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涼し 3

涼し 3


例句を挙げる。



涼しさや藁で束ねし洗ひ髪 井月の句集 井上井月
涼しさや藍より〔も〕こき門の空 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
涼しさや蚊帳の中より和歌の浦 漱石
涼しさや蝦釣舟の赤行燈 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
涼しさや裸でこゆる筥根山 子規句集 虚子・碧梧桐選
涼しさや襟に届かぬ髪のつと 斯波園女
涼しさや象の下掃く朝の人 佐野青陽人 天の川
涼しさや象を見おろす天守閣 仙田洋子 雲は王冠
涼しさや逆さに覗く紫蘇畑 飴山實 辛酉小雪
涼しさや過去帳閉ぢて夜の雨 渡辺水巴 白日
涼しさや遠く茶運ぶ寺扈従 高井几董
涼しさや野飼の牛の額つき 鳳仭 俳諧撰集「藤の実」
涼しさや針葉の梢星に遠く 内田百間
涼しさや鉋にけづる檜のにほひ 中川宋淵 詩龕
涼しさや鐘をはなるるかねの声 蕪村
涼しさや長けし蓬を縄からげ 魚目
涼しさや間毎にかはる渓の音 金尾梅の門 古志の歌
涼しさや雨を露なる竹の月 太祇
涼しさや雨後の畠の石拾ふ 上村占魚 鮎
涼しさや雷遠き夕まぐれ 冬柏
涼しさや風の色さす梅もみぢ 野坡
涼しさや飛天の見する土不踏 飴山實 『花浴び』
涼しさや駕籠に隙やる茶屋の店 水田正秀
涼しさや髪結ひ直す初きげん りん 俳諧撰集玉藻集
涼しさや鷺も動かぬ杭の先 正岡子規
涼しさや黒き朝顔あるべからず(三鷹事件判決 橋本夢道 無禮なる妻抄
涼しさよ不来の人のふいと来て 会津八一
涼しさよ字の名にして土清水 高橋睦郎 金澤百句
涼しさよ手まり程なる雲の峰 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
涼しさよ白雨ながら入日影 向井去来
涼しさよ鰻頭喰ふて蓮(はちす)花 広瀬惟然
涼しさをいふ口許の黒子かな 野中亮介
涼しさをみずみずしさをオカヒジキ 高澤良一 燕音
涼しさをもてなしとして離れ侍す 伊藤風楼
涼しさをわが宿にしてねまるなり 松尾芭蕉
涼しさを思ひ出させて降る雨よ 汀子
涼しさを我が宿にしてねまるなり 芭蕉
涼しさを持ちあふ風の便りかな 越後三条-はつ 俳諧撰集玉藻集
涼しさを此松でもつた軒端哉 井原西鶴
涼しさを汲むごと寸時会ひ別る 村越化石
涼しさを添へてもの言ふ夜の秋 森澄雄
涼しさを祈り過てや羽ぬけ鳥 横井也有 蘿葉集
涼しさを絵にうつしけり嵯峨の竹 松尾芭蕉
涼しさを聲になせざる涼しさよ 牧石剛明
涼しさを見せてそよぐや城の松 内藤丈草
涼しさを見せてや動く城の松 丈草 (犬山にて市中苦熱)
涼しさを進上申すあふぎかな 立圃
涼しさを飛騨の工が指図かな 松尾芭蕉
涼しやとおもひ涼しとおもひけり 後藤夜半 底紅
涼しやな百済観音酒買ひに 松山足羽
涼し夜の壁蚊は守宮が食うべけり 林原耒井 蜩
涼し音のあとしのび音をししおどし 石塚真樹
淋しきまで涼し涼しきまで淋し 成瀬正とし 星月夜
淡路島涼しく欄にのるごとし 五十嵐播水 埠頭
深夜涼し脚細りゆく戸外の椅子 大井雅人 龍岡村
清水諸白涼しきゆへに其の名をうる 吉林 選集「板東太郎」
清浄の涼しき庵を残し置き 星野立子
渓の家涼しと見れば畳掃く 大岳水一路
渓音に聾ひて昼寝涼しけれ 金尾梅の門 古志の歌
渡海船嬉々と乗りこむ島涼し 小原菁々子
湖で別れし顔の涼しかる 瀧澤伊代次
湖の空涼し晩鴉も急がざる 林原耒井 蜩
湖の雨の涼しき胡瓜もみ 富安風生
湖の風涼しく入りて廊下の灯 京極杞陽 くくたち下巻
湖を前に涼しき焚火かな 比叡 野村泊月
湖涼しボートで通ふ宇賀の禰宜 鈴鹿野風呂 浜木綿
湖涼し打出の小槌お守りに 松田雄姿
湖涼し鰺刺打ちてやや潜る 皆吉爽雨 泉声
湯あみゐて涼しき風の流れくる 上村占魚 球磨
湯どうふを食べて涼しくなりにけり 深見けん二
満願の涼しき露をならべけり 中川宋淵
溢れて涼し炭礦路地の日焼子は 小林康治 玄霜
滝仰ぎ命涼しき袖袂 小林康治 玄霜
滝涼しはこぶ餌を待つ小鶺鴒 渡辺水巴 白日
滝涼し神ありとせば濡れてゐむ(白糸の滝) 河野南畦 『空の貌』
滝涼し蝶吹かれ来て吹かれ去り 鈴木花蓑句集
滝涼し那智の巫女字を習ふ 橋本鶏二 年輪
激流涼し虎杖巨林なせりけり 岡田日郎
濃き日あり涼しき風のありぬべし 後藤夜半 底紅
瀑涼し奇岩を一人づつ領し 田村了咲
瀬々涼しひらく投網に鹿島槍 岡田 貞峰
火口壁牢獄なせり月涼し 福田蓼汀 山火
火山灰降つて涼しき風の入れられず 中園七歩才
灯だんだん暁けぐむ白気涼しみぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
灯のもとの秋果涼しき影持てり 阿部みどり女
灯の下に見知らぬ鳥の瞳涼し 長谷川かな女 雨 月
灯の海に立ちゐて涼し万灯会 工藤葉子
灯の涼し「てんとうむし」といふ店に 照子
灯の涼しかんざし店に銀の蝶 千手 和子
灯の涼し唄ひて和してソンブレロ 北見さとる
灯を消すや蹠涼しく褥ふみ 佐野美智
灯を消せば涼しき星や窓に入る 夏目漱石 明治四十四年
灯台の灯の回りくる涼しさよ 大串章 百鳥 以後
灯涼しく粋に山の端にはまだ日 京極杞陽 くくたち上巻
灯涼し並べる沙弥の頭は剃り立て 長谷川かな女 花寂び
灯涼し消ぬるは浪の高きがため 福田蓼汀 山火
灯涼し船影水をよぎるゆゑ 福田蓼汀 山火
炎天の大仏へ妻と胎内の涼しさに 橋本夢道 無類の妻
炎天を来て無類の妻の目の涼しさ 橋本夢道 無類の妻
炎曇いまわが家は厠のみ涼し 桂信子 黄 炎
烏賊売りの声涼しきを選び買ふ 林翔 和紙
無人島の天子とならば涼しかろ 夏目漱石(1867-1916)
無関心装う顔のいと涼し 高澤良一 随笑
焼打ちをのがれ涼しき観世音 野見山ひふみ
煩悩も菩提も識らず月涼し 岡安迷子
煩悩をひとつあずけて寺涼し 金堂豊子
煩悩無尽闇が見え来て涼しかり 小松崎爽青
熨斗むくや磯菜涼しき島がまへ 水田正秀
燈台をコンパスとして海涼し 下村梅子
燈涼しく総玻璃聖堂山頂に 吉良比呂武
燈涼し遊ばんかなとおもひつつ 京極杞陽 くくたち上巻
燈臺の光さすとき海涼し 原石鼎
燕尾服にかの行進曲こそ涼しけれ 大井恒行
燕返す弥陀へ涼しき声を投げ 羽部洞然
父祖の地に入りて微塵の星涼し 橋本榮治 麦生
爺さまの意地の悪さよ涼しさよ 筑紫磐井 花鳥諷詠
爽波先生言ひたい放題露涼し 辻桃子
牛飼星涼し人に後るゝばかりにて 小林康治 玄霜
犬吠の句碑涼しかり親しかり 高木晴子 花 季
狂ひ咲く桜一輪涼しけれ 小松崎爽青
狂院の後ろ涼しき松林 都筑智子
独りゐて闇を涼しむ蓮の花 重田暮笛
狭き帯しめて涼しき立居かな 久保田万太郎 草の丈
猫までが不機嫌今宵涼しきに 殿村莵絲子 牡 丹
献饌の儀に折からの雨涼し 森田峠
玉澤のずんだ餅目に涼しきよ 高澤良一 寒暑
珠洲焼の引き緊りたる黒涼し 沢木欣一 往還以後
現れて漕ぎゆくカヌー月涼し 河合いづみ
球場の暑しといへど球涼し 小路紫峡
琴の爪揃ふ涼しくおそろしく 石田勝彦 秋興
瓜くふや涼しき声の女共 妻木 松瀬青々
瓜もむや灯影の末の涼しさに 増田龍雨 龍雨句集
生家涼し煤け時計の鳴り出でて 羽部洞然
産着着てはやも家族や蝉涼し 渡辺水巴
産着縫ふこと涼しさのはじめなり 臼井悦子
産衣着てはやも家族や蝉涼し 渡辺水巴 白日
田草取る若狭や雨の涼しさに 森澄雄
田草取苦しきものは涼しきごと 森澄雄
男涼しコントラバスを横抱きに 小枝秀穂女
町に出て宵は涼しき花屋かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
留守のまの手紙読む灯の涼しけれ 碧雲居句集 大谷碧雲居
留守の婢涼し磨きて木目波紋めく 香西照雄 素心
畝涼しく高原野菜向ひ峯まで 佐野美智
病とふ同伴者あり露涼し 田川飛旅子
病には触れず涼しき文届く 山口 英子
病みて見るこの世美し露涼し 遷子
病む妻の眸涼しく頷きし 野川 枯木
病床を空けて涼しむ簟 中川岩魚
病母問へばすべて涼しく答へけり 渡辺恭子
症状の因(もと)の知れたる涼しさよ 高澤良一 素抱
癌病むあなたよ涼しくしているかなあ 田中陽
白い船が窓を横切り事務涼し 大井雅人 龍岡村
白は目に涼し夾竹桃さへも 稲畑汀子
白木槿涼しき昼に夜がつゞき 高橋馬相 秋山越
白樺に雨音のして来て涼し 龍胆 長谷川かな女
白涼し紫も亦涼しく著 星野立子
白粥の一椀のみの涼しさよ 藤崎久を
白粥や起き直りえて風涼し 原田種茅 径
白蝶の森に這入るを見て涼し 阿部みどり女
白鳥を少女がなぶる涼しさよ 中村苑子
百合涼し右にゆれても左にも 河東碧梧桐
百姓名涼しく蓑湖猫又湖 西本一都 景色
百日紅をさな木なれば涼しさよ 相馬遷子 山河
百日紅涼しき木かげつくりけり 高橋淡路女 梶の葉
百畳に松の枝這はす涼しさよ 杉本寛
盆三日涼しき部屋に熟睡せよ 角川源義 『冬の虹』
盆東風に暮れて涼しき浜火かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
盗まれて南瓜涼しき朝の露 中勘助
目があへば会釈涼しく返り来る 星野立子
目が覚めて鶏のゐる涼しさよ 岸本尚毅 舜
目つむりぬ風の涼しきところ得て 加藤覚範
目の前の岩に雲立つ涼しさよ 名和三幹竹
目をすゑて涼しき別れかはしけり(十月七日老父重態) 石原八束 『雁の目隠し』
目を閉ぢて無念にあれば涼しかり 阿部みどり女 『石蕗』
目元涼しく「私カタクチイワシです」 高澤良一 燕音
目礼の涼しき距離の飛騨民家 都筑智子
目立たざる涼しき服を夜も着て 後藤夜半 底紅
目立つなく装ふ人とゐて涼し 岡本まち子
相許せどなほ文もせず居る涼し 中塚一碧樓
真黒き釣鐘を見て昼涼し 桂信子 草樹
眼を病めばものみな暈を被て涼し 伊藤いと子
着きてすぐ海鞘もてなさる日涼し 野澤節子 黄 炎
着く汽車に犬は涼しき貌を立て 辻田克巳
瞳が涼し蓬髪無言の山男 福田蓼汀 秋風挽歌
石段を登り漁村の寺涼し 高浜虚子
石畳径ひろひに髪涼し 石川桂郎 高蘆
石筍の親子が並ぶ洞涼し 森田峠 避暑散歩
砂浜に雑魚うちあけて月涼し 正岡子規
磯枕涼しといふもおろか也 尾崎紅葉
祝福の涼しき声に和してをり 稲畑廣太郎
神垣の巖となりて浪涼し 尾崎紅葉
神山を涼しき杣の抜けてゆく 大峯あきら 鳥道
神楽笛ここ涼し音の佃堀 古沢太穂
神鏡のわれを捉へて涼しけれ(羽黒山) 上村占魚 『一火』
祭服の涼しき白や起工式 稲畑廣太郎
禁煙禁煙大杉並木涼し 石川桂郎 四温
禅門の戒の一字や露涼し 正田稲洋
秋くさをいさゝかまじへ草涼し 久保田万太郎 草の丈
秋は涼しき店のいろくづ水たらす 臼田亜浪 旅人
空涼しネオン疲るるさまもなく 岩崎照子
空港の灯は赤と青芝涼し 田中蘇冬
空港の雨の涼しさ殊のほか 森田峠 避暑散歩
空言の恋の坩堝にゐて涼し 西川良子
窓あけて寝ざめ涼しや檐の雲 正岡子規
窓に並べて万年青も涼し旧病棟 石川桂郎 高蘆
窓涼し今は一つの舟も見ず 五十嵐播水 埠頭
窯元の老主帷子涼しげに 真柄 嘉子
競られゐて暑き鮟鱇飛魚は涼し 野澤節子 黄 炎
竹も木もわかなくなりて暮涼し 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
竹よ竹何なければぞ涼しけれ 広瀬惟然
竹人形ひとり言さへ涼しくて 渡辺恭子
竹林をはみだせる竹涼しけれ 大木あまり 雲の塔
笑ひさうな骨格標本風涼し 上田 春日
笑み涼し何を夢見て赤ん坊 高澤良一 素抱
笙涼し遥かに蓮の葉分船 蓼太
笛吹いて涼し壁画の飛天仏 木暮剛平
笛方の涼しき袖を水鏡 小原芳子
笠あふつ柱涼しや風の色 史邦
笠かろくかぶりつれ日の涼しさよ 久保田万太郎 流寓抄以後
笠置いて木かげ涼しき日の匂ひ 中川宋淵 詩龕
第一鎖骨の涼しさ乙女ら珠洲へ行く 磯貝碧蹄館
第三の石門涼し雲の上 子規句集 虚子・碧梧桐選
