カテゴリ:冬の季語( 1193 )

凍滝 の俳句

凍滝 の俳句

凍滝

例句を挙げる。

ときめくよ一糸纏はぬ凍瀧に 三好潤子
一切放下して凍滝の融け始む 高橋悦男
一瞬に大凍滝のゆるみ落つ 松住清文
凍て滝の裏に水落つ音のして 福井千悠
凍滝あまた稀に音たて落つるあり 福田蓼汀 秋風挽歌
凍滝と奥嶺の月と照らし合ふ 能村登四郎
凍滝に一縷の自在ゆるさるる 山崎冨美子
凍滝に刻ながるるは雪降れり 鈴木貞雄
凍滝に来て一穂の火を供ふ 右城暮石
凍滝に生きてゐるなり水一縷 椎名康之
凍滝に礼して神楽舞ひ納む 矢島渚男
凍滝に積む雪旅の先いそぐ 津田清子 礼 拝
凍滝に約束のひと来てゐたる 辻桃子
凍滝のいただき天に触れてをり 三森鉄治
凍滝のうす緑なる襞の数 高濱年尾 年尾句集
凍滝のかげりつくせる日のあり処 木村蕪城 寒泉
凍滝のそのいただきに日が射して 山口青邨
凍滝のなかを貫く青きもの 江井芳朗
凍滝のゆるびて呱々の声となる 椎橋清翠
凍滝の一水走り意志通す 高橋良子
凍滝の凍てても見ゆる滝の相 能村登四郎
凍滝の寂莫たりし解けはじむ 松本たかし
凍滝の帆明りほどの遠さかな 鷹羽狩行
凍滝の怒濤の音を嵌め殺し 石嶌岳
凍滝の明るさにをり車椅子 谷口紫頭火
凍滝の氷柱己を封じたり 野沢節子
凍滝の玉簾なす水の音 川辺房子
凍滝の真正面の厚さかな(袋田) 岸田稚魚 『萩供養』
凍滝の膝折るごとく崩れけり 上田五千石 森林
凍滝の自ら音を絶ちにけり 今関幸代
凍滝の身ぬちを水の流れゐる 鈴木貞雄
凍滝の阿修羅の相を愛しめる 堀口星眠 青葉木菟
凍滝は巌にかかり宙に出づ 三木星童
凍滝は日翳りやすし三十三才 有働 亨
凍滝を眉間にかかげ独鈷山 宮津昭彦
凍滝を蔵して山の総昃り 津田清子
凍滝を見る太陽の側に佇ち 村越化石 山國抄
凍滝を視てきしくちびるとおもふ 夏井いつき
凍瀧が吾が目にあふれ空にあふれ 今瀬剛一
凍瀧が落ちて来さうな月の町 今瀬剛一
凍瀧に倚れば上り来地の韻き 火村卓造
凍瀧のしろがね闇をつらぬけり 桂信子
凍瀧の人影しかと岩に踏む 古舘曹人 砂の音
凍瀧の内や垂水の音やさし 佐藤希世
凍瀧の樹を呑み込んでゐたりけり 寺島ただし
凍瀧の芯を凍て得ぬ水いそぐ 津田清子
凍瀧や千年も待つここちして 大木あまり 火球
凍瀧や失ひしもの火のいろに 大木あまり 火のいろに
凍瀧や根付の鈴を鳴らしみる 野口光江
凍瀧や禽ちらばつて散らばつて 大木あまり 火球
夜の凍滝無数の忍者攀じのぼる 田辺香代子
月光の凍滝に刻蒼みけり 富川明子
月徐々に射す凍滝の苦悶相 林翔
源流は凍滝に尽き峠越え 福田蓼汀 秋風挽歌
火を焚いて凍瀧守となりたしや 大木あまり 火球
皎々として凍瀧の刻うつる 古舘曹人 砂の音
青空の端より凍てゝ滝かかる 井芹眞一郎
音を生みけり凍滝の一とかけら 行方 克巳
ねむるまで冬滝ひびく水の上 飯田龍太
体内に大冬滝をもち戻る 平井照敏 天上大風
冬滝に対ひ刻々いのち減る 後藤比奈夫 花匂ひ
冬滝のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏(1885-1962)
冬滝のその巌相を見たるのみ 林 翔
冬滝の伝記かなしく棒立に 古舘曹人 能登の蛙
冬滝の力抜きたる力あり 河野南畦 『元禄の夢』
冬滝の哭きやみてより氷りけり 小林康治 『叢林』
冬滝の墨絵となりて山毛欅に消ゆ 松村蒼石 雁
冬滝の天ぽつかりと青を見す 橋本多佳子
冬滝の澄み切る壺に五指浸す 原裕 青垣
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬滝を日のしりぞけば音変る 西東三鬼
冬瀧に降り込むもののつぎつぎに 藺草慶子
冬瀧の真上日のあと月通る 桂信子
冬瀧の飛沫となりぬわが髪も 都筑智子
甘露てふもの冬瀧の遠しぶき 塚本邦雄 甘露
ぎりぎりの命脈保つ冬の滝 榊瑞芳
ねむれねば頭中に数ふ冬の滝 赤尾兜子(1925-81)
みな暗き口あき仰ぐ冬の滝 朔多 恭
一本の荒縄に閉づ冬の瀧 古舘曹人 砂の音
七星の柄杓が落とす冬の滝 有馬朗人
位置変へて冬の滝音楽しめり 加藤憲曠
八方に音捨ててゐる冬の滝 飯田龍太 山の影
冬の滝おのが響の中に落つ 中村世紀
冬の滝一岩盤を擁しけり 吉田紫乃
冬の滝不動明王ひとり立つ 加藤知世子 花寂び
冬の滝丸太一本吐き出せる 小川原嘘帥
冬の滝人に言葉を求めはせず 大井雅人 龍岡村
冬の滝奈落の音となりゆけり 柴田白葉女
冬の滝朝日夕日もなき巌 野澤節子 遠い橋
冬の滝水のかたまり叩きつける 藤岡筑邨
冬の滝細くおもたく峰よりす 松村蒼石 雁
冬の滝音かへしくる石鼎忌 原裕 青垣
冬の滝音を殺して落ちにけり 鈴木真砂女
冬の瀧おのれの壁に響きけり 古舘曹人 砂の音
冬の瀧わが怨念を打ちひびく 野澤節子
冬の瀧力をためてゐたりけり 平井照敏
冬の瀧底へ底へと落ちゆけり 井上 康明
冬の瀧心棒立てゝとゞろけり 沢木欣一 往還以後
冬の瀧男の膝に陽があたり 上野さち子
凶悪な音の夜に入る冬の滝 飯田龍太 遅速
創造のこと冬の滝まつすぐに 小川双々子
大巌に振り放さるる冬の滝 西本一都
天空へ駆けのぼるごと冬の滝 上野さち子
少年や父には冬の滝かかり 鈴木六林男 悪霊
文書くやすぐ恋文のやう冬の滝 加藤知世子 花寂び
月上げて白を彩とす冬の滝 町田しげき
しつかりと見ておけと瀧凍りけり 今瀬剛一
どこか水落ちてゐる音滝氷る 石井とし夫
一筋の流れを残し滝凍つる 池田秀水
一鳥の影もゆるさず滝凍る 平子公一
乾坤の刻をとどめて滝凍る 町田しげき
凍つる滝凍つる星いま息かよふ 今泉宇涯
啄木鳥の谺は天に滝凍る 三谷和子
大いなる水を束ねて滝凍てり 保坂リエ
天日へ一徹の直滝凍る つじ加代子
山の背を越えがたく滝凍てており 駒 志津子
岩々のまとふ青さに滝凍る 木村蕪城
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
日和空覗かせて滝凍てにけり 森田峠 避暑散歩
水の自在わづかに許し滝氷る 佐野美智
滝凍ててみちのくの風青みたる 下山芳子
滝凍ててもろもろの巌立ちあがる 細川加賀
滝凍ててをらず目的失ひし 橋本美代子
滝凍てて人間遠くありにけり 佐久間慧子
滝凍てて大音響をこもらする 小林康治 『華髪』
滝凍てて巌も眠りにつきにけり 鈴木貞雄
滝凍てて微塵の音のなかりけり 西岡フサ子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍てて立つ一切を忘却し 橋本美代子
滝凍てて金剛力のこもりけり 小島花枝
滝凍る中空に裾ふつ切れて 早崎明
滝凍る刻の止まりし形して 原田走日朗
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
滝氷り木の実に小鳥はたはたす 宇佐美魚目 天地存問
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
翔ぶ鳥の下にひかりて瀧氷る 中戸川朝人
老神の上から瞶め滝氷る 和知喜八 同齢
滝冱てて製多迦童子ころびをり 阿波野青畝
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝落下の滝とすれちがう 河合凱夫 飛礫
凍る滝落下途中の形して 村上冬燕
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎 寒九
氷る滝その上をせく水のあり 有馬朗人 天為
風響くなり氷瀑の大伽藍(カテドラル)高澤良一 ぱらりとせ

凍滝 補遺

あるときはもつるるままに冬の滝 桂信子 花影
ねむるまで冬滝ひびく水の上 飯田龍太
まつたうに落ちて冬滝ただ白し 桂信子「草影」以後
みづからを照らして夜の凍滝は 上田五千石『風景』補遺
一枚の氷盤流れ来滝の川 山口青邨
一椀に 甘酒の膜 冬滝見る 伊丹三樹彦
影のごと人去りゆけり氷り滝 鷲谷七菜子 花寂び
洩れ日寄らしめず冬滝の巌ぶすま 鷲谷七菜子 銃身
巌巌のまとふ蒼さに滝凍つる 木村蕪城 寒泉
月射して凍滝さらに凍つる刻 能村登四郎
月徐々に射す凍滝の苦悶相 林翔
見尽して去ぬるそびらの冬の滝 日野草城
源流は凍滝に尽き峠越え 福田蓼汀 秋風挽歌
古氷懸けたる瀧を山鴉 石田勝彦 雙杵
紅蓮大紅蓮の氷瀧壺に 松本たかし
山ふかき冬滝にして忘らるる 能村登四郎
女等に白い矯声冬の滝 飴山實 おりいぶ
全石のひびきを絶ちて滝凍る 阿波野青畝
体内に大冬滝をもち戻る 平井照敏 天上大風
滝見茶屋赤ん坊が泣き滝凍る 山口青邨
滝凍つとはげしく星の息づけり 林翔
滝凍てしめず落下すなほ落下す 橋本多佳子
滝凍てずおよし明神およしのため 山口誓子
滝凍てて日輪宙にくるめける 木村蕪城 寒泉
滝凍りわが顔涙流しけり 山口青邨
滝氷る上索道も停止して 右城暮石 上下
滝壺ゆ逆しまに滝凍てにけり 相馬遷子 山河
男滝凍る悲愴も敢てなす 能村登四郎
爪先を使ひつづけて凍滝道 岡本眸
冬の滝の仔細つぶさに見て返す 安住敦
冬の滝ひびく生死のうらおもて 飯田龍太
冬の滝音かへしくる石鼎忌 原裕 青垣
冬の滝音を殺して落ちにけり 鈴木真砂女 都鳥
冬の滝間髪近き岩濡らさず 平畑静塔
冬の滝細くおもたく峰よりす 松村蒼石 雁
冬の滝晩年賭くることありけり 安住敦
冬の滝脇のラヂオに笑い声 飴山實 おりいぶ
冬の滝腋のラヂオに笑い声 飴山實 おりいぶ
冬滝に対ひ刻々いのち減る 後藤比奈夫
冬滝のきけば相つぐこだまかな 飯田蛇笏 春蘭
冬滝の真上日のあと月通る 桂信子 花影
冬滝の澄み切る壺に五指浸す 原裕 青垣
冬滝の前おし黙りおしとほす 星野麥丘人
冬滝の天ぽつかりと青を見す 橋本多佳子
冬滝の伝記かなしく棒立に 古舘曹人 能登の蛙
冬滝の虹一聯や神話の地 角川源義
冬滝の白襟合し落ちにけり 岡本眸
冬滝の墨絵となりて山毛欅に消ゆ 松村蒼石 雁
冬滝の縒りをくれたる一糸あり 上田五千石『琥珀』補遺
冬滝の谺蕩々と湯の小滝 松村蒼石 雁
冬滝を日のしりぞけば音変る 西東三鬼
凍る滝ときをり駅の拡声器 大野林火 飛花集 昭和四十五年
凍る滝取巻く闇のうすみどり 岸田稚魚 筍流し
凍る滝生身の禽をはじきけり 岸田稚魚 筍流し
凍滝あまた稀に音たて落つるあり 福田蓼汀 秋風挽歌
凍滝と奥嶺の月と照し合ふ 能村登四郎
凍滝にコカコーラーの赤ベンチ 右城暮石 一芸
凍滝に月の光のいま及ぶ 山口青邨
凍滝に月光量を徐々に殖す 能村登四郎
凍滝に積む雪旅の先いそぐ 津田清子 礼拝
凍滝に対す一足十指もて 岡本眸
凍滝に注連張る二重三重に 右城暮石 一芸
凍滝に来て一穂の火を供ふ 右城暮石 虻峠
凍滝のかげりつくせる日のあり処 木村蕪城 寒泉
凍滝のしろがね闇をつらぬけり 桂信子 花影
凍滝のそのいただきに日が射して 山口青邨
凍滝の産まぬ身となりそそり立つ 鷹羽狩行
凍滝の自ら溶くるほかはなし 津田清子
凍滝の神も容れざる深奥部 能村登四郎
凍滝の神を封ぜし辺のくもり 能村登四郎
凍滝の凍てゝも見ゆる滝の相 能村登四郎
凍滝の帆明かりほどの遠さかな 鷹羽狩行
凍滝の膝折るごとく崩れけり 上田五千石 森林
凍滝へ下り行く者を押し止む 右城暮石 句集外 昭和四十六年
凍滝へ両足分の地の平ら 岡本眸
凍滝や未生も死後も白世界 岡本眸
凍滝を蔵して山の総昃り 津田清子
日矢を得て白刃の光冬の滝 桂信子 草影
剥落の氷衣の中に滝自身 上田五千石 森林
白き日の炎ゆるしづけさ冬の滝 鷲谷七菜子 黄炎
白玉楼中の人を遠くす滝氷柱 福田蓼汀 秋風挽歌
氷り滝いづこよりこゑ洩らしゐる 鷲谷七菜子 天鼓
明日あたりかならず凍る滝に立つ 能村登四郎
木を樵りにゆく凍滝の上渉り 津田清子
夜も音のとどろき止まず冬の滝 桂信子 花影

凍滝 続補遺

滝はゞや氷の中のいざり松 其角

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 05:48 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冴ゆる の俳句

