2017年 05月 17日 ( 5 )

泉  の俳句

泉  の俳句


*ろうかんの泉を鳴らす大柄杓(黒羽大雄寺) 角川源義 『秋燕』
「おはよう」を胸が噴き出す泉の辺 林翔 和紙
あたたかき血を思ひけり初泉 石田勝彦
いづみ千年湛ふ白きは姫辛夷 及川貞 夕焼
いのち短かし泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥
いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥
うつくしく泉毒なる螢かな 飯田蛇笏 霊芝
およがせて洗ふ産着や泉鳴る 高橋せをち
おろがみて神の泉をすくひ飲む 山田健弘
かゞまりて水皺したしき泉かな 日野草城「花氷」
かぎりなく泉の涌ける園の奥失はれたる時を埋めむ 大野誠夫
かなかなや泉に浸けし力杖 村越化石
くらがりのそぼふる泉ありしかな 小池文子
クレヨン一本曾我兄弟の泉の中 川崎展宏
けまん草森は泉の音に酔ひ 河野南畦 湖の森
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
この樹の根泉の下に濡れをらむ 鈴木鷹夫 千年
この先に泉があると言って帰る 池田澄子 たましいの話
コムパクト泉の空を捉へけり 加藤三七子
こんこんと泉湧きをり茂の忌 岩永成史
こんこんと夫の笑ひし泉かな 小池文子 巴里蕭条
さし入れし手を押し上げて泉湧く 高橋悦男
サングラス泉をいよよ深くせり 水原秋桜子
サングラス泉をいよゝ深くせり 水原秋桜子
シスターの声降りそそぐ泉かな 市堀玉宗(栴檀)
しろがねの器ならべつ泉殿 松瀬青々
しんしんと峡星満ちぬ泉の上 羽部洞然
しんしんと泉わきけり閑子鳥 閑古鳥 正岡子規
しんしんと日を押し上げてゐる泉 仲村青彦
スイスは朝の青さ漲り泉湧く 有働亨 汐路
せきれいに夕あかりして山泉 飯田蛇笏 山廬集
セルロイド製たり泉に沈みても 加倉井秋を 午後の窓
たちよれるものの朝影山泉 飯田蛇笏 椿花集
ちひさくも絶え間なく声泉汲む 中田剛 珠樹以後
つまだちの白樺ばかり夜の泉 上田五千石 森林
てのひらは茶碗のはじめ泉汲む 小檜山繁子
どか~と泉の深さ底磊塊 西山泊雲 泊雲句集
とくとくの泉に 鳴らす 跪坐の喉 伊丹三樹彦 一存在
なづな咲き泉細音に墓の裏 野澤節子 黄 炎
にぎやかに大根車来る泉 安田晃子
はしりもて杓しりぞきし泉かな 阿波野青畝
はつ蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり 山口青邨
ひざまづき海女目を洗ふ泉かな 上野泰 春潮
ピレーネエの風の泉は氷遠に鳴る 石原八束 人とその影
マイナス充電中か泉への水 加藤郁乎
まくなぎが泉暗しと囁けり 鈴木鷹夫 渚通り
まひる野の泉鶺鴒が知れるのみ 栗生純夫 科野路
まれに人まれに犬来る泉かな 小林たけし
みえてゐる枕一つや泉殿 加藤三七子
みづかきのあるごと掬ふ泉かな 石田京子
み仏と泉と庇同じうす 森田峠
もとからの泉を活かす開拓よ 茨木和生 木の國
もの音の芯はしぐれの泉かな 秋山牧車
もりあがる泉の歓喜汲みて飲む 平井照敏 天上大風
ゆるやかに光琳模様泉より 宮津昭彦
よりかゝる柱映れり泉殿 池内たけし
らふそくの炎伸びたり泉殿 小川軽舟
ラムネ湧く園遊会の泉哉 尾崎紅葉
りんだうを摘みて泉の辺に出づる 畠山譲二
わが影を掬ひ飲みする泉かな 井上美也
わが影を金のふちどる泉かな 朱鳥
わが子欲し泉内より水ひらく 山上樹実雄
わたなかの島に泉の噴き止まず 品川鈴子
愛情は泉のごとし毛絲編む 山口波津女 良人
握手いづれも大き掌ばかり泉湧く 野沢節子 雪しろ
握手するやうに泉に手をひたす 岩岡中正
暗きもの泉に棲めり娶りけり 河原枇杷男
闇美し泉美し夏祓 素十
伊豆の夜の泉か脈かききすます 八木三日女
一会とは泉の如し虹立てり 佐藤美恵子
一人ゐて泉のほとり風つどふ 相馬遷子
一点の渦震へをる泉かな 阿波野青畝
一燈をもらひ祭の森の泉 村越化石
一本の蝋燃しつつ妻も吾も暗き泉を聴くごとくゐる 宮柊二
茨の実泉に映りかつこぼる 水原秋桜子
芋茎洗ふ泉に水輪ひろげつつ 手島靖一
芋洗ふひとりが占めて野の泉 黒坂紫陽子
羽子一つ落ちて泉水氷りゐぬ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雲の頭に晩夏の茜泉暮る 川村紫陽
雲裏に毅き富士ある泉(わきま)かな 中戸川朝人 尋声
駅春夜喫泉の辺に移民の荷 馬場駿吉
越にこもる低き泉の子守唄 豊口陽子
園林に仏陀泉を秘めたまひし 長谷川かな女 雨 月
炎天の中充ちてくる泉かな 中山砂光子 『納沙布』
炎天の道行く泉あれば飲み 相馬遷子 雪嶺
遠くから空の鳴り出す泉かな 秋山夢
汚染源探す人あり泉に在り 香西照雄
鴬にくつくつ笑う泉あり 西東三鬼
黄落や泉のこゑのあるばかり 角川春樹
温むなき砂丘の泉砂を噴く 山口草堂
音ひとつ立ててをりたる泉かな 石田郷子
音一つたててをりたる泉かな 石田 郷子
夏手袋望郷のいづみ揺れやまず 柴田白葉女 花寂び 以後
家の泉鶯ひそむ緑映す 香西照雄 対話
火の山へ旅す泉に手を浸けて 津田清子 礼 拝
火を焚きて美しく立つ泉番 平畑静塔
花アカシヤ泉のこゑののぼりゆく 石田勝彦
花火垂る夜の泉が声あげて 小林康治 玄霜
花終りぬ泉いよいよ黝し 栗生純夫 科野路
花楓われを泉へいざなへり 星野麦丘人
花鋏夜の泉へとしづめたし 朝倉和江
蚊帳の中月光溜り泉なす 白松達夫 『初松籟』
蛾の羽をうかべてゐたる泉かな 夏井いつき
蛾の眠る真昼睡たげに泉の芯 田川飛旅子 花文字
海近き泉に馬の来てをりぬ 藤木倶子
海神の膂力あまりて噴く泉 林翔 和紙
海底の泉のむかしむかしかな 夏石番矢
崖(はけ)泉玉とたばしる太郎杉(偕楽園) 角川源義 『神々の宴』
垣結ひの蕗葉それ浮く泉かな 金尾梅の門 古志の歌
鴨足草雨に濁らぬ泉かな 飯田蛇笏
萱わけて馬の来てをる泉かな 秋櫻子
刈草屑のかたより浮ける泉かな 西山泊雲 泊雲
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 山廬集
缶詰を泉に囲ふ郁子の花 篠田悌二郎
観音の御掌のうちより泉湧く 渡辺 恭子
閑古沁む泉一物もまとはねば 栗生純夫 科野路
丸太担いで通つても泉に映る 加倉井秋を
丸太擔いで通つても泉に映る 加倉井秋を
巌より湧く泉には齢なし 津田清子 二人称
眼つむれば泉の誘ひひたすらなる 多佳子
眼の奥に白旗ばかり涸れた泉 吉浜稲子
眼まで青き魚棲む野の泉 永方裕子
岩かどに飾かゝれる泉かな 比叡 野村泊月
岩つばめ古き泉を見にゆかむ 山田みづえ
岩穿ちけるを昔に泉かな 尾崎迷堂 孤輪
顔つけしあとの泉の明るしや 七菜子
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
顔ゆれて血よりつめたく泉澄む 鷲谷七菜子
顔映りにくき泉の風を知る 森田峠 逆瀬川以後
顔浸けしあとの泉の明るしや 鷲谷七菜子
顔濡らすも幸かアルプの泉喫む 有働亨 汐路
亀鳴くや西湖うつしのお泉水 竹中碧水史
掬ぶとし深さありける泉かな 尾崎迷堂 孤輪
掬ぶよりはや歯にひびく泉かな 芭蕉
掬ぶより早歯にひびく泉かな 松尾芭蕉
鞠外れてざぶと浮へる泉かな 尾崎紅葉
喫泉が婆にとびつく彼岸かな 秋元不死男
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔
喫泉に顔打たす人を裏切るべく 隈治人
喫泉に丈足らぬ子よ桃ひらく 村上 光子
喫泉に鼻濡らしゆく末黒かな 吉本伊智朗
喫泉に百万石の蝉しぐれ 田中英子
喫泉の把手が敏感少女等に 右城暮石
喫泉の穂の定まらず日焼の子 真田 清見
喫泉の老ゆるを知らぬ苑の薔薇 伊藤敬子
喫泉は舌をくすぐる薔薇の昼 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
喫泉や風をはらみて楡大樹 八幡城太郎
喫泉を丸太囲ひにうららけし 上田日差子
喫泉飲む疲れて黒き鳥となり 西東三鬼
朽ち柵を覗くや法の泉澄む 鍵和田[ゆう]子 未来図
汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉 飯田蛇笏 山廬集
汲みに出て初東雲の泉かな 田中兆木
牛の貌泉を暗くしたりけり 大串章
牛去りし泉に赤し九輪草 相馬遷子 山国
牛蒡一束泉に座る年の暮 原田喬
居待月泉かがやきそめにけり 山田梵雨
競馬負け顔ぢゅう濡らし喫泉のむ 津田清子 二人称
胸冷ゆるまで湧泉の奥を見る 千代田葛彦
極彩スカート幾重にも巻き泉汲む 吉野義子
近よらば泉の声の遠去らむ 玄
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな 原石鼎
薫風の泉なるべし大榎 本宮鼎三
啓示乞ふ泉の面にくちづけて 上田五千石 田園
詣る子に智慧の泉といふが湧く 舘野翔鶴
結ぶより早歯にひびく泉かな 松尾芭蕉
血圧高し泉の底をのぞき込む 田川飛旅子 花文字
月よさの泉あふれつ夏落莱 内藤吐天
月夜の森を縷をなし出づる泉の水 内藤吐天 鳴海抄
犬が飲む月下の泉溢れをり 移公子
犬が来て泉を飲めり移る鵙 田川飛旅子
原爆忌ごぼりごぼりと泉の穂 加藤楸邨
原爆日ごぼりごぼりと泉の穂 加藤楸邨
言霊の茂吉のくにの泉かな 成田千空「白光」
呼吸あらく地を抱き泉口づけに 栗生純夫
己が顔映りて暗き泉かな 比叡 野村泊月
己れ恃む泉の中に五指ひらき 岡本眸
故郷や暗きより湧く泉ゆゑ 小檜山繁子「流水」
午過ぎの濃き木影なる泉かな 尾崎迷堂 孤輪
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
御簾垂れて人ありやなし泉殿 柳沢白川
光の矢折々飛ばし泉湧く 深見けん二 日月
口づけて山の泉の硬きかな 鈴木梅代
口やれば泉の霊気おのづから 町田しげき
広き葉のかさなり映る泉かな 吉岡禅寺洞
紅つつじ咲ききはまれる庭泉 柴田白葉女 『夕浪』
荒れなぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏
荒れ凪ぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏
降り出づる泉のほとりすぐに濡れ 栗生純夫 科野路
降り出でて泉にはなき雨の音 栗生純夫 科野路
降誕祭ルルドの泉病む娘に欲し 成瀬桜桃子
香を放つ大樹いづれや夜の泉 堀口星眠 営巣期
香椎宮にゆかりの泉甕に満つ 竹田守貞子
刻々と天日くらきいづみかな 川端茅舎
刻々と天日くらき泉かな 茅舎
黒百合や高嶺の泉飛騨に落つ 堀口星眠 営巣期
黒蜻蛉浮木に群るゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
今も尚湧き継ぐ泉芙美子の忌 水野征男
今日も描く泉に雲の変りけり 長谷川かな女 雨 月
昏らみたる泉にひたすほたるかご 飯田蛇笏 春蘭
根白草摘みに靄立つ泉まで 古川芋蔓
紺青の蟹のさみしき泉かな 阿波野青畝
紺切濃く底に沈める泉かな 西山泊雲 泊雲句集
妻の母独り居泉に胡瓜浮べ 香西照雄 対話
妻詣る鈴を泉にゐて待てり 中戸川朝人 星辰
菜洗ひがひろげて山の泉暮る 宮坂静生 山開
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實 少長集
柵されて飲水といふ泉湧く 小林勇二
笹子鳴く泉に声を試すごと 羽部洞然
山雲のかゞやき垂れし泉かな 石橋辰之助 山暦
山吹の移りて黄なる泉さヘ 服部嵐雪
山泉つるくさはやく黄葉せり 飯田蛇笏 春蘭
山泉橿鳥蔓の実を啄めり 飯田蛇笏
山泉杜若実を古るほとりかな 飯田蛇笏 山廬集
山男老いては集ふ泉あり 有働 亨
仔鹿ゐて泉に青き闇溜まる 野沢節子 八朶集以後
仔鹿ゐて泉に青き夕来たる 野澤節子 『駿河蘭』
使ふ人ある泉の辺うつくしき 布施伊夜子(鷹)
四阿は風の十字路泉噴く 田中水桜
子ども失せ天神さまの泉かな 飯島晴子
子のなき村の露の泉を汲みて去る 老川敏彦
子蜥蜴に泉がわかつ瑠璃の色 三谷昭 獣身
思ひ出すどこの泉といふことなく 加倉井秋を 『午後の窓』
思ひ出すには泉が大きく過ぎる 加倉井秋を
枝ひくく橿鳥とまる泉かな 飯田蛇笏 春蘭
枝映る樹に懸巣鳴く泉かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
死火山麓泉の声の子守唄 西東三鬼
詩はひとりひとりよ泉覗きゆく 村越化石
詩人と俳人相寄る春泉湧く音に 加藤知世子 花寂び
次の子に帽子あづけて泉呑む 江本英一
辞書の名の苑や泉や春を待つ 藤村克明
鹿杖に翁倚らるゝ泉かな 尾崎迷堂 孤輪
実となれる梨の根株の泉かな 沢木欣一
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 大野林火
若き歌唱いよよ泉をあふれしむ 木下夕爾
若菜摘みいくたり寄るや田の泉 下村ひろし
手鏡を汚してしまふ泉かな 櫂未知子 蒙古斑
周辺がありて泉が昏れきりぬ 加倉井秋を 午後の窓
宗祇の名遺す泉へ細き露地 塚本京子
修羅の貌うつし泉を暗くする 小林康治 玄霜
終生まぶしきもの女人ぞと泉奏づ 中村草田男
臭木の実泉が川になるところ 辻桃子
充電のやうに泉に手を浸す 猪俣千代子
宿とればすぐ泉べに炊ぐ娘よ 爽雨
出土クルスまろばせ祀る泉の辺 下村ひろし 西陲集
春の月酒の泉にうかびけり 尾崎紅葉
春の泉汲むとて乙女ひざまづく 内藤吐天 鳴海抄
春泉かそけき飢ゑは恋に似て 鍵和田[ゆう]子
春泉にかがめば過去の顔々々 橋本榮治 逆旅
春泉もの結ひし藁輪の形に 大岳水一路
春泉を飲みきれず去る森深く 今瀬剛一
春遅し泉の末の倒れ木も 石田波郷
春夜浴泉翼のごとく腕ひろげ 山口青邨
春来つつあり喫泉の噴き強し 館岡沙緻
初蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏
初泉おのづからなる踏処あり 綾部仁喜 樸簡
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 草田男
傷兵と子に噴泉の水は涸れ 岸風三楼 往来
少年の鱗のひかる泉かな 近三津子
松籟の泉の底に起りけり 牧野春駒
笑ひてもひびくばかりの夜の泉 加倉井秋を 『午後の窓』
城郭都市あちこちに湧く泉かな 上原瑞子 『燈台草』
常のことの泉に洗ふ若菜かな 尾崎迷堂 孤輪
譲られて譲る檜山の青泉 影島智子
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
唇つけし泉息つくひまもなし 橋本美代子
唇を濡らす泉やa・i・u・e・o 高澤晶子
寝ても思ふ砂丘にとめし泉の色 有働亨 汐路
心身の離合泉のこゑ聴けば 下村槐太 天涯
新蕎麦や床几のはしに泉鳴り 井沢正江
新樹光泉あふれてより昏し 鷲谷七菜子 雨 月
森の奥泉ひかりて聖夜待つ 古賀まり子 降誕歌
森の泉汲みゆく乙女ばかりなり 内藤吐天 鳴海抄
榛の枝を山蛤おつ泉かな 飯田蛇笏 霊芝
浸す手に水の刃立つる泉かな 井沢正江
深山雨に蕗ふか~と泉かな 飯田蛇笏 霊芝
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
身のなかを北より泉ながれけむ 河原枇杷男 密
身を延べて泉は近し烏蛇 豊口陽子
震災忌老婆喫泉抱へ飲む 岡本 眸
人が飲み羊が飲みし泉かな 下村梅子
人声のして泉湧く町の端 桂信子 黄 瀬
人葬りきし手すすげと泉鳴る 井沢正江
人避けて来しが泉のさびしさは 大島民郎
諏訪口は泉の色の暮春かな 直人
吹き降りの夜が明け泉滾々と 栗生純夫 科野路
吹奏や黄泉は泉のはずもなく 増田まさみ
水の中水を突き上げ泉湧く 岡田日郎
水晶の如くに湧きて泉かな 内田 じすけ
水底にものの双葉や初泉 綾部仁喜 樸簡
水飯の残りを捨てる泉かな 水飯 正岡子規
水面おだやかならず泉が湧きつづけ 津田清子 礼 拝
杉山中何も映さず泉湧く 野澤節子 遠い橋
世阿弥の手巌の真下より泉 中田剛 珠樹以後
星ぞらへこと~と湧く泉かな 萩原麦草
星凍る泉端より揺れやみて 藤原たかを
棲むものの孤独月牙の泉あり 稲畑汀子
生はひとたび一日は泉湧くままに 斎藤玄 雁道
生前も死後も泉へ水飲みに 中村 苑子
聖泉の結氷に突く双手かな 井上弘美
聖泉の水岐れては芹の水 下村ひろし 西陲集
聖泉の湧きつつ溜むる落椿 下村ひろし 西陲集
聖童女くちづけ去りし泉かな 大橋敦子
青ぶだう庭に泉をもつ一戸 つじ加代子
青松葉見えつつ沈む泉哉 正岡子規
青松葉見えつゝ沈む泉哉 泉 正岡子規
青竹を編みて泉の蓋となす 森田 峠
青梅のはねて泛く葉や夕泉 飯田蛇笏 山廬集
青葉木菟泉溢れて灯の圏外へ 川村紫陽
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規
赤き馬車泉に掬める少女待つ 林翔 和紙
切れるまで神の泉に指浸す 村松 いく
折れ曲り泉に沿ひて手摺かな 西山泊雲 泊雲句集
折れ曲る手摺泉に浮き沈み 西山泊雲 泊雲句集
絶間なき泉や家齢三百年 加藤知世子 花寂び
絶間なく砂踊らせて湧く泉 了戒 純
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋桜子
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉荐りにとび交ふ映る泉かな 西山泊雲 泊雲句集
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
泉ありいづれの堂も遠からず 森田峠 三角屋根
泉ありピカドンを子に説明す 池田澄子 たましいの話
泉あり遠き神代に恋ありき 山本歩禅
泉あり子にピカドンを説明す 池田澄子「たましいの話」
泉から巣箱が三つ見えにけり 大串章 百鳥 以後
泉くむ歯朶の青きに胸染めて 清水 節子
泉こんこん母思ひ出すこと易し 橋本美代子
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泉と別れ一樹なき谿直登す 有働亨 汐路
泉なほ湧く天領の廃銀山 品川鈴子
泉に映るおのれ厭ひて歩き出す 平間真木子「洙」
泉に手浸し炎天うるほへり 黒坂綾子 『黙契の虹』
泉に浸け少年の脛短か 上田五千石
泉に棲みつき退屈のあめんぼう 津田清子 二人称
泉に灯夕暮はイエスの匂ひ 伊藤希眸
泉に来て花瓣をそしる烏かな 高橋 龍
泉ぬくしといひつゝ女葱洗ふ 村田八重
泉のごとくよき詩をわれに湧かしめよ 木下夕爾
泉のなかの瑞の言の葉円き力 平井さち子 完流
泉のむ父祖の大地にひざまづき 大串 章
泉の底に一本の匙夏了る 飯島晴子
泉の辺後れ来しものらつどふなり 小林康治
泉の辺後れ来し者らつどふなり 小林康治 玄霜
泉の辺驢馬を荷車より離す 山崎ひさを
泉はなきかカイバル越えの弱法師 加藤楸邨「吹越」
泉へと桃李二人を従へて 平野周子 銀化
泉へのかぐはしき闇夜鶯 小池文子
泉への崖鷹の巣の下を落つ 石田波郷
泉への道や全き落し角 大石悦子 百花
泉への道火を振つてくれにけり 茨木和生 往馬
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷
泉への路おくれゆくやすけさよ 石田波郷
泉へ垂らし足裏を暗く映らしむ 田川飛旅子
泉へ沈む常緑樹の葉へ子守唄 田川飛旅子 花文字
泉ほどさみしきものを知らざりき 夏井いつき
泉まで遡る蝌蚪黒緊り 中戸川朝人 残心
泉まで歩める影の深からむ 小林康治
泉まで木々の影ふむ独歩の忌 三田きえ子
泉まで来て読む母の手紙かな 村上喜代子 『雪降れ降れ』
泉みて子育て観音乳房おす 和知喜八 同齢
泉やさし旅果ての掌は泳がせて 小林康治
泉ゆたか揺れ揺れ育つ名無し草 鍵和田[ゆう]子 未来図
泉より刈り来て茅の輪結ひにけり 根岸 善雄
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子
泉より石輝ける二月かな 大岳水一路
泉より転生の鳥翔てりけり 村越化石
泉一井戸二の島の大南風 中戸川朝人 星辰
泉飲む仔馬に風の茨垂れ 飯田龍太
泉飲む子は真みどりに透きとほり 吉原文音
泉屋の跡に落葉が彩重ね 田中英子
泉屋の壓(ママ)に蚊の鳴く夕哉 蚊 正岡子規
泉干る女足音多きゆえ 萩原麦草 麦嵐
泉掬う生命とくとく脈打ちて 大塚梅子
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
泉掬むひかりを咽喉にはしらせて 平井照敏 天上大風
泉掬む山人面上げにけり 河野静雲 閻魔
泉喫み終るまで峰いくつか澄む 加藤知世子 花寂び
泉喫み虹ほどの刻充ちゐたり 加藤知世子 花寂び
泉吸ひ紅髪を獅子のごとぬらす 古舘曹人 砂の音
泉吸ふ草木と同じ生を享け 平畑静塔
泉汲むや胸を離れし首飾 猪俣千代子
泉汲む綱引張るや*すがる 八木林之介 青霞集
泉汲む手鍋を置いてありしかな 茨木和生 倭
泉水になじまぬ蝌蚪も泳ぐなり 樋笠文
泉水に顔をうつすや花曇り 飯田蛇笏 山廬集
泉水に山女も活きて鮎の宿 滝井孝作 浮寝鳥
泉水に落葉のたまる小舟哉 落葉 正岡子規
泉水へと人没し去る葎かな 高浜虚子
泉成るわれ純粋を主宰して 加藤郁乎
泉石のあきらけくある雨月かな 大橋櫻坡子 雨月
泉石をはづるる滝や青嵐 飯田蛇笏 山廬集
泉石を外づれる滝や青嵐 飯田蛇笏 霊芝
泉聴く面ざし深くなりゐたり 大石悦子 群萌
泉底にしきなす木の葉木の実かな 飯田蛇笏 山廬集
泉殿に朗詠うたふ声更けぬ 泉殿 正岡子規
泉殿映せる水の古色なる 石川星水女
泉殿鏡面消えし古鏡吊る 橋本鶏二
泉殿水かげろふも庇内 高木晴子 花 季
泉殿西日となりて下りにけり 吉岡禅寺洞
泉殿文房四宝備へたる 二塚元子「かつらぎ選集」
泉噴き萬餘の霊に献水す 下村ひろし 西陲集
泉噴く水輪の影は光るもの 勝俣泰享
泉噴く千万の音退けつ 中村汀女
泉噴く罔象の女神顕ちたまへ 津田清子
泉辺に棲み荒星を殖やさむか 栗林千津
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 中村草田男
泉辺の家消えさうな子を産んで 飯島晴子
泉辺の石われ去らば蟹の乗る 村越化石
泉辺の母子訪ふや旅つぎ足して 平井さち子 完流
泉鳴る修道院は眠るによし 平畑静塔
泉湧くくちづけ誰もはばからず 井沢正江
泉湧くらしや佇てるも跼めるも 山本歩禅
泉湧く山家を捨てて町に住む 神谷美枝子
泉湧く太古の砂を踊らせて 安斉君子
泉湧く朴の花影片寄せず 羽部洞然
泉渾々飯島晴子自裁せり 鈴木鷹夫
浅間嶺に唇ひびかせて泉呑む 宮坂静生 雹
洗ひ積む大根いづみ溢れをり 及川貞 夕焼
銭透ける愛の泉や小鳥来る 楠見稲子
早乙女のすぎし泉のそば通る 百合山羽公 故園
早乙女の笠や泉のうへを過ぎ 百合山羽公 故園
相ひびかふ智恵子泉と落し水 西本一都 景色
草の葉に朝の泉が匂へるよ 河合凱夫 藤の実
草原の径は泉の森へ消ゆ 山田弘子 懐
草泉鳴く虫ありてながれけり 飯田蛇笏
草泉夕やみ退けば昏るるのみ 岡本眸
草濡れてはたして泉湧くところ 井沢正江
蒼然と旅人を待つ泉かな 大木あまり 雲の塔
足浸ける泉徹底して透けり 津田清子 礼 拝
体内に泉あるごと愛すなり 辻美奈子
台風待つ一燭泉めく暗さ 友岡子郷 遠方
大いなる泉を控へ酒煮かな 石井露月
大勢で来てもさびしき泉かな 折笠悦子
大旱や泥泉地獄ふつふつと 誓子
鷹の巣やひとり泉のゆらめける 山上樹実雄
啄木鳥に泉の水輪絶ゆるなし 水原秋桜子
沢瀉に泉の蜻蛉生れけり 根岸善雄
濁りゆく泉のそばのからすうり 中田剛 珠樹
谷口の木の葉の八重に泉かな 松瀬青々
谷底の癩者の家の泉など 香西照雄 対話
探梅の女湧き泉湧きつゞく 横山白虹
短日の泉と暮るる虚空かな 廣瀬町子
地の凍てを流るる泉遠からず 鈴木詮子
地べたより生えし石仏鳴る泉 河合凱夫 飛礫
池泉めぐる老松の影苔の花 田口一穂
中年の顔奪はるる泉かな 角川源義
中年の恋の暗さよ草泉 三谷昭 獣身
昼くらく歯朶も映らぬ泉かな 五十嵐播水
朝の裸泉のごとし青年立つ 島津 亮
朝日まだ山を出でざる泉かな 茨木和生 往馬
町びとの麦茶を冷す泉あり 石川桂郎 高蘆
蝶がゐて草の泉を傷つける 石原八束 風霜記
長虫を追うてあがりぬ泉殿 吉岡禅寺洞
鳥が来る泉の鹿は花うるし 能村登四郎
鳥たちのための泉に口づけぬ 野中亮介
鳥を飼い胸に泉をひろげている 前田秀子
椎の根に杓渡しある泉かな 比叡 野村泊月
槻の根の泉や美濃の一の宮 鈴木しげ子
蔦幾条枝よりたるゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
嬬恋の字の一つの泉汲む 文挟夫佐恵
底ひ鳴る平出泉ゆ田水引く 宮坂静生 青胡桃
底砂の綾目さやかに泉かな 松根東洋城(渋柿)
笛吹くや泉は夢の国のもの 龍胆 長谷川かな女
天つ日のふとかげりたる泉かな 富安風生
天正の世より存する泉あり 田中蛇々子
田園広し青き唇もて泉吸ふ 齋藤玄 『玄』
登山馬人乗せしまま泉飲む 山口波津女
凍る沼凍らぬ泉道は奥へ 森川光郎
島人の永久に掬むべき泉かな 上野泰(春潮)
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
橡の実の打ちて泉の面ゆがむ 前田鶴子
薙ぎ草のおちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 山廬集
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 霊芝
南半球泉に映る星の房 橋本美代
二人してしづかに泉にごしけり 川崎展宏
二人してしづかに泉よごしけり 川崎展宏(1927-)
虹見うしなふ道、泉涸るる道、みな海辺の墓地に終れる 塚本邦雄
日ざす喫泉濡れけるままに髑髏消ゆ 磯貝碧蹄館
日本遠し落葉の下に泉生き 有働亨 汐路
日矢とても底にとどかぬ泉かな 檜紀代
日矢とどく聖泉春を奏でをり 秋月すが子
日矢の中泉にひたす櫛ちさき 鷲谷七菜子 黄 炎
如月花ひらくや古泉湛然として魚子遊ぶ 日夏耿之介 婆羅門俳
波郷忌の泉に生きて水馬 向笠和子
馬は未明の泉のむ鈴りんりんと 加藤知世子
馬も飲む泉にどかと小日輪 村越化石 山國抄
白き矢の浮ぶ泉や百合の花 会津八一
白雲の滑り尽せり青泉 関森勝夫
白雲の限りなく過ぐ野の泉 近藤一鴻
白濁は泉より出で天高し 西東三鬼
白藤のほとりと落ちし泉かな 柴田白葉女
肌沈め野分の泉底明るむ 筒井節子
抜けし歯を捨てに泉を探しに行く 秋元不死男
飯籠の次第に枕む泉かな 比叡 野村泊月
被爆時報平和の泉いま激す 下村ひろし 西陲集
避暑浴泉つひの床寝の乙女どち 橋本鶏二
百合影す径を泉へ行かんとす 大野林火
百代の過客行かしめ泉鳴る 渡辺恭子
百日紅の午後盛り上る泉の芯 田川飛旅子 花文字
不意に合ふ泉の脈とわが脈と 中嶋秀子
浮き出でし鯰をかしや泉殿 楠目橙黄子
父たる希ひ泉へ飴の紙泛かす 磯貝碧蹄館 握手
父の後姿に残る戦争泉の辺 鈴木六林男
撫子の咲き澄む泉汲みにけり 中村 四峰
風に映え泉におそき山ざくら 飯田蛇笏 春蘭
物売りのきて蹤きまとふ泉の辺 稲垣きくの 黄 瀬
物落し易し泉のほとりでは 加倉井秋を 『午後の窓』
噴きやまぬ*かがいの森の青泉 毛塚静枝
焚火明り遠ちの泉をまづとらふ 栗生純夫 科野路
穂を揺りて泉は夜も充たすものを 中戸川朝人 残心
母の忌の蟹みつつ汲む泉かな 福田甲子雄
母はわが心の泉リラ芽ぶく 古賀まり子
母子像となり喫泉をかわるがわる 八木三日女
母老いぬ地図に泉の記号欲し 江里昭彦
抱き上げて駅の喫泉子に与ふ 河野南畦 『風の岬』
砲音の響く村なり泉湧く 上西啓三
帽燈や坑の泉は声あげて 小林康治
朴の花いづみ炎の如くにて 茨木和生 三輪崎
鱒秤る分銅蒼し山いづみ 伊藤白潮
又一人来て口づける泉かな 都甲久美子
末期来と露の泉を汲みにけり 栗生純夫 科野路
万年筆の中に泉やさくらの芽 正木ゆう子
満月の泉飲む胃の形見え 今瀬剛一
満山のみどりを籠めて泉湧く 有働亨 汐路
未婚なり掌をついて濁す泉の底 中嶋秀子
無花果や雨余の泉に落ちず熟る 飯田蛇笏 山廬集
無碍の詩こそ泉うちより水拳 友岡子郷 遠方
名にしおふ除病延寿の泉飲む 竹内鈴子
綿虫をはづませてゐる泉かな きちせ・あや
木の蔭の巌の蔭なる泉哉 星野麦人
木雫の間遠となりし泉かな 西山泊雲 泊雲句集
木雫の吹き飛んで来る泉かな 茨木和生 往馬
木蓮や泉石の幽今春に 尾崎迷堂 孤輪
目慣るればほのぼの碧き泉かな 五十嵐播水
勿忘草穂高のゆらぐ泉あり 澤田 緑生
夜の泉男寝落つや奏でいづ 殿村莵絲子 牡 丹
野の風塵穢れざるもの泉のみ 栗生純夫 科野路
幽霊の立ち寄りさうな泉かな 東野鷹志
有刺線砂丘の泉囲みけり 高繁泰治郎
湧き止まぬ泉なりけり橡のもと 高浜年尾
湧き立ちて静けさつのる泉かな 深見けん二 日月
湧くや泉白扇の影のありどころ 村上鬼城
湧ける音輪となり泉湧きゐたり 村越化石
夕づくや桑摘の背に泉鳴り 馬場移公子
夕明り水輪のみゆる泉かな 草城
揚羽より軽し泉に憩ひ来て 神尾久美子 桐の木
洋傘ついて泉がすこしも親しめず 加倉井秋を 午後の窓
羊群の泉濁して立ち去れり 太田土男
陽関の涯て泉あり寄れば逃ぐ 石原八束
浴泉のエメラルド色花曇 桂信子 樹影
雷蝶の身を立て直す泉かな 大木あまり 雲の塔
落盤葬終えごくごくと泉呑む 鷹島牧二
里芋を泉に洗ふ乙女かな 岩井久美恵
立ちどまりたるのみ泉辺を過ぎぬ 森田峠 避暑散歩
立ち去るや泉の音の背にさやか 内藤吐天
立てば郭公跼みて泉湧く音す 千代田葛彦
立上り泉へ落す咳ひとつ 田川飛旅子 花文字
竜胆に霧ふる泉澄みにけり 西島麦南
旅の泉に手洗ひをるや妻いかに 小林康治 玄霜
旅人の影を重ねし泉かな 成瀬正俊(ホトトギス)
旅人の額あかるき泉かな 小川軽舟
旅人の手を浸しゆく泉あり 丸山 麻子
猟人が示しし泉つめたしや 成田千空 地霊
緑わく夏山陰の泉かな 蓼太
緑蔭のいづみの草にしづむ花 石原舟月 山鵲
緑蔭の奥かがやきて泉湧く 内藤吐天 鳴海抄
緑泉に老の手浸す沁むことょ 山口草堂
林中にわが泉あり初茜 小澤 實
霊泉に散る風花のうすみどり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
霊泉の味の濃かりし照紅葉 安藤 節
連歌師の名を負ふ泉柳散る 久保田珠生
連翹の花にとどろくむなぞこに浄く不断のわが泉あり 山田あき
露のスラムの夜が昼となる泉の声 赤城さかえ句集
老鴬の啼くねに鎮む山泉 飯田蛇笏 椿花集
老農は鎌で泉を飲みにけり 安井浩司 汝と我
和へくれぬ泉に浸し置きし独活を 大野林火
蕨丈け泉がうつす雲の冷え 西村公鳳
腕時計外す泉の底得んと 河野南畦 『風の岬』
凭れゐて謫居の如し泉殿 木村蕪城
曼珠沙華智慧の泉の澄むところ 飯田龍太
孵で水の泉に遇ひぬ旅の果 沢木欣一
寫り来し泉はすでに夜のもの 中原道夫
巒霽れてちる花に汲む泉かな 飯田蛇笏 山廬集
毬つく子二人泉に春兆す 町田しげき
祀りある泉の神も門邊なる 橋本鶏二
罐詰を泉に囲ふ郁子の花 篠田悌二郎
蓼は穂に霧ふる泉澄みにけり 西島麥南
蜻蛉生る朝の泉は息ひそめ 山田弘子 螢川
螢とぶや泉石ひろき庭の面 高橋淡路女 梶の葉
袂なきことつまらなき泉かな 正木ゆう子
迸らずに滾るる泉を子安神 平井さち子 鷹日和
邯鄲や叢中泉あるごとし 羽部洞然
霙れ空泉のいろに雲剥がれ 石原八束 空の渚
靄明りして十三夜泉鳴る 吉野義子
饒舌の彼奴を泉の辺に置くな 吉田未灰
鶺鴒の叩く泉石序ありけり 篠塚しげる


