<   2014年 04月 ( 152 )   > この月の画像一覧

蜃気楼

蜃気楼

例句を挙げる。

うつそみをまぼろしといふ蜃気楼 岡本爽子
おんなと云うからだ重たき蜃気楼 森須 蘭
ことごとくものの音絶え蜃気楼 長沼紫紅
たゞ沙漠なりし眺めに蜃気楼 桑田青虎
どこまでが雲どこまでが蜃気楼 上野たかし
みつけしは非番の厨夫蜃気楼 山口誓子
ものいはぬ女の佇てり蜃気楼 加藤三七子
コーランに欠けたる頁蜃気楼 藺草慶子
人の世の生死なにほど蜃気楼 森久保美子
再びのものとはならず蜃気楼 伊藤玉枝
十代の汚点の上に蜃気楼 櫂未知子 貴族
単色の沖にいのちの蜃気楼 対馬康子 吾亦紅
口笛をあやつる舌や蜃気楼 小川軽舟
同舟の人の見付けし蜃気楼 鈴木花蓑句集
唾でくり呑ます話術に蜃気楼 関本夜畔
太刀魚をさげて見てゐる蜃気楼 新田了葉
巨き船出でゆき蜃気楼となる 山口誓子 雪嶽
憂愁は距りにあり蜃気楼 鷹羽狩行 五行
流人島迎への船の蜃気楼 品川鈴子
海鳴りを聞き蜃気楼いまだ見ず 平間真木子
湖の一寸上る蜃気楼 松澤昭 麓入
珊瑚つむ船の行方や蜃気楼 松瀬青々
現身を真つ白にする蜃気楼 下山光子
生まざりし身を砂に刺し蜃気楼 鍵和田釉子
硝子吹く沖にあらはる蜃気楼 八牧美喜子
舞ふや失せ沙漠の果の蜃気楼 加藤知世子
蜃気楼たちしところに船すゝめ 新谷氷照
蜃気楼たつてふ海に不思議なし 福田蓼汀
蜃気楼だんまりの犀あゆみ来る 白澤良子
蜃気楼の現われない空 帆立貝移動した 吉岡禅寺洞
蜃気楼はたして見せぬ魚津かな 百合山羽公
蜃気楼半分は貝殻なりし 大坪重治
蜃気楼将棋倒しに消えにけり 三村純也
蜃気楼市の淫らをみせにけり 龍岡晋
蜃気楼弁当の紐真つ赤なり 小川軽舟
蜃気楼此岸に眉を剃りをれば 柿本多映
蜃気楼沖にも祭あるごとし 鷹羽狩行
蜃気楼消えてしばらく波さわぐ 吉川康子
蜃気楼現はるといふ子の任地 林真砂江
蜃気楼背にしてもなお涙湧く 平井久美子
蜃気楼見てよりわが眼たよりなし 廣瀬ひろし
蜃気楼見むとや手長人こぞる 芥川龍之介
蜃気楼見ることなしに魚津過ぐ 荒金 久平
蜃気楼見んとや手長人こぞる 芥川龍之介 我鬼窟句抄
蜃気楼詩の行間に立つごとし 中村清志
蜃気楼錬金術師歩きゐる 岩城久治
行く程に消えぬ沙漠の蜃気楼 吉良比呂武
貝類のこぞり舌出す蜃気楼 能村研三
鉄塔の見えしが始め蜃気楼 小林草吾
青信号連続すひとつは蜃気楼 浦川聡子
魚津とはさみしき町や蜃気楼 加藤三七子
魚津よりとゞく写真の蜃気楼 瀧澤伊代次
たとへば海市に見たる羅馬を憶ふかな 大石悦子
なみだ盛り上がり海市を壊しけり 櫂未知子 貴族
も一人の我は海市に棲んでをり 眞鍋呉夫
一幕一場海市を鳥のよぎりけり 大石悦子
一舟のありぬ海市のうちかそとか 奥坂まや
三本の柱を立てし海市かな 原裕 『王城句帖』
仮幻忌の海市を追ふや駱駝の背 白井眞貫
列柱の一本欠けし海市かな 水野恒彦
友あらぬがうらみぞ海市消ゆるなき 森川暁水 淀
墓場まで異なる海市もとめあふ 櫂未知子 貴族
恋人も海市も待つは幸ならむ 橋本榮治 越在
我が野心刻みし柱海市にあり 小川軽舟
戦火ボスニアいつそ海市の都なれ 仙田洋子 雲は王冠
拱ける人ゆく見ゆる海市見し 森川暁水 淀
故郷すでに海市の中や母老いし 柴田佐知子
沖にたつ海市は蒼く炎えにけり 石原八束
海市(かいやぐら)あまたの足袋の干されゐる 柿本多映
海市あまたの足袋の干されゐる 柿本多映
海市いま倒れし景を起したる 中原道夫
海市うしろの鏡落ちさうな 柿本多映
海市からとしか思へぬ郵便物 仲 寒蝉
海市この頬杖くぐるおもかげや 加藤郁乎
海市まで大風呂敷を持ち歩く 櫂未知子 蒙古斑
海市より便り一片ひるかもめ 橋本榮治 越在
海市消えてただ烏賊そだつ海ありぬ 森川暁水 淀
海市消え買物籠の中に貝 中嶋秀子
海市消ゆ恍惚として子守唄 八木三日女
海市見せむとかどはかされし子もありき 小林貴子
海市見に子供病院看護婦長 折井眞琴
海市遠く辺波はしじに白かりき 森川暁水
燃えかけの玩具の形して海市 櫂未知子 貴族
軍艦のあとかたもなき海市かな 荒木かず枝
遊糸また海市武彦まだ来ぬか 橋本榮治 越在
酔うて漂う深夜の海市誰彼失せ 楠本憲吉
雉子立てり海市消えたる夕岬 堀口星眠 営巣期
雑草を踏んで海市もあらざりき 銀漢 吉岡禅寺洞
鬱塊の遊び出でたる海市かな 佐怒賀正美
魂のあそびや海市ひろがりつつ 小川双々子


以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:59 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