冴ゆる の俳句

冴ゆる 補遺

「詩人はいのち墓は塊(いしくれ)」妻の語冴ゆ 中村草田男
あまり冴えて死化粧の顔近づけず 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
いたづらに銀漢ぞ冴ゆ妹なくて 伊丹三樹彦
うぐひすは寒さに冴えて句碑除幕(伊賀町芭蕉公園にわが句碑建つ) 細見綾子
かゝる朝かなかなきけば目も冴えぬ 高屋窓秋
きちかうのむらさき冴ゆるそばへかな 日野草城
クリスマスイヴの橋燈青冴えて 佐藤鬼房
この夜冴え銀漢を見しが相別る 加藤秋邨
さしこめる火明り妻の膝に冴ゆ 大野林火 早桃 太白集
すぐやみしうす雪に胸冴えにけり 大野林火 海門 昭和八年
ちゝろ燃ゆ焔の冴えも海の丘(十月下旬、沢木欣一氏出征のため寒雷送別会、水戸大洗に行く) 細見綾子
チヤルメラやまだ宵の町月冴ゆる 石橋秀野
ときに青冴え追分の冬はじめ 佐藤鬼房
トラックの燈冴えて夜の河照らす 山口誓子
なにがしの忌日ぞけふは冴え返れ 正岡子規 冴返る
はなびらか鼓膜か冴ゆる梅の空 三橋敏雄
ふと疼く注射のあとや冴え返る 日野草城
ふるさとの鯛かも知れず瞳の冴えて 鈴木真砂女 夕螢
まことの死かなたにし夜々冴えかへる 石塚友二 方寸虚実
まなうらに紅旗冴えざえ抜歯の夜 佐藤鬼房
みちのくも北深く棲み一気冴ゆ 中村草田男
みほとけの彩色あはく冴え返る 伊丹三樹彦
みほとけの直なる背竹秋は冴ゆ 伊丹三樹彦
メリーゴーラウンド爆音直進頭上に冴え 中村草田男
もつとも冴ゆる尼寺の常緑樹 飯田龍太
わが燈消すも外燈冴ゆる癩園よ 大野林火 青水輪 昭和二十六年
鮎茶屋の稚鮎のころの戻り冴え 上田五千石『天路』補遺
安楽死冴え返る夜を醫師戻る 相馬遷子 雪嶺
闇冴えて虚空に聴きし濤の音 鷲谷七菜子 銃身
遺影なれば眼許くろずみ冴ゆるかな 大野林火 雪華 昭和三十三年
一汐木汀にささり月冴ゆる 鷲谷七菜子 銃身
一切の木の流体の冴えにけり 岡井省二 明野
一尾冴えて渓流を突く鯉ながれ 渡邊水巴 富士
稲熟れて冴え冴えとして夕餉とる 細見綾子
雨漏の壁のひまより冴えかへる 石橋秀野
渦笑窪消え水鏡寡婦に冴ゆ 香西照雄
遠目にも 禰宜の白冴え 梅花祭 伊丹三樹彦
塩場灯影人動く二三銀河冴ゆ 種田山頭火 自画像 層雲集
鴎らに鷹を消したる空の冴え 上田五千石 琥珀
牡蠣割りのとばす牡蠣殻冴えかへる 細見綾子
温室とぢて天禮幽に霜冴ゆる 飯田蛇笏 白嶽
音冴えてあはれをさなご弾き遂げし 日野草城
仮泊宴さそり座とほく低く冴ゆ<船長の招宴> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
夏寒きまで花冴えて稚魚の水 飯田龍太
果てしなく心の冴ゆる夜なりけり 右城暮石 句集外 大正十年
花うぐひ鰭かさぬれば虹が冴ゆ 加藤秋邨
花ぐもり濃ければ雲雀冴えにけり 日野草城
花火あと川のうねりの大きく冴ゆ 大野林火 冬青集 雨夜抄
花筏なさざるまでに水の冴え 上田五千石『天路』補遺
過程音いま決定音機械冴ゆ 中村草田男
海の上に昼月冴えて慈姑掘り 松村蒼石 雪
咳けば襁褓の彼方星冴えぬ 佐藤鬼房
蛙いまだ冴えざえと田のつらなれる 大野林火 早桃 太白集
楽冴えて胸に別れの楽を和す 赤尾兜子 稚年記
潟冬木舟をつないで冴えにけり 大野林火 海門 昭和九年
葛城や夜の念仏の鉦冴ゆる 有馬朗人 知命
萱艸の花の朱の冴え那智の瀧(那智) 細見綾子
寒梅や痛きばかりに月冴えて 日野草城
幹立ちて幹立ちて冴え返りけり 石田勝彦 秋興以後
柑橘の鬱金ぞ冴えぬ塀に余り 伊丹三樹彦
澗泉に岩と沈みて冴えにけり 日野草城
眼の下に沈める頸白く冴ゆ 日野草城
眼の冴えにわが思ふことかぎりなき 日野草城
眼鏡拭くやまた冴え冴えと笹鳴けり 加藤秋邨
顔見世の連弾冴ゆる月冴ゆる 水原秋櫻子 蓬壺
幾日も米はなく冴えし山のぞむ 下村槐太 天涯
忌日なり又冴え返る風の音 正岡子規 冴返る
机上冴ゆけふ一日を拠らざりし 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
機音の渦の一点 護符冴える 伊丹三樹彦
起きぬけの冴えぬ面輪や散柳 日野草城
急ぐなかれ月谷蟆に冴えはじむ 赤尾兜子 玄玄
牛啼けり夜半の轣轆冴えつづき 中村草田男
強風に新築の音ばかり冴え 廣瀬直人 帰路
狂へる唱は冴えて風呂場に反響す 中村草田男
暁の隣家すでに真夏の声に冴え 飯田龍太
琴冴えてのこる虫の音さそひけり 水原秋櫻子 蘆雁以後
金米糖こぼれて冴ゆる療舎かな 伊丹三樹彦
靴の音冴えて冷房の石階を 日野草城
穴太積ものおそろしく冴えにけり 阿波野青畝
月は冴え~人の世またく寝入りたり 尾崎放哉 大正時代
月冴えぬ熱く淹れたる茶のかをり 日野草城
月冴ゆと歯を磨き彳ち雨後の幹 伊丹三樹彦
月冴ゆと蕃歌聴きつつ眠りしかや 伊丹三樹彦
月冴ゆるばかりに出でゝ仰ぎけり 高浜年尾
月冴ゆる石に無数の奴隷の名 有馬朗人 知命
月照るとみほとけの面ことに冴ゆ 伊丹三樹彦
言葉ふと途切れしままや冴え返る 鷲谷七菜子 黄炎
固唾のむ音のときどき冴えを剌す 篠原梵 年々去来の花 皿
枯枝に残月冴ゆる炊ぎかな 杉田久女
湖冴ゆる夜の蒼天へ風奔り 鷲谷七菜子 銃身
御鏡に松明映り冴え返る 正岡子規 冴返る
御鏡に篝火映り冴え返る 正岡子規 冴返る
鯉の金しづめし水の冴ゆるかな 鷲谷七菜子 花寂び
更けてひとり推して敲いて詩句冴ゆる 上田五千石『琥珀』補遺
行人裡馭夫の鞭ぱんぱんと冴ゆ 伊丹三樹彦
降る雪の影をさまりつ壁冴えぬ 大野林火 早桃 太白集
高温の麓真昼の耳冴えて 飯田龍太
刻々と天井颪の冴えかへる 阿波野青畝
今日より冴ゆ天井鼠みじろぐ音 香西照雄
今返す冬の発句ぞ冴えかへる 正岡子規 冴返る
妻も子もはや寝て山の銀河冴ゆ 臼田亜郎 定本亜浪句集
妻も詩人濯ぎつくして白布冴ゆ 香西照雄
採点と父の仏菓に灯ぞ冴ゆる 中村草田男
採点の灯冴えて干せし碗(もひ)にやどる 中村草田男
冴え~と顔に来るもの室の花 細見綾子
冴え~と鳶笛吹けり蕗の薹 飴山實 辛酉小雪
冴えかへり思ふに君が遺書なりし 加藤秋邨
冴えかへるお濠の鴨の声近く 山口青邨
冴えかへるたましひにしむ香けむり 飯田蛇笏 雪峡
冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤秋邨
冴えかへる崖の谺の高まり来 加藤秋邨
冴えかへる山ふかき廬の閾かな 飯田蛇笏 山廬集
冴えかへる伯耆の富土となりにけり 石橋秀野
冴えかへる夕日うすうす街に照り 山口青邨
冴えざえとわれらの作しししんの闇 篠原梵 年々去来の花 雨
冴えつづく夜の胸の上を雁帰る 橋閒石 雪
冴える石の家ピアノ線ひとり雨となる 赤尾兜子 歳華集
冴える夜の冴えの底ひに己をり 能村登四郎
冴え冴えと還状貝塚の白毛 佐藤鬼房
冴え冴えと沙翁の寺に小夜の窓 有馬朗人 立志
冴え冴えと春さむければ月近き 飯田蛇笏 春蘭
冴え冴えと鳶笛吹けり蕗の薹 飴山實
冴え冴えと魄西空に手が届く 佐藤鬼房
冴え返りつつ獣心のなごむさま 飯田龍太
冴え返るとは取り落すものの音 石田勝彦 秋興
冴え返る音のひとつに子のギター 楠本憲吉 孤客
冴え返る音や霰の十粒程 正岡子規 冴返る
冴え返る金毛閣は人を入れず 阿波野青畝
冴え返る空に愛宕の雲寒し 正岡子規 冴返る
冴え返る空ゆ母拉致せしは誰 楠本憲吉 孤客
冴え返る五体投地のこもり僧 角川源義
冴え返る匙を落して拾ふとき 細見綾子
冴え返る三笠颪や薪能 正岡子規 冴返る
冴え返る春日颪や薪能 正岡子規 冴返る
冴え返る松林抜けみづうみへ 細見綾子
冴え返る灯に首細き油壺 橋閒石 雪
冴え返る二三日あり沈丁花 高野素十
冴え返る日々東京の噂きこゆ 大野林火 早桃 太白集
冴え返る富士は眩しき山なりけり 中村苑子
冴え返る面魂は誰にありや 中村草田男
冴え返る壺の或る夜は怒濤かな 加藤秋邨
冴え返る壺を覗けば何もなし 橋閒石 朱明
冴え返る荼碗とならび北魏仏 加藤秋邨
冴ゆる客観妻の涙の目も横顔 中村草田男
冴ゆる寝の浅したゆたふ湖の音 鷲谷七菜子 銃身
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏 家郷の霧
冴ゆる夜の北斗を焦す狼烟哉 正岡子規 冴
冴ゆる夜や乾び反りたる魚の鰭 上村占魚 鮎
冴ゆる夜や女ひそかに劍習ふ 正岡子規 冴
皿冴ゆる鮑コキール貝も焦げ 日野草城
三月を此能故に冴え返る 正岡子規 三月
山の柿遠く実れば六腑冴え 飯田龍太
山月に冴えて聾ひたる耳二つ 飯田蛇笏 山廬集
山上奔馬空の残影冴えるかな 金子兜太
山辺より灯しそめて冴ゆるかな 前田普羅 普羅句集
残光に石のいのちのいや冴ゆる 伊丹三樹彦
姉とかや合歓の青莢冴ゆる谷 飯島晴子
子は留守の照る日曇る日冴え返る 日野草城
詩は怒余寒緑を冴えしめて 香西照雄
耳底の声追ふばかり冴ゆるかな 石川桂郎 含羞
耳鳴りは宇宙の音か月冴ゆる 林翔
借り家や冴ゆる夜近き汽車の音 正岡子規 冴
若き大工一つ灯冴ゆる鉋屑 中村草田男
取り落す計報荒星冴え返る 鷲谷七菜子 銃身
秋冴えたり我れ鯉切らん水の色 正岡子規 秋の水
十二月八日の冴えに退りけり 渡邊水巴 富士
渋濯屋白に疲れぬ白壁冴え 香西照雄 素心
獣皮舗の裸像灯りて冴え返る 飯田蛇笏 旅ゆく諷詠
春の河軍馬蹈みわたり冴えぎらふ 三橋敏雄
春の汗して絶食十日頭冴ゆ 相馬遷子 山河
春の月くもりて冴えて更けにけり 日野草城
女房泣く聲冴えて御所の夜更けたり 正岡子規 冴
小城下や辰の太鼓の冴え返る 正岡子規 冴返る
松ばかり冴えて十一月といふ 石塚友二 磯風
松は松椿は椿冴えかへる 山口青邨
松籟や鏡と冴ゆる碑の面 上田五千石『天路』補遺
沼が随所に髭を剃らねば眼が冴えて 金子兜太
沼涯のけむりが空に冴えて猟期 古沢太穂 火雲
鐘冴ゆる夜かゝげても灯の消んとす 正岡子規 冴
侵略の蒼冴えの肉撃たれたり 金子兜太
寝冴ゆると双耳の蝉や鳴きしきる 石塚友二 方寸虚実
新聞なれば遺影小さく冴えたりき 石田波郷
真夜の月冴えて二三の秋蛙 日野草城
神将のなべて青丹の面ぞ冴ゆ 伊丹三樹彦
神将の剥落のほど冴えにけり 伊丹三樹彦
人形のひとつびとつのいのちぞヽ冴ゆ 伊丹三樹彦
人生冴えて幼稚園より深夜の曲 金子兜太
酢海鼠に胸うち冴えしさびしさや 森澄雄
吹雪來んとして鐘冴ゆる嵐哉 正岡子規 吹雪
水鏡冴えたる亭は白障子 阿波野青畝
水冴えてカーヴす鯉の白々と 渡邊水巴 富士
水門におらび青冴え雪女 佐藤鬼房
水甕に水なき典座冴え返る 上田五千石『森林』補遺
星空冴えてくる寒行の太鼓うちだした 種田山頭火
星冴えて篝火白き砦哉 正岡子規 冴
声冴ゆる女あるじゆ紅を買ふ 野澤節子 未明音
青を研ぐごとくに風や冴えかへる 平井照敏
青肉のメロン冴え雪の積む韻 日野草城
青年一団リヤカー転宅音冴えて 中村草田男
静かさや冴え渡り来る羽根の音 村上鬼城
惜しみ置く箸も茶碗も冴えかへる 加藤秋邨
石ころの冴えた音梅の畑かしぐ 細見綾子
石棺に鎌研ぎし跡冴ゆるかな 松崎鉄之介
石工あり玄翁宙に風冴ゆる 飯田蛇笏 雪峡
雪後三日月観念のいろに冴え 飯田龍太
雪中を跳ぶ青冴えの石狐 佐藤鬼房
雪明り熱のぼるとき冴えにけり 大野林火 早桃 太白集
浅間冴え松炭燃ゆる五月の炉 前田普羅 春寒浅間山
曾根崎やむかしの路地に月冴えて 鷲谷七菜子 黄炎
草青き倉庫のかげにレール冴ゆ 大野林火 海門 昭和十三年
霜冴えてけはしく啼ける鴉かな 日野草城
大寒の古りし手鏡冴えにけり 桂信子 月光抄
大雁塔阿弥陀一尊冴えにけり 大野林火 月魄集 距和五十七年
鷹の羽の冴え返りける白襖 能村登四郎
棚畑のすみ~冴えて見えにけり 村上鬼城
探すもの書庫になく机辺冴えかへる 山口青邨
段落を経し山水の音の冴え 上田五千石『天路』補遺
知性冴え返る、弾道の錯落に 日野草城
竹の葉騒は冴ゆる眼鏡に数知れず 野澤節子 未明音
昼冴えて巷の立木とぼしかり 大野林火 冬青集 雨夜抄
昼寐より頬冴えざえと紅く覚めぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
潮かぶる家に耳冴え海の始め 金子兜太
町燈匿しふるさとのごと星ふえ冴ゆ 篠原梵 年々去来の花 雨
漬茄子の紺冴え冴えと赤坂昏れ 楠本憲吉 孤客
鶴の羽や白きが上に冴え返る 河東碧梧桐
鶴病んで梅散る頃や冴え返る 正岡子規 冴返る
庭芝の青冴え冴えと日の盛り 村山故郷
笛冴ゆる老いの重眉いよよ重 橋本多佳子
天の声うつそみの声冴えて消えぬ 中村草田男
天の川冴えざえと都会眠りけり 日野草城
天の川冴えて莠(はくさ)のたけにけり 加藤秋邨
天冴えて烈風に繊き富士を見たり 渡邊水巴 富士
土管掘る工事の星が冴え返る 右城暮石 句集外 昭和三十一年
冬の朝河岸に葬りの花環冴ゆ 大野林火 冬青集 海門以後
冬川に冴える電球を撃つは今 赤尾兜子 虚像
島泊昴落ちさう冴えにけり 阿波野青畝
踏切に高まり浮び女冴ゆ 大野林火 雪華 昭和三十六年
頭を剃りて祖母のやすけき死顔冴ゆ 伊丹三樹彦
頭冴えたりつづけざま嚏して 森澄雄
闘争重点冴えるスレート魚鱗の路 金子兜太
汝が目信じて妻となりきと声冴えつ 中村草田男
二羽の鶴すがたの冴えていたましき 水原秋櫻子 秋苑
日を待てる夜空の色の一書冴ゆ 中村草田男
日曜午下ショパン聴く子の脳冴えしか 赤尾兜子 歳華集
能登に聴く津軽じよんがら燈冴ゆ 上田五千石『琥珀』補遺
巴里の絵のここに冴え返り並ぶあはれ 水原秋櫻子 岩礁
波打つて陰まざまざと巌冴ゆる 鷲谷七菜子 銃身
波暮光礁打ち据ゑて青藻冴ゆ 鷲谷七菜子 銃身
梅かをり女ひとりの鏡冴ゆ 桂信子 月光抄
萩刈つてからりと冴えぬ夕明り 渡邊水巴 白日
白菊とわれ月光の底に冴ゆ 桂信子 月光抄
白口の夢縷々と河鹿鳴き冴ゆる 日野草城
白沙の青松冴え冴え残るよ艫の別れ 中村草田男
白梅に 善相句碑の墨の冴え 伊丹三樹彦
白梅に月は冴えつつ飆かな 日野草城
白梅や島の夜明の星の冴え 村山故郷
白夜冴え拗牛何を分けつづく 赤尾兜子 歳華集
白驟雨桃消えしより核は冴ゆ 赤尾兜子 歳華集
鳩たちぬ羽音が耳に冴えて鳴り 高屋窓秋
肥後あやめ冴え~と色欲しがらず 細見綾子
尾根落葉しつくして青空の冴ゆ 村山故郷
琵琶冴えて星落來る臺哉 正岡子規 冴
琵琶冴ゆや桂の花の散る匂ひ 正岡子規 月
美は微なりと告ぐごとく冴ゆ春星座 楠本憲吉 方壺集
病院食茄子も胡瓜も色冴えず 鈴木真砂女 紫木蓮
富士冴えて山拓く人ら石担ふ 渡邊水巴 富士
斧は冴え立木はこれの観世音 川端茅舎
斧冴えて立木を作佛したまへり 川端茅舎
父と子は母と子よりも冴え返る 野見山朱鳥 愁絶
舞ひ冴ゆや面の下より男(を)ごゑ発し 橋本多佳子
風荒き峠の菫冴えにけり 渡邊水巴 白日
風冴えて魚の腹さく女の手 石橋秀野
風冴えて高嶺紺青雪のこる 飯田蛇笏 雪峡
風冴えて宙にまぎるる白梅花 飯田蛇笏 雪峡
文楽の春とはいへど灯影冴え 飯田蛇笏 雪峡
暮れ残る豆腐屋の笛冴えざえと 中村草田男
蓬とも菊とも畑の冴え返り 右城暮石 句集外 昭和六年
亡骸のベツドに木椅子冴えて侍す 大野林火 雪華 昭和三十八年
北斗高く虚子誕生日冴えかへる 山口青邨
本陣は留守 両断の白菜冴え 伊丹三樹彦
又云へり師走狐の声冴ゆと 相生垣瓜人 明治草
満月の冴えてみちびく家路あり 飯田龍太
岬めぐる道高く潮の青く冴ゆ 村山故郷
蜜蜂に冴え隔てたり石蕗の花 石塚友二 光塵
霧晴れマチャプチャレヘ 冴える シャッター音 伊丹三樹彦
木曽川を見おろして城冴え返る(愛知県犬山) 細見綾子
夜すがらの卒業の歌暁に冴え 中村草田男
夜勤工冴えぬレタスを馬食して 佐藤鬼房
夜半の月冴えず明るし春近き 及川貞 夕焼
夜番の柝冴えたり月の夜と思ふ 日野草城
野辺送りきのふもけふも冴え返る 正岡子規 冴返る
友ら逝きわが生きのびて冴え返る 日野草城
夕さくら瀬音たかまりきて冴ゆる 伊丹三樹彦
夕しぐれ老母いよいよ頭が冴えて 佐藤鬼房
夕ベ冴ゆ病秩父の咳聞ゆかに 大野林火 雪華 昭和三十八年
夕刊を縄で吊る子よ口笛冴ゆ 伊丹三樹彦
夕冴えの幹矗々と遠木霊 鷲谷七菜子 銃身
夕冴えの老幹まとふ苔の青 鷲谷七菜子 銃身
夕冴ゆる雪嶺ちりめん織られゆく 橋本多佳子
幼長男眼やさし次男声冴えたり 中村草田男
用ふなき一炉もつとも冴え返る 上田五千石『森林』補遺
翌くる朝軒吹く風も冴え返る 村山故郷
頼み了へ人冴ゆ目尻の皺も消し 香西照雄
落款の丹の冴え冴えと遺墨あり 上田五千石『天路』補遺
藍冴ゆる浴衣をしやんと小女房 日野草城
裏山や月冴えて笹の音は何 正岡子規 冴
立たんとす腰のつがひの冴え返る 正岡子規 冴返る
立ちあがる波の青冴ゆ枯れの日よ 鷲谷七菜子 銃身
流氷のいつ戻りけん冴え返る 河東碧梧桐
龍胆は冴えてりん~草にある 細見綾子
両刀重き武士の草履の音冴ゆるか 中村草田男
旱天に星みえ疲労冴えてくる 金子兜太
濤声冴ゆるげに古言の犬吠ゆる 中村草田男
玻璃戸冴ゆ白きは牛乳の指のあと 中村草田男
絲の継傷ちりめんの白地冴え 橋本多佳子
茗荷汁沈金彫が冴えにけり 阿波野青畝
萬緑の一紺として四葩冴ゆ 石塚友二 曠日
貪惚けの貪冴え在れや籠枕 永田耕衣
蹠砲まつり御輿播磨と金文字冴ゆ 松崎鉄之介
颱風下死人のごとく耳目冴ゆ 三橋敏雄
鳰の声冴えきるや水曇りをり 鷲谷七菜子 銃身
鳰の巣に葭のひと茎冴えにけり 飴山實 句集外

