カテゴリ:秋の季語( 1167 )

落葉 補遺 2

落葉 補遺 2

水色の奇術の果の楡落葉 橋閒石 荒栲
汐いつか満ちし静けさ江の落葉 臼田亜郎 定本亜浪句集
池に落つ琴坂落葉深くせる 山口青邨
池のほとり露仏あるなり松落葉 河東碧梧桐
池へだて共に映れり落葉焚 水原秋櫻子 緑雲
池近き芝に柳の落葉哉 正岡子規 柳散る
河骨に稀の落葉を法の松 清崎敏郎
沼尻の落葉くぐりて水澄めり 松村蒼石 雁
泉水に落葉のたまる小舟哉 正岡子規 落葉
波のごと落葉沓脱石を舐む 山口青邨
泣きつ祈る人の子に落葉そゝぐかな 種田山頭火 自画像 層雲集
泥の手を洗ふ落葉の水溜り 右城暮石 天水
流されて来し落葉にて流れ堰く 津田清子
海を背に薄らなみだの落葉焚 佐藤鬼房
海光へ屋根の落葉を掃きおとす 岡本眸
海恍とねむる櫟生の落葉どき 飯田龍太
海辺行けば這ひ草咲いて松落葉 河東碧梧桐
消灯時廊ぬけがけの落葉かな 角川源義
涼風は桜落葉をこぼす程 清崎敏郎
深かりし佛峠の落葉かな 相生垣瓜人 明治草
深大寺大屋根落葉ささりしまま 細見綾子 和語
深潭にして一片の落葉生く 富安風生
渋色の蟷螂に桜落葉かな 河東碧梧桐
渓埋めし水禍の岩に落葉はや 福田蓼汀 秋風挽歌
渓橋に落葉しそめし碑のみゆる 飯田蛇笏 椿花集
温泉の宿の旗はらはらと木葉ちる 正岡子規 落葉
湖の上に舞ひ行く落葉哉 正岡子規落葉
湯船にも落葉吹き込み山の国 草間時彦 櫻山
満月の流水落葉了りけり 水原秋櫻子 玄魚
滑川源泉といふ落葉ふる 山口青邨
滝のごと落葉を穴に掃き落す 上野泰 佐介
滝壷に吸はれし落葉出でて来ず 大野林火 冬雁 昭和二十二年
潦落葉空より地の底より 西東三鬼
濡縁に白菜を干す落葉一枚 山口青邨
火の髪の花火の下は降る落葉 中村苑子
火をかけてすずかけ落葉すぐになし 富安風生
火をなだめ落葉をかぶせ又かぶせ 阿波野青畝
火を恋ふは焔恋ふなり落葉焚き 橋本多佳子
火を放つべく築かれし落葉の城 鷹羽狩行
火事のあと木の実落葉の降り積めり 角川源義
火移りてはかなく燃ゆる落葉かな 日野草城
火葬場のうしろの山の落葉どき 飯田龍太
焚かれをり夜は木菟が来る樹の落葉 大野林火 方円集 昭和五十一年
焚くこともまた急がるる落葉掻き 鷹羽狩行
焚く落葉まなかより煙あげそむる 大野林火 冬雁 昭和二十一年
焚火中炎のせては落葉失せ 上野泰 佐介
無花果の落葉後続落葉無く 永田耕衣
無花果落葉の柄を枝の離層痕に當つ 永田耕衣
無花果落葉個々定位置に茫然と 永田耕衣
煙立つ生きて帰りし落葉焚 西東三鬼
燧石使つてみたき落葉あり 後藤比奈夫
爆心地訪へば落葉の音高し 稲畑汀子
爛々と虎の眼に降る落葉 富澤赤黄男
爪のいろ明るく落葉はじまりぬ 岡本眸
父が掃けば母が焚いてゐる落葉 種田山頭火 自画像 落穂集
父の忌の 葉裏ばかりの 桐落葉 伊丹三樹彦
父上は嵐のあとの落葉かき 高野素十
物語のごとくにさくら落葉かな 山田みづえ 木語
犬猫と夜はめつむる落葉の家 西東三鬼
狂院の落葉焚き白き水を出す 右城暮石 句集外 昭和二十六年
狒々塚や落葉の渦に足とらる 角川源義
独り行くや落葉蹈む音身にしめて 日野草城
独楽二つぶつかり離れ落葉中 星野立子
狼の墓堀り探す落葉哉 正岡子規 落葉
猪の夜たゞがさつく落葉哉 正岡子規 落葉
猫眠り刻々落葉降りつもる 山口青邨
甃欅落葉に日々埋もる 野澤節子 八朶集以後
甘酒を上燗神の落葉焚き 平畑静塔
生きてゐる木の実が爆ぜて落葉焚き 鷹羽狩行
生涯を感謝すこころ落葉降る 飯田蛇笏 家郷の霧
産土の氏子当番落葉掃く 右城暮石 散歩圏
産土の落葉に雪の舞ひそめし 飯田龍太
用二つ済ます落葉の喫茶店 岡本眸
町に出づ落葉を焚くは妻に委ね 安住敦
町中に落葉に埋れ宮古りぬ 星野立子
町落葉何か買はねば淋しくて 岡本眸
略歴に略すいろいろ落葉降る 上田五千石『琥珀』補遺
番雁の踏める落葉に朝日かな 原石鼎 花影以後
病む窓のあかるし落葉をはりしや 鷲谷七菜子 黄炎
病む窓の落葉色して石鼎忌 石田波郷
痩頬の昃りて桜落葉かな 藤田湘子 途上
療園やシベリア廊下に落葉翔く 角川源義
療園や雪の音して落葉ふむ 角川源義
癒え遅々たり月の落葉の白き嵩 岡本眸
白き手の病者ばかりの落葉焚 石田波郷
白日の旅してゐたり落葉山 鷲谷七菜子 一盞
白日は我が霊なりし落葉かな 渡邊水巴 白日
白樺の落葉しつくし朝の鐘 山口青邨
白樺の落葉を踏むは久しぶり 後藤比奈夫
白骨の手足が戦ぐ落葉季 三橋鷹女
百済観音をがみに落葉踏みゆけり 細見綾子
皆土に還る落葉もその一つ 石塚友二 玉縄抄
皇居にも深落葉道陛下の道 山口誓子
盆栽にするどく飛びし落葉あり 波多野爽波
盆栽の欅も落葉急ぐなり 高田風人子
目つむれば欅落葉す夜の谷 飯田龍太
目に沖の巌に立つ浪落葉踏む 石塚友二 光塵
目襖に落葉の兎売られゆく 加藤秋邨
真昼うらゝかに落葉みな灰となりぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
真直ぐに青空切れて落葉谿 松村蒼石 雪
知らぬ人と咄して落葉くさき夜を 右城暮石 句集外 昭和九年
石の上落葉二三枚冬めける 山口青邨
石の亭石の腰掛落葉降る 山口青邨
石の椅子掛けしかたちに深落葉 鷹羽狩行
石垣にかかる落葉も掃き落とす 右城暮石 天水
石楠花に聚碧園の樟落葉 飯田蛇笏 家郷の霧
石臼にのつたる桜落葉かな 飴山實 次の花
砂をつかめば射す松落葉人親し 中村草田男
砂白く松の落葉や数ふべし 正岡子規 散り松葉
碧落の都心へ落葉別れとは 原裕 葦牙
確かな岩壁落葉のときは落葉のなか 金子兜太
礎石うづむ桜落葉や真紅 山口青邨
礼拝に落葉踏む音遅れて着く 津田清子 礼拝
神の山ふらす落葉をふりかぶり 山口青邨
神の森水無月風に*かしわ落葉 前田普羅 能登蒼し
福寿草落葉の中や人にかくれ 山口青邨
秋もはや栗の落葉や目黒道 正岡子規 栗
秋日踏む菩提寺磴の梅落葉 西島麦南 人音
税関の塔白し街落葉しぬ 大野林火 冬青集 雨夜抄
稿急ぐ落葉色して訪る蛾 秋元不死男
空のふかさは落葉しづんでゐる水 種田山頭火 草木塔
空也忌の虚空を落葉ただよひぬ 石田波郷
空林の落葉明るし虎落笛 日野草城
空蝉にすでに落葉の二三枚 大野林火 冬雁 昭和二十二年
窓の下なつかしき日の落葉かな 飯田蛇笏 山廬集
窓の外の落葉のそらを人行けり 三橋敏雄
窓の影夕日の落葉頻り也 正岡子規 落葉
窓打つや落葉しぐれの風の渦 石塚友二 方寸虚実
立ちつくすとき落葉散る音の中 稲畑汀子
立岩の裏も神ある落葉かな 河東碧梧桐
童等のはや立つ落葉ふる句碑に 山口青邨
童等のふつつり去りし夕落葉 中村汀女
笊干すや垣の落葉に遠き山 飯田蛇笏 山廬集
笹原に落葉はげしくつきささる 山口青邨
箒さき吹き返さるゝ落葉かな 高野素十
築地門遅れ落葉をしまひけり 石田勝彦 雙杵
築山の上より落葉掻き下る 高浜年尾
紙燭して落葉の中を通りけり 正岡子規 落葉
素裸はなみのこに息合はすため 佐藤鬼房
紬着て妻をり桜落葉かな 草間時彦
細き道のしきりに曲る落葉かな 正岡子規 落葉
細目にて神しろしめす落葉掃 平畑静塔
終日やかさりこそりと萩落葉 山口青邨
終焉の地や落葉舞ふ日の飄 角川源義
絵馬堂の内日のぬくき落葉かな 飯田蛇笏 山廬集
網干すに遠の幾山落葉いろ 細谷源二 鐵
縄文の甕のかけらに落葉舞ふ 山口青邨
繊き月低く落葉の舞ひつれて 山口青邨
繚乱と落葉の天に舞ひはてむ 佐藤鬼房
美しき帯がこぼしぬ松落葉 山口青邨
義歯ゆるむばかり夕べの落葉焚 佐藤鬼房
老の手の箒落葉や干反り逃ぐ 石塚友二 方寸虚実
老妻の安堵したるらむ落葉掃く 山口青邨
老斑の月より落葉一枚着く 西東三鬼
老樹は白梅と聞く墓前落葉のあたたかし 荻原井泉水
耕人に山の落葉の飛ぶ日かな 松本たかし
肌に添ふ落葉愛しや露天風呂 林翔
肩にかかる落葉もぬくし冬の蝶 村山故郷
背に落葉大古の柩見て帰る 有馬朗人 母国拾遺
背嚢ごと身を投げた日よ 落葉鳴る 伊丹三樹彦
背景のありて落葉の降り易し 後藤比奈夫
胴体に落葉ひらひら暇な牛 草間時彦 中年
胸の奥より風の音せり落葉せり 岸田稚魚 負け犬
臘梅の落葉生命線透かす 後藤比奈夫
自からをねぎらふ神の落葉掃き 平畑静塔
自然林てふは落葉を掃かぬこと 後藤比奈夫
舞ひながら渦にまかるゝ落葉哉 正岡子規 落葉
舞ひながら渦に吸はるゝ木葉哉 正岡子規 落葉
舞ひ上る落葉に足を掬はれし 上野泰 佐介
舞ひ舞ひし銀杏落葉が水の上 清崎敏郎
舟に住む犬が落葉の中歩く 有馬朗人 知命
舟蟲に欄の濤翳松落葉 飯田蛇笏 山響集
芝火燃え落葉ひつくりかへり燃え 上野泰 佐介
花のごとき祝いの菓子や落葉宿 山口青邨
花の如く銀杏落葉を集め持ち 波多野爽波 鋪道の花
花を掃き青き落葉を掃きにけり 富安風生
花神楽落葉神楽もたけなはに 百合山羽公 樂土
苔を掃く箒やはらかまた落葉 山口青邨
苔寺の落葉を掃きし箒あり 上野泰
若き日をおろそかにして落葉踏む 後藤比奈夫
英霊を祀る日に逢ふ落葉かな 石塚友二 方寸虚実
茶坐敷の五尺の庭を落葉哉 正岡子規 落葉
茶屋敷の五尺の庭の落葉哉 正岡子規 落葉
草庵の落葉の中の黄菊かな 山口青邨
菊の簇れ落葉をかぶり乱れ伏す 杉田久女
菊畑に欅の落葉はじまりぬ 清崎敏郎
菩提樹の落葉を透かし雪解くる 山口青邨
萩伐られ菊枯れ梅の落葉哉 正岡子規 枯菊
落付きの知れぬ木の葉や風の空 正岡子規 落葉
落窪は落葉溜めわれは静臥せり 石田波郷
落葉 落葉落葉 床の中にも降る 三橋鷹女
落葉、雀も来年勅題の鳥ではある 荻原井泉水
落葉あたたかうして藪柑子 種田山頭火 草木塔
落葉あたたかくかみしめる御飯の光り 種田山頭火 草木塔
落葉かきしところ歩けり落葉掻 石田波郷
落葉かき小枝ひろひて親子かな 正岡子規 落葉
落葉かく子に茸の名を尋けり 正岡子規 茸
落葉が褥の石棺 枕座もありまして 伊丹三樹彦
落葉が鳴るだらう足音を待つてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
落葉きよし名残の銅鑼を打ちて別る 及川貞 榧の實
落葉きれいに掃いて池のおちば 荻原井泉水
落葉くぐる水よりひそけき恋を聞く 大野林火 雪華 昭和三十九年
落葉さへあらぬ山路となりにけり 渡邊水巴 白日
落葉さんさん天皇通る警備せり 村山故郷
落葉しいて寝るよりほかない山のうつくしさ 種田山頭火 自画像 落穂集
落葉しげし葬りのかげをつらね行く 大野林火 冬青集 海門以後
落葉しづかな木々石山に根を下ろし 西東三鬼
落葉しづくしたる木の実赤く 種田山頭火 草木塔
落葉してさらにしたしくおとなりの灯の 種田山頭火 草木塔
落葉してむつかしげなる枳殻かな 正岡子規 落葉
落葉してめぐり倦まざる島の鳶 廣瀬直人
落葉してやどり木青き梢哉 正岡子規 落葉
落葉して乞丐に齢なかりけり 石橋秀野
落葉して人にかかはりなき谺 原裕 青垣
落葉して仁王にまさる幹の瘤 鷹羽狩行
落葉して何のささめく日の墓群 鷲谷七菜子 黄炎
落葉して北に傾く銀杏かな 正岡子規 落葉
落葉して厨子に観音像ひとつ 廣瀬直人
落葉して友のひとり子少し馴れ 廣瀬直人
落葉して塔より低き銀杏哉 正岡子規 落葉
落葉して大空の柚子のありどころ 種田山頭火 自画像 落穂集
落葉して天に吸はるる白樺 鷲谷七菜子 一盞
落葉して岩の秀にある夕日かな 上村占魚 鮎
落葉して己れ培ふ椴松よ 津田清子
落葉して幾条ひびく終電車 飯田龍太
落葉して心元なき接木かな 村上鬼城
落葉して思惟仏に月惜しみなし 鷲谷七菜子 花寂び
落葉して景色広がりゆきにけり 稲畑汀子
落葉して木目あらはの一茶像 鷹羽狩行
落葉して枝にぎやかに並木たり 上田五千石『風景』補遺
落葉して栴檀の実の残りゆき 山口誓子
落葉して湖水の漁に疎きかな 河東碧梧桐
落葉して瀧かくれなし池に落つ 水原秋櫻子 雪蘆抄
落葉して白樺白樺らしくなる 津田清子
落葉して礎もなし關の跡 正岡子規 落葉
落葉して老木怒る姿あり 正岡子規 落葉
落葉して蔓高々と懸りけり 前田普羅 普羅句集
落葉して薬草の根を養へり 右城暮石 天水
落葉して遠き歩行者音もなし 石田波郷
落葉して遽に羅漢の裏寒し 小林康治 玄霜
落葉して頬の尖りの目には立たぬ 藤田湘子 途上
落葉して鳥啼く里の老木哉 正岡子規 落葉
落葉すやしづかに庫裡の甕の水 飯田蛇笏 山廬集
落葉すやひそかにひそかに戦慄する 岸田稚魚 雁渡し
落葉すや木曾の塗師の門ひろく 臼田亜郎 定本亜浪句集
落葉すや神憑く三つの影法師 飯田蛇笏 霊芝
落葉するおとにさめゐるまぶたかな 飴山實 少長集
落葉するこれから水がうまくなる 種田山頭火 草木塔
落葉する前のいちまいづつの葉よ 後藤比奈夫
落葉せし槻の枝の囮かな 正岡子規 落葉
落葉せり食大胆に臆病に 藤田湘子 神楽
落葉せる一樹といへど直ならず 上田五千石『琥珀』補遺
落葉たく わが手にひかる念珠もなし 富澤赤黄男
落葉たく煙の中の顔である 尾崎放哉 須磨寺時代
落葉たまりゐる絞り屋の蔵の窓(愛知県有松) 細見綾子
落葉だまりふみゆけばともる朧かな 大野林火 海門 昭和七年以前
落葉とびはや頬赤き佐久乙女 林翔 和紙
落葉と吾風吹き上げて坂長し 香西照雄 対話
落葉と年内にくる賀状が喪中たれかれ 荻原井泉水
落葉どつと奏づるものに皇帝の曲 山口青邨
落葉なか忘れむとして身を置けり 松村蒼石 雪
落葉なき合歓の下霜とけやらぬ 飯田蛇笏 山響集
落葉なほおのれの幹の辺を去らず 岡本眸
落葉につれベレーたのしき草田男像 古沢太穂 古沢太穂句集
落葉には重り合ふといふ情 後藤比奈夫
落葉に偲ぶ学の鉄鎖の重かりしよ 中村草田男
落葉に坐すショルダーバッグ投げ出して 安住敦
落葉に教師と妻とかげはこぶ 大野林火 海門 昭和十一年
落葉に溺れむ家や主病む 能村登四郎
落葉に雨 無音 母との一つ炬燵 伊丹三樹彦
落葉に鶲まぎるる風の宮 山田みづえ 草譜
落葉の、水仙の芽かよ 種田山頭火 草木塔
落葉のあと夜の物音のひそみをり 鷲谷七菜子 黄炎
落葉のせ大仏をのせ大地かな 上野泰
落葉の上に雨して冬の来るなり 細見綾子
落葉の下で釘になつた蚯蚓 三橋鷹女
落葉の下に棲むこほろぎは長く生く 津田清子 礼拝
落葉の中に行けば行かるる路あるなり 荻原井泉水
落葉の中一顆の果球詩神秘む 山口青邨
落葉の中剃りあやまりし死者の顔 岸田稚魚 負け犬
落葉の中母国語一つこぼれ落つ 有馬朗人 母国
落葉の墓地に晴計合せて兄いもと 岡本眸
落葉の夜歌仙これより恋の部へ 飯田龍太
落葉の少女ノートに何か書いては抱き 岡本眸
落葉の嵩病室よりの楽遍し 石田波郷
落葉の沢石という石五百羅漢 金子兜太
落葉の雨しぐれの雨も興そへむ 山口青邨
落葉の音泪を溜めて何見やる 岸田稚魚 雁渡し
落葉の黄回想とほきてのひらに 鷲谷七菜子 黄炎
落葉はく上野の茶屋の女哉 正岡子規 落葉
落葉はげしこの山墓を埋むべく 山口青邨
落葉はげし主婦の座降りしわが肩に 岡本眸
落葉はや石の色せし一二枚 岡本眸
落葉はや聖堂に観る海戦史 上田五千石『天路』補遺
落葉は落ちて落ちつくところ毎朝霜 荻原井泉水
落葉ひらめく静かに急かる齢あり 能村登四郎
落葉ひら~風のゆくへに従ひぬ 上村占魚 鮎
落葉ふかく水汲めば水の澄みやう 種田山頭火 草木塔
落葉ふかしけりけりゆきて心たのし 長谷川素逝 砲車
落葉ふきまくる風のよろよろあるく 種田山頭火 自画像 落穂集
落葉ふみくるその足音は知つてゐる 種田山頭火 草木塔
落葉ふみわけほどよい野糞で 種田山頭火 自画像 落穂集
落葉ふみ泉の神の菖蒲谷 角川源義
落葉ふむおほよそ橡の落葉にて 山口青邨
落葉ふむわれにつきくる栗鼠いとし 山口青邨
落葉ふむ分れし道のまた曾へり 高野素十
落葉ふむ音なき落葉肩に受け 及川貞 夕焼
落葉ふり東京通りいまはなし 山口青邨
落葉ふるふる うつくしき夜景かな 富澤赤黄男
落葉ふる停留場よ明石町 山口青邨
落葉ふる奥ふかく御仏を観る 種田山頭火 草木塔
落葉ふる庭に山鳩ゐて迎ふ 山口青邨
落葉ふる音ここに来てかすかなり 山口青邨
落葉ふんで人道念を全うす 飯田蛇笏 霊芝
落葉ふんで豆腐やさんが来たので豆腐を 種田山頭火 草木塔
落葉へばりつく朝の草履干しをく 尾崎放哉 須磨寺時代
落葉へらへら顔をゆがめて笑ふ事 尾崎放哉 一燈園時代
落葉ほろ~汽笛鳴らしつゝ汽車が来し 種田山頭火 自画像 層雲集
落葉まだよく音立てて櫟山 鷲谷七菜子 游影
落葉みちふりかへりてもひとはなし 安住敦
落葉みな万骨となり山眠る 楠本憲吉 方壺集
落葉みな乾反葉ばかり山の窪 能村登四郎
落葉もて卍描けり法の庭 山口青邨
落葉やがてわが足跡をうづめぬる 種田山頭火 自画像 層雲集
落葉やゝ深きところが道らしき 高野素十
落葉よりあるひはピアノ早かりき 加藤秋邨
落葉よりぬつくと生えて炭焼夫 林翔
落葉より立ち上りたる大樹かな 稲畑汀子
落葉より薄目開けをり蕗の薹 石塚友二 磊[カイ]集
落葉を踏んで来て恋人に逢つたなどといふ 種田山頭火 草木塔
落葉一通り掃いてきた髪をつくろう 荻原井泉水
落葉五六枚錦木の葉二三枚 山口青邨
落葉何かに辿りつかんと光るなり 加藤秋邨
落葉吹きたまりしところ古墳あり 星野立子
落葉吹く蔵間ひ猫のぬけてゆく 臼田亜浪 旅人 抄
落葉噴く烟の巻舒おもしろや 阿波野青畝
落葉地にとどくや時間ゆるみけり 加藤秋邨
落葉存分浴びきたりし夜肉を煮る 大野林火 雪華 昭和三十八年
落葉寄せつくる墓火に風の音 角川源義
落葉寒人を忘ぜず町行けば 石田波郷
落葉尽き寄生木の群天を占む 林翔 和紙
落葉尽き日射しはなやぎそめしかな 鷲谷七菜子 游影
落葉径リス死んでをり瞑目す 高田風人子
落葉径分かるるところ左へ行く 高田風人子
落葉急ぐ秘宝はつねに小さきもの 古舘曹人 能登の蛙
落葉拾うて棄てて別れたきり 尾崎放哉 須磨寺時代
落葉掃いて土に見出でし小草かな 原石鼎 花影
落葉掃いて文庫の訴訟安堵かな 河東碧梧桐
落葉掃かれある子の墓をたゞ掃きぬ 及川貞 榧の實
落葉掃き居る人の後ろの往来を知らず 尾崎放哉 一燈園時代
落葉掃くおのれを探しゐるごとく 平井照敏
落葉掃く妻やや口あけて専らなり 石田波郷

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by 575fudemakase | 2016-11-15 14:57 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

