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雪野 の俳句

雪野 の俳句

雪野 

あへぎゆく汽笛を刻に雪野人 宮坂静生 青胡桃
お日照るや雪野のくまの鵯のこゑ 金尾梅の門 古志の歌
きんいろのきつねの駆けた足跡か雪野に滲むちいさな闇は 加藤治郎
じゃみせんじょんから坊様(ぼさま)に蹤きて雪の原 高澤良一 燕音
その奥に水ひびきあふ雪野かな 野木藤子
たいくつな白樺佇てり雪の原 三輪初子
ながながと川一筋や雪の原 凡 兆
はてしなき雪野に鶴は朱を点ず 木下ふみ子
ひた歩く雪原恋の罠あらずや 仙田洋子
ぼほと日が落つ雪原の畦木ども 桜井博道 海上
またたかぬ一灯が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子
まぶしくて雪原ひかりの鹿ふやす 永田耕一郎 氷紋
みかへれば雪野のひかり榛にそふ 川島彷徨子 榛の木
みそさざい聴く雪原に橇止めて 小坂順子
やがてたつ鶴粛然と雪の野に 竹下陶子
われとわが顔の昃りを雪の原 佐野良太 樫
われに遇うため父は生まれし雪野 林美鈴
一つ家のともし火低し雪の原 雪 正岡子規
一斉に雪原をたつ日の出鶴 浅沼艸月
一村のみ雪原白紙委任状 河野 薫
一片の雪だにつけず雪野の木 小澤實
一望の雪野に畦の井の字かな 二瓶洋子
影一つだになくて雪原睡くなる 野澤節子 遠い橋
黄塵の野面の隅に雪の富士 水原秋桜子
黄鷹の雪原の果まで飛翔 長谷川かな女 花寂び
何処やらにせゝらぎの音雪の原 西山泊雲 泊雲句集
花嫁が雪野まぶしき駅に下車 阿部みどり女
画竜点晴どころではなく雪野かな 櫂未知子 蒙古斑
鴨飛んで雪原に大き影落す 林 翔
眼とひたいで出逢う雪野に光り合い 岩間愛子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
汽笛しみゆく雪原の果に出そむ星 シヤツと雑草 栗林一石路
汽笛ひいひいと雪の原暮るゝ工場あり シヤツと雑草 栗林一石路
騎初や鞭加へ越す雪野原 広江八重桜
久々に照る雪原のあの木この木 佐野良太
玉川の一筋光る雪野かな 内藤鳴雪
禽のみに目聡く斑雪野に住めり 堀口星眠
金売が小荷駄行くなり雪の原 几董
群れ鴨を載せ雪原のかゆからむ 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
形代となるまで伏せむ雪の原 柿本多映
穴と見し所家なり雪の原 松瀬青々
月光の雪原を這ふはぐれ雲 岡田日郎
月雪の野はたしかなり大根時 惟然
元日の日輪雪の野をわたる 宮崎青岬
枯葉揉まるる音澄んで雪原の月 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
後続を待てり雪野の平にて 津田清子
行人に雪野の起伏晴れにけり 金尾梅の門 古志の歌
降る雪の/野の/深井戸の/谺かな 重信
降る雪の野の深井戸の谺かな 高柳重信
根雪原影の嶽おく月明り 河野南畦 湖の森
採氷や唯雪原の網走湖 唐笠何蝶
山室のひとつ灯蒼む根雪原 河野南畦 湖の森
子が知れる雪野の果の屠殺場 沢木欣一
寺一つむつくりとして雪の原 雪 正岡子規
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
耳聾ひて雪原と青空にあり 千代田葛彦 旅人木
若さ遣りな場なし雪原の道つづく 右城暮石
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
手の平を落とし雪野に転びたる 大石雄鬼
朱雀門紛れもあらず雪の原 坪井澄郎
受難節の日矢むらさきに雪の原 鷲谷七菜子
初鴉雪原低くとびつづけ 小野池水
傷あらぬ雪原に顔埋めたし 能村研三 騎士
硝子戸に雪原あふる卒業歌 有働亨 汐路
唇耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
吹かるるは何の蔓もの雪の原 高澤良一 随笑
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子
清算のごとく雪野の石の家 三谷昭 獣身
声出さば他人の声なり雪の原 小泉八重子
青し青し若菜は青し雪の原 来山
雪の原すべりゆくごと大烏 稲葉道子
雪の原とぶ夕雲の力なし 橋本鶏二 年輪
雪の原なる探梅の五六人 長谷川櫂 天球
雪の原ぼつこりとなる木陰かな 美濃-此筋 俳諧撰集「有磯海」
雪の原穴の見ゆるは川ならめ 寺田寅彦
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原道は自然と曲りけり 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
雪の原猟銃音がわれを撃つ 遷子
雪の野にところところの藁屋哉 雪 正岡子規
雪の野にもろびとこぞりて雪汚す 今泉康弘
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子 紅日
雪の野に拾ふ薄墨羽毛なり 古賀まり子 緑の野以後
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古館曹人
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の上に見えつつ富士ヶ嶺はくろずむ雲とともに黒ずむ 宮原勉
雪の野の兎華麗な罠に陥つ 能村研三 騎士
雪の野の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の野の彼方を行くは知る人か 高濱年尾 年尾句集
雪の野や畝なす茶垣遠黝し 杉山岳陽 晩婚
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子 紅日
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を最上の幅で押し通す 津田清子 二人称
雪の野を方向づける川流れ 津田清子 二人称
雪眼鏡雪原に日も牛も碧き 橋本多佳子
雪原とならばまた来む芒原 橋本美代子
雪原となりし筑紫野久女の忌 鈴木厚子
雪原にあらかた埋もれ梅林 長谷川櫂 古志
雪原においてきぼりのごと一戸 高澤良一 随笑
雪原におらぶ言の葉なさぬ語を 川口重美
雪原につんと彳ちたる萱いっぽん 高澤良一 随笑
雪原にまつたき夕日垂れ来たる 石橋辰之助 山暦
雪原にわが機影投げ初飛行 室賀杜桂
雪原にわが誕生の紅一すじ 魚沼泉
雪原に塩湖の広さおく機窓 山田弘子 こぶし坂
雪原に汽笛の沈む成木責 石田波郷
雪原に月光ゆらぐこともなし 岡田日郎
雪原に月光充ちて無きごとし 岡田日郎
雪原に建てて見捨てて己が墓 中島斌雄
雪原に犬放ち炉火熾んなり 河野南畦 『黒い夏』
雪原に呼気のみ太しゆまりして 川口重美
雪原に杭打つ土の匂ふまで 加藤憲曠
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に行き暮れいつか星の中 岡田日郎
雪原に子のこゑのある淋しさよ 石寒太 あるき神
雪原に十勝の月をあげにけり 星野松路
雪原に小さき礼拝堂(チャペル)暮れ残る 仙田洋子 雲は王冠
雪原に小さき礼拝堂暮れ残る 仙田洋子
雪原に沼あり水晶水湛ふ 岡田日郎
雪原に雪原の道ただ岐る 八木林之助
雪原に雪降り月光の跡癒やす 岡田日郎
雪原に川あらはれて重きかな 桜井博道 海上
雪原に川の全長沈みけり 鈴木 勉
雪原に太のどのびて鶏鳴す 北原志満子
雪原に丹頂の婚かがやけり 小柳ひろ子
雪原に天つ日暗きまで照りぬ 岡田日郎
雪原に土よりの杭うらがなし 成田千空 地霊
雪原に灯して牧舎年を守る 金箱戈止夫
雪原に到り双手を挙げて会ふ 成田千空 地霊
雪原に踏み入るなんと淋しき世 熊谷静石
雪原に道あるらしや人遠し 高木晴子
雪原に屯田兵舎と碑が一本 瀬野美和子 『毛馬堤』
雪原に白顕ち晒す布の丈 野沢節子
雪原に風吹き夕日消しにけり 岡田日郎
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚
雪原に兵叱る声きびしかり 片山桃史 北方兵團
雪原に片手袋の指忘れ 対馬康子 吾亦紅
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に北斗七ツの六ッ昇る 岡田日郎
雪原に野哭といふ語口もるる 石寒太 炎環
雪原に立方体のホテルかな 岩崎照子
雪原に佇つ初陣のこころあり 中原道夫
雪原に橇現る朝日躍り出で 中山砂光子 『納沙布』
雪原に鴉の掟翔けては降り 齋藤愼爾
雪原のいづこ月光ひらりと舞ふ 岡田日郎
雪原のおのが影へと鷲下り来 山口草堂
雪原のかなた雪嶺絹の道 片山由美子 風待月
雪原のしづかさ余呉の湖を嵌め 永井博文
雪原のなかに川ある墳墓の地 佐川広治
雪原の一樹かがやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子
雪原の一樹高しと日はのぼる 石田波郷
雪原の果て見て歩くばかりなり 永田耕一郎 氷紋
雪原の起伏失せつゝ雪深む 大橋敦子 匂 玉
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の月枯蔓に大いなる 西本一都
雪原の月光かたまる一巨木 岡田日郎
雪原の見えぬところに翳生ず 宗田安正
雪原の高き一樹を恃みとす 小澤克己
雪原の黒きところが能の村 佐川広治
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子
雪原の子に太陽がつきまとう 長嶋石城
雪原の樹間に光る湯の湖かな 若林幸枝
雪原の深創ゑぐり天塩川 山崎秋穂
雪原の人か一点動くを待つ 有働亨 汐路
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子
雪原の水漬く一線菜現れぬ 原田種茅 径
雪原の青さ身に沁む朝の楽 堀口星眠 火山灰の道
雪原の赤きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雪舐め老犬牛を追ふ 岡田日郎
雪原の泉へけものみち寄れり 中戸川朝人 残心
雪原の中に春立つ産屋はも 依田明倫
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の兎の足跡藪目指す 斉藤志津子
雪原の突起もつとも白き藁塚 河合凱夫
雪原の日矢に盲ひし達磨売り 木内彰志
雪原の白光月光を以つて消す 岡田日郎
雪原の風遠し樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の風遠し樹氷晶々と 内藤吐天
雪原の風遠樹氷晶晶と 内藤吐天
雪原の焚火に月の上りけり 岩田由美
雪原の平らに書かれし遺書ありき 寺田京子
雪原の明より暗へ三十三才 木附沢麦青
雪原の木の影あはし影を踏む 仙田洋子 橋のあなたに
雪原の夜風ぶつかれ街に酔ふ 石橋辰之助
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藍の彼方の吾子七夜 堀口星眠 営巣期
雪原の藁塚として寄り添へる 樋笠文
雪原の靄に日が溶け二月尽 相馬遷子
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原へつながつてゐる長廊下 西山 睦
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や肩から上の人往き来 嶋田摩耶子
雪原や小屋に刃物を閉じ込めて 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
雪原や抜きさしの歩の女の息 猪俣千代子 堆 朱
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪原をわたる日ざしに馬放つ 木村凍邨
雪原を悪童のごと漕ぎ進む 松本明子
雪原を圧してオーロラ出現す 坊城 中子
雪原を一列に来る下校の児 中園真理子
雪原を琴唄まろびゆく夕べ 文挟夫佐恵 雨 月
雪原を月わたりゆく翁面 斎藤梅子
雪原を跳びては羽摶ち鶴の舞 伊東宏晃
雪原を跳び跳ぶ兎一未来 中島斌雄
雪原を分つ落葉松襖かな 古賀まり子 緑の野以後
雪原を北狐また銀狐 天本美沙絵
雪原を来てやまどりの尾をひらふ 那須乙郎
雪原行くきのふの吾を置き去りに 西井さち子
雪野へと続く個室に父は臥す 櫂 未知子
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野ゆく誰もひとりの手を垂れて 阿部誠文
雪野一個所肥壷にふくらめる 栗生純夫 科野路
雪野遠し墓に遇ふさへ親しくて 成瀬桜桃子 風色
雪野原涯に昼餉のうすみどり 平井久美子
雪野原真一文字に昏れにけり 工藤菁生
雪野行き吾には吾の放浪記 大橋敦子 匂 玉
雪野行く汽車にとびつく一戸の灯 笠井操 『雪の紋』
雪野照り莎の金ンの紛れたる 成田千空 地霊
雪野暮るるわが脳濁るはやさにて 高野ムツオ 陽炎の家
雪野来て雪野の果に灯をともす 三谷昭 獣身
雪野来て買ひたきものに懸想文 金箱戈止夫
雪野来て半鐘記号の赤連珠 平井さち子 紅き栞
雪野鴉雨誘ふ声しぼるなり 金尾梅の門 古志の歌
千の鬼出て雪原に跡もなし 加室鳴
千年の大寺一つ雪野かな 雪 正岡子規
川鳴れど雪原暮れて道失ふ 岡田日郎
泉まで雪原踏まれ往来あり 岡田日郎
足跡の盡きし戸口や雪の原 雪 正岡子規
足跡の盡きし小家や雪の原 雪 正岡子規
体重をかけ雪原を横切らねば 嶋田摩耶子
丹頂の舞ふ雪原の輝きに 村上唯志
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
朝日さす雪原金沙銀沙照り 鈴木貞雄
長々と川一すじや雪の原 凡兆 選集古今句集
鳥の数いのちの数の雪野原 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
湯をかけて墓現はるる雪の原 藺草慶子
燈台の燈が雪原へ伸び切れず 河野南畦 『硝子の船』
踏みわたる雪野日たけつ鶏遠き 金尾梅の門 古志の歌
逃げ水が逃ぐ雪原の高速路 茨木和生 木の國
二タ杉より離々の人家の雪野かな 野村喜舟 小石川
馬となるべき魂あをく雪原に 正木ゆう子
柏の葉生きて雪野を駈けつづく 堀口星眠 営巣期
白山に引き上げられし雪の原 大石悦子 百花
白日の雪原を行く浚はれゆく 成田千空 地霊
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野に月あり青き魔がひそみ 堀口星眠 営巣期
斑雪野に古傷かばふ身を斜め 稲垣きくの 牡 丹
斑雪野に黒牛といふ鬱を置く 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
斑雪野に波打ち寄する厚田かな 古川英子
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治
斑雪野やいきなり尽きて陸奥の海 中川禮子
斑雪野や産着干さるる牧夫寮 丸山美奈子
斑雪野や日差し静かにゆき渡り 安田敏子
斑雪野を楽人の群れ通り過ぐ 川崎展宏
班雪野を詩嚢繕ひより戻る 中原道夫
百歳の彼方は雪の野づらかな 成田千空
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
風紋のしるき雪野を踏み戻る 辻 桃子
分水嶺汽車を雪野へ放ちけり 羽部洞然
噴煙の影雪原を蒼くせり 前山松花
文藝はいまだ雪原に佇つ柱 中原道夫
墓前なり月山雪の野に泛ぶ 篠田悌二郎
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
没日の後雪原海の色をなす 有働 亨
本然の日と雪の原ここ母郷 成田千空 地霊
眠りも祈り雪原は雪重ね 斎藤愼爾 夏への扉
夜の嶽を灯が登りゆく根雪原 河野南畦 湖の森
夜の嶽を燈が登りゆく根雪原(立山連峰) 河野南畦 『湖の森』
厄人形雪野へ送る肩車 佐々木とく子 『土恋』
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕空や雪野に黒き楊柳 永井龍男
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
葉のついてゐるのは柏雪の原 高木晴子
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本 眸
林檎の芯抛る雪原の大反射 内藤吐天
林檎置く車窓雪野は果もなく 永井龍男
鷲下りて雪原の年あらたなり 山口草堂
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
橇失せぬ雪原と星あふところ 平野 露子
翔けゆきし影かたちなき雪の原 的野雄
鴉二羽寄りつ離れつ雪の原 辻田菊子

雪野 補遺

うつむくときおのが息の香雪野にて 橋本多佳子
けぶり立つ稲架木雪野の墓標とす 鷲谷七菜子 銃身
しかも狙う鳶か 雪原無一物 伊丹三樹彦
たまゆらの日のたちのぼる雪の原 上田五千石『琥珀』補遺
と見こう見しても 雪野の 飢鴉 伊丹三樹彦
またたかぬ一燈が刺す雪の原 鷲谷七菜子 銃身
絢爛たる雪原を見て又ねむる 岸田稚魚 雁渡し
一つ家のともし火低し雪の原 正岡子規 雪
一樹の影なき雪原へ入り来り 鷹羽狩行
餌を漁るは個々 雪原の群鴉 伊丹三樹彦
何すればこの雪原に跡のこる 右城暮石 天水
懐炉の火身の一点に雪野行く 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
角キラリ雪原の鹿既に在らず 中村草田男
関ケ原よりの雪野に百足虫山 山口誓子
帰農記に雪野の果の木は入れず 細谷源二 砂金帯
汽車見る子せちにいとほし雪の原 富安風生
汽車全く雪原に入り人黙る 西東三鬼
穴あいてとけてゐるなり雪の原 三橋敏雄
月が照り雪原遠き駅ともる 橋本多佳子
月の出を夜嵐となる雪の原 飯田蛇笏 家郷の霧
見張る首 雄とし 雪野の番い雉子 伊丹三樹彦
三叉に白き花あり雪の原 山口青邨
思ひ出のごと斑雪野に日当れる 清崎敏郎
寺一つむつくりとして雪の原 正岡子規 雪
耳そばだてて雪原を遠く見る 飯田龍太
車窓に映るわが像雪の野を走る 松崎鉄之介
若さ遣り場なし雪原の道つゞく 右城暮石 声と声
水あればある夕焼や雪の原 中村汀女
星白く炎えて雪原なほ暮れず 相馬遷子 雪嶺
生きものの白さで飛んで 雪野の鷺 伊丹三樹彦
青鷺のこゑ倶会々々と斑雪野に 山田みづえ まるめろ
切れ切れの雪野の虹をつぎあはす 橋本多佳子
雪の原の灯影まことに片ほとり 中村草田男
雪の原ふみ大滝を見んとする 山口青邨
雪の原一樹の蔭に尿かな 日野草城
雪の原何処まで見ゆる月の雪舟 尾崎放哉 大学時代
雪の原犬沈没し躍り出づ 川端茅舎
雪の原深夜の赤き月出づる 相馬遷子 山国
雪の原中仙道の家灯る 阿波野青畝
雪の原猟銃音がわれを撃つ 相馬遷子 山河
雪の野に 尖るを 棒杭とも墓とも 伊丹三樹彦
雪の野にところところの藁屋哉 正岡子規 雪
雪の野に狭軌の鉄の路つづく 山口誓子
雪の野に最も白き白亜館 山口誓子
雪の野に出てうるほへる昼の汽車 廣瀬直人
雪の野に馬を使ひて耕作す 渡邊白泉
雪の野に夜陰おもたき寺廂 松村蒼石 雪
雪の野に立つ黒きもの墓石なり 山口誓子
雪の野のいま夕鶴に波うてる 古舘曹人 砂の音
雪の野のふたりの人のつひにあふ 山口青邨
雪の野の一隅照らす夜の娶り 有馬朗人 知命
雪の野へ吾子がゆあぶる音ゆけり 渡邊白泉
雪の野をうがちて深き井戸をくむ 有馬朗人 母国拾遺
雪の野を一人学校より帰る 山口誓子
雪の野を最上の幅でおし通す 津田清子
雪の野を多彩のコンテナ貨車走る 山口誓子
雪原に灰撒くは雪を融かすなり 加藤秋邨
雪原に形あるもの牛の柵 山口誓子
雪原に午後のひかりのほろびゆく 飯田龍太
雪原に硬き闇あり星を嵌め 相馬遷子 雪嶺
雪原に黒一点を加へ佇つ 林翔
雪原に黒目がちなる異界の子 佐藤鬼房
雪原に榛の木のみの立つ夕日(新潟県浦佐、行方秋峰さん居六句) 細見綾子
雪原に生きて女が灯に歩く 赤尾兜子 蛇
雪原に遭ひたるひとを燈に照らす 橋本多佳子
雪原に足跡犬の停まるまで 山口誓子
雪原に踏切ありて踏み越ゆる 橋本多佳子
雪原に日射せり糞まる力出づ 岸田稚魚 雁渡し
雪原に日射せり糞る力出づ 岸田稚魚 負け犬
雪原に白鳥雪くれば更に 金子兜太
雪原に物蔭ありて真黒し 佐藤鬼房
雪原に紛れざらんと鶴啼けり 岸田稚魚 筍流し
雪原に兵の壮夫の発句生れよ 石橋秀野
雪原に北斗の針の廻りけり 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原に没る三日月を木星追ひ 橋本多佳子
雪原に橇駆り吾子と昏れてゐる 橋本多佳子
雪原に雉子出あるく伊吹山 岡井省二 明野
雪原に鴉喪章の羽根納め 鈴木真砂女 夏帯
雪原のどの家にも月芯をなす 飯田龍太
雪原のひとりの尿意清浄と 飯田龍太
雪原のわれ等や鷹の眼下にて 橋本多佳子
雪原の一樹かゞやき囀れり 相馬遷子 山国
雪原の雨ぬくし木立一色に 大野林火 冬青集 雨夜抄
雪原の家山寄りにかたまれり 右城暮石 虻峠
雪原の萱離々たりやスキー行 山口誓子
雪原の起伏に翳の煙色 右城暮石 句集外 昭和五十五年
雪原の極星高く橇ゆけり 橋本多佳子
雪原の昏るるに燈なき橇にゐる 橋本多佳子
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子 山国
雪原の銃身徐々に決りゆく 鷲谷七菜子 銃身
雪原の水音鈴ふるごと暮るる 鷲谷七菜子 銃身
雪原の轍白さを失はず 右城暮石 句集外 昭和四十一年
雪原の天地神明去りがたし 古舘曹人 能登の蛙
雪原の白さ 生きものの鷺の白さ 伊丹三樹彦
雪原の夜気をしりへに橇の燈 飯田蛇笏 家郷の霧
雪原の夜明孤屋は火を燃やす 福田蓼汀 秋風挽歌
雪原の藁塚ぐるり雪陥ち込む 山口誓子
雪原の赭きサイロのロシヤ文字 松崎鉄之介
雪原の雉子となりいま朝日さす 岡井省二 前後
雪原の靄に日が溶け二月盡 相馬遷子 雪嶺
雪原は月読神伏してゐる 平井照敏
雪原やアイヌの国のシャモ部落 石塚友二 磊[カイ]集
雪原やとんで二つの監視塔 石川桂郎 高蘆
雪原や千曲が背波尖らして 橋本多佳子
雪原や落ち方の月隈見する 臼田亜郎 定本亜浪句集
雪原より低く絶対安静位 岸田稚魚 雁渡し
雪原よ降り疲れたる雪遊ぶ 岸田稚魚 雁渡し
雪原をゆくとまくろき幌の橇 橋本多佳子
雪原をゆく銃口を怠らず 石田勝彦 百千
雪原を堰きて小川の水やはらか 右城暮石 句集外 昭和二十八年
雪原を倖せとみる日輪のかがやき 赤尾兜子 蛇
雪原を山まで誰かのしのし行け 西東三鬼
雪原を焚きけぶらして鉄路守る 橋本多佳子
雪原を無疵のうちに見に来たる 右城暮石 散歩圏
雪野のかぎり行きたし呼びかへされずに 橋本多佳子
雪野の桔梗とり来たばねる荒むしろ 松崎鉄之介
雪野ゆくもろ手隠して背を曲げて 鈴木真砂女
雪野より梅野につゞく遠い雲 高屋窓秋
雪野暮れすぐ木星より光来る 橋本多佳子
雪野鴉己れ枉げねば棲みつけず 上田五千石『田園』補遺
千年の大寺一つ雪野かな 正岡子規 雪
疎林立つところもはだら雪の原 阿波野青畝
鼠駆け出しが雪原ひろがれり 山口誓子
足跡の盡きし戸口や雪の原 正岡子規 雪
足跡の盡きし小家や雪の原 正岡子規 雪
電線や雪野はるばる来て吾を過ぐ 橋本多佳子
白馬ばかり朝焼けゐるよ雪野果て 角川源義
斑雪野にすこし暴れし蘇民祭 岡井省二 鹿野
斑雪野の月夜を水の流れくる 飯田龍太
斑雪野の端清潔な厠置き 岡本眸
斑雪野の夕日湯の宿まで蹤くか 大野林火 方円集 昭和五十一年
斑雪野へ父の柩を焼きにやる 小林康治 四季貧窮
斑雪野や怯啼く鷺の松くろし 角川源義
斑雪野や女男の塞神の肩を擁く 角川源義
斑雪野を集めて高め富士といふ 上田五千石『琥珀』補遺
風音にまじる音なし雪の原 相馬遷子 山国
仏菓捧げゆくに 尾を立て雪野の犬 伊丹三樹彦
圃も湖もただに雪原老スワン 角川源義
歩かねばならぬ雪野を人歩く 山口誓子
暮れてなほ天上蒼し雪の原 相馬遷子 山河
棒が立って 鴉がとまる ただ雪野 伊丹三樹彦
釦一個が どこかで失せて 雪野の旅 伊丹三樹彦
目から殺(や)られる男 雪野の陽さえも敵 伊丹三樹彦
湧きそめて星かぎりなし雪の原 相馬遷子 山国
夕焼のかそかなりしか雪の原 相馬遷子 山国
略奪の速さに過ぎて雪野汽車 岡本眸
啼かず飛ばず雪野鴉の二羽三羽 鈴木真砂女 夕螢
鴉には飽いてる 雪野へ坐職の眼 伊丹三樹彦

