誓子
暮雪のタクシー流れて舞踏会のごと 岸田稚魚 負け犬
暮雪の広場いましアドマン漂はす 岸田稚魚 負け犬
暮雪の天刎枝の雪の白々と 山口青邨
暮雪ふむ僧長杖をさきだてぬ 飯田蛇笏 山響集
暮雪ふる舞踏乙女もちりぢりに 百合山羽公 故園
母たちの供養乳房や根雪解く 能村登四郎
母のふところ雪深々とあやめ咲く 橋閒石 荒栲
母の座は雪降る家の灯の真下 有馬朗人 母国
母遺し雪降りかくす故郷発つ 福田蓼汀 山火
母郷なり粉雪と知れるのみの闇 佐藤鬼房
母子ありき雪深き昼餅焼いて 松村蒼石 雪
法悦のごとく雪降りやまぬかな 村山故郷
忘られし三角渚水雪降る 佐藤鬼房
望郷やしなのの山の深雪空 松村蒼石 雪
枕辺に妻ゐて春の深雪云ふ 村山故郷
鱒池にひとの近づく雪景色 飯田龍太
繭玉にかかる小雪や光悦寺 寒食 星野麥丘人
無花果の木や雪降れば雪かかり 細見綾子
霧行くや樅は深雪に潰えつゝ 相馬遷子 山国
命日の牡丹雪その後の凍て 佐藤鬼房
明け方の暗さもどりし深雪に降り立つ 篠原梵 年々去来の花 皿
綿雪や雪をかむれる実万両 森澄雄
茂吉忌や時に逸りて牡丹雪 細見綾子
毛蟹食えば雪降りウイマム以後の民 古沢太穂 火雲
木のもとに草青々と暮雪かな 原石鼎 花影
木の芽打つて雪はげし句々抹殺す 渡邊水巴 白日
木の芽張り雪降り山の幻化境 林翔
木々ぬれて大樋水迅く暮雪やむ 飯田蛇笏 春蘭
黙々生きて暁の深雪に顔を捺す 佐藤鬼房
目覚の声か満開の雪の下 飯田龍太
夜の間に薄雪降りしだけつもる 右城暮石 句集外 昭和二十九年
夜の書庫にユトリロ返す雪明り 安住敦
夜の船は雪降り出でて雪積みぬ 細谷源二 鐵
夜の町は紺しぼりつつ牡丹雪 桂信子 初夏
夜の明けてゆくと深雪の冷えぞこれ 篠原梵 年々去来の花 皿
夜もすがら雪明りしんしんと冷ゆ 村山故郷
夜桜や大雪洞の空うつり 正岡子規 夜桜
野に大雪も来よとおもふ冬菜を漬ける 中川一碧樓
野の果まで雪明かるくて道あやまつ 津田清子 礼拝
野火あふつ風に粉雪のまじりつつ(奈良) 細見綾子
約束の日なり降る雪さまたげず 及川貞 夕焼
幽きより風新雪の竹しなふ 鷲谷七菜子 銃身
有明に雪つむ四絛五絛かな 正岡子規 雪
夕月や雪あかりして雑木山 藤田湘子 途上
窯跡に鼬出て来し雪明り 飯田龍太
落葉松林の奥しづかなる深雪かな 村山故郷
乱へ到らず根雪絡みあう白秩序 赤尾兜子 歳華集
離りて貧し深雪の中の翌檜 小林康治 四季貧窮
立ち睡る馬のまはりを舞ふ小雪 有馬朗人 知命
流水の声は隠さず雪の谷 鷹羽狩行
旅かなし夢の中にも雪降れり 鈴木真砂女 夏帯
林泉に暮雪の白き涅槃かな 日野草城
嶺近く大雪晴るる水迅し 廣瀬直人 帰路
炉を離れ飯詰(いじこ)の中に雪明り 古舘曹人 樹下石上
炉隠しに轡かかりて暮雪ふる 飯田蛇笏 春蘭
廊灯しゆく婢に月明の深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
老孤松大雪景を降らしけり 永田耕衣
老松方方を拝す大雪景 永田耕衣
曼珠沙華の葉をぬらしたる粉雪かな 細見綾子
撓みたる樹頭の刎ねて雪散華 福田蓼汀 秋風挽歌
朧夜の裸火の見に粉雪舞ふ 飯田龍太
柩蔽へば華やかに雪降り来 鷲谷七菜子 一盞
焙じ茶の熱しかんばし雪景色 日野草城
爐隠しに轡かかりて暮雪ふる 飯田蛇笏 心像
竈火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
篁の夜の査けくて雪の声 臼田亜郎 定本亜浪句集
翔べと命じて死にぎはおのが雪景色 佐藤鬼房
蓼科へ傾く廂大雪解 木村蕪城 一位
蹇に縋り寝の子よ雪明り 小林康治 玄霜
蹇や深雪ゆく子を励ましつ 小林康治 玄霜
鰤の尾に大雪つもる海女の宿 前田普羅 能登蒼し
鳰と目があう鉄道長屋へ粉雪舞い 古沢太穂 火雲

雪 補遺  続き

*あさざ網吹かれ雪降る溺谷 松崎鉄之介
あかんぼに紅き唇雪明り 中村草田男
あのへんに浮御堂点く暮雪かな 阿波野青畝
あまづたふ日のさざなみの深雪原 上村占魚
いま起きしばかりの寝間の雪明り 廣瀬直人
うごめくに雪降り積むや蟹の甲 水原秋櫻子 殉教
おのづからひらく瞼や牡丹雪 加藤秋邨
かがやく雪景色の夢がさめた 尾崎放哉 小豆島時代
かごめかごめかまくらに降る雪の声 平畑静塔
きさらぎの粉雪に浮く錦鯉 廣瀬直人
ぎんなんを焼くゆふぐれの雪明り 橋閒石
くすぐるごとき哀歓の雪降り初めぬ 中村草田男
けふはふる牡丹畑に牡丹雪 山口青邨
ここが縄張り 根雪に手押車を押し 三橋鷹女
こころ火の国にあそべる粉雪かな 三橋鷹女
コツプのかげすきとほる夜の雪深し 大野林火 海門 昭和七年以前
ささやかに受賞祝はれ牡丹雪 松崎鉄之介
さざんかにすこし雪降るこころかな 平井照敏
さんさんと田宮二郎の雪降れり 平井照敏
しづかにこころ満ちくるを待つ牡丹雪 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
じぶ食へばたちまち加賀の雪景色 飴山實
しん~と雪降る空に鳶の笛 川端茅舎
しんとして深雪の視野のあるばかり 加藤秋邨
スケートの面粉雪にゆき向ふ 橋本多佳子
ずり落ちず聖樹に積みし綿雪は 山口誓子
そこここと網倉見ゆる深雪かな 阿波野青畝
ただに素顔の青流沿へり深雪道 中村草田男
たべ物の切口ならび夜の深雪 中村草田男
だんまりの深雪一行子を中に 平畑静塔
どの家よりも海に近くて雪降れり 山口誓子
トンネルを出れば雪国雪降れり 清崎敏郎
なきがらの軽きおもひの雪明り 飯田龍太
なつかしき水の音する深雪かな 清崎敏郎
バス停 暮雪 揃って無口の湯治老婆 伊丹三樹彦
はるか新雪北へ真直ぐ道作り 森澄雄
ひとつづつ深雪の上の星の数 加藤秋邨
ひとりゐの牡丹畑に牡丹雪 山口青邨
ふるさとの山は愚かや粉雪の中 飯田龍太
ふるさとの楢山夢の粉雪舞ひ 飯田龍太
ヘヤピンを前歯でひらく雪降り出す 西東三鬼
また一人暮雪にかへりスキー脱ぐ 水原秋櫻子 古鏡
マフラーの新雪のごと肩にゆたか 山口青邨
まんさくや小雪となりし朝の雨 水原秋櫻子 餘生
みちのくの雪降る町の夜鷹蕎麦 山口青邨
みちのくの雪深ければ雪女郎 山口青邨
みちのくは雪深き国ゆきつばき 山口青邨
みつみつと雪積る音わが傘に 橋本多佳子
みみづくの眠る梢に粉雪舞ふ 飯田龍太
めづらしい春の大雪 尾崎放哉 小豆島時代
もちの花よべの小雪のほどこぼれ 山口青邨
ゆるやかに大雪片のまじりきし 清崎敏郎
わが頬に天の雪降り地にもふる 渡邊白泉
暗黒に降る雪片の見えて積む 大野林火 青水輪 昭和二十七年
伊吹山広き地域に雪降らす 山口誓子
遺されて母が雪踏む雪あかり 飯田龍太
井戸の窪一茶旧居の深雪中 松崎鉄之介
一刀に斬りさげし根雪秋の富士 富安風生
一燈につのりきたりし粉雪かな 清崎敏郎
一燈を底に雪降る硫黄泉 大野林火 雪華 昭和三十七年
一木の白樺立てば雪降れり 平井照敏
飲食はいやしきがよし牡丹雪 岸田稚魚
飲砲光つて居る深雪 尾崎放哉 小豆島時代
羽子つき居る青空よ粉雪をおとす 尾崎放哉 大正時代
駅夫の眼旅具の粉雪をかなしむや 大野林火 海門 昭和十年
円空仏怒髪ゆたかに雪降れり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
炎天に妄執の雪降らしたり 山口誓子
猿の眼に 飢ありありと 深雪の檻 伊丹三樹彦
縁側に映りて降るや牡丹雪 三橋敏雄
遠き燈のそこにのみ雪降り集ふ 山口誓子
遠野勢夜半に著きぬる雪明り 河東碧梧桐
鉛とかすにみちのくの空雪降らす 松崎鉄之介
応挙寺大雪塊のしりぞかず 阿波野青畝
黄に爛れ深雪晴せる硫気口 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
沖暗くサィ口をうづむ雪降れり 松崎鉄之介
牡丹雪 人間(ひと)の貌こそかなしけれ 富澤赤黄男
牡丹雪 茫失の面またたきせず 富澤赤黄男
牡丹雪おのが生みたる風に乗り 岡本眸
牡丹雪ジルベスターの夜をこめて 山口青邨
牡丹雪その夜の妻のにほふかな 石田波郷
牡丹雪てのひらくぼめ降つてくる 山口青邨
牡丹雪とははつきりと地にとどく 後藤比奈夫
牡丹雪わらべのこゑをまじへ降る 大野林火 月魄集 昭和五十五年
牡丹雪一片にして覆ふ紅粉花の苗 山口青邨
牡丹雪下宿のお豊何してる 山口青邨
牡丹雪海に消えてはとどろくも 加藤秋邨
牡丹雪古人一茶を撫でをれば 加藤秋邨
牡丹雪酒屋の前の友の家 森澄雄
牡丹雪重しと伏すやおかめ笹 山口青邨
牡丹雪息がゆるめば鯉うごく 加藤秋邨
牡丹雪天に戻るもあるごとし 阿波野青畝
牡丹雪土につくときふとためらふ 加藤秋邨
牡丹雪二つに離れ解けにけり 阿波野青畝
牡丹雪木立は遥か粉雪せる 三橋鷹女
牡丹雪陽明門をかくし得ず 川端茅舎
牡丹雪林泉鉄のごときかな 川端茅舎
温室の戸を緑のぞくよ深雪晴 大野林火 雪華 昭和三十七年
温室へ出入り二日またぎの深雪晴 大野林火 雪華 昭和三十七年
音といふ音閉ざされし深雪宿 稲畑汀子
音なく白く重く冷たく雪降る闇 中村苑子
火を浴びし木に降る雪を見てゐたり 飯田龍太
火形(かぎゃう)にて焚火深雪にくだけゆく 平畑静塔
火消壷まことに黒し牡丹雪 山口青邨
花匂ふ能郷白山の雪の香か 大野林火 飛花集 昭和四十六年
悔のような根雪 日がさし 日がかげり 伊丹三樹彦
海に寄り来て海に降る雪を見る 山口誓子
海音の明るさ恃め根雪墓 角川源義
海吹雪く林檎畑に雪深々 松崎鉄之介
海底に何か目ざめて雪降り来 加藤秋邨
蟹を立ち売る降る雪に消されもせず 津田清子
貝まきて畳に拾ふ根雪かな 平畑静塔
貝刺しの雪つむ芝をわたり来ぬ 永田耕衣
外堀内堀きさらぎの粉雪舞ひ 廣瀬直人
柿吊つて新雪の神嶺に来ぬ 森澄雄
岳新雪前山幾重衿合わせ 山口青邨
額の亡母浮き出てかなし雪降れば 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
橿鳥のこぼす粉雪の光り舞ふ 水原秋櫻子 秋苑
鎌倉に小雪ありけり初詣 山口青邨
鎌倉に雪降り出しぬ黒マント 草間時彦
鴨毟る雪降らざれば止まぬなり 橋本多佳子
寒潮に雪降らす雲の上を飛ぶ 西東三鬼
干柿の八ツ岳新雪のかがやきに 山口青邨
干潟には時間をかけて雪積る 鷹羽狩行
幹たかく葬後深雪の夕ながし 飯田龍太
甘酒に 小雪散り込む 椿の宮 伊丹三樹彦
甘酒の沸々木瓜は雪深き 水原秋櫻子 蓬壺
観音の御衣深雪にはだけむほど 松崎鉄之介
眼がしらに雪降りはじめ樹をぬらす 三橋敏雄
眼の高さ以下はゆつくり牡丹雪 鷹羽狩行
眼を病むに降る雪霏々と兵舎消す 伊丹三樹彦
眼前を刻すぎゆけり牡丹雪 岡本眸
顔出でし窓の暗黒雪景色 三橋敏雄
幾谿の雪明りのみ見つつ来ぬ 加藤秋邨
記憶を持たざるもの新雪と跳ぶ栗鼠と 中村草田男
起きてゐる咳や深雪となりにけり 石橋秀野
泣ける場所があって 暮雪の 漬物納屋 伊丹三樹彦
旧正や雪深き国けふも雪 山口青邨
虚空見る目や瞬けば牡丹雪 加藤秋邨
虚空雪降る一途なる妻遊べる妻 加藤秋邨
虚子塔の手向の蜜柑にも粉雪 阿波野青畝
漁夫町 根雪 飴玉溶かす舌もつ子ら 伊丹三樹彦
魚屋の荷に雪降つて金目鯛 草間時彦
峡一つ奥へすゝめば雪降れり 高浜年尾
峡湾は暮しの歯型雪降り降る 佐藤鬼房
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男
郷倉は深雪・氷柱よ三百年 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
鏡なす大雪嶺を北の盾 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
暁闇をこめて降る雪こまかなり 大野林火 青水輪 昭和二十五年
局地性大雪六甲山に積む 山口誓子
芹川の芹を埋めて雪積る 大野林火 月魄集 昭和五十五年
近づいて 遠のく人語 根雪地蔵 伊丹三樹彦
近づく睡り水に近づく牡丹雪 加藤秋邨
喰積や雪明暗の陶の匙 角川源義
空の紺氷柱の瑠璃に深雪晴 松本たかし
空町へ土塀の坂や深雪晴 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
空谿の深雪のどこか月ありぬ 加藤秋邨
月光に深雪の創のかくれなし 川端茅舎
犬を呼ぶ女の口笛雪降り出す 西東三鬼
犬猫と共に永らふ牡丹雪 西東三鬼
肩落とすやうに日暮れて牡丹雪 岡本眸
見てゐたるところから雪降りはじむ 加藤秋邨
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女
限りなく降る雪何をもたらすや 西東三鬼
枯草に粉雪さゝやけば胼の吾れ 杉田久女
湖の松に雪つむ*えり簀編 高野素十
胡桃ひとつに夢ひろがりぬ牡丹雪 森澄雄
御高祖頭巾の婆寸詰り粉雪降る 松崎鉄之介
御所の灯はかぞへて五つ牡丹雪 山口青邨
口あけて口中の天雪降りくる 三橋敏雄
杭一本雪降る条々かぎりなし 中村草田男
行きゆきて深雪の利根の船に逢ふ 加藤秋邨
購ふはくろき襟巻雪降れり 大野林火 早桃 海風抄
降り積むごとき睡りは来ずや牡丹雪 加藤秋邨
降る雪が川の中にもふり昏れぬ 高屋窓秋
降る雪が父子に言を齎しぬ 加藤秋邨
降る雪が踊る櫟を降りつつむ 石田波郷
降る雪に 宝石店の 裡暗む 伊丹三樹彦
降る雪にサイレンの尾の細り消ゆ 西東三鬼
降る雪にさして消えたる日ざしかな 清崎敏郎
降る雪にさめて羽ばたく鴨のあり 加藤秋邨
降る雪にしんこの犬コ四肢張れる 大野林火 飛花集 昭和四十七年
降る雪にやすらけくとぞ奏しける 阿波野青畝
降る雪に映写つゞくる映画館 山口誓子
降る雪に貝吹く頬をふくらませ 山口誓子
降る雪に角巻の胸真白くす 山口誓子
降る雪に汽笛船底をうち貫けり 山口誓子
降る雪に胸飾られて捕へらる 秋元不死男
降る雪に古りし螺鈿の底光り 松崎鉄之介
降る雪に若菜祭の禰宜の列 高野素十
降る雪に終焉の蔵戸もなしや 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
降る雪に触れんと蔓ら這ひまはる 三橋鷹女
降る雪に漕ぎ出で海に漁夫ひとり 山口誓子
降る雪に太陽光の通路あり 山口誓子
降る雪に長子羽摶つごと来るよ` 角川源義
降る雪に日輪小さきスキー場 山口誓子
降る雪に病む者一指だに触れず 石田波郷
降る雪に目ひらいてみてまた泣けり 加藤秋邨
降る雪に老母の衾うごきけり 永田耕衣
降る雪に俯向くことを慣ひとす 山口誓子
降る雪のいまは鴨さへかきくらす 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪のしんしんと松を降りかくす 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪のそらへ體温のぼりゆく 三橋敏雄
降る雪のたてがみかぶり秣喰ふ 三橋敏雄
降る雪の影おぎろなし昇汞水 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
降る雪の影をさまりつ壁冴えぬ 大野林火 早桃 太白集
降る雪の影を障子に旅ごころ 大野林火 月魄集 昭和五十五年
降る雪の空つづきにて海も降る 山口誓子
降る雪の激しさにゐる受け応へ 岡本眸
降る雪の月をかくさずすでに春 大野林火 冬雁 昭和二十二年
降る雪の紙呆気なし聖夜劇 伊丹三樹彦
降る雪の松に浮寝の鴨にふる 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪の勢ひあまりて捻れけり 岡本眸
降る雪の勢ひ失せてさまよひぬ 岡本眸
降る雪の星屑まじへ橇走る 山口青邨
降る雪の川の奔流見せず降る 大野林火 青水輪 昭和二十四年
降る雪の底にして鴨の青うごく 水原秋櫻子 蘆刈
降る雪の薄ら明りに夜の旗 西東三鬼
降る雪やここに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女
降る雪や襖をかたく人の家に 石田波郷
降る雪や傘にあまりて供華の枝 石田波郷
降る雪や山美しく人貧し 角川源義
降る雪や樹洞を恋ふる一羽毛 秋元不死男
降る雪や父母の齢をさだかには 石田波郷
降る雪や夢の檜山に憑かれ来て 中村苑子
降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男
降る雪や流せし赤きものも消え 山口青邨
降る雪を見てまた戻る哺育室 飯田龍太
降る雪を見る眼差のみな同じ 山口誓子
降る雪を高階に見て地上に濡る 西東三鬼
降る雪を照らす汽罐車動きそむ 山口誓子
降る雪を鳥凌ぎゆく昇りゆく 中村草田男
降る雪を天階に見ず畦に見る 秋元不死男
降る雪を齢を一つ加へ見る 大野林火 青水輪 昭和二十四年
降る雪点々アララギ巨幹にあたり散る 中村草田男
高きより雪降り松に沿ひ下る 山口誓子
豪雪に寝て髪の毛の白くなる 山口誓子
豪雪の夜明のおさな髪撫でる 橋閒石
豪雪や母の臥所のかぐわしく 橋閒石
豪雪をうがつわが尿レモン色 平畑静塔
豪雪報ひしひし雪割草は知る 山口青邨
黒き雲脚を垂らして雪降らす 山口誓子
黒き地や身を降る雪の打ちつけに 中村草田男
骨上げ 深雪路 モンペおかしい姉遅れる 伊丹三樹彦
骨上げ 大雪 隠亡待ちのたたら踏む 伊丹三樹彦
根雪掘る二十代経し妻の背よ 佐藤鬼房
根雪待つ用意をさをさ怠らず 清崎敏郎
砂山の八方やぶれ雪降り出す 中村苑子
細雪加賀屋あたりに灯の入りて 岸田稚魚
細雪妻に言葉を待たれをり 石田波郷
細雪身に添ひ齢加へけり 岡本眸
在りし日の妻のこゑあり牡丹雪 森澄雄
三つ並ぶ大きな窓や牡丹雪 松本たかし
三月のとぼそのひまの粉雪かな 石橋秀野
山の雪降るを見てをり春炬燵 岸田稚魚
山の襞みな垂直に新雪を 山口青邨
山越えてゆかばいかなる雪降らむ 平井照敏
山越えの木偶に優しや雪明り 橋閒石
山峡の粉雪にまじり枯葉舞ふ 清崎敏郎
山々のはればれねむる深雪かな 飯田龍太
山上の粉雪一日草に積む 廣瀬直人
山雀の声の深雪を誘ひゐる 飯田龍太
山川と湯川落ち合ふ雪深し 松本たかし
山刀伐の深雪の中に炭を焼く 阿波野青畝
山刀伐の深雪解けまで文字ねむれ 加藤秋邨
山門を掘り出してある深雪かな 清崎敏郎
四月馬鹿雪降りいでて夜をはやむ 角川源義