冴ゆる 補遺

「詩人はいのち墓は塊(いしくれ)」妻の語冴ゆ 中村草田男
あまり冴えて死化粧の顔近づけず 大野林火 白幡南町 昭和三十三年
いたづらに銀漢ぞ冴ゆ妹なくて 伊丹三樹彦
うぐひすは寒さに冴えて句碑除幕(伊賀町芭蕉公園にわが句碑建つ) 細見綾子
かゝる朝かなかなきけば目も冴えぬ 高屋窓秋
きちかうのむらさき冴ゆるそばへかな 日野草城
クリスマスイヴの橋燈青冴えて 佐藤鬼房
この夜冴え銀漢を見しが相別る 加藤秋邨
さしこめる火明り妻の膝に冴ゆ 大野林火 早桃 太白集
すぐやみしうす雪に胸冴えにけり 大野林火 海門 昭和八年
ちゝろ燃ゆ焔の冴えも海の丘(十月下旬、沢木欣一氏出征のため寒雷送別会、水戸大洗に行く) 細見綾子
チヤルメラやまだ宵の町月冴ゆる 石橋秀野
ときに青冴え追分の冬はじめ 佐藤鬼房
トラックの燈冴えて夜の河照らす 山口誓子
なにがしの忌日ぞけふは冴え返れ 正岡子規 冴返る
はなびらか鼓膜か冴ゆる梅の空 三橋敏雄
ふと疼く注射のあとや冴え返る 日野草城
ふるさとの鯛かも知れず瞳の冴えて 鈴木真砂女 夕螢
まことの死かなたにし夜々冴えかへる 石塚友二 方寸虚実
まなうらに紅旗冴えざえ抜歯の夜 佐藤鬼房
みちのくも北深く棲み一気冴ゆ 中村草田男
みほとけの彩色あはく冴え返る 伊丹三樹彦
みほとけの直なる背竹秋は冴ゆ 伊丹三樹彦
メリーゴーラウンド爆音直進頭上に冴え 中村草田男
もつとも冴ゆる尼寺の常緑樹 飯田龍太
わが燈消すも外燈冴ゆる癩園よ 大野林火 青水輪 昭和二十六年
鮎茶屋の稚鮎のころの戻り冴え 上田五千石『天路』補遺
安楽死冴え返る夜を醫師戻る 相馬遷子 雪嶺
闇冴えて虚空に聴きし濤の音 鷲谷七菜子 銃身
遺影なれば眼許くろずみ冴ゆるかな 大野林火 雪華 昭和三十三年
一汐木汀にささり月冴ゆる 鷲谷七菜子 銃身
一切の木の流体の冴えにけり 岡井省二 明野
一尾冴えて渓流を突く鯉ながれ 渡邊水巴 富士
稲熟れて冴え冴えとして夕餉とる 細見綾子
雨漏の壁のひまより冴えかへる 石橋秀野
渦笑窪消え水鏡寡婦に冴ゆ 香西照雄
遠目にも 禰宜の白冴え 梅花祭 伊丹三樹彦
塩場灯影人動く二三銀河冴ゆ 種田山頭火 自画像 層雲集
鴎らに鷹を消したる空の冴え 上田五千石 琥珀
牡蠣割りのとばす牡蠣殻冴えかへる 細見綾子
温室とぢて天禮幽に霜冴ゆる 飯田蛇笏 白嶽
音冴えてあはれをさなご弾き遂げし 日野草城
仮泊宴さそり座とほく低く冴ゆ<船長の招宴> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
夏寒きまで花冴えて稚魚の水 飯田龍太
果てしなく心の冴ゆる夜なりけり 右城暮石 句集外 大正十年
花うぐひ鰭かさぬれば虹が冴ゆ 加藤秋邨
花ぐもり濃ければ雲雀冴えにけり 日野草城
花火あと川のうねりの大きく冴ゆ 大野林火 冬青集 雨夜抄
花筏なさざるまでに水の冴え 上田五千石『天路』補遺
過程音いま決定音機械冴ゆ 中村草田男
海の上に昼月冴えて慈姑掘り 松村蒼石 雪
咳けば襁褓の彼方星冴えぬ 佐藤鬼房
蛙いまだ冴えざえと田のつらなれる 大野林火 早桃 太白集
楽冴えて胸に別れの楽を和す 赤尾兜子 稚年記
潟冬木舟をつないで冴えにけり 大野林火 海門 昭和九年
葛城や夜の念仏の鉦冴ゆる 有馬朗人 知命
萱艸の花の朱の冴え那智の瀧(那智) 細見綾子
寒梅や痛きばかりに月冴えて 日野草城
幹立ちて幹立ちて冴え返りけり 石田勝彦 秋興以後
柑橘の鬱金ぞ冴えぬ塀に余り 伊丹三樹彦
澗泉に岩と沈みて冴えにけり 日野草城
眼の下に沈める頸白く冴ゆ 日野草城
眼の冴えにわが思ふことかぎりなき 日野草城
眼鏡拭くやまた冴え冴えと笹鳴けり 加藤秋邨
顔見世の連弾冴ゆる月冴ゆる 水原秋櫻子 蓬壺
幾日も米はなく冴えし山のぞむ 下村槐太 天涯
忌日なり又冴え返る風の音 正岡子規 冴返る
机上冴ゆけふ一日を拠らざりし 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
機音の渦の一点 護符冴える 伊丹三樹彦
起きぬけの冴えぬ面輪や散柳 日野草城
急ぐなかれ月谷蟆に冴えはじむ 赤尾兜子 玄玄
牛啼けり夜半の轣轆冴えつづき 中村草田男
強風に新築の音ばかり冴え 廣瀬直人 帰路
狂へる唱は冴えて風呂場に反響す 中村草田男
暁の隣家すでに真夏の声に冴え 飯田龍太
琴冴えてのこる虫の音さそひけり 水原秋櫻子 蘆雁以後
金米糖こぼれて冴ゆる療舎かな 伊丹三樹彦
靴の音冴えて冷房の石階を 日野草城
穴太積ものおそろしく冴えにけり 阿波野青畝
月は冴え~人の世またく寝入りたり 尾崎放哉 大正時代
月冴えぬ熱く淹れたる茶のかをり 日野草城
月冴ゆと歯を磨き彳ち雨後の幹 伊丹三樹彦
月冴ゆと蕃歌聴きつつ眠りしかや 伊丹三樹彦
月冴ゆるばかりに出でゝ仰ぎけり 高浜年尾
月冴ゆる石に無数の奴隷の名 有馬朗人 知命
月照るとみほとけの面ことに冴ゆ 伊丹三樹彦
言葉ふと途切れしままや冴え返る 鷲谷七菜子 黄炎
固唾のむ音のときどき冴えを剌す 篠原梵 年々去来の花 皿
枯枝に残月冴ゆる炊ぎかな 杉田久女
湖冴ゆる夜の蒼天へ風奔り 鷲谷七菜子 銃身
御鏡に松明映り冴え返る 正岡子規 冴返る
御鏡に篝火映り冴え返る 正岡子規 冴返る
鯉の金しづめし水の冴ゆるかな 鷲谷七菜子 花寂び
更けてひとり推して敲いて詩句冴ゆる 上田五千石『琥珀』補遺
行人裡馭夫の鞭ぱんぱんと冴ゆ 伊丹三樹彦
降る雪の影をさまりつ壁冴えぬ 大野林火 早桃 太白集
高温の麓真昼の耳冴えて 飯田龍太
刻々と天井颪の冴えかへる 阿波野青畝
今日より冴ゆ天井鼠みじろぐ音 香西照雄
今返す冬の発句ぞ冴えかへる 正岡子規 冴返る
妻も子もはや寝て山の銀河冴ゆ 臼田亜郎 定本亜浪句集
妻も詩人濯ぎつくして白布冴ゆ 香西照雄
採点と父の仏菓に灯ぞ冴ゆる 中村草田男
採点の灯冴えて干せし碗(もひ)にやどる 中村草田男
冴え~と顔に来るもの室の花 細見綾子
冴え~と鳶笛吹けり蕗の薹 飴山實 辛酉小雪
冴えかへり思ふに君が遺書なりし 加藤秋邨
冴えかへるお濠の鴨の声近く 山口青邨
冴えかへるたましひにしむ香けむり 飯田蛇笏 雪峡
冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤秋邨
冴えかへる崖の谺の高まり来 加藤秋邨
冴えかへる山ふかき廬の閾かな 飯田蛇笏 山廬集
冴えかへる伯耆の富土となりにけり 石橋秀野
冴えかへる夕日うすうす街に照り 山口青邨
冴えざえとわれらの作しししんの闇 篠原梵 年々去来の花 雨
冴えつづく夜の胸の上を雁帰る 橋閒石 雪
冴える石の家ピアノ線ひとり雨となる 赤尾兜子 歳華集
冴える夜の冴えの底ひに己をり 能村登四郎
冴え冴えと還状貝塚の白毛 佐藤鬼房
冴え冴えと沙翁の寺に小夜の窓 有馬朗人 立志
冴え冴えと春さむければ月近き 飯田蛇笏 春蘭
冴え冴えと鳶笛吹けり蕗の薹 飴山實
冴え冴えと魄西空に手が届く 佐藤鬼房
冴え返りつつ獣心のなごむさま 飯田龍太
冴え返るとは取り落すものの音 石田勝彦 秋興
冴え返る音のひとつに子のギター 楠本憲吉 孤客
冴え返る音や霰の十粒程 正岡子規 冴返る
冴え返る金毛閣は人を入れず 阿波野青畝
冴え返る空に愛宕の雲寒し 正岡子規 冴返る
冴え返る空ゆ母拉致せしは誰 楠本憲吉 孤客
冴え返る五体投地のこもり僧 角川源義
冴え返る匙を落して拾ふとき 細見綾子
冴え返る三笠颪や薪能 正岡子規 冴返る
冴え返る春日颪や薪能 正岡子規 冴返る
冴え返る松林抜けみづうみへ 細見綾子
冴え返る灯に首細き油壺 橋閒石 雪
冴え返る二三日あり沈丁花 高野素十
冴え返る日々東京の噂きこゆ 大野林火 早桃 太白集
冴え返る富士は眩しき山なりけり 中村苑子
冴え返る面魂は誰にありや 中村草田男
冴え返る壺の或る夜は怒濤かな 加藤秋邨
冴え返る壺を覗けば何もなし 橋閒石 朱明
冴え返る荼碗とならび北魏仏 加藤秋邨
冴ゆる客観妻の涙の目も横顔 中村草田男
冴ゆる寝の浅したゆたふ湖の音 鷲谷七菜子 銃身
冴ゆる灯に新年夜情雪のこゑ 飯田蛇笏 家郷の霧
冴ゆる夜の北斗を焦す狼烟哉 正岡子規 冴
冴ゆる夜や乾び反りたる魚の鰭 上村占魚 鮎
冴ゆる夜や女ひそかに劍習ふ 正岡子規 冴
皿冴ゆる鮑コキール貝も焦げ 日野草城
三月を此能故に冴え返る 正岡子規 三月
山の柿遠く実れば六腑冴え 飯田龍太
山月に冴えて聾ひたる耳二つ 飯田蛇笏 山廬集
山上奔馬空の残影冴えるかな 金子兜太
山辺より灯しそめて冴ゆるかな 前田普羅 普羅句集
残光に石のいのちのいや冴ゆる 伊丹三樹彦
姉とかや合歓の青莢冴ゆる谷 飯島晴子
子は留守の照る日曇る日冴え返る 日野草城
詩は怒余寒緑を冴えしめて 香西照雄
耳底の声追ふばかり冴ゆるかな 石川桂郎 含羞
耳鳴りは宇宙の音か月冴ゆる 林翔
借り家や冴ゆる夜近き汽車の音 正岡子規 冴
若き大工一つ灯冴ゆる鉋屑 中村草田男
取り落す計報荒星冴え返る 鷲谷七菜子 銃身
秋冴えたり我れ鯉切らん水の色 正岡子規 秋の水
十二月八日の冴えに退りけり 渡邊水巴 富士
渋濯屋白に疲れぬ白壁冴え 香西照雄 素心
獣皮舗の裸像灯りて冴え返る 飯田蛇笏 旅ゆく諷詠
春の河軍馬蹈みわたり冴えぎらふ 三橋敏雄
春の汗して絶食十日頭冴ゆ 相馬遷子 山河
春の月くもりて冴えて更けにけり 日野草城
女房泣く聲冴えて御所の夜更けたり 正岡子規 冴
小城下や辰の太鼓の冴え返る 正岡子規 冴返る
松ばかり冴えて十一月といふ 石塚友二 磯風
松は松椿は椿冴えかへる 山口青邨
松籟や鏡と冴ゆる碑の面 上田五千石『天路』補遺
沼が随所に髭を剃らねば眼が冴えて 金子兜太
沼涯のけむりが空に冴えて猟期 古沢太穂 火雲
鐘冴ゆる夜かゝげても灯の消んとす 正岡子規 冴
侵略の蒼冴えの肉撃たれたり 金子兜太
寝冴ゆると双耳の蝉や鳴きしきる 石塚友二 方寸虚実
新聞なれば遺影小さく冴えたりき 石田波郷
真夜の月冴えて二三の秋蛙 日野草城
神将のなべて青丹の面ぞ冴ゆ 伊丹三樹彦
神将の剥落のほど冴えにけり 伊丹三樹彦
人形のひとつびとつのいのちぞヽ冴ゆ 伊丹三樹彦
人生冴えて幼稚園より深夜の曲 金子兜太
酢海鼠に胸うち冴えしさびしさや 森澄雄
吹雪來んとして鐘冴ゆる嵐哉 正岡子規 吹雪
水鏡冴えたる亭は白障子 阿波野青畝
水冴えてカーヴす鯉の白々と 渡邊水巴 富士
水門におらび青冴え雪女 佐藤鬼房
水甕に水なき典座冴え返る 上田五千石『森林』補遺
星空冴えてくる寒行の太鼓うちだした 種田山頭火
星冴えて篝火白き砦哉 正岡子規 冴
声冴ゆる女あるじゆ紅を買ふ 野澤節子 未明音
青を研ぐごとくに風や冴えかへる 平井照敏
青肉のメロン冴え雪の積む韻 日野草城
青年一団リヤカー転宅音冴えて 中村草田男
静かさや冴え渡り来る羽根の音 村上鬼城
惜しみ置く箸も茶碗も冴えかへる 加藤秋邨
石ころの冴えた音梅の畑かしぐ 細見綾子
石棺に鎌研ぎし跡冴ゆるかな 松崎鉄之介
石工あり玄翁宙に風冴ゆる 飯田蛇笏 雪峡
雪後三日月観念のいろに冴え 飯田龍太
雪中を跳ぶ青冴えの石狐 佐藤鬼房
雪明り熱のぼるとき冴えにけり 大野林火 早桃 太白集
浅間冴え松炭燃ゆる五月の炉 前田普羅 春寒浅間山
曾根崎やむかしの路地に月冴えて 鷲谷七菜子 黄炎
草青き倉庫のかげにレール冴ゆ 大野林火 海門 昭和十三年
霜冴えてけはしく啼ける鴉かな 日野草城
大寒の古りし手鏡冴えにけり 桂信子 月光抄
大雁塔阿弥陀一尊冴えにけり 大野林火 月魄集 距和五十七年
鷹の羽の冴え返りける白襖 能村登四郎
棚畑のすみ~冴えて見えにけり 村上鬼城
探すもの書庫になく机辺冴えかへる 山口青邨
段落を経し山水の音の冴え 上田五千石『天路』補遺
知性冴え返る、弾道の錯落に 日野草城
竹の葉騒は冴ゆる眼鏡に数知れず 野澤節子 未明音
昼冴えて巷の立木とぼしかり 大野林火 冬青集 雨夜抄
昼寐より頬冴えざえと紅く覚めぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
潮かぶる家に耳冴え海の始め 金子兜太
町燈匿しふるさとのごと星ふえ冴ゆ 篠原梵 年々去来の花 雨
漬茄子の紺冴え冴えと赤坂昏れ 楠本憲吉 孤客
鶴の羽や白きが上に冴え返る 河東碧梧桐
鶴病んで梅散る頃や冴え返る 正岡子規 冴返る
庭芝の青冴え冴えと日の盛り 村山故郷
笛冴ゆる老いの重眉いよよ重 橋本多佳子
天の声うつそみの声冴えて消えぬ 中村草田男
天の川冴えざえと都会眠りけり 日野草城
天の川冴えて莠(はくさ)のたけにけり 加藤秋邨
天冴えて烈風に繊き富士を見たり 渡邊水巴 富士
土管掘る工事の星が冴え返る 右城暮石 句集外 昭和三十一年
冬の朝河岸に葬りの花環冴ゆ 大野林火 冬青集 海門以後
冬川に冴える電球を撃つは今 赤尾兜子 虚像
島泊昴落ちさう冴えにけり 阿波野青畝
踏切に高まり浮び女冴ゆ 大野林火 雪華 昭和三十六年
頭を剃りて祖母のやすけき死顔冴ゆ 伊丹三樹彦
頭冴えたりつづけざま嚏して 森澄雄
闘争重点冴えるスレート魚鱗の路 金子兜太
汝が目信じて妻となりきと声冴えつ 中村草田男
二羽の鶴すがたの冴えていたましき 水原秋櫻子 秋苑
日を待てる夜空の色の一書冴ゆ 中村草田男
日曜午下ショパン聴く子の脳冴えしか 赤尾兜子 歳華集
能登に聴く津軽じよんがら燈冴ゆ 上田五千石『琥珀』補遺
巴里の絵のここに冴え返り並ぶあはれ 水原秋櫻子 岩礁
波打つて陰まざまざと巌冴ゆる 鷲谷七菜子 銃身
波暮光礁打ち据ゑて青藻冴ゆ 鷲谷七菜子 銃身
梅かをり女ひとりの鏡冴ゆ 桂信子 月光抄
萩刈つてからりと冴えぬ夕明り 渡邊水巴 白日
白菊とわれ月光の底に冴ゆ 桂信子 月光抄
白口の夢縷々と河鹿鳴き冴ゆる 日野草城
白沙の青松冴え冴え残るよ艫の別れ 中村草田男
白梅に 善相句碑の墨の冴え 伊丹三樹彦
白梅に月は冴えつつ飆かな 日野草城
白梅や島の夜明の星の冴え 村山故郷
白夜冴え拗牛何を分けつづく 赤尾兜子 歳華集
白驟雨桃消えしより核は冴ゆ 赤尾兜子 歳華集
鳩たちぬ羽音が耳に冴えて鳴り 高屋窓秋
肥後あやめ冴え~と色欲しがらず 細見綾子
尾根落葉しつくして青空の冴ゆ 村山故郷
琵琶冴えて星落來る臺哉 正岡子規 冴
琵琶冴ゆや桂の花の散る匂ひ 正岡子規 月
美は微なりと告ぐごとく冴ゆ春星座 楠本憲吉 方壺集
病院食茄子も胡瓜も色冴えず 鈴木真砂女 紫木蓮
富士冴えて山拓く人ら石担ふ 渡邊水巴 富士
斧は冴え立木はこれの観世音 川端茅舎
斧冴えて立木を作佛したまへり 川端茅舎
父と子は母と子よりも冴え返る 野見山朱鳥 愁絶
舞ひ冴ゆや面の下より男(を)ごゑ発し 橋本多佳子
風荒き峠の菫冴えにけり 渡邊水巴 白日
風冴えて魚の腹さく女の手 石橋秀野
風冴えて高嶺紺青雪のこる 飯田蛇笏 雪峡
風冴えて宙にまぎるる白梅花 飯田蛇笏 雪峡
文楽の春とはいへど灯影冴え 飯田蛇笏 雪峡
暮れ残る豆腐屋の笛冴えざえと 中村草田男
蓬とも菊とも畑の冴え返り 右城暮石 句集外 昭和六年
亡骸のベツドに木椅子冴えて侍す 大野林火 雪華 昭和三十八年
北斗高く虚子誕生日冴えかへる 山口青邨
本陣は留守 両断の白菜冴え 伊丹三樹彦
又云へり師走狐の声冴ゆと 相生垣瓜人 明治草
満月の冴えてみちびく家路あり 飯田龍太
岬めぐる道高く潮の青く冴ゆ 村山故郷
蜜蜂に冴え隔てたり石蕗の花 石塚友二 光塵
霧晴れマチャプチャレヘ 冴える シャッター音 伊丹三樹彦
木曽川を見おろして城冴え返る(愛知県犬山) 細見綾子
夜すがらの卒業の歌暁に冴え 中村草田男
夜勤工冴えぬレタスを馬食して 佐藤鬼房
夜半の月冴えず明るし春近き 及川貞 夕焼
夜番の柝冴えたり月の夜と思ふ 日野草城
野辺送りきのふもけふも冴え返る 正岡子規 冴返る
友ら逝きわが生きのびて冴え返る 日野草城
夕さくら瀬音たかまりきて冴ゆる 伊丹三樹彦
夕しぐれ老母いよいよ頭が冴えて 佐藤鬼房
夕ベ冴ゆ病秩父の咳聞ゆかに 大野林火 雪華 昭和三十八年
夕刊を縄で吊る子よ口笛冴ゆ 伊丹三樹彦
夕冴えの幹矗々と遠木霊 鷲谷七菜子 銃身
夕冴えの老幹まとふ苔の青 鷲谷七菜子 銃身
夕冴ゆる雪嶺ちりめん織られゆく 橋本多佳子
幼長男眼やさし次男声冴えたり 中村草田男
用ふなき一炉もつとも冴え返る 上田五千石『森林』補遺
翌くる朝軒吹く風も冴え返る 村山故郷
頼み了へ人冴ゆ目尻の皺も消し 香西照雄
落款の丹の冴え冴えと遺墨あり 上田五千石『天路』補遺
藍冴ゆる浴衣をしやんと小女房 日野草城
裏山や月冴えて笹の音は何 正岡子規 冴
立たんとす腰のつがひの冴え返る 正岡子規 冴返る
立ちあがる波の青冴ゆ枯れの日よ 鷲谷七菜子 銃身
流氷のいつ戻りけん冴え返る 河東碧梧桐
龍胆は冴えてりん~草にある 細見綾子
両刀重き武士の草履の音冴ゆるか 中村草田男
旱天に星みえ疲労冴えてくる 金子兜太
濤声冴ゆるげに古言の犬吠ゆる 中村草田男
玻璃戸冴ゆ白きは牛乳の指のあと 中村草田男
絲の継傷ちりめんの白地冴え 橋本多佳子
茗荷汁沈金彫が冴えにけり 阿波野青畝
萬緑の一紺として四葩冴ゆ 石塚友二 曠日
貪惚けの貪冴え在れや籠枕 永田耕衣
蹠砲まつり御輿播磨と金文字冴ゆ 松崎鉄之介
颱風下死人のごとく耳目冴ゆ 三橋敏雄
鳰の声冴えきるや水曇りをり 鷲谷七菜子 銃身
鳰の巣に葭のひと茎冴えにけり 飴山實 句集外

冴ゆる 続補遺

冴えて行月はひとつよ西ひがし 李由
冴えそむる鐘ぞ十夜の場の月 杉風 深川

以上


by 575fudemakase | 2017-04-18 05:43 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

三寒四温 の俳句

三寒四温 の俳句

三寒四温

例句を挙げる。

ここ数日カーテンコールめく四温 高澤良一 素抱
だらしなく酔ひて四温の帽子かな 草間時彦
つゞきたる四温の果つる雨となる 大久保橙青
てのひらに四温の雨や能のあと 宇佐美魚目 天地存問
ひよいひよいと波よせてくる四温晴 小島花枝
まぎれなく三寒四温始まれる 五十嵐哲也
まぶしさの四温の繭を掌に掬ふ 木村蕪城 寒泉
みづみづと磯菜四温の靄あげぬ 石原舟月 山鵲
めぐり来る杜氏の恐るる四温かな 小島左京
をとつひの三寒の尾をまだ曳けり 高澤良一 素抱
サンダルで本屋を覗く四温かな 石川文子
バス待つや傍を四温の煙草拾ひ 北野民夫
ブロンズの鷹女に会へる四温かな 関根悦子
マンシヨンの足場をはずす四温の日 角皆美代子
一喜一憂してゐる三寒四温かな 竹中しげる
一握の叔母の髪結ふ四温かな 都筑智子
一睡の夢に疲るる四温かな 植村久子
一羽馴れせし雄鶏の四温かな 池田澄子
七曜をつなぐ三寒四温もて 鈴木栄子
三寒で片づけられぬけふの冷え 高澤良一 素抱
三寒と四温のぎったんばったんこ 高澤良一 素抱
三寒にわれちぢまりて四温待つ 貝森ひで
三寒に統く四温や街繁華 福田蓼汀 山火
三寒のあとの一温かも知れず 鷹羽狩行
三寒のきびしさ笑忘れける 大場白水郎 散木集
三寒のくらがりを負ふ臼一つ 八重津苳二
三寒のそれでもぼちぼちハーブ園 高澤良一 素抱
三寒のどっちつかずの夜半の月 高澤良一 素抱
三寒の吾が息牛の息とあり 依田秋葭
三寒の四温の湖の大白鳥 椎橋清翠
三寒の四温の看護日記かな 阿部正調
三寒の四温の空にゐる雀 今井杏太郎
三寒の四温を待てる机かな 石川桂郎(1909-75)
三寒の四温を濁る頭かな 山田みづえ 手甲
三寒の四温兆しぬ筆買ひに 及川貞
三寒の四温紺屋の藍がたつ 青山久女
三寒の嬰をまるめて皿秤 長谷川双魚 『ひとつとや』
三寒の日は蒼かりし山おもて 三宅一鳴
三寒の昼餉おじやに腹が足り 高澤良一 素抱
三寒の木にひつかかる四温かな 松澤昭 麓入
三寒の水甕に日のそだちをり 長谷川双魚 風形
三寒の瀧と四温の枯木灘 角川春樹(1942-)
三寒の灯台怒涛を従がへて 藤野艶子
三寒の障子つぎ張りの白さもて 中山純子 沙羅
三寒の風の残りし四温晴 山内山彦
三寒の鬼面とまがふ釣り魚 河野南畦 湖の森
三寒の鯉がみじろぐ泥けむり 能村登四郎
三寒の黒竹粋な一商家 高澤良一 宿好
三寒は籠り四温は用足しに 高澤良一 素抱
三寒やエンデバの富士白一点 唐木培水
三寒や坂の下より葱の立つ 小島千架子
三寒や寝にも入りくる松林図 宇佐美魚目 秋収冬蔵
三寒を貶し四温を褒めにけり 中瀬喜陽
三寒四温にんげんのそばに鴉 河村四響
三寒四温のことに四温は父の眼よ 野澤節子 花 季
三寒四温ゆゑ人の世の面白し 大橋越央子
三寒四温赤ん坊泣いて肥るのみ 岡部六弥太
九官鳥四温の窓に機嫌よし 椎橋清翠
人見知りする子かくれて四温かな 横山利子
仏五十守り三寒の灯を消しぬ 影島智子
八ツ手より蝶の出舞ふ四温かな 森山 治子
凍てつぎて四温たまたま石蕗の濡れ 飯田蛇笏 雪峡
前厄の虫歯三寒四温かな 橋本白木
北斗星四温の水をこぼしけり 有馬朗人
原爆地三寒とどめたる四温 松澤昭 麓入
古る年の夜月がはなつ四温光 飯田蛇笏 雪峡
四温とてくづるゝ日和なりしかな 稲畑汀子
四温とて暮れてしまいぬ海のきわ 鈴木六林男
四温にもぴたりと閉ざす白襖 柴田白葉女 花寂び 以後
四温の日低き歓語の碁石たち 吉田銀葉
四温やゝ暖かすぎて窓に佇つ 大場白水郎 散木集
四温よな小便の泡目がふたつ 隈 治人
四温夜に入りてもこゝろ遊びけり 篠田悌二郎 風雪前
団地四温幼な声ほどよく届く 鍵和田[のり]子
土いじり終り四温の腰伸ばす 高澤良一 宿好
土塀の日向の記憶四温光 深谷雄大
塩あてし鯖緊まりゆく四温の夜 伊藤いと子
墨倉の明け放たれし四温かな 佐藤美智子
声届くところに禽のゐる四温 長谷川双魚 風形
売り犬が通りへ出さる四温かな 斎藤由美
奈良晒三寒の糸織りかけに 高澤良一 寒暑
女医の脚組まれて海に四温かな 田中信克
子の嫁に欲しき人ゐて四温光 都筑智子
家中を散らかして出る四温かな 岡田史乃
寒中の風鈴が鳴る四温かな 飯田蛇笏 春蘭
徘徊す虎は四温の毛皮被て 高澤良一 寒暑
手をかへすごとく三寒四温かな 八牧美喜子
揚舟へ四温の山を禽こぼれ 大岳水一路
旅二日四温のうちに終へしこと 荻江寿友
日本海けふ力抜く四温かな 辻桃子
日照りつつ四温に紛れ込む雪か 鳥居おさむ
明治期の軒燈四温の外厠 北野民夫
朝の雨上り四温となりゆけり 稲畑汀子
杣が妻四温の濡手かざすなる 木村蕪城 寒泉
果樹園をぬけて産院四温光 飯田蛇笏 椿花集
枯芝に四温の月を眺め立つ 大場白水郎 散木集
母の忌を和服で過ごす四温晴 伊東宏晃
母の機嫌の三寒四温おもしろき 山田みづえ 木語
水は三寒地は四温なる夕景色 能村登四郎
水浴びて鷭も四温の舟溜り 石井とし夫
水際にて四温踏みとどまりゐたり 長谷川双魚 『ひとつとや』
湖の三寒四温くりかへし 山本 綾
熊野路の四温のひと夜雨こまか 矢島渚男
父の忌の花買ひに出し四温かな 細田寿郎
牛の背波群れて平坦四温光 平井さち子
玻璃越しの三寒の空鳥過ぎし 河野南畦 湖の森
産院を繞る雪山四温光 飯田蛇笏 椿花集
白珠の四温の星のうるむなり 柴田白葉女
砂場の子遠く見守る四温の目 高澤良一 宿好
磴蓆濡れて四温の善光寺 西本一都 景色
空也蒸しにして三寒の「笹の雪」 及川貞 夕焼
窓のうちはたきのうごく四温かな 岩田由美
立てかけし橇に四温の雫かな 原田青児
童子にも受験苦三寒四温かな 草間時彦
羆立ちあがりて四温日和なる 伊藤いと子
老いごころ揺れゐて三寒四温かな 吉野義子
胎中の胎児三寒四温越ゆ 清水基吉 寒蕭々
蛤の舌出してゐる四温かな 江口千樹
褒貶は知らず四温に身を委ね 毛塚静枝
見えてゐる海底の巖四温かな 田中裕明 櫻姫譚
谷戸を風抜けて四温の遊亀邸 奥田郁子
象亀の砂に喰ひこむ四温の手 高澤良一 さざなみやっこ
贋作師三寒四温の壺作る 西村我尼吾
赤ん坊の笑顔に笑窪ある四温 篠崎みや子
軒しづく頻りに落つる四温かな 白樹
返事出しそびれ三寒四温かな 長田等
返信の来ずに三寒四温過ぐ 上田五千石 田園
退坑の貌にかがよふ四温光 西川赤峰
閑のキリンと無聊の河馬と四温にて 矢島房利
降りいでし四温の雨や竹騒ぐ 石川桂郎 高蘆
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子 山国
雲とんでゐるも暫く四温晴 高濱年尾 年尾句集
雷門潜り四温の中国語 高澤良一 宿好
青鳩は木のふところに四温かな 邊見京子
風見鶏風を捜してゐる四温 山田弘子
黒板に三寒の日の及びけり 島谷征良
黒潮の帯あきらかに海四温 井沢正江

