カテゴリ:冬の季語( 1195 )

霰 の俳句

霰 の俳句


例句を挙げる。

「竹返」の手甲の上に霰散る 長谷川かな女 花寂び
あだし野に日の一すぢの霰かな 徳永山冬子
あばら家〔に〕とんで火に入る霰哉 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
いかめしき音や霰の檜木笠 芭蕉
うなゐ髪霰をつけて愛しけれ 福田蓼汀 山火
うれしさの霰たばしる鴨の数 山田みづえ 草譜以後
おとづれし清女が傘の霰かな 中勘助
お七夜荒れ霰も混じりゐるといへり 猿橋統流子
お降りのいつか霰の音となる 粳間ふみ
かきくらす掛菜にはぜて玉霰 小林康治 四季貧窮
かさ守のおせん出て見よ玉霰 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
かの山を思ひ忘るる玉霰 斎藤玄 無畔
からからと霰跳ねたりこの娶り 中田剛 珠樹
きつとして霰に立や鹿の角 支考
この度は音のしてふる霰かな 高野素十
この霰これが北陸日和かな 高木晴子 晴居
こぼれたる霰の空のあをかりき 五十崎古郷句集
これほどの霰に寒き朝かな 日鮮 霜 月 月別句集「韻塞」
さつさつと荻も氷も霰かな 中村史邦
さみしさや霰逃れし方の枯れ 小林康治 『潺湲集』
さわ~と霰いたりぬ年の市 銀漢 吉岡禅寺洞
しのもみや袖に音有り玉霰 調泉 選集「板東太郎」
しろ金や霰ふる夜の年忘れ 上島鬼貫
すぐ昏らむ地のもろもろや霰打つ 村越化石 山國抄
すさまじき霰となりて芦を刈る 加藤楸邨
たばしりし霰のあとの簷雫 河野静雲 閻魔
たばしるや十符(とふ)の樽菰玉霰 松滴 選集「板東太郎」
ちる霰立小便の見事さよ 一茶
つくまでに霰降り過ぎし渡舟かな 野村喜舟 小石川
つるぎ洗ふ武夫(もののふ)もなし玉霰 夏目漱石 明治三十二年
てのひらの霰天より帰り来し 丘本風彦
とけるとも見えで消え行く霰哉 会津八一
とけるまで霰のかたちしてをりぬ 辻桃子
なほ奥へ行者みちあり初霰 高塚頼子
にはとりの総毛立つたる霰かな 白岩 三郎
のぼり窯芯まで青し玉霰 兼近久子
はね上りとび上りして霰降る 久留島 広子
ひらきたる厨子の香にふる霰かな 永田耕衣 加古*傲霜
ふり向きて霰とほりし大徳寺 宇佐美魚目 天地存問
ふるさとに芒なびきて霰来る 横光利一
ふるさとの山仰ぐ眼に霰落つ 横光利一
ふるさとは緋蕪漬けて霰どき 蒼石
ほしいまゝにプラツトフオームの霰哉 尾崎紅葉
まぎれなく貧し鼻うつ夕霰 小林康治 玄霜
みづうみを打つて過ぎゆく霰かな 草間時彦 櫻山
ものありぬ霰が降れば音たてる 加倉井秋を 午後の窓
ものもへば霰にまぶた打たれけり 川口重美
やう~に舟岸につく霰哉 寺田寅彦
ゆく雲や霰ふりやむ寺林 飯田蛇笏 霊芝
ゆづり葉の見事にたれて霰かな 原石鼎
ゆり合す蓑のひまうつ霰かな 弄我
よろこびて地に一刷けの初霰 斎藤俊子
わが血子に移せり霰ふりきたる 川島彷徨子 榛の木
わだなかに教会の鐘霰ふる 石原八束
アーケードの中へ転がる玉霰 川村甚七
一旦は照つて峠の霰かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
一禮に籠めて別るる霰かな 古舘曹人 砂の音
一羽毛たらむ霰へ身を入るる 齋藤玄 『雁道』
一莚霰もほして有りにけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
一霰こぼして青し松の空 原 石鼎
一霰まじろがぬ鷹のけしき哉 也好
丁子かく祖母が布子や初霰 中勘助
三椏の枝をころがる霰かな 藤田あけ烏 赤松
三絃のばちで掃きやる霰哉 小林一茶
三鬼忌の山傾けて霰かな 角川源義 『神々の宴』
乗鞍岳烟り全天霰降る 仙田洋子 雲は王冠
五六間飛ぶや霰の網の魚 蒼[きう]
人等来るうつくしき霰もちて来る 山口青邨
今日も亦霰たばしりつゝ暮れぬ 高木晴子 晴居
仏飯の麦めでたさよ初霰 石田波郷
会い別る占領都市の夜の霰 鈴木六林男 荒天
会者定離(ゑしゃぢょうり)笹に霰や松の雪 ゆき 俳諧撰集玉藻集
何もなき二月と思へば霰降る 百合山羽公
俄かなる霰や壺に花なき日 秩父
俳諧に霰飛び散り長子得し 齋藤玄 『玄』
傘さして女のはしる霰かな 太祇
元日の地を威して玉霰 吉武月二郎句集
内灘の霰たばしる砂塵かな 桑田青虎
冬の情月あきらかに霰ふる 暁台
冬知らぬ宿や籾摺る音霰 松尾芭蕉
冴返る音や霰の十粒程 子規句集 虚子・碧梧桐選
初花に霰こぼしぬ小湧谷 長谷川かな女 雨 月
初薬師磴に霰の敷きそめし 松波はちす
初霰たばしる牧を閉ぢにけり 佐藤瑠璃
初霰めざめの子等を待たで消ゆ 相生垣瓜人 微茫集
初霰父の冥土にしみるもの 古舘曹人 樹下石上
初霰耳に残りてゐし朝餉 相生垣瓜人 微茫集
初霰鮭のぼる瀬々けぶらせて 及川 澄
初霰鳶尾(しゃが)や万年青の葉のきほひ 鞭石 俳諧撰集「藤の実」
勅額に霰はげしき玉せせり 倉富勇二
勿ちに小粒となりし霰かな 高浜虚子
北国の夕べの霰小鯛煮ゆ 高島筍雄
十夜ある昼の筵に霰かな 田中寒楼
叢に日かげりて霰静かな 高濱年尾 年尾句集
口あけば鼻にたはしる霰かな 尾崎紅葉
口こはき馬に乗たる霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
口切の窓を過ぎゆく霰かな 会津八一
句碑ひとつ墓標にかはる夕霰 古舘曹人 樹下石上
叱られて帰る霰の石畳 桂信子 黄 炎
吉野葛溶くや窓うつ夕霰 南光翠峰
吹き落とす木の葉に包む霰かな 錦江 俳諧撰集玉藻集
吾も走り霰も走り橋長し 城谷文城
吾子育つ島の霰に打たれもし 村松紅花
呉竹の奥に音ある霰かな 正岡子規
啄木鳥の羽音きびしく霰止む 堀口星眠 火山灰の道
啓蟄の霰しまくに薄日浮く 松村蒼石 雁
四弦一斉霰たばしる畳かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
土器にたまる霰や土芳の忌 鈴鹿野風呂 浜木綿
垣際のぱつぱとはしやぐ霰哉 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
場末町章魚の脚打つ霰かな 幸田露伴 谷中集
塩田に跳ねて静まる夕霰 岸田稚魚 筍流し
売られをる臼に霰のたまりけり 大島鋸山
変な岩を霰が打つて薄日さす 西東三鬼
夕ばえて霰ふりやむ花圃の水 石原舟月 山鵲
夕霰をりから池の端に在り 下村槐太 天涯
夕霰冥府の母に被布やらむ 関戸靖子
夕霰枝にあたりて白さかな 高野素十
夕霰等身のチエロはこばるる 塚本邦雄
多羅葉をみだれ打つたる霰かな 京極杞陽
夜の町を牛牽く人に打つ霰 内田百間
夜毎敷く霰こまかに雁帰る 金尾梅の門 古志の歌
夢殿は海の枯木に霰かな 島村はじめ
大かたは霰はね出る盥かな 竹冷句鈔 角田竹冷
大屋根に右往左往の霰かな 上野泰 佐介
大嶽を霰ひそかに降り去れり 雑草 長谷川零餘子
大粒な霰にあひぬうつの山 漱石
大隊の駈足に降る霰かな 会津八一
天塩路や霰に残るとりかぶと 齋藤玄 飛雪
太鼓うつ山の学校の霰かな 龍岡晋
夫旅にある寧けさよ玉霰 石田あき子 見舞籠
奔放にあるべき素手や玉霰 渋谷道
奔湍(ほんたん)に霰ふり込む根笹かな 夏目漱石 明治三十二年
妻と行く霰店には鯛二つ 香西照雄 対話
妻死後の力賜はる霰がこ 黒須俊行
子守沙彌霰たばしる傘さして 橋本鶏二 年輪
寒燈や外の霰をきゝすます 西山泊雲 泊雲句集
寝るより枕かたむく初霰 齋藤玄 飛雪
小夜更けて霰らしきが散らばりぬ 手塚美佐 昔の香
小走りに出し禰宜が妻霰降る 木村蕪城 寒泉
小阪殿のはり縄打つて霰哉 鶴汀
小霰の音の蹤きくるばかりかな 八木林之介 青霞集
届きけり霰ちる日の蕪寿し 飴山實 辛酉小雪
山の水まだ衰へず初霰 木村敏男
山茶花に月の霰やそゞろなる 金剛纂(麥南小句) 西島麥南、飯田蛇笏選
山門の鉄網に入る霰かな 古白遺稿 藤野古白
山鳥の霰の打ちしところ白 田中裕明 櫻姫譚
岩海苔を掻けばたまたま霰来て 鈴木真砂女 夕螢
岩襞にすこしたまりて霰かな 西山泊雲 泊雲句集
島原の霰をうける袂かな 岩谷山梔子
川浪の霰光りに川千鳥 飯田蛇笏 椿花集
広小路に人ちらかつて玉霰 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
庄内の野に日は照れど霰哉 寺田寅彦
役者親子しづかに座して霰打つ 長谷川かな女 花寂び
忽ちに小粒になりし霰かな 高浜虚子
急霰のあとの月光愛終る 徳弘純 非望
急霰のたまれば光るイカケ鍋 細谷源二
急霰のはしり波立つ鯛生簀 石原義輝
急霰の去れば影生れ比叡あり 岸風三楼 往来
急霰の自転車白鳥を記憶する 鈴木光彦
恐ろしき岩の色なり玉霰 夏目漱石 明治三十二年
我善坊に車引き入れふる霰 河東碧梧桐
戒壇院霰ひと撒きして雪に 赤松[けい]子 白毫
或る草に佛眼賜ふ玉霰 河原枇杷男 烏宙論
手枕の夢にふりこむ霰かな 二葉亭四迷
打敷くは霰なりけり誕生日 鈴木しげを
打返す藁干す時の霰かな 河東碧梧桐
折からや霰たばしる敷砂に 西山泊雲 泊雲句集
抱きいづる石の睡り児夕霰 松村蒼石 雪
挨拶や髷の中より出る霰 夏目漱石 明治二十九年
振り向けばふるさと白く夕霰 中村苑子(1913-2001)
採氷池よべの霰のまろびをり 金子伊昔紅
故里の人を思へば霰降る 会津八一
散りあえぬ楢の日和や霰雲 会津八一
文章を書きをればよく霰ふる 永田耕衣 傲霜
日の子われ日の下にして玉霰 原石鼎
日の高さ霰おとせる枯野かな 乙字俳句集 大須賀乙字
日一日障子の外の霰かな 森鴎外
明け方にふりし霰ぞ霜の上 花蓑
星消えて闇の底より霰かな 古白遺稿 藤野古白
時ならず馬で山越す霰哉 露月句集 石井露月
晩祷や星を招きし霰あと 村越化石 山國抄
暁闇の衛士のつらうつ霰かな 筑紫磐井 野干
書道塾出る子入る子に玉霰 福田甲子雄
月に侘び霰にかこつとぼそかな 原石鼎
月の出の俄に曇り一霰 比叡 野村泊月
月光の削りし木々に霰ふる 百合山羽公 故園
有耶無耶の関は石山霰哉 寺田寅彦
朝はしぐれ夕べ霰の竹瓮かな 草間時彦 櫻山
朝市の火入にたまる霰かな 一茶 ■文政年間
木曽殿に遅参責めらる玉霰 田中水桜
木賊原小兎はねる霰かな 幸田露伴 江東集
束の間の洩れ日にさとく霰止む 中村田人
松の葉をこぼれて落つる霰かな 古白遺稿 藤野古白
板葺の屋根をころがる霰哉 寺田寅彦
枇杷の花霰はげしく降る中に 野村喜舟
枯れむぐら掻いくゞり落つ霰かな 青邨
枯蓮の玉といつはる霰かな 古白遺稿 藤野古白
柴売の柴にはさまる霰かな 会津八一
梅いくつ閼伽の折敷に玉霰 榎本其角
楢山に降りし霰ぞ田に敷ける 秋櫻子
楪葉にこは年玉の霰かな 古白遺稿 藤野古白
欠航の行嚢二百霰打つ 木村蕪城 寒泉
歌手病める窓の橘霰やむ 宮武寒々 朱卓
武士の臑に米磨グ霰かな 服部嵐雪
武蔵野の教師となりし玉霰 日原傳
死に遠く飢ゑも爽やか霰うつ 楸邨
残菊の雨は霰と変じける 有働亨 汐路
殖林の松伐る香して霰かな 大谷句佛 我は我
母恩遠し夜の霰は屋根駈けて 皆川白陀
母死して軽くなりたる霰かな 河原枇杷男 閻浮提考
水にある日たのしきを大霰 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
水にうくものとは見えぬ霰かな 千代尼
水の面にしばらく見ゆる霰かな 松籟集(蕉子句集) 小野蕉子
水仙に霰のまろびあへるかな 久保田万太郎 流寓抄
水仙の根に降たまる霰哉 吟江
水仙や雨に霰に戸を閉めて 中村汀女
氷上に霰こぼして月夜かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
氷頭なます霰といふ字胸中に 八牧美喜子
氷魚汲むや暁の霰に灯かざして 山田孝子
河童なくと人のいふ夜の霰かな 中勘助
沼の怪をおどろかし降る霰かな 野村喜舟 小石川
波止埋めて糶待つ蟹や初霰 吉澤卯一
注連貰ひ一と霰せし畦跳んで 荒井正隆
洛北の霰日和に蕪村の忌 鈴鹿野風呂
流れゆく霰かなしや泊船 会津八一
浅沓に霰はいるや地鎮 高田蝶衣
浜垣に鴎しけとぶ霰かな 楠目橙黄子 橙圃
海へ降る霰や雲に波の音 其角
海吹雪霰先立て来りけり 西本一都 景色
渡船は帆を巻きおろす霰哉 寺田寅彦
港町海の機嫌の霰過ぐ 猪俣千代子 秘 色
湯村の湯九十八度霰打つ 岩崎照子
満目の霰に旅装解きにけり 田中裕明 櫻姫譚
灯蓋に霰のた〔ま〕る夜店哉 一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
炭を出す間に月のさし霰降り 大橋櫻坡子 雨月
焚かんとす枯葉にまじる霰哉 夏目漱石 明治三十一年
熊笹に野麦峠の霰かな 沢部幹雄
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
燈火の色変はりけり霰打つ 内田百間
片町や霰捨てつゝ雲とほる 飴山實 少長集
牛酪なめて一人いぬるや寒霰 北原白秋
牡蠣殼に生身の牡蠣に霰過ぐ 中戸川朝人
犬の尾の霰へ帰るベーシスト 須藤 徹
狐診し医師戻るに霰かな 菅原師竹句集
玉ぜりの裸を叩く霰かな 富安風生
玉霰すべて了りぬ日の光り 山口誓子
玉霰ふたつならびにふゆるなり 三橋敏雄 眞神
玉霰ほちりと石を打ちけるよ 尾崎紅葉
玉霰人の恋聞く聞き流す 清水基吉 寒蕭々
玉霰冬の桜をちらしけり 尾崎紅葉
玉霰夜タカは月に帰るめり 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
玉霰夜鷹は月に帰るめり 小林一茶
玉霰幽かに御空奏でけり 川端茅舎
玉霰月の兎が仕業かな 柳原極堂
玉霰杉の命と檜の妃 下田稔
玉霰漂母が鍋をみだれうつ 蕪村 冬之部 ■ 貧居八詠
玉霰竹に当つて竹青し 日野草城
玉霰花壇はつよき皮膚もてり 渋谷道
玉霰花甘藍を囃しおり 大野紫陽
玉霰茶の子のたしに飛入ぬ 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
玉霰誰がまことより二三分 安昌 選集「板東太郎」
玉霰雪ゆるやかに二三片 汀女
玻璃窓に霰たばしる夜半かな 寺田寅彦
琵琶行の夜や三味線の音霰 松尾芭蕉
生酔がちろりで遊ぶ霰かな 筑紫磐井 花鳥諷詠
甲板に霰の音の暗さかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
畦立ちの仏に霰たまりける 水原秋櫻子
白猫に不実な霰ふりかかる 宇多喜代子
白飯に飢ゑしは昔霰はね 桂信子 花寂び 以後
白鳥に霰をこぼす茜雲 西本一都
百余艘鯨に向ふ霰かな 会津八一
盞や庭に霰のきこえつつ 京極杞陽
相摶つて元旦の霰いさぎよし 河野南畦 『風の岬』
真木部屋の霰拾はん笹交り 能州大野氏-良長 俳諧撰集「藤の実」
石上の霰にそそぐ時雨かな 会津八一
石山の石にたばしる霰哉 松尾芭蕉
石濤に既に狎れつつ玉霰 相生垣瓜人 微茫集
石蕗の葉をうちも破らぬ霰哉 熊三
磐石をめがけて霰降り集ふ 誓子
磧湯の底までうちて霰来る 山岸治子
磨れて木賊に消る霰かな 榎本其角
磨臼にすりつぶさるる霰かな 会津八一
神の田の祭のごとし初霰 永方裕子
神燈の真下のくらさ夕霰 桂信子 遠い橋
稲架骨に風の鳴る日や霰雲 皆川白陀
竹を割る俄霰に力得て 高木和蕾
竹買ふて裏河岸戻る霰かな 正岡子規
篁に降り込む霰山始 木村蕪城 寒泉
素堂碑に霰ふりやむ山の径 飯田蛇笏 椿花集
素湯呑んで霰を見たる近江かな 安東次男 昨
絶えず躍りて軽き霰や肩の幅 高濱年尾 年尾句集
絶頂に敵の城あり玉霰 夏目漱石 明治二十九年
網はらふころり~と霰杜父魚 米野耕人
繭白し不破の関屋の玉霰 井上井月
老い朽ちてゆく母羨し玉霰 永田耕衣 與奪鈔
胸に溜めし敗残の詩夜の霰 小林康治 玄霜
胸熱く詩を溜め霰遊ばせて 小林康治 玄霜
能登殿の矢先にかゝる霰哉 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
船橋に駄馬騒ぎ出す霰かな 会津八一
色ケ浜霰とぶ冬迫りけり 青畝
茎漬に霰のやうに塩をふる 細見綾子 花寂び
荷をうつて霰ちる君みずや村雨 山口素堂
落穂拾ひゆく~霰至りけり 石井露月
落葉掃く中にころがる霰かな 柑子句集 籾山柑子
葉牡丹を街の霰にまかせ売る 中村汀女
葱ひくや昨日の霰そのまゝに 西山泊雲 泊雲句集
葱引いて来る妻の髪霰かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
蓆帆の早瀬を上る霰かな 夏目漱石 明治三十二年
蓑虫は何處に居るぞと霰降る 会津八一
蓮の実を袖に疑ふ霰哉 井原西鶴
蓮の茎からからと鳴り霰来ぬ 松村蒼石 露
薄明の霰と知るや胸に撒く 杉山岳陽 晩婚
薄暮や霰興ずる樽ひろひ 加舎白雄
藁灰にまぶれてしまふ霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
蘭万年青なほ降り足らぬ霰かな 小杉余子 余子句選
蝿の貌ほどの霰や潰れ降り 永田耕衣 殺祖
衛士の火のます~もゆる霰哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
袂着た子を打交せて霰降る 尾崎紅葉
袋小路に霰愛犬紺太の屍 塚本邦雄 甘露
見て居れば小雪の中の玉霰 高木晴子 晴居
訪ふ嬉れしき霰や道に垂るゝ竹 安斎櫻[カイ]子
語られぬ神にたばしる霰かな 角川源義 『冬の虹』
足もとに旅の霰のすぐたまる 加倉井秋を 午後の窓
足もとに霰ころがる焚火かな 上甲明石
足もとに霰はね降る別れかな 小林寂人
蹴あぐれど裳(もすそ)にたまる霰かな 遊女-ときは 俳諧撰集玉藻集
退院者送る霰の門に出て 下村ひろし 西陲集
道訊きにゆきし子を待つ父へ霰 中村草田男
都をどり霰降る夜の篝燃え 渡辺水巴
金槐集霰たばしる日なりけり 奥田杏牛
金沢のしろき日輪夕霰 中田剛 珠樹
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火 草木塔
銅のとゆにたばしる霰かな 寺田寅彦
鍋焼の行燈を打つ霰かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
鏡餅霰まじりの音となリ 深見けん二
降りにけり落ちては消ゆる玉霰 七 俳諧撰集玉藻集
降りをさまり降りをさまりて霰かな 京極杞陽
降り止んでひつそり並ぶ霰かな 茅舎
隙間多き夜業工場霰溜む 西村公鳳
雑水に琵琶聴く軒の霰かな 松尾芭蕉
雪につきささる霰の小樽かな 小宅容義
雪峰の月は霰を落しけり 原石鼎
雪空に霰ふるなる但馬かな 京極杞陽 くくたち下巻
雲乱れ霰忽ち降り来り 虚子
雲割れて月光霰こぼしけり 福田蓼汀
雲衲等霰に飛んで帰りけり 河野静雲 閻魔
雲霰帆一つ見えぬ海淋し 寺田寅彦
霜の上にたまる霰はやはらかに 高橋馬相 秋山越
霰うつて信長の墓うそぶける 松本進
霰うつわが少年の日の学舎 堀口星眠 営巣期
霰うつ杣が板屋のそぎはなし 北原白秋
霰おく夕べの土のさりげなき 松村蒼石 寒鶯抄
霰おもへば開拓地真平ら 龍太
霰かな野山の真言聴き居れば 河原枇杷男 訶梨陀夜
霰がこ啖ひ文人の棋譜を観る 石原八束 断腸花
霰きく坐せる盲の友一人 京極杞陽 くくたち下巻
霰さらりとあがりて明し門麦生 林原耒井 蜩
霰して月夜もみゆる碑のほとり 飯田蛇笏 椿花集
霰して納め遅れの飾かな 石田勝彦 秋興
霰すがし崩るるものを身に蔵し 鷲谷七菜子 黄炎
霰せば網代の氷魚を煮て出さん 松尾芭蕉
霰たばしる早く起きたる甲斐のあり 長谷川かな女 花 季
霰ちれくゝり枕を負ふ子ども 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
霰とぶ石屋根の先日本海 井上雪
霰なぐ日なたの粉ナ葉かたよりつ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霰にもやさしくならぬ湖の國 安東次男 昨
霰にも夕榮もつや須磨の浦 井上井月
霰ふるこの土地人よ父よ祖父よ 京極杞陽
霰ふると思ふ空かな初竈 増田龍雨 龍雨句集
霰ふる悪しき映畫のポスターに 京極杞陽
霰ふる煤びしまどよドンきこゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霰ふれども濡れざるは白秋碑 松澤昭 神立
霰まじへ修二会の火屑匂ひけり 田中英子
霰みな吸ひこまれゆく茶山かな 守山琴女
霰やみし静けさに月さしてをり 内藤吐天
霰やみ木々美しく濡れにけり 橋本鶏二
霰引く空のおくがに星見つる 金尾梅の門 古志の歌
霰打ち花片積る彫の恥部 八木三日女 赤い地図
霰打つ天井板やいづこより 河野静雲 閻魔
霰打つ暗き海より獲れし蟹 松本たかし
霰打つ模型の鮨をめがけては 秋元不死男
霰打つ男女の世より逃るべし 大木あまり 山の夢
霰打つ相対死も足柄よ 高柳重信
霰散り舗道隅より夕兆す 上井正司
霰散る武者絵のふいと立つごとし 平井照敏 天上大風
霰来て喪の元日の暮色急 下村ひろし 西陲集
霰来るたそがれの川狭められ 松村蒼石 雪
霰止みその日は暮るる御師部落 岡田日郎
霰止み鴉いま鳴く御宮居 木村蕪城 寒泉
霰止む時束の間の淋しさよ 尾崎迷堂 孤輪
霰白う浮ぶ盥の夜の水 鶯子句集 山口鴬子
霰窓を打つて二更の月黄なり 福田把栗
霰粒石採り場への深轍 右城暮石 上下
霰聞くやこの身はもとの古柏 芭蕉
霰跳ねけふ一日を踏まぬ土 野澤節子 黄 炎
霰降り鳩翔ち貯炭渚なす 小林康治 玄霜
霰降る*かりんの色の光にて 対馬康子 吾亦紅
霰降る大地に鈴の音満つごとく 柴田白葉女 花寂び 以後
霰降る天に慶びあるごとく 永津溢水
霰降る宿のしまりや蓑の夜着 内藤丈草
霰降る田の面や榛の枝細か 癖三酔句集 岡本癖三酔
霰降る胃カメラ呑みに行く道に 村本畔秀
青天を一ト雲走る霰かな 東洋城千句
青潮に霰溜め浮きラワン材 木村蕪城 寒泉
青空の見ゆる霰の落ちてきし 石田郷子
鞍馬寺を打つて過ぎける霰かな 尾崎迷堂 孤輪
音たてゝ又霰降るみぞれ降る 高木晴子 晴居
音のして霰ふりくる 遠天に星ありながら雲ありながら 岸本節子
風を追ひ霰を追ひて魂翔けぬ 篠原鳳作
風呂熱くたしなむ妻や夕霰 西島麦南 人音
餅切るや又霰来し外の音 西山泊雲 泊雲句集
馬も家族村は霰を迎へけり 有働亨 汐路
馬を入れて袴たゝめば霰かな 古白遺稿 藤野古白
驚破霰狐啼く声やみにけり 古白遺稿 藤野古白
髪の中に脱けてある髪夕霰 永田耕衣 吹毛集
鬼塀の鬼が霰を撥ね返す 下村ひろし 西陲集
鳩白う神杉に乱れ霰降る 幸田露伴 拾遺
鶏につく鼬の悪の霰かな 野村喜舟 小石川
龍神を祭る岩頭の霰哉 寺田寅彦
ちりめんの狙(さる)を抱く子よ丸雪(あられ)ちる 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
ふりやみていはほになじむ玉あられ 蛇笏
中空に降りきゆるかと夕あられ 白雄
二三合蜆にまじる丸雪(あられ)かな 梅室
初あられ捨鎌の辺に弾みけり 有働亨 汐路
夕市や蟹の眼を打つ玉あられ 東條素香
夕爾の詩つぶやく藁の玉あられ 福田甲子雄
小夜あられ起見んばかり降にけり 加舎白雄
揚舟や枯藻にまろぶ玉あられ 飯田蛇笏 山廬集
獅子舞も奥湯へいそぐ夕あられ 山岸 治子
玉あられ百人前ぞお取越 山店 芭蕉庵小文庫
玉あられ鍛冶が飛火にまじりけり 暁台
玉あられ風夜半を過ぐこずゑかな 飯田蛇笏 山廬集
白樺に吾名きざめば夕あられ 細谷源二 砂金帯
紅の鷹の大緒や玉あられ 胡布 霜 月 月別句集「韻塞」
萱負へば音の変りし夕あられ 藤原 如水
急霰に家鴨の雄声突っ走る 高澤良一 石鏡