泉 補遺

「おはよう」を胸が噴き出す泉の辺 林翔 和紙
「お日さん」と日を称ぶ子等と泉辺に 中村草田男
あたたかき血を思ひけり初泉 石田勝彦 百千
いづみ千年湛ふ白きは姫辛夷 及川貞 夕焼
いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥 天馬
うたかたの命泉に充満す 中村草田男
うつくしく泉毒なる螢かな 飯田蛇笏 霊芝
うつぶせに落椿泛く山泉 飯田蛇笏 白嶽
うつむきて尾のある形泉飲む 右城暮石 虻峠
うつろひて蝋燭すすむ泉かな 阿波野青畝
うなだれの馬待つ 廃墟や 泉や 秋 伊丹三樹彦
おほばこの花は穂をなし泉の辺 清崎敏郎
お大師のお杖の泉みづすまし 飴山實 句集外
かがまりて水皺したしき泉かな 日野草城
かつて矢尻を研ぎし泉の神隠し 橋閒石 風景
からまつのうつる泉に雷匂ふ 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
かりそめに板屋かけたる泉かな 阿波野青畝
くもりなき秋の泉を誰も汲まず 上田五千石『天路』補遺
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
この冬のもうゆげを吐く泉かな 阿波野青畝
しぐれより霰となりし山泉 森澄雄
しづめたる食器泉の辺に読める 橋本多佳子
しんしんと泉わきけり閑子鳥 正岡子規 閑古鳥
せきれいに夕あかりして山泉 飯田蛇笏 山廬集
せきれいの叩く泉石ひきしまり 阿波野青畝
そのことば森の泉ですすぎ来よ 平井照敏
そよ風やしきりに湧ける夕泉 日野草城
たぎりたぎる坩堝のさまの泉口 中村草田男
たちよれるものの朝影山泉 飯田蛇笏 椿花集
つくばねや泉のごとく竹酒鳴る 角川源義
つまだちの白樺ばかり夜の泉 上田五千石 森林
とくとくと泉脈うち月くらし 鷲谷七菜子 銃身
とくとくの泉に 鳴らす 跪坐の喉 伊丹三樹彦
どの石も坐昧にかなふ泉かな 阿波野青畝
なやらひの夕影おとす泉坂 角川源義
のぞきこむ寒の泉の抜け道を 平井照敏
はしりもて杓しりぞきし泉かな 阿波野青畝
はしる鮠こごみ見るなり泉殿 阿波野青畝
はつあきを石田いづみに逝かれけり 山田みづえ 草譜
はつ蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏 春蘭
はなやかに秋空うつる山泉 飯田蛇笏 春蘭
はなやかに秋空ふかき山泉 飯田蛇笏 心像
ひざまづき海女目を洗ふ泉かな 上野泰 春潮
ひとり奏でてわがきれぎれの遠泉 加藤秋邨
まんさくや鯉重なりて山泉 森澄雄
みほとけに泉水の冬青みどろ 伊丹三樹彦
もりあがる泉の歓喜汲みて飲む 平井照敏 天上大風
やはらかく擁く唇に泉噴く 飯田龍太
やみがての夕立の泉くみにけり 高野素十
ゆるき歩の父子登攀者に泉の穂 能村登四郎
ろろろろと喫泉噴かす厄日かな 上田五千石『琥珀』補遺
わが影を金のふちどる泉かな 野見山朱鳥 天馬
わが掬めば泉涸るゝか罪数多 鈴木真砂女 夏帯
アルミ貨透く噴泉の底 浮浪の午后 伊丹三樹彦
ゲーテもここにシルレルもここに泉湧く 山口青邨
サングラス泉をいよよ深くせり 水原秋櫻子 晩華
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり 山口青邨
一とめぐりして三十歩泉かな 高野素十
一と枝の葉を千切りあひ泉に投ぐ 中村草田男
一人ゐて泉のほとり風つどふ 相馬遷子 山国
一掬の泉のほかは考へず 鷹羽狩行
一族の墓乾く泉遠く遠く 橋本多佳子
一泉一石昔ながらの桜散る 内藤鳴雪
一点の渦震へをる泉あり 阿波野青畝
一王国寒の泉を掌に掬ぶ 角川源義
三本の杉を神とす泉湧き 山口青邨
不語よ泉辺妻の「結び笑」 中村草田男
中年の顔奪はるる泉かな 角川源義
五指五箇の意思もつ泉に漬かり 橋閒石 無刻
亡きひとの数この家の自流泉 山口誓子
人影を許さず湛ふ泉かな 清崎敏郎
人栖めば泉のきめも密になる 右城暮石 句集外 昭和三十五年
人獣くはしく彫りし泉かな 阿波野青畝
今日生くる不思議泉の湧く不思議 林翔
仔鹿ゐて泉に青き闇溜まる 野澤節子 八朶集以後
仲間さがす 森の泉で遅れをとり 伊丹三樹彦
何に赴く泉の水の奔り出す 石田波郷
何もかも丸太のままや泉殿 阿波野青畝
修羅の貌うつし泉を暗くする 小林康治 玄霜
傾く日雪の下なる泉鳴り 相馬遷子 雪嶺
光りひろげ雪の泉の朝日子よ 大野林火 白幡南町 昭和三十年
児が掬ふ泉菲力な父の前 佐藤鬼房
円き泉二十年来一宣言 中村草田男
円匙・鶴嘴泉辺の葛無慙なり 能村登四郎
冬の旅喫泉あふれゐるを飲む 橋本多佳子
冬の森旧知のごとく泉噴く 相馬遷子 雪嶺
冬も湧くたしかな泉夜明け近し 佐藤鬼房
冬も湧く泉を山の音としぬ 鷹羽狩行
冬寧く故旧の泉聴くばかり 上田五千石『琥珀』補遺
冬帽が涙の泉泣きつづく 平井照敏 天上大風
冬木の芽泉汲みたる夢より醒め 藤田湘子
冬眠の夢の端に鳴る山泉 上田五千石『天路』補遺
冷泉にしぼりし夕オル眼をひやす 山口誓子
冷泉に浸しハンカチうすきかな 右城暮石 句集外 昭和三十九年
冷泉の魚下界より吾は来し 山口誓子
冷泉を温泉と呼ぶ恵方村 阿波野青畝
凝然と葛餅はあり自流泉 山口誓子
凧のうなり山中の泉へかよふ 大野林火 冬青集 雨夜抄
初日射す嬰児泉の如く泣く 有馬朗人 母国
初泉五穀作りを安らげぬ 平畑静塔
初風の海や棕櫚ある泉澄む 中村草田男
刻々と天日くらきいづみかな 川端茅舎
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
千年の泉ごぼりとたなごころ 加藤秋邨
口つけて泉うごかす小太陽 秋元不死男
口つけて秋意こもごも山泉 飯田龍太
古る嶺もふるき泉も雪ふれり 飯田龍太
古泉水居沈むいもり動くなし 松本たかし
吾子の上妻が言ふ間も泉湧く 中村草田男
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
命の過半は過ぎぬ泉と日へ祈る 中村草田男
哄笑す泉に浸けし顔あげて 岡本眸
唇歯没して馬や音なく泉吸ふ 中村草田男
啄木鳥に泉の水輪絶ゆるなし 水原秋櫻子 玄魚
啓示乞ふ泉の面にくちづけて 上田五千石 田園
喫泉に口あまやかす雪のなか 桂信子 女身
喫泉に爪立ち童女 晩夏の森 伊丹三樹彦
喫泉に顔伏せてゐて花菜照 岡本眸
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ 林翔 和紙
喫泉のピュッと頬打ち 震災忌 伊丹三樹彦
喫泉の女うかがふ仔蟷螂 燕雀 星野麥丘人
喫泉の把手が敏感少女等に 右城暮石 上下
喫泉をむさぼりて子の鼻濡れぬ 日野草城
喫泉飲む疲れて黒き鳥となり 西東三鬼
噴泉の裸女の羞恥に雪墜るか 下村槐太 光背
国有林泉は杣が私す 鷹羽狩行
地にちらばり蟻が泉の辺にも来る 右城暮石 句集外 昭和三十年
地に出づる音よろこべる泉かな 野見山朱鳥 荊冠
地獄とは泉源のこと丑湯治 阿波野青畝
増えも減りもせずに泉の湧き流る 右城暮石 句集外 昭和三十四年
夏浅しラジウム泉に臍下透け 上田五千石 琥珀
夕影のしぬびやかなる泉かな 日野草城
夕日低し冬喫泉に身を折れば 岡本眸
夕明り水輪の見ゆる泉かな 日野草城
夕立に濁らぬ泉町中に 右城暮石 句集外 昭和三十九年
夕蝉よ泉いちにち水を練り 鷹羽狩行
夕闇 閉門 音して受洗の泉は在る 伊丹三樹彦
夜の厨こほろぎが涌く泉なす 山口誓子
夜の噴泉わが恋畢りたりと彳つ 安住敦
大年の注連新しき杣泉 森澄雄
大御心斯くありとこそ泉涌く 阿波野青畝
大旱や泥泉地獄ふつふつと 山口誓子
大杉の根を抱き込みし泉かな 右城暮石 天水
大石臼のさまの底より湧く泉 中村草田男
大風の藪如月の泉坂 岡井省二 山色
天つ日のふとかげりたる泉かな 富安風生
天も地も泉のなかに声はして 高屋窓秋
天下第三の泉の水の茶を賞づる 大野林火 月魄集 昭和五十五年
天日の徹る冬日の山泉 飯田蛇笏 家郷の霧
天日の遮ぎられをる泉かな 清崎敏郎
天日をしづめし泉龍の玉 森澄雄
天日無冠仰ぎて詩友と泉辺に 中村草田男
女は身重たし泉飲む時も 右城暮石 句集外 昭和四十一年
女人浴泉百囀りの影すなり 松本たかし
女来て男来て泉あふれをり 村山故郷
妻と来て泉つめたし土の岸 中村草田男
妻の母独り居泉に胡瓜浮べ 香西照雄 対話
子ども失せ天神さまの泉かな 飯島晴子
子七人捨てて去る母泉辺に 金子兜太
守一の泉なるべし納戸に日 佐藤鬼房
安産なれ大泉中小泉涌く 中村草田男
家の泉鶯ひそむ緑映す 香西照雄 対話
家より十歩泉のありて朝の蝉 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
寒明けの幣の浸りし泉かな 飯田蛇笏 山廬集
少女に夏泉のやうな鏡持ち 岡本眸
少年の去りし石踏み泉汲む 石田波郷
尾長翔ぶ波郷の泉訪ふわれに 藤田湘子 神楽
屋上の噴泉は凍のもどらずに 山口誓子
山ふかくあふるる泉櫻ちる 飯田蛇笏 家郷の霧
山椒喰に明けぬとしるす浴泉記 水原秋櫻子 緑雲
山泉つるくさはやく黄葉せり 飯田蛇笏 春蘭
山泉冬日くまなくさしにけり 飯田蛇笏 家郷の霧
山泉常山木の揚羽しばらくは 飯田蛇笏 家郷の霧
山泉杜若実を古るほとりかな 飯田蛇笏 霊芝
山泉橿鳥蔓の実を啄めり 飯田蛇笏 椿花集
山泉汲むや朝の日幾すぢも 佐藤鬼房
山泉顔をうつして掬みにけり 森澄雄
山深く輪飾のある泉かな 能村登四郎
山眠る西日泉の眼と別れ 飯田龍太
山行へ玉の泉を喫し去る 上田五千石『天路』補遺
岳麓は泉わくとこ農易し 高浜年尾
島人の永久に掬むべき泉かな 上野泰
崖泉玉とたばしる太郎杉 角川源義
嶺に旭のまろぶよ森の凍泉 角川源義
巒霽れてちる花に汲む泉かな 飯田蛇笏 霊芝
川音を遠ざかり来て泉の声 右城暮石 句集外 昭和三十六年
差入れて直指水底わが泉 中村草田男
己れ恃む泉の中に五指ひらき 岡本眸
帰り来ずや亡父母山より泉より 中村草田男
庭石の泉の如くしぐれけり 阿波野青畝
延命の泉とくとく掌に受けん 角川源義
引きすてし芹泛く雪の泉かな 飯田蛇笏 心像
心身の離合泉のこゑ聴けば 下村槐太 天涯
思ひ出の誰もすこやか草泉 岡本眸
悪占はためらひ沈む泉かな 阿波野青畝
手をやれば笊を蹶りをる泉かな 阿波野青畝
抜けし歯を捨てに泉を探しに行く 秋元不死男
拷問の池泉残れり冬の蝶 松崎鉄之介
指入れて齢の沁みる山泉 秋元不死男
掬はれてなほ湧きつづく山泉 鷹羽狩行
掬びたる指々にこゑ山泉 鷹羽狩行
握手いづれも大き掌ばかり泉湧く 野澤節子 雪しろ
文芸の人等会する泉かな 山口青邨
新樹光泉あふれてより昏し 鷲谷七菜子 銃身
旅の泉に手洗ひをるや妻いかに 小林康治 玄霜
旅三日泉を慕ふこころ湧く 上田五千石『田園』補遺
旅人に中世の町泉わき 山口青邨
旅人よ 憩えと 泉の岩煙草 伊丹三樹彦
日のはだら泉より川躍り出づ 中村草田男
日向に金泉日陰に銀泉茅舎遥か 中村草田男
日盛りの間歇泉の一つ噴く 高野素十
日矢の中泉にひたす櫛ちさき 鷲谷七菜子 黄炎
日脚伸ぶ椨の大樹の根に泉 松崎鉄之介
旧泉や彼方は蒼く此処は透き 中村草田男
早乙女のすぎし泉のそば通る 百合山羽公 故園
早乙女の笠や泉のうへを過ぎ 百合山羽公 故園
昏さたのし泉の底を手にさぐる 大野林火 雪華 昭和三十三年
昏らみたる泉にひたすほたるかご 飯田蛇笏 春蘭
春の駅喫泉の穂のいとけなし 西東三鬼
春夜浴泉翼のごとく腕ひろげ 山口青邨
春山に間歇泉の今噴くと 高野素十
春泉に立ち春滝は見にゆかず 安住敦
春遅し泉の末の倒れ木も 石田波郷
昼のおぼろ泉を出でて水奔る 西東三鬼
智恵子の泉凍る前にて滴れり 能村登四郎
曼珠沙華咲ける泉も雲の中 野見山朱鳥 荊冠
曼珠沙華智慧の泉の澄むところ 飯田龍太
月出でて泉の空に航路あり 廣瀬直人
朝かげに水蜘蛛はしる秋泉 飯田龍太
朝日さす秋の泉に跼みけり 飯田蛇笏 春蘭
朦朧の身を運びたる泉かな 波多野爽波
木々枯れぬあつき泉は野に湧ける 山口誓子
木の実落つ泉の空の深き日ぞ 石田勝彦 雙杵
木は蟠根竹は錯節泉平ら 中村草田男
木もれ日を遊ばせてゐる泉かな 佐藤鬼房
束ね髪泉に梳きし櫛目なる 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
松の葉散れり泉水の青き空 尾崎放哉 大正時代
松立てて鯉にぎにぎし門泉 森澄雄
松風のひびく泉の底に貌 桂信子「草影」以後
林檎浮く無雑作 泉番は少女 伊丹三樹彦
枝ひくく橿鳥とまる泉かな 飯田蛇笏 春蘭
枯山に薬また飲む泉の音 飯田龍太
枯葎とくとくと鳴る坂泉 角川源義
枯野鴉が涸れし泉の水飲みに 安住敦
桜濃に雨乞ひ泉錆ふかし 角川源義
梅恨あり駅の喫泉に口し彳ち 安住敦
梅雨の喫泉渇き求むにやや低し 草間時彦 中年
森の中酒の泉あり遅桜 山口青邨
森の喫泉詩を泛べては唇づける 能村登四郎
棲むものの孤独月牙の泉あり 稲畑汀子
椿林不増不滅の泉湧く 山口誓子
椿落ち眼ざむる泉波郷の日 角川源義
極月の泉夕日を得てゐたり 廣瀬直人 帰路
榛の枝を山蛤おつ泉かな 飯田蛇笏 霊芝
樹々とその日輪うつる泉かな 山口誓子
死の灰や砂噴き上げて春の泉 西東三鬼
死火山麓泉の声の子守唄 西東三鬼
残雪や狩くら神の泉鳴る 角川源義
水なき喫泉落葉了へたる一樹下に 草間時彦 中年
水の穂をみてぐらと揺り泉湧く 中村草田男
水を読むかに泉辺の老耽読 中村草田男
水打つて泉湧寺道朝のひま 村山故郷
水温む泉に遠き汲置きも 鷹羽狩行
水面おだやかならず泉が湧きつづけ 津田清子 礼拝
水飯の残りを捨てる泉かな 正岡子規 水飯
水飲めと 泉映りの微笑神父 伊丹三樹彦
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 霊芝
汚染源探す人あり泉に在り 香西照雄 素心
汝が病めば泉は雪に埋れゆく 野見山朱鳥 運命
汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉 飯田蛇笏 霊芝
沙の膚小石の堆(つかさ)泉湧く 中村草田男
沙丘の泉小鳥の浴み尾もひろげて 中村草田男
沙羅散つて雨の上りし宝泉寺 燕雀 星野麥丘人
泉、夜が朝となりてあふるる 荻原井泉水
泉ありあかとき人ひとり居る 荻原井泉水
泉ありこの神のあり古事記あり 高野素十
泉あり少年鮒を釣りゐたり 細見綾子
泉あり腹這うて口つくべし 荻原井泉水
泉あれば拝みて憩ふ白遍路 大野林火 飛花集 昭和四十八年
泉あれば熱ありて鴬の国 鷹羽狩行
泉くむ人の婆娑たる秋の影 飯田蛇笏 春蘭
泉くもり父情がきざむ水の皺 能村登四郎
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泉にしばし馬蹄のしぶき犬のしぶき 中村草田男
泉にふかく二犬身を漬くぶつちがひ 中村草田男
泉に入れ胸腹熱き碧蜥蜴 橋本多佳子
泉に棲みつき退屈のあめんぼう 津田清子
泉に浸け少年の脛短か 上田五千石『田園』補遺
泉に笑声本来潔くば誰洗はむ 中村草田男
泉のつめたさ掌の上掌の上かそかなり 赤尾兜子 蛇
泉の中歯締め唇締め乙女佇つ 中村草田男
泉の円一方切つて流れ出す 橋本多佳子
泉の声期して歩めば到るものよ 中村草田男
泉の底に一本の匙夏了る 飯島晴子
泉の底明し顔浸け眼ひらけば 橋本多佳子
泉の底明王怒るさびしさよ 角川源義
泉の水泡いきづき豊かなる日なり 中村草田男
泉の濯ぎ女襞ふかぶかと片水輪 中村草田男
泉の穂咽喉の奥うつごぼごぼと 加藤秋邨
泉の穂族が授けし暇なる 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
泉の詩火薬の匂ひほのかにす 高屋窓秋
泉の辺後れ来し者らつどふなり 小林康治 玄霜
泉の辺水気の中に常若草 中村草田男
泉の際一個老醜の顔うかべ 平畑静塔
泉の面場(もにわ)かぎりつつ泉波 中村草田男
泉の面月訪ひ月色しのび寄る 中村草田男
泉の音つゝましき故世に貽る 飯田龍太
泉の音山姥恋し母恋し 中村草田男
泉はなきかカイバル越えの弱法師 加藤秋邨
泉は涸れず倒れ木のまま冬を越す 大野林火 青水輪 昭和二十六年
泉への横径に入りかへり来ず 上田五千石『田園』補遺
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷
泉へ誦する「父母忌みの歌」父母恋し 中村草田男
泉まで幼霊に手をひかれゆく 佐藤鬼房
泉やさし旅果ての掌は泳がせて 小林康治 玄霜
泉より数歩たちまち烈日下 岡本眸
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子 礼拝
泉わく苔むす熔岩の間より 高浜年尾
泉をば夜とならしめて闇ぞ護る 中村草田男
泉一つ水楢林こゑもなし 石田波郷
泉中水湧く水玉もぶれあひ 中村草田男
泉久し呪はんとして遂には祝ぐ 中村草田男
泉亭へつながる小径富貴草 飴山實 句集外
泉光りて走せ去る少女を祝福す 草間時彦 中年
泉原や皆夕ぐれの菌山 高野素十
泉吸ひ紅髪を獅子のごとぬらす 古舘曹人 砂の音
泉吸ふ草木と同じ生を享け 平畑静塔
泉喫んでにんげん駱駝顔同じ 加藤秋邨
泉噴くいま天山は雪解にて 加藤秋邨
泉噴く光りを肩の麦袋 橋閒石 風景
泉噴く火の山の胎とほり来て 津田清子
泉声の絶えしほとりや寒施行 水原秋櫻子 殉教
泉声の訥々たるをもてなさる 上田五千石『琥珀』補遺
泉声や小梨の花もたそがれて 相馬遷子 山国
泉声をしづめて澄みに徹しけり 上田五千石『琥珀』補遺
泉変らず集へるものも変らずに 大野林火 飛花集 昭和四十四年
泉守る蛇いて東一華咲く 金子兜太
泉居てこの山裾に荒星呼ぶ 金子兜太
泉底にしきなす木の葉木の実かな 飯田蛇笏 山廬集
泉底見ゆ蟹とはなるる泡ひとつぶ 加藤秋邨
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
泉掬むひかりを咽喉にはしらせて 平井照敏 天上大風
泉映りを はばかる齢か 竹の秋 伊丹三樹彦
泉春の音にこどもの影揺れて 大野林火 青水輪 昭和二十六年
泉暗し古き難破の落椿 三橋敏雄
泉殿に朗詠うたふ声更けぬ 正岡子規 泉殿
泉水に顔をうつすや花曇り 飯田蛇笏 山廬集
泉水の雪やむ蘚に波うてり 飯田蛇笏 心像
泉汲む指のこごゑはほぐれゆき 平畑静塔
泉湧きあふる歓喜は静かならず 橋本多佳子
泉湧きゆがみて戻る鱒の列 水原秋櫻子 晩華
泉湧くかぎり信心絶ゆるなし 上田五千石『天路』補遺
泉湧く乳房ビキニにかくれたり 平畑静塔
泉湧く冬山赤面症の君に 金子兜太
泉湧く周辺嗅ぎて猟の犬 右城暮石 句集外 昭和三十一年
泉湧く女峰の萱の小春かな 水原秋櫻子 葛飾
泉湧く暗さいつまで見てゐても 岡本眸
泉湧く暗さイエスは十字架に 野見山朱鳥 荊冠
泉湧く青銅古き大鉢に 中村汀女
泉滾々悔いても消ゆる罪ならず 鈴木真砂女 夏帯
泉滾々許されしごと佇ち上る 鈴木真砂女 夏帯
泉澄みて水働きの底を見す 上田五千石『琥珀』補遺
泉番そこはかとなく涙ぐむ 平畑静塔
泉番歩みてものをこそ思へ 平畑静塔
泉白し木の間高みを山越人 中村草田男
泉石と 冷え通いあう 孤座の膝 伊丹三樹彦
泉石にきて禽せはし秋の影 飯田蛇笏 春蘭
泉石の同工異曲水すまし 百合山羽公 樂土
泉石の在処かなしと栖み給ひき 伊丹三樹彦
泉石をはづるる滝や青嵐 飯田蛇笏 山廬集
泉石を外づれる滝や青嵐 飯田蛇笏 霊芝
泉見て鯉になりたき老の顔 森澄雄
泉辺に日のありどころ妻問へり 中村草田男
泉辺に発意か無為か莚小屋 中村草田男
泉辺に雪の通ひ路けふつかず 上田五千石『琥珀』補遺
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 中村草田男
泉辺の家消えさうな子を産んで 飯島晴子
泉辺は色なき風の湧きどころ 上田五千石『琥珀』補遺
泉辺は藤蔓掛けて直き木々 中村草田男
泉辺へ生きものすべて独り来る 中村草田男
泉辺やここらの父母の足の迹 中村草田男
泉辺や一遍路過ぎそれつきり 岡本眸
泉辺や報命のごと風到る 中村草田男
泉辺や声音ふくらに乙女どち 上田五千石『琥珀』補遺
泉透く 青かまきりを頭まで沈め 伊丹三樹彦
泉面に湧き到るものやはらかし 上田五千石『田園』補遺
泉飲む仔馬に風の茨垂れ 飯田龍太
泉鳴る修道院は眠るによし 平畑静塔
法力の泉湧かしめ蛭封ず 右城暮石 天水
洗ひ積む大根いづみ溢れをり 及川貞 夕焼
洗骨の泉にふるへ秋の蝶 飯島晴子
活眼や肉眼泉に洗ひつる 中村草田男
浦上や涙喜捨して泉湧く 平畑静塔
浴泉の腕は翼花の雲 山口青邨
浴泉やひた降る雪を唇に吸ひ 松本たかし
浴泉や夜のまはりに林檎の実 森澄雄
浴泉や青嵐して箒川 水原秋櫻子 葛飾
海神の膂力あまりて噴く泉 林翔 和紙
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
深山雨に蕗ふか~と泉かな 飯田蛇笏 霊芝
渇癒す泉に葬の顔写し 鈴木真砂女 夏帯
測量手にごして去りし泉の辺 能村登四郎
湧きゆらぐ泉が昏し大夕焼 右城暮石 句集外 昭和三十二年
湧くあたり石菖揺るる泉かな 清崎敏郎
湧く泉白布ふはふは濯ぎをり 右城暮石 句集外 昭和三十四年
湧く泉駱駝は噛みつぶすごとく喫む 加藤秋邨
湯泉の丘の頬白とまる桑の先 飯田蛇笏 椿花集
滴りは底にて泉聴いており 赤尾兜子 蛇
澄むことに一生を懸けし人の泉 中村草田男
火の山へ旅す泉に手を浸けて 津田清子 礼拝
火を焚きて美しく立つ泉番 平畑静塔
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 大野林火 青水輪 昭和二十五年
炎天の道行く泉あれば飲み 相馬遷子 雪嶺
無人とはただ己居る夕泉 中村草田男
無花果や雨余の泉に落ちず熟る 飯田蛇笏 山廬集
爛々と泉虫音にふちどられ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
爽かにたちどまりたる山泉 飯田蛇笏 家郷の霧
牛去りし泉に赤し九輪草 相馬遷子 山国
猟の音雪にきこえて山泉 飯田蛇笏 椿花集
玉鏡遺れたまへる泉かな 日野草城
琅*かんの泉を嗚らす大柄杓 角川源義
瑠璃鳥鳴くや飛泉こもごも霧となり 水原秋櫻子 旅愁
生きものの影入るるたび泉哭く 飯島晴子
生きるから水の中より泉の音 藤田湘子 てんてん
生はひとたび一日は泉湧くままに 斎藤玄 雁道
生前も死後も泉へ水飲みに 中村苑子
生家の肌夜も泉のあふるる音 香西照雄 対話
町びとの麦茶を冷す泉あり 石川桂郎 高蘆
町中や泉あふれてもの晒す 山口青邨
白桔梗の根も売りゐたり泉辺に 細見綾子
白泉のもの朽縄も唖蝉も 佐藤鬼房
白蛾寝て泉のほとり一夜泊つ 山口青邨
百合しばし消入りしわむ泉かな 阿波野青畝
百合影す径を泉へ行かんとす 大野林火 青水輪 昭和二十三年
盆過ぎし天魚ましづか村泉 岡井省二 鹿野
盗伐の斧を泉に浸けて置く 鷹羽狩行
目のあたり浴泉群女深雪晴 松本たかし
眼つむれば泉の誘ひひたすらなる 橋本多佳子
短日や泉汲まんとまづ拝し 星野立子
石泉の灼けて秋意を語らざる 阿波野青畝
砂金つきあげ突き上げて山泉 鷹羽狩行
祖父となりし掌喫泉くすぐるよ 中村草田男
秋の夜や泉のごとく酒鳴らす 角川源義
秋の暮浅溲瓶泉のこゑをなす 石田波郷
秋耕のみち通じたる山泉 飯田蛇笏 春蘭
秋耕の遠くよりきて泉掬む 飯田蛇笏 春蘭
秋蚊出て暮るゝ泉の端濡らす 小林康治 玄霜
穂芒に熱泉樋を走り漏る 松本たかし
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
競馬負け顔じゆう濡らし契泉のむ 津田清子
粉雪の眉辺泉辺哀れなり 永田耕衣
紅葉照る双つ泉を姉妹とも 上田五千石 風景
細長き泉に着きぬ父と子と 飯島晴子
紺青の蟹のさみしき泉かな 阿波野青畝
終生まぶしきもの女人ぞと泉奏づ 中村草田男
給油着陸 農耕国の喫泉飲む 伊丹三樹彦
絶えず一旦泉の面盛りあがる 中村草田男
縄文の杉に泉声すさびけり 阿波野青畝
翠光の浴泉たばる走梅雨 上田五千石『天路』補遺
老い母は噂の泉柿の秋 草間時彦 中年
老斑の手を差し入れて泉犯す 西東三鬼
老鴬の啼くねに鎮む山泉 飯田蛇笏 椿花集
聖書にもありき泉の固拳 鷹羽狩行
背籠(たんがら)山杉間の泉暗すぎる 佐藤鬼房
腹背に鵙喫泉に胸濡らす 飴山實 おりいぶ
膝つたふ静かな力泉湧く 桂信子 晩春
臘八や石泉が奏づ美妙音 村山故郷
自から泉への道栗拾ふ 平畑静塔
花アカシヤ泉のこゑののぼりゆく 石田勝彦 雙杵
花火垂る夜の泉が声あげて 小林康治 玄霜
芽吹く樹下喫泉ありて濡れどほし 岡本眸
苔厚き長枝の下の泉湧く 中村草田男
茨の実泉に映りかつこぼる 水原秋櫻子 霜林
草に湧く泉への道古く細く 右城暮石 句集外 昭和三十四年
草原の泉なりけり鳴く蛙 石塚友二 玉縄抄
草泉夕やけ退けば昏るるのみ 岡本
草泉鳴く蟲ありてながれけり 飯田蛇笏 心像
荒れなぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏 春蘭
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實 少長集
萌ゆる野の泉に杖を置かれけむ 藤田湘子 神楽
萱わけて馬の来てをる泉かな 水原秋櫻子 葛飾
萸泉への足袋 穿かす 補聴器 眼鏡不要 伊丹三樹彦
落葉ふみ泉の神の菖蒲谷 角川源義
葉桜の下の喫泉音絶えず 清崎敏郎
蓋ありて明暗わかつ泉かな 阿波野青畝
蕎麦冷す水も泉の深大寺 上田五千石『天路』補遺
薊ぽつかり泉の面を霧流れ 大野林火 雪華 昭和三十四年
薔薇投げて泉一瞬中世に 山口青邨
薙ぎ草のおちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 山廬集
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 霊芝
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
藩公の茶を佗びられし泉かな 阿波野青畝
蘇鉄めぐる泉に濡れし目鼻のまま 橋閒石 風景
蛇笏逝き蟲の音沈む山泉 秋元不死男
蛍に汲めども尽きぬ泉あり 鈴木真砂女 紫木蓮
蜑等の命と讃ふ泉かな 清崎敏郎
蜥蜴青く睦むも涸れし泉の底 橋閒石 無刻
蝉しぐれ樹々は泉石かき抱き 大野林火 冬雁 昭和二十二年
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋櫻子 蓬壺
行者宿泉に廻り甜瓜 森澄雄
裸身、巌をつたうて泉には来たり 荻原井泉水
角を追ふ野に月影の泉かな 高屋窓秋
詩の泉さらさら流る爆心地 高屋窓秋
詩心かなし泉の響滾々と 山口青邨
諏訪日は泉の色の暮春かな 廣瀬直人
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 中村草田男
諸葛泉に大根洗ひて葉を散らす 松崎鉄之介
謝すごとく膝折り泉に口つけて 鈴木真砂女 夏帯
谷底の癩者の家の泉など 香西照雄 対話
赤き馬車泉に掬める少女待つ 林翔 和紙
足浸ける泉徹底して透けり 津田清子 礼拝
透明な泉はぬくし病父に冬 飴山實 おりいぶ
過去見るかに老婆泉を長眺め 橋本多佳子
遷化てふすずしきことば泉鳴る 鷲谷七菜子 一盞
野の泉鳥わたるやと来て空し 水原秋櫻子 蘆雁
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな 原石鼎 花影
長き柄の杓ながれたる泉かな 阿波野青畝
長路来て泉さそへば足浸ける 橋本多佳子
間遠に噴く泉下闇風落ちて 鷲谷七菜子 銃身
闇美し泉美し夏祓 高野素十
隙を充たす三角泉幾沙丘 中村草田男
障子に泉の音は月になるらしく 荻原井泉水
隠し湯の跡池泉なす蝉時雨 松崎鉄之介
雀来てぬくし喫泉に石の屋根 飴山實 おりいぶ
雙燕をしのぶ信濃の浴泉記 飯田蛇笏 家郷の霧
雨のなか流離(さすら)う色の泉あり 金子兜太
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雪ちつて芹生の涵る藪泉 飯田蛇笏 心像
雪の中膏(あぶら)の如き泉かな 川端茅舎
雪の川泉のごとく湧き流る 山口青邨
雪の懸巣霊泉由来つたへけり 水原秋櫻子 殉教
雪を待つ泉一円空暗し 野澤節子 未明音
雪中の泉に真夜の冥さあり 平井照敏 天上大風
雪山の泉の鯉を苞にせる 水原秋櫻子 蓬壺
雪片蔭ふかき泉の満を持す 飯田龍太
雪解の泉飲まむとすれば天うつる 橋本多佳子
雲軽し泉の音は草透きて 草間時彦 中年
震災忌老婆喫泉抱へ飲む 岡本眸
霊池とて四方に泉湧く音よ 川端茅舎
霊泉にシヤボンつかふや明易し 前田普羅 普羅句集
霊泉に冷して酒は甘露水 上田五千石『琥珀』補遺
霊泉に鯉のけはひのして見えず 鷹羽狩行
霊泉の疑ひもなく温みけり 鷹羽狩行
霊泉や銀杏こつと落ちころげ 佐藤鬼房
霞みけり泉を抱く森ふたつ 大野林火 飛花集 昭和四十七年
霰打つ音のままなる山泉 飯田龍太
露の楽夜風に泉汲みをれば 飯田龍太
青嵐泉に似たる鏡拭く 山田みづえ 木語
青松葉見えつゝ沈む泉哉 正岡子規 泉
青梅のはねて泛く葉や夕泉 飯田蛇笏 山廬集
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規 泉
静臥の胸泉見て来し動悸せり 石田波郷
静臥飽く流泉のこゑ蜂のこゑ 橋本多佳子
音たてて泉湧くなり枯山に 水原秋櫻子 霜林
頭脳より噴上げてをる泉あり 阿波野青畝
顔ぢゆうに喫泉当つる青嵐 岡本眸
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
顔ゆれて血よりつめたく泉澄む 鷲谷七菜子 銃身
顔浸けしあとの泉の明るしや 鷲谷七菜子 黄炎
風に映え泉におそき山ざくら 飯田蛇笏 白嶽
風も記憶も亡ぶよ泉飲みすぎて 秋元不死男
風邪声とおもう泉の湧く音を 金子兜太
飛泉あり打ちてしぶける若楓 水原秋櫻子 殉教
飛泉から光風磔死の神色よ 香西照雄
飯粒(いひぼ)四五がひらききつたり家泉 中村草田男
飴なめて舌の泉よ枯るる中 鷹羽狩行
養泉寺は皐月曇りに糸すすき 佐藤鬼房
高草に雲の臭ひや湧く泉 原石鼎 花影
鱒棲まはせ神の泉の冬を涸れず 大野林火 雪華 昭和三十八年
鱒秤る分銅蒼し山いづみ 伊藤白潮
鳥が来る泉の塵は花うるし 能村登四郎
鴨足草雨に濁らぬ泉かな 飯田蛇笏 山廬集
鴬にくつくつ笑ふ泉あり 西東三鬼
黄塵や銭を泉の露店板 百合山羽公 寒雁
黄昏に似てさにあらず泉殿 阿波野青畝
黄鶺鴒泉に舞へる蛾を獲たり 水原秋櫻子 玄魚
黒土退いて白沙出でぬ新泉 中村草田男
黒富士の裾野泉に唇を触れ 鷹羽狩行
龍泉に沈めし弗貨一円貨 右城暮石 句集外 昭和四十七年
龍泉の蛇尾としてまた冬眠か 佐藤鬼房