四面 雪明り その湯にかるがる浮き 伊丹三樹彦
子が寝ねて妻の水のむ雪明り 加藤秋邨
子の留守の家降りつつむ牡丹雪 飯田龍太
市隠の愚責めぬく無燈雪明り 香西照雄
死ぬ日いつか在りいま牡丹雪降る 橋本多佳子
獅子舞に山手暮色雪降り出す 富安風生
紙を干す富士新雪と相照らひ 山口青邨
次の間も~雪明りかな 高野素十
七十の恋の扇面雪降れり 橋閒石
酌めば茶のすぐにさめたる深雪かな 鈴木真砂女
手毬唄牧も雪降るころならむ 飯田龍太
首綱で犢引き来る深雪かな 河東碧梧桐
樹蔭にも雪積るまで時借さめ 山口誓子
洲浜草鞍馬はけふも雪降ると 後藤比奈夫
熟睡より雪降る中に覚めゐたり 大野林火 月魄集 昭和五十五年
出雲まが玉暮雪の中を買ひに出づ 松崎鉄之介
春の雪降らせし夜空裾濃なす 松崎鉄之介
春の雪降りつつ早む夜の刻 飯田龍太
春の雪降るまもとけてゐたりけり 鈴木真砂女
春の雪降るや山家のうしろから 三橋敏雄
春の雪降る日の鬘合せかな 後藤比奈夫
春の雪降れば積れば山つばき 飯田龍太
春の雪明るし法王の日本語 阿波野青畝
春の粉雪に一塊の村しづか 飯田龍太
春暁や音もたてずに牡丹雪 川端茅舎
春月の眼胴(めどう)うるほひ雪景色 川端茅舎
春大雪未明友逝き逝きて帰らぬ 金子兜太
処女の背に雪降り硝子夜となる 西東三鬼
初雪は根雪にならぬ林檎かな 阿波野青畝
曙の雪明りより膳所の鳰 阿波野青畝
書を積んで巌のごとし牡丹雪 山口青邨
書庫までのわが足あとや牡丹雪 山口青邨
女中部屋の雪あかりに病んでゐる 尾崎放哉 小豆島時代
女名の家の濡縁深雪嵩む 中村草田男
除雪軍の通りしあとに雪降れり 清崎敏郎
除雪車に雪降る海がうごきくる 加藤秋邨
小雪や実の紅の葉におよび 鷹羽狩行
小雪飾りて山椒は棘ばかり 飯田龍太
少女等の髪の粉雪やスキー行 高野素十
松の枝大雪塊ののり撓め 高野素十
松籟の消ぬかのままに雪降る音 中村草田男
焼畑に鴉ついばむ雪降り来 角川源義
織りすすむ殊に紅絲に雪明り 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
信濃路に降る雪昏し空に織り 中村草田男
新雪にスキー応へてをりにけり 後藤比奈夫
新雪に何か声澄むさるをがせ 飯田龍太
新雪の山別々の闇に入る 飯田龍太
新雪の上いたましや玩具燃ゆ 飯田龍太
新雪の人の表札を見てはゆく 加藤秋邨
新雪の葡萄畑に水の音 松崎鉄之介
新雪の穂高の奥の光るは槍 山口青邨
新雪の木曽駒と遇ひ君等と会ふ 松本たかし
新雪の来て花ひらく蓮華岳 山口青邨
新雪や崖の上下に声めざめ 加藤秋邨
新雪をかぶり富士山一本立ち 平畑静塔
新雪をもて槍岳は槍としたり 山口青邨
新雪を一浴したる駒ケ嶽と会ふ 松本たかし
深雪にアイヌは腰の定りぬ 後藤比奈夫
深雪のどれもみみづく越後の子 森澄雄
深雪の下くぐり来し水漉場に入る 橋本多佳子
深雪の戸はひれば読んで居り暗し 平畑静塔
深雪の照り双頬へ来てそを熱す 中村草田男
深雪の燈灯れる駅を通過せり 清崎敏郎
深雪の夜友をゆさぶりたくて訪ふ 中村草田男
深雪やへくそかづらがふとそよぎ 加藤秋邨
深雪よりいま一滴の旅はじまる 加藤秋邨
深雪降らしていま憩ふ空月と星 中村草田男
深雪宿温泉室の屋根は雪を置かず 松本たかし
深雪宿足あと家を一めぐり 高野素十
深雪晴 木馬 ブランコ みな音絶ち 伊丹三樹彦
深雪晴雁木表に馬具吊られ 松崎鉄之介
深雪晴湯花凝らしめ湯は流れ 大野林火 雪華 昭和三十七年
深雪晴非想非非想天までも 松本たかし
深雪掻く家と家とをつながんと 西東三鬼
深雪踏む白き看護婦呼べばふり向く 西東三鬼
深雪道来し方行方相似たり 中村草田男
人恋えば灰のごとくに雪降れり 橋閒石
水に着かんとするときがふと牡丹雪 加藤秋邨
清瀬村医療区に鐘雪降り出す 石田波郷
声はわれらよ雪降りつつむ終ひの蔵 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
西方も粉雪の眉毛充満す 永田耕衣
惜しみなく炉火焚かれたり雪降り来る 橋本多佳子
積むことのはやき暮雪よ妻病めば 大野林火 青水輪 昭和二十五年
積るともなき粉雪の積りゐし 清崎敏郎
赤のまんま末枯(すがれ)れたりすでに雪降りたり 金子兜太
赤子泣き覚めぬひとの家雪明し 橋本多佳子
跡隠しの雪降る闇に沸く怒濤 加藤秋邨
雪の一糸も無く白日や秋の声 中村草田男
雪の香の犬コ小筥に族鞄 大野林火 飛花集 昭和四十七年
雪の上に雪降ることのやはらかく 西東三鬼
雪はげし化粧はむとする真顔して 橋本多佳子
雪はげし鶏舎の網の目をつぶし 鷹羽狩行
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 橋本多佳子
雪はげし谷戸の流れの音たつほか 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
雪はげし夫の手のほか知らず死す 橋本多佳子
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子
雪はげし木立悉く傾けば 石田波郷
雪を払って僕生きている 雪降る墓地 伊丹三樹彦
雪雲が通る儀礼の雪降らし 山口誓子
雪空火を焚きあげる雪散らす 尾崎放哉 須磨寺時代
雪窪に雪降る愛を子の上に 橋本多佳子
雪降つてうすずみいろの厨かな 草間時彦
雪降つてもよきほど藁屋いぶせきよ 大野林火 方円集 昭和五十三年
雪降つてより雪除の柵造り 山口誓子
雪降つてゐる赤門や冬休 深見けん二
雪降つて解く大阪の生旺ん 山口誓子
雪降らしおのれも白き天狗山 山口誓子
雪降らす夜も家なしの天の童 三橋敏雄
雪降りて休めるトロを子は走らす 山口誓子
雪降りて谷の底より吹き揚る 山口誓子
雪降りて蕪村忌にしてクリスマス 富安風生
雪降りぬ病む友に詩も多からん 松崎鉄之介
雪降りやみ鋸の音なほつづく 山口誓子
雪降り出す車窓よぎる燈の白熱し 大野林火 青水輪 昭和二十六年
雪降るか沼に宿かる神の岳 角川源義
雪降るか立春の暁昏うして 石田波郷
雪降るとき黄河黄濁を極めん 金子兜太
雪降ると兎の風船だけが赤 加藤秋邨
雪降ると背骨一本立ちにけり 加藤秋邨
雪降るなかのコンクリート塀母子眠らせ 金子兜太
雪降るな人間魚雷いまぼろぼろ 山口誓子
雪降るにまかす夜中の鼠捕り 山口誓子
雪降るはあしたあたりか五百川 平井照敏
雪降るもやむも正法眼蔵意 上村占魚
雪降るや一壺一輪白牡丹 水原秋櫻子 緑雲
雪降るや忌の日一日美しく 角川源義
雪降るや去る足跡をかくさんと 角川源義
雪降るや妻が小声の子守唄 伊丹三樹彦
雪降るや笹に音して更けにけり 森澄雄
雪降るや泥濘荒るる北の海 松崎鉄之介
雪降るや白千羽孜々と食み 大野林火 雪華 昭和三十九年
雪降るや霏々と水仙埋むべく 山口青邨
雪降る山と睡眠薬を枕上 大野林火 雪華 昭和三十五年
雪降る夜逃場は海のほかになし 山口誓子
雪降れど高臺のなき工場地区 三橋敏雄
雪降ればころんで双手つきゐたり 三橋敏雄
雪降れば転んで双手つきゐたり 三橋敏雄
雪降れりすこし離れし海の上 山口誓子
雪降れりひとのさまよひ十字なす 三橋敏雄
雪降れり月食の汽車山に入り 石田波郷
雪降れり時間の束の降るごとく 石田波郷
雪降れり人のゆきかひ十字なす 三橋敏雄
雪降れり美童に遙かに無数の駅 金子兜太
雪降れるときひたすらに白き父 三橋敏雄
雪山に雪降り友の妻も老ゆ 西東三鬼
雪深き村々燈火洩らさざる 山口誓子
雪深くかぶりてをりしヌード小屋 清崎敏郎
雪深くして厨房の音こもる 橋本多佳子
雪深く勝道上人斧ふりしか 川端茅舎
雪深く天手力男命籠り在す 山口青邨
雪深く南部曲屋とぞ言へる 山口青邨
雪深く年歩む吾あゆむなり 岡本眸
雪積ることはじまりて水暮るる 大野林火 青水輪 昭和二十七年
雪積る梢の勾配ありにけり 稲畑汀子
雪掻けば雪降る前の地の渇き 中村苑子
雪中の水仙雪の香とにほふ 山口青邨
雪粉雪受話器をながれ来たるこゑ 三橋鷹女
雪片と人間といづれ雪降りつぐ 石田波郷
雪明りこゑももらさず餌場の鴨 橋本多佳子
雪明りベツドにうづむ寝顔かな 大野林火 早桃 太白集
雪明り一切経を蔵したる 高野素十
雪明り死へやすやすと鉄路置き 岡本眸
雪明り熱のぼるとき冴えにけり 大野林火 早桃 太白集
雪明り目覚めて夜の胸隆き 岡本眸
雪嶺のがれ煎餅買ふ掌に雪の声 角川源義
戦友会暮雪にはかに会者増ゆ 松崎鉄之介
船の絵を見しが雪降る海が見ゆ 加藤秋邨
船煙黒褐に雪降りてやむ 山口誓子
船煙雪降る海にはねかへる 山口誓子
祖母・父母の死苦の総和や雪降り次ぐ 中村草田男
組みあひて降つてくるなり牡丹雪 三橋敏雄
壮行や深雪に犬のみ腰をおとし 中村草田男
想ひ出づ歴史の中に雪降れり 山口誓子
息やはらかく降る雪にお晩です 大野林火 白幡南町 昭和三十年
大いなる牡丹雪鼻の先に落つ 阿波野青畝
大雪が押す禅堂の雪囲ひ 山口誓子
大雪となる兎の赤い眼玉である 尾崎放哉 須磨寺時代
大雪に耐ふる柱の時計うつ 橋閒石
大雪に埋れざるものなかりけり 三橋敏雄
大雪の村に水銀燈点る 山口誓子
大雪の朝を出でゆく魚の骨 佐藤鬼房
大雪の都電とどまる旧居前 水原秋櫻子 帰心
大雪の夜の排卵を拝むなり 橋閒石
大雪の夜の白檀を燻ずべし 橋閒石
大雪の夜を福寿草ひらきけり 橋閒石
大雪や山毛欅の諸枝のどこか揺れ 阿波野青畝
大雪や母の点つ茶の泡みどり 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
大雪を曳きあへずして汽車うごく 平畑静塔
大雪を冠りて木々も低頭す 山口誓子
大雪を降らして伊吹雪少な 山口誓子
大雪を降らす曲者伊吹山 山口誓子
大雪を必然として埋れ住む 山口誓子
大雪原人の住む燈の見当らず 山口誓子
大雪原地球のうねりそのままに 山口誓子
大雪原天には月を掲ぐのみ 山口誓子
大雪片不意に吾が眼の前に降る 山口誓子
大沢の深雪解くるに間あるなり 山口誓子
啄木鳥や深雪に立てる木も凍り 水原秋櫻子 秋苑
脱衣著衣浴女出で入り雪散華 松本たかし
探梅図ことしも掛けて雪深き 山口青邨
炭つぐや髷の粉雪を撫でふいて 杉田久女
炭色の眠たうなりぬ牡丹雪 森澄雄
誕生日わが満面に雪明り 伊丹三樹彦
地は厚くして大雪の富士を載す 山口誓子
抽出に佛光りし雪降るか 永田耕衣
昼暗き四方八方の雪降りみだる 山口誓子
鶴舞うて雪降りて旅なぐさむる 星野立子
低山に雪降りわれら蹣跚と 金子兜太
天高き処新雪降りしきる 山口誓子
天草を天たかく見れど雪降れり 山口誓子
点燈す手の高さより雪降りをり 森澄雄
電燈を点けて雪降る日の奢り 山口誓子
土につくまで牡丹雪重かりき 加藤秋邨
冬は何故か涙もろくて雪降れり 松崎鉄之介
冬鵙の暮れんとしつつ雪明り 加藤秋邨
湯汲老婆に 妓から会釈の 深雪の橋 伊丹三樹彦
湯女どちと深雪月夜を一つ温泉に 松本たかし
湯女どちの肌の湯艶よ深雪宿 松本たかし
湯畑の湯花採る日や深雪晴 松本たかし
灯台のどの方位にも雪降れり 鷹羽狩行
燈を洩らし深雪の関ケ原に住む 山口誓子
討伐隊まだかへりこぬ暮雪かな 石田波郷
踏み出でて大雪晴に身の浮けり 岡本眸
堂内へ気まぐれ小雪 灰葬経 伊丹三樹彦
瞳に古典紺々とふる牡丹雪 富澤赤黄男
道に柴一枝夜明けて雪降りをり 森澄雄
道傍に海あふれたる暮雪かな 石田波郷
謎もなし穴掘れば穴に雪降り 藤田湘子
日がさして消えて春雪降りやまず 清崎敏郎
日のあたる方へ深雪の幹歩む 藤田湘子
日本曹洞第一道場深雪晴 上村占魚
乳児の黒瞳さめて見てゐる牡丹雪 加藤秋邨
妊りて堆く寝て雪降り積む 森澄雄
年木積み新雪ひかる岳を負ふ 水原秋櫻子 霜林
白牡丹われに落ちつぐ牡丹雪 山口青邨
白菊は富士新雪を前に光る 山口青邨
白魚を煮る酒の香や細雪 水原秋櫻子 緑雲
髪刈りあう父と子に雪つむ迅さ 橋閒石
半ば魔を恃む深雪に両足消し 西東三鬼
斑雪降り家鴨のこゑを聞きとどむ 三橋敏雄
氾濫の絮のごとくに牡丹雪 阿波野青畝
飯噴くと恍惚たりき粉雪の日 加藤秋邨
尾ある人現るか雪降る奥吉野 津田清子
美しき夜となしつつ牡丹雪 森澄雄
百千の土管口あけ雪降れり 石田波郷
病みてここに綿雪を見て慰まむ 森澄雄
病める目にときに繚乱牡丹雪 森澄雄
富士根雪鶴は再び病みにけり 渡邊白泉
父の奥に雪降り子守唄遠し 中村苑子
父の忌の雪降りつもる炭俵 大野林火 早桃 太白集
父の墓へは新雪 母焼く煙見返り 伊丹三樹彦
負け独楽のつきささりたる深雪かな 加藤秋邨
復活や深雪に墓の抱かれて 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
覆はれし受難のイエス雪降れり 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
淵の深さやあとからあとから牡丹雪 加藤秋邨
仏壇屋 覗きもし 雪降る町で男 伊丹三樹彦
憤りわが踏む雪に雪明り 加藤秋邨
粉雪の雉子はしばらくあるきけり 加藤秋邨
粉雪はくちなしの実にとまりそめ 清崎敏郎
粉雪ふつてゐる畑の畝そろへり 大野林火 冬青集 雨夜抄
粉雪ふる常はおもひのなき径 飯田龍太
粉雪ふる町賑はひて年歩む 松本たかし
粉雪や朝より熱き女の身 森澄雄
粉雪散らし来る大根洗ふ顔を上げず 尾崎放哉 須磨寺時代
兵起す喇叭ぞ鹿児島に雪降れり 山口誓子
編笠山新雪すこしのせ瀟洒 山口青邨
墓原に低き声充ち雪降り出す 岡本眸
暮雪てふ比良を舳に捕 阿波野青畝
暮雪飛び風鳴りやがて春の月 水原秋櫻子 霜林
母のふところ雪深々とあやめ咲く 橋閒石
母子踊る粉雪の如く静寂に 三橋鷹女
母情さながら楓古木に粉雪舞ひ 飯田龍太
本を売る予報なかりし牡丹雪 鷹羽狩行
埋葬行森を隠して雪降れり 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
妹の嫁ぐ栃尾も雪深し 高野素十
又も夕ベとなり粉雪降らし来ることか 尾崎放哉 須磨寺時代
満目の大言海の雪降れり 平井照敏
無より有出でくる空の牡丹雪 阿波野青畝
綿雪のいつしか粉雪白魚汁 森澄雄
綿雪のふる夜おのれに紛れ紐れ入る 森澄雄
綿雪やしづかに時間舞ひはじむ 森澄雄
木立裾落ち込んでゐる深雪かな 高浜年尾
黙々生きて暁の深雪に顔を捺す 佐藤鬼房
目のあたり浴泉群女深雪晴 松本たかし
夜なべの母寝ゐてふかぶか雪積る 松崎鉄之介
夜の鉄路乗りかへてより雪深き 橋本多佳子
夜泊石呉天より雪散らせ来よ 阿波野青畝
爺ケ岳新雪の髪ふりかぶる 山口青邨
薬待つ遠い日向の雪景色 飯田龍太
柳鰈貰ふ大雪そのあとに 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
癒らざる方へ打臥す雪降り出す 石田波郷
由良の戸 暮雪 汽笛こんなにかなしいとは 伊丹三樹彦
欲しきもの夫の相槌牡丹雪 岡本眸
浴泉やひた降る雪を唇に吸ひ 松本たかし
落葉松はいつめざめても雪降りをり 加藤秋邨
落葉松を仰げば粉雪かぎりなし 橋本多佳子
裏山に巨岩があり雪降れり 金子兜太
流水のはげしさよ降る雪も斜め 大野林火 青水輪 昭和二十六年
旅鞄雪に置く雪降りしきる 山口誓子
両手組めば握手に似たり雪降りつぐ 中村草田男
力なく降る雪なればなぐさまず 石田波郷
林泉邃く来て雪明る簷ありぬ 伊丹三樹彦
俯伏せに甕押しならび雪降れり 石田波郷
溲瓶にも飛込むがあり牡丹雪 阿波野青畝
煖炉に立つ大雪を積む聖樹 山口誓子
煖炉燃え牡丹雪とはかかるもの 三橋鷹女
轆轤いま土をひきあぐ牡丹雪 加藤秋邨
饒舌に吹雪寡黙に降る雪よ 稲畑汀子

雪 続補遺

*霰小雪ふた親のこゝろ察し入 加舎白雄
あかるさに蠅の出て行深雪哉 田川鳳朗
あやなくも霰降かつ小雪哉 加藤曉台
いつ涌きていつ降る雪の玉柏 鬼貫
こゝろだに置処なき深雪哉 松岡青蘿
しなのぢや小田は粉雪に蕎麦畠 高井几董
そばへ啼鳥や小雪のさゝとふる 寥松
たをやかに柳もうけよ初深雪 馬場存義
ない事のやうに来ていふ深雪哉 田川鳳朗
ひつかくれ~降る雪の山 秋之坊
よし野山も唯大雪の夕哉 野水
われ若きいつやらは此雪げしき 土芳
一重なみ雪降かゝる凍かな 蘆本
下京や雪つむ上の夜の雨 凡兆
絵の中に居ルや山家の雪げしき 去来
客となりて雪降迄は竹の月 松岡青蘿
魚店に鰒の残るや雪げしき 呂風
月雪の墨の香ふかみ古人達 加舎白雄
元服や丹波の小雪ふれこんこ 支考
根雪かと見ればおそろし風の音 北枝
在寺や天井張らぬ雪あかり 鈴木道彦
鷺の雪降さだめなき枯野哉 千代尼
女潟とは小雪のたまる根笹哉 支考
小雪せよ笠着て舞ん神の前 建部巣兆
水仙の香やこぼれても雪の上 千代尼
是をだに夕日の野菊雪深し 句空
積にけり消る力のなき粉雪 田川鳳朗
雪の声篠三葉四葉のうごき哉 加舎白雄
雪の夜や重ッて行鳥の声 丈草
雪の有ものにきかすな松の声 千代尼
雪降て今朝は誠に浮世かな 買明 反古ふすま
雪降にうらと表は替りけり 芙雀
雪降のひよ鳥越や猿すべり 桃先
雪降は鴈のこゝろの目玉かな 助然
雪降や紅梅白し花の春 杉風
雪降や調抜子しづむ夜の神 車庸
雪降や南高藪殿どなり 紫道
雪深く人は世渡る楫をたえて 加藤曉台
雪明りあかるき閨は又寒し 建部巣兆
千人の日用そろふや雪明り 炭太祇
大雪と成けりけさは鶴のこゑ 成田蒼虬
大雪に埋まぬものや鏡の声 落梧
大雪に明たまゝ也枝折門 荻人
大雪に餅をならべし莚かな 建部巣兆
大雪のこゝにも食のけぶりかな 不玉
大雪のつみ残しけり腹のうち 田川鳳朗
大雪の降とは見えず浦のさま 成田蒼虬
大雪の旦若菜をもらひけり 加舎白雄
大雪の中からほのと赤つばき 諷竹
大雪の夜を打崩す景色かな 松岡青蘿
大雪やむぐらの宿のひしけ物 野水
大雪や我を山家に庭の松 夏目成美
大雪や水の枝折の埋跡 野坡
大雪や落つきて啼鳥の声 紫白女
大雪や里どまりするひわの声 卯七
大雪や隣のをきる聞合せ 浪化
大雪や隣へ行ば雪の洞 路健
池水にかさなりかゝる深雪哉 高井几董
猪突の控に立る深雪かな 加藤曉台
底冷やいつ大雪の朝ぼらけ 此筋
提灯についたも氷る小雪かな 寥松
踏初て根雪となるや椿井坂 正秀
日比見し松も深雪の高根哉 高桑闌更
年の雪の郭公かな夜ルの声 旦藁
白妙は遠山而已ぞ小雪ちる 高桑闌更
帆ばしらに雪降そふや風面 泥足
物置の櫃の先まで雪あかり 釣壺