霰 補遺

うす日して震災堂の玉あられ 飯田蛇笏 山響集
うながすや霰む山村往診談゛ 水原秋櫻子 蓬壺
うなゐ髪霰をつけて愛しけれ 福田蓼汀 山火
うらなひの鬚にうちこむ霰哉 正岡子規 霰
うれしさの霰たばしる鴨の数 山田みづえ まるめろ
おかめ笹笹原なせり初霰 山口青邨
おどろくや月に踏み敷く初霰 石塚友二 磯風
かきくらす掛菜にはぜて玉霰 小林康治 四季貧窮
かたかたは霰ふるなり鳰の月 正岡子規 霰
カラ~な藻草に溜る霰かな 河東碧梧桐
から城に鵲さわぐ霰かな 正岡子規 霰
かるさうに提げゆく鍋の霰哉 正岡子規霰
きりぎしにとりつき住むや玉霰 山口青邨
この度は音のしてふる霰かな 高野素十
ころがれば哀れ天付霰かな 永田耕衣
さげて行く鍋へ打ち込む霰哉 正岡子規 霰
しぐれより霰となりし山泉 森澄雄
しばらくはあられふりやむ楢林 飯田蛇笏 山響集
すさましや霰ふりこむ鳰の海 正岡子規 霰
たちまちにあられ過ぎゆく風邪ごもり 桂信子 月光抄
ちはやぶる臍を原とし霰かな 岡井省二 大日
つはぶきに霰はじける五六粒 飴山實 花浴び
はらはらと音して月の霰哉 正岡子規 霰
ひらきたる厨子の香にふる霰かな 永田耕衣
ふりやみて巖になじむたまあられ 飯田蛇笏 白嶽
ふるさとは緋蕪漬けて霰どき 松村蒼石 寒鶯抄
ほとめきて霰が胸を打ちにけり 岸田稚魚 紅葉山
まぎれなく貧し鼻うつ夕霰 小林康治 玄霜
みちのくの霰はいまも茎漬季 山口青邨
みづうみを打つて過ぎゆく霰かな 草間時彦 櫻山
もう合えぬ祖父母 地蔵に霰の餐 伊丹三樹彦
ものすごき音や霰の雲ばなれ 正岡子規 霰
ゆく雲や霰ふりやむ寺林 飯田蛇笏 山廬集
ゆづり葉の美事にたれて霰かな 原石鼎 花影
りきむ程猶はね返す霰かな 正岡子規 霰
りきむ程猶はね返る霰哉 正岡子規 霰
逢阪や霰たばしる牛の角 正岡子規 霰
一しきり霰のふりてしくれ哉 正岡子規 霰
一ト霰篁わたるひびきかな 村山故郷
一本一本箸洗ひをり夜の霰 岡本眸
一粒の霰裸子道砥の如く 山口青邨
一禮に籠めて別るる霰かな 古舘曹人 砂の音
一霰こぼして青し松の空 原石鼎 花影
隠田の罅すさまじき霰かな 秋元不死男
烏賊漁る大電球を打つ霰かな 阿波野青畝
雲立ちの霰過ぎけり山始 岡井省二 鹿野
塩田に跳ねて静まる夕霰 岸田稚魚
温泉へ行く百姓に霰騒ぐ 飴山實 おりいぶ
音のして藁火に消ゆる霰哉 正岡子規 霰
音のして霰も見えず藪の中 正岡子規 霰
音不意に霰雲より落ちきたる 右城暮石 句集外 昭和三十七年
何か降ると言ひしとき止む宵霰 山口青邨
何か苗育つフレーム霰ふる 山口青邨
何もなき二月と思へば霰ふる 百合山羽公 故園
何段に杉の木陰のあられ哉 正岡子規 霰
我に突き当り行く青年達霰飴色 永田耕衣
我善坊に車引き入れふる霰 河東碧梧桐
蛾の翅の霰小紋がわびしくて 松村蒼石 雁
海の際霰はねては陽にまみる 佐藤鬼房
海静かなるに石切る音や霰降る 河東碧梧桐
刈萱に湖北は霰のるころか 飴山實 句集外
寒月や海にこぼるゝ玉霰 正岡子規 寒月
堪閑の灯も消さず夜半の霰きく 村山故郷
岩海苔を掻けばたまたま霰来て 鈴木真砂女
岩膚の玉あられやみ霑へり 飯田蛇笏
岩關の岩にけし飛ぶ霰哉 正岡子規 霰
祈るとき霰荒蕪の短山 赤尾兜子 歳華集
逆潮の霰ふたたび来りけり 岡井省二 山色
急霰にあけし障子や冬籠 日野草城
急霰を敷き国宝の塔立てり 鷹羽狩行
魚棚に鮫竝べたる霰かな 正岡子規 霰
胸に溜めし敗残の詩夜の霰 小林康治 玄霜
胸熱く詩を溜め霰遊ばせて 小林康治 玄霜
蕎麥の雪棉の霰はまばらなり 正岡子規 霰
鏡餅霰まじりの音となリ 深見けん二
驚かす霰の音や冬籠 正岡子規 冬籠
玉あられまこと小さくちいさくて 川端茅舎
玉あられ風夜半を過ぐこずゑかな 飯田蛇笏 山廬集
玉霰くぐるばかりや枯いばら 阿波野青畝
玉霰すべて了りぬ日の光り 山口誓子
玉霰ふたつならびにふゆるなり 三橋敏雄
玉霰みな傷ついて居るならむ 三橋敏雄
玉霰花無き梅を降り包み 松本たかし
玉霰錦木の実もうちまじへ 川端茅舎
玉霰鯛茶の上に来つゝあり 岡井省二 猩々
玉霰炭に酔ひたる顔出せば 草間時彦 中年
玉霰竹に当つて竹青し 日野草城
玉霰幽かに御空奏でけり 川端茅舎
芹さましあへず霰大空よりす 原石鼎 花影
金華山志せば冬になる霰 河東碧梧桐
句碑ひとつ墓標にかはる夕霰 古舘曹人 樹下石上
駒返り峠に向ふ霰哉 尾崎放哉 大学時代
啓蟄の霰しまくに薄日浮く 松村蒼石 雁
渓巖に吹きたまりたるあられかな 飯田蛇笏 霊芝
畦立ちの佛に霰たまりける 水原秋櫻子 蓬壺
茎漬に霰のやうに塩をふる 細見綾子
欠航の行嚢二百霰打つ 木村蕪城 寒泉
月に侘び霰にかこつとぼそかな 原石鼎 花影
月光の削りし木々に霰ふる 百合山羽公 故園
犬吠ゆる白虎山下の霰かな 正岡子規 霰
軒をうつ霰が覚ます去年今年 飴山實 句集外
古塀の終に倒るゝ霰かな 正岡子規 霰
戸格子を漏れて降り込む霰かな 日野草城
枯むぐら掻いくぐり落つ霰かな 山口青邨
枯原に降り込む霰のみの音 右城暮石 散歩圏
枯蔓にふる霰こそかすかなれ 山口青邨
湖の氷にはぢく霰哉 正岡子規 霰
午過ぎて初霰せり爆音下 加藤秋邨
呉竹の奥に音あるあられ哉 正岡子規 霰
呉竹の横町狹き霰かな 正岡子規 霰
呉竹の名に音たてゝ霰哉 正岡子規 霰
語られぬ神にたばしる霰かな 角川源義
口こはき馬に乘たる霰哉 正岡子規 霰
后陵出でて霰に顔うたる 角川源義
甲板に霰の音の暗さかな 正岡子規 霰
荒れ畝の霰のあとはぬくめあふ 能村登四郎
降り止んでひつそり並ぶ霰かな 川端茅舎
降る程の霰隱れて小石原 正岡子規 霰
降霰の白き小窓の内に職す 渡邊白泉
降霰やつむれるまなこ遊ばせつつ 三橋敏雄
黒羽や霰たばしる座禅堂 鷲谷七菜子 天鼓
妻と行く霰店には鯛二つ 香西照雄 対話
冴え返る音や霰の十粒程 正岡子規 冴返る
鷺のほか霰うつもの暗くなりぬ 加藤秋邨
三鬼忌の山傾けて霰かな 角川源義
三月のたばしる霰見つつ臥す 野見山朱鳥 愁絶
三輪の里降りわたりたる霰かな 阿波野青畝
山茶花に月の霰やそゞろなる 西島麦南 人音
山茶花の落花とをどる霰かな 原石鼎 花影
山風や雉子のあら羽に一ト霰 村山故郷
散りそむ花に霰せり大空高きより 種田山頭火 自画像 層雲集
四絃一齋霰たばしる疊かな 正岡子規 霰
子の脚がはね霰はね視野ゆたか 加藤秋邨
死ぬるまで怒つてゐると玉霰 飯島晴子
時々に霰となつて風強し 正岡子規 霰
鹿の躯のぬくさかなしや霰打つ 草間時彦 中年
柴漬になぐりこんたる霰哉 正岡子規 霰
捨橋の中にたばしる霰哉 正岡子規 霰
捨舟の中にたばしる霰かな 正岡子規霰
弱霰載せ気球の半身夜明待つ 赤尾兜子 蛇
手をしかと合はし霰に耐へゐたり 角川源義
酒倉へ粕とりにやる初霰 飴山實 句集外
宿根を打つや天付き玉霰 永田耕衣
順禮の笠を霰のはしりかな 正岡子規 霰
初めての霰かしこみ誕生日 上田五千石『天路』補遺
初霰ありて即ち欠航す 高野素十
初霰めざめの子等を待たで消ゆ 相生垣瓜人 微茫集
初霰耳に残りてゐし朝餉 相生垣瓜人 微茫集
初霰硝子戸の中びろうど冷ゆ 細見綾子
初霰父の冥土にしみるもの 古舘曹人 樹下石上
初霰簗には鰻かゝるべし 高野素十
小心の鴛鴦に霰の水柱 日野草城
小走りに出し禰宜が妻霰降る 木村蕪城 寒泉
掌に跳ねて失せて霰の重きかな 岡本眸
掌の霰溶けゆくに心ほぐれけり 橋閒石
松を洩る霰夕映え墓の面(能登一の宮、折口信夫先生墓のほとり) 細見綾子
上弦の最後の霰溶け行くも 永田耕衣
城崎に必ず逢ひし霰かな 岡井省二 前後
城門の釘大いなる霰哉 正岡子規 霰
寝るより枕かたむく初霰 齋藤玄 飛雪
振り向けばふるさと白く夕霰 中村苑子
人等来るうつくしき霰もちて来る 山口青邨
陣笠のそりや狂はん玉霰 正岡子規 霰
吹きまはす浦風に霰霙かな 河東碧梧桐
星暗く霰うつなり小野木笠 正岡子規 霰
星一類霰一粒手にもとらむ 山口青邨
青照りの日輪据わる霰あと 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
青竹をつたふ霰のすべり哉 正岡子規 霰
青潮に霰溜め浮きラワン材 木村蕪城 寒泉
石橋の上にたまらぬ霰哉 正岡子規 霰
石上の霰しばらく月照らす 桂信子 月光抄
石上も地上も霰はねかへる 山口誓子
石濤に既に狎れつつ玉霰 相生垣瓜人 微茫集
雪解のぬかるみを吸ふ霰かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
雪峰の月は霰を落しけり 原石鼎 花影
千両に霰こぼして空青し 橋閒石
川浪の霰光りに川千鳥 飯田蛇笏
素堂碑に霰ふりやむ山の径 飯田蛇笏
槍持の横つらを打つ霰哉 正岡子規 霰
蒼天より八ッ手をたたくあられくる 細谷源二 鐵
藻汐草かきあつめたる霰哉 正岡子規 霰
霜よけの俵破れし霰かな 正岡子規霰
打返し藁干す時の霰かな 河東碧梧桐
大きわが熱の掌霰はずみ消ゆ 佐藤鬼房
大きわが熱の掌霰はづみ消ゆ 佐藤鬼房
大屋根に右往左往の霰かな 上野泰 佐介
大阪に来てをり霰しまく日を 村山故郷
大年の霰打つたる鯉の澄み 森澄雄
大粒な霰ふるなり薄氷 正岡子規 霰
大粒の霰降るなり石疊 正岡子規 霰
大佛のからからと鳴る霰哉 正岡子規 霰
大佛のまじろきもせぬ霰哉 正岡子規 霰
瀧壺の渦にはねこむ霰哉 正岡子規 霰
凧に霰降り来る曇りかな 河東碧梧桐
蛸壺の壺割れてをる霰かな 阿波野青畝
鍛錬の霰附くなり老の松 永田耕衣
男神倒けて在せる霰かな 飯島晴子
知る人の顔近づくに霰いよゝ 細見綾子 桃は八重
地に鳴るは三月尽の夜のあられ 飯田蛇笏 雪峡
竹垣の外へころげる霰かな 正岡子規 霰
竹買ふて裏河岸戻る霰かな 正岡子規 霰
竹藪に伏勢起る霰かな 正岡子規 霰
竹賣の通りかゝりし霰哉 正岡子規 霰
猪の人をかけたる霰かな 正岡子規 霰
朝はしぐれ夕べ霰の竹瓮かな 草間時彦 櫻山
朝日さすそのとき霰ときめきて 山口誓子
朝発つ牝牛に異音流れる霰の丘 赤尾兜子 蛇
町筋を霰たばしりたばしりて 清崎敏郎
沈丁をくぐりて落つる霰かな 中村汀女
鶴の巣を傾けてふる霰哉 正岡子規 霰
汀にたまる霰見て温泉の村に入る 尾崎放哉 須磨寺時代
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火
鉄鉢の中へも霰 種田山頭火 草木塔
天塩路や霰に残るとりかぶと 齋藤玄 飛雪
途中三湖を見る遑ありて降る霰 河東碧梧桐
土くれは霰まみれや寒牡丹 中村草田男
冬緑なる樹を霰降りかくす 右城暮石 句集外 昭和二十七年
燈心のたばにこぼさぬ霰かな 正岡子規 霰
踏み捨ての石も霰も武州の産 三橋敏雄
禿山に鉄塔立ちて霰降る 上田五千石『田園』補遺
届きけり霰ちる日の蕪寿し 飴山實
那須野より大寺打つて霰かな 森澄雄
薙刀を車輪にまはす霰哉 正岡子規 霰
鍋焼きの行燈を打つ霰かな 正岡子規 霰
日の海や今し方なる浮霰 三橋敏雄
日の子われ日の下にして玉霰 原石鼎 花影
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
年賀式軍帽たたきたる霰 伊丹三樹彦
脳天に霰を溜めて耶蘇名ルカ 西東三鬼
波除に霰ころころ人働く 岡本眸
梅の木に霰きしかば文章書く 永田耕衣
白樺に吾名きざめば夕あられ 細谷源二 砂金帯
白魚に霰くはゝる棹秤 飴山實
白飯に飢ゑしは昔霰はね 桂信子 晩春
八陣の石は崩れてあられ哉 正岡子規 霰
八陣の石崩れたる霰哉 正岡子規 霰
髪の中に脱けてある髪夕霰 永田耕衣
帆柱や大きな月にふる霰 正岡子規 霰
帆渡りの島山颪霰かな 河東碧梧桐
板屋根に眠りをさます霰かな 正岡子規 霰
板塀によりもつかれぬ霰かな 正岡子規 霰
磐石の黒き勝利よ霰歇む 鷹羽狩行
磐石をめがけて霰降り集ふ 山口誓子
磐石打つ霰 幻の鬼ら躍り 伊丹三樹彦
筆に聲あり霰の竹を打つ如し 正岡子規 霰
氷上に霰こぼして月夜かな 臼田亜郎 定本亜浪句集
氷霰のかなた気球の沈み浮く 西東三鬼
病院の岩窪の霰夜光る 西東三鬼
貧しき退院胸に霰をはじきつつ 西東三鬼
風吹て霰空虚にほどばしる 正岡子規 霰
風呂熱くたしなむ妻や夕霰 西島麦南 人音
風呂敷のものゝかさばる霰かな 清崎敏郎
文章を書きをればよく霰ふる 永田耕衣
変な岩を霰が打つて薄日さす 西東三鬼
片町や霰捨てつゝ雲とほる 飴山實 少長集
暮れて尚硝子戸を霰うち止まず(三月廿五日、マーシャル全滅の報) 細見綾子
抱きいづる石の睡り児夕霰 松村蒼石 雪
北海の急霰吾の寝屋を撃つ 山口誓子
北斎の北に重なる霰かな 永田耕衣
無口の牛打ちては個々に死ぬ霰 西東三鬼
木の葉に笠に音たてて霰 種田山頭火
木兎の鳴きやむ杉の霰哉 正岡子規 霰
木蓮の苗束打つて霰去る 飯田龍太
黙契の集牛と我を霰打つ 西東三鬼
門附の編笠しをるあられ哉 正岡子規 霰
夜の霰へ犬を叱りて送らるゝ(西東三鬼氏を訪ふ) 細見綾子
夜廻りの木に打ちこみし霰哉 正岡子規 霰
夜廻りの鐵棒はしる霰哉 正岡子規 霰
耶蘇名ルカ霰はじきて友帰る 西東三鬼
油槽へむらがる眼ざらざら霰ふりこむ 赤尾兜子 蛇
有明の霰ふるなり本願寺 正岡子規 霰
夕鳶の翔けかたむきて玉あられ 飯田蛇笏 家郷の霧
夕霰をりから池の端に在り 下村槐太 光背
夕霰枝にあたりて白さかな 高野素十
揚舟や枯藻にまろぶ玉あられ 飯田蛇笏 山廬集
溶くる霰落つる霰を月照らす 桂信子 月光抄
葉牡丹に年立つあられ降りやみぬ 飯田蛇笏 白嶽
葉牡丹を街の霰にまかせ売る 中村汀女
旅僧の笠破れたる霰哉 正岡子規 霰
林中の青笹にとぶ玉あられ 飯田龍太
涙腺に霰たばしる民族なり 永田耕衣
霊芝生えし松の切株霰添ふ 山口青邨
老い朽ちてゆく母羨し玉霰 永田耕衣
老訥の観る霰のみ残るらむ 永田耕衣
鷲の子の兎をつかむ霰かな 正岡子規霰
藁灰にまぶれてしまふ霰かな 正岡子規 霰
藁屑のほのぼのとして夕霰 原石鼎 花影
曉の霰のたまるおとし穴 正岡子規 霰
炮烙に豆のはぢきや玉あられ 正岡子規 霰烙(ろく<火+緑のつくり>)
玻璃障子霰たばしり日ノ箭ふり 川端茅舎
篁に降り込む霰山始 木村蕪城 寒泉
賣れ殘る炭をおろせば霰かな 正岡子規 霰
鉈の柄を短く持ちて霰かな 飯島晴子
霰うつ巌に渇きて若い女 西東三鬼
霰おく夕の土のさりげなき 松村蒼石 寒鶯抄
霰おもへば開拓地真つ平ら 飯田龍太
霰きて術後の弱き目を荒らす 秋元不死男
霰して月夜もみゆる碑のほとり 飯田蛇笏
霰して納め遅れの飾かな 石田勝彦 秋興
霰すがし崩るるものを身に蔵し 鷲谷七菜子 黄炎
霰たばしり雪の切間に雪の佐渡 森澄雄
霰ふりやむ大地のでこぼこ 尾崎放哉 須磨寺時代
霰ふることもありしか笹粽 正岡子規 粽
霰やんで笠ぬげば月空に在り 正岡子規 霰
霰を撥ね石の柱のごとく待つ 西東三鬼
霰笠を打つてすくはる小順禮 正岡子規 霰
霰降りいふこときかぬ杖がある 飯島晴子
霰降り鳩翔ち貯炭渚なす 小林康治 玄霜
霰降り夜も降り顔を笑はしむ 西東三鬼
霰降る生れて間なき乳児の身に 山口誓子
霰降る鼠草子の鼠たち 飯島晴子
霰散る武者絵のふいと立つごとし 平井照敏 天上大風
霰止み鴉いま鳴く御宮居 木村蕪城 寒泉
霰打つ音のままなる山泉 飯田龍太
霰打つ谷底の墓時忠卿 大野林火 飛花集 昭和四十四年
霰打つ模型の鮨をめがけては 秋元不死男
霰跳ね絵馬より馬を誘ひ出す 鷹羽狩行
霰跳ぶ厨に近し病父と寝て 飴山實 おりいぶ
霰来るたそがれの川狭められ 松村蒼石 雪
霰落とす雲つぎつぎに庭日南 右城暮石 句集外 昭和八年
霰粒石採り場への深轍 右城暮石 上下
鮟鱇の口あけて居る霰かな 正岡子規 鮟鱇