筑波見ゆると有馬総長涼しかり 今瀬剛一
箔置くに涼しき息を使ひけり 吉田紫乃
箱庭のとはの空家の涼しさよ 京極杞陽
箸涼しなまぐさぬきのきうりもみ 久保田万太郎 流寓抄
籠に盛りてどの花となく涼しさよ 高濱年尾 年尾句集
米を磨ぐ水の涼しさいくたびも 蓬田紀枝子
粧ふといふは涼しく見せること 木内悠起子
精進の器の涼し青高野 村越化石
糸からくり大きな所作の音涼し 高澤良一 ぱらりとせ
糸すゝき涼しき夜の花瓶かな 長谷川かな女 雨 月
紋どころ涼しき日覆三船祭 福田章史
紙カップまづまろばして風涼し 久保田万太郎 流寓抄
紙コップ飛ぶ涼しさや舟遊び 吉屋信子
紙ナプキン折目涼しき樹下の卓 渡邊千枝子
素木仏涼しきまでに痩せたまふ 太田 昌子
素裸になりて見せたる涼しさよ 竹冷句鈔 角田竹冷
紡錘形に鳩の彫刻楽涼し 中戸川朝人
紫禁城高野の僧に会ひて涼し 杉本寛
紫蘇揉んでひとりの夕餉涼しけれ 石田あき子 見舞籠
紫陽花の灯を消し思ひ涼しくす 古賀まり子 緑の野
細格子連ね茶屋街雨涼し 都筑智子
組紐の媼涼しき糸さばき 山口貴志子
経糸涼し一本通るくるみ染 猿橋統流子
結ひあげて涼しき髷となりにけり 久保田万太郎 草の丈
結納の二人へ母は涼しき髪 都筑智子
結跏趺坐生死の外の涼しさか 橋本榮治 麦生
絵硝子の藍の涼しき神学部 石田克子
緑涼し沙彌がくみ来る出ながれ茶 河野静雲 閻魔
縁涼しかくもちひさき足の痕 瀧春一 菜園
縁涼し浮べるごとく人坐る 五十嵐播水 埠頭
美食家の歯音涼しうモモスズメ 高澤良一 燕音
群星にうもれしわれの一人涼し 原石鼎 花影以後
義によって命涼しき硯かな 立花北枝
義民祭る蝋涙涼しげすぐ濁り 香西照雄 対話
老の手にまはるろくろが涼しいぞ 後藤夜半
老人に会うて涼しくなりにけり 今井杏太郎
老優の齢涼しくありにけり 市村季子
老居士と朝茶一喫露涼し 上林白草居
老杉にむささびの穴湖涼し 西本一都 景色
耳飾り樹下に涼しき婆の耳 上野さち子
肌たたき命涼しみゐたるかな 村越化石
胡瓜喰らひ息の涼しき貧家族 澤木欣一
胸の手の涼しく明けて鯛の海 野澤節子
胸板に夜風涼しみゐる患者 高澤良一 鳩信
能もなき教師とならんあら涼し 夏目漱石(1867-1916)
脱ぐ笠の涼し泊りにつく同者 井上井月
腕時計外せるのみにやや涼し 白岩 三郎
腰かくる石さめざれど夕涼し 松藤夏山 夏山句集
腰かけて中に涼しき階子かな 浜田酒堂
腰長や鶴脛ぬれて海涼し 松尾芭蕉
膝と膝に月がさしたる涼しさよ 河東碧梧桐
自ら風の涼しき余生かな 虚子
自動車のぱたんとしまる峡涼し 京極杞陽 くくたち上巻
自在鉤涼し土間より風の沙汰 櫛原希伊子
舞ふ獅子の白衣に蹤きて蝶涼し 伊藤いと子
舞台裏見えて涼しき野外劇 伊東白楊
舟屋見ゆ蕪村の海の涼しさに 浅井青陽子
舟涼し吹かれて居れば吹きにけり 立花北枝
航涼し河水濁りすでになく 中田みづほ
船でゆく寺や離宮や風涼し 伊藤いと子
船と船通話して居る灯涼し 高濱虚子
船の灯の遠ざかりゆく涼しさよ 五十嵐播水 埠頭
船旅の涼しく老いし二人かな 小山徳夫
船涼し左右に迎ふる対馬壱岐 高浜虚子
船霊を山に上げたる涼しさよ 鳥居おさむ
良寛の頤細き涼しさよ 村松紅花
芋の露ひぐれて涼し海の村 田中裕明 櫻姫譚
芝庭の広さわからぬ闇涼し 高木晴子 花 季
芭蕉葉にかくれて涼し夏の月 松藤夏山 夏山句集
芭蕉隆く露走り来る涼しさよ 小林康治 玄霜
花と実の中垣涼し梨子の窓 上島鬼貫
花捨ててむしろ涼しき硝子花器 朝倉和江
花木槿足腰立てば涼しもよ 林原耒井 蜩
苔涼し平泉先生の白緒下駄 桂樟蹊子
若水に鰹のをどる涼しさよ 其角
茄子売の言少なけれ顔涼し 羽部洞然
茄子紺に恵那山昏るる涼しさよ 西本一都
茅の輪に日向ながらの雨涼し 内藤鳴雪
茴香に涼しき雲の通ひけり 岸秋溪子
茶のこころ夏は涼しくあれとのみ 西本一都
茶の稽古いとなまれゐて寺涼し 上村占魚 球磨
茶屋涼しひとり残りてする昼寝 高濱年尾 年尾句集
草ぐきに鰓さしきたる涼しさよ 斎藤梅子
草屋根の勾配涼し伊香郡 杉山青風
草庵の砂糖涼しき苺かな 増田龍雨 龍雨句集
草涼し夢は輓馬の音に覚め 河野多希女 こころの鷹
草涼し蜘蛛は眠りの糸を吐く 庄司圭吾
草清水草にもつるる涼しさよ 西本一都 景色
草臥(くたぶれ)はどふも涼しい月よなふ 広瀬惟然
荻窪に茣蓙屋があればこそ涼し 筑紫磐井 花鳥諷詠
菩提樹下誘はれて涼し珈琲どき 桂樟蹊子
萱馬のたてがみ涼し波が越す 伊藤いと子
葉から葉へつたふて涼し竹の雨 羽幸
著莪の花涼しさを知るはじめなり 細見綾子 花寂び
葛切の井の涼しさを掬ふごとし 大野林火
葛切や齢涼しく父は老い 橋本榮治 麦生
蒲活けてあり涼しさの乱れなし 宮津昭彦
蓮一葉抽く稲原の朝涼し 金尾梅の門 古志の歌
蓮喰うて先づ寂しさよ涼しさよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
蓼の葉の虫枯れて鳴る涼しけれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蓼科の夜はしんしんと星涼し 鳥羽とほる
蔵座敷五尺時計の音涼し 白澤よし子
蔵涼し千両箱の黒びかり 山田紀子
蔵涼し紅屋の裔の鈴木姓 森田峠 避暑散歩
蕗の葉のひるがへりつゝ道涼し 石橋辰之助 山暦
薄羽蜉蝣酒断ちてより灯の涼し 小松崎爽青
藍蔵のなか何もなき涼しさよ 長谷川櫂
藤の実の如く垂れなば涼しからむ 高澤良一 ぱらりとせ
藻に触れてゆく水が見え朝涼し 大串章
虎杖の箸を涼しくまゐらせり 松山足羽
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實(1956-)
虚子坐像涼し闘志は秘めしまま 千原叡子
虫たべに来て鳥涼し高山寺 宇佐美魚目 天地存問
虫涼し天象星を列ねたり 大木格次郎
蚊嫌ひの母に戸ざして夜雨涼し 富田木歩
蚊帳吊らぬ涼しさ語り更かしけり 金尾梅の門 古志の歌
蛇笏忌の雲飲食を涼しくす 河野友人
蜜豆の寒天の稜の涼しさよ 山口青邨
蜻蛉の羽ね涼しげに生れけり 高橋淡路女 梶の葉
蝉涼しわがよる机大いなる 杉田久女
蝉涼し一路直ちに山門へ 露月句集 石井露月
蝉涼し仏足石に供へ米 冨田みのる
蝉涼し八雲山風吹き通ふ 鈴鹿野風呂 浜木綿
蝉涼し妙義荒尾根空を馳せ 河野南畦 湖の森
蝉涼し少年隊伍もて来たる 岸風三楼 往来
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉涼し折々風に鳴きほそり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
蝉涼し朴の広葉に風の吹く 碧梧桐
蝉涼し水踏んて来た藁草履 尾崎紅葉
蝉涼し汝の殻をぬぎしより 杉田久女
蝉涼し流れにそむき梳れる 太田鴻村 穂国
蝉涼し睡魔払ひに下り立てば 清原枴童 枴童句集
蝉涼し絵馬の天人身を横に 松本たかし
蝉涼し絶えず刈藻のながれくる 瀧春一 菜園
蝉涼し翁も触れし老杉に 小松崎爽青
蝉涼し蟹ははさみをたたみ去る 阿部みどり女
蝉涼し足らぬねむりをねむりつぐ 秋櫻子
蝉涼し蹴鞠は刻を惜むなく 岸風三楼 往来
蝉遠く切支丹浄土涼しけれ 小林康治 玄霜
蝦夷菊に日向ながらの雨涼し 内藤鳴雪+
蝶涼しトラピスチヌの牧草地 西本一都
蝶涼し一言主の嶺を駈くる 阿波野青畝
蟹の穴塞ぎみぬ夕べ涼しくて 中島月笠 月笠句集
蠍座の涼しく揺るる沖は恐し 山本歩禅
行く涼し谷の向ひの人もゆく 原石鼎
行水や戸板の上の涼しさに 素牛 俳諧撰集「藤の実」
行違ひあれど逢ひ得し樹下涼し 高木晴子 花 季
街ゆけり独りを涼しと思ひつつ 山田みづえ 草譜
衣更へて命涼しく老いにけり 前田 白露
袒て如来涼しき一夏かな 菅原師竹句集
裏まれて居る涼しさの夜半の霧 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
裏口は涼し寂しと深空あり 中尾寿美子
裏寝覚表寝覚と水涼し 西本一都 景色
裸火を神の灯と置く涼しさよ 林翔 和紙
裾さばき涼しきマラヤ娘たち 成瀬桜桃子 風色
西日さし涼しき風も亦入りて 波多野爽波 鋪道の花
西谷に西寺涼し観世音 杉本寛
西返し涼しき雨となりにけり 烏不關句集 織田烏不關、吉田冬葉選
要やゝ綻びし扇涼しけれ 小林康治 四季貧窮
見えてゐるその辺の灯の涼しけれ 上村占魚 球磨
見むとし見れば石の涼しさ湧き漂よふ 加藤知世子 花寂び
見るからに涼しき島に住むからに 夏目漱石 明治三十七年
観音のこゑの涼しき口説かな 石毛喜裕
解きし握手の手を振る別れ涼しくも 稲垣きくの 黄 瀬
解し合ふ言葉少なにゐて涼し 高木晴子 花 季
誕生日わが名二音の涼しかり 内田 美沙
誘ひ合ふて厠にゆく子月涼し 佐野青陽人 天の川
語らずにゐる涼しさや簟 岡安迷子
読みほけて涼しと思ふ夜のくさめ 林原耒井 蜩
護摩の火と向き合ふ正座眉涼し 森青山
谷の祠涼しく朽ちて居たりけり 尾崎迷堂 孤輪
谿の螢峰ほととぎす歌碑涼し 加藤知世子 花寂び
象潟や涼しき潮に千松嶋 松根東洋城
貧乏癌よ「掠めること火の如く」死も涼し 橋本夢道 無類の妻
責め三味のきびしく涼し老瞽女 西本一都 景色
貸馬の瞳の涼しさのかなしさよ 風生
賭場出てプール邊に佇つ月涼し 吉良比呂武
赤ん坊と一つ毛布に月涼し 岸本尚毅 舜
赤子つむる一文字二つこそ涼し 蓬田紀枝子
赤子に汽車見せて涼しむ麻畑 野澤節子 黄 炎
赤子涼しきあくびを豹の皮の上 野澤節子 花 季
起工式待つ昂りの涼しさよ 稲畑廣太郎
足音をきゝ振り向かず椅子涼し 高木晴子 花 季
足高に涼しき蟹のあゆみかな 木因
躍る水鎮もる水に苔涼し 吉年虹二
身にまとふ反古捨てさらば涼しからむ 塘柊風
身ふたつになりし涼しさほほゑみて 橋本鶏二 年輪
身ほとりに夜風山風涼し過ぎ 高木晴子 花 季
身辺に母がちらちらして涼し 耕二
車前草も人のくすりに谷涼し 宇佐美魚目 秋収冬蔵
車窓涼し驚異の潤目欠伸の穴 香西照雄 素心
車輪梅井の涼しさに匂ふかな 河野南畦 湖の森
軍刀利さん涼し涼しと登りけり 飯島晴子
輝く日涼しき水に城映る 高木晴子 花 季
迎火の灰わが死後も露涼し 松村蒼石 雁
追風にまろびて涼し沖津波 水原秋桜子
逃がしやる鮒掌に涼しけれ 中田剛 珠樹以後
透きとほる流れの涼し鯉もまた 西井静子
逢へばまた厚きてのひら涼しくて 野上けいじ
遊亀展の白寿の画業涼しけれ 伊東宏晃
道もその道に叶ふてもの涼し 千代尼
道涼し芦の風また蒲の風 峠
道草ずつと涼しい夕風に送られて友来る 人間を彫る 大橋裸木
遠きほど*えりの定かや波涼し 梅原黄鶴子
遠き世の涼しさ残す袴襞 林翔 和紙
遠つ祖ここらや漕げる松涼し 臼田亞浪 定本亜浪句集
遠の灯の名ををしへられ居て涼し 竹下しづの女 [はやて]
遠泳後の入江涼しき舵の音 中拓夫 愛鷹
遠泳終ふ入江涼しき舵の音 中拓夫
遺墨にも月日涼しく流れけり 辻口静夫
遺影ふと励ましの目を涼しき灯 高木晴子
遺影涼し林中を牛の斑が移り 子郷
配られて水色の飴涼しさう 都筑智子
酒盛の椰子葉囲ひに灯の涼し 桂樟蹊子
酒蔵の裏涼しくて朝の市 沢木欣一
酔て猶眼涼しやさくら人 高井几董
酔語悔いをり終電車涼しくて 細川加賀 『傷痕』
醜男の蜂子皇子の山涼し(羽黒山) 細川加賀 『生身魂』
野に下れば白髯を吹く風涼し 夏目漱石 明治三十七年
野村万蔵蹴つて袴の涼しけれ 大木あまり 火球
金・銀で酬ゆる恩の涼しかり 筑紫磐井 婆伽梵
金婚や金の小匙の涼しかり 田中英子
金山の発破をり~月涼し 河野静雲 閻魔
金持は涼しき家に住みにけり 正岡子規
金泥で書く波羅蜜の涼しさよ 筑紫磐井 野干
金網の中に涼しき佛かな 会津八一
金花佐久ゆめの万葉仮名涼し 山田みづえ 木語
金銀の光涼しき薬かな 川端茅舎
針とぶといふレコードも涼しけれ 田中裕明 先生から手紙
針山を涼しく風の通りけり 松山足羽
針荒き雑巾寄進寺涼し 赤松[けい]子 白毫