北山は小雪散らん軒端吹 高桑闌更
木の葉ちり雪降上にちる木の葉 野坡
来月は猶雪降ンはつしぐれ 千里
落穂拾ひのまた出るに小雪ふる 寥松
蘭の香は薄雪の月の匂ひかな 松岡青蘿
里へ出る鹿の背高し雪明り 炭太祇
旅人に我糧わかつ深雪哉 高井几董
狼の声そろふなり雪の暮 内藤丈草
寐見台雪降時は起にけり 凉菟
棹立て越の深雪やみほつくし 正秀
蠣ひねる背戸のほそめや雪明り 昌房
鶯よいつをむかしの雪の声 鬼貫

以上

by 575fudemakase | 2017-04-19 10:11 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


例句を挙げる。

あくがれし雪国に来て飛雪の夜 大島民郎
あぢさゐの枯れて日当る根雪かな 藤田あけ烏 赤松
あひ触れて深雪の廂夜は深し 福田蓼汀 山火
あらき日の出あらき暮雪の泥炭地 細谷源二
うつはりに鶏の鳴く深雪かな 吉田冬葉
お涅槃のかたきまぶたや雪明り 前田普羅
お白州の格子窓より雪明り 高澤良一 随笑
お降りのうす墨刷ける深雪かな 西本一都 景色
かぎりなく舞ひおりて雪明りとなる 千代田葛彦 旅人木
かぎ括弧型に根雪のとけにけり 櫂未知子 貴族
かくて暮雪持たざる人は鶴のごとし 細谷源二
かまくらへ城と童女と雪明り 河野多希女 月沙漠
からたちの黄の褪せてくる飛雪かな 藤田あけ烏 赤松
かん酒や深雪とならん深雪になれ 白泉
がうがうと深雪の底の機屋かな 皆吉爽雨(1902-1983)
きさらぎや深雪に沈む林檎園 福田蓼汀 山火
くろもじに粉雪かかりてみづみづし 風生
こころ火の国にあそべる粉雪かな 三橋鷹女
ことことと小豆煮つむる細雪 加藤耕子
ことと音又も深雪にことと音 京極杞陽
この食を今受くる手の雪明り 宮武寒々 朱卓
こんにやくの一枚ありし深雪かな 龍岡晋
こゝろだに置処なき深雪哉 松岡青蘿
ごう~と深雪の底の機屋かな 皆吉爽雨
しなのぢや小田は粉雪に蕎麦畠 高井几董
しんしんと柱が細る深雪かな 栗生純夫
じぶ食へばたちまち加賀の雪景色 飴山實 『次の花』
だんだんに深雪の畑となりにけり 阿部みどり女
ちちははや畳にゆらぐ雪明り 金箱戈止夫
とんどの火小雪まじりを猛りけり 平田マサ子
どつと起る歓声にまた飛雪かな 金尾梅の門 古志の歌
ぬばたまの闇も深雪も祀らるる 西本一都 景色
のり出でて両岸迫る深雪かな 高濱年尾 年尾句集
はしか寺分教場も根雪来て 文挟夫佐恵 遠い橋
ひそかなる壺の吐息や雪明り 朝倉和江
ひとはふり塵ののりゐる深雪かな 銀漢 吉岡禅寺洞
ひめ始八重垣つくる深雪かな 増田龍雨
ひもすがら小雪ちらつく年用意 伊達外秋
ふきのたう根雪汚れて退りけり 高澤良一 素抱
ふるさとに東歌あり根雪ふむ 烏頭子
ふるさとの山は愚かや粉雪の中 飯田龍太 百戸の谿
ふるさとの町縫う根雪煤臭し 飴山實 『おりいぶ』
ふる雪やすでに深雪の一伽藍 橋本鶏二
ほつたりと鴉深雪の樹に暮るる 加藤知世子
また一人暮雪にかへりスキー脱ぐ 水原秋桜子
まろ~と白大嶽や峡深雪 松根東洋城
みそさざい暮雪に声をこぼし去る 中村 信一
みちつけて水の出でくる深雪沢 上田五千石 森林
みちのくの深雪の倉の寒造 遠藤梧逸
みちのくは根雪の上の土竜打 長谷川浪々子
みみづくの眠る梢に粉雪舞ふ 飯田龍太
むささびの飛翔影曳く雪月夜 村上喜代子
もう帰らん茶釜の下の秋の暮 雪色 選集「板東太郎」
もしもしにもしもし申す雪月夜 攝津幸彦 鹿々集
もちの花よべの小雪のほどこぼれ 山口青邨
やはらかくふくさ折つたり雪曇り 椎本才麿
やや酔ひて子の部屋を訪ふ細雪 鈴木鷹夫
やわらかに粉雪は舞うわたくしという昏がりの窓のむこうに 三枝浩樹
りくぞくと暮雪妻の手吾が手につつむ 細谷源二
わがまなぞこに語々据うるごと雪国人 赤城さかえ
わが母郷雪国の海蒼き町 大橋敦子 匂 玉
わが翳をわれがさびしみ雪明り 加倉井秋を 午後の窓
アドバルーンのない空がちらす 日暮の粉雪 吉岡禅寺洞
シグナルの青を夜の目雪国ヘ 野澤節子 花 季
スケートのきほへば飛雪また飛雪 大島民郎
バイブルに鞣し香のある深雪かな 石原八束 雁の目隠し
ブリユーゲルの雪景色あり喪服着る 仙田洋子 雲は王冠
ホーと木莵雪国の土匂ひ出づ 村越化石
ミサの歌こもり深雪の梁太し 宮津昭彦
ランプ明り雨戸に粉雪ささと触れ 福田蓼汀 秋風挽歌
レモン大の雫おちくる雪国晴れ 桜井博道 海上
レール若し貨車を雪国より発たす 磯貝碧蹄館 握手
一切を断ち雪国の重襖 鷲谷七菜子 花寂び
一力ののれんにかゝる粉雪かな 松根東洋城
一撞一礼飛雪に年を畏みぬ 森澄雄 鯉素
一文字に雁去る朝の雪曇 石塚友二 光塵
一文字の一葉はね居る深雪かな 西山泊雲 泊雲句集
一筋の深雪の径の追儺寺 梧桐 青吾
一頭の闇のいななく粉雪かな 河原枇杷男 閻浮提考
一飛雪ひゅうと川面をよぎりけり 高澤良一 鳩信
一飛雪挿す柊にとどまりぬ 阿波野青畝
三が日だるまになれば粉雪ふる 八木三日女 落葉期
三十路はや粉雪をいそぐ死化粧 渡辺恭子
三月のとぼそのひまの粉雪かな 石橋秀野
上*せいの燈明りわたり深雪かな 原石鼎 花影以後
不安ごとテレカ吸いこまれ雪国へ 吉田嘉彦
世に遠く浪の音する深雪かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
中坪は雪国づくり金魚飼ふ 水原秋櫻子
中空に起重機鳴れる深雪かな 米沢吾亦紅 童顔
中華街砕かれている雪明り 対馬康子 吾亦紅
五六尺積らぬうちはまだ小雪 佐藤五秀
人を消し忘れ帝都の深雪かな 五島高資
人形使お七に添いて深雪踏む 藍不二子
人月の弥陀ケ原なる雪景色 高木晴子 花 季
今は灯をつけよ筆擱く雪明り 篠田悌二郎
今降りて根雪となるか椿井坂 水田正秀
仕込樽撞木と古りぬ雪明り 石川桂郎 高蘆
信義なき世なりといふも雪明り 野村秋介
修二会いま飛雪浄土へ火を降らす 細見しゆこう
倶利伽羅は杉ばかりなる小雪かな 細川加賀
停止なき金魚粉雪に売られおる 寺田京子 日の鷹
傘の柄にどんど明りと雪明り 阿部みどり女
傘松と飼はるゝ鶴と深雪かな 野村喜舟 小石川
備前窯の系図かげろふ雪明り 殿村莵絲子 牡 丹
傷口に粉雪積れば血を噴かむ 石原八束 『白夜の旅人』
僧に遇ふのみの深雪の高野かな 岩崎照子
先ず目には東寺の塔や細雪 橋本夢道 『無類の妻』以後
兎ゆきしあとのみ散りて深雪なり 及川貞 夕焼
児らのうたふ鳥追ひ唄も伝承となりはてにけり杳き雪明り 大滝貞一
兵を送る松明あらはるゝ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
其の上は天領といふ根雪かな 梶山千鶴子
冬苺雪明り遠く遠くあり 加藤楸邨
冷奴のんどに不二の根雪かな 渡辺恭子
凍豆腐編む天窓の雪明り 加藤弥子
出家するごとし粉雪海へ海へ 櫂未知子 蒙古斑
刻々と手術は進む深雪かな 中田みづほ
剪定は寒にするもの深雪掘る 西本一都
匹夫も逸る飛雪の比叡はじまりぬ 高柳重信
医師あらでまた走る桑の雪明り 佐野青陽人 天の川
千人の日用そろふや雪明り 炭 太祇 太祇句選後篇
午ちかく雀なき出し深雪かな 原石鼎
卓々と声張る鵜群暮雪急 村上冬燕
卯の花の深雪咲きして美術館 本宮鼎三
去年の雪明るく消えぬ梅の花 横光利一
参籠の人の掻き居る深雪かな 比叡 野村泊月
反芻の牛の顔ある雪明り 依田明倫
叡山の小雪まじりの涅槃西風 西沢信生
口も手も深雪にゆるめでく廻し 宇佐美魚目 秋収冬蔵
古戦場信濃の粉雪唇にふる 西本一都 景色
叫びたい子等に深雪のつくり山 成田千空 地霊
吊橋の乾きあとさき深雪道 中戸川朝人
吊橋の深雪ふみしめ飛騨へ径 前田普羅 飛騨紬
向日葵に雪国の窓欝とあり 石原舟月 山鵲
吶喊鶴亀! 一万年ノ雪景色 夏石番矢 真空律
吾一語汝一語や夜の深雪 徳永山冬子
啼きしあと鶴は深雪の中あゆむ 安田 晃子
四方の深雪に山上湖温みそむ 松村蒼石 雁
地に皺の中のふるさと雪明り 矢島渚男 天衣
地の深雪宙の二階の白根澄む 飯田蛇笏 椿花集
地より湧く暮雪口中までとどく 吉田紫乃
地酒買ふ飛騨の暮雪に肩濡らし 長田等
埋もれて穴あく笹の深雪かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
堂押祭深雪を踏んで声しぼる 皆川盤水
境内や深雪晴れたる池の水 石原舟月 山鵲
壮行や深雪に犬のみ腰をおとし 中村草田男(1901-83)
外は飛雪帰る風呂敷かたく結ぶ 古沢太穂 古沢太穂句集
夜の書庫に『ユトリ口』返す雪明り 安住敦
夜の柱肥るは深雪くるならむ 稲島帚木
夜の飛雪獣皮店鋪の飾戸に 西島麥南
夜晴れて朝又降る深雪かな 虚子
夢の世のわが墓見ゆる雪明り 清水基吉
夢を見るまでモモンガ飛ばす雪明り 石川青狼
大いなる冬芽飛雪が岳を消す 及川貞 夕焼
大山の根雪もとれぬ羽子日和 皆吉爽雨
大松明の火の粉雪の粉鬼走る 松本 竜庵
大椿とりまいてゐる飛雪かな 山本洋子
天にまだある粉雪がちらちらす 御旅屋長一
天よりも夕映敏く深雪の面 野澤節子 黄 瀬
天井に駕籠つるしある深雪かな 龍岡晋
天壁を夕焼のぼる深雪かな 児玉南草
天臺の大寺にして深雪かな 橋本鶏二
天辺の飛雪ちからを抜くところ 赤松[けい]子 白毫
太陽が粉雪降らす稚魚放流 石川文子
太陽に吹き込む飛雪スキー場 中西碧秋
夫病む部屋の乳児が伸びする雪明り 加藤知世子 黄 炎
妻へ声送る 雪国の赤電話 伊丹三樹彦 樹冠
姨捨の深雪の底の炬燵婆 藤岡筑邨
娘等濯ぐ深雪の中の温泉の流 伊藤柏翠
嬬恋の里も深雪の中の頃 成瀬正とし 星月夜
子が寝て妻の水のむ雪明り 加藤楸邨
子等散つて深雪の学舎たそがるゝ 石橋辰之助 山暦
孤り炊ぐや根雪の上に煙をため 細谷源二
学僕の松を納むる暮雪かな 矢野奇遇
宝恵籠を出る裾こぼれ粉雪ちる 岡本圭岳
家裏は鬼の逃げ路の雪明り 林原耒井 蜩
宿木に飛雪張りつく峠越え 高澤良一 随笑
密月旅行雪国どこにゆきても雪 長田等
富山にて金澤おもふ深雪かな 松根東洋城
寐たはずの牛が顔だす雪月夜 本宮哲郎
寒明の飛雪をそらに妻と酌めり 森川暁水 淀
寒立馬遠く飛雪と砂防林 河野多希女 こころの鷹
寒菊に著せたる傘も深雪かな 橋本鶏二
寒鮒の籠も秤も粉雪かな 龍雨
寺領なる闇が深雪を照らしゐる 鳥居おさむ
小便所の油火にちる粉雪哉 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
小屋ぬちに田舟乾ける深雪かな 猿橋統流子
小柴門出入のしげき深雪かな 飯田蛇笏 山廬集
小説でなき「小雪」を螢火に 長谷川かな女 花 季
小雪の朱を極めたる実南天 富安風生
小雪の水清く田の一枚のなみ立ち 原田種茅 径
小雪ふる夕べは言葉こまやかに 柴田白葉女 花寂び 以後
小雪や古り枝垂れたる糸桜 飯田蛇笏 霊芝
小雪や実の紅の葉におよび 鷹羽狩行
小雪日々残るところには残り 川島彷徨子 榛の木
小雪舞ふ病者片目を開けてをり 石井保
少女等の髪の粉雪やスキー行 高野素十
少年帰る夕日の根雪蹴りながら 飴山實 『おりいぶ』
屋根替にまたも飛雪の奥丹波 薄木千代子
山の音深雪にしづむ永平寺 石原八束 『操守』
山下りし根雪に白き睡りかな 勝又木風雨
山二つ一双なせる深雪かな 橋本鶏二
山内の杉に吸はるゝ粉雪かな 野村喜舟 小石川
山吹や根雪の上の飛騨の径 普羅
山火事や乾の空の雪曇り 寺田寅彦
山荘に飯噴く匂ひ細雪 伊藤敬子
山門を掘り出してある深雪かな 清崎敏郎(1922-99)
岩温泉に老猿ばかり深雪晴 西本一都 景色
峡暮雪眼に赤きものあるはずなし 千代田葛彦 旅人木
崖の上に犬吠えたつる雪曇り 加藤楸邨
嶺々暁くるしづかな粉雪町に降る 野澤節子 花 季
川流れる雪国雪に柿残す 和知喜八 同齢
左義長の竹組む根雪踏み固め 吉澤卯一
左義長や雪国にして雪の上 松根東洋城
巫女の剣佩きたる雪月夜 飯田蛇笏 霊芝
市隠の愚責めぬく無燈雪明り 香西照雄 対話
帯かたき和服一生粉雪降る 野澤節子
帰りつく身をよす軒や雪明り 飯田蛇笏 山廬集
帰去来(かえりなんいざ)山国へ雪国へ 橋本榮治 越在
幌に降る雪明るけれ二の替 阿部みどり女 笹鳴
干網に日ざせば狂ふ粉雪かな 西山泊雲 泊雲句集
広重の亀山の図の深雪かな 伊藤敬子
庭におく深雪の石にみそさざい 飯田蛇笏 椿花集
廊灯しゆく婢に月明の深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
廬火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 『おりいぶ』
往診鞄暮雪に重し親鸞忌 伊与幽峰
御扉にふとも日のさす暮雪かな 日野草城
御松明の火の粉粉雪舞ひ上げぬ 川口黄秀
御涅槃のかたきまぶたや雪明り 普羅
御滅燈この世の果ての雪明り 沢木欣一
忘れ雪明日は別るゝ女とあり 松木 百枝
念ごろな飛脚過ゆく深雪かな 蕪村遺稿 冬
思はざる猟夫に逢へり根雪来て 太田 蓁樹
怠りの歳月を埋め飛雪なほ 小林康治 玄霜
急がねばならぬ暮雪の降りやうや 高澤良一 随笑
恋猫の通ふ深雪の紅殻戸 佐野美智
息切れし口を飛雪にあづけをり 林翔 和紙
恵那山ありと思ふ障子の雪明り 森田峠 避暑散歩
意に満たぬ日々に粉雪がちらつけリ 桂信子 花寂び 以後
愛のごとし深雪の底の水音は 小林康治 玄霜
我寐れば暗の仏の深雪かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
手ぶくろをはめつゝ急ぐ暮雪かな 及川貞 夕焼
手焙りや経師師の店雪明り 永井龍男
打解て落人圍ふ深雪かな 井上井月
托鉢の比良の暮雪に笠かざし 野田まこと
抱かれて指繊くなる雪明り 寺井谷子
掛路樹の飛雪にかなひ飾馬 阿部みどり女
故郷去る三日の暮雪ちらつく中 田中鬼骨
教会の塔めじるしの深雪かな 山本歩禅
文書くと机に向ふ雪景色 山口波津女 良人
旅人に我糧わかつ深雪哉 高井几董
旅痩の髭温泉に剃りぬ雪明り 河東碧梧桐
日本曹洞第一道場深雪晴(越前永平寺) 上村占魚 『橡の木』
日食や飛雪黒白こもごもに 栗生純夫 科野路
早も小雪かゝりし水や鴛鴦の沓 原石鼎 花影以後
早梅や深雪のあとの夜々の靄 龍雨
明治女は死顔緊まる雪明り 加藤知世子 花 季
星の空なほ頬をうつ粉雪あり 堀口星眠 火山灰の道
星見えて星の光りの粉雪降る 佐々木夕加子
時雨星またゝく嶺の雪明り 西島麦南 人音
暮雪しづかに壁の刺繍絵古びたり 有働亨 汐路
暮雪にてただ漠々の海苔簀原 林翔 和紙
暮雪にて燈火黄を増す貧しさよ 中島斌男
暮雪の嶺帽なき空を掟とす 安東次男 裏山
暮雪の軸雪村八十二歳筆 高澤良一 鳩信
暮雪ふる舞踏乙女もちりぢりに 百合山羽公 故園
暮雪やむ静けさ鴛鴦の羽づくろひ 内藤吐天
月光に深雪の創(きず)のかくれなし 川端茅舎(1897-1941)
月明に雪国のごと火山灰の島 板敷浩市
月読の梢をわたる深雪かな 加藤楸邨
望蜀の粉雪りんりん牛の角 寺田京子 日の鷹
木のもとに草青々と暮雪かな 原石鼎
杉玉にとまりては消ゆ粉雪かな 西村和子 かりそめならず
杉間より粉雪とび出す追儺寺 田中青濤
村まはりする花嫁御深雪晴 木村蕪城 寒泉
杣が家は障子一重の根雪かな 山口草堂
松島は薄雪平泉は深雪 田村了咲
松過ぎの月が散らせし小雪あり 永井龍男
林檎煮る雪国遠く来し林檎 三好潤子
枚岡の神代はしらず雪曇り 飯田蛇笏 山廬集
枯蔓にうす日あたりて深雪かな 清原枴童 枴童句集
柊を挿すやものみな雪明り 吉岡句城
柩出て畳八枚の雪国なり 古館曹人
柿の枝の影につまづく雪月夜 石川 桂郎
根雪かと見ればおそろし風の音 立花北枝
根雪ふみ新雪にぬれ旅の町 及川貞 夕焼
根雪まで灯届かず授乳室 中澤康人
根雪やさしひざまづきては湯浴みなす 寺田京子
根雪一枚めくれしや風光りしや 村越化石
根雪来る古墨に二象比肩之図 宇佐美魚目 秋収冬蔵
梅さくや赤土壁の小雪隠 広瀬惟然
梵天の法螺貝飛雪の天へ吹く 小林輝子
棹立てて越の深雪やみをつくし 水田正秀
椿姫(トラヴィアータ)の耳に囁く粉雪かな 仙田洋子 雲は王冠
楮皮剥ぐ人々に飛雪かな 吉武月二郎句集
楽書も訴へに満つ雪明り 中島斌男
榛の実が粉雪と語る去年今年 永峰久比古
槍の穂は雪をとどめず深雪晴 福田蓼汀 山火
樫の樹の静に動く粉雪かな 会津八一
橇下りる深雪に足を下したる 高濱年尾 年尾句集
橇帰る飛雪の底に町ありて 堀口星眠
橇用意して娼家ある深雪かな 森川暁水 黴
機音にゆきあたりたる深雪かな 清准一郎
橿鳥の鳴くばかりなる深雪かな 大橋櫻坡子 雨月
檜林のこし粉雪町を消し 長谷川かな女 花寂び
檻の鶴いとしみのぞく深雪かな 大場白水郎 散木集
此あたり深雪漸く人あらず 高濱年尾 年尾句集
歳暮の荷小雪に庇ひ抱きゆけり 岡本まち子
死なくば遠き雪国なかるべし 和田悟朗
死に顔が童女に変はる雪明り 笹本千賀子
死者は深雪に生者は檻に安らがむ 齋藤玄 『玄』
死顔のやすらかなるや雪明り 近藤一鴻
死顔の妻のかしづく深雪かな 石原八束 操守
残されて鯨の背骨のごと根雪 高澤良一 燕音
段差また段差根雪の温泉場 高澤良一 寒暑
母の間に母を見にゆく雪明り 日下部宵三
比叡よりの暮雪あそべり酢茎樽 山田ひろむ
毛蟹食べ雪国の夜のみづみづし 古賀まり子 緑の野以後
毬唄や十は深雪の十日町 大井戸辿
水を揉み落とす深雪の白竜頭 岡田日郎
水仙のほのかに匂ふ雪明り魚のたぐひが沈みて眠る 竹久夢二
水滴を待つ硯あり雪曇 石川桂郎 高蘆
水着緊むる雪国の肌まぎれなし 成田千空 地霊
池水にかさなりかゝる深雪哉 高井几董
汽罐車庫うすけぶりたつ深雪かな 宮武寒々 朱卓
沖ッ鳥山さしてとぶ雪月夜 金尾梅の門 古志の歌
泉岳寺小雪じゃんじゃん降りにけり 高澤良一 宿好
波の音低し雪国雪止んで 深見けん二
注連貰ひ宵の飛雪をかぶり行く 木村陽城
注連貰比良の飛雪を漕ぎもどる 羽田岳水
洩るる灯のそこより前後なき深雪 安東次男 裏山
海にも降り良寛母の墓粉雪 古沢太穂
海暗し暮雪いつまで降れば足る 有働亨 汐路
海波折れ地鳴り穹鳴り雪月夜 石原八束 『操守』
海苔に酌むわれらに飛雪やみては降る 森川暁水 淀
海苔掻に粉雪ちらつく手元かな 高橋淡路女 梶の葉
深雪なほ高まりゆくは堤らし 青葉三角草
