カテゴリ:秋の季語( 1256 )

栗 の俳句


*たらの枝に栗拾ふ子のとらへらる 木津柳芽 白鷺抄
*ゆで栗や冷えたる笊の水しづく 楠目橙黄子 橙圃
いが栗のつや吐く枝や筧口 室生犀星
いが栗のなぜみにくうは生れける 栗 正岡子規
いが栗のはぢける音やけふの月 今日の月 正岡子規
いが栗ははじけ伊賀よりわれ出でず 中島武子
いが栗や嬉しき程は握られず 之竹
いが栗や独はぢけて出る迄 諷竹
いが栗や落つる合点に突きて逃げ 苔蘇 九 月 月別句集「韻塞」
いが栗をいちいち返す栗拾い 村垣摶宣
いが栗をひきぞわづろふあれ鼠 栗 正岡子規
いが栗を地蔵の膝でわりしよな 青嵐
いくそたび栗を拾ひぬ家守りて 梅里全子 『祝矢』
えにしかな夫に栗むく六十年 及川貞
お十夜の茹栗売に雨の粒 草間時彦 櫻山
お墓の栗むきゐしは風の昔かな 太田鴻村 穂国
かうなれば意地なり栗をとことん剥く 高澤良一 暮津
かさなりて栗の落葉のみな長し 長谷川素逝 暦日
かぞへつつ山栗入るる茶袋に 田中冬二 麦ほこり
かち栗に喉の乾きや山清水 清水 正岡子規
かち栗もごまめも君を祝ひけり ごまめ 正岡子規
ことことと茹で栗鳴りて綾子亡し 西村秋子
ささ栗の柴に刈らるる小春かな 鬼貫
すぐそこの栗山にさへ日傘さし 山田弘子 螢川
せせらぎに戯るる陽や青マロン 林翔 和紙
それなりの重みのありて虚栗 山口 速
ダリの絵を見てきて栗のいが落す 成瀬桜桃子 風色
チャイナタウン栗焼く傍(はた)を通り抜け 高澤良一 素抱
てのひらに柴栗妻がのこしけり 石田波郷
どこからも見ゆる鞍岳栗拾ふ 古賀 雁来紅
どや~と風の朝の栗拾ひ 尾崎紅葉
ねむごろに栗剥きてをり泣きてをり 殿村菟絲子
ねんごろにねんごろに栗剥くがよい 櫂未知子 蒙古斑
ハングルとこぼれ焼栗手秤に 倉本 岬
ひえびえと下掃かれある栗林 綾部仁喜 樸簡
ひしひしと毬栗をしぬ施餓鬼棚 前田普羅
ひとつひとつ栗むいてやりし子は遠し 及川貞 夕焼
みなし栗ならべおはじきあそびせる 加藤三七子
みなし栗ふめばこころに古俳諧 富安風生
みなし栗山の風韻秘めゐたり 大橋敦子
やうやくに剥き切る栗の皮の嵩 高澤良一 暮津
ゆで栗や十夜と云へば霧深く 増田龍雨 龍雨句集
ゆで栗や小さな帯をして立居 阿部みどり女
ユネスコ村拾ひつくされ栗はなし 石田あき子 見舞籠
よくぞ身を鎧ふものよと栗を剥く 堀前小木菟
よべ栗を剥きし痛みの指にあり 山田弘子 螢川
逢えばことなし女栗剥くひたすらに 三谷昭 獣身
握りもつ山栗ひとつ訣れ来し 多佳子
安請け合いして剥く栗の硬きこと 高澤良一 暮津
井月の墓にころがる虚栗 伊藤伊那男
一粒の大粒の艶丹波栗 中山純子
鰯雲いが栗の束手に荒き 渡邊水巴 富士
引き受けし手前剥かねばならぬ栗 高澤良一 暮津
雨くらきわびしさに栗茹でてをり 水原秋櫻子
雨ためて添ふみなし栗栗拾ふ 皆吉爽雨 泉声
雨だれやいくつも月の栗を剥く 斉藤夏風
雲迅し青栗の枝吹き折れて 小池文子 巴里蕭条
鋭鎌もて山のわらんべ栗を剥く 本田浮巣
往診の靴の先なる栗拾ふ 金子伊昔紅
黄落や栗の木敷きし小布施みち 有村節香
下野や風雨いよいよ栗林 鈴木真砂女
何の木のもとゝもあらず栗拾ふ 虚子
家裏の栗落つ音の昔のまゝ 細見綾子
火薬庫を見まわりに来て栗拾ふ 逸見末草
会心や栗三つ拾ひ三つが合ふ 平井さち子 鷹日和
絵所を栗焼く人に尋ねけり 夏目漱石
崖ゆれる栗落ちて位置きまるまで 鈴木六林男 桜島
嚇々と大毬栗の口中よ 井沢正江
顎のやさしさ澄む空に青栗満ち 友岡子郷 遠方
肝魂のすさぶる飢えや虚栗 鈴木明
虚栗ひとつ拾ひてもどりけり 金久美智子
虚栗ふすべ一茶の忌なりけり 西本一都 景色
虚栗ふめば心に古俳諧 富安風生
虚栗荒(さ)びる一途といふ生家 中原道夫
虚栗鴫立庵の露地にかな 町田しげき
虚栗拾ふ茂吉も来し径か 阿部子映
虚栗掌にころばせて火山地帯 猿橋統流子
虚栗踏まねば行けず比翼塚 山田知沙
峡の夜の栗を煮る灯もありぬべし 大串章
近道やいが栗落て足をさす 栗 正岡子規
苦楽をともに栗ある夜は栗を煮る 村越化石
靴音と栗落つる音の均しさ 四ッ谷 龍
栗うまし剥いて貰ひてひとつづつ 篠田悌二郎 風雪前
栗が落ちる音を児と聞いて居る夜 尾崎放哉
栗のいが落ちるいのちの音たてる 寺田京子 日の鷹
栗のつや落ちしばかりの光なる 犀星
栗の実が一途におちる闇の中 瀧澤伊代次
栗の実が散ってしまったイガイガ村 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
栗の樹下髪を叩いて蟻落す 高澤良一 宿好
栗の木に栗落す棒二本づつ 金久美智子
栗の毬剥くや大きな軍手はめ 成宮紫水
栗ひろふ聲か朝戸にかぜの音 及川貞 夕焼
栗むいてしづかに冬のともしびに 京極杞陽 くくたち下巻
栗むいて遠野語りとなりにけり 秦 孝浩
栗むいて慈母観音のごとき夜を 中山純子 沙 羅以後
栗むいて食べたる跡や猪の垣 細見綾子
栗むいて無口の夜のありにけり 松尾 美子
栗むきて夫婦は黙の刻多し 冬一郎
栗むきぬ子亡く子遠く夫とふたり 及川 貞
栗むくや怠けて肥えし膝の上 細川加賀 『傷痕』
栗むくをそばから食うべ夫は癒ゆ 及川貞
栗むけば遠き思ひの大家族 幡野千恵子
栗を拾ひともにはにかむ父同士 林 翔
栗を焼くある夜の雨のつれ~に 寺田寅彦
栗を焼く伊太利人や道の傍(はた) 夏目漱石 明治三十四年
栗を焼く互ひに旧きこと話し 千原 叡子
栗を焼く三人のまどゐわらひ多し 森川暁水 淀
栗を焼く山賊の妻美なるかな 露月句集 石井露月
栗を剥き終りてもまだ剥きたき手 須川洋子
栗を剥き独りの刻を養へり 野澤節子
栗を剥くときの無口に身のぬくむ 節子
栗を剥くふたり暮しを運命とし 鍵和田[ゆう]子 未来図
栗を剥くふたり暮らしを運命とし 鍵和田[のり]子
栗を剥く記憶一枚づつはがし 加藤 耕子
栗を剥く手休め亦も溜息つく 高澤良一 暮津
栗を剥く夭折をうべなひあうて 千代田葛彦
栗硬きは茹で足らざるや出来悪しや 高澤良一 随笑
栗山にあれば落日慌し 高浜虚子
栗山にひつそりとゐる懸巣かな 皆川盤水
栗山に在れば落日慌し 高浜虚子
栗山に指の血は濃く喉を過ぐ 中島斌雄
栗山の空谷ふかきところかな 芝不器男
栗山の空谿ふかきところかな 定本芝不器男句集
栗山へ一縷の径のかかる見ゆ 富安風生
栗煮えて食後の家族また集ふ 高橋悦男
栗煮ゆる間を蝶類の図鑑かな 川崎展宏
栗拾ひねん~ころり言ひながら 一茶
栗拾ひねんねんころり云ひながら 一茶
栗拾ひ谷川の音を進みけり 尾崎迷堂 孤輪
栗拾ふものの光の見ゆるとき 平畑静塔
栗拾ふをとめの声の妻の声 斌雄
栗拾ふをとめの聲の妻の聲 中島斌男
栗拾ふ家に錠なき一部落 武田忠男
栗拾ふ栗鼠の歯型のつくものも 田中佳嵩枝
栗拾ふ深山の中の林かな 尾崎迷堂 孤輪
栗拾ふ声か朝戸に風の音 及川貞
栗拾ふ天地に母の老い深し 原裕 青垣
栗拾ふ両手のほかに何もなし 佐土井智津子
栗焼くと炉中のを拡げけり 西山泊雲 泊雲
栗焼くやまこと淋しき山住ひ 高橋淡路女 梶の葉
栗焼く香ただよへば船点し合ふ 子郷
栗焼く香家暗かりし夜を思ふ 飯田龍太
栗焼けば寝そびれあそぶ末子かな 水原秋桜子
栗焼けば面照らされて言ひまどふ 岩田昌寿 地の塩
栗焼て煙草を刻む老婆哉 寺田寅彦
栗焼て枝に風聞夜寒哉 太阜
栗剥いてさゞめきこぼす膝厚し 清水基吉 寒蕭々
栗剥いて金色に夜を富ますかな 嶋崎茂子 『ささやき神』
栗剥いて見るのもいやといふ顔す 高澤良一 暮津
栗剥いて残業の娘の帰り待つ 岡村喜代子
栗剥いて世を憂ふことなき如し 福島壺春
栗剥きぬ父の帰りを待つやうに 櫂未知子 貴族
栗剥きの我慢比べに音を上げず(妻と) 高澤良一 暮津
栗剥くは上手所帯は崩しても 小沢信男
栗剥くや宵の睡気を越えてより 平井さち子 鷹日和
栗剥くや食はすや恋も古びたり 清水基吉
栗剥けと出されし庖丁大きけれ 高浜虚子
栗剥けと盆と包丁置きゆけり 高澤良一 暮津
栗剥けば手が莫迦になり小休止 高澤良一 暮津
栗落ちて栗落ちて家あけられず 武田和郎
栗落ちて初めて己が影をもつ 高橋馬相
栗落ちて亡き友の町山裾に 佐藤正治 『山川草木』
栗落ちて鼬の道の絶えてけり 栗 正岡子規
栗落ちて龕の如しや湯治の火 宇佐美魚目 天地存問
栗落つる枕も青き月夜哉 会津八一
栗落とす時にこの世を夢とみなし 大串章
栗落葉土龍の穴に刺さりゐる 岸本尚毅 舜
栗落葉踏みて埃を立て歩く 茨木和生 往馬
栗落葉踏み静塔の歩を思ふ 茨木和生 往馬
栗林たま~松の幹太し 高濱年尾 年尾句集
栗林の北山よそほひ尽したる 三浦恒礼子
栗林家探し止めてゐたりけり 石田波郷
栗茹でて鍋の湯捨つる溝藁麦に 田中冬二 俳句拾遺
君が呉れし毬栗爆ぜる爆ぜるかと 八木林之介 青霞集
月の夜の落栗拾ひ尽しけり 芥川龍之介
原罪といふことおもひ栗を剥く 岩崎照子
五右衛門の釜茹でに遇ふ栗の虫 高澤良一 燕音
吾妹子は栗剥きなから怨しけり 尾崎紅葉
鯉浮て栗落ちて水輪相うてり 石島雉子郎
口少しとがらせて妻栗を剥く 肥田埜勝美
口裂かるまでは凡人青栗笑む 香西照雄
口裂かるるまでは凡人青栗笑む 香西照雄 対話
香ばしき焼栗御説ごもっとも 高澤良一 燕音
高原の青栗小粒日の大声 西東三鬼
婚礼という山栗が裂けはじめる 西川徹郎 月光学校
妻として栗剥けば夫食ふ早し 殿村 莵絲子
妻なしや今年栗むくひとりにて 森澄雄
妻籠路や宝珠ひねりの栗きんとん 高島筍雄
三つにて腹よろこびぬ丹波栗 森澄雄 所生
三つ栗の三つ合へば毬恋ふと見ゆ 林原耒井
山と盛る栗をののしりののしり剥く 高澤良一 暮津
山の日は地を熱くしぬ一つ栗 中戸川朝人 尋声
山びこのひとりをさそふ栗拾ひ 飯田蛇笏
山栗のひとつは獣臭きかな 野木桃花
山栗の五つ六つ乗る蓬莱盆 下田稔
山栗の小粒袋に締めて売る 野沢節子
山栗の大木のあるなつかしき 松本たかし
山栗や少年の日の土の橋 鷹羽狩行
山栗を五合枡に量りゐる 田中冬二 麦ほこり
山栗を拾ひあつめてすこし老ゆ 志摩知子
山見えぬ山ふところの栗林 藤後左右
刺(いが)に世を遁れてしるや栗の肌 酒堂 俳諧撰集「藤の実」
子と仰ぐ青栗よりも濃きはなし 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
子の声の山に弾けて栗拾ふ 西山すみ子
子へ買ふ焼栗(マロン)夜寒は夜の女らも 中島斌雄
子へ買ふ焼栗夜寒は夜の女らも 中島斌男
子等起きよ栗山けふも上天気 福田蓼汀 山火
詩碑の前はじけて虚栗ならず 西本一都 景色
宍粟(しそう)大湖青栗のある夕余色 赤尾兜子
柴栗の柴もみいでて栗もなし 室生犀星
柴栗の二つ三つは眠き数 鈴木鷹夫