雪野 続補遺

なが~と川一筋や雪の原 凡兆
雁啼くや明星しづむ雪の原 常世田長翠
月雪の野はたしか也大根時 惟然
七種のみくさは摘し雪野かな 四睡
青し~わか菜は青し雪の原 小西来山
雪の原ほつこりとなる木かげ哉 此筋
雪の野に雪をさゝげし荊棘哉 加舎白雄
川筋のたゞしくなりし雪野哉 乙訓
日の落る方が西なり雪の原 井上士朗
富士に添て富士見ぬ空ぞ雪の原 高井几董

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 16:04 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

地吹雪 の俳句

地吹雪 の俳句

地吹雪

あす晴るるための地吹雪アイヌ村(コタン) 宮坂静生
こぼれつつ地吹雪橋を渡りゆく 鈴木鷹夫 千年
さらさらと地吹雪あそぶ殉難碑 伊藤霜楓
スキー迅し従ひ走る雪煙 大家湖汀
やみくもに駈け出す地吹雪番外地 平井さち子 紅き栞
伊吹嶺に雪煙見ゆる薬草屋 後藤和朗
一瞬の地吹雪に地の動きけり 瀬野美和子 『毛馬堤』
海へ還る地吹雪晩年泣かぬ母 齋藤愼爾
革命いつのこと地吹雪に昏れる村 木附沢麦青
岩手山雪けむり立つ二日かな 沼澤 石次
汽車の厚き硝子雪浪かがやかす 西村公鳳
畦青む地吹雪除けも外されて 窪田竹舟
月光に落葉松羽摶つ雪けむり 堀口星眠 営巣期
月明や乗鞍岳に雪けむり 石橋辰之助 山暦
最北のバス地吹雪に呑まれゆく 小笠原弘順
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
初夢のなかの高嶺の雪煙 飯田龍太
人死にし山月明の雪けむり 高須茂
吹雪荒れ地の雪けむりつぎて立つ 石橋辰之助 山暦
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂
雪けむり日輪の渦いく重にも 千代田葛彦 旅人木
雪けむり立つ夜の星座鋭く正し 石橋辰之助 山暦
雪けむり立てど北斗はかゝはらず 石橋辰之助 山暦
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
雪煙岳に孤高のこゝろあり 岡田貞峰
雪煙天に吐き出す前穂高 石川英子
雪落ちて空をながるる雪けむり 辻桃子
雪浪に濱はせきれい鳴にけり 松瀬青々
雪浪を鶫喜び跳びにけり 茨木和生 往馬
地吹雪がかくす札幌時計台 魚野満佐流
地吹雪がしんと集まる壜の底 大下真利子
地吹雪が消して見知らぬ街となる 高橋笛美
地吹雪が北の斜面を責めやまず 能村研三 騎士
地吹雪と行くほのぼのと馬の臀 橘川まもる
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子(1931-)
地吹雪にこの身が今に飛ばされん 三好潤子
地吹雪にひとの消えゆく墓の裏 渡辺直信
地吹雪にゆさぶられをり夜の帷 伊藤彩雪
地吹雪に一本の杖護身かな 佐藤母杖 『一管の笛』
地吹雪に何さらはれし墓傾ぐ 中山砂光子 『納沙布』
地吹雪に帰心引止められてをり 山田弘子 螢川
地吹雪に捲かれてすがる燈台碑 伊東宏晃
地吹雪に杭とならんか立ちすくみ 笠井操 『雪の紋』
地吹雪に根尾の老桜巌のごと 近藤一鴻
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消え現れて先ゆく蓑 福田甲子雄
地吹雪に石にならむと身を丸め 小林道子 『下萌』
地吹雪に雪原の村吹き消さる 長谷川櫂 古志
地吹雪に夕日とろりと翼伸ばす 昆ふさ子 『冬桜』
地吹雪のかの糸櫻見舞ふべし 黒田杏子 花下草上
地吹雪のなか身ひとつの寧きかな 澁谷道
地吹雪のやがて遠のく三番叟 黒田杏子 一木一草
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪のやめば山星近かりき 志津天児
地吹雪の渦うまれつつ大沼暮るる 小林 碧郎
地吹雪の渦巻く芯に村一つ 相馬沙緻
地吹雪の果に池あり紅鱒あり 西東三鬼
地吹雪の顔もて集ふ仲間かな 成田千空
地吹雪の駆け降りて来る段々田 森田かずを
地吹雪の空あをあをとありにけり 杉山霄子
地吹雪の行方も知らず北斗の座 宮下師水
地吹雪の高流れして伊賀暗し 橋本鶏二
地吹雪の塞ぐ一路の風の岬 円谷よし子
地吹雪の上は青空草城忌 松倉ゆずる
地吹雪の先には誇り高き海 櫂未知子 貴族
地吹雪の千石平星咲き出す 伊藤いと子
地吹雪の道あらはれて来るを待つ 永田耕一郎 方途
地吹雪の彼方の桜吹雪かな 遠山 陽子
地吹雪の沸騰湖の日をかくす 堀口星眠 営巣期
地吹雪の夜の涯より橇の鈴 佐藤国夫
地吹雪の野を抜けきって夕日あり 奥田智久
地吹雪の恍惚として寒立馬 鈴木石夫
地吹雪は遠く花屋に花満ちて 泉風信子
地吹雪やさきのさきまで姥捨野 小原啄葉
地吹雪やひととへだつる村また町 八幡城太郎
地吹雪や一切黝き夜明前 加藤知世子 花 季
地吹雪や遠野に増ゆる天の音 斉藤夏風
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房(1919-2002)
地吹雪や沖の一縷を目にとどめ 金箱戈止夫
地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子
地吹雪や脚のみじかき陸奥の馬 畑中とほる
地吹雪や牛飼住める茅のはて 堀口星眠 営巣期
地吹雪や曲りて並ぶ大氷柱 長谷川櫂 古志
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄
地吹雪や絶版の書が店先に 辻桃子
地吹雪や叩き鳴らして津軽三味 中岡毅雄
地吹雪や柱のきしむおしら神 小原啄葉
地吹雪や燈台守の厚眼鏡 加藤憲曠
地吹雪や胴擦りあへる寒立馬 小原啄葉
地吹雪より解かれ羽もつごとかろし 笠井操 『雪の紋』
地吹雪を越後路列車突き進む 杉谷悦子
地吹雪を背に青年の大滑降 本多トミ
地吹雪を木曽の尻振列車かな 後藤綾子
地吹雪過ぎよろけつつ影立ちあがる 笠井操 『雪の紋』
地吹雪聞いている何もしない日 伊藤角子
猪苗代湖見えずなりつつ田のうえは地主無用の雪煙立つ 田中佳宏
田居の灯に一夜地吹雪はばたける 佐藤国夫
田居の灯に地吹雪一夜はばたける 佐藤 国夫
南部富士地吹雪寄する中に聳つ 高橋青湖
日の射して地吹雪の奥輝けり 柏原眠雨
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
燃ゆる日や雪天翔くる雪煙 相馬遷子
波しぶき雪煙となり崖のぼる 中戸川朝人 尋声
病枕地吹雪ときに火の音して 寺田京子
碧天や雪煙たつ弥生富士 水原秋桜子
北に生き地吹雪という婆娑羅かな 山下真理子
猛りつついよいよ潔し地吹雪は 澁谷道
夕陽いま射さんとするや地吹雪燃ゆ 佐藤昌市
熄む気配なし海鳴も地吹雪も 中出静女
藪の穂やいまはたしづる雪けむり 西島麦南 人音

地吹雪 補遺

けぶりたつ雪浪に生え木菟の耳 佐藤鬼房
ゴンドラのはるか下方の雪煙 右城暮石 句集外 昭和四十四年
つまづくも女身地吹雪眩み過ぐ 鷲谷七菜子 銃身
一塊の地吹雪飛べる硫気谷 上田五千石 森林
一嶽のあげてゐたるは雪煙 石田勝彦 秋興以後
枯葦は素直に伏して地吹雪す 草間時彦 中年
魂極るいのち耀ふ雪煙 佐藤鬼房
山と対話雪煙渦をまきて消す 福田蓼汀 秋風挽歌
真向に地吹雪終生天邪鬼 上田五千石『田園』補遺
石狩孤村地吹雪の子のはぐれ星 古沢太穂 捲かるる鴎
雪煙が消すD5lとその後尾 石川桂郎 高蘆
雪煙と瀬鳴りかたみに子の時刻 佐藤鬼房
雪煙の残響の青海原よ 佐藤鬼房
雪煙の夜明りに顕つわが臼女 佐藤鬼房
雪煙は雪煙を追ひ天に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
前傾強めよと 地吹雪 真っ向から 伊丹三樹彦
足跡を消す地吹雪を怖れつつ 稲畑汀子
地吹雪 真っ向 孤影を思い知れよとか 伊丹三樹彦
地吹雪と別に星空ありにけり 稲畑汀子
地吹雪に出口もあらず狐塚 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に消えて早池峯とどろけり 古舘曹人 樹下石上
地吹雪に天狼呆け失せにけり 阿波野青畝
地吹雪のやがて鳴りだす寺障子 古舘曹人 樹下石上
地吹雪の奥より旅のひかりかな 高屋窓秋
地吹雪の棚田もつとも鍵刻の相 佐藤鬼房
地吹雪や王国はわが胸の中に 佐藤鬼房
地吹雪や五歩離りし顔遥かなる 斎藤玄 狩眼
地吹雪や倒るる馬は眠る馬 斎藤玄 狩眼
地吹雪を見ての 地酒の燗加減 伊丹三樹彦
竹幹の弓勢なりし雪煙 石田勝彦 百千
燃ゆる日や青天翔ける雪煙 相馬遷子 山国
柏ばかり枯葉へ低地帯地吹雪く 古沢太穂 火雲
磐に立つわれを消したる雪煙 野見山朱鳥 曼珠沙華
爺・鹿島・五竜にあがる雪煙 松崎鉄之介
哭く鴉妙高にたつ雪煙 角川源義

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 09:00 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