以上

by 575fudemakase | 2017-05-17 20:11 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

清水 の俳句

清水 の俳句

清水 の例句
清水

*ぶなの根に湧く清水飲む誕生日 山形悦子
あとざまに小魚流るる清水かな 几董
あとさまに小魚流るゝ清水哉 高井几董
あやまつて清水にぬらす扇哉 扇 正岡子規
いかほどを生きしや桂清水掬む 佐藤鬼房
いつも身近に眞清水涌くを感じをり 眞鍋呉夫
ウェストン碑礎石をめぐる山清水 岡部義男
うつくしき人なほ結ぶ清水かな 備前-晩翠 元禄百人一句
うつくしや榎の花のちる清水 加舎白雄
おくつきに近くは湧ける清水かな 尾崎迷堂 孤輪
おくらばや清水に影の見ゆるまで 千代尼
おもかげや仏酒売る苔清水 樗良「雪の声」
お岩木の手水の真清水手に痛し 高澤良一 寒暑
お岩木の真清水引きて御神水 高澤良一 寒暑
お岩木の真清水大き柄杓に受け 高澤良一 寒暑
かけ出での髭をしぼりて清水かな 召波 五車反古
かけ出の髭をしぼりて清水哉 召波
かち栗に喉の乾きや山清水 清水 正岡子規
かりそめの清水なりしが祀らるる 忍月
くちすすぎ月光残す山清水 柴田白葉女
こゝに湧く清水が頼み杣夫婦 岡本秋雨路
このあたり金出るといふ清水かな 成瀬正とし 星月夜
この清水濁せば曇る御山かな 比叡 野村泊月
ころころと清水あそばせ芭蕉の道 原 裕
こんこんと砂おどらせて清水湧く 尾崎さなえ
さざれ蟹足這ひのぼる清水かな 芭蕉
さゞれ蠏足はひのぼる清水かな 芭蕉
ざざ洩りの柄杓とりあぐ清水かな 阿部みどり女 笹鳴
さらさらと石を流るゝ清水哉 清水 正岡子規
しくるゝや祗園清水智恩院 時雨 正岡子規
したたりは歯朶に飛び散る清水かな 夏目漱石 明治四十年
しろがねの指の間を洩れ山清水 檜紀代
しんかんと物すごき山の清水哉 清水 正岡子規
しんしんと鈴振るごとし清水湧く 村越化石 山國抄
すぐ裏に清水湧きゐる花の茶屋 田中冬二 麦ほこり
すさまじく清水湧くなり雨の中 増田龍雨 龍雨句集
すゝしさをこほす岩間の清水哉 清水 正岡子規
すみにけり巌下清水神代より 幸田露伴 江東集
ただ頼め内井の清水湧くかぎり 臼田亜浪 旅人
チャグチャグ鈴清水にひびき橋渡る 八牧美喜子
てのひらに喜捨享くるごと岩清水 田中康夫
てのひらに清水の重さ妹はるけし 蓮田双川
どう見ても何やら足らぬ底清水 秋色 俳諧撰集玉藻集
とくとくと清水にうつる春日哉 会津八一
とくとくの真清水化けるまで生きな 後藤綾子
とくとくの清水の甘し山ざくら 関森勝夫
とくとくの清水の末のふきのたう 吉野義子
とくとくの清水はいかに花の雲 宇佐美魚目 天地存問
ところてんの叩かれてゐる清水かな 夏目漱石 明治四十年
とめどなく時遣る清水迷ひ鳩 鍵和田[ゆう]子 未来図
トラック去る天の岩戸の清水積み 山口超心鬼
とんねるや笠にしたゝる山清水 清水 正岡子規
ななくさの春田の畦ぞ湧く清水 木津柳芽 白鷺抄
ならはしの二文づつとる清水哉 会津八一
ぬけたりな清水が本の片草履 服部嵐雪
ぬるむかと寄れは清水の氷哉 水温む 正岡子規
ねぶたくと清水な呑みそ横田山 斯波園女
ねらはれし魚の命や山清水 清水 正岡子規
のしかゝる岩を支えて清水飲む 梅木酔歩
のど下る清水いとほし霧の中 佐野良太 樫
のむよりもこぼるが早し山清水 辻桃子(童子)
はきながら草履を洗ふ清水かな 立花北枝
はらわたにひやつく木曽の清水哉 清水 正岡子規
はらわたもひやつく木曽の清水かな 清水 正岡子規
ハンカチを清水に絞る泣きしあと 津田清子
はんざきに真清水今も湧き流れ 臼田亜浪
ひぐらしの声溶けゐたる岩清水 関森勝夫
ひぐらしや京に着きすぐ清水へ 小田切輝雄
ひとり言いうて立ち去る清水かな 太祇「太祇句選後篇」
ひとり言いふて立さる清水哉 炭 太祇 太祇句選後篇
ひやつくや清水流るゝ右左 清水 正岡子規
ふく清水に砂の負け居る汀かな 高田蝶衣
ほら穴に清水の湧くをうやまへり 細見綾子 黄 瀬
またくらに白雲起る清水哉 清水 正岡子規
みなもとは権現山の清水汲む 長抉微子
みな清水ならざるはなし奥の院 井上井月
むすぶ手に翌の秋しる清水かな 五雲 五車反古
むすぶ手に翌の秋知る清水哉 五雲
もてなしの鯨はほめて清水かな 幸田露伴 拾遺
もとかしく片手に掬ふ清水哉 清水 正岡子規
よき清水あふるる音の遠くまで 金久美智子
わが影に来て影添ふや岩清水 中村苑子
悪僧の天窓(あたま)冷せし清水哉 吉分大魯
握叡の揆込んである清水哉 寺田寅彦
鮎鮓の駅の山北清水かな 野村喜舟 小石川
遺書抱へ来てこの旅の清水かな 中塚一碧樓
一ツ家の背にはしりこむ清水哉 清水 正岡子規
一筋は筧にはいる清水かな 清水 正岡子規
一隅は清水つめたき小池哉 清水 正岡子規
一言はかヘじ清水の如きあり 松瀬青々
一口に足らぬ清水の尊さよ 清水 正岡子規
一山の圧のかかりし巌清水 小原禎子
一枝は田にはしりこむ清水哉 清水 正岡子規
瓜わりの清水と申し観世音 鈴鹿野風呂 浜木綿
雲に立つ不動の像や石清水 清水 正岡子規
雲に立つ不動濡れたり石清水 清水 正岡子規
雲母搗く家のほとりの清水かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
栄華こゝに方に掬むなり岩清水 石塚友二 方寸虚実
英彦谷に沈む鐘の音岩清水 野見山智子
円空(えんく)さんにどすんどすんと山清水 中戸川朝人 星辰
円空(く)さんにどすんどすんと山清水 中戸川朝人
延命の清水汲み合ひ那智詣 有原静子
横道を行けば果して清水哉 清水 正岡子規
音して湧く冬の真清水横川谷 鷲谷七菜子
音たてゝ清水あふれをり瓜をどる 及川貞 夕焼
音立てて清水あふれをり瓜をどる 及川 貞
下駄もぬがず足を入れたる清水哉 寺田寅
我があとへ兎唇立よる清水かな 許六 俳諧撰集「有磯海」
我顔のうつりて寒き清水哉 清水 正岡子規
我宿にいかに引べきしみづ哉 蕪村 夏之部 ■ 丸山主水が、ちいさき龜を寫したるに賛せよとのぞみければ、任官縣命の地に榮利をもとめむよりハ、しかじ尾を泥中に曳んには
海底に真清水は湧き寒鮃 長谷川櫂 虚空
蟹を見て気の付く岨の清水かな 桃隣「陸奥鵆」
崖下の清水に屋根の出来にけり 比叡 野村泊月
鎧てふ重かりしもの草清水 波多野爽波 『骰子』
笠の端の清水に廻ぐる田植かな 浜田酒堂
渇すれば清水ある旅にゆきたまへ・・・碧梧桐を送る
葛を得て清水に遠きうらみ哉 蕪村 夏之部 ■ 探題寄扇武者
釜つけて飯粒沈む清水かな 清水 正岡子規
寒清水涸れず夜も落つ寂と落つ 及川貞 夕焼
汗臭き手拭洗ふ清水哉 清水 正岡子規
監獄にあたら流れ込む清水哉 清水 正岡子規
関の清水古里恋し生鰹 青雲 選集「板東太郎」
関所跡いまもいのちの清水湧く 藤岡筑邨
館めぐる清水の動脈呱々の声 成田千空 地霊
丸薬に清水をむすぶ道のほとり 清水 正岡子規
巌清水渇く咽喉をつらぬけり 山口草堂
巌清水二月の怒濤うちつくる 佐野青陽人 天の川
眼に力戻りぬ深山清水飲み 菰田晶(狩)
岩が根に湧く音かろき清水かな 井上井月(1822-86)
岩が根に湧音かろき清水かな 井上井月
岩つかみ片手に結ぶ清水哉 清水 正岡子規
岩鏡咲きかぶさりし清水かな 中村素山
岩清水きらきら受胎告知の日 丹治法男
岩清水ことばあふるるごとくなり 原 裕
岩清水ていねいに眸を洗ひけり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
岩清水ひとりじめして婆の家 冨田米子
岩清水ふるさとの姿海知らず 中川結子
岩清水一蝶さらに黄なりけり 古舘曹人
岩清水引きて名代の新豆腐 菱田トクエ
岩清水飲まるることのなき清さ 平井照敏 天上大風
岩清水雲にひかりて坊が跡 岸原清行
岩清水胸のあはひを通りけり 小檜山繁子
岩清水女跨ぎて一人占め 平畑那木(鉾)
岩清水大虎杖の葉に掬ひ 白井新一
岩清水呑みてけものの声を出す 白地恭子
岩清水別の岩から噴き溢れ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
岩清水霧立つてゐる間(はざま)かな 乙字
岩清水蝌蚪に来りてたまりけり 村上鬼城
岩藤の影は届かぬ清水かな 長谷川零余子
顔あげよ清水を流す髪の長 榎本其角
顔ふって水のうまさの山清水 河野南畦
顔ふつて水のうまさの山清水 河野南畦
顔寄せて底の穢を見し清水かな 比叡 野村泊月
顔見世の楽屋入まで清水に 中村吉右衛門
顔見世の楽屋入りまで清水に 中村吉右衛門
寄るものを山蛭呪ふ清水かな 喜谷六花「寒烟」
帰る鳥に行き違ひけり清水越 鳥帰る 正岡子規
帰省して葬ひに三度来し清水 中塚一碧樓
掬ぶ手の甲に冷えつく清水哉 清水 正岡子規
客ありて汲みに行くなる清水かな 松藤夏山 夏山句集
脚照らすひかりとなりぬ草清水 鳥居おさむ
笈あけて仏を拝む清水かな 清水 正岡子規
旧仮名遣は本仮名遣清水の音 草田男
去るに決まる家の清水を日々愛す 及川貞 夕焼
強清水母は一日影育て 原裕 青垣
強力の清水濁して去りにけり 河東碧梧桐
強力の毛脛にあたら清水哉 森鴎外
橋立の磯清水とて葭の中 西山泊雲 泊雲句集
驚きの過ぎしに汲むや家清水 中塚一碧樓
暁けきりしみづうみのいろ夏桔梗 中岡毅雄
極楽や清水の中に蓮の花 正岡子規
玉あらば玉あらひたき清水哉 江涯
玉垣の中より神の岩清水 藤田 静古
桐掩ふ庭の清水に塵もなし 清水 正岡子規
近道によき事ふたつ清水かな 千代尼
近道を来て日の足らぬ清水かな 千代尼
金銀の気を吹く山の清水哉 石井露月
金時も熊も来てのむ清水哉 正岡子規
銀山や真冬の清水たばしりぬ 辻 桃子
駒鳥やまだ歯にあらき岩清水 千代田葛彦
愚庵忌や清水で買ふこぼれ梅 市嶋 絢
空壜に清水をいれてはまきちらす 岡田史乃
櫛つけて清水にさつと薄油 みどり女
軍曹の清水見にくる露営哉 会津八一
欠け茶碗一つおかれて岩清水 種市清子
結びさる清水かるゝな柳沢 松岡青蘿
結ぶ手にあつさをほどく清水かな 千代尼
月かげや清水したたる岩の鼻 井上井月
剣客と袂を分つ清水かな 露月句集 石井露月
堅横に清水流るゝ小村哉 清水 正岡子規
現し世の十指が掬ぶ 苔清水 伊丹公子
古郷や厠の尻もわく清水 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
戸を閉めて人すぐ座る山清水 田中裕明 山信
戸隠の奥社に甘き岩清水 須賀允子
戸隠の家根から落る清水哉 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
戸隠の壁ぬけて来し岩清水 原裕 『青垣』
五合目の富士の清水を掬ひのむ 星野椿
光る風のすぢ明らかに清水かな 中村汀女
口つけて眉のぬれたる清水哉 清水 正岡子規
口ふくむ清水に春の名残かな 中川宋淵 詩龕
口やれば波たたみ来る清水かな 西山泊雲 泊雲
口やれば波たゝみ来る清水哉 西山泊雲 泊雲句集
坑内鼠清水湧く場所知りて来る 戸沢寒子房
幸島の猿は砂中の清水摂る 大浦フサ子
紅さいた口もわするるしみづかな 千代尼
行さきでまた我に逢ふ清水かな 千代尼
高清水閣一睡の時雨かな 青木重行
黒き手に紺屋の掬ぶ清水哉 山本洒石
此松も柳にしたき清水かな 横井也有 蘿葉集
今一度列のうしろに岩清水 松 せい一
混浴の肌叩き出て清水のむ 高澤良一 素抱
笹舟の思はぬ速さ岩清水 も 宗方夕子
鯖街道行者の清水汲みて飲む 須賀遊子 『保津川』
三ケ月〔の〕清水守りておはしけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
山だちもともに舌打つ清水かな 中勘助
山のすそ野の裾むすぶ清水かな 千代尼
山の宿に手洗ひ水も清水哉 清水 正岡子規
山陰の小笹の中の清水かな 清水 正岡子規
山寺や縁の下なる苔しみづ 高井几董
山若し清水さらりと白茶碗 岡部弾丸
山人の十指の掬す岩清水 加古宗也「八ッ面山」
山吹のわすれ花さくしみづかな 高井几董
山清水かき濁らせて旅人われ 相馬 黄枝
山清水ごくごく飲めば杉の青 二串康雄
山清水ささやくまゝに聞入りぬ たかし
山清水ささやくままに聞入りぬ 松本たかし
山清水ささやくまゝに聞入りぬ 松本たかし
山清水さびしき指の揃ひをり 鎌倉佐弓
山清水汚せしことのすぐに澄む 橋本多佳子
山清水翁の杖を拝しけり 佐藤美恵子
山清水願かけの水二掬ひ 藤井光(青樹)
山清水汲みに木花咲耶姫 上野澄江
山清水国境越えし思ひふと 野辺祥子 『遠野火』
山清水魂冷ゆるまで掬びけり 臼田亜浪
山清水掌にあふれつつふくみけり 上野泰 佐介
山清水靭左りへまはりけり 雁宕
山清水石鹸もて寺僮何洗ふ 楠目橙黄子 橙圃
山清水注ぎて吹けり習ひ笛 宮田富昭
山清水豆腐の角を削りけり 林原耒井 蜩
山清水鳴れり朽葉を潜り出て 高澤良一 鳩信
山町や清水祭に盆踊 滝井孝作 浮寝鳥
山鳥の影うつしたる清水哉 清水 正岡子規
山内の一院に湧く清水かな 高濱年尾 年尾句集
山里や清水うれしき理髪床 尾崎紅葉
珊瑚珠のごと蟹沈む清水かな 下村梅子
子の西瓜清水に冷えてゐて日射す 中山純子
市に入る花売憩ふ清水かな 夏目漱石 明治四十年
私生活知る山荘の岩清水 津田清子 二人称
寺清水もつれ流れて末濁らず 中村草田男
寺清水西瓜も見えず秋老いぬ 西瓜 正岡子規
耳に目に谷をへたつる清水哉 清水 正岡子規
七月や真清水の音葉がくれに 神尾久美子 桐の木
七夕竹の青さ清水に挿して保つ 宮坂静生 青胡桃
柴門に清水に執し住みにけり 尾崎迷堂 孤輪
縞蛭に日のうつくしき清水かな 松根東洋城
車椅子の足先清水へあそばせる 奈良文夫
車屋のさきにのみたる清水哉 清水 正岡子規
杓のべてたまる清水をまちにけり 山本京童
杓入れて山驚かす清水かな 尾崎迷堂 孤輪
弱法師ほゝけた濡す清水かな 阿波野青畝
弱法師ほゝげた濡す清水かな 阿波野青畝「万両」
手あぐれば結びめのなき清水かな 千代尼
手に結ぶ清水の末の小滝哉 清水 正岡子規
手のひらにゆるる清水をのみにけり 上野泰 佐介
手桶持つ人に清水を尋ねけり 清水 正岡子規
酒冷す清水に近く小店あり 清水 正岡子規
秋の空清水流るゝ思ひあり 秋の空 正岡子規
秋雨や柄杓沈んで草清水 村上鬼城
秋深き清水つぶやきつぶやき湧く 加藤知世子 花寂び
秋風に錠かゝり居る清水かな 西山泊雲 泊雲句集
住かねて道まで出る歟山清水 服部嵐雪
住みかねて道まで出るか山清水 服部嵐雪
十本の指しみじみと山清水 原石鼎
春雨の中におぼろの清水哉 蕪村 春之部 ■ 小原にて
春雨の木下につたふ清水かな 春雨の木下にかかる清水哉 松尾芭蕉
春光を片手掬ひに苔清水 高瀬哲夫
巡礼の親子出てくる清水哉 清水 正岡子規
初雪に祇園清水あらはれぬ 初雪 正岡子規
初蝶や木曾の真清水樋あふれ 下田稔
女のむあとの柄杓や岩清水 清水 正岡子規
小綬鶏の鋭声や清水井にあふれ 吉川 春藻
小柄杓に鎖つけたる清水哉 清水 正岡子規
掌に支へる岩や清水吸ふ 楠目橙黄子 橙圃
樟の香の去年を栞の清水かな 加舎白雄
樟の香や村のはづれの苔清水 夏目漱石 明治四十年
上簇や真清水は崖つたひつつ 神尾久美子 桐の木
丈六のそびら音して苔清水 飴山實 『花浴び』以後
城跡や古井の清水まづ訪はん 松尾芭蕉
城跡や古井の清水先(まず)問はむ 松尾芭蕉
食ひこぼす握飯白き清水哉 寺田寅彦
食器清水に浸し一山の昼寝僧 楠目橙黄子 橙圃
唇に薬つめたき清水かな 阪本四方太
心太そへてねのつく清水哉 清水 正岡子規
心太の桶に落ち込む清水哉 清水 正岡子規
新しき手柄杓の香の岩清水 小山白云子
新涼のすこし溢れし佐井清水 山田弘子 螢川
浸けてある根まがり竹に鳴る清水 西本一都 景色
真清水に口痺らして孤独癖 内藤吐天 鳴海抄
真清水に早苗浸してありにけり 欣一
真清水に日は衰へて杉小苗 赤尾兜子
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 高澤良一 素抱
真清水のひんやりあまし故郷は 橋本クニ
真清水の雲より傅ふ飛桟かな 高田蝶衣
真清水の音のあはれを汲みて去る 黒田杏子
真清水の極みは黒き鮴のうを 高橋睦郎 金澤百句
真清水の極みは黒し鮴のうを 高橋睦郎「金沢百句」
真清水の泡立ちいそぐ年の暮 飯田龍太
真清水も病みて野をゆく初夏よ 沼尻巳津子
真清水も並木も神のしらしけり 高田蝶衣
真清水や梶の御紋の荒み魂 荒井正隆
真清水や真金の鋺(まり)を越ゆるほど 高橋睦郎 稽古飲食
真清水や真金の鋺を越ゆるほど 高橋睦郎 稽古
真清水や世に小峠の忘れられ 野村喜舟 小石川
真清水や天より落ちし白き蝶(箱根) 河野南畦 『花と流氷』以前
真清水や冬温う茎漬くる 巌谷小波
真清水や棟が下に昔より 野村喜舟 小石川
真清水を多毛のかいな潜りてくる 宇多喜代子
真清水を沸かし新茶の香の濃かり 竹田菁雨 『瞽女慕情』
真清水呑み若き己れに逢ふごとし 塘柊風
神楽坂清水流るゝ膩かな 尾崎紅葉
神奈川の岱の清水に先すゝめ 服部嵐雪
身をつつむ山の匂や苔清水 小久保美代子
人の世の銭にされけり苔清水 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
人も居らず瓜ひやしたる清水哉 清水 正岡子規
人死ねば豆腐を浸す清水かな 萩原麦草 麦嵐
厨ぬけ一渓となる清水かな 西本一都 景色
水うまし赤城は秋の草清水 大場白水郎 散木集
水晶の山路ふけ行清水かな 蕪村遺稿 夏
水晶の山路分け行く清水かな 蕪村「落日庵句集」
水筒につめる身延の寺清水 仁科歌子
水筒に清水しづかに入りのぼる 篠原梵
水風呂へ流し込だる清水哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
雛つれて鵙の来てゐる清水かな 軽部烏頭子
菅笠のはしもぬれたる清水かな 清水 正岡子規
菅笠の紐ぬらしたる清水かな 清水 正岡子規
澄みかかる清水や小き足の跡 夏目漱石 明治四十年
棲む魚の砂走りせる清水かな 中村汀女
正月の雪真清水の中に落つ 広瀬直人
正宗が刃をわたるしみづかな 正巴 五車反古
正宗が刃をわたる清水哉 正巳
清水ありや婆子曰く茶を喫し去れ 清水 正岡子規
清水ある家の施薬や健胃散 内藤鳴雪
清水かければ石室不動目を瞠く 石原八束 断腸花
清水には裏も表もなかりけり 千代尼
清水にもあるや神の名仏の名 清水 正岡子規
清水のみに柄杓もて来る町はづれ 清水 正岡子規
清水のみに椀もつて来る町はづれ 清水 正岡子規
清水のむかたはら地図を拡げをり 高野素十
清水のむつつがの胸の板ぬらし 山口誓子
清水のむつゝがの胸の板ぬらし 誓子
清水のむ底まで透るさびしさに 柴田白葉女
清水のめば汗軽らかになりにけり
清水のやうな沈黙地震の山耕す 加藤知世子 花寂び
清水のんで立つ白ズボン草の中 大橋櫻坡子 雨月
清水の音繭かき次第に早くなる 加藤知世子
清水の灯は暗うして鉢叩 藤野古白
清水の碗ゆすぎて伏せて追ひのぼる 中島斌男
清水もて茱萸の実あらひ高館へ 檜山哲彦
清水より濡れつゞきたる山路かな 山村村家
清水引く茶店の庭の筧哉 清水 正岡子規
清水引て庭に滝あり山の宿 清水 正岡子規
清水飲むこめかみの脈感じつつ 岡部玄治
清水飲むつゝがの胸の板濡らし 山口誓子 遠星
清水飲む山の緑を傾けて 森内定子
清水飲む神代のごとく髪束ね 永島理江子
清水飲んで頬つたふを雫拭かで立つ 原石鼎
清水音の時に呪詛めき百地蔵 鍵和田[ゆう]子 浮標
清水掬むやいさごのひかり指に沁み 八木絵馬
清水掬むや犇と岩に倚る繊そ腕 竹下しづの女 [はやて]
清水吸うて歯白く嶮を笑ひけり 原石鼎「花影」
清水汲みに渓へ下りし今のぼりけり 尾崎迷堂 孤輪
清水汲む影のそとなる水の碧 原裕 青垣
清水汲む車の列や大江山 河本益夫
清水汲む心はるばる来つるかな 池内たけし(1889-1974)
清水汲む神に祈りし両の手で 樋口 玄海児
清水弧にめぐり寨(とりで)は村となる 竹中宏 句集未収録
清水諸白涼しきゆへに其の名をうる 吉林 選集「板東太郎」
清水遂に流れ出でたる日南哉 篠崎霞山
清水踏み鹿のおびえとつながるか 竹中宏 句集未収録
清水得つ笠で押し分け叢かな 比叡 野村泊月
清水得て手足を洗ひ草だんご 中山純子
清水入り清水出づる岩の窪哉 森鴎外
清水鳴る高原野菜「プッチーニ」 吉原文音
清水湧くいづこともなきひゞきかな 比叡 野村泊月
清水湧くところを知りて草刈女 萩原麦草 麦嵐
清水湧く岩のさざれや山椒魚 島田雅山
清水湧く青き千曲となるために 藤田湘子
清水湧く地の骨のごと大樹の根 関口成生
清水淋し提灯花はうつむきに 尾崎迷堂 孤輪
生き死にを清水のふちに蟹赤し 川崎展宏
生き物の如く掌に触れ湧く清水 内藤吐天 鳴海抄
生れて初めて会いし清水と花ごぼう 寺田京子
聖霊は清水に見えし影ぢや迄 立花北枝
西行の詠みたる清水掬めど澄む 森田峠
西行の掬びあまりや苔清水 苔清水 正岡子規
西行の掬みたる清水掬めど澄む 森田峠 避暑散歩
西行の清水を引きて蓬の香 大木あまり 火のいろに
西行の清水掌にうけ悴めり 角川源義
西行の聴きし風音清水汲む 坪野邦子(ホトトギス)
西行も翁も飲みし苔清水 小山陽子(杉)
西行庵これが栖か苔清水 氏家頼一
青あをと見えて底ある清水かな 千代女「千代尼尺牘」
青々と見えて根のある清水かな 千代尼
青竹の樋の山清水寒も鳴る 及川貞 榧の實
静さや清水ふみわたる武者草鞋 蕪村遺稿 夏
石に針生姜も入らず清水かな 秋色 俳諧撰集玉藻集
石垣に仏彫る寺の清水哉 清水 正岡子規
石橋に歯朶が生えゐる清水かな 野村喜舟 小石川
石工(いしきり)の鑿冷したる清水かな 與謝蕪村
石工の飛火流るゝ清水哉 蕪村遺稿 夏
石工の飛火流るる清水哉 與謝蕪村
石工の鑿冷したる清水かな 蕪村 夏之部 ■ 馬南剃髪、三本樹にて
石工の鑿冷し置く清水かな 蕪村
石菖へ片寄り深き清水かな 比叡 野村泊月
石槽に清水を落す筧かな 岩木木外
石白く清水湧き出る野中哉 清水 正岡子規
石筍にはるかなる時地下清水 玉城一香
赤松の影あきらかや夕清水 比叡 野村泊月
絶壁に眉つけてのむ清水かな 松根東洋城「新春夏秋冬」
絶壁に眉つけて飲む清水かな 松根東洋城
絶壁の巌をしぼる清水哉 清水 正岡子規
仙人の鬚洗ひ居る清水哉 寺田寅彦
先き騎のあと待合わす清水かな 井上井月
先へ行くつれよび戻す清水哉 清水 正岡子規
先達の大声に呼ふ清水かな 尾崎紅葉
先馬の沓しめし行く清水かな 猿雌 俳諧撰集「有磯海」
千代能の桶すてられて苔清水 苔清水 正岡子規
川上は温泉の涌くなる清水かな 召波「春泥発句集」
浅く見えて杓の届かぬ清水哉 清水 正岡子規
洗面の清水拓地を貫流す 津田清子 礼 拝
早紅葉やその真清水を汲むとせん 高木晴子 花 季
草に滲みる清水一縷の宿りかな 成田千空 地霊
草刈の足をつけたる清水哉 寺田寅彦
草清水たれかれと世をへだてたる 中林美恵子
草清水汲むや一切空の刻 風早郷
草清水小さき棚田へ導かれ 本郷けさみ
草清水草にもつるる涼しさよ 西本一都 景色
草清水太陽珠と冷されて 斎藤正
草清水塔影映るところかな 永田青嵐
草清水湧くこの村に通夜ありぬ 中田剛 珠樹
草鞋買へば問はぬ清水をも教へけり 会津八一
走り井の真清水あふれ蝉丸忌 瀬木清子
蔵六の清水をむすぶうしろがみ 田中裕明 花間一壺
側の岩に仏を刻む清水哉 清水 正岡子規
其下に清水流るる芭蕉哉 清水 正岡子規
其底に木葉年ふる清水かな 子規
村の子の草くぐりゆく清水かな 石井露月
泰山に顔つけてのむ岩清水 俊成七島
苔ともにすくひあげたる清水哉 苔清水 正岡子規
苔のなき石を踏場の清水哉 正岡子規
苔の香のしるき清水を化粧室(トワレ)にひき 竹下しづの女句文集 昭和十三年
苔の香や笠被てむすぶ岩清水 飯田蛇笏 山廬集
苔清水のぞけばうつる笠の裏 寺田寅彦
苔清水掬ふに杖を岩に立つ 岸風三樓
苔清水底砂にして青松葉 苔清水 正岡子規
苔清水天下の胸を冷やしけり 夏目漱石 明治四十年
苔清水馬のロ籠をはづしけり
苔清水不動の滝と落つるかな 野村喜舟 小石川
苔清水落花一ひら又一ひら 内田園生
苔清水霊芝など生ひて土かほる 寺田寅彦
大巌のふるきにほひや清水吸ふ 大橋櫻坡子 雨月
大徳の縁起かしこき清水かな 会津八一
大峰を日わたりて晦き清水かな 蛇笏
大峰を日わたりて幽き清水かな 飯田蛇笏 山廬集
鷹匠のはしりつぎたる清水かな 徐寅 六 月 月別句集「韻塞」
滝道や根笹熊笹清水湧く 野田別天楼
濁る世に慣れぬ清水や山の中 清水 正岡子規
谷杉に蝶舞ひ上る清水かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
誰が恩の杓あたらしき草清水 森澄雄
湛へ満つ槽の夕にも湧く清水 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
炭焼や朧の清水鼻を見る 榎本其角
炭窯の十能冷やす庭清水 石川桂郎 四温
断崖をおろかに長き清水かな 尾崎紅葉
男は次郎長の清水の海の冬凪 中塚一碧樓
男女の川落ちて流るゝ清水かな 高橋淡路女 梶の葉
秩父往還メロディバス来橡咲けり 清水山彦「山火合同句集」
茶屋の茶に清水の味はなかりけり 清水 正岡子規
昼寝して臍に雲おく清水越 昼寝 正岡子規
彫り付けし不動の像や岩清水 会津八一
朝寒の日当る庫裡の清水かな 比叡 野村泊月
朝顔の大輪清水湛ふごと 高澤良一 燕音
朝清水山羊の額碑の固さもつ 友岡子郷 遠方
朝日さすすだれの外の岩清水 飯田蛇笏 春蘭
朝夕や恋る清水の蜷むすび 加舎白雄
町なかを真清水走り朱欒の実 木村里風子
爪紅の濡色動く清水かな 卯七
釣瓶もて汲む橋立の磯清水 巽恵津子
鶴首の爺来て清水すこし飲む 嶋田麻紀
底の石動いて見ゆる清水哉 夏目漱石 明治四十年
底見えて小魚も住まぬ清水哉 清水 正岡子規
底清水心の塵ぞしづみつく 服部嵐雪
底清水心の塵もしづみつく 嵐雪「其袋」
庭清水団扇を置いて掬びけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
庭清水藤原村の七番戸
庭先に亀の吐き出す清水哉 清水 正岡子規
庭先の清水に白し心太 心太 正岡子規
摘草や清水がもとの鬼の面 井上井月
田村麻呂祀れる山の清水かな 鈴木しげを
土間足駄かりかりひびき井戸清水 中村草田男
冬の清水音色もろとも掌に汲めり 高澤良一 鳩信
冬浜に湧く真清水の香をまとふ 原裕 葦牙
凍てとけて筆に汲み干す清水かな ばせを 芭蕉庵小文庫
凍て解けて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
凍どけて筆に汲干す清水かな 芭蕉
塔頭の一寺の湧ける清水かな 尾崎迷堂 孤輪
湯をむすぶ誓ひも同じ石清水 松尾芭蕉
湯治宿つと山清水引き込んで 高澤良一 素抱
湯治場のとば口に湧く山清水 高澤良一 素抱
湯治場の天下一品山清水 高澤良一 寒暑
筒鳥や桶より溢れ山清水 早川とも子
藤咲くや海ヘ落込む石清水 会津八一
踏みわたる石のゆるぎの清水かな 小杉余子 余子句選
透く清水一尾の鱒も飢ゑしめず 津田清子 礼 拝
道くさも手のうつくしき清水かな 千代尼
道のべの清水に杓のありにけり 清原枴童 枴童句集
道の辺の清水に春の沸き反り 幸田露伴 江東集
銅盤に溢るゝ清水秋の風 西山泊雲 泊雲句集
那須の野の清水か出湯かとぞ寄る 皆吉爽雨 泉声
縄文の貌して飲めり岩清水 青木重行
二タ蟹の爪たゝかへる清水かな 東洋城千句
二三町温泉を去りて苔清水 苔清水 正岡子規
二人してむすべば濁る清水かな 蕪村
二人して片足づつの清水かな 夏目漱石 明治四十年
日ざかりの岩よりしぼる清水かな 京-常牧 元禄百人一句
日の筋へとく~落つる清水かな 小杉余子 余子句選
日の縞を掌に掬ひたり苔清水 中川杞友
日の当る大岩しぼる清水かな 野村喜舟 小石川
馬と蚕を飼ふ厨暗くて山清水 森 澄雄
馬の沓沈みてぬるむ清水哉 水温む 正岡子規
馬の口籠をはづしけり 苔清水 正岡子規
馬上より手綱ゆるめる清水哉 清水 正岡子規
馬柄杓に草をわけ行清水哉 清水 正岡子規
馬柄杓を岩に割込む清水かな 野径 俳諧撰集「有磯海」
馬方の山で飯くふ清水哉 清水 正岡子規
拝ん松弘法清水湧くほとり 八牧美喜子
白山の真清水引けり永平寺 野崎ゆり香「花鎮め」
白山の清水に白し堅豆腐 熊田鹿石
白神のいのちの清水はらわたに 成田千空
白神の清水桂の根に噴ける 三枝正子
白鳳のみ足すすがせ苔しみづ 中勘助
麦秋や清水汲み来し大薬鑵 比叡 野村泊月
麦飯を清水に洗ひゐたるかな 茨木和生 三輪崎
抜いたりなあはれ清水の片草鞋 服部嵐雪
抜たりなあはれ清水の片草履 服部嵐雪
半腹の路分れたる清水かな 会津八一
板蕎麦を頂き羽黒の清水乾す 高澤良一 石鏡
飯くれぬ村はありとも苔清水 苔清水 正岡子規
比叡と云へば横川を挙ぐる清水かな 尾崎迷堂 孤輪
膝もとに清水あふるるさくらかな 鈴木貞雄
百里来し人の如くに清水見ゆ 細見綾子
漂泊は跡をとどめず湧く清水 野見山朱鳥
貧しき死診し手をひたす山清水 相馬遷子 雪嶺
父と子の清水黄色き瓜食ひて 細見綾子
父の父の父の鉱脈清水つたう 八木三日女 落葉期
風幽らく我が眉を吹く清水かな 楠目橙黄子 橙圃
蕗の葉に汲む白神の山清水 小林洋子
伏し重つて清水掬ぶや生徒達 竹下しづの女 [はやて]
伏姫の御祓せしとふ清水ありや 寺田寅彦
幣立てて源流といふ岩清水 甘田正翠
片手桶傾き移る清水かな 比叡 野村泊月
片髭の鯰をはなつ清水かな 安東次男 昨
補陀落の径写し出す苔清水 渡辺恭子
母馬が番して呑す清水哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
宝舟の葢沈み居る清水かな 会津八一
宝丹(ほうたん)のふたのみ光る清水かな 夏目漱石 明治四十年
放牛の牧やカムイの清水引き 沼澤 石次
放牧の牛の喉鳴る山清水 大山ク二子
法の山清水を鳥と頒ちあふ 小川かん紅
法印の法螺に蟹入る清水かな 夏目漱石 明治四十年
忘れても清水むすぶな高野道 清水 正岡子規
摩尼摩尼と湧く真清水を拝みぬ 沼尻巳津子
万籟寂たり清水静に砂を吹く 清水 正岡子規
万籟寂然清水静に砂を吹く 清水 正岡子規
無住小屋に道標あり山清水 大谷恵教
無佛寺の蕎麦につめたき清水かな 中勘助
霧捲いて夜明の清水匂ふなり 佐野良太 樫
霧降るに清水掬むなり皆旅人 林翔 和紙
鳴り鳴りて堰洩る清水目高迎へ 香西照雄 対話
孟秋の真清水さぶし踝も 攝津幸彦 鹿々集
木茸や街の八百屋が忽と消え 清水一莉「未来図合同句集」
目ではかる水の冷たさ山清水 尾崎和子
目にむすぶ谷間々々の清水かな 千代尼
目洗へば目明かに清水かな 高浜虚子
夜に入ればせい出してわく清水哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
夜出てしけものゝ跡や草清水 石井露月
夜清水を汲む傘に飛ぶ螢かな 吉武月二郎句集
薬師経読み果てぬいざ清水汲まん 尾崎迷堂 孤輪
柳ちり清水かれ石ところどころ 蕪村
柳散り清水涸れ石処々 蕪 村
柳散清水涸石処々 蕪村
柳散清水涸石処々 与謝蕪村
柳散清水涸石処々 與謝蕪村
柳散清水涸石處處 蕪村 秋之部 ■ 遊行柳のもとにて
輸飾や厨のうちの岩清水 比叡 野村泊月
遊人眠て犬之を守る清水かな 比叡 野村泊月
夕暮を清水も飲まず急ぎけり 清水 正岡子規
夕立のあがりし清水蟹あそぶ 清原枴童 枴童句集
夕立の過ぎて跡なき清水哉 清水 正岡子規
葉先揺る小草よ清水くすぐりて 香西照雄 素心
踊り子の踏めば玉吐く沢清水 前田普羅 春寒浅間山
来る風のすぢ明らかに清水かな 中村汀女
落ちも敢へず朽葉流れ去る清水かな 会津八一
落合ふて音なくなれる清水哉 蕪村 夏之部 ■ 馬南剃髪、三本樹にて
蘭ふんでうへの清水へゆきにけり 永田耕衣 真風
立ち寄れば蛇の横切る清水かな 素丸「素丸発句集」
立山の清水のかもす酒と聞く 稲畑汀子
流れ入るや清水鼓虫よりも舞ふ 中村草田男
流れ来て清水も春の水に入 蕪村遺稿 春
旅なれや牛が飲みたる清水掬む 石田 波郷
旅人ののみほして行く清水哉 清水 正岡子規
旅人の汗の玉散る清水哉 汗 正岡子規
旅人の顔洗ひ居る清水哉 清水 正岡子規
旅人の知らで過ぎ行く清水哉 清水 正岡子規
旅人の名をつけて行く清水かな 清水 正岡子規
涼しさや清水につけしつぼの籠 中勘助
淋し寒し出羽の清水後の月 河東碧梧桐
輪飾の井桁あふるる清水かな 会津八一
涙ほど清水湧きけり物の蔭 岡田春堂
冷し瓜富士の真清水戸々に湧き 勝亦年男
玲瓏と玉を噴き居る清水かな 星野麦人
霊芝あり苔香る所清水わく 寺田寅彦
露凍てて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
老鴬や歯朶に湧き澄む山清水 碧雲居句集 大谷碧雲居
厠にも清水ながるる坊泊り 鷹羽狩行「八景」
姨捨のくらき中より清水かな 一茶
嶽腹を雲うつりゐる清水かな 飯田蛇笏
杣が家へ清水引く竹真青なり 野原 春醪
杣が子に日中さみしき清水かな 原石鼎
榾ひらききって清水に手を浸す 右城暮石 上下
涸清水杓にためては遊びけり 阿波野青畝
獨すむ友よ朧の糒雪清水 榎本其角
眞清水の杓の寄附まで山長者 原石鼎
眞清水や眞金の鋺を越ゆるほど 高橋睦郎
礒清水旅だんすほしき木陰哉 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
穢多むらのうらを流るゝ清水哉 高井几董
筧して絶えずの清水洗ひ飯 小澤碧童 碧童句集
筧にも道にも副流村へ清水 香西照雄 素心
脛入れて短く見ゆる清水哉 清水 正岡子規
蠅散りて馬よく眠る清水かな 水田正秀
釵を落して深き清水かな 清水 正岡子規
錢龜や青砥もしらぬ山清水 蕪村 夏之部 ■ 丸山主水が、ちいさき龜を寫したるに賛せよとのぞみければ、任官縣命の地に榮利をもとめむよりハ、しかじ尾を泥中に曳んには
霍乱や関の清水は草の中 増田龍雨 龍雨句集
鮠棲みて戸毎の溝も清水なす 山野邊としを
鶯の笹葉を散らす清水かな 士朗「枇杷園句集」
鶺鴒の黄の滴れり山清水 堀口星眠