柴栗の破顔一笑野良着干す 今井茅草
柴栗や音を抑へて水流れ 伊藤敬子
柴栗や馬のばりしてうつくしき 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
柴栗を袂につゝむ小供かな 栗 正岡子規
芝栗を拾ひて山の声を聴く 赤川速水
主婦業といえば大袈裟栗剥いて 佐柳妙子
手の音すればゆめのほとりの栗林 阿部完市
手間ひまを掛けて煮上げし栗の艶 山田弘子
拾はれて毬栗あるじ然とせり 仙田洋子 雲は王冠
拾ひたる栗一夕の糧となる 下村梅子
拾ひ来て畳に置きぬ丹波栗 前田普羅
秋もはや栗の落葉や目黒道 栗 正岡子規
重陽の栗を琥珀の珠と煮たり 秋櫻子
初物の茹で栗なれば刳り餘さず 高澤良一 随笑
勝ちさうになつて栗剥く暇かな 栗 正岡子規
勝ちさうになりて栗剥く暇哉 栗 正岡子規
焼く栗に薄刃入れつつけふはひとり 森川暁水 淀
焼栗の一袋買ふ谷汲寺 細見綾子 黄 炎
焼栗の温みやそろそろ妻恋し 奈良文夫
焼栗の灰吹きながら咄かな 滝川愚仏
焼栗の香の流れたり社会鍋 吉田鴻司
焼栗の爆ぜて一茶忌近うせり 吉田鴻司
焼栗の冷ゆれば重し翁の忌 秋元不死男
焼栗も客も飛び行く夜寒かな 内藤丈草
焼栗も客も飛行く夜寒哉 丈草 (答見寄山庵)
焼栗やまた近くなる雨の音 幹彦
焼栗やむかし丹波に鬼がゐて 大石悦子 群萌
焼栗や壺坂寺へ九丁茶屋 西山泊雲 泊雲
焼栗を衣嚢にわれはエトランジエ 林原耒井 蜩
焼栗購ふスモッグ濃ければ淋しければ 楠本憲吉
笑み栗に早速棒を探してる 杉澤昌子
笑み栗や鬼一口に青き空 松根東洋城
笑栗の籠にあふれて厨口 田川つる女
信濃路に子は眠りゐむ栗を剥く 楸邨
神妙に栗をむくなり剥きにくき 久保田万太郎 草の丈
人混みに栗むきし爪痛みをり 岩淵喜代子 朝の椅子
刃を据ゑて大ぶりの栗剥きにけり 野末たく二
吹雪如月義弟・毬栗倫理学 高柳重信
西安のみやこで食ぶや丹波栗 細見綾子 天然の風以後
青栗に四方の山雲照りきそふ 相馬遷子 山国
青栗に纒ふ恥あり強く見る 石塚友二 方寸虚実
青栗のころげて土になじまざる 大木あまり 火球
青栗のぱちりぱちりと丹波かな 斉藤夏風
青栗の径をくる子ら濡れ水着 羽部洞然
青栗の刻一刻にゆふまぎる 山口誓子
青栗の稚なさ毛虫丸まりて 香西照雄
青栗の朝夕となくうるほへり 飯田蛇笏
青栗の病者とともに夜へ沈む 千代田葛彦 旅人木
青栗の風に遅れて揺るるあり 岩田由美 夏安
青栗の棘やはらかし釣月軒 山崎祐子
青栗の矮き木立が湖かくす 木村蕪城 寒泉
青栗やずしりと重き備前焼 黒田桜の園
青栗やミルクふくます日陰婆 宮坂静生 雹
青栗や異形の笑みの鉈仏 中村明子
青栗や屋島こけしは見つゝたのし 友岡子郷 遠方
青栗や砂の流れし山の道 中拓夫
青栗や戦死のやうな一訃報 岡本眸
青栗や朝の焚火のわづかにて 中拓夫 愛鷹
青栗や猫は尻尾で考へる 中村明子
青栗をゆする炎天のかぜ冷えぬ 瀧春一 菜園
青栗を活けぬ荒れくる夜の兆し 野澤節子 黄 炎
青栗を生けぬ荒れくる夜の兆し 野澤節子 『鳳蝶』
青栗を踏まず過ぎにし跡のあり 林原耒井 蜩
青栗を踏まへて尼の庵とあり(洛西鳴滝にて) 『定本石橋秀野句文集』
青栗毬に日高き蚊帳払ひけり 金尾梅の門 古志の歌
青淵の嵐や落つる栗多し 水原秋櫻子
石だたみ崩えて青栗一つ落つ 林翔 和紙
石臼の傾いてゐる栗落葉 綾部仁喜 樸簡
切株の上いが栗の二つ三つ 高野素十
切株の中に北あり夏休 栗山辺 銀化
千あらば千を拾はん栗拾ひ 森下流子
前山の音てふ栗の落ちはじめ 斉藤夏風
喪の旅の土産つややかの丹波栗 大橋敦子 匂 玉
早池峰の山ふところに栗拾ふ 笠井順一
窓にゐて少しもらひぬ拾ひ栗 龍胆 長谷川かな女
揃ひ居る光と影の栗林 京極杞陽 くくたち下巻
待つことは長し栗の実落つることも 山口青邨
大いなる幹のまはりの栗ひろふ 長谷川櫂 蓬莱
大風の落葉にまじり栗礫 福田蓼汀 山火
大粒の五山の栗を拾ひけり 根岸浩一
丹波栗五六顆を墓のてのひらに 沢木欣一
丹波栗笑みたる下の地主径 前田普羅 春寒浅間山
丹波栗大粒の色つややかに 和泉直行
丹波栗母の小包かたむすび 杉本 寛
丹波栗毬の強情なるを呉れ 石嶌岳
男無きさ庭毬栗百ひそむ 殿村菟絲子 『樹下』
知らぬ子とあうてはなれて栗拾ふ 左右
地に落ちて柿栗青し土用東風 西島麦南
宙の青栗愛のはじめの羞しさに 友岡子郷 遠方
昼飯に少し間のあり栗拾ふ 赤星水竹居
昼餉の火たゝせゐて背戸栗拾ふ 及川貞 榧の實
朝しづのどん栗落る音すなり 中勘助
朝月の柴栗つたふ撓へかな 柴車 俳諧撰集「藤の実」
朝焼の染めし青さに栗のいが 長谷川素逝
長ければ栗の落葉のねぢれをり 上村占魚 球磨
長安の都で食ぶや丹波栗 細見綾子
長女はやわが好敵手マロン剥く 松村多美
庭の栗茹でて庭師をねぎらひつ 白岩 三郎
天の音たつる落栗一つ家に 赤松[ケイ]子
天高し山家は庭に栗干せる 田中冬二 俳句拾遺
転げ出て故山の匂ひ虚栗 高澤良一 ねずみのこまくら
怒る栗笑ふ栗皆落ちにけり 栗 正岡子規
灯の暗き丹波の郷や虚栗 赤尾恵以
踏み入りし栗の林の落葉かな 比叡 野村泊月
童子いでて夜来の栗を拾ひ鳧 会津八一
道元忌初栗焼かれ薬石に 佐藤宗紹
道問へば栗拾ひかととはれけり 赤星水竹居
遁世したき夫と住みて栗を剥く 田川飛旅子 『薄荷』
日々に栗程よく落ちぬ住みふりぬ 及川 貞
日輪に青栗の虫老いにけり 飯田蛇笏 春蘭
年よりの水にづかづか栗ひろひ 宇佐美魚目 天地存問
買ひ足して拾ひし栗の飯かしぐ 遠藤 はつ
買ひ置きの焼栗つまみ年籠 高澤良一 宿好
剥きづらき栗を手にして長丁場 高澤良一 暮津
剥き甲斐のある栗だけを五つ六つ 櫂未知子 貴族
半盲のもつとも栗を剥きにくし 安住敦
半茹での硬さは熊でも喰う栗か 高澤良一 随笑
番小舎の栗のいが焼くドラム罐 吉田紫乃
美しき栗鼠の歯形や一つ栗 前田普羅
筆遅き卓にひびきて丹波栗 下田稔
病む父に青栗ひと枝盗み来しよ 石川桂郎
病む父へ青栗一枝盗み来しよ 石川桂郎 含羞
夫残し来て落栗の肩を打つ 竹内美智代
夫逝きて一人で拾ふ庭の栗 伊吹み江子
父さみし母の忌日の栗むきて 菖蒲あや 路 地
父にあり子になき戦後栗むけり 玉城一香
父恋ひの山中に栗落としをり 伊藤白潮
風にゆさゆさ栗すべて落されし以後 藤岡筑邨
風小僧落としてゆきぬ山の栗 高澤良一 石鏡
焚代やかはきてうすき虚栗 純夫
別れきて栗焼く顔をほてらする 西東三鬼
別れ来て栗焼く顔をほてらする 西東三鬼
母が煮る栗あまかりし十三夜 能村登四郎
母の肘と触れ合えば栗の実の気分 丸木美津子
蓬莱に積む搗栗(かちぐり)の一とにぎり 光信喜美子
岬に茶屋ゆで栗並べ通ひ婆 河野南畦 湖の森
民宿の茶請けの栗の渋皮煮 高澤良一 燕音
鳴く虫をあらはに見つゝ栗拾ふ 秋櫻子
木曾仔馬青栗のいが道にでて 森澄雄
木曽仔馬青栗のいが道に出て 森澄雄
木肌ひゆる風重し灯に栗拾ふ 金尾梅の門 古志の歌
夜も昼も醒めてゐるなり虚栗 小泉八重子
夜を長く長く使ひて栗を剥く 高澤良一 寒暑
夕月の色のいよいよ栗きんとん 高澤良一 石鏡
落ちてすぐ露まみれなる栗拾ふ 及川貞 夕焼
落栗に雨脚つよくなりにけり 石田郷子
落栗に思ひがけなき菌かな 桃隣
落栗に膝ついて居る關所かな 栗 正岡子規
落栗のいきなり水に大しぶき 宇佐美魚目 天地存問
落栗の向け合ふ尻の白さかな 石田勝彦 秋興
落栗の座を定めるや窪溜り 井上井月
落栗の真新しきはこれとこれ 高澤良一 燕音
落栗の流れて来たる筧哉 野風
落栗の路考茶いろ帯び幾日経し 高澤良一 石鏡
落栗やなにかと言へばすぐ木魂 芝不器男
落栗や一と日陽を見ぬくなど神 高井北杜
落栗や記憶の奥に鬼のこゑ 鍵和田[ゆう]子
落栗や砂の流れし山の道 中拓夫 愛鷹
落栗や沼の雨月の夜に似たり 小川芋銭
落栗や兎の遊ぶ所なし 成美
落栗や日のぬくもりを手のひらに 岡 汀子
落栗や墓に経よむ僧の前 黒柳召波 春泥句集
落栗や翌の命も山の奥 松岡青蘿
落栗や藁屋の夢も醒る程 太無
落栗をよべ栗の木を今朝見たり 後藤夜半
落栗を見つけて母の手を離す 田中芙美
落栗を拾へばほのと日のぬくみ 成瀬正とし 星月夜
旅なれやひろひてすつる栗拾ふ 篠田悌二郎
旅にして焼栗買ひぬ紅葉狩 高橋淡路女 梶の葉
老猿の忌日を栗の落ちにけり 栗 正岡子規
凩よ世に拾はれぬみなし栗 榎本其角
媼一人枡に山栗量りゐる 田中冬二 麦ほこり
抛られて音もたてずに虚栗 松田美子
搗栗のくちやくちやの皺毛の国の 森澄雄
搗栗や歯のなきは無き家の春 無徳
棘で立つ青栗母は気兼ばかり 香西照雄 対話
毬栗と風が磨いてゆきし谷 櫂未知子 貴族
毬栗に指の先より近づきぬ 藤田寿美子
毬栗に袖なき猿の思ひ哉 其角
毬栗に踏みあやまちそ老の坂 黒柳召波 春泥句集
毬栗のかくまで守るをかしさよ 殿村菟絲子 『菟絲』
毬栗のはぜかかりゐる八重葎 飯田蛇笏 春蘭
毬栗のまま買うてきて何為さむ 青木重行
毬栗のみどりの針の錆びはじむ 大橋敦子
毬栗の餓鬼大将もゐたりけり 平井照敏 天上大風
毬栗の笑ふも淋し秋の山 李由 九 月 月別句集「韻塞」
毬栗の触角闇をゆたかにす 櫂未知子 蒙古斑
毬栗の吹きちぎられて石の上 寺田寅彦
毬栗の淡彩愛づる草の上 高澤良一 石鏡
毬栗の弾けてをりぬわが留守に 八木林之介 青霞集
毬栗の転がる能勢の棚田かな 大柳篤子
毬栗の浮き足立てる地面かな 上野泰 佐介
毬栗の蓑にとどまるあらしかな 白雄
毬栗の毬に青みの抜けるころ 宮坂静生
毬栗の簑にとゞまるあらしかな 加舎白雄
毬栗は丹波の鬼の笑ひなり 筑紫磐井 婆伽梵
毬栗や手に棒げたる法(のり)のには 服部嵐雪
毬栗を活けて国宝級の壺 長田等
毬栗を入れし袋をおそるおそる 正木ゆう子 静かな水
毬栗を落すと竿に振られをり 小林れい
毬踏まれ山栗童子産まれけり 塩原栄子
爐の火を栗を思ふまゝにする栗を焼く 中塚一碧樓
玻璃に触る青栗讃美歌はるかより 柴田白葉女 遠い橋
瞼に棲む顔一つ殖ゆ栗むく夜 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
茹で栗のうすら甘さよこれの世の 細見綾子
茹で栗の当たりはずれを妻の云ふ 高澤良一 随笑
茹で栗の当らぬ栗がちと多し 高澤良一 素抱
茹で栗の当りばかりと言う訳には 高澤良一 素抱
茹栗の湯気に遊べる仏かな 原石鼎
茹栗や胡坐功者なちいさい子 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
茹栗や胡坐巧者なちひさい子 一茶
茹栗を食べて世帯の言葉かな 草間時彦
邂逅の不可思議栗を剥き対ふ 石塚友二 方寸虚実
鶫罠落栗拾ふことありぬ 中尾白雨 中尾白雨句集