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by 575fudemakase | 2014-07-31 00:58 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

涼し 4

涼し 4


例句を挙げる。



霧噴いて灯影涼しや植木市 三宅孤軒
霧涼しなき母の名を人に言ふ 橋本鶏二
露といふとびつくものの涼しけれ 西本一都 景色
露涼しくて化野と言ふところ 下村梅子
露涼しとてかよひ路のあらはなる 田中裕明 花間一壺
露涼しひとりに猛き山の草 中村汀女
露涼し上着をぬぎて誰も手に 久保田万太郎 流寓抄
露涼し人また涼しかりしかな 倉田紘文
露涼し佐用媛石の泣くといふ 下村梅子
露涼し何も願はず合掌す 渡辺恭子
露涼し夜の風紋を刻みつつ 岸田稚魚 筍流し
露涼し太陽の面まだ平ら 川端茅舎
露涼し富士は裾野の捨草鞋 青木重行
露涼し寝墓に彫りし聖十字 景山筍吉
露涼し山家に小さき魚籠吊られ 大串章 百鳥
露涼し幾重離りて山の色 松村蒼石 露
露涼し形あるもの皆生ける 村上鬼城
露涼し戦信敷居の上に来る 加倉井秋を
露涼し掌ほどの畠づくり 上村占魚 鮎
露涼し方十尺の書斎跡 下村ひろし 西陲集
露涼し日輪は地を離れつゝ 西島麥南
露涼し月毛の馬のとほるなり 岡井省二
露涼し朝ひとときの畑仕事 津田柿冷
露涼し朝富士の縞豪放に 富安風生
露涼し木末に消ゆるはゝき星 石井露月
露涼し洗はぬ顔の妻や子や 日野草城
露涼し白樺の葉はハート型 西本一都 景色
露涼し答へし齢驚かれ 赤松[ケイ]子
露涼し自在鉤影なす青畳 石川桂郎 含羞
露涼し芝生につきし栗鼠の径 神田九思男
露涼し葉うらの瓜に朝日影 比叡 野村泊月
露涼し蚊帳吊草は花つけて 小杉余子 余子句選
露涼し足神さまへ竹の径 つじ加代子
露涼し鎌にかけたる葛の蔓 飯田蛇笏 霊芝
靄に消えあらはるゝ島も帆も涼し 乙字俳句集 大須賀乙字
青い山の上にも山、くもれるを涼しとする 荻原井泉水
青春かく涼しかりしか楡大樹 鍵和田釉子
青桐が見え三面鏡涼し 柴田白葉女 花寂び 以後
青物に涼しき月の巷かな 尾崎紅葉
青畳涼し一書の重さの影 野澤節子 黄 瀬
青竹の涼しき音を振りこぼす 佐藤美恵子
青笊に湯呑が盛られ土工涼し 香西照雄 対話
青葉木菟姉亡き家の涼し過ぐ 羽部洞然
非在また涼しきものか花はちす 伊丹さち子
面舵に船傾きて星涼し 高浜虚子
靴脱いで久闊の露涼しけれ 田中裕明 櫻姫譚
音に抜く涼しさ宵の洋酒瓶 河野南畦 『風の岬』
音速の涼しさ運ぶ梓川 佐藤美恵子
須磨の浦や松に涼しき裸蜑 子規句集 虚子・碧梧桐選
須磨涼し今も昔の文のごと 阿波野青畝
頭の中の涼しきものをはたらかす 村越化石
頭家出る獅子に切火の涼しさよ 伊藤いと子
頭照りつつ己れ涼しき羅漢たち 柴田白葉女 『朝の木』
顔にふるる芭蕉涼しや籐(と)の寝椅子 夏目漱石 明治三十二年
顔入れて馬も涼しや花卯木 普羅
風さけて入り日涼しき菖蒲の日 千代女
風のない涼しさよしんと葉波立ち 室生犀星 犀星発句集
風吹いて来て家中涼しゅう 高澤良一 寒暑
風太郎涼しむ上野の山のかぜ 高澤良一 素抱
風涼しく詩の舟少しおくれたり 子規句集 虚子・碧梧桐選
風涼し墓になりても母に侍す 西本一都
風涼し折鶴蘭の刎ねちがひ 西本一都 景色
風涼し月に連珠の二階かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人
風涼し机の上の湖月抄 井上井月(1822-86)
風涼し架上絶叫せし虚空 羽部洞然
風涼し母の白髪の飛ぶばかり 細川加賀 生身魂
風涼し灯柱によせつけて 竹冷句鈔 角田竹冷
風涼し生地(せいち)へかへる浪の音 立花北枝
風涼し神の声なき声と聞く 桑田青虎
風涼し銀河をこぼれ飛ぶ蛍 野見山朱鳥
風涼し雀にまがふ一市民 中村草田男
風涼し黒子も父の遺せしもの 猪俣千代子 堆 朱
風生と死の話して涼しさよ 高浜虚子(1874-1959)
風知草涼しき声でもの言はな 鈴木栄子
風穴の涼しさの手の夫に触る 敦賀皓子
風色や枸杞垣煽つ宵涼し 富田木歩
風鈴のもつるるほどに涼しけれ 中村汀女
風鈴の垣根涼しく曲りけり 阿部みどり女 笹鳴
風鐸の下涼しさを賜れり 毛塚静枝
飛ばしたる笠揉む濤や崖涼し 比叡 野村泊月
飛ぶ種の大きな翼涼しけれ 田中裕明 先生から手紙
飛機整備引継ぐ真夜の月涼し 柴田黒猿
飛騨涼し北指して川流れをり 大野林火(1904-84)
飲食もて悼むならひや露涼し 齋藤玄 『雁道』
饒舌も夜の水音も涼しかり 稲垣きくの 黄 瀬
香冷えの仏眼逢ひしのち涼し 中尾寿美子
馬の首叩いて森の涼しけれ 大木あまり 火球
馬車涼し極星高く北に来ぬ 福田蓼汀 山火
駅の灯の涼しき果を思ひけり 中川宋淵 遍界録 古雲抄
高原といふ円さあり露涼し 林 糺苑
高原涼し靄の刻すぎ朝日の萱 古沢太穂 古沢太穂句集
高架下涼しはらはら鳩こぼれ 高井北杜
高館や風の涼しとのみ云へで 大橋敦子
髪少しつめて涼しく結ひにけり 高橋淡路女 梶の葉
髻のくづれ涼しき勝名乗 肥田葉子
魂迎ふ闇を涼しき草の音 鷲谷七菜子 花寂び
魚釣らで涼しさ釣りぬ舟かへす 野村喜舟 小石川
鯉が蹤き鯉にわがつき水涼し 皆吉爽雨 泉声
鯉の餌の浮く間あらせず水涼し 赤松[けい]子 白毫
鯉涼し水を忘れしごとく居る 森澄雄 所生
鰻選る涼しき小屋のなまぐさき 百合山羽公 寒雁
鱒あかり鱒くらがりと池涼し 亀井糸游
鱒ゆらとその向き変へるとき涼し 高澤良一 宿好
鵠は白く鴉は黒き涼しさよ 芥川龍之介 我鬼窟句抄
鶴舞へり松風奏で涼しさに 山口青邨
鶴飛ぶらさぞうれしうも涼しうも 広瀬惟然
鷺の立つ中洲の草や川涼し 正岡子規
鷺涼しお水送りの川筋に 森田峠 逆瀬川以後
鷺涼し鏡花の町を訪ふべきとき 文挟夫佐恵 黄 瀬
鸚鵡涼し常磐津師匠盲ひゐて 石原八束 空の渚
鹿の斑のさくら色して涼しけれ 和田耕三郎
鹿涼し満ちくる潮に脚濡らし 野澤節子 『八朶集』
麦飯をぼろぼろ食ひて涼しけれ 前田普羅
麻の香のくるも涼しや寺の庭 立花北枝
麻服涼しげ慇懃無礼の口髯も 赤城さかえ句集
黄帷子残りしいのち涼しくす 立花豊子
黄金(くがね)の如生きよ一字金輪佛(いちじきんりんさん)涼し 辻桃子
黄金の如生きよ一字金輪佛涼し 辻桃子 花
黒く涼し聖女の祈り汗し見ゆ 小林康治 玄霜
黒もまた涼しき色よ夏帽子 野坂 安意
黒を着て涼しき心お盆なり 井上 雪
黒曜の瞳のほころびしとき涼し 大橋敦子
黒檻の涼しく眼そらしけり 上村占魚 鮎
黒海上空涼しく雲の漂へり 上野さち子
黒白を以て眼なり涼し 桑原三郎
黒神殿御燈奥へ奥へ涼し 石川桂郎 四温
黒髪の涼しく眼そらしけり 上村占魚 『鮎』
鼓虫のはやも涼しき鑑真忌 森澄雄
鼻すじの涼しおばこの国訛 坊城としあつ
鼻の穴涼しく睡る女かな 日野草城
龍胆の濃くて涼しさ濃かりけり 木村滄雨
あこよ来よ転ぶも上手夕涼 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
あとがきに謝の字の多き夜涼かな 草間時彦 櫻山
うかうかと南草に酔や朝涼 召波
えらい人になつたさうなと夕涼 正岡子規
おこし絵に灯をともしけり夕涼 正岡子規
お神楽の大蛇刺されて以後夜涼 坂野宜枝
ぐいと反る湾岸道路夜涼の灯 高澤良一 随笑
この刻を留むべく来し夜涼かな 高木晴子 花 季
そらんずる山のかたちの夜涼かな 朝倉和江
たが為ぞ朝起昼寝夕涼 榎本其角
たばこの火手に打抜て夕涼 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
たましひのあらはに踊る夜涼かな 山田みづえ 木語
びっしりと異神の 赤道都市 夜涼 伊丹公子
ふところに夜涼の星のしのぶらめ 栗生純夫 科野路
ふはふはと夜涼の橋をひとり越ゆ 文挟夫佐恵 遠い橋
ほめられて小歌やめけり夕涼 微房 古句を観る(柴田宵曲)
まだ誰も触れない涼気青葡萄 今瀬剛一
まとひたるものに晩涼いたりけり 細川加賀
みちのくのまつくらがりの夜涼かな 高野素十
むささびが天井にゐる夜涼かな 山口草堂
ゆひ髪や鏡はなれて朝涼 上島鬼貫
わが書斎夜涼を待ちてわれひとり 瀧春一 菜園
わんぱくや縛れながら夕涼 一茶
インディアン唇くれなゐに夜涼かな 飯田蛇笏 春蘭
バトミントン少女夜涼の灯の左右へ 仲田藤車
バンドネオン晩涼刻むダリエンソ 高澤良一 素抱
ボンネットヘッドシャークの涼気過ぐ 高澤良一 燕音
ムクリ・コクリ来るぞ夜涼を吾子寝しや 太田土男
一日の髭を子に寄す夜涼かな 太田土男
一生の晩涼にゐるおもひかな 水内三猿
下京の夜涼に消ゆる僧の列 鹿倉はるか
下網に晩涼の日のかゝりけり 鈴木花蓑句集
五位鷺の吐息夜涼の母とをり 堀口星眠 営巣期
仲見世を通り抜けたる夜涼かな 池田秀水
低音部利かせ夜涼のダリエンソ 高澤良一 鳩信
僧を訪ふ蝮も出でん夕涼に 中村草田男
先師てふことば始めの夜涼かな 能村登四郎 天上華
勤め妻戻り夜涼へ犬を解く 羽部洞然
北海の羅漢と談ず夜涼かな 日夏耿之介 婆羅門誹諧
半身を小窓より出し夜涼の樹々 長谷川かな女 花 季
原爆碑夜涼の芝になほ熱る 下村ひろし 西陲集
和讃して回向して朝涼の内 高木晴子 花 季
夏期講習終れり街に夜涼満つ 大塚茂敏
夕涼の檐の蜘蛛空へ這ひゆくよ 原田種茅 径
夕涼の荒磯に人のちさくこそ 太田鴻村 穂国
夕涼の足にまつはる蛙かな 金尾梅の門 古志の歌
夕涼の追叉手網を一と渚 下田稔
夕涼の風を踏みゆく石だたみ 山田弘子
夕涼や水投つける馬の尻 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
夕涼や汁の実を釣るせどの海 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
夕涼や灯をともさゝる高胡坐 尾崎紅葉
夕涼や生き物飼はず花作らず 相馬遷子 雪嶺
夕涼や眼鏡をかけて菊の蟲 佐藤魚淵
夕涼や編笠岳は雲解きて 古賀まり子 緑の野以後
夕涼や跼る老の前を過ぎ 佐野美智
夕涼を井の字飛白の大臣かな 尾崎紅葉
夕涼石炭くさき風が吹く 正岡子規
夜涼かな並びて那覇の灯をさがす 横山白虹
夜涼かな棒高跳に刻うつり 下村槐太 天涯
夜涼この棕梠の葉騒の繰り返し 鷹羽狩行 誕生
夜涼の三人笑えば遠く岩を感じ 北原志満子
夜涼の大拍手その中にわが手も鳴り 赤城さかえ句集
夜涼や念仏申て居るも有 左彦
夜涼や足でかぞへるゑちご山 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
夜涼や露置く萩の絵帷子 高井几董
夜涼より浮浪の面上げにけり 斎藤玄 雁道
夜涼一家青き蚕棚が家に満ち 相馬遷子 雪嶺
夜涼如レ水天ノ川辺ノ星一ツ 正岡子規
夜涼如水三味引キヤメテ下り舟 正岡子規
女もす口笛夜涼映画待つ 岸風三楼 往来
妻なし〔が〕草を咲かせて夕涼 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
子の闇に鶏も迷ふやゆふ涼夕涼 千代尼
宝石函ぶちまけしごと夜涼の灯 高澤良一 燕音
小走りに消えたる叔母の夜涼かな 八木林之介 青霞集
山女釣晩涼の火を焚きゐたり 水原秋桜子
山女魚釣晩涼の火を焚きゐたり 水原秋櫻子
山彦の通り抜けたる涼気かな 神尾久美子
山晩涼羽後の訛が唄めいて 平山路遊
山青く晩涼の炉の燃えにけり 福田蓼汀 山火
山魚釣晩涼の火を焚きゐたり 水原秋桜子
島へゆく船のともづな解く夜涼 神並春枝
島ゆ島へ渡る夜涼の恋もあらむ 臼田亞浪 定本亜浪句集
干網に晩涼の日のかゝりけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
平原の夜涼にたへて妻立てり 田村了咲
形そろへ朝涼の鯛五六枚 荒井正隆
彦三頭巾白鉢巻が夜涼呼ぶ 高澤良一 素抱
恨みうすらぐ晩涼の爪切りすぎて 川口重美
戦さ経し僧と語れり朝涼に 杉本寛
斯う居るも皆がい骨ぞ夕涼 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
日月の盛砂涼気渡りけり 伊丹さち子
晩涼に池の萍皆動く 高浜虚子
晩涼のあたまの微光わが発す 三橋敏雄 巡禮
晩涼のいまを惜まむラヂオ消す 篠田悌二郎
晩涼のともしび蔵ふ峡の家 猪俣千代子 堆 朱
晩涼のひとり腕組む二階住み 有働亨 汐路
晩涼のましろき蝶に今日のこと 星野立子
晩涼のもとも風呼ぶ豊後笹 福田蓼汀 秋風挽歌
晩涼の一燈に森またたかず 千代田葛彦
晩涼の北の港を出づる船 成瀬正とし 星月夜
晩涼の句碑へ七面山の風 星野椿
晩涼の坂あきらかに吾くだる 村越化石
晩涼の子や太き犬いつくしみ 中村汀女
晩涼の幼な机の灯がひとつ 龍太
晩涼の星に停めたるオートバイ 藺草慶子
晩涼の星のあつまる島の上 宮津昭彦
晩涼の机上に薩摩切子かな 横山美代子
晩涼の杉本寺は鐘も撞かず 松本たかし
晩涼の棕梠かけのぼるからす猫 猿橋統流子
晩涼の楸邨の臍やさしからん 原田喬
晩涼の橋の向うの寄せ太鼓 高澤良一 素抱
晩涼の欅の下に死者を待つ 飯島晴子
晩涼の水平線に弛みなし 石井とし夫
晩涼の水鳴る腹を訝しげ 高澤良一 素抱
晩涼の河面がくらし目玉焼 横山白虹
晩涼の波は礁を越えそめし 田村木国
晩涼の津軽じょんがら哭き三味線 高澤良一 寒暑
晩涼の流水つれて村の坂 羽部洞然
晩涼の渚踏み歳とりたくなし 菖蒲あや 路 地
晩涼の灯に燈台の灯もまじる 下村ひろし
晩涼の灯のあを~と医師の門 五十崎古郷句集
晩涼の盗み酒頬染めゐずや 細川加賀
晩涼の真白き蝶に今日のこと 立子
晩涼の砂丘一村こぼれ住む 有働亨 汐路
晩涼の空に連らなる出船あり 中村汀女
晩涼の竹藪深く時計鳴る 阿部みどり女 『光陰』
晩涼の簾をさえもあげぬまま 中村汀女
晩涼の胸に砂寄せ砂ゆっこ 高澤良一 素抱
晩涼の腹あたたむる夏布団 大野林火
晩涼の自動車まれに途切れけり 久保田万太郎 流寓抄以後
晩涼の葛もすこしく眠る葉か 皆吉爽雨 泉声
晩涼の蒼き樹海へ小屋煙 福田蓼汀 秋風挽歌
晩涼の蝉つぶやけり槻の木に 木津柳芽 白鷺抄
晩涼の闇にこころの魚放つ 上村占魚(1920-96)
晩涼の頭を延べ軒の三手先龍 高澤良一 素抱
晩涼の飛行機照らし出されたる 臼田亜浪 旅人
晩涼の黒の勝ちたる斑(ぶち)の猫 高澤良一 燕音
晩涼やうとみし楽にいつか乗り 稲垣きくの 黄 瀬
晩涼やうぶ毛生えたる長瓢 杉田久女
晩涼やともらぬものに螢籠 鈴木真砂女 夕螢
晩涼やはじめ低音に習ひ笛 伊藤京子
晩涼やはすかひに寝て青畳 林翔
晩涼やふと人聲の来ては去り 久保田万太郎 流寓抄以後
晩涼やをとこの声の子守唄 稲垣きくの 黄 瀬
晩涼やパイプくはへて司厨長 橋本鶏二 年輪
晩涼や上径戻る草刈女 比叡 野村泊月
晩涼や主婦ら床几を路次に出し 岸風三楼 往来
晩涼や出船のあとにさし将棋 五十嵐播水 埠頭
晩涼や夜店はてたる吉田町 五十嵐播水 播水句集
晩涼や太藺の池は水湛ふ 柴田白葉女
晩涼や妻擁きて明日つかるるな 森澄雄 雪櫟
晩涼や宿屋の並ぶ大門町 田中冬二 俳句拾遺
晩涼や富士よりの水ほとばしり 成瀬正とし 星月夜
晩涼や川の中なる供養塔 吉屋信子
晩涼や弟が描くモデルとなる 加倉井秋を
晩涼や彫師の膝の草箒 和泉昭子
晩涼や心にたゝみ話きく 星野立子
晩涼や月いついでし立咄 久保田万太郎 流寓抄以後
晩涼や木を挽ける音挽き切りし 日野草城
晩涼や朶雲明るく比叡憂鬱 日野草城
晩涼や母も在します祈の座 古賀まり子 洗 禮
晩涼や水を見るべくベンチあり 岸風三楼 往来
晩涼や海ちかけれどみに行かず 久保田万太郎 流寓抄以後
晩涼や海の中なる疊岩 皿井旭川
晩涼や湖舟がよぎる山の影 水原秋桜子
晩涼や琴ひく母のほとり書き 古賀まり子 降誕歌
晩涼や病体包む釦多し 中山純子 茜
晩涼や白根一帯燈を減らし 村越化石
晩涼や簾の下の石濡れて 比叡 野村泊月
晩涼や網戸に透ける港の灯 高濱年尾 年尾句集
晩涼や翡翠に替へし耳かざり 原田青児
晩涼や肥桶の音籬外 西山泊雲 泊雲
晩涼や胡坐くみたる磯がしら 比叡 野村泊月
晩涼や腐魚なでて鼻鳴らす波 竹中宏 饕餮
晩涼や茶をくむ人の指ゑくぼ 杉本寛
晩涼や藤棚広き立場茶屋 田中冬二 俳句拾遺
晩涼や蝉落ちまろぶ石畳 木下夕爾
晩涼や裏戸は閉さで置けと告げ 西山泊雲 泊雲
晩涼や親に似て子もだまりん坊 龍岡晋
晩涼や赤い団扇を腰にさし 比叡 野村泊月
晩涼や運河の波のややあらく 中村汀女
晩涼や遺品の鈴を大切に 村越化石 山國抄
晩涼や音楽の上を雲迅み 岸田稚魚
晩涼や食器ひたして水歪み 伊藤京子
晩涼や鬱然と鳴る低音部 林翔 和紙
晩涼を歩す向ふより道来る 村越化石
朝涼、さいかちのわくら葉早い 北原白秋
朝涼といふ千金につつまるる 竹下陶子
朝涼に煙草の虫を掃きに行く 松瀬青々
朝涼に菊も一艘通りけり 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
朝涼のお伽の国に今起きぬ 星野立子(印度)
朝涼のたなごの水を替へてをり 鈴木しげを
朝涼のまにと早目に家を出し 八木春
朝涼のまゝ昼となる草家かな 高木晴子 花 季
朝涼のヴェール揃へり弥撒乙女 林翔 和紙
朝涼の一番電車花の荷と 茂里正治
朝涼の千振冷えて居たりけり 河野静雲 閻魔
朝涼の厨はじめの水硬し 古賀雪江
朝涼の夢に跣の亡父と逢ふ つじ加代子
朝涼の太り切ったる糸瓜かな 稲田 眸子
朝涼の太刀預つて磨礪(とぎ)・浄拭(ぬぐひ) 筑紫磐井 婆伽梵
朝涼の渡り廊下に言交はす 西村和子 窓
朝涼の湖の放ちたる一汽艇 中村汀女
朝涼の白波に蟹まろびけり 大串章 百鳥
朝涼の祈祷歌ながる牧草地 下村ひろし 西陲集
朝涼の粥の座笋の曲ながれ 三谷昭 獣身
朝涼の草に咲き入る南瓜かな 金尾梅の門 古志の歌
朝涼の蚊帳はづさるゝ湖畔宿 高濱年尾 年尾句集
朝涼の身より生まるる礼言葉 村越化石
朝涼の風勤行の膝にあり 小坂灯村
朝涼やさくら落葉の二三枚 岸風三楼 往来
朝涼やつむりのまろき帝切児 下村ひろし 西陲集
朝涼やとうすみとんぼ真一文字 原石鼎
朝涼やわり前髪の笛の役 井上井月
朝涼や墨すりて身の澄むを待つ 都筑智子
朝涼や実りゆくものみな不思議 高橋馬相 秋山越
朝涼や栗鼠がきて食ふ花メロン 軽部烏帽子 [しどみ]の花
朝涼や浸して五指の上の水 蓬田紀枝子
朝涼や磔曼陀羅の翳踏めば 小林康治 玄霜
朝涼や紺の井桁の伊予絣 清水基吉
朝涼や長雪隠の大和尚 河野静雲 閻魔
朝涼や髪刈りし子に賢き耳 磯貝碧蹄館 握手
朝涼を歩みて胸の鈴鳴らす 平田節子
朝涼を笑む島の娘の糸切歯 中村草田男
杖のふと道失ひし夜涼かな 村越化石
東京の晩涼に足り宿を出ず 亀井糸游
枇杷の核に息かけて見し夜涼かな 中島月笠 月笠句集
棟梁の居残つてゐる夜涼かな 堤高嶺
檣灯のゆらりと進む夜涼かな 西村和子 窓
此の刻を止むべく来し夜涼かな 高木晴子
此舟に老たるはなし夕涼 榎本其角
気っ風よき啖呵のごとき涼気とも 高澤良一 寒暑
水ちかき夜涼の石を踏まへけり 石原舟月 山鵲
水郷の夜涼の子等のハーモニカ 高濱年尾 年尾句集
水銀灯晩涼の町坂勝ちに 冨田みのる
沖へ燈を送り夜涼の塔下る 原裕 青垣
河原鶸あそぶ朝涼の水流す 柴田白葉女 『夕浪』
法廷に月影さして夜涼かな 飯田蛇笏 山廬集
潮じめりして晩涼の髪膚かな 深見けん二
潮浴びし気だるさ夜涼映画すゝむ 岸風三楼 往来
火祭の発止と僧の一涼気(寒河江、慈恩寺山伏) 河野南畦 『元禄の夢』
炎天を槍のごとくに涼気過ぐ 飯田蛇笏
無花果や広葉にむかふ夕涼 広瀬惟然
爆薬よりも砂のふかさと夜涼にいふ 竹中宏 句集未収録
片天窓剃て乳を呑夕涼 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
琴弾て老を噛ませよ夕涼 智月 俳諧撰集玉藻集
生かなし晩涼に坐し居眠れる 高浜虚子
町なかに草のにほひの夜涼かな 鷲谷七菜子 花寂び 以後
白刃の中ゆく涼気一誌持つ 鈴木鷹夫
白塊の鳥のデフォルメ涼気曳き 高澤良一 宿好
白桔梗晩涼に人うごき居り 岡本松浜 白菊
白樺に映え晩涼の火赤し 福田蓼汀 山火
盤斎の湯衣なつかし夕涼 浜田酒堂
礼拝堂に従ふ深轍も夜涼 宮津昭彦
神野寺に円き月ある夜涼かな 高木晴子 花 季
空仰ぎて父母を忘れし夜涼かな 中島月笠 月笠句集
竹藪の晩涼をとぶ黒き蝶 阿部みどり女
笛ふいて夜涼にたへぬ盲かな 飯田蛇笏 霊芝
筆かみし朱唇の墨も夜涼かな 西島麥南 金剛纂
筆ほぐす朱唇の墨も夜涼かな 西島麦南


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by 575fudemakase | 2014-07-31 00:40 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