三寒四温 補遺

おほかたは浮ぶ四温の金魚達 鷹羽狩行
この老母ゐて訪ひ易き四温かな 大野林火 月魄集 昭和五十五年
だらしなく酔ひて四温の帽子かな 草間時彦
たらちねと呼ばるる汝の四温かな 上田五千石 天路
ときに三寒おほかたは四温の人 鷹羽狩行
まぶしさの四温の繭を掌に掬ふ 木村蕪城 寒泉
まま子潮平々四温ぐもりかな 上田五千石『森林』補遺
よき日なり日延べ四温と申さむか 林翔
われよりも病が待てる四温の日 能村登四郎
胃痛つづきて四温また裏返る 能村登四郎
一つづつ亀浮かび出て四温かな 村山故郷
一枚のはがきのみくる四温の日 能村登四郎
果樹園をぬけて産院四温光 飯田蛇笏
寒中の風鈴が鳴る四温かな 飯田蛇笏 春蘭
空也蒸しにして三寒の「笹の雪」 及川貞 夕焼
古る年の夜月がはなつ四温光 飯田蛇笏 雪峡
後肢で立つをこころみ四温の子 上田五千石『天路』補遺
糠みそへ塩たす三寒四温かな 鈴木真砂女 都鳥
三寒といへば不死男の嶽中句 鷹羽狩行
三寒と四温の中の命名日 能村登四郎
三寒に続く四寒ぞ疎ましき 相生垣瓜人 負暄
三寒に統く四温や街繁華 福田蓼汀 山火
三寒のあとの一温かも知れず 鷹羽狩行
三寒のきづな四温のえにしかな 鷹羽狩行
三寒のなくて四温の十姉妹 鷹羽狩行
三寒のにぎはひにある誕生寺 伊藤白潮
三寒ののちの四温を信ずべし 上田五千石 風景
三寒の寒さ問はるる逝くままに 斎藤玄 狩眼
三寒の寒に随ふ藪柑子 森澄雄
三寒の寒のつづきて四温なし 桂信子 花影
三寒の鯉が身じろぐ泥けむり 能村登四郎
三寒の四温の香爐文箱かな 岡井省二 山色
三寒の次の一日はさびしくも 山口青邨
三寒の星を小粒に櫟原 石田勝彦 雙杵
三寒の日向うらやむ日影かな 鷹羽狩行
三寒の頬板よりも堅きかと 阿波野青畝
三寒も四温もいまははろかなり 上田五千石『風景』補遺
三寒も四温も尋ね来しが留守 中村苑子
三寒も四寒のごとく巌ぶすま 鷹羽狩行
三寒やくちばし赤き小鳥飼ひ 鷹羽狩行
三寒や四温や四喜や三憂や 相生垣瓜人 明治草
三寒や四温や本を買ひ溜めて 安住敦
三寒や時にがばりと夜の鯉 鷹羽狩行
三寒をつぎて四温のこころなし 上田五千石『風景』補遺
三寒を四温へ笛の音をはこぶ 上田五千石 森林
三寒を怠け四温を口実に 雨滴集 星野麥丘人
三寒を知らず四温の地下宮殿 鷹羽狩行
三寒四温声荒らぐることもなし 安住敦
三寒四温余生濫用をいましめて 安住敦
山よりに四温の日ざし水菜あり 右城暮石 句集外 昭和十九年
産院を繞る雪山四温光 飯田蛇笏
四温かな高野帚が香を放ち 飯田龍太
四温とて待たるはよけれ待つはよし 上田五千石 天路
四温にて糖分をやや多く採り 能村登四郎
四温の水打つて花街の老舗守る 上田五千石『琥珀』補遺
四温の日あまねき国に医書残す 平畑静塔
四温の日さうめん囃子の烏賊たまふ 角川源義
四温の日袴いさめば埃たつ 角川源義
四温の日笹を屋根とし遺髪塚 角川源義
四温の日松山墓の風たむろ 角川源義
四温の日踏絵の町の皿うどん 角川源義
神南備の四温の鯉の彩と墨 上田五千石『天路』補遺
水は三寒地は四温なる夕景色 能村登四郎
水晶の中なる草も四温待つ 鷹羽狩行
成人に麗日老に四温かな 百合山羽公 樂土以後
聖痕のいづれもうすれ四温の日 上田五千石『琥珀』補遺
聖戦の三寒四温童らそだつ 飯田蛇笏 白嶽
雪原の三寒四温浅間噴く 相馬遷子 山国
続きゐる四温の一日女客 星野立子
吊玉葱芽吹く三寒四温かな 山田みづえ 木語
凍てつぎて四温たまたま石蕗の濡れ 飯田蛇笏 雪峡
年明けて二度目の墓参四温晴 星野立子
噴水を上げて四温といふべかり 後藤比奈夫
返信の来ずに三寒四温過ぐ 上田五千石 田園
母の機嫌の三寒四温おもしろき 山田みづえ 木語
忙中のこころ遊ぶも四温の夜 能村登四郎
北斗星四温の水をこぼしけり 有馬朗人 耳順
麻姑の手のすこしつめたき四温かな 飯田龍太
木洩日の先にもありし四温晴 後藤比奈夫
猟夫らは四温の月に顔並めぬ 飯田蛇笏 心像
杣が妻四温の濡手かざすなる 木村蕪城 寒泉
鸛嘴打ち鳴らす四温かな 有馬朗人 非稀

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 05:37 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬深し の俳句

冬深し の俳句

冬深し

例句を挙げる。

あなどりて真冬の蜂にさゝれけり 森田中霞
ここに又陸稲のみどり島の冬 深見けん二
なにか喰む猿の顔じゆうが冬深む 芦川源
なにもかも倒れて真冬深みたる 宇多喜代子 象
ひとり乗る真冬の奈良の昇降機 原田喬
わが木にて暗き杉立つ真冬かな 中村苑子
一盞のベルモット書斎冬深し 山口青邨
乳の形あることはあり冬深む 上野さち子
二三日父母を見ず冬ふかむ 橋本榮治 麦生
五本杉五本囁く冬深空 殿村菟絲子 『菟絲』
人*かんの真冬をわたる筬の音 飯田蛇笏 椿花集
人の言ふ反革命や冬深む 相馬遷子 雪嶺
冬ふかき日の吹かれをり桑畑 金尾梅の門 古志の歌
冬ふかき月のひかりを離さぬ木 中田剛 珠樹
冬ふかくほとけの彫りも見えがてに 室生犀星 犀星発句集
冬ふかく風吹く大地霑へり 飯田蛇笏 椿花集
冬ふかしとつぶやけば又深くなりぬ 草間時彦
冬ふかし仏飾るに花鳥の図 土橋石楠花
冬ふかし朝は煤降る映画街 金子潮
冬ふかし薔薇園石の天使おく 原田青児
冬ふかし豆挽く揺れのなかにあり 中田剛 珠樹
冬ふかむかな音もなく隣り合ひ 岡田 和子
冬ふかむさびしさ限りなき砂丘 伊東宏晃
冬ふかむ父情の深みゆくごとく 飯田龍太
冬帽の真冬の浪花男かな 攝津幸彦
冬深き井戸のけむりよ朝まだき 室生犀星(1889-1962)
冬深き坂の途中の岐れけり 小島良子
冬深き志野の湯呑の肌ざはり 大場美夜子
冬深き癌研灯り砦なす 菖蒲あや あ や
冬深く墓掘る者は低唱す 有馬朗人 知命
冬深く萎えし花々幾日ぞ 室生犀星 犀星発句集
冬深しいちじくの根に灰撒いて 鈴木しげを
冬深しからだ全部で振り向きぬ 須川洋子
冬深し二俣川といふところ 鈴木しげを
冬深し思ひのままに土乾く 松村蒼石 雪
冬深し手に乗る禽の夢を見て 飯田龍太 山の木
冬深し柱の中の濤の音 長谷川櫂(1954-)
冬深し海も夜毎のいさり火も 八木絵馬
冬深し秤が元へ戻る音 成田千空 地霊
冬深し老と死の字は六字画 宮本はるお
冬深し老婆がどこにでも坐り 長谷川双魚 風形
冬深し脱ぎすてし靴の朝は穿く 瀧春一 菜園
冬深し藪へ入り込む川の砂 大峯あきら 鳥道
冬深し闇に濃き闇薄き闇 柏禎
冬深し闇に踏みたるひとの尾も 河原枇杷男
冬深し顔を作れば黒子泛き 長谷川双魚 『ひとつとや』
冬深し鼈甲いろの漬菜にも 細谷鳩舎
冬深むとも春近しとも木々の色 橋本榮治 逆旅
冬深む刻字うするる支那小凾 加藤三恵子
冬深む息つめしわが影の黒 櫛原希伊子
冬深む漬物石の重たさに 渡辺寛子
冬深む蒼空ばかり身延線 森澄雄
冬深む黙契のごと双拳 村越化石 山國抄
冬深井みんな無口になつてゐる 栗林千津
出で行くはむしろ不安の真冬の道 石田波郷
切株も獣顔して冬ふかむ 岡本まち子
喪の中に幹立ち真冬始まれる 和田悟朗
噴煙の伏して崩れず冬深し 米谷静二
四囲の音聴き澄ますとき冬深く 加藤楸邨
堪忍と鳴る鹿威し冬深し 佐々木六戈 百韻反故 初學
山上は真冬の小鳥うららに人に鳴き寄る 人間を彫る 大橋裸木
山猫もどんぐりも冬深むなか 大串 章
峡湾の碧さや牟婁の冬深き 内藤吐天 鳴海抄
島真冬船より投ぐる餌に猿来 太田嗟
師恩友情妻子の情冬ふかむ 相馬遷子 山河
干魚あぶる市中に来て冬深き 室生犀星 犀星発句集
愛染と墨書して冬深まれり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
故人みなよき顔に冬深し 宇多喜代子 象
方丈の寸尺狂ひなき真冬 庄司圭吾
日の当る方へ歩みて冬深む 朝倉和江
晩餐図椅子一つあけ冬深し 有馬朗人 天為
樅の葉の結晶満ちて冬ふかし 堀口星眠 営巣期
歯を磨きながら死にたい 真冬ガソリンスタンドの床に降る星 穂村弘
死支度など捗どらず冬深む 井出寒子
母を責めひとり真冬の海にくる 江川貞代
水墨の槎(いかだ)に孤客冬深む 小澤實(1956-)
水音にそそぐ水音冬深し 行方克巳
波かもめ遠啼きに冬深めたり 河野南畦 湖の森
煮えてきて蜆おどろく冬深し 辻桃子
爪かけて木原の斜陽冬ふかむ 飯田蛇笏 椿花集
父と子のかげる真冬の昆虫館 長谷川双魚 風形
猩々の一物突起せる真冬 高澤良一 燕音
田を截つて大地真冬の鮮らしさ 飯田蛇笏
男鹿に冬ふかむ廃船壊ちつゝ 能村登四郎 合掌部落
白樺の枝こまやかに冬ふかむ 石田あき子
真冬の故郷正座してものおもはする 飯田龍太 春の道
真冬の洞単身で来て顔とがる 澁谷道
真冬日のマンシヨンに棲む聖マリア 平田栄一
真冬日の割れそうな壺売られおり 關根 巧
真冬日の古城のほかは海である 高橋比呂子
真冬日の夕ベは死螢ばかりとぶ 佐々木宏
真冬日の絞めやすくある鶏の首 海老名衣子
真冬日の鼻の先より昏れにけり 成田昭男
真冬日をバスは二時間来ぬつもり 櫂未知子 貴族
真冬日を死なずさぶがる鯉も又 齋藤玄 『雁道』
石山そぎ立ち真冬の鴉鳴きかかる 人間を彫る 大橋裸木
砂丘ゆく人すぐ遠く冬ふかむ 伊東宏晃
祖母の形見少しづつ減り冬深む 古賀まり子 緑の野以後
神輿屋の神輿に埃冬深む 林翔 和紙
窯出しの紅のにじみや冬深む 遠藤律
笹にまじるあやめみどり葉冬深き 室生犀星 犀星発句集
糊皿に一雷鳴や冬深し 外川飼虎
老母の煮炊き常凡冬ふかむ 上野さち子
耐へよとや真冬一と間に塩と綿 成田千空 地霊
胎児にとって真冬のフォルテは必要不可欠 夏石番矢
脚絆も黒く若き君等の冬深まる 鈴木六林男 第三突堤
薙刀と絵皿ならべて冬深し 中田剛 珠樹以後
親星を子星はなれず冬深む 木附沢麦青
角砂糖しみじみ溶けて真冬なり 中山純子 沙 羅以後
足掛け一日真冬さながら弁護人 宮崎二健
踏切りが振るつよき白旗真冬の豚 寺田京子 日の鷹
遠く咲く真冬の花火ピアニスト 高橋謙次郎
銀山や真冬の清水たばしりぬ 辻 桃子
鍋の向こうに力士の手形冬深し 大山キヌ子
馬駆くる鉄の壁掛冬深き 田村了咲
鯔網に冬ふかみつつ空つ風 飯田蛇笏 雪峡
鳶は輪をひたすらなぞり冬深む 中 拓夫
麻姑の手の指のかたちに冬深む 長谷川久々子
あしの皮はぎおちる冬の深みけり 室生犀星 犀星発句集
とくさまつすぐな冬の深さよ 室生犀星
シエーバーの充電冬の深みけり 林 誠司
峠教ゆ冬の深みのなつかしく 村越化石 山國抄
干鰯たやさぬ冬の深まりて 室生犀星 犀星発句集
好きなことばかりしてゐて深む冬 高澤良一 石鏡

冬深し 補遺

タンゴ弾く男のひげの冬深し 有馬朗人 耳順
にこにこ聞いてる笑くぼの深き冬夜の子 古沢太穂 火雲
わが木にて暗き杉立つ真冬かな 中村苑子
鴎来て常願寺川冬深む 上田五千石『風景』補遺
眼のごとき沼あり深き冬の山 鷲谷七菜子 銃身
巨船目の前に真冬の風車売り 飯田龍太
現実の相を真冬の水かがみ 飯田蛇笏 家郷の霧
吾とわが鍔迫り合ひの真冬なり 佐藤鬼房
鯉のかげ鯉に重ねて冬深し 鷹羽狩行
甲冑の無言の列に深き冬 有馬朗人 立志
黒猫のひげ見てをれば冬深し 飯田龍太
魂痩せて真冬の夢を見つづけし 三橋鷹女
砂山のすぐ散らかつて冬深き 岡本眸
思ひ出し廻りの水車冬深む 上田五千石『琥珀』補遺
寺の子に真冬みどりの島ひとつ 飯田龍太
受験苦に迫る真冬の蜘蛛の糸 飯田龍太
熟柿いくつも食ふ百姓の冬ふかし 飯田龍太
春へ手のとどかぬごとく冬深し 能村登四郎
女づれ子連れの凪の深き冬 原裕 青垣
昇天の鳶に真冬の曼珠沙華 飯田龍太
深き冬日吏の小幸をあたためて 飯田龍太
真冬となる山いくつもありみづうみは一つあり 中川一碧樓
真冬の故郷正座してものおもはする 飯田龍太
真冬の樹海は茫然と豊饒と 飯田龍太
真冬日や絵馬の蹄のよく描けて 佐藤鬼房
真冬日を死なずさぶがる鯉も又 斎藤玄 雁道
神輿屋の神輿に埃冬深む 林翔 和紙
身のまはり手で掃いて冬深まりぬ 岡本眸
人の言ふ反革命や冬深む 相馬遷子 雪嶺
人は喪に真冬のいろを上げし石蕗 三橋鷹女
人寰の真冬をわたる筬の音 飯田蛇笏
水掴みどほし真冬の蒟蒻屋 岡本眸
切飴の切口の艶冬深む 松崎鉄之介
早鞆の凪の二夜に冬深む 上田五千石 天路
草の果て日の果て真冬来つつあり 廣瀬直人 帰路
大いなる真冬の金魚口ひらく 加藤秋邨
滝音を山の音とし冬深む 桂信子 花影
男らや真冬の琴をかき鳴らし 飯島晴子
弔問の扉を押して冬深かりき 鷲谷七菜子 一盞
鉄路わかれ又岐れ冬深むべく 岡本眸
田の果てに夕日真冬のバンガロー 飯田龍太
田を*きつて大地真冬の鮮らしさ 飯田蛇笏 家郷の霧
冬ふかき森ゆく斧を光らせつ 草間時彦 中年
冬ふかしことに灯笠の緋を極め 飯田龍太
冬ふかし臼を日向に干すこゑも 飯田龍太
冬ふかし小銭あつめし結婚賀 草間時彦 中年
冬ふかし鉄くろがねと読むことも 飯田龍太
冬ふかし熱出て身の香あることも 森澄雄
冬ふかし肥満の童児地に坐り 飯田龍太
冬深き言葉上下す寝台車 岡本眸
冬深き広辞苑とも親しまず 安住敦
冬深き樹石の姿晴れ渡り 松本たかし
冬深き罌粟一輪をデッサンす 草間時彦
冬深く主見知らぬ家二軒 飯田龍太
冬深く墓掘る者は低唱す 有馬朗人 知命
冬深しなまぐさきこと女いふ 寒食 星野麥丘人
冬深しねむくなりたる猫の眼も 飯田龍太
冬深しひとの眼を見るインコたち 飯田龍太
冬深しふたたび海を見たるとき 飯田龍太
冬深しわきて眼病みの闇の灯は 飯田龍太
冬深し急ぐを常の靴音も 岡本眸
冬深し巨船ひたすら南溟へ 飯田龍太
冬深し子を道連れの旅人見え 飯田龍太
冬深し思ひのままに土乾く 松村蒼石 雪
冬深し指組み替ふる膝の上 岡本眸
冬深し手に乗る禽の夢を見て 飯田龍太
冬深し新聞読めばすぐ昼に 燕雀 星野麥丘人
冬深し真夜に目覚めし獣の香は 飯田龍太
冬深し声低めても牧師には 飯田龍太
冬深し切りたる髪の散るさまも 飯田龍太
冬深し灯のなき離宮思ふとき 飯田龍太
冬深し童児は鳥の瞳をみつめ 飯田龍太
冬深し夜雨聞きては忘れては 飯田龍太
冬深し幼子がいま医師の前 飯田龍太
冬深みくる色鯉の夢のさま 森澄雄
冬深みたり女ごゑ佐渡おけさ 森澄雄
冬深む寺建つる音やすみなく 飯島晴子
冬深む蒼空ばかり身延線 森澄雄
冬深む肉食三日つつしめば 上田五千石『琥珀』補遺
冬深む病閑雲を踏むごとく 廣瀬直人 帰路
峠より見ゆる真冬の舟溜り 廣瀬直人
尼寺のものの匂ひの冬深し 飯田龍太
日本海に真冬日あらん山越えれば 金子兜太
泊り二日竹に向ひて真冬なり 大野林火 方円集 昭和五十一年
白身魚ならばと食べて冬深む 能村登四郎
晩餐図椅子一つあけ冬深し 有馬朗人 天為
未知の書は真冬焼けゆく川の色 飯田龍太
網かけしごとき真冬の葡萄園 松崎鉄之介
羅紗の襟厚く真冬に向ひたり 山口誓子
欄干に冬深き湖少女の香 飯田龍太
旅先の町に灯が満ち冬深む 岡本眸
廊下行く真冬の真夜の一ナース 石塚友二 玉縄以後
老人と別れてからの真冬かな 橋閒石 微光
老人の友誼真冬の蜘蛛の糸 飯田龍太
罅深き冬鏡あり廊尽きぬ 岡本眸
苺畑青きその家も冬深く 飯田龍太

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 05:32 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

霜焼 の俳句

霜焼 の俳句


霜焼

例句を挙げる。

きまじめに家具屋の友の霜焼ぐせ 川崎展宏
じゃんけんのぐうは霜焼にぎりしめ 草間時彦
人好しの貧乏耳に霜焼けして 平山藍子
叱るべき児の霜焼をふと庇ふ 富永小谷
大き手の霜焼の指愛しめり 仙田洋子 雲は王冠
大聲の霜焼の子や川つぷち 田中裕明 花間一壺
子の泣く顔霜焼の手に覆ひきれず 宮坂静生 青胡桃
客のあと妻霜焼の足を出す 下村ひろし
少し耳かゆし霜焼とも思わず 高浜年尾
杣を籠め霜焼け深き杉の山 小島千架子
父祖の血を承けけり頬の霜焼も 不破 博
蝶日和霜焼の膝ほどき見る 木歩句集 富田木歩
霜焼けのくすり机上にモオツアルト 桜井博道 海上
霜焼けの子の手がつくる砂の塔 佐川広治
霜焼けの手に息かけて機を織る 斉藤 夏子
霜焼けの杉襖なす雪解かな 小林康治 四季貧窮
霜焼けの頭をころころと蕗の薹 きくちつねこ
霜焼けの黄やみちのくの早苗束 沢木欣一
霜焼し泣き顔ならず泣きつづけ 宮坂静生 青胡桃
霜焼にかこつけ嘘をいふあはれ 阿部みどり女 笹鳴
霜焼に手ふれつおもひまとまらず 馬場移公子
霜焼に角ばみ小さき片の耳 篠原梵
霜焼のかゆきにつけて母恋うて 成瀬櫻桃子 素心
霜焼のわが指をわが指が揉む 加倉井秋を 午後の窓
霜焼の小さき手より見舞ひ花 石田あき子
霜焼の小指が過去を覚ましけり 丸田余志子
霜焼の手を子は告ぐる婢は告げで 中村汀女
霜焼の耳こすりつゝ遅刻の子 吉塚久二三
霜焼の耳ばかり見て聴き役に 上野章子
霜焼の耳美しき燈下かな 中西正史
霜焼の膝ツ子うづく夜伽かな 富田木歩
霜焼の頬の赤らも頼まるゝ 林原耒井 蜩
霜焼もせず臈たけしいつのまに 久米正雄 返り花
霜焼や叱つてばかりゐる子にて 中村汀女
霜焼をこすり歩きぬ古畳 長谷川かな女
高野僧耳の霜焼まぬかれず 森田 峠
鮎の炉や霜焼の子は掌を抱く 前田普羅 飛騨紬
京も終霜やけ薬貝に盛る 『定本石橋秀野句文集』
凍傷の手もて岳友に花捧ぐ 福田蓼汀
凍傷の痛痒織機フル運転 津田清子 二人称
凍傷を火鉢でこすり勤めけり 草野戎朗
凍傷者をれど一行無事と知る 小川里風
海苔場あり凍傷の手の女らに 市橋一男
雨聞くや凍傷薬を耳にもぬり 秋元不死男
霜やけをこすり歩きぬ古畳 龍胆 長谷川かな女
霜やけを不二の光にこころ儘 園女 俳諧撰集玉藻集
霜やけを踏まれ総髪を逆立たす 宮武寒々 朱卓

霜焼 補遺

おちぶれて人霜やけにわぶるかな 正岡子規 霜焼
鮎の炉や霜焼の子は掌を抱く 前田普羅 飛騨紬
雨聞くや凍傷薬を耳にもぬり 秋元不死男
京も終霜やけ薬貝に盛る 石橋秀野
信濃より藷さげてきし手の霜焼 加藤秋邨
霜やけのこどもねむればねむくなる 飴山實
霜やけのまゝごと蓆泣き別れ 石橋秀野
霜やけの手から海鼠のすへりけり 正岡子規 海鼠
霜やけの手より熬豆こぼしけり 正岡子規 霜焼
霜やけや武士の娘の水仕事 正岡子規 霜焼
霜やけや母に夕餉の後影 石橋秀野
霜やけや娘の指のおそろしき 正岡子規 霜焼
霜腫の一茶よ柿も鶏頭も 鷹羽狩行
霜焼けの手をならべ見すもう癒ゆと(四月三日、永子吾が家の子となる) 細見綾子
霜焼けの杉襖なす雪解かな 小林康治 四季貧窮
霜焼に角ばみ小さき片の耳 篠原梵 年々去来の花 皿
霜焼のかなしき右手をさすりつゝ 星野立子
霜焼の糸檜葉虚子の句碑立てり 右城暮石 一芸
霜焼の幼なはらから並び寝て 石橋秀野
霜焼や真夜の梁沈みつゝ 石橋秀野
凍傷の手をこすりゐる泣くがごとく 松崎鉄之介
凍傷の跡といふ顔媼さび 星野立子
凍傷の痛痒織機フル運転 津田清子
灣曲し凍傷し宝玉値のバナナ 中村草田男

霜焼 続補遺

霜やけも不二の光に心まゝ 園女
霜やけの手を吹てやる雪まろげ 羽紅女
うぐひすや未だ霜腫の人の耳 三宅嘯山

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 05:11 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪催 の俳句