落葉 補遺 1

落葉 補遺 1

「ここに眠る」こことは落葉一重の地 鷹羽狩行
あくまでも落葉掃く作務つづきけり 稲畑汀子
あざやかに蔦の落葉の柄を長く 山口青邨
あたたかに落葉吹きたむ寿康館 角川源義
あたたかや櫟落葉の降りしきる 中村汀女
あなたなる落葉の深さ思ひけり 阿波野青畝
あひびきやちらりほらりと夜の落葉 日野草城
いかにこの寺を落葉寺と呼ばん 日野草城
いささかの落葉を焚きて煙出す 細見綾子
いそぐなよとは思はねど落葉降る 後藤比奈夫
いちめんに呼名「落穂」の松落葉 中村草田男
いちめん落葉で 何描く微笑 滞仏画家 伊丹三樹彦
いつきても門の落葉の同じほど 波多野爽波 鋪道の花
いつまでも樟落葉掃く音つづく 山口青邨
いつまでも蟲の音一つ落葉踏む 中村汀女
いつもほど落葉を焚いて焚き止みぬ 及川貞 榧の實
いつも誰かが 起きてて灯してて 落葉の家 伊丹三樹彦
いつよりか落葉焚くことなかりけり 雨滴集 星野麥丘人
いつ敷きし雪ぞ峠の落葉季 水原秋櫻子 帰心
いづれ地に朽つる落葉を掃き寄する 桂信子 草影
いてふ落葉もつとも深きところ踏む 山口青邨
いてふ落葉敷きつむ土の見えぬまで 細見綾子
いてふ落葉踏めばよみがへること多し 山口青邨
いと小さき落葉よ汝は夭折か 林翔
いまは日の当る落葉を掃ける音 後藤比奈夫
いやさうに首ふる風の落葉哉 正岡子規 落葉
うしろより忽と音たつ落葉掻 岸田稚魚 紅葉山
うす青き銀杏落葉も置きそめし 松本たかし
うは目見る戸越の空の落葉雨 石塚友二 方寸虚実
おちよぼ口して塩嘗地蔵落葉中 山口青邨
お堂浅くて落葉ふりこむさへ 尾崎放哉 須磨寺時代
お百姓落葉鳴らして大尿 日野草城
かかる入日いつまた見むと落葉踏む 水原秋櫻子 霜林
かきよせて落葉にしるや庭のあき 正岡子規 落葉
かこハれた五尺の庭の落葉哉 正岡子規 落葉
かさなりて栗の落葉のみな長し 長谷川素逝 暦日
かさりともこそりとも墓落葉かな 星野麥丘人
かそけさの落葉の音の枝をつたふ 長谷川素逝 暦日
かの森の終のいてふの落葉見に 安住敦
からかさ干して落葉ふらして居る 尾崎放哉 須磨寺時代
からからと散らかりふゆる落葉かな 三橋敏雄
からまつ落葉まどろめばふるさとの夢 種田山頭火 草木塔
ぎらと光る落葉の中にひそむ水 山口青邨
くわりんの実埋もるあと一枚の落葉 山口青邨
けぶるごと老いていつまで落葉焚 鷲谷七菜子 花寂び
けもの来て何噛みくだく夜の落葉 野澤節子 未明音
ここに径尽きて落葉の寄せてあり 稲畑汀子
ことごとく落葉せり追ひつめられぬ 藤田湘子 途上
このみちどこへゆくふかく落葉して 種田山頭火 自画像 落穂集
この宵の落葉踏む音のみ待てる 山口青邨
この家売り候 桜落葉は積り候 伊丹三樹彦
この枯木この落葉いま波郷亡し 石塚友二 磊[カイ]集
この落葉大学生としても踏みし 富安風生
こまごまと落葉してをり滝の岩 波多野爽波 鋪道の花
これよりは落葉掃くことたのしみに 山口青邨
ころがりてまことに粗なる落葉籠 飯田蛇笏 心像
こんこんと湧きて落葉を泛べたる 清崎敏郎
ごうごうと楡の落葉の降るといふ 高野素十
ご詠歌の振鈴澄むや落葉寺 鷲谷七菜子 游影
さかんなる落葉にあへることうれし 山口青邨
さはればすぐあく落葉の戸にて 尾崎放哉 須磨寺時代
さびしさの手ふれてぬくき落葉あり 鷲谷七菜子 黄炎
さびしさは素足に触るゝ落葉かな 日野草城n
ざうざうと掃く音落葉多きやう 山口青邨
しぐれる落葉はそのままでよし 種田山頭火 自画像 落穂集
しだれざくら総身落葉したりけり 草間時彦 櫻山
しづかさをひいて落葉の音つたふ 長谷川素逝 暦日
しづかなる音のただ降る椎落葉 長谷川素逝 暦日
しめじめと落葉踏む音近づけり 上田五千石『風景』補遺
しめりたる落葉を焚きしことありし 高野素十
すずかけの落葉と人にかこまるる(茅舎賞受賞のため上京、本郷白十字にて記念会二句) 細見綾子
すずかけの落葉吹かるる方へ別る(茅舎賞受賞のため上京、本郷白十字にて記念会二句) 細見綾子
すずかけ落葉妻とは別に町にあり 安住敦
せせらげり落葉の嵩をくぐり出て 清崎敏郎
せつせつと落葉は己が木をくぐる 松村蒼石 雁
せゝらぎて日光通る落葉山 上田五千石『風景』補遺
その中の濡れし落葉も焚かれけり 稲畑汀子
それでよろしい落葉を掃く 種田山頭火 草木塔
そゝけたる梢銀杏の落葉かな 河東碧梧桐
たそがれの海の光りに落葉舞ふ 村山故郷
ただあるく落葉ちりしいてゐる道 種田山頭火 自画像 落穂集
ただひとり落葉を踏みて*たらつみに 飯田蛇笏 椿花集
ただ歩く落葉ちりしいてゐるみち 種田山頭火 自画像 落穂集
たつつけのみな神にして落葉かき 原石鼎 花影以後
たのむ木の椎の落葉をいまは踏む 山口青邨
たまさかの落葉の音のあるばかり 長谷川素逝 暦日
たれびとを夢にたづねん落葉宿 上田五千石『琥珀』補遺
ちぎれ飛ぶ落葉か鳥か撓(たわ)の空 佐藤鬼房
ちりこんだ杉の落葉や心ふと 正岡子規 心太
ちんどんやをちかた通る落葉宿 山口青邨
ちんどん屋いまははやらず街落葉 山口青邨
つぎ足してつぎ足してひろき落葉宿 山口青邨
つくづくと落葉つもりて象潟や 鷲谷七菜子 天鼓
とかくして不二かき出すや落は掻 正岡子規 落葉
ときをりは影となりつつ落葉掻 鷲谷七菜子 游影
とどこほるとみれば通ひて落葉川 上田五千石『天路』補遺
ともしびのあれば落葉のふるが見ゆ 山口青邨
とりに餌を門掃きてさて落葉焚 及川貞 夕焼
とろろそばなんどすすりて落葉茶屋 山口青邨
どうがんじさま時雨来て落葉して 草間時彦 櫻山
どうしても落葉踏まねば行けぬ路 鈴木真砂女 都鳥
どこをどう吹くも落葉の風となる 岡本眸
なおも続く 森の出口のキスと落葉 伊丹三樹彦
なほ暮れて落葉おのおの土の上 長谷川素逝 暦日
なんぼう考へてもおんなじことの落葉ふみあるく 種田山頭火 草木塔
ねぎらひのひと言かかる落葉掻 石田勝彦 秋興以後
ねんねこに母子温くしや夕落葉 中村汀女
はき出せぬ五尺の庭の落葉哉 正岡子規 落葉
はご掛けに大工をやとふ落葉哉 正岡子規 落葉
はじまりし落葉は母に言はで発つ 中村汀女
はらはらと落葉かさかさと老人 藤田湘子 てんてん
はらはらと身に舞かゝる木葉哉 正岡子規 落葉
ひつそりと落葉宿より出湯の香 鷲谷七菜子 天鼓
ひとすぢにこころ馳す落葉夕日なり 大野林火 冬青集 海門以後
ひとふるひ落葉して梢しづかなる 上田五千石『琥珀』補遺
ひねもすの霧に落葉の音もなし 清崎敏郎
ひもすがらみつむるのみや落葉ふる 石田波郷
ひややかに落葉見送るゆふべの木 飯田龍太
ひらひらと吾に落たる木葉哉 正岡子規 落葉
ひらりと礼落葉降る中走せながら 中村草田男
ひるからのあたたかさ落葉つもりけり 村山故郷
ひろひはさむ落葉あまりに大きくて 山口青邨
ふきまろぶ落葉にしかと大地あり 長谷川素逝 暦日
ふたたびす香港夜景落葉坂 中村汀女
ふとき幹落葉の土をぬいてたつ 長谷川素逝 暦日
ふりかゝる松の落葉や雀鳴く 正岡子規 散り松葉
ふりしきる落葉障子の火影にも 山口青邨
ふりつもる落葉におもてかくす水 山口青邨
ふりつもる落葉を蹴れば日にとどく 山口青邨
ふるみちのとぎれし落葉日和かな 鷲谷七菜子 花寂び
ほそほそと烟立つ茶屋の落葉かな 正岡子規 落葉
ほろほろとゐろりの木葉もえてなし 正岡子規 落葉
ほろほろと朝霜もゆる落葉哉 正岡子規 朝霜
みちのくの落葉さびしと彼は書く 山口青邨
みちのくの落葉しつくす林かな 村山故郷
むさしのの空真青なる落葉かな 水原秋櫻子 葛飾
むさし野のまゝに住み古り落葉焚 及川貞 榧の實
むつつりとデリシヤス落葉踏み入りぬ 古舘曹人 能登の蛙
ものを書くうしろ落葉のしきりなる 山口青邨
やはらかに落葉かさみて濃山吹 松村蒼石 雁
やや動く一まい二まい日の落葉 鷲谷七菜子 一盞
ゆづらざる空のありけり栃落葉 石田勝彦 秋興以後
よき庭や苔に落葉に埋まるとも 阿波野青畝
よき落葉道ありて靴埋めたる 細見綾子
よくこぼし萩の落葉を掃く青畝 阿波野青畝
よく見れば落葉の水に蝦魚あそぶ 山口青邨
よびかけられてふりかへつたが落葉林 種田山頭火 草木塔
よべの虫がけろりと歩く落葉かな 渡邊水巴 白日
よぺ殊に星かがやきし落葉かな 村山故郷
らんらんと落葉の豹の瞳かな 平井照敏
わがための欅落葉のをり~に 高野素十
わがふれて節子の琴の落葉の音 山口青邨
わが住めば木々も落葉も植木村 石塚友二 曠日
わが去ればわが句碑のこる椎落葉 秋元不死男
わが庭の落葉の嵩を肯へり 安住敦
わが庭の落葉は掃かず跫音を 山口青邨
わが庵の更けては落葉の音するばかり 種田山頭火 自画像 落穂集
わが歩む落葉の音のあるばかり 杉田久女
わが立つにこの山寺のはや落葉 山口青邨
わが童女似る彼は亡く落葉降る 飯田蛇笏 家郷の霧
わが胸の落葉を拉(しだ)く鴻(おほとり)よ 佐藤鬼房
わが踏むを待ちて落葉の応へけり 相生垣瓜人 負暄
わが髪はわれとあたたか夕落葉 中村汀女
わらんべの酒買ひに行く落葉哉 正岡子規 落葉
をとつひのけふの墓前の落葉かな 岸田稚魚
をりからの月の落葉のうら表 中村汀女
アカシヤの落葉祭りの如くにも 石塚友二 磊[カイ]集
オムレツが上手に焼けて落葉かな 草間時彦
ガイド嬢マロニエ落葉踏んでゐる 阿波野青畝
クツシヨンの花燃ゆるなり落葉宿 山口青邨
クリスマスローズ莟あり落葉の中 山口青邨
サボテンの刺一枚の落葉刺す 山口青邨
シェパードの停る速さや楢落葉 渡邊白泉
ジャケツ厚し落葉焚き来し香をこめて 草間時彦 中年
スープに台皿 路上に雨の落葉の嵩 伊丹三樹彦
セーヌ流れわが靴音に落葉降る 深見けん二
ニコライの鐘の愉しき落葉かな 石田波郷
ピアノ鳴るうかれ落葉の風に舞ふ 上村占魚 鮎
マイセンの陶の貴人(あてびと)落葉宿 山口青邨
マッチ箱落葉へ拗りからなりし 阿波野青畝
マロニエの落葉を踏めば古き巴里 山口青邨
マロニエの黄金の落葉ペガサスも 山口青邨
メデイアとは落葉を運び去る水も 後藤比奈夫
ルネといふ店の白樺落葉かな 能村登四郎
ローソクの透きとほり燃ゆ落葉宿 山口青邨
ローソクを煙草の火とす落葉宿 山口青邨
一つづつ落葉に裏のついてゐし 後藤比奈夫
一としきり落葉して木はまた日を浴ぶ 大野林火 青水輪 昭和二十四年
一人禰宜落葉箒を横使ひ 飯島晴子
一塵やけさ読む新聞松落葉 山口青邨
一宿す富士の裾野の落葉宿 細見綾子
一方向を得て落葉群移動せり 加藤秋邨
一枚の橡の広葉の落葉濡れ 上村占魚 球磨
一枚の神の落葉の影濃きも 高野素十
一枚の落葉となりて昏睡す 野見山朱鳥 愁絶
一枚の落葉一枚の羽机上閑 山口青邨
一眼に落葉一眼に泪溜め 安住敦
一籠の紅葉いくらぞ落葉掻 正岡子規 落葉
一茶の落葉、良寛の落葉わたしが掃く 荻原井泉水
一遍の図絵の祖父塚落葉焚く 松崎鉄之介
一隅に落葉をためて田の仕舞 能村登四郎
万両の落葉に埋もれつつ赤し 山口青邨
三つ栗の其の落葉の一つかや 河東碧梧桐
三人となり落葉掻何を笑ふ 星野立子
三代の嵐九代の落葉かな 正岡子規 落葉
三尺の庭に上野の落葉かな 正岡子規 落葉
三日見ねば総落葉してやすけしや 角川源義
下闇に光る銀杏の落葉かな 正岡子規 銀杏落葉
下馬札の奥は銀杏の落葉かな 内藤鳴雪
不眠にて落葉火の燃えしぶりたる 細見綾子
世に古ぶおくるるごとし落葉籠 岡井省二 五劫集
丘落葉島の夕焼長からず 村山故郷
両の手をさびしがらせて落葉焚く 鷹羽狩行
中天に舞はせて磴の落葉掃く 上野泰 佐介
中庭の落葉となり部屋部屋のスリツパ 尾崎放哉 須磨寺時代
久しぶりに妹がり行けば落葉哉 正岡子規 落葉
二つあるゆゑ耳塚よ松落葉 阿波野青畝
二の酉の落葉月夜となりにけり 草間時彦
二三枚木葉しづみぬ手水鉢 正岡子規 落葉
二三枚落葉沈みぬ手水鉢 正岡子規 落葉
二三疋落葉に遊ぶ雀かな 村上鬼城
二僧都のかたみに鳴るや落葉中 山口青邨
二日雨の泊りの落葉殖やしたる 大野林火 飛花集 昭和四十六年
五六枚さらに加はる落葉の火 鷹羽狩行
亦も肩をすくめて 失語の 落葉のパリ 伊丹三樹彦
京に生れ落葉の奥の奥にく 西東三鬼
亭々とそびえて暮るる落葉の木 飯田龍太
人の焚く落葉のかさを見て過ぎし 中村汀女
人の目に朝日とびつく落葉かな 岡本眸
人の香を断ちたる径の落葉かな 鷲谷七菜子 游影
人は祷り犬尿し去る落葉の刻 岸田稚魚 負け犬
人丸が好きで落葉を掃きにくる 後藤比奈夫
仄とある落葉明りや思慕に似て 安住敦
今宵おひまの射的屋老人 落葉に雨 伊丹三樹彦
今日の日の黄なる落葉に逍遥す 川端茅舎
今日もまた一斗許りの落葉かな 正岡子規 落葉
仏頭の埋もれもせで落葉山 鷲谷七菜子 天鼓
仕方なきことかも知れず落葉降る 星野立子
佇めば水が落葉をくゞる音 清崎敏郎
佐久佐女の森の落葉の紅一枝 大野林火 方円集 昭和四十九年
何か足らないものがある落葉する 種田山頭火 草木塔
何の落葉刻を深く黄にして大き 山口青邨
何を待つ日に日に落葉ふかうなる 種田山頭火 草木塔
修験とは落葉かく踏み岩かく踏み 後藤比奈夫
俸給の薄さよ落葉と舞はせたし 林翔 和紙
個は全や落葉の道の大曲り 西東三鬼
停電の闇に眼をあげ落葉きく 臼田亜郎 定本亜浪句集
傷兵と犬居てしろし落葉昏る 細谷源二 鐵
元日の門前に来る子と落葉 飯田龍太
光より人あらはれぬ山毛欅落葉 鷲谷七菜子 游影
入院や葉脈あざやかなる落葉 西東三鬼
八一逝くつぶやくごとく落葉散る 有馬朗人 母国
八月の櫻落葉を掃けるかな 富安風生
公園の木椅子に凭るは落葉聴く 安住敦
公園の落葉の椅子の隣同士 中村汀女
公園の飼へる狐に落葉降る 山口青邨
内陣に御あかし搖ぐ落葉かな 内藤鳴雪
円山もしづかな日あり落葉降る 後藤比奈夫
冬籠家は落葉にうもれけり 正岡子規 冬籠
冬落葉石垣照らしだす電灯 廣瀬直人 帰路
凍落葉銀閣寺出て煙草喫ふ 百合山羽公 寒雁
凩に舞ひあがりたる落葉哉 正岡子規 凩
凩の外は落葉の月夜哉 正岡子規 凩
出征のあと突風に落葉敷きぬ 渡邊水巴 富士
切株と思へば石や落葉降る 山口青邨
初日うらうら草の戸落葉深きまま 山口青邨
別れたる銀座に欅落葉かな 松崎鉄之介
刻々と土の落葉の暮るるのみ 長谷川素逝 暦日
前をゆく人にはらはら落葉かな 山口青邨
加賀町の宵のさびしさや落葉風 村山故郷
励みとも嘆きとも日の落葉樹 廣瀬直人
匂ふ落葉光は行方さだまらぬ 鷲谷七菜子 銃身
北窓の落葉明りや妻の肩 草間時彦 中年
十字架のうしろ明るし落葉して 津田清子
十月の楡の落葉をはやふみて 山口青邨
十王の落葉を踏んで長命寺 星野麥丘人 2004年
半跏して病も古りぬ落葉ふる 石田波郷
卍の金高く落葉の降る中に 山口青邨
南面の落葉微塵や穴施行 森澄雄
厚落葉より水にじみ修道院 鷹羽狩行
厚落葉踏む父母よりも師の恩に 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
厭戦の巌反戦の落葉降る 飯田龍太
厳めしく門立てり落葉ふりやまず 種田山頭火 自画像 層雲集
又別のところに焔落葉焚 深見けん二
受話器に受く母国語窓に降る落葉 有馬朗人 母国
古き樹の残りて街に落葉ふる 山口青邨
古家や狸石打つ落葉の夜 正岡子規 落葉
古文書を時かけて読む落葉の日 鷲谷七菜子 一盞
古池に落葉つもりぬ水の上 正岡子規 落葉
句碑の字の情にふれてふる落葉 山口青邨
吐き出して落葉を惜しむ滝の渦 前田普羅 飛騨紬
含羞みて うつくしかりき 落葉の中 富澤赤黄男
吹かれゆく心落葉の風の中 長谷川素逝 暦日
吹きあがる落葉かかる夜笑はずや 加藤秋邨
吹きあがる落葉にまじり鳥渡る 前田普羅 飛騨紬
吹きおろす木葉の中を旅の人 正岡子規 落葉
吹きたまる紅葉落葉の玄関に 山口青邨
吹きたまる落葉の墓や吾子いかに 角川源義
吹きたまる落葉や町の行き止まり 正岡子規 落葉
吹きよせられてゆふべは落葉おちつく 種田山頭火 自画像 落穂集
吹き下す風の木の葉や壇かつら 正岡子規 落葉
吹き下す風の落葉や背戸の山 正岡子規 落葉
吹き入れし石燈籠の落葉哉 正岡子規 落葉
吹溜りへところがれる風落葉 阿波野青畝
吾を負ひし兄の背老いぬ落葉焚 岡本眸
呼吸惜しむ老にひとひらづつ落葉 林翔 和紙
唇もチーズもうすく落葉おわる 橋閒石 風景
啄むもの あるから鳩が 落葉の墓 伊丹三樹彦
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋櫻子 葛飾
四五枚の木の葉掃き出す廓哉 正岡子規 落葉
団栗の己が落葉に埋れけり 渡邊水巴 白日
国分尼寺らしく赤松落葉かな(備中国分尼寺跡六句) 鷹羽狩行
園丁と鶴と暮れゐる落葉かな 飯田蛇笏 山廬集
園丁の焚くゆりの木の落葉かな 星野麥丘人
團栗の共に掃かるゝ落葉哉 正岡子規 落葉
團栗もかきよせらるゝ落葉哉 正岡子規 団栗
土と暮れ落葉は闇にもどりけり 長谷川素逝 暦日
地があからさまに落葉す動物園 右城暮石 声と声
地で売るは 落葉か アクセサリか 原宿 伊丹三樹彦
地に敷いて朝の落葉のささやかず 長谷川素逝 暦日
地に敷いて落葉のしじまときにあり 長谷川素逝 暦日
地のしじま落葉のしじま敷きにけり 長谷川素逝 暦日
地を見つめをりまたたくに落葉積む 松村蒼石 雁
地を走る落葉さへぎるものもなし 上野泰 佐介
地車や石を積み行く落葉道 正岡子規 落葉
坂の上の落葉つややけし海が見ゆ 大野林火 冬青集 海門以後
坂の上の風ひびき来る落葉かな 村山故郷
垣間見し落葉焚く火の清かりし 相生垣瓜人 負暄
城あとの桜落葉に心止め 上村占魚 球磨

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by 575fudemakase | 2016-11-15 14:54 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 続補遺 2

時雨 続補遺 2

悲しさも云ちらしたる時雨哉 卓袋
慈悲ふかき代官たちて初時雨 露印
成レ~と降か時雨に七回り 此筋
我せこが帰りし夢や時雨の戸 りん女
我ひとり食の替出すしぐれ哉 野坡
我山は足駄いたゞくしぐれ哉 其角
我庵も瀬田の時雨の剃毛ついで 其角
戸障子や何所の時雨のあまり風 魯町
所望なら時雨さう也後の月 蘆本
手の跡やおもひまいらせ袖しぐれ 旦藁
手向草あふぎの上に時雨けり 万子
打こみの酒の友来るしぐれ哉 夕兆
折さして枝見る猿や露しぐれ 高桑闌更
折角と鵜の羽ほして時雨かな 寂芝
折~の時雨伊吹はぬらせども 千川
押かけの客と名乗や夕しぐれ 正秀
担ひもて毛呂に翁のしぐれかな 加舎白雄
拝み処にのぼる小坂の時雨哉 卯七
振うては居眠る鳥や村しぐれ 三宅嘯山
捨られて野中の松の時雨けり 魯九
提て出る市の狸や初しぐれ 木因
散雲の下は沙汰なきしぐれかな 林紅
文も見ぬ時雨降る夜ぞ定なき 鬼貫
文消しておもひの窓の時雨哉 乙訓
新わらの屋根の雫や初しぐれ 森川許六
新庭の石も落付初しぐれ 洒堂
新田に稗殻煙るしぐれ哉 昌房
新藁の屋ねの雫や初しぐれ 許六
旅すがた時雨のよ芭蕉翁 樗良
旅すれば時雨の跡のあたゝまり 鈴木道彦
旅ならば亭主もあらん夕時雨 万子
旅なれぬやつこつれけり夕時雨 許六
旅の意地坂を見おくるしぐれかな 怒風
旅の旅つひに宗祇の時雨かな 素堂
旅人とたが呼かけん袖しぐれ 濁子
既に来る足音余所へ小夜時雨 早野巴人
日のさしてふるや蜜柑に初しぐれ 卓池
日の早う暮たばかりぞはつ時雨 田川鳳朗
日の脚に追はるゝ雲やはつしぐれ 千代尼
日は落て波をあかしの夕時雨 樗良
旧庵にしらぬ僧あり初しぐれ 百里
是きりと見ゆる日もなき時雨かな 吐月 発句類聚
時雨きく佗もありけり東山 桜井梅室
時雨きく顔は替らぬ心かな 其角
時雨きや並びかねたるぶね 千那
時雨くる酔やのこりて村時雨
時雨けりたばこ荷主の草鞋懸 諷竹
時雨していとゞわりなきわかれ哉 樗良
時雨して入かはりけり池の鳥 桜井梅室
時雨するほどは間もあるゆふべ哉 田川鳳朗
時雨する日や能因がから車 許六
時雨せよなどか橋立真野の比良 角上
時雨そめ黒木になるは何々ぞ 椎本才麿
時雨だつ雲や泣~峯の月 支考
時雨ては音なし河に明切ぬ 雪芝
時雨ても乾く宿有旅羽織 中川乙由
時雨ても仕回ず月の薄曇 三宅嘯山
時雨ても雫短し天王寺 鬼貫
時雨てや花迄残るひの木笠 園女
時雨とはよう名をつけた~ 野紅
時雨にも名のおもしろき美濃路哉 中川乙由
時雨にも海静なり旅硯 中川乙由
時雨にも見ばやつぼんでのこる菊 蘆本
時雨ねば松は隙なり小六月 支考
時雨ふる比守武御供なりけるや 一笑(金沢)
時雨ほど声ふりかゝるひばり哉 松岡青蘿
時雨もみぢ旅寐翫する両亭主 土芳
時雨るやしぐれぬ中の一心寺 小西来山
時雨るや戻りして来る馬の鈴 昌房
時雨るや手元へうつる斧の影 成田蒼虬
時雨るや舟へ佃の茶の匂ひ 車英 園圃録
時雨るや舟まつ岸の戻り馬 加舎白雄
時雨るや落る葉にさへ生れ色 野坡
時雨るや軒にもさがる鼠の尾 早野巴人
時雨るや辛抱づよき烏芋掘 卓池
時雨るるや軒にもさがる鼠の尾 早野巴人
時雨るゝといふ名甲斐あれ二見がた 中川乙由
時雨るゝやひかえ細工の気草臥 岱水
時雨るゝやへだゝる雲も膝の上 りん女
時雨るゝやもとあらそいのないじや迄 芦角
時雨るゝや墨のヂマル新卒都婆 夕兆
時雨るゝや弥陀の利生を呀にや 百里
時雨るゝや町屋の中の薬師堂 志太野坡
時雨るゝや背負つれたる木葉かご 壺中
時雨るゝや門口もなき薪の*ならべ 琴風
時雨るゝや高雄しまふて一夜松 角上
時雨るゝや黒木つむ屋の窓あかり 野沢凡兆
時雨をばはだしにしてや初紅葉 左次
時雨ゝやおくへもゆかず筆なやみ 玄虎
時雨ゝや一降ふつて峯の松 建部巣兆
時雨ゝや壁もそこらの土の色 蘆本
時雨ゝや牛に付たる油筒 高桑闌更
時雨ゝや町屋の中の薬師堂 野坡
時雨ゝや竹かつぎゆく鳥羽縄手 高桑闌更
時雨ゝや葱台の片柳 其角
時雨ゝや角まじへゐる野べの牛 高桑闌更
時雨来てまた時雨行く夕べかな 完来 発句題叢
時雨来よ花も紅葉有磯海 樗良
時雨来る空や八百やのおとりこし 許六
時雨来る空や八百屋の御取越 〔ブン〕村
時雨来る空や女中の多賀参 許六
時雨痩松私の物干にと書り 其角
時雨聞て腸さぐる寐覚かな 松岡青蘿
時雨行日をおもかげの翁かな 加舎白雄
時雨行笠や十夜の鉦の奥 中川乙由
時雨行風やいづこの根ぶか汁 〔ブン〕村
時雨降座はしづまりぬ古後達 凉菟
時雨雁箕手にならぶ時もあり 松窓乙二
時雨~に鎰かり置ん草の庵 挙白
時雨~能名になるぞ夜の雨 朱拙
晴て行跡にもの有初しぐれ 中川乙由
暁の鐘ぬれてある時雨かな 木因
暑さへなをなさけなるしぐれかな 樗良
暮かゝる餌やの窓の時雨かな 許六
暮て行一羽烏や初しぐれ 諷竹
暮て行時雨霜月師走哉 西鶴
暮るとてけふも時雨や九月尽 桃隣
更行や鐘もしぐれもさゞ波も 完来
月と雲時宜はすんだり初時雨 北枝
月はよう御出なされた時雨かな 旦藁
月は花はけふはしぐれの翁哉 加舎白雄
月まちや我宵がちに山しぐれ 土芳
月代や時雨のあとのむしの声 丈草
月代をいそぐやう也村しぐれ 千川
月待や我宵がちに山時雨 土芳
月時雨さりとては古きけしきかな 井上士朗
月時雨もるを庵の会式かな 成田蒼虬
月蝕のはり合になるしぐれかな 鈴木道彦
月越しの松風ぬらすしぐれ哉 松窓乙二
有明となれば度々しぐれ哉 許六
有明や時雨まちとる杉の上 浪化
朔日の出合がしらや初しぐれ 洒堂
朔日の待るゝ数かはつしぐれ 露川
朔日はこらえて見たる時雨哉 野紅
朔日や日の有うちを夕時雨 高桑闌更
朝がほの種はなれたり初しぐれ 成田蒼虬
朝しぐれあはしき心かく斗 土芳
朝夕の不二もけぶらぬ時雨かな 建部巣兆
木々の葉も地に有付てしぐれ哉 野坡
木の浜やしぐれにかゆる小越舟 正秀
木仙やあいに時雨のつよう来る 十丈
木兎の寝やうとすれば時雨かな 中川乙由
木斛のてり葉を風にしぐれ哉 支考
木母寺はしぐれも夜~の方はづれ 鈴木道彦
杉たつる門に蚊の鳴しぐれ哉 高井几董
杉の森天狗おそろし時雨哉 林紅
村しぐれ一二の橋の竹笠屋 荷兮
村しぐれ跡はこぶねの*篝かな 芦角
村たちてぬれたる文や初しぐれ りん女
村時雨めいわく川や数しらず 正秀
村時雨中に立たる虹ひとつ 千川
村時雨山は男鹿のなみだかな 馬場存義
杣が火のけぶり行あふしぐれかな 成田蒼虬
杣小家の焼さしは何初しぐれ 中川乙由
来た時雨能句したいとつのめ立 泥足
来る冬をまたぬ時雨ぞ哀なれ 露川
来月は猶雪降ンはつしぐれ 千里
東人窓に時雨を見とれけり 三宅嘯山
東雲やしぐれめく物先あはれ 土芳
松に蔦片手うちなる時雨かな 野口在色
松のほど時雨の楯となる菴 加舎白雄
松ばらや時雨せぬ日も冬のをと 杉風
松五尺そよやことしの初時雨 尚白
松低きさとやしぐれの鴉あれ 井上士朗
松原のすきまを見する時雨哉 其角
松原の御製にもるゝ時雨かな 許六
松陰の硯に息をしぐれ哉 其角
松風のぬけて行たるしぐれ哉 千代尼
松風の里は籾するしぐれ哉 嵐雪
板壁や馬の寐かぬる小夜しぐれ 史邦
板壁や馬の寝かぬる小夜しぐれ 中村史邦
枯ながら時雨をしぼる柳哉 三宅嘯山
枯菊の夜るは淀のる初時雨 野坡
枯葛の夜るは泣のかはつしぐれ 野坡
柊はしぐれぬ顔で咲にけり 素覧
染かけて山へ日の入る時雨かな 玄武 新類題発句集
染らねば時雨匂はす葱ばたけ 野坡
染物に星の入たるしぐれかな 探志
柳など梢は重し初時雨 去来
柳にも雫みじかしはつしぐれ 千代尼
柴の戸に夜明烏や初しぐれ 建部巣兆
柴の戸やしぐれた跡の雲の減 丈草
柴はぬれて牛はさながら時雨哉 其角
柴売の柴にことかくしぐれ哉 正秀
柿の葉のまだひらついてしぐれ哉 如行
柿包む日和もなしやむら時雨 露川
栩搗か引板の名残か村しぐれ 千那
根はなしと罪ゆるさるゝしぐれ哉 三宅嘯山
梅の木は苔のつくなりはつしぐれ 寥松
梅の樹の容すはつしぐれ 高井几董
梅咲り松は時雨に茶を立ル比 杉風
梟の身をまかせたるしぐれかな 夏目成美
梨の花しぐれにぬれて猶淋し 野水
梵論~の時雨すがたや京の町 長翠
棒公の棒であしらふ時雨哉 朱拙
棹鹿の身すかしもどる時雨哉 寂芝
椎柴に間なき時雨のはこび哉 加舎白雄
楠の根を静かにぬらす時雨哉 与謝蕪村
業平にしぐれのうたはなかりけり 鈴木道彦
楮ひたす水もにごさぬしぐれ哉 卓池
楯つきて待やむかふも時雨雲 正秀
橋筋は夜の賑ふしぐれかな 成田蒼虬
次ぎ歌の友やしぐれの霊迎へ 長翠
歟の声の時雨成けり軒の暮 野坡
止めば降る時雨の坂や五十町 馬場存義
正風は此人よりぞはつしぐれ 恵風 ふるすだれ
此あたり何をあてどに時雨るゝぞ 諷竹
此うへは白きものとてしぐれけり 千代尼
此ごろの野辺にまたるゝ時雨かな 樗良
此なみだ我か人のか村時雨 乙訓
此はづみ風がぬかさぬ時雨かな 野径
此中はしぐれても立ッ日数かな 野坡
此別れにつこりとして時雨けり 露川
此墓の三とせは夢にしぐれかな 智月尼
此寐覚かねて時雨の板びさし 寥松
此月の時雨を見せよにほの海 曲翠
此比のむかしになりし時雨かな 嵐青
此法やはなは降らでも初時雨 野坡
此猿はやしろ久しき時雨かな 園女
此畑に大根のこる時雨かな 嵐青
此釜の煮えかあらぬか初時雨 蓼太 発句類聚
此顔がもとの我なり幾時雨 木因
武蔵野やいく所にも見る時雨 舟泉
比叡おろししぐれの度や寝床替 丈草
比叡までものぼれ時雨のはしり舟 李由
比良の雲湖水に夜の時雨哉 凉葉
気がつけば夢の中にも時雨哉 路青
気のうつる石のくぼみや初時雨 りん女
水枯や石川ぬらす初しぐれ 荷兮
江戸住やしぐれ問こす人ゆかし 黒柳召波
江戸桜心かよはんいくしぐれ 濁子
江戸瓦しまぬ程ふる時雨かな 露言 富士石
池の星またはら~と時雨かな 立花北枝
池の星又はら~と時雨かな 北枝
沖の雲しぐれて帰れ後脊山 加藤曉台
沖西の朝日くり出す時雨かな 沾圃
沖見ゆる障子の穴もしぐれけり 桜井梅室
河原毛の烏帽子の上や初しぐれ 去来
沸音の時雨を風炉の名残哉 田川鳳朗
油断せぬかほや時雨るゝ琵琶法し 北枝
泉涌寺を顔でをしゆる時雨かな 成田蒼虬
洩るまでは聞すましけりさよ時雨 桜井梅室い
洩る月をなぐさめかねて行しぐれ 井上士朗
流れたる雲や時雨るゝ長等山 北枝
流人船実に時雨て見贈りぬ 加舎白雄
浮出し海人佗しげな時雨かな 三宅嘯山
海山のしぐれつきあふ菴の上 丈草
海山の骨を見するや初しぐれ 游刀
海川の乗らぬ所を時雨かな 紫道
海越に田地をぬらすしぐれ哉 里東
淋しさに宿や時雨のくだり闇 松窓乙二
淡路より時雨もすなり月も照 松岡青蘿
淡路山つゝぽりとして時雨けり 壺中
深川の豆煎噺時雨けり 田川鳳朗
深川は月もしぐるる夜風かな 杉風 続別座敷
深川は月も時雨るゝ夜風かな 杉風
深草へ便のほしきしぐれかな 木導
深谷やしきる時雨の音もなし 嵐雪
渋柿も紅粉や流れて初時雨 露川
渋鮎や扨は水にも露しぐれ三宅嘯山
渡し守ばかり蓑着るしぐれ哉 傘下
湖を屋ねから見せん村しぐれ 尚白
湯豆腐や都は知らず北時雨 仙化
漸と京に着けり村しぐれ 芙雀
澄月にかゝる曇りや露しぐれ 三宅嘯山
濡がみに日は包まれて時雨けり 素丸 素丸発句集
濡にける的矢をしはくしぐれ哉 炭太祇
瀟湘の灯のさやはづす時雨哉 土芳
火ともしの何もかぶらで露しぐれ 加舎白雄
火燵切思案の中やはつしぐれ 吾仲
炭がまや烟からみて行時雨 五明
炭売やいかに時雨るゝ皃の形 小春
煙帛にじめ~とふるしぐれかな 松窓乙二
片庇飯櫃過るしぐれ哉 一笑(金沢)
片日影棺ゆく野の時雨かな 伊藤信徳
片袖は人に見せばやはつ時雨 亀世
片袖をほせば片袖しぐれかな 梢風尼
牛が来てしるう成ほど時雨けり 許六
牛の子も鼻ゆるされて時雨哉 中川乙由
牛の子や杭にすり付むらしぐれ 泥足
牛売て伯父と道きる時雨かな 去来
牛馬のくさゝもなくて時雨かな 浪化
物の葉につれだつ音や初しぐれ りん女
物音の夜な~変るしぐれ哉 望月宋屋
犬の子のかさなり転ぶしぐれ哉 百里
犬吼る昼も淀野のしぐれかな 夏目成美
狂乱のこゑや時雨る角田川 不碩 伊達衣
独居や古人かやうの小夜しぐれ 井上士朗
狭布子のひとへ夢の時雨の五月庵 杉風
猪に誰かけられし夕しぐれ 加舎白雄
猫鳥の行列もなき時雨哉 荻人
玄関にて御傘と申時雨哉 炭太祇
玉まつり時雨のすがた眼にうかぶ 樗良
玉笹や不断時雨るゝ元箱根 西鶴
琴箱を荷ひゆくなり夕しぐれ 加舎白雄
瓢箪のかたまりすます時雨哉 斜嶺
瓢箪の形も定るや初しぐれ 中川乙由
生て世に寐覚うれしき時雨哉 黒柳召波
田はもとの地に落付や初時雨 千代尼
田舎気の見ゆる処や初しぐれ 成田蒼虬
畠ふむ鳥も山見る時雨かな 凉菟
番雁の畔もちかねるしぐれかな 鈴木道彦
畳屋のいなでぞありぬ夕しぐれ 高井几董
疇道をうろたへ廻る時雨かな 正秀
痩像に魂を入歟小夜しぐれ 松岡青蘿
痩臑をさすりて時雨聞夜哉 五明
白壁によごれ待なり初しぐれ 中川乙由
白河に袖かき合すしぐれ哉 望月宋屋
白菊の残る甲斐あるしぐれかな 成田蒼虬
白雲の里の時雨や檜木笠 荊口
白雲や時雨かゝゆる町の上 卯七
百までといはるゝ顔の時雨哉 朱拙
百年の芭蕉しぐれのあるじ哉 樗良
皃しらぬ世にも泣さん時雨かな 土芳
盗捨売にするしぐれかな 朱拙
目出度さを松に顕はす時雨哉 越人
相傘は医師ともす也むら時雨 馬場存義
真赤にしぐれも待ず唐がらし 諷竹
真野は二度かた田は今や初時雨 野坡
眼にのぼる花かき交て一しぐれ 加藤曉台
瞬をひきたてゝふれ初しぐれ 卓池
石くろく晴残してや一しぐれ 土芳
石経の墨を添けり初しぐれ 丈草
石臼の陰のしぐれてあそこ爰 丈草
砂山や小松ありつく初しぐれ 素覧
砂清し時雨過行鳥居さき 成田蒼虬
碁にまけてつれなく見ゆる時雨哉 杉風
神帰り根笹に走る時雨哉 為有
神鳴がなふて待るゝ時雨かな 中川乙由
神鳴のまことになりし時雨哉 其角
稲垣の見ゆるところや初しぐれ 成田蒼虬
穴熊の出ては引込時雨かな 為有
空鮭にあふてや其程初時雨 吾仲
突出した舟はのがるゝ時雨かな 桜井梅室
窓ぶたになるやしぐれの松のかげ 井上士朗
窓明て双紙洗やはつ時雨 中川乙由
立がれの松や素肌にむら時雨 魯九
立よれば祢宜はしる人時雨の火 早野巴人
立臼のぐるりは暗し夕しぐれ 樗良
竪横と屏風に暮て時雨かな 浪化
竹に来て猶脚はやき時雨哉 野坡
竹の絵を掛て悲しき時雨哉 孤屋
笠とれば六十皃の時雨かな 園女
笠に着た黒木は売てしぐれけり 桜井梅室
笠を泣時雨なつかし北南 望翠
笠取よ富士の霧笠時雨笠 其角
笠提て塚をめぐるや村しぐれ 北枝
笹の葉に西日のめぐる時雨かな 椎本才麿
筆屋が軒鹿の涙や時雨行 凉菟
筆嶋を時雨寄てや千句塚 中川乙由
箒目の角もとれざるしぐれ哉 素覧
簑ほしと石も今日泣けはつ時雨 田川鳳朗
簑を着て鷺こそ進め夕しぐれ 其角
簑笠の翁しぐれしむかし哉 万子
簑笠もほからかし行時雨哉 左次
簑箱の古実聞たし初時雨 支考
米山のふる道ゆがむはつしぐれ 成田蒼虬
糸に只声のこぼるる時雨かな 鬼貫
約束に手はじく夜の時雨哉 りん女
紅葉引船もしどろに時雨かな 許六
細き灯もあらたに光る時雨かな 桜井梅室
結構な日を定てや初しぐれ 舎羅
網けふこそ比良の初しぐれ 木節
網さらす松原ばかりしぐれかな 素堂
綿ざねのいりつく音や村時雨 吾仲
綿売のすげなきものに時雨かな 桜井梅室
義仲寺のふみ濡て来る時雨かな 桜井梅室
羽折かさむ月にかゝれる村時雨 杉風
羽織着て出かゝる空の時雨かな 高井几董
翁見む夢のしぐれは誠にて 松岡青蘿
翌日もふるとてけふも降時雨かな 松窓乙二
耳にある声のはづれや夕時雨 土芳
耳にある声の外也夕時雨 土芳
聞からに胸ふさがるゝ露時雨 路健
聞しよりかくも時雨の筑波ふき 寥松
肝心の日は時雨けり大根曳 洒堂
背中むく里の住居や夕しぐれ 嵐青
胸に手を置て寐覚るしぐれ哉 水颯
腹のなるをとも更行しぐれかな 旦藁
舎りうれし時雨乾かす我衣 高桑闌更
舟人にぬかれて乗し時雨かな 尚白
舟~の片腹おかし横時雨 傘下
色かへぬ松やしぐれのあまし物 野水
芋ほりに男はやりぬむら時雨 風国
芋喰の腹へらしけり初時雨 荊口
芝うらや時雨て帰る牛の角 加舎白雄
芝うらや時雨れて帰る牛の角 白雄 白雄句集
芝原の生キ出てかなしつゆしぐれ 白雪
芥子苗のうごきそへけり初しぐれ りん女
芥火の細口あけてはつ時雨 成田蒼虬
芭蕉~枯葉に袖のしぐれ哉 風麦
花鳥やあつめて塚の初しぐれ 昌房
苔ながらいく世男松の露しぐれ 句空
苔に水聞ちからなき時雨哉 舎羅
苫船や夢に時雨るゝ八幡山 松岡青蘿
茅ふく軒をしぐれのまことかな 井上士朗
茅屋に俤のこる時雨かな 正秀
茶に塩のたらぬ朝也はつしぐれ 成田蒼虬
茶を呑ば茶ばたけに降る時雨かな 野坡
茶を煎て時雨あまたに聞なさん 嵐雪
茶袋に泪のかゝる時雨かな 路青
草に木につかはれながら村しぐれ 惟然
草の戸に焼火はほそし夕時雨 桃妖
荒海の鳥もきこゆるしぐれかな 卓池
菅笠や似たと泣出す袖時雨 亀洞
菊の日のきくより白きしぐれ哉 松窓乙二
菊の香や鼻からぬけて露時雨 吾仲
落さふな雲の茂みや時雨先 浪化
落日の稲妻なして時雨けり 三宅嘯山
落葉せぬ京もふるびや初時雨 露川
葉はしぐれ根は水清し冬の芹 野坡
葉多葉粉に一ぺん降や初しぐれ 露川
葛葉よりかさつく比のしぐれ哉 許六
蒟蒻の湯気あたゝかにしぐれ哉 猿雖
蓑むしの死なで鳴夜や初しぐれ 松岡青蘿
蔓ものゝつるのゆるみやはつ時雨 露印
蔦の葉の落た処を時雨けり 此筋
蕎麦腹に扨も時雨の降ッたりな 白雪
蕪菜に田舎だよりの時雨かな 吾仲
藁焼てうちは音なき時雨哉 中川乙由
藤ばかま香のをとなしく時雨ふる 寥松
藤豆のまだ咲たがるしぐれかな 寥松
蘿の葉の細かに動くしぐれ哉 助然
蜀黍の陰をわたるや露時雨 荷兮
蟷螂の座鋪つくるや初しぐれ 寂芝
蟷螂の羽も染にけりつゆしぐれ 三宅嘯山
行しぐれ簑着て追んおもひあり 加舎白雄
行灯をかゝげさしてや初時雨 含粘
行違ふ船にものいふしぐれかな 井上士朗
行雲のはし乱ッゝ初しぐれ 高桑闌更
衰やしぐれ待身となりにける 黒柳召波
袖しぐれ百二十里を墓参り 望月宋屋
袖つまにもつれし雲や露時雨 嵐雪
西行もしばし棚かるしぐれ哉 尚白
見しり逢ふ人のやどりの時雨哉 荷兮
角田川舟ちん高き時雨かな 蕉雨 八巣発句集
言信るしぐれや我が病ムまくら 杉風
言葉尽て扇に画し雪しぐれ 樗良
訪ひに行うちに月見るしぐれかな 亀世
誰肩に牡丹の旅や初しぐれ 曲翠
豆腐やの火影たよりや小夜時雨 程已
責馬のいくつ残るぞ初しぐれ 左柳
買切と馬にのり出すしぐれかな 雪芝
赤ばるやむなしき苔を初時雨 文鳥
起出る間に音絶えし時雨哉 田川鳳朗
足たゝぬ蛭子ふねなき時雨かな 野坡
足癖になるやしぐれの里めぐり 野坡
足袋はいてじつとして居る時雨哉 杉風
跡遠く時雨て来たり今朝の事 左柳
跫もきえて時雨の又寐かな 朱拙
踏分る杖のあまりのしぐれかな 野坡
軒に来て我ぞ鳩啼露時雨 除風
軒のしぐれ地の霜池もいく古び 完来
軒下のふりこふらつく時雨哉 泥足
軒口の乱るゝ穂屋のしぐれ哉 望月宋屋
近付の道具も出たりはつしぐれ 凉菟
近江笠越前簑のしぐれ哉 千那
近江路や紀の路に消る時雨哉 土芳
近道をおもひこなしてしぐれかな 野紅
近道を阿闍梨につるゝ時雨哉 園女
迯尻を笑ふからすもしぐれかな 正秀
追ついて霰の跡のしぐれ哉 旦藁
追鳥の幸得たるしぐれかな 卓池
逢坂の先ぬるゝほど時雨けり 許六
遊びやうわすれて居るに初時雨 土芳
道~やしぐれを照らす柿の色 樗良
都染江戸に向きけり初時雨 言水 江戸十歌仙
酒になるげんかい灘のしぐれ哉 野明
酒や時雨のめば紅葉ぬ人もなし 松氷貞徳
酒桶を只干兼ししぐれかな 許六
野ざらしの露よしぐれよ剃髪塚 樗良
野は霍の嘴ふりあげて初しぐれ 成田蒼虬
野路くれて牛の貝ふく時雨哉 卓池
野風ふく室町がしら初時雨 高井几董
金屏に乾く時雨のやどりかな 中川乙由
釣柿の夕日ぞかはる北しぐれ 其角
錦織家見によればしぐれ哉 高井几董
鍋屋からかぶつて戻る時雨かな 木導
鍋本にかたぐ日影や村しぐれ 丈草
鐘つきて肝のつぶるゝ時雨かな 非群
鐘の音あらひ立たる時雨かな 木導
鐘の音やしぐれ降行あとのやま 加藤曉台
鑓持の猶振たつるしぐれ哉 正秀
門てるや裏の片屋の横しぐれ 角上
門口や夕日さし込村しぐれ 一笑(金沢)
門番の膝にかゝるや北しぐれ 木導
降うちに亦異音の時雨かな 琴風
降さしてまた幾所か初しぐれ 千代尼
降そめてふりもさだめずはつ時雨 樗良
降て来るしぐれや野路の松二本 壺中
降にけり紅葉らうへのはつしぐれ 成田蒼虬
降らぬ日の猶定まらぬ時雨哉 田川鳳朗
降中へふりこむ音や小夜時雨 五明
降出して時雨は負る日よりかな 紫貞女
降込て硯をぬらす時雨かな 亀世
降雪を泥にこねたる時雨哉 正秀
隠家の森やしぐれの青幣 りん女
雑魚はまのごつたに見える時雨哉 寥松
離別荷の潜にぬれるしぐれ哉 三宅嘯山
難波女の駕に見て行しぐれ哉 高井几董
雨にわかち風にまぎるゝしぐれかな 樗良
雪までのなじみを竹の時雨かな 小西来山
雪見ゆる峰をかくして初時雨 高井几董
雪雲は愛宕にたばふしぐれ哉 浪化
雲しぐれかゝるや星の白眼がち 正秀
雲はあれど時雨もたねばたゞ寒し 井上士朗
雲はしぐれ鐘は其世の感に伏 加藤曉台
雲よりも先にこぼるゝしぐれ哉 去来
雲母行豆腐にかゝるしぐれ哉 黒柳召波
雲水のうつゝ海道は時雨けり 凉菟
雷おつる松はかれ野の初しぐれ 丈草
雹ふれ時雨の雲の行だまり 子珊
霄の中上野浅草としぐれけり 夏目成美
霄暗を時雨わかるゝ小舟かな 加舎白雄
霜時雨それも昔や坐興庵 嵐雪
露しぐれその間をいそぐ夕日哉 乙訓
露しぐれ我目にのみや虹のさす 三宅嘯山
露しぐれ時雨し跡の照る日哉 高桑闌更
露時雨さしては来り聾傘 挙白
露時雨しぐれんとすれば日の赤き 加舎白雄
青海の根は切れて来る時雨哉 百里
青鵐啼くやしぐれの先ばしり 井上士朗
静さやしぐれこがらし休むとき 桜井梅室
面うちの宿にしぐれの旅寐哉 早野巴人
面白や時雨る透間の流星 探志
音のした戸に人もなし夕時雨 有井諸九
音のみぞ深山しぐれは木のあなた 寥松
頓て入る月や二日の夕時雨 史邦
額板や時雨転じて胡粉の霜 牧童
顔あげてきけば寐覚の河時雨 芙雀
顔しらぬ世にもなかせんしぐれ哉 土芳
類ひなや鰤の脊さらし初時雨 樗良
風はやし時雨待とる峯の松 猿雖
風雲や時雨をくゞる比良おもて 丈草
飛石のしめり加減やはつ時雨 中川乙由
食どきにさしあふ村のしぐれ哉 去来
食堂に雀啼くなり夕時雨 各務支考
食堂に雀啼なり夕時雨 支考
食焼て柴ぬらしけりはつしぐれ 許六
飼猿の引窓つたふしぐれ哉 其角
首かけん笠ぬいの島初しぐれ 西鶴
馬かりて竹田の里や行しぐれ 乙訓
馬の尾に払ひ行なる時雨哉 望月宋屋
馬の背を染よしぐれの紫根 長翠
馬はぬれ牛は夕日の村しぐれ 杜国
馬道は梺をまねる時雨かな 呂風
馬道は麓を廻るしぐれかな 呂風
馬鑓の空もしぐれの往来かな 土芳
馬駕籠も時雨にかなし墓参 呂風
駅路で人にとはるゝしぐれ哉 りん女
駕籠舁は百の空見るしぐれかな 野坡
驚かぬ網引のさまや初しぐれ 高桑闌更
魂まつり雪も時雨も袖の露 樗良
魚鳥もたらで我等がしぐれ神 長翠
鰒も出て浮世を渡る時雨哉 吾仲
鰯やくかざも伏見の時雨哉 臥高
鰹の木にたよる山路の時雨哉 牡年
鱗のこゝろはふかしはつしぐれ 加藤曉台
鳥の羽もさはらば雲の時雨口 丈草
鳥急におどろく松のしぐれ哉 仙化
鳥羽田には時雨ふるらし水菜船 加藤曉台
鳰の巣のあらはなるよりしぐれそめ 加藤曉台
鳳まはる平等院の時雨かな 尚白
鳴海にてしぐれそめけり草鞋の緒 井上士朗
鳴門時雨れて浮世の松は風もなし 大淀三千風
鳶の羽もかいつくろひぬ初しぐれ 向井去来
鳶の羽も刷ぬはつしぐれ 去来
鳶尾の葉はみなぬれにけり初しぐれ 鼠弾
鴬のすり込竹のしぐれ哉 紫白女
鴬やしぐれにまじる藪の音 朱拙
鶏の尾に入日はさしてしぐれ哉 望月宋屋
鶏頭の花に持て来る時雨哉 岱水
鶴啼もあてにはならず夕しぐれ 成田蒼虬
鷺ぬれて鶴に日のさすしぐれ哉 与謝蕪村
鷺烏片日がはりや夕時雨 其角
鹿の声跡はしぐれて明にけり 凉菟
鹿の音や松にしぐれて九月尽 除風
麦糞の土に落つくしぐれ哉 李由
黄昏や月見えそめて時雨二度 桜井梅室
黒みけり沖の時雨の行どころ 丈草