灼く

灼く

例句を挙げる。

「当人渡世勝手次第」の島に灼け・・・八丈島 高澤良一 ねずみのこまくら
ある遠さは灼けてしづかにもがく濤 竹中宏 句集未収録
うらがへる葛の葉飛騨も灼けそめぬ 大野林火
おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ嶽 加藤楸邨
かへりみる大厦灼けて虚に充ちぬ 下村槐太 天涯
からみゆく登山綱にわれに岩灼くる 石橋辰之助 山暦
くづほるる酒灼け顔の日焼けして 石原八束 空の渚
こんなにも灼けゐる墓石西林寺 高澤良一 素抱
ただ灼けて玄奘の道つづきけり 鉄之介
ただ灼けて空に夏雲湧けよ湧けよ 石橋辰之助
ただ石として灼くるのみ野の佛 千代田葛彦
ただ祈りあるのみ被爆の碑ぞ灼くる 向野楠葉
たゞ灼けて空に夏雲湧けよ湧けよ 石橋辰之助 山暦
どんど火に顔ばかり灼け餅灼けず 町田しげき
はや灼けて検問所の窓乱反射 関森勝夫
はらからと喪服を灼かる炎天下 高澤良一 素抱
ひまはりかわれかひまはりかわれか灼く 三橋鷹女
ほと神を灼く太陽の熊野灘 吉田紫乃
まかがよふ白さるすべり地に灼けて 高澤良一 素抱
やすやすと山の蚯蚓の日に灼かれ 宮坂静生
わが影のたちまち冷ゆる灼け沙漠 伊藤いと子
わが灼くる影をちぢめて爆心地 佐野美智
わたつみに楫取り損ね灼け汐木 高澤良一 寒暑
われに無かりし青春海女の堅肉灼け 野澤節子 花 季
イスラムの墓灼けてゐて貴賎あり 森田峠 逆瀬川
エーゲ海睦みて水虫も灼ける 八木三日女 石柱の賦
ケルン灼け足奪はるる地獄谷 河野南畦 湖の森
コンクリート灼くるに坐り行き処なし 石田郷子
ゴム灼くる匂ひにダリヤいたみたる 和田耕三郎
シーサーの大屋根小屋根灼けゐたり 小元 洋子
ダムの上灼けて土工の墓二十 三鬼
バレンタインの日なり灼かれて真赤な鉄 見学 玄
ヒンドゥーの秘儀灼けつきる 全塔身 伊丹公子
ペンキ塗る青空がまだ灼けぬうち 高澤良一 随笑
ボクサー像のグラブが灼けて草田男忌 奈良文夫
マラルメて誰梨は木に灼け響き 竹中宏 饕餮
ミサイルの灼くる砲座に蟻のぼる 伊藤いと子
一茶の地灼けて一人の子にも逢はず 蓬田節子
三時草鋪道は灼けてほてりをり 高澤良一 素抱
主峰なほ灼けふかみをりわが裡にて 昭彦
丼の墨汁灼けて葬終る 田口珂那
久女の墓灼けてわが手を触れしめず 藤岡筑邨
今生に灼く地獄見る鬼来迎 毛塚静枝
仰向けに倒れて灼くる風化仏 佐野農人
休日のシャッター灼ける問屋街 西村和江
先生の墓前に潔く灼かる 荒井正隆
八方の灼けてたゞ刻経つばかり 暮石
力なき浜昼顔に砂灼けし 三ツ谷謡村
原爆屍かつと口開け灼けつく地 中島斌雄
厦灼けぬなにか憤しく灼けぬ 下村槐太 光背
古利根の夕日に灼けて蘆枯れし 石井とし夫
古稀自祝土蜂を追うて眼の灼けて 中島斌雄
句おもふが祈り瓦礫の灼けふかき 中島斌男
向日葵の灼ける頸筋力欲し 田川飛旅子 花文字
向日葵は灼けて土偶のおほらかさ 高澤良一 素抱
国原に団雲浅問は我と灼ける 草田男
土灼くる日の続くなり棉の花 原田青児
土熱く灼けゐし記憶終戦日 沢木欣一
地の塩が白を凝らせり灼け砂漠 品川鈴子
地より灼け天より灼けて健児の塔 吉田紫乃
地獄灼けガツと鳴り鎖す鐵の扉 横山白虹
地獄灼け天使の翼見ることなし 横山白虹
地獄灼け悪鬼の胸に汗きら~ 横山白虹
地獄灼け面もふらず人うごく 横山白虹
城灼けて海灼けてここ母のくに 奈良文夫
塩噴いて流沙の川の灼けにけり 下村梅子
夏灼くる砲車とともにわれこそ征け 長谷川素逝 砲車
夏灼けし小島を頼み徒人海女 桂樟蹊子
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ 長谷川素逝 砲車
大厄のもうなき齢灼けはじむ 野見山ひふみ
大阪や黒猫灼けし屋根歩き 有働亨 汐路
天が下灼けゐる墓誌に余白あり 高澤良一 素抱
天を灼く積乱雲の育つ峡 大野林火
天地灼けぬ兵士乗船する靴おと 片山桃史 北方兵團
天灼けて白さるすべり地に灼けて 高澤良一 素抱
太陽を逃げきれぬ塔灼け曲る 小檜山繁子
夾竹桃東京砂漠灼けはじむ 千代田葛彦
姑なくて灼けしままなる休み石 影島智子
嬰も母も灼けし白濤眸にやどす 大岳水一路
宇宙船あばたに灼けて冷房裡 高井北杜
寒月は丑満の雲すこし灼く 佐野良太 樫
小包とゞく燈台守の灼け畳 中島斌男
屋上園灼けて花かげうばはれぬ 原田種茅 径
山々の灼け美しき落し文 大岳水一路
山恋ふ日母の墓石の灼けゐるか 石橋辰之助 山暦
山河統べてわれあり足うら灼けて立つ 千代田葛彦 旅人木
山灼けて死の谷生きる硫気吐く 福原紫朗
岩灼かれわが登山綱さへ目守りえず 石橋辰之助 山暦
岩灼くるにほひに耐へて登山綱負ふ 辰之助
岩灼くる光の底に蛇ゆけり 沢木欣一
岩灼けて北岳草の残り花 小林碧郎
岩肌を叡智の登山綱灼け垂るゝ 石橋辰之助 山暦
巌灼けて真鐵の光り濤摶てり 内藤吐天
巫女の鈴りりちりち砂灼けにける 伊藤敬子
干魚の眼が抜けゐたり熊野灼く 茨木和生 木の國
平和の礎(いしじ)灼かれて女子供の名 岡崎たかね
廈灼けぬなにか憤ろしく灼けぬ 下村槐太 天涯
弱り目祟り目炭火に灼けで湯に灼けたり 磯貝碧蹄館 握手
影ぐるみ灼かれ突立つ義民の碑 高澤良一 ねずみのこまくら
彼の日のごと権兵衛坂は灼けをらむ 高澤良一 寒暑
従ふや灼けの極みに巷あり 油布五線
心中に一基の墓の灼くるかな 赤尾恵以
息づけば灼けし風さへ岩吹かず 石橋辰之助 山暦
悪城の壁ほろびの魔刻持ち灼ける 河野多希女 納め髪
憩なし獣皮の椅子の背の灼けて 後藤綾子
手が灼けて昔も関の手付き石 和知喜八 同齢
掃苔の手触りて灼くる墓石かな 竹下しづの女 [はやて]
掛茶屋の酒に唇灼くだるま市 町 淑子
故郷のひたすら灼ける父母の墓 山県よしゑ
断層の縞あらく海の風灼けぬ 内藤吐天 鳴海抄
旅灼けの顔がかこみぬ真桑瓜 加藤知世子 花寂び
日こそ明鏡灼けて償ふ「刺客」の墓 磯貝碧蹄館 握手
日覆灼け花市の花香にむせし 山口波津女 良人
星鴉崖崩は地獄の色に灼け 小松崎爽青
暖炉灼く夫よタンゴを踊ろうか 三橋鷹女(1899-1972)
曼珠沙華日はじりじりと襟を灼く 橋本多佳子
月光のちりちり島の間を灼く 岸田稚魚 筍流し
月灼けて放牛を逐ふ鞭ひかる 石原舟月
月面に人の足痕地球灼く 石塚友二
朝より謝肉祭ゆゑ雲も灼く 石塚友二 光塵
朝曇午後は灼くべし頭のほてり 石塚友二
朝雲の灼けて乳牛に桐咲けり 飯田蛇笏 霊芝
朝顔のうつろひやすく灼け来けり 臼田亞浪 定本亜浪句集
朱鷺の嘴灼けたる檻に触れにけり 辻桃子
杏いくつか熟れてをりぢつと灼けつづく 川島彷徨子 榛の木
杖に置く挙も灼くるひとつかな 村越化石
松風の吹いてをれども灼けてをり 槐太
柔かく女豹がふみて岩灼くる 風生
核の日々静かに灼くるオートバイ 徳弘純 麦のほとり
桔梗にはよそ事のごと灼ける空 高澤良一 寒暑
業風に叫喚地獄灼けよ灼けよ 横山白虹
機翼の屑貨車に溢れて灼けつつ過ぐ 原田種茅 径
機翼灼け眼下に都市をあざけるか 皆吉司
機関車の瘤灼け孤り野を走る 西東三鬼
殉教地寝墓濡れやすし灼けやすし 香西照雄 素心
母の背や岩群灼けて棘(おどろ)なか 徳弘純 非望
毛野の空狭間の奥に灼けつづく 川島彷徨子 榛の木
水壺と灼け翻る乙女妻 小檜山繁子
水泳に灼けて女の産毛消ゆ 辻田克巳
沙丘灼け長き兵列天に入る 片山桃史 北方兵團
没日凍て暗き火口の像を灼く 石原八束 空の渚
河原石ひとつ灼けことごとく灼け 行方克巳
河口灼けゆうべの夜光虫を見ず 栗生純夫 科野路
河灼けて纜槍のごとくなり 不死男
波止灼けて物売る子等の目のかはき 西村和子 かりそめならず
洪水あとの石白く灼け鳥渡る 臼田亞浪 定本亜浪句集
海匂ふ灼くるガスタンクのうしろより 宮津昭彦
海昇り来し太陽が熊野灼く 右城暮石 上下
海浜ステージ灼けゐて何もはじまらず 池田秀水
海灼くる四肢もて余す少年に 清水衣子
海照りて鬼の手作り岩を灼く 高澤良一 随笑
海路来て灼くる埠頭に旅終る 山口波津女 良人
涼しけれ睫毛夕日に灼かれつつ 佐野良太 樫
湖に突き出して木の灼け桟橋 右城暮石 上下
湖を搦め灼くる太古の道一筋 西本一都 景色
滅法に灼く業平の通ひ道 楠節子
潮灼けの海士の顔浮く初湯かな 古畑丁津緒
潮灼けの眉のうすさよ磯竃 中村丹井
潮路来て夏日に灼けし国を踏む 山口波津女 良人
濤灼けて眠りゐる嬰に母の影 大岳水一路
灘灼けて無辜の一舟漂はす 下村ひろし 西陲集
灼かれゐる大絶壁に巨眼空く 仙田洋子 雲は王冠
灼かれをり見えざるものを釣る人は 櫂未知子 蒙古斑
灼くほどにアキレス腱を際立たす 櫂未知子 貴族
灼くるだけ灼けし風立つ百日紅 馬場移公子
灼くるだけ灼けて空貨車動き出す 堀 青研子
灼くる園蛇口の向きのまちまちに 宮田俊子
灼くる地にうつそ身立たす葬りかな 井沢正江
灼くる地に今降りたちてスチユアデス 森田峠
灼くる宙に眼ひらき麒麟孤独なり 中島斌雄
灼くる岩ふと背に影を恐山 金山たか
灼くる嶺よし青年の肩見るごと 大野林火
灼くる日に大鉄骨は翼なす 鈴鹿野風呂 浜木綿
灼くる日の陸に積まれて波殺し 白井房夫
灼くる正午索道宙にいこひをり 登四郎
灼くる石籠に満てば立つ石負女 細川加賀
灼くる砂上豚鳴く方へ少女ゆく 須並一衛
灼くる砂丘このまま流人とはならむ 都筑智子
灼くる空へ煙突残し瓦礫の山 原田種茅 径
灼くる空より熔接の火をこぼす 大橋敦子 手 鞠
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 林火
灼くる街崖は真葛の谷なせる 瀧春一 菜園
灼くる道ほじくり返しその上に 高澤良一 素抱
灼くる魚河岸身体置くだけある日影 岩田昌寿 地の塩
灼けしづむ天に涙のとどかざり 仙田洋子 雲は王冠
灼けし地にまる書いてあり中に佇つ 後藤綾子
灼けし地に灼けし影置く師の忌なり 嶋田麻紀
灼けし熔岩さまよふ原始人清子 津田清子 二人称
灼けし鉄管のたうちまわること知らず 八木三日女
灼けし鐵帽拾い墓水汲むほかなき 石橋辰之助
灼けず濡れず真赤な水着肉余る 下田稔
灼けそゝぐ日の岩にゐて岳しづか 石橋辰之助 山暦
灼けつくす沙漠の月は色なさず 石原舟月
灼けつく砂浜の鶏追ふ影が踊つて淋しいひるから 人間を彫る 大橋裸木
灼けてゐる礁に耳つけ濤を聴く 篠原梵 雨
灼けてをりお岩木行きのバスダイヤ 高澤良一 寒暑
灼けて暁くるテラスに亀とその卵 小池文子 巴里蕭条
灼けにけり氷柱の先の遠い雲 佐野良太 樫
灼けほてる土にどすんとランディング 高澤良一 燕音
灼ける肌の一部分にて痒がる耳 河合凱夫 飛礫
灼ける鴉砂防より湧く土工の唄 齋藤愼爾
灼けゐたり紫蘇そのものが影のごと 宮津昭彦
灼けゴビに長城力尽きゐたり 平野謹三
灼け土にしづくたりつつトマト食ぶ 篠原鳳作
灼け岬いのち捨てむか詩捨てむか 品川鈴子
灼け熔岩にわれを窺ふ鴉の眼 伊東宏晃
灼け砂にまろびて球を獲しところ 大橋櫻坡子 雨月
灼け砂に藻屑を焚きし跡匂ふ 栗原 政子
灼け砂に踏板埋れ途方なし 長谷川かな女
灼け砂の真白目を突く恐山 高澤良一 随笑
灼け砂を踏みゐてひとりとは軽し 伊丹さち子
灼け砂利の蟇の豆子よいづこまで 加藤知世子 花 季
灼け破船からんと置きて尻屋崎 鳥居おさむ
灼け神輿揉むぞ気抜けば潰さるる 荒井正隆
灼け紅旗へんぽん関羽生誕祭 高澤良一 鳩信
灼け蔓のその先獲物のあるごとし 高澤良一 素抱
灼け鉄路犬方角を失ひて 右城暮石 上下
灼け雲や竜骨海の荒れ呼んで 河野南畦 湖の森
炎天の葉知慧灼けり壕に佇つ 鈴木しづ子
烈日に灼けつつまれて造船所 五十嵐播水 埠頭
焦土灼けもはや待避の意なし 下村ひろし
煖炉灼く夫よタンゴを踊らうよ 三橋鷹女
照りつける鉄砲鼻に葛灼けて 高澤良一 ももすずめ
熔岩灼くるしづけさ天に日は駐(とどま)り 草堂
熱風や眼灼かれ行くや夫に蹤き 小池文子 巴里蕭条
爆心の残壁の灼け手に沁ます 中島斌男
父母の墓灼けぬ金銭網の目に 石橋辰之助
牛の貌憶えず灼けて牛後たり 中島斌雄
猫の信長花椿の灼くるに向き 長谷川かな女 花 季
猫車灼けをり日本海無韻 行方克巳
瓶灼けて裕次郎忌の浜汚れ 原 川雀
生明らか死も明らかに灼かれをり 櫛原希伊子
男靴そろへ灼かれる指の先 谷口桂子
異人墓地日本の妻の名も灼けぬ 細川加賀 生身魂
発掘の箆使ふ背の丸く灼け 河野頼人
白眼の仁王の灼くる池頭 今津哲朗
白象のごとくけだかく雲灼けて 高澤良一 ぱらりとせ
百万年灼かれ絶壁沈黙す 仙田洋子 雲は王冠
盆セール過ぎしデパート窓灼けて 石塚友二
看板の背骨西日に灼かれゐぬ 羽部洞然
矢鱈赤き看板灼けて物価高 猿橋統流子
石ころとあか土と灼け弾痕焦げ 長谷川素逝 砲車
石伐つて壁に垂線百灼けたり 田川飛旅子 『使徒の眼』
石灼けて粉塵に帰す恐山 高澤良一 随笑
石灼けて纜の影濃かりけり 木母寺
石灼けて賽の河原に一穢なし 稲荷島人
砂の上砂吹かれゆく灼け砂丘 松田多朗
砂丘灼けつひにひとりの影尖る 山口草堂
砂丘灼け天日あをき灘に照る 伊東宏晃
砂丘灼け巫女出さうな濤の牙 河野南畦 湖の森
砂日傘ひらき頃なる砂の灼け 能村登四郎
砂灼けていしを一事として帰る 小宮山遠
磧灼けバッタは石の色に飛ぶ 草村素子
祈りても詠ひても灼け平和像 加藤知世子 花寂び
神将にもの問うて身の灼けにけり 吉田紫乃
祭暑し磴灼けて裂けるかに 森川暁水 黴
積乱雲野に湧き野に湧き貨車灼くる 相馬遷子 山国
空ふかし岩群を灼く日はあれど 手島 靖一
米堤げて火を吐く喉をラムネに灼く 竹下しづの女句文集 昭和二十四年
網戸ごしに雲灼く入日卓を灼く 川島彷徨子 榛の木
縄跳びの灼け跣子と鶏の足 小檜山繁子
繋船の鉄鎖灼けゐて人影なし 瀧春一
翡翆の田川の行方里曲灼く 下村槐太 天涯
聖像の二十六人灼けわれ一人に 加藤知世子 花寂び
背なを灼く烈日われはアラビアヘ帰り来しなり火の匂いする 三井修
胸灼く酒雛といふもの我に会ふ 石川桂郎 含羞
能登塩田足型そのまま灼けている 斎藤 都
自由で少し不安で灼けし砂丘行く 津田清子 礼 拝
自転車のサドル灼けゐて腰浮かす 高澤良一 寒暑
臼彫りが彫りし井月の墓灼くる 西本一都 景色
花々やかくも灼けたる花圃の土 瀧春一 菜園
草灼くるにほひみだして鶏つるむ 篠原鳳作
草田男逝くコンクリートに雀灼け 館岡沙緻
莨なし食後の河が灼けてゐる 片山桃史 北方兵團
葛灼けて菅江真澄のゆきし道 高澤良一 寒暑
葭切や灼けたる茎を掴みをる 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
薬罐灼けすぐにアウトとなる野球 八木三日女 紅 茸
蜘蛛の囲の糸灼けをらん晝つ方 高澤良一 素抱
蝉のこゑ疲れつかれてゆふ灼けぬ 中尾白雨 中尾白雨句集
蟹さんの型押し遊び灼け砂に 高澤良一 素抱
蟻つよく生きて一茶の山河灼く 宮津昭彦
街道はこれから灼けむ露葎 高澤良一 宿好
被爆像仰ぎ現し身灼かせをり 中島斌男
被爆林灼け長官の死を伝ふ 皆川白陀
貧は貧富は富の天の灼けにけり 久保田万太郎 流寓抄
貨車灼けて満載されている怒り 森 武司
蹠に灼けつく土や粟を蒔く 久保白茅子
載せ石の灼けて籠の鵜老いゆくか 伊藤いと子
輪廻生死さもあれきみが病一躯霜ふれば霜にわがこころ灼く 山田あき
逃げどころなし長城のどこも灼け 伊丹三樹彦
逆縁の身を灼く暑き日なりけり 滝青佳
逆髪は姉にてものを灼く陽にて 竹中 宏
遊船に陽は青々と灼けにけり 飯田蛇笏 霊芝
野と河原けじめなきまで灼け穂草 下村ひろし 西陲集
野に坐る眉目よき石の灼けてくる 中西舗土
野生馬の背の灼くるまま岬山 寺田順子
針金の灼けきはまりつ誘蛾燈 阿波野青畝
鈴懸の刈り込んである灼け舗道 高澤良一 寒暑
鉄を灼く火を凝視む瞳に火が棲める 片山桃史 北方兵團
鉄棒といふ直線の灼けてをり 永野佐和
鉄灼け木も灼け滑台一基 小澤實 砧
鉄路が血管日本の道程灼けつゝあり 磯貝碧蹄館 握手
鋼灼くにほひ余寒の鉄工所 松本照子
鍛冶の音を白く打ちこみ灼くる海 栗生純夫 科野路
間みじかの胸灼く咳を憎み咳く 篠原梵 雨
雀らと灼け少年のぼんのくぼ 神尾久美子 桐の木
雲の裏灼けゐて藺刈暮れつゝあり 阿部[しょう]人
雲灼けて声なき山河広島忌 伊東宏晃
雲灼けて鋼光りの沖とざす 手塚美佐
露地灼くる真青き海を奥にして 川島彷徨子 榛の木
青上総海かけ灼くる鬼来迎 野沢節子 八朶集以後
青海が灼け牧柵に女囚消ゆ 石原舟月
青空がまるごと灼けて玉砕日 高澤良一 随笑
顔過ぐる機関車の灼け旅はじまる 橋本多佳子
風垣灼けひとすぢみちの婆の村 河野南畦 湖の森
風灼けて南大門にぶつかれり 田口彌生
風灼けて氷塊を水流れ出づ 大岳水一路
風鈴や静かに灼くる能舞台 加古宗也
首ふつて弾み歩きの灼け駱駝 鷹羽狩行
馭者の鞭灼くる大地を打てりけり 森田峠
駅近し灼くる線路の交錯に 原田種茅 径
鬼女の像灼けつつ内面夜叉美人 加藤知世子 花寂び
鴟尾灼けて顔も尻尾も向ひ合ふ 北野民夫
鶴は病めり街路樹の葉の灼けて垂り 鷹女
麦穂だつ陽は鉄塔に灼けそめぬ 西島麦南 人音
黄は艶なり長けては灼くる女郎花 高澤良一 素抱
黄土灼け巨大な影法師と歩く 小檜山繁子
黒く灼く樹頭を占むるみな鵜なり 宮津昭彦
黝く灼けわが影われに先んじゆく 梵
ぎじぎじと熱砂は口をねばらする 長谷川素逝 砲車
ぐすぐすと熱砂を踏めり旅の神 原裕 青垣
この熱風走る詩としてゴビを行く 加藤知世子
ゴビ熱砂蝶きしきしと消えにけり 鍵和田釉子
ピラミッド叩けば熱砂こぼしけり 矢島 渚男
人骨に似たる熱砂の枯珊瑚 秋光道女
低い家に住み熱風の草を刈る毎日が仕事 橋本夢道 無禮なる妻抄
俺に似た少年兵が熱砂ゆく 五島高資
壘を獲し熱砂のけむりあがりたれ 大橋櫻坡子 雨月
大西部熱砂に蝶と人の影 仙田洋子 雲は王冠
或る記憶熱風道の幅に来る 中島斌雄
果てしなき熱砂に両親揃わぬ子 対馬康子 吾亦紅
流木や熱砂に消ゆる河なれど 鳥居おさむ
涼風熱風こもごもいたる白河原 福田蓼汀 秋風挽歌
渚まで熱砂跳ねゆく跣かな 高澤良一 素抱
漁夫の葬舟を熱砂に曳き上げて 津田清子 礼 拝
熱砂に漁婦泣き「日本の巡査かお前らは」 古沢太穂 古沢太穂句集
熱砂ゆくなほ白靴を捨てきれず 野澤節子 花 季
熱砂ゆく捨て猫と化し街に出る 対馬康子 吾亦紅
熱砂ゆく老婆の声もせずなれり 誓子
熱砂砂塵こころ庇ふに限りあり 小池文子 巴里蕭条
熱砂降る砂漠の薔薇と言ふは石 小池文子 巴里蕭条
熱砂降る飼はれて黙す亀の上 小池文子 巴里蕭条
熱風に麦なびく麦の青はげしき 日野草城
熱風の花火焔樹や何告げ得む 小池文子 巴里蕭条
熱風の街に満月ぎらぎらす 西村公鳳
熱風の黒衣がつつむ修道女 中島斌雄
熱風や小声に売れる宝籤 百合山羽公 故園
熱風や眼灼かれ行くや夫に蹤き 小池文子 巴里蕭条
熱風や祖国は簾さやかならむ 小池文子 巴里蕭条
熱風や若者に岩砕かれて 佐藤鬼房
熱風や鶏が目ほそめ何かを見る 加藤楸邨
熱風や黒をアラブの色として 日美清史
爆音のあと死の谷(デスバレー)の熱砂のみ 仙田洋子 雲は王冠
珊瑚樹は熱風の吹き入りしまま 岡田史乃
発掘の熱砂に転ぶ泪の壺 殿村菟絲子 『牡丹』
羊の血熱砂流るるまでもなく 中戸川朝人
荒荒と熱砂に羊皮乾きけり 小池文子 巴里蕭条
蓮の葉へいづこより吹く熱風か 中田剛 珠樹以後
蛾を食みし蜥蜴熱砂に口拭ふ 佐野青陽人 天の川
踏めば鳴る離島の白き熱砂かな 橋本榮治 麦生
軍配昼顔熱砂をにじりつつ咲けり 堀口星眠 青葉木菟
鞁(むながい)置く熱砂さみしく波立たせ 対馬康子 愛国
駅馬車の道は熱砂へ還りけり 仙田洋子 雲は王冠
骨拾ふまして熱砂ののど仏 宮本みさ子


以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:39 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