雪催 の俳句

雪催

例句を挙げる。

あるこほる揮発せし指雪催 小川軽舟
あをじ去り頬白来り雪催ひ 島村元句集
えんぶりや雪止んでなほ雪催 藤木倶子
かたづけも遊びのひとつ雪催 上田日差子
からすみの琥珀色透く雪催 築城百々平
しやちほこの目の支へあふ雪催 大木あまり 山の夢
その中へ入りつつ暗し雪催 斎藤玄 雁道
ふたりゐてそれぞれの黙雪催 辻美奈子
もてなしの焚火かこむや雪催ひ 大場白水郎 散木集
オホーツクの没日環なす雪催 澤田 緑生
五百羅漢声あげてをり雪催 蓬田紀枝子
人中や風船ゆきて雪催 秋元不死男
人形の顔てらてらと雪催 阿部みどり女
凧ばいと売る古町や雪催 石川桂郎 高蘆
凧市の地より色顕つ雪催ひ 文挟夫佐恵 遠い橋
刃物屋の暗さが匂ひ雪催ひ 行方克巳
匂ふまで鴉が近し雪催 細川加賀 生身魂
北の海獣泣きして雪催ひ 上村占魚 『自門』
場違ひの赤貝貧し雪催 鈴木真砂女 夕螢
墨すつて昼暗くせり雪催 秋元不死男
声つぶす御伝鈔なり雪催ひ 赤松[ケイ]子
夢に見るふるさといつも雪催ふ 冨田みのる
大陸的気性ときどき雪催 櫂未知子 貴族
天蚕織りの彩の沈める雪催ひ 柴田白葉女 『月の笛』
妖村正二尺四寸雪催 稲島帚木
妻の煮るものあふれたがるよ雪催 吉田明
妻病めば子等諍かはず雪催ひ 相馬遷子 山国
対岸の焚火わらへり雪催ひ 石原舟月
封すでに切られし手紙雪催ひ 益永孝元
屋根裏にみんな来ている雪催い 永末恵子
屑買ひが見てわれが見て雪催 清水径子
山ふかき紅梅にして雪催ひ 有働亨 汐路
山頭火に酒零したり雪催い 川村三千夫
干してある索麺明り雪催ひ 桑田青虎
干魚の眼の抜けてゐる雪催ひ 福井 登
干鰈のはらの子あらは雪催ひ 高島筍雄
幻聴は般若心経雪催ふ 田川飛旅子 『山法師』
幼女早や内股あるき雪催 秋元不死男
庫裡に出て尼の手さぐり雪催 古舘曹人 砂の音
廃船の錆盛り上る雪催 森藤千鶴
弥太郎忌朝から山の雪催ひ 上村占魚 鮎
後産を山に埋めて雪催 茨木和生 遠つ川
悪相の魚は美味し雪催 鈴木真砂女
手の中に小さき手のある雪催 辻美奈子
拭き重ねゆく皿蒼し雪催 渡邊千枝子
拭ふても消えぬ手の染み雪催 井沢正江
明日分の薬はありて雪催 佐野笑子
本だなの抜きあと深く雪催い 川崎ふゆき
東塔の美しきゆゑ雪催ひ 後藤夜半
松過ぎや斑雪の上の雪催ひ 石田波郷
楢櫟枝を交へたる雪催 岸田稚魚 筍流し
死川に日輪白き雪催 永井東門居
母親になり損ねたな雪催 櫂未知子 貴族
水出づる魚は暗しも雪催 斎藤玄 雁道
泥鰌すてゝ闘ふ五位鷺や雪催ひ 佐野青陽人 天の川
火事跡のまた匂ひ出づ雪催ひ 鷹羽狩行
火渡りを待つはつきりと雪催ひ 竹中弘明
煌々と人離れゆく雪催 角川源義 『秋燕』
獅子舞や師走の空の雪催ひ 木歩句集 富田木歩
甍いろをひそめてひさし雪催ほす 川島彷徨子 榛の木
産月の馬屋見舞ふ灯や雪催 増田松枝
相逢うて仰くや路の雪催ひ 尾崎紅葉
短調の唄炉辺よりす雪催 文挟夫佐恵 雨 月
竹林の奥軋みゐる雪催 岡部名保子
紅殻の格子の冷えて雪催 小元洋子
綯ふ藁の馬となりゆく雪催 長野美恵子
綾取の橋が崩れて雪催 佐藤鬼房
織り上げて藍のにほへる雪催 根岸善雄
繭玉や霞むと見えて雪催ひ 増田龍雨 龍雨句集
膝つ子の人形屑にぬくもる雪催ひ 木歩句集 富田木歩
草焚けば草の香流れ雪催ひ 大場白水郎 散木集
藁灰の底のぞきみる雪催ひ 福田甲子雄
藪空や北斗も見えず雪催ひ 西山泊雲 泊雲句集
蜂蜜にげんげの匂ふ雪催 鈴木雪湖
袋の中のものの匂へる雪催ひ 村越化石
裏山の杉の香つよき雪催 落合伊津夫
足かけて鮫裂く女雪催 加賀美子麓
蹄鉄の伊那のこもり音雪催ひ 老川敏彦
蹇へて子と飴分つ雪催 小林康治 玄霜
蹼に乗つたる鳥や雪催 齋藤玄 『雁道』
辞書ひきに立つや二日の雪催 斉藤夏風
道急ぐ雪もありなむ雪催 清水径子
長生きの猫の目蓋雪催 宇多喜代子 象
雄鶏の二度は鳴かざる雪催 平子公一
雛の面に血のいろかよふ雪催 ほんだゆき
雪催せめて綿虫出でて舞へ 相馬遷子 山河
雪催ひことこと妻の土鍋煮ゆ 岸本砂郷
雪催ひまこと狢の鳴く夜にて 馬場移公子
雪催ひ刃物の町は水を恃み 長谷川双魚 風形
雪催ひ川一条の盆地かな 上村占魚 鮎
雪催ひ庇はみだす唐がらし 蓬田紀枝子
雪催ひ村のよろづ屋混みあひて 小沢梅鶯
雪催ひ発動船の鼓動聴く 殿村莵絲子 花 季
雪催ひ相馬赤牛首をふり 島ふで女
雪催ひ秋刀魚買はんと引つかへす 榎本冬一郎 眼光
雪催ひ菓子食ふならば灯に染めて 中村草田男
雪催ふをんなの熱き土不踏 神尾久美子 桐の木
雪催ふ夕べに垂れて榛の花 松村蒼石 雪
雪催ふ巷ゆ干鰯得てかへる 石塚友二
雪催ふ江の黝々と梅ひらく 松村蒼石 寒鶯抄
雪催ふ琴になる木となれぬ木と 神尾久美子
雪催ふ雲にぞ畳む嶺渡るは 石塚友二 光塵
雪催剥き蛤のなほ生きて 鈴木真砂女 夕螢
雪催小家に住める友ばかり 石田波郷
雪催松の生傷匂ふなり 上田五千石 森林
雪催毛蟹茹でねば紅生れず 鈴木真砂女 夕螢
雪催翔ちきつたるや鴨の青 齋藤玄 飛雪
雪催逃腰の石川啄木像 斎藤玄
雪催陸封されてわれありぬ 櫂未知子 蒙古斑以後
雪催雀の語り聴いてをり 村越化石
雪催骨まで冷えて患家出づ 相馬遷子 雪嶺
雪平の底の火あかし雪催ひ 石田波郷
青春の辞書の汚れや雪催 寺井谷子
魚の死は瞳をみはるなり雪催 鳥居おさむ
鮟鱇の肝蒸し上る雪催 鈴木真砂女
鯉跳んで雪の匂ひす雪催ひ 殿村菟絲子
鳥も木もうたがひぶかく雪催 千代田葛彦
あかあかとイクラ丼雪もよひ 辻 桃子
かぐらせり唄谺して雪もよふ 黒木千佳子
この里や雪積む上の雪もよひ 小杉余子 余子句選
ひとの香のたゆたふ湯船雪もよひ 谷口桂子
ふりむかぬ人の背幅や雪もよひ 鷲谷七菜子 黄 炎
アドバルン魂ぬけ揚る雪もよひ 山口青邨
一禽の一語をこぼす雪もよひ 岡田貞峰
丸二つ描きて乳房や雪もよひ 折井眞琴
嘘つきのバス時刻表雪もよひ 丸田余志子
大原へ帰る尼あり雪もよひ 角川春樹
大鷲の魚掴みたつ雪もよひ 加藤草杖
子をのせて漁舟出でしが雪もよひ 大島民郎
寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ 杉田久女
延年の能舞ふ稚児や雪もよに 加藤三七子
掃初やかゝれとてしも雪もよひ 久保田万太郎 流寓抄
斧噛んで暮るる一幹雪もよひ 野中亮介
昼を鳴く鶏居て谷中雪もよう 長谷川かな女 牡 丹
檜皮剥ぐ音の緊まれる雪もよひ 西村梛子
湯帰りや灯ともしころの雪もよひ 永井荷風
父の忌の茶を濃く入るる雪もよひ 荒井正隆
稲滓火(しび)の関東平野雪もよひ 角川春樹
線路工夫の唄か嘆きか雪もよひ 石塚友二 方寸虚実
繭玉の紅うつくしや雪もよひ 角川春樹
群ぼつち日当りながら雪もよひ 角川春樹 夢殿
羽子つくや夕いよいよ雪もよひ 星野立子
膝にとる袂の重み雪もよひ 佐藤美恵子
落葉松は散るべくなりぬ雪もよひ 内藤吐天
藁灰を掻き散らす鶏や雪もよひ 富田木歩
街頭にはじまる暮色雪もよひ 中原 歌子
金魚田に金魚をさがす雪もよひ 大島民郎
雪もよひの夜の飾り竹の青き葉 人間を彫る 大橋裸木
雪もよひ余病たちまち入院に 朝倉和江
雪もよひ剃刀役のナース来る 鳥居美智子
雪もよひ川音ふかくこもるなり 柴田白葉女 花寂び 以後
雪もよひ芋をむく庵しづかなり 中勘助
雪もよひ銃後に白魚いでにけり 渡邊水巴 富士
雪もよふ雲に灯し常楽会 稲垣黄雨
青空のちぢめられゆき雪もよひ 阿部みどり女
鱈汁のたぎる夕べや雪もよひ 川村ひろし
顔擦って川原の雪気野天風呂 高澤良一 寒暑
叡山の雪気柱の朱を剥ぎに 高澤良一 燕音
叡山の雪気太肉締めつけぬ 高澤良一 燕音
いま憂季とや雪雲と何十の歌謡 阿部完市 春日朝歌
まつくろな雪雲鍬の浅使ひ 平畑静塔
オリオンやさしも雪雲なくなりぬ 渡邊水巴 富士
一抹の雪雲はしる春夕日 前田普羅 飛騨紬
名残雪雲にまぎれず山四月 阿部みどり女
心揺れ易し雪雲の乱れにも 相馬遷子 山河
恵那かけて雪雲とぢぬ戎市 水谷晴光
日の真珠光雪雲をあふれ出づ 岡田日郎
更に深く雪雲を追ふ旅にあり 椎橋清翠
河口より雪雲うつる神子秋沙 大森三保子
無相忌の鐘に雪雲うごくなり 遠山麦浪
白老山の春の片雪雲が克つ 古舘曹人 能登の蛙
紙干して雪雲より陽を誘ひだす 飯田旭村
茜さす雪雲に消え晴着の子 佐藤鬼房
郷に入る雪雲低きまま日ぐれ 木村蕪城 寒泉
酢海鼠や窓に雪雲圧し来たり 鈴木柏葉
陸奥昏ると虹のごとくに雪雲立ち 小林康治 玄霜
雪雲が押し来る海と一体に 茨木和生
雪雲にさへ立つ虹のあることを 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
雪雲にはなやぎあがり船名旗 五十嵐播水 埠頭
雪雲に故郷はよそ貌油槽群 木村蕪城 寒泉
雪雲に檜山のかたちさだまらず 篠原梵 雨
雪雲に痰つまりたる見る悲し 龍胆 長谷川かな女
雪雲に色を変へつつ日本海 稲畑汀子 汀子第三句集
雪雲に触れ日輪のゆらぎけり 岡田日郎
雪雲に雪雲突つ込み崩れ合ふ 岡田日郎
雪雲に青空穴のごとくあく 高浜年尾
雪雲のかたちににじみ夕日消ゆ 岡田日郎
雪雲のまつはる山の青さかな 阿部みどり女
雪雲のもたらす風に出帆旗 五十嵐播水 埠頭
雪雲のやうやく低し船北へ 高濱年尾 年尾句集
雪雲の八方破れ日の光 岡田日郎
雪雲の尾のめぐる空卒業す 川崎展宏
雪雲の晴れ間の希望すぐに消ゆ 相馬遷子 山河
雪雲の穴ぽつかりと邪馬台国 津田清子
雪雲の赤松鮮やかに友と逢ふ 中拓夫 愛鷹
雪雲や敵と覚ぼしき砲の音 渋川玄耳 渋川玄耳句集
雪雲や波にもまれて沖の島 鈴木真砂女 夕螢
雪雲や鬼も肱を出だすべう 去来 俳諧撰集「藤の実」
雪雲をかざして岳と岳聳ゆ 岡田日郎
雪雲を愛す時計の大振子 対馬康子 吾亦紅
雪雲を洩る日かすかに薪にさす 川島彷徨子 榛の木
雪雲を海に移して町ねむる 八木忠栄
高野隠して雪雲の通過中 有馬いさお
鰈網おろす雪雲重るるところ 木村蕪城 寒泉
鳶・鴎乱舞雪雲沖に籠め 鈴木真砂女 夕螢
水とりや雪ぐもを日のまろび出づ 角川春樹 夢殿
分け入りてにわか雪空美濃馬場(ばんば) 高澤良一 ぱらりとせ
宇治発つと雪空にごりきたりけり 中田剛 珠樹
息のむや加賀雪空の街ばかり 完市
斑雪空へつながる海の紺 加藤憲曠
暮れてゆく雪空やいつか静まりぬ 高濱年尾 年尾句集
朝より雪空熱がまた出でむ 相馬遷子 山河
枝下しをる雪空の日洩れ 小澤碧童 碧童句集
母を呼ぶ声なき声や雪空ヘ 山本歩禅
海に出て見るに雪空裏日本 藤後左右
濠端犬つれて行く雪空となる 尾崎放哉
炎上の雪空に舞ふ鴉かな 橋本鶏二 年輪
猟師消ゆ老いも死もなく雪空に 佐藤鬼房 朝の日
石の上雪空となりゆれ通し(殺生石) 岸田稚魚 『筍流し』
窓しめて雪空遠き助炭かな 長谷川春草
雪空となりし三日の夫婦客 久保田万太郎 流寓抄以後
雪空と鐘にしらるゝ夕べ哉 井原西鶴
雪空にじむ火事の火の遠く恋しく 尾崎放哉
雪空に人あらはるゝ砂丘かな 大橋櫻坡子 雨月
雪空に堪へて女も鱈を裂く 細見綾子
雪空に滲みてきたる日ありけり 中田剛 珠樹
雪空に睡魔の描く大伽藍 野見山朱鳥
雪空に野火が舞はせる金砂子 能村登四郎 菊塵
雪空に霰ふるなる但馬かな 京極杞陽 くくたち下巻
雪空に黒鳥ひとつ渡りけり 中勘助
雪空のものうくて貨車うごき出す 桂信子 黄 炎
雪空の下水の花か糞湧き浮く 岩田昌寿 地の塩
雪空の最後の一つをもぐ 種田山頭火 草木塔
雪空の羊にひくし出羽の國 幸田露伴 江東集
雪空は駅の煙によごれけり 高濱年尾 年尾句集
雪空ややかんぼつくりこの子等の陣 木歩句集 富田木歩
雪空やよごれはてたる檣頭旗 五十嵐播水 埠頭
雪空や桐へ下りくる山鴉 大峯あきら 鳥道
雪空や檻の海鵜は遠く見る 阿部みどり女
雪空や死鶏さげたる作男 飯田蛇笏 山廬集
雪空や片隅さびし牛の留守 丈卿 俳諧撰集「有磯海」
雪空や襤の海鵜は遠くを見る 阿部みどり女
雪空をなまはげの闇おりてくる 平井照敏 天上大風
雪空をアンモナイトになる心 櫂未知子 貴族
雪空を落ちくるものもなかりけり 高浜年尾
雪空垂れて兵士のように乳児立つ 林田紀音夫
雪空暮れくるお地蔵の前の道をとる 人間を彫る 大橋裸木
飢ゆる都市雪空動くゆるやかに 三谷昭 獣身
鴉の声過ぎ雪空ににじむかとも 原田種茅 径
句集山河遺りぬ雪ぞら行くや君 及川貞
いつかまた建つ銅像や雪の空 松崎豊
さかまくやふりつむ嶺の雪の雲 内藤丈草
ちんどんやの先頭雪の空支ふ 磯貝碧蹄館 握手
京まではまだ半空や雪の雲 芭蕉
佐渡へ書く一簡佐渡は雪の雲 中島斌雄
冬至より来たるもいまだ雪の空 立花北枝
創熱やかうかうとして雪の空(小手術) 岸田稚魚 『負け犬』
白妙のどこが空やら雪の空 上島鬼貫
降る雪の空におしやべり拡声器 青葉三角草
雪の空動くと見しがやみてけり 原田種茅 径
髭のルーラン雪の空ゆく吾は地をゆく 磯貝碧蹄館 握手

雪催 補遺

アドバルン魂ぬけ揚る雪もよひ 山口青邨
オリオンやさしも雪雲なくなりぬ 渡邊水巴 富士
お祝儀と書いてにはかに雪催ひ 波多野爽波
けふも雪もよひのこんなに餅をもらうてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
サンダルの男思案の雪催ひ 飯田龍太
しばらくは笹も動かず雪模様 正岡子規 雪
その中へ入りつつ暗し雪催 斎藤玄 雁道
ともさねば厨は暗し雪催ひ 鈴木真砂女 夏帯
にんまりと蜂は死ぬべし雪催 秋元不死男
ふりむかぬ人の背幅や雪もよひ 鷲谷七菜子 黄炎
みつむればものひかりいづ雪曇 加藤秋邨
愛憎の愛の絶え絶え雪催 佐藤鬼房
茜さす雪雲に消え晴著の子 佐藤鬼房
悪相の魚は美味し雪催 鈴木真砂女 都鳥
綾取の橋が崩れる雪催 佐藤鬼房
暗く鋭く朴の苞芽や雪催ひ 石田波郷
一文字に雁去る朝の雪曇 石塚友二 光塵
一抹の雪雲はしる春夕日 前田普羅 飛騨紬
引き返す雪雲有視界飛行 稲畑汀子
陰湿な根強き噂雪催ひ 飯田龍太
羽子つくや夕いよ~雪もよひ 星野立子
鰻重に気持(うけ)悪くなる雪催 佐藤鬼房
往還を犬に慕はれ雪催 上田五千石『琥珀』補遺
押入の不機嫌の戸も雪もよひ 百合山羽公 樂土以後
屋根の上に島山青し雪催ひ 石田波郷
火事跡のまた匂ひ出づ雪催 鷹羽狩行
火床(ほど)の終り西空に張る雪雲よ 佐藤鬼房
絵図面の堀の水色雪催ひ 廣瀬直人
崖の上に犬吠えたつる雪曇 加藤秋邨
角巻の色の邃さの雪催ひ 後藤比奈夫
括り桑一枝撥ねたる雪ぐもり 鷲谷七菜子 銃身
眼の中の闇のかたまり雪催 飯田龍太
寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ 杉田久女
機関車の車輪竝びたる雪催 三橋敏雄
却つて稚拙四十路の恋の雪模様 石川桂郎 含羞
京に入る日や大比叡の雪もよひ 村山故郷
峡の臭いつも雪空とんど焼 細見綾子
郷に入る雪雲低きまま日ぐれ 木村蕪城 寒泉
空籠の底の銭入れ雪催ひ 飯田龍太
月山の雷鳴に膽抜かれ来る 佐藤鬼房
庫裡に出て尼の手さぐり雪催 古舘曹人 砂の音
湖際のもの横流れ雪ぐもり 桂信子 初夏
交み椋鳥宙で分れて雪ぐもり 岸田稚魚 筍流し
厚き雪雲首ゆきて足ゆく挽馬 橋閒石 無刻
濠端犬つれて行く雪空となる 尾崎放哉 須磨寺時代
黒姫を雪雲の帯巻きにけり 松崎鉄之介
砂丘ゆく女人の手足雪催ひ 飯田龍太
妻病めば子等諍かはず雪催ひ 相馬遷子 山国
菜を茄でて顔ひた濡らす雪催 岡本眸
笹の葉のみだれ具合や雪模様 正岡子規 雪
山人の語尾くぐもれば雪催 上田五千石『琥珀』補遺
耳つまめば生のぬくもり雪催ひ 林翔
手に受けて雪雲いろの繭三つ 上田五千石『琥珀』補遺
重たく揺れてひょうと雪空青クレーン 古沢太穂 火雲
宿根の絡み貌見ゆ雪模様 永田耕衣
鋤刺して堆肥湯気立つ雪ぐもり 能村登四郎
小屏風に竹四五本や雪もよひ 星野麥丘人
少女は肩摶ち合ひ語る雪催ひ 石田波郷
松島の牡蠣到来や雪もよひ 山口青邨
鐘まぼろし水島は現れ雪空に 岡井省二 明野
場違ひの赤貝貧し雪催 鈴木真砂女 夕螢
心揺れ易し雪雲の乱れにも 相馬遷子 山河
神木の根の盛り上がる雪催ひ 廣瀬直人
薪割りの枕がとんで雪催 鷹羽狩行
身のどこか蝕進むらし雪催 佐藤鬼房
人中や風船ゆきて雪催 秋元不死男
水の香と木の香かよへり雪催 藤田湘子 てんてん
水出づる魚は暗しも雪催 斎藤玄 雁道
水滴を待つ硯あり雪曇 石川桂郎 高蘆
石の上雪空となりゆれ通し 岸田稚魚 筍流し
積む岩の重みの不安雪催ひ 飯田龍太
雪ぐもりして雨となる木賊叢 能村登四郎
雪ぐもり火星はもはや高からむ 山口誓子
雪ぐもり宮座にはかる婿養子 角川源義
雪ぐもり恋持つ女の眼おそろし 岸田稚魚 雁渡し
雪もよひたうとう雪になつてひとり 種田山頭火 草木塔
雪もよひ鎌首もてば鎌軽し 平畑静塔
雪もよひ銃後に白魚いでにけり 渡邊水巴 富士
雪もよひ赤城をまつる蚕飼村 角川源義
雪もよひ雪にならない工場地帯のけむり 種田山頭火 草木塔
雪もよひ窓拭きビルに貼り附きて 草間時彦 中年
雪雲が赤し海べり工場つまり 飴山實 おりいぶ
雪雲が通る儀礼の雪降らし 山口誓子
雪雲にさへ立つ虹のあることを 稲畑汀子
雪雲に故郷はよそ貌油槽群 木村蕪城 寒泉
雪雲に色を変へつつ日本海 稲畑汀子
雪雲に神の燃やす火攀ぢて見む 山口誓子
雪雲に青空穴の如くあり 高浜年尾
雪雲に檜山のかたちさだまらず 篠原梵 年々去来の花 雨
雪雲のおもきに疲れ眼鏡おく 角川源義
雪雲のとゞまる気配山頂に 稲畑汀子
雪雲のはしばし先を争へり 山口誓子
雪雲のやうやく低し船北へ 高浜年尾
雪雲のやがて青空連れて来し 稲畑汀子
雪雲の運河をのぼるうつむいて 佐藤鬼房
雪雲の縁を色どる冬日かな 正岡子規 冬の日
雪雲の空にたゞよふ裾野哉 正岡子規 雪
雪雲の支へきれざるものこぼす 稲畑汀子
雪雲の晴れ間の希望すぐに消ゆ 相馬遷子 山河
雪雲の素通り遠野物語 稲畑汀子
雪雲の朝より山脈を杳くせり 角川源義
雪雲の通路の伊吹雪嶺なり 山口誓子
雪雲の鉄骨を接ぐ火口(ひぐち)吼ゆ 佐藤鬼房
雪雲の天より暗き沼なりき 加藤秋邨
雪雲の頭にすがり来て灘光る 角川源義
雪雲の薄らぐ気配更に無し 右城暮石 句集外 昭和六十三年
雪雲の暮るるに筆を洗ひをり 水原秋櫻子 霜林
雪雲の暮るる間の小豆色 森澄雄
雪雲の裂けし蒼さに死を染めん 橋閒石
雪雲は脚を収めて勢ひ過ぐ 山口誓子
雪雲は重し雪嶽地帯過ぐ 山口誓子
雪雲へ炊煙あげてかわく巷 飴山實 おりいぶ
雪雲へ貌 叫ぶ聲はとどかずも 富澤赤黄男
雪雲や皆俯向きの墓地作り 岸田稚魚 負け犬
雪雲や砂丘の谷間風やはらか 草間時彦 中年
雪雲や波にもまれて沖の島 鈴木真砂女 夕螢
雪空にじむ火事の火の遠く恋しく 尾崎放哉 須磨寺時代
雪空に睡魔の描く大伽藍 野見山朱鳥 曼珠沙華
雪空に野火が舞はせる金砂子 能村登四郎
雪空に滲むともなき西明り 上田五千石『森林』補遺
雪空のところもかへず羽子をつく 中村汀女
雪空のものうくて貨車うごき出す 桂信子 女身
雪空の一隅赤き入日かな 正岡子規 雪
雪空の光疼きぬ骨疼きぬ 岸田稚魚 負け犬
雪空の最後の一つをもぐ 種田山頭火
雪空の針全の雪離れざる 阿波野青畝
雪空の雪にもならで亥子かな 正岡子規 亥の子
雪空は駅の煙によごれけり 高浜年尾
雪空へ掛声そろふ船起 上村占魚
雪空や死さげたる作男 飯田蛇笏
雪空や死鶏さげたる作男 飯田蛇笏 山廬集
雪空や藁火に竹のはしる音 正岡子規 雪
雪空や鴉群棲む町の中 村山故郷
雪空ゆるがして鴨らが白みゆく海へ 種田山頭火 自画像 層雲集
雪空をなまはげの闇おりてくる 平井照敏 天上大風
雪空を映してにぶき川の面 高浜年尾
雪空を支へ暮れたる公孫樹かな 橋閒石
雪空を発つはなびらのごときもの 上田五千石『森林』補遺
雪空一羽の鳥となりて暮れる 尾崎放哉 須磨寺時代
雪空火を焚きあげる雪散らす 尾崎放哉 須磨寺時代
雪催い都には幸棲むという 楠本憲吉 方壺集
雪催うすき膝抱く渡航船 角川源義
雪催からの木馬もはずみをり 草間時彦 中年
雪催せめて綿虫出でて舞へ 相馬遷子 山河
雪催ひ菓子食ふならば灯に染めて 中村草田男
雪催ひ水さしてゐるアセチレン 飯田龍太
雪催ひ川一条の盆地かな 上村占魚 鮎
雪催ひ全館灯す警視庁 中村汀女
雪催ひ焚火に水を撒くさまも 飯田龍太
雪催ふ雲にぞ畳む嶺渡るは 石塚友二 光塵
雪催ふ樫に不満のいろありし 飯田龍太
雪催ふ巷ゆ干鰯得てかへる 石塚友二 磯風
雪催ふ江の黝々と梅ひらく 松村蒼石 寒鶯抄
雪催ふ肌に触れ汝れかなします 岸田稚魚 雁渡し
雪催ふ仏頂面の甲斐の山 廣瀬直人
雪催ふ夕べに垂れて榛の花 松村蒼石 雪
雪催愛憐胸にうづきつつ 藤田湘子 途上
雪催牡丹は木(ボク)を緊めにけり 藤田湘子
雪催骨まで冷えて患家出づ 相馬遷子 雪嶺
雪催小家に住める友ばかり 石田波郷
雪催松の生傷匂ふなり 上田五千石 森林
雪催常闇に炉のうづくまり 秋元不死男
雪催心遣ひを墓守へ 星野麥丘人 2003年
雪催石に戻りし石の街 平井照敏 猫町
雪催剥き蛤のなほ生きて 鈴木真砂女
雪催毛蟹茹でねば紅生れず 鈴木真砂女 夕螢
雪催翔ちきつたるや鴨の青 齋藤玄 飛雪
雪曇財閥こゝに盤踞せり 日野草城
雪平の底の火あかし雪催ひ 石田波郷
雪模様ふゞくにや山のたゝずまゐ 河東碧梧桐
雪模様卒都婆の垣をかためけり 川端茅舎
線路工夫の唄か嘆きか雪もよひ 「百萬」 「方寸虚実」石塚友二
草青む雪雲嶺をつつむ日も 飯田龍太
息吐いて雪雲雪となりにけり 加藤秋邨
俗名の太き一字名雪催ひ 廣瀬直人
凧ばいと売る古町や雪催 石川桂郎 高蘆
池水の刻々たまる雪催ひ 飯田龍太
朝より雪空熱がまた出でむ 相馬遷子 山河
町空は塔の高さに雪催 上田五千石『森林』補遺
爪ののびあまりにはやし雪曇 赤尾兜子 玄玄
鉄扉一枚開いて葱買ふ雪催 岡本眸
電熱のコイルが赤し雪催 右城暮石 散歩圏
鳶・鴎乱舞雪雲沖に籠め 鈴木真砂女 夕螢
楢櫟枝を交へたる雪催 岸田稚魚
剥制の鳥の凍爪雪催ひ 飯田龍太
白老山の春の片雪雲が克つ 古舘曹人 能登の蛙
風呂吹や小窓を壓す雪曇 正岡子規 風呂吹
防空燈雪雲とらへあそびをり 西東三鬼
墨すつて昼暗くせり雪催 秋元不死男
妹の宛名の小字雪催ひ 廣瀬直人
木の末に鳶雪催ひ雪の谷 佐藤鬼房
野の雪雲集(よ)りて仕へて白大山 橋本多佳子
弥太郎忌朝から山の雪催ひ 上村占魚 鮎
遊船のなかの足音雪催ひ 飯田龍太
羅漢谷 殊に 雪雲蟠る 伊丹三樹彦
陸奥昏ると虹のごとくに雪雲立ち 小林康治 玄霜
猟師(またぎ)消ゆ老いも死もなく雪空に 佐藤鬼房
嶺かくす雪雲 懸菜縮みきる 伊丹三樹彦
煌々と人離れゆく雪催 角川源義
癩園の空となく雪催しぬ 石田波郷
膠煮る香がどこかして雪催 能村登四郎
茹玉子掌に冷えきりて雪催 上田五千石『田園』補遺
蹇へて子と飴分つ雪催 小林康治 玄霜
鮟鱇の肝蒸し上る雪催 鈴木真砂女
鰈網おろす雪雲重るるところ 木村蕪城 寒泉
鰒釣や沖はあやしき雪模様 正岡子規 雪