以上
by 575fudemakase | 2016-11-14 10:12 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 続補遺 1

時雨 続補遺 1

(殺生石)此石やまづ目にたてゝ初しぐれ 寂芝
*かっこどり鳩きかぬ時節のしぐれかな 昌房
*かりやすを呼込比やむら時雨 露川
*しに馬の野経読立つ時雨哉 五明
あそばるゝほどに時雨て月夜かな 朱拙
あたらしき紙子にかゝるしぐれかな 許六
あたゝかに宿は物くふしぐれ哉 野坡
あの松に言の葉残る時雨哉 夕兆
あはれさや時雨るゝ頃の山家集 山口素堂
あふさかは草鞋のうるゝしぐれかな 風国
あふ坂で行違ひけり初しぐれ 諷竹
ありやうは緞子に寐たし初時雨 支考
あり数の宮も藁家もふる時雨 鈴木道彦
あれ聞けと時雨来る夜の鐘の声 其角
いくしきり時雨て行や経の内 游刀
いくしぐれつくりかけたる庵あり 杉風
いさかひに根もなき市の時雨哉 正秀
いそがしや沖の時雨の真帆片帆 去来
いたゞいて硯ならぶるしぐれかな 田川鳳朗
いつの旅もしぐれさそはぬ事ぞなき 松窓乙二
いまのしぐれは松にかゝれる夕日哉 越人
うきことをしらぬ所へしぐれゆく 諷竹
うき雲のけふは迷はずしぐれけり 桜井梅室
うぐひすのしのび歩行や夕時雨 炭太祇
うぐひすの卯時雨に高音哉 高井几董
うたがふなむかし時雨し月の松 田川鳳朗
うちかづく衣笠山や一しぐれ 馬場存義
うちよれば去年のやうに時雨哉 土芳
えり当しけふや時雨の中日和 野坡
おそろしき雲も心や初時雨 中川乙由
おとなしき時雨を聞くや高野山 鬼貫
おとゝしの竹色かへぬしぐれかな 桜井梅室
おもしろき人を呼出す時雨哉 其角
おもひ出す客の機嫌もしぐれ月 浪化
かけ廻る夢に追付ヶひと時雨 琴風
かけ蓑やしぐれ降夜の友は誰 完来
かさ~と紅葉ふむ間に時雨けり 鈴木道彦
かしこまる後も壁のしぐれ哉 浪化
かた袖をひかで戸立るしぐれかな 十丈
かた~は藪のてつだふしぐれ哉 丈草
かつらぎの神もおたちか小夜時雨 露川
かなしさや時雨に染る墓の文字 浪化
からかさに駒のほさるゝしぐれかな 助然
からかさはよき道づれよしぐれ空 卓池
からかさもさしていらぬや村時雨 尚白
から崎のかたへしぐれて行人か 凉菟
から船の黒津に戻る時雨かな 探志
きのふけふあしたは只のしぐれ哉 千代尼
きのふけふ我身になるゝ時雨哉 樗良
きら星の雲は見へずも時雨けり 三宅嘯山
きり~す死ぬほどふれ初時雨 紫白女
くま刷毛に上野のしぐれそゝぎけり 夏目成美
けふあすとうかゞふ雲のしぐれ哉 除風
けふこそは日比忘れぬ時雨かな 桜井梅室
けふだけの水は来る也時雨の輪 成田蒼虬
けふにあたる時雨悲しや昼眠り 知足
けふもまたうどんのはいる時雨哉 其角
こがらしの地にも落さぬしぐれかな 向井去来
こがらしの里はかさほすしぐれ哉 一笑(金沢)
この下の木樵もかゞむ時雨かな 野坡
この日数の故人をおもふしぐれかな 加舎白雄
この比の垣の結目やはつ時雨 野坡
この頃の垣のゆひめや初しぐれ 野坡 続猿蓑
こばしりて村に入る日や初しぐれ 風国
こゝはまだ汐の傍ふる時雨哉 素行
さくら見るけふも時雨のやどり哉 松岡青蘿
さし越スや深山時雨のぬれ筏 加藤曉台
さし足をわすれて闇の時雨哉 正秀
さびしさの時雨や人の胸さらヘ 芦角
さめ~としぐれふくめり月の眉 長翠
さよしぐれ又寐覚けりたばこ盆 望月宋屋
ざゞんざや猶浜松にはつしぐれ 北枝
しぐるゝや時雨れぬ町の時太鼓 桜井梅室
しぐれうとおもふて咲や枇杷の花 野坡
しぐれけむしみ~となる四方の空 荷兮
しぐれけりはしり入けり晴にけり 惟然
しぐれけりほち~高き竹の節 松窓乙二
しぐれけり今夜は聞し箸洗ひ 諷竹
しぐれけり土持あぐる芋がしら 松岡青蘿
しぐれけり宿のはづれの枯薄 除風
しぐれけり尾根のすかひにわらび焚 加藤曉台
しぐれじと浦人申曇かな 長翠
しぐれする音聞初る山路かな 黒柳召波
しぐれせぬ時には雲に鳶一つ 野坡
しぐれせよ翁の夢のきえしほど 松窓乙二
しぐれそめてばせを葉翌を繕はず 加藤曉台
しぐれそめて汐ふく海士の行衛哉 土芳
しぐれたか山田より出し壺荷ひ 諷竹
しぐれづく雲にわれたる入日哉 杉風
しぐれてぞいかにも出たる不破の月 井上士朗
しぐれてや大分見ゆる桜の木 松窓乙二
しぐれにてはなかりける夜の悋気声 早野巴人
しぐれねばものあらたまる日もあらず 加藤曉台
しぐれねば又まつ風のたゞをかず 北枝
しぐれはれて白雲白く松高し 樗良
しぐれむとしては雲ちる嵐かな 卓池
しぐれ会や客を連来て錠明る 鈴木道彦
しぐれ川水の覚えに曲りけり 田川鳳朗
しぐれ待のみをのゝえの朽法師 松窓乙二
しぐれ来て園のにしきを蹈日哉 高井几董
しぐれ来て水しはだちぬ湖の暮 完来
しぐれ来ぬ柱の穴をほる音に 長翠
しぐれ来やさしくる傘のはぢき書 北枝
しぐれ来るあすをもまたで旅の空 井上士朗
しぐれ気のなふて一日小春かな 路通
しぐれ行果は一むらのけぶり哉 加藤曉台
しぐれ行雲のあはいや薄日照 十丈
しぐれ見る窓へ蚊一ツ入にけり 桜井梅室
しぐれ過て草に落来ぬ松の風 高井几董
しぐれ野や吹かれてすごき鷹の草 野坡
しづかさは赤松石を時雨哉 風国
しづ~と来たのにぬるゝしぐれ哉 田川鳳朗
しのゝめにしぐれめくもの先哀 土芳
しばらくを乞食の化粧ふ時雨哉 木因
しほるゝやまだき時雨の藤衣 錦江女
しよろ~と時雨て越や鼠が関 魯九
しら菊の表はしろし初しぐれ 木因
しゝ~し若子の寝覚の時雨かな 西鶴
その中に唯の雲あり初時雨 千代尼
その影や時雨て雲に一むかし 北枝
その筈とおもへどぬるゝ時雨哉 知足
その苫の寒さを菊に時雨けり 凉菟
その言よ月も時雨て塚の前 十丈
そも~や地雨もあはれ初時雨 荊口
たふとさや息つく坂の初しぐれ 正秀
たらずまへ橋に柴おくしぐれ哉 成田蒼虬
たゞかふた草で有しかはつしぐれ 寥松
だまされし星の光や小夜時雨 羽紅女
だゞひろき庭も払はずむら時雨 舎羅
ちからなき御宿申せし時雨かな 諷竹
ちからなく軒を見廻すしぐれ哉 風国
ちとはやうよしのゝ奥の時雨哉 一笑(金沢)
つぎ哥のこれぞしぐれの物語 加舎白雄
つつくりとひとり時雨や夜もすがら 凉菟
つら~と杉の日面行しぐれ 加藤曉台
づぶぬれの合点で鷺はしぐれ哉 白雪
とつかよりほどがやへ二里時雨けり 諷竹
とてもならゆふ暮見たし初しぐれ 寥松
とにかくに篠家はむすべ時雨人 松窓乙二
とり~のけしきあつむる時雨哉 沢雉
とろ~と寐入所を時雨けり 芙雀
ながらへるはづよ時雨もゝらぬ松 桜井梅室
なき跡や時雨てたつる古障子 洞木
なつかしき文見つけたり初しぐれ 田川鳳朗
なべて世は留主なき神の時雨哉 田川鳳朗
なまぐさき里をはなれてしぐれ哉 野明
ならの葉の布になりてやもる時雨 凡兆
にぎやかに菊は咲けり初時雨 浪化
にじり~枴の先や片しぐれ 百里
によこ~と雲の景色や露時雨 桃先
ぬしは誰時雨かたまる小長刀 早野巴人
ぬれわたる鶴の背中や初時雨 許六
ぬれ色を石に残して初しぐれ 舎羅
はこび行や何もない野の初時雨 猿雖
はしり込時雨の門やひとり言 朱拙
はし~は時雨つ九万八千軒 蘆本
はじめての日や漸と一しぐれ 諷竹
はつしぐれけふ汐竈も薄烟り 成田蒼虬
はつしぐれしばらく有て波ひとつ 成田蒼虬
はつしぐれたがはぬ空となりにけり 加舎白雄
はつしぐれまだ朝がほの花ひとつ 杉風 杉風句集
はつしぐれやむやしばしのから錦 樗良
はつしぐれ川砂ながれ止みにけり 寥松 八朶園句纂
はつしぐれ憂世の輪迄ぬけし事 桃隣
はつ時雨よてな女の後帯 遅望
はつ時雨帆に色~の責道具 凉菟
はつ時雨戸あけてミれバ反歩也 山店
はつ時雨戸あけて見れば反歩なり 山店 芭蕉庵小文庫
はつ時雨野守が宵のことばかな 井上士朗
ひか~と池の金魚やむらしぐれ 壺中
ひた~と落葉地につく時雨かな 桃妖
ひつぢ田の麦より青き時雨哉 尚白
ひとしぐれ塚をめぐると見る斗 成田蒼虬
ひと岬は汐汲で居るしぐれ哉 成田蒼虬
ひと時雨するや素堂が嫁菜迄 松窓乙二
ひと朝の時雨の色も拝みたし 成田蒼虬
ひへながら打寐て時雨きくばかり 北枝
ふたつの江尻眼にかけて初しぐれ 成田蒼虬
ふりよ~とても時雨の竹之丞 鈴木道彦
ふり初て日半~の時雨かな 句空
ふり~てあはれはつゞくしぐれかな 野坡
ふる中へ降りこむ音や小夜しぐれ 吉川五明
ふる~と昼になりたる時雨かな 臥高
へら鷺も時雨見かけしかせぎかや 鈴木道彦
まだ鹿の迷ふ道なり初しぐれ 千代尼
まづそらは物のたらざる時雨かな 野紅
まな板の音時めかすしぐれかな 成田蒼虬
みぞれとは時雨に花の咲た時 支考
みぞろ木やしぐれてはこぶ皐月雨 鈴木道彦
みづうみの泡しづまりてしぐれかな 完来
むかしおもふ時雨降る夜の鍋の音 鬼貫
むかしかな今かな軒のはつしぐれ 完来
むきたらで又やしぐれの借り着物 丈草
むざ~と蕎麦殻くさる時雨哉 桃後
むすぼれた所をといて時雨哉 塵生
むらしぐれ三輪の近道尋けり 其角
むらしぐれ古市の里にしばしとて 黒柳召波
むらしぐれ経書堂をやどりかな 馬場存義
むら時雨されどもものはそこなはず 小西来山
めしの泡引ころ庵のしぐれかな 成田蒼虬
もたれたる柱も終にいそしぐれ 丈草
ものゝふの宿は時雨やかゞみ立 早野巴人
もの買ふて京は時雨のやどり哉 馬場存義
もめあふて雪も時雨も来ぬ日哉 田川鳳朗
もらぬかと先おもひつく時雨哉 牡年
もらぬほど今日は時雨よ草の庵 斜嶺
やねふきの海をねぢむく時雨哉 丈草
やよしぐれ出来合喰し中やどり 一笑(金沢)
ゆふべより降まさりッゝ小夜時雨 樗良
わかい時見ぬ暁のしぐれ哉 小西来山
わすれじな湯豆腐あつき時雨の夜 樗良
わりなくて願ひあてけり時雨の日 鈴木道彦
われをよけ~してはつ時雨 田川鳳朗
われ鍋や薪の下もる村しぐれ ト尺
一しぐれあれに里有滝のうへ 露川
一しぐれしぐれてあかし辻行灯 去来
一しぐれしぐれて鴈のさはぎ哉 十丈
一しぐれすかさず啼や山の雉子 成田蒼虬
一しぐれするや五月の雨の中 井上士朗
一しぐれづゝかくれ行岡の松 早野巴人
一しぐれ来るや茶巾のふりなをし 句空
一しぐれ根笹にはしれすゞめ貝 りん女
一しぐれ虎より先に走りけり 桜井梅室
一しぐれ鵜は水底をあさるうち 桜井梅室
一むらの烟はなれて行時雨 加藤曉台
一二度は物にまぎれつ初時雨 許六
一声は鶏もうたふや初時雨 成田蒼虬
一夜きて三井寺うたへ初しぐれ 尚白
一夜づゝ淋しさ替る時雨哉 早野巴人
一方は藪の手伝ふしぐれ哉 丈草
一日に着舟は出ぬ時雨かな 路健
一日は塚の伽する時雨かな 浪化
一疵は簑にをとなし初しぐれ 野坡
一袋松かさ得たりはつしぐれ 白雄 白雄句集
一雲に夜はしぐれけり須磨明石 井上士朗
七とせとしらずやひとり小夜しぐれ 其角
三ヶ月によく時雨たり天の原 半残
三尺の身をにじがうのしぐれ哉 其角
三度くふ旅もつたいな時雨雲 小林一茶
三度まで時雨ていとゞ黒木馬 黒柳召波
三日月もあるやまことの初時雨 桜井梅室
上荷とる薪の上のしぐれかな 芙雀
下手の碁の一番すぐる時雨哉 夕道
不作法に松の月夜をしぐれ哉 吾仲
世にふるはさらにばせをの時雨哉 井上士朗
世の中に老の来る日やはつしぐれ 許六
世の中を絵にかき晴るしぐれ哉 越人
両袖にたゞ何となく時雨かな 惟然
並び居て泣や此道此時雨 北枝
中~に傘も苦になる時雨哉 野坡
九重の人も見え透しぐれ哉 千代尼
乳のみ子に手あてゝ走時雨哉 毛〔ガン〕
乾たり時雨たり我旅姿 凉菟
二夜三夜寐覚とはるゝ時雨かな 松岡青蘿
五十二年ゆめ一時のしぐれ哉 千里
五十歩の兎追ゆる時雨哉 千那
京へ出て目にたつ雲や初時雨 千代尼
人は寐て鼠の顔にもるしぐれ 夏目成美
人を人にかへてほしさよ露時雨 魯九
人恋し杉の嬬手に霧しぐれ 白雄 白雄句集
今に其折も忘れず村時雨 芙雀
今もその折はしぐれてむかし哉 芙雀
今市の市日といへばしぐれかな 許六
今年きく上野の鐘も時雨けり 加舎白雄
今日にあふのみか旅して初時雨 田川鳳朗
今朝見れば松の葉つもる時雨かな 蓼太 蓼太句集初編
仰向て見る人もなきしぐれ哉 千代尼
伏見気で今朝大阪のしぐれかな 小西来山
伐ておく菊を洗ふや一しぐれ 成田蒼虬
休まずにふれや亥の子の初時雨 野紅
何さがす鼠耻かしはつ時雨 其角
何やらん思ふに濡す一しぐれ 土芳
何所やら花の香すなり小夜時雨 松岡青蘿
何気なく着ておはすらん時雨笠 完来
何鳥としらぬもゆかし夕しぐれ 句空
使した犬を撫るや露しぐれ 三宅嘯山
侘られし俤画くしぐれ哉 杉風
便せよ時雨~の冨士の形 中川乙由
俤は軒のあやめのはつ時雨 松窓乙二
俳諧に古人有世のしぐれ哉 高井几董
俳諧の袖も翁も時雨かな 梢風尼
俳諧説て関路を通るしぐれかな 曽良
側藥罐淋しげに涌ク小夜しぐれ 桃後
傘におしもどさるゝしぐれかな 紫貞女
傘の上は月夜のしぐれ哉 黒柳召波
傘提てしらぬ翁ぞむらしぐれ 池西言水
僧うかれけり松はひとりに里時雨 杉風
僧は帰るさらへの道や初時雨 中川乙由
兀山のあたまくだしに時雨哉 蘆本
先以薪のふみやはつしぐれ 凉菟
光なき末のみか月しぐれけり 寥松
兎や角と筧せしより降時雨 建部巣兆
入月やしぐれの雲の底光 丈草
入相や加茂をへだてゝ初しぐれ 風国
八畳の楠の板間をもるしぐれ 其角
公儀しに出れば跡追ふ時雨哉 荊口
其しぐれおふくはしらで泣人か 土芳
其柴の濡色買ん初しぐれ 中川乙由
其筈とてことしの松も時雨けり 小西来山
冬の雨しぐれのあとを継夜哉 黒柳召波
冬瓜の市もくづるゝ時雨かな 木導
凩の地迄落さぬしぐれかな 去来
出女やすこし時雨てぬり木履 洒堂
刀根の二瀬しぐれわけたる渡り哉 加舎白雄
分けあふたやうな時雨や少しづゝ 田川鳳朗
分別のあたまに廻るしぐれかな 助然
初しぐれたとはゞ梅のにほひかな 樗良
初しぐれ今日菴のぬるゝほど 高井几董
初しぐれ傘は余りに新しく 土芳
初しぐれ未つくろはぬ障子より 梢風尼
初しぐれ根笹に飛べよすゞめ貝 りん女
初しぐれ爰もゆみその匂ひ哉 素覧
初しぐれ目にふれ身にもふれにけり 高桑闌更
初しぐれ自在の竹に吹かゝれ 松岡青蘿
初しぐれ草の菴にてはなかりけり 加舎白雄
初しぐれ隣の人も門に立 諷竹
初しぐれ風もぬれずに通りけり 千代尼
初時雨別はこゝぞ馬に鞍 支考
初時雨百舌鳥野の使もどつたか 諷竹
初時雨真昼の道をぬらしけり 露印
初時雨舌うつ海膽の味もこそ 池西言水
初時雨軒に隠者と額もあれ 素覧
初時雨阿仏の旅やつゞら馬 園女
初発心猶つよかれと時雨哉 四睡
化さうな傘おかし村しぐれ 傘下
化に出た狐を化すしぐれかな 小西来山
北がちに見るや伊吹の朝時雨 怒風
北国へこれからはいる時雨かな 嵐青
北山を背中に屹とはつしぐれ 吾仲
十月にちらぬ柳も時雨けり 諷竹
十月にふるはしぐれと名をかへて 北枝
半月や黒ひかたより片しぐれ 尚白
南無月夜南無雪時雨鉢たゝき 井上士朗
原中や星ばつて居て降時雨 如行
又時雨やり過したる月の色 木導
又降はものうたがひのしぐれかな 小西来山
取あへぬ山桝さかなやはつしぐれ 巣兆 曾波可里
取あへぬ山椒さかなやはつしぐれ 建部巣兆
取かへす心も消るしぐれ哉 北枝
取葺やふるき軒もる月時雨 諷竹
口切やみなみは時雨北は雪 木導
口切や峰の時雨に谷の水 野坡
古壁は袖にすれけり小夜時雨 仙化
古郷に高ひ杉あり初しぐれ 荊口
古郷のおもひにしぐれ聞夜哉 樗良
古鳶の魚とりおとすしぐれかな 卓池
只泣て居れば日も立つ時雨哉 路青
名月に時雨干けり棚の上 浪化
名月もふたつ過たりつゆしぐれ 夏目成美
名木の跡へ廻るや一しぐれ 中川乙由
君が名やいづく行衛のほの時雨 土芳
吸物を出せば晴行しぐれ哉 樗良
吹まはす風のしまりや初時雨 北枝
吹上るほこりの中のはつしぐれ 高井几董
吾妻雲時雨する夜は猶ゆかし りん女
喘息に寐つかぬ声や小夜時雨 黒柳召波
喧*嘩より埒の明たる時雨哉 車庸
嘯ば時雨に香あり菊屋酒 小西来山
噂して居たる所へはつしぐれ 諷竹
噺させて置て寐いるや小夜時雨 露川
土山や唄にもうたふはつしぐれ 高桑闌更
在明となれば度~しぐれかな 許六
地にはまだとをらで通る時雨哉 尚白
坊といふ音にしぐれて山路哉 文鳥
垣越の山や松たけ露しぐれ 北枝
埓明ヶた顔や時雨のあとのやま 蘆本
塗ものゝ上にちよぼ~しぐれかな 去来
塚もけふ誠の渡る時雨かな 暁雨 ふるすだれ
塩うりの松原はしる時雨かな 許六
塩間に鮎死かゝるしぐれかな 如行
塵むすぶ麦の葉組や初時雨 紫貞女
墓もどり十方なき世のしぐれ哉 探志
墨吉や今一*しぐれと暮る迄 諷竹
売庵へ米つき覗くしぐれ哉 北鯤
売竹の枝もぐ里やはつ時雨 蘆本
夕しぐれ古江に沈む木の実哉 黒柳召波
夕山や紅葉に翌の時雨雲 成田蒼虬
夕川や霧のしらみを行時雨 加藤曉台
夕日さす波の鯨や片しぐれ 早野巴人
夕暮を少し残して行しぐれ 桜井梅室
夜あらしや時雨の底の旅枕 鬼貫
夜しぐれに小鮠焼くなる匂ひかな 井上士朗
夜しぐれに小鮠焼なる匂ひかな 井上士朗
夜しぐれはよし野にさかりあらし山 井上士朗
夜や闇時雨に染ぬ梅の花 仙化
夜時雨や鳥一啼の枝うつり 野坡
夜着ふとん有のまゝなり初しぐれ 浪化
夢うつゝ三度は袖のしぐれ哉 去来
夢よりか見はてぬ芝居村時雨 其角
夢破るものはしぐれの蹄かな 亀世
大仏もぬれぬ御代ありはつ時雨 許六
大名も簑着て通れ初しぐれ 露川
大根の大根になるしぐれ哉 尚白
大根の延び出るをとや初時雨 りん女
天の原よし原不二の中行く時雨かな 素堂
天井の鼠躁し村時雨 介我
太皷やむ四条面のしぐれ哉 乙訓
妻木とる内侍の尼のしぐれ哉 黒柳召波
宇治木幡京へしぐれてかゝる雲 曲翠
守りてしれ時雨のゆふべ雪の朝 完来
守山のもりを子にする時雨哉 其角
定めなきものなればこそ初時雨 田川鳳朗
客とめむ時雨の雲の通る内 杉風
客とめん山をはなるゝしぐれ雲 杉風
客主月ほどに待しぐれ哉 野坡
室に詣賀茂の時雨ぞ思ひ出る 望月宋屋
宵の中上野浅草としぐれけり 成美 成美家集
宵やみに松はしぐれて通りけり 芙雀
宵闇の杉にさゝやく時雨哉 猿雖
家によりて亭主のしらぬ時雨雲 土芳
家間に野水の見えて初しぐれ 成田蒼虬
宿のない乞食も走るむら時雨 小西来山
宿の時雨さつさ時雨とうたひけり
宿り木のうと~青し初時雨 六窓 新類題発句集
宿札を打や朝露夕しぐれ 除風
宿老に夜番の供やしぐれ降 小西来山
寐心に存分降りぬはつ時雨 田川鳳朗
寝莚にさつと時雨の明り哉 小林一茶
寺深く竹伐音や夕時雨 黒柳召波
小夜*しぐれとなりの臼は挽やみぬ 野坡
小夜しぐれ人を身にする山居哉 其角
小夜しぐれ竹に入おと幽なり 三宅嘯山
小夜しぐれ隣の臼は挽きやみぬ 志太野坡
小夜しぐれ隣へはいる傘の音 嵐蘭
小夜時雨屋根のちかきに休べし 玄梅
小夜時雨船へ鼠のわたる音 早野巴人
小夜時雨誰じやといへば迯るをと 山店
小夜時雨隣へ這入る傘の音 嵐蘭 類題発句集
小女郎にも走りまけたり夕時雨 乙訓
小春とて蝶はくれどもしぐれかな 風国
小田の鷺目も覚さずにしぐれけり 桜井梅室
尼御前の塗笠したふ時雨哉 三宅嘯山
尼達の旅寐催すしぐれかな 建部巣兆
居つゞけの鳥もわたるや初時雨 浪化
屋根*ふきの萱よ~としぐれ哉 蘆本
屋根*ふきや比良の時雨の晴て行 木節
屋根のそしらぬ顔や村時雨 桃隣
屋根取た菊の姿や村しぐれ 三宅嘯山
山々は痩て時雨るゝ今日のみぞ 芦角
山がらの里かせぎするしぐれかな 去来
山ざとや霧の中なるひと時雨 寥松
山に照り川にさす日の時雨哉 紫白女
山の日のをしのけられてしぐれ哉 りん女
山の色やまうす間もなく初しぐれ 寥松
山下や牛にもはこぶしぐれ水 杉風
山人は木祭すらし初時雨 松窓乙二
山吹や時雨をからん笙のぬし 洒堂
山城のとはかは急ぐ時雨かな 黒柳召波
山姥のはやくもめぐるしぐれかな 白雪
山姫の手をこぼるゝや初時雨 望月宋屋
山水をちよつ~とかするしぐれ哉 尚白
山茶花に手をかけたれば時雨けり 井上士朗
山茶花や時雨の亭の片びさし 池西言水
山風や竹箆返しの村時雨 丈草
山~を染てとふるや初しぐれ りん女
峯筋の出来る日もなく時雨哉 荻人
嶋むろで茶を申こそ時雨かな 其角
川上の煎酒にほふしぐれかな 支考
川音の時雨なりけり御用船 支考
巳取に鴨ねだればや初時雨 五明
市中に松を尋ぬるしぐれ哉 支考
市人の炮碌冠るしぐれかな 建部巣兆
常の身にならでもならず時雨哉 土芳
常斎の仲まに入む朝時雨 鼠弾
常盤なる柑子色つくしぐれかな 墨河 江戸の幸
干網に入日染つゝしぐれつゝ 小西来山
平押に五反田くもる時雨かな 野明
年寄れば時雨をだにも待れけり 五明
年月の夢と時雨を手向かな 嵐竹
年毎や花にしぐれにほとゝぎす 樗良
年~に味ひかはるしぐれかな 諷竹
年~や御意得る度に初時雨 支考
幾人かしぐれかけぬく勢田の橋 内藤丈草
幾切にとりなす夜やさら時雨 野坡
幾時雨心そひ行江戸ざくら 濁子
広沢やひとり時雨るゝ沼太良 史邦
底寒く時雨かねたる曇りかな 猿雖
延た夜にしては甲斐なき時雨哉 田川鳳朗
引被る衣の香床し初時雨 支考
張たてゝ傘ほす昼のしぐれ哉 李由
張立の行燈吹ぬくしぐれかな 卓池
張笠に音聞替よ一しぐれ 中川乙由
影の絵に亦追かくる時雨哉 智月尼
彼袴鳶になつたか夕しぐれ 如行
律僧の鼠ぬれ行しぐれかな 小西来山
後の世の事など松のしぐれ哉 諷竹
後の月蕎麦に時雨の間もあらね 松岡青蘿
御さがりと言ん二見の初しぐれ 成田蒼虬
御前には人すくななり夕時雨 越人
御命講のつぶりて走るしぐれかな 許六
御火焼に杉ふる雪の時雨哉 木節
御築地に見こす山辺やいく時雨 炭太祇
御逮夜は芭蕉にうけて時雨けり 百里
御首てる正面通リしぐれけり 高桑闌更
徳利さげて賤の子うたふ時雨哉 四睡
心する紙の匂や夕しぐれ 五明
心せよ時雨も早し東山 成田蒼虬
忍の字を忍ぶとよみてしぐれつゝ 土芳