栗 補遺

「河」いかになりゆくらむや栗を掌に 角川源義
あづまなる落栗色に出て固し 三橋敏雄
あなたなる美濃はいづこの栗林 山口誓子
あばきたる石室虚栗こぼれ 山口青邨
いがながら栗くれる人の誠哉 正岡子規 栗
いが栗に手のひら触れて月の前 加藤秋邨
いが栗のなぜみにくうは生れける 正岡子規 栗
いが栗のはぢける音やけふの月 正岡子規 今日の月
いが栗の中の二人といふ話 高野素十
いが栗をひきぞわづろふあれ鼠 正岡子規 栗
いが毬割れて笑みてすべりて落つ栗よ(丹波では栗の熟すことを笑むといふ)(丹波五句) 細見綾子
いのちの森栗をひろひぬ人遠く 山口青邨
いろいろな角出来てゆく栗をむく 深見けん二
おそろしく齢とつて栗林にゐよう 飯島晴子
おほどかにこそ栗林(りつりん)は栗こぼす 平畑静塔
お十夜の茹栗売に雨の粒 草間時彦 櫻山
かち栗に喉の乾きや山清水 正岡子規 清水
かち栗もごまめも君を祝ひけり 正岡子規 ごまめ
かへりみて母なし霜夜焼栗買ひ 能村登四郎
かへりみればひと日まちゐし栗の飯 森澄雄
くろかみを束ねておもし栗拾ひ 永田耕衣
このあたりまだ飯能市栗給ふ 清崎敏郎
さゝやかな鉱山あるや栗拾ひ 河東碧梧桐
せせらぎに戯るる陽や青マロン 林翔 和紙
たたなはる丹波の山に生りし栗か 村山故郷
ただ憩ふ芝なめらかに栗おつる 飯田蛇笏 春蘭
てのひらに柴栗妻がのこしけり 石田波郷
ねんごろに食みし栗なりこなるべし 相生垣瓜人 明治草
のぼりつめたる栗の木の夫をみる 飯田龍太
はちきれむばかりの栗ぞ好もしき 相生垣瓜人 明治草抄
ひし~と毬栗さしぬ施餓鬼棚 前田普羅 普羅句集
ひとつひとつ栗むいてやりし子は遠し 及川貞 榧の實
ひとの世やけぶり立てをる十夜栗 石田勝彦 百千
ひろふ栗あらばいづくの里までも 平畑静塔
ふたたびは来ることもなき栗の路 後藤夜半 翠黛
ほつほつと楽しみむくや栗の秋 杉田久女
みなし栗ふめばこころに古俳諧 富安風生
みなし栗丹波の露の溜るなり 阿波野青畝
みほとけの深大寺村栗を買ふ 及川貞 榧の實
もてなしに栗燒くとて妹がやけど哉 正岡子規 栗
もてなしやランプの下に栗むきて 星野立子
やまびこのひとりをさそふ栗拾ひ 飯田蛇笏 心像
わが座右にリイチの壺と栗まろぶ 水原秋櫻子 岩礁
オルガンの音はすこやか出落栗 石田勝彦 百千
ラグビーの栗色の脛を見て愉快 山口誓子
一と籠の栗を提げたる客招じ 後藤夜半 底紅
一段とよかりき大き栗食べて 相生垣瓜人 明治草
一茶生地ひらたき栗が栗色に 香西照雄 対話
丈六へ猿が拾ひしあとの栗 飴山實
三つにて腹よろこびぬ丹波栗 森澄雄
三つ栗の一つ残りて毬の中「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
三つ栗の満面の笑といふべけれ 山口青邨
三つ栗や最上川めぐらす虹の丘 角川源義
三つ食べて飽くべき栗を四つ食べし 相生垣瓜人 明治草
三年の毬のするどき栗の秋 鷹羽狩行
下野や風雨いよいよ栗林 鈴木真砂女 夕螢
丹波栗ころがり五十代の艶 鷹羽狩行
丹波栗双手で掴み掴みくれぬ 岸田稚魚 紅葉山
丹波栗笑みたる下の地主径 前田普羅 春寒浅間山
主病ム絲瓜ノ宿ヤ栗ノ飯 正岡子規 栗
人も居らず栗はねて猫を驚かす 正岡子規 栗
仰ぐ顔暗し青栗宙にある 西東三鬼
伊予の国栗煮ふくめの朝餉かな(松山にて) 細見綾子
休めたる包丁の刃を栗に当つ 山口誓子
俳諧の栗を拾はむ虚栗も 阿波野青畝
兄音読郭公裏の栗の木に山口青邨
光陰を継ぐぽつねんと虚栗 秋元不死男
八月の一粒栗の木や仰ぐ 石川桂郎 高蘆
八栗嶺の松原屋根の遍路みち 高浜年尾
円卓や栗飯に呼ぶ弟あり 河東碧梧桐
出羽青し柿・栗・林檎青ければ 鷹羽狩行
出落栗脱藩道即死出の道 松崎鉄之介
切株の上いが栗の二つ三つ 高野素十
初栗に山土の香もすこしほど 飯田蛇笏 春蘭
別れきて別れもたのし栗を食ふ 西東三鬼
別れきて栗焼く顔をほてらする 西東三鬼
勝ちさうになつて栗剥く暇かな 正岡子規 栗
勝ちさうになりて栗剥く暇哉 正岡子規 栗
勝ち栗も餅もそろふてあすの春 正岡子規 大晦日
医者がよひ毬ばかりなる栗を踏み 石川桂郎 四温
十六夜やはじめて実る庭の栗 村山故郷
半杓庵青栗の枝屋根にのせ 山口青邨
半盲のもつとも栗を剥きにくし 安住敦
厄男天津栗を咬みにけり 阿波野青畝
厚意受く栗の三面指で触れ 香西照雄 対話
口裂かるるまでは凡人青栗笑む 香西照雄 対話
古稀の兄朝とく起きて栗拾ふ 山口青邨
古稀の炉に栗飯の栗兄が剥く 山口青邨
嘘のやうな栗の林の静けさに 清崎敏郎
四万川に一樹の栗はこぼれけり 前田普羅 春寒浅間山
土明るくて放念の栗の毬 鷲谷七菜子 天鼓
坂を下りて左右に藪あり栗落つる 河東碧梧桐
坐ること覚えたる子が栗を食ふ 細見綾子
声変りして毬栗を剥くところ 佐藤鬼房
壺愛でて栗名月も近きころ 藤田湘子 神楽
夕立が来るよと教ふ栗の葉越し(丹波にて) 細見綾子
夜はいつもひとりの栗の皮を剥く 清崎敏郎
大年や栗ぜんざいの箸短か 鈴木真砂女
大木をなす青栗の下に墓 右城暮石 句集外 昭和二十四年
大栗をまんまと茹でて食うべけり 相生垣瓜人 負暄
大粒は天津栗よ豆を撒く 阿波野青畝
大風の落葉にまじり栗礫 福田蓼汀 山火
夫と食ぶ茹で栗夜汽車過ぎ行けり 細見綾子
女弟子あまた姉歯のみなし栗 角川源義
妹の声あるやうな栗の飯 細見綾子
妻なしに栗名月の残り栗 石田勝彦 百千
妻の役火中の栗をせせり出す 平畑静塔
姪婿が栗擔はせて參りたり 正岡子規 栗
娘がくれし母流の栗のふくませ煮 能村登四郎
婆羅門女天狗さびしき顔す栗ころげ 加藤秋邨
子が剥いて亀甲形の栗なりし 能村登四郎
子ども来ねば雀栗色雪に弾む 野澤節子 未明音
子に栗を剥くや数顆を膝のもと 山口誓子
子を抱くや青柿栗とふりかぶり 石川桂郎 含羞
子等起きよ栗山けふも上天気 福田蓼汀 山火
宍粟大湖青栗のある夕余色 赤尾兜子 玄玄
宣長の山の栗かな大きくて 雨滴集 星野麥丘人
家裏の栗落つ音の昔のまま(丹波五句) 細見綾子
小さなる栗乾しにけり山の宿 村上鬼城
小原女の通ひ路狭し栗のいが 正岡子規 栗
尼寺と呼ばれ栗めしむかごめし 阿波野青畝
尿前のしぐれ溜め在り実なし栗 阿波野青畝
山の日と八月青き栗のいが 長谷川素逝 暦日
山の栗こがね光りす昼寝覚め 飯田龍太
山の香のかすかにありて栗子餅 鷹羽狩行
山を見るならひに栗を落す声 岡井省二 鹿野
山中や何れか固き鼻と栗 永田耕衣
山家昼闌け埓もなう栗落つことよ 日野草城
山寺かさこそ栗を量るらしい音させて 種田山頭火 草木塔
山栗の毬の火達磨寒日和 飯田龍太
山栗の落つる後より露の降る松本たかし
山窪に拾はれぬまま双子栗 鷹羽狩行
山行の栗の種より雨あがる 石橋秀野
岩山に風ぶつかれり歯でむく栗 西東三鬼
川べりに暮れて通りぬ栗林 山口誓子
干し栗のいよいよちぢむ白峰村(白山山麓白峰村) 細見綾子
干栗のかたはらに人老いゆける 山口青邨
干栗をつかみ食うべる月夜の子 前田普羅 飛騨紬
年々の丹波の栗の汝あるため 大野林火 方円集 昭和五十三年
幹蹴れば 青年の日のいが栗 降る 伊丹三樹彦
幾月夜干栗甘くなるばかり 前田普羅 飛騨紬
庵の猫はや炉辺を恋ふ栗を焼く 富安風生
影ぼしがだまつて栗を焼いてゐる 安住敦
待つことは長し栗の実落つることも 山口青邨
念々に栗を剥きをる忌日かな 石田勝彦 秋興以後
怒る栗笑ふ栗皆落ちにけり 正岡子規 栗
怨もなし毬のまま着く盆の栗 赤尾兜子 玄玄
慎みて子規忌の栗や食むべかる 相生垣瓜人 負暄
憶良にも見られをるべし栗食むを 相生垣瓜人 負暄
我に逆ふ看護婦憎し栗拾てよ 杉田久女
我を信ぜず生栗を歯でむきながら 加藤秋邨
手の内に三つ溜めては栗拾 三橋敏雄
手盆番茶のあと 栗山へ誘いたがる 伊丹三樹彦
才槌頭いが栗あたま獺祭 岡井省二 鯨と犀
投栗がけふの足枷蝗とぶ 百合山羽公 寒雁
拾ひし栗入るゝ袋をぬひくれし(丹波五句) 細見綾子
拾ひたる日向の栗のあたゝかし 星野立子
拾ひ来し栗出すあちらこちらから 右城暮石 一芸
拾ひ来て畳に置きぬ丹波栗 前田普羅 普羅句集
掌中に栗の硬さの小気味よき 川端茅舎
掌中に汗ばむ栗の肌の艶ン 川端茅舎
掌中の栗とて汗を握り〆め 川端茅舎
握りもつ山栗ひとつ訣れ来し 橋本多佳子
搗栗のくちやくちやの皺毛の国の 森澄雄
摂津より奥の栗酒鬼貫忌 森澄雄
摩尼殿や舞台熱けれ栗ひらく 岡井省二 明野
支那栗を子に頒つなど命ありき 加藤秋邨
故郷の栗大小にいびつなる 細見綾子
新涼の垂枝となりぬ栗林 石田勝彦 雙杵
日々に栗程よく落ちぬ住み古りぬ 及川貞 榧の實
日輪に青栗の虫老いにけり 飯田蛇笏 春蘭
日輪に青栗の蟲老いにけり 飯田蛇笏 心像
旧盆の月なり栗の木をこえて 百合山羽公 故園
早生栗の粒葡萄より彫深し 百合山羽公 寒雁
昼餉の火たゝせゐて背戸栗拾ふ 及川貞 榧の實
晴雪やことさら影の栗林 石田勝彦 雙杵
朝にひろい夜は珠数にさす山の栗 古沢太穂 三十代
朝刊をとりて来し手に栗もてる 高屋窓秋
木曾人の手作る栗の菓子うまし 水原秋櫻子 蘆雁
木曾仔馬青栗のいが道に出て 森澄雄
未明覚め汝に栗飯を汝の忌なり 及川貞 夕焼
杉山のすつとひかげる栗の飯 石田勝彦 百千
杣山やたかみの栗に雲かかる 飯田蛇笏 山廬集
杣山や高みの栗に雲かゝる 飯田蛇笏 霊芝
林檎柿栗桃も実を入れ青信濃 森澄雄
枝つきの青栗で追ひ杣の恋 鷹羽狩行
柴栗を袂につゝむ小供かな 正岡子規 栗
柿・栗吾にもたらし食べよ食べよ 橋本多佳子
栗々々闇々々の馬肝色 岡井省二 大日
栗いろにこころをあはす上人たち 飯島晴子
栗うゑて淀の茶店や行々子 右城暮石 句集外 昭和十一年
栗がすんだ栗の林へつづき一すぢみち 中川一碧樓
栗が落ちる音を児と開いて居る夜 尾崎放哉 須磨寺時代
栗ぎんなんまろべばたのし京にゐて 石橋秀野
栗くぬぎ芽立ち霞めり背山垣 及川貞 榧の實
栗くれぬ否み難くて手にしたり 水原秋櫻子 霜林
栗ころげころげてこんなところまで 右城暮石 天水
栗さはに狩りけり草にすべりけり 岡井省二 山色
栗すでに実りて遠き空のいろ 飯田龍太
栗のいが鼠の穴をふさぎけり 正岡子規 栗
栗のかげ僅に妻の肩を抱く 石田波郷
栗の句を案じて吾等おし黙る 山口誓子
栗の句を案じゐるとき栗が爆ぜ 鷹羽狩行
栗の実のほかは丹波のこと知らず 鷹羽狩行
栗の木に早くも盗児隠見す 相生垣瓜人 明治草
栗の木の下の濯ぎ場夕暑し 廣瀬直人
栗の木の下行く峡の秋日澄む 村山故郷
栗の木の情と賜ひしひとの情 山口誓子
栗の木やふかく身心挾まれつ 飯島晴子
栗の本よむ栗園の雪真白 平畑静塔
栗の樹と背あはせやさるすへり 正岡子規 百日紅
栗の毬まだやはらかく人にあふ 山口青邨
栗の毬山なす道に出でにけり 前田普羅 飛騨紬
栗の毬焼くつもりして山と積む 右城暮石 散歩圏
栗の毬焼けるけぶりに鶲かな 岡井省二 鹿野
栗の毬籠の中へも日がはひる 細見綾子
栗の毬踏みしも旅の終りかな 加藤秋邨
栗の毬青くて山雨なだれけり 臼田亜浪 旅人 抄
栗の皮むきて残してゆきしかな 細見綾子
栗の皮むく小刀の鈍りたる 細見綾子
栗の皮むけば昔の夜長の影 細見綾子
栗の皮プチプチつぶす別れ来ぬ 西東三鬼
栗の皮剥きてこの世に順ひぬ 桂信子 草影
栗の秋「伊賀向きヤ九里」と言いならし 飴山實
栗の穂に夕月金の輪をひろげ 飯田龍太
栗の粒ほどの日月いきいきと 原裕 青垣
栗の肌黒本尊はてりたまふ 川端茅舎
栗の荷の重さ山家のこころなり 百合山羽公 樂土
栗の落つ音に目覚むと便りあり 細見綾子
栗の顔目鼻正しく現るゝ 川端茅舎
栗ばかり食みて夜なべをせざりけり 細見綾子
栗ひろふ聲か朝戸にかぜの音 及川貞 夕焼
栗みのるやうやく天も弓なりに 百合山羽公 寒雁
栗むいてかなしき話女たち 富安風生
栗むいて食べたる跡や猪の垣 細見綾子
栗むきぬ子亡く子遠く夫とふたり 及川貞 榧の實
栗むくがまつたく下手でひと代過ぐ 加藤秋邨
栗むくやたのしみ寝ねし子らの明日 杉田久女
栗むくや夜行にて発つ夫淋し 杉田久女
栗むくや泣寝の癖の額髪 石橋秀野
栗も食ひ栗名月も見たりけり 相生垣瓜人 負暄
栗も食べ松茸も食べありがたし 山口青邨
栗ゆでて旅の鞄の隅に入れ 細見綾子
栗よりもすでに茸の艶まさる 百合山羽公 故園
栗を剥くときの無口に身のぬくむ 野澤節子 未明音
栗を剥くときの神父の毛深き手 鷹羽狩行
栗を剥くわが家に口も手も増えし 鷹羽狩行
栗を剥く刃先いきいき妻の余生 上田五千石『琥珀』補遺
栗を剥く妻やわれ等が自祝の日 山口誓子
栗を剥く姉妹の許に帰りけり 松崎鉄之介
栗を拾ひともにはにかむ父同士 林翔 和紙
栗を掌に余し老婆の影祈る 古舘曹人 能登の蛙
栗を正橡を暫く譎(けつ)となす 相生垣瓜人 明治草
栗を焼き兵に老いちちははが睦ぶ 伊丹三樹彦
栗を焼く漢子容貌魁偉かな 日野草城
栗を踏み胸にひらめくもののなし 古舘曹人 能登の蛙
栗を踏む良寛いかに踏みにけん 阿波野青畝
栗卓上にぶち撒かれたる童話色 石塚友二 曠日
栗喰みて頬照ることも日本海(北陸線、親不知) 細見綾子
栗園の大樹そびえて風はらむ 平畑静塔
栗園の小雨歩いてくる畏友 飯島晴子
栗垂りて父母をまた今年見ず 森澄雄
栗実りつつある山の墓参道 飯田龍太
栗実りをりびしよ濡れの月夜にて 飯田龍太
栗実りをり病院のうしろにて 飯田龍太