噴井の例句

噴井の例句

例句を挙げる。

あかつきの佛間を出でて噴井かな 田中裕明 花間一壺
あぢさゐの色汲む神の噴井かな 白井香甫
うなづきて子を見守れる噴井かな 八木林之介 青霞集
そうめん処ひねもす噴井鳴りにけり 伊藤京子
その昔官幣大社の噴井かな 清水 浩
ちちはもうははを叱らぬ噴井かな 黒田杏子 一木一草
よろぼへる噴井の穂にも風きたる 八木林之介 青霞集
一城を支へし噴井今も噴く 高槻青柚子
一月の音もしづかに宮噴井 橋本 対楠
一杓のありて涼しき噴井かな 酒井 素女
初秋や噴井流るゝ草の中 白水郎句集 大場白水郎
卯の花や噴井に潜む昼の星 牧島松風
去る家や夜目の噴井に花浮いて 及川貞 夕焼
噴井あり凌霄花これを暗くせり 富安風生
噴井あり学ぶ吾等のために噴く 山口誓子
噴井あり烟のやうに母の住む 小泉八重子
噴井の穂つね打つところ冬鏡 原裕 青垣
噴井の音晩帰のあゆみ子につながる 下村槐太 天涯
噴井より水到りつつ菖蒲の芽 中村将晴
噴井愛しぬ噴井に眼鏡落すまで 小澤實
噴井辺に根で連つて盛る花 波多野爽波 『一筆』
夜の音の噴井をころぶ麦湯罎 石川桂郎
夜の音噴井をころぶ麦湯罎 石川桂郎
子雀に噴井の溝の裾うたふ 石川桂郎 四温
家うちによき噴井あり新豆腐 野村多賀子
少年の寄りて触らぬ噴井かな 八木林之介 青霞集
山のもの浸してくらき噴井かな 山崎秋穂
底砂のひしめきゆらぐ噴井かな 古賀拓桜
心音に似たる噴井のありにけり 細川洋子
忍冬神の噴井を司る 阿波野青畝
拝所の噴井にささる榕樹の根 宮岡計次
敷松葉噴井はいつも溢れをり 星野立子
新じやがのゑくぼ噴井に来て磨く 西東三鬼
日の射せる噴井の底の見ゆるかと 八木林之介 青霞集
日盛となりし噴井のほとりかな 余子句集 小杉余子、松根東洋城選
月浴びて玉崩れをる噴井かな 高濱虚子
望の夜の神の噴井の溢れをり 青木道子
朝寒の噴井が眼鏡くもらしぬ 臼田亞浪 定本亜浪句集
杓添へて噴井あふるるやすけさよ 高松千恵子
森の中噴井は夜もかくあらむ 山口青邨
汲み溜めて噴井の桶や火の恋し 石川桂郎 四温
河童忌や噴井に踊るまくはうり 小林羅衣
溢るるとなくあふれゐる噴井かな 鈴木貞雄
炎天に鉄のたたずむ自噴井 赤城さかえ句集
父の忌の噴井の底のうすあかり 大木あまり 火球
白雲は動き噴井は砕けつつ 中村汀女
硯洗ふ手もと小暗く噴井かな 石川桂郎 高蘆
花ふぶく道に噴井の水はしり 瀧春一 菜園
若水や噴井に手指ゆるべつつ 石川桂郎 四温
蝶生れ小田の噴井も力づく 有働亨 汐路
蝶飛んで草に溢るゝ噴井かな 西山泊雲 泊雲句集
道の辺の噴井に落る北風かな 増田龍雨 龍雨句集
鉱山の村噴井に障子洗ふなど 瀧春一 菜園
門前の噴井の音や蝉丸忌 池尾ながし
闇にある噴井の音や灯取虫 増田龍雨 龍雨句集
霙に洗ふ小鍋噴井は地の温み 中島斌男
鮓桶に雀遊べる噴井かな 青峰集 島田青峰
鶯菜洗ふや噴井あふれしめ 大竹孤悠

以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:38 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

「おはよう」を胸が噴き出す泉の辺 林翔 和紙
いづこより洩るゝ光ぞ泉見る 雑草 長谷川零餘子
いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥
うつくしく泉毒なる螢かな 飯田蛇笏 霊芝
およがせて洗ふ産着や泉鳴る 高橋せをち
おろがみて神の泉をすくひ飲む 山田健弘
かぎりなく泉の涌ける園の奥失はれたる時を埋めむ 大野誠夫
かなかなや泉に浸けし力杖 村越化石 山國抄
けまん草森は泉の音に酔ひ 河野南畦 湖の森
ここに酸素湧く泉ありクリスマス 石田波郷
こんこんと夫の笑ひし泉かな 小池文子 巴里蕭条
しろがねの器ならべつ泉殿 松瀬青々
しんしんと峡星満ちぬ泉の上 羽部洞然
せきれいに夕あかりして山泉 飯田蛇笏 山廬集
たちよれるものの朝影山泉 飯田蛇笏 椿花集
ちひさくも絶え間なく声泉汲む 中田剛 珠樹以後
つまだちの白樺ばかり夜の泉 上田五千石 森林
てのひらは茶碗のはじめ泉汲む 小檜山繁子
とくとくの泉に 鳴らす 跪坐の喉 伊丹三樹彦 一存在
どか~と泉の深さ底磊塊 西山泊雲 泊雲句集
にぎやかに大根車来る泉 安田晃子
はしりもて杓しりぞきし泉かな 阿波野青畝
まひる野の泉鶺鴒が知れるのみ 栗生純夫 科野路
みえてゐる枕一つや泉殿 加藤三七子
みづかきのあるごと掬ふ泉かな 石田京子
み仏と泉と庇同じうす 森田峠 避暑散歩
もりあがる泉の歓喜汲みて飲む 平井照敏 天上大風
ゆるやかに光琳模様泉より 宮津昭彦
よりかゝる柱映れり泉殿 池内たけし
らふそくの炎伸びたり泉殿 小川軽舟
わが子欲し泉内より水ひらく 山上樹実雄
わが影を金のふちどる泉かな 野見山朱鳥
わたなかの島に泉の噴き止まず 品川鈴子
コムパクト泉の空を捉へけり 加藤三七子
スイスは朝の青さ漲り泉湧く 有働亨 汐路
マイナス充電中か泉への水 加藤郁乎
ラムネ湧く園遊会の泉哉 尾崎紅葉
一人ゐて泉のほとり風つどふ 相馬遷子 山国
一会とは泉の如し虹立てり 佐藤美恵子
一本の蝋燃しつつ妻も吾も暗き泉を聴くごとくゐる 宮柊二
一点の渦震へをる泉かな 阿波野青畝
一燈をもらひ祭の森の泉 村越化石
世阿弥の手巌の真下より泉 中田剛 珠樹以後
中年の恋の暗さよ草泉 三谷昭 獣身
二人してしづかに泉にごしけり 川崎展宏
人が飲み羊が飲みし泉かな 下村梅子
人声のして泉湧く町の端 桂信子 黄 瀬
人葬りきし手すすげと泉鳴る 井沢正江 湖の伝説
人避けて来しが泉のさびしさは 大島民郎
今日も描く泉に雲の変りけり 長谷川かな女 雨 月
仔鹿ゐて泉に青き夕来たる 野澤節子 『駿河蘭』
仔鹿ゐて泉に青き闇溜まる 野澤節子
伊豆の夜の泉か脈かききすます 八木三日女 落葉期
体内に泉あるごと愛すなり 辻美奈子
修羅の貌うつし泉を暗くする 小林康治 玄霜
冷泉家小松も手入れ了へにけり 谷 迪子
出土クルスまろばせ祀る泉の辺 下村ひろし 西陲集
刈草屑のかたより浮ける泉哉 西山泊雲 泊雲句集
初蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏
刻々と天日くらき泉かな 茅舎
勿忘草穂高のゆらぐ泉あり 澤田 緑生
化被して蝶こぼしをる龍泉寺町 筑紫磐井 婆伽梵
千両を供へ霊泉祀らるる 清崎敏郎
午過ぎの濃き木影なる泉かな 尾崎迷堂 孤輪
南半球泉に映る星の房 橋本美代子
口やれば泉の霊気おのづから 町田しげき
合歓の雨湯泉の客待ち合はす 雑草 長谷川零餘子
名にしおふ除病延寿の泉飲む 竹内鈴子
吹き降りの夜が明け泉滾々と 栗生純夫 科野路
吹奏や黄泉は泉のはずもなく 増田まさみ
吾子生れぬ光かがやく泉たち 細谷源二 砂金帯
和へくれぬ泉に浸し置きし独活を 大野林火
唇つけし泉息つくひまもなし 橋本美代子
啓示乞ふ泉の面にくちづけて 上田五千石 田園
噴きやまぬ*かがいの森の青泉 毛塚静枝
四阿は風の十字路泉噴く 田中水桜
園林に仏陀泉を秘めたまひし 長谷川かな女 雨 月
地べたより生えし石仏鳴る泉 河合凱夫 飛礫
垣結ひの蕗葉それ浮く泉かな 金尾梅の門 古志の歌
夕明り水輪のみゆる泉かな 草城
夜の泉男寝落つや奏でいづ 殿村莵絲子 牡 丹
大いなる泉を控へ酒煮かな 石井露月
大旱や泥泉地獄ふつふつと 誓子
天つ日のふとかげりたる泉かな 風生
天正の世より存する泉あり 田中蛇々子
如月花ひらくや古泉湛然として魚子遊ぶ 日夏耿之介 婆羅門俳諧
妻の母独り居泉に胡瓜浮べ 香西照雄 対話
嬬恋の字の一つの泉汲む 文挾夫佐恵
子ども失せ天神さまの泉かな 飯島晴子
子のなき村の露の泉を汲みて去る 老川敏彦
子蜥蜴に泉がわかつ瑠璃の色 三谷昭 獣身
孵で水の泉に遇ひぬ旅の果 沢木欣一 沖縄吟遊集
家の泉鶯ひそむ緑映す 香西照雄 対話
宿とればすぐ泉べに炊ぐ娘よ 爽雨
寝ても思ふ砂丘にとめし泉の色 有働亨 汐路
山の湯泉や裸の上の天の川 子規句集 虚子・碧梧桐選
山泉杜若実を古るほとりかな 飯田蛇笏 霊芝
山泉橿鳥蔓の実を啄めり 飯田蛇笏 椿花集
山男老いては集ふ泉あり 有働 亨
山雲のかゞやき垂れし泉かな 石橋辰之助 山暦
山鳩の啼き泉邸は真昼閉す 宮武寒々 朱卓
岩かどに飾かゝれる泉かな 比叡 野村泊月
岩つばめ古き泉を見にゆかむ 山田みづえ
岩穿ちけるを昔に泉かな 尾崎迷堂 孤輪
崖(はけ)泉玉とたばしる太郎杉(偕楽園) 角川源義 『神々の宴』
巌より湧く泉には齢なし 津田清子 二人称
巒霽れてちる花に汲む泉かな 飯田蛇笏 霊芝
己が顔映りて暗き泉かな 比叡 野村泊月
己れ恃む泉の中に五指ひらき 岡本眸
常のことの泉に洗ふ若菜かな 尾崎迷堂 孤輪
帽燈や坑の泉は声あげて 小林康治
幽霊の立ち寄りさうな泉かな 東野鷹志
広き葉のかさなり映る泉かな 銀漢 吉岡禅寺洞
底砂の綾目さやかに泉かな 東洋城千句
御簾垂れて人ありやなし泉殿 柳沢白川
心身の離合泉のこゑ聴けば 槐太
愛情は泉のごとし毛絲編む 山口波津女 良人
手鏡を汚してしまふ泉かな 櫂未知子 蒙古斑
折れ曲り泉に沿ひて手摺かな 西山泊雲 泊雲句集
折れ曲る手摺泉に浮き沈み 西山泊雲 泊雲句集
探梅の女湧き泉湧きつゞく 横山白虹
掬ぶとし深さありける泉かな 尾崎迷堂 孤輪
揚羽より軽し泉に憩ひ来て 神尾久美子 桐の木
握手いづれも大き掌ばかり泉湧く 野澤節子 牡 丹
握手するやうに泉に手をひたす 岩岡中正
撫子の咲き澄む泉汲みにけり 中村 四峰
放牧の仔牛来て飲む野の泉 田中英子
新樹光泉あふれてより昏し 鷲谷七菜子 雨 月
新蕎麦や床几のはしに泉鳴り 井沢正江 以後
旅の泉に手洗ひをるや妻いかに 小林康治 玄霜
旅人の手を浸しゆく泉あり 丸山 麻子
旅人の額あかるき泉かな 小川軽舟
日本遠し落葉の下に泉生き 有働亨 汐路
日矢の中泉にひたす櫛ちさき 鷲谷七菜子 黄 炎
早乙女のすぎし泉のそば通る 百合山羽公 故園
早乙女の笠や泉のうへを過ぎ 百合山羽公 故園
星ぞらへこと~と湧く泉かな 麦草
昼くらく歯朶も映らぬ泉かな 五十嵐播水
暗きもの泉に棲めり娶りけり 河原枇杷男
朝の裸泉のごとし青年立つ 島津 亮
木の蔭の巌の蔭なる泉哉 星野麦人
木雫の間遠となりし泉かな 西山泊雲 泊雲句集
未婚なり掌をついて濁す泉の底 中嶋秀子
杉山中何も映さず泉湧く 野澤節子 遠い橋
枝映る樹に懸巣鳴く泉かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
柵されて飲水といふ泉湧く 小林勇二
森の奥泉ひかりて聖夜待つ 古賀まり子 降誕歌
森の泉汲みゆく乙女ばかりなり 内藤吐天 鳴海抄
棲むものの孤独月牙の泉あり 稲畑汀子
椎の根に杓渡しある泉かな 比叡 野村泊月
極彩スカート幾重にも巻き泉汲む 吉野義子
榛の枝を山蛤おつ泉かな 飯田蛇笏 霊芝
橡の実の打ちて泉の面ゆがむ 前田鶴子
次の子に帽子あづけて泉呑む 江本英一
死火山麓泉の声の子守唄 西東三鬼
母こひし夕山桜峰の松 泉鏡花(1873-1939)
母の忌の蟹みつつ汲む泉かな 福田甲子雄
母はわが心の泉リラ芽ぶく 古賀まり子 降誕歌
母老いぬ地図に泉の記号欲し 江里昭彦 ラディカル・マザー・コンプレックス
水晶の如くに湧きて泉かな 内田 じすけ
水面おだやかならず泉が湧きつづけ 津田清子 礼 拝
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 飯田蛇笏 霊芝
汚染源探す人あり泉に在り 香西照雄 素心
池泉めぐる老松の影苔の花 田口一穂
汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉 飯田蛇笏 霊芝
汲みに出て初東雲の泉かな 田中兆木
沢瀉に泉の蜻蛉生れけり 根岸善雄
泉ありいづれの堂も遠からず 森田峠 三角屋根
泉あり遠き神代に恋ありき 山本歩禅
泉から巣箱が三つ見えにけり 大串章 百鳥 以後
泉くむ歯朶の青きに胸染めて 清水 節子
泉こんこん母思ひ出すこと易し 橋本美代子
泉での言葉しづかにおびただし 古舘曹人 能登の蛙
泉と別れ一樹なき谿直登す 有働亨 汐路
泉なほ湧く天領の廃銀山 品川鈴子
泉に棲みつき退屈のあめんぼう 津田清子 二人称
泉に浸け少年の脛短か 上田五千石
泉ぬくしといひつゝ女葱洗ふ 村田八重
泉のごとくよき詩をわれに湧かしめよ 木下夕爾(1914-65)
泉のむ父祖の大地にひざまづき 大串章
泉の底に一本の匙夏了る 飯島晴子(1921-2000)
泉の辺後れ来し者らつどふなり 小林康治 玄霜
泉の辺驢馬を荷車より離す 山崎ひさを
泉へのかぐはしき闇夜鶯 小池文子 巴里蕭条
泉への道後れゆく安けさよ 石田波郷(1913-69)
泉へ垂らし足裏を暗く映らしむ 田川飛旅子 花文字
泉へ沈む常緑樹の葉へ子守唄 田川飛旅子 花文字
泉ほどさみしきものを知らざりき 夏井いつき
泉まで歩める影の深からむ 小林康治
泉みて子育て観音乳房おす 和知喜八 同齢
泉やさし旅果ての掌は泳がせて 小林康治 玄霜
泉より刈り来て茅の輪結ひにけり 根岸 善雄
泉より生きもの獲んと童たち 津田清子 礼 拝
泉より転生の鳥翔てりけり 村越化石
泉吸ひ紅髪を獅子のごとぬらす 古舘曹人 砂の音
泉吸ふ草木と同じ生を享け 平畑静塔
泉喫み終るまで峰いくつか澄む 加藤知世子 花寂び
泉喫み虹ほどの刻充ちゐたり 加藤知世子 花寂び
泉噴き萬餘の霊に献水す 下村ひろし 西陲集
泉噴く千万の音退けつ 中村汀女
泉噴く水輪の影は光るもの 勝俣泰享
泉声や小梨の花もたそがれて 相馬遷子 山国
泉川いとけなき咳こんこんと 山口誓子
泉干る女足音多きゆえ 萩原麦草 麦嵐
泉底にしきなす木の葉木の実かな 飯田蛇笏 山廬集
泉成るわれ純粋を主宰して 加藤郁乎
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
泉掬むひかりを咽喉にはしらせて 平井照敏 天上大風
泉掬む山人面上げにけり 河野静雲 閻魔
泉殿映せる水の古色なる 石川星水女
泉殿水かげろふも庇内 高木晴子 花 季
泉殿西日となりて下りにけり 銀漢 吉岡禅寺洞
泉殿鏡面消えし古鏡吊る 橋本鶏二
泉水になじまぬ蝌蚪も泳ぐなり 樋笠文
泉水に山女も活きて鮎の宿 滝井孝作 浮寝鳥
泉水に顔をうつすや花曇り 飯田蛇笏 山廬集
泉水へと人没し去る葎かな 高浜虚子
泉汲むや胸を離れし首飾り 猪俣千代子 堆 朱
泉汲む綱引張るや*すがる 八木林之介 青霞集
泉湧くくちづけ誰もはばからず 井沢正江 晩蝉
泉湧くらしや佇てるも跼めるも 山本歩禅
泉湧く太古の砂を踊らせて 安斉君子
泉湧く朴の花影片寄せず 羽部洞然
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 中村草田男
泉辺の家消えさうな子を産んで 飯島晴子
泉辺の石われ去らば蟹の乗る 村越化石
泉飲む子は真みどりに透きとほり 吉原文音
泉鳴る修道院は眠るによし 平畑静塔
浮き出でし鯰をかしや泉殿 楠目橙黄子 橙圃
浴泉のエメラルド色花曇 桂信子 樹影
海底の泉のむかしむかしかな 夏石番矢 神々のフーガ
海神の膂力あまりて噴く泉 林翔 和紙
海近き泉に馬の来てをりぬ 藤木倶子
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 飯田蛇笏 山廬集
温むなき砂丘の泉砂を噴く 山口草堂
湧き止まぬ泉なりけり橡のもと 高浜年尾
湧くや泉白扇の影のありどころ 村上鬼城
湧ける音輪となり泉湧きゐたり 村越化石
満山のみどりを籠めて泉湧く 有働亨 汐路
濁りゆく泉のそばのからすうり 中田剛 珠樹
火の山へ旅す泉に手を浸けて 津田清子 礼 拝
火を焚きて美しく立つ泉番 平畑静塔
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 林火
焚火明り遠ちの泉をまづとらふ 栗生純夫 科野路
無花果や雨余の泉に落ちず熟る 飯田蛇笏 山廬集
父たる希ひ泉へ飴の紙泛かす 磯貝碧蹄館 握手
父の後姿に残る戦争泉の辺 鈴木六林男 桜島
牛の貌泉を暗くしたりけり 大串章
牛去りし泉に赤し九輪草 相馬遷子 山国
牛蒡一束泉に座る年の暮 原田喬
物売りのきて蹤きまとふ泉の辺 稲垣きくの 黄 瀬
犬が来て泉を飲めり移る鵙 田川飛旅子
犬が飲む月下の泉溢れをり 馬場移公子
瑕瑾あり泉帝の名のさくらんぼ 堀口星眠 樹の雫
生はひとたび一日は泉湧くままに 齋藤玄 『雁道』
生前も死後も泉へ水飲みに 中村苑子(1913-2001)
生家の肌夜も泉のあふるる音 香西照雄 対話
田園広し青き唇もて泉吸ふ 齋藤玄 『玄』
町びとの麦茶を冷す泉あり 石川桂郎 高蘆
登山馬人乗せしまま泉飲む 山口波津女
白き矢の浮ぶ泉や百合の花 会津八一
白濁は泉より出で天高し 西東三鬼
白藤のほとりと落ちし泉かな 柴田白葉女
白雲の滑り尽せり青泉 関森勝夫
白雲の限りなく過ぐ野の泉 近藤一鴻
百合影す径を泉へ行かんとす 大野林火
百日紅の午後盛り上る泉の芯 田川飛旅子 花文字
目慣るればほのぼの碧き泉かな 播水
相ひびかふ智恵子泉と落し水 西本一都 景色
眼つむれば泉の誘ひひたすらなる 多佳子
短夜や冷泉橋の潦 五十嵐播水 播水句集
祀りある泉の神も門邊なる 橋本鶏二
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
立ちどまりたるのみ泉辺を過ぎぬ 森田峠 避暑散歩
立ち去るや泉の音の背にさやか 内藤吐天 鳴海抄
立てば郭公跼みて泉湧く音す 千代田葛彦 旅人木
立上り泉へ落す咳ひとつ 田川飛旅子 花文字
笛吹くや泉は夢の国のもの 龍胆 長谷川かな女
笹子鳴く泉に声を試すごと 羽部洞然
紅つつじ咲ききはまれる庭泉 柴田白葉女 『夕浪』
紺青の蟹のさみしき泉かな 青畝
終生まぶしきもの女人ぞと泉奏づ 中村草田男(1901-83)
結ぶより早歯にひびく泉哉 芭 蕉
絶間なき泉や家齢三百年 加藤知世子 花寂び
綿虫をはづませてゐる泉かな きちせ・あや
緑わく夏山陰の泉かな 蓼太
緑蔭の奥かがやきて泉湧く 内藤吐天 鳴海抄
罐詰を泉に囲ふ郁子の花 篠田悌二郎
羊群の泉濁して立ち去れり 太田土男
老農は鎌で泉を飲みにけり 安井浩司 汝と我
老鴬の啼くねに鎮む山泉 飯田蛇笏 椿花集
聖泉の水岐れては芹の水 下村ひろし 西陲集
聖泉の湧きつつ溜むる落椿 下村ひろし 西陲集
肌沈め野分の泉底明るむ 筒井節子
胸冷ゆるまで湧泉の奥を見る 千代田葛彦 旅人木
腕時計外す泉の底得んと 河野南畦 『風の岬』
色鳥や森は神話の泉抱く 宮下翠舟
芋洗ふひとりが占めて野の泉 黒坂紫陽子
花鋏夜の泉へとしづめたし 朝倉和江
若き歌唱いよよ泉をあふれしむ 木下夕爾
茨野やながれて浅き泉川 西島麦南 人音
草の葉に朝の泉が匂へるよ 河合凱夫 藤の実
草泉夕やみ退けば昏るるのみ 岡本眸
荒れ凪ぎて囲の蜘蛛黄なる山泉 飯田蛇笏
菜洗ひの去りたる泉荒れにけり 飴山實 少長集
蒼然と旅人を待つ泉かな 大木あまり 雲の塔
蔦幾条枝よりたるゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集
蕨丈け泉がうつす雲の冷え 西村公鳳
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 飯田蛇笏 霊芝
薫風の泉なるべし大榎 本宮鼎三
藤豆太り日々の泉辺去るべくも 香西照雄 対話
蛾の眠る真昼睡たげに泉の芯 田川飛旅子 花文字
蛾の羽をうかべてゐたる泉かな 夏井いつき
蜩や暮れてひかりを増す泉 川村紫陽
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝶がゐて草の泉を傷つける 石原八束 風霜記
血圧高し泉の底をのぞき込む 田川飛旅子 花文字
袂なきことつまらなき泉かな 正木ゆう子
被爆時報平和の泉いま激す 下村ひろし 西陲集
詣る子に智慧の泉といふが湧く 舘野翔鶴
詩はひとりひとりよ泉覗きゆく 村越化石 山國抄
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 草田男
譲られて譲る檜山の青泉 影島智子
谷口の木の葉の八重に泉かな 松瀬青々
谷底の癩者の家の泉など 香西照雄 対話
赤き馬車泉に掬める少女待つ 林翔 和紙
足浸ける泉徹底して透けり 津田清子 礼 拝
身のなかを北より泉ながれけむ 河原枇杷男 密
近よらば泉の声の遠去らむ 玄
野の風塵穢れざるもの泉のみ 栗生純夫 科野路
鍬をもつて農夫ひろげし泉かな 原石鼎
長虫を追うてあがりぬ泉殿 銀漢 吉岡禅寺洞
閑古沁む泉一物もまとはねば 栗生純夫 科野路
闇美し泉美し夏祓 素十
降り出づる泉のほとりすぐに濡れ 栗生純夫 科野路
降り出でて泉にはなき雨の音 栗生純夫 科野路
降誕祭ルルドの泉病む娘に欲し 成瀬桜桃子
陽関の涯て泉あり寄れば逃ぐ 石原八束(1919-98)
雨ふれば雨に葛咲く山泉 飯田蛇笏 椿花集
雲の峰石伐る斧の光かな 泉鏡花(1873-1939)
雲の頭に晩夏の茜泉暮る 川村紫陽
霊泉を知る人もなし棕梠の花 雉子郎句集 石島雉子郎
靄明りして十三夜泉鳴る 吉野義子
青ぶだう庭に泉をもつ一戸 つじ加代子
青松葉見えつつ沈む泉哉 正岡子規
青梅のはねて泛く葉や夕泉 飯田蛇笏 山廬集
青竹を編みて泉の蓋となす 森田峠 避暑散歩
青葉木菟泉溢れて灯の圏外へ 川村紫陽
静かさは砂吹きあぐる泉哉 正岡子規
鞠外れてざぶと浮へる泉かな 尾崎紅葉
音ひとつ立ててをりたる泉かな 石田郷子
音一つたててをりたる泉かな 石田 郷子
顔つけしあとの泉の明るしや 鷲谷七菜子
顔の辺を深山泉の声とほる 飯田龍太
顔ゆれて血よりつめたく泉澄む 鷲谷七菜子
顔映りにくき泉の風を知る 森田峠 逆瀬川以後
顔濡らすも幸かアルプの泉喫む 有働亨 汐路
飛泉から光風磔死の神色よ 香西照雄 対話
飯籠の次第に枕む泉かな 比叡 野村泊月
香を放つ大樹いづれや夜の泉 堀口星眠 営巣期
馬は未明の泉のむ鈴りんりんと 加藤知世子 花寂び
馬も飲む泉にどかと小日輪 村越化石 山國抄
駒の鼻ふくれて動く泉かな 高濱虚子
魂棚に風吹き入れて泉川 野沢節子
鳥たちのための泉に口づけぬ 野中亮介
鳥を飼い胸に泉をひろげている 前田秀子
鴨足草雨に濁らぬ泉かな 飯田蛇笏 山廬集
鷹の巣やひとり泉のゆらめける 山上樹実雄
黒百合や高嶺の泉飛騨に落つ 堀口星眠 営巣期
黒蜻蛉浮木に群るゝ泉かな 西山泊雲 泊雲句集