霰 続補遺

*霰小雪ふた親のこゝろ察し入 加舎白雄
あめあられ雪や蜷川新右エ門 旦藁
あやなくも霰降かつ小雪哉 加藤曉台
あられかなけさのさむさを計る音 存義 古来庵発句集
あられかなけふのさむさを計る音 馬場存義
あられきくやこの身はもとのふる柏 芭蕉 続深川集
あられにはおもひ忘よはちかつぎ 挙白
あられふる篶のまがきや子はほしき 鈴木道彦
あられ雨空も馴ずや降こぼす 鈴木道彦
あられ降軒は黄めり正木つら 加藤曉台
いかに見よと難面うしをうつ霰 羽笠
うき雲や*霰月夜を鳩の啼 加舎白雄
おもしろき愛宕の坂の霰かな 素丸 素丸発句集
から~と味噌に摺こむ霰かな 傘下
から崎やあられ打込浪がしら 卯七
ぎよつとして霰に立や鹿の角 支考
くれなひの鷹の太緒や玉あられ 木導
げそ~と霰はれたるはる日かな 鈴木道彦
こけかはる霰晴てや梅の花 土芳
こぼるゝとのみ申たし降霰 松窓乙二
さゝばゆふ落葉をくゞるあられかな 杜若
さつ~と荻も氷もあられかな 史邦
しろ金や霰ふる夜の年忘れ 鬼貫
たまあられ水に沈めば消ぬべし 加藤曉台
たま霰星の空より降にけり 長翠
つばの葉も打ぬくやうな霰かな 芙雀
つぶ~と蕗の葉に降夕あられ 加舎白雄
つり髭に二度手間落る霰かな 紫白女
ねこ鳥の山田にうつるあられかな 正秀
のまばのめ霰降夜の箔仏 乙訓
はつ霰座頭笠ぬぐ霰哉 一笑(金沢)
ひすがらに垣間見くゞる霰哉 助然
ひとつ~かぞへもならず玉あられ 乙訓
まて暫しあられを華や柴小舩 馬場存義
めりやすの旅寐はやすしはつあられ 洒堂
もの売の声のはづみやはつあられ 土芳
よそ事にへがたく見ゆれ雪霰 田川鳳朗
伊勢の御師の折敷に溜る霰哉 建部巣兆
一おこし日を取たてゝあられ哉 林紅
一降はあられはしりのふり残し 土芳
一石橋年うちこさん玉あられ 流也 江戸広小路
鵜はしづみ鷺は雲井に霰かな 桜井梅室
奥山は霰雲なりけふの月 加藤曉台
音しばし霰にもなるはちたゝき 土芳
嫁入の歩で吹るゝ霰かな 去来
花の日は空に根のなき霰哉 土芳
荷をうつて霰ちる君みずや村雨 素堂
我物よ溝より内の玉あられ 尚白
海へ降霰や雲に波の音 其角
海士の尻沈むで浮て霰かな 其角
外の井や朝に炊ぐ玉あられ 尚白
柿の葉につれ~当る霰かな 卯七
樫の木の枝にとばしるあられ哉 蘆文
粥杖や打たれてあられはしりまで 完来 発句題叢
干鮭の目打て出るあられかな 雪芝
丸合羽はしり過たる霰かな 知足
顔出してはづみを請ん玉あられ 嵐雪
気たるみし鷹の面うつ霰哉 加藤曉台
記録所に目を留らるゝ霰かな 三宅嘯山
強く降て石に砕ケン玉霰 一笑(金沢)
玉あられ緒絶の橋やふり所 風虎 誹枕
玉あられ小菊の綿がこぼれける 土芳
玉あられ百人前ぞおとりこし 山店
玉霰お児の姿見初けり 木節
玉霰さて奇妙なる細工かな 井上士朗
玉霰思ひまをけし竹柱 加藤曉台
玉霰誰まことより二三分 安昌 坂東太郎
玉霰鍛冶が飛火に交りけり 加藤曉台
狗子の目をしばたゝくあられかな 三宅嘯山
鶏の忘れては寄霰かな 中川乙由
月や霰其の夜の更けて川千鳥 上田無腸
呼かへす鮒売見えぬあられ哉 凡兆
呼びかへす鮒売見えぬあられ哉 野沢凡兆
枯菊をまたもてはやすあられかな 夏目成美
五六間飛や霰の網の魚 成田蒼虬
広小路に人ちらかつて玉霰 一茶 文政句帖
行雲の四五合こぼすあられ哉 荻人
降こんで肩をぬかするあられかな 桜井梅室
今や身を裂か霰の紙合羽 五明
昆布売のうしろにかゝる霰かな 成美 はら~傘
笹の葉にこゞとをはじく霰哉 蘆文
三拝に霰のはしる扇かな 林紅
傘は世にたづさはる霰かな 四睡
山の月霰こぼせし皃もせず 松窓乙二
山風や霰ふき込む馬の耳 吉分大魯
山風や霰ふき込馬の耳 露印
山里は人をあられの花見かな 其角
山里や雲さへ来れば霰降る 鈴木道彦
市人の板戸負ひてあられ哉 支考
市人の目の鞘はづすあられ哉 支考
歯朶売のさつと仕舞ふてあられ哉 配力
汐いりの門田やあれて霰ふる 長翠
取次へ霰をはじく長柄かな 其角
手みじかに消て見するや玉霰 舎羅
舟曳の腰にたばしる霰かな 桜井梅室
初雪の次手のよさにあられ哉 雪芝
初霰柏木風呂にあたる音 句空
小夜あられ起見んばかり降にけり 加舎白雄
松の葉やあられひとつのすはりやう 曲翠
松嶋や炉路の霰にひの木笠 牧童
消まいぞ霰の音がうそになる 松窓乙二
心よくあられやくゞる冬木立 魚日
新田に水風呂ふるゝあられ哉 昌房
吹れ来て珠簾にはさまる*霰哉 三宅嘯山
吹入て背筋をはしる霰かな 許六
吹落す木葉に包む霰哉 錦江女
水にうくものとは見えぬ霰かな 千代尼
水鳥の大崩れするあられかな 正秀
酔きげん*霰に傘をはづしけり 三宅嘯山
菅笠の旅にあふたる霰哉 林紅
青柳やあら怪しからぬゆふ霰 寥松
静さや枯藻にまろぶ玉霰 加藤曉台
雪あられ旅好人の夜も寝ず 桃隣
雪の朝うへにころぶや玉あられ 路健
雪や五合あられや五合壱升哉 凉菟
雪雲の引のき際をあられかな 浪化
銭湯へ客の傘遣る霰かな 道彦 続蔦本集
祖父の指嘗るかんろやはつ霰 野坡
足リになる物か師走の雪霰 凉菟
打綿にあられ降り込師走哉 木導
鯛を切手もとにはしるあられ哉 三浦樗良
大仏のやね閑なるあられかな 許六
中空に降きゆるかと夕あられ 加舎白雄
猪の怒り毛走るあられ哉 木導
町中のあられさはがしひとの顔 炭太祇
追ついて霰の跡のしぐれ哉 旦藁
土器を投てうけたるあられかな 蓮谷 温故集
冬のはやいそがしうなる霰かな 木因
冬の情月明らかにあられふる 加藤曉台
冬瓜のかくてもあられ降夜哉 句空
藤葺やあられにやどる不破庇 其角
曇り晴松は霰のもやうかな 望翠
鍋売や霰ながらも得かぶらず 木因
縄ふしに霰はさまる垣根かな 加藤曉台
匂ひなき冬木が原の夕あられ 加舎白雄
猫の毛の中にはさまるあられ哉 許六
年の尾にあらむつかしや雪霰 中川乙由
梅いくつ閼伽の折敷に玉霰 其角
梅持て霰にはしる三十日哉 万子
白丁の根に吹まくるあられ哉 支考
薄暮やあられ興ずる樽ひろい 加舎白雄
飛かへる岩のあられや窓の内 丈草
美濃帋の力聞ゆるあられかな 晩得 哲阿弥句藻
膝つきにかしこまり居る霰かな 史邦
武士の足で米とぐ霰かな 嵐雪 玄峰集
武士の臑に米磨グ霰かな 嵐雪
武蔵野や富士のあられのこけ所 其角
武蔵野や富士の霰のこけ所 其角
風雲に別れてはしるあられ哉 卓池
壁までが板であられの山居哉 炭太祇
別事のどこともなしや飛あられ りん女
縫ものゝ中につぶ~霰かな 紫貞女
縫立の帋衣をためす霰哉 露川
磨レて木賊に消ル霰かな 其角
門高く池にこけこむあられ哉 卓袋
夜神楽や襟にあられのはくほろり 尚白
夜嵐に中でかたまるあられ哉 露川
野の末の雲に音あるあられ哉 成田蒼虬
矢面に出女たてり玉あられ 白雪
落馬しておもしろげやむ霰哉 松窓乙二
冷めしの霰たばしる鷹野哉 黒柳召波
恋侘てあるにあられぬ霰哉 旦藁
蓮の実を袖に疑ふ霰哉 井原西鶴
浪人のあられたばしる紙子哉 李由
老武者と指やさゝれむ玉霰 去来
嶽山のしるしにおろす霰哉 路健
椶櫚の葉の霰に狂ふあらし哉 野童
籠目から霰ふるふやこと納め 梅人 栞集
莚帆にあられたばしる月夜かな 牡年
霰かとなじめば太し寒の雨 怒風
霰かとまたほどかれし笠やどり一 如行
霰ちれくゝり枕を負ふ子ども 小林一茶
霰にもまだ鳴る山のなる子かな 卓池
霰ふり嶺のまさ木の今やちる 寥松
霰ふる音にも世にも聾傘 長谷川馬光
霰ふる形は木曽路かむさし野か 木節
霰やは芥子に牛房は埋木の 杉風
霰降絵ばかり見てもあられふか 錦江女
霰入る序に耳の掃除かな 朱拙
霰迄降約束歟若菜の夜 松窓乙二
鵲の橋よりこぼす霰かな 示蜂

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:17 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷壁 の俳句

氷壁 の俳句

氷壁

火の山の一氷壁の美しき 児玉 菊比呂
三面の氷壁のなか水揉み合ふ 岡田日郎
春あけぼの凱歌の如き氷壁立つ 有働亨 汐路
雪壁につららの育つ夜の月 伊藤いと子
雪壁の炎ゆる夜空ぞ鴨帰る 堀口星眠
雪壁の迫りて山の深くなり 稲畑廣太郎
雪壁の風身を刺すや岳開き 熊田鹿石
雪壁の崩れんばかり日は宙に 岡田日郎
絶巓の夜明け氷壁エメラルド 福田蓼汀 秋風挽歌
啄木鳥や氷壁に日のにじみ落つ 中村 信一
悼むべき「氷壁」を読む炬燵かな 三和玲湖
氷壁が雲とたたかふ牧の空 大島民郎
氷壁が返すこだまはわれのもの 本田青棗
氷壁に黒燿石の洞の闇 中戸川朝人 残心
氷壁に垂る一線のザイルの朱 小倉英男
氷壁に石楠花凍る葉を垂らす 岡田日郎
氷壁に着くゴンドラの終の駅 山口誓子
氷壁に夕雲の来てゐたりけり 岡田日郎
氷壁に来て燦然と鳥乱る 中戸川朝人 残心
氷壁のおのがこだまの中に鴎 古館曹人
氷壁の奥は知らずも死後の国 河野南畦 湖の森
氷壁の下の教会ともりそむ 石原八束
氷壁の碧を引き寄せユーカラ織る 中山砂光子 『納沙布』
氷壁は女の誘ひかも知れず 石田よし宏
氷壁は息絶えわれの声けぶる 中本源二
氷壁へ氷壁の影刃のごとし 羽部洞然
氷壁を煽りて発てるブルージェイ 高澤良一 ぱらりとせ
氷壁を攀づくれなゐの命あり 大串章
木々芽吹く富士の大氷壁の前 羽部洞然
嶺の星黄を氷壁へしたたらす 太田嗟
聳えゐて氷壁に翳まぎれなし 鷲谷七菜子

氷壁 補遺

聳えゐて氷壁に翳まぎれなし 鷲谷七菜子 銃身
瞑れば雉子鳩背後には氷壁 佐藤鬼房
氷壁の空真蒼に日脚のぶ 飯田龍太
氷壁に着くゴンドラの終の駅 山口誓子
桃咲くや雪壁かすむ間の岳 水原秋櫻子 餘生
絶巓の夜明け氷壁エメラルド 福田蓼汀 秋風挽歌
生活の氷壁きびし爪を剥ぐ 富澤赤黄男
残雪の雪壁なせり渋峠 水原秋櫻子 殉教
コーヒーを飲み雪壁の中走る 細見綾子

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:12 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪礫 の俳句

雪礫 の俳句
雪礫 

ふり向けば大年増なり雪礫 一茶
また当る当てずつぽうや雪礫 下村 梅子
まぼろしの夫の背めがけ雪礫 中嶋秀子
わらんべのつぶら眼と来る雪つぶて 後藤房枝 『蕗童子』
影の無き雪礫のみ当りけり 昆ふさ子 『冬桜』
外れし雪礫積雪に喰ひ入れり 津田清子
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子
割れるたび薔薇の形の雪つぶて 櫂未知子
眼に見えて弱まる速度雪礫 右城暮石 上下
仰のけにこけて投るや雪礫 一茶
靴紐をむすぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
靴紐を結ぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
元旦の不眠工区へ雪礫 穴井太 土語
吾にも来る唖の子どちの雪つぶて 細川加賀
三絃のばちでうけたり雪礫 一茶
七日堂熱気沈めの雪つぶて 田崎鶏童
若菜つむぬきかけ袖や雪礫 北枝
若菜つむぬぎかけ袖や雪礫 立花北枝
手の熱くなるまで固め雪礫 深谷鬼一
手加減のなくなりて来し雪つぶて 城台 洋子
手足なき藁塚雪礫受けて立つ 柴田奈美
出稼より帰りし父に雪礫 太田土男 『西那須野』
初花の一枝にしまき雪つぶて 加藤耕子
女医未婚にて雪礫よくあたる 吉田吐志男
新しき雪に沈みて雪礫 村上三良
雪つぶてまた投げ合うて別れかな 阿部慧月
雪つぶて額にはぜる鼻眼鏡 二村典子
雪つぶて光にのめりこむひかり 落合水尾
雪つぶて受けし一つを憎しめり 原 石鼎
雪つぶて樹に当り爆ず吾子恋し 田川飛旅子 花文字
雪つぶて投げ入れにけり佐梨川 細見綾子
雪つぶて別れがたなく投げ合ひて 金児杜鵑花
雪礫あたりし枝の鶲かな 橋本鶏二 年輪
雪礫あたりし障子開きけり 清原拐童
雪礫あらぬ方よりよんで来し 諸橋 草人
雪礫うちし孤独のかへりけり 小林康治 玄霜
雪礫かはされ不意に恋心 小口洋子
雪礫しきりに塀を越えて来る 高浜年尾
雪礫とび交ふ幹の間かな 川原 程子
雪礫もて雪投げに誘ひけり 太田土男
雪礫よりも喚声飛びかはす 中島斌雄
雪礫われに投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫海に吸はれてゆくが見ゆ 松山足羽
雪礫湖に抛りて掌がさびし 猿橋統流子
雪礫吾に投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫光り掠めし恋の中 成田千空 地霊
雪礫松に当れば松にほふ 鈴木鷹夫 春の門
雪礫仁王立して受けとめし 下村梅子
雪礫仁王立ちして受けとめし 下村梅子
雪礫雪にぶちこむ独り旅 椎橋清翠
雪礫田鴫を追つて落ちにけり 長谷川かな女 雨 月
雪礫馬が喰んとしたりけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
雪礫飛んできて子の現れる 田村のり子
雪礫夜の奈落に妻子ねて 森 澄雄
袖がないから濡れずに投げる雪つぶて 仁平勝 花盗人
村の木へ離郷最後の雪礫 中田勘一 『雪礫』
仲直りしてぶつけ合ふ雪礫 片山由美子 水精
長持にわが雪つぶて雪祭 田中午次郎
罵るや戎を縛す雪礫 河東碧梧桐
白き尾を曳く強肩の雪礫 右城暮石 上下
白虹のごとくよぎりし雪礫 柴田果
薄氷の上にとゞまり雪つぶて 川崎展宏
飛のいて烏笑ふや雪礫 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
飛びくるは彼の心音雪礫 広川康子
父への憎しみ消えぬ父の忌雪つぶて 楠本憲吉
雄ごころの萎えては雪に雪つぶて 川崎展宏
幼子の遠くは飛ばぬ雪礫 仲佐方二
懶惰せめて子の雪礫でも浴びろ 伊丹三樹彦
抛らるる刹那の名なり雪礫 越野蒼穹

雪礫 補遺

懈惰せめて 子の雪礫でも 浴びろ 伊丹三樹彦
墓参後の背の雪礫 次代のもの 伊丹三樹彦
父の雪礫礫に芯ありて 鷹羽狩行
彼をぎっちょと知った その雪礫浴びた 伊丹三樹彦
白き尾を曳く強肩の雪礫 右城暮石 上下
罵るや戎を縛す雪礫 河東碧梧桐
啄木の追はれし村の雪つぶて 鷹羽狩行
雪礫打つ電柱を目の敵 上田五千石『琥珀』補遺
雪礫手に受け止めて投げ返す 右城暮石 句集外 昭和五十年
雪礫峡に裂かるる海の街 角川源義
雪礫うちし孤独のかへりけり 小林康治 玄霜
雪礫あへなく没し雪に帰す 阿波野青畝
雪国が的雪つぶて粉微塵 平畑静塔
雪つぶて投げ入れにけり佐梨川(小出紙漉を見る) 細見綾子
女教師に罪なき者の雪礫 上田五千石『田園』補遺
靴紐を結ぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
眼に見えて弱まる速度雪礫 右城暮石 上下
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子 礼拝
賀を交しをるにどこより雪つぶて 森澄雄
愛のごと脆くて春の雪礫 上田五千石『風景』補遺

雪礫 続補遺 

茶の花や越路の笠の雪礫 野坡
初雪や爪臙脂のつく雪礫 木導
若菜つむぬぎかけ袖や雪礫 北枝
軍兵を蒲団で待ん雪礫 其角

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:08 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪野 の俳句