凍る の俳句

凍る の俳句

凍る

例句を挙げる。

あはれ民凍てしいひさへ掌に受くる 長谷川素逝 砲車
あめつちのひかりかなしく蝶凍てぬ 石原舟月 山鵲
あめつちの凍て全身に旭さしいづ 飯田蛇笏 雪峡
あるきつつ靴の底ひに足は凍つ 長谷川素逝 砲車
あをあをと裏質鋪の空の凍て 飯田蛇笏 雪峡
いちまいは蝶の羽なり氷るなり 辻允子
いつもかすかな鳥のかたちをして氷る 対馬康子 純情
いとしみて生きし日凍つる夜の口笛 千代田葛彦 旅人木
いよゝ凍てし土くれに日の流れ来し 雑草 長谷川零餘子
いるまんの訴人憎まむ心凍て 下村ひろし 西陲集
うけとりし手もこそ凍つれ下足札 久保田万太郎 流寓抄
うちてしやまむうちてしやまむ心凍つ 久保田万太郎 草の丈
うつくしく油の氷る灯かな 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
うつろひきて微少となりて夜々凍む砂 宮津昭彦
うらの凍て踏みくる朝の声まぼし 金尾梅の門 古志の歌
おしめの一枚がふき落ちて きつい凍てようだ 吉岡禅寺洞
おそろしき人の往来に灯の凍てず 大場白水郎 散木集
かくまでも鶴啼くものか凍つる夜は 猿渡青雨
かさゝぎ飛び雉子たち凍つる日なりけり 久保田万太郎 草の丈
かたぶきし水弥氷る盥かな 高井几董
かね氷る山白妙の月夜哉 一茶
かんじきの紐が凍てつきほどけざる 高橋向山
けさ妻をあはれとおもふもの凍てて 田村了咲
こころ忘れ来しが白鳥千羽凍つ 岸田稚魚 筍流し
ことごとく天の昏さに河凍る 対馬康子 吾亦紅
この凍てを百夜車を唄はゞや 野村喜舟 小石川
この庵を七年凍てて守りしなり 村松紅花
この道もやがて凍てんと歩きゆく 星野立子
こぼれたる鱈は足蹴にされ凍てぬ 小池次陶
こぼれ温泉の凍てしに転けし温泉汲女よ 木村蕪城 寒泉
こぼれ温泉の凍てたるを踏み大旦 木村蕪城 寒泉
こみあぐるものあり凍てしものの影 阿部みどり女
これちょうだい まっくろ黒助凍てなまこ 高澤良一 寒暑
さばき凍て判事が首をまげる情 飯田蛇笏 雪峡
したたかに凍る一夜を百夜かな 齋藤玄 『無畔』
しづけさに凍る御霊のうす明り(二月八日畏友安西均詩人逝く) 石原八束 『仮幻』
すがる手の身重の妻に凍る道 有働亨 汐路
すぐ氷る木賊の前のうすき水 魚目
たどりつきしもののごとくに氷る瀧 大木あまり 火球
ちちははのすべて亡き世や凍て晴るる 石原八束
ちらと灯が凍るルンゼに見えしといふ 岡田日郎
どこか水落ちてゐる音滝氷る 石井とし夫
どことなくここらの山路凍ててをり 上村占魚 球磨
なお翔ぶは凍てぬため愛告げんため 折笠美秋 君なら蝶に
なきがらや油灯氷る借り錦 松瀬青々
にほどりの凍てよ凍てよと嶽の星 栗生純夫 科野路
ぬば玉の地は地につゞき鐘氷る 松瀬青々
ねこざめの放つてありぬ凍てにけり 鈴木しげを
はこびゆく火を吹く風も凍て急ぐ 金尾梅の門 古志の歌
はしためにふきんかなしく凍て反りて 富安風生
ばら色のままに富士凍て草城忌 西東三鬼
ひとひらの凍てつく闇を子が炎やす 松澤昭 神立
ひとり凍てひとりゆるめり墓地の道 細見綾子 黄 炎
ひねもすの風をさまりて星凍つる 伊藤とし子
ひゞくものたゞ凍てきりし靴音のみ 河合凱夫 藤の実
ふりむけば角のかたちに鶴凍つ 河野多希女
ふり仰ぐ鬼に設楽の星凍つる 佐野美智
ぶら下るごと月かゝり道凍てぬ 星野立子
へーイ・へーイと男女が別れ凍る星座 赤城さかえ
また沼の氷るか月の孤なりけり 石井とし夫
まつげすぐ凍てて滑降あきらめる 伊藤とほる
まろみなほ朝月凍ててそも偸安 香西照雄 対話
みだれたるわが銀の髪さへも淡く映して野の水氷る 山下陸奥
みちのくの星むらさきに凍てにけり 岸風三楼 往来
みちのくや凍ての割目が死の戸口 佐藤鬼房 「何處へ」以降
みちよりはすこしは低く凍てし沼 田村了咲
もくれむの凍む枝に雨のぬくとからむ 高澤良一 ももすずめ
ものすべて凍る地上へ羽毛落つ 右城暮石 声と声
ものゝ凍て解けやまずして雪を見し 雑草 長谷川零餘子
やうやくに凍ての身につく夜陰かな 飯田蛇笏 春蘭
ゆく馬の背に月凍る年の暮 金尾梅の門 古志の歌
ゆつくりと来て老鶴の凍て仕度 能村登四郎 菊塵
よき夜ほど氷るなりけり冬の月 浪化
よせ墓のかたむき凍てし夕の星 柴田白葉女 『朝の木』
よべの飯凍てつきゐるや藁盒子 坂井華渓
らうそくの涙氷るや夜の鶴 蕪村 冬之部 ■ 鶴英は一向宗にて、信ふかきおのこ也けり、愛子を失ひて悲しびに堪えず、朝暮佛につかふまつりて、讀經をこたらざりければ
わかさぎの氷打ち~凍てにけり 佐野青陽人 天の川
わが心氷る華厳を慕ひ来ぬ 川端茅舎
わが悔にぴしりと対ひ影凍つる 小池文子 巴里蕭条
われも下りてゆく石段の凍てゆがみ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
オソコロコロセンダリ称へ凍むまじや 高澤良一 ももすずめ
オリオンに向ふ家路や凍てる夜 神田典夫
オリオン凍つ家路幾度の曲り角 齋藤愼爾
オーロラの燃えつゝ凍つる極の空 築山能波
クロイツェル・ソナタ折り鶴凍る夜 浦川 聡子
サーチライト棒立ちに凍てふつと消ぬ 篠原梵 雨
チユーリツプその水凍てむわがペン凍つ 林原耒井 蜩
デコ木型黒びかりして凍てにけり 高澤良一 さざなみやっこ
トロツコと氷るばかりの池がある 瀧春一 菜園
ノックしてまがある鉄扉夜の凍て 飯田蛇笏 雪峡
バスを待つ凍てし油の壜さげて 田村了咲
バス待つ眼吸殻ひろふ背に凍てつ 原田種茅 径
ピンゾロの丁と起きたり鐘氷る 泉鏡花
ヘーイ・へーイと男女が別れ凍る星座 赤城さかえ句集
ペンダント凍てて肌に火を感ず 猪俣千代子 堆 朱
ボロ市に行かざりし鼻凍て戻る 石田あき子 見舞籠
ユダの髯柔さ赤さに凍る雲 中島斌雄
ラマ塔や凍てゝ横たふ大黄河 今村青魚
ロランけふも幾人の凍てし身に棲みし(ロマンロラン研究会) 中戸川朝人
一人がないて通夜のひとびと凍み入りぬ 細谷源二 砂金帯
一切凍てて鉄がくぎりしこの空間 楸邨
一山の湯けむり凍てし日に向ふ 爽雨
一湾の凍て浪音を封じけり 大島早苗
一筋の流れを残し滝凍つる 池田秀水
一線を越えて凍る尾觝骨 春海敦子
一言主に長々申し凍みにけり 松崎鉄之介
一鳥の影もゆるさず滝凍る 平子公一
一鳥も飛ばず刈田の凍てつづく 阿部みどり女
万の雁擁き夜の沼氷るなり 佐藤国夫
万巻の書と地下室に凍ててをり 中村雅樹
三井の鐘立ち去る耳に凍み憑きて 高澤良一 燕音
三井寺の夕凍み及ぶ大黒天 高澤良一 燕音
上流や凍るは岩を押すかたち ふけとしこ
下町に曲らんとして鐘氷る 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
不動尊炎もろとも凍てにけり 五十嵐春男
丑満の星飛び氷る切通し 佐野美智
世の汚濁しりぞけて鶴凍てにけり 鈴木真砂女
世は粛すか検察庁の窗の凍て 飯田蛇笏 雪峡
中空にオリオン揚げて村凍てし 相馬遷子 雪嶺
丹田の脈摶つまでに凍てにけり 吉田紫乃
丹頂の紅のもつとも凍ててゐし 石鍋みさ代
乃木夫人愛用ミシン凍ててあり 辻桃子
乙女薔薇そのまま凍ててピアノ鳴る 小串歌枝
乳母車地に凍て暮るる屑部落 古賀まり子 洗 禮
乾坤の刻をとどめて滝凍る 町田しげき
二歩三歩その後まつたく鶴凍てし 鈴木真砂女
二段上の枝に凍みをりもう一羽 高澤良一 ねずみのこまくら
二階から手が出て掴む凍み豆腐 東海林嶺風
五枚づつ藁もて編みし凍み豆腐 林蓼雨
亡き猫の足跡こゝに凍てゝあり 林原耒井 蜩
人を見てすいッちよ凍るばかりなり 渡邊水巴 富士
人声にさとくふたたび鶴凍てぬ 鈴木白祇
人小さく凍てて地の揺れ思ふまま 桂信子
人燃えて焼夷弾光蒼く凍つ 石原八束 『幻生花』
人落す影に埋立地が凍る 斉藤夏風
人親しわきて家路の凍てゆるぶ 飯田蛇笏 雪峡
人間の像凍てつけて火口噴く 石原八束 空の渚
今宵またペン凍ることまぬかれず 木村蕪城 寒泉
今年また山河凍るを誰も防がず 細谷源二
今朝も掃かれず障子の羽蟲いつ凍てし 石井露月
伐木のあとあり木屑凍ててをり 上村占魚 球磨
伯牙断絃つくづく鶴の凍てにけり 龍岡晋
伽藍建つる人らが均らす凍てし土 不滅の愛 小澤武二
住み着きしは天保年間とぞ凍み鵜 高澤良一 鳩信
俳諧のまだ宵なから月氷る 尾崎紅葉
傀儡姫凍てて吊らるる楽屋裏 石原八束 『秋風琴』
傘を刺す地の茫々と氷る前 松澤昭 神立
兀として凍てゝ居る哉犬の糞 寺田寅彦
兀兀と鉛筆の音凍みる夜は 中田剛 珠樹以後
元日の照る陽や鷺の凍ること 渡邊水巴 富士
元朝の凍ての極みの墨を磨る 中島斌雄
光年に病むは一瞬星凍つる 立川華子
全山にこゑ掛け瀧の凍て始む 小澤克己
八方の径凍て寝ても手を組める 山口草堂
公傷の指先とほく鶴凍てし 細谷源二 鐵
公魚のひらひらと釣れすぐ凍てぬ 小林黒石礁
公魚は針はづされてすぐ凍てぬ 江中真弓
円湖凍てゝ方位東西相隣る 草田男
円空の二寸に足らぬ凍み佛 高澤良一 随笑
写さるるわが脳まざと凍つる中 尾高せつ子
冬ざれてたましひ氷るあしたかも 日夏耿之介 婆羅門俳諧
冬の日やとけては氷る忘れ水 一鼠
冬の日や馬上に氷る影法師 芭蕉
冬の月母と子の距離凍てついて 河野静雲
冬の雁楯の雨さへ氷る夜に 喜谷六花
冬没日瑪瑙の中に富士は凍て 永井龍男
凍つけば凍つきながら笹の風 秋之坊
凍つまじと力を籠めて滝落つる 牧野春駒
凍つまま枯野の果の石二つ 濱人句集 原田濱人
凍つるならいまの心のまま凍てたし 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
凍つるまで鵜の瀬の水のひびきかな 桂 信子
凍つる夜のなほありつつもすでに春 下村梅子
凍つる夜のふところにあり子の寝息 皆川白陀
凍つる夜のビルの壁画の未来都市 和田耕三郎
凍つる夜のラジオは軍歌もて了る 岸風三楼 往来
凍つる夜の一つの乳房あたためよ 栗生純夫 科野路
凍つる夜の信号機のみ点滅す 西山すみ子
凍つる夜の光芒天を駆け会す 岸風三樓
凍つる夜の地震しづまりし黒羊羹 和田耕三郎
凍つる夜の櫓に垂らす女帯 加藤耕子
凍つる夜の線密集す蟹の顔 小檜山繁子
凍つる夜の視線交はる外ぞなき 林原耒井 蜩
凍つる夜の防空頭巾たゝみ寝る 岸風三楼 往来
凍つる夜や子の諳んずる賢治の詩 佐藤美恵子
凍つる夜を羽摶くものゝある虚空 正雄
凍つる日のにはかにあきし扉なりけり 久保田万太郎 流寓抄
凍つる日の山に及びて岩檜葉も 古舘曹人 砂の音
凍つる日や枝折戸ほとり鶲来て 大岳水一路
凍つる星見上げ地上に生きてをり 今橋眞理子
凍つる滝凍つる星いま息かよふ 今泉宇涯
凍つる街逢ひしも逢はざりしも同じ 上野さち子
凍つる音棟木を走り永平寺 関浩青
凍つ山と背中合せに山家の灯 村越化石 山國抄
凍てあがる万象の冷え葱をぬく 長迫貞女
凍てうるむ眼のいとけなき初年兵 片山桃史 北方兵團
凍てかたき常盤木の葉によう日ざす 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てが鞭鳴らす銅板の湾にきて 寺田京子 日の鷹
凍てきびしかりし名残りのある庭に 稲畑汀子
凍てきびし屋上ネオン雲に映え 飯田蛇笏 雪峡
凍てきれずあり滝音の乱れざる 鷲谷七菜子 雨 月
凍てしきる喰積つつく寝しなかな 高田蝶衣
凍てし土大釜磨き干されけり 飯田蛇笏 雪峡
凍てし土掘りつつ身をば隠しける 野澤節子 黄 炎
凍てし外へすつぽり頬を包む朝 高木晴子 花 季
凍てし夜の松の中なる北斗の尾 田川飛旅子 花文字
凍てし影柩をかこみ遠ざかる 柴田白葉女 遠い橋
凍てし手を浸せば海の流れ止む 萩原麦草 麦嵐
凍てし把手廻す白鳥座を北に 櫛原希伊子
凍てし木々の響かんとして暮れにけり 渡辺水巴 白日
凍てし湖深夜の微光知らるるな 津田清子 二人称
凍てし道踏みかなしみの崩れけり 石原八束 秋風琴
凍てし野や何か聴こゆる帽かむる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
凍てし階人形つかひ登り来る 宮武寒々 朱卓
凍てし頬を岩に触れしめ息づきぬ 石橋辰之助 山暦
凍てし髪の綿屑知らで夕餉かな 渡辺水巴 白日
凍てすこしゆるみし午や煤払ふ 大橋櫻坡子 雨月
凍てずしてさやかに蝶の飜る 相生垣瓜人 明治草抄
凍てつきし五体どこより崩れむか 平子 公一
凍てつぎて四温たまたま石蕗の濡れ 飯田蛇笏 雪峡
凍ててなほ水の勢あり男瀧 大木あまり 火球
凍ててなほ蛍光ペンを抱いて新宿 櫂未知子 貴族
凍てとけて筆に汲み干す清水かな ばせを 芭蕉庵小文庫
凍てとけをゆくゆく懺悔おのづから 飯田蛇笏 雪峡
凍てながら日当る山をたづねけり 村越化石 山國抄
凍てにけり障子の桟の一つづゝ 久保田万太郎 草の丈
凍てに寝て笑む淋しさを誰か知る 飯田蛇笏 椿花集
凍てに曳く悪玉の影闇に消ゆ 石原八束 空の渚
凍てぬもの下水とその香母の文 香西照雄 対話
凍てのこりたる漣の光かな 水田むつみ
凍てのぼりつめて梢のふるへをり 永田耕一郎 雪明
凍ての限りへ橇の鈴の音この夜を泊つ 古沢太穂
凍ての鶴悲のきはまりにかうと啼く 高澤晶子
凍てはげし青年の声ひかリ出す 柴田白葉女 花寂び 以後
凍てほそり来るや枯葭片よりつ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てまぐろ鋭き鉤をはねかへす 森田峠
凍てまさる玻璃の月光停電す 飯田蛇笏 雪峡
凍てもどり木曽路は夜へ渓響き 福田蓼汀
凍てやしぬ人転ろびつる夜の音 伏水 鷺喬 五車反古
凍てゆくやこの広額もて愛せしもの 赤城さかえ
凍てゆるびたる処落日さすところ 行方克巳
凍てゆるび水仙花をこごませぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍てゆるぶ山畑の土うごくかも 飯田蛇笏 雪峡
凍てゆるみ緊り信濃は黄夕焼 蓼汀
凍てゆるむどの道もいま帰る人 大野林火
凍てゆるむ燈にほしいまま玩貝の色 宮津昭彦
凍てゆるむ落石音や七こだま 加藤知世子
凍てゆるむ麦生畑の早桃はも 飯田蛇笏 春蘭
凍てる夜となりゆく様に夕暮れる 高木晴子
凍てる夜や妻にもしひる小盃 森川暁水
凍てる廊にころび哭きけり声あげて 龍胆 長谷川かな女
凍てをふみ気安く墓地をただ通る 飯田蛇笏 雪峡
凍て呆けの足指失くし歩み来し(羽前肘折温泉) 上村占魚 『自門』
凍て土にはね返さるゝさぐり杖 片山すみれ
凍て土にほろほろと日のあたりそむ 長谷川素逝 砲車
凍て土に射ちし薬筒抛られ抛られ 長谷川素逝 砲車
凍て土に斧外れ形正しき痕 右城暮石
凍て土に解けたる水や浮びけり 高濱年尾 年尾句集
凍て土ゆ凍て白菜を捩ぎ取りぬ 林原耒井 蜩
凍て土をすこし歩きてもどりけり 五十崎古郷句集
凍て土を漕げばきしきし車椅子 山田 百穂
凍て埃り裏街道は初大師 石原舟月
凍て寒い日の夕焼け障子の皆に 八年間『碧梧桐句集八年間』 河東碧梧桐
凍て御舎解く紀伊の忌部の匠みしを 加倉井秋を
凍て湖に焚火せし罪測られず 津田清子 二人称
凍て湖に跼む貧しさ極まりて 津田清子 二人称
凍て湖のほとりの森の倒れ木よ 成瀬正とし 星月夜
凍て湖も呼人といへる村も過ぎ 成瀬正とし 星月夜
凍て滝の裏に水落つ音のして 福井千悠
凍て畝の葱抜くだましだましして 藤岡筑邨
凍て畳に落ちてひろごる涙かな 竹下しづの女 [はやて]
凍て空にネオンの塔は畫きやまず 篠原鳳作
凍て空にネオンの蛇のつる~と 篠原鳳作
凍て空に声を残して移民発つ 五十嵐播水
凍て華厳烏全身輝やき翔ぶ 加藤知世子 黄 炎
凍て虫をくはへとびたる鶲かな 銀漢 吉岡禅寺洞
凍て蜜柑少し焙りてむきにけり 篠原鳳作
凍て蝶のきらめき渡る山湖かな 中川宋淵
凍て街路ちらばる命拾ひあふ 飯田蛇笏 椿花集
凍て解けて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
凍て解のはじまる土のにぎやかに 長谷川素逝
凍て踏んで虚しき笑ひ胸をつく 石原八束 空の渚
凍て返る土一寸を持ち上げて 浦野芙美
凍て返る水をうしろに夜の耳 三宅一鳴
凍て返る風に骨ある思いかな 原子公平
凍て鉱石躍り火を噴き砕かるる 加藤知世子 花寂び
凍て雪に日のしむ尾長鳥なきわたり 金尾梅の門 古志の歌
凍て雪に柔く雪来りけり 高濱年尾 年尾句集
凍て雲に笙放つなり万燈会 角川春樹 夢殿
凍て雲や江上反れてひらき初む 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凍て飯にぬる茶もあらず子等昼餉 竹下しづの女 [はやて]
凍て飯を犬に煮てやる夜半の冬 木歩句集 富田木歩
凍て鶴の火を蔵したる胸かたち 能村登四郎
凍みて立てば隣の人が銭鳴らす 田川飛旅子 花文字
凍みに凍む虚空蔵さんのどぜう髯 高澤良一 随笑
凍みるとはみちのくことば吊豆腐 井桁蒼水
凍みる中そもそも三井の鐘由来 高澤良一 燕音
凍み厠ぎっくり腰の不甲斐なき 高澤良一 寒暑
凍み柿に楊枝が程の針氷柱 高澤良一 随笑
凍むこゑに電光石火みそさざい 高澤良一 ももすずめ