鳥帰る

鳥帰る

例句を挙げる。

この国の桜を見ずや鳥帰る 森澄雄 空艪
それぞれに喉照つて鳥帰るなり 岡井省二
ねむる鍬精切れし鎌鳥帰る 百合山羽公 寒雁
トーチカを残す海峡鳥帰る 杉本寛
ビーナスの影は闘士よ鳥帰る 大木あまり 山の夢
人に見ゆる高さをもつて鳥帰る 加倉井秋を 午後の窓
何も残さず何も持たずに鳥帰る 川崎陽子
先頭は空に溶けゐて鳥帰る 猪俣千代子
光より湧きて光へ鳥帰る 水田むつみ
北窓にありあまる空鳥帰る 原田喬
南蛮船渡来の潮路鳥帰る 下村ひろし 西陲集
啼き交はし木の鳥竹の鳥帰る 梅沢墨水
地震なき地へ高々と鳥帰る 五十嵐哲也
墳丘のやさしきくびれ鳥帰る 猪俣千代子
夕立後じつくりと濡て鳥帰る 北原白秋
大空へつづく島畑鳥帰る 千手和子
大阪や煙の中を鳥帰る 青木月斗
如意輪の一指の天を鳥帰る 野見山ひふみ
宿帳にのこる齢や鳥帰る 北見さとる
山々の松なぎ倒し鳥帰る 対馬康子 純情
山の端の雲入れ替り鳥帰る 浦山輝代
山荘に馬柵二重なり鳥帰る 皆吉爽雨
帰らんとわれはいづくへ鳥帰る 森澄雄
帰り着き死ねばうれしと鳥帰る 松瀬青々
心音の乱るる日なり鳥帰る 福田蓼汀 秋風挽歌
旨さうな鳥だつたのに鳥帰る 櫂未知子 蒙古斑
時の鐘鳴りつぐ天を鳥帰る 高橋悦男
時鳥帰り支度の我に鳴く 石井邦子
暁といふ短さを鳥帰る 大川つとむ
檐近き夕映空や鳥帰る 寺田寅彦
正装のリボンは十字鳥帰る 対馬康子 純情
気晴らしに出て来し浜や鳥帰る 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
水煙の塔の天路を鳥帰る 野見山朱鳥
汐木焚く火に煙なし鳥帰る 青木重行
江の北に雲なき日也鳥帰る 松瀬青々
汽車見えて鳥帰る野の警報機 町田しげき
淡路消すかすみは青し鳥帰る 赤松[ケイ]子
湖青し雪の山々鳥帰る 子規句集 虚子・碧梧桐選
滅びたる山河とがめず鳥帰る 秋山卓三
漂泊といふこと人に鳥帰る 稲岡長
父ありし昨日の空や鳥帰る 橋本榮治 麦生
猪垣に日のありながら鳥帰る 山尾 玉藻
磯近き出湯に浸れば鳥帰る 大網信行
筑波嶺は天の道標鳥帰る 小川斉東語
繃帯は自愛のしるし鳥帰る 磯貝碧蹄館
自転車を路地に洗へば鳥帰る 依光陽子
葬すみ後のうつろに鳥帰る 福田蓼汀 秋風挽歌
街燈は高きにともり鳥帰る 桂信子 緑夜
親友のとなりに坐り鳥帰る 桑原三郎 晝夜
頬杖の杖をはづして鳥帰る 伊藤敦子
鳥帰りたる夜の雨をききゐたり 塙告冬
鳥帰り汁甘くなる鬼うどん 大木あまり 山の夢
鳥帰るいつもの道にゐて仰ぐ 岸田稚魚 『紅葉山』
鳥帰るいづこの空もさびしからむに 安住敦(1907-88)
鳥帰るいづこの窓も真顔見え 今井聖
鳥帰るかんでんがんの空のみち 西村公鳳
鳥帰るきのふは華燭けふは喪の 稲垣きくの 黄 瀬
鳥帰るこんにやく村の夕空を 飯田龍太
鳥帰るたれか宜候(ようそろう)呼ばわり 渋谷道
鳥帰るところどころに寺の塔 森澄雄 四遠
鳥帰るなべてかそけきものの列 小室善弘
鳥帰るなり整然と椅子机 石田郷子
鳥帰るはや逡巡の歳ならず 荒井正隆
鳥帰るひとにはひとの暮らし向き 加藤朱
鳥帰るクラムチャウダー海の卓 対馬康子 吾亦紅
鳥帰るゴルフ帰りの男女らに 飯田龍太
鳥帰るテレビに故人映りつつ 岸本尚毅 鶏頭
鳥帰る一羽は天の裏門より 河原枇杷男 流灌頂
鳥帰る三河の涯や五平餅 古舘曹人 砂の音
鳥帰る人の世は靴すり減らし 清水径子
鳥帰る今日でなければならぬかに 今橋真理子
鳥帰る北上川を見てあれば 倉田 紘文
鳥帰る夢のあとさき田が濡れて 藤田三郎
鳥帰る捨つと決めたる手紙束 西村和子 かりそめならず
鳥帰る日本さんざん遊ばれて 高山れおな
鳥帰る未完の笛を掌に残し 藤沢紗智子
鳥帰る東京に人流れつく 和田耕三郎
鳥帰る桜田門を掃き終り 斉藤夏風
鳥帰る水と空とのけぢめ失せ 沢木欣一
鳥帰る水際はものの影ふえて 松村武雄
鳥帰る沖つもれ日は炬のごとし 皆吉爽雨
鳥帰る沖に父の帆一つあり 中拓夫
鳥帰る渡り大工のわが上を 北光星
鳥帰る無辺の光追ひながら 佐藤鬼房(1919-2002)
鳥帰る父の血を享くさみしさも 岸洋子
鳥帰る看取り二十日の仏かな 溝口昭二
鳥帰る石器の出でしローム層 福田蓼汀 秋風挽歌
鳥帰る空に掟のあるごとく 寺島ただし
鳥帰る空の一角伸びてゆく 山田弘子
鳥帰る空や大きな雫垂れ 池田義弘
鳥帰る約束ごとのあるやうに 新津静香
鳥帰る終の住みかなど要らぬ 伊藤昌子
鳥帰る絶やさぬものに地上の火 対馬康子 純情
鳥帰る羅馬に続く橋の上 伊藤いと子
鳥帰る老は出口のなき淵か 飯田龍太
鳥帰る藁しべいろに田をつなぎ 岡本眸
鳥帰る誰に告ぐべきおもひとや 坂本宮尾
鳥帰る赤い針山窓際に 佐藤和夫
鳥帰る近江に白き皿重ね 柿本多映
鳥帰る野中に楡と水たまり 鈴木貞雄
鳥帰る野菜の花の咲くころを 岡本高明
鳥帰る陳腐な日々の待つ屋根ヘ 櫂未知子 貴族
鳥帰る雁木の上の石の数 文挾夫佐恵
鳥帰る電気自動車走る世も 高澤良一 随笑
鳥帰る高さにあれば寺ひかる 鳥居おさむ
鳥帰る魔女の箒も帰りけり 石田郷子
鳥帰る鳩は鳩胸つき合せ 百合山羽公
鳥帰る龍馬の像をすれすれに 岩井久美恵
うすうすと鳥引く夕を常世とも 吉本和子
一隅を暗くして鳥引きにけり 石田勝彦
墓標杉鳥引く空を蔽ひけり 鷲谷七菜子 游影
小鳥引く木曾路は細き人の道 大串章
小鳥引く畑の中の古戦場 古舘曹人 砂の音
小鳥引く頃の薬を竝べては 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
山陰や誰呼子鳥引板の音 蕪村 秋之部 ■ 武者繪賛
引鳥のつぎ~消ゆるうつろかな 野村喜舟 小石川
引鳥の中にまじるや田螺取り 支老 芭蕉庵小文庫
牧の道小鳥引きたる羽か拾ふ 皆吉爽雨
裏日本に西日は永し小鳥引く 松村蒼石
遠くまで雨の引鳥見ゆるかな 石嶌岳
鏡中に鳥引く空のゆがみけり 八木林之介 青霞集
鳥引いてあえかに曇りそめしかな 清水基吉 寒蕭々
鳥引きにけり整然と遺書の文字 篠崎圭介
鳥引くや雪まだ残る越の里 中村昭一
鳥引くを子らと見て立つ二月堂 堀口星眠 営巣期
米山のはづれに海や鳥かへる 上村占魚
胸中の湖あたためて鳥かへる 木村敏男
裏富士に天の一太刀鳥かへる 赤松[ケイ]子
鳥かへる風雨の夜の時計かな 原田喬


以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:57 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

春落葉

春落葉

例句を挙げる。

あすなろの明日を重ねし春落葉 丸山海道
いつせいに春落葉塔はばたくか 上田五千石 森林
がじゆまるの春の落葉や錨石 下村ひろし 西陲集
ひとりにて焚き了ふまでの春落葉 石田あき子 見舞籠
もの忘れわらひあひたり春落葉 柴田白葉女 『月の笛』
一つ家の窯元休む春落葉 下村ひろし 西陲集
七盛が墓吹きおろす春落葉 原裕 葦牙
加齢とは落葉のうへに春落葉 友岡子郷
千年の樟息づける春落葉 神山果泉
名園の思はぬ嵩の春落葉 檜 紀代
四肢ゆらと亀が浮きくる春落葉 松本 幹雄
宙返り春の落葉といふことも 上野泰 佐介
宿痾また分身となる春落葉 冨田みのる
山蟻の巣を隠すかに春落葉 大島民郎
春落葉いづれは帰る天の奧 野見山朱鳥(1917-70)
春落葉えたいの知れぬものも掃く 鍵和田釉子
春落葉さはさりながら命惜し 富安風生
春落葉しきりに音をかさねけり 岸田稚魚 『紅葉山』
春落葉ゆふかぜの尾のなまぐさき ほんだゆき
春落葉ゆらぎそめにし人への信 小松崎爽青
春落葉利休この世を去りし日か 飯田龍太
春落葉四六の蟇を掌に 原 裕
春落葉墓のうしろを水流る 関戸靖子
春落葉恋の木椅子に降りしきり 斎藤 節子
春落葉放課後長き聴講生 二村典子
春落葉母恋ひ掃けば限りなし 田中 珠生
春落葉波に濡れたるところにも 岸本尚毅 舜
春落葉焚きては昨日忘れけり 古賀まり子 緑の野
春落葉焚く火が昨日を儚くする 小松崎爽青
春落葉鶏鳴つやをもてりけり 小松崎爽青
木の梢に父ゐて降らす春落葉 中村苑子
淡き日に墓守が焚く春落葉 古賀まり子 緑の野以後
瀬に舞へば光降るかに春落葉 鷲谷七菜子 雨 月
磊落な椨の落とせる春落葉 高澤良一 宿好
祓戸の神に雨ふる春落葉 藤田あけ烏 赤松
茅葺きの小門かたむけ春落葉 河野南畦 湖の森
葛飾や春の落葉を雨に掃く 細見綾子
葬列の一人となりて春落葉 市ヶ谷洋子
蜥蜴とも膝つき合へり春落葉 松山足羽
観音さんへ婆を案内に春落葉 岸田稚魚
跼みては佇ちては春の落葉焚 石田波郷
野宮や春の落葉の氷りたる 大木あまり 火球
鎮守府の官舎の樟の春落葉 高澤良一 鳩信
隍(からほり)の落葉の上の春落葉 鳥居美智子
雪の上春の落葉のちるわびしさ 松村蒼石 雪