栗実るころの夜気かな古襖 飯田龍太
栗実る下はこゝろのやすらぎて 山口誓子
栗干していまこそ山家ゆたかなれ 山口青邨
栗干して水仕つづくる水音す 森澄雄
栗干せば高き白雲母のごとし 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
栗引くやけふやや強き雁渡し 森澄雄
栗打つや近隣の空歪みたり 飯田龍太
栗拾ひたくても急ぎかへらねば 星野麥丘人 2002年
栗拾ひをれば嫂帰り来し(宮岡計次さん生家二句) 細見綾子
栗拾ひ降り出し強き山の雨 鷹羽狩行
栗拾ひ青毬噛ます乳母車 鷹羽狩行
栗拾ふ中腰は立ち直るもの 平畑静塔
栗拾ふ先へ先へと眼を遣りて 右城暮石 句集外 昭和五十六年
栗拾ふ城跡の炉のありしあと 鷹羽狩行
栗拾ふ大籠を持ち来りしよ(宮岡計次さん生家二句) 細見綾子
栗拾ふ天地に母の老い深し 原裕 青垣
栗拾ふ谷深村のどんづまり 上田五千石『森林』補遺
栗採りの少年種種の眼鼻立 山口誓子
栗林鋭声翼とともに去る 山口誓子
栗柿たべちらしランプ吊る親しき夜となり 荻原井泉水
栗焼いて渡世とす南大門の市 河東碧梧桐
栗焼く香家暗かりし夜を思ふ 飯田龍太
栗熟れて白壁雲の意のままに 飯田龍太
栗熱く老後夢みる夕日向 飯田龍太
栗燒いて經義爭ふ法師かな 正岡子規 栗
栗燒てしづかに話す夕哉 正岡子規 栗
栗甘くわれら土蜘蛛族の裔 津田清子
栗畑に日だまりのあり犬ふぐり(丹波) 細見綾子
栗笑ふ離家たのむや老一茶 角川源義
栗笑めど髪かえりみるいとまもたず 古沢太穂 古沢太穂句集
栗笑めりそこまでの地を未だ踏まず 石田波郷
栗綴る妹見ればあかき行燈かな 河東碧梧桐
栗羊羹走りの栗の螺鈿かな 百合山羽公 樂土以後
栗色は栗より橡の濃かりけり 相生垣瓜人 明治草
栗茹でてかばんの底にドイツ行 細見綾子
栗茹でて楽しからずや自祝翁 水原秋櫻子 殉教
栗落し秋葉天狗の里覗き 百合山羽公 樂土
栗落す男来女来われも行く 石田波郷
栗落ちて鼬の道の絶えてけり 正岡子規 栗
栗落つる庭広く犬小屋もあり 村山故郷
栗落つる藁屋根にトタン屋根足して 山口青邨
栗落とす女を見つつ湯浴みをり 石田波郷
栗買つてより刑場へ道絞る 古舘曹人 能登の蛙
栗青しすこし風邪気の少年に 飯田龍太
栗青し半裸少女と鏡空 平畑静塔
栗青し雨やりすごす乗馬隊 大野林火 雪華 昭和三十三年
栗青し雲にもありて旅ごころ 鷹羽狩行
栗食ひてよごす四十の膝がしら 藤田湘子 途上
栗食ふと膝入るるなり古机 石田波郷
栗食べて栗名月も無月なる 草間時彦
栗食みて丹波の話少しして 細見綾子
栗食むや若く哀しき背を曲げて 石田波郷
栗飯と粢(しとぎ)綺羅なす秋の風 角川源義
栗飯にする栗剥いてをりしかな 安住敦
栗飯に突きさす杓文字厳島 阿波野青畝
栗飯のおむすび老の虫おさヘ 後藤夜半 底紅
栗飯のふつくら炊けて祝ぎごころ 能村登四郎
栗飯のまつたき栗にめぐりあふ 日野草城
栗飯のもりあがる黄をほぐし食ふ 大野林火 月魄集 昭和五十四年
栗飯の月見は淋し秋の暮 正岡子規 秋の暮
栗飯の給仕して居る娘哉 正岡子規 栗
栗飯の釜吹きこぼし禍福なし 鈴木真砂女 夏帯
栗飯も末の山住み十三夜 松村蒼石 寒鶯抄
栗飯やほの~として塩加減 日野草城
栗飯や不動參りの大工連 正岡子規 栗
栗飯や人の吉凶入りみだれ 日野草城
栗飯や寮生卓に目白押 日野草城
栗飯や晴のこころのつづきをり 森澄雄
栗飯や目黒の茶屋の發句會 正岡子規 栗
栗飯や箸立に妻の箸ふえて 能村登四郎
栗飯を子が食ひ散らす散らさせよ 石川桂郎 含羞
栗飯を昼に炊いたる菊節供 森澄雄
栗飯を炊かんとぬれし掌を垂れて 下村槐太 天涯
栗飯を炊けばこころは満ち足らふ 山口誓子
栗飯ノ四椀ト書キシ日記カナ 正岡子規 栗
栗飯ヤ病人ナガラ大食ヒ 正岡子規 栗
棘で立つ青栗母は気兼ばかり 香西照雄 対話
森番のごと笑栗(ゑみぐり)の幹たたく 佐藤鬼房
楢栗の幹にあかあか秋日射 山口青邨
樹にありて栗の翁でおし通す 古舘曹人 能登の蛙
歌人の背戸の初栗とてもらふ 山口青邨
此庭や芝こまやかに栗干しぬ 河東碧梧桐
死の見ゆる日や山中に栗おとす 秋元不死男
母が煮る栗あまかりし十三夜 能村登四郎
母達や数珠繰るごとく栗を選る 平畑静塔
毬ながら栗くれる人のまことかな 正岡子規 栗
毬のまま栗を銀座で売りてゐし 細見綾子
毬の栗もらふ眼を強らせ 鷹羽狩行
毬を出し栗や蛻けし物の如 相生垣瓜人 負暄
毬寄せし上にも栗の落ちてゐし 右城暮石 天水
毬栗のはぜかかりゐる八重葎 飯田蛇笏 春蘭
毬栗の檜皮にかゝる社かな 河東碧梧桐
毬栗の浮き足立てる地面かな 上野泰 佐介
毬栗の頑なしきが笑みこだる 相生垣瓜人 負暄
毬栗の餓鬼大将もゐたりけり 平井照敏 天上大風
毬栗や翁とがめし関のあと 百合山羽公 樂土以後
毬栗蹴つて瞬の童心了りけり 林翔
毬若き栗奔流も雨の前後 古沢太穂 捲かるる鴎
沖縄へ旅初ものの栗ゆでて 細見綾子
浄瑠璃寺へ栗の青毬ここだ踏む 伊丹三樹彦
海鳴を聴く父栗を食む子供 相生垣瓜人 微茫集
火中の栗丹波恋ひしと爆づるかな 村山故郷
烏には栗の毬食ふ日のありし 相生垣瓜人 明治草抄
焦げるその寸前に炊けし栗の飯 能村登四郎
焼栗の一袋買ふ谷汲寺(美濃国、谷汲寺) 細見綾子
焼栗売る寡黙 羽根団扇は使い 伊丹三樹彦
燈心を掻きたててなほ栗暗し 加藤秋邨
燒栗のはねかけて行く先手哉 正岡子規 栗
燒栗のはねて驚く一人かな 正岡子規 栗
燒栗や妻なき宿の角力取 正岡子規 相撲取
父を恋う青栗たたく石の橋 飴山實 おりいぶ
片栗をかたかごといふ今もいふ 高野素十
牧原の隅通ひ路や栗拾ひ 河東碧梧桐
独り居て淋しく栗をむく日かな 杉田久女
生栗の上の干栗一と莚 前田普羅 飛騨紬
男体はいま颱風の真青栗 加藤秋邨
病む我に兄姉親し栗をむく 杉田久女
病む父へ青栗一枝盗み来しよ 石川桂郎 含羞
病子規の栗飯の記や密ならず 相生垣瓜人 明治草
百年の巨き栗の木栗落す 山口青邨
盆に分けて栗は少し芋と豆 正岡子規 月見
盆に分けて栗は少し豆と芋 正岡子規 栗
盆栗やそこらに山椒魚のをる 岡井省二 鯛の鯛
盆栗を拾ふ飯籠いつぱいに(丹波) 細見綾子
目交に懸かるものなく栗食めり 相生垣瓜人 明治草抄
相続に栗の毬散る地も混へ 松崎鉄之介
眞心の蟲喰ひ栗をもらひたり 正岡子規 栗
眞心ノ虫喰ヒ栗ヲモラヒケリ 正岡子規 栗
眼二つの青栗山の木隠れ人 金子兜太
石だたみ崩えて青栗一つ落つ 林翔 和紙
石仏と笑いころげる栗の風 橋閒石 荒栲
砂かけて埋めし山栗掘り出せり 細見綾子
碑に栗の青毬青き影 山口青邨 山口青邨
神将睡し斎の栗飯飽食し 安住敦
秋はかたはらにゐて栗などを剥きやれよ 安住敦
秋晴や栗むきくれる兄と姉 杉田久女
秩父路に蒟蒻を買ひ栗を買ひ 鈴木真砂女 都鳥
稀の栗愛でたし常の藷親し 相生垣瓜人 明治草
稚児ねむり握りゆるみし栗一顆 能村登四郎
空ふかく栗生れ出づ玉のごと 角川源義
竹の山から日のひかり栗林 岡井省二 鹿野
笑み落つるとは栗のこといとしさよ 山口青邨
笑栗の三つぞろひなるわれに落ちよ 山口青邨
笑栗やむかしの顔の一つづつ 石田勝彦 百千
等身ヌード写真栗売が背に 石川桂郎 高蘆
素朴にもなりけり栗を食うべつつ 相生垣瓜人 負暄
終電車手に青栗の君を帰し 平畑静塔
結願の顎なりける栗ごはん 岡井省二 大日
羅漢の肩 打って 転げて 落栗は 伊丹三樹彦
羊羹が容れけり栗が容れられき 相生垣瓜人 負暄
羊羹や金象嵌の栗ふたつ 日野草城
美少女の双手にあまる山の栗 飯田龍太
老の坂越ゆれば丹波栗青し 角川源義
老猿の忌日を栗の落ちにけり 正岡子規 栗
考ふる頭上青栗たわわなる 松崎鉄之介
耘平の虫喰ひ栗が夜泣きせり 星野麥丘人
聲はげむ夜學ききつゝ栗をむく 及川貞 夕焼
臍の緒の土へ柴栗ひとしきり 鷲谷七菜子 天鼓
自から泉への道栗拾ふ 平畑静塔。
良夜明け地にまろぶ栗の毬青し 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
良寛の歌のやうなり栗の径 阿波野青畝
芋のあとに栗を蒸すべき指圖哉 正岡子規 栗
茄栗うまいうまい流産した顔を見せとる 中川一碧樓
茹で栗のうすら甘さよこれの世の 細見綾子 虹立つ
茹栗を食べて世帯の言葉かな 草間時彦 櫻山
落ちきたる青栗イワン・カラマゾフ 平井照敏 猫町
落ちてすぐ露まみれなる栗拾ふ 及川貞 榧の實
落つるはずなき毬栗をうち仰ぎ 石田勝彦 秋興以後
落とすと拾う栗音立てておとす 荻原井泉水
落栗に膝ついて居る關所かな 正岡子規 栗
落栗の向け合ふ尻の白さかな 石田勝彦 秋興
落栗の水を跨げば猪の柵 石田勝彦 雙杵
落栗を拾ひ茸を採らまくす 河東碧梧桐
蓬莱のかち栗かぢる七日哉 正岡子規 蓬莱
虚栗ひろひて関のかたみとす 山口青邨
虚栗ペン皿にあり年暮るる 山口青邨
虚栗拾ひて神に詣でざる 上田五千石『琥珀』補遺
虫喰ひが多いけれどと丹波栗 細見綾子
蛇の首栗園の秋拝むなり 平畑静塔
蝉殼も共に落ち来し栗拾ひ(丹波五句) 細見綾子
街に似顔絵師焼栗売も四つ辻に 山口青邨
衝立や栗飯の香を隣なす 石川桂郎 高蘆
裏山に栗は笑みたり君が居は 山口青邨
裸灯に額てかてか マロン売る 伊丹三樹彦
西安のみやこで食ふや丹波栗 細見綾子
誕生日の夫茹で栗を食べ飽きず 細見綾子
貂の目をして浜栗を嗅ぎゐたり 佐藤鬼房
負目あり又噛みあてし虚栗 岸田稚魚 負け犬
近づきて栗剥く妻をやや目守る 山口誓子
近道やいが栗落て足をさす 正岡子規 栗
通ひぢに立ついが栗の青は何 渡邊白泉
道端に栗賣竝ぶ祭かな 正岡子規 栗
道詮忌栗色の濃き栗供ふ 右城暮石 虻峠
遺父母には甘すぎる湯気栗の飯 香西照雄 素心
邂逅の不可思議栗を剥き対ふ 石塚友二 方寸虚実
還暦の翁と言はれ栗もらふ 山口青邨
都より疲れもどりて栗を焼く 水原秋櫻子 玄魚
銀髪やみづから栗の籠を負ひ 平畑静塔
長安のみやこで食ぶや丹波栗 細見綾子 虹立つ
阿蘇栗や机に置けば雲うごく 加藤秋邨
陵守に机一基と栗一と枝 松村蒼石 雁
雜談の間に栗の燒けるべく 正岡子規 栗
雨くらきわびしさに栗茹でてをり 水原秋櫻子 餘生
雨の日や泥に突きさす栗のいが 正岡子規 栗
雨はげし青栗いよよ青くして 石田波郷
雨ふる栗負うて来て雑魚に代へて 種田山頭火 草木塔
霄闇の貰ひし栗のまた黒し 百合山羽公 樂土
霜にのこる毬栗と見て小さゝよ 右城暮石 句集外 昭和十一年
青栗が落ちているなり親指冷ゆ 金子兜太
青栗に四方の山雲照りきそふ 相馬遷子 山国
青栗に尾長の声は帯のごとし 飯田龍太
青栗に暑き疾風の過ぎしのみ 飯田龍太
青栗に纒ふ恥あり強く見る 石塚友二 方寸虚実
青栗に風起れかし車椅子 石田波郷
青栗のいとけなきもの声にせず 森澄雄
青栗のうしろの空の甲武信嶽 飯田龍太
青栗のとげあるを持つ淑女にて 山口誓子
青栗のまづ見え山雨去りにけり 鷲谷七菜子 游影
青栗のまなこはめたる晩夏かな 平井照敏 猫町
青栗の下を轍の躍りゆく 廣瀬直人
青栗の刻一刻にゆふまぎる山口誓子
青栗の千曲の時計鐘打てり 飴山實 おりいぶ
青栗の同じ形は見飽きたり 佐藤鬼房
青栗の天歓喜して夜に入る 飯田龍太
青栗の姿ととのふ虹の中 飯田龍太
青栗の幹に頭を寄せ馬の陣 中村草田男
青栗の月の褪せたる枝低き 飯田蛇笏
青栗の朝夕となくうるほへり 飯田蛇笏 春蘭
青栗の棘やはらかに妻来る日 石田波郷
青栗の棘豊かなる婚後かな 飯島晴子
青栗の毬をしづめて水膨る 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
青栗の矮き木立が湖かくす 木村蕪城 寒泉
青栗の稚なさ毛虫丸まりて 香西照雄 素心
青栗の雨うつうつと猪の柵 石田勝彦 雙杵
青栗も入れし栗の荷獺祭忌 飴山實 句集外
青栗も屋根も道より見下ろせり 右城暮石 句集外 昭和六十年
青栗やもう働かぬ水車 森澄雄
青栗や天炎け地炎け風に太り 松崎鉄之介
青栗や山雨なごりの雲の屑 上田五千石『琥珀』補遺
青栗や潔めてありし外厠 能村登四郎
青栗や濃くなるのみのいくさ傷 佐藤鬼房
青栗や翠微しばらく虹の雨 飯田蛇笏 心像
青栗や若さのもどる呼び言葉 能村登四郎
青栗や鍛冶屋に隣る厩あり 中村草田男
青栗や雨音得つつお供水 岡井省二 明野
青栗を踏まへて尼の庵とあり 石橋秀野
青栗大樹なぞへの影みな団々と 中村草田男
青栗散らばる一路ひたすら朝の径 金子兜太
青栗殖ゆ街の子の眼のとどくところ 伊丹三樹彦
青毬栗落ちて不動の姿持つ 林翔
青淵の嵐や落つる栗多し 水原秋櫻子 旅愁
顔かくし栗焼く何の賤さなどなきも 赤尾兜子 歳華集
願はくば木綿縞なる栗袋(丹波五句) 細見綾子
風の子は山かけめぐる風の栗 臼田亜浪 旅人 抄
風の青栗頷くさまに拒むさまに 石田波郷
風雨なり栗盗む児も来ざるべし 相生垣瓜人 明治草
飯赤く栗黄にあるじすこやか也 正岡子規 栗
馬の栗マルクス像も顔ひしやげ 加藤秋邨
駅雑沓どこかで栗のはなさける 石橋秀野
鬼が棲みし山の珍なる丹波栗 村山故郷
鰯雲いが栗の束手に荒き 渡邊水巴 富士
鳴く虫をあらはに見つつ栗拾ふ 水原秋櫻子 重陽
鴬のこゑはるかより虚栗 飯田龍太
鵙空に三つ栗生まる母子家族 角川源義
黒染にいが栗つかむ松か岡 正岡子規 栗
黒牛のねまれる土に栗落つる(故郷の丹波青垣町にて) 細見綾子