雪催 続補遺

鵯の枯木さがしや雪ぐもり 風国
草臥て烏行なり雪ぐもり 路通
雪空や片隅さびし牛のるす 丈草
雪空に裸でふとる冬瓜かな 梢風尼
雪空と鐘にしらるゝ夕ベ哉 井原西鶴
雪雲や桜に志賀の墓まいり 除風
雪雲や鬼も肱を出すべう 去来
雪雲や横に折たる山の先 素行
雪雲は愛宕にたばふしぐれ哉 浪化
雪雲の引のき際をあられかな 浪化
雪雲のみせかけまでゞ月夜哉 如行
雪雲のとり放したる月夜哉 沙明
山ひとつ腰に付てや雪ぐもり 凉菟
狐鳴岡の昼間や雪ぐもり 丈草

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 04:55 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

風花 の俳句

風花 の俳句

風花

例句を挙げる。

いまありし日を風花の中に探す 橋本多佳子
ねんねこの手が風花を受けてをり 佐々木六戈 百韻反故 初學
ほろほろ鳥駈け風花を一と煽り 岸田稚魚 筍流し
みづいろの風花降りぬ平林寺 渡辺恭子
もつるるもほぐるるも風花芒 都筑智子
やんでゐし風花のまた小松原 有働亨
わがいのち風花に乗りすべて青し 橋間石
スープ皿買ひ風花の街戻る 山田弘子
タクシーに乗りこむ髪に風花が 西村和子 夏帽子
一月の風花呼びて樅の黒 村越化石 山國抄
万葉の由布の風花うつくしき 秋山 万里
上つ毛や風花おろす山を並め 普羅
下京や風花遊ぶ鼻の先 沢木欣一
六甲の嶺離れさて風花す 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
刑務所の祝日の扉に風花す 宮武寒々 朱卓
初空や風花松にとどまらず 碧雲居
労られをり風花に濡るるさへ 山内山彦
勾配こそ裸婦の幻想風花して 河野多希女
吹越や虹のごとくに遠雪嶺(群馬方言風花を吹越といふ) 角川源義 『秋燕』
地球には笑窪があつて風花す 大下真利子
外濠に風花能を観に急ぐ 田川飛旅子 『山法師』
大き風花まつげにとまる母の死後 栗林千津
天上に還らむとする風花あり 沢木欣一 遍歴
子の心見えてとどかず風花す 岡田和子
宮城野のどの子に触るる風花ぞ 藤田湘子
封筒のなか明るくて風花す 辻田克巳
屍包む毛布一枚風花す 古賀まり子 洗 禮
山神の息触れて舞ふ風花か 福永耕二
山繭に風花あそぶ夕日かな 荒井正隆
恋するや風花肩に膝に咲かせ 原裕 投影
戯れ言で別れてきしが風花す 小泉八重子
捨て人形風花に眼をひらきゐる 能村登四郎
新任の顔風花にのぞかるる 細川加賀
日が眩し牟婁(むろ)の風花こまやかに 淡路女
日ねもすの風花淋しからざるや 高浜虚子
春暁の風花舞へる汐路かな 草間時彦 櫻山
晩鐘の風花となり消えにけり 有馬朗人 知命
晴着の子風花に連立ちて来ぬ 松村蒼石 雪
月明の風花なりし地に触れず 倉橋羊村
朝焼の片雲風花こぼしつつ 岡田日郎
木曾谷へ月の風花あつまるや 羽部洞然
村の空澄み切ってゐて風花す 斉藤友栄
林*けいの蘭にゝ風花かかりけり 石原舟月 山鵲
林中に日はとどまりて風花す 小林康治 『華髪』
森出づるより風花の西行忌 杉山岳陽
毛の國の/風に揚げたる/凧も/風花 林桂 黄昏の薔薇 抄
汀女も見む風花速き裏川を(熊本駅) 殿村菟絲子 『牡丹』
泣く声に似て風花の煙突 飴山實 少長集
洗禮の済みしみどり児風花に 稲畑汀子
浅間見えぬ町いくたびも風花す 松村蒼石 雁
海見えて風花光るものとなる 稲畑汀子 汀子第二句集
消息を淋しめば空風花す 岡田順子
灯の照らす風花黄なり松川駅 殿村莵絲子 牡 丹
灯を遠み京の川筋風花す 庄司圭吾
灯台の見えて風花舞ひはじむ 森田峠 避暑散歩
炭とりに出て風花の夜も舞へり 風生
父として生きたし風花舞ふ日にも 赤尾兜子
父母を経て来たりしか風花は 齋藤愼爾
牟婁の海の島高晴れを風花す 内藤吐天 鳴海抄
玻璃覗き消ゆ風花の迷ひ子も 香西照雄 対話
病めば遠し母の涙か風花す 小林康治 玄霜
登校のランドセル追ひ風花す 大川鶴園
白魚の風花ながら汲まれけり 鍵和田[のり]子
目瞑るは老いし白鳥風花す 古賀まり子 降誕歌
神無言風花無言いのちの赤 平井照敏 天上大風
福耳の僧の説法風花す 太藤 玲
秩父より風花つれて箒売 野崎ゆり香
空覆ふ鶴の聲より風花す 邊見京子
窓に風花スプーンに炉火明り 山田弘子
約束は確か北口風花す 中原道夫(1951-)
経をあげ口中熱し風花す 毛塚静枝
縄跳びと独楽廻す子と風花と 永井龍男
繭玉に恵那の風花市ひらく 水谷晴光
自動車とバスの間に風花が 京極杞陽 くくたち上巻
舎宅区にはじめての喪や風花す 宮武寒々 朱卓
舞台の風花東踊の妓に髪に 楠本憲吉
茹玉子摂る風花の局趾 宮武寒々 朱卓
華やかに風花降らすどの雲ぞ 相馬遷子 山國
葛城の風花消えて湯掛唄 萩原麦草 麦嵐
薄墨の花より淡く風花す 稲岡長
薪減つてきぬ風花もけふまでか 大串章
蟹折つて食へば風花顔へくる 西村公鳳
見うしなふあとへ風花また一つ 林 翔
見舞はむと思ひ居りしが風花す 石田あき子 見舞籠
豊後野や風花に種蒔き飛ばす 殿村菟絲子
身をひくと風花寄りてふつと消ゆ 鳥居美智子
連れだちてくる風花や濶山河 千代田葛彦 旅人木
遊びつつ地にとどかむと風花はおのづからなる影を伴ふ 田中譲
遍路笠かぶりし目路にまた風花 橋本多佳子
遠眼鏡韃靼のくに風花す 佐川広治
遮断機に触るる温泉煙風花も 木村蕪城 寒泉
里に来ぬ風花を見て友の婚 萩原麦草 麦嵐
鈴鹿よりくる風花か札納め 草村素子
鐘よ鳴れ風花舞へるトラピスト 森田峠 避暑散歩
雪となく風花となく湖の町 岡田日郎
頬濡るるまで風花を見飽かざる 小林康治 『存念』
顔にふれ夜の風花の眼に見えず 西村公鳳
風が来て風花模様くつがへす 小畑一天
風花が大仏殿の松に遊ぶ 細見綾子 黄 炎
風花が消えて叡山うひ~し 萩原麦草 麦嵐
風花が舞ふ日本を去るひとに 斉藤 節
風花が降りて濡らしし街上をまぼろしなして日が流れたり 半田良平
風花が頬にかかりてかくれ逢ふ 木村蕪城 寒泉
風花してロザリオ痛きまで光る 加藤知世子
風花す余燼を踏みて愁ひけり 西島麥南 金剛纂
風花す父のやさしさ極まれば 山田みづえ 忘
風花す牡蠣割の黙われの黙 川畑火川
風花といふにはあらし山山葵 古館曹人
風花といふ花降ると杣の言ふ 石川文子
風花といふ華やぎを髪に受く 新明セツ子
風花とおもいて栄螺蓋ひらく 和知喜八 同齢
風花と風花の間ぞ間は魔とぞ 馬場駿吉
風花にたえず寒天干し返し 寺島美園
風花にときめくことも遠江 関森勝夫
風花にひきしぼるなりいかのぼり 松村蒼石 寒鶯抄
風花にひとを待つなる瞳のあをみ 高瀬哲夫
風花にやがて灯りぬ芝居小屋 松本たかし
風花によき板囲したりけり 久米正雄 返り花
風花に厄詣する心あり 高濱年尾 年尾句集
風花に取り込み忘る男物 高澤良一 ぱらりとせ
風花に心あづけて授業かな 稲畑汀子 春光
風花に手あげて友の来りけり 鈴木貞雄
風花に振り向きて吾貧しかり 冨田みのる
風花に木の根草の根しづかなり 湘子
風花に松一本のゆめうつつ 鈴木鷹夫
風花に梅蕾む日のいと澄めり 西島麦南 人音
風花に濡れきし髪や針供養 西島麦南
風花に灯のにじみけり浮御堂 細井光男
風花に無帽出生届了ふ 宮武寒々 朱卓
風花に的の遠のき弓始 内田一郎
風花に眸もやして逢ひしこと 横山房子
風花に礼者のかざす扇かな 村上鬼城
風花に紺のまひとぶ染場かな 石橋秀野
風花に追はれて戻る腑抜け旅 林翔 和紙
風花に追ひつくひかりみな淡し 佐藤美恵子
風花に運河は青く廃れゆく 木村蕪城 寒泉
風花に雪見障子を上げらるる 後藤夜半 底紅
風花に顔むけて銭足らずけり 石川桂郎 含羞
風花に馬を繋ぎて旅籠なる 清崎敏郎
風花に驚破(すは)一角の日の光 誓子
風花のあとの夕日に鴨濡るる 宮津昭彦
風花のありしは朝のことなりし 高浜年尾
風花のうたがひぶかく地に届く 檜 紀代
風花のおしもどされて漂へる 倉田紘文
風花のかかりてあをき目刺買ふ 石原舟月 山鵲
風花のかがやき過ぎぬ遠き空 内藤吐天 鳴海抄
風花のけふどの家も紙干さず 橋本美代子
風花のこころおきなく山山葵 古舘曹人 樹下石上
風花のつと舞ひあがるとき悲し 上村占魚 球磨
風花のときをり針の光もつ 木暮陶句郎
風花のひまひまに出て耕せり 吉田鴻司
風花のまつはり遊ぶ身のめぐり 上村占魚 球磨
風花のやみつつ梅の花となる 上野泰 佐介
風花のローザ・ルクセンブルグ忌の海よりもどる海鼠をさげて 原田禹雄
風花の一しきりともいへず熄む 後藤夜半 底紅
風花の一ッ時はげし目をつぶる 内藤吐天 鳴海抄
風花の一片にして遠ながれ 皆吉爽雨
風花の中白濁の主峰見ゆ 岡田日郎
風花の仕事始の薪を割る 高浜虚子
風花の地に着くまでを遊びけり 村松路生
風花の夕べとなりし浮御堂 角川春樹
風花の大きく白く一つ来る 青畝
風花の大勢小勢待つ時間 橋本多佳子
風花の天しんしんの百叩き 仁平勝 花盗人
風花の如郁李の散る日かな 橋本 道子
風花の宵の銀座で待合せ 星野椿
風花の山湖夕日の翼澄む 岡田日郎
風花の峠越ゆれば鶴の里 今井つる女
風花の峡の小村の二日かな 松本たかし
風花の御空のあをさまさりけり 石橋秀野
風花の散つて来る空太平洋 右城暮石
風花の日もすがらなる大原かな 比叡 野村泊月
風花の日暮とぼしき白魚漁 下村ひろし 西陲集
風花の本降りとなるどんど焼 堀口星眠
風花の村に魂子こぼしゆく 渡辺乃梨子
風花の束の間あそぶ鳥総松 杉山岳陽
風花の汚職候補者何さけぶ 岩田昌寿 地の塩
風花の温泉郷の校舎半旗垂る 宮武寒々 朱卓
風花の狂ふや忽と旅に出づ 小林康治 玄霜
風花の男や眉をむきだしに 古舘曹人 能登の蛙
風花の畦道つたひ訪れぬ 高木晴子 晴居
風花の眉にとどまる齢かな 戸川稲村
風花の磯に出しとき降り畢る 下村槐太 天涯
風花の空をいつまで眺めゐる 西村和子 夏帽子
風花の空を黝しと見る不惑 根岸善雄
風花の窓開きなば狂ふべし 鷹女
風花の耳成山が今は見ゆ 細川加賀 生身魂
風花の聞きしごとくに日もすがら 上村占魚 球磨
風花の興ずる様もうたてしや 相生垣瓜人 明治草抄
風花の舞い込む三塔十六谷 高澤良一 燕音
風花の舞ひしはきのふ桃の花 高木晴子 晴居
風花の舞ひたつ峡に月たまる 中勘助
風花の舞ひひろがりし瀧光る 仙田洋子 雲は王冠
風花の舞ひを乱せる救急車 佐藤晴生
風花の舞ひ連れて来し黒瞳がち 栗林千津
風花の舞ふと見しかど曇るのみ 石塚友二 光塵
風花の舞ふにつけても地震のこと 関 弥生
風花の舞ふは青空消えしより 高木晴子
風花の華やかに舞ひ町淋し 松本たかし
風花の行方に心遊ばせて 本岡 歌子
風花の街に眼鏡の玉を拭く 冨田みのる
風花の街来てスープ巴里風 大橋敦子 匂 玉
風花の触れきし袖をたたみけり 堀 政尋
風花の触れしかば口結びけり 莵絲子
風花の訣れに汽車は開かずの窓 品川鈴子
風花の貝のつめたき久女の忌 神尾久美子 掌
風花の遊ぶや奈良の刃物店 沢木欣一 地聲
風花の野を遠くゆき敗北す 徳弘純 非望
風花の野鍛冶馬鍛冶打ちにけり 齋藤玄 飛雪
風花の阿波内侍を拝みけり 八木林之介 青霞集
風花の降りくる空のいと蒼し 高橋淡路女 梶の葉
風花の音の世界に来て消ゆる 伊藤凉志
風花の高音域を保つべし 夏井いつき
風花はすべてのものを図案化す 高浜虚子
風花は勝ち気な海の贈りもの 櫂未知子 貴族
風花は千万くさめ一つ出づ 堀口星眠 樹の雫
風花は海へ沈んでゆく羽音 対馬康子 吾亦紅
風花は火山のあいさつ仔牛跳ね 村上一葉子
風花は雪か花かと翁さぶ 大串章(1937-)
風花は須臾オリオンの枠たしか 津田清子 礼 拝
風花やあるとき青きすみだ川 久米正雄 返り花
風花やいずれ擁かるる女の身 楠本憲吉
風花やいつおぼえたる顔みしり 久保田万太郎 流寓抄
風花やうすくらがりの浅草寺 石原八束 操守
風花やおのれ支ふる店一つ 鈴木真砂女 夕螢
風花やかかへて軽き替着の荷 西村和子 夏帽子
風花やかたらひの鵜の白灯 殿村莵絲子 花寂び 以後
風花やかなしき声の紙芝居 上村占魚 球磨
風花やかなしびふるき山の形(船上山麓にて) 『定本石橋秀野句文集』
風花やときの流るるごとあそび 上野さち子
風花やどつと機械が昏くなる 田川飛旅子 花文字
風花やひらりくるつと猫の顔 平井照敏 天上大風
風花やひるがへるとき翳ありぬ 山本満義
風花やまだアイロンの利いて来ず 三好潤子
風花やまばたいて瞼思い出す 池田澄子
風花やみなてのひらに深空もつ 北澤瑞史
風花やわが掌染めたる夕日影 石田波郷
風花やわけて杉立つ永平寺 青木重行
風花やをろがみ申す山の神 山口青邨
風花やコント広場に訃報聞く 小池文子 巴里蕭条
風花やサイロの空に星溜り 堀口星眠 営巣期
風花やプレハブ校舎の笑い声 三浦北曲
風花やライスに添へてカキフライ 遠藤梧逸
風花や一本菅は児をもたず 源義
風花や乳児が指さすニュースカー 加藤知世子 黄 炎
風花や亡き師の言葉片々と 桂信子 花寂び 以後
風花や仏の乗りし青木賊 牧石剛明
風花や信濃の地図を壁に貼る 木村蕪城 寒泉
風花や傷あるものは野に返す 対馬康子 吾亦紅
風花や光琳笹のほぐれ合ふ 伊藤敬子
風花や切り開かれしままの咽喉 対馬康子 吾亦紅
風花や列柱なせる義士の墓 三浦誠子
風花や化石の魚の骨晒す 佐藤美恵子
風花や受ける幼の手をそれて 安積叡子
風花や受洗の朝の髪梳かる 古賀まり子 洗 禮
風花や古き言葉は手をつきて 宇佐美魚目
風花や名代七味の匙さばき 原 俊子
風花や君が略図を頼りとす 椎橋清翠
風花や地祀りの竹かつぎだす 森賢之助
風花や城守のごと遠眼して 鳥居おさむ
風花や墓は陸軍上等兵 内田園生
風花や墨書のまだ乾かぬに 不死男
風花や夕影帯びし壷一つ 秩父
風花や夕枯櫟ただよはす 森澄雄
風花や夢のをはりに日が当り 山口和夫
風花や夫の棺の出でし門 中嶋秀子
風花や妖精の声聞こえくる 岡本一代
風花や宇治浮舟のいしぶみに 杉本寛
風花や小学校の昼やすみ 上村占魚 鮎
風花や山は二十重にわが行手 木村蕪城 一位
風花や岩を立てたる火伏神 古舘曹人 樹下石上
風花や峡を出でゆく千曲川 小林碧郎
風花や川中島に犀千曲 正木不如丘 句歴不如丘
風花や市に箸売る能登乙女 山田春生
風花や干されて暗き割烹着 竹内公子
風花や干川に泥鰌ほる人 中勘助
風花や座右のひとつに鉄兜 岸風三樓
風花や弔辞ひそめし旅鞄 大島民郎
風花や弘法市に琴売られ 獅子倉一彦
風花や心めざめてそれを追ふ 林翔 和紙
風花や思はぬ方に城の松 服部鹿頭矢
風花や悍馬くびすじから滅び 藤田康子
風花や所詮愚痴ゆゑ口ごもり 岸風三楼 往来
風花や掌に打つごとき棺の釘 平井照敏 天上大風
風花や明治を誇る湯治宿 木内はるえ
風花や昼灯してひそと住む 上野泰 佐介
風花や月を逸れゆく星ありて 小林康治 『潺湲集』
風花や木の橋石の橋と化し 木内怜子
風花や木曾の御料の槇檜 木村蕪城 一位
風花や杭にあらがふ糶の牛 新家豊子
風花や杭の翡翠いつかなし 中井余花朗
風花や武蔵相模に着倒れて 桑原三郎 春亂
風花や比叡へ帰る人とゐる 金久美智子
風花や氏素姓なき庭ながら 石塚友二 光塵
風花や汽笛ふくらむ飛騨の谷 藤田湘子
風花や波路のはては空青き 秋櫻子
風花や流るるごとく山の脈 櫛原希伊子
風花や浄瑠璃浄土うすみどり 大屋達治
風花や浅間にのぼる道しるべ 高木晴子 晴居
風花や海の匂ひの干拓地 栗田やすし
風花や消え消えとぼる仰願寺 猪俣千代子 堆 朱
風花や渾身で行く車椅子 豊場 梓
風花や湖紺青に凪ぎわたる 木下ふみ子
風花や湯槽あまたに人ひとり 水原秋桜子
風花や瀬音秘めたる天塩川 天田牽牛子
風花や爪漆黒の能登の牛 黒田櫻の園
風花や牡蠣船朝のふき掃除 清原枴童 枴童句集
風花や狂ふすべなき身のひとつ 石嶌岳
風花や町に売りだす桜肉 菅原多つを
風花や畝まで走り鶏交む 大木あまり 火のいろに
風花や登山賽者の女夫づれ 飯田蛇笏 山廬集
風花や白樺の幹立ちそろひ 石嶌岳
風花や石みなまるく水に入る 横光利一
風花や祇園の裏の真暗がり 藤田湘子
風花や神学生と野をつれだち 山野邊としを
風花や竹担がんと真直ぐ立て 川村紫陽
風花や笙にあはせし隼人舞 筑紫磐井 野干
風花や糶りおとされし魚跳ねる 石井龍生
風花や美しき夜に入らむとす 星野立子
風花や翡翆が来てゐる杭ぜ 高濱年尾 年尾句集
風花や肩にも触れて響きけり 高橋馬相 秋山越
風花や胸にはとはの摩擦音 石田波郷
風花や船の帆たたむ港あり 鈴木太郎
風花や荷風の作をふところに 大町糺
風花や葱が主な荷主婦かへる 橋本多佳子
風花や薄日さしつゝまだ降れる 雑草 長谷川零餘子
風花や袂にたまる書き損じ 秋元不死男
風花や言葉交さぬ別れあり 松田淳子
風花や貌あげて鳴くとりけもの 長篠旅平
風花や貝ちりばめし海女の櫛 冨田みのる
風花や赤子の指の夢に舞ふ かたぎり夏実
風花や蹤き来てそれし一少女 角川源義 『秋燕』
風花や遊行柳へ至る畦 宋岳人
風花や遮断機ひとつの国境 八巻絹子
風花や錦絵めきて眼鏡橋 下村ひろし 西陲集
風花や鏡の奥に子供の手 皆吉司
風花や雑嚢つねに身のほとり 岸風三楼 往来
風花や雪の白根を天に置く 相馬遷子 山國
風花や雲の抱ける空あはれ 木下夕爾
風花や青き竹伐り死者の杖 三ヶ尻湘風
風花や魚死すとも目は閉ぢず 鈴木真砂女
風花や魚臭はりつく糶の声 松島秋子
風花や鳴けば引き出す島の牛 松本旭
風花よとて告げやらむ人もがな 西村和子 かりそめならず
風花を仰ぎし目には水くらく 杉山岳陽
風花を捲きて松明上堂す 伊藤いと子
風花を糞(た)れていづこよ日暮鳥 安東次男 昨
風花を綺羅と眺むる逢瀬かな 楠本憲吉
風花を美しと見て憂しと見て 星野立子
風花を舞はせし雲の入れ替る 山田弘子
風花を舞はせる仕掛大地にも 比奈夫
風花を見しのみに足る旅二日 松村蒼石 雁
風花を言葉やさしく告げらるる 村越化石
風花を読むべく佇ちて読まれをり 栗林千津
風花を追えば亡夫のそびらなり 日原輝子
風花を追へば背に鳴る沖の濤 原裕 青垣
風花を頬にかぞへて待つ間かな 安積素顔
風鬼元風紀係よ風花す 坪内稔典
飛火野といふ名うつくし風花も 稲岡長
餅つきしあと風花の軽やかに 田中英子
馬刺食ひ夜の風花を連れ歩く 奈良文夫
高野より来る風花に畑打つ 神蔵 器
魚食ぶを子がかなしめば風花す 中村明子
鳶の眸のしたたかに澄み風花す 鴻司
齟齬ありやあり風花をふりかぶり 小林康治 『叢林』
初便り吹越の中来りけり 村越化石
吹越に大きな耳の兎かな 加藤楸邨(1905-93)
吹越に牛を焙つて食ふ山背 橘川まもる
吹越のここまでちぎれとぶものか 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
吹越のやみたる空に峡の月 高橋悦男
吹越の舞ひ来る昼のレストラン 満田玲子
吹越の雪をまとひて宿に着く 羽吹利夫
吹越やきらりきらりと日の面 加藤楸邨
吹越や一灯点る山の駅 山田節子
吹越や烏一羽を引攫ひ 相馬沙緻
吹越や虹のごとくに遠雪嶺(群馬方言風花を吹越といふ) 角川源義 『秋燕』
高熱は吹越空に見てゐたり 金箱戈止夫