深雪に入る犬の垂れ乳紅きかな 原子公平
深雪に高く継ぎ足す道しるべ 羽吹利夫
深雪より嘴をぬき鶴歩む 大澤ひろし
深雪中湖村一塊となり睡る 鷲谷七菜子 雨 月
深雪掻く家と家とをつながんと 西東三鬼
深雪晴わが影あをき虚空より 深谷雄大
深雪晴酢をうつ香り二階まで 中戸川朝人
深雪晴雁木表に馬具吊られ 松崎鉄之助
深雪晴非想非非想天までも 松本たかし(1906-56)
深雪見むと軒へのべたる手燭かな 原石鼎 花影以後
深雪谷芽木峻烈の枝を伸べ 辻田克巳
深雪踏み長持唄を通しけり 濱本 八郎
深雪道のけぞり合うてすれ違ふ 長尾虚風
深雪道来し方行方相似たり 中村草田男
深雪野の割れしところにさゝ流れ 高濱年尾 年尾句集
深雪野をいちにち歩き面痩せし 伊藤敬子
深雪雲割れて真つ青霊の道 加藤知世子 花 季
清水の小雪おっとり店構 高澤良一 燕音
温室の花買ひぬ信濃の深雪中 及川貞 夕焼
温泉上りの身の柔らかし深雪の夜 殿村莵絲子 牡 丹
温泉場雪掻き根雪ひっぺがし 高澤良一 寒暑
湖べりの田の小さしや雪曇り 古沢太穂 古沢太穂句集
湖守るは灯一つの深雪かな 正木不如丘 句歴不如丘
湯女どちと深雪月夜を一つ温泉に 松本たかし
湯女どちの肌の湯艶よ深雪宿 たかし
湯婆こぼす垣の暮雪となりにけり 飯田蛇笏 山廬集
湯帰りやあらおもしろの雪景色 尾崎紅葉
湯煙や根雪となりし山襖 石塚友二 光塵
満目の深雪の底に温泉あり 村上三良
漂泊のこゝろ羽黒の深雪踏む 桑田青虎
火の酒を雪国の遠き連隊へ 仁平勝 花盗人
火口丘女人飛雪を髪に挿す 山口誓子(1901-94)
灯して寝る癖の美帆にいま雪明かり 折笠美秋 君なら蝶に
灯とぼるは家あるあかし深雪原(越後柏崎) 上村占魚 『橡の木』
灯に粉雪にわとり眠るうしろ向き 飴山實 『おりいぶ』
灯を消して障子にはかに雪明り 上村占魚 鮎
灯入して妻生々と暮雪かな 杉山岳陽 晩婚
炉を離れ飯詰(いじこ)の中に雪明り 古舘曹人 樹下石上
炭竃に火のまはりたる暮雪かな 石原舟月 山鵲
炭鉱の灯のかたまれる深雪かな 戸沢寒子房
焔といふもののしづけき暮雪かな 鷲谷七菜子 花寂び
煤蟹や根雪明りに糶場うち 石川桂郎 高蘆
煮干粉が袋に湿り根雪減る 西村公鳳
燈を洩らし深雪の関ヶ原に住む 山口誓子 紅日
父方のふかき縁の雪国に 京極杞陽 くくたち下巻
父笑ふうしろ西日の雪景色 飯田龍太
片膝をついて深雪や凍死人 紅実
牧暮れて木木にいたゞく雪明り 中川宋淵 詩龕
独り碁や笹に粉雪のつもる日に 中 勘助
猪打ちの粉雪を蹴つてゆくなりし 細見綾子
猿酒に消ゆる小雪もありぬべし 秋元不死男
生きて来し分の根雪が二メートル 櫂未知子 貴族
産屋口深雪をかぶる村の墓地 つじ加代子
田ひばりや暮雪に声のまぎれずに 千代田葛彦 旅人木
疼きけり深雪に地震に疼きけり 西本一都
病みてより夜の粉雪の音が好き 森田愛子
病む母に山河深々たる暮雪 冨岡夜詩彦
瘤木割つて斧の歯こぼす雪明るし 内藤吐天 鳴海抄
発止ときし鶺鴒つぶて深雪原 鷲谷七菜子 銃身
発酵のつづく根雪もトンネルも 櫂未知子 貴族
白壁の日は水のよな深雪かな 佐野良太 樫
白樺のいっぽん交じる雪景色 高澤良一 ぱらりとせ
白樺の白極まりぬ雪月夜 古賀まり子
白樺林劇の如くに小雪舞ふ 岡田日郎
白河より遊行柳へ飛雪かな 太田土男
白魚や深雪のうへの夜の雨 龍岡晋
百枚の座布団のある雪明り 岸本尚毅 舜
監視塔四囲に深雪の収容所 安田北湖
目のあたり浴泉群女深雪晴 松本たかし
眠れずにゐて洛中の雪明り 石嶌岳
着ぶくれてあり雪国に誰よりも 茂里正治
瞬きて過去よりもどる細雪 福永耕二
石段が汀で尽きる雪景色 池田澄子
破魔矢得て飛雪の磴をひたに下る 正雄
祈祷師の家に深雪のかゝり人 森田峠 避暑散歩
祖父逝くやその拓きたる野は深雪 依田明倫
祝ぎごとの近づく音で小雪降る 都筑智子
稚子が合掌小雪の朝が来て 長谷川かな女 花 季
稽古日の花の出入りの雪明り 野澤節子 花 季
積る後は只散るまでの小雪哉 美角
穴のやうに唇あけ歩む粉雪に 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
空深く消え入る梢や雪月夜 西山泊雲 泊雲句集
竹に見て野を慕(なつ)かしむ深雪哉 羅父
箸一ぜん買ひに出でたる深雪かな 龍岡晋
簀囲ひに蒟蒻踏める深雪かな 野村喜舟 小石川
籾殻を根雪に三戸馬を飼ふ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
粉雪あがる夕日の彩がただよいて 古沢太穂 古沢太穂句集
粉雪いよゝ大降となりぬ蘆の花 西山泊雲 泊雲句集
粉雪が似合ふ黒衣の三姉妹 櫂未知子 貴族
粉雪しきりや子等各々の夢がたり 加藤知世子 黄 炎
粉雪に亡母来る音かと耳澄ます 黒江鏡湖
粉雪に灯して熊の腑分かな 小原啄葉
粉雪のすこしかかりし松をとる 田中冬二 麦ほこり
粉雪の句帳にたまる鶴を待ち 古舘曹人 砂の音
粉雪の塔あかしひとびと儚なき希ひ 細谷源二 砂金帯
粉雪の夜を怺へて鶏の爪 吉田紫乃
粉雪の散り来る迅し草の原 長谷川かな女 花寂び
粉雪の篝火に降る寒詣 長谷川 櫂
粉雪は灯に金箔となりて飛ぶ 吉田紫乃
粉雪ふるまでのやさしい潦 桂信子 黄 瀬
粉雪ふるマントの子等のまはりかな 加藤楸邨
粉雪ふる常はおもひのなき径 飯田龍太
粉雪やいづこ隙間を洩るゝ風 寺田寅彦
粉雪や恋の煮つまる村芝居 中山純子 沙 羅以後
粉雪や朝より熱き女の身 森澄雄
粉雪舞ふ成人の日の記念樹へ 福田甲子雄
粉雪舞ふ湖の大きさ掴めずに 杉本寛
粉雪舞ふ闇に寒天造りの燈 堤俳一佳
粕焼いて深雪の底の白髪童子 西村公鳳
糊をねる音きくきくと雪月夜 吉野義子
約束の最後の橋の雪明り 水野真由美
紙を漉く明治と同じ雪明り 長田等
細雪一茶の国の夕間暮 裕
細雪妻に言葉を待たれをり 石田波郷(1913-69)
細雪愛ふかければ歩をあはす 佐野まもる
細雪義理ゆえ別の義理を欠く 千島染太郎
細雪遊女の墓のまへうしろ 福島せいぎ
細雪過ぎゆくものとして極む 和田悟朗
細雪遠干潟かけ人恋ふも 小林康治 玄霜
細雪降る日の故郷の幾小径 村越化石 山國抄
綿のごときひかり暮雪の卒業生 桜井博道 海上
緋寒桜ほうと見とれて雪国びと 中山純子 沙 羅以後
縁下へ燈火がさせる深雪かな 佐野良太 樫
繋ぎてし我犬来るや雪明り 石島雉子郎
羚羊の跡ぞ深雪を巌頭へ 篠田悌二郎
老杉のしまけり飛雪止観の座 鷲谷七菜子 花寂び
聖鐘へ深雪明りの梯子とどく 宮津昭彦
聞き及ぶ高田瞽女訪ふ深雪中 松尾緑富
肥橇曳く遠深雪野に消えむため 小林康治 玄霜
肩出して眠る雪国育ちかな 鳥居美智子
背山より今かも飛雪寒牡丹 皆吉爽雨(1902-1983)
自転車の翳に鳩ゐる雪国よ 林桂 銅の時代
舞へる田鶴飛雪のときをおもはする 森川暁水 黴
舞踏室の灯洩れ薬師堂深雪かな 宮武寒々 朱卓
良寛の遊びし村の雪景色 太田土男
若水や映るものみな雪景色 吉武月二郎句集
茂吉の墓埋めて根雪となりにけり 三宅 句生
茨の枝に頬白ふくるゝ粉雪かな 西山泊雲 泊雲句集
茶を点つる声遠かりし暮雪光 加藤楸邨
茶を焙ず匂ひほのかに暮雪かな 岡本松浜 白菊
茶焙じて我夜果てなき深雪かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
莚帆に風筋見せる粉雪哉 井上井月
菩提樹の實のこぼれゐる深雪かな 河合凱夫 藤の実
葉ごもりて深雪のごとき牡丹かな 橋本鶏二
葱洗ふや月ほのぼのと深雪竹 飯田蛇笏 山廬集
蒼海に果つ雪国の雪岬 大橋敦子 匂 玉
蕎麦刈つて富士は根雪となりにけり 三上良朗
蕗隠しに轡かかりて暮雪ふる 飯田蛇笏
薄雪の炭火深雪の炭団かな 小杉余子 余子句選
藁負うて田道こかしぬ雪曇 金尾梅の門 古志の歌
蝦夷見むと深雪に窪む長靴は 小林康治 玄霜
行きゆきて深雪の利根の船に逢ふ 加藤秋邨 寒雷
行年の深雪の音に子と団欒 久米正雄 返り花
衾被て木魚の眠る深雪かな 鈴木貞雄
裸参りの一歩一歩や根雪鳴る 藤島かの子
西方も粉雪の眉毛充満す 永田耕衣 冷位
見て居れば小雪の中の玉霰 高木晴子 晴居
見の遠き深雪の鶴になぜ泣くや 齋藤玄 『無畔』
見送り絵小雪舞はせて雪をんな 高澤良一 寒暑
観能の灯の晝ふかき深雪かな 西島麥南
訥々と雪国よりの雪見舞 島田まつ子
詣りぬれば釣鐘蒼き深雪かな 野村喜舟 小石川
誰が継ぐとなき漢籍の雪明り 佐野良太 樫
谷々の流れとまりし深雪かな 岡本松浜 白菊
谷の水くゞもりひゞく深雪かな 比叡 野村泊月
谷杉の鬱蒼真白深雪かな 松根東洋城
赤ちやんの通つた匂い深雪晴れ 坪内稔典
赤海老のさしみ縮めり深雪の夜 殿村莵絲子 牡 丹
起きてゐる咳や深雪となりにけり 石橋秀野
踏みゆきて佐渡の深雪の能舞台 坂井建
踏切の灯を見る窓の深雪かな 飯田蛇笏 霊芝
蹇に縋り寝の子よ雪明り 小林康治 玄霜
蹇や深雪ゆく子を励ましつ 小林康治 玄霜
身を伏せて郷関はあり細雪 竹本健司
車窓に迫り来深雪兎の走りし跡 赤城さかえ句集
軍港の兵の愁ひに深雪晴れ 飯田蛇笏 霊芝
軒氷柱雪国の花舗暗かりき 古賀まり子
転轍の孤影に飛雪集中す 三谷昭 獣身
農具市深雪を踏みて固めけり 前田普羅 新訂普羅句集
近づく雪国 座席で躍るハートのA 花谷和子
追れ行人〔の〕うしろや雪明り 一茶 ■寛政年間
遅月にふりつもりたる深雪かな 飯田蛇笏 霊芝
道傍に海あふれたる暮雪かな 石田波郷
遠き灯を飛雪がうばふ羽越線 耕二
遠ち方の鶏音に覚めし深雪かな 木歩句集 富田木歩
遮断機をくぐる雪国かも知れず 対馬康子 純情
遺されて母が雪踏む雪明り 飯田龍太
酔へば出るアリランの唄粉雪降る 石川文子
里へ出る鹿の背高し雪明り 炭 太祇 太祇句選
野の果まで雪明るくて道あやまつ 津田清子 礼 拝
金箔師/鯉師の/深雪暮かな 林桂 銀の蝉
金色堂飛雪にひらく淑気かな 佐藤国夫
金襴の軸のさがれる深雪宿 京極杞陽 くくたち下巻
釘店の路地に住みても深雪かな 野村喜舟
針供養宮戸座裏の深雪かな 増田龍雨 龍雨句集
釣堀の葭簀囲ひの深雪かな 龍岡晋
銀日輪飛雪を凌ぎゆくものに 成田千空 地霊
門しめて雲衲去りし暮雪かな 河野静雲 閻魔
門をゆくひと物いはぬ深雪かな 会津八一
開かぬ戸もはづれゐる戸も深雪宿 皆吉爽雨
開山の昔を今や深雪寺 尾崎迷堂 孤輪
間欠泉のごときわが詩粉雪降る 仙田洋子 雲は王冠
闘うて鷹のえぐりし深雪なり 村越化石
降る雪は雪国の財際限なく 品川鈴子
降れ粉雪後段は庭の杉楊枝 元求 選集「板東太郎」
除夜の鐘かすかに聞え深雪かな 清原枴童 枴童句集
隠沼に消えし深雪のけもの跡 山田弘子
隧道の中も勾配雪国は 茨木和生 木の國
雁たちて暮雪に翅音のこりたる 野澤節子 『八朶集』
雛の日の都うづめし深雪かな 鈴木花蓑句集
離りて貧し深雪の中の翌檜 小林康治 四季貧窮
雨のち小雪青銅の十二使徒 対馬康子 吾亦紅
雪の道深雪の里を遠さかな 東洋城千句
雪の音絶えて深雪となりゐたり 橋本冬樹
雪を黄に染むる燈ありて雪国よ 宮津昭彦
雪卸し暮れており立つ深雪かな 前田普羅 飛騨紬
雪吊の千切れて垂れし深雪かな 鈴木貞雄
雪国にあらためて白水芭蕉 嶋田摩耶子
雪国にいて白鳥は菓子の白 和知喜八 同齢
雪国にこの空の青餅の肌 成田千空
雪国にちかづく田水うつろなり 松村蒼石 雁
雪国にテレビ忘るる四日まり 石川桂郎 高蘆
雪国に住みつくと決め転職す 松尾緑富
雪国に住みて造花の手内職 成瀬正とし 星月夜
雪国に六の花ふりはじめたり 京極杞陽(きよう)(1908-81)
雪国に嫁ぎ著なれしちやん~こ 三輪きぬゑ
雪国に嫁ぐ雪見に招かれて 長谷川回天
雪国に子を生んでこの深まなざし 森澄雄
雪国に早出しの雛ありにけり 下田稔
雪国に来て雪をみずクリスマス 久保田万太郎 流寓抄
雪国に生れし妻の雪卸し 橋詰 一石
雪国に花鳥づくしの婚衣裳 筑紫磐井
雪国に雪よみがへり急ぎ降る 三橋敏雄 眞神
雪国に雪解時ありめざましき 伊藤柏翠
雪国のありとも見えず松飾 龍胆 長谷川かな女
雪国のさびしき鎧のプロパンガス 松本恭子 二つのレモン 以後
雪国のひかりを紙に漉き込める 三森鉄治
雪国のぽとと点りて暗くなる 長谷川双魚 『ひとつとや』
雪国のわつと芽吹ける雑木山 坂本山秀朗
雪国の人住むところ雪汚れ 品川鈴子
雪国の余生暮らしや根深汁 山本 きつの
雪国の大蕣の咲にけり 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
雪国の子にクラークの言葉あり 山本歩禅
雪国の子に雪の降る七五三 小川里風
雪国の日はあはあはし湖舟ゆく 飯田蛇笏 山廬集
雪国の晴こそ深し臼の市 成田千空 地霊
雪国の朝はすがしや納豆汁 今城余白
雪国の桜の花は小粒哉 正岡子規
雪国の樹の雪は夜に降りし雪 右城暮石 上下
雪国の汽車を歩きて座席探す 右城暮石
雪国の海きらきらと卒業す 高木弘子
雪国の父の大屋根母の墓 山田弘子
雪国の産屋そのまゝ納屋代り 森田峠 避暑散歩
雪国の田は水びたし農具市 橘川まもる
雪国の童等の遊びのはや暮るる 松村蒼石 寒鶯抄
雪国の納屋もろこしの黄を吊す 森田峠 三角屋根
雪国の細月の縁朱に燃え 上村占魚 球磨
雪国の苔の青さに一葉落つ 大島民郎
雪国の萩は紅濃し土濡れて 松村蒼石 雁
雪国の蔵座敷見ゆ穂麦中 阿部みどり女
雪国の言葉の母に夫奪はる 中嶋秀子
雪国の闇に置きたる枕かな 黒田杏子 水の扉
雪国の雪が減らずに日の暮るゝ 右城暮石 上下
雪国の雪のない田をよぎる死者 斎藤白砂
雪国の雪のやみたる北斗かな 大峯あきら
雪国の雪の話や暖炉もゆ 宮本 とよ
雪国の雪降る音の無音なる 新谷ひろし
雪国の駅は洞窟目が並び 三谷昭 獣身
雪国の駅や目鼻が汽車を待つ 三谷昭 獣身
雪国の鱈の目玉もねぶり喰ぶ 中山純子 沙 羅以後
雪国はいつも目の前雪が降る 平畑静塔
雪国へ家庭教師を帰しけり 山田弘子
雪国へ帰る人あり冬籠 田福
雪国へ苛性ソーダを運ぶ貨車 五島高資
雪国へ貨車は青菜を積み込める 館岡沙緻
雪国やけものの仮面あれば足る 対馬康子 吾亦紅
雪国やしづくのごとき夜と対す 櫻井博道
雪国や人若やぎて盲縞 橋石 和栲
雪国や向ふの国の日がとどく 永田耕一郎 方途
雪国や土間の小すみの葱畠 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雪国や夜はともしび蜜柑色 不破博
雪国や日の漂へば人の声 磯貝碧蹄館
雪国や月照りてまた白朝日 和知喜八 同齢
雪国や糧たのもしき小家がち 蕪村遺稿 冬
雪国や膕に透く一静脈 林 桂
雪国や青日輪の炎垂れ 近藤一鴻
雪国を出てすぐ避寒心かな 安原葉
雪国を訪はん土産は何よけん 成瀬正とし 星月夜
雪墜ちて深雪ににぶき音うまる 桂信子 黄 炎
雪折の竹もうもれし深雪かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
雪明かり家来の雉子などあれよ 佐々木六戈
雪明りあり降る雪の見ゆるほど 汀子
雪明りしつついつしか暮れにけり 田中冬二 俳句拾遺
雪明りしてまだ暗し雪卸し 瀬戸 十字
雪明りして井戸神の鏡餅 赤石明子
雪明りして岩風呂の岩の相 高澤良一 寒暑
雪明りすると思はねばしてをらず 加倉井秋を 午後の窓
雪明りたよりに雪を卸しをり 三宅句生
雪明りには池くらし山あかるし 及川貞 夕焼
雪明りの街燈が灯りそめた シヤツと雑草 栗林一石路
雪明りゆらりとむかし近づきぬ 堤白雨
雪明りより炉あかりに杣戻る 細谷鳩舎
雪明り一切経を蔵したる 高野素十
雪明り仏となりしうつしゑに 阿部みどり女
雪明り及びて波のふくれくる 奥田智久
雪明り夜明けの色の加はりし 奥田智久
雪明り家来の雉子など現れよ 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
雪明り星幽かにも遙かにも 奥田智久
雪明り橋を壊した跡なのです 小川双々子
雪明り死者は夢見ることありや 折笠美秋 死出の衣は
雪明り母なき部屋にははのこゑ 日下部宵三
雪明り毛蚕といへるは糸ほどか 宇佐美魚目 天地存問
雪明り疲れやすきはランプの炎 桜井博道 海上
雪明り紅差し指の老いゆけり 文挟夫佐恵 遠い橋
雪明り蔀戸すこし埃りかな 八木林之介 青霞集
雪明り虚ろの姉に添ひ寝して 中村苑子
雪明り返へらぬ人に閉しけり 前田普羅
雪明り闘病冴えの眠る顔 加藤知世子 花寂び
雪景色だんだん深く次の駅 今井千鶴子
雪曇りして一日の表裏見す 原裕 青垣
雪曇り身の上を啼く鴉かな 内藤丈草
雪曇身の上を啼く烏かな 丈草
雪月夜塗椀つぎの世の音す 川村静子
雪月夜師の影踏まず離れずに つじ加代子
雪月夜影に首ある安堵かな 吉田紫乃
雪月夜斜の木影々々かな 東洋城千句
雪月夜歩きてつくる五十路の顔 加藤知世子 花寂び
雪月夜猟場の割符拾ひけり 西山泊雲 泊雲句集
雪月夜蘆間の寝鳥しづまりぬ 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪月夜裸婦の屍伏し~て 渡邊水巴
雪片のつれ立ちてくる深雪かな 高野素十
雪眼鏡かけて雪国熟知せる 堀米秋良
雪雀の周囲をのこし降る暮雪 長谷川かな女 花寂び
雷鳥や霧海の底の雪明り 大森桐明
霜除にさや~と来ては粉雪やみぬ 青峰集 島田青峰
霧行くや樅は深雪に潰えつゝ 相馬遷子 山国
青邨忌よの字橋より粉雪かな 小原啄葉
青頸のわが娘ふるさとは悲の雪国 武田伸一
非目前深雪の杉の立話 和知喜八 同齢
音のない粉雪のやうに死は来るか 渡辺延子
顔あげて髪は粉雪に濡るるまま 仙田洋子 橋のあなたに
風の小雪ガラスの城に嬰の微笑 柴田白葉女 花寂び 以後
風の道を中ぞらにみる雪月夜 石原八束 空の渚
風呂にゐて胸のときめく暮雪かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
風呂吹や小窓を圧す雪曇 正岡子規
風神の膝に力の雪明り 古館曹人
飄客の束ね髪なり雪景色 小澤實(1956-)
飛び来ては白馬の暮雪顔へ憑く 野澤節子 遠い橋
飛花か飛雪か棘棘(いらいら)として立つ柱 夏石番矢 猟常記
飛雪あかるし焼酎にて乾杯 宮津昭彦
飛雪いよいよはげし吾れのみ見のこりて 野澤節子 黄 瀬