以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:37 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

浜木綿

浜木綿

例句を挙げる。

ひんやりとして浜木綿の莟なり 山西雅子
ましぐらに浜木綿へ来る波と思ふ 武田知子
一よりあかるきわれの長女は浜木綿 阿部完市 春日朝歌
一湾に雨を呼び込む浜おもと 高澤良一 鳩信
大雨のあと浜木綿に次の花 飴山實 『次の花』
少女まづ脚みづみづし浜おもと 香西照雄 対話
少年のみぞおち深し浜おもと 高井北杜
巫子寄せへ浜木綿けむる月のみち 宮武寒々 朱卓
帆船に浜木綿は翅ひろげたり 伊丹さち子
庭が亜熱帯となつて 浜木綿がうわつた 吉岡禅寺洞
志士の像大いなるかな浜おもと 森田峠 避暑散歩
浜おもと島人はただおもととも 高野素十
浜おもと補陀洛浄土この沖に 酒井 京
浜おもと踏みしむる砂ほこほこと 高澤良一 ももすずめ
浜おもと香のことごとく夜明けたり 三宅一鳴
浜木綿が咲けば蛾が来るどこからか 下村梅子
浜木綿に 黒潮の・背を きこうとする 吉岡禅寺洞
浜木綿にさへぎるもののなき夕焼 高橋金窗
浜木綿に不二隠す雲下りて来ぬ 木村蕪城 寒泉
浜木綿に乳しぼらるる牛白き 太田鴻村 穂国
浜木綿に夕風とどく駅ホーム 加藤あき江
浜木綿に夜の波白き祭笛 西島麦南
浜木綿に大いなる濤きてやさし 村田脩
浜木綿に大きな海の日ぐれかな 矢部白茅
浜木綿に子を抱きかへて帰り海女 白川朝帆
浜木綿に星夜の火山灰の降る音す 桂樟蹊子
浜木綿に昼餉の海女の一たむろ 中村三山
浜木綿に波うち返す月の浜 山中三木
浜木綿に流人の墓の小さゝよ 篠原鳳作 海の旅
浜木綿に潮垂れ顔の男寄る 文挟夫佐恵 雨 月
浜木綿に爪化粧してスープ摂る 宮武寒々 朱卓
浜木綿に牟婁の岩礁とこしなへ 阿波野青畝
浜木綿に美しき海ありにけり 松本 敦子
浜木綿に鍵を忘れず持たれしか 長谷川かな女 花寂び
浜木綿に頻浪しげくなりにけり 下村梅子
浜木綿に風の粘れる祭あと 原裕 青垣
浜木綿のざんばら髪は幡随院 高澤良一 素抱
浜木綿のたゞ咲くばかり無人島 平林春子
浜木綿のひらきをはりて月の刻 古舘曹人 砂の音
浜木綿のみだれて青く魚眠る 金尾梅の門 古志の歌
浜木綿の仄めく闇に温泉の噴けり 田守としを
浜木綿の先に見えくる登校児 高澤良一 素抱
浜木綿の切先たてし蕾かな 清崎敏郎
浜木綿の咲いて鴎のゐない海 今井杏太郎
浜木綿の咲けり海より二里の庭 高橋利雄
浜木綿の土に踏み込む富士の裾 古舘曹人 砂の音
浜木綿の夕べ泳ぎ児見えぬなり 臼田亜浪 旅人
浜木綿の奔放に裂け幕府跡 北見さとる
浜木綿の岬けむりの汽車でつく 矢島渚男
浜木綿の島伊勢海老の網を干す 中島花楠
浜木綿の明日咲く茎を月にあぐ 黒木野雨
浜木綿の月下にあるは香の高き 大橋敦子 手 鞠
浜木綿の沖にぎりしめ児は眠る 佐川広治
浜木綿の白きかんざし月に濡れ 滝春一
浜木綿の真日の虚しさ波つぶやく 山口草堂
浜木綿の真青の葉や春の雨 楠目橙黄子 橙圃
浜木綿の磯に曳きくる角力牛 幕内千恵
浜木綿の管に合はせて蝶の舌 高澤良一 素抱
浜木綿の糸梳る岬の風 中村和子
浜木綿の花と暴風圏に入る 後藤比奈夫 花びら柚子
浜木綿の花のしろさ 琉球はいま 孤独です 吉岡禅寺洞
浜木綿の花の上なる浪がしら 神尾季羊
浜木綿の花の傷みや蝸牛 射場 延助
浜木綿の花の月夜に海女踊る 下村非文
浜木綿の花茎さみどり蟻のぼる 高濱年尾 年尾句集
浜木綿の花茎のぼる草の蔓 高濱年尾 年尾句集
浜木綿の芽立ち赤らむ朝より雨 河野南畦 湖の森
浜木綿の蔭にて海の石の墓 佐野まもる
浜木綿の蕋に雨はれゐたりけり 八木林之介 青霞集
浜木綿の薄暮にひらく濤の音 古館曹人
浜木綿はタカラジェンヌの長まつげ 高澤良一 素抱
浜木綿は甲羅法師のかざす花 山口誓子
浜木綿へ兄は流れて弟も 中村苑子
浜木綿も三津朝市も茜ざす 西本一都 景色
浜木綿や「きくへ」としるす海女の籠 伊藤いと子
浜木綿やいづこより日の出る村ぞ 千代田葛彦 旅人木
浜木綿やひとり沖さす丸木舟 福永耕二
浜木綿や乱礁に濤こぞり立ち 伊東宏晃
浜木綿や奇巌の間展く海 米田双葉子
浜木綿や岩礁荒き野島崎 伊東宏晃
浜木綿や式内の宮埼の先に 木村蕪城 寒泉
浜木綿や日向七浦七峠 磯野充伯
浜木綿や朝の帆頷きつつすすむ 飯島晴子
浜木綿や海女の濡身をかくさむと 小島千架子
浜木綿や潮に夜明けの色走り 木内彰志
浜木綿や濡れし艪櫂を軒に立て 米澤吾亦紅
浜木綿や灘も岬も夕明り 杉崎あさ
浜木綿や父を墨痕ながれたり 宇多喜代子
浜木綿や磯小屋の火の暮れ残り 末永 てる
浜木綿や群像一糸ずつ纏い 田仲了司
浜木綿や荒垣に干す磯草履 木村仁美
浜木綿や荒磯の天日人を灼き 下村槐太 天涯
浜木綿や青水脈とほく沖へ伸ぶ 山口草堂
浜木綿を一鉢育て遺しける 沢木欣一
浜木綿を光の束と置く渚 渡邊千枝子
浜木綿咲く朝の岬を呼びよせて 千代田葛彦 旅人木
海女の櫛忘れてありぬ浜おもと 沖一風
漁火に向き浜木綿は海女の花 神尾久美子 掌
煖房の浜木綿既に蕾上げ 高浜年尾
燈台の黒き石垣浜おもと 木村 都由子
産声や暁の浜木綿風を呼ぶ 黒川憲三
耶蘇島の波止群落の浜木綿 小原菁々子
脱兎のごと雨駆け抜けぬ浜おもと 高澤良一 寒暑
舗装路を渚と見立て浜おもと 高澤良一 素抱
苦潮や浜木綿の花色を変ふ 長尾正樹
誕生日夜は浜木綿の白花火 吉野義子
身を裂きて咲く浜木綿と思ひけり 雨宮きぬよ
遠のくものよ国生みの山も浜木綿も 金子兜太
雲はみな風の形や浜おもと 不破博
はまゆふに雨しろじろとかつ太く 長谷川素逝
はまゆふのかたわらに咲く端居かな 楠目橙黄子 橙圃
はまゆふのまだ咲かぬ風薫りけり 久保田万太郎 流寓抄
はまゆふの白へ紛れる波の音 福川悠子
はまゆふの花終らんと月夜雨 松村蒼石 春霰
はまゆふは真夜の灯台にほはしむ 阿波野青畝
はまゆふもまた返り咲く捕鯨の地 友岡子郷
はまゆふを月待つ庭の終ひ花 荒井正隆
はまゆふ咲く島へ十歩の橋渡る 田中芙美

以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:36 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

灸花

灸花

例句を挙げる。

こぼれても咲いても親しやいと花 北川サト
どくだみの終りしからに灸花 後藤夜半 底紅
またひとつ薬のふへて灸花 西島美代子
口広き縄文の土器灸花 河村美登里
夫に吾灸花には熊ん蜂 依光陽子
廃村をゆく霧青し灸花 橋本榮治 麦生
灸花いつまで続くこんなこと 高澤良一 燕音
灸花けふの暑さの如何ばかり 高澤良一 ぱらりとせ
灸花こころひとつが昏れゐたる 河原枇杷男
灸花にも散りどきのきてゐたる 大澤ひろし
灸花ふたつの指に抓み摘む 後藤夜半 底紅
灸花七番寺へ喘ぎ坂 高澤良一 宿好
灸花今はかうして日を送る 高澤良一 随笑
灸花微熱の五体もてあます 古川塔子
灸花文弱といふ向う見ず 高橋青塢
灸花消しに来てゐし秋の風 後藤比奈夫 花びら柚子
灸花無数に咲けば疎まるる 檜 紀代
灸花疱瘡神にからみつく 滝沢伊代次
灸花首を傾げて見る人も 高澤良一 寒暑
へくそかづらと言はず廃園みな黄葉 蓼汀
へくそかづら凡打ばかりの草野球 高澤良一 素抱
へくそかづら本家分家を垣一重 岡田菫也
へくそかづら首に掛くれば珠数かづら 殿村菟絲子
一茶翁へくそかづらが咲いたぞな 牧辰夫
取木翁へくそかづらを一と払ひ 坂口 かぶん
名をへくそかづらとぞいふ花盛り 高浜虚子
葛を吹くへくそかづらを吹きし風 後藤夜半 底紅
疎まるゝことに馴れっこ灸花 高澤良一 寒暑
竹藪の木障(こさ)のあたりの灸花 手塚美佐
落第の子の窓掩い灸花 渡辺千枝子
蛇の血にみなかみや灸花 斎藤玄 雁道
降りぐせの山の宿なり灸花 星野麦丘人
雨の中日がさしてきし灸花 清崎敏郎

以上
by 575fudemakase | 2014-07-31 00:33 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