芸術劇場 高橋竹山 孤高の響き
凍むや門付一から学ぶことばかり 高澤良一 燕音

凍むる日々鴉のあぐる一つうた 村越化石 山國抄
凍む国の神火をきりし火燧臼 下田稔
凍む木(ボク)にちょんと目鼻の木っ端佛 高澤良一 随笑
凍む白さもていつぽんの藁流る 櫛原希伊子
凍む闇にねそびれし目と耳ひらく 篠原梵
凍るまでいくたび笑うことありや 橋石 和栲
凍るまで人の言葉を話す鳥 櫂未知子 貴族
凍るペン絶えざる鼠の歯音澄む 岩田昌寿 地の塩
凍る中凍りきれざるはほとばしる 猪俣千代子 堆 朱
凍る夜のおのれを叱しては恕す 能村登四郎 菊塵
凍る夜のらふそくを土間に兵ねまる 長谷川素逝 砲車
凍る夜のハム厚く切り誕生日 菖蒲あや 路 地
凍る夜の人鎮まれば猫猛る 長谷川かな女 花寂び
凍る夜の凍らぬ夢のまくら哉 中川宋淵 遍界録 古雲抄
凍る夜の妻子の眠りいさぎよし 相馬遷子 雪嶺
凍る夜の屍衣に鳴りゐる時計かな 中川宋淵 遍界録 古雲抄
凍る夜の悲劇映画を遠ながめ 飯田蛇笏 雪峡
凍る夜の懺悔聴問僧招ぜらる 内藤吐天 鳴海抄
凍る夜の木瓜に来る朱や夫癒えよ 加藤知世子 花寂び
凍る夜の死者を診て来し顔洗ふ 相馬遷子 山河
凍る夜の灯火の色星の色 成瀬正とし 星月夜
凍る夜の袋マスクの馬の貌 有働亨 汐路
凍る夜は馬より下りてあるくなり 長谷川素逝 砲車
凍る夜やうちあふぐ灯の抱くべき 西島麥南
凍る夜や人のさびしさ眉間に来 石塚友二 方寸虚実
凍る夜や地より蹴放す馬盥 仭宕
凍る夜や星に牽かれて星出づる 相馬遷子 雪嶺
凍る夜を花もこぼさず桜草 渡辺水巴 白日
凍る寂けさ緑すつすと藺を植ゑる 加藤知世子 花寂び
凍る寒さの星が連なつて我が行くところ 人間を彫る 大橋裸木
凍る断崖黄河文明起りし地 長谷川素逝 砲車
凍る日の落葉はたえまなく降れる 高木晴子 晴居
凍る日の陳痛の皺鶏卵に 小檜山繁子
凍る森舌さとければ莨苦し 宮津昭彦
凍る池小さし御社いと小さし 高木晴子 花 季
凍る湖かけて涅槃の雪つもる 木村蕪城 寒泉
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝落下の滝とすれちがう 河合凱夫 飛礫
凍る滝落下途中の形して 村上冬燕
凍る瀧対き合ひて日を捧げたり 中戸川朝人
凍る谷鼬かがやき走りけり 堀口星眠
凍る足袋いづれが夫のものなりや 井上雪
凍る身のおとろへ支ふ眼を瞠る 石橋辰之助 山暦
凍る野に城門をあけ民ら迎ふ 長谷川素逝 砲車
凍る野に栄えて紅きアイヌの火 細谷源二 砂金帯
凍る野に部落は土壁めぐらせる 長谷川素逝 砲車
凍る鐘ひとつびとつの音を異に 誓子
凍る門真一文字に開きたり 久米正雄 返り花
凍る闇シリウス光千変し 相馬遷子 雪嶺
凍る闇星座牡牛の目が赤し 相馬遷子 山河
凍滝の凍てても見ゆる滝の相 能村登四郎
凍瀧の芯を凍て得ぬ水いそぐ 津田清子
凍蝶の凍てゆくひと日美しく 小坂順子
凍解のふたたび凍てて相つぐ死 加藤かけい
凍鶴の凍ての外なる木の根つこ 原裕 青垣
凍鶴の徹頭徹尾凍てにける 長尾宗一
凍鶴の脚踏み替えて又凍てぬ 遠藤雪花
凧ひとつ凍みて白山遠くせり 昭彦
分銅のさがるによろけ踏む地凍つ 下村槐太 天涯
切干の仕上げの凍ての来たるかな 山根和子
切干の屋根に凍てたる山家かな 九保田九品太
初乗りの馬の落せしもの凍てし 高島茂
初市や鰤の目凍みて買はれゆく 杉本苑子
初神楽吹かねば氷る笛を吹く 加藤かけい
初経のもろ手も凍つる未明かな 原田浜人
剱ケ峰の下に金星凍てつきぬ 渡邊水巴 富士
北かなし凍みのもどらぬもの食べて 田村了咲
北面の御陵や凍つる皇統譜 中西悦哉
十本の素伸べの凍ての鍛冶場かな 石田勝彦 秋興
千両の実の凍てやうや福寿草 増田龍雨 龍雨句集
千鳥鳴く夜かな凍てし女の手 中塚一碧樓
午後となる氷る渚に顔失くす 岸田稚魚
半鐘のいぼいぼ凍る海鼠かな 龍岡晋
卒塔婆の生みたる茸凍みにけり 中戸川朝人
厨いまぴしぴし凍る寝そびれゐて 野澤節子
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
厨掃いて夕ベの凍みにうたれけり 金尾梅の門 古志の歌
去年の鶴去年のところに凍てにけり 水原秋櫻子
去年今年地はかたくなに凍てしまま 津田清子 二人称
参籠や硯の氷る日頃なる 尾崎迷堂 孤輪
双鶴の影をかはして凍てにけり 西島麥南 金剛纂
古里や凍てたる中の水車 野村喜舟 小石川
吉原や凍てどけに敷く酒むしろ 芥川龍之介
君が代のうたこそ凍みよとのゐの坐 太田鴻村 穂国
君の瞳の青くて凍てて仕舞ひけり 和田耕三郎
否応もなく凍てはじむ男瀧 大木あまり 火球
吹き込みしよべの雪凍て紙漉場 桑田青虎
吾子のもの干す軒下に湖は凍て 木村蕪城 寒泉
咳きいりて凍てに躓く夜の坂 石原八束 秋風琴
哨戒の翼燈凍てし星にまぎれぬ 篠原梵 雨
哨戒機サーチライトの叉に凍てぬ 篠原梵 雨
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
嘘に倦みて青き陶酔が凍る 石原八束 空の渚
噴烟の中の凍る日胸を墜つ 石原八束 空の渚
噴烟の捲き湧く火口壁凍る 石原八束 空の渚
噴烟の波動虚空に凍て透る 石原八束 空の渚
圓空佛鉈目あらはに凍ておはす(飛州丹生川村袈裟山千光寺二句) 上村占魚 『石の犬』
土凍てて掃いても残る浄め塩 大木さつき
土凍てて日を経る牛蒡朽葉かな 飯田蛇笏 春蘭
土凍てて日輪のもとあるばかり 長谷川素逝 暦日
土凍てて闘ふ独楽の走り癖 内藤吐天 鳴海抄
地の凍てを流るる泉遠からず 鈴木詮子
地は凍ててこころ狷介父葬る 飯田蛇笏 春蘭
地下足袋凍る徹夜の君ら会えば笑む 鈴木六林男 第三突堤
地凍る漢民族の大き国土 長谷川素逝 砲車
地球凍てぬ月光之を照しけり 高浜虚子(1874-1959)
垣なして月明の鶴凍つるなり 原裕 出雲
埠頭の灯凍てたる鼠走らせる 高橋馬相 秋山越
堂凍てて唱名潮満つごとし 西村和子 窓
堂凍てて杉山に日の来迎図 鷲谷七菜子 花寂び
堂凍てゝ四隅に鉄の燈籠かな 久米正雄 返り花
堂凍みに毘沙門天のひんむく眼 高澤良一 宿好
塵ふかく萬巻の書の金ン凍てぬ 西島麥南
塵芥夫凍て蟹殻の紅こぼす 莵絲子
壁の蛾の凍てきし四方の夕立かな 渡辺水巴 白日
壁射たれ凍てたる土をこぼすなり 長谷川素逝 砲車
声凍みて頬白とべり夕穂高 堀口星眠 火山灰の道
売られる畑の凍て土が牛蒡についてきた 栗林一石路
売りにくる布銭の凍てを手に受くる 日原傳
壷凍る なまあたたかき指ふれじ 富澤赤黄男
壺にくむ洗礼の水凍てずあれ 田村了咲
夕ばえてはやきネオンに地が凍てぬ 飯田蛇笏 雪峡
夕凍てのにはかにおもひ浮ぶこと 龍太
夕凍てはまこと人なき炎かな 飯田龍太
夕凍みに青ざめならぶ雪の嶺 相馬遷子 山国
夕凍みのにはか也有の文台に 高澤良一 燕音
夕凍みのわけても鯛の鼻柱 高澤良一 ももすずめ
夕凍みの山彦山に残りけり 秋山ユキ子
夕凍みの直路三十路の靴鳴らす 高澤良一 ねずみのこまくら
夕凍みの空のしみじみ信濃かな 草間時彦 櫻山
夕凍みの聳ゆる暗さ甲斐の国 直人
夕凍みや目白のひそむ裏の畑 飴山實 辛酉小雪
夕凍みや石の円柱に燈咲き出で 宮津昭彦
夕凍みや禽それぞれの木へ沈み 矢島渚男 梟
夕凍みを飾れり白き歩道橋 宮津昭彦
夕影のかぎりをつくし鶴凍つる 大岳水一路
夕日凍み石塁矢竹生ひにけり 冨田みのる
夕暮の凍てゆくものの中に彳つ 高木晴子 花 季
夕焼が凍てて泪の粒を生む 三谷昭 獣身
夕空やむざんに晴れて凍みわたる 相馬遷子 山国
夕翳や魚籠上ぐるより鮒凍てぬ 原田種茅 径
夕茜沼氷るまであと一歩 橋本美代子
夜の木凍てて鳥のふくみ音虫に似る 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夜の網あげて空しく鐘氷る 高田蝶衣
夜もとる白墨オリオンの凍て全身に 中島斌男
夜を凍てゝ薄色褪せず櫻餅 渡邊水巴
夜泣き子と下水を残し街凍てる 森田智子
夜祭の戻りの凍ては云はざりき 岸田稚魚
夢殿をのぞみ石仏野に凍る 大島民郎
大いなる水を束ねて滝凍てり 保坂リエ
大凍てに鼓笛の韻き地にしみる 飯田蛇笏 椿花集
大地凍つる為に傾く障子とか 橋本鶏二
大地凍つ地図と眼鏡と油顔 古川塔子
大地凍て凍てし河載せ傾きぬ 片山桃史 北方兵團
大松明の火の粉も凍る午前二時 伊藤いと子
大空に月ぶら下り雲凍てぬ 浩山人
大空の一枚白く凍てにけり 阿部みどり女(1886-1980)
大鏡ある闇の凍てすりぬける 柴田白葉女 遠い橋
大鮪凍て解けて紅甦る 鈴木真砂女 夕螢
天が下蛇行の河の凍てしまま 山本歩禅
天ぐさの洗ひ場の石濡れ氷る 田中冬二 俳句拾遺
天の凍て夜陰に樫を捉へけり 栗生純夫 科野路
天凍てて鋲の赤光縷を曳けり 内藤吐天
天地凍て音の溜まれる竹の節 長谷川草々
天日へ一徹の直滝凍る つじ加代子
天暗し一本杉や凍てゝ鳴る 芥川龍之介
太陽が凍る時間の鷺の脚 河合凱夫 飛礫
太陽に正面きつて凍てし滝 檜 紀代
太陽の燃えつゝ空の凍てにけり 慧月
妻に秘めむ恍惚鶴もろともに凍て 古館曹人
妻笑ひだす水栓も杓も凍て 辻田克巳
姿見にむけば白頭昼の凍て 飯田蛇笏 雪峡
子の凍てし手をぬくめつゝ眠りけり 上野章子
子の忌日合掌の指凍てしかな 阿部みどり女
子の手握つて氷る道すべるまい 人間を彫る 大橋裸木
子の鶴も親にならひて凍てはじむ 波多野爽波 『一筆』以後
子を叱りゐる夕凍みの女ごゑ 南草
子供らにいつまで鶴の凍つるかな 石田波郷
孤児の枕並べて夢凍る 寺田寅彦
安達太良の風に吹かるる凍み豆腐 松本正一
家の中に水氷る日や荷風読む 田川飛旅子
家影の水に落ちゐて暮れ凍てし 木歩句集 富田木歩
寂しさの底にささりて蝶凍つる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
寒垢離や不動の火焔氷る夜に 正岡子規
寒天の田にうす墨の山凍る 原裕 青垣
寒泳を指の先まで凍てて見る 宮原 双馨
寒肥やおほかたの葉の朝の凍て 小澤碧童 碧童句集
射殺され棒の如くに屍凍て 若木一朗
小鳥売かへりみられず凍てもせず 大場白水郎 散木集
少年とドラム凍ての月蝕融けあへる 河野多希女 彫刻の森
屋根石の鴉の横目ソ領凍つ 古館曹人
屍地に凍て厳然と旗すゝむ 片山桃史 北方兵團
展帆をはるかにしたり凍つる蝶 中戸川朝人
山かげ池の氷る末社にも初詣する 荻原井泉水
山の手へ坂たてかけて街凍てぬ 白夜
山の星ともしび凍るミサに侍す 相馬遷子 雪嶺
山の端を離れ満月すぐ凍る 吉野トシ子
山の背を越えがたく滝凍てており 駒 志津子
山中に楪氷るものを踏み 宇佐美魚目 秋収冬蔵
山火事も凍てはてにける大裾野 百合山羽公 寒雁
山眠るや山彦凍てし巌一つ 松根東洋城
山腹にかたまり凍つる墓石かな 阿部みどり女 笹鳴
山茶花の一とたび凍てて咲きし花 細見綾子
山風や夜落ちしところ湖氷る 松根東洋城
山鳩も氷る夜明の軒に居り 遠藤はつ
岩々のまとふ青さに滝凍る 木村蕪城
岬の濤のけぞる宙の凍てにけり 飯田蛇笏 雪峡
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
川という凍てつくまでは水流す 秋元零折
川凍てて枯木の影も凍てにけり 阿部みどり女 月下美人
工具箱凍てて銀河を柿えし日 対馬康子 吾亦紅
巨鳥見守る暁の凍つる中 小島千架子
常念岳の秀を研ぎ澄ます空つ凍み 太田蛇秋
干菜風盥の濯着凍てゝあり 金尾梅の門 古志の歌
干足袋の日南(ひなた)に氷る寒さかな 大須賀乙字(1881-1920)
年新たな凍み足袋裏を堅くせり 節子
幻燈の別に映る灯夜の凍て 飯田蛇笏 椿花集
幼子よ地に水氷るこれが冬 肥田埜勝美
広場凍て飛行機のわだち深くのぶ 細谷源二 鐵
底濁ごす魚氷る池陽のさして 泰山俳句集拾遺 中村泰山、熊谷省三編
庭土や凍て藁しく冬の梅 成美
廃船の凍て屯ろせり宿の前 阿部みどり女
延年舞黒凍みの堂鳴らしけり 高澤良一 ぱらりとせ
引汐に小貝の氷る真砂かな 古白遺稿 藤野古白
引返す山路これより凍ててをり 稲畑汀子 春光
弥陀洞にゴム手袋の凍ててをり 大石雄鬼
影すでに凍てておるなり暦売 田川飛旅子
影ふかくかたきら捨てし壕凍てぬ 長谷川素逝 砲車
役げし石の凍るほかなし遭難碑 桂樟蹊子
待つことは明日一点に鳶凍てり 古舘曹人 能登の蛙
待乳山さるのこしかけ凍てにけり 古舘曹人 樹下石上
徒に凍る硯の水悲し 寺田寅彦
徒に凍る街路を歩きけり 高澤良一 随笑
御手洗も御灯も氷る嵐かな 炭 太祇 太祇句選
徹夜の稿にいつ置かれたる林檎凍む 森澄雄
心中に鳴らす金鈴凍てずあれ 岡本差知子
心忘れ来しが白鳥千羽凍つ 岸田稚魚
急くことはなし凍てし身に言ひきかす 橋本鶏二
恋の血の高鳴つていま月凍る 仙田洋子 橋のあなたに
恋捨てに雪山に来しが笑ひ凍る 小林康治 玄霜
息とめてみる凍みくさきものばかり 宮坂静生
息ひそかに凍てゆく終の父呼べず 山田みづえ
悔のごと繊月凍ててかかりけり 斎藤 道子
懐に凍て山河と猫を磨き 和田悟朗
我が手に触れつまどろめしばし魂氷る妻よ 折笠美秋 君なら蝶に
我が汽車の白煙凍てし野に凝るかな 太田鴻村 穂国
我が行く天地万象凍てし中 高浜虚子
戸あくれば翔つものありて凍てし沼 田村了咲
手の凍てゝ板の如しや大根引 川島奇北
打ちこけて指(さし)ぬき氷るなみだかな 素顰 俳諧撰集玉藻集
托鉢の鉢に凍てつく指はがす 鈴木貞雄
把り凍て飛び降りるにも翼なし 鈴木六林男 第三突堤
投げ込みしままの形に楮凍つ 今瀬剛一
折鶴のごとくに葱の凍てたるよ 秋を
拓けゆく湿地帯なり凍て解くる 鈴木洋々子
拓地の灯星より高く凍るなり 小林黒石礁
拓次碑ここに鉄のオブジェ凍てて立つ 北野民夫
拠るものの欲しけれど壁凍るなり 橋本多佳子
指環凍つみづから破る恋の果 鈴木しづ子
捨て水のやがて氷るや三十三才 荻原井泉水
捨て水の身を張りて地に凍てつけり 大串章
捨水の即ち氷る寒に在り 池内たけし
掃かれずに凍てたるものや寒雀 春草
掃き了へて夕凍みねずみもちの実に 高澤良一 ねずみのこまくら
掌に落ちてぬくき涙がすぐ凍てつく 加藤知世子 黄 炎
採点のペンが凍て又林檎凍て 木村蕪城 寒泉
採煙蔵鵺の眼のごと凍てて火は・・・古梅園 高澤良一 ねずみのこまくら
描線の威嚇と攻撃巴里凍る 高澤良一 宿好
摩周凍て万象動くものもなし 小森行々子
放射路の 一筋窓に向ひ凍つ 大場白水郎 散木集
放魚提げ凍む硝子無き窓見上ぐ 宮武寒々 朱卓
断崖にとり縋る手の凍て痺れ 片山桃史 北方兵團
新しき筧や盛り上り氷る 波多野爽波 『一筆』以後
方円に氷るくさぐさ境内に 高澤良一 鳩信
旅の髪汚れなかりし氷る国 八牧美喜子
日が面と向ひて湖の凍てゆるむ 檜 紀代
日のみ鮮紅万象暁の凍ての中 福田蓼汀 秋風挽歌
日は雲のはたてに凍てて風粗し 石塚友二
日凍てゝ空にかゝるといふのみぞ 高浜虚子
日和空覗かせて滝凍てにけり 森田峠 避暑散歩
日当りの風に凍てたる蝶々かな 吉武月二郎句集
日蔭より日南に凍る風ありぬ 高橋馬相 秋山越
日陰りて張子天狗の凍みつ鼻 高澤良一 さざなみやっこ
日雀ゐて石の髄まで凍ててをり 加藤楸邨
日鼻凍む土偶になせり愛しくてか 宮津昭彦
旧年の足跡すでに凍てゆるむ 角川源義
早春の凍て雲にして山の端に 高濱年尾
旬日を一日のごと崖氷る 下村槐太 天涯
旱り空回帰すものの蒼き凍て 石原八束 空の渚
旱る夜の疲れ憤りの凍てかへる 石原八束 空の渚
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎 寒九
明日のもの凍てて自在にかかりをり 木村蕪城 一位
星の下蒟蒻凍る音なりや 川野さゆり
星よりもまばらに沼の灯の凍てし 石井とし夫
星よりも凍て一燈にたどり着く ほんだゆき
星凍つ下煉炭とれぬ幾家族 古沢太穂 古沢太穂句集
星凍てし高野の宵は真夜に似し 物種鴻両
星凍てたり東京に住む理由なし 鈴木しづ子
星凍てて地を打つ舞の榊鬼 橋本榮治 麦生
星凍る泉端より揺れやみて 藤原たかを
昨夜の凍てとけゆく綺羅や糸寒天 水野富美
昨日捨てた花 氷る 運河に街詰まり 伊丹公子
昼も凍む葬列に淵青き弓 宇佐美魚目 秋収冬蔵
晩年は死後の逆算凍てゆるむ 竹中碧水史
暁の畳の凍てて座禅堂 田中 南耕
暗殺が夜をふみ鳴らす凍ての光ゲ 石原八束 空の渚
書く文字のうすくて悲し硯凍て 田村了咲
書く筆の凍てつゝ思ひはこびつゝ 上村占魚 鮎
書を掩うて疑義思ふ夜や鐘氷る 菅原師竹句集
最果てに凍てし地球の皮膚呼吸 樽谷俊彦
月の暈網代の上に氷るらん 有山江南
月光の切先に触れ湖凍てぬ 根岸善雄
月凍つる群青の村その下に 岡田順子
月凍てて千曲犀川あふところ 福田蓼汀 山火
月塊の己が光に浸り凍つ 福田蓼汀
月明の夜は恍惚と墓凍つる 鷲谷七菜子 雨 月
月照るや両岸氷る南白亀川 前田普羅
月蝕や凍てし魚骨の隙ひそか 櫛原希伊子
朝が凍る汽車に乗つている 橋本夢道 無禮なる妻抄
朝凍みて夕暮ぬくむ杉山中 野澤節子 遠い橋
朝凍みの山しろがねの春の露 奥山公世
朝凍みの鉦叩きをり夫の寺 殿村莵絲子 雨 月
朝日かつと凍て土やがて光り出でぬ 高濱年尾 年尾句集
朝氷る骨正月の酒酌むよ 小澤碧童 碧童句集
木しづくの落ちては氷る古宿かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
木の如く凍てし足よな寒鴉 木歩句集 富田木歩、新井聲風編
木の股に雪塊凍てて暮れんとす 福田蓼汀 山火
杉の実のよく見えて村氷るなり 大峯あきら 鳥道
村中の闇をあつめて火が凍る 河合凱夫 飛礫
村貧したつきの湖も凍てわたり 青葉三角草
束の間に人焼き終へし面ラみな凍て 小林康治 四季貧窮
東伏見宮御下賜の鶴凍てにけり 龍岡晋
枯芦や朝日に氷る鮠(はや)の顔 広瀬惟然
枯萩の髄脈々と雨氷る 臼田亞浪 定本亜浪句集
枯蘆や朝日に氷る鮠の顔 惟然
柑子剪る庭石凍る手燭かな 長谷川かな女 雨 月
染汁の紫氷る小溝かな 正岡子規
柿の蔕カアの一ト声凍みるなり 高澤良一 宿好
根の国をくだるこごしき岩根凍み 宮津昭彦
桟へ一里まひるを氷る歯朶 宇佐美魚目 秋収冬蔵
桟や花眼に氷る石の数 宇佐美魚目 秋収冬蔵
桶の水あらかた氷るこぼれざま 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
梁近き初鶏亡父の世も凍てし 栗生純夫 科野路
梅が香や朝々氷る花の陰 千代尼
梅白し檜山の凍てをふみ来り 瀧春一 菜園
梟のむく~氷る支度哉 一茶
梵鐘も高きに凍つる當麻かな 山本洋子
棒のよな燈の夜汽車呑み山凍る 宮津昭彦