飛雪くる海の先端海に橋 対馬康子 吾亦紅
飛雪のホーム軍手という語なお生きいる 古沢太穂 古沢太穂句集
飛雪の町 さまよう 朝から珈琲飢餓 伊丹三樹彦 覊旅句集三部作 磁針彷徨
飛雪はや目鼻もあらず喪へ急ぐ 小林康治 『華髪』
飛雪われに来るや睫毛を濡さむと 細谷源二 砂金帯
飛雪来ることのしばしば寒牡丹 細見綾子 天然の風
飛騨人や深雪の上を道案内 前田普羅 飛騨紬
飾り臼南の窓の雪明り 村上一央
駅にだけ人をり深雪村眠る 嶋田摩耶子
駅凍てゝ曠野につゞく深雪かな 前田普羅 飛騨紬
駅暮るる水が飛雪を吸いつくし 三谷昭 獣身
駅暮雪エロ写真売にささやかる 有働亨 汐路
高台をゆき次ぐを見る雪曇り 飯田蛇笏 椿花集
鬼の身に虚ありなむ雪明り 沼尻巳津子
鬼を視たるが/義民はじめや/飛雪の/両手 林桂 黄昏の薔薇 抄
鮎の炉の火かげとゞかず深雪の戸 前田普羅 飛騨紬
鮒煮えてくれば粉雪となりにけり 桂信子 黄 炎
鯨鳴く水族館を出て小雪 対馬康子 愛国
鱈船がゆき昏れし洲の雪明り 村上しゅら
鳥が去り光がのこる深雪晴 柴田白葉女 雨 月
鳥とぶや深雪がかくす飛騨の国 前田普羅(1884-1954)
鳥の嘴に赤き実のなき深雪かな 野村喜舟 小石川
鳥声や出窓みづから雪明り 石川桂郎 四温
鳥落ちず深雪がかくす飛騨の国 前田普羅
鳶覚めて杉に粉雪の厚帷 西村公鳳
鴨もろく飛雪に遠く撃たれけり 蛇笏
鵯啼いて堆の小雪となりにけり 石原八束 『秋風琴』
鶏が踏む根雪が蒼しガリレオ忌 飴山實 『おりいぶ』
鶏たかく榎の日に飛べる深雪かな 飯田蛇笏 霊芝
麦の芽のうごかぬ程に小雪ちる 蝶夢
黒豆を煮んか粉雪が降つて来る 細見綾子 花寂び
あめつちのねむりもやらで雪あかり 河野美奇
しくしくと肺のあたりの雪あかり 増田まさみ
まゆ玉やにはかにけさの雪ぐもり 久保田万太郎 流寓抄
わが部屋に馬の影する雪ぐもり 高田律子
中庸を愛する国の雪あかり 櫂未知子 貴族
交み椋鳥宙で分れて雪ぐもり 岸田稚魚 筍流し
夜咄の灯あかり軒の雪あかり 古賀まり子
常照光寺石階を踏む雪あかり 加藤耕子
括り桑一枝撥ねたる雪ぐもり 鷲谷七菜子 雨 月
枯蘆や浅間ヶ嶽の雪ぐもり 村上鬼城
水鳴りを一句に封ず雪あかり 柴田南海子
湖際のもの横流れ雪ぐもり 桂信子 初夏
烏丸の路地の奥まで雪あかり 橋本榮治 麦生
狐鳴く岡の昼間や雪ぐもり 内藤丈草
空襲の夜明けて窓の雪あかり 京極杞陽 くくたち下巻
遺されて母が雪踏む雪あかり 飯田龍太
阿片(モヒ)をさす襤褸たくりぬ雪あかり 神崎縷々
雪あかり妻睡りをるにはあらず 杉山岳陽 晩婚
雪あかり胸にわきくるロシヤ文字 古沢太穂 古沢太穂句集
雪あかり酸素外れてゐたりけり 石田あき子 見舞籠
雪ぐもり火星はもはや高からむ 山口誓子
鮎焼きし大炉の灰に雪あかり 前田普羅 飛騨紬
あめつちのねむりもやらで雪あかり 河野美奇
しくしくと肺のあたりの雪あかり 増田まさみ
まゆ玉やにはかにけさの雪ぐもり 久保田万太郎 流寓抄
わが部屋に馬の影する雪ぐもり 高田律子
中庸を愛する国の雪あかり 櫂未知子 貴族
交み椋鳥宙で分れて雪ぐもり 岸田稚魚 筍流し
夜咄の灯あかり軒の雪あかり 古賀まり子
常照光寺石階を踏む雪あかり 加藤耕子
括り桑一枝撥ねたる雪ぐもり 鷲谷七菜子 雨 月
枯蘆や浅間ヶ嶽の雪ぐもり 村上鬼城
水鳴りを一句に封ず雪あかり 柴田南海子
湖際のもの横流れ雪ぐもり 桂信子 初夏
烏丸の路地の奥まで雪あかり 橋本榮治 麦生
狐鳴く岡の昼間や雪ぐもり 内藤丈草
空襲の夜明けて窓の雪あかり 京極杞陽 くくたち下巻
遺されて母が雪踏む雪あかり 飯田龍太
阿片(モヒ)をさす襤褸たくりぬ雪あかり 神崎縷々
雪あかり妻睡りをるにはあらず 杉山岳陽 晩婚
雪あかり胸にわきくるロシヤ文字 古沢太穂 古沢太穂句集
雪あかり酸素外れてゐたりけり 石田あき子 見舞籠
雪ぐもり火星はもはや高からむ 山口誓子
鮎焼きし大炉の灰に雪あかり 前田普羅 飛騨紬
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏
寝て覚めて雪の声聞く真暗がり 菖蒲あや
晩年や林に積みし雪の声 小林康治
更けし灯に睫毛影なす雪の声 篠田悌二郎
篁の夜の査けくて雪の声 臼田亞浪 定本亜浪句集
野の仏と語る嵯峨野の雪の声 橋本夢道 『無類の妻』以後
雪のこゑ老来ひしと四方より 飯田蛇笏 春蘭
雪の声珈琲は重厚紅茶は軽快 日野草城
雪の声聞く耳欲しき日暮なり 太田土男
雪踏めば胎の子も聞く雪の声 佐藤美恵子
駅の名の峠と呼ぶや雪の声 寅彦 (羽越紀行中)
鰤来るや夜を限りなき雪の声 小田 司
鶯よいつをむかしの雪の声 上島鬼貫
五柳先生六花七言絶句之天 加藤郁乎
六花には育たぬままに降つてきぬ 橋本末子
六花めく犬の足跡雪の墓地 高澤良一 素抱
六花清く崩れし掌 稲畑廣太郎
日盛りの元湯六花の六角堂 高澤良一 宿好
稚児舞の大地踏み鳴る六花かな 野沢節子 八朶集
餅の香に在りて捉へつ六花の音 林原耒井 蜩
わが年齢おそれ三月雪の花 寺田京子 日の鷹
手とればマッフに雪の花ぞ散る 岡野知十
父が倒れぬ樹々に三月雪の花 寺田京子 日の鷹
磨ぎなほす鏡も清し雪の花 松尾芭蕉

馬の尾に雪の花ちる山路かな 支考
スキー了へ積雪標のやや沈めり 大島民郎
初日かげ積雪の牙に潮なぎぬ 飯田蛇笏 春蘭
塗り直す積雪標やまゆみの実 木村美保子
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子
夜の積雪躍りて踏みて子をやどす 八木三日女 紅 茸
屋を出て積雪の暾にあくび出づ 飯田蛇笏 椿花集
水際まで尺の積雪浮寝鳥 古賀まり子
積雪が映ゆ硝子戸の全面に 右城暮石 上下
積雪にすぐ乗るスキー倒しけり 長谷川かな女 雨 月
積雪に夕空碧み雲の風 飯田蛇笏 霊芝
積雪に明暗ありぬ松の上 宇多喜代子 象
積雪に月さしわたる年の夜 飯田蛇笏
積雪に飛びこむ雪の礫かな 徳永山冬子
積雪の中に鳩鳴く枝のあり 長谷川かな女 雨 月
積雪の牙にうつ浪や犬橇駛す 飯田蛇笏 春蘭
積雪の碧落藪をそめにけり 松村蒼石 雪
積雪の籠城や女を人質に 藤森成吉 天翔ける
積雪の鬱たりといふ他はなく 山口誓子
積雪や埋葬をはる日の光り 飯田蛇笏 霊芝
積雪計コスモスに埋れありにけり 久米正雄 返り花
英霊となり積雪を踏み来しなり 石橋辰之助 山暦
ひたすらに積る雪なり茂吉の忌 相馬遷子 山河
ものうりの鈴の絶えまに積る雪 『定本石橋秀野句文集』
水青し土橋の上に積る雪 夏目漱石 明治二十九年
笹鳴やつくばひかけて積る雪 軽部烏帽子 [しどみ]の花
身をゆすりゐてかなしみの積る雪 石原八束 『藍微塵』
降り積る雪にさめゆく火事の空 太田鴻村 穂国
降り積る雪より白し波の花 浦幸雪
雪像に積る雪掃き雪まつり 内田柳影
*えりの水ゆふつづさして雪積みぬ 石原舟月 山鵲
いつしかに元日の雪積りけり 岩田潔
うさぎ径谿のむこうも雪積り 和知喜八 同齢
かまくらの肩まろやかに雪積る 館岡沙緻
きぬぎぬを別れ来しかばふり返る北山の嶺にはつか雪積む 中野照子
この里や雪積む上の雪もよひ 小杉余子 余子句選
どの木にも雪積りをる読書かな 辻允子
ぼた山に雪積らせて街眠る 金箱戈止夫
むさしのの雪積む松を納めけり 渡辺恭子
よき眠りなりし雪積む二重窓 有働亨 汐路
わが墓に雪積む景を見にゆくか 安住敦
一夜どかと雪積み森を鳶出でず 西村公鳳
一夜雪積もり遠くへ来しごとし 川村紫陽
下京や雪積む上の夜の雨 凡兆
中学生神語りおり雪積む藁 金子兜太 少年/生長
二つづつ川の灯黄なり雪積めり 長谷川かな女
人恋ふる歌に雪積む林檎の木 原裕 青垣
人泊めて雪積もらする蚕屋二階 下田稔
今し方までの雪積み寒牡丹 三村純也
伐り出しの竹に雪積む利休の忌 岡井省二
休日や地を癒やすごと雪積り 川村紫陽
切口に春の雪積む峯薬師 古舘曹人 砂の音
初市や抱き寐の子にも雪積り 田川飛旅子
初手水邸内は雪積んで靄 京極杞陽
塚と化し雪積むままの氷下魚釣 原柯城
夜の船は雪降り出でて雪積みぬ 細谷源二 鐵
夜雪積む雪女郎こそ恐ろしや 小林康治 玄霜
大露頭赭くてそこは雪積まず 山口誓子 方位
奥山に雪積るらし白湯うまし 村越化石
孤独なるブロンズに夜の雪積り 山本歩禅
山の湯に雪積む頭並べたる 矢島渚男
山国の小さき山も雪積る 辻田克巳
常磐木にして降るだけの雪積る 津田清子
平橋に続き反橋雪積める 高澤良一 さざなみやっこ
心臓の音のとっくん雪積む夜 高澤良一 随笑
拒みゐし雪積みはじむ海の芥 鷹羽狩行 月歩抄
故障なほりたる後もバスに雪積る 津田清子
旧正の雪積んで谷あらたまる 宮津昭彦
暗黙の干柿美濃は雪積まむ 殿村莵絲子 雨 月
暮れて蒼し雪積む嶺も雪無きも 相馬遷子 雪嶺
村貧しければ雪積むほかはなし 岸風三樓
束の間に雪積む歌会始かな 盛川真二
東門の奥は雪積む荒磯道 猿橋統流子
枕均して雪積む音を聞いてをり 林菊枝
梅林に雪積む彼岸詣でかな 浦野栄一
母危篤一冬一の雪積むに 高井北杜
流氷の上に雪積む終身刑 中村路子
湖に向く雪積むポーチ閉ざしあり 高木晴子 花 季
煤煙のしづかに遠し雪積めば 千代田葛彦 旅人木
片側は雪積む屋根や春の月 鳴雪句集 内藤鳴雪
猿は昔のこゑを遺せり雪積む夜 松村蒼石 雪
猿も山も雪積むことをうべなへり 松村蒼石 雪
秩父路の臍や雪積む観世音 原裕 青垣
継体天皇大頭なり雪積もり 松山足羽
老らくの恋かな春の雪積る 津田清子
聖燭のごとし雪積む枯芙蓉 堀 葦男
藁焼きし灰に雪積み小鳥来る 野見山ひふみ
蜩のいまは雪積む地の奥に 平井照敏 天上大風
豊胸の聖母どこより雪積もる 対馬康子 純情
遠き鴨蜑の早寝に雪積り 林翔 和紙
金髪に染め帰途は黒恋い雪積む樹々 寺田京子 日の鷹
鎌倉に春の雪積む一夜かな 松本たかし
雑木林に雪積む二人の棺のように 金子兜太 暗緑地誌
雪に雪積みて神山神に近く 杉本寛
雪積まぬひと処あり藪柑子 井口さだお
雪積みしけはひにしらむ屏風かな 金尾梅の門 古志の歌
雪積みしところより海更に退く 山口誓子 構橋
雪積みて巨き砂丘は天にあり 森川暁水 淀
雪積みて深く撓みしリラの枝ああ祖国とふ遠国ありし 安永蕗子
雪積みて闇しろがねに奥の院 つじ加代子
雪積みぬ夢のかよひ路無きまでに 京極杞陽
雪積むに似たる安心得たりけり 三田きえ子
雪積むは深きいたはり積みにけり 齋藤玄 『雁道』
雪積むやしづかにつつむこころの喪 桂信子 黄 炎
雪積むや夜を日に三河花祭 岡島礁雨
雪積むや恋しくて猫背ひどくなりぬ 池田澄子
雪積むや畦にころげし筌いくつ 木村蕪城 寒泉
雪積むを見てゐる甕のゆめうつつ 斎藤玄 雁道
雪積む夜夫待つごとく刻過ごす 横山房子
雪積む家々人が居るとは限らない 池田澄子(1936-)
雪積む貨車酔い痴れた手は妻の肩 金子兜太 少年/生長
雪積めりよべの熟睡の深さほど 相馬遷子 雪嶺
雪積もらむはからずも鳴る蚊帳の鐶 千代田葛彦 旅人木
雪積りつまらぬことの気になりぬ 加倉井秋を 午後の窓
雪積ることと歩幅が合ふ気がす 加倉井秋を 午後の窓
雪積るしのび返しや夕霧忌 三宅応人
雪積る中滑らかな水車の軸 津田清子 礼 拝
雪積る凶作の田を忘れよと 津田清子 二人称
雪積る夢殿次第に花型に 加藤知世子 花寂び
雪積る家へ妻ひとり置いて出る 加倉井秋を
雪積んで一丁の斧しづまれり 清水径子
雪積んで京のお寺の庭に似て 上村占魚 球磨
雪積んで田とけじめなき藁塚の裾 猿橋統流子
雪積んで陣屋米蔵ねずこ葺 高澤良一 随笑
雪詠みて雪積む句碑でありにけり 藤浦昭代
霏々として雪積みつるむ鶏女夫 前田普羅 飛騨紬
静かなる夜は雪積みてゆくらしく 高木晴子 晴居
音もなく春の雪積む蹶速塚 伊藤いと子
あかつきに雪降りし山神還る 藤田湘子
あかときの雪降るまえの寂かさとおもいて卓にともる燈を消す 三枝浩樹
あく取りて捨てて雪降る日なりけり 如月真菜
いつ見ても婆に雪山雪降りをり 中山純子 沙羅
うつすらと日の在り処見え雪降れり 徳永山冬子
えんぶりの笛いきいきと雪降らす 村上しゆら
おだやかに腹のへりゆく雪降りぬ 冬の土宮林菫哉
おもかげの雪降るなかの捨聖 鈴木貞雄
さめざめと夕べ雪降る川流れ 松村蒼石 雁
さんさんと雪降るなかのものわすれ 鷲谷七菜子 花寂び
しろたへの雪降るははの墓掃けり 佐川広治
しんしんと雪降り遠き母屋かな 深川正一郎
しんしんと雪降る木曾に安らげり 中村苑子
しんしんと雪降る空に鳶の笛 川端茅舎(1897-1941)
しんねりと残れる鴨に雪降り出す 山田みづえ
その上にまたその上に雪降れり 秋山未踏
たふとさや雪降らぬ日も蓑と笠 松尾芭蕉
ためらひてゐし輪中雲雪降らす 近藤一鴻
どんど火のうしろ雪降る夜の川 柯舟
なほも雪の降る市街戦にならう雪降る 秋山秋紅蓼
なまぐさき眠りの蛇を雪降りつつみ 高柳重信
ねむれざる瞼の裏に雪降らす 楸邨
ひとしきり雪降る川の破れ靴 中拓夫 愛鷹
ひと遠く雪降りつもる雪の上 柴田白葉女 雨 月
ふところに鳴る菓子袋雪降れり 長谷川双魚 風形
ふるさとの酔容酔語雪降りぬ 橋本榮治 麦生
ほしいまま亡師春雪降らしめき 岸田稚魚 筍流し
ほの赤くけむる雪降り没日刻 宮津昭彦
まなこ閉づればとこしへに立つ一本のさあをき竹の内に雪降る 永井陽子
まれによき夢みし朝や雪降りつつ 清水基吉
みちのくに雪降るかぎり雪女郎 木村滄雨
みちのくの雪降る町の夜鷹蕎麦 山口青邨
みちのくの雪降る街の桜餅 長内万吟子
みどりごのいまだ見ぬ雪降るを待つ 佐野美智
みどり子に初めての雪降りいだす 有働亨 汐路
み雪降る尾のある人の住む山に 角川春樹
もう一度雪降つてから鴨帰す 矢島渚男
ものの芽の雪降るときも旺んなり 伊藤東魚
わかさぎの身ごもるに雪降りつのる 千代田葛彦
わが葬列夢に雪降る仮借なし 小林康治 玄霜
われを見る深きまなざし雪降るなか 鷲谷七菜子
をかしさはすこし雪降る子の日かな 松根東洋城
イザナミの流し目強き日必ず雪降る 夏石番矢 神々のフーガ
カマンベール東京に雪降つてをり 多田睦子
クリオネに負けし天女が雪降らす 榎本利孝
クリスマス礼拝つひに雪降らず 上田日差子
ゴンドラ行く雪降る宙は雪に満ち 有働 亨
スキーに足りぬ雪降り薯らが囁くよ 寺田京子 日の鷹
スキー買へば巷にも雪降りそめつ 堀口星眠 営巣期
トラックの幌の暗がり雪降り込む 西村和子 夏帽子
ペリカンの己れつつみて雪降れり 入倉朱王
ロボットが一室うばひ雪降りだす 河野南畦 『元禄の夢』
一つ年とつて雪降る夏蜜柑 和知喜八 同齢
一天の告白のごと雪降れる 伊東宏晃
三月や見事なる牡丹雪降り良妻愚母 橋本夢道 良妻愚母
三椏に春の雪降る雪の奥 小林康治 『華髪』
丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子
人の世の淋しからむと雪降らす 片山由美子 水精
人の世の過去へ過去へと雪降れり 三村純也
人の死に始まる一日雪降れり 古賀まり子
人の死のあかりが路地に雪降れり 古賀まり子 緑の野以後
人生なかば白く黒く雪降りしきる 川口重美
今もラ・クンパルシーターと雪降るよ三鬼 八木三日女 落葉期
今日ざらめ津軽七種の雪降るてふ 田中英子
休め田のねむり深めて雪降れり 古賀まり子 緑の野
佐保姫のまばたきほどの雪降りぬ 池亀恵美子
佐渡に雪降るらし風の五合庵 斉藤夏風
何か食べたいしやべりたい口雪降り出す 栗林千津
何しても佳き吾が時間雪降れり 橋本美代子
佗助や夢の切れ目を雪降れり 小檜山繁子
俯して待つ波郷思ひの雪降れと 齋藤玄 『玄』
俳諧の雪降れり溺れなむいざ 小林康治 『虚實』
傷つきし馬に雪降る父の谷 大井雅人 龍岡村
兎も角雪降るは降るはと初電話 岩井 柳蛙
兎狩する頃合の雪降りし 居附稲声
兔罠作りてよりは雪降らず 若土 白羊
全伽藍雪降れり父母未生の闇 倉橋羊村
全空より雪降り出せる暗さかな 三谷昭 獣身
公魚がひらひら釣れて雪降れり 永井龍男
内孫他住、同居の外孫フランス風に雪降るか 橋本夢道 良妻愚母
冬の雨嶽寂光に雪降れり 沢木欣一 雪白
凍滝に刻ながるるは雪降れり 鈴木貞雄
処女の背に雪降り硝子夜となる 西東三鬼
切紙のこまやかな音雪降れり 猪俣千代子 堆 朱
初大師雪降りたらぬ寒さかな 白水郎句集 大場白水郎
初旅の眼裏すでに雪降れり 古賀まり子 緑の野以後
前髪に雪降りかゝる鷹野かな 吏明 古句を観る(柴田宵曲)
勾玉は始めのかたち雪降れり 野見山ひふみ
北斎の海に雪降る涅槃かな 春樹
十字架は地に挿すものぞ雪降り来 橋本榮治 麦生
千年の雪降る塔の上にかな 秋山巳之流
午近き明るさに雪降りつづく 西村和子 夏帽子
卯の花や雪降髪の南部馬 文挟夫佐恵 雨 月
卸したる雪へ雪降る父子の旅 藤田湘子
去年の実の柘榴にありて雪降れり 永井龍男
双六のなかなか果てず雪降り来 辻桃子
双子山見えず雪降る曾我の墓 中島月笠 月笠句集
古壺の底が音吸ふ雪降り出す 河野多希女
古池のをしに雪降る夕かな 正岡子規
名刺受雪降り込みて濡れにけり 白水郎句集 大場白水郎
吾子死なす窓雪降れり雪降れり 三谷昭 獣身
呆とあるいのちの隙(ひま)を雪降りをり 上田五千石(1933-97)
喜びて靴に入る足雪降れり 桑原三郎 晝夜
喪失や胸像に雪降りつもる 藤岡筑邨
図書は猟犬雪降る山へ眼をひらき 西川徹郎 家族の肖像
図書館の窓荒園に雪降れり 沢木欣一 雪白
土蔵の穴一茶終焉の雪降れる 西本一都 景色
地上より貧富失せよと雪降れり 有働亨 汐路
地中にて大根の直雪降れり 中戸川朝人
坂邸楽はずませて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
坑夫らに雪降れるのみ十二月 淡路青踏
埋葬のやがてまろらに雪降らむ 文挟夫佐恵 雨 月
墓碑銘を写す間も雪降り冥む 木村蕪城 寒泉
声あげて泣きしあとにも雪降れり 朝倉和江
夕空は雪降りつくし漂ふ紺 中西舗土
外梯子濡るる春雪降るかぎり 田村了咲
夜の船は雪降り出でて雪積みぬ 細谷源二 鐵
夜の雪降りつつ下水流れけり 榎本冬一郎 眼光
夜をこめて胆を腐らす雪降れり 寺田京子
夜学部や宿直室に雪降り来る 森田智子
夜明けつつためらふ空や雪降りくる 大島民郎
夢にまで雪降る昏さ手を洗う 対馬康子 吾亦紅
大勢にひとりひとりに雪降れり 出口 善子