栗 続補遺

いが栗に心も似るか山法師 凉菟
いが栗のまだ喰しばるあつさ哉 露川
いが栗の口あいて待はやし哉 此筋
いが栗やひとりはぢけて出るまで 諷竹
いが栗や落る合点に突て迯 苔蘇
いとし子の栗の刺ぬく火かげかな 東皐
つれなさよはや捨られし栗のいが 壺中
へなたりやかつぎあげしは水の栗 其角
わんごりと口をひらかす栗のいが 朱拙
三ッ栗に中の七日をおもふ夜ぞ 加藤曉台
三栗のうはなり打や角被 其角
両方へ手ひらく栗の別れ哉 浪化
二子山二子ひろはん栗のから 其角
凩よ世に拾はれぬみなし栗 其角
刈あとの柴にもゑむや山の栗 鈴木道彦
刺に世を遁てしるや栗の肌 洒堂
十月や水田の中の栗のいが 釣壺
古寺やねざめに栗の落るをと 馬場存義
名月や琴柱にさはる栗の皮 園女
小柑子栗やひろはむまつのかど 舟泉
心から栗に味ある節句かな 鬼貫
手を握る児や月見の小柴栗 半残
搗栗や餅にやはらぐそのしめり 沾圃
文も見じ鬼住む跡の栗のいが 素堂
料足に栗まいらする忌日哉 黒柳召波
日蝕の日に喰入や栗の虫 李由
月みるや芋に喩る栗の味 荷兮
月代に驚破や栗とる藪の音 土芳
栗に飽て蘭につく鼠とらへけり 黒柳召波
栗のから藻の中のハゼかぞへつべし ト尺
栗の日や椎ももみぢものりこへつ 小西来山
栗の葉のいくつに立て秋が来る 朱拙
栗ひとつ握りて丸き子の手哉 五明
栗売の玄関へかゝる閑居かな 其角
栗拾ふ子供も散ぬ庵の月 句空
栗持ておもひをのぶる木の目かな 李東
栗柿に日はほつこりと雪の窓 朱拙
栗石に心なしとや道の霜 荊口
栗飯やよろこぼひたる祖母が皃 三宅嘯山
樽虫の身を栗に啼こよひかな 其角
機(はた)じねを網にしたりや栗袋 鬼貫
毬栗に踏あやまちそ老の坂 黒柳召波
毬栗に関見返るや上路山 凉菟
毬栗の笑ふも淋し秋の山 李由
毬栗の簑にとゞまるあらしかな 加舎白雄
毬栗や手に棒たる虫の 嵐雪
焼栗といろりへくばるうつの山 仙化
焼栗も客も飛行夜寒かな 丈草
生栗を握りつめたる山路哉 其角
禅門や栗の木なぐる竿の音 木因
福僧や小山が末の栗ばやし 三宅嘯山
綿取に誰か物いふ栗の中 野坡
芝栗のやせを見せたり衣がへ 野径
荻伏て栗の軒うつ寝覚哉 万子
菴の夜やたま~焼もしひな栗 寥松
落てある栗もひろはず山の庵 卓池
落栗に思ひがけなき菌哉 桃隣
落栗に甲は着たり檜木笠 小春
落栗も共にこけてやさるのこゑ 桃妖
落栗や兎のあそぶところなし 夏目成美
落栗や墓に経よむ僧の前 黒柳召波
落栗や守宮の栖家あらさるゝ 鈴木道彦
落栗や小僧先だつ猿の声 桃妖
落栗や翌の命も山の奥 松岡青蘿
落栗や谷にながるゝ蟹の甲 祐甫
豆栗と月の古風や実まこと 凉菟
迯栗に客追栗やけふの月 凉菟
達磨忌や焼栗はねて無東西 蘭径 新類題発句集
関守のこゝろゆるすや栗かます 其角
霊棚の栗にさきだついの字哉 嵐雪
鴈音やつかむ水田の栗のいが 釣壺