棒瘠しその空間を凍てしめて 三谷昭 獣身
極月の扶持乏し筆氷るまで 小林康治 四季貧窮
樹々のおく雪凍む闇の立ちまさる 石橋辰之助 山暦
樹も氷る池は去年より凍てにける 石橋辰之助 山暦
樺の樹の微光となりて山氷る 対馬康子 吾亦紅
橇の道竹林に入り凍てにけり 佐野良太 樫
橋凍る波は拍手のごとき音 対馬康子 吾亦紅
機鑵車の蒸気が凍てる月明り 飯田蛇笏 雪峡
檻の狐凍てし己れの糞たしかむ 津田清子 礼 拝
櫓の声波を打つて腸氷る夜や涙 芭蕉
櫟のみちおのづと氷る沼にいづ 川島彷徨子 榛の木
死んではならぬと凍てし吾がてを犇ととりし 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
死化粧や髪の先まで母凍てて 吉野義子
残雪やいく日凍てたる碑のほとり 古沢太穂 古沢太穂句集
毛皮して瞳の黒耀は凍てがたし 飯田蛇笏 雪峡
水けむりあげゐて滝の凍て拒む 木内怜子
水しぶき空に氷るやけものみち 宇佐美魚目 秋収冬蔵
水に落し椿の氷る余寒哉 高井几董
水の流れる方へ道凍て恋人よ 鈴木六林男 桜島
水の自在わづかに許し滝氷る 佐野美智
水をのむ鶏が空むき氷る山 宇佐美魚目 秋収冬蔵
水仙の葉に水仙の葉影凍み 高澤良一 ねずみのこまくら
水平線凍て命終の心電図 平井さち子
水底へ幹立ち上り山凍つる 大岳水一路
水打つて去年と今年を凍てしむる 三好潤子
水打つて氷る戸口やけさの春 村上鬼城
水氷る助六染の工場かな 会津八一
水煙の飛天の楽も凍る月 長谷川史郊
水鳥に凍てはとほらず逆雪嶺 原裕 青垣
氷るには美しかりし蓮の骨 吉田鴻司
氷るへき水さへ絶し冬田哉 左簾
氷るまで山にかしづく二つの湖 栗生純夫 科野路
氷るもの氷り餅花にぎやかに 宇佐美魚目 秋収冬蔵
氷る夕の餘光にうごく道の草 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
氷る夜の文殊に燭をたてまつる 茅舎
氷る夜の灯かゝげし産井かな 西島麦南 人音
氷る夜やうちあふぐ灯の抱くべき 西島麦南 人音
氷る夜や双手かけたる戸の走り 加舎白雄
氷る夜や我にも海のありて騒ぐ 矢島渚男 船のやうに
氷る夜や畳にしめる上草履 青蘿
氷る夜や諸手かけたる戸のはしり 白雄
氷る岩肌初日さし金屏となりぬ 岡田日郎
氷る戸を得たりや応と明け放し 夏目漱石 明治二十九年
氷る日の杣がもの言ふ雑木山 大峯あきら 鳥道
氷る日の灯ともす電車かよひをり 飴山實 少長集
氷る月瞑目に神浮び来る 高田蝶衣
氷る月蝕記憶に遠き空の壁画 河野多希女 彫刻の森
氷る池に鳰遥かなる晨かな 島村元句集
氷る池や氷らぬ方のさゞら波 東洋城千句
氷る池日は赤松の幹にあり 高橋[テイ]子
氷る河わたる車室の裡白む 山口誓子 黄旗
氷る沼 氷る沼 目のやりどなし 富澤赤黄男
氷る沼ノアの方舟まだ見えぬ 齋藤愼爾
氷る渚に白鳥を追ふ長靴埋め 小林康治 玄霜
氷る湖の木霊呼びつつ機始 原 柯城
氷る湖の温泉おつるところ舟囲ふ 木村蕪城 一位
氷る湖へだて二街響きあふ 木村蕪城 寒泉
氷る湖二つに割るる夜を囃す 原裕 青垣
氷る滝その上をせく水のあり 有馬朗人 天為
氷る燈の油うかがふ鼠かな 與謝蕪村
氷る田を走りて春の玉霰 今井杏太郎
氷る田を音ばりばりと鋤きおこす 相馬遷子 雪嶺
氷る畦ゆるゝと見るや鶇居り 水原秋櫻子
氷下魚あはれ尾をはねしとき凍てにけり 大塚千々二
氷壁に石楠花凍る葉を垂らす 岡田日郎
氷柱宿寝髪凍つてしまひけり 小林康治 玄霜
永痛みて使はざる傘凍てにけり 朝倉 和江
求愛の羽の凍てをる孔雀かな 大木あまり 雲の塔
汚れなき蝶なり凍てゝをりにけり 松下鉄人
池氷る山陰白し冬の月 古白遺稿 藤野古白
池氷る神渡るかに一亀裂 田中朗々
汽車の窓凍てゝひらかぬ別れかな 副島いみ子
汽車行きて氷る山田を煙らしむ 山口波津女 良人
沖へ行つて消ゆ凍て雲のゆくへかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
没日の樹ちかぢか燃えてのち凍つる 柴田白葉女 花寂び 以後
没日凍て暗き火口の像を灼く 石原八束 空の渚
河の水うごいてゐたり凍ての日も 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
河凍てしことを確かむ石飛礫 対馬康子 純情
河川工事土るゐるゐと凍みはつに 細谷源二 鐵
沼凍てて高ゆく雲を映さざる 猿橋統流子
沼凍てて鴨一族に空もなし 河野南畦 湖の森
法華寺の減罪の凍て畳より 井沢正江 晩蝉
泥濘の凍てゝかたさや蹄あと 西山泊雲 泊雲句集
注連凍てゝ翁のシテの現はれし 佐野青陽人 天の川
泳ぎ来る鯉にさゞなみ凍るかも 渡邊水巴 富士
洞なして骨透くうれひ亀凍つる 原裕 青垣
流し来て氷る瀬隈や谷筏 癖三酔句集 岡本癖三酔
流木を咥へて凍る波ころし 大島民郎
浪の華とき~舞ひて荒磯凍つ 雁択水
浮浪児や凍てし夕刊はしやぎ売る 原田種茅 径
海に向く絶壁の凍て明けしらむ 飯田蛇笏 雪峡
海ゆ来て鳴く鳥しろく夜の凍つる 古志の歌 金尾梅の門
海凍てゝ渚ともなし島の春 凍魚
海凍る国に鮭鮓甘きかな 河東碧梧桐
海鼠凍つ光ふるへり冬彦忌 古谷群象
淋しさの置きどころなく鶴凍てぬ 有馬籌子
深き息かけて凍蝶凍てさせず 三好潤子
深爪のいたみにも似て水氷る 鎌倉佐弓 水の十字架
渤海の凍てし渚の忘れ汐 高濱年尾 年尾句集
港凍て小鳥かげなき異人墓地 河野南畦 湖の森
湖いまだ凍てず竹瓮につもる雪 木村蕪城
湖の凍て対岸の音近し 勝俣雅山
湖よりも凍みて根場の夕餉どき 依田由基人
湖凍ててわが声われを驚かす 林翔 和紙
湖凍てて療園の嬉戯玻璃のうち 木村蕪城 寒泉
湖凍てて落暉の総のそよぎをり 大峯あきら
湖凍るそがひの山に人葬る 木村蕪城 寒泉
湖凍るひびきの夜夜を書に痴るる 木村蕪城 寒泉
湖氷る大きな朝にあひにけり 加藤楸邨
湖氷る日を見さだめつ楮蒸す 栗生純夫 科野路
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湯豆腐や花凍る雨灯にみだれ 渡邊水巴 富士
滝の上の水も凍つてゐたりけり 今井杏太郎
滝の凍て仰ぎかねたる空明くる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
滝は凍て山頂つぎつぎ日を失す 福田蓼汀 秋風挽歌
滝仰ぐ思ひのひとつひとつ凍て 石田勝彦 秋興
滝凍ててみちのくの風青みたる 下山芳子
滝凍ててもろもろの巌立ちあがる 細川加賀
滝凍ててをらず目的失ひし 橋本美代子
滝凍てて人間遠くありにけり 佐久間慧子
滝凍てて大音響をこもらする 小林康治 『華髪』
滝凍てて巌も眠りにつきにけり 鈴木貞雄
滝凍てて微塵の音のなかりけり 西岡フサ子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍てて立つ一切を忘却し 橋本美代子
滝凍てて金剛力のこもりけり 小島花枝
滝凍る中空に裾ふつ切れて 早崎明
滝凍る刻の止まりし形して 原田走日朗
滝壷はふちより凍る身のゆくへ 鍵和田[ゆう]子
滝壷もいふに及ばず凍つたり 下村梅子
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
滝音を蔵し凍てゆく月の巌 鷲谷七菜子 雨 月
漁り火のいろも凍ると書き送る 佐野まもる 海郷
漣に九州氷る舌ざはり 松澤昭 山處
漣のさまを残して沼凍てぬ 小野郁巴
潦かはかんとして凍てにける 五十崎古郷句集
潮の香もなくはろばろと海氷る(根室) 上村占魚 『萩山』
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
火の香して林中は凍てきららかに 鷲谷七菜子 花寂び
火をさけて地の提灯凍るさま 飯田蛇笏 春蘭
火口壁の凍てにつまづきうづくまる 石原八束 空の渚
火口湖が凍る真白き亀裂もち 品川鈴子
火口熱が臓腑を犯す空の凍て 石原八束 空の渚
火口熱に凍てのとどかぬよな地獄 石原八束 空の渚
火口鳴り騰りて凍てる空の波 石原八束 空の渚
火山灰凍てて火口の死角より騰る 石原八束 空の渚
灯ともるや其処に凍てゐし人の顔 林翔 和紙
灯の下に凍て解く薔薇よあゝ危し 林原耒井 蜩
灯まつ戸のあけたても凍て急ぐ 金尾梅の門 古志の歌
灯火のすはりて氷る霜夜かな 松岡青蘿 (せいら)(1740-1791)
炉火守りて焼岳凍る夜を寝ねず 石橋辰之助 山暦
炉火燃え上る畳に氷る射鳥かな 雑草 長谷川零餘子
炭を割る音夕凍みのむらさきに 大野林火
炭竈へみち逆落し氷る枝 宇佐美魚目 秋収冬蔵
無の跫音の 沼氷る ひびきよ 富澤赤黄男
煙草つけてすぐ去る人や池氷る 阿部みどり女 笹鳴
照明が消えてたもまち城氷る 長田等
燃え据わる炉火むらさきに夜の凍つる 金尾梅の門 古志の歌
燈火のすわりて氷るしも夜かな 青蘿
燭陸離ピアノ音をたえ夜の凍て 飯田蛇笏 雪峡
爐火守りて焼岳凍る夜を寝ねず 石橋辰之助
爪立ちに鶴を覗ひ妻凍つる 原裕 出雲
父亡き夜山水凍てて音断えし 成瀬桜桃子 風色
牡蠣舟の並んで氷る干潟かな 古白遺稿 藤野古白
牡蠣船より凍てし大地へ渡りけり 島村元句集
犬の舌夕雲氷る水に鳴る 中島斌雄
狩くらの凍てに大火の炎立ちけり 飯田蛇笏 椿花集
狼を神とし祀り山凍る 岡田日郎
猩々の三七日頃か鐘氷る 子規句集 虚子・碧梧桐選
猪撃ちに曉の諸星なほ凍てぬ 石田あき子 見舞籠
猫埋める土凍る日も難民来る 鈴木八駛郎
猿の糞凍てて発電所への道 引間芳春
獄凍てぬ妻きてわれに礼をなす 秋元不死男
獄塀凍て雲母明滅義民坐すや 香西照雄 対話
玄関に凍てし北斗を見て閉むる 阿部みどり女
玉砂利を踏む音も凍てし神の庭 谷條 昭平
玲瓏と池にも天の鴟尾凍る 狹川青史
玻璃戸にも野づらの寒さ来て凍る 占魚
玻璃越しに凍む信長の太刀兜 渡辺恭子
瓦斯燈の凍つるや遠くより来しに 小池文子 巴里蕭条
甘藷凍つをわが罪の如隠し棄つ 殿村菟絲子 『繪硝子』
生きながらひとつに氷る海鼠かな 芭 蕉
生ながらいなご凍てゆく枯葎 月草
生木凍て裂くる音わが身ぬちにも 柴田奈美
田の水の有たけ氷る朝かな 野澤凡兆
甲斐駒にくれいろひくく宙の凍て 飯田蛇笏 雪峡
男に男らしさ八方氷る木曾 宇佐美魚目 秋収冬蔵
男の瀧や女瀧な凍てそと打ち続く 平井さち子
町凍る陸橋の裾引き入れて 宮津昭彦
画集句集大邪魔物として凍る 宇多喜代子 象
異端者に凍てゆるびみゆ天主の燭 飯田蛇笏 雪峡
病む人の逝きたる知らせ蝶凍つる 杉山和子
病棟の凍る灯りに妻の伏す 川口利夫
痰コップ凍てしを誰に訴へむ 石田 波郷
登山綱凍て瞼を濡らす雪とべり 石橋辰之助 山暦
登攀路一条凍てて雲に入る 望月たかし
白き灯となり鴎凍てゆく海いでず 寺田京子 日の鷹
白新た河清をまてず凍る河 平井さち子
白魚をはたく刺網凍てゝをり 松尾緑富
白鳥の翔てり翔たねば凍つるべし 岸田稚魚 筍流し
百姓ら天主を信じ凍てゆるぶ 飯田蛇笏 雪峡
皆既月蝕凍て王女めく銀の匙 河野多希女 彫刻の森
眠りゐる子の眉あげて氷る山 田中裕明 櫻姫譚
眠れぬ夜凍てゝゆくらむ水一壺 石田 波郷
石の上往く目返す目凍つるなり 岸田稚魚 筍流し
石凍てて抱かれぬ埋められむ為 品川鈴子
砂の中に海鼠の氷る小さゝよ 碧梧桐
砲据うとかつかつ凍てし地を掘る 長谷川素逝 砲車
砲烟の凍つて雪と散ずらむ 渋川玄耳 渋川玄耳句集
磐石に蝶は凍みつくまで潔し 佐野まもる
礁凍て一徴の青をだもゆるさず 富安風生
秒針の強さよ凍る沼の岸 西東三鬼
穴釣のあきらめ去りし穴凍る 金子 潮
空き缶の凍てたる空気蹴られたる 森田智子
空の青きはまり岩は並み凍てぬ 石橋辰之助 山暦
空凍てて銀杏大樹の槍千本 吉田信子
空凍てぬ隙を見せじと喋りつぐ 宮武寒々 朱卓
窯の火を守るに匠は闇に凍つ 大西岩夫
竜飛沖過ぎて飛沫も凍る夜ぞ 工藤義夫
竹河岸の竹ひゞらぐや夕凍てて 芥川龍之介
筆凍てゝかするゝばかり辞表書く 石井とし夫
節分凍てずこの川のいづこへ行くぞ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
精霊の凍みる雪夜を牡丹照る 渡邊水巴 富士
糊いまだ凍てず竹瓮につもる雪 木村蕪城 寒泉
糊凍てて諏訪明神の月夜かな 草間時彦 櫻山
紅梅に牛の涙も氷るらん 子規句集 虚子・碧梧桐選
紅茶あつし凍てつつ薔薇のひとさかり 春草
納棺す深夜の凍てに繩たすき 飯田蛇笏 春蘭
紙漉女に「黄蜀葵糊」(ぬべし)ぬめぬめ凍てざるもの 橋本多佳子
紙砧打つ夕凍みの一山家 つじ加代子
絢爛と傀儡の凍てる楽屋裏 石原八束
総毛立ち土間の猪凍ててあり 下村梅子
纜のくひこめるまゝ道凍てゝ 森田峠 避暑散歩
置酒独語理非曲直の凍る夜を 石原八束 空の渚
翔ぶ鳥の下にひかりて瀧氷る 中戸川朝人
老松の枯葉を誘ふ凍つよし 前田普羅 飛騨紬
老神の上から瞶め滝氷る 和知喜八 同齢
考への中まで凍ててきさうな日 岡田順子
聖像の予告もなしに凍て始む 対馬康子 愛国
聖書閉づ凍てたる音に今日終る 亀井糸游
肉桂玉しゃぶる御城下凍みっぱれ 高澤良一 ぱらりとせ
胴震ふ犬に熟柿と夕凍み空 河野多希女 納め髪
胸像の芯の虚ろを抱へ凍つ 横山房子
臘梅のつばらかに空凍てにけり 石原舟月 山鵲
自ら惹かるる歩み足凍てる 阿部みどり女
自由が丘の夕ベは氷る雪兎 山田みづえ
舗道凍つわが靴音の夜々ほてり 河合凱夫 藤の実
舟当ててきやきや氷る寝覚かな 杉風 霜 月 月別句集「韻塞」
船去りて岸壁の凍て今知りぬ 金子麒麟草
艪の声波を打って腸凍る夜や涙 艪声波を打って腸凍る夜や涙 松尾芭蕉
花ぞ浪紅梅凍る金魚船 花流 選集「板東太郎」
花の夜を塊り氷る無頭海老 高野ムツオ
花嫁に松毬氷る山の空 大峯あきら
花街果て凍る灯とぼす狸神 高井北杜
苔凍むや墓石とまがふ地番石 下村ひろし 西陲集
茎漬も氷る中なり一茶の地 加藤知世子
茜空凍みて東京横浜間 高澤良一 宿好
荒々しき火と棲み凍る土器のこせり 宮津昭彦
荒むしろ沈み切れずに川凍てぬ 岡本 眸
菓鋪街の鴻池邸鶴凍てぬ 宮武寒々 朱卓
菠薐草土に喰ひ込み氷る谷 沢木欣一
落日の巨眼の中に凍てし鴉 富澤赤黄男
落暉凍て阿蘇の風嘯天に泣く 石原八束 空の渚
落柿舎の夕凍みの憑く柿古木 高澤良一 燕音
落柿舎の柿の蔕ほど吾も凍みて 高澤良一 燕音
葬りの土より氷る諏訪の湖 古沢太穂 古沢太穂句集
葱掘るや大地は昼も深く凍つ 三輪浅茅
蒟蒻を呼びに戻るに道凍る 坪内稔典
蒼天をゆきつつ雲も氷る山 太田嗟
蓬莱に氷るはじめの湖の音 佐野美智
蓮掘の凍てに言葉を失へる 大橋敦子
蕗の芽に蝉の殼など凍てありぬ 松瀬青々
薔薇挿すや紅すでに凍ててあり 椎橋清翠
藁氷る地へむらさきに梯子かげ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
藪柑子崖凍る日の近からむ 太田 蓁樹
蘆の根のしつかり氷る入江哉 正岡子規
蛇口より凍る夜の妻しんとして 成田千空 地霊
蝶つひに凍てたる因と果なりけり 久保田万太郎 流寓抄
蝶凍つる何も持たぬを自由とし 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
蝶凍てて富士くれなゐに染りゐる 角川春樹
蝶凍てて苔のにほひにつつまるる 松村蒼石 露
蝶凍てて触れなば塵とくづるるか 宇都木水晶花
蝶凍てて餐庁の灯に近づけず 横山白虹
蝶凍てゝうたるゝ霜のしづくかな 藤原保吉
蝶凍てゝ何処までかろみ目指しをり 秋山巳之流
螺旋階段凍てて靴音をこぼしける 有働 亨
蟹売女凍ててその掌も蟹の紅 鈴木真砂女 夕螢
血の凍る思ひいくたび走馬燈 中嶋秀子
行人をとゞめず凍てる一木かな 中島月笠 月笠句集
行年や笹の凍てつく石の水 室生犀星 魚眠洞發句集
街凍ててこころおごらず靴の音 飯田蛇笏 雪峡
街凍てて歓楽の灯の怖ろしき 石原舟月 山鵲
裂けし翅大事にたたみ蝶凍てぬ 横谷清芳
裏街の福音耳まで凍てて聞く 有馬朗人 母国
裏街はあまたの岐路の夕凍みつ 有働亨 汐路
見えぬものに頷き凍る夜を眠る 野澤節子 花 季
見ゆるかぎり火を発す星雪凍る 渡辺水巴 白日
覚如忌や凍てつく灯皿わりなくも 西の丘
観世音こころに浮べ山凍つる 大岳水一路
触るる物みな凍て指頭熱したり 欣一
訃ののちの日数を氷る硯かな 宇佐美魚目 秋収冬蔵
誰が何を祈りし神か山凍る 岡田日郎
諍を好まぬ蝶の凍てにけり 樋笠文
諏訪の町湖もろともに凍てにけり 石橋辰之助 山暦
警衛士凍てたる蝶のうごきけり 久保田万太郎 草の丈
谷川に小鍋の氷る木曾路かな 古白遺稿 藤野古白
豆腐干す半日村が凍てにけり 阿波野青畝
貨車あまたちらばり凍てて歳去りぬ 片山桃史 北方兵團
責台と抱石四枚凍て白州 高澤良一 随笑
赤よな噴く火口をのぞく鼻の凍て 石原八束 空の渚
赤啄木鳥の打つ幹昼を凍るなり 小林黒石礁
赤富士は逸してめざめ宿凍つる 皆吉爽雨 泉声
赭土の断崖のもと凍る黄河 長谷川素逝 砲車
走らねば身の凍つるなり修二会僧 須賀一恵
足跡の氷る山路も宵の口 宇佐美魚目 秋収冬蔵
跡の月思へば氷るたたき鉦(かね) 智月 俳諧撰集玉藻集
跫音の凍てつく闇を曳き帰る 石原八束 秋風琴
踏襲のままの姿勢に鶴凍てり 上田五干石
身を掻けば穢がぽろぽろと鶴凍つる 波多野爽波 『一筆』
迅風凍つ火口地鳴りの人小さし 石原八束 空の渚
迅風無尽の凍て崖を墜つ噴火煙 石原八束 空の渚
迎春や油の氷る壜の中 碧童
通夜が明けたる硝子戸の凍てついた青空 人間を彫る 大橋裸木
通夜の食べもの早や凍てて皿に分けらるる 人間を彫る 大橋裸木
逢ひたさのつのりて銀河凍つるかな 藺草慶子
運の尽きならぬ凍み鐘突かれけり 高澤良一 燕音
道凍てし夜と云ふものゝ中にあり 高浜虚子
遠く呼びあふ汽笛その尾に凍る星 佐藤鬼房
遠つ世の禁色の蝶凍てにけり 石田小坡
遠山の落窪にも星ひとつ凍む 篠原梵 雨
遠空をゆく電車音野は凍てて 大井雅人 龍岡村
遺骨に日の射すまで畳凍つるかな(兄の遺骨還る) 岸田稚魚 『負け犬』
郷の寂凍てにたかきは白根のみ 飯田蛇笏 雪峡
酒すこし飲んで別れぬ通夜の凍て 石原八束 空の渚
酔眼にインキ凍つてしまひけり 草間時彦 櫻山
野施行や石に凍てつく小豆飯 長野蘇南
野辺送り転びて凍てに跪拝めく 田中英子
金庫凍つやこもりゐし空気顔へ来る 原田種茅 径
金星や羊の肉のごつと凍て 日原傳
金梨地の磁器凍てかへるさびしさに 石原八束 空の渚
金縷梅やのつたりと出て雲氷る 中拓夫
金色の凍てし烏や黒部川 折井眞琴
釘に濡手拭かけて凍てる日である 尾崎放哉