大空にくらく雪降る別れかな 柴田白葉女 遠い橋
天地の息合ひて激し雪降らす 野澤節子(1920-95)
天地の谺もなくて雪降れり 鈴鹿野風呂
天気かな されど見えざる雪降る愛よ 折笠美秋 君なら蝶に
奥嶺奥嶺へ雪降るやうな繭組む音 加藤知世子 花寂び
女と見る疑心暗鬼の雪降るを 齋藤愼爾
女の胸雪降りつゝむ山河わかず 岩田昌寿 地の塩
婚決めてよりの娘の日々雪降れり 上野さち子
子と話す童話の外は雪降れり 小松道子
子の髪を撫でてゐる夢雪降りゐし 有働亨 汐路
宙をゆく父の鉄鉢雪降れり 磯貝碧蹄館
客となりて雪降迄は竹の月 松岡青蘿
密林のごとく雪降る火の捨て場 成田千空 地霊
寒復習障子硝子に雪降つて 大橋櫻坡子 雨月
寒念仏急がねば雪降り来るよ 大越千代
寒燈や松江大橋雪降るらむ 林原耒井 蜩
審判台いまも地上に雪降れり 成田千空 地霊
寺山の桑に雪降る二月かな 石原舟月 山鵲
少女と来て雪降る国の初景色 岸田稚魚
尾ある人現るか雪降る奥吉野 津田清子 二人称
尾白鷲雪降るときも止むときも 福島壺春
屋根白くなりて夜の雪降りやまず 右城暮石 上下
山に雪降迚耳の鳴にけり 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
山動かねば囃すごと雪降れり 村越化石 山國抄
山里のかくれ耶蘇とて雪降れり 牧野桂一
峡湾は暮しの歯型雪降り降る 佐藤鬼房 海溝
川上に雪降る夜の火消壺 広治
帆ばしらに雪降りそふや風面 泥足 霜 月 月別句集「韻塞」
帆船は雲と日暮れて雪降りぬ 細谷源二 鐵
帯締むるは舟きしむ音雪降れり 本塩義子
干拓地まだ陸ならず雪降りて 茨木和生 木の國
年賀の雪降りきてかゝる吾が眼鏡 藤後左右
年重ねたる父の忌の雪降れり 上野さち子
弾き初めの千鳥の曲が雪降らす 林明子
彼の雲は山頂に雪降らしをり 高木晴子 花 季
忘恩の春の雪降り積もりけり 上田操
思考像しんしん青し雪降る下 加藤知世子 花寂び
恍惚の直後の手足雪降れり 高澤晶子(1951-)
息止め見る雪割草に雪降るを 加藤知世子 花寂び
恰もや鎮魂の雪降りにけり 小林康治 『華髪』
想望の山に近づき雪降らす 和田悟朗
愛をしる牝獣の前雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
戦盲に雪降りかかる黒眼鏡 榎本冬一郎 眼光
手毬唄牧も雪降るころならむ 飯田龍太 山の影
投錨ののちも雪降る響灘 坪内稔典
折紙の色を畳めば雪降れり 島田碩子
掌の山の一つに雪降らす 松澤昭 神立
揺り返しつづくつごもり雪降れり 仙田洋子 橋のあなたに
改札の鋏におこる雪降る旅 橋本夢道 『無類の妻』以後
方舟に在るかの目覚め雪降れり 宮脇白夜
早足に佐渡の雪降るにごり酒 橋本榮治 麦生
早鐘を聞く雪降らば雪の中 和田悟朗
明るい店向き合ふて夜の往き来こまごま雪降る 人間を彫る 大橋裸木
春の悲曲窗をくらめて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
春の雪降りつゝすでに野は眩し 相馬遷子 山国
春の雪降るふつくらとゆつくりと 細見綾子
春の雪降る下宿屋の階軋む 対馬康子 吾亦紅
春の雪降る日の鬘合せかな 後藤比奈夫 金泥
春立つや雪降る夜の隅田川 角川春樹(1942-)
昨日ありし街焦土の雪降り積む 椎橋清翠
昼眠る眼底に雪降らしめて 日下部宵三
時効だと告げる運河に雪降れば 櫂未知子 貴族
暗き方は海に雪降る室の花 篠田悌二郎
曲り家に眠らぬ鏡雪降りくる 坂巻純子
書架整理雪降りそめし玻璃戸かな 橋本鶏二 年輪
月ありと見れば雪降る定めなし 雑草 長谷川零餘子
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治 四季貧窮
月よりも上の空より雪降り来る 堀米秋良
月見えて濁れる面や雪降れり 高濱年尾 年尾句集
望郷や雪降るごとき寒月光 八牧美喜子
木偶鴨の眼のかなしくて雪降れり 関戸靖子
杉山の杉それぞれに雪降らす 町田しげき
来し方の野に雪降れり涅槃寺 野見山朱鳥
東方に峠あるなり雪降るなり 村越化石 山國抄
松とれて雪降りて常の日となりぬ 及川貞 夕焼
松納め嶺明るくて雪降れり 中拓夫
枯芦や大沢の雪降る池にやすらぎぬ 橋本夢道 『無類の妻』以後
柊に春の雪降り一樹の音 野澤節子 黄 炎
栗鼠がかくれし木の穴へ雪降り出せり 田川飛旅子 花文字
桃花節雪降りいでぬはしきやし 加藤三七子
桐の木はいつもいつぽん雪降り出す 神尾久美子 桐の木
梟に向き合へば雪降りけり 細田恵子
椴松といふは雪降る木なりけり 今井杏太郎
榛の木に雪降る音を聞きわくる 細見綾子 黄 瀬
槐太忌の傘にかそけき雪降れり 冨田拓也
樅の木に樅のしづけさ雪降れり 渡邊千枝子
橙や遠山はまだ雪降らず 角川春樹
檻の中雪降るヘッドライト過ぎ 中島斌雄
止木に鶏の行儀の雪降れり 猪俣千代子 秘 色
歳晩や空仰がねば雪降らす 新谷ひろし
死 ぬ る 夜 の 雪 降 り つ も る 山頭火
死のかげに音楽が雪降らせをり 原裕 葦牙
死の如し雪降るなかの鉄棒は 奥坂 まや
死の跡の棒ひとつ立ち雪降れり 永田耕一郎 海絣
死人もゐて紙の雪降る児童劇 星野昌彦
母容れて繭の柩や雪降れる 奥坂まや
母遺し雪降りかくす故郷発つ 福田蓼汀 山火
比良明神しゃなりしゃなりと雪降り出す 高澤良一 燕音
水仙に四月雪降る国かなし 有働亨 汐路
水底は暗(やみ)のさざなみ雪降れり 鷲谷七菜子
水甕に雪降りつのる暮色かな 近藤一鴻
汝がとる燭芯たちて雪降れり 飯田蛇笏 雪峡
汲みあげし水のまはりに雪降れり 榎本冬一郎 眼光
汽車に寝ね雪降る船に寝て旅す 山口波津女 良人
沈丁の一夜雪降りかつにほふ 篠田悌二郎
沖くらく建国の日の雪降れる 轡田進
泣き飽きし女東京に雪降れり 対馬康子 吾亦紅
注連を焼く火のはなびらに雪降れり 野見山朱鳥
洲浜草鞍馬はけふも雪降ると 後藤比奈夫
海を見るひとりひとりに雪降れり 小田郁子
海底に何か目ざめて雪降り来 加藤楸邨
海深く魚を潜ませ雪降れり 阪本謙二
海老蔵に雪降らせけり初芝居 野口里井
涅槃会や松に雪降る清涼寺 青木月斗
湖に群衆の如く雪降れり 上野泰 佐介
満月をくぐりはやみて雪降れり 松村蒼石
漉き紙の仮の世界に雪降れり 和田悟朗
灯の裾に暗黒の水雪降れり 川村紫陽
灯を捧ぐあはれ赦せと雪降る闇に 高柳重信
無花果の木や雪降れば雪かかり 細見綾子 花寂び
焼失の二階の窓に雪降らす 対馬康子 吾亦紅
燦燦と交通巡査に雪降れり 池内友次郎 結婚まで
父に抗ひてきし背に蒼く鉛より深く重たく雪降りつもる 大滝貞一
父の忌の雪降りつもる炭俵 大野林火
牛乳の皺になりゆく雪降る夜 阿部みどり女
牡丹の芽に雪降らす天ありて 阿部みどり女
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男
狐等に銀世界雪降りつづく 池内友次郎
猟銃音たちまち過去へ雪降りつむ 千代田葛彦 旅人木
猪鍋のぼたんびらきや雪降れり 小檜山繁子
琴唄の雪降るよりもさびしかり 文挟夫佐恵 雨 月
生くること急がねば雪降りつくす 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
甲斐谷へ武田家紋の雪降れり 佐川広治
白くなりたい石の願望雪降れり 磯貝碧蹄館
白すぎる雪降りゐたり母の墓 瀧澤宏司
白魚は水ともならず雪降り降る 碧雲居
白鳥に魂抜けて雪降れり 藤岡筑邨
白鳥よ日かげればすぐ雪降り出す 草間時彦
的遠く雪降りかくす弓始 大橋宵火
目覚めゐて雪降る音に息合はす 石川文子
眼がしらに雪降りはじめ樹をぬらす 敏雄
石焼藷に雪降る麻布中之橋 有働亨 汐路
砂山の八方破れ雪降り出す 中村苑子
神々の沓音に雪降りはじむ 奥坂まや
神鏡に成人式の雪降れり 江口竹亭
福耳の婆へ雪降る火消壷 坂内佳禰
稿難し雪降れば雪に韜晦す 小林康治 玄霜
積もる雪降る雪いまだ名なき児に 野見山ひふみ
窓のなき潜水艦に雪降れり 茨木和生 木の國
立春といふに雪降り孫生る 皆川白陀
竹林に隠さるる鈴雪降れり 磯貝碧蹄館
竹筒の中のさざなみ雪降る中 太田紫苑
竹藪を曲り雪降る直指庵 橋本夢道 『無類の妻』以後
筆匠の死後も名だいに雪降れり 飯田蛇笏 椿花集
糧かろき身に闇せまり雪降り来 石橋辰之助 山暦
約束の雪降つてゐる出会ひかな 増田宇一
紐解くになほ天霧し雪降り来 下村槐太 光背
絵屏風の中も雪降る加賀泊 橋本榮治 麦生
綾取の川くれなゐに雪降れり 山崎節子
縁談の蔵王雪降る雲の中 岩田昌寿 地の塩
繭玉飾る麓の村よ雪降り出す 村越化石 山國抄
美濃紙の美濃を雪降る頃訪ふて 高澤良一 随笑
羽子板市夕べはなやぎ雪降れる 石田小坡
聖佛母懸けて春雪降りしきる 松村蒼石 露
肉体の薄闇に雪降り敷きぬ 徳弘純 麦のほとり 以後
肩に乗る小鳥のかろさ雪降れり 井上雪
胃の中に雪降る如き訣れかな 冨田拓也
胸埋めるほどに雪降る初日記 菅原多つを
脱ぎすてし足袋の白きに雪降り出す 内藤吐天 鳴海抄
花に雪降り光太郎逝き給へり 石塚友二
花祭踊る設楽の真闇雪降らす 村上冬燕
芽吹く木に芽吹かざる木に雪降れり 朝倉和江
茫々と湖に雪降り鴨のこゑ 豊長みのる
茶筅の先雪降る音を感じて止む 中嶋秀子
草田男の死絵皿雪が雪降らす 河野南畦 『広場』
荒れ鵜群れ海の底まで雪降れり(尻屋崎付近二句) 河野南畦 『硝子の船』
荒粒の雪降りかくす荷揚げ鱈 平子 公一
荘巌な無音の調べ雪降り積む 河野薫
荷馬につゞく砲車の記憶雪降るか 中島斌男
菩提樹に雪降りし香の二日かな 西村公鳳
落葉松はいつ目覚めても雪降りをり 加藤楸邨
蓬莱や雪降る音の夜の山 晏梛みや子
薄い雑誌が靴箆がわり雪降り出す 鈴木六林男 第三突堤
薺打つ音澄むくりや雪降れり 足羽雪野
蛇の目に雪降る刻の重くあり 仙田洋子 橋のあなたに
蝌斗の水三月の雪降りにけり 増田龍雨 龍雨句集
蝶の化身の雪降りつづく信濃川 佐川広治
血は眠らず春闘近し雪降り積む 橋本夢道 無類の妻
血を享けて戻りし意識雪降れり 朝倉和江
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪降るさらば明日も降りなむ 山中智恵子
行くも帰るもならぬ四十や雪降れり 佐野美智
裏返す刺繍の冬は雪降らぬ 対馬康子 愛国
覆はれし受難のイエス雪降れり 大野林火
見てゐたるところから雪降りはじむ 加藤秋邨 怒濤
象の皺一日だけの雪降れり 中島斌雄
貨車の上に黒き雪降る受難節 井沢正江 湖の伝説
責は己に雪降るまでの木々の枝 榎本冬一郎 眼光
起笹にいくたびとなく雪降れり 比良暮雪
足止めの柩一体雪降れり 村越化石 山國抄
足止めの雪降るに何んの鶏鳴ぞ 村越化石 山國抄
辷る鴨うづくまる鴨雪降れり 高澤良一 さざなみやっこ
追へばまだ会へさうに母雪降れり 猪俣千代子 秘 色
送水会法螺の高音に雪降り来 岡 淑子
造花かく挿し幸せか雪降れり 村越化石 山國抄
遠き白鳥珠とつつみて雪降れり 古賀まり子 降誕歌
遠つ嶺に雪降りてより木々の銘 原裕 青垣
遠母に亡き父に雪降りはじむ 細川加賀 『傷痕』
醒むるたび鶴は啼きけり雪降る闇 沼尻巳津子
針傷をいくたびも舐め雪降れり 長谷川双魚 風形
鉄板打つ響きの圏に雪降りて 榎本冬一郎 眼光
銃声や空の奥処に雪降れり 柿本多映
鍵かけて夜の浴槽たのし雪降れり 畑耕一 蜘蛛うごく
鎌倉に雪降る雛の別れかな 宮下翠舟
長靴をはくほど春の雪降りし 細見綾子 黄 瀬
門松の竹の切つ先雪降れり 井上美子
防風衣(アノラック)かたしいつしか雪降りゐぬ 石橋辰之助 山暦
阿夫利嶺に雪降る金の寝釈迦かな(相州大山) 石原八束 『幻生花』
阿武隈の山に雪降る黒空穂 八牧美喜子
阿蘇に雪降る夜はかなし雉子を食ふ 野見山朱鳥
除夜の鐘地にはつもらぬ雪降れり 那須 乙郎
雑木山消して雪降る槇の山 金箱戈止夫
雛頭百一様に雪降れり 猪俣千代子 秘 色
雨の野を越えて雪降る谷に入る 福田甲子雄
雪だるまうしろの山に雪降れり 中本美代子
雪に据ゑ雪降つてゐる社会鍋 嶋田一歩
雪に雪降り積む白さ乳児眠る 長田等
雪のうへに雪降るありありと青し 辻美奈子
雪の上に白き雪降る廓址 有働亨 汐路
雪の上に雪降ることのやはらかし 西東三鬼
雪の山山は消えつつ雪降れり 高屋窓秋
雪原に雪降り月光の跡癒やす 岡田日郎
雪国の雪降る音の無音なる 新谷ひろし
雪安居胸中に雪降らしゐる 嶋 杏林子
雪山に雪降り夜の力充つ 日下部宵三
雪山に雪降り重ね粥柱 陣内イサ子
雪掻けば雪降る前の地の渇き 中村苑子
雪景の湖に雪降り誰も死なず 和知喜八 同齢
雪虫や雪降る前の音なき野 柴田白葉女 『冬泉』
雪見とは卍巴と雪降ること 京極杞陽
雪降つてあたま丸めし伊吹山 細川加賀 生身魂
雪降つてもう目のみえぬ林檎の木 和知喜八 同齢
雪降つてゐる赤門や冬休 深見けん二
雪降つてをりぬ独りで餅を焼く 岸風三楼 往来
雪降つて来しと小声の暖かし 殿村菟絲子 『菟絲』
雪降つて白鳥の巨花湖に浮く 和知喜八 同齢
雪降つて赤松の幹いよよ立つ 猪俣千代子 堆 朱
雪降らす天の雪蔵開け放ち 玉井俊一
雪降らす雲かや窓に動きそむ 阿部みどり女 笹鳴
雪降りしあとの寒さや浅蜊汁 増田龍雨 龍雨句集
雪降りし四月の冬も終りけり 高木晴子 晴居
雪降りし日も幾度よ青木の実 中村汀女
雪降りし朝や孔雀の声汚れ 加古宗也
雪降りつもる電話魔は寝ている 辻貨物船
雪降りつ凹めつ馬淵川氷る 小林康治 玄霜
雪降りて光の紐を遺しけり 斎藤玄
雪降りて海を鳴らすよ父の郷 伊藤京子
雪降りて積ることなき井のほとり 山口波津女 良人
雪降りて立体失する銃砲店 宮武寒々 朱卓
雪降りて遠き翅音を降らすなり 齋藤玄 『玄』
雪降りて高野の春の土濡るゝ 高木晴子 花 季
雪降りぬ同じ日本語話しつつ 櫂未知子 貴族
雪降りぬ非在の花にこだわりつ 鳴戸奈菜
雪降りをり夢に故人の向うむき 松村武雄
雪降りをり深夜の停車駅に声 宮津昭彦
雪降り出す灯のなき鶴の寝園に 横山房子
雪降り出す瞼閉づれば故郷の山 櫛原希伊子
雪降り来るか梟の目瞑れば 橋本榮治 逆旅
雪降り来梵天唄の聞ゆれば 文挟夫佐恵 雨 月
雪降り来牛乳とレモン睡る窓 小池文子 巴里蕭条
雪降り積む櫟林や秀野亡し 関戸靖子
雪降り込む改札口のみかん箱 中拓夫 愛鷹
雪降り込む溝の黒きを夜の力 村越化石
雪降り降る山の男で逝きし吾子 栗林千津
雪降るとき黄河黄濁を極めん 金子兜太 黄
雪降るとラジオが告げている酒場 清水哲男
雪降るもやむも正法眼藏意 上村占魚 『橡の木』
雪降るやくらくしづかに隅田川 山西雅子
雪降るやさだまる家をいまは得し 杉山岳陽 晩婚
雪降るやしづかに消ゆる灯を見たり 長田等
雪降るやしばらく墓を忘じゐし 松村蒼石 雁
雪降るややけつく聲のをしねどり 廣江八重櫻
雪降るや一つの峡に一清流 猿橋統流子
雪降るや人いて人の辺が冥し 長谷川草々
雪降るや僻地のネオン赤がちに 有働亨 汐路
雪降るや化石句ばなし懇ろに 荒井正隆
雪降るや忌の日一日美しく 角川源義 『冬の虹』
雪降るや教科書になき歴史読む 羽田岳水
雪降るや濡れたる草のうちふるヘ 岸本尚毅 舜
雪降るや瑠璃光寺池鏡なす 合田岩雨
雪降るや生まれし町に子を産みて 猪俣千代子 堆 朱
雪降るや種くろく透け雀瓜 山西雅子
雪降るや紙人形の紙の呼吸 滝井清子
雪降るや経文不明ありがたし 相馬遷子 山河
雪降るや葉音収めて竹立てる 臼田亜浪 旅人
雪降るや身裡に翳をつみかさね 宗田安正
雪降るや遠き記憶の母の胸 皆川白陀
雪降るや銀紙まきしチヨコレート 藤岡筑邨
雪降るより消えてひるごろ シヤツと雑草 栗林一石路
雪降るよ障子の穴を見てあれば 正岡子規(1867-1903)
雪降るを見てゐて人を赦しけり 日下部宵三
雪降る三界僧の飽食赦すべからず 磯貝碧蹄館 握手
雪降る中硝煙の香の甦る 千代田葛彦 旅人木
雪降る庭に昨夜の父が立っている 西川徹郎 死亡の塔
雪降る朝白き産着を賜りし 有働亨 汐路
雪降る淵玉虫色に紬織る 加藤知世子 花寂び
雪降る街大魚の背骨など見せて 北原志満子
雪降る間も暗き結核彷徨す 林田紀音夫
雪降る降る今宵北国へと発つ人よ 文挟夫佐恵 黄 瀬
雪降ればすぐに雪掻き妻なき父 寺田京子 日の鷹
雪降れば夜は来といひて昼に来ぬ 下村槐太 光背
雪降れば女子大もつくる雪達磨 山口青邨
雪降れば湯気倍にして饅頭屋 高澤良一 寒暑
雪降れば石の耳輪はおもからまし 野澤節子 黄 炎
雪降れば雪たのし商の妻失格 八牧美喜子
雪降れば雪見の酒をもてなさん 金山 有紘
雪降れりくつがへらんとする鯉に 高澤良一 随笑
雪降れり子の手を包む我の手に 橋本榮治 麦生
雪降れり子役の素足花道に 佐藤せつ子
雪降れり少年の日の友等無く 相生垣瓜人 微茫集
雪降れり時間の束の降るごとく 石田波郷(1913-69)
雪降れり海なき国の野に山に 福田蓼汀 山火
雪降れり疑心暗鬼の雪降れり 堀井春一郎
雪降れり葱の口臭あたらしく 中拓夫 愛鷹
雪降れり雪の重みが裂きし木に 徳永山冬子
雪降れる夜の闇淡くなつて来し 青葉三角草
霊南坂ゆけば雪降る牧師館 冨田みのる
青き愛撫の銅版の人雪降れり 磯貝碧蹄館
静けさの極み雪降りいでにけり 徳永山冬子
静けさを深め雪降るわが行方 原裕 葦牙
静夜にてかのバイオリン雪降らす 鈴木六林男 桜島
静臥位に豊かなる雪降りつづく 誓子
音すべて雪降る音の中に消ゆ 加藤瑠璃子
音もなく白く冷たく雪降る闇 中村苑子
音絶えしこの音が雪降る音か 有働亨
風景の何処からも雪降り出せり 柿本多映
風裏はあそび雪降る氷柱かな 松村蒼石
食堂のすべての窓に雪降れり 大井雅人 龍岡村
餅の杵洗へば山に雪降りぬ 大串章
餅食う母雪降る死火山の裏側に 佐藤野火男
馬の目に雪降り湾をひたぬらす 鬼房
馬の眼に遠き馬ゐて雪降れり 中条明
馴鹿の角重たげに雪降りぬ 寺田寅彦
高山の雪降る街の消火栓 高澤良一 随笑
高張に霏々と雪降るお講かな 石田雨圃子
鮟鱇が吊るされ河岸に雪降れり 伊藤みちを
鳥の目に雪降るはひとつの奇跡 宇多喜代子
鳥翔ちて雪降りすさむ遠い沼 対馬康子 愛国
鳴雪忌二月一度も雪降らず 堀田春子
鳶のいろ巌に重なり雪降れり 中西舗土
鴨の羽に雪降り汀までは寄らず 猿橋統流子