以上
by 575fudemakase | 2016-11-14 10:10 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 3

時雨 3

横川かのあたり時雨の糸ごしに 成瀬正とし 星月夜
横臥しの片耳を過ぐ夜のしぐれ 丸山海道
樫の木に時雨鳴くなり谷の坊 時雨 正岡子規
樫の木に時雨鳴るなり谷の坊 時雨 正岡子規
橋は夕日竹屋の渡ししぐれけり 時雨 正岡子規
橋立の片波高きしぐれかな 西山泊雲 泊雲句集
橋立をたてに雲ゆく時雨かな 西山泊雲 泊雲句集
機くるひ縞に出て軒時雨れけり 内田百間
橡の実は厚朴におくれてはつしぐれ 飯田蛇笏
檜葉垣や時雨るる石の荒御魂 古舘曹人 樹下石上
檜隈に色どめしたるしぐれかな 安東次男 昨
欅山ながら時雨の庭ながら 京極杞陽 くくたち下巻
歌詠んで又泣きたまふ時雨哉 時雨 正岡子規
正倉院木の実時雨のただ中に 河合佳代子
此の猿はやしろ久しき時雨かな 斯波園女
此頃はどこの時雨に泣いて居る 正岡子規
武藏野や夕日の筑波しくれ不二 時雨 正岡子規
歸り花それも浮世のしくれ哉 時雨 正岡子規
残菊に北山しぐれほしいまゝ 山本い花
残菊のなほはなやかにしぐれけり 日野草城
母の嘆きのとほざかるしぐれ虹 黒田杏子 花下草上
母葬る土美しや時雨降る 橋本多佳子
比叡あたご雲の根透けり村時雨 言水
比叡おろししぐれの度や寝床替 内藤丈草
比叡までものぼれ時雨のはしり舟 李由 俳諧撰集「有磯海」
比枝の雲夜はしぐるゝともし哉 時雨 正岡子規
比枝一つ京と近江のしくれ哉 時雨 正岡子規
毘沙門の杉が時雨をよびにけり 角光雄
水ぎはもなくて古江のしぐれ哉 蕪村遺稿 冬
水にまだあをぞらのこるしぐれかな 久保田万太郎 流寓抄
水の上風追うてゐる時雨かな 吉武月二郎句集
水神に笹生の時雨小降りがち 飯田蛇笏 椿花集
水迅き疎水へ紅葉しぐれかな 槙尾登代子
水面に時雨し跡のなまなまし 右城暮石 上下
水鳥のかたまりかぬる時雨かな 良長 古句を観る(柴田宵曲)
水鳥の背の高う成るしぐれかな 千代尼
水鶏去而入野北方時雨鳧 日夏耿之介 婆羅門誹諧
氷屋の氷にしぐれゐたりけり 田中裕明 山信
池の星またはらはらと時雨かな 立花北枝 (?-1718)
池の星またはら~としぐれかな 北枝
池の星又はらはらと時雨かな 立花北枝
池の鴨森の鴉や夕時雨 寺田寅彦
池隈の鴛鴦の彩濃に時雨かな 松根東洋城
池隈の鴛鴦の彩艶に時雨かな 東洋城千句
汽車此夜不二足柄としぐれけり 時雨 正岡子規
沈みゆく夜の底へ底へ時雨落つ 山頭火
沖を航く船に陽のさす時雨かな 中村美代子
沖夕焼けて鴎鳴き合ふ時雨かな 金尾梅の門 古志の歌
沖晴れて時雨るる此処が三国町 深見けん二
沖波は時雨れて暗し屋根の上 有働亨 汐路
沖見ゆる障子の穴もしぐれけり 梅室
沢音の時雨とまがふ木曾山中 片山由美子 天弓
河原鶸しぐれの道となりにけり 尾林朝太
沸く音の時雨を風炉の名残かな 鳳朗
油断せぬかほや時雨るる琵琶法師 立花北枝
沼の香をしぐれゆく彼方坂あがり 安斎櫻[カイ]子
沼波の光りを消さず時雨来し 石井とし夫
法堂の一角灯るしぐれ哉 中川宋淵 詩龕
波はしりしぐれくもりに七つ島 猿橋統流子 『丹波太郎』
波音かしぐれか旅寝うつゝなる 内田准思
泥地獄時雨を得つつ沸沸と 中村汀女
泪しぐるゝや色にいでにけり我戀は 時雨 正岡子規
洞あればかくれ鬼の木しぐれけり 岩城久治
流れたる雲や時雨るる長等山 カガ-北枝 十 月 月別句集「韻塞」
流人船実に時雨て見送りぬ 加舎白雄
流燈はさんだらぼつちささしぐれ 文挟夫佐恵 遠い橋
浄林の釜にむかしを時雨けり 時雨 正岡子規
浅草に七味を買へば時雨れけり 江口千樹
浅草の時雨打つなりどぜう汁 松山足羽
浜芦屋晴れ山芦屋時雨つゝ 北垣宵一
浦しぐれ灯台母のごと灯る 吉田杉子
浪人となりてひもじき時雨かな 小酒井不木 不木句集
浪人を一夜にふるす時雨哉 時雨 正岡子規
海と山しくるゝ音や前うしろ 時雨 正岡子規
海に去る時雨や追へぬものばかり 西川 織子
海に沖あり霧時雨して見えざれど 高柳重信
海に遠く/海に/向く坂/風しぐれ 林 桂
海に降る時雨や人を隔てつゝ 小佐田哲男
海は照り松は時雨の枝張りて 岩田昌寿 地の塩
海光をはるかに置きて時雨れけり 須藤常央
海原の如く照らしぬ時雨月 波多野爽波 鋪道の花
海山のしぐれつきあふ菴の上 内藤丈草
海棠の花は咲ずや夕しぐれ 蕪村遺稿 冬
海津余呉木之本尾上しぐれけり 草間時彦 櫻山
海溝をたしかに越えししぐれ雁 吉田紫乃
海苔襖重ねて奥行しぐれ軒 平井さち子 完流
海蒼くしぐれ敗戦兵還る 石原舟月
海鼠今松葉しぐれて桶の中 松瀬青々
消ゆるまで時雨に赤き一位笠 川崎展宏
消炭のつやをふくめる時雨かな 室生犀星 魚眠洞發句集
淡路より時雨もすなり月も照 松岡青蘿
深山路や落葉しぐれに逢ふも旅 柴田道人
深川は月も時雨るる夜風かな 杉風
深曇りして時雨よぶ鳰の海 柴田白葉女 『冬泉』
深谷やしきる時雨の音もなし 服部嵐雪
清滝に宿とるべくとしぐれ居り 比叡 野村泊月
渓の樹のぬれざるはなくしぐれやむ 飯田蛇笏 雪峡
渡し場にまだ謫仙のしぐれかな 加藤郁乎 佳気颪
渦染めて鯉のきほへばしぐれけり 金尾梅の門 古志の歌
温泉煙のまた濃くなりし時雨かな 土屋仙之
湖に月をおとすやむらしくれ 時雨 正岡子規
湖のしぐれてきたる祝箸 福島 勲
湖の方雲夕づくとしぐれけり 角川源義 『神々の宴』
湖の色かはり~て時雨雲 高濱年尾 年尾句集
湖の隈藍少しある時雨かな 内藤吐天
湖へむく湖北観音しぐれつつ 川原 博美
湖や底にしくるゝ星の數 時雨 正岡子規
湖西線また*えりが見えしぐれけり 町田しげき
湖頭の碑欠けて無き字に時雨かな 比叡 野村泊月
湯のたぎる家のぐるりを時雨けり 時雨 正岡子規
湯のたぎる薬鑵は貧し時雨けり 阿部みどり女
湯ぶねより一とくべたのむ時雨かな 川端茅舎(1897-1941)
湯場しぐれお吉の唄のものさびず 林原耒井 蜩
湯手拭被せて古提灯も時雨れけり 林原耒井 蜩
源義桂郎しぐるる雲に乗り給ひ 山田みづえ
溝こえて小笹に辷るしぐれ鶏 松村蒼石 寒鶯抄
滂沱たる部分もありてはつしぐれ 渋谷 道
滝壺に滝写りをりしぐれ馳く 猿橋統流子
漂行の鳥影は祖父片しぐれ 佐藤鬼房 朝の日
漉切(すきぎれ)や鼻の穴もれ行く時雨 調巴 選集「板東太郎」
漕ぎ急ぐ舟とも見えず時雨れつゝ 石井とし夫
潮騒や木の葉時雨るる夜の路 臼田亞浪 定本亜浪句集
澤渡りの石ぬれそめし時雨かな 久保田万太郎 草の丈
濡にける的矢をしはくしぐれ哉 炭 太祇 太祇句選
濡れてゐる朴に月あり小夜時雨 松本たかし
濤音にしぐれのまじる行幸宿 宮武寒々 朱卓
瀬の音のいつか時雨るゝ音なりし 稲畑汀子 汀子句集
瀬の音の時雨に似たる蕪蒸 角川春樹
火ともしの火ともしかねつむら時雨 時雨 正岡子規
火の上に読む文濡れし時雨哉 尾崎紅葉
火祭を待つ間時雨の幾度か来て 鈴木真砂女 夕螢
灯かすかに沖は時雨の波の音 時雨 正岡子規
灯れば東廓の時雨傘 高野 典
灯をかへす時雨のありし庭の石 川島彷徨子 榛の木
炉話の寝込み勝ちなり一ト時雨 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炭斗にしぐれに濡れし炭まじる 能村登四郎
炭斗のしぐれに濡れし炭まじる 能村登四郎
烏丸は時雨れ五条の柳散る 小松崎爽青
烏鳶をかへり見て曰くしぐれんか 時雨 正岡子規
無患子のしぐれし空にみなぎる実 皆吉爽雨 泉声
無愛想な雲の端よりしぐれけり 吉野トシ子
煙草消す男に帰心小夜時雨 谷口桂子
照紅葉さきほど時雨したりとか 阿波野青畝
熊笹のさゝべり白し時雨ふる 川端茅舎
熊笹を時雨のはしる天城越え 山本 洋子
熱湯にこんにやく踊る目借時 雨宮抱星
燐寸すりて人を送れるしぐれかな 室生犀星 犀星発句集
燗ぬるくあるひはあつくしぐれかな 久保田万太郎 草の丈
燗番のしぐれてゐるや大根焚 五十嵐播水
燗酒や屋島あたりがしぐれをり 里見善三郎
燠かきのかくもへりゐて時雨宿 銀漢 吉岡禅寺洞
燭寸かつ振り子の詩なり片しぐれ 加藤郁乎
爛番のしぐれてゐるや大根焚 五十嵐播水 播水句集
爪ほどの貝むらさきに時雨けり 古舘曹人 砂の音
爪琴の下手を上手にしぐれけり 時雨 正岡子規
父の墓夕べあしたとしぐれけり 山田みづえ 木語
父の廟子の廟並ぶ時雨かな 比叡 野村泊月
父の松抱いてしぐるる日なりけり 橋石 和栲
片しぐれして林中の青水輪 冨田みのる
片しぐれ人参島より来たりけり 山尾 玉藻
片しぐれ北山杉の空せまき 高橋君枝
片しぐれ幾日つづくぞ小町寺 麦水
片紅葉しぐれけぶりに鷹ヶ峰 野沢節子
片脚は琵琶の湖中に時雨虹 田畑美穂女
片脚を湖に堅田の時雨虹 杉山恵子
牛つなぐ酒屋の門のしくれ哉 時雨 正岡子規
牛つんで渡る小船や夕しぐれ 正岡子規
牛のせて渡る小舟や夕しくれ 時雨 正岡子規
牛の尾に壁のやぶれをしくれけり 時雨 正岡子規
牛の尾もぬらす名所のしくれ哉 時雨 正岡子規
牛むれて歸る小村のしくれ哉 時雨 正岡子規
牛一つ見えてしぐるゝ尾上哉 時雨 正岡子規
牛車歸る大津のしくれ哉 時雨 正岡子規
牛鍋のふつふつ煮えて伊勢時雨 田部みどり
牛馬のくささもなくて時雨かな 浪化 俳諧撰集「有磯海」
牡丹焚く背なつつぬけにしぐれ闇 吉田未灰
牡丹焚火待つしぐれ傘かたむけて 吉田未灰
物いはば雲はしぐれん冬近し 樗良
牲の牛ひた啼いて時雨満山に 久米正雄 返り花
犀川を渡り地震くる時雨来る 西本一都 景色
犬の碑をけふより打ちて時雨来ぬ 石田あき子 見舞籠
犬一匹受付に寝て時雨寺 市川冨士子
犬張子買へばしぐるる谷中かな 角谷昌子
狐火の次第に消ぇて小夜時雨 井上井月
狐火は消えて野寺の朝しくれ 時雨 正岡子規
狛犬や碓氷の神のしぐれける 川崎展宏
猩々木緋をうち重ねしぐれけり 千代田葛彦 旅人木
猪の岩鼻はしるしくれ哉 時雨 正岡子規
猿一つ蔦にすがりてしぐれけり 正岡子規
猿酒をおもへば深山時雨けり 大串章
獄を出て時雨の中を帰りけり 角川春樹
獅子灯籠鶴灯籠としぐれけり 蓑谷皐一
玄海の沖暗みつゝ時雨来し 高濱年尾
玄関にて御傘と申時雨哉 炭 太祇 太祇句選
玉笹や不断時雨るゝ元箱根 井原西鶴
玻璃すこしよごれて時雨来りけり 深見けん二
珠洲と呼び名舟といひてそだち来し能登のうみやましぐれ降りをり 三井ゆき
球なくて電柱立てり海しぐれ 山口誓子
琵琶の音にさそひ出しけり小夜しくれ 時雨 正岡子規
瓦置く其夜めてたき時雨かな 尾崎紅葉
甌穴によびよせられて時雨ふる 横山白虹
甕群に藍の華浮く時雨山 古舘曹人 樹下石上
甘酒の釜の火色の嵯峨しぐれ 鈴木鷹夫 渚通り
生きて世に寝覚うれしき時雨かな 召波
生姜もてころす馬刺や夕しぐれ 中尾杏子
産小屋に星の穴ある時雨寒 古舘曹人 砂の音
産小屋に藁塗りこめて時雨寒 古舘曹人 砂の音
産小屋の月日を返す時雨傘 古舘曹人 砂の音
田の家の今ともしける夕時雨 臼田亞浪 定本亜浪句集
田戻りや時雨に濡れしものを抱き 橋本鶏二 年輪
由布越えて来し時雨冷え温泉に浸り 高濱年尾 年尾句集
甲山よりも小さく時雨虹 山田弘子 懐
男一人京のしぐれにあひにゆく 矢島渚男 梟
町の灯へ戻りて泊つる小夜時雨 稲畑汀子
畔塚をうかゞひゐるやしぐれけり 齋藤玄 飛雪
留学の子ありしぐるる壁に地図 皆吉爽雨
畝襟や時雨もいたく横嵐 尺草 選集「板東太郎」
畦道をうろたへ廻る時雨かな 水田正秀
畳屋のいなでぞありぬ夕しぐれ 高井几董
畸人傅をとぢかへす夜の間の時雨かな 日夏耿之介 婆羅門俳諧
疾き影は玄海灘の時雨雲 文挟夫佐恵 遠い橋
病床の淡路島よりしぐるるか 田畑美穂女
痩像に魂を入歟小夜しぐれ 松岡青蘿
発ちし子の今はフエリーか小夜時雨 山田紀子
白ベレー大和しぐれに濡れてをり 佐川広治
白味噌の椀の洛中しぐれけり 大屋達治
白朮火を傘に守りゆく時雨かな 大谷句仏
白毫の塔まぼろしに山時雨 小島千架子
白河の関のしぐれの九曜紋 西田真理子
白無垢の蚕蛾のわななくしぐれかな 千代田葛彦
白無垢の蚕蛾わななくしぐれかな 千代田葛彦
白砂の山もあるのにしくれ哉 時雨 正岡子規
白神時雨荒れて猿の横走り 星野紗一
白粥をまぶしくしぐれ通りけり 田中鬼骨
白芥子や時雨の花の咲きつらん 芭蕉「鵲尾冠」
白菊の少しあからむ時雨哉 時雨 正岡子規
白鷺と天の接点しぐれけり 野見山ひふみ
白鷺は堰を離れず夕時雨 笹井雅司
白鷺も鷺見る面もしぐれけり 古賀まり子 緑の野以後
百幹の竹のしぐれてしづくせず 檜紀代
盤渉にしぐるゝ須磨の板屋哉 時雨 正岡子規
目もとより時雨の晴るる庵主さま 川崎展宏
目を閉じるほかに何ある時雨鹿 伊丹三樹彦
目前をむかしに見する時雨哉 蕪村遺稿 冬
目覺むれは猶降つてゐるしくれ哉 時雨 正岡子規
直撃の笑ふほかなし青時雨 檜紀代
相傘に片袖づゝをしぐれかな 横井也有 蘿葉集
相寄りて陶榻ふたつ時雨けり 岸風三楼 往来
眼うとしと母こごみ寝る時雨れんか 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
眼の隅に尼僧の素足しぐれ止む 横山白虹
眼を閉じるほかに何ある 時雨鹿 伊丹三樹彦
着陸の光る時雨となりゆける 稲畑汀子 汀子第三句集
瞽女の唄山椒太夫しぐれけり 西本一都 景色
石にまた戻る石仏時雨晴れ 伊藤敬子
石のしたしさよしぐれけり 荻原井泉水
石の上にやみはじめたる朝しぐれ 岡井省二
石上の霰にそそぐ時雨かな 会津八一
石山に時雨るゝ虹の短けれ 松藤夏山 夏山句集
石廊時雨るゝ夜や「科野路」を読了す 林原耒井 蜩
石段のぬるるにはやきしぐれかな 久保田万太郎
石段のぬるゝにはやきしぐれかな 久保田万太郎 草の丈
石臼の陰のしぐれてあそこ爰(ここ) 内藤丈草
石蕗咲けりけさしぐれたる痕きえず 久保田万太郎 流寓抄
石見路のしぐれやすさよ子持鮎 飴山實 少長集
砂みちのあくなくぬるゝしぐれかな 久保田万太郎 流寓抄
砂原の時雨吸いこんて水もなし 時雨 正岡子規
砂山にぬるゝ草ある時雨かな 増田龍雨 龍雨句集
砂山の砂ふところに墓しぐれ 細見綾子 雉子
砂川の時雨吸こんで水もなし 時雨 正岡子規
砂色の鳥啼く礁しぐれ来る 文挟夫佐恵 雨 月
研ぎたての太刀魚届く夕しぐれ 木屋四風子
碑をかこむ鉛筆の音時雨の音 加藤知世子 花 季
磯しくれ花も紅葉もなかりけり 時雨 正岡子規
礪波越すあはたゞしさよ幾時雨 前田普羅 能登蒼し
祗王寺の篝あととかうちしぐれ 田邊夕陽斜
神の名の嶺より走り霧しぐれ 山田弘子 懐
神主にいぶかしまれつ夕時雨 比叡 野村泊月
神護寺の仏も眠る峯しぐれ あるひ花野
神輿倉昼も灯す青しぐれ 高澤良一 素抱
神農の軸掛け医家の時雨月 浜田徳子
神鏡の曇りかしこき時雨かな 比叡 野村泊月
禅寺の磴に手摺や雪しぐれ 正部家一夫
禅林の廊下うれしきしぐれ哉 蕪村遺稿 冬
禪寺のつくづく古き時雨哉 時雨 正岡子規
種おろし遠峯しぐれのうつるころ 福田甲子雄
種おろし遠嶺しぐれのうつるころ 福田甲子雄
稲佐山寝墓しぐれておはすらん 桑田青虎
稲扱きのモーター競ふ月時雨 柴田白葉女 遠い橋
稲架しぐれ信濃に多き道祖神 西本一都 景色
稲架を打つてしぐれは海へ走り去る 木下夕爾
稲架襖伊賀山時雨今日は来ず 橋本鶏二 年輪
稻掛けて神南村の時雨哉 稲掛 正岡子規
積み込みし俵にぬくきしぐれかな 井上井月
積丹の背山越えくる時雨雲 井熊 茂
穴うさぎ穴掘ればまたしぐれけり 大江眞一路
穴仏異な顔したるしぐれかな 阿波野青畝
穴熊の耳にしぐるゝ夕哉 時雨 正岡子規
空と雲重なり合へば時雨けり 安田哲夫
空になき時雨の音の石にあり 井田すみ子
空に飛ぶ山や時雨の來りけり 時雨 正岡子規
空の八隅くらし時雨の来つつあり 上村占魚 『石の犬』
空ら拭きの机にひびくしぐれかな 高澤良一 ねずみのこまくら
空海の道われの道横しぐれ 黒田杏子 花下草上
空濠へかなかなしぐれ降り込めり 野澤節子
窓あけて見送つてゐる時雨かな 比叡 野村泊月
窓しぐれ鏡の林しぐれけり 阿部みどり女 笹鳴
窓の灯の佐田はまだ寝ぬ時雨かな 蕪村
窓打つや落葉しぐれの風の渦 石塚友二 方寸虚実
窓押すや藪のはざまの時雨星 西山泊雲 泊雲句集
窓推すや時雨ながらの夕月夜 時雨 正岡子規
窯ぐれの手だれ時雨れて窯泣けり 鈴木詮子
竈馬来て硯池をのぞく小夜時雨 高田蝶衣
立臼のぐるりはくらし夕時雨 樗良
立臼のぐるりは暗し夕しぐれ 樗良
竜胆に日のさして居る時雨かな 比叡 野村泊月
竜胆を摘みし野悼み時雨くる 井上哲王
竝ぶ訃やただ柿熟るゝ時雨空 横光利一
竪戸樋の中は旱の時雨かな 士丸
竹の実の嵯峨の時雨に遇ひにけり 青木重行
竹むらやややにしぐるる軒ひさし 室生犀星 魚眠洞發句集
竹売つて酒手にわびむつゆ時雨 立花北枝
竹寺の竹の時雨にあひ申す 松原地蔵尊
竹杖に想ひはせをり加賀しぐれ 大谷 茂
竹林の径ゆづり合ふしぐれ傘 鹿毛み月
竹柏林幾代神びぞしぐれつつ 下村槐太 光背
竹植うるその日を泣くや村しぐれ 素堂「鉢扣」
竹藪を出れば嵯峨なり夕時雨 時雨 正岡子規
笛吹童子時雨の夜は何をなす 鈴木六林男 王国
笠とれば六十顔の時雨かな 斯波園女
笠もなきわれを時雨るるかこは何と 芭蕉
笠もなき我を時雨るるかこは何と 松尾芭蕉
笠塚にふるは紅梅しぐれかな 西本一都 景色
笠塚に笠のいはれをしくれけり 時雨 正岡子規
笠寺や時雨濡らさぬ観世堂 磯野充伯
笠提げて塚をめぐるや村しぐれ 立花北枝
笠提て塚をめぐるや村しぐれ 北枝
笠箱や跡の川音夕しぐれ 調泉 選集「板東太郎」
笹の葉に西日のめぐる時雨かな 椎本才麿
筆あはれ時雨の雲の濃く淡く 相生垣瓜人 微茫集
箱庭の寸馬豆人をしくれけり 時雨 正岡子規
篁の嵯峨はしぐるる墓どころ 石原舟月
簷だれの坊主落ちずに霧時雨 阿波野青畝
籾すりの夜より癖づきし時雨かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
糸に只声のこぼるる時雨かな 上島鬼貫
紅をひき出かけずにいる時雨かな 田中基白
紅を引く夜汽車の窓を時雨かな 佐藤文子
紅茸は木の葉に消えず山時雨 飯田龍太
紙漉くや橙のまたしぐれをり 大峯あきら 鳥道
素通りの故郷の山河時雨れをり 山田弘子 こぶし坂
紫に上る時雨も京らしく 星野 椿
紫の時雨の空もありにけり 大峯あきら 宇宙塵
紫陽花を鳴らす鶲の時雨かな 渡辺水巴 白日
結界の身に青時雨埒もなや 角川源義
絵殿の絵脳裡を去らずしぐれけり 下村槐太 天涯
絵馬を見る人顔暗き時雨かな 阿部みどり女
絵馬堂や時雨あそびの子守唄 吉武月二郎句集
絵馬幾重いくへに青葉時雨かな 樋口桂紅
網さらす松原ばかりしぐれかな 素堂
綿の木にしぐれかけたり娵そしり 河東碧梧桐
綿玉のひそかにはぜる時雨哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
緋の夜具をかむりて聴くや坊時雨 近藤一鴻
総門の白蛙股時雨けり 高澤良一 燕音
縁に出て松を仰げば時雨かな 比叡 野村泊月
縦横に絲瓜一つをしくれけり 時雨 正岡子規
縮むかに天の橋立しぐれをり 竹中碧水史
繭の中音しづまりてしぐれなる 室生犀星 遠野集
義仲を梦見る木曾のしくれ哉 時雨 正岡子規
義仲寺へいそぎ侯はつしぐれ 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
義経の落ちし街道しぐれけり 猪俣 壽水
羽の国の稲刈しぐれ湖を渡る 西本一都 景色
羽織着て出かゝる空の時雨かな 高井几董
翁の日ロンドン塔もしぐるると 酒井 武
翁見む夢のしぐれは誠にて 松岡青蘿
翆黛の時雨いよいよはなやかに 高野素十
翠黛(すゐたい)の時雨いよいよはなやかに 高野素十(1893-1976)
翠黛の時雨いよいよはなやかに 高野素十
翠黛の時雨いよ~はなやかに 高野素十
老いぼれしくひつき犬をしぐれけり 時雨 正岡子規
老が恋わすれんとすればしぐれかな 蕪村
老幹の苔したたかに時雨吸ふ 田中水桜
耳に手やこっち次第の村時雨 濯資 選集「板東太郎」
耳奥に時雨の谷の小鳥たち 高野ムツオ 雲雀の血
耳鳴りの耳振つて聴く時雨かな 小出 恋
聖堂の森の時雨や夕鴉 寺田寅彦
聞き耳の至近にありし時雨の夜 岡田 耕治
聞香に一本の松しぐれけり 大石悦子 聞香
聞香の思ひ猿蓑時雨の碑 加藤知世子 花寂び
職辞して帰るに開くしぐれ傘 三浦晴子 『晴』
肉桂(シナモン)で掻き混ぜてゐる時雨かな 中原道夫 巴芹
肌着即体温かなかなしぐれかな 池田澄子
肘張つて蟹茹でらるる雪時雨 鈴木真砂女 夕螢
肝心の日は時雨けり大根曳 浜田酒堂
肥前しぐれて光体となる壺の群 佐川広治
肩先に京訛きく時雨道 渡辺 恭子
肩出して大根青し時雨雲 前田普羅 新訂普羅句集
肩濡らすほどにしぐれて与謝峠 茂里正治
背山よりしぐれ尾を曳く神事能 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
背戸あけて家鴨よびこむしぐれ哉 正岡子規
能登しぐれ曳売りの荷を濡らし過ぐ 茂里正治
能登よりのしぐれが来ると宿をんな 石川文子
能登路には能登路のしぐれはじまれり 安東次男 裏山
能登金剛しぐれの中にそそり立つ 吉田未灰
能面の裏を返せば時雨れけり 清水道子
膝並めて木の実時雨を聞く縁し 杜藻
膝小さく杞陽夫人や時雨寒 山田弘子
膳まはり物淋しさよ夕しくれ 時雨 正岡子規
臘梅や枝まばらなる時雨ぞら 芥川龍之介
自嘲うしろすがたのしぐれてゆくか 種田山頭火
自転車を漕ぐ子と父の夏果てて坂の上なるかなかなしぐれ 三枝昂之
舞妓くる智恩院さま花しぐれ 萩原麦草 麦嵐
舞扇ひらきてとぢて時雨れけり 金久美智子
舟つなぐ百本杭のしくれ哉 時雨 正岡子規
舟一つ遠州灘のしくれ哉 時雨 正岡子規
舟人にぬかれて乗し時雨かな 尚白
船宿の外階段のしぐれけり 行方克己 昆虫記