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by 575fudemakase | 2017-04-18 08:53 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

皹 の俳句

皹 の俳句


あかがりの血噴くとなげき筆つくる 竹下陶子
あかがりやまだ新嫁のきのふけふ 正岡子規
あかがりや哀れ絹地に引つかかり 三橋敏雄
あかがりや世上の費(つひえ)そくゐ飯 口慰 選集「板東太郎」
あかがりや帝都を踏みて恥じる事 一鉄 選集「板東太郎」
あかがりや頻婆果の唇斯くあらむ 阿波野青畝
あかがりをいざ灸せばや苅干火 惟然
あかがりを夜の高野の火に焙る 福島せいぎ
あかぎれが疼くよ昭和ひとけたよ 宇咲冬男
あかぎれに当るこはぜを掛けにけり 浜口今夜
あかぎれに葱の匂ひの残りけり 広瀬千鶴
あかぎれの膏薬つつむ落葉かな 木導 十 月 月別句集「韻塞」
あかぎれの子のみ仏に合掌す 佐藤和子
あかぎれの指そろばんの珠弾く 土屋保夫
あかぎれの手のきらめくは和紙の村 落合水尾
あかぎれの手のきらゆくは和紙の村 落合水尾
あかぎれの手のふれてゐる乳房かな 佐々木有風
あかぎれの母の手ゆ享く粥眩し 玉村夜音女 『さんご玉』
あかぎれの母を残して父逝けり 高橋悦男
あかぎれの薬貼る手と貼られる手 勝目トミ
あかぎれや左翼文学廃れたる 石村与志
あかぎれをかくして我を見舞ふ妻 西形佐太郎 『てんご』
あかぎれをかくそうべしや今年妻 前田普羅
あかぎれをきらしたる手やおもひもの 久保田万太郎 流寓抄
あかぎれを知らぬ子と鶴折りにけり 改田以久代
あかぎれ膏貝詰なるがたのもしき 水原秋桜子
きやくそうあかぎれていれ 河野静雲
そとかくす皹の手を見のがさじ 臼田亞浪 定本亜浪句集
なき母の声あかぎれの割目から 平畑静塔
ははそはに似しあかがりのもの悲し 立花 豊子
やさしきは*椀成るときのあかがり手 文挟夫佐恵 雨 月
永らへしおのが皹母ゆづり 山吹静子
下男下女胼皹を話し居る 岡村三鼠
乾鮭にあかぎれの手を噛まれけり 平塚蕗山
客僧の皹手入あちらむき 河野静雲
愚痴つぽく皹が又疼き出す 西村和子 夏帽子
元日の暮れて日課の皹薬 榎本栄子
左手の使はぬ指のあかぎれて 黒田杏子
妻も子も土着せしごとあかぎれす 大川幸子 『小春日和』
匙落ちし音皹にひびきけり 百合山羽公
子の下宿誘ひて皹ふやしけり 斎藤節子
雫も小走りあかぎれの子の豆腐買 能村登四郎
初発心痩せ皹がまた痛む 西田孤影
掌に手おきあかがり妻の棘さがす 角川源義
寝ほてりの吾子の頬なる微塵皹 篠原梵
身の冬の皹あかぎれの薬かな 久保田万太郎 流寓抄
身の冬の胼あかぎれの薬かな 久保田万太郎
成人の日にあかがりの手を見ざる 川崎展宏
石切るに生きる証のあかぎれよ 石橋林石 『石工日日』
祖母の代のあかがり膏や今も塗り 根岸 善雄
足袋ぬいであかがり見るや夜半の鐘 正岡子規
鱈割き女あかがりもなく腰太く 西本一都
爪に絵を描きて皹など知らず 杉原 佳子
爪皹痛み六十路も嫁の座に 菅野イチ子 『花漆』
田の皹に風しむ夜なり一茶の忌 伊藤三十四
土筆摘む手に皹の未だのこる 田中冬二 俳句拾遺
働けば口あく皹に膏薬を食わせている 栗林一石路
箸にかかりにくき麦飯皹いたむ 大熊輝一 土の香
飯粒やあかがり帰る越の山 言水 選集「板東太郎」
筆頭にあかぎれ膏や冬用意 水原秋桜子
熔岩踏みしあかぎれ疼く海の紺 殿村莵絲子 牡 丹
藍ふかく滲む皹の二三すぢ 西村旅翠
擲ちし妻の座遠し皹も 山田みづえ 忘
皹(あかぎれ)といふいたさうな言葉かな 富安風生(1885-1979)
皹ぐすりつけぬ筆墨あらたゆゑ 及川貞 夕焼
皹といふいたさうな言葉かな 富安風生
皹のこの手生涯自分の手 福田蓼汀 秋風挽歌
皹の妻の手一年長かりし 椎橋清翠
皹の指にあつまる水の声 萩原玉子
皹の指講宿の炉にかざし 佐藤 欽子
皹の手に縫ひにくし絹の物 中宮 喜代子
皹の手もて売らるる鶏を撫づ 福田蓼汀 山火
皹の手よまたと会う日のすでになし 鈴木六林男
皹の手より受けたる泥の葱 白岩てい子
皹の痛むや星のあらぬ夜 渡辺民子
皹の娘のほてる手に触はられぬ 飯田蛇笏
皹の胼の薬も問はれけり 谷口雲崖
皹は母似父より医業継ぎ 土屋巴浪
皹や矢取りする子の藁草履 寺野竹湍
皹や遊女の恋を琴に弾き 熊丸淑子
皹や稍稍熱き湯のしみ心地 会津八一
皹を獅子身中の虫という 宇多喜代子
皹を少し気にして同窓会 矢口由起枝
皹薬つけてより紅絹縫ひ始む 敦賀皓子
胼の手を皹の足を己かな 尾崎迷堂 孤輪
胼皹以下に百効百草湯 大石悦子 百花

皹 補遺

あかがりや哀れ絹地に引つかかり 三橋敏雄
あかがりや雨来てくらき鍛冶部落 角川源義
あかがりや頻婆果の唇斯くあらむ 阿波野青畝
あかぎれや貝詰膏に如くはなき 水原秋櫻子 蘆雁
きずがそのままあかぎれとなり冬籠る 種田山頭火
そとかくす皹の手を見のがさじ 臼田亜郎 定本亜浪句集
もう泣かぬ釣瓶あかぎれ踵(きびす)寝て 佐藤鬼房
握りしめる手に手のあかぎれ 種田山頭火 草木塔
匙落ちし音皹にひびきけり 百合山羽公 寒雁
雑兵や皹を吹く草の上 村上鬼城
残る日のほのぼのうごく皹の中 加藤秋邨
雫も小走りあかぎれの子の豆腐買 能村登四郎
手の節々あかがり膏やなほ励む 阿波野青畝
十字切る手に日本の皹もらひ 鷹羽狩行
春の飴妻よ皹も久しからじ 日野草城
春寒く疵がそのままあかぎれとなり 種田山頭火 草木塔
傷あとのあかぎれをまた痛めけり 松崎鉄之介
土乏しあかがりの子を此頃見ず 松崎鉄之介
筆頭にあかぎれ膏や年用意 水原秋櫻子 蘆雁
米量る血ふくあかぎれ泣く嬰児 佐藤鬼房
母の忌の母より継ぎしあかぎれぞ 松崎鉄之介
寐ほてりの吾子の頬なる微塵皹 篠原梵 年々去来の花 皿
擲ちし妻の座遠し皹も 山田みづえ 忘
皹ぐすりつけぬ筆墨あらたゆゑ 及川貞 夕焼
皹といふいたさうな言葉かな 富安風生
皹に遠くなりたる手を洗ふ 山田みづえ 木語
皹のこの手生涯自分の手 福田蓼汀 秋風挽歌
皹の手もて売らるる鶏を撫づ 福田蓼汀 山火
皹の娘のほてる手に触はられぬ 飯田蛇笏 霊芝
皹の踵が疼くお元日 佐藤鬼房
萬物やあかがり強くたこ優し 三橋敏雄

皹 続補遺

あかぎれの膏薬つゝむ落葉哉 木導
あかがりよをのれが口もむさぼるか 路通

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 08:24 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

採氷 の俳句

採氷 の俳句

採氷

例句を挙げる。

切りとりし空の蒼さや採氷夫 武井耕天
太陽はまず採氷夫を青い刃にする 佐々木麻男
採氷のきらめき積まれ月光裡 伊藤皓二
採氷のはじまる雪を掃きにけり 阿部慧月
採氷の橇がわり込む湖上の路 古館曹人
採氷の灯にかはたれの雪飛べり 木村蕪城 寒泉
採氷の赤旗立てて昏れてをり 原田青児
採氷や唯雪原の網走湖 唐笠何蝶
採氷や日輪退る杉木立 窪田あさ子
採氷や湖の端より売る故郷 対馬康子 愛国
採氷や湖の蒼さを切つてをり 三浦敦子
採氷場人馬の道を江上に 桂樟蹊子
採氷夫おのれの影も容れて切る 源鬼彦
採氷夫けもの引き連れ舟小屋に 新谷ひろし
採氷夫とは自己の倒影を截る奴さ 細谷源二
採氷夫ゆがめる顔に笑うかべ 大場白水郎 散木集
採氷夫切れどきりなし嘆息す 成瀬桜桃子 風色
採氷夫棒立ちのとき若き日の眼 細谷源二
採氷夫焚火に立ちて雫する 橋本多佳子
採氷池よべの霰のまろびをり 金子伊昔紅
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
採氷池方形を日の器とす 木村蕪城 寒泉
採氷池青き澱みの凍ゆるぶ 木村蕪城 寒泉
採氷馬空より蒼きもの牽きゆく 小関骸子
暮色より暮色が攫ふ採氷馬 齋藤玄 『玄』
松矮く繞り採氷池を隠す 木村蕪城 寒泉
椎き採氷の辺を登校児 木村蕪城 寒泉
蒼天へ積む採氷の稜ただし 木村蕪城 寒泉
試し切り終り採氷はじまりし 白幡千草

採氷 補遺

スケートの氷切る音山しづか 山口青邨
鋸で氷田を引く採氷夫 平畑静塔
荒き刃のゆききあらはに氷挽く 鷹羽狩行
採氷に山々は日を頒ち合ふ 平畑静塔
採氷の灯にかはたれの雪飛べり 木村蕪城 寒泉
採氷の道具のうちの高箒 上村占魚
採氷の夫に焚火す遠くより 平畑静塔
採氷池子等への怒声日へ谺 木村蕪城 寒泉
採氷池青き澱みの凍ゆるぶ 木村蕪城 寒泉
採氷池方形を日の器とす 木村蕪城 寒泉
採氷夫焚火に立ちて雫する 橋本多佳子
採氷婦疲れ果てても母の暖 平畑静塔
松矮く繞り採氷池を隠す 木村蕪城 寒泉
蒼天へ積む採氷の稜ただし 木村蕪城 寒泉
椎き採氷の辺を登校児 木村蕪城 寒泉
氷塊の上に祭の氷挽く 鷹羽狩行
氷上を犬駆ける採氷夫が飼へり 橋本多佳子
氷切る男のちから溶けゆく塩 赤尾兜子 蛇
氷挽ききっていきれる冬日の鋸 古沢太穂 古沢太穂句集
氷挽き運ぶ一切手を触れず 右城暮石 上下
氷挽き鋸透ける我鬼忌かな 秋元不死男
氷挽く音こきこきと杉間かな 臼田亜郎 定本亜浪句集
氷挽く鋸土佐の大魚の牙 山口誓子
氷挽ける音の中にて愛憎す 岸田稚魚 負け犬
焚火するもの採氷の田に遠く 平畑静塔
北風の中氷挽きたるあと残る 岡本眸
冷凍の鬆入りの氷挽きゐたり 山口誓子
檻の豹より減るかがやきの氷挽く 赤尾兜子 虚像

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:44 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

砕氷船 の俳句

砕氷船 の俳句

砕氷船

例句を挙げる。

マスクして砕氷船のごと進む 林翔 和紙
夜々見ゆる砕氷船の機関の火 及川牧風
月明や砕氷船の錨垂れ 井上康明
氷塊を水尾に伴ひ砕氷船 市川公吐子
海馬来たる砕氷船の後より 広中白骨
湾外へ砕氷船の一路かな 久米幸叢
砕氷船の水尾をたまりに漁り舟 林佑子
砕氷船の航跡青し蹤いて航く 小野田洋々
砕氷船オロラの下に泊つるかも 間宮緑蔭
砕氷船大日輪をいただきぬ 佐藤青水草
砕氷船海に一路をのこしけり 松原千甫
砕氷船舳先いためて繋りをり 高木紫雲

砕氷船 補遺

マスクして砕氷船のごと進む 林翔 和紙
*げきとして砕氷船も横はる 河東碧梧桐

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:40 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷湖 の俳句

氷湖 の俳句

氷湖

例句を挙げる。

一枚の氷湖に幼手を殺す 古舘曹人 能登の蛙
一枚の氷湖をふたり渡れるか 櫂未知子 蒙古斑
一氷湖空の紺さへ許さざり 古内一吐
三面鏡その一枚にある氷湖 対馬康子 純情
児の睡る橇を氷湖に曳き渡る 品川鈴子
冬茜氷湖の中の城一つ 有馬朗人 耳順
初荷橇氷湖をたわみつつ渡る 吉村唯行
喪の家の氷湖をかくす深廂 田村了咲
夕空の星研ぎいづる氷湖かな 徳永山冬子
夜は星の語り部となる氷湖かな 雨宮きぬよ
夜空より暗き氷湖と思ひけり 小島千架子
大吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀
大氷湖落暉散乱しても無音 甲斐虎童
大試験さなかの氷湖かがやけり 木村蕪城 寒泉
天仰ぐほかなし氷湖の真中は 野沢節子
抽んでし氷湖の芦に霧氷かな 奥田智久
日輪を愛す氷湖の真中に 宮津昭彦
日輸のほか何もなき氷湖かな 深谷岳彦
星の数ふえつゝ暗き氷湖かな 浜井武之助
曳く橇の氷湖に沿へり注連貰 村上光子
月と日と倶にただよふ氷湖かな 板谷芳浄
月上げて氷湖一枚暮れ残る 伊東宏晃
月光にさらけ出されし氷湖かな 草間時彦 櫻山
朝焼けて氷湖を渡る北きつね 高岡秀行
橋一つこえて氷湖となりゐたり 友岡子郷
氷湖に雪死装束の白さもて 轡田進
氷湖の日わたるに置きて松葉杖 木村蕪城 寒泉
氷湖ゆく白犬に日の殺到す 岡部六弥太
氷湖より親しきものに蕪城の名 原裕 青垣
氷湖日の出影も輝くわが分身 川村紫陽
氷湖昏れ万籟を絶つ四辺かな 伊東宏晃
氷湖照る吾妻鏡の世も斯くや 木村蕪城
氷湖照る明るさ朴の幹つたふ 早崎明
氷湖白く喪の家の子らけふ見えず 田村了咲
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
氷湖見る胸をわづかに傾けて 古舘曹人 能登の蛙
氷湖駆く余生の力恃みつつ 北見さとる
漁夫戻る肩に氷湖のひかりをり 手島 靖一
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
犬吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀 秋風挽歌
甘露煮に氷湖のひかり粗々し 原裕 青垣
穴釣や氷湖轟く寧からず 新井石毛
穴釣りの人増え氷湖明けしらむ 伊東宏晃
翡翆や氷湖一隅融けそめて 堀口星眠 営巣期
老画家とゆく落日の氷湖の辺 野澤節子 遠い橋
聯珠の灯氷湖をかこみ遠ちに切れ 福田蓼汀 秋風挽歌
脚ひらく氷湖に刃入るるとき 櫂未知子 蒙古斑以後
蒼天を涵し氷湖の罅深し 木村蕪城 寒泉
諏訪衆に風の集まる氷湖かな 原裕 青垣
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子
鳥発つて氷湖傷つく鉄の刃 田川飛旅子
ミシガン湖凍りついたる初日かな 仙田洋子 雲は王冠
光の中眼ひらきどほし湖氷挽く 加倉井秋を 『真名井』
円湖凍てゝ方位東西相隣る 草田男
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
山上湖氷らんとして波さわぐ 篠田悌二郎
山風や夜落ちしところ湖氷る 松根東洋城
月光の切先に触れ湖凍てぬ 根岸善雄
湖凍ててわが声われを驚かす 林翔 和紙
湖凍てて療園の嬉戯玻璃のうち 木村蕪城 寒泉
湖凍てて落暉の総のそよぎをり 大峯あきら
湖凍り林をのぼるオリオン座 堀口星眠 火山灰の道
湖凍るそがひの山に人葬る 木村蕪城 寒泉
湖凍るひびきの夜夜を書に痴るる 木村蕪城 寒泉
湖氷る大きな朝にあひにけり 加藤楸邨
湖氷る日を見さだめつ楮蒸す 栗生純夫 科野路
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湖氷挽く挽き音しだいに咽び音に 加倉井秋を 『真名井』
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
猟銃音湖氷らんとしつゝあり 相馬遷子 山國
凍湖に犬の見つけし落しもの 青葉三角草
凍湖の汀ともなく木立あり 依田秋葭
月一輪凍湖一輪光りあふ 橋本多佳子
犬も亦凍湖を渡る家路あり 青葉三角草
穴釣す暁けの凍湖を渡り来て 松尾緑富
風吹けり凍湖に琴糸はるように 対馬康子 愛国
ショーのあと消す氷盤に水撒きて 津田清子 二人称
寸鉄をもて氷盤を磨ぎにけり 栗生純夫 科野路
氷盤の炎消しがたしかゆ炊く火 細谷源二 砂金帯
火口湖が白き氷盤となれるのみ 山口誓子

氷湖 補遺

*えり古りて湖尻の氷雨上がりけり 松村蒼石 寒鶯抄
あけぼのや湖の微をとる氷魚網 森澄雄
うらゝかや氷の解けし諏訪の湖 正岡子規 麗か
かすれては氷湖に交すわが語はも 大野林火 青水輪 昭和二十六年
さゝ波や氷らぬ鳰の湖青し 正岡子規 鳰
一枚の氷湖に幼手を殺す 古舘曹人 能登の蛙
一枚の氷湖はめこむ古代地図 有馬朗人 母国
一枚の氷盤流れ来滝の川 山口青邨
火口湖が白き氷盤となれるのみ 山口誓子
外燈に氷湖をわたりきし風音 大野林火 青水輪 昭和二十六年
街空に氷れる湖の線がある 木村蕪城 一位
葛飾や氷沼の葦の日を恋ふる 角川源義
葛飾や氷沼を午の鉦すめる 角川源義
甘露煮に氷湖のひかり粗々し 原裕 青垣
観念の死を見届けよ青氷湖 佐藤鬼房
眼前に古鏡眼下に結氷湖 岡本眸
機窓を開けて諏訪湖の氷解 木村蕪城 一位
漁樵をり氷湖雪山こもごも照る 木村蕪城 寒泉
強き星氷湖はすでに闇のなか 鷲谷七菜子 天鼓
結氷湖懐中燈の輪がすすむ 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
結氷湖氷の解けし方に村 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
月一輪凍湖一輪光りあふ 橋本多佳子
月光にさらけ出されし氷湖かな 草間時彦 櫻山
犬吠えて氷湖天狼を真上にす 福田蓼汀 秋風挽歌
鍵束を凍湖に鳴らし神楽舞 三橋鷹女
湖があり森あり氷河とどまれる 鷹羽狩行
湖の青氷下魚の穴にきはまりぬ 斎藤玄 狩眼
湖の氷にはぢく霰哉 正岡子規 霰
湖の氷らず海につながりて 右城暮石 虻峠
湖の氷をよごす出初かな 前田普羅 普羅句集
湖の靜かに三井の鐘氷る 正岡子規 鐘氷る
湖氷り川躍りゆく大地かな 岡本眸
湖氷る響幾夜にわたりつる 木村蕪城 一位
湖撫でて氷雨一過やある永別 楠本憲吉 孤客
光芒とともに凍湖へ夕日降る 中村草田男
高熱の落ちたる湖の厚氷 橋閒石 無刻
山の湖に白雲閑たり氷浮く 村山故郷
山へだて結氷湖あり眠られず 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
四肢氷りついて氷湖となりにけり 三橋鷹女
春の湖夜の氷の下明るし 加藤秋邨
障子越しさわだつ湖の氷解 木村蕪城 寒泉
信濃いま蘇枋紅梅氷解くる湖 橋本多佳子
諏訪衆に風の集まる氷湖かな 原裕 青垣
厨房に温泉迸り湖氷る 木村蕪城 一位
雪積むを許して湖の氷りけり 石田勝彦 秋興以後
葬りの土より氷る諏訪の湖 古沢太穂 古沢太穂句集
蒼天を涵し氷湖の罅深し 木村蕪城 寒泉
大試験さなかの氷湖かがやけり 木村蕪城 寒泉
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城 一位
昼すぎの睫毛の繁る氷沼 飯島晴子
冬の雲海大いなる氷盤 山口誓子
冬茜氷湖の中の城一つ 有馬朗人 耳順
凍湖に赤き椅子一つ置く何見んと 藤田湘子
凍湖に焚火せし罪測られず 津田清子
凍湖一面町に冬咲く花を見ず 中村草田男
馬橇駆つて氷湖の風は刃のごとし 鷲谷七菜子 天鼓
氷らんとせる湖の色さだまらず 岸田稚魚 紅葉山
氷る湖の温泉おつるところ舟囲ふ 木村蕪城 一位
氷る湖へだて二街響きあふ 木村蕪城 寒泉
氷る湖太陽これを犯すなし 阿波野青畝
氷る湖二つに割るる夜を囃す 原裕 青垣
氷る湖日の落ち際をきびしくす 岸田稚魚 紅葉山
氷を割れば水はたはたと湖鳴りす 角川源義
氷解けて湖辺の路の往来かな 正岡子規 凍解
氷魚といふさかな小鉢に湖の宿 桂信子 花影
氷湖の上氷魚釣り出され腸すかす 角川源義
氷湖の底何かまさぐる糸たらし 角川源義
氷湖の日わたるに置きて松葉杖 木村蕪城 寒泉
氷湖より親しきものに蕪城の名 原裕 青垣
氷湖見る胸をわづかに傾けて 古舘曹人 能登の蛙
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
氷湖出し水よろこびて熔岩の端を 飯田龍太
氷沼に下りて 鴉の黒化粧 三橋鷹女
氷沼野や水木は空に傾ける 角川源義
氷盤に汝が意ふ型を刻まむと 山口誓子
氷盤に立つ『白鳥の死』を了へて 鷹羽狩行
氷盤の炎消しがたしかゆ炊く火 細谷源二 砂金帯
氷盤を向股向脛ゆきめぐる 山口誓子
夫婦住む鉄路と凍湖見下ろして 中村草田男
風の湖舟溜りより氷り初む 上田五千石 森林
暮れんとす氷湖をへだて吠ゆる犬 大野林火 青水輪 昭和二十六年
猟銃音湖氷らんとしつゝあり 相馬遷子 山国
聯珠の灯氷湖をかこみ遠ちに切れ 福田蓼汀 秋風挽歌
老人に子を遺りにくる氷沼 飯島晴子
老体を氷湖の道がつきぬける 斎藤玄 狩眼
礫うつ氷沼のひびきを愛しみて 橋本多佳子