鴨毟る雪降らざれば止まぬなり 多佳子
鶴の懐妊山裾に雪降らしむる 磯貝碧蹄館
鷺の雪降りさだめなき枯野かな 千代尼
鹿の瞳に雪降る今年はじまれり 野見山ひふみ
黒白の斎藤茂吉雪降れり 和田悟朗
*えりに降る雪のはげしさ往くさ来さ 下村槐太 天涯
いちさきに孟宗ゆれて降る雪よ 原石鼎 花影以後
いつせいに降る雪速度ゆるむなり 加藤秋邨 雪起し
いつ涌きていつ降る雪の玉柏 上島鬼貫
かぎりなく降る雪何をもたらすや 西東三鬼
かまくらへ降る雪生死ひとつなる 河野多希女 月沙漠
ごみごみと降る雪ぞらの暖かさ 宮沢賢治
しん~と降る雪に見入りわがさだめ 原石鼎 花影以後
ただ白く降る雪心音もて通る 野澤節子 黄 炎
ちらちらと檻の狐に降る雪よ 成瀬正とし 星月夜
ふるさとの夜半降る雪に親しめり 飯田蛇笏 椿花集
まつすぐに降る雪はなく積りをり 橋本榮治 麦生
やみなく降る雪を掻きに出てゐる 人間を彫る 大橋裸木
よろこべる子に降る雪の白くなり 臼田亜浪 旅人
スケートの終り降る雪真直なり 山崎秋穂
亂れ降る雪や音なき音をこめ(上州草津温泉) 上村占魚 『かのえさる』
佳き言に似て降る雪や掃き納め 川辺きぬ子
元日や竹の葉に降る雪の音 南うみを
公魚のよるさゞなみか降る雪に 渡邊水巴 富士
凛然と降る雪のさまかそかなる夜の紺青を吸ひて光れり 大滝貞一
力なく降る雪なればなぐさまず 石田波郷(1913-69)
君に降り吾に降る雪卒業す 北澤瑞史
吾等つひに起てり降る雪もたのし 佐野良太 樫
天地たゞ傘に降る雪あるばかり 石塚友二
宿とりて猶降る雪に佗びにけり 東洋城千句
幌に降る雪明るけれ二の替 阿部みどり女 笹鳴
懸命に降る雪知らで夜半に覚む 村越化石 山國抄
戎克の灯降る雪に射すほどもなき 桂樟蹊子
新年会降る雪を見て高階に 川畑火川
日射しつつ降る雪の綺羅蔵開 早川柾子
明日を信ず鉄骨に降る雪の向き 榎本冬一郎 眼光
杉に降る雪さらさらと紙漉場 西村公鳳
東京よ小公園に朝降る雪 高柳重信
松に降る雪ほたほたと実朝忌 冨田みのる
河に降る雪があきらめきつて降る 加倉井秋を
泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕に眠れ 佐佐木幸網
洋芹をいとほしみ降る雪淡し 堀口星眠 営巣期
海に降る雪美しや雛飾る 小林康治 『華髪』
湖こめて降る雪松につもり来し 佐野青陽人 天の川
灯の及ぶ限り降る雪埋むる雪 橋本榮治 逆旅
灯明りの中をしづかにくらがりへ降る雪 シヤツと雑草 栗林一石路
炭を積む馬の脊に降る雪まだら 夏目漱石 明治三十二年
無人派出所曲れば降る雪の千代田区 大沼正明(1946-)
白髪の姉を秋降る雪と思い込む 西川徹郎 月山山系
積もる雪降る雪いまだ名なき児に 野見山ひふみ
立つたびに降る雪つのる温め酒 小林康治 『虚實』
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
約束の日なり降る雪さまたげず 及川貞 榧の實
自転車の燈に降る雪のおびただし 相馬遷子 雪嶺
舳先に降る雪一条の言葉のごと 桜井博道 海上
蟹を立ち売る降る雪に消されもせず 津田清子 二人称
誰を訪はむ故郷を蔽ひ降る雪に 榎本冬一郎 眼光
賤ヶ岳より降る雪や*いさざ汲む 井桁蒼水
身の闇に降る雪嘗めて檻の熊 金箱戈止夫
遠く降る雪より緩く吾に降る雪 加倉井秋を 午後の窓
闇を降る雪をおもえば額打たる 和田悟朗
降る雪がさそふねむりの思惟仏 小室善弘
降る雪が別るゝひとの瞳にも降る 五所平之助
降る雪が川の中にもふり昏れぬ 高屋窓秋(1910-99)
降る雪が月光に会う海の上 鈴木六林男
降る雪が父子に言(こと)を齎らしぬ 加藤楸邨
降る雪と歯並の白さ別れ際 榎本冬一郎 眼光
降る雪にさはられてゐるクリスマス 攝津幸彦
降る雪にはばたく鷺の生きの白 吉野義子
降る雪にわが家の客の家遠し 山口波津女 良人
降る雪にわが家の燈のみ道照らす 山口波津女 良人
降る雪にピンポンの音は廊下の果 栗林一石路
降る雪に力抜きたる汀かな 山田みづえ 木語
降る雪に卒業写真撮りにゆきし 大橋櫻坡子 雨月
降る雪に大護摩焚けり初薬師 熊田鹿石
降る雪に天神地祇と応えけり 渡辺誠一郎
降る雪に客送らんと吾も濡る 山口波津女 良人
降る雪に弾み付ききし夕笹子 高澤良一 ねずみのこまくら
降る雪に悲しみはたゞ怺ふべし 相馬遷子 山河
降る雪に松は翼をひろげたり 徳永山冬子
降る雪に楽器沈黙楽器店 大橋敦子 母子草
降る雪に消えし国家の現われ来 徳弘純 麦のほとり 以後
降る雪に照らされてゐる谷の家 桑原三郎 晝夜
降る雪に白樺総立ちとなりにけり 岡田日郎
降る雪に白玉楼中皆会す 福田蓼汀 秋風挽歌
降る雪に目ひらいてみてまた泣けり 加藤楸邨
降る雪に眼いきいき目礼少女 鈴木六林男
降る雪に睫毛もつとも早く濡れ 内藤吐天 鳴海抄
降る雪に糶らるる蟹の紅しづもる 三好潤子
降る雪に紛ぎれ梅咲き和紙の村 西村公鳳
降る雪に縒つよくして川流る 的野雄
降る雪に老母の衾うごきけり 永田耕衣 與奪鈔
降る雪に胸飾られて捕らへらる 秋元不死男
降る雪に船の肋骨歯抜け立つ 米沢吾亦紅 童顔
降る雪に裸身まぶしき玉せせり 井田満津子
降る雪に触れんと蔓ら這ひまはる 三橋鷹女
降る雪に遠流のごとし鶴の色 齋藤玄 『無畔』
降る雪に金の卵を想ひゐる 林桂 銅の時代
降る雪に針金ゆるく巻かれあり 森田智子
降る雪に長子羽摶つごと来るよ 角川源義 『神々の宴』
降る雪に闇に瞠き喰ひ飽かぬ 石橋辰之助 山暦
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
降る雪のかなたかなたと眼があそぶ 皆吉爽雨
降る雪のかなた蝋燭の輪の舞踏靴 高柳重信
降る雪のことば遊びのかぎりなし 長田等
降る雪のその先日暮れ峠の灯 野澤節子 『八朶集』
降る雪のたてがみかぶり秣喰ふ 三橋敏雄
降る雪のつもる濃淡ありにけり 志摩芳次郎
降る雪のときたま力ゆるめけり 秋山未踏
降る雪のをりをり隙をひろげ舞ふ 井沢正江 晩蝉
降る雪の一身もえてただ悼む 赤城さかえ
降る雪の中の香煙初大師 今川 青風
降る雪の力の中へ川入りゆく 齋藤玄 『狩眼』
降る雪の垣に昨日の煤の竹 中野浩村
降る雪の天に逆巻くときのあり 鈴木貞雄
降る雪の奥うすうすと雪刷く山 千代田葛彦 旅人木
降る雪の徐々に地上の形なす 林田紀音夫
降る雪の水くらければ浮寝鳥 小檜山繁子
降る雪の白魚採を遠くする 大橋敦子 匂 玉
降る雪の真ん中にあり自在鈎 森田智子
降る雪の空におしやべり拡声器 青葉三角草
降る雪の舞ふは熄むてふ心あり 稲畑汀子
降る雪の谷に雉子鳴く西行忌 南光 翠峰
降る雪の野の深井戸の谺かな 高柳重信
降る雪は天飛ぶ田鶴を消しにけり 下村梅子
降る雪は急ぎ積るに急がざる 嶋田一歩
降る雪は生者に翳り死者に照る 加藤知世子 花 季
降る雪は雪国の財際限なく 品川鈴子
降る雪も一途雛とは女とは 綾部道江
降る雪も互みの酔も迅し早し 清水基吉 寒蕭々
降る雪やこけしの如く吾子馳け来 小林康治 四季貧窮
降る雪やこゝに酒売る灯をかゝげ 鈴木真砂女
降る雪やさらに北指す夜汽車なり 桂樟蹊子
降る雪やひとひらづつの初明り 金箱戈止夫
降る雪やもの言ひて眼の黒さ増す 今瀬剛一
降る雪や九死一生皆懺悔 橋本夢道 無類の妻
降る雪や他郷と言ふを知りてをり 杉山岳陽 晩婚
降る雪や厠が近くなりにけり 仁平勝 東京物語
降る雪や地上のすべてゆるされたり 野見山朱鳥
降る雪や天金古りしマタイ伝 長谷川双魚(1897-1987)
降る雪や夫婦離(か)れ住むせんもなし 川口重美
降る雪や妻が過しむ愚痴の中 清水基吉 寒蕭々
降る雪や家得たりしを誰に謝す 杉山岳陽 晩婚
降る雪や岬に買ひし藻付焼 八牧美喜子
降る雪や拳の鷹に心問ふ 野村喜舟 小石川
降る雪や旅人われに家路なく 山本歩禅
降る雪や明治は遠くなりにけり 草田男
降る雪や母の諭しに「をのこたれ」 井田寛志
降る雪や灼鉄は暗いところで打つ 榎本冬一郎 眼光
降る雪や父母を子が持つ日曜日 林翔 和紙
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏(1885-1962)
降る雪や祖母が縫ひゆく花雑巾 古賀まり子 降誕歌
降る雪や禅問答を繰り返す 佐藤美恵子
降る雪や竹藪庵に香を聴く 橋本夢道 『無類の妻』以後
降る雪や行かねばならぬゆえに行く 下村梅子
降る雪や野には舌持つ髑髏(ひとがしら) 夏石番矢 猟常記
降る雪や音読の書は立てらるる 成田千空 地霊
降る雪より積む雪白し避病棟 川村紫陽
降る雪よ今宵ばかりは積れかし 夏目漱石(1867-1916)
降る雪よ闇のシュプール消さずあれ 石橋辰之助 山暦
降る雪を仰ぎゐる身の浮遊感 高橋京子
降る雪を仰げば昇天する如し 夏石番矢(1955-)
降る雪を天階に見ず畦に見る 秋元不死男
降る雪を泥にこねたる時雨かな 水田正秀
降る雪を見てをり犬の真顔なる 行方克巳
降る雪を見てをり眼鏡てのひらに 井上雪
降る雪を見んとてこけし眼をもらふ 矢島渚男 天衣
降る雪を避ける意志なき柩出づ 林田紀音夫
降る雪を降る雪を消す湿り田は 津田清子 二人称
降る雪淋しがつて白粉をとくてのひら 人間を彫る 大橋裸木
限りあるいのちよわれよ降る雪よ 鈴木真砂女 夕螢
限り無く降る雪何をもたらすや 西東三鬼
雪や降る雪や母胎にあるごとし 松山足羽
雪明りあり降る雪の見ゆるほど 汀子
飛ぶ雪も降る雪に和し暮れにけり 殿村菟絲子 『牡丹』
饒舌に吹雪き寡黙に降る雪よ 稲畑汀子 汀子第二句集
じやじや馬を飼ひ馴らすかに雪激し 柴田奈美
夜廻りの老の背を追ひ雪はげし 岡田日郎
懺悔(こひさん)に雪はげしくて浄めらる 筑紫磐井 婆伽梵
木の芽打つて雪はげし句々抹殺す 渡辺水巴 白日
熊笹原音絶えてより雪はげし 岡田日郎
竹に降る雪はげし目刺よく焼けぬ 渡邊水巴 富士
絶壁にはりつく海鵜雪はげし 新谷氷照
鏡中に飛ぶ雪激し髪染むる 加藤 紅
関ヶ原ここを先途と雪はげし 下村梅子
雪はげしいのち惜しめと母の文 宮下翠舟
雪はげしかり劉生のかぶらの絵 中田剛 竟日
雪はげし夫の手のほか知らず死す 橋本多佳子
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子(1899-1963)
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 橋本多佳子(1899-1963)
雪はげし松ぼつくりの見えながら 岸本尚毅 舜
雪はげし灯して碧きなまこ切る 吉野義子
雪はげし生まるる言葉宙に消え 仙田洋子 橋のあなたに
雪はげし白樺一樹一樹消す 岡田日郎
雪はげし縛されざるはむしろわびし 吉野義子
雪はげし血汐のごとき茨の実 古賀まり子 緑の野以後
雪はげし遠のものみな亡びけり 野澤節子 黄 瀬
雪はげし闇を横切る北キツネ 松田満江
雪はげし雪の脈博灯をつつむ 石原八束
雪はげし鶫がくだる葡萄棚 石原舟月
雪激しピアノ売りたる夜のごとし 櫂未知子 蒙古斑以後
雪激し何の夾雑物もなし 津田清子 礼 拝
雪激し見知らぬ人と言交はし 佐野美智
雪激し鼓はげしく打たれゐて 文挟夫佐恵 雨 月
飯の前死の前音なく雪はげし 小檜山繁子
おぼろ夜の雪のふる夜にさも似たる 久保田万太郎 草の丈
こんもりと栂や旦暮を雪の降る 村越化石 山國抄
さ迷ひて果は降りゆく雪の降る 小池文子 巴里蕭条
しらぬまにつもりし雪のふかさかな 久保田万太郎 流寓抄
どんど焚くどんどと雪の降りにけり 一茶
どんど焼きどんどと雪の降りにけり 一茶
ないそでをなをふる雪の歳暮かな 井上井月
なほも雪の降る市街戦にならう雪降る 秋山秋紅蓼
なまはげの出る夜を雪の降りしぶる 高澤良一 ももすずめ
はつ雪の降出す此や昼時分 傘 下
ふる雪にひとりふたりとひと逝きぬ 中尾白雨 中尾白雨句集
ふる雪にみなちがふことおもひゐる 中尾白雨 中尾白雨句集
ふる雪に巴をつくる浮寝鳥 内藤吐天 鳴海抄
ふる雪に手をのべて時とどまらず 野見山朱鳥
ふる雪に木々の撓ひや白吉野 宇佐美魚目 秋収冬蔵
ふる雪に洗濯バサミなげつけり 皆吉司
ふる雪に犬も退屈狩の宿 三好雷風
ふる雪に駅はしりぞきはじむなり 藤後左右
ふる雪のかりそめならず年用意 久保田万太郎 流寓抄以後
ふる雪のゆるやかにして松の幹 橋本鶏二 年輪
ふる雪の水の明るさ山葵沢 細見綾子
ふる雪の音のみとなるわさび沢 細見綾子 黄 炎
ふる雪やすでに深雪の一伽藍 橋本鶏二
ふる雪や機械しづかに鐵を切る 橋本鶏二
ふる雪を消しつつ鱒の渦ながる 沢田緑生
ふる雪を見てをりこの曲何の曲 西村和子 夏帽子
まなうらの緋を積む雪の降りにけり 斎藤玄
みちのくにさらりと雪の降りし頃 成瀬正とし 星月夜
ゆくところ雪のふるくに親鸞忌 西本一都 景色
りんてん艫、今こそ響け。/うれしくも、/東京版に、雪のふりいづ。 土岐善麿
バザールヘ行きましよ雪の降る前に 筑紫磐井 花鳥諷詠
二十日忌は雪の降るさへなつかしき 大森桐明
井戸深く雪のふりこむ日暮かな 増田龍雨 龍雨句集
人体に空地のありて雪の降る 鳴戸奈菜
仲秋淡海に遊ぶ 水の月やよ望にふる雪歟とぞ 蕪村遺稿 秋
初髪を結ひをり雪のふりてをり 久保田万太郎 草の丈
前略と激しく雪の降りはじむ 嵩 文彦
古郷はかすんで雪の降りにけり 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
大仏にひたすら雪の降る日かな 飯田龍太 今昔
姉と雪の降る日の貝あはせ 筑紫磐井 野干
学問の静かに雪の降るは好き 中田みづほ
山焼きのすみたる村に雪の降る 河原 比佐於
彳めば猶ふる雪の夜みちかな 几菫
急がねばならぬ暮雪の降りやうや 高澤良一 随笑
捨てられし花の朧へ雪の降る 金箱戈止夫
新しき雪の降る夜の雪女 後藤夜半 底紅
林あかるくさらさらと雪のふるけはひ シヤツと雑草 栗林一石路
桐畑それも景色や雪のふる 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水雪の降る日暮まで札所道 吉田紫乃
氷結の上上雪の降り積もる 山口誓子 青女
沢庵の若衆せゝりや雪のふみ 服部嵐雪
河豚喰て其の後雪の降りにけり 上島鬼貫
湖に隈なく雪の降ることよ 上野泰 佐介
濡れ土に届かぬ雪の降ってをり 嶋田摩耶子
父と子のあはひに雪の降り積る 福田甲子雄
生き生きて妻と二人の老いたらば帰らむ英彦山(えいげん)よ雪の降る見ゆ 伊藤保
真鱈なお涙眼雪のふりはじむ 諸角せつ子
稚き日の雪の降れゝば雪を食べ 篠原鳳作 海の旅
窓帷の重くて雪のふる夜なり 桂信子 黄 炎
節分をみかけて雪のふりにけり 久保田万太郎 草の丈
紅梅に雪のふる日や茶のけいこ 永井荷風
綿雪の降る一つ空隅に目離れず 安斎櫻[カイ]子
緑竹の猗々たり霏々と雪の降る 夏目漱石 漱石俳句集
縄を綯ふ檜山に雪の降る限り 小原渉
芝生との別れと思ふ雪の降る 嶋田摩耶子
芹洗ふ井水に雪の降りそそぐ 石川桂郎 四温
見てとほる雪のふる駅ふらぬ駅 藤後左右
贄の熊昇天雪の降り止まず 柴田黒猿
輪飾や鏡中雪の降りしきる 龍雨
近き友遠き友雪の降る聖夜 村越化石 山國抄
近山に彼岸の雪のふりにけり 石原舟月 山鵲
遠き灯は兎眼雪の降りに降る 大木あまり 山の夢
遠山に雪のふたたび小鮎波 鷲谷七菜子 花寂び 以後
酒蔵の窓あるかぎり雪の降る 茂里正治
鉛筆に雪の降り出す匂いあり 高野ムツオ
限りなく虚しき雪の降るばかり 福田蓼汀 秋風挽歌
隣國は雪の降りつむ木のかたち 宇多喜代子
雁行や初秋の雪の降る地平 対馬康子 吾亦紅
雪のふることのこんなになつかしく 行方克巳
雪のふるさみしさよけれ善光寺 西本一都 景色
雪のふるゆめよりさめし朝寝かな 久保田万太郎 流寓抄以後
雪のふる空の高処に年木樵 宇佐美魚目 秋収冬蔵
雪の上に二月の雨の降りにけり 石原舟月
雪の降るまへの桜の木にもたれ 長谷川双魚 『ひとつとや』
雪の降る佐渡ヶ島より初電話 北澤瑞史
雪の降る夜握ればあつき炭火かな 上島鬼貫
雪の降る山を見てゐる桃の花 福田甲子雄
雪の降る彼の世は赤く燃えてをり 石原八束
雪の降る町といふ唄ありし忘れたり 安住敦(1907-88)
雪の降る華麗に夜の来てをりし 嶋田一歩
雪の降る遠き世赤く燃えてをり 石原八束(1919-98)
雪の降る闇に無数の目犇く 鈴木貞雄
雪をんな来さうな雪の降りといふ 根元敬二
雪吊の力の限り雪の降る 倉田紘文
雪国の子に雪の降る七五三 小川里風
雪山に雪の降り居る夕かな 前田普羅(1884-1954)
霊山を仰ぐ夜の果て雪の降る 飯田蛇笏 椿花集
魚眠るふる雪のかげ背にかさね 金尾梅の門
鰒喰うて其の後雪の降りにけり 鬼貫
鰤敷や雪の降り込む舟焚火 桑田青虎
鴬につもらぬ雪のふりにけり 久保田万太郎 流寓抄
鹿を曳く雪の上なり雪の降る 文挟夫佐恵 黄 瀬
けらけらと笑ヘり雪の積りをり 石原八束 黒凍みの道
さみしさの極みの雪の積るなり 石飛如翠
ひと遠く雪降りつもる雪の上 柴田白葉女 雨 月
まだもののかたちに雪の積もりをり 片山由美子
初午や狐のわたる雪の積 滝井孝作 浮寝鳥
弥太郎忌今宵は雪の積れかし 上村占魚 鮎
新樹匂ひ霊車は雪の積れるなり 渡邊水巴 富士
眉の上にも降りつもる雪父と母 磯貝碧蹄館
舞ふ雪の積むにはあらず昼の鐘 上村占魚 鮎
草木なき頂上雪の積むままに 津田清子 二人称
門松や静かに雪の積る音 墨水句集 梅澤墨水
降りつもる雪に火口もただの穴 品川鈴子
*かんじきをはいて一歩や雪の上 高浜虚子
かりがねの撓ひしなひて雪の上 飴山實 少長集
かんじきをはいて一歩や雪の上 高浜虚子
したゝかに炭こぼしけり雪の上 銀獅
しら~と今年になりぬ雪の上 伊藤松宇
たびらこや洗ひあげおく雪の上 吉田冬葉
ひと遠く雪降りつもる雪の上 柴田白葉女 雨 月
厄落す火の粉とび散る雪の上 福田甲子雄
吹落す杉の枯葉や雪の上 比叡 野村泊月
囀りや宿雪の上を水流れ 八束
墓守の火を焚きつぐも雪の上 岸田稚魚 筍流し
夜もすがら満月照るや雪の上 相馬遷子 山国
夥かに炭こぼしけり雪の上 銀獅
山吹や根雪の上を飛騨の径 前田普羅
左義長や降つゞきたる雪の上 鞭石
左義長や雪国にして雪の上 東洋城
市に竝ぶ泥葱三把雪の上 羽部洞然