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by 575fudemakase | 2016-11-13 18:55 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 2

時雨 2

吹あげてしぐれの松葉空に満つ 松瀬青々
吹かれ~時雨来にけり痩男 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
吹上るほこりの中のはつしぐれ 高井几董
吾が前が時雨に濡れてゆきにけり 高木晴子 花 季
吾前の日ざしに時雨来しことを 高木晴子 晴居
周山街道眼鏡明るくしぐれけり 永島靖子
和びとの時雨れてゆくや竹の中 鷲谷七菜子 天鼓
和邇びとの時雨れてゆくや竹の中 鷲谷七菜子
咳きいでて夜半の時雨を遠くしぬ 林翔 和紙
品川に台場の音のしぐれかな 飯田蛇笏 山廬集
品川の宿場通りの時雨かな 中里信司
哭かむまで母の白髪時雨けり 小林康治 玄霜
唐傘の裏に音してしぐれかな 玉井瑛子
唐崎に遇ひし時雨と式部の実 ふけとしこ 鎌の刃
唐櫃に時雨の音を納めけり 岸田稚魚 筍流し
唯今は十国峠時雨をる 高木晴子 晴居
唸りしぐれきやくしやかたがわ 加藤耕子
唾壺をたゝく隣や小夜しくれ 時雨 正岡子規
啼いて居し犬静まりて小夜時雨 高木餅花
喝采がしぐれに変はりはじめけり 波多江敦子
喪にありてききたる宵の時雨かな 宮武寒々 朱卓
喪の列に妻を遣りたる時雨かな 原裕 葦牙
喪の旅の衿掛け替ふる小夜時雨 大橋敦子 勾 玉以後
嘘の髪かぶりて泣けりしぐれ通夜 平井さち子 紅き栞
噴水にしぐれのまじる夜の髭 鳥居おさむ
噴煙の傾けば来し時雨かな 大久保橙青
噴煙をあげて火の鳥時雨れけり 岩切貞子
四つの歌碑みな見きしぐれ濡らせるを 猿橋統流子
四五人にしぐれかゝるや紙芝居 龍雨
四五人や時雨をめでて庭にあり 比叡 野村泊月
四國路へわたる時雨や播磨灘 時雨 正岡子規
四方より釣鐘なぶるしぐれ哉 時雨 正岡子規
回診の来るとき時雨金色に 岩田昌寿 地の塩
国栖人のしぐれで染めし楮紙 長谷川櫂 蓬莱
土なし家なし時雨ばかりを聞く我等 加藤知世子 黄 炎
土佐の國南もなしにしぐれけり 時雨 正岡子規
土佐の海南もなしにしぐれけり 時雨 正岡子規
土山や小浪が笠にしぐれふる 時雨 正岡子規
地の菓子の味をりからのしぐれかな 久保田万太郎 流寓抄
地震のあと心にしみる菊しぐれ 西本一都 景色
坂いくつ曲りてあふぐ青しぐれ 小峰松江
坂にふりし時雨は街に来てもふる 横山白虹
坂に沿ふ湯まちのたつき時雨るる日 小川濤美子
坂めくに下駄爪尖の時雨かな 松根東洋城
堂守の時雨炬燵や引けば寄る 古舘曹人 砂の音
塔かげの瓦片しぐれし地に拾ふ 皆吉爽雨 泉声
塔しのぐもののなければしぐれくる 上田五千石(1933-97)
塔の月仰いで居ればしぐれけり 比叡 野村泊月
塔を見るほどよき距離をしぐれをる 鍵和田[ゆう]子
塔高し時雨の空の天王寺 時雨 正岡子規
塩間に鮎死にかゝる時雨かな 如行 俳諧撰集「有磯海」
塩鮭は親し北方から時雨 雅人
塩鮭を湯にくぐらせし時雨かな 鈴木真砂女 夕螢
塩鯛の塩ほろほろと時雨かな 時雨 正岡子規
墓に彫る時の翼に時雨降る 野見山朱鳥
墓囲ふ藁にしぐるる暮色かな 門前弓弦子
墓裏に手をつかねたる時雨雲 古舘曹人 砂の音
墨擦つても擦つても薄し時雨来る 阿部みどり女
壁に懸けわが賜りし時雨の句 村松紅花
壱岐埠頭時雨の銅鑼となりにけり 文挟夫佐恵 遠い橋
壺買つて奈良の時雨に逢ひにけり 江口千樹
夏蚕しぐれ夜も農婦を眠らせず 西條
夕されば海はしぐれぬ海鼠売 掬池路
夕しぐれ尼が財布を買ふことも 長谷川双魚 風形
夕しぐれ柩を蔽ふ白レース 吉野義子
夕しぐれ煤煙ながす空のこる 千代田葛彦 旅人木
夕しぐれ煮炊きの香して山の宿 松橋幸子
夕しぐれ鬼師の蒐む瓦かな 伊藤敬子
夕まぎる啄木鳥のゐる時雨かな 阿波野青畝
夕日さす波の鯨や片しぐれ 巴人
夕日照る時雨の森の銀杏かな 時雨 正岡子規
夕星の澄み極まりて時雨けり 金尾梅の門 古志の歌
夕時雨さゝずに傘をつきにけり 大場白水郎 散木集
夕時雨また藪道にさしかゝり 清原枴童 枴童句集
夕時雨をんなの眼もて藍を鑑る 柴田白葉女 遠い橋
夕時雨去なぬ雀に米やらん 高田蝶衣
夕時雨図書館の鐘ふいに鳴る 杉本さいき
夕時雨来て狸藻の花黄なり 内藤吐天 鳴海抄
夕時雨白磁の姿くづれそむ 相生垣瓜人 微茫集
夕時雨自宅待機に月余経ぬ 芦沢一醒 『花枇杷』
夕時雨蟇ひそみ音に愁ふ哉 蕪村 冬之部
夕時雨話半ばに別れけり 縣 積雄
夕時雨野の枯いろの濃かりけり 久保田万太郎 草の丈
夕時雨降りゐる景の傾ける 波多野爽波 鋪道の花
夕時雨雲の切目は暮れて居ず 林直入
夕時雨風に引き戻されもせし 村越化石 山國抄
夕時雨鳩たちて師の近づけり 小池文子 巴里蕭条
夕月のおもて過行しくれ哉 時雨 正岡子規
夕烏一羽おくれてしぐれけり 時雨 正岡子規
夕茜してゐる時雨雲の端 高濱年尾
外套にしみもせざりし時雨なる 野澤節子 黄 瀬
外能登や海かけて来る夜叉時雨 岩坂満寿枝
多賀城の紅葉しぐれにあひにけり 石原八束 空の渚
夜あらしや時雨の底の旅枕 上島鬼貫
夜のしぐれそれの爪もて蟹食へば 皆吉爽雨
夜の時雨いよよ目納め櫛作り 加藤知世子 花 季
夜の棟に裾触り時雨亙りけり 石塚友二 光塵
夜の湯槽に裾野を恋ふる霧時雨 宮武寒々 朱卓
夜の雨はじめ終をしぐれけり 加舎白雄
夜をこめて独り時雨るゝ鹿火屋守 酒匂新冬
夜時雨やから呼されしあんま坊 一茶
夢うつゝ三度は袖のしぐれ哉 向井去来
夢工房三年坂のむら時雨 清水三千代
夢殿の絵脳裡を去らずしぐれけり 下村槐太 光背
大いなるかな法兄弟の時雨笠 阿波野青畝
大仏に到りつきたる時雨かな 高浜虚子
大仏の裏しぐれつつ男郎花 宮田正和
大佛の鐘が鳴るなり小夜時雨 時雨 正岡子規
大原は時雨つゝ月出づるかな 高濱年尾 年尾句集
大原は時雨れつゝ月出づるかな 高濱年尾
大原や青葉しぐれに髪打たす 鍵和田[ゆう]子
大原女が時雨にしたる頬被り 高濱年尾 年尾句集
大名の柩ぬれたる時雨哉 時雨 正岡子規
大和三山二山はしぐるるよ 山口いさを
大和路は時雨ふるらし氣車の覆 時雨 正岡子規
大夫にもならで此松しくれけり 時雨 正岡子規
大学のほとりの寺の月しぐれ 石原舟月 山鵲
大寝坊夢は時雨にほとびけり 可躍 選集「板東太郎」
大寺も小寺もしぐれ明りにて 飯田龍太
大山の闇より音となる時雨 山田弘子 懐
大揺に竹ゆれうつり時雨けり 上村占魚 鮎
大柄な画商といふもしぐれけり 折井紀衣
大根の大根になる時雨哉 尚白
大正の時計の鳴れるしぐれ窯 筒井珥兎子
大江山越えくる時雨荒きこと 西井雅子
大江山鬼の角よりしくれける 時雨 正岡子規
大牛の路に塞がる時雨哉 時雨 正岡子規
大盛の蜆ラーメンしぐれけり 赤坂とし子
大空のしぐれ匂ふや百舌鳥の贄 渡辺水巴 白日
大空へ山を吹きこすしぐれ哉 松瀬青々
大鍋に蟹ゆで上る時雨かな 鈴木真砂女 生簀籠
大門町堀端町も時雨けり 小森丈仙
大阪はしぐれてゐたり稲荷ずし 北野平八
天の原よし原不二の中行く時雨かな 山口素堂
天ぷらは河岸のなごりや夕時雨 龍岡晋
天保山扉船の上にしぐれつゝ 米沢吾亦紅 童顔
天地の間にほろと時雨かな 高濱虚子
天地をしばらくたもつ時雨哉 几圭
天崩れ人は廃墟に時雨れたる 金箱戈止夫
天平の甍にわれに降る時雨 桂樟蹊子
天蓋のしぐれ葬列村貫く 石原舟月
天龍より風越に時雨るる狗賓(グヒン)かな 日夏耿之介 婆羅門俳諧
太陽も時雨に濡れてありにけり 粟津松彩子
太龍寺かけめぐるごとしぐれ来る 寺西安子
夫へ言ふ月の時雨に濡れ来しこと 岡本差知子
奈良にして消ゆる寧楽山しぐれ雲 皆吉爽雨 泉声
奈良七夜降るやしぐれの七大寺 樗堂
奈良千年伽藍伽藍の時雨哉 時雨 正岡子規
奥嵯峨へ帰る尼なり時雨傘 五十嵐播水 播水句集
奥能登の旅の先き先きしぐれけり 岡田日郎
奥阿仁駅しぐれ真赤な箱ポスト 田村九路
奪衣婆の時雨に胸をはだけたる 川崎展宏 冬
女人堂しぐれて燭を継ぎにけり 門井美豫
如是閑先生旧居の時雨明りかな 皆川白陀
妙高の霧さき立てて時雨来る 西本一都 景色
妻と来し湖尻泊りにしぐれ虹 桂樟蹊子
妻持ちしばかりの吾が身小夜時雨 成瀬正とし 星月夜
妻木とる内侍の尼のしぐれかな 召波
姫島を望み陰陽石しぐれ 穴井太 原郷樹林
姫路城お菊の井戸にしぐれけり 南雲秀子
子と別る白膠木の紅葉時雨はや 小林康治 四季貧窮
子の寝息妻を誘ひてしぐれけり 杉山岳陽 晩婚
子をかばひつゝ時雨傘堤行く 高濱年尾 年尾句集
子をつれて手の中の手よ町時雨 皆吉爽雨
子を結ぶ竹に日くるゝしぐれ哉 蕪村遺稿 冬
子を育ておのれ育たぬしぐれかな 中野英伴
子を負〔て〕川越す旅や一しぐれ 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
子等のあと妻も時雨れて戻りけり 河野静雲 閻魔
子舟載せ親船に家紋しぐれ通し 平井さち子 完流
子連れとてとく帰りけり夕時雨 中村汀女
孤蓬庵はたして時雨来りけり 大石悦子 聞香
学園の昼を賑はすひと時雨 飯田蛇笏 椿花集
宇治木幡(こばた)京へしぐれてかかる雲 曲翠 俳諧撰集「有磯海」
宇陀の牛にあはぬ淋しさをしぐれけり 米沢吾亦紅 童顔
安寿塚しぐれの虹の紅の辺に 坂根白風子 『彩雲』
宗匠の四國へ渡るしくれ哉 時雨 正岡子規
宗祇去り芭蕉歿して幾時雨 時雨 正岡子規
宗祗去り芭蕉没して幾時雨 正岡子規
宗鑑が粥煮るけさのしくれ哉 時雨 正岡子規
定に入僧のあるらん小夜しくれ 時雨 正岡子規
定家卿時雨そめけん夏座敷 調和 選集「板東太郎」
定家様にてかし座敷あり村時雨 由平
実海桐をくゞる時雨の響きけり 前田普羅 能登蒼し
客足の絶えしは時雨来し故か 鈴木真砂女 夕螢
家うつりの車駆りゆく時雨かな(十一月廿一日松江南田町に転居) 『定本石橋秀野句文集』
家までのかへり路時雨あまたたび 上村占魚 球磨
家路とは情のあるもの夕時雨 粟津松彩子
宿かして名をなのらする時雨かな ばせを 芭蕉庵小文庫
宿れとは御身いかなるひと時雨 宗因
宿借りて名を名乗らする時雨哉 松尾芭蕉
寂として目鼻時雨るる樹胎仏 加藤知世子 花寂び
富士を出て箱根をつたふ時雨哉 時雨 正岡子規
寒げだつ賤か夜明や花時雨 花の雨 正岡子規
寒念仏夜々の時雨に逢ひにけり 金田狂蜂
寒明の窓さら~と時雨鳧 内田百間
寝入りめに似非の時雨の朴落葉 宇多喜代子 象
寝寒さの思ひしぐれにあつまりぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
寝筵にさつと時雨の明りかな 一茶
寝莚にさつと時雨の明り哉 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
寝返るも時雨るゝ家でありにけり 小林康治 四季貧窮
寺々の時雨たづねて京に在り 新村寒花
寺あれば紅葉もありてむら時雨 時雨 正岡子規
寺かぢる鼠が駆ける時雨かな 前田普羅
寺もなき鐘つき堂のしぐれ哉 正岡子規
寺もなき鐘つき堂の時雨かな 時雨 正岡子規
寺町の沈む時雨や加賀の町 今泉貞鳳
封切って兵のにほひを知る時雨 福島小蕾
封切つて兵のにほひを知る時雨 福島小蕾
尉もなし野はしぐれつつ腸洗う 赤尾兜子
小夜しくれとのゐ申の聲遠し 時雨 正岡子規
小夜しくれ小鴨のさわぐ入江哉 時雨 正岡子規
小夜しぐれうましの嫁を祝ぎて辞す 宮武寒々 朱卓
小夜しぐれ湯壺の人の眼ひらかぬ 林原耒井 蜩
小夜しぐれ買ひきし米を量るなり 成瀬櫻桃子 風色
小夜しぐれ隣の臼は挽きやみぬ 野坡
小夜時雨*煮る物買うて戻りけり 高橋淡路女 梶の葉
小夜時雨ありたる後のうろこ雲 軽部烏帽子 [しどみ]の花
小夜時雨ほとけに履かす足袋買ひに 梶山千鶴子
小夜時雨上野を虚子の来つゝあらん 正岡子規
小夜時雨子等は己の臥床のぶ 中村汀女
小夜時雨枢おとして格子うち 石橋秀野
小夜時雨樞おとして格子うち 石橋秀野
小夜時雨溝に湯を抜く匂ひかな 藤野古白
小夜時雨玻璃におさへて灯かがやく 川島彷徨子 榛の木
小夜時雨生死の外に坐るかな 野村喜舟 小石川
小夜時雨眠るなかれと鐘を撞く 夏目漱石 明治三十七年
小春とはしぐれせぬ日の野山かな 此路 選集古今句集
小松雫していさご路あかし夕時雨 日夏耿之介 婆羅門俳諧
小町墳言葉少なに時雨傘 浅野アツ子
少年の瞳して阿修羅のしぐれをる 鍵和田釉子
尼寺の暗き明るさ夕時雨 立子
尼寺の暗さ明るさ二タ時雨 星野立子
尼寺の暗さ明るさ二夕時雨 星野立子
尾の道やしぐれ催ひの渡り雲 石塚友二 光塵
尾花蛸這はせ夕市しぐれけり 山崎冨美子
尿前のしぐれて虹を立てにけり 阿波野青畝
居酒屋に時雨持ちこむ女傘 小池龍渓子
屋根苔の深くもぬれし時雨かな 楠目橙黄子 橙圃
屋根葺の海をふりむく時雨かな 内藤丈草(1662-1704)
屑鉄みな物のかたちに時雨そむ のぼる
山あひに日のあたりゐるしぐれかな 室生犀星 魚眠洞發句集
山の湯の尾花しぐれに別るるか 西本一都 景色
山の灯をいぶかしみ聞く夕時雨 西山泊雲 泊雲句集
山の端や月にしぐるゝ須磨の浦 時雨 正岡子規
山の音時雨わたると思ひをり 森 澄雄
山は時雨大根引くべく野はなりぬ 也有
山は晴れ谷は時雨るる塩の道 加藤よし子
山めぐる姥は時雨の名なりけり 高橋睦郎
山中に人の働くしぐれどき 齋藤玄 『雁道』
山中の時雨に無線中継所 和田耕三郎
山中の落葉しぐれや芭蕉堂 泊 康夫
山中の風が風呼ぶ時雨宿 中川結子
山二つかたみに時雨れ光悦寺 田中王城
山原の竹売りに那覇しぐれけり 小熊一人 『珊瑚礁』
山吹や時雨をからん笠のぬし 浜田酒堂
山囲みゐる街日ごと時雨ぐせ 高木晴子 花 季
山城のしくれて明る彦根哉 時雨 正岡子規
山城へ井出の駕籠借る時雨哉 松尾芭蕉
山居しぐれてけづる牛蒡のかをり哉 中勘助
山崎や時雨の月の朝朗 時雨 正岡子規
山桐の葉を真平らにつゆしぐれ 飯田蛇笏
山茱萸と云へば和菓子の黄味しぐれ 高澤良一 寒暑
山茶花に時雨の跡の残りをり 森田 愛子
山茶花のしぐるる花のみな平ら 皆吉爽雨
山茶花の艶極まりてしぐれけり 長谷川双魚 風形
山茶花の蕋かげ消ゆるときしぐれ 赤松[けい]子 白毫
山茶花も煉獄の火の時雨にて 小檜山繁子
山蔭やしぐれの道の函ポスト 石塚友二 光塵
山里や嫁入しぐるゝ馬の上 時雨 正岡子規
山門に時雨るる島と沖を置く 原田青児
山風やしっぺ返しの村時雨 内藤丈草
山鳥の尾を垂れてゐるしくれ哉 時雨 正岡子規
岡崎で泊まらにや暮るゝ時雨かな 長谷川零余子
岡野辺や楢の広葉をうつ時雨 大魯
岩倉の目無し地蔵のしぐれぐせ 大野林火
岩小屋に紅葉時雨をやりすごし 福田蓼汀 山火
峠路や時雨晴れたり馬の声 尾崎放哉
峡深く人の後追ふ時雨かな 野村泊月
島の端に残る時雨も朝の景 山田弘子 螢川
島守のあらめの衣しぐれけり 時雨 正岡子規
島山にしぐれかへしぬ福良港 石原八束
崩れ簗天城へしぐれ移りけり 佐野梧朗
崩れ簗見れば見えをりしぐれつつ 加藤楸邨
嵐山のみやげ屋で買ふ時雨傘 清水志郎
嵯峨しぐれ小脇抱への手漉和紙 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
嵯峨の時雨に待ちゐて肩を濡らせしよ 大石悦子 群萌
嵯峨ははや時雨ぐせなる十三夜 鈴鹿野風呂
川と海どこで折合ふ時雨虹 佐藤麻績
川千鳥雪のしぐれを梭のごとし 矢島渚男 天衣
川向ふ今しも木の葉時雨かな 高澤良一 鳩信
川幅にしぐれの重さ来そめたり 松村蒼石 雪
川添の飴屋油屋時雨けり 鏡花
川添や酒屋とうふ屋時雨れつゝ 泉鏡花
川砂を敷きて時雨の通る庭 高澤良一 宿好
川舟を揚げし長さのしぐれたり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
川越しの銭にも成らぬ時雨哉 横井也有 蘿葉集
川音の時雨れて今もランプなり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
帆を下す舸夫に妻出て時雨るるよ 五十嵐播水 埠頭
帆柱に月持ちながら時雨かな 時雨 正岡子規
師へつとの時雨に買ひぬ磯ざかな 及川貞 榧の實
帰りきて日本の時雨肺潤らす 長峰二三
帰り来し吾子に灯を向け時雨をり 加藤楸邨
常の雨を誰が聞き分けて夕しぐれ 伊丹-宗旦 元禄百人一句
常盤津会はねし銀座のしぐれけり 田原幹一郎
常磐木は時雨宿りに適ふもの 物種鴻兩
幕下りてわく拍手さへ夕時雨 大場白水郎 散木集
幣一つ刺されて墳のしぐれけり 上野さち子
干柿の二筋三筋しくれけり 時雨 正岡子規
干柿の錆びつくしたる軒時雨 米沢吾亦紅 童顔
干籾にしぐれ日和となりにけり 銀漢 吉岡禅寺洞
干網に入日染みつつしぐれつつ 来山
干茸に時雨れぬ日とてなかりけり 松本たかし
平成期の時雨はきらきら光らねば 藤後 左右
年よりにしぐれ一と粒比叡山 魚目
年月のつもるにまかすしぐれかな 久保田万太郎 流寓抄
幼稚園しぐれていまだ退けぬかな 道芝 久保田万太郎
幾人(いくたり)かしぐれかけぬく勢田の橋 内藤丈草(1662-1704)
幾人かしぐれかけぬく瀬田の橋 丈草
幾人か時雨駈けぬく勢田の橋 丈草
幾山河こえさりゆかば時雨かな 星野昌彦
幾度の時雨のあとの夕時雨 波多野爽波 鋪道の花
幾時雨横川へ我ら行かしめず 成瀬正とし 星月夜
幾時雨石山の石に苔もなし 時雨 正岡子規
幾重にもネオンの滲む時雨かな 上月ひろし
広沢やひとりしぐるる沼太郎 中村史邦 (未詳)
広沢やひとり時雨るる沼太郎 史邦
広沢やひとり時雨るゝ沼太良 史邦
庫裡の簷しぬぐ山茶花しぐれけり 加藤風信子
庫裡までは濡るるに任す杉しぐれ 北野民夫
庭石の仏顔鬼顔しぐれけり ほんだゆき
庭雀時雨ただしき三ケ日 松村蒼石 雁
庵主の反古しらべ居る時雨かな 比叡 野村泊月
廓街の時雨を裸馬に乗り過ぎつ 宮武寒々 朱卓
廻廊に燈籠の星や小夜しくれ 時雨 正岡子規
弁当忘れても時雨傘忘れるな 坊城 中子
張り出せし枝は鳩の座時雨くる 菊井稔子
形なさぬ鎧ぞ飾り時雨宿 石川桂郎 四温
往路より復路ものものしき時雨 宇多喜代子 象
待ちうけて涙見あはす時雨かな かや 俳諧撰集玉藻集
後の月蕎麦に時雨の間もあらね 松岡青蘿
御油・赤坂時雨に追はれ通りけり 中村純子 『花守』
御築地に見こす山辺やいく時雨 炭 太祇 太祇句選後篇
御造営の白木を濡らす時雨かな 西山泊雲 泊雲句集
御遷宮一月こえてしくれ哉 時雨 正岡子規
心弱くなりゐる母を泣かしめて夜の時雨か落葉を踏むは 北沢郁子
思ひ出し思い出し降るしぐれかな 京-烏水 選集古今句集
思ひ捨つ一片に京のしぐれかな 中村汀女
急く旅の熱田はしぐれ津はいかに 筑紫磐井 未定稿Σ
恋もなき時雨の貯炭むらさきに 小林康治 玄霜
恋沢の竹一管の青しぐれ 落合水尾
恠談の蝋燭青し小夜しくれ 時雨 正岡子規
息づきの仏とわれと堂しぐれ 皆吉爽雨 泉声
愛古りて時雨の彩もなかりけり 小林康治 玄霜
戀ともなしくれそめたる袂哉 時雨 正岡子規
我が袖の蔦や浮世の叢しぐれ 遊女-薄雲 俳諧撰集玉藻集
我もいつか斯くはしぐるる墓とならん 猿橋統流子
我佇てば我佇つところ時雨ゐし 田中暖流
我袖の蔦や浮世のむら時雨 遊女薄雲
或る日よりかなかなしぐれ明け昏れに 杉山やす子 『梅東風』
手から手へあやとりの川しぐれつつ 澁谷道
手入すみし松のあかるきしぐれかな 久保田万太郎 流寓抄
手拭の妙法講をしくれけり 時雨 正岡子規
手鏡のむらさき濃ゆく時雨けり 富沢赤黄男
托鉢の出会ひがしらや能登時雨 市堀玉宗
折からの時雨きく眼をわれに向け 林原耒井 蜩
折りもてるものをかざして時雨れけり 風生
押かけの客と名乗るや夕しぐれ 水田正秀
捨てし世も四とせ過ぎぬる時雨かな 松根東洋城
捨文の時雨に濡れて着きにけり 尾崎紅葉
捨聖足より濡るる時雨かな 雨宮きぬよ
掃きよせて時雨の音を聴く落葉 井上井月
掃溜に青菜の屑をしぐれけり 時雨 正岡子規
掛け替ふる大絵馬打てり那智しぐれ 坂口 麗峰
掛稲の表を走る時雨かな 比叡 野村泊月
掛稻にしくるゝ山の小村かな 時雨 正岡子規
掛軸の宗旦狐しぐれ呼ぶ 広岡仁 『休診医』
掻き曇り緋寒桜に雪しぐれ 伊東宏晃
提灯の見えつかくれつしぐれけり 時雨 正岡子規
揚繰(あぐり)網ひく河時雨通りけり 石原八束 『藍微塵』
携へて時雨傘ともならざりし 真下喜太郎
撥ねつるべ笠間窯元しぐれけり 土岐久英
放生池を時雨がたたく師は亡しや 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
敗荷にひかり散華の旅しぐれ 野澤節子 黄 炎
散るや実(げに)花の時雨の山西瓜 調鶴 選集「板東太郎」
数珠売女ねぢれ柱にしぐれ待 西本一都 景色
文も見ぬ時雨降る夜ぞ定なき 上島鬼貫
文鳥死す五坪の庭に時雨来て 宮坂静生 青胡桃
新しき紙子にかかるしぐれかな 許六
新宿に荷馬ならぶや夕時雨 時雨 正岡子規
新田に稗殻煙るしぐれ哉 昌房
新藁の出そめて早き時雨かな 芭蕉
旅いつも終幕のあり時雨虹 山田弘子 こぶし坂
旅に逢ふ人も時雨もなつかしく 藤松遊子
旅の旅つひに宗祇の時雨かな 山口素堂
旅二た夜一と夜時雨れてたのしくて 高橋淡路女
旅二た夜一ト夜時雨てたのしくて 高橋淡路女
旅人の牛にのつたる時雨哉 時雨 正岡子規
旅人や橋にしぐるゝ馬の上 時雨 正岡子規
旅僧の牛に乘つたる時雨哉 時雨 正岡子規
旅恋の鎮西の空時雨るゝや 小林康治 玄霜
旅衣不破の時雨にぬらしけり 時雨 正岡子規
旅衣時雨るゝがまゝ干るがまゝ 竹下しづの女 [はやて]
既に来る足音よそへさよ時雨 宋阿
日ありつゝ時雨るゝ京の慣ひかな 高濱年尾
日ぐれのトタン屋根がしぐれてきた 橋本夢道 無禮なる妻抄
日の入るを待つと唄へばしぐれけり 猿橋統流子 『丹波太郎』
日の烏ぬれにぞぬれしゆふ時雨 惟中
日の脚に追はるる雲やはつしぐれ 千代尼
日本と砂へ書きたる時雨哉 一茶
日枝までものぼれ時雨の走り舟 李由
早や三度時雨にあひぬ町暮るゝ 高木晴子 晴居
早打の先へはれ行しぐれ哉 子曳
早舞の鼓はつしとしぐれけり 唐橋秀子
昃れば時雨れて居りし高雄かな 高濱年尾 年尾句集
明日越ゆる山うかがへば時雨星 福田蓼汀
昔、男、しぐれ聞き聞き老いにけり 久保田万太郎 流寓抄
昔おもふしぐれ降る夜の鍋の音 鬼貫
昔東海道鈴鹿坂下時雨かな 松根東洋城
星月夜空にはくれし時雨哉 孤舟
星見えて椎に音ある時雨かな 西山泊雲 泊雲句集
星見れば星にはかなき時雨あと 上村占魚 鮎
昨日しぐれ今日又しぐれ行く木曾路 漱石
昴星涙のごとくしぐれけり 大峯あきら
昼ふかきネオンの骸にしぐれゐる 篠原鳳作 海の旅
昼深きネオンの骸にしぐれゐる 篠原鳳作
昼深く待つ足音に時雨降る 野見山ひふみ
昼顔や襦袢をしぼる汗時雨 昼顔 正岡子規
時ならぬこれは時雨ぞ一乗寺 高澤良一 燕音
時鐘鳴るヴェニスの時雨橋幾つ 石原八束 『風信帖』
時鐘鳴るヴエニスの時雨橋幾つ 石原八束 風信帖
時雨かな耳なし法師の琵琶思う 伊達甲女