以上

by 575fudemakase | 2017-06-26 09:40 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

田村草 の俳句

田村草

タムラ草咲くペンシヨンに人の声 佐野たけ子
堰落つる水の光りて田村草 吉岡桂六
黄鳥の音や雪の戸の玉箒 松岡青蘿
花の名をそこそこ覚え田村草 高澤良一 ももすずめ
山に来て穂田を見下ろす田村草 森 澄雄
山の気を集めて咲けり田村草 満田玲子
拾得の几巾にからむや玉箒 其角
田村草触れて棘なきこと確か 稲畑汀子
田村草風は二手に岐れゆく 高澤良一 燕音
田村草兵火に耐へし堂ひとつ 大島民郎
睫まで雲下りてくる田村草 満田春日

by 575fudemakase | 2017-06-09 18:22 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

茜草 の俳句

茜草 

茜草あかねを染めて花は黄に 野沢 純
茜草妓女の便りを読みかへす 野沢純
茜草祇王は何にすがりけむ 泉春花
雨冷えの白花をつづり茜草 高槻弘文
足濯ぎ野川にごしぬ茜草 金田きみ子
蔓引けば花の応へて茜草 福永耕二


by 575fudemakase | 2017-06-09 18:20 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

藤豆 の俳句

藤豆 

たくましく藤豆育つ暑さかな 白水郎句集 大場白水郎
一坪の畑藤豆食べきれず 宮居寿子
山國の空や藤豆生り下り 青木綾子
藤豆にをりをり風の来て揺れて 桝本 澄子
藤豆に手ふれて固き秋暑し 滝井孝作
藤豆に少しく柔毛ありにけり 山田みづえ
藤豆に少し柔毛ありにけり 山田みづえ
藤豆のはや乾らび音となつてをり 西川みさを
藤豆のひらひら実る垣根かな 滝 佳子
藤豆の咲きのぼりゆく煙出し 高野素十
藤豆の垂れたるノの字ノの字かな
藤豆の垂れて小暗き廊下かな 高浜虚子
藤豆は手のとどかざるなほ上に 杉山岳陽
藤豆は手の届かざるなほ上に 杉山岳陽
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話

藤豆 補遺

万緑に藤豆の垂れわたりたる 阿波野青畝
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
藤豆の咲きのぼりゆく煙出し 高野素十


by 575fudemakase | 2017-06-09 18:18 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

鬱金の花 の俳句

鬱金の花 

うこんの花ガラス器に活けみんな透明 福富健男
臥してなお鬱金の花のおとろえず 浜芳女
時雨馳せうこんの花のさかりなる 大野林火
尊厳といふ死に際や鬱金咲く 佐野鬼人
日照雨過ぎ鬱金の花の良く匂ふ 須賀遊子 『保津川』
野の道は曲りつ鬱金の花ざかり 中田ゆき
薬園の鬱金の花の夜も匂ふ 寺田木公

鬱金の花 補遺

蝶つるめ鬱金の花の日の中に 燕雀 星野麥丘人
時雨馳せうこんの花のさかりなる 大野林火 冬雁 昭和二十二年

by 575fudemakase | 2017-06-09 18:17 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

煙草の花 の俳句

煙草の花 

ことあらば本家に集ひ花煙草 吉川智子
ひろびろと旅明けわたる花煙草 山田みづえ
わが旅路たばこの花に潮ぐもり 阿波野青畝
雨雲は山離れゆく花煙草 永方裕子
煙草のない日 煙草の花さき澄み 吉岡禅寺洞
煙草の花改札口に子供の瞳 桜井博道 海上
煙草咲くや乳房誇りて佐久の牛 才記翔子
遠国の人のなりして花煙草 一ノ瀬タカ子
花たばこやさしき空の見えはじむ 中嶋秀子
花たばこ空に明日あり便りまつ 角川源義
花たばこ噴煙厚き峡の空 白澤良子
花煙草いかにも隠れ住む部落 鍵和田[ゆう]子 未来図
花煙草ここらも法の山畑 柴原保佳
花煙草しんしんと遠き山ありぬ 橋本政徳
花煙草どこか幼き浅間山 二反田秋弓
花煙草ひとすぢの道島を貫き 正木ゆう子 静かな水
花煙草安達太良山に雲湧けり 井水貞子
花煙草一身隠し摘みすすむ 田中隆子
花煙草浦々に散るミサ帰り 古賀寿代
花煙草最上濁流かがやけり 堀口星眠
花煙草昨日のバス道高みに現れ 平井さち子 完流
花煙草死亡の友と見しシネマ 攝津幸彦 鹿々集
花煙草十分に葉の大きかり 高澤良一 ぱらりとせ
花煙草盛りの淡し農婦病む 馬場移公子
花煙草摘むにやゝ酔ひ山の畑 西村数
花煙草土臭き雨通りけり 宮岡計次
花煙草那須の山々つらなれり 岡安迷子
花煙草北空はなし阿夫利嶺立つ 岩田昌寿 地の塩
海青き島の傾斜や花煙草 池田俊男
乾きたる道の続くや花煙草 副島いみ子
棄てらるる身をうす紅に花たばこ 渡辺恭子
畦道のつゞくかぎりは花煙草 小野 鶴子
見えて来し開拓村や花たばこ 室生礪川
玄海の風に開けり花煙草 龍頭美紀子
口能登や煙草の花のけぶりつゝ 沼田義明
行けどゆけど吉備の山みち花煙草 松尾いはほ
砂丘畑煙草の花を掻きゐたり 野村多賀子
咲いてすぐ煙草の花の摘まれけり 幸 数限
山の子の遊び暮れたり花たばこ 小田切輝雄
残照の壱岐はるかなり花煙草 山崎冨美子
七谷の花たばこ人恋ふる色 角川源義
小さき駅煙草の花にかくれゐる 田中冬二 冬霞
小田急で逃げたし秦野花たばこ 千田稲人
焼跡の煙草の花を隠すなし 石田波郷
水惜しむ兵を睡らせ煙草の花 片山桃史 北方兵團
精悍のさまに川痩せ花煙草 佐藤鬼房
青空の煙草の花に濁り来し 川崎展宏
田舎医師の父のあけくれ煙草の花 石井哲夫
南無遍照土佐はろかなり花煙草 羽田岳水
日田越えの峠の小村花たばこ 吉田南窓子
能登青し煙草の花に通り雨 細川加賀 生身魂
棉つみや煙草の花の見て休む 蕪村
夕づきて遠野に淡し花煙草 竹澤英子
雹受けし葉のずた~や花煙草 瀬野直堂

煙草の花 補遺

塘尽きるところ煙草の花あやに<漢陽張公堤> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
精悍のさまに川痩せ花煙草 佐藤鬼房
焼跡の煙草の花を隠すなし 石田波郷
関越えの西かつと照り花煙草 佐藤鬼房
花煙草わたつみの風ゆたかなり 村山故郷
花たばこ遠き赤城を傘に入る 角川源義
遠野路やけぶるごとくに花煙草 鷹羽狩行
わが旅路たばこの花に潮ぐもり 阿波野青畝

by 575fudemakase | 2017-06-09 18:15 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

懸煙草 の俳句

懸煙草 

あら壁やこほろぎ老いて懸烟草 懸煙草こほろぎ<虫+車> 正岡子規
こつ~と鎌の当りて煙草刈る 松藤夏山 夏山句集
ずつしりと縄のしなひて懸煙草 深見けんニ
一湾に暮色ただよふ懸煙草 渡会昌広
雨ながら西の明るし懸煙草 東條和子
雨降らぬ夜は火山灰降りぬ懸煙草 塚原岬
雲の上に溶岩のぞく懸煙草 熊丸淑子
煙草干す*うだつをあげて山枯らす 吉田紫乃
煙草干す家も見えけり蕎麥の花 蕎麥の花 正岡子規
煙草干す寺の座敷に旅寝かな 几董
家ぢゆうに懸煙草して嫁若し 森田峠
家中の跣足ばたらき懸煙草 中田みづほ
海鳴りのふるさと今も煙草干す 長島八千代
掛煙草華やかの梁となりにけり 西山泊雲 泊雲句集
掛煙草日にけに匂ひ夜も匂ふ 金子伊昔紅
干し煙草峡の夕日は家貫く 桜井博道
汽笛知らぬ山の子の村煙草干す 清水清山
金蜂のただよひ焦がす掛煙草 角川源義
懸け煙草くぐりて優し能登ことば 加倉井秋を
懸け煙草黄ばみてやさし飛弾言葉 加倉井秋を 『真名井』
懸煙草いたはり居れり露さむく 田中冬二 行人
懸煙草して風通しよき二階 中村芳子
懸煙草めぐらし妻の生家なり 坂田羔風
懸煙草ランプの笠とすれすれに 田中冬二 行人
懸煙草音なき雨となりにけり 石橋秀野
懸煙草曲り屋いよよくらくなる 仲村美智子
懸煙草四、五戸にはしる山の水 勝又木風雨
懸煙草小屋の高窓ふさぎけり 遠藤孝作
懸煙草納屋と母屋をつなぎをり 堤 京子
古軒や錣威に掛煙草 富安風生
孤つ家のわびしをとめが懸け煙草 及川貞
故人住みて煙草懸けたる小家かな 高浜虚子
荒壁に煙草干したる山家かな 水落露石
国道の伸び来つつあり懸煙草 富岡掬池路
佐久平眼下に展け懸煙草 木内はるえ
仕上りし色に連なり懸煙草 入村玲子
子供等の空地とられて懸煙草 山口青邨
柴垣に煙草干しけり鶏頭花 寺田寅彦
青々と煙草懸けたり納屋の前 松藤夏山 夏山句集
早池峰の笠雲厚し煙草干す 中村翠湖
巣につかぬ鶏けたゝまし懸煙草 石橋秀野
窓といふ窓に目貼し懸煙草 村山 志水
達谷の窟を過ぎて懸煙草 八木林之介 青霞集
達谷の窟人出て煙草干す 山口青邨
巽明りのして懸煙草あがり亜ぐ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
朝顔や煙草干場の片隅に 田中冬二 俳句拾遺
風の庭に雀播かれし懸煙草 柴田白葉女
門先は耶馬のたぎつせ懸煙草 田村木国
噎ぶ香の懸煙草より離れけり 八木林之介 青霞集
莨干す壁に西日のよわりかな 煙草干す 正岡子規
蜑の家に煙草懸けたり波くづる 久保 乙秋

懸煙草 補遺

あら壁やこほろぎ老いて懸烟草 正岡子規 懸煙草こほろぎ<虫+車>
この辺の軒端々々の懸煙草 清崎敏郎
煙草干す家も見えけり蕎麥の花 正岡子規 蕎麥の花
金蜂のただよひ焦がす掛煙草 角川源義
懸煙草音なき雨となりにけり 石橋秀野
懸煙草山姥のこのをとめさび 森澄雄
子供等の空地とられて懸莨 山口青邨
巣につかぬ鶏けたゝまし懸煙草 石橋秀野
窓高き梁の日影や掛煙草 河東碧梧桐
太陽の見通し深し懸煙草 平畑静塔
達谷の窟人出て煙草干す 山口青邨
納屋並び大牛小牛懸煙草 星野立子
婆ら守る地干し煙草は陽が皺む 古沢太穂 火雲
百姓の操の葉にて懸煙草 百合山羽公 樂土
霧ながれゐるをかまはず煙草干す 阿波野青畝
莨干す那須野ケ原の一軒家 山口青邨
莨干す壁に西日のよわりかな 正岡子規 煙草干す



by 575fudemakase | 2017-06-09 18:12 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