風花 補遺

いつときの風花崩れざる日和 高浜年尾
いまありし日を風花の中に探す 橋本多佳子
チェッカーや肩の風花あざやかに 草間時彦 中年
てのひらが風花のせてうきたがる 秋元不死男
とうから仕舞屋(しもたや) 風花ぐせの黒暖簾 伊丹三樹彦
ふるさとや風花の山父の墓 村山故郷
ほろほろ鳥駈け風花を一と煽り 岸田稚魚 筍流し
ミサの鐘頓に風花とびまさり 阿波野青畝
みづうみの水皺みな消し風花くる 能村登四郎
ゆめうつつめく風花のいとまかな 阿波野青畝
わがいのち風花に乗りすべて青し 橋閒石
暗き方へ流れ入る水風花す 能村登四郎
横臥位のまま風花を空に描く 赤尾兜子 玄玄
横笛庵蔀をおろし風花す 山口青邨
歌碑高し夕風花の道の辺に 石田勝彦 雙杵
華やかに風花降らすどの雲ぞ 相馬遷子 山国
海は風花旅の蓬髪さやぎ出す 岸田稚魚 負け犬
海窟を出でよと王妃星の聲 佐藤鬼房
海見えて風花光るものとなる 稲畑汀子
粥占の竃の灰か風花か 百合山羽公 樂土以後
汽笛あげしのみ風花の駅通過 大野林火 雪華 昭和三十六年
宮城野のどの子に触るる風花ぞ 藤田湘子
泣く声に似て風花の煙突 飴山實 少長集
牛太郎らしきが居りて風花す 楠本憲吉 隠花植物
狂ふ風花を求めて奔り行く 相生垣瓜人 負暄
激流の生みし風花かと思ふ 岡本眸
個性なき髪容かな風花す 星野立子
口噤みゐて風花を殖しけり 能村登四郎
坂に来て知る風花と夕灯 能村登四郎
昨日見た花は跡なし夜の風 正岡子規 花
笹鳴と風花と手の灰ふるひ 三橋鷹女
笹鳴や風花の澄む夕あかり 日野草城
三月の風花雑木山濡らす 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
桟橋の見えゐて遠し風花す 橋閒石
使ひ子走る昃ればすぐ風花して 橋本多佳子
四条大橋風花肩に妓と行き会ふ 村山故郷
捨て人形風花に眼をひらきゐる 能村登四郎
捨草履風花馬頭観世音 佐藤鬼房
遮断機に触るる温泉煙風花も 木村蕪城 寒泉
手庇に舞ふ風花の刻短か 秋元不死男
秋篠へこのたびもまた風花す 細見綾子 存問
春暁の風花舞へる汐路かな 草間時彦
諸肩に受けて風花にぎはしく 石田勝彦 秋興以後
松籟の幹風花のはや熄みぬ 石田波郷
松籟は颯と風花とばしけり 阿波野青畝
消え易し佳き面ざしと風花と 楠本憲吉 方壺集
上つ毛や風花おろす山を並め 前田普羅 春寒浅間山
触るるもの風花と知る江口寺 能村登四郎
神無言風花無言いのちの赤 平井照敏 天上大風
遂に空風花降らす水無瀬宮 能村登四郎
杉山のでんと据りて風花す 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
晴着の子風花に連立ちて来ぬ 松村蒼石 雪
西海の風花人はまだ唄ふ 中村汀女
青空に風花がつけし創かすか 能村登四郎
石ひとつひとつが水子風花に 平井照敏 猫町
雪虫舞ふそも一片の風花か 山口青邨
浅間見えぬ町いくたびも風花す 松村蒼石 雁
洗礼の済みしみどり児風花に 稲畑汀子
達治記念館風花に鍵あけてくれぬ 能村登四郎
炭とりに出て風花の夜も舞へり 富安風生
点眼のごと風花を病める眼に 安住敦
燈心席萱屋根厚く風花す 能村登四郎
読唇の聡き目に栖む風花よ 佐藤鬼房
日もすがら風花とんで客ありて 高浜年尾
廃れ坑口夕風花を吸ひやまず 岸田稚魚 負け犬
晩鐘の風花となり消えにけり 有馬朗人 知命
扉に寄りて夕風花の似顔描き 岸田稚魚 負け犬
病めば遠し母の涙か風花す 小林康治 玄霜
夫なくて風花の眼もあてられぬ 山口誓子
父として生きたし風花舞ふ日にも 赤尾兜子 玄玄
風花かすだまか夜の勿来川 佐藤鬼房
風花が酒臭きわが息に触れ 鷹羽狩行
風花が飾る晩年 黒帽子 伊丹三樹彦
風花が大仏殿の松に遊ぶ(東大寺) 細見綾子
風花が舞ひこんでをり湯煙に 清崎敏郎
風花が舞ひをり鵯が囃しをり 相生垣瓜人 負暄
風花が頬にかかりてかくれ逢ふ 木村蕪城 寒泉
風花が稍賞翫に堪へにけり 相生垣瓜人 負暄
風花す父のやさしさ極まれば 山田みづえ 忘
風花す余燼を踏みて愁ひけり 西島麥南 金剛纂
風花といふにはあらし山山葵 古舘曹人 樹下石上
風花となりたる塔の二つかな 星野麥丘人
風花と須臾の弱日と惑ひかな 能村登四郎
風花にたふさぎ更ふも病む一事 斎藤玄 狩眼
風花にひきしぼるなりいかのぼり 松村蒼石 寒鶯抄
風花にやがて灯りぬ芝居小屋 松本たかし
風花に運河は青く廃れゆく 木村蕪城 寒泉
風花に顔むけて銭足らずけり 石川桂郎 含羞
風花に驚破一角の日の光 山口誓子
風花に見とるる女体歩きをり 加藤秋邨
風花に紺のまひとぶ染場かな 石橋秀野
風花に紫さむき羽織かな 日野草城
風花に似て舞ふよ雪の魁は 林翔
風花に晴曇半ばなりしかな 高浜年尾
風花に精ありとせば二十日月 佐藤鬼房
風花に折れたるごとき肩の音 平井照敏 猫町
風花に雪見障子を上げらるる 後藤夜半 底紅
風花に大き巌のそびえたる 日野草城
風花に追はれて戻る腑抜け旅 林翔 和紙
風花に馬を繋ぎて旅籠なる 清崎敏郎
風花に背をかがめたる稚児の舞 佐藤鬼房
風花に梅蕾む日のいと澄めり 西島麦南 人音
風花に鼻もぎとられ天主像 有馬朗人 母国
風花に病ひの獄を放たれし 上田五千石『森林』補遺
風花のあと茫然と村ありし 飯田龍太
風花のいつときくらむ紺絣 石田勝彦 雙杵
風花のおのれ淋しくなりて熄む 後藤比奈夫
風花のきらめき消ゆる命かな 清崎敏郎
風花のこころおきなく山山葵 古舘曹人 樹下石上
風花のここ浄見原宮どころ 阿波野青畝
風花のため走り根の松は在り 佐藤鬼房
風花のちりつつ月は十五日 阿波野青畝
風花のつと舞ひあがるとき悲し 上村占魚 球磨
風花のひとひらくれなゐ日に染まり 山口青邨
風花のまつはり遊ぶ身のめぐり 上村占魚 球磨
風花のやみつつ梅の花となる 上野泰 佐介
風花のゆるやかに舞ふ櫟原 森澄雄
風花の磯に出しとき降りをはる 下村槐太 光背
風花の一しきりともいへず熄む 後藤夜半 底紅
風花の一分停車酒買ひに 斎藤玄 狩眼
風花の一片が附くカメオの貌 楠本憲吉 孤客
風花の一片消えて瞳に残る 角川源義
風花の我より君に逃ぐるあり 阿波野青畝
風花の狂ひみだるる夕日かな 阿波野青畝
風花の狂ふや忽と旅に出づ 小林康治 玄霜
風花の興ずる様もうたてしや 相生垣瓜人 明治草
風花の金銀に舞ふお食初 山口青邨
風花の湖の日のゆるむなし 岡井省二 明野
風花の御空のあをさまさりけり 石橋秀野
風花の今日舞ひ上り舞ひ上り 高野素十
風花の雑草園に舞ふ日あり 山口青邨
風花の山紫水明狂へとぞ 阿波野青畝
風花の散つて来る空太平洋 右城暮石 虻峠
風花の人の面輪のしろじろと 山口青邨
風花の吹き上げてくる古刹かな 鷹羽狩行
風花の石段小刻み多佳子の道 細見綾子
風花の雪に変りて夕べ来し 星野立子
風花の窓開きなば狂ふべし 三橋鷹女
風花の大きく白く一つ来る 阿波野青畝
風花の大勢小勢待つ時間 橋本多佳子
風花の男や眉をむきだしに 古舘曹人 能登の蛙
風花の弔旗へさはれるを数ふ 秋元不死男
風花の辻を曲りて壺に逢う 橋閒石
風花の日の輪のなかに祝がれゐし 岡井省二 五劫集
風花の白き日輪より湧きて 山口青邨
風花の舞ふと見しかど曇るのみ 石塚友二 光塵
風花の舞ふやわが顔にのみいつも 山口青邨
風花の舞へばつれ舞ひ榾ぼこり 後藤比奈夫
風花の舞へば艶なる人ぞかし 山口青邨
風花の聞きしごとくに日もすがら 上村占魚 球磨
風花の募れるときの熄むこころ 後藤比奈夫
風花の名残りも東山辺かな 上田五千石『琥珀』補遺
風花の野鍛冶馬鍛冶打ちにけり 齋藤玄 飛雪
風花の誘ひし日矢か裸祭(国府宮三句) 鷹羽狩行
風花の轢音しまし暮れまどふ 角川源義
風花は乾きしものに触れて消ゆ 清崎敏郎
風花は甘露や網走婆享くる 斎藤玄 狩眼
風花は桑のしもとにすいすいと 阿波野青畝
風花は須臾オリオンの枠たしか 津田清子 礼拝
風花は大津の皇子の降らしけむ 阿波野青畝
風花ふと此方へ田中美知太郎 寒食 星野麥丘人
風花へ飛びこんでくる紋鶲 阿波野青畝
風花もひとたびは寧し一間得し 藤田湘子 途上
風花も大水の面の日輪大 大野林火 飛花集 昭和四十五年
風花も乱舞の型を踏襲す 相生垣瓜人 負暄
風花やあとりの渡りちりぢりに 石田波郷
風花やいずれ擁かるる女の身 楠本憲吉 方壺集
風花やいまわのきわに鶴の声 橋閒石 風景
風花やいま痩せどきの千曲川 藤田湘子 神楽
風花やおのれ支ふる店一つ 鈴木真砂女
風花やお護摩の僧のいま上堂 山口青邨
風花やかつて魯鈍の兵たりし 伊丹三樹彦
風花やかなしき声の紙芝居 上村占魚 球磨
風花やかなしびふるき山の形 石橋秀野
風花やなほ哀歓の長子われ 楠本憲吉 隠花植物
風花やひとびと兵の世と断ちぬ 伊丹三樹彦
風花やひとひら手簿に散りて消ぬ 伊丹三樹彦
風花やひらりくるつと猫の顔 平井照敏
風花やひるげともなき餅を焼く 星野立子
風花やゆきかふ人間ら乾き 橋閒石 朱明
風花やよるべもとむる流れ澪 能村登四郎
風花やわれに遺りしいがあたま 伊丹三樹彦
風花やをどりて鳴れる四つの鐘 石田波郷
風花やをろがみ申す山の神 山口青邨
風花や一木菅は児をもたず 角川源義
風花や縁薄かりし病長子 楠本憲吉 孤客
風花や何しぶしぶと磨崖仏 加藤秋邨
風花や瓦礫昏れ終ふ身のほとり 岸田稚魚 負け犬
風花や岩を立てたる火伏神 古舘曹人 樹下石上
風花や伎藝天女のまなかひに 細見綾子 存問
風花や寄りつ離れつ客引女 岸田稚魚 負け犬
風花や去年も周山街道に 寒食 星野麥丘人
風花や魚死すとも目は閉ぢず 鈴木真砂女 都鳥
風花や峡はいづくも山廂 上田五千石『森林』補遺
風花や胸にはとはの摩擦音 石田波郷
風花や駒嶽は夕ベの茜色 飯田龍太
風花や空の彼方に夢見よと 林翔
風花や靴下を脱ぐ片手わざ 加藤秋邨
風花や犬耳を立てきつとせり 平井照敏
風花や見あげし杉の梢より 山口青邨
風花や孤客を得たる夕佳亭 阿波野青畝
風花や傘に渋刷く小手のさき 石橋秀野
風花や山は二十重にわが行手 木村蕪城 一位
風花や氏素姓なき庭ながら 石塚友二 光塵
風花や七人の貌鴨川に 佐藤鬼房
風花や失語の妻の眼が宙に 右城暮石 虻峠
風花や十八尊者見てゐし間に 村山故郷
風花や出し昆布の束横抱きに 鈴木真砂女 都鳥
風花や小学校の昼やすみ 上村占魚 鮎
風花や掌に打つごとき棺の釘 平井照敏
風花や信濃の地図を壁に貼る 木村蕪城 寒泉
風花や心めざめてそれを追ふ 林翔 和紙
風花や新宿のひとに圧されゆく 角川源義
風花や人居し門の空乳壜 赤尾兜子 歳華集
風花や青淵ひとつ置ける谿 水原秋櫻子 殉教
風花や石の小臼を束子置 上田五千石 森林
風花や石垣高くあるばかり 橋閒石
風花や石切る音の石に消ゆ 廣瀬直人 帰路
風花や雪の白根を天に置く 相馬遷子 山国
風花や川のまなかの浮鴎 雨滴集 星野麥丘人
風花や苔塁々とみどりなす 村山故郷
風花や大傘の大僧正 山口青邨
風花や托鉢僧が出で来し寺 村山故郷
風花や池の彼岸に弥陀の顔 村山故郷
風花や昼灯してひそと住む 上野泰 佐介
風花や町なかにある国分寺 安住敦
風花や電燈に燈が欲しきころ 山口誓子
風花や登校はみな面あげ 上田五千石 天路
風花や登山賽者の女夫づれ 飯田蛇笏 山廬集
風花や湯槽あまたに人ひとり 水原秋櫻子 殉教
風花や日あたる辛夷昃る沙羅 石田波郷
風花や日さすとき苔の美しき 村山故郷
風花や納屋も紅殻塗にして 清崎敏郎
風花や飛雲たちまち嶽かくす 村山故郷
風花や尾鰭あまれる籠の魚 橋閒石
風花や肘出て尼のやわらかし 赤尾兜子 蛇
風花や塀にはりつき柩車通す 岡本眸
風花や亡き師の言葉片々と 桂信子 晩春
風花や墨書のまだ乾かぬに 秋元不死男
風花や木椅子数個の珈琲店 有馬朗人天為
風花や木曾の御料の槇檜 木村蕪城 一位
風花や夕枯櫟ただよはす 森澄雄
風花や袂にたまる書き損じ 秋元不死男
風花や蹤き来てそれし一少女 角川源義
風花をこぼせし雲の日をこぼす 稲畑汀子
風花をさきがけとしてだびら雪 阿波野青畝
風花を見しのみに足る旅二日 松村蒼石 雁
風花を追へば背に鳴る沖の濤 原裕 青垣
風花を舞はせる仕掛大地にも 後藤比奈夫
風花を浴びたる顔をして見せぬ 加藤秋邨
風花を栞りしごとく詩集閉づ 阿波野青畝
風花を綺羅と眺むる逢瀬かな 楠本憲吉 楠本憲吉集
風花急小雨の村を過ぐるより 松崎鉄之介
母や残る風花ぐせのふるさとに 山田みづえ 忘
夕日より風花飛来晩年か 山口誓子
幼きころ遊びし町や風花す 村山故郷
六甲の嶺離れ来て風花す 稲畑汀子
涅槃会の風花日和とぞなりし 細見綾子
玻璃覗き消ゆ風花の迷ひ子も 香西照雄
篝火に風花あらぶ墓どころ(祖父送葬) 飯田龍太

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 04:50 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