以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:56 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

*えり竹をがらがら落す蓬かな 石田勝彦
あかがねの雨樋秋の蓬春邸 高澤良一 素抱
あをあをと十一月の蓬かな 山口いさを
いにしへの田に蓬萌ゆ進むべし 鍵和田[ゆう]子
うら若き川原蓬やはるの風 加舎白雄
お茶摘女あるは蓬を藉きみだし 西本一都
かへるさの日照雨に濡れし蓬籠 麦南
かまきりや日傭(ひよう)も同じ蓬が杣 露章 選集「板東太郎」
きさらぎの蓬を焚けり深大寺 宮岡計次
きなくさい猫のまわりの枯れ蓬 河合凱夫 飛礫
くれはやき泊瀬の蓬さはに見し 安東次男 昨
この頃のぐづつき日和蓬萌ゆ 坂田 玲子
この頃の雪や案山子のなれの果 尼-蓬生 俳諧撰集玉藻集
さながらに河原蓬は木となりぬ 中村草田男
しばらくは日のふくらみの蓬籠 都筑智子
すでに子は風と駆けゐる蓬摘 平子 公一
そこらまで蓬を摘みに庵の妻 後藤夜半 翠黛
たてまつる八十路の母に蓬もち 及川貞 夕焼
たらちねや蓬の花剪り足洗ふ 松村蒼石 雪
ちちははの魂あそぶ蓬かな 原裕 出雲
つみためて臼尻に撰る蓬かな 飯田蛇笏 山廬集
なにげなき餅草摘の身拵 斎藤玄 雁道
ひざまづき蓬の中に摘みにけり 高野素十(1893-1976)
ひとり身の影をゆたかに蓬摘む 宍戸富美子
ひるがへる丈のありたる蓬かな 石田郷子
ひんがしの風にとばすな蓬籠 大峯あきら
ぺーチカに蓬燃やせば蓬の香 沢木欣一 塩田
まつくろに蓬枯れたる伊吹かな 阿波野青畝
もう少したらぬ蓬を摘みにゆく 田畑三千
やまくさの蓬は萌えぬ咲く馬酔木 木津柳芽 白鷺抄
ゆく春や蓬が中の人の骨 榎本星布 (せいふ)(1732-1814)
わが坐せしだけ蓬野に萎え与へ 加倉井秋を
アイヌ等が焼く蓬生の火ぞ濃しや 細谷源二 砂金帯
ペーチカに蓬燃やせば蓬の香 沢木欣一
一ト所蝶のむれゐる蓬哉 松瀬青々
一一つ律義の箸に挾まれて蓬の餅 安斎櫻[カイ]子
七草や神も蓬が島あそび 白 尼
万葉の恋の蓬野電車ゆく 三嶋隆英
万葉の男摘みけむ蓬摘む 竹下しづの女句文集 昭和十二年
万葉の風立つ蓬摘みにけり 大嶽青児
不惑まで夏の蓬を刈らむかな 中原道夫
中辺路の餅草摘みのかぶりもの 宇佐美魚目 天地存問
丹生川村の菖蒲蓬を朝市に 久保美智子
二上山の雲切れてきし蓬籠 鈴木しげを
佇つ影の日へ歩み出す蓬原 桂信子 遠い橋
低くして母のよろこぶ蓬山 齋藤玄 『玄』
何のかの便りの風や枯芒 蓬山 (芭蕉追善)
何ほども蓬摘めずに一歳妻 鷹羽狩行
俎の蓬を刻みたるみどり 誓子
傷口をふさいでくれし蓬かな 長野なをみ
優婆塞(うばそく)が佛性ほどの蓬摘 筑紫磐井 野干
元日に敷けばや真野のあら蓬 水田正秀
充分に老いて蓬に変身す 中尾寿美子
八ッ口のあるはかなしき蓬原 石川桂郎
冬めくや見舞ひし母の小さき顔 蓬見喜美江
初夏や蓬が中の白薊 高田蝶衣
口髭の白くいませる蓬かな 大木あまり 火球
右腕は雲の匂いに蓬摘む 守谷茂泰
吾妹子が摘みて籠に満つ蓬かな 岩田潔
園児らの眉ひらけゆく蓬道 原裕 葦牙
塩屋まで蓬摘む子の来てゐたる 鈴鹿野風呂 浜木綿
夏草となってしまひし蓬かな 相須 ミヤ子
夕空は眼につめたくて蓬籠 友岡子郷
夜露の蓬搗いて八十八夜かな 阿部みどり女 月下美人
夢の淵蓬を摘みて摘みきれぬ 草深昌子
天心に跼むは蓬摘める母 齋藤愼爾
太陽を蹴れば蹴鞠の蓬原 かけい
娶る日に冬の蓬が萌え易し 萩原麦草 麦嵐
子と摘みにゆく銀(しろがね)の蓬かな 山西雅子
存分に老いて蓬に変身す 中尾寿美子
家建ちて萌えし蓬に影置ける 富美子
寂しさが音になるなり蓬籠 斎藤玄
寒蓬推古の朝の堀ぞこれ 西本一都 景色
寒餅やことに胡麻餅豆の餅 草間時彦 櫻山
屋根の上に蓬萌ゆるや破れ寺 寺田寅彦
山の湯の宿のロビーに絵蓬 酒井 武
山上憶良ぞ棲みし蓬萌ゆ 竹下しづの女 [はやて]
山國の苦き蓬もたたふべし 筑紫磐井 未定稿Σ
山火果つ白きは蓬の灰ならむ 高澤良一 ぱらりとせ
山門の下に摘みたる蓬かな 佐藤 芙陽
嵩もなき籠の蓬にほゝ笑みぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
帆に遠く赤子をおろす蓬かな 飴山實 少長集
常滑や蓬萌やして休窯日 鈴木真砂女
干反りたる竹の葉下や崖蓬 楠目橙黄子 橙圃
年々や蓬香に立つ臼一つ 鈴木しげを
年経たる小町のにほひ蓬原 鷲谷七菜子 天鼓
庭先へ廻りて一つ草の餅 草間時彦 櫻山
引力の匂ひなるべし蓬原 正木ゆう子
従妹九ツ蓬でみがく水眼鏡 田中裕明 山信
思ふこと風が奪へり蓬萌ゆ 村田脩
手の中へふくらんでくる蓬摘む 坂巻純子
手造りのしかも味噌餡柏餅 草間時彦 櫻山
押へてもふくるる籠の蓬かな 実花
拱手してをれば蓬の泥乾く 加倉井秋を 午後の窓
掌に銀の影置く蓬かな 春日鳥宇
摘みためて蓬ぬくさよ掌に 高橋淡路女 梶の葉
摘む前の蓬の上に眠りたし 今瀬剛一
旅人のわれに目をこせ蓬摘み 前田普羅 能登蒼し
日ざかりやおのが影追ふ蓬原 飯田蛇笏 山廬集
日のいろや蓬ふかるゝ秋のくれ 加舎白雄
日の下に真水のくぼみ蓬山 桂信子 緑夜
日暮れまで摘みし蓬のこれつぽち 中村苑子
日照雨して薄暑の蓬しゞに生ふ 西島麦南 人音
日迎へみち蓬摘みたるあとのあり 金子篤子
春たくる飛鳥の里の蓬哉 妻木 松瀬青々
春の砂蓬に少しかけてやる 細見綾子 花寂び
春雨や蓬をのばす艸の道 松尾芭蕉
春雷やうす日来てゐる蓬原 石鼎
晩年もなほ日永にて摘む蓬 中村苑子
晴れきつて空の昏みや蓬摘 廣江八重櫻
月の出の苦蓬わが旅なかば 佐藤鬼房 鳥食
朝より腓返りの蓬原 柿本多映
枯芝に蓬薊と萌えて居し 松藤夏山 夏山句集
枯草にまじる蓬の初日かな 渡辺水巴 白日
柔かき蓬恃むや子生るゝと 清水基吉 寒蕭々
根分する菊に紛るゝ蓬かな 仙波花叟
桑畑に摘みし蓬のやはらかし 穴井 まき
桜餅草餅春も半かな 正岡子規
梅の木にぶつかりながら蓬摘 辻桃子
死ぬるほど蓬負ひけり唇の塩 齋藤玄 『狩眼』
母ゆきて天の河原に蓬摘む 香坂恵依
水巴忌の蓬が混る蚊遣草 萩原麦草 麦嵐
水鏡はなれて蓬原のあり 柿本多映
河原蓬が枯れて逢はぬいくにち 中塚一碧樓
泣ける子を泣けるがまゝに蓬摘む 上村占魚 鮎
活断層の上かも知れず蓬摘む 赤尾恵以
流れには遂に出逢はず蓬摘む 波津女
流燈会磧蓬の冷えびえと 須山おもと
涼しさや長けし蓬を縄からげ 魚目
淋代の夏磯蓬長けにけり 古舘曹人 樹下石上
火の山の蓬の匂ふ雑煮椀 斎藤道子
火渡りの大煙くる蓬かな 藤田あけ烏 赤松
炉開や天目古りし孤蓬庵 四明句集 中川四明
烈風に影かばふごと蓬摘む 馬場移公子
焼芝の針の如くに蓬かな 松藤夏山 夏山句集
瓦落ち軒の蓬も飛びにけり 寺田寅彦
生国はここかもしれず蓬摘む 宇多喜代子
登呂の世の車田の畦蓬萌ゆ 渡辺立男
白光のかの蓬まで行かば死す 永田耕衣