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:28 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

氷海 の俳句

氷海 の俳句

氷海

例句を挙げる。

氷海に壁のごときがはだかれり 千葉 仁
氷海に生まれし亀裂四月来る 山本歩禅
氷海に秋日踊らす白夜行 殿村莵絲子 雨 月
氷海の亀裂と亀裂相遭はず 橋本鶏二
氷海の千鳥ら船団を率いたり 萩原麦草 麦嵐
氷海の巌畳々と濤に非ず 古館曹人
氷海の涯しらしらと今日の雁 古沢太穂
氷海の陸よりたかく見ゆるかな 伊藤凍魚
氷海へ水路は藍を絞りたり 金箱戈止夫
氷海へ追ひつめられし日輪よ 坂巻純子
氷海やこだまさびしきわれの咳 伊藤彩雪
氷海やはやれる橇にたわむところ 山口誓子
氷海やはるか一連迎ひ橇 山口誓子
氷海や日の一粒の珊瑚色 金箱戈止夫
氷海や月ひた走る照り昃り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
氷海や船客すでに橇の客 山口誓子
氷海を上る朝日に氷下魚釣 粟津松彩子
黒犬も氷海を来し船の客 有馬朗人 耳順
潮の香もなくはろばろと海氷る(根室) 上村占魚 『萩山』
海凍てゝ渚ともなし島の春 凍魚
海凍る国に鮭鮓甘きかな 河東碧梧桐
よごれたる凍港犬もよごれをり 青葉三角草
凍港となりゆく頃の漁夫達よ 成瀬正とし 星月夜
凍港にともしび暗く住める漁夫 成瀬正とし 星月夜
凍港に人の匂ひの無い酒場 能城 檀
凍港に旗古るシップレストラン 田村了咲
凍港に起重機鷲の嘴の如し 久米正雄 返り花
凍港のどこに鋲打つ連れて打つ 久米正雄 返り花
凍港の中央碧き潮動く 齋藤愼爾
凍港の人ゐて赤き旗を振れり 岸風三楼 往来
凍港の今し沈める日を見ずや 岸風三楼 往来
凍港の歛まる雲や初御空 飯田蛇笏 霊芝
凍港の氷を解くと砲をうつ 太田ミノル
凍港の真中一筋解けはじむ 守谷順子
凍港やからすの落す魚の腑 泰史
凍港やクレーンも人も沈む日に 岸風三楼 往来
凍港や天主の鐘の夕告ぐる 蔦花
凍港や楽器売場のごと光り 櫂未知子 貴族
凍港や舊露の街はありとのみ 山口誓子
凍港より大洋並べ誓子の忌 南部富子
凍港を素描す画架を石廊に 石原八束
父を地に還す凍港ひかるころ 櫂未知子 貴族
少年兵を氷江に追ひ刺し落す 細谷源二 鐵
氷江や往くも還るも轟々と 石田波郷
氷江を照らして月の高からず 大場白水郎 散木集
氷原に没る太陽の紅からず 村上冬燕
氷原に鷲来て吾の生身欲る 津田清子
氷原の果てに白夜の影引かず 合田丁字路
氷原の氷の塊のみな影引く 古館曹人
氷原を白き貂ゆく光あり 長谷川櫂
船客に四顧の氷原街見えず 山口誓子

氷海 補遺

ほそ~と煙の晴るゝ凍港よ 日野草城
少年兵を氷江に追ひ刺し落す 細谷源二 鐵
船客に四顧の氷原街見えず 山口誓子
大亀裂せる氷海のおそろしき 阿波野青畝
凍海の盲魚のすがた空に描く 西東三鬼
凍港の歛まる雲や初御空 飯田蛇笏 霊芝
凍港や旧露の街はありとのみ 山口誓子
凍港や緋文字かりそめにして消えず 橋閒石
氷海の涯しらしらと今日の雁 古沢太穂 捲かるる鴎
氷海の朝焼けきびし狐舎の春 飯田蛇笏 山響集
氷海やさいはてに来て夢道のゆめ 古沢太穂 捲かるる鴎
氷海やはやれる橇にたわむところ 山口誓子
氷海やはるか一連迎ひ橇 山口誓子
氷海や月のあかりの荷役橇 山口誓子
氷海や船客すでに橇の客 山口誓子
氷原の天に見知らぬ月照れり 山口誓子
氷江の上の橋行く暮色かな 日野草城
氷江の西日となりぬ浮碧楼 日野草城
氷江やしみつたれたる牛車の灯 日野草城
氷江を越え兵の貌かっと映ゆ 伊丹三樹彦
北吹けば国来々々と海氷来 角川源義
無限大なる氷海や裂目見ゆ 阿波野青畝
養狐交け春の氷海鏡なす 飯田蛇笏 山響集

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 06:23 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

悴む の俳句

悴む の俳句

悴む

例句を挙げる。

いたいけの悴けたる手を垂りにけり 松村蒼石 寒鶯抄
すぐ泣く子今泣きさうに悴みて 京極杞陽
ちゝはゝの遺せし吾や悴みて 杉山岳陽 晩婚
つと立ちて悴む我をつきはなす 岡田和子
めつむれば霜雫せり悴むなよ 赤城さかえ句集
われらみな生の側にて悴めり 小坂順子
をんな坂下りはじめの悴みぬ 渡辺恭子
オルゴール切れて人形悴みぬ 吉原文音
一些事に躓きしより悴めり 石田あき子 見舞籠
一徹の父を見送り悴めり 山崎千枝子
一指一指悴かみ十指らちもなし 岡田日郎
一村悴み浮城のごとく赤城山 北野民夫
二人ゐて二人悴みゐたりけり 小澤實
人の死を知る眼交はして悴かめる 石原八束
人形がこなす苦役に悴めり 渡辺恭子
八十九歳の悴む御尤 粟津松彩子
八千の鶴に餌をまき悴めり 原 和子
厄介な孫のふぐりの悴める 清水基吉
取りおとす参籠の箸や悴みて 原 柯城
叱らるる子も悴かみてかなしけれ 橋本鶏二
地の塩の孤を悴みが呪縛す 石原八束 空の渚
坂くだる足音までも悴みて 渡辺 和子
天網にかからぬ蝶の悴めり 原和子
太陽に悴める手をむけても見 三好雷風
妻とのみなるはいよいよ悴むなり 右城暮石 声と声
屯田の訛悴むことやなし 齋藤玄 飛雪
山大きいまぼろし拾ふほど悴かむ 松澤昭 父ら
山家宿二階つき出て鼻悴かむ 平井さち子 完流
心中に火の玉を抱き悴めり 三橋鷹女
怯へしか悴みゐしか手をとれば 野中 亮介
悴かみてちひさな嘘が言へぬなり 香西照雄 対話
悴かみてペン落しつつ稿つづけ 阿部みどり女 月下美人
悴かみて糸の縺れをとくすべも 成瀬正とし 星月夜
悴かみて躓く心又一歩 橋本うた子
悴かめるこの一瞬もわれの生 相馬遷子 雪嶺
悴かめる一光年の途中かな 上野まさい
悴かめる児の手に白き息をかけ 山田 栄美代
悴みしわが手包める病者の手 白岩 うた
悴みし手に残業の鍵の束 長谷川史郊
悴みし手に水はじき水仕事 上野泰 佐介
悴みし手より警棒放されず 田崎令人
悴みし指がもの言ふ袋糶 堀 康代
悴みし掌の鉛筆より蝶生る 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
悴みし海豚のごとき眼をみたり 稲垣きくの 黄 瀬
悴みし身ぬちつらぬく茶碗酒 小島千架子
悴みてあやふみ擁く新珠吾子 能村登四郎 咀嚼音
悴みてけふこの女醜さよ 中杉隆世
悴みてこころ閉してしまひけり 柴田白葉女
悴みてこれを限りの手紙書く 森田峠
悴みてさらにその日のおもひだせず 久保田万太郎 草の丈
悴みてすぐ知れる嘘ひとつ吐く 山田弘子 こぶし坂
悴みてつひに衆愚のひとりなり 斎藤空華 空華句集
悴みてひとの離合も歪なる 中村草田男
悴みてよめる句に季のなかりけり 久保田万太郎 流寓抄
悴みてわかき日ばかりおもふめる 久保田万太郎 流寓抄以後
悴みてわが句おほかた旅に得し 成瀬桜桃子 風色
悴みてゐしそのことをもてあます 加倉井秋を 午後の窓
悴みてをりしが犬に吠えらるる 木暮陶句郎
悴みて乗つたる石のぐらりとす 大石悦子 聞香
悴みて亡き師詠ふを自戒せり 石川桂郎 高蘆
悴みて人の云ふこと諾かぬ気か 高濱年尾 年尾句集
悴みて佛づとめの燭ともす 吉田 長良子
悴みて千人針の糸くくる 井上雪
悴みて印押す手術承諾書 毛塚静枝
悴みて喪にゆく夫や畦づたひ 石田あき子 見舞籠
悴みて囚徒に髪を刈られけり 角川春樹
悴みて地にすれすれのよき枝を 宇佐美魚目 天地存問
悴みて堆朱の膳をしまひをり 下村槐太 天涯
悴みて妻に一円借りにけり 白岩三郎
悴みて少年人の靴磨く 岸風三楼 往来
悴みて己のことのほか知らぬ 中杉隆世
悴みて影を失ふ水の上 松澤昭 神立
悴みて心いきいき怒れるなり 佐野美智
悴みて心ゆたかに人を容れ 富安風生
悴みて憤(むづ)けば不愍笑めばなほ 川口重美
悴みて扉を押す力余りたり 右城暮石 声と声
悴みて手袋ぎらひ足袋ぎらひ 太田育子
悴みて掴みにくくて一円貨 辻田克巳
悴みて旅は迎への人まかせ 皆吉爽雨
悴みて桶に水くむ月詣り 脇坂啓子
悴みて死の日待つとはあらざりき 小林康治 『潺湲集』
悴みて水の切先そらし得ず 岡田 和子
悴みて汽車に眠りぬあすも旅 成瀬櫻桃子 風色
悴みて洋奴たりゐし歳月よ 小林康治 玄霜
悴みて海苔漉き了へし窓白む 長谷川史郊
悴みて猿の腰かけ向ひ合ひ 殿村莵絲子 雨 月
悴みて生きてゆく嘘つきにけり 成瀬櫻桃子 風色
悴みて眼よりも高きものを見ず 百瀬美津
悴みて瞑りて皇居過ぎゐしか 石田波郷
悴みて短き一語ともならず 山本紅園
悴みて秀野恋ひゆく雑木山 関戸靖子
悴みて糸の縺をとくすべき 成瀬正俊
悴みて綯ひたる縄のやはらかし 河崎 初夫
悴みて見上ぐる塔の高さかな 片山由美子 水精
悴みて見知らぬ街を行くごとし 井沢正江
悴みて読みつぐものにヨブ記あり 上田五千石 風景
悴みて跼むにあらず祷るなり 成瀬櫻桃子 風色
悴みて踏みて鶯張は憂し 亀井糸游
悴みて飛ばなくなりし竹とんぼ 宮下秀昌
悴みて高虚子先生八十一 高浜虚子
悴みの溶けゆく泪春煖炉 殿村莵絲子 牡 丹
悴み病めど栄光の如く子等育つ 石田波郷
悴むとその身切りさう鎌の神 加藤知世子 花寂び
悴むや岩に魑魅の水の音 古舘曹人 樹下石上
悴むや手に息かけて松葉杖 山口恵子
悴むや拳固宙までおろしけり 阿波野青畝
悴むや注連を引きあふ陰の石 古館曹人
悴むや胸ふかき像捨てきりて 鷲谷七菜子
悴むや鞄へひとの金満たし 皆川白陀
悴むを許さぬ一机ありにけり 石塚友二
悴む妻見れば却つて口つぐむ 榎本冬一郎 眼光
悴む手こする太陽赤き下 村越化石 山國抄
悴む手なだめ藍糸絞りきる 太藤 玲
悴む手女は千も万も擦る 山口誓子 一隅
悴む手銃の重さを記憶せり 千代田葛彦
悴む身ほどけて椅子に深くをり 高木晴子 花 季
悴めどまた火の粉浴び鬼が舞ふ 友岡子郷 遠方
悴めばなほ悲しみの凝るごとく 永井龍男
悴めば地にすれすれに星生れぬ 加倉井秋を 午後の窓
悴めば祈る形に指組まれ 竹内千花
悴めば花かと潤み白きもの 宇佐美魚目 天地存問
悴めば遺影は横を向きにけり 古舘曹人 砂の音
悴めり波濤は石をまろばせつ 斎藤梅子
悴めり雌伏せりとも言はむかな 相生垣瓜人 明治草抄
悴めるすがたに牛を曳き去りぬ 下村槐太 光背
悴める妻毎日の髪結へり 森川暁水 黴
悴める姿に牛を曳きゆきぬ 下村槐太 天涯
悴める手で書く現場日誌かな 大野審雨
悴める手に死に給ふ髪を梳く 都筑智子
悴める手に母の手の大きかり 千原叡子
悴める手のすべりがち棺担ふ 岡安仁義
悴める手は憎しみに震へをり 高浜虚子
悴める手を暖き手の包む 高浜虚子
悴める手を病む母に握らるる 鈴木昌江
悴める掌のかたちして枯柏 高澤良一 ももすずめ
悴める掌を包みやり諭しけり 西村和子 夏帽子
悴んでくる手拳にしてしまふ 石井保
悴んでまるくなりゐる女房かな 森川暁水 黴
悴んでゐる手を垂れて這入りくる 京極杞陽 くくたち上巻
悴んでをりし両手を預かる手 黒川悦子
悴んで聞いて忘れてしまふこと 稲畑汀子 春光
悴んで言はずもがなを甲走る 小出秋光
意志伝へくれぬ指先悴みて 稲畑汀子 春光
投網師の悴かむ手より鮒を買ふ 河前 隆三
教室の悴む吾子を目で励ます 山田弘子 螢川
柩傾ぎわが町人の血悴かむ 古舘曹人 能登の蛙
梧桐一本二階障子の悴めり 柴田白葉女 牡 丹
水底の文字悴まず虹の石 後藤比奈夫 めんない千鳥
氷河期の人類と共に悴かみぬ 相馬遷子 雪嶺
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
法廷に指の悴む男女かな 山口誓子
流離の荷からげ悴むばかりなり 小林康治 玄霜
炎天下廃磔像に悴むか 小林康治 玄霜
父の喪の盛装となり悴むか 小林康治 四季貧窮
牛売りし札数へをり悴みて 三宅句生
牛百頭鳴き流れゆく大洪水 悴山紀一
病む夫に耳悴みて仕へけり 石田あき子 見舞籠
白鳥になりたきひとと悴めり 仙田洋子 雲は王冠
石女の妻悴みて役立たず 森川暁水 黴
石階に悴める手ぞ十字切る 下村ひろし
税務署を出て悴みし犬に会ふ 前山松花
竹馬に仕上げて青し悴みぬ 永井龍男
結び目の解けぬかなしさ悴めり 馬場移公子
縄帯の悴いくつぞ霜柱 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
考へてゐるひとところ悴める 岸田稚魚 『紅葉山』
聞けば聞くほどに心の悴みて 水田むつみ
膝の上の悴む手では嘘は云へぬ 岸田稚魚
茶を吹いて悴むこゝろほぐれをり 河野柏樹子
蜘蛛迅し悴みをれる身ほとりを 森川暁水 黴
被告悴け判官網をうつごとし 飯田蛇笏 雪峡
西行の清水掌にうけ悴めり(西行庵とくとくの清水) 角川源義 『神々の宴』
跳ぶ水の幅悴める眼にはかる 大岳水一路
身はおろか心の中も悴みぬ 下村梅子
身長一九〇センチ悴めり 大野朱香
運転の始動悴み解けるまで 稲畑汀子 春光
釘をさすつもりの言葉悴めり 江頭 信子
鍋釜もわれにさからふ悴かめば 沢田しげ子
長病みの母云ふ骨も悴むと 渡辺恭子
電車待つ鬼城の町に悴みて 猪俣千代子 秘 色
霊柩車他郷に送り悴める 宮坂静生 青胡桃
飴なめて流離悴むこともなし 加藤秋邨 野哭
飽食の紙袋割り悴む手 鈴木康允
骨拾ふ箸ままならず悴みて 岡安仁義
鳥獣のうちの我なり悴めり 斎藤梅子
麻酔利く悴めるわれ居なくなり 辻田克巳
かじかみし手に蔵の扉の重かりし 宮林和子
かじかみし手をあげてゐるわかれかな 銀漢 吉岡禅寺洞
かじかみし手をよせ来る戀としも 久保田万太郎 草の丈
かじかみし手を尻に敷き靴みがき 北野民夫
かじかみし顔を写してコンパクト 稲畑汀子
かじかみつゝ月給袋逆さに持つ 石橋辰之助
かじかみて何をするにも腹だたし 右城暮石
かじかみて気ものらぬまま花ミモザ 落合よう子
かじかみて石切る山と海の間 津田清子 二人称
かじかみて脚抱き寝るか毛もの等も 橋本多佳子
かじかむや大き朱塗の牡丹刷毛 下田実花
もの煮る火見つめかじかむ顔ひとつ 松崎丘秋
をさなごの手のかじかみを握りて解く 伊藤敬子
乳さぐる小蟹の如くかじかむ手 赤松[ケイ]子
俥より下りてかじかむ手なりけり 久保田万太郎 流寓抄
修二会いま火の粉かじかむ群衆に 諸角せつ子
夜なべかじかむ戦後自作農となりしが 芳野庄太郎
幼な子のかじかみし爪藷に刺さる 田川飛旅子 花文字
暮天の冬日掴み来たれよかじかむ子 細谷源二 砂金帯
死者生者共にかじかみ合掌す 西東三鬼
空青しかじかむ拳胸を打つ 西東三鬼
耳飾りかじかむ月に鋭どくて 柴田白葉女
震災の被害を知らす文字かじかむ 八牧美喜子
露天湯へどぼんと入らねばこごえちまふ 高澤良一 寒暑