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by 575fudemakase | 2016-11-13 18:54 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 1

時雨 1

*えりしぐれ渚は菜屑ゆりかへし 関戸靖子
*ひつじ田にしぐるるときの音もなし 長谷川浪々子
*ひつじ田のしぐるるときの音もなし 長谷川浪々子
B面に替へし頃よりの時雨 須川洋子
ZIGZAGに死の斥候が来てしぐれ 楠本憲吉
「解体新書」漢文で読みしぐれけり 銀林晴生
あかあかと落葉松林時雨れけり 相馬遷子 山河
あかるみの松にのぼるや小夜しくれ 時雨 正岡子規
あくびして猫が飯食ふ朝時雨 中拓夫
あさづけのまづくなりたる時雨かな 久保田万太郎 草の丈
あしあとの時雨にのこるけもの道 岩井京子
あしおとかあらぬしぐれの小屋根越 室生犀星 犀星発句集
あたたかに宿は物くふしぐれかな 野坡
あだし野や時雨れて帯の内温し 殿村菟絲子 『晩緑』
あちこちす林の人に時雨哉 千家元麿 千家元麿句集
あつあつの豆腐来にけりしぐれけり 来山
あによめの日傘を借りてせみしぐれ 筑紫磐井 婆伽梵
あはれさやしぐるる比の山家集 素堂
あはれさや時雨るる頃の山家集 山口素堂 (1642-1716)
あぶらやにふらずもがなのしくれ哉 時雨 正岡子規
あまたたび時雨るる香住蟹景気 阿波野青畝
あめつちのしぐれびかりに旅の者 黒田杏子 花下草上
あら蓑の藁の青みやはつ時雨 蓼太
ありあけの枕をただすしぐれかな 金尾梅の門 古志の歌
あるきゐる母もしぐるるもののうち 長谷川双魚 『ひとつとや』
あれきけと時雨来る夜の鐘の聲 宝井(榎本)其角 (1661-1707)
あれ聞けと時雨来る夜の鐘の声 榎本其角
いきかひに根もなき市の時雨かな 正秀 俳諧撰集「有磯海」
いくそたび時雨るゝ萩を刈りにけり 岸風三楼 往来
いさかひに根もなき市の時雨かな 水田正秀
いそがしや沖の時雨の真帆片帆 去来
いち早く虚子と時雨れてをらるるや 深見けん二 日月
いつからを時雨といはん太陽暦 時雨 正岡子規
いつの間に星なくなつて時雨哉 時雨 正岡子規
いづく時雨傘を手にさげて帰る僧 松尾芭蕉
いづく時雨傘を手に提げて帰る僧 芭蕉
いづれかはかの学僧のしぐれ傘 田中裕明 花間一壺
いと白う八つ手の花にしぐれけり 中村汀女
いろいろの戀をしくるゝ嵯峨野哉 時雨 正岡子規
いろいろの時雨は過ぎて冬の雨 冬の雨 正岡子規
うぐひすのしのび歩行や夕時雨 炭 太祇 太祇句選
うぐひすの卯時雨に高音哉 高井几董
うぐひすの忍び歩行や夕時雨 太祇
うしろすがたのしぐれてゆくか 種田山頭火 草木塔
うしろより日の当り来し時雨傘 淵沢容司郎
うしろより蹤き来る嵯峨の夕しぐれ 高澤良一 燕音
うしろ姿のしぐれてゆくか 種田山頭火(1882-1940)
うすうすとこの身そのまま時雨虹 古松治子
うたひめにネオンかはたれはつしぐれ 飯田蛇笏 雪峡
うちまぎれ行くや松風小夜しくれ 時雨 正岡子規
うつくしきあぎととあへり能登時雨 飴山實(1926-2000)
うつくしき時雨過ぎたる鹿の子たち 飯田龍太
うるむ灯や小樽しぐれの硝子館 的場 敏子
うれ柿を鳥もち去る時雨かな 中勘助
えび舟を時雨の白く過ぎにけり 金箱戈止夫
おかめ笹さらさらさらと時雨けり 邊見京子
おかめ笹しぐれんとする湖の碧 角川源義
おとなしき時雨を聞くや高野山 上島鬼貫
おなじしぐれ柞の森や形境 調幸子 選集「板東太郎」
おのが畫を売らむと抱へ時雨畫家 相馬遷子 雪嶺
おもひやる時雨の中や筏さし 阿誰
おん像(かたち)修すと此處も時雨かな 高橋睦郎 金澤百句
お日さまのいそがしきはるしぐれかな 細川加賀 『玉虫』以後
お葉車音なくすすむ夜の時雨 成瀬桜桃子
かき消ゆるまでにしぐるる人と海 跡部祐三郎
かけ橋や笠の端めぐる時雨雲 時雨 正岡子規
かけ稲の籾噛み去るや時雨雲 銀漢 吉岡禅寺洞
かしこまる後も壁のしぐれ哉 浪化
かたかたは藪のてつだふしぐれかな 内藤丈草
かつぎ屋の腰よろめくや朝時雨 林翔 和紙
かなかなしぐれお湯のあないを垣越しに 林原耒井 蜩
かなかなしぐれまめがまさをにゆであがり 林原耒井 蜩
かなかなしぐれ今宵の夢に雲湧かむ 太田鴻村 穂国
かなかなしぐれ仔山羊と分つ山羊の乳 林原耒井 蜩
かなかなしぐれ安堵の色を互みかな 林原耒井 蜩
かなかなしぐれ独りぼつちの米洗ふ 林原耒井 蜩
かなかなしぐれ竹おのづからゆらぎゐる 太田鴻村 穂国
かなかなしぐれ雲やおりゐる身のほとり 太田鴻村 穂国
かばかりの草のあかるむ時雨かな 中田剛 珠樹以後
かへり見る我が積む石のしぐれけり 宮武寒々 朱卓
かへるさの燈ともし頃を時雨けり 上村占魚 鮎
からかさを千鳥はしるや小夜時雨 時雨 正岡子規
からまつの透く千本の時雨寒 鷲谷七菜子 花寂び
きそひ打つ五山の鐘や夕しぐれ 正岡子規
きぬぎぬを引きとめられてしぐれけり 時雨 正岡子規
きのふけふあしたは只のしぐれかな 千代尼
きのふ来し人を数へてしぐれけり 長谷川双魚 風形
きらきらとしぐれくるなり田鶴の空 大橋櫻坡子 雨月
きらきらと京が時雨れてをりにけり 稲畑廣太郎
くらま路のしぐれにぬれて声かけあう 浅原六朗 欣求鈔
くれなゐの糸のごとくに花しぐれ 角川春樹 夢殿
くろみ立つ沖の時雨や幾所 丈草 俳諧撰集「藤の実」
けふはもう帰る便なき島時雨 豊原月右
こがらしの地にも落さぬしぐれかな 向井去来(1651-1704)
こがらしの地にも落とさぬしぐれかな 去来
ことごとく木を諳んじる時雨なり 穴井太 原郷樹林
このうへは白きものとてしぐれけり 千代尼
この山の木の葉音してしぐれけり 森澄雄 四遠
この日かずの故人をおもふしぐれ哉 加舎白雄
この旦時雨光りて樹を洗ふ 西村公鳳
この時を静に書見朝時雨 永井志九令
この比の垣の結目やはつ時雨 野坡
この海に草鞋(わらんぢ)すてん笠しぐれ 松尾芭蕉
この海に草鞋捨てん笠時雨 松尾芭蕉
この猿はやしろ久しき時雨かな 園女 俳諧撰集玉藻集
この郷の色壁や旅しぐれつゝ 内田百間
この里に湯女まだ残る時雨かな 大場白水郎 散木集
こもり居の門辺の菊も時雨さび 杉田久女
ころがつて時雨ぐもりの青竹瓮 細川加賀 生身魂
ごまよごし時雨るゝ箸になじみけり 久保田万太郎 草の丈
さうさうとしぐるゝ音や四つの絲 時雨さうさう<口+曹> 正岡子規
さかしまに水薬振る夜の時雨かな 八十島稔 柘榴
さくら見るけふも時雨のやどり哉 松岡青蘿
ささ竹にさやさやと降るしぐれかな 士朗
さしかける夢もあるなり時雨傘 橋石 和栲
さしこすや深山しぐれのぬれ筏 暁台 選集古今句集
さしてゆく傘に時雨のおのづから 軽部烏帽子 [しどみ]の花
さして行く奉天城は時雨哉 寺田寅彦
さし足をわすれて闇の時雨かな 水田正秀
さはつても時雨さう也ちゝぶ山 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
さびしさは星をのこせるしぐれかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
さみしさに口あけてゐる時雨かな 小林康治 『華髪』
さみどりの刺身こんにやく花時雨 角川春樹 夢殿
さめざめとしぐるる歌の沖の石 下村梅子
さわつても時雨れさうなり秩父山 一茶
さんさ時雨父の仙台平袴 幸田多景子
ざざんざや猶浜松にはつしぐれ 立花北枝
しくるるや上野谷中の杉木立 時雨 正岡子規
しくるゝやいつこの御所の牛車 時雨 正岡子規
しくるゝやいつまで赤き烏瓜 時雨 正岡子規
しくるゝや何を湯出鱆色に出る 時雨 正岡子規
しくるゝや刀引きぬく居合拔 時雨 正岡子規
しくるゝや古き都の白牡丹 時雨 正岡子規
しくるゝや夕日の動く西の空 時雨 正岡子規
しくるゝや妹がりはいる蛇の目傘 時雨 正岡子規
しくるゝや妻、子を負ふて車推す 時雨 正岡子規
しくるゝや局隣も草雙紙 時雨 正岡子規
しくるゝや山こす小鳥幾百羽 時雨 正岡子規
しくるゝや岬をめぐる船の笛 時雨 正岡子規
しくるゝや弘法死して一千年 時雨 正岡子規
しくるゝや旅人細き大井川 時雨 正岡子規
しくるゝや昔の夢を花の下 時雨 正岡子規
しくるゝや東へ下る白拍子 時雨 正岡子規
しくるゝや松原通る馬の鈴 時雨 正岡子規
しくるゝや檐より落つる枯あやめ 時雨 正岡子規
しくるゝや熊の手のひら煮る音 時雨 正岡子規
しくるゝや物書く筆の薄にじみ 時雨 正岡子規
しくるゝや石にこぼるゝ青松葉 時雨 正岡子規
しくるゝや祗園清水智恩院 時雨 正岡子規
しくるゝや紅薄き薔薇の花 時雨 正岡子規
しくるゝや胡弓もしらぬ坊か妻 時雨 正岡子規
しくるゝや腰湯ぬるみて雁の声 時雨 正岡子規
しくるゝや芋堀るあとの溜り水 時雨 正岡子規
しくるゝや芳野の山の歸り花 時雨 正岡子規
しくるゝや藜の杖のそまる迄 時雨 正岡子規
しくるゝや隣の小松庵の菊 時雨 正岡子規
しくるゝや雀のさわぐ八重葎 時雨 正岡子規
しくるゝや鶏頭黒く菊白し 時雨 正岡子規
しくれけり月代已に杉の上 時雨 正岡子規
しくれけり梢に夕日持ちながら 時雨 正岡子規
しくれけり菎蒻玉の一むしろ 時雨 正岡子規
しくれけり豆腐買ひけり晴れにけり 時雨 正岡子規
しくれしてねぢけぬ菊の枝もなし 時雨 正岡子規
しくれして鎧の袖の曇り哉 時雨 正岡子規
しくれすに歸る山路や馬の沓 時雨 正岡子規
しくれたる人の咄や四疊半 時雨 正岡子規
しくれつゝも菊健在也我宿は 時雨 正岡子規
しくれては熊野を出る烏哉 時雨 正岡子規
しぐるとも御笠參らすよしもなし 時雨 正岡子規
しぐるるといへばしぐれてゐるらしき 綾部仁喜 寒木
しぐるるとなきに茶はなき端居かな 室生犀星 犀星発句集
しぐるると白熱電球ともりけり 穴井太 原郷樹林
しぐるると舟がひく水尾鴨の水尾 宮原 双馨
しぐるると赤い傘さし老婆ゆく 深見けん二
しぐるるにあらぬあしおと絶えにけり 室生犀星 犀星発句集
しぐるるに尼僧がポット提げてくる 横山白虹
しぐるるもまた好日の蔓もどき 斉藤美規
しぐるるも風鐸は音せざりけり 阿波野青畝
しぐるるやいもぼうの灯のほうと点く 木田千女
しぐるるやいろはに並べ下足札 鷲田 環
しぐるるやかぶさり織れる機織女 橋本鶏二 年輪
しぐるるやくだまくひとの衿糞 加藤郁乎(1929-)
しぐるるやこんにゃく深くうなずけり 穴井太 原郷樹林
しぐるるやしぐるる山へ歩み入る 種田山頭火 草木塔
しぐるるやすばやくたたむ市のもの 片山由美子 水精
しぐるるやだらだら坂の黒光り 丸谷才一
しぐるるやふと会へさうな山頭火 長戸弥知香
しぐるるやほのほあげぬは火といはず 片山由美子 風待月
しぐるるやもみ(紅)の小袖を吹きかへし 去来 俳諧撰集「有磯海」
しぐるるやもみの小袖を吹かへし 去来
しぐるるやよべ祝うけし花は壺に 皆吉爽雨 泉声
しぐるるやコップの水もしぐれ色 佐久間慧子
しぐるるや一喝されて牛歩む 小俣由とり
しぐるるや一家襁褓の中に住む 椎橋清翠
しぐるるや丹波絣の端切買ふ 浅場芳子
しぐるるや亀もこの世を仮とせし 森本虹泉
しぐるるや二十六聖片濡れて 柴田弘子
しぐるるや以下同文の表彰状 宮内香宝
しぐるるや低き軒借る京の町 高木久子
しぐるるや僧も嗜(たしな)む実母散 川端茅舎(1897-1941)
しぐるるや僧も嗜む実母散 川端茅舎
しぐるるや写本の上に雨のしみ 正岡子規
しぐるるや切られて白き蛸の肌 鈴木真砂女 夕螢
しぐるるや加賀友禅の鏡掛 中橋文子
しぐるるや南に低き雲の峯 几董 五車反古
しぐるるや古茶に戻れる新茶の香 石川桂郎 四温
しぐるるや呼び合ふごとく灯のつきて 久保田愛子
しぐるるや坂に向き合ふ酒場書肆 山田 文男
しぐるるや堀江の茶屋に客ひとり 龍之介
しぐるるや夕日残れる原くらし 立花北枝
しぐるるや夜明をひびく湯檜曾川 渡辺 立男
しぐるるや夢のごとくに観世音 草間時彦 櫻山
しぐるるや大工の腰の釘袋 樋口けい子
しぐるるや奥の細道むすびの地 早矢仕永次
しぐるるや宮に兀げたる鬼女の面 闌更
しぐるるや寺の柱に呼子笛 松山足羽
しぐるるや少し痩せたる母の墓 川崎柊花
しぐるるや山彦は樹を親と思ひ 長谷川久々子
しぐるるや帽子屋のこる三田通り 大島民郎
しぐるるや恋占ひの値段表 小林 稔
しぐるるや我も古人の夜に似たる 蕪村
しぐるるや手斧で彫れる雉子車 野見山朱鳥
しぐるるや抑えたきものふつふつと 安曇統太
しぐるるや掌をかさねおく膝の上 鈴木しづ子
しぐるるや旅の日数の足袋の数 影島智子
しぐるるや木の香はなれぬ舟造り 神尾久美子
しぐるるや杉の高枝のぎいと鳴る 太田鴻村 穂国
しぐるるや松は雀をひそませて 南うみを
しぐるるや松美しき法隆寺 阿久津都子
しぐるるや柱をのぼる炉火明り 金尾梅の門
しぐるるや楸邨の観しものの底 小檜山繁子
しぐるるや横笛庵は苑の奥 石原舟月 山鵲
しぐるるや檜葉きせあるく囮籠 皆吉爽雨
しぐるるや死なないでゐる 種田山頭火(1882-1940)
しぐるるや水をまとひて錦鯉 宮坂静生 山開
しぐるるや河霧の里とつくにに 小池文子
しぐるるや波の忍路の捨番屋 坂井とみ子
しぐるるや波も見せずに多摩の水 中村汀女
しぐるるや津和野人形の紙小袖 山田弘子 螢川
しぐるるや海から暮れる岬町 大浜寿美子
しぐるるや湯田中行の終電車 田中冬二 行人
しぐるるや潮も黒ずむ熔岩岬 下村ひろし 西陲集
しぐるるや炭が火となるさみしき香 三橋 迪子
しぐるるや煤によごれし竹の幹 室生犀星 魚眠洞發句集
しぐるるや燈明一つ奥の院 星野椿
しぐるるや田のあらかぶの黒む程 芭 蕉
しぐるるや田の新株(あらかぶ)の黒むほど 松尾芭蕉
しぐるるや田の新株の黒むほど 芭蕉
しぐるるや畝傍は虹をかかげつつ 篠原鳳作
しぐるるや目鼻のありし木端仏 椎橋清翠
しぐるるや目鼻もわかず火吹竹 川端茅舎
しぐるるや目鼻をわかず火吹竹 川端茅舎(1897-1941)
しぐるるや瞼の中に目玉あり 森賀まり
しぐるるや積まれし石が音を出す 長谷川双魚 『ひとつとや』
しぐるるや空に片隅なかりけり 保坂リエ
しぐるるや窓を掠むる鳥つぶて 沢木欣一 雪白
しぐるるや竹美しき厭離庵 加藤安希子
しぐるるや筑波二山のなほも寄る 岩西多加志
しぐるるや箴音ひびく千曲川 竹内和歌枝
しぐるるや糸なきときの糸車 神尾久美子 桐の木
しぐるるや綿にくるまる棉の種 穴井太 原郷樹林
しぐるるや胡桃に甲斐の国の音 穴井太 原郷樹林
しぐるるや脚折鍋を炉にかけて 白雄
しぐるるや脚折鐺を炉にかけて 白雄
しぐるるや船いま運河わたるとき 佐川広治
しぐるるや芒みみづく鳴きもせず 横山房子
しぐるるや芥ふちどり日本海 岸田稚魚 『負け犬』
しぐるるや花衣句碑朱を放つ 穴井太 原郷樹林
しぐるるや茶房に大きパリの地図 麻殖生伸子
しぐるるや蒟蒻冷えて臍の上 正岡子規(1867-1903)
しぐるるや蓑虫庵の石竃 下里美恵子
しぐるるや螺鈿の鳥のあをびかり 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
しぐるるや解かれて青き稲架の竹 岸 典子
しぐるるや語り始めし石人像 立木節子
しぐるるや誠の暮は鳥さわぐ 几圭
しぐるるや鉄筆捨てし黙ふたつ(川島四天居にて筆耕) 細川加賀 『傷痕』
しぐるるや飴の匂へる宮の内 室生犀星 魚眠洞發句集
しぐるるや駅に西口東口 安住敦(1907-88)
しぐるるや黒みてここに去来の墓 高澤良一 燕音
しぐるるや鼠のわたる琴の上 蕪村
しぐるるよ佐野の渡も三輪の崎も 下村梅子
しぐるる土をふみしめてゆく 種田山頭火 草木塔
しぐるる墓荒田千枚見下しに 岸田稚魚 筍流し
しぐるれど御笠參らすよしもなし 時雨 正岡子規
しぐるゝと人はいるなり寐惚顔 時雨 正岡子規
しぐるゝやともしにはねるやねのもり 時雨 正岡子規
しぐるゝやむれて押あふ桶の鮒 時雨 正岡子規
しぐるゝや右は龜山星か岡 時雨 正岡子規
しぐるゝや寫本の上に雨のしみ 時雨 正岡子規
しぐるゝや平家にならぶ太平記 時雨 正岡子規
しぐるゝや日暮るや塔は見せながら 時雨 正岡子規
しぐるゝや殘燈かすかに詩仙臺 時雨 正岡子規
しぐるゝや蒟蒻冷えて臍の上 時雨 正岡子規
しぐるゝや隣の家に運座あり 時雨 正岡子規
しぐれうとうとして暮れにけり 時雨 正岡子規
しぐれうとしぐれうとして暮れにけり 正岡子規
しぐれきてはては松風海の音 時雨 正岡子規
しぐれきてほとほと都とほき寺 鍵和田?子(ゆうこ)
しぐれきて山彦絶ちし下りかな 原田種茅 径
しぐれきて時雨の海のほか見えず 加藤瑠璃子
しぐれきて束稲山をかくしけり 成瀬桜桃子 風色
しぐれきて海鳥しろし茶の畠 石原舟月 山鵲
しぐれきて蟹のやうにも山下る 清水能舟
しぐれくるシカゴの街に石の椅子 仙田洋子 雲は王冠
しぐれくる空か赤松高くあり 藤田あけ烏 赤松
しぐれぐせつきし丹後にお客さま 杉本美寿津
しぐれけりはしり入りけり晴れにけり 広瀬惟然
しぐれけり土持あぐる芋がしら 松岡青蘿
しぐれけり走り入りけり晴れにけり 惟然
しぐれこぼす空のしろがね女寺 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
しぐれしか裏の竹山旭さす 時雨 正岡子規
しぐれずに空行く風や神送 正岡子規
しぐれせぬ處はあらずはりま灘 時雨 正岡子規
しぐれたりぐい呑に顔うづめては 草間時彦 櫻山
しぐれたるあとの日が射し実南天 鷲谷七菜子
しぐれたる小ぐらき雲が真上ゆく 篠原梵 雨
しぐれたる幹綿々と梓川 小野比路
しぐれたる鴟尾一対を仰ぐのみ 中田剛 珠樹以後
しぐれつつならべる屋根のありにけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
しぐれつつ出島鼈甲店灯す 井田満津子
しぐれつつ吾を待つものに帰るべく 京極杞陽 くくたち下巻
しぐれつつ我を過ぎをりわれのこゑ 森澄雄 浮鴎
しぐれつつ月を真上の北信濃 河野亘子
しぐれつつ木の花うかぶ高さかな 宇佐美魚目
しぐれつつ杉は静かに高野山 藤井冨美子
しぐれつつ油炒めも必死にて 飯田龍太
しぐれつつ浪立ちながる本渡川 下村ひろし 西陲集
しぐれつつ陽のさす牛馬童子かな 鈴木享子
しぐれつゝ暮るゝならひの二三日 軽部烏帽子 [しどみ]の花
しぐれつゝ水落ちいそぐところかな 久保田万太郎 草の丈
しぐれつゝ留守もる神の銀杏かな 高浜虚子
しぐれつゝ紅葉のいろの盛りかな 高橋淡路女 梶の葉
しぐれつゝ走る雲あり鷹ケ峰 比叡 野村泊月
しぐれてはおどろきやすし鉢の鮠 篠田悌二郎
しぐれてはどこからとなく山のこゑ 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
しぐれては傾ぎゆくなり四ッ目垣 宇佐美魚目 天地存問
しぐれては市振駅の柿紅葉 山田みづえ
しぐれては松あざやかに暦売 鷲谷七菜子
しぐれては枯れゐる石をなほ枯らす 朱鳥
しぐれては殺生石の毒吐きぬ 福田太ろを
しぐれては鄙ぶ高雄の柿もみぢ 高澤良一 宿好
しぐれては鐘鳴らすなり祖敬院 伊藤霜楓
しぐれても耕すばかり輪中人 近藤一鴻
しぐれて三日月へ酒買ひに行く 山頭火
しぐれなとあれよ餘りに静かなり 時雨 正岡子規
しぐれねば又松風の只おかず 立花北枝
しぐれの幹濡れて片側充たされず 成瀬桜桃子 風色
しぐれの跡泥の靴あと吾子病むや 古沢太穂 古沢太穂句集
しぐれひとしきり人形つつむ玻璃 中田剛 珠樹
しぐれむ日何時とは知らず林泉暑し 相生垣瓜人 微茫集
しぐれよとばかりロビーに人の絶え 久保田万太郎 流寓抄以後
しぐれる漁港「めし」の看板立てっぱなし 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
しぐれゐる一流木と日本海 野見山朱鳥
しぐれをりコンピューターに億の数 加藤楸邨
しぐれをりコンピユーターに億の数 加藤楸邨
しぐれをるらしき静けさ壷の耳 坂本謙二
しぐれんといてふもみぢ葉すきとほる 槐太
しぐれ仏三歩しざりて目鼻顕つ 吉野義子
しぐれ候ほどに宿につきて候 夏目漱石 明治二十九年
しぐれ傘かろきがたのし童話荘 西本一都 景色
しぐれ呼ぶ幹のくろがね父の郷 伊藤京子
しぐれ哉きのふはうすきものの残 安東次男 昨
しぐれ墓こころなごみぬまた来なむ 松村蒼石 寒鶯抄
しぐれ寒金泥欅さくら咲き 猿橋統流子 『丹波太郎』
しぐれ居りし烏も杉を離れけり 比叡 野村泊月
しぐれ急墓ぐさとりて妻も娘も 松村蒼石 寒鶯抄
しぐれ恋ふ死を急ぐごと旅つづけ 林火
しぐれ日々如意ケ嶽より比叡より 岸風三樓
しぐれ日々如意ヶ嶽より比叡より 岸風三樓
しぐれ星またたく蓮田掘りすてし 石原舟月 山鵲
しぐれ月槻の余滴をてらしけり 石原舟月
しぐれ来し三千院の玄関かな 田中王城
しぐれ来し小浜とありし道しるべ 上野章子
しぐれ来し音をすばやく榊山 鷲谷七菜子 天鼓
しぐれ来てはさみ忙しや蟹の市 山本一糸
しぐれ来てひとりひとりが匂ふかな 山田みづえ
しぐれ来て園のにしきを蹈日哉 高井几董
しぐれ来て縫ひの急く手を火にかざす 及川貞 夕焼
しぐれ来て鉄の匂ひの舟箪笥 脇本千鶴子 『てんと花』
しぐれ来とチーク落葉の鳴りいづる 千代田葛彦 旅人木
しぐれ来と松の中なる松その他 岸田稚魚
しぐれ来ぬ手向けの笹の音にのりて 久保田万太郎 流寓抄
しぐれ来やさしくる傘のはぢき書 立花北枝
しぐれ来る弾かぬピアノと肖像画 ながいとおる
しぐれ気のなうて一日小春かな 路通
しぐれ汐ささらに鳴りて流燈会 石原八束 空の渚
しぐれ笠目深に越の蟹売女 木下ふみ子
しぐれ聞きちりめん山椒一トつまみ 高澤良一 宿好
しぐれ聴く聖観音へ蜘蛛の糸 大島民郎
しぐれ蕭蕭獄舎に降るはべつの雨 森村誠一
しぐれ虹かゝげて比叡かくれなし 岸風三楼 往来
しぐれ虹二つ目は藍濃かりけり 大石悦子
しぐれ虹手窪の底のますほ貝 猿橋統流子 『丹波太郎』
しぐれ行く山が幕石のすぐうしろ 瀧井孝作
しぐれ見るうしろに赤き火鉢の火 猿橋統流子
しぐれ連れ一の関まできたりけり 岡田史乃
しぐれ過ぎあとあるものに藪柑子 松村巨湫
しぐれ過て草に落来ぬ松の風 高井几董
しぐれ道影失ひて歩みけり 牧長幸子
しぐれ避け北山杉の見ゆる簷 高澤良一 宿好
しぐれ雲から落ちてきし棗の実 六角文夫
しぐれ雲眉根に支へゆく思ひ 片山由美子 風待月
しぐれ雲眼鏡において古書店主 諸角せつ子
しぐれ~て片仮名だより書きをらん 廣江八重櫻
しし~し若子の寝覚の時雨かな 西鶴
したゝかに音のそひきし時雨かな 久保田万太郎 草の丈
しはぶきの野中に消ゆる時雨かな(折口信夫先生に随ひ武蔵野を歩く) 角川源義 『口ダンの首』
しんかんと時雨るゝ松や蚶満寺 寺田寅彦
しんがりの仔牛しぐるる牧仕舞 久田 澄子
しゝしゝし若子の寝覚の時雨かな 井原西鶴
しゝ~し若子の寝覚の時雨かな 西鶴
すぐき桶しぐれの石を三つ吊れり 草間時彦
すばらしいものがしぐれて来りけり 関口比良男
せみしぐれ身体のなかの対の骨 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
その影や時雨て雲に一むかし 立花北枝
その色を湖に頒ちし時雨虹 山田弘子 こぶし坂
その頃の吉野の駅に時雨けり 角川春樹(1942-)
たぎる湯の玉繭匂ふ加賀時雨 三澤いつ子
たはごとはみみずにまかせしぐれけり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
たぶの木のあたりの暗きしぐれかな 吉田紫乃
たましひのあまたのひとつ時雨鯉 齋藤玄 『雁道』
ためらはず嫁げるうしろ時雨けり 小林康治 玄霜
たらちねの国の時雨に濡れにけり 小林康治 四季貧窮
だまされし星の光や小夜時雨 野澤羽紅女
だんだんに燈のほそりけりさよ時雨 時雨 正岡子規
ちんば鶏たま~出れば時雨けり 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
つくは山かのもこのものしくれ哉 時雨 正岡子規