清水 補遺

あやまつて清水にぬらす扇哉 正岡子規 扇
いかほどを生きしや桂清水汲む 佐藤鬼房
いでいりの息のあたりて清水かな 阿波野青畝
おのづから水紋うまれ岩清水 鷹羽狩行
かち栗に喉の乾きや山清水 正岡子規 清水
きこゆるやこころの清水湧くひびき 日野草城
この清水錫丈洗ふ八百年 阿波野青畝
この清水飲みたる人の数に入る 山口誓子
さらさらと石を流るゝ清水哉 正岡子規 清水
しんかんと物すごき山の清水哉 正岡子規 清水
すゝしさをこほす岩間の清水哉 正岡子規 清水
そそぐほど手の平若し川清水 中村草田男
その昔の清水門とて岩清水 松本たかし
ただ頼め内井の清水湧くかぎり 臼田亜浪 旅人 抄
たもとほるは目高の為事門清水 中村草田男
つくばひのかたちをあふれ清水かな 鷹羽狩行
つくばひの知足にひゞく清水かな 阿波野青畝
つめたさに金魚痩せたる清水哉 尾崎放哉 大学時代
とくとくの清水は左右の手を洩るる 阿波野青畝
とくとくの清水掬ひしたなごころ(吉野山二句) 細見綾子
とんねるや笠にしたゝる山清水 正岡子規 清水
ぬけてゆく畑に清水のありにけり 右城暮石 句集外 昭和八年
ねらはれし魚の命や山清水 正岡子規 清水
はらわたにひやつく木曽の清水哉 正岡子規 清水
はらわたもひやつく木曽の清水かな 正岡子規 清水
ばた~と鴉むれ居る清水かな 内藤鳴雪
ひとり来て母を恋へりし清水かな 中村汀女
ひやつくや清水流るゝ右左 正岡子規 清水
ふたたびは来ぬ清水なれやすらひて 山口青邨
ほら穴に清水の湧くをうやまへり(受水走水) 細見綾子
またくらに白雲起る清水哉 正岡子規 清水
もとかしく片手に掬ふ清水哉 正岡子規 清水
よき清水ありて梅雨越す山家かな 右城暮石 句集外 昭和十三年
わが影に来て影添ふや岩清水 中村苑子
一ツ家の背にはしりこむ清水哉 正岡子規 清水
一口に足らぬ清水の尊さよ 正岡子規 清水
一枝は田にはしりこむ清水哉 正岡子規 清水
一歩ごと別の清水の音聞ゆ 中村汀女
一筋は筧にはいる清水かな 正岡子規 清水
一隅は清水つめたき小池哉 正岡子規 清水
万籟寂たり清水静に砂を吹く 正岡子規 清水
万籟寂然清水静に砂を吹く 正岡子規 清水
丈けの草刈る足もとの清水かな 右城暮石 句集外 大正十一年
丈六のそびら音して苔清水 飴山實 句集外
両手に清水をさげてくらい路を通る 尾崎放哉 須磨寺時代
丸薬に清水をむすぶ道のほとり 正岡子規 清水
乞食僧の鈴のただよふ清水蔭 角川源義
二三町温泉を去りて苔清水 正岡子規 苔清水
二百ミリ降つて濁らぬ苔清水 右城暮石 句集外 昭和三十八年
人も居らず瓜ひやしたる清水哉 正岡子規 清水
仁丹を清水の中へこぼしけり 日野草城
仕ふるがごとく膝つき岩清水 鷹羽狩行
低青空海へ二里ゆく町清水 中村草田男
側の岩に仏を刻む清水哉 正岡子規 清水
先へ行くつれよび戻す清水哉 正岡子規 清水
其下に清水流るる芭蕉哉 正岡子規 清水
其底に木葉年ふる清水哉 正岡子規 清水
冬浜に湧く真清水の香をまとふ 原裕 葦牙
剣岩残りて清水無かりけり 河東碧梧桐
千代能の桶すてられて苔清水 正岡子規 苔清水
厠にも清水ながるる坊泊り 鷹羽狩行
去るに決まる家の清水を日々愛す 及川貞 夕焼
口つけて眉のぬれたる清水哉 正岡子規 清水
口づけて飲めるもありて苔清水(吉野山二句) 細見綾子
咆哮の音してぞ湧く清水かな 山口青邨
四五本の画筆を洗ふ清水掬む 後藤比奈夫
土不踏さます湯殿山の清水かな 阿波野青畝
土間足駄かりかりひびき井戸清水 中村草田男
堅横に清水流るゝ小村哉 正岡子規 清水
夕暮を清水も飲まず急ぎけり 正岡子規 清水
夕立の過ぎて跡なき清水哉 正岡子規 清水
大いなる林の前の清水かな 村山故郷
大峰を日わたりて幽き清水かな 飯田蛇笏 山廬集
奏でゐる清水の音をみだし掬む 中村汀女
奥多摩の岩清水飲み干しにけり 細見綾子
女のむあとの柄杓や岩清水 正岡子規 清水
客親しひとり清水に嗽ぐ 飯田蛇笏 家郷の霧
寺清水もつれ流れて末濁らず 中村草田男
寺清水西瓜も見えず秋老いぬ 正岡子規 西瓜
小柄杓に鎖つけたる清水哉 正岡子規 清水
小清水のひびらぎ注ぎ大清水 中村草田男
少しこぼして置いて幼女が清水運ぶ 中村草田男
山の宿に手洗ひ水も清水哉 正岡子規 清水
山中の五百羅漢に岩清水 松崎鉄之介
山僧の大太刀洗ふ清水かな 内藤鳴雪
山塞ぐ林泉(しま)狭みかも清水行く 松本たかし
山清水ささやくままに聞き入りぬ 松本たかし
山清水ひそめき辿る庭造 松本たかし
山清水出放しにして黒ホース 右城暮石 散歩圏
山清水掌にあふれつつふくみけり 上野泰 佐介
山清水汚せしことのすぐに澄む 橋本多佳子
山荘の時かけて汲みし清水かや 中村草田男
山陰の小笹の中の清水かな 正岡子規 清水
山鳥の影うつしたる清水哉 正岡子規 清水
岩つかみ片手に結ぶ清水哉 正岡子規 清水
岩清水 旅して 喉を尖らせて 伊丹三樹彦
岩清水うける両手の裏に沁む 篠原梵 年々去来の花 中空
岩清水ことばあふるるごとくなり 原裕 葦牙
岩清水すぐに普通のつめたさに 篠原梵 年々去来の花 中空
岩清水寿(いのちながし)と杓を添へ 川端茅舎
岩清水掬ばんとすれば蛇の衣 正岡子規 蛇の衣
岩清水武甕槌(たけみかづち)も掬びけん 川端茅舎
岩清水湧きゐるばかり龍金花 後藤比奈夫
岩清水飲まるることのなき清さ 平井照敏 天上大風
岩煙草を鉢植にこゝの清水哉 右城暮石 句集外 昭和十年
嶽腹を雲うつりゐる清水かな 飯田蛇笏 春蘭
川清水わが紋どころ酢漿草咲く 中村草田男
川清水捨石臼に白沙寄る 中村草田男
巡礼に一服せよと山清水 鷹羽狩行
巡礼の親子出てくる清水哉 正岡子規 清水
左手は岩抱き右手清水掬む 林翔
広き野に霊の清水のあるところ 阿波野青畝
底石よりも清水のあやのさはにして 中村草田男
底見えて小魚も住まぬ清水哉 正岡子規 清水
庭先に亀の吐き出す清水哉 正岡子規 清水
庭先の清水に白し心太 正岡子規 心太
庭清水藤原村の七番戸 正岡子規 清水
庭清水辿り澄めるにいもり棲む 松本たかし
庵結ぶ開眼仏や庭清水 河東碧梧桐
弱法師ほほげた濡す清水かな 阿波野青畝
強清水母は一日影育て 原裕 青垣
彼の岸に清水を掬めば鬼の影 佐藤鬼房
御手洗に心洗へと清水鳴る 阿波野青畝
心太そへてねのつく清水哉 正岡子規 清水
心太の桶に落ち込む清水哉 正岡子規 清水
心太清水の中にちゞみけり 尾崎放哉 大学時代
忘れても清水むすぶな高野道 正岡子規 清水
我顔のうつりて寒き清水哉 正岡子規 清水
戸隠の壁ぬけて来し岩清水 原裕 青垣
手に掬ぶ清水にも沁む檜の香 富安風生
手に結ぶ清水の末の小滝哉 正岡子規 清水
手のひらにゆるる清水をのみにけり 上野泰 佐介
手の切れるやうと讃へて岩清水 鷹羽狩行
手の平にとくとく落つる清水かな 阿波野青畝
手桶持つ人に清水を尋ねけり 正岡子規 清水
指にひびく末だ揺水の井戸清水 中村草田男
採石場清水流れてゐるところ 清崎敏郎
掬ぶ手の甲に冷えつく清水哉 正岡子規 清水
故郷(くに)めく町山水めきし井戸清水 中村草田男
旅人ののみほして行く清水哉 正岡子規 清水
旅人の名をつけて行く清水かな 正岡子規 清水
旅人の汗の玉散る清水哉 正岡子規 汗
旅人の知らで過ぎ行く清水哉 正岡子規 清水
旅人の顔洗ひ居る清水哉 正岡子規 清水
旧仮名遣は本仮名遣清水の音 中村草田男
昼寝して臍に雲おく清水越 正岡子規 昼寝
時鳥しば鳴き清水蕗を打つ 水原秋櫻子 蘆刈
朝しづか清水のひびききこえつつ 日野草城
朝日さすすだれの外の岩清水 飯田蛇笏 春蘭
杉の花時じくに落ち苔清水(吉野山) 細見綾子
村びとの奢り使ひの岩清水 鷹羽狩行
杣が子に日中さみしき清水かな 原石鼎 花影
松の根の苔なめらかに清水吸ふ 杉田久女
柱時計の音落ち流る川清水 中村草田男
栄華こゝに方に掬むなり岩清水 石塚友二 方寸虚実
桐掩ふ庭の清水に塵もなし 正岡子規 清水
極楽や清水の中に蓮の花 正岡子規 蓮の花
榾ひらききって清水に手を浸す 右城暮石 上下
横道を行けば果して清水哉 正岡子規 清水
橋立や諸手に結び磯清水 鷹羽狩行
武家屋敷より真清水に朱欒垂れ 飯田龍太
武家屋敷より真清水へ朱欒垂れ 飯田龍太
水の音は御供の清水の月にあふれ 荻原井泉水
水も寝るか夕べの清水杭巻く 中村草田男
水筒に清水しづかに入りのぼる 篠原梵 年々去来の花 雨
水音を草がしづめて草清水 鷹羽狩行
汗臭き手拭洗ふ清水哉 正岡子規 清水
洗面の清水拓地を貫流す 津田清子 礼拝
洞清水とどろとどろと奈落鳴り 阿波野青畝
流れ入るや清水鼓虫よりも舞ふ 中村草田男
浅く見えて杓の届かぬ清水哉 正岡子規 清水
涸清水杓にためては遊びけり 阿波野青畝
清水ありや婆子曰く茶を喫し去れ 正岡子規 清水
清水ありパカチに充つる音嬉し 山口青邨
清水ある坊の一つや中尊寺 河東碧梧桐
清水でそそくさ顔洗ひざま来し乳母ぞ 中村草田男
清水にもあるや神の名仏の名 正岡子規 清水
清水のみに柄杓もて来る町はづれ 正岡子規 清水
清水のみに椀もつて来る町はづれ 正岡子規 清水
清水のむかたはら地図を拡げをり 高野素十
清水の声と妻の声には誘はるる 中村草田男
清水の岸竹叢酒庫一つづつ 中村草田男
清水の幅十三絃のさまに流る 中村草田男
清水參らせむ幻住庵趾石一つ 石塚友二 曠日
清水吸うて歯白く嶮を笑ひけり 原石鼎 花影
清水奔りて指併せしめ岐れしむ 中村草田男
清水引く茶店の庭の筧哉 正岡子規 清水
清水引て庭に滝あり山の宿 正岡子規 清水
清水手に痛し耐ふるはすずしけれ 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
清水掬めば ハンカチ紛いの鶺鴒翔つ 伊丹三樹彦
清水汲む影のそとなる水の碧 原裕 青垣
清水汲んできて飲めという家内とほかおおぜい 荻原井泉水
清水湧き葎となれる茶所の跡 右城暮石 句集外 大正十四年
清水湧く垣根の草に茗荷など 右城暮石 句集外 昭和六年
清水湧く螢袋をもて汲まん 山口青邨
清水湧く青き千曲となるために 藤田湘子 神楽
清水溢れて足跡の泥の上を走す 中村草田男
清水潺湲対蹠界いま吾子の在り 中村草田男
清水行き安ら清らにいもり棲む 松本たかし
清水見るに倦きず日向の座に疲れず 中村草田男
清水飲むつゝがの胸の板濡らし 山口誓子
清水飲む歯並びわるき行者かな 阿波野青畝
清水飲んで頬つたふを雫拭かで立つ 原石鼎 花影
渓清水牛の銀鐶鼻ゆ垂れ 中村草田男
渓清水踏んで牛等や蹄しぶく 中村草田男
湧き出づる清水も産みの安らかに 山口誓子
溢るるを草の押へて草清水 鷹羽狩行
漂泊は跡をとどめず湧く清水 野見山朱鳥 幻日
濁る世に慣れぬ清水や山の中 正岡子規 清水
炭窯の十能冷やす庭清水 石川桂郎 四温
父と子の清水黄色き瓜食ひて 細見綾子
田に清水念佛太鼓痩せ音張り 三橋鷹女
白赤の鯉を清水に癩病めり 右城暮石 句集外 昭和二十五年
白雲の湧く杉山の清水なる 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
百里来し人の如くに清水見る 細見綾子 桃は八重
監獄にあたら流れ込む清水哉 正岡子規 清水
真清水と湯と管二つ谷走る 阿波野青畝
真清水に日は衰へて杉小苗 赤尾兜子 玄玄
真清水の杓の寄附まで山長者 原石鼎 花影
真清水や常陰といふも照りくもり 上田五千石『天路』補遺
真清水を高きに囲ひ崇神陵 鷹羽狩行
矢も盾もたまらず結び岩清水 鷹羽狩行
石垣に仏彫る寺の清水哉 正岡子規 清水
石白く清水湧き出る野中哉 正岡子規 清水
秋雨や柄杓沈んで草清水 村上鬼城
空で波うつ清水や水瓶仰ぎ飲む 中村草田男
竹寺の清水の岩に竹柄杓 鷹羽狩行
笈あけて仏を拝む清水かな 正岡子規 清水
筧にも道にも副流村へ清水 香西照雄 素心
絶壁の巌をしぼる清水哉 正岡子規 清水
網戸入れ甕に清水を湛へけり 水原秋櫻子 餘生
総揚羽吻延ぶる有時や岩清水 永田耕衣
羊歯原の清水を掬ふ 頭蓋骨 三橋鷹女
耳に目に谷をへたつる清水哉 正岡子規 清水
背の子へ清水の盃を水平に 中村草田男
胎内に岩清水湧く磨崖仏 津田清子
脛入れて短く見ゆる清水哉 正岡子規 清水
苔ともにすくひあげたる清水哉 正岡子規 苔清水
苔のなき石を踏場の清水哉 正岡子規 苔清水
苔の香や口つけて飲む岩清水 鷹羽狩行
苔の香や笠被てむすぶ岩清水 飯田蛇笏 霊芝
苔清水したたる悔の明るさに 橋閒石 卯
苔清水底砂にして青松葉 正岡子規 苔清水
苔清水馬の口籠をはづしけり 正岡子規 苔清水
若葉を貫く光りにふくるゝ清水 尾崎放哉 大正時代
苺の葉の毛だちに掬ふ清水かな 細見綾子 桃は八重
茶屋の茶に清水の味はなかりけり 正岡子規 清水
草もつれあふこともなく草清水 鷹羽狩行
菅笠のはしもぬれたる清水かな 正岡子規 清水
菅笠の紐ぬらしたる清水かな 正岡子規 清水
葉先揺る小草よ清水くすぐりて 香西照雄 素心
蘭ふんでうへの清水へゆきにけり 永田耕衣
裏山の清水ひく樋幾百尺 山口青邨
西行の掬びあまりや苔清水 正岡子規 苔清水
誰が恩の杓あたらしき草清水 森澄雄
諸鳥の争鳴するに清水噴く 上田五千石『天路』補遺
谷の子遊ぶ清水に枝川つくりつつ 中村草田男
貧しき死診し手をひたす山清水 相馬遷子 雪嶺
路次を犬は一と走せめぐり川清水 中村草田男
踊り子の踏めば玉吐く沢清水 前田普羅 春寒浅間山
車屋のさきにのみたる清水哉 正岡子規 清水
透く清水一尾の鱒も飢ゑしめず 津田清子 礼拝
酒冷す清水に近く小店あり 正岡子規 清水
野狐の尾をひたし去る清水かな 内藤鳴雪
金時も熊も来てのむ清水哉 正岡子規 清水
釜つけて飯粒沈む清水かな 正岡子規 清水
釵を落して深き清水かな 正岡子規 清水
鎧てふ重かりしもの草清水 波多野爽波
院のしげりそを打つて噴く清水あり 荻原井泉水
雨の輪の重なりそめし草清水 鷹羽狩行
雲に立つ不動の像や石清水 正岡子規 清水
雲に立つ不動濡れたり石清水 正岡子規 清水
雲高く一片かげる清水かな 河東碧梧桐
霧降るに清水掬むなり皆旅人 林翔 和紙
音たてゝ清水あふれをり瓜をどる 及川貞 榧の實
頂上へ達するまでの幾清水 松本たかし
顔洗へば粗髯につく山清水 大野林火 潺潺集 昭和四十年
飯くれぬ村はありとも苔清水 正岡子規 苔清水
飲食の茶碗を借りて清水受け 阿波野青畝
馬上より手綱ゆるめる清水哉 正岡子規 清水
馬方の山で飯くふ清水哉 正岡子規 清水
馬柄杓に草をわけ行清水哉 正岡子規 清水
馬蹄の迹へ沁み出る清水砂の上 中村草田男
驚きの過ぎしに汲むや家清水 中川一碧樓
魂守りて怒れる虫や岩清水 原石鼎 花影
鮓つけて真清水に手を洗ひけり 内藤鳴雪
鯉のため浅くひろげて庭清水 鷹羽狩行
鳥は巣を見棄てたる根もと清水噴く 橋閒石 無刻
鳴り鳴りて堰洩る清水目高迎ヘ 香西照雄
黙の清水へ声の小清水ゆんでより 中村草田男