悴む 補遺

いたいけの悴けたる手を垂りにけり 松村蒼石 寒鶯抄
かじかみてぬくみきるまで口つぐむ 野澤節子 未明音
かじかみて何をするにも腹だたし 右城暮石 散歩圏
かじかみて脚抱き寝るか毛もの等も 橋本多佳子
かじかみて神将を見むと鍵を押す 伊丹三樹彦
かじかみて石切る山と海の間 清崎敏郎
かじかみて鼠近よる鼠捕り 日野草城
かじかみて木場にばうばうあぐらくむ 佐藤鬼房
かじかみ聞く蔑げられしものの弁 楠本憲吉 隠花植物
かじかむや頭の血脈の音とくとく 橋本多佳子
けふ一日顔悴みてものを云はず 山口誓子
サーカスの子の悴かみて馬を愛で 中村汀女
たらちねに生み遺されて悴める 上田五千石 天路
タンク過ぎ鼻悴みし我かへる 加藤秋邨
わが吉書平成元年かじかむな 阿波野青畝
愛染の金鼓を打ちて悴めり 角川源義
飴なめて流離悴むこともなし 加藤秋邨
椅子かたく悴み見るや受難劇 能村登四郎
一語添へ一語削りて悴める 上田五千石 風景
一瞬胸せまりたり悴む顔の囚衣群 能村登四郎
一日作さざればすなはち悴めり 上田五千石『琥珀』補遺
炎天下廃磔像に悴むか 小林康治 玄霜
火口ちかく悴けたるわが掌を見たり 山口誓子
我年の七十七や悴みし 高野素十
海のシャワーかじかむ形の少年達 草間時彦 中年
且つ悴け且つ呆けつつ明け暮るる 相生垣瓜人 負暄
顔いたきまで悴みて鉄を打つ 加藤秋邨
急き外づす釦数々悴かむ手 右城暮石 句集外 昭和三十八年
教師俳人かじかみライスカレーの膜 西東三鬼
近づいて見れば夕栄えさるすべり 佐藤鬼房
群像の使徒の足下に悴める 上田五千石『天路』補遺
拳骨にならず悴む汝かな 阿波野青畝
御徒士宿紙嵯造りに悴めり 松崎鉄之介
工区の煙悴む綾取り陽へさしだし 飴山實 おりいぶ
考へてゐるひとところ悴める 岸田稚魚 紅葉山
妻とのみなるはいよいよ悴むなり 右城暮石 声と声
三文原稿と思ひ悴みはげみをり 能村登四郎
山番が出すチャイ 十指の悴み解け 伊丹三樹彦
指からみ合ひて悴む洗面所 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
指先のことのみか指悴めり 高浜年尾
死者生者共にかじかみ合掌す 西東三鬼
手洟かみ漁夫の真顔の悴みゆく 能村登四郎
囚人の悴けし足を足蹴にす 山口誓子
書けばすぐ悴みつつも筆力 加藤秋邨
食ふといふときを屈背に悴める 上田五千石『琥珀』補遺
心中に火の玉を抱き悴めり 三橋鷹女
振香炉振りつつ童子悴める 西東三鬼
身を粉にし励む齢すぎ悴めり 松崎鉄之介
生涯を一職に生き悴めり 能村登四郎
西行の清水掌にうけ悴めり 角川源義
早梅の悴み咲きをしてをるよ 清崎敏郎
足枷といふものはめて悴める 山口誓子
天壇の龍の悴む格天井 鷹羽狩行
屯田の訛悴むことやなし 齋藤玄 飛雪
被告悴け判官網をうつごとし 飯田蛇笏 雪峡
膝の上の悴む手では嘘は云へぬ 岸田稚魚 雁渡し
氷河期の人類と共に悴かみぬ 相馬遷子 雪嶺
氷湖行けばさすらひの日の悴めり 角川源義
父の喪の盛装となり悴むか 小林康治 四季貧窮
片岸に艀寄りあひ悴むか 佐藤鬼房
暮天の冬日掴み来たれよかじかむ子 細谷源二 砂金帯
母いかにかじかみて米研ぐ兵よ 伊丹三樹彦
法廷に指の悴む男女かな 山口誓子
磨き磨いてなほ悴みぬ靴みがき 加藤秋邨
鳴き龍の青丹の下に悴めり 飯島晴子
藍壺にこごえる藍はただの汁 平畑静塔
流離の荷からげ悴むばかりなり 小林康治 玄霜
恋仏仰ぎあふぎて悴める 上田五千石『琥珀』補遺
悴かみてちひさな嘘が言へぬなり 香西照雄
悴かむや税問答に継穂なく 伊丹三樹彦
悴かめるこの一瞬もわれの生 相馬遷子 雪嶺
悴けたる四肢に鎖の鴫りにけり 山口誓子
悴まぬ日のために今日悴みき 加藤秋邨
悴みさがす老婆や切符出て来たり 中村草田男
悴みし我が手のただに腹立たし 右城暮石 句集外 昭和五十三年
悴みし手に水はじき水仕事 上野泰 佐介
悴みし手もてしばらく火の熱き 右城暮石 句集外 昭和十七年
悴みし銅貨もれなくもらひたり 中村汀女
悴みし日の紺絣なつかしき 加藤秋邨
悴みてあやふみ擁く新珠吾子 能村登四郎
悴みていよいよ頑固顔となる 右城暮石 虻峠
悴みてつらぬきかねし「かな嫌い」 能村登四郎
悴みてひたすら思ふ死とは何 桂信子 花影
悴みてひとの離合も歪なる 中村草田男
悴みてわれ山科といふ字書く 高野素十
悴みて化粧妻の座ほろ苦し 山田みづえ 忘
悴みて何となけれど腹立たし 右城暮石 散歩圏
悴みて我を離れず影法師 加藤秋邨
悴みて喜怒哀楽の別もなし 上田五千石『風景』補遺
悴みて吃々としてあらがひぬ 富安風生
悴みて言葉と言葉つなぎけり 稲畑汀子
悴みて妻の忌の燭取り落す 高野素十
悴みて師を託しおく末枯野 角川源義
悴みて叱らるることに泣きにけり 中村汀女
悴みて取り落したる洗面具 右城暮石 散歩圏
悴みて手をこする揉手めきゐたり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
悴みて囚徒抗ふこともなし 山口誓子
悴みて拾ふ流人の屋子の歌 上田五千石『琥珀』補遺
悴みて心ゆたかに人を容れ 富安風生
悴みて水のあをさの燈をともす 上田五千石『琥珀』補遺
悴みて祖翁に拈華旅遠く 富安風生
悴みて相逢ひし顔思ひ出せず 加藤秋邨
悴みて相逡ひし顔思ひ出せず 加藤秋邨
悴みて堆朱の膳をしまひをり 下村槐太 天涯
悴みて読みつぐものにヨブ記あり 上田五千石 風景
悴みて能面の眼に射られけり 百合山羽公 樂土
悴みて扉を押す力余りたり 右城暮石 声と声
悴みて腹立たしさも極まれり 右城暮石 句集外 昭和五十二年
悴みて聞き入ることばありにけり 稲畑汀子
悴みて亡き師詠ふを自戒せり 石川桂郎 高蘆
悴みて友の死悼む句は成さず 安住敦
悴みて洋奴たりゐし歳月よ 小林康治 玄霜
悴みて瞑りて皇居過ぎゐしか 石田波郷
悴み病めど栄光の如く子等育つ 石田波郷
悴むごと鳴り熄む錘子期錘子期よ 中村草田男
悴むや岩に魑魅の水の音 古舘曹人 樹下石上
悴むや胸ふかき像捨てきりて 鷲谷七菜子 黄炎
悴むや税問答に継穂なく 伊丹三樹彦
悴むや注連を引きあふ陰の石 古舘曹人 樹下石上
悴むを許さぬ一机ありにけり 石塚友二 玉縄以後
悴む手女は干も万も擦る 山口誓子
悴めば遺影は横を向きにけり 古舘曹人 砂の音
悴めり雌伏せりとも言はむかな 相生垣瓜人 明治草
悴めるすがたに牛を曳き去りぬ 下村槐太 光背
悴める園児五十に玻璃くもる 能村登四郎
悴める我が手まことに腹立たし 右城暮石 句集外 昭和四十九年
悴める姿に牛を曳きゆきぬ 下村槐太 天涯
悴める指動かせば口歪む 右城暮石 散歩圏
悴める手にペンとりて書きくるゝ 星野立子
悴める手に何事も腹立たし 右城暮石 句集外 昭和四十一年
悴める夫婦かたことと鳴る障子 村山故郷
懶るに慣れ悴むに慣れにけり 相生垣瓜人 負暄
柩傾ぎわが町人の血悴かむ 古舘曹人 能登の蛙

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 06:05 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

凍滝 の俳句

凍滝 の俳句

凍滝

例句を挙げる。

ときめくよ一糸纏はぬ凍瀧に 三好潤子
一切放下して凍滝の融け始む 高橋悦男
一瞬に大凍滝のゆるみ落つ 松住清文
凍て滝の裏に水落つ音のして 福井千悠
凍滝あまた稀に音たて落つるあり 福田蓼汀 秋風挽歌
凍滝と奥嶺の月と照らし合ふ 能村登四郎
凍滝に一縷の自在ゆるさるる 山崎冨美子
凍滝に刻ながるるは雪降れり 鈴木貞雄
凍滝に来て一穂の火を供ふ 右城暮石
凍滝に生きてゐるなり水一縷 椎名康之
凍滝に礼して神楽舞ひ納む 矢島渚男
凍滝に積む雪旅の先いそぐ 津田清子 礼 拝
凍滝に約束のひと来てゐたる 辻桃子
凍滝のいただき天に触れてをり 三森鉄治
凍滝のうす緑なる襞の数 高濱年尾 年尾句集
凍滝のかげりつくせる日のあり処 木村蕪城 寒泉
凍滝のそのいただきに日が射して 山口青邨
凍滝のなかを貫く青きもの 江井芳朗
凍滝のゆるびて呱々の声となる 椎橋清翠
凍滝の一水走り意志通す 高橋良子
凍滝の凍てても見ゆる滝の相 能村登四郎
凍滝の寂莫たりし解けはじむ 松本たかし
凍滝の帆明りほどの遠さかな 鷹羽狩行
凍滝の怒濤の音を嵌め殺し 石嶌岳
凍滝の明るさにをり車椅子 谷口紫頭火
凍滝の氷柱己を封じたり 野沢節子
凍滝の玉簾なす水の音 川辺房子
凍滝の真正面の厚さかな(袋田) 岸田稚魚 『萩供養』
凍滝の膝折るごとく崩れけり 上田五千石 森林
凍滝の自ら音を絶ちにけり 今関幸代
凍滝の身ぬちを水の流れゐる 鈴木貞雄
凍滝の阿修羅の相を愛しめる 堀口星眠 青葉木菟
凍滝は巌にかかり宙に出づ 三木星童
凍滝は日翳りやすし三十三才 有働 亨
凍滝を眉間にかかげ独鈷山 宮津昭彦
凍滝を蔵して山の総昃り 津田清子
凍滝を見る太陽の側に佇ち 村越化石 山國抄
凍滝を視てきしくちびるとおもふ 夏井いつき
凍瀧が吾が目にあふれ空にあふれ 今瀬剛一
凍瀧が落ちて来さうな月の町 今瀬剛一
凍瀧に倚れば上り来地の韻き 火村卓造
凍瀧のしろがね闇をつらぬけり 桂信子
凍瀧の人影しかと岩に踏む 古舘曹人 砂の音
凍瀧の内や垂水の音やさし 佐藤希世
凍瀧の樹を呑み込んでゐたりけり 寺島ただし
凍瀧の芯を凍て得ぬ水いそぐ 津田清子
凍瀧や千年も待つここちして 大木あまり 火球
凍瀧や失ひしもの火のいろに 大木あまり 火のいろに
凍瀧や根付の鈴を鳴らしみる 野口光江
凍瀧や禽ちらばつて散らばつて 大木あまり 火球
夜の凍滝無数の忍者攀じのぼる 田辺香代子
月光の凍滝に刻蒼みけり 富川明子
月徐々に射す凍滝の苦悶相 林翔
源流は凍滝に尽き峠越え 福田蓼汀 秋風挽歌
火を焚いて凍瀧守となりたしや 大木あまり 火球
皎々として凍瀧の刻うつる 古舘曹人 砂の音
青空の端より凍てゝ滝かかる 井芹眞一郎
音を生みけり凍滝の一とかけら 行方 克巳
ねむるまで冬滝ひびく水の上 飯田龍太
体内に大冬滝をもち戻る 平井照敏 天上大風
冬滝に対ひ刻々いのち減る 後藤比奈夫 花匂ひ
冬滝のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏(1885-1962)
冬滝のその巌相を見たるのみ 林 翔
冬滝の伝記かなしく棒立に 古舘曹人 能登の蛙
冬滝の力抜きたる力あり 河野南畦 『元禄の夢』
冬滝の哭きやみてより氷りけり 小林康治 『叢林』
冬滝の墨絵となりて山毛欅に消ゆ 松村蒼石 雁
冬滝の天ぽつかりと青を見す 橋本多佳子
冬滝の澄み切る壺に五指浸す 原裕 青垣
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬滝を日のしりぞけば音変る 西東三鬼
冬瀧に降り込むもののつぎつぎに 藺草慶子
冬瀧の真上日のあと月通る 桂信子
冬瀧の飛沫となりぬわが髪も 都筑智子
甘露てふもの冬瀧の遠しぶき 塚本邦雄 甘露
ぎりぎりの命脈保つ冬の滝 榊瑞芳
ねむれねば頭中に数ふ冬の滝 赤尾兜子(1925-81)
みな暗き口あき仰ぐ冬の滝 朔多 恭
一本の荒縄に閉づ冬の瀧 古舘曹人 砂の音
七星の柄杓が落とす冬の滝 有馬朗人
位置変へて冬の滝音楽しめり 加藤憲曠
八方に音捨ててゐる冬の滝 飯田龍太 山の影
冬の滝おのが響の中に落つ 中村世紀
冬の滝一岩盤を擁しけり 吉田紫乃
冬の滝不動明王ひとり立つ 加藤知世子 花寂び
冬の滝丸太一本吐き出せる 小川原嘘帥
冬の滝人に言葉を求めはせず 大井雅人 龍岡村
冬の滝奈落の音となりゆけり 柴田白葉女
冬の滝朝日夕日もなき巌 野澤節子 遠い橋
冬の滝水のかたまり叩きつける 藤岡筑邨
冬の滝細くおもたく峰よりす 松村蒼石 雁
冬の滝音かへしくる石鼎忌 原裕 青垣
冬の滝音を殺して落ちにけり 鈴木真砂女
冬の瀧おのれの壁に響きけり 古舘曹人 砂の音
冬の瀧わが怨念を打ちひびく 野澤節子
冬の瀧力をためてゐたりけり 平井照敏
冬の瀧底へ底へと落ちゆけり 井上 康明
冬の瀧心棒立てゝとゞろけり 沢木欣一 往還以後
冬の瀧男の膝に陽があたり 上野さち子
凶悪な音の夜に入る冬の滝 飯田龍太 遅速
創造のこと冬の滝まつすぐに 小川双々子
大巌に振り放さるる冬の滝 西本一都
天空へ駆けのぼるごと冬の滝 上野さち子
少年や父には冬の滝かかり 鈴木六林男 悪霊
文書くやすぐ恋文のやう冬の滝 加藤知世子 花寂び
月上げて白を彩とす冬の滝 町田しげき
しつかりと見ておけと瀧凍りけり 今瀬剛一
どこか水落ちてゐる音滝氷る 石井とし夫
一筋の流れを残し滝凍つる 池田秀水
一鳥の影もゆるさず滝凍る 平子公一
乾坤の刻をとどめて滝凍る 町田しげき
凍つる滝凍つる星いま息かよふ 今泉宇涯
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
大いなる水を束ねて滝凍てり 保坂リエ
天日へ一徹の直滝凍る つじ加代子
山の背を越えがたく滝凍てており 駒 志津子
岩々のまとふ青さに滝凍る 木村蕪城
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
日和空覗かせて滝凍てにけり 森田峠 避暑散歩
水の自在わづかに許し滝氷る 佐野美智
滝凍ててみちのくの風青みたる 下山芳子
滝凍ててもろもろの巌立ちあがる 細川加賀
滝凍ててをらず目的失ひし 橋本美代子
滝凍てて人間遠くありにけり 佐久間慧子
滝凍てて大音響をこもらする 小林康治 『華髪』
滝凍てて巌も眠りにつきにけり 鈴木貞雄
滝凍てて微塵の音のなかりけり 西岡フサ子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍てて立つ一切を忘却し 橋本美代子
滝凍てて金剛力のこもりけり 小島花枝
滝凍る中空に裾ふつ切れて 早崎明
滝凍る刻の止まりし形して 原田走日朗
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
滝氷り木の実に小鳥はたはたす 宇佐美魚目 天地存問
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
翔ぶ鳥の下にひかりて瀧氷る 中戸川朝人
老神の上から瞶め滝氷る 和知喜八 同齢
滝冱てて製多迦童子ころびをり 阿波野青畝
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝落下の滝とすれちがう 河合凱夫 飛礫
凍る滝落下途中の形して 村上冬燕
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎 寒九
氷る滝その上をせく水のあり 有馬朗人 天為
風響くなり氷瀑の大伽藍(カテドラル)高澤良一 ぱらりとせ

凍滝 補遺

あるときはもつるるままに冬の滝 桂信子 花影
ねむるまで冬滝ひびく水の上 飯田龍太
まつたうに落ちて冬滝ただ白し 桂信子「草影」以後
みづからを照らして夜の凍滝は 上田五千石『風景』補遺
一枚の氷盤流れ来滝の川 山口青邨
一椀に 甘酒の膜 冬滝見る 伊丹三樹彦
影のごと人去りゆけり氷り滝 鷲谷七菜子 花寂び
洩れ日寄らしめず冬滝の巌ぶすま 鷲谷七菜子 銃身
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
月射して凍滝さらに凍つる刻 能村登四郎
月徐々に射す凍滝の苦悶相 林翔
見尽して去ぬるそびらの冬の滝 日野草城
源流は凍滝に尽き峠越え 福田蓼汀 秋風挽歌
古氷懸けたる瀧を山鴉 石田勝彦 雙杵
紅蓮大紅蓮の氷瀧壺に 松本たかし
山ふかき冬滝にして忘らるる 能村登四郎
女等に白い矯声冬の滝 飴山實 おりいぶ
全石のひびきを絶ちて滝凍る 阿波野青畝
体内に大冬滝をもち戻る 平井照敏 天上大風
滝見茶屋赤ん坊が泣き滝凍る 山口青邨
滝凍つとはげしく星の息づけり 林翔
滝凍てしめず落下すなほ落下す 橋本多佳子
滝凍てずおよし明神およしのため 山口誓子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍りわが顔涙流しけり 山口青邨
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
男滝凍る悲愴も敢てなす 能村登四郎
爪先を使ひつづけて凍滝道 岡本眸
冬の滝の仔細つぶさに見て返す 安住敦
冬の滝ひびく生死のうらおもて 飯田龍太
冬の滝音かへしくる石鼎忌 原裕 青垣
冬の滝音を殺して落ちにけり 鈴木真砂女 都鳥
冬の滝間髪近き岩濡らさず 平畑静塔
冬の滝細くおもたく峰よりす 松村蒼石 雁
冬の滝晩年賭くることありけり 安住敦
冬の滝脇のラヂオに笑い声 飴山實 おりいぶ
冬の滝腋のラヂオに笑い声 飴山實 おりいぶ
冬滝に対ひ刻々いのち減る 後藤比奈夫
冬滝のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏 春蘭
冬滝の真上日のあと月通る 桂信子 花影
冬滝の澄み切る壺に五指浸す 原裕 青垣
冬滝の前おし黙りおしとほす 星野麥丘人
冬滝の天ぽつかりと青を見す 橋本多佳子
冬滝の伝記かなしく棒立に 古舘曹人 能登の蛙
冬滝の虹一聯や神話の地 角川源義
冬滝の白襟合し落ちにけり 岡本眸
冬滝の墨絵となりて山毛欅に消ゆ 松村蒼石 雁
冬滝の縒りをくれたる一糸あり 上田五千石『琥珀』補遺
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬滝を日のしりぞけば音変る 西東三鬼
凍る滝ときをり駅の拡声器 大野林火 飛花集 昭和四十五年
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍滝あまた稀に音たて落つるあり 福田蓼汀 秋風挽歌
凍滝と奥嶺の月と照し合ふ 能村登四郎
凍滝にコカコーラーの赤ベンチ 右城暮石 一芸
凍滝に月の光のいま及ぶ 山口青邨
凍滝に月光量を徐々に殖す 能村登四郎
凍滝に積む雪旅の先いそぐ 津田清子 礼拝
凍滝に対す一足十指もて 岡本眸
凍滝に注連張る二重三重に 右城暮石 一芸
凍滝に来て一穂の火を供ふ 右城暮石 虻峠
凍滝のかげりつくせる日のあり処 木村蕪城 寒泉
凍滝のしろがね闇をつらぬけり 桂信子 花影
凍滝のそのいただきに日が射して 山口青邨
凍滝の産まぬ身となりそそり立つ 鷹羽狩行
凍滝の自ら溶くるほかはなし 津田清子
凍滝の神も容れざる深奥部 能村登四郎
凍滝の神を封ぜし辺のくもり 能村登四郎
凍滝の凍てゝも見ゆる滝の相 能村登四郎
凍滝の帆明かりほどの遠さかな 鷹羽狩行
凍滝の膝折るごとく崩れけり 上田五千石 森林
凍滝へ下り行く者を押し止む 右城暮石 句集外 昭和四十六年
凍滝へ両足分の地の平ら 岡本眸
凍滝や未生も死後も白世界 岡本眸
凍滝を蔵して山の総昃り 津田清子
日矢を得て白刃の光冬の滝 桂信子 草影
剥落の氷衣の中に滝自身 上田五千石 森林
白き日の炎ゆるしづけさ冬の滝 鷲谷七菜子 黄炎
白玉楼中の人を遠くす滝氷柱 福田蓼汀 秋風挽歌
氷り滝いづこよりこゑ洩らしゐる 鷲谷七菜子 天鼓
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎
木を樵りにゆく凍滝の上渉り 津田清子
夜も音のとどろき止まず冬の滝 桂信子 花影

凍滝 続補遺

滝はゞや氷の中のいざり松 其角

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 05:48 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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