白昼の能見て過す蓬かな 魚目
盃の周りのけむり蓬生ふ 磯貝碧蹄館
短かさよ行基参のつみ蓬 松瀬青々
禰宜作る掛蓬を氏子待つ 赤坂倭文子
秋の蚊帳蓬の風を炎えたゝす 萩原麦草 麦嵐
筑波を見む夢のつくばは餅草色 折笠美秋 君なら蝶に
籠あけて蓬にまじる塵を選る 高濱虚子
籠まけて萎えし蓬の皆葉裏 楠目橙黄子 橙圃
背で聴く育児らの摘む蓬の音 兜子
脳髄に詰まつて休む蓬かな 永田耕衣 冷位
船頭の蓬団子を買へと言ふ 瀧澤伊代次
良寛の海を眼下や長け蓬 鳥海むねき
芦焼の水に蓬が漂うて 山西雅子
芹蓬摘めよと與ふ子に刃物 石川桂郎
草蓬あまりにかろく骨置かる 楸邨 (サイパンに果てし義弟の遺骨還る)
草餅を作る気になり蓬摘む 椎野 房子
荷馬夫らが屍を焼く蓬野や 細谷源二 砂金帯
萍蓬(こうほね)の水踏んでいる夢のつづき 渋谷道
萍蓬の水踏んでいる夢のつづき 澁谷道
萱の丘蓬々と紅く枯れんとす 瀧春一 菜園
蓑笠を蓬にして草の庵 正岡子規(蓑一枚笠一箇、蓑は房州の雨にそぼち笠は川越の風にされたるを床の間にうや~しく飾りて)
蓬々と杉菜生ふるは地の果か 三橋鷹女
蓬々と詩につよき髪麥嵐 松村蒼石 露
蓬が杣和泉が軒の人形なり 幽山 選集「板東太郎」
蓬だんご作りくれないの婆となり 北原志満子
蓬に徐福と申す鼠かな 高浜虚子
蓬に聞かばや伊勢の初便 芭 蕉
蓬に聞ばや伊勢の初便 芭蕉
蓬に能登の荒磯の石を据う 細見綾子
蓬のひかげかづらのすゑまでも 阿波野青畝
蓬の香ふりまく湯気の餅搗器 秋川ハルミ
蓬の麓へ通ふ鼠かな 鬼貫
蓬はや一人あそびの子に萌ゆる 荒木嵐子
蓬は木に扉は発狂して居りぬ 河原枇杷男 定本烏宙論
蓬は木に母を殺めし思ひ出に 河原枇杷男
蓬ひに来たその顔が風呂を焚いてゐた 尾崎放哉
蓬まで蓬まで来て老いざらむ 永田耕衣 冷位
蓬もゆる去年の径あり*あさざ簗 前田普羅 能登蒼し
蓬やのれんゆるがぬ家伝薬 高橋 淑子
蓬や上野の山と相対す 正岡子規
蓬や女峰磐座雲に立ち 小林碧郎
蓬や掛けて隠るる古柱 後藤比奈夫
蓬や東にひらく伊豆の海 水原秋櫻子
蓬や海に始まる人類史 高橋悦男
蓬や湯葉六代の竃神 黒木野雨
蓬をいろいろに餝り直しけり 正岡子規
蓬を語ればいつか父母のこと 西村三重子
蓬匂ふ湯に洗足や飛ぶ螢 冬葉第一句集 吉田冬葉
蓬干す莚ものべぬ薬の日 河東碧梧桐
蓬干す莚や多摩の酒造場 長谷川かな女 牡 丹
蓬庵に禰宜も連なり風炉名残 手島あさ子
蓬摘まんかと夜話のそれつきり 今瀬剛一
蓬摘まんといふ客に草履おろしけり 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
蓬摘み尾上にかゝり能登蒼し 前田普羅 能登蒼し
蓬摘み年々おなじ風のうた 馬場移公子
蓬摘み摘み了えどきがわからない 池田澄子
蓬摘み死なばほほゑむ唇ならむ 河原枇杷男
蓬摘むかへらざる日を今切に 岡田 和子
蓬摘む一円光のなかにゐて 桂信子 緑夜
蓬摘む古址の詩を恋ひ人を恋ひ 竹下しづの女句文集 昭和十二年
蓬摘む彼岸の母に逢うために 長谷川草々
蓬摘む未だ見ぬ国をおもひつつ 河野友人
蓬摘む生れかはりし童たち 松村蒼石 春霰
蓬摘む由比の峠の暮るるまで 大橋利雄
蓬摘む真昼まばゆき川の面 五十嵐播水 播水句集
蓬摘む籠の中まで夕日入る 鈴木幸子
蓬摘む身はけむりかな伊吹山 鳴戸奈菜
蓬摘一人は遠く水に沿ひ 田中王城
蓬摘潮のさざなみ川のぼる 中拓夫
蓬灼け雉子は卵生みおとす 松村蒼石 雪
蓬燃ゆ憶良・旅人に亦吾に 竹下しづの女(1887-1951)
蓬生にねむたく閑雅なる晝餐 横山白虹
蓬生に二日つづきし黄沙かな 省二
蓬生に土けぶリ立つ夕立かな 芝不器男
蓬生の野や芳しき風渡る 松本可南
蓬生の雨明るくて冷たしや 松村蒼石 雁
蓬生の露をなだめる父の杖 宇多喜代子
蓬生ふる水田休め田妹が里 松瀬青々
蓬生ふ月指す城の波の音 横光利一
蓬生やかへり見すれば春幽か 内藤吐天 鳴海抄
蓬生や手ぬぐひ懸て竹婦人 蓼太
蓬生や日暮れておろす凧の音 梅室
蓬生や露の中なる粉引唄 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
蓬草軒葺き垂れて花御堂 松藤夏山 夏山句集
蓬萌えおほばこの葉も遅速なく 汀女
蓬萌えそめし燈台暮しかな 清崎敏郎
蓬萌え太鼓の胴のやうな道 高澤良一 ぱらりとせ
蓬萌ゆ二十六聖人踏みし径 山田ひさし
蓬萌ゆ憶良・旅人に亦吾に 竹下しづの女
蓬萌ゆ春来われにも女の子ある 森川暁水
蓬萌ゆ枯草の骨踏めば鳴る 阿部みどり女
蓬萌ゆ風吹く土手に佇みて 御林めぐみ
蓬萌ゆ風塵つねの畦ながら 塩谷はつ枝
蓬萠ゆ憶良・旅人に亦吾に 竹下しづの女句文集 昭和十二年
蓬薊これより草の茂るかな 尾崎迷堂 孤輪
蓬見舟僧の客乗せ僧漕げる 伊沢三太楼
蓬野にしばらく預け乳母車 大谷史子
蓬野にひそむ鏡の欠片は病魔 鈴木勁草
蓬野に馬は車輪を置き忘る 磯貝碧蹄館
蓬長け波音人を安からしむ 右城暮石
蓬長け火山の裾の霧まとふ 村越化石 山國抄
蓬雑炊共にすすりて鳩間節 影島智子
蓬風呂あびてぬくとし今日の月 金尾梅の門 古志の歌
蓬香を嗅ぐ刹那さへひとの妻 堀井春一郎
蛇の衣かゝれる蓬薊かな 岡本松浜
蝉声のむらさきに染む蓬左の庫 伊藤敬子
螢の乳つけし蓬が秋に入る 細見綾子 花寂び
螢籠つるや蓬のかくし妻 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
行く春やほうほうとして蓬原 正岡子規
行春やほう~として蓬原 子規句集 虚子・碧梧桐選
袖口に風ささやける蓬摘 古賀まり子 緑の野以後
西行の清水を引きて蓬の香 大木あまり 火のいろに
誰も背に暗きもの負ふ蓬摘み 河原枇杷男 密
跼まねば蓬の夕香失かりしに 加倉井秋を
踏むがまゝ磧蓬の日和かな 楠目橙黄子 橙圃
運び来し土に蓬のまじりをり 玉木嘉一
道たがへ来しこともよし蓬摘む 梶原左多夫
道問へば老婆出てきて蓬の香 桂信子 黄 瀬
遠くから人の来てゐる蓬かな 小西敬次郎
野霞のこぼす小雨や蓬摘 芝不器男
鈴の鳴る方へ傾く蓬かな 柿本多映
銃眼を残して生ふる蓬かな 横光利一
雑兵はみんな蓬になっている 水島純一邯
雪ふかく蓬かざる山廬かな 飯田蛇笏
露霜や蓬生の宿に人病めり 紅葉
青嵐垢面蓬髭ばかりかな 清水基吉 寒蕭々
静電気われ蓬野へ蓬野へ 永末恵子 留守
風の蓬はいくら摘んでもひと握り 今瀬剛一
風吹いて持つ手にあまる蓬かな 秋櫻子
風呂敷を袋にむすび蓬摘む 上村占魚 球磨
風邪引きや髯蓬々の山男 楠目橙黄子 橙圃
飛行機雲艶なる日かな蓬伸び 百合山羽公 寒雁
飛鳥仏の鼻梁も青し青し蓬 金子兜太
餅に搗く蓬奔流しそめけり 皆吉爽雨
餅草の匂ふ蓆をたたみぬ 室生犀星 魚眠洞發句集
餅草も雀がくれとなりしはや 森澄雄 鯉素
餅草や砂渦のたつ曲り道 室生犀星
餅草を摘む歌の橋華の橋 永井龍男
香をとめぬまで蓬枯れ雪の上 藤岡筑邨
香具山の蓬摘まんと大袋 大島雄作
鶴を見に老のうき足蓬生に 赤松[けい]子 白毫