雪野 の俳句

雪野 

あへぎゆく汽笛を刻に雪野人 宮坂静生 青胡桃
お日照るや雪野のくまの鵯のこゑ 金尾梅の門 古志の歌
きんいろのきつねの駆けた足跡か雪野に滲むちいさな闇は 加藤治郎
じゃみせんじょんから坊様(ぼさま)に蹤きて雪の原 高澤良一 燕音
その奥に水ひびきあふ雪野かな 野木藤子
たいくつな白樺佇てり雪の原 三輪初子
ながながと川一筋や雪の原 凡 兆
はてしなき雪野に鶴は朱を点ず 木下ふみ子
ひた歩く雪原恋の罠あらずや 仙田洋子
ぼほと日が落つ雪原の畦木ども 桜井博道 海上
またたかぬ一灯が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子
まぶしくて雪原ひかりの鹿ふやす 永田耕一郎 氷紋
みかへれば雪野のひかり榛にそふ 川島彷徨子 榛の木
みそさざい聴く雪原に橇止めて 小坂順子
やがてたつ鶴粛然と雪の野に 竹下陶子
われとわが顔の昃りを雪の原 佐野良太 樫
われに遇うため父は生まれし雪野 林美鈴
一つ家のともし火低し雪の原 雪 正岡子規
一斉に雪原をたつ日の出鶴 浅沼艸月
一村のみ雪原白紙委任状 河野 薫
一片の雪だにつけず雪野の木 小澤實
一望の雪野に畦の井の字かな 二瓶洋子
影一つだになくて雪原睡くなる 野澤節子 遠い橋
黄塵の野面の隅に雪の富士 水原秋桜子
黄鷹の雪原の果まで飛翔 長谷川かな女 花寂び
何処やらにせゝらぎの音雪の原 西山泊雲 泊雲句集
花嫁が雪野まぶしき駅に下車 阿部みどり女
画竜点晴どころではなく雪野かな 櫂未知子 蒙古斑
鴨飛んで雪原に大き影落す 林 翔
眼とひたいで出逢う雪野に光り合い 岩間愛子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
汽笛しみゆく雪原の果に出そむ星 シヤツと雑草 栗林一石路
汽笛ひいひいと雪の原暮るゝ工場あり シヤツと雑草 栗林一石路
騎初や鞭加へ越す雪野原 広江八重桜
久々に照る雪原のあの木この木 佐野良太
玉川の一筋光る雪野かな 内藤鳴雪
禽のみに目聡く斑雪野に住めり 堀口星眠
金売が小荷駄行くなり雪の原 几董
群れ鴨を載せ雪原のかゆからむ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
形代となるまで伏せむ雪の原 柿本多映
穴と見し所家なり雪の原 松瀬青々
月光の雪原を這ふはぐれ雲 岡田日郎
月雪の野はたしかなり大根時 惟然
元日の日輪雪の野をわたる 宮崎青岬
枯葉揉まるる音澄んで雪原の月 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
後続を待てり雪野の平にて 津田清子
行人に雪野の起伏晴れにけり 金尾梅の門 古志の歌
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
降る雪の野の深井戸の谺かな 高柳重信
根雪原影の嶽おく月明り 河野南畦 湖の森
採氷や唯雪原の網走湖 唐笠何蝶
山室のひとつ灯蒼む根雪原 河野南畦 湖の森
子が知れる雪野の果の屠殺場 沢木欣一
寺一つむつくりとして雪の原 雪 正岡子規
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
耳聾ひて雪原と青空にあり 千代田葛彦 旅人木
若さ遣りな場なし雪原の道つづく 右城暮石
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
手の平を落とし雪野に転びたる 大石雄鬼
朱雀門紛れもあらず雪の原 坪井澄郎
受難節の日矢むらさきに雪の原 鷲谷七菜子
初鴉雪原低くとびつづけ 小野池水
傷あらぬ雪原に顔埋めたし 能村研三 騎士
硝子戸に雪原あふる卒業歌 有働亨 汐路
唇耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
吹かるるは何の蔓もの雪の原 高澤良一 随笑
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子
清算のごとく雪野の石の家 三谷昭 獣身
声出さば他人の声なり雪の原 小泉八重子
青し青し若菜は青し雪の原 来山
雪の原すべりゆくごと大烏 稲葉道子
雪の原とぶ夕雲の力なし 橋本鶏二 年輪
雪の原なる探梅の五六人 長谷川櫂 天球
雪の原ぼつこりとなる木陰かな 美濃-此筋 俳諧撰集「有磯海」
雪の原穴の見ゆるは川ならめ 寺田寅彦
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原道は自然と曲りけり 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雪の原猟銃音がわれを撃つ 遷子
雪の野にところところの藁屋哉 雪 正岡子規
雪の野にもろびとこぞりて雪汚す 今泉康弘
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子 紅日
雪の野に拾ふ薄墨羽毛なり 古賀まり子 緑の野以後
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古館曹人
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の上に見えつつ富士ヶ嶺はくろずむ雲とともに黒ずむ 宮原勉
雪の野の兎華麗な罠に陥つ 能村研三 騎士
雪の野の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の野の彼方を行くは知る人か 高濱年尾 年尾句集
雪の野や畝なす茶垣遠黝し 杉山岳陽 晩婚
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子 紅日
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を最上の幅で押し通す 津田清子 二人称
雪の野を方向づける川流れ 津田清子 二人称
雪眼鏡雪原に日も牛も碧き 橋本多佳子
雪原とならばまた来む芒原 橋本美代子
雪原となりし筑紫野久女の忌 鈴木厚子
雪原にあらかた埋もれ梅林 長谷川櫂 古志
雪原においてきぼりのごと一戸 高澤良一 随笑
雪原におらぶ言の葉なさぬ語を 川口重美
雪原につんと彳ちたる萱いっぽん 高澤良一 随笑
雪原にまつたき夕日垂れ来たる 石橋辰之助 山暦
雪原にわが機影投げ初飛行 室賀杜桂
雪原にわが誕生の紅一すじ 魚沼泉
雪原に塩湖の広さおく機窓 山田弘子 こぶし坂
雪原に汽笛の沈む成木責 石田波郷
雪原に月光ゆらぐこともなし 岡田日郎
雪原に月光充ちて無きごとし 岡田日郎
雪原に建てて見捨てて己が墓 中島斌雄
雪原に犬放ち炉火熾んなり 河野南畦 『黒い夏』
雪原に呼気のみ太しゆまりして 川口重美
雪原に杭打つ土の匂ふまで 加藤憲曠
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に行き暮れいつか星の中 岡田日郎
雪原に子のこゑのある淋しさよ 石寒太 あるき神
雪原に十勝の月をあげにけり 星野松路
雪原に小さき礼拝堂(チャペル)暮れ残る 仙田洋子 雲は王冠
雪原に小さき礼拝堂暮れ残る 仙田洋子
雪原に沼あり水晶水湛ふ 岡田日郎
雪原に雪原の道ただ岐る 八木林之助
雪原に雪降り月光の跡癒やす 岡田日郎
雪原に川あらはれて重きかな 桜井博道 海上
雪原に川の全長沈みけり 鈴木 勉
雪原に太のどのびて鶏鳴す 北原志満子
雪原に丹頂の婚かがやけり 小柳ひろ子
雪原に天つ日暗きまで照りぬ 岡田日郎
雪原に土よりの杭うらがなし 成田千空 地霊
雪原に灯して牧舎年を守る 金箱戈止夫
雪原に到り双手を挙げて会ふ 成田千空 地霊
雪原に踏み入るなんと淋しき世 熊谷静石
雪原に道あるらしや人遠し 高木晴子
雪原に屯田兵舎と碑が一本 瀬野美和子 『毛馬堤』
雪原に白顕ち晒す布の丈 野沢節子
雪原に風吹き夕日消しにけり 岡田日郎
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚
雪原に兵叱る声きびしかり 片山桃史 北方兵團
雪原に片手袋の指忘れ 対馬康子 吾亦紅
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に北斗七ツの六ッ昇る 岡田日郎
雪原に野哭といふ語口もるる 石寒太 炎環
雪原に立方体のホテルかな 岩崎照子
雪原に佇つ初陣のこころあり 中原道夫
雪原に橇現る朝日躍り出で 中山砂光子 『納沙布』
雪原に鴉の掟翔けては降り 齋藤愼爾
雪原のいづこ月光ひらりと舞ふ 岡田日郎
雪原のおのが影へと鷲下り来 山口草堂
雪原のかなた雪嶺絹の道 片山由美子 風待月
雪原のしづかさ余呉の湖を嵌め 永井博文
雪原のなかに川ある墳墓の地 佐川広治
雪原の一樹かがやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹高しと日はのぼる 石田波郷
雪原の果て見て歩くばかりなり 永田耕一郎 氷紋
雪原の起伏失せつゝ雪深む 大橋敦子 匂 玉
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の月枯蔓に大いなる 西本一都
雪原の月光かたまる一巨木 岡田日郎
雪原の見えぬところに翳生ず 宗田安正
雪原の高き一樹を恃みとす 小澤克己
雪原の黒きところが能の村 佐川広治
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子
雪原の子に太陽がつきまとう 長嶋石城
雪原の樹間に光る湯の湖かな 若林幸枝
雪原の深創ゑぐり天塩川 山崎秋穂
雪原の人か一点動くを待つ 有働亨 汐路
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子
雪原の水漬く一線菜現れぬ 原田種茅 径
雪原の青さ身に沁む朝の楽 堀口星眠 火山灰の道
雪原の赤きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雪舐め老犬牛を追ふ 岡田日郎
雪原の泉へけものみち寄れり 中戸川朝人 残心
雪原の中に春立つ産屋はも 依田明倫
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の兎の足跡藪目指す 斉藤志津子
雪原の突起もつとも白き藁塚 河合凱夫
雪原の日矢に盲ひし達磨売り 木内彰志
雪原の白光月光を以つて消す 岡田日郎
雪原の風遠し樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の風遠し樹氷晶々と 内藤吐天
雪原の風遠樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の焚火に月の上りけり 岩田由美
雪原の平らに書かれし遺書ありき 寺田京子
雪原の明より暗へ三十三才 木附沢麦青
雪原の木の影あはし影を踏む 仙田洋子 橋のあなたに
雪原の夜風ぶつかれ街に酔ふ 石橋辰之助
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藍の彼方の吾子七夜 堀口星眠 営巣期
雪原の藁塚として寄り添へる 樋笠文
雪原の靄に日が溶け二月尽 相馬遷子
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原へつながつてゐる長廊下 西山 睦
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や肩から上の人往き来 嶋田摩耶子
雪原や小屋に刃物を閉じ込めて 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
雪原や抜きさしの歩の女の息 猪俣千代子 堆 朱
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪原をわたる日ざしに馬放つ 木村凍邨
雪原を悪童のごと漕ぎ進む 松本明子
雪原を圧してオーロラ出現す 坊城 中子
雪原を一列に来る下校の児 中園真理子
雪原を琴唄まろびゆく夕べ 文挟夫佐恵 雨 月
雪原を月わたりゆく翁面 斎藤梅子
雪原を跳びては羽摶ち鶴の舞 伊東宏晃
雪原を跳び跳ぶ兎一未来 中島斌雄
雪原を分つ落葉松襖かな 古賀まり子 緑の野以後
雪原を北狐また銀狐 天本美沙絵
雪原を来てやまどりの尾をひらふ 那須乙郎
雪原行くきのふの吾を置き去りに 西井さち子
雪野へと続く個室に父は臥す 櫂 未知子
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野ゆく誰もひとりの手を垂れて 阿部誠文
雪野一個所肥壷にふくらめる 栗生純夫 科野路
雪野遠し墓に遇ふさへ親しくて 成瀬桜桃子 風色
雪野原涯に昼餉のうすみどり 平井久美子
雪野原真一文字に昏れにけり 工藤菁生
雪野行き吾には吾の放浪記 大橋敦子 匂 玉
雪野行く汽車にとびつく一戸の灯 笠井操 『雪の紋』
雪野照り莎の金ンの紛れたる 成田千空 地霊
雪野暮るるわが脳濁るはやさにて 高野ムツオ 陽炎の家
雪野来て雪野の果に灯をともす 三谷昭 獣身
雪野来て買ひたきものに懸想文 金箱戈止夫
雪野来て半鐘記号の赤連珠 平井さち子 紅き栞
雪野鴉雨誘ふ声しぼるなり 金尾梅の門 古志の歌
千の鬼出て雪原に跡もなし 加室鳴
千年の大寺一つ雪野かな 雪 正岡子規
川鳴れど雪原暮れて道失ふ 岡田日郎
泉まで雪原踏まれ往来あり 岡田日郎
足跡の盡きし戸口や雪の原 雪 正岡子規
足跡の盡きし小家や雪の原 雪 正岡子規
体重をかけ雪原を横切らねば 嶋田摩耶子
丹頂の舞ふ雪原の輝きに 村上唯志
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
朝日さす雪原金沙銀沙照り 鈴木貞雄
長々と川一すじや雪の原 凡兆 選集古今句集
鳥の数いのちの数の雪野原 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
湯をかけて墓現はるる雪の原 藺草慶子
燈台の燈が雪原へ伸び切れず 河野南畦 『硝子の船』
踏みわたる雪野日たけつ鶏遠き 金尾梅の門 古志の歌
逃げ水が逃ぐ雪原の高速路 茨木和生 木の國
二タ杉より離々の人家の雪野かな 野村喜舟 小石川
馬となるべき魂あをく雪原に 正木ゆう子
柏の葉生きて雪野を駈けつづく 堀口星眠 営巣期
白山に引き上げられし雪の原 大石悦子 百花
白日の雪原を行く浚はれゆく 成田千空 地霊
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野に月あり青き魔がひそみ 堀口星眠 営巣期
斑雪野に古傷かばふ身を斜め 稲垣きくの 牡 丹
斑雪野に黒牛といふ鬱を置く 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
斑雪野に波打ち寄する厚田かな 古川英子
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治
斑雪野やいきなり尽きて陸奥の海 中川禮子
斑雪野や産着干さるる牧夫寮 丸山美奈子
斑雪野や日差し静かにゆき渡り 安田敏子
斑雪野を楽人の群れ通り過ぐ 川崎展宏
班雪野を詩嚢繕ひより戻る 中原道夫
百歳の彼方は雪の野づらかな 成田千空
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
風紋のしるき雪野を踏み戻る 辻 桃子
分水嶺汽車を雪野へ放ちけり 羽部洞然
噴煙の影雪原を蒼くせり 前山松花
文藝はいまだ雪原に佇つ柱 中原道夫
墓前なり月山雪の野に泛ぶ 篠田悌二郎
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
没日の後雪原海の色をなす 有働 亨
本然の日と雪の原ここ母郷 成田千空 地霊
眠りも祈り雪原は雪重ね 斎藤愼爾 夏への扉
夜の嶽を灯が登りゆく根雪原 河野南畦 湖の森
夜の嶽を燈が登りゆく根雪原(立山連峰) 河野南畦 『湖の森』
厄人形雪野へ送る肩車 佐々木とく子 『土恋』
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕空や雪野に黒き楊柳 永井龍男
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
葉のついてゐるのは柏雪の原 高木晴子
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本 眸
林檎の芯抛る雪原の大反射 内藤吐天
林檎置く車窓雪野は果もなく 永井龍男
鷲下りて雪原の年あらたなり 山口草堂
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
橇失せぬ雪原と星あふところ 平野 露子
翔けゆきし影かたちなき雪の原 的野雄
鴉二羽寄りつ離れつ雪の原 辻田菊子

雪野 補遺

うつむくときおのが息の香雪野にて 橋本多佳子
けぶり立つ稲架木雪野の墓標とす 鷲谷七菜子 銃身
しかも狙う鳶か 雪原無一物 伊丹三樹彦
たまゆらの日のたちのぼる雪の原 上田五千石『琥珀』補遺
と見こう見しても 雪野の 飢鴉 伊丹三樹彦
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
絢爛たる雪原を見て又ねむる 岸田稚魚 雁渡し
一つ家のともし火低し雪の原 正岡子規 雪
一樹の影なき雪原へ入り来り 鷹羽狩行
餌を漁るは個々 雪原の群鴉 伊丹三樹彦
何すればこの雪原に跡のこる 右城暮石 天水
懐炉の火身の一点に雪野行く 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
角キラリ雪原の鹿既に在らず 中村草田男
関ケ原よりの雪野に百足虫山 山口誓子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車見る子せちにいとほし雪の原 富安風生
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
穴あいてとけてゐるなり雪の原 三橋敏雄
月が照り雪原遠き駅ともる 橋本多佳子
月の出を夜嵐となる雪の原 飯田蛇笏 家郷の霧
見張る首 雄とし 雪野の番い雉子 伊丹三樹彦
三叉に白き花あり雪の原 山口青邨
思ひ出のごと斑雪野に日当れる 清崎敏郎
寺一つむつくりとして雪の原 正岡子規 雪
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
車窓に映るわが像雪の野を走る 松崎鉄之介
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
水あればある夕焼や雪の原 中村汀女
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子 雪嶺
生きものの白さで飛んで 雪野の鷺 伊丹三樹彦
青鷺のこゑ倶会々々と斑雪野に 山田みづえ まるめろ
切れ切れの雪野の虹をつぎあはす 橋本多佳子
雪の原の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の原ふみ大滝を見んとする 山口青邨
雪の原一樹の蔭に尿かな 日野草城
雪の原何処まで見ゆる月の雪舟 尾崎放哉 大学時代
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原中仙道の家灯る 阿波野青畝
雪の原猟銃音がわれを撃つ 相馬遷子 山河
雪の野に 尖るを 棒杭とも墓とも 伊丹三樹彦
雪の野にところところの藁屋哉 正岡子規 雪
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子
雪の野に最も白き白亜館 山口誓子
雪の野に出てうるほへる昼の汽車 廣瀬直人
雪の野に馬を使ひて耕作す 渡邊白泉
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古舘曹人 砂の音
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の一隅照らす夜の娶り 有馬朗人 知命
雪の野へ吾子がゆあぶる音ゆけり 渡邊白泉
雪の野をうがちて深き井戸をくむ 有馬朗人 母国拾遺
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を多彩のコンテナ貨車走る 山口誓子
雪原に灰撒くは雪を融かすなり 加藤秋邨
雪原に形あるもの牛の柵 山口誓子
雪原に午後のひかりのほろびゆく 飯田龍太
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に黒一点を加へ佇つ 林翔
雪原に黒目がちなる異界の子 佐藤鬼房
雪原に榛の木のみの立つ夕日(新潟県浦佐、行方秋峰さん居六句) 細見綾子
雪原に生きて女が灯に歩く 赤尾兜子 蛇
雪原に遭ひたるひとを燈に照らす 橋本多佳子
雪原に足跡犬の停まるまで 山口誓子
雪原に踏切ありて踏み越ゆる 橋本多佳子
雪原に日射せり糞まる力出づ 岸田稚魚 雁渡し
雪原に日射せり糞る力出づ 岸田稚魚 負け犬
雪原に白鳥雪くれば更に 金子兜太
雪原に物蔭ありて真黒し 佐藤鬼房
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚 筍流し
雪原に兵の壮夫の発句生れよ 石橋秀野
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に没る三日月を木星追ひ 橋本多佳子
雪原に橇駆り吾子と昏れてゐる 橋本多佳子
雪原に雉子出あるく伊吹山 岡井省二 明野
雪原に鴉喪章の羽根納め 鈴木真砂女 夏帯
雪原のどの家にも月芯をなす 飯田龍太
雪原のひとりの尿意清浄と 飯田龍太
雪原のわれ等や鷹の眼下にて 橋本多佳子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子 山国
雪原の雨ぬくし木立一色に 大野林火 冬青集 雨夜抄
雪原の家山寄りにかたまれり 右城暮石 虻峠
雪原の萱離々たりやスキー行 山口誓子
雪原の起伏に翳の煙色 右城暮石 句集外 昭和五十五年
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の昏るるに燈なき橇にゐる 橋本多佳子
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子 山国
雪原の銃身徐々に決りゆく 鷲谷七菜子 銃身
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子 銃身
雪原の轍白さを失はず 右城暮石 句集外 昭和四十一年
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の白さ 生きものの鷺の白さ 伊丹三樹彦
雪原の夜気をしりへに橇の燈 飯田蛇笏 家郷の霧
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藁塚ぐるり雪陥ち込む 山口誓子
雪原の赭きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雉子となりいま朝日さす 岡井省二 前後
雪原の靄に日が溶け二月盡 相馬遷子 雪嶺
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原やアイヌの国のシャモ部落 石塚友二 磊[カイ]集
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や千曲が背波尖らして 橋本多佳子
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亜郎 定本亜浪句集
雪原より低く絶対安静位 岸田稚魚 雁渡し
雪原よ降り疲れたる雪遊ぶ 岸田稚魚 雁渡し
雪原をゆくとまくろき幌の橇 橋本多佳子
雪原をゆく銃口を怠らず 石田勝彦 百千
雪原を堰きて小川の水やはらか 右城暮石 句集外 昭和二十八年
雪原を倖せとみる日輪のかがやき 赤尾兜子 蛇
雪原を山まで誰かのしのし行け 西東三鬼
雪原を焚きけぶらして鉄路守る 橋本多佳子
雪原を無疵のうちに見に来たる 右城暮石 散歩圏
雪野のかぎり行きたし呼びかへされずに 橋本多佳子
雪野の桔梗とり来たばねる荒むしろ 松崎鉄之介
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野より梅野につゞく遠い雲 高屋窓秋
雪野暮れすぐ木星より光来る 橋本多佳子
雪野鴉己れ枉げねば棲みつけず 上田五千石『田園』補遺
千年の大寺一つ雪野かな 正岡子規 雪
疎林立つところもはだら雪の原 阿波野青畝
鼠駆け出しが雪原ひろがれり 山口誓子
足跡の盡きし戸口や雪の原 正岡子規 雪
足跡の盡きし小家や雪の原 正岡子規 雪
電線や雪野はるばる来て吾を過ぐ 橋本多佳子
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野にすこし暴れし蘇民祭 岡井省二 鹿野
斑雪野の月夜を水の流れくる 飯田龍太
斑雪野の端清潔な厠置き 岡本眸
斑雪野の夕日湯の宿まで蹤くか 大野林火 方円集 昭和五十一年
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治 四季貧窮
斑雪野や怯啼く鷺の松くろし 角川源義
斑雪野や女男の塞神の肩を擁く 角川源義
斑雪野を集めて高め富士といふ 上田五千石『琥珀』補遺
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
仏菓捧げゆくに 尾を立て雪野の犬 伊丹三樹彦
圃も湖もただに雪原老スワン 角川源義
歩かねばならぬ雪野を人歩く 山口誓子
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
棒が立って 鴉がとまる ただ雪野 伊丹三樹彦
釦一個が どこかで失せて 雪野の旅 伊丹三樹彦
目から殺(や)られる男 雪野の陽さえも敵 伊丹三樹彦
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本眸
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
鴉には飽いてる 雪野へ坐職の眼 伊丹三樹彦

雪野 続補遺

なが~と川一筋や雪の原 凡兆
雁啼くや明星しづむ雪の原 常世田長翠
月雪の野はたしか也大根時 惟然
七種のみくさは摘し雪野かな 四睡
青し~わか菜は青し雪の原 小西来山
雪の原ほつこりとなる木かげ哉 此筋
雪の野に雪をさゝげし荊棘哉 加舎白雄
川筋のたゞしくなりし雪野哉 乙訓
日の落る方が西なり雪の原 井上士朗
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:04 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

地吹雪 の俳句

地吹雪 の俳句

地吹雪

あす晴るるための地吹雪アイヌ村(コタン) 宮坂静生
こぼれつつ地吹雪橋を渡りゆく 鈴木鷹夫 千年
さらさらと地吹雪あそぶ殉難碑 伊藤霜楓
スキー迅し従ひ走る雪煙 大家湖汀
やみくもに駈け出す地吹雪番外地 平井さち子 紅き栞
伊吹嶺に雪煙見ゆる薬草屋 後藤和朗
一瞬の地吹雪に地の動きけり 瀬野美和子 『毛馬堤』
海へ還る地吹雪晩年泣かぬ母 齋藤愼爾
革命いつのこと地吹雪に昏れる村 木附沢麦青
岩手山雪けむり立つ二日かな 沼澤 石次
汽車の厚き硝子雪浪かがやかす 西村公鳳
畦青む地吹雪除けも外されて 窪田竹舟
月光に落葉松羽摶つ雪けむり 堀口星眠 営巣期
月明や乗鞍岳に雪けむり 石橋辰之助 山暦
最北のバス地吹雪に呑まれゆく 小笠原弘順
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
初夢のなかの高嶺の雪煙 飯田龍太
人死にし山月明の雪けむり 高須茂
吹雪荒れ地の雪けむりつぎて立つ 石橋辰之助 山暦
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂
雪けむり日輪の渦いく重にも 千代田葛彦 旅人木
雪けむり立つ夜の星座鋭く正し 石橋辰之助 山暦
雪けむり立てど北斗はかゝはらず 石橋辰之助 山暦
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
雪煙岳に孤高のこゝろあり 岡田貞峰
雪煙天に吐き出す前穂高 石川英子
雪落ちて空をながるる雪けむり 辻桃子
雪浪に濱はせきれい鳴にけり 松瀬青々
雪浪を鶫喜び跳びにけり 茨木和生 往馬
地吹雪がかくす札幌時計台 魚野満佐流
地吹雪がしんと集まる壜の底 大下真利子
地吹雪が消して見知らぬ街となる 高橋笛美
地吹雪が北の斜面を責めやまず 能村研三 騎士
地吹雪と行くほのぼのと馬の臀 橘川まもる
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子(1931-)
地吹雪にこの身が今に飛ばされん 三好潤子
地吹雪にひとの消えゆく墓の裏 渡辺直信
地吹雪にゆさぶられをり夜の帷 伊藤彩雪
地吹雪に一本の杖護身かな 佐藤母杖 『一管の笛』
地吹雪に何さらはれし墓傾ぐ 中山砂光子 『納沙布』
地吹雪に帰心引止められてをり 山田弘子 螢川
地吹雪に捲かれてすがる燈台碑 伊東宏晃
地吹雪に杭とならんか立ちすくみ 笠井操 『雪の紋』
地吹雪に根尾の老桜巌のごと 近藤一鴻
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消え現れて先ゆく蓑 福田甲子雄
地吹雪に石にならむと身を丸め 小林道子 『下萌』
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
地吹雪に夕日とろりと翼伸ばす 昆ふさ子 『冬桜』
地吹雪のかの糸櫻見舞ふべし 黒田杏子 花下草上
地吹雪のなか身ひとつの寧きかな 澁谷道
地吹雪のやがて遠のく三番叟 黒田杏子 一木一草
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪のやめば山星近かりき 志津天児
地吹雪の渦うまれつつ大沼暮るる 小林 碧郎
地吹雪の渦巻く芯に村一つ 相馬沙緻
地吹雪の果に池あり紅鱒あり 西東三鬼
地吹雪の顔もて集ふ仲間かな 成田千空
地吹雪の駆け降りて来る段々田 森田かずを
地吹雪の空あをあをとありにけり 杉山霄子
地吹雪の行方も知らず北斗の座 宮下師水
地吹雪の高流れして伊賀暗し 橋本鶏二
地吹雪の塞ぐ一路の風の岬 円谷よし子
地吹雪の上は青空草城忌 松倉ゆずる
地吹雪の先には誇り高き海 櫂未知子 貴族
地吹雪の千石平星咲き出す 伊藤いと子
地吹雪の道あらはれて来るを待つ 永田耕一郎 方途
地吹雪の彼方の桜吹雪かな 遠山 陽子
地吹雪の沸騰湖の日をかくす 堀口星眠 営巣期
地吹雪の夜の涯より橇の鈴 佐藤国夫
地吹雪の野を抜けきって夕日あり 奥田智久
地吹雪の恍惚として寒立馬 鈴木石夫
地吹雪は遠く花屋に花満ちて 泉風信子
地吹雪やさきのさきまで姥捨野 小原啄葉
地吹雪やひととへだつる村また町 八幡城太郎
地吹雪や一切黝き夜明前 加藤知世子 花 季
地吹雪や遠野に増ゆる天の音 斉藤夏風
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房(1919-2002)
地吹雪や沖の一縷を目にとどめ 金箱戈止夫
地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子
地吹雪や脚のみじかき陸奥の馬 畑中とほる
地吹雪や牛飼住める茅のはて 堀口星眠 営巣期
地吹雪や曲りて並ぶ大氷柱 長谷川櫂 古志
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄
地吹雪や絶版の書が店先に 辻桃子
地吹雪や叩き鳴らして津軽三味 中岡毅雄
地吹雪や柱のきしむおしら神 小原啄葉
地吹雪や燈台守の厚眼鏡 加藤憲曠
地吹雪や胴擦りあへる寒立馬 小原啄葉
地吹雪より解かれ羽もつごとかろし 笠井操 『雪の紋』
地吹雪を越後路列車突き進む 杉谷悦子
地吹雪を背に青年の大滑降 本多トミ
地吹雪を木曽の尻振列車かな 後藤綾子
地吹雪過ぎよろけつつ影立ちあがる 笠井操 『雪の紋』
地吹雪聞いている何もしない日 伊藤角子
猪苗代湖見えずなりつつ田のうえは地主無用の雪煙立つ 田中佳宏
田居の灯に一夜地吹雪はばたける 佐藤国夫
田居の灯に地吹雪一夜はばたける 佐藤 国夫
南部富士地吹雪寄する中に聳つ 高橋青湖
日の射して地吹雪の奥輝けり 柏原眠雨
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
燃ゆる日や雪天翔くる雪煙 相馬遷子
波しぶき雪煙となり崖のぼる 中戸川朝人 尋声
病枕地吹雪ときに火の音して 寺田京子
碧天や雪煙たつ弥生富士 水原秋桜子
北に生き地吹雪という婆娑羅かな 山下真理子
猛りつついよいよ潔し地吹雪は 澁谷道
夕陽いま射さんとするや地吹雪燃ゆ 佐藤昌市
熄む気配なし海鳴も地吹雪も 中出静女
藪の穂やいまはたしづる雪けむり 西島麦南 人音