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by 575fudemakase | 2016-11-13 18:52 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 補遺2

時雨 補遺2

掛稻にしくるゝ山の小村かな 正岡子規 時雨
提灯の見えつかくれつしぐれけり 正岡子規 時雨
撞く鐘はをみな手ならむしぐれ虹 上田五千石『琥珀』補遺
放課後のガラス時雨を呼ぶひかり 廣瀬直人
故山のごと高し時雨のビルディング 中村草田男
散る花や三鬼しぐれを渡しつつ 石塚友二 曠日
新宿に荷馬ならぶや夕時雨 正岡子規 時雨
新發智の青き頭を初時雨 正岡子規 時雨
新聞で見るや故郷の初しくれ 正岡子規 時雨
旅に在す恩師いづちの時雨笠 山口青邨
旅の目にしぐれの湖の乱れのみ 大野林火 方円集 昭和五十年
旅びとにしぐるる簷の深からぬ 伊丹三樹彦
旅人にしぐれて藍き嶽鎧ふ 飯田蛇笏 山響集
旅人にやらずの木の実しぐれかな 鷹羽狩行
旅人の京に入る夜や初時雨 正岡子規 時雨
旅人の京に入る日や初時雨 正岡子規 時雨
旅人の京へ入る日や初時雨 正岡子規 時雨
旅人の牛にのつたる時雨哉 正岡子規 時雨
旅人や橋にしぐるゝ馬の上 正岡子規 時雨
旅人われ羅漢としぐれゐたりけり 伊丹三樹彦
旅僧の牛に乘つたる時雨哉 正岡子規 時雨
旅恋の鎮西の空時雨るゝや 小林康治 玄霜
旅衣不破の時雨にぬらしけり 正岡子規 時雨
日々に見て菜のとくしげる露しぐれ 飯田蛇笏 家郷の霧
日は西に蕪村の毛馬の時雨るるか 佐藤鬼房
日射しすぐ時雨模様になる日和 右城暮石 句集外 昭和十二年
旧宿場しぐれ焼亡後に似たり 松崎鉄之介
早舟の細き舳先にしぐれけり 日野草城
星見れば星にはかなき時雨あと 上村占魚 鮎
映画ありこの時雨の涼しけれ 山口青邨
昴星楼閣のごとしぐれけり 山口誓子
昼からが次第にしぐれさうになる 右城暮石 句集外 昭和十二年
昼顔や襦袢をしぼる汗時雨 正岡子規 昼顔
時じくの鮴名物よ雪しぐれ 阿波野青畝
時ならぬ谿の時雨や黒茶碗 桂信子 草影
時雨かといへばしぐれて来りけり 加藤秋邨
時雨きき酒一合は飲めぬなり 鈴木真砂女 居待月
時雨さんざ仏具屋町わが生家古り 村山故郷
時雨してあとは水澄むばかりなる 右城暮石 句集外 昭和十八年
時雨して人気火の気の無き神社 右城暮石 散歩圏
時雨して虹の出さうな山の空 右城暮石 句集外 昭和六十二年
時雨して鴨居明るき燈をともす 右城暮石 句集外 昭和十七年
時雨すぎ光流して柿田川 松崎鉄之介
時雨すぎ紫式部しづくせり 水原秋櫻子 浮葉抄
時雨すぎ鳰あまたをり鵜もうかぶ 水原秋櫻子 岩礁
時雨せし日輪吾に余生なし 右城暮石 句集外 昭和四十九年
時雨せし青空急ぐ女学生 右城暮石 句集外 昭和五十六年
時雨つゝ生垣めぐり訪ひぬ 星野立子
時雨ても時雨ても旅果てざるは 稲畑汀子
時雨で匂う象 遠巻きに 詩の仲間 伊丹三樹彦
時雨とはなりて鈴鹿に遊びけり 阿波野青畝
時雨とも冬の雨とも善光寺 星野麥丘人
時雨とも通り雨とも言ひながら 稲畑汀子
時雨なり兵も軍馬もまつげ濡れ 伊丹三樹彦
時雨にもあはず三度の酉の市 正岡子規 時雨
時雨にも喧嘩にも女の児が強し 右城暮石 散歩圏
時雨の湖に沿いて番傘さしゆく子 古沢太穂 古沢太穂句集
時雨の駅逢ひて不用意あくび出づ 松崎鉄之介
時雨ふり鵯鳴き移り落葉中 右城暮石 句集外 昭和四年
時雨ふる磐城ぞ琵琶の弾き語り 佐藤鬼房
時雨まづ濡らしてゆきぬくわりんの実 細見綾子
時雨やみしか洋傘を橋に衝く 山口誓子
時雨やみわがこころばえ地を愛す 飯田蛇笏 白嶽
時雨より外の誠や乕の雨 正岡子規 時雨
時雨るるとおもひ下げ来し傘ひらく 上村占魚 球磨
時雨るると人にまじりて急ぎけり 中村汀女
時雨るると仰ぎもすれば俯きも 阿波野青畝
時雨るると木米茶碗蹤ききたる 加藤秋邨
時雨るると精し青塗の塔ぬちに 伊丹三樹彦
時雨るると著せたまはりし真綿かな 松本たかし
時雨るると袖うちかざしよろこべる 富安風生
時雨るると長き兵列のはしけぶり 伊丹三樹彦
時雨るると頬白啼かず去りけぶる 伊丹三樹彦
時雨るると鶴監視人出てをりし 清崎敏郎
時雨るるにおしもだしゆく兵殆ど 伊丹三樹彦
時雨るるやうるさくなりし川の音 山田みづえ まるめろ
時雨るるやとことはに澄む比翼皿 永田耕衣
時雨るるやめざまし雀京に啼き 石川桂郎 高蘆
時雨るるや何となく買ふ記念パン 佐藤鬼房
時雨るるや好いた同士の同じ顔 中村草田男
時雨るるや家風呂に入るも十月振 臼田亜郎 定本亜浪句集
時雨るるや寺は一段づつ高し 廣瀬直人
時雨るるや幾曲りして笹の門 石川桂郎 含羞
時雨るるや息もてくもる若狭塗 古舘曹人 砂の音
時雨るるや手あげて埴輪夫を恋ふ 野見山朱鳥 天馬
時雨るるや水をゆたかに井戸ポンプ 中村汀女
時雨るるや淵へ片寄る楢林 廣瀬直人
時雨るるや烏賊より出づるトビカラス 中村草田男
時雨るるや父の独吟繙けば 山田みづえ 手甲
時雨るるや竹のごとくに枯るる草 山口青邨
時雨るるや蘆刈下駄のむかしぶり 水原秋櫻子 殉教
時雨るるや話し残せしこと文に 星野立子
時雨るるや身の丈ほどの塀の内 廣瀬直人
時雨るるや障子のうちに蘆花夫人 石田波郷
時雨るるや障子明りに黒仏 山口青邨
時雨るるや隣の屋根のたのもしき 永田耕衣
時雨るるや雄島の橋の脚高く 山口青邨
時雨るるや青峰も見えて箱根道 村山故郷
時雨るるや音してともる電熱器 波多野爽波 鋪道の花
時雨るるや馬車より低き小松原 川端茅舎
時雨るるや髯題目の碑のならび 松崎鉄之介
時雨るるや鰡塚ひとつくつがへり 水原秋櫻子 殉教
時雨るゝと四五歩戻りて仰ぎけり 高野素十
時雨るゝやさして急ぎの用もなく 星野立子
時雨るゝやパンなど焼いてもてなしぬ 星野立子
時雨るゝや又きこしめす般若湯 川端茅舎
時雨るゝや松にこぞれる浜烏 原石鼎 花影
時雨るゝや柳に少し葉のありぬ 細見綾子 桃は八重
時雨るゝや横にならびし岨の松 正岡子規 時雨
時雨るゝや水の流るゝ竹林 前田普羅 普羅句集
時雨るゝや海と空とのあはひより 正岡子規 時雨
時雨るゝや灘の嵐の波かしら 正岡子規 時雨
時雨るゝや灯火にはねる家根のもり 正岡子規 時雨
時雨るゝや空の青さをとぶ鴉 原石鼎 花影
時雨るゝや筧を傳ふ山の雲 正岡子規 時雨
時雨るゝや紅葉を持たぬ寺もなし 正岡子規 時雨
時雨るゝや電燈ともる車井戸 前田普羅 普羅句集
時雨るゝ灯魚画きて妻を遠くしぬ 小林康治 玄霜
時雨る夜は古りし恋ゆゑ映画みる 佐藤鬼房
時雨れきし自由ケ丘の男ども 加藤秋邨
時雨れしは気のつかざりし病臥かな 高浜年尾
時雨れたるあとの日ざしの移りゐし 後藤夜半 底紅
時雨れつつ山は容をなしにけり 桂信子 花影
時雨れつつ片虹立てり殉教碑 水原秋櫻子 殉教
時雨れつつ礁かき消す怒濤かな 加藤秋邨
時雨れつつ鋸山の歯に夕日 山口青邨
時雨れつゝけぶれる遠ちへ牛車 星野立子
時雨れつゝわれ大阿蘇と雲に入る 野見山朱鳥 曼珠沙華
時雨れつゝ時雨れつゝ船美しく 星野立子
時雨れつゝ木地屋木屑に埋れて 高野素十
時雨れては裾曲の稲架の見ゆるのみ 水原秋櫻子 殉教
時雨れてもルーズソックスルーズのまま 後藤比奈夫
時雨れゐて光りをそそぐ海の村 佐藤鬼房
時雨れゐる第三埠頭傷だらけ 佐藤鬼房
時雨をり東照宮坂かく古りて 松村蒼石 雁
時雨亭跡寒禽のこゑもなし 雨滴集 星野麥丘人
時雨來る雲の上なりふしの雪 正岡子規 時雨
時雨傘させしからには人憶ふ 後藤比奈夫
時雨傘そこまでもやひ来て別れ 星野立子
時雨傘ふたゝびひらく水の上 日野草城
時雨傘まといて背に負う 海鳴り負う 伊丹三樹彦
時雨傘みな持つてゐてひらき合ふ 日野草城
時雨傘凭せしままや寺の門 桂信子 草影
時雨傘山門に名もなかりけり 石橋秀野
時雨傘持歩き一外交員 伊丹三樹彦
時雨傘比叡が霽るると傾げあふ 日野草城
時雨光る砂地松葉と牡蠣殼と(能登一の宮、折口信夫先生墓のほとり二句) 細見綾子
時雨去り戎衣は歩きつつかわく 伊丹三樹彦
時雨去る冬の大円鏡智かな 平井照敏 天上大風
時雨川に沿ひて旧道ぬかりたる 松崎鉄之介
時雨待つ心にいつか人の事 高浜年尾
時雨星かゞやくひまもなかりけり 日野草城
時雨星またゝく嶺の雪明り 西島麦南 人音
時雨星仰ぎ宿の婢寝る仕度 山口青邨
時雨星北斗七つをかぞへけり 橋本多佳子
時雨月をり~除夜の鐘照らす 高浜年尾
時雨月八瀬を出で来しうしろより 村山故郷
時雨月夜半ともなれば照りわたり 橋本多佳子
時雨来て提げし洋傘なほさゝぬ 山口誓子
時雨来て汽笛はくらき海に果つ 佐藤鬼房
時雨来て流水の声変りけり 水原秋櫻子 餘生
時雨来て濡らし濡らせり栗落葉 山口青邨
時雨来て茜さしまた時雨来る 右城暮石 句集外 昭和四十六年
時雨来と大木の幹砥の如し 川端茅舎
時雨来と屏風の歌仙隠れけり 阿波野青畝
時雨来と栴檀林にあそびをり 川端茅舎
時雨来と水無瀬の音を聴きにけり 川端茅舎
時雨来と脊の鉄兜撫で別れ 川端茅舎
時雨来ぬすでに投函終へてのち 山口誓子
時雨来やわらびかたむく岨の石 飯田蛇笏 山廬集
時雨止まねば木耳も不機嫌か 飯田龍太
時雨止みきらぬにうす日映す鋪道 細見綾子 桃は八重
時雨止み舗道生々と書店出づ 細見綾子
時雨止み鋪道生々と書店出づ 細見綾子 桃は八重
時雨汽車光りてすぐるビルの間 松崎鉄之介
時雨泥踏み集まりて土葬せる 右城暮石 一芸
時雨空かへりみて時遥かかな 飯田龍太
時雨空見えずなりたる虹探す 右城暮石 散歩圏
時雨虹かたみに懸り檜原越ゆ 下村槐太 天涯
時雨虹とは晴れてゆく空のあり 稲畑汀子
時雨虹島を踏まへて顕ちにけり 佐藤鬼房
時雨虹旅路はるけくありしかな 稲畑汀子
時雨虹立つが慣ひの湖畔かな 高浜年尾
時雨虹色うらがへるとき二重 稲畑汀子
時雨越前時は過ぎゆき日矢われに 金子兜太
時雨迅し街道海に沿ふてより 大野林火 海門 昭和七年
時雨過ぐ濡紙不吉にもあらず 飯田龍太
時雨降る美し国なり踏みて行く 小林康治 四季貧窮
時雨雲しづかに山を離れけり 日野草城
時雨雲しりぞき沖を暗くせり 阿波野青畝
時雨雲とざしかねたる星に逢ふ 加藤秋邨
時雨雲とぶやたたかふ鳶烏 山口青邨
時雨雲には青空のついてくる 稲畑汀子
時雨雲はるかの比叡にかゝりけり 杉田久女
時雨雲低し烏も低くとぶ 山口青邨
時雨雲光る高架の裏をゆく 橋閒石 雪
時雨雲冷えしたたかに落しゆく 山田みづえ 草譜
時雨雲刷き出す紺の海と空 角川源義
時雨雲動く明るさ暗さあり 稲畑汀子
時雨雲支へきれざるときこぼす 稲畑汀子
時雨雲散り乱りつつみ崎照る 松本たかし
時雨雲洩るゝ日射のある船路 高浜年尾
時雨雲流るる藪は傾きぬ 大野林火 冬青集 雨夜抄
時雨雲走り日の箭の走りつつ 山口青邨
時雨雲追ひかけてゐる時雨雲 稲畑汀子
時雨雲遠ざかりつゝ海照りす 高浜年尾
時雨馳せうこんの花のさかりなる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
時雨鳥しばし垣穂に沿へりけり 臼田亜郎 定本亜浪句集
時雨鳩わが肩に来て頬に触れ 川端茅舎
晝中のあからあからとしくれけり 正岡子規 時雨
晩翠に浮いて堂塔しぐれけり 日野草城
曙をしくれて居るや安房の山 正岡子規 時雨
曼陀羅に残れる金や初しぐれ(奈良元興寺) 細見綾子
曼陀羅の地獄極楽しぐれたり(奈良、元興寺三句) 細見綾子
月うらとなる山越や露時雨 原石鼎 花影
月の輪の金色澄める露時雨 川端茅舎
月やうそ嵐やまこと初時雨 正岡子規 時雨
月一つ忘れて湖のしくれ哉 正岡子規 時雨
月二郎墓碑の茶の木の夕しぐれ 飯田龍太
月出るやしぐるゝ雲の裏手より 正岡子規 時雨
月夜しぐれ銀婚の銀降るやうに 佐藤鬼房
月見えてうそや誠のしくれ哉 正岡子規 時雨
有明の又しくれけり一くらみ 正岡子規 時雨
有明を小窓ひとつに時雨けり 正岡子規 時雨
有磯道時雨急なり旅行けば 村山故郷
朝からしぐれて柿の葉のうつくしさは 種田山頭火 自画像 落穂集
朝しぐれの洗ひしあとの句碑に会ふ(金沢尾山神社、我が句碑あり) 細見綾子
朝の間の少し時雨れしことを僧 星野立子
朝の鵙ないてしまへばしぐれけり 加藤秋邨
朝はしぐれ夕べ霰の竹瓮かな 草間時彦 櫻山
朝散歩しぐるるほどのうれしさに 阿波野青畝
朝早くしぐるる火を焚いてゐる 種田山頭火 草木塔
朝時雨*えりの魚影を濃くしたる 佐藤鬼房
朝時雨夕時雨とぞわび住めり 星野立子
朝時雨鶲を庭にのこし去る 加藤秋邨
朝風のまたしぐれゐて吊し柿 村山故郷
朧月ぐづぐづと照るしぐれかな 阿波野青畝
木の鳥居木の橋を経て霧しぐれ 鷹羽狩行
木兎は淋しき晝のしくれ哉 正岡子規 時雨
木曾の橡しぐれの音も外としぬ 森澄雄
木洩れ日のむらさき深く時雨去る 桂信子 月光抄
朴の葉の高く残りて時雨れけり 松本たかし
杉しぐれたちまちに山なつかしき 岡井省二 夏炉
杉なりの俵の山をしくれけり 正岡子規 時雨
杉の根の一祠の燭やしぐれつつ 能村登四郎
杉の空しぐるゝ駕の見えて行 正岡子規 時雨
杉の葉もしくれて立てり繩簾 正岡子規 時雨
杉の香の時雨呼ぶなり金泥経 永田耕衣
杉山のしぐれあかりと熱き白湯 能村登四郎
杉山の重なり合ひて時雨ぐせ 右城暮石 散歩圏
村は小春山は時雨と野の廣さ 正岡子規 小春
村時雨鹿より早し尾根を越える 能村登四郎
束の中より時雨に濡れぬ薪を抜く 篠原梵 年々去来の花 雨
杣の子か木の実しぐれか木のさやぎ 飴山實 句集外
東京も果ての山辺の夕時雨 飯田龍太
東山しぐれしぐれて兄の墓 村山故郷
東山はかなくなりてしぐれけり 日野草城
東西に聖堂聖橋時雨る 松崎鉄之介
松あれば松風時雨わがいほり 山口青邨
松か岡香の烟にしくれけり 正岡子規 時雨
松が枝にさはりし音や時雨傘 日野草城
松にしぐれ杉に鳶鳴く夕日哉 正岡子規 時雨
松に菊蕎麦屋の庭の時雨かな 渡邊水巴 白日
松のお寺のしぐれとなつて泊ります 種田山頭火 自画像 落穂集
松ぼくり芝生に降らす時雨雲 右城暮石 句集外 昭和五十五年
松島の時雨を朝の通ひ舟 佐藤鬼房
松枯れて時雨れてわれを打つ怒濤 能村登四郎
松籟やしぐれぐもりの甃 石田波郷
松葉しく茶の湯の庭の初しくれ 正岡子規 時雨
松青し今し時雨し千木の空 村山故郷
松風に筧の音もしくれけり 正岡子規 時雨
松風やしぐるるいろに種の浜 岸田稚魚
板前の仕事着白くしぐれけり 鈴木真砂女 卯浪
板壁の迦陵頻伽にしぐれをり 飴山實 花浴び
林泉の音のしぐれに会ひにけり 上田五千石『風景』補遺
果樹園を守る灯影や露しぐれ 日野草城
枯枝に鳶と烏の時雨哉 正岡子規 時雨
枯蓮のいかに枯れよとしぐるらん 正岡子規 時雨
柊の花のしぐれの粒のごと 大野林火 月魄集 昭和五十四年
柏をもてつつみし包子(パオズ)しぐれけり 加藤秋邨
染付の鷺の薄るゝ夕時雨 相生垣瓜人 微茫集
染返す時雨時雨のもみぢ哉 正岡子規 時雨
柚子照りて牛の鼻よりしぐれけり 加藤秋邨
柩のほかは時雨くらがりして来たる 山田みづえ 木語
柱穴櫛形山の時雨溜め 山口青邨
柿の冷え掌にうけて山しぐるるか 鷲谷七菜子 花寂び
柿をむく刃のすすむ音しぐれけり 大野林火 方円集 昭和五十二年
柿赤く松緑なる時雨かな 高野素十
柿釜といふことをして時雨れけり 後藤比奈夫
桑黄葉多度は遥かに時雨れます 松本たかし
桜しべしぐれと言はめ平家谷 鷹羽狩行
桶の蓋とればしくるゝ豆腐哉 正岡子規 時雨
梅屋敷てふ提灯に小夜時雨 山口青邨
梅擬つら~晴るゝ時雨かな 川端茅舎
棉摘の一家かたまるしぐれかな 加藤秋邨
棲みふりて身も木も草も露時雨 山口青邨
椋鳥の高きに時雨ふるばかり 飯田龍太
植林の杉ばかりなる時雨ぐせ 右城暮石 句集外 平成四年
椎の実のこつんと打ちししぐれ塚 野澤節子 存身
椿の葉濡らすしぐれの音と聴け 安住敦
楠多き中にも巨樹の露しぐれ 松本たかし
楡しぐれ金鶏は地をあゆむのみ 飯田蛇笏 山響集
楢山時雨藪鳥なほも静まらで 臼田亜郎 定本亜浪句集
業平竹鳴らして過ぎぬ初時雨 山口青邨
榧の実にかなかなしぐれ不破の関 森澄雄
榾くべて法師もてなすしくれ哉 正岡子規 時雨
樫の木に時雨鳴くなり谷の坊 正岡子規 時雨
樫の木に時雨鳴るなり谷の坊 正岡子規 時雨
樹も草も時雨地に呼ぶ峡の国 飯田龍太
橋といふ道の栞にしぐれさす 上田五千石『琥珀』補遺
橋は夕日竹屋の渡ししぐれけり 正岡子規 時雨
橋渡る遠き時雨の海ひかり 加藤秋邨
橘の紋の垂幕しぐるる灯 山口青邨
機関区に蒸気絶えずも初しぐれ 上田五千石『田園』補遺
橡の実は朴におくれて初しぐれ 飯田蛇笏 霊芝
檜葉垣や時雨るる石の荒御魂 古舘曹人 樹下石上
櫨紅葉芒の奥にしぐれつつ 水原秋櫻子 浮葉抄
欅しづかな荻窪を時雨去る 飯田龍太
歌僧の長き顔にもしぐれけむ 阿波野青畝
歌詠んで又泣きたまふ時雨哉 正岡子規 時雨
此頃はどこの時雨に泣いて居る 正岡子規 時雨
武藏野や夕日の筑波しくれ不二 正岡子規 時雨
歩をつかふ蟲ひとしぐれやりすごし 上田五千石『風景』補遺
歸り花それも浮世のしくれ哉 正岡子規 時雨
死ぬときは楽にと如来さましぐれ 佐藤鬼房
残菊のなほはなやかにしぐれけり 日野草城
母とみに弱りぬ時雨しばしばす 松崎鉄之介
母子今日はフランス刺繍 初しぐれ 楠本憲吉 楠本憲吉集
母葬る土美しや時雨降る 橋本多佳子
毎日の時雨に馴れて濁酒かな 村山故郷
毎日の時雨大佐渡小佐渡かな 村山故郷
毒茸に青草なびく山時雨 飯田龍太
比枝の雲夜はしぐるゝともし哉 正岡子規 時雨
比枝一つ京と近江のしくれ哉 正岡子規 時雨
比良の嶺のいまこそばゆき時雨ばえ 鷲谷七菜子 天鼓
毛越寺時雨れゐて夕茜さす 佐藤鬼房
水かけて大釜洗ふ時雨空 廣瀬直人
水を摶つ時雨の音のあるばかり 日野草城
水仙は垣根に青し初しくれ 正岡子規 時雨
水溜めてある水口の初時雨 廣瀬直人
水焚や入江眺めの夕時雨 杉田久女
水煙の夕映えにつつ時雨ける 伊丹三樹彦
水神に笹生の時雨小降りがち 飯田蛇笏 椿花集
水郷のしぐれ明りやうなぎ飯 阿波野青畝
水面に時雨し跡のなまなまし 右城暮石 上下
水音かすかにまた時雨る森のしめやかさ 種田山頭火 自画像 層雲集
江畔のすつぽん店もしぐれけり 阿波野青畝
汽車此夜不二足柄としぐれけり 正岡子規 時雨
沈み行く夜の底へ底へ時雨落つ 種田山頭火 自画像 層雲集
沖晴れて時雨るる此処が三国町 深見けん二
泊てふ駅に降りけり初時雨 鷲谷七菜子 天鼓
泊めてくれない村のしぐれを歩く 種田山頭火 自画像 落穂集
法要茶会時雨よりややにぎやかに 石田波郷
波の秀のしぐるるままに壱岐の鳥 加藤秋邨
波郷土に山坂すべる初時雨 古舘曹人 砂の音
波郷逝く時雨の道のなぜに遠き 松崎鉄之介
泣きぐせの時雨蹄鉄屋(かなぐつや)の死後に 佐藤鬼房
泣くといふ女の武器や夕時雨 鈴木真砂女 夏帯
泥鰌とる鷺のむらがる初時雨 飯田蛇笏 椿花集
泪しぐるゝや色にいでにけり我戀は 正岡子規 時雨
洋中に國極まれり時雨ふる 松本たかし
洋傘つきて帰る家路の海しぐれ 山口誓子
洗ひ鯉時雨の利根に獲し鯉ぞ 水原秋櫻子 霜林
流人碑に 滲む 時雨の粒また粒 伊丹三樹彦
浄林の釜にむかしを時雨けり 正岡子規 時雨
浅き夜の藪にひゞきてしぐれけり 日野草城
浅草に時雨れ居りとは誰知るや 渡邊白泉
浜しぐれ烏賊の腸抜く女どち 燕雀 星野麥丘人
浪人を一夜にふるす時雨哉 正岡子規 時雨
海しぐれ求むる方に虹もなく 山口誓子
海しぐれ蜑の焚く火の炎濡れ 山口誓子
海と山しくるゝ音や前うしろ 正岡子規 時雨
海の村時雨に休む映画館 山口誓子
海の門のしぐるる岩に鶚かな 水原秋櫻子 葛飾
海原の如く照らしぬ時雨月 波多野爽波 鋪道の花
海津余呉木之本尾上しぐれけり 草間時彦 櫻山
海鞘といふ字にも海よりしぐれくる 百合山羽公 樂土以後
海鳥の泛きつつ時雨明りかな 山田みづえ 木語
海鳥の翼緩やか時雨雲 右城暮石 句集外 昭和五十四年
消える 消えない 流人耶蘇碑の時雨の燭 伊丹三樹彦
涙ぐむ粥あつ~や小夜時雨 川端茅舎
涙雨木の実しぐれを誘ひけり 上田五千石『田園』補遺
渓すみて後山まぢかくしぐれけり 飯田蛇笏 山響集
渓の樹のぬれざるはなくしぐれやむ 飯田蛇笏 雪峡
温泉に入りて遊ぶ男女や小夜時雨 松本たかし
温泉を恋ひて辿る山路や小夜時雨 松本たかし
湖に月をおとすやむらしくれ 正岡子規 時雨
湖のしぐれに帰る燕かな 河東碧梧桐
湖の方雲夕づくとしぐれけり 角川源義
湖の面の鳥肌立ちてしぐれくる 上田五千石『田園』補遺
湖や底にしくるゝ星の數 正岡子規 時雨
湯どころの夜景華やぐ灯に時雨 村山故郷
湯にひたる背筋にひたと蟲時雨 川端茅舎
湯のたぎる家のぐるりを時雨けり 正岡子規 時雨
湯ぶねより一とくべたのむ時雨かな 川端茅舎
湯柱の鬼の怨みも時雨れけり 百合山羽公 樂土以後
湯豆腐の間にもしぐれのありしとか 上田五千石 天路
満ちて帰る富貴の大堂のしぐれの香 大野林火 月魄集 昭和五十四年
満山の白山茶花に夕時雨 中村汀女
溝こえて小笹に辷るしぐれ鶏 松村蒼石 寒鶯抄
漂行の鳥影は祖父片しぐれ 佐藤鬼房
潮騒や木の葉時雨るる夜の路 臼田亜郎 定本亜浪句集
濡れてゆく空の一劃時雨虹 稲畑汀子
濡れてゐる朴に月あり小夜時雨 松本たかし
濡れ鹿を素気なく去らす 時雨傘 伊丹三樹彦
濡縁に時雨片足かけて過ぎ 上野泰
濡縁に花替ふる婢や朝時雨 富安風生
瀧きほひ蘭の実枯れて時雨雲 飯田蛇笏 山響集
瀧径をい行かんずるにひとしぐれ 石塚友二 磊[カイ]集
瀬の音のいつか時雨るゝ音なりし 稲畑汀子
瀬戸内は沖よりくるか初しぐれ 能村登四郎
火ともしの火ともしかねつむら時雨 正岡子規 時雨
火の奥の炎の熾んなる時雨宿 桂信子 花影
火山灰しぐれ若葉の星の海に消ゆ 角川源義
火祭を待つ間時雨の幾度か来て 鈴木真砂女 夕螢
灯かすかに沖は時雨の波の音 正岡子規 時雨
灰色のドームの如く時雨れ来し 星野立子
烏鳶をかへり見て曰くしぐれんか 正岡子規 時雨
照紅葉さきほど時雨したりとか 阿波野青畝
熊笹のさゝへり白し時雨ふる 川端茅舎
熊笹打つて沖よりしぐれ日本海 森澄雄
熔岩の怒濤の如く時雨中 星野立子
燈台に旧き燈が点くしぐれ崎 上田五千石 琥珀
爪ほどの貝むらさきに時雨けり 古舘曹人 砂の音
爪琴の下手を上手にしぐれけり 正岡子規 時雨
父の墓夕べあしたとしぐれけり 山田みづえ 木語
父の松抱いてしぐるる日なりけり 橋閒石 和栲
牛つなぐ酒屋の門のしくれ哉 正岡子規 時雨
牛つんで渡る小船や夕しくれ 正岡子規 時雨
牛に乘て矢橋へこえん初しくれ 正岡子規 時雨
牛のせて渡る小舟や夕しくれ 正岡子規 時雨
牛の尾に壁のやぶれをしくれけり 正岡子規 時雨
牛の尾もぬらす名所のしくれ哉 正岡子規 時雨
牛むれて歸る小村のしくれ哉 正岡子規 時雨
牛一つ見えてしぐるゝ尾上哉 正岡子規 時雨
牛消えて時雨移りの幾砂丘 岸田稚魚 負け犬
牛車歸る大津のしくれ哉 正岡子規 時雨
牧の戸に鎖一条霧しぐれ 阿波野青畝
狐火は消えて野寺の朝しくれ 正岡子規 時雨
独り居の膝を崩さず露しぐれ 日野草城
独り言いよよ時雨るる夜となりぬ 桂信子 月光抄
猪の岩鼻はしるしくれ哉 正岡子規 時雨
猫に名をあたへて我はしぐれをり 加藤秋
猫拾ひ来て長子立つ露時雨 原裕 青垣
猿一つ蔦にすがりてしくれけり 正岡子規 時雨
猿黙し吾黙し時雨雲流れ 山口青邨
玉串にさらさらさらと時雨れもす 阿波野青畝
玉砂利の踏み均されて霧しぐれ 鷹羽狩行
玻璃すこしよごれて時雨来りけり 深見けん二
珠数玉の青さ時雨の来さうなり 右城暮石 句集外 昭和六年
球なくて電柱立てり海しぐれ 山口誓子
琵琶の音にさそひ出しけり小夜しくれ 正岡子規 時雨