以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:55 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

荷風忌

荷風忌

例句を挙げる。

木場丸太浮きつぱなしに荷風の忌 小島千架子
牛鍋てふ店まだありし荷風の忌 斎藤由美
独り身の自由が淋し荷風の忌 山田具代
荷風の忌墨東の川すぐ濁る 福島勲
荷風忌の踊り子がガムを噛む楽屋 伊藤黄雀
荷風忌の近しひそかに潮上げて 片山由美子 風待月
荷風忌の雲の移り気見てゐたり 吉川高詩
荷風忌や精養軒のオムライス 佐藤紫城
荷風忌や賛否臆せずカレー煮て 赤松[けい]子 白毫
荷風忌や雨よりも日にあやめ褪せ 成瀬桜桃子 風色
荷風忌を駱駝に乗りて遊びけり 有馬朗人



以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:54 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

春の宵

春の宵

例句を挙げる。

「前略」と書きしばかりや春の宵 中村苑子
うかれ鴉ほかに名は無く宵の春 中島月笠 月笠句集
けふよりの妻と来て泊つる春の宵 日野草城
けふ買ひし金魚眠りぬ宵の春 渡辺水巴 白日
すり減りし骨を嘆きつ春の宵 原裕 青垣
そぞろ歩きもはなだの裾や春の宵 夏目漱石 大正三年
どぶ泥に手を入れて冷たしや春の宵 内田百間
はたなかに案山子囁(ツツ)めく春の宵 日夏耿之介 婆羅門俳諧
ひえ~と浅間がすわる春の宵 前田普羅 春寒浅間山
びら文字の跳ねたる髭よ春の宵 今泉貞鳳
ふと春の宵なりけりと思ふ時 高浜虚子
ふり向きしうしろに月や春の宵 高橋淡路女 梶の葉
ほどを打つ鼓稽古も春の宵 四明句集 中川四明
また明日といふ日のあるに春の宵 長谷川回天
ゆく春の宵にて僧が修羅を舞ふ 佐藤鬼房
カーテンも引くべきは引き春の宵 波多野爽波 鋪道の花
サバランに酔ふ父なりし春の宵 水原 春郎
セルロイド人形歩け春の宵 大峯あきら
上方の穴子押鮨春の宵 國島十雨
人形の胸押せば哭く春の宵 伊藤敬子
伝へ古る雅の舞や春の宵 谷川八重子
傾城に歌心あり春の宵 寺田寅彦
児の笑顔寝顔にかはり宵の春 福田蓼汀 山火
公達に狐化けたり宵の春 蕪村
六区とてひとりは淋し春の宵 関口真沙
切株の松脂ひかる春の宵 前田普羅 能登蒼し
句を知りて四十年の春の宵 高橋淡路女
同じ橋三たび渡りぬ春の宵 夏目漱石 大正三年
声まがふ茶の間の父子春の宵 亀井糸游
女湯の聲の覚えや春の宵 会津八一
妊りし娘に長電話春の宵 野川 枯木
妹が読む伊勢物語宵の春 池上浩山人
妻とエレベーターの急行に乗る春の宵 橋本夢道 『無類の妻』以後
婚の荷の重ねの淡し春の宵 橋本良子
子守歌うたつてみたし春の宵 谷口桂子
客を待つ一卓一花春の宵 岩崎照子
客帰る三日月があり春の宵 高木晴子 晴居
家集まだ表紙のしめり春の宵 赤松[けい]子 白毫
宿坊の廊下軋むや春の宵 内田八重子
宿引にひかれごころや宵の春 飯田蛇笏 山廬集
寐まどひし鶯もあるよ春の宵 渡辺式子丸
小百姓の飯のおそさよ春の宵 村上鬼城
小鏡にうつし拭く墨宵の春 杉田久女
座布団の緋色によろけ宵の春 井沢正江 以後
息つめて写経一と文字春の宵 石川 泰子
扇もて顔をかくしぬ宵の春 雑草 長谷川零餘子
抱けば吾子眠る早さの春の宵 深見けん二
新妻の湯桶かんこん春の宵 辻田克巳
日本の古へよりの春の宵 上野泰 春潮
春の宵このままパリに住みたしや 山本歩禅
春の宵やわびしきものに人體圖 中塚一碧樓
春の宵テレビばつかり見なさんな 稲畑廣太郎
春の宵人の妻なる事もよし 高橋淡路女 梶の葉
春の宵北斗チクタク辷るなり 前田普羅 春寒浅間山
春の宵噴煙の香を横ぎれり 前田普羅 春寒浅間山
春の宵妻のゆあみの音きこゆ 日野草城
春の宵歯痛の歯ぐき押してみる 徳川夢声
春の宵白鳩の尾に影たまる 四ッ谷 龍
春の宵皿を汚して男去る 北さとり
春の宵船のほとりの待ち俥 五十嵐播水 埠頭
春の宵身より紅紐乱れ落つ 三好潤子
春の宵鋏の小鈴よくひびき 吉屋信子
春の宵高層ビルに迷い犬 伊藤真理
椅子の背をすべる衣や春の宵 大場ひろみ
椿子も叡子もいます宵の春 阿部慧月
歌人の絵所訪へり春の宵 桃家
止まり木といふ椅子に乗り春の宵 岩崎照子
止利仏師衾裾を刳り春の宵 和田悟朗 法隆寺伝承
母といふも我が知るのみや宵の春 渡邊水巴 富士
水銀の行方も知れぬ春の宵 五島高資
江に映る関の灯や宵の春 蘇山人俳句集 羅蘇山人
江の電のことんと停まる春の宵 水原 春郎
油気の喰へぬ病や春の宵 富田木歩
活魚の顔に疵あり春の宵 岩井如酔
浦人の小唄習ふや宵の春 竹冷句鈔 角田竹冷
浮かぶのは横顔ばかり春の宵 谷口桂子
温顔の輝きおもふ春の宵 相馬遷子 雪嶺
湯の町の春の宵とは殊の外 星野椿
潮の香をもて来る露地や春の宵 小杉余子 余子句選
灯の位置を変へてひと待つ春の宵 谷口桂子
灯の前にはにかむ妻や宵の春 西山泊雲 泊雲句集
灯を卓に近づけ春の宵となる 高木晴子 花 季
無為といふこと千金や春の宵 富安風生
父を呼ぶコーヒの時間春の宵 小山白楢
犬にあひて猫は稲妻春の宵 橋本鶏二
猪口伏せて飯食ふ老や宵の春 河野静雲 閻魔
町なかの藪に風あり春の宵 内田百間
白馬に使者にほやかや春の宵 河東碧梧桐
目つむれば若き我あり春の宵 高浜虚子
眠たがる兄に句を問ふ宵の春 比叡 野村泊月
笙鳴るや「林歌」に連るゝ春の宵 長谷川かな女 雨 月
筋かひにふとん敷きたり宵の春 蕪村
筋違にふとん敷きたり宵の春 蕪村
籠行燈さげて庭ゆく宵の春 比叡 野村泊月
織田作の住みたる町の春の宵 高見岳子
肘白き僧のかり寝や宵の春 蕪村
胴掛のほどけて淋し春の宵 道芝 久保田万太郎
自像見入る時淋しみや宵の春 中塚一碧樓
花嫁が舳先をあるく春の宵 佐川広治
草庵や子の絵ひとつに春の宵 杉田久女
菊亭のおとゞ牧馬を弾ず春の宵 寺田寅彦