地吹雪 補遺

けぶりたつ雪浪に生え木菟の耳 佐藤鬼房
ゴンドラのはるか下方の雪煙 右城暮石 句集外 昭和四十四年
つまづくも女身地吹雪眩み過ぐ 鷲谷七菜子 銃身
一塊の地吹雪飛べる硫気谷 上田五千石 森林
一嶽のあげてゐたるは雪煙 石田勝彦 秋興以後
枯葦は素直に伏して地吹雪す 草間時彦 中年
魂極るいのち耀ふ雪煙 佐藤鬼房
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
真向に地吹雪終生天邪鬼 上田五千石『田園』補遺
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂 捲かるる鴎
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙と瀬鳴りかたみに子の時刻 佐藤鬼房
雪煙の残響の青海原よ 佐藤鬼房
雪煙の夜明りに顕つわが臼女 佐藤鬼房
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
前傾強めよと 地吹雪 真っ向から 伊丹三樹彦
足跡を消す地吹雪を怖れつつ 稲畑汀子
地吹雪 真っ向 孤影を思い知れよとか 伊丹三樹彦
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に天狼呆け失せにけり 阿波野青畝
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪の奥より旅のひかりかな 高屋窓秋
地吹雪の棚田もつとも鍵刻の相 佐藤鬼房
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄 狩眼
地吹雪や倒るる馬は眠る馬 斎藤玄 狩眼
地吹雪を見ての 地酒の燗加減 伊丹三樹彦
竹幹の弓勢なりし雪煙 石田勝彦 百千
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
柏ばかり枯葉へ低地帯地吹雪く 古沢太穂 火雲
磐に立つわれを消したる雪煙 野見山朱鳥 曼珠沙華
爺・鹿島・五竜にあがる雪煙 松崎鉄之介
哭く鴉妙高にたつ雪煙 角川源義

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 09:00 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

凍る の俳句

凍る の俳句

凍る

例句を挙げる。

あはれ民凍てしいひさへ掌に受くる 長谷川素逝 砲車
あめつちのひかりかなしく蝶凍てぬ 石原舟月 山鵲
あめつちの凍て全身に旭さしいづ 飯田蛇笏 雪峡
あるきつつ靴の底ひに足は凍つ 長谷川素逝 砲車
あをあをと裏質鋪の空の凍て 飯田蛇笏 雪峡
いちまいは蝶の羽なり氷るなり 辻允子
いつもかすかな鳥のかたちをして氷る 対馬康子 純情
いとしみて生きし日凍つる夜の口笛 千代田葛彦 旅人木
いよゝ凍てし土くれに日の流れ来し 雑草 長谷川零餘子
いるまんの訴人憎まむ心凍て 下村ひろし 西陲集
うけとりし手もこそ凍つれ下足札 久保田万太郎 流寓抄
うちてしやまむうちてしやまむ心凍つ 久保田万太郎 草の丈
うつくしく油の氷る灯かな 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
うつろひきて微少となりて夜々凍む砂 宮津昭彦
うらの凍て踏みくる朝の声まぼし 金尾梅の門 古志の歌
おしめの一枚がふき落ちて きつい凍てようだ 吉岡禅寺洞
おそろしき人の往来に灯の凍てず 大場白水郎 散木集
かくまでも鶴啼くものか凍つる夜は 猿渡青雨
かさゝぎ飛び雉子たち凍つる日なりけり 久保田万太郎 草の丈
かたぶきし水弥氷る盥かな 高井几董
かね氷る山白妙の月夜哉 一茶
かんじきの紐が凍てつきほどけざる 高橋向山
けさ妻をあはれとおもふもの凍てて 田村了咲
こころ忘れ来しが白鳥千羽凍つ 岸田稚魚 筍流し
ことごとく天の昏さに河凍る 対馬康子 吾亦紅
この凍てを百夜車を唄はゞや 野村喜舟 小石川
この庵を七年凍てて守りしなり 村松紅花
この道もやがて凍てんと歩きゆく 星野立子
こぼれたる鱈は足蹴にされ凍てぬ 小池次陶
こぼれ温泉の凍てしに転けし温泉汲女よ 木村蕪城 寒泉
こぼれ温泉の凍てたるを踏み大旦 木村蕪城 寒泉
こみあぐるものあり凍てしものの影 阿部みどり女
これちょうだい まっくろ黒助凍てなまこ 高澤良一 寒暑
さばき凍て判事が首をまげる情 飯田蛇笏 雪峡
したたかに凍る一夜を百夜かな 齋藤玄 『無畔』
しづけさに凍る御霊のうす明り(二月八日畏友安西均詩人逝く) 石原八束 『仮幻』
すがる手の身重の妻に凍る道 有働亨 汐路
すぐ氷る木賊の前のうすき水 魚目
たどりつきしもののごとくに氷る瀧 大木あまり 火球
ちちははのすべて亡き世や凍て晴るる 石原八束
ちらと灯が凍るルンゼに見えしといふ 岡田日郎
どこか水落ちてゐる音滝氷る 石井とし夫
どことなくここらの山路凍ててをり 上村占魚 球磨
なお翔ぶは凍てぬため愛告げんため 折笠美秋 君なら蝶に
なきがらや油灯氷る借り錦 松瀬青々
にほどりの凍てよ凍てよと嶽の星 栗生純夫 科野路
ぬば玉の地は地につゞき鐘氷る 松瀬青々
ねこざめの放つてありぬ凍てにけり 鈴木しげを
はこびゆく火を吹く風も凍て急ぐ 金尾梅の門 古志の歌
はしためにふきんかなしく凍て反りて 富安風生
ばら色のままに富士凍て草城忌 西東三鬼
ひとひらの凍てつく闇を子が炎やす 松澤昭 神立
ひとり凍てひとりゆるめり墓地の道 細見綾子 黄 炎
ひねもすの風をさまりて星凍つる 伊藤とし子
ひゞくものたゞ凍てきりし靴音のみ 河合凱夫 藤の実
ふりむけば角のかたちに鶴凍つ 河野多希女
ふり仰ぐ鬼に設楽の星凍つる 佐野美智
ぶら下るごと月かゝり道凍てぬ 星野立子
へーイ・へーイと男女が別れ凍る星座 赤城さかえ
また沼の氷るか月の孤なりけり 石井とし夫
まつげすぐ凍てて滑降あきらめる 伊藤とほる
まろみなほ朝月凍ててそも偸安 香西照雄 対話
みだれたるわが銀の髪さへも淡く映して野の水氷る 山下陸奥
みちのくの星むらさきに凍てにけり 岸風三楼 往来
みちのくや凍ての割目が死の戸口 佐藤鬼房 「何處へ」以降
みちよりはすこしは低く凍てし沼 田村了咲
もくれむの凍む枝に雨のぬくとからむ 高澤良一 ももすずめ
ものすべて凍る地上へ羽毛落つ 右城暮石 声と声
ものゝ凍て解けやまずして雪を見し 雑草 長谷川零餘子
やうやくに凍ての身につく夜陰かな 飯田蛇笏 春蘭
ゆく馬の背に月凍る年の暮 金尾梅の門 古志の歌
ゆつくりと来て老鶴の凍て仕度 能村登四郎 菊塵
よき夜ほど氷るなりけり冬の月 浪化
よせ墓のかたむき凍てし夕の星 柴田白葉女 『朝の木』
よべの飯凍てつきゐるや藁盒子 坂井華渓
らうそくの涙氷るや夜の鶴 蕪村 冬之部 ■ 鶴英は一向宗にて、信ふかきおのこ也けり、愛子を失ひて悲しびに堪えず、朝暮佛につかふまつりて、讀經をこたらざりければ
わかさぎの氷打ち~凍てにけり 佐野青陽人 天の川
わが心氷る華厳を慕ひ来ぬ 川端茅舎
わが悔にぴしりと対ひ影凍つる 小池文子 巴里蕭条
われも下りてゆく石段の凍てゆがみ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
オソコロコロセンダリ称へ凍むまじや 高澤良一 ももすずめ
オリオンに向ふ家路や凍てる夜 神田典夫
オリオン凍つ家路幾度の曲り角 齋藤愼爾
オーロラの燃えつゝ凍つる極の空 築山能波
クロイツェル・ソナタ折り鶴凍る夜 浦川 聡子
サーチライト棒立ちに凍てふつと消ぬ 篠原梵 雨
チユーリツプその水凍てむわがペン凍つ 林原耒井 蜩
デコ木型黒びかりして凍てにけり 高澤良一 さざなみやっこ
トロツコと氷るばかりの池がある 瀧春一 菜園
ノックしてまがある鉄扉夜の凍て 飯田蛇笏 雪峡
バスを待つ凍てし油の壜さげて 田村了咲
バス待つ眼吸殻ひろふ背に凍てつ 原田種茅 径
ピンゾロの丁と起きたり鐘氷る 泉鏡花
ヘーイ・へーイと男女が別れ凍る星座 赤城さかえ句集
ペンダント凍てて肌に火を感ず 猪俣千代子 堆 朱
ボロ市に行かざりし鼻凍て戻る 石田あき子 見舞籠
ユダの髯柔さ赤さに凍る雲 中島斌雄
ラマ塔や凍てゝ横たふ大黄河 今村青魚
ロランけふも幾人の凍てし身に棲みし(ロマンロラン研究会) 中戸川朝人
一人がないて通夜のひとびと凍み入りぬ 細谷源二 砂金帯
一切凍てて鉄がくぎりしこの空間 楸邨
一山の湯けむり凍てし日に向ふ 爽雨
一湾の凍て浪音を封じけり 大島早苗
一筋の流れを残し滝凍つる 池田秀水
一線を越えて凍る尾觝骨 春海敦子
一言主に長々申し凍みにけり 松崎鉄之介
一鳥の影もゆるさず滝凍る 平子公一
一鳥も飛ばず刈田の凍てつづく 阿部みどり女
万の雁擁き夜の沼氷るなり 佐藤国夫
万巻の書と地下室に凍ててをり 中村雅樹
三井の鐘立ち去る耳に凍み憑きて 高澤良一 燕音
三井寺の夕凍み及ぶ大黒天 高澤良一 燕音
上流や凍るは岩を押すかたち ふけとしこ
下町に曲らんとして鐘氷る 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
不動尊炎もろとも凍てにけり 五十嵐春男
丑満の星飛び氷る切通し 佐野美智
世の汚濁しりぞけて鶴凍てにけり 鈴木真砂女
世は粛すか検察庁の窗の凍て 飯田蛇笏 雪峡
中空にオリオン揚げて村凍てし 相馬遷子 雪嶺
丹田の脈摶つまでに凍てにけり 吉田紫乃
丹頂の紅のもつとも凍ててゐし 石鍋みさ代
乃木夫人愛用ミシン凍ててあり 辻桃子
乙女薔薇そのまま凍ててピアノ鳴る 小串歌枝
乳母車地に凍て暮るる屑部落 古賀まり子 洗 禮
乾坤の刻をとどめて滝凍る 町田しげき
二歩三歩その後まつたく鶴凍てし 鈴木真砂女
二段上の枝に凍みをりもう一羽 高澤良一 ねずみのこまくら
二階から手が出て掴む凍み豆腐 東海林嶺風
五枚づつ藁もて編みし凍み豆腐 林蓼雨
亡き猫の足跡こゝに凍てゝあり 林原耒井 蜩
人を見てすいッちよ凍るばかりなり 渡邊水巴 富士
人声にさとくふたたび鶴凍てぬ 鈴木白祇
人小さく凍てて地の揺れ思ふまま 桂信子
人燃えて焼夷弾光蒼く凍つ 石原八束 『幻生花』
人落す影に埋立地が凍る 斉藤夏風
人親しわきて家路の凍てゆるぶ 飯田蛇笏 雪峡
人間の像凍てつけて火口噴く 石原八束 空の渚
今宵またペン凍ることまぬかれず 木村蕪城 寒泉
今年また山河凍るを誰も防がず 細谷源二
今朝も掃かれず障子の羽蟲いつ凍てし 石井露月
伐木のあとあり木屑凍ててをり 上村占魚 球磨
伯牙断絃つくづく鶴の凍てにけり 龍岡晋
伽藍建つる人らが均らす凍てし土 不滅の愛 小澤武二
住み着きしは天保年間とぞ凍み鵜 高澤良一 鳩信
俳諧のまだ宵なから月氷る 尾崎紅葉
傀儡姫凍てて吊らるる楽屋裏 石原八束 『秋風琴』
傘を刺す地の茫々と氷る前 松澤昭 神立
兀として凍てゝ居る哉犬の糞 寺田寅彦
兀兀と鉛筆の音凍みる夜は 中田剛 珠樹以後
元日の照る陽や鷺の凍ること 渡邊水巴 富士
元朝の凍ての極みの墨を磨る 中島斌雄
光年に病むは一瞬星凍つる 立川華子
全山にこゑ掛け瀧の凍て始む 小澤克己
八方の径凍て寝ても手を組める 山口草堂
公傷の指先とほく鶴凍てし 細谷源二 鐵
公魚のひらひらと釣れすぐ凍てぬ 小林黒石礁
公魚は針はづされてすぐ凍てぬ 江中真弓
円湖凍てゝ方位東西相隣る 草田男
円空の二寸に足らぬ凍み佛 高澤良一 随笑
写さるるわが脳まざと凍つる中 尾高せつ子
冬ざれてたましひ氷るあしたかも 日夏耿之介 婆羅門俳諧
冬の日やとけては氷る忘れ水 一鼠
冬の日や馬上に氷る影法師 芭蕉
冬の月母と子の距離凍てついて 河野静雲
冬の雁楯の雨さへ氷る夜に 喜谷六花
冬没日瑪瑙の中に富士は凍て 永井龍男
凍つけば凍つきながら笹の風 秋之坊
凍つまじと力を籠めて滝落つる 牧野春駒
凍つまま枯野の果の石二つ 濱人句集 原田濱人
凍つるならいまの心のまま凍てたし 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
凍つるまで鵜の瀬の水のひびきかな 桂 信子
凍つる夜のなほありつつもすでに春 下村梅子
凍つる夜のふところにあり子の寝息 皆川白陀
凍つる夜のビルの壁画の未来都市 和田耕三郎
凍つる夜のラジオは軍歌もて了る 岸風三楼 往来
凍つる夜の一つの乳房あたためよ 栗生純夫 科野路
凍つる夜の信号機のみ点滅す 西山すみ子
凍つる夜の光芒天を駆け会す 岸風三樓
凍つる夜の地震しづまりし黒羊羹 和田耕三郎
凍つる夜の櫓に垂らす女帯 加藤耕子
凍つる夜の線密集す蟹の顔 小檜山繁子
凍つる夜の視線交はる外ぞなき 林原耒井 蜩
凍つる夜の防空頭巾たゝみ寝る 岸風三楼 往来
凍つる夜や子の諳んずる賢治の詩 佐藤美恵子
凍つる夜を羽摶くものゝある虚空 正雄
凍つる日のにはかにあきし扉なりけり 久保田万太郎 流寓抄
凍つる日の山に及びて岩檜葉も 古舘曹人 砂の音
凍つる日や枝折戸ほとり鶲来て 大岳水一路
凍つる星見上げ地上に生きてをり 今橋眞理子
凍つる滝凍つる星いま息かよふ 今泉宇涯
凍つる街逢ひしも逢はざりしも同じ 上野さち子
凍つる音棟木を走り永平寺 関浩青
凍つ山と背中合せに山家の灯 村越化石 山國抄
凍てあがる万象の冷え葱をぬく 長迫貞女
凍てうるむ眼のいとけなき初年兵 片山桃史 北方兵團
凍てかたき常盤木の葉によう日ざす 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てが鞭鳴らす銅板の湾にきて 寺田京子 日の鷹
凍てきびしかりし名残りのある庭に 稲畑汀子
凍てきびし屋上ネオン雲に映え 飯田蛇笏 雪峡
凍てきれずあり滝音の乱れざる 鷲谷七菜子 雨 月
凍てしきる喰積つつく寝しなかな 高田蝶衣
凍てし土大釜磨き干されけり 飯田蛇笏 雪峡
凍てし土掘りつつ身をば隠しける 野澤節子 黄 炎
凍てし外へすつぽり頬を包む朝 高木晴子 花 季
凍てし夜の松の中なる北斗の尾 田川飛旅子 花文字
凍てし影柩をかこみ遠ざかる 柴田白葉女 遠い橋
凍てし手を浸せば海の流れ止む 萩原麦草 麦嵐
凍てし把手廻す白鳥座を北に 櫛原希伊子
凍てし木々の響かんとして暮れにけり 渡辺水巴 白日
凍てし湖深夜の微光知らるるな 津田清子 二人称
凍てし道踏みかなしみの崩れけり 石原八束 秋風琴
凍てし野や何か聴こゆる帽かむる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
凍てし階人形つかひ登り来る 宮武寒々 朱卓
凍てし頬を岩に触れしめ息づきぬ 石橋辰之助 山暦
凍てし髪の綿屑知らで夕餉かな 渡辺水巴 白日
凍てすこしゆるみし午や煤払ふ 大橋櫻坡子 雨月
凍てずしてさやかに蝶の飜る 相生垣瓜人 明治草抄
凍てつきし五体どこより崩れむか 平子 公一
凍てつぎて四温たまたま石蕗の濡れ 飯田蛇笏 雪峡
凍ててなほ水の勢あり男瀧 大木あまり 火球
凍ててなほ蛍光ペンを抱いて新宿 櫂未知子 貴族
凍てとけて筆に汲み干す清水かな ばせを 芭蕉庵小文庫
凍てとけをゆくゆく懺悔おのづから 飯田蛇笏 雪峡
凍てながら日当る山をたづねけり 村越化石 山國抄
凍てにけり障子の桟の一つづゝ 久保田万太郎 草の丈
凍てに寝て笑む淋しさを誰か知る 飯田蛇笏 椿花集
凍てに曳く悪玉の影闇に消ゆ 石原八束 空の渚
凍てぬもの下水とその香母の文 香西照雄 対話
凍てのこりたる漣の光かな 水田むつみ
凍てのぼりつめて梢のふるへをり 永田耕一郎 雪明
凍ての限りへ橇の鈴の音この夜を泊つ 古沢太穂
凍ての鶴悲のきはまりにかうと啼く 高澤晶子
凍てはげし青年の声ひかリ出す 柴田白葉女 花寂び 以後
凍てほそり来るや枯葭片よりつ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てまぐろ鋭き鉤をはねかへす 森田峠
凍てまさる玻璃の月光停電す 飯田蛇笏 雪峡
凍てもどり木曽路は夜へ渓響き 福田蓼汀
凍てやしぬ人転ろびつる夜の音 伏水 鷺喬 五車反古
凍てゆくやこの広額もて愛せしもの 赤城さかえ
凍てゆるびたる処落日さすところ 行方克巳
凍てゆるび水仙花をこごませぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てゆるぶ山畑の土うごくかも 飯田蛇笏 雪峡
凍てゆるみ緊り信濃は黄夕焼 蓼汀
凍てゆるむどの道もいま帰る人 大野林火
凍てゆるむ燈にほしいまま玩貝の色 宮津昭彦
凍てゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子
凍てゆるむ麦生畑の早桃はも 飯田蛇笏 春蘭
凍てる夜となりゆく様に夕暮れる 高木晴子
凍てる夜や妻にもしひる小盃 森川暁水
凍てる廊にころび哭きけり声あげて 龍胆 長谷川かな女
凍てをふみ気安く墓地をただ通る 飯田蛇笏 雪峡
凍て呆けの足指失くし歩み来し(羽前肘折温泉) 上村占魚 『自門』
凍て土にはね返さるゝさぐり杖 片山すみれ
凍て土にほろほろと日のあたりそむ 長谷川素逝 砲車
凍て土に射ちし薬筒抛られ抛られ 長谷川素逝 砲車
凍て土に斧外れ形正しき痕 右城暮石
凍て土に解けたる水や浮びけり 高濱年尾 年尾句集
凍て土ゆ凍て白菜を捩ぎ取りぬ 林原耒井 蜩
凍て土をすこし歩きてもどりけり 五十崎古郷句集
凍て土を漕げばきしきし車椅子 山田 百穂
凍て埃り裏街道は初大師 石原舟月
凍て寒い日の夕焼け障子の皆に 八年間『碧梧桐句集八年間』 河東碧梧桐
凍て御舎解く紀伊の忌部の匠みしを 加倉井秋を
凍て湖に焚火せし罪測られず 津田清子 二人称
凍て湖に跼む貧しさ極まりて 津田清子 二人称
凍て湖のほとりの森の倒れ木よ 成瀬正とし 星月夜
凍て湖も呼人といへる村も過ぎ 成瀬正とし 星月夜
凍て滝の裏に水落つ音のして 福井千悠
凍て畝の葱抜くだましだましして 藤岡筑邨
凍て畳に落ちてひろごる涙かな 竹下しづの女 [はやて]
凍て空にネオンの塔は畫きやまず 篠原鳳作
凍て空にネオンの蛇のつる~と 篠原鳳作
凍て空に声を残して移民発つ 五十嵐播水
凍て華厳烏全身輝やき翔ぶ 加藤知世子 黄 炎
凍て虫をくはへとびたる鶲かな 銀漢 吉岡禅寺洞
凍て蜜柑少し焙りてむきにけり 篠原鳳作
凍て蝶のきらめき渡る山湖かな 中川宋淵
凍て街路ちらばる命拾ひあふ 飯田蛇笏 椿花集
凍て解けて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
凍て解のはじまる土のにぎやかに 長谷川素逝
凍て踏んで虚しき笑ひ胸をつく 石原八束 空の渚
凍て返る土一寸を持ち上げて 浦野芙美
凍て返る水をうしろに夜の耳 三宅一鳴
凍て返る風に骨ある思いかな 原子公平
凍て鉱石躍り火を噴き砕かるる 加藤知世子 花寂び
凍て雪に日のしむ尾長鳥なきわたり 金尾梅の門 古志の歌
凍て雪に柔く雪来りけり 高濱年尾 年尾句集
凍て雲に笙放つなり万燈会 角川春樹 夢殿
凍て雲や江上反れてひらき初む 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍て飯にぬる茶もあらず子等昼餉 竹下しづの女 [はやて]
凍て飯を犬に煮てやる夜半の冬 木歩句集 富田木歩
凍て鶴の火を蔵したる胸かたち 能村登四郎
凍みて立てば隣の人が銭鳴らす 田川飛旅子 花文字
凍みに凍む虚空蔵さんのどぜう髯 高澤良一 随笑
凍みるとはみちのくことば吊豆腐 井桁蒼水
凍みる中そもそも三井の鐘由来 高澤良一 燕音
凍み厠ぎっくり腰の不甲斐なき 高澤良一 寒暑
凍み柿に楊枝が程の針氷柱 高澤良一 随笑
凍むこゑに電光石火みそさざい 高澤良一 ももすずめ