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by 575fudemakase | 2016-11-13 18:50 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

時雨 補遺1

時雨 補遺1

山宣ひとりの墓へしぐれん空が寄り 古沢太穂 捲かるる鴎以後
ZIGZAGに死の斥候が来てしぐれ 楠本憲吉 方壺集
「*あめかんむり」のごと時雨来るなり坂の上 山田みづえ 忘
あかあかと落葉松林時雨れけり 相馬遷子 山河
あかるみの松にのぼるや小夜しくれ 正岡子規 時雨
あたらしき火のとほりけり初時雨 正岡子規 時雨
あの家この家のべんがら格子雪しぐれ 村山故郷
あはれ鶫時雨の網に嘴を垂れ 水原秋櫻子 浮葉抄
あぶらやにふらずもがなのしくれ哉 正岡子規 時雨
あまたたび時雨るる香住蟹景気 阿波野青畝
いくたびか時雨れてけふも島に泊つ 村山故郷
いつからを時雨といはん太陽暦 正岡子規 時雨
いつしかに桑の葉黒し初しくれ 正岡子規 時雨
いつとなく時雨れて佐渡は今日も暮るゝ 村山故郷
いつの間に星なくなつて時雨哉 正岡子規 時雨
いと白う八つ手の花にしぐれけり 中村汀女
いぶせくてよき此頃の時雨かな 右城暮石 句集外 昭和十年
いま見しを月下の石蕗に時雨来る 水原秋櫻子 帰心
いろいろの戀をしくるゝ嵯峨野哉 正岡子規 時雨
いろいろの時雨は過ぎて冬の雨 正岡子規 冬の雨
うしろすがたのしぐれてゆくか 種田山頭火 草木塔
うたひめにネオンかはたれはつしぐれ 飯田蛇笏 雪峡
うちさやぐ時雨の竹の青さかな 日野草城
うちまぎれ行くや松風小夜しくれ 正岡子規 時雨
うつくしきあぎととあへり能登時雨 飴山實 少長集
うつくしく時雨過ぎたる鹿の子たち 飯田龍太
おかめ笹しぐれんとする湖の碧 角川源義
おたたしぐれてすたすたいそぐ 種田山頭火 自画像 落穂集
おとなしき笹あを~としぐれけり 日野草城
おとはしぐれか 種田山頭火 自画像 落穂集
おのが畫を売らむと抱へ時雨畫家 相馬遷子 雪嶺
お山しぐるる岩に口づけて飲む 種田山頭火 自画像 落穂集
お日待に降り出てしぐれはじめかな 上田五千石『風景』補遺
かき時雨れ鎔炉は聳てり嶺近く 杉田久女
かくれすむにはあらねども露時雨 山口青邨
かぐはしや時雨すぎたる歯朶の谷 川端茅舎
かけはしはしぐれて越えぬ亡き顔と 加藤秋邨
かけ橋や笠の端めぐる時雨雲 正岡子規 時雨
かざす手に時雨をはりのふたみ粒 加藤秋邨
かつぎ屋の腰よろめくや朝時雨 林翔 和紙
かなかなしぐれ人あつまりて今宵も 大野林火 海門 昭和七年以前
かなかなしぐれ泣けてくるよな腹の汗 大野林火 海門 昭和九年
かへらざるものをしぐれと呼ぶべきか 平井照敏
かへるさの燈ともし頃を時雨けり 上村占魚 鮎
からかさを千鳥はしるや小夜時雨 正岡子規 時雨
からげたる赤腰卷や露時雨 正岡子規 露
からだ投げだしてしぐるる山 種田山頭火 自画像 落穂集
からまつの透く千本の時雨寒 鷲谷七菜子 花寂び
かんばしき黒珈琲や初時雨 日野草城
かゝる処に六波羅密寺しぐれゐる 日野草城
きそひ打つ五山の鐘や夕しくれ 正岡子規 時雨
きぬぎぬを引きとめられてしぐれけり 正岡子規 時雨
きらめく時雨少女笑へば塔ひびき 加藤秋邨
くわりんの実たびたび時雨したる色 右城暮石 散歩圏
けふから時計を持たない夕べがしぐれる 種田山頭火 自画像 落穂集
けふはしも高雄時雨にうちぬるる 山口青邨
けふ以後やしぐれ日和を潟の常 上田五千石 天路
こけし小さな瞳貰ひて時雨に笑む 加藤秋邨
ここに遊ぶ松亭々と初時雨 山口青邨
このごろや夕かけてくる時雨ぐせ 桂信子 草影
このわたり大きくしぐれざかひかな 岡井省二 五劫集
この宵のさんさしぐれは雪となる 山口青邨
この山の木の葉音してしぐれけり 森澄雄
この時雨かつて独歩の書に読みき 加藤秋邨
この松のわれに高しや初時雨 山口青邨
この道を芭蕉もゆきぬ初時雨 山口青邨
こもり居の門辺の菊も時雨さび 杉田久女
さうさうとしぐるゝ音や四つの絲 正岡子規 時雨さうさう<口+曹>
さしかける夢もあるなり時雨傘 橋閒石 和栲
さはさはと紙衣と時雨身を去らず 加藤秋邨
さめてまた時雨の夜半ぞひとのもと 橋本多佳子
さらさらと石のしぐれの亡き二人 加藤秋邨
さんざ時雨黄金掘る山をまなかひに 村山故郷
しくるるや上野谷中の杉木立 正岡子規 時雨
しくるゝやいつこの御所の牛車 正岡子規 時雨
しくるゝやいつまで赤き烏瓜 正岡子規 時雨
しくるゝや何を湯出鱆色に出る 正岡子規 時雨
しくるゝや刀引きぬく居合拔 正岡子規 時雨
しくるゝや古き都の白牡丹 正岡子規 時雨
しくるゝや夕日の動く西の空 正岡子規 時雨
しくるゝや妹がりはいる蛇の目傘 正岡子規 時雨
しくるゝや妻、子を負ふて車推す 正岡子規 時雨
しくるゝや局隣も草雙紙 正岡子規 時雨
しくるゝや山こす小鳥幾百羽 正岡子規 時雨
しくるゝや岬をめぐる船の笛 正岡子規 時雨
しくるゝや弘法死して一千年 正岡子規 時雨
しくるゝや旅人細き大井川 正岡子規 時雨
しくるゝや昔の夢を花の下 正岡子規 時雨
しくるゝや東へ下る白拍子 正岡子規 時雨
しくるゝや松原通る馬の鈴 正岡子規 時雨
しくるゝや檐より落つる枯あやめ 正岡子規 時雨
しくるゝや熊の手のひら煮る音 正岡子規 時雨
しくるゝや物書く筆の薄にじみ 正岡子規 時雨
しくるゝや石にこぼるゝ青松葉 正岡子規 時雨
しくるゝや祗園清水智恩院 正岡子規 時雨
しくるゝや紅薄き薔薇の花 正岡子規 時雨
しくるゝや胡弓もしらぬ坊か妻 正岡子規 時雨
しくるゝや腰湯ぬるみて雁の声 正岡子規 時雨
しくるゝや芋堀るあとの溜り水 正岡子規 時雨
しくるゝや芳野の山の歸り花 正岡子規 時雨
しくるゝや藜の杖のそまる迄 正岡子規 時雨
しくるゝや隣の小松庵の菊 正岡子規 時雨
しくるゝや雀のさわぐ八重葎 正岡子規 時雨
しくるゝや鶏頭黒く菊白し 正岡子規 時雨
しくれけり月代已に杉の上 正岡子規 時雨
しくれけり梢に夕日持ちながら 正岡子規 時雨
しくれけり菎蒻玉の一むしろ 正岡子規 時雨
しくれけり豆腐買ひけり晴れにけり 正岡子規 時雨
しくれしてねぢけぬ菊の枝もなし 正岡子規 時雨
しくれして鎧の袖の曇り哉 正岡子規 時雨
しくれすに歸る山路や馬の沓 正岡子規 時雨
しくれたる人の咄や四疊半 正岡子規 時雨
しくれつゝも菊健在也我宿は 正岡子規 時雨
しくれては熊野を出る烏哉 正岡子規 時雨
しくれとも雪ともしらす走り雲 正岡子規 時雨
しぐるとも御笠參らすよしもなし 正岡子規 時雨
しぐるるか玉虫の厨子くらくなる 加藤秋邨
しぐるると子安の小貝濡れにけり 阿波野青畝
しぐるると寄り合ふ鳥の烏骨鶏 石田波郷
しぐるると座敷ワラシを見たかりき 加藤秋邨
しぐるると球磨の釣人火を焚けり 阿波野青畝
しぐるると菊も籬によろぼへる 富安風生
しぐるると赤い傘さし老婆ゆく 深見けん二
しぐるると道草いそぐ法隆寺 阿波野青畝
しぐるるに物干しきりの飯場かな 阿波野青畝
しぐるるも晴るるも変へず湯の煙 阿波野青畝
しぐるるやあつあつをもて止めの椀 鷹羽狩行
しぐるるやあるだけの御飯よう炊けた 種田山頭火 草木塔
しぐるるやいよいよほそき弥陀の指 秋元不死男
しぐるるやうかれめ住まぬ化粧坂 角川源義
しぐるるやしぐるる山へ歩み入る 種田山頭火 草木塔
しぐるるやなど白波は誘ふなる 中村汀女
しぐるるやのれんしまひてよりの客 鷹羽狩行
しぐるるやみんなぬれてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐるるやめでたき茶器が市に出づ 水原秋櫻子 梅下抄
しぐるるやマンホールにも源家紋 百合山羽公 樂土以後
しぐるるや人のなさけに涙ぐむ 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐるるや切られて白き蛸の肌 鈴木真砂女 夕螢
しぐるるや古茶に戻れる新茶の香 石川桂郎 四温
しぐるるや号東山雲巌寺 森澄雄
しぐるるや夕焼たばしる河口港 角川源義
しぐるるや夢のごとくに観世音 草間時彦 櫻山
しぐるるや夢みるための眠りさえ 橋閒石俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
しぐるるや岩ゆ噴きゐる湯のけむり 村山故郷
しぐるるや思ひかへして辻たがへ 上田五千石『天路』補遺
しぐるるや手斧で彫れる雉子車 野見山朱鳥 幻日
しぐるるや旅信を落すポストの丈 秋元不死男
しぐるるや昼を暈して茶屋灯 上田五千石『天路』補遺
しぐるるや死なないでゐる 種田山頭火 草木塔
しぐるるや泰山木と虚子像と 星野麥丘人
しぐるるや濤更けまさるバーの椅子 石田波郷
しぐるるや燃えて密かな北の人 橋閒石 卯
しぐるるや父の形見に矢立あり 高田風人子
しぐるるや病ひに癒えのきざしなし 野見山朱鳥 愁絶
しぐるるや百市の川の名をしらず 雨滴集 星野麥丘人
しぐるるや肌磨きに姫丸太 富安風生
しぐるるや船に遅れて橋灯り 鷹羽狩行
しぐるるや芥ふちどり日本海 岸田稚魚 負け犬
しぐるるや花売媼菊持て来 安住敦
しぐるるや踏切の灯の笠ななめ 鷹羽狩行
しぐるるや道は一すぢ 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐるるや遺影故郷の山の景 松崎鉄之介
しぐるるや郵便やさん遠く来てくれた 種田山頭火 草木塔
しぐるるや鉈に生まれし仏達 阿波野青畝
しぐるるや駅に西口東口 安住敦
しぐるるを知らず目薬さしをれば 阿波野青畝
しぐるる土に播いてゆく 種田山頭火 草木塔
しぐるる土をうちおこしては播く 種田山頭火 草木塔
しぐるる土をふみしめてゆく 種田山頭火 草木塔
しぐるる塘葬列行くに鐘鳴らし 安住敦
しぐるる墓荒田千枚見下しに 岸田稚魚 筍流し
しぐるる夜客の一人に寂聴尼 鈴木真砂女 紫木蓮
しぐるる街のみんな温かう着てゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐるれど御笠參らすよしもなし 正岡子規 時雨
しぐるゝと人はいるなり寐惚顔 正岡子規 時雨
しぐるゝやともしにはねるやねのもり 正岡子規 時雨
しぐるゝやむれて押あふ桶の鮒 正岡子規 時雨
しぐるゝや右は龜山星か岡 正岡子規 時雨
しぐるゝや寫本の上に雨のしみ 正岡子規 時雨
しぐるゝや平家にならぶ太平記 正岡子規 時雨
しぐるゝや日暮るや塔は見せながら 正岡子規 時雨
しぐるゝや殘燈かすかに詩仙臺 正岡子規 時雨
しぐるゝや蒟蒻冷えて臍の上 正岡子規 時雨
しぐるゝや隣の家に運座あり 正岡子規 時雨
しぐれうとうとして暮れにけり 正岡子規 時雨
しぐれきく藪かもゆかし草の宿 山口青邨
しぐれきし我にあらずや癪の神 加藤秋邨
しぐれきてはては松風海の音 正岡子規 時雨
しぐれきて仏体は木に還りける 加藤秋邨
しぐれきて女の紅のよぎりけり 松崎鉄之介
しぐれくる崖の赤土見れば見ゆ 加藤秋邨
しぐれけり出石白磁の箆描きに 大野林火 月魄集 昭和五十四年
しぐれしか裏の竹山旭さす 正岡子規 時雨
しぐれしたしうお墓を洗つていつた 種田山頭火 草木塔
しぐれして余生の永き世はよきか 大野林火 月魄集 昭和五十四年
しぐれして古き仏は立木かな 大野林火 方円集 昭和五十一年
しぐれして手箱に鹿を蒔きにけり 岡井省二 有時
しぐれして日曜毎の法事かな 大野林火 月魄集 昭和五十五年
しぐれして白い襷をくばりにゆく 飯島晴子
しぐれしと素十大声満足し 阿波野青畝
しぐれしを知らず源氏の香聞きぬ 阿波野青畝
しぐれずに空行く風や神送 正岡子規 時雨
しぐれせぬ處はあらずはりま灘 正岡子規 時雨
しぐれたりぐい呑に顔うづめては 草間時彦 櫻山
しぐれたるあとの日が射し実南天 鷲谷七菜子 游影
しぐれたるけはひの土へ初日かな 鷲谷七菜子 游影
しぐれたるまま地下鉄が停車せる 阿波野青畝
しぐれたる小ぐらき雲が真上ゆく 篠原梵 年々去来の花 雨
しぐれつつうつくしい草が身のまはり 種田山頭火 草木塔
しぐれつつしづかにも六百五十柱 種田山頭火 草木塔
しぐれつつ我を過ぎをりわれのこゑ 森澄雄
しぐれつつ柞に日射す貴船口 能村登四郎
しぐれつつ気温高まる夜の近火 野澤節子 未明音
しぐれつつ油いためも必死にて 飯田龍太
しぐれつつ花咲く菊に葉のにほひ 飯田龍太
しぐれつつ路傍の石も成仏す 阿波野青畝
しぐれつつ長居の炭火くづれゆく 水原秋櫻子 岩礁
しぐれつゝ富士のありける空暮れぬ 日野草城
しぐれてその字が読めない道しるべ 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐれてぬれてまつかな柿もろた 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐれてぬれて待つ人がきた 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐれては市振駅の柿紅葉 山田みづえ 木語
しぐれては日あたるところ牛繋ぎ 山口誓子
しぐれては松あざやかに暦売 鷲谷七菜子 游影
しぐれては紅花鮮らし夫婦墓 角川源義
しぐれて山をまた山を知らない山 種田山頭火 草木塔
しぐれて柿の葉のいよいようつくしく 種田山頭火 草木塔
しぐれて雲のちぎれゆく支那をおもふ 種田山頭火 草木塔
しぐれともゆげともわかぬ夜の湯浴 阿波野青畝
しぐれなとあれよ餘りに静かなり 正岡子規 時雨
しぐれねば火星するどく露地の奥 加藤秋邨
しぐれのあとしぐれのあとと峠越す 大野林火 飛花集 昭和四十七年
しぐれの跡泥の靴あと吾子病むや 古沢太穂 古沢太穂句集
しぐれふるみちのくに大き佛あり 水原秋櫻子 岩礁
しぐれますと尼僧にあいさつされて居る 尾崎放哉 須磨寺時代
しぐれむ日何時とは知らず林泉暑し 相生垣瓜人 微茫集
しぐれよと泣尼ころぶ狂言師 阿波野青畝
しぐれより霰となりし山泉 森澄雄
しぐれる落葉はそのままでよし 種田山頭火 自画像 落穂集
しぐれゐて片羽縛りの死鴉 佐藤鬼房
しぐれゐて神と仏が寄せあふ肩 加藤秋邨
しぐれゐる一流木と日本海 野見山朱鳥 幻日
しぐれをきし額をもつて熱診られ 加藤秋邨
しぐれをりコンピューターに億の数 加藤秋邨
しぐれんといてふもみぢ葉すきとほる 下村槐太 天涯
しぐれんと腕欠仏真青なり 加藤秋邨
しぐれ一粒紙子にとどめ戻りたる 大野林火 月魄集 距和五十七年
しぐれ中来て夕膳の蟹を待つ 能村登四郎
しぐれ坂笛の豆腐屋下りゆけり 秋元不死男
しぐれ城崎 湯気立つ屋根に鳩かたまる 伊丹三樹彦
しぐれ墓こころなごみぬまた来なむ 松村蒼石 寒鶯抄
しぐれ宿りが 機で 嵯峨人形買っちまう 伊丹三樹彦
しぐれ小屋明治村句を興行す 平畑静塔
しぐれ待つ心に似たり仏の灯 阿波野青畝
しぐれ急墓ぐさとりて妻も娘も 松村蒼石 寒鶯抄
しぐれ恋ふ死を急ぐごと旅つづけ 大野林火 月魄集 昭和五十四年
しぐれ日射すやしんしんと母枯れゆけり
しぐれ晴間にそば粉を干してゐるならん(妹ヘ) 細見綾子
しぐれ来し尼やかりかり柿を食ふ 加藤秋邨
しぐれ来し音をすばやく榊山 鷲谷七菜子 天鼓
しぐれ来てひとりひとりが匂ふかな 山田みづえ 木語
しぐれ来てやゝ早き灯の寺泊 能村登四郎
しぐれ来て縫ひの急く手を火にかざす 及川貞 夕焼
しぐれ来とちと立ち止り歩き出す 岸田稚魚 紅葉山
しぐれ来と松の中なる松その他 岸田稚魚
しぐれ来や夜は白身の焼肴 亭午 星野麥丘人
しぐれ来るせめて薄暮の熱き粥 飯田龍太
しぐれ色の鯰や鮒やどもる漁夫 古沢太穂 火雲
しぐれ虹あはあはと掛け母国なし 阿波野青畝
しぐれ追ふ昨日出石に今日間人 大野林火 月魄集 昭和五十四年
しげさ節ききてしぐれの隠岐に泊つ 野見山朱鳥 幻日
しだれざくら一葉もなくてしぐれけり 大野林火 方円集 昭和五十二年
しづかなる時雨の音にみな眠る 山口青邨
しづ~と下向の虚子や花しぐれ 日野草城
しはぶきの野中に消ゆる時雨かな 角川源義
しばらくは息を蓄へしぐれ傘 岸田稚魚 紅葉山
しばらくは時雨の音にものを書く 山口青邨
すぐき桶しぐれの石を三つ吊れり 草間時彦
すぐもどる西の河原やはつしぐれ 石田波郷
すべもなく催促金神しぐれをり 加藤秋邨
するすみの雲しぐるるか市の空 上田五千石 風景
たけのふしながくひとつぶづつしぐれ 平畑静塔
たそがれや白山茶花に幾しぐれ 日野草城
たましひのあまたのひとつ時雨鯉 斎藤玄 雁道
ためらはず嫁げるうしろ時雨けり 小林康治 玄霜
たらちねの国の時雨に濡れにけり 小林康治 四季貧窮
だしぬけに富士しぐれ出す障子の灯 村山故郷
だんだんに燈のほそりけりさよ時雨 正岡子規 時雨
つくは山かのもこのものしくれ哉 正岡子規 時雨
つぼ白粉時雨宿りに買ひもして 石橋秀野
つややかな信心のこゑ青時雨 鷲谷七菜子 游影
つゆけさの初こがらしか露しぐれ 高屋窓秋
つりばなと教へられけり初時雨 山口青邨
とかうして咳おさまりぬ小夜時雨 日野草城
ときに葉をまじへて木の実しぐれかな 鷹羽狩行
とみるまに時雨の水輪池に満つ 日野草城
ともし火の一つ殘りて小夜時雨 正岡子規 時雨
どうがんじさま時雨来て落葉して 草間時彦 櫻山
ながつきのいつかのこのみしぐれかな 鷹羽狩行
ながながと電話堅田は夕時雨 高野素十
なき人のまことを今日にしくれけり 正岡子規 時雨
にひはりの埴の赭さよ大時雨 日野草城
ぬかづくや時雨と言はず鞭の雨 百合山羽公 樂土以後
ぬれながら人ものいはず横時雨 正岡子規 時雨
はぐれ鹿寄り来て去りし時雨かな 岸田稚魚 筍流し
はつきりと鉦叩又蟲時雨 星野立子
はつしぐれ大根おろしに甘味かな 大野林火 月魄集 昭和五十五年
はらはらとしぐれて馭者の五角星 山口誓子
ひつじ田に三畝の緑をしぐれけり 正岡子規 時雨ひつじ<禾+魯>
ひとしぐれありけり石の寝入りばな 日野草城
ひとしぐれありける道の日和かな 日野草城
ひとしぐれして木賊むら濡れにけり 岡井省二 夏炉
ひとしぐれ過ぎたる海鼠噛みにけり 鷲谷七菜子 游影
ひとつまみの塩に味きめ夕時雨 鈴木真砂女 都鳥
ひとつれの時雨やどりや清閑寺 日野草城
ひとときは寒暮の日記しぐれけり 高屋窓秋
ひとりごと時雨に濡れし髪なでゝ 星野立子
ひとりゆく山科の道しぐれけり 日野草城
ひとり来て宇陀のしぐれに濡れにけり 日野草城
ひとり来て箕面しぐれに会ふことも 後藤比奈夫
ひと日晴れけふはしぐれぬ毛絲編み 及川貞 夕焼
ひと時雨又ひと時雨東山 稲畑汀子
ひと時雨蜻蛉は赤く湖わたる 角川源義
ひねもすの時雨をめでて妻とある 上村占魚 鮎
びるしやな佛音しておかめ笹しぐれ 岡井省二 五劫集
びるばくしや目細う時雨ごころかな 阿波野青畝
ふたもとの榎しぐるる月日かな 岸田稚魚 雁渡し
ふた本の榎しぐるる月日かな 岸田稚魚 負け犬
ふりかへて我身の上のしくれ哉 正岡子規 時雨
ふるしぐれお修羅あそびのわらしたち 加藤秋邨
ふるみちや伊賀の時雨に菊濡れて 水原秋櫻子 殉教
ふんだんに蟹食ひし夜の時雨かな 松崎鉄之介
ほととぎす一ト時雨せし笹径 大野林火 冬雁 昭和二十一年
ほろほろと七面鳥もしぐるるか 加藤秋邨
ほろ醉の端唄なまるや小夜時雨 正岡子規 時雨
まぐはひの飛鳥の石にしぐれけり 阿波野青畝
まだ熱き灰捨てに出てしぐれ月 鷹羽狩行
まだ犬もつながれしまま夕時雨 中村汀女
まなかひの田より立ちたる時雨虹 鷲谷七菜子 一盞
まのあたり蘆のほぬるるしぐれかな 松村蒼石 寒鶯抄
まぼろしの鹿はうつつも時雨かな 加藤秋邨
まぼろしの鹿はしぐるるばかりかな 加藤秋邨
まらうどにしただみ茄でよ能登時雨 木村蕪城 寒泉
みえぬものひかるしぐれのうへのあめ 平畑静塔
みぞれともならで越路のしくれ哉 正岡子規 時雨
みちのくのしぐれ世に出て似たり貝 森澄雄
みちのくの時雨の月を思ひ寝る 山口青邨
みちのくの時雨は荒し棒の虻 山口青邨
みづうみに見えずに蒲の時雨かな 岡井省二 山色
みづうみのいま鬱々としぐれどき 草間時彦 櫻山
みづうみのたかぶり迎ふ時雨かな 草間時彦 櫻山
みほとけに時雨けぶれる池面見ゆ 伊丹三樹彦
みほとけに時雨の音の棟過ぐる 伊丹三樹彦
みほとけの金色蔵ふ時雨の扉 伊丹三樹彦
み佛に母に別るゝ時雨かな 杉田久女
むらしぐれ青杉山に黄葉の斑 日野草城
むら時雨東寺門前素通りす 村山故郷
めつむれば木曾路の時雨ゆくごとし 加藤秋邨
もくもくとしてしぐるる白い函をまへに 種田山頭火 草木塔
もてあそぶ火のうつくしき時雨かな 日野草城
もの凄き鳥なく山のしくれ哉 正岡子規 時雨
もの書きて端近くゐればゆく時雨 山口誓子
もの煮ゆる音をあやしみ時雨なる 右城暮石 句集外 昭和十六年
やすらへば時雨れにけりな谷紅葉 松本たかし
やはり時雨れて 竹輪焼く火に見惚れて 旅 伊丹三樹彦
ゆく道のひかり出したる初時雨 岸田稚魚 紅葉山
よき滝を見せてもらひぬ時雨中 星野立子
わが夢をしぐるる海の一ゆすり 加藤秋邨
わが宿の客をぬらせし時雨かな 前田普羅 普羅句集
わが宿はどこ湖の夕時雨 高野素十
わが店の酒は辛口夕時雨 鈴木真砂女 都鳥
わが庭に石ただ一つ初時雨 山口青邨
わが立てば琴棋書画の間軒しぐれ 山口青邨
わが部屋を恋しと思ふ時雨かな 星野立子
わが髪をぬらす黒髪山時雨 山口青邨
わが魂のごとく動かずしぐれ鳰 能村登四郎
わたしひとりのけふのをはりのしぐれてきた 種田山頭火 自画像 落穂集
われ立つや時雨烏の木の下に 山口青邨
アメリカも共にしぐれん海の音 正岡子規 時雨
カチューシャ被りの牧婦霧しぐれ 阿波野青畝
カルストの時雨の虹のはなやかに 山口青邨
コスモスに空の時雨の来はじめる 右城暮石 句集外 昭和六年
シアトルまた北国しぐれ慣ひとす 高浜年尾
ジヤズの音をふみ急ぎたる初時雨 石田波郷
チエホフを読むやしぐるる河明り 森澄雄
バーベキュー興ざめてきし霧しぐれ 阿波野青畝
パリモード長き柄の傘初時雨 山口青邨
ホイトウと呼ばれる村のしぐれかな 種田山頭火 自画像 落穂集
ホップの支柱八ケ岳に傾き幾時雨 山口青邨
ミルク甘し島の茶房の時雨窓 村山故郷
モーターのめぐるぬくみの夕時雨 大野林火 早桃 太白集
レストラン「ふくろうの森」しぐれけり 佐藤鬼房
一しくれ京をはつれて通りけり 正岡子規 時雨
一しぐれ過ぎたる萩を刈りにけり 安住敦
一つ二つ谷のともしや夕時雨 上村占魚 鮎
一と二はしぐれて風の三の酉 百合山羽公 樂土以後
一と時雨してねびまさるくわりんの実 細見綾子
一と時雨して石青し石赤し 後藤比奈夫
一の池二の池しぐれ一位の実 飯田龍太
一人客は断られけりまた時雨 村山故郷
一口村(いもあらひ)十三丁のしぐれ傘 日野草城
一口村時雨舟よりあふぎつゝ 日野草城
一合の飯煮ゆる間や夕しぐれ 鈴木真砂女 夏帯
一塊の冬嶽雲にしぐれ霽れ 飯田蛇笏 白嶽
一尾根に日向が逃げて葛しぐれ 上田五千石 琥珀
一月や時雨るる森の賽銭箱 廣瀬直人 帰路
一村は籾すりやんで夕しぐれ 正岡子規 時雨
一睡の山はありたり夕時雨 斎藤玄 雁道
一粒のしぐれ娼婦の顔を切る 赤尾兜子 蛇
七湯の軒に雲おくしくれ哉 正岡子規 時雨
万年青の実いよいよ赤し初時雨 山口青邨
丈高く枯菊立てる時雨かな 正岡子規 枯菊
三井寺に颯と湖水の時雨哉 正岡子規 時雨
三十のゑがかぬ眉にしぐれけり 鷲谷七菜子 黄炎

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by 575fudemakase | 2016-11-13 18:48 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

菊 の俳句

菊 の俳句

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by 575fudemakase | 2016-11-12 14:56 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
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▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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