不知火 の俳句

不知火 

わだつみに燃ゆる不知火見んと旅 藤 小葩
わだつみの神戯るゝ不知火か 阿部小壺
家裏は不知火の海絵灯籠 松田雄姿
胸までも炎ゆる不知火重かりき 河野多希女
銀河よりこぼれ不知火となりて燃ゆ 阿部小壷
五月雨や龍燈あぐる番太郎 松尾芭蕉
最終便沖に不知火点けてくる 津村光枝
生国は不知火の果てほうき売 中村久江
船まつや不知火の海蝗とび 橋本多佳子
息つまる不知火の闇濃し 加藤三七子
大朱欒落ちて不知火海見ゆる 宮部鱒太
冬萌も赤し不知火の国なれば 福田蓼汀
不知火が芒に映る晦日かな 鬼将
不知火でないかもしれぬ眠たくて 正木ゆう子 悠
不知火にムー大陸の横たわる 五島高資
不知火に酔余の盞を擲たん 日野草城
不知火のいつしか胸の火に移る 柴野みちゑ
不知火のしらけて寒き夜明かな 不知火 正岡子規
不知火のその海底のあねおとと 黒田杏子 花下草上
不知火のをみな寂かに名告りけり 黒田杏子
不知火の闇に鬼棲む匂ひあり 松本陽平
不知火の闇の海原船もなし 不知火 正岡子規
不知火の沖に虹立つ初湯かな 東 妙子
不知火の火の言霊の舞へりけり 黒田杏子 花下草上
不知火の海あり古き廓あり 八尾修
不知火の海の曇る日枇杷熟るゝ 坂井白路(ホトトギス)
不知火の海の不知火恋ひて寝ず 前田野生子
不知火の海をわたりし旅五日 新山 武子
不知火の見えぬ芒にうづくまり 杉田久女
不知火の現れしか医師逝かれたる 坊城 中子
不知火の語り部として禰宜老いぬ 柴田田鶴江
不知火の消えし遥かに向くこゝろ 沖双葉
不知火の消えて一会の思ひかな 田代朝子
不知火の退く如く失せにける 江崎潮春
不知火の燃えてさびるる旅籠かな 本郷昭雄
不知火の燃ゆらむ有明海眠れず 村瀬さつき
不知火の波の荒崎鶴わたる 桂樟蹊子
不知火の浜の風紋わが秋思 鍵和田[ゆう]子 未来図
不知火の夜を繚乱と炎えつづく 牧野麦刃
不知火はころがり*えいの大游泳 下田明子
不知火はわだつみ遠く燃ゆるもの 森土秋
不知火は海渡りゆく仏かな 竹内悦子
不知火へ駆けおりてゆくまなむすめ 夏石番矢
不知火もまた狐火も語り継ぐ 後藤比奈夫
不知火やそことも分かす鳴く狐 不知火 正岡子規
不知火や闇の三十日の底明り 不知火 正岡子規
不知火や鏡に裸身あづけたる 各務耐子
不知火や黒糸威の大鎧 佐藤史奈
不知火や山人に海恐ろしく 岩田美蜻
不知火や指す方にまた飛火生れ 岡部六弥太
不知火や死に絶えてのち生き絶える 黒田杏子
不知火や女に通ふ浪間舟 野間喜舟
不知火や消えては遠く飛火生み 岡部六弥太
不知火や石牟礼道子明滅す 黒田杏子 花下草上
不知火や存在感のある人に 堀口ハル子
不知火や中年に華あるごとく 首藤基澄
不知火や櫨臍のきしむ父の海 中村石秋
不知火や名さへ残さず一揆人 高田自然
不知火や嵐はれ行く海の果 不知火 正岡子規
不知火や櫓臍のきしむ父の海 中村石秋
不知火よことば惜しめば横走る 神田斐文
不知火を闇路にもとす嵐哉 不知火 正岡子規
不知火を見てなほくらき方へゆく 伊藤通明
不知火を見てなほ暗き方へゆく 伊藤通明
不知火を見てよりどつと船の酔ひ 檜 紀代
不知火を見るべく旅のひとりなる 吉武玲子
不知火を見る丑三つの露を踏み 野見山朱鳥
不知火を見る丑三の露を踏み 野見山朱鳥
不知火を故郷に持てり枇杷をむく 栗木麦生
不知火を想ふ研師の暇かな 藤田湘子
不知火を待つ銀漢の鮮かに 渡辺安山
不知火を待てり草木の寝る刻を 松岡豊子
不知火海の入日へ鶴の啼きやまず 阿波岐 滋
平家琵琶目に不知火も燃えるころ 高部雅堂
稻妻の消て不知火かすか也 稲妻 正岡子規
艪は父か不知火の海遠ざかり 伊藤希眸

不知火 補遺

稻妻の消て不知火かすか也 正岡子規 稲妻
不知火を闇路にもとす嵐哉 正岡子規 不知火
不知火をともに見し友すでに亡し 森澄雄
不知火や嵐はれ行く海の果 正岡子規 不知火
不知火や宿の女は渡り者 後藤比奈夫
不知火や闇の三十日の底明り 正岡子規 不知火
不知火やそことも分かす鳴く狐 正岡子規 不知火
不知火もまた狐火も語り継ぐ 後藤比奈夫
不知火の熾りくる眉目見たらずや 岡井省二 前後
不知火の出を誘ひあふ頃ほひか 鷹羽狩行
不知火の見ゆとふ岬の月見草 藤田湘子 神楽
不知火の見えぬ芒にうづくまり 杉田久女
不知火の海初明り鶴も覚む 山口青邨
不知火の海は明るし花の上に 清崎敏郎
不知火の海の松風鶴の墓 山口青邨
不知火の海の潟橇蹴り帰る 野見山朱鳥 幻日
不知火の闇の海原船もなし 正岡子規 不知火
不知火のしらけて寒き夜明かな 正岡子規 不知火
不知火のしびれいよいよ熾んなり 岡井省二 鯛の鯛
不知火に酔余の盞を擲たん 日野草城
窓あけて不知火の海ただ闇に 橋本多佳子
引鶴に不知火の海朝茜 山口青邨

by 575fudemakase | 2017-06-09 18:09 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

硯洗 の俳句

硯洗 

いにしへの硯洗ふや月さしぬ 加藤楸邨
うき草に硯洗へり鵜匠の子 飯田蛇笏 山廬集
おもへただ硯洗ひの後の恥 園女
おもへたゞ硯洗ひの後の恥 園女 俳諧撰集玉藻集
この硯誰にゆづらん洗ひけり 美津口たけお
さざなみや硯洗ひし手をあらひ 長谷川双魚
すり減りし父の遺愛の硯洗ふ 武田光子
すり癖の残る硯を洗ひけり 福田寿子
ひとり洗ふ硯の上の咀華忌かな 齋藤玄 飛雪
ゆく年の硯を洗ふ厨かな 三好達治
愛硯のよはひを思ひつつ洗ふ 百合山羽公
愛用の名も無き硯洗ひけり 冨田みのる
悪筆の硯洗ふはかなしきこと 後藤比奈夫
何は置き硯を洗ひ清めんと 高木晴子 花 季
家ひそかなるや硯を洗ひけり 石田波郷
家学われに絶ゆる硯を洗ひけり 池上浩山人
我が俳句不作の硯洗ひけり 長尾俊一郎
我の手に帰したる硯洗ひけり 大石暁座
我永久に遺す硯を洗ひけり 深川正一郎
巌に灯して硯洗ふや女の童 会津八一
興福寺の筆あり硯洗ひけり 鈴木しげを
句に生きて慾なき硯洗ひけり 田口雲雀
窪みたる硯の月日洗ひけり 森緑葉
君が名や硯に書いては洗ひ消す 夏目漱石 明治二十九年
形見分せむと洗ひし硯かな 下村 梅子
月詠みし重硯を洗ひをり 宇佐美魚目 天地存問
硯より心を洗ふ一苦労 後藤比奈夫 めんない千鳥
硯洗うや虹濃き水の豊かなる 飯田蛇笏 霊芝
硯洗つてたそがれの音となる 松澤雅世
硯洗ひ干す亭二三歩の斜面かな 飯田蛇笏 山廬集
硯洗ひ肉声もたぬ父の文字 水鳥ますみ
硯洗ひ半日の閑あまりあり 横井迦南
硯洗ひ野分の端に波郷病む 秋元不死男
硯洗ふてのひらほどの一つ得て 神蔵器
硯洗ふは心を洗ふにもまさり 原コウ子
硯洗ふやりんりんと鳴る山水に 新田 豊
硯洗ふや虹濃き水の豊かなる 飯田蛇笏 山廬集
硯洗ふや落ち来る水の高きより 原月舟
硯洗ふリラの花ある小さき闇 桜井博道 海上
硯洗ふ雲ながれてはとどまらず 岬雪夫
硯洗ふ献句短冊着きたれば 殿村菟絲子
硯洗ふ妻居ぬ水をひびかせて 石田波郷
硯洗ふ手もと小暗く噴井かな 石川桂郎 高蘆
硯洗ふ蔵王真水をあふれしめ 小枝秀穂女
硯洗ふ天山山脈見ゆるまで 九鬼あきゑ
硯洗ふ墨あをあをと洗れけり 橋本多佳子
硯洗ふ墨あをあをと流れけり 橋本多佳子
硯洗ふ良寛自得自在たり 田中水桜
硯洗へば梶ながるるやさやさやと 飯田蛇笏 山廬集
硯二つ重ね沈めて洗ひけり 池上浩山人
硯面の歳月の疵洗ひけり 藤井凌雪
午後の日の早くもかげり洗硯す 西村止子
御秘蔵の硯を洗ふ小姓かな 鈴木苔花
高階に硯を洗う鈴の空 鈴木六林男
高僧のかたみの硯洗ひけり 星野立子
今年またひとつの硯洗ひをり 石川桂郎
今年より吾子の硯のありて洗ふ 能村登四郎
山水の迅きに洗ふ硯かな 大橋越央子
子の名前薄れし硯洗ひけり 下間ノリ
志存して洗ふ硯かな 池上浩山人
詩の舟や硯を洗ふ春の水 会津八一
手で洗ふ硯の裏や柚子の花 藤田あけ烏 赤松
手を洗ひ耳洗ひ硯洗ひけり 柏禎
十年の硯洗ふこともなかりけり 硯洗 正岡子規
塾閉ぢし妻の洗へる硯かな 綾部仁喜 樸簡
徐霞客の暴に洗ひし硯かな 尾崎紅葉
少しづつ山遠ざかり硯洗ふ 折井紀衣
振袖をしぼりて洗ふ硯哉 硯洗 正岡子規
深き秋もの言はぬ師に硯洗ふ 小池文子 巴里蕭条
親と子のごとき硯を洗ひけり 八染藍子
摺り減りし硯洗へり業のごと 絵馬寿
生涯の一つ硯を洗ひけり 綾部仁喜 寒木
生涯の硯とおもひかつ洗ふ 竹本白飛
雪解や湖舟に洗ふ旅硯 西島麦南 人音
洗はるる大硯石にかへらんと 皆吉爽雨
洗ひあげて端渓と知る硯かな 柴原碧水
洗ひたる机洗ひたる硯哉 硯洗 正岡子規
洗ひたる硯にほそき筆二本 高橋淡路女
洗ひたる硯に暫し待しにけり 相生垣瓜人 明治草抄
洗ひたる硯に侍る思ひあり 篠塚しげる
洗ひたる硯に水の澄んでをり 上野泰 佐介
洗ひたる硯のせ行く掌 赤星水竹居
洗ひたる硯の海といふところ 杉浦 東雲
洗ひたる硯を磨れば墨の虹 三星山彦
洗ひたる硯匂ふに任せけり 相生垣瓜人
洗ひもせで帳場硯や二十年 升本翠華
洗硯す晩年はかく寂びたらむ 林翔
洗硯の一戸球磨川べりにあり 神尾季羊
洗硯の雲にかがやき戻りたり 矢野典子
洗硯の後棒硯の事あらむ 相生垣瓜人
洗心の一刻を措く初硯 西岡伸実
袖濡れて硯洗へり大三十日 水原秋桜子
大硯を引きずり出して洗ひけり 加藤国彦
大望を捨てんと硯洗ひけり 村松紅花
濁り川硯洗ひしのちに見る 百合山羽公 寒雁
誰がもちし硯ぞ今日をわが洗ふ 水原秋櫻子
誰が持ちし硯ぞ今日をわが洗ふ 水原秋桜子
天に河地に川硯洗ひけり 飯沼三千古
二人にて硯は一つ洗ひけり 池上不二子
年々や硯を洗ふ墨の滓 佐藤紅緑
梅雨ぐもり写経の硯洗ひけり 高橋淡路女 梶の葉
髪梳いて硯を洗ふ歌娘 鈴鹿野風呂 浜木綿
眉の辺に宵ある硯洗ひけり 岡井省二
筆硯を洗ふ朝涼おのづから 長谷川素逝 暦日
夫亡くて子ありて洗ふ硯かな 鈴木真砂女 夕螢
父と子に一つの硯洗ひけり 細川加賀 生身魂
撫でたくて小春の硯洗ふなり 林翔
物好や硯洗ふて鮓の圧 尾崎紅葉
文弱のいのちの硯洗ひけり 上田五千石(1933-97)
片手では持てぬ硯を洗ひけり 鈴木 榮子
名を書くと硯洗ひし誕生日 八木三日女
命名のための硯を洗ひけり 三村純也
門川や机洗ふ子五六人 七夕 正岡子規
余震なほ硯を洗ふいとまにも 菅原和子
旅の吾に妻や硯を洗ひをらむ 星野麦丘人
炉の名残墨交る朱硯洗ひけり 柴田紫陽花
恍として洗はるるなる硯かな 相生垣瓜人 明治草抄
濤音の天より硯洗ひけり 菅原多つを
疵数多の無銘硯も洗ひけり 岩本光曜