芸術劇場 高橋竹山 孤高の響き
凍むや門付一から学ぶことばかり 高澤良一 燕音

凍むる日々鴉のあぐる一つうた 村越化石 山國抄
凍む国の神火をきりし火燧臼 下田稔
凍む木(ボク)にちょんと目鼻の木っ端佛 高澤良一 随笑
凍む白さもていつぽんの藁流る 櫛原希伊子
凍む闇にねそびれし目と耳ひらく 篠原梵
凍るまでいくたび笑うことありや 橋石 和栲
凍るまで人の言葉を話す鳥 櫂未知子 貴族
凍るペン絶えざる鼠の歯音澄む 岩田昌寿 地の塩
凍る中凍りきれざるはほとばしる 猪俣千代子 堆 朱
凍る夜のおのれを叱しては恕す 能村登四郎 菊塵
凍る夜のらふそくを土間に兵ねまる 長谷川素逝 砲車
凍る夜のハム厚く切り誕生日 菖蒲あや 路 地
凍る夜の人鎮まれば猫猛る 長谷川かな女 花寂び
凍る夜の凍らぬ夢のまくら哉 中川宋淵 遍界録 古雲抄
凍る夜の妻子の眠りいさぎよし 相馬遷子 雪嶺
凍る夜の屍衣に鳴りゐる時計かな 中川宋淵 遍界録 古雲抄
凍る夜の悲劇映画を遠ながめ 飯田蛇笏 雪峡
凍る夜の懺悔聴問僧招ぜらる 内藤吐天 鳴海抄
凍る夜の木瓜に来る朱や夫癒えよ 加藤知世子 花寂び
凍る夜の死者を診て来し顔洗ふ 相馬遷子 山河
凍る夜の灯火の色星の色 成瀬正とし 星月夜
凍る夜の袋マスクの馬の貌 有働亨 汐路
凍る夜は馬より下りてあるくなり 長谷川素逝 砲車
凍る夜やうちあふぐ灯の抱くべき 西島麥南
凍る夜や人のさびしさ眉間に来 石塚友二 方寸虚実
凍る夜や地より蹴放す馬盥 仭宕
凍る夜や星に牽かれて星出づる 相馬遷子 雪嶺
凍る夜を花もこぼさず桜草 渡辺水巴 白日
凍る寂けさ緑すつすと藺を植ゑる 加藤知世子 花寂び
凍る寒さの星が連なつて我が行くところ 人間を彫る 大橋裸木
凍る断崖黄河文明起りし地 長谷川素逝 砲車
凍る日の落葉はたえまなく降れる 高木晴子 晴居
凍る日の陳痛の皺鶏卵に 小檜山繁子
凍る森舌さとければ莨苦し 宮津昭彦
凍る池小さし御社いと小さし 高木晴子 花 季
凍る湖かけて涅槃の雪つもる 木村蕪城 寒泉
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝落下の滝とすれちがう 河合凱夫 飛礫
凍る滝落下途中の形して 村上冬燕
凍る瀧対き合ひて日を捧げたり 中戸川朝人
凍る谷鼬かがやき走りけり 堀口星眠
凍る足袋いづれが夫のものなりや 井上雪
凍る身のおとろへ支ふ眼を瞠る 石橋辰之助 山暦
凍る野に城門をあけ民ら迎ふ 長谷川素逝 砲車
凍る野に栄えて紅きアイヌの火 細谷源二 砂金帯
凍る野に部落は土壁めぐらせる 長谷川素逝 砲車
凍る鐘ひとつびとつの音を異に 誓子
凍る門真一文字に開きたり 久米正雄 返り花
凍る闇シリウス光千変し 相馬遷子 雪嶺
凍る闇星座牡牛の目が赤し 相馬遷子 山河
凍滝の凍てても見ゆる滝の相 能村登四郎
凍瀧の芯を凍て得ぬ水いそぐ 津田清子
凍蝶の凍てゆくひと日美しく 小坂順子
凍解のふたたび凍てて相つぐ死 加藤かけい
凍鶴の凍ての外なる木の根つこ 原裕 青垣
凍鶴の徹頭徹尾凍てにける 長尾宗一
凍鶴の脚踏み替えて又凍てぬ 遠藤雪花
凧ひとつ凍みて白山遠くせり 昭彦
分銅のさがるによろけ踏む地凍つ 下村槐太 天涯
切干の仕上げの凍ての来たるかな 山根和子
切干の屋根に凍てたる山家かな 九保田九品太
初乗りの馬の落せしもの凍てし 高島茂
初市や鰤の目凍みて買はれゆく 杉本苑子
初神楽吹かねば氷る笛を吹く 加藤かけい
初経のもろ手も凍つる未明かな 原田浜人
剱ケ峰の下に金星凍てつきぬ 渡邊水巴 富士
北かなし凍みのもどらぬもの食べて 田村了咲
北面の御陵や凍つる皇統譜 中西悦哉
十本の素伸べの凍ての鍛冶場かな 石田勝彦 秋興
千両の実の凍てやうや福寿草 増田龍雨 龍雨句集
千鳥鳴く夜かな凍てし女の手 中塚一碧樓
午後となる氷る渚に顔失くす 岸田稚魚
半鐘のいぼいぼ凍る海鼠かな 龍岡晋
卒塔婆の生みたる茸凍みにけり 中戸川朝人
厨いまぴしぴし凍る寝そびれゐて 野澤節子
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
厨掃いて夕ベの凍みにうたれけり 金尾梅の門 古志の歌
去年の鶴去年のところに凍てにけり 水原秋櫻子
去年今年地はかたくなに凍てしまま 津田清子 二人称
参籠や硯の氷る日頃なる 尾崎迷堂 孤輪
双鶴の影をかはして凍てにけり 西島麥南 金剛纂
古里や凍てたる中の水車 野村喜舟 小石川
吉原や凍てどけに敷く酒むしろ 芥川龍之介
君が代のうたこそ凍みよとのゐの坐 太田鴻村 穂国
君の瞳の青くて凍てて仕舞ひけり 和田耕三郎
否応もなく凍てはじむ男瀧 大木あまり 火球
吹き込みしよべの雪凍て紙漉場 桑田青虎
吾子のもの干す軒下に湖は凍て 木村蕪城 寒泉
咳きいりて凍てに躓く夜の坂 石原八束 秋風琴
哨戒の翼燈凍てし星にまぎれぬ 篠原梵 雨
哨戒機サーチライトの叉に凍てぬ 篠原梵 雨
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
嘘に倦みて青き陶酔が凍る 石原八束 空の渚
噴烟の中の凍る日胸を墜つ 石原八束 空の渚
噴烟の捲き湧く火口壁凍る 石原八束 空の渚
噴烟の波動虚空に凍て透る 石原八束 空の渚
圓空佛鉈目あらはに凍ておはす(飛州丹生川村袈裟山千光寺二句) 上村占魚 『石の犬』
土凍てて掃いても残る浄め塩 大木さつき
土凍てて日を経る牛蒡朽葉かな 飯田蛇笏 春蘭
土凍てて日輪のもとあるばかり 長谷川素逝 暦日
土凍てて闘ふ独楽の走り癖 内藤吐天 鳴海抄
地の凍てを流るる泉遠からず 鈴木詮子
地は凍ててこころ狷介父葬る 飯田蛇笏 春蘭
地下足袋凍る徹夜の君ら会えば笑む 鈴木六林男 第三突堤
地凍る漢民族の大き国土 長谷川素逝 砲車
地球凍てぬ月光之を照しけり 高浜虚子(1874-1959)
垣なして月明の鶴凍つるなり 原裕 出雲
埠頭の灯凍てたる鼠走らせる 高橋馬相 秋山越
堂凍てて唱名潮満つごとし 西村和子 窓
堂凍てて杉山に日の来迎図 鷲谷七菜子 花寂び
堂凍てゝ四隅に鉄の燈籠かな 久米正雄 返り花
堂凍みに毘沙門天のひんむく眼 高澤良一 宿好
塵ふかく萬巻の書の金ン凍てぬ 西島麥南
塵芥夫凍て蟹殻の紅こぼす 莵絲子
壁の蛾の凍てきし四方の夕立かな 渡辺水巴 白日
壁射たれ凍てたる土をこぼすなり 長谷川素逝 砲車
声凍みて頬白とべり夕穂高 堀口星眠 火山灰の道
売られる畑の凍て土が牛蒡についてきた 栗林一石路
売りにくる布銭の凍てを手に受くる 日原傳
壷凍る なまあたたかき指ふれじ 富澤赤黄男
壺にくむ洗礼の水凍てずあれ 田村了咲
夕ばえてはやきネオンに地が凍てぬ 飯田蛇笏 雪峡
夕凍てのにはかにおもひ浮ぶこと 龍太
夕凍てはまこと人なき炎かな 飯田龍太
夕凍みに青ざめならぶ雪の嶺 相馬遷子 山国
夕凍みのにはか也有の文台に 高澤良一 燕音
夕凍みのわけても鯛の鼻柱 高澤良一 ももすずめ
夕凍みの山彦山に残りけり 秋山ユキ子
夕凍みの直路三十路の靴鳴らす 高澤良一 ねずみのこまくら
夕凍みの空のしみじみ信濃かな 草間時彦 櫻山
夕凍みの聳ゆる暗さ甲斐の国 直人
夕凍みや目白のひそむ裏の畑 飴山實 辛酉小雪
夕凍みや石の円柱に燈咲き出で 宮津昭彦
夕凍みや禽それぞれの木へ沈み 矢島渚男 梟
夕凍みを飾れり白き歩道橋 宮津昭彦
夕影のかぎりをつくし鶴凍つる 大岳水一路
夕日凍み石塁矢竹生ひにけり 冨田みのる
夕暮の凍てゆくものの中に彳つ 高木晴子 花 季
夕焼が凍てて泪の粒を生む 三谷昭 獣身
夕空やむざんに晴れて凍みわたる 相馬遷子 山国
夕翳や魚籠上ぐるより鮒凍てぬ 原田種茅 径
夕茜沼氷るまであと一歩 橋本美代子
夜の木凍てて鳥のふくみ音虫に似る 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夜の網あげて空しく鐘氷る 高田蝶衣
夜もとる白墨オリオンの凍て全身に 中島斌男
夜を凍てゝ薄色褪せず櫻餅 渡邊水巴
夜泣き子と下水を残し街凍てる 森田智子
夜祭の戻りの凍ては云はざりき 岸田稚魚
夢殿をのぞみ石仏野に凍る 大島民郎
大いなる水を束ねて滝凍てり 保坂リエ
大凍てに鼓笛の韻き地にしみる 飯田蛇笏 椿花集
大地凍つる為に傾く障子とか 橋本鶏二
大地凍つ地図と眼鏡と油顔 古川塔子
大地凍て凍てし河載せ傾きぬ 片山桃史 北方兵團
大松明の火の粉も凍る午前二時 伊藤いと子
大空に月ぶら下り雲凍てぬ 浩山人
大空の一枚白く凍てにけり 阿部みどり女(1886-1980)
大鏡ある闇の凍てすりぬける 柴田白葉女 遠い橋
大鮪凍て解けて紅甦る 鈴木真砂女 夕螢
天が下蛇行の河の凍てしまま 山本歩禅
天ぐさの洗ひ場の石濡れ氷る 田中冬二 俳句拾遺
天の凍て夜陰に樫を捉へけり 栗生純夫 科野路
天凍てて鋲の赤光縷を曳けり 内藤吐天
天地凍て音の溜まれる竹の節 長谷川草々
天日へ一徹の直滝凍る つじ加代子
天暗し一本杉や凍てゝ鳴る 芥川龍之介
太陽が凍る時間の鷺の脚 河合凱夫 飛礫
太陽に正面きつて凍てし滝 檜 紀代
太陽の燃えつゝ空の凍てにけり 慧月
妻に秘めむ恍惚鶴もろともに凍て 古館曹人
妻笑ひだす水栓も杓も凍て 辻田克巳
姿見にむけば白頭昼の凍て 飯田蛇笏 雪峡
子の凍てし手をぬくめつゝ眠りけり 上野章子
子の忌日合掌の指凍てしかな 阿部みどり女
子の手握つて氷る道すべるまい 人間を彫る 大橋裸木
子の鶴も親にならひて凍てはじむ 波多野爽波 『一筆』以後
子を叱りゐる夕凍みの女ごゑ 南草
子供らにいつまで鶴の凍つるかな 石田波郷
孤児の枕並べて夢凍る 寺田寅彦
安達太良の風に吹かるる凍み豆腐 松本正一
家の中に水氷る日や荷風読む 田川飛旅子
家影の水に落ちゐて暮れ凍てし 木歩句集 富田木歩
寂しさの底にささりて蝶凍つる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
寒垢離や不動の火焔氷る夜に 正岡子規
寒天の田にうす墨の山凍る 原裕 青垣
寒泳を指の先まで凍てて見る 宮原 双馨
寒肥やおほかたの葉の朝の凍て 小澤碧童 碧童句集
射殺され棒の如くに屍凍て 若木一朗
小鳥売かへりみられず凍てもせず 大場白水郎 散木集
少年とドラム凍ての月蝕融けあへる 河野多希女 彫刻の森
屋根石の鴉の横目ソ領凍つ 古館曹人
屍地に凍て厳然と旗すゝむ 片山桃史 北方兵團
展帆をはるかにしたり凍つる蝶 中戸川朝人
山かげ池の氷る末社にも初詣する 荻原井泉水
山の手へ坂たてかけて街凍てぬ 白夜
山の星ともしび凍るミサに侍す 相馬遷子 雪嶺
山の端を離れ満月すぐ凍る 吉野トシ子
山の背を越えがたく滝凍てており 駒 志津子
山中に楪氷るものを踏み 宇佐美魚目 秋収冬蔵
山火事も凍てはてにける大裾野 百合山羽公 寒雁
山眠るや山彦凍てし巌一つ 松根東洋城
山腹にかたまり凍つる墓石かな 阿部みどり女 笹鳴
山茶花の一とたび凍てて咲きし花 細見綾子
山風や夜落ちしところ湖氷る 松根東洋城
山鳩も氷る夜明の軒に居り 遠藤はつ
岩々のまとふ青さに滝凍る 木村蕪城
岬の濤のけぞる宙の凍てにけり 飯田蛇笏 雪峡
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
川という凍てつくまでは水流す 秋元零折
川凍てて枯木の影も凍てにけり 阿部みどり女 月下美人
工具箱凍てて銀河を柿えし日 対馬康子 吾亦紅
巨鳥見守る暁の凍つる中 小島千架子
常念岳の秀を研ぎ澄ます空つ凍み 太田蛇秋
干菜風盥の濯着凍てゝあり 金尾梅の門 古志の歌
干足袋の日南(ひなた)に氷る寒さかな 大須賀乙字(1881-1920)
年新たな凍み足袋裏を堅くせり 節子
幻燈の別に映る灯夜の凍て 飯田蛇笏 椿花集
幼子よ地に水氷るこれが冬 肥田埜勝美
広場凍て飛行機のわだち深くのぶ 細谷源二 鐵
底濁ごす魚氷る池陽のさして 泰山俳句集拾遺 中村泰山、熊谷省三編
庭土や凍て藁しく冬の梅 成美
廃船の凍て屯ろせり宿の前 阿部みどり女
延年舞黒凍みの堂鳴らしけり 高澤良一 ぱらりとせ
引汐に小貝の氷る真砂かな 古白遺稿 藤野古白
引返す山路これより凍ててをり 稲畑汀子 春光
弥陀洞にゴム手袋の凍ててをり 大石雄鬼
影すでに凍てておるなり暦売 田川飛旅子
影ふかくかたきら捨てし壕凍てぬ 長谷川素逝 砲車
役げし石の凍るほかなし遭難碑 桂樟蹊子
待つことは明日一点に鳶凍てり 古舘曹人 能登の蛙
待乳山さるのこしかけ凍てにけり 古舘曹人 樹下石上
徒に凍る硯の水悲し 寺田寅彦
徒に凍る街路を歩きけり 高澤良一 随笑
御手洗も御灯も氷る嵐かな 炭 太祇 太祇句選
徹夜の稿にいつ置かれたる林檎凍む 森澄雄
心中に鳴らす金鈴凍てずあれ 岡本差知子
心忘れ来しが白鳥千羽凍つ 岸田稚魚
急くことはなし凍てし身に言ひきかす 橋本鶏二
恋の血の高鳴つていま月凍る 仙田洋子 橋のあなたに
恋捨てに雪山に来しが笑ひ凍る 小林康治 玄霜
息とめてみる凍みくさきものばかり 宮坂静生
息ひそかに凍てゆく終の父呼べず 山田みづえ
悔のごと繊月凍ててかかりけり 斎藤 道子
懐に凍て山河と猫を磨き 和田悟朗
我が手に触れつまどろめしばし魂氷る妻よ 折笠美秋 君なら蝶に
我が汽車の白煙凍てし野に凝るかな 太田鴻村 穂国
我が行く天地万象凍てし中 高浜虚子
戸あくれば翔つものありて凍てし沼 田村了咲
手の凍てゝ板の如しや大根引 川島奇北
打ちこけて指(さし)ぬき氷るなみだかな 素顰 俳諧撰集玉藻集
托鉢の鉢に凍てつく指はがす 鈴木貞雄
把り凍て飛び降りるにも翼なし 鈴木六林男 第三突堤
投げ込みしままの形に楮凍つ 今瀬剛一
折鶴のごとくに葱の凍てたるよ 秋を
拓けゆく湿地帯なり凍て解くる 鈴木洋々子
拓地の灯星より高く凍るなり 小林黒石礁
拓次碑ここに鉄のオブジェ凍てて立つ 北野民夫
拠るものの欲しけれど壁凍るなり 橋本多佳子
指環凍つみづから破る恋の果 鈴木しづ子
捨て水のやがて氷るや三十三才 荻原井泉水
捨て水の身を張りて地に凍てつけり 大串章
捨水の即ち氷る寒に在り 池内たけし
掃かれずに凍てたるものや寒雀 春草
掃き了へて夕凍みねずみもちの実に 高澤良一 ねずみのこまくら
掌に落ちてぬくき涙がすぐ凍てつく 加藤知世子 黄 炎
採点のペンが凍て又林檎凍て 木村蕪城 寒泉
採煙蔵鵺の眼のごと凍てて火は・・・古梅園 高澤良一 ねずみのこまくら
描線の威嚇と攻撃巴里凍る 高澤良一 宿好
摩周凍て万象動くものもなし 小森行々子
放射路の 一筋窓に向ひ凍つ 大場白水郎 散木集
放魚提げ凍む硝子無き窓見上ぐ 宮武寒々 朱卓
断崖にとり縋る手の凍て痺れ 片山桃史 北方兵團
新しき筧や盛り上り氷る 波多野爽波 『一筆』以後
方円に氷るくさぐさ境内に 高澤良一 鳩信
旅の髪汚れなかりし氷る国 八牧美喜子
日が面と向ひて湖の凍てゆるむ 檜 紀代
日のみ鮮紅万象暁の凍ての中 福田蓼汀 秋風挽歌
日は雲のはたてに凍てて風粗し 石塚友二
日凍てゝ空にかゝるといふのみぞ 高浜虚子
日和空覗かせて滝凍てにけり 森田峠 避暑散歩
日当りの風に凍てたる蝶々かな 吉武月二郎句集
日蔭より日南に凍る風ありぬ 高橋馬相 秋山越
日陰りて張子天狗の凍みつ鼻 高澤良一 さざなみやっこ
日雀ゐて石の髄まで凍ててをり 加藤楸邨
日鼻凍む土偶になせり愛しくてか 宮津昭彦
旧年の足跡すでに凍てゆるむ 角川源義
早春の凍て雲にして山の端に 高濱年尾
旬日を一日のごと崖氷る 下村槐太 天涯
旱り空回帰すものの蒼き凍て 石原八束 空の渚
旱る夜の疲れ憤りの凍てかへる 石原八束 空の渚
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎 寒九
明日のもの凍てて自在にかかりをり 木村蕪城 一位
星の下蒟蒻凍る音なりや 川野さゆり
星よりもまばらに沼の灯の凍てし 石井とし夫
星よりも凍て一燈にたどり着く ほんだゆき
星凍つ下煉炭とれぬ幾家族 古沢太穂 古沢太穂句集
星凍てし高野の宵は真夜に似し 物種鴻両
星凍てたり東京に住む理由なし 鈴木しづ子
星凍てて地を打つ舞の榊鬼 橋本榮治 麦生
星凍る泉端より揺れやみて 藤原たかを
昨夜の凍てとけゆく綺羅や糸寒天 水野富美
昨日捨てた花 氷る 運河に街詰まり 伊丹公子
昼も凍む葬列に淵青き弓 宇佐美魚目 秋収冬蔵
晩年は死後の逆算凍てゆるむ 竹中碧水史
暁の畳の凍てて座禅堂 田中 南耕
暗殺が夜をふみ鳴らす凍ての光ゲ 石原八束 空の渚
書く文字のうすくて悲し硯凍て 田村了咲
書く筆の凍てつゝ思ひはこびつゝ 上村占魚 鮎
書を掩うて疑義思ふ夜や鐘氷る 菅原師竹句集
最果てに凍てし地球の皮膚呼吸 樽谷俊彦
月の暈網代の上に氷るらん 有山江南
月光の切先に触れ湖凍てぬ 根岸善雄
月凍つる群青の村その下に 岡田順子
月凍てて千曲犀川あふところ 福田蓼汀 山火
月塊の己が光に浸り凍つ 福田蓼汀
月明の夜は恍惚と墓凍つる 鷲谷七菜子 雨 月
月照るや両岸氷る南白亀川 前田普羅
月蝕や凍てし魚骨の隙ひそか 櫛原希伊子
朝が凍る汽車に乗つている 橋本夢道 無禮なる妻抄
朝凍みて夕暮ぬくむ杉山中 野澤節子 遠い橋
朝凍みの山しろがねの春の露 奥山公世
朝凍みの鉦叩きをり夫の寺 殿村莵絲子 雨 月
朝日かつと凍て土やがて光り出でぬ 高濱年尾 年尾句集
朝氷る骨正月の酒酌むよ 小澤碧童 碧童句集
木しづくの落ちては氷る古宿かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
木の如く凍てし足よな寒鴉 木歩句集 富田木歩、新井聲風編
木の股に雪塊凍てて暮れんとす 福田蓼汀 山火
杉の実のよく見えて村氷るなり 大峯あきら 鳥道
村中の闇をあつめて火が凍る 河合凱夫 飛礫
村貧したつきの湖も凍てわたり 青葉三角草
束の間に人焼き終へし面ラみな凍て 小林康治 四季貧窮
東伏見宮御下賜の鶴凍てにけり 龍岡晋
枯芦や朝日に氷る鮠(はや)の顔 広瀬惟然
枯萩の髄脈々と雨氷る 臼田亞浪 定本亜浪句集
枯蘆や朝日に氷る鮠の顔 惟然
柑子剪る庭石凍る手燭かな 長谷川かな女 雨 月
染汁の紫氷る小溝かな 正岡子規
柿の蔕カアの一ト声凍みるなり 高澤良一 宿好
根の国をくだるこごしき岩根凍み 宮津昭彦
桟へ一里まひるを氷る歯朶 宇佐美魚目 秋収冬蔵
桟や花眼に氷る石の数 宇佐美魚目 秋収冬蔵
桶の水あらかた氷るこぼれざま 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
梁近き初鶏亡父の世も凍てし 栗生純夫 科野路
梅が香や朝々氷る花の陰 千代尼
梅白し檜山の凍てをふみ来り 瀧春一 菜園
梟のむく~氷る支度哉 一茶
梵鐘も高きに凍つる當麻かな 山本洋子
棒のよな燈の夜汽車呑み山凍る 宮津昭彦
棒瘠しその空間を凍てしめて 三谷昭 獣身