以上

by 575fudemakase | 2017-05-17 13:21 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

踊 の俳句

踊 の俳句

踊 の例句

踊 補遺

あらはれて踊の人数つづくなり 後藤夜半 翠黛
いざ踊れ溝の蛙ものら猫も 正岡子規 踊
いつせいに手あげて踊りの身が細る 中村草田男
いづくともなく踊りより散りゆくと 高野素十
いづくともなく集りて踊るとか 高野素十
いづくより湧きくる踊ぞめきかや 稲畑汀子
いでたちの下駄をまづ打つ踊りかな 石田勝彦 秋興以後
うき人の袂觸れたる踊哉 正岡子規 踊
うたごゑのかなしく踊たけなはに 長谷川素逝 村
うつし世をかなしとこぞり踊唄 福田蓼汀 秋風挽歌
うらみとは踊も歌もすぎゆくもの 中村草田男
おうおうと男掛声都踊 山口誓子
おのがための手拙踊か亀泳ぐ 香西照雄 対話
おはん踊る松の寿十二月 山口青邨
おわら流し踊る歩をもて蹤けるかな 松崎鉄之介
お忍びとならざることも阿波踊 稲畑汀子
かなしびを節おもしろに踊唄 上田五千石『琥珀』補遺
かゞり火の白樺燃えて踊りけり 及川貞 夕焼
きりもなくふえて踊子草となる 後藤比奈夫
くり出して 供養踊のすみてより 長谷川素逝 村
ぐいぐいと潮の引け刻盆踊 鷹羽狩行
けふよりの踊けいこの遠太鼓 長谷川素逝 村
げじげじの踊るかたちにあたり見る 岸田稚魚 雁渡し
こきりこや蝌蚪の踊れる水のなか 桂信子 草影
ここのところ東踊の灯があふれ 山口青邨
これが最後の枯木の踊一つ星 西東三鬼
こゑすでにかんこ踊りとおもひけり 岡井省二 五劫集
しかすがに胸うちさわぐ踊哉 正岡子規 踊
しづめ唄そびらにはなれ踊の輪 石川桂郎 高蘆
すすむよりしざる踊の威儀くづれ 阿波野青畝
そも~は都踊で見染めけり 日野草城
たかぶりの音かたかたと踊下駄 稲畑汀子
たはぶれに妻抱き踊る夜の秋 伊藤白潮
たましひのあらはに踊る夜涼かな 山田みづえ 木語
ちかづきの多過ぎてうき踊哉 正岡子規 踊
つづみうつ肉手丁々都踊 橋本多佳子
づか~と来て踊子にさゝやける 高野素十
てのひらをかへせばすすむ踊かな 阿波野青畝
どちらから見ても踊子草踊る 後藤比奈夫
なか空に夜も城映え盆踊 村山故郷
なまくさき漁村の月の踊かな 正岡子規 踊
にぎはひの筋へ入りゆく踊の尾 上田五千石『琥珀』補遺
のうぜんのもと踊り子の待ち合はす 大野林火 潺潺集 昭和四十年
はじめからいびつ郡上の踊の輪 鷹羽狩行
はるばると来てさみしさを踊るなり 岡本眸
ふるさとは好きよ好きよと踊りをり 高田風人子
まづ逢ふも信夫の里の踊り子草 岡井省二 前後
もう歯のない犬もめぐりて踊の輪 中村草田男
もてなしの餅つき踊月の宿 角川源義
もろともに露の身いとふ踊りかな 飯田蛇笏 山廬集
も一人の我を踊りの中に見つ 能村登四郎
やせ村に老もこぞりし踊かな 正岡子規 踊
やまぎりに濡れて踊るや音頭取 飯田蛇笏 霊芝
や吟ひたる踊子わたり橋躍る 阿波野青畝
ゆきかへり郡上踊の橋たがヘ 石川桂郎 高蘆
よし原は猫もうかれておどりけり 正岡子規 踊
よべ踊りけさ朝月夜別れけり 大野林火 潺潺集 昭和四十年
より添ひて踊の顔を包むなる 後藤夜半 翠黛
わが影は 鬼が踊るか 稲光り 富澤赤黄男
わが知れる東踊の老妓はも 山口青邨
われの汽車踊の阿波へ走るのみ 阿波野青畝
をどれ踊れしんぞいのちの山乙女 臼田亜浪 旅人 抄
をみならにいまの時過ぐ盆踊 森澄雄
アミ文化村の踊の杵の音 阿波野青畝
タツノオトシゴ踊りをる海市かな 岡井省二 鯨と犀
ポインセチアぼくにはタンゴ踊れない 亭午 星野麥丘人
マツ赤になつて烏瓜踊つてるばかり 尾崎放哉 小豆島時代
ミスブランシ踊り子脚をくみいこふ 安住敦
レコードの唄空ら流し踊り場に 右城暮石 句集外 昭和五十二年
ロートレクの踊子手袋黒く長く 山口青邨
一ところくらきをくぐる踊の輪 橋本多佳子
一と踊り命がけなる大蛾かな 前田普羅 春寒浅間山
一人おきに男女の踊哉 正岡子規 踊
一人置きに女のまじる踊かな 正岡子規 踊
一夜被て一夜の情踊笠 後藤比奈夫
一山に社寺をちりばめ 踊子草 伊丹三樹彦
一巡りして踊笠なほ目深か 鷹羽狩行
一年に一度の美声踊り唄 右城暮石 句集外 昭和三十八年
一歩~踊の足の二歩進む 高野素十
一瞬の空虚かすめし踊りの輪 能村登四郎
一管の笛取つて老いず盆踊 山口青邨
一遍が踊ればころぶ団栗も 有馬朗人 非稀
一遍の踊りとなりし海髪(おごのり)よ 岡井省二 猩々
七月のセル着せられて踊り見に 石川桂郎 含羞
万亭の門行き都踊かな 高浜年尾
三日月は山も踊も照らさざる 平畑静塔
上下の夜河原ほのと此所踊り 中村草田男
上手下手などと云はずに踊るべし 右城暮石 散歩圏
下萌の踊子草と思はるる 山口青邨
下萌の踊子草もはやたむろ 山口青邨
両刀を人に預けて踊りけり 内藤鳴雪
主ならねど癩と踊りて我汗す 平畑静塔
予定表都踊と書き足しぬ 稲畑汀子
五十路またよきぞと唱へ宵踊り 中村草田男
井田川の橋袂なる踊りの輪(富山県、八尾風の盆三句) 細見綾子
人の世のかなしきうたを踊るなり 長谷川素逝 村
仏にも歓喜踊躍の春埃 後藤比奈夫
住吉は松とりまいて踊かな 正岡子規 踊
余の人も混ぜて狂女の連踊る 平畑静塔
供神の龍踊かこむ海の眼玉 金子兜太
俺の分までもつと腰ふり蝌蚪踊れ 岸田稚魚 雁渡し
俺の分までもつと腰振り蝌蚪踊れ 岸田稚魚 負け犬
倒木に踊り足りたる腰おろす 岡本眸
兜虫よこぎりゐたる踊の座 加藤秋邨
八つ鹿の羯鼓ほがらか庭踊 佐藤鬼房
八月尽蟹を踊らすテレビ見て 百合山羽公 寒雁
内海へなだれ屋島の踊子草 鷹羽狩行
出を待てる東踊の男ぶり 山口青邨
出踊りしたは遠い日 井戸辺で障子洗う 伊丹三樹彦
出迎へし阿波の医師も踊足袋 飴山實 句集外
初夢に見し踊子をつつしめり 森澄雄
初盆の供養踊をうけてをり 長谷川素逝 村
加はらず狂女の踊見る阿呆 平畑静塔
十五夜の怒濤へ若き踊りの手 西東三鬼
合歓の花鷺は娶りの踊りして 飴山實 句集外
吉原の踊過ぎたる夜寒哉 正岡子規 夜寒
名月に花風(はなふう)といふ踊り見し 細見綾子 曼陀羅
名月に花風といふ踊り見し(沖繩二句) 細見綾子
名月や何やら踊る海の面 正岡子規 名月
向合ひ踊る合間が風の道 松崎鉄之介
君が代を踊りそめけり花の春 正岡子規 初春
吾にうなづき手拍ちうなづき踊子等 中村草田男
土偶まかいの 首や手足や 踊る農夫 伊丹三樹彦
塀の上蝉取袋二つ踊り 上野泰 春潮
墓山の階に踊場風光る 上田五千石 森林
夜の林檎歯並みずみずしく踊り子 伊丹三樹彦
夜の目にも踊りの場の草青し 清崎敏郎
夜を更かす踊子草をかたはらに 後藤比奈夫
夜を踊るウイグルびとに月の庭 松崎鉄之介
夜気截つて踊は指の先に力 大野林火 飛花集 昭和四十四年
大盗の怨霊の鷺の少女踊る 橋閒石 風景
天の川ま夜中の酔ひどれは踊る 種田山頭火 草木塔
天草をよべの踊の場に干す 清崎敏郎
女にも生れて見たき踊哉 正岡子規 踊
好きたいか好かれるよりもと踊歌 中村草田男
好漢や生れは阿波の踊の手 百合山羽公 樂土
嫗まるまる昆布巻姿花下に踊る 中村草田男
学問を憎んで踊る老子の徒 村上鬼城
宵の間の角力くづれて踊哉 正岡子規 踊
宵月の出汐の踊はずみ来し 臼田亜郎 定本亜浪句集
家の人供養踊に掌をあはす 長谷川素逝 村
寒椿踊らんとして坐りなほす 平井照敏 猫町
寺々や盆の踊に破れ築地 石橋秀野
寺苑なり踊の櫓立ちゐるは 山口誓子
小時も老ゆ東踊の三味をひき 山口青邨
小脇にはして軽すぎる踊笠 後藤比奈夫
小踊りクルス胸裸に走りくる拓地 三橋敏雄
尻をつく大道踊夕桜 古舘曹人 樹下石上
尾鰭めく紅帯の房踊へ行く 香西照雄 素心
屈強な踊り手揃ふ伊勢神楽 松崎鉄之介
屠殺場近く九階灯ともり男女踊る 金子兜太
山の町踊に夜は膨れけり 大野林火 飛花集 昭和四十四年
山会に猫が踊るよ漱石忌 山口青邨
山国の聞けば淋しき踊唄 稲畑汀子
山姥の通りぬけたる踊の灯 星野麥丘人
山山に木曽の踊も終りけり 松本たかし
山川にのりて下るよ踊唄 平畑静塔
川に音還る踊の灯の消えて 岡本眸
帯の卍揺れても卍阿波踊 林翔
帯もまだ結べぬ手にて盆踊 百合山羽公 樂土以後
常臥しの踊りもならず空也の忌 森澄雄
幕間や初夏の虹彩踊り段 石塚友二 方寸虚実
幣たてゝ彦山踊月の出に 杉田久女
店先によべの踊子たゝずめる 清崎敏郎
弔ひの黒衣冠りて盆踊 山口誓子
引く手差す手押す手もあれや女踊る 香西照雄 素心
引く波を追ふかに進み踊の輪 香西照雄 素心
弟の死んで招ばるる阿波踊 松崎鉄之介
影大き手が何まねく盆踊 鷲谷七菜子 天鼓
影引いて踊る鴉や春の暮 渡邊白泉
彼岸会の老婆の踊り素面素手 右城暮石 句集外 昭和三十九年
待つほどに踊ぞめきの押して来し 稲畑汀子
後姿踊りつつ去る追はんとす 中村草田男
忍ぶ夜はおわら踊の笠着よと 後藤比奈夫
念仏踊は歩いてゆくよ月赤し 山田みづえ 手甲
念仏踊ぽつりぽつりと花の雨 岸田稚魚
念仏踊仏も神もめぐりけり 大野林火 方円集 昭和五十二年
念仏踊大杉雫してゐたり 大野林火 方円集 昭和五十二年
思はざる人が踊の輪にをりぬ 星野立子
思はざる旅愁ゴーゴー皆踊る 星野立子
懸巣飛び老いし伊昔紅踊るなり 水原秋櫻子 残鐘
我を遂に癩の踊の輪に投ず 平畑静塔
或夏の或夜も流れ踊も去る 中村草田男
戻りゆく踊疲れの三味抱いて 高浜年尾
手うら足うら後へかへす踊かな 原石鼎 花影
手のそよぐ方へ進みて盆踊 鷹羽狩行
手のひらを上踊の手~ 高野素十
手を上げて月受け止むる踊かな 上野泰
手を伸べて烏にかも似て盆踊 鷹羽狩行
手を拍つて佐渡へおいでと吾も踊る 阿波野青畝
押し出され踊らされをり花筵 清崎敏郎
掻きたててどんどの小さき火の踊り 伊藤白潮
揃はざる足音の過ぎ踊子草 岸田稚魚 紅葉山
揚げ舟に月さしてゐる踊かな 大野林火 早桃 太白集
揚げ舟に高張立てし踊かな 高野素十
故郷の土蹴つて鳴らして踊下駄 大野林火 飛花集 昭和四十四年
斜陽館へ踊りの列の末に蹤く 能村登四郎
新幹線より見て盆踊ひとつまみ 岡本眸
日がくれて踊りに出たり生身玉 正岡子規 踊
日月のごとくに巡り踊の輪 野見山朱鳥 運命
昇りつつ踊の月となりゆけり 岡本眸
明けて鉾立つ青杉山と踊りそろふ 松崎鉄之介
明月の中に何やら踊りけり 正岡子規 名月
星浴びて山又山の山に踊る 大野林火 方円集 昭和五十二年
春の夜や都踊はよういやさ 日野草城
春の日や踊教ふる足拍子 正岡子規 春日
春の飛雪鉄路が踊り集まりゆく 石田波郷
春来るか孤児ら踊りの足つきなど 古沢太穂 三十代
春興にきそひ踊るや六歌仙 水原秋櫻子 餘生
昼酒の鬼の踊りし曼珠沙華 森澄雄
時化ぬけの八朔踊もやるといふ 長谷川素逝 村
時計見て看護婦踊より脱けゆく 加藤秋邨
暗い沖へ手あげ爪立ち盆踊 西東三鬼
曳猿の紐いつぱいに踊りをり 星野立子
月とどまる踊りの唄の天に抜け 大野林火 潺潺集 昭和四十年
月とるごと種まくごとく踊りけり 山口青邨
月と雲遊べり人は踊の輪 後藤比奈夫
月に踊る中にはいれば輪となりぬ 上村占魚 鮎
月の出て渚近づく踊唄 岸田稚魚 筍流し
月出でゝ鬼もあらはに踊かな 河東碧梧桐
月明の落葉踊れり槻一樹 草間時彦 中年
月更けて恋の部に入る踊かな 内藤鳴雪
月赤し雨乞踊見に行かん 正岡子規 雨乞
月遍照の嶺々に手をあげ踊るなり 大野林火 雪華 昭和三十四年
木々芽吹く中にも柿の枝踊り 石川桂郎 含羞
木曾谷に十二拍子の踊あり 山口青邨
村過る踊子草の短かさに 古舘曹人 樹下石上
東をどり幕汐汲の踊にて 山口青邨
東踊の菓子をそなへし人を知る 山口青邨
東踊宮本武蔵出を待てる 山口青邨
松山乙女踊るを見るゆゑ松山人 中村草田男
枯原の水越ゆ影を踊らせて 右城暮石 句集外 昭和二十三年
棘ふかき踊子を包みさる吹雪 橋閒石 風景
椰子風に 笛吹くかぎり 蛇踊る 伊丹三樹彦
榛の花伊豆の踊り子この道を 山口青邨
横丁で紛れて外れて阿波踊 稲畑汀子
樫のくらみへ片よりたがる踊の輪 能村登四郎
歌垣の世は變りたる踊りかな 正岡子規 踊
歎き唄郡上踊を挟む軒 石川桂郎 高蘆
正気にて狂女よつぴてでも踊る 平畑静塔
死馬の骨買われ逆光のポプラ踊る 橋閒石 荒栲
殺し場も東踊にありにけり 山口青邨
母の顔見えれば踊りかくれけり 中村汀女
母子踊る粉雪の如く静寂に 三橋鷹女
母恋し放下念佛踊見て 石田勝彦 雙杵
母酔うて古き手振りの踊かな 内藤鳴雪
毬はぜる淋しさの踊子青し 橋閒石 風景
水打ちては魚臭をしづめ踊りつぐ 上田五千石『田園』補遺
水際青芝鼓うち肢ふむ鹿踊 佐藤鬼房
汐まねき呪文の踊りくりひろげ 野見山朱鳥 曼珠沙華
汐騒も更けぬ平家の踊唄 星野麥丘人
流しまた一つの風情阿波踊 高浜年尾
流し踊り過ぎ打水の跡も見ゆ 能村登四郎
浦祭祭囃子に波踊り 上野泰 春潮
浪華踊見つつはあれど旅疲れ 富安風生
浮誇孑孑裸踊の肌の沢(つや) 中村草田男
海暮れて踊子の足袋白くめぐる 角川源義
淋しさに踊子草のふゆるなり 後藤比奈夫
渦潮にはげみて踊かけにけり 飴山實 句集外
湯口に踊る白繭小春の糸を繰る 古沢太穂 古沢太穂句集
湯女踊る渓声夜は調変へ 山口青邨
満月のひと夜さ踊り阿波を去る 森澄雄
漂着の平家供養の盆踊 山口誓子
火事見舞東踊の小時より 高野素十
火踊も餘燼となりし馬追かな 百合山羽公 樂土
火踊りの火を撒くフィルム凍る舷 古沢太穂 火雲
火踊信玄塚を焼くばかり 百合山羽公 樂土以後
火踊先づ設楽野のいなびかり 百合山羽公 樂土以後
火踊衆の着きたる煙かな 石田勝彦 雙杵
灯がついて踊の音は大津かな 山口青邨
灯の芯に来し踊り子の帯ゆるみ 能村登四郎
煖炉灼く夫よタンゴを踊らうか 三橋鷹女
熊祭るアイヌも踊れ菊の洒 内藤鳴雪
燈が点きて踊櫓は花御堂 山口誓子
燭光が踊る素顔をかがやかす 平畑静塔
爪先で進み退く阿波踊 山口誓子
爪先の喜んでゐる踊かな 後藤比奈夫
牡丹の芽踊るが如くわが立てば 山口青邨
狂院の百合のとび出す盆踊 古舘曹人 砂の音
狂院をめぐりて暗き盆踊 西東三鬼
狐面つけて踊りの輪の中に 中村苑
独りでも踊ろうよ葛の花がくれ 橋閒石 虚 『和栲』以後(I)
猫じやらしそよぎ夜を待つ阿波踊 森澄雄
瓦場に燭の乏しい踊りの輪 佐藤鬼房
田遊の鈍の踊の果てもなし 岸田稚魚
男嫌ひのこむらちらりと阿波踊 鷹羽狩行
男装し太腿を見す阿波踊 山口誓子
町中の木槿暮るれば阿波踊 森澄雄
療苑の盆踊赤ふんだんに 右城暮石 上下
癩の手が夜天つかまむとする踊 平畑静塔
癩の踊螢火入れてたけなはに 大野林火 雪華 昭和三十四年
癩盲のかたまり踊唄を聞く 大野林火 雪華 昭和三十四年
癩踊るみな来世を見る眼して 大野林火 雪華 昭和三十四年
白粉の濃ゆきを待てる踊笠 後藤比奈夫
白脛をかくさず風に踊るなり 藤田湘子 てんてん
白鳥見る雪の踊場かがやかに 古舘曹人 能登の蛙
盆の夜や踊りて癩が地にぎつしり 平畑静塔
盆の月既に高しや踊の輪 高浜年尾
盆の町見るも踊るも更けにけり 鈴木真砂女 紫木蓮
盆は皆に逢ふて踊つて一夜きり 大野林火 飛花集 昭和四十四年
盆唄や今生も一と踊りにて 石塚友二 曠日
盆踊も雨や里人風呂へ行く 中村草田男
盆踊落葉松を月駈けぬけぬ 加藤秋邨
盆踊頭上の月がよく踊り 阿波野青畝
眦に紅決したる踊りかな 石橋秀野
眼窩深く翳り沖縄びと踊る 藤田湘子
石の上に踊るかまきり風もなし 西東三鬼
石舞台月夜はむろん踊る舞台 金子兜太
破れたる翅もたゝむ蛾の踊 前田普羅 春寒浅間山
神輿踊り人踊る秋の風囃せ 村山故郷
神輿踊る秋日散らして橋の上に 村山故郷
秋日さす山車で踊れるひよつとこに 清崎敏郎
秩父人秋蚕あがりぬと来て踊る 水原秋櫻子 残鐘
稲の花たんとたもれや仕踊 山田みづえ 木語
稲太る月夜の手足盆踊 飴山實 おりいぶ
空路で見る米の字の燈は盆踊 山口誓子
空間を両手で掻ける阿波踊 山口誓子
窓のかげよその二階の踊かな 正岡子規 踊
窓開かぬぼろバス 熊の無駄踊り 伊丹三樹彦
竜踊の一瞬鱗裏返し 阿波野青畝
精神科切りまで美声にて踊る 平畑静塔
精神科踊りて要らず眠り薬 平畑静塔
精神科踊るつなぎの輪のとけず 平畑静塔
精神科踊ればどん底には非ず 平畑静塔
紅袂徒歩に石踏み踊るなり 中村草田男
細きふり見するを踊女かな 右城暮石 句集外 昭和十五年
緑衣着て踊るこの世のひとならず 山口誓子
編笠は深きがよけれ阿波踊 鷹羽狩行
繰り出してはや急調の阿波踊 鷹羽狩行
罪障の面隠して踊る盆 鈴木真砂女 紫木蓮
群舞たったひとりの踊子を凝視め 伊丹三樹彦
羽を打つて小天狗どもの踊かな 正岡子規 踊
羽打つて小天狗どもの踊哉 正岡子規 踊
老いながら椿となつて踊りけり 三橋鷹女
老狂女百まで踊り生きむとす 平畑静塔
耳噛んで踊るや暑き死の太鼓 西東三鬼
聖樹下に踊りてはらふ塵少し 原裕 葦牙
肌寒の提灯赤き踊かな 日野草城
肘白き君が踊の手ぶりかな 正岡子規 踊
背の高い人のこにくき踊哉 正岡子規 踊
脇挟みたきはおけさの踊笠 後藤比奈夫
腕といふしなやかなもの盆踊 能村登四郎
腰いやに低く繰り出し阿波踊 鷹羽狩行
腰細く踊り過ぎしは汝ならむ 岸田稚魚 筍流し
膰(ひもろぎ)を負ひ豊年の鹿踊 佐藤鬼房
膳玉悪玉踊り惚けて雨期終る 金子兜太
舞踏会諜者が諜者ときて踊る 伊丹三樹彦
花風を踊る爪先き月の波(沖縄) 細見綾子
芽柳や短かき枝の踊りやう 星野立子
若者よ踊一途に魂抜けて 高田風人子
英人も露人もましる踊哉 正岡子規 踊
草取衆一人は紅緒踊笠 山口青邨
草相撲の相撲に負けて踊かな 村上鬼城
萬歳の踊りかけたり町はつれ 正岡子規 万歳
葛の蔓触れて踊れる出水川 右城暮石 句集外 昭和六十年
葛山を嵐のいづる踊かな 飴山實 花浴び
葭切に水打ち誘ふよ踊歌 香西照雄 素心
虫送り踊の鉦の甲高し 清崎敏郎
蛇踊のいと単調にくりかへす高浜年尾
蛇踊の万の鱗の一つ落つ 野見山朱鳥 荊冠
蛇踊りや山々に雲蟠り 高野素十
蛇踊り秋冷誘ふ辻の楽 角川源義
蝌蚪踊る貯炭場の水よきことあれ 小林康治 玄霜
蟷螂の風を踊りてゐたりけり 平井照敏 天上大風
行く水に横顔続けや踊の輪 中村草田男
街角の少し暗きに踊り痴れ 稲畑汀子
袈裟揺るる最勝人の踊かな 阿波野青畝
袖なくてうき洋服の踊り哉 正岡子規 踊
裸木の極みとなりて踊り出す 岡本眸
裾引いて踊りくれしも春立てり 細見綾子
見古りたるあしべ踊の廊下番 後藤夜半 翠黛
親負うて踊念佛見に行ん 正岡子規 踊
誰そや闇に小石投げこむ踊哉 正岡子規 踊
謝肉祭水売女踊り出す 有馬朗人 天為
貌を人にかくして踊りけり 石橋秀野
負はれたる子供もせなで踊哉 正岡子規 踊
越の月存分踊り明かすべし 阿波野青畝
足元の闇を蹴り蹴り踊る盆 鈴木真砂女 紫木蓮
足指を踊らす体操 寝待月 伊丹三樹彦
足調子千がひとつに踊下駄 大野林火 飛花集 昭和四十四年
踊あはれ没日の浜に影を曳き 後藤比奈夫
踊あるふるさと持ちて皆帰る 大野林火 飛花集 昭和四十五年
踊うた低くひくくて汐さし来 星野麥丘人
踊おぼえて木の葉さびしくひかる宿 飯島晴子
踊すみ燈籠納めすみ闇夜 長谷川素逝 村
踊すみ燈籠送りすみ闇夜 長谷川素逝 暦日
踊たけなは片肌脱ぎの太鼓打ち 福田蓼汀 秋風挽歌
踊の手ひらひら進み風の盆 福田蓼汀 秋風挽歌
踊の手金星を指し夫を指し 香西照雄 素心
踊の灯なくば三日月のみの谷 鷹羽狩行
踊の灯北斗星さへみな消えて 中村草田男
踊の町清流も灯をちりばむる 松崎鉄之介
踊の輪ただに輪廻のかがやきに 中村草田男
踊の輪に入らむとならず立ち出でぬ 中村草田男
踊の輪ドナウ川風たちつるる 林翔 和紙
踊の輪寝覚の床の入口に 山口青邨
踊の輪潮さしひたす空地の端 佐藤鬼房
踊の輪老婆眼さだめ口むすび 西東三鬼
踊はじまる町空火取虫離れ 松崎鉄之介
踊より戻りて水を一息に 清崎敏郎
踊らねばすこし損せり阿波の夜 能村登四郎
踊らまくさかさ頬冠したりけり 松本たかし
踊らんと顔を包めばうつくしき 後藤夜半 翠黛
踊りが歌ふ「かはらぬものは空の青」中村草田男
踊りくる飛んでくるなる秋の水 石田勝彦 秋興以後
踊りけり初荷の山も崩れよと 正岡子規 初荷
踊りけり腰にぶらつく奉加帳 正岡子規 踊
踊りたけなは闇から闇へ猫が跳び 上田五千石『田園』補遺
踊りたるどんぐり独楽は負けにけり 阿波野青畝
踊りたる狂女と生きし二十年 平畑静塔
踊りつづくここが墳墓の大地蹴り 大野林火 雪華 昭和三十四年
踊りつづく癩に祭の酒などなし 大野林火 雪華 昭和三十四年
踊りつゝ異国の旗の下の除夜 山口誓子
踊りの夜川に這ひでて葛の蔓(富山県、八尾風の盆三句) 細見綾子
踊りの灯木曾は檜山の立ちそそり 大野林火 潺潺集 昭和四十年
踊りの輪挫きし足は闇へゆく 赤尾兜子 玄玄
踊りの輪数珠のかたちに盆送る 鈴木真砂女 紫木蓮
踊りの輪殖ゆるや盆もけふかぎり 大野林火 潺潺集 昭和四十年
踊りゆくどこまでも同じ輪の上を 橋本多佳子
踊りゆく踊りの指のさす方へ 橋本多佳子
踊りゐて月の埠頭となりてゐし 岸田稚魚 筍流し
踊りをりいつさきの衆烏賊の衆 清崎敏郎
踊り凧 踊らせ 老爺の日銭のほど 伊丹三樹彦
踊り唄終りを始めにくりかへし 橋本多佳子
踊り唄遠しそこよりあゆみ来て 橋本多佳子
踊り場に赤い紐落ち雁わたし 岡井省二 鯛の鯛
踊り場の世話役がたゞ歩き廻る 右城暮石 句集外 昭和三十六年
踊り子にトマトのこれる畑かな 永田耕衣
踊り子のうすら汗してにほひをり 森澄雄
踊り子のひとり日焼けて踊りゐる 安住敦
踊り子の二たび三たび梅雨窓に 中村汀女
踊り子の少年少女のうぜんかずら 能村登四郎
踊り子の揃ふ飼屋の虫の声 前田普羅 春寒浅間山
踊り子の眉ぬるる星の影蒼く 村山故郷
踊り子の背ナに乗りゆく小蟷螂 野澤節子 存身
踊り子の踊り疲れて月さびし 村山故郷
踊り子の踏めば玉吐く沢清水 前田普羅 春寒浅間山
踊り子の酒のふくべの笑ふかな 角川源義
踊り子を次々に呑み太柱 上野泰 春潮
踊り抜き阿波の旅寝の深かりし 稲畑汀子
踊り明し唄ひ明して風の盆 福田蓼汀 秋風挽歌
踊り来て月の匂ひの衣を畳む 橋閒石 雪
踊り櫓解かれしといふ縄丸太 能村登四郎
踊り見に来て川音のよろしもよ(富山県、八尾風の盆三句) 細見綾子
踊り見の婆巾着の堅握り 能村登四郎
踊り足早池峯霧の渦まけり 加藤秋邨
踊るかな春の夕日の影法師 正岡子規 春の夕
踊るなり月に髑髏の影を曳き 三橋鷹女
踊るなり紙も蚕も滅ぶれど 大野林火 飛花集 昭和四十五年
踊るべく人集まりぬ夕堤 内藤鳴雪
踊るらめ女泣かせぬ世の来るまで 中村草田男
踊る人月に手を挙げ足を上げ 高浜年尾
踊る夜の坂ゆるやかに風の盆(富山五句) 鷹羽狩行
踊る夜もくろがねの輪の水練児 百合山羽公 寒雁
踊る路地踊り抜かねば抜けられず 岡本眸
踊る輪にさからひ妹をさがす 鷹羽狩行
踊る輪に身が透きとほるまで踊り 能村登四郎
踊る輪の主を馳せ過ぎ戻る犬 鷹羽狩行
踊る輪の暗きところを暗く過ぎ 鷹羽狩行
踊れよと呼びかけられて旅の我 高浜年尾
踊れよと横川法師の説きにけり 阿波野青畝
踊れ踊れ花のちる迄暮るゝ迄 正岡子規 散桜
踊去るよわが母不言(だま)つてただ逝きて 中村草田男
踊去るよ乙女へ映りし吾なりしも 中村草田男
踊去るよ故友の妻はや嫁しもして 中村草田男
踊唄いきの尾長の老いのこゑ 野見山朱鳥 運命
踊唄ほどには踊進まざる 後藤比奈夫
踊場の一瞬の闇去年今年 山口青邨
踊太鼓地酒ぶつかけ滅多打ち 岸田稚魚 筍流し
踊太鼓夕誘ふ海のあなたより 種田山頭火 自画像 層雲集
踊女の足の上品上生に 後藤比奈夫
踊姫衣を擲つを照らしをる 阿波野青畝
踊娘の帯は黒繻子風の盆 清崎敏郎
踊娘の昂ぶりさます路地の闇 岡本眸
踊子がさつき丸への投げテープ 川端茅舎
踊子となるくずのはの子供かな 阿波野青畝
踊子のそれ~恋をもちにけり 日野草城
踊子のひとり外れたる二の輪かな 星野麥丘人
踊子の笠のうちこそ見まほしく 高浜年尾
踊子の顔つくろへり年ゆけり 山口誓子
踊子も冷たきものを飲める除夜 山口誓子
踊子や除夜の淑女を眼に偸む 山口誓子
踊子宿簾の裾を川流れ 大野林火 飛花集 昭和四十四年
踊子草おけさの島は人減ると 上田五千石『琥珀』補遺
踊子草かこみ何やら揉めてゐる 飯島晴子
踊子草咲きむらがれる坊の庭 山口青邨
踊意先づ指に走りて雲の峯 中村草田男
踊散じて児の瞳の黒き乳母車 中村草田男
踊望む塀の低さよ座の高さよ 中村草田男
踊浴衣は白波模様裾は紺 香西照雄 素心
踊笛腰にさしたる老の伊達 山口青邨
踊笠いくつ覗けば妻をらん 飴山實 句集外
踊笠うしろに脱ぎし汗男 百合山羽公 寒雁
踊笠二つにたたみ縁に腰 阿波野青畝
踊笠被りて眉目の生れけり 後藤比奈夫
踊見し木曽の夜霧に中り病む 松本たかし
踊見の妻古りたれど連れにけり 松村蒼石 寒鶯抄
踊見るうしろを夜舟たちゆけり 大野林火 早桃 太白集
踊見る家郷にありし日の如く 上田五千石『琥珀』補遺
踊見る犬はけものの息荒く 雪しろ 野澤節子
踊見る色傘しづむおかぼ畑 前田普羅 春寒浅間山
踊見る踊疲れを憩ひつつ 松本たかし
踊見送りさぐれば千切れて柳の葉 中村草田男
踊髪とけばもの落つはら~と 高浜年尾
蹴出しつつしみつつしみて阿波踊 鷹羽狩行
軽羅の末子門前無人の一と踊 中村草田男
輪に踊るひとつの美貌盗みつつ 鷹羽狩行
通ひ路のあしべ踊の宵景色 後藤夜半 翠黛
運動会夫人ら重心低く踊る 草間時彦 中年
道ばたに蘆辺踊の二階かな 後藤夜半 翠黛
達磨殿踊り出したり秋のくれ 正岡子規 秋の暮
遠い丘に踊るじじばば青棗 金子兜太
郡上のなあまでは踊れて狩行かな 鷹羽狩行
郡上踊扁平足のとちりけり 石川桂郎 高蘆
郡上踊肌にしつとり阿波しじら 松崎鉄之介
都踊の戻りを外れて酔ひにけり 日野草城
都踊り美女嬋娟を競ひけり 村山故郷
醫師の友あり長崎に踊るかな 岡井省二 前後
金髪に風たちやすき盆踊 鷹羽狩行
銀座より東踊にみちびく灯 山口青邨
銀紙の聖鐘踊子ら足を組み 山口青邨
銃声一発、さくらに白骨の踊りいでたるなり 荻原井泉水
長簓しなふ暮春の鹿踊り 能村登四郎
阿波の阿は阿呆の阿よと踊りけり 鷹羽狩行
阿波を去る踊桟敷を解く道を 稲畑汀子
阿波踊のぞき郡上で踊りけり 松崎鉄之介
阿波踊らしく踊れてをらずとも 稲畑汀子
阿波踊をどる楽しさ故に来し 高浜年尾
阿波踊下駄の爪先立てしまま 山口誓子
阿波踊両手差し上げ宙掴む 山口誓子
阿波踊男女の別は腿で知る 山口誓子
降る雪が踊る櫟を降りつつむ 石田波郷
院長の掛声精神科は踊る 平畑静塔
除夜たのしわが踊手は歯をかくさず 山口誓子
集りてはやも踊りの輪となれり 桂信子 草影
雑踏のどこが踊の輪といへず 稲畑汀子
難民の踊る仮面の眼を感ず 平畑静塔
雨あとの荒草いきれ盆踊 鷹羽狩行
雨の踊子毛布に眠る手を出して 金子兜太
雨雲の月をかすめし踊哉 正岡子規 月
雪の上に日の斑の踊り童子墓 鷲谷七菜子 銃身
雪の夜の踊子の痣かくすなし 岸田稚魚 筍流し
雪の虚空を語りつつ踊りの手となりぬ 加藤秋邨
雪解水雀踊りなすに憩ひをり 石川桂郎 含羞
雲ほのと明るむ島の盆踊 鷹羽狩行
雷のあとを淋しき踊哉 正岡子規 踊
露ふみふみ暗き月下の鹿踊 佐藤鬼房
青天に湧く粉雪やえんぶり踊り 草間時彦 中年
青年直ぐ 輪になる 踊る 遠郭公 伊丹三樹彦
青木賊都踊は音洩らさず 波多野爽波
音あはれ放下踊の大ささら 百合山羽公 樂土以後
頭に椿夜は出て踊る石佛 三橋鷹女
頭燈の無礼盆踊を照らす 山口誓子
風にいやいや踊らされ鳥威し鷹羽狩行
風の盆男踊りは鳥に似て 有馬朗人 非稀
風の蝶日の蝶舞と踊の差 鷹羽狩行
風よりも軽かりしもの踊笠 後藤比奈夫
風上の踊にわれの足拍子 林翔 和紙
風出でて泣かむばかりの踊唄 岡本眸
骨のみの工場を透きて盆踊 西東三鬼
鬼大師呪符をかざして踊らぼや 阿波野青畝
鬼若も山を下りて踊かな 内藤鳴雪
鳥威し夜も踊れり蜑の墓地 右城暮石 句集外 昭和五十七年
鳳仙花咲くくらがりを来て踊 中村汀女
鳶の笛習い 村には踊り櫓 伊丹三樹彦
鴨川踊われも霞みて先斗町 森澄雄
鹿踊り跳ねてはちらす桜蘂 能村登四郎
鹿踊頭の垂に春の字を 山口青邨
黒煙けふなき空へ踊りの手 西東三鬼
鼻先を霧の流るる踊かな 清崎敏郎
龕燈や郡上踊へ橋渡す 石川桂郎 高蘆