蓼科の未だ見えてゐる春の宵 田中冬二 麦ほこり
藪空に拡ごる星や春の宵 西山泊雲 泊雲句集
衝立の繍ひ鳳凰も宵の春 軽部烏帽子 [しどみ]の花
袂もたげて盃さしぬ宵の春 雑草 長谷川零餘子
裏口に誰か来て居る春の宵 田中冬二 麦ほこり
裏川の水鳴り止まず春の宵 内田百間
言ひつのる唇うつくしや春の宵 日野草城
贈られし花環に燭や春の宵 四明句集 中川四明
足なえの妻所在なや春の宵 寺田寅彦
足袋裏に舞台の塵や宵の春 龍胆 長谷川かな女
鏡の間こゝは米国春の宵 高木晴子
鐘撞けば流石に更けて春の宵 井月の句集 井上井月
額つりて小家賑し春の宵 前田普羅
養生の酒色に出づ宵の春 河東碧梧桐
鯱のイルミネーシヨン春の宵 稲畑廣太郎
黄に灯る赤き蝋燭春の宵 中口飛朗子
人寄れば早や春宵の思ひする 高木晴子 花 季
刻長し春宵の情詠ふべく 徳永山冬子
卒寿なる吾にも春宵おとづれる 粟津松彩子
叱られて 春宵古い積木を積む 沙羅冬笛
咳やみて春宵さらに更くるのみ 上村占魚 鮎
地階より春宵スープ皿の下に 古舘曹人 能登の蛙
子を諭し春宵稀に胸さわぐ 殿村菟絲子
山の雨春宵だんろもてなさる 及川貞 榧の實
山春宵鯉のあらひに酒飲めば 岡田日郎
戸に戻りつく春宵の雨ほつ~ 高濱年尾 年尾句集
春宵に包まれてをる我のみか 上野泰 春潮
春宵のきんいろの鳥瞳に棲める 富澤赤黄男
春宵のこの美しさ惜しむべし 星野立子
春宵のたがひに交す小盃 倉田 紘文
春宵のつくづくたたみいわしの目 池田澄子
春宵のふしどに入りし聖かな 河野静雲 閻魔
春宵のサラダのヴイネガ過ぎにけり 林原耒井 蜩
春宵のムーン・ストーンの形見かな 野澤節子 『駿河蘭』
春宵の乳足りし子を見飽かぬも 西村和子 夏帽子
春宵の今は今又明日は明日 星野立子
春宵の伐折羅の闇は田へ通ふ 古館曹人
春宵の何から話そ旅のこと 稲畑汀子
春宵の分針少し遅れゐる 行方克巳
春宵の匂ひと思ふ闇ふかし 高木晴子
春宵の地震ありしといふなしといふ 高濱年尾 年尾句集
春宵の埴輪つぶやく如くなり 井上兎径子
春宵の夫の莨を盗み吸ふ 西村和子 夏帽子
春宵の宿のもの音聞かれけり 行方克巳
春宵の弔文遺著を積みて書く 皆吉爽雨 泉声
春宵の折からの雨頬にあたる 高濱年尾 年尾句集
春宵の星に会話をつなぎをり 稲畑汀子 春光
春宵の時計のねぢを固く巻く 藤木清子
春宵の枕行燈灯を忘る 飯田蛇笏 霊芝
春宵の林檎のはだへゆるみゐる 藤木清子
春宵の歩を祇園にも一寸入れ 戸田河畔子
春宵の母にも妻にもあらぬ刻 西村和子 夏帽子
春宵の母に会ひきし京都かな 大橋櫻坡子 雨月
春宵の灰をならして寝たりけり 原石鼎
春宵の烏丸帖習ふなり 岡本松浜 白菊
春宵の無聊の母に琴を置く 山岸治子
春宵の玉露は美酒の色に出づ 富安風生
春宵の玻璃戸は鏡みな映る 高木晴子 花 季
春宵の白障子ただならぬ時 皆吉爽雨
春宵の皆殺されし沙翁劇 下田明子
春宵の窯燃えつらね瓦村 三好潤子
春宵の紐ぞろぞろと蔵の中 吉田さかえ
春宵の胸撫でおろすやうな灯よ 高澤良一 随笑
春宵の自動車平凡な人と乗る 藤木清子
春宵の蘇州夜曲は聴かざりし 深川正一郎
春宵の賭場万金を卓に積み 吉良比呂武
春宵の部屋の広さよ嫁がせて 望月たかし
春宵の障子にひゞく水の音 上村占魚 鮎
春宵の食事了れり観光団 前田普羅 能登蒼し
春宵の食卓かこむ一人缺けし 内藤吐天
春宵の黙に万金ありぬべし 内藤桂子
春宵やいま別れ来し人に文 村上杏史
春宵やうごくともなき布良の星 大西 桑風
春宵やおのず歩の合ふ湖畔みち 乃万美奈子
春宵やこぼるゝものに足袋の砂 林原耒井 蜩
春宵やすでにはるけくボブ・ディラン 行方克巳
春宵やその月暦なかば過ぐ 石川桂郎 高蘆
春宵やもの和へて指やさしくす 中野あぐり
春宵やセロリを削る細身の刃 石田波郷
春宵や人の屋根さへみな恋し 原石鼎
春宵や兜煮まなこ見開きて 古賀まり子
春宵や地震にまろびし加賀手鞠 宮崎みさを
春宵や女易者に列出来て 下山宏子
春宵や字を習ひゐる店のもの 五十嵐播水 播水句集
春宵や客より綺羅の熱帯魚 水原秋櫻子
春宵や客賑やかに門を出づ 田中冬二 麦ほこり
春宵や彗星淡き尾をひろぐ 横山房子
春宵や戸棚のわきの花燈口 加倉井秋を
春宵や押せば露台へあく扉 波多野爽波 鋪道の花
春宵や木偶が眉上げもの申す 那須 淳男
春宵や朱の毛朱を噴き化身舞ふ 加藤知世子 花寂び
春宵や柱のかげの少納言 高浜虚子
春宵や楽器それぞれの音を持てる 下村梅子
春宵や港は船の灯をつらね 鮫島交魚子
春宵や漁家の上なるくぬぎ山 大峯あきら 鳥道
春宵や笛の仕ふる能移し 都筑智子
春宵や自治会の議事もめて居り 酒井信四郎
春宵や菓子鉢銀のいぶしいろ 及川貞 夕焼
春宵や鉄漿壺のありどころ 西島麦南 人音
春宵や閉ぢて久しき舞扇 行廣すみ女
春宵や食事のあとの消化剤 波多野爽波 鋪道の花
春宵や駅の時計の五分経ち 中村汀女
春宵をみんな読みゐて雨の音 及川貞 夕焼
春宵を一人名曲喫茶店 成瀬正とし 星月夜
春宵を尽せし人の話かな 長谷川かな女 雨 月
春宵を水上勉登壇す 辻田克巳
春宵を独りにされぬ死後のごとし 田川飛旅子 『山法師』
春宵を番台にただ坐りをり 波多野爽波 鋪道の花
春宵を鉄塔穏やかに待てる 吉田素糸
昭君酒春宵を汲む紫砂の碗 田中英子
東京の春宵に旅立ちて来し 成瀬正とし 星月夜
横顔に春宵といふ角度あり 蔦三郎
濱名湖畔春宵京の菓子頒けて 及川貞 夕焼
猫出かけ我春宵の庵を守る 深川正一郎
画室春宵パレツトのごと床汚れ 皆吉爽雨 泉声
皿洗ふ音も春宵さまたげず 皆吉爽雨 泉声
裸電球春宵文弥節熱す 石川桂郎
酒提げて農に春宵来りけり 鷲谷七菜子 花寂び
門前の春宵ひたと暗くなる 長谷川素逝 暦日
集ひあり春宵いたるやや遅き 皆吉爽雨 泉声
風車春宵の闇に翼をひたし 山口青邨


以上
by 575fudemakase | 2014-04-30 10:53 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