極月の扶持乏し筆氷るまで 小林康治 四季貧窮
樹々のおく雪凍む闇の立ちまさる 石橋辰之助 山暦
樹も氷る池は去年より凍てにける 石橋辰之助 山暦
樺の樹の微光となりて山氷る 対馬康子 吾亦紅
橇の道竹林に入り凍てにけり 佐野良太 樫
橋凍る波は拍手のごとき音 対馬康子 吾亦紅
機鑵車の蒸気が凍てる月明り 飯田蛇笏 雪峡
檻の狐凍てし己れの糞たしかむ 津田清子 礼 拝
櫓の声波を打つて腸氷る夜や涙 芭蕉
櫟のみちおのづと氷る沼にいづ 川島彷徨子 榛の木
死んではならぬと凍てし吾がてを犇ととりし 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
死化粧や髪の先まで母凍てて 吉野義子
残雪やいく日凍てたる碑のほとり 古沢太穂 古沢太穂句集
毛皮して瞳の黒耀は凍てがたし 飯田蛇笏 雪峡
水けむりあげゐて滝の凍て拒む 木内怜子
水しぶき空に氷るやけものみち 宇佐美魚目 秋収冬蔵
水に落し椿の氷る余寒哉 高井几董
水の流れる方へ道凍て恋人よ 鈴木六林男 桜島
水の自在わづかに許し滝氷る 佐野美智
水をのむ鶏が空むき氷る山 宇佐美魚目 秋収冬蔵
水仙の葉に水仙の葉影凍み 高澤良一 ねずみのこまくら
水平線凍て命終の心電図 平井さち子
水底へ幹立ち上り山凍つる 大岳水一路
水打つて去年と今年を凍てしむる 三好潤子
水打つて氷る戸口やけさの春 村上鬼城
水氷る助六染の工場かな 会津八一
水煙の飛天の楽も凍る月 長谷川史郊
水鳥に凍てはとほらず逆雪嶺 原裕 青垣
氷るには美しかりし蓮の骨 吉田鴻司
氷るへき水さへ絶し冬田哉 左簾
氷るまで山にかしづく二つの湖 栗生純夫 科野路
氷るもの氷り餅花にぎやかに 宇佐美魚目 秋収冬蔵
氷る夕の餘光にうごく道の草 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
氷る夜の文殊に燭をたてまつる 茅舎
氷る夜の灯かゝげし産井かな 西島麦南 人音
氷る夜やうちあふぐ灯の抱くべき 西島麦南 人音
氷る夜や双手かけたる戸の走り 加舎白雄
氷る夜や我にも海のありて騒ぐ 矢島渚男 船のやうに
氷る夜や畳にしめる上草履 青蘿
氷る夜や諸手かけたる戸のはしり 白雄
氷る岩肌初日さし金屏となりぬ 岡田日郎
氷る戸を得たりや応と明け放し 夏目漱石 明治二十九年
氷る日の杣がもの言ふ雑木山 大峯あきら 鳥道
氷る日の灯ともす電車かよひをり 飴山實 少長集
氷る月瞑目に神浮び来る 高田蝶衣
氷る月蝕記憶に遠き空の壁画 河野多希女 彫刻の森
氷る池に鳰遥かなる晨かな 島村元句集
氷る池や氷らぬ方のさゞら波 東洋城千句
氷る池日は赤松の幹にあり 高橋[テイ]子
氷る河わたる車室の裡白む 山口誓子 黄旗
氷る沼 氷る沼 目のやりどなし 富澤赤黄男
氷る沼ノアの方舟まだ見えぬ 齋藤愼爾
氷る渚に白鳥を追ふ長靴埋め 小林康治 玄霜
氷る湖の木霊呼びつつ機始 原 柯城
氷る湖の温泉おつるところ舟囲ふ 木村蕪城 一位
氷る湖へだて二街響きあふ 木村蕪城 寒泉
氷る湖二つに割るる夜を囃す 原裕 青垣
氷る滝その上をせく水のあり 有馬朗人 天為
氷る燈の油うかがふ鼠かな 與謝蕪村
氷る田を走りて春の玉霰 今井杏太郎
氷る田を音ばりばりと鋤きおこす 相馬遷子 雪嶺
氷る畦ゆるゝと見るや鶇居り 水原秋櫻子
氷下魚あはれ尾をはねしとき凍てにけり 大塚千々二
氷壁に石楠花凍る葉を垂らす 岡田日郎
氷柱宿寝髪凍つてしまひけり 小林康治 玄霜
永痛みて使はざる傘凍てにけり 朝倉 和江
求愛の羽の凍てをる孔雀かな 大木あまり 雲の塔
汚れなき蝶なり凍てゝをりにけり 松下鉄人
池氷る山陰白し冬の月 古白遺稿 藤野古白
池氷る神渡るかに一亀裂 田中朗々
汽車の窓凍てゝひらかぬ別れかな 副島いみ子
汽車行きて氷る山田を煙らしむ 山口波津女 良人
沖へ行つて消ゆ凍て雲のゆくへかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
没日の樹ちかぢか燃えてのち凍つる 柴田白葉女 花寂び 以後
没日凍て暗き火口の像を灼く 石原八束 空の渚
河の水うごいてゐたり凍ての日も 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
河凍てしことを確かむ石飛礫 対馬康子 純情
河川工事土るゐるゐと凍みはつに 細谷源二 鐵
沼凍てて高ゆく雲を映さざる 猿橋統流子
沼凍てて鴨一族に空もなし 河野南畦 湖の森
法華寺の減罪の凍て畳より 井沢正江 晩蝉
泥濘の凍てゝかたさや蹄あと 西山泊雲 泊雲句集
注連凍てゝ翁のシテの現はれし 佐野青陽人 天の川
泳ぎ来る鯉にさゞなみ凍るかも 渡邊水巴 富士
洞なして骨透くうれひ亀凍つる 原裕 青垣
流し来て氷る瀬隈や谷筏 癖三酔句集 岡本癖三酔
流木を咥へて凍る波ころし 大島民郎
浪の華とき~舞ひて荒磯凍つ 雁択水
浮浪児や凍てし夕刊はしやぎ売る 原田種茅 径
海に向く絶壁の凍て明けしらむ 飯田蛇笏 雪峡
海ゆ来て鳴く鳥しろく夜の凍つる 古志の歌 金尾梅の門
海凍てゝ渚ともなし島の春 凍魚
海凍る国に鮭鮓甘きかな 河東碧梧桐
海鼠凍つ光ふるへり冬彦忌 古谷群象
淋しさの置きどころなく鶴凍てぬ 有馬籌子
深き息かけて凍蝶凍てさせず 三好潤子
深爪のいたみにも似て水氷る 鎌倉佐弓 水の十字架
渤海の凍てし渚の忘れ汐 高濱年尾 年尾句集
港凍て小鳥かげなき異人墓地 河野南畦 湖の森
湖いまだ凍てず竹瓮につもる雪 木村蕪城
湖の凍て対岸の音近し 勝俣雅山
湖よりも凍みて根場の夕餉どき 依田由基人
湖凍ててわが声われを驚かす 林翔 和紙
湖凍てて療園の嬉戯玻璃のうち 木村蕪城 寒泉
湖凍てて落暉の総のそよぎをり 大峯あきら
湖凍るそがひの山に人葬る 木村蕪城 寒泉
湖凍るひびきの夜夜を書に痴るる 木村蕪城 寒泉
湖氷る大きな朝にあひにけり 加藤楸邨
湖氷る日を見さだめつ楮蒸す 栗生純夫 科野路
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湯豆腐や花凍る雨灯にみだれ 渡邊水巴 富士
滝の上の水も凍つてゐたりけり 今井杏太郎
滝の凍て仰ぎかねたる空明くる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
滝は凍て山頂つぎつぎ日を失す 福田蓼汀 秋風挽歌
滝仰ぐ思ひのひとつひとつ凍て 石田勝彦 秋興
滝凍ててみちのくの風青みたる 下山芳子
滝凍ててもろもろの巌立ちあがる 細川加賀
滝凍ててをらず目的失ひし 橋本美代子
滝凍てて人間遠くありにけり 佐久間慧子
滝凍てて大音響をこもらする 小林康治 『華髪』
滝凍てて巌も眠りにつきにけり 鈴木貞雄
滝凍てて微塵の音のなかりけり 西岡フサ子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍てて立つ一切を忘却し 橋本美代子
滝凍てて金剛力のこもりけり 小島花枝
滝凍る中空に裾ふつ切れて 早崎明
滝凍る刻の止まりし形して 原田走日朗
滝壷はふちより凍る身のゆくへ 鍵和田[ゆう]子
滝壷もいふに及ばず凍つたり 下村梅子
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
滝音を蔵し凍てゆく月の巌 鷲谷七菜子 雨 月
漁り火のいろも凍ると書き送る 佐野まもる 海郷
漣に九州氷る舌ざはり 松澤昭 山處
漣のさまを残して沼凍てぬ 小野郁巴
潦かはかんとして凍てにける 五十崎古郷句集
潮の香もなくはろばろと海氷る(根室) 上村占魚 『萩山』
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
火の香して林中は凍てきららかに 鷲谷七菜子 花寂び
火をさけて地の提灯凍るさま 飯田蛇笏 春蘭
火口壁の凍てにつまづきうづくまる 石原八束 空の渚
火口湖が凍る真白き亀裂もち 品川鈴子
火口熱が臓腑を犯す空の凍て 石原八束 空の渚
火口熱に凍てのとどかぬよな地獄 石原八束 空の渚
火口鳴り騰りて凍てる空の波 石原八束 空の渚
火山灰凍てて火口の死角より騰る 石原八束 空の渚
灯ともるや其処に凍てゐし人の顔 林翔 和紙
灯の下に凍て解く薔薇よあゝ危し 林原耒井 蜩
灯まつ戸のあけたても凍て急ぐ 金尾梅の門 古志の歌
灯火のすはりて氷る霜夜かな 松岡青蘿 (せいら)(1740-1791)
炉火守りて焼岳凍る夜を寝ねず 石橋辰之助 山暦
炉火燃え上る畳に氷る射鳥かな 雑草 長谷川零餘子
炭を割る音夕凍みのむらさきに 大野林火
炭竈へみち逆落し氷る枝 宇佐美魚目 秋収冬蔵
無の跫音の 沼氷る ひびきよ 富澤赤黄男
煙草つけてすぐ去る人や池氷る 阿部みどり女 笹鳴
照明が消えてたもまち城氷る 長田等
燃え据わる炉火むらさきに夜の凍つる 金尾梅の門 古志の歌
燈火のすわりて氷るしも夜かな 青蘿
燭陸離ピアノ音をたえ夜の凍て 飯田蛇笏 雪峡
爐火守りて焼岳凍る夜を寝ねず 石橋辰之助
爪立ちに鶴を覗ひ妻凍つる 原裕 出雲
父亡き夜山水凍てて音断えし 成瀬桜桃子 風色
牡蠣舟の並んで氷る干潟かな 古白遺稿 藤野古白
牡蠣船より凍てし大地へ渡りけり 島村元句集
犬の舌夕雲氷る水に鳴る 中島斌雄
狩くらの凍てに大火の炎立ちけり 飯田蛇笏 椿花集
狼を神とし祀り山凍る 岡田日郎
猩々の三七日頃か鐘氷る 子規句集 虚子・碧梧桐選
猪撃ちに曉の諸星なほ凍てぬ 石田あき子 見舞籠
猫埋める土凍る日も難民来る 鈴木八駛郎
猿の糞凍てて発電所への道 引間芳春
獄凍てぬ妻きてわれに礼をなす 秋元不死男
獄塀凍て雲母明滅義民坐すや 香西照雄 対話
玄関に凍てし北斗を見て閉むる 阿部みどり女
玉砂利を踏む音も凍てし神の庭 谷條 昭平
玲瓏と池にも天の鴟尾凍る 狹川青史
玻璃戸にも野づらの寒さ来て凍る 占魚
玻璃越しに凍む信長の太刀兜 渡辺恭子
瓦斯燈の凍つるや遠くより来しに 小池文子 巴里蕭条
甘藷凍つをわが罪の如隠し棄つ 殿村菟絲子 『繪硝子』
生きながらひとつに氷る海鼠かな 芭 蕉
生ながらいなご凍てゆく枯葎 月草
生木凍て裂くる音わが身ぬちにも 柴田奈美
田の水の有たけ氷る朝かな 野澤凡兆
甲斐駒にくれいろひくく宙の凍て 飯田蛇笏 雪峡
男に男らしさ八方氷る木曾 宇佐美魚目 秋収冬蔵
男の瀧や女瀧な凍てそと打ち続く 平井さち子
町凍る陸橋の裾引き入れて 宮津昭彦
画集句集大邪魔物として凍る 宇多喜代子 象
異端者に凍てゆるびみゆ天主の燭 飯田蛇笏 雪峡
病む人の逝きたる知らせ蝶凍つる 杉山和子
病棟の凍る灯りに妻の伏す 川口利夫
痰コップ凍てしを誰に訴へむ 石田 波郷
登山綱凍て瞼を濡らす雪とべり 石橋辰之助 山暦
登攀路一条凍てて雲に入る 望月たかし
白き灯となり鴎凍てゆく海いでず 寺田京子 日の鷹
白新た河清をまてず凍る河 平井さち子
白魚をはたく刺網凍てゝをり 松尾緑富
白鳥の翔てり翔たねば凍つるべし 岸田稚魚 筍流し
百姓ら天主を信じ凍てゆるぶ 飯田蛇笏 雪峡
皆既月蝕凍て王女めく銀の匙 河野多希女 彫刻の森
眠りゐる子の眉あげて氷る山 田中裕明 櫻姫譚
眠れぬ夜凍てゝゆくらむ水一壺 石田 波郷
石の上往く目返す目凍つるなり 岸田稚魚 筍流し
石凍てて抱かれぬ埋められむ為 品川鈴子
砂の中に海鼠の氷る小さゝよ 碧梧桐
砲据うとかつかつ凍てし地を掘る 長谷川素逝 砲車
砲烟の凍つて雪と散ずらむ 渋川玄耳 渋川玄耳句集
磐石に蝶は凍みつくまで潔し 佐野まもる
礁凍て一徴の青をだもゆるさず 富安風生
秒針の強さよ凍る沼の岸 西東三鬼
穴釣のあきらめ去りし穴凍る 金子 潮
空き缶の凍てたる空気蹴られたる 森田智子
空の青きはまり岩は並み凍てぬ 石橋辰之助 山暦
空凍てて銀杏大樹の槍千本 吉田信子
空凍てぬ隙を見せじと喋りつぐ 宮武寒々 朱卓
窯の火を守るに匠は闇に凍つ 大西岩夫
竜飛沖過ぎて飛沫も凍る夜ぞ 工藤義夫
竹河岸の竹ひゞらぐや夕凍てて 芥川龍之介
筆凍てゝかするゝばかり辞表書く 石井とし夫
節分凍てずこの川のいづこへ行くぞ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
精霊の凍みる雪夜を牡丹照る 渡邊水巴 富士
糊いまだ凍てず竹瓮につもる雪 木村蕪城 寒泉
糊凍てて諏訪明神の月夜かな 草間時彦 櫻山
紅梅に牛の涙も氷るらん 子規句集 虚子・碧梧桐選
紅茶あつし凍てつつ薔薇のひとさかり 春草
納棺す深夜の凍てに繩たすき 飯田蛇笏 春蘭
紙漉女に「黄蜀葵糊」(ぬべし)ぬめぬめ凍てざるもの 橋本多佳子
紙砧打つ夕凍みの一山家 つじ加代子
絢爛と傀儡の凍てる楽屋裏 石原八束
総毛立ち土間の猪凍ててあり 下村梅子
纜のくひこめるまゝ道凍てゝ 森田峠 避暑散歩
置酒独語理非曲直の凍る夜を 石原八束 空の渚
翔ぶ鳥の下にひかりて瀧氷る 中戸川朝人
老松の枯葉を誘ふ凍つよし 前田普羅 飛騨紬
老神の上から瞶め滝氷る 和知喜八 同齢
考への中まで凍ててきさうな日 岡田順子
聖像の予告もなしに凍て始む 対馬康子 愛国
聖書閉づ凍てたる音に今日終る 亀井糸游
肉桂玉しゃぶる御城下凍みっぱれ 高澤良一 ぱらりとせ
胴震ふ犬に熟柿と夕凍み空 河野多希女 納め髪
胸像の芯の虚ろを抱へ凍つ 横山房子
臘梅のつばらかに空凍てにけり 石原舟月 山鵲
自ら惹かるる歩み足凍てる 阿部みどり女
自由が丘の夕ベは氷る雪兎 山田みづえ
舗道凍つわが靴音の夜々ほてり 河合凱夫 藤の実
舟当ててきやきや氷る寝覚かな 杉風 霜 月 月別句集「韻塞」
船去りて岸壁の凍て今知りぬ 金子麒麟草
艪の声波を打って腸凍る夜や涙 艪声波を打って腸凍る夜や涙 松尾芭蕉
花ぞ浪紅梅凍る金魚船 花流 選集「板東太郎」
花の夜を塊り氷る無頭海老 高野ムツオ
花嫁に松毬氷る山の空 大峯あきら
花街果て凍る灯とぼす狸神 高井北杜
苔凍むや墓石とまがふ地番石 下村ひろし 西陲集
茎漬も氷る中なり一茶の地 加藤知世子
茜空凍みて東京横浜間 高澤良一 宿好
荒々しき火と棲み凍る土器のこせり 宮津昭彦
荒むしろ沈み切れずに川凍てぬ 岡本 眸
菓鋪街の鴻池邸鶴凍てぬ 宮武寒々 朱卓
菠薐草土に喰ひ込み氷る谷 沢木欣一
落日の巨眼の中に凍てし鴉 富澤赤黄男
落暉凍て阿蘇の風嘯天に泣く 石原八束 空の渚
落柿舎の夕凍みの憑く柿古木 高澤良一 燕音
落柿舎の柿の蔕ほど吾も凍みて 高澤良一 燕音
葬りの土より氷る諏訪の湖 古沢太穂 古沢太穂句集
葱掘るや大地は昼も深く凍つ 三輪浅茅
蒟蒻を呼びに戻るに道凍る 坪内稔典
蒼天をゆきつつ雲も氷る山 太田嗟
蓬莱に氷るはじめの湖の音 佐野美智
蓮掘の凍てに言葉を失へる 大橋敦子
蕗の芽に蝉の殼など凍てありぬ 松瀬青々
薔薇挿すや紅すでに凍ててあり 椎橋清翠
藁氷る地へむらさきに梯子かげ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
藪柑子崖凍る日の近からむ 太田 蓁樹
蘆の根のしつかり氷る入江哉 正岡子規
蛇口より凍る夜の妻しんとして 成田千空 地霊
蝶つひに凍てたる因と果なりけり 久保田万太郎 流寓抄
蝶凍つる何も持たぬを自由とし 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
蝶凍てて富士くれなゐに染りゐる 角川春樹
蝶凍てて苔のにほひにつつまるる 松村蒼石 露
蝶凍てて触れなば塵とくづるるか 宇都木水晶花
蝶凍てて餐庁の灯に近づけず 横山白虹
蝶凍てゝうたるゝ霜のしづくかな 藤原保吉
蝶凍てゝ何処までかろみ目指しをり 秋山巳之流
螺旋階段凍てて靴音をこぼしける 有働 亨
蟹売女凍ててその掌も蟹の紅 鈴木真砂女 夕螢
血の凍る思ひいくたび走馬燈 中嶋秀子
行人をとゞめず凍てる一木かな 中島月笠 月笠句集
行年や笹の凍てつく石の水 室生犀星 魚眠洞發句集
街凍ててこころおごらず靴の音 飯田蛇笏 雪峡
街凍てて歓楽の灯の怖ろしき 石原舟月 山鵲
裂けし翅大事にたたみ蝶凍てぬ 横谷清芳
裏街の福音耳まで凍てて聞く 有馬朗人 母国
裏街はあまたの岐路の夕凍みつ 有働亨 汐路
見えぬものに頷き凍る夜を眠る 野澤節子 花 季
見ゆるかぎり火を発す星雪凍る 渡辺水巴 白日
覚如忌や凍てつく灯皿わりなくも 西の丘
観世音こころに浮べ山凍つる 大岳水一路
触るる物みな凍て指頭熱したり 欣一
訃ののちの日数を氷る硯かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
誰が何を祈りし神か山凍る 岡田日郎
諍を好まぬ蝶の凍てにけり 樋笠文
諏訪の町湖もろともに凍てにけり 石橋辰之助 山暦
警衛士凍てたる蝶のうごきけり 久保田万太郎 草の丈
谷川に小鍋の氷る木曾路かな 古白遺稿 藤野古白
豆腐干す半日村が凍てにけり 阿波野青畝
貨車あまたちらばり凍てて歳去りぬ 片山桃史 北方兵團
責台と抱石四枚凍て白州 高澤良一 随笑
赤よな噴く火口をのぞく鼻の凍て 石原八束 空の渚
赤啄木鳥の打つ幹昼を凍るなり 小林黒石礁
赤富士は逸してめざめ宿凍つる 皆吉爽雨 泉声
赭土の断崖のもと凍る黄河 長谷川素逝 砲車
走らねば身の凍つるなり修二会僧 須賀一恵
足跡の氷る山路も宵の口 宇佐美魚目 秋収冬蔵
跡の月思へば氷るたたき鉦(かね) 智月 俳諧撰集玉藻集
跫音の凍てつく闇を曳き帰る 石原八束 秋風琴
踏襲のままの姿勢に鶴凍てり 上田五干石
身を掻けば穢がぽろぽろと鶴凍つる 波多野爽波 『一筆』
迅風凍つ火口地鳴りの人小さし 石原八束 空の渚
迅風無尽の凍て崖を墜つ噴火煙 石原八束 空の渚
迎春や油の氷る壜の中 碧童
通夜が明けたる硝子戸の凍てついた青空 人間を彫る 大橋裸木
通夜の食べもの早や凍てて皿に分けらるる 人間を彫る 大橋裸木
逢ひたさのつのりて銀河凍つるかな 藺草慶子
運の尽きならぬ凍み鐘突かれけり 高澤良一 燕音
道凍てし夜と云ふものゝ中にあり 高浜虚子
遠く呼びあふ汽笛その尾に凍る星 佐藤鬼房
遠つ世の禁色の蝶凍てにけり 石田小坡
遠山の落窪にも星ひとつ凍む 篠原梵 雨
遠空をゆく電車音野は凍てて 大井雅人 龍岡村
遺骨に日の射すまで畳凍つるかな(兄の遺骨還る) 岸田稚魚 『負け犬』
郷の寂凍てにたかきは白根のみ 飯田蛇笏 雪峡
酒すこし飲んで別れぬ通夜の凍て 石原八束 空の渚
酔眼にインキ凍つてしまひけり 草間時彦 櫻山
野施行や石に凍てつく小豆飯 長野蘇南
野辺送り転びて凍てに跪拝めく 田中英子
金庫凍つやこもりゐし空気顔へ来る 原田種茅 径
金星や羊の肉のごつと凍て 日原傳
金梨地の磁器凍てかへるさびしさに 石原八束 空の渚
金縷梅やのつたりと出て雲氷る 中拓夫
金色の凍てし烏や黒部川 折井眞琴
釘に濡手拭かけて凍てる日である 尾崎放哉