硯洗 補遺

あきらめし旅あり硯洗ひけり 水原秋櫻子 餘生
いちにちの硯洗へば初音かな 飴山實 句集外
いにしへの硯洗ふや月さしぬ 加藤秋邨
うき草に硯洗へり鵜匠の子 飯田蛇笏
おもかげの映ろふ硯洗ひけり 上田五千石『琥珀』補遺
ひとり洗ふ硯の上の咀華忌かな 齋藤玄 飛雪
愛硯を愛児の如く洗ひけり 相生垣瓜人 負暄
悪筆の硯洗ふはかなしきこと 後藤比奈夫
家ひそかなるや硯を洗ひけり 石田波郷
海深く浚ひて硯洗ひけり 鷹羽狩行
旧仮名を墨守硯も洗ひけり 百合山羽公 樂土以後
献立てを日々書く硯洗ひけり 鈴木真砂女
献立を日々書く硯洗ひけり 鈴木真砂女 夏帯
硯より心を洗ふ一苦労 後藤比奈夫
硯洗うや虹濃き水の豊かなる 飯田蛇笏 霊芝
硯洗ひて夜の闇の馬肝色 岡井省二 鯨と犀
硯洗ひまだ憑きものの落ちぬ顔 能村登四郎
硯洗ひ干す亭二三歩の斜面かな 飯田蛇笏 山廬集
硯洗ひ先づは心に書かむかな 林翔
硯洗ひ野分の端に波郷病む 秋元不死男
硯洗ふや虹濃き水の豊かなる 飯田蛇笏 山廬集
硯洗ふ意地に徹して老いにけり 鈴木真砂女 都鳥
硯洗ふ空しからざる日にせんと 水原秋櫻子 餘生
硯洗ふ硯の海で人は死ねず 鈴木真砂女 紫木蓮
硯洗ふ己が行く末見えてゐて 鈴木真砂女
硯洗ふ妻居ぬ水をひびかせて 石田波郷
硯洗ふ手もと小暗く噴井かな 石川桂郎 高蘆
硯洗ふ水の貧しき路地に住み 鈴木真砂女
硯洗ふ墨あをあをと流れけり 橋本多佳子
硯洗へば梶ながるるやさやさやと 飯田蛇笏 山廬集
甲骨文字書くため硯洗ひけり 岡井省二 鯨と犀
今年またひとつの硯洗ひをり 石川桂郎 含羞
今年より吾子の硯のありて洗ふ 能村登四郎
佐久の句を書くべき硯洗ひけり 水原秋櫻子 蘆雁
子規の忌を待ちて硯を洗ひけり 相生垣瓜人 負暄
師が賜びし硯重しと洗ひけり 林翔
七夕の硯洗はば息あへがむ 石田波郷
若楓影さす硯洗ひけり 水原秋櫻子 重陽
十年の硯洗ふこともなかりけり 正岡子規 硯洗
振袖をしぼりて洗ふ硯哉 正岡子規 硯洗
水をゆたかに硯を洗ふ筆洗ふ 山田みづえ まるめろ
数へ日になほ洗硯の大事あり 相生垣瓜人 負暄
雪解や湖舟に洗ふ旅硯 西島麦南 人音
洗ひたる机洗ひたる硯哉 正岡子規 硯洗
洗ひたる硯に暫し侍しにけり 相生垣瓜人 明治草
洗ひたる硯に水の澄んでをり 上野泰 佐介
洗ひたる硯の上の試めし書き 阿波野青畝
洗ひたる硯の面の遊仙図 阿波野青畝
洗ひたる硯匂ふに任せけり 相生垣瓜人 明治草
洗ひつつ硯を水に飽かしめし 相生垣瓜人 明治草
洗ひては青鱗めづる硯あり 水原秋櫻子 殉教
洗硯す晩年はかく寂びたらむ 林翔 和紙
洗硯に興じて鬱を散じけり 相生垣瓜人 負暄
洗硯のゆくへ迷へる墨一縷 能村登四郎
洗硯の後捧硯の事あらむ 相生垣瓜人 明治草
洗硯やそよぐ楓に雨蛙 水原秋櫻子 餘生
束脩の薄き硯を洗ひけり 阿波野青畝
袖濡れて硯洗へり大三十日 水原秋櫻子 晩華
存問の減りゆく硯洗ひけり 上田五千石『天路』補遺
濁り川硯洗ひしのちに見る 百合山羽公 寒雁
誰が持ちし硯ぞ今日をわが洗ふ 水原秋櫻子 霜林
奈良墨を愛して硯洗ふなり 村山故郷
如法水求めて硯洗ひたまへ 阿波野青畝
年逝くや硯洗ひしあとの刻 森澄雄
白露なり洗硯の事又あらむ 相生垣瓜人 明治草
発心のあやふき硯洗ひけり 上田五千石『琥珀』補遺
眉の辺に宵ある硯洗ひけり 岡井省二 山色
筆硯を洗ふ朝涼おのづから 長谷川素逝 暦日
夫亡くて子ありて洗ふ硯かな 鈴木真砂女 夕螢
撫でたくて小春の硯洗ふなり 林翔
文弱のいのちの硯洗ひけり 上田五千石 天路
墨しかと離さぬ硯洗ひけり 鷹羽狩行
墨流れ雲龍となる硯洗ふ 山口青邨
名硯にならざりいくら洗ひても 後藤比奈夫
門川や机洗ふ子五六人 正岡子規 七夕
夕桜鬱然として硯洗ふ 橋閒石
夕爾遺愛の硯をまづは洗ふべし 安住敦
夕星のころ洗硯の父なりし 能村登四郎
落魄のおもひの硯洗ひけり 上田五千石『天路』補遺
恍として洗はるるなる硯かな 相生垣瓜人 明治草
恃むなる硯洗へる飛雪かな 石田波郷
翡翠の去来す硯洗ひけり 水原秋櫻子 帰心

by 575fudemakase | 2017-06-09 18:06 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

鳩吹 の俳句

鳩吹 

鬼女谷の木橋渡る子鳩吹けり 大川幸子 『小春日和』
五十年鳩吹く老の子も持たず 鳩吹く 正岡子規
山の子の一里鳩吹く下校かな 佐佐木としまさ
山もとや鳩吹く聲消えて行 鳩吹く 正岡子規
子を連れて鳩吹過る小村哉 鳩吹く 正岡子規
子連れ杣わが鳩吹きにふり返る 下村ひろし 西陲集
失へる山河鳩吹きのみひびく 小松崎爽青
寂しくも鳩吹きながら見えずなんぬ 尾崎紅葉
手相見の手持ち無沙汰や鳩吹けり 脇坂啓子
春寒し鳩吹く形に指温め 鈴木栄子
心臓のかたち鳩吹く形かな 暮岸江 銀化
人消えて陶鳩笛(オカリナ)湧けりすすき原 平井さち子 鷹日和
男山鳩吹く松ものどかにて 野上豊一郎 能百句
仲見世に鳩笛を買ふ傘雨の忌 恒松英子
仲見世の鳩笛を買ふ傘雨の忌 恒松英子「鳩笛」
町を出てやがて鳩吹く聲す也 鳩吹く 正岡子規
道づれの影と別れて鳩吹けり 谷古宇久子
鳩ささぬひまや鳩吹く岩がくれ 蝶夢
鳩の飛ぶ方に鳩吹く聲遠し 鳩吹く 正岡子規
鳩吹いていよいよ峡の奥に入る 松崎鉄之介
鳩吹いて猿の泣き声誘ひけり 二神節子 『砥部』
鳩吹いて禁煙の口なぐさめる 清水基吉
鳩吹いて見えざるものを信じたり 長谷川秋子
鳩吹いて見ゑざるものを信じたり 長谷川秋子
鳩吹いて昔をかへすよしもなし 清水基吉
鳩吹いて杜甫草堂にゐる現 斎藤 梅子
鳩吹いて島を離るゝ島育ち 大本正貴
鳩吹きつゝ信太の森に這入けり 鳩吹く 正岡子規
鳩吹きて唐招提寺築地道 小坂 順子
鳩吹きや少年の目の僧がゐる 小島千架子
鳩吹き吹き小家の横に廻るかな 松瀬青々
鳩吹くやおそい昼食すませては 杉野一博
鳩吹くやおのが頬骨吹き細め 素丸
鳩吹くやはたての白き帆をみつめ 猪俣千代子 秘 色
鳩吹くや羽前陸前山つづき 小島千架子
鳩吹くや亀が集まる四天王寺 遠藤寛太郎
鳩吹くや犬は夕日にうづくまる 村山古郷
鳩吹くや狐の宮のうしろ側 鳩吹く 正岡子規
鳩吹くや石段森に人るところ 山本洋子
鳩吹くや夕雲遊ぶ月の山 角川源義
鳩吹くや藪山口のつぶら家 暁台
鳩吹くよ煌と彼の世に目を据ゑて 横山冷子
鳩吹く風リフトにひとりぼつちかな 鈴木寿美子
鳩吹く風日付の判る時計買ふ 高澤良一 素抱
鳩吹けば祖の声うつつ飛騨の里 桃井輝子
鳩吹のかくれごろ也そばの華 水田正秀
鳩吹のたくみも老いてしまひけり 鳩吹く 正岡子規
鳩吹のだまつて通る嵐哉 鳩吹く 正岡子規
鳩吹の一人に落つる夕日哉 鳩吹く 正岡子規
鳩吹の過ぎ行里や八ッ下り 鳩吹く 正岡子規
鳩吹の森の中道分れ行く 内藤鳴雪
鳩吹の貧しき里を通りけり 鳩吹く 正岡子規
鳩吹やけぶらふに足る峡の雨 岩永佐保
鳩吹や雨となりつつ遠ざかる 篠原温亭
鳩吹や雨となりつゝ遠ざかる 篠原温亭
鳩吹や己が拳のあはれなる 松根東洋城
鳩吹や坂道下りて杉林 松下紫人
鳩吹や寺領の畑の柿林 正岡子規
鳩吹や新聞少年の空から晴れ 山崎しんぺい
鳩吹や夕日に出たる山の墓 飯田蛇笏 山廬集
鳩吹をいさむる妻もなかりけり 鳩吹く 正岡子規
鳩吹を叱る法師もなかりけり 鳩吹く 正岡子規
鳩笛でス#ートホームを吹く暮春 福田蓼汀 秋風挽歌
鳩笛に俄かにゆらぐ北の樹々 石崎素秋
鳩笛に鳩の横顔文化の日 石川文子
鳩笛の胸ふくらます小春かな 黒瀧昭一
鳩笛の古墳に吹き寄す秋気配 山下一冬
鳩笛や駄菓子屋にも春来てゐたり 坂本米子
鳩笛や昼のひかりの忘れ潮 倉橋羊村
鳩笛や辻の地蔵に鍵かけて 夏秋明子
鳩飛んで鳩吹聲はやみにけり 鳩吹く 正岡子規
法師にもあはず鳩吹く男かな 言水
法師にもあはず鳩吹男かな 言水
夕けぶり鳩吹く人にかかりけり 一茶
杳かなる霧や鳩笛唇にあつ 横山白虹
膠かけ鳩笛つくる夏炉かな 西本一都 景色
藪蔭や鳩吹く人のあらはるる 正岡子規
藪陰や鳩吹く人のあらはるる 正岡子規


鳩吹 補遺

寒夜には陶のひびきの鳩笛(オカリナ) 佐藤鬼房
五十年鳩吹く老の子も持たず 正岡子規 鳩吹く
山もとや鳩吹く聲消えて行 正岡子規 鳩吹く
子を連れて鳩吹過る小村哉 正岡子規 鳩吹く
秋の雲 泥の鳩笛ふけども鳴らず 富澤赤黄男
吹きかけてみて鳩吹と思ひけり 能村登四郎
町を出てやがて鳩吹く聲す也 正岡子規 鳩吹く
梅雨晴間鳴く鳩笛をひとつ彫り 能村登四郎
白夜呼ぶ北欧みやげの鳩笛は 百合山羽公 樂土
鳩の飛ぶ方に鳩吹く聲遠し 正岡子規 鳩吹く
鳩吹いていよいよ峡の奥に入る 松崎鉄之介
鳩吹いて月夜は声を忘るるか 石田勝彦 百千
鳩吹いて真人のために興じたる 森澄雄
鳩吹きつゝ信太の森に這入けり 正岡子規 鳩吹く
鳩吹くや犬は夕日にうづくまる 村山故郷
鳩吹くや狐の宮のうしろ側 正岡子規 鳩吹く
鳩吹くや夕雲遊ぶ月の山 角川源義
鳩吹のたくみも老いてしまひけり 正岡子規 鳩吹く
鳩吹のだまつて通る嵐哉 正岡子規 鳩吹く
鳩吹の一人に落つる夕日哉 正岡子規 鳩吹く
鳩吹の過ぎ行里や八ッ下り 正岡子規 鳩吹く
鳩吹の貧しき里を通りけり 正岡子規 鳩吹く
鳩吹や寺領の畑の柿林 正岡子規 鳩吹く
鳩吹や夕日に出たる山の墓 飯田蛇笏
鳩吹をいさむる妻もなかりけり 正岡子規 鳩吹く
鳩吹を叱る法師もなかりけり 正岡子規 鳩吹く
鳩笛でスヰートホームを吹く暮春 福田蓼汀 秋風挽歌
鳩笛をふく立冬のものに倦み 橋閒石
鳩笛を吹いてみて買う暮の春 橋閒石 微光以後
鳩笛を吹くやしんじつ父として 伊丹三樹彦
鳩飛んで鳩吹聲はやみにけり 正岡子規 鳩吹く
老人の鳩吹く老を吹くごとし 森澄雄
藪陰や鳩吹く人のあらはるゝ 正岡子規 鳩吹く

by 575fudemakase | 2017-06-09 17:25 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
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例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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