涼し 2

涼し 2


例句を挙げる。


形相の涼しきもあり伎楽面 和田悟朗 法隆寺伝承
影といふものに游びて涼しき生 鷲谷七菜子 天鼓
待合の木椅子涼しき黒光り 仁平勝 東京物語
御来迎涼しきまでに燃ゆるかな 大谷碧雲居
御灯に切火を打つて神涼し 武原はん女
志度寺は涼しく海女の墓もある 池内たけし
念願の涼しさ極め主の祈り 稲畑廣太郎
思ひ出すことどもこゝに涼しく居 高木晴子 晴居
恋死の墓も涼しき一つにて 加藤三七子
惚れ惚れと若人の句読む息涼し 殿村莵絲子 牡 丹
慮外なから月に裸の涼しさよ 尾崎紅葉
我立てば師の句碑鏡なし涼し 深見けん二
扉に垂れし忘れロザリオ彩涼し 下村ひろし 西陲集
手をのべて届く崖百合窓涼し 福田蓼汀 山火
手廂に来し方を見て涼しかり 黛まどか
手廻しに朝の間涼し夏念仏 野 坡
手拭の二尺がほどの涼しさよ 塚田登美子
手水水涼しかりしを金火鉢 曲言 選集「板東太郎」
手鏡に夕月がふと涼しけれ 日野草城
打揃ひ涼しき芥子の頭かな 虚子選躑躅句集 岩木躑躅、村上磯次郎編
抜け道のなんと涼しき京伏見 芦内くに
拓本涼し紙透き出づる沙羅の詩 林翔 和紙
拱きて舟を見てゐる涼しさよ 岸風三楼 往来
振りかざすだんびら涼し怪猫圖 高澤良一 燕音
振り移る起床の鐘の涼しき音 石川桂郎 高蘆
排気の火涼し戦火を忘れねど 殿村莵絲子 牡 丹
提唱の布袋和尚や蓮涼し 河野静雲 閻魔
揚羽など真黒きものら涼しげなり 三橋鷹女
揺れて涼し愛の折鶴千羽 下村ひろし 西陲集
摺粉木も旅の買ひもの露涼し 細川加賀 生身魂
教会の大いなる鍵月涼し 有馬朗人 天為
敢て書き遺すことなし灯涼し 岸風三樓
文涼し男の子生れしを綴り来し 河野南畦 『花と流氷』
斫るも負ふも生涯奈落石涼し 西本一都 景色
新聞に三日触れざる眼の涼し 中村明子
施餓鬼旛五彩涼しき梨葉の忌 文挟夫佐恵 雨 月
旅一と日ウィンの雨に濡れ涼し 高木晴子 花 季
旅涼しうら表なき夏ごろも 高井几董
旅涼し燈下繚乱のペルシャ靴 林翔 和紙
旅衣涼しく俥飛ばしけり 白水郎句集 大場白水郎
日々のこと天に任する涼しさよ 高澤良一 素抱
日かげる時連れ鳴いて鳰涼し 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
日さかりの花や涼しき雪の下 呑舟
日の盛りより涼しさに移る艸 松瀬青々
日めくりの減るも涼しきひとつにて 正木ゆう子
日曜の紺まだらなる朝涼し 原裕 青垣
日涼し船いま波のさわぐ中 久保田万太郎 流寓抄以後
昏れがての飛天に似たる雲涼し 伊藤いと子
昔日の涼しさに立つ二人かな 依光陽子
星涼しうたごゑ流れくる川原 穴澤光江
星涼しく白樺も闇たのしめり 宮津昭彦
星涼しみよしのの坊灯をもらす 下村梅子
星涼しアンデルセンの童話など 星野麥丘人
星涼しニューヨーク行パリー行 山本歩禅
星涼しユダヤかたぎのはなし好き 久保田万太郎 流寓抄
星涼し光となりて飛びにし代 林翔 和紙
星涼し吾子賜はぬも神の意か 水田むつみ
星涼し夜は夜の面の龍馬像 つじ加代子
星涼し寝るを惜みて立つ門に 星野麦丘人
星涼し川一面に突刺さり 野見山朱鳥(1917-70)
星涼し昼は黒砂に雲母賞でぬ 香西照雄 素心
星涼し樅のふれあふ音かさね 星野麦丘人
星涼し謡の声のをとこをみな 猪俣千代子 堆 朱
星涼し遊歩甲板の籐椅子に 岸風三楼 往来
星涼し遠い日本の見えそうな シヨー麗子
星涼し青竹踏みの土不踏 村本畔秀
星空の涼しければの瞳なりけり 石田勝彦 秋興
昧爽の風の涼しさ眠り落つ 山田みづえ
昼しぼむ花や涼しき石の間 中川宋淵 詩龕
昼はまた昼の涼しさ萱草咲く 沢田早苗
時の来て朴と涼しき別れかな 中山世一
時代の眼涼しく使ふ雄之介 高澤良一 鳩信
晒布ひく人涼しさをいひあへり 飯田蛇笏
暑き箇所涼しき箇所が汽船極端 京極杞陽 くくたち上巻
暗き燈も時に僅かに涼しきか 瓜人
曇りともわかたぬ富士の影涼し 金尾梅の門 古志の歌
曉齋の百鬼夜行図おお涼し 高澤良一 寒暑
更けまさる月の波筋涼しきに 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
更に上る一層楼の雲涼し 尾崎紅葉
月いでて涼しき蓮の広葉かな 本多 勝彦
月が涼しゆう毀れた肺がしみじみ息するは 大橋裸木
月のこる涼しきまゝに夢殿ヘ 松瀬青々
月の暈茶筅がおどる涼しきごと 小林康治 玄霜
月は日を火星は月を追ひ涼し 岡田日郎
月も露も涼しきとはのわかれかな 久保田万太郎 流寓抄
月影の洩れて涼しや籠枕 利会
月明下一舟の去る涼しさよ 杉本寛
月涼しいそしみ綴る蜘蛛の糸 杉田久女
月涼しこころに棲めるひと遠く 木下夕爾
月涼しそれ~跼み船を待つ 五十嵐播水 埠頭
月涼しといへる老爺が達者哉 尾崎紅葉
月涼しところどころに斑ある樹 中田剛 竟日
月涼しよきおもひ出をもたぬわれ 藤木清子
月涼しノートルダムの時計鳴る 星野立子
月涼し中庭の戸はあきしまま 五十嵐播水 埠頭
月涼し今日の終りの厨水 木下夕爾
月涼し僧も四条へ小買物 茅舎
月涼し兵火山門に迫りしと 大峯あきら 鳥道
月涼し吹かれて雲のとどまらず 臼田亞浪 定本亜浪句集
月涼し塩田筋目正しけり 稲垣美知子
月涼し慰められることはいや 今井千鶴子
月涼し映画をひとつみて帰る 古沢太穂 古沢太穂句集
月涼し晝のまゝなる雲ひとつ 春草句帖 長谷川春草
月涼し杉葉の門の明放し 尾崎紅葉
月涼し来世もまぎれなき母娘 渡辺恭子
月涼し橋架けたやと歌ひつゝ 尾崎紅葉
月涼し汐垂るゝ艪をかつぎゆく 内藤吐天
月涼し浜の電車に送られし 阿部みどり女 笹鳴
月涼し百足の落つる枕もと 之道 俳諧撰集「藤の実」
月涼し祭行燈消えがちに 福田蓼汀 山火
月涼し空は洞となりにけり 上野泰 佐介
月涼し葭切やみて葭の影 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
月涼し行けば纜ありまたぐ 五十嵐播水 埠頭
月涼し貯炭場蛙鳴き渡る 小林康治 玄霜
月涼し軽業のごと畦わたり 石川桂郎 含羞
月涼し運河をめぐるカンツォーネ 今留治子
月涼し韓国へゆく船の旅 小川軽舟
月蝕のやがて涼しきひかりふる 百合山羽公
月読命涼しや鰡とばす 小川軽舟
有松も鳴海もしぼり風涼し 伊藤敬子
朝 は 涼 し い 著 荷 の 子 山頭火
朝の銀座めづらし銀座も涼しかり 及川貞 夕焼
朝の間の露を涼しと芝歩く 稲畑汀子
朝の雨涼しく木槿咲きにけり 岸風三楼 往来
朝は涼しい茗荷の子 種田山頭火 草木塔
朝市のあとの涼しく掃かれけり 大串章
朝市や涼しき雨の榊売 ながさく清江
朝日涼し野良着も蠅も縞模様 香西照雄 対話
朝早く起きて涼しき橋ありぬ 今井杏太郎
朝毎の涼しさにある残暑かな 小杉余子 余子句選
朝涼し健啖の語のあはれなる 相生垣瓜人 微茫集
朝涼し僧の会釈と白芙蓉 角川春樹 夢殿
朝涼し全脳動きはじめたる 村山三郎
朝涼し国境渡る乳母車 有馬朗人 天為
朝涼し巣を離れ飛ぶ蜂一つ 宋淵
朝涼し苔の面のささら立ち 岸田稚魚 筍流し
朝皃に涼しくくふやひとり飯 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
朝露によごれて涼し瓜の泥 芭蕉
朝露や撫でて涼しき瓜の土/朝露によごれて涼し瓜の土 松尾芭蕉
朝顔と赤坊の瞳と暁涼し 福田蓼汀 山火
朝顔や朝寝涼しき枕もと 会津八一
朝顔や片肺なれど声涼し 中山純子 茜
木かくれて鶴一聲の涼しさよ 会津八一
木に囲まれて蝉の眼とゐて涼し 河野友人
木下闇あらら涼しや恐ろしや 正岡子規
木偶の抜く段平涼し文弥節 高澤良一 ももすずめ
木曽涼し磨きぬかれて火縄銃 中島畦雨
木菟が目を細め涼しきランプかな 殿村菟絲子 『繪硝子』
木麻黄の葉風涼しや夏季講座 石井桐陰
本町の法被の届く涼しさよ 如月真菜
本門寺の森を吹き来る風涼し 高木晴子 晴居
朱の柱あまた涼しき還御かな 藺草慶子
朱肉つけて一塊涼し山の石 碧雲居句集 大谷碧雲居
杉の幹太し涼しと中年来る 原裕 葦牙
杉叢の群山あつめ涼しけれ 石塚友二 方寸虚実
杉抽いて松涼し雨ざんざ降る 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
杉玉を吊るす地酒屋蝉涼し 後藤冬至男
村涼し飼屋の草履見えてをり 大峯あきら 鳥道
村雨に漁火消ゆるあら涼し 大須賀乙字
杓のうなづく滴りの涼しさよ 辻田克巳
杜涼し幣に結びし麻一筋 伊藤いと子
来いといふ人あれ嶋は涼しげ也 尾崎紅葉
杭涼し蹠に感ず水の張り 櫛原希伊子
松に濡れて旭に晞く衣涼し 尾崎紅葉
松の奥浪音涼し御用邸 五十嵐播水 播水句集
松の風また竹の風みな涼し 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
松は朽ちて御涼しさの遺りける 尾崎紅葉
松涼し鎮みまつりし法の宮 高濱年尾
松落葉見る見る殖ゆる庭涼し 高浜虚子
松蔭に笛吹いて海涼しゅうす 高澤良一 素抱
松虫鈴虫汐騒の涼しくなれる 臼田亜浪
松風に乾きて涼し由か耳 尾崎紅葉
松風の涼しき浜の館かな 高橋淡路女 梶の葉
松風の落葉か水の音涼し 松尾芭蕉
松風や阿修羅涼しく腋をあげ 前田普羅
板前の万能包丁涼しけれ 猪狩セイジ
枇杷の露涼しと窓を蔽ふ日かな 会津八一
林中のやがて涼しきこだまかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
果てしなき涼しさといふ夢も見き 高山れおな
枝移りする蝉のあり月涼し 五十嵐播水 埠頭
枯笹の涼しき葉ずれ父の周忌 中拓夫 愛鷹
枳殻新芽吾目の中の涼しかる 細見綾子
染屋舟みどり涼しき淦汲めり 林翔 和紙
柳行李片荷は涼し初真桑 松尾芭蕉
栗鼠の子に見つめられゐる涼しさよ 仙田洋子 雲は王冠
桃食べて涼しくなりし寺住ひ 中山純子 沙 羅以後
桜鯛さげて少女の瞳の涼し 阪本謙二
梅雨あけて静かに涼し夜の畳 高橋馬相 秋山越
梵鐘を爪はじきつつ涼しけれ 上村占魚 球磨
森にゐて木よりも涼し袋角 平畑静塔
椅子涼し衣通る月に身じろがず 杉田久女
椰子の実の流れ著く浜月涼し 千本木溟子
椰子涼し一番星はどこに出る 岩崎照子
楼門の山気ひとひらづつ涼し 赤松[けい]子 白毫
榧の樹を涼しがりつつ皆憩ふ 下村槐太 天涯
構はれぬことが涼しき浦の宿 上崎暮潮
樋にかゝる苗一束や露涼し 島村元句集
樒くべ護摩の火はぜる涼しさよ 岡田日郎
樹々涼し穂高岩群照りをるに 石橋辰之助 山暦
樹下涼しゴッホに似たるルンペン氏 岩崎照子
橋かけて中島涼し茶の通ひ 立花北枝
橋の名を聞きて涼しくなりゐたる 黒田杏子
橋通るとき涼しくて欄に手を 高濱年尾 年尾句集
櫂ひとつ置かれて月の涼しかり 浦川 聡子
櫓声身にひしと涼しむ闇の濃し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
欄涼し闇の川面のすぐそこに 高濱年尾 年尾句集
此あたり目に見ゆるものは皆涼し 芭 蕉
此人は洒落が上手で風涼し 竹冷句鈔 角田竹冷
歩くこと涼し仏の前を行く 村越化石
死ぬまでの痛みと悟り涼しかり 牧野春駒
死は涼し医師の手に衿合されて 赤松[けい]子 白毫
死や涼し点滴の紐とりはづし 清水径子
死後涼し光も射さず蝉も鳴かず 朱鳥
母がりの厨子の佛の涼しけれ 筑紫磐井 野干
母の日の母の福耳涼しかり 渡辺恭子
母の背の若く涼しき桐箪笥 猪俣千代子 堆 朱
母の骨涼しあしゆびより拾ふ 上野さち子
母ひとり住みて涼しき草屋かな 石井桐陰
母へ向く妻にのこされつゝ涼し 杉山岳陽 晩婚
母よかの星と涼しき刻得てか 小松崎爽青
母老いて灯の涼しさを言ひ給ふ 大串章
水の色涼しくかげり初めにけり 高橋淡路女 梶の葉
水の葉鰈網はふり落つ涼しさよ 金尾梅の門 古志の歌
水よりもわづかに涼し瓜の色 樗良
水よりも竹林に添ふ涼しさよ 八染藍子
水団扇ペカ~鳴りて涼しいぞ 鈴木花蓑句集
水底の石みな透ける涼しさよ 吉屋信子
水底の砂の涼しく動くかな 長谷川櫂(1954-)
水底を涼しき雲のわたるなり 会津八一
水月光坂水走り岩涼し 岡田日郎
水涼しモーツァルトを聴くやうに 吉原文音
水涼し毬藻に鱒のひらめきて 臼田亜浪 旅人
水涼し毬藻の生きてゐる蒼さ 大橋敦子 匂 玉
水涼し父が好みし中の川 高木晴子
水涼し秋澄む関のかざり鎗 蓼太
水涼し緋鯉真鯉と浮き変り 今村蕾橘
水涼し過去一切を惜しみなく 柴田白葉女 花寂び 以後
水涼し選炭更に洗はるゝ 高濱年尾 年尾句集
水渡る声の涼しさ嫉みをり 文挟夫佐恵 黄 瀬
水盤に木賊涼しく乱れなく 小谷松碧
水貝や灯が入れば灯の涼しさに 森澄雄
水輪涼し祠に木目大きすぎて 香西照雄 素心
水鏡してゐる如き鹿涼し 岩崎照子
水音のかすかにありて涼しさよ 稲畑汀子 汀子句集
水音の風とはなるる春涼し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
水飯がすこし胃の腑も涼しからん 細川加賀 生身魂
汐煙ながれて涼し伊良古岬 鈴木花蓑句集
汐越や鶴脛ぬれて海涼し 芭蕉
汗涼し一刻に鞭あつる旅 赤松[ケイ]子
汝が指卓布にかけて涼しさよ 清原枴童 枴童句集
汝が涼し眼のあな大きもよ父を見ず 林原耒井 蜩
江戸五百里京八百里風涼し 西本一都 景色
池水の涼しさうつる蚊帳かな 増田龍雨 龍雨句集
池涼し向ふ側にも誰かゐる 山口いさを
沖涼しかかる船の灯街をなし 五十嵐播水 埠頭
沙羅の木に涼しさをいふ水のかげ 田中裕明 櫻姫譚
泡吹虫泡を出てをり朝涼し 堀口星眠 青葉木菟
波涼しすれ違ふ時船迅く 河合いづみ
波涼しボートは遠くへは行かず 岸風三楼 往来
波立てゝ生簀涼しや闇の中 増田龍雨 龍雨句集
注射器具朝は涼しき音たつる 朝倉和江
泳ぐ寐ざまの自画像死また涼しきや 文挟夫佐恵 黄 瀬
洋間には木の椅子ばかり涼しけれ 上野泰 春潮
洗はれてつむり涼しき石地蔵 樋笠文
洞然居士庭に涼しく花茗荷 田中英子
津軽弁涼しく聞きて分らなく 稲畑汀子 春光
浜木綿の百重なす葉の露涼し 鈴鹿野風呂 浜木綿
浦唄涼しそれとおぼしき夜山影 林原耒井 蜩
浪涼し干潟の端に乳母車 福田蓼汀 山火
浮み来て真昼涼しき鯉の髭 小松崎爽青
浮世絵の女涼しくふり向ける 西村和子 夏帽子
浮葉巻葉立葉折葉とはす涼し 山口素堂
海にすむ魚の如身を月涼し 星布尼
海は球形せりあがりゆく船涼し 林翔 和紙
海へ向く人のことばの涼しさよ 旭
海女涼し桶にすがりし子に教ふ 近藤一鴻
海女涼し玉依姫の血あるかや 阿波野青畝
海樓の涼しさ終ひの別れかな 河東碧梧桐
海涼し夕暮れ島の片便り 蘇山人俳句集 羅蘇山人
海涼し絣模様にうさぎ波 河野頼人
海風を渡るオカリナ雲涼し 吉原文音
涙また涼しよ生きてありにけり 村越化石
涼しいか草木諸烏諸虫ども 広瀬惟然
涼しいねと通夜の遺影のおん眼もと(悼大野林火先生) 殿村菟絲子 『菟絲』
涼しからん這入口から加茂の水 一茶 ■年次不詳
涼しかる月の門辺の臀(しりこぶた) 尾崎紅葉
涼しきかさびしきかもぐらに問はむ 南上敦子
涼しきダム友とその妻の間に見る 寺田京子 日の鷹
涼しき斑染めて秋待つ薊の葉 大島民郎
涼しき灯すゞしけれども哀しき灯 久保田万太郎 草の丈
涼しき灯一つ~に涼しき灯 久保田万太郎 草の丈
涼しき灯夜毎にふえて来りけり 久保田万太郎 草の丈
涼しき瞳迫りて舞に誘ひけり 岩崎照子
涼しき身耳にあて繭ささやかす 平畑静塔
涼しき雨老境の艶ほくろにも 村越化石 山國抄
涼しくしづか白繭に音こもりゐて 高島 茂
涼しくて山の樹々ひそひそ語る 高橋信之
涼しくて山雀の芸飽かず見る 辻田克巳
涼しくて眠られざりし女の顔 右城暮石 声と声
涼しくて眼に見えざりし蜘蛛の糸 右城暮石 声と声
涼しくて立つてをるなり寺の門 岩田由美
涼しくて翳りある屋ぞあらまほし 筑紫磐井 婆伽梵
涼しくて薪かかへる手が上手 金田咲子 全身 以後
涼しくて薬の草の花も咲く 大峯あきら
涼しくて蟹の朽ちをるお寺かな 太田鴻村 穂国
涼しくて魚影一分の隙もなし 飯田龍太
涼しくなるまで帯はぐるぐる巻き 今瀬剛一
涼しくも火之迦具土ノ神といふ 後藤夜半
涼しくも野山にみつる念仏哉 向井去来
涼しく化粧ひ墓参に向ふ三人子曳き 小林康治 玄霜
涼しく女の名聞いて忘れて女と居る 荻原井泉水
涼しく裸のうらおもてからほくろ寫しとらる 橋本夢道
涼しく銀鱗抗し得し魚数尾くるる 古沢太穂 古沢太穂句集
涼しけに横日匂へり夕鏡 尾崎紅葉
涼しけれ睫毛夕日に灼かれつつ 佐野良太 樫
涼しげといはれ心外梅雨は憂し 星野立子
涼しげな師と対ひゐて畏れけり 都筑智子
涼しげな菓子のくばられ来たりけり 成瀬正とし 星月夜
涼しさうな顔してすごいことを言ふ 須川洋子
涼しさにひとり門辺を歩きけり 会津八一
涼しさにミダ同躰のあぐら哉 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
涼しさに一筋生きて水屋川 松本進
涼しさに二人とうたり物がたり 紫白女
涼しさに伸びて夜明の瓜の花 石井露月
涼しさに似る子の心うべなふは 毛塚静枝
涼しさに嘯く月の高頬かな 尾崎紅葉
涼しさに四ツ橋を四つ渡りけり 来山
涼しさに坐して暑さを口にせし 手塚美佐 昔の香
涼しさに堪へて人あり磯しぶき 原石鼎
涼しさに寐よとや岩の窪溜 内藤丈草
涼しさに寝かねし唄や門の月 小酒井不木 不木句集
涼しさに寝てわが生をながめやりぬ 村越化石 山國抄
涼しさに居眠り行かん汽車の中 会津八一
涼しさに心の中を言はれけり 細見綾子(1907-97)
涼しさに惜みつ手置く読後の書 篠田悌二郎 風雪前
涼しさに懸けられてゐる佛かな 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
涼しさに旅濯ぐものひと掴み 稲垣きくの 牡 丹
涼しさに柱細りて酔ひにけり 八木林之介 青霞集
涼しさに石仏もまた位せり 村越化石
涼しさに覗く隣を持ちにけり 野村喜舟 小石川
涼しさに触れし手を剌す幹の芽よ 中島月笠 月笠句集
涼しさに鉛筆五本削りけり 鈴木しげを
涼しさのおみやげ三つ蛸三つ 永末恵子
涼しさのさびし走馬燈火をつがん 渡辺水巴 白日
涼しさのはや穂に出でて早稲の花 正岡子規
涼しさのむらだちのぼる杉木立 石原八束 空の渚
涼しさのゆつくりひらく薔薇茶かな 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
涼しさの一つ生まれて固き渦 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
涼しさの一人が立つて歩きけり 阿部みどり女 『微風』
涼しさの太き柱に凭れけり 藺草慶子
涼しさの宵の明星目ざし歩す 高木晴子 花 季
涼しさの寂しさとなる留守居役 小山則道
涼しさの心太とや凝りけらし 寺田寅彦
涼しさの指図に見ゆる住まゐかな 松尾芭蕉
涼しさの星の仲間の山家の灯 加藤亮
涼しさの水の上の声の漕ぎ出でつ 原田種茅 径
涼しさの池畔に出でし歩をゆるめ 西村和子 窓
涼しさの澄みの怖ろし羅針盤 太田鴻村 穂国
涼しさの火より生れし土偶かな 小池きく江
涼しさの真たゞ中や浮見堂 井上井月
涼しさの累々としてまり藻あり 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
涼しさの肌に手を置き夜の秋 高浜虚子
涼しさの肩より背より帰るさは 石塚友二 方寸虚実
涼しさの舟をわたりて舟に乗る 杉本寛
涼しさの野山に満つる念仏かな 去来 選集古今句集
涼しさの鈴振るごとき鳰のこゑ 石田郷子
涼しさの銅板に引く線なりし 高橋将夫
涼しさの闇こめて水匂ふかな すみだ川 新井聾風
涼しさの鳶の尾楫や伊勢の海 大峯あきら 鳥道
涼しさはいつもの席の柱陰 桂信子(1914-)
涼しさは一本道の母の墓 大木あまり 火球
涼しさは人参の髭馬の髭 大木あまり 火球
涼しさは哥機嫌なり月の船 乗雲 俳諧撰集「藤の実」
涼しさは寂しさとなり糸すすき 殿村菟絲子 『晩緑』
涼しさは座敷より釣鱸かな 昌長
涼しさは染めつけ鯰向付 高澤良一 鳩信
涼しさは椅子に円座をたまひしこと 後藤夜半 底紅
涼しさは波のうしろを次の波 岩田由美
涼しさは淋しさとなり糸薄 殿村莵絲子 雨 月
涼しさは淋しさに似て夜の秋 藤松遊子
涼しさは船の灯のゆきちがふとき 五十嵐播水 埠頭
涼しさは花えらびゐる尼二人 長谷川双魚 風形
涼しさは錫の色なり水茶碗 信徳
涼しさは露の大玉小玉哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
涼しさもその名からしてユカタハタ 高澤良一 燕音
涼しさも暑さもなべて寂かなり 相生垣瓜人 微茫集
涼しさやあるほど出して鷺の首 千代尼
涼しさやお水屋にさす木もれ月 金尾梅の門 古志の歌
涼しさやことに八十年(やそぢ)の松の声 千代尼
涼しさやこぼれもやらぬ松の露 高井几董
涼しさやすべて良医の匙加減 会津八一
涼しさやどの絵馬も帆に風孕み 伊藤いと子
涼しさやほの三日月の羽黒山 芭蕉
涼しさやみどりごの振る鈴の音 上田圭子
涼しさやよき碁に勝ちて肱枕 雨谷
涼しさやをさなき時のよし簀蔭 松瀬青々
涼しさやジャズに星降る楼の上 寺田寅彦
涼しさやデュフィにブルー・モツァルト 文挟夫佐恵 遠い橋
涼しさやファーストサーブ決めし時 仙田洋子 橋のあなたに
涼しさや一人が立って歩きけり 阿部みどり女
涼しさや井筒の中の忍草 江戸庵句集 籾山庭後
涼しさや傳一休のされかうべ 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
涼しさや先づ蛤の口の砂 句空 芭蕉庵小文庫
涼しさや先武蔵野のよばひ星 榎本其角
涼しさや八人代の田の青み 荒雀 俳諧撰集「有磯海」
涼しさや共に米かむ椎が本 如行
涼しさや再びともす燭の下 高井几董
涼しさや切紙の雪はら~と 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
涼しさや十悪法然愚禿鸞 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや半月うごく溜り水 一茶 ■寛政六年甲寅(三十二歳)
涼しさや去来の墓の一つ石 荒井英子
涼しさや君とわれとの胸の中 正岡子規
涼しさや塵なき風の茂り吹く 大谷句佛 我は我
涼しさや境内こゝに歯朶の谷 尾崎迷堂 孤輪
涼しさや墓なる父を訪ひたれば 角川春樹
涼しさや夏田の畔の昼あかり 智月 俳諧撰集玉藻集
涼しさや夕わだつみの色かはる 五十嵐播水 播水句集
涼しさや夕襞できし比枝の山 五十嵐播水 播水句集
涼しさや大津灯りし水の上 五十嵐播水 播水句集
涼しさや天守へのぼる木の階段 相馬沙緻
涼しさや天神地祇も鶏も 阿波野青畝
涼しさや奈良の大仏腹の中 夏目漱石 明治二十九年
涼しさや婦人画報に友二の句 青木重行
涼しさや子をよぶ牛も川の中 正岡子規