踊 続補遺

あの中のうつ気踊かさくら人 寥松
うかと出て家路に遠き踊哉 黒柳召波
かの後家のうしろに踊る狐哉 黒柳召波
しらぬどし夫婦と妖て踊かな 望月宋屋
しら露の中に手を打踊かな 成田蒼虬
たて臼もともに踊や祇園の会 嵐雪
たまうちや抱たも踊る男の子 三宅嘯山
つゝみ合し夫婦出くわす踊哉 高井几董
なひ恋を尻にあらする踊哉 吾仲
につとりと御所の五郎が踊哉 りん女
はちたゝき少し踊て廻向かな 樗良
まくり手が踊崩してをどりけり 加藤曉台
ゆふだちをまつ江の鱸踊けり 三宅嘯山
よひやみや門に稚き踊声 炭太祇
七夕の川をへだてゝ踊かな 李由
七猿の仲間に踊る師走かな 冠里 類柑子
不拍子の踊是非なし庄屋の子 白雪
世には着て親に背むくを馬鹿踊 鬼貫
世の中の踊は丸し十七夜 中川乙由
主の子の後には邪魔な踊かな 三宅嘯山
乗掛で踊の中を旅出かな 小西来山
兄弟は踊に影の添ふごとく 凉菟
卯の花や踊崩れてほととぎす 鬼貫
名月にひかれて行や里踊 林紅
在郷で死て戻りし踊かな 桃隣
声はてる踊の果や乱れ鶏 荻子
夜は相撲昼は踊の噂さ哉 露印
夜明るや酒のきをひの一踊 長虹
夢と成し骸骨踊る荻の声 其角
大分は茶屋に崩るゝ踊哉 如行
嫉き夜の夏書の筆の踊けり 三宅嘯山
子心の哀やよそにきく踊 玄梅
小娘の生先しるしかけ踊 其角
小踊に夜更る五条あたりかな 秋之坊
広庭や踊のあとに蔵立む 一笑(金沢)
影見れば我一丈の踊哉 乙訓
憂き人を独りへだてゝ踊かな 不屑 新類題発句集
朱雀野は薄もういて踊かな 馬場存義
極楽の札場込合ふ踊かな 越人
殿様かたお前の沖や踊舟 立詠 板東太郎
母式*ぶ闇よりやみへ踊かな 黒柳召波
水の音踊たあとへ戻りけり 田川鳳朗
法談は其座に置て踊かな 野紅
瓜市の跡は場になる踊りかな 其角
生ケぶねの魚も踊るやはるの雨 程已
目にありや去年わかれし組踊 望月宋屋
眠たがる子をかりに来る踊かな 卓池
秋もやゝ西にきこゆる踊かな 桜井梅室
笠かして地蔵姿の踊見む 一笑(金沢)
聖*りょうも見に出らるゝや子の踊 露川
腹貸さぬ子に錦あり盆踊 午心 発句類聚
虫の音や踊見あきて戻り足 十丈
蚊屋釣て踊に出るや女房なし 木因
見ぬふりや踊子のもぐ門の桃 鈴木道彦
見られねば猶うらやまし盆踊 桃隣
親ならば見よ踊子の袖の鈴 北枝
談義から鹿にはいりて踊かな 野紅
踊にも出せよ摺粉木音羽山 凉菟
踊の夜田に乞ふ雨をいとひけり 三宅嘯山
踊るべきほどには酔て盆の月 李由
踊召シて番の大郎に酒たうべけり 其角
踊子の帰り来ぬ夜やきり~す 丈草
踊子の笠ならべたる牡丹かな 支考
踊子やかき消やうに稲荷山 尚白
踊子やひとり~の親ごゝろ 舎羅
踊子や滋賀の都も汗くさき 千那
踊子や皃月になり闇になり 田川鳳朗
踊子を馬でいづくへ星は北 其角 五元集
辻踊一崩して丸ふなる 釣壺
間拍子の合ふてあはれや盆踊 馬場存義
雨の夜は踊を習ふ裏屋哉 一笑(金沢)
面白き癖見出しけり辻踊 野紅

以上

by 575fudemakase | 2017-05-17 09:09 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

扇  の俳句

扇  の俳句


扇 の例句

扇 補遺

あきんどの既につかへる扇子かな 日野草城
あふぎやる扇の風をほほ笑まれ 阿波野青畝
あやまつて清水にぬらす扇哉 正岡子規 扇
いちはやく白扇買ひしこと悔いぬ 燕雀 星野麥丘人
いつせいに年忌の扇使ひけり 石田勝彦 秋興以後
いまさばと思ふ心に扇閉づ 稲畑汀子
いろいろに扇子弄れど言ひにくし 日野草城
うすものの中に扇をつかふ腕 山口誓子
うちひらく片輪車の銀扇 山口青邨
うつくしや京の女の扇折 正岡子規 扇
うつくしや扇づくりの苗代田 山口青邨
おさらばと扇をたゝむ別れかな 正岡子規 扇
かざす顔に紅うつる扇哉 正岡子規 扇
かつみ葺く扇使ひもけふよりぞ 森澄雄
かの扇わが失くしたる舟あそび 中村汀女
ここからも風や吹くらんかけ扇 正岡子規 扇
この扇子七百五十号に多謝 阿波野青畝
この扇愛し用ゐて女持 山口青邨
これ迄と扇をたゝむ別れ哉 正岡子規 扇
こゝからも風は来るかやかけ扇 正岡子規 扇
ささやきや銀扇の風遠ざけつ 中村汀女
ざれ歌の手跡めでたき扇哉 正岡子規 扇
しひられてもの書きなぐる扇哉 正岡子規 扇
しろがねがうこんの男扇かな 岡井省二 猩々
しろがねの房つき扇置かれけり 岡井省二 鹿野
すずしろを扇の形にめでたさよ 高野素十
すてられた扇も露の宿り哉 正岡子規 露
すて扇ひろつていづち置くべしや 原石鼎 花影
たかし忌の白扇が打つ膝拍子 鷲谷七菜子 花寂び
たはれをや扇の手わさ小さかしき 正岡子規 扇
たまに出て人の扇の珍らしき 後藤夜半 底紅
たゝみたる扇にはねる蜈蚣かな 正岡子規 扇
つつ~と扇の上に粽のせ 高野素十
なかば閉ぢ扇子の白さ改まる 鷹羽狩行
にほはしく女賊の扇古りにけり 飯田蛇笏 山廬集
はや~と扇使ひぬ法然忌 岡井省二 大日
はらみつの頤と思ふ扇かな 岡井省二 前後
はるばると南の島へ白扇 有馬朗人 非稀
ひらきたるまゝの男の扇かな 岡井省二 猩々
ひろげある女の扇わがたたむ 後藤夜半 底紅
ふしさへも一と夜に出来つ扇折 正岡子規 扇
まづもゆるあはれお飾の紅扇 山口青邨
まづ扇使ふことより落著きぬ 稲畑汀子
みせばやの花に扇を捨てやらず 後藤夜半 底紅
むくつけきをのこが舞へる扇かな 村上鬼城
もてあそぶ扇となりて言とぎれ 鷲谷七菜子 黄炎
もてなせり棕梠扇にて蠅を追ひ 山口誓子
ものいはぬ座頭にくしや京扇 正岡子規 扇
ゆるやかに僧のつかへる黒扇子 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
よき人の襟にさしたる扇かな 内藤鳴雪
わが使ふ扇の影が乱すもの 中村汀女
モンペ穿きよき帯しめて扇子さし 山口青邨
一と雨の急に扇を捨てんかと 高浜年尾
一扇の軸を上座に契沖忌 飯田蛇笏 雪峡
一瀑をたたみ秘めたる扇かな 日野草城
七十の恋の扇面雪降れり 橋閒石 荒栲
上布着て扇子を帯にさして来し 細見綾子
下闇に白くつかへる扇子かな 日野草城
中元としての南地の舞扇 後藤比奈夫
中元の扇のことで宗花堂 高野素十
二条より嵯峨にかかりし扇かな 深見けん二
二条通富小路東扇店 山口青邨
五六本物書きすてし扇かな 内藤鳴雪
京に来て扇購ふいとま哉 正岡子規 扇
京の町にはでな扇を求めけり 正岡子規 扇
京わらべ三尺帯に扇子かな 石橋秀野
京人は男もやさし紅扇 正岡子規 扇
人待つ間扇絵の鮎泳がする 林翔
仰臥さびしき極み真赤な扇ひらく 野澤節子 未明音
仲見世の口覆の浅き扇店 富安風生
住職の大扇面の風貰ふ 山口誓子
佐理の字を写さむとおもふ扇子かな 阿波野青畝
傾城にとりかくされし扇哉 正岡子規 扇
傾城にものかゝれたる扇哉 正岡子規 扇
全開の扇田いまは刈田なり 山口誓子
六十を祝ふて贈る扇哉 正岡子規 扇
冬浪の銀扇の飛ぶ虚空かな 上野泰 春潮
出でて行くに扇子と数珠こそ忘れまじ 荻原井泉水
出雲人赤き扇をつかひけり 燕雀 星野麥丘人
剣売て扇さしたるすゞみかな 正岡子規 扇
匂はしく女賊の扇古りにけり 飯田蛇笏 霊芝
十人に十の扇の動く部屋 稲畑汀子
千部会の僧みな扇ゆるさるる 山口青邨
名園に扇子を使ふ著莪の花(後楽園) 細見綾子
君絵を画け我句を書かん白扇 正岡子規 扇
喪ごころの使ひて絵野の扇なり 岡井省二 有時
噴水へすゝむ白扇ひら~と 原石鼎 花影
塾生の詩を書きたがる扇かな 正岡子規 扇
墓石洗ひあげて扇子つかつてゐる 尾崎放哉 須磨寺時代
墨痕の隆々として古扇 石田勝彦 秋興以後
夏風邪や熊野とりおとす舞扇 山口青邨
夕涼の来てをり扇鶏頭に 森澄雄
夕涼小魚のせたる扇哉 正岡子規 扇
夕顔の花を画きたる扇哉 正岡子規 夕顔
大岡の訴を聞く扇哉 正岡子規 扇
大石忌酒盃ともなる舞扇 山口誓子
奈良扇恋はならぬときめつけし 後藤比奈夫
奈良扇男扇の好もしき 後藤夜半 底紅
奪られたる扇のことを思ひいづ 後藤夜半 翠黛
女の雛は檜扇膝の上に立て 山口誓子
女らの 扇使いに 鰭振る魚 伊丹三樹彦
女手に抓み使ひの扇よし 後藤夜半 底紅
妓生の扇がくれに澄む目かな 阿波野青畝
妻亡くし写経扇子を配りけり 松崎鉄之介
宗祇水汲むに扇子を落しけり 松崎鉄之介
小扇しづかにつかふ媾曳(あひびき)水に映り 中村草田男
小扇をはつれて見ゆる寝顔哉 正岡子規 扇
尾の鰭の扇を金魚全開す 山口誓子
山の日に桧扇の実もはじけたり(白山山麓白峰村) 細見綾子
山を見るならひに扇置きにけり 岡井省二 夏炉
山山の蒼き日と夜舞扇 高屋窓秋
川風や金波銀波の舞扇 中村草田男
帯かたく扇子あたらし子と街ヘ 及川貞 夕焼
帯の上の乳にこだはりて扇さす 飯田蛇笏 霊芝
年々やこれの扇の置きどころ 西島麦南 人音
忘扇となりて絵柄に気がつきし 能村登四郎
忘扇をとどけついでの二三言 能村登四郎
思ひ出しづかひに扇匂はする 上田五千石『琥珀』補遺
惟光の骨の扇を使ひをり 岡井省二 鯨と犀
懐刀のごと一文字に置く扇子 鷹羽狩行
我が咳に伽藍の扇垂木撥ね 川端茅舎
我が心よりも小さな扇子買ふ 有馬朗人 耳順
扇おき筆を執りては海を見る 山口青邨
扇おくこころに百事新たなり 飯田蛇笏 雪峡
扇なす谷にながらへ落葉焚く 佐藤鬼房
扇ひらき胸かくさうず雛かな 山口青邨
扇ほめとは美しき名の神事 後藤比奈夫
扇を逆にひらいてしまひ子は去りぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
扇売る女脂粉をいとひけり 西島麦南 人音
扇子もて種痘のあとをかくしけり 山口青邨
扇屋に相席ありて一の午 岸田稚魚
扇屋の女中頭の年賀かな 岸田稚魚
扇山むら雲すぐる雪解かな 飯田蛇笏 山廬集
扇持たずもとより羽織などは着ず 正岡子規 扇
扇絵やありともなくて銀の浪 村上鬼城
扇置いて妓生膝を高うしぬ 阿波野青畝
扇置きいとかろやかに死の話 鈴木真砂女 紫木蓮
扇見てふし思ひ出す夜寒哉 正岡子規 夜寒
扇貼ることに始る祭あり 後藤比奈夫
扇面の引手の彫りの幾冬ぞ 中村汀女
扇面の空より水の濃かりけり 上田五千石『琥珀』補遺
扇骨木の実妃陵の鳰の鳴きにけり 岡井省二 鹿野
手擦れふと過去引き戻す扇かな 稲畑汀子
持ちそめの扇子のかたき薄暑かな 日野草城
捨つるべき扇に記す恋句はも 上田五千石『琥珀』補遺
捨ててほしいと思ひゐる扇あり 後藤比奈夫
撰りひらく湖南の扇の舐の粉にほふ 篠原梵 年々去来の花 雨
数へ日の扇だたみに減りゆきぬ 鷹羽狩行
施餓鬼すみ扇子使ひて戻りくる(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
旅人の扇置なり石の上 正岡子規 扇
旅人の破鐘叩く扇かな 正岡子規 扇
旅衣とけば扇のはたと落つ 石橋秀野
日蔽舟扇使ひの人見ゆる 松本たかし
朝戸出の腰にしづけき扇かな 渡邊水巴 白日
東をどり白扇は鶴の舞ふごとく 山口青邨
松島に扇かさしてなかめけり 正岡子規 扇
柱たかく足倚せて扇つかひけり 飯田蛇笏 山廬集
梶鞠や天つ日さくる扇子あり 山口誓子
楽あれば苦ある扇を置きにけり 上田五千石『琥珀』補遺
檜扇に招きかへさん揚雲雀 内藤鳴雪
檜扇に歌も書れぬ思ひ哉 正岡子規 扇
檜扇のうしろ清少納言かな 平井照敏 猫町
檜扇のほつれも恋の怨かな 安住敦
檜扇をひとり使ひてさびしさよ 森澄雄
次の間に控へて扇名残かな 桂信子 草影
正しく持つてことし捨てるばかりの扇をもつ 荻原井泉水
死に近く羽根扇てふものありし 飯島晴子
母がおくる紅き扇のうれしき風 中村草田男
母使ふ扇の薫る風に近し 野澤節子 未明音
水に浮くものとし扇流さるる 後藤比奈夫
流扇の名残とどめよ大堰川 阿波野青畝
海は扇松島は其絵なりけり 正岡子規 扇
涼しさに海へなげこむ扇かな 正岡子規 涼し
涼しさのこゝを扇のかなめかな 正岡子規 涼し
涼しさよみんな開いて扇店 山口青邨
渓の蛾は扇にとりて美しき 富安風生
濃あぢさゐ扇をねたむ日なりけり 中村汀女
灯に蛾あり扇のごとく狂ひけり 阿波野青畝
炎天や白扇ひらき縁に人 原石鼎 花影
為山画いて皆が贊する扇哉 正岡子規 扇
爆音の空たちもどり扇持ちぬ 渡邊水巴 富士
牛若の扇は赤きとんほ哉 正岡子規 蜻蛉
物書いた扇を人に見られけり 正岡子規 扇
男なら鳥獣戲畫の扇かな 岡井省二 猩々
発心の歌書き捨てし扇哉 正岡子規 扇
白扇にいよいよ筆を惜しむべし 星野麥丘人 2002年
白扇に山水くらしほととぎす 飯田蛇笏 山廬集
白扇に描きし瓜やじぐざぐす 相生垣瓜人 明治草
白扇のさみしや霧の峰泊り 秋元不死男
白扇のゆゑの翳りをひろげたり 上田五千石 琥珀
白扇の上昇するや昇降機 中村汀女
白扇の粉落すやうな新しさ 細見綾子
白扇やいひつくろへど裏切りなり 村山故郷
白扇や乾き乾かぬ墨の痕 日野草城
白扇や恥ぢては足の指うごく 加藤秋邨
白扇や文ンにあそびて人喬し 西島麥南 金剛纂
白扇をたためば乾く山河かな 橋閒石 和栲
白扇をひらいてみても利益(りやく)なし 星野麥丘人 2001年
白扇をひらひら何を現すや 山口誓子
白扇を一気にたたみたる別れ 鷹羽狩行
白扇を伏せまぼろしの蝶押さふ 山口誓子
白扇を十本買はぼ梅雨明けむ 雨滴集 星野麥丘人
白扇を捨てて手だけになりて舞ふ 山口誓子
白扇を流してみむか壇ノ浦 星野麥丘人 2005年
白扇を用ひて山気そこなはず 上田五千石 琥珀
白扇を白扇のまま雨の夜は 星野麥丘人 2001年
白扇を落す怨情極まりて 山口誓子
白扇を蝶の如くに使ひをり 上野泰 佐介
白扇を遺児欲しがりてもてあそぶ 右城暮石 句集外 昭和二十七年
白檀の扇ぞ撓ふ我鬼忌かな 秋元不死男
白鳥の一羽白扇双開き 阿波野青畝
百日紅ちらは扇にうけて見ん 正岡子規 百日紅
目礼のあとの黙殺白扇子 鷹羽狩行
眺むるとなく開きをり奈良扇 桂信子 花影
神の扇に憤怒将門冬の燭 角川源義
福笹や早足火扇に蹤きて行く 村山故郷
秘めごとの如く使へる扇かな 中村汀女
笏あてし檜扇あてし裸雛 後藤夜半 底紅
笹につけて扇やかさん女七夕 正岡子規 七夕
簾なす雨くぐり来て扇店 中村汀女
簿水子祭の扇かざしけり 後藤夜半 翠黛
粛として葬列を待つ扇かな(国葬) 飯田龍太
紅の扇と見ゆれ帯の間 正岡子規 扇
紅扇十三にして舞をなす 正岡子規 扇
紅扇手向け太夫の墓としぬ 阿波野青畝
絵扇や鼻にぬけたる女ごゑ 藤田湘子 てんてん
緑蔭に紅覆輪の扇使ふ 山口青邨
繭買やおとなひかざす古扇 飯田蛇笏 山廬集
老そめてなほ絵扇の小さなる 村上鬼城
胸あけて人にはやらぬ扇風 能村登四郎
胸にあて女扇のたたまれぬ 後藤夜半 底紅
胸を匐ふ蟻を扇で掻き落す 山口誓子
舞扇たたむ玉の汗ただひとつぶ 山口青邨
舞扇ひらきて懸けて月を待つ 後藤夜半 底紅
舟べりに水見て扇名残かな 桂信子 花影
船に忘れし扇憶へば波模様 林翔
艶ばなし微に入るときの白扇子 鷹羽狩行
花氷かすめし風の扇より 山口青邨
花野径扇かざすは艶めける 富安風生
若き妓の扇子にも句を大石忌 森澄雄
草以忌を修し扇を忘れけり 松崎鉄之介
草鞋とけて口にくはえる扇哉 正岡子規 扇
葬列に加はる扇子つかひつつ 伊丹三樹彦
蒼茫と扇子売場でありにけり 上田五千石『琥珀』補遺
薔薇を見るわれの手にある黒扇 原石鼎 花影
薫風やむかし伯山の張扇 水原秋櫻子 蓬壺
藤を描くならはし加茂の扇には 後藤比奈夫
蛾を以て扇としけり須磨の浦 永田耕衣
衣摺りて使ふ女の扇佳し 後藤夜半 底紅
袖口に扇子の風を入れる虚子 飯島晴子
袴より抜く白扇のあたらしき 能村登四郎
要やゝ綻びし扇涼しけれ 小林康治 四季貧窮
見学の扇づかひをはゞかりぬ 清崎敏郎
話身に入りし扇をぱち~と 星野立子
誰が扇わすれおきけん松のもと 正岡子規 扇
謎扇ほほとわらひてたたまれし 阿波野青畝
謡ひながら小銭を受くる扇哉 正岡子規 扇
謡師に肩はる癖の扇哉 正岡子規 扇
象牙扇骨こま~とひらかるゝ 日野草城
豪華なる女犯の扇なぶりけり 飯田蛇笏 山廬集
贈るべき扇も持たずうき別れ 正岡子規 扇
贐といふ白扇のすがすがし 高野素十
赤きものを子はめで草のざつ扇 正岡子規 扇
近江より帰りて扇しまひけり 能村登四郎
遠雷や発止と入れし張扇 水原秋櫻子 晩華
酒を注ぎ注ぎて白扇こぼさざる 山口誓子
金扇に日輪真紅武者飾 山口誓子
金扇に紅日凝らす武者飾 山口誓子
金扇の雲浮かしたる冬の翳 飯田蛇笏 椿花集
金扇を颯々と使ふ田夫かな 山口青邨
銀扇にかくし終ふせぬこころかな 中村汀女
銀扇の外骨きつく押しひらく 野澤節子 未明音
銀扇の如くに水を打ちにけり 上野泰 佐介
銀扇をあぎとにあてゝ思ひごと 星野立子
錦蛇扇をもつて指ささる 富安風生
長旅や名残の扇用ひつ 阿波野青畝
門扇の石蕗のほとりに欲しき石 上村占魚
開き見る忘扇の花や月 山口青邨
関取の小さき扇を持ちにけり 村上鬼城
阿曽次郎と裏に書いたる扇哉 正岡子規 扇
雲の峯に扇をかざす野中哉 正岡子規 雲の峯
霧に借りしひとの扇はひとの香が 加藤秋邨
青田波扇とひらく夕べかな 上田五千石『森林』補遺
面垂れて忿怒の扇え開かず 石塚友二 方寸虚実
韮一本われの眼を扇ぐなり 飯島晴子
頬杖の鉄扇いたし時鳥 正岡子規 時鳥
頷いてばかりゐる客白扇子 中村苑子
颯々と遅参の扇つかひけり 上田五千石『天路』補遺
颯詠と二字ある扇ひろげられ 阿波野青畝
髪結ふて古風な人の扇哉 正岡子規 扇
黒扇膝にたゝみて芥子をみる 原石鼎 花影