茎立

茎立

例句を挙げる。

おのれ育て奉仕せぬ人茎立菜 香西照雄 素心
おろかとは茎立ののびすぎしこと 成瀬桜桃子 風色
こぼれ菜のいづれそれぞれ茎立ちぬ 中村汀女
エプロンの人出る度に茎立てる 波多野爽波 鋪道の花
一軒家焼け砂に茎立つものの踏まる 梅林句屑 喜谷六花
値引札つけて茎立ちしてをりぬ 諸田登美子
僧は留守茎立つままに畑のもの 木村蕪城 一位
僧房の乏しき糧も茎立てる 水谷晴光
光茫と茎立簇のおくれをり 萩原麦草 麦嵐
利休忌の中州の畑茎立てる 飴山實 『次の花』
古火鉢の中に植ゑしが茎立てり 辻桃子
大小の畑のもの皆茎立てる 高濱虚子
大根の茎立ちにけり門に立つ 松藤夏山 夏山句集
大根の茎立ち安房の潮曇り 久保田重之
妻留守に集金多し茎立てる 杉本寛
帰還命令痩菜の二三茎立てり 皆川白陀
平仮名の生る様見し茎立菜 星野紗一
引き残したるそこばくの茎立てり 北野里波亭
斜塔となり雁塔となり茎立てり 百合山羽公
日曜の雨の明るく茎立てる 成瀬正とし 星月夜
時ならぬ夫の饒舌茎立ちぬ 泉本浩子
浦島草茎立ち不二は雲の中 富岡掬池路
聖護院もの紫野もの茎立てり 百合山羽公
花もたぐ茎立やまだ子が欲しく 赤松[けい]子 白毫
茎立ちの日蝕下国亡ぶるな 清水昇子
茎立ちの雨隠れなる山ありぬ 田中裕明 山信
茎立ちや矢のごとく来て締切日 鷹羽狩行
茎立つて疎まれてゐる鉢一つ 小田尚輝
茎立つやひしひしと夜の石屋の幕 加倉井秋を
茎立つや夕空の晴れ所在なく 小松崎爽青
茎立つや太陽ひと日雲の中 大橋敦子
茎立つや紙干す家を庭づたひ 馬場移公子
茎立てて波郷忌ちかき石蕗の花 渡辺 立男
茎立てるものをとらへし牛の舌 渡辺大年
茎立てゝからし菜雄々し勇しゝ 前田普羅 新訂普羅句集
茎立と水平線とありにけり 森田峠 逆瀬川
茎立と葱坊主とは仲間なり 粟津松彩子
茎立のかこめる礎石あたゝかく 宮野 寸青
茎立の天の中心逸れ曲り 上野泰 佐介
茎立の寝惚貌してをりにけり 粟津松彩子
茎立の最中の舟を洗ひゐる 大隈チサ子
茎立の花うちこぼす彼岸かな 支考 閏 月 月別句集「韻塞」
茎立の荒れざま岬曇りけり 林翔 和紙
茎立の野をめぐりきて畝傍陵 今村君恵
茎立は一寸伸びに子等朝寝 上野泰 佐介
茎立へきれいな膝をそろへけり 日原傳
茎立やおもはぬ方に月ありて 岸田稚魚
茎立やきのふの雨の朝ぼらけ 阿波野青畝
茎立やきのふは遠しをととひも 黒田杏子
茎立やひとりに飽きて蝶捉ふ 原コウ子
茎立やイワンのばかの巨きな掌 龍岡晋
茎立や一枚の葉を長く垂れ 藺草慶子
茎立や出発点に整列す 永島敬子
茎立や動輪がまづ力出す 田川飛旅子 『邯鄲』
茎立や命の果をたくましく 稲畑汀子
茎立や土葬の穴の深さ決る 石川桂郎
茎立や妙にあかるきゆふまぐれ 高澤良一 さざなみやっこ
茎立や子なき夫婦の相孤独 西本一都 景色
茎立や富士ほそるほど風荒れて 鍵和田[ゆう]子
茎立や引佐細江をかくす畑 八木林之介 青霞集
茎立や当麻の塔に日が当り 斎藤夏風
茎立や懈るまじき女の手 石田波郷
茎立や抱けば泣きやむ赤ん坊 増田三果樹
茎立や故郷すでに他郷にて 樋笠文
茎立や書をくくりたる十文字 和田 祥子
茎立や朝日が昇る風の中 鈴木 晶
茎立や未だ濡れざる海女の前 伊丹さち子
茎立や東京へ立つ襤褸なり 齋藤玄 飛雪
茎立や次の場面に鳩の胸 西山貴美子
茎立や母が遺愛の鍬の錆 猿橋統流子
茎立や泥靴乾く薪の上 石塚友二 光塵
茎立や洗へば白きコック帽 大町糺
茎立や海へ出てゆく飛行雲 秋元不死男
茎立や灯台守の捨て畑 高橋悦男
茎立や目鼻を暗く抜きゐたる 橋本榮治 逆旅
茎立や県(あがた)をわかつ潮けむり 斎藤梅子
茎立や真名にはあらぬ魚干して 橋本 薫
茎立や空の光の餘りつゝ 棚橋影草
茎立や籠出し雛に親そぞろ 西山泊雲 泊雲
茎立や継ぐあてもなき畑を打ち 滝谷 章
茎立や虐げてゐねば心緩ぶ 田川飛旅子
茎立や親葉明りに包まれて 西山泊雲 泊雲句集
茎立や親葉郤け勃然と 西山泊雲 泊雲句集
茎立や転居の文は数行に 八牧美喜子
茎立や過ぎては冬のなつかしき 石塚友二 光塵
茎立や間引乱れのあるまゝに 久木原みよこ
茎立や降りつゝ雨の強くなる 森田峠
茎立や風に身包む拓地妻 橋本鶏二
茎立をつゝみするどき親葉かな 西山泊雲 泊雲句集
茎立を抱きつつ道教へられ 阿部喜恵子
菜の花の強き茎立つ波頭 大屋達治 絵詞
蕪一つ畝にころげて茎立てる 西山泊雲 泊雲句集
賜死といふことのたとへば茎立す 柳生正名
農をつぐ人なき畑に茎立ちぬ 仲佐方二
野のひかりあつむるところ茎立す 神田南畝
鍵一つ掛けて出づ家茎立てり 高澤良一 さざなみやっこ
開拓のころ知らぬ子に茎立てり 奥谷亞津子
雨少しあれば茎立つ畑のもの 竹中 一藍
雨降れば降るとてたのし茎立てる 星野立子
音軽く降りゐる雨や茎立てる 成瀬正とし 星月夜
魂おくる火に茎立てて鶏頭かな 太田鴻村 穂国
くくだちや畑つづきに歯科内科 石川桂郎
くくだちや砂丘がくれに七尾線 猿橋統流子
くくだちや貌拭かれゐる朝の馬 金子篤子


以上
by 575fudemakase | 2014-04-29 08:07 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

春大根

春大根

例句を挙げる。

しなしなとして春大根買はれけり 秋元不死男
ブラジルの春大根の大きこと 伊津野 静
妻病むと春大根の萎えて幾日 原田種茅
妻病んで春大根をすればかたし 田室澄江
山畑や引かで腐りし春大根 斎藤俳小星
春大根くぐもり育つ風の峡 有働亨
春大根ぶつきら棒にまけて売る 高橋悦男
春大根を無知蒙昧と君は言へるか 栗林千津
春大根卸しすなはち薄みどり 鷹羽狩行
春大根洗ふ明るさ野の明るさ 栗原米作
春大根音なく煮立ちひとりかな 谷口桂子
朝市に春大根も出で初めし 打保好子
武蔵野の雲照りそめつ春大根 秋山三之助
水やはらか春大根を洗ふとき 草間時彦
波の声春大根の畑に消ゆ 江藤 ひで
牛飼ひの提げて来りし春大根 宮田正和
目に見えて体力戻る春大根 高澤良一 鳩信 入院日誌
神饌に春大根の一把かな 永井寿子
縄文遺跡春大根に囲まれぬ 中村明子
鉱山に朝市が立ち春大根 大熊太朗
頭陀袋とり出す太き春大根 水内鬼灯
高波のどどと寄せくる春大根 伊佐山春愁


以上
by 575fudemakase | 2014-04-29 08:06 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