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by 575fudemakase | 2017-04-18 08:53 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

皹 の俳句

皹 の俳句


あかがりの血噴くとなげき筆つくる 竹下陶子
あかがりやまだ新嫁のきのふけふ 正岡子規
あかがりや哀れ絹地に引つかかり 三橋敏雄
あかがりや世上の費(つひえ)そくゐ飯 口慰 選集「板東太郎」
あかがりや帝都を踏みて恥じる事 一鉄 選集「板東太郎」
あかがりや頻婆果の唇斯くあらむ 阿波野青畝
あかがりをいざ灸せばや苅干火 惟然
あかがりを夜の高野の火に焙る 福島せいぎ
あかぎれが疼くよ昭和ひとけたよ 宇咲冬男
あかぎれに当るこはぜを掛けにけり 浜口今夜
あかぎれに葱の匂ひの残りけり 広瀬千鶴
あかぎれの膏薬つつむ落葉かな 木導 十 月 月別句集「韻塞」
あかぎれの子のみ仏に合掌す 佐藤和子
あかぎれの指そろばんの珠弾く 土屋保夫
あかぎれの手のきらめくは和紙の村 落合水尾
あかぎれの手のきらゆくは和紙の村 落合水尾
あかぎれの手のふれてゐる乳房かな 佐々木有風
あかぎれの母の手ゆ享く粥眩し 玉村夜音女 『さんご玉』
あかぎれの母を残して父逝けり 高橋悦男
あかぎれの薬貼る手と貼られる手 勝目トミ
あかぎれや左翼文学廃れたる 石村与志
あかぎれをかくして我を見舞ふ妻 西形佐太郎 『てんご』
あかぎれをかくそうべしや今年妻 前田普羅
あかぎれをきらしたる手やおもひもの 久保田万太郎 流寓抄
あかぎれを知らぬ子と鶴折りにけり 改田以久代
あかぎれ膏貝詰なるがたのもしき 水原秋桜子
きやくそうあかぎれていれ 河野静雲
そとかくす皹の手を見のがさじ 臼田亞浪 定本亜浪句集
なき母の声あかぎれの割目から 平畑静塔
ははそはに似しあかがりのもの悲し 立花 豊子
やさしきは*椀成るときのあかがり手 文挟夫佐恵 雨 月
永らへしおのが皹母ゆづり 山吹静子
下男下女胼皹を話し居る 岡村三鼠
乾鮭にあかぎれの手を噛まれけり 平塚蕗山
客僧の皹手入あちらむき 河野静雲
愚痴つぽく皹が又疼き出す 西村和子 夏帽子
元日の暮れて日課の皹薬 榎本栄子
左手の使はぬ指のあかぎれて 黒田杏子
妻も子も土着せしごとあかぎれす 大川幸子 『小春日和』
匙落ちし音皹にひびきけり 百合山羽公
子の下宿誘ひて皹ふやしけり 斎藤節子
雫も小走りあかぎれの子の豆腐買 能村登四郎
初発心痩せ皹がまた痛む 西田孤影
掌に手おきあかがり妻の棘さがす 角川源義
寝ほてりの吾子の頬なる微塵皹 篠原梵
身の冬の皹あかぎれの薬かな 久保田万太郎 流寓抄
身の冬の胼あかぎれの薬かな 久保田万太郎
成人の日にあかがりの手を見ざる 川崎展宏
石切るに生きる証のあかぎれよ 石橋林石 『石工日日』
祖母の代のあかがり膏や今も塗り 根岸 善雄
足袋ぬいであかがり見るや夜半の鐘 正岡子規
鱈割き女あかがりもなく腰太く 西本一都
爪に絵を描きて皹など知らず 杉原 佳子
爪皹痛み六十路も嫁の座に 菅野イチ子 『花漆』
田の皹に風しむ夜なり一茶の忌 伊藤三十四
土筆摘む手に皹の未だのこる 田中冬二 俳句拾遺
働けば口あく皹に膏薬を食わせている 栗林一石路
箸にかかりにくき麦飯皹いたむ 大熊輝一 土の香
飯粒やあかがり帰る越の山 言水 選集「板東太郎」
筆頭にあかぎれ膏や冬用意 水原秋桜子
熔岩踏みしあかぎれ疼く海の紺 殿村莵絲子 牡 丹
藍ふかく滲む皹の二三すぢ 西村旅翠
擲ちし妻の座遠し皹も 山田みづえ 忘
皹(あかぎれ)といふいたさうな言葉かな 富安風生(1885-1979)
皹ぐすりつけぬ筆墨あらたゆゑ 及川貞 夕焼
皹といふいたさうな言葉かな 富安風生
皹のこの手生涯自分の手 福田蓼汀 秋風挽歌
皹の妻の手一年長かりし 椎橋清翠
皹の指にあつまる水の声 萩原玉子
皹の指講宿の炉にかざし 佐藤 欽子
皹の手に縫ひにくし絹の物 中宮 喜代子
皹の手もて売らるる鶏を撫づ 福田蓼汀 山火
皹の手よまたと会う日のすでになし 鈴木六林男
皹の手より受けたる泥の葱 白岩てい子
皹の痛むや星のあらぬ夜 渡辺民子
皹の娘のほてる手に触はられぬ 飯田蛇笏
皹の胼の薬も問はれけり 谷口雲崖
皹は母似父より医業継ぎ 土屋巴浪
皹や矢取りする子の藁草履 寺野竹湍
皹や遊女の恋を琴に弾き 熊丸淑子
皹や稍稍熱き湯のしみ心地 会津八一
皹を獅子身中の虫という 宇多喜代子
皹を少し気にして同窓会 矢口由起枝
皹薬つけてより紅絹縫ひ始む 敦賀皓子
胼の手を皹の足を己かな 尾崎迷堂 孤輪
胼皹以下に百効百草湯 大石悦子 百花

皹 補遺

あかがりや哀れ絹地に引つかかり 三橋敏雄
あかがりや雨来てくらき鍛冶部落 角川源義
あかがりや頻婆果の唇斯くあらむ 阿波野青畝
あかぎれや貝詰膏に如くはなき 水原秋櫻子 蘆雁
きずがそのままあかぎれとなり冬籠る 種田山頭火
そとかくす皹の手を見のがさじ 臼田亜郎 定本亜浪句集
もう泣かぬ釣瓶あかぎれ踵(きびす)寝て 佐藤鬼房
握りしめる手に手のあかぎれ 種田山頭火 草木塔
匙落ちし音皹にひびきけり 百合山羽公 寒雁
雑兵や皹を吹く草の上 村上鬼城
残る日のほのぼのうごく皹の中 加藤秋邨
雫も小走りあかぎれの子の豆腐買 能村登四郎
手の節々あかがり膏やなほ励む 阿波野青畝
十字切る手に日本の皹もらひ 鷹羽狩行
春の飴妻よ皹も久しからじ 日野草城
春寒く疵がそのままあかぎれとなり 種田山頭火 草木塔
傷あとのあかぎれをまた痛めけり 松崎鉄之介
土乏しあかがりの子を此頃見ず 松崎鉄之介
筆頭にあかぎれ膏や年用意 水原秋櫻子 蘆雁
米量る血ふくあかぎれ泣く嬰児 佐藤鬼房
母の忌の母より継ぎしあかぎれぞ 松崎鉄之介
寐ほてりの吾子の頬なる微塵皹 篠原梵 年々去来の花 皿
擲ちし妻の座遠し皹も 山田みづえ 忘
皹ぐすりつけぬ筆墨あらたゆゑ 及川貞 夕焼
皹といふいたさうな言葉かな 富安風生
皹に遠くなりたる手を洗ふ 山田みづえ 木語
皹のこの手生涯自分の手 福田蓼汀 秋風挽歌
皹の手もて売らるる鶏を撫づ 福田蓼汀 山火
皹の娘のほてる手に触はられぬ 飯田蛇笏 霊芝
皹の踵が疼くお元日 佐藤鬼房
萬物やあかがり強くたこ優し 三橋敏雄

皹 続補遺

あかぎれの膏薬つゝむ落葉哉 木導
あかがりよをのれが口もむさぼるか 路通

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 08:24 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

採氷 の俳句

採氷 の俳句

採氷

例句を挙げる。

切りとりし空の蒼さや採氷夫 武井耕天
太陽はまず採氷夫を青い刃にする 佐々木麻男
採氷のきらめき積まれ月光裡 伊藤皓二
採氷のはじまる雪を掃きにけり 阿部慧月
採氷の橇がわり込む湖上の路 古館曹人
採氷の灯にかはたれの雪飛べり 木村蕪城 寒泉
採氷の赤旗立てて昏れてをり 原田青児
採氷や唯雪原の網走湖 唐笠何蝶
採氷や日輪退る杉木立 窪田あさ子
採氷や湖の端より売る故郷 対馬康子 愛国
採氷や湖の蒼さを切つてをり 三浦敦子
採氷場人馬の道を江上に 桂樟蹊子
採氷夫おのれの影も容れて切る 源鬼彦
採氷夫けもの引き連れ舟小屋に 新谷ひろし
採氷夫とは自己の倒影を截る奴さ 細谷源二
採氷夫ゆがめる顔に笑うかべ 大場白水郎 散木集
採氷夫切れどきりなし嘆息す 成瀬桜桃子 風色
採氷夫棒立ちのとき若き日の眼 細谷源二
採氷夫焚火に立ちて雫する 橋本多佳子
採氷池よべの霰のまろびをり 金子伊昔紅
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
採氷池方形を日の器とす 木村蕪城 寒泉
採氷池青き澱みの凍ゆるぶ 木村蕪城 寒泉
採氷馬空より蒼きもの牽きゆく 小関骸子
暮色より暮色が攫ふ採氷馬 齋藤玄 『玄』
松矮く繞り採氷池を隠す 木村蕪城 寒泉
椎き採氷の辺を登校児 木村蕪城 寒泉
蒼天へ積む採氷の稜ただし 木村蕪城 寒泉
試し切り終り採氷はじまりし 白幡千草

採氷 補遺

スケートの氷切る音山しづか 山口青邨
鋸で氷田を引く採氷夫 平畑静塔
荒き刃のゆききあらはに氷挽く 鷹羽狩行
採氷に山々は日を頒ち合ふ 平畑静塔
採氷の灯にかはたれの雪飛べり 木村蕪城 寒泉
採氷の道具のうちの高箒 上村占魚
採氷の夫に焚火す遠くより 平畑静塔
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
採氷池青き澱みの凍ゆるぶ 木村蕪城 寒泉
採氷池方形を日の器とす 木村蕪城 寒泉
採氷夫焚火に立ちて雫する 橋本多佳子
採氷婦疲れ果てても母の暖 平畑静塔
松矮く繞り採氷池を隠す 木村蕪城 寒泉
蒼天へ積む採氷の稜ただし 木村蕪城 寒泉
椎き採氷の辺を登校児 木村蕪城 寒泉
氷塊の上に祭の氷挽く 鷹羽狩行
氷上を犬駆ける採氷夫が飼へり 橋本多佳子
氷切る男のちから溶けゆく塩 赤尾兜子 蛇
氷挽ききっていきれる冬日の鋸 古沢太穂 古沢太穂句集
氷挽き運ぶ一切手を触れず 右城暮石 上下
氷挽き鋸透ける我鬼忌かな 秋元不死男
氷挽く音こきこきと杉間かな 臼田亜郎 定本亜浪句集
氷挽く鋸土佐の大魚の牙 山口誓子
氷挽ける音の中にて愛憎す 岸田稚魚 負け犬
焚火するもの採氷の田に遠く 平畑静塔
北風の中氷挽きたるあと残る 岡本眸
冷凍の鬆入りの氷挽きゐたり 山口誓子
檻の豹より減るかがやきの氷挽く 赤尾兜子 虚像

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:44 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

砕氷船 の俳句

砕氷船 の俳句

砕氷船

例句を挙げる。

マスクして砕氷船のごと進む 林翔 和紙
夜々見ゆる砕氷船の機関の火 及川牧風
月明や砕氷船の錨垂れ 井上康明
氷塊を水尾に伴ひ砕氷船 市川公吐子
海馬来たる砕氷船の後より 広中白骨
湾外へ砕氷船の一路かな 久米幸叢
砕氷船の水尾をたまりに漁り舟 林佑子
砕氷船の航跡青し蹤いて航く 小野田洋々
砕氷船オロラの下に泊つるかも 間宮緑蔭
砕氷船大日輪をいただきぬ 佐藤青水草
砕氷船海に一路をのこしけり 松原千甫
砕氷船舳先いためて繋りをり 高木紫雲

砕氷船 補遺

マスクして砕氷船のごと進む 林翔 和紙
*げきとして砕氷船も横はる 河東碧梧桐

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷湖 の俳句

氷湖 の俳句

氷湖

例句を挙げる。

一枚の氷湖に幼手を殺す 古舘曹人 能登の蛙
一枚の氷湖をふたり渡れるか 櫂未知子 蒙古斑
一氷湖空の紺さへ許さざり 古内一吐
三面鏡その一枚にある氷湖 対馬康子 純情
児の睡る橇を氷湖に曳き渡る 品川鈴子
冬茜氷湖の中の城一つ 有馬朗人 耳順
初荷橇氷湖をたわみつつ渡る 吉村唯行
喪の家の氷湖をかくす深廂 田村了咲
夕空の星研ぎいづる氷湖かな 徳永山冬子
夜は星の語り部となる氷湖かな 雨宮きぬよ
夜空より暗き氷湖と思ひけり 小島千架子
大吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀
大氷湖落暉散乱しても無音 甲斐虎童
大試験さなかの氷湖かがやけり 木村蕪城 寒泉
天仰ぐほかなし氷湖の真中は 野沢節子
抽んでし氷湖の芦に霧氷かな 奥田智久
日輪を愛す氷湖の真中に 宮津昭彦
日輸のほか何もなき氷湖かな 深谷岳彦
星の数ふえつゝ暗き氷湖かな 浜井武之助
曳く橇の氷湖に沿へり注連貰 村上光子
月と日と倶にただよふ氷湖かな 板谷芳浄
月上げて氷湖一枚暮れ残る 伊東宏晃
月光にさらけ出されし氷湖かな 草間時彦 櫻山
朝焼けて氷湖を渡る北きつね 高岡秀行
橋一つこえて氷湖となりゐたり 友岡子郷
氷湖に雪死装束の白さもて 轡田進
氷湖の日わたるに置きて松葉杖 木村蕪城 寒泉
氷湖ゆく白犬に日の殺到す 岡部六弥太
氷湖より親しきものに蕪城の名 原裕 青垣
氷湖日の出影も輝くわが分身 川村紫陽
氷湖昏れ万籟を絶つ四辺かな 伊東宏晃
氷湖照る吾妻鏡の世も斯くや 木村蕪城
氷湖照る明るさ朴の幹つたふ 早崎明
氷湖白く喪の家の子らけふ見えず 田村了咲
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
氷湖見る胸をわづかに傾けて 古舘曹人 能登の蛙
氷湖駆く余生の力恃みつつ 北見さとる
漁夫戻る肩に氷湖のひかりをり 手島 靖一
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
犬吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀 秋風挽歌
甘露煮に氷湖のひかり粗々し 原裕 青垣
穴釣や氷湖轟く寧からず 新井石毛
穴釣りの人増え氷湖明けしらむ 伊東宏晃
翡翆や氷湖一隅融けそめて 堀口星眠 営巣期
老画家とゆく落日の氷湖の辺 野澤節子 遠い橋
聯珠の灯氷湖をかこみ遠ちに切れ 福田蓼汀 秋風挽歌
脚ひらく氷湖に刃入るるとき 櫂未知子 蒙古斑以後
蒼天を涵し氷湖の罅深し 木村蕪城 寒泉
諏訪衆に風の集まる氷湖かな 原裕 青垣
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子
鳥発つて氷湖傷つく鉄の刃 田川飛旅子
ミシガン湖凍りついたる初日かな 仙田洋子 雲は王冠
光の中眼ひらきどほし湖氷挽く 加倉井秋を 『真名井』
円湖凍てゝ方位東西相隣る 草田男
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
山上湖氷らんとして波さわぐ 篠田悌二郎
山風や夜落ちしところ湖氷る 松根東洋城
月光の切先に触れ湖凍てぬ 根岸善雄
湖凍ててわが声われを驚かす 林翔 和紙
湖凍てて療園の嬉戯玻璃のうち 木村蕪城 寒泉
湖凍てて落暉の総のそよぎをり 大峯あきら
湖凍り林をのぼるオリオン座 堀口星眠 火山灰の道
湖凍るそがひの山に人葬る 木村蕪城 寒泉
湖凍るひびきの夜夜を書に痴るる 木村蕪城 寒泉
湖氷る大きな朝にあひにけり 加藤楸邨
湖氷る日を見さだめつ楮蒸す 栗生純夫 科野路
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湖氷挽く挽き音しだいに咽び音に 加倉井秋を 『真名井』
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
猟銃音湖氷らんとしつゝあり 相馬遷子 山國
凍湖に犬の見つけし落しもの 青葉三角草
凍湖の汀ともなく木立あり 依田秋葭
月一輪凍湖一輪光りあふ 橋本多佳子
犬も亦凍湖を渡る家路あり 青葉三角草
穴釣す暁けの凍湖を渡り来て 松尾緑富
風吹けり凍湖に琴糸はるように 対馬康子 愛国
ショーのあと消す氷盤に水撒きて 津田清子 二人称
寸鉄をもて氷盤を磨ぎにけり 栗生純夫 科野路
氷盤の炎消しがたしかゆ炊く火 細谷源二 砂金帯
火口湖が白き氷盤となれるのみ 山口誓子

氷湖 補遺

*えり古りて湖尻の氷雨上がりけり 松村蒼石 寒鶯抄
あけぼのや湖の微をとる氷魚網 森澄雄
うらゝかや氷の解けし諏訪の湖 正岡子規 麗か
かすれては氷湖に交すわが語はも 大野林火 青水輪 昭和二十六年
さゝ波や氷らぬ鳰の湖青し 正岡子規 鳰
一枚の氷湖に幼手を殺す 古舘曹人 能登の蛙
一枚の氷湖はめこむ古代地図 有馬朗人 母国
一枚の氷盤流れ来滝の川 山口青邨
火口湖が白き氷盤となれるのみ 山口誓子
外燈に氷湖をわたりきし風音 大野林火 青水輪 昭和二十六年
街空に氷れる湖の線がある 木村蕪城 一位
葛飾や氷沼の葦の日を恋ふる 角川源義
葛飾や氷沼を午の鉦すめる 角川源義
甘露煮に氷湖のひかり粗々し 原裕 青垣
観念の死を見届けよ青氷湖 佐藤鬼房
眼前に古鏡眼下に結氷湖 岡本眸
機窓を開けて諏訪湖の氷解 木村蕪城 一位
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
強き星氷湖はすでに闇のなか 鷲谷七菜子 天鼓
結氷湖懐中燈の輪がすすむ 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
結氷湖氷の解けし方に村 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
月一輪凍湖一輪光りあふ 橋本多佳子
月光にさらけ出されし氷湖かな 草間時彦 櫻山
犬吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀 秋風挽歌
鍵束を凍湖に鳴らし神楽舞 三橋鷹女
湖があり森あり氷河とどまれる 鷹羽狩行
湖の青氷下魚の穴にきはまりぬ 斎藤玄 狩眼
湖の氷にはぢく霰哉 正岡子規 霰
湖の氷らず海につながりて 右城暮石 虻峠
湖の氷をよごす出初かな 前田普羅 普羅句集
湖の靜かに三井の鐘氷る 正岡子規 鐘氷る
湖氷り川躍りゆく大地かな 岡本眸
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湖撫でて氷雨一過やある永別 楠本憲吉 孤客
光芒とともに凍湖へ夕日降る 中村草田男
高熱の落ちたる湖の厚氷 橋閒石 無刻
山の湖に白雲閑たり氷浮く 村山故郷
山へだて結氷湖あり眠られず 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
四肢氷りついて氷湖となりにけり 三橋鷹女
春の湖夜の氷の下明るし 加藤秋邨
障子越しさわだつ湖の氷解 木村蕪城 寒泉
信濃いま蘇枋紅梅氷解くる湖 橋本多佳子
諏訪衆に風の集まる氷湖かな 原裕 青垣
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
雪積むを許して湖の氷りけり 石田勝彦 秋興以後
葬りの土より氷る諏訪の湖 古沢太穂 古沢太穂句集
蒼天を涵し氷湖の罅深し 木村蕪城 寒泉
大試験さなかの氷湖かがやけり 木村蕪城 寒泉
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
昼すぎの睫毛の繁る氷沼 飯島晴子
冬の雲海大いなる氷盤 山口誓子
冬茜氷湖の中の城一つ 有馬朗人 耳順
凍湖に赤き椅子一つ置く何見んと 藤田湘子
凍湖に焚火せし罪測られず 津田清子
凍湖一面町に冬咲く花を見ず 中村草田男
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子 天鼓
氷らんとせる湖の色さだまらず 岸田稚魚 紅葉山
氷る湖の温泉おつるところ舟囲ふ 木村蕪城 一位
氷る湖へだて二街響きあふ 木村蕪城 寒泉
氷る湖太陽これを犯すなし 阿波野青畝
氷る湖二つに割るる夜を囃す 原裕 青垣
氷る湖日の落ち際をきびしくす 岸田稚魚 紅葉山
氷を割れば水はたはたと湖鳴りす 角川源義
氷解けて湖辺の路の往来かな 正岡子規 凍解
氷魚といふさかな小鉢に湖の宿 桂信子 花影
氷湖の上氷魚釣り出され腸すかす 角川源義
氷湖の底何かまさぐる糸たらし 角川源義
氷湖の日わたるに置きて松葉杖 木村蕪城 寒泉
氷湖より親しきものに蕪城の名 原裕 青垣
氷湖見る胸をわづかに傾けて 古舘曹人 能登の蛙
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
氷湖出し水よろこびて熔岩の端を 飯田龍太
氷沼に下りて 鴉の黒化粧 三橋鷹女
氷沼野や水木は空に傾ける 角川源義
氷盤に汝が意ふ型を刻まむと 山口誓子
氷盤に立つ『白鳥の死』を了へて 鷹羽狩行
氷盤の炎消しがたしかゆ炊く火 細谷源二 砂金帯
氷盤を向股向脛ゆきめぐる 山口誓子
夫婦住む鉄路と凍湖見下ろして 中村草田男
風の湖舟溜りより氷り初む 上田五千石 森林
暮れんとす氷湖をへだて吠ゆる犬 大野林火 青水輪 昭和二十六年
猟銃音湖氷らんとしつゝあり 相馬遷子 山国
聯珠の灯氷湖をかこみ遠ちに切れ 福田蓼汀 秋風挽歌
老人に子を遺りにくる氷沼 飯島晴子
老体を氷湖の道がつきぬける 斎藤玄 狩眼
礫うつ氷沼のひびきを愛しみて 橋本多佳子

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:28 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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