扇 続補遺

*うたひてはひろげて見たき扇哉 猿雖
*たきしめた扇に請る葵かな 三宅嘯山
あめつちのたらずめつかふ扇哉 寥松
いねぶりや人の扇の風が来る 万子
うかるゝや扇隣に水の花 上島鬼貫
かざしてや扇にへだつ蝉の声 支考
けふこそは扇とるらめ氷室守 鈴木道彦
けふのこと扇に書にあまりけり 松窓乙二
これみつが蜘捨てにたつ扇かな 大伴大江丸
さかさまに扇をかけてまた涼し 丈草
さしかえて扇持たる別かな 木導
さしわたす扇子の影や白牡丹 素丸 素丸発句集
さし置つ取つゝ鳴らす扇かな 三宅嘯山
しら菊に与一が扇さもあらば 秋色 俳諧嘱入尽
すまひ取扇遺ひの見事かな 三浦樗良
すゞしさや扇流れぬ宵もなし 馬場存義
そら言はむかしまことの扇かな 中川乙由
たそがれや藤植らるゝ扇取 其角
たゝみしを打ひらきてぞ扇なる 寥松
とろ~と扇も眠るすゞみ哉 望月宋屋
なぐさみも扇くらぶる斗也 杉風
なつ嶋を扇の下や四望亭 鈴木道彦
ふして拝む時には何もしら扇 小西来山
ふところに吉原本や扇うり 岩翁 伊達衣
みどり子に甜り取れし扇かな 三宅嘯山
ものかゝぬ扇涼しき別れかな 中川乙由
よにふるを何にたとへむぬれ扇 加藤曉台
わすれめや扇にむすぶ文の数 三浦樗良
三味線に月を弾出す扇かな 早野巴人
三日月の入さの松や扇をく 鈴木道彦
乞食も古き扇を頼みかな 三宅嘯山
二本目の扇をおろす暑さ哉 嵐青
二本目の扇子を下す暑さかな 嵐蘭 類題発句集
五十聟天窓をかくす扇かな 小林一茶
人々に扇をあげて草まくら 北枝
人買は草にすわつて扇かな 其角
倒の扇でもなし雲のみね 中川乙由
優々と羽扇に蝿を払ひけり 望月宋屋
児あふぐ扇の箔もまつりかな 加舎白雄
八朔や扇さしたる小百姓 蓼太 蓼太句集二編
兵の酌におりたつ扇かな 凉菟
其扇子こちから招く別かな 万子
冨士をさへ見まじとかざす扇かな 鈴木道彦
出女に扇子とられて泊りけり 桜井梅室
初夢や額にあつる扇子より 其角 五元集拾遺
前に置て神に物申扇かな 馬場存義
厠なる扇も喰らふ鼠かな 高井几董
叩首や扇を開き目を閉 桃隣
只白き扇をこのむ女かな 尚白
名月のうらや扇の二見潟 許六
名月や家の扇子はまねきよし 路通
呼懸て扇引せんにはかまど 遅望
四方からあふかれて居る扇かな 抱一 軽挙観句藻
夏野行扇のはしもたよりかな 夏目成美
夕立や扇にうけし下り蜘 炭太祇
夕顔やうすき扇の日のうつり 其角
夜歩行の露にとぢたる扇哉 高井几董
夜目にのみ扇淋しき光り哉 土芳
天の川色絵の扇ながさまし 杉風
奇麗さにかこひ古せし扇かな 田川鳳朗
女郎花うてば扇のにほひかな 言水
嬉しさを鷹に見せたる扇哉 嵐雪
寐所へさがしにかへる扇かな 園女
寐所へ扇にすへし蛍かな 園女
封切ばはや神風の扇哉 中川乙由
居双て手を唯をかぬ扇かな 杉風
嶋かげや扇子にひとつ居て見る 凉菟
常盤木や扇子を置てうたひもの 凉菟
床まくら父に骨折る扇かな 上島鬼貫
座についた顔見るやうな扇かな 牧童
忘てや人の扇を取あつさ 杉風
思へども雑の哥かく扇子哉 万子
扇から落して仕廻首途かな 凉菟
扇だけよけても波は来ざりけり 松窓乙二
扇とる手へもてなしのうちは哉 炭太祇
扇ならべ文台にその古実あり 凉菟
扇にもむせずや神の宝鶴 りん女
扇もて柳わけ行宮女かな 東皐
扇より二日もはやき別れかな 田川鳳朗
扇子では片皃見ゆる躍かな 壺中
扇子またおかぬもけしきまかせかな 土芳
扇子買にふねをつけるや花川戸 梅室 梅室家集
扇屋の暖簾白し衣かへ 利牛 炭俵
扇屋の暖簾白し衣がヘ 利牛
扇折いかに持たる汗ぬぐひ 千那
扇折子に耻しきけはひかな 尚白
手にとれば歩行たく成る扇哉 小林一茶
手にふれて一字を探れ破れ扇 芙雀
手拭をしめしてきせよ扇づら 其角
抜書や扇の真砂ありそ海 凉菟
文字摺の石の幅知ル扇哉 桃隣
日南ゆく片顔黒き扇かな 一笑(金沢)
明月や国では鮎の扇子だけ 凉葉
暮まつや白地扇の風あたり 良品
月なき夜柳をあふぐ扇哉 越人
朝顔や扇の骨をかきね哉 其角
松かげにみるや扇の道中記 炭太祇
松杉の宿や扇の明はじめ 露川
柴石の扇子に重し夕涼み 朱拙
案内者や扇ひらいて和歌の浦 路青
武士は扇法師は団こそよけれ 東皐
気のつまる相手には先扇哉 鼠弾
水の粉に風の垣なる扇かな 其角
海ひとつへだてゝまねく扇子哉 露川
涼しさや先門出から御田扇 中川乙由
涼しさや扇流れぬ宵もなし 存義 俳諧新選
涼しさを百里封して扇哉 中川乙由
淋しさに扇かりけり早泊り 藤森素檗
湖の風を帆にして扇かな 露川
片手綱馬上に扇見事なり 加舎白雄
町礼や袴のひもに扇さす 曲翠
白扇古郷と書て手向けり 田川鳳朗
白雲や扇をつかふ須磨の浦 野坡
目に嬉し恋君の扇真白なる 与謝蕪村
眠気来て片わきあふぐ扇かな 諷竹
石の上に落るものなしをく扇 舎羅
石竹や蒔た扇も今いとふ 中川乙由
砂もてり我も扇に一すくひ 凉菟
神鳴の灸する絵も扇哉 史邦
紗の袷のせて扇のしはりかな 良品
紫陽花やのろま遣ひのさし扇 米翁 染井山荘発句藻
維光が厠に持し扇哉 其角
繪着て小扇おもき端居哉 尚白
置ざまと書なぐりたる扇哉 望翠
自他に背かず愛扇風を*うなずけり 挙白
色町や扇かくれの人こゝろ 香以 香以居士発句
芦の根に落すと見しかぬれ扇 松窓乙二
花鳥もうら絵はうすき扇かな 炭太祇
草の戸や扇の箔に蚤のつく 寥松
蜑の子や何はなくとも盆扇 加藤曉台
蝸牛扇子鳴らせばふりかへる 桜井梅室
説法の扇に散や合歓の花 中川乙由
誰やらん扇のうごく月の影 望月宋屋
貧し気に扇の見ゆる戸口かな 夏目成美
身の程をしりぬ扇のしめる夜半 玄梅
都人の扇にかける網代哉 許六
酒のみの日に~かはる扇子かな 桜井梅室
野はづれや扇かざして立どまる 利牛
鉢の木の扇笑ふなかへり花 其角 五元集
隠し画の主まどひぬる扇かな 三宅嘯山
雨誉めて畳む扇かな 寥松 発句類聚
面とりて六十の野良が扇かな 東皐
面頬をはづして将の扇哉 黒柳召波
頤はしのびたらざる扇かな 朱拙
顔ばかり扇に吹すひるね哉 句空
風をさへまねき出したる扇哉 杉木望一
風声水音都の不二を扇かな 早野巴人
飛蛍舟に扇を揚にけり 高桑闌更
高椽や扇であふぐ馬の面 鈴木道彦

以上

by 575fudemakase | 2017-05-17 09:03 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