春の蚊

春の蚊

例句を挙げる。

あはあはし春蚊よりわが生きざまは 朝倉和江
いきものは春の蚊なりし来るらしき 小池文子 巴里蕭条
しばらくは耳に春の蚊熊野道 斉藤夏風
たゝみ居る衣よりたちし春蚊かな 森千代子
ともしびにうすみどりなる春蚊かな 山口青邨
ともしびの色定まりて春蚊出づ 波多野爽波 鋪道の花
ひつそりと春の蚊を打つ水の音 森田正実
ぷーんと来る春の蚊にしてあな近き 高澤良一 寒暑
みどり児の手を出し眠る春蚊出づ 伊東とみ子
もの云ふはめんだう春蚊ふつと吹く 長谷川かな女 雨 月
ゆく春の蚊のスタンドに影ひける 臼田亞浪 定本亜浪句集
よだれかけ乳くさければ春蚊出づ 上田五千石 田園
わが袖のどこかに失せし春蚊かな 加倉井秋を 午後の窓
不忍の池より春の蚊の来たる 今井杏太郎
仏像のてのひらにして春蚊の死 鷲谷七菜子 黄 炎
何か曳き春の蚊飛べり三鬼亡し 秋元不死男
何もかもゆるしてをりぬ春蚊かな 松山足羽
何もかも春蚊も親し草の庵 富安風生
先生のあたりはづれや春蚊出づ 横山昌子
写楽の絵見てゐる春の蚊きいて 北原白秋
初蚊遣けふ箸初の浩宮 石田あき子 見舞籠
初蚊遣香や変らず青き渦 百合山羽公 寒雁
坐しゐたり鴫立庵の春の蚊に 町田しげき
声のみの春の蚊措きて文なさず 石川桂郎 四温
声明の黙より春の蚊がひとつ 中岡毅雄
夕日かなし春の蚊柱だけに差す 加倉井秋を 午後の窓
夕空を昇らむために春蚊生まれ 木村勇
大伽藍ぬけたる安房の初蚊なり 辻桃子
女のこと思ひ出さする春蚊かな 右城暮石 声と声
建長寺さまの東司や春蚊いづ 小沢謙三
御代の春蚊屋は萌黄にきはまりぬ 越人
患者らの血に太りたる春蚊打つ 三宅年子
愛憎の誰彼とほし初蚊遣 伊藤孝一
文机の脚を離れぬ春蚊かな 石川桂郎 高蘆
春の蚊がとまり白墨まみれの手 日原傳
春の蚊が墜ちし海図の最深部 内藤吐天 鳴海抄
春の蚊だ竹林に風呂立ててゐる 北原白秋
春の蚊のいておぞましや亭を去る 高濱虚子
春の蚊のうすうすとして灯に寄りぬ 水谷 たつ子
春の蚊のこゑなき肋痛むなり 石田波郷
春の蚊のとまりて敷布のべられし 中島月笠 月笠句集
春の蚊のひとたび過ぎし眉の上 日野草城
春の蚊のゐておぞましや亭を去る 高浜虚子
春の蚊のゐる手さぐりに吊り束子 石川桂郎 高蘆
春の蚊の乞食(ほいと)の葱にまとはるも 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
春の蚊の低きへ飛びて見失ふ 右城暮石 声と声
春の蚊の噂ほどなる声曳きて 野沢節子
春の蚊の寄つて来るのは寂しいか 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
春の蚊の尻ほそぼそと影のあり 吉武月二郎句集
春の蚊の文福茶釜より出でて 横山たかし
春の蚊の燈のほとり過ぎ顧みず 山口誓子
春の蚊の畳に低くそひうせし 上村占魚 球磨
春の蚊の絮の如くに吹かれきし 古賀 秀女
春の蚊の翅がうごいて紅らみぬ 今井杏太郎
春の蚊の翅のみどりに辞書の中 中拓夫
春の蚊の翅も乱さず打たれけり 加藤あき江
春の蚊の聞き誤りし声やらん 高濱年尾 年尾句集
春の蚊の肢折れやすく子を嫁かす 角川源義 『秋燕』
春の蚊の腹のみどりに辞書の中 中拓夫 愛鷹
春の蚊の酒肴の上をとびにけり 大橋櫻坡子 雨月
春の蚊は人になじまず去り行けり 高濱年尾 年尾句集
春の蚊ふつとたたいた 北原白秋
春の蚊やまみえてくらき翁像 深見けん二
春の蚊や一つとまりし雛の顔 正岡子規
春の蚊や乞食の葱にまとはるも 佐々木六戈
春の蚊や深酒せぬに二日酔 近藤一鴻
春の蚊や牡丹の覆けふ除りし 清原枴童 枴童句集
春の蚊や着物の膝をはなれゆく 三橋敏雄 まぼろしの鱶
春の蚊や職うしなひしことは言はず 安住敦
春の蚊や舞の由来に大柱 古館曹人
春の蚊よ竹林に風呂焚きつけて 北原白秋
春の蚊を真つ先に打つ女かな 仙田洋子 雲は王冠
春の蚊を遊ばせてゐる一と間かな 細川加賀 『玉虫』
春蚊たつ花鳥の袂曳く辺より 大橋敦子
春蚊とてめぐるをしばし許しけり 植田露路
春蚊とび子恋は安らぎに似たり 細川加賀
春蚊出づ擁きて世に遅るゝや 小林康治 玄霜
春蚊出づ暗きに文書裁断器 山崎ひさを
春蚊出てゆふべやさしきもののかげ 向田貴子
春蚊出て久女の墓に音生まる 北見さとる
春蚊出て早鐘の音をまとひけり 北見さとる
春蚊浮く夜や山ちかく移り住み 高井北杜
春蚊生る良寛の背の黒松に 堀 古蝶
春蚊生れて一隅水のひゞきけり 山上樹実雄
春蚊生れ闇も綾目をなせりけり 福永耕二
春蚊鳴く耳のうしろの暗きより 小林康治
松の幹によるべなくとぶ春蚊かな 雑草 長谷川零餘子
死をのがれたるか春蚊に鳴き寄らる 山口波津女 良人
浅草の鐘鳴り春の蚊一匹 石橋秀野
漂へる春蚊に昏き伎楽面 有馬籌子
独り病めば春蚊ささやく鼻の上 細川加賀
畳目にまぎれて春の蚊なりけり 岡本眸
病む母の息あはあはと春蚊いづ 恩田秀子
眼鏡の度上げねば初蚊見失ふ 高澤良一 素抱
紅茶土瓶の湯気の夜の春の蚊 北原白秋
脚垂れてきて金刀比羅の春蚊かな 古舘曹人 樹下石上
襟掛けてをれば出初めし春蚊かな 下田実花
西方に飢えし国あり春蚊鳴く 和田耕三郎
観音の腰のあたりに春蚊出づ 森澄雄
酒匂ふ神楽控へに春蚊出て 荒井正隆
金泥の菩薩刺さんと春の蚊が 古川水魚
雨二夜春の蚊過ぎぬまのあたり 中村汀女
電灯に近づき春蚊見えずなる 鷹羽狩行
顔の上草のにほひの初蚊鳴く 野沢節子

以上
by 575fudemakase | 2014-04-29 08:05 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)

山椒の芽

山椒の芽

例句を挙げる。

こなごなにたましひありて山椒の芽 齋藤玄 『無畔』
まだ匂ひ放たぬ小さき山椒の芽 官田節子
何にでも添ふる山椒の芽を摘んで 稲畑汀子
土用芽の中の山椒の芽を摘まな 戸井田和子
夕刊をとりて山椒の芽をとりて 高野富士子
大風に山椒の芽も出揃ひし 瀬戸 十字
夫婦となる人に匂えり山椒の芽 長谷川かな女 花 季
寺の水飲めば山椒の芽が匂ふ 青柳志解樹
山椒の芽さゞ波立てゝ拡ごりぬ 渡辺桂子
山椒の芽まつすぐに世を見たりけり 須佐薫子
山椒の芽やはじめても逢ふごとし 井沢正江 晩蝉
山椒の芽を摘みに出て門灯す 西村和子 夏帽子
山椒の芽午後から降らなきゃいいのにねぇ 高澤良一 燕音
山椒の芽少し摘みすぎ悔いにけり 佐藤ゆき子
山椒の芽摘むや山椒の香にまみれ 畠山譲二
山椒の芽摘む度に火山灰埃して 有里要子
山椒の芽母に煮物の季節来る 古賀まり子 緑の野
山椒の芽盗まむ夜を待ちにけり 石川桂郎 高蘆
山椒の芽食べてかぐろき遊びする 中村苑子
摺鉢は膝でおさへて山椒の芽 草間時彦
日もすがら機織る音の山椒の芽 長谷川素逝
朝夕に摘む一本の山椒の芽 上村占魚
流刑地の今はつらつと山椒の芽 佐藤ゆき子
祝ぎ言を享けをり芽山椒の香を口に 石田あき子 見舞籠
芽山椒の舌剌す一茶の墓詣 野沢節子
芽山椒一本を日にいくど見む 石川桂郎 高蘆
芽山椒青年を摘む匂いして 星野明世

以上
by 575fudemakase | 2014-04-29 08:04 | 春の季語 | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

プロフィールを見る

カテゴリ

全体
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
未分類

以前の記事

2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

ねずみのこまくら句会短評(2..
at 2017-07-16 03:58
2017年 7月 ねずみのこ..
at 2017-07-13 19:45
梅雨夕焼 の俳句
at 2017-07-06 05:03
天瓜粉
at 2017-06-29 13:24
栗 の俳句
at 2017-06-26 09:40

外部リンク

記事ランキング