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by 575fudemakase | 2014-07-31 00:22 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

露伴忌

露伴忌

例句を挙げる。

そば猪口の端物買ひたる露伴の忌 半澤清隆(天為)
ペン胼胝の白く乾きて露伴の忌 赤木真理
幻談に燭して修す露伴の忌 橋本鶏二
暮れてより稲妻しげし露伴の忌 村山古郷
桐の木は素通りがよし露伴の忌 神尾久美子 桐の木
片減りの墨の歳月露伴の忌 成瀬櫻桃子(春燈)
詩丸また酒たてまつる露伴の忌 加藤郁乎 江戸桜
豌豆の目こぼし摘むや露伴の忌 手塚美佐
雑巾バケツに水は六分目露伴の忌 三木敬子(航標)
露伴忌のいやにしづかな日雷 高澤良一 素抱
露伴忌や触れれば固き喉ぼとけ 北野民夫
蝸牛忌や師礼をつくす人あらば 加藤郁乎「初昔」
蝸牛忌の近づくころや照りつゞく 塩谷半僊
蝸牛忌や驟雨が浪をわたりくる 中拓夫

以上
by 575fudemakase | 2014-07-30 00:32 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

月見草

月見草

例句を挙げる。

あかつきの河は奏でず月見草 六本和子
いちばんに朝が来てゐる月見草 吉田紫乃
かな~やまだ蕾もつ月見草 碧雲居句集 大谷碧雲居
かの母子の子は寝つらんか月見草 中村草田男
かはたれの生身つめたし月見草 文挟夫佐恵 黄 瀬
さゆらぎは開く力よ月見草 稲畑汀子
たれさがる花粉の紐や月見草 鈴木花蓑句集
つまみあぐ猫の子軽し月見草 横山房子
どこへ倒れても月見草つかめさう 今瀬剛一
ほころびて蕊うすみどり月見草 池内友次郎 結婚まで
まづ揺れて開く気配の月見草 岩間光景
みちのくの海ひかりなし月見草 村上 光子
みづうみの月に開けり月見草 成瀬桜桃子 風色
よりそへばほころびそめぬ月見草 池内友次郎 結婚まで
わが心海より昏し月見草 福田蓼汀 山火
コンテナを砦に港月見草 岩崎照子
ダンプ後退月見草ぎりぎりまで 今井 聖
ボタ山の裾に風生れ月見草 下村ひろし 西陲集
ママと書きママと書き月見草の夕 長谷川かな女 花 季
モンペ脱ぎ夜の裳ゆるらか月見草 香西照雄 素心
一つ蛾に浜の月見草みなひらく 林翔 和紙
一寸よそ見する間に開き月見草 室町ひろ子
一足ごとに月見草の土手道となる 川島彷徨子 榛の木
一輪車こぐ子駈ける子月見草 山田弘子
一面といふ月見草今は枯れ 深見けん二
乳牛に乳みち月見草ひらく 加倉井秋を 『真名井』
乳色の空気の中の月見草 高浜虚子
五六歩に海遠去りし月見草 斎藤玄 玄
人の世に月見草あり夜明けあり 星野立子
人の子に名を授けたる月見草 黒田杏子 一木一草
佐渡のはや暮れてをりたる月見草 大山 清治郎
傘ぬちにライターを摩る月見草 宮武寒々 朱卓
傘をさす女のこぶし月見草 磯貝碧蹄館
八ケ岳まなかひにあり月見草 町春草
兵火以後は衰へし寺月見草 大峯あきら
冥界へやさしきしるべ月見草 磯貝碧蹄館
北斗露の如し咲きすむ月見草 渡邊水巴
友の下宿に庖丁錆びる月見草 林桂 銅の時代
吊ランプもたらす女月見草 大木格次郎
啄木像の気取り愛すや月見草 奈良文夫
四人歩けば開き初めし月見草 長谷川かな女 花 季
壺の肩愛する孤り月見草 河野多希女 こころの鷹
夕ながし蹤きて戻りの月見草 清水基吉 寒蕭々
夕べ着き朝発つ宿の月見草 安沢阿弥
夕暮に白妙ふるへ月見草 藤間綾子
夕潮に纜張りぬ月見草 五十嵐播水 播水句集
夕焼けて薫ゆる月あり月見草 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
夕闇に浮かぶ孤舟の月見草 吉居珪子
夜の帷はみ出してゐる月見草 津村典見
夜の燈も乏しき村や月見草 香西照雄 素心
天地のあひびき長し月見草 三橋鷹女
妹が手をふるれば開く月見草 高浜虚子
妻は川に足浸けたがる月見草 佐野良太 樫
富士の霧圧倒し来る月見草 富安風生
対岸が灯れば滲む月見草 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
工場の木だまが這へり月見草 米沢吾亦紅 童顔
帆はいつも遠きところや月見草 下鉢清子
帰路とほし見ざるに月見草がみゆ 柴田白葉女 花寂び 以後
干網に光る鱗や月見草 西山泊雲 泊雲句集
床蹴り泣く稚児にほぐれて月見草 加藤知世子 花寂び
床頭台暗し月見草が欲し 岸田稚魚 『紅葉山』
影絵劇一団下車す月見草 山口青邨
待てど来ずライターで焼く月見草 寺山修司(1935-83)
急湍を抜けゆく船や月見草 日原大彦
摺り足に夜が来わななく月見草 文挟夫佐恵 黄 瀬
散るといふ風情はなくも月見草 原田杉花
星は夜空をおよぐ子のかず月見草 日美清史
昼のこともう過去となる月見草 星野 椿
月あらぬ空の澄みやう月見草 臼田亞浪 定本亜浪句集
月のまはり真空にして月見草 正木ゆう子
月はまだかがやきを得ず月見草 片山由美子 水精 以後
月出でてかくかく照らす月見草 前田普羅
月見草*しいらこちこちになって 柴田孝之
月見草いたる処に萎れけり 野村喜舟 小石川
月見草かく美しき宵ありき 星野立子
月見草かよはさ影を落しけり 池内友次郎 結婚まで
月見草きのふの花に暮れにけり 佐野青陽人 天の川
月見草さつきの手紙読みかへす 丸山比呂
月見草すくなく咲きて月明し 松本たかし
月見草どこまで行つても兄妹 小泉八重子
月見草にはとどかぬ体温計一本 永末恵子
月見草に子におくるゝの母帰宅 竹下しづの女 [はやて]
月見草に食卓就りて母未だし 竹下しづの女 [はやて]
月見草のひらくあかるさはある シヤツと雑草 栗林一石路
月見草の明るさの明方は深し 河東碧梧桐
月見草はなればなれに夜明けたり 渡辺水巴
月見草はらりと地球うらがへる 三橋鷹女
月見草は身の丈の花吾子嗅ぐよ 林 桂
月見草ひらきつつ闇密度増す 藤岡筑邨
月見草ひらき男の子守唄 渡辺桂子
月見草ひらくを待たず別れけり 岩崎照子
月見草ひらく野が果つ小樽湾 田川飛旅子 花文字
月見草ひらひらてのひらは流れ 八木三日女
月見草ふれて行かねばならぬ道 稲畑汀子
月見草ぽあんと開き何か失す 文挟夫佐恵 黄 瀬
月見草みごもりびとも歩りきけり 林原耒井 蜩
月見草めざめて黒き貨車長し 殿村莵絲子 花 季
月見草ゆれつつ宵を待つてをり 上野 泰
月見草われは掌ひらきたり 清水径子
月見草ガスは焔となりにけり 安東次男 裏山
月見草ランプのごとし夜明け前 川端茅舎
月見草一刀あらば野を拓く 古舘曹人 能登の蛙
月見草五十数へてまだ咲かず 佐野青陽人 天の川
月見草今宵は女同士かな 黒川悦子
月見草刈りのこされて盆の花 村越化石 山國抄
月見草別れてのちの山霧は 臼田亞浪 定本亜浪句集
月見草勤労の歩のかく重く 竹下しづの女句文集 昭和十二年
月見草原初のいろに海昏るゝ 望月たかし
月見草咲き満ち潮騒高くなりぬ 道部臥牛
月見草咲く絶海に絶天に 阿部誠文
月見草喪明け一と日の湖あそび 中村明子
月見草垣外の草と匂ひ合ふ 林原耒井 蜩
月見草墓前をかすめ日雨ふる 飯田蛇笏 霊芝
月見草夕べを過去としてしぼむ 甘田正翠
月見草夕べ誰かの来る予感 栗本秀子
月見草夕月よりも濃くひらく 安住敦
月見草外ノ浜とてとぼしらに 村上三良
月見草夜が遠まきにそそのかす 柴田白葉女 花寂び 以後
月見草夜気ともなひて少女佇つ 松本青石
月見草夜潮あそびの人通ふ 吉武月二郎句集
月見草夢二生家と知られけり 文挾夫佐恵
月見草大輪能登の夜をありく 前田普羅 能登蒼し
月見草始発電車は風はらみ 大井雅人 龍岡村
月見草客車一輛夜の駅に 桜井博道 海上
月見草宿はランプのともりけり 小澤碧童 碧童句集
月見草富士は不思議な雲聚め 河野南畦 『試走車』
月見草山のしづくを己れとし 河野多希女 こころの鷹
月見草山城たりし砦石 山本洋子
月見草川の流れの合ふところ 是木 朱夏
月見草帰り俥が拾ひし客 鈴木栄子
月見草庭にも咲いて浜つゞき 重永幽林
月見草怒濤憂しとも親しとも 広崎喜子
月見草房州露は貧しけれど 中村草田男
月見草日々波乗りの若者に 冨田みのる
月見草早瀬にひとり髪洗ふ 田中冬二 俳句拾遺
月見草星と言はれて見ゆるほど 阿部みどり女
月見草月のひかりの外はなく 手塚美佐 昔の香
月見草月より翳を貰ひけり 藤本朋子
月見草未完の家に闇つまる 横山房子
月見草枯立てり気が沈み入る 瀧井孝作
月見草梟の森すぐそこに 川端茅舎
月見草歩み入るべく波やさし 渡邊千枝子
月見草歩を返さねばなるまじく 大橋敦子
月見草水平線の上に吹かれ 高澤良一 ねずみのこまくら
月見草汐ざゐ闇とふくれ来る 増田 富子
月見草沖は漁火かざりそめ 徳永山冬子
月見草河童のにほひして咲けり 湯浅乙瓶
月見草沼よりの風あつめをり 村上しゅら
月見草涙見せじと海を見る 星野椿
月見草濃霧に咲いて昼なりし 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
月見草灯よりも白し蛾をさそふ 竹下しづの女句文集 昭和十二年
月見草煤の日輪に汽車停る 殿村莵絲子 花 季
月見草煤煙朝の海に降る 水原秋桜子
月見草爆震露を払ひけむ 林原耒井 蜩
月見草牛は四肢より暮れそめて 藤田湘子
月見草留守にする灯を一つ点け 保坂リエ
月見草白沙を神の御前まで 前田普羅 能登蒼し
月見草百姓泣きしを思ひ出づ 石田波郷
月見草砂地は風の吹くままに 桂信子 黄 瀬
月見草神の鳥居は草の中 水原秋櫻子
月見草胸の高さにひらきけり 西村和子 夏帽子
月見草花ひらく辺に門火燃ゆ 松村蒼石 雁
月見草花をあらたに鵜舟並む 石原舟月 山鵲
月見草荒磯の墓の薄暮光 石原舟月 山鵲
月見草萎れし門に帰省せり 前田普羅
月見草蕊さやさやと更けにけり 川端茅舎
月見草蛾の口づけて開くなる 松本たかし
月見草行かるゝ道と思ひゆく 高濱年尾 年尾句集
月見草見てゐて声の潤みけり 藤木倶子
月見草見る間も齢に責つかれる 文挟夫佐恵 黄 瀬
月見草赤くしぼみて落もせず 温亭句集 篠原温亭
月見草踏切番にいとまあり 木村蕪城 一位
月見草身の穴々を隠しけり 磯貝碧蹄館
月見草遠くから呼聲がする 草山 横山うさぎ
月見草重ねて薄き旅衣 西村雅苑
月見草野外映画のはじまれる 西村三穂子
月見草鉄砲水を忘れけり 文挟夫佐恵 雨 月
月見草開かんとして力あり 高濱年尾
月見草開くところを見なかつた 嶋田摩耶子
月見草闇より濃き嶺胸を衝く 文挟夫佐恵 黄 瀬
月見草雨にひるまぬ色を見き 阿部みどり女
月見草雲の暗さが村の端 桜井博道 海上
月見草霧の中より波つぶて 今瀬剛一
月見草音なき音に咲き増ゆる 水田むつみ
月見草馬も沖見ておとなしく 橋本風車
月見草馬柵に咲き湖ただ青し 岸風三楼 往来
月見草魚臭の消えし船残る 中拓夫
月見草鵜が敏感になりにけり 近藤一鴻
月見草黒部の水をやさしくす 宇咲冬男
月食や首を傾げる月見草 船平晩秋
朝の声濤が消しゆく月見草 桜井博道 海上
木炭の触れあう音の綺麗な月見草 金子皆子
松の根も石も乾きて月見草 中村汀女
機関車のひびきの残り月見草 木内怜子
母の臍さみしかるべし月見草 宗田安正
水漬きつつ梢の花もつ月見草 西本一都 景色
水音の中を歩いて月見草 末光令子
汐引いて海の遠さや月見草 中川きよし
汐浴の衣投置くや月見草 雉子郎句集 石島雉子郎
汝と我の間の月見草ひらく 上野泰 春潮
決心のひとときを咲く月見草 大西泰世 椿事
汽車煙熱きがかかる月見草 鷹羽狩行 遠岸
沖さらに沖を蔵せり月見草 伊丹さち子
波を踏むさまに海女ゆく月見草 米澤吾亦紅
洗髪乾きて軽し月見草 松本たかし
派出所の交替勤務月見草 大野伊都子
流す涙黄色と思ひ月見草 阿部みどり女
浄白は黄泉の色かも月見草 小松崎爽青
浦人に廓今亡し月見草 下村ひろし 西陲集
海女帰る刻月見草咲き揃ふ 町田しげき
湖荒れてゐる日はさみし月見草 高橋笛美
滑走路尽きしところに月見草 冨田みのる
漂流記読む椅子暮れぬ月見草 福田蓼汀 山火
潮ごみに鐘つく寺や月見草 会津八一
潮風に今開きけり月見草 雉子郎句集 石島雉子郎
濤来ればほの明るしも月見草 山口草堂
灯を消せよ月見草には月のあり 林原耒井 蜩
炎天やつぼみとがらす月見草 太田鴻村 穂国
無人駅ホームの端の月見草 石定まさ子
焼跡の東京広し月見草 成瀬桜桃子
燈の障子月見草色妻和むか 香西照雄 素心
牛かえり馬かえりゆく月見草 北原志満子
牛の群歩き出す意ぞ月見草 古舘曹人 砂の音
狐雨ふる田貫湖の月見草 萩原麦草 麦嵐
猛犬の女あろじや月見草 五十嵐播水 播水句集
瓜の腸堆し月見草ひらく 龍胆 長谷川かな女
病後の身縁に椅子出し月見草 阿部みどり女 月下美人
目覚めたるばかりの色に月見草 西村和子 かりそめならず
眼鏡購いぬ海が続いて月見草 和知喜八 同齢
知床の沼汚れなし月見草 山崎靖子
短きは膝の高さの月見草 京極杞陽 くくたち下巻
砂かげろふ瞳にこそばゆき月見草 太田鴻村 穂国
砂浜で転んでからの月見草 大西泰世 世紀末の小町
磧湯にひたりをる闇や月見草 冬葉第一句集 吉田冬葉
私の前を私が歩く月見草 原子公平
窓開き遅き夫待つ月見草 岩波千代美
竹割つた気性高きに月見草 古舘曹人 能登の蛙
紅さしてきし真夜中の月見草 青柳志解樹
細月に黄を奪はれて月見草 阿部みどり女
繋がるる鵜舟細身よ月見草 冨田みのる
織娘帰る鉄道沿ひに月見草 沢木欣一
美しき蝶の顎や月見草 齋藤愼爾
羽化はじまる月見草横の男も 森下草城子
考へに沈める女月見草 成瀬正とし 星月夜
耳重き兵隊溜まる月見草 大屋達治 繍鸞
耶蘇島の夕波しづむ月見草 正林白牛
腕たてふせ百回の罰月見草 竹中宏 句集未収録
虫喞々月見草張りつめんとす 林原耒井 蜩
行かう月見草のあわただしいそちこち 梅林句屑 喜谷六花
読みをれば海より暮れぬ月見草 五十嵐播水 埠頭
買うて来し月見草はや暗まぎれ 高木晴子 晴居
遠くまで灯は及ぶもの月見草 波多野爽波 鋪道の花
遥かなる村のあかりや月見草 朝木 芳子
釣人の魚籠の重さや月見草 林 久子
銀杏返しといふ髪ありき月見草 遠藤梧逸
開くとき蕋の淋しき月見草 高浜虚子
開くより大蛾の来たる月見草 高橋淡路女 梶の葉
降ることよわれ一人なる月見草 佐野良太 樫
陽炎や砂より萌ゆる月見草 秋櫻子
雨の中開きつゞけて月見草 高浜年尾
雨粒のそれかあらぬか月見草 飴山實 『次の花』
雲下りきて一雨の月見草 藤田あけ烏 赤松
項(うなじ)一つ目よりもかなし月見草 中村草田男
項一つ目よりもかなし月見草 中村草田男
風に舌出して子供や月見草 山西雅子
風に薄き表皮のありて月見草 正木ゆう子
風化してゆく篠小屋の月見草 萩原麦草 麦嵐
風紋の夕づく砂丘月見草 小原菁々子
風鈴に月見草ありそれでよし 高木晴子 晴居
馬市の跡は荒地の月見草 大木あまり 火のいろに
馬柵(ませ)つづくかぎり空ある月見草 桂信子 草樹
馬首をおろしてゐるや月見草 京極杞陽 くくたち下巻
高潮に咲いて小ひさし月見草 雑草 長谷川零餘子
鬣は馬のせつなさ月見草 松山足羽
魚籠の中しづかになりぬ月見草 今井聖
鰡はねて波まだ暮れず月見草 岡本まち子
鴉描いて足がふくれたよ月見草 永田耕衣 闌位
姫路城待宵草と暮れのこる 鈴鹿野風呂 浜木綿
少し酔ひ待宵草に手をふれぬ 菖蒲あや
帰らざる人を待宵草と待つ 川口咲子
待宵草妻に呼ばるるごとくかな 松山足羽
待宵草林立石油備蓄基地 高澤良一 寒暑
待宵草片淵は暮れ鮎をどる 木津柳芽
待宵草鳥海丸は繋がれて 高澤良一 寒暑
朝の間の待宵草に雨ありし 西村和子 窓
海苔干場待宵草の座萌えたり 佐野まもる 海郷
鉞半島突端の大待宵草 高澤良一 随笑
雨欲しき待宵草の香のほのか 阿部みどり女 月下美人
鵜捕り場に待宵草の吹かれをり 町田しげき

以上
by 575fudemakase | 2014-07-30 00:31 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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