汗  の俳句

汗  の俳句

汗1

汗2


汗 補遺

あぐらかく者に満つ汗蟇 赤尾兜子 蛇
あしうらに嬌声汗の安静終ふ 岸田稚魚 負け犬
あたしがいくさおこして負けた汗の税 中村草田男
あつまりて故宮に汗す旅のはじめ 金子兜太
あてなき歩み汗流す馬とすれちがふ 大野林火 青水輪 昭和二十五年
あぶら汗拭ひ馬齢を加へけり 日野草城
いきいきと汗老斑の体より 山口誓子
いたはられゐてぼうだたる老の汗 松村蒼石 寒鶯抄
いねゐつつをさなき指(および)汗の髪掻く 篠原梵 年々去来の花 皿
いまも嚢負ふ職汗臭くして 山口誓子
いま山頂に汗よろびて看護婦達 飯田龍太
いわけなや牛ひきかへる児の汗 正岡子規 汗
うすうすと晩夏の髭の汗ばめる 原裕 葦牙
うすごろもやははだの汗あらはるる 日野草城
うす汗や行李をくゝる力業 日野草城
うつとりと友と見合ひき汗拭き終へ 中村草田男
うづくまり父の墓前に汗おとす 大野林火 早桃 海風抄
おくれ毛の汗ひややかに背かるる 鷲谷七菜子 黄炎
おとなびし少年の手の汗ばめる 山口誓子
おんこゑのまぎれがちなり汗冷ゆる 日野草城
かたはらに土屋文明の鬚の汗 加藤秋邨
かたびらや汗ひえびえと座にたゆる 飯田蛇笏 山廬集
かなかなしぐれ泣けてくるよな腹の汗 大野林火 海門 昭和九年
かひな霑らすことし苦患の汗にあらず 野澤節子 未明音
かんばせの汗うつくしき祭かな 日野草城
くひちぎる折もありけり汗拭 正岡子規 汗巾
くろぐろと汗に溺るるほくろかな 日野草城
ことしまた校正の夏汗垂りて 山口誓子
このごろを嘆きの汗のほか知らず 大野林火 飛花集 昭和四十八年
この夏は成すこと多ししづけき汗 大野林火 青水輪 昭和二十四年
こめかみに汗二すぢや花圃の人 原石鼎 花影
これが最後の日本の御飯を食べてゐる、汗 種田山頭火 草木塔
こゑなさぬ悲鳴あげつつ汗の床 岸田稚魚 雁渡し
さまざまなかほして汗の嘘つきあふ 加藤秋邨
さらぼひし身もひそやかに汗ぐめる 相生垣瓜人 明治草
すこやかな汗の大足に見舞はれぬ 加藤秋邨
すでに子の薄き貧しき汗の胸 石田波郷
すもも食む午前の汗を流しきり 野澤節子 鳳蝶
すゝしさやむかしの人の汗のあと 正岡子規 涼し
ずぶ濡れの汗は匂はず投炭夫 草間時彦 中年
その顔の汗のべし見や麻畠 森澄雄
たくましき僧の腕や汗手貫 高浜年尾
ただ汗のとき長崎の夕凪ぞ 森澄雄
ただ砂礫今は喜悲なき汗の貌 加藤秋邨
たどりきし道さながらに汗流る 大野林火 月魄集 昭和五十六年
たわやめや笑みかたまけし鼻に汗 日野草城
たゞ汗を流しに入り有馬の湯 高浜年尾
つかれ身の汗冷えわたる膚かな 飯田蛇笏 山廬集
つくつくと汗の香に飽く旅寝哉 正岡子規 汗
つつじ山とつとと下りて汗ばみぬ 上村占魚 球磨
てのひらを見せよといはれ汗ばみぬ 星野麥丘人 2004年
なにをしに行くや老人汗垂れて 草間時彦 櫻山
なまこ壁に触れたる汗のひきにけり 石川桂郎 四温
なりはひの汗とめどなし悲しからず 鈴木真砂女 夏帯
にじみたる汗につつまれ総身あり 篠原梵 年々去来の花 皿
はじいてもまた来る蟻に汗しけり 臼田亜郎 定本亜浪句集
はてもない旅で汗くさいこと 種田山頭火 自画像 落穂集
はなやかな照明しかと汗を見す 中村汀女
はるばると来しごと額の汗ぬぐふ(中村草田男、西東三鬼、神田秀夫、原子公平の諸氏と粟津温泉に遊ぶ) 細見綾子
ひとすぢの流るる汗も言葉なり 鷹羽狩行
ひと宥す術なく坐り汗たれつ「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
ふるさとや多汗の乳母の名はお福 三橋敏雄
へそが汗ためてゐる 種田山頭火 草木塔
べと濡れの汗の腕のこの児に触る 山口誓子
ほのかなる少女のひげの汗ばめる 山口誓子
ほのと饑じ風邪の汗とるもの脱げば 石川桂郎 高蘆
ぽろぽろしたたる汗がましろな函に 種田山頭火 草木塔
またたきまたたき論鋒澄みくるよ汗の妻 中村草田男
まつたくのひとりの汗を耳の裏 岡本眸
まどろみの汗ねっとりと火口茂る 橋閒石 風景
むつの海や鹹きは汗疹ゆゑならず 佐藤鬼房
やさしき声す汗し落胆ふかきらし 加藤秋邨
やせ馬の背に汗流すあつさ哉 正岡子規 汗
わがあぎと離れて石に汗ぽとり 波多野爽波
わが声を出すラジオ提げ汗しをり 加藤秋邨
わが汗をわが嘗めわれの味したり 林翔
わが汗疹充実す恥かきたれば 加藤秋邨
わが身の汗聖なる土に落ちて沁む 日野草城
われを見る妻の眼汗を眼張りの中 中村草田男
サタン生る汗の片目をつむるとき 加藤秋邨
スケートの汗ばみし顔なほ周る 橋本多佳子
スト終へ来し男の汗が匂ふなり 加藤秋邨
デモ満つ日の地階に汗を帯ぶボンベ 古沢太穂 火雲
トタン屋根踏まれうつうつ昼盗汗 佐藤鬼房
ハンドルの汗を拭ひて地図を見る 稲畑汀子
バラかがやく鉄工の汗の顔寄れば 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
ピアノ離れず汗の子は触れ母は拭き 林翔 和紙
ヘルベルト・フォン・カラヤンのつひの汗 林翔
ペンとる身の 汗の薄味 原爆忌 伊丹三樹彦
マグロ購ふ汗の片手は鎌下げて 飯田龍太
マラソンの顔をふつては汗とばし 清崎敏郎
ラグビーや敵の汗に触れて組む 日野草城
リノリューム看護の汗落ちもとのまま 中村草田男
リフトに入る汗にほふ風とすれちがふ 篠原梵 年々去来の花 皿
レスリングあしかの如く汗に濡れ 後藤比奈夫
ロザリオにあやまつ汗は神ぞ知る 阿波野青畝
一本の木蔭に群れて汗拭ふ 相馬遷子 山国
一歩出てジムの汗拭く 柳絮飛ぶ 伊丹三樹彦
一身の芋八貫と汗ともどる 平畑静塔
三尺の汗の空間対面す 草間時彦 中年
三時打つ烏羽玉の汗りんりんと 川端茅舎
世間師の歯白し汗を圧拭(おさへぶき) 中村草田男
主ならねど癩と踊りて我汗す 平畑静塔
九段坂田園の婆汗垂り来 渡邊白泉
乳濡れの汗濡れの頬ねむり落つ 鷹羽狩行
乳貰ひ戻るや汗の目をつむり 細見綾子
二人子はや汗の若者独活の花 石田波郷
二時頃は山も汗する蝉ぢぢと 星野立子
人ごみに母失ふまじき額の汗 角川源義
人の汗によごれ我が身の汗に汚れ 右城暮石 句集外 昭和三十一年
人の背が巨いなり汗を見つつゐる 加藤秋邨
人の膝ばかり見せられ汗に臥す 加藤秋邨
人まかせ出来ぬ性にて汗かきで 上村占魚
人夫の汗乱れ乱れぬ身を揺るゆゑ 中村草田男
今も胸に友の原爆死汗むすぶ 山田みづえ 忘
今年竹皮剥ぐころの汗少し 鈴木真砂女 夕螢
仏陀の顔うつむき汗す孤児白痴 赤尾兜子 蛇
仔牛独り反芻(にれは)みながら居汗して 中村草田男
代田掻汗と光を撒き散らし 相馬遷子 山河
仰臥して満面の汗無為の汗 日野草城
休らへば汗につめたき背中哉 正岡子規 汗
休暇語る汗の生徒ら燦爛たり 林翔 和紙
伝はりし器量より恥ぢらひの汗 平畑静塔
体内に狂へるものや往き汗す 石塚友二 玉縄抄
信太森出て汗くさく貰ひ水 角川源義
信心の汗にはあらず弥陀の前 鷹羽狩行
俥挽うなじの汗を見られつゝ 日野草城
健康な弟顔の汗を拭く 日野草城
傭はれて汗の学徒の前に売る 飯田龍太
傷兵の隻手汗拭ふ黒眼鏡 加藤秋邨
傾城の重ね着苦し汗の玉 正岡子規 汗
働きし汗の胸板雷にさらす 西東三鬼
働き通す汗百日や汗を恃め 山田みづえ 忘
働くも遊ぶも汗が身を濡らす 右城暮石 声と声
働く婦顎の継ぎ目に汗溜めて 山口誓子
兄妹の餉のしづかさの汗の裡 石田波郷
充ちし中年額づたふ汗振りて落す 能村登四郎
先づ汗の顔に親しみ初対面 稲畑汀子
先達とても天恵の汗の玉 平畑静塔
兜蟲漆黒なり吾汗ばめる 石田波郷
入学児脱ぎちらしたる汗稚く 飯田龍太
入道雲あまたを友に職場の汗 西東三鬼
全身に汗して人の好意うく 右城暮石 上下
兵の顔あはれ稚し汗拭くなど 加藤秋邨
兵出征機械断層の辺に汗す 細谷源二 鐵
冷ゆるまなき旱の汗にあまんずる 野澤節子 未明音
冷ゆる汗国原の見のはろけしや 日野草城
冷房や汗のけはひもなき少女 日野草城
分娩室扉は鉄壁ぞ汗滂沱 草間時彦 中年
刻々を汗の愁顔寄せ守り 福田蓼汀 秋風挽歌
削り氷や汗冷えそむる腋の下 日野草城
剣襟の尖目を離れず汗ばみあるく 篠原梵 年々去来の花 皿
励める顔節あるごとき汗流る 中村草田男
労働の汗臭くしてよき句作る 山口誓子
医もおそる夜半の病者の玉の汗 飯田蛇笏 白嶽
十二神将汗のまなこに打ち仰ぐ(新薬師寺) 細見綾子
十年の汗を道後の温泉に洗へ 正岡子規 汗
千両の石の重さや牛の汗 正岡子規 汗
午前の汗午後の汗意識不明のまゝ 右城暮石 声と声
半世紀生き堪へにけり汗を拭く 日野草城
南京の月夜の汗疹ありにけり 加藤秋邨
原爆忌汗とめどなく頭は冷えて 野澤節子 未明音
原爆投下時分の汗の手を洗ふ 上田五千石『琥珀』補遺
去るものばかりが見ゆる汗の中 斎藤玄 雁道
友の前胸の薄さの汗拭ふ 木村蕪城 寒泉
友ひそと来て坐りゐし汗ばみて 石塚友二 方寸虚実
友よりの来信はたらく汗を言はず 野澤節子 未明音
口を信ぜずあはれは汗の喉仏 加藤秋邨
口腹の慾の足どり汗ながれ 石橋秀野
合掌のぬくさつめたさ汗のまま 中村草田男
君たちの血がめぐるより汗ばめる 石田波郷
君と吾ずぶぬれの汗わかつなし 草間時彦 中年
君汗を拭きつつ既にしたしけれ 日野草城
吾が死ぬ日と口述筆記汗冷ゆる 松崎鉄之介
吾子の鼻汗かきて蝉を鳴かせゐる 加藤秋邨
吾子も亦汗の蓬髪瞳澄めり 中村草田男
吾子痩せて手に病汗のねばりけり 飯田蛇笏 白嶽
呟けば子が問ひかへす汗の中 加藤秋邨
和して汗の手拍手痛しフラメンコ 林翔 和紙
咳込むや汗と泪に顔濡らし 大野林火 青水輪 昭和二十三年
唄が唄汗が汗呼びフラメンコ 鷹羽狩行
唐突にセリム湖の碧汗冷ゆる 松崎鉄之介
唾涸れ怒れる汗は黒き河に 西東三鬼
商ひに汗す日曜讃歌のなか 伊丹三樹彦
喜劇みし汗を拭きつつ言無かり 石田波郷
嘆きつゝひとのはだへは汗にじむ 日野草城
嘲られゐる汗の胸板浮き沈み 岸田稚魚 雁渡し
噴き出づる汗もて汗の身を潔め 橋本多佳子
噴くごときかんばせに汗飴湯かな 森澄雄
四つの閉美籠れる顔の汗ばめる 相生垣瓜人 微茫集
四五柱英霊に駈く汗噴きつ 石塚友二 方寸虚実
土なぶりして透き通る汗こぼす 右城暮石 散歩圏
土掘る人の汗はつきずよ掘らるゝ土に 種田山頭火 自画像 層雲集
土間の燈に澄む密造酒汗し呑む 佐藤鬼房
地の池や衆愚のわれら汗し過ぐ 佐藤鬼房
地も汗を出すとき死のごとき外寝 平畑静塔
地図の上に汗を落して命令聞く 長谷川素逝 砲車
地熱の汗炎天の汗より鹹し 山口青邨
坐り胼胝汗ばみし足組み交す 石塚友二 方寸虚実
基地の子として生れ全身汗疣なり 能村登四郎
基地化後の嬰児か汗に泣きのけぞり 能村登四郎
堕地獄や汗の父子の硫黄にむせ 能村登四郎
墓に告ぐ汗していよよ(けが)れむと 西東三鬼
墓に汗林火十七回忌かな 松崎鉄之介
墓の前立ちてしづかに汗流れ 深見けん二
墓の地に一滴の汗すぐ乾く 西東三鬼
墓原に汗して老いし獣めく 西東三鬼
墓地に来て我が身の汗を拭ひ居り 右城暮石 句集外 昭和三十二年
墓掘人等「孝行話」を汗の手ぶり 中村草田男
壁の面の汗の手型や征きにけり 加藤秋邨
売子たちみな美しく汗かけり 安住敦
夏ちかし髪膚の寝汗拭ひ得ず 石橋秀野
夏終る花めく汗もあえずして 相生垣瓜人 明治草
夕衣そとよりしみし他人の汗 中村草田男
夜もすがら汗の十字架背に描き 川端茅舎
夜学にて得し金銭妻に汗ぬぐふ 大野林火 早桃 太白集
夜行軍汗の軍帽を手に脱げる 山口誓子
夢の師や覚めて川なす胸の汗 石塚友二 曠日
大いに汗かきたる後の身ぬち冷ゆ 松崎鉄之介
大き荷を提げし外人汗見せず 右城暮石 句集外 昭和四十六年
大き頭に汗噴き野路の墳遠し 角川源義
大津絵奴汗ぬぐふ間も槍立てて 能村登四郎
大阪に来てゐるのみに汗流す 山口誓子
天暑し悲しみの場汗滂沱 山口青邨
夫婦して主に汗捧げ甘藷挿す 上村占魚
夾竹桃白しと見つつ兵汗す 山口誓子
女人憂し旅粮食ふとき目に汗し 佐藤鬼房
女教師が白背に汗のしみ負へる 山口誓子
女汗ばむ花の陰爬虫族眠る 橋閒石 無刻
妻の汗見てわが汗を拭ひけり 日野草城
妻子措けば漂泊に似て腋の汗 小林康治 玄霜
娼婦いま汗の蹠ぞやはらかし 岸田稚魚 負け犬
娼窟の錺屋(かざりや)鼻に汗浮かべ 佐藤鬼房
婦人会幹事やさしき鼻に汗 日野草城
子の汗のすがしく匂ひ神輿振 林翔 和紙
子の汗の顎が押ふる小提琴 能村登四郎
子の遺髪汗にぬれじや旅つづく 角川源義
子の顔の叱られて汗滂沱たり 山口誓子
孤児すでに女の瞳なり汗す街 右城暮石 句集外 昭和二十二年
孫だいてほしく汗もひくころの抱いてくる 荻原井泉水
家に帰りて汗臭からぬ浴衣哉 正岡子規 浴衣
寝かへれば汗のひつゝくあつさ哉 正岡子規 暑
寝ぬる身にこの日の汗のこもらへり 松崎鉄之介
寧ろすかし汗の少年のガラス工 石田波郷
審判の婦の泣く汗に夏来る 飯田蛇笏 家郷の霧
小便に糖が出て鼻に汗が出て 阿波野青畝
小倉山夏うぐひすに汗ばみぬ 日野草城
小説の発端汗の捨切符 藤田湘子
小麦刈るしわ多き眼に汗たまる(道志渓谷) 細見綾子
少年の汗の香と寝る雨の航 能村登四郎
少年憂国白シャツ汗で透きとほり 香西照雄 対話
屏風坂まで汗かいて来りけり 雨滴集 星野麥丘人
山住みの人訪ふ道の汗たのし 細見綾子 桃は八重
山匂ふ雨もろともに汗拭けば 岡本眸
山拓く汗にじむ目に動かぬ湾 佐藤鬼房
山揚に參ずる二十前の汗 平畑静塔
山昏れてぬぎすてし汗のもの重し 松村蒼石 雪
山風に汗同臭の麦刈女 飯田龍太
峯行の褐色の汗衣を徹す 津田清子
嵐めく青葉見つめて汗垂れゐき 大野林火 早桃 太白集
嶺の肩に富士小さしや玉の汗 角川源義
巓の風にをとめの汗にほふ 日野草城
巴里知らずくらしの汗の帯に滲み 鈴木真砂女 夏帯
帯しめて心きまりぬ汗もなし 星野立子
帯に汗滲ませ路地に老いゆくか 鈴木真砂女 夕螢
帽子ぬぐや汗に撚れあふもつれ髪 杉田久女
店先に車夫汗くさき熱哉 正岡子規 暑
座をわけて貰ひ汗の身通しけり 中村汀女
弥撒うかゞふ恥の己れの汗の胸 小林康治 玄霜
弥撒果てし汗ぬぐふ老婆胸皺み 小林康治 玄霜
強力の汗や夏炉のそばに来て 百合山羽公 寒雁
彼を負ひ彼の汗の手前に垂れ 長谷川素逝 砲車
御仏に忘れてありし汗拭ひ 高野素十
御僧は父の世よりや汗手貫 草間時彦
心より過去消し日々の汗にも馴れ 鈴木真砂女 夕螢
忙中の汗日月と申さばや 日野草城
応召の髪成り笑ひ汗拭へり 石川桂郎 含羞
怒るにはあらねど汗の死者みつめる 右城暮石 句集外 昭和二十六年
思ひ屈し汗冷冷とありしこと 木村蕪城 寒泉
思春期の汗あふれ出づ麦畑 飯田龍太
息災の汗華やぎて三十過ぐ 山田みづえ 忘
悔の果深夜日輪を汗の目に 加藤秋邨
愚かなる汗して迎ふ面かむり 山田みづえ まるめろ
戀ごころまひるは汗もながれたる 渡邊白泉
我が名楸邨汗の沈黙に呟かる 加藤秋邨
我もはや汗かゝぬ迄に老にけり 正岡子規 汗
手ににぎりしめし汗やがて見つめたり 尾崎放哉 大正時代
手にふれし汗の乳房は冷たかり 野見山朱鳥 曼珠沙華
手首なる汗の中より光りにじむ汗 篠原梵 年々去来の花 皿
押しくらに 加わる 有色同志の汗 伊丹三樹彦
拭へども噴く汝の汗有難き 大野林火 月魄集 距和五十七年
掌のなかに子の掌汗ばみ墓参の途 伊丹三樹彦
掌中に夫の画料 汗沁むまで 伊丹三樹彦
掌中に汗ばむ栗の肌の艶ン 川端茅舎
掌中の栗とて汗を握り〆め 川端茅舎
撥ねる汗鉄の赤き間短かさよ 中村草田男
支配人猪首の汗を且拭ふ 日野草城
教會より汗の黒人のみ出でくる 三橋敏雄
数条の汗にさきがく汗一条 能村登四郎
新薬師寺に吾がふく汗も立秋か 細見綾子
旅人の汗の玉散る清水哉 正岡子規 汗
旅人は汗も涙も独り拭きぬ 中村草田男
旅人や杖に干し行く汗拭 正岡子規 汗巾
旅果つや旅の汗疹をかなしめば 小林康治 玄霜
日々の夕ベは汗の衣をぬぎ 高野素十
日に浴しにじめる汗の鹹にほふ 山口誓子
日まはりの盛んなる日の額の汗 細見綾子
日中や汗にほはさぬ看護婦たち 石川桂郎 四温
明け方の二度寝の夢に汗したり 能村登四郎
明け易き四五幹の竹汗を噴く 能村登四郎
明日来ると云ふたのしさや汗ふけど 細谷源二 砂金帯
昼寝ざめ厨に立てり胸の汗 石塚友二 方寸虚実
昼寝覚む耳のうしろに汗掻いて 安住敦
昼顔や襦袢をしぼる汗時雨 正岡子規 昼顔
晴れて汗すげなく多佳子忌はすぎし 平畑静塔
曇日の汗頸すじに君失ふ 岸田稚魚 負け犬
曳き連れてどれも汗馬夏木立 日野草城
書写山に残暑の汗を拭きあへず 高浜年尾
朝の駄馬 勇ませ 半裸の汗 光らせ 伊丹三樹彦
朝も汗瓦灼けわたりほのじろき 日野草城
朝餉すみし汗やお位牌光りをり 渡邊水巴 白日
木賊刈地にぽたぽたと白き汗 平畑静塔
来て立ちて汗しづまりぬ画の女 深見けん二
東京に着て汗ばめる白絣 細見綾子
東京は不毛の汗のピカソ展 平畑静塔
松籟は峠ならむと汗ばみ登る 篠原梵 年々去来の花 雨
林火忌の汗滂沱たる記憶かな 松崎鉄之介
果樹園の舗装路に汗したたらす 右城暮石 一芸
柵ぬちに汗の黄裸の俘虜めける 能村登四郎
梢踏んで汗拭く漢輝けり 中村草田男
棕梠の蔭に汗ばみ立てば汽艇出づ 藤田湘子 途上
棺はこぶ男の汗も世にありがたし 飯田蛇笏 白嶽
極彩の夢見て覚めし胸の汗 岡本眸
次の村まで 汗は出尽す 薬売 伊丹三樹彦
歩々に汗ワイシヤツ胸に附き離る 篠原梵 年々去来の花 皿
死に近き父に汗なく生仏 上村占魚
死ぬる日と詠みしみほとりただ汗す 松崎鉄之介
死賜う如し汗の筆硯抛つは 楠本憲吉 孤客
母ならぬ乳房の汗を隠し拭く 岡本眸
母の汗拭へば終の白額 野澤節子 八朶集
母者には汗によごれしもの土産 篠原梵 年々去来の花 皿
気づかれのひとり汗ばみゐたりけり 岡本眸
水に手を入れてたのしむ汗退くまで 大野林火 雪華 昭和三十八年
水笛を吹いて一旦汗の引く 後藤比奈夫
汗おぼゆ間なくに鉄の走り寄る 中村汀女
汗かいて笑ふみどり児日照草 岡本眸
汗かかぬやうに歩きて御所の中 波多野爽波
汗かきて日日恙なくありにけり 松本たかし
汗かきて馬は馬色を失へり 山口誓子
汗かきの我が誕生日油照り 右城暮石 句集外 昭和三十三年
汗かゝぬ女の肌の涼しさよ 正岡子規 涼し
汗がぶつかり漁夫と漁夫すれ違ふ 鷹羽狩行
汗が目に己恃むは潔し 福田蓼汀 秋風挽歌
汗が糸ひく紅を血と拭きチンドン屋 中村草田男
汗きらり青花搾る挺子に石 大野林火 飛花集 昭和四十八年
汗くさき女工となりて藤を知らず 三橋鷹女
汗くさき少女かたまり水を飲む 右城暮石 句集外 昭和二十四年
汗くさき行者の宿や夏の月 正岡子規 汗
汗くさき農夫の立てる中通る 山口誓子
汗くさき遊女と寝たり狭き花筵 正岡子規 汗
汗くさしうしろ向たる小傾城 正岡子規 汗
汗さへ無しや腕繊ければ腋捉ふに 中村草田男
汗しさする師の背よ明日は思はざり 松崎鉄之介
汗しつつ大いに笑ひ汗垂れたり 石田波郷
汗しつつ菓子食へり人をもてなすと 石田波郷
汗しづみ巨き石棺を抱きけり 松村蒼石 雁
汗してになつてきたきうりかじれといわれる 荻原井泉水
汗してマラソン胸もと緊めて銀行員 中村草田男
汗して帰る坂に情火の犬の列 秋元不死男
汗して石に彫るべき大字書きおえたり 荻原井泉水
汗しとど写楽の目して口をして 林翔 和紙
汗しとゞ苦しき夢はさめてけり 正岡子規 汗
汗し働く基地の炎天生々し 小林康治 四季貧窮
汗し喰ひ男六人食器缺け 伊丹三樹彦
汗し思ふますらたけをはみいくさは 三橋鷹女
汗し来て絵島の墓に煙草供く 角川源義
汗し見る木偶大首は天狗久 能村登四郎
汗し覚め胸に波せりとほき虫 石塚友二 方寸虚実
汗し集会放屁その子をたしなむ漁婦 古沢太穂 古沢太穂句集
汗し食ふパン有難し糞の如し 西東三鬼
汗し飲む馬盥茶*碗我鬼忌かな 齋藤玄 飛雪
汗じみし人のからだとさはりけり 松本たかし
汗じむペン桝を埋めねば稿成らず 伊丹三樹彦
汗すゞし働くのみに身を任せ 及川貞 夕焼
汗たぎちながれ絶対安静に 川端茅舎
汗で辷る男女椰子の実落ちる音 三橋敏雄
汗と拭く柱鏡の脂顔 石塚友二 方寸虚実
汗と泥にまみれ敵意の目を伏せず 長谷川素逝 砲車
汗と涙こも~こぼし合掌す 石橋秀野
汗どつと出て子の言葉真くれなゐ 藤田湘子
汗ながれ啼魚先生いまは亡き 日野草城
汗にしみて紅さめし襦袢哉 正岡子規 汗
汗にじむ目に力籠め瞑りぬ 石田波郷
汗にまみれ薬研の谿を渡りたる 佐藤鬼房
汗に饐えし千人針を彼捨てず 長谷川素逝 砲車
汗ぬぐはぬ一旅人や筆の業 小林康治 玄霜
汗のかひな時計うつし世刻みをり 野澤節子 未明音
汗のつぶやき人一人さへ救へざる 大野林火 潺潺集 昭和四十年
汗のほかただ詫びたしや喜雨亭忌 能村登四郎
汗のほかには味方なし汗滂沱 鷹羽狩行
汗のみを垂れゐて涙なかりけむ 斎藤玄 雁道
汗のものどかと置かれぬ婢に 高野素十
汗のもの抛りて籠にをさまりし 波多野爽波 鋪道の花
汗のもの脱いで人手に委ねたる 波多野爽波 鋪道の花
汗のハンケチ友等貧しさ相似たり 石田波郷
汗の光溌剌たれば悪女とや 中村草田男
汗の双腕削ぎおとさるる思ひかな 岡本眸
汗の吾子ひたすらにわが眼を追へり 飯田蛇笏 白嶽
汗の囈語誰に「久闊」の一語ぞも 中村草田男
汗の坂翁に遅れゆくごとし 上田五千石『琥珀』補遺
汗の多弁やたつた一語を救はんため 加藤秋邨
汗の女体に岩手山塊殺到す 加藤秋邨
汗の妻化粧くづれも親しけれ 日野草城
汗の子が楽器を銭に換へむとす 阿波野青畝
汗の子のつひに詫びざりし眉太く 加藤秋邨
汗の子の呂律や唄となりにけり 石塚友二 光塵
汗の子一人皿をなめては又泣いて 中村草田男
汗の孤独九十九里浜に歩み出で 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
汗の手に草の穂をおく別れかな 石橋秀野
汗の手の一度は触れよわらべ石 加藤秋邨
汗の手合す殉忠の鏃刻りたる戸 石塚友二 方寸虚実
汗の掌に天金失せし辞書馴染む 伊丹三樹彦
汗の日のみさを忌なりき女流来て 石田波郷
汗の日日かくて相逢ふこともなし 加藤秋邨
汗の服のポケットにマッチこぼれいて 古沢太穂 三十代
汗の服脱ぐや教師を棄つるごと 能村登四郎
汗の母者が病児負ひ負ふ放屁なりき 中村草田男
汗の水夫飯食ふ顔が船に満つ 中村草田男
汗の火夫顎紐とれば農夫の顔 草間時彦 中年
汗の父また母また子岩を越ゆ 中村草田男
汗の玉ふつふつ結びやまぬかも 日野草城
汗の玉背中に道がありしとは 林翔
汗の目が見る大粒の実梅かな 松村蒼石 雪
汗の目に索道すすむ愉快かな 阿波野青畝
汗の目のくぼみて子等も飢ゑんとす 加藤秋邨
汗の目はかがやき黄塵の頬はとがり 長谷川素逝 砲車
汗の目をきゆうつと搾り開きけり 阿波野青畝
汗の眼に金色仏細しけれ 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
汗の眼に青芦の水脈吹かれひらく 大野林火 青水輪 昭和二十六年
汗の眼帯片眼びかりに黒宗徒 能村登四郎
汗の睡り夢に癩者が高笑ふ 草間時彦 中年
汗の紅往診幾千なさば業果てむ 相馬遷子 雪嶺
汗の肌より汗噴きて退路なし 能村登四郎
汗の肩精悍なり蝉を示したる 加藤秋邨
汗の背にはるかな夕日わかちなし 飯田龍太
汗の背を掴みて反る子癒えたしや 加藤秋邨
汗の背を水道栓に当てゝ洗ふ 右城暮石 句集外 昭和二十九年
汗の胸この創痕に仕ふるか 石田波郷
汗の胸割つて昼餉をとるところ 佐藤鬼房
汗の腕触れてべとつく幼姉妹 山口誓子
汗の膚はつと冷たし花柘榴 右城暮石 声と声
汗の臍に山風あそび青田ゆく 飯田龍太
汗の街急坂の上にあるは悲し 渡邊白泉
汗の襯衣脱ぎて若者胸毛恥づ 山口誓子
汗の視野に涯かぎろへる熔岩地帯 能村登四郎
汗の身の露の身の程冷えにけり 川端茅舎
汗の身や露の身よりもひえまさり 川端茅舎
汗の軽子つぎつぎ飛び来悪魔のごと 小林康治 玄霜
汗の雀斑少年聖歌隊解かれ 橋本多佳子
汗の頸没日も風も沖へ急く 飯田龍太
汗の顔の笑へば生まる二重顎 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
汗の顔人が拭くゆゑ我も拭きぬ 林翔 和紙
汗の顔吾子怒り何をいはんとする 加藤秋邨
汗の顔多くうなだれ野辺送り 伊丹三樹彦
汗の顔失語の貌や師の部屋に 角川源義
汗の顳フレッチャーイズム覚えてけり 岸田稚魚 雁渡し
汗の顳フレツチヤーイズム覚えてけり 岸田稚魚 負け犬
汗の香のいまだ稚き香を嗅げり 三橋鷹女
汗の香のほのかに寝ぬる子の愛しさ 日野草城
汗の香の愛しく吾子に笑み寄らる 三橋鷹女
汗の香の職餓鬼ばかりビール酌む 小林康治 玄霜
汗の髪切つて終身の翳うする 鷲谷七菜子 銃身
汗の髪洗ふ頭蓋も痩せにけり 相馬遷子 山河
汗はじく蝦夷の乾燥空気かな 高浜年尾
汗は目に傷兵の銃と二つ負ひ 長谷川素逝 砲車
汗は鹽坐して帯びゆく放射能 三橋敏雄
汗ばみし手のひらの音畳這ふ 篠原梵 年々去来の花 皿
汗ばみし穂先ほのぼの稲の花 能村登四郎
汗ばみし面をぬぐふ御成かな 阿波野青畝
汗ばみし黒子見てゐてまじろがず 加藤秋邨
汗ばみて亡きひとの妻うらわかき 日野草城
汗ばみて余命を量りゐたらずや 石田波郷
汗ばみて加賀強情の血ありけり 能村登四郎
汗ばみて少年みだりなることを 山口誓子
汗ばみて蒙古少女にみつめらる 加藤秋邨
汗ばみて薨去を語る家族かな 渡邊水巴 白日
汗ばみて言ひ足りしとも足りぬとも 後藤比奈夫
汗ばむ手ピアノ怒濤の海になる 有馬朗人 母国
汗ばめる頬の生毛の金色に 清崎敏郎
汗ひいて太幹をしげしげと見る 波多野爽波
汗ひいて母は仏となりにけり 深見けん二
汗ひいて洞然と銭洗ふなり 石川桂郎 高蘆
汗ひとすぢそのまま臍に入らむため 能村登四郎
汗ふかき尊大人の冠かな 山口青邨
汗ふくや仙台は木もあるところ 正岡子規 汗
汗ふくや背にかばんの紐のあと 正岡子規 汗
汗ふくや飛騨も晩夏の白木槿 森澄雄
汗ふくわれに何の気負ひの夕日なる 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
汗ふく親銭数ふる子舟は着きぬ 正岡子規 汗
汗ふんだん 墓地を下見の男のいま 伊丹三樹彦
汗みづく句碑より刈るは丈の草 平畑静塔
汗みづく妻のあはれさはいふも愚か 日野草城
汗もて買ふ「靖国の楯」母が為 石田波郷
汗もひき島の風にも馴れてきし 清崎敏郎
汗もろとも本音を吐いてしまひけり 山田みづえ 木語
汗も唱(うた)も湧き尽きしかや光る寝顔 香西照雄
汗も唱も湧き尽きしかや光る寝顔 香西照雄 対話
汗も塩となる塩田かせぎの痩せよう 荻原井泉水
汗も拭はず握手して親しさよ 鷹羽狩行
汗も身のうち極楽のあまり風 鷹羽狩行
汗ゆるやか七つの丘の一つ越え 林翔 和紙
汗わくや動きもやらぬ牛車 正岡子規 汗
汗をかく蛇も居るらしその濡れ身 桂信子「草影」以後
汗をよくかきたまひけり夏といはず 日野草城
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 正岡子規 汗
汗を拭くわが肌なればいとほしく 種田山頭火 自画像 層雲集
汗・泪慟哭を断ち柩出づ 能村登四郎
汗一洗の赭顔夕映父てふもの 香西照雄 対話
汗一滴見せぬ土工の炎天掘り 右城暮石 句集外 昭和三十四年
汗伝ふ背を観るわれに兄あるごと 中村草田男
汗光り安全帽の光りけり 後藤比奈夫
汗入れてより本題に入りにけり 稲畑汀子
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 霊芝
汗冷えて嚏しきりや蔵王堂 右城暮石 句集外 昭和四十八年
汗冷えて黙せる肩のならびけり 石橋秀野
汗口ヘオンマカキヤ口ニソワカ誦し 阿波野青畝
汗喘ぎ大牛の身の動きゐて 山口誓子
汗噴くをすくなくせむと身じろがず<津浦線> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
汗垂りて孤りの昼餉食むはさみし 三橋鷹女
汗垂れてまた愚痴をいひ出さんとする 伊丹三樹彦
汗垂れて乾き渺たる一僧侶 斎藤玄 雁道
汗垂れて半面笑ふ宣教師 加藤秋邨
汗垂れて庶民モツ喰ふヘイ・マンボ 岸田稚魚 負け犬
汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓 石田波郷
汗垂れて昔恋せし顔昼寝 加藤秋邨
汗垂れて酔へば職の穢呵責なし 小林康治 玄霜
汗垂れて霧笛聴きをり刻うつる 加藤秋邨
汗垂れて鳶を聞くなり松隠れ 石田波郷
汗多かりければ籾殻多く附き 中村草田男
汗夜ごと片半身に熱帯夜 山口青邨
汗寒く拝むや涙おのづから 石塚友二 方寸虚実
汗干してだらりとさげた紋服とはだかでいる 荻原井泉水
汗微塵身は冷静の憤 川端茅舎
汗拭いてあたり撫子畑かな 岡井省二 鹿野
汗拭いてふと掃苔の山甘し 岡井省二 明野
汗拭いて何に怒らん腹減りぬ 加藤秋邨
汗拭いて卒然とわが塒無し 石塚友二 光塵
汗拭いて身を帆船とおもふかな 岡本眸
汗拭いて顔うしなへる忌ごもり 岡本眸
汗拭きし頭をばしづかに掻く百姓 中村草田男
汗拭きてあげる面を日の待てる 中村草田男
汗拭きてすなはち肌理のこまかなり 山口誓子
汗拭きて白鷺をれば遠を見る 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
汗拭きに来し大阪と思ひけり 亭午 星野麥丘人
汗拭くは門入りていつもこの石上 加藤秋邨
汗拭くや傘寿は字面だけのこと 平畑静塔
汗拭くや膩乗り来し年の胸 石塚友二 光塵
汗拭くや茂吉の大人にはげまされ 加藤秋邨
汗拭くや谷を埋むるくはずいも 上村占魚
汗拭けば*墨東くらき迎へ風 中村草田男
汗拭はず戦敗れし日を語る 上村占魚
汗拭ふ向ふに高し雲の峯 正岡子規 雲の峯
汗拭を草に干しけり葱摺 正岡子規 汗巾
汗拭香水の香をなつかしむ 正岡子規 汗巾
汗掻きて昼寝しゐたる吾をあはれむ 山口誓子
汗散らし再見(ツアイチイエン)の拍手と握手 鷹羽狩行
汗氷る山陰行けば風もなし 正岡子規 汗
汗沁みて傍目もならぬ想一つ 中村草田男
汗涸れぬ高梁雲を凌ぐ午下 相馬遷子 山国
汗淋漓男かがやきかがやける 山口青邨
汗深く商館の暗き階を登る 日野草城
汗滲み面皮白磁のごとくなり 川端茅舎
汗漬となりし師の日を忘れめや 上田五千石 風景
汗濡れし身にて五十に近づけり 山口誓子
汗濡れの乳袋より乳貰ふ 山口誓子
汗疣の児我も裸のまゝいだく 右城暮石 句集外 昭和二十五年
汗疣の背罪を犯せしこと思ふ 山口誓子
汗疹して娘は青草のにほひかな 飯田蛇笏 霊芝
汗疹の児尻へに蜆採り倦まぬ 佐藤鬼房
汗疹児の頭を刈る怒り哀しけれ 石川桂郎 含羞
汗白く幼き黒人鼓笛隊 鷹羽狩行
汗知らずところきらはずうたせけり 上田五千石『琥珀』補遺
汗粒の 鼻が出ばつて 原爆忌 伊丹三樹彦
汗臭きシヤツに秋風四方よりす 飴山實 おりいぶ
汗臭き手拭洗ふ清水哉 正岡子規 清水
汗臭き着物脱ぎけり山の宿 正岡子規 汗
汗臭ふ貧しき友の呉れし金 日野草城
汗舐めて十九世紀の母乳の香 西東三鬼
汗血馬絶えし沃土に馬肥ゆる 稲畑汀子
汗貧し金色仏顕ずれば 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
汗馬の筋張る腹や草いきれ 日野草城
汗鹹し友の死悼む言とぎれ 安住敦
汝が胸の谷間の汗や巴里祭 楠本憲吉 楠本憲吉集
汽缶焚いて創る聖夜の汗の塩 上田五千石『田園』補遺
汽関車頭部まず着き汗の汽関手着く 金子兜太
沙羅の雨汗牛充棟を恥部とする 下村槐太 天涯
沸々の汗を羨む汗をかき 鷹羽狩行
洋車夫の剃りたる頭汗を噴く<北京> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
洋車夫の肩の日汗にぬれて来ぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
洗ひ髪ひたひの汗の美しく 星野立子
浄瑠璃のむせび語りや汗一滴 能村登四郎
浄衣着て汗を忘れてしまひたる 後藤比奈夫
浅かりし真昼の夢に寝汗しぬ 日野草城
浦上や旅来し胸の汗緊る 小林康治 玄霜
海藻を食ひ太陽へ汗さゝぐ 藤田湘子
淋汗に山の日まはり蛙かな 岡井省二 明野
淋漓たる汗もうれしや虚子墓前 波多野爽波
深き業もちて女の汗かかず 右城暮石 句集外 昭和四十五年
温泉あがりの汗乾く間を一人をり 星野立子
温泉に汗を落す間もなき人出入 高浜年尾
湯上りの汗吹き出づる心地よし 星野立子
満身の汗の茶筅を狂はしをり 石川桂郎 含羞
満面に汗して酬もとめざる 阿波野青畝
滂沱たる女の汗や絲を取る 相馬遷子 雪嶺
滂沱たる汗のうらなる独り言 中村草田男
滴りか金山掘りの汗か血か 鷹羽狩行
濃き影の真上に汗にまみれ立つ 篠原梵 年々去来の花 雨
灌水し 太陽神に汗仕え 伊丹三樹彦
火の鉄を打つ胸の汗日に曝し 右城暮石 句集外 昭和三十一年
火曜日の巷をかへり家に汗す 三橋敏雄
炎える岩運ぶや汗の毛脛張り 佐藤鬼房
焔へ額差入れ汗の投炭夫 草間時彦 中年
無影燈汗の五体を捉へたり 鷲谷七菜子 花寂び
焼土に汗たらし行車力哉 正岡子規 汗
熔岩に汗しおのれの歩みあゆみつづくる 橋本多佳子
熟睡して汗疹赤らむ児のあはれ 中村汀女
爆忌のシャツ 死に損いの 汗濡れの 伊丹三樹彦
父を焼く音に堪へをり指に汗 岡本眸
牛の顔よりもあはれに汗の顔 藤田湘子 途上
狂人を見て来しといふ額の汗 細見綾子
狼星が盗汗の胸にはりついて 佐藤鬼房
獅子頭 外す 流民の裔の汗 伊丹三樹彦
玉の汗ぬぐはず茨木少年像 鷹羽狩行
玉の汗ぬぐへばありし喉仏 鷹羽狩行
玉の汗簾なすなり背に腹に 川端茅舎
玉の汗鳩尾(みづおち)をおちゆきにけり 川端茅舎
現身の汗に濡れざるところなき 日野草城
琉球裂く泣く汗の孫引据ゑて 大野林火 雪華 昭和三十四年
甕を頭に汗かく女匂ひけり 阿波野青畝
生えそろひ来し髪汗ばみねむりをり 篠原梵 年々去来の花 皿
生きかはり執念く生きて今の汗 能村登四郎
生きて汗 引導石に坐してもみる 伊丹三樹彦
生姜湯に薄汗をして更けしかな 大野林火 飛花集 昭和四十七年
生死軽重ニユース凝りつく汗の面 石塚友二 方寸虚実
産声やへなへな落とす汗の腰 草間時彦 中年
畢に路傍の人見やりつゝ双手汗 石塚友二 方寸虚実
異人学徒の汗の香 加え 山手をバス 伊丹三樹彦
異教徒の汗してのぞく懺悔室 相馬遷子 山国
病める身の汗や白胸より溢る 山口誓子
病者にかこまれ汗匂はすはわれのみに 大野林火 青水輪 昭和二十五年
痩せし夢道置ききて築地銀座は汗 古沢太穂 捲かるる鴎
痩せし師の枕頭に汗罪科めく 松崎鉄之介
癌患者訪ふ汗をもて身を鎧ひ 相馬遷子 雪嶺
白皙の鼻汗ばみて子等遊べり 山口誓子
百仏を撮るに百拝 汗したたる 伊丹三樹彦
百姓の広き背中や汗流る 高野素十
百態の人の一人は汗拭けり 林翔
盆すぎの万の燈籠汗地獄 角川源義
盆僧の汗芳しく来たりけり 草間時彦 櫻山
盗汗冷ゆ化性のものに圧されゐし 相馬遷子 山河
目にはひる汗はこぶしでぬぐふのみ 長谷川素逝 砲車
目の窪になほも生きんとして汗溜め 岸田稚魚 雁渡し
相摶てる吾子を汗垂れて見てゐるなり 加藤秋邨
眉たわみ麗貌汗をちりばめぬ 日野草城
真黒き汗帽燈の下塗りつぶす 西東三鬼
眦を汗わたりゆく飴湯かな 阿波野青畝
眼に汗や火山の赫き襞なだれ 大野林火 雪華 昭和三十四年
眼のきれいな汗の老婆や母在さば 中村草田男
眼の大きな汗かき男の漫画終わる 金子兜太
眼澄む犬馬は騎士の汗の伴 中村草田男
睾丸の汗かいて居るあはれ也 正岡子規 汗
石に沁む石工の汗や蝉時雨 日野草城
石仏に雲累々と汗落す 古舘曹人 能登の蛙
石舞台遊ぶ額に汗見せず 平畑静塔
砲の辺に叱咤され兵汗垂らし 伊丹三樹彦
砲車はをどり砲手は汗を地におとし 長谷川素逝 砲車
硫黄臭塔婆塚汗とめどなし 佐藤鬼房
硫黄臭浴みの肌の汗噴けり 能村登四郎
磨崖大仏の膝下に汗ぬぐふ 鷹羽狩行
祗園会や女ざかりの汗見事 日野草城
神の愛にも似て限りなき汗よ 林翔
神父の汗どつと惜しげもなし場末 平畑静塔
秋の汗ひとをくびきりし気の疲れ 日野草城
秋扇となりて汗の句あらはれぬ 加藤秋邨
秋涼し寝汗もなくて昼寝ざめ 日野草城
税吏汗し教師金なし笑ひあふ 加藤秋邨
種採つて束の間の汗愉しみぬ 岡本眸
稽古場の面をかぶれば汗臭き 正岡子規 汗
積まれ乾けり嘗て淋漓の汗の石 林翔 和紙
窓一つ涼し汗牛充棟裡 阿波野青畝
端役にて汗を殺すといふことも 藤田湘子
笈摺に洗ひて落ちぬ汗もあり 後藤比奈夫
笈摺の文字も朱印も汗透す 後藤比奈夫
算機鳴り勤労の汗面に満つ 日野草城
総身の汗を脱ぐなりシャツを腹ぎ 鷹羽狩行
緑光へはりつく汗の裸形の細き祷り 赤尾兜子 蛇
縁厚き眼鏡してをり汗と光る 篠原梵 年々去来の花 皿
縞帳の黄が訴ふる苦か汗か 大野林火 飛花集 昭和四十四年
罐焚の首ふりて汗ふり落す 加藤秋邨
罪消ゆる日ありや囚衣に汗の塩 津田清子 礼拝
罪深き京の女や綺羅の汗 正岡子規 汗
羅に汗も見せずよ来て坐る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
美しきものにも汗の引くおもひ 後藤比奈夫
美しき五月の汗を拭はずに 鷹羽狩行
美しく小鼻に汗をとゞめたる 高浜年尾
老の汗夕焼さめて来りけり 松村蒼石 寒鶯抄
老人の汗たまりたる眼窩かな 草間時彦 櫻山
老母の視野 朦朧 そこへ汗の胡坐 伊丹三樹彦
老皺に真幸く現ず夏の汗 三橋敏雄
老身に泌みし汗や輝かぬ 相生垣瓜人 負暄
老車夫の汗を憐む酒手哉 正岡子規 汗
老農の陳情われも汗したたる 伊丹三樹彦
耕すや天より汗を賜りて 細谷源二 砂金帯
肉食つて汗拭きて消ゆ脇役者 能村登四郎
背の窪をさぐりすべりの汗ありし 林翔
胸に掌に歩兵はあごの汗おとす 長谷川素逝 砲車
胸の上に毛布たくめて汗しゐしか 篠原梵 年々去来の花 皿
胸の汗カンテラの灯に鏡なす 山口青邨
胸の汗冷えて遠くが見えはじむ 岡本眸
胸の汗拭くまうしろに柱立つ 岡本眸
胸の汗真青白夜の稲妻か 加藤秋邨
胸板を汗の流るるわかめ汁 細見綾子
腕の汗触れ合ひバスの扉しまらず 右城暮石 句集外 昭和三十一年
腕の腹汗ばみゐるにこだはり書く 篠原梵 年々去来の花 皿
腕ひろげ放つ狐臭の夜の汗 三橋敏雄
腰撓め踏絵見し腋汗走る 小林康治 玄霜
膚しろき少女も汗によごれそむ 山口誓子
臍凹め汗溜めて世を罵るや 小林康治 玄霜
興奮のすぐ汗ばみて恥しく 星野立子
舌頭に千転するや汗の玉 正岡子規 汗
舞扇たたむ玉の汗ただひとつぶ 山口青邨
芋団子汗の童べ膝に肩に 細谷源二 砂金帯
芒野へ山襞汗の如く垂れ 野見山朱鳥 曼珠沙華
芦の香の汗したまひし老母かな永田耕衣
花の墓前にしばらくは汗のまま 飯田龍太
花木槿美作に来て汗白し 森澄雄
若き母汗腋の下乳房の下 中村草田男
若者の汗が肥料やキャベツ巻く 西東三鬼
若者の汗の流るる焙炉かな 高野素十
若者の汗は透明稲の風 草間時彦 中年
若者の汗旺んなる力業 日野草城
若者や汗の顔セ笑みほぐし 星野立子
英霊車子が母に教ふ汗しつつ 加藤秋邨
茫として女の汗や仙洞御所 雨滴集 星野麥丘人
草の宿汗かきたまふ仏あり 山口青邨
草取の汗に衰ふ髪の嵩 岡本眸
草田男つぶやき誓子独語す汗の黙 加藤秋邨
草苅の汗眼に入れば日がいびつ 細谷源二 砂金帯
荒草を薙ぎゆく汗の女脛(はぎ) 佐藤鬼房
荵摺我旅衣汗くさし 正岡子規 汗
菅刈と同じからざる汗垂るる 斎藤玄 雁道
菅刈のめげぬ汗噴き出づるかな 齋藤玄 飛雪
著たきりの死装束や汗は急き 三橋敏雄
葛の葉に働く汗をふりこぼす 富安風生
蒼き寡婦つめたき汗をわきのした 日野草城
薄暑の汗頸おおう髪今日刈らな 古沢太穂 三十代
薔薇かかへきし汗をとるわれの前 大野林火 雪華 昭和三十五年
蚊の口もまじりて赤き汗疣哉 正岡子規 汗
蝦夷の奥珈琲もとめ額の汗角川源義
蝸牛も食ひきと汗にめつむりき 加藤秋邨
蟻地獄抗へば侏儒に似て汗す 小林康治 四季貧窮
血を採らる快感に汗してゐたり 能村登四郎
血を止めんと軍医は汗を地におとす 長谷川素逝 砲車
血族(みうち)に見ざる一重瞼の汗重きを 中村草田男
行共にして若き尼汗見せず 右城暮石 上下
行末や額せまくして汗たるゝ 岸田稚魚 雁渡し
行末や額狭くして汗たるる 岸田稚魚 負け犬
行水や再び汗の細工事 正岡子規 行水
被爆者忌脱ぐ汗のシヤツ裏返る 三橋敏雄
西の密寺の飲真天道汗の童 金子兜太
西方に新月生き残りしは汗す 大野林火 雪華 昭和三十五年
覚めてすぐ戦争を思ふ鼻の汗 加藤秋邨
言葉つまる心の隙に汗ありて 林翔 和紙
詩三千汗くさく薬くさく酒くさし 中村草田男
諂つても生きねばならぬ汗噴き出す 小林康治 四季貧窮
豚の餌煮る乳房の汗のほとばしり 岸田稚魚 負け犬
象使ひ高きに汗をしたゝらし 渡邊白泉
貝をむく汗の口辺法師蝉 古沢太穂 三十代
貧しさも汗もこぶしをもつてぬぐふ 有馬朗人 母国
貧に暇なし夏シヤツは日々汗にほはす 松崎鉄之介
貧農の汗玉なして夕餐摂る 飯田蛇笏 霊芝
賭博の座夜は汗して病むばかり 佐藤鬼房
赤い部屋が車窓とび過ぐ汗の日暮れ 金子兜太
足るを知らずたれかれとなく汗臭き 鷹羽狩行
踊り子のうすら汗してにほひをり 森澄雄
踊笠うしろに脱ぎし汗男 百合山羽公 寒雁
踏む蹄しばしば相触れ汗の馬 中村草田男
身から出てあまり清らに盆の汗 上田五千石 天路
身を起すとき全身の汗流る 山口誓子
身二つとなりたる汗の美しき 野見山朱鳥 曼珠沙華
輜重らの汗砲弾の箱を割る 長谷川素逝 砲車
返り花の白さ汗してゐたりけり 右城暮石 句集外 昭和十九年
透明な外国人の汗見つつ 中村草田男
遅々と船団脱糞のまも汗垂れて 佐藤鬼房
過ぎ去りし汗の季節のなつかしく 波多野爽波 鋪道の花
道化師の種明しして汗見せず 鷹羽狩行
遠足に農夫汗拭く刻賜る 上田五千石『田園』補遺
選句すてゝしたゝる汗に切籠見る 渡邊水巴 富士
遽かの暑美人の汗に眼をとどむ 日野草城
野に臥して汗同臭の麦刈女 飯田龍太
野馬追武者兜の汗は拭はざり 松崎鉄之介
金借るべう汗しまはりし身の疲れ 「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
金借るべう汗しまわりし身の疲れ 石塚友二 方寸虚実
金策の日も夜も汗の胸抱いて 小林康治 四季貧窮
金銭に怒れる汗を土に垂る 西東三鬼
金餓鬼と見るか書を売る汗の日々 伊丹三樹彦
金魚売露地深く来て汗拭ふ 加藤秋邨
金魚玉夜の軽雷に汗ばめり 大野林火 海門 昭和十二年
釘づけに病むにあらねど汗しづか 野見山朱鳥 愁絶
鉄塔下遅々と過ぎ来し朝の汗 右城暮石 声と声
鉄打つて胸の厚みに汗噴けり 佐藤鬼房
鉄斎へ汗念力の膝がしら 加藤秋邨
錦着て牛の汗かく祭りかな 正岡子規 祭
鍛造の地ひびき汗の腿張つて 佐藤鬼房
鍬の柄土間に汗かき梅雨に入る 富安風生
鐘撞いて男ひと日の汗拭ふ 原裕 青垣
長門本逐うて汗の眼すずやけき 原裕 葦牙
闘ふ汗怠ける汗天ただ高し 加藤秋邨
陳情の徒労の汗を駅に拭く 相馬遷子 山国
陽炎や嫁ぎ汗ばみ謎もなし 加藤秋邨
雀班より汗湧く少女運動会 草間時彦
雑閙のお閻魔さまへ汗かきに 山口青邨
難波橋汗光る馬鞭摶たれ 伊丹三樹彦
霊験や善男善女汗まみれ 右城暮石 句集外 昭和五十三年
青年逝きぬその父の和顔の汗 日野草城
青竹の匂ひ青年の汗の匂ひ 大野林火 白幡南町 昭和三十年
青萱をびつしり負ひし汗の顔 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
青葦原汗だくだくの鼠と会う 金子兜太
青麦に青き穂が出て汗稚し(太郎一年生) 細見綾子
静脈の黒さ汗の手吊革に 石塚友二 方寸虚実
面上に汗のあまねき漢かな 日野草城
面除れば淋漓と汗し兵の眉宇 伊丹三樹彦
革椅子に汗冷えて見る火消壷 松村蒼石 雁
頑躯汗すこやかあだをうたでやまじ 長谷川素逝 砲車
頭掻けば洗はぬ日数の汗にほふ 篠原梵 年々去来の花 中空
額に汗の俥夫と 額に朱の母子と 伊丹三樹彦
額の汗顎の汗恋おそるべし 加藤秋邨
顔の汗大きてのひらに一掃す 加藤秋邨
顔寄せてみな親しき人や汗ばみて 山口青邨
顔振つて汗散らし行く青芒 右城暮石 天水
食べた後の顔になりゆく汗さまざま 中村草田男
飲食に腋下汗ばむ柿の花 岡本眸
餞別に汗衫をもらふ殘暑哉 正岡子規 残暑
馬の股白く汗しぬ軍の馬 山口誓子
馬の背のしとどの汗を掻き落す 山口誓子
馬顔を横にふりつつ汗払ふ 中村草田男
髪の奥から奥からの妻の汗 中村草田男
鬼事逃げる汗の小鬼に皆舌出し 中村草田男
鬼剣舞灯に跳躍の汗も飛び 能村登四郎
鬼来迎汗の亡者のでづつぱり 松崎鉄之介
魂も汗を噴くちふ噴くならむ 相生垣瓜人 明治草
魔性棲む余地なき汗をふりこぼす 岡本眸
鯉山の飛沫か汗か鉾の衆 能村登四郎
鶏走る早さや汗の老婆行く 中村草田男
麦刈女汗に張る目の位けるとも 大野林火 雪華 昭和三十六年
麦秋や農婦胸より汗を出す 細見綾子
麦背負ひ智が土にやけ汗にとけ 飯田龍太
麦藁帽杭に被せて汗拭ふ 右城暮石 句集外 昭和四十九年
黄の色の汗修道尼日本人 右城暮石 上下
黒く涼し聖女の祈り汗し見ゆ 小林康治 玄霜
黙々と地下の群集汗を垂る 西東三鬼
黙々と憩ひ黙々と汗し行く 相馬遷子 山国
黙祷や汗なめて礼す被爆時報 小林康治 玄霜
鼻梁汗かく原爆祭うつろなり 原裕 葦牙

以上


by 575fudemakase | 2017-05-17 08:03 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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