縄飛 の俳句

縄飛 の俳句

縄飛び

例句を挙げる。

ジヤケツ真赤く縄飛はまだ出来ず 富安風生
地を叩く夫の縄飛び春隣 蕪木啓子
年寄れる工女秋野に縄飛べる 高浜年尾
春日野に角切りの縄飛べりけり 林徹
次の世の人体白き縄飛びす 攝津幸彦
熊野では縄飛びするか秋の風 坪内稔典
縄とびをくぐり女を繰り返す 和田悟朗
縄とびをしては見にくる青写真 竹末春野人
縄とびを兄にゆづりて黙りけり 依光陽子
縄飛の大波引いて夕べなる 樋笠文
縄飛びにウインド聖樹燈をとどかす 中戸川朝人 残心
縄飛びの上手に飛ぶ子と下手な児と 松村多代子
縄飛びの丘の下なる蓮を植う 加倉井秋を
縄飛びの入る時のがしのがしをり 櫻井弘子
縄飛びの大波引いて夕べなる 樋笠 文
縄飛びの息のみだれず対ひ合ふ 大川つとむ
縄飛びの縄がたたくよ春の土 富田直治
縄飛びの縄に絡まる落葉嵩 古市絵未
縄飛びを跳んで二つの山笑ふ 佐川広治
縄飛を教へて母子二人跳 根岸善雄
ちやつきらこありしあとにて縄跳びを 田中灯京
地を強く打つ縄跳びのはじめの縄 池田秀水
大縄跳びよもつひらさか行きもどり 柴田奈美
寒夕焼縄跳び場より跳び帰る 鷹羽狩行 誕生
山に燈や縄跳の縄消えてきし 中嶋鬼谷
縄跳に入りて越後の真冬口 宮坂静生 山開
縄跳の弧が放ちたる少女かな 大石悦子 群萌
縄跳の波がくり出す幾童女 野中亮介
縄跳の百まで数へ暮れにけり 石原ゆう子
縄跳の縄海光を切り止まず 橋本榮治 麦生
縄跳びしゅうしゅうこんにゃくの村で 小林一枝
縄跳びと独楽廻す子と風花と 永井龍男
縄跳びのこゑのむかうで山眠る 鈴木蚊都夫
縄跳びの子が陽炎を出入して 山田弘子
縄跳びの少女初蝶と化しにけり 牧野寥々
縄跳びの少女斑雪をはるかにす 堀口星眠 営巣期
縄跳びの灼け跣子と鶏の足 小檜山繁子
縄跳びの端をもたされ木の葉髪 長谷川双魚 『ひとつとや』
縄跳びの縄は冷えねど夜迫る 中村草田男
縄跳びもぬくもる迄か激しはげし 中村草田男
縄跳びや地を打つ音の乾きゐて 黒坂紫陽子
縄跳びをしながらゆけば熊の檻 岸本尚毅 舜
縄跳や地を打つ音の乾きゐて 黒坂紫陽子
縄跳や己の影を打ちつづけ 貞吉直子
縄跳や欅寂びゆく風の中 丹羽啓子
縄跳をせず悪童か弱虫か 黒坂紫陽子
縄長く縄跳びをせる涅槃西風 大石雄鬼
茱萸の木に縄跳びの紐からみおり 松本弘子
踊る向日葵縄跳びの子のとぶたびに 磯貝碧蹄館 握手

縄飛 補遺

なはとびのなはや薺の花のなか 渡邊白泉
寒夕焼け縄跳び場より跳び帰る 鷹羽狩行
若葉深う子等の縄飛び暮れにけり 種田山頭火 自画像 層雲集
秋濤に縄跳の縄はげしくす 飯島晴子
十二月縄跳びをよけいそぎおり 飴山實 おりいぶ
春の暮縄跳び天使露地に降り 上田五千石『田園』補遺
娼窟に縄とびの縄ちらちらす 金子兜太
石掃いて縄飛びの縄たるみけり 松崎鉄之介
縄とびの寒暮いたみし馬車通る 佐藤鬼房
縄とびの純潔の額を組織すべし 金子兜太
縄とびの端もたさるる遅日かな 橋閒石
縄とびの縄の端持つ麦の秋 細見綾子
縄とびの輪のなか大き入日かな 中村苑子
縄とびをするところだけ雪乾く 橋本多佳子
縄跳びの間隔置きて枯野すすむ 山口誓子
縄跳びの村童が遠く小さく瞰ゆ 伊丹三樹彦
縄飛びが輪をかき春の太陽切る 有馬朗人 母国
縄飛びして使の途の秋の暮 山口誓子
野の枯れに縄とびはげし縄見えず 山口誓子
脛長き戦後乙女の縄跳びくら 伊丹三樹彦

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 02:46 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪達磨 の俳句

雪達磨 の俳句

雪達磨

例句を挙げる。

この家の赤子のやうな雪達磨 大石悦子 百花
ドン・キホーテぞ雪達磨さゝやき合ふ 川口重美
両眼に潮の満ちたる雪達磨 杉野一博
二つ目の雪達磨あり作りかけ 高澤良一 素抱
八衢の夜ぞふけにけり雪達磨 西島麦南 人音
八衢の夜のふけにけり雪達磨 西島麥南 金剛纂
再びの雪に盲ひし雪達磨 竹下陶子
奇禍なきや雪達磨夜々雪肥り 成田千空 地霊
女生徒の作る豊胸雪達磨 楠節子
始業ベル雪塊雪達磨ともならず 津田清子 二人称
家々の灯るあはれや雪達磨 渡辺水巴 白日
崩れかけたる目鼻だち雪達磨 金子 蜂郎
庇かげはづれて月の雪達磨 五十嵐播水 播水句集
庭の雪使ひ果して雪達磨 湯川雅
弟作つてなか~溶けず雪達磨 中島月笠 月笠句集
月に寝し喪家の門や雪達磨 渡辺水巴
朝の日に濡れ始めたる雪達磨 稲畑汀子
木の下の草のみどりや雪達磨 岡本松浜 白菊
村の灯のことごとく消え雪達磨 木内彰志
東京の星低かりし雪達磨 望月たかし
松とるや小くなりし雪達磨 比叡 野村泊月
清水の舞台の上の雪達磨 五十嵐播水 播水句集
牧番の麓むけたる雪達磨 松本みどり
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男
男泣きして雪達磨出来上る 杉野一博
芝まみれなる雪達磨いたいたし 大橋敦子
街にあふるゝ雪達磨職を得て帰る 川口重美
軍艦に乗って遙かな雪達磨 渡辺誠一郎
転学の子に友はなし雪達磨 福田蓼汀
雀もろとも夕焼けてをり雪達磨 村山古郷
雪がまた降り始めたり雪達磨 今瀬剛一
雪ふれば女子大もつくる雪達磨 山口青邨
雪塊を二つ重ねし雪達磨 右城暮石
雪達磨ありし処に消え失せぬ 池内たけし
雪達磨とうから人の前をゆく 杉野一博
雪達磨とけゆく魂のなかりけり 西島麦南(1895-1979)
雪達磨まはりのすでに暮れてゐし 香月 梅邨
雪達磨バケツの水で鍛えらる 山本紫黄
雪達磨大きく据ゑて始業式 橋本末子
雪達磨妓楼の時計刻打てり 磯貝碧蹄館
雪達磨家が灯れば歩き出す 小泉八重子
雪達磨怒らせてわが幼な顔 加藤知世子
雪達磨成りつゝもなほ駅の雪 石塚友二 光塵
雪達磨旅に作りて置き去りに 大橋敦子 匂 玉
雪達磨朝日にむいて赫と立つ 長谷川かな女
雪達磨眼を喪ひて夜となる 角川源義
雪達磨腹には黒きもの蔵す 柴田奈美
雪達磨草の庵をかためけり 川端茅舎
雪達磨解けて小石のたまりゐる 鈴木鵬于
雪達磨遅刻教師を迎へけり 南光翠峰
雪達磨闇がからんで肌荒らす 毛塚静枝
雪達磨青空ひろくなりきたる 下村槐太 天涯
雪降れば女子大もつくる雪達磨 山口青邨
頬ずりをさせて双体雪達磨 相馬沙緻
おぼえある町なり辻に雪だるま 水原秋櫻子
かく生きてかく忘れられ雪だるま 有馬朗人
たれやらに似し雪だるま見て過ぎる 伊東月草
もう誰もゐぬ校庭の雪だるま 立花文江
チヨコレート目玉に入れて雪だるま 青木起美子
二つあり芝生の上の雪だるま 長谷川櫂 天球
出稼の父待ち大き雪だるま 太田土男
初お目見え天気予報の雪だるま 高澤良一 随笑
初雪や土の混りし雪だるま 榎本栄子
天気図に楽しげにゐる雪だるま 青木夢子
天気図のみな東向く雪だるま 内田美紗 魚眼石
天気図の裏日本に雪だるま 高澤良一 宿好
学校初校門に雪だるま晴れ 柴田澄子
小児病棟前にほつそり雪だるま 須磨佳雪
居酒屋の灯に佇める雪だるま 阿波野青畝
崩れゆくああ東京の雪だるま 八木忠栄
愛知らず目鼻うしなふ雪だるま 中村明子
昏れてをり面潰えし雪だるま 山田みづえ
松ぼくり以て両の眼雪だるま 高澤良一 随笑
校庭にとりのこされし雪だるま 三嶋隆英
校庭に考へてゐる雪だるま 遠藤保資
欝としてはしかの家に雪だるま 辻田克巳
永劫に月は遅れて雪だるま 大坪重治
田の雪をころげきて立つ雪だるま 蓬田紀枝子
目玉入れあたたかきもの雪だるま 古堅蒼江
窓に溶け園児昼寝の雪だるま 杉本弥生
考へるさまに傾く雪だるま 大高千代
躰じゅう松葉だらけの雪だるま 高澤良一 随笑
達磨市富士は大きな雪だるま 本宮鼎三
酔ひ帰る教師に夜の雪だるま 新田祐久
雪だるま二年二組はみかんの目 山口ただお
雪だるま倒れて戸口塞ぎたる 伊藤いと子
雪だるま兄は潜水艦だった 相原左義長
雪だるま北なる肩を高くせり 岸風三樓
雪だるま午後は目鼻もなかりけり 池田秀水
雪だるま向きゐる海の荒れてをり 高橋麻男
雪だるま星のおしゃべりぺちやくちやと 松本たかし
雪だるま昼夜の生徒入れかわる 岩崎健一
雪だるま月の細きは届かずて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雪だるま残し旅人宿を発つ 新田千鶴子
雪だるま泣きぬにわかの月あかり 寺田京子
雪だるま男作るか女にするか 杉野黙男
雪だるま笑福亭の門前に 鷹野素十
雪だるま雪につつまれまたあした 高澤良一 随笑
頂上や人の匂ひの雪だるま 松尾隆信
鬱としてはしかの家に雪だるま 辻田克巳
鶏鳴いてころんだままの雪だるま 五島高資
きのうよりここにこうして雪兎 宇多喜代子
きらきらと氷つてゐたり雪兎 長谷川櫂 虚空
たましいの後れて消える雪兎 澁谷道
ひきつづき身のそばにおく雪兎 飯島晴子
人肌を知りてくろぐろ雪うさぎ 櫂未知子 貴族
分校の子供の数の雪兎 武田孝子
団欒にもすこし居たい雪兎 河合多美子
座すことも夢のひとつに雪うさぎ 大井 恒行
掌に載せて息吹きこみぬ雪うさぎ 橋倉葉久子
朱の盆に載せて丹波の雪うさぎ 草間時彦
泣きやめて師へ奉る雪兎 池田澄子
病みて臥す子の枕辺に雪兎 薦田伸子
盆の上に透けてきたりし雪兎 岡部渓子
目を入れて亡き子に似たる雪兎 大木あまり 火球
聡き耳持つ山の子の雪うさぎ 首藤基澄
自由が丘の夕ベは氷る雪兎 山田みづえ
赤きものあれば目となる雪兎 宇多喜代子 象
雪うさぎ恋生れし日のよみがへる 仙田洋子 雲は王冠
雪うさぎ柔かづくり固づくり 波多野爽波 『骰子』
雪うさぎ泣かされ役が捧げくる 文挟夫佐恵 遠い橋
雪うさぎ溶けて竃を残したり 五島高資
雪うさぎ溶ける 生きねば生きねばならぬ 折笠美秋 君なら蝶に
雪うさぎ熱き泪をもちながら 佐藤和枝
雪うさぎ眼からとびだし濁り酒 和知喜八 同齢
雪兎おのれ細りし水湛ふ 加倉井秋を
雪兎かしこきころの綴方 立原修志
雪兎ぐいと地球が回り出す 宇多喜代子 象
雪兎つくる夫婦に二人の子 木村蕪城 寒泉
雪兎わが家に娘なかりけり 岩城久治
雪兎一夜兎になりすます 宇多喜代子 象
雪兎作つて溶けて如意ヶ嶽 波多野爽波 『湯呑』
雪兎作りて婚期過ぎにけり 宮武章之
雪兎欲りし熱の子もう眠る 久保田月鈴子
雪兎雪被て見えずなりにけり 佐藤鬼房
青髭の松葉貰ひし雪兎 門馬圭子
とる年もあなた任せぞ雪仏 一茶
俤の眼にちらつくや雪佛 井上井月
午祭り待たで絵馬師や雪佛 石塚友二
天の戸の開帳なれや雪佛 重 供
山に雪仏が母の山に雪 平子公一
御ヒザに雀鳴也雪仏 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
拝む人のつみも消る雪佛 徳 元
月さえて二日に成ぬ雪仏 蒼[きう]
此下にかくねむるらん雪仏 服部嵐雪
裾の消て達摩かふじの雪仏 井原西鶴
雪佛消て跡にや佛の座 重 供
天気図の裏日本に雪だるま 高澤良一 宿好

雪達磨 補遺

おぼえある町なり辻に雪だるま 水原秋櫻子 殉教
かく生きてかく忘れられ雪だるま 有馬朗人 非稀
かけ落と叫び給ふな雪佛 正岡子規 雪仏
つぶてめり込む雪達磨溶けはじむ 西東三鬼
ひきつゞき身のそばにおく雪兎 飯島晴子
やがて工都の 陽がべたべたと 雪だるま 伊丹三樹彦
按摩この路地にあります雪だるま 阿波野青畝
運慶が子供遊びや雪佛 正岡子規 雪仏
遠隔に一孫春の雪だるま 百合山羽公 寒雁
家々の灯るあはれや雪達磨 渡邊水巴 白日
掛乞をにらむやうなり雪佛 正岡子規 雪仏
居酒屋の灯に佇める雪だるま 阿波野青畝
狂ひ寝や雪達磨に雪降りつもる 中村草田男
孤児園に雪降り太る雪達磨 飴山實 おりいぶ
昏れてをり面潰えし雪だるま 山田みづえ 忘
昨日見た處にはなし雪だるま 正岡子規 雪仏
始業ベル雪塊雪達磨ともならず 津田清子
子供等に楽しき紅茶雪だるま 星野立子
志比谷の道しるべなり雪だるま 阿波野青畝
耳立てて目もあちら向き雪兎 鷹羽狩行
自由が丘の夕べは氷る雪兎 山田みづえ 草譜
失意の歩戻れば迎ふ雪達磨 福田蓼汀 秋風挽歌
芝生転ぶに安し少年と雪だるま 三橋鷹女
春寒し見離されたる雪兎 杉田久女
女手の打擲に成る雪仏 上田五千石『琥珀』補遺
雀もろとも夕焼けてをり雪達磨 村山故郷
石階に立つ狩行作雪達磨 鷹羽狩行
雪うさぎ柔かづくり固づくり 波多野爽波
雪うさぎ女ひとりに溶け失せし 波多野爽波
雪だるまピカソの顔ができにけり 阿波野青畝
雪だるま犬も民話の中にあり 平畑静塔
雪だるま笑福亭の門前に 高野素十
雪だるま星のおしやべりぺちやくちやと 松本たかし
雪だるま中仙道を誤たず 阿波野青畝
雪だるま都心へ都心へ人いそぐ 村山故郷
雪だるま無用の礫くらひけり 藤田湘子 神楽
雪ふれば女子大もつくる雪達磨 山口青邨
雪よごれ最たるものに雪だるま 鷹羽狩行
雪塊を二つ重ねし雪達磨 右城暮石 虻峠
雪達磨わづか半日つきあひし 阿波野青畝
雪達磨眼を喪ひて夜となる 角川源義
雪達磨肩に金星ぽつと点く 鷹羽狩行
雪達磨左右の眉目異なれり 右城暮石 散歩圏
雪達磨成りつゝもなほ駅の雪 石塚友二 光塵
雪達磨青空ひろくなりきたる 下村槐太 光背
雪達磨草の庵をかためけり 川端茅舎
雪達磨二十世紀も半ば過ぎ 上野泰
雪兎つくる電気がついてから 飯島晴子
雪兎つくる夫婦に二人の子 木村蕪城 寒泉
雪兎なんぼつくれば声通る 飯島晴子
雪兎援けず潮にわがそだつ 杉田久女
雪兎作つて溶けて如意ケ嶽 波多野爽波
雪兎雪に戻して一睡す 飯島晴子
雪兎雪被て見えずなりにけり 佐藤鬼房
雪兎断り下手といふことか 飯島晴子
雪佛われからにらみ崩れけり 正岡子規 雪仏
雪佛眼二つは黒かりし 正岡子規 雪仏
太平の刀ためすや雪佛 正岡子規雪仏
太陽がまぶしさ嫌ふ雪達磨 秋元不死男
太郎の雪だるま花子の雪うさぎ 鷹羽狩行
朝の日に濡れ始めたる雪達磨 稲畑汀子
潰えたる雪達磨かな御所を前 山口青邨
都鳥去って 闇くる 雪達磨 伊丹三樹彦
湯湧の湯ここよと夜半の雪達磨 阿波野青畝
逃げてゆく掏摸に触れけり雪だるま 阿波野青畝
八衢の夜ぞふけにけり雪達磨 西島麦南 人音
八衢の夜のふけにけり雪達磨 西島麥南 金剛纂
飛雪もて祝福さるる雪達磨 鷹羽狩行
不細工もよしよしと吾が雪兎 飯島晴子
方位失し目鼻もあらぬ雪だるま 中村草田男
郵便屋さんにも見せて雪兎 飯島晴子
老いたれば作つてみたる雪兎 飯島晴子

雪達磨 続補遺 

裙の消て達磨かふじの雪仏 井原西鶴
簑笠の形やすぐに雪仏 此筋
百年のけふこのごろ歟雪仏 完来
醜きは誰もくづさず雪ぼとけ 完来
終に扨見ずにすまして雪仏 諷竹
此春をなぶりおさめや雪仏 浪化
此下にかくねむるらん雪仏 嵐雪
光さゝぬうちにをがむや雪仏 高島玄札
月さえて二日に成ぬ雪仏 成田蒼虬
何をして六十馬鹿~雪仏 蝶羽
さむくともひになあたりそ雪仏 山崎宗鑑

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 02:33 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

雪合戦 の俳句

雪合戦 の俳句

雪合戦

例句を挙げる。

すかれたる教師は的や雪合戦 佐伯敬続
一乗谷小学校の雪合戦 佐藤淑子
僧通る頭上やめざる雪合戦 右城暮石 上下
石の窓雪合戦を俯瞰せり 加藤かけい
組打となる少年の雪合戦 右城暮石 上下
遠く寂し雪合戦の喊声は 石田小坡
雪合戦なかの一人が狙はるる 行方克巳
雪合戦の惨事肥溜に落ちしこと 内藤吐天 鳴海抄
雪合戦の総隊長は校長なり 千葉 仁
雪合戦わが町の子に退くものなし 小林きそく
雪合戦わざと転ぶも恋ならめ 高濱虚子
雪合戦休みてわれ等通らしむ 山口波津女
雪合戦声に遅れて当りけり 新谷ひろし
雪合戦敗れて雪で胸飾る 橘九城
雪合戦泣く子が泣いて終りけり 上島清子
雪合戦生徒の速き球が来る 辻田克巳
雪合戦茂吉の歌碑がその楯に 長谷川耿子
八王子は五男三女や雪遊戯(すさび) 折笠美秋 虎嘯記
夕星やひとりとなりし雪遊び 金尾梅の門 古志の歌
夕餉よばふ声にわかれぬ雪遊び 金尾梅の門 古志の歌
山の子の湯気の子となり雪遊び 鈴木酔子
玻璃ぬちに母の顔ある雪あそび 藤本至宏
母織れる窓の下なる雪あそび 皆吉爽雨
雪あそび黒髪長き子を賞づる 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
ふり向けば大年増なり雪礫 一茶
まぼろしの夫の背めがけ雪礫 中嶋秀子
仰のけにこけて投るや雪礫 一茶
仲直りしてぶつけ合ふ雪礫 片山由美子 水精
元旦の不眠工区へ雪礫 穴井太 土語
初花の一枝にしまき雪つぶて 加藤耕子
割れるたび薔薇の形の雪つぶて 櫂未知子 貴族
吾にも来る唖の子どちの雪つぶて 細川加賀
外れし雪礫積雪に喰入れり 津田清子
女医未婚にて雪礫よくあたる 吉田吐志男
幼子の遠くは飛ばぬ雪礫 仲佐方二
懶惰せめて子の雪礫でも浴びろ 伊丹三樹彦
手加減のなくなりて来し雪つぶて 城台 洋子
手足なき藁塚雪礫受けて立つ 柴田奈美
新しき雪に沈みて雪礫 村上三良
父への憎しみ消えぬ父の忌雪つぶて 楠本憲吉
白き尾を曳く強肩の雪礫 右城暮石 上下
白虹のごとくよぎりし雪礫 柴田果
眼に見えて弱まる速度雪礫 右城暮石 上下
罵るや戎を縛す雪礫 河東碧梧桐
若菜つむぬぎかけ袖や雪礫 立花北枝
薄氷の上にとゞまり雪つぶて 川崎展宏
袖がないから濡れずに投げる雪つぶて 仁平勝 花盗人
長持にわが雪つぶて雪祭 田中午次郎
雄ごころの萎えては雪に雪つぶて 川崎展宏
雪つぶて光にのめりこむひかり 落合水尾
雪つぶて別れがたなく投げ合ひて 金児杜鵑花
雪つぶて受けし一つを憎しめり 原 石鼎
雪つぶて樹に当り爆ず吾子恋し 田川飛旅子 花文字
雪つぶて額にはぜる鼻眼鏡 二村典子
雪礫あたりし枝の鶲かな 橋本鶏二 年輪
雪礫あたりし障子開きけり 清原枴童 枴童句集
雪礫あらぬ方よりよんで来し 諸橋 草人
雪礫うちし孤独のかへりけり 小林康治 玄霜
雪礫しきりに塀を越えて来る 高浜年尾
雪礫とび交ふ幹の間かな 川原 程子
雪礫もて雪投げに誘ひけり 太田土男
雪礫よりも喚声飛びかはす 中島斌雄
雪礫仁王立して受けとめし 下村梅子
雪礫光り掠めし恋の中 成田千空 地霊
雪礫吾に投げし子吾子になれ 橋本美代子
雪礫夜の奈落に妻子ねて 森 澄雄
雪礫海に吸はれてゆくが見ゆ 松山足羽
雪礫湖に抛りて掌がさびし 猿橋統流子
雪礫田鴫を追つて落ちにけり 長谷川かな女 雨 月
雪礫雪にぶちこむ独り旅 椎橋清翠
雪礫飛んできて子の現れる 田村のり子
雪礫馬が喰んとしたりけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
靴紐をむすぶ間も来る雪つぶて 中村汀女
飛のいて烏笑ふや雪礫 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
飛びくるは彼の心音雪礫 広川康子
女教師も出て雪投げの大いくさ 牛尾泥中
泣きながら尚雪投げをつゞけをる 高橋すゝむ
的も無く雪投げ吾も島流し 三好潤子
長停車降りて雪投げしてゐる子 高濱年尾 年尾句集
雪投げしくれなゐの手が医にはべる 平畑静塔
雪投げや女の児泣かせてよきものか 甲田鐘一路
雪投げをして教会にあつまり来 中村汀女

雪合戦 補遺

幼な児の泣くまでやめぬ雪遊び 右城暮石 句集外 昭和三十七年
長停車降りて雪投げしてゐる子 高浜年尾
僧通る頭上やめざる雪合戦 右城暮石 上下
組打となる少年の雪合戦 右城暮石 上下
雪投げをして教会にあつまり来 中村汀女
松原に雪投げつけんふじ詣 正岡子規 富士詣

雪合戦 続補遺 

おもしろや白き烏の雪あそび りん女

以上

by 575fudemakase | 2017-04-18 02:24 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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