御神楽やおきを弘げる雪の上 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
手水湯や流しそこなふ雪の上 膳所-弩鳥 俳諧撰集「有磯海」
数読んで鰤投げ出すや雪の上 萩男
日光みちて樹影はげしき雪の上 渡邊水巴 富士
明星は乞食も見るか雪の上 服部嵐雪
木の影の一語を置ける雪の上 大串章 山童記
柿の枝の影につまづく雪の上 石川桂郎 含羞
橇で着く初刷折るや雪の上 久米正雄 返り花
死後もまたあかあかと火を雪の上 有馬朗人 知命
水仙の折れ伏せる葉や雪の上 虚子選躑躅句集 岩木躑躅、村上磯次郎編
水仙の香やこぼれても雪の上 千代女
炭竈や雪の上行夕煙り 松岡青蘿
煤掃に砧すさまじ雪の上 亡士-嵐蘭 極 月 月別句集「韻塞」
煤竹の投げ出されある雪の上 大橋宵火
父亡くて母かこみ立つ雪の上 細川加賀 『傷痕』
空澄みてまんさく咲くや雪の上 相馬遷子 雪嶺
笹一葉ちりとなりけり雪の上 土芳 俳諧撰集「有磯海」
糶り残る鱈ひきずつて雪の上 石川文子
美しき日和になりぬ雪の上 太祇
能舞台普請の木屑雪の上 藺草慶子
菊月や外山は雪の上日和 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
落葉松の錆針敷けり雪の上 福永耕二
葬の雪の上誰が転びしや 岸田稚魚
葱抜くや土ぱらぱらと雪の上 南 うみを
金蘭のふくろおとせよ雪の上 立花北枝
雪の上*あさざこぼれてゐたりけり 関戸靖子
雪の上から踏む牡蠣殻や他郷ならず 木村蕪城 寒泉
雪の上ぽつたり来たり鶯が 茅舎
雪の上まづ第一歩印しけり 鈴木貞雄
雪の上まろびて熱き女の身 井上雪
雪の上わが影跼み糧を食ふ 相馬遷子 山国
雪の上をころげどんどの火屑かな 岸田稚魚 『萩供養』
雪の上を死がかがやきて通りけり((二月二十五日歌人斎藤茂吉逝く)) 石原八束 『秋風琴』
雪の上を燃えつつ走る吉書かな 白文地
雪の上ジルベスターの仮面捨つ 山口青邨
雪の上光りの贅のたよりなし 松澤昭 神立
雪の上日が交叉して四月くる 永田耕一郎 雪明
雪の上桃花の色の霞かな 松瀬青々
雪の上火屑かたまり吹かれをり 鈴木貞雄
雪の上芥捨て暮れ早くせり 岸田稚魚 筍流し
雪の上鱈ぶちまけて売られけり 松本 旭
雪の上鶏あつまりてくらくなる 成田千空 地霊
雪を掻き落して白し雪の上 右城暮石 声と声
青天やなほ舞ふ雪の雪の上 臼田亞浪 定本亜浪句集
餅搗きし臼のほてりや雪の上 大串章 山童記
香をとめぬまで蓬枯れ雪の上 藤岡筑邨
鳴き通る雪間雪の上猫の恋 皆吉爽雨 泉声
麦のためまづ風ゆらぐ雪の上 立花北枝
うつくしき日和となりぬ雪のうへ 炭 太祇
冬紅葉散りて数葉雪のうへ 高澤良一 寒暑
炭竃や雪のうへ行く夕けぶり 青蘿
真昼間の山雪のうへ蜘蛛あるく 高澤良一 燕音
鶯の畳さはりや雪のうへ 立花北枝
おぼろ夜の雪ふる夜にさも似たり 久保田万太郎
おらが世は臼の谺ぞ夜の雪 一茶
くらがりに変貌を遂ぐ夜の雪 高澤良一 随笑
こゝろ皆竹にふすなる夜の雪 松岡青蘿
さくさくと藁喰ふ馬や夜の雪 大江丸
たまさかに浪の音して夜の雪なり 北原白秋 竹林清興
ともしびを見れば風あり夜の雪 蓼太
ともし火を見れば風あり夜の雪 蓼太
ひきすてし車のかずよ夜の雪 加舎白雄
みとりするその夜の雪は積りけり 平井照敏 天上大風
ポストから玩具出さうな夜の雪 渡邊水巴
乞食の事いふて寝る夜の雪 李由 霜 月 月別句集「韻塞」
二十日夜の雪残りたる竹籬 浦田一代
今日の塵焼くその上に夜の雪 阿部みどり女
何の工事場土管に夜の雪かかり 古沢太穂 古沢太穂句集
修行者に此杖やらん夜の雪 むめ
俳居士の高き笑や夜の雪 会津八一
六条の豆腐の沙汰や夜の雪 京-吾仲 霜 月 月別句集「韻塞」
凧の果てはチラチラ夜の雪 阿部みどり女
初午や思ひがけなき夜の雪 高橋淡路女 梶の葉
別荘や膳のかよひも夜の雪 松岡青蘿
刻かけて蟹食ふ夜の雪密に 川島万千代
厩の灯道にさしゐる夜の雪 木村蕪城 一位
夜の雪だまつて通る人もあり 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
夜の雪となりたるらしきしじまなり 渡部マサ
夜の雪となる焼跡を通りすぎ 長谷川かな女 花寂び
夜の雪に御嶽の貂が木を登る 小山しげる
夜の雪に聴き耳をたて老コリー 鈴木貞雄
夜の雪に誰かホテルの窓あけし 横山白虹
夜の雪に駅の時計の機械透け 田川飛旅子 花文字
夜の雪のひとひらうけて嗅ぐあそび 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夜の雪のまこと静かや縄をなふ 水野六江
夜の雪のやみし風音立ちにけり 赤城さかえ
夜の雪やさら~と戸にふれもして 法師句集 佐久間法師
夜の雪や受験の吾子が居睡りて 相馬遷子 山国
夜の雪をとこのおもさかと思ふ 保坂敏子
夜の雪公衆電話開けつぱなし 八木三日女 紅 茸
夜の雪大きく照らし出されたる 岸本尚毅 鶏頭
夜の雪屏風一枚ものおもふ 中尾寿美子
夜の雪晴れて薮木の光りかな 浪化 (1671-1703)
夜の雪耶蘇の言葉のごとく降る 藤岡筑邨
夜の雪遮二無二海の中へ降る 山口誓子
夜の雪降りつつ下水流れけり 榎本冬一郎 眼光
夜の雪雪の音して降りはじむ 右城暮石 上下
妻と病めば鎮魂歌めく夜の雪解 小林康治 玄霜
嫁く人のほかはささめく夜の雪 鷲谷七菜子 黄 炎
子の部屋に子がゐる音の夜の雪 細川加賀 生身魂
孤独なるブロンズに夜の雪積り 山本歩禅
寝ならぶやしなのゝ山も夜の雪 一茶 ■文化四年丁卯(四十五歳)
射的屋の人形倒る夜の雪 鈴木真砂女 夕螢
小便の数もつもるや夜の雪 貞室
屋根白くなりて夜の雪降りやまず 右城暮石 上下
山にふる夜の雪片に満つる軒 橋本鶏二
川黒うして舟に声あり夜の雪 古白遺稿 藤野古白
師の面ざし父と重なる夜の雪 毛塚静枝
御車を大路に立てゝ夜の雪 古白遺稿 藤野古白
我が子なら供にはやらじ夜の雪 とめ 俳諧撰集玉藻集
戦争が戻つてきたのか夜の雪 鈴木六林男 桜島
戸まどひや呉竹くゞる夜の雪 西望 選集「板東太郎」
手探りに香炉を擁す夜の雪 古白遺稿 藤野古白
昼よりも明るき夜の雪を掻く 北 光星
更けゆくや雨降り変はる夜の雪 碧童 (昭和十二年二月一日碧師病歿、通夜)
月の夜の雪の立山まのあたり 中村汀女
月光とともにただよふ午夜の雪 飯田蛇笏 雪峡
林中やきちきちと散る夜の雪 岸田稚魚 筍流し
梅白し古墳に夜の雪来つつ 神尾久美子 掌
森の奥の夜の雪のおくの真紅のまんじ 高柳重信
椅子回し見る少年に夜の雪 対馬康子 吾亦紅
樽さげて酒屋おこさん夜の雪 二柳
漆にはうるしを重ね夜の雪 管 タメ
灯の動き来るは道なり夜の雪 高橋笛美
炉がなくて炉話亡ぶ夜の雪 八牧美喜子
熊突の夫婦帰らず夜の雪 名倉梧月
爆音またもペンがりがりと夜の雪 栗林一石路
父の死の夜の雪と思ふ肩に頭に 小林康治 四季貧窮
牛飼が句を見せに来る夜の雪 細川加賀 生身魂
牡蠣船や夜の雪堆く覚めてあり 山口誓子
物書きて鴨にかへけり夜の雪 笹山 菰堂 五車反古
窓あけて眺めゐる間の夜の雪 波多野爽波 鋪道の花
窓の灯やわが家うれしき夜の雪 永井荷風
笠着たる人によく降る夜の雪 立花北枝
自転車に夜の雪冒す誰がため 相馬遷子 山国
舞姫のおもかげいだき夜の雪ヘ 山本歩禅
蛎船の障子細目や夜の雪 孤軒句集 三宅孤軒
豆撒きの夜の雪やむや家路急き 石川桂郎 含羞
質おいて番傘買ふや夜の雪 泉鏡花
身を律す夜の雪琴は袋の中 河野多希女 両手は湖
酒のめばいとど寝られね夜の雪 芭蕉
酔ひ帰る教師に夜の雪だるま 新田祐久
閉し固む戸に訪れて夜の雪 石塚友二 光塵
陣太鼓ひそかに打つは夜の雪 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
難波津や橋めぐりして夜の雪 青蘿
霊膳の湯気の細さや夜の雪 渡辺水巴 白日
静かさや大つごもりの夜の雪 吉野左衛門
顔につく夜の雪村に岩つきだし 大井雅人 龍岡村
魂を落して睡る夜の雪 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
鹿子ゆふ音きこゆなり夜の雪 広瀬惟然
わが佇てば降りまさりつつ窓の雪 波多野爽波 鋪道の花
下窓の雪が明りのばくち哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
丸窓の雪に灯ともる実南天 九郎
切張りの隙は有けり窓の雪 調鶴 選集「板東太郎」
北窓の雪さへあかり障子かな 重頼
子の声の窓の雪しきりなり白き 原田種茅 径
空襲の夜明けて窓の雪あかり 京極杞陽 くくたち下巻
窓の灯やわが家うれしき夜の雪 永井荷風
窓の雪日の暮れかねてありにけり 高橋淡路女 梶の葉
絹糸の光沢しめやかに窓の雪 瀧井孝作
繭玉にはなやぎ降れり窓の雪 星野立子
蝋燭のうすき匂ひや窓の雪 素牛 俳諧撰集「藤の実」
降り止まぬ無灯の窓の雪青し 阿部みどり女
飾り臼南の窓の雪明り 村上一央
くろぐろと雪片ひと日空埋む 相馬遷子 山國
ただならぬ静けさは雪片の大 菅裸馬
つまづけり人の暗さの雪片に 栗林千津
三椏の花雪片の飛べる中 山口青邨
中空に見し雪片を身にまとふ 原裕 葦牙
二月堂昏れ綿虫か雪片か 長谷川史郊
加奈陀の雪片ひらりとクリスマスカード 石塚友二
去年今年雪夜雪片かさなり降る 斉藤美規
囚徒ゆき雪片は地にくだけけり 飯田蛇笏 雪峡
大いなる雪片ふはと枝をたつ 橋本鶏二
妻寂し髪の雪片消ゆるより 齋藤玄 『玄』
宙にのみありて華麗なる雪片 鷲谷七菜子 銃身
山にふる夜の雪片に満つる軒 橋本鶏二
崖赭し雪片はひた飛びゆくも 藤田湘子 途上
巨島消えし天雪片を掌に数ふ 古館曹人
日の中に雪片とべるだるま市 門伝史会
檜山より雪片馬の強咀嚼 宇佐美魚目 秋収冬蔵
浮き沈む雪片石切場の火花 西東三鬼
消え難き雪片をつけ毛つぶ貝 八木林之介 青霞集
温泉は遠し肩の雪片すでに凍り 大島民郎
湖村音なし雪片かぎりなき夜空 鷲谷七菜子 雨 月
湯煙を吸ひ雪片を散らす空 成瀬正とし 星月夜
病者見よ熔岩が雪片ゆたかにす 萩原麦草 麦嵐
百万片中一雪片の落下つづく 加藤秋邨 吹越
目刺やく一雪片にとびこまれ 下村槐太 天涯
石蕗の葉に雪片を見る霙かな 高浜虚子
磁気帯びて春の雪片髪につく 渋谷道
穢土と呼ぶこの世の冬ぞ仰ぐとき無数の雪片天より下る 大下一真
空にもどる雪片もあり工事の灯 桜井博道 海上
絶巓へ降る絶体の雪片よ 坂戸淳夫
罠に雪片森のおきてとして速し 対馬康子 愛国
老人と思ひ雪片とびつけり 加倉井秋を
胎動や午後の雪片太りつつ 飴山實 『おりいぶ』
花の中雪片こほる椿かな 中田剛 珠樹
虹くぐり舞ふ雪片のかぎりなし 岡田日郎
通る雲雪片こぼす猫柳 遠藤梧逸
雪片が舞うくらがりの石の椅子 河合凱夫 飛礫
雪片が雪のいのちをきらめかす 三好潤子
雪片が髪を濡らすよ月給日 石橋辰之助
雪片となるまではただ鈍色に 猪俣千代子
雪片と耶蘇名ルカとを身に着けし 静塔
雪片にふれ雪片のこはれけり 夏井いつき
雪片に飛びつく波の上りけり 西村和子 窓
雪片のかかるよ赤子家に迎ふ 太田土男
雪片のつれ立ちてくる深雪かな 高野素十
雪片のはげしく焦土夜に入る 飯田蛇笏 春蘭
雪片の大きさ今のきざやかさ 細見綾子 花 季
雪片の平らにのりし寒牡丹 吉野義子
雪片の消ぬべくあそぶ辛夷の芽 堀口星眠 営巣期
雪片の眼より離れず埴輪馬 河野多希女 こころの鷹
雪片の瞼に降りてきたるあり 中田剛 珠樹
雪片の花びらとなる子の受賞 都筑智子
雪片の裏返り紺ばかり降る 殿村菟絲子 『牡丹』
雪片の負けず嫌ひが先争ふ 三好潤子
雪片の高きより地に殺到す 山口誓子 激浪
雪片は誰のてのひら弟よ 栗林千津
雪片も旅いそぐかに翁の忌 堀口星眠 青葉木菟
雪片やこぼれ餌にきてこぼれ海猫 吉田紫乃
雪片や呪符のごとくにこころ占む 林田紀音夫
雪片をすいと引き寄せ一枯枝 高澤良一 鳩信
雪片を児は児の眼して見てゐたる 星野麥丘人
雪片を星が降らしぬクリスマス 相馬遷子 雪嶺
鶴のこゑ身に雪片の消ゆる間も 大岳水一路
鶴の檻雪片月をかすかにす 飯田蛇笏 春蘭
黒人が眉に雪片つけて来る 田川飛旅子 花文字
えんぶりの雪照り道を影の列 加藤憲曠
三椏の花や雪照る夕日受け 及川貞 夕焼
安達太良は雪照りにけり吹流し 細川加賀 生身魂
幻のごと雪照らふ天塩岳 古賀まり子 緑の野以後
片頬に雪照る雛を納めけり 渡邊千枝子
牛羊に昨日の雪照る大試験 木村蕪城 寒泉
萱ふかく雪照る雲雀きこえくる 金尾梅の門 古志の歌
葛城山の肩に雪照る皇子の陵(河内日本武尊白鳥陵) 角川源義 『神々の宴』
見えてゐる菜圃の妻を雪照らす 吉武月二郎句集
雪照らして光の渦の日が渡る 渡辺水巴 白日
雪照りて山上の日はゆらぎをり 渡邊水巴 富士
雪照りに馬打たるること忘れ 松澤昭 父ら
雪照りに髯うつうつと歩くべく 岸田稚魚 筍流し
雪照りのはげしさ橇が一つ来し 佐野良太 樫
雪照るや骰も人も面つつむ 古舘曹人 能登の蛙
あまえびのぬめりを舌に雪夜かな 吉野義子
いねし子の朱唇にうるむ雪夜かな 渡邊水巴 富士
いぶりがつこ雪夜に飲めと届きけり 茂里正治
ごきぶりの何と大きく舞ふ雪夜 殿村莵絲子 花寂び 以後
ねむりいて耳が孤独よ雪夜の父 寺田京子 日の鷹
ふと覚めし雪夜一生見えにけり 村越化石
ふるさとの雪夜のいまも匂ふ水 千代田葛彦 旅人木
スタンドの燈は何さそふ雪夜なる 渡辺水巴 白日
フリージヤ雪夜に長き妻の祈り 金箱戈止夫
一糸整然雪夜夢まで香をきく 加藤知世子 花寂び
並び寐の子と手つないで雪夜かな 渡辺水巴 白日
亡き人の句に逢ひ閉づる雪夜の書 野澤節子 黄 瀬
去年今年雪夜雪片かさなり降る 斉藤美規
墓の上雪夜の潮流れをり 岸田稚魚 『負け犬』
夢ありし雪夜の離被架庇護の中 赤松[けい]子 白毫
夫遠しわが量にふゆ雪夜の湯 吉野義子
妻の裾跨ぐ雪夜となりしかな 小林康治
子より幼く雪夜寝息に加はりぬ 猪俣千代子 堆 朱
子ら留守の雪夜晩年のごとく更く 茂里正治
寝仕度に触れて鈴鳴る雪夜かな 村越化石
少年美し雪夜の火事に昂りて 中村苑子
幕開いてひとり紅茶の雪夜かな 渡邊水巴 富士
文業の竹林灯す雪夜にて 清水基吉 寒蕭々
昔雪夜のラムプのやうなちひさな恋 鷹女
甕に入れ雪夜の水の自在奪ふ 宮津昭彦
甕の水雪夜は言葉蔵しをり 能村登四郎(1911-2002)
甘栗をむけばうれしき雪夜かな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
生けるものは重たさ持てり雪夜にて 加藤秋邨 まぼろしの鹿
畦の雪夜も解くるなり初蛙 藤原如水
畳の目粗し雪夜をかへりきて 桂信子 黄 炎
発心の言葉雪夜の方寸に 田川飛旅子
登り窯の洩れ火のはねる雪夜かな 石原八束 藍微塵
祝祭の雪夜にぎやかとりけもの 山田みづえ
精霊の凍みる雪夜を牡丹照る 渡邊水巴 富士
紙幣とは雪夜香を嗅ぐためのもの 林翔 和紙
紙風船越の雪夜に妻がつく 肥田埜勝美
繭紡ぐごとく雪夜を重ねたる 金箱戈止夫
覚めてひとり盗汗ぬぐふや雪夜風 小林康治 四季貧窮
過去帳に姑の名記す雪夜かな 影島智子
酔ふほどに行火のあつき雪夜かな 小杉余子
雪の風瀬々になごんで雪夜かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪夜なる足はるかにし睡るかな 村越化石 山國抄
雪夜にてことばより肌やはらかし 森澄雄
雪夜にて妙にも耳の鳴りゐたる 馬場移公子
雪夜の瀬こころを遣れば奏でけり 馬場移公子
雪夜ふるさと真白き曲り蒼き曲り 加藤知世子 花寂び
雪夜一路わが車追ふ車なく 野澤節子 牡 丹
雪夜子にかぶすマフラー裏につぎ 古沢太穂 古沢太穂句集
雪夜子は泣く父母よりはるかなものを呼び 加藤秋邨 起伏
雪夜寝て四囲を海とも野山とも 大串章
雪夜思ふ花咲蟹の濃き脂肪 小檜山繁子
雪夜来し髪のしめりの愛しけれ 大野林火
雪夜消す灯の残像の緋から青 千代田葛彦 旅人木
雪夜眠る痛む喉など痛ましめ 所山花
首出して夫婦雪夜を眠りをり 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
馬が眼をひらいてゐたり雪夜にて 加藤楸邨
鼻かみて雪夜を更に貧しうす 原コウ子
あたたかき雪がふるふる兎の目 上田五千石(1933-97)
いちまいの鋸置けば雪がふる 上田五千石(1933-97)
むまさうな雪がふうはりふはり哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
伊那の吊り柿食うて戻れば雪がふる 林原耒井 蜩
山頭火永遠の留守雪がふる 夏石番矢
山鳩よみればまはりに雪がふる 高屋窓秋(1910-99)
林ゆたかに火を焚いてをれば雪がふる シヤツと雑草 栗林一石路
柳葉魚漁るアイヌ舟歌雪がふる 野見山朱鳥
灯をめざし白蛾のやうな雪がふる 佐藤公子
菊枯らす雪がふりたる夜の富士 萩原麦草 麦嵐
雪がふかくなりそうな、財布の紐くびにかけゆく 伊藤雪男
雪がふるふる雪見てをれば 種田山頭火 草木塔
雪がふる障子に顔をうづめけり 萩原麦草 麦嵐
かぢの火も殊さらにこそ笠の雪 服部嵐雪
ぽつかりとわれて落ちけり笠の雪 伊勢-芦本 俳諧撰集「有磯海」
何を釣る沖の小舟ぞ笠の雪 黒柳召波 春泥句集
市人にいで是売らむ笠の雪 松尾芭蕉
我が雪とおもへばかろし笠の雪 其角
笠の雪いくび(猪首)になりて惜しまるる 卯七 俳諧撰集「有磯海」
笠の雪博士の簑も新しく・・・中田みづほ、独逸留学出発に際し医学博士の学位を受く。昼の雪ますます粗くなりにけり 高澤良一 随笑
白酒やどんどこ降つて昼の雪 大峯あきら
米売と交す言葉や昼の雪 藤田湘子 途上
腸(はらわた)が古びん昼の雪ちらちら 高澤良一 随笑
見上げたる顔に当りて昼の雪 高澤良一 随笑
魚食うて口腥(なまぐさ)し昼の雪 成美

以上

by 575fudemakase | 2017-04-